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石田説明員 二十三年ごろといえば、まだ自動車とか道路なんというものは、もうほとんど問題にならなかった。やはり
国鉄人からいえば、昔の独占制における夢というものが去らなかった時分だと思うのです。それで、その後とにかく道路は発達し、自動車は盛んに利用されるということで、
国鉄というものは、えらい強敵にぶつからねばならぬということで、ここに独占制のプラスというものはほとんど消えちゃった。そこへ持ってきて、収支の体制というものがすっかり変わっちゃった。そういうぐあいで、自動車なんかの競争があることによって収入はふえますけれども、収入のふえ方はきわめて貧弱だ。そこへ持ってきて、さらに支出のほうですが、要するに人件費というものは、えらい勢いで一二%も二二%もふえるというようなことで、収支の差というものはすっかり逆転してしまった。たとえば四十三年と四十四年の
予算なんか見ますと、収入の増はまず七%ぐらい。しかも、支出の増は一二%ということで、運輸収入と経費だけの差を見ても、すでに三百億ぐらいのマイナスになってきておる。そこへ持ってきて、御
承知のとおり、非常な大きな
通勤輸送の増強をやらなければならぬ。これが四十年から五千百九十億で第三次計画をやったのですが、四十一年、四十二年、四十三年で約二千七、八百億かかった。さらにその上に、初めの五千百九十億じゃだめだ、いまから二千七百九十億のほかに五千五百億を加えなければ、ということで、八千何ぼというものをやらなければならぬ。しかも、この
通勤輸送というやつが、昔と違って工事費はいかにも高い。とにかく土地だけで四割ないし五割はかかる。しかも、収入の点においては非常に大きな割り引きをしなければならぬために、問題にならぬ。そこへさらに人口の増で、とにかく今後ともこれはますますやらなければならぬという、この八千何ぼというものの利息の
負担はどうなるか、それが一番大きなものです。だから、いまの
国鉄が直面している問題は、収支の体制が非常に悪いということである。そして、利息の
負担にとにかく千数百億もかかってやらなければいかぬ、これが一番大きいのですよ。それでわれわれとしては、これまでに易々諾々としてやって、おった
公共負担なんか、この際つつしんで返上しなければならぬ、
政府でひとつ見てくれということである。さらに
赤字線の問題、これがいまだって、
赤字だけだと千四、五百億はマイナスになっている。これは、えらい勢いでまだふえている。この
赤字はどうするかということで、要するに天下の大勢というものはすべて非なり。ただ、われわれが望みを持ち得るのは、一生懸命でやれば、収入のほうの増というものは
相当に期待できるということで、今度のような三本柱による
再建計画を立てたといったような次第でございます。これは二十三年ごろといまとは、全く情勢が変わっておるのであります。しかし、今度
政府があれだけ援助してくださるということ、そしてまた、
国鉄としても、だいぶ
合理化の余地はある。そこへ持ってきて
利用者に九百十億も
負担してもらえば、まずもって私どもは、希望を持ってこの
再建計画に当たれるということで、この
運賃値上げというものが出たわけなんです。
さらにこれは
一つ、ついででありますから、
質問してくれる方がないかもしれぬから申し上げるが、
運賃の
値上げの問題です。これは一体、
運賃を
値上げするというと
物価の上に
影響がある。それは私は二つあると思う。第一は、
公共料金を上げるということの心理的
影響だな。これは私は、〇・九%よりはむしろ大きいんじゃないかと思う。しかし、これは時の問題で、かすに一月や二月の時をもってすれば
——問題は〇・九%の問題ですが、企画庁長官の
意見は、少々私は不賛成だ。ということは、なるほど〇・九%というものは
影響はありましょう。しかし、これによって得た九百十億というものは、何もどぶへ捨てるわけじゃない。これによってわれわれは輸送力を増強する、
通勤輸送を改善するということで、ことに輸送力を増強すれば、それだけやはり物資の流動というものが盛んになってくる。それは
需要供給の上にプラスになりこそすれ、決してマイナスにならぬ。さらに、輸送力を増強するということは、それだけ生産の増強に役立つではないか。そこにおいて、つまり品物のサプライの上において
相当大きいプラスになる。だからして、私に言わせれば、〇・九%の
影響があるということではなくて、マイナスの×の×というのは、あるいは〇・九より大きいかもしれない。いずれにしても、〇・九より小さいということは
考えられない。したがって、この〇・九というものを振り回すということは、私はこれは、一を知って二を知らぬということではないかと思う。