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1969-02-27 第61回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年二月二十七日(木曜日)     午後三時二十三分開議  出席委員    委員長 中村 寅太君    理事 宇野 宗佑君 理事 臼井 莊一君    理事 小渕 恵三君 理事 本名  武君    理事 八木 徹雄君 理事 川崎 寛治君    理事 美濃 政市君 理事 永末 英一君       大村 襄治君    箕輪  登君       井上  泉君    中谷 鉄也君       西風  勲君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         総理府特別地域         連絡局長    山野 幸吉君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省条約局長 佐藤 正二君     ――――――――――――― 二月二十日  沖繩のB52爆撃機即時撤去等に関する陳情書  (第八二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  沖繩及び北方問題に関する件      ――――◇―――――
  2. 中村寅太

    中村委員長 これより会議を開きます。  沖繩及び北方問題に関する件について調査を進めます。  順次質疑を許します。小渕恵三君。
  3. 小渕恵三

    小渕委員 まず、大臣にお尋ね申し上げたいのは、六月に訪米をされるということを承っておりますが、そのとき政府としては、基地態様については一つのまとまった考え方を持たれて訪米をされるのですか、お伺いいたします。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまのところ、六月の二日から三日間ほど、主として国務長官と会談をすることに予定をいたしております。  沖繩の問題は、御承知のように今年の末、まあ十一月以降に総理が渡米することになっておりますので、非常に困難な大きな問題でございますから、両国の最高首脳部の中で話の結末をつけるようにいたしたいという予定を一方にいたしておりますから、私が参りました場合は、沖繩の問題については、もちろんその総理訪米成果があるようにする、何といいますか、レールを敷くことにつとめたいと思っておりますので、確定的といいますか、決定的といいますか、そういうものを持って、そしてその場で話し合いを煮詰めるというところまではいくまいかと考えております。  これは申し上げるまでもございませんが、ニクソン政権も成立いたしまして新陣容もできました。との機会に、各種の問題につきまして先方の考えていることもただし、また、われわれの考え方基本十分理解を深めてもらえるような話し合いにしたい、かように考えております。
  5. 小渕恵三

    小渕委員 そういたしますと、今度は、十一月に総理訪米されると承っておりますが、その時点までには考え方を、特に基地態様でありますが、まとめ上げる予定にいたしておられますか。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは早期返還ということと、それから沖繩を含む日本の安全ということから考えて、いかなる道が最善の道であるかということを十分検討して、そして日本側考え方に向こうの考え方を引きつけてくるということにしたいと思っておりますから、総理訪米前には、もちろんわれわれの考え方——私が訪米いたしましたり、またその間向ころから参ります機会もございますから、そういう接触を通じてだんだん路線をつくっていく、日本の世論を背景にして実のあるものにしたいと思っておりますので、総理訪米前にはもちろん考え方を固めてまいりたい、かように考えております。
  7. 小渕恵三

    小渕委員 世間では、総理訪米をされましても、沖繩返還については、一定の期間の時点返還をされるという時間的めどはつけるけれども基地態様については返還をされる時点において決定されるべきものであるから、十一月訪米時点では、基地態様については結論を出さぬというような意見もあるわけですが、いまの大臣お話ですと、十一月の訪米時点まで一応態様についての考え方も明らかにできそうだ、こういうことでございますか。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 やはりこれは相互一体の問題であると私思いますから、少なくとも考え方については、わがほらの考え方というものを固めてまいることが適当かと、かように考えております。
  9. 小渕恵三

    小渕委員 そこで、いま国会でも、しからば基地態様は何かといっていろいろ議論があるようでありまして、全面撤去から核つき自由使用を含めて、さまざまな態様考えられておるように思います。自由民主党におきましても、五月一ぱいにはぜひ自由民主党としての考え方を明らかにしたいと外交調査会川島会長は言われておるようでありますが、しからば政府として、その腹案現時点においていろいろ考えておられるだろうと思うのです。その腹案をつくり上げるためには、現在の世界情勢その他勘案しなければならない問題が多々あるだろうと思うのですが、政府として、その態様を決定されるにあたって、どういう点について一体考慮を及ぼしておるか、お答えできればお伺いしたいと思います。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、しばしば今国会でも論議が行なわれておることはいまさら申し上げるまでもございませんが、私たち考え方基本としては、とにかくできるだけ早い機会施政権返還させたい、それから同時に、沖繩本土同様になるわけですが、その日本が、安全を守るということが国家存立最高の要件であると私は思うのです。そういう点で、現に沖繩基地が非常に重要な役割りをしておる、こういうことになっておりますが、返還された後においてわが国の安全が十分守れる、こういう体制はかくあるべきものだということを、主体的に考えをまとめていくことが一番大きな問題ではなかろうか。そういう観点に立ちますと、いまもおあげになりましたように、実にいろいろの要素から判断、分析をしていかなければならないと思いますので、ただいまも国会での各党各派のいろいろの御意見も伺っているわけでございますが、そういう点を十分勘案して、また、国際的な情勢判断等につきましても、十分いま真剣に検討しておるわけでございます。
  11. 小渕恵三

    小渕委員 私は、これからおそらく政府としては、考えられるすべてのエレメントを摘出して検討されるのであろうと思いますが、私自身がいろいろ考えましても、極東の、なかんずく朝鮮半島におけるいろいろな問題、あるいは中共の今後の核政策の問題、さらにまた現在ある本土の、日本基地そのものが、一体十二分に日本の安全を確保するために必要であるか、いろいろ論議されておる問題については、現在世界各国におけるその国の自衛隊、軍隊というものが活動するにおいて、日本では比較的制約が、緊急時に活動を及ぼさなければならないその時点においてすら、あるであろうというような議論もあるわけです。したがって、もろもろの問題をひとつぜひ検討されまして、その暁において一つの案というものを築き上げていただきたい、こう御要望を申し上げておきます。  そこで、時間もございませんので前に進みますが、私は大臣にたいへん御指導をいただいておるのであります。しかしながら、なかなかもって大臣外交の行動を起こされるその基調となる大臣のお考えについては、聞く機会の少ないことを残念に考えておるわけであります。そこで、基地態様云々ということをいろいろお話しされても、今国会先輩各位が相当鋭く追及いたしましても出てくる答弁白紙と、こういうことでありますので、違う立場から私はひとつ大臣のお考えを承っておきたいと思うのです。というのは、これから六月に大臣訪米されまして、政府責任者として外交折衝を展開される、こういうことになりますと、基地態様については白紙だということでありますので、われわれはわからぬ、しかしながら、国民の一人として考えますれば、政府にその責任をお渡ししておるわけでありますので、外交折衝責任者として大臣一体どういうお考えにおいて行動されるかということを聞いておくことも、私は非常に意義あることだろう、こういうことに考えてお伺いをいたします。非常に唐突な御質問でありますが、大臣は、第三次の世界大戦というものは現在起こるというふうにお考えになりますか。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは国際情勢判断の上の最も大きなテーマであると思いますが、私は、いろいろ日本国内にも論議がありますけれども、私ども考え方としては、こういうふうに考えております。  現状においては、日本のいままでの考え方が正しかった。そしてまた、その考え方の正しさの基礎になっている情勢判断というものも、また正しかったんじゃなかろうか。そういう状態がよりよき姿になることが望ましいというふうに考えますから、第三次大戦というものは絶対的に起こらないようにつとめていく、こういう体制が大切じゃなかろうかと思います。  もう少し具体的に申しますと、やはりここしばらくの間、大戦というようなものが起こらず、また起こりそうにないということは、抑止力理論というものがやはり一番妥当であったのだ、こういうふうな考え方をとっているわけであります。戦争に巻きこまれるどころか、戦争未然に防止される、日本の国が安全であるというこの体制、これはこまかく言えば幾らも言えると思いますけれども日本自衛隊、そうしてこれを補完する日米安保体制、すなわち、戦争未然防止抑止力、この組み合わせでまいりますことが、一面におきましては日本憲法によって徴兵のない自衛隊、自衛ということに専念する体制、そうして一面におきましては財政的負担も少ない、これが今日の繁栄をもたらしたゆえんであろう、こういうふうな姿がずっと続いていく、そうして世界的にもっともっと日本のような考え方の国がふえて、そうして最終的に世界から戦争というものがなくなる、平和憲法目標としているような世界が醸成されるように、一面において、たとえばアジア外交などにつきましても、開発途上国に対するいろいろな意味での援助、協力というようなものは措しむべきでない。ある程度の犠牲をも覚悟していくべきものではないだろうか。大ざっぱに申しますと、こんなふうに考えておるわけでございます。
  13. 小渕恵三

    小渕委員 結論としては、起こり得ないということだろうと思います。そこで、いまベトナムというお話も出ましたが、局地戦は、これは昭和二十五年から四十何回世界であったわけでありますので、これは起こる可能性もあるかもしらぬ。そこで大戦と、こう言ったわけであります。そこで、私自身も起こり得ないと、こう考えております。それはやはり、大戦の場合は、現在の核兵器破壊力現代文明の絶滅を意味するほど大きくなってきたので、これをへたに戦争手段に訴えられない。これが大戦を抑止している力になっているのだ、こういうふうに私は考えます。それからそのことは、先年日本を訪れたフランス戦略家のボーフルも、アジア調査における講演の中で、「第一は、核兵器はもはや戦闘遂行兵器ではなく、戦争抑止兵器であることである。第二に抑止戦略は核による安定を作り出したが、過度に安定が保たれると通常戦争を再び作り出す。だからある程度の核による不安を織り込んでいない計画は、かえって危険だということになる。第三に現代の新しい黄金律は「平和は危険によって強制される」ということである。第三次世界大戦を避けることができているのは核戦争危機感からである」、こういっております。私も、取り上げることばが非常に多いというように考えております。  そこで、核兵器における大戦抑止力というものに対していま一つの言をとったわけでありますが、大臣も同じようにお認めになられますか。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 基本的には、私もそういう考え方に御同感でございます。そうして、それに対してもいろいろの御意見はあろうと思いますけれども、やはり現実の姿においては抑止力理論というものが確かに成果を発揮している。しかし、それが将来の理想の姿であるかといえばそうではもちろんないと思いますので、たとえば核を持てる国の軍縮、持たざる国に対する安全保障というようなことが世界的に確立されることが望ましい、こういうふうな考え方でございます。
  15. 小渕恵三

    小渕委員 かねて総理もたしか御答弁になっておられたと思いますが、日本政府方針である非核原則を遂行できるのは、アメリカ核抑止力があるからであるということが言われておりますが、やはり大臣におかれましてもそうお考えになられますか。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いわゆる非核原則というものにつきましては、先年の国会でも大いに取り上げられ、また今日もそうでございますが、自由民主党立場というものを政府が大いに推進することに努力を続けているわけでございます。この非核原則というのは、あの当時にも自民党意見として、あるいは政府意見として明らかにされておりますが、安保体制というもの、あるいは核軍縮というもの、あるいは原子力の平和利用については世界と均等の立場を堅持する、この三つを合わせて非核原則というものが確立される、この考え方自民党方針でもあり、また現内閣基本方針でもある、私はかように考えておるわけでございます。
  17. 小渕恵三

    小渕委員 そこで、アメリカ核抑止力、こういう核の中に一体沖繩を含むかどうかという問題は、なかなかむずかしい問題だろうと考えます。沖繩の核の潜在的効果、これはあるかないかわからないというそういう状態、こういうものをまた重視するかという問題は、これから真剣に考えられなければならない問題だろうと思うのです。そこで、実は私自身も、自分自身結論がまだ出ておらないのですが、かりにそのアメリカ核抑止力というものを認め、かつまた、その中に沖繩というものの潜在的効果を重視するということになりますると、抑止力認めるなら手を縛らないほうがいい、手を縛らないことがすなわち核の抑止力を発揮するのではないか、こういう考え方もあるだろうと思うのです。これは私自身もまだ結論を得ておりませんので、考え方があるということだけで答弁も求めませんが、これからいろいろの腹案をこしらえていかれる上には、おそらくこういう問題も十二分に検討されておるだろうと思いますが、さらにかてて加えて検討されて、ほんとうに日本国民が安全な平和な生活を今後永久に続けていくために、現時点で最もいいことは何かという観点に立って、これからの十二分な対処を私は期待いたしておきます。時間がありませんので、答弁も、できれば意味をわからせるだけの簡明なものにお願いしたいと思います。  次に、これまた大臣基本主張的なお考えについてお伺いしておきますが、現在の世界の平和、これがすなわち力の均衡によって保たれておるのだ、こういう考え方があるわけですね。外交史をひもときますと、実はギリシアの昔からそういうことがいわれておって、むしろ第二次世界大戦のときにこういう考え方は終えんしたのだ、こういうことがいわれておるのです。第二次世界大戦以後、平和が保たれるためには国際連合というものの力にまつべきだ、こういう議論がありまするけれども現実世界のきびしいこの国際政治を見ておりますと、今後まだ実力支配の時代でありますし、その秩序の維持は、究極においては物理的、非人間的な力の原則——バランスオブパワーですね、これのいかんに帰するという実に悲しい現実、これまた私は認めなければならぬという気がいたします。もちろん、国際平和のために国際連合というものがたゆみない努力をしておることも否定はいたしませんけれども、やはり現実にはバランスオブパワー、これが世界政治のきびしい現況であると私は理解いたしますが、大臣いかがでしょう。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 現実には確かにそういうことでありますから、先ほど申しましたようにこれに甘んじてだけはいられないので、日本といたしましても、先ほど申しました核の軍縮であるとかいうことについては、できるだけ世界状況がそういうふうになるように努力をしていかなければならない、あるいは私が先般来、まだ十分練れた案ではございませんけれども平和国家代表者として国連の中にもっと強い発言力を持つように、そういう姿になりたいということについて、これから積極的な活動もしてみたいと思っておるわけであります。
  19. 小渕恵三

    小渕委員 力の均衡論というものについてお認めになられただろうと私は解釈をいたします。このパワーというものの中には通常兵器も含まれるし、軍事力ももちろんでありますが、その他経済力、教育の力、すべてが含まれるだろうと思いますし、さらに核兵器も私は当然入ってくると思いますが、いかがでしょうか。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 現に抑止力理論が行なわれており、それがメリットをあげておると私は判断いたします。したがって、考え方として核武力均衡というものも、現実の問題としてはこれがまだ続くのであろう、かように考えます。しかし、いまわが国はというお尋ねではなかったかもしれませんが、わが国としては、非核原則というこの崇高な目標を同時に守り抜いていくべきではなかろうか、かように考えております。
  21. 小渕恵三

    小渕委員 極東の現在の状況は、大戦が起こるような状況とお考えになっておられますか。極東、なかんずく沖繩あるいは朝鮮半島あるいは中華民国、その周辺でけっこうです。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 極東状況でございますが、私は、現在のところそんな大きな緊張はないようにも見受けますけれども、たとえばいまおあげになった中でも朝鮮半島におきましては、休戦協定ができまして以来でも、何か予測せざる状況が起こりはしないだろうかという感じはぬぐい去ることができないような感じもいたします。現に北から画に対してはゲリラその他の侵入がある、あるいはさきにはソウルの大統領官邸にまでそういった勢いがしみ込んだというようなこと、あるいは国連の報告などに見ましても、朝鮮半勘における緊張というものが、それが国連の舞台などにおきましても問題にされているというようなことから見まして、何かそういう感じがぬぐい切れないような感じがいたします。  それからベトナムにつきましては、これはおそらく国民的な願望であろうと思いますけれども、せっかく直接の当事者がフルメンバーでパリのテーブルに着いたわけですから、一日も早く平和の話し合いができることを期待して、ポストベトナムになったらば日本としても平和的ないろいろな意味での積極的協力をしていきたい、かように考えております。
  23. 小渕恵三

    小渕委員 確かに、朝鮮半島では三十八度線をめぐって幾つかのトラブルがあったことは承知いたしておりますが、それが発端となって朝鮮戦争の繰り返し、あるいは大戦にまで進んでいくという状況でないことは、私もそう考えます。そこで、言うなれば、大戦が起こらないということであるなれば、現在極東一種バランスオブパワーになっておる、私はこういう感じがしております。そこで、今度沖繩返還をされまして、沖繩の現在持っておる力、軍事力も含めてそういうものが、急激にかつ一時的に、しかも短期間の中にそうした力を失っていくということは力の均衡を失し、一種陥没地帯がそこに生ずることによってむしろ国際緊張を生み出すゆえんにもなるというバランスオブパワー理論から、気がしないで毛ないわけであります。したがって、私は、沖繩が将来返還されて、その基地そのものも、いずれ将来においては、日本自衛隊をもってすべて日本同胞の安全を確保していくという方向には当然なっていかなければならないと考えまするけれども返還をされますその時点において、急激かつ一時的、しかもきわめて早い力の減少というものは、むしろ避けていくことが望ましいのではないかと私自身考えております。大臣の御見解を承りたいと思います。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まさにそういう点が、われわれの考えていかなければならないテーマ一つであると思いますが、先ほど申しましたように、日米安保体制の使命や性格というものが、日本日本を含む極東の安全、これがなければ日本存立というものが、十分安心ができないという角度から見まして、沖繩が現にアメリカの手によって軍事的な重要性を持っておるわけであります。これをどういうふうに評価し、また、どういう姿であるならば、返還のときに、いま御指摘になりましたようないろいろな心配にならないような条件になるであろうか、その点を私どもとしてはいろいろな角度から全く真剣に検討しておるわけでありまして、私は、いまお述べになったところと多少ニュアンスの違う点があるかもしれませんけれども、そういう姿勢で事に取り組んでいるわけでございます。
  25. 小渕恵三

    小渕委員 復帰をされる段階におきましては、第一に日本の安全ということを最大限考え、そしてそういう時点になっても、急激かつ一方的軍事力の低下をはかることなく対処していく道を今後とも検討されていただきたいと思います。  そこで、時間があとほんのわずかになってまいりましたのでもうこれでやめますが、またの機会にいたしたいと思いますが、最後に、私は、この国会においていろいろ議論されました、野党その他傾聴に値するものもあるわけでありますが、ただ、沖繩の問題について、本土沖繩化ということに反対をするという意思の表明がかなりされておるのです。私はそのことをいろいろ解釈をしてみますると、端的にいうと、沖繩に現在核があるかどうかわかりませんけれども、その軍事的ないろいろの基地そのものがあることによって、沖繩がいろいろ危険の負担をしておる。それが日本という大ワクの中に入った場合、その基地そのものも北海道にまで及ぶからして、その危険そのものが、いわば日本一億人の危険になってくるということは好ましくないという御議論のように承っておるわけであります。  そこで、私は、核があるかどうかわかりませんけれども、大体核装備しておるから、ほかから侵略される危険があるという考え方自体がナンセンスだと思う。一体核兵器を製造して現在保持している国が、その歴史からいって、核を保有して以来侵略をされたという歴史は、私はかって聞いていない。ソ連にしても、アメリカにしても、中共にしても、フランス、イギリスにしてもしかりです。したがって、それがかりに存在をしておるからして、それが日本全土に及ぶから日本本土沖繩化反対するという考え方は、やはり避けなければならない問題であろうと考えております。  そこで、私は福田恒存の書いた文章を読んでみますが、勉強に値すると思うのです。   原水爆は私達の前に始めて出現した「悪魔」ではない。全人類を殺せる核兵器が「悪魔」で、五人しか殺せぬダイナマイトが「悪魔」ではないと考へる人は、すべての價値を数量で割切るといふ最も現代的な「悪魔」の思想に囚れてるる事を反省してみるがよい。全人類の死が五人の死より「悪魔的」に見えるのは、世界戦争局地戦争より恐しく見えるのは、正直のところ、全人類の死や世界戦争には自分の死が含まれてをり、五人の死や局地戦争なら自分が助る餘地が大であるといふ利己心の働きでしかないのではないか。   さういふ利己心に訴へながら、それと氣附かぬところに、現代精神的頽廢がある。 こういっております。  そこで、私は、本土沖繩化ということに反対する方々が、かりに本土人たちの核に対するアレルギーに迎合し、訴えて、そういうことのために反対をするとするならば、まことに残念だというふうに考えております。その発言そのものが最も沖繩を理解しておると自信を持っておられ、また、沖繩に最も愛情を持っておられる方々が、本土人たちのそうした利己心に訴える姿勢でなくて、それ以外のことから考えていただけるのであるとするならばけっこうでありますが、そうでなく、本土人たちのそうした危険な気持ちに迎合するようなことでないことを私は願うておるわけであります。もちろん、核の問題について、持ち込みをすることやつくることや保有することについては、私自身これに賛成するものではありません。しかしながら、沖繩本土もともに運命共同体として考えるとするならば、本土人たちのそういう不安あるいはアレルギー、そういうものに訴える姿勢だけでこの問題を提起されることを私は好まないわけであります。願わくば、大臣におかれても、ほんとうに沖繩と祖国本土が同じ運命共同体として、これからその喜びもその苦しみもともにする、そういう考え方で前進のできるようなこれからの沖繩問題の解決のために、鋭意努力していただきたいことを強く要請いたしまして、私の意見並びに質疑を終わります。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 たいへん含蓄のある御意見を伺いまして、非常にありがたく思うわけであります。ことに福田恒存氏の所説を引かれたわけですが、大いに味わうべき意見であると思います。  ただ一つだけはっきり申し上げておきたいと思いますが、ことばの使いよういろいろございましょうが、いま世間で話題になっておりますような意味での本土沖繩化と申しますか、そういうことは絶対に私は考えていない、このことだけはっきり申し上げておきます。
  27. 中村寅太

    中村委員長 中谷鉄也君。
  28. 中谷鉄也

    ○中谷委員 本国会におけるだんだんの論議を通じて、私はあらためて次のようなことを、質問の最初に法制局長官にお尋ねいたしたいと思います。  昭和二十一年日本憲法が施行され、昭和二十七年に平和条約が発効した後、沖繩アメリカ施政権下に置かれた。そこで、政府の御見解をあらためてお尋ねするわけでありますけれども沖繩日本憲法が適用されていないというのは、全面的に適用されていないということなのかどうか。すなわち、日本憲法の前文の最後の部分は、長官、すでに私が引用するまでもなしに、次のようにあります。「日本國民は、國家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」とあります。沖繩県民が日本国民であるということ、これは全くあたりまえのことだ。なればこそ、われわれは沖繩返還について全力をあげている。そうすると、沖繩アメリカ施政権下に置かれたということをもって、この日本憲法の前文の規定さえも適用されないというふうなことは、私は一人の日本国民としてどうしても納得ができない。決してそれは感情論とかムード論ではなしに、素朴な憲法論として私は納得ができない。徴税義務であるとかその他のもろもろの法律に規定された義務ではなしに、沖繩返還運動というものは、沖繩県民及び沖繩に住むところの日本国民基本的な権利であると同時に、私は、国家に対するところの、返還運動を推し進めるということは忠誠義務だと思う。そういう日本国民としての権利、基本的な権利、同時に基本的な国家に対する忠誠義務さえも、施政権下における沖繩県民は奪われておるのだろうか。だから、日本憲法が適用されないというのは、どのような意味において適用されないのか。はたして全面的に適用が排除されているのか、そういうふうに言い切ってしまっていいのか、この点についての御答弁をいただきたい。
  29. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 最初に、はっきりいたしますためだけの意味でございますが、日本憲法は二十一年に制定されましたが、施行されたのは二十二年の五月三日からでございます。  そこで、むろん御存じのことでございますが、法律論をやります場合には、きわめて何といいますか、理論の問題でございますから、理論と感情を一緒にしないで考えていかなければならぬと私は思っております。むろんその社会を支配するのは法律だけではなくて——法律というのは、私は法律を長いことやっておりますけれども、これは最後の頼みとするところぐらいに思っておりまして、やたらに法律を振り回すのは実はどうかというような気がほんとうはしております。しかし、法律論としてのお尋ねでございますから、その面でお答えをしなければなりません。  確かに憲法が制定されましたのは二十一年、二十二年から施行されました。当時、沖繩はすでに実はもう行政的には離れておりましたし、日本国領域自身がマッカーサーという連合国最高司令官によって全権を握られておった。つまり、日本憲法は確かに二十二年五月三日に施行されたとはいいますものの、実は憲法の上の実効性というものは、そのときはまだあがっておりませんで、ほんとうは、昭和二十七年でございましたが、平和条約が発効したときに実はほんとうに憲法が施行されたというのが、これまたことばじりをとらえるようでございますけれども、ほんとうに真面目を発揮したのはそのときからであるということになると思います。  そこで、その発効した平和条約によって、実は日本の旧来の領域というものはそれぞれ処理をされた。それと同時に、日本は、何と書いてありましたか、ちょっと正確には覚えておりませんが、平和条約によって主権を回復する、そういう意味で独立性を復活した。そうして憲法がそのままの姿を発揮するに至ったということでございますので、平和条約の三条によって沖繩は同時に日本の領域から離れたわけでございますから、日本憲法がそこに施行されているということは、現実に有効性を持って施行されているということは、どうしても私は言えないと思うわけです。この考え方として、現に潜在主権があるのだから、そこには潜在的に日本憲法が施行されているのだ、それが本土に返ってきたらそれは浮かび上がるのだ、そういう説明はむろんしてよろしゅうございますけれども、大事なことは——その中身をどういうふうに言って説明するかということよりも、大事なことは、じかにわれわれが直視をしなければならぬのは、日本憲法沖繩において実効性を持って適用されていないという事実そのものだと私は思います。これは遺憾なことであるには違いありませんけれども、いままでのいろいろな事実の推移あるいは法的措置の変遷等によってそうなっているということは、冷厳たる事実としてわれわれはそれを直視しなければいかぬと思うわけです。  ところで、いまお話がありますように、返還運動をする、これは実は憲法が適用されているからするというよりも、むしろわれわれの国籍法上の日本国民である、われわれの同胞である、そういう法律なんかにしがみつかなければいかぬような問題ではなしに、もっとわれわれの精神的つながりといいますか、もっと深いところに根ざした自然の声といいますか、そういうものだと見ていいのじゃないか。むしろそれに法律的根拠を求めなければならぬというような考え方は、何もそんなことを言わなくても、心情あふれる気持ちの発露として、当然これは法律の根拠などを求めずして出てくるものであって、わざわざ法律との関係を説明することもないのではないか、率直に申してそういうふうに思うわけでございます。
  30. 中谷鉄也

    ○中谷委員 なぜこのような質問を申し上げたか。言うまでもなしに、残存主権がある、日本憲法が潜在的に適用されているのだという、そのような主張、それは現実を冷厳に見てくださいと法制局長官は言われるけれども、そういう考え方がB52撤去の問題、総合労働布令の問題あるいは警察権の逮捕権の問題、あらゆる問題において外交保護権として発動してくるときの理論的な根拠になってくる。日本憲法が全面的に適用されていないという、そういう論理というのは、アメリカ施政権をほしいままに認めるところにつながっていく。だからこそ私はこの点を問題にしたい。  そこで、いま一度お尋ねをいたします。片々たる法律論をするつもりはありません。そうすると、「日本國民は、國家の名費にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」というのが日本憲法の前文の文言であります。いわゆるマッカーサー司令部によって間接統治をされておった。現在の施政権下におけるところの沖繩というものが、間接統治であるか直接統治であるかというふうな問題は別として、間接的に管理されておったとおっしゃるけれども、そのときにおいて日本憲法は、二十七年までは間接的な管理の中においては動いておったわけでしょう。同時に、施政権下において日本憲法が潜在的に生きているのだということを言うことが沖繩県民のために利益であり、沖繩県民の心情に合致し、そうして沖繩問題の解決の基本的な姿勢だと思うのですが、この問題について息を長くやります。この問題は、私は二年間、国会に出てまいりまして沖繩問題に取りかからしていただきましたけれども、あらためてイロハのイに戻って、日本憲法のもとにおいて沖繩県民とは何か、施政権下における沖繩県民とは何かということを私は問わなければならないということを最近感じました。息を長く長官と論争いたしたいと思いますけれども、いま私がお尋ねしたことについて、あらためてひとつお答えをいただきたいと思います。
  31. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 先ほど申し上げましたように、憲法が施行されてから平和条約が発効するまでの間、やはり憲法というものを、私ども内閣法制局の者としては、極力法令が憲法に適応するように、法令をつくる場合でもむろん考えておりました。考えておりましたが、これは憲法のいう秩序が、占領体制下における法の一つの秩序であったことは間違いないことでありまするから、われわれはそれを尊重し擁護すべく、われわれのできる範囲において努力をしてきた。これはだれも同じだと思います。  しかし、何と申しましても法律上は当時の占領行政下にあった。法律上の説明をすれば、これは何と申しましても憲法外の一つの権力があった。これを認めざるを得ない。その権力のもとに日本憲法というものは制約を受けておった。したがって、憲法というものは、われわれが現に享有しておるような憲法としての実効性は持っておらなかった。これはもうほんとうに認めざるを得ない。  それが平和条約が締結されてから後に、先ほども申し上げましたからくどくど申し上げませんが、真の実効性を持つようになってまいった。こういうような意味憲法の実効力を持った適用というものは、現に沖繩には行なわれておらない。これもまたどうも、世論があるかもしれませんが、認めざるを得ない。ただ、先ほど申し上げましたように、観念的に施行されているけれども現実的に適用されていないというような説明は、むろんできると思います。しかし、大事なことは、全く実効性を持って適用されているかいないかの問題でございまして、その一点に関する限りは、どうしても現在の憲法があそこに適用されているというわけにはいかない。やはり施政権を米国が持っているのと、それから施政権が解除されまして日本に返ってきた場合と、そこには何としても法律的には区別のついた説明をせざるを得ない。説明といいますか、現象を法律的には区別されなければならないということになると思うわけです。
  32. 中谷鉄也

    ○中谷委員 川崎委員のほう、から関連質問があるようでありますが、その前に私、一点だけ長官にお尋ねをいたします。  私が沖繩県民であるならば、日本国民としての権利を認められていないということよりも、日本国に対する日本国民としての忠誠義務がないんだと言われることのほうが、むしろ一そうの侮辱を感ずる。そうすると、日本国民である沖繩県民は、現在、長官の論理によれば、日本国に対する忠誠義務さえも持たない、持ち得ないような状態にあるとでもおっしゃるのですか。そんなことはとても、私は国民感情に反すると思う。憲法感情に反すると思う。許しがたいことだと思います。一体どうなんでしょう。
  33. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 最初に申し上げたと思っておりますけれども、その忠誠義務ということばでございますが、これが法律上の、たとえば憲法九十九条にありますような憲法の尊重、擁護の義務といいますか、これもまた、ある意味では忠誠義務の大きな発露だと思いますが、そういう義務だと見るのか、そうじゃなくて、われわれはもっと自然的な——よく自然法では実定的な根拠がなくてもこれは権利だというような考え方がございますが、そういう実定法の根拠を離れた義務観念といいますか、もっと法律によって初めて認められた義務という、命ぜられた義務というよりももっと深い義務だとおっしゃるのか、その辺の区別が明確ではございませんけれども、私は法制局長官でございますので、高尚な面での義務はあると思いますけれども、それではお答えにはならぬと思いますので、たとえば憲法九十九条、これは国会議員、国務大臣等に対していわゆる憲法尊重、擁護の義務を課しておりますが、むろん憲法を尊重し擁護する義務を負うのは、憲法を確定した国民一般一であることは言うまでもない。しかしこれは、現に憲法のもとに立つ国民について言えることであって、現に憲法のもとに立たない国民について尊重、擁護の義務ということは、これはちょっとおかしいのではないか。沖繩の県民は、平和条約三条によりまして米国の施政権下にある。遺憾ながら、憲法が、先ほど来申し上げているように、実効性をもってそこに及んでいるとはいえない。その意味で、沖繩住民は、憲法の保障のもとに立っているということも、遺憾ながら言、えない。  よく基本的人権は日本憲法によって保障されているかという問題がございますが、これも実定的な効力をもって日本憲法によって保障されているとは言いかねる。これを尊重し擁護する義務を負うのだという意味で、ぎりぎり一ぱいの憲法上の義務があるのだということは、ちょっと私は言いかねると思います。しかし、もっと深い意味で、哲学的意味でおっしゃるのなら、私は、これは議論していれば長くなると思いますが、そういうものはあるのかもしれないという気がいたします。あるのかもしれないというのは、はなはだどうも心細い言い方かもしれませんが、あるということは哲学的な意味では言えるのではないかという気がいたしますが、私の守備範囲外でありますので、その点はこの程度にとどめさしていただきたいと思います。
  34. 中村寅太

    中村委員長 関連して質疑の申し出がありますので、この際これを許します。川崎寛治君。
  35. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 法制局長官にお尋ねしますけれども施政権の及んでいないところに、日本憲法に基づいた日本の法律がストレートに及んでおる、適用されておるということになると、このことは憲法上どういうことになりますか。具体的にいえば、戦傷病者戦没者遺族等援護法というのは、これはストレートに及んでおりますね。だから、このことが一つ。それから、国民の要件は法律で定めるという国籍法の問題、先ほど長官もちょっと触れられましたけれども、これはもっとも二重国籍のような複雑な問題を出しておりますけれども、及んでおる。そうしますと、日本国会が制定をした法律がストレートに施政権のないところに適用されておるということ、このことをどういうふうに見ていくか。
  36. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 これは、簡単に申し上げるよりもほんとうは詳しく申し上げたほうがいいと思いますけれども、そうかといって時間は許されないと思いますので……。  たとえば国籍法、日本人の国籍法は、いわゆる属地主義あるいは血統主義という立場をとっておりますけれども、これは、外国で日本人の子供として生まれたらこれは日本国民になるというのは、世界じゅうどこででも実は適用になるわけです。そういう意味でこの沖繩にも適用があるのだといえば、これはアメリカにも適用があるし、フランスにも適用があるということになりますが、適用になるという意味は実はそんなことを言う趣旨ではございませんので、いまは国籍法の、まあ一例でございます。  もう一つ、戦傷病者戦没者遺族等援護法ですか、これは恩給法なんかもそうですが、実は私いま詳しい規定がすぐに浮かんでまいりませんけれども、たとえば恩給法なんかでも、どこの国におりましてもその要件に適合する者には金を出すというような種類のものは実はどこにもあり得るわけで、適用になるかどうかが一番典型的にあらわれますのは、たとえば日本の道路交通法あたりが沖繩に適用になるかといえば適用になっておらないというような意味の、つまり国権の意思を強制的にそこで遂行するというようなものが一番論ずるのに都合がいい問題でございますが、そこの御説明は省きまして、いまおあげになった例のものとしては、ひとり沖繩だけの問題ではない、ほかの地域についても同じように問題になる問題ではありませんかということだけ申し上げておきたい。
  37. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 それはちょっと詭弁になると思うのです。というのは、どこででも当然というけれども、これは法改正をして、琉球政府本土内の都道府県と同じようにみなすという法改正をやって初めて支給されるようになったのですよ。だから、きのうも私との応答の際に、自治体はないのだということを言っているけれども日本の法律の上では琉球政府を都道府県並みにみなすというふうにちゃんと法律では出ているのですが、その法改正をやってこれは及んだのです。だから、先ほど単なる属人法的な、属人的な権限でそれは及んでいるのだ、こうは言い切れないものがこの戦傷病者戦没者遺族等援護法の法律にはある。だから、施政権がないとあなたは言っておるけれども憲法に基づいた法律がここに、しかも琉球政府を媒体として行なわれておるという点で問題がある、こういうふうに私は思うのです。いかがですか。もう一ぺん。
  38. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 たしかそういう改正を比較的近年やったことを覚えておりますが、要するに物をやるといいますか、ことばは悪うございますが、何といいますか国権の統治権の行使、それを妨げるというのじゃなしに、何か金銭的贈与をするとか、そういうようなたぐいのものはこの適用になっているかどうかというよりも、どこの国に日本人がおりましても、あるいは外国人であっても、たとえば勲章をやるとか、そういうようなたぐいのものですと、さっき言った国権の発現というものとは多少話が——多少ところか、だいぶ法律論としては話が変わってくるものだと私は思っております。いずれにしましても、いまの御設例からは、憲法が適用になっているとかあるいは日本の法律が適用になっているとかというようなことにはやはりならない。
  39. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 そういうことが地域的にきまったのだから、二十七度線を越えて向こうに及んだのだから。
  40. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 それは何といいますか、説明がむずかしいのですが、この沖繩の住民に限らず、合理的理由があるものなら、ほかの者にそういうこともまた与えることができるじゃないか、こういうことを言いたいわけで、沖繩日本の法律が本来適用されるものであるという証拠にはならない、ほかの場合でもそういうことは考えられ得るということを申し上げているわけです。
  41. 中谷鉄也

    ○中谷委員 長官に対する質問は一応終わりますが、大臣にお尋ねしたあと、さらに一点お尋ねしたい点がありますので、しばらくお待ちいただきたいと思います。しかし、法律論として法律家が長く御説明になるときはどうも自信をお持ちにならないときという感じがいたしますが、先ほどの説明は非常に長過ぎたので、あとで私もよく速記録を検討いたします。  そこで、大臣にお尋ねをいたしますが、総合労働布令につきましては、三月一日まで施行を延期するということでございましたね。さてそこで、すでにきょうは二十七日でございますが、総合労働布令について政府アメリカに対して問題点を数点指摘されましたが、これについての交渉の経過はどういうことになっているでしょうか。結局、三月一日以降の問題については布令はどういうことになるのか、これが一点です。この問題については続いてお尋ねをいたします。  いま一つは、屋良主席のもとにおけるところの琉球政府は、数十点にわたる問題点を指摘をいたしておりますね。この琉球政府日本政府との間の、本土政府との間における交渉はどういうことになっているでしょうか。なお、琉球政府の数十点にわたる問題点の指摘、少なくとも私はしごくもっともだと思うのです。これらについてアメリカに対してさらに申し入れの追加をされるべきだと思われるが、この点はいかがですか。  それからいま一つは、要するに政府の問題点の指摘はきわめて数点にしぼられておりますが、本来この布令は、政府としても修正というのではなしに、これだけ問題点が多いのだから、撤回をして、あらためて新しい布令を出すことを求めておられるのかどうか、これらの点についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  42. 愛知揆一

    愛知国務大臣 総合労働布令につきましては、いまもお述べになりましたように三月一日までに、二つに分かれておるわけですが、沖繩人たちに対しては、琉球政府あるいは組合あるいは個人であっても民政府に対して意見を申し述べてくれという態度を民政府がとっておるわけでございます。それでまだ意見はこれからも——まああす、あさってということになりましょうが、琉球のほうではまだ受け入れる余地はある。それからこちら側は、日本政府側、外務省が窓口になりまして、労働法規の専門家も労働省にもたくさんおられるし、そういう方々の御意見総理府がとりまとめまして、そして三月一日——実を申しますと私は多少延びてもいいと思うのですが、かっちりした意見アメリカ政府側に申し入れをしたい、こう考えておりますが、申し入れをいたします場合、日本政府といたしましては、沖繩においてたとえば琉球政府がどういう態度をとられるか、これはいまお述べになりましたように大体の態度はきまったわけでありますが、あるいはそのほかのところからもどういうふうな意見が出るであろうか、こういうことも十分にらみ合わせて、日本政府としては、あるものにつきましてはそれを支持するというような態度をとらなければなるまいかと思っております。  それから、日本政府のいままでのやり方を御説明いたしますと、言及いたしますと、第十条というものは、少なくともこの労働布令という名に値するようなものではないのですね。これが一番問題だと思いましたから、これだけはとりあえずということで、すでに申し入れをいたしております。  それから、実は昨日も床次総務長官とも御相談をいたしまして、とにかく三月一日ということになっておりますから、早急に取りまとめをして、アメリカ政府への申し入れの案をいよいよ早急に固めましょうという申し入れが床次さんのほうからもございました。所管からいえば、沖繩側の動向は総理府で取りまとめられるわけですから、その辺、沖繩におけるこの問題の沖繩県の方々の気持ちあるいはその態度がどうなっておるかということを十分にらみ合わせて措置をしたい、こういうふうに考えております。  それから、もう一つお尋ねの点は布令の撤回の問題でございますが、これは率直に申しますと、この問題が起こりましたときに、これを日本政府のほうのその当時の立場としては、中身を十分検討して、直すべきととろを直すことに協力してくれという実は申し入れをいたしたわけでございます。したがいまして、従来のこの経過から申しますと、撤回ということは、これは率直な言い方でございますが、日本政府としては従来の経過からいって言いにくい立場にあります。
  43. 中谷鉄也

    ○中谷委員 いずれにしても三月十日をめどとして布令の問題点について申し入れをする、そうしてそれについてアメリカのほうからの返事がある、そしてさらにその点について協議、さらに意見の調整、さらに問題点の指摘をする、そういう作業が終わるまではこの布令は適用されない、そうして結局、大臣答弁いただきましたが、少なくとも十条、いわゆるきわめて治安法的性格が強い、一般市民に対する規制を含んでおるといわれているこの十条については、これはもう、話し合いとしては修正の話し合い、削除の話し合いはついておると伺ってよろしいのでしょうか。
  44. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはとりあえず、われわれから見て一番不合理だと思うことをまず指摘し、それから、いずれその他の点についてもすっかりまとめて、日本政府意見を固めるからそれを待ってほしいということで、もちろん期限はまだ来ておりませんししますから、今後折衝するつもりでございます。  そうして、これも従来の経過から申し上げますれば、意見を出してくれ、これはまあ形式的——またいまの法律論になりますけれども、法律的にいえば沖繩方々が民政府に対して出してくれと言っているわけで、こちらは横から協力する立場に置かれます。形式としてはそのほうが正式なんですけれども、こちらは横から申し入れをして大いに一体となっていこう、こういうことになっておりますから、アメリカ側の態度がきまるまではこの布令は施行されない、こういうふうに私は考えております。また、そうしなければいかぬので、あの当時の経過、折衝から申しましても、いろいろ意見が出る、そしてこれは撤回するなりあるいは修正するなり、各条項についてそういうアメリカ側の、民政府意見が固まれば、それを民政府から琉球政府なりあるいは沖繩方々の十分な納得と理解を得てから最終的態度がきまるんではないか、またそうしてもらいたい、こういうふうに私は考えております。
  45. 中谷鉄也

    ○中谷委員 布令の問題にちょっと時間をとり過ぎましたが、結局少なくとも十条についての見通しは、削除の見通しでございますね。
  46. 愛知揆一

    愛知国務大臣 特に重点を置いてこちらの意見をもうすでに出しておるくらいですから、わがほうの意のあるところ、あるいは意欲ということは十分向こうも理解しておるであろう、いまのところはまだ期待の段階で、いま申しましたように、全部が取りまとめて討議されなければ最終的な向こうの態度はきまりますまいから、いまこの点について、まだはっきりした回答をもらっているわけではございません。いまのところは期待の段階でございますけれども、いままでの状況から申しまして、十分彼らも理解を進めているであろう、こういうふうに考えます。
  47. 中谷鉄也

    ○中谷委員 前回、予算分科会でお尋ねをした質問をいま一度繰り返します。  沖繩原水協の発表によりますと、沖繩の核弾頭は二千四十発と推定されるということが報道されております。そこで、前回は、基地態様をおきめになるためにも、沖繩の核基地の現状を外務大臣として御確認になる必要がありますということで私はお尋ねしました。今度は、最初の憲法論に戻るんですけれども日本本土沖繩県民のために、核基地のあることについて生命の危険を感じておる沖繩県民のために、日本政府が正式の外交ルートを通じて核基地の現状、核弾頭の存在の有無等について確認を求めることは、外交保護権の行使として当然のことではなかろうか。この観点から、従来の国会における沖繩基地、特に核基地については、上院における証言であるとかあるいはアメリカの有力者の伝えるところによればというふうなことで、正式なルートを通じての確認がなされておりませんが、日本本土沖繩県民のために、日本政府アメリカから正式に核基地の現状についての報告を受けるべきではないか。いかがでしょうか。
  48. 愛知揆一

    愛知国務大臣 沖繩に核がどういうふうな状態であるか、あるいはまたないかということについては、日本政府としては、公式な立場からいえば、これはわからない。そこで、いまお尋ねのような角度から尋ねたことがあるかというお尋ねでございますが、そういう角度から尋ねたことはいままではございません。しかし、今後の問題といたしましては、もう返還の問題ということはここまで——いよいよ始まるわけでありますから、そういう場合におきましては、私ども、先ほどもこの席で申し上げましたように、われわれの平和と安全を維持するためには、沖繩基地のあり方というものがどうあるべきかということについて、われわれ、主体的な角度からの意見を固めるために必要な措置はとっていかなければならないと思っております。  なおまた、答弁が長くなって恐縮ですが、たとえば原潜の問題とかあるいはB52の問題とか、いろいろこれに関連した問題がございますが、そういう点につきましては、いわゆる外交保護権ということが通例使われます。私は、これは法律論としてどういうふうに言ったらいいのかわかりませんが、いわゆる外交保護権というようなことも考えまして、そういう角度からいままでも折衝につとめているわけでございます。
  49. 中谷鉄也

    ○中谷委員 これは大臣でなしに、外務省当局のどなたかにお答えいただきたいと思います。  要するに、核基地の確認についてどのようなルート、どのような機会にどのようなルートを通じて、いま大臣が御答弁になったような確認をされますか。事務的な問題としてお答えいただきたい。
  50. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 従来から米国政府は、核兵器の、特に核弾頭などがどこにあるかとか、どこにないとかいうことは一切発表しておりませんので、われわれ事務的にこの内容を取り上げてどうこうということは、いままでの経験によればはなはだ困難の問題でございますが、やはりこれは返還交渉全体の中の一環として、わがほうに必要な知識を向こうから得るということ以上に現在申し上げることはできません。
  51. 中谷鉄也

    ○中谷委員 大臣の御答弁によれば、いまだかつてそういうことについての要求をしたことがないとおっしゃるのですね。ですから、発表がありませんでしたと言いますが、私は発表という受け身のことを聞いているのではないのです。私、実はこの問題について、アメリカ核兵器に関する法の関係を調べてみました。いわゆる両国間政府の中において発表してはいけないというふうな規定は、私の調査した範囲では見当たりません。だから、これはひとつ大いに事務的な——私はむしろ、こういうことは、それほどトップレベルにおいてやらなければならないほどの重大な問題ではないと思うのです。事務的な問題においても早急に対応策を講じていただきたい。講ずべきであるというふうに考えます。これはしかし、局長の御答弁少し何だか——何だかというとあれですが、大臣のほうからもう一度お答えいただきたい。
  52. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私さっき申しましたとおり、従来は、いまお尋ねになったような角度からは、外交ルートを通じては聞いておることはございません。しかし、先ほど申しましたように、これから返還交渉というものをだんだんに始めていく時期になりましたから、わがほうの主体的な立場沖繩がどうあるべきかということを検討するにつきましては、この問題が含まれることが私は自然の成り行きだろうと思います。
  53. 中谷鉄也

    ○中谷委員 西風委員があとに控えておりますので、あとちょっと別の質問に移ります。  大臣にお尋ねをいたしたいと思うのですが、日米首脳会談に至るまでの足取りというのは、ASPACの閣僚会議が歩、る。外務大臣訪米される。そうして外務大臣がお帰りになってから日米閣僚会議が行なわれますね。さらに、九月の第二火曜には国連総会が行なわれる。そういうようなこと、それが沖繩返還外交交渉とどのように結びついていくのだろうかということでお尋ねをいたします。  まず、日米閣僚会議において、沖繩問題を議題にされるということについては当然だと思います。そういうように私は理解をいたしますが、まさに最重点の議題としてお取り上げになる、そうして米国からの閣僚に対して、特に世論の四五%が本土並みということを主張している、そういう国民感情、県民感情というものを率直に訴えるべきだと私は信じますが、日米閣僚会議における大臣のこれにお臨みになるところのお立場、これをひとつお答えいただきたい。しかし、何と申しましても、その以前に大臣訪米があるわけですから、外務大臣訪米にあたっては、先ほど小渕君の質問にお答えがあったように、要するに訪米によって首脳会談のレールを敷くという目的にとどまることになるのでしょうか。そうして日米閣僚会議を迎えられるわけです。しかし、愛知外務大臣訪米について、もっと掘り下げてお尋ねしなければいけないかと思いますけれども、日米閣僚会議における議題と、その中における沖繩の取り扱いとそれに臨む態度、これについてひとつお答えいただきたい。
  54. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、六月の初めにやろうと思っております会談につきましては、先ほど小渕委員にお答えしたような姿勢で臨みたいと思っております。そしてこれは主としてロジャーズ国務長官が相手でございますが、その後に考えられる日米閣僚会議でございますが、これはこの性格が貿易、経済ということが主題でございまするから、会議の主題としてはそういうことになるはずでございます。しかし、私どもが期待しておりますのは、その中に国務長官が固有のメンバーとして入っておるわけですから、この日米閣僚会議のときには、個別的な会談を今回は私は重視していきたい。ですから、いわば第二回の私とロジャーズの会談というものが東京で行なわれる、これを期待しております。それから国連総会は、また主たる使命は別でございますけれども、たまたまニューヨークで行なわれるわけでございますから、ワシントンはすぐ近くですし、またロジャーズ氏も国連総会には当然出席するであろうと思いますから、いわば第三回目のロジャーズ・愛知会談が持てるのではなかろうか。  そういうふうにいたしまして、これは非常に困難な話し合いだ、外交演説の中にも言っておきましたけれども、困難であることは万々承知の上ですから、そこで相当の期間をかけ、そしてたとえば最初の会談では、双方の態度というものが相当明らかにはなりましょうが、なかなか合意というようなところにはいかない。何べんも何べんも煮詰めながら、それで最後のお尋ねでございますが、私としては、日本の国益ということは、これを支持、理解される国民のお考えというものが何よりのたよりでございますから、そういう点はもう十分に胸に入れて参りたいと思っております。
  55. 中谷鉄也

    ○中谷委員 九月の第二火曜日からの国連総会のことですが、大臣は当然一般演説をおやりになるわけですね。このときに沖繩問題は当然お取り上げになるだろうと思いますが、国連総会において沖繩問題をどのような角度からお取り上げになるか——お取り上げになるかどうか、お取り上げにるべきだと思いますが、この点についてお答えいただきたいと思います。
  56. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、国連総会において言いたいと思っておりますことが私の頭の中にはずいぶん一ぱいございますが、これからの状況に応じて、どういうことを打ち出すことが一番日本の国益になるか、あるいは世界全体に対し、あるいは国連の運営に対して、わがほうとしては何を期待すべきであるかというようなことにつきましては、とっくり想を練り、あるいは環境を見詰めていきたいと思います。ただいまの御意見につきましても、教えられるところが非常に多いように思います。
  57. 中谷鉄也

    ○中谷委員 それでは、この機会に特連局長さんに一点だけお尋ねをしておきます。  最近、黙認耕作地の取り上げというのが新聞に報ぜられましたね。要するに、言うてみればこれは軍事基地の拡張ですね。黙認耕作地というのは、本来軍用地だなんというけれども、使わずにほっておく。そこへ黙認耕作地を取り上げているというようなことは、これは私、非常に重視します。そういう事実について、特連としてはどういうふうに対処されるか、この点をお答えいただきたい。  同時に、大臣に私はお答えをいただきたいと思うのです。要するに、施政権下にあるのだからということで、本来の基地がどんどん拡張されていくというようなことについては、これは日本政府としては当然何らかの形における申し入れをせざるを得ないと私は思うのです。そういう状況については十分な関心をお持ちになるかどうか。そうして必要に応じては、そのような黙認耕作地の取り上げに基づく基地拡張等については申し入れをされるかどうか。それらの問題について、事実関係を含んでおりますので、局長さんのほうからひとつお答えをいただきたいと思います。
  58. 山野幸吉

    ○山野政府委員 最近二、三の事例としまして、黙認耕作地を取り消すというようなことが報道されておりますが、この詳細につきましては、ごく最近の事例でございますので、まだ私のところへ詳細な報告は来ておりません。しかし、これは、実は軍用地として一応賃貸借契約でありまして、賃借料をもらって、そして一面では当分の間黙認耕作を認める、黙認するということになっておるわけでございます。その規定には、やはり必要なときには解除することがあるということになっておるわけでございます。したがいまして、これは琉球政府と耕作者あるいは米民政府、軍、その間で円満に話し合いをつけて処置していただきたい。契約の実態としては、やはり軍が必要である場合にはこれは黙認を取り消すことがあるということに一応なっておるわけでございます。したがいまして、そうかといってその黙認が取り消されることを私どもは別にどうこう言うわけじゃございませんで、というのは、それがよろしいとか悪いとかいう意味ではなくて、それはやはり現地で円満に解決していただきたい、かように考えておるわけでございます。
  59. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま山野長官からお答えがございましたが、先ほども中谷委員からお話がありましたように、私どもの関心はやはり返還問題を控えて非常に大きいわけでございます。私も、さらに十分成り行き等、具体的に事実関係も総理府のほうから教えていただいて、私どもとして発動すべきことがあれば喜んで積極的に発動いたしたいと思います。
  60. 中谷鉄也

    ○中谷委員 最後に、法制局長官に一点だけお尋ねをいたしまして、質問を終わります。   〔中村委員長退席、宇野委員長代理着席〕  実は、この問題については私、非常に不勉強ですけれども沖繩問題というのは、私は憲法問題であるということを最近特に痛切に感じますので、今後ひとつ息長く私はこの問題に取り組みたいと思います。だから、質問はきわめて素朴な形で本日はいたします。再質問はいたしませんので、長官の御答弁だけを本日はとりあえず承っておきたい。  私がお尋ねをいたしたいのは、核つきで沖繩返還される、要するに日本憲法の適用下に沖繩が入ってくる、それが核つきで入ってくるというふうな場合には憲法十三条の違反になる問題を含んでいる。法律論ですから、違反だというふうに必ずしもきょうは断定をいたしません。違反の可能性を私は十分含むというふうに考えますが、この点についてはひとつ長官の本日の御答弁を承って、あらためて再質問の機会を持ちたい。そのことにだけお答えいただきたいと思います。
  61. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 御指摘の憲法十三条は、「生命、自由及び幸福追求に封ずる國民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の國政の上で、最大の尊重を必要とする。」という規定でございますが、この規定は、言うまでもなく、国政全般についてのものであって、むろん米軍基地の取り扱いだけにかかわるものでないことは申すまでもございませんが、この中で、一国の安全を保持すること、これが公共の福祉の最たるものであるというふうにも考えられますし、また、との十三条はいろんな面からよく引用される規定でございます。たとえば一国が武力攻撃を加えられた場合に自衛の措置を講ずべきゆえんは、この十三条にあるという考え方もございます。あれこれいろいろ考えられる基礎になる規定でございますから、いま仰せのように十三条がこの問題と全く縁もゆかりもないというふうには私はあえて申し上げませんが、さしあたりの私の考えを述べるにとどまりますけれども、米軍基地の取り扱いがかりに本土並みと違った、並みではないというようなことがあったからといって、そのことが直ちに、もう論の余地もなしに十三条に違反するというようなふうには、それほど明白にそうなるというふうには私は考えておりません。   〔宇野委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、そういう問題としてはやはり十三条ということもあるということは、御指摘の点として拝聴もし、また、そういう問題点も考えなければいかぬというようなことは異論はございませんけれども、さしあたってどう考えるかといえば、いま申されたようなことが直ちに十三条に違反して違憲であると、かりに返還になってあそこに憲法ができるようになった場合のお話でございましょうが、そういうふうには断定はできないのではないか、さしあたりのお答えでございます。
  62. 中谷鉄也

    ○中谷委員 質問を終わります。直ちに違憲とはいえないという、直ちに違憲といえない点に掘り下げる問題がありますので、今後の質問に待ちたいと思います。終わります。
  63. 中村寅太

    中村委員長 西風勲君。
  64. 西風勲

    ○西風委員 それでは中谷委員が時間の関係で詰めることのできなかった問題について、まず二、三お伺いしたいと思います。  先ほどの総合労働布令の問題についてアメリカから意見を聞かしてもらいたいというような、媒体があったにしても日本政府アメリカの総合労働布令に対してかなり積極的な意見を出しているわけであります。私どもは、それ全部賛成という意味ではありませんけれども、あれを直す上で一定の役割りを果たそうとしているわけです。現在沖繩にはこれに似たような布令、布告がありますし、これからも、沖繩現地における状況の変化によって今度の総合労働布令のような、法律的に見てもかなり非常識な提案というようなものが出てくる可能性があるのではないかと思うのです。したがって、日本政府は、今度の総合労働布令の問題を前例として、そうしたものに対して積極的にアプローチしていく、同時に、これは祖国復帰といいまして毛、法律的にはそれまでにできるだけ地ならしするということが必要なわけですから、現に存在している布令、布告についてもこれに検討を加えて、本土に復帰したときの地ならしが容易になるような、積極的な立場をとるというように私どもが確認していいかどうかということをお尋ねしたい。
  65. 愛知揆一

    愛知国務大臣 労働布令の問題につきましては、私これも率直に意見を申し上げますけれども、内容も問題ですけれども、これの出し方というようなことが、いま非常識というお話もございましたけれども、そういうふうに受け取られるような出し方にも私は大きな問題があると思いますから、そこで、私どもといたしましてもほんとうに一生懸命努力してまいったつもりでありますし、今後努力いたしたいと思います。そういう角度で問題の処理に当たりたいという気持ちでございますから、今後も、そういうふうな出し方もしないだろうと思いますけれども、かりの問題としてそういうことがありましたら、同様に現在のような考え方でいきたいと思います。  それから、その次の問題は、現在ある布令、布告の問題でございます。これは山野局長のほうからお答えしたほうがもっと的確かと思いますけれども本土との一体化ということについては、御承知のように政府としても従来から努力いたしておりますが、そういう角度から、私は総理府等におかれましても十分研究しておられる、かように考えております。
  66. 西風勲

    ○西風委員 くどいようですけれども、もう一回確認します。総合労働布令の今回の問題を契機にして、これらの不合理な点については、政府はかなり積極的な態度を、これを前例としておとりになるというように確認していいわけですね。
  67. 愛知揆一

    愛知国務大臣 姿勢としては、そういう姿勢で事に当たってまいりたいと思います。
  68. 西風勲

    ○西風委員 それでは、中谷委員が出しました第二の問題についてお尋ねいたします。  先ほど、沖繩にあります米核戦力について、返還のめどをつけ、返還の内容を検討する上でこれは重要な資料になるわけですから、外務省が一定の調査をする、そういうことばを使ったかどうか知りませんが、実質的には調査をするということですけれども、それに対して北米局長からは、かなり消極的な意見があったわけです。私どもは、局長よりも大臣が積極的にやるという答弁をしたわけですから、これに従ってお尋ねするわけですけれども、これはどういう機関、どういう方法でやられるかということが一つです。それからいつまでにやられるか。それからもう一つは、この調査の結果が明らかになりましたら、報告書というようなかっこうにはならぬかもわかりませんけれども国会の関連委員会において、答弁その他の形において公表するというふうに受け取っていいかどうか、お尋ねしたいと思います。
  69. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申しましたように、返還問題を論議し、話し合っていく過程におきまして、そういうことももちろん必要なことであろうという意味で、アメリカが現にどういう考え方でどういうものをやっているかということは、私ども一つの参考というか、資料にどうしても必要なことであろうと思います。ただ、これは、返還後どうするかということにも関連いたします。それから現にあるもの等について、アメリカは従来は、あるいは現在は、返還に至るまでの間は、アメリカの軍規により、あるいはアメリカの法制によってこれを有したり備えたりしておるのでございましょうから、ほかの問題と違いまして、そういうことについていまとかくに私が申し上げることは、私としても考えなければならぬこともあろうと思いますから、的確なお答えはできません。ただ、政府としては、秘密外交というようなことは全然考えておりませんから、私どもが知り得たことの中身等につきましては、国会等におきまして返還態様あるいは基地態様というようなことが煮詰まってまいりますれば、適宜の機会お話を申し上げることは、私は、当然のわれわれの責務であろうと思っております。
  70. 西風勲

    ○西風委員 これはもう原水協が、核弾頭が二千四十発あるといった、個数が一個も違っていないというようなことはないでしょうけれども、大体確実なところを実際調査しているわけですね。現地を歩き、その基地のある周辺でさまざまな調査をやって、民間団体でさえこの程度の調査をすることができるのですから公然の秘密ですよ、アメリカ基地の内容については。秘密ということになっておるけれども、実際はほとんど公然化した部分が相当あるわけですから、そういう点については、希望として申し上げておきますけれども、できればあなたが訪米されるまでに——おそらくあなたが訪米されるまでに沖繩返還にあたっての政府原則的な立場というのを、公表されるかどうかは別にして、明らかにされるわけでしょうから、それまでにこういう点について資料を提供されるような調査なり折衝をお願いしたいというふうに思います。  そこで、法制局長官残っておられますから、中谷委員が発言しました点に関連して第三点としてお尋ねしますけれども、この間の予算分科会でわが党の川崎委員から、沖繩が核つきで本土返還されるという場合には住民投票が必要なのではないかという質問があって、あなたは政治論の立場で、これは法律論の立場じゃないと思うのですけれども、そういう必要がないというお話があったのですけれども、私どもから言わしむれば、沖繩住民の住民投票のみならず、核基地つきで沖繩返還される場合には、日本憲法に対して質的制約が加わるというように私どもは見るわけです。だから、ある意味では、沖繩の住民投票どころか、国民投票によって憲法解釈をめぐって——野党と与党というだけで三分の一と三分の二とあるわけです。あるいはさまざまな調査機関の内容なんかによりますと、中立問題、非武装問題、核武装問題を含めてどちらが多数かわからないほど、これは国会の勢力分野にあらわれている党派数だけで判断できないさまざまな内容が現実にあるわけです。だから、そういう点について、日本国民の世論を的確につかむという点では国会解散というのも一つの方法でしょうけれども、それと同時に、沖繩の核つき返還について、核が憲法に制約されているにもかかわらずそれを越えて受け入れることになるわけですから、この点に関する憲法の質的変化として、むしろ国民投票が必要ではないかというふうに考えるわけですけれども、どうですか。
  71. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいま御指摘の問題は、むしろ私は、委員のほうからの問題は政治論をおっしゃっているんじゃないかというふうに考えますが、前に川崎さんでしたかお話がございましたのは、たしか憲法九十五条の問題ではなかったかと思います。そういう意味から言いますとこれはまさに法律論になるわけですが、憲法の九十五条は「一の地方公共團體のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共團體の住民の投票においてその過半敷の同意を得なければ、國會は、これを制定することができない。」普通の法律ですと、言うまでもなく国会の両院が可決したときに法律になるというわけでございますが、その原則に対する例外として、一の地方公共団体のみに適用される特別法は、国会の議決だけでは足りないで、住民投票に付さなければいけないという規定が九十五条にございます。この九十五条の規定は、現にある一の地方公共団体、それにのみ適用される特別の法律、それはこういう制定の手続を経なければいかぬというわけで、いままでも幾つかのその例はございますけれども、今回問題となりますのは、やはり一つの国際約束でございますから、ここに言う特別法には第一に入らぬだろうし、それからまた、第二点としては、一の地方公共団体になるというのは、実は返還されてから後に国内法上の地方公共団体になるわけでございますから、これはどうやってかけることにするのか私には十分によくわかりませんけれども、いずれにしましても九十五条の問題にはなり得ないだろう、こういう御答弁を申し上げたつもりでございます。もし違っておりましたらまた改めますけれども、たしかそういうことでお答えしたと思うわけでございます。
  72. 西風勲

    ○西風委員 いまの発言じゃ納得できないのでお聞きしたいのですけれども、あなたの話は長いので、私やりますともうあなたの演説で終わりになりますから、残された時間はほかの問題に移りたいと思います。  最近、フォーカス・レティナ作戦というのが問題になっているわけですね。アメリカが大輸送演習をやるということで問題になっているわけですけれども、これはおそらく本土あるいは沖繩というようなものを含めた形の大演習ではないかというふうに思われるわけです。こうした演習をやるということについて、日本政府、外務省に対して連絡があったかどうかということをまずお尋ねしたいと思います。
  73. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いまのお尋ねは、フォーカス・レティナというアメリカの部隊空輸演習、このお尋ねでございますね。との二十五日に、在ワシントン日本大使館が国務省から、米軍の韓国空輸訓練について通報を受けました。その後二十六日、在京米大使館からも国防省発表につき連絡を受けました。現在までに米側から入手した情報によりますと、この演習の概要と目的は次のとおりでございます。  三月十五日から二十五日まで、米韓両軍は、ソウル南東約六十四キロの地点において、フォーカス・レティナと呼ばれる米韓合同軍事演習を行なう予定である。この演習には、在韓米軍及び韓国軍四千五百名のほか、米本土基地から相当の兵員が空輸されることになっております。国防省の発表によりますと、この演習の目的は、米本土内の戦略予備軍を海外に迅速に展開する能力を実証することにある、かようにされております。
  74. 西風勲

    ○西風委員 これはあなただけに聞くのは少し問題があれするかもわかりませんけれども自衛隊を含めて日本が、この演習に対して何か援助とか参加とか派遣とかいうようなことはありますか、また要請がありますか。
  75. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私のほうへの連絡、通報等によりますと、この演習の参加のための兵員輸送機は日本には関係がない、一口に言えばそういうことでございます。
  76. 西風勲

    ○西風委員 いま沖繩の問題を解決していく上で、これはもうたびたび議論されていることですから長い話はしませんけれども、アジアの安定と平和というようなことが非常に重要なわけです。ベトナム和平は、御承知のように、曲折はあるだろうけれども基本的には解決するだろうというふうに見られるわけです、それはどういう方式かというような点は、力関係その他で変化があると思いますけれども。これが終わりますと、先ばしった意見かもわかりませんけれども朝鮮で新しい危機が醸成される。七〇年ないし韓国大統領選挙前後というのが非常な危険信号になっておるわけです。こういうときにこういう大演習というものが行なわれますと、これは極東緊張激化に役立っても緩和には役立たないのではないかというように私どもは常識的に判断するわけです。したがって、日本政府としては、こういう演習は中止してもらいたい、アジアの緊張緩和にとって有害な作用を及ぼすから当分やるべきではない、そんなことよりもベトナム和平その他についてもっと積極的な提案、動きをアメリカにしてもらいたいというようなことを要求するのが当然ではないかと思うのですけれども、そういう立場はとりませんか。
  77. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは米韓両軍が合同の演習をするということでありますし、日本自衛隊はこの演習については全く関係がないということでございますから、私まだこの通報を受けたばかりで何かとコメントすることは差し控えたいと思いますが、ただ、基本的なものの認識の点については、たいへん失礼でございますが、私の基本考え方と西風さんのお話とは、私は違うように思います。つまり私が先ほど申し上げましたように、たとえばこれと直接関係なく申し上げるわけですけれども日本のとっておる日米の安保体制、またそれを通じて見受けるところのアメリカ体制というものは、やはり戦争というような危険性が起こらないように、未然に防止するというようなことが目的である。さような点からいって、こういう演習も必要であると、こういうふうな観点から行なわれているものであろう、私はこういうふうに見ております。
  78. 西風勲

    ○西風委員 私は、おそらく自衛隊その他若干の人たちが、内密のうちに参加することがあとで明らかになると思うのですけれども、きょうは時間がありませんし、まだ演習が終わってないのですから先ばしって言うことはできませんが、おそらくそういう体制になると思うのです。  そこで、私どもがなぜこれを問題にするかといいますと、最近沖繩返還をめぐって日本政府アメリカとの関係、あるいは日本政府国民との関係というような関係よりも角度が変わって、アジアの戦略体制、特に韓国、台湾というのを焦点にした沖繩問題に対する軍事的圧力というものが、沖繩返還交渉に非常にあしき影響を与える徴候が出始めているというふうに見るわけです。そういう点から見て、こういう演習に対して私どもが神経過敏になるのはあたりまえだ。  そこで、論を進めましてお聞きしたいのですけれども、佐藤総理大臣は、これはまあ新聞の報道するところですからあれですけれども、陳国府大使が帰るにあたって、私ども沖繩返還にあたっては台湾政府を心配さすようなことはしません、誤解されたら困るから、帰ったら蒋総統にうまく話してもらいたいということを言っているわけですね。それから、保利官房長官が李東元という元外務大臣に対して、韓国の安全保障に対しては、南朝鮮安全保障に対しては有害になるような、また韓国が不安を持つような形で沖繩返還交渉が行なわれるというようなことはあり得ないということを言っているわけです。そういう点があるわけですね。さらに保利官房長官は、閣議後の記者会見で、現在は特使を出すべきでないけれども、交渉が煮詰まった段階では、韓国や台湾にも特使を出して、沖繩問題について相談せざるを得ないであろうということを言っているわけですね。これは、また新聞がうそ書いているのだということをすぐあなた方は言われますけれども、これはちゃんとした記者会見で聞いているわけです。まあこういう点についてどういうようにお考えになっているか、まずお聞きしたいと思います。
  79. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、この問題につきましてはこういうふうに考え、かつ処理したいと思っております。  沖繩返還交渉の問題は、もう筋道からいってこれは日米間の話し合いの問題でございます。したがいまして、この交渉につきましては、われわれの交渉相手はアメリカである。この筋道は一つ貫いていくべきものだと思います。ただ、こういう問題につきましては、周辺近隣の諸国、友好国が関心を持っているということは、これまた客観的な事実であろうと思います。そして私ども考え方は、これは御承知のように、日米安保体制でもって貫いていくという考え方でございますから、いま日米安保条約の目的が、日本及び日本を含む極東の安全に寄与するということになっておりますから、この考え方からいけば、周辺のそれらの国々の方々に対しても御心配はないという角度で結果的に処理されることになろうと思いますから、そういったような事柄については、近隣の友好国の方々機会あればお話をすることは適当な措置であると思います。ただ、現在の段階で、いま申しましたような私の考え方でございますから、特使を特にそれらの国に派遣するというようなことは、ただいまのところは考えておりません。
  80. 西風勲

    ○西風委員 それじゃ、六月に行なわれるASPACですね、日本の伊豆ですか何かで行なわれることになっているようですけれども、ここで韓国や国府から要求があった場合に、沖繩返還問題がここで話し合いの議題にされるということはありますか。
  81. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ASPACにつきましては、ASPACには基本憲章といったような規約のようなものはございませんけれども、累次の会議で非常にはっきり確認されていることがございます。それはいまさら申し上げるまでもございませんが、相互自由に隔意なくいろいろの意見を交換し合おうということになっております。それからすでに、今回のASPACの会議につきましてはそういうことではありますが、議題の整理あるいは運営の方法等は二回にわたって東京で常任委員会、いわば運営委員会のようなものも開かれております。そういう動向からいたしまして、この種の問題が特に議題になるということは私は考えられないと思います。ただ相互の、各国の、複数国間の中での自由な意見の交換でございますから、そういう機会にそういうことも話題になることはあり得ることではなかろうか、かように考えております。
  82. 西風勲

    ○西風委員 もう少しこの問題をあれしたいのですけれども、時間があと三分ぐらいしかありませんから、あと二、三お伺いしたいと思います。  一つは、あなたは六月二日にアメリカに行かれるわけですね。その前に、五月に事務レベルでの折衝というのが行なわれると伝えられております。この六月二日までに——あなた方知らぬこと多いのですけれども、新聞に出ておるのですから、毎日、新聞を読んでください。知らなければ困るからね。よけいなことを言いましたけれども、あなたが六月に行かれるときには、白紙で交渉するということはあり得ないわけですからね。だから六月二日あなたが訪米されるまでに——自民党でも川島調査会というのが動き始めております。だから、行かれるまでに案が固まり、一定の考え方ができるというように了解していいですか。
  83. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまもお話がございましたが、私の属する自由民主党におきましてもいろいろの考え方があり、これはいろいろの方向でだんだんと合意ができつつある、またそれを期待いたしております。したがって、そういうものは、私が出発する前にできることを期待しておるわけでございます。しかし同時に、私としては、何べんもいろいろの機会に申し上げておりますように、この交渉というものはとてもなまやさしいものではございません。したがって、十一月末ごろといま予定されておりますが、そのトップ会談で国民の御期待に沿うような実りある成果ができるように努力しなければならない問題でございますから、私が、たとえば一枚の紙の訓令を六月二日にいただいていくというようなことでは、この種の今回のこと——相当の期間をかけ、また何べんかの懇談、話し合いを続けて実りあるようにしていきたい。また、その間最も大事なことは、日本の世論にこたえていかなければならないわけでございますから、たとえばおまえはこれでやってこい、やってこなかったら首だと——首になることは一向差しつかえございませんが、国益のために世論にこたえて、そして十分の成果をあげるということのためにはねばり強いやり方が必要であると思いますから、いまお尋ねのような趣旨のものが、私が行く前にできるとは必ずしも思っておりません。
  84. 西風勲

    ○西風委員 あなた方、困難だ困難だと言われますけれども、困難なのは日本国民に対してであって、アメリカに対してあなた方の交渉は困難じゃないのですよ。というのは、アメリカはロジャーズ国務長官が、もうすでにアメリカは完全に固まった意見——と言うことができるかどうかわかりませんけれども核つき自由使用の線で日本政府と交渉するというので検討を始めているし、アメリカはこの線で来るわけです。日本政府だって先ほどの佐藤発言、保利発言、さまざまある政府のあれを総合すれば、白紙白紙だと言っているけれども、世間が受け取っているのは、これはまさに、与党であると野党であるとにかかわりなく、核つき自由使用というふうに大体世間が受け取っているわけですね。だから、そういう点で日本政府が、国民世論の最大公約数というのはやはり本土並みというのが最大公約数なんですから、この点に踏みとどまってアメリカと積極的に交渉するというようにしなければ——何かアメリカとの間に困難だ困難だといって宣伝をされておりますけれども、全然困難ではないのですよ。アメリカと全く一〇〇%交渉の余地がないほど違いがないわけですから、そういう点についてはやはり国民を基盤に置いて、沖繩県民の心情を——軍事優先ではなくて、沖繩県民の心情を基盤とした返還の態度を積極的にとっていただくことをお願いして、時間が来たようでありますから、終わります。
  85. 中村寅太

    中村委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十一分散会