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1968-12-19 第60回国会 参議院 地方行政委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年十二月十九日(木曜日)    午前十時五十分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         津島 文治君     理 事                 熊谷太三郎君                 吉武 恵市君                 林  虎雄君                 原田  立君     委 員                 小林 国司君                 小林 武治君                 鈴木 省吾君                 船田  譲君                 増田  盛君                 若林 正武君                 竹田 四郎君                 千葉千代世君                 松澤 兼人君                 和田 静夫君                 阿部 憲一君                 山田  勇君                 山崎 竜男君    国務大臣        労 働 大 臣  原 健三郎君        自 治 大 臣  野田 武夫君        国 務 大 臣  荒木萬壽夫君    政府委員        警察庁長官官房        長        浅沼清太郎君        厚生政務次官   粟山  秀君        労働大臣官房長  岡部 實夫君        労働省労働基準        局長       和田 勝美君        労働省婦人少年        局長       高橋 展子君        自治政務次官   砂田 重民君        自治大臣官房長  宮澤  弘君        自治省行政局長  長野 士郎君        自治省財政局長  細郷 道一君        消防庁長官    佐久間 彊君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木  武君    説明員        大蔵省主計局主        計官       秋吉 良雄君        厚生省医務局指        導課長      正田 泰央君        厚生省児童家庭        局企画課長    鈴木  猛君        農林省農政局普        及部長      冨樫 覺悟君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○地方行政改革に関する調査  (地方行政及び警察行政基本施策に関する件)     —————————————
  2. 津島文治

    委員長津島文治君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  地方行政及び警察行政基本施策に関する件を議題といたします。  まず、野田自治大臣及び荒木国家公安委員長から所信を伺います。野田自治大臣
  3. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 私はこのたび自治大臣を命ぜられました野田でございます。所管行政の各般にわたり複雑多様な問題をかかえております時期に当たって、その責務の重大さを痛感いたしております。私は、かねてから地方自治は国政の基本であると考えておりましたので、これを機会地方自治発展国民福祉向上のため、さらに努力する所存でありますが、この際、当面する諸問題の若干について所懐の一端を申し述べ、各位の御理解格別の御協力を賜わりたいと存ずるものであります。  わが国社会経済の最近における急速な発展に即応して、行政運営広域的処理必要性は一そう強まっていると私は考えております。そこで、府県段階においては、広域的地方公共団体としての府県自治能力充実強化するため、前国会成立をみなかった都道府県合併特例法案次期通常国会に再度提出し、皆様方の御協力を得てぜひその成立をはかりたい所存であります。市町村段階においては、事務共同処理方式など現行制度の積極的な活用をはかるほか、地域住民生活圏広域化傾向に即応するため、都市的地域及び農山村地域を通じ一体として形成されつつある日常生活圏広域市町村圏として把握し、所要の行財政上の措置を講じてその特性に応じた地域の形成、振興につとめてまいりたいと考えております。  また、地方行政簡素化合理化につきましては、さきに地方公共団体から聴取した結果によりまとめた「地方行政合理化に関する行政改革意見」に基づき、その推進をはかっているところでありますが、引き続き、なお一そうの努力を重ね、各省庁協力も得て行政改革の実現につとめてまいりたいと存じます。  公務員行政につきましては、今後一そう公務員秩序確立と正常な労使関係の樹立につとめるとともに、地方団体定年制を採用し得る道を開き、あわせて適正な給与制度確立及び運用、地方公務員福祉の増進などを通じて、公務能率向上をはかってまいりたいと存じます。  次に、地方財政について申し上げます。最近の社会経済情勢進展に伴い、地方団体財政需要は、質量ともに大きく変動してまいっておりますが、地方行政水準は、まだきわめて低く、地方財政体質もこれらの財政需要に対処するためには、まだはなはだ脆弱であると考えられます。このため、当面の地方財政対策は、過密過疎対策に対処しつつ新しい町づくり地域づくりの計画的な推進地方公営企業経営基盤強化にその施策の重点を置く必要があると考えます。これらを実施するためには、きわめて多額の財源を必要としますので、地方財源の一そうの充実確保につとめてまいりたいと存じます。また、地方団体においても、事務機構簡素合理化などにつとめ、地方財政体質改善になお一そうの努力を払うよう指導してまいる所存であります。  地方税制につきましては、ここ数年来、困難な地方財政のもとにおいて、あとう限りの減税を行ないながら、税負担合理化均衡化を進めてまいりましたが、今後においても、税制調査会長期答申の趣旨にそって、地方税源充実をはかるとともに、地方財政状況を考慮しつつ、住民負担の一そうの合理化をはかってまいりたいと存じます。  次に、消防行政について申し上げます。最近における火災その他の災害の多発と多様化傾向にかんがみ、消防行政充実強化については、積極的に施策を講じてまいる所存であります。そのため、まず消防体制常備化広域化消防財源充実による消防施設の増強をはかってまいりたいと存じます。  さらに、近年火災による死傷者が増加する傾向にありますので、この際、高層建築物地下街等不特定多数の者を収容する施設における予防査察及び煙対策その他の予防規制強化につとめるとともに、交通事故等の激増している状況に対処するため、救急業務の拡充についても引き続き力を入れてまいりたいと存じます。なお、消防職員及び消防団員教養訓練と処遇の改善につきましても一段と努力をいたす所存であります。  以上、所管行政の当面の諸問題について所信一端を申し上げたのでありますが、委員各位の格段の御協力によりましてその実をあげることができますよう、一そうの御鞭撻と御指導をお願い申し上げる次第であります。
  4. 津島文治

  5. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 私は、先般の内閣改造に伴いまして国家公安委員会委員長を命ぜられ、その責務の重大さを痛感いたしておるのであります。  委員各位には平素から警察行政につきまして多大の御尽力をいただいており感謝にたえないところでございますが、今後とも格別の御指導と御協力を賜わりますようお願い申し上げる次第であります。  この機会に、警察行政をめぐる当面の諸問題につきまして所信一端を申し述べたいと存じます。  私は、警察行政の目的は、国民が安んじてその生活にいそしめるようにすることにあり、治安の確保なくしては、民主政治発展国民生活向上もあり得ないと存じておるのであります。このような観点から見まして、最も憂慮にたえないのは、最近における一部学生集団による相次ぐ暴力事案の発生であります。各位承知のように、これら集団は、暴力をもって学園の自治を破壊しつつあるばかりでなく、各地集団的暴力行為を敢行し、国民生活に重大な不安と損害を与えるに至っております。私は、このような事態にかんがみ、警備体制確立その他所要措置を講ずるとともに、さらに関係省庁とも相はかって総合的な施策推進にもつとめてまいる所存であります。  次に、最近の犯罪情勢において注目されますのは、挙銃による連続射殺事件金融機関に対する強盗事件列車等に対する爆破事件などの異常、凶悪な犯罪各地で続発していることであります。警察といたしましては、これらの事件早期解決に全力をあげているところであり、幸い横須賀線電車爆破事件については国民各位協力により解決を見たのでありますが、今後このような情勢に対処するため、広域捜査体制を一段と充実強化し、捜査方法科学化合理化を促進してまいる所存であります。  次に、最近地方自動車の目ざましい普及に伴いまして本年の交通事故は異常な増加を示し、その被害者数は八十万名をこえるのではないかと見られておるのであります。このような状況に対しましては、関係省庁と密接な連絡のもとに交通安全施設整備悪質運転者に対する取り締まりの徹底等を期するほか、地域社会における事故防止体制づくりを促進してまいりたい所存であります。  また、最近の都市における交通混雑の激化は、都市機能を著しく阻害するに至っておりますが、当面、合理的な交通規制徹底交通信号機機能高度化をはかるとともに、抜本的なこれが解消策につきましても、鋭意検討を加えてまいる所存であります。なお、昨年の国会で御審議いただきました交通反則通告制度は、国民各位理解のもとに順調に発足いたしており、また、かねてお話申し上げておりました運転免許行政処分合理化適正化をはかるための点数制度につきましては、去る十月一日、関係政令を公布し、明年十月一日から実施の運びとなりましたことをここに御報告申し上げておきたいと存じます。  以上、当面の問題の二、三について申し上げたのでありますが、現在の困難な情勢に対処して警察がその使命を十分に果たして国民の期待にこたえられるかどうかは、一にかかって警察職員の素質の向上士気高揚にあると存ずるのであります。このような観点から、警察職員の採用、教養につきましてはもちろん、待遇改善その他の士気高揚方策につきましても積極的に配慮してまいる所存であります。  重ねて皆様の御協力をお願いして、私のごあいさつに代えさせていただきます。
  6. 津島文治

    委員長津島文治君) ただいまの野田自治大臣及び荒木国家公安委員長発言に対し、御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  7. 千葉千代世

    千葉千代世君 私は、公営企業の実態とそれから労働関係並びに職員賃金その他についてまず伺い、続いて労働省機構改革に伴う婦人少年室関係、さらに農林省厚生省関係にまたがる補助金の問題について伺いたいと思います。  まず、自治省行政局長にお尋ねいたします。先般の地方行政委員会地方事務官制度の廃止についての質問に対しまして、行政局長は次のように答えておられます。すなわち、行政管理庁長官が主宰する関係大臣話し合いの中で、運輸省関係仕事については陸運行政車検及び登録というものを一応分けて、陸運行政というものについては地方行政の総合的な交通行政になるべく多く取り入れるほうがよい。車検登録事務は画一的な行政であるから、全国一本でコントロールしたほうが能率的である。そしてそういう方針のもとに具体的な事務委譲について、両省、すなわち自治運輸両省の間に協議しているところであると言われておりますが、その後の話し合いはどのように進んでいらっしゃるでしょうか。
  8. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) その後におきまして陸運行政につきましては、十一月二十六日に、行政管理庁長官から閣議におきまして陸運行政改革につきましての御報告があったように伺っております。その後、行政監理委員会というのが行政管理庁機関として行政改革推進のために置かれている機関がございますが、その行政監理委員会におかれまして、そういう従来までの経過につきまして私どもも呼ばれまして説明を求められまして、御説明をいたしました。その後、具体的な事務委譲につきましての話し合いというものは、現在、関係省庁の間で協議中でございますが、まだ具体的な進展がそれほどあるという段階ではございません。
  9. 千葉千代世

    千葉千代世君 私がなぜこのような質問をしたかというと、最近の新聞に出ておりましたのですが、運輸省陸運事務所出先機関化の問題についてですけれども、この出先機関化に伴って陸運行政の大部分を国の出先機関で行なうことを主張する。つまり地方委譲する事務としては、まあどうでもよいよと言っては言い過ぎかもしれませんけれども、要するに、端っこの事務だけの感じを私受けたのですけれども地方陸運行政自治体として一元的に行なうということができない。さすがの自治省も、いまおっしゃったように、進展していないという内容の中身は、運輸省考え方にあまり御賛成でないようにも私は推測しているわけなのです。で、問題が振り出しに戻って、いつ解決するやらめどもつかないというような記事も新聞にちらほら出ておったし、現にけさ、たしか私、毎日だったと思うのですが、けさ新聞にも、行政監理委員会荒木大臣意見書を出すことをきめたということが出ておりますのです。で、重ねて伺いますけれどもほんとう自治省の腹は、この運輸行政一元化についてどういうところなのでしょうか。
  10. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 自治省ほんとうの腹というようなことになりますと、私ども事務方だけで確たるお答えはなかなか申し上げかねるわけでございますけれども、私もきょうの新聞を拝見いたしました。先ほど申し上げました行政監理委員会説明を求められまして、そういう話をいたしましたあとで、関係各省の方々の御意見等も伺われまして、行政監理委員会としての御意見をおまとめになったのだろうと思いますが、私ども伺いましたところでは、一つの問題は、陸運行政の中で、陸運事務所が扱っております仕事が、いわゆるこの自動車車体検査登録というものと、それから自動車運送事業免許とか許認可、監督というようなものと二通りに分かれるわけでありますが、その中で自動車運送事業につきましては、バス、ハイヤー、トラックとか、タクシーとかいろいろありまして、地域住民の足の問題といいますか、そういうものと非常に密接な関係がございます。その範囲をどれだけ県のほうにゆだねるか、ゆだねないかということにつきまして、私ども運輸省当局との間ではまだ意見一致を見ておりません。その関係につきまして、出先行政監理委員会の御意見でございますと、まあどちらかと申しますと、私どもの申しておりますほうにやや近いという方向にものを考えていくべきだというような御意見が出されておるやに拝見した。また、一そうそういう線に沿いまして折衝を続けてまいりたいと思っております。
  11. 千葉千代世

    千葉千代世君 まだ一致を見ていないというお答えですけれども、はっきり言っていつごろ一致を見る見通しなんでしょうか。また、それは臨時行政調査会とか地方制度調査会、あるいは若干後退したようですけれども、さっき申し上げた行政局長さんの御答弁ですね。すなわち行政監理委員会のいうような、地方陸運行政自治体によって一元的に行なっていくということなんですが、そういう点をもう少しはっきりおっしゃっていただきたいと思うんです。というのは、私はなぜこれを申し上げるかというと、後ほど続いて出てきます地方公営企業職員の問題の労働関係とか、あるいは賃金問題に相当影響する面も出てくるんじゃないかと、赤字の問題もからんでこう考えておりますので、忌憚のないところをお答えいただきたいと思っております。
  12. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 先ほど申し上げました十一月二十六日に行政管理庁長官閣議で御報告なすったその内容の中には、いまの車体検査登録という仕事は、これは一元的にやっていく、ただし、車体検査については民間企業委譲する、そして登録は国の事務として一元的にやっていくんだ。一面、県内の陸運業者、つまり先ほど申し上げました自動車運送事業関係するものでございますが、それにつきましては、県に委譲可能なものは関係省庁の間で協議してきめると、こういう大きな方針を示されたというようなかっこうになっておりまして一私どもはまあそれにつきましてのいろんな扱い方、問題の考え方というものが、正直申しまして、必ずしも関係省庁の間で全く一致しておるという現在の段階ではございません。一致いたしましたならば、これはもうすぐそういう措置が講ぜられるわけでございますが、ただ、それについて現在折衝中でございます。お互いの意見一致を見出すべく努力をしている最中でございます。で、いつまでにそれが片づくのかということになりますというと、私どももそういう一応の方向というものがあるわけでございますから、できるだけ早くこれは片づけなければいかぬ。また、地方事務官の多年の問題でございますので、片づけたいと考えております。先ほど先生がお話ございましたように、地方制度調査会臨時行政調査会、それから先ほど申し上げました行政監理委員会、それぞれの見解は、地方制度調査会臨時行政調査会はほとんど一致しております。すなわち地方事務官が扱っております仕事は、あげて府県に委任をして、そしてその身分は地方公務員に切りかえる、地方の総合的な自治行政の中で扱うことが適当だという、こういう意見でございます。行政監理委員会になりますと、多少ニュアンスが違っております。やはり検査登録についてはある程度そういう全国的に技術的な問題もあるし、統一的な処理をするほうが適当ではないかというようなことが出ております。ただし、その余のものは地方自治行政といいますか、地方地域社会住民生活に非常に密接な関係があるから、これはやはり地方にできるだけ委譲すべきだという考え方、したがいまして、それに従事する職員は、地方公務員に切りかえていくべきだと、こういう考え方が示されておるわけでございます。今回の関係省庁の間の大まかなワクは、それらのいろんな答申から出てまいりましたものを一応集約いたしました形で、方針的なものが一応示されておるという形でございます。そこで、その中で具体的な細目にわたっての詰めを現在行なっておるという状況でございます。
  13. 千葉千代世

    千葉千代世君 私は、よく大都市市長さん方から伺うのですが、これは市長さんから聞くまでもなく、現に私ども東京に住んでおって現実に経験しているわけなんですけれども都市交通の困難の原因というのはいろいろあると思うのですけれども、その一つは、やはり都市交通行政が一元的に行なわれていないというようなことにあるのじゃないか。関係省庁ばらばら行政の中でやっておってはなかなか根本的な解決はできないのじゃないかと、そういうことも考えているわけなんです。そこで、たとえば都市交通についてもいろいろありますけれども路面電車を撤去するとか、あるいはバスの運行について改良するとか、地下鉄の問題については国の出資金がどうとか、いろいろいままでの地方行政委員会、あるいは運輸委員会でずいぶん討議されていることも速記を拝見して調べてみたわけなんです。しかし、幾ら国会で討論しておっても現実的にはこれが実施されていない。私この間、親戚の人を連れて歌舞伎座へ行った、夜おそくなった、タクシーを拾おうとしても、どうしても拾えない。築地の向こうにバスがあるわけなんです。それに乗ろうとしても、四十分待っても帰るころのバスが来ないわけなんですね、昔、前ですというと電車を待ってということもありました。タクシーは全然寄りつかないし、それは、まあ千円出せば行くとか何とか、全然私ども良心的に考えても乗れませんし、とぼとぼ日比谷まで歩くことにしたのですが、こういうふうになってきますというと、昼間の混乱と夜の交通地獄と申しましょうか、全く人為的な魔の交通地獄の中にいるわけなんです。そうすると、やはりこの排除という問題については、私企業公的企業、これがせり合っているという状況、こういうものを、やはり全体的な観点に立った交通行政というものがきちっとしていかないというと、じんぜんと日を重ねておったのでは解決できないのじゃないかということを考えるわけなんです。それで、こんなに非常にくどく質問しているというのはわけがあるわけなんです。いまの公営企業法は四十一年に大改正されました。独立採算制確立とか、負担基準明確化とか、赤字企業の再建などの措置がとられたわけですけれども、これらの法改正地方公営企業制度調査会答申をもとにしていることは御承知のとおりですけれども、私はこの答申そのもの企業経営本位だという姿勢を、もっともだということを、あまり賛成はしていないわけですが、それでもまだ答申企業環境整備とか、都市交通一元化等にふれて、交通企業の成り立つようにその周辺の問題についても積極的に建議をしているのじゃないかと、この一面を把握しているわけなんですけれども、ところが肝心なことが、実は事務移譲の問題に見るように、一向にらちがあかないという、たとえば、答申は、地下鉄建設は路上が使えないので地下にもぐるのであるから、地下道建設費都市改良事業として国においても道路並み補助をせよと言っておるわけなんです。なるほど自治省予算要求の構想としては出しているけれども、若干の補助費を出したほかは何ら見るべきものがないように思います。そういう中で交通企業職員賃金のみが不当に押えつけられているという、これは企業だけの合理化が強引に進められていっていて、さっき申し上げたようなものがばらばらな中で、この谷間の中で、この一番犠牲をこうむっているのがこの職員の問題であるのじゃなかろうか。先ほど野田自治大臣は、正常な労使関係確立する云々ということばがあったわけです。私も当然だと思うんです。しかし、正常な労使関係というのは、やはりそこに働いている労働者ほんとうに安心して生活して、次の再生産のために意欲を持って働けるという、この基礎が保障されない限りは、これはだめだと思うんです。そういう意味の正常な労使関係という点から見ていきますというと、これは私非常に何か心さびしい思いがいたします。それに関連いたしますけれども公営企業体職員賃金、特に当面した問題で伺いますけれども人事院勧告実施要求して、御承知のとおり、公務員組合皆さんが共同して闘争を進めてまいったわけですが、十七日から十八日の夜にかけていろいろ与野党の御苦労、あるいは総評その他各党皆さん話し合い、あるいは公務員共闘皆さん、非常な御努力の中で一応のめどはついたわけで、了解点一致したわけなんです。そうして、まあ、御承知のように、十八日の二時にストが回避されたんです。けれども東京都の労働組合連合会——都労連と申しておりますが、それは独自の立場統一ストを実行した、時限ストを実行したわけなんです。それは東京交通労働組合——東交都教組都職を含む皆さんであるわけです。なぜこのような立場に追い込まれなければならなかったかという点なんです。私はこれは公務員賃金、つまり人事院勧告完全実施の熾烈な要求、これも当然でございますけれども、その中に公営企業体職員の保障がなかったということ、つまり中央交渉の妥結の中では、公務員の七月実施にさかのぼるという話し合いはついたけれども、そのときに地方公務員も含まれますねという中で、そのとおりだというお答えがあったわけです。私は地方公務員の中に、この地方公営企業職員も含まれているという、こういう解釈を持っているのです。ところが、ずっと先ほどから伺っておったり、いろいろ調べてみますというと、どうもそれも心配になってきた。私は重ねて申し上げますけれども地方公務員の中に地方公営企業職員も含まれると、そういう解釈でおりますけれども、いかがでしょうか。
  14. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 御指摘のとおりでございまして、法律的には地方公務員と申しますと地方公共団体が雇用しておる職員でございますから、一般の行政事務に携わっております者も、それから公営企業に携わっております者も、ひとしく地方公務員でございます。
  15. 千葉千代世

    千葉千代世君 いまほかの連絡をしておりましたので失礼しました、もう一ぺんおそれ入りますが。
  16. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 地方公共団体に雇用されております者はすべて地方公務員である。これはいまの地方公務員法が明らかにしておるところでございます。したがいまして、地方公営企業に従事しております職員地方公務員でございます。
  17. 千葉千代世

    千葉千代世君 そういたしますと、地方公営企業職員に七月にさかのぼるということは適用されますか、されませんか。
  18. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 法律的にはいま行政局長から申し上げたとおりでございますが、従来、給与の議論をいたしますときには、地方公務員という場合に、公営企業は含まないと、こういうことで大体話ができております。と申しますことは、いつも給与の際に国の公務員について給与改定をする、それに準じて地方公務員の給与改定をするという場合には、その地方公務員については一般的には公営企業職員をそのまま含まない、公営企業につきましては公営企業法の三十八条によって給与のきめ方が別個に書いてございます。それによってきめられるわけであります。また、国が公務員の給与改定をして財源措置をするというときに、地方公務員についても財源措置を準じた措置をするという場合におきましても、公営企業の給与改定については別の財源措置はしない、こういうことでずっときております。その辺は関係者の間においては考え方確立をしておるものと私は考えております。
  19. 千葉千代世

    千葉千代世君 地方公営企業労使関係については当事者間で円満に話し合い解決すべきである。これが本旨だと思いますが、その点いかがですか。
  20. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 公営企業のいろいろの労使間の諸条件につきましては、労使間で話し合う、これが基本の原則であります。
  21. 千葉千代世

    千葉千代世君 そこで、三十八条の問題もありますけれども、たしか十一月二十六日でしたか、竹田先生の御質問の速記録をいま拝見したら再建の問題がずっと出ておったのですが、この独立企業採算制と赤字再建の問題と、そういう問題におもに賃金の抑制の重点がかけられておるようなんです。私はちょっと話が飛躍いたしますけれども、再建計画についていま出ているところはどことどこなんですか。この間の速記録には名古屋が一番トップではないだろうかというようなことがあって、十二月中までに一生懸命行政指導するなんというようなことがちょっとこれに書かれておりますが、名古屋はその後どうなっておりましょうか。また、東京の実情はどうなっておりましょうか。再建計画について賃金にからんだ面の処理方法はどうなっておりましょうか。
  22. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 先般の地方公営企業法の一部改正によって財政再建の道が開かれましたが、その規定に基づいて再建をいたしております団体は百五十五ございます。もちろん大都市交通企業もそれに含まれておるわけであります。百五十五の中で昨年の給与改定ですでに完了いたしましたものはほとんどでございます。十一月末では八つの団体だけが昨年の給与改定、俗に八賃と申しております。八賃の改定に伴う措置をいたしております。八団体だけがいま残っているわけであります。その八団体に六大都市もみな入っている。そこで、その後、六大都市の交通につきまして、それぞれの団体で八賃をする場合にはどういうふうに収支のつじつまを合わせていくかということでいろいろ議論もしていただきました。その結果、名古屋は一昨日ですか、市議会で変更案が通った、こういうことでございます。東京も私は新聞承知をいたしておりますが、数日前に通過をいたしましたようでございます。
  23. 千葉千代世

    千葉千代世君 名古屋のこの変更案の通ったものは内容はどういうのか、御存じでしょうか、それから東京内容を御存じでしょうか。
  24. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) まあ内容はそれぞれその実情に応じて違っておりますが、大まかに申しますと、名古屋の場合は、軌道の撤去の繰り上げをする、それから他の企業内の努力をする、たとえば手当の整理、そういったことが中心になっております。それから東京の場合も同じく軌道の撤去をいたしますほか、やはり企業内の努力合理化をしていただく、あわせて東京の場合は、軌道撤去に伴って不用となりました交通事業の財産の一部を一般会計で引き取ってもらう、こういうようなことが大体の骨子でございます。
  25. 千葉千代世

    千葉千代世君 いま御指摘のように、東京は十二月の十二日に三つの附帯条項をつけて都議会を通過しているわけです。自治省のほうにはまだ正式に申請はないんじゃないかと思っておりますが、その中で計画案の一部を修正をして八賃の承認を得たわけなんですね。しかし、九賃については何らのめども一なければ何にもないということ、そうすると、それではこれと同じように計画変更を一部修正して、次はまた九賃の保障ができるのかどうかというと、これはまだ全然保障も何もできていないし、またできないようないま現状の中にある。それは自治省のほうで、一般経費のほうからそちらに回すことは相ならぬというきついお達しがあるので、それは変更の内容については、あなたがいま述べられたようにいろいろこまかい項目があるわけなんですけれども、しかし、私が究極的に考えますことは、一般会計の中から出すのはだめだと自治省が言っているとか、こういうふうにいろいろ考えていった場合、どんなにしても現実の情勢の中で正当な労使関係、その裏づけになる公営企業職員生活の安定、これを考えていきますというと、九賃のめどもつかないままでいれば、このまま放置していったらば職員生活は一体どうなるとお考えでしょうか。これは自治大臣お答えいただければ一番よろしいのですが、どなたでもけっこうです。
  26. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 大臣からお答えする前に私からちょっと申し上げておきます。  公営企業と給与決定の原則は、御承知のように公営企業法に明示されております。他の公務員、あるいは他の同種の企業の給与とか、あるいは生計費、そういったようなものを考慮してきめることとされておりますが、さらに公営企業でございますので、やはり、その企業の経営の状況ということを勘案してきめる、こういうことでございます。したがいまして、それを平たく言えば、地方公営企業の給与の改定にあたっては、まず現在の賃金ベースが一体他の類似のものに比べて高いのか低いのかということが一つ。もう一つは、それじゃ他の企業とか、あるいは他の公務員に比べて上げるべきだと判断した場合でも、財源があるのかどうか。この二つが要素になってきめられていくべきものだと思っております。したがいまして、九賃があり、八賃があるから必ずこれは上がるものというのとは性質が違うと思うのです。そこのところが公営企業の給与のあり方として、まず関係者の方々の間で認識をいただくということが必要であろうと思っております。したがって、八賃につきましても、大都市交通についてはいろいろ給与の高さもおかえになりましたし、また、それをしぼり出す財源にもいろいろ議論がございまして、関係市も非常な苦悩をいたしました結果、ややおくれまして、一般の場合とおくれて今回そういう成案を得る市も出てきた、こういうのが現状であります。したがいまして、九賃には全く絶望的であると、こういうお話もございますが、私はやはり公営企業、しかも六大都市のように再建の状態にある。やはり一種の病気でございますので、病気にかかっている間は、いろいろほかの事情もございましょうが、その病気の状態のもとにおいて考えていただくということがまず先ではなかろうかと思っております。ただ私どもは、たびたび申し上げておりますように、それじゃ公営企業、特に都市交通事業の将来はいまのままですべていいかということになりますと、いろいろやはり問題があるのではなかろうかという気がいたします。御承知のように、いろいろ都市の事情の変化、いわゆる社会経済情勢の推移といったようなものがございますので、そういう面から来る都市交通の受けます影響というものについては、私は合理的な解決を将来はかるべきではなかろうかというふうに考えております。したがいまして、私どももたとえば明年度におきましては、先ほどお話に出た地下鉄企業に対する国の財政措置というようなことも考えてもらわにゃいかぬと思いますし、また建設資金のコストを引き下げるというようなことも考えていただかなければならない。まだそのほかいろいろ、たとえば路線を変更するにあたっての許認可事務をもっと円滑にしてもらうといったような行政上の問題もございましょう。あるいは大きくは大都市交通一元化といったようなことも真剣に考えなければならないと思いますが、さしあたっては先ほど申し上げたようなことを明年は進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  27. 千葉千代世

    千葉千代世君 合理的な解決をしていくという希望、これはもう了承いたしますが、しかし、合理的な解決と申しましても、再建企業の期間ですね。これは七年になっていますね。そうしますというと、物価はどんどん上がっていくと、とても追いついていけない。この場合は赤字をかかえておるから云々といわれたのですが、それはまあ問題はありますけれども、現にお金があってもベースアップはしないという、やっぱり総合予算のたてまえをくずさないからというその看板にしがみついておったわけでしょう。現にあるわけです、国家公務員の場合はね。そういうふうにして、お金があっても出さない。ないところはむろん出ないわけですね。しかし、やっぱり国と地方関係、それから公営企業職員の問題これらを関連していきますというと、同じ公務員立場でありながら生活条件、それから物価の上昇率、そういう問題については差があるわけではないと思うのです、私は。そうした場合に、この再建期間がおおむね七年だということが法律上なっておるわけです。そうすると、七、八年経てば公務員の給与は倍になっていきますね。そうすると、八賃が片づかないところはいま八つの団体で、名古屋が大体、あと東京が大体、あと残りは六つあることになりますね。そうすると、大体めどがつきそうなところもあるようなんでありますが、まだ確たる保障がない、こういうふうになっていきますと、これは私はむずかしい計数的なことはわかりませんけれども、やはりこの際は国が金繰りのめんどうを見ていくということ、もちろん公営企業職員についての労働関係法規、あるいは仲裁裁定の問題等もあります。あるいは争議権の禁止等もあります。しかし、人事院の勧告が行なわれて、それを完全実施という基本的——さらに今度一歩後退して七月からになったとなれば、大体仲裁にかけたところは幾つあるか知りませんが、あまりないと思うのです。そうすると、それと同じような効力をもって、同じような配慮の中で生活の安定というのを見守ってやるというのが、これがほんとうの愛情のある労使関係の樹立じゃないんでしょうか。これは自治大臣にひとつ答えていただきたいのですけれども
  28. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) いま千葉さんの御質問内容を承っておりまして、確かに理論的には地方公営企業職員もやはり地方公務員でございます。その給与につきましても実質的にやはり不平等であってはいけないか、そういうことはよく私も理念的に非常によくわかります。先ほど私の発言のときにも、正常な労使関係の樹立につとめるという立場からいたしましても、御意見ごもっともだと思っております。いま政府委員からお答えいたしておりますとおり、地方公務員の給与体制と、公営企業のきめ方というものが違っておるようでございます。これはお話のとおり、いまの地方公営企業が非常な赤字に悩んでいる、こういうときでございますから、お互い相互話し合いでやりましても、なかなか公営企業職員の給与というものは合理的にいかないということはよくわかります。そこで、たとえばいまお話のございました、今度八月が一ヵ月間繰り上げの給与になるという場合には、これは国家公務員と同様に、地方公務員におきましてもこれに準じます。その点について、さらにこれが公営企業職員にどうかという御心配のようでございます。これはいま財政局長も御説明したように、内容によってきめ方が異っておりますが、しかし、地方行政一般の指導から申しますと、やはりできるだけその点に格差がないようにっとめなくちゃならぬ。それらにつきましてはやはり企業の実態もありますし、また個々の企業内容が各地方公共団体で違っておりますから、一律にこれを指導いたしますと申しましても、これも観念的にはわかりますが、実際上はたして効果がどこまでくるか、しかし、できるだけ合理的にやはり給与体制というものは同じ地域に働いて、同じ職責を持っているということから考えますと、これはやはり自治省指導といたしましても、そういうできるだけ不合理がないように指導するというのは私は当然のことで、それ以上は政府委員から申しましたとおり、きめ方が違っておるものですから、そういうところは御了承願いますが、指導としてはそういう指導をすべきじゃないかと、こう考えております。
  29. 和田静夫

    和田静夫君 大臣のごあいさつを伺ったわけですが、いまの問題に関連をしまして、この機会にまず基本的にひとつお尋ねをしたいのは、新大臣として給与関係閣僚、そういう立場で七人委員会に臨まれているわけですね。ところが今国会に上程されてきている給与法案というものは、人事院の勧告から見ればたいへんお粗末なものである、こういう形になっています。したがって、人事院勧告が守られずに給与法案が今国会にかかってきた。そのいきさつについて七人委員会のメンバーの一人として自治大臣のまず考え方を承りたいと思います。
  30. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 私は基本的には人事院勧告というものは当然尊重するということを言っておりますから、これを完全実施すべきものだと基本的に私は考えております。そこで、先般の給与関係閣僚の協議会におきましても、私はそういう主張をいたしました。また労働大臣も同じ主張をしておったようでありますが、しかし、前内閣においてすでに大蔵当局の意見によって、財源関係ということでございましょう、八月実施ということに閣議決定いたしております。そこで、内輪なことをちょっと申しますが、せめて一ヵ月でも繰り上げてはどうかという意見を出しました。そういう話も相当出ましたけれども、どうしても財政当局の意向が、すでに前内閣において閣議決定しているのだから、本年度においてはどうしてもこれは八月に実施する以外にないということでございましたから、したがって、じゃあ将来はどうだということになります。それで来年度を期し——今後ということばを使っております、御承知のとおり。今後はいわゆる人事院の勧告を完全実施する方向でもって、給与体制をきめよう、こういうことで話がつきまして、さらに閣議で八月実施の再確認をした、こういう経過でございます。
  31. 和田静夫

    和田静夫君 それから今後はという形でもっていろいろ論議をされた。予算委員会でも大蔵大臣に今後とは一体いつなんだ、こう言ったら、昭和四十四年度だ、こういうふうに答えられました。それは私も聞いておった。ただいまの御説明の中にあったように、私たちが過去に、ずっと公務員皆さんの動きを見ていまして、賃金を上げてください、こう言いますと、たとえば予算がない、あるいは赤字である、こういうことを理由に口癖のように言われて、とにかく金がないということを理由にされながらずっと延ばされてきた。一ぺんも守られてこなかった。ところが、ことしはその金がないということは言えない。これは政府側もお認めになると思います。そうなると、問題は公務員とその家族はたいへんな生活苦の中にあえいでいるわけですね。この生活苦にあえいでいるところのものに、人事院勧告に当面は基づいて、いかに報いるか、それがまさに焦点だと思います。それが佐藤内閣が示さなければならない政治姿勢そのものだと私は思うのですね。その辺について私はもう少し、メンバーの一人なんですから、強く完全実施という形でこの強硬な主張をし続けていただきたい、こう思うのですけれども、いかがですか。
  32. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 私はお話のとおり本年の給与体制をきめる場合に、金がないということは、まあいろいろ自然増収その他でおわかりのとおり、これは財政当局の説明のとおりで、そこで、その理由はどこにあるかと財政当局に聞きますと、財政上の配分のバランスをとる、均衡をとるために給与は八月だと、こういうことでございます。いろいろその間の話し合いはありましたけれども、先ほど御報告いたしましたような結論が出たわけであります。それで、私の基本的な考え方は、いまお尋ねの完全実施の問題については全く同感であります。私は、よけいなことかもしれませんけれども、従来そういう考え方を持っておりまして、私が数年前に総理府を担当したときに、十月実施のときでございました。これは無理して一ヵ月繰り上げるべしということで、ちょうど私担当しておりました。やっと九月にそのとき一ヵ月間繰り上げたことを自分でも思いを持っております。私もいまの御質問をいただく点は全く同感なんです、実は私自身は。しかし、いろんな事情が、御承知のとおり、ああいう閣議で前内閣も決定しているし、さらに新内閣でもこれを再確認している。今後の問題でございますが、これはしかも大蔵大臣も言っておりますとおり、今後がいっかということは、三年、五年後じゃなくて、四十四年度からの給与体制については完全実施のほうに何かって進むんだと、こういうことを言っておりますから、私はあくまでもそういう方針に基づいてこの給与体制の人事院勧告ほんとうに尊重するという姿勢でいきたいと、こう思っております。
  33. 和田静夫

    和田静夫君 いわゆる完全実施に向かって進むというのでは、たとえば七月にします、六月にします、五月にします、こういう形で漸次向かっているのですという日本語のあやでもって、たいへんごまかされる危険性がある。したがって、自治大臣のお考えとしては、四十四年度からは人事院勧告完全実施をいたします、そういうお答えととってよろしいんですか。
  34. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 私は繰り返して申しますが、完全実施すべしという意見を持っている一員でございまして、また私は給与体制の関係の閣僚会議のときにおいては、必ず私は四十四年度から実施すべしという腹がまえでかかります。しかし、御承知のとおり、これは各省の関係がございますから、私一人がここで……。
  35. 和田静夫

    和田静夫君 あとのほうはいいですよ。
  36. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) いいですね。
  37. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、人事院勧告をたとえば守ることが再びできないという状態になってきた場合に、私はやはり労働三権が公務員から取り上げられていったあの歴史というものを一ぺん振り返ってみなければならない。いわゆる今日の法律ができ上がった立法の趣旨というものを考えてみなきゃならないという段階に実は来ていると思います。守られなければです。何といっても二十年間にわたって守られてきませんでした。憲法が保障をしているところの労働基本権のすべてをやはりこの機会公務員に返す、そういうことが必要になってきているのではないかと思うわけです。一つの法律ができて二十年間にわたって軽視をされてきた、政治的には。それが行なわれなかった。そうすれば、やはり憲法に基づく基本的な権利という考え方に返るのが私は当然ではないか。私はそれが政治というもののこたえなんだ、そこまで実は思うんです。その辺のことを十分にいまの御答弁との関連で考えておいていただきたいと一つ思うのです。  それから二つ目には、言われましたように、バランスだとか、総合予算主義だとか、こういうような形のものに拘泥されているんですね。私は多くの公務員の諸君が、とにかく法が不履行の条件の中で泣かされているわけです、生活的には。このことはたいへん考えなければならないと思いますね。政治道義上許されないことじゃないかと思うのです。幸いにして新大臣はいわゆる党人派の方である。私はこの政治道義というものを野田大臣は十分にやはり履行をしていただく、そういう立場に立っていただかなければならぬのじゃないか。言うまでもなく政治の根になるものは人権の尊重であります。特に生活権、生存権の尊重であります。これがやはり否定をされ続けてきたんですから、その点を十分に踏まえていただいて、いまの千葉先生の質問に対する御答弁に関連をするのですが、いわゆる公営企業職員賃金について、これも以上二つの考え方の上に立ってのたいへんな問題を実は含んでいると、こう思うのです。公営企業が近年赤字になってきておる、そのことを私は決して否定をしませんから。再建団体になってきておる、こういう実情について知らぬわけではありませんが、ところが、そうなってきたら、赤字を解消するために賃金水準を切り下げるという指導が現実には行なわれているわけです。企業会計の財政再建のために生活権が無視されるという指導が行なわれている。これは私はそう簡単に、細郷財政局長はいろいろ財政的な側面から御答弁になりましたが、そういう財政技術論から解決できる問題ではないだろうと思うのです。特に地方公営企業の諸君というのは団体交渉権を持っている。そして対等の立場に立って賃金をきめるという決定原則を実は持っておるわけです。それは法のたてまえなんです。その法のたてまえが、やはり疎外をされるということは、大臣、これはゆゆしい問題だと私は思うのです。したがって、私はこの地方公営企業の経済性という側面からものを見ることを決して否定はしません。否定はしませんが、しかしながら、公共性という側面からひとつ見た場合に、いわゆる過密都市状態の中におけるところの都市交通、そして利用度、あるいは運転の遅速、そういうような関係から起こる財政事情というようなものに対する抜本的な対策の問題は、やはり対策の問題として存在をしますけれども賃金そのものは一般地方公務員と同様の形でもってやはり行なわれていくという、そういう個別決定方式というものがもっと尊重を私はされなければならないと、こう思うのです。そういう意味で法律上のたてまえを国がきめておりながら、財政という見地から公営企業の諸君の賃金の水準というものがくずされていく、こういう矛盾については納得をすることができません。大臣は政治的な立場に立ってこの問題についていかがお考えですか。
  38. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 私は、先ほどお答えしましたが、公営企業職員はやはり地方公務員と同様な考え方で、これは気持ちの上では扱うのがほんとうではないかと思っております。それはいろいろ、これは公営企業の法規的のこともありますし、御説明する必要もありません。だから、賃金のきめ方も、いまお話のとおり、団体交渉の可能とか何とかありますが、これは給与体制のきめ方は多少内容は違っていることも承知しております。しかし、いまの、何と申しますか、一般の地方行政からくる、地方行政関係する職員の給与こういうことから見ますと、いまおっしゃっているとおり、これは一般の地方公務員地方公営に従事している職員とそこに差があるということは決して好ましい状態ではないと思っております。ただ、これは理屈ではございませんが、これは百も御承知のとおり、公営企業は大体の根底にあるのは独立採算制にいくべしと、こういうことに大体なっているのですね。いまはできません、そんなことは。そういうことも加味しますと、なかなかいまの同じようにしようというのが、もともと公営企業のあり方というものが、財政上いろいろ、普通の地方公務員とは違った財政上の措置をしなくちゃならないようになっておるものですから、そこにいまも財政局長がいろいろ赤字の問題その他いろんな問題、待遇問題を説明しておりましたが、これは現実的に無視できない説明でございますが、一般論からいうと、政治の姿勢としては私はよくわかります。しかし、これをいますぐ直すか直さぬか、これがなかなか容易なことではございませんから明言はできません。一般的な姿勢としてはよく了解できると思っております。
  39. 千葉千代世

    千葉千代世君 まだこの公営企業職員の問題については質問したいと思いますが、時間の制約もありますので、要望して次の問題に移りたいと思うんですが、その要望というのは、やはりこのままでただ日を送っていったのではなかなか公営企業職員待遇改善もほど遠いではないか。きのう私、東京都の都労連の皆さま方ともお会いして話し合いしましたのですけれども、交通労働組合の方々は非常に悲痛な考えであったのですね。ずっと前、かつては再建のために賃金を半分にさせられたり、いろんな曲折を経ながら、とにかく労働者待遇改善のために全力を尽くして話し合いでやってきた。事ここに至っていま〇・一が国家公務員地方公務員に約束された、自分たちが置き去りにされた、その赤字の原因というのが、一体自分たちにあるんだろうか、経営者にあるんだろうか、どうだろうかということを真剣に討議していきますというと、これはなかなか容易ならない問題であって、やはりその原因というのは、先ほどからるる申し上げましたように、やはり国の責任、地方行政の責任、あるいは陸運行政その他のいろいろな問題がしわ寄せられてくるのじゃなかろうか。それで、これはひとつこのままにしておいたのではいけないから、二月にひとつ、これは全く座談ですが、大闘争をぶっ放して無期限ストぐらいやらなければ壁が破れない、追い詰められたといって、これは座談で正式の会議ではございませんけれども、全く一組合員が必死になって追い詰められているという現状なんです。そういう意味で、私ども政治に携わる者は、やはりその追い詰められたままでいるようなことは忍びないと考えますので、どうかひとつ金繰りについてなり、いろいろの処置を講ぜられて安心して働けるような裏づけをしてほしいと、こういう要望を述べて、これ以上論議いたしますと、まだまだとても時間が足りませんので、またの機会に十分なお話をしたいと思っておりますので、これを打ち切ります。  続いて、私は労働省機構改革に伴う婦人少年室の問題を中心として質問いたします。委員長、速記をとめてください。
  40. 津島文治

    委員長津島文治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  41. 津島文治

    委員長津島文治君) 速記をつけて。
  42. 千葉千代世

    千葉千代世君 労働大臣に伺います。私は最近京都の婦人団体連絡協議会をはじめ、たくさんの婦人団体、あるいは労働組合の婦人部等から労働行政機構改革に伴う婦人少年室の廃止案について反対の陳情を受けたわけです。その陳情書の中にこういうことがありました。「別紙要望書を各大臣あてに送ったから、よく検討の上、婦人少年室を国の機関として存置し、さらに拡充強化をはかるよう協力してほしい。」と、こういうふうに要望が書いてあるわけです。労働大臣、緊急においでになったようですから、官房長あるいは婦人少年局長さん、このような陳情をどのくらいいままでお受けになっていらっしゃいますか、お答えになっていただきたいと思います。
  43. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) ただいま千葉先生の御指摘のそういう要望につきましては、婦人団体の方、それから婦人少年室で、いろいろ行政推進をお願いしておる協助員の方その他から、多数私ども受けております。
  44. 千葉千代世

    千葉千代世君 それから、あなた方がいつも御一緒に働いていらっしゃる労働省内部の皆さんからはどういう御意見の反映がありましたか。
  45. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) 私どもこの問題につきまして、婦人少年室長にも集まっていただきまして、私どもからも御説明をいたしました。それから意見も承っております。それで、いまのところまとまって少年室長全体の意見として集約されたものはまだございませんが、その会議その他で出されました意見につきましては、将来、婦人少年室が廃止されることに伴って、婦人少年行政が雲散霧消するのではないかという危惧の念が表明されております。
  46. 千葉千代世

    千葉千代世君 それから、労働省婦人少年室の業績ということで、前の婦人少年局の婦人労働課長の大羽綾子さん、それから日本有識婦人クラブ全国連合会会長の北野トミさんほか婦人少年室の果たした役割りについて非常にこまかく述べられておりますので、私はここで読み上げる時間はありません。私、そこで伺いますが、これは婦人少年局長に伺います。あなたはこの婦人少年室の設置以来、婦人少年室が果たした役割りについてどのように評価されていらっしゃいますか。
  47. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) 私から婦人少年室の業績につきましていろいろと申し上げるのもちょっとてまえみそになるかとも思うのでございますが、私の考えておりますところでは、婦人少年室は発足以来二十一年の間に、非常に小さな組織でありかつ非常に少ない予算でありながら、その使命としますところの婦人労働者、年少労働者の保護、福祉の増進のために、また婦人の地位向上のために、非常に誠心誠意力を発揮いたしまして、また時代の要求というものにマッチして仕事を進めてまいり、大かたの世論の支持、御協力等も得て今日に至っておる、そのように感じております。
  48. 千葉千代世

    千葉千代世君 そこで婦人少年局長さんは、幾らてまえみそであってもけっこうです。これは事実をそのままはっきりお互いに言い合うというのが本委員会の任務でございまして、やっぱりはっきりおっしゃっていただきたい。こういう中で、この婦人少年室の今後の発展拡充についての陳情書があるわけですけど、それについてあなたはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  49. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) 私は婦人少年行政の重要性というものは今後ますます増大すると考えますので、この行政が今後ますます拡充強化されまして、増大する行政需要にマッチしていくようにはかっていくべきだと考えます。
  50. 千葉千代世

    千葉千代世君 具体的に婦人少年室が——機構改革については後ほど詳しく私も質問したいことありますけれども、あなたが現在の各県の婦人少年室がそのままで発展拡充しているという方途について、あなたの経綸は何ですか。
  51. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) 婦人少年室は、先生よく御存じのとおり、婦人少年局の第一線機関でございまして、国の機関として設置されているわけでございます。したがいまして、その任務は、国の一線機関としての役割りということになっております。したがいまして調査、啓蒙あるいは連絡調整といった業務が主たる役割りでございまして、直接住民への具体的サービスという分野につきましては、本来的には、責任と申しますか、それをあまり負っていない機関でございます。しかし、需要もございますので、相談業務という機能を通しまして、働く婦人の方々、年少労働者あるいは一般婦人の方々のもろもろの生活の問題等についての御相談等にも応じてきたというのが今日までの姿でございますし、また、国の機関としてはそのような機能がやはり期待されるものであると思います。したがいまして、今後の発展を考えるといいますときには、やはり、この調査、啓蒙、連絡調整ということを主軸にいたしまして、それにケースワーク的な相談業務を加えながらやっていくという本来の姿でやることになるわけです。
  52. 千葉千代世

    千葉千代世君 わかりました。本来の婦人少年室をそのまま存置して、そして内容充実していきたいと、このように解釈してよろしゅうございますか。
  53. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) 婦人少年室を発展させてまいるというときには、ただいま申し上げたような線でますます発展させていくということになると、そのように申し上げた次第でございます。
  54. 千葉千代世

    千葉千代世君 そこをはっきりしていただきませんと、機構改革のときに伺う焦点がぼけるんで、たいへんくどいようですけれども、「いく場合」にはではなくて、あなたが実際に携わっておって、このまま存置して発展していくという基本的な考えですかということです。と言うのは、たいへん御遠慮なすって述べていらっしゃいますが、私のところに来る陳情には、婦人少年室の果たした役割りは、調査その他の活動は基本的にありますけれども、その他たいへんな仕事のデータが来ているわけですね。特に、これは十二月十三日の新聞ですけれども、「どこへ行く「婦人少年室」」の中に、使命感にあふれた方々が数少ない中で一生懸命にやっている実例が述べられているわけなんです。私はこれに述べられるまでもなく、昭和二十二、三年の初めのときに、GHQ労働課のミス・スミスさんがいらっしゃったときに呼ばれました。そのときに、先進国並みに言うと、婦人少年局があるというのはちょっとあれだから少し考えてみたらどうだろうか、あなた方、働く婦人にとってはどうですかと言われたから、私は即座に、日本の労働行政その他一般の中に、特に婦人労働行政については調査一つ何もない、民間もなければ、公的にもなかった、そうした歴史の中で果たした役割り、果たす今後の役割りは非常に大きいということで、徹頭徹尾反対いたしました。その後御承知のように、たしか藤田たき先生が局長のときに、また廃止か縮小かの問題を予算的な面から出されたわけです。そのときに藤田局長さんは先頭に立って、私は局長だから大きな声では言えないけれども、これだけの仕事をして、これだけの発展性を持って、これだけの婦人の問題について、単に労働行政ばかりでなくて、婦人の地位向上その他やっているので、たいへんなことなんだということで、みんな心配して、政府のほうでも考慮してこれを残したということもあったわけです。また、今度来たわけです。労働行政発展という面で機構改革ということも私は聞いております。しかし、やはりポイントは、あなたがセクションにいらっしゃって、そして機構改革の中に、あるいは改革案でございますか、後ほど聞かしていただきますけれども、そういう会合の中であなたの御意見を述べる機会はどのくらいございましたか。あなたのいまの、基本的にこの少年室を堅持していきたいと、発展、拡充していくためにはこれこれだといういままでの実績の中から、将来の展望についてどのように意見を反映されましたか。あるいはそれを取り上げてもらいましたか。はばんだものは何ですか。言いにくいでしょうね。ここではかまいませんよ。そういう点で変なことを言ったって、みんな与党の議員さんもいますから、りっぱな男性一ぱいだから心配ない。言ってください。
  55. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) ちょっと婦人局長……
  56. 千葉千代世

    千葉千代世君 私は婦人局長に聞いている。
  57. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) 婦人少年局の受け持っております仕事の重要性につきましては、私は常々省内でもその認識を深めていただくよう努力をいたしておりますし、また、特に今回このような問題が起こりまして以来は、特にそのことについて強力に発言をいたしておりますし、また、関係の方々もそのことをよく御了解いただいていると、そのように考えております。
  58. 千葉千代世

    千葉千代世君 それでは、ここで官房長さんに、局長さんは、常々の業績を述べられて皆さんが御了解いただいていると言ったんですから、御了解いただいて、婦人少年室を残すように御了解したんですか。別な方向で了解したんですか、その点ちょっと。
  59. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) 婦人局長からは、省内の会議その他で、婦人少年行政が今度の機構改革に伴ってそこなわれないように十分配慮してもらいたいと、これは強い要望がございました。私どもは、婦人少年行政の問題もそうでございます、ほかの行政もそうでございますが、今回の機構改革、いま考えておりますことは、都道府県段階におきまして、労働行政がばらばらでいままで行なわれてきている、これを一本化してやることが、全体の行政、それと各分野の行政を相互に関連づけながら発展させる方向であろうということを基本的な前提として考えております。その中で、たとえば婦人行政につきましては、先ほど局長が言われました調査、啓蒙あるいは指導というようなことが、いままで非常に大きな役割りを果たしてきた。これが今度の機構改革の中でも、この活動自体がそこなわれないように十分配慮をするという方向で検討をいたしてきております。したがいまして、いまの婦人少年室をそのまま存続させるということも一つの案かと思いますが、労働行政全体の各分野を総合的に発展させるということを前提にして、その中で帰人少年室が従来行なってきた機能をそこなわずにこれをさらに充実させるという方向で、婦人局長意見をいろいろ聞いて、今後もさらにそういうささえをいろいろつくって考えてまいりたいと思います。
  60. 千葉千代世

    千葉千代世君 そこで、機構改革案なるものがありましたら、それを概略でけっこうですから述べていただくことと、それから四十三年十一月二十六日に行政管理庁長官と労働大臣、自治大臣との覚書というのがありますけれども、引き継ぎを受けられましたでしょうか。大臣が受けられたかどうかということです。
  61. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) 概要でございますが、いま私ども考えております概要は、先ほど申しましたように、都道府県段階においてばらばらな行政労働省行政機関府県に一木化するということでございます。具体的には各都道府県の労働基準局と……
  62. 千葉千代世

    千葉千代世君 それはあとで伺いますけれども、いま先に、覚書を御承知かどうかということです。
  63. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) 前大臣から大臣にお引き継ぎになっております。
  64. 千葉千代世

    千葉千代世君 自治地方大臣に伺いますけれども、前大臣が十一月二十六日に覚書をしておりますけれども、それをお引き継ぎございましたか。
  65. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 引き継いでおります。
  66. 千葉千代世

    千葉千代世君 十一月二十六日というと、元の大臣がおかわりになることが大体わかった最後の時点ですね。何であわててこれやったんでしょうか。そのわけをちょっと聞かしてください。大臣はどういうふうに引き継がれたんですか。はい、わかりました。  とにかく、この覚書ですけれども、覚書の全貌と要点ですね。覚書の特に基準監督官制度と婦人少年行政の面だけをちょっと述べていただいて、そのごく原則的なことと、それから機構改革の概括をちょっと述べていただきたいんですが。
  67. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) 覚書の概要その他いま御説明申し上げますが、その前に、その前にお話しのございました、二十六日になぜ前内閣の最終段階で覚書を取りかわしたかということにつきまして、よろしければちょっと御説明したいと思います。
  68. 千葉千代世

    千葉千代世君 はいどうぞ。
  69. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) この機構改革の問題、前内閣のときに二月以来ずっと閣議決定に基づきまして行革本部を中心に作業を進めてまいりました。そこで、前大臣の最終段階のお考えは、その間いろいろ機構改革の大綱について話し合いをしてこられました。当初の予定が十二月の中旬を目途に成案を得たいというようなことで進めてまいったわけでございますが、内閣がそれまでに改造せざるを得なくなった。そこで、従来話し合ってきたことをその段階ですべて白紙にするということもどうか。そこで、その最後の段階で従来話し合ってきたことをそこで関係大臣が確認をされて新内閣に引き継ぐほうがいいというお考えのもとにやられたと承知しております。  それから覚書の概要でございますが、覚書は、都道府県の労働基準局及び婦人少年室を廃止いたしまして、その事務を原則として都道府県知事に委任をする。その受け入れのために都道府県に労働部を設ける。それからなおその際、労働基準行政、特に監督行政の特殊性にかんがみまして、労働基準監督官制度はこれを堅持する。婦人少年行政につきましては、都道府県労働部の中に課ないし室を設けるように特段の配慮をする、これが第一点でございます。  それからさらに、広域的な労働行政、労働力の需給調整の問題、あるいは基準法による問題とか広域にわたるものにつきまして、これを処理するために地方労働局を設ける。  それから、これに伴いまして、従来から問題になっておりました地方事務官制度は廃止する。  それからなお、第一線の機関でございまする労働基準監督署並びに安定所は、現在どおり国の機関としてこれを存置する。さらに労災・失業保険が五人未満に拡大適用されるに伴いまして、徴収事務を能率的に一元化するために必要な労働保険の徴収事務所を新たに設けるというようなことを中身といたしております。  なお、この改正にあたりまして、今後の人事の交流の問題とか、なお、この切りかえにあたりまして、職員の勤務条件がいやしくも低下しないようにということも、この覚書の中にうたわれて、そういう方向で今後進めていく。  なお、これらのさらに詳細につきましては、今後関係行政機関の間で話をさらに続けていくと、こういう趣旨が概要でございます。
  70. 千葉千代世

    千葉千代世君 続いて、機構改革について簡単に。時間の都合もありますから、要点だけでけっこうです。
  71. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) いま覚書につきまして御説明申しましたことがその機構改革の概要でございます。したがいまして、従来労働省のいわゆる地方出先機関といたしまして県段階にございます基準局は、これを廃止いたします。それから婦人少年室も廃止する。それで、都道府県に現在労働の主管部というのが東京の労働局のほかに七つの道府県に労働部がありまして、あとはほかの部に所属、たとえば民生労働部、商工労働部とかございますが、これを各県に労働部を、専管の部を置いていくようにする。それからなお、組織といたしましては、先ほど覚書の点で御説明申しましたその部の中に、課ないし室を置くように進めていく。それから、地方労働局を設ける。この設置の個所その他についてはまだきめておりません。今後協議いたすことにしております。そういうような状況になっております。
  72. 千葉千代世

    千葉千代世君 それでは伺いますけれども、いま御説明の骨子は、労働省の本省があって地方の労働局がある。そうすると、労働局が、今度その中に労働基準監督署があって、それから公共職業安定所、それから労働保険徴収事務、つまり、いまおっしゃいました失対保険、そういうものを一元化していくとおっしゃいましたね。それから職業訓練所、労政事務所、それも都道府県とする。そうすると、いま述べた三つの問題がこれは国のほうですか、これは国の監督になって、任命権はだれがするのですか。
  73. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) ちょっと私の説明が悪かったかと思いますが、労働省が本省としてございます。それから地方にはブロックにこの個所はまだはっきりしておりませんがブロックごとに地方労働局を、これは国の機関として置くことになります。それから、県の段階では国の機関は置きませんで、都道府県の中に労働部を設けて、そこが総合的な学働行政の所管をすることになる。それから第一線、さらに都道府県のさらに下の段階でございますが、そこは基準監督署、それから安定所、これは従来どおりでございます。それから徴収事務所を一つ設ける。それからなお御指摘の訓練所その他は、これは従来都道府県に、すでにその組織の中でやっております。これはそのままということになるわけでございます。
  74. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうしますと、地方労働局はブロックに置かれる。そして今度労働基準監督署とか公共職業安定所とか、こうずっとありますね、この人事はどなたがなさるのですか。知事に委任するのですか。
  75. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) 覚書の線で、原則といたしまして仕事を知事に機関委任いたしますので、それに伴いまして人事も機関委任をしていくということになっております。ただ、原則としてということで、具体的にどの範囲にどういうふうに知事に委任をしていくかは、今後話し合っていきたいというのが基本的な考え方でございます。
  76. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうしますと、労働基準監督署その他でいろいろな違反事件があったとしますね。そうすると、違反事件を今度は処罰したりなんかするのはどこがやるのですか。
  77. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) これは第一次的には基準監督官がこれを行ないまして、もちろん、知事の責任においていたすわけでございます。ただ、先ほどちょっと申しましたが、基準監督官制度をこれを堅持する。要するに、基準監督官というのは、そういう資格要件を持ったものはそのまま制度的にこれを保持していくということにいたしております。なお、この知事の処分地方その他につきまして、実は労働大臣が委任事務に関しての監督権を持つということにしておりまして、覚書の中に、機関委任事務について、労働大臣が必要な処分取り消し権、あるいは代執行権等の監督権を留保するということにいたしております。
  78. 千葉千代世

    千葉千代世君 私、たいへん心配なのは、さっきおっしゃられた覚書の5のところにね、「国が監察を行なうほか、労働大臣の取消及び代執行の権限を創設する」と、こうありますね。そうすると自治大臣、この地方自治は全く侵されないんですか。いいんですか、これ。大臣、いま覚書の中で、「労働大臣の取消及び代執行の権限を創設する」というんですね。人事を地方に委任すると、最終的には国がこれを監督して、そうしてこの代執行権、取り消し権というものを創設した場合に地方自治は侵されないかということなんです。あなたはそれでいいんですかということです。どなたでもけっこうですが。
  79. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 労働行政の中で、まあ特に職安行政あるいは労働基準行政は国家行政としての色彩が非常に強いことは、もうかねてから言われているところであります。そういうこととの関連がありましてここではそういう覚書になったと思いますが、通常、国の仕事と、それ以外にも県知事は国の委任を受けましていわゆる機関委任事務もいたしております。これにつきましては、現在でも主務大臣は指揮監督権を持っております。それで、そういう意味で一定のものにつきましては、事前に承認を与えるとか、許可するとかという問題が現にあるわけでございますが、通常は、そういうことは指揮監督という包括的な、法律的な作用の中に、この場合は労働の基本的な権利義務というものに非常に問題があるということから、最小限度、そういうものを考えていくということはやむを得ぬではないかという考え方に立っておるわけでございますが、御指摘のように国家行政というものを都道府県知事なり市町村長にあまりたくさん委任をしますと、そのほうばかりの仕事をやるというようなことになりまして、地域行政の面がそこなわれるという危険があるではないか。また、それについて非常に強い監督権があれば、そういうことで地方団体のいわゆる自律性というものを侵すおそれはないか。この点は、確かにそういう御心配の御指摘はごもっともだと思います。したがいまして、これは必要最小限度そういう観点と、それから労働行政に特有な、労働の基本的な権利といいますか、そういうものを十分に確保するということとどのように調和していくか、こういう特別な考え方で、ひとつ考えていかなきゃならないことだろうと思います。
  80. 千葉千代世

    千葉千代世君 覚書の中で、「労働基準監督官制度は、これを堅持する」と、堅持して、そうしてここにずっとあるわけです。そうすると、いま言った違反の問題について、かりにあった場合には、地方監督官あるいは県知事が処理して、最終的には労働本省に行く。その間に地方労働局が国の機関としてブロックに置かれるとするならば、ここを経由するんでしょう。どうなんでしょうか。
  81. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) 地方労働局の基本的な考え方につきましては、覚書の8項のところにございます。「地方労働局の所掌権限については、都道府県との重複を避け、その所掌事務内容を明確にする」と、ダブル行政になるということは避けるべきだと、しかしながら、いまの監督の問題につきましては、地方労働局がブロック局という立場からダブらないでどういう監督をするかは、この所掌事務の中で今後明らかにしてまいりたいというふうに考えております。したがいまして、県知事がやって、それをそのまま地方労働局に上げて本省がという、そういう行き方をとることはいま考えておりません。
  82. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうしますと、ここに「堅持する」、「婦人少年行政については、課ないし室を設けるよう特段の配慮をする」こうありますね。で、私、この辺気に食わないし、おかしいですね。さっきから述べられた、あんなに必要性を言っているのが、ここではたしてこの覚書の中で具体的にあらわれているかというと、ちっともあらわれていないんですね。何か聞くところによると、県に労働部を創設して、そうして婦人少年課というものを設けて云々ということを言われている。私は、これは仄聞ですからはっきりわかりませんが、そうすると、いま県に労働部のあるというのはあまり数がないというんですけれども、どのくらいあるんですか。
  83. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) 先ほどもちょっと触れましたが、東京に労働局というのがございまして、あとは七道府県に労働部がございます。
  84. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうしますと、私、これずっと拝見してきて、基準監督の問題もさることながら、公共職業安定所という問題が出ていますね。そうすると、たとえば私、いま千葉県に住んでおりますけれども、京葉工業地帯のたいへんな労働力を要するような産業、この続出する、これからもどのくらい発展するかわからないというお手上げ状態の中で、まだまだたくさんの申請があるわけですね。そうした場合に、この基準の問題相当、基準違反の問題が出てくるのじゃないか。そうすると、基準違反のことよりも雇用政策のほうが優先してしまって、そうして相当ふえていくのじゃないかという心配が一つある。この問題については時間がありませんからきょうは譲りまして、この婦人少年室の組織の問題は特段の配慮をすると言ったんですけれども、特段の配慮の内容は、各県に労働部を——いま七県しかないのを——全県的に労働部を設けて婦人少年課をつくるという要望なんですが、自治大臣はそれを了承してこの覚書ができたのですか。全国知事会はこれをしかし了承したのですか。あるいは労働部を創設して、ほんとうに婦人労働行政が完ぺきを期した方向へいく見通しがあるのかないのか。そういう点をちょっと答えてください。
  85. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) ここにございます労働部を設けるということは、自治法には各県の部の設置についての規定がございます。これの中に標準部として労働部をその中に加えて各県に設けていく。これは具体的に条例で設けられることになりますが、課につきましては、これは各県の規則で設けられるということになりますので、一方的に私たちで法律でするということもいまのたてまえとしてできません。そこで私どもは、当時の労働大臣といたしましては、自治大臣に、労働行政地方に入ってくることについて、ぜひこういう方向で今後必要な措置をとっていただかなければならぬということを御了解願ったものと考えております。
  86. 千葉千代世

    千葉千代世君 御了解願ったものと考えているということについては、自治大臣が御了解なすったのでしょうか。具体的には七県しかないところを、あとに残った四十六都道府県のうちの三十九県に労働部を設置して婦人少年課をつくる、このことを承知したのですか。承知したとなればどういう法的根拠であったかということと、それから地方自治の侵害ではないか。条例をつくるということは、地方自治にとっては非常に大事な基本的な自治権なんですね。それを中央が侵すようなことは、自治大臣といえどもこれは非常に越権じゃないかと思うんですけれどもどうなんでしょうか。
  87. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 前大臣のときでございますが、先ほど労働省の官房長からお話がありましたように、自治大臣としては、この労働行政機構の改革について覚書に書いてありますような方向協力をしたいということは明確に意見一致を見た、こういうことでございます。そうなりますと自治を侵すものじゃないかというまたお話がいまございました。府県の組織につきましては、先ほどもお話がございましたが、強制をするというような形はたてまえとしてとっておりません。地方自治法には標準的な部局というもののあり方を示しております。これはそういうことでございますが、おのずから、部を設ける、あるいは組織をどうするかというのが行政一般の一つ考え方でございます。今回の場合は、府県にありますところの労働基準局なり婦人少年室が府県の組織の中に加わると、こういうことに相なるわけでございます。そういたしますと、相当組織が当然できなきゃならないということになりますので、標準部局として県に労働部を考えるということは、これはまあ一応だれしもやむを得ない措置として受け入れることに私どもとしてはならざるを得ない状況だというふうに思います。もしこうなれば、その場合に、もう一つの問題の婦人少年室等の問題がございます。婦人少年室は、私どもの伺っておりますところでは、それほど大きな組織ではございませんようでございますけれども、これはやはり先ほど来のお話しございましたような婦人少年行政の重要性という問題は、やはり十分にこれは考えていかなきゃならないところであろうと思います。これは自治大臣といたしましては、地方自治法上の助言なり指導なりという立場で、府県知事にそういう婦人少年室についての行政がそこなわれるようなことのないような形で特別の組織を特別に考慮してもらうということは、ぜひこういうことになります場合には、都道府県並びに都道府県知事に対して要請をいたしまして、そうしてその理解のもとに実行してもらいたい。私どもは、それはまた理解してもらえるものと考えておるわけでございまして、頭から自治を否定するというような形で考えておるわけじゃございません。
  88. 千葉千代世

    千葉千代世君 まあ、そういう要望とか願望はありますけれども、できてみなければわからないんです。というのは、部の設置の大体基準がありましても、全国で労働行政というのは非常に大事なものだと思うのです。それが七つしかできていないわけなんです。あとはほかの商工なりいろいろなことにまとまっている。そうすると、それさえも困難な中で、分度は婦人少年課というものをそこへ置くということは、なおさら困難だと思うんです。ことに婦人労働行政というものはこれははだで感じてみないと、なかなか机の上ではそう規格的にいくものではないと思うんです。これも時間の関係で省略いたしますが、この資料をとってみますというと、たいへんな、四人か五人で、非常に血の出るような犠牲を払ってお仕事をしていらっしゃるわけです。この中には、人事の交流は中央と地方で行なうとか、これはたいへんよさそうに見えますけれども、一枚はいでいきますというと、この地方労働部あるいは地方婦人少年課を置くということについては何ら法的根拠はないわけですから、中央でいかに願望しても各県がその気にならなければいけないし、また、形骸だけの、形だけのものを置いたって、実質的にこれがフルに活動するような体制ですね、はたしてそれができるかどうかということになると、現在の日本の労働行政の中で各県非常にまちまちです。私は婦人の首切りとか賃金の問題、男女差の問題等をずっと調べてみましたけれども、これは山陰とか北陸ですね、たいへん失礼ですけれども、それと今度は東京、大阪、福岡、こういうふうなところ、それから九州のほうとかというものとたいへんな格差がある。労働行政の把握についてもまたたいへん違うんです。それを中央の労働省の婦人少年局がみな調査事項その他の問題をずっとおろして地方の相談相手になって隘路はどこにあるか、問題点を一々究明して、これを掘り起こして、ほんとうに力を尽くして日本の労働行政に反映していったという功績をまた乱されるようになることが私はたいへん心配なわけです。特に、いまのような産業構造の改編にあたって、婦人労働というものがどういう評価をされているか、単なる働きの機械という面にとらわれてしまっては、さっきの公営企業の問題ではないですけれども、同じ道を歩んでいくことは私は想像にかたくない。そういうふうに考えていきますと、まだまだ多くの問題点がありますけれども、この点については次の機会に譲りますけれども、そういう、各県ではたしてどういうあれができるのかどうかということと、それからもう一つは、中央の機構改革が、そういうものができれば受ける考えだ、こういうお答えがありましたけれども、さっき婦人少年局長は言われたんです。少年室を存置して拡充して強化していきたい、そういうことをおっしゃったんでしょう。私は、それは労働省として労働行政の中での機構改革ですから、少年局長がいかに言ったって、それが取り入れられるかどうかということについては、それは省の問題でしょうから言いませんけれども、やはり、そういう実績を持った人の声というものが反映してこそ労働行政というものが日本全体の水準を上げていくんじゃないか、こういうふうに考えていきますというと、たいへん心配なわけです。  そこで、もう少し労働省に伺う要望ということは、この機構改革について再検討の余地があるかどうかということと、それから自治省はそれに対するもう少し資料を付して、たとえばいままで富山県なら富山県に労働部があって、どういう行政を、婦人労働についてはどういう実績を持ったということと、七つの労働部で婦人労働部の実績を資料にして全部出してください。あるいは、いまないところは、こういうふうな、できかかっておるところでもいいですから、きちんとそこら辺お出しいただきたいと思います。いかがですか。それだけ要望して、農林省と厚生省のほうに移りますけれども、よろしいでしょうか。
  89. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) この機構改革の問題につきましては、その大綱について、先ほどから御説明申し上げておりますように、労働大臣、自治大臣及び行管長官の三大臣の間で、前内閣のときでございますが、基本的にこういう方向で進むということを確認し覚書を取りかわしたと、それぞれ大臣、引き継がれております。基本的な大綱に関しましては、この大綱の線に沿ってさらに具体化についていろいろ検討してまいるということになると思います。
  90. 千葉千代世

    千葉千代世君 自治省のほう、ひとつ資料をお出しいただけますか。
  91. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 調べられる限りの資料を取りそろえて提出したいと思います。
  92. 千葉千代世

    千葉千代世君 それはいつごろまでにできましょうか。いままで資料は何もないのでそういう案を同調したんですか。自治省は何もないので、要請ございまして同調なさったんでございますか。
  93. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 婦人少年行政という形では、現在まで府県労働省の婦人少年室がございまして、婦人少年室がその行政を行なっておられたわけでございますから、その意味の婦人少年行政についての実績は県にはございません。ただし、広く一般に婦人少年問題につきまして、府県では社会福祉関係でございますとか、母子福祉の問題でございますとか、児童福祉関係でございますとか、非常に関係の深い行政を従来から行なってきておるわけでございます。そういうものの資料としては、私どものほうでできるものは取りそろえてお目にかけたい、そういうことでございます。
  94. 千葉千代世

    千葉千代世君 それは要りません。どこの県だって母子福祉の問題とか社会福祉の問題は何をしているかわからない。これは全然必要がない。婦人労働行政について、特に基準局関係ですから、そういう問題について婦人少年室が果たしてきましたね、役割りを。それがなかったときには何もない、ノーであったかどうかということです。その資料があったらある、なければない。ないけれども、こうしようという案がもしあったら出していただきたい。ただ何もなくて、向こうの願望がありますから受けて立つかまえだ。そんな、いま土俵が始まっているのに、そんなことじゃしょうがない。それでたいへん私も言い過ぎて恐縮ですけれども非常に、何か案ができて、押せ押せでやられますと困るので、やっぱり、地方自治の拡大とか自主権というものと婦人労働行政というものはほんとうに両立してやれるのかやれないのかということがいまかなめになっているので、重ねてお願いいたします。
  95. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) ただいまの御質問に関しまして、ちょっと差し出がましいのですけれどもお答えいたします。と申しますのは、従来から府県におきまして婦人労働に関する行政を私ども補助金をもってお願いしてやってきております実績がございますので、たとえば、働く婦人の家を設置するとかあるいは勤労青少年ホームを設ける、あるいは内職対策を進める、家事サービスの職業訓練をするとか、こういうような婦人労働、年少労働関係のサービス的な仕事府県において行なっているということをお耳に入れたいと思います。
  96. 千葉千代世

    千葉千代世君 それは、私も前に労働省の婦人少年問題審議委員をしておりましたから、そのときに家事サービス要員の養成とかそういう点について非常に地方でお骨折りをいただいていることも知っております。ただそれが地方で、補助金を出せば事足れりという感覚で婦人労働行政をやっているところが多いので、それを私は心配しているわけなんです。それはわかりました。  そこで時間がないんですが、大蔵省の主計官の方はおいででしょうか。  次は、厚生省と農林省補助金の問題について伺うんですが、この間、各党の婦人議員が超党派で、自民党から共産党まで各党の婦人議員で懇談会をつくっております。それで、各省から補助金制度の問題を聞いたわけです、強勉会を開いたわけです。それで、この中でも補助金についていろいろ問題点がある。しかし、この中で厚生省、農林省関係には非常に大事な問題があって、一律に補助金を打ち切られては困るんではないかということがありまして、総理大臣に直接陳情したわけです。おかしな話です、総理大臣に陳情と言うと。そのときに総理大臣が、どこが重点であるかわからないから順序を書いて持ってきてくださいということをおっしゃったんです。これは、どれが大事だ、どれが大事でないということは、私ども各省の権限を侵すこともできませんし、それは各省自体の問題で、また御意見を聞くということであったわけです。そこで、この間の予算委員会で田中寿美子さんの質問に答えて言うのには、大蔵大臣は、交付税の税率の引き下げということを考えていると言ったけれども、そうすると自治大臣は、それは困るというような、ことばははっきり把握いたしませんが、おっしゃっております。三二%の交付税率を引き下げないかわりに、補助金打ち切りということを云々されているわけです。これはほんとうかどうかということが一つと、それから百万円以下の補助金については都道府県単位、十万円以下については市町村単位で打ち切るということを言われたようなんです。そうすると、私はたいへん心配なんです、どれもこれも一括でやられてしまうというと。厚生省、農林省関係を調べてみますというと、たとえば保育所の問題あるいは保健所の問題保母養成所の問題、特別保育事業費の問題農林省関係では、農業改良普及員あるいは生活改良普及員とか農業改良研究員とか、こういうふうに、拾ってみただけでもずいぶん重要な問題、特にこれから食管会計をめぐってお米の生産を他に転換する、他のつまり農産物に栽培転換していくかどうかについてたいへんな問題をかかえているときに、こういう方々のもし補助金を打ち切られたら、人件費はたいへんなことになるんじゃないかと考えたわけです。時間がありませんので、大体各省の中で厚生省とか、補助金ずいぶん項目が多いようですから、厚生省と農林省に簡単に説明していただいて、大蔵省にきょう来ていただいたのは、この補助金の査定をいつごろするのかということと、それから、打ち切らないように努力をしていただきたいということと、二つの要望を添えて質問してそろそろ話を終わりたいと、こういう考えでございますけれども
  97. 秋吉良雄

    説明員(秋吉良雄君) 国の財政が硬直化しているということを、いろいろ大蔵省といたしましては御説明申し上げているところでございますが、私どものほうの大蔵省の場合には、非常に国の財政がいろいろな面で窮屈になっています。で、地方財政は、こう申しますと自治省のほうからおそらく反対の御意見があろうかと思いますが、大蔵省サイドから見ますと、国の財政よりも地方財政は最近ゆとりがあるんじゃないかという考え方を持っておるわけでございまして、したがいまして、交付税率の修正の問題につきましても、自治省のほうに御検討願いたいということで御相談申し上げておるわけでございます。また、それとは多少関連もございますけれども補助金制度につきましては、これはかねてから政府といたしましては、従来補助金の問題についていろいろ弊害がございます。これにつきましては、各界からいろいろ御指摘を受け、常に補助金をもっと整理しろということで、補助金は整理合理化すべきだということを各方面からおしかりを受け、また叱咤激励を受けているということも、過去においてもあり、現在でもあるわけでございます。その意味におきまして、補助金合理化審議会の答申とか、あるいは臨時行政調査会意見であるとか、あるいは地方制度調査会におきましても、零細補助金等は整理合理化すべきであるとか、いろいろの御答申をいただいておりまして、政府といたしましては、これに基づきまして鋭意零細補助金等をはじめ非効率の補助金につきましては整理合理化をはかってきているわけでございますが、今回御指摘のような、職員設置費補助金の御質問かと思いますが、この点について特に関係各省にも御相談申し上げていることは事実でございます。で、これはどうして職員設置費補助金を大蔵省といたしましては極力廃止を各省に相談しているかと申しますと、御案内のように、職員はこれは地方公務員そのものでございまして、しかも、長い間補助金が継続されておるわけでございます。仕事自体もすでに地方事務そのものでございまして、全く軌道に乗っておる事務ばかりでございます。で、これは交付税の基準財政需要計算になじむような経費でございまして、いろいろな面からいきまして、職員設置費補助金につきましては、地方行政サイドの面からいっても、これはその総合行政と申しますか、地方の自主行政といいますか、とかく補助金行政はひもつき行政ということでおしかりを受けているというようなことも考えまして、それから国と地方財源調整という面もございますが、そういった点から考えまして、各省に職員設置費補助金につきましては廃止ができないかということで相談をいたしておる段階でございまして、職員設置費補助金は、したがいまして、どのものを除くとか、どのものは悪いとかいうようなことじゃなしに、すべて、これは地方公共団体職員設置の国の委託系統は別でございますけれども職員設置費補助金系統はすべて落ちなく各省に整理方をお願いしている、こういう段階でございます。
  98. 千葉千代世

    千葉千代世君 時間の都合ありますから、私もうやめますが、その分、資料として農林省と厚生省の方、きょう私全部明らかにしてもらいたいと思いましたけれども、一時でございますので省略したいと思いますから、おそれ入りますが、この資料を、地方行政委員会の委員の皆さまにこの二、三日中にお渡ししていただきたいのですが。で、お渡していただきたいものは、地方交付税回しと予想される職員設置費補助金、いま大蔵省で御説明になったその面ですね。たとえば農林省関係補助金職員で言うと、地方公共団体に出す補助金の問題ですね。それから農業改良普及事業関係とか、ずっとありまして、最後は植物防疫対策職員、こうありますが、これは膨大な予算の中にあることはありますけれども、私自体が見ますと、こんなに一ぱいあって容易ではないわけなんです、抜いて見るのが。先生方もお忙しいから、先生方の労を省くために、抜き出して私こう整理いたしましたのですが、それなら厚生省関係では、児童福祉関係国庫補助金の整理についてということで、福祉問題をはじめ、たとえば老人家庭奉仕員というのがたくさんあるわけです。この項目と、予算の要求額ですか、それを印刷してお配りいただくことで質問を打ち切りたいと思いますけれども委員長、ひとつ御了解いただくようにお願いしてください。
  99. 津島文治

    委員長津島文治君) 厚生省、いまの資料、ようございますか。
  100. 鈴木猛

    説明員鈴木猛君) 私、児童家庭局企画課長でございますが、児童家庭局に関しましては、いろいろ交付税回しということで、特に職員設置費等で二、三問題になっているものがございますけれども、私、厚生省全体の仕事を担当しておりませんので、会計課長とよく相談をいたしまして、先生の御要望をお伝えしたいと思います。
  101. 冨樫覺悟

    説明員(冨樫覺悟君) 私、農林省農政局の普及部長でございますが、ただいまの御要求に対しましては、帰りまして十分相談いたしまして資料をつくりたいと、かように存じております。
  102. 津島文治

    委員長津島文治君) これにて休憩いたします。午後二時から再開いたします。    午後一時二分休憩      —————・—————    午後二時十一分開会
  103. 津島文治

    委員長津島文治君) ただいまから地方行政委員会を再開いたします。  砂田自治政務次官から登言を求められております。この際、これを許します。砂田自治政務次官
  104. 砂田重民

    政府委員(砂田重民君) このたび自治政務次官を命ぜられました砂田重民でございます。地方自治問題各般にわたりまして重大な時局に当面をいたしておりますだけに、責任の重さを痛感をいたしております。懸命に大臣を補佐いたしてまいる決意をいたしておりますが、当委員会の先生方の格段の御指導と御協力を切にお願い申し上げる次第でございます。(拍手)     —————————————
  105. 津島文治

    委員長津島文治君) 地方制度及び警察行政基本政策に関する件を議題といたし、休憩前に引き続き質疑を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  106. 原田立

    ○原田立君 今度自治大臣野田さんが新たにおなりになられて、きょうこうやって大臣のごあいさつがあったわけでございますが、現状非常に自治行政がたいへんであることは、もう大臣とっくに御承知のことと思うんでありますが、いま一番問題になっている地方交付税率の引き下げとかいうようなことを大蔵省は盛んにアドバルーンを上げておりますが、過日地方制度調査会において野田新大臣はそういうことは断じてやらせないというようなお話がございましたけれども、当委員会に初めてお見えになられましたので、その点について、所感、御決意なりお聞かせいただきたいと思います。
  107. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 原田さんもよく御存じのとおり、地方財政は非常に窮乏いたしておることは、もう説明の要はないと思っております。そこで、最近財政当局から、地方財政が好転しているから何らか少し地方財政財源をあんばいしたいというので、いろいろな意見が出ているようでございます。私はまだ実は正式に財政当局とは折衝いたしておりません。そこで、財政当局がどういう案を持っておりますか、近く正式に折衝といいますか、非公式でありますが大臣折衝に移ることになっておりますが、それをあらかじめ申し上げておきます。  そこで、いま地方交付税の引き揚げ論というのが出ているのも承知しておりますが、これは私はしばしばもう申し上げておるように、地方財政地方団体の国有の財源であるという考え方で通しております。それはどういうわけかと申しますと、国税三税のうちの三二%という地方交付税でございますが、これはこの国税三税の配分の基準でございまして、その基準がはっきりしているときに、自然増が云々だということでその配分の基準を変えようという考え方は、私どもはどうしても同意できません。そこで、本体から言うならば、この地方交付税は、一般会計からこちらに出すというところの形、こういう考え方基本に異論があると思う。実質的には、その三二%の財源というものは特別会計に入れて、そして地方財源の基礎とすると、これが本質的なやり方だと思っております。したがって、私といたしましては、その税源の基本的な考え方からいたしましても、またもう一つは、今日の地方財政の実質的内容からいたしましても、税率を引き下げるという意見に対してはどうしても同意しかねると、こういう態度をとっております。
  108. 原田立

    ○原田立君 自治大臣お話しのようなこと等は、私も先刻承知しておるんですが、去年あたりから交付税率を引き下げよう引き下げようというような動きがだいぶあって、まあことしはっきりとそういう線が出てきた。で、新大臣にというよりか、自治省として、こういうふうな引き下げるがごときこの意見が出ないようにより強くしていってもらいたいと、こう思うんです。そういう議論が出て、団体あたりでもがたがたしております。そういう心配をかけさせないようなきちっとしたものをやっていってもらいたい。これがまあ特別会計に繰り入れるというような形になってあらわれてくるんでしょうが、その見通しはどうですか。
  109. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 前もって申し上げておきましたとおり、まだ私のほうに正式にも、公式にも、非公式にも、私自身に対しての折衝はきておりません。われわれはあくまでもこの三二%の交付税がわれわれの財源だということで今日まで地方財政の計画もやっておりますから、何らいま変動しておりませんが、正式か非公式か、いずれにしても私に折衝があった場合には、そういうふうな、先ほど申しました態度でもって臨みたいと、こう考えております。
  110. 原田立

    ○原田立君 こんなことを言ってはたいへん失礼だと思うんですけれども、やっぱりさいふのひもを握っている大蔵省が一番強くて、自治省はそれから取るほう——取るほうと言っちゃおかしいけれども、交渉してもらうほうだと。何だかこう非常に基盤が弱くて、腰が弱いというんですかね、そういう不安感を持つ。まあ私だけのことであるかどうか。
  111. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) いや、よくわかります、それは。
  112. 原田立

    ○原田立君 だから、そういうようなことがあってはならないということで、この問題について新大臣の決意を聞いているところなんですけれども、大臣だけの決意じゃなしに、自治省全体としても、そんなふうにとやこう言われないようなものをかっちりとっくり上げていってもらいたい、こう思うんです。  それから、いろいろなことが大臣の所信の中に出ておりますが、地方事務官制度の廃止について、臨時行政調査会でもこういうものは廃止しろというふうに言われて答申が出ているにかかわらず、これがだんだん形が変わってきて、たいへん答申の線がくずれているような感を強く持つ。それで、いろいろ各省も意見がおありだろうと思うけれども、この臨時行政調査会答申に沿った線での強力なバックアップというものが、主張というものがもっと自治省になけりゃいかぬじゃないか、こう思うのですが、それについてはどういうふうにお考えでしょうか。あるいはまた、その後どういうふうな動きになっておるのか、その点をお答え願いたい。
  113. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 地方事務官問題につきましては、前内閣の終わりにおきまして、労働省関係の労働行政改革運輸省関係陸運行政改革問題につきまして関係省庁の間で各大臣荒い一つの了解というものができまして、それが閣議に報告をされておるという状況でございます。その後、そういう考え方に基づきまして関係省庁の間におきまして種々協議をいたしております。ただ、厚生行政につきましては、現在、医療保険制度の抜本改革ということがいわれておりまして、その抜本改革というものの成案——実現というものの行くえを見定めてから検討するのが適当ではないかというようなことで、一応この改革問題が見送られておるというかっこうでございます。で、陸運行政につきましては、この前も御説明申し上げましたが、現在陸運事務所が扱っております仕事の中では、大きく分けまして、車両の検査登録仕事と、それから自動車運送事業の監督とか規制というような仕事、二つに分けることができるわけでございますが、その中の車両検査につきましては民間に委譲することをたてまえとする、登録は全国統一的に一元的な管理のもとに登録業務というものを進めていくことが適当ではないかというような考え方が出ております。それ以外の自動車運送事業関係陸運行政につきましては、一都道府県内の陸運行政につきましては、全体陸運行政の所管は運輸省であるけれども、県に委譲可能なものはなるべく委譲して考えていく、その関係については関係のところで協議をするというようなことが一応の了解というようなかっこうになっておるのであります。問題は、そういうことの結果、現在の陸運事務所が改組されるわけでございまして、その陸運事務所でそれぞれの仕事を担当しておりましたものが振り分けられていくというようなことにもなるわけです。したがいまして、そういう事務の移動の具体的な細目というものをこれから考えていかなければならないということになっております。労働行政につきましては、同じく地方事務官問題といたしましては、これも改革するという方向で考えられておりますが、そのほかにさらに広く現在の労働基準局——都道府県に置かれておりますところの労働基準局を中心にしまして、労働基準行政、婦人少年行政というようなものも府県行政の中で労働行政一元化をはかるというかっこうにいたしてまいりたいというようなことで、現在の婦人少年室や府県の労働基準局を廃止いたしまして、その仕事を知事に委任をしまして、そして府県に労働部を設けていくというようなこと、それからもう一つは、広域的な労働力の需給調整等の雇用の問題あるいは労働基準法関係におきますところの司法処分等の問題につきまして広域的な調整をいたしますために地方労働局というものを置きたいというようなこと、それから労働基準監督署、公共職業安定所、そういうものは現在のような状態の中で府県知事の監督のもとに置く、そのほかに労災保険、失業保険の適用なり徴収の一元化に伴いまして労働保険徴収事務所というものを同じような形で置いていきたい、こういうようなことを骨子にいたしました一応の方向というものが考えられております。これにつきましても、現在関係各省庁の間で事務的にはなおいろいろ検討すべき問題がございます。まだまだ関係省庁の間で意見一致を見ておりませんので、現在鋭意協議中という段階でございます。  先ほどお話がございました、地方制度調査会あるいは臨時行政調査会といま伝えられているところの案の内容とは違っておるのではないかというような御指摘でございますが、労働行政につきましては、地方事務官問題というものだけを取り上げて考えました場合には、いまの労働行政機構の改革という中で一応形の上では解決をしていくということになりますが、労働行政機関全体としての問題としての大きな改革の中にむしろ入ってしまっておるというかっこうでございます。  それから陸運行政につきましては、臨時行政調査会地方制度調査会は、御指摘のごとく、陸運事務所で扱っております仕事は全部地方仕事にして、陸運事務所に勤務しておりましたところの地方事務官は全部地方公務員にしろ、こういうのが答申でございました。その後臨調の答申の実行を見守るためということで、行政監理委員会というものが行政管理庁にできておりますが、この行政監理委員会がその実行方法として検討しました際に、陸運行政につきまして多少ニュアンスの違った、つまりいま申し上げましたような車両の検査登録の一元的な処理、特にそういうものと陸運行政とは分けて考えるべきではないか、そうして一元的にやるほうがいいというものは一元的に管理をしていく、それから地域行政地域住民生活に密接に関係するものは、いまの陸運事務所が所掌しておるもののみならず、もう一ぺん再検討の上で、さらに幅広く知事に、あるいは府県委譲可能なものは委譲すべきではないか、こういうような方向を出されておったのでありますが、現在のこの基本的な考え方になっておりますものは、そういうものを一つ柱にいたしまして、基本的な改革方向というものが一応出されておるというふうに私どもは受け取っております。現在それにつきましての内容につきましては、いま申し上げましたとおり、関係省庁の間でせっかく協議中でございます。
  114. 原田立

    ○原田立君 いろいろいま長く御説明があったけれども、要するに、地方事務官制度を廃止しろ、廃止していけ、そういう点の非常に強い要望が地方団体もあるわけです。ところが、現実に最近になって煮詰まってきたのは、だんだん答申の線に逆行しているということで、大いに大きい不満があるわけです。そこで、行政局長御答弁いただいたけれども、大臣にお伺いしたいのですけれども、こういう答申に逆行しているような方向ですね、これは改めるべきではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  115. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) いま行政局長が御説明申し上げましたように、この問題は前内閣で大体方向をきめております。これは臨時行政調査会行政監理委員会その他の意見、また内閣全体としての意向を固めたと思っております。私は地方事務官の問題は、内容によっては、何と申しますか、必ずしもいまの政府の持っている考え方答申に逆行しているとは言い切れない。やはり答申方向に現実的に適応するように、そういう各省間の調整をしていくべきだ、またそういう方向に向かって調整しつつある、こう考えております。
  116. 原田立

    ○原田立君 答申には地方事務官制度を廃止しろと言っているけれども、現段階においては必ずしもそれが妥当な意見ではない、こういうふうな考えですね、大臣のいまの御答弁は。
  117. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) いや、私の言いあらわし方に誤解があったと思いますが、逆行しているじゃないかという御意見でございまするが、逆行しているものとは考えておりません。しかし、つまりそういうまぎらわしい点があれば、この点は是正しなければなりません。しかし、いまの各省間の折衝、また政府がこの問題を取り上げて、この答申に沿うて、そしてそこに現実的にこれを調整していこうという考えで前内閣もやっておりましたが、この新しい内閣におきましても、やはり私いま申しました、答申に逆行するようなことではなくて、答申に沿うような方向で各省間に調整をしていこう、こういう考え方で進んでおる、こういうことでございます。
  118. 原田立

    ○原田立君 それ一つ問題取り上げてもたいへん時間がかかるのですから、いまの大臣の御答弁では私は納得しがたい。それだけ申し上げておきたい。  それから現在、国家公務員のほうのベア完全実施問題について、七月に実施すべきだというようなことで、四党国対の委員長段階で何か調印されたという、話し合いがついたという。内閣では八月実施ということになっている。しからば、一カ月そこでずり上がってくるわけでありますけれども、その際、地方公務員は国家公務員のベアに準ずるということになると、ここでまた七月実施というようなことが現実問題として出てくるのじゃないだろうか。地方公務員のほうはそれに対してどういうお考えでありますか。それからまた、もし七月実施になった場合に、伝え聞くところによると、約九十億ほどのお金がかかるという。それについての手当てはどういうふうにするつもりなのか、当面の大きな問題ですから、お伺いしておきたい。
  119. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 先般の閣議では、御承知のとおり前内閣のときに八月実施ということを閣議で決定しており、さらに確認いたしまして、その後の四党の何かの折衝で七月実施ということを聞いておりますけれども、私はただ情報、そういう方向にいっているのだという情報だけ聞いておりますけれども、まだ正式に何らの通告もなく、またそれが具体的に折衝も受けておりません。具体的に何ら、こうなったという報告も受けておりません。しかし、一カ月間繰り上げた、国家公務員の給与が繰り上げてまいりました場合には、これは地方公務員にやはりこれに準じて処理しなくちゃならぬと考えていることはもとよりでございます。そこで、この財源はお示しのとおり九十億か、九十億近くかかるそうでございます。いま財政当局から、もしそういう場合はどうするかということについて、政府委員からお答えいたします。
  120. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) もし一月繰り上げるといたしますと、一般財源で七十四億が予定したものよりも必要になります。いまのところ財源の目当てがございません。
  121. 原田立

    ○原田立君 目当てがないなぞと、困るじゃありませんか。別段措置なさるお考えはないのですか。
  122. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 大臣からお答えしましたように、まだ政府部内の正式の議論になっておりません。
  123. 原田立

    ○原田立君 大いに不満の答弁だけれども、内部できまっていないというのではやむを得ないでしょう。だけれども、現実におそかれ早かれ、それは問題にされてくることは間違いないと思うのです。そのときに、ただ、ない袖は振れませんでは済まないはずだと思う。それでお聞きしている。その段階になったらお聞きしましょう。  それから従来過過密大都市について、もっとしっかり財源を付与していかなければいけないと、盛んにいわれているわけですが、その逆にまた、過疎地帯というものがどんどん全国に発生していて、その方面の市町村は財政的にも非常に困っている。身近かな近い問題で言うと、私は福岡に住んでおりますけれども、今度の石炭関係答申案が出る。遠からずして約二万人の失業者が出てくる。それらが生まれた土地を離れていかなければならない。完全に過疎地帯が筑豊関係では出てくるわけでありますけれども、あるいはまた北海道関係において、炭鉱関係の市町村も、やはりこれまたそういううき目にあっていかなければならない。こういう、過疎というよりか、それ以前の問題の市町村であると思うのでありますけれども、取り扱いとしては、この過疎地帯の財政をもっと強力に援助すべきではないか、こんなふうに考えるわけです。産炭地の振興ということとからみ合わせて、大臣、こういう過疎地帯に対してどういうふうなお考えであるか、お聞きしたい。
  124. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 地方行政の中で、過密地帯、過疎地帯対策という、非常にまた最近の社会情勢の推移で、著しい問題が重要性を持ってきているわけであります。まあ応急措置としてはいろいろのことも考えますけれども基本的に申しますと、やはり過疎地帯に対しては、その地域の特性を生かした産業を興す。たとえばいまの産炭地の問題でも、従来から政府がやっておりまするが、政府の施策が追いつかぬほど急速にそういう事態がどんどん起こっておることは承知しております。したがって、これらの問題を考えましても、また、いまちょうど産炭地のお話がありましたが、産炭地の振興策につきましても、いろいろ産炭地振興事業団等がありましてやっておりますが、やはり地方公共団体といたしましても、いろんな点において負担が重くなっております。だからできるだけ、基本的にはその地域に即した産業を持ってくる、あるいは社会生活基盤の整備によって、なるべく人口が安定、定着するような方法を考えなくてはならぬ。そこでこれがためには地方交付税あるいは地方債の措置地方債を拡充していく、また一面その地点だけを考えないで、市町村圏の広域行政、こういうものから考えて、やはり幅広い、しかも現実的な問題をとらえて対処しなくちゃならぬ、こう思っております。
  125. 原田立

    ○原田立君 実は過日、奄美大島に行ってきたわけなんですけれども、あそこで有馬支庁長からいろいろと陳情を受けまして、奄美群島振興特別措置法が今年度で打ち切りになるので、ぜひともこれは延長してもらいたい、こういうふうな強い要請がありました。なお局長にもこのことはお願いしておきましたのですが、また秋吉主計官にも多少お願いしておきましたのですが、あの奄美大島は過疎地帯といってはあれですが、それ以前の問題があるのじゃないか、こういうふうに強く思っております。それでああいうところの地域開発というような面からいっても、この際ぜひとも、いままで十五年間特別措置が行なわれておりますが、現地としてはもう五年間はぜひとも延ばしてほしい。そうすればやっと浮上してくる、そういうふうな意見がありました。これはたいへん大きな課題ではないかと思うのですが、それについてのお考えをお聞きしたい。  それともう一つは、先ほど申し上げた産炭地などのようなそういうところですね。地方交付税でカバーするとか、あるいはいろんなことでかさ上げしてやるとかいうようなことのようでありますけれども、そういう過疎地域などについても特別に立法して、そうしてこれだけのものはやったのだ、これでしっかりやれというような、そんなふうな方向にはできないかどうか、この二つをお伺いしたい。
  126. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) この奄美大島の振興措置法ですが、これは奄美群島振興事業、一種の特別法ですが、これはどうしても現在の状態から見て、このまま打ち切るということは無理だ。したがってさらに五カ年間ぐらいは延長すべきだという立場で、目下極力それを実現するように努力をいたしております。  それから過疎地帯に対する施策について何か特別立法をというお尋ねでございましたが、これはまず特に産炭地を取り上げても、地方では、原田さん御存じでございますが、いままでもずいぶん産炭地振興関係のいろんな機関をつくってやっておりましたけれども、なかなか実は容易じゃないのです。それは私も知っております。だからほかの過疎地帯の問題もこれは一緒ですが、特別立法といいますけれども、こういうことがあるのじゃないか。私はまだはっきりその点を考えていないから明快にお答えできませんが、地域によってほんとうに違うのですね。過疎地帯もそれぞれ特殊事情がおのおの異なるところが多いわけです。だから、はたして立法ということになりました場合に、ただ単に、かりに産炭地だけだと、またこれは別でございますが、全国の過疎地帯を全部網羅するようなそういう法律ができるかどうか、しかしその御趣旨はよくわかっておりますから、まあひとつ、特に過疎地帯は今日の社会情勢では見のがせ得ない大きな問題でございます。十分そういう意味を含んで善処したい、こう思っております。
  127. 原田立

    ○原田立君 先ほど公営企業赤字の対策についての質問がありましたけれども、また以前細郷局長にもその点お聞きしたことがあるのですが、公営企業赤字はなかなかたいへんな状態であることは先刻御承知のとおり。そこで私聞いた話でありますが、横浜市営交通が軌道の敷地を売りに出した。国道のまん中の軌道の敷地ですから、当然これは、そんなところを民間人に買われちゃって、家なんか建てられちゃったらたまったものではない。ですから当然国で買うだろうと思うのですが、そういうようなこと等がすでに話し合いが進められておるのかどうか、あるいはまた、聞くところによると、何か十六億くらいだそうですね。金額が十六億だと、一ぺん賞与でばっと出すと、またもとのゼロに戻ってしまう。自分のところが持っている財産を売却し、そして公営企業経費の冗費をばなくしていこうという気持ちはわかるけれども、ただそれだけでは公営企業赤字というものは根本的に解消できない。そうなると政府がすぐ、何でもかんでも公営料金の値上げというところまで進んでくるようですけれども、そういうことじゃなくて、この公営企業赤字経営を、何とか赤字にならないようにしなければいけないのじゃないか。新聞等によっていろいろと伝えられておりますけれども、この公営企業赤字に対して、赤字経営の公営企業に対して、政府としてもっと抜本的な対策を打ち立てるべきではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  128. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) お話のとおり、いまの地方公営企業の財政の状態は、まことに困窮しているということばが使えるほどひどいのです。そこで大体本質的にいいますと、企業でございますから、公営企業にいたしましても、独立採算制というたてまえをとるのが当然でございましょうが、実態はとてもそんなことやっておったのではいけないというようにまあだれでも考えることです。と申しますのは、いまお話しありましたように、すぐ料金を引き上げる、交通関係でも水道関係でも、ほかのことでもそうですが、料金を引き上げると、これが物価に影響する。これはまことに避けなくちゃならぬことで、ある程度はこれは企業性からいいまして、やむを得ぬ場合もあるかもしれませんが、できるだけ引き上げということを避ける。こういたしますと、年々赤字が累積してくる。これはいろいろいま手を尽くしておりますけれども、いまのままの財政措置では、結局お話のとおり、料金でも引き上げなければやっていけないという、われわれ先ほども前提として申し上げましたが、なるべくそれを避けなければいけないとは思いながらも、そういう情勢に追い込まれる。そこで交通関係にしますと、いま大都市地下鉄をやっておりますが、これももう御存じだと思いますが、国でもってもう少しめんどう見てはどうかと、トンネル問題その他もございます。そういういろんなことをやっておりますが、特にこれは重要な問題でございますから、ひとつ財政局長からざっくばらんなお話を申し上げたほうが、非常に御参考になると思いますので、局長から申し上げます。
  129. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 公営企業でございますから、やはり独立採算がたてまえであると思います。そして原価を償うに足る適正な料金を維持すべきだと。ただ、交通のような事業でございますと、特定の種類の交通機関だけが高い料金、たとえば地下鉄だけが非常に高い料金になるということでは、他の交通機関との競争関係から、経営の将来が心配であるというような事情がございますので、地下鉄につきましては、御承知のように財政負担を国並びに関係地方団体がすべきではなかろうか、ぜひこういう方向で来年度の措置をいたしたいと、かように考えております。  それから、一般に公営企業が最近赤字を出してまいりました内容をいろいろ分析してみますと、私はやはり一つは、企業内の努力の問題があろうと思います。これはどうしても合理化努力をおやりいただかなけりゃならない。しかし、また反面では、公営企業、特に交通とか水道とかいうものが、新しい時代に即応すべく建設改良をやるとか、あるいは別の種類の施設をつくるとかいうようなことをいたしておるわけでありますが、それの資金コストが非常に高い。公営企業はほとんど自己資本を持っておりませんので、そういう建設改良事業をいたそうといたしますと、どうしても資金コストの問題が起こってくる。それで資金コストを何とか引き下げることをいたしたい。いろいろ公営企業の問題を解決するためには、なお多くの問題があろうと思っております。さしあたって来年はそういう点に重点を置いて努力をいたしたいと、かように考えております。
  130. 原田立

    ○原田立君 細郷財政局長の御答弁は、大蔵省が自治省に答弁しているような、そんなふうなように受け取れる。そうじゃなくて、もう少し、これは財政局長にお伺いするよりか、むしろ自治大臣に、こういう公営企業赤字でたいへん困っている、現実問題ですよ。これをいまの財政局長が言うような大蔵省ばりの考え方でなしに、もっと手厚い手当てというようなものはしてやるべきじゃないか。現に九月でしたか、総理もこの点について抜本的な対策を立ててやれという指示もあったというふうに新聞承知しております。それでこの問題をお聞きしているわけなんですが、財政当局のこちらの話ではなしに、大臣としての、この問題については熱意を込めて解消に当たっていく決意かどうか、その点をお聞きしたい。
  131. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 私は、ごもっともだと思います。ただ、現実的にこれをどう処理するかというのは、従来からやってきたことでございますから、一朝一夕にこれが根本的に財政措置ができるということは、非常に困難でございます。たとえば、いま財政局長から申しました中に、資金コストが高いのだと、これなんか私考えますのに、たとえば公営企業の金融公庫、公営企業金融公庫の金利なんか、それから金の出し方とか、これが大体金融公庫をつくるとき、政府出資が三十何億という、まことにお話にならないような資金を出している。したがって、金利も非常に高金利、七分以上の金利が出ているところもあるし、もちろん下もありますけれども、こういうのは、やはり現在の公営企業の実態からして、これは一地方公営企業だからというようなことでなくて、政府全体から見て、いわゆる地域住民がこの地方公営企業のために、これこそ地方住民の福祉とか、しあわせとかいうことばがどこまで当てはまるかということから考えてみますと、こういうものもやはり実態的に改めなくちゃならない。それからいまの、たとえば交通問題でも、地下鉄でなきゃ、もう路面交通は行き詰まって、にっちもさっちもいかぬと、これはむしろ地方公共団体あるいは地方公営企業がやるということよりも、国全体の交通政策から、どの政策から考えても、これはやはり総合的に考えてやらなければならない問題じゃないかと思います。いまお話のとおり、独立採算制だからということばを私も使いますが、これは基本的には企業でございますから、それは使ってもいいと思います。また適正な料金をとるということも間違ってないと思いますけれども、その経営のまかなえる料金がとれないことは、もうだれが見たって当然のことでございますから、それならば国全体から考えても、これは公営企業に対する根本的な財政の対策というものを考えるときにきているのではないか、こう考えております。  それで、このまま放置するときは、これは全く行き詰まって、企業の体制、企業のいろんな計画というものがほとんど不可能になってくる。こういうことまで考えられますので、いまどういう方策、どうやるかということは、まだ私どもも煮詰まっておりませんが、非常に重要な問題として、自治省全体としても考えて、ひとつさらに案をつくりたいと、こう思っております。
  132. 原田立

    ○原田立君 国家公安委員長さんもお見えいただきましたのでちょっとお伺いしたいと思いますが、過日、十二月十二日の新聞で拝見したわけでありますが、警視庁は独で学内に立ち入ると、乱闘の東大に警告をしたと、こういうことでございますが、これについて簡単でけっこうですから、いきさつ等御説明を願います。
  133. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  大学紛争に関しましての警察官の学内出動問題でございますが、他の委員会等におきましてもお答えしたことですれども、学内における秩序の維持につきまして、大学当局がいわば第一義的に判断して適当の措置をするという課題かと一応心得ます。御指摘の警視庁の見解というのは、お話のとおり、去る十二月十一日、東京大学教養学部内で発生しました暴力事犯について、大学当局に対し文書で警告したことを御指摘かと存じます。この警告の趣旨は、東大教養学部内で本月初め以来発生しました暴力事案について、そのつど大学当局の善処方を口頭で要望してきておったのであります。ところが十二月十一日にも数十人の重軽傷者を出すという暴力事案を見たにもかかわらず、警察官の立り入り要請に終始大学当局は消極的であったことから、警察としましても、治安維持の責任上、このような事態を放置することは許されないという立場でございますので、将来再び流血の事態を見るような場合には、大学当局の要請を希望はしますけれども状況によりましては、警察独自の判断で学内に立ち入って、事態の収拾をはかる場合もあるという意味の趣旨を、警察としての基本的な態度を表明したものであると存じます。  この警視庁の見解は、御指摘のように他の機会に私が申し上げました見解と別に違うものではございませんので、学内といえども治外法権の場ではない、これはきわめて明瞭な、法治国日本において当然のことでございます。学園内の治安を最終的に維持することはむろん警察責務であるということから、たとえて申し上げれば、人の生命身体などに危害が及ぶような事態には、大学の要請がなくても、警察独自の判断により学内に立ち入ることもあり得ると存ずるのであります。ただ警察は、大学というところが理性の場でありますから、教育的な観点も当然あるわけでございますので、そういうことも考え合わせまして、学内への警察の出動には特に慎重を期しております。大学当局と緊密な連絡をとりながら事態に対処して今日に至っているような次第でございます。  なお警察としましては、大学紛争がより高い立場から根本的に解決されるということをむろん期待しておるわけでございまして、それとともに、事態の重大化ということが考えられるとしますならば、これに対処するような必要な準備体制を整えておくことも、警察立場から国民に対する当然の責任、課題であろうかと存ずる次第でございます。
  134. 原田立

    ○原田立君 現在、九州の佐世保で原潜寄港反対デモが盛んに行なわれ、それに対して警備当局もいろいろと手配をしているやに新聞報道で承知しておりますが、そのほうの状況はいかがですか。
  135. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 昨日十八日、佐世保にアメリカの原子力潜水艦が入港しましたことは御承知のとおりでありますが、それに対しまして現地の大体の状況は、全学連中核派など、いわゆる過激派学生集団が約七百人ないし八百人ぐらいが現地に動員されておりまして、角材、投石等の暴力手段によって米軍の基地突入まで目ざすという事前情報がございました。また、全国実行委員会及び中央実行委員会——前者は社会党系、総評系といわれております。中央実行委員会、後者のほうは日共系といわれております。この両実行委員会では、いずれも入港期間中に山場を設定いたしまして、西日本、規模二万人の抗議集会デモを行なう計画がございまして、その他の団体におきましても抗議行動が予想されております。一方、右翼団体においても、こういう反対闘争に対抗するというふうな形で現地行動をする情報でございました。  そんなふうな情勢からいたしまして、現地におきましては、過激な不法事案や混乱が予想されましたので、長崎県公案委員会は、県内の警察力だけでは治安維持の万全を期することがむずかしいと判断いたしまして、必要な警察官の援助を他の府県公安委員会に要求いたしまして、警察官四千四人、内訳を申しますと、長崎県内千四百人、県外応援が三千人、合わせて四千四百人をもちまして警備に当たることとしております。この警察官の動員数は、過激派学生集団暴力事案に対する警備の万全を期するために必要と考えておるものでございまして、別に大げさなものではないと存じております。  なお、本年一月のアメリカの原子力空母佐世保入港中の警備体制を御参考までに申し上げますと、五千八百人でございました。内訳は、県内千九百人、県外応援三千九百人でございまして、過激派学生集団の最高動員数は千九百五十人でございました。以上お答え申し上げます。
  136. 原田立

    ○原田立君 俗に一〇八号事件といわれるこの事件についていまだ解決を見ないことを非常に残念に思うのでありますけれども、その後の経過は報道にも出ておりませんので、その中間報告的なことをしていただきましょう。
  137. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お尋ねのあの一〇八号事件——連続ピスト事件と通称されておる課題かと存じます。御承知のように、本年十月十一日東京、十月十四日京都、十月二十六日函館、十一月五日名古屋におきまして、連続して発生を見たのは御承知のとおりでございます。警備員、夜警員及びタクシー運動手、合計四名が挙銃をもって射殺されたのでありまして、わが国の犯罪史上類を見ない凶悪な事件でございます。  警察庁におきましては、事件の性格にかんがみまして、全国警察の組織的な捜査を強力に行なう必要があることから、十月十八日、これを指定第一〇八号事件としまして、全国的な広域捜査を行なうこととしまして、その連絡調整に当たっておる次第でございます。現在、この事件解決のために、関係四都道府県警察に捜査本部を設置いたしまして、強力な捜査を進めるとともに、他の府県警察におきましても、本件捜査を重点的に行なっております。全国警察の総力をあげて犯人の早期検挙に努力しておるという状態でございます。また本件の犯人がこの種の犯罪をさらに重ねることも考えられますので、捜査とあわせまして、続発事件防止のため、日夜厳重な警戒につとめているわけでございます。しかしながら、本件は遺留物件等に手がかりになる点等が非常に少ないということ、犯人の姿をはっきり見た人がいないということなどから、捜査はなかなかむずかしゅうございまして、全国警察をあげての懸命の努力にもかかわらず、遺憾ながらまだ解決に至っていないのでございます。しかし、本件につきましては、国民一般の方々からの情報も多数寄せられておりまして、警察としましては、今後ともそのような国民各位の御協力を得て、警察組織の全力を傾けてその解決に当たる考えでございます。
  138. 原田立

    ○原田立君 青少年の間にシンナー遊びですね、これがたいへん流行して、死者もだいぶ出ております。非常に大きな社会問題化しているわけでありますが、実際の取り締まりは、シンナーそのものについては通産省あたりであろうと、こう思うのでありますが、警察としては不良青少年の補導、そういうふうな面から、この件についてどういうふうなことをお考えですか。
  139. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お尋ねのように、シンナーの乱用によりまして死人までたくさん出ておることは、ほんとうに遺憾なことと存じております。その状況の概要を御参考までに申し上げますと、シンナー乱用によります死亡者が、本年に入りましてから六十二人——少年が四十六人、成人十六人、合わせて六十二人ということに相なっております。そのほかに、シンナーを使いましての自殺が四十二人、合わせて百四名ということであります。また、警察がシンナー乱用で補導しました少年の数は、本年十一月までで一万八千七百三十二人でございます。九月までは毎月急増を示しておるという状況でございますが、十月以降はやや横ばい状態というのが、この被害状況の概要でございます。  で、これに対しまして、御指摘もございましたように、警察だけでこれが対策が万全を期することは困難でございますので、第一に、シンナー類を不必要な者に入手させないような措置をとる。第二に、シンナー類の有害であるという、有害性につきましてのPRを学校、職場、家庭など、あらゆる面にわたって徹底的に行なう。さらに第三番目に、シンナー乱用者に対する補導を強化する、こういう三点に重点を指向しまして、関係省庁にそれぞれ必要な施策を要望しますと同時に、シンナー類の販売業者にも販売について自主規制を求めてまいっておるのであります。また、各都道府県警察におきましても、中央のいま申し上げたような考え方と相対応しまして、それぞれの段階において適当な措置を講ずるということでやってきておりますが、同時に、乱用者に対する補導を強化して今日に至りました。まあ、幸いにして、さっきも申し上げましたように、どうやら横ばい状態にまではこぎつけているという状況でございます。
  140. 和田静夫

    和田静夫君 冒頭きょうの大臣のあいさつについて二、三問題に触れたいと思っておったのですが、あとに回します。で、最初に大蔵の主計官、何か衆議院のほうにも呼ばれておるようでありますので、二、三の問題について触れたいと思うのですが、まず第一に、財政審議会の十一月二十一日の答申について二、三、自治、大蔵のそれぞれの当局の見解を求めておきたいと思います。  この答申において地方財政の今後検討すべき点として第一に、地方財政の公経済全体に占める比重は、国の財政の占める比重よりむしろ大きい。地方財政も国と同一基調でフィスカル・ポリシーの有効な適切な運営を確保する必要があるとしており、第二に、国の財政の現状に対比すれば地方財政は総体的にゆとりのある状況にあるので、国と地方との財政上の適正な均衡をはかるわけです。さらに当面の措置一つとして、交付税率の修正、年度間の財源調整など、現行地方交付税制度について所要措置を行なうとしています。また十二月の六日の財政制度審議会の席上で大蔵省の鳩山主計局長は、来年度は地方交付税交付金の総額を本年度に比べ二〇%増程度にとどめなければならないと強調されています。結局大蔵省の考え方というのは、けさ新聞でも明らかですが、地方にこんなに財源をとられたら国の予算は組めない。また景気調整の面からも国と地方の足並みがあまりにも違ってしまうとして、地方交付税率は四十一年以前の水準に戻すのが当然で、来年度は二%引き下げる。地方財源補助の性格を持つ職員設員費補助金地方債元利償還費に対する補給金の打ち切り、地域立法に基づく高率補助の削減を強く主張しておると、こう思われるのでありますが、この点についてまず自治省はどうお考えになりますか。
  141. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 一つ地方財政の実態に対する認識であろうと思いますが、私ども地方におきます行政施設水準の低位性ということからいたしまして、地方財政の実態が豊かであるという考え方には反対であります。いま一つは、地方に黒字が出たという議論がございますが、一方では借金をしながら出しておる黒字であるという点からいたしまして、これも正しい見方ではない、こういうふうに考えております。  いろいろ財政制度審議会では、国債の依存率が高い、あるいは地方財政で黒字が出ておるとかいうような議論、その他たくさんあろうと思いますが、そういうことを根拠に地方財政がよくなったと、こういう立論をされておるようであります。公債の依存率が高いということは、これは私は数字の示すとおり日本は高いと思います。ただ国は公債を全く一般財源のかわりに出しておるという。ところが地方地方債を出しておる場合と機能が違うのではないだろうか。地方団体の場合でございますと、一般財源のかわりに出しておる部面はほとんど現在ございませんで、それぞれの地方団体の財政規模が小さいがゆえに、まとまった仕事をするためにはどうしても負債によらざるを得ない、こういう事情がございます。同じ借金ではございますが、性質が違っているんじゃないかというふうに私どもは考えております。  そこで、そういったような考え方から、地方財政は国に比べて数字的にもゆとりがあるということでございまして、そのために交付税の率を下げるというような議論については、私ども考え方からいたしますと、これまた反対せざるを得ない。地方財政が十年ぐらい前のあの苦しい時代に比べて、地方財政自身は改善されてきたことは、私は事実だと思います。そのことがすぐ国と比較して、国よりもよくなっているんだということには、私はならないんじゃないか。その理由は、先ほど申し上げたようなことにあるわけでございます。したがいまして、財政制度審議会でいろいろ御審議をいただいたわけでございますが、地方財政の問題は、やはりいろいろ複雑で多方面にわたります。地方行政の需要を財政面に反映しているものでございますだけに、単純に数字の上だけでいいとか悪いとかというようなものではないんじゃないか。もっと幅広く、奥深くいろいろな問題を見て、はたして地方財政がいいのか悪いのかということを考えるべきであろう、こういうふうに思っております。
  142. 和田静夫

    和田静夫君 いまの自治省の答弁を含んで、大蔵省に伺いたいんですが、地方制度調査会の十二月十八日の緊急総会は、地方交付税率の引き下げを行なうべきではない、都市財源充実すべきである、こういう答申を出したことは御存じのとおりでしょう。その理由について別に申し上げません。また地方財政審議会は、十一月の二十六日に、すでに交付税率の引き下げには反対である、こういう意見書を提出をしております。いわゆる総理の諮問機関である地方制度調査会や、あるいは自治省の付属機関である地方財政審議会などが出しているこれら一連のいわゆる答申について、大蔵省はどのように受けとめられていますか。
  143. 秋吉良雄

    説明員(秋吉良雄君) 大蔵省といたしましては、国も地方も通じ、全体的な公経済の予算がいかにあるべきかということを総合的に検討する立場に立たせられておることは、御承知のとおりでございます。そこで、国民負担がどのように、資源配分機能が効率的に配分されて、それがいかに国民福祉に換元されていくかというようなこと等も念頭に置きつつ、国、地方を通ずる公経済の財政について十分配慮して、地方財政問題についても検討するわけでございますが、大蔵省といたしましては、ただ地方財政だけのみに着目して議論をしておるんじゃなしに、国の経済、地方財政全体を通じて、地方財政はどういう位置づけにあるか、全体の国の予算を組む場合に、どのように地方財政のあり方を考えていくのかという、国、地方を通ずる公経済を通じての考え方で議論をしておるわけでございまして、交付税率につきましては、御案内のように、昭和四十一年度のあの不況の際に、あれはたしか国税三税では大幅減税、あるいは不況等によって伸びも非常に停滞をしたわけでございます。のみならず、景気振興の意味からいたしまして、七千三百億にのぼる国債発行を予定したわけでございまして、その結果、地方財政収支といたしましては、当時地方財政計画では約二千五百億になんなんとする財源不足が見込まれておったわけでございまして、これが財源対策の一環といたしまして、先ほど申し上げました交付税率が二九・五%から三二%に引き上げられて今日に至っておるわけでございますが、その後の経済情勢の回復、それから、先ほど申しました交付税率の三二%に引き上げられた、それから地方税の増収等によりまして、最近の地方財政の収支状況はとみによくなっているというふうに考えておるわけでございます。  それに引きかえまして、国の財政は、当然増経費が非常に著増しております。しかも公債依存率が非常に高い。公債依存率について申し上げますと、国の場合は一〇・九%でございます。地方の場合は四・二%という数字になっておるわけでございまして、この国の公債依存率の一〇・九%という数字は、これはちょうど地方財政が昭和三十年前後において危機であったということが叫ばれておりました。あのときの地方財政地方債依存率もほぼ同じ数字でございます。たしかあのときは八%ないし九%が地方財政の依存率だと、その地方財政の危機であった当時の依存率を、はるかに国の場合は上回っているというのが現状でございます。で、今後公債負担がますますふえる、加速的にふえる、当然増経費は非常にふえているというような、いわゆる財政の硬直化の現状でございます。  そこで、確かに地方におきましては、先ほど自治省の財政局長からもお話がございましたように、奥深い、いろいろ幅広い問題をかかえている。行政水準の問題等に無限の財政需要があることは、私どもは十分承知をしておるわけでございますが、これは何も行政水準の向上というのは、地方財政だけで遂行すべきものではないように思います。御案内のように、国と地方を通じましてともどもこの仕事をやっておるのが実態でございます。そういった観点からいたしまして、国においても財政需要が無限でございます。地方においても財政需要が無限である。しかしながら、国民負担からする公経済の資源というものは限られております。これをどのように最も国、地方を通じてあるべき姿で予算を組むかということで私ども苦慮するわけでございまして、そういった意味合いからいたしまして、交付税が当初は約二千六百億円くらいじゃないかという予測でございましたが、最近の情勢によりますと、もっとふえておる。あるいは三千億に近いようなふえ方をするのじゃないかというような憶測すらあるわけでございます。そういたしますと、前年対比いたしますと二六・七%もふえる。ところが国の予算は全体的に見まして一五%程度しかどうしてもふえない、ふやすことができないという場合に、そういった場合に、財源の配分として、はたしてそれがいいかどうかというようないろいろなジレンマにぶち当たってくるわけでございまして、そういったようないろいろな角度からいたしまして、大蔵省といたしましては、交付税率三二%については、できるだけ四十一年度の二九・五%に近づけるように修正を願いたいということで、私ども事務当局といたしましては、自治省にお願いしておる、こういう段階でございます。
  144. 和田静夫

    和田静夫君 地方財政に景気調整機能を持たせる、こういう財政審議会の考え方が出ております。これはどのように理解をされておりますか。
  145. 秋吉良雄

    説明員(秋吉良雄君) 結局、いわゆる財政による国民経済をどのように誘導するかということ、つまり、平たく申しますと、それはいろいろなフィスカル・ポリシーの問題でございますが、要するに、これはいろいろな見方があると思いますが、公経済が、地方財政と国の財政と、やはり車の両輪のごとく、同一の基調の上で動いて初めて車は動くわけでございます。そこで、公経済の占める地方財政の割合は、私ども立場から申しますと、いろいろな意味において地方財政のほうがむしろ国よりも大きい影響力があるのじゃないかという感じすらしておるわけでございます。これは国の一般会計の規模と、それから地方の普通会計の規模を申し上げますと、形式的においてはほぼとんとんでございます。決算ベースでは地方財政のほうが多うございます。ところがこれを、いわゆる交付税、補助金等の国庫支出金が地方のほうに回ります。したがいまして、それを引きました残りはいわゆる国の純然たる支出でございまして、そういった実質規模の比較をいたしますと、国よりも地方のほうが約二倍である、こういう状況でございます。  これはしかしながら、単に一般会計、普通会計のみの実質というものの比較でございますが、これをさらにもっと幅を広げまして、国の場合は国鉄、電電公社、特別会計、こういった政府関係機関を調べますと、それからまた地方の場合には特別会計、企業会計、公営企業を含めました、いわゆる中央、地方の、国民の何といいますか、総生産に対する政府財貨サービスの伸びはどうかという比較をいたしますと、これは経済企画庁の試算でございますけれども国民総生産に占める政府財貨サービスの割合は二割でございます。ところが、中央と地方の財貨サービスの割合は、これは中央が九・九%に対しまして地方が一〇・一%、こういう経済企画庁の数字でございます。  こういったようないろいろな資料からいたしまして、むしろ地方財政のほうが公経済に占める割合は高いんじゃないかという感じすら持っているわけでございまして、その意味からいたしまして、国のみが景気調整の片棒をかついだんでは片手落ちでございます。そういう意味からいたしまして、過去におきましては、昭和四十一年度においては、景気振興をはかる意味で公共事業の繰り上げ施行をいたしたわけでございますが、この際にも地方財政の御協力をいただきまして、それから四十二年度は逆に景気の引き締めをやったわけでございますが、その際にも、全体といたしましては三千百億の繰り延べ措置をした後、地方財政にも御協力を願いまして、九百十億の繰り延べ措置を期待した、こういう次第でございます。
  146. 和田静夫

    和田静夫君 大体考え方はわかったんですが、財政審議会のいうように、あるいはまた、大蔵省がいまもるる述べられましたように、はたして地方財政は国の財政に比べて、総体的に見てゆとりのある状況にあると言えるのだろうかという点は、自治省の別に味方するわけじゃありませんが、どうも疑問に私、思うのです。自治省は、十一月の二十三日に、四十二年度の全国市町村の決算をまとめて発表しています。これによりますと、景気の立ち直りと税収入の伸びによって、前年度同様、黒字基調を堅持した反面、かつての深刻な赤字の経験にこりて慎重な財政運営が行なわれたというふうになっているわけです。しかしながら、財源上の制約を反映して、債務負担行為、四十二年度以降支出予定額二千七百六十五億円、四十二年度中の増加額約七百三十七億円、前年度比三六・五%となって、年を追って激増をしています。それから公害であるとか交通安全対策など、財政需要が増大をしているにもかかわらず、実は慎重な財政運営が行なわれて、緊縮型の財政運営をするための指導が行なわれたために、真の意味での住民サービスは私はおろそかになってきたのではないかと、こう思うんです。都市施設の拡充、生活基盤の整備など、したい仕事ができないというのが実情ではないかと思いますが、自治省はこのことについてどうお考えになっているか、あわせて実は聞いておきたいと思います。  また、起債率が低下しているのに、赤字にこりた地方団体が投資を差し控えているというのが私は実態であると、こう思うわけです。決して事業をやりたくないというわけではないことは、これはもう当然です。また増大をする公共投資需要を抑圧することは、これは自治大臣にもあわせてお聞きをしたいんですが、社会開発を看板としている佐藤内閣にとっては、私は恥ずべきことではないかと、こう思うんです。いかがですか。
  147. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 大体地方財政の実態についての認識は、先ほど申し上げたとおりでございますし、ただいまのお話も、私どももそういう角度で市町村決算の分析なり見方をいたしておるのでございます。まあ交付税率、交付税に非常に自然増が多いということも事実だと思いますが、まあ交付税に自然増が多いということは、同時に国税にも自然増が多いということでございます。また国と地方との財政規模を比較しての議論もしばしばなされております。確かに規模としては実質は一対二であると思います。ただ、その際もう少し突き詰めてものを見てまいりますと、国は単一の経済財政主体でございますが、地方は三千四百の財政主体があるわけでございます。したがいまして、もし国と地方の間を比較をするということでございますと、やはりそのそれぞれはどうなっているかということも見てみないといけないのじゃないだろうか、公債の依存率がグロスではおっしゃるとおりでございますけれども、個々の団体を見てまいりますと、たとえば東京周辺の人口急増地帯、こういうところの公債に依存している率は、国の率よりはるかに高いのでございます。まあそういったようなこともございますし、また行政水準を向上させることは、私も地方団体だけがやっているものとは思っておりません。国も非常に努力をしておられるし、租税負担の限界でそれがおのずから限度があるということも承知をいたしておりますが、ただ国と地方がそれぞれ分担をしております仕事の中身についてこれを見てまいりますと、いかにも地方の分担している部分の行政水準が低いのではないだろうか。道路一本とりましても、市町村道の整備状況は非常に低い。国道は相当よくなってきておると、そういったようなバランスの問題もやはりあろうと思います。したがいまして、そういった事業を行なっておりますと地方単独事業というものを、いままでのような姿で今後もずっと推移すればいいんだと私ども実は考えていない。いままでは国道を整備するために地方道はがまんをしてまいりました。しかし、ある程度国道がいった以上は、地方道をどうしても整備をしなければならないという段階でございますから、単純に総ワクが一対二だから、それでどうこうというような議論には私は結びつかないのじゃないだろうかという気持ちがいたしております。  まあ景気調整その他の問題につきましても、私どもは別に地方財政が景気調整はしないのだという気持ちは持っておりません。やはり国全体が、国際収支がよくなるか悪くなるか、景気の動向がどうかということについては、国だけでなく、地方財政もこれに当然そういった機能を持ってやるべきだと思いますが、いかんせん、現状におきましては、地方財政がまかなうべき部分の経費は、景気調整になじめない面が非常に大きいというような事情もございますので、それらも勘案して、私どもは、先ほど申し上げたような地方財政財源をこの際削るべきではない、こういう考え方に立っております。
  148. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 後段に御指摘になりました社会開発と申しますか、これが、まあ社会開発というのは、やはり地方公共団体のになっている仕事が非常に量が多い。よくいわれておりますが、社会資本がいままで非常に乏しいじゃないかという、これは一般論ですが、これはどこに持ってくるかというと、結局社会開発がおくれておると、社会開発がおくれておるということは、申すまでもなく、地域住民福祉ということに欠けていると、だから私は、この財政面からだけ、金を幾らやっている、幾ら取っているというようなことだけでもって、私は政治家の一人として、その数字だけのことで、いま財政局長が言っておりますが、私は、結局大蔵省の主張をけしからぬと、そんなことではありません。政治家の一人として考えた場合に、いま日本に置かれておるあらゆる施策の中で、何といってもいま仰せのこの社会開発、これが非常におくれております。日本の産業で、生産が世界で何番目と、二番、三番と、非常にこれはけっこうなことでございますが、これは産業資本と社会資本と比べれば、われわれとしては社会開発のためにいままであまり手を入れなかったから、そういう経済成長の面を生んだと思っております。これは国際競争から考えても、相当産業資本に手を入れて日本の経済を立て直すこと、間違っておりませんが、もうそろそろこのあたりで、経済成長率など考えないで、ほんとうに実体の民族全体のしあわせを考えるところにきておるのではないか、その意味からいきまして、数字の上においていろいろ御議論があっておりますから、立場立場でございますから、これは無理はないと思います。いま財政局長が申しましたように、また議員の各位も御存じのとおり、地域地域にまいりました場合のこの地方公共団体のいわゆる行政水準いうものは、まことに低といってもいいと思う。ほとんど手をつけていないところが多いのです。過密地帯でいいますと、これはもう東京周辺のごときは、御承知のとおり、過疎地帯に参りますと、学校の分校を一つつくる金をどうするか、先生が来るかどうか、先生来たって泊まる所もない。お医者さんはいない。どこからお医者さんをつかまえてくるかというようなところが、まだ私どもと同じ日本人の住んでいるところで、あっちこっち見えるのです。最近、過密地帯、過疎地帯の問題が非常に大きく取り上げられてきたのは非常にけっこうなことです。いま申しましたとおり、各市町村に参りますと、市町村の道のごときは、この時代に、自動車が通れない道がまだ四割、五割ある、こういうのです。国道、これは非常にけっこうです。これはどんどんひとつりっぱにしていただきたい。半面、ほんとう地域住民のしあわせということが私は国の基本じゃないかと思いますから、いろいろこれに数字上の問題財政上の問題もあります、ありますけれども、いまやっとこれからひとつ地域住民福祉のためにやろうという、しかもいままでは財政局長も言っております、また皆さんも御存じでございますが、やりたい仕事もやらないでおる。だから財政が好転してくるのじゃないか。食うものも食わないでおれば、借金しないように三食食うのを二食とがまんしていれば、何とかこれは家はやっていける。三食食うと赤字が出る。こういうことですから、もう少し、実態の把握もしないで数字上のいろんな議論があるということは、私は政治家のひとりとして非常に遺憾と思う。私は、決して大蔵省をやっつけようとか、自治省の肩を持つわけじゃありませんが、あまり顕著な事実でございます。これは政治家として大きい謙虚な気持ちで反省しなければならぬと思っております。私はそういう気持ちで、大蔵省とお互いにやり合おうとは毛頭考えておりませんけれども、つまり基本は、政治家として、いまの日本の実情を把握しているかどうかというところにいまの私は論点があると思っておりますから、私といたしましては、やはりそれにはどうしても財政の基盤が固く強くなければできないことですから、そういう態度で進みたい、こう考えております。
  149. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、私、いま自治大臣から答弁を承ってたいへん心強いのですが、そういうような実情にある中でも、大蔵省は、交付税率は予定どおり下げられますか。
  150. 秋吉良雄

    説明員(秋吉良雄君) できるだけ国、地方を通ずる公経済におきまして、健全な財政運営ができるという角度から、またやはり経済官庁、財政当局としては、なるべく日本の経済がうまくいくようなかじとりをする立場にあります。もちろん場合によっては見込み違い等もございますけれども、なるべく谷間のない国民経済の成長ということを目ざして、経済のかじとりをしなくちゃなりません。経済はいろいろ谷間があったり何かいたしますと、それが非常に国民生活に影響を与えることは、私ごとき者から申すべくもないと思っております。そういった一方、財政需要は無限ではございますけれども、同時にまた、経済の正しいかじとりをやらなくちゃならぬという点もございます。そういった全体総合を勘案いたしまして、それから、公経済の財政資金というものの租税負担にも限度がございます。そういった全体を考えまして、やはり交付税率の問題については見直しをする必要があるという考え方でおります。
  151. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵省の考え方に対してはたいへん不満なんであります。いわゆる今日起こっておる問題を考える場合に、やはり一番大切なことは、自治大臣も述べておりますが、いま日本国民が一体どういうような社会的な生活の実態に置かれておるか。そこに見誤りがあると、私は、たいへんなことになると思います。したがって、そこに視点を置いて、いわゆるまさに人権を尊重するというところに視点を置いて、今日の事態に対処する、そういう心がまえというものを強く要望をしておきたいと思います。  そこで、税財源の再配分で、約七百億円の補助金は一体今後どうされますか。けさども若干の答弁がありましたが、特に零細補助金は今後統合していくのかどうか、その辺お伺いいたしたい。
  152. 秋吉良雄

    説明員(秋吉良雄君) 補助金の整理合理化につきましては、これはかねてから政府といたしましては鋭意努力をいたしております。で、補助金がいろいろ弊害を伴うということは、これは各界から指摘をされ、なるべく補助金は整理合理化をすべきである、どうも政府は整理合理化に熱意がない、もっと勇断を持ってやるべきである。いま一兆六千五百億円くらいの補助金でございます。これは補給金等を入れてでございます。よくこれを二割くらい切ったらどうかという議論があるわけでございますが、なかなかそうは言ってもできないというのが、これは御賢察いただけるかと思いますが、補助金につきましては、補助金合理化審議会の答申、あるいは臨時行政調査会改革案等ございますが、これはすべて非効率な、あるいはもう当時の経済実態、社会情勢とそぐわないでまだ補助金が残っておるとか、あるいは地方の一般財源処理すべきような補助金は廃して、地方の一般財源処理すべきである。高率な補助金はえてして補助金待ちの弊害を伴い、しかも財政資金の効率運用の意欲を阻害するというようなことからして、高率な補助金はできるだけ引き上げろ、それから収益性のあるものは、できるだけ融資に切りかえるべきだ等、いろいろなことがいわれておりますが、御指摘の補助金につきましては、これは補助金合理化審議会の答申にもうたわれておりましたけれども、四十二年度の予算編成におきましては、全国知事会から、零細補助金は、これは繁雑であって、行政能率上非常に困る。したがって全国知事会としては、一件々々補助金の名前まで提示されまして、いわゆる補助金返上論というような声があったわけであります。私どもは正直に申しまして、いろいろの雑音、抵抗がございましたけれども、できるだけ補助金の整理統合には努力をしたつもりでございます。昭和四十二年度においては、廃止、統合等を含めて百七十一件の零細補助金合理化をやったわけでございます。御指摘の零細補助金の整理につきましては、本年度におきましては、特に行政改革推進の一環といたしまして、財政資金の効率的な運用、あるいは行政運営の簡素能率化、こういった見地からいたしまして、先般閣議決定をいたしたわけでございますけれども、せっかくのお尋ねでございますから、多少こまかくなるかもしれませんが、交付額は、県段階において百万未満、あるいは市町村段階において十万未満の零細補助金につきましては、これはひとつ整理、合理化の対象にあげまして、今後各省と十分相談を遂げて、整理、合理化方向に持っていきたい、このように考えております。  それから、七百億という御指摘の数字がございましたけれども、その数字のお答えはちょっと遠慮させていただきますが、いずれにいたしましても高率な補助金等については、これは補助率を引き下げよう、それから地方債の元利補給につきましては、いわばこれは基準財政需要計算になじむような性格がある。のみならず、職員設置費補助金につきましては、午前中にも御質疑がございましたけれども、これは各界の答申にもございます。したがって、こういったものにつきましては、もうすでに市町村あるいは地方固有事務に同化しているわけでございまして、漫然と補助金をつけるようになっているわけでございます。それ自体、実態的に地方公務員でございますから、基準財政需要計算になじむものでございますから、こういいった補助金を廃止をいたしまして、交付税の配分によって財政に織り込むということにいたすならばいかがかという考え方で、ただいま各省にいろいろ御相談をいたしております。で、お答えしておきますけれども、これは決して事業そのものを整理するという意図があるわけでは全然ございませんで、いわば従来の各種の答申の意向を受けまして、地方行政の自主性ということも考えまして、それから交付税の財政需要計算の単位費用に織り込むわけでございますから、十分そういった事業の特性は運営上生かされるということを考えているわけでございます。
  153. 和田静夫

    和田静夫君 その場合、その後進地域について特別に依存対策をお立てになる、そういうお考えはありますか。
  154. 秋吉良雄

    説明員(秋吉良雄君) 後進地域だけの御指摘でございますけれども、多少脱線するかもしれませんが、現在各種特殊立法というのは非常に数多くございまして、特殊立法は、もうまんべんなく全国に網の目のように広がっているように、いろいろございます。後進地域あり、産炭地域あり、新産、工特あり、首都圏、近畿圏整備あり、離島あり、奄美あり、北海道あり、枚挙にいとまがないくらい特殊地域立法がございます。台風常襲地帯とか、あるいは豪雪地帯であるとか、その他各種開発促進法というのがいろいろございます。そういったものを、いま経済企画庁を中心にいたしまして、新全国総合開発計画——これは御指摘のように、従来は拠点開発構想であったのが、ネットワーク構想に切りかえるという考え方のもとに、いろいろ策定が試みられておりますが、そういたしますと、当然従来のいわゆる開発方式、そういいった各種地域立法は全体的に手直さなければならない形になってくるわけであります。したがいまして、その一環といたしましても、この後進地域の問題については、これは当時——三十六年の制度でございますけれども、当時に比べまして非常に地方財政も好転をしておりますし、こういった補助率のかさ上げは、むしろ交付税の総体的な配分措置によってカバーすべきが筋合いじゃないかということで、そういう方向で検討する必要がある、かように考えております。
  155. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵省は最後にいたしますけれども、減税を一体どこまでやりますか、やるとすれば、その財源はどこから出されますか。
  156. 秋吉良雄

    説明員(秋吉良雄君) 質問の意味が私ははき違うかもしれませんが、国税でございましょうか、地方税でございましょうか。
  157. 和田静夫

    和田静夫君 国税、地方税すべてを……。
  158. 秋吉良雄

    説明員(秋吉良雄君) ちょっと税のほうは、私所管外でございますから、答弁は遠慮さしていただきたいと思いますが……。
  159. 和田静夫

    和田静夫君 大臣お見えになりましたので、最初に返りますが、けさほど自治大臣からごあいさつがありました。で、私は、自治大臣のごあいさつの中には、幾つかの大きな問題を含んでいると思います。労働問題の基本については、午前中若干この委員会で述べましたので省略をいたしますが、第一に、都道府県合併特例法案次期通常国会に再度提出をします、皆さん方の御協力を得てぜひその成立をはかりたい所存であります、こういうふうに言われているのでありますが、私は、府県制度を議論する場合にどうしても欠落をしている視点というのは、地方行政になぜ地方自治が必要かという基本についてであろうと実は思うのです。地方行政がうまくいくかいかないかというのは、地方自治のあり方いかんに私はかかっているだろうと、こう思うのです。したがって、経済交通あるいは通信が発達したから、区域が狭くななったからというような見方で行なう府県合併の議論ほどお粗末なものは私はないと、こう思います。何か広域行政が時代の推移であるというように受け取っている向きがたいへん多いのでありますが、もちろん自治体相互の協力関係は今後進めらるべきでありましょうし、また進むでありましょう。そのことと私は合併という問題とは全く内容を異にしている、そう思うのでありまして、そのことも私ば確認し合っておきたいと、こう思うのです。問題は、憲法第八章の地方自治の趣旨をどう考えるのか、府県制が地方自治の原則で確立されたことはどういうことなのかということでなければならないと、こう思うのです。したがって、現在構想をされております合併法案について、具体的なことはどっちみち通常国会になろうと思いますから述べませんけれども、とにかく反対であるということは、明らかに、この機会にごあいさつがありましたから意思表示をいたしておきます。  また、第二に、地方団体定年制を採用する道を開きたいとされています。私は臨時国会の冒頭にたいへんな挑戦を受けたと、こう思うのでありますが、地方財政赤字対策として定年制をしくことは、地方自治のあり方をゆがめるばかりではありません。今日、御承知のとおり地方公務員の退職後の生活保障、いや全日本の働く人たちの生活保障というものはたいへん不十分なことであることは、大臣みずからがよく御存じだと、こう思うのであります。このような状態の中で、地方公務員にのみ定年制を強制する、そういうことは全くの生活権の侵害であります。そして一方では、御存じのとおりこのことは明らかに憲法違反であります。よって絶対反対であることをこの機会に明らかにしておきたいと思います。  第三番目に、適正な給与制度確立及び運用、そして公務能率向上をはかってまいりたいと、こう述べられているのでありますが、この際、やはり明らかにしておかなければならないのは、地方公務員の給与決定の原則は、周知のとおり、地方自治の本旨に基づいて、人事委員会を置く、そうして当局と議会が条例により給与を改定することとされているのであります。このことは、自治体が、そこに雇用をされる地方公務員の給与を自治権に基づいてきめることであるということであります。国家公務員の給与は、考慮すべき一つの要素でありまして、これに準じなければならないという法律上の根拠はどこにもないのであります。しかも、けさども議論があったのでありますが、公営企業職員と単純な労務に従事する職員労働関係は、御存じのとおり地公労法の適用によって、労働条件はすべて団体交渉事項とされております。いかに政府といえども、干渉は許されないのであります。このことを、ごあいさつの中で述べられたそのことについて忘れずにおいていただきたいと要望をいたします。  第四に、地方財政、税制の問題についても触れられているのでありますが、これはいま委員会を通じて若干の質問で指摘をしたとおりであります。  とりあえず、ごあいさつについては以上のことを申し上げて、一面では猛省を促し、一面では十二分な御努力を要請をしておきたいと、こう思うのであります。  そこで、以下二、三、具体的な問題についてさらに質問を続行したいと思うのでありますが、まず地方公営企業法の一部適用である病院事業の行政指導について、この機会にお伺いをしておきます。  自治体病院の経営について、自治省は独立採算を基本指導をされておりますが、今日の医療費体系のもとで、独立採算は困難であるとしばしば論議があったところでありますが、私もそう思うんです。独立採算を強要する結果、患者と病院に働く労働者の犠牲をしいている、この現実について、自治省はどのように理解をされておりますか。
  160. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) やはり公営企業でございますから、経営はあくまでも合理的にやっていく。そうして住民へのサービス向上をはかるべきだと、こういう基本的な考え方指導をいたしております。ただ病院事業につきましては、現在の医療費体系の問題もあろうと思います。しかし、この医療費体系のもとにおきましても、その病院の規模によって、あるいはその病院が持っております種類と申しますか、科別と申しますか、そういったようなことによって、りっぱに経営の行なわれているところもございます。したがいまして、一がいに病院事業はいけないと、こういうわけではないと思うのであります。ただ、私どもも病院事業がひとしく公営企業といいましても、その中でやはり特殊な地位を占めている事業であるということは十分認識しておかなければならないと考えております。たとえば、地方僻地におきます病院におきましては、それがその地域の広さ、あるいは住民の数等からいいまして、どうしても独立採算になじまないというようなものもございましょうし、あるいは病院の医療技術というものがどんどん進んでいって、新しい医療技術を仕入れるためには、どうしても現状のままでは独立採算はむずかしいといったようなものもあるわけでございまして、そういったようなものに対しましては、負担区分という制度を導入することによりまして、独立採算のたてまえが貫かれるようにくふうをしております。その辺の負担区分等の問題につきましては、いろいろ時代の推移によって動いていく面があろうと思います。その辺はなお今後ともそういった時代の推移等もにらんで合理化をすべきであろうと、こういうふうに思っております。
  161. 和田静夫

    和田静夫君 病院事業の増改築費の負担区分でありますが、建築費の一部、または全部を一般会計から負担することとなっておりますが、この場合、何を基準に負担区分をきめられておりますか。
  162. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 病院事業につきましては、先ほども申し上げましたような現行の医療費体系のもとにおきます問題とか、あるいは、その病院事業なるものがやはり生命に関する問題であったりいたしますので、病院事業については、当分の間は一般会計の負担をよけいにできる、こういうことで、ちょっといま条文が見当たりませんが、そういう考え方を法律できめております。
  163. 和田静夫

    和田静夫君 その基準は。
  164. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 病院は、いろいろ、先ほど申し上げましたように規模、病床の数でありますとか、あるいはそこが内科であるのか、総合病院であるのか、そういったようなことも非常に経営に影響があるわけでございます。したがいまして、その基準というものを画一的につくるということが非常にむずかしいのでございます。ただ、私ども基本といたしましては、病院の経営自体は収支がまかなえるように、経常的な経営は収支がまかなえるように、建設改良につきましては、一般会計の負担もこれを入れることはやむを得ない、こういう考え方でやっております。
  165. 和田静夫

    和田静夫君 どうもはっきりしませんけれども自治体病院の財政再建計画の変更について私は伺ってみたいと思うんですが、財政再建計画は人件費の改定が含まれておりません。たとえば本年度のいわゆる人事院勧告が、けさの大臣答弁によれば、人事院勧告が守られる方向で大体実施をされていく気運になってきているわけですけれども、それらの点についてどういうふうな措置をされますか。一方、病院の収入は、医療費は中央できめられる、来年の一月から薬価基準が五・六%ばかり引き下げられる、収入減はもう今日明確になってきておると思うんです。このように自治体独自で処理できない事情にあるものがあります。また、一方では深刻な医師の、あるいは看護婦の不足がある。あるいは医療技術者確保のためにも、私は、処遇の改善というものはたいへん緊急な問題に、自治体病院の場合なっているんではないかと思うんですが、この場合、当然財政再建計画の変更が余儀なくされるのではないかと思いますが、このような場合に、再建計画の変更はどう扱い、処理されるのですか。
  166. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 再建計画をつくるにあたりましては、ベース改定を予想しておりませんで、毎年の定期昇給は、これを計画の中に含めて織り込んでおるわけです。これは別に病院事業だけではございませんで、あらゆる再建企業が全部そういう行き方をとっております。いまの公営企業の問題はいろいろあると思いますが、自治体限りで料金がきめられないから企業採算が合わないんだということではないと思うのでございまして、現実に、水道の料金は自治体限りできめられる、にもかかわらずいろいろな問題がある、こういったようなこともございますので、必ずしも国がきめるから経営ができるできないではなくして、むしろ、そういった置かれた条件の上で、どういう経営をすれば、合理的な経営をすればうまくやれるかどうかという問題だろうと思います。そういう場合に、その経営の規模でありますとか、あるいは種別でありますとかいうようなことがいろいろ地域的に考えられなければならないというふうに考えております。そういう点で、先ほど申し上げましたように、病院には確かに特殊の事情があろうと思います。負担の区分等について一般の場合とは違った緩和規定を設けておるというのが現状でございます。なお給与の改定につきましては、一般公務員の場合、先ほど大臣からもできるだけ完全実施というのが望ましいのだという方向お答え申し上げたわけであります。公営企業につきましては、先ほど来申し上げておりますように、そういう一般公務員と同じようなレベルであることが私も望ましいことだと思っておりますけれども、ただ、それだからといって、それじゃ、その分を独立採算のたてまえで充実するためには、料金の問題にすぐかえるのかといったようなむずかしい問題でございます。特に再建団体においては、過去のいろいろな累積された事情から再建計画をやっておるわけでございますので、再建団体については、もう一度白紙になって、いろいろな給与の条件であるとか企業の経営のしかたであるとかいうようなことも考え直していただきたい。そういう考え方のもとで計画をつくり、計画の運用をしていただきたい、こういうふうに私ども指導をいたしております。したがいまして、給与改定があったら必ず、再建計画を組んでいる企業も給与改定に移行をするということは、一律には私どもは申し上げられない、こう思っております。
  167. 和田静夫

    和田静夫君 どうも一律には申し上げられない。けさ地方公営企業の場合にも問題にしたのですが、どうも細郷局長の御答弁、自治省全体の考え方、あるいは政府全体の考え方は、どうも財政優先という考え方が先に立っている。その辺が非常に不満なわけです。なぜ病院労働者が、地方公務員でありながら、地方公務員賃金改定があるのに、その病院が再建団体なるがゆえにその生活権が保障されないのか。この点は、私はやはり筋が通らないと思います。働く者の生活権というものを基本に置きながら財政措置が講ぜられる、そういう形の強い努力というものがもっと求められてしかるべきであると、そう考えるのが当然です。そのことを強く求めておきたいと思います。で、そういう意味でも、一方で医療の実態というものが何か自治省によって無視をされているという感じがしてしかたがありません。患者のためによりよい医療が行なわれる自治体病院づくりとでも言いますか、そういうことを、たとえば増改築における起債の承認にあたっても、経営の合理化というようなものを強く条件にするのではなくて、いま申し上げたこの患者のためにという形のものを基本に置きながら指導すべきであると、そう深く思います。どうですか、厚生省のほうは。
  168. 正田泰央

    説明員(正田泰央君) 指導課長の正田でございます。いま先生のおっしゃった地方自治体の病院の経営につきまして、いろいろ客観情勢がむずかしい点があるわけでありますが、その際、そういった条件を乗り越えるためのいろいろな当面しておる近代化でありますとか、あるいは合理化といったような問題がいろいろ出てまいるわけでありますが、厚生省といたしましては、あくまで医療を提供する、サービスを提供する部分と、それからその病院の経営のあり方というものはやはり相互に関連がありまして、お互いに持ちつ持たれつの関係にあると思います。やはりよい医療を提供するためのよい経営と申しますか、あるいは経営をはかるためのよい医療を提供しなければならぬ。そういうような相互の関係に立って経営の指導を行なっております。したがいまして、あくまで今後の非常に高度で、また複雑で、また膨大化する一方の医療をこなすための医療機関としては、病院管理、あるいは経営の管理と申しますか、そういった面をよく医療がうまくいくような形で経営の指導をいたしていきたいと思っております。また現にそういうふうにつとめているわけであります。
  169. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 関連して。細郷局長にちょっとお伺いしておきたい。ただ国家公務員に対する人事院勧告そのままいわゆる病院、公立病院等の職員に提供することはできぬというお話ですけれども、国家公務員のベース改定の中には、たとえば医療職員に対する初任給の引き上げだとか、特別のそういう給与の是正をはかるかというようなことがあるわけです。ところが、もし人勧そのままの準用はいけない。特に公立病院等は独立採算でやらなければいけないということになれば、新しいお医者さんをとることもできないでしょうし、国立のほうは、そういう特別に医療職員に対しては改善をはかっていく。そうすると、公立の病院からそっちのほうへ行ってしまって、公立の病院は独立採算制のワクを受けながら、しかも職員に対するせっかくの国なら国、あるいは国の方針としての医療行政に対する思いやりというものをそちらに均てんしなくなってしまう。それでは公立病院というものは全くじり貧になってしまう。独立採算制もうまくいかない。やはり優秀な医療職員も来ていただく。そして、それに対して、人事院勧告で給与の是正を行なわれるならば、そういう部分はとることは当然じゃないかと思うのですが、こういう面はどうですか。
  170. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 確かに、いまおっしゃったような問題はなかなかむずかしいといいますか、悩みのある問題でございまして、私ども、先ほど私が一律的にこれを認めるわけには再建団体についていきませんと申しましたのは、いろいろ企業自体の置かれた環境なり、過去のいろいろな企業内の行き方といいますか、経営の行き方がどうであったかといったようなことも反省をしなければならぬものを持っておるという意味で、実は申し上げたわけであります。やはり、公営企業の給与だけをこれを取り出して見る場合にどうかということになりますと、公営企業職員の給与については、やはり公営企業法に定められております考え方、国の公務員でありますとか、あるいは同種の企業職員の給与であるとか、そういったようなものも経営状況とともに考えてきめるべきであろう、したがいまして、いまお話のございました点、それがそのまますぐ、いいとか悪いとかいうことは、個々の企業の置かれております環境によって採択をきめるべきだろうと、こういうふうに思うのでございます。やはり、病院経営をやる上に、将来の病院の職員の構成でありますとか、あるいは新陳代謝でありますとか、あるいは医療技術が低下しないようにするとかいうことは、当然企業経営の態度としてやるべきであろう。その結果において、そういうものも、とらなければならぬものもあっても私はしょうがないと思います。そういうものがあってもいいと思います。そういう点をきめこまかく考えて、経営の合理化をやっていくということを、私どもは端的に、一律にやってはいけませんよというふうな言い方をして申し上げておるわけでございます。
  171. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 もう一つだけ。  私が言いますように、人事院勧告で、国全体の医療を高めるというような意味から、政策的に医療職員の初任給あるいは給与の是正をするという方針ならば、やはりその部分は医療全体として、たとえそれが国立であろうと公立であろうと、それに準じていかなければ、いわゆる日本の何というか、国民の医療の向上あるいは国民の健康保持というところに差しつかえがくるんじゃないですか。これもやはり一つのひずみだと思うのですよ。公立の病院だけ何もそんなに医者を優遇することは必要ないじゃないかということは言えないじゃないですか。
  172. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 公営企業職員の給与の決定の原則には、そういう意味で他の同種の企業の給与状況も考えなさいと、こういうことがございますので、私はそういう中で、いま御指摘のようなことを十分織り込んで考えていけると思っております。ただ私は、ここで申し上げたいことは、人事院勧告でベースアップがあった。あったからすぐそのとおりなまの生き写しで地方公営企業にやっていくということについては、少なくとも再建企業については考え直していただきたいということを実は私は強調いたしたいわけでございます。現実にいま、じゃあ地方でお医者さんが幾らで採れるかというと、なかなか現実はベースアップぐらいの問題で処理できない問題を持っておりますんで、ベアをしないからお医者さんが来ないんだということも、私は言うのはややオーバーだろうと思うんです。もっと根本の問題があると思いますけれども、いま全国で百五十五の再建指定団体がございます。そのうちの病院事業につきましては、先般の八賃で全部改訂をいたしております。
  173. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 局長のやつは初めいいことを言っておいて、あとで悪いようなことを言うから。まあ大体御趣旨はわかりました。御努力願いたいと思います。  厚生省としてもそうじゃないですか。国の場合にお医者さんの初任給は引き上げられたとすれば、やはり公立の場合でもそういうふうになってほしいとお考えになるでしょう、どうですか。
  174. 粟山秀

    政府委員(粟山秀君) 厚生郵政務次官に就任いたしました粟山秀でございます。よろしくお願い申し上げます。  ただいまの御質問お答え申し上げます。厚生省といたしましては、お考えのとおりでございます。やはりどのような病院にいようとも、国立がそうなれば同じように引き上げられるのがほんとうだろうと、そう思っております。
  175. 和田静夫

    和田静夫君 北九州市の病院のあの給食下請問題について、最後の質問になりますが、処理は一体その後どうなっているんですか。  振り返ってみますと、三月二十六日の衆議院の社労委員会で、厚生大臣は河野正議員の質問に答えまして、医療法の趣旨からも病院の直営が当然である。万やむを得ず委託する場合といえども、その内容の適正を期すためにも、しかも給食が医療の一部であるという本質からも、その委託先が本来営利を目的とするものではなくて、公益法人が適当である、この方針指導すると発言をされたのであります。さらに四月九日に衆議院社会労働委員会で「谷北九州市長は、公益法人に切りかえることについては、厚生大臣の方針に沿って善処する」、と答えているのであります。以来八カ月たっておるのでありますが、今日なお具体的になっていません。直ちに公益法人または直営に戻す指導をすべきであると思いますが、国会でのこの約束事をどう処理解決されるんですか。自治省、厚生省、両方の御見解を承わりたいと思います。
  176. 粟山秀

    政府委員(粟山秀君) お答え申し上げます。  御質問の北九州市の市立病院の給食の委託の問題ですけれども、前にお答え申し上げてございますとおりに、公益法人化するということは市当局でもってもうそのように決意いたしておりまして、数次にわたって打ち合わせをいたしております。しかしその給食の内容というのが、お話にありましたとおり、やはり医療の一部であるということから考えましても、重要な問題であるし、それから公益法人としての業務のあり方、サービスのあり方など、そういうことなども考えまして、公益法人移行に伴う諸問題について数次にわたって検討中でございます。厚生省といたしましても十分な指導をいたしまして、そうして一日も早くこれが実現するようにと現にやっております。これからもこれを進めていきたい、こういう方針であります。
  177. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 北九州市の再建の際の委託については、御承知のような経緯があったわけであります。いろいろ御意見が出ました。法律上の問題もあったりいたしましたので、関係省の間で十分相談をいたしまして、その相談の結果に基づいてその後経営をいたしている次第であります。私どもも再建がうまくできますようにという気持ちで指導してまいりたい、かように思っております。
  178. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、自治省の側は、厚生大臣が約束し、谷北九州市長が述べた公益法人問題について具体的にはどのようにされるのですか。
  179. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 私どもは、委託先が別に公益法人でなければならないとは考えておりません。どういう会社に委託するのが最も有利であり、かつ能率的であり、かつ健全な食事ができるかということであろうと思っております。そこで、当時公益法人にしたいという厚生当局の御意向も私ども間接に承わっておりますが、先ほど申し上げましたようなことで、現在特に問題なく進んでいるのじゃないか、かように見えております。
  180. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、話はかなり違ってくるので、厚生省と自治省考え方はいまお聞きのとおりかなり違う。いわゆる給食そのものは医療の一部である、言ってしまえば医療そのものである。こういう園田厚生大臣の考え方、答弁に基づいて、公益法人か直営に戻すというそのどちらかであるということが明らかにされたのであります。そのことは社会労働委員会を通じての約束事であります。これは自治省側もその趣旨を踏まえて厚生省と十分な相談をしてもらいたい、その趣旨に沿うように御努力願いたいと思いますが、大臣いかがですか。
  181. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) ただいま財政局長からお答えいたしましたように、最も効率的な、しかも医療水準が低下しないということが原則でございます。そのことは北九州市の市長にも通じてあることであります。私は、あと事務的にはわかりませんから御免こうむりたい。いやしくも医療水準を低下させないということであれば、いいと思っております。
  182. 和田静夫

    和田静夫君 いま私が申し上げましたような趣旨が十分にくみ取られて作業が進むものであると理解をいたしておきます。  では最後の問題ですが、地方事務官制度について二、三承りたいと思うんですが、最後にしたいと思ったんですが、実は厚生省に関係がありますので、もしよかったら残っていただけませんかねえ、時間があれば。あまり無理にとは言いませんが……。あの地方事務官制度の問題について、実は地方行政委員会ではいろいろお尋ねをしてきまして、そしてそのつど私たちの意向が盛り込まれたような形の答弁をずっといただいてきたんです。ところが、厚生省や労働省の見解を見てまいりますと、どうも自治大臣が答弁をしておったことのようにはいかないような感じもいたします。で、これは、当然自治大臣もあるいは厚生大臣もそれぞれ事務の引き継ぎの中で重要な案件としてすでに御理解願っていると思うんですが、地方事務官制度は、地方仕事をしながら、身分は国家公務員であるという、非常に変則的な制度であります。これまでに、臨時行政調査会地方制度調査会からもすみやかに廃止をすべきであるという答申が出され続けてきました。地方自治体の側からも、強く実は地方への身分移管が要請され続けてきたわけです。地方事務官制度を廃止して当然地方に移すべきである、そういうことは、私たちは再三確認をしてきました。新大臣でありますから、再確認の意味でまずこのことをお尋ねをいたしたいと思います。
  183. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) お答えいたします。やはり地方行政の総合的な行政水準を上げるためには、やはりお話のとおり、この問題は、地方の団体の希望に沿うことはいいと思って、歓迎しております。
  184. 和田静夫

    和田静夫君 いま自治大臣のほうから御答弁のとおり、地方事務官のいわゆる地方移譲については、その趣旨を歓迎をするということであったわけですね。厚生省の側、どういうふうにお考えですか。
  185. 粟山秀

    政府委員(粟山秀君) 御承知のように、私、就任後間もないものでございます。いまの答弁について、いままでどのようになっておりましたかも私承知しておりませんので、いま担当官を呼びましたので、御質問に対するお答えはちょっとお待ちいただきたいと思います。
  186. 和田静夫

    和田静夫君 いま大臣の答弁をいただいたんですが、ところが、まあ厚生省は担当の方、お見えになる方の答弁でよいと思いますが、自民党の関係及び厚生当局では、国の職員の身分移管の方向を全面的に否定をされるような、社会保険業務の公社化案を打ち出す、また労働省の場合は、失業保険法の改悪や、あるいは基準行政合理化けさほど論議がありましたが、それとからめて、職安行政の中央集権化を企図する、こういう動きがたいへん濃厚であるようであります。自治大臣としては、具体的にこれに対してどういうふうに御対処されますか。
  187. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 私は、この問題は前内閣以来の問題でありまして、大体の方針自治省としてはきめておるわけでございます。私は、やはり前内閣の方針に従うて自治省としても対処したいと、こう思っております。
  188. 和田静夫

    和田静夫君 新しい内閣ができてから、まだその関係——労働、厚生との関係における折衝というのは、行管を中心にしてまだございませんか。
  189. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) ありません。
  190. 和田静夫

    和田静夫君 どうも見ていますと、各省庁のセクショナリズムが、府県、市町村の行政はもちろんのこと、わが国の行政をバラバラにしている、この行政を渋滞させている現実というものを直視をしていただかなければならないと、こう思うのです。自治省の側はよく、そういう立場で、ある意味では見ておると思うのですが、厚生、労働の側に強くそのことを実は要望をしたい。自治体をどうも政府の下級官庁と見る、そういう旧弊を打ち破る必要があるということが理解をされていないように思うんです。事務配分の並列化の措置などを含んで、私はこれは自治大臣が、そのとおりだと言われてしまえばそれまでなんですがね、所信を承っておきたいと思います。
  191. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) まあそれまでという端的なことばは別ですが、どうもこのいまの御質問に出たことばのような傾向が強くて、やはり地方行政は自主的に、なるべく総合的に行政を進めたほうが行政水準が上がる、こういう考えであります。
  192. 和田静夫

    和田静夫君 いま私申しましたけれども、政府官庁の中では、首長の公選によって、首長が公選なるがゆえに人気取り政策が行なわれている、そうしてむだな行政が行なわれている、こういうふうに思い込まれているような節が、けさほどの労働当局とのやりとりを通じても幾つか感ぜざるを得ません。しかし、戦後の統治構造の民主化にとって重要な一つは、何といっても府県制であります。特に知事公選にあることを考えてみますと、地方事務官地方への移譲というのは、私は憲法の示す地方自治の理念を実現することにほかならないと、こう思うのです。新大臣は勇気をもって地方事務官の廃止、そうしてそれはこの地方自治法の精神に基づいて地方への移管という形で取り組み続けていただきたい、そう思います。その際、行政事務のみを地方に移してゆくというような作業が先行をしますと、どうしても抵抗が起こると思うのです。補助金の整理、一般財源確保、そういう国と地方との負担区分を明確化する必要が私はある、こういうふうに思っています。各省庁やその職員行政改革に反対をする。実は職員団体が組織をされていないところではその向きが多いのですが、私はこれは不当な配転や既得権が剥奪をされることを心配をされているからだと思うのです。地方公務員になることを格下げである、こういうふうに思い込まされている日本の役人的な習性、そういうものもまた一方であることを自治大臣十分に考えながら対処をしていっていただかなければならないと思うのです。何といっても、根深い省庁のセクショナリズムによるところの、ある意味では奪い合いですから、その辺のことは十分に官僚に負けないようにやっていただきたいと、こう思います。  そこで、政府は行政改革第二次案を十二月の十五日までにまとめると、こう言われてきておったわけです。ところが、どうも新聞か何か読んでおりますと、さっぱり進んでいない——さっぱり進んでいないと言ったらおこられますが、進み過ぎていてある意味では結論が出ないということかもしれませんが、そういう批判があります。一体原因はどの辺にあるのか、地方事務官を廃止するということだけはさまったけれども、どうにもあとの問題が具体化をしない。自治省としては、どの辺に一体見通しをお立てになって作業を進められますか。
  193. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 行政改革の第二次案は地方事務官問題のみではございませんで、補助金の整理でありますとか、共管、競合行政でありますとか、会計、人事、事務処理簡素化でありますとか、いろいろな問題を含むという予定で、行政改革の第一次案がその方向を示しているわけでございます。御指摘のように、それが十二月中旬を目途としてということで、大体の見込みのようなことを了解があったわけでございますが、それが全体として第二次行政改革案というものがまとまっておるという段階に至っておりません。私ども行政改革本部等の検討にも参加しておりますけれども、これらの問題も、いずれもお示しのように、御指摘のように、方向は一応きまっておりますが、具体化というものがなお十分でないということで、改革本部を中心にいたしまして、関係省の間の詰めと申しますか、具体的な事務折衝をいま行なっているという現状でございます。  地方事務官問題に限って申し上げますならば、これもいま申し上げておりますような一連の状況の中にあるわけでございまして、まあ手っとり早く申しますと、まだまだ関係省庁の間の意見一致しないということを申し上げるほかしかたないと思います。  で、御指摘のように、それは関係各省のセクショナリズムのいたすゆえんじゃないかという、そういう見方もあるいはできるかもしれないと思います。  また、地方事務官問題解決方向というものについても、なおなお十分な理解を遂げてもらいまして方向を進めていくという、私どもこれからなお努力をしなければならないのじゃないかと思っております。なるべく大臣の御発言にありますような方向に即しまして、問題が解決するように今後とも努力をいたしたい。いつまでにできるかということになると、できるだけ早くと申し上げるほかしかたがないと思いますが、間に合えば最近の機会に制度化ができるようにという気持ちで努力をいたすつもりであります。
  194. 和田静夫

    和田静夫君 厚生相、お見えにならぬようですから、要望だけ申し上げておきますから、あとで十分に御検討願い、そうして御理解、御協力を仰ぎたいと思うのであります。  厚生省の関係なんですけれども、いま自治省の側から御答弁があったように、どうも医療問題と関係をしていく、そういう形のことが、たな上げになる原因に、地方事務官制度に関していえばなっているのです。地方事務官制度は、何といっても二十年間放置されてきているのです。そうして地方事務官ができているところの趣意は、これは都道府県職員なんです、これはもう法律で明らかなんです。したがって、そういう意味で、医療制度とは切り離して、とにかく別の角度でこれを検討して私たち一向に差しつかえないと思うのです。そういうふうに私たちは考えているので、厚生省の側もそういう立場に立った御努力というものをぜひお願いしたいと思います。  以上で終わりたいと思います。
  195. 津島文治

    委員長津島文治君) 本件はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十四分散会      —————・—————