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重光政府委員 私から、最近やっております
ワシントンの
会議の模様についてだけ御報告いたしたいと思います。
御
承知のとおり、二月二十四日から六十六カ国の
代表及び二十五カ国のオブザーバーを入れて
ワシントンでやっておりますが、この
会議は二十一日に終わる予定でございます。今日までのところ、正直に言いまして何にもきまっていないというのが現状でございます。したがいまして、この
会議でどうなったということはまだ御報告できないのでございますが、御
承知のように、こういう大きな
会議になり、これほどむずかい問題になりますと、
各国は、まず第一に自分の
腹一ぱいの
主張をぶつける、そうして、それをもんでおりますうちにだんだん腹のうちがわかってきて、そうして、だんだん結果が出てくるという
経過をたどるわけでございますが、いままでの討議の結果から見ますと、腹のうちが少しわかりだしたという
状態でございまして、二十一日に終わるものでございますから、これもまだ正式にはきまっておりませんが、今回の
会議で妥結しないことは、これはもう全く確実といってよろしい。したがいまして
考え方としましては、いまの主流の
考えは、これに引き続いて、この終わった
あと、
準備委員会を夏ごろにでも続けまして、そうして
準備委員会の作業の進みぐあいを見まして、この
会議と同じような
会議をことしの秋、大体十一月ごろもできたらやることにしたい、これが大方の
考え方でございます。まだきまったわけではございません。
そこで、いままでの
会議で
各国がいろいろな
提案をしたり、それから
演説をしたり、あるいは
会議の背後でいろいろな個人的な接触を通じて腹の探り合いをやったわけでございますが、これらを総括いたしまして、大体こういうラインではないかというような観点から御報告してみたいと思います。
問題はいろいろございましょうが、今回の
会議は
委員会が
四つできまして、おもな実体問題は第一
委員会、それから第二
委員会は法律問題、第三
委員会は
技術問題及びもう
一つは
財政その他に関する
委員会でございます。それで、ちょっとつけ加えますが、この第二
委員会の
法律関係の
委員会では、
日本側が
議長をつとめております。第一
委員会のほうの
議長は
アメリカでございます。問題の大
部分は第一
委員会の
議題でございます。
それで、いままで少しわかったと思われる問題をあげてみますと、まず、
インテルサットの
業務の
範囲、
インテルサットの
機構の問題、それから
インテルサットの
法的地位、これも
あとで御
説明申し上げますが、
国際法上の
地位、それから
財政に
関係するのですが、調達の問題がいままで
相当重点の
一つとして論議されました。そのくらいのところであろうと思います。
一番の問題は
業務の
範囲でございますが、これは
条約面からいえば、
加盟国の
権利義務というかっこうになっておりますが、要するに、
恒久インテルサットが何をやって何をやらないかということでございます。それで、これは
特殊衛星の問題、
国内衛星の問題、それから
公衆通信に関する
地域衛星の問題、この
三つといって差しつかえないと思うのでございますが、これは
会議の場におきましてもとらえ方はいろいろございますが、内容的に分類すると、この
三つではないかと思われます。
もちろん、
特殊衛星というのは、御
承知のとおり、
公衆通信以外の
衛星であって、
実験用、
科学用あるいはテレビの
放送用、その他、要するに、
公衆通信用以外の
衛星をすべてここで
特殊衛星といってとらえられておるわけであります。この
特殊衛星、
国内衛星は言うまでもなく
国内だけで使う
公衆衛星でございます。この
特殊衛星と
国内衛星につきましては、これは御
承知のとおり、
アメリカの
態度とそれ以外の国とが非常に違っておりました。ことに、当初においては全く違っておりました。
アメリカの案は、
特殊衛星及び
国内衛星は、
インテルサットの
機関の
決定をもらわなければできないのだというような案を出したのでございます。しかし、この
特殊衛星と
国内衛星に関するいままでの論議の
実態から申しますと、
インテルサットの
決定がなければできないのだということを少しでも言ったのは
アメリカだけで、ほかの国は、これは自由であるべきだというのが全く絶対多数なんでございます。それで、先ほど申しましたように、一体腹の中はどうだということになるのでございますが、これはぼんやりした
見通し――ぼんやりで恐縮でございますけれども、いまの時点においてぼんやりした
見通しをつければ、これは自由になるという公算が一番強いのでございます。これは、
会議でございますから当然であろうと思います。
ただ問題は、これまた当然でございますが、
衛星を上げる以上は
インテルサットの
衛星と
技術的な面で妨害し合う、そういった
技術的な問題は、
インテルサットと十分
協議しなければいけない。これは
各国も言い、実は
日本のこの問題に対する
態度も、
原則は自由である、しかし
技術的に
お互いに妨害し合っても困るし、そういう意味で、上げるに際しては
インテルサットと
技術的な問題について
協議が必要だ、そういう
態度を表明いたしましたし、また、そういう
試案も非公式に出したわけでございます。
問題は、
公衆通信に関する
地域衛星の問題でございます。これは
アメリカは認めないということを前から言っておりましたし、
会議にも一応、認めないという案を出しました。これについて
意見は、
特殊衛星と
国内衛星ほど、ほかがこぞって、
アメリカ以外は全部
米案に
反対だということではございません。これは主として、
地域衛星を認めた場合に、
インテルサットのほうの実入りが少なくなる、そういう経済的な
理由が多いようでございます。ただ、いままで発言した国を全部あげるわけにもいきませんが、大
部分の国は、これは
インテルサットがあるからといって禁止すべきものではない、もちろん
技術的な
協議を行なった後両立するように
運営しなければならないけれども、これは
原則として自由にすべきであるという
意見のほうが大多数でございます。これに関連いたしまして、アジアの国でも大
部分はそういう
意見でございますが、非常に注目されますのは、フィリピンとマレーシアだけは、この点について全く
アメリカと同様なことを言っております。
アメリカと同様なことを言ったのは、すなわち、絶対に認めないということを言ったのは、アフリカで一カ国か二カ国ございますが、それ以外の国は禁止すべきものではない。しかし、どの国も指摘するのでございますが、
技術的に両立するような
関係が必要であるということに加えて、これは経済問題がからんでくる、あるいは政治問題がからんでくる。でございますから、
特殊衛星、
国内衛星と比べまして、これは非常に複雑な問題であるから、よく検討しろ、こういう
意見が大多数としては出ておるわけでございます。
日本は、この問題につきまして
代表から
演説もし、案も出ておりますが、
公衆通信に関する
地域衛星については、
原則的に自由にすべきである、しかし
特殊衛星及び
国内衛星に関する
規定、必要である
技術的な
協議のほかに二点を重視すべきであるということを言っておるのでございます。その第一点は、
地域衛星、
通信衛星というものは、
当該地域の
利害関係を持っておる国すべてが同意してつくらなければいかぬ、一部の国だけでつくるというのはよろしくない。それから第二点は、
公衆通信に関する
地域衛星をつくっても、たとえば、その
地域内の
通信についてはその
地域衛星組織を使わなければいけない。ということは、
インテルサットを使ってはならぬということでございますが、そういうふうに、
インテルサットを使えないようにするという
考えの
地域衛星はいかぬ、この二点を、
技術的な
協議の必要に加えて
試案として出しております。しかし、この
公衆通信に関する
地域衛星の問題は、前の二者、すなわち
特殊衛星と
国内衛星とはその複雑さが非常に違いますから、これに対する
見通しは、前者に比べればまだ立ちにくいというのが
状態でございます。この点は
あとでもう一度申し上げますが、
業務の
範囲ということについては、大体そんなところでございます。
その次は、
インテルサットの
機構の問題でございますが、これは一応
総会と
理事会と
管理機関の三本立てであるということは大体の
考え方でございます。
総会は
各国一票、平等、これもみなそのような
考えのようです。
それから、
理事会は
各国の
出資率に応じた
投票権を受ける。この
理事会において
出資率に応じた
投票権にするということについての
反対は、あまり
会議中聞かれておりません。ただ問題は、
総会の
権限と
理事会の
権限とを具体的にどこで引くかという点は大問題でございまして、この問題については具体的な
考えはまだ全然出てきておりません。抽象的に、
理事会の
権限を狭くしろとか広くしろとかいう
意見だけでございまして、具体的には出てきておりません。
それから三番目の
管理機関でございますが、言うまでもなく
アメリカのほうは、
コムサットをそのまま
管理機関にしたいということでございます。ところが、これに対して、それでいいのだという国はないので、まず、たてまえとして
国際機関をもってこの
管理機関にすべきである。問題は
国際機関ができるまでの
過渡的期間において
コムサットを使っていく、そういう
考えが強いわけでございますが、この問題に関する
アメリカ側の
考えは、前の
地域衛星その他に比べまして非常に強いようでございます。といいますのは、
地域衛星についてまあまあだけれども、
コムサットを何とかして維持したいということは非常に強く言っております。したがって、この
管理機関の問題は、いまのところ全く
見通しがついておりません。ただ、将来もずっとこの
コムサットでいくというような
協定ができるという
見通しは、ちょっとないと思います。どこで折り合うかは将来の問題になると思います。
それからその次は、
法的地位という妙な問題でございますが、これは、新しくできる
インテルサットが一体
政府間の
国際機関であるか、あるいは
合弁会社のような
民間の
企業体の集まりであるかという問題でございます。これは、問題は法律問題でございますが、いままであげましたような
実態の問題と関連いたしまして、
アメリカは、これは
合弁会社のようなものにしたいと言っておるわけでございます。これは、ほかの国は、いやそれはいかぬ、
政府間の
国際機関であるのが当然であるということを言っておりますが、これは
実態について話がまとまれば、別に
合弁会社にする必要も
アメリカにとってないものでございます。結局全部まとまらないから、法律問題でもがんばっておる、そういうような
感じのように見受けられます。これは第二
委員会の問題でございますが、
見通しはついておりません。
それからもう
一つ、ちょっとこまかな問題にはなりますが、
インテルサットがいろいろな機器を調達する場合の
原則、これは御
承知のように、現在の
暫定協定では、最も安くていいもの、そうして、その見地から、同等なものがある場合には、なるべく広い
地域の国から調達する、こういう
原則になっております。
それで、わがほうは言うまでもなく、いまのこの
原則をそのまま残してもらいたい。わがほうだけではなく、ヨーロッパその他の
先進国はみなそれを
主張しております。しかし、これに対して、同等のものならほかからもいいというけれども、いままでの実際は、ほかから入れたので少し高くなったではないかという問題が起こっておるのです。しかし、これはまだ、もちろん詰まっておりませんが、どうなるかいまのところ見当がつかない。しかし、
先進国はこぞって現行の
規定を
主張しておりますから、まあそれから非常にかけ離れるようなことはないと思いますが、これまた、いまの段階においては不明でございます。
内容的には以上だと思いますが、
会議が二十一日に終わってしまって、それで一部には、
アメリカ側としてはなるべくこれを延ばしたほうがいいのじゃないかという
考えというか、そういう予想をする向きもあるのでございますが、
最初にちょっと申しましたように、これを二十一日に終わって、
準備委員会を夏ごろ開く。その
準備委員会は、一体どの程度の国の数にするかということがいま問題になっておりますが、これはわからない。二十カ国とか三十カ国とか、そういう数になるかと思いますが、それで詰めて、そうして、ことしじゅうにまたこの
会議を開きまして、何とか妥結に持っていきたい、こういう
考えは
アメリカ側にもあるし、
会議全般の空気のように
考えております。
以上が、ただいまの
ワシントンにおきます
会議の
説明でございます。