運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1969-07-04 第61回国会 衆議院 運輸委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年七月四日(金曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 砂原  格君    理事 阿部 喜元君 理事 大竹 太郎君    理事 徳安 實藏君 理事 古川 丈吉君    理事 細田 吉藏君 理事 野間千代三君    理事 山下 榮二君       川野 芳滿君    菅  太郎君       木部 佳昭君    中川 一郎君       福家 俊一君    箕輪  登君       井上  泉君    板川 正吾君       久保 三郎君    内藤 良平君       渡辺 芳男君    沖本 泰幸君       松本 忠助君  出席政府委員         運輸省自動車局         長       黒住 忠行君  委員外出席者         参  考  人         (交通評論家) 玉井 義臣君         参  考  人         (日本損害保険         協会専務理事) 山口 秀男君         参  考  人         (日本トラック         協会専務理事) 武藤 儀一君         参  考  人         (静岡行政書         士会交通事故取         扱員)     小松好太郎君         参  考  人         (日本ムチ打症         連絡協議会副会         長)      古瀬 雄二君         専  門  員 小西 眞一君     ――――――――――――― 七月四日  委員井村重雄辞任につき、その補欠として箕  輪登君が議長指名委員に選任された。 同日  委員箕輪登辞任につき、その補欠として井村  重雄君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  自動車損害賠償保障法の一部を改正する法律案  (久保三郎君外十四名提出、第五十八回国会衆  法第三五号)      ――――◇―――――
  2. 砂原格

    砂原委員長 これより会議を開きます。  久保三郎君外十四名提出自動車損害賠償保障法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  本案につきましては、第五十八国会におきましてすでに趣旨説明を聴取いたしておりますので、この際、これを省略したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 砂原格

    砂原委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決せられました。  これより、本案について参考人から意見を聴取することといたします。  本日御出席参考人は、交通評論家玉井義臣君、日本損害保険協会専務理事山口秀男君、日本トラック協会専務理事武藤儀一君、静岡行政書士会交通事故取扱員小松好太郎君、日本ムチ打症連絡協議会会長古瀬雄二君、以上五名の方であります。  参考人各位には、本日御多忙にもかかわらず御出席を賜わり、まことにありがとうございました。  本日は、本法案の審査のため、自動車損害賠償保険制度の諸問題について、参考人各位よりそれぞれの御立場から忌憚のない御意見を承り、もって本案審査参考に供したいと存ずる次第であります。  御意見開陳はおおむね十分程度におとどめいただくようお願いいたします。御意見開陳は、委員長指名順に御発言を願うことといたします。  なお、御意見開陳のあと、委員から参考人各位に対し質疑を行ないますから、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは玉井参考人にお願いいたします。玉井義臣君。
  4. 玉井義臣

    玉井参考人 ただいま御紹介にあずかりました玉井義臣でございます。  私は、法律にも保険にも全くのしろうとでございますので、むずかしい議論はできませんが、私が遺族の一人であるということとは別に、自賠責を論ずるには、やはり被害者を忘れた論議は無意味だという観点から、被害者立場を代表して発言したいと思います。  自賠責論議をいたしますには三つの視点からのアプローチがあると思うのでございますが、その一つ被害者救済立場であり、いま一つ事故防止立場であり、もう一つ国民経済及び私経済的な立場からであります。  従来、自賠責保険金限度額引き上げに際しまして議論中心になりましたのは、ややもすると被害者あるいは事故防止観点を忘れ、国民経済的な立場議論されていた、その結果、非常に極端なことをいえば、被害者はモータリゼーションの伸展の犠牲になったというような節がございます。たとえば、いま盛んに世間で報道されております、あるいは私が関係していることではありますが、交通遺児の問題ですが、交通遺児の四割が貧困家庭に転落している、また、交通裁判で判決をもらっても、その三七%がから手形、つまり一文も相手から取れていないとか、あるいは途中で月賦が取れなくなったというような状態で、支払い能力のないために、被害者が非常に苦しんでおります。  で、今回の自賠責論議するにあたりましても、保険収支大幅赤字、一説にいわれる損保で四十三年度分ですか、千七百億の赤字があるということから、議論中心保険料率引き上げ幅に移っているように思えるんであります。そして被害者のことは、二の次にされているような印象を私は受けるわけであります。しかし、申すまでもないのですが、交通事故には、いまや事故防止に対するきめ手はありませんで、事故自動車台数の伸びをはるかに上回って、急激にふえております。しかも負傷者は、ことしになって急激に伸び、年度末には百万前後になるといわれております。  そこで私は、いまこの自賠責問題点論議するにあたって特に重要であるという負傷者の問題について、二点ばかり簡単に述べてみたいと思います。  その前に、本委員会の審議の案件であります自動車損害賠償保障法の一部を改正する法律案に対する私の意見でございますが、これは趣旨説明にもありますとおり、現在、自家保障を行なっているものの事故率も多くなってきておりまして、この自賠法ができました当時の状況からは、かなり変わってきているし、あるいは被害者立場から見ましても、自家保障者あるいは適用除外車保障解決がおくれぎみであるというような意味も加味しまして、この際、久保議員外十四名提出改正案については、全面的に賛成するものであります。  ところで、私の先ほど申し上げました負傷者に対する保障の問題でありますが、まず第一に問題にいたしたいのは、自賠法による診療が、一部医師金もうけ主義に走らせると申しますか、非常に医療費についていろいろなトラブルが起こる傾向が出てまいりまして、そういう治療費高騰二つの弊害をもたらしてきているんではないかと思います。  その一つは、先ほど申し上げました千七百億の赤字一つの大きな原因になっているんじゃないかということ、あるいはもう一つは、救急医療の質が低下してきているんじゃないかということであります。  まず、千七百億円赤字の一因になっているということでございますが、御承知のとおり、交通事故治療には、自賠診療のほか、健保国保などによる保険診療、あるいは労災による診療があるんでございますが、大別しますと、自賠診療保険診療になるかと存じます。  それで、両者を比較しますと、もうこれも御承知のとおりでありますが、医療の一点単価保険では十円でありますが、自賠診療では慣行料金に従っておりますので、いま大体十五円から二十円ぐらいの料金を取っているといわれております。薬その他についての治療のしかたについても、健保診療では制限を設けておりますが、自賠診療ではいわゆる自由診療で、まあ医師の思うままの診療ができるということでございます。  それからもう一つ非常に重要な点は、保険診療の場合、その診療内客をチェックする機関があるのに対して、自賠診療では審査機関がない。このために、非常に過剰診療があったり、水増し請求が出てくる素地が、この制度内にあるんじゃないかと思います。たとえば、これは佐賀県鳥栖の例でございますが、三時間の診療に対して三百六十五本の注射を打ち、六十万円の治療費請求した。そのお医者さんは検挙されまして、過去に一千万円を保険会社からだまし取っていたということが明らかになったといわれております。また、私が相談を受けました八王子の事件では、一件当たり、一カ月の治療に百二十数万円の治療費請求され、訴訟に持ち込んだ例がございます。この場合、患者のほうは当初から保険診療医者に申し出たのでございますが、医者のほうで再三保険診療を拒否しているという事実がございます。これは大なり小なり、地方でも問題になっておるのでございますが、露骨に拒否するんでなくても、えんきょくにそれを断わるというようなことがあって、非常に弱い立場被害者がずるずると自賠診療で高額の治療費を取られているというような傾向が、各地で見られているようであります。  いまの自賠診療による治療費高騰というのを数字的に裏づけてみますと、昭和三十九年に傷害者の自賠請求のうち、五万円が治療費に相当したのでございますが、これが四十二年には十万円、ちょうど倍になっております。もちろん、人件費や新薬などが高くなっているという面もございますが、傷害一件当たり平均保険金額が十万円というのは、非常に高いという感じがするのであります。  大体、交通事故負傷患者を大別しますと、軽傷中等傷重傷、重篤の三種類に分かれるのでありますが、かすり傷程度のもの、つまり、軽傷は十人のうち五人ぐらいだといわれております。中等傷といいますのは、多少時間がかかりますが、時間をかければ命に別条はないという骨折のようなものですが、これが大体十人のうち三人から四人だといわれております。もう一つは、頭部外傷胸部外傷腹部外傷、脊損、大腿部複雑骨折なんかですが、これは重傷、重篤というところに数えられておりますが、これが大体十人のうち一人から一人半だというふうに統計では出ております。そうしますと、やはりかすり傷を含めて、現在治療費が十万円になっているということは、ここにかなりお医者さんのほうでの取り過ぎがあるんじゃないかということが考えられるんじゃないかと思います。  そこで、この医師過剰診療水増し請求をチェックする方法としまして、私は二つの点について案を出してみたいと思います。  その一つは、いま健康保険は一割も使われておりませんが、この健保適用国民に周知せしめて、健保使用交通事故医療に当たらせるようにすれば、かなりの赤字はカバーされるのではないかというふうに考えられます。  第二点は、健保国保にありますように、審査機関を自賠にも設ける必要があるのではないかということです。これで診療内客を詳しくチェックすれば、これもまた赤字を少なく食いとめる一つ方法になるのではないかと思います。  次に、私は被害者立場で特に申し上げたいのは、医者が――一部の医者かもしれませんが、そういうふうに、非常にどぎついことばを申しますと、交通患者を食いものにするために、いまの救急体制にひずみが出てきたということです。  御承知のとおり、いまの救急医療の仕組みは、交通事故にあいましたら、現場から直ちに救急車に乗せられて、もより救急病院に運び込まれるのでありますが、そこに治療能力施設が十分であれば問題ないのでございますが、先ほどの重傷、重篤の、十人のうち一人ないし一・五人という患者に対しては、大多数その能力施設が整っていない病院だと見てよろしいかと思います。そこで、この際、救命のためには、専門医のいる大学病院へ運び込む必要があるのでございます。  いま一つ数字をあげますと、いま死者の七割から八割が頭部外傷患者でありますが、そのうち三割は、専門医が的確迅速な診療を施せば助かるのでではないかといわれております。しかし、一方で重傷どもうかるという医療が厳然としてある限り、つまり、悪貨が良貨を駆逐しているような現状である限り。この、もより救急病院専門医のいる大学病院ないし大病院とのパイプは詰まっているわけでございます。ですから、そのパイプを結びつけるためにも、交通救急医療がもうかり過ぎてはいけない、むしろ極端にいえば、救急医療というものは、もうからないのが原則なんでありますから、医療健保によってかなりぎりぎりの線で行なわれるようなものになりますと、勢いその重傷者は大病院に転送されるというようなことが期待されるのではないかと私は思います。片一方重傷者受け入れ体制を整備する必要があることは、言うまでもありません。それは各都道府県に五十床ないし百床ぐらいの救急センターを設置しまして、そこで独立採算制のもとに、赤字を国ないし都道府県がてん補すれば、重篤者重傷者に対する適切な治療が行なわれるのではないかと思います。  次に、第二点でありますが、今度、保険金引き上げで、うわさによりますと、傷害の五十万円は据え置きになる公算が大であると聞くのでありますが、これはやはりどうしても、いまの倍額の百万円程度に上げていただきたいと思うのであります。  言うまでもなく、重傷者の割合は変わりませんが、非常に交通事故がふえておりますので、重傷者、重篤者の絶対数は、勢い増加しております。そうしますと、そこの重篤者の場合、治療費が非常に高くかかりますために、休業補償費慰謝料が取れない被害者が多く出ております。片一方で不正な医療をチェックしながら、片一方休業補償慰謝料を多く取れるような体制をつくらなければならぬのじゃないかと思います。  もう一点は、休業補償費が所得、物価上昇によりまして相対的に、五十万円のワク内で占める地位が少なくなってきているんじゃないかということです。ですから、いままで、たとえば三カ月の休業補償が得られた人たちが、あるいは得られた傷の状態人たちが、いまでは物価上昇で二カ月分の補償しかもらえないというようなことになるんじゃないかと思います。  もう一つは、慰謝料の一日千円が据え置かれるとしますと、これは片一方死亡保険金が上がり、死亡慰謝料が百万円から二百万、いまもう四百万くらいに上がっているときに、こちらのほうだけ三期間据え置きというのもおかしいんじゃないかと思います。  時間が来ましたので、ざっぱくですが、この辺で終わりたいと思います。(拍手
  5. 砂原格

    砂原委員長 ありがとうございました。  参考人各位にお願いをしておきますが、多数の方々がお出かけいただいておりますので、時間は十分程度で御趣旨説明をしていただいて、後刻また質疑応答でお答えをいただきたいと思います。  山口秀男君。
  6. 山口秀男

    山口参考人 ただいま御紹介いただきました日本損害保険協会専務理事をしております山口でございます。  私は、この昭和三十年にできました自賠の法律というものの重要性は、今日ますます重大さを加えているというふうに考えております。それで私は、本日は、この保険の窓口をあずかっております保険会社側の者といたしまして、この保険の最近の傾向と申しますか、そういうことを簡単に申し上げさせていただきたいと思っております。  すでに先生方は、今日の自賠責収支状態というようなことは御承知のことでございますが、先ほど玉井参考人からもお話のございましたように、自賠責収支と申しますものは、昭和四十三年度の契約についての支払い保険金が全部出てしまうという時点におきましては、千七百億円ほどの赤字になる。そのときには、千七百億円ほどの赤字になる。そしてその数字は、きわめて正確さを持った数字であるというふうに推算されておるわけでございます。ただいまの保険料率は、昭和四十二年の八月に、この法律死亡限度百五十万円を三百万円まで引き上げられましたときに、その当時の推定黒字と申しますか、それを昭和四十二、四十三、四十四年の三カ年間で吐き出そう、そして正当な料率にしようということで料率算定があったわけでございます。昭和三十年に始まりましたこの法律は、昭和三十八年ころまでは、少しずつですが、毎年毎年ずっと赤字を計上しておったわけでありまするが、その後、三十九年、四十年あたりから、自動車台数がふえるとか料率が変わるというようなことになりまして、少々の黒字を計上したというのが実情であったのでございます。  その当時、だんだんと交通事故も多くなりますので、その防止対策というのが官民あげて盛んになってきておったのでございます。それで、その当時この料率算定をいたしますものにつきまして、事故率防止対策というのが、うまくいくならば横ばいということでとどまるのではないかというような推測をいたしましたので、ただいま申し上げましたように、たとえば死亡の場合の百五十万が三百万ということになったわけでありますけれども保険料率のほうは平均して一割ちょっとの引き上げ、こういうことでやったわけでございます。  ところが、その後、予想に反しまして事故がどんどんとふえてまいりまして、警察庁統計がございますので、すでに皆さん承知のようでございますが、事故が爆発的に多くなりまして、特に死傷者増加が四十年を底といたしまして急激に増加しまして、四十年度の指数を一〇〇といたしますと、四十三年度末には一九二・二というように、大幅な増加を来たしたようなわけでございます。これは、死傷者の数で申しますと、警察庁統計によりますと、四十年度は四十三万八千百五十人というのが、四十三年度は八十四万二千三百二十七人、こういうふうにふえているわけでございます。これは、交通事故が非常に大型化いたしまして、一事故当たり死傷者が非常にふえてきたわけです。それで、私どもが最初予測しましたようなのが、大番狂わせになるという結果を来たしたようなわけでございます。  これは、交通事故が非常にふえますにつれて、保険事故請求がどしどしふえるということも当然のことでございますが、また、一件当たり支払い単価が非常にふえてきておるわけでございます。昭和四十三年度中にこの請求を受け付けました件数は、五十五万九千九百九十七件ございます。四十年度当時の受付件数を一〇〇としますると、ただいま申しました五十五万九千というのは三〇三というのですから、三倍になったということでございまして、非常にふえているという数字でございます。傷害事故の一人当たり支払い単価でございまするが、四十一年度の契約では十七万一千円でございましたが、四十三年度の契約になりますと、これが二十万二千円ということになっております。一件当たり約三万円、二年間にふえているというような大体の推測がここへ出てきておるわけであります。  こういうことでございますと、いままで申し上げましたような傾向、それからそれに基づくいろいろな資料によって試算をし、分折をいたしますと、ただいまの保険料率は、危険に適応した率からいうと、半分以下だというようなことがいわれるわけでございます。  そういうことでございまするから、この保険料率を一日も早く正当な料率に直しませんと、だんだんと雪だるま式赤字がふえてまいります。そしてその結果は、保険料引き上げということもだんだん幅が大きくなるにつれて、やりにくくなるというような結果も出てくるかと思うわけでございます。それでそのままでおきますれば、もう皆さんも御想像願えますように、自賠法がこれでうまくやっていけるかと後悔するのじゃないかというようなことになりかねないのでございます。そういたしますと、交通事故被害者救済というようなことがうまくいかない、その保護に欠けるところがあるというような、非常に憂慮すべき状態になるのじゃないかということを憂慮するわけでございます。  先ほども申し上げましたとおり、昭和三十年にこれが発足しておりますから、もう十三年たっております。それですから、いろいろと制度上もそれぞれ考えなくちゃならぬことが非常に多く出てきていると思うのであります。現在、各方面からの改善要望といたしましては、医療費が少し高いようだが、これをもう少し考えなくちゃならぬではないかという点があります。それからまた、事故発生をした車からは保険料を少し高く取るべきではないかということであります。ただいま御案内のように、事故車無事故車も、一律に強制保険で同じ料率をちょうだいしているようなわけでございますので、事故を起こしたような車からは、保険料は高く取れというような御意見でございます。また、運転免許証を持っている人がいま二千五、六百万人おられると思うのでございますが、そういう人たちを対象にして、保険契約さしたらいいではないかというような貴重な御意見もいただいておるわけでございます。それで、それらにつきましては、私どもといたしましては、慎重に御意見を研究さしていただきまして、できるだけりっぱな体制ができるようにというようなことを考えているわけでございます。  ただ、これらの制度を改善するということは、ほんとうに大事なことでありまするが、これはあくまで安全な運転を促進する、それから、被害者救済を第一に、主として考えるということが大事でございまして、これで保険料を押える、値幅を押えるというようなことを支持するというような考えではぐあいが悪いのじゃないか、こういうふうな考えでおるわけでございます。  時間も参りましたようでございますので、簡単でございますが、私の意見を終わらしていただきたいと思います。(拍手
  7. 砂原格

    砂原委員長 ありがとうございました。  次は武藤儀一君。
  8. 武藤儀一

    武藤参考人 日本トラック協会専務理事武藤でございます。  国会議員先生にはいつもお世話さまになっておりまして、厚くお礼を申し上げます。  本日は、自動車損害賠償責任保険制度につきましての意見を述べろということであがったわけでございますが、まず、本日の委員会に提案されております適用除外車の廃止の問題、自家保障者の問題につきまして、簡単に意見を述べたいと思いますが、現在、提案理由の中にもございますように、国、都道府県、三公社、指定都市等の車につきましては、強制保険適用を除外されておるわけでございまして、そういう車で事故にあった人は、直接その役所と交渉するというようなシステムになっておるわけでございますが、実際問題としまして、被害者――そういう車の被害を受けられた方たちがそういう役所と交渉するということは、かなり苦痛な場合が多いのじゃないかということは察せられるわけでございます。したがいまして、こういうような現在の適用除外車強制保険プールの中へ入っていただいて、ほかの自動車と同じように、被害者救済を受けられるというような形を取り入れるべきじゃないか、私もそう考えておるわけでございます。  次に、適用除外車のうちで自家保障者の問題でございますが、現在、強制保険制度の中で自家保障者が約五十社ばかりあるわけでございますが、自家保障者メリットとしましては、自家保障の許可を受けておやりになっておる方々につきましては、それぞれ自分の会社のことでございますので、できるだけ事故件数を少なくして、自社の出費を少なくしようという努力をされておるわけでございまして、その面につきましては、事故防止上大きなメリットがあると存ずるわけでございます。  ただ一つ問題は、自社事故経費を減らすために、なるべく損害賠償額を少なくしようというような動きがありました場合には、これは被害者救済上非常に好ましくないということになるわけでございまして、事故防止の面ともう一つ被害者保護と、両面から問題を検討しなければならないと思います。運輸省のほうでも、自家保障者につきましてはよく監督されておるわけでございますが、被害者保護に欠けるというような面が顕著でございますれば、自家保障制度を廃止しまして、強制保険プールへ入れるとか、あるいは自家保障者の場合につきましても、国の保障事業に対する被害者の直接請求制度を取り入れるとかというような形によりまして、被害者救済措置がとられることが好ましいかと存じます。  そのほか、保険制度全般につきまして十四年経過しておりまして、その間にいろいろ改善は行なわれてきておったわけでございますが、最近に至りまして、大幅赤字の問題に関連しまして、現在の保険制度自身につきまして、いろいろ議論が出ておるわけでございますが、まず最初は、現在の保険制度では、一度保険をかければ、その保険期間の間に何回事故を起こしても、保険金がもらえるという形になっておるわけでございます。何か悪質な者を奨励するような形になっておるわけでございます。これは自動回復制といっております。この自動回復制を廃止するという一つ考え方がございますが、自動回復制を廃止いたしまして、事故を起こしたら、そのとたんに保険契約が失効するということになりますと、次の車検までその車が保険なしで走る可能性が出てくるわけでございまして、無保険で走らないような担保措置が考えられなければならないと思うわけでございます。  次にもう一つ事故を起こした車から次に保険契約をかけるときに割り増し保険料を取るという方法一つ考えられるわけでございますが、これにつきましても、技術的に問題がありまして、現在、保険契約をかけるのは、国内三十何社のどの会社にかけてもいいわけでございまして、A会社につけておって事故を起こした、あそこへ行くと割り増し保険料を取られるから、B会社へ行くというようなことが可能でございまして、何かそういうチェックの方法が必要で、現実問題として、その技術的な解決が必要かと思います。  次に、ドライバー保険制度が各方面で提唱されておりまして、ユーザー関係あるいは自動車関係業者で組織しておりますところの自動車会議所でも、ドライバー保険制度を導入すべきであるというような意見、結論が出まして、関係方面へ陳情しておるわけでございますが、非常に運転免許者がふえてまいりまして、その後、一たん運転免許を受けた人は、自動車を持っておらなくとも、運転免許証を持っておる以上は、ときどき車を使うという可能性がありまして、ときどき使うということが、非常に事故率の多い結果になる場合が考えられるわけでございまして、ドライバー保険制度を導入すべきだと私ども考えておりますが、ただドライバー保険制度を導入しました場合に、現在の保有者責任に基づきましたところの損害賠償責任保険とどういうふうに調整していくか、制度上の調整の問題が理論的に一つあるわけでございます。一つ事故に対しまして、現在の制度による保有者責任保険運転保険と、両方の保険が働くという形が考えられるわけでございますが、その場合、プールしてやるのか、どうするか、考えれば簡単なことかもわかりませんが、法律的、理論的に検討すべき問題点があるように思われます。  次に、保険料大幅赤字の問題に関しまして、医療費の問題が私どもの業界あるいは自動車ユーザー側でいろいろ議論の対象になっておるわけでございますが、自賠責保険におきましても、健康保険あるいは労働災害保険と同じような基準を制定していただくか、あるいは健康保険適用されるようなシステムを考えていただきたい。労災保険におきましては、労災保険指定医制度がございまして、労災保険指定医の協会が、その指定医の実際の診療をたびたび監査しているというような形をとっておるようでございますが、健康保険の導入が困難であるとしましても、せめて労災保険並みの基準に持っていっていただきたいと思っておるわけでございます。  さらに、休業補償の基準も制定していただきたいということも考えておるわけでございます。現在の大幅赤字に関連しまして、一挙に何倍というような値上げ率が出ておるようでございますが、赤字につきましては、この保険制度は、ここ三年や五年でなくなる制度でございませんので、赤字は長期にわたって解消するという計画で考えていただきたいと思っております。これから新しく車を持って保険をかける人たちにつきましては、自分たちと何にも関係のない赤字についての負担を受けなければならない、理論的に非常に割り切れない問題があるわけでございまして、長く薄くというような考え方をとっていただきたいと思っております。  さらに、恒常的には保険収支を毎年度検討していただきたい。ためておいて、急にどかっと大きな赤字を出して、何倍というような料率の改定をされましても、保険料を支払うほうの立場に立ちますと、それを何とか事業収入の中で回収しなければならない。最終的には、保険金でもらえるではないかということになりますが、保険料は前払いでございまして、保険金をいただくのは半年か二年先かというようなことになってくるわけでございまして、保険料を支払う側としましては、何とかさしあたりの収入のところでその保険金を調達しなければならないということになるわけでございまして、将来、保険料収支を毎年検討されまして、大幅な料金改定ということが起きないようにしていただきたい、こう思っているわけでございます。  時間も来たようでございますが、以上簡単に私の意見を申し上げさしていただきました。ありがとうございました。(拍手
  9. 砂原格

    砂原委員長 ありがとうございました。  次は、小松好太郎君。
  10. 小松好太郎

    ○小松参考人 私は、静岡行政書士会の交通事故を取り扱っております小松好太郎であります。  まず最初に、本案提出は、私ども行政書士といたしまして、毎日日常業務上これを取り扱ってまいっております関係上、この法案を通していただくことにたいへんな期待を持っております。  静岡県の行政書士会は、四十二年度におきまして、自動車事故の悲惨な状態を何とか解決しなければいけないだろうということから、有志が集まりまして、会に交通取り扱い員制度を設けていただくようにいたしまして、自治省、運輸省等にもいろいろお伺いを立てまして、自賠法に基づきます諸制度でございますが、責任保険、責任共済、自家保障者、政府保障事業等の書類作成を業とすることを許されております。  それからまた、今後は社会保険労務士という問題がございますので、その取り扱いの範囲をいろいろ協議しておりますが、交通事故におきましては、先ほどから参考人の皆さまからのお話もございましたが、健康保険、労災等の使用、国民保険等の使用について、一般のお方が手続を十分熟知されておらないために、これが使われておらない、活用されておらないということで、その手続書類等についても、私どもの業務の分野として取り扱っております。  この改正案の必要といたします理由は、もうこの説明書のとおりでございます。現実に事故状態を取り扱っておりますと、全くこのとおりでございます。私どもが日常、自賠法におきます諸制度の不備な点、被害者に非常に不利な点、この点を解決したい、これを解決しなければ被害者救済はできないんだ、こう考えておりましたときに、この改正案の御提出がありましたことは、私ども行政書士の交通事故取り扱い員としては、双手をあげて賛成いたし、また、これの施行を望んでおります。  もう諸先生方は十分御承知だと思いますが、自賠法が制定されました当時から考えてみますと、現在の自動車の進歩というものは、全然予測もしてなかった状態の発展性でございます。それとともに、この自動車が危険物といわれておりますために、それから派生いたします交通事故というものが、現在の道路状況その他から考えてみまして、当然これを防止し、また、減少するということは、困難なような状況にあると私ども考えております。これを、できた事故の事態の被害者救済するためには、この自賠法による以外にはない。しかし、自賠法による以外にないが、それが被害者救済のために欠陥があっては、せっかく世界に冠たる自賠法だといわれておりますこの法文も、何も値打ちがなくなってしまうのではないか。ここで私どもはこの法案の改正というものを心から待っておる。  たとえば、簡単に例を申し上げますと、いままでの自動車事故の場合は人対車でございました。現在は自動車の性能の状態、また、皆さまお使いされる量によりまして、車対車の事故が多数発生してまいっております。この場合、事故の事実として、自家保障者また適用除外車と責任保険、または共済に付保されております車と衝突いたしました場合、取り扱い上、いままで単独の場合でも、なかなか困難がございました。ましてや、今後二重衝突、三重衝突があった場合、単一な手続ができない。せっかく損保さんのほうにおかれましても、査定所を設けられて、いろいろ苦心されて、損害の算出をなさっておられます。それが片方の車は自家保障者であるために、会社が任意でやるんだ、片方の車は付保険者であるために、損保さんのほうで査定所でいろいろ査定をされる。この差というものができております。現実に私どもがいろいろ書類を申請をいたしまして書類を出しますときに、何といっても正確な損害を出してくださるのが損保さんであります。その次に、さらにこれは制度がつくられてから新しい機関でございますので、どうしても責任共済における損害のほうの算出のほうが、損保さんから比べますと、われわれとしては低いような感じがいたしてならないのです。これにまた自家保障者となってしまったらば、これは自家保障者というお立場がお立場でございますから、自己防衛ということが第一主眼になられると思います。この両損害額の算定というものは、また低いということになっております。また、国の場合、大きないわゆる適用除外車の場合には、被害者の力のあるものならばよろしゅうございますが、一般国民の場合には、これにいろいろ交渉いたしますことは非常に困難でございます。私どものところへもおたずねくださいまして、いろいろ手続書類をつくりますが、それでも困難がございます。これを一元化していただき、単一化していただきたい、これがまず被害者救済できる基本的な条件になると私は思っております。  それで私どもお願いしたいのは、できるならば――今日の間まで苦心をされた損保さんの査定の項目、これと共済もむろんおつくりになっておられます。できるならば、共済のほうに私どもが書類を差し出しましたのが責任共済のほうからそこで御審査いただくよりも、損保さんのほうにお回し願っていただいて、それで同じような形態でやっていただきたい。むろん自家保障者についても、そういうような気持ちがあります。自家保障者においても、被害者の仮払い制度も認められておりますけれども、現実の問題においては、全額示談をしなければ、なかなか損害金が渡されないという事実でございます。こういうことは私どもの――損保さんのほうにつきましても窓口が十八社、外国保険も入れますと、それぞれ二十何社、これで被害者というものは、それですらまごついております。これに被害者救済する制度が四制度もあるんだということは、ますます被害者を困難におとしいれておる。これはどうしても単一にしていただきたい。それで、いままでの問題につきまして、損保さんのほうでもいろいろ苦労なすっておられて、この問題をやられておりますので、できるだけその機関を単一的にしていただきたい。  しかし、ここで最後に私が申し上げたいと思いますのは、損保さんのほうは、保険におきます損害金のてん補ということが主体ではないかと私は思います。それで私は、できるならば、いまの自動車御当局のうちに、自家保障を御廃止なされば、当然その分野の方がおあきになると思いますので、そのお方々にひとつぜひともお願いいたしたいのは、この被害者のいろいろの問題を保険会社という形、従来のようなぐあいに、自家保障者というような形ばかりではなしに、もっと総括的な調査機関、いわゆる相談処理機関というものを設けていただいて、それでそのもとにわれわれ行政書士が書類を提出することができる、それでその損害額について損保さんのほうでいかに補てんをするか、こういうようなことになってまいりますれば、当然いままでの保険補償金に対するいろいろの問題が派生しなくなるのではないかと私も考えております。  それから静岡県におきましての例を申し上げますが、先ほどから社会保険、労災等の御使用の問題にいろいろ御疑義がございましたが、静岡県では河瀬先生という方が、自動車事故につきましては、世間から医者がとかく疑惑の目を持たれておる、非常に治療費が高いといわれておる、そういうことを防ぐためには、業務上の場合は労災を使え、それから会社のつとめの方は健保を使え、一般の方は国保を使えということを御提唱なさっております。私ども行政書士会の交通事故取り扱い員も、河瀬先生の御意向と手を握って現在やっております。ここにもございますが、ちょうど日本トラック協会専務理事さんにも、医師会のほうから行政書士の事務所を使っていろいろのことをする、そうすれば、そのときに第三者行為、手続その他をやってくれるのだ、実際にはこういうことで私どもは進んでおります。現在、静岡県において、その第三種の保険に対する給付を拒むような医者は、われわれはあまりよくない医者だということで、できるだけそういうことの適用のできるところへお入りになるように、途中からでもどんどん転院させておる場合もございます。こういうことでございます。  まだいろいろ自賠法の実際の施行につきましては、もっと具体的に申し上げたい事実、私、去年でも百五十件くらい保険請求、また、いろいろのことについての書類をつくっております。実際持ってまいれといわれれば、資料を持ってまいります。個々のことについても各あります、各ありますということを御報告申し上げて、諸先生方の御参考にさせていただきたいと思っております。私どもがほんとうに待望しておりましたこの一本化の第一歩を踏み出す法案の提出でございますので、双手を上げて賛成をいたします。これを早く実現していただくことを念願しております。  簡単でございますが……。(拍手
  11. 砂原格

  12. 古瀬雄二

    古瀬参考人 私は、日本ムチ打症連絡協議会古瀬でございます。  当然のことながら、交通災害の被災者の立場から、自動車賠償保険制度に基づく自賠責の問題について、二、三の問題点について意見を述べたいと思います。  御存じのように、交通事故は非常に激増しています。その中で、特に昨年は八十四万人、つい最近の警察の発表を見ましても、すでに死亡者がこの上半期で七千三百五十六人、一日平均四一・一人、これもまた史上最高の数字だということを警察庁で発表しております。このように、非常に交通事故死傷者が急増しているわけです。したがって、この交通事故の被災者の保護救済という問題は、非常に重要な問題になっていますし、緊急を要する問題であるというように私たち考えております。  そういう状況の中で、いわゆる自賠法に基づく、自賠責保険制度は、いまさっきからいろいろ出されておりますけれども、現状では非常に不十分であり、現状の中では交通の災害者が非常に苦しんでいる。そういう実態を、私たちは毎日見てきているわけです。  一番大きな問題の第一は、自賠責保険は、被害者の損害のうち一定限度額までの分を支払う、つまり最低保障制度になっているわけです。その限度額が、死亡の場合三百万円、傷害の場合五十万円ということに現行なっているわけです。ところが、まず最初に死亡の問題を見ましても、先ほど来からいろいろいわれておりますように、その治療費だけでも、すでにこれは朝日新聞等の例を見ますと、二週間で二百万円の治療費を取られたというような問題や、わずかな期間に何百万という治療費を取られているという実例が非常にあるわけです。遺家族はそうした治療費請求を受けて、非常にあたふたしているというような事態があるわけです。そうしますと、ほんとうに遺族に残されるのは、現行の三百万円の中では非常に少ないものであるし、今後生活していく上では非常に暗たんたるものがあるのじゃないかというふうに思います。こうした実例は非常に多いわけです。今日日本の場合には世界第二の自動車生産国になっているということであります。しかし保険状態は最低というようなことが新聞等にも書かれているわけです。死亡に対する欧米の補償の相場を見ますと、大体二十万から三十万ドル、つまり七千二百万から一億八百万円というぐあいに新聞なんかでは発表されています。具体的にいいましても、スウェーデンが最高ですが、七千万から一億八千万、フランスの場合で三千六百万、英国の場合で、営業車が三千五百二十八万、自家用車で一千五百十二万、ノルウェーが一千万、ドイツが九百万、アメリカが一千八十万等々、こうして国際的に見ますと、非常に自動車の生産は高まっているにもかかわらず、その被害者に対する賠償保険制度は非常に悪いということがいえるんじゃないかというぐあいに思います。したがって、私たちは、こうした死亡についての保険金も大幅に引き上げることが必要だと思いますし、当面としても、一千万円ぐらいに引き上げていただきたいというぐあいに考えておるわけです。  さらに、傷害の場合の五十万円について申し上げますと、この五十万円については、今度の中では何か据え置きになるようなことがいわれておりますけれども、これは非常に問題のあるところじゃないかというぐあいに考えております。この点についても、五月に横浜市内で起きた事故を見ましても、先ほどの治療費の問題を見ましても、十八日間で九十一万円以上の請求を受けている。そして、その後も治療を続けなければならないというような事態の被害者がいるわけです。警察が発表しております重傷患者、つまり初診時一カ月以上の診断治療をしなければならないという重傷患者は、今日非常に多いわけです。こうした重傷患者は、当然、今日の五十万では治療を済ますことはできないというぐあいに私たちは思います。  また、最近問題になっております追突事故等によるむち打ち損症の場合には、いま盛んに厚生省、運輸省その他いろいろ研究はされておりますけれども、今日なお医学的には、はっきり究明はされておりませんし、その治療方法は確立されておらないわけです。したがって、病院によってそれぞれ治療方法が違う。患者はいろいろな症状を訴えている。皆さんも御存じのように、運輸省の船舶技研でサルの実験をやりました結果の中で、むち打ち症が全身障害だというような見解も発表されておるわけですけれども、いずれにしても、その治療方法が確立されていないために、治療期間が非常に長くなっている。そして、初診時は二週間なり三週間の診断書でありますけれども、その症状がなかなかなおらない。そういう中から、すでに一年以上、あるいは二年、三年になる人まで出てきているわけです。そういう状態を見ますと、これまた五十万の自動車賠償保険では、まかない切れないというぐあいに考えるわけです。  もちろん、自動車事故は第三者行為でありますから、加害者が任意保険に加入していれば、任意保険のほうからも出るということがありますけれども、これも新聞等によりますと、任意保険の加入率は、現在、日本では大体二〇%そこそこだといわれている状態であるわけです。今後さらにモータリゼーションということで自動車がさらに激増してくる、そういう中では、当然、支払い能力のない状態の車の所有者も出てくると思います。そうなってきますと、任意保険の加入率は、将来ずっと見ていきますと、もっと低くなっていくという可能性も、なきにしもあらずだというぐあいに思います。そうしますと、やはり勢い自賠責にたよらざるを得ないということになると思うのです。  さらに、ここでつけ加えておくならば、いわゆる任意保険制度を見ましても、任意保険は営利保険のたてまえになっておりますから、当然、事故発生件数あるいは損害率によって、いわゆるメリット料率だとか、あるいはデメリット料率などが設けられておるわけです。また、砂利類運送自動車割り増し、そういうことで異常に危険度の高い車についての料率は非常に高くなっております。したがって、具体的にいうならば、ハイヤー、タクシーあるいはダンプカー、そういうものは任意保険に加入していない場合が非常に多い。また、加入が事実上できない形になっている。しかし、実際にはタクシーあるいはダンプ、そうした事故というのが非常に多いわけです。そういうぐあいに見ていきますと、これらの問題を見ましても、自賠責にたよる状態というのは、ますます大きくなってくるのではないだろうかというぐあいに思うわけです。  さらに、前にも申し上げましたように、この自賠責保険は、被害者の損害のうち一定限度額までの分を支払う最低保障制度になっているということでありますけれども、実際にはこれらが悪用されて、最高の保障制度に悪用されているという状態があるわけです。たとえば、タクシー会社に働く労働者が業務による事故疾病をするわけですけれども、その場合に、経営者はその運転手からいわゆる白紙委任状というものを取るわけです。この白紙委任状の中には、強制自動車賠償保険の範囲内で問題を解決するについての一切の責任を委任するというようなぐあいになっております。したがって、こうした条件の中で、まだ本人が病気入院中に白紙委任を理由に相手と示談をし、一定額でもって補償を打ち切ってしまうというような事態が、これは一つ二つの例ではなく、非常に多くあるわけです。やはりできるだけ五十万の損害賠償の範囲内でこの問題を済ましてしまいたいというような事態が起こっているわけです。また、多くの場合、加害者はやはり五十万の限度内で解決するために、任意保険に入っていることを実際には隠していたり、あるいは自賠責の手続や支払いを故意におくらせて、泣き寝入りをさせるというようなことが現実には行なわれております。したがって、そうした点から見ましても、この五十万円の金額をもっともっと大幅に引き上げていくことが、今日非常に重要になっているのではないだろうかというぐあいに思うわけです。先ほど来から出ておりますように、被害者は非常に弱い立場にありますので、やはりそうした点を十分加味をして、この保険制度を改善をしていっていただきたいというぐあいに思います。  次に、後遺障害の問題でありますけれども、特に、むち打ち症等交通災害の場合には、非常に複雑な症状を呈しております。にもかかわらず、まだ治療を続けてもらいたいにもかかわらず、途中で症状固定ということで打ち切られてしまう例が非常に多いわけですけれども――やむを得ずそうした形で補償を打ち切られるわけですが、この等級が医師によって認定をされるわけです。ところが、その認定を持って保険会社にいくわけでありますけれども、査定事務所の中でさらにそれについての査定が加えられ、その等級が実際上は下げられるという例が非常にあるわけです。被害者にとっては、まだまだ治療は続けていってもらいたいにもかかわらず、症状が固定だということで打ち切られてしまい、そして、その後遺症を医師から認定を受けたにもかかわらず、また査定事務所で引き下げられてしまうというようなことで、この点では非常に多くの不満が出ておりますので、そういう点についての問題もあわせて考えていただきたいというぐあいに思います。  最後に、やはりこうした問題点考えますと、この保障制度については、現在のようないわゆる総合保険制度では、やはり問題のほんとうの解決にならないのではないだろうか。今日、交通事故の非常にたくさん出てきている状態の中からでは、非常にむずかしいのではないか。したがって、できる限り社会保障制度を加味した形での方向で将来やられる必要があるのではないかというぐあいに思います。  さらにもう一つ最後に申し上げたいのは、いわゆる交通災害者の実態がほんとうにどうなっているのかということが、今日まだまだ明らかになっていません。そういう点をやはり専門的な調査機関で調査をしていただきたいし、そうした実態の上に立って、こうした自賠責保険制度を根本的に改善をしていただくようにお願いをしたいというぐあいに思います。  時間の関係がありますので、以上をもって意見を終わります。(拍手
  13. 砂原格

    砂原委員長 ありがとうございました。     ―――――――――――――
  14. 砂原格

    砂原委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。大竹太郎君。
  15. 大竹太郎

    ○大竹委員 まず玉井参考人に一点だけお尋ねいたしたいと思います。  玉井さんからは、自賠法の問題を考える場合には、被害者立場事故防止立場、財政の立場、この三つを考えなければいかぬ、ことに、被害者立場というものを重んじなければいけないという論点に立って、いろいろ御意見をお聞きしたのでありますが、私も原則的にはそのとおりだと思うのでありまして、保険金もいまの三百万円では足らないのじゃないかという意見を持っておるわけであります。しかし、保険金が非常に高くなると、それを負担する立場もあるわけでありますので、同じ被害者の中でも、事故について非常に重大な責任のある被害者に対しては、やはり全然無過失な人との間に相当の差別をつけていいのじゃないか。たとえば、交通事故を無視して被害を受けたというような被害者と全然無過失な被害者の間には、相当厚薄があってもいいのではないか。もちろん、これはどういうように差をつけるか、その他は技術的にまた非常にむずかしい問題だと思うのでありますが、基本的にそういう立場に立って、この保険金の支払いその他について考えるべきじゃないかと私は思うのでありますが、御意見いかがでございますか。
  16. 玉井義臣

    玉井参考人 ただいまの御質問でございますが、この自賠法の最もすぐれているところは、無過失責任主義に近い、いわば社会保障に近いものをとった点にあると私は思うのです。ですから、最低限あるところまでは被害者の過失をあまり重く見ない。いまのように重大な過失でも八割、つまり最大限二割の過失相殺しかしないという現行の自賠の行き方は、ほかの国の、特に英米法のオール・オア・ナッシングの過失相殺をとる国のものに比べて非常に優秀だと思いますので、たとえば死亡者の場合、五百万くらいのところまではいまのままでいく、その上はかなりの過失相殺をとってもいいというような、二本建てでいくべきじゃないかというふうに考えております。
  17. 大竹太郎

    ○大竹委員 時間がございませんので、いまの問題でいろいろまだお聞きしたいのでありますが、その程度にいたしておきまして、次に山口参考人に一点お伺いいたしたいと思います。  先ほど非常に赤字が出て困っているんだということで、いろいろ原因等あげられ、そして運転保険制度の採用、あるいは事故を起こした者に対しては保険金を高くする。いろいろのことが考えられるという意味のことをおっしゃったのでありますが、運転保険制度、あるいは事故を起こした者から保険金をたくさん取るというようなことは、これは一つのお考えでありまして、もちろん法令その他の改正がなければできないことであります。ただ、保険会社として自分でおできになる問題として、たとえば医療費が非常に高過ぎる、これは先ほど玉井さんからも、医者が非常に悪いんだというような意味のこともおっしゃったわけでありますけれども、そういうようなこともあわせて、非常に不法に高い面もあるということを、山口参考人自身お認めになっているやにも聞き取れたわけでありますが、そういうものをチェックするのにどういうことを考えていらっしゃるのか。これは自分でおできになることでありますから、赤字である以上、大いに努力されなければいけないと思うわけであります。  それからいま一つは、保険金の支払いその他についても、私は非常に安易じゃないかと思う。ここに自動車局長いられて非常に恐縮なんでありますが、たとえば飛騨川の事件のごとき、あれは警察その他で全然自動車側には過失はない、こういつているわけでありまして、これはいろいろ議論すれば際限がありませんけれども保険会社として、医者のことでありますから、これをチェックするということは、なかなかたいそうなことでありますし、一面また、ああいう事故についていろいろな行政指導等もありますから、これは払わないんだ、あれはどうだというようなことは、なかなかむずかしいことではありますけれども、こういうたくさん赤字を出していて、ただ保険金を上げてもらえばそれで間に合うんだという、自分の努力は一向なさらぬということでは、私は世間は通らぬのではないかと思いますが、そういうことに対しては、どうお考えになりますか。
  18. 山口秀男

    山口参考人 ただいま大竹先生から御質問がございました点でございますが、医療費の高いということ、これは実際のところ保険会社の者は、ことに私どもは、医療というようなことについて実は医術が全然わからぬわけですから、ほんとうにそうであるかどうかということはわからぬ。ただ、世間でいろいろな話が出るわけでございますね。そうしまして、特にまたわれわれが常識的に考えて、これは少し高いんじゃないだろうかというようなことがあるとすれば、それはそのお医者さんのところでそれを問いただすということも、一、二ないではないのです。ところが、実際はお医者さんのほうが詳しいわけでありまして、これだけのものが現実に要っているということになりますと、どうも水かけ論というようなことにもなるわけです。私どもは、お医者さんがそういうことをやっておいでになるということを実は認めるというようなことではないのであって、そういううわさと申しますか、そういうことがあるから、それに対してこれは慎重にやっていかなければならぬということを考えているのです。そういう意味から私どものほうでもひとつそういうものをチェックすると申しますか、調べると申しますか、そういう機関をこしらえたいと思って、ほぼそういうような案もつくっておるような次第でございます。結局、被害者も、それからお医者さんも、こういう自賠法というような、いわばとうとい法律でございますから、それがゆがめられるようなことがないように、ということを実は考えているような次第でございます。  それからもう一件は、支払いのほうも少し甘過ぎるのじゃないかというようなことをおっしゃったのですが、これは甘いと言われるとなんでございますが、いま申し上げたようなことから、結局、皆さんのほうからごらんになって甘いのじゃないか、あるいは、こういうふうに赤字がたくさん出たのは、甘いから実は赤字が出たのじゃないかというようなことになるかと思うのですが、決してそういう甘いような取り扱いはしないつもりでおりまするので、どうぞひとつ御承認をお願いしたいと思います。
  19. 大竹太郎

    ○大竹委員 次に、武藤参考人に一言だけお伺いいたしておきます。  いろいろ御意見をお伺いしたのでありますが、参考人はトラック協会の専務理事でいらしゃいますから、トラック業者の業態についてはよく御承知だと思うのであります。最近、トラックの運賃の値上げその他と関連して、この自賠法の金額を引き上げるについて、保険料も上げなければならぬという問題について、いろいろ陳情等を受けるのであります。これは、もちろんたくさんの業者でありますから、いろいろなふところぐあいの差異もあると思うのでありますが、トラック業界全体として、トラックのいまの保険料が二倍ないしそれ以上になるというようなことになると、負担力とでも申しますか、そういう面においてトラック業者のふところぐあいにどういうような影響を与えるか、これは、なかなかむずかしい問題だと思うのでありますが、率直にいって、負担力はまだ相当あるかないかということをお聞かせいただきたいと思います。
  20. 武藤儀一

    武藤参考人 御質問の点につきましてお答えしたいと思います。  トラック運賃並びにトラック事業者の経営状態というものと、保険料あるいは税金等の問題が関連しておるわけでございますが、トラック運賃は、路線運賃につきましては、昭和二十七年にいまの認可運賃が認可されまして、途中一回、近距離を上げて遠距離を下げる、賃率自体には変化なしというような認可を受けたままで進んで、大体、賃率、額としましては、十五年間据え置きというような形で運営されておるわけでございます。   〔委員長退席、古川(丈)委員長代理着席〕 区域運賃につきましては、昭和三十二年に一割程度、三十九年から四十年につきまして一割前後の値上げ、改定を認められまして、両方合計いたしまして二割少しの値上げが昭和二十七年以来十五年間に認められただけでございます。そこで人件費のほうは、その間に何倍かに上がっておるわけでございまして、経費のうちの大体四〇%から五〇%を人件費が占めておるわけでございますが、賃金ベース自身は、昭和二十七年から何倍かになっておるわけでございまして、かつては一万何千円というのが、現在四万円程度の平均賃金になっておるわけでございます。  トラック業者は魔法つかいみたいなことをやって、いままで経営をしのいできたわけでございますが、最近になりまして、交通規制やら交通渋滞やら、経営上いろいろ支障を生ずる問題が出てきまして、かつて行なってきた車両の大型化にも限界が来ているというようなところで、経営状態としましては、非常に苦しい状態になっておるわけでございます。そこで、保険料がかりに三倍になりますと、現在の三万九千円の保険料が大体十二万円近くなる。一カ月で一台当たり一万円ずつ保険料として考えなければならぬというようなことになってくるわけでございます。現在、一カ月の収入の五%になるかならないか、大体ぎりぎりのところで経営しておるわけでございまして、そこからさらに月一万円の保険料考えていかなければならぬというようなことは、非常に苦しいわけでございます。さらに保険料は、最初に前金で払うわけでございまして、経営自体苦しくなって、資金繰りが非常に困難になっておるわけでございまして、急激に上げられるということは、どこかで、手抜きをしなければならぬ。手抜きをすれば、それはやがて事故の問題につながってくるというようなことになりまして、大幅な引き上げ事故誘発の危険というものが、からみ合っておるように思われるわけでございます。引き上げ自身はある程度までやむを得ないと業界は考えておると思いますが、大幅な引き上げにつきましては、何とか再考慮していただきたいという気持ちでおるわけでございます。
  21. 大竹太郎

    ○大竹委員 質問を終わります。
  22. 古川丈吉

    ○古川(丈)委員長代理 久保三郎君。
  23. 久保三郎

    久保委員 時間もありませんから、簡単に関係の皆さんにお伺いをしたいのでありますが、まず第一に、私どもが昨年来提案している自賠責の一部改正に対して御意見をいただいたのでありますが、あるいは聞き落としたのか知りませんが、いわゆる適用除外あるいは自家保障、この二つをすべて現行の自賠の制度の中に取り込むというこの改正案についての御見解をお漏らしいただけなかったかと思うのであります。  そこで念のために、山口参考人、それから古瀬参考人のお二人から、賛成であるのか、あるいは御批判があるのか、簡単に御意見をいただきたいと思います。
  24. 山口秀男

    山口参考人 ただいま久保先生からの御質問でございますが、時間の関係もございまするので、ごく自分たちの範囲のことを述べたほうがいいだろうと思いまして、実はその問題に触れていないわけでございます。その失礼をお許しを願いたいと思います。  先ほどどなたかからもお話があったかと思いまするが、法律の改正がありますのは、結局、自賠責法律としまして、被害者保護ということに欠けるところがないような法律になればいいわけでございますので、そういう意味におきまして、現状が自家保障がどういう程度にあるかということを、私自身はあまりつまびらかにしておりません。しかしながら、いろいろな方の御意見を総合して拝聴しておりまして、大体そういうものも一緒にこの法律の中に入れてやったほうが公平であり、いいのじゃないかというような御意見のように私ども聞いて、そういう気持ちでいるわけでございます。ですから、そういう意味におきまして、私、賛成とか不賛成とかいうことを申し上げないでおきましたのですが、そういう意味におきまして、賛成ということにお願いしたいと思います。
  25. 古瀬雄二

    古瀬参考人 この自家保障制度の問題については、先ほども申し上げたわけでありますけれども自家保障制度ですから、どうしても保険勘定ができるだけ利益になるような方向での運営がされる可能性が非常に強いということですね。そのために、私たちが聞いている中でも、大阪あたりの自家保障制度をとっている某会社の車に事故を起こされて、災害者は非常にその補償の点でいろいろむずかしい問題を投げかけられて、苦しめられたという例なんかも非常にあるわけです。そういう点から考えますと、やはりこの自家保障制度を現在の自賠責の範囲の中に入れていくということのほうが、被災者保護、災害者の救済の点からいくならば、もっといいのではないだろうかというぐあいに考えております。
  26. 久保三郎

    久保委員 それでは、次に山口参考人にお伺いしたいのでありますが、先ほども大竹委員からこれに類するお尋ねがあったかと思うのでありますが、自動車事故による人身事故ですね。そのほかに物的事故もありますが、当面、一番問題なのは人身事故であります。人身事故被害者救済という大きな観点から見て、保険制度をもう一ぺん総合的に見直す必要がありはしないかと思うのであります。  と申し上げますのは、いま問題になっている自賠責制度でありますが、先ほどどなたかからもお話があったように、これは最低限の保障というふうにわれわれはとっているわけなんです。だからこそ、無過失賠償というか、そういうものにほとんど近い制度になっているという、これは世界に類例のない非常に進歩的なものだと思っているし、そういう意味もあるから、少なくとも自家保障制度とか適用除外とかは認めるべきじゃないというのが、てまえどもの思想であります。しかしながら、これまたお話にありますように、一たび人身事故が起きた場合の損害賠償は、当然、裁判になります。裁判の判決は、千七百万あるいは二千万とかいうものが当然出てくると思うのであります。しかしながら一方、それじゃ支払い能力についてはどうなのかというと、最低限の自賠責があるだけで、今日では死亡の場合は三百万限度であります。そうなりますと、これはもう判決はあったが、実効はあがらぬということでありまして、今日大きな社会問題になっていることも、御案内のとおりであります。そういうことからいきますれば、言うならば、上積み任意保険という制度についても、何らかの手配が必要であろうと思うのであります。  本来ならば、自賠責による保険というものは、いわゆる保険業というか、そういうものが本業として扱うものじゃなくて、言うなら、国の代理店というか、そういう程度にこれを扱うものではないかとわれわれは最近思っているのです、これは率直に申し上げますと。というのは、法律がありまして、強制保険でありますから、これをかけなければ車検を通過しないのですね。だから、保険というものは一々勧誘、といったら語弊がありますが、商業ベースで保険の勧誘というか、そういう業務上の仕事というか、活動を必要とする自由業だと思うのです。ところが、自賠責はその必要はないですね。店さえ張っておけば、と言ったら語弊があるが、一応自動的に来ざるを得ない。来ざるを得ないというとおかしいかしれませんが、そういう性格もある。先ほどのどなたかのお話では、任意保険は二〇%くらいだ、こういうのですね。もちろん、われわれが損保界に要望する点は、この任意保険について、もっと創意くふうをこらして、ぜひこの国民の要望にこたえてもらえないだろうかというのがあるのです。しかし、それを損保業界にだけ望むことも不可能でありますので、必要があれば、これに対しても国家的な何かの対策を立てなければいかぬだろう、こういうふうに思っている。だから、そういう意味で自賠責に全部をたよるということじゃなくて、時代はもうすでに進んでまいりましたから、上積み任意保険を含めて、総合的な自動車事故に対処するというのが、最近のわれわれの検討すべき要点だろうと思っておるのです。ついては、損保業界としてそういう考えを持っておられるかどうか。現状の上積み任意保険についての積極的な取り組みはなされているのか、いかがでしょう。
  27. 山口秀男

    山口参考人 お答えをいたします。  ただいま久保先生からおしかりをこうむりましたように、任意保険の付保率が非常に少ないのじゃないかというようなこと、先生からもおっしゃいましたように、ただいま三百万というのに、裁判のときには千七百万だとか、二千万をこすものが出るというような状態でございます。そうして、そういう場合に支払い能力がなければ、もうそのままになってしまうのだから、これはたいへんだというわけでございます。それで、任意保険の普及につきましては、任意保険の対人賠償は、ただいまのところ五五%くらいまでにもう進んでおるはずでございます。二〇%というのは、ごく前のことというようなことに考えております。しかし、その五五%にいたしましても、私どもはまだまだこれではいけない、もっともっと普及をはかることが大事だと思っておりますので、これはひとつ保険会社にもよくお話をしまして、そうして普及に努力をしたいと考えております。  それから自賠の強制保険というものは、営業をやっている民間の保険で扱わなくてもいいのじゃないかというようなお話のようにも考えたわけでございますが、保険は世界各国を通じて、国営保険というのはもうほとんどないのでございまして、そういう姿があるということは、私ども保険人としては恥だと思っております。ですから、いまもおっしゃったような強制保険でありましても、われわれの努力によって普及をはかっていく。それから、国営とかあるいは公営というものと、それから民間の保険というものの能率その他ということは、あまり申し上げるのはいかがかと存じますけれども、大体の御意見は、やはり営業をやって、民間の人にまかしていただいて、そうしてそこが能率をあげていくということが、実際的ではないかというような御議論が多いようにも考えております。  御承知のように、私どもはいろいろな種類の保険をやっておりますので、それで片手間ではございません。もう自動車保険というのが大宗になっていくと思うのですけれども、そういうのと、ほかの保険をやはり同時に契約をとる、あるいは支払いにおいても、すべてお客さんと密着してやるというようなことになりますると、口幅ったいようでございますけれども、ひとつ民営にまかしておいていただきたいと考えておりますので、どうぞその点はよろしく御助力をお願いしたいと思っております。
  28. 久保三郎

    久保委員 別に国営にするということじゃなくて、六割再保険でありますから、自賠の制度は、まあ言うなら国の責任でやるという思想から出たとわれわれは思うし、また、それが正しいと思うんです。しかし、保険の業務を全部、自賠責はいまの保険営業とか共済営業のほうから取り上げてしまうという思想では私はないのであります。代理店として最終的にも御活躍をいただくことが必要だろうと思うのです。しかし、直ちにそれをどうするかということは、これまた検討しなければなりませんけれども。てまえどもとしては、そういう思想を根底に持っておるわけであります。しかし、現実はそう簡単にいかないかもしれませんから、さしあたりこの制度の一本化で提案を申し上げている二つの問題があるわけであります。それにしても五五%の上積み任意保険だそうでありますが、強制保険である自賠責をやはり営業者におまかせいただきたいというなら、この自賠責の上に乗せるものも、もうちょっと営業的に取れないものだろうかと思うのです。  ところが、先ほどもどなたか参考人からお話がありましたが、トラックなどは任意保険を忌避するというか、あまり好まないという態度があるというお話であります。これは私も、うわさであるかしりませんが、聞いております。これは無理からんというか、ダンプなどだというと、あれにかけては損だろうからというので、どうも保険というものは得することばかり考えて、損することは考えないのか。それは保険じゃないだろうと思う。保険というものは、得を取ったり損したり、差し引き多少なりとも手元に残るというものが保険業務だろうと私は思っておる。そういう意味からいって、どうもいまのお話だけでは、われわれ納得しがたい。だから、これは損保業界の山口さんのほうに一切おまかせしておけば、そのうちに九十何%におなりになるんでしょうかという心配があるということだけを、時間がありませんから申し上げておきます。  いずにしても、われわれは、損保にたよって店舗を張っておけば、ひとりで来るというのは少なくとも営業じゃない。それならば、もう少し上積み保険を、八〇%になった、九〇%になったということならば、ああ損保の上に乗っかったなということで了解しないわけではありませんが、そういう感じがいたすのであります。少し言い過ぎであるかもしれませんが、そういう感じを、いい機会でありますから申し上げておきたいと思います。  それから限度引き上げでありますが、それぞれ運輸省なり大蔵省のほうで皆さんに御相談があると思うのであります。先ほどのお話では、千七百億赤字だと、なるほど計算はそうかもしれません。契約ベースということで、かなり信憑性があると思います。しかし結果は、これは予想でありますから、できたものの結果じゃありませんから、予想の結果として千七百億赤字になるだろう。だから、そういうものの上に立って、われわれもそうでありますが、二倍半にするとか、三倍に料率を上げるというのは、どうも何か説明をもう少し十分にしなければ、一般国民は了解しないのではなかろうか、これが一つございます。その点についてはどういうふうに――何かくふうがあるのでしょうか。  それから限度引き上げ――死亡の場合は限度額六百万は、少なくとも航空機その他の問題から比較して、当然だろうという主張をわれわれは昨年来しております。本来ならば、政府では、前の運輸大臣はこの春に少なくとも五百万、そういう引き上げを実施しますという約束を昨年にしておいたのでありますが、その後、損保業界のいわゆる料率の問題等もあったのかしりませんが、いまだに実現のことになっておりません。いずれにしても、そういう引き上げについては当然だとお思いになるかどうか。  それから、先ほど各参考人からお話があった、医療費限度は五十万円で引き上げない、こういうことですね。こういうお話があるが、あなたのほうでは、その点についてはどういうお考えでいらっしゃるか、その二つであります。
  29. 山口秀男

    山口参考人 いまの最後のほうの医療費の五十万でございますね。傷害の五十万というものについては、これはいろいろな御意見が出ておるわけで、五十万では足りないじゃないかという方が、かなりございます。事実また、そういう場合もあるかと思います。しかし、これは先ほど私ちょっと申し上げましたときに、たとえば四十年度の傷害の一件当たりが五十七万一千円だったというのが、昭和四十三年度にして見ると二十万二千円、こういうふうなことを申し上げましたように、それが非常に急テンポで多くなっている。ですから、件数が非常に多くて、そして一件当たりがそういうふうにふえますと、これはもうほんとうにたいへんなんです。先ほど、ことしは死傷が百万くらいになるんじゃないかというようなお話でありますが、それが一万違うと、もう百億になってしまうんですね。そういうことになりますと、ますますもって赤字というものが非常にひどいものになると思います。やはりこの際は漸進的に、障害はただいまのところは五十万で押えていただいたらどうかという気持ちを私は持っております。  それから死亡の場合の三百万は少ない、これもいま先生おっしゃったとおり、だいぶ裁判その他のことで、これはもう何と申しますか、常識というのはおかしいかもしれませんが、非常にふやさなくてはならぬような羽目になっておるような気がするんですね。ですから、これはやはり相当額まで、ことしは上げていただく必要があるんじゃないかと思っております。そうして、それをもって足りないものは、それは私どもが努力をいたしまして、何とかして努力でカバーするというようなことでやっていきたい、こういうふうに考えております。
  30. 久保三郎

    久保委員 重ねてお尋ねするのでありますが、ちょっと時間がありませんから、意見だけ申し上げておきたいと思うのですが、医療費限度額というのは、これは限度額でございますから、だから、これは御承知のように、上げても、上げたまま全部もらうということにはならぬわけです。しかし、いま何人かのほかの参考人皆さんからお話があったように、医療費の問題には別な面からの、別なサイドからの検討の余地もございます。しかしながら、実際は医療費が上がってきていることは事実でございます。長期にもなっていることも事実です。それだけ医学が進歩したということでもあろうかと私は思うのであります、逆にいえば、そういう意味でありますから、この据え置きにはあまり反対なさらぬほうがいいんじゃないかと思う。保険者の立場というか、損保業界というか、山口さんのようなお立場からするならば、先ほど玉井参考人、小松参考人からそれぞれお話がありました医療制度との関係で、やはりその方向へ、もう少しそのサイドからこの制度を確立するということを考えるのが筋じゃなかろうか、こういうふうに思うのであります。五十万に据え置きというのでは、どうもこれまた世間では納得しがたいだろう、こういうふうに思うわけなのであります。ぜひ御考慮をいただきたい、こういうふうに思います。  それから、小松参考人にちょっとお尋ねしたいのですが、先ほどのお話の最後のほうに、被害調査の機関を総合的なものを設けたら云々というようなお話がありましたが、ちょっと中身がよく聞き取れなかったのでありますが、お答えいただければと思います。
  31. 小松好太郎

    ○小松参考人 私ども行政書士の立場から考えてみますと、保険会社というものは、あくまで損害額のてん補機関であるのであります。それより先に、いわゆる事故の事実、損害、そういうものを出す機関を、この自賠法運輸省が主管されておられますので、運輸省のもとにひとつ一括おつくりになったらいかがでございましょうか、そういうことなんでございます。自家保障等の廃止等の問題がもし可決された暁においては、いままでの自家保障でも、運輸省は非常に御熱心にいろいろ御指導されておるわけであります。そういう資料をもって、運輸行政上この自動車事故に対する問題はこう処理するんだということをおやりになる。それから損保のほうで損害金に対して補てんをする、これが一つのシステムではないか、こういう問題でございます。そういう機関ができれば、当然その機関医師会なり何なりと交渉して、国保を使い、健保を使い、労災を使う、こういう問題になってまいると思います。
  32. 久保三郎

    久保委員 簡単にもう二つほどですが、武藤参考人にお尋ねしますが、先ほどのお話では、てまえどもの提案に対して、適用除外のほうは御賛成のようでありましたが、自家保障のほうは少しく違うようなお話でありまして、言うならば、請求方法考えればいいんじゃないかというお話でありますが、そういうことは、なかなか現行制度の中でできにくいんじゃなかろうかと私は思っているわけなんです。それではまた自家保障を固執されるメリットがなくなるんじゃなかろうかと逆にも思いますので、この際は、やはり傾向として事故が多くなると、自分で持ち切れなくなって、自家保障から自賠責に逃げ込む傾向が最近ずっと出てきております。逃げ込むといったらおかしいが、自動的に入ってくる。だから、ほっておけばいいんじゃないか。というのは、事故が多くなれば、ほっておけば全部自家保障をやめるかもしれません。それでは社会的な責任として、あまりにも割り切れないんじゃないか。事故が多くなってしょい切れなくなったらば、自分でもうやめちゃう、損害がないときは自分のところでやるが、多くなってきたらば、人の背中で薄めていこうかというのでは、どうも何か社会正義の立場から見て、われわれはちょっと疑問がある。もっとも武藤参考人は、そんな立場からおっしゃったのではないとは思っております。そんな失礼な考えじゃないと思うのですが、ただどうも法のもとでは、やはり一緒のほうがいい、われわれはこういうふうに思うのです。だから、ぜひそういうことで皆さんに御納得をいただきたい、こういうふうに私は思っているのですが、いかがでしょう。
  33. 武藤儀一

    武藤参考人 お答えいたします。  自家保障制度の問題につきましては、久保先生からおっしゃいましたように、被害者救済という面に欠ける点があるではないかという問題と、もう一つ私が考えましたことで事故防止的な効果が一つあるんではないか。自家保障をやっておりますと、自分の会社の中でできるだけの努力をして、事故件数を減らしていくというようなメリットがあるんではないかというような考え方をしておりまして、まあこの両方の面から考え自家保障制度の存廃というものを御検討いただきたい、こういうようなことを申し上げたわけでございます。例といたしまして、労災保険で――労災保険というのは自家保障保険をやっておるのですが、建設業につきまして優良割り戻し制度をとりましたら、建設業界の労災事故がかなり減った。これは自分の事業所で努力して事故を減らしていけば割り戻しがくるというようなことが、結局、労災事故防止の意欲を喚起したというような結果だろうということなのでございますが、それなら、自家保障制度事故防止的効果を考えるなら、ある一定規模の、基準以下の事業者についても同じようなことを考えてもいいではないか。たとえば、何十台かの自動車が何年か保険請求事故を起こさなかったというような場合には、割り戻しを考えるというような制度の形でこういう制度考え直してもいいのではないか、このようなぐあいに考えておるわけでありまして、自家保障制度廃止反対というわけではございません。この点につきまして、よく御検討いただいてお考えいただきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  34. 久保三郎

    久保委員 おっしゃることよくわかりました。そういうふうに、ある事業所では全体として事故防止に非常に熱心にやっている会社がございますよ。これは言うなら、そういう運輸業でないところでありますが、それはおっしゃるとおりに、やはり事故件数というか、そういうものに応じて保険料率というか、そういうものを適用していく制度こそ望ましいんだろうと思うのであります。そういうことでお考えいただくということがいいと思うのです。  そこで、最後に玉井参考人にお伺いしたいのでありますが、いま問題になっている――私のほうじゃなくて、政府を中心にして限度引き上げ保険料率の問題であります。先ほどもお話があったかと思うのでありますが、少しく医療の面に重点を置かれてお話があったので、あるいは聞き漏らしたかと思うのでありますが、簡単でけっこうでありますが、いわゆる限度引き上げはやるべきだ。これは簡単な話でありますが、料率について、御案内のとおり損保業界は――損保業界ばかりじゃないでしょうが、山口さんばかりねらっておるように思われても困りますが、千七百億という腰の抜けそうな赤字が出るということで、国民というか、ユーザーはこれまた困っておる。しかし、一般の国民は、いまの五十万の医療費限度とか、三百万の死亡限度なんていうものは問題外だということでありますので、交通評論家として、高い見地からどういうふうにお考えですか、一言御意見をお述べいただきたいと思います。
  35. 玉井義臣

    玉井参考人 保険金額は高いほうがよろしいですし、保険料は安いほうがいいというのは、これは国が考えても、ユーザーが考えても同じだと思うのであります。そもそも日本の保険料は、いまのところ諸外国に比べると、かなり安いのではないかということがいわれております。過日、欧米の交通事情を視察して帰ってきましたある新聞社の記者が言いますのに、フランスではフォルクスワーゲン一台、一年間で十二万円の保険料を払っておる。やはり被害者救済というものを重点に見るならば、多少の保険料高騰はやむを得ない、物価が高くなるから、被害者救済のほうをおくらしていく、あるいは自動車の売れ行きが鈍るから、保険料を押えていくというふうな考え方でまいりました結果が、先ほども申し上げましたように、交通遺児に象徴される被害者の貧困状況、困窮状態だと思うのであります。ですから、多少の物価の値上がりはやむを得ない、やはりこの問題は、最初に申し上げましたように、被害者のことを考えて、勇断をもって保険料引き上げもしんぼうすべきであると私は考えております。
  36. 古川丈吉

    ○古川(丈)委員長代理 野間君。
  37. 野間千代三

    ○野間委員 だいぶ時間がたちましたので、二、三点だけお尋ねをいたします。  初めに日ト協会の武藤さんにちょっとお願いをしますが、実は私の友だちで、自動車がトラックに追突をされたという事件があったのでありますが、これが示談の交渉になったのですが、なかなか進まないで、結局は裁判になったということです。いま争っておるわけが、おしりの肉が片方なくなるような大けがであったのですが、確かに武藤さん言われるようなメリットが一面ではあるとは思いますが、そのメリット、いわば示談屋さんといわれるやり方ですね。このデメリットを差し引きをすると、どうも被害者にとっては、あまりメリットがないという結果ですね。  これについて、いまちょっと例を申し上げると、実はその示談に来られた方が、五千円ばかり、会社でいっておるよりもよけいに話をつけるのに出した。そうしたら、その係の方は首になった。たいへんな例なんであります。   〔古川(丈)委員長代理退席、大竹委員長代理着席〕 しかし、これはいわば、この制度一つの象徴的な欠陥でもあると思うのです。したがって、示談の問題を担当される会社の方のあり方ですね、身分といいますか、そういうものにやはり問題がある。ですから、そういうこともあって、こういう制度は、やはり責任保険のほうに一括包括さるべきだということもあると思うのですね。しかし、いま直ちにというわけにはいきませんしいたしますので、とりあえずそういう問題について、やはり会社制度なり、そういうものについて相当検討をして、いわば独自性をもって折衝に当たるというような態度が必要ではないか。また、それができるような社内の機構、位置づけが必要ではないかというふうに思うのですが、この点についていかがでしょう。
  38. 武藤儀一

    武藤参考人 自家保障者五十何社かのうちで、トラック事業者が自家保障をやっておりますのは五つか七つか、数は非常に少ないわけでございますけれども、関係事業者のところで被害者の方に非常に御迷惑をかけている事案があったというお話でございまして、まことに遺憾に存じておるわけでございます。  全般的に見まして、自家保障の場合に、良心的におやりになっておるところと、被害者の側から見て、いたずらに時日を遷延さしている、あるいは少しでも会社の払う金額を少なくしようとする努力をしているというふうに受け取られるような場合があるのではないか。結局、役所のほうでは、自家保障者の監督をしておられまして、自家保障者がどのような支払いをしているかという点は調べておられるわけでございますが、おっしゃるような、そういう被害者に迷惑をかけるような、被害者救済に欠けるような事案がしばしばあるということなら、この自家保障制度の自身の廃止ということを考えなければならないのではないか、こう思っておるわけでございます。  もう一つ救済措置としましては、事故が起きた場合に、その自家保障者との示談交渉が、なかなからちがあかないという場合に、運輸省保障事業に直接請永するというような制度考えたらどうか。運輸省保障事業審査しまして、立てかえ払いをして、それを自家保障者に代位して請求していく、相手の自家保障者が納得しなければ、保障事業自家保障者との訴訟という問題になるかもわかりませんが、そういうふうな制度の導入によって、被害者救済に欠けないようなことを考えたらどうかというようなことを考えたわけでございます。被害者救済に欠ける点が多ければ、この制度はやめるのが社会的な要請だ、私はこう考えます。一面、事故防止的な効果も、何らかの措置によって保障制度の中でも考えていただきたいという考え方も持っておるわけでございます。
  39. 野間千代三

    ○野間委員 一応わかりました。  それから、古瀬さんにちょっとお尋ねをいたしますが、むち打ち症の被害者方々には、やはり運転者の方が相当多いのじゃないかと思うのです。したがって、企業の中で運転をされておってこういう被害を受けるということで、そういう関係で責任保険のほう、あるいは労災のほうなどが適用されるということになると思うのですが、労災のほうには労災のほうの欠陥がある。特にむち打ち症というと、言われるように、たいへん長期にわたるし、しかも原因がはっきりしない。そうなってくるから、必然的に労災のほうではある一定の限界にくる、こうなると思うのです。そういう関係で、特に運転をされている立場で見た場合に、何かそういう方面での欠陥についてお気づきで、何とか解消したいというふうに考えていらっしゃると思うのですが、どういうふうにお考えですか。
  40. 古瀬雄二

    古瀬参考人 いま野間先生から言われましたように、職業的な交通運転労働者の中で、最近特に追突事故等によるむち打ち損傷が非常に急増しておるわけです。これは、もちろん正式に統計をとってみたわけではありませんから、まだよくわかりませんけれども、大体私たちがつかんでいる範囲では、職場の二割近くがむち打ち損傷にかかっているという実情にあります。したがって、もちろん、むち打ち損傷になっても、軽いのから非常に重いのといろいろあるわけですけれども、また、当然、業務中における事故によって起こっているわけで、そういう中では、その補償の問題についても、いろいろ複雑な問題を持っているわけであります。つまり、労働者ですから、本来ならば、労災保険適用をしなければなりませんけれども、第三者行為災害ということで、いわゆる自賠が先行されて、その補償を受けるというようなかっこうになっているところが非常に多いわけです。  もちろんそうなっているのには理由がありまして、労使の間で、労働協約で休業補償その他一〇〇%の補償協定がされている場合には、当初から労災保険適用を受けて一〇〇%の休業補償をもらいながら治療に専念できるという状態があるわけですけれども、そうでない場合には、御存じのように、休業補償が六〇%という状態になっております。そのために、六〇%の休業補償では、そういう治療をしながら生活をしていくということは、なかなか困難だ。そういうところから、自賠ではその過去三カ月間の平均賃金というのは全額補償される形になっておりますので、五十万の範囲内では労災を先行するという状態にいまなっているわけです。しかし、最近それとはまた別に、非常に医療費がかさむ、自賠からやると、医療費がかさむということから、健康保険に最初かけていくというようなことも起こっているわけであります。それらの場合には、労働者のほうがそうした問題について知らない場合には、健康保険では、御存じのように半年間は傷病手当金をもらう、そして半年しても、なお、かつ、なおらない場合には、経営者は労働者が知らなければ解雇できるような状態になっているわけです。したがって、そうしたことが故意にやられるというような場合もあって、そういうことのために非常に苦しんでいる人も、これはそう多くはありませんけれども、いるわけであります。労働者である場合には、そうしたさまざまな、いわゆる自賠が使えるし、労災が使えるし、健康保険が使えるという、非常に複雑な保険制度になっておりますので、労働者自身がよほどそうした問題について知っていなければ、非常に不利な状態になる場合があるわけです。そういう点について、私どもとしては、できるだけそうした補償制度を簡素化をしていただきたい。被害者がすぐ自分の被害について、簡単に手続その他もできるようになるし、補償も簡単にできるような状態にしていただきたいという希望が非常にあるわけであります。  そのほか、むち打ち症の問題では、医学的にまだはっきりしていないわけですけれども、もう治療効果がないということで打ち切られているという問題があるわけです。この問題は交通災害者の立場からすると、もう非常にたいへんな問題になっているわけですけれども、そうした医学的な――今日の交通災害、特にむち打ち症についての研究その他これをもっともっと進めて、一日も早くその治療方法等を確立をしていただきたいという問題もあるわけであります。  以上、二点についてお答え申し上げました。
  41. 野間千代三

    ○野間委員 もう一点、これは小松参考人にちょっとお尋ねしたいのですが、たいへんいい御意見を伺ったのですが、一番どなたもおっしゃられるので問題なのは、被害者ですね。被害者立場が非常に弱いということ、また、だれしもがいろいろ複雑な手続のことはよく知っておりません。したがって、すぐ即応していい制度適用してもらったりするのは非常にむずかしい。そういう例も、小松参考人の場合にはよく御承知のようでございますが、そういう関係で、被害者の弱い立場、交渉能力の弱い状態を何とか組織的に強化をして、そうして交通災害からの治癒を早めるということが必要だと思うのです。そういう関係で、政府のほうにおいて責任を持った機関なりをつくって、そうしてそこへ行けば、相当強い交渉もしてもらえるというふうなことも必要じゃないか。いろいろ方法はあると思うのですが、この場合いかがでしょう。いまの中ではそういう点が欠けているのですが、具体的にこういう方法をとってもらいたいというようなお考えがあったら、この際ひとつ伺っておきたいと思います。
  42. 小松好太郎

    ○小松参考人 お答えいたします。  いまの御説のようなぐあいに、被害者立場というものは、大きな会社の従業員の場合とか団体とかの方ならば、これはその組織が援助してくださいますから、これはよろしゅうございますが、一般の国民の場合には、そのよりどころがございませんので、それをどういうぐあいにするか、政府機関的にやるか。しかし、いま責任保険等の関係からいいますと、私ども考えでは、一応、政府機関はあくまでいわゆる指導機関であって、やはり示談その他の問題につきましては、当事者間で解決しなければならぬ問題がありますので、そこのところで、私も、てまえみそのようでございますが、たとえば行政書士なり資格のある、こういう者が各人の――被害者の御依頼を受ければ、どんどんそこにおいて書類をつくってまいります。私どもも、自賠法被害者救済のためのものでございますから、その制度でいかにしたらば被害者救済して差し上げることができるかということでいろいろの手続をやるし、やってもおります。しかし、不幸にして行政書士の組織もまだ十分でございませんものですから、いまのところは、あまり活発には活用されておりませんが、静岡県では、だいぶ県のほうでも着目していただいております。最初、私どもがこういう仕事をいたしますと、ややもしますと、世間一般では、すぐ通例の示談屋と間違えまして、示談介入だとか、何か事件屋だとか、こういうようにお考えになられがちですが、私どもは、あくまで自賠法に基づいてやっております。自賠法のことについては、かなり精通してやっておるつもりでございます。まあ、これを監督する機関は当然あってよい。われわれのほうは、いまのところ自治省の主管になっておりますので、できれば私どもの資格の一部のものが運輸省の公認のような形にさしていただいて、その指導のもとにおいて書類作成なりしていったならば、より一そう効果があがるところではないか、こう考えております。
  43. 野間千代三

    ○野間委員 同じ問題で玉井参考人、何かありますか。被害者の手続が非常にむずかしいという問題で、何かこう制度的なりに考えてみたらどうかということなんですが。
  44. 玉井義臣

    玉井参考人 ちょっと私、手続の点につきましては詳しいことはわかりませんが、かなりその手続が繁雑であるために弱っている。弱って、相談しにくる人たちのあるのを何回か体験したことがございます。しかし、こまかい点については、私よく存じません。
  45. 野間千代三

    ○野間委員 終わります。
  46. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 山下榮二君。
  47. 山下榮二

    ○山下(榮)委員 時間もないようでございますから、簡単に二、三お伺いをいたしたいと思うのであります。  冒頭に、玉井参考人に対する質問が大竹委員からございましたが、玉井参考人は三つの方針を打ち出してお話があったのでございますが、被害者救済のことについては、先ほどからいろいろお話が出ておるようであります。二番目におっしゃいました事故防止の問題でございます。  事故防止には、御承知のとおり、いろいろな方法があろうと思うのであります。たとえば、運転手の資格をもっと厳重にしなければならぬとか、あるいは歩行者の注意を喚起しなければならぬとか、道路の整備を行なわなければならぬとか、あるいは交通標識等の完ぺきを期さなければならぬとか、いろいろあろうと思うのであります。しかし、評論家として今日まで、いわゆる交通事故問題と長年取り組んできておられる玉井さんとして、今日、日々交通事故が累増してまいって、先ほどのお話を伺いますと、昭和四十四年度末には事故件数は百万件に及ぶであろう、こうおっしゃっておるのでありますが、それを防止するためには、一体どこにその中心を置いたらいいとお考えになっておりますか、ちょっとお伺いをいたしたいと思うのであります。
  48. 玉井義臣

    玉井参考人 たいへんむずかしい質問を受けましたが、いわばそういうきめ手があれば、政府のほうでお打ちになって、事故はお減らしになると思うのですけれども、現実にそれだけの危機感がありながら、予想どおりに事故がふえているということは、交通事故というのは、やはり総合的な対策以外にないということではないかと思うのです。しかし私は、自賠法の中で事故防止の役割りを果たせられる方法はあると思うのです。それば、海外でも数量的にはとらえられませんが、運転者が非常に注意をするのは、やはり事故を起こせば保険料が高くなる、すぐ自分のふところにはね返ってくる、そういうことで注意をする。何も人道的に、あるいは法律を順守するという意味ばかりではなしに、やはり自分のふところがかわいいといいますか、保険料にすぐはね返ってくるのを勘定しながら運転するというふうにいわれております。ですから、この自賠法に関しましても、すでにいわれておりますとおり、車にメリットシステムをつけるとか、あるいは、いま新しい方向として論議されておりますドライバー保険でございますね。ドライバー個々の事故歴、違反歴に対してメリット、デメリットをつけて、それを運転者の保険料にすぐはね返すことによって、注意を喚起するというような方法が出ておるわけですが、それは一刻も早く取り入れるべきだと思います。
  49. 山下榮二

    ○山下(榮)委員 先ほど言い落としてもおりましたが、日本は諸外国に比べて、酔っぱらい運転が非常に多いと思うのです。こういうこと等の防止がきわめて必要ではないか、私はこう考えておるのであります。これがやはり世間の大きな声となり、世論となって、ドライバーたるものは車のハンドルを握る限り、酒は飲んではならぬ、こういう厳重な一つの定めがなければ、なかなか酔っぱらい運転というものはやまない、私はこう思っておるのであります。そういう点も、今後やはり考えていかなければならぬ問題じゃなかろうか、こう思っておるのであります。  時間もございませんから、次に、先ほど久保委員もお伺いをされておったと思うのですが、山口参考人に伺いたいと思うのです。強制保険と任意保険があるわけですが、任意保険に入っているのは、わずか二〇%と先ほどおっしゃったようでございます。   〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕 これは久保委員もおっしゃっておったと思うのですが、最近、裁判所の判決等を見ましても、賠償額が非常に高額になってまいってきておるのであります。任意保険といわゆる強制保険というものを一つプールにしておるような制度――ただ任意保険だけを上げろ上げろ、こういうことだけではなく、あるいは自賠法だけを上げよ上げよ、こういうことではなく、これをプールして考えていく、併用する、こういう制度を設けたらどんなものだろうか。こう私は考えたりするのですが、直接賠償保険の責任の任にあられる山口さんとしては、一体いかようにお考えになっておりますか。
  50. 山口秀男

    山口参考人 いま自賠責プールというようなお話がございました。ただいまあります自賠責保険と、それからその上積みとしての任意保険というものが一つ一つというか、相補完しながら、助け合いながら、自分の責任を果たすという形がやはり一番願わしいのであって、また、そういう意味で、いままで二つ保険があると思うのでございますが、先ほどからお話もございましたように、任意保険のほうの普及率がどうも十分でございませんものですから、そういう点につきまして、われわれも努力をいたしまして、そしてそれが満足すべきような状態になるならば、両方相助け合って、十分に責任を果たすというようなことになるんじゃないかと思っております。  ただ、強制賠償のほうの金額のアップということが――いまの運輸大臣、また、前の運輸大臣あたりでも、いまの三百万をお上げになろうというような意思表明もあっているようでございますから、これは当然上がるというふうに考えるわけでございますが、この上がるのが強制保険でありまして、百人のうち九十五人くらい全然事故を起こさない人があるのに、そのうちのある人が事故をたびたび起こすために保険料が上がる。保険金額が高くなることは、保険料も高くなるということで、やはりこれは犠牲にならなければならない。そういう形でございますので、これはやはり限度引き上げというものも段階的にやっていかれることが、一般の自動車をお持ちになっている方に対してのつとめではないかというような気がするのでございます。要は、私どもが任意保険について、もう少し勉強しろということを先生方もおっしゃっていると思いますので、その点、十分心に銘じまして、もう少しその点に努力をさせていただきたい、こういうふうに考えます。
  51. 山下榮二

    ○山下(榮)委員 もう一つ伺いたいと思うのですが、先ほど自賠法の運営の面から考えて、赤字対策として保険料引き上げをおっしゃっておったと思うのですが、保険料引き上げだけでは自賠法の完ぺきを期するわけにはまいらない、こう思うわけですが、現実にこの法の運営の任に当たっておられて、今日の自賠法を一体どう改めなければならぬかという改正のおもな点を何かお考えになっておりましょうか、ちょっと伺いたいと思います。
  52. 山口秀男

    山口参考人 私どもが今日この席で最初にお願いしましたことは、この自賠法という非常に重要な、りっぱな制度をやるためには、これがくずれないようにしなければならぬのだから、それで保険料だけは、一日も早く正当な保険料にしていただきたいということでございます。結局、保険というものは、入ってくるものと出るものがちょうど一つになるということで、この法律でもそういうことになっておりますが、現実の姿として見ますと、昨年の六月ごろからでございましょうか、支払いは各保険会社の各支店や何かで行なうわけでございます。これは、全国に二千四、五百あるわけでございます。そういう支店とか営業所が、非常に自賠の支払いに対しての金が必要になってくる。そうすると、どうしても本店のほうに対して、早く金を送ってきてくれというようなことになりますから、本店が金を送る。それがずっと昨年の春ごろからあらわれてきましたので、これはたいへんだなというので、実は各会社についてよく調べましたところが、とにかく毎月毎月全体を総合してみまして、入ってきた保険料以上のものが出ているということがはっきりしてまいっている。ですから、この傾向でいったら、これはたいへんなことになるというので、先生方からお考えになると、何だかあわてて保険料引き上げをお願いしているようなかっこうになっていると思うのですが、とにかくこれは早く直していただかなければ、支払いがだんだんとむずかしくなってくる。そうすれば、被害者の方もお困りになるということなので、ぜひこれだけは早くやっていただきたい。  それから、それが済みますれば、第二段というとおかしいのですが、同時に先ほどから諸先生方からも各参考人の方からもいろいろなお話があるように、やはり十三年たちますと、何か直さなければならぬところもございます。ですから、ただいま医療費の問題をどうしたらいいとか、あるいはドライバーと申しますか、免許証を持っている方に対してこれを強制保険にしたほうがいいか、それとも、そうでなくて任意だけでやっていくのがいいか、これはいろいろな方法もあるかと思うのですが、そういうふうな諸問題が提示されておるわけでございます。そういうものをひとつよく御審議願って、そして改正をしていただきたいというふうに考えております。
  53. 山下榮二

    ○山下(榮)委員 それじゃもっと深追いをしたいと思うのですけれども、時間がないようでございますから、小松さんにお伺いをいたしたいと思うのです。  いろいろお取り扱いをいただいておるようでありますが、自賠法にいたしましても、なかなかスムーズに保険料被害者に早く渡らない、手続がむずかしい、こういう苦情をわれわれはよく聞くのであります。そこで、そういう手続上むずかしい、やっかいだというネックは、一体どこにあるのか、お取り扱いをされておる関係から、おわかりであろうと思うのであります。  もう一つは、患者治療を受けるのに、お医者さんが組合保険、あるいは国保、あるいは労災、いろいろな関係の健康保険を非常にきらう。一体こういうところの原因はどこにあるのか。やはり保険に入っている者は保険適用ができるようにすべきではないか、こういう感じもするのですが、お取り扱いをされた関係から、それらのネックがどこにあるか、こういうことがおわかりになっておったら、お教えいただきたいと思うのです。
  54. 小松好太郎

    ○小松参考人 お答えいたします。  これは、本議案を御提出になられたわけですが、まず複雑だということ。窓口が現在のところでも四つある、これを一本化しなければならない。今度は実態に入ってまいりますと、保険会社さんが十九社あるわけでございます。それから外国保険もある。これは、損保の専務理事さんがおいでなので、特にお願いしたいのは、各社の保険請求の書式がみなまちまちでございますので、これを何とかひとつ統一していただきたい。それから具備すべきいろいろの書類の不足が非常に多うございます。私どもそれを、とにかく不足しながらもいろいろ出しております。こういう点もひとつ御改良なすったらどうか。とにかく被害者が簡単に請求できるようなシステムにしなければならない。  また、いまの書式の書き方ですが、まず第一に、これはわれわれ専門屋でもいろいろと苦しんでおります。これを簡単にしなければならない。もう一つは、さらに一歩深く入りますと、責任保険契約の番号でございますが、契約いたしますときの登録番号と――新車をお買いになりますと、よく皆さん自動車の車体番号でおやりになる。これがセコハンになってきますと、一年以上になると、実際は登録番号で扱うようになりますけれども、車体番号で入っていますために――警察御当局のほうは、自動車の登録番号でおやりになる。だから、車体番号は記載することにはなっておりますが、そこの点がなかなか十分行き届かない点もございますので、そういう点がまず被害者側としては、実務上は非常に苦労してまいります。  それから、自動車の登録車の所有者、使用者という問題、非常にあいまいな問題がございます。どなたの車か、はっきり言いますと、中古車だといって、その車がくる。実際にその方が保有者で運行業者であられるのか、そういう問題で判定に苦しむ。こういうもうスタートから、しろうとではできないようないまの手続状態であります。これを何とか一つのフォームをつくって、簡単明瞭なやり方にしなければならない、こう思います。  それから次の点でございますが、社会保険の問題その他の点についてお答えいたします。  自動車事故の場合は、突発でございますので、医療費の問題等についても、私ども病院などとよく協議しておりますが、確かにその場に、たとえば五十万なり百万かければ命が助かるようなお方もございます。そういう点は、私ども重大な場合には、御遠慮なくお書きください、それから健康保険なり、いまの業務上の場合は、労災をすぐ使っていただく、それから健康保険を使っていただく、また、国保の方は国保を使っていただくようにしております。私どもは、そういうところを好んでおやりくださらないところは、これはせっかくこれまでの社会保障制度もあり、とにかく自賠保険自体も社会保障制度一つの性格を持っているんだ。それに御協力いただけないような病院というものは、われわれのうちでは好感を持っておりません。  それで、これは私ども、いつでも、損保協会の査定事務所に出ますと、それとなく暗に、私どもの扱ってきた書類のうちでも、どうもこの病院はおかしいねといってチェックする場合が、われわれの内輪話ではお話ししております。どうもここの病院へ行きますと、とにかく加害者が泣かされておりますね、被害者も泣かされておりますね、ということはあります。これは当局もおわかりになっているわけでありますから、もう少し監督を厳重になすっていただけたならば、できることだと思います。  それから、私ども労災とか国保とか、とにかくいろいろ調整の場合には、骨折などの場合は、いまの状態でいきますと、月に大体十五万から二十万かかります。それで責任保険限度額の範囲内で済むものは、あえて健康保険とかなんとか、手数のかかることはさせません。それから骨折等で六カ月も七カ月もかかるんだという見込みのときは、相当強固な態度で病院にお願いしております。これは何といっても六カ月も七カ月もかかるんだ、このかかる損害については、加害者も負担しなければならない。しかも、加害者に賠償能力が十分あればいいんだけれども、ないのが通常だ。だから、ひとつ国保なり健康保険なり使ってください。そして将来においてそれが第三者行為で加害者のところに請求していくことになれば、被害者は安心して入院されるのではないか。いま一番問題は、加害者が治療費を払ってくれるかどうか。五十万までは確かに払ってもらえる、あとが困ったということがある。そういうところにその制度があるんだ、なぜそれを持ってこないか。静岡県の医師会は、それを盛んに提唱されております。だから、そのうちでもやはり個人でお考えになっておられる方は、自負担でやってくださいという御希望のお方もございますが、そういうところは、ある期間が過ぎますと、私どもは当事者の方にどんどん転医をおすすめしております。この期間でなおったならば、今度はすみやかにどこそこの国立の病院にいらっしゃいとか、社会保険病院にいらっしゃいとか、厚生年金病院にお出かけになって、それで国保なり健保なり、こういうものをお使いになって、長期間治療して、早く原状回復をしていただきたいということをおすすめしております。そういうことをすすめない限りは、幾ら政府御当局がこうだああだと指図しても、そこの扱う機関が積極的に勧告し、要請しなければ、これはならないと思います。そういうことでやっております。
  55. 山下榮二

    ○山下(榮)委員 最後に古瀬さんにお伺いをいたしたいと思うのですが、先ほどもお話しになっておりました、むち打ち症はおおむね運転者が多いと思うのであります。むち打ち症は、相当長期にわたって治療しなければならぬ、こういう関係にあると思うのですが、これは雇用者、被雇用者の間で、あるいは労働協約その他の関係等で、はたして運営がうまくいっているものでありますか、どうか。むち打ち症患者に対する取り扱いが、労使間でどういうことに運営されておるか、おわかりになったら、ちょっとお伺いしてみたいと思います。
  56. 古瀬雄二

    古瀬参考人 お答えいたします。  労使の問題でありますから、労使の関係が非常にいい場合には、労働協約等でそうした労働災害についての協定がなされておりますから、当然その協定に基づいて補償がされていくという形になっております。ところが、御存じのように、たとえばタクシーなんかの場合には、非常に中小零細企業が多いという関係もあって、労働協約でその休業補償の、たとえば労災の六〇%を除いたあとの四〇%を経営者側が補償するというような労働協約が、なかなか財政上できないという問題等もあって、そういう協定が結ばれていないところが非常に多いわけですね。そうしますと、当然、自賠責適用を最初受けていくという形になっておりますけれども、特別の支払い能力のある加害者なら別ですけれども、そうでない場合には、やはり五十万の障害の場合には、その限度をこえますと労災のほうに切りかえていくという形で、それ以降は六〇%の賃金になるということになる。これは、スムーズにそうしたかっこうで引き継がれているところもあるわけですけれども、中には、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、災害を受けた労働者が、まだ症状が悪いにもかかわらず、かってに白紙委任状で示談をしてしまって、補償を打ち切ってしまうというような事態も起こっているわけです。特に、私たちも、二聞いておりますけれども、入院を半年間ばかりやっていたのですけれども、その間にもう示談をしてしまって、自賠のほうからはすでに保険金を半分以上とってきてしまっているにもかかわらず、本人には休業補償を半年間にわたって全然なさないというような問題もあるわけです。そうした問題については、いろいろ相談をしながら問題の解決をするようにはしておりますけれども、想像以上にそういう問題が起こっているということを申し上げておきたいと思います。大体、そういうことになっております。
  57. 山下榮二

    ○山下(榮)委員 時間がきましたので、終わります。
  58. 砂原格

    砂原委員長 松本忠助君。
  59. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 きょうは参考人各位から、それぞれのお立場においていろいろとお話を伺いまして、たいへん有益な参考になりました。  そこで、時間もございませんので、私、いままで各委員方々参考人に質問されましたことと重複する点を除きまして、一応きょういろいろのお話を聞いておりますと、やはり現行法にはいろいろな不備な点がある、こういう点については、改善をしなければならないというふうな皆さん方の御意見がございますように受け取りました。中でも、自家保障であるとか、適用除外車の問題等については、われわれも大いに検討を要する問題である、このように思っております。  そこで、現在の自賠責の三百万を五百万にするということについては、私どもも、これはぜひそうしなければならないと思いますが、推定赤字のいわゆる千七百億というのを補てんするために料率を改定する、こういう点については私どもはどうも了解できない。  そこで、山口参考人一つだけ伺っておきたいのですが、将来これが五百万になり、その後もまた一千万になるということは、いままでの裁判の状態などから考えましても、十分予測されるわけです。将来、それも近い将来、二、三年のうちに一千万になる、こういうことになった場合に、それは相当に保険料が増額されていくだろう、それの負担にどの程度、業界においてたえられるか。また、オーナードライバーの方々も、たいへんな保険料になってくると思うわけです。そして、勢いそれが大きな影響を物価にも与えていく。こうなりますので、いまいきなり千七百億をここで料率改定の中に含むということについて、山口参考人はどのように思っておられるか。将来またこれが一千万になるようなことを考えてみた場合に、保険料は幾らくらいになるか、こういう点についての見解をひとつ漏らしていただきたい。
  60. 山口秀男

    山口参考人 ただいまの御質問は、一千万というようなことでございますので、私ども実はそういうことをいままでほとんど考えてもいなかったわけでありますが、五百万になるということは――五百万程度になるであろうということは、ほぼあれしているわけでありますが、それからいままでの赤字というものは千七百億になるだろうということは、これは推定ではありますけれども、最初申し上げましたように、請求件数増加とか、一件当たりの金額の高騰とかいうようなものから、これはほぼ正確な、あまり違わない推定だろう、こういうふうに考えているわけであります。それでこの千七百億というのを、なかなか一度にというわけにはまいらぬと思いますが、現在のところでは、大体三年なら三年くらいなところでそれを消していく。それから料率が不適正だということは先ほど申し上げましたですから、それをまず直していただく。そんなふうなことから見まして、私ども死亡が五百万、そうして傷害はそのままということであったら、現在の約三倍近くになるのじゃないか、こういうふうに実は考えておるわけでございます。  それから先生のお話のうちで、損害がどうしてそういうふうになるのかということでございましたが、これは自動車の損害とこの支払い保険金というものは、実はことししたものが、ことし、来年、再来年くらいで大体七割五分か八割くらい、支払い保険金としては、それからあとの二年ないし三年で、そのあと一〇〇%になるというような支払いの傾向があるわけでございます。それで実は、ことしちょうだいした保険料が、ほんとうは全部出ているわけじゃもちろんございませんですけれども、しかし、これはもうすでにその年に起こって支払いをしたもの、それから支払いはないのだけれども、現実にもう損害が起こっているのだ、起こっているのだけれども、金額がはっきりしていないというもの、それからまた、将来まだ期限がある間に、これから先も起こるであろうというものを加えましての千七百億円、そんなふうな計算になっているわけでございます。
  61. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 じゃ、その問題はそれでいいでしょう。  時間もありませんし、あと一点だけ伺っておきたいのですが、玉井参考人に、交通評論家としての高い立場から一つ伺ってみたいことがあります。  それは、きょうも武藤参考人の御意見の中に、ドライバー保険制度を導入した場合に、法律的にはどうか、どう調整したらいいか、こういう御意見もございました。そうしてまた、いま山下委員からの質問に対しまして、玉井参考人からも、事故歴を加味したドライバー保険、こういうようなお話もございましたので、私もその点について、いままでにいろいろと調べたこともございます。したがいまして、この方法を高い立場から参考人はどういうふうに思っておられるか、ひとつ玉井参考人に伺っておきたいわけです。  要するに、運転者に賠償責任保険をかけよ、こういうことを私どもかねがね言っております。被害者救済運転者の事故の抑止力、これを強めるために、この方法が最もいいのではなかろうか。こう思いまして、四十二年の末あたりから研究を進めまして、四十三年の四月の四日には、交通安全対策特別委員会でも、この問題に対して御当局の意見を聞きまして、さらに本年の二月二十五日にも、予算委員会の第五分科会でこの問題についても伺ってみました。また、五月の十五日には、私ども実施計画の試案、こまかい点まで、要するに、保険料を一体どれくらい取ったらよろしいかというような点までも加味した計画案をつくりまして、このことに対しまして業界の新聞が――日刊自動車新聞が取り上げまして、六月の十一日から十三日まで、三回に分けて載せております。私どももいろいろ業界の御意見も聞いてみますと、この点に対して賛成する方が非常に多いわけです。そこでその一つとしては、日本の代表的な自動車メーカーの最高首脳部に会いましたときにも、私はこの意見を申し上げましたらば、賛成である。タクシーの運転手さんにも――私は毎朝、新橋から国会まで参りますのに自動車に乗って参りますが、そのときに聞いてみると、やはり賛成する。それから輸送業者、いわゆるトラックの業者であるとか、そういう方々にも個々に聞いてみますと、まあ負担がかえって軽くなるのでいいじゃないか、こういうことも言われます。  そこで、この現行法プラス自動車運転者に賠償責任保険をかける、こういうふうにしますと、それだけでも三百万、現行法そのままで、五百万にしないで、現行法の三百万のままで置いておいて、それに運転者の保険を三百万創設をする、上積みするということになると六百万になります。したがいまして、府政のいままで、ここで五百万にしようという考え方よりも百万プラスされた状態になります。そういう方法でやったらば、十分な被害者救済ができるのではなかろうか、また、そのことによって運転者の事故の抑止力にもなるのではなかろうか、こういうふうに考えもするものですから、この点について、玉井参考人の御意見を伺っておきたいと思います。
  62. 玉井義臣

    玉井参考人 私、先ほど申し上げましたとおり、ドライバー個人にかける保険といいますのは、先生おっしゃいましたとおりの事故抑止効果があると思うのでございます。  ただ、いま自動車メーカーとかユーザーの皆さん方がドライバー保険を提唱されているのは、もっぱら財源を、保険料を散らばらして、いまの保有者の負担をできるだけ軽くしようという意味なのじゃないかと思うのでございますが、私はそういう意味じゃなしに、もっぱら事故抑止、事故防止観点から見て、ここに極端なメリット、デメリットシステムを加えて、事故を起こさない者には極端に保険料で優遇する、事故を起こした者については、事業所が敬遠するくらいに重いデメリットをつけていく、そういうことによって悪質運転者を結果的に排除していくというふうに用いるならば、これは非常に有効な方法だと思うのであります。ですから私は、現行の三百万にすぐ三百万を継ぎ足して、ドライバー保険をつくるというよりも、いまの三百万を、いま政府がお考えのような――多分五百万になると思うのですが、今後運転保険に対するいろいろな研究を重ねた上で、さらに次の段階で三百万なりの上積みをすべきではないかと思います。ただし、全く乗らない人が払うという不公平も起こるのでありますから、ウエートからはそんなに大きなウエートをかけてはいけないというふうに考えております。
  63. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 時間もございませんから、以上で私の参考人に対する質問は終わります。
  64. 砂原格

    砂原委員長 参考人に申し上げます。  本日は、御多用中のところ、貴重なる御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十二分散会