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1968-12-20 第60回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年十二月二十日(金曜日)    午前十時四十分開議  出席委員   委員長 堂森 芳夫君    理事 大坪 保雄君 理事 鹿野 彦吉君    理事 神田  博君 理事 三原 朝雄君    理事 岡田 利春君 理事 池田 禎治君       藏内 修治君    佐々木秀世君       西岡 武夫君    多賀谷真稔君       中村 重光君    平岡忠次郎君       田畑 金光君    大橋 敏雄君  国席国務大臣         通商産業大臣  大平 正芳君         労 働 大 臣 原 健三郎君  出席政府委員         通商産業省鉱山         石炭局長    中川理一郎君         労働省職業安定         局長      村上 茂利君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      亘理  彰君         通商産業省鉱山         石炭局石炭部長 長橋  尚君         通商産業省鉱山         保安局長    橋本 徳男君     ――――――――――――― 十二月二十日  委員石野久男辞任につき、その補欠として平  岡忠次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員平岡忠次郎辞任につき、その補欠として  石野久男君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十二月十七日  炭鉱保安対策に関する陳情書外二件  (第二一三号)  石炭産業の安定に関する陳情書外三件  (第二一四号)  石炭産業安定対策に関する陳情書  (第二八一号)  産炭地域の振興に関する陳情書  (第二八二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  石炭対策に関する件      ――――◇―――――
  2. 堂森芳夫

    堂森委員長 これより会議を開きます。  この際、原労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。原労働大臣
  3. 原健三郎

    原国務大臣 このたび、労働省を担当することになりました原健三郎でございます。  労働問題がますます重要性を加えてきている今日、私は誠心誠意労働行政推進につとめてまいる所存でございますので、よろしくお願い申し上げます。  最近の石炭鉱業の動向を見ますと、その前途はますますきびしいものがあり、今後も炭鉱閉山合理化により離職を余儀なくされる炭鉱労働者が少なくないと考えておるのでございます。今後の石炭対策のあり方につきましては、御承知のとおり、本年四月以降、石炭鉱業審議会において鋭意御審議をいただいているのでございますが、労働省といたしましては、同審議会答申をまって炭鉱離職者対策産炭地域における雇用安定対策等を積極的に推進してまいる考えでございます。  また、石炭鉱業における労働災害防止につきましては、労働省労働者保護の見地から多大の関心をもって努力いたしておるのでございますが、本年も北海道炭砿汽船株式会社等において重大災害発生し、多くの犠牲者を出しましたことはまことに遺憾に存じております。労働省は、これまでも数回にわたり通商産業省に対し、石炭鉱山保安確保について勧告を行なってきたのでございますが、去る十月にも最近の災害発生状況にかんがみ、勧告を行なったところでございます。今後とも通商産業省と密接な連携をとり、石炭鉱業における労働災害防止を鋭意進めてまいりたいと存じております。  以上、当面する問題について、私の考えを簡単に申し上げたのでありますが、石炭対策の再検討が進められている今日、委員各位の御意見を十分拝聴して、今後の行政推進に資したいと存じますので、この上ともよろしくお願い申し上げる次第でございます。(拍手)      ————◇—————
  4. 堂森芳夫

    堂森委員長 閉会審査申し出の件についてお  はかりいたします。   石炭対策に関する件について、議長に対し、閉会審査申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  5. 堂森芳夫

    堂森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、申し出手続につきましては、委員長に御一任願います。  閉会中の委員派遣承認申請に関する件についておはかりいたします。  閉会審査案件が付託になりました場合、審査のため委員派遣を行なう必要が生じました際の手続等に関しましては、あらかじめすべて委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 堂森芳夫

    堂森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  それでは、石炭鉱業審議会答申に対する意見などについて、調査のため来たる二十四日、二十五日の両日、九州、二十三日、二十四日の両日北海道にそれぞれ委員派遣を行ないたいと存じますので、御了承願います。  なお、今回の委員派遣に際しましては、往復とも航空機の使用について、議長申請をいたしたいと存じますので御了承願います。
  7. 堂森芳夫

    堂森委員長 石炭対策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。岡田利春君。
  8. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、いま進められております小委員会取りまとめに対するいわば基本的な問題の質問の前に、若干事務的な質問を行ないたいと思います。  その第一点は、当初審議過程においていわば窓口整理をする、こういうことが議論されてまいりましたけれども、この窓口整理ということばは、確かに今度の取りまとめの報告された内容にはしるされていないわけです。しかし、閉山交付金トン当たり二千四百円から平均トン当たり三千三百円に上げる、ただし臨時措置としてここに書かれておりますのは、企業ぐるみ閉山を行なうときにはそれぞれの債務労働債務一般債務金融債務鉱害債務、これらに対してはその見合いでこれに対して上積みをして閉山交付金を出すのだ、こういう考え方がこの中にあるのでありますが、臨時措置ということは、明らかに当初議論された窓口整理意味しているのではないか、このように私は思うのでありますけれども、この臨時措置とは一体どの程度期間考えられているのか、この点をまず明らかしてもらいたいと思うのです。
  9. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 この制度は、過去の急激かつ大規模な合理化過程発生しました著しい超過債務をかかえた石炭企業が、企業としてやめるという場合に、労務者をはじめ地元の関係者等に耐えがたい影響を与えるおそれがございます。一般的な制度としての閉山交付金では、これらの方々にたいへんな影響を与えるという事柄が予想されますので、特に超過債務にリンクして一般閉山交付金制度のほかに割り増し的な制度考えよう、それによって大きな社会的な混乱の発生というものを防止したい、こういうことに発したものでございます。したがまして、事柄の性質上こういたしましても、また今次の政策によりまして石炭鉱業ほんとう再建路線にのることになりますならば、このような制度はもはや必要としないのでありまして、その意味では臨時的なものであるということは当然ではなかろうか。石炭対策につきましての対策費総額というものを効率的に使うという意味からも、これを無制限に引き延ばすというわけにはまいらないのでございまして、どれくらいの期間に設定するか、まだ最終的には決定を見ておりませんけれども、与えられました財源の効率的活用という観点と、閉山円滑化という観点とのかね合いでこれを決定すべきものであろうということで考えております。私の頭では大ざっぱなところ三カ年というところが中心になって事務的な詰めをやってみようかと思っている状況でございます。
  10. 岡田利春

    岡田(利)委員 この条項を考えてみますと、大体この対象になる企業というものはほぼ明らかではないか。これはすでに再建炭鉱があるわけですから、言うならば再建四社、これは麻生、杵島、貝島、明治、こういう企業対象になるのではないか。従来のいきさつからいえば、そういう絵をかいているのではないか、こういう気がするわけです。それと同時に、中小炭鉱の場合には、この面は対象になると考えられているのかどうか。
  11. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 具体的な会社の名前は差し控えたいと思いますが、岡田先生もおっしゃいますように、前の再建会社というものが著しい超過債務をかかえておるということから見まして、可能性のあるものだとお考えになるのは当然のことでございます。なお中小炭鉱につきましても、これは同一に律して適用いたしたいと考えております。
  12. 岡田利春

    岡田(利)委員 次に、「企業合理化努力企業間の協力体制確立」この(1)に「鉱区再編調整等のための企業統合自立意識昂揚地域および炭種別需給確保のための炭鉱単位企業分割、それらのための石炭部門と非石炭部門分離」こういうことばが使われておるわけです。このことはいま申し上げました、非常に困難な再建を続けてきた企業関連をしないでものごとを考えることはできないのではないか、こういう私は感じがするわけです。そういたしますと、結局企業としては成り立たないけれども単位炭鉱としてこれは国民経済立場からいえば、やはりこの炭鉱存続をさせたいという点はどういう関連を持っておるのか。さらにまた、石炭部門と非石炭部門分離をするということは、これは企業家の自主的な判断によるものだということなのか、この点についてはいかがですか。
  13. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 鉱区再編調整をはかりまして、合理的な操業ないしは開発をはかるという意味合いで、ある一定地域炭鉱をそれぞれの会社から切り離して一つに組み立てて統合させまして、これによって合理化能率の向上を追求するという考え方考え得ると思っております。たとえば、かねてから課題とされているような北空知地区というようなところにつきましては、これらの推進検討することは十分値打ちのあることだと考えております。  一方、石炭鉱業がその合理性を追求する方法といたしまして、いま申しましたような求心的な方向考えていく場合のほかに、分割といったような形で遠心的な形態をとることが、合理性の追求に役立つ場合もあり得ると考えます。たとえば非常にたくさんの炭鉱を持っておる会社があるといたしまして、それぞれの炭鉱能率、採算というものが違います場合に、弱い炭鉱がいい炭鉱の成績に安易に依存するというようなこともありましょうし、またいい炭鉱が、われわれが幾ら働いても悪い炭鉱のために持っていかれてしまうというような気を起こしてもいけませんし、そういう場合むしろ自主的な経営を、それぞれの炭鉱ごとにやらせるほうが合理的ではなかろうかという考え方もあるわけでございます。  それからもう一つは、いま岡田先生が御指摘になりましたように、企業としてはいかような助成で問題を考えても成り立ち得ないという状況になりましたときに、その中の一つ炭鉱助成のいかんによりましてはある程度役割りを果たし得る、ことに地域需給の面からであったり、あるいはは混炭の材料として、他の存続炭鉱との関連において必要だという場合もあり得るわけでございまして、こういうものにつきましては、これを分割して残すという方向考えるという必要性がある場合もあるであろう。これは岡田先生考えになっているとおりでございまして、これらの点につきまして一体どういうやり方をやっていけばこれが可能か、いろいろむずかしい、分割等の場合におきましても、統合等の場合におきましても、それぞれ複雑な債権債務関係にあるものをどう持っていったらよろしいかということには、いろいろ事務的に考えましてもむずかしい問題はございますけれども考え方としてはさよう考えていく必要があるんではなかろうか、こういうことを小委員会答申の中でうたっておるのでございます。これらの統合にいたしましても、また分割にいたしましても、当該会社兼業部門を持っております場合には、やはりそのものとの整理が必要になってまいりますので、そういう意味での分離ということも前提になるということを考えております。  それから原則といたしまして、これらは企業自主的判断で行なってもらうべきことである、こう考えますが、たとえば再建交付金交付を受けるようなときに、そういった将来図をかいてくるということであれば、政策的に推進すべきことと、政策的にあるいははまずいということもあり得るかもしれませんので、所要のチェックはある程度はできるんではなかろうか。それから客観的に見て間違いのない方向として疑問のない場合におきましては、小委員会答申案にもございますように、勧告をするというような制度検討してみてはいかがか、こういうことでまとめられておるのでございます。
  14. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういたしますと、結局閉山交付金臨時措置とこれらの問題とが、いま申し上げました点は非常に密接不可分な関係がある。しかし、企業ぐるみ閉山する場合には臨時措置するんだ、たとえば四つの山があって二つの山を残すという場合には、これは企業ぐるみでないから臨時措置対象にならないということになるのか、どういう関連ですか。
  15. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 ただいま申しましたように、それらの点は考え方を示しておるのでございまして、いま先生おっしゃいましたような問題が出てまいると思いますが、これは答申趣旨にのっりまして、具体的に私ども事務ベースに乗るように今後検討すべきことだと承知しております。いまの段階では、相なるべくは閉山は円滑にし、残すに値するものを残すということが両立し得るようなという気持ちで小委員会考えておるわけでございますので、私どももその趣旨にのっとりまして検討を加えてまいりたいと思っております。
  16. 岡田利春

    岡田(利)委員 この点私は、この書いている文章は非常に矛盾していると思うのです。こういう矛盾した文章を平気で書ける心臓の強さには驚いているわけですが、これが単に事務的な措置で今後処理されるべきという軽々しい問題では私はないと思う。  いずれ議論は別にしまして、もう一つお伺いしておきたいのは、いままで再建企業は、これはいわば中小炭鉱と同じように交付金交付されていた。実質トン当たり百五十円交付されていた。再建企業内容を分析いたしますと、総じて一般炭炭鉱であるわけです。そういたしますと、いままで再建企業昭和四十五年度まで、とにかく交付金はやるんだ、百五十円の実績があった。今度一般炭でありますから百五十円の交付金だ、こういうことになってまいりますと、全然上乗せというものはこれらの企業にないという、こういう理解になるのですが、この点はそういう理解でよろしいかどうか。それと中小炭鉱の場合も、前は肩がわりを受けた炭鉱でも、いわゆる交付金を受けたわけです。今度肩がわりを受けると、一般炭炭鉱については百五十円、それ以上の百五十円の上積みはないわけですから、これまた従来の政策とそういう中小炭鉱の場合は全く同じだ、こういうぐあいにこの文章を読むと理解されるんですが、そういう理解で間違いがないのですか。
  17. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 安定補給金交付につきましては、再建交付金交付を受けるものと受けないものにつきまして、答申案では百五十円の格差をそれぞれについてつけるということで、交付を受けない方々はそれぞれ原料炭で五百円、一般炭で三百円の安定補給金を受けるということに相なっております。この考え方は、再度と申しますか新しく再建交付金という制度をつくりますので、これを希望する方あるいはその適用になかなか乗り得ない方という方々に対しまして、公平上のバランスをとりたい、こういうことで考えたわけでございます。その意味におきましては、従前の中小炭鉱管理会社に対して百五十円というものは一応御破算にいたしまして、今回の再建交付金交付を受けるものと受けないものということで区別をされておるわけでございます。
  18. 岡田利春

    岡田(利)委員 これまた私は、石炭政策というものは生きものを相手にして政策をやっておるわけですから、今度の小委員会取りまとめの思想というものは政策的な断絶がある、これは非常に無理だと思うわけです。いわば、極端にいえば、つぶしてしまうのだということになればそれですっきりするのでしょうけれども、抽象的には、ことばで説明をすると結局政策断絶にしかほかならない。こういう矛盾がこの文章を読むと出ると私は思うのです。この点の議論はまた別に譲りたいと思うわけです。  もう一つ最後に聞いておきたいことは、この中に出ております「需給円滑化確保するための共同行為実施等、実情に即した体制整備を行なう必要がある。」これは一体何をこの前提に置いてこういう文章が出たのですか。
  19. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 今後の情勢変化を予想いたしますと、出炭量につきまして地域的にあるいは炭種的に、あるときある数量が減少するというような事態も予想されるわけでございまして、従来の流通チャンネルが、たとえばA炭鉱B社へ納めておるというのを、どこかほかのところからこれを回さななければいけないというようなことをやりまして、計画に沿った実施がはかられるように考える必要があろうかと思います。そういった事態に対処いたしまして、石炭企業の各社がいわばカルテルを結成いたしまして、各自が相互に連絡し融通し合って、石炭需給円滑化をはかろうというようなことを念頭に置いて書かれた字句でございます。このような共同行為実施によりまして、ユーザーへできるだけ迷惑をかけないようにしたいという趣旨でございます。  なお、この共同行為の法律上の規定のしかた等につきましては、現在検討中でございます。
  20. 岡田利春

    岡田(利)委員 今日の石炭産業労務者確保がきわめて重大であることは論をまたないところであります。ところが労働者定着及び確保対策の中には、無利子の融資制度を活用して住宅環境整備をはかっていこうではないか、この面が出ておりますけれども、それ以外に労働者確保については何ら出ていないわけです。いままでの議論を通じても、労働力確保はきわめて重大問題である。しかも通産当局としてもこの点については何らかやはりその対策を講じなければならない。しばしば言明したところです。しかし、この小委員会取りまとめを見ますと、住宅環境、これは長期に残る山に対しては融資制度を活用しようというだけであって、ほかに見るべきものがないわけです。この際、労働省職業安定局長が来ておりますから、労働省としてこの小委員会取りまとめに対してどの程度相談を受けたのか、相談を受けたとすればどういう発言をしたのか、これはいかがですか。
  21. 村上茂利

    村上政府委員 小委員会検討をされる過程におきまして、労働省としましては通産省から絶えず緊密な連絡を受けております。したがいまして、この小委員会の案が作成される段階におきましても、幾つかの点にわたりまして労働省の見解を申し上げておるような次第でありまして、先生指摘労務者定着及び確保対策、この点につきましても従来と炭鉱労務の事情が変わりまして、離職者の問題と並んでさらに問題は、石炭経営を継続しますに必要な労働者をどう確保するかということが非常に重大な問題になってきたというような最近の傾向にかんがみまして、炭鉱労務者定着確保ということを真剣に考えざるを得ない、こういう点を私どもは主張いたしておるわけでありまして、そういう観点からこの項目が入っておるわけであります。その場合に、労働力確保する基本的な立場といたしましては、まず石炭産業労働者にとって魅力あるものであること。それから職場環境その他が同様に労働者に魅力あることが必要でございます。経営の基本的な問題については、労働省の所掌の範囲を越えると存じますけれども、そういった経営確立ということを望みつつ、具体的には炭鉱住宅その他環境整備ということを促進していただく。あるいはまた災害の問題につきましても、保安対策を強化するといった災害の少ない職場にしていただくといったような幾つかの問題があるわけでありまして、こういった点を労働力確保基本的前提とする必要があるという考えを持っておるわけであります。そういった点につきましては、保安対策の強化とかいろいろな事項が小委員会の案にも盛られておるわけでありまして、そういう前提条件をいわば整えることと相まちまして、労働力確保のためには、今後離職いたします炭鉱労務者をできるだけ存続炭鉱への再就職を円滑にするということがきわめて直接的である。こういう観点から今後積極的な指導援護措置を講じてまいりたい、かように存じておる次第でありまして、そういった内容も小委員会の案には示されておるわけであります。
  22. 岡田利春

    岡田(利)委員 村上さん、これはほんとうですか。いまあなたが答弁されたのは私はそう受けとめていないわけです。労働省労働者確保ほんとうに真剣に討議してその案を練ったとすれば、私はこういう文章の書き方にはならぬのではないかと思うのですよ。これは何もないですよ。確かに住宅環境については融資制度考えましたけれども、それ以外のものとして労働省から見るといまどういうことが行なわれておるか。若年労働力確保するために一体どういうことをやっておるのか。学校制度をやったりそういうことを企業でもやっている。こういう面に何か全然触れていない。若年労働力確保するためにさらに一体どうあらねばならないのか、企業にやらせるとすれば企業にやらせるとして、その方向も何ら示唆されていない。あるいは炭鉱労働者確保については、従来の答申をずっと見ればそう差がないわけですね。いわば答申の繰り返しで環境整備の問題が一つだけつけ加えられた。こういう内容にしかなっていないと私は思うのです。そういう点で私は綿密な緊密な連絡がとられたというけれども、しかし私の調査では、小委員会労働省から相当責任のある者が出て、この点について意見を述べたということはないわけですよ、ありますか。
  23. 村上茂利

    村上政府委員 小委員会で案を取りまとめ段階におきましては私が出席をいたしております。私もいろいろ意見を申し上げておるところであります。  この小委員会の案は、何ぶんにも全体の政策のいわば骨子を示したものでありますから、ことばが非常に簡単なために具体的内容を推しはかることがあるいはむずかしい点もあるかと思います。たとえば、いまの御指摘若年労働者をどうして確保するかという問題につきまして、これは一般産業でも非常にむずかしい問題でございますが、単に職業紹介機関を通じまして努力するにいたしましても、産炭地域における状態が魅力あるものでなければならぬ。そのためにたとえば新しい「福祉施設設置等労務者福祉対策推進を図る」こういう項目が入っておるわけであります。この福祉施設がどのようなものであるべきかということはさらに各部会において検討されるでありましょうし、私どもは来年度の予算編成関連いたしまして、今後その具体化に努力したいと考えておりますが、そういった点につきましては私ども十分配慮し、そして予算要求につきましても、通産省がなされるもの、労働省がこの福祉施設として何を要求するかといった点につきましては分担を明らかにいたしまして、それぞれ財政当局と折衝いたしておるような次第でございます。
  24. 岡田利春

    岡田(利)委員 しかし、いま炭鉱労働者確保するという場合には、若年労働力を具体的にどう一体確保するかというのが一つの問題です。慢性的に労働力不足でありますから、閉山されていく経験のある炭鉱労働者存続させる企業にどうやってスムースに転換できる装置をするかということがかぎなんですよ。これ、ないじゃないですか。少なくとも通産省の感覚ならこの程度で書かれたということは私は理解できますけれども、もし、あなたが言われるように、労働省炭鉱労働力確保について真剣に検討したとするならば、この二点が触れられていないということはどうもあまり真剣に考えられていないのではないか、言っていることと実際は違うのではないか、こういう大きな疑惑を私は持たざるを得ないのですよ。この二点は考えられないですか、装置。あるいはまた若年労働力について、その確保のためにほかの産業が苦しいのですから、たいへんなんですから、特に炭鉱についてはいろいろな実績もあるわけですから、そういう面を推進をしたい、こういうことが出てこないで労働力確保ということにならぬのじゃないですか。
  25. 村上茂利

    村上政府委員 先ほど来申し上げておりますように、必要な労働者確保する、そのためには企業自体が経営が健全であり、魅力あるということが基本的な前提条件であるわけであります。しこうして、さらに具体的な労働条件がどうであるかということが、それと関連いたしまして問題になるわけでありますが、今回の小委員会考え方を見ますると、労務者対策推進という点については「炭鉱労務者の置かれている環境は十分とはいい難く、」と、こういうふうに認識を明確にいたしておるのでありまして、「今日、これの改善がなければ、雇用の安定と石炭鉱業再建を期することはできない。」こういう認識を労務問題の冒頭にかかげておりますことは、従来の合理化の案には見られなかったことではないかと私は考えておるわけであります。そしてまた、具体的内容につきましても、従来はいわゆる消極的な離職者対策という面がほとんど全部をおおっておったような傾向がございますが、今回の案におきましては「労務者定着対策と、これがトップに出てきておる、こういう文章の構成になっておるわけであります。そういった点で、私どもの基本的な認識あるいは考え方の重点の置きどころというものは、小委員会の案の作成段階におきましてもいれられておるというふうに存ずるわけであります。  ただ、具体的な、若年労働者をどういうふうに充足するかという点につきましては、これをやれば絶対可能だといういわゆるきめ手はなかなかないのでありまして、私どもは今後第一線の職業安定機関を督励いたしまして、必要労働力確保に力を注ぎたいと思いますが、先ほど申しました福祉施設を具体的に考えるにつきましても、青壮年勤労者が魅力あるような内容のものにするかどうかといったような問題もあるわけでありまして、そういった点も考慮いたしましてできるだけの努力をいたしたい、かように考えておる次第であります。
  26. 岡田利春

    岡田(利)委員 労働省あたりは、私は少なくとも閉山になる炭鉱から労働力確保するためにどういうことをやっておるか、一人当たり支度金二十万、最近は二十万ぐらいまで上がってきているわけです、そして二年間働けばこれは返済しなくてもいい。これでも労働力確保できないのですよ。なかなか困難なのです。だからそういう現実に行なわれておる実態を把握すれば、当然それは支出になっているわけですから、その面を総括的に考えると、閉山になる炭鉱労働者を残りの炭鉱確保する、こういう点について一歩政策が当然出てくるのだと私は思う。具体的なものは出なくても、方向は出るのだと思うのですよ。あるいは新規の労働力確保するために、それぞれ大きな企業については努力をしているわけですよ。こういう面について総括的に調査をし、分析をし、総括することによって答申としての方向が出るものだと思うのです。ですから、私はそういう点では御丁重な御答弁をいただきましたけれども、きわめて抽象的であって、それは答弁の繰り返しにしかすぎないという感じを非常に強くするわけです。議論はこの程度にいたします。  最後にもう一つ聞いておきますが、閉山になる炭鉱企業ぐるみ閉山になる場合には、臨時措置がありますから、その場合には退職金等の労働債務は七五%まで保証する。しかしこれは臨時措置がありますから、臨時措置の適用のできない炭鉱の場合には結局二千四百円が三千三百円になった。二千四百円の五〇%が優先的に労働債務に支払われる、こうなるわけですね。三千三百円の場合にもこの考え方が当然基礎的に延長されておると思うわけです。そうすると、早くやめたほうが退職金は七五%まで保証してやるが、臨時措置期間一ぱい一生懸命努力する炭鉱は自然条件の変化や災害がありますから、そこで閉山をしなければならぬという場合には、これはともかく二千四百円が三千三百円に上がっただけで、何らその面についての考え方はない。文章を読むとこのように私は理解するのですが、この点はいかがですか。
  27. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 特別閉山交付金制度の適用を受けなければならないような事態になっておる会社というのは、先ほどの岡田先生の御指摘にもありましたように、そう多くあるとは考えておりません。債務リンクで考えまして七五%くらいの退職金充当率に考えた思想は、一般閉山交付金の三千三百円を考えます場合でも、原則として通常の状態であればそのようなものに落ちつくはずであるというような試算をいろいろやりまして、この三千三百円をきめておるわけでございます。また、そのことが鉱害債務の有無によりまして必ずしも実現できないという事態もあるということが計算過程ではっきり出てまいりましたので、鉱害債務につきましてこれを別個に分けて考えるということも考えたわけでございます。そういう気持ちでございますので、時間の経過とともにこの特別閉山交付金制度期間がかりに終了いたしましても、一般閉山交付金制度の適用によりましておおむね同様のことが行なわれるという立場に立ってものを考えたわけでございます。ただしかしながら、いずれの場合にいたしましても、国の交付する閉山交付金によって退職金の支払いに充当されることがいわば裏打ちされております額が七五%ぐらいということでございますので、残りの二五%というものに対しての配慮をいたしませんと、先ほど来お話しになりましたような労働者の先行き不安感ということによって労働者確保が期待し得ないという心配もございますので、小委員会案では、国が負担する額にもおのずから限度があるので、企業サイドでも何らかの措置を講ずることを検討すべきであるということで、残り二五%についてのくふうをひとつ考えなさいと、こういうふうに申しておるわけでございます。これにつきましては業界におきましても私のほうからも連絡をいたしまして、ひとつ至急に具体案をつくるように呼びかけをいたしております。具体案が出てまいりまして何がしか法制的な支援その他が必要であるということになれば、予算的な問題とは別個といたしましても、そういう制度企業がやることについて応援を与え得ることについては今後私どもの課題として検討してまいりたいと思っておるところでございます。
  28. 岡田利春

    岡田(利)委員 先般委員会で説明されました小委員会取りまとめをずっと一読して、矛盾点について事務的に見解を尋ねたわけです。私はこの取りまとめを見まして、基本方針というものが出て一、二、三、四、こう書かれて、対策の概要というものが内容的に具体的に示されておるわけです。これは明らかに基本方針と対策の概要と思想的な分裂がある、こういう理解に実は立たざるを得ないわけです。特に重大なことは、石炭鉱業の位置づけと展望というものがない。そういう意味ではこれが第四次答申にそのまま出るとすれば、まさしく最低の答申案である。少なくともいままでの答申石炭の位置づけと展望というものが明確にあった。今度の場合は全然ないわけですよ。これが最低の答申であるといわれる最たる理由はここにあると私は思うのです。通産大臣もこの試案は綿密に読まれたと思うのです。私はそう思うのです。この点について通産大臣の所見を承りたいと思います。
  29. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのように、政策を打ち立てる場合におきまして、エネルギー資源としての石炭の位置づけと、それから計画年度にわたりましての確たる展望を持ちまして、それを軸として石炭政策を打ち立てるのが当然の道行きであろうと考えるのであります。ところが、いままでやってまいりました石炭政策は、そういう線に沿うてやってまいったのでありますけれども岡田委員も御承知のように、石炭鉱業の生産性が思うにまかせなかった、能率が当初想定いたしましたような運びになかなか参らなかった、賃金のアップ率も当初予想しておったようなカーブではあり得なかったというような事情に加えまして、競合エネルギーの値段は逆にだんだん弱含みになってまいったといういろいろな事情の変化がございまして、当初描いておりました構想が遺憾ながらその線に沿った結実を見ることができなかったのでございます。  そこで、いま審議会において私どもが御依頼申し上げて御審議をいただいております段階でございますが、小委員会の原稿が出ておりますけれども、これはその限りにおいて私ども理解するところではそういう立て方ではなくて、逆に国といたしましてまず助成の限界をはっきりさそう、そしてその限界を見きわめた上で労使並びに関係者が最善を尽くしまして努力をいたしますれば、見るべき成果が期待できるのではないかという立て方にいたしたのではないかと理解いたしておるのでございます。御指摘のように本来の立て方の逆になっておるようでございますけれども、従来の経緯にかんがみましてこういう立て方でいったほうが実効的ではないかと御判断されたものと私は理解いたしております。
  30. 岡田利春

    岡田(利)委員 昭和三十七年に石炭調査団が編成をされて答申を行なって以来、実に七年が経過しておるわけです。しかも小委員会のメンバーはその主力メンバーであるほとんどの人がこの七年間とにかく石炭を扱い、第四次答申をいましようといたしておるわけです。そうしてこの小委員審議の経過を私なりに分析してまいりますと、当初は相当思い切ったことをしなければならぬということで積極的な発言が行なわれてまいったわけです。それがいつの間にかしりつぼみになって、いわば投げ出したようなかっこうで議論が進められたような感じを私は非常に強く持っておりますし、私以外の多くの人もそう思っておりますから、今度の審議会審議経過に対して、またいま取りまとめられておる小委員会の一応試案についても非常に強い不信感を持っておる。しかも時間的な経過を分析してまいりますと、この取りまとめはいわば炭鉱の経理と結局は分離したことになりましたけれども分離問題——経理と分離問題にも相当なエネルギーを使ってそこに集中し、相当時間を経過してしまった。それ以外きわめて抽象的にさらっと掘り下げが足りない形で文章的に取りまとめた。これが私はこの取りまとめの案の内容の真相であろう、こう思うわけです。そういう点で、結局はいろんな矛盾点、また多くの人々が聞きたい面についてこの案は答えていないという考え方を私は持っておるわけです。  そこで、この答申が一応位置づけと展望が明らかにできないというのは、結局数字を出すということは、いままでの経過にかんがみるとどうも出した数字と大きく違う、だからこの試案はあまり数字を出さないで逃げようという逃げ腰の姿勢で書いた文章ではないかと思うのです。しかし昭和四十八年には、参議院で大臣が答弁しておるように、わが国の出炭規模は三千五百万トンになることは間違いがないでしょう。しかもその間賃金については一〇%値上げを一応めどにする、生産性については三%、コストアップの要因については大体二%アップ、こういう基礎的な数字のもとで、しかも昭和四十八年は三千五百万トン、こう想定されたことは間違いないでしょう。これは参議院でも答えておりますけれども、この点についてはどうですか。
  31. 大平正芳

    ○大平国務大臣 国が助成をしてまいる場合に、試算の前提として各年度の出炭ということについて一応の想定した数字を持っておりますことは持っておるわけでございますが、いま御指摘のように四十八年度三千五百万トンというような数字をとらえておることも事実でございますけれども、しかし現実の出炭は、私が先ほど申しましたように、これだけの助成をいたしまして新しい石炭政策がとられて、これが幸いに労使並びに関係者に魅力あるものとして受けとめられまして、生産意欲が上がってまいりますならば、それ以上の出炭がありますことは望ましいことでございまして、私どもは三千五百万トンで押えるとかなんとか、そういうような考えは毛頭ないわけでございます。
  32. 岡田利春

    岡田(利)委員 財源には限度がある、助成には限界がある、私もそれは理解するわけです。だからこそ、五カ年間の総財源を四千億なら四千億、四千二百億なら四千二百億に押えれば、それぞれ交付金なり閉山交付金、産炭振興、融資対策なり、それは当然予算的に考えていいわけです。ですから、その財源から逆算をすると、どうしてもやはりぴちっと五カ年間の傾向、産炭構造、出炭規模というものは多少違ってもほぼ明らかにされなければ、これは計算ができないのではないかと思うのです。われわれの頭で暗算しただけでも、そうしなければなかなかこういう政策は具体的なものが出てまいらないのだと思うのです。そういたしますと、結局昭和四十八年は三千五百万トンだ、こうすると、ずっと私ども頭の中で日本の炭鉱を一々えがいてみるわけですが、北海道は一体幾らになるか、常磐は幾らになるか、西部、九州地区はその場合には幾らになるかということは、きわめて必然的に出てくるのではないかと思うのです。ですから、大臣としては、別にそれを押える意味ではないと言いますけれども、財政の目ざす方向は、そういうものごとの考え方で組み立てられておりますから、ひ弱な体質を持っているわが国の石炭産業は必然的にその方向に流れていく。そして一応予想していない要因が出れば、それよりも大きくくずれるのだ、こういう方向がこの取りまとめをするにあたっての一応の考え方ではなかろうか。どのように理解しても、どのように分析しても——なかなか通産省は口が固くて、われわれには具体的なことは言いませんけれども、いま炭鉱の数は多くないと思うから、自分なりに分析しても明確に出てくるわけですが、ほとんど変わらないわけです。企業なり個々の単位炭鉱中小炭鉱の現状等を分析してみると、あまり変わらないわけです。ですから、大臣の言われているのは、むしろ四十八年三千五百万トンというのは、いま私が申し上げましたような数字、こういうものが順調にいった場合に大体三千五百万トンになるのだろうということであって、むしろいま想定されていない要因が出た場合には大きくくずれる、私はこういうことになるのだろうと思うのです。ここは非常に肝心なところなのですけれども、大臣どうですか。こういう私の考え方というものは、この取りきめの思想の中に明確に据えつけられておる、こう思うのですが、そうお思いになりませんか。
  33. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど申しましたように、第三次案におきまして、当初計画当局が想定いたしましたとおりの事柄が運ばれなかった。生産性も賃金率も思うようにいかなかったということでございますが、今度の場合は、その点は非常に手固く生産性の向上も賃金のアップも想定して、実現可能な目安をまず据えたという感じが一ついたします。  それから第二点といたしまして、岡田先生もお考えになられておることと思うのでございますけれども企業経営は何も機械的なものではないと思われておられると拝察しますが、われわれが政策を立て、それを拝見いたしまして各企業関係者がいろいろくふうをこらすわけでございまするから、そのくふうのしかたによりまして、いろいろと当初予想いたしました算術的な計算が、実は思ったより向上したじゃないかという実績が期待できないとはいえないのじゃないかとも思うのでございます。とりわけ、あなたが御指摘になりました体制の問題、審議会の発足以来いろいろ体制問題でずいぶんエネルギーを費やしたという御指摘でございましたが、事実そのとおりでございますが、どのような体制をとるかというようなことにつきましても、ほんとうに苦悶を重ねられて、私は御苦労であったと思っているのです。それで、これもこういう石炭鉱業に内在的ないろいろな問題があるわけでございまして、何とかそこに活路を見出そうという苦心のあらわれでございまして、私どもこれから石炭政策を一応打ち立てましても、これを実際に指導してまいって、これを運用してまいる場合には、いろいろなくふうを不断に重ねていかなければならぬと思うのでございまして、そういう過程を通じまして、こいねがわくば一応の出炭目標が、こういう計算でこうなっているからというようなことではなくて、みなの努力でもっと出してみようじゃないかというような意欲がほうはいとして出るようなものに持っていかなければならぬ。おまえはずいぶんロマンチックに考えるじゃないかというおしかりを受けるかもしれませんが、これだけの国費、そしてこれだけの御批判のあらしの中で政府がやろうとする政策であるだけに、私どもほんとうにそこは真剣に取り組んでまいらなければならないものではないかと考えております。
  34. 岡田利春

    岡田(利)委員 いま大臣が言われましたけれども、そういう期待をしなければ政策は出せぬわけですから、そういう期待をしたいという気持ちについては、十分理解はできるわけです。しかし期待と事実、どうなっていくかという点については、また別でありまして、私どもは私どもなりで分析して、では炭鉱というものはどうなっていくのか、この政策のもとではどうなっていくのかということを分析しますと、残念ながらこの政策では一、二年しかもたないだろう、大体昭和四十四年、四十五年、この時点で政策はくずれるであろう、こう見ているわけです。しかも、その理由は、結局第三次答申と同じように、もう私企業のみに拘泥していて、ダイナミックな展望がない。この展望がせめてあれば、まだ話は違うと思うのですけれども、そういう展望がないわけです。そういうダイナミックな、伸びていくような、ずっと展開されていくような素地というものは、この文章を読んでみてもどこにも感じられないわけです。ここに致命的な欠陥があるわけです。少なくとも大臣が言われるように、できるだけ出炭を確保する、しかし、たとえば四千万トン確保するといっても、この政策のもとでは、とてもじゃないけれども確保できるものではないし、四十八年三千五百万トンというけれども、四十八年三千五百万トンの体制すらもこれでは維持できないであろう、こう実は見ているわけです。それは、もうそれぞれ理由があるわけです。たとえば原料炭の山だからこれは確保したい、こう思っても、企業には炭鉱ごとにずいぶんアンバランスがあるわけです。それを企業サイドだけで考えると、あるAという山はどうしても救われない。企業としては本能的に閉山をするかあるいは分離しておいて閉山方向にいくか、こういう緊急措置を、自衛的措置をとらざるを得ないように追い込まれていく。これはわが国の最大の原料炭のそれぞれの企業単位炭鉱を分析すれば当然そういう点が出てくるわけです。あるいはまた、ある一つ鉱区の展望があるからこれを切り離すといっても、切り離しただけでは成り立たないわけです。これにはある一定の条件に達するまでの積極的な助成がなければならぬ。そういう原料炭なら原料炭であるからといって助成がなければ、そこまでの政策ほんとうにぴちっとしなければ、これも絵にかいたぼたもちで、やってみたけれどもすぐ消えてしまうという結果になることも明らかなわけです。あるいはまた、国民の立場からいえば、ある企業というものは九州の一番南端に炭鉱がある、北海道の空知炭田のまん中に炭鉱がある、そうして東京に本社があって、福岡に事務所があって、札幌に事務所があって、端と端の炭鉱を管理している、そういう大きな企業もあるわけです。こういうものをできるだけ簡素化してメリットを出さないで、ただ助成は国費は限度だから、そういう前提を変えなければ、同じ四千億なら四千億投資をする効果というものは半減するわけです。メリットのあるものは出せる、このくらいの気持ちがなきゃいかぬのじゃないか。また、国民経済立場からいえば、単に企業に振り回されるのではなくして、やはりかくあるべきだというものを出して、こういう方向で協力するものについてはこれこれこれこれの政策の恩恵が与えられる、協力しないでかってにやっていくというものに対しては何も政府がめんどうを見る必要はないわけですよ。しかも、四十八年以降といえども、野放しでは石炭企業は自立はできないことは明らかなわけですから、ここの点が、もう少しネジの締め、そのポイントに欠けるところに、非常に評判の悪い小委員会の案になっているのだと思うのですね。  そこで、大臣にお聞きしたいのですけれども、二十三日に総合部会でも相当議論が出て、私どもの聞いておるところでは、経営者みずから、これだけではやっていけません、さらにひとつ頼まなきゃならぬという発言もされていますし、中小炭鉱では、先ほど若干事務的な質問をしたような根拠に基づいて、これについては反対だ、のめない、こう中小炭鉱経営者自身が言っているわけです。また、公益委員の代表等も、きわめてきびしい意見を出されている。本来であれば炭労くらいがやかましいことを言うけれども、あとは大体納得するだろうと思ったけれども、なかなかそういかなかった。こういう審議の経過を見てもすでに明らかですし、新聞論調を見ても私は明らかだと思うのです。しかし、今日小委員会の中枢メンバーが一応取りまとめた案を、二十三日の総合部会を開いて、いずれ総会を開いて大臣のところに答申をするのだと思うのです。しかし、日程的に考えますと、今年の最終閣議が二十七日とすれば、あと来年の閣議がおそらく六日に開かれるのだと思うのです。答申を得てそのままストレートで閣議決定する考え方があるのか。大臣としては相当な時間をおいて、正式答申を受けてそれぞれの意見も聞き、そういう上に立って大臣として決断されて閣議決定をする方針なのか。いずれにしても、いま私が申し上げましたようにいろいろな意見があるわけです。ただ、残念ながら、正式な答申が出ていないものですから、どうもまだ最終答申ではないというところで議論が詰められない状況にわれわれが立たされているものですから……。この点大臣としては、いままでの審議経過を見てどう考えられていますか。
  35. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど中川局長からも御答弁申し上げましたように、それぞれ情景に応じてメリッドを最大限に出すようなくふう、あるいは分離あるいは統合、そういったものについて、場合によっては政府が勧告権も持とう、持つべきであるというような思想がそこに盛られてあるという御指摘がありましたことは御案内のとおりでございまして、私はこう考えております。この答申がありましてもそれは大きな処方箋としての骨子と思いまして、いわば私どもはそれを受けて臨床的にいろいろくふをこらさなければならぬことは行政の責任者として当然であろうと思っておりまして、岡田委員おっしゃるとおり、それぞれの山のメリットが最大限に生かされるようなくふを一生懸命に見出して、それを具現していかなければならぬものと考えております。  それから手順でございますが、近く年内には本答申がいただけるものと期待しております。しかしこれはあくまでも審議会の御答申でございまして、政府には政府の立場がございます。自由民主党をはじめといたしまして各政党にもいろいろ御意見が私どもにも伝えられておるわけでございます。したがいまして、そういった御意見を十分承りまして、いろいろ肉づけをいたしましてできるだけ魅力のあるものに仕上げたいという気持ちでいま一ぱいでございまして、しかる上閣議決定に持ち込みたい、そう考えておるのでございまして、時限を限りまして三日、五日を非常に争う、拙速をとうとぶというような性質の政策ではないと心得ております。
  36. 岡田利春

    岡田(利)委員 私はいまの第三次まで石炭政策を進めてきた石炭合理化臨時措置法があり、今度さらに、たとえば石炭合理化事業団も業務の内容がふえ、膨大なものになっていく、あるいは電力のために電力用炭の納入の株式会社もある。とにかく企業もそのままですけれども、政府の機関についても何らこれは触れていないわけです。この取りまとめ内容を見ますと全然触れていないわけです。私は発足当時の合理化事業団の性格というものは大きく変わっていくのだと思うのです。そういう面から見て、少なくとも有機的なつながりを持ってそれを十分検討したり、政府自体の体制的なものについても当然検討が加えられてしかるべきではないか。各企業も端と端に炭鉱があって本社があって管理部門が膨大になっている。政府の管理機構だってそうですよ。これはある程度一元化できれば合理化事業団のほうも、そういういろいろな政府の機関も整理統合ができるし、石炭局だって行政簡素化できるはずです。そういうあらゆるメリットというものはあるはずですよ。単に本土の企業にやる金ばかりが石炭の予算ではないわけですから、少なくともそういう点について一段とくふうすべきではないか。あるいはまた鉱区の問題についても——これは勧告すると言っていますけれども、いままで三千億以上やって、今度四千億以上やって——簿価から見れば微々たるものです。鉱区なんというのは当然出すべきではないか。そうして施業案を政府が認可するわけですから、認可した施業案についてそれは炭鉱に掘らせればいいわけです。そして炭鉱にやるなら鉱害がついて回るわけですから、鉱区調整とか何とかは関係ない。いわゆる合理化計画に基づいて、再建計画に基づいてどうせ施業案が具体的に出てくる。施業案を認可する鉱区は当然その企業が掘る、移譲する鉱区なんというのは、合理化事業団に出すなり国に出すなり、当然これは出していいのではないか。そうすると鉱区調整問題なんというのは議論する余地がなくなるのです。まして原料炭を戦略的に位置づけたとすれば原料炭をできるだけ掘る。残る一般炭としては良質の一般炭を安定的に掘るとすれば、そこに調整をするとか勧告をするなんという必要はないのではないか。あるいは流通も先ほど言ったように、単に共同行為等にちょっと触れただけです。あれだけ大問題になっている流通機構にこの程度ではたして国民が納得するかどうか。前にも申し上げましたように、わが国の炭価の形成というものは、主産地が九州でありますから、九州に近いところが安くて九州に遠いところが高いわけです。今度北海道に重点が移りますが、北海道に近い東京電力が炭価が高くて、北海道に遠い中部電力が安いわけです、九州に近いために。原料炭は今度は瀬戸内海の水島に持っていくわけです。東京地区が高くて関西地区が安くて、さらに向こうにいくとまだ安くなるわけですよ。こういう産炭構造が革命的に変わっているにもかかわらず、炭価形成は明治以来の伝統的なものそのままにしておくのかどうか、炭価改善の努力をするのかしないのか、答えを出してない。あるいは、この目ざす方向でいけば、当然炭の供給体制ががらっと変わってくるわけです。それでも依然として商社を経由して、これは権利だからといってトン百円から百五十円、わざわざ通してそこにお金をやって炭を納めなければならぬのか。こううい点については改善するのかしないのか。何もないのですよ。いますぐできなくとも、石炭の長期見通しに立てば、そういう点を前向きでやろうとしているのか。むずかしい、むずかしいといって、もう全然文章にも出ていないのですよ。文章にも出ていないのだから、まるきりやる気がないということですよ。少なくとも、できるかできないか、そういう努力をする、努力ぐらいはするならわかるけれども、全然ない。もう話にならぬのですね。そうして私どもは長い間、鉱区をどうくふうするか、鉱区調整をスムーズにどう調整するか、流通機構については、むずかしいことはわかるけれども、どう一体これを乗り切っていくのか、口をすっぱくしていろいろな点について提案もいたしておるわけです。ですから、われわれの言うことが一〇〇%すぐできなくとも、やっていかなければならぬということは常識ですよ。常識に対して芽も出ないということは、まさしく不毛の政策である。こういう面については不毛であると、こう言われても私は答弁のしようがないのじゃないかと思うのですね。こういう点について、大臣どうですか、積極的にわれわれの意見も聞いて、まあ社会党のいう国有、国営化はできないとしても、本会議で大臣は答弁しているわけですからできないとしても、そういう方向については十分意見を聞いて、通産大臣としては最終決断を下すのだ。先ほどの話は、十分そういう意見は聞く。しかしドイツのシラー経済相は、夜を徹して労働者代表やあらゆる階層の意見を聞き、経営者とも話をして、涙ぐましい、相当のエネルギーを消耗して、あのドイツの石炭政策をまとめて、そうして一月一日から新しい体制でスタートするのですよ。ですから、いままでは答申が出るまで、答申が出るまでと逃げられておりましたけれども答申が出た暁は、年末年始、正月を返上して大車輪で、これだけの国費をつぎ込むわけですから、国民にこたえて、関係者にこたえて、大臣として最終的な石炭対策をきめる、こういう決意がおありですか。
  37. 大平正芳

    ○大平国務大臣 何ページかの答申になりそうでございまして、それが非常にこうかんなもので、微に入り細を尽くして、いまあなたが御指摘のような問題を全部網羅して書かれたら、ある意味においてありがた迷惑なんでございまして、やはり私の申し上げました骨子が書かれてある、あとの肉づけにつきましては、私どもといたしましては、皆さま方の御意見をよく聞きながら肉づけをしてまいりまして、魅力のあるものにしたい。微力でございますが、精一ぱい努力してまいりますので、この上とも御鞭撻と御協力をお願いしたいと思います。
  38. 岡田利春

    岡田(利)委員 じゃ、終わります。
  39. 堂森芳夫

    堂森委員長 田畑金光君。
  40. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの質問に継続しますが、この間大臣は植村会長とお会いになりまして、意見調整をはかられた。そして答申については、おそらく来週に出るだろう、このように言われております。また、そうでなければあなた方としても来年の予算作業に差しつかえも出てくると見ておりますが、来週に答申は出るものと期待しておりますが、そのように見通してよろしゅうございますか。
  41. 大平正芳

    ○大平国務大臣 来週ちょうだいできると考えております。
  42. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの岡田委員質問に対して、大臣は、答申が出た暁にはさらに与党なり各党の意見ども聞いてみて政府の原案を作成する、このようにお話がありましたが、国会の意思を聞くはもちろんでありまするが、与党野党、各党の石炭政策についての意見を聞く機会はおつくりになりますか。
  43. 大平正芳

    ○大平国務大臣 現にそういう機会を持ちつつございまするし、今後も持ってまいります。
  44. 田畑金光

    ○田畑委員 私、率直に申しまして、今回の答申の原案になるであろう政策懇談会小委員会の集約いたしました内容を拝見したときに、一番われわれが遺憾に思うことは、先ほども指摘がありましたが、石炭の位置づけが明確にないということです。前回の答申につきましては、大臣御承知のように、今後の石炭の位置づけは五千万トン程度にすることが妥当であるということを明示いたしておりまするし、また先般、総合エネルギー調査会がいろいろな角度からわが国の総合エネルギーを検討し、その中の石炭の位置づけはかくあるべしという結論を出しておるわけです。  ところが今回の案については、先ほど来、四十八年度には三千五百万程度になるであろうという話はお聞きいたしまするが、案自体の中に石炭の位置づけというものがはっきり出ていないわけです。これはどうしてこのような形になったのか。あるいは、これは答申の原案であるから、答申が出た節には、政府としてはいま私の申し上げた石炭の位置づけなどについて明示する、こういう御方針なのか、その点を明らかにしていただきたい。
  45. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど岡田委員の御質疑にお答え申し上げたのでございますが、そういう出炭目標を想定いたしまして石炭政策を打ち立ててまいるという方法と、再建の基礎条件を政府の助成によりまして構築いたしまして、そのあとは労使並びに関係者がその条件の中で最善を尽くしていただいて出炭をかちとっていただくか、どちらか二つの方法があると思うのでございまして、私の理解する限りでは、今度の答申の思想は後者によっておるのではないか、そう存じておるのでございます。いずれがいいか悪いか、その優劣の判断はやってみないとわからぬと思うのでございますが、私の考えでは、いまの置かれた状況のもとにおきましては、石炭審議会のほうでいま考えられておる思想も無理からないのではないか、そういう判断でございます。
  46. 田畑金光

    ○田畑委員 私は、過般新聞に出ました与党の石炭特別委員会考え方なるものを拝見しましたが、中川委員会においては、五千万トンの出炭体制の維持という前提政策作業を進めておるようであります。これは中川氏個人の御意見と受け取るわけにはまいりませんが、中川特別委員会意見だと考えます。そこで私は、一体今回のこの答申を貫く精神というものは、これは石炭再建をはかるのか、維持するのか、それとも撤退をはかろうとするのか、どこに重点を置くのか、このあたりを明確にしてもらわねば困ると思うのです。維持、再建をはかるということであれば、やはり石炭の位置づけ、これをわれわれとしては考えておる。そのためには、政府としてはあらゆる施策を講じて石炭産業の安定をはかるのだという心がまえと体制というものがなければ、四十八年度三千五百万トンというような話をなさっておるが、四十八年を待たずしてがたがたと石炭産業はくずれていくのではないか、こういうことを私はおそれておるわけであります。まあそのような意味において、やはりこの際石炭の位置づけというものがもっとはっきりすることこそ、答申を受けた政府の政策決定あるいは閣議決定等々において十分爼上に取り上げらるべきだと見ておるわけですが、この点についてもう一度ひとつ大臣の考えを聞かしてもらいたいと思います。
  47. 大平正芳

    ○大平国務大臣 石炭が日本固有の大事なエネルギー資源でございまして、産業政策の上から申しましても、また一国のセキュリティーの上から申しましても、大事な資源であることは申すまでもございません。さればこそ政府が累次にわたりまして巨額の国費を投じて石炭政策をやっておるゆえんだと思うのでございます。今後日本の所要のエネルギーは年々歳々増大してまいるわけでございまして、エネルギー資源といたしまして余るものはないと思うのでございます。石炭資源というものが経済性を持ちまして、将来のエネルギー需要に対して十分ミートしてまいるということが一番望ましい状態でございまして、私どもは経済的な資源としての石炭の出炭が多ければ多いほどけっこうだと思います。それで問題は、この石炭政策を立てる場合に、先ほど申しましたように、一定の出炭目標を想定いたしまして政策を組み立てていくか、それとも再建の諸条件を整備して、そしてそのあとは企業の生産意欲に待つか、どちらかの態度、どなたが考えてもその選択であろうと思うのでございまして、いずれがすぐれていずれが劣っておるかとはにわかに論断できないのではないかと思うのでございまして、出炭目標を、田畑委員指摘のように、あらかじめ打ち立てなかった、そういう行き方をとったのだというように御了解願えればしあわせと思います。
  48. 田畑金光

    ○田畑委員 局長にお尋ねしますが、四十三年度の出炭の計画と実績の見通しと申しますか、どのように見ておられますか。
  49. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 本年度につきまして四千七百万トン程度の想定をいたしておりましたが、ただいまの見通しでは四千六百万トンぐらいに落ちつくのではなかろうか、百万トンぐらいの計画のほうに対しまして不足が出るのではなかろうか、かように考えております。
  50. 田畑金光

    ○田畑委員 四十八年度は三千五百万トンになるであろう、 こうしばしばいわれておるわけですが、よってきたる計算の基礎は何でそうなるのか。四十四年、四十五年、四十六年、四十七年、四十八年、ちょうどこれから五年後には、ことし四千六百万トンとしますと、かれこれ一千一百万トンも減少する。年間かれこれ二百万トン以上の出炭減少ということになりますが、そのような計算の基礎というのはどのような数式の上から出てきておるのか、その辺をひとつ明らかにしていただきたい。ことに、これは大臣百も御承知のように、政策懇談会の小委員会の案なるものは、石炭局の事務当局がその庶務をあずかって作業を進めてきておるわけですから、小委員会の案は即実は事務当局の考え方であろうし、通産省考え方であろうと私は見ておるわけですが、三千五百万トンの線というものがどのような根拠から出てきておるのか、この辺をひとつ計数的に御説明を願いたい、こう思うのです。
  51. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 先ほど来大臣からもお答えがありましたように、また岡田委員との質疑の間にも出ておりましたように、五年間に私ども石炭政策のために用意し得る財源というものがほぼ一定をいたしておるわけでございます。が、反面、産炭地域振興、鉱害対策推進、雇用安定対策といったもので、ある程度の、これも相当の額になりますが、支出をしなければならないものも、石炭鉱業再建と相並んで、片方に何がしかの均衡のとれたものとして用意をしなければならぬわけでございます。そこで、大臣お答えになりましたように、それらとのバランスをとりつつ助成費の限界というものをいろいろ求めてみまして、その助成の中でどのような石炭鉱業の運営が行なわれていくであろうかということを想定はいたしております。その想定のもとには、これから先四十四年から四十八年度までのコストの状況、これらを先ほど来御議論が出ておりますような能率の数字、あるいは人件費の数字、物件費の値上がり率というようなものを念頭に置きまして、これらの助成費でおおよそどれくらいの石炭生産が行なわれ得るであろうかということを想定いたしてみますと、五年間で平均毎年四千万トン強程度、四十八年度時点では三千五百万トン程度という想定をいたしておるわけでございまして、これはくどいようでございますけれども一つ助成政策考えまして、それを企業に適用してどれくらいの経営になるかということを考えた場合の出炭予想でございまして、大いに労使が努力をしていただけるならば、それ以上のことにもなり得る期待を持ちたいと思いますし、また予想外の事柄が起こりますならば、それよりも下回るということもあり得る、こういう状況でございます。
  52. 田畑金光

    ○田畑委員 私は明確を欠く答えだと思いますが、具体的に毎年二百万トンずつ減っていくであろう、しかもその五年間にはいまあなたのお話しになった労働賃金の面を見ても、毎年相当額これは上がっていかざるを得ないし、物価の値上がりも、これは相当上がっていくだろうし、また炭鉱自体の自然条件、抗内事情も相当変わっていくであろうし、そういうことを考えてみますと、そういう想定のもとで毎年二百万トンずつ縮小する、あるいは撤退する——静かな撤退ということばをよくお使いになっておりますが、それなりの計画があって、四十八年度はこうなるであろう、こういうことだと思うのですけれども、あなたのいまのお話を聞いておるとばく然として、どういう計算基礎の上からそのようになっていくのか、特に数字の面からひとつ納得のいくような説明を願いたい、私はこう言っておるわけです。その間価格政策の問題などは一体どうなるのか。石炭の価格の問題等については一体どうなるのか。特に今回の原料炭などについては原料炭を優先に考えておりますが、三分の一の原料炭は国内で確保する。輸入原料炭などは何といっても先進国等からの輸入であるとすれば、原料炭などの上がってくることだけはこれは当然明らかだと思いますが、そういう点から見た場合に、石炭の価格政策というものはいまの四十八年度までの計画の中では何らの考慮も払われていないのかどうか、これらの点はどういうことなんですか。
  53. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 与えられた条件の中でいろいろ考えておりますので、石炭の価格というものにつきましても小委員会はかなり長い時間をかけて議論をいたしました。ただしかし、残念ながらいまのエネルギー事情でございますので、重油を入手しようと思う消費者の立場からいたしますと、無理に高い石炭を買わなければならないという理由は出てこない。原料炭につきましても、依然として輸入炭のほうが価格は安いという状況にございまして、これは田畑先生が一番よく御承知のように、これを調節するために増加引き取り交付金という制度をつくりまして、それぞれのユーザーにある一定の幅のいまの価格差補償をいたしまして、石炭の引き取りを確保してもらっておる、こういうことでございます。計画期間内に消費者のほうでの価格を上げるということはなかなか困難である。いまとっておる制度からいたしますと、高く買ってもらうということであれば逆に増加引き取り交付金をよけい出さなければならないということで、これはおそらく消費者との関係では解決できない問題だという考え方で、炭価について現状炭価をもってあらゆることを考えるということで小委員会の論議は進んでまいりました。ただ最近の状況といたしましては、原料炭、ことに輸入炭の価格というものが先行き少し強くなるのではないかという想定も成り立つのでございまして、今後の問題としてはそこいらに何がしかの期待が持てるのじゃなかろうか。五年間一切炭価については触れないということではなくて、そういう機会もあり得ようとは考えておりますけれども、試算の前提はすべて大体いまの価格で推移するという前提をとってものごとを考えたような状況でございます。
  54. 田畑金光

    ○田畑委員 これは大臣並びに局長に私は特に希望するのですが、あなた方のお答えを聞いていてもさっぱり理解できないわけです。それでどうして四十八年度には三千五百万トンになるのかということですね。四千億ないし四千二百億の財源というものは確かに固定しております。それをいろいろな形で、安定補給金なりあるいは肩がわりなりその他に向けるわけですが、そういう計算基礎の上に立てば、この年はこうなる、あの年はこれだけになるというようなことは、やはり小委員会検討されたと思うのですが、適当な機会にはひとつその資料を出してもらいたいと思います。その用意はありますね。
  55. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 繰り返しになりますけれども、どの山を残し、どの山をなくするのだということを言おうという気持ちは、審議会も私どもも持っておりません。これだけの助成の中でひとつ考えていただきたい。ただその結果がどうなるかについて、われわれが何の想定も推定も持っておらぬということでは困るわけでございますから、おおよそどのような規模になるであろうかということは考えております。しかし、これも突き詰めてまいりますと、中小の数多い企業は別といたしまして、中堅企業以上のものについて個別の評価をいたしておるわけです。判断をしておるわけでございます。ただしかし、これは私どもの想像であり推察であるわけでございますから、そういう数字をもし田畑先生が御納得いただけるところまで御説明しようとしますと、事柄の性質上個別炭鉱のところまで御説明をいたしませんと最終的には御納得いただけないということになります。これは役所の立場としては絶対に避けたいことでございますので、中間的な、個別がわからないような数字を公式の国会の配付資料というような形でなくて、前にも一回お願いしたことがございますが、懇談会その他で説明しろということであれば、私どもも十分に説明はいたします。
  56. 田畑金光

    ○田畑委員 それは局長の最後の答えで私は納得しますが、適当な機会に懇談会等でひとつ説明してもらわぬと、さっきからのお答えを聞いていてどうもさっぱりのみ込めなくて困っておりますから、ひとつそのような機会をぜひつくってもらいたいと思います。  それから、いまの局長の答弁にも関連しますが、今度の小委員会案を読んで、いわゆる入り口整理というものをやるのかやらないのか、この点はどうなんです。これだけの積極的な援助を講ずるということになってきますと、その資金の、有効な費用の効果という面から考えてみますと、やはりこれは入り口整理という思想の上に立っているのじゃないか、こう見ておるわけなんですが、その点はどうなんですか、明確に答えていただきたい。
  57. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 新聞等でいろいろ計画的に出てまいりました俗称をお使いになっての御質問でございますが、そもそも入り口整理というのは何であるかというのが明確でない、人によっていろいろとり方があるわけでございます。もしかりに今後の助成をするにあたって、助成に値しないという会社なり炭鉱なりを頭に置いて、それらのものをやめてくれなければ助成をしないのだというようなきつい思想だといたしますと、小委員会は少なくともそういう考え方ではございません。何らか閉山を強制するというような思想には全然立っておらないわけでございまして、助成のワクを示して、その中で判断をしてもらうという基本主張を貫いておるわけでございますから、何らか指名解雇式なことをするという考えは絶対にございません。
  58. 田畑金光

    ○田畑委員 局長、私このことをお尋ねしておるのは、今度もまた、再建交付金という名前ではありますが、昨年は肩がわりといっていたけれども、第二次の肩がわりとして千億を予定しておるわけですね。昨年の肩がわりにあたっては、石炭鉱業再建整備臨時措置法という法律に基づいて肩がわりの運営がはかられたわけです。その際大手の炭鉱については少なくとも炭量十年以上という条件が付せられていたわけです、中小についてはある程度の条件の緩和がはかられていたわけですが。ことに今日、先ほど来大臣あるいは局長からも述べられておるように、一つ産業にこれだけ大きな財政資金を投資するということを考えますと、いろいろその他の産業との均衡、国民の世論の動向等々も考慮の上に立って石炭政策もよりシビアーに推進されてまいることだと見ておるわけであります。そういうことを考えてみますると、昨年の肩がわりにおいてもすでに条件が付せられておる。今回の第二次肩がわりあるいは再建交付金その他の援助措置にあたっても、当然よりシビアーな条件というものが、この小委員会の案の骨子として、精神的には流れておるわけです。そういうことを私は考えたときに、これはどうも、ことば企業自主的判断に待つというようなことで逃げておりますが、実際この法律の運用にあたっては、政府の援助措置実施するにあたっては、当然入り口整理という問題も出てくると私は見ておるわけですが、どうですか。この辺ははっきり答えたほうが無難だと思いますが……。
  59. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 助成政策にもいろいろな柱がございまして、たとえば安定補給金のように、トン当たりの生産額に対してダイレクトに補給をしていくというような場合に、これが何年続こうと、続いておる限り安定補給金を出していくという考え方実施すればそれでよろしいという性質の補助体系もございますし、再建交付金のようにとにかく制度そのものが十五カ年間にわたる年賦償還をしようということでございますから、その趣旨に乗れるようなものでなければいけないということは、やはり行政事務として考えます場合には、一つの制約として必ずついてくるはずのことでございますし、再建計画というものに相当具体的な、その期間内における会社の見通し、判断が記載されていなければならぬことも当然のことだと思います。ただ、けさほど来いろいろ御議論がございましたように、こんな案をつくったって二、三年でだめなんだという御批判もあるくらい——私はそうは思いませんけれども、相当状況変化等について御懸念があるという状態でございますから、小委員会考え方としましては、再建交付金等につきましても、十五年間見通してやるというようなことを期待すると、実際問題としてなかなかむずかしいことが出てくるであろう。相当事態は変動する可能性があるのだから、その辺の適用はなるべく弾力的に考えてくれというお気持ちは出ております。それらの趣旨をくみ取り、また行政上の制度的な制約とのかね合いで処理いたしたいと思っておりますが、前の肩がわりと今回の再建交付金制度が全く異なっております点は、一つは前の制度が、いま田畑委員おっしゃいましたように残存鉱量があるという要件がありましたこと、これは今後ともそうなると思いますが、もう一つ累積赤字があるという要件があったわけでございます。われわれはこれから先諸先生がいろいろ御心配なされますように、ほっといてもだんだん少なくなるのじゃないかというような御懸念のある状態でございますので、かりに赤字がなくても、将来の石炭産業再建のにない手として私どもが期待したい企業に対しましてもこの再建交付金は出そう、小委員会の案はこういう思想に立っております。具体的に申しますと、たとえば太平洋、松島は赤字がないということで適用がなかったわけでございますけれども、今回はそういうふうに考えるべきではない、こういう基調に立っておりますし、配分基準等につきましても、これはまだ最終的にはきめておりませんけれども、従来のような債務残高だけでものを考えていくということではなくて、出炭量基準というようなものもひとつ大きな柱として中心に考えてみようではないか、こういう意見がこの小委員会の骨子にはあらわれておるわけでございます。
  60. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの再建交付金というのは中小にも適用するわけですね。その点が一つ。  それから再建のための今後の資金確保の面を特に今度の小委員会の案では考慮なさっておるようです。長期資金については合理化事業団から出すことにしようというわけです。運転資金については債務肩がわりに応じた担保物件を銀行からはずしてもらって、それを今後の運転資金の銀行融資の担保の役割りに引き充てよう、こういう考え方を持っておるわけですが、ただ私心配することは、去年の場合も結果としては銀行の救済に終わっておる率が大半ですね。去年の制度実施後大日本炭鉱がああいう形で閉山になった。大日本と取引していた銀行はほとんど損失がない。一番気の毒な目にあったのは、そこに働いていた労働者の諸君あるいは資材を納入した小さな一般債権者というものが非常な迷惑を受けた、こういう結果になっておるわけです。今回のこの制度、今後の金融措置の運用にあたっては、肩がわりについては十五年、そうして三分の利息ということで銀行から担保をはずしてもらう、こういうようなことになっておりますが、三分の利息ということになった場合、銀行が心よく担保物権をはずしてくれるかどうかということ、しかも十五年ですね。三分ということになればどういうことになるかしらぬが、いまの銀行の資金コストというものは一体どれくらいに当たっておるものか。大蔵省から亘理主計官も出席されておるようですが、いま一般の市中銀行などの資金コストというものはどれくらいになっているでしょうか。
  61. 亘理彰

    ○亘理説明員 私ちょっと専門でございませんで、いま手元に資料を持っておりませんのであとで御報告申し上げますが、いずれにしても資金コストを下回るものであることは間違いないと思います。
  62. 田畑金光

    ○田畑委員 これは銀行の資金コストから見て、明らかにはるかに資金コストを割っておるわけですね。そうして十五年で三分でということになってきますと、これは一体銀行がはずしてくれるかどうか、こういうことを心配するわけですが、これは何しろ大平さんという偉大な通産大臣が登場されたので、銀行などとの話し合いは大平さんがやればまあうまくまとまるとは見ておりますけれども、自信がおありかどうか。この辺のことも、中小にこの再建交付金を適用するかどうかということと、今後の運転資金の確保について、この制度運用で通産当局は自信があるかどうか、このあたりをひとつ聞かしてもらいたいと思う。
  63. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 再建交付金交付につきましては、先ほど御説明いたしましたような制度的な制約と申しますか、要件はつくと思いますけれども、要件に該当する限り中小炭鉱であろうと適用はいたします。  それから、いま御指摘の点は資金繰りの問題でございますが、ひとつつけ加えておきたいと思いますのは、合理化事業団の無利子融資制度が近代化工事、いわば設備投資的なものを中心にして運営されることは確実でございますが、運転資金の調達を、全く次のところで考えております担保解除によって期待をするというふうに考えておられるようでございますが、私ども考えはいささか違いまして、通常の意味における正常な運転資金というものは、その企業が動いておる限り、採掘された石炭、これが売り払わられる間というものに見合う運転資金というものはどのような企業でも調達可能だと思っております。一口で申しますと、炭代見合いの運転資金というものは十分つくはずのものである。  そこで、担保解除で私ども考えておりますのは、以上のような設備金融、投資金融を合理化事業団を中心にし、運転資金は炭代見合いで市中で見てもらおう、こう考えましても、石炭鉱業の総資金需要というものをこの二つだけで埋めるというわけにもいくまい。そこで従来どおりひとつ企業に資金調達の努力をしてもらいたいわけであるけれども、しかしながら先生も御承知のように、なかなか石炭鉱業と銀行との関係がそう期待できるような信頼関係に必ずしもないという状況がございます。片方、まあ最悪の場合、担保を出すから貸してくれというのは最後のきめ手になるのだと思いますが、この抵当権も枯渇をしておるというのが現状でございますので、せっかく再建交付金交付いたします以上、この再建交付金交付の進行に見合って担保を解除してもらっていい筋合いはあるのでありますけれども、金融機関が抵当権を持つというのは最悪の場合に備えて抵当権を持つわけでございますから、幾らかでも債権を持っておる限りにつきましては、抵当権というものは概して言えば根抵当的にはずさないというのが銀行側の基本的な態度でございます。  そこでいろいろと苦心をいたしました結果——前の一千億の肩がわりのときの債権整備法を御説明いたしますと、ある企業に対しましてある一定額の肩がわりをきめまして、毎年それを払っていく途中でその企業が解散をしたという状態になりますと、金融機関はその会社に持っておる抵当権を行使いたしますが、行使をしてもまだ肩がわり総額の未払い分について完全に回復ができないという事態が出てきます。そのときには抵当権を行使した後における未回復の元本の二分の一を国は損失補償をいたしましょうという制度に相なっておったわけでございます。これは先ほどおっしゃいましたように、金融機関との約定期間を延長させ、かつ金利もカットしておるということとのかね合いで、金融側に万が一の場合の損失補償を可能な限度において国が持つということできまった制度でございます。この制度前提にいたしますと、ある時点で会社が倒産いたしましたときに、担保権をよけい持っておればおるほど銀行側のかぶりは少なくて済むわけでございます。そのことは国側からの損失補償の額も少なくて済むということでございます。そういう筋合いからいたしますと、担保解除をしたほうが損であるということになりますので、今度の再建交付金について私ども考えておりますのは、そうではなくて、その場合であっても解除してくれた担保物権の実額相当分は国としてひとつ覚悟いたしましょう、こういうことで担保解除がやりやすくなるような制度考えたいということでございます。もしその事態が不幸にして起こりますと、その分だけ、国の持ち出し分は大きくなりますが、銀行側は得も損もないという状況でございますので、企業と金融機関と十分な理解と話し合いができるならば、相当の担保解除がであるのではないかというのがこれの仕組みでございます。  田畑委員の御質問のもう一つは、十五年、三%というようなことで銀行側が乗ってくるであろうかどうかというようなことでございますが、これは小委員会の骨子の基本方針のところで書いておりますように、これだけの政策をやるのでございますから、関係者も応分の協力と犠牲をこうむってもらいたいという公平論の上に成り立っておる事柄でございまして、肩がわり再建交付金交付などは要らないという金融機関も出てくるかもしれません。それは可能性としてはあると思いますが、ここは企業と銀行側で十分ひとつ努力をしていただきたいというのが私どもの念願でございます。必要によりましては、私ども答申がきまり次第金融機関にも声をかけて御説明し、協力を要請したいと思っております。なお、植村会長御自身も会長としてのお立場で金融機関との懇談、懇請をなさる予定になっております。
  64. 田畑金光

    ○田畑委員 私は、いまの点はひとつ大臣にとくと頭に入れて御努力をいただきたいのですが、植村会長もいきさつからいってもみずから金融機関とも当たってみられるという御答弁でありましたが、その努力を私は特に望みたい、こう思うのです、担保の解除といっても、金融機関としては十五年、年三分ということではなかなか応じがたいのではないかと思いますし、またせっかくこの制度石炭の前向きのために生かすのには、それが実現しなければ意味はないと思うのです。ことに銀行で押えておる有価証券であるとかあるいは株券であるとかあるいはまたほとんどの炭鉱がそうだと思いますが、鉱業財団という形で物権は全部担保に入っていると思うのです。その鉱業財団の中で実際に値打ちのある土地であるとか建物などをはずさせて、そしてそれを次の石炭企業の資金繰りに運用させるということは、私は今後金融面として一番大事なことだと思いますので、これは大臣、特にみずから御努力を願いたいと考えますが、これについて大臣の御所見を承ります。
  65. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そのように努力するつもりでございます。
  66. 田畑金光

    ○田畑委員 それから、労働者定着の問題について先ほど来いろいろ質疑応答がございましたが、今度の考え方の基礎には炭鉱労働者の賃金のベースアップは年一〇%、こういう想定に立っているわけです。しかし、もうすでにことしの炭鉱労働者の賃上げは一〇・四%になっているわけです。来年以降のわが国の経済の高度成長ということを考えてみますと、ことしも来年も実質経済成長率が一二%から一三%をこえるという状況です。さらにまた今後の消費者物価の値上がりということを考えてみるならば、おそらく来年は定期預金一年の五・五%の利息率をこえて六%ないし七%にも及ぶのではなかろうか、このように見ておるわけですが、そういうことを考えてみますと、地下に働く労働者の賃金が地上産業のそれよりも低いというところに、私は炭鉱労働者炭鉱職場の魅力を失わしめておる一番大きな原因があると考えておりますが、こういう点について今後の答申の中には一体どのように配慮がなされておるのか、これが第一点。  それから第二点として、これは労働省の担当者が適当であったかもしれませんが、いらっしゃらないようでありますので、この際ひとつ大臣並びに局長にお尋ねしておきますが、合理化事業団から炭鉱住宅整備について無利子の金をこれから貸し付けようという制度を採用されたということはけっこうだと思いますが、問題は限られた予算のワクの中でこれから炭鉱労働者住宅環境整備にまで金を回すということになってきますと、おのずからその他に資金の回るのが制約を受けるわけです。この住宅整備計画について何年計画で進めていこうというような考え方に立って政策の運用を今後なさる御用意があるかどうか。  第三の問題点として指摘したいことは、この小委員会の案の中には労使の協議ということがうたわれております。私は非常にけっこうなことだと思います。ところがこの案の中では、炭鉱企業の中の労使の次元での協議制ということをうたっているのですね。すでに一企業を離れて、炭鉱企業相互間の連携なり大同団結が必要とされておるときに、またそのような考え方もこの小委員会の案の中には出ておりますが、やはり労使の関係というものは単に企業の中の労使という低い次元ではなくして、産業別労使協議制、こういうような考え方が私はこれからの石炭産業経営には欠くべからざる要件をなすものと見ておるわけです。大臣御承知のとおり、西独においてはたとえばルール炭田において統合会社をつくり、そうしてその下に七つの独立のブロックの会社をつくって、それぞれの段階において、炭鉱に適用されておる例の労使共同決定法に基づいて監査役なりあるいは労働者代表の取締役が出るという、労使共同決定法の精神というものがあの統合会社あるいはそのもとに置かれるブロック会社の中にも採用されておるわけですね。そういうことを考えてみますと、私は今度のこの答申の中で企業の中の労使協議制だけでは次元が低過ぎる、産業別の労使協議制などが確立されて初めて前向きの施策だ、こう考えるわけですが、こういう点について今度の答申内容の中で配慮される用意があるかどうか、このあたりを明確に示しておいていただきたいと思います。
  67. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 労働者につきまして一番基本的であります賃金につきましては、前回の再建整備計画では年七%の上昇率、こういうことで考えておりましたのを、今回の想定では一〇%と想定をいたしております。小委員会答申骨子にも出ておりますように、今回小委員会の認識も今後の労働力確保、安定策ということなしに今後の石炭鉱業再建というものははかれないという前提でいろいろのことをお考えいただいたのでございますが、冒頭述べておりますように、財源的な制約もこれあり、今後の物価上昇率あるいはそれに基づく賃金の上昇率、ことに五年間のことでございますから十分な予測はできませんので、一応一〇%と想定をいたしておるわけでございます。  それから二番目には住宅改善の問題でございますが、建設省等の不良住宅の改造というようなことも産炭地等にとりまして十分役立つことでございますので、こういうことを従来建設省と相談をいたし、お願いをして進めてきたのでございますが、いま申しましたような労働事情の状況から申しますと、そういうほかの施策に依存するようなことでは十全は期し得ないという感じからいたしまして、今回初めて合理化事業団の融資対象に住宅改善といった生活環境整備の融資もひとつ対象に加えよう、こういうことを考えたわけでございます。御指摘のように十分な金があるわけではございませんので、またそれにあまり出し過ぎますと、産業自身の運営に必要な投資額にも関係することでありますので、この辺はかね合いを見ながら五年間に必要なものを少しずつやっていこうということで、いま鋭意どれくらいのことを考えればいいかということを検討しておる段階であります。  いずれにいたしましても、小委員会答申骨子におきましては方向づけでございまして、どのくらいの金額をどういう手順でどう出していけばいいかということは、答申を受けまして以来、むしろわれわれの行政ベースの仕事としてひとつ考えていきたいと思っております。  それから第三点は労使協議の問題でございますが、こういう変動期でもございますし、国もこれだけのことをいたすわけでございますから、この骨子案にも出ておりますが、労使がほんとうに相協力して力をふるい起こしてもらわないと、せっかく国がこれだけの思い切った助成をいたしましても効果があがらないということにつきましては、繰り返しいろいろな個所で述べておるわけでございます。その意味において労使がほんとうにしっくり、いままでのいきさつその他を捨てて、前向きの再建のために胸襟を開いて相協力していただくという上に、問題点についての突っ込んだディスカッションが行なわれるということは望ましいことだと基本的には考えております。ただどういう事項がこの協議にふさわしい事項であるかということにつきましては、私が双方から聞いておる限りにおきましては、まだかなりの開きがございます。まあ問題のない点として小委員会骨子では保安その他の問題についての企業別協議ということをいっておりますが、先生の御意見はどちらかといえば全体グロスでの協議、こういうことのようでございますので、これらにふさわしい協議事項というものをどういう場所で考えたらいいかということは、今後私どもにひとつ検討させていただきたいと思っております。
  68. 田畑金光

    ○田畑委員 時間もございませんので、私最後に一つだけお尋ねしておきたいのですが、鉱区調整の問題です。先ほども岡田委員から強く指摘されたわけですが、前回の答申でも、鉱区調整の面については「従来必ずしも十分に行なわれていたとはいい難いので、今回の画期的対策実施に際して、これを強力に推進する。」とうたっております。今回の小委員会案でも鉱区再編調整ということ、それがためには企業統合云々ということも強くうたわれておるわけですが、鉱区再編調整ということについて一体どれだけの実績があがってきたのか、あるいはまた通産省としてどれだけ実際努力なさってきたかということです。これは私は非常に疑問に考えているわけです。旧方式によって買収されたいわば合理化事業団の処理にかかる鉱区の問題等についても、残存炭鉱においてあの鉱区がほしいというような希望も相当現実にあるわけです。またいまの鉱業権の放棄によって閉山した場合の鉱区の中にも、やはり残存炭鉱にとっては必要な鉱区が現にあるわけです。あるいはまたそうでなくて、企業間相互において、当然この鉱区統合調整があればビルド鉱としてもっと発展が期待できるという場合がしばしばあるわけです。ところが、こういう面について答申の場合、あるいはこの国会における質疑応答の中では前向きの答えが出るわけだが、実際の運用の面においてほとんど実績があがっていない、こういう点についてはまことに遺憾であると考えますが、ひとつこの指摘した点について、今後通産省としてはどのような態度でいくのか、これを明示していただきたいと思います。
  69. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 総合的な効果をあげ得る手段としての鉱区調整は、積極的に進めてまいりたいと思っております。いままでのやり方にあるいは多少御不満があるかもしれませんが、少なくともこれから先の問題といたしましては、積極的に進めてまいりたいと思っております。  それから御指摘のもう一つの、消滅鉱区についての再活用の問題をおっしゃったわけでございますが、これは制度趣旨からいたしまして、原則として再設定を認めておりません。ただ例外的に著しく合理的な場合に限って通産大臣が確認した場合に、これを認めるということにいたしております。これもケース、ケースにつきまして、それがほんとうに合理的な使い方であるという場合には考えていこうかと思っております。
  70. 田畑金光

    ○田畑委員 ひとつ大臣に、最後に希望だけ申し上げておきますが、間もなく答申が出るわけです。そうしてまた予算編成にあたり、四十四年度の新しい答申に基づく第一年度が出発するわけでありますが、どうかひとつ大臣としては、先ほどお話しのように、今後の石炭政策を進めるにあたっては、与党だけでなく、野党の意見も聞き、国会の意見も十分反映するように積極的な施策の前進のため御努力を願いたいと考えておるわけです。いずれにいたしましても、今度出てくる答申内容がどんなものであるかということは、あるいはまたこの小委員会案そのものが出てくるのかどうか、いろいろわれわれが予測することは必要でないとも思いますが、おおよそこうであろうということだけは出てくるわけです。今後の石炭のあり方については、たとえば社会党の先ほどの主張のように国有化あるいは公社化等々の主張もあろうと考えておるわけです。またこれにも長所もあるしまた短所もあろうかと考えておりますが、とにかくこのような行き詰まった時点において答申が出、来年の予算編成ということになれば、われわれはその答申の中で最善の道を求める以外にないという感じを強くするわけでございまして、どうか今後答申に基づく予算措置あるいは立法措置においては十二分に、労使当事者はもちろん、各界各層の意見を聞かれて、国会の意思も十分反映した上で善処されんことを特に大臣に御希望申し上げておきます。  せっかく大蔵省の主計官御出席を願いましたが、あなたに対する質問がもう時間がなくてできなくなったのですが、ひとつ石炭の問題については大蔵省としても格別の御協力を切に希望して私の質問を終わります。
  71. 堂森芳夫

    堂森委員長 大橋敏雄君。
  72. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 大臣の時間がないようでございますので、大臣に率直にお尋ねいたしたいと思います。  今度の答申原案を見ますと、先ほどからお話があっておりますように、出炭規模が明瞭にあかされていない。私はこの点につきまして非常に不安を感じているわけですが、現行五千万トンの出炭規模が、それでも昭和四十八年度には三千五百万トンに縮小されるのではないか。答申原案の表面には出ていないけれども、大体その線で動いているということを感ずるわけです。それは三千五百万トンというのがもうごく常識的な、そうして当然そうなっていくべき出炭規模なのか、また表面にあらわれなかったというのは、もしかすると、それ以下の出炭規模になるやもしれないという危惧があって示されなかったのか、そういう点、大臣としてはどのようなお考えに立っていらっしゃるか、まずそれをお聞きしたいと思います。
  73. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど申しましたように、石炭が経済的なエネルギー資源として活用される限りにおきまして、政府としてそれがこれ以上あってはいけないというような考えは間違いだと思うのでありまして、国有の資源として多ければ多いほどいいと思います。ただ三千五百万トン、四十八年度という数字は、国が助成考える場合におきまして一つの計算上の数字でございまして、そのように事態が進んでいくであろうとかいうものではないわけでございまして、先ほど私が申し上げましたように、みんなが努力いたしまして生産意欲を発揮してまいりますならば、これより上になることはわれわれの希望するところである。しかし、先ほどもお話が出ておりましたように、異常な事態、われわれが予想しないような事態が起きて、そういう出炭を期待できない場合があり得ないとは限らない。これは、この世の中は天国じゃございませんから、いろいろなことが起こらないとは限らぬわけでございまするから、そういう意味で御理解をいただければしあわせと思います。
  74. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 非常に苦しい御答弁のように感じましたけれども、この前、植村会長さんにお尋ねしたときも、三千五百万トンというのは一応の試算の基準として取り上げているのだ、こういうお話でございましたけれども、私はむしろこの三千五百万トンというのは相当検討され、あるいは思索された内容ではないかと思うのです。ですから、そういうあいまいな表現をやって、今後どうする、ああするじゃなくて、ある意味においては、はっきりとその出炭規模、それを打ち出して、その上での対策を立てない限りは、ほんとうの最終的な抜本対策にはならないのではないか、こういうふうに心配しております。その一つの例といたしまして、 マスコミ等の情報によりますと、すべてが三千五百万トンということで報道されております。その立場から特に私の住む九州の地におきましてはものすごい反響を呼んでおります。たとえば、もし三千五百万トンということになれば、一例としまして、九州に現存する現在の山が六十六炭鉱、あるいは六十四炭鉱ともいわれておりますけれども、生き残るのはそのうち原料炭の山で十六ではないか、また天草の無煙炭の三つ、そのほか少しで、二十数鉱山じゃないだろかというようなことまでが、もう想定されているわけであります。私がここでお尋ねしたいのは、再建していくいわゆるビルド鉱とスクラップされていくその炭鉱との今後の基準といいますか、それはどこに置かれようとしてあるのか、お尋ねしてみたいと思います。
  75. 大平正芳

    ○大平国務大臣 この方針は、先ほども申しましたように国の助成の限界をお示しするわけでございますから、それに応じまして各企業体におきまして自主的に御判断をいただく、そういうことになろうかと思います。
  76. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 一般会社等の、あるいは工場等の内容からいきますと生産性というのが大体中心になってその内容判断されていくわけでございますが、炭鉱の場合は出炭能率あるいはその炭種、今回は原料炭中心にものが考えられているのだ、こういうふうにも伺っておるわけでございますが、もし出炭能率あるいは炭種、これが選択の基準ということになれば、非常に問題が出てくるのではないかという気もするのですが、この点もう一度あらためてお尋ねしてみたいと思います。
  77. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 基本的にはただいま大臣からお答えございましたように、示し得る助成の中で判断をしていただくということでございます。そこで、いま大橋先生のおっしゃいましたように、原料炭にややウエートを置いているというのは、その助成の中に、たとえば安定補給金原料炭一般炭で格差をつけてある、その格差の理由をたどっていけば、原料炭山が一般炭山よりも概してよけいコストがかかるというところに着目をいたしましてそういう格差をつけておるわけでございまして、繰り返すようでございますが、これはどんなことがあっても残す、これはいやがってもやめさせるという筋合いではなくて、いまのような考え方助成政策そのものの中に組み込まれておりますので、これでひとつ御判断していただく。そこで大いにやろうやという気持ちで会社でそれぞれそろばんを腹の中で入れてもらって、この政策助成ならばやれるということであれば大いにひとつ力を出してもらいたい。その結果がわれわれの想定、試算の前提になっておる数字よりも大きくなっても一向かまわない。むしろそのことを期待したいというのが私ども立場でございます。
  78. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 大臣が時間が非常にないということでございますので、いまの問題は局長さんにもうしばらく、あとでお尋ねしてみたいと思います。  それじゃ大臣にお尋ねしますが、いずれにしましても今度の答申原案が中心になって正式答申となると思いますが、その方向からいくと九州はもうどえらい打撃を受けることが予想されるわけです。したがいまして、大臣にお尋ねしたいことは、この九州の産炭地域に対して格段の配慮をお持ちであるかどうか。もしあれば、九州の場合はこのようなことをやってみたいという腹案があるとか、何かを示していただきたいと思うのですが、その点どうでしょうか。
  79. 大平正芳

    ○大平国務大臣 産炭地の振興、それからその周辺の市町村の財政対策、これは保安対策と同様に、小委員会の案におきましても、ごらんのとおり言及されておるところでございます。しかし今度の小委員会で示されておるばかりでなく、従来政府が産炭地振興対策といたしまして、事業団を中核として鋭意やってまいりましたことは御案内のとおりでございます。また各企業におきましても、経済の変革期でございまして、いろいろな意味での転進をお考えになっている向きもたくさんあるようでございまして、そういうもろもろのもくろみが定着いたすように工場の立地、税制その他万般の処置を講じまして国民のしあわせに還元するように処置してまいるのが私どもの責任でございます。つきましては、いま大橋先生お話しの、九州地域について特に他の地域と違った対策があるかとのお尋ねでありますが、私どもといたしましては、そういう産炭地振興対策をとる場合におきましても、もとより各地域それぞれ個性的な特徴があることは当然でございますので、その特徴に応じて断策してまいるわけでございまして、九州地域だけに限りました特段の政策制度、そういうものがあるかと問われるならば、そういう方向ではなくて、具体的な、個性的な事情に応じましてもろもろの政策を組み合わせて実行してまいる、そういう考えでございます。
  80. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 実はきのう福岡のある有志の方が産炭地のそういう問題を心配しまして、四十四年度の産炭地域振興予算要求額が一般で六十五億ですか、財投で七十一億四百万ですか、もうすでに要求されているわけだけれども、今度の答申内容次第でこれが減らされるようなことがあるのではないかと非常に心配をしてきておりましたけれども、この点はどうですかね。こういう予算要求はこのまま通っていくものでしょうか。
  81. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 実はきのう産炭地域振興審議会の小委員会が最終的な結論に達しまして、近く審議会の総会を開いて、いままで審議してまいりましたところの全貌をお示しすることができる日が近づいております。その際、いろいろディスカッスの際に、いまのような予算要求額というのが出た、私も出ておりましたが出しておりますが、これは小委員会の全体の骨組みの中での産炭地域問題ということで、全体の五年間でいえば四千二百億、来年度でいっても八百数十億になると思いますが、その中でセットをしたものでございますので、予算でございますから、折衝過程で多少の出入りはあると思いますけれども審議会考えておることとは全く同一で、その中の一つの分野をよりこまかく、より詰めて議論をしておるということでございますから、決して石炭鉱業審議会の中で変更が行なわれるということはあり得ないわけでございます。
  82. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 大臣、最後にもう一点ですが、福岡のほうではむしろこの一、二年にものすごい閉山が起こるのではないか、そのために離職者がまたすごい数になるのではないかという懸念から、福岡県といたしまして、産炭地域雇用安定法というものを想定しまして、その案をつくって、大臣の手元までいっているのではないかと思うのですが、こういう内容を見ていただいたでしょうか。もし見ていただいたならば、それに対する大臣の意見を聞いて、終わりたいと思います。
  83. 大平正芳

    ○大平国務大臣 亀井知事が上京されまして、その他の要望と同時に、いま御指摘の御要望を承りました。もっともこれは主管は労働大臣のほうでございますので、そちらのほうとよく協議いたさなければならない問題だと思っています。
  84. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 先ほどの問題ですが、九州のことばかり聞いて申しわけないのですが、上半期六十七炭鉱の平均出炭能率を見ますと四十七・七トンであった。大手の場合はそれが五十四・六トン、中小の場合は三十四・五トン、これ福岡の通産局の調べです。いわゆる平均出炭能率に達しない中小炭鉱が半数を越える二十五炭鉱もある。また大手では六割強の十二炭鉱あるということになれば、先ほどの答申原案の方向からいくと、ほんとうに心配しているような事実が起こるのではないかという懸念があるわけですが、先ほど言った選択の内容についてもう一ぺんお願いしたいと思います。
  85. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 大まかにいいますと、石炭鉱業のコストの中で人件費のウエートというものは非常に高うございますので、一人が何トン炭を出すかといういまの能率の数字というものは、炭鉱の生産力あるいは経営力、こういうものを示す指標としては非常に大きい指標でございますけれども、ただこれだけで、能率が非常に小さいからあぶないというふうにいえるかどうかとなりますと、また事柄が違ってまいります。これはその炭鉱が置かれております自然条件その他から見まして、投資額がさほど大きなものでなくて、それだけに能率も低い、しかし全体の経費と掘られた炭との関係からいいますとさほど苦しくないという状況もあるわけでございますから、能率数字だけで一律に判断することは適当ではないと思います。  そこで概していいますと、北海道と九州というようなつかみ方でつかみますと、確かに古い炭鉱地帯でございますので、採掘条件その他自然条件が九州は北海道に比べれば総体としてやはり劣っている。これはいままでの閉山の進展ぐあいを見ても御理解いただけるところでございますから、今後の問題につきましても、九州と北海道を比べて閉山のウエートがどちらに出てくるかということになれば、九州地区で御心配になるのを私は当を得ないとは思いません。しかし繰り返しになりますけれども、なるべくわれわれとしても大きな閉山を避けて石炭鉱業というものを再建したいという考えでおりますので、個別の企業が十分な力を発揮していただけるならば、いろいろ取りざたされるほど心配をなさる必要はないのではなかろうか。ただいかにも不安感が横溢しておりまして心配をしますと——逆に私は経営者にも労働者にもお願いしたいのでございますけれども、最近は何か仕事に気合いが入っていないという感じがいたすわけでございまして、答申があって来年度の政策が決定するまで不安な状況にあるというのはやむを得ぬことかといままでがまんはしておりますけれども、四十四年度からはひとつよほど元気を出してやってもらいたい。いまのように何となく心配だ、心配だということだけでうろうろされて経営がうまくいくとは思いませんので、ほんとうに自分で胞算用をしてもらって、経営者も労働者もうちの山はやめるべきだということであればくどくど心配していないでやめてもらう。そのかわりにこれならやれるじゃないかという判断があったらひとつ新しく元気をふるい起こしてやってもらいたいというのが私どもの気持ちでございまして、そういう意味で、くどいようでございますけれども、どこがいいとかどこが悪いとかいうことではなくて、自分で元気を持っていただける仕組みとして、小委員会が出炭規模その他をいわないで、助成の態様を示して判断をしてもらおう、こういうふうに考えたのだと理解をいたしておる次第でございます。
  86. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 先ほども言いましたように、今度の対策原料炭中心に進められている。安定補給金を見ましても、一般炭よりも原料炭のほうに手厚い補給金が加算されていく。こういうことを見ますと、何か矛盾を感ずるのですね。確かに原料炭が必要だからそうあるべきだということになりますけれども再建であるという立場からいきますと、一般炭のほうにもっと手厚い施策を施すべきではないか。たとえば日本石炭協会九州支部の調べを見まして私は感じたのですけれども原料炭がとにかく一般炭よりも高い。一般炭はたとえば五千八百五十カロリー、これは九州電力の買価がトン当たり三千七百円だというのですね。原料炭はその灰分八%だそうですが、それは八幡製鉄納めで五千三百円だ。基本的に値段が違うし、その上に原料炭のほうに手厚い補給金がいくということになれば、ほんとうに大企業だけを優遇して中小炭鉱はどうにでもなれというふうな感じを受けるわけですね。むしろ一般炭のほうにももっと手厚い補給金の考えを持っていくべきではないか、こういう考えを持っているのですが、そういう点はどうなんですか。
  87. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 小委員会考え方を私どもいまお伝えしておるわけでございますから、その限りでお聞き取りいただきたいわけでございますが、小委員会考え方は、長期的に見てやはり原料炭というものは非常に必要だ、こういう感じでものを考えております。そこで、一般炭原料炭とで差をつけておりますのは、実は安定補給金の数字だけでございまして、ほかの取り扱いは大体同じになっておるわけでございます。安定補給金の格差につきましては、実は若干の数字がございまして、今後の再建をになうべき会社炭鉱というものを一応頭の中に置いてみまして、その会社一般炭の場合のコストと原料炭の場合のコストを並べて考えてみますと、採掘条件に相当の差がございまして、コストの上でいまの安定補給金の格差として表示しております二百円ぐらいの格差はむしろあってようやく似通った条件になるんではなかろうか、こういう判断に一応立っておるのでございます。ただこれはおっしゃいましたように、一般炭原料炭ということで考えておるわけでございますが、原料炭の採掘がおおむね大手によって行なわれ、中小には原料炭が少ないということを考えますと、あるいはこの理論どおりの数字でなくて、何がしかの配慮が——答申を受けたあとでもいいのかもしれません。これは私どもも大臣と御相談いたしまして、必要があれば御意見を承って、何がしかの調整考えることもあるかもしれません。
  88. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 もう一つ最後に。  話は変わりますけれども、炭価の問題でございますが、今度の新石炭政策が抜本策ではないという批判があるのです。その理由の一つとして肝心の炭価問題に触れていない、いわゆるまんじゅうの中のあんこ抜きの抜本策ではないか、これじゃ無意味だという声があるわけでございます。炭価というものは重油価格に押しまくられて確かに固定されている現状でございますが、これに対して局長はどういうふうにお考えになっておりますか。石炭炭価の問題です。
  89. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 石炭政策考えます上で、関係者それぞれに応分の協力と犠牲を払ってもらうというのが小委員会の原案の基本方針の中の一つにあるわけでございます。その意味では消費者にも何がしかの協力と犠牲をお願いしたいという気持ちは持っておりまして、審議会でもいろいろと炭価問題は議論をしたのでございますけれども、やはり比較的縁の近いところからよけい犠牲をこうむってもらわなければならぬという筋合いに相なりますので、もし石炭の消費者にあまり多大な協力と犠牲を要請するということになりますと、需要そのものがなくなってしまうということになって、元も子もなくなって石炭産業再建そのものが根底からくずれるということに相なってはいかぬ。まあ先ほどもお答え申しましたように五年間という期間はこれはまだ相当ある期間でございますので、その間の状況変化等の推移を見て炭価問題についてもまたお願いできる情勢がくれば考えたい、こういうことでございまして、現在時点では炭価の値上げということを考えないで政策をお考えになった、こういうふうに御理解をいただければよろしいのではないかと思います。
  90. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 とにかく人件費とか消費財費は確実に上昇していきますし、特に人件費は石炭生産原価の五・六割を占めておると聞いております。ことしも一〇・四%上がったそうですね。このように毎年一〇%ずつ上がるとすれば、これまた毎年五・六%のコストアップになっていく、非常に矛盾を感ずるわけですね。そこで、いろいろ私も勉強してみたわけですが、フランスとか西ドツイでは重油消費税を創設して、その税収分を炭価の修正の原資にせよ、こういうような具体案まで出て、そうした矛盾を解消していっているということを聞いております。今後いろいろと検討なさる段階において、この炭価問題は非常に重大な内容だと思いますので、それを踏まえた上で審議を進めてもらいたいと希望いたしまして、きょうの私の質問を終わりたいと思います。      ————◇—————
  91. 堂森芳夫

    堂森委員長 御報告申し上げます。  今会期中、本委員会に参考送付されました陳情書は四件であります。印刷してお手元に配付しておきましたので、御了承願います。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時二十五分散会