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1969-04-02 第61回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月二日(水曜日)委員会において、 次の通り小委員及び小委員長を選任した。  宇宙開発の基本問題に関する小委員       木野 晴夫君   小宮山重四郎君       佐々木義武君    齋藤 憲三君       田川 誠一君    橋口  隆君       福井  勇君    石川 次夫君       三木 喜夫君    山内  広君       吉田 之久君    石田幸四郎君       近江巳記夫君  宇宙開発の基本問題に関する小委員長                小官山重四郎君 ――――――――――――――――――――― 昭和四十四年四月二日(水曜日)     午後一時四十三分開議  出席委員    委員長 石田幸四郎君   理事 小宮山重四郎君 理事 佐々木義武君    理事 齋藤 憲三君 理事 田川 誠一君    理事 石川 次夫君       海部 俊樹君    桂木 鉄夫君       木野 晴夫君    渡辺美智雄君       山内  広君    吉田 之久君       近江巳記夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君  出席政府委員         科学技術政務次         官       平泉  渉君         科学技術庁長官         官房長     馬場 一也君         科学技術庁計画         局長      鈴木 春夫君         科学技術庁研究         調整局長    石川 晃夫君         科学技術庁振興         局長      佐々木 学君         科学技術庁原子         力局長     梅澤 邦臣君  委員外出席者         参  考  人         (動力炉・核燃         料開発事業団副         理事長)    今井 美材君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  小委員会設置並びに小委員及び小委員長選任の  件  参考人出頭要求に関する件  宇宙開発事業団法案内閣提出第二八号)  科学技術振興対策に関する件(原子燃料に関す  る問題等)      ――――◇―――――
  2. 石田幸四郎

    石田委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。近江巳記夫君。
  3. 近江巳記夫

    近江委員 私は、最近の原子力研究所等における事故につきまして非常にいろいろと心配をしておったわけです。そういうわけで、本委員会を通じてもいろいろその対策等について、安全という面における万全のそういう措置をしてもらうように、あらゆる角度から長官にもその点を要望してまいりました。ところが、残念なことに、日本原子力発電所で、またそういう事故が起きておった。しかも、この事故は、一月から二月末にかけて同発電所使用済み核燃料を冷却するプール内壁のはげた塗料をはがして再塗装する工事を行なっておった。そのときのできごとであります。二月の二十四日にこの事故が発生しておるのですが、もうすでに四月ですよ。あれだけいままで、原研における事故の問題について、われわれとしてはその点を強く要望してきたわけです。その点、二月二十四日にこういう事故がありながら、何回もその間には委員会が開かれておる。一体、どうしてそのときに発表もしなかったのか、その辺非常に不可解なことがあまりにも多過ぎる。したがって、あなた方は、一体、この事故について知っておったのかどうか、またさらに、知っておったとすれば、それに対してどういうあなた方の気持ち、また、その対策をとってきたのか、まず、あなた方の言い分をひとつ聞きたいと思うのです。
  4. 木内四郎

    木内国務大臣 放射能管理の非常に大事なことは、近江委員のおっしゃるとおりでありまして、私も、この点については、特に今後のわが国の原子力産業の発展のために安全第一、しかも、科学的だけでなく、一般の人の安心ができるようなふうにこれをやっていかなければならぬということは、かねがね申し上げておったところなんです。いまお話しのこの事故というものは、実は法定の報告事項でもありませんでした関係上、そういう関係もありまして私どもに全然連絡がなかったわけです。そこで、ごく最近になってこの事態を承知した、こういうようなわけです。  こまかなことにつきましては政府委員のほうから説明をさせたいと思います。
  5. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 この原電におきまして、二月二十五日の午前十一時ごろに使用済み燃料貯蔵の池がございますが、その池の水をとりまして中の内面塗装をしました。それは清水建設下請業者が約三名入りましてしたわけでございますが、その入ります場合には、作業衣原電から渡しまして、その作業衣を着てやるという形になっております。それで、その作業衣にはポケットチェンバーという測定器がついておりまして、それで実際に行ないましたが、その作業が終わりましてから、出て、それをカウンターで調べましたところ、その中に着ておりますセーターに一部放射能が感ぜられました。したがいまして、そのセーターを脱がせまして帰したわけでございますが、実は、この管理上からいきますと、一応ちゃんとした措置をとっておりますが、事実上そういうことがなるべくないようにという努力は前々からお願いしているわけでございます。ただ、幸いに、これにつきましては、実際の量といたしましては一ミリレムという計算がきておりますが、これについてはたいしたことではございませんので、からだに影響ということは全くございません。  それから、これを二月二十五日からずっと隠しておったという点、まことに申しわけございませんが、実は法的面から考えますと、私たちのほうへ届け出という範囲に入っておりません。したがいまして、向こうが自主的にこれに対して処理する段階でございますが、現在われわれのほうも、できるだけ安全性を守るようにということで進めておりますので、今後ともできるだけそういうふうで、こういうことがないようにさせていきたい、こう思っております。
  6. 近江巳記夫

    近江委員 このプールは、御承知のように、使用済み核燃料棒を冷却するプールである。そうしますと、この間から原研では核燃料棒に要するに傷がいって、そこから汚染されたものがしみ出しているわけですよ。そういう点からいけば、これは最も危険な作業ではないですか、それを、請け負ったところは清水建設だ、その下請にそれをやらした。これはしろうとがやっているのでしょう。この辺のことについて、あれだけ原研事故云々の問題になっているときに、あなた方のほうに報告がないという。私たちのあの質問でも、他のあらゆる機関にそういう放射能汚染のおそれが必ず考えられるから、厳重に今後そうした事故が起きないように注意を徹底してもらいたいと言ったはずですよ。そういうあなた方の徹底がちゃんと行き届いておれば、実はこういうような事故がありましたと、当然入ってくるのがあたりまえじゃないですか。あなた方は、私たちが要望したその徹底を、あらゆる機会にやったのですか。やっておって向こう報告しないとなれば、向こうは、これはたいへんな問題ですよ。どうなんですか、その辺は。
  7. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 安全対策については十分考えるようにということは、常にやっております。今度の場合、この貯蔵槽処理という場合には、管理規程がございます。管理規程で、水を抜きまして、それでまわりをきれいにする。その管理規程で入るので、当然そこで前の調査をいたしまして、入る場合の規定で、これでこういう人が入っても大丈夫――しかも、そういうときは作業衣を着て入るという形になっております。それで着て入りまして、したがって、その管理規程で、出たときには念のために必ず調べること、ということで、調べて、中のセーターにあったわけであります。この点、原電におきましても十分考えて処理していたんですが、はからずもこういうことがあった――確かに申しわけないこういうことがあったと思いますが、そういうことについては原電理事その他が私らのところに参りましたときに、常に向こうの幹部の方々にも安全を守るように、そういうことは申し上げて、十分われわれとしてもできるだけの徹底をはかっているところでございます。
  8. 近江巳記夫

    近江委員 この管理規程に従って、作業衣も着て、あらゆる水も抜いて、安全な態勢で入った――それじゃ、あなた方のおっしゃる、何もかも万全であるのに、なぜ放射能を浴びたんですか。あなた方のそういうような管理規程なり、あるいは万全であると判断したその時点において、非常に危険な状態の中で、しろうとに近いような人に作業さしている。これはもうたいへんな問題ですよ。しかも、この事件については、この作業衣は、これをあとでチェックをした――この汚染区域に入るときには、発電所当局作業衣手袋、長ぐつをつけてこのように入った。しかし、この放射能検査を受けたところが非常に高い放射能を浴びておった、しかも下着にまで。下着ジャケツを脱いではかったところでもそれだけの高い放射能を示しておった。しかも、その下着ジャケツについては、クリーニングをしたらぼろぼろになってしまった。本人には返してない。新しいのを持ってきている。あなた方は軽い事故だと思っているかもしれないけれども、そのような証拠ともなるようなものを全部そのような、言うなら押し隠しているような状態ではないですか、この件について。どこに何でもなかったという根拠があるのですか。あなたが考えているような、そんな小さなこととは違いますよ、これは。それじゃ、なぜそのような下着ジャケツを返さないのですか。また、証拠として置いておかないのですか。その辺のもっとこまかいところをあなたは報告したらどうですか。あなたは、報告は、ほんとうにアウトラインしか言わないから、私はこういうケースをぽんぽんと出しているんですよ。あなたは、少なくとも当局として、責任者として、私たち以上にもっとこまかい報告を受けておるはずじゃないですか。私から言わなければ、あなたはそういうことを言わないのですか。あなたが聞いていることを全部ここで報告しなさい。
  9. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 実は作業衣の下に着ておりますものにつきまして、私の聞いているところでは、それを原電放射能を抜いて返すということがもちろん当然の義務でございます。それで抜いて返すということに時間をかけておりまして、その間にいろいろ行き違いがあったようにも聞いております。それで、こういう問題がございましたので、清水建設のほうから作業衣を支給したというふうに聞いておりますが、実はその作業衣にくっついた場合には原電がそれを処理するということになっておりますので、脱がせましてやったわけでございます。その範囲としては確かに私も聞いておりますが、そういういきさつが途中にあったということは確かでございます。
  10. 近江巳記夫

    近江委員 それじゃこの事件はどうやって発覚してきたんですか。あなたのところにどうやって届いたんですか。まず、その経過をずっときめこまかに言ってくださいよ。それが大事なんです、その経過が。その中に一切の問題が含まれておる。
  11. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 この事故につきましては、申しわけございません、実は一両日前に、あるもので、こういうことがあったのではないかということは間接的に私がとりました。つきまして、すぐ原電調査を命じまして、けさまでの調査のことをただいま申し上げたわけでございます。
  12. 近江巳記夫

    近江委員 そうすると、あなたはその報告を受けられて、いま報告なさったくらいの内容しか受けていないのですか。もっといろいろなことを知っているでしょうが。本委員会において私はこれを聞いているのですからね。あなたが聞いているもっとこまかいことを――私が作業衣下着ジャケツの話をして初めてあなたからそういうようないろいろな話が出てきておる。いろいろ報告を受けておるこまかいことをここでもっと報告してくださいよ、いろいろな角度から。
  13. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 私の知っていますところでは、この作業に行かれました人の奥さんが、作業衣が返ってこないので作業衣を返してくれということから話が出てまいりまして、村会の方々にその話がいきまして、それから原電のほうに話がいって、それでいまみたいな処理になった、その辺まで聞いております。そこでけさまでのこの調査で、実は、なぜセーターについたのかという点についての調査をもっと十分やるようにという指示をいたしております。と申しますのは、作業衣を脱ぐときに、不注意に脱いで、作業衣のほうから移ったという場合も考えられるという点がございますので、どこから出たかという原因究明としては十分やるようにという指示をしているところでございます。
  14. 近江巳記夫

    近江委員 あなた方はこの事故を非常に軽いように思っておりますけれども、検査当時、それじゃどのくらいの反応があったのですか。
  15. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 必ず、この仕事をやります場合――この場合は、足場を取りはずすという形で入った人たちでございます。それで作業衣を着まして、その作業衣のポケットにポケットチェンバーというのをつけております。そのポケットチェンバーには常に受けましたレム数が出ますが、それから計算いたしますと一ミリレム、したがいましてその中に一ミリレム以下が出ておるということになります。
  16. 近江巳記夫

    近江委員 いまの数値は間違いありませんか。
  17. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 私のほうで調べて、向こうからの報告として現在一ミリレム、それでこれの確認をいまいたさせておるところでございます。
  18. 近江巳記夫

    近江委員 それで、こうした原子力発電所というのは、もう何十カ所もこれからできるわけですよ。こういうずさんな管理体制というか、これは一つのこととして、ああそうか、人体にそこまでの影響がなかったかと済ませる問題じゃないですよ、これからの問題として。事件が二月二十四日に入っていながら、やっときのうおとついくらいにそれを気づいた、そういう連絡不備というか、これはもうあなた方が幾らわれわれに、私たちは安全を徹底しますとかなんとか言ったって、信用できないですよ。放射能汚染の問題については、あれだけ国会においても、マスコミにおいても、世間においても重大視しているわけです。一番の頂点のときに何の報告も入っておらない。あなた方、それに対してどう思いますか、監督官庁としてそのことについてどう思いますか。
  19. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 こういう原子力を扱って完全に被曝しないようにという考え方でございますが、やはり中の掃除その他の場合には、できるだけ安全管理規程でやっております。それで、その中に当然最小限度計画被曝といいますか、計画的に被曝を受けなければならない場合もございます。そういう点で考えておりますが、この場合は、作業衣のほうに出てくれば、これは当然でございますが、中に入ったという点で、確かに予測しがたい点で、セーターのほうにも出たということでございます。その点は確かに今後十分注意していかなければいけない。その徹底化を当然これから先も十分やらせていただきたいと思っております。
  20. 近江巳記夫

    近江委員 要するに、この二月二十四日にこれだけの事故があって、これがあなた方の耳に入らなかった。当然あれだけの安全管理ということをあなた方としても常に国会でも答弁なさっているし、あなた方もそれだけの処置をしてきた。しかし、それがこのように、われわれがこうやって聞かなければあなた方のところではっきりできない、また、それをあなた方も発表もしない。この辺のところを、要するに、いまのあなたの答弁では、いろいろな不測なことも起きるかもわからない、それを向こうのほうに責任をおっかぶせるような感じがある。二月の二十四日からいままで報告も――そういうようにあなた方としてキャッチができなかった、そのことについてどう思っているのですか。その辺の感覚が問題ですよ。やむを得ないという感覚なのですか、どうなのですか、その点は。
  21. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 法的に見ますと、事故届け範囲から見ますと、これは法的に義務として届け出になる範囲でございません。しかし、こういう事故が、ことに初めての原子力発電所でございますから、できるだけ、ありました場合にはこちらへ連絡をとるようにという形をとっております。向こうも非常に徹底してはやっておりますが、今度の場合が起こりまして、その点についてのわれわれのほうに対する連絡、こういうことの緻密性が少し欠けていたと存じますが、できるだけ連絡するように今後持っていきたいと思っております。
  22. 近江巳記夫

    近江委員 連絡をとるようにやっておったのでしょう、同様なことであろうと。それができていないということ自体が、あなた方がまだまだ安全という問題についていいかげんに考えているのですよ。神経が末端まで行き届いていないじゃないですか、ぴりぴりしたものがないじゃないですか。あなた方がそんないいかげんな態度では、国民は安心できませんよ。国会答弁で、その場限りでどうだこうだ、末端のあらゆる第一線機関にまであなた方が言明したことが行き届いていなければだめじゃないですか。しかも、その作業状態についても、非常にそういうようないろいろな心配な点が予測されたとあなたは先ほどおっしゃった。それをしろうとに近いような下請のそんな人にやらせておる、そんなずさんな管理がありますか。それは管理規程に従っているのですか、そういうしろうとに近いような人をやらすということは、管理規程ではどうなっているのですか。
  23. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 この管理規程の規則は私たちのほうで承認していますが、ここまで下請業者にやらせるかどうか、熟練者か、こういう点については私もいまちょっと存じません。しかし、向こうがここに入れる場合には、当然この分は放射能について十分責任ある者が入るあるいは入らない、それから入る場合にはどういう管理者がここにくっついているという形で、当然その点は進めていると思います。
  24. 近江巳記夫

    近江委員 進めておりますと思いますではなくして、それでは、それをあなたは監督官庁として出しなさいよ。こうこうこういうような規程でこうなっていますと。同じようなケースが何ぼでも起きますよ、こんなことでほっておけば――局長にお聞きして、それから大臣にお聞きしますから、局長
  25. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 もちろんこういう諸装置の内壁塗装、こういう場合には、向こう放射性管理主任技術者もおります。そういう熟練したのがそばへ行ってやり方を言って、それで作業員が入るという形になっております。したがいまして、今度の場合も、その規程としては当然それでやっていきまして、それから管理していってそれを見つけた。当然その間に、いま先生おっしゃいます不注意といいますか、そういう点があったかも存じません。その点について十分いま検討さしているところでございます。
  26. 近江巳記夫

    近江委員 それでは、あなた、その主任責任だと言うのですか。その辺の責任をあなたはどこにあると考えているのですか。その責任というのはつながって、結局は科学技術庁に来るわけでけけれども、その責任段階をもう少しあなたとして、これこれこれがポイントであり、こうなっているのだと、その辺をもう少し事件をこまかく話をして明確にしなさい。
  27. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 法的にいきますと、この仕事責任は全部原電でございます。したがいまして、原電作業範囲内としてこういうことが起こったということで、当然の責任としては原電が負います。しかし、法的以外のものになりますと、届け出が参りまして、われわれが指示その他をいたします。ただ、そういうことだけでいくわけじゃなくて、行政指導、あるいは現在の状況から緊密な連絡をとって、なるべくここはうまく持っていきたいという感覚からいきますと、当然われわれのほうもそういう普及徹底が悪いというところの責任は確かにございます。
  28. 近江巳記夫

    近江委員 原電は、なぜ科学技術庁のほうにいままで報告しなかったのですか。
  29. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 原子炉によります事故という場合で考えまして、法的に必ず届けるという基準がございます。これは規制法に載っておりますが、その範囲外でございますので、原電はこの件についてわれわれのほうに届け出てこなかった。ただし、私たちのほうも、先ほど申し上げました行政指導その他の関係から、できるだけ今後こういうものについても連絡をとるようにさせたいと思っております。
  30. 近江巳記夫

    近江委員 先ほどもお話ししたように、作業員についても、しろうとに近いような、チェックもできないような、そういう下請にやらしておるわけです。そうすると、このような作業について同じようなケースがこれから考えられますよ。そういうあぶない管理のままで、あなた、これからやらすつもりですか。これはただ一つの不手ぎわであった、それだけで済まして、また同じようなことをこれから続けるのですか。科学技術庁としてどう考えているのですか。
  31. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 この件につきまして十分いま調査中でございます。そして、そのやり方等不備がございましたら、これにつきましてはわれわれのほうから厳格な指示を与えたい、こう思っております。
  32. 近江巳記夫

    近江委員 あなた方の指示というのは、結局いままでの状態から見て、あなた方行政責任監督官庁として報告もしなさいといっておったって、報告も入っていないでしょう。あなた方の指示がこうだといったって、そのとおり実行するとは限りませんよ。住民も安心して、作業員も安心して仕事にかかれるような、もっときめこまかなそうした対策というのが大事じゃないですか。ただ指示だけでだいじょうぶですか。それは、あなたは原因をとことん追及しなければわからないとおっしゃるかもしれないけれども、ただ指示だけでそんな簡単に、これから発生してくるそういう事故が防げますか。
  33. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 早急に原電と打ち合わせしまして、その連絡体制その他についても考えたいと思っております。
  34. 近江巳記夫

    近江委員 連絡体制というのは、それはまあいずれにしてもパイプですから、事故未然に防いでいく、あるいは事故後の報告とか、これはもう当然やってもらわなければならない。しかし、未然に防ぐということは一番大事なんですよ。起きてから連絡したって、しかたがない。だから、あなた方として、今後こういうような事故を防いでいく、それについてどのように考えておられるのですか。ただの一片のそんな指示でいいんですか。
  35. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 原電が行ないます安全管理方策というものについては、できるだけ緻密にやるように、その点は年じゅう指示しております。それで、今後もそういう点、安全管理やり方、いまの処置のしかた、これについては十分徹底してもらうようにいたしたいと思います。
  36. 近江巳記夫

    近江委員 それから、あなた方の十分な徹底というのは、私たちはそこまで確信は持てませんけれども、まあ、しかし、一応そのまま受けるとして、この事故の、もう少し私は内容に入ってみたいと思うのですけれども、この作業員は、発電所内汚染管理区域使用済み燃料プールのペンキ塗り変え作業のための足場づくり作業をしていた。汚染区域に入るときには、発電所当局作業衣手袋、長ぐつをつけ、帰りに、放射能がついていないかどうかをチェックする。作業員作業衣を脱ぎ、手を洗って放射能検査を受けた。そうすると、放射能反応を示した。もう一度手を洗ってはかったけれども、やはり放射能反応を示した。おかしいと思って、下着ジャケツを脱いではかったところが、今度は放射能反応を示さなかった、まあこういうようなことを言っているわけです。ところが、預かったこのジャケツ下着は、クリーニングをしたらぽろぽろになってしまった、こういう事実をあなたはどう思われますか。なぜ下着クリーニングしたら、ジャケツクリーニングをしたらぽろぽろになったのですか。こういう事実をあなたはどう考えますか。
  37. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 いま先生おっしゃいました前のほうは、確かにそうでございます。それで衣服を脱がせて検査したところ、身体汚染というのはなかった、こういうことでございます。  それから、そのジャケツクリーニングしたらぼろぼろになったということは、まだ私は存じません。ただ、放射能がその一ミリレム程度のものでジャケツがとたんにぼろぼろになるということは、いまちょっと私もよく存じませんが、考えられないと思います。
  38. 近江巳記夫

    近江委員 考えられないなら、どうしてそれじゃジャケツを、この下着を返さないのですか。だから、そこのところはおかしいじゃないですか。
  39. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 確かにそのジャケツを、もしよごれていました場合には、それをきれいにして返すというのが取りきめになっております。その関係から、確かに、この原電がシャツを返すのに、重点的に早くやるということをせずに、もたもたしていたというような感じがその間に私はうかがわれます。その点ではある程度の、ここに従事した人たちの奥さん方に悪い影響を及ぼしたのではないか、こう考えます。
  40. 近江巳記夫

    近江委員 これはあなたのほうも調査なさるとおっしゃっていますから、私ももう少し詳細な報告を受けたいと思いますが、先ほどあなたが話されたように、今後のそういうこまかい点に至るまでの連絡報告ですね。それを今後やっていきたいと、このように言われた、それと実際の作業の規定、あらゆる細部にわたる点にまで今後統一した基準をぴしっとつくって、そして、今後実施されていかれるつもりなのかどうか、その辺のところをお聞きしたいと思うのです。
  41. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 やはり原子炉安全審査をして、こういう運転をし始めたときに十分な管理規程というのをつくっております。それでもこういうことが起こったという先生のおしかりでございますが、もちろん、こういうことが起こって、二度、三度ないように、できるだけ、この点については安全管理規程をもう一度見直して、十分直すというところは直すようにいたしたいと思います。
  42. 近江巳記夫

    近江委員 時間がありませんので、この問題はこれで終わりますが、ここで長官にお尋ねしたいのですが、東京電力と福島県の間で三十一日に安全協定が結ばれて、共同で放射能の監視に当たる取りきめをした、このようになっておりますが、それは科学技術庁チェックをしたのですか、また、チェックをしたその中で、問題点というのはなかったのですか。
  43. 木内四郎

    木内国務大臣 原子炉安全管理の問題について、近江委員にいろいろ前の質問に関連して御心配をかけまして、まことに恐縮しております。  ところで、原子炉の設定にあたりましては、すでに御案内だと思うのですけれども、これを設置する場合には、総理大臣の許可が要ることは御案内のとおりです。許可するにあたりましては、その前に安全専門審査会の厳重な審査をするわけですね。それからまた、あとにおきましてもあるいは設計、工事方法の検査もしますし、また、仕事を始める前の事前の検査もしますし、また、いまいろいろ御心配になっておった保安規定ですね、そういうものの認可というようなこともやっておるのです。そうして、原子炉の運用に対する安全性を十分に確保するように諸般の規定を設ける、また、手続をしておるわけなんですね。  ところで、そういうことで、原子炉の設置、それから運営にあたっては、安全性は十分確保されると私どもは思っておるのですけれども、一般には、地元の人たち安全管理の問題について非常に不安を持っておる。そこで、地方公共団体と原子炉の設置者との間において特別に協定を結んで、そして、設置者が調査するところのモニタリングポストですね。そこに出た結果、そういうものを設置者のほうで見るだけでなく、その地方公共団体の代表者もこれを見て、そして、これならよかったという、それで安心感を与えるために、私どもはできるだけ設置者と地方公共団体とが、名前はいろいろありますけれども、協議会のようなものを設けて、その監視の結果を納得してもらう、了解してもらう、こういうことは非常にいいことだと思いまして、従来からそういうことをすすめておるわけです。  そこで、すでにこれは福井県にもありますけれども、福井県では、関電と日本原子力発電会社、福井県とがすでにそういう協定を結んで、協議会といいますか、そういう機関を設けてやっておるわけです。それで今回は東京電力と福島県とがそういう協定を結んで、そういう機関を設けて、そうして、自分たちが調べるだけじゃない、地元の人にも十分了解してもらう、こういうことにしたということは、これは非常にけっこうなことだ。従来からわれわれはそういうことを設置者また地元の人にすすめておるわけです。そこで、もし要求があれば、科学技術庁におきましても十分に指導――と申してはあるいは失礼かもしれないが、指導したり助言したりしたい、かように思っておるわけです。
  44. 近江巳記夫

    近江委員 あなたは政府として新たな監視機関を設ける、こういう発言をなさったと聞いておりますけれども、その構想についてお聞きしたいと思うのです。
  45. 木内四郎

    木内国務大臣 多少間違って新聞などに報じられたようでありますが、私は別に新たなる機関を設けるということを申したわけではないのでありまして、この間、再処理工場の設置の安全審査の専門部会が原子力委員会の中にありまして、それから報告が出たことは御案内のとおりだと思います。その中に、海域に対する影響という項の下に、周辺の環境におけるところの監視の結果を公正に評価し得るような権威ある中央機構を考えることが必要だ、こういう一項も入っておるわけであります。それは、私いま申し上げたように、科学的には正しいとわれわれのほうでは思っても、原子力委員会その他のほうで思っても、一般の人にやはり不安がある程度ある、それを解消するためには、もっと権威のある機関でそういうことをいろいろ評価してみたほうがいいじゃないか、こういう構想があるわけであります。そこで、私はそのことに言及しまして、これは非常にけっこうな構想だ、われわれとしても、原子力委員会において、その問題について十分検討していかなければならぬ問題である、こういうことを申したわけであります。
  46. 近江巳記夫

    近江委員 何かちょっとあいまいな大臣の答弁のように思うのですけれども、具体的に私いまお聞きしておるわけですが、そういう権威のある監視機構といいますか、そうした住民の不安をなくすために、そういうような権威のあるものを置くというのは非常にけっこうじゃないかと長官も答えたと、このようにおっしゃっておりますが、そのことばを具体化していけばどうなるのですか。あなたがおっしゃったこの新たな監視機関を設けるということになるんじゃないですか。
  47. 木内四郎

    木内国務大臣 先ほど来申し上げておるように、政府としては、原子炉に関する規制のいろいろな法律があって、われわれのほうとしては、科学的に万全の措置を講じていると思っています。しかし、それでも地方住民などにいろいろなことがありますから、いま申しましたような、また、さっきお話がありましたような東京電力と福島県というような、地方における協議会を設けて、そして、地元の住民にも、ああそうか、それなら安心だというようなふうに言い得るような、納得させることのできるような機関ができることは非常にけっこうだ、こう思っているのです。たまたま安全審査専門部会におきまして、再処理工場についてそういう提言がありましたから、私は、その問題は大いに取り上げる値打ちのある問題だ、かように思いまして、これは私一人でどうとかということのできる問題じゃないので、まだ原子力委員会自体がその問題を検討しておらないのですから、原子力委員会自体は、あの報告書を取り上げて、非常に慎重に検討して、そして原子力委員会などの意見を十分に徴した上に適当な措置を講ずることがいいだろう、十分に検討した上でないと、いますぐにどういう機構を設けるかというようなことは、直ちにまだお答えはできないわけであります。
  48. 近江巳記夫

    近江委員 そうすると、やはり将来は、いま大臣がおっしゃった、何らかの具体的なそういう権威あるものをつくっていきたいというお考えは、大臣はあるわけですね。
  49. 木内四郎

    木内国務大臣 それは非常にけっこうなことであるので、私は前向きにその問題を検討していくことがいいだろう、かように思っております。しかし、これは原子力委員会の中で特別なそういう機構を設けるかどうか、そういう点につきましては、いずれともまだ決定しかねる問題であります。
  50. 近江巳記夫

    近江委員 だけれども、この監視機構を設けるということは、これは大臣がそういう発言をされたということで、それによって住民はみんな、これからの安全ということについて非常に安堵した、そういうような気持ちを持っているわけですよ。もう大体知っているのですよ、そういうことは。それをまた何かあなたの抽象的な、将来、ある程度は考えているけれどもというような、何となしにばく然とした――それじゃ、原子力委員会がだめだといえばもう私はやめるのだと、そういうような非常に弱々しい、他の機関で決定してくれたら私はやりますというような、あなた、国の最高長官として非常に確信がないと私は思うのです。もう少しやはり、あなた最高長官として、はっきりとおっしゃったらどうなんですか。何かよそへぼっと私の意思を預けてあるような感じですよ。どうなんですか、その点は。
  51. 木内四郎

    木内国務大臣 いま申しましたように、問題は、あの報告書にあることが一体どういうことかと申しますと、この周辺環境に対する監視というものはいろいろなことでやっています。これはすでに政府においてやっておることでもありますし、さらに地方においても、今度再処理工場ができることになれば、再処理工場自体も、おそらくその地元の人たちとある程度のものをこしらえたりする、監視機構をこしらえるでしょう。そこで、文句は何と書いてあるかというと、周辺環境におけるところの監視の結果得たところの資料を公正に評価するところの権威ある中央機構というものを考えることが望ましい、こういうことにいまなっているわけです。ですから、これは監視機関ということはいいが、その数値は正しいなら正しい、あるいはどうだという、この評価をするところの権威ある中央機構というものを設けることが望ましいということであります。私は、そういうことができることは非常にけっこうだと思っております。ただ、しかし、行政上の問題としていろいろな手続もありますから、私は科学技術庁長官だからといって、何もかもほかのことを無視して、いますぐにそういうものを設けますということをここで言い切ることは適当な発言ではない、かように私は考えておるわけです。
  52. 近江巳記夫

    近江委員 あなた個人としては、将来そういう権威ある機関を設けていきたい、この辺の意思ははっきりしておるわけですか。
  53. 木内四郎

    木内国務大臣 それですから、私は先ほど来申し上げておりますように、これは非常にけっこうな発想である。したがいまして、これを原子力委員会等にはかって、そうして、適当なことはできるだけ実現するようにいたしたい、かように私は思っております。しかし、その機構はどういう機構であるか、それはいままだここで言及する段階ではない。慎重に検討して、最も効果的な、効果をよくあげるような中央機構というものができるのでなければ、私は意味がないと思いますから、そういうことについて十分検討してまいりたい、かように申し上げておるわけであります。
  54. 近江巳記夫

    近江委員 あまり時間がありませんので終わりますが、もう一度先ほどの原電のあの事故に戻りますけれども、この事故によって国民の間にまた非常に不安感というものが高まったと私は思うのです。こういう点について、最高責任者として、いまどのような気持ちでおられるか。先ほど、具体的なことについては局長答弁されたわけでありますが、それについて、あなたが最高長官としてさらに具体的なお考えが何かありましたら、こういう点をもって今後の安全、国民の皆さんに安心をしてもらうというそれがあれば、最後の締めくくりとして、ここで述べていただきたいと思います。
  55. 木内四郎

    木内国務大臣 いまの日本原子力発電所使用済み燃料貯蔵しておった、それの槽のペンキ塗りかえについて、いろいろ御心配をかけまして非常に恐縮しております。私はもともと、これから日本の原子力の技術、また、原子力産業の発達をはかっていくためには、まず安全確保ということが第一だということは、もう繰り返しあらゆる機会に申し上げております。しかも、それは、科学的にも安全であるだけでなく、社会的にみんなの人の不安がないようにこれを納得させていかなければならぬということを私は第一に考えております。そこで、そういう見地から、私はそう考えても考えなくても、政府の今日までの施策というものはそこへひたすら目がけておるわけです。そこで、さっき申しましたように、原子炉をつくる場合には、厳重なる安全審査の専門委員会で審査をして、そうして、許可をするかどうかということをきめる。それから、設計とか工事の方法についても、詳細に調べて認否を決定する、あるいは、いよいよ仕事を始める場合には、さらに安全性の見地から事前の検査をする、のみならず、この保安規定も原子力委員会で審議をして認めておるものですから、保安規定についても認可をする、そういうふうにして、設置だけでなく、運営についても十分に安全が確保される、さらに、放射線あるいは放射性物質の管理につきましては、これまた厳重なる基準を設けて、これを設置者に守らせる、こういうことにしておるわけです。  ところで、この安全管理の問題は、これも私は前回の委員会でよく申し上げたと思うのですが、これは管理者だけが注意しておっただけじゃいけないのです。これに従事する者あるいはこれを監督する者、この人たちも細心の注意を払っていかなければならぬ。管理規程にはこうあるけれども、保安規定にはこうあるけれども、おれたちはマスクをかけないでやってもいい。この前の被曝のように、マスクの用意があるのにマスクをつけないでやってもいい、あるいは作業衣を着ないでやってもいいというようなことをやっては困るわけです。ですから、この保安規定というものは、詳細にわたって注意すべき点を規定しているわけなんです。  それで、今度の炉の問題につきましても、まず作業衣を着て入る、手袋をする、あるいはくつをはいて入る。そうして、しかも出てきた場合に、もちろん安全審査のことを十分審査していますが、これはやはり危険なものを扱うものですから、多少の汚染があるかもしらぬ、そういうところは出てきたら、すぐに厳重に検査をしろ、作業衣手袋、それからさらには、疑問のある場合には下着まで検査しろ、こういうことで厳重な検査をやってきておるわけです。そこで、検査したとろが、多少の汚染があるから、それは洗たくしなければならぬということで、これを取り上げるということは当然のことで、作業衣も取り上げる、下着も汚染しておったので取り上げる、そして、これを洗たくして返すということになっておるのだから、洗たくをした。洗たくをしたところが、たまたまそれがぼろぼろになった。それは汚染の程度によったのか、あるいはシャツとかああいうものの素材が悪かったのか、あるいはこれは私はわからないと思うのです。そこで、それを返せなかったものだから困っておるところに、その工事に従事した者からシャツを返してもらわなければいかぬと言ってきたので、清水建設がかわりのシャツを返した、こういう事態でありまして、私は、この設置者としては相当な注意を払っておるのじゃないかと思うのです。  しからば、それをなぜ科学技術庁が知らなかったかという問題になってくると、これは、科学技術庁は規定を設けてあるのです、設置者に対して義務を命じておる、ある程度の被害があったら、すぐに報告しろ。これは、彼らは軽微なものと見た、いいか悪いかは別として、軽微なものと見たから、われわれのほうに報告してこなかった。その作業衣を洗たくして返せばいいと思ったら、返す前にぼろぼろになってしまったということで、その程度で、軽く見たといったらしかられるかもしれないけれども、軽く見ているわけではないのですよ。そこで、そういう事態だと私は聞いておるのです。しからば被曝――被曝といいますか、汚染の程度はどうかといいますと、一ミリレム程度で、きわめて軽微なものであった。しかも、出てきたときに、すぐに厳重な検査をした。保安規定に従っておる。一ミリレムという非常に低いものであったということです。そういうようなことで、事態は、私は、そう申し上げてははなはだあれですけれども、われわれのほうに報告すべき事項じゃなかったのですよ。われわれのほうとしても、その規定によって法定の報告を受ける段階になっておらなかったのです。しかし、いま近江先生のおっしゃったように、私も先ほど来申し上げているように、科学的にはそうであっても、一般に不安を与えてはいかぬというので、そういうものがあったらできるだけこちらに報告するようにさせるように、私は原子力局長にも、またその設置者に対しても注意しているわけなんです。私は何としても安全確保ということを第一の問題だとして、部下に対しても厳重に注意している次第ですから、今般はいろいろ御心配をかけましたけれども、この程度でひとつお許しを願いたいと思います。
  56. 近江巳記夫

    近江委員 この程度で終わろうと思ったのですが、あなたも要らぬことばかり話しておるから、私も時間がないからもうやめますけれども、ぼろぼろになったのは洗たく機だとか、あとでちょっと訂正は入りましたけれども、非常にニュアンスが強いわけです。そういうことだとか、一貫してそういう小さなことについては報告しなくてもいいのだというような、科学技術庁責任ではないというような、責任回避のようなそういうようなことばは、私は非常によくないと思う。この事件で私が聞いておったのでは、あなたは一ミリレムなどと言っておるけれども、検査当時の話から百から百五十ミリレム反応を示したといわれる。局長、これは厳重にもう一度事実を調査してください。話に食い違いがあり過ぎる。こんなのは冗談で言っているのと違うのです。こういう点について、あなたたち行政の、厳重な詳細な管理規定を設けてやっておるといったって、現実にこういった事故が起きておる、不備があるからこういうことが起こるのです。作業員に至るまで、従業員に至るまで、あなたはこまかいそうしたことを守らせてどうだと言っておるけれども、現実にこういう事故が起きておる。そこで、どこでどういう事故が起きたのかというチェックをもっと厳重にしなければならぬと思う。そういう点で、結局保安あるいは運営、安全管理、従業員のそうした問題、あらゆる点に至って、こういう安全性という問題についていろいろそういう関連のものがあろうかと思いますけれども、そこで総点検をやって、あらゆるこまかい部署に至るまでチェックをやって、そこで先ほど局長は、悪い点は改めて、また改善していくと言われましたけれども、そこで、そういう総点検を開始すべきであると思いますが、局長はどうですか、あらゆる規定に至るまで。
  57. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 よく調べまして、不備のないように十分やらせたいと思っております。
  58. 近江巳記夫

    近江委員 私がいま言った総点検はやるのですか。あらゆる規定からこまかい点に至るまで総点検はやりますか。
  59. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 今度の調査をやりまして、そういうことがございましたらば、当然そこまでやらないと、われわれのほうでも、いま大臣から言われました安全第一ということの観点からもやりたいと思います。
  60. 近江巳記夫

    近江委員 その局長答弁に対して、大臣はさらにバックアップして完ぺきにやられる御意思がおありでしょうか。
  61. 木内四郎

    木内国務大臣 いま局長から申し上げましたように、保安規定というものも十分に注意してつくってあるつもりでありますけれども、なお調べました結果、必要があるということになりますれば、そういう点については改めなければならぬと思っております。
  62. 近江巳記夫

    近江委員 これで終わります。      ――――◇―――――
  63. 石田幸四郎

    石田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  原子燃料に関する問題調査のため、本日、動力炉・核燃料開発事業団理事長今井美材君を参考人として、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 石田幸四郎

    石田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ―――――――――――――
  65. 石田幸四郎

    石田委員長 濃縮ウラン開発について、動力炉・核燃料開発事業団においては、すでに遠心分離方式について基礎開発研究が進められているのでありますが、最近、理化学研究所においてウラン濃縮のガス拡散法に使われる有望な隔膜が開発されたと新聞は報じております。  最初に、その両者について、それぞれその特徴、経済性及び将来の見通し等について説明及び意見を聴取することといたします。  それでは、最初に、理化学研究所関係について、梅澤原子力局長より説明を求めます。梅澤局長
  66. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 先般来いろいろ新聞その他に出ております理研の濃縮ウランの問題について御説明申し上げます。  理研におきましては、昭和四十二年に正式にこの問題に取りかかりまして、まず最初にアルゴンを使用いたしまして隔膜の研究を始めました。それで、研究に使われました隔膜につきましては、住友電気工業が試作いたしましたアルマイト、アルミナ、テフロン、ニッケル、銅、こういうものを対象といたしまして、いろいろな隔膜の研究をしたわけでございます。それでやりましたところ、基礎的に考えますと、アルマイト、それからアルミナ、ニッケルこれが六弗化ウラン、これは非常に腐食性の多いものでありますが、これを使った場合にはいい効果が出るのではないかということで選ばれました。このたびの発表はアルミ系のものでございます。それで、ここまでの研究は、実は理研が自主的に理研の経常研究費で進めた研究課題でございます。四十三年度になりましてから、こういう研究がここまでまいりましたので、われわれのほうでは事業費を利用いたしまして――これは原子力平和利用研究委託費というのがございます。これを千百五十七万三千円出しまして、現在住友電工と理研が研究を進めているところでございます。しかし、このたび発表されましたものは、その前の段階のことがおもでございます。  それで、その内容から申しますと、まだ、このアルミナの問題につきましては穴詰まりと申しますか、巣のように穴があいておりますが、それを使っていく間に穴詰まりの問題があるのではないか。それから、腐食性に耐えられるかどうかという点の問題があります。それからなお、ニッケルのものにつきましても、弗素性及び弗素加工をするところの問題点が残っております。そういう点の解明がまだこれから進まなければなりませんので、まだ基礎的段階だということで御承知いただいてけっこうだと思います。  それで、分離の方式でございますが、これには定容法と定圧法とございます。この間のは定容法でございまして、簡単にいいますと、一つの箱の中に、まん中に隔膜を置くわけでございます。それで一方から真空に引っぱりますと、ウラン二三五のほうがよけいに片一方に移動していくという形で研究したわけでございます。それで、その移動していったウラン二三五を計算して持ってきますと、理想的にこれをカスケードを組んでやれば、七〇%くらいは移動することができるのではないかという目安が現在ついたというところでございます。しかし、まだ目安でございまして、そのほかに、先ほど言いました、これに関連します穴詰まりの問題、あるいは材料あるいは装置の開発、そういう点の問題が相当残っております。したがいまして、来年度、つまりこの四十四年度につきましては、この方式を三つ並べまして、三つのカスケードを組みまして研究を進める。その後は、多分十くらいカスケードを組んで進まなければならないのではないかという考え方を持っております。  原子力委員会におきましては、あとで御説明されます遠心分離機の方法と、それから気体拡散法と二つを両立して研究を進めておりまして、昭和四十七年ころには両方の成果を持ち寄りまして、経済性その他を考えて、そして、その後どちらかの一つを実用化の方向に進めていくという方向でいこうというのが、いまの見解でございます。  そういう状況で、ようやくそのアルミナについてのある程度の有効利用性が出たというのが現状でございます。  それから、これを海外の状態と比較いたしますと、海外につきましては、現在のところ、この隔膜その他については全くわからない、知らないということが現状でございます。しかし、アメリカでは、このガス拡散法で現在行なっております。今後とも実用化していくのには、これで当分いくのではないか。もちろん、遠心分離法の研究は進めておりますが、まだ当分はこのガス拡散法でいくという状況のように考えられます。  しかし、欧州のほうは、このあと御説明されます遠心分離法という方向に非常に興味を持っております。それで、ドイツ、オランダ、イギリス、この三国が共同で進めようという考え方で着々といま共同体制を結んでおる模様でございます。  なお、ドイツにおきましては、そのほかに、ノズル分離法というのがございます。これについての基礎研究もやっておりますが、まだ、これについての可能性といいますか、そういうことについてはつまびらかにされておりません。  以上、簡単に申し上げますと、今回のガス拡散法の現状はこの程度でございます。
  67. 石田幸四郎

    石田委員長 次に、動力炉・核燃料開発事業団関係について、今井参考人にお願いいたします。
  68. 今井美材

    ○今井参考人 遠心分離法と申しまするのは、ガス拡散におけると同じように、ガス状であるウラン、六弗化ウランと申しますが、ガス状でございまするから、これを非常に大きなスピードで回せば、重いものが器壁の外側にふっとんで、まん中のほうは軽いものが希薄になって残るということを利用いたします。この方法が世界でどの程度に行なわれておるかということは、数年前アメリカ情報の禁止を各国に要請したりなどいたしましたので、現実には非常にわからない状態でありまして、最近――いま局長のお話にございました英独和三国が共同してやるなどということが起こりました現状でも、なおかつ実態はよくわかりません。  それはそれといたしまして、私どもが何をやってきたかのアウトラインを御報告いたします。  私どもがこの仕事を始めましたのは昭和三十九年であります。それより以前に、この遠心分離法というのは科学技術庁の補助金、委託費等をもちまして理研がすでに手をつけておりました。私どもが三十九年にお引き受けをいたした段階では、理研が設計をせられた機械が二基ありました。そのうち一基は、これは初歩のものでありましたが、第二基目のものは、そのままの形でわれわれが受け継ぎまして、私どもが三十九年以来、一両年にわたってやってきたのは、そのちょうだいした遠心分離機をどうしてものにして動かすかということに専念いたしました。大体これは径が三十センチばかりありまして、長さは一メートル半くらいございます。大きさだけはおおむね工業化の段階でも使われるだろう大きさになっております。  ついででございますが、遠心分離機の開発をやりますのに、径が小さければ回転数をうんと出しまして、そうして、ちょうど円周のところのスピードを毎秒三百メートルあるいは三百五十メートルというハイスピードにすることがエッセンシアルでありますので、小さくなれば回転数が高いわけです。比較的大きいと、回転数はより少なくても同じスピードになる、そういうわけでございます。  そこで、二つタイプがございまして、小さくて超ハイスピードに回すのと、大きくてそれほどハイスピードに回さぬものと二つあります。私どもがとりましたのは、工業的に一歩でも近づきたいということで、初めから径が大きくてスピードがよりおそいというタイプを選びました。しかしながら、いま申しましたように、円周における回転速度は毎秒三百メートル程度でありまするから、したがいまして、回転数は一万八千から二万回転毎分ということに相なります。この程度のものは、小さいスピードのものでは、超遠心分離というものが類がないわけではないのでございますが、大きくて目方もあって、それを振り回すということになりますと、三十九年の時点におきましては、なかなか各種の問題がありまして、これを単に動かすばかりではなくて、長時間にわたって安定して動かすことのために、非常にいろいろの苦心をしてまいりました。たとえて申せば、軸受けでありまするけれども、これは普通の軸受けをそのまま使っただけでは、なかなかうまくいかないのであります。ハイスピードのために間もなく摩耗してしまう等の問題があります。また、これを空気の中で回しますると、空気抵抗のために相当馬力の損をいたします。もともと、遠心分離法がガス拡散法よりどこがいいかといいますと、馬力を食わぬ。お聞き及びのことと存じますが、ガス拡散法におきまする電力消費量というものはたいへんなものでありまして、数百万キロワットの発電所を付設しておかなければ動かないような、そういうしかけがアメリカの実態であります。  そこで、頭の中で考えられることは、この回転体を真空の中で回せば、空気抵抗がなくて、ずっと馬力が減るではないかということで、実際われわれは初めからそれをやっております。いま実証されておることは、やはり考えたとおり、ガス拡散法の十分の一ぐらいの馬力で回るということがわかっております。ところが、先ほど来経過を申し上げまする段階で、そんなことも含めてやってまいったわけでありまして、四十、四十一年等におきまして、ようやっとだんだん長時間の運転に耐えられるようになってまいりました。  そこで、何としても、これで一体ものが分かれるか分かれないか、テストをするのがきめ手でありまするから、これにものをかけて、いわゆる濃縮ということができるかどうか、きわめたいわけでありまするけれども、何しろやや大きな装置を持っておりますので、これを動的に動かして、そして、分離ができたかできないかをウランについて見るということは、なかなか容易ではありません。そんなわけでございまするので、だれしも考えることは、ウランでなくて、かわりのもので同位元素を分離をやるということ、先ほど理研の例にもありましたごとく、アルゴンの三六、四〇を分けるということ、これを手始めにやりました。  このことのために一応分離の効果は十分であるというような結果が出ましたので、それに勢いを得まして、さらにその二号機の改造をやるとともに、四十二年から三年にわたりましては、今度はアルゴンではやや分子量が小さ過ぎて、ウランと離れ過ぎておるので、第二番目の模擬実験といたしましては、硫黄に同位元素があります。それを弗化物にした六弗化硫黄というものを使いまして、これで分離試験をいたしました。この結果、その当時はだいぶ機械のほうもよくなりまして、二万回転毎分確保できるようなことに相なりましたので、これでもっておよそウランをかけてもだいじょうぶではないかというような成績が出てまいったのであります。  これらの試験をやりますにつきましては、まだ付帯のことがたくさんありまして、たとえば、これを連続的に効率よくやりますためには、単に回わすのではなくて、中でガスの対流が生ずるごとく、こういうふうに対流ができるごとくに回すのでありまするが、そのためには高速回転体の中で、ガスを一方であたため、一方で冷やすということをやります。そうしますと、これが中で動く。そのことのために、ずっと効率が上がってくる。そのようなこともやりまして二万回転の回転に成功いたしましたので、これらの設計をすべて取り入れて、今度は第三号機というもの、これを初めて科学技術庁の予算をちょうだいして製作をいたしておるというのが現状であります。この製作はもう二、三カ月のうちに完了すると思いますので、この新しい機械による試験はこの夏ごろに始めたいと思います。その際には今度は付設の、ウランを循還するごとき施設も一緒につくってもらっておりますから、今度はそういう模擬試験ではなくて、六弗化ウランをじかに使って、やや大きい機械で回してみることができると思っております。  今後どうするかというような問題もございますが、ゴールは、先ほど局長のお話にありました四十七年には、これでガス拡散と比べて、どちらがどうだというような比較評価にたえられるようなデータを出したいと考えております。  以上が今日までの経過でございます。     ―――――――――――――
  69. 石田幸四郎

    石田委員長 以上で説明及び意見聴取は終わりました。  質疑の申し出がありますので、これを許します。石川次夫君。
  70. 石川次夫

    石川委員 ただいま御説明を受けましたけれども、濃縮ウランの方法は、いまのところ、遠心分離法ということ、あるいはまた化学分離法、ノズル法、いろいろあるのでありますけれども、ガス拡散という方法は、御承知のように、たいへん電力を食う。大規模のものでなければ成立をしないということで、とても日本では、そういう意味を含めて、あと技術的なことも含めて可能性はないんじゃないか、こういうふうに思っておったのでありますけれども、新聞で報道されておりますように、たいへん見通しが一ぺんに明るくなったというほどではありませんけれども、どうやらその曙光が見えてきたというふうな非常な成果を上げてきたことを国民の一人として喜びたいと思うわけであります。  そこで、このガス拡散法の見通しの問題、これは昭和四十七年に大体見通しを立てるということになっておるわけでありますけれども、これはせっかくそういういい成果が出たのに水をさすつもりは毛頭ありませんけれども、大体これは小規模のものじゃ成立をしないし、電力をたいへん食う。アメリカでは、いま御説明もありましたけれども、大体アメリカ全体でフル回転をした場合には、一〇%以上の電力を食っておるというようなことで、日本でやるとすれば、日本とアジアだけではまだまだその需要にたえるほどの――需要というものはそれに伴わないということで、おそらく中共まで含めるぐらいの規模でなければ、ガス拡散は成り立たないんじゃなかろうか、こういうようなことが常識的にいわれておるわけです。このガス拡散は、科学技術の進歩という意味ではたいへん有益なことでありますから、今後どんどん、この成果の上に立って、さらにいろいろ検討しなければならぬ点がたくさんあるようであります。そういう点を今後とも研究を進めてもらわなければならぬと思いますけれども、大体の見通しとして、ガス拡散というものは、電力やその他の関係で、日本に適応でき得るものかどうか、こういう疑問を素朴に私は持っておるわけであります。その点の見解を局長から伺いたい。
  71. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 確かにガス拡散につきましては、電力というものは相当食います。一部でいわれているときには、三分の一ぐらいが電力にかかるという考え方でございます。しかし実際のところ、ガス拡散は、先ほど申し上げましたように、実際の内容というものは、どこの国も極秘でございます。したがいまして、こういうことを進める場合には、どうしても独力でやらなければいけないという立場から、四十七年までこの研究を進めていく。したがいまして、現在のところは、その経済性に合うか合わないかということは、極端に言いますと、ネグレクトしまして、こういう方法でうまくいくんじゃないかという技術的見解を出そうというところの現状でございまして、いま先生がおっしゃいました点につきましては、まだまだこれから先相当調査してデータを積みませんと、何とも申し上げられない現状だ、こう思っております。
  72. 石川次夫

    石川委員 けちをつけるようなかっこうになりますとたいへん申しわけないので、その点は誤解のないようにお願いをいたしたいと思います。まあ、それにいたしましても、たいへん朗報でありまして、全然暗中模索であったものが曙光が見えてきたということになっておるわけでありますから、先ほどお話がありました隔膜の穴詰まりとか、腐食の問題、あるいは安定性とか、分離性能の研究というものは、今後ともどんどん進めていただかなければならぬ、こう思うわけであります。  そこで、これから派生的な問題としてひとつお伺いをいたしたいと思うのでありますが、その後、これが東海大学でもって発表会がありました場合に、穴の大きさというふうなものについて、ろ過する場合の穴の大きさは、大体二万五千分の一ミリから十万分の一ミリ程度であるけれども、数の問題についてはちょっと公表できない、こういう話がございました。これはいわゆるノーハウということになるでありましょうし、国際的にもこの濃縮の方法、濃縮ウランをつくる工程というふうなものについては、日本でもドイツでも、アメリカのほうから遠心分離法の成果は発表するなというきつい注文を受けたということが、国際的にあまねく知られておるところであります。そういうことで、この数の問題も、これはノーハウということにしたいという気持ちはわからぬことはございません。わからぬことはございませんけれども、御承知のように、一方では、原子力関係は、自主、民主、公開の原則が厳然として守られなければならぬということが一つあるわけであります。そうすると、このノーハウの関係で公表できないというものと、原子力基本法によって公開をするということが原則である。公開の原則を立てた論拠はいろいろあります。いまここで繰り返すつもりはございませんけれども、科学技術の進歩というもののためには、全部そういう成果を発表した上に立ってどんどん進めていくということが一番いい方法であることは、これは議論の余地がありません。同時に、原子力の場合には、相当安定性の問題ということもありますから、そういう点でやはり公開の原則というものは貫かなければならぬというふうな、いろんな論拠はありますにいたしましても、とにかく、公開の原則は厳として守らなければならぬというのが、日本の場合には一つの動かしがたい柱になっておる。ところが、先ほど申し上げたように、遠心分離法でも、アメリカのほうから発表しちゃいかぬ、これは軍事利用というふうなこともあるから、そういうことになるという論拠もわからぬことはございません。それから、小さな問題かもしれませんけれども、この間の燃料棒の破損の問題についても、これを発表したのはけしからぬ、これは別な理由もありましたけれども、そういうことで停職になったというふうなこともある。これは安全性の場合には公開という原則を守らなければならぬのに、停職という問題が出ておる。ここでまた、いまお話し申し上げたように、穴の数は公表できないのだというふうなことになって、原子力基本法の公開の原則というものの意義というものは、現実に照らしてみると、どうもあぶなくなってくる。私は、そのいう意味がわからぬことはないのです。外国では秘密なんですから、日本だけが公表するというばかなことがあるかという議論もわからぬことはありません。けれども、この原子力基本法というものに照らして、公開というのは、一体どこまでが公開なんだ。原子力の場合に、ほかの場合にもあることでありますけれども、一体、ノーハウというものは、どこまでをノーハウとするのかという根拠、これをひとつ明確にしてもらわないと、今後いろんな点で非常な混乱が出てくるのではないかという心配があるわけです。原則としては、あくまでも公開の原則によってもらいたい、私はこう思うのでありますが、公開の原則にどうしてもよれないという場合があるとすれば、それは何を根拠としてやるのかという点を明確にしてもらいたい。
  73. 木内四郎

    木内国務大臣 いまお話がありましたように、原子力基本法第二条によって、成果は公開する、こういうことになっております。これはもうこれを守っていかなければならぬと思うのです。  ところで、たとえば今回の例をとりますと、どういう点を発表できないと言ったか、私は正確には存じませんけれども、これは技術が完成すれば当然特許の申請をすべき問題だと思うのです。特許を申請しまして、特許が設定されれば、これは当然公開されると思うのです。しかし、それまでの間は商業機密というものはやはり保護する必要がある。しかし、それまでの間商業機密を保護したからといって、これは公開の原則に反するということは私はいえないのじゃないかと思います。なお、こまかな技術的の問題で必要がありますれば、局長のほうからお答えいたしたいと思います。
  74. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 いま大臣のおっしゃったとおりでございますが、いま先生がノーハウということをおっしゃられました。ノーハウにつきましては、当然商業機密はあると思います。ただし、公開の場合には、研究の成果の――成果にはその途中の成果というのがございますが、そういうことでいきますと、ノーハウというものは大体その部分部分に少しずつ入ると思います。それで、先生のおっしゃいました穴の大きさその他について、当然もうこれは言っていいという場合には出ますが、そういうものについては当然そこの、たとえば、ここでは住友電工でございますが、そこが自主開発をしまして出したデータでございます。したがいまして、その点につきましては、当分公開はできないということはあると思います。これはいかに公開の原則がございましても、やはり商業機密の関係、ただし、できました膜このものについてはどんどん出します。ただ、それをつくるときの穴をつくる方法とか――いずれは穴の大きさなんというのは堂々と言うと思います。しかし、穴のつくり方、そういう点についての一種の独特のノーハウ技術というものについては、これは商業機密として考えていきませんと、その公開というものの考え方があまりに広過ぎるのじゃないか、私はそう考えております。
  75. 石川次夫

    石川委員 長官がおっしゃられたように、特許というものになるだろうからというお話がございました。私は、特許になれば、これは公開だと思うのです。特許にしてもいかぬというふうなことは、これは論外なんで、特許にするということの場合、いま局長からも話がありましたけれども、どの辺まで特許になるかという問題ですね。それで、たとえば住友電工と理研との共同でやったこういう成果なんでありますけれども、住友、理研の共同の名前でやるのか、あるいは住友電工の名前でやるのか、それとも、部分部分でもって違うから全部分離してそういう特許申請をするのか、これはちょっと具体的には、そこまではいまの段階で言えないかもしれませんけれども、そういう点で、私は、特許になれば、これは公開だと思うのです。特許にしてもいかぬなんということは、これは論外だと思うので、特許にする場合に、これは工作方法まで全部やるかどうかは別として、そういうふうに特許にもできないような、たとえば住友電工で穴をあけた、その穴をあける工作方法とかいうふうなものがあれば、これは特許にできないかもしれません。そういうことはわかりますけれども、そういうものであれば、いわゆる原子力基本法でいうところの公開というものにはぼくは違反しない、こう思うのです、そういう意味でのノーハウであれば。しかし、成果はちゃんと発表してもらわなければならぬ。そういう意味で、発表してもらう公開の方法としては特許でもかまわない、こう思うのですが、特許の見通しはどうなっていますか、全面的にやりますか。
  76. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 実は、先ほど御説明いたしましたように、今度発表されました中身は、自主開発の部分がほとんどでございます。四十二年度から私たちのほうで委託費を出しております。したがいまして、今年度の分野からは特許に関係してわれわれが相当出てまいります。その点からいきますと、向こうとの契約がございますが、その契約から考えますと、特許はなるべく早く出さないと困ります。したがいまして、特許を出すと同時に、われわれのほうに特許を出したという申請がまいります。そうして、報告を受け取ります。それから、その特許を今度はほかに使う、そういう場合には、すべて長官指示を受けるという形で、その点は十分押える形はとられているわけでございます。それで、できるだけ公開の原則を守っていくという形がとれる、こう思っております。
  77. 石川次夫

    石川委員 公開の問題については、ここで話をする場ではないと思うので、産業スパイ罪の制定なんという問題があるものですから、あらためてまた議論をしたいと思いますから、この辺にいたします。  そこで、いまの濃縮をガス拡散法でやると電力を相当食う、コストが相当高い、こういう問題で、われわれとしては、遠心分離法ができれば、このほうが小規模のもので対応できる、電力量もそう食わなくても済むという期待をもっておるわけです。いまのお話だと、見通しが明るいとまでは言えないけれども、かなり進捗をしておるように思われるわけなんですが、世界じゅうの趨勢を見ると、これは秘密にやっておるからわかりませんけれども、どうもまだまだ見通しが立っていないという現実の姿ではなかろうかというふうに思われるわけです。その点での見解があれば、ひとつ教えてもらいたいということが一つと、それから、そのほかに化学分離法というふうなものもあって、このほうが有望なんではないかというふうな見方も専門家の中では行なわれておるわけです。ノズル法はちょっと見込みがないというような話もちょっと聞いておるので、この辺もよくわかりませんけれども、その辺の見通しを今井さんのほうから、おわかりになりましたら、ひとつ教えてもらいたい。
  78. 今井美材

    ○今井参考人 初めの、遠心分離の見通しの点でございますけれども、先ほども申し上げましたごとく、実際のテクニカルのことは全くわかりません。海外の専門家などにも多少聞きましたけれども、こういう点に若干の進歩があるというような指摘を聞いてはおりまするけれども、それだからこれでガス拡散を凌駕するであろうというようなことについていま申し上げることは、私としても不可能だと存ずる次第でございます。  ただ、特徴として従来考えられておりましたことは、やはりそのまま今日でも生きて、あるいは実証されてきておると思うのであります。それは、先ほど申し上げましたが電力を食わない。それから、小さくてフレキシビリティーがありますので、大工場をつくらない場合に適当であるということ、これもまた確実であります。また、一つのプラントの中には一定の大容積がありますから、そこにインベントリーと申しますか、非常にたくさんの六弗化ウランが死蔵されていないとガス拡散は動かない。そういう点から申しましても、遠心分離のほうは手軽に、少量の、現実に作業にあずかっておる量に近いものでいいというような特徴がある、さようなことであります。  一方、これは機械的製作が問題でありまして、非常に大量の遠心分離機というものを整備しなければならない。また、一たんでき上がった上におきましても、これは年々維持、補給をしなければならない、こういう点が問題になっておることは、どなたの御意見も共通であると思います。  さて、その次に、化学分離法のお話が出ました。化学分離法と申しまするのにも若干述べられてあると思いますけれども、日本ではイオン交換樹脂膜等を出入りする溶液の中に入っておるウランを、二三八と二三五とのスピードの差によって分けるという趣旨の化学分離は行なわれました。原子燃料公社は、これに大学の先生方の御援助も得ながら数年頭を突っ込んでまいりました。私はいまでもこれは、プリンシプルとしては、いくものであろうと自分では思っておりまするが、案外これを実行する手段がむずかしくて、おそらく、私が少し推量を加えて申し上げるのは悪いかもしれませんが、これは科学的推量でありますからお許しを願うならば、いくはずのものであるけれども、この溶液の中には水というよけいなものが非常に大量入っておるのでございます。これが熱運動等でじゃまをするから、だから、うまくいくべきものもいかないんであろう、私はそう思うのであります。要するに、これを数年やりましたけれども、工業化できるほどの分離成績を上げることができませんでした。それで、ただいまは、もっといいアイデアが別に出てくるまではちょっとストップしようというつもりで、私どもはストップいたしております。化学分離が他国でうまくいったということもあまり聞いておりませんのですが、たまたま自分たちがやりましたので、その点についてお答えいたしました。
  79. 石川次夫

    石川委員 こういう専門的なことを聞いても、われわれもしろうとでございますから、いずれまた個人的にいろいろ伺いたいと思うのですが、問題は、四十七年に見通しを立てるという目標があるわけです。いまガス拡散では一応の曙光が見えてきた、分離法についても一段の進捗を見たといっても、四十七年で見通しを立てるなんていうスピードではないと思うのですよ、現在のやり方では。四十七年に見通しを立てるなんということを言い切っておるけれども、現在、たとえば遠心分離法、これはしろうとがお話をしてまことにピントはずれかもしれませんけれども、やっと三号機ができたという程度のスピードです。私なんかは、いろんな形の遠心分離機を十台くらい並べて一ぺんにやる、このくらいの気魄でやらないと――二号機をやっと改良して、三号機ができました、まあこれは予算の関係もあったり、いろいろなことがあるかもしれませんけれども、とにかく、濃縮ウランは全部アメリカに依存するというふうなことは、どう考えても将来たいへんな問題です。どうしても日本でやらなければいかぬ。将来石油がなくなり、石炭が当てにならぬということになれば、濃縮ウランしかないわけですよ。その場合に、四十七年の目標を立ててやっているスピードがまことに遅々たるものではないだろうか。将来これで一体どうなるんだというあせりがあって、私は、いまのような御説明をわざわざ伺ったわけなんです。  さて、長官に伺いたいのですけれども、いろいろ予算の関係もこれありということなんでしょうけれども、国家百年の計からいうと、こんなスピードでは、四十七年に将来の方向を大体決定するのだなんということは不可能だと思うのです。これはどうお考えになりますか。
  80. 木内四郎

    木内国務大臣 石川委員は、核エネルギーの政策についてかねがね非常に御心配願っておって、私どもたいへんありがたく思っておるんですが、御案内のように、いま原子力発電は軽水型の炉を使っております。したがって、濃縮ウランが必要だ。そこで、アメリカからこれを入れることにしておりますが、現在におきましては、全面的にアメリカに依存しておるといっても差しつかえないと思うのです。これは、いま御指摘のように、わが国の燃料政策の上からいって重大な問題でありまするので、そこで、何とかしてウラン濃縮の技術を自主的に開発したい。しかも、各国がこれを科密にしておりますから、どうしてもわが国としても自主的に開発したいというので、いろいろ動燃事業団あるいは理化学研究所等に御研究を願っておるのですが、四十七年までに無理じゃないかというお話がありました。しかし、これは四十七年を一応の目安といたしまして、そのころまでには、ガス拡散法あるいは遠心分離法が一応のめどがつくだろう。そういうことで、四十七年を目安として、そのときになって、二つの研究の成果を比較し、また、経済性を比較し、また、国の予算等もいろいろ考慮して、できればどちらか一つにしたい、こういうのが従来からの原子力委員会の意見であり、科学技術庁の方針でございます。何としても、御案内のように、ガス拡散などは、こまかなことはわかりませんけれども、何千億か――アメリカなどは、そのために三カ所だか知りませんけれども、七千億円、八千億円、あるいは一兆円と言う人もあるのですが、膨大な国費を要しまするし、また、電力も非常に多量の電力を必要とする、そういう事情も考えまして、四十七年ごろに一応のめどがつけば、その成果、また経済性、予算の関係等も考慮して、できれば一つにしたい、こういう方針なんでありまして、なるべくできるようにいたしたい、かように存じておる次第であります。  遠心分離機についても、ことしは第四号機をつくってもらうことにいたしておるような次第であります。
  81. 石川次夫

    石川委員 何か燃料は、もうアメリカに頼むんだということが前提となって、炉の開発は相当積極的にやっておるような印象を受けるのですね。動力炉・核燃料開発事業団といっても、炉のほうはばかにはなやかにクローズアップされておりますが、実際それに伴って、核燃料懇談会なんかもあって、相当熱心にやっておるとは思うのですけれども、どうもぼくたちが見ておると、燃料のほうは立ちおくれになっておるのじゃないかという気がしてしかたがないのです。それで、ことさらに私は事あるたびに核燃料の問題をひっさげて質問をしておるわけなんですけれども、濃縮の技術は、いま言ったように四十七年度にめどを立てるというのだけれども、沖繩返還よりもこのめどは非常に怪しいと思っておるのです。どうも四十七年あたりで、そんなめどが立つような態勢にはないのじゃないかという心配があるものですから、私は苦言を呈するわけなんですけれども、動力炉のほうは相当予算を使いますよ。しかし、それに負けず劣らず並行してやるのだという気魄でやってもらわなければならぬ。  と同時に、これは機会をあらためて申し上げたいし、また、ここで申し上げるよりは、商工委員会でもって私は発言をしようと思っておるのは、核燃料のウラン鉱の問題ですね。これは何回も申し上げておりますから、もうくたびれて、私のほうも申し上げる気力もないくらいなんですけれども、アメリカ自体が一九七五年には自給自足で手一ぱいですよ、ウラン鉱の埋蔵量からいって。どう考えたって、アメリカが日本に一――三十年間の原子力協定がありますから、全部アメリカから燃料をもらえるものだという錯覚を起こしておるのだけれども、実際アメリカ自体は、濃縮の能力はあるかもしれませんが、埋蔵量からいって、そういう余裕はないのです、アメリカは。そこへ持ってきて、インドとかラテンアメリカ、オーストラリアは、ウラン鉱の輸出は禁止しております。そうすると、いまのところ当てになるのは、南アフリカとカナダ、そんなところになっちゃうのですね。ニュージーランドあたりも若干あるという話は聞いておりますけれども、そういうふうなことで、やっておるのは、どこでやっておるのかというと、どこでやっておるのか、さっぱりわからないわけですよ。  動力炉開発事業団のほうでは、総理大臣の許可を得て、そういう海外探鉱もできることになっておりますけれども、これはなかなか動力炉開発事業団で海外まで行って、積極的にやれるような態勢にはない。しからば、今度は通産省でやるのかというと、通産省は金属鉱物探鉱促進事業団というものがあります。ありますけれども、これは鉛とかすず、亜鉛、これで手一ぱいですよ。もうほとんどウランのほうにはノータッチというかっこうです。将来アメリカから三十年間はだいじょうぶなんだといって、じんぜん手をつかねておるようなかっこうで、安心し切っておるふぜいですけれども、実は探鉱自体、ウラン鉱を自分で開発する――濃縮の技術は、日本でできなければ、アメリカでは当分、三十年間は保証するでしょうけれども、少なくともあと十年ぐらい以内には、鉱脈それ自体を日本がはっきりと確保しなければとんでもないことになるわけです。アメリカから三十年間無条件で来るわけじゃないのですよ。将来にまたがって話をすると、石油がなくなり、石炭がなくなった場合に、さあこのウラン鉱を日本の国は持っていない、アメリカも供給しないという、最悪の場合は、そういうことが考えられるというのが現状です。そういうときに即応して、一体どういう対策を立てているんだというと、さっぱり対策らしい対策がないのです。御承知のように、日米共同で、カーマギー社との共同で、カナダのエリオットレーク地区は有望だというのだけれども、その見通しなど私はよく聞いておりませんけれども、こんなものだけでは、とても日本の需要をまかなえるだけのものはないでしょう。あと十年たちますと、御承知のように、南アフリカとカナダ、日本で採掘可能な地区の、いまの埋蔵量の三分の一を日本は必要とする、そういう計算が成り立つ。ですから、いまの発見された埋蔵量だけからいけば、全部の三分の一を日本は持ってきちゃわないと、日本の需要を満たすことはできないという状態です。そんなことは不可能ですよ。そうなれば、どうしても日本独自の探鉱をやらなかったらとんでもないことになる。それで、通産省のほうでは、予算を見ましたらば、そんなウラン鉱なんかを開発する予算は何もない。民間にまかせればいいのだというけれども、民間ではこんな冒険はとてもできません。国家がどうしてもやらなければいけない。そういうようなことを前提とすると、まことに、将来のウラン鉱を開発していくという体制が皆無に近い状態ではないだろうか。この点は、通産大臣のほうに私のほうから商工委員会のほうで相当突っ込んだ質問をしたいと思っておりますけれども、何かいまの体制ではまことに心もとないと思うのですけれども、長官、これをどうお考えになっておりますか。
  82. 木内四郎

    木内国務大臣 お説のように、今後は原子力発電が非常にふえてきまして、わが国の核燃料の使用量というものは非常にふえてくる。しかるに、わが国においては、そういうようなものはない、はなはだ貧弱である、こういうことでありまするので、当然の帰結として、できるだけ長期に安定的な供給をまず確保することが必要だ、こういうことで、日米、日英、その他の原子力の協定を結びまして、当面必要な、三十年間の必要に対して米国その他から供給を受けるという条約ができましたことは、御案内のとおりだと思うのですが、しかし供給を受けて、無限のものじゃありません、限られた量でありまするから、これは当然結論として、これを最も有効に使わなければならないという結論になるだろうと思います。そこで、わが国としては、その点に着目いたしまして、この輸入した核燃料を最も有効に使う方法を考えようということで、御案内のように、新型転換炉、また高速増殖炉の開発に力を尽くしていく。これは、御案内のように、天然ウランも使い得るし、経済的にもわりあいいい。そこで、これを、高速増殖炉の開発に力を尽くしていく。それだけじゃいかぬ、いまのお話のように、みずから開発していかなくちゃならぬ。開発していかなくちゃならぬといっても、国内にないのですから、海外の鉱山を探鉱する以外にない。探鉱に対して政府は何ら力を尽くしていないじゃないかというお話ですが、これは動燃の予算におきまして、この探鉱の助成の費用をことしは一千万円ばかり出すことになっておりまして、そうして、海外の鉱山を探鉱して開発輸入をはからなければならぬというので、まあ、お話しのように十分ではございませんけれども、その点に努力をいたしております。そうしてまた、一方において、民間業者、すなわち電力業者等が個別に、あるいは鉱山業者と共同いたしまして、カナダ等の鉱山を探鉱して開発に力を尽くしたい、かように考えて、もう数件成立しているものはあるようであります。  それから、かりに海外の山を探鉱いたしましても、さあいよいよ掘るというときに、日本の人的の要員が足らないじゃないか、こういう問題が出てまいりまするので、それに備えるために、人形峠の鉱石、これははなはだ貧弱でありまするけれども、これの採鉱と製錬をやりましてその技術をひとつみがいていこう、そういう人間を養成していこう、こういうことでやっておるようなわけであります。  まあ概略はそんなようなわけですが、いま電力業者その他が、あるいは鉱山業者と協力し、あるいは外国の鉱山業者その他と協力して、すでに開発輸入の契約をしたようなことにつきましては、局長のほうからお答えしたいと思うのですが、はなはだ不十分ではあると思うのですけれども、着々そのほうに力を尽くしておるというふうな事情であります。
  83. 石田幸四郎

    石田委員長 関連で、齋藤憲三君。
  84. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 ただいま石川委員から適切な御質問がありましたので、それに関連してお答えを願いたいと思うのです。  私は、いまの核燃料並びに核原料の問題、これに非常に心痛をいたしておる一人であります。それで、当委員会を通じてこのウラン鉱物に対する資料の要求をしておるのでありますが、まだ要求した資料が出てこない、その要求資料は一体いつごろ出てくるのか、ちょっと御答弁を願います。それをなるべく早くひとつ……。
  85. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 できるだけ正確のをつくるために、いま早急にやっております。なるべく早く、この前お約束いたしましたように、できるだけ早く出さしていただきいと思っております。
  86. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 それは、昭和六十年までに日本の必要なU3O8の形で大体九万トン必要だということを聞いておるわけであります。先ほど来お話に出ております三十年間のウランは、昨年アメリカとの条約で締結いたしましたウラン二三五換算の百六十一トン、これはいま計画をしておる発電所に必要な三十年間のものであって、今後計画をする原子力発電には関係ないんだ、私はそう思っているのですが、そのとおりなんですか。
  87. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 先生のおっしゃるとおりでありまして、百六十一トンのうち、発電用としては百五十四トン、これにつきましては、十三基いま計画されております。これに対する三十年間分のものでございます。それから、いま六十年まで、ウランは、U3O8にして考えまして先生は約九万トン――まあ九万トンから十万トンというのが現在の目安でございます。
  88. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 六十年までに大体九万トンの積算量を必要とするという計算は、三千万キロワットから四千万キロワットの発電量ということになる。最近になると、四千万キロワットから五千万キロワット、ないしは五千万キロワットから六千万キロワット。安いウランが一体世界的に何ぼあるかというと、U3O8でもって大体八十万トン、高いウランでもって七十万トンが追加される。そういうようなことから、私の計算からいきますと、日本が六十年までに九万トン要る、あるいはそれ以上のウランが要るといったって、そのウランは一体どこから持ってくるのかということになりますと、ただいま石川委員が質問されましたとおりに、はなはだ心もとない現状に立ち至るのではないか、こう思うのであります。それに対して、御質問がございましたように、ウラン原鉱石を一体どこが責任をもってとるのか。石川委員は商工委員会において通産省にその質問をする、こうおっしゃるのでありますけれども、われわれからいえば、科学技術庁原子力局があり、原子力委員会がある。この燃料確保の責任というものは、やはり科学技術庁並びにその関係機関、特に法律によって定められた動燃にあるんじゃないか、私はこう思うのです。特に、動力炉・核燃料開発事業団法の成立に際しましては、当局案には海外の鉱石を探鉱、開発、製錬することは書いてなかったのを、わざわざ国会の意思として、総理大臣の許可を得てやるというところまでこぎつけたのです。いまにして海外資源の確保というものを国家の責任においてはからなければ、これはあとでほぞをかむような事態に立ち至るということは、これは明白なんじゃないか、私はこう思っておるのです。それに対して、長官は、一体どこが責任をもってこの重大な燃料対策をやるのか。これは非常に大きな問題でありますから、いま速急にコンクリートして明確にしていただきたいというのではないのですが、この国会を通じて、この点だけははっきりして、それに順応する資源獲得の方法を実行するような昭和四十五年度の予算措置その他をひとつつくっていただきたい、こう思うのですが、これに対する御所見をひとつ承っておきたい。
  89. 木内四郎

    木内国務大臣 お話しのように、この問題は非常に重要な問題で、石川先生、それから齋藤先生からいろいろお話があって、まことにごもっともなんです。私どもも心を砕いておるわけなんです。そこで、さっき申しましたように、不十分ながら着々やっておるつもりなんですけれども、不十分なことは私も認めざるを得ないと思うのです。  そこで、しからば所管はどうかといいますと、やはり燃料政策あるいは電力の政策というようなことからくれば、通産省もこれに対して発言権がある。しかし、原子力関係のことでありまするので、私どものほうにおきましても責任はあると思うのです。そこで、この問題は、原子力委員会においても非常に心配しておるのでありまして、原子力委員会においてよく検討して、そうして、意見を出しまして、そうして、政府を鞭撻するといってはあれですけれども、この推進をはかっていくようにいたしたい、かように思っております。
  90. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 それは、従来の燃料公社のときには、地質調査所が概査をして、燃料公社が精査をするという状態だったと記憶しておるのですが、しかし、あれは国内に対するウラン鉱の探鉱状態だったのです。日本の実情は、大体人形峠あるいは東郷地区、それに東濃地区を加えてU3O8で五千五百トンといっておるけれども、これは実際やってみなければわからないので、二千トンになるか、三千トンになるか、これはものの数じゃないわけです。どうしても海外のウラン鉱というものを探鉱しなければならない。第一段階において探鉱しなければならない。そうしますと、結局第一にやることはカーボーン。まあカーボーンをやる前に飛行機を低空に飛ばしてシンチレーションカウンターの概査をやる、それに感じたところへカーボーンをやる、これはたいへんなことだと思うのです。口では言えますけれども、よほど腹を据えて、大がかりな計画でもって遂行しないと、こういうことは私はできないんじゃないかと思うのです。特に、これはいかに科学技術庁原子力委員会でやろうと思っても、やはり外国を相手でありますから、外交問題も起きてきましょうし、いろんな問題がからんでくるだろうと思う。こういう問題に対しましては、ひとつ特に思いをいたされまして、ぜひとも早急にこの燃料獲得の問題について特に原子力委員長として御努力を願いたいと思うのであります。ひとつもう一ぺん御所信を承りたいと思います。
  91. 木内四郎

    木内国務大臣 お話しのように、まことに重大な問題でありまするので、私も最善の努力をいたしたいと思っております。
  92. 石川次夫

    石川委員 齋藤委員のほうからいろいろ適切な質問があったわけなんでありますけれども、念のために申し上げますと、三十年間は無条件に現在計画されておるものについてはウランが供給されるというのが常識のようになっておるが、私はそうにはならないということを言いたいのですよ。それはどういうことかというと、アメリカの埋蔵量を別にして、生産量はいまのところ大体一万五百トンくらいです。しかし、将来の計画は一万五千トンから一万六千トンというような計画になっておるわけなんですけれども、大体その需要のほうからいうと、アメリカ自体が一九七五年には二万トン必要だという計画があるのです。足りないのですよ、生産能力が。世界の大体三六・四%、現在のところは埋蔵量があるといわれておるアメリカ自体が、現在の生産能力の相当伸びを見ても、自分の国に対して、自分の国で持っている埋蔵量だけでは、生産能力じゃ足りない。したがって、一九七五年くらいになれば、どうしても海外からアメリカ自体が入れなければならぬような事態になるのではなかろうかということすらいわれておるのです。これは正当な数字を基礎として私は申し上げておる。したがって、三十年間原子力協定をやっておるから、それは無条件でもらえるという状態ではない。  それとあと一つは、かんじんな将来の問題にまたがっていえば、自主独立の外交なんて言ったって、全部が全部アメリカに依存するなんていう――燃料エネルギーを全部つかまえられたら、自主独立の外交も何もできはせぬですよ。そういうふうなものをひっくるめて考えると、これはたいへんな問題じゃないか。そういう点で、早急にこの海外探鉱の問題のめどを立てないと、向こうは濃縮能力はいまのところございますよ。濃縮能力は、天然ウランで、いまのところ三方トンくらいはアメリカで持っております。生産能力は一万五千トンくらいに伸ばすという計画です。しかしながら、アメリカ自体が二万トン必要になるのが一九七五年。アメリカ自体が足りなくなるのじゃないかということです。だから、向こうからもらえるものだという安心感は絶対にこの際戒めなければならぬ。そういうことで、日本自体が自分で自分のエネルギーというものを確保する。それと、濃縮の問題は、日本でやるというような体制をよほど内閣自体として、政府自体の姿勢として確立をしないと、とんでもないことになりはせぬか、こういうことで、私は非常に心配をしている。その点についてよほど腹をきめてやってもらいたい。ということのためには、いま申し上げておるように、一体通産省でやるのか、科学技術庁でやるのか。科学技術庁というところは、プランニングをやって、新しいものをつくるだけだという印象がありますから、そういう実際の事業をやるのはどうも通産省ではなかろうかというふうな感じ方をわれわれも持っておるわけです。その点は、ぴしっと内閣で姿勢をきめて、早急に濃縮の問題とこの海外探鉱の問題はやるのだということでやらないと、これはあと五、六年たったらたいへんな問題になると思うのです。いまからでもおそくはないといいますが、もうおそいのじゃないかと思うのです。よほどの決意でひとつ取り組んでもらいたい、こう思うので、ひとつ長官の決意を聞きたいと思う。
  93. 木内四郎

    木内国務大臣 いまお話しの点、まことにごもっともでありまして、先ほど齋藤先生にお答えしましたように、微力ですが、最善の努力をいたしたいと思います。
  94. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 ちょっと、いまの関連。いまの石川委員の御質問ですね。われわれは昨年の条約によって三十年間、いま計画中の百六十一トン、ウラン二三五、あれはもらえるものだ、こう思ったのですが、あれは条約は原料はこっちから持っていかなければならぬという条約なんだな。こっちから原料を持ち込まない場合には、アメリカから原料を買うことができる。だけれども、原則はやはり日本が原料を持ち込んでいって濃縮をしてもらうというのが条約の本旨なんだな。こっちから原料を持っていかないときに向こうで買おうと思っても、向こうで売らぬと言ったら、ほんとうのウランになっちゃう。(笑声)そういう条約ですか。それとも、あくまでも、濃縮する原料のウランも向こうで提供するという、これは条約なんですか。それならいいけれども、そうでないと、いま石川委員の言われるように、向こうは手一ぱいですから、原料を持ってきてください、それなら濃縮してあげましょう、こう出られたときに、こっちに手持ちの原料がなければ、それはどうにもならぬということになってしまう。それは、どうなんです、条約の本旨は。
  95. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 いま石川先生は向こうが信用ならぬというおっしゃり方で私も聞いておりましたのですけれども、実際の契約からいきますと、七二年までの燃料というものについての百五十四トン、これはやはり確約して入れてくれということでお考えいただきたいと思っております。
  96. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 それはいいの、原料はなくても。
  97. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 百六十一トンの範囲内につきましては、原料がどうでありましょうと、大体平均三%の濃縮ウランということで必ず入れてくれるということになっております。
  98. 石川次夫

    石川委員 そういう約束になっておることはわかっているのですけれども、現実がそうなっておらぬということを私は言いたいのです。足りなくなれば原料を持ってこいといわれても、これはしょうがないのじゃないかということ、ないそでは振れないのですから、これはそう楽観的な見通しは立てられないということを私は言いたいのです。そういうこともよくひとつ研究をしてもらいたいと思うのですけれども、そういう事態になってもだいじょうぶだという体制を一応とらなかったら、とんでもないことになるわけです。発電所はつくったわ、全部ストップだわ、こういうかっこうになるわけです。そういう事態が、いまの数字からいくと出てくるものですから、その事態になってもだいじょうぶだという体制をつくるためには、相当急いで海外探鉱というものを進めなければとんでもない事態になりますよということを私は警告しておるわけです。アメリカも、ないそで――濃縮能力はあるのです。だけれども、生産能力はないのですよ。その生産を伸ばす計画を見ても、アメリカのものに間に合わないという数字が出てきておるのですよ。それは、アメリカ自体で解決するのかもしれません。あるいは、割りに合うからというので、もっとスピードを上げて生産能力をふやすということになるかもしれませんが、現時点における見通しとしては、間に合わないという数字が出てくる。そういうときに、供給できませんからといわれて、そのときになってあわてたのではとんでもないことになるということでその辺もよく含めて研究をして対策を立てる。いずれにしても、現在のような、安心し切って三十年間はだいじょぶだというふうなことだけにもたれかからないで、早急に海外探鉱を自分の力でやる、濃縮も早急に技術を確立するということをやらなければ、これはいずれにしても、間に合う、間に合わないの問題は別にしても、これは早急にやらなければならぬ緊急の課題だと思う。そういう点で申し上げたわけなんですが、そういうことで、科学技術庁がやるのか、通産省がやるのか、その辺のことをよほど政府全体として姿勢をきちっと固めて早急に取りかからなければならぬ問題だということだけは、ひとつぜひやってもらいたいわけです。  実は、きょうはこういう質問をする予定ではなかったので、時間がえらい食っちゃったものですから、科学技術白書をもとにして、それから、この間の長官の演説に対する質問を一回もやっておらぬものですから、その科学技術の基本政策の問題で実は質問したかったわけです。しかし、それをやりますとたいへん時間がかかりますので、私の持ち時間も過ぎてしまいましたから、これは後日に譲ります。科学技術白書も実はきのういただいたばかりで、よく読んでおりませんものですから……。これによっても、いまのものに関連していいますと、海外探鉱の問題と濃縮の問題はさらっと流しているだけです、この科学技術白書の中では。これはたいへんな問題だという緊迫感が全然出ておりません。これを見ても、私はこの点についてだけ特に取り上げて言わなければならぬという必要性を感じて取り上げて申し上げただけです。科学技術の基本政策の問題について、実はきょう一時間ばかりの予定で質問をしようと思ったのですが、後日に譲ります。      ――――◇―――――
  99. 石田幸四郎

    石田委員長 この際、小委員会設置の件についておはかりいたします。  宇宙開発の基本問題について調査を行なうため、小委員十三名よりなる宇宙開発の基本問題に関する小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 石田幸四郎

    石田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、小委員及び小委員長の選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  101. 石田幸四郎

    石田委員長 御異議なしと認めます。  それでは宇宙開発の基本問題に関する小委員に       木野 晴夫君   小宮山重四郎君       佐々木義武君    齋藤 憲三君       田川 誠一君    橋口  隆君       福井  勇君    石川 次夫君       三木 喜夫君    山内  広君       吉田 之久君    近江巳記夫君       石田幸四郎 以上十三名を指名し、小委員長には小宮山重四郎君を指名いたします。  なお、小委員、小委員長の辞任及びその補欠選任並びに小委員会において参考人より意見を聴取する必要が生じました場合には、その期日、人選その他所要の手続につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  102. 石田幸四郎

    石田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ――――◇―――――
  103. 石田幸四郎

    石田委員長 引き続き、宇宙開発事業団法案を議題として審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。吉田之久君。
  104. 吉田之久

    吉田(之)委員 宇宙開発事業団法案に関しまして、若干の御質問をいたしたいと思います。  宇宙と申しますのは、領土とか領海、領空と違って、これこそは国際的な共通のものだと思うのです。したがって、宇宙の開発という問題も、完全に国際的に共通した分野で進められなければならないということはわかります。また、わが国における宇宙開発の動きについていろいろ資料などを読ましていただきました。しかし、現段階におきまして、一口に申しまして、これからのわが国の宇宙開発、特に事業団をつくって進めるこれからの開発については、あくまでも日本の持っている力を国際的に協力させる意味を主眼としてやるのか、それとも、現段階ではそれほどおこがましいことはいえないので、ともかく、国際的協力や協調を続けながら、まず、わが国のナショナルインタレストを確保することを主眼目としてやろうとするのか、その辺のところを率直に、まず長官からお示しいただきたいと思います。
  105. 木内四郎

    木内国務大臣 御案内のように、宇宙開発は今度事業団で取り上げていただくことになったのですが、宇宙を開発するということになりますと、これはやはり宇宙空間の真相を究明いたしまして学術の研究に資するとか、あるいはまた、わが国の技術水準を非常に高めていく、あるいは、科学技術の開発の能力を高めていく、こういう効果もありますし、また、これを実用化することによりまして国民の生活の向上、産業経済の発展に資する、こういうこともあると思うのですが、さらにまた、国際会議等におきましていろいろ発言力を増す、すなわち、国際的にわが国の発言力を増すというようないろいろな効果もありますので、わが国といたしましては、どうしてもこれをひとつ開発していきたい。それで、これがすなわちわが国の国益に合するゆえんであると私どもは考えておるのです。もちろん、さればといって、国際協力という点を無視するわけではありませんで、その必然の結果として国際協力にも大いに役立つ、かように考えているわけです。
  106. 吉田之久

    吉田(之)委員 抽象的な概念としては非常によくわかるのですけれども、いよいよこの事業団を発足させようとするときに、二つのウサギを一ぺんに追うことはなかなかたいへんだと思うのです。やはりどちらにほんとうのウエートをかけるのかというふうなところがまずはっきりしないと、これからのいろいろな基本計画の立て方等につきましても、いろいろと問題が非常に派生してくるのではないかというふうな気がいたします。
  107. 木内四郎

    木内国務大臣 それは、いま申し上げたことで大体おわかり願ったのではないかと思ったのですが、ちょっとことばが足らなくてたいへん失礼いたしましたけれども、何としても、いま申し上げましたようないろいろな利点といいますか、利益もありますので、わが国の国益をやはり第一として考える。そして、その必然的の結果として、宇宙開発は国際協力にも役立つものである、かように考えている次第であります。
  108. 吉田之久

    吉田(之)委員 それで大体長官の気持ちは、よくわかってまいりました。  そこで、この間の長官の提案説明を承っておりますと、まず具体的には、昭和四十六年に電離層観測衛星を打ち上げる。四十八年には実験用静止通信衛星を打ち上げる。この辺を当面の目標として事業団を発足させて進めていこうではないかというような提案とわれわれは承っております。さらに、この電離層観測衛星の開発というのは、結局通信衛星を打ち上げるための前段階としての開発であるというふうにも書かれております。だから、大体その辺からわが国の宇宙開発が始まっていくのだろうというところは理解できるわけなんです。  そこで、まずその辺から始めるとして、宇宙開発における基本的な、非常に長期にわたる計画というものは、まだ、率直に申しまして、めどが十分立たないと思うのです。そんなに遠くまでの計画は立たないと思うのです。だから、建設的に考えまして、とりあえずやれるところからまず五年先、十年先の目標を設定して精一ぱい進めていこうじゃないかということでやっていっていいと思うのです。ただ、はっきり言えることは、こういう長期的な、基本的な計画がなくともいろいろと開発は進めていけますけれども、その宇宙開発における進め方の中で、米国なんかの例を見ても明らかなように、関連する産業界ですね、それが非常に巨大なものとしてでき上がってまいります。この関連する産業界、たとえば、酸素であるとか、固体燃料、液体燃料、あるいはチタン、電子工業、ロケットの付属機械、あるいは太陽電池など、われわれの考えられる範囲内においても、相当広範にわたる関連産業界というものが形成されていくと思うのです。こういうものが形成されて、組織化されていくことだけははっきりしておりますので、宇宙開発の目的や方向、対策等に関する原則を定める基本法の制定というのはやっぱりできるだけ早くつくらなければならないと思うのです。しかし、基本法といえども、宇宙という概念自身が、国際的に共通でありながらなかなかに具体的な定義がセットしないものですから、そう日本だけが単純に割り切ってつくり上げるわけにもまいらないだろう。これもしばらく時間をおこう。しかしながら、関連産業がいたずらに自己の利益追求だけにもしも走っていったとするならば、それは非常に困った結果を招くと思います。この事業団を進めるにあたっては、そういう関連産業に対して秩序ある体制を整備しておく必要があると思うのです。まず、その辺のところぐらいまでは当然考えなければならないのではないか。これについて、今日の時点における政府の見解はいかがなものであろうかということを長官にお伺いいたします。
  109. 木内四郎

    木内国務大臣 お話しのように、宇宙の開発は非常に急ピッチにいっております。しかも、その範囲というものも非常に拡大してきていきます。そこで、われわれとしては、どこまで一体やるべきか、どういう方法でやるべきか、何年先くらいを見るべきか、いろいろな問題がありますけれども、宇宙開発委員会におきましては、当面十年ぐらいの先までを展望いたしまして、さしあたり五年くらいにおいてどういうことをやったらいいか、こういうことについて、いませっかく検討を続けてもらっているわけです。しかし、検討は続けておりますけれども、さしあたりの計画としては、さっきお話があったように、四十六年には電離層観測衛星、それからまた、四十八年には静止通信衛星を打ち上げる、こんなようなことになっているのです。この委員会は、御案内だと思うのですけれども、いろいろな専門家を集めておりまして、いろいろな各部会を設けて、そうして、学識経験者の意見などを徴して、各分野にわたっての問題を研究しているのであります。  いまお話がありましたように、アメリカあたりでは、宇宙開発に関する事業をやっている会社が非常に多い。これが非常に大きくなってきている。これはお話しのとおりでありまして、今日は世界的にこの宇宙開発関係しない会社というものは技術がおくれてしまう。これはひとりアメリカだけでなく、ほかのほうでも宇宙開発関係しない会社は技術がおくれてしまうというぐらいにまでいわれているほど、各会社の技術水準の向上などにも役立っておるのです。そこで、アメリカなどは非常に巨大な計画を立てております。したがって、そのうちのばく大なる資金というものは産業会社のほうへ流れてまいりまするので、ここで関連産業が非常に大きくなってきているということ、これもお話しのとおりなんです。  わが国におきましては、宇宙開発委員会で、いま申しましたように、いろいろな分野に分けて研究しておりまして、学識経験者の意見を徴してきめておるのでありまして、大体方向はそれによってきまる。基本計画はそれによってきまる。そして、宇宙開発事業団は、その基本計画のもとにおいてやっていく、こういうことになりますので、関連産業の会社の利益追求のためにこの計画が左右されるというようなことは私はないもの、かように考えておるわけでございます。
  110. 吉田之久

    吉田(之)委員 あってはならないと思うのですけれども、しかし、どういう機関チェックするか、あるいはあらぬ方向に逸脱していかないように監視をするか、もちろん十分配慮はなさるだろうと思うのですけれども、やはり進めながらもその点は十分ひとつ注意してやっていただかないと、何のための宇宙開発をやったのか、振り返ってみたらわけがわからなかったというふうなことになってはたいへんだと思うのです。  さらにいま一つは、日本の国において宇宙開発事業に臨む場合に、他国と違って、ぜひひとつ内外に向かって鮮明にしておかなければならない一つの事項があると思います。それは言うまでもなく、宇宙開発事業の目的及び成功した事業の結果を一切軍事的には利用しない、これはもう大前提だということでございますので、この機会に、基本法まではつくれないとしても、もっぱら平和的にのみ活用することがわが国の宇宙開発の最初から最後までの目的であるんだということを、何らかの形で政府みずからが一番最初に宣言しておかなければならないのではないか。いろいろなところで十分そのことは触れられておりますけれども、あるいは、委員会の設置の場合にも十分明らかにされてはおりますけれども、この際事業団が発足するにあたっては、あらためて宇宙基本法というものがまだつくれない現状において、しかも、わが国の宇宙開発というものは断じて軍事的利用には一切関係ないものだということを何か明確に内外に宣言する必要があると思います。そういうことを長官自身はお考えにならないですか。
  111. 木内四郎

    木内国務大臣 いまお話しの点、ごもっともでありまして、また、その前の問題につきましても、関連産業に左右されないように十分に注意するようにという御指摘でありましたが、その点も十分注意してまいりたいと思うのです。  いまお話がありました宇宙開発の目的その他についても十分注意をするようにということでありました。これについては、御案内だと思うのですが、いまの宇宙開発委員会のできる前の宇宙開発の審議会というのがありまして、それの一号答申におきまして、宇宙開発の目的というのはあくまで平和利用に限るものだということを強調しております。また、これは公開の原則、あるいは民主的、自主的にやっていかなくちゃならぬというようなことについても言及しております。そこで歴代の長官はこれをあくまで守っていくということを申しておりまするし、また、申さなくても、その答申にすでにある方針に従ってやっているのでありまするから、これは間違いがありませんし、先般のこの宇宙開発事業団法案の趣旨を衆議院の本会議で説明した場合におきましても、佐藤総理大臣から、あくまでこの基本方針に従ってやっていくということをはっきり言明いたしておりまするので、重ねて何か宣言でもする必要があるではないかということでありまするが、その必要はなくて済むのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  112. 吉田之久

    吉田(之)委員 長官のお気持ちとしては、いまさらにそれを言わなくたってあまりにも明白ではないかとおっしゃるお気持ちだろうと思います。しかしながら、この委員会におきましてもそれぞれ各党とも、この事業団を進めるにあたっては、本来ならばやはり宇宙基本法というものがあって、そして事業団法というものができ上がるべきはずである。動燃の場合にもそうでございました。しかしながら、宇宙開発の場合には、少し変わった形で走り出さなければならない。なぜ基本法がそれほど問題になるかといえば、やはりあくまでも平和利用のみに限定されるということの明確な規定が要るからだという論議が続けられておりますことは、御承知のところでございます。やはり非常に大事な点に対しては念には念を入れると申しますか、こういう機会に、あらためて内閣として平和利用宣言というふうなものをなされることが、国民に対してよりよき理解と協力を求める非常にすぐれた手段、方法になるのではないかというふうにわれわれは考えております。したがって、その点はひとつこれからの推移を見て、長官自身ももう一度よく、そういう方法もあり得るということを御検討なさってはいかがかと思います。  次に、ワシントン会議の模様につきましては、去る三月十九日の日に、重光国際連合局長によって詳細に報告されておりますので、多くは触れることを省略いたしますけれども、地域衛星の点につきまして、アジア諸国では、現時点では、いささか反対しているようなことをわれわれも承っておりまして、ヨーロッパにおけるそれと、アジアにおけるいまの状態とは、だいぶ事情が違うと思うのです。しかしながら、いつまでもアジア諸国においてそういうこだわりがあるだろうとはわれわれは考えられません。いつかは将来融和される時点が来るであろうということを考える場合に、地域利用の衛星を日本が打ち上げ利用することを今後あくまで主張していくべきだ、お互い全部そう思っておりまするけれども、特にこの点について、担当の責任者である長官として、やはり今後の国際会議の中でそれを強く主張していくという態度を堅持しておられるだろうと思いますけれども、間違いはございませんでしょうか。
  113. 木内四郎

    木内国務大臣 いまお話しになった点もごもっともでございまして、この間ワシントンで会議がありまして、その会議は最終段階において妥結いたしませんでしたけれども、わが国の態度といたしましては、あくまで地域衛星の権利をひとつ獲得いたしたい、こういうことで今後とも進んでいくという覚悟でございます。
  114. 吉田之久

    吉田(之)委員 宇宙開発の場合でも、あるいは一方、だいぶ性格が違いますけれども核の問題でも、最近大国主義というものが非常に問題とされております。特に、今後幹線衛星をわが国が打ち上げて、それが今日のインテルサットよりもさらにすぐれたものができないとは断定できないと思います。したがって、米ソの大国主義に対して、わが国が現時点においてどのような形で権利を留保しておくということがやはり非常に大事な問題だろうと思います。そういう点でも、今後政府は相当いろいろな努力を払っていかれなければならないと思うのですが、具体的に、将来にわたって、大国主義に対するわが国の権利の留保のしかたというふうなことで御検討になったことはございませんか。
  115. 石川晃夫

    石川(晃)政府委員 お答えいたします。  今般のインテルサットの全権会議におきましても、その辺のところがやはり問題になったということでございまして、各国とも一国一票主義、総会においては各国とも一国一票という考え方を非常に強く出しております関係で、アメリカ側としても、その点についてはやはり十分考慮を払っているようでございます。
  116. 吉田之久

    吉田(之)委員 次に、具体的な事業団法の内容について、少し伺っていきたいと思うのでございますけれども、提案説明のほうで申しますと、その第四に「事業団の業務といたしましては、みずからまたは委託に応じ、人工衛星打ち上げ用ロケットの開発、打ち上げ及び追跡を行なうことといたしております。」こう申しておられるわけであります。結局、だれが一体打ち上げるのか、事業団がそういう一つの打ち上げの実施部隊になるのか、それとも、いろいろと企画、立案、指導をするいわゆる参謀本部的な役割りを果たすのか、まず、それをお答えいただきたいと思います。
  117. 木内四郎

    木内国務大臣 これは、御案内のとおりだと思いますが、第一条と第二十二条によりまして、人工衛星及び打ち上げ用ロケットの開発は事業団自身が行なうということになっておるわけでございます。
  118. 吉田之久

    吉田(之)委員 それでは、委託に応じて打ち上げるという場合もあるわけですね。委託されて打ち上げたときに、打ち上げたって、この種の研究開発というのは成功するとはさまっておりません。失敗したときには、その直接の依頼者に対してはどういう責任をとらなければならないのか、あるいは国家としてやる以上、まるがかえに向こうの金でやるはずはございません。当然国費を投じてやることでございましょうから、国民に対しても何がしかの責任をとらなければなりません。そういう特に委託された場合の責任のとり方、そういう点は検討されたことがございますか。
  119. 石川晃夫

    石川(晃)政府委員 お答えいたします。  委託の問題につきましては、やはり本質的にはその委託されたときの契約内容いかんによるものだと存じます。私たちも、この事業団において、こういう打ち上げ、追跡の事業をやるからには、失敗しないように十分万全を期することも考えておりますし、また、従来先進諸国が経たような失敗を繰り返さないように努力する考えでおるわけでございます。
  120. 吉田之久

    吉田(之)委員 努力はされるでしょうけれども、その契約の内容の中で、その成果について取りきめるというようなことはあり得るのですか。あるとすれば、どういうきめ方をするのですか。
  121. 石川晃夫

    石川(晃)政府委員 その点につきましては、まだ詳細に検討は進めていないわけでございますが、その打ち上げを依頼された内容が、たとえば衛星だけを依頼されたとか、あるいは打ち上げも全部依頼されたというような、内容もいろいろあると思います。その内容につきまして私たちが十分検討いたしまして、注文先のほうのミスである場合には、当然注文先の責任になると思いますが、私たちのほうでやっておりますロケットなり、そういうものにつきまして私たちのほうに責任がありました場合には、事業団なりあるいは監督側の責任になるというふうに考えております。
  122. 吉田之久

    吉田(之)委員 そうすると、長官、非常に冒険的な委託は受けられないということですね。よほど確かでないと、事業団が委託に応ずるというようなことは、ちょっとできそうにございませんが、そういうことでございますか。
  123. 木内四郎

    木内国務大臣 それはお話のとおりでございます。しかし、初めて開発するものですから、これは、初めからもう完ぺきを期するということはできないと思うのです。ある程度の失敗があることはやむを得ないのじゃないかと思います。ことに、アメリカなどの例を見ましても、初めから完ぺきなものを打ち上げたわけではありませんで、いろいろ失敗したこともあります。しかし、その貴重なデータを処理して、さらに次のときにはこれを改善していくというのが開発の場合の常道だと思っておるのですが、できるだけ安全なものを打ち上げるようにするし、システムデザインから何からかにから、気象の実験とか、そういうものをいろいろやりまして失敗のないようにしますけれども、いま局長が言いましたように、各国の失敗を繰り返すようなことをしたくない、そこでいろいろな実験をして、その上でやりまするけれども、初めから完ぺきを期するということはちょっと困難な場合があるのじゃないかというぐあいに思います。
  124. 吉田之久

    吉田(之)委員 打ち上げる前から失敗の話ばかりして恐縮なんですけれども、各国の場合でしたら、察するに、軍部というのがありまして、軍部がこれを軍事的に利用する場合もありますから、打ち上げてくれというので軍が委託すれば、これはいや応なしに打ち上げることもできるし、また、軍自身がそういう強力な開発の推進力を果たしていることも一面言い得ると思うのです。日本の場合は非常に事情は別でございます。民間が打ち上げてくれ。民間といえども、いろいろ企業の形態は異なりますけれども、やはり全然利害を度外視して、おもしろ半分というか、まあひとつテストに打ち上げてくれないかというようなわけにはまいらないと思うのです。やはりその辺でこれから非常に困難な問題が予想されるのではないか。しかし、それをこわがっておったんでは、これは研究にも開発にもなりません。やはり多少の冒険もしなければなりません。十分検討した結果打ち上げた、しかしうまくいかなかった、ならば今度はひとつ事業団のほうでお返しにひとつ打ち上げて、あなたのほうで使ってもらおうかというふうなことも起こるんじゃないですか。どうなんですか。
  125. 石川晃夫

    石川(晃)政府委員 お答えいたします。  現在事業団のほうで考えておりますのは、当面の問題といたしましては、開発段階を考えておりまして、これにおきましては、ロケットも、それから衛星におきましても、ことに電離層衛星なども全部事業団の事業として行なうわけでございます。先ほどお話ございました委託の件につきましては、これは相当ロケットの信頼性を得た時点において委託を受けるというかっこうになるのが当然ではなかろうかと存じます。  気象衛星につきましても、当初は、開発段階になりますと、全部事業団のほうの事業として行なう予定にしております。したがいまして、実際に委託を受けますのは実用衛星というような段階になると思いますので、その段階においては、私たちも、そのロケットに対する信頼性は十分得られるものというふうに考えております。
  126. 吉田之久

    吉田(之)委員 だいぶわかってきました。  それでは、今度「事業団がその業務を行なうにあたっては、主務大臣の認可を受けて定める基準に従ってその業務の一部を民間機関等に委託することができる」と述べられております。今度、委託する場合があるわけですね。これはどういう場合なんですか。
  127. 石川晃夫

    石川(晃)政府委員 お答えいたします。  委託する業務といたしまして現在考えておりますのは、製造メーカーなどに対しましての試作等の委託が主でございます。そのほかに、仕様決定とか設計というようなための調査解析というような一部の委託もございます。あるいは追跡業務等を東京大学の内之浦の実験場にお願いするというような内容のものもまたあるわけでございます。いろいろ、その実利用をされる方からの委託ということは、現在のところは、あまりないというふうに考えておりますが、利用する段階において、その部分的な開発委託というようなものにつきまして、研究委託的なものにつきましては、特にそれについての非常にいい設備を持っているとか、あるいはすぐれた能力を持っている場合には、委託することもあるかと考えております。
  128. 吉田之久

    吉田(之)委員 そうすると、研究段階において、自分でやるよりもそちらでやるほうがより確かであって、完全だという場合に委託する、だから、この委託というのは、どんどん実利用される中で委託するというようなことは、事業団としては原則としてはとらない、こういうふうに理解して間違いございませんか。あくまでも自分で打ち上げる。委託されることはあっても、委託するということは、いまおっしゃったような範囲内におけるきわめて小規模のものであるというふうに考えて間違いないですか。
  129. 石川晃夫

    石川(晃)政府委員 そのように考えていただいてけっこうだと思います。
  130. 吉田之久

    吉田(之)委員 その次に「事業団の業務の運営につきましては、宇宙開発委員会の議決を経て内閣総理大臣が定める宇宙開発に関する基本計画に従ってその業務を行なう」、こういうことになっております。そうすると、内閣総理大臣が定める宇宙開発に関する基本計画というのは、どの辺までのところを定めるのかですね。この基本計画というのは、事業団の業務の運営よりは、より範囲が大きいと思うのですよ。どの辺まで大きいのか。イコールであったんじゃ、これはちょっとおかしいと思うのです。基本法がない時点において、どの辺まで定めるのか。
  131. 石川晃夫

    石川(晃)政府委員 この基本計画につきましては、宇宙開発委員会の議決を経まして、そして、内閣総理大臣が定めるわけでございますが、この内容は、いま先生のおっしゃいましたように、相当大きなものでございます。たとえば、開発の目標とか、あるいは研究開発を行なうおもな項目、それから開発スケジュールというような、開発的な、基本的なものを考えておりまして、事業団のほうにおきましては、さらにこまかな具体的な問題、たとえば、具体的なロケットとか、衛星の設計、あるいは開発の方法、詳細な開発スケジュール、こういうようなものを事業団のほうできめるわけでございます。
  132. 吉田之久

    吉田(之)委員 ちょっと問題がもとへ戻って恐縮なんですけれども、たとえば電電公社やNHKが利用するであろう衛星を打ち上げるのは、やはり事業団ですか。それは委託されて打ち上げることがあるのですか。
  133. 石川晃夫

    石川(晃)政府委員 お答えいたします。  電電公社、NHKがどのような衛星開発をやるかという点につきましては、まだ詳細ではございませんし、これにつきましては、現在、郵政省のほうで、その通信衛星なりあるいは放送衛星についての構想を固めているというふうに聞いているわけでございます。したがいまして、現時点におきましては、NHKなり電電公社から直接私たちのほうへ話がくるということはないと思います。これが通信衛星というような段階になりますと、現在のところでは、郵政省のほうからその開発計画をもって、そして、事業団のほうでその開発を進めるというふうな話になっております。
  134. 吉田之久

    吉田(之)委員 次に、通信衛星と放送衛星というのは、構造的にどのように違うのかということですね。われわれ、ちらっと専門家から聞いた話では、全然同じものなんだ、電波を受けて、一定の方向に拡大して流すだけのものであって、別に通信衛星と放送衛星とが全く異なる機構のものではないというふうにも聞いたりいたしておりますのですが、その辺はどういうことなんですか。もしも、それがほとんど大差のないものであるということであるならば、そういう二つの衛星を、たとえば一つで一元的に活用していく。多目的ダムといいますけれども、多目的な衛星というのが打ち上げられるということが、やはり効率的にも非常にいいことだし、宇宙開発のわが国のこれから一元的な運用の面でも非常にプラスするのではないかというふうな気がするのですが、ちょっとその辺のところをお答えいただきたい。
  135. 石川晃夫

    石川(晃)政府委員 お答えいたします。  通信衛星、放送衛星につきましては、専門的には、郵政省の所管でございますので、郵政省のほうからお答えがあったほうがいいわけでございますが、私たち現在理解しておりますところによりますと、通信衛星と申しますのは、衛星の中に相当多数の通信チャンネル、いわゆる電話回線的なものをたくさん持っているわけでございます。これは、ある周波数にたくさんの通信チャンネルをのせるわけではございますが、これはわりあい送信電力が少なくて済むわけでございます。現在上がっているのでは、四十ワット程度で数百チャンネル流しているような衛星もあるわけでございます。  しかし、一方、放送衛星と申しますのは、技術的に申しますと、ただいま申しました電力が相当大きくなりますので、この衛星の電源自体が相当大きなものを必要としてくるという点に、技術的には根本的に違いがあるわけでございます。  さらに、内容的には、放送衛星と申しますのは、直接国民大衆に電波を送るわけでございますので、ただいま申しましたように、相当電力を必要とするわけでございますし、また、受信するほうも、いわゆる不特定多数の者が受信するという衛星でございますし、先ほど申しました通信衛星は、特別な通信系を組織するというに点おいて、根本的にまた違っているわけでございます。
  136. 吉田之久

    吉田(之)委員 次に、現状で東大宇宙研究所と科学技術庁宇宙開発とを比較した場合に、実績から見て、まことに残念ですけれども、東大のほうがはるかに現時点では上回っているのではないか、少なくとも一歩前進しているのではないかというふうな気がいたします。今後ビッグサイエンスに取り組んでいく場合に、科学技術庁の力と東大というその学問の力と、現に研究されている成果、こういうものを統合して効果的に行なっていかなければならないと思うのです。したがって、そういう意味で、大学の宇宙研と、それからこの事業団との関連というふうなものは、今後具体的にどういうふうに進めていくつもりでおられますか。
  137. 石川晃夫

    石川(晃)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生おっしゃいましたように、確かに東京大学のほうは十年以上の歴史を持っておりまして、いろいろな面において実質的には進んでいると思います。しかし、科学技術庁のほうにおきましても、数年来技術の開発を進めまして、ようやく液体ロケットまで開発にこぎつけたわけでございまして、私たちのほうの研究陣も相当この点に力を入れてやっておりますので、早晩相当なロケット開発ができるものと考えております。  先生御指摘の東大の宇宙研の問題でございますが、現在私たちのほうで了解しております点は、東京大学が現在開発しておりますミューロケットは、それが信頼できる時点になりますと、それで開発をやめるというふうになっているわけでございます。その後におきましては、これを信頼できる時点になりました場合には、この事業団でその後の開発を行なうということになっております。  ただ、東京大学で現在開発しております科学衛星につきましては、引き続き東京大学で、学術研究の目的のために開発を進める、こういうふうになっているわけでございます。
  138. 吉田之久

    吉田(之)委員 アメリカなんかでも大学が衛星を打ち上げるということはしていないというふうにわれわれは仄聞いたしております。今後、日本の場合、東大の宇宙研で、宇宙研みずからが衛星を打ち上げるというようなことは、日本の場合には起こり得ますか。
  139. 石川晃夫

    石川(晃)政府委員 お答えいたします。  現時点におきましては、東京大学はミューロケットを開発いたしまして、それに現在開発しております科学衛星をのせて打ち上げるということになっておりますが、先ほど申しましたように、ミューロケットの開発が終わりまして、これが事業団に引き継がれた後におきましては、東京大学で開発されますいろいろな科学衛星は、この事業団において打ち上げるということになるものと考えております。
  140. 吉田之久

    吉田(之)委員 次に、事業団の役員の問題なんですが、理事長のほかに副理事長を置きますね。この法案の表現からいいますと「副理事長は、事業団を代表し、」と、こう書いてあります。そして、その次に「理事長の定めるところにより、理事長を補佐して事業団の業務を掌理し、」云々と、こういうふうに書かれております。理事長が事業団を代表することは、これはまあ当然でございますけれども、「副理事長は、事業団を代表し、」と同じように書いてあります。実は動燃事業団のほうを見ますと、ちょっと書き方が違うわけです。動燃事業団法の十二条の2では「副理事長は、理事長の定めるところにより、事業団を代表し、理事長を補佐して」云々、こういうふうになっております。きょうだいのような事業団法のうちで、動燃と宇宙開発事業団との副理事長の権限が少し違うのかどうか、御説明いただきたいと思います。
  141. 石川晃夫

    石川(晃)政府委員 お答えいたします。  動燃事業団におきましては、業務を大別いたしますと、動力炉の開発業務と、それから核燃料の開発業務、この二つに大別されるわけでございまして、複数の副理事長がそれぞれ、理事長が定めるところによって分担して代表権を行使しようということを当初予想していたわけでございます。そうして、いまのような規定になったおけでございますが、宇宙開発事業団の場合は、そのような必要もございませんし、また、この法案には一般的な規定の例にならいまして、このように副理事長に本来的な代表権を付与したというものでございまして、別に特に他意をもってこれをつくったわけではないわけでございます。
  142. 吉田之久

    吉田(之)委員 他意はない、いわばこちらのほうが自然な書き方だとおっしゃるのですか。
  143. 石川晃夫

    石川(晃)政府委員 そのように考えております。
  144. 吉田之久

    吉田(之)委員 ところが、われわれの考え方では、副理事長あたりから、いわゆる各民間団体の代表者の人たちが役員に就任してこられることが十分今度はあり得ると思うのです。しかも、その利害が対立したりする場合には、理事長、副理事長といえども下がっていなければならないというふうに書かれております。そういうことを考える場合に、理事長と副理事長との権限が一見全く同格のように解釈されるような表現であると、あとでいろいろと要らざるトラブルが起こったり無用な誤解が生じたりしはしないかという点、動燃事業団と比べてみまして、少し気になったわけであります。その点、誤解であればけっこうでございますけれども、特に長官としてその辺十分な配慮をしておかれたいと思いますので、そのことを申し添えておきまして、私の質問を終わります。
  145. 石田幸四郎

    石田委員長 次回は明三日木曜日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開くこととし、本日はこれにて散会をいたします。    午後四時二十七分散会