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佐々木参考人 御紹介を受けました
東京水産大学の
佐々木忠義でございます。
御
承知のように、ただいま
海洋科学技術審議会におきまして、いろいろ
海洋開発に関します
科学技術につきまして
審議を重ねておりますが、本来でありますならば、
会長の速水が本席に
出席をいたしまして、
皆さま方に
お話を申し上げる筋でございますけれ
ども、のっぴきならない用事ができまして、
出席ができませんので、まず、
海洋審で行なっております
内容の
概略を、
会長にかわりまして私が
お話をさせていただきます。その
あとで、私
個人の、時間が許されますならば
私見としての
海洋開発への考え方を述べさしていただきたい、このように存ずる次第でございます。
海洋審におきましては、まず
審議の当初に、
四つの
部会を発足させまして、第一
部会として
海洋鉱物資源、第二
部会として
生物資源、第三
部会として
海洋環境部会、第四の
部会といたしまして、以上の問題に
関連をいたします
共通技術並びに
共通施設に関する
部会、この
四つの
部会が発足をいたしまして、それぞれ
部会長のもとに
専門委員を委嘱いたしまして、何回となく
部会を開いて、
検討をいたしたわけでございます。私は、第四
部会長を仰せつかりましたので、全体の御報告の
あとで、特に第四
部会の問題についても、お許しがありますならば、御
説明をいたしたいと、このように考えます。各
部会で
専門委員を委嘱いたしまして、これらの問題を慎重に
検討、
審議をいたしましたものを何回となく
総会に持ち込みまして、全体的な観点からこういう問題をどういうように取り扱っていくかという
総会が、これまたひんぱんに招集をされたわけでございます。その
総会におきまして、現時点で
最終結論が出ておるわけではございませんけれ
ども、
作業はかなり進行いたしまして、近く
総会としての、
海洋審としての
結論がまとまるものと思っております。
以上のような経過に伴いまして、
海洋審でいま考えておりますごく大ざっぱの
内容を申し上げますと、まず第一は、将来こういうものが取り入れられますならば、国の
施策としてぜひ
お願いをしたいという
幾つかの
項目があるわけでございますが、その第一の問題は、とにかく
日本周辺の
大陸だなの
海底をこの際徹底的に
基礎的調査を行なう必要がある。ごく大ざっぱな
内容は、
海底の
地形がどうなっているか、
地質がどうなっているか、
日本周辺の
大陸だなに一体どういう
程度の
鉱物資源が賦存するかといったような、その
資源の
問題等を含めまして、
日本周辺の
大陸だな
海底の徹底的な
調査研究の
推進をやる必要があるということが第一点でございます。
第二点は、
海洋という
環境を私
どもがどのように把握し、それをわれわれの
生活に役立てるか、
海洋環境をいかに
利用していくかという問題でございまして、したがいまして、
海洋を、いろんな複雑な現象がたくさんありますけれ
ども、きわめて迅速的確に把握するためには、いろいろな
手段が必要でございます。たとえば、
海洋の各
海域に
ロボットブイ、つまりいろいろな
海象を把握いたしますセンサーを積んだ
ブイを設置いたしまして、その
ブイから、時々刻々変転きわまりない
海象をほかの
ステーションに
テレメータリングで送ってくる、それをほかの
ステーションで受けまして、直ちにコンピューターにかけてそれを解析していくとか、あるいは、必要な
データをおかのほうから
コールシステムで逆にこっちがコールいたしますと、直ちにそれに反応して、必要な
データがいながらにしてとれるとかいったような
海洋の
環境、複雑な
海象を的確迅速につかんでいく、そうして、
海洋開発の
基礎の確立をしなければならない。そういうようなことをかりにいたしますと、エレクトロニクスとか、あるいは
関連をいたしましたいろんな分野の
科学技術が、当然の結果として、飛躍的に
発展をすることが期待ができる、こういうわけでございます。
第三点は、
わが国は、御
承知のように、
裁培漁業におきましてはおそらく
世界第一の地歩を占めておる、そいう
科学技術を持っておるというように考えられておりますが、まだまだこういうように
資源の乏しい、
人口の多い
わが国でございますから、少なくとも
わが国周辺の
大陸だなに、各地に
裁培漁場というものをつくりまして、積極的に魚を養いとっていくという姿勢をこの辺で出さなければならないじゃないか、そのためには、一挙にそういうことができる段階にはまいりませんので、現在持っておるすぐれた
科学技術を結集いたしまして、
わが国の適当な、かなり広範にわたる
海域を設定をして、それを
実験海域として、
周辺全体に及ぼすための
基礎の
技術をそこで積み上げていく、
開発をしていく、そういったような
家験栽培漁場というものを直ちに設定して、もちろん、それに伴います
各種の
機器、
装置をあわせて
研究開発をしていくということが必要ではないか。
それから第四点は、主として
海底の
石油、
天然ガス等の
鉱物資源の
採取に関する問題でございますが、申し上げるまでもなく、これまでの
わが国の
石油産業は、遺憾ながらその
技術その他の点において
外国に多くのものを依存してきた。このままで推移いたしますと、諸
外国ではさらに進んだ、すばらしい
技術を
開発しておりますので、この辺で私
どもも思い切ってかなり長い先を見て、当然こうなるであろうと考えられる、先行的と申しますか、そういう
技術を
開発いたしまして、そして、
石油掘
さくの
——現在五十メートルくらいでとっておりますけれ
ども、将来は二百五十メートルぐらいのところの
海底にそういう
装置を設置して、そこからさらに数千メートルに及ぶ
深度までの
ボーリングができる、そういったような、かなり長い先を見た
先行的技術開発をいまにして行なわなければ、再び後塵を拝するはめにおちいるだろうといったようなことから、そういうような先導的な
技術の
開発をすべきではなかろうか。
それから、最後の第五点でございますが、以上のようなことをいろいろあわせ考えますならば、すべての問題に
共通をいたします
共通的な
技術、
共通的ないろいろな
施設というものが当然出てまいるわけでございます。たとえば、ごく簡単に一例を申しますならば、これも十分御
承知のように、
アメリカ、
ソ連、フランス、ドイツ、イギリスあるいは
スコットランド等では、
海中に
作業基地をつくりまして、そうして、
人間がそこに長期間
滞在をして、そこで
生活をしながら
海洋資源開発の
場所に出かけていって、そこで働いて再びわが
基地に帰ってくる。船上から
潜水いたしますと、
潜水時間が非常に長くて、
作業時間が非常に短い。一日のうちにわずか二、三十分しか
海底で働けない。しかし、そういったような
海中作業基地をつくって、そこに居を移せば、何十日に及ぶ長期間にわたって多くの人が
資源採取に従事することができる、そういうことの
可能性を見出すために、いま申し上げたような
諸国では非常な力を入れて、その
技術開発に邁進をしておるわけでございます。すでに
皆さま方の御
努力で、
わが国におきましても、再来年を
完成目途といたしまして百メートルの
海底に
海中作業基地をつくりまして、四人の
海底作業員が約一カ月にわたって
滞在をし、
資源採取のためのいろいろな
手法、
手段を習得していく、それを受けまして、今度は、少なくとも
大陸だなを少し越しました二百五十メートルくらいの
海底にさらに規模の大きい
海中作業基地を設置いたしまして、
収容人員が十名、そこで
日本じゅうの
海底で働く
第一線——私は
先兵と申しておりますが、そういう
先兵を入れかわり立ちかわりその
共同利用施設を使ってそこで訓練をしていく。直接水圧を受けながら
人間が悪
条件下で働くということは、決してりこうな
方法ではございませんけれ
ども、いやおうなしにここかなりの長い間はそういう
手法で
資源開発にアプローチしなければならないというのが
現状でございまして、それを見越して各国でも非常な力を入れてやっておる。そこで今度は、
大陸だなを越えた二百五十メートル
あたりのところに設置をして、そして、入れかわり立ちかわりそこでたくさんのそういう
海底開発の
先兵を
共同利用施設を通して養成をしていく、そういう
特殊技術者をつくっていく。そのためには、いきなりそういうことができるわけではございませんから、そういうことを行なう
実験海域を求め、そして
陸地には事前に高度の
教育技術を持った人をさらに
潜水シミュレーターという
方法で、タンクの中に入れまして、実際に海の中に行かなくても、海の中に入ったと同じ
技術が習得できるやり方があるわけでありまして、一例を申し上げますならば、航空機の
操縦士が
シミュレーターを通して
操縦を習得し、ほとんど飛行機に乗らなくてもりっぱなパイロットになれると同じように、ほかの
潜水シミュレーターで徹底的なそういう
教育をする。その
共同利用施設としての
潜水シミュレーター並びにそれに
関連するいろいろな
施設がございますが、そういったようなものにすぐこれから手をつけなければならない。へたをすると青い目の
先兵が
わが国周辺の
資源開発に従事する
可能性があるのではないかというように私はかねがね考えておるわけでございますが、この
共同利用施設、
機器に関しましては、私が
部会長をいたしております第四
部会ですべてまとめたものでございますが、その中の
一つとしてそういうものがあります。
それから、これも御
努力によりましてようやくできました、
わが国では
最高の
潜水深度を持っております
潜水船「しんかい」、これは四人が乗って六百メートルの深さに
潜水をして、いろいろな
基礎的調査に従事をする特殊の
潜水船でございますが、諸
外国ではもう数千メートルが常識でございます。諸
外国でやっておるからというわけではありませんけれ
ども、
世界の
海洋の九五%は深さ六千メートルくらい。
アメリカでスレッシャーという
原子力潜水艦が沈没いたしましたが、その
原因を
調査するときに、どうしたかと申しますと、
アメリカが持っておりますバチスカーフ、
深海潜水艇を使ってたいへんな
努力をしてやったわけでありますけれ
ども、ああいう原理のものは
機動力がない。いろいろな問題で非常に困りまして、その
事故を契機として、
アメリカは
潜水船の
研究開発に従事して、現在すでに
アメリカでは十数社の各企業がそれぞれ独特なるものをつくっておる。大体
海洋の九五%が六千メートルの
深度を持っておりますが、先だってあれは「ぼりばあ丸」でございましたか、沈没をいたしましたのも六千メートル
程度で、ああいうものの
原因を追及するにいたしましても
方法がないわけであります。
世界の
海洋の九五%を占める
深度でああいう
事故が起こった場合に、直ちにそれを
調査する
手段、今後のいろいろなことをあわせ考えますと、少なくとも六千メートルを
目標とする新しい
深海潜水船の
技術開発がどうしても要る、といったような
幾つかの
項目がその中に包含をされておるわけでございます。
第一
部会につきましては、御
出席の
藤井第一
部会長が担当をされておりますので、御
説明があるかと思いますが、以上
私見をまじえまして、
海洋審の今日までの
審議の
状態を御報告いたした次第でございます。
一度ここで話を打ち切りまして、
あとに、もし必要でございましたならば、私の全く
個人の見解を申し述べたい、このように考えます。
以上でございます。(拍手)