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1969-03-18 第61回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年三月十八日(火曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 中村 寅太君    理事 臼井 莊一君 理事 小渕 恵三君    理事 本名  武君 理事 八木 徹雄君    理事 川崎 寛治君 理事 美濃 政市君       小坂善太郎君    福田 篤泰君       古屋  亨君    箕輪  登君       山田 久就君    中谷 鉄也君       吉田 泰造君    伊藤惣助丸君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      床次 徳二君  出席政府委員         総理府特別地域         連絡局参事官  加藤 泰守君  委員外出席者         総理府特別地域         連絡局総務課長 及川 謙三君     ――――――――――――― 三月六日  沖繩B5爆撃機即時撤去に関する陳情書  (第一八四  号)  沖繩B5爆撃機即時撤去等に関する陳情書  外三件  (第一八五号)  同外二件  (第二一五号)  沖繩施政権返還に関する陳情書  (第  二一六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  沖繩及び北方問題に関する件      ――――◇―――――
  2. 中村寅太

    中村委員長 これより会議を開きます。  沖繩及び北方問題に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷鉄也君。
  3. 中谷鉄也

    中谷委員 私は、きょう、沖繩における沖繩県民に対する米軍人軍属犯罪について、なお琉球民警察官逮捕権、すなわち民政府布令第八十七号についてお尋ねをいたしたいと思います。  すでに過去の委員会におきまして、昭和三十九年以降現在までのいわゆるおもな凶悪事件実例についての調査報告を求めたことがあります。たとえば昭和三十九年一月二十七日、那覇市居住の米軍メード外人風の二人連れによって強盗、強姦傷人被害を受けたというような事実など、十二件についての調査報告を受けたのでありますが、その際にもわれわれは問題にいたしましたが、事件発生年月日発生場所被害者被疑者事件内容、そうして事件発生後における措置等については調査報告内容書に記載されておりまするけれども、これらの被疑者犯人が検挙されたのかどうか、そうしてどのような判決を受けたのか、すなわちどのような制裁を受けたのかということが、被害者を含むところの沖繩県民社会感情としては一番重大なできごとであろうと思うのであります。すなわち、私が最初お尋ねをいたしたいのは、すでに当委員会に提出をされましたところのおもな凶悪事案実例については判決部分が脱落をしておるわけでありますが、これらについてはその後調査をされたかどうか、この点について長官お尋ねをいたしたい。
  4. 床次徳二

    床次国務大臣 おもな犯罪事件等については、この前資料をお示ししておると思いまするが、その措置につきましては、憲兵隊に引き継いだというところまでわかっておりまして、その後判決のわかりましたものもありますし、わからないものもあるようであります。詳細は政府委員からお答え申し上げます。
  5. 中谷鉄也

    中谷委員 私は次のように思います。  裁判公開原則というのは、民主主義国家におけるところの基本的な原則であります。長官の御答弁ではありますけれども、わかったものもあるし、わからないものもある。一体そんなことがわかりにくい状態にあるのかどうか、そんなことは一体いかがなものでございましょうか。要するに、どのような判決を受けたということが十分現地においてはわかっているのだけれども、たまたま特連局にはその資料が入っていないという趣旨なのか、それとも長官がおっしゃるように、憲兵隊に引き継いだあと、それは暗やみの中において、暗黒の中において判決が行なわれておるのであって、どんな判決を受けたのか、そうしていわゆる県民感情から見て、国民感情から見て死刑の判決を受けるのが相当だと思われる事案無期判決を受けるのが相当だと思われる事案が、あるいは懲役三年、禁錮五年というようなことでのうのうとして本国に帰国しておるということであるのかもしれないということなのか、その点についてさらにひとつ明確に御答弁をいただきたい。
  6. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいまお答えいたしましたのは、私の持っております資料には判決関係がないものでありますから、引き継いだというところまで申し上げたのでありまするが、個々のケースにつきましてこちらでわかっておる判決に対しましては、現地においてわかり得るものであります。ただ、ここに全部持っておるかどうかにつきましては、政府委員のほうから申し上げます。
  7. 中谷鉄也

    中谷委員 長官に次のようにお尋ねをいたします。  裁判公開原則は、軍事法廷においては守られているかどうか、要するに、米軍人軍属沖繩県民に対するところの犯罪についてどのような裁判が行なわれているか、それについての裁判公開原則というのが守られているかどうか。日本国の憲法において、裁判公開というのは一番基本的な原則であります。西部劇でさえも裁判公開をされておる。そういうふうな状態の中で、沖繩において、すでにもう二十一世紀になろうとする今日、非公開で行なわれておるということであれば、これはお話にならない。裁判公開原則が守られているかどうか、まずこの点について長官の御答弁をいただきたい。
  8. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいまの点明瞭でありませんので、これははっきり調べましてから御答弁申し上げたいと思います。
  9. 中谷鉄也

    中谷委員 特連局お尋ねをいたしたい。  裁判公開原則はどのように相なっておりますか。
  10. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 裁判手続そのものについて、完全な公開になっておるかどうかという点につきましては、私ちょっと承知しておりませんのでまことに申しわけございませんが、判決の結果につきましては公表されております。たとえば六八年五月に事件がございました民間の主婦殺し軍事判決によりますと、無期懲役不名誉除隊給与剥奪、兵位降等というような判決が公にされております。
  11. 中谷鉄也

    中谷委員 長官お尋ねをいたします。  裁判公開原則というのは、民主主義社会におけるどのような基本的な原理、基本的な人権擁護要請に基づくところの原理でありましょうか。裁判公開が許されていない、不明瞭であるということは、どのような結果を人権擁護上もたらすものでございましょうか。お尋ねをいたしたい。
  12. 床次徳二

    床次国務大臣 原則といたしまして、これは公開原則人権擁護のために必要であると思っております。ただ、沖繩の場合におきましては軍人関係法廷でありますので、はたして現実においてどこまでそれが実行されておるかということにつきまして、ちょっとただいま手元で明瞭でありませんので、これは調べましてお答え申し上げたいと思います。
  13. 中谷鉄也

    中谷委員 裁判公開原則というのは、裁判が公正適正、法のもとにおいて正しく事実が認定をされることが、単なる裁判官の独善によらない、基本的人権を守るところの近代国家における最も原則的な要請であろうと私は思うわけであります。  特連局お尋ねいたしたい。軍事法廷一体何カ所、どこにあるのですか。
  14. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 軍が四軍ございますので、それぞれ別個に軍事法廷を持っていると私は思います。それ以外に、民政府に属する裁判所として米国民政府裁判所があります。
  15. 中谷鉄也

    中谷委員 四軍がそれぞれ軍事法廷を持っている。その軍事法廷場所は、沖繩の何町の何番地ですか。軍事基地内のどの建物にあるかということは御存じですか。
  16. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 その点につきましては私承知しておりませんけれども、軍司令部の所在地のところであろうと私は思います。
  17. 中谷鉄也

    中谷委員 その軍事法廷というのは、固定的なものですか、それとも移動しているものですか。要するに、和歌山地方裁判所とか東京高等裁判所というのは動きませんね。この軍事法廷というのは、固定しているのですか、動いているのですか。
  18. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 司令部の所在するところにあるのでございます。したがって、移動といいましても、これは司令部移動すれば当然移動するわけでございますが、司令部移動しない限りにおいては移動しないわけでございます。
  19. 中谷鉄也

    中谷委員 私が聞いているのは、たとえば衆議院の院内に裁判所法廷があったと思ったら、それからしばらくだったら第二議員会館のほうへ行ってみたり、あるいはしばらくすると今度は参議院のほうへ行ってみたり、あるいは国会図書館のほうへ行ってみたり、そういうふうに移動をしているという事実はありませんかと聞いているのです。
  20. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 それは軍のほうの建物の使用の問題であろうかと思いますが、軍の都合で移動することはあるいはあるかもしれませんが、普通の状態で考えますれば、軍事法廷としての固定的な場所というのはあるだろうというふうに思います。
  21. 中谷鉄也

    中谷委員 私は、きょうの質問は準備をせずに、ただほんとう人権を守るという立場でお尋ねをしているけれども、御答弁については私ははなはだ遺憾です。私は、長官はじめ沖繩問題の御専門家であるといわれながら、この問題についてのお取り組みはきわめて不十分だと思う。端的にその点をあえて指摘せざるを得ません。  そこでお尋ねをいたしますが、法律的に公開原則は担保されておることになっておりますかどうか、この点、長官いかがですか。
  22. 床次徳二

    床次国務大臣 法律的には人権は守られておると思います。これは行政命令によりまして、やはり沖繩におけるところの権利に対しましても十分な基本人権というものを守ることが行政命令の基本的な原則になっておりますので、さような意味におきまして人権は守られておると考えられます。
  23. 中谷鉄也

    中谷委員 特連局お尋ねします。布令根拠は……。
  24. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 軍事法廷につきましては布令そのものには載ってないわけでございまして、布令に載っておりますのは民政府裁判所関係だけでございます。
  25. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、長官からお答えいただきました、法令上まず公開原則が担保されておるというようなことは当然のことでございますね。アメリカ民主主義国家であるということを主張する限りにおいては、これは最小限度の法律的な担保だと思うのです。ですから、法令上のどこかに軍事法廷根拠があるはずだと思うのです。もちろん特別の場合に限って非公開にすることができるという規定はあるかもしれませんけれども、原則的に公開というのは、軍事法廷に関する軍の規定のどこかにあるはずでございます。そのことについても、長官のほうでひとつ十分お調べいただいて、これらの問題について、沖繩県民について、たとえば自分のかわいい娘さんがむごたらしい被害を受けて殺された、その加害者アメリカ兵がどんなふうに裁判を受けているのか、にやにや笑いながら裁判を受けているのか、かしこまって裁判を受けているのか、ほんとうに反省、悔悟をしているのか、どんなふうな申し立てをするのか、そんなことが全く傍聴できない、全くそのようなことを知ることができないということであれば、これは許しがたいことだと思うのです。したがいまして、私がきょうお願いいたしたいのは、法令上の根拠を明らかにされたいということが第一点。これはあることが当然ですから。  次に私が長官お尋ねをいたしたいのは、事実上公開原則は守られているかどうか、この点はいかがでしょうか。と申しますのは、先ほど特連局のほうから御答弁がありましたとおり、軍事法廷基地内にございますね。入っていくことについては許可が要りますね。どういう手続軍事法廷傍聴に行っておるのですか。沖繩県民は実際に傍聴に行っておりますかどうか、この点いかがでございましょうか、長官の御答弁をいただきたい。
  26. 床次徳二

    床次国務大臣 軍事法廷根拠は、統一軍法によって行なっておるようであります。なお、琉球政府裁判所はもちろん公開でありますが、民政府裁判所公開であります。なお、軍事法廷につきましては、陸、海、空それぞれ、先ほどお答え申し上げましたように法廷を持っておるのでありますが、基地内で開かれるという点から、事実上公開が制約されるかもしれない。先ほどのお尋ねの点は、公開原則であるが、しかし、基地の中であるために行けるかどうかという点につきましては、ただいまのところはっきりいたしません。制約を受けているかもしれないという点であります。米側といたしましては、もちろんこれは公開されるということになっております。なお、いつ開廷するかという期日につきましては、照会すれば通知されるというわけでありますが、ただ法廷の広さ等によりまして、何人それを許すかということは浮動であるよしであります。なお、軍事法廷に対しましては、私も関心を持っておりまするが、最近非常に改善されたようで、昨年の暮れでありますが、判決を受けました者につきまして、従来にないところの新しい判例と申しますか、殺人に対して無期懲役になり、しかも軍の資格も降等いたしまして、従来ないところの処置であったということが新聞にも出ておったわけであります。この点は漸次改善されつつあるものと考えておる次第でございます。
  27. 中谷鉄也

    中谷委員 長官に私は、次のような要望と申しますか、措置をお願いいたしたいと思います。公開原則というのは、民主主義社会における基本的な原則だと私は思います。そこで、公開原則前提として、裁判がいつ開かれるかということがわからなければ、事実上公開原則というものは無視されますね。一体沖繩報道関係者に対して、そのようなことが軍の関係者から積極的に通知されているのかどうか。それから、琉球警察局等に対してそれらのことが通知されているのかどうか。なお、何といってもその裁判傍聴したいのは被害者遺族であります。被害者とその親族であります。それらの人はどういうふうな手続をもって、いつ裁判が開かれるかということを、相当な時間の余裕を持って——たとえばきょう十時から開かれるということを、九時半に連絡を受けたってどうにもなりません。相当余裕を持って知らされるべきであるということを私は考えます。実は私は、社会党の第四次調査団の団員といたしまして、川崎議員とともに沖繩に一昨々年参りましたが、そのときにもライトボール法務局長に会いまして、このことを強く要望いたしておきました。また、当時の琉球警察局長にも、そのような措置をとるべきであるということを申しておきましたけれども、その後一向に実現されたように見えない。総務長官に私が特に要望したいのは、裁判公開原則前提となるべき、裁判がいつ開かれるかということが、その裁判関係を持つところの被害者遺族親族などの知り得るような状態というものを、どのようにしておつくりになるか、この点についてひとつ長官の今後の措置をお伺いいたしたいと思います。
  28. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいまお尋ねの点につきましては、報道関係あるいは警察局等につきましては、聞けばこれを知らしてくれるという形になっておるようでございます。積極的に向こうから期日を発表するという形にはなっていませんが、連絡によりまして知り得ておるという状態でございます。
  29. 中谷鉄也

    中谷委員 被害者遺族一体どういうことになっていますか、琉球警察局被害者遺族に知らしてくれていますか、この点は一体どういうふうな措置をおとりになっていますか。また、一般県民はどうしてそれを知り得るのでしょうか。大体軍事法廷というのは、一体傍聴人を何人に制限されておりますか。そんなことは特連御存じですか。
  30. 床次徳二

    床次国務大臣 被害者に対する通知でありますが、これは警察局のほうにわかっておりますから、警察局のほうに照会すればわかるという形になっております。積極的に被害者に対して通知をするというふうにはなっておらぬようであります。今後警察局被害者に対する連絡等につきましては、不十分な点は十分に改めさせたいと思います。
  31. 中谷鉄也

    中谷委員 どんな事件であっても、日本法廷ならば、人を殺したというふうな事件の場合には、被害者感情はどうかということを、被害者遺族法廷に立って証言をするのがあたりまえなんです。被害者の気持ちもまた法廷で出てくるのがあたりまえなんです。そんな審理が行なわれておるということでしょうか、行なわれていないということでしょうか。要するに、被害者不在のままの裁判が行なわれておるというふうに長官は思われませんか。
  32. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいまの点につきましては、十分ではないのではないかというふうに感じております。今後ともこの点は積極的に連絡をいたしたいと思います。
  33. 中谷鉄也

    中谷委員 基地内の法廷であります。そこで、基地入り口にはカービン銃を持ったところの衛兵が立っておる。一体どういう手続で入っていいのか戸惑うだろうと思うのです。そういうふうな法廷へ行くまでの手続というものは容易にできておりますかどうか、また容易に入門できるようにすることが私は適切だと思うが、その点についての長官の御答弁を承りたい。
  34. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいまの問題は、警察局被害者との連絡の問題であろうと思います。この点は、警察局に対しましても十分に連絡をとりまして、そして傍聴その他ができますような努力をいたしたいと思います。
  35. 中谷鉄也

    中谷委員 そうではないのです。いよいよ裁判期日がわかりまして、県民が、たとえば娘が死んだ、その娘さんの友人の娘さんたち傍聴に行こうといって基地入り口まで行った、そのときに入れるのかどうか、この点についての実態はどうなっておりますか、なかなか入りにくいのじゃないでしょうか。その点について、傍聴するといって行くならば、米軍自分のほうの恥部を見せることになるわけですね。米軍人軍属犯罪ですから恥部を見せることになるわけだけれども、しかし、被害者とその親類、友人はそれを傍聴する権利がある。それが公開原則だと思うのです。そういう基地の壁によって、公開原則が法律的には許されておっても、事実上阻止されておるというようなことのないような措置を今後おとりいただくように御努力いただけますか。努力するというお答えをいただきたいが、それについては具体的にどうしていただけますかという質問です。
  36. 床次徳二

    床次国務大臣 いかにもごもっともな御意見であります。しかし、今日までのところ、傍聴に参りまして拒否されたという例はないようであります。なお、今後これに対しましては、警察局と先方との間の連絡等に対しまして、よく連絡をとらせるということが肝要ではないかと思っております。ただ、人数を何人くらい入れるかということにつきましては、法廷の大きさによりましてだいぶ小さいところもあるようでありまして、そういうような関係もあろうかと思いますので、連絡を密にいたしまして御趣旨のようにいたすべきだと考えて、努力いたしたいと思います。
  37. 中谷鉄也

    中谷委員 長官にあまりこまかいことをお尋ねすることは恐縮ですが、では特連局お尋ねします。  公開原則というのは大事な原則でございますね。傍聴というのは公開原則の具体的なあらわれだから、私お尋ねするのですよ。拒否されたことがないというふうなメモが回ってきたようですね。では一体、最近の凶悪事件数例をあげてください。それについて何名県民傍聴したか、傍聴人があったのかなかったのか、報道関係の人が傍聴したかどうか、一般県民傍聴したかどうか、ひとつこの点について御答弁いただけますか。傍聴を拒否された事実がないと思いますというふうな答弁と、事実上傍聴はなかったということは別でしょう。そういう実態を踏まえての御答弁なのかどうか。そういうこまかいことまで長官にお聞きしようとは私は思わないけれども、そちらからメモが回ってきたから、そういうことを私はお聞きする。傍聴人があったのかなかったのか、何名傍聴人があったのか、その点、はっきりわかっていますか。
  38. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 メモを回したので誤解を受けたかもしれませんが、私は、拒否されたということで問題にされたという事実を聞いていない、こういうふうに長官に発言していただきたいと思ったわけでございまして、それ以上のあれはございません。いままでのあれにつきまして、何名申し出があってどうこうというような点につきましては、その事実関係をつまびらかにしておりませんから……。
  39. 中谷鉄也

    中谷委員 私は、この機会に長官に要望しておきたいと思います。  拒否されたということで問題になった事例がないということは、逆に言いますと、沖繩県民人たちは、本来傍聴というふうなことはできないんだ、困難なんだ、たいへんわずらわしいことなんだということであきらめておる。だからこそ傍聴についてのトラブルが起こらないのです。権利の行使をしないところにトラブルの起こりようがないわけなんです。だから私は、公開原則傍聴という現実的な形においてあらわれるように、ひとつこの問題については長官の嫁うから直接米軍のほうと——政府としては米軍のほう、あるいはこれは日米琉諮問委員会等においても、この公開問題というか傍聴問題を議題としてあげていただいていい問題じゃないかと思うのです。長官、いかがでございましょうか。
  40. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいまのお尋ねの点につきましては、確かに今後妥結すべき問題であると思うので、十分努力いたしたいと思います。
  41. 中谷鉄也

    中谷委員 では、公開問題についてはその程度にいたします。  そこで次に、まず最初民政府布令八十七号、すなわち琉球民警察官逮捕権が、運用の面においてどのように改められたというか、運用面において弾力的運用をされるようになったか、この点についてひとつ御答弁をいただきたい。
  42. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 昨年の七月に民政官書簡が出まして、それによりますと、布令八十七号の第一項に掲げております犯罪は例示にすぎないということでございます。したがいまして、現行犯以外のものにつきましても琉球警察逮捕することができるということになるわけでございます。この点、書簡においてそういう見解の表明がございました。したがって、相当程度、従来よりも警察の権限が拡大された形で運営されることになる、こういうふうに思います。
  43. 中谷鉄也

    中谷委員 私は次のような点が改められるべきだと思います。   〔委員長退席臼井委員長代理着席〕 すなわち、布令八十七号をお開きをいただきたいと思いますが、「警察局の警官が、」要するに沖繩のほうの警察官が、「米国陸、海、空軍軍人その他米国軍法に服すべき者を」、要するに軍属ですね、「逮捕するときは、直ちに最寄りの米国陸、海、空軍憲兵隊又は海軍警備隊に、逮捕状況明細報告書と共に犯人を引渡さなければならない。」私はこの「逮捕するときは、」というのは、逮捕したときはの誤訳ではないかというような感じもするのですが、いずれにしても逮捕したときにはすぐ、直ちに引き渡しなさいとなっていますね。そうすると、この場合の逮捕状況明細報告書というものを長官ごらんになったことがありますでしょうか。非常に失礼な質問ですけれども、お尋ねいたします。
  44. 床次徳二

    床次国務大臣 いや、見ておりません。
  45. 中谷鉄也

    中谷委員 私は長官に、これもひとつぜひとも措置をしていただきたいと思うのです。私きょうは突然の質問なので現物を持ってまいりませんでしたけれども、一昨年私が入手いたしました逮捕状況明細報告書というのは、欄がこの程度の欄でございますね。要するに五センチとそれから十センチくらいの欄なんです。しかも一枚の紙に被疑者二人になっているようなものであったと記憶いたします。そんなところへ、人を、大事な家の娘さんを殺したというような事件逮捕状況を、その犯人がすなおに逮捕に応じたかどうかというようなことだけ書いて引き渡すなんということは、とにかく沖繩警察官としては耐えられないことだと思うのです。そのときに証拠の血痕がついておったとか、ピストルを所持しておったとか、ピストルのいわゆる煙硝のにおいが服についておったとかいうふうなことを詳細に、とにかく動かぬ証拠というものを逮捕状況明細書の中に書いて引き渡してこそ、私はその事件というものが動かないものになるだろうと思うのです。この点、逮捕状況明細書というものも捜査権を拡大をするという方向で、逮捕権と同時に捜査権を拡大するという方向においてまず措置さるべきである、要するにそういうように思いますが、いかがでございましょうか。
  46. 床次徳二

    床次国務大臣 逮捕につきましては共同捜査という手もあるわけでありますし、なお大事な、いわゆる証拠の問題でもありますので、十分な説明ができないような場合に対しましてはこれを補えるように、ひとつ検討いたしたいと思います。
  47. 中谷鉄也

    中谷委員 要するに長官、では問題を整理しましょう。逮捕権の拡大と、そうして本来与えられておらない捜査権を、逮捕権というものの拡大の中において、事実上の捜査権というか、事実上の捜査ができるように運用の面で拡大をしていく、これが私は、現在の沖繩県民人権米軍人軍属犯罪から守る一つの手だてだと思うのです。そういうような点についてひとつ長官として、こういうふうな対策を講ずべきだと思う、また、この問題についてはどの機関に提示すべきだというようなことについての御答弁をいただきたいと思います。
  48. 床次徳二

    床次国務大臣 琉球政府警察官の権限が拡大されたということに対しまして、私は非常にいいことだと思っておりまするが、なおこの拡大された警察権の行使というものに対して遺憾のないように、拡大されました趣旨に沿うように努力いたしたいと思って、この点は、ただいま御質問等ありましたが、十分検討いたしたいと思います。
  49. 中谷鉄也

    中谷委員 こまかい質問になりますので特連局に。「直ちに最寄りの米国陸、海、空軍憲兵隊又は海軍警備隊に、」引き渡さなければならないとありますね。これは逆に言いますと、いっときでも日本人の手に米軍人を置いておきたくないんだという露骨な、一つのアメリカのものの考え方なんです。悪いことをした人間であっても、とにかくアメリカのほうにひったくっていきたい、こういう考え方だ。具体的な実務の問題点で「直ちに」とありまするけれども、いわゆる凶悪犯罪例として出ているものなどについては、逮捕した者についてどの程度の時間で引き渡しをしておりますか。逆に言うと、「直ちに」とあるのはどの程度で引き渡しせざるを得ない、そういうことに相なっておりますか。こういう点の実態をお調べになったことがありますか。
  50. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 ただいまの点につきましては実態を調べたことは実はございませんが、この条文そのものが、むしろどちらかといえば現行犯を中心に書いているので、その者が犯人であるという明確な——現行犯でございますから当然明白な場合を想定して、「直ちに」というふうになっているのだと思います。先ほど申し上げましたように、現行犯以外の者についても逮捕できるというようなことになりますれば、おのずからその者が犯人であるということをはっきり確認することにならないと、逮捕ということもすぐには出てまいらぬかと思います。そういう意味におきまして、逮捕そのものは、現行犯以外の者につきましては、ある程度の事実を確認するということが必要になるのは当然だろうと思います。そういうことでございますので、その意味におきまして逮捕するまでの時間的な、あるいは時間の経過といいますか、そういったものは現行犯の場合とは違って、非現行犯の場合には多少のあれがあるわけでございます。ただ、逮捕されたあと直ちに向こうへ引き渡す、こういうことにつきましては、それが犯人であるということがはっきりしておりますれば直ちに引き渡しても、犯罪そのものの確認ということが行なわれておりますれば問題は少ないだろうと思います。しかし、現実にどの程度の時間的な余裕で引き渡しをされているかということにつきましては、先ほど申し上げましたように調査いたしておりません。
  51. 中谷鉄也

    中谷委員 要するに、捜査権の拡大、逮捕権の拡大というのは、直ちにとかすみやかにということばの弾力的運用をすべきだというのが私の考え方なんです。一晩でもとめたら直ちにならないんだと何も思い込む必要はないでしょう。逆に言いますと、とにかく人殺しをした人間、日本国の国民を殺したアメリカ軍人を、琉球警察局がせいぜい十時間や十五時間琉球警察の留置所にぶち込んでおいたって、何もこの布令違反にならないでしょう。「直ちに」ということばは、そういうふうに拡大して理解すべき条文だと私は思います。   〔臼井委員長代理退席、委員長着席〕 「直ちに」といえば、何かもう飛んでいくようにそれを持っていくというふうなものであってはならない。最大限「直ちに」ということばを長く理解をして、拡大解釈をして、そしてできるだけの証拠固めをしておくということが大事なことなんです。この点について、「直ちに」というのは実態はわからないけれども、法律解釈として一晩ぐらいとめておいても「直ちに」にはなりますとお答えができますか。これは長官、政治問題というようなことにも相なるかと思いますので、「直ちに」というのは、とにかく引き渡せる状況はあっても、やはり十時間ぐらい置いて私のほうで証拠調べをしなければというときには、十時間や十五時間ぐらい置いておいても別に布令違反にはならないし、それがむしろ返還をいよいよ目前にしたところの日本の立場なんだというふうに言っていいと思うのですが、いかがですか。
  52. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいまのところ、「直ちに」ということばを一晩その他まで延ばし得るかどうかということについては、お答えすることは困難だ。これはよく考えて、今後もいわゆる共同捜査のと申しますか、両警察の協力という趣旨の立場から考えまして、検討いたしたいと思います。
  53. 中谷鉄也

    中谷委員 それから参事官は何か誤解があるのじゃないですか。現行犯逮捕については直ちにだということが出ておりますね。ところが、その運用の面において、現行犯以外の者も逮捕できるようになったとおっしゃいましたね。そうすると、現行犯以外の者の逮捕というのは、通常逮捕と緊急逮捕でありますね。この場合は直ちに引き渡さなくてもいい、そういうふうな運用になっておるのですか。
  54. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 その点につきましては、私申し上げましたのは、現行犯の場合には犯人であるということがはっきりいたしておりますので、その限りにおいては犯罪者として犯人引き渡しが当然できるわけでございます。それから現行犯の場合の「直ちに」というのと、現行犯以外の場合におきましては、その者が犯罪人であるかどうかという確認をする必要がもちろんあるわけでございますので、そういう意味におきまして、逮捕前の状態におきましては十分確認をしなければならないという時間的な余裕があるだろう、こういうふうに考えたわけでございます。そういう意味で、逮捕してすぐに引き渡すという問題につきましては、現行犯の場合と非現行犯の場合と、区別してはっきりこうであるべきだというところまで申し上げることは、あるいはできないのかもしれませんが、捜査そのもののあれとしては、犯人の確認というような意味において時間的な余裕があるのだろう、こういうふうに思います。
  55. 中谷鉄也

    中谷委員 もう結論的な質問に入りますが、率直に言って参事官はあまりお詳しくないですね。通常逮捕とか緊急逮捕の場合については直ちにであるか、直ちにじゃないかという質問をしましたけれども、どうもお詳しくない。  そこで私質問しますけれども、加藤さんとしては、通常逮捕とか緊急逮捕の場合には、本来捜査権があるとして理解しておられるのですか。
  56. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 私申し上げましたのは、犯人として確認するという必要がある、犯人逮捕ということをする限りにおきましては、犯人として確認することはもちろん必要である、そういう意味において申し上げたつもりでございます。
  57. 中谷鉄也

    中谷委員 うんと特連局に御勉強をいただくために質問をしておきます。通常逮捕の場合には、令状がなければ逮捕できないのが原則でございますね。そうすると、琉球警察局逮捕できるというのはどんな令状によるのですか。その点の運用はどうなっておりますか。
  58. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 その点につきましては、警察官逮捕状を出し得る状態は、特に軍人であろうと普通の場合であろうと同じであろう、こういうふうに思います。
  59. 中谷鉄也

    中谷委員 その令状はだれが発付する令状なんですか。逆に言いますと、現行犯についてだけしか逮捕できないのが布令八十七号だったのですね。それを運用の面において現行犯以外も逮捕できることになったというのでしょう。非常にけっこうだとあなた方おっしゃる。しかし、通常逮捕の場合は、令状がなければ逮捕できない。令状主義というのが基本的人権原則ですね。その令状というのは、だれの発付する令状なんですか。それがどんなかっこうで琉球警察局警察官の手にあるわけですか。無令状逮捕なんですかそうじゃないのでしょうか、一体どうなんでしょうか。弾力的運用といって、何か拡張されて安心しておられますけれども、どうもあいまいなんですね。だから、一体令状主義との関係はどういうふうになりますか、御勉強をいただくためにこういうこまかい質問をしておきます。
  60. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 宿題を出していただきまして、ただいま先生御指摘のように勉強が足らないようでございますので、勉強いたしまして御返事申し上げます。
  61. 中谷鉄也

    中谷委員 では最後に私は長官お尋ねをいたしたいと思います。二つだけ最後にお尋ねをいたします。  最近再び、一時下降傾向をたどっておりました米軍人軍属犯罪というもの、特に凶悪犯が非常にふえてきたということが現地からの報道で伝えられております。きわめて遺憾なことであるといわなければなりません。そのような状態の中で、まず日本本土における米軍人軍属の検挙率というのは、たしか九八%から九九%であるというふうに私は記憶をいたします。ところが、沖繩における米軍人軍属のいわゆる検挙率というものは六〇%前後、六〇%をやや上回る程度ではなかったであろうかと、私、これまた記憶をいたすわけであります。いずれにいたしましても、日本本土におけると比べて、米軍人軍属犯罪の凶悪性とその検挙率の低さというものは目をおおうものがあります。一体その原因は何にあるのか、それに対する対策は一体何か、これは沖繩県民人権を守るということと、また日本民族としての誇りを守るという観点から、ひとつ長官の御方針と具体的な対策、今後どのようなルートを通じてそれらの問題にお取り組みになるか、これらの問題について御答弁をいただきたいと思います。
  62. 床次徳二

    床次国務大臣 最近凶悪事件がふえたニュースもありますが、私どもの手元におきましては、前年、四十三年は十一月までの統計でありまするが、むしろ減っておるような数字なのであります。しかし、私の想像でありまするが、沖繩に駐在しておりまするところの米軍が絶えず交代しておりますので、本国から来た兵隊あるいはベトナムから帰ってきた兵隊あるいは移動による等々、いろいろな例があるだろうと思います。そのときそのときによりましてだいぶ部隊の種類も違うのでありまして、それによりまして犯罪が多かったり少なかったりするのではないかということを一応推測はいたしておるわけでありますが、詳細につきましては、さらにこの点は調査しなければ何とも申し上げにくいことだと思います。しかし、いずれにいたしましても、今日御指摘になりました本土におけるところの米軍の検挙率と比べてなお現地では低かろうということが予想されますが、根本的には何かと申しますと、施政権につながるのではないか。同時に、本土におきましても、御承知のごとく、安保条約の改定前と改定後におきましては警察権と裁判権の行使の状態が著しく違っておる。この点におきまして、むしろ安保改定前の状態にありまするところの沖繩の状況が著しく検挙率が低いというのも、私はそこに原因があるのではないかと思います。したがって、当面の問題といたしましては、絶えず米政府に対しまして人権の尊重ということに対して働きかける。これを要求すると同時に、根本的には、何と申しましても施政権の返還ということが一日も早く実現されるということが必要ではないか、基本はそこにある。それによってもとが解決できるのではないかというふうに私は考えまして、施政権の返還ということに対しましては従来からも努力しておりまするが、本土政府といたしましては十分に努力いたしたいというわけであります。
  63. 中谷鉄也

    中谷委員 もうこれで質問を終わろうと思ったのですが、あと一、二点だけいまの御答弁に関連してお尋ねをいたします。  米軍人軍属人権尊重の態度、別のことばで言えば綱紀あるいは軍紀の振興とか粛正とかいう問題だろうと思います。そういうような問題について、長官、政府として、この凶悪犯罪について特にわれわれは注目をいたしますが、米軍人軍属がこのような凶悪犯罪を犯すというふうなことは非常に遺憾なことである、特に人権尊重の立場というものをいま一度米軍人軍属としては冷厳に反省をすべきだということ、さらに、軍紀をさらに粛正すべきだというふうな点、軍の規律を守るべきだというふうな点について、政府として米国に対してどのようなルート、どのような方法で交渉、意思表示をされますか。この点をひとつお答えいただきたいと思います。
  64. 床次徳二

    床次国務大臣 アメリカに対して注意を喚起するという方法におきましては、日米交渉がありますし、なお、卑近な例でありまするが、総務長官が高等弁務官及び民政官に申し入れるという、従来からもそういうようなルートをとっておりますから、私は、今後ともそういうルートを活用いたしまして、十分注意を喚起してまいりたいと思います。
  65. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、日米交渉においてこの問題もお取り上げいただき、同時に、冒頭にお尋ねをいたしました裁判公開の問題、さらに軍事法廷のあり方の問題、傍聴の問題、さらに、凶悪犯罪の検挙をさらに促進する問題、そうしていわゆる米軍人軍属人権尊重等の問題には、総務長官としては近く——私は、不安におびえる沖繩県民の立場からいいまするならば、一日も早く措置をさるべきだと思うのです。すみやかに、いま長官が御答弁になられましたところの申し入れ、交渉、措置、意思表示、これはどういうことに相なるでしょうか。そういうものをやっていただける、こういうふうに理解してよろしいのでしょうか。
  66. 床次徳二

    床次国務大臣 県民の不安を除去することはまことに緊要なことでありまして、できるだけ早い時期にそういう努力をいたしたいと思います。
  67. 中谷鉄也

    中谷委員 根本問題は、検挙率の低さは、私は、琉球警察のほうに捜査権が与えられていないという点にあると思うのです。だから、とにかく全体としての捜査権とまでいかなくても、当面私は、共同捜査方式というふうなことではなしに、独自の捜査権を与えるべきだということを考えます。この点について私は、こういうふうな問題はまさに運用の問題として、諮問委員会等において措置できる問題だと思う。独自の捜査権というのがとの程度の幅と内容を持つものかについて——私は、刑事法については、これは私の仕事ですから、かなり私なりに意見がありますけれども、ひとつ長官のほうで御検討になって、ある程度の幅と広さを持ったところの捜査権を琉球警察局が持つことを、当面まずさるべきだと思う。いわゆる合同捜査とか共同捜査というが、土地勘もなければ日本語もわからない、通訳つきのそういうアメリカの憲兵が日本人の被害者の捜査をしようと思ったって、言語、風習その他の違いから、捜査が十分にいかないのはあたりまえなんです。捜査官の心情からいいますと、そのいわゆる補助的な立場における捜査というものは、捜査の計画が立たなければ、捜査そのものの、とにかく立案もなかなかできにくいのです。いわゆる独立した捜査権というものを当面すみやかに琉球警察局に与えるような、これは私は、布令八十七号との関係においての運用としてもできるし、八十七号をそのような形において修正すること、少なくとも捜査権についての修正をすることについて、長官としてはお考えになるかどうか。根本問題はあとに残りますが、もう一点あとでお伺いします。布令八十七号は、捜査権の拡大という観点にしぼってひとつ修正さるべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  68. 床次徳二

    床次国務大臣 今日、沖繩におけるところの米軍犯罪というものに対して、ただいま御指摘の捜査権の問題もありますが、なおいろいろの問題があると思う。たとえば警察力の充実その他組織の問題等におきましても、私どもが本土に比べると著しい欠陥を生じておる。いわんや、いまの布令の問題等におきまして制約があるために、十分活動できないという問題もある。しかし、いずれにいたしましても住民の幸福、平和に非常に影響の大きいことでありますので、この点は、これが少しでも解決できますように努力いたしたいと思っております。
  69. 中谷鉄也

    中谷委員 長官、御答弁が私少し納得いかないのですよ。琉球警察警察力が十分であっても不十分であっても、捜査権がないのだから、米軍人軍属犯罪には力の出しようがないのですよ。幾ら充実したって捜査権という権限を与えられなければ、どうにもならないのですよ。私は調べてみましたけれども、沖繩県民犯罪というものの検挙率はそう低くないですよ。長官のそういうような御答弁は、デモ対策だというようなことにいわれかねませんよ。捜査権を与えろという話をしているときに、とにかく琉球警察警察力の充実なんておっしゃっても、捜査権のないものを使いようがないじゃないですか。いまの御答弁は全く見当はずれの御答弁です。だから私はお尋ねをいたします。布令八十七号を、ことに捜査権の問題を中心としてすみやかに修正すべき段階に来ていると思う。そうでなければ、沖繩県民の不満は解消しない。日米交渉あるいは長官御自身のその他のルートを通じて、布令八十七号の修正の御意思があるかどうか。私は当然修正すべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  70. 床次徳二

    床次国務大臣 先ほど、警察の問題につきましては、関連した問題でございますので充実も必要であるし、同時に、力を備えることによって布令の拡大ということも実現し得る、裏表になるのではないかという感じがいたしましたものですから両方申し上げたのでありまするが、もとより布令そのものに対しましても、これは十分検討すべき問題ではないかと考えておる次第であります。  先ほど私は本土の安保改定のことも申し上げましたが、沖繩におきましては、むしろそれ以前の状態であるということを私ども認識はいたしておるわけであります。したがって、根本におきまして施政権の問題がありますけれども、しかし、日常におけるところの県民の平和ということを考えまする以上は、これに対してできるだけの努力をいたすことは当然だと思う。そういう努力を続けてまいりたいと思います。
  71. 中谷鉄也

    中谷委員 それで基本的な問題としては、屋良主席などがほんとうに切実な叫びとしてあげておる米兵犯罪の刑事裁判権の民移管をすべきだ。ことに少なくとも、いわゆる公務外における犯罪についての民移管をすべきだ。このことがやはり基本問題だと思うのです。現行犯逮捕権があり、捜査権があり、そうして裁判権というものがあるわけです。だから私は、この点についても御検討をいただけるかどうか、その点をお尋ねすると同時に、当面まず八十七号については、琉球警察局も捜査できるような捜査権の拡大というこの一点、八十七号に問題はたくさんありまするけれども、この一点が私は一番ポイントだと思う。最大眼目だと思う。この点について——私は労働布令もたいへんな労働布令だと思いますが、この八十七号も、私はきわめて遺憾な布令だと思うのです。だから私は八十七号の撤回ということをあえて言いたいけれども、そういうわけにもいかぬ。政府の立場というのは野党と違うのだから、そういうわけにいかぬだろう。そうすると、八十七号については、少なくとも捜査権の拡大という点で交渉をさるべきだと思いますが、そういう点の交渉をされるかどうか。そうして、米軍犯罪の民移管ということを目標としてさらに長期展望の中で交渉されるかどうか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  72. 床次徳二

    床次国務大臣 先ほども申し上げましたように、いわゆる民移管ということ、これは先ほど例として安保の問題をことさら申し上げたのでありますが、そういう基本的な問題にからんでおる。本土におきましても安保改定に非常な努力を要して、そうしてあの結果を得たということを私ども考えながら、沖繩におけるところの警察取り締まりと申しますか、秩序の確保、むしろこれは積極的に申しますと人権の確保という問題をつかまえてまいりたい、さような趣意において今後とも一そう努力いたしたい。直接にはただいまの布令関係いたしておるわけでありまするが、その布令の改定につきましても、さような趣意において私ども一そうの努力をいたしたいと思います。
  73. 中谷鉄也

    中谷委員 最後に特連局お尋ねをいたしますが、昭和三十九年から現在までの犯罪というので、ずっと前の委員会でこういう資料をいただきましたね。その中に、どういうふうな判決を受けたのかお調べになればわかるだろうけれども、いまのところわかっていないというのもあるし、たまたま資料としては出てないのかというふうなこともありますが、この参考資料三としていただいた資料事件がどんな運命をたどったかということについて、次の委員会というわけにもいかないと思いますが、なるべく急いで資料を御提出いただくということをひとつお約束いただきたいと思うのであります。  それから琉球警察局とも連絡をおとりになって——率直に言って日本警察であれば完全に黒だ、とにかくこんなものは検挙されないほうがどうかしているというふうな事件が白だというふうなことで、そのまま済んでしまっている事件も何件かございますね。こんなものは一体どの点に捜査の欠陥があったのか、初動捜査においてどこが間違いだったのか、要するに琉球警察局に捜査権がなかったという点に非常に残念な点があったのかとか、そういうふうに検挙できなかった事件についてはどこにその教訓を求めるべきかというようなことについても近く私はお尋ねするかもしれませんから、この点についても御準備をいただきたい、こういうふうにお願いをしておきます。  本日はこの程度質問を終わります。
  74. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 ただいま御要望の点につきましては、鋭意調査しまして提出さしていただきたいと思います。  それから先ほど宿題ということになりました点につきましては、私自身としてもさらに検討してまいりますが、先ほど申しましたことでことばの不十分であったと思われる点がございますので、さらに補足させていただきますと、現行犯以外のものも琉球警察逮捕できる、こういうふうになったということを申し上げましたが、確かに先生のおっしゃるように令状の問題が一面出てくると思います。ただ、琉球警察といたしまして現行犯以外に令状なくして逮捕できる面もあるわけでございますので、その部分については、このまま適用されるのは当然可能だというふうに思います。令状の問題につきましては、これは軍人に対する令状でございますので、その点、裁判権等の関係で非常にむずかしい点があろうかというふうに思います。さらによく研究してみたいと思います。
  75. 中谷鉄也

    中谷委員 では終わります。
  76. 中村寅太

    中村委員長 川崎寛治君。
  77. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いまの中谷委員の件についてちょっとお尋ねしておきたいと思いますが、昨年、日米琉諮問委員会の設置法案が本委員会で論議になりましたときに、米軍人軍属犯罪の問題を諮問委員会にかけられるか、それはだめだ、こういうことになったわけですね。そしてそのときの答弁は、いま総務長官が言われたように、日米協議委員会あるいは外交ルートでやっていきます、努力をしたい。いま総務長官も努力をしたいと言われたが、諮問委員会ができますときに、非常に大事な人権問題であるこの問題については具体的にどうしていくのだというときに、そういう答弁があったわけです。そういたしますならば、具体的に日米協議委員会でこの問題を——それ以降何回かあったと思いますから、そのことが具体的に協議委員会にかけられたのかどうか、それから外交ルートでどういう交渉がなされてきたのか、具体的にお答えを願いたいと思います。
  78. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいまの問題については、この議題のために協議委員会を開いたことはございません。しかし、具体的の問題といたしまして、総務長官ルート並びに政府間ルートによりまして意見を申し入れております。
  79. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうすると、意見を申し入れている段階ですね。それから先ほどの施政権の返還の問題で解決を、これは当然なことだと思います。しかし、現在の政府が進めておりますそういうものの予測されるところから見ましても、早くて七二年、そういうことで、七二年施政権返還ということになれば、まだ三年間沖繩県民はこういう状態でいなければならないのかどうか、あるいは申し入れてあるものが、具体的に制度として改善をなし得るのかどうか、その辺いかがでありますか。
  80. 床次徳二

    床次国務大臣 最終的には施政権の返還によって相当な部分が片づくのではないかと思いますけれども、しかし、御指摘のとおり、若干の時間はかかると思います。しかし、その時間がかかる間に従来どおりでよろしいとは必ずしも考えられないので、できるだけその期間におきましても努力してまいりたい。制度そのものによりまする改善もあるし、運用そのものによります改善もあり得ると思うので、この点は積極的な努力をいたす所存でございます。
  81. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 その努力ということは、何十ぺん総理をはじめ聞いているのですよ。だから具体的にどうする、どう申し入れてどうしていく、これはきょうはもう答弁が出ないと思いますが、その点をひとつ明らかに具体的な形にしてもらいたい、こう思います。  それから次には、一体化三カ年計画の問題についてお尋ねをしたいと思いますが、昨年の十一月五日の閣議決定で、来年度の対沖繩財政援助は一体化推進の線に沿って拡充する、こういうふうにして、一体化三カ年計画というものを土台にして、そこへ入れていくのだ、こういうふうに閣議決定をして、それからまた、総務長官の本委員会におきます所信表明においてもそういうことを表明されたわけですね。  そこで、具体的にお尋ねしたいのですが、この四十四年度予算案で一体化三カ年計画の何%充足をするのか、そのことをお尋ねしたいと思います。
  82. 床次徳二

    床次国務大臣 一体化三カ年計画は、それぞれ各年度に割り当てて幾ら幾らというふうには考えておりません。御承知のごとく、一体化の内容につきましては、制度そのものの改善もありますし、同時に、事業によって示すものもあります。事業によりますものは、あるいは数字によって明らかにすることができると思いますが、実は本年度の初年度にあたりましては、地元の状況によりまして、まず将来の一体化の完成のために何をなすべきかということを重点に考えまして、そうして必要なものから先に取り上げたというわけであります。したがって、何%進んだかということに対しましては、具体的の計画、全体の計画そのものが明瞭でありませんので、何%ということは申し上げにくいわけでございまするが、しかし、これが府県並みという点にまいりますと、毎年相当進捗度を示しておる。かりに数字をもって申しますると、府県の財政に対しましては八割八分くらいにまできておる。それから町村財政で申しますと、大体八〇%弱の数字になっております。これはかりの数字でありまして、しかし、本来から申しますならば、まだまだ実態から申しますると相当大きなものがなければならない。たとえば国民健康保険のごときものは、これは制度を充実して実施するには相当手間がかかるのですが、しかし、その準備として本年度から手始めをいたしておるというようなわけでございまして、来年度におきましても、実は本年度の経過にかんがみまして、十分地元の要望というものを考えながら第二次年をつくり、さらに第三次年に進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  83. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 この閣議決定の中でも、おおむね三カ年間で完了する、こういうふうにいっているのです。そうしますと、三年たったときに完了しているのかどうか、全体計画はないわけでしょう。なくて完了したかどうかというのは、何ではかるのですか。だから、それはきわめて主観的なものになるのではないかということが一つ。  それから、この三カ年計画に対応する現地沖繩側の三カ年計画というのが具体的につくられていくのか、合わせられていくのかどうか、その辺いかがですか。
  84. 床次徳二

    床次国務大臣 これは三カ年計画でおおむね完了するという目標を書いておりますが、たとえば、先ほど申し上げましたように、国民健康保険のごときは、なかなか三カ年でもって完了するということはなく、三年目において着手できるという状態になると思います。さような例もございますので、全体といたしましては本土並みの、まず復帰いたしましたときに制度的に、また実質的に摩擦の起こらないということを考えまして努力してまいりたいというのが、いまの状態であります。
  85. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 しかし、制度を一体化するといっても、当然それには資金的な裏づけがなければ制度はできないわけですね。そうしますと、少なくともこの程度のものというものがなければ、それはなかなかきちんと進まないと私は思います。といいますのは、総務長官も私も同じ鹿児島ですから、奄美大島のことはお互いに何がしか知っているわけですね。奄美大島が返還されましたときにも、昭和十年−十二年の水準という基準の置き方でやっていったわけです。ところが、その水準の置き方でやっていった場合に、本土側の成長が激しかったために全然それは食い違っているのですね。だから、いまだに四七%という状態に奄美大島はある。地方行政委員会で奄美の振興法というのが今度かかって問題になった、衆議院の段階は終わったわけですけれども。だから、類似県並みという基準の置き方にいたしましても、これはその県それ自体が全部違うわけであろうし、戦後二十数年間において、それぞれの県で発展の努力をしてきているわけです、違うわけですね。だから、類似県並みという置き方自体にも一つ問題があるし、三カ年計画についても、いま全体計画はないんだ、こういうふうにおっしゃられる。それでいて三カ年計画という打ち出し方をしている。だから計画は、たいへん羊頭を掲げて狗肉を売るというたぐいになりかねないわけです。その三カ年計画のことが一つと、それから類似県並みという基準の置き方の問題、これが類似県並みという水準の置き方をしていきますと、本土の成長というものとの間のギャップが必ずまた出てくるわけですから、この点は再検討しなければならぬのではないか、こういうふうに思います。
  86. 床次徳二

    床次国務大臣 まず一体化に対しましては、比較といたしましては、やはり本土の類似県というものを目標にいたさなければならぬと思う。しかしながら、御承知のごとく、本土の府県並びに市町村と沖繩状態並びに市町村との間に制度的にも非常に格差があるというわけでありますから、制度を直しながら、しかも財政力をつけていく、この二つの方法を採用しながら本土の府県並みという目標が出てくるわけであります。この努力をいたすと同時に、本土のほうも伸びておりますし、なお沖繩のほうにおきましては、過去二十年以上も離されておったために蓄積資本がないというところに、非常に大きな産業的な欠陥も持っておるわけであります。したがって、当然将来に対しましては、産業の振興計画というものを考えなければならない。ただいま奄美大島振興計画のお話がありましたが、過去の奄美大島の振興計画というものの経験を、私は沖繩には生かさなければいけないのではないか。したがって、今日におきましては、振興計画に対しまして十分な検討をいたしてまいりたい。現在から民間ベースにおきまして、なおまた、政府ベースにおきまして振興計画を考えながら、同時に一体化も進めていく。だから、一体化政策の中に振興計画の基礎になるものも、もちろん部分的に入ると思うのであります。なかなかその点は区分がはっきりいたしません。数字的にどこまでかということはなかなか困難だと思いまするが、しかし、とりあえず本土府県並みということ、そうして復帰ができやすいようにするということを目前の目標として、しかも将来の沖繩の発展ということに対しましては、振興計画というものを期待しながら、二本立てでやっていきたいというのがいまの構想であります。
  87. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 この類似県並みという場合に、類似県のほうは、全国の日本国民全体の平均のもの、あるいはそれ以上のものというものを目ざして動いているわけですね。こっちは類似県を目ざすわけでしょう。沖繩は目ざすわけでしょう。向こうは動いているのです。だから、この類似県並みというやり方でいきますと、必ずまたそこに格差が出てくる。この点を私は指摘しておきたいと思います。  それから次に、奄美大島の問題についても、先ほど言いましたように水準の置き方、あるいはこの五カ年計画を改定していって、十年−十二年水準に五カ年計画で持っていくと言ったけれども、それでできなかった。十カ年計画でようやく八割にいった。最初置いた目標の八割にようやく十カ年計画でいったわけですね。だからこの点は、基準の置き方については、ひとつよほど、ただ単に類似県並みという安易な基準の置き方ではなくて、もっと日本国民全体の中で考える、日本の経済の中の沖繩として位置づけるという考え方をしていかなければ、特にもうあれだけ離れた、たいへんな島の群ですからね、この経済については、水準、基準の置き方というものはひとつきちんと検討してもらいたい、こういうふうに思います。  次には、日本政府のこの援助が、まあピックアップ方式になっておりますから、各項目ごとにずっと援助金が出ておるわけです。この日本援助を、本土の各府県に対する補助金というふうにみなすわけですね。みなしました場合には、補助率はどのくらいになるかということです。これはわかりますか。たとえば琉球政府の道路費の全体の中に占める援助額、そこからくる比率、それから港湾とか、河川とか、治山治水とか、あるいはその他の社会福祉施設とか、当然どれくらいの補助率になっているかということが出なければ、先ほど言いましたように、類似府県並みと言ってみても、そこは感覚の問題、感じの問題に終わってしまう、こう思いますから、その辺、補助率としてどれくらいになるのか、具体的に数字でお示しを願いたいと思います。
  88. 床次徳二

    床次国務大臣 最初に、先ほどのお話でありますが、私ども、全体の一体化計画というものを、ワクをつくらないというところに置きまして、むしろお話しのような立ちおくれを防ぐ、むしろ弾力性があるものではないかというふうに考えておるわけなんです。したがって、私どもの一体化というものは、本土もどんどん伸びていく、だから、その伸びていく府県に追っつきながら一体化をしていくという含みを私は持ち得ると思うのであります。むしろ、何億円というようなワクをつくって、それを年度割りにするよりもはるかにいいのではないか、その点は利点だと思う。ただし、そのために、毎年の予算が少ないためにおくれるということがあったのではいけないというわけでありますが、これは復帰の時点がありますので、ある程度までの目安をつけながらいきたい。少なくとも三年以内には追っつきたいという意味において、積極的にこの点は考えておる次第でありまするが、お話のような点も、この点は、私ども仕事をやります場合に、やはり年度計画がないとなかなか仕事がやりづらい問題があります、実際問題として。したがって、できるだけ年度計画というものを頭に置きながら進んでいきたいと思うのでありますが、後段の御質問にも関連するのでありまするが、今日の補助が項目別になっております。この点は、まことに本土と比較する場合に不自由な状態であるわけであります。しかし、補助率につきましては、大体本土の府県に対する事業を参酌しまして出しておる。たとえば義務教育の負担につきましては二分の一負担、緊要なものに対しましてはそれぞれ補助率を上げまして出しておりますが、しかし、それでもって地元の財政力に対して十分かと申しますると、実は地元ではそれぞれの比較的、いわゆる地元で対応費といっておりますが、地元の負担部分というものは、財源的に乏しいために非常に苦しいという状態にあるわけであります。この点は、やはり項目別の補助というものに対するある程度までの欠陥であるだろうと思います。しかし、これを本土の交付税みたいなようなまとまった補助を出す、また、事業に対しましても本土並みの補助でもって運営するとなると、実は沖繩琉球政府というもの自体の財政力というものが、まだ的確でないと申しまするか、明確に都道府県並みに出ていないという点があるわけです。すなわち、国政事務をしょっておる、同時に、町村事務も持っておるというわけでありまして、その点はだんだん行財政制度を整備いたしまして、本土の府県に近づくように改めていく。事務もさようにいたしていきたい。そうしていわゆる琉球政府の財政力にふさわしい木土並みの援助ができるような形へ将来持っていきたい。目標は、そういう目標でもってやっておるわけでありますが、現在はなかなかそう単純に本土並みというふうにはいき得ない。  なお、項目別に援助いたしますことは、過去からそういう例もあった。しかし、いつまでもそういう項目別の援助をやっていくということが必ずしもいいことでないことは、ただいま申し上げましたような欠陥もあるわけです。この点は、将来におきまして検討しながら、同時に、沖繩における制度の改善、一体化の進行状態につれてやはり進まなければならないものと考えておる次第であります。  なお、政府委員からお答え申し上げます。
  89. 及川謙三

    ○及川説明員 お答えいたします。  いま総務長官からお答えしたとおりでありますが、若干補足いたしますと、公共施設、たとえば道路、港湾あるいは漁港等におきましては約七五%程度でございます。それから教育関係では、一番大きい教員給与につきましては本土と同じように二分の一でございますが、学校施設とか備品につきましては八〇%でございます。それから生活保護あるいは老人福祉、児童福祉等社会保障関係の件につきましては、本土と同じように八〇%、それからそのほか産業振興のための諸施設その他は、漸次本土の府県に対する補助率と同程度、若干それよりもいい割合になっているかと思います。五〇%前後になっております。
  90. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 昨年の六月の二十七日に、第五号で諮問委員会が国、県の機能の再配分ということについて勧告を出し、琉球政府日本政府は研究中、こういうふうに聞いておるわけであります。このことはいつから具体化されますか。
  91. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 第五号の国、県事務の運営につきましては、年度末を目標に各省と協議いたしております。したがって、その協議がととのいました時点でもって分離が実現できるようにいたしたいと思っております。  会計年度の一体化につきましては、これは第六号でございますが、目標は、一応向こうの七一会計年度ということを目標にいたしまして、その移行措置について目下検討中でございます。その成案ができましたら琉球政府と協議いたしまして、実現していきたいと思っております。
  92. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうすると、国、県の機能の再配分ということは、これはつまり予算の上にもきちんと出なければいけませんね。そうしますと、いまの答弁は、どうもアメリカ側を主体にしたような答えをするからよくわかりにくいわけだけれども、四十五年度の予算からそういうふうに実行されるというふうに見ていいのですか、各省庁と云々というのがありますが、それが一つ。それから、あとのほうの会計年度の問題は、七一米会計年度、こういうふうに言われましたが、そのことは昭和四十六年度の予算でそういうふうに整理するというのですか、それとももう一つずれるのですか。日本を主体にやってください。
  93. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 日本を主体にしてものを考えていくべきだというのは当然のことでございますが、私、勧告の措置として申し上げたわけでございます。四十五年度の会計年度から実施できるように特連局で目下検討中でございます。したがって、会計年度の一体化につきましては、琉球政府との協議その他がございますので、四十五年度から実施できるかどうかというのはその協議次第によるかと思いますが、目標といたしましては四十五会計年度から適用したいと思って、目下努力しておるわけであります。
  94. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それは五号も六号も、両方ともですか。
  95. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 そういうことでございます。
  96. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 わかりました。  それから次に、前に大村委員もちょっと質問された問題でございますが、琉球開発公社の問題です。これもいろいろ問題があると思います。昨年、沖繩地域における産業の振興開発等のための琉球政府に対する資金の貸付けに関する特別措置法案、これを議論しましたときには、当時山野特連局長がこういうふうに答えたわけですね。民政府が管理しておる開発金融公社を琉球政府に移管してもらって、これを母体に金融公庫をつくることを計画している、諮問委員会でもその方向で慎重に検討しているが、半年ぐらいのうちに結論を出してもらい、処理したい、ということになりましたね。それから、その間は大衆金融公庫でやる、こういうふうになっておるわけです。それからまた、開発金融公社については、諮問委員会の勧告のとおり、本土の調査団調査結果に従い移管問題を決定していきたい。しかも、この資料を見ますれば、新設予定ということでわれわれは資料をもらい、そのことを前提にあの法案を通したわけですね。それから、鈴木源吾さんを団長に現地調査をやった。ところが最近の現地の報道によりますと、どうもたいへん雲行きが違うようだというような報道があるわけですね。そして、この間の大村委員の質問に対しては、やはり特連局長が、開発金融公社の琉球政府移管の問題につきまして云々、そして、現年度の財政投融資につきましては、さしあたり琉政の特別会計に繰り入れまして貸し付けまして、その特別会計から琉銀等の市中金融機関に委託をいたしまして融資を行なっておる現状だ、こういうふうに当時の答弁からしますとたいへん食い違ってきているわけですね。また、同じ答弁の中で、この開発金融公社の取り扱いについての基本的な方針が打ち出されると思いますので、その時点においてあらためてその問題を検討していきたい、こういうふうに、今度はだいぶ後退してきているわけですね。それは、日本の国会で法案を審議しているときには、こういう方向で行くのだと言っておった。しかし、実際に調査団が入ってやってみたら、どうも困難だというふうなことになっておるのかどうか。現に鈴木調査団が行ったその報告というものは、現地の新聞によりますと、全面移管はほぼ困難との結論に達した模様であるというふうな報道もなされておるわけですね。そこらの経過をもう少し具体的に明らかにしてもらいたいと思います。
  97. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 昨年の国会におきまして法案を通す際には、先生のいま御指摘のとおりの答弁をしたと思います。また、その後のあれにつきまして、具体的に特別会計から大衆金融公庫でなくて琉銀等の金融機関にお願いするということになったことは、いま御指摘のとおりであります。その経緯につきましては、現地の情勢判断から、大衆金融公庫よりも沖繩銀行あるいは琉球銀行のほうがいいということになったということでございます。(川崎(寛)委員「いつからなった」と呼ぶ)最近でございます。これは琉球政府のほうできめられたわけでございます。私のほうといたしましては、無理もない点もありますので、大衆金融公庫を使ってやるということについては、一応琉球政府措置を承認するということで、大衆金融公庫を使わない方向になっているわけでございます。  それから移管問題につきまして、鈴木調査団が去年からずいぶんいろいろな資料を集めて検討されておられるわけでございますが、ただいま御指摘のような報道につきましては、私ども、そういうような内容のものであるというふうなことは聞いておりません。たぶんそういう方向にいくかどうかという点につきましては、私どもとしては、いまの時点においてはそういうふうに承知しておりませんので、その点は諮問委員会に対する鈴木調査団調査報告が近いうちに出るだろうというふうに聞いておりますので、その結果によって判断をして措置していきたい、そういうふうに考えております。
  98. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうしますと、特連局長が言っておるように、日本政府からのものは特別会計に入って、そしてその特別会計から琉銀と沖銀に出て、それが貸し付けられている、こういう現状ですね。そうすると、昨年ここで答弁をされたような形の産業開発金融公社の問題は、移管ができたらそれをもう一ぺんまたそこに戻すわけですか。そしてつまり、こっちから産業資金として出している分はその産業開発金融公社を通して出す、こういうことに整理されていくわけですか。
  99. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 ただいまの点につきましては業務委託という形でやっておりますので、(川崎(寛)委員「それは市中銀行に」と呼ぶ)はい。そういうことでございますので、具体的に公社移管というようなことが実現いたしますれば、当然当初の予定のように、そちらに入れて運用していくということになろうかと思います。ただ、ただいまの時点におきましてはまだ答申といいますか、調査報告が出ておりませんので、どういうふうになるということは申し上げられないのでありますが、さしあたっての暫定措置として、沖繩銀行あるいは琉球銀行等を使って貸し付けを実施していく、こういうことにいたしておるわけでございます。
  100. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 現地の報道によりますと、四千万ドル以上の開銀資金を琉球政府に譲渡するには、日米両国の外交レベルでの話し合いが必要だという報道があるわけです。つまり先ほど加藤さんのほうの御答弁では、鈴木調査団の報告というのが近くある、そして移管はできるだろう、そういうふうに受け取れたわけです。ところが現地のほうでは、四千万ドル以上の云々があって、これはなかなか困難じゃないかという報道もなされておる。  それから次には、これは非常に問題だと思うのだが、琉球政府は全面移管した場合、外国からの資金の借り入れ債務保証は現在ほどにはできなくなり、長期金融機関としての機能が薄れることなどがおもな理由のようだ、こういうふうに言っておるわけです。去年のこの法案の審議の際にも、長期資金が非常に問題になったわけですね。沖繩には長期資金がない、資本蓄積ができないということで非常に問題になったわけですが、これらの点はどういうふうにお考えになっておりますか。それから、その調査団の報告が出たら、移管の方向なんですか、一体になる可能性もあるのですか、どっちなんですか。
  101. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 鈴木源吾さんを団長とする調査団の結論がどういう結論になるかということは、私いまの段階で十分承知しておりませんので申し上げられませんけれども、われわれとしてはといいますか、日本政府としては、諮問委員会琉球政府への移管という形で議題にされた時点から、ぜひ移管が実現するようにという気持ちを持っておるわけでございますので、鈴木調査団の結論がそういう方向になることを望んでおるわけでございます。
  102. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、結論が出なければわかりませんので、その時点でまた問題にしたいと思います。  次に、資料をお願いしたいと思いますが、これまで、結局去年は大衆金融公庫でやらなかったかどうかが一つ、それと結局最近市中銀行に入れたのは、そうすると去年法案が通って本土から金がいって、それは直接特別会計でやったのかどうかですね。それからいままでに貸し付けた企業、会社名、それから業種、この業種が問題になりますのは、基地関連のサービス業なんかはだめだということが、あのときやかましく議論になっておりますので、会社名、それから業種は何か、借り入れの目的、それから融資の金額、そういうものをひとつ資料として本委員会に出してもらいたいと思います。
  103. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 去年の春の国会で法律案を通していただいたわけですが、しかし、その融資の金は、実は去年の七月以降の琉球政府の会計年度に応じたものとして考えているわけでございますので、もちろん七月以前にそれを運用することは考えていなかったわけです。ただ、たまたま去年は主席公選その他の選挙の関係で、具体的にどういうふうに運用していくかという点がきまりかねていたわけでございまして、屋良政権が誕生いたしましたあとその点を十分検討された結果、琉銀あるいは沖銀等の市中銀行を使って運用していこう、こういうことになったわけでございます。その決定は、先ほど申し上げましたように最近のことでございますので、その具体的な貸し付け等につきましては、また資料として提出するように努力したいと思います。
  104. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは次に、諮問委員会の勧告の十六号、軍関係離職者対策ですね。これは、勧告の内容はどういう内容なのかということが一つ。それから、つまり現地で非常に要望しております間接雇用の問題、この点もこの中で検討されているのかどうか。それは先ほどの総務長官答弁裁判の問題等も関連しておるわけですが、施政権が返還ができなければだめなんだという議論になっちゃうのかどうか、その点、まあ雇用の問題ですね。
  105. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 勧告十六号の軍関係離職者対策につきましては、本土における駐留軍の離職者対策等を勘案いたしまして、できるだけ本土において離職された方が受けられるような、そういう対策が行なわれるようにという意味で勧告が出されたわけでございます。したがいまして、この問題は向こうで琉球政府が具体的に法律をつくりまして、その法律によってこの対策が行なわれる、こういうことになろうかと思います。それは現在、琉球政府が立法院に勧告する予定の中に入っております。内容的には、いま申し上げましたようなことで、本土の対策と同じような対策がとれるようにという趣旨であるというふうに聞いております。  なお、雇用関係の問題につきましては、この中で取り上げられてはおりません。
  106. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうすると、駐留軍離職者臨時措置法でしたか、本土側にありますね。そういうようなもの、そういう中身のものを今度やろう、こういうことですね。つまり、そういうことかどうかということ。  それから失業保険は相互主義でつなぎましたね。そうすると、これは大体本土のあれと同じようなものを制度化する、こういうことですね。  それから次に、雇用の問題は、つまり間接雇用と琉球政府雇用ということにしていく方向で検討があるのかどうか。
  107. 床次徳二

    床次国務大臣 いまの離職者対策につきましては、本土と同じ内容のものを琉球立法院でもって立法してもらって、その必要の経費は五千万円、補助に計上しております。  それからなお、軍雇用者の基本的な問題、間接雇用にするかどうかという問題であります。いろいろこの点は検討しておりますが、現状におきましては、本土並みの雇用制度をとることはなかなか困難が多いのじゃないかと思います。しかし、いずれにいたしましても復帰いたしました際におきましては本土と一体化するというのがたてまえだと考えておりますので、この点につきましても積極的に、さような見地から検討いたしたいと思います。
  108. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 先ほど金融公社の問題に関連してちょっと落ちておりましたので、もう一ぺんただしたいのですが、つまりいろいろ制度が混乱というか動揺していますね。そこで、やはりもう必要なことは、七二年には政府側としても返還をめどにしようというわけでしょう。それから一体化しよう。そうであるならば、農林漁業金融公庫なり、中小企業金融公庫なり、国民金融公庫なりの支所を開設していくという形にいくほうが、資金の効率からしてもいいのじゃないですか。これは去年も議論になったわけだけれども、やはりいまは、もっとそういうことを進めなければいけないのではないか。これは外資法の問題も布令と民立法でいま争っております。その他いろいろ問題があるわけで、この金融の面のそうした面がきちんとしなければ、なかなか産業の振興ということも困難な問題がずっと続くと思うのです。そういう制度金融機関を沖繩に伸ばしていく、設置していくということについて検討されておるのかどうか、あるいはそういう方向での具体的なあれがあるのか、お尋ねしたいと思います。
  109. 床次徳二

    床次国務大臣 御指摘のごとく、金融機構も、将来の場合におきましてはそういう本土の支所という形でもってあるのが適当ではないか、かような目標でもってやっておりますが、現在におきましては直ちにこれを支所とするわけにまいらないいろいろの事情がありますので、ただいま御説明申し上げましたような形において金融をいたしておるわけでございます。将来におきましては、やはり一体化という立場からその点は十分検討してまいりたいと思います。
  110. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 その将来というのは、どの辺をめどに置いておられますか。
  111. 床次徳二

    床次国務大臣 この点は、やはり施政権と関係のあるものも少なくないと思う。非常に微妙な問題でありますので、やはりほかの一体化と同じように、めどは施政権返還の時期を見ていきたい。なお、施政権の返還の際におきましては、経済的な問題がいろいろあるわけであります。根本的には、ドルの問題等いろいろあるわけであります。金融制度、運用等におきましても著しい変化があるわけであります。そういうことを念頭に置きながら、円滑な運営ができますように努力いたしたいと思っております。
  112. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 施政権が返還になるというか、具体的に返還になるときにならなければできないということですか、それとも具体的に言えば、十一月日米首脳会談が終わって施政権の返還のめどがきまったならば、そういうことをなし得る条件に入ったと言えるのですか。
  113. 床次徳二

    床次国務大臣 その切りかえの方法はいろいろあると思うのでありまして、本土と同じ内容の法律をつくって実施しておって、そうして返還したときに一挙に切りかえるという行き方もあると思います。また、それができない場合におきましては、暫定的な方法によってやらざるを得ない場合もあろうと思います。これはものによりまして、やはり一番摩擦の起きない円滑に実施できる方法でやらざるを得ないのじゃないか。その点をやはりいまから多少時間をかけて検討していきたい。これはいろいろな不確定要素もありますために相当むずかしい問題もありますが、それをいまのうちに十分詰めていきたいというところに、将来の産業政策等の大きな問題点があります。国の制度そのもの−私は地方制度その他はわりあい楽だと思いますが、経済方面の問題につきましては、非常に刺激なり影響が大きいので、慎重に考えていきたいと思っております。
  114. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 最後に、琉球政府は歳入欠陥で非常に苦しんでおりますね。本土側からはどうもだめのようだというので、アメリカ政府から借りようか、民政府のほうから借りようかというふうなたいへんさびしい状況になっておるわけです。この点は、制度はどうあろうと、沖繩県民が望んで今日の状態にあるわけではないのですから、この点については時間的にどうのこうのということではなくて、この歳入欠陥に対して本土側からも手を差し伸べるべきじゃないかと思います。具体的にお伺いしたいと思います。
  115. 床次徳二

    床次国務大臣 最近におきまして、琉球政府の歳入歳出状態が非常にアンバランスになってきておるということでありまして、これが公共事業の実施に影響あり、なお私どもといたしましては、一体化にも影響があるのじゃないかという懸念をいたしておるわけであります。できるだけすみやかに収入支出のバランスを健全なものに回復させたいと思っておるのであります。地元政府におきましても、この点にいろいろと今日努力をいたしておる次第でありまして、私どもも、よく琉球政府と相談いたしまして善処いたしてまいりたいと思う次第であります。
  116. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それは具体的に相談し合っているということですか、それとも琉球政府から来たならば応じましょうということですか。
  117. 床次徳二

    床次国務大臣 特連局からも一応の調査には参りましたが、しかし、地元琉球政府自体といたしましても、その後の経済界の推移等から見まして、いろいろと歳入の見積もりのはっきりとした状態をつかむということの努力をしておるわけであります。なお、歳出に対しましても、必要なものと歳出減をなし得るものといろいろ現在検討しておる次第でありまして、できるだけやはり地元は地元なりにこれを解決していきたいという努力をしておるようでありますので、私どもも、地元とその点はよく相談いたしながらこれを解決すべく努力いたす考えであります。
  118. 中村寅太

    中村委員長 伊藤惣助丸君。
  119. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 総務長官に伺いたいのですが、日米琉諮問委員会が今日までいろいろと行なわれてきたわけでありますが、いままでどのくらいの勧告があったのか、件数とその一つ一つの内容について簡単に伺いたいと思います。
  120. 床次徳二

    床次国務大臣 諮問委員会は非常に積極的に会合しておりまして、今日まで、三月十四日現在で九十一回という回数になっております。その内容につきましては、項目は非常に多くなっておりまして、今日三十四件になっております。  なお、個々の問題につきましては政府委員から御説明申し上げます。
  121. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 諮問委員会の勧告が最初に出ましたのが去年の三月十一日でございます。その後鋭意努力をされまして、去年の十一月七日までの間に三十一件の勧告がなされたわけでございます。その後、御承知のような琉球政府の諮問委員会に対する態度が必ずしもはっきりいたしませんでしたので、勧告が実現できなかったわけでございますが、去る三月十一日に三件の勧告がなされました。したがって、今後さらに必要な勧告がされるようになろうかというふうに期待しております。
  122. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 九十一回、三十四件ですか、その項目でけっこうですから、三十四件の項目、内容を簡単に……。
  123. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 勧告第一号は昨年の三月十一日でございますが、これは一体調査団の派遣勧告でございますのでこれは別にいたしまして、第二号として、四月九日に特定分野における人事交流の促進が勧告されました。第三号は、先ほどもちょっと川崎先生の御質問にございました琉球開発金融公社資産の琉球政府への移管の問題を調査するようにという意味の勧告がなされたわけでございます。それから第四号は、資格免許の統一促進措置ということで、近く法案の御審議を願うことになっております。第五号、第六号は、先ほどもちょっと触れました国、県の事務の再配分といいますか、分離、それと会計年度の一体化でございます。第七号は動物検疫の一体措置でございまして、これにつきましては、本土側でいわゆる検疫官を沖繩事務所に派遣するというような形で一体化の措置をとるようにいたしたいと思っております。それから第八号は学校の施設設備の充実、第九号は琉球大学の整備と、文教関係のものがございます。それから第十号は、石垣港及び石垣空港の指定入港としての指定について、これは琉球政府措置の問題でございます。第十一号は、いわゆるJISの採用、第十二号は、社会保険福祉施設の設置及び一体化、第十三号は、後期中等教育の振興、第十四号は、教員研修の充実と人事交流の推進、第十五号は、地方税制の一体化、第十六号は、これも先ほど川崎先生から御指摘のありました軍関係離職者対策についての問題、第十七号は、身体障害者の雇用問題、第十八号は、職業訓練の充実、第十九号が医療保険の皆保険化と本土並み給付の実現、第二十号は、生活保護制度の改善、第二十一号は、住民皆保険体制の確立、第二十二号は、老人福祉施策の推進、第二十三号は、身体障害者福祉施策の充実強化、第二十四号は、児童福祉施策の充実強化、第二十五号は、観光関係の振興、第二十六号は、いわゆるJASの採用、第二十七号は、那覇空港の整備拡充、第二十八号は、失業保険被保険者の関係の期間通算の措置でございます。第二十九号は、検疫の業務の強化、第三十号は、沿岸及び近海の資源調査、第三十一号が医療サービス体制の整備、それに三月十一日に出ました三十二号、これは国勢調査の本土との一体的実施、第三十三号は、私立学校の振興方策、第三十四号が社会教育、スポーツ等の振興と青少年健全育成の推進、以上でございます。
  124. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いまの中で三件ほど高等弁務官に提出したというお話を伺ったのですが、その点はいかがですか。
  125. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 この諮問委員会の勧告はすべて高等弁務官に対する勧告でございますので、この三十四件すべてが高等弁務官に通告されておるわけでございます。
  126. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうしますと、それらの勧告というか、諮問機関で弁務官に提出したわけですね。その弁務官のほうでそれについてどういう態度で、また、どういうふうにその勧告を出してきたかということを聞きたいわけです。
  127. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 勧告されたあと、弁務官といたしましては必要な措置をとるということになるわけでございます。特に琉球政府に対して高等弁務官が措置をとらせる——とらせると申しますか、琉球政府に対して、そういう勧告に盛られた措置がとり得るように高等弁務官としては尽力する、こういうような内容になるかと思いますが、ただ琉球政府だけでございませんで、日本政府も措置をしなければならないものもあるわけでございます。ただ、この点につきましては、日本政府に対する勧告というのはもちろんございませんわけで、日本政府としては諮問委員会に政府代表を送っているわけで、その勧告された内容の実現に努力するという意味で参画しているわけでございますので、政府としては勧告の内容の実現に努力するという形で、先ほども申し上げましたように、たとえば免許資格の統一措置についての法案を提出するとか、あるいは動物検疫の検疫官を沖繩事務所に派遣して検疫の一体化をはかっていくとか、そういうふうに日本政府の側で勧告の内容に応ずるような措置をとっておる、こういうことでございます。
  128. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 要するに、たくさんの問題の中で、高等弁務官がそれではこのようにやりなさいと勧告したというのは何件で、またそれが実施されてきているかどうか、いろいろ検討されている段階ではありますが、どんなものが勧告されておるのか、それを伺います。
  129. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 この勧告されたものは、すべて高等弁務官としては実現に努力するということになっているわけでございます。ただ、具体的に直ちに実現することができないものにつきましては琉球政府にその検討をさせておる、こういうことでございます。もちろん、日本政府といたしましても、琉球政府が検討するのに際しましていろいろ助言をしておりますしい日本政府の側で必要な措置はとるようにいたしておるわけでございます。したがいまして、具体的に勧告の実現しておるものというお話でございますと、調査団の派遣というのは当然のことでございますが−…・。
  130. 中村寅太

    中村委員長 加藤君、少し声を大きく出さないと速記に聞こえませんから……。
  131. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 一体化をはかる免許促進の措置は、これは本土のほうで法案を出しますと、向こうでもそれに応じた法案が出されるということになっております。それから、国政の分離とかあるいは会計年度につきましては、先ほど川崎先生の御質問に対して申し上げたような措置でございます。動物検疫につきましても、先ほど申し上げましたように、具体的に検疫の実施の緒についておるわけでございますけれども、ただこれは来年度からの予算でございますので、来年度から実施されるようになろうかと思います。それから、その他たとえば後期中等教育の振興等につきましては、来年度の援助計画の中に三千六百万程度の予算を計上されておりますし、予算の措置をいたしましたものはこの勧告の中で相当あるわけでございます。したがいまして、予算の措置をとって、それから具体的に実現されるわけでございますので、その実現は、琉球政府の側でそれぞれ予算を組んで実現していくもの、それから立法措置をとるもの等は、これから具体的になろうかと思います。  以上であります。
  132. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いまいろいろと勧告したことに対する実現というのが非常に問題になるわけでありますが、それぞれの勧告した内容について資料として要求したいわけですが、その点はいかがでしょう。いま申されました勧告の内容、それから検討しておるいろいろ資料がございますね、それを要旨にして提出を願いたい。
  133. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいま御質問のありました諮問委員会の勧告でありますが、これは日米琉でもって話し合ってできたことで、しかもその結論となりましたものは、今後の一体化の、一歩ずつ必要な手段に対する結論でありますので、これを実施してまいりたい。ただ、中には予算の関連したものもあります。同時に、本土で申しますと法律改正、地元で申しますと立法院の法律にしなければならないものもあるわけでございます。その点が時間的におくれております。非常に多岐にわたるものもあるわけでございます。布令の、たとえば立法院に、民立法に委任されたものにつきましてもなかなか消化し切れないという状態、しかし、結局その勧告をできるだけすみやかに処理することが一体化を促進することであると考えて、私たちは努力いたしておるわけでございます。  なお、御要求の勧告の内容、要旨等につきましては、あとでお配りいたします。
  134. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 要するに言いたいことは、日米琉諮問委員会があっていろいろ問題を検討しておる。ただ、それが単なるお話で終わってしまっては非常に問題だ、こういうことを私たちは心配するわけです。したがって、そうであるならば、日米琉諮問委員会ですか、これは単なる名目だけの委員会になってしまう。そういう点で存在理由がないじゃないか、こういうふうに思うわけです。ですから、その点、今後十分にその実現方を私たちは見ていきたい、こう思います。
  135. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいまの御懸念でありますが、現実におきまして諮問委員会の答申いたしましたことを着々と実行いたしておるわけであります。したがって、将来の一体化のために大きな役割りを果たしておると思います。ただ、屋良政権になりましてから、一時この諮問委員会をどうするかということに対していろいろと検討しておったようでありますが、最近になりまして、やはり諮問委員会を活用するという方針をきめたように聞いておりますのでけっこうなことだと思うので、今後とも諮問委員会に一そう活動してもらうと同時に、諮問委員会の結果というものを、地元におきましても、また本土におきましても、これをできるだけ実現するように努力していきたいと思います。
  136. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この諮問委員会では政治的問題は扱うわけですか、それとも政治問題は扱わないのですか、その点をはっきり伺っておきます。
  137. 床次徳二

    床次国務大臣 諮問委員会は、一体化に必要な施策を中心として考えておるわけでございまして、したがって、施政権の返還というような、いわゆる外交的なもの、基本的な問題は扱わない。なお、諮問委員会の権限が、高等弁務官に与えられた権限の範囲内という限定があるわけでありまして、したがって、諮問委員会でもって一切を解決するというわけにはまいりませんので、残された問題は日米の折衝によって解決していきたいと思います。
  138. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 返還に至るまでの一つの経過措置として、一体化政策というのを政府でやっておるわけでありますが、この諮問委員会の実績といいますか、実現をわれわれは非常に考えているわけです。その強力な実現方を私たちは強く政府にお願いするわけです。このような一体化政策をやるわけでありますが、これはあくまでも高等弁務官がいろいろな問題を諮問するだけでございまして、実際には、日本アメリカにおいていろんな問題があった場合には、直接交渉しなければならないような現状ではないかと思うわけです。そういう意味において、たとえば人権問題であるとか、司法権の問題であるとか、あるいは警察権の問題であるとかいうのがあるわけです。そういうことについて、施政権がまだ日本に返還されていないから、それは米国政府との交渉は無理だ、もしこういうことがすでに前提としてあるならば、すべてのそういうものの実現が非常におそくなる、または日米琉諮問委員会で諮問して、高等弁務官との間だけでいろんな問題を行なっておったんでは交渉というものが非常におそくなる、こういうふうにも考えられるわけです。そういう意味で、現在沖繩でいろんな問題が起きております。たとえば、要するに軍人との問題において犯罪が発生した、あるいはまた風しんの問題が発生した、こういった問題がありますが、そういうことに対して、現地においてはその問題を非常に大きな社会問題として取り上げておるわけです。しかしながら、その対策については非常に弱いようにも思いますし、さらにまた今後は強力にそういった問題を日本政府が取り上げて、米国政府と、あるいはまた高等弁務官と話し合いをしなければ、早期にそれらの問題を解決することはできないんじゃないか、こう思うわけです。  一つは、具体的に伺いたいわけですが、最近沖繩に発生した風しんの問題があるわけです。この問題について、政府は二十五日ですか、調査団を派遣してその問題を調査する、こういう報道があるわけでありますが、そのことについて政府はどのような考えでやるのか。おそらく厚生省関係で派遣されると思うのですけれども、しかし、この問題も非常に重大な問題でありますので、総理府としてどのように考え、また扱っていくのか、簡単に伺いたいわけです。
  139. 床次徳二

    床次国務大臣 高等弁務官の権限に属することにつきましては、ただいま申し上げましたように、諮問委員会を十分に活用してこれで解決をはかっていきたい。今日まで相当の実績があるし、なお今後も期待をいたしたいと思いますが、しかし、高等弁務官の権限にない問題は、当然これは日米の交渉によりまして、施政権が返還になりませんでも、その中間の段階において、できるだけ県民の幸福を守るように努力をいたしてまいりたいと思っておる次第であります。  なお、お尋ねの風しんの問題につきましては、すでに調査をいたしまして、今日までその調査の結果に対しての努力をいたしておるわけであります。去る一月の末から二月の中旬まで専門医師十二名の検診班を派遣いたしまして、そして心身障害児五百五十五名の検診を実施いたしたのであります。その結果、障害児三百六十名の人に対しまして、その原因が、先天性の心疾患が五十二名、聴力障害三百三十九名、先天性の白内障が二百八十九名であるという報告書を受けましたので、その報告によりまして、さらに緊急対策として、まず先天性心疾患者に対しましては、そのうちの三名の重症者を早急に本土に収容して手術を施す。なお、他はやはり相当の大きさになりますが、待って、計画的に実施するということにこれは処置がきまりました。なお、聴力障害の者に対しましては、高度の聴力障害者二百二十八名に対しましては補聴器を装置させるということになりました。この補聴器は、単に物を与えるだけではいけませんので、補聴訓練をしなければならぬという意味において、訓練をさせる教育団をこの二十五日に派遣することになっておるわけです。調査の結果の手配をいたしておるわけであります。なお、眼疾患につきましては、伝染性白内障児で、早く手術いたしますならば視力を回復するということになっておりますので、この対策を今日努力をいたしております。先般も新聞に出ておりましたが、寄付金がありましたので、とりあえず必要とするものを寄付等によりましてなおしていく。なお引き続き残された者に対しても、対策を講じたいというわけであります。
  140. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 沖繩における米兵の凶悪犯罪は非常に多いわけであります。そしてまた、沖繩ではこれも非常に社会問題になっておるわけです。要するに外人事件といいますか、軍人を中心として発生した件数というのは、一九六六年のときが四百七件で最高であったわけですが、その後減ってきておるわけです。その内容は殺人、強盗、放火、婦女暴行、こういうきわめて悪質な犯罪が発生しておるわけでありますが、このことは非常に大きな問題になっておりまして、またその事件に対する検挙率が非常に少ないわけです。たとえば一九六四年あたりは五六%しかその問題が解決していない。また六五年は六〇%くらい、六六年が六四%、六七年が五二・七%、六八年が四六%、こういうふうに問題が迷宮入りといいますか、解決がしていない現状であります。こういうことが、沖繩住民の社会問題として現在非常に大きな問題になっておるわけです。こういった犯罪に対して、とにかく沖繩に住む人たちは、同じ日本人でありながら、返還前でもある関係もあって、その問題が米国政府によって、また米軍によって一方的に処理されてきておる。こういう問題は、私たちは、大きな人権問題として取り上げなければならないわけです。こういうことに対して、本土ではもっと積極的にこの問題を考え、さらに具体的に今後こうしていくんだという強い姿勢を米側に示すべきであり、また何らかの考えを持って折衝すべきではないかと思うのです。その点について総務長官の考えを伺いたい。
  141. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいまお話がありましたごとく、米軍人の犯罪というもの、特に沖繩におきましては、軍人の数が多いところへもってまいりまして、また軍隊の駐在状況というものも非常に生活状態からいいまして、犯罪につながりやすいという状態にあろうかと思うのであります。したがって、この犯罪者をできるだけ減少せしめるということは、これは住民の平和、安全につながることが非常に大きいのでありまして、本土政府といたしましても、たびたびこの問題についてはすでに政府に申し入れをいたしておるわけでありますが、今後ともこの点はさらに一そう努力を続けたいと思います。基本的には、いわゆる裁判権の問題、また警察権等のいろいろの障害があります。そういう障害を予期いたしながら、しかし県民の幸福の問題でありますので、私どもは、たとえ施政権の返還前でありましても、できるだけ犯罪を減少することができますように努力いたしたいと思います。
  142. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 今後の交渉にあっては、まず第一にこの問題を取り上げて解決していただきたい、こういうふうに要望いたしておきます。  国政参加の問題について伺いたいわけですが、国政参加についての立法措置について、その後の進捗状況はどうなっているのか。これはもうわれわれ国民から見れば、非常に行き詰まりに来ているのであって、手詰まりになっているのではないか、こういうことが言われております。さらに、与野党間において妥協がなるかどうか、それはわかりませんけれども、立法化というのは非常におくれるんじゃないか。これに対して政府としては、内閣による立法というものを考えているかいないか、そのことを伺いたいと思います。
  143. 床次徳二

    床次国務大臣 いわゆる国政参加の、沖繩の代表を本土国会に加えるという問題につきましては、すでに日米間の話し合いによってそれが具体的な処置に移されておるわけでありまして、すでにその意思を両院議長に申し入れてあり、今日国会において御審議を願っておる段階であります。すなわち、これが国会の組織、運営に関係することが非常に多いので、国会の御意見によってきめることが最も適切ではないかというので、そういう措置をとっている次第でありまして、政府といたしましては、長年の住民、県民の要望でありますから、ぜひひとつこれがすみやかに実現できまするように希望いたす次第であります。
  144. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この問題は、現在議長から議運のほうに、一応そのことは議運のほうで扱うような方法になっているように思うわけです。しかし、与野党間の歩み寄り、また立法化がもしおくれるとすれば、これはきわめて遺憾なことであるわけです。われわれが審査するもう一つの方法としては、政府が原案を提出して審査する、こういうことがあるわけでありますが、その点について総務長官はどのように考えられますか。
  145. 床次徳二

    床次国務大臣 先ほども申し上げましたように、この国政参加の問題は国会の組織と運営に関係してくる。国会法の一つの例外と申しますか、国会法の対象そのものであると私ども考えておるのでありまして、政府がこれに対して意見を申し上げることはむしろ適当でないと考えており、今日は国会において御審議の段階であり、委員会で申しますと議運のほうでいま御審議をいたされておるように承っております。しかし、政府といたしましては、この問題が一日も早く実現することが望ましいと思うのであります。
  146. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 その点で政府として——もちろんそういう国会法の問題でありますが、政府側からその原案を出して審査しろ、こういうことも一つの方法として考えられるわけです。また、そのほうが早く実現するのではないか、こういうこともいわれているわけです。その点で総務長官にお伺いいたします。
  147. 床次徳二

    床次国務大臣 この問題は、国会側からずいぶん強い御要望があった問題でありまして、実はそれが実現の軌道に乗ったわけです。しかもその内容は国会自体の問題でありますので、政府が原案を出して御審議を願うということは、いささかこの点は政府といたしましても、国会の権限というものに対して、侵すとでもいうことばを使うかどうか知りませんが、政府が提案をいたすということにつきましてふさわしくない問題ではないかと思うので、この点については意見を差し控えている次第であります。できるだけむしろ国会において御検討願うということが最もこの問題としてふさわしいことである、かように考えております。
  148. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 総務長官に伺いたいのですが、何も意見を差し控えないで、姿勢としてはやはり早期に国政参加の実現をはかるべきだ、何らかの形でこれはやるべきじゃないかと思うのです。そのことは長官として閣議でもいろいろ話があるでしょうし、総理とも相談しなければならないことだと思いますが、長官としては、政府がそのことを原案をつくって出すという考えがあることについていいか悪いか、どう思いますか。
  149. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいま申し上げましたように、この問題は、国会が御発議になって御決定になるべき事柄であると私考えておるのであります。ただし、国会のほうから政府案をつくれという、委任とでも申しますか、がありまするならば、政府としては動きやすいのではないかと私個人として考えておる次第でありますが、総務長官といたしましては、先ほど申しましたように、これは長年の待望の問題でありまするから、一日も早くひとつ国会でもって御審議を願って、結論を出していただくことを待望しておる次第であります。
  150. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この間総務長官からいろいろ沖繩の問題について伺ったのですが、あいまいな点が少しあったので、その点をはっきりしておきたいと思います。  それは、沖繩の軍事道路の問題、さらにガス、水道、電力ですか、こういう問題についてその管理権とか移譲のことについていろいろ問題になっておると思うわけです。その点について、その後この問題がどのような経過でいま進んでいるか、そのことをもう一回伺いたいわけです。
  151. 床次徳二

    床次国務大臣 沖繩におきましては、本土の安保条約とまだ立場が全然違うのだと思っております。本土でありまするならば、安保条約に基づくところの行政協定というものがありまして、いろいろ軍用道路の問題あるいはその他の問題が解決されると思いまするが、何ぶんにも、御承知のごとく基地の態様というものがどうなるかということがわかりません。沖繩におきましては、たとえばどの程度のものが基地というふうに考えるかどうかということも明瞭ではありませんが、ただ軍用道路自体としては、名前どおり実は軍が優先的に使用する立場になっておる、しかも、たとえば一号国道のごときは、これが一般県民の使用と併用されているということ、だから今後の取り扱い等につきましては、これは具体的に基地の態様とともに検討すべき問題ではないかと私は考えておるわけであります。  なお、電気、ガス、水道の問題等につきましても、これは住民の生活に非常に不可分の問題でありまするが、同時に、軍が大きな利用者でもあるわけで、むしろ沿革的に申しますると、軍の関係が主体であって、それが一般民需に及んだと見てもいいものではないかと思う。もちろん場所によりましては、水道のごときは全然軍と関係のない水道施設もあるわけでありまするが、那覇を中心とするおもなものにつきましては非常に密接な関係があると思う。したがって、今後はやはり基地の態様と一緒に解決しなければならないものではないかというふうに考えておるわけであります。
  152. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 要するに一体化政策というのは、制度の一体化、また本土とのすべての一体化ということを施政権返還までに実現しようというのがそのねらいだと思うのです。ところが、施政権返還になるまで軍用道路も一本もその交渉をしない、またガス、水道ですか、現在米軍の管轄のものについても何ら手をつけないというような状況であっては、これは一体化政策の趣旨から見れば反するのじゃないかと思うわけです。この間総務長官は、軍用道路については基地の態様または返還の実現の時点でその軍用道路を考える、こういう答弁をなさったわけですが、私たちはいろいろな問題から、現在沖繩県民が常に非常に大切な生活権を守るためにも大事な道路が、一方的に軍用道路だからということで常に圧迫されたり、または返還されてもいいような、現在軍用道路としてもほとんど使っていないような、そういう道路であってさえも軍用道路だからということで制限を加えられておる、こういう一つの現状があるわけですよ。そういう点について、私たちは、そういうことをこそ早く、基地の返還の態様に関係なく、また施政権に関係なく、どんどんとその交渉に当たるべきじゃないか、そう思うわけです。長官の所信をお聞かせ願います。
  153. 床次徳二

    床次国務大臣 軍と関係のないものにつきましては、諮問委員会等の一体委員会におきまして一体化を検討いたしまして、そうしてできるだけ復帰に備える、これは当然のことでありますが、御指摘の道路とか電気とか水道とかにつきましては、かなり軍との関係が密接に入り組んでおると思う。したがって、当然研究はいたすべきであろうと私ども考えておるわけでありまするが、しかし、いまからそれを具体的にどうするかということは、基地の態様等との関係もありますので一がいには何とも申し上げにくい。しかし、将来のことを考えまして、研究いたすべきことは研究いたしまして、支障のないようにいたしたいと考えておるわけであります。たとえば電気の系統等も違っておりますのは、あるいは民に移管するということも常識的には考えられるのではないかと思いますが、ただ関連いたしておりますものにつきましては、なかなかそういう問題もむずかしいのではないかと思う。したがって、そういうことにつきましては将来の復帰の場合をよく考えながら、同時に、基地の態様というものを考えながら、今日よりあらかじめ検討はすべきものであろうと思います。
  154. 中村寅太

    中村委員長 伊藤君、ちょっとおはかりいたしますが、総務長官——おわかりですね。
  155. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 はい。いわゆる一九七二年に返還がもしされるとした場合、一体化政策を現在いろいろ検討しておりますけれども、たとえば七二年返還ということを前提と考えた場合に、現在の一体化政策のこの推進状況で、七二年返還は一体化政策を完全に本土並みになると考えられて進めているのかいないのか、この点伺います。
  156. 床次徳二

    床次国務大臣 一体化政策は、三年でもっておおむねその目標を達するように努力をいたしております。しかし、逆に申しまして、一体化政策が完成できなければ復帰ができないものとは考えておりません。復帰が早くなりましても、受け入れには支障のないようにできるだけの策は講ずべきであるし、また講ずることができるのではないかと思っております。しかし、何といいましてもその間の摩擦ができるだけ少ないほうがよろしいので、一応三年を目標として努力してまいりたいと思います。  なお、このあり方につきまして、ことしはとりあえず初年度として予算を組み、努力しておるわけでありまするが、なお本年から来年の情勢によりまして、第二年次の組み方等につきましては地元の要望等も十分検討して、また、その後の変化等がありますならばそれを検討いたしまして第二年次の計画をつくり、さらに第三年次の計画に及ぶというふうに一体化を推進してまいりたいと思います。
  157. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 最後に、長官に伺いたいのですが、沖繩が返還されれば、防衛庁は沖繩に、それぞれの防衛に関する自衛隊の配置等が行なわれると思うわけです。そのことについて、沖繩はいままで二十何年かの間米軍の施政権下に置かれてきたわけでありますが、それは特連局の仕事になると思いますが、この二十数年の間において、もし日本が、現在の自衛隊が日本にいまある状態または自衛隊の配置がいろいろとありますけれども、もし沖繩がいまから二十何年か前に日本に返還され、日本として沖繩があった場合、この二十数年間にわたって防衛費は、たとえば沖繩についてはどのくらいかかったかというようなことは計算しているわけですか、またはそれは考えているかいないか。これは今後の沖繩の防衛に関する、またはいろんな予算に対してきわめて重大な一つの積算基礎になるのではないかと思うので、伺っておきたいと思います。
  158. 床次徳二

    床次国務大臣 沖繩が本土の領土でありました場合であれば、当然防衛の対象になったろうと私ども思いますが、それが幾らになるかどうかということにつきましては、実は私の所管ではございませんので、今日材料を持っておりません。
  159. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そのことは検討する考えがあるわけですか、それとも全く認めないという形ですか、どうですか。
  160. 床次徳二

    床次国務大臣 この点は、ひとつ防衛関係の方面にお聞きをいただきたいと思います。
  161. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 終わります。
  162. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ちょっと先ほど伊藤君から国政参加の問題が出ましたので、関連してお尋ねをしておきたいと思います。  それは、沖繩現地県民はストレートな国政参加ということを要望しておるわけですね。差別のない代表を選びたい、こういう要望をいたしております。そこで、院の構成だから国会が当然のことだと思います。そこで国会が、ストレートな国政参加の沖繩県民の代表を選ぶ法案を制定しました場合には、当然政府はその趣旨に従ってアメリカ側と交渉をいたしますね。そのことは外務大臣の仕事でありますか。つまりそのことは、昨年の日米協議委員会によります日米合意書というものの範囲はいかようにでも解釈ができる。だからそういうあいまいな合意書に基づいてやるのではなくて、院の構成である。つまりいまの日本の国会というのは、その意味では完全な国会になっていないわけです。百万の県民の代表が出ていないわけです。そこで、ストレートの正式の参加ということを国会がきめたということになれば、当然政府は、国の最高の決議機関がきめたその方針に従ってアメリカ側と交渉する。当然のことだと思うのです。その点、これは本来ならば外務大臣にお尋ねすべきかもわかりませんが、ただいま伊藤委員のほうからそれに関連して質問がございましたので、ちょっと関連してお尋ねをしておきたい、こう思います。
  163. 床次徳二

    床次国務大臣 すでに政府から両議長に対しまして、一体化の施策を含む日本政府の沖繩施策を円滑かつ効果的に行なっていくためには、住民の参加が必要である、そういう立場からの一体化の施策のための国政参加でありますので、そういう限度におきましては、国会の御趣旨がきまりましたならば、政府としては十分に尊重せらるべきものと私は考えております。
  164. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 終わります。
  165. 中村寅太

    中村委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時八分散会