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1968-12-19 第60回国会 衆議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年十二月十九日(木曜日)    午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 足立 篤郎君    理事 安倍晋太郎君 理事 鹿野 彦吉君    理事 草野一郎平君 理事 湊  徹郎君    理事 森田重次郎君 理事 石田 宥全君    理事 角屋堅次郎君 理事 稲富 稜人君       亀岡 高夫君    小山 長規君       白浜 仁吉君    田澤 吉郎君       田中 正巳君    中尾 栄一君       中山 榮一君    藤波 孝生君       本名  武君   三ツ林弥太郎君       赤路 友藏君    伊賀 定盛君       工藤 良平君    兒玉 末男君       佐々栄三郎君    柴田 健治君       西宮  弘君    斎藤  実君       樋上 新一君  出席政府委員         農林政務次官  小沢 辰男君         農林省農地局長 中野 和仁君         林野庁長官   片山 正英君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      秋吉 良雄君         厚生省環境衛生         局公害部公害課         長       橋本 道夫君         農林大臣官房参         事官      小沼  勇君         農林省農地局参         事官      井元 光一君         農林省農地局建         設部調査官   虎谷 秀夫君         林野庁林政部長 大山 一生君         水産庁次長   森沢 基吉君         通商産業大臣官         房審議官    成田 寿治君         通商産業省企業         局立地公害部長 矢島 嗣郎君         海上保安庁警備         救難監     猪口 猛夫君         消防庁予防課長 高田  勇君        専  門  員 松任谷健太郎君     ――――――――――――― 十二月十八日  委員赤路友藏辞任につき、その補欠として柳  田秀一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員柳田秀一辞任につき、その補欠として赤  路友藏君が議長指名委員に選任された。 同月十九日  委員園田直君及び田澤吉郎辞任につき、その  補欠として藤波孝生君及び赤城宗徳君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員赤城宗徳君及び藤波孝生辞任につき、そ  の補欠として田澤吉郎君及び園田直君が議長の  指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十二月十七日  全国鶏卵販売農業協同組合連合会卵価安定基  金加入に関する請願上村千一郎紹介)(第三  七一号)  同(浦野幸男紹介)(第三七二号)  同(加藤六月紹介)(第三七三号)  同(海部俊樹紹介)(第三七四号)  同(中垣國男紹介)(第三七五号)  同(丹羽久章紹介)(第三七六号)  同(丹羽兵助紹介)(第三七七号)  同(藤井勝志紹介)(第八四四号)  同外一件(細田吉藏紹介)(第八四五号)  同(村上信二郎紹介)(第八四六号)  食管制度堅持に関する請願外二件(芳賀貢君紹  介)(第三七八号)  同(田代文久紹介)(第四一五号)  同(谷口善太郎紹介)(第四一六号)  同(林百郎君紹介)(第四一七号)  同(松本善明紹介)(第四一八号)  同(井上泉紹介)(第五八三号)  同(武藤山治紹介)(第五八四号)  同(武藤山治紹介)(第八四七号)  山梨県の果実等災害対策に関する請願樋上新  一君紹介)(第五九〇号)  動物虐待防止法制定に関する請願小川半次君  紹介)(第八二五号)  農地法の一部を改正する法律案の再提出等に関  する請願増田甲子七君紹介)(第八七一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十二月十七日  農山村住民及び林業労働者の生活安定に関する  陳情書外百十一件  (第一八五号)  同外七十四件  (第二六一号)  昭和四十三年産米の等外、規格外米政府買入  れに関する陳情書  (第一八六号)  真珠不況対策に関する陳情書  (第  一八七号)  外国系清涼飲料に関する陳情書  (第一八八号)  農業委員会関係費増額に関する陳情書  (第一八九号)  米の配給制度改善に関する陳情書  (第一九〇号)  農業対策に関する陳情書  (第二六二  号)  地方卸売市場施設整備資金融資制度改善に関  する陳情書  (第二六三号)  食糧管理制度堅持に関する陳情書外六件  (第二  六四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  国有林野活用に関する法律案内閣提出、第  五十八回国会閣法第八八号)  農林水産業振興に関する件  請 願   一 全国鶏卵販売農業協同組合連合会卵価     安定基金加入に関する請願堀川恭平君     紹介)(第六八号)   二 同(足立篤郎紹介)(第一一八号)   三 同(秋田大助紹介)(第一一九号)   四 同(植木庚子郎君紹介)(第一二〇号)   五 同(遠藤三郎紹介)(第一二一号)   六 同(奥野誠亮紹介)(第一二二号)   七 同(加藤常太郎紹介)(第一二三号)   八 同(鍛冶良作紹介)(第一二四号)   九 同(角屋堅次郎紹介)(第一二五号)  一〇 同(神田博紹介)(第一二六号)  一一 同(川崎秀二紹介)(第一二七号)  一二 同(菅太郎紹介)(第一二八号)  一三 同(木部佳昭紹介)(第一二九号)  一四 同外一件(草野一郎平紹介)(第一三〇     号)  一五 同(坂本三十次君紹介)(第一三一号)  一六 同(始関伊平紹介)(第一三二号)  一七 同外二件(白浜仁吉君)(第一三三号)  一八 同外一件(進藤一馬紹介)(第一三四号)  一九 同(田村元紹介)(第一三五号)  二〇 同(堂森芳夫紹介)(第一三六号)  二一 同(丹羽兵助紹介)(第一三七号)  二二 同(野田武夫紹介)(第一三八号)  二三 同(橋本龍太郎紹介)(第一三九号)  二四 同(藤枝泉介紹介)(第一四〇号)  二五 同(藤波孝生紹介)(第一四一号)  二六 同(山口鶴男紹介)(第一四二号)  二七 同(山手滿男紹介)(第一四三号)  二八 農民年金法制定に関する請願佐々栄     三郎紹介)(第一一六号)  二九 農業者年金制度確立に関する請願(渡辺     肇君紹介)(第一一七号)  三〇 全国鶏卵販売農業協同組合連合会卵価     安定基金加入に関する請願上村千一郎     君紹介)(第三七一号)  三一 同(浦野幸男紹介)(第三七二号)  三二 同(加藤六月紹介)(第三七三号)  三三 同(海部俊樹紹介)(第三七四号)  三四 同(中垣國男紹介)(第三七五号)  三五 同(丹羽久章紹介)(第三七六号)  三六 同(丹羽兵助紹介)(第三七七号)  三七 同(藤井勝志紹介)(第八四四号)  三八 同外一件(細田吉藏紹介)(第八四五号)  三九 同(村上信二郎紹介)(第八四六号)  四〇 食管制度堅持に関する請願外二件(芳賀     貢君紹介)(第三七八号)  四一 同(田代文久紹介)(第四一五号)  四二 同(谷口善太郎紹介)(第四一六号)  四三 同(林百郎君紹介)(第四一七号)  四四 同(松本善明紹介)(第四一八号)  四五 同(井上泉紹介)(第五八三号)  四六 同(武藤山治紹介)(第五八四号)  四七 同(武藤山治紹介)(第八四七号)  四八 山梨県の果実等災害対策に関する請願     (樋上新一紹介)(第五九〇号)  四九 動物虐待防止法制定に関する請願小川     半次紹介)(第八二五号)  五〇 農地法の一部を改正する法律案の再提出     等に関する請願増田甲子七君紹介)(第     八七一号)      ――――◇―――――
  2. 足立篤郎

    足立委員長 これより会議を開きます。  第五十八回国会より継続審査になっております内閣提出国有林野活用に関する法律案を議題といたします。
  3. 足立篤郎

    足立委員長 本案につきましては、第五十八回国会におきまして、すでに趣旨説明を聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 足立篤郎

    足立委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  5. 足立篤郎

    足立委員長 質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。湊徹郎君。
  6. 湊徹郎

    湊委員 国有林活用法案については、過般の通常国会において、森田委員よりいろいろ質疑が行なわれましたが、特にその焦点は、現在の国有林偏在する実態について明らかにしながら、同時に、国有林地帯における生活あるいは経済、これがいかに困難な、みじめな状態にあるかというふうな実態を示されながら、特に部分林問題等に触れ、同時に、そういう状態が起きてきた基本的な過程と、偏在するに至った原因等について、こまかい議論が行なわれたわけであります。それについては、私、繰り返し申し上げる必要はないかと思いますが、再度確認する意味で、そのときの政府答弁の要旨は、これは開発熟度がそういう地帯は非常に少ないので、したがって、奥地の未開発林等がかなり取り残されておる、そういう経済的な理由から偏在している、これが一番大きな要素だというふうな趣旨答弁がございました。  森田委員は、そのほか歴史的な事情、あるいは実際に国有林に対処する役人の心がまえや態度の問題、さらにその法律自体の、いわばゲルマン法からローマ法に切りかえたその切りかえ過程に非常な無理があった、それから、その後の下戻法以降の経過等についても、非常に地元要望にこたえるような措置が行なわれなかったんだというふうな点を指摘しておるのでありますが、その偏在原因について再度、ひとつ政府のほうでどういうふうに把握をしていらっしゃるか、お示し願いたいと思います。
  7. 片山正英

    片山政府委員 ただいまの偏在理由ということでございますが、御承知のように、確かに現在の国有林は、北海道、内地におきまして東北、群馬、それから九州方面の宮崎、鹿児島、そういう方面国有林が非常に多く偏在を来たしておる、これは確かに先生の御指摘のとおりでございます。  そこで、なぜそういうふうになったかということでございますが、この前も御答弁申し上げましたが、当時の藩有林あるいは社寺有林、そういうものが、たしか明治二年だと思いますが、版籍奉還の際に国有林になった。しかし、そのなりました中で、従来地元民の方々国有林の中に入りまして、いろいろ薪炭、木材その他を採取し、かつ、手入れをしておったというようなところがございますものは、いろいろの経過をたどりましたが、最終的には国有林下戻法という法律の中でそれが整理されてまいった、したがいまして、そういう慣習のあったものは民間のほうに譲り渡されてきたというのが実態であろうかと思います。したがいまして、そういう慣習のなかったところ、あまり手入れその他が行なわれなかったところ、そこは官有林になっておるという実態であろうかと思っておるわけでございます。  ただ、いろいろな本を見ますと、その当時の政府の問題、あるいは役人態度の問題というようなことは、確かに本にいろいろ記述されていることはありますけれども、私は、経済的な面が主体であったというふうに解釈しておるわけでございます。
  8. 湊徹郎

    湊委員 そこで、そういうふうな原因については経済的なあるいは社会的な、さらには長い明治以来の歴史的な経過があるわけなんでありますが、そういう実態を踏まえた上で、いままでの経過等を今後の活用にあたってどういうふうにそれを生かしていくといいますか、そういう過去の経過を踏まえた上で、今後やっていかれることについての政府としての基本的な態度、これについてお示しをいただきたいと思います。
  9. 片山正英

    片山政府委員 基本的な政府態度を、すなわち今度の国有林活用法案の中に示しておるわけでございますが、社会、経済が非常に急テンポに変わってきておりますのに即応いたしまして、農林業におきましてもその構造改善あるいは地元振興、そういうものに対処してまいらなければならない。そのような意味で、それに積極的に国有林も御協力申し上げ、そういうことに対処してまいるという姿でこの法案を出したわけでございます。  したがいまして、そういうものに対処する結果といたしまして、必然的に国有林の多い地帯が、そのような対象に相なろうというふうに思うわけでございます。
  10. 湊徹郎

    湊委員 なお、過般の森田質問の際に、西村大臣は最後にお見えになられて、その中で基本的な考え方を説明されておるのでありますが、それによりますと、この国有林活用の問題というのは、国土全体の中における大きな一つ資源あり方の問題なんだ、その資源をいかに国民全体のために生かしていくか、またその資源をいかにその地域に生かしていくか、そういう問題だと理解をしている。そういう前提に立って、国有林野国民林産資源であるという面から、これを維持し、培養し、活用していくという面と、いま一つは、国土の保全という面と、その両方を考えていかなければいかぬのだ。こう思います、というふうな答弁をなすっておるのであります。これはもちろん大臣のお考えなんですが、長官はこの点についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  11. 片山正英

    片山政府委員 西村大臣の御答弁のとおりに思っております。  ただ、若干補足いたしますと、現在、林業基本法というものが出ておりますが、その中で、森林資源に関する基本的計画というのを実はつくっておるわけでございます。それに基づきまして全国森林計画もつくっております。民有林につきましては、その全国森林計画に基づきまして地域森林計画というのをつくっております。国有林におきましては、さらに経営計画というものをつくっておりまして、森林に関する合理的な施業のあり方というものを明確にいたしまして、その資源が合理的に活用され、合理的に開発されるような計画をいたしておるわけでございます。
  12. 湊徹郎

    湊委員 以上のようなことを前提にいたしまして、これから御質問申し上げたいと思うのでありますが、私は、国有林の問題は、活用するというととろにポイントがあるので、開放そのものよりも、いかにこれを使っていくかという観点に立って今後考えていくべきだ、そういうふうに考えております。  その場合には、御承知のように、最近非常に日本経済全体が高度成長を遂げてきた。世界第三位の経済力工業力を持つようになった。で、世界の中でこの日本列島全体をもう一ぺんながめ渡して、そして国土そのものを大改造しながら、列島メガロポリスというふうな観点に立って、それで国土全体の活用をしていかなければいかぬ、こういうことで、過般経済企画庁でも、全国国土総合開発計画の手直しが行なわれ、それがいま具体化されつつある段階でございます。  そういうふうにしてまいりますと、このたださえ狭いといわれておる国土の、ほとんど七割以上を占めておるのが森林面積でありますから、そういう角度から、この国有林も含め民有林林野全体を考えていかなければいけないような国家的な課題、いまそういうものを解決する段階に来ているというふうに思うわけであります。  そういう時点から考えました場合に、従来の林野関係法制はどちらかというと、特に国有林の場合は、管理法的な色彩が非常に強かったわけであります。そういう意味国有林野そのもの考えますと、前の西村大臣が言われましたように、これを一つ資源としてとらえていくというふうな見方、さらに国有林野事業に関していえば、事業として、経営体として考えていく見方のほかに、国土としてこれをどういうふうに使っていくことが、将来の日本全体のためにいいか、こういう観点が新たにやはり加わってくると思うのでありますが、その点についての基本的な考え方を、ひとつお尋ねしたいと思います。
  13. 片山正英

    片山政府委員 先ほどもちょっと触れましたけれども、林業基本法によりまして、木材につきましては長期需給の見通しというものを一応想定いたしまして、それにマッチするような形をとる森林基本計画というものを実はつくっおるわけでございます。これは、林業という面から策定しておるわけでございます。  そこで、先生の御指摘ございました、もっと高い総合的な土地利用計画いかんということでございますが、その問題につきましては、実は各産業間の総合的な調整ということを定めることが必要だと思いますけれども、その間それらの調整につきましては、なお相当多くの検討をすべき事項があると思うわけでございます。経済企画庁においても、そのような意味検討されておるということも、われわれ連絡の中で存じておるわけでございますが、現段階においては、それらの問題を総合的に検討をする時期がもう少しあるのじゃないだろうか。  したがいまして、現段階におきましては、われわれといたしましては、この活用法案は、先ほど申しました森林基本計画というものとの調整をはかりながら、かつ、農林業構造改善等政府が推進しておりますものにつきまして、活用を配慮し、善処してまいりたいという態度でございます。
  14. 湊徹郎

    湊委員 繰り返しますが、今後の課題としてこれは非常に大きい問題で、それぞれ各省間にもわたる点もあるので、今後検討すべき課題だとは思うが、いまの時点では、まだ具体的に検討に入る段階にないというふうなお話のようなんでありますが、しかし、考えてみると、日本ぐらい利用すべき土地についてはきわめて高度に利用し、特に農地等については、土地生産性については世界に冠たる水準まで至っておる、こういわれながら、反面、その国土全体の利用からいうと、利用がこのくらいはまずい国はないという批判も一面にあるわけでありまして、理屈を言えば、いままでむしろ使っていない、利用していない、そういうところをこれからどうするかということが、日本の今後の大きな宿題であろう。  そういうことになると、そのほとんどは林野面積で、おたくの所管になるわけですから、当然、国土計画のほとんどはおれの手でやってやるというくらいの気がまえでもしおやりになれば、そういうことが可能な状態にある。だからこの点について、さっき申したことをどういう手順で、これからどういうふうに具体的にやっていくおつもりなのか、そこら辺をお聞かせ願いたいと思います。
  15. 片山正英

    片山政府委員 ただいまの先生のおっしゃる土地総合利用、最もいい利用、これはわれわれとしても当然対処してまいらなければならないわけでございますが、現在どういう土地に対するどういう需要があるのだろうというようなこと、そういうことを通しますと、一林野庁という段階ではなかなか困難でございます。したがいまして、各産業を所管しておるそれぞれの関係との、十分の打ち合わせの中で対処してまいるということに相なろうかと思っておる次第でございます。
  16. 湊徹郎

    湊委員 いまの問題は、もう少しあと時点でお聞きをしたいと思います。  次に、今度の国有林活用法案を出されるにあたって、従来の処理方式、これと比べましてお尋ねをしてみたいのですが、どちらかというと、国有林を経営していくんだというふうなたてまえが前提になって、あとは、具体的にケースバイケース処理をするというふうにいままで扱われておるわけであります。  そこで、この法案の中にもありますが、地域実態に即したような処理、あるいはより高度の広い立場からの合理的な利用、要するに、地域住民の意向に沿ってこの法案が実際に生かされるかどうか、こういうことが将来の中心課題だろうと思います。そういう点について、従来やってきた経過にかんがみ、この法案ができることによって具体的にはどういうふうな前進が期待されるか、特に、地域住民の希望がどういう形でより前進した姿で扱われるか、そこら辺について、概括的に最初お尋ねをしておきたいと思います。
  17. 片山正英

    片山政府委員 国有林活用の問題につきましては、従来とも、農業構造改善その他積極的な姿で対処してまいっておったわけでございますが、御承知のように、その対処の方法といたしましては、次官通達をもちましてそれぞれやってまいったわけでございます。そこで、今回活用法案につきましては、法律の中で具体的に推進すべき事項というものを基本的態度として明らかにし、国民方々にも十分周知徹底をいたしまして、その中でこれを合理的に推進するという態度をとった次第でございます。  内容といたしましては、延納の特約というようなものが中心になりまして法案が構成されておるわけでございますが、その他につきましては、従来の法律活用いたしまして、円滑に進めるという内容でございます。
  18. 湊徹郎

    湊委員 裏返してお聞きをしますが、要するに、これについてはいろいろな意見がいままで出されております。いままでの具体的なそれぞれの行政措置によって、大体活用支障なくいっているのだから、特に法律をつくる必要はあるまいというふうな意見もあるし、反面、先ほど申しましたように、この国有林については、財産管理という観点が非常に強かったために、また、その手続や何かが各種の法令にまたがっておりましたために、実際にはなかなか思うような活用がはかられていないから、これは、どうしても総合的にそういうものを促進する法制が必要なんだとか、いろいろな意見があったと思いますが、この法案をつくったもとになっておる点、従来やってきて特にどういう点が支障になってこの法案を出されたのか、裏返しのお尋ねになりますが、お聞きをしておきたいと思います。
  19. 片山正英

    片山政府委員 従来やっておりました姿は、確かに先生指摘のとおり、国有財産法あるいは国有林野法というものをそれぞれ適用してまいったわけでございます。そこで、先ほども申しましたように、国が積極的にこれを開放するものは何かということを、この際法案を通して明確にするというのがこの法案の骨子でございます。  そこで、その手続がばらばらになっておるじゃないかという点につきましては、法案成立後、それらのものを要約あるいは手続を明確にした通達を出しまして、その姿をはっきりさしていきたい、かように思っておるわけでございます。
  20. 湊徹郎

    湊委員 次に、一、二実態についてお尋ねをするのでありますが、この法律制定にあたって、いろいろな形で全国的に、おれの地帯ではこういうふうに活用したい、こういうふうに払い下げをやってくれぬか、あるいは部分林の設定をやってくれぬかと、いろいろな要請、要望が出ておると思うのであります。林野庁に現在全国から出されているそういう要望について、つまり、活用を予想される対象面積等について明らかにしていただきたいと思います。
  21. 片山正英

    片山政府委員 現在、活用面積要望がこれこれであるというのは、総括的にはございません。ケースバイケースでこれを処理しておるわけでございます。ケースバイケースとは何かと申しますと、農林省として推進しております農業構造改善事業であるとか、草地改良であるとか、開拓パイロットであるとか、林業構造改善であるとか、あるいは、これは農林省所管外でもございますが、公共関係であるとか、そういうものをケースバイケースにとらえまして、国有林事業使命達成との調整をはかって、極力活用してまいるという態度でございますので、現在、どれだけだという結果はわかりますが。今後に要請されておる姿は、まだ明確になっておりません。
  22. 湊徹郎

    湊委員 次に、この法案提案過程においていろいろ議論が行なわれたのは、過程において、あるいは農地改革の際に、さらに林野整備臨時措置法の際に、あるいは町村合併法、新市町村建設促進法、こういう過程で、いままで開放された実績があるわけでありますが、その後の活用実態からして、なかなかどうもうまくいっておらぬところが多いようだというふうなことが一つ問題としてあるわけであります。その点について、活用のいままでの実績はわかっておりますからけっこうでありますが、その後活用されずに、あるいは場合によっては悪用されておるようなもの、それに対して、林野庁としては今日までどのような手を打ち、処置をとり、そして現在はどういうふうになっておるか、そうして今後はどうしていくつもりか、その点をお尋ねしたいと思います。
  23. 片山正英

    片山政府委員 終戦後、自作農をはじめとして活用いたしてまいりましたが、数量は、先生必要ないわけでございますので省略いたしますけれども、概略六十万町歩というものを、自作農はじめそれぞれに活用してまいったわけでございます。大体、国有林経済林として経営するであろうと予定いたしております一五、六%に相当するものを、活用対象として出したわけでございます。  そこで、それらの面積がどのようになっておるのかということにつきましては、正確な数字は実は把握しておらないのでございます。七割から八割程度のものは、いわゆる利用が行なわれておるというふうに思うわけでございますが、若干の面積につきましては、先生指摘のとおり、地域経済の非常に急激な変化がございますので、たとえば、農地に行ったものでも農地外に利用することがございます。これはもちろん許可が要るのでございますが、転換されているものがございます。かつまた、労務不足あるいは山村の実態が変わってきているということから、粗放利用、未利用というような形が、先生指摘のとおりございます。しかし、それらにつきましては、今後、われわれとしましては活用をさらに進めていく場合でございますので、それらの点もあわせ検討いたしまして、目的どおり使われるように指導し、かつまた、さらに活用考えていく、両々相まってこれは判断していくべきものだというふうに考えまして、そのように指導してまいりたいと思う次第でございます。
  24. 湊徹郎

    湊委員 先ほど、この国有林野活用考えるにあたって、国土全体の立場からこれは一つ計画をもって促進しなければいかぬのじゃないか。そういう計画は、現在のところまだございませんというふうなお話なのでありますが、実際にこの法案を実施するにあたりまして、一つは、地元にいる住民の意向、地元のほうで、こういうふうにひとつ利用していきたいのだというプランがやはり前提になると思いますけれども、それと同時に、今度は現実にきめるにあたって、国自体として、この国土というものはこういうふうに使っていくことが一番いいのだ、そういうものさしがなければ、今度は、具体的に選択をして活用する場合にこれは進まないのじゃないか、こういうふうに思うのです。そういう意味で、現在の国有林に限定して、国有林の中で、現在はこうであるけれども、しかし、こういうふうに使えばもっとより高度の活用が期待されるというふうな実態をやはり調べてかからぬと、これは話にならぬと思うのでありますが、その辺の計画というものはお持ちなのかどうか。そのものさしを持たないで、そうしてやろうとしても無理じゃないか、こういうふうに思うのでありますが、その点をお聞かせ願いたい。
  25. 片山正英

    片山政府委員 先ほどもちょっとお答えいたしましたが、なお補足いたしますと、現在、国有林の経営につきましては、先生承知のように、国有林の経営をする立場から三つの部類をとっておるわけでございます。一つは、第一種林と称しまして、これは国土保全、こういうようなことで制限を要する山、それからもう一つは、地元民等を中心とします第三種林、共用林野とかそういう山の経営、残りの第二種林というのが、大体全体の国有林面積の半分くらいでございますが、いわゆる経済林として国有林がやっておる姿でございます。そういう基本的な区分けをいたしまして、経営をそれぞれ高度化するように配慮しているわけでございますが、問題は、地元民の活用という観点から、それをどう利用するかということでございます。  これらにつきましては、実は国有林としての計画ではございませんで、農林省あるいは県、市町村、それぞれが地元の向上という面から企画されております。その企画は、先ほど申し上げました農林省通達に基づく企画でございます。それによりまして、それぞれ国も援助をいたしておりますので、それとの関連で、われわれは積極的に対処してまいるという態度でございます。したがいまして、国有林としてこれをこうするという、国有林自体が林業以外の計画は実はやっておらないわけでございまして、あくまでそれらの計画に御協力申し上げる、積極的に対処する、そういう態度でございます。
  26. 湊徹郎

    湊委員 次に、法律案内容について逐次お尋ねしたいと思うのであります。  第一番目は、これは先ほどもお話し申し上げたのでありますが、「この法律は、林業基本法第四条の規定の趣旨に即し、」こういう前提でもって、これを根拠にしながらきめていくのだということになっておるのでありますが、林業基本法というのは、これは一種の事業法であります。したがって、さっきのように国土全体の利用ないしは資源活用、こういうふうな観点からすれば、「林業基本法第四条の規定の趣旨に即し、」こういうかまえでもってこの法律考えられておるということは、私としてはいささか狭過ぎやしないか、こう思うのでありますが、この点についての考え方をお聞きしたいと思います。
  27. 片山正英

    片山政府委員 林業基本法というものが成立しておりますが、さらに、われわれが森林を取り扱う態度といたしまして森林法というものがございます。したがいまして、山を経営する場合に、いわゆる国土保全等の公益的機能というものが一つ、それから経済的の機能というものとの関連におきまして、それらを総合いたした形におきまして、先ほど申しました全国森林計画というものを策定いたしておるわけでございます。その全国森林計画を、さらに民有林国有林別にそれぞれの計画をつくりまして、土地の高度利用土地の有効利用というところに視点を置きまして、現在実施しておるというのが実態でございます。
  28. 湊徹郎

    湊委員 それから第三条に、国有林活用資格者といいますか、こういう対象に対して活用をはかっていくんだ、それから活用の目的、これが書いてございますが、そこの中に、農林省令で定めるもの、これはひらがなの「もの」と漢字の「者」と九つばかりあるわけでありますが、この具体的な内容については、現在大体きまっておるのですか、その点をお示し願いたいと思います。
  29. 片山正英

    片山政府委員 ただいま先生の御質問の省令の細部の内容でございますが、実はまだ検討中で、はっきりした段階まで至っておりません。現在検討中でございます。
  30. 湊徹郎

    湊委員 はっきりしたものはまだ的確にきまっていないけれども、こういうものを対象にするんだというものはあるわけでございましょう。
  31. 片山正英

    片山政府委員 ただいま検討しておる部長からお答えいたします。
  32. 大山一生

    ○大山説明員 ただいま長官から申し上げました三条関係の省令事項でございますが、おおよその内容を順を追って申し上げます。  最初に、第三条第一項第一号の「造成の事業農林省令で定めるもの」、この「農林省令で定めるもの」と申しますのは、農業構造改善事業でありますとか、あるいは開拓。パイロット事業であるとか、あるいは草地改良事業というようなもの、あるいは県単でやっているような事業、こういった国なり県なりが指導助成しているようなもの、これを規定する予定になっております。  それから、その次の対象となっております「地方公共団体その他農林省令で定める者」、これは土地改良区でありますとか、農協連合会であるとか農事組合法人、こういうものを規定する方針でございます。  それから二号のほうにまいりまして、「当該譲渡をした者で農林省令で定めるもの」というのがございますが、これはいわゆる売り渡しにかかります農用地をもっぱら利用するものでないものとか、あるいはこれを譲り渡すことによって林業経営に支障を来たすものであるとか、あるいは同一ないしは隣接の市町村の国有林活用を希望しているものであるとか、こういった条件に該当するもの、こういうふうに規定したいというふうに思っております。  それから第三号の「近代化の事業農林省令で定めるもの」、これは林業構造改善事業といったようなものを規定したいと思っております。  それから「林業を営む個人で農林省令で定めるもの」、これは保有いたします林地面積が一定以下であるといったようなことですが、当面は個人の近代化事業というのは考えておりませんので、これは後になって必要が出たときに定めるということになろうかと思います。  それから、同じく最後の「団体で農林省令で定めるもの」、これは生産森林組合でありますとか、こういったもので、相当程度が同一市町村内で林地を持ち、あるいは住所を持っているような、小規模で経営している個人が構成している団体、こういうふうに規定したいと存じます。  それから、四号の「造林及び保育、家畜の放牧又は養畜の業務のための採草で農林省令で定めるもの」、これは分収を目的とする造林、撫育であるとか、あるいは国と共用して行なう放牧、養畜といったようなことを規定いたしたい、こういうふうに考えます。  それから、そのあとにございます「団体で農林省令で定めるもの」、これは代表者なり代表権の範囲、こういうものを規約でつくることになりますが、その規約が一定の基準に該当しているものであるというようなことを規定したい、こういうふうに存じます。  それから、最後の六号の「団体その他農林省令で定める者」とございますが、これは土地改良区でありますとか、漁業協同組合であるとか、こういった活用の相手としてふさわしいものというようなことを規定いたしたい、こういうふうなつもりでおりますが、なお詳細につきましては、関係省とも相談してまいりたい、こういうふうに思います。
  33. 湊徹郎

    湊委員 ただいまの詳細の点は、後ほどさらに明らかにしていただくことにして、この中で、過般森田先生からも話があったのでありますが、特に青森県などにおいては、いわゆる軒先国有林地帯、こういうものもかなりある。なかなか実際に林業構造改善事業等の対象にもならないというふうなところがある。そういうところは、市町村自体が国有林の中にすっぽりはまり込んでいる。特に、国有林野率が九割をこえるような市町村もかなりあるというふうな具体的なお話もあったわけであります。  そういうことになりますと、市町村自体がやはり活用対象として当然考えられなければいけないわけなんでありますが、特に市町村を対象外にしておる。農業構造改善の場合は大幅に市町村まで含めて認めておるが、林業については市町村をはずしておる。こういうのはどういうわけですか。
  34. 片山正英

    片山政府委員 林業構造改善の場合には、それぞれの林業を営む人たちが規模の拡大、そのことによって安定をはかっていく、いわゆる個人の所有規模を大きくするということに視点を置いて、実は林業構造改善というものを進めておるわけでございます。市町村につきましては、林業基本法にも書いてございますが、国に準じて行なうというのが公共団体の立場になっておるわけでございます。なおまた、市町村というものにつきましては、従来基本財産造成ということが行なわれておりましたけれども、市町村の財政源と申しますのは、主として税金というものが中心でまかなわるべきものであるというふうに考えられつつあるように思われます。基本財産造成ということもさることながら、そういう税収というものが対象になっておる。したがって、従来考えておったような基本財産造成というものは、薄れつつあるというふうに判断されるのではないかと思います。  ただ、先ほど申しましたように、小規模林業者の面積を拡大するというのに中心がございますので、そちらのほうを優先的に、積極的にやってまいるというのが、この法案態度でございます。
  35. 湊徹郎

    湊委員 ただいまの全般的な趣旨についてはよくわかるのであります。基本財産的な考え方がだんだん薄れておる。それから、ここでねらっておるのは、小規模林業者の経営を広げて、そして安定経営をできるだけつくるのに役立つようにしていきたいのだという、そのねらいはわかるのでありますが、さっき申しましたように、実際にもうほとんど国有林イコール市町村というところもかなり実際問題としてあるわけであります。そういうところが、あるいは公有林を持ちだいとかいろいろなことがあるだろうと思うのでありますが、そういう市町村としての利用の道を、まるきりふさいでしまうというのはいかがなものかと思うのでありますが、再度御答弁をお願いいたします。
  36. 片山正英

    片山政府委員 先生指摘の市町村に対する態度でございますが、この活用法案といたしましては、積極的にやるそのものを明確にしたわけでございます。したがいまして、市町村に対してはこの活用法案対象にしないのですが、国有林野法によりまして、これは従来どおりやるという態度には変わりないわけでございます。ただ、積極的にやる姿としましては、小規模森林所有者の拡大というところにその意味を持たせ、積極性を持たせたいということでございます。
  37. 湊徹郎

    湊委員 おっしゃることはよくわかるのでありますが、そういうことでありますから、もう事実上市町村が、その市町村住民のためにこの趣旨に従ってやるような場合は、たてまえは、この法案ではそういう小規模所有者を直接の対象にはしておるのだけれども、しかし、そういう市町村については、同じような考え方でやっていくというふうに理解してよろしゅうございますか。
  38. 片山正英

    片山政府委員 ただいま、市町村の住民対象にしてどうかという御質問だと受け取るわけでございますが、そういう場合には当然やるわけでございます。市町村の住民対象にした、いわゆる小規模森林所有者、そういう者の森林保有を拡大するということに対しては対処するわけでございます。市町村自体に対しましては、これは国有林野法によりまして、従来どおり対処してまいりたい、こういうように考えております。
  39. 湊徹郎

    湊委員 いや、いま申し上げたのは、それは当然住民のためなんでございますが、住民のために市町村がやるような場合は、これは国有林野法でやっていくんだ、こういうお話なんですが、その国有林野法で取り扱う場合に、この法案で直接小規模の森林保有者を取り扱うのと同じような態度考え方、やり方で御処理願えますか、こういう意味なんです。
  40. 片山正英

    片山政府委員 ちょっと重複した説明になると思いますけれども、これは農業構造改善林業構造改善、そういう政府の方針に基づくわけでございます。したがいまして、あくまで住民対象にした形になるわけでございますが、市町村みずからが、たとえば部分林にする、市町村の基本財産としてやるというような場合には、これは否定しているわけじゃございませんで、それは国有林野法によりまして従来どおりやってまいりたい、こう考える次第でございます。
  41. 湊徹郎

    湊委員 それでは、次に第三条の第二項に、国有林野活用にあたっては、自然的、経済的諸条件から見て合理的なもので、それと同時に、その所在地域経済的、社会的な実情を考え、そして当該地域住民の意向を尊重したものでなければならないとあります。その当該地域住民の意向を尊重するとおっしゃる場合に、具体的なやり方、手続としては、どういうふうな形でやられるお考えですか。
  42. 片山正英

    片山政府委員 地元住民の意向ということでございます。したがいまして、まず、ある人が計画をするわけでございまして、それがそれぞれの官庁の指導の中でできるわけでございますので、その事業内容というものがございます。それからもう一つは、その事業を行なう人、事業参加者、それから事業は行なわなくても、それを取り巻くそれぞれの人、そういう者の意向と関連すべきことというものを調査するわけでございますが、主として公共団体の長の意見ということに相なろうかと思う次第でございます。
  43. 湊徹郎

    湊委員 いまのことと関連して第四条に、活用のための具体的な手続が書いてございます。活用について、推進のための方針を農林大臣がきめる、それから適地の選定方法をきめる、その他当該活用の実施に関する基本的事項をきめる、この三つをきめてそれを公表する、こういうことになっておりますが、それぞれについてその方針というのは、たとえばどの程度のものをお示しになるつもりなのか。それから適地の選定方法、これは現在の次官通達等でも、選定基準というのがきめられておりますが、それとの関連、つまり、従来の選定基準では窮屈過ぎるからこの際すっかり直していくんだというふうなことも、また直してもらわなきゃいけない点も、これは後ほどお尋ねしますが、相当あるわけであります。そういう選定の方法、その場合の実際に協議したり何かする機関、手続、そういうものを含めて具体的にお示しをいただきたいと思います。
  44. 片山正英

    片山政府委員 国有林野活用の基本的な事項ということの具体的な内容の御質問でございます。  まず、活用のための方針ということにつきましては、国の基本的な考え方対象事業ごとの活用の方式あるいは売り払い代金延納の方式等を明確にする。それから活用の適地の選定方法という第二番目の問題につきましては、活用の申し出の方法、あるいは調査の方法、あるいは国有林野管理審議会等の意見の聴取、活用適地の選定基準というようなものが基本的に示される。そこで、現在適地の選定の要領というものが現にございます。いろいろなこまかいものを含めてございますが、それらももう一度再検討いたしまして、主としてそれに準じてやっていくということになろうかと思う次第であります。
  45. 湊徹郎

    湊委員 ただいまの中で、現在行なわれておる適地選定の要領、これは次官通達としてあるんだけれども、これも全部再検討をして、いままで実施してきたものを基準にしながら洗い直しをしていくんだ、こういうお話がございましたが、それに関連して、現在の適地選定の基準のどういう部分に、特にいままでいろいろと問題があったのか、そういう点を一点お聞かせをいただきたい。  それから、林政審議会の意見を現在聞いていらっしゃると思うのでありますが、この点はどうなるのか、この二点お聞きをしておきたいと思います。
  46. 片山正英

    片山政府委員 現在、適地選定基準というのがございますことは先ほど申しました。内容といたしましては、気温、傾斜、土層、土性、それぞれ規定はされております。現在、これによって特に支障があるというふうには実は考えておりませんけれども、なお、いろいろな実態を通してこれらについてもう一度検討してまいりたい。現在それほど、ここがまずいというふうには出ていないと思っておりますが、この際もう一度やってみたいということでございます。  それから第二点の林政審議会の問題でございますが、林政審議会に、こういう基本的な問題でございますので、基本的な事項につきましては審議をしていただく予定にいたしておる次第でございます。
  47. 湊徹郎

    湊委員 いま、従来の選定基準で現実にはたいした支障はないのだというお話であったのでありますが、現在、県知事と営林局長が相談して活用適地を選定するたてまえになっておりますね。その場合の基準として、活用しようとする国有林野が通作可能な距離の範囲内にあるというふうなことがございます。これなんかも、道路条件の変更等によってかなり変え得るし、また、現にかなり変わってきつつあるわけですし、それから人工造林に適する土地、特に幼齢林の造林地については、たてまえとしてもう全部はずす、こういうふうな扱いになっておるわけなのでありますが、ここら辺についても、実際問題としてはかなり問題のあることを承知しておるわけであります。いろいろお聞きする中で、この幼齢林の取り扱いについて特にお尋ねしておきたいと思います。
  48. 片山正英

    片山政府委員 第一点の通作距離の問題でございますが、これは通作可能ということでわれわれは考えておりますが、道路その他の整備にかかってまいりますので、その点は弾力的な解釈を持っておる次第でございます。  第二点の幼齢林の問題でございますが、これは国有林野使命達成との調整をはかりつつという基本法の趣旨でございまして、その中に入っておるわけでございます。第一点が、国土保安上必要なものあるいはそれに準ずるもの、第二点が、ただいま先生の御指摘の幼齢林でございます。そのほか、国有林が経営上どうしても必要な土地、たとえば宿舎の土地であるとかいうもの、それから共用林野とか、ほかの権利者が中にあるもの、そういうものについては調整をはかっていくということでございます。  先生の御指摘の幼齢林でございますが、幼齢林につきましては、やはり原則としては、十年なら十年の非常にりっぱな幼齢林があって、それが全然利用に達していないというものを、むざむざ切っていくということもいかがかと思うわけでございます。しかし、いろいろな地帯を選定する場合に、たまたまそういうものが若干入り得るということを排除しておるわけではございませんが、考え方としては、そういうものを対象にして活用するという以外に土地の選定を考えるべきではないか、こういう趣旨でございます。
  49. 湊徹郎

    湊委員 次に、時間のほうの制限もございますので次に移りますが、第五条は、活用を受けたものの義務規定でありますが、これは先ほどお話があったように、戦後処置してきた払い下げ等の活用実態を見ると不十分なものも多い。したがって、今後の活用にあたっても、当然この中には、用途指定とか買い戻しの特約をつけるとかいろいろございますが、そういう意図に反した活用をチェックするための具体的な措置なり——これはあまりきびしくすると活用できないし、あまりゆるくすると困るということで、なかなかこの運用はむずかしい点だろうと思うのでありますが、その具体的な措置考え方等についてお聞きしておきたいと思います。
  50. 片山正英

    片山政府委員 活用あり方として、大きく分けまして貸付する場合と売り払いする場合とがあるわけでありますが、貸付につきましては用途指定をいたしまして、その用途に適するように指導してまいりたいと思う次第でございます。それから売り払いにつきましては、とれまた用途指定をいたすわけでございますが、その中で、あまりにもその実態と離れた姿がある場合には、改約等の措置もでき得るというふうに運用してまいりたいというわけでございます。  いずれにしても、そのような不適正な土地利用にならないために、われわれは国有林野管理審議会というものを設けてございます。学識経験者の方々に御依頼申し上げましてそういう審議会を設けてございます。その審議会で十分審議をいたしまして、そのような形にならないように活用していただきたい、かように思う次第でございます。
  51. 湊徹郎

    湊委員 大体十二時までということでありますので、最後に、この延納の特約の規定、これは従来にない規定でありますが、特にこの場合に立木竹をどういうふうに扱うかということが問題だろうと思います。これは林地と一緒に扱っていくんだということになりますと、同じように二十五年の延納対象というふうに考えていいかどうか。それから、立木竹の値段は一体どういうふうにして算定をするのか、その二点についてお尋ねをいたします。
  52. 片山正英

    片山政府委員 延納の問題でございます。それに対する土地、立木でございます。われわれといたしましては、活用していただく場合に土地中心になるわけでございますので、立木につきましては、利用伐期のものがございますれば、それは売り払ったあと活用していただくということに相なろうと思います。しかし、その立木におきましても、農耕等において必要なもの、たとえば防風林であるとか、そういうようなものがもしありますれば、それは当然立木をつけて売るわけでございます。  さらにまた、幼齢林というのはわれわれは原則としては望ましくないとは思いますが、しかし活用上それしかない、たまたまそこに幼齢林が若干入っているというようなものがあろうかと思います。そういう幼齢林につきましても、これは切るわけにいきませんから、立木つきで売ります。ただ、その場合の価格でございます。利用対象以上、利用伐期以上のものにつきましては、市場価から逆算いたしました価格で売るわけでありますが、市場価を持たないいわゆる幼齢林の場合につきましては、コスト、いわゆる費用価で価格算定をいたすということになるわけでございます。  延納は二十五年以内でございます。
  53. 湊徹郎

    湊委員 いま価格算定の根拠についてお聞きしたのでありますが、これを実際の実例に当たってみると、現在、農業構造改善事業等は、農地法に基づく価格でもってこれはやっておりますね。それと比べてどういうふうな数字になりますか、実例がございましたらお示しを願いたいと思います。
  54. 片山正英

    片山政府委員 農地法に基づく価格と一般の価格との差の御指摘だと思いますが、立木につきましては変わりませんが、土地につきましては農地法によるほうが安いわけでございます。こまかい計算はいたしておりませんが、おおむね三分の一程度になっておるのじゃないかというふうに思う次第でございます。
  55. 湊徹郎

    湊委員 ほかに質問者もございますので、以上で私の質問を終わりたいと思います。
  56. 足立篤郎

    足立委員長 鹿野彦吉君。
  57. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員 私はこの問題について、大臣の代理として小沢政務次官に総括的な御意見を承ることにいたしたいと思います。  この法案の、農業構造改善の方向とか、いろいろ基本的な考え方は、みないずれも同じであり、ことに湊議員がいま触れられたことは、私なんかの考えと同じ線に沿うて触れておられるわけでございます。けれども、お互いに大局的な立場に立つ国会議員としてこの問題をながめると、私は大切な問題があると思いますから、その点から触れてみたいと思います。  日本の農業はいま非常にむずかしい状態で、これほど農業問題がむずかしい事態に差しかかったことはないのじゃないかと思うのです。結論から言いますと、それは農業の経営規模が非常に狭いために、無理をして米の値段で価格操作をやってきた、それが行き詰まりになった、こういうことでございます。そこで、この根本を是正する方法はただ一つ、農業の経営規模を拡大して、そうして農業者の生産性を高め、貿易の自由化という大きな日本の国策の線に沿うて自由化をいたしましても、農業者の所得というものが他の産業の人々におくれをとらないような状態をつくるということで、これにはただ一つ、経営規模の拡大よりほかはない。経営規模の拡大をするためには、またただ一つ国土の七割を占める山林地帯活用だ。  ところが、七割を占める山林地帯活用国土を広く使うこと、こういうことの中にあって、私有地の問題は別といたしましても、国有林を完全にそうした方向に開放し、そうして農業の経営規模の拡大をはかることが、国民全体の生産性を高めることにもなり、ことに、農産物があらゆる面に趣いて値段が下がるということになれば、物価問題を直ちに解決する主たる条件になるのであります。  そこで私は、これほど大きな政治性を持ったこの問題に対して、この国有林野活用法案に対するところの農林省の心がまえについて、大臣、政務次官が大局的に判断をしていただかなければ、いろいろとむずかしい問題を排除しながらやっていくについては、官僚の諸君も、そのまことはあってもなかなか思い切った措置ができないような結果になるのじゃないか、こう思いますから、こうしたことに対する御認識を、まず政務次官からお伺いいたしたいと思います。
  58. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生がおっしゃるとおり、日本の農業の今日の環境はまことにきびしいものがあるわけでございます。その中にありまして一番大事なことは、われわれが農林業振興しようという場合に、まず経営規模の拡大だということは、もうおっしゃるとおりだと思います。そのほかに、農業構造改善をさらに進めていかなければならない、あるいは農山村地域振興をはかるための諸施策を大いにやっていかなければならない、こういう要請が、このきびしい環境のもとにおける農業発展のために強くあるわけでございます。  したがって、この要請にこたえるためには、どうしてもいま先生のおっしゃいましたような、この国土全体の七割を占める森林地帯といいますか、林野というものを積極的に活用していかなければ、とうていこの要請にこたえることができぬだろう。こういうような意味で、確かに従来まで行政措置でいろいろと、部分的といいますか、若干ずつ活用も行なわれてきたとは思いますが、やはり国の姿勢としてこうした法案を出しまして、積極的にひとつ活用をはかっていこうということでお願いをいたしておるわけでございます。  ただ、国有林野事業を直接責任を持ちます私どもの立場からまいりますと、国有林野というものは一面におきまして国土保全という公益のための機能を持っているわけでございますし、また一方、木材そのものの需給と価格の調整という機能も果たして、これもまた重要視していかなければならない。したがって、私どもの持つこの基本的な国有林野の機能というものとの調整考えながら、この農業規模の拡大に資するように、活用を大いに積極的に、前向きに進める、こういうつもりでおるわけでございまして、先生お話しのように、農業の経営規模の拡大を通じまして生産性を向上していくためにぜひ積極的に活用をしていただく、こういうのが趣旨でございます。おっしゃるとおりでございます。
  59. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員 当然、小沢政務次官も私と同じような考え方に立っていただけるものと御期待しつつ御質問申し上げましたが、やはりそのとおりであったわけでございます。ただ、日本の農業問題だけでなく、硬直化を叫ばれておるところの日本の財政の根本問題も、日本経済全体が、ことごとくこの国土の狭い中にあって、なおかっこの七割を占める山間地帯をいかに活用するかというところに問題があるわけでございまして、確かにいろいろな問題もありましょうけれども、都市集中の過密、過疎の問題、あるいはまたいま森林資源も不足だ、こういうようなこともありますが、確かにそれはそのとおりです。木材を生産することもけっこうです。ただ、あらゆることをするについて、従来のような森林経営のあり方というようなものは、これはもう近代化されたところの経営にそぐわないわけでございますから、森林経営にいたしましても、またその他の農業経営にいたしましても、いろいろと近代化の線に沿うて、やはり生産性向上に合うような経営方式が実現しなくてはならないわけでございます。  そうした意味において、ただ国有林だからというようなことで、死蔵し温存をしていくということが、一つの大きな社会的罪悪に属するのじゃないかとすら表現ができる、こう思いますので、これは国有林野に働く人々の問題も考えながら、こういうような人々も決して不幸にならないように、あるいはまたこれをそういうふうな線に沿うて積極的に活用する方法を考えていただきたい。  ここであまり詳しいことに触れたくないが、具体的に申しますと、国有林野中心として農林、建設一体になって、百メーターとか五十メータなどというような土地をつぶして平らにしたらいいと私は思う。そうして水の貯蔵のダムをつくり、ここにりっぱな道路をつくり、そして農業もあるいは林業も、酪農も近代化されたそうした経営ができるような基盤をつくっていく。こういうようなことが考えられると思うのですが、そのためには、従来のように国有林野はただ林野庁の財産だというような考え方を捨てられて、国民経済の発展のために積極的に利用するという、こういう方向に持っていっていただく必要があるのではないかと思います。これは、きびしい目先の農業問題を解決して、将来に大きな希望を農業者諸君に与えることにより、また現在の難問題を解決する一つの方法にもなるのではないか、こう思いますから、そうした大きな問題をむずかしい問題として取り組みながら、この国有林活用法案を生かしていかれる、こういうふうに考えていただきたいと思います。そうしたことについての政務次官の御意見を承りまして終わることにいたします。
  60. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 おっしゃるように、国土全体の総合的な開発計画の見地あるいは日本経済全般の立場から、いろいろ国有林というものについての見方、あるいは活用考え方というものを考えていかなければいかぬというお説につきましては、またそういう政治論につきましては、私ども非常によく理解できるわけでございます。しかし、農業のいまの経営規模の拡大にいたしましても、あるいは構造改善にいたしましても、あるいはまたきびしい国際環境の中で耐えていかなければならない、あるいは労働の不足からくる条件にも対応していかなければいけない。そういうきびしい中で農業をほんとうに総合的な見地から発展をさせていくためには、先生も当然御承知のとおり、いろいろな政策を総合的にとらえていかなければいけないわけでございます。  そこで、こいねがわくはこの国有林野活用法案がその一助にもなって、ぜひおっしゃるように、特に山村地域におきまして農業の経営規模の拡大が、これによって若干でも進むことができ、あるいは構造改善事業というものが、これによって非常に総合的にやりやすくなるというようなことがあれば、いまの農業にとっても非常にしあわせなことになるのではないか、こういうような考えをもって、特に法案の御審議をお願いし、成立をお願いしているわけでございますので、先生のおっしゃいました基本的な大きな政治論、十分私どもも勉強させていただきまして、その方向で努力をしていきたいと思っております。
  61. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員 ちょっと最後に、これは政務次官にもお願いしたいのですが、国有林活用そのことが、そうした日本経済の問題、農業近代化のためのごく一部分であるというような、もし認識を持たれておるとすると、ぜひ是正していただきたいと思います。私は、大部分がやはり国有林活用によって、そうした問題の解決がなされるのではないかと思います。遺憾ながらこれよりほかはない。あとは、あるいは日本の国を取り巻くところの海岸線の海を利用するとか、そういうようなこときり絶対にない。硬直化せんとする日本経済をもみほぐし、基本的な国民全体の生産性を向上しながらいくには、山林地帯活用と海岸線の活用、その中で国有林が大部分の使命を占めるのだ、このような認識をもってこの法案の審議に、私は今後とも熱情を注ぐつもりでございます。どうぞひとつ政務次官も、そのような認識を持っていただくことをお願いいたしまして、私の質疑を終わることにいたします。
  62. 足立篤郎

  63. 稲富稜人

    ○稲富委員 時間がありませんので、詳細につきましてはいずれまた機会を見て質問いたすことにいたしまして、二、三の要点をとらえまして質問したいと思うのでございます。  まず、政務次官にお尋ねしたいと思いますことは、政府は、昨年の夏総合農政ということを提唱いたしまして、それに真剣に取り組むといわれております。この総合農政というものを考えますときに、林野がになうべき職責といいますか、地位というものは非常に大きいと思うのでございます。この国有林野活用に関する法律案というものは、政府が総合農政を主張する前に、すでにこの法案提出されておったわけでございますが、今後、この国有林野活用という問題と、今日政府が策定されておる総合農政というものと、これは不可分の関係にあって、また、これは将来発展させなければならない性質のものだと思うのでございます。これは総合農政があとでできたんだけれども、その一環としてこの活用法案というものを生かしていこう、こういうような考え方があらねばならないと思うのでございますが、これに対する腹がまえをまず承りたい。
  64. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 私は、先生おっしゃるように、総合農政という見地から考えましても、この法案というものは非常に有効適切であるというふうに考えております。
  65. 稲富稜人

    ○稲富委員 最近、御承知のごとく非常に外材の輸入がふえております。国内におきまする材木の生産がますます減退しておるような状態にあるのでございますが、ここ数年間の外材の輸入に対する対策に対して、政府はいかなる考え方を持っていらっしゃるか承りたい。
  66. 片山正英

    片山政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生の御指摘のとおり、外材はここ非常に急激な輸入がございます。最近におきましては、約四割が外材によって占められておるという状況でございます。そこで、われわれといたしましては、国内の森林資源開発ということが絶対必要条件であろうと思っておるわけでございます。国内自給を高めていくという方向が、やはり絶対必要であろうと思います。そのような意味の諸対策というものを進めておるわけでございます。  一方、外材におきましては、従来価格の安定、需要の充足というようなことから外材を入れてきておるわけでございますけれども、外材につきましても、ソ連材、米材、南洋材とそれぞれ事情を異にしております。いろいろな問題を持っております。最近におきましては、特にその問題が顕著にあらわれてきております。したがいまして、それらの問題も十分それぞれの国と折衝も開始しております。その中で木材需給が安定していくような、しかし、国内資源が有効に利用されるという、その問題を持ちながら外材の対策というものにも対処してまいりたい、こういうふうに思う次第でございます。
  67. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいま長官が言われましたように、外材の輸入がだんだんふえてくる、国内材がますます不足してくる、こういうような傾向は、建築材等の値が上がったり、あるいは化学建材を使うという問題が起こってくる。化学建材を使うというような結果、あるいは一たん火事が起こった場合は毒ガスを発生して、人の生命まで奪う、こういうような非常に大きな問題が生じてきている。こういう点から申し上げましても、国内材木の生産というものは、ますます増大するということが最も必要であると思うのであります。これに対しましては、もちろん国有林野の造林計画というものが進められることも当然必要であると思うのでございますが、こういう場合に、もちろん里山等は、先刻申しましたように総合農政の立場からこれを活用しよう、こういうような問題も当然起こってくるわけでございます。  その点を考えますときに、私たちがまず現在のわが国の民有林の実情を見ますときに、民有林が老齢化していろ。老齢化していくと、長期にわたりますと生産も鈍ってくる、あるいは治水関係から申し上げましても、水に対するたくわえが少なくなるというような問題がある。ところが、伐採しようとすると人手が不足する、あるいは税金がかかる、こういう民有林には民有林の非常な悩みがある。こういうような問題に対して、政府としてはやはり民有林をもっと活用する、あるいはこれに対する造林その他もやる、あるいは伐採したものに対する課税対策も考える、あるいは老齢化した樹木はこれを伐採してあとに植林する、いろいろなことを民有林としては考えてやらなければならないと思うのでございます。これに対してどういうような指導をなさるおつもりであるか、この点も伺っておきたいと思います。
  68. 片山正英

    片山政府委員 森林の三分の二が民有林でございます。その大きな面積を占める民有林の対策いかんという御質問だと思いますが、御承知のように、従来木材利用形態というのは、戦前におきましては薪炭材といわゆる建築材等の用材がほぼ半々という実態であったろうと思うわけでございます。したがいまして、民有林の山はそれに即応するような山であったわけでございます。しかし、その後木材需要の形態は急激に変化してまいりまして、御承知のように、薪炭材の需要というのは、木材需要のかつては五〇%を占めるものであったものが、いまや一〇%を割り、七、八%だと思いますが、そのような状況に変わってきております。九十何%というのが用材の需要でございます。  そこで、民有林の姿を見ますと、薪炭材その他に対処しておった山が六割以上あったわけでございます。そのようないわゆる薪炭林山の改良、これが、今後の木材の供給源も含めて解決しなければならぬ問題だと思っておるわけでございます。したがいまして、そのような山の改良につきまして、林道であるとか、あるいは造林であるとか、あるいは薪炭林の近間の山が草地として利用されるのであれば、そういう合理的な利用に持っていく。とにかく、そういう薪炭林山の改良こそ今後の木材需給あるいは民有林の解決になろうというふうに思うわけでございますので、それらに対する施策を進めておるわけでございます。  そこで、先般森林法の一部改正をお認めいただいたわけでございますが、そこで計画的なそれらの推進をはかるということ、さらには、半分以下ではございますが用材林というのもございますから、それらの計画的な供給をはかるというようなことで、森林施業計画をこの際ぜひやってまいりたい。御理解をいただいてやってまいりたい。それには恩典措置として、先生さっき御指摘の税金という問題も、二割免除するというような形も含めまして、それぞれ計画的な推進をはかることによってこの問題を解決してまいりたい。問題は予算にも関係しますが、そのような形で努力してまいりたいというふうに思う次第でございます。
  69. 稲富稜人

    ○稲富委員 元来、民有林に対する林野行政の上からの指導というのが、私は弱かったのではないかと思う。たとえば、終戦後民有林に対しまして、開墾を目的とする強制買い上げ等をやりました。ところが、それを開墾もしないし造林もやらないでほうっておるというのがよくあるのでございます。その時分に開墾するんだということで民有林を強制買い上げしておきながら、その後放任されておる、こういうような問題もよく見るのであります。こういうことは、林野行政の立場から見たならば、民有林をそういうことで強制買い上げをするならば、これをどういうように活用されておるのであるか、こういうことに対するその後の監督といいますか、これに対する監視というものをやはり怠ってはいけないと思うのでありますが、こういう点が非常になおざりにされているということは、やはり民有林に対する従来の林野行政の指導というものが非常に弱かったのではないか、こう私は考えるのでありますが、いかがでございますか。
  70. 片山正英

    片山政府委員 終戦直後の非常に食糧の不足した時代、民有林を含めましていろいろ開墾されて、そうして食糧増産に寄与してまいったわけでございますが、経済社会の急激な変化が、その当時のそのような姿が、いまの段階ではなかなかマッチしない形であるということにおいて、先生先ほど指摘の問題があろうかと思う次第でございます。  そこで、われわれ林野庁として民有林の行政ということでございますが、いろいろな諸制度の中で進めてはおるわけでございます。たとえば戦後の制度といたしまして、農業も同じでございますが、改良普及員というものも配置しまして、そしてそれぞれの形で指導してまいっております。かつまた、民有林の総合体でございまする森林組合というものにつきましても、それぞれ森林組合のあり方、そういうものを通しましてこれまた指導しておるわけでございます。なおまた、それぞれの民有林計画をどうすべきかというようなことにつきましても、それぞれ制度の中で指導してまいっておるわけでございます。そのような形で、われわれといたしましてはできる限りの姿として指導してまいっておるわけでございますが、問題は、やはり先ほど申しましたように、民有林実態が、非常に急激な変化に対処してまいらなければいけないというところに非常に困難性があるわけでございます。  ただ、残念ながら、先生指摘のように、私たちアンケートをとりますと、山に対して所有者が非常に関心を持っているという者もございます。しかし、遺憾ながら山に対してあまり関心を持っていないというすなおなお答えをいただいた者もございます。したがいまして、今後森林計画的な姿というものを十分指導し、御協力をいただいて、先生の御指摘があることのないようにつとめてまいりたいと思う次第でございます。
  71. 稲富稜人

    ○稲富委員 この問題はあまり深く突っ込みませんが、要するに、いまおっしゃったように食糧増産に使っていればいいのです。森林を、わざわざ植林しておったものをやめさせて、それを食糧増産に使う、開墾するといいながら、食糧増産もやっていない、こういうような問題があるということは、やはり森林というものをお粗末にしておる、こういうような結果じゃないかと私は思うのです。私たちはそういう問題に対して、常に早く植林をやるように言うけれども、何しろ、御承知のとおり、山間におきましては植林が、人手不足であるとか、こういうような問題のために、なかなか民有林というのが造林計画活用されないという点が非常に今日多いのであります。おそらくこれは林野庁としても認められておると思うのであります。  それで、ここで私は特に申し上げたいと思いますことは、今回この国有林野活用をされますると、おのずからこれに対する収入金というのが出てまいります。金が入ります。この使途をどうするかという問題になります。これに対して、私たちはただいま、いかにも活用されれば——活用されるに必要なる民有林が放任されておるというような問題は、ことに奥山等にありますので、こういうものを政府が積極的に経営管理する、こういうような方向にその金を差し向けたらば、日本国土保全の立場から申し上げましても、先刻申しましたような材木資源の不足している分を補うという両面からいって、非常に適宜な措置ではないか、かように私どもは考えるわけでございますが。これに対してどういう考えを持っていらっしゃいますか。
  72. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 おっしゃるとおり、奥地未開発民有林を積極的に国でこれを所有する方向で善処いたしまして、国有林野の基盤を強化し、確保していくということは、非常にいいことだと私、考えておりますが、なお十分検討してみたいと思います。
  73. 稲富稜人

    ○稲富委員 その場合、大体の目途として、国有地となるべき、適格するような民有地というものが相当にあると思うのでございますが、どのくらい見込んでいらっしゃいますか。
  74. 片山正英

    片山政府委員 国有林活用は、先ほどいろいろお話もありましたように、積極的に行なう。その場合は、あくまで日本の狭い土地でございますから、土地を高度利用するという方向であるならば、われわれはほんとうに積極的に、まさしく御協力申し上げてやってまいりたい。その場合に、売り払われたそれらの資金を通しまして、さらに国有林として、民間が開発困難である、あるいは開発しにくいというようなものは、できればそれを積極的に買ってまいるというのがいいことではないだろうかというふうにわれわれは思うわけでございますが、これらの問題については、いろいろ関係省等ともお打ち合わせしながら問題を解決してまいりたいというふうに思う次第でございます。
  75. 稲富稜人

    ○稲富委員 その場合、そういうことになりますと、あるいは林道をつくるとか、あるいはこれが維持管理のための人員等も相当に確保しなければいけない。特に、現在民間で一番困っておる問題は、民有林を持つ場合、その維持管理に非常に困るということなんです。人手が不足しておるということなんです。こういう場合、国有林でやりましたら、国有としてまた対策もできると思いますが、そうなりますと、相当に人員の必要も生じてくると思うのでございますが、そういうことに対しても政府は応じてやる、これだけの腹がまえはできておりますか。
  76. 片山正英

    片山政府委員 買い入れまする民有林、これは当然御審議の中で決定していただくわけだと思いますけれども、そういう形でもし民有林国有林に買い上げて、それによって事業量がふえるということが——具体的にはやってみないとわかりませんが、そのような形において、たとえば治山を行なうとか造林を行なうとか、そういうものがあれば、当然労務関係等を十分考えてやってまいらなければいかぬ、こう思っております。
  77. 稲富稜人

    ○稲富委員 それでは最後に、ひとつ意向を承っておきたいと思いますが、ただいま申しましたように、国有林野活用、それによる収入によって民有林野の買い上げをして、これに対する国有林野としての機能を十分発揮する、こういうようなことをすることが最も妥当じゃないかということで、先般、委員長もそういうような私案を持っておられたようでございます。私たちは今回のこの法案に対しましても、ただいま申しましたようなことがもしも組み入れられて修正でもできるならば、そういうことによって私たちは今後、この国有林野活用を機会といたしまして、さらに国有林としての十分な機能を将来発揮することが必要じゃないか、場合によってはそういうことに対する修正でもやったらどうかという委員長の私案もあったようでございますが、もしもそういうことになった場合は、政府はこれに対して受けて応ずるだけの心がまえはできておりますか、その点を念のために承っておきたい。それによって今後の法案の審議の参考にもいたしたい、かように考えておるわけでございますが、いかがでございますか。
  78. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 私どもは、先生のおっしゃったような御趣旨のお説につきましては、基本的に、先ほど来申し上げておりますように、賛成でございます。ただ、詳細を承ってみませんと、ことに修正案ということになりますと、その案文等につきまして、私ども政府としては、やはり政府関係のそれぞれのところとの調整をいたさなければいけませんが、その考え方、その案が、そういういま先生がお述べになりましたような、るる質疑応答されました御意見のようでございましたら、私ども基本的に賛成でございますので、そういう線で十分検討させていただきたいと思います。
  79. 稲富稜人

    ○稲富委員 それでは、いろいろお尋ねしたいこともありますけれども、時間の関係もありますので、さらに具体的な問題は、今後法案の審議を通じましてまた質問いたすことにいたしまして、本日は私の質問はこれをもって打ち切ります。
  80. 足立篤郎

    足立委員長 午後一時三十分に再開することとし、これにて休憩いたします。     午後零時二十九分休憩      ————◇—————     午後一時五十六分開議
  81. 足立篤郎

    足立委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐々栄三郎君。
  82. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 香川用水に関する質問をいたします。  前回におきまして若干問題点に触れたのでありまするが、まず第一点として、ちょうど前回は農林大臣あるいは政務次官が在席しておられませんでしたので、これは政治的な姿勢の問題でありますので、新任の政務次官に初めからお気の毒でありまするけれども、お答えいただきたいと思うわけです。  それは、愛知用水公団法が廃止されまして、十月一日以降におきましては、すべて水資源公団法によって事業が行なわれるということになったわけであります。香川用水は、現在もうすでに発足をいたして工事をいたしておりまするが、もちろん、水資源公団法に基づいてこの事業を行なっておるわけであります。そのやり方は、国営部分だけを水資源公団がやる。別に国営事業部分として農林省が行なう、こういうやり方でございます。  ところが、以前豊川用水及び愛知用水が行なわれましたときには、一貫施行方式によりまして、国営事業部分と県営事業部分、団体常事業部分をすべて一貫して愛知用水公団が行なったわけであります。ところが、これがすでに廃止され、現在すべて水資源公団法のもとに行なわれることになったのにもかかわらず、これから行なわれようとしておるところの三重用水、それから木曾川総合用水、これらにつきまして、従来の愛知用水公団方式と同じような一貫施行方式を行なう、こういうふうに聞いておるわけです。  一貫施行をするかあるいはしないかということは、非常にこれは利害関係が多いわけであります。どういう点があるかと申しますと、末端の工事まで一貫してやりましたならば、工事期間が非常に短くて済みます。国営事業をやってあとでその次に県営事業をやる、あるいはそれができてまた団体営をやるということになりますと、国に対する工事の認証の許可とかいろいろなことで非常に時間がかかりまして、せっかく幹線水路ができ上がりましても、末端門口まで水が来るようになりますためには、ずいぶんこれは長期間を要するということを考えておかなくてはならぬと思いますが、この点が第一点。それからもう一つは、末端までやりましたならば、合理的に、計画的に仕事をやることができまするから、経費の点で非常にロスが少なくて済むということでございます。すなわち、経費の節約ができるということであります。それから第三点は、いろいろ末端方面にありますところの水の、いわゆる従来の慣行というようなものが、一貫施行で末端までやりますると、ある程度これを合理化することができると私は思うのであります。  そういう点から考えますると、私は、これから行なう三重用水あるいは木曾総合用水がこの一貫施行で行なわれるといたしまするならば、香川用水もそういうようなやり方をすべきであり、また、香川用水のみならず、日本全国のこの種の工事について同じような方式がとられるべきであって、  一方は愛知用水方式でやるが、一方はそれをやらないというようなことは、法のもとに平等であるべき国民に対して、これは非常にへんぱな、不公平なやり方だと思うわけであります。これについて、政務次官の明快な御答弁をいただきたいと思います。
  83. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 おっしゃるように、一貫施行方式というものが合理的であることは確かだと思いますが、愛知用水公団を水資源公団に統合する場合、ちょうどその統合する際の方針をきめます際の経緯がございます。御承知のとおりでございますがその経緯がございますので、やむを得ず木曾川と三重の用水事業につきましては、四十三年度の予算編成過程等を通じまして、関係各省協議の上で、現在やっておりますような県営級まで含めるようなやり方をしたわけでございますが、本来、水資源公団が実施しますものにつきましては、水資源開発促進法という法律に基づいてやらなければならない。したがって、この法律に基づく指定水系におきまして農業関係事業を行なう場合は、御承知のとおり、原則として基幹施設についてのみやる、こういうようなことになっておるものでございますから、そこで、香川用水の場合に違いが出てきたと思うのでございます。  私どもとしては、香川用水地区におきまして、国営級の施設に関連する県営、団体営事業が、すでに相当進捗しておる点もございますので、おくれているようなものについては、実際上国営級の施設と跛行を来たさないように、現行方式の中でできるだけ推進をしていこう、どういう方針をとらざるを得なかったわけでございます。  なお、私も大臣も着任早々でございますので、先生の御意見中心にいたしまして、さらに検討をしてまいりたいと思いますが、いまのところはそれしかお答えができないわけでございます。
  84. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 香川県においては、県営あるいは団体営は相当できておるというお話でありますが、これは前回にも申し上げました金額で申しますと、国営工事のあと引き続いてやる工事が、県営の部分で約五十億円、それから団体営でやりまするのが七十億円、こういうような膨大な計画があるわけなんです。ですから、あなた方のおっしゃることは実情に合っておらない。これだけ申し上げて、この問題につきましては、時間の関係もありますのでこれ以上申し上げません。ただいま次官が、今後十分検討をしたいというのに期待をいたしたいと思います。もちろん私は、香川用水だけを問題にするのではなしに、やはり水資源公団でやる限りは、末端まで一貫してやることが非常に合理的だということを、私は特に主張したいと思うのです。そういうような大きな見地から、今後御検討を願いたいと思うわけであります。  第二点は、先般の委員会で石田委員から資料要求がございまして、きょうここに資料が提供されております。この資料について、詳しい御意見を聞いておりますと時間がかかりますので、私は、この中で重点はどこにあるのかというと、いわゆる補給水量比の問題、これにあると思いますので、すなわち、この補給水量比が、補助金が非常に高くなったという問題に関連をいたしておりますので、この点についてだけひとつ農地局長から、御説明を簡潔にしていただきたいと思います。
  85. 中野和仁

    ○中野政府委員 前回の委員会で、先生から資料提出の御要求がございまして差し上げてございます中で、この三枚目の豊川用水事業総合補助率の算定というのが、いまのお話しの点かと存じますが、この中で、国営農水について七七・七七%という補助率になった理由でございますが、それが四ページにございまして、ここをごらんいただきますと、前回申し上げましたように、申請によります土地改良事業あるいは開拓事業、それからそのほかいろいろなこまかい事業、畑かん等ございまして、それぞれに補助率がきまっておるわけでございます。それに対しまして計画いたしました補給水量が、この表にございますようにそれぞれきまっております。そこで、それを百分比として出しまして、補給水量に補助率をかけまして、この一番右の端の現行国庫負担比率というところにございますように、たとえば、最初の用水補給でありますと〇・〇六%というようなことで、全部総合いたしますと、補助率が一〇〇のものがあり五八のものがあるのが、総合しまして〇・七七%、こういうことになったわけでございます。
  86. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 これは豊川用水の問題でありまして、もうすでに完了しているし、しかも、他地域の用水事業内容に立ち入ってあれこれとほじくり回すということは、私の好まないところでございます。でありますから、あまり深くは私は申し上げぬつもりでありますが、とにかくわれわれが見て、国営部分、それから団体営部分、県営部分を通じて全部七割の補助になっておるということは、これは私ども、一般のこの種工事と比較をいたしまして非常に豊川用水が有利になっておる。そういう点から、これ自体に私は反対するのじゃない、他の工事にもこういうような地元のことを考えたというか、そういうようなやり方をやってもらうことに私は反対をするわけではない、賛成なんでありますが、ただ、若干裏取引と申しますか、いろいろきょうも資料を出しておられますが、私が検討いたしました結果によりますと、どうも納得がいかない点があるわけです。したがって、私はいたずらに豊川用水を非難するという、またあなた方を非難するというわけじゃなしに、やはり公正なやり方をしてもらいたいという、そういう見地で私が申し上げるということを、まず初めに御理解をしていただきたいと思うのです。  それで、これを詳しく申すとまた時間がかかりますから、私は要点だけを申し上げたいと思いますが、この問題で補給水量比というのが非常に問題です。それで、一〇〇%補助部分の開拓事業が、補給水量の関係で非常に多くなったから、この部分の工事費が、いわゆる国営農水部分が七七・七七%になり、その部分がそれだけになったから、したがって全体として、全工事について七割の補助という高率補助になったんだという御説明でありますが、私、少しく納得いかないというのは、きょう一般に配られた文書の中には入っておりません。私は、これはあなたのほうからいただいたわけですが、きょう一般の方になぜこれをお配りしないのかと私は疑問に考えておるのですが、実は、このお配りにならなかった点が私は非常に問題だと思う。それはなぜかというと、補給水量比というのは、要するに面積に対して単位当たり補給水量というものをかけ合わすということに帰着するわけなんですね。そういたしますと、面積というものがそれぞれ違ってまいりあるいは補給水量比というものが変わってまいりますと、補助金、補助率というものが自然に変わってこざるを得ないわけなんです。そういう点から申しまして、この面積と補給水量というものの算定が、合理的に、われわれが納得できるようにできておるかどうかということについて私は若干の疑義を持っておる。これがもし間違っておるか、意図的に、意識的に数字をつくり上げるというようなことが行なわれておったといたしますと、七七・七七%とか全部について七割というような補助率にはならぬことになるわけです。  そこでお尋ねをしたいのですが、まずこの面積の問題です。私の聞くところによりますと、この面積はまだ確定しておらないというふうに私は承っておるわけです。確定しておらないものをなぜ補助金の基礎にして算定することができるかということについて、まず御答弁をお願いしたいと思うのです。
  87. 中野和仁

    ○中野政府委員 現在算定いたしておりますのは、三十九年当時の面積でやっておるわけでございます。三十九年の計画変更いたしましたあとの面積でやっているわけでございます。
  88. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 ちょっといま聞き取りにくかったのですが、面積の点は、現在、いわゆる農民負担金の割り当てとかいうような面について、その面積がまだ確定しておらないということを農地局の方から私は承っておるのです。もしそうだとすれば、この確定しておらないものを基礎にして、こういうような補助率が出るはずがないのですね。これを確定しておるのかおらないのか、ひとつ答えていただきたいと思う。これは農地局長でもけっこうですよ。
  89. 中野和仁

    ○中野政府委員 豊川用水事業をずっと前から始めておるわけでございますが、御承知のように、あの周辺はかなりいろいろ都市化をするような問題もございます。したがいまして、当初の計画から改定をいたしまして、三十九年にいろいろ作業いたしまして四十年に改定をしたわけでございます。そのときに計算いたしました補助率が七割ということになっているわけでございます。
  90. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 こういう問題で押し問答をする時間が私は非常に惜しいのですが、結局、全体の補助が七割になったというのは、一〇〇%の開拓部分が非常に多い。多くなったのは、個々の面積に対して、これに対する通水量をかけ合わせたその結果、一〇〇%部分が多いので、最終的には七割になったというのですから、この面積が確定しない限りはあとの数字は出てこない、こう私は言っておるのです。現在の段階においてそれは確定しておらぬでしょう。もちろんこれは政令によって決定されましたが、政令によって決定された七・二・一という補助率の割り振り——面積がいまにおいても決定しておらぬのですから、あの段階においてももちろん決定しておったはずはないのです。それだけをあなたがはっきりとおっしゃってくださればいいのですよ。
  91. 中野和仁

    ○中野政府委員 事業が終わりまして、いよいよこれから農家に賦課が始まる、そういうものと違いまして、先ほど申し上げましたように補助率を事前にきめなければならないということでありますから、開拓面積、それから用水補給、畑かんというもので当時の予定といいますか、計画に基づきまして補助率を決定したわけでございます。
  92. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 どうもあなたの答えはピントがはずれておるのです。私もう詳しく申しませんけれども、現在においてさえ面積が確定しておらないのに、なぜ補助率を七・二・一ときめた段階において面積が決定しておったのだ、こう私は尋ねておるのです。あの段階において決定しておらぬのだし、いまも決定しておらぬのでしょう。そのことをお答えいただきたい。
  93. 中野和仁

    ○中野政府委員 先ほど申し上げましたように、三十九年当時の計画変更で決定いたしました面積について補助率をつくっているわけでございますが、ただ先生のお話を伺っておりますと、そういたしますと、面積が変わるたびに補助率が変わってきて、いつ確定するのだというような問題になるわけでございますけれども、そうではありませんで、この豊川用水事業の補助率をきめる場合、その面積によって決定をしたわけでございます。
  94. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 この問題だけ言っておると時間がかかりますから、次に進みたいと思うのです。  もう一つの問題は、補給水量比の問題でございます。この表にあります補給水量というものを減水深に換算をいたしますと、これは補水が一・九ミリから三・六ミリ、開田が十五ミリ、こういうように換算されるわけなんですが、これは間違いはございませんか。
  95. 中野和仁

    ○中野政府委員 この間、私どもの専門家を先生のところに派遣いたしまして申し上げたとおりでございまして、間違いございません。
  96. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 ところが、これも私が農地局の資源課でお聞きをした資料によりますと、これは実験的にやったのじゃなくて、今日まで国営と県営と団体営でやった事業について、この減水深を集計して全国平均をした数字があるのです。これによりますと、補水が二十一ミリ、開田が二十一ミリから三十ミリということになっておる。それから、この表の中にある通水量を換算した減水深では、補水が一・九ミリから三・六ミリ、開田が十五ミリというふうになっておる。先ほど申し上げたとおりであります。全国平均で補水と開田があまり減水深が変わらないのに、豊川の場合、補水に対する開田の割合は五、六倍になっておるのですね。開田のほうへたくさん水が要るということになれば、これは一〇〇%補助ですから、結局通水量が多くなり、それがまた国庫補助率に影響してくるというわけなんです。私がこういうような数字を比較してみた場合に感じますことは、どうもそこに開田部分を大きくしておるというふうに私は見るのですが、これについてのお答えをいただきたい。
  97. 中野和仁

    ○中野政府委員 私のほうの資源課からお取り寄せになった数字でございますが、そのことにも間違いがないと私は思うわけでございます。既存の水田につきましては、ほかの水も使っておるというようなこともございまして、新たにやりました事業によって補給する水が、豊川用水の場合は、既存の水田については二・何ミリ、香川用水の場合も、たしか十三・何ミリかのうちで二ミリかそこらを補給するということになっておるわけであります。開田の場合は、全く畑なり山を水田にするわけでございますから、そこにその水が全部行くということで、先ほどから申し上げていますような数字になるわけでございます。
  98. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 先ほど私が申し上げた補水二十一ミリ、開田二十一ミリから三十ミリというのは、いままでやった日本全国の何百という工事の平均なんですね。その平均であれば、開田であっても開墾地の水であってもそうたいして変わりはないのに、なぜ豊川の場合だけ五倍にも六倍にもなっておるのかと言うのです。私は、平均の数字を基礎にして豊川の異例な状況について尋ねておるのですから、そういう考えで答えていただきたいと思います。
  99. 中野和仁

    ○中野政府委員 一般の場合が二十ミリから三十ミリであるというふうにいたしましても、豊川の場合は十五ミリでございますから、一般の、先ほど先生が申されました平均とそれほど違わないと申しますか、若干まだ、豊川用水での開田の見方が十五ミリですから、少ないというふうになっておるわけであります。
  100. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 わからぬですかね。補助率関係からいうと倍数ということが問題になる。要するに、全国平均で補水が二十一、開田が二十一ないし三十ミリとありまして、大体一対一というぐあいでいっておる。豊川の場合は、補水が一・九ミリあるいは三・六ミリ、これに対して開田が十五ミリですから、五、六倍になっておる。こういうようになりますと、補助率を算定いたします場合に高くなってくるのだ、これを言っておるのですよ。
  101. 中野和仁

    ○中野政府委員 私が先ほど申し上げましたように、豊川の場合の既存の水田の補水は二・五ミリでございますが、そのほかに、従来から既存の水田は水を使っております。したがいまして、豊川の既存の水田については、はっきりいま覚えておりませんけれども、十五ミリあるいは二十ミリというふうな水が要るわけでございます。そのうち、豊川用水のこの事業によって二・五ミリの補給をするということでございますので、十五ミリと二・五ミリとの倍数をお考えいただくと、これは少しおかしいのではないかというふうに思います。
  102. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 こういうことで時間をつぶすのも惜しいのですが、私が全国平均だということを特に申すのは、これは豊川の場合もやはり特殊な土地でしょうが、しかし、こういうような土地が全部集まって平均して二十一ミリという補水の水量が出てきたのでしょう。そうすると、やはりこれに近い数字が豊川の場合も出るのがほんとうだと私は思うのです。全国何百ある工事を調査して平均が出ておるのですから、あなたが豊川だけ特殊だと言われても、私は通らないと思う。なるほど補水ですから、従来あるたんぼへ水を引くのですから、水を取る量が少なくていいでしょうけれども、これは他の地域においても同じなんです。開墾地でたくさん水が要るということは、これは豊川だけでなくてよその地域においても同じなんですよ。その平均の数字がここへ出ておるのです。だから、何も豊川は池がどうとか川がどうだとか言わなくていい。よその補水も同じです。わかりますか。
  103. 中野和仁

    ○中野政府委員 私、先ほど申し上げましたように、豊川自体の水田の減水深が二・五ミリではないわけでございまして、やはり十五ミリなりあるいは二十ミリというふうになっておるわけでございます。ただ、この事業で幾ら補水するか、見るかというのが二・五ミリということでございます。その辺は、香川用水のことを申し上げても、香川用水の水田計画の減水深は十三・四ミリというふうにきめて計画しておるわけであります。その中で、この事業によりまして二・一ミリだけを補給する、こういうふうに考えておるのと同じ考え方だと思うわけでございます。
  104. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 だから、どこでも補水というものを出す場合には、やはり従来から池があったり川があったりするのですから、この量は開田より少ないということは、私は普通だと思うのです。それは豊川だけではないと思うのです。だから、そのことをいま豊川だけについて主張なさるのは間違っておるのじゃないか、これは全国平均の数字が出ておるのですから。ここでとまっておりますと、与えられた時間がなくなって、肝心の香川用水についての質問ができませんから、これはあとへ保留いたしておきます。後刻また納得のいくように御説明していただきたいと思います。  ただもう一つ、減水深についてこの際つけ加えて申し上げたいことがあるのです。これだけはやはりぜひ申し上げておかなければいかぬと思いますが、愛知県庁におきましてこの問題について質問したのです。そうしますと、こういう答えを愛知県庁でしておるのです。「開田の水量については、当初は多量を要するが」開田、開畑ですから多量を要します。「要するが永久ではない。数年を経過すれば補水並みになるので、その水量の積算は」ここが大事なところですが、「近傍類似の補水田の水量とした。」と、こういう答えをしておるのです。つまり、開畑あるいは開田は、初めは水がたくさん要るけれども、自然に水がしみ込むとかいろいろしておりますうちに普通の補水並みになるから、設計にあたりましては、普通の補水田並みにいたしましたという答えをしておるのです。この答えが真実だとすれば、県が補水量をいろいろ出してこられた、この数字そのものが根本的にひっくり返ると思います。これについて、このとおりとしますとどうなるかというと、七割の補助にはならぬのです。補水並みだからこれより下がるのです。これについて、愛知県庁の言うことが間違っておるならおる、われわれのこの表が正しいと言われるなら言ってください。
  105. 井元光一

    ○井元説明員 おっしゃるとおりの必要水量でありますと、費用をよけい持つようなわけになります。一般的に減水深が、こことあそこは非常に差があるだろうというような御意見が出て、確かに非常に差もあるわけです。ただし、あるいはいま先生のおっしゃったような近傍類似の減水深からいえば、当然開拓地においても、将来の減水深の姿を考えて出すのですから、そんなに近傍類似と差がないわけです。ですから、開拓地においても既耕地においても、その近くであればそんなに減水深の差が出ないと思うわけでございます。先生の発言されたとおりの減水深にならなくてはいけないわけです。  ところが、豊橋のような非常に古い開拓地でありますと、昔開拓地に入植者が入った場合には、この開拓者の初年度、二年度、三年度という姿を見ていると、非常に水が足りなくて騒ぎ出した時代がたくさんあったわけです。そういう時代に、まだそういうことで押し切れないような姿の時代でしたから、わりあいにそういう要望を入れて、減水深を多く見積って開拓者の便宜をはかった時代があったわけです。豊橋がそれに当てはまるかどうかは私はわかりませんけれども、必要水量のために加減したのが昔はたいへんだくさんあったと思います。  しかし技術屋が、ここは近傍類似の減水深と同じだということで押し切れる場合と、押し切れない場合が昔はありましたけれども、最近はそういうことはありません。ただ、減水深の相違というものは、小さい地区と大きい地区と、減水深の差から補給水量が非常に大きく変わってくるとは、一がいには申しにくい点がたくさんあると思います。
  106. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 いろいろおっしゃったが、私がお聞きしておるのは、この表の通水量が正しいのか、愛知県庁がこの問題について言ったことが正しいのか、これを聞いておるだけなんです。愛知県庁では開田も補水並みにした、こう言っておるが、愛知県庁の言うのが間違いですか、それが正しいのですか。
  107. 井元光一

    ○井元説明員 先ほど毛局長が申しましたとおり、これについては正しいと申し上げるしかございません。
  108. 虎谷秀夫

    ○虎谷説明員 先生の御質問でございますが、資源課から言いました数字は、開田も補水も二十一ミリと申し上げたのは、おそらく、減水深が二十一ミリで、補水についていいますと、新たに補給する水量が二十一ミリだというふうに申し上げたのではないのではないかと私は考えるわけです。  それから、豊川の場合に開田が十五ミリで、補水が十五ミリというのは、減水深では同じように見ております。ただ、新規の補給水量は、開田のほうは全部見ますために十五ミリ、補水のほうは二・五ミリというふうになっておるというわけでございます。
  109. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 それに対していろいろ反論しておると、これは時間が非常にかかりまして、予定どおり私の質問が進行しませんから、あとでまた納得のいくようにお話を聞きたいと思います。とにかく、いろいろこの表を見ましても、何か初めから全部七割補助、こういう線をきめておいて、そしてあとでこういう理論づけをしたというような印象が、私にはぬぐい切れないのです。ずいぶんこのごろは皆さんに対して政治力がいろいろありますね、たんぼの中に新幹線の駅がついたりするのですから。そういう裏取引が豊川用水にもあるのではないか。なければけっこうです。そういうことが私は疑われる。あなた方の出してこられた資料そのものも疑われる。一番大切な資料を一般委員に配付しないということの中にも、私は大きな疑問を抱いているということだけをつけ加えて、この問題に対する質問はやめておきます。  次に進みまして、これは香川用水のアロケーションの問題であります。香川用水のいわゆる幹線の農業用水負担部分とそれから都市用水、すなわち工業用水、上水道用水の負担部分とを見ますると、この幹線部分は百七億でございますが、農水が六〇%、六割の負担をしておる。それから都市用水が金額として四割の負担をしておる。ところが水量から見ますと、農水が四割二分五厘で都市用水が五割七分五厘で、これが逆になるわけなんですね。逆になって余分に農業用水が負担をさせられておる。そのために、われわれが勘定すると約十八億五千万円くらいの過重負担を農業用水がしておる。したがって、それが農民負担の増加ということになってくるのです。  この問題を私はお聞きをしたいと思いますが、これに関連をして豊川用水の場合にも同じような問題であるわけなんです。実は私は前回の質問のときに、豊川用水の国営農水二百十二億の中には、何十億かの金がどうも出所がわからないということを申し上げた。五十億と申したか六十億と申したか、そういうことを質問の一番最後に申したのです。ところが私、あとでいろいろあなたのほうにお聞きして調査してみますと——その前に申し上げますが、私がそういうような計算をしましたのは、五、六十億という金額がおかしい、余分に農業用水にはめ込まれておるのではないかということを質問し、疑問を抱きました理由というのは、いまの用水によるアロケーションでアロケートしますと、これは農水が五割で都市用水が約五割近くになって、これは均分されなければならないという理屈になるのです。ところが、実際はどうなっておるかというと、農水が七割三分、都市用水が二割七分というふうにこれは割られておるのです。そういうようなことの結果として、不当に農業用水のほうに金がかかっておる。あなた方としては二百十二億には問題がないのだ、こう思われると私は考えるわけなのですが、ただ、なぜ一体そういうふうに利用する水量が同じであるのにかかわらず金額がそういうように変わってくるのか、なぜ都市用水より農業用水のほうにたくさんの負担がかかってくるのかということについて、ひとつ御説明をいただきたいと思うのです。
  110. 井元光一

    ○井元説明員 ただいま先生の御指摘のように、確かに水量からいいますと、農業用水は非常に負担が多過ぎる。これは御存じのとおり、畑かんを除くほかは農業用水というのは一般的には年間三カ月、百日前後の水の使用日数になるわけでございます。そのために、非常に要るときのピークをとるわけでございます。ところが、水道用水や工業用水はピークをとらないで、年間の需要水量はほとんど同じくらいの水量でいっているわけでございます。  そういうことからいたしまして、水量割りにいたしますと非常に農業のほうが重いようでありますけれども、ピークの割合というのはちょっとおかしいようでございますが、ピークをとりますということは、パイプの太さを非常に大きくしなければならない。したがって、工事費等において、ピークをとる側が工事費をよけいかぶるという考え方に基づきまして、御存じのとおり、これは水資源開発公団の施行令によって費用の持ち方がきめられているわけでございます。  以上でございます。
  111. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 いまの問題は、香川用水における上水道用水とそれから工業用水との問題にもあるのです。つまり、上水が金額の負担は五二%負担しておる。工水が四八%金額を負担しておる。工水のほうが少ないのです。ところが、利用水量から申しますと、上水のほうが四四%の利用、それから工水のほうが五六%の利用ということになって、利用という点からいうとこの金額がまた逆になっておるのですが、これも同じような理論ですか。不当に市民の飲料用水の方面に金をかけて、資本家の工業用水のほうが安くなっておるということですね。
  112. 井元光一

    ○井元説明員 これは主務大臣が違うもので、私のほうから工業用水と上水道のことについては申し上げられないのですけれども、農業用水のほうから推量いたしますと、農業用水をピークをとらないようにすれば、どこかに調整池のようなものをつくらなければいけないわけです。そうすれば、当然その費用は農業用水のほうで負担しなければならない。そのパイプの太さで、農業で水をピークにとろうとするからよけい費用がかかり、持たなければならないというような理論に到達するわけです。おそらくその理論と同じような結果になるのだろうと存じます。
  113. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 いま法律でそういうふうになっておるのだと言われたが、私は立法論という立場からあなたの考えを聞きたいと言うのです。それでいまあなたがおっしゃったのは、いわゆる身がわり建設方式というのだろうと思いますね。ところが、農業はピーク時に一時にずいぶん水が流れるから、それだけ建設費用をよけい負担してもらわなければいかぬのだという、こういう理論です。一応それはもっとものような気がするのです。しかし、よく考えてみると、工業用水や都市用水はどうかというと、これは年じゅう水が流れておるのです。それからかんがい用水というのは、なるほど一時にたくさん流れて工事費はかかるかもしれぬが、それはかんがい時期だけで短期間だけしか流れない。そうすると、利用時間の点からいくと、その建設方式だけでお金の割り当てをするということ、建設費がよけいかかるのだという点だけからアロケートするということは、私はどうも非常に一面的だと思うのです。それを考えるならばやはりもう一歩、年がら年じゅう水が通っておる都市用水、短期間しか水を使わない農業用水というこの利用率、こういう点をやはり私はアロケーションの中へ取り込んでこの配分をきめるということが合理的だと思うのです。あなたは立法論的にいってどう思いますか。いかにも農民に対してこういうような負担を過重にかけるという理論だと私はその理論を思うのですが、どうでございますか。
  114. 井元光一

    ○井元説明員 確かに先生おっしゃるような点を、私たちも多少は感じないわけではないわけでございます。管理等の面からいったら、確かにおっしゃるとおりの点がございます。ただし、二十八年に電源開発法がしかれまして、その後これとほとんど同様な水資源開発促進法でこの法律を受け継ぎまして、そして多少の改定が加えられましたけれども、農業側が不利であるような感覚を修正しようといたしましても、それはなかなか修正ができないのですが、これは、いろいろな技術の立場から毎回議論するわけでございますから、そんなに片寄った分け方ではないわけでございますけれども、そういう感じは確かにいたすわけでございます。
  115. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 要するに、これは資本家の政府ですからやむを得ぬでしょう。社会党内閣でもできましたら、こういう不合理は是正されるだろうと私は思うのです。  それはそれにしまして、次にお尋ねをしたいと思います。香川用水の農家負担、総額にして十七億五千万円でありますが、この反当農家負担というものは一体幾らか。それから、現在はそうだが、工事ができ上がった段階において、物価、賃金、それから設計変更があると思います。設計変更の計算は無理だと思いますが、物価、賃金、こういうようなものの変動によって、この反当五千七百円の農民負担がどの程度に上がっていくものだろうかということをお聞きしたいと思うのです。さらに、その六分五厘の金利を加算した場合には、これがまたさらにどうなるかということをお聞きをしたいと思うのです。
  116. 井元光一

    ○井元説明員 非常にむずかしい御質問でございますが、将来の物価、賃金の値上がりの見込みをまぜるということはちょっとできかねると思いますが、事務的に積み上げて計算した結果のことをちょっと申し上げます。  水資源開発公団が行なっております香川用水事業事業費は約百五億でございます。このうち農業分担額はおおむね六十二億五千八百万円であります。また、国営の香川用水の土地改良事業は、農業専用部分についてだけを行なうものでありまして、約七十五億円でございます。これらについて、いずれも国庫補助率が現在の状況では五八%になっております。この五八%を控除した残りの四二%のうち、香川県において二七・五%負担することになっております。農民負担率は一四・五%となりますので、受益の全田畑を通じて建設費の平均負担額を計算いたしますと、十アール当たりについて、水資源開発公団分は約二千九百六十円となります。国営分については約三千五百四十円になります。合計で約六千五百円になっております。  償還にあたりまして、建設期間中の利息及び償還利息、いずれも六・五%分が加算されますと、この額は二倍足らずの額になると想定する次第でございます。  なお、県営、団体営分の負担額につきましては、これらの事業が現在確定しておりませんので、無理にと申しますとおかしいのですが、現段階で算定いたしますと、非常にむずかしい点はございますけれども、大体におきまして十アール当たり一万円余りとなる見込みでございます。  以上でございます。
  117. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私は、いまの金額はちょっと低目で、実際はこれより高くなると思いますが、時間がありませんので、もうこれ以上申し上げません。  最後に、負担金の履行義務についてお聞きしたいのです。たとえば香川県で、香川用水の場合に満濃土地改良区あるいは内場池関係土地改良区、こういうところは用水の水は要らぬのですが、こういうところはどうなりますか。
  118. 井元光一

    ○井元説明員 土地改良事業の受益地域内の事業の参加資格、これは当然受益者も含めるわけですが、同意あるいは不同意にかかわらないで事業費の一部を負担することになっているわけです。個々の受益者の負担額については、土地改良区の内部で、受益者の態様あるいは程度等を考慮の上に調整することができることになっているわけでございます。また、受益地域に含まれる農地を事業計画確定後に転用する場合には、当該転用者は、その事業費の一部を転用の決済金といたしまして土地改良区に支払わなければならないことになっておるわけです。水資源事業関係においても、ただいまの御説明と同様でございます。
  119. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私の質問したことだけに答えればいいような質問のしかたをしたいと思うのです。同じ香川用水土地改良区の中で、この用水の水を必要としない満濃池あるいは内場池地域の負担義務はどうなるか。
  120. 井元光一

    ○井元説明員 いまのお答えで申し上げたわけでございますけれども、その満濃池の水を利用する人が受益地の中に入っておりますれば、いま申し上げた内容の規約でやっていただきたいと思います。
  121. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 水を使わない方も義務があるのですか。
  122. 井元光一

    ○井元説明員 はい。
  123. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 それと同じような性質の問題ですが、こういう場合はどうですか。利水しない者で賛成の旨の承諾印を押した場合に、この人の負担義務はありますか。水を使わない地域が満濃、内場池以外にばらばらにあるのですね。それはどうでありますか。
  124. 井元光一

    ○井元説明員 そういう場合も方々の地区にございますが、判こを押した者につきましては、当然国としてはとる対象といたしますけれども、これは、いま説明を申し上げましたとおり、土地改良区内において調整ができると思います。
  125. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 もう一点、水を使うつもりで判こを押しておった。ところがその農地を他に、宅地または公用地に売ったというような場合、その売った人の責任はどうでございますか。
  126. 井元光一

    ○井元説明員 ただいまの場合も決済の責任はあるわけでございますけれども、土地改良区の内部でその点は調整できるのではないかと考えております。
  127. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 愛知用水の滞納が非常に多いということが、ことしの五月の建設委員会で問題になりましたが、その経過は現在どうなっておるかということをお聞きしたいのです。香川用水の場合にも今後こういう問題が起ころうかと思いますので、その現状と、これに対する対策はどうなっておるかということをお聞きしたいと思う。
  128. 井元光一

    ○井元説明員 愛知用水の建設費の農民負担額の未収額について申し上げます。  四十三年九月末において農民負担金の徴収決定済み額は四十七億一千九百万円であります。一方、収納額は五億二千百万円でありますが、未収額は四十一億九千八百万円となっている次第でございます。  なお、この未収額の回収をはかるべく、一万五千町歩の受益面積に対しまして新たな方針のもとに行なった四十二年度の賦課額二億三千九百万円に対しては、四十三年八月末までに二億一千九百万円の徴収が行なわれております。その徴収率は九一%を示しており、この未収額は今後漸次回収されるものと考えております。  なお、農民負担金の未収額の今後の方針について申し上げます。愛知用水公団は昭和三十七年に受益面積約二万三千ヘクタールを対象に、関係土地改良区に対しまして総額六十億三千五百万円の賦課を行ないましたが、大都市近郊農業の変貌等地域的の特殊事情、農地転用とか二種兼業の急激な傾斜等ありまして、その後、受益面積の減少が見られまして、昭和四十二年度決済において約四十二億円の未収金を生じてございます。この問題は早急に解決をはかる必要がございますが、上述の農業受益面積の減少は、経済成長に伴って都市用水の需要の増大と表裏一体の現象であると考えられるので、この問題の解決にあたりましては、両者一体として処理することが妥当であると考えまして、その方向でこれまで愛知用水公団は、愛知県や土地改良区等と折衝を重ねてまいったのであります。その結果最近に至りまして、残存受益農地面積約一万五千町歩について、これまでの滞納額をも含めまして農民負担金の徴収実行計画を立てたわけでございます。受益面積の減少約八千町歩に見合う分は、その余裕施設及び余剰水を都市用水に転用いたしまして、その利用料金によって補てんする方向で処理することについて、地元農民を含めた関係者間で基本的な了解に達したのであります。四十二年十二月でございます。四十二年度からはこの方針で徴収することになったわけであります。なお、このような機運もありまして、三十七年度から四十一年度までの五年間は、徴収額二億三千百万円に達しまして、四十二年度は二億一千九百万円の徴収の実績を示したわけでございます。  以上でございまます。
  129. 足立篤郎

    足立委員長 佐々君に申し上げますが、申し合わせの時間がすでに十七分三十秒過ぎておりますので、締めくくりをお願いいたします。
  130. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私は、早く終わりたいと思っておるんですが、答弁が長くなって予定どおりいかぬ点がありますので、その点御了承いただきたいと思います。あと簡単な二間だけで終わりますから、お願いいたします。  この農民負担の徴収につきまして、いわゆる国税滞納処分の例によって強制執行するというようなことはお考えにならないかどうか。これは私たちも直接関係のあることだから、この際方針としてお聞きしておきたいと思うのです。
  131. 虎谷秀夫

    ○虎谷説明員 先ほど事官から申し上げましたように、一万五千町歩につきましては、これは農民負担金といたしまして徴収していく予定でございます。払わない場合には、当然国税滞納処分等の例によりまして徴収するというふうに考えております。
  132. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 いまの御答弁でありますが、あり得るというふうに御答弁になったんですか、あるというんですか、どっちですか。
  133. 虎谷秀夫

    ○虎谷説明員 国税滞納処分の例によって徴収いたします。
  134. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 最後に、もう一問だけでありますから。これは自治省へお尋ねをするべきかとも思いますが、ついでにお尋ねしておきたいと思うのですが、香川用水に対して、いわゆる後進県でありますので、後進県の補助率アップの適用があると思います。これは私は、すなわち五八%に対して八%あると考えておるんですが、これがありますかどうかということと、これはいわゆる国庫負担分以外の地元負担分として、これを加えた金額で県と農民とが負担すべきものではないのか、あるいは県だけがこれをとってしまっていいのか、この点ひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。
  135. 井元光一

    ○井元説明員 ただいまの後進地域の引き上げ率でございますが、これは県のほうに、県の負担を軽くする考え方からいっておりますので、地元負担の軽減にはならない、そういうふうに解しております。
  136. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 その問題は、農民に負担を求めてきめます場合に、私どもの県ではひた隠しにこれを隠しまして、そういう金が余分に入ってくることは言わないのです。農民が知っておったら、もっと農民の負担は軽くして県の負担を重くせよ、あるいは折半せよという意見が当然出てくるのだが、言わないのです。しかし、これはあなたのお答えでわかりましたから、これ以上申し上げません。  最後に、政務次官にお答えをいただきたいのですが、とにかく初めに申し上げましたところの、いわゆる一貫施行方式にいたしましても、国庫補助の問題にいたしましても、政治というものは公正に、いわゆる裏取引がないように、政治権力である地域を有利にするというようなことが行なわれず、公正に行なわれるべきだと思うのです。香川用水はこの十月に着工したばかりでありまして、これから何カ年かかけてやるわけでありますが、そういうような公正な気持ちでこれからもやっていく、また、いままでのいろいろな問題点については十分検討して、改むべきものは改めていただきたいと思うのですが、こういう問題について、最後に政務次官の御見解を承って、私の質問を終わりたいと思うわけです。
  137. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 愛知用水公団の事業を引き継ぎましたその後の水資源公団の事業等につきまして、私は、それぞれ公正な算定の結果補助金、補助率が決定したものと信じております。先生のおっしゃるように、今後とも当然これらにつきましては一そう注意しまして、公正な運営を期してまいりたいと思う次第でございます。
  138. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 終わります。      ————◇—————
  139. 足立篤郎

    足立委員長 この際、請願審査に入ります。  今国会において本委員会に付託になりました請願は、全部で五十件であります。  本日の請願日程第一から第五〇までの各請願を一括して議題といたします。  まず、審査の方法についておはかりいたします。  各請願内容につきましては、請願文書表等によりましてすでに御承知のことと存じます。また、先刻の理事会におきまして慎重に御検討いただきましたので、この際、各請願についての紹介議員からの説明等は省略し、直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  140. 足立篤郎

    足立委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日の請願日程中、第一ないし第四八及び第五 ○の各請願は、いずれも採択の上内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  141. 足立篤郎

    足立委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、ただいま議決いたしました各請願委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  142. 足立篤郎

    足立委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  143. 足立篤郎

    足立委員長 また、本委員会に参考送付されました陳情書は、消費者米価据置きに関する陳情書等外二十七件でございます。御報告いたしておきます。      ————◇—————
  144. 足立篤郎

    足立委員長 この際、閉会中審査に関する件についておはかりいたします。  すなわち、  国有林野活用に関する法律案  農業協同組合法の一部を改正する法律案  農業振興地域の整備に関する法律案  農林水産業振興に関する件  農林水産物に関する件  農林水産業団体に関する件  農林水産金融に関する件  農林漁業災害補償制度に関する件以上の各案件につきまして、閉会中もなお審査を行ないたい旨議長に対し申し出たいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  145. 足立篤郎

    足立委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、議長への申し出に関する手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 足立篤郎

    足立委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  147. 足立篤郎

    足立委員長 引き続き農林水産業振興に関する件について質疑を続行いたします。柴田健治君。     〔委員長退席、湊委員長代理着席〕
  148. 柴田健治

    ○柴田委員 漁業の公害といいますか、養殖漁業に対していろいろと産業公害を与えておる。そういう点の中で、先般十月、引き続き十二月に起きました兵庫県の家島漁業協同組合、これは養殖漁業としてノリなりハマチの養殖をやっているのですが、これに対する重油の流出による被害、同時に、千葉県浦賀水道におけるノリの養殖に与えた被害に関連してお尋ねを申し上げたいと思います。  まず、兵庫県の分ですが、これはいずれ角屋委員のほうから関連質問があろうかと思いますが、兵庫県の家島漁業協同組合がやっておるノリ、ハマチの養殖に、石田鉱油という出光石油の系列の給油会社が、船に給油するさなかに重油を海に流した、こういう事件でありますが、この事件について私たち現地を調査したわけでありますが、事故のあった日が十月二十五日のように聞き及んでおります。本格的に騒ぎ出し、そして取り上げられて、私たちが調査に行ったのが十一月十六日であったと思っております。相当の期間を経、調査に行ったのでありますが、その調査で、現地でいろいろ漁民の皆さんなり、また実際油を流したタンクを見たわけでありますが、これを見て私はつくづくふしぎに思いますことは、こういう事件が起きたというあの事件を見まして、海上保安庁は何を巡視しておるのか、この点非常に疑問を持ったのであります。  陸上の危険物の取り扱いを見ますと、消防法で明確にしており、消防法に関連して、政令として危険物を規制する政令があるわけですが、この取り扱いの基準等がでたらめでありまして、認可をとっておるのかとらないのか、その点も非常にあいまいだ。いやしくも油を売る業者というものは、基準に合わして相当の施設というものをつくらなければならぬ。それが簡単なタンクをもって海に浮かして、そして船までそのタンクを引っぱっていって給油している。こういうことが許されていいのかどうか。これを海上保安庁は、あそこは普通の港湾の区域内で起きておる、これは運輸省の管轄であるといっている。普通港湾の区域内でも、あの出入の激しい、まあ大きな船はないようでありますが、せいぜい二、三百トン、五百トン前後のように見ましたが、そういう小さい船がひんぱんに出入しておる中に油タンクを浮かして、船に給油するタンクを船まで引っぱっていく、こういうことは法治国家として許さるべきことではないという感じがしたわけです。この点について海上保安庁はどういう監督をしてきたのか、どういう取り締まりをやってきたのか、取り締まりの総元締めでありますから、実態を十分聞かしてもらいたいと思いますが、御答弁願います。
  149. 猪口猛夫

    ○猪口説明員 御承知のように、揮発性の油等の危険物輸送にあたりましては、危険物輸送取締規則に基づきまして、ただいま御質問のありましたような輸送に関する一つの基準がきまっておるわけでございます。それに基づきまして船体の設備等もできていると思います。私たちは、巡視船艇によりましてそれらの船舶につきまして立ち入り検査等をやりまして、船舶設備上の規定にのっとって、万全に設備されているかどうかというようなことは検査いたしますが、ただいま御質問のありましたように、タンクのようなものを浮かべて走るのはおかしいではないかということにつきましては、海上保安庁の所掌ではございませんので、私から何ともお答え申し上げることができませんが、危険物輸送取締規則に基づきまして、一定の基準で輸送しているものにつきましては、私たちは港則法または海水油濁防止法、水産資源保護法等に基づきまして、海上におきます油の流出、放出等の監視をやっているわけでございます。  ただいまお話のありました石田鉱油株式会社の前浜沿いの油による油濁関係につきましては、当庁は十月二十四日の真夜中に情報入手いたしまして、二十五日から活動開始いたしまして、二十八日までには全部その油を、関係の向きと協力いたしまして処理済みという報告を得ている次第でございます。
  150. 柴田健治

    ○柴田委員 船舶でそういう危険物を運ぶ場合は、やはり船舶安全法でいろいろ基準があるわけですから、その点はわれわれもよく理解しておるのですが、普通港湾の中で、港湾の指導、監督または巡視というものについては海上保安庁の任務だと私たちは思っている。港湾の区域内でそういう油タンクを浮かしておるという、なぜああいうものを見のがしたのか。これは兵庫県に本責任がある。それから、そういうものを見つけた場合には、海上保安庁は告発すべきではないか。そういう規定に反するものを港湾に浮かしておるということについては、当然告発の手続をすべきではないか、こういう気持ちを私たちは持つわけです。  水産庁にお尋ねしたいのですが、そういう事件が起きてから水産庁はどういう処置をとったか、簡単に説明願いたいと思います。
  151. 森沢基吉

    ○森沢説明員 ただいま先生の言われました事件、直ちに兵庫県の水産課から報告を受けまして、電話報告並びに県の水産課長が上京しまして詳細に承知をいたしております。現在、水産庁といたしましては、すみやかに被害額の算定等を県に対して進めるよう御連絡を申し上げております。
  152. 柴田健治

    ○柴田委員 この責任は、水産庁の立場からの見解ではどこにあると思いますか。
  153. 森沢基吉

    ○森沢説明員 責任は明らかに石田鉱油にある、こういうように思いますので、当然石田鉱油が損害の賠償をすべきであるというように私たちは考えております。
  154. 柴田健治

    ○柴田委員 業者が悪いということはわかるが、行政官庁としても海をきれいにする、それにあわせて海で生きておる産業、要するに漁業というものについては、水産庁は当然目を光らして守らなければならぬし、監督もしなければならぬし、いろいろ総合的に指導の責任があると私は思うのですが、その前に、ああいう事件が起きたら、直ちに水産庁は県を督励して、その業者に対してすぐ告発の手続をとるべきです。ああいうものは明らかに法に違反である。  結局、彼ら業者は、船舶と同じような考え方をもってああいう施設をつくったのじゃないか。百五十トンほど入れるタンクをつくっている。消防法の十六条の七でいけば、鉄道なり船舶、飛行機というものは消防法から適用外にされておる。だから海の上に船舶としてごまかしたのじゃないか。悪質な行為だと私は思うのです。陸上であろうと、海上であろうと、自力で動かないものはこれは船舶とはいえない。海の上で自力で動くというものが船舶だとわれわれは解釈しておる。そんな特別のタンクをつくるということは——ドラムかんを引っぱっていったというなら、ドラムかんは油を入れるものだということで、普通の標準型の規格に合わない容器でありますから理解できるのでありますけれども、別にああいう油タンクをつくるということは、これは明らかに違法だということをわかりながらやった。二十四日の夜半、二十五日の未明にかけて起きた事件が、私が十一月十六日に行った場合に、まだそのタンクを浮かしてある。何にも処置してない。水産庁はなぜあれを告発の手続をしなかったのか。県を督励してなぜそういう手続をやらなかったのか、業者が悪いのだという責任だけでなしに。私たちが調査をした時点で判断すれば、これは県も国も業者も結託してあんなことをやらしたという解釈をせざるを得ない。二十五日に起きたものならば、直ちに告発してあれを撤去させるとか、全部証拠物件として引き揚げるべきじゃないか。なぜそれができなかったか、そういう点はどうですか。
  155. 森沢基吉

    ○森沢説明員 水産庁といたしましては、先ほど申し上げましたように県を督励をして、先生のおっしゃいますようにすみやかに実態を把握し、措置をやるという方向は、原則としていかなる場合もとっております。このケースの場合も、兵庫県は業者に対しまして、こういうバージを使うということは、あそこの実態から見て困る、将来陸上タンクに切りかえるようにという指示を、県のほうから出しております。そういう報告を私たち受けておることをあわせて申し上げます。
  156. 柴田健治

    ○柴田委員 石田鉱油のほうは油が二トンほど流れた、三トン流れた、いや五トン以内だ。ところが、あの容器を私は見たのです。見たら、結局何トン流れたか確認できていない。容器の大きさからいうと百五十トンくらいある。百五十トンの容器を使うということになれば、これはもう明らかに消防法の第十条の危険物の基準適用を受けるわけです。あれは船舶でないのですから、おそらく水産庁は船舶として認定してない、海上保安庁も認定してないと思いますが、そういうものを浮かして給油をするなんということは、はなはだ常識に欠けている。常識のないものです。  こういう点で、漁民に与えた影響をまだほおかぶりして、二トン流れた、三トン流れた、中和剤を放出したからもうだいじょうぶだと、県なり国が業者の言い分をそのままのんでいる。われわれは兵庫県の県庁で説明を受けたが、業者の言いなりそのままを説明している。こういう姿勢だからこそ、ああいうものをでたらめに海の上に浮かして給油する。ああいう行為をしたら、一年以下の懲役であり十万円以下の罰金ということは明確になっている。この点について告発してきびしくすべきではないか。それで、責任の所在が業者ということならば、業者は明らかに補償もしなければならぬのに、まだ補償がもたもたしている。県がきつい態度をとらない。国もきつい態度をとらない。こういうことを許すから補償問題まで難航せざるを得ない。  それにあわせて今度通産省は、出光興産の十一万バーレルの石油コンビナートの新設の許可を来月中にするんだというような情報を聞きました。あの付近の三十四の関係漁協は、条件付賛成もありいろいろ意見があるようでありますけれども、そういう小さな問題を放棄して、今度新しく出光興産の石油コンビナートをつくるのに、国は積極的な姿勢で漁民を説得するという役割りを果たしている。こんな小さな問題でも、漁民にとっては小さいことではない、大きい問題です。ノリの養殖、ハマチの養殖というものは相当資本がかかる、先行投資がたいへんなんです。それを一夜のうちにめちゃくちゃにしてしまうというやり方、それを追及されて初めて責任は業者にありますなんて、発見したらすぐ告発の手続をとるべきなんです。水産庁はなぜ県にそれだけのことをやらせなかったか、その点をひとつ……。
  157. 森沢基吉

    ○森沢説明員 いま御指摘のことは、先生よく御承知の姫路の出光の製油所の誘致の問題ともからんで、いろいろ地元に複雑な事情があるようでございます。したがいまして、地元の協同組合におきましても実は態度を決しかねておる、そういうことを私たち県のほうから承っております。先生の言われる御趣旨はよくわかりますので、とりあえずわれわれといたしましては、先ほど申し上げましたように、すみやかに県を通じて調査をさせまして、しかるべき措置を加害者に対してとらせるというふうにいたしたいと思います。
  158. 柴田健治

    ○柴田委員 ああいう石田鉱油の店の中には、危険物を取り扱う資格を持っておる人がたくさんおると思う。特にああいう大きい会社になると、主任というものがなければならぬ。これは消防法、危険物取り締まりのそういう政令でちゃんときめられておる。そういう資格を持っておる人は、どういう給油の施設をしなければならぬということは、陸上でも海上でも明確になっておる。それをやらない者に資格を与えたというのは、兵庫県も兵庫県だと私は思うのですよ。危険物を取り扱う業者にはちゃんと責任者がある。それを海の上にタンクを浮かして、船が沖に着いたら、そこに油タンクを引っぱっていって給油するなんということは非常識きわまる。私は、この補償については県も国も責任があると思う。法を犯しておる。これは全部補償すべきだ。ただ二トン流れた、三トン流れたという数字じゃない。百五十トンの容器なら百五十トン流れたという解釈をするべきだと私は思う。  私は、終戦後経験があるのですが、話は余談になりますけれども、いなかでどぶろくをつくった。一斗のかめで一升どぶろくがあったら、国税庁はどういいましたか、一斗つくったものだということで罰金をとったのですよ。それと同じように、百五十トン入った容器が流れたから、百五十トンみんな流れたという解釈をして漁業補償に取り組むべきである。それを二トン流れた、三トン流れたなんという言いわけは立たぬと私は思う。水産庁どうですか、この補償問題については、そういう姿勢で積極的に指導もし、調停もするという心がまえがありますか。
  159. 森沢基吉

    ○森沢説明員 率直に申し上げまして、こういう被害問題は、全国各地にわたりまして非常にたくさんございます。私たちが水産庁から一々出向きまして解決をしていくというわけには物理的にもまいりませんので、原則といたしまして、各地の県の機関を通じましてこれに協力をしながら、まず被害の実態の確認、加害者に対する措置の要請、そういうものを従来からも行なってまいりましたし、このケースにつきましても行ないたいと思います。もちろん水産庁といたしましては、漁業者の立場において協力することは申し上げるまでもありません。
  160. 柴田健治

    ○柴田委員 通産省にお尋ねしたいのですが、これに関連して、出光のあそこのコンビナートの建設に許可を近々に出すという情報なんですが、そういう経過と漁業協同組合との話し合いの経過、それからもう一点は、認可する以上は、現在まで四日市にしろ水島にしろ至るところ石油コンビナートの建設に伴って公害が発生をしておることは事実でありますし、御承知のとおりだと思いますが、今後新設する石油コンビナートの建設に伴って、そういう石油精製基地ができると、それに関連産業というものが出てくるわけであります。これは当然のことなんですが、この関連産業を含めてどういう基地の構想を持っておられるのか。また公害対策というものは、今度新しく認可する限りにおいては、業者のほうの認可をする条件として公害対策というものをどういう方法で、どういう基本構想で指示していくのか、その点、ひとつ通産省のほうのお考えをお答え願いたいと思います。
  161. 成田寿治

    ○成田説明員 お答えいたします。  出光興産の姫路製油所につきましては、十月の石油審議会で、十五万バーレルの申請でありましたが、十一万バーレルの許可をしてよいという答申が出たのでございます。  ただ、この姫路の製油所につきましては、前々からいろいろ地元との関係で問題がありますので、石油審議会におきましても、この姫路製油所だけについては、特にこういう注文がついて出ておるのであります。「当該特定設備の新設計画に関し、公害対策、漁業問題処理地元との調整に努めるものとすること。」そういう地元との利害関係あるいは公害上の話し合いを十分に詰めた上でやれという異例の注文が出ておるのであります。したがいまして、われわれはこの石油審議会の注文にあるような事情もございますので、いますぐ許可をするということは考えておらないのでありまして、地元との話し合いの経緯をいろいろ見て、その上で許可を考えていきたいと思っております。  それから、漁業組合との話し合いについてどうかというお話もありましたが、御承知のように、いま出光興産が県や市の立ち会いのもとで、播磨灘の漁業組合、三十四組合の団体でありますところの播磨漁友会と、公害防止対策あるいは補償問題等について話し合いを重ねております。それで、いろいろ合意に達した点もあるやに聞いておりますが、全体としてはまだ話し合いがついていないというふうにわれわれは聞いておるのでございます。したがって、今後いろいろ県、市のあっせんによってどこまで話し合いがつくか、その経緯を見た上でこの許可をしていきたいというふうに考えております。  それから、今後各地におきまして、いろいろ電力、石油化学等とのコンビナートの石油基地がつくられつつありますが、これに対する一般的な公害対策の方針としましては、個々の計画に即しまして具体的な公害対策の計画を出させまして、その内容審査して、地元あるいは漁業との関係が問題ないという検討を行なった上で、認めるものは認めていくというふうに考えております。  それから、特に公害で亜硫酸ガスの問題等につきましては、脱硫装置をつくらせる等の条件も付して、特に慎重に公害対策については検討して、その上で認めていくという方針になっております。
  162. 柴田健治

    ○柴田委員 審議会のほうが、十五万バーレルの申請に対して、十一万バーレル許可をしてもいいという答申をされた、答申に沿って慎重に検討をしておられる、こういうお答えなんですが、まだすぐに許可を出す段階ではないというように解釈してもいいのですか。
  163. 成田寿治

    ○成田説明員 いますぐ許可をする段階にはないのであります。と申しますのは、先ほど言いましたように、十五万バーレルの申請に対してカットして十一万バーレルにしました。したがって、カットされたかっこうで会社から新しい公害防止計画等が出てまいるわけでありまして、もちろん、資金計画等のデータも出てまいるのでありますが、それがまだ会社から出ておらない。それにもう一つは、さっき言いましたように地元、特に漁業組合等との話し合いもいま話し合いが進行中で、まだめどがついていない。そういう事情からいたしまして、いますぐ許可をする段階にはないというふうに考えております。
  164. 柴田健治

    ○柴田委員 また通産省にお尋ねいたしたいのですが、やはり漁業協同組合と話し合いがつくまで、漁業協同組合との合意に達するまでは許可を出さない、そういうように、漁業協同組合の意見というものを通産省としては十分取り上げていくという姿勢ですか。
  165. 成田寿治

    ○成田説明員 漁業組合との話し合いがつくまでということでありますが、ただ、話し合いというのも一〇〇%つくのか、あるいは相当総合的に考えてついたといえる状態にあるのか、これは具体的にはちょっとデリケートな問題があると思いますが、総体的に考えて、地元と大きな問題が起こらないというめどがついて初めて許可をする。その点につきましては、十一月の十四日の商工委員会で、前の通商産業大臣の椎名さんが、堀委員の質問に対してもそういう趣旨答弁しておりますが、われわれもその方針でやっていきたいというふうに考えています。
  166. 柴田健治

    ○柴田委員 いずれ角屋委員から質問されると思いますから、この程度で……。  私はあわせて、先般十二月五日浦賀水道で起きたところの、日本郵船と友田産業と共同運航しておる船と、それからインドの国籍を持っておるアディジャヤンティ号という船が衝突という事故を起こした。これによって二十五トンの重油が流出したということから、あの付近における千葉県側の蔵波漁協、奈良輪漁協というような漁協のノリの養殖にたいへんな被害を与えた。被害額は四億四千万だということを聞いておるのですが、たいへんな被害である。私はこの点については現地を見ておりませんし、十分把握してないのですが、漁民のほうから強い不満といいますか、補償について強い要求が出てまいっておるわけであります。これらの点について、水産庁はいまどういう取り組みをしておるのか、これに対する解決の方法、取り組みの姿勢、この経過をひとつ御説明を願いたいと思う。
  167. 森沢基吉

    ○森沢説明員 いま御指摘のありましたタンカーによるノリの被害事件でございますが、水産庁といたしましては、県のほうに総務部長をヘッドといたします対策本部が設置をされまして、いま漁業者からは四億四千万程度の被害という申し出がわれわれのほうにもなされておりますが、県はまた県の立場でいろいろ調査をやっております。したがいまして、水産庁といたしましては、この県の対策本部を中心として進められる措置につきまして、いろいろ御援助を申し上げると同時に、すでに地元におきましては弁護士を立てまして、相手方に対して訴訟を提起するという準備ができておるようでございます。  かつて昭和三十七年に、やはり富津沖でイーグル・クーリエというアメリカの船が座礁いたしまして、ノリに大きな被害を与えたことがございますが、そのときも、必要に応じて水産庁といたしましても、相手方の弁護士等とも会いまして、極力解決を早期に進めるようにということをやった経緯がございます。やり方はいろいろあると思いますが、そういう県の措置に対しまして、できるだけわれわれは協力、援助をしていく、こういう考え方でございます。
  168. 柴田健治

    ○柴田委員 海上保安庁にお尋ねしたいのですが、こういう事故が起きた場合に、事故船に対する情報の確認といいますか、事故の起きた地点なり、船種なり、そういう情報がいち早く入る、入った場合にどういう処置を海上保安庁はとられるのか、その点御説明願いたいのです。
  169. 猪口猛夫

    ○猪口説明員 一般の海難事故発生の情報が入りますれば、もよりの航行中あるいは哨戒中の巡視船艇をその海難事故現場に急行させるとともに、海難事故の様相に応じまして、待機中の巡視船等を動員して派遣するのがならわしでございます。この種のタンカー事故があった場合には、先ほど申しました一般の海難救助行動に移るとともに、いち早くそのタンカーの被害状況に応じまして一般に流出油の状況を周知するとともに、その流出油の拡散防止の措置を講ずるわけでございます。  御承知のように、その方法といたしましては、オイルフェンスの展張あるいは中和剤による油の中和方法等によるのでございまして、本件につきましても、この情報を富浦丸より入手いたしまして直後、付近哨戒中の巡視艇を急行させるとともに、総数十五隻にわたる巡視船艇並びに航空機を出動いたしまして、事件の処理に当たった次第でございます。
  170. 柴田健治

    ○柴田委員 浦賀水道のこの千葉県の事件を見ますと、もう少し注意をしてやれば、こうしたノリの養殖に影響がなかったのではないかという疑問を私は持つのです。たとえば、事故が起きた、かってに修理をする、修理がもうできたのだという解釈でそのまま船を運航してしまう。それを運航停止をして、保安庁の巡視船が、完全に修理が終わったかどうかという確認、これならもう間違いないという確認、そういう確認において運航をさせる、そういう指導ができておったら、あれだけ広範囲に、遠距離に油を流さずに済んだのではないか。この点については、あまりにも船業者のほうが無責任な行動をとったのではないか。ただ一方的な解釈で、もう修理が終わったのだ、もう油の流出はないだろう、こういう一方解釈でどんどん船を運航さしたというところに、私は問題が起きたというように感ずるわけでありまして、もう少し船会社のほうも細心の注意を払うべきではなかったか。事件が起きて、あとからとやかく言うてもいたし方ないのですが、しかし今後の問題としては、海上保安庁はやはり法規に基づいて、そういう危険物を運ぶ船舶については、現行制度の中で、たとえば船舶の構造令をもう一回も二回も検討して改正をする必要があるかないか。     〔湊委員長代理退席、委員長着席〕 それは現行制度の中で運用できるという面もあるでありましょうけれども、改正しなければならぬ点があるのではないか。こういうふうに私は感じるわけでありまして、やはり船の検査は、新造をやる、検査をして許可をして出す、また運航中で検査の期限がくれば検査をするというように、ただ形式的の検査でなくして、そういう危険物を運ぶ船舶については常時検査をする、中間検査もする、こういう姿勢が必要ではないか。それには現行の法規を改正する必要もあるのではないか。こういうように私は感じるわけでありまして、先般の浦賀水道の事件は、先ほど申し上げたように、船長がもう少し慎重に行動をとったら、あの広範囲に海をよごさなくても済んだのではないか、こういう気がするのですが、それはあとの祭りですが、今後の問題として、海上保安庁の現在の機構で、陣容で、日本列島は御承知のように周囲が海で、沿岸漁業に与える影響というものはたいへんなものなんですが、完全なる監視、巡視、そういうものができるのかできないのか。いまの陣容と機構とでやれるという自信があるのか。今後ますますこういう被害が起きてくる可能性が十分ある、こういうことをわれわれが考えた場合に、現在の機構と陣容で完全に国民の期待に沿えるような、また漁民の期待に沿えるような、そういう力が発揮できるのかどうか、それをひとつお答え願いたいのです。
  171. 猪口猛夫

    ○猪口説明員 ただいまお話しのありました件はごもっともな点が多々あるのでございますが、私、最初に先生の御質問にお答えする前に、本件の問題点を一つ申し上げたいと思います。  先ほどお話しのありましたように、もう少し手の打ち方が早ければああいう被害を拡大せなくて済んだんではないかというお話がありました。事実私たちはそれを反省しているのでございますが、なぜそうなったかと申しますと、当日は非常に視程が悪くて、そのために各事故関係船舶の動静というものがはっきりつかめなかったということが、先生の御心配になったようなことになったと思います。それからもう一つは、たとえ視界が非常によくて急行いたしました巡視船艇が該船を発見することが容易で、直ちにその事故現場におきまして当該船舶を指導し得る状況にあったといたしましても、現行制度では、その巡視船艇または海上保安官にそういう強力な指導権がございません。端的に申し上げますと、千葉に向かって動きつつあるインド船に停止命令をかけまして、直ちに講ずべき措置を命令するのが好ましいのでございますが、現行制度では、残念ながらまだそういうことができない状況になっております。それで私たちといたしましては、目下勉強しておりまする海上交通法の場におきまして、浦賀水道のごとき狭水道のところでは、そういうことができ得るようなことを考慮しておるわけでございます。  最後に、先生からお話しのありました、海上保安庁は国民の期待に完全にこたえ得るだけの自信があるかということでございますが、私たちは現在の巡視船艇並びに航空機が、国民の期待に沿い得る完全な自信は持っておりません。それで、毎年その増強、整備等につきまして鋭意努力しておるのでございますが、まだその機会に至らないのでございます。ただし、それが完全な整備体制に入らなければ、われわれはただ手をこまねいておるかと申しますと、そういうことはとうていできません。私たちは国民から与えられました施設設備、機具等を十分活用いたしまして、私たちの現在持っておりまする総力を結集いたしまして、万全を期するように努力するほかはないと信じておる次第でございます。今後ともそういう心がまえで、本件のごとき事例につきましても処理していきたいと思っている次第でございます。
  172. 柴田健治

    ○柴田委員 海上保安庁のほうはいろいろと広範囲な区域を巡視され、また取り締まり、またそうした安全を守っていくという安全性の責任があるわけですが、そういう責任の分野からいって、もっときめのこまかい——先ほど申し上げた兵庫県の家島のように、普通港湾内において油タンクをかってにつくって浮かしている。ああいうものを私たちは見て、陸上でもああいうことをしたらたいへん大きな問題だし、一ぺんに営業停止。まして出光興産の系列、資本が出光興産でありますから、もうああいう不法行為をする業者、漁民を苦しめるような業者に、通産省のほうが直ちに認可をおろすなんということはもってのほかだと思う。自分の子会社の危険物の取り扱いがわからぬようなそういう業者に、新しいコンビナートの製油所を新設許可をするなんというのは、通産省としてはもって許すべきではない。こういう強い姿勢を持ってもらいたいし、また海上保安庁のほうも、いろいろといまの陣容ではむずかしい点もあろうと思いますけれども、法治国家である限りにおいてはああいうことは許すべきではない。直ちに撤去を命ずるべきだ。保安庁はそれだけの取り締まりをしてもらいたい、こういう気がするわけです。  水産庁のほうは何としても漁民の保護、守ってもらわなければならぬ。次の再生産の経費、いま先行投資をし、いろいろ投資の償還もできないというそういう災害を受けているわけですから、生活の脅威でもあるし、また次のそうした生産の脅威である。両面の脅威を受けておるわけです。被害を受けておるわけですから、水産庁は両方とも——千葉県のノリの養殖の被害についても、いま浦賀水道のほうの報告を聞いても、また実情を漁民の皆さんから聞いても、船会社のとった行動というものは非常に軽率だ。どんなに考えたって、私はしろうとなんですが、しろうとが考えても、これはちょっと常識が欠けておる。こういう気がどちらも、兵庫県のほうもする。これはそれぞれの業者のもう手落ちだ。手落ちどころか明らかに悪意がある。千葉県のほうは悪意があるとは思いませんけれども、兵庫県のほうは悪意だ。こういう解釈をしておるわけで、水産庁のほうも誠意をもって、水産庁が持っておるあらゆる力を結集して、この早期解決、早期完全なる補償、損害賠償、こういうものを漁民の立場に立ってやってもらいたい。これを強くお願いをしておきたいのです。  政務次官に一つ最後にお願いしたいのですが、数々こうして漁民がたいへんな被害をこうむるわけです。漁民の被害というものは、そういう油の流出もありますし、陸上から流れていく汚物や汚水の被害、そういうもの全体の被害なのですが、特に現今では油の被害が多い。日本は石油資源のない国でありますから、外国からどうしても運んでくる。この石油の輸入総額は相当の数量でありますが、これが入ってくる限りにおいては、まあ石油ばかりじゃございませんが、いろんな危険物によって漁場が荒らされ、沿岸漁業でどんな養殖漁業を農林省が奨励しても、もう一歩というところでこういう被害をこうむる。農民の生産意欲、勤労意欲を極度に減退させるような被害がある。そういうことを考えると、今後もいつ起きるかわからないということを考えたら、被害が起きたら直ちに国会で追及を受け、いろいろと業者との話し合い、補償の問題、こういういつも同じことを繰り返すというやり方は好ましいことではない。国においてそういう問題を処理する一つの基本的な制度が必要ではないか、こういう気がするわけです。  いまトン税という税金を船舶からとっておるわけですが、このトン税を改正して、とん税の中で、船舶によって被害を受ける漁業、要するに船舶漁業保険制度をつくったらどうか。生命保険制度、火災保険制度のように、海上においても船舶一トン当たり何ぽかの負担金を出していただいて、船舶漁業保険制度をつくって、被害が起きたら直ちにその保険金から漁民に対して損害補償していくという、そういう制度をつくったらどうかという気がするのです。その他漁民の失業保険制度もわれわれは考えざるを得ない段階にきておると思いますけれども、それよりかまず船舶漁業保険制度をつくるべきだ、こう私は考えておるわけです。政務次官どうですか、こういう制度を。油が流れた、すぐわあわあ騒ぐ、また委員会関係者に来てもらっていろいろ問題点を追及するというよりか、船会社にももっと責任を感じさせる、要するに受益者負担という原則からいっても、当然こういう制度をつくるべきではないか。日本は特に周囲が海であります。船舶の航行が非常にきびしい。私が言わなくても、海上保安庁のほうが安全交通法とか船舶交通法とかなんとかいうことを先ほど言われましたが、そんなことを私は言うておるのじゃなくして、船会社がもっと責任をもって漁民に対する保護といいますか、われわれも船を通してもらうのだけれども、漁民を守らなければいかぬという考え方に立って、責任体制の確立ですよ。こういう制度は、どうですか政務次官、検討する必要がないと思いますか、あると思いますか。
  173. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 船舶による漁業のいろいろな公害につきまして、新たな補償制度を何とか確立すべきではないか、そのためにとん税等活用してこの補償制度をひとつ考えろ、こういう御意見でございます。私ども農林省の立場は、漁民を守り、沿岸養殖業も振興してまいらなければいかぬ立場でございますので、非常に傾聴に値することだと思いますが、御承知のとおり、公害問題はその因果関係が非常にめんどうであり、微妙でございます。また、船舶関係等との関連を考えますと、運輸省と私ども十分その面で協議もしてまいらなければいかぬわけであります。実は、この前からの事件あるいはいままでもそういう事故等がたくさんございますので、目下私どもの省と運輸省では十分協議中ではありますけれども、そういう方向で今後も検討したいと思います。  また一方、御承知のとおり公害基本法に基づきますいろいろな法制の整備が進んでまいっております。当面は紛争処理のいろいろの法律によります処理制度というものを活用いたしまして、できるだけ早くこの紛争の処理に当たりまして、被害の救済に万遺漏なきを期していきたい、現実の行政の運用としてはそういうようにやっていきたいと考えております。
  174. 柴田健治

    ○柴田委員 それではもう一、二点、水産庁にお願いし、消防庁のほうにも今後の運用についてお願いして、お答えをいただきたいと思うのです。  先ほど兵庫県の危険物取り扱いの違反について、消防法の違反であり、また政令として危険物取り扱いの規則にも相反しておる。消防法を読んでみると、あの取り扱いは各条に全部違反しているわけです。この点を考えた場合に、消防庁のほうは県のほうへ、地方公共団体の関係者に直ちに適切なる処置をするようにお願いしたい。明らかに適切な処罰といいますか、それをすべきだ。あのまま置いておいてはいけない。何年あのままの姿で放置したかということを考えた場合に、これはもう適切なる処置をすべきだ、法に照らし合わせてやるべきだ、そういうきびしい姿勢でやってもらわないとこれはけじめがつかないと思う。こんなのが日本の国内にあったということ、こういう事件を起こしたということ自体、このまま放置したら、これはもう国民が納得しない。何年間ああいうことをして放置したのか、こういうことを考えた場合に、消防庁のほうも法に照らし合わせて処罰をする、告発をする、こういうくらいの姿勢を持ってもらいたい。そういう見解を聞きたいのです。  それから、水産庁のほうもこの補償については早急に、完全に、もう責任の所在というものは明らかになったんだから、責任の所在を明確にした以上は、それだけの処置、補償については早急に漁民の納得するような、そういう漁民の立場で水産庁はやってもらいたい。だからもう早急にやっていただかないと、いつまでも延ばしておくような問題ではないと私は思うので、早急にやってもらいたい。そういう心がまえのお答えを願いたい。
  175. 高田勇

    ○高田説明員 ただいま御指摘の点につきましては、私どものほうでも十分な関心を持っておりますので、調査を進めまして適切な処置を講じてまいりたいと思います。
  176. 森沢基吉

    ○森沢説明員 漁業者が困りませんように、いま先生のおっしゃいました線に沿いまして、県と一緒に強力に、早く実害補償がとれますように努力していきたい、そのように思います。
  177. 柴田健治

    ○柴田委員 大蔵省は見えておりますか。
  178. 足立篤郎

    足立委員長 大蔵省の秋吉主計官が見えております。
  179. 柴田健治

    ○柴田委員 大蔵省の主計官にお尋ね申し上げたいのですが、一昨日農林大臣に対して、同僚の工藤委員からお尋ねをされた問題に関連質問としてお尋ねしたいのですが、今度四十四年度の予算編成にあたって、地方財政計画を作成するにあたって、大蔵省のほうの考え方を仄聞すると、新聞の報道等を見ますと、地方財政は非常に好転した、豊かになった、いろいろと国の財政と地方財政と均衡ある、苦しいなら苦しい、楽しいなら楽しいというそういう考え方に立って、国のほうが苦しいんだから、地方財政はよくなったんだから、財政配分で検討するという考え方のようです。  そういう姿勢の中から出てまいりましたものはたくさんございますけれども、特に工藤委員から農林大臣に、農業改良助長法に基づいて、いま都道府県に農業改良普及員、生活改良普及員と合わせて約一万四千人足らず国庫補助職員として配置しておるわけですが、国のほうは、基準でいえば三分の二の補助、地元都道府県は、地方公共団体は三分の一ということになっておるわけです。ところが、実質的には賃金の基準を低く押えておりますから、地元超過負担という問題が長い間論議されて、大蔵省のほうも近年超過負担分の解消という、そういう姿勢で取り組んできていただいておる。非常にわれわれも好感を持ち、大きな期待を持ってまいりましたが、先ほど申し上げたように、地方財政計画を作成するにあたって、地方財政がよくなった、今度は交付税の率を下げる、三二%を二%ぐらい下げて三〇%ぐらいにするのだ、こういう報道から、地方公共団体六団体といわれる団体から非常なきびしい追及といいますか、陳情がございました。そこで、いろいろな補助打ち切りというもので、特に大蔵省のほうは交付税率は下げないかわりに、先ほど申し上げましたように、国庫補助職員を地方公共団体に肩がわりをする、こういう考え方がいま流れておるわけであります。  この点について、地方公共団体の農業関係は、特に農民に直接つながりを持っておる機構だけに心配している。農民も、いま食管問題で非常に心配をいたしておりまして、大蔵省というものが食管会計もこわすのではないかと心配している。またその上農薬の補助も打ち切るのだ、国庫補助職員も打ち切りだ、こういう追い打ちをかけられると、農民のほうはいよいよいても立ってもおられないという気持ちがするわけであります。そういう点で工藤委員が心配して農林大臣に質問をした。  ところが農林大臣のほうは、そういうことは一切ありません、農林省としてはそういう地方公共団体に肩がわりするようなことはしません、現在の制度を守り、かえって拡充していくのだ、経営の改善を今後一そう強く要求されるそういう事態に入って、そういう改良普及事業について府県に肩がわりするようなことはいたしません、こういう答弁があったのですが、心配なのは、大蔵省が肝心なさいふのひもを握っておるわけですから、大蔵省がいやだといったらどうにもならない。長谷川農林大臣がどんなに気ばっても、大蔵省の人はなかなか言うことを聞かぬらしい。そういうわれわれの印象からいうと、先入感からいうと、それが一つの心配でありますから、いまお忙しい中を来ていただいた大蔵省の秋吉主計官に、大蔵省はそういう補助金について、特に農業改良助長法という国の法律を根底からくずすような制度に対しては、そういう考え方は毛頭ありません、農林大臣答弁したとおりであります、こういうお答えをいただけば答えは簡単でありますので、大蔵省の主計官、ひとつお答えを願いたいと思います。
  180. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 いろいろ交付税率の引き下げの問題、補助金の整理等について御指摘の点は、私どもの考え方も大筋において御指摘のとおりであります。何とか国、地方を通ずる財政運営が健全になるという方向で、いろいろな面で私ども大蔵省はいま苦慮しておるわけでございますが、一つは交付税率の引き下げの問題、それからそれと関係はございますけれども、また別途の問題といたしまして、従来とも補助金の整理、合理化につきましては、政府といたしましてはいろいろ努力してきておるところでございます。  補助金の整理、合理化につきましては、補助金等合理化審議会であるとかあるいは臨時行政調査会の改革意見であるとか、あるいは地方制度調査会の答申であるとか、いろいろな面から、各界から、もっと政府は勇断をもって補助金の整理、合理化をやるべきであるという叱吃激励を受けておるような場面もありますし、予算委員会においても、補助金整理をもっとやるべきだ、こういうおしかりを受けていることも間々あるわけでございます。  それはそれといたしまして、何とかして財政資金の効率的な運用をはかるとかあるいは行政運営の簡素、能率化をはかるという見地からいたしまして、できるだけ補助金、たとえて申しますと零細補助金等はなるべく整理統合をやる。その一環といたしまして、職員設置補助金の御指摘でございますけれども、この職員設置補助金については、もうすでにそれ自体が地方公務員でございます。したがって、交付税計算の財政需要計算になじむような経費でございまして、こういったようなものにつきましてはできるだけ補助金は廃止いたしまして、地方の一般財源で処理するのが至当であるんじゃないか。これはまた補助金等合理化審議会の答申等いろいろの意見においてそういう指摘を受けているわけでございまして、私ども、特に農業改良普及員ということではなしに、委託系統を除きますいわゆる地方公共団体の職員設置補助金につきましては、漏れなくすべてこの際根本的に見直しをいたしまして、地方の一般財源で処理したらどうかということで、ただいま各省にも御相談を申し上げている、こういう段階でございます。
  181. 柴田健治

    ○柴田委員 農林大臣は、この間工藤委員に気ばったお答えをしたのですが、どうも主計官のお答えによると、各省へ内々いろいろな形で補助金の整理について相談をしておる、こういうお答えなんですが、そこがわれわれは非常に心配なんですね。いま大きく農政が変わろうとしておる。そういう段階で特に農民が不安に思っておるのは、現行制度で——まあ不備な制度もあるわけですが、しかし、それこそ前の西村農林大臣ではないが、農政の根幹を守るということばをよく聞くのですが、その根幹が根底からくずれるような、食管の問題にしろ、そうした農業の技術革新の最も中心的な機構として、これから特に営農方式、また経営方式というものが大きく変わろうとするときに、そういう技術的な面を公共団体に肩がわりしてはずすという考え方、身分からいうと地方公務員であるからはずしてもいいんだといういまの考え方、それなら農業改良助長法という国がいままでとってきた制度の、それこそ基本的な方針というものが根底からくずれてしまう。そういうものをくずしてまで、ただ金のために——いま職員の補助が四十三年度で六十二億円程度だと記憶しておりますが、その他を含めたところで七十億円ほど、その六十二億円か七十億の金を削って、その負担を地方に回してしまう。それで日本の農政をどうするんだ。農林大臣のほうは血の通うたあたたかい農政をやりますと言う。これはこの間から二、三回聞きました。そういう制度を大蔵省のほうからぶっつぶしてくる。農林大臣がどんなに気ばって血の通った農政をやろうとしても、大蔵省がぶち切ってしまったら血が通いはせぬ。それこそ死んでしまう。血が通うどころか、血を供給する血管を切ってしまうのだからそれこそ死んでしまう。農民の息の根をとめるということになる。そういうことを大蔵省が考えること自体が私はおかしいと思う。  ただ、大蔵省は国民の金を持っておるところなんだから、国民民な立場に立って予算執行、予算編成ということはわかりますけれども、現在まで歴史を持って続けてき、今後大いに活用しなければならぬ段階にきておるそのときに、改良普及事業をぶち切るなんていうことは、もう技術体系はそのままでよろしい、身分は地方公務員であるからもう地方へ肩がわりをしてもよろしいなんていう、そういう考え方自体がおかしいのであって、農林大臣はこの間ああいうことを委員答弁したのですが、農林大臣をわれわれは大いに信頼しているが、しかし一つの不安がある。マスコミや何かから報道をされるものだから、心配だから大蔵省の主計官に来ていただいて関連質問としてお尋ね申し上げた。いまお聞きのとおりのお答えなんですが、大蔵省がああいう姿勢で農林省に相談がいま来ているということなんだが、どういう程度受けておられるのか、政務次官ひとつお答え願いたいのです。
  182. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 私も、実は大蔵政務次官をやって大蔵省に一年四カ月ばかりおりました。いま秋吉主計官が言われたことにつきましては、一般論としては理解できるわけでございます。しかし、御承知のとおり、いま農政というものは重大な転機に立っているわけでございます。ことにこれから私どもは、総合農政ということばがいいか悪いかわかりませんけれども、総合的に農政の推進というものをはかっていかなければいけない重大な時期にあるのでございます。これは大蔵省でもよく認識をしていると思います。そういたしますと、この総合農政を推進するにあたって、それを第一線にあって技術的に指導をしていこうというような、特にわが省の関係のいろいろな人員につきましては、これは軽々に財政の面からいろいろ制度を変えていくというようなことで、農業の大事なこの時期に、指導に当たる技術者を不安動揺におとしいれたり、あるいは効果があがらないようなやり方をすることは、国家的に見ても私は得じゃないと思う。  そういう意味で私ども農林省は、あくまでも大臣が言明を皆さま方に申し上げましたように、特に農業改良普及員等につきましては、つい最近もできるだけ濃密指導というような線で個所数も整理統合いたしまして、特に技術的な指導の効果をあげようということを全国にわたって、ようやく都道府県と協議の上、実施の段階に入ったばかりでございます。そういたしますと、一般論としては私どもは大蔵省の意見を十分聞くにやぶさかではありませんけれども、少なくとも農林行政につきましては、私どもとしていまの段階で、そういうような混乱を与え、不安を与えるような措置をとるべきでないという、強い決意をもってひとつ予算編成に当たるつもりでございます。
  183. 柴田健治

    ○柴田委員 大臣も次官もまことに心強い答弁を聞かしていただいて心強いのですが、大蔵省の秋吉主計官が一般論だけでここで言われたんじゃいかぬのです。結局主計官、農林省意見を十分聞いてもらい、それからひとつ腹をきめてもらわないと、いまマスコミで流れてくるものは非常に心配のほうが多いのですよ。農林省は気ばってみても大蔵省のほうが依然として強いのだから、金を持っておるほうに締められたらどうにもならぬじゃないか。地方財政計画も自治省のほうへこうだ、こういうことで押しつけてしまうと、自治省のほうは今度大きな迷惑をするということになる可能性があるので、特に主計官に、この点についてはもう一回ごめんどうでも、切らないような考え方をすなおにひとつお答え願いたいのです。お願いします。
  184. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 お答えいたします。  私どもは、農業改良助長法の農業改良普及員制度について、その存在をとやかく言っているわけではなくて、その存在を私どもが非常に高く評価しておることは、私から申し上げるまでもないわけでございまして、要は、補助金みたいなひもつき行政でやるのがいいか、地方の一般財源で処理するのがいいかということでございまして、補助金を廃止いたします場合には、地方交付税の基準財政需要の単位計算の中に織り込みまして、農業改良普及事業支障のないように十分配慮いたす所存でございます。
  185. 柴田健治

    ○柴田委員 時間が来ましたからもう終わりにいたします。いずれ角屋委員から出光についてあらためて関連質問として核心に触れる質問があると思いますが、農林省のほうも、特に水産庁には最後までお願いしておきますけれども、これについては、千葉県のほうも兵庫県のほうも至急に解決するように取り組んでもらいたいということを強くお願いして、質問を終わります。
  186. 足立篤郎

  187. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 たいへん時間もたっておりますし、私は三十分というふうにいわれておりますので、その範囲内で御質問を申し上げたいと思います。  実は、いま柴田委員が取り上げた出光の姫路への進出問題ですが、過般、私、出光のほうにも調査団長で参りましたが、静岡の浜岡町の原子力発電所問題も、調査団長でつい最近行ってまいりました。それらの問題もありますし、さらに予算編成を前にして、戦後二十三年を経過しておる開拓政策の諸問題というふうなものについても、実は予定をしておったわけでありますが、きょはむしろ出光問題と、最近非常に大きく国民の関心を呼んでおります沖繩の問題の中で、農林水産に関連する一、二点について特に御質問申し上げるということで、簡潔にします。  出光の姫路進出の問題については、先ほども柴田委員から、現地に参りました立場に基づいて御指摘がございました。これは申し上げるまでもなく、昭和四十一年の五月に出光興産姫路製油所の起工式が行なわれるにあたって、漁民並びに出光進出反対共闘会議の反対で、ついて姫路進出が中止になったというふうなところから、ずっと問題が今日に続いておるわけでありまして、しかも、先ほど来の御質問の中でも出ておりましたように、本年の十月のたしか九日だったと思いますが、石油審議会が出光に対しまして、十一万バーレルの製油を認めた。その場合にクレームがつきまして、これは通産省からお話がありましたように、漁業問題、公害問題等について地元と十分調整を行なう、こういうことがいわれておるわけであります。この点については問題が数年間にわたりましただけに、わが党の関係でも公害対策特別委員会その他商工委員会等におきまして、兵庫選出の三木君あるいは堀君あるいは河上君等々、あるいはその他党の関係からも、これらの問題に関連して取り上げられてまいりました。  そこで、まず第一にお伺いしたいのは、このクレームとの関係の問題であります。これは過般商工委員会で、わが党の堀君が椎名前通産大臣に御質問申し上げた際にも、とにかく進められておる話し合いがきちっとまとまっていくまでは、これにオーケーを与えるというようなことは好ましくないしやらない、こういうふうに、答弁そのままについては会議録を持っておりますけれども、そういう趣旨答弁がなされております。実は、大平通産大臣に来ていただいて、この考え方をそのまま受けて、今後の問題に対処するのであるかどうかお伺いしたいと思っておりましたが、きょうは大臣も政務次官も都合が悪いようでありますので、通産省の担当のほうから、その点についてまずお答えを願いたい。
  188. 成田寿治

    ○成田説明員 出光の姫路製油所の許可につきましての石油審議会のつけました注文につきましては、先ほどお答えしましたように、先月の十四日、椎名前通産大臣が商工委員会でお答えした方針でわれわれも処理していきたいと思っております。
  189. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 石油精製の問題については、通産省のほうの担当にお伺いしますと、現在わが国の場合二百七十万バーレル、そして四十五年の四月までに三百三十二万バーレルになる、それに新しく、過般の石油審議会でいわゆる審議会答申として決定になりました五十万バーレルのものが加わる、こういうプランで今後推進をされるというふうに承っているわけですが、過般の石油審議会の際に、出光の十一万バーレルをはじめ、興亜、三菱あるいは鹿島、関西石油、冨士、東北石油、昭和石油に対して、それぞれ所要の精製の割り当てがございました。私ども承知しておるところでは、石油審議会から特に許可、オーケーを与えるにあたって注文がついたのは異例のことであって、したがって、通産省の所管大臣としても、その点は十分尊重していこうという姿勢にあるのだと思うのです。  私、昨年の予算委員会の際にも、公害問題を取り上げたときに通産省にきびしく言ったのですが、公害の当の責任者として今後の——先ほど小沢政務次官からお話のあった紛争の問題あるいは救済の問題等について、党独自の立案の問題について今日いろいろやっておりますけれども、そういう過程で通産省の姿勢、あるいは厚生省の姿勢、あるいは農林省その他の姿勢というものを公平に見ておりますと、どうしても通産省というのは、業界本位ということに傾斜しやすいという性格を持っておる。たまたまこの問題についてはクレームがついた関係もあって、非常に慎重に対処されようとする、またそれは当然である、こういうふうに思います。  そこで、さらにお伺いしたいのは、一応この石油審議会のほうからは、四十五年十月というふうな期限で出光の十一万バーレルの許可を与えるということにいたしておる。そうすると、現地の話し合いということを十分見守っていく姿勢にあるわけですが、東大の今日の紛争ではありませんけれども、一応タイムリミットを置いて、その時点になったならば、まだ問題が紛糾しておる段階でもこれを強行するのか。この時間的タイムリミットを逆算しますと、来年の春にいわゆる着工しなければ、四十五年の十月というのに技術的には間に合わぬだろうというふうにいわれるわけですが、四十四年の春の着工というところにタイムリミットを置いて、押せ押せでやるというようなことは全然考えていないということであるのかどうか、伺いたい。
  190. 成田寿治

    ○成田説明員 製油所の建設は大体一年半かかりますので、石油審議会の答申にあったように、姫路製油所が四十五年の十月に稼働するということで逆算しますと、来年の春に着工しないといけないということになるわけでございます。ただ、出光の場合は現在油槽所に使っておりますので、あるいは全く新規の工場よりは若干建設期間が少なくて済むのではないかと思いますが、タイムリミットという厳密なあれではありませんけれども、稼働時期から逆算すると、大体来年の春ということであります。したがって、われわれは来年の春までに出光興産が地元等と話し合いがついて、石油審議会の答申どおり許可できることを希望しておるのでございます。  ただ、そのタイムリミットから逆算して、押せ押せで強行するのではないかというお尋ねでございますが、先ほど言いましたように、椎名前通産大臣答弁しましたように、そういう考えではないということをお答え申し上げます。
  191. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この出光問題については、本年の九月五日に兵庫県知事の金井君、姫路市長の吉田君、あるいは出光興産株式会社取締役社長の出光君の三者の協定書が取りかわされておるわけですが、その後、関係との間の新しい協定というようなものが文書的にできたのがあるのかどうか、あるいはこれ以外には協定はなくて、いまあげて折衝中である、こういう時点だとは私は思うのですけれども、その辺のところを簡潔にお答え願いたい。
  192. 成田寿治

    ○成田説明員 九月五日の協定書はできておりますが、その後、新しい協定書ができたというふうには聞いておらない。現在その点でいろいろ会社と地元と県、市等が入りまして、漁友会並びに播磨公害対策連絡会議等と話し合いを進めておるというふうに聞いております。
  193. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この種工場、あるいはこういう製油所等の誘致の場合には、日本の最近の公害の頻発、多発化等の傾向、あるいは公害病患者の発生等、社会的な問題が非常に大きくなってまいりまして、数年来、通産省におかれても厚生省におかれても、いわゆる事前調査というのが非常に重要視されるようになった。出光の姫路の調査に関連をして、厚生省でも二回にわたって事前調査をなされる、あるいは通産省でも御調査をなされるということの経過があったわけですけれども、これはすべて公にされる、そういう段階にきておるのかどうか、あるいはすでに発表されたという時点であるのかどうか、通産、厚生両省の担当から簡潔にお答え願いたい。まず厚生省。
  194. 橋本道夫

    橋本説明員 姫路の地区の環境対策の調整につきましては、厚生省は四十一年と四十二年と四十三年、最も気象の不利な時点を選びまして調査いたしております。四十一年度の調査につきましてはすでに公表いたしました。四十二年度の調査につきましては近く公表するということで、現在資料を完了したところでございます。
  195. 矢島嗣郎

    ○矢島説明員 通産省のほうは総合事前調査という名前でございまして、単に現在における汚染状況等を調べるだけではなくて、それを理論計算によりまして電子計算機にかけ、さらに五年ないし七年後の立地を予想いたしまして、それを模型にして風洞実験をいたします。さらに、その結果に基づきまして、汚染がはなはだしい場合が多うございますので、具体的に、この工場についてはこういう改善をしろという個別の改善指導を行なって、その上で完了するわけでございます。そのためにだいぶ時間がかかるわけでございますが、通産省といたしましては、この事前調査につきまして、大気関係とそれから水の関係と両方をいま播磨地区にやっておるわけであります。  大気の関係につきましては、調査結果がほぼまとまりつつある状況で、近く発表に至ると思います。水のほうは、まだ水理模型実験をやっと終えたばかりでございまして、一番ポイントになる、将来の計画に対する改善指導というものをまだやっておりませんので、この点は、若干完了までに時間がかかるのではないかと思います。
  196. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いま厚生、通産の事前調査のことを聞いたのですが、事前調査の内容についても科学的に検討してみなければならぬ。ただ、出光なら出光の製油所を認める、あるいは今後の播磨地区における工場の進出の一応の想定を立ててみて、大気汚染その他公害関係がどうなるかという環境基準に基づく総合的な判断をするということが十分なされざる段階において、非常に問題をはらむこの種工場が石油審議会ではきめられる。これも、すでに数年前にきまっておってそれがつぶれた、そしてそれが千葉に行った。そこで、地元の県だとか市だとか、あるいは商工会だとか、こういう商工関係の諸君が、公害より何よりこれを持ってくることが地域開発であるかのごとく錯覚をして狂奔し、ついに強引に引っぱってくるというような形のように、率直にいって見えるのでありまして、これは、国の場合も地方自治体の場合も、あるいは地域社会の指導的な立場の場合でも、もっと国民の健康と生命ということを基本に置きながら、工場の問題については十分事前的な整備、事前的な調査というものがなされなければならぬ、こう思うのです。  そこで、この地域は、すでにもう廃案になりましたが、ばい煙規制法の適用地域である。これが大気汚染防止法に継がれる。一体厚生省は、あの地域の公害環境というものの実態は、全国的に見てどの程度の水準にあると考えておるのか、この点について簡潔にお答え願いたい。
  197. 橋本道夫

    橋本説明員 この地域の大気汚染の現状は、全国的に見てどの程度であるかという御質問でございますが、当該地域は三十九年度に指定地域になりまして、四十一年度にその周辺地域が付加されております。現在、それにつきましての結果から判断いたしますと、中程度の汚染地域であるということでございまして、今回、十二月一日に施行されました大気汚染防止法では、A、B、Cの三つのランクに分けておりまして、中程度のBのランクに属するというのが、現在の姫路地区の汚染の状況であります。
  198. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 A、B、CでBだというと、何か中程度のように聞こえるのですが、Aというのは、私どもの県の四日市をはじめ、あるいは尼崎だとかあるいは川崎ということになると、これはいわゆる公害によるぜんそくが出たり、いろいろな公害病でテレビでも報道されるようなひどいところであって、Bというと、まだこれらかいろいろなものを呼んできてもよろしいというふうな錯覚があると、これは重大な誤りだという前提に立って、いまの点をお聞きしておいたわけであります。  農林省に返るわけですけれども、私は地元の原子力発電所問題で非常に苦労した経験もありますが、過般浜岡の原発の現地調査に行ったり、今度の出光の姫路の現地調査に行ったり、その他宮崎の党の国民議会出席の際、先日兒玉君が取り上げた問題が出されました。いろいろ話してみると、結局、海岸にそういうものができるということもありましょうが、漁業関係者の犠牲の上にそういうものがなされる、そういうことがひしひし感ぜられることが多い。厚生省にも公害関係の機構がある程度整備をしてくる、通産省でも公害関係の機構が整備してくるという段階時点で、農林省のほうは水産庁がやっさもっさ、とにかく担当もほとんどおらない段階の中で注文は至るところから来る、それをこなしていかなければならぬということで、非常に苦労しておるのが現実ではないかと思うのです。  ここ数年来の傾向を見ても、あるいはこれからの状況を見てまいりますと、先ほど柴田君のほうから取り上げた千葉のいわゆるインドの油船——この間私、千葉の問題では、アメリカの油送船による漁業関係の被害問題を予算委員会でもやったことがございますが、そういうように全国至るところで漁業に関連する公害関係問題というのが、続出と言っていいほど出てきておるんですね。これは、むしろ水産庁よりも政務次官に尋ねなければならぬと思う総合的な問題ですが、農政はいろいろ総合的にやらなければならぬ重大な段階に来ておるわけですけれども、やはり農林漁業者の問題の中で、特に漁業の関係が多いと思うのですが、それに関連した人員整備といいますか、機構というと非常に大きく考えるのですが、とにかくそれが非常におくれておる。これはもう少し整備充実をして、農林省の傘下にある農林漁業者の、いわゆる産業や生活を守るという姿勢が、特に重要になってきておるのではないかとひしひしと感ずるわけですが、その点はどうなんですか。
  199. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 おっしゃるように、その必要性がますます高まってきておることは私ども十分認識しております。したがいまして、何らかの方途を講ずべきだという御意見も十分わかるわけでございます。ただ、水産庁がこれを中央において全部やろうとしても、なかなかうまくいくものではないと思いますので、むしろ県の水産当局と、常にいろいろな面について一体的に仕事をやっておるわけでございますから、県の水産関係の職員とも十分意思疎通をはかり、あるいはその心がまえを持ってもらい、早期に解決するような努力をいたしていくのが現実的ではないかというふうに、いまのところは考えざるを得ないわけでございます。
  200. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これは、政務次官に私は苦言を呈するわけではないのですが、公害に関連する問題というのは、知事かあるいは現地の市長が、工場を連れてくるのが地域開発だという錯覚で狂奔する姿勢のところが多いわけです。その中に農林部があったり水産部があったりするが、これはヘビににらまれたカエルではないわけだけれども、なかなか漁業者の立場で積極的に動くという姿勢になっていない。もちろん、地方自治体の水産にしろ農林関係にしろ、そういうものが主体的に動くということを私は否定するのではない。しかし、現実はさような形になっていないことが多い。だとすれば、やはり農林省が主体的条件において公害から農林漁業者を守るということは、これ自身非常に重要なことであって、そういう点からも、いまの政務次官の非常に消極的な態度では私は了解しかねるわけです。そういうことの苦言をひとつ呈しておきたい。そういう意味で、今後十分これらの問題の整備、充実に配慮を願いたいと思います。  私、この問家島の漁協のほうにも行ったのですが、非常にたくさんの方々が夜急遽集まられて、現地の切々たる要請も聞いてきたのですけれども、一つは、公害から農林漁業者を守るという農林省あるいは水産庁の姿勢以外に、大体家島あたりに行っても、反対をしておりますと、県や市からいろんな面で冷遇をされていますね。もう具体的な例は私、言わないことにしますけれども、冷遇されていますよ、あるいは補助金をやらぬとか、何の仕事をやらぬとか。で、賛成の旗上げをしたほうには、何をやってやるとかかにをやってやるとか、そういう形での責め上げもありますが、それ以外に、陰に陽に冷遇する姿勢がありますね。民主主義の世の中だから、一つの問題を与えられて、賛成があり反対があるというのは、何もふしぎではないと思うのだが、私は、こういう問題で相当苦労しておる現地には、進んでその実情を把握するばかりでなしに、そういう実態はないかという姿勢でやはり行かなければならぬ必要性というものを感じましたね。  それらの点については、農林省があるいは水産庁がどうするというわけではない。それは自治省であったりあるいはその他の省であったりするのだが、そういう問題もやはりひしひしと感じますが、水産庁はどうです。春にタイムリミットを置かないと通産省は言っておるのだが、現地の実態を、そして現地のなまの声をやはり聞いてもらいたい。過般来堀君との質疑応答の中でも、また三木君に対して森沢さんが答えておるのも私、十分聞きました。もうこまかいことは言いません。これは時間の関係上省略しますが、私ども農林水産委員会というのは、主として農林水産関係者の問題を中心に、血の通ったことを考えていくという姿勢ですが、ぜひ水産庁も、この問題についてはいま言ったことも含めて、現地に行って現地のなまの声を聞いてあげてくださいよ。これは、いままでも調査という時点では行かれたかもしれませんが、これからもどんどんやってもらいたい。直接、間接がんじがらめのような、そういう責め上げをやられているように私はひしひしと感じましたね。これはいかぬですよ。もっと科学的に、客観的に、そこに置くのがいいかどうかという立場で反対をしておるそれらの人々の声を謙虚に聞き、そういう危険性があるかないかという姿勢で取り組んでいくべきだと思うのです。私は率直に言って、兵庫県の場合、県の姿勢、あるいは姫路市の姿勢というものは、これは基本的に間違った姿勢を含んでおる、そういうふうに感ずるだけに、ぜひ現地の農林漁業の方々のなまの声を聞いて、この問題にどう対処するか、こういう姿勢をひとつ農林省側にお伺いしたいと思うのですが、いかがですか。
  201. 森沢基吉

    ○森沢説明員 私自体も長く兵庫県の水産課に奉職した経験もあり、家島の状況をよく存じております。また地元方々が、いろいろ条件つきなり絶対反対なりの方々が、昔の経緯をもちまして私のところに参りまして、なまの声をいろいろ従来も聞いております。  ただ、いま角屋先生指摘のようなことが、おそらく兵庫県になかったと思いますけれども、そういう点もあわせまして、最近どういうことになっておるかということは、われわれといたしましても、本省なりあるいは瀬戸内海漁業調整事務局なりから担当官を派遣いたしまして、よく漁業者の声を聞くようにいたしたいと思います。
  202. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 出光の姫路進出の問題に関連して、私は希望として、特に石油審議会からもクレームつきで異例の答申が出ておるのだから、むしろそういう点で、来年の春までにタイムリミットを置くという考え方じゃなしに、それがやはり中止になれば中止になったでまた手があるわけですね。いわゆる四十五年十月以降の石油審議会からオーケーを受けた分を繰り上げる、そして繰り上げたあと、ずいぶんたくさんの社があった中からこれだけのものが選ばれたわけで、まだほかにもある。そのほかの希望のところで、現実に瀬戸内海の美い海ときれいな環境がさらによごされていくということよりも、もっとほかの地域で、しかも現地に問題がないというような地点があれば、これはむしろ、私をして言わしむれば変更したほうがよろしいと思うのだが、今後の折衝の中でもそういうことも含めてやってもらいたい、こういうことを、関係各省のそれぞれの方々の心がまえとして、強くお願いをいたしておきたいと思います。  静岡の浜岡の問題に関連しても、漁業関係者との点で感を深くした点があるのですけれども、時間の関係上多くを申し上げるわけにいきませんが、ただ一点、原子力潜水艦、あるいは原子力空母、あるいは原子力発電所、こういう全体を通じて、日本の海面の放射能汚染というものが今後強まる危険性は十分持っておる。これは科学技術庁、あるいは原子力委員会、あるいは日本におけるこの方面の学会というところでも大きな研究課題になるわけですけれども、水産庁としては、海面の原子力の放射能汚染というふうな問題については、従来からどういう姿勢で取り組み、あるいは今後どういう姿勢で取り組んでいくか。これは漁業サイドの問題として、これらについての基本的な考え方を承っておきたいと思います。
  203. 森沢基吉

    ○森沢説明員 いま御指摘のように、原子力発電所、再処理施設、あるいはまた原子力潜水艦等、いろいろ海面に放射能を流出する危険性を含むケースが最近非常にふえております。特に私たちは、原子力発電所の問題並びに再処理の問題につきましては、これが漁業者に与える心理的な影響、また不幸にして事故等があれば、そこに起きます被害等から見まして、非常に重要であると同時に、また、国民にたん白質を供給するという漁業の立場から見ましても、人間の健康保持上非常に問題が起こるという気がいたしますので、科学技術庁の原子力局とは水産庁は定期的に、長官ベース、局長ベースで協議を持っております。  それから、水産庁自体といたしましては、率直に申し上げて、現在、原子力関係の研究機構が非常に弱体でございます。ただ、先ほど申し上げたような情勢でございますので、常時海洋中の放射能の環境調査を水産研究所がやり、あるいは原子力発電等に予定されておりますところの環境調査、あるいはその後のトレース、さらに前向きに原子力を利用する方法の研究、こういうものを進めていく体制を立てたいと思います。来年度予算には、年次計画等で原子力関係の研究者の増員等も要求する予算を出しております。現在そういう状態でございます。
  204. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 最後に一つ、沖繩のパインの問題について簡潔にお尋ねをいたしたいと思います。  もともと国民課題である沖繩の今後の経済の復興の問題について、やはり沖繩の問題は日本の問題であるという姿勢で、今後総合的に取り上げていかなければならぬということを痛感するわけですが、時たまたま農林水産問題を含めた例の自由化問題というのに関連をいたしまして、沖繩のパインかん詰めの自由化問題の行くえがどうかという点が、沖繩の地域産業と沖繩経済という問題から、非常に重要なウエートを持っておるのでありまして、関係者の方々が、これらの問題については従来の姿勢でやってもらいたいということで、中央にも押しかけ、そしてわれわれのところにも強く要請をされておりますし、また、そのことは今日の状況において当然であるというふうに考えておるわけですが、この際、パインかん詰めの日本への輸入状況、そしてその中において沖繩の占めておるウエート、さらにいま言った自由化問題に関連をいたしまして、農林省としてパインのかん詰め問題については従来の姿勢でいくという方針であろうと思いますけれども、それらの今後の考え方について、簡潔にお答えを願いたいと思います。
  205. 小沼勇

    ○小沼説明員 お答え申し上げます。  最初に、沖繩のパインかん詰めにつきまして、その輸入の状況を申し上げます。全体として昭和四十二年度日本にパインかん詰めを輸入しました状況は、加糖のものでございますが、二百十九万六千ケースでございまして、そのうちで七一・六%が沖繩のものでございます。その他が二八・四%ございますが、そのうちの三分の二程度は台湾から、残りはアメリカそれからフィリピン、マラヤというようなところから来ておるわけでございまして、かなりのものが琉球から来ておるという状況でございます。それで、琉球におきますパイナップルの産業はかなりウェートが大きいわけでございますが、一番大きいのはサトウキビを原料にしております糖業、砂糖をつくる糖業でございますが、これが輸出の中で大体五五%くらいを占めております。その次がパインかん詰めでございまして、これが大体輸出の中で一七・八%程度を占めておるという状況でございまして、パインかん詰めにつきましては、全量わが国に輸入されておるという状況でございます。  ただ、沖繩のものがほかの国でつくられるものに比べまして価格が割高でございまして、非常に競争力が乏しいという状況でございます。それを保護いたしますために、琉球産のパイナップルのかん詰めにつきましては関税を免除しておりまして、ほかの国については基本税率で四五%、暫定では五五%という関税をかけておるわけでございます。また、琉球以外から参りますものにつきましては、自由化していないという状況でございます。  そういう状況でございますが、いろいろと問題が出てまいっておりますので、パイナップルのかん詰め等の沖繩におきます生産の状況、あるいは国際的な情勢の推移等を見ながら、慎重にひとつ対処していきたいということで、目下事務当局で検討を続けておるという状況でございます。
  206. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 最後に、政務次官にこの問題でお尋ねをして終わりたいと思います。  沖繩の基地経済からいわゆる自立経済への再建等、これは基地のあり方政府・与党がどう考えようと、われわれがそれについてどう考えようと、基本的には基地経済からの脱却、日本と沖繩とが非常な差別的な経済条件でなしに、やはり沖繩の繁栄をというそういう立場から長期的に展望してみますと、先ほどお答えがありましたように、パインかん詰めの沖繩経済におけるウエート、あるいは今後の展望の中でも占めるであろう重要性というものから考えてみますと、単に経済合理主義とか、あるいは自由化に際して、日本本土だけの視点とかいうことを離れて、沖繩の自立経済への発展というような長期展望の中で、この問題の今日持っておる重要性ということで、おそらく農林省としては、当面やはり、いままで堅持してきた方向をとるべきであるという御方針であろうと思いますが、そういうことでぜひこの問題は対処してもらいたい、こう思うのですけれども、いかがでございますか。
  207. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 過般の、御承知のとおりの自由化を基本的に進めてまいるという考え方の閣議決定もございますので、私どもは、もう先生のおっしゃる気持ちで十分慎重に対処してまいるわけでございますが、国際情勢の推移等も十分検討いたしまして善処をいたしたいと考えております。
  208. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 以上で終わります。
  209. 足立篤郎

    足立委員長 斎藤実君。
  210. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 水産庁次長に、漁業問題について若干お尋ねいたします。  わが国の漁業は追い詰められた漁業というか、だんだん非常に日本漁業というものがきびしい段階に直面してきております。と申しますのは、去る十二月三日にワシントンで行なわれた日米のタラバガニ協定等でも、向こう二カ年の実績が、過去二年間の半分に削られたという事実、昭和三十八年、三十九年の実績から見ますと約三分の一になった。ことしの春の日ソ漁業交渉でも、タラバガニではさんざん痛めつけられたという苦い経験もございます。最近では、特にインドネシアにおきましても、十二海里の専管水域を設定しました。その協定によれば、一そう当たり三百ドルの漁業基地使用料という名目で、私どもは入漁料というふうに言っておるのですが、そういうふうに支払うようになった。次いでオーストラリア、これもことしの一月に専管水域十二海里を設定しました。これもまた同じように、日本漁船一そう当たり四万円支払うような協定にもなった。スペイン等でも領海六海里の外側に六海里の漁業専管水域を設定いたしました。モーリタニア、これも領海六海里を十二海里に拡大をいたしました。  こういうふうに、国際的なこういう領海問題等考えますれば、いま私が申し上げましたように、現実的に日本漁業をめぐる国際環境は非常にきびしい。わが国は外国の漁場から追い詰められているという現実に直面をしておるわけです。もはや安易な立場あるいは場当たり的な態度は、もうここでは許さるべき段階ではない。私の調査によりますと、最近ソビエトそれから韓国、北朝鮮等でも、北海道周辺、三陸沖等に大船団をもって操業をしておるという事実もあります。  私は昨年、世界各国が専管水域あるいは領海拡大という傾向に向かってきておる現実に直面して、やはり日本としても何らかの措置を講ずべきではないかというふうに質問をした。そのときに久宗長官でしたか、私の質問にこういうふうに言っておる。多数の漁船が来て操業が行なわれる場合、両国の漁業調整上非常に問題があるという場合に立ち至れば、専管水域という措置も必要かと思う。さらにまた、両国と話し合いをしてみて、さような事態を避けるような賢明な方法があればまた考える、こういう答弁をしておるわけです。こういう国際環境をめぐる日本の漁業はきびしくなったという現実の上に立って、わが国の専管水域、いままでどおり三海里ということは、もはやわが国の沿岸漁業を守る立場の上からいっても、これは当然考えなくてはならないのではないかというふうに考えるのですが、次長、いかがですか。
  211. 森沢基吉

    ○森沢説明員 いま斎藤先生の御指摘のありましたように、日本の漁業、これは沿岸、沖合い、遠洋、あらゆる漁業を通じましてひしひしと国際情勢の変化の波が押し寄せているということ、全くそのとおりでございます。特に私は二つある、こういうふうに考えています。一つは、有用水産資源の国際管理への方向、あるいは数カ国による国際的な管理への方向というものが、あらゆる角度において、EAO等を通じまして強くなっていくだろう。それからもう一つの点は、沿岸国の主権の拡大であります。なぜ沿岸国が主権を拡大するかというのは、やはり国民に低廉な動物たん白を供給する場としては、海洋が最も生産力が豊富であり、しかも、投資効率がいいという観点からいたしまして、後進国が自分でとる技術能力が十分ありませんでも主権を拡大する。この二つが、現在日本の漁業が直面いたしております国際問題であるというふうに観念をいたしております。  前の長官がお答えしましたように、現在、いろいろ日本と密接な水域上の問題を持ちます韓国との間には、日韓漁業条約によりましてお互いに漁業水域を設定いたしております。私たちの基本的な考え方は、一方的に設定をされた漁業水域、さらにその水域を設定をして、過去の実績のある国に対して一方的に退去を命ずるというような姿勢には納得できない。しかし、相互に話し合いをすることには決して消極的な態度ではないという考え方でございます。  最近、日本の沿岸、近海におきましても、ソ連のサンマあるいはサバのまき網漁船等が盛んに活動いたしております。こういう事態を踏まえまして、日本の沿岸の漁業者を保護するために、漁業水城問題等考えるべきではないかという御意見先生からもございますし、また業界の一部からもございます。私たちはこれにつきましては、外務省ともどもに現在の情勢をわきまえまして、十分研究もし検討もしていかなければならぬということでやっております。  ただ、率直に申し上げまして、諸外国の沿岸に日本の漁業が、先ほど先生申されましたように、かなり十二海里の内部で実績を持っております。またスペイン、モーリタニアあるいはフランス、こういう国々と水域交渉をやらなければならぬという時点でございますので、日本自体が踏み切る場合には、やはりそういう外へ出ております漁業に対するはね返りも考えまして、要するに、メリットとデメリットを十分考えあわせて、慎重にやるべきであるというのが現在の水産庁の考え方でございます。
  212. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 いま次長のお話で、遠く海外へ出ている漁船のことも考えるというお話でございました。しかし私は、この資料によりますと、再三ソ連あるいは北朝鮮、韓国とも話し合いもし、また打ち合わせをするというお話でありましたけれども、一向減っていないのですね。具体的な例を申し上げますと、ソ連の棒受けサンマ漁です。これは昭和四十二年、これが襟裳岬沖合いあるいは三陸沖に、母船七千トン級三隻、あるいは仲積み船千トン級四隻、独航船百五十トンが二十五隻、ことしに入りまして同じ海域、これは日高沖にも参っておりますが、一万二千トン級が三隻、大型漁船九千トンが七隻、そのほか冷凍船を含む五十七隻、これがことしの十月十日から約一カ月間操業をしておったという事実です。それから韓国船ですが、これは昭和四十二年は底びきです。これも母船、独航船等で約七隻、ことしに入ってからも同じような数です。それから北朝鮮等もやはり樺太西岸、沿海州等で二十隻というふうに一向減っていない。しかも、沿岸漁民にしてみれば、わが国の法律で共同漁業権を設定されている区域です。その区域では、当然漁民の操業と秩序を守り、保護している区域です。その区域のすぐそば、これは襟裳岬から九海里、しかも、この九海里は底びき禁止ラインの区域なんです。その中へ入って操業をしているという事実もあるわけですね。北海道の漁業については、相当大型の魚礁等も入れておるわけです。ですから、共同漁業権は沖合い約十七海里ですか、日本法律で保護されている。その区域内にソ連の大型船団五十七隻が入ってきて操業している。それによって被害も受けているわけですね。  そこで、北海道周辺の漁民は、非常な恐怖と不安を持っているわけです。ですから、この問題をやはり政府としても真剣に考えなくちゃならぬではないかと私は思うのです。たとえ数が少ない漁民であっても、やはり漁民を守るというのが私はほんとうの政治じゃないかと思うのですが、どうも私は次長の答弁は納得できない。日本法律で保護されている区域内で外国の船が操業し、漁に対して相当被害を受けているということは、精神的にもあるいは魚の問題からいっても非常に大きい問題だと思う。再度御答弁をお願いします。
  213. 森沢基吉

    ○森沢説明員 沿岸漁業者を、特にこういう諸外国の脅威から守らなければならぬということは、もうわれわれも全く同感でございます。小さいということを言われましたが、日本経営体あるいは漁業構造から見まして、沿岸漁業というものは、就業者におきましてもあるいはまた経営体の数におきましても圧倒的に多い階層でございます。しかも、とりますものはかなり高価な水産物をとるということで、水産行政上の位置づけは非常に大きいわけでございまして、私たちは、北海道その他の沿岸漁業者の外国漁船に対する恐怖は十分はだで体得ができるわけでございますが、ただ、先ほど申し上げましたように、漁業水域の問題等につきましてもいたずらに手をこまねいているのではなくて、これはいろいろな角度から検討しなければならぬということでやっております。  それからもう一つ、漁業水域を設定することだけでこの問題は実は解決をしないだろうと思います。というのは、外国漁船の操業形態がいろいろであります。ラテンアメリカのように百五十海里も二百海里も主権を拡大するというようなことは、国際的にわれわれは常識として考えられませんので、やはり現在まだ国際法で確立をしておりませんけれども、いわゆる通念となりつつある十二海里というものを前提といたしました場合でも、それですべての問題が解決するわけにはまいらないということで、実は資源の保護あるいは資源の効率的な利用という面と漁業との摩擦をなくするというような面につきまして、最も日本の近海に参ります度数の多いソ連のサンマ船団などとは、日ソの技術交流の場におきまして、ことしの七月も水産庁の担当班長をソ連のサンマ漁船に乗せまして、資源問題それから漁業調整問題等、いろいろ意見の交換を行なわせております。こちらでいろいろ漁業の規制を沿岸にしいておりますことにつきましては、その近所へ参ります外国漁船につきましても、ひとつ協力をさせるというふうなことも、われわれは努力をしてまいらなければならない。単に漁業水域を設定することだけで、現在の情勢に対処するということはできないのではないかという、両方の考え方をわれわれは持っておりまして、検討中であることをもう一度申し添えておきます。
  214. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 長官、いまソビエトといろいろな話し合いをするというような、漁業専管水域だけでは解決できないというお話がございましたけれども、現実にはこれは一向減っていないわけです。それでソビエトと交渉するというお話もいまありましたけれども、私は交渉の段階でないと思うのです。毎回毎回これは私が御質問しているのですが、いつも検討中である、あるいは交渉中であるという答弁なのですけれども、実際零細な漁民があの周辺で、荒海の中で戦っているわけですよ。その不安というものが非常に大きい。交渉の経過なり、具体的にもっと答弁してくれなければ納得できません。
  215. 森沢基吉

    ○森沢説明員 外国漁船の日本周辺の操業がふえているということは、いま斎藤先生指摘のとおりでございます。それで、先ほどサンマ船につきましての日ソの話し合い等の経過を申し上げたわけでございますが、私たちは、単にサンマだけに限らず、先ほど申し上げましたようなあらゆる漁業の面について、日本の沿岸漁業者に迷惑を与えてもらっては困るということを、いろいろな国際交渉の場において、今後も強力に続けていきたい、そういうふうに考えております。  ただ、日本サイドにおきましても、日本法制の場合には、現在は三海里より先は公海でございますので、そこで操業する沿岸あるいは沖合い漁業に対しましても、標識の設置あるいは危害予防、そういうものにつきましても、水産庁としても被害の起こらないような指導は、従来も十分してまいりましたし、今後もしていきたい、こういうように思います。  率直に申しまして、この水域問題はいつも同じ答えばかりではないかというおしかりを受けておりますが、刻々と最近は情勢が変わってまいりましたので、私たちもその内容の重要性というものにつきましては、十分認識をしているつもりでございます。ただ手をこまねいて見ておるというわけではございません。ただ、問題は非常に複雑で、いろいろな角度の検討を要しますので、あまり歯切れのいいお答えができないというのが現状でございます。
  216. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 相手のあることですから、これはなかなか一朝一夕にはいかないかもしれません。ですけれども、この沿岸漁民にしてみれば、日本の国内法で保護され、その規定されている範囲内で仕事をしておって、しかも、そこに大きな船団が来て操業しているという事実、私、これは日本の国にとっても大きな損失であるというように考えるわけです。  それからもう一つ長官のお話の中で、事故が起きないように指導すると言いますけれども、これはちょっと不可能だと私は思うのです。共同漁業権等も十七海里までを認めているわけです。それで多額な国の費用でもって、魚礁等も十二海里ないし十五海里に投入しているわけです。そこに、今度底びきまでやられてはたまったものじゃないです。ですから、そういう通り一ぺんの答弁ではなくて、国際環境がだんだん十二海里の方向に向かってきているし、前向きでこの問題を考えるときではないかというふうに私は考えるのですが、その点もう一ぺん……。
  217. 森沢基吉

    ○森沢説明員 先ほども最後に答弁申し上げましたとおり、私たちも先生の御指摘のように、状況が刻々と非常に変わってまいりましたので、従来もやっておりますけれども、さらに深くこういう問題を検討すべき時期に来ているということでは同感でございます。
  218. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 この問題は平行線ですから次に譲りますが、実はソ連船による被害が相当出ているわけです。これは水産庁のほうで御存じでしょうか。
  219. 森沢基吉

    ○森沢説明員 最近の十月及び十一月に北海道で起きましたカニかご漁業とか、あるいはタコのから釣りなわ漁業に対して、ソ連漁船が停舶中に被害を与えたことであろうというふうに想像いたしますが、この件につきましては、北海道知事並びに現地の漁業協同組合から御報告を受けております。
  220. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 これらの被害を受けた漁民に対する補償は、一体どうなりますか。
  221. 森沢基吉

    ○森沢説明員 協同組合の御報告等によりますと、金額的にはそう巨額な金額ではない。私たちの得ております報告では、大体十万円前後ということで、地元も現在われわれに対して、補償を要求してくれという動きはないように私は感じております。そういう補償のことよりも、先ほども触れましたけれども、とりあえず被害を受けないように、漁具等に標識をつけるということが大事であるというふうに私たちは考えておりまして、北海道知事に対しまして、つい最近、そういう海域で操業する船の漁具等に標識をつけるように指導しろ、こういう通達をしております。  その根拠は、漁業法の第七十二条に、知事がそういう漁業の摩擦を防ぐために、漁業者、漁業協同組合あるいは連合会に対して、漁具に標識をつけるということを命ずることができるという根拠規定がございます。とりあえずそういう標識を急いでつけなさいという段階で、補償の問題についてはまだ出ておりません。
  222. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 私の調べでは、いままで昭和四十一年八月二十一日から三十日までの間に、これは韓国漁船による被害ですが、タコのから釣りなわ一千七百六十七枚で、約二百九十一万五千円という損害を受けている、こういう事例があります。ことしの十月、いまあなたが言われたように十万円程度の被害等も出ているわけです。これは外国の船ですから持って行きどころがないが、実際はこれは補償をしてもらいたいという気持ちがあるのですよ。いまあなたは、標識をつければいいじゃないかという指導をしたと言いますけれども、大船団で来た場合、もしその標識があっても被害を受けた場合は、これはどうするのですか。
  223. 森沢基吉

    ○森沢説明員 原則論でございますけれども、非常に重大な被害を、向こうの不注意によって与えられたという場合には、こちら自身がそういう被害の防除の措置をすべきことはもちろんでございますが、私たちは外交ルートを通じて、当然しかるべき要求をしなければならぬ、こういうふうに思います。  ことしの秋に起きました北海道の事件につきましては、同じような書類が実は外務省の東欧課にも提出をされております。それで外務省といたしましては、現在、どういう状態で、どういう標識がついておってどうだという事実関係を、至急に調べて回答してほしいということを、現在に照会中のようでございます。原則論としては、非常に重大な被害等があれば、当然しかるべき外交ルールを通じて、向こう側に要求すべきものというふうに私たちは考えております。
  224. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 いままでの慣例でありますと、当事者間同士で事件が解決しない場合は、国際司法裁判所に提訴することができる。しかし、相手国が応じない場合は、これはどうにもならないのだという事実があるのですが、こんな場合どうなりますか。
  225. 森沢基吉

    ○森沢説明員 私の知るところでは、こういう漁具の被害等に対しまして、国際司法裁判所に提訴した前例はございません。オーストラリアのアラフラ海の真珠貝の問題について提訴した例は、過去においてございましたが、それ以外はないと思います。やはり実態を明らかにして、当然向こうに過失があるということになれば、それの防除を求め、さらに、漁民の受けた損害につきまして補償を求めるというのが筋合いでありまして、国交のあります国につきましては、外交ルートを通じて、外務省ともども私たちそういう努力をすべきだというふうに考えております。
  226. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 いまお話がありましたように、もし向こうのほうで応じない場合には、泣き寝入りになるわけですね。先ほどの話にもありましたように、共同漁業権の範囲内で操業中の日本漁船が外国の船から損害を受けた場合は、もし相手の国が応じない場合は、何らかのこれは国の責任において考えるべきではないかというふうに考えるのですが、これではあまりにかわいそうだ。日本法律に従って操業中のものが、公海の原則ということで外国の船による被害を受けたならば、何らかの国の責任において補償すべきではないかと考えるのですが、こういう問題に対して検討する御意思はありませんか。
  227. 森沢基吉

    ○森沢説明員 いま御指摘のようなことをやった前例というものは、実はないわけでございます。何回も繰り返して恐縮でございますが、やはりあくまでルートを通じて、向こうの行動がこちらに実質的に被害を与えるという場合には、それに対する補償を求める、こういうことに尽きる、こういうふうに私どもは考えます。  ただ、一般論でございますが、そういうことで非常に苦痛を受けられるというふうな事態が集中的にあるとするならば、われわれは、やはり一般的な漁業振興対策等におきまして、できるだけ道庁あるいは県庁ともどもに前向きな施策を講ずる必要は、沿岸漁業振興という立場で十分あるだろう、こういうふうに考えております。
  228. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 これからもたびたび起こることが、私は十分予想されると思うんです。先ほど私が申し上げましたように、沿岸漁業の形態と申しますのはやはり零細漁民が多い。いままで政府がとってきた政策は、やはり遠洋漁業、大資本漁業に対して非常に力を入れているというふうに私は考えるわけです。いまこういう一つの実例を私は申し上げましたけれども、国内たん白資源の確保のために努力をしている零細沿岸漁民に対する政府の処し方は非常に冷たい。ここで水産庁がもう少し本気になって、血の通ったあたたかい政治をやるべきではないかというふうに考えるのです。これは私は北海道の沖合いの一事件だけ申し上げているのではないわけですよ。日本の沿岸漁民を保護育成するという立場で考えてもらいたい。どうでしょうか。
  229. 森沢基吉

    ○森沢説明員 お説ごもっともで、全く同感でございます。私たち微力でございますけれども、やはり日本国民の摂取しております動物たん白の中で、現在六割が水産物でございます。特に、消費の動向等から見ましても、かなり沿岸漁業等でとれます高価な水産物というものが、今後も需要が旺盛であるという推定からしまして、沿岸、沖合い、遠洋ともにおのおのきめのこまかいさらに強力な施策が、食糧行政という総合的な立場でなければならないというふうに私たち考えております。できるだけそういう線に沿いまして、私たちも努力をしていきたいということを申し上げておきたいと思います。
  230. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 時間も参りましたので、この漁業問題については、またあらためて農林大臣等にもお尋ねをしたいと思います。  以上で私の質問は終わります。
  231. 足立篤郎

    足立委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十五分散会