○箕輪
委員 北方領土復帰の実現は、戦後二十四年にわたりまして、引き揚げ島民はもとより、国民のひとしく悲願としてきた最も重要な国家的課題でございます。今回
政府は、
北方領土の早期復帰の実現と
領土問題未解決のために起こるところの諸問題解決のために内政的
措置を整備する
方針のもとに、昨年十一月、田中前総務
長官の
北方領土視察に伴い、
政府部内に北方問題
各省連絡会議設置の閣議決定をされてこれに対処する一方、特殊法人、仮称
北方領土問題対策協会を設立いたしまして広く国民に啓発をするとともに、
北方領土諸問題の解決を促進されようとして立法化の提案を見たところでございます。
私は、昨年の四月二十二日に本
委員会におきまして、
北方領土問題に対処するために特殊法人の単独立法化について
政府にお尋ねいたしたのでありますが、その
趣旨に賛同して前向きに検討する旨の御答弁をいただいたのであります。そうした観点と経緯から、この法案の目的なり、また御
提出については心から賛意と敬意を表する次第であります。そこで、特殊法人の計画するところの業務の範囲などを中心といたしまして、お尋ねいたしたいと思う次第でございます。
まず第一に、従来
政府は、北方
地域の諸問題については特殊法人南方同胞援護会にもっぱら処理させていたのであります。すなわち、南方同胞援護会は、
沖繩・小笠原など南方諸島に関する諸問題について
調査研究、啓発宣伝を行なうとともに、同
地域に居住する
日本国民の援護
措置を講じ、あわせて
施政権返還などについても民間運動を推進するため、
昭和三十一年十一月十五日財団法人として設立されたのであります。その後この会の重要性が認識されまして、翌三十二年六月一日南方同胞援護会法の制定によって、
昭和三十二年九月一日から特殊法人として発足を見たものであります。さらに、
昭和三十四年三月二十日南方同胞援護会法が一部改正されまして、その附則をもって、業務に関する
暫定措置として、
政令で定める北方
地域に関しても南方と同種の業務を行なうことができることとなったものでございます。自来十年間、もっぱらこの南方同胞援護会で北方の諸問題に対処するという
施策がとり進められてまいったのであります。今回新しい法案を見ますときに、大筋はこの従来の南方同胞援護会の北方関係事業を承継したことと、
昭和三十六年北方
地域旧漁業権者等に対する特別
措置に関する法律に基づいた北方協会の事業をそのまま承継し、この二つを合わせて
北方領土問題対策協会という新しい人格を設置する、このように私は理解いたしておるのであります。
そこで、新法人は十月一日設置の予定と承知いたしておりますけれ
ども、その事業などの
内容に、この二つの団体が従来実施してきたものと異なる格別違ったものがその事業の範囲の中で見られないのであります。全くこの従来の二つの団体が行なってきたものを一つに取りまとめた、そういうふうに解釈しておりますが、その二つの事業が行なった以外の何か新しい、特記するような格別のものが範囲の中で見られないのであります。したがって、初年度ということもありましょうけれ
ども、予算の面で見ましても一千八百万円、上半期における南方同胞援護会の北方関係費を含めてみましても、わずか二千四百万円程度と承知しておるわけであります。管理費を除くとほとんど事業として実施するものがないのではないかと私
どもは心配するのであります。それでは国民の要望するところの、
全国的規模から見たところの
北方領土復帰運動なり広範かつ多角的な
北方領土諸問題の処理は不可能で、とうてい所期の目的は期待し得ないのではないかというように憂慮いたしておるのでございますけれ
ども、この点について、簡単でけっこうでございますから、ひとつ御
説明をいただきたいと思うわけであります。