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松本(善)
委員 この白鳥
事件につきましては、現在再審の申し立てが行なわれておりまして、この
事件は、先ほどもちょっと申しましたように、唯一の物的証拠といわれております弾丸の鑑定が、非常に大きな問題になっております。白鳥
事件につきましては、三発の弾丸以外には何の物的証拠もありません。これは松川
事件、青梅
事件、八海
事件と同じように、やはり他人の供述や自白が虚偽だということが問題になっておる
事件であります。この再審申し立ての中で新しい証拠が出てまいりました。その過程で検察庁のこういうような問題についてのやり方というのは、一体正しいのかどうかという問題がかなり出てきたのであります。この三発の弾丸の一発は白鳥警部の体内から出たものであり、他の二発は高安という人の供述によって
北海道の幌見峠から発見されたというものであります。この高安という人の供述によりますと、幌見峠でピストルの射撃訓練を行ない、その拳銃で白鳥警部が射殺されたということになっておる。したがって、この三発の弾丸が同一のピストルから発射されたものであるかどうかということ、それからまた、白鳥警部の体内から出たという弾丸以外の二発の弾丸が、幌見峠で発見された。これが実際に幌見峠に埋まっていたのかどうか、発射訓練をしたというときから発見されたときまで一年七カ月、二年三カ月ということになっておりますけれども、これだけ長くほんとうに幌見峠にあったのかどうかということによって、この高安という人の供述が正しいかどうかということで問題になっておるわけであります。したがいまして、この二つの点、三つの弾丸が同一のピストルから発射されたものでないということ、また幌見峠から発見されたという二つの弾丸が一年七カ月ないし二年三カ月も土の中に埋っておったものではないんだということになりますと、これはまさに再審事由に当たる刑事訴訟法四百三十五条六号の新しい証拠ということになると思うのですが、それで争われておるわけでありますが、、この三つの弾丸が同じピストルから発射されたものかどうかということについて、申し立ての中で、弁護団の
要求によって検察庁が出してきた鑑定書が二通ある。この二通は、先ほどお聞きいたしました警察庁の科学捜査研究所の作成したものであります。科学捜査研究所物理課銃器係警察庁技官が作成した
昭和二十八年九月四日付鑑定書及び
昭和二十九年七月三十日付鑑定書によりますと、この二通の鑑定書は、いずれも発射痕、発射の際に生ずる線条痕を調べた結果、幌見峠から発見されたといわれる弾丸と白鳥警部の殺害に使用された弾丸とか同じピストルから発射されたとは認定できないということになっておるわけであります。先ほど警察庁の鑑識課長が言いましたのでは、絶対に信頼を置いておるというその鑑定は、そういうものであります。特に
昭和二十九年七月三十日付の鑑定書は、三つとも線条痕が違っているというふうにいっておるのであります。この二つの鑑定書が、裁判確定に至るまで検察庁は
裁判所に
提出をしなかった。再審申し立ての段階に至って、初めて弁護団の
要求によって
提出されたわけであります。これは見ようによっては、明らかに村上国治氏の無実の証拠を隠していたということになるわけです。こういうような検察庁も大いに信頼をしておるという科学捜査研究所の鑑定書が、はっきり二通もあるわけです。そういうものは、当然にこの公判の確定されるまでの過程において出さるべきものではないだろうか。いままでも、松川
事件でも諏訪メモ問題がありました。青梅
事件でも国鉄の事故点検簿というものがありまして、いずれも弁護団の物的証拠として出されたものであります。無罪のための大きなきめ手となるような証拠となっておる。こういうような被告に有利な証拠、そういうものが、
検察官の手によって確定されるまで隠されておる。こういう問題について、やはり考えなくちゃいかぬのではないか。
検察官は、検察庁の立場とすれば、自分の立場が有利になる不利になるは別として、真実を発見をする。そうして無罪になるのはかまわない。八海
事件が無罪になりましたときに、新聞では、一体検察庁は戻ってくることができるのか。つつ走り出したらどこまでもイノシシのように突き進んでいくのか、こういうように書かれておりました。こういうように、自分の
手元に被告を無罪にするような、被告に有利なような証拠をいつまでも置いておくというような検察の態度が正しいと思われるかどうかということについて、お聞きをしたいと思います。