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1968-12-18 第60回国会 衆議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年十二月十八日(木曜日)    午前十時三十九分開議  出席委員   委員長 小峯 柳多君    理事 天野 公義君 理事 宇野 宗佑君    理事 海部 俊樹君 理事 鴨田 宗一君    理事 中村 重光君 理事 堀  昌雄君    理事 玉置 一徳君       遠藤 三郎君    岡本  茂君       神田  博君    木野 晴夫君      小宮山重四郎君    坂本三十次君       始関 伊平君    塩谷 一夫君       丹羽 久章君    橋口  隆君       藤井 勝志君    武藤 嘉文君       岡田 利春君    久保田鶴松君       佐野  進君    楯 兼次郎君       千葉 佳男君    中谷 鉄也君       永井勝次郎君    古川 喜一君       塚本 三郎君    吉田 泰造君       近江巳記夫君    岡本 富夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  大平 正芳君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    柿沼幸一郎君         農林省農林経済         局長      亀長 友義君         水産庁長官   森本  修君         通商産業政務次         官       藤尾 正行君         通商産業省通商         局長      宮沢 鉄蔵君         通商産業省企業         局長      大慈彌嘉久君         通商産業省化学         工業局長    後藤 正記君         通商産業省鉱山         石炭局長    中川理一郎君         中小企業庁長官 乙竹 虔三君  委員外出席者         経済企画庁総合         開発局参事官  塙阪 力郎君         農林大臣官房参         事官      小沼  勇君         農林省畜産局参         事官      平松甲子雄君         水産庁漁政部長 安福 数夫君         通商産業大臣官         房審議官    成田 寿治君         通商産業省通商         局次長     楠岡  豪君         通商産業省貿易         振興局長    原田  明君         通商産業省繊維         雑貨局長    高橋 淑郎君         通商産業省鉱山         石炭局鉱業課長 加納 寛治君         工業技術院総務         部長      荘   清君         専  門  員 楯野 幸雄君     ――――――――――――― 十二月十八日  委員中谷鉄也辞任につき、その補欠として岡  田春夫君が議長指名委員に選任された。 同日  委員岡田春夫辞任につき、その補欠として中  谷鉄也君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十二月十七日  原子力発電所地帯安全性確保及び整備開発に  関する請願村山喜一紹介)(第三八三号)  同(稻村左近四郎紹介)(第四一九号)  同(坂本三十次君紹介)(第八四八号)  化粧品再販契約制度に関する請願赤澤正道  君紹介)(第五八五号)  同(増田甲子七君紹介)(第五八六号)  昭和四十四年度中小企業予算増額に関する請願  (天野公義紹介)(第八四九号)  東京ガスの布設管老朽による事故防止に関する  請願谷口善太郎紹介)(第八九八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十二月十七日  電気料金引下げに関する陳情書  (第一六〇号)  第二次資本自由化に関する陳情書  (第一九一号)  火災共済協同組合強化拡充に関する陳情書  (第一九二号)  東南アジア見本市船の実現に関する陳情書  (第一九三号)  原子力安全確保に関する陳情書外一件  (第二一七号)  中小企業振興に関する陳情書  (第  二六五号)  中小企業保護育成に関する陳情書  (第二六六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 小峯柳多

    小峯委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。橋口隆君。
  3. 橋口隆

    橋口委員 昨日表明のありました通産大臣所信表明の演説に関連をいたしまして、二、三の質問を試みたいと思います。  わが国経済をめぐる国際環境は、一方では先進国との激しい競争にさらされており、また他方では発展途上国からの追い上げに直面しているという、非常にきびしい条件であることは申すまでもないところでございます。特にことしの末から来春にかけて、残存輸入制限自由化、第二次資本自由化問題等が断行されて、国際競争は一そう激烈になるものと思われます。そういう意味で、これから開放経済に突入するというわが国産業考えてみると、これに関連をして国内産業の再編成あるいは企業体質改善中小企業合理化、新技術開発等、幾多の問題が必要になってくると思いますが、これについて通産大臣が非常に前向きの姿勢で取り組んでおられることは御同慶にたえないところでございます。  そこで、大臣に直接お伺いしたいのでございますが、おくれてお入りになるということでございますので、ひとつまず具体的な問題から政府委員の皆さんに御意見を伺いたいと思います。  せっかく農林省がお見えになっておりますので、初めに残存輸入制限自由化の問題について若干お伺いしたいと思います。  きのうの閣議で、わが国残存輸入制限自由化についての基本方針がきめられたわけでございますが、それによると、両三年中にかなりの分野で自由化する。次に、関係国内産業には必要な措置をとる。また相手国貿易制限的措置撤廃努力する、こういう方針をきめております。そのあとで佐藤首相は、農林物資には問題も多いが、ぜひ前向きで取り組んでほしい、こういうことを言われております。これについて、農産物というのは最後まで残るものだろう、こう考えられておったのでございますが、アメリカ要求もあり、また日本方針としてもこれに取り組むことになったわけですが、農林省当局としてはどういうような姿勢でこれに臨まれるおつもりでありますか。
  4. 亀長友義

    亀長政府委員 いま御質問のような貿易自由化ということが早急に推進をされるということで閣議決定もあった次第でございますが、御承知のように、日本農業は諸外国農業に比べて非常に零細でございまして、諸外国でもまだ現在、農産物につきましてはかなりの非自由化品目が残っておるというのが実情でございます。しかし、日本の場合、いわゆる先進国の中で、農産物関係に関しましても七十三品目の非自由化物資が残っておる。先進国の中で一番多いフランスに例をとりましても、五十八か九、六十足らずでございます。西独とかその他の国はもっと少ないというような事情でございまして、現在日本ガット加盟国という立場からいたしましても、各種の日本農業独特の事情があるにせよ、やはりあまりにも非自由化品目が多過ぎはしないかという批判が当然あると思います。それから、さらに全般的な貿易立場から見ましても、もう少し農産物について自由化を進めなければ、国全体の貿易がうまくいかないという事情もあるかと思います。しかし一方には、御承知のようにわれわれ農林省といたしまして、いわゆる総合農政ということばを最近使っておりまして、米だけに重点を置かない農業、米以外の作物も大いに奨励してまいりたい、園芸、畜産物、果樹というふうなものにも今後日本農業を発達さしていきたい、かような観点から、いまこれを一挙に自由化するということについてはいろいろ問題がございます。かような点を総合的に検討いたしまして、われわれとしましてはできるだけの自由化は進めたいという考え方で、農林大臣からも指示がございまして、目下各品目については検討中でございます。  しかしながら、農産物につきまして、いわゆる農政立場と申しますか、総合農政という観点からいいましても、これを一挙に全面的にやるというようなことばなかなかむずかしいかと思いますけれども、国全体の立場に立ちまして、できる限りの自由化を進めてまいる、かような観点目下作業を進めておる次第でございます。
  5. 橋口隆

    橋口委員 そうすると、当面何品目くらいを予定されておりますか。
  6. 亀長友義

    亀長政府委員 当面何品目という当初からの目標は、私ども数字をもって立てるということはいたしておりませんので、現在農産物関係で非自由化のものは七十三品目ございます。このほかにいわゆる国家貿易として考えられております米、麦、バターというようなものがございますが、これは国家貿易品目ということでもちろん急速な自由化ということは不可能でございます。七十三品目の中には外国から非常に強い要求のある品目もございますが、私どもとしましては、七十三品目につきまして全面的検討を行なうという議閣指示に従いまして、各品目について自由化が可能であるかどうか、もしやるとすればいかなる措置が必要であるか、あるいは農政全般観点から当面これは不可能であるというふうな一応の分類目標をつくるということで、現在作業を進めておりますので、御質問のように何品目ということで一応目標を立てて作業を進めておるというような事情でなくて、全品目について、もしそれを自由化しないならばどういう理由で考えていくか、さらに自由化する場合にはどういう手を打たなければならないか、かような観点から一応全品目を全面的に検討しておるという段階でございます。
  7. 橋口隆

    橋口委員 新聞によりますと、アメリカは今回三十七品目要求している。そのうちで農産物については十三品目要求しているそうですが、そのとおりですか。
  8. 亀長友義

    亀長政府委員 そのとおりでございます。
  9. 橋口隆

    橋口委員 これについてはどういうふうに考えて対処されるおつもりですか。これはやむを得ないとお考えですか。それともできるだけひとつ抵抗しようという考えですか。
  10. 亀長友義

    亀長政府委員 農産物十三品目の中には、日本農業にとってもし自由化すればかなりな影響を与えるだろうと思われるものもあります。しかし、そうでないと考えられるものもございます。またアメリカの強さと申しますか、希望というものがどの程度であるかということも、これは実際に交渉してみなければ判断がつかないようなものもあるというふうに考えられます。したがまして、私どもアメリカ要求品目を全部、これはイエスだとかノーだとかいうことでなくて、先ほど申し上げましたように、現在の非自由化品目を全面的に検討した結果出てくる可能なものをこの際できるだけ自由化する、かような考え方で進めたいと考えます。
  11. 橋口隆

    橋口委員 農産物輸入制限自由化というのは、国内産業立場から見ても、ただいま話しのとおり非常に重要ですから、ぜひ慎重に扱っていただきたいと思います。その点今後ともぜひ十分御検討をお願いいたします。  そこで、輸入制限撤廃また資本自由化推進されますと、どうしても国内中小企業合理化が非常に必要になってくると思います。そういう点で、中小企業問題について若干伺いたいと思います。  最近、わが国中小企業は、いま申し上げたような資本取引自由化あるいは特恵関税の実施、労働力の不足の深刻化等内外経済の諸情勢に対応して中小企業構造改善が非常に迫られているわけでございます。これに対して通産省としてはいろいろな対策を講じているわけでありますけれども、なかなか一般中小企業に浸透しないうらみがあると思います。そういう意味で、今後一そういままでの施策拡大する必要があると思うのですが、たとえば中小企業振興事業団資金量拡大、その他政府関係金融機関資金規模拡大等、も一つと思い切ってこれを拡大する必要があると思いますが、中小企業庁長官としてはどういうふうに考えておられますか。
  12. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 先生指摘のとおり、中小企業近代化への脱皮は火急のことになっておると思います。これがために、私たち中小企業政策重点を特にここに指向いたしまして、まず御指摘中小企業振興事業団でございますが、事業団資金量につきましては、来年度思い切って大幅拡充をいたしたい。これは実は本年度におきましても、予算計上金額に対しまして二倍余の各府県からの要請がありました。したがいまして六割余を来年度に持ち越さざるを得ない、こういう状況になっております。そういうことでございますので、来年度工場団地等団地群また共同施設等、いわゆる一般案件につきましては本年度の七五%増しの予算増額要求をしておるわけでございます。  なお次に、御指摘金融関係でございますが、団地共同施設等、いわゆる協業化、共同化振興事業団中心母体として推進いたしますものの、何といいましても中小企業一般に対します近代化資金供給は、市中金融を原則といたしまして、政府系金融機関中心とする政府機関金融によりましてこれを補完してまいる必要があると考えます。ちょうど本年の当初は金融の引き締めという事態でございましたので、近代化投資も、中小企業におきましては若干スローダウンをいたしたわけであります。このスローダウンした分を取り戻すという必要もございますので、来年度は特に近代化資金供給中小企業金融機関を通じまして行なってまいりたいということで、現在財政投融資にいたしまして四十数%増、本年度に対しまして貸し付け量におきまして四十数%増の要請をしておる、こういうわけでございます。  なお、そのほかに、特に産地を形成しております業種等でありまして、輸出に大きく依存をしておるもの、ないしは外国の、特に発展途上国競合関係に立って、国内市場について脅威を感じておりますような業種につきましては、業界ぐるみ構造改善を進める必要があるということで、この部門につきましては、すでに織布がおととしから発足をしておるわけでございます。この方式をメリヤス、染色等拡充する、あるいはさらに金属洋食器洋がさ等雑貨類、これは輸出に依存し、産地を形成しておるものでございますが、こういう業種につきましては構造改善対策を急速に進めてまいりたい。それがために必要なる中小企業金融公庫を通じます特別金融制度あるいは税制上の特別措置、これを講じてまいりたい。  右のようなことを考えておる次第でございます。
  13. 橋口隆

    橋口委員 ただいまお話しになりましたような施策を、ひとつ強力に推進をしていただきたいと思います。  そこで、こういう中小企業に対しての施策は最近かなり発展をしてきたのですが、取り残されているのが小規模事業対策ではないかと思います。これにつきましては、商工会を通じて経営指導員をふやすとか、それから小規模企業共済事業団、こういうわずかの制度しかない。ところが、日本中小企業零細企業のうちで小規模事業というのが圧倒的に多いと思うのです。これに対しては、全然手がつけられていない。しかもそれは大体が家庭を中心とする商店でございますが、これを一般農家に比べますと、農業政策の面では非常に行き届いた施策が行なわれております。たとえば一例を私の郷里にとりますと、南九州畑作振興については政府がほんとに至れり尽くせりの施策を今回講じてくれている。ところが、一般小規模事業に対しては何も手を打っていない。倒産にまかせるというような状況でございます。これはおそらく全国一般に共通の問題であろうかと思います。これについては政府は新しい施策をもっと強力に打ち出す必要があると思うのですが、具体的な案をお持ちでいらっしゃいますか。
  14. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘のように、中小企業問題の中で特に小規模事業者群は大きな問題をはらんでおります。戦後、大企業との格差の是正、不利の補正、これを念がけまして中小企業政策が進められたのでございますが、幸い国民経済発展とともに中小企業層の中でも上部のものは相当な経済力をつけてまいったのでございますけれども、御指摘小規模事業者層、これは四百十万の中小企業の中で過半を占めておる層でございますが、この層の競争力は依然として非常に微弱でございますが、非常に多数の事業者群でございますので、この事業者経済力を何とかつけていくということは、それ自体として非常に大事でございます。さらにこの小規模事業者群機械工業の下請でございますとか、繊維最終加工であるとか、あるいは特に商業部門の非常に多くの部分とか、こういう国民経済上の非常に必要な部分を分担をしておるわけでございますので、国民経済上もこの小規模層体質改善が非常に大事であると考えるわけでございます。  これに対する施策でございますが、何といいましても数が多い。したがいまして、これに対しましては相当知恵をしぼった施策が必要である。もちろん先生指摘のように、これに対する国の予算でございますが、財投とか税制とか、こういうふうな量を確保することも必要でございますけれども知恵も必要であると思うわけであります。私たち、この非常に多数の小規模企業層に対してとっております施策のうちで重点を置いておりますのは、いま御指摘経営指導員商工会議所商工会において約五千名配属されております経営指導員によります経営改善普及事業、これが一つの柱、これは来年度人員の大幅増加、さらに指導員の身分の安定によります質の向上、この辺をねらっておるのが一つでございます。  第二に大きな施策として考えておりますのは、何といいましても信用力を補完する必要があると思いますので、信用保証制度基礎強化拡充、これが非常に大事であるということで、来年度信用保険公庫に対します大幅な出資の増を要求をしておるわけであります。  第三には、政府金融機関といたしまして国民金融公庫に対します資金量大幅追加、この辺が大きな施策考えられるわけでございまするが、その他機械貸与制度でございますとか、共同工場でございますとか、ないしは技術指導でございますとか、このような施策を進めてまいって、小規模企業層に対する施策強化考えてまいりたいと思う次第であります。
  15. 橋口隆

    橋口委員 ただいまのお話のように、小規模企業ため信用保険公庫出資増をするとか、あるいは国民金融公庫資金量拡大するということはぜひ推進をしていただきたいと思いますが、特に小規模企業共済事業団一般中小企業者も加入できるような仕組みにして、もっと財政基礎を強めておいて、そしてこれを大事業団まで発展させるというような構想はございませんか。そうすれば、貸し出しとか、金融面について非常に役に立つのではないかと思われますが……。
  16. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 小規模企業共済事業団は、事実上生業に近いのでありますが一応経営者でありますためにそれ以外の国が関与、支援しております共済制度対象になり得ない小規模経営者層対象とし発足したのでございまするが、まだ発足して時間もたっておりませんので、加入者も少ない。加入者が非常にふえてまいりますと、先生指摘のように余裕金運用等によりまして非常に効果を発揮するのでございますが、現在のところ加入者が非常に少ない。したがいまして、私たち先生指摘のような方面事業拡充をする研究はしておりまするけれども、さしあたり大事なのは加入者増加である、これを目標にして現在鋭意努力をしておるわけであります。なお出資におきましても、本年五千万円の出資をいたしたわけでありますけれども、来年はさらに大幅増額出資をいたしたいというふうに考えております。
  17. 橋口隆

    橋口委員 この小規模企業対策につきましては、先ほど申し上げましたように、一般農家等に対する政府施策研究されまして、零細企業にもこれを適用するような新しい制度が考案されないかどうか、こういう点も十分ひとつ御研究を願いたいと思います。  次に、技術振興の問題についてお伺いいたします。技術振興は、これからの企業体質改善ためにも、したがって国際競争力強化ためにも非常に大事でございますが、大型プロジェクト拡充も含めまして、また中小企業に対する技術援助も含めて政府はどういうようなお考えをお持ちになっているか、工業技術院からお伺いしたい。
  18. 荘清

    荘説明員 御指摘のございましたとおり、わが国経済発展の真の基盤をなすものは、独創的な自主的な技術開発力であると考えております。このために、通産省といたしましては、先導的な技術であり、かつ大規模研究開発が必要な技術につきましては、大型プロジェクト制度によりまして、現在超高性能電子計算機脱硫技術等研究開発推進いたしておりますが、今後とも既存のプロジェクト研究開発を一そう推進いたしますとともに、新しく明四十四年度からは海水の淡水化と副産物の利用、航空機用ジェットエンジン開発の新規の二テーマに着手をいたしたい、かように考えておる次第でございます。  また、傘下の試験研究所におきましては、先導的な技術の芽を育成するという基礎研究重点といたしておりますが、さらに、この方面におきましては、海洋開発とか公害の防止技術という点にも特に重点を置きまして、一そう試験研究所における研究推進いたしたいと考えております。さらに、民間企業における研究に対する助成でございますけれども、この民間研究に対する研究補助金制度等助成措置をさらに拡大いたしますとともに、財政投融資等の手段も通じまして、諸技術民間における開発力の培養に格段の努力をいたしたい、かように考えておる次第であります。
  19. 橋口隆

    橋口委員 中小企業技術振興も非常に大事だと思うのですが、どういう施策をお考えになっておりますか。
  20. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘のように、中小企業労働集約産業から技術集約産業脱皮をはかっていかなければならないということでわれわれ考えておるわけでございまするが、必要な施策といたしましては、まず国の試験研究機関及び府県立工業試験研究機関の拡張が第一でございます。  それから第二は、中小企業の諸技術補助金制度でございまするが、この補助金拡充いたしたいというふうに考えております。  第三といたしましては、特にこれはわれわれ力を入れておるのでございまするが、業界が自主的に固まりまして共同技術開発をやるという機運が非常に出てきております。本年もすでに第一号として印刷業界と玩具の業界におきまして共同研究所をつくるのに対しまして、政府所要経費の半分を負担するという構想が今年発足いたしましたが、来年はさらにこのやり方を他の業種拡充をいたしたいということで必要な予算計上をはかっておる次第であります。なお、必要なことは情報提供だと思いますので、情報提供につきましては、中小企業振興事業団情報室情報部に格上げいたしまして、ここを通じまして府県なり所要中小企業団体なりに技術情報を流していくという構想を持っております。
  21. 橋口隆

    橋口委員 次に、エネルギー政策について伺いたいと思いますが、今回石炭鉱業審議会から石炭再建策について具体案が答申をされる予定になっておるようでございます。五年間に四千二百億円という膨大な金額を投ずる内容になっておるようでございます。これについては、石炭対策特別委員会質疑が行なわれると思いますので、私はこれを省略したいと思いますが、この石炭政策はぜひ強力に進めていただきたいと思いますが、今後エネルギーの大部分を占めることになっている石油問題について伺いたいと思います。  石油は、わが国は九九%まで輸入に依存しておるわけでございますが、これについては、もうすでに民族資本により海外石油資源を開発するということが当面の急務になっております。政府もこれについては従来力を入れてきたところでございますが、どうしてもこれは飛躍的な拡充をはからなければほかの先進諸国との競争にもとても太刀打ちできないだろと思います。この海外開発に投じておる費用を各国と比較してみても、わが国かなり立ちおくれてると思いますが、これについて、通産省としては明年度どういう施策をお考えになっておりますか。
  22. 成田寿治

    ○成田説明員 海外の石油資源開発を促進して、エネルギーの安定供給をはかるために、政府としても非常に強力な政策をとってまいっておりまして、一昨年、石油開発公団を特殊法人として設置して海外開発事業に対して、融資、出資等の助成推進をやってまいっております。ただ石油の開発ためには、非常に多額に、しかも長期にわたって安定した金が必要でありますので、四十四年度予算におきましては、原油関税の一部を財源としまして、石油資源開発特別会計を設置したい、そういう予算要求をいたしておるのでございます。
  23. 橋口隆

    橋口委員 私も、いまの原重油の関税の中から石油に振り向けて、それを海外資源の開発に充てるということはどうしても必要だろう、特別会計をつくってやるということが、最も適切な施策ではないかと思いますが、これは非常に大きな政治問題にもなると思うのです。政務次官はどういうふうにお考えになりますか。
  24. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 通産省といたしまして、エネルギー資源を将来ともに確保していくということが、わが国産業発展にとりまして不可欠のことでございます。したがいまして、私ども大臣の指導のもとに、これを将来にわたって確保いたしまするために最善の努力を尽くしたい。当然、海外開発資源の確保のために、その十二分の予算措置をとっていきたい、かように考えております。
  25. 橋口隆

    橋口委員 ぜひその実現に努力をしていただきたいと思います。  そこで、当面の石油産業についての重大な問題は、いま非常に論議されておりまして、かなり大きな運動になっておると思いますが、揮発油税、軽油引取税等の値上げを政府考えておるようでございます。揮発油税については一〇%、軽油引取税については二〇%、そういう高率の値上げを考えておる。しかもトラック税まで考えておるようでございます。ところが日本の石油企業というのは、精製部門のみに限定をされていますから、非常に収益率が低い。その上に公害とかあるいは備蓄などの非常な重荷をしょわされて、過重負担にあえいでいると思う。しかも、現在でもガソリン税というのは、間接税の中で最高の六一%を占めているのでございますが、 これはほかの酒やビールの五二・八%を上回っていて、最高ではないかと思います。こういうような負担を今後さらに課するということは非常に大きな問題ではないかと思います。特に道路整借のためにこの財源を回すのでございます。道路の整借も非常に大事でございますけれども、これは将来に残る国民的な資産でもあるわけでありますから、どうしても財源調達の方法というのをもっと別に求める必要があるのじゃないかと思います。たとえば一例としては道路公債を発行するとか、あるいは一般財源から大幅にこれを出していくとか、そういう問題を考えなくてはならない時期に来ていると思うのございますが、これは非常に大きな問題に発展すると思います。そういう意味で政務次官はどういうふうにこれに対処をされようとしておりますか。
  26. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 石油に対しまする課税が、だんだんと重くなっていることは御指摘のとおりだろうと思います。しかしながら、一方におきまして、国内の道路を整備してまいる、これもまた国民的な要望であり、また地域のそれぞれの発展にとりまして欠くべからざる一つの要素でございます。したがいまして、こういった問題を処理いたしまするために、道路公債を発行をするというような方法も一つの方法であろうと思いまするけれども、御案内のとおり今日の状況のもとにおきましては、一方におきまして、発行しております公債をできるだけ減らしてまいりたいという政府財政政策もあるわけでございます。したがいまして、こういった問題とのかね合いにおきましてこの問題を処理いたさなければならぬ、かようなことでございまするので、私どもも御趣旨のありまするところは十二分に体しまして、そうして財政当局と今後の詰め方をいたしてまいりたい、かように考えております。
  27. 橋口隆

    橋口委員 税制の問題については、ぜひ政務次官の御奮闘をお祈りしたいと思います。  次に原油備蓄の問題、それからCTSの問題、これについて伺いたいと思いますが、この問題については私もたびたびこの委員会質問いたしましたが、備蓄の問題は一向進んでいないだろうと思います。現在備蓄については何日分くらいの余裕を持っておりますか。
  28. 成田寿治

    ○成田説明員 現在の備蓄は、原油と製品合わせまして大体四十五日分程度の備蓄能力になっております。
  29. 橋口隆

    橋口委員 この四十五日というのは、昨年の六月、中東戦争の勃発した直後と全然変わっていない。政府はそのために特別な予算要求したはずでございますが、一年間の間に何らの進展も見ないというのは、少し怠慢ではないかと思いますが、どうですか。
  30. 成田寿治

    ○成田説明員 石油の需要の伸びが非常に大きいので、過去二年間、あまり備蓄の能力としては伸展しないのでありますが、今年度の設備許可にあたりましても、許可の対象になっております製油所につきましては、原油を三十五日分持つように指導をやっておりますので、昭和四十五年度末までに、原油、製品合わせまして六十日分の貯油を確保するという政策を打ち出していますが、その方向にだんだん追いついてまいりたいと思っております。
  31. 橋口隆

    橋口委員 この問題は、日本産業の一番大事なエネルギーでございまするから、備蓄をふやすことはもう絶対の要請だろうと思います。多少の過重負担になるかと思いますけれども国民経済全体の問題を考えれば非常に重大でございますから、ぜひ、ひとつこれは推進をしていただきたいと思います。  同時に、CTSの問題でございますが、これは昨年十数カ所を調査されて、その候補地を一応選定されたわけでございますが、今後これに対しては政府は誘導されるつもりはございますか。それともこのまま調査だけで終わり、こういうことですか。その点はっきりしていただきたいと思います。
  32. 成田寿治

    ○成田説明員 CTSの構想につきましては、昨年度財団法人の日本工業立地センターに委託して、日本各地を調査してもらいまして、そうして非常に有力な候補地として十数カ所の調査を行なったわけでございます。それで備蓄の面からしましても、あるいは流通の合理化の面からしましても、CTSの実現というのは非常に大きな意義を持っておりますので、政府としてはこれを積極的に促進していきたいと思っております、ただ備蓄の実際の主体になりますのは石油会社、民間企業でありますのが、そういう面では民間企業がお互いに話し合って、その実現をしてもらわないといけないということになっておるのでございまして、政府としては石油会社を通しまして、その実現に進むように今後強力に指導していきたいと思っております。
  33. 橋口隆

    橋口委員 CTSの問題についても、政府はぜひ強力に指導していただくようにお願いをします。  次に公害対策についてお伺いいたします。  公害対策は最近非常にやかましく論議されて、だんだんと整備されてきつつあるようでありますが、これについては政府は積極的に助成する必要があるだろうと思います。これについて私、特にお伺いしたいと思いますのは、排煙脱硫の現状、それから重油からの脱硫方式の問題、こういう点についてはどういうふうにいま進められておりますか。
  34. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 御案内のとおり、工業技術院も非常な勉強をいたしまして、脱硫装置につきましてはその研究が飛躍的に進んでおります。来年度になりますと、大型の脱硫装置の試作実験ということも行ないますしいたしますので、これが実用に転用されるのは当然のことであろうと思います。こういった問題につきましては、何といいましても、政府考え方中心が人権の尊重であり、人間の健康の維持である、あるいは地域の住民との調整であるというような観点からいたしましても、私ども通産行政の中の最重点項目としてこの問題は勉強するようにというような大臣の御方針でございます。したがいまして、大気におきます噴煙の脱硫問題あるいは石油の基本的な脱硫問題、こういった問題につきまして、最重点政策といたしまして遺憾なきを期するように研究をいたさせております。
  35. 橋口隆

    橋口委員 この公害の問題は、ただに国民の福祉向上という観点だけでなくて、最近では企業立地の場合にもかなり問題になると思います。だから公害対策には積極的に取り組まないというと、やがて日本の工業を立地する場合に非常に大きな障害になるかと思われます。そういう意味でぜひただいまのお話のように強力に具体的にひとつ推進をしていただきたいと思います。  そこで工業立地の問題を伺いたいと思いますが、ただいまのような公害、それから最近やかましくいわれている過密問題、こういうものを避けて合理的な立地政策を考える必要があるかと思います。それについてひとまず通産省の御意見を伺いたいと思いますが、従来二つの意見が対立しておると思います。経済的な合理性によって消費地に近接した立地政策をとるか、それによって集積的な効果をねらうかというような問題、それからもう一つは、こういうような過密、公害を避けて国土を最も有効に利用していこうという一つの理想主義的な立場ですか、それから遠隔地の立地政策をこれから採用していく、こういう問題についても基本方針をお伺いしたいと思います。
  36. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 こういった工業立地の問題につきまして、私どもといたしましては大きな柱を四つ立てておるわけでございます。  その第一は、御指摘のとおりの公害の問題でございまして、これは何といいましても人権に関する問題でございますから、最優先をさせなければならぬということでございます。  第二の問題といたしましては、こういった公害を避けますためには企業側に非常に大きな負担をかけていかなければならぬ。こういった問題につきまして、私どもがそれでは企業側にどのような措置ができるか、こういった問題もこれはあわせ考えていきませんと、産業の将来の発展に対しまして、そのために非常に大きな障害が起こっては困る。これが第二の点だと思います。  第三の点は、何といいましても過密の問題でございます。大都市集中をいたしまして、過密の問題が次第に大きくなりつつある、こういうときにあたりまして、できるだけそういった過密からくる市民、住民、国民の皆さま方の御迷惑といいますものを避けますために、企業自体の移転を考えていかなければならぬ、そういった指導を今後やらしていかなければならぬ。これが第三の問題だろうと思います。  第四の点といたしましては、これまた御指摘のとおりでございして、何といいましても国土全体といいますものを産業基盤といたしまして考えていく、こういうことが必要であろうと思います。  したがいまして、これは国土計画との関連におきまして、どのような産業をどのように配置すればいいか、こういった問題の研究を進めてまいりまして、そうしてむだのないように合理的にものごとが処理できますようにいたしてみたい、かような考え施策研究いたさせ、さらに実施段階に強力に施策を進めてまいりたい、かように考えております。
  37. 橋口隆

    橋口委員 この方針につきましては、各省の間に多少意見の食い違いがあるのではないかと思われます。それは、通産省では最近工業開発構想というものを新聞にも出しておられるようでございます。他方、運輸省では昭和六十年を目標とした港湾整備の方向というのを打ち出しておる。その中で一つの例をあげますと、九十九里浜の開発を積極的に推進するということを運輸省は言っている。これに対して通産省あるいは経済企画庁はどういうふうにお考えになりますか。まず通産省から伺いたいと思います。
  38. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 こういった問題を一省の考え方だけできめるというようなことはできないのでございまして、各省間の意見を十二分に調整をし、どれが最もわが国土の将来、産業の位置づけというようなものに適当であるかということにつきまして、各省間の見解を統一させるということが先行いたさなければならぬ、かように考えております。
  39. 塙阪力郎

    塙阪説明員 経済企画庁におきましては、運輸省の港湾局のほうから正式に話は聞いておりませんけれども、九十九里浜を工業地に開発したらどうかという考えがあるといったことは聞いております。この点につきましては、首都圏の内部でございますし、経済企画庁といたしましては賛成しかねるという態度でございますけれども、ただいま通産政務次官がおっしゃいましたとおり、大事な問題でございますので、関係各省間におきましてさらに協議、検討すべきものである、こう存じております。
  40. 橋口隆

    橋口委員 私は国土開発の趣旨から考えまして、九十九里浜をこれから開発していくということは非常に危険なことではないかと思うのです。現在でも関東地域に、東京周辺に工業地帯が密集しておる。その上にさらに九十九里浜を開発するということになれば、もうあらゆるものが、特に圧倒的比重がこの関東地方にかかってくる。しかも今度住民はレクリェーションの地域も奪われる。こういうことから、結論は私は経済企画庁の立場からすればはっきりしていると思う。そういうことは絶対にやめて、そうして国土の均衡ある発展をはかるために遠隔地に立地する、そういうような方針を進める絶好の機会ではないかと思いますが、それについてはどうですか。
  41. 塙阪力郎

    塙阪説明員 ただいま橋口先生指摘の点は非常に大事な点でございますが、私どもにおきましては、工業というものは大体二つの型があると思っております。  第一の型は、鉄鋼、石油、石油化学といったようないわば基礎資源型工業でございまして、こういったものは国際競争関係とかあるいは技術革新の伸展に伴いまして、ますます大型化してまいります。そういたしますと、用地確保の問題、用水確保の問題あるいは原材料とか製品の輸送関係の問題、それからまた先ほどおっしゃいました公害問題、こういった問題がございますので、基礎資源型工業というものは、これからは好むと好まざるとにかかわらず遠隔地に立地せざるを得ない、こういうふうに思われます。  一方、都市型工業と申しまして、機械中心とする都市型工業、こういったものは必ずしも遠隔地に立地する必要はございませんので、いういったものは都市周辺でもけっこうでございます。あるいは交通の発達に伴いまして多少遠隔地とも考えております。
  42. 橋口隆

    橋口委員 これは政府全体として十分御検討をお願いしたいと思います。  そこで、通産省にお伺いしたいと思いますが、どうしても工業立地を適正化するために、その法案を前から準備されていると聞いておりますけれども、これは他省との調整上延び延びになっているように聞いておりますけれども、どういうふうにお扱いになるつもりでありますか。
  43. 大慈彌嘉久

    ○大慈彌政府委員 御指摘いただきましたように、既成工業地帯に対して産業が過度に集中したというために、またそういった公害問題の解決をはかるために、通商産業省としましては、懸案の工業立地適正化法案、仮称でございますが、これを次の国会へ提出するように準備をしております。各省と現在折衝中でございますが、なお問題はいろいろございますけれども、折衝を続けておるような次第であります。
  44. 橋口隆

    橋口委員 この工業立地適正化法は、今後の国土開発基礎になる法律でございますから、ぜひひとつ推進をしていただきたいと思います。また通産省としてもいま経済企画庁で策定をされている全国総合開発計画の中で工業開発プロジェクトが一番重大じゃないか、これが推進力になると思います。そういう意味で将来の立地計画については十分の御研究をお願いしたいと思います。  大臣にお話を伺いたいのですが、あと十分ぐらいかかりそうで、十分たちますと私の持ち時間は切れますので、十分だけ持ち時間を保留さしていただきまして、あとで質問さしていただきます。
  45. 小峯柳多

    小峯委員長 岡田利春君。
  46. 岡田利春

    岡田(利)委員 大臣、鉱山局長がまだ参議院のほうから見えませんから、その前に予備的な質問をいたしておきたいと思います。  私は、本日わが国の硫黄政策についてお尋ねをいたしたいのでありますが、特にいま国内硫黄鉱山の中で最大の規模を誇る松尾鉱業の現状はきわめて憂慮すべき状態にある、かように存ずるわけです。  そこで、私は、まず通産当局として今日の松尾鉱業の現状を一体どう把握されているのか、その点についてお伺いをいたしたいと思います。
  47. 加納寛治

    ○加納説明員 お答えいたします。松尾鉱業は日本で一番大きな硫黄、硫化鉱の生産企業でございます。従来日本の硫黄の需要の三〇%ないし四〇%、硫化鉱の一〇%程度を供給いたしております。おおむね日本の硫黄需給に関しましては、そのために自給自足をし得るという状態でございます。  しかるに、最近公害対策から発しました石油企業におきます硫黄の回収という問題が起こりまして、その回収硫黄が市場に多少出回ってきたということから、値段の低落が見られまして、また多少需給もゆるんでまいりました。そのために経営といたしましては、ここ二年間に急激に悪化を見せております。一方、四年ほど前から硫黄鉱山の合理化問題ということが必要になりました。通産省では、鉱業審議会にはかりまして、硫黄鉱山の合理化問題に取り組んだわけでございます。少なくとも輸入硫黄に対抗し得るという合理化計画のもとに諸般の計画を進めてまいりました。その一環といたしまして、松尾鉱山では従来坑内掘りをやっておりましたが、これを露天掘りに切りかえる、また従来非常なコスト高になっておりました精錬方式を、焼き取り精錬方式から近代化した機械化の精錬方式に切りかえるということで、大がかりな合理化対策に取り組んできたわけであります。その設備投資のさなかにこういった硫黄の需給の急激な変化ということが起こりました。この両面から、現状におきましては松尾鉱業は非常な窮状におちいっておるというふうに考えられます。事実ことしの七月に現地に硫黄の調査団を派遣いたしまして、いろいろ技術面からもあるいは経理面からも検討をお願いしたのでございますが、その結果によりますと、借り入れ金が約六十六億、欠損で十六億という程度の営業成績を示しておりました。このままでは、特にこの負債をかかえたままでは松尾鉱業の存在はきわめて悲観的であるという結論が出されております。しかしその後、経営側あるいは現地に働かれる労働側の涙ぐましい努力によりまして、特に需要業界に対しまして積極的な引き取りをお願いする、あるいは石油業界と話し合いをいたしまして価格の維持をはかるということで今日まで推移をいたしておりますが、かろうじて操業が続けられておるというのが現状だと思います。
  48. 岡田利春

    岡田(利)委員 松尾鉱業における合理化の推移をながめてみますと、昭和二十八年に二百八名の共かせぎ婦人の人員整理を行なった。また昭和三十三年には三百二十名の希望退職を募り人員整理を行なった。加えて昭和三十四年の八月にもまた百四十七名希望退職を募っております。引き続いて昭和三十七年の十月には千八十二名の希望退職を募りました。昭和四十二年の八月には八百八十四名の希望退職を募って人員整理を行なっておるわけです。また四十二年十月には購買会を分離をする、こういう非常に激しい合理化を行なってきておることはよく御存じかと思うわけです。  一方において、今日の硫黄鉱山の実情から、経営の合理化、こういう中で通産省の行政指導に基づいて松尾鉱業としては新しい精錬設備に膨大な投資をする、こういう方向で合理化を進めてまいったのでありますが、いま答弁がありましたように、今日松尾鉱業そのものの存立がきわめて重大な時点に立っておる。そこで、私がお聞きしたのは、今日松尾に働いておる労働者はどういう状態に置かれておるか、そういう実情をよく把握されておるのかどうか、この点について引き続き伺っておきたいと思う。
  49. 加納寛治

    ○加納説明員 特に労働問題におきましては、九月ごろから給料の遅延がございました。一部組合側で借り入れを行ない、あるいは現在十二月におきましては、まだ給料が支払われておらない。御承知のように、松尾鉱山は東北の非常に寒いところにございまして、高度も千メートルというところで、すでに極寒期に入っております。越冬の準備その他で非常に金の要るときでございます。労働組合といたしましても、目下会社側と年末資金について交渉をしておるというふうに聞いておりますけれども、その代り行きについてはまだはっきり承知をいたしておりません。
  50. 岡田利春

    岡田(利)委員 いま答弁がありましたように、松尾鉱業は六十億の借り入れを行ない、しかも累積赤字十六億を越えておるわけです。その中で、八月の賃金は五〇%より支払いがされておりませんし、あとの五〇%は組合で賃金の手当をしておる。その後分割払いが行なわれて、十二月が五〇%で、この末にあとの五〇%を一応支払う。したがって、年末の資金については目下のところ労使の交渉の中では一銭も出し得ない。この資金のめどがつかないという形で推移をしておるわけです。七月における通産省努力によって、一応資金のつなぎ等の努力をされた経緯もあるわけですが、松尾の置かれておる立地条件というのは、非常にへんぴな山の中であって、しかもすでに雪が積もって、もう積雪期には十尺も雪が積もって輸送も困難な状態である。このままで推移いたしますと、一体この冬をどうして過ごすことができるか。食料品である米のたくわえがなければ、米も従業員は獲得することができないという、いわば社会問題化される時点に立たされておるのではないかと私は思うわけです。したがって、私は賃金の五〇%の支払い及び一定の期末手当の資金の面は、そういう実情から考えれば、当然何らかの措置をしてしかるべきではないか、このように考えるのであります。この点については、松尾鉱山として別に通産省に対してそういう協力の要請とか、そういうものがあるのかないのか、またそういう点について報告がなされているのかどうか。この点についてお伺いいたしたいわけです。
  51. 加納寛治

    ○加納説明員 松尾鉱業の資金繰りにつきましては、ほとんど毎月のように会社側から事情は聴取いたしております。しかしながら、会社側が説明の中で、資金繰りをよくするために特に銀行にお願いをするという問題につきましては、この七月に合理化資金の一部を追加融資をお願いするという段階におきまして、実は通産省が中に入りまして、資金のあっせんをいたしたわけでございますけれども、そのときの状況から見ましても、きわめて現状は困難である。と申しますのは、七月に二億円の追加融資をしたわけでございますが、その時点でも銀行側は、現状ではとても融資の対象にはなり得ないという意向でございます。そこをいろいろお話しをしたあげく、この追加融賃に応じていただいたわけでございます。その後銀行に対して松尾鉱業がいろいろ要請をしておるようでございますけれども、銀行側はなかなか応じられない。しかし一部の銀行でごく最近千七、八百万ばかりの追加融資をしたというふうには聞いておりますけれども、これはもうほんの一部の資金繰りの役にしか立たなかったではなかろうか。現実にはいま資金繰りを好転をさせるために銀行借り入れについて通産省はあっせんの依頼を受けておりません。
  52. 岡田利春

    岡田(利)委員 松尾の実情については、ずいぶん詳しく承知をされておるわけですから、少なくともいま述べられた松尾の現状認識からして、もうすでに二十日にならんとしておるのに、賃金は五〇%より支払いされていない、期末手当については全然めどがない、こういう態度で松尾鉱業は終始をいたしておるわけです。したがって、従来の松尾鉱業に対する通産省の行政指導の立場から見れば、むしろこの現状はすでに数回にわたって窮状が訴えられておるのでありますから、これは積極的に打開をする、そういう立場姿勢というものを私は示すべきではないかと思うわけです。そういう点についてはいかがですか。
  53. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 参議院の石炭特別委員会に入っておりましたので、申しわけございません。鉱業課長からお答えいたしておると思いますが、硫黄対策全般という問題の中で、松尾鉱業の緊急事態というものに対しまして、従来から私どもも可能な限りの努力をいたしてきたつもりでございます。お答えいたしたかどうか、まださだかではございませんけれども、私の前任者の時代の昨年の十月、私がかわりました直後の本年六月、二度にわたりまして、北海道東北開発公庫、第一銀行、興銀といったところを、私どもなりの最大限の努力で説得をいたしまして、融資の道を講じてまいりましたけれども、率直に申しまして、私が本年六月各金融機関を回りました感触から申しますと、金融機関は、いまの時点でこれ以上の融資にはこたえられないというのが現状だと思っております。その意味で、その後も引き続き松尾の経営責任者である山野上社長とは、私はほとんど各月二回くらいずつ状況を聞き、御相談に乗っておりますけれども、現在持っておりますような六十億円に近い借り入れ金総額という状況では、率直に申しまして窮状打開はなかなか困難をきわめておるという状況でございます。
  54. 岡田利春

    岡田(利)委員 通産省はすでに本年の九月六日に松尾鉱山調査団を入れて、現地報告を受けておるわけです。しかるに松尾鉱業の再建計画については、いまだ経営者自身が明からにいたしていないわけです。もう十二月の暮れに迫っても、調査団が九月に報告しておるのにかかわらず、再建計画というものが示されていない。そういう経過を経て、年末ぎりぎりになって、いわば労働者には賃金は半分より払わない、期末手当については応じられない、こういう状態になっておる。通産省のいま言われたように、毎月二度くらいも松尾鉱業と会っておるのに、再建計画も出されない。こういう状態のままにずるずる推移した責任は、私はきわめて重大だと思うわけです。一体再建計画というものはどうなっておるのですか。そういう点については通産省としては、どういう態度で松尾鉱業に対して臨んでおるのか、明らかにしてもらいたい。
  55. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 私はただいま率直な状況についてお話をいたしたわけでございますが、事態そこまできていて、何か手を講ずることを考えないのは、少しゆっくり過ぎておるじゃないかという岡田先生の御意見だと思いますが、ただいま入りました連絡によりまして、新しい事態が起こりましたので、この席で御報告をいたしたいと思います。  松尾鉱業は窮状打開のため、本日会社更生法の適用を東京地方裁判所に申請し、受理をされました。今後は同社の再建のための更生計画が確立されるよう債権者たる銀行並びに関係大口企業に協力を呼びかけるとともに、管財人の推薦、関係企業、特に硫黄業界の積極的な協力というものを要請いたしたいと考えております。事ここに至りまするまでには、事柄が更生手続の申請でございますので、明らかな意思として私ども相談を申し上げたことはございませんけれども、いま岡田委員がおっしゃいましたように、とにかく状況を見、それなりに考えてみても打つ手がない。ないとすれば、そういう道が一つ考えられるのではなかろうかということは、ことばの端々に双方、これは非常に微妙な問題でございますので、私のほうからそれを推奨するわけにもいきませんし、向こうも従業員と債任者の立場考えると、明瞭な意思表示を私どもにし得る状況でもございませんので、あうんの話とお聞き取り願いたいのでございますが、そういうこともあろうかと思って、実は私どもは、当面もしこういう事態になったときの対応策というものをひそかに考えて、かつ管財人の推薦につきましても、私どもなりに何らかの御協力を申し上げて、松尾の今後の再建のために一番適当だと思われる方向につきましては今後とも松尾鉱業と御相談申し上げたい、かように考えております。きょうこの連絡を受けますと同時に松尾の社長からも、役所のほうでもひとつ管財人の推薦等、これからの長期の松尾鉱業の再建にかかわる大事な事柄でございますので相談に乗ってくれということも連絡が来ております。私は石特に行っておりましたので代理の者が聞いておりますけれども、以上のような状況でございますので、新しく起こりました更生法の申請という事態に即応いたしまして、私どももできるだけの協力をいたしたいと考えております。
  56. 岡田利春

    岡田(利)委員 いまのニュース、まことに突然なことでありますけれども、私はただここで議論しても、そういう突発的な問題が出ておるわけですから深い議論にならぬと思いますが、少なくともその松尾鉱業の経過から考えれば、ある程度事前に相談があってしかるべきではなかったのか。こういう意思決定、もちろん企業の責任者が意思決定はしなければなりませんけれども、当然そういう点については相談があってしかるべきではないのか。いままでの経緯から考えれば当然相談してしかるべきではないのか。また鉱山側の代表に対してもそういう点については当然協力を求めなければならぬわけでありますから、そういう点について十分事前に相談すべきじゃなかったかという大きな疑念が、いまのお話を聞いて非常に強くするわけです。     〔委員長退席、海部委員長代理着席〕いずれにしても、松尾鉱業の鉱区の現状は従来東洋第一である、こういわれて、この再建のために相当関係方面努力されたことは私は認めるのでありますけれども、しかし今日松尾鉱業の労働者の置かれておる現状というのは、いまあの地域でありますから、高校生は全部盛岡の学校に通わなければならぬわけです。通学はできませんから、約三百名の高校生は盛岡に下宿をして勉強する。このために要する経費というのは毎月一万三千円。そのお金がなければ高校生を高校に通わすことができないという状態にあるわけです。こういう現状を考えれば、会社更生法の適用を会社が申請したとしても、当面こういう置かれておる、年を越す問題について一体どう配慮するか、この点については十分検討されなければならない問題だと私は思うわけです。私はそういう意味において、硫黄政策がいま大きな政治の課題になってきましたけれども、こういう点についての労使の相互の理解、こういうものがなければ会社更生法では再建ができないのではないか。一応会社更生法の適用を受けていても、会社更生法で再建ができるのか、しからずんば、別な思い切った方法によって松尾の再建をはかるのか、むしろ再びそういう決断に迫られる可能性というものを持っているのではないか、こういう判断を実はせざるを得ないわけです。そういう点について特に社長から管財人の推薦等について相談があったという答弁でありますので、これらの現状認識に立って、当然そういう相談に応じていく態度についてひとつこの際お聞かせ願いたい。
  57. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 御指摘のとおりでございます。地理的に非常に特殊なところでございまして、冬を迎えますと、一応これで冬ごもりの状態になる場所でございます。更生手続をとったからといって直ちに問題が解決するわけのものでもないことは確かでございます。ただ、私どももこの事態はかねがね予想いたしておりましたので、現在持っております在庫の売りさばき等で、少なくとも債権取り立てがスットプされた場合の、いわゆる手から口の経営というものが何とかやっていけるかどうかということについての見通しは若干持っております。ただ長期的な再建ということになりますと、岡田先生いまおっしゃいましたとおり、この手続をとったから直ちに道が聞けるというものではなくて、いろいろと問題が出てくるわけでございます。これは御指摘のとおり私どもも現経営者とよく相談して、管財人が選ばれましたならば、管財人と十分な連絡をとって、相なるべくは、相当の縮小はありましても、日本一の松尾の山というものが何らかの形で再建できますことに全面的にひとつ努力いたしたいと思っております。
  58. 岡田利春

    岡田(利)委員 この際通産大臣にお伺いしますが、私は通産大臣が政調会長時代にも松尾鉱山の問題で協力方を要請したことがございますし、またきのうも現地のそれぞれの地方自治団体の代表、あるいは働いておる労働者の代表や家族が通産大臣にいろいろ陳情いたしたわけです。いま私と鉱山局長の間の質疑をお聞きになっておられたと思うのですが、この際大臣のこの面についての考え方をお聞かせ願いたい。
  59. 大平正芳

    ○大平国務大臣 硫黄政策につきましては、岡田委員御案内のとおり、審議会の御答申の示す方向で、私どもも鋭意努力しなければならぬと思っております。その方向でやってまいります場合に、どういたしましても鉱山企業自体の合理化が前提になるわけでございますが、松尾鉱山におかれまして、きょう非常手段を講ぜられたのを契機にいたしまして、本格的に山自体の合理化のもくろみが立てられて、それが再建のレールに乗りまして、そして同時にわれわれの硫黄政策とマッチいたしまして、活路が開けてまいりますように、非常に精力的に、そしてまた関係者、従業員の方々、地域の経済財政関係方面が非常に多いわけでございますので、周到でかつきめのこまかい対策を講じまして、皆さんの御期待にこたえなければならぬと思っております。
  60. 岡田利春

    岡田(利)委員 硫黄問題が政治問題になり始めてもうここ二、三年経過いたしておるわけですが、来年度予算要求に対しても、通産省としてはこの硫黄政策を樹立をするため予算要求もされておる模様であります。この際、この予算要求をしておる通産省として、どういう基本的なものごとの考え方で硫黄政策を立てようとされているのか、この際大臣の所信を承りたい。
  61. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま申し上げましたように、本年七月の鉱業審議会の御答申がございまして、過剰硫黄の輸出によりまして需給の均衝をはかりまして、市況を回復させるという点が、たしか第一点であったと思います。  第二点は、いまお触れになりましたように、鉱山企業自体の合理化によりまして、硫黄対策経済的に定着するようにしてまいるということでございます。  過剰硫黄の輸出によりまして需給の均衝をはかると申しましても、どのように過剰硫黄が出てまいりますのか、また、それの売りさばきの値段がどうなりますのか、これからの公害対策の進み方等、非常に流動的なものがあろうと思うのでございますが、基本は、世界的に需要があるわけでございますから、その市場を開拓いたしまして、それが輸出にしむけられるだけの環境と、それから生産体制を打ち立てることに力を入れていかなければならぬと考えております。
  62. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 ちょっと補足して申し上げます。趣旨はいま大臣お答えのとおりでございまして、輸出対策につきましては、本年の八月に硫黄鉱山と石油精製会社と貿易商社等の関係企業四十六社をもって日本化学工業品輸出組合の硫黄部会というものを結成いたしまして、十月から輸出カルテルを結んで、秩序ある形で積極的に輸出に取り組む体制を整えつつございまして、輸出成約の面でも成果をあげるきざしがもうすでに見えております。  また一方、輸出市場の開拓を目的といたしました硫黄調査団を、今年の十一月四日から一カ月にわたりまして、韓国、台湾、インド、タイ、オーストラリア、ニュージーランド等の硫黄消費国に派遣いたしまして、海外需要者の意見をも十分に聴取した結果、努力いかんによっては、今後の輸出につき明るい見通しが得られるという確信を得ております。また、大口消費国であるオーストラリアについては、ジェトロに委託して市場調査友実施中でございます。なお、今後さらに硫黄輸出を伸ばすために、関係業界中心といたしまして、硫黄の輸出基地の建設につきまして具体的た検討を進めております。また、石油業界、硫黄鉱山業界との協調による輸出責任体制についても、両業界の意見調整をはかっているところでございます。  予算としたしましては、来年度予算におきまして、市場調査と輸出基地の建設、輸出在庫の金融等につきまして必要な財政資金の確保をはかってまいりたいと思っております。  反面合理化対策につきましては、精錬費のコストダウンをはかるために、来年度から合理化資金の補助金を交付するよう、予算要求を行なっております。
  63. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、産業政策の面で見れば、通産省対策というのは一年ないし二年常におくれておる、こう思うわけです。すでに昭和四十三年十月から十二月の間に日産百トン前後の脱硫装置が開始をする。これだけで日産四百七十トンになるわけです。昭和四十四年では六カ所、日産四百五トンの回収硫黄というものが出てまいるわけです。昭和四十五年になれば五カ所、日産四百トンの回収硫黄が出てまいるわけです。急激にこの量はふえてまいります。そういたしますと、昭和四十四年で大体三十万トンの硫黄が余ってくる。四十五年では大体四十九万トンの硫黄が余る。昭和五十年では七十八万トン、昭和六十年になれば百六十五万トンの硫黄が余ってくるわけです。余った硫黄は当然海外に輸出しなければならぬということになってまいります。ただ、私は、いま日本の硫黄政策というのは、硫黄鉱山に対する政策ではなくして、結局随伴硫化鉱が出ている銅、鉛、亜鉛のベースメタルを生産している鉱山対策の大きな側面を持っておる、このことを理解しないで単体硫黄だけの問題を考えることはまことに当を得ていない、こう実は考えているわけです。そうしますと、政策のポイントは一体どこにあるのか。回収硫黄をそれ自体として目的にするならば、トン当たり十万円かかるわけです。しかし、公害対策で今度政府は百億をこえる財政投融資を設備に回す、また、税制上の優遇措置もとって、このことを大いに奨励するという積極的な態度をいま示しているわけです。そうすると、この機会に回収される硫黄に対してある程度いわゆる規制をする、こういう明確な態度が決定されなければ硫黄政策というものは成り立たないのではないか。  それと同時に、脱硫をした重油の価格、この点については、特に電力会社が対象になるわけでありますが、この適正化をはかる。一%脱硫して五百円高く買った。ほかの原油を安くすれば、手取りとしては精製会社は全く同じで、とてもこれでは成り立っていかない。成長産業のきわめて収益の悪い産業であるということは、一般に常識になっているわけです。そうすると、脱硫した硫黄価格の適正化——設備に対しては、いま言ったように財政税制の優遇措置をはかるわけでありますが、そういう面から見れば、この回収硫黄については一方においては規制をする。そして国内硫黄については、合理化を進めながら、大体ヨーロッパ諸国の硫黄価格程度までこれを合理化を進めて押えていく。こういう三つの考え方に立って、この三つを連立方程式で同時に解決するところに、私は初めて硫黄政策というものが成り立つ、実はこういう見解を持っているわけです。これ以外に、私自身としては確固たる硫黄政策を確立する道はないのではないか、私はそういう考え方に立って、通常国会には硫黄産業の安定法を提出をしたい、こう考えているわけです。私はこのような見解を持っておるのでありますが、この際大臣の所見を承っておきたいと思います。
  64. 大平正芳

    ○大平国務大臣 傾聴に値する御提言をいただきまして、私どもといたしましても、今後硫黄政策を立てる場合に、御提言がございました考え方、メカニズム、そういった点十分参考にいたしまして、検討を進めさしていただきたいと思います。
  65. 岡田利春

    岡田(利)委員 ただ、来年度予算審議が通常国会でなされてまいるわけですが、この予算がきまり、そういう回収設備に対する財投を進めていく、あるいはまた税制上の優遇措置をする、この機会を除いて、私は回収硫黄に対する政府のある程度の規制といいますか、こういう政策をとることはむずかしいのではないか、 こう思うわけです。一応政府の場合には、民間の協力を得て答申の線で何とかそういう方向を進めたいというぐあいに考えておられるようでありますけれども、私は、そういう新しい政策を展開するときにその素地というものを確立しなければ、時間を経過したのでは結局おそきに失して、硫黄業界というものはその市場について大きな混乱が生まれてくるのではないか、こう思うわけです。タイミングとしては、今度の政策を展開する時点、こういう点について特に業界の協力も得る、あるいはまた油を買い入れる側の電力の理解も得るタイミングはこの機会以外にない、こう思っているわけです。こういうものごとの考え方については、大臣としてはいかがですか。
  66. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 大臣もお答えになりましたように、基本的に、私、岡田先生がいまお話しになりましたことは全く同感でございます。硫黄問題を片方で硫化鉱との関連考えるということ、それから、脱硫硫黄につきまして、重油価格というものを合理的なものに設定するならば、石油精製業界においても硫黄対策についての協力の下地ができるのではないかということは、お説のとおりだと思います。ただ残念ながら重油の消費業界と石油精製業界との力関係、あるいは石油精製業界の内部に持っております若干の弱さというようなものがありまして、ここのところは、私もそう考えますけれども、なかなか実行を保証し得るようなことがはっきり出てまいりませんことが残念なのでございますが、タイミングといたしましてやはりいまの時点で大いにそういう背景、実態の改善ということに心がけるべきだということについては全く同感でございます。
  67. 岡田利春

    岡田(利)委員 政府があまり財政負担を伴わないでこれらの政策を進めるためには、やはりそういう総合的な視点に立って問題を解決をしていくということでなければならない。この場合、結局石炭産業の二の舞を繰り返してはならぬのではないか。石炭産業は、御存じのように千二百円をどんどん下げていく、経済成長の中で物価が上がる、賃金が上がる、こういう点で石炭産業はもう根本的に合理化の面でも硬直化して弾力性を欠いたというのが石炭政策の最大の失敗であったわけです。硫黄鉱業の場合にも、とにかく鉱山業は合理化できるし、合理化しなさい、徹底的な合理化をした。しかし経済成長の中でコストは上がってまいりますし、また労賃も上がってまいります。そのわりあいに資源産業というものは生産性の伸びというものは大きく期待できないのでありますから、問題はやはりある程度弾力的に受けとめておいて、そこに総合的な点を結び合わせて政策を立てる、こういう考え方に立たなければ、単にすべての産業をかかえるということでは、なかなか産業政策というものは成り立っていかないのではないか、こう私は考えるわけです。こういう点について、特に今後、石炭産業も重大な時期にありますけれども、こういう産業についても、そういう経験にかんがみて、ひとつ大臣対策を立ててほしい。時間がございませんので、このことを大臣に強く要請いたしておきます。  そこで、鉱山局長にお尋ねをいたしますけれども、政策を立てる場合は、問題は国際的な硫黄価格の動向と国内価格の推移、こういう関連において硫黄価格というものはきまってまいると思うわけです。この長期的な見通しを立てるということは非常にむずかしい要因もございますけれども、しかし国際的な硫黄の供給と需要の関係から見れば大体推計がつくのではないか。そうすると、国内価格は大体どの程度をねらわなければならないか、輸出価格はどこまで下げなければ新規の市場を開拓できないか、こういう中で硫黄の価格というものはおのずからきまってまいると思うわけです。そこに大きな差があるとすれば、常に輸出価格と国内価格の二重価格というものを念頭に置かなければならないのではないか、こう私は考えるのでありますが、この点について一体どういう判断を持たれておるか、お聞かせ願いたいのです。
  68. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 御指摘のとおり、輸出に主眼を置いてこれからのことを考えてまいりますと、はたしてどれくらいの価格であって輸出が可能であるかということが問題になろうかと思います。実は量的な国際需要としての硫黄需要はあることは、今回の調査団の報告によりましてもかなりはっきりしておりまして、問題は価格ということになるわけでございます。おおよその判断としては、おそらく四十ドル前後というのが輸出価格であろう、こう考えております。そこで硫黄鉱業に対しましてこの輸出採算可能価格というものを合理化によって生み出すという努力は、これは相当酷ではありますけれども、やらなければいかぬと思いますが、はたしてそこまで行けるかどうかということは、いま岡田先生おっしゃいましたように、いろいろ問題があると思います。むしろ先生のお使いになりました規制という概念とは、私ども考え方は少し違うのでございますけれども、回収硫黄をできるだけ輸出に回し、そして山硫黄をできるだけ国内に回る分を多くするという比率のとり方によりまして、国内価格というものを若干安定的なものにして、経過的な硫黄鉱山の安定に資したい。そのためには石油精製業者が回収硫黄を進んで輸出に回せるような素地として、重油価格というものが問題になるのだというのは、先生の御指摘のとおりだと思います。私どもはそういう考え方で、ただいまの御意見に全く同感であるということを申し上げたのでございます。これは時間概念も入れなければならぬと思います。しかし長期的な問題としては、輸出採算価格というものに対して、やはり山側にも努力をしてもらわなければならぬ。経過的な問題としましては、相なるべくは回収硫黄の輸出に回る比率が高いことによって、急激なショックを山の側に与えない、この辺を双方の理解と協力によって実現してまいりたいというのがただいまの気持ちでございます。
  69. 岡田利春

    岡田(利)委員 今日の硫黄の国際価格というのは、結局アメリカやメキシコのフラッシュ硫黄の建て値によって、大体きまるわけです。またカナダ等ではもうすでに一年分ぐらいのストックを持って、常に市場開拓に積極的に調査をし、努力をしている、こういう客観的な条件に置かれておるわけです。わが国輸出先は、当然東南アジア、オーストラリア並びにアフリカ、こういう地帯を対象にして硫黄の輸出をはかってまいらなければならないわけです。そうしますと、国際的にフラッシュ硫黄の建て値が基準になるのでありますから、輸出価格というものは、もちろん輸送距離が若干違いますけれども、一応この建て値を意識しないで市場を伸ばすことは、私は言うだけであって実際はできないと思うのです。常にそういうことが基準になってまいるわけです。そうすると、このフラッシュ硫黄の価格に鉱山硫黄の合理化を進めて合わせるとするならば、鉱山はすべて閉山をしなければならない、こういう事態に追い込まれますし、また硫化鉱と硫黄の一対一・三という比率で見ると、硫化鉱の面についても重大な影響を与えてまいるわけでありますから、これはもう成り立たないということははっきりしているわけです。しかも合理化はとてもそういうところまで進むことは不可能であるということは、これまた明らかだと思うわけです。そういう認識が一致するならば、結局ここに硫黄の国内価格と輸出価格、そして回収硫黄と鉱山硫黄の価格の二重価格、こういう問題を何らかの形で解決しなければ、私は硫黄政策というものはどう考えても成り立たない、こう思うのです。これを解決する方法は、現在の鉱山というものは数多くないのでありますから、あるいは硫化鉱系についても把握のしかたは非常に簡単でありますから、そういう視点から見れば私はおのずからはっきりしてくるのではないか、あまりにも明瞭ではないか、こう思うのです。こういう点については、通産当局としては詰められておるのかどうか。また、どうも審議会の答申を見ると、抽象的な答申で八方美人的な答申で、あっちにもよくこっちにもよい、結局は何を意図しておるのか、答申の中では明確性を欠いておるわけです。合理化とか、輸出基地をつくるとか、輸出を振興させるとか、抽象論はきわめて多いのでありますけれども、けんな答申をもらった通産省は困るのではないか、こう、むしろ私は思うくらいなんです。こういう点についてはいかがですか。
  70. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 確かに非常に困難があると考えます。フラッシュの価格も、専門家の意見によりますと、現状二十ドルぐらいというのがやはりコストアップして、三十五ドル近いものに上がっていくのではなかろうか、こういう感じがいたします。国際的な市場価格といたしましては、先ほどお答えしましたように、FOB四十ドル、消費地で五十ドル前後というものが一つの目安になるだろう、硫黄山に、これの採算可能価格まで合理化させるということは非常にむずかしかろうという岡田先生の御意見は私もそうだと思いますが、絶えずそういう目標でものを考えてもらわなければいかぬ。ただ、どれくらいの合理化が可能かということについては、通産省としてもおよそのめどは持っておらなければいけない。あまり酷なものばかり期待してもいけない。そこで先ほど申しましたように、回収硫黄との適当なる調整によってこれを考えたいというのが私ども考え方でございまして、これを双方の話し合いの場の中でうまく解決する仕組みとして先ほど申しました輸出組合、この中におけるカルテルの運営というものをひとつ十分活用をはかって、石油精製側にも応分の協力をしてもらうことによって長期的な輸出対策というものについてのめどをつけてまいりたいと思うわけです。御承知のように、来年度で回収硫黄分で大体国内需要はまかなえるという数字になります。四十五年度になりますと、回収硫黄だけでも国内需要を越える生産額になる。石油精製業界も本気になって輸出考えなければならないことは、公害対策の進展とともに漸次はっきりしてきておるわけでございます。この機会にひとつ業者の協調、協力によって、全体として輸出考え国内価格においては山側にあるということを考えていただくよりほかないのではなかろうかと思っております。
  71. 岡田利春

    岡田(利)委員 局長の答弁はきわめて抽象的にすらっと答弁されておるのですが、現状の産業政策はなかなかそういうきれいごとではいかないと思うわけです。回収硫黄が山硫黄より上回ってくれば、輸出ができないとすれば、これは投げるといったって公害が起きますし、投げるわけにいかぬ。そうすると、私の見通しでは、自主的に硫酸センターをつくって、安い硫酸をつくって、結局硫酸市場になだれ込んでいくのが必然的な流れだと思うのです。そうすると、硫黄政策というものはベースメタルを生産している全鉱山にも私は影響してまいると思うわけです。ですからどうしても歯どめがなければいけない。いま局長が言われたように、国際価格の基準になるフラッシュ硫黄の建て値が三十五ドル、それ以上若干上回ったとしても一万三千ちょっとなんです。大体一万三千前後で当分推移することは間違いのない事実だと思うわけです。私は鉱山の合理化というものは、先ほども申し上げましたけれども合理化を当面目先だけで急いで、結局鉱山経営そのものがもう弾力性を欠いて硬直化してしまう。その後どうするかということになると、これはどうにもならない。お手あげである。そこで必然的に山は閉山になっていく。こういう石炭産業の失敗を繰り返してはならないと思うのです。少なくとも日本技術陣が見たら大体どこまでいけるかということはわかります。私が見ても大体わかる、山に入ってみれば。もうそれ以上にやれということはやめろということなんです。ですから私はそういう面から見ると、もちろん合理化はしなければならぬけれども、そこにおのずから線が出てくる。そうすると、供給できる価格というものはおのずから定まってくるのではないか。その方向というものは二重価格、こういう傾向をはっきり正面に浮き出してくることになるのではないか、こう思うのです。ですから通産当局が、普通の装置産業と違って、地下資源の場合には、合理化合理化合理化を急ぎ過ぎて結局は態勢が硬直化して瓦解をする、政策が破綻をするということを繰り返してはならないのではないか。この点は、ほんとうに四つか五つの山よりないわけですから、もう少しぴしっと把握をして、技術的にも十分裸にして検討して、これを残すのか残さないのか、その中で方向はどうしてもこうならこうであるという確信の持った政策というものが打ち出されなければならない。こういう点については従来審議会でやってまいりましたけれども、もう一度そういう徹底した——山の数か多くないのでありますから、技術的な調査団を出すとか、そういう面で現状把握というものを間違いないようにして、その上で政策を出すという気持ちはないかどうか、この機会に承っておきたいと思います。
  72. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 輸出問題に新しく取り組むという状況に相なってきておりますので、海外環境についての調査その他を十分完ぺきを期しまして輸出考えなければならぬ。およそこれくらいの価格だというものを的確につかみました上で、硫黄山の合理化計画につきましてもその目でまた見直してみる。その際、合理化の限界というものも、御指摘のとおりひとつ十分わきまえてものを考えていきたいと考えております。
  73. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は特に、第一次公害で油から硫黄が回収され、まさしく国内の硫黄鉱山は第二次公害を受けている、こう申し上げなければならぬと思うのです。これが政策が破綻して、出てくる硫黄の輸出が順調にいかないとすれば、三次公害が生まれてくるのじゃないか、こういう気がするわけです。  そこで私は、先ほど申し上げましたように通常国会に、仮称でありますけれども硫黄安定法という構想で現実の法案を出したい、こう思っておるわけです。その基本になるものは、何といっても鉱業政策の立場から見て、一定価格のもとで国内価格というものを安定させ、鉱山の硫黄関係については国内市場を優先させる、こういう観点に立たなければならないのではないか。回収硫黄についてば、国内需要の不足分を補って、これを積極的に輸出をする、そういうものごとの考え方に立たなければならないのではないか。そういたしますと、価格上どうしても二重価格というものは避けられないと私ども判断をいたしているわけです。これを調整する機能をつくって、財政負担を伴わないで総合政策の中でこの問題を解決をしていく、こういう趣旨の立法を通常国会に出したいと思っているわけです。すでに社会党は硫黄政策のために多くの労作を発表いたしておるわけですが、こういうものごとの考え方について見解があればこの機会に承っておきますし、これはひとつ政党、イデオロギーにとらわれないで、わが国の硫黄政策を進める上に役立つ政策の確立のためにまた各党、各委員の協力を得なければならぬ、私はこう思っているわけです。したがって、いま申し上げましたわが党の基本的な考え方に対して、特に所見があればこの機会に承っておきたい。
  74. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 硫黄サイドから考えますと、先ほど来申しておりますように、岡田先生の御見解に私どもも賛成なんでございますが、これをあまり明白に二重価格というようなことで打ち出す、あるいはこの価格調整のためのプール機関と申しますか、何がしかそういう一手買い取り機関的なものを考えるということになりますと、反面こういうこともやはり考えておかなければならぬという問題が出てまいります。その一つは、硫黄の需要業界がそういう制度を容認するであろかどうかという問題だと思います。これはユーザーのほうから申しますと、みすみす国際的価格より割り高な原料購入をしいられるということでございまして、この辺の反対というものは相当強いものを予想しなければならないのではなかろうか。また石油業界から見ますと、私先ほど申しましたように、協調と協力、応援をひとつ頼むという立場なら別でございますけれども、何か力によってこれを強制するということになってまいりますと、この面からも反対が出てくる可能性がございます。また、全体として財政負担をしないようにというお気持ちのようでございますから、その点は問題ないといたしましても、成り行き、見込みとして赤字運営という要請が出てくるのではなかろうか。法律論的に以上のものを総合いたしますと、営業の自由と申しますか、そういうたてまえ等から憲法上の問題等につきまして十分な答が出てまいるかどうかというのは、私まだ十分は詰めておりませんけれども、そういう心配があろうかという感じであります。ねらっていらっしゃるお気持ちと私ども考えておりますことは全く同じでございまして、方法論上の違いという感じがいたすわけでございます。まあ私どもはこういう考え方も一応吟味をしてみなければいかぬ、そこまで自信がない段階でございますので、輸出組合におけるカルテル行為というようなことで、相互の協調、協力を——たまたま私のほうは石油精製業も所管しているものでございますから、そういう立場で事実上解決をしてまいりたいというのがただいまの気持ちでございます。
  75. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんからこれで終わりますが、いまの局長の答弁に対して、私はわかりやすいことばで言えば、国内価格はヨーロッパ価格、輸出価格はフラッシュ硫黄の建て値、こういうふうに割り切った考え方に立たなければ成り立たないのですよ。そして回収設備に対しては財投、税制上の優遇措置をとる。脱硫した油については適正価格で取引ができるように行政指導をする。もちろん電力についても、公益事業でありますから、国としても相当の資金的な援助をしているわけでありますから、そういう点で、この面についても割り切りを求めていく、これはだれが考えてもむずかしくない問題なのです。むずかしく考え過ぎては結局政策が立たないということになるのじゃないか。私はわかりやすく言えば、そういうものごとの考え方に立たざる限り、またそういう方向を見出さざる限り、そういう方向に全体をまとめない限り、硫黄政策は立たないのだと、私はきわめて端的に考えているわけであります。こういう点でひとつ十分、今後法案の提出にあたっていずれ議論する機会もあると思いますから、積極的な取り組みをこの機会に強く要望して、終わりたいと思います。
  76. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 午後一時から再開することとし、この際休憩いたします。     午後零時三十二分休憩      ————◇—————     午後一時二十一分開議
  77. 小峯柳多

    小峯委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐野進君、
  78. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は、昨日通商産業大臣所信表明をいたしました件につきまして、割り当てられた時間一時間でございますから、その時間内で質問をしてみたいと思います。  大臣が昨日所信表明としてお読みになった内容について私いろいろの角度から検討してみたわけですけれども、具体的に内容に入って質問をいたしますと、これは何時間にもなってしまうわけですから、そういうわけにもまいりませんので、できるだけ要点をしぼって質問をしたいと考えて、何点かをあげたわけであります。その中で、石炭対策あるいは公害問題さらには物価問題というようなことについてに、それぞれほかの委員会関連等もありますので、これを省略いたしまして、貿易の振興と経済協力の推進資本自由化の進展など、開放経済体制についてのそれぞれの所信、さらに発展途上国からの追い上げについての中小企業近代化の問題、さらに産業国際競争力の基盤をなす技術開発力、この四点を中心にして質問をしてみたいと思うわけであります。その前にいわゆる総括的な御説明があるわけですが、この問題から入って、逐次時間内に質問を終わりたいと思うわけであります。  まず第一に、先ほども質問がございましたが、さらに昨日もこれに関連した質問があったように承りますが、いま一番問題になっております、この第二項にも書かれてあるように残存輸入制限自由化、さらに資本取り引きの自由化、特恵供与の問題等、こういうようなことについて、私の考えを交えながら質問をしてみたいと思うわけであります。  昨日来の新聞にとの内容等については詳しく説明されておりますので、私はできる限りそういう点については避けて、端的に御質問をしてみたいと思うのでありますが、これらの問題はすべて関連した問題であり、現在日本経済が置かれておる立場から見たとき、これを避けて通ることのでき得ない国際的な問題であると思うわけであります。そしてまた、この問題の処理いかんで今後の日本経済に対して非常に大きな影響を与える、こういうことになっておるわけでございから、通商産業大臣もその就任以降これらの問題についてたびたび見解等も表明されておられるわけです。  そこで、まず私ども立場に立ってこれらの問題について質問をしてみたいと思うのでありますが、大臣はこれらの問題が現在置かれておる国際情勢の中で、国際情勢といっても直接わが国関係のある問題として、いわゆるベトナム問題の処理が現在の情勢の中でどのように見通されるかという点についてまず一点御質問申し上げたいと思うのであります。これで日本経済に与える影響ということであります。  第二点目には、アメリカ大統領が来年の一月からニクソン大統領にかわるわけです。したがって、ニクソン大統領の経済政策というものがどうなるのかということが日本経済に非常に大きな影響を与えるということでございますが、そういうような問題について、ニクソン大統領の経済政策といままでの民主党のジョンソン大統領の経済政策との差について、これは冒頭の質問でありますから抽象的でもけっこうでございますから、ひとつこの二点についてお答え願いたいと思います。
  79. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ベトナム戦争を終結するという意図は、ジョンソン大統領によって本年三月三十一日に打ち出されたことは御案内のとおりでございます。その後。パリの会談が続き、それが拡大会談になっておるようでございまするが、これが現実の最終的な終結を見るまでにどのくらいの期間がかかるか、これは逆賭できません。朝鮮事変のときもたしか二年くらいかかったと思うのでございますが、相当の期間かかるとは思いますけれども、まず終局の方向にいっておると見るのが正しい見方ではないかと思います。そういうことになりますると、いま御指摘日本経済にどういう影響があるかという問題でございますが、ベトナム戦争が継続されておることによって、直接に日本との関係はベトナム特需という形においてありましたものがなくなることは当然でございます。もっとも、あらゆる日本輸出品がベトナム向けというて書いてあるわけじゃございませんから、最近急速に伸びました対米輸出の中にベトナムの戦争と全然無関係であると断言し得ないものがあると思いますから、直接間接日本輸出がその影響を受けて、その程度におきまして減るということは想像するにかたからざるところだと思います。しかしながら、ベトナムの戦争がやみまして、ポストベトナムの復興計画がどのように立てられるか、復興需要というものが日本経済にどのように新たな需要として出てまいりますか、これはまだ想像の域でございまして、的確に捕捉することはできないと思います。それよりも何よりも、ベトナムの戦争をやめると決意したアメリカの決意のほうが重大だと思います。ああいう形において、大量の軍隊を他の大陸に投入するというような形における介入、そういったことは、今後どなたが大統領になろうとも、おそらく繰り返すというようなことはないだろうと思いまするので、いままで私どもが経験したようなアメリカの世界政策下における日本経済の運営というのではなくて、もう少し局面が変わった運営になるのではないかというように私は考えます。  それから第二点といたしまして、ニクソン新政権の対日経済政策をどう見るかということでございますが、新政権は閣僚の任命を終えてまさにスタートをいたそうとしておりますが、どのような政策を打ち出されるか、私どもは的確に予見することはできないと思います。ただ間違っておるかもしれませんけれども、私はこのように考えます。  きのうも中村先生の御質問だったか、関連して申し上げたと思いますが、ニクソン政権は少数与党を率いての政権でございまするから、ニクソン氏の抱懐する経済政策がそのままもろにアメリカの政策として具体化するということには直ちにならないで、相当の民主党との間の妥協というようなことになるのではないか、そういう意味で、大きな変革が起こり得ないのではないかというような感じがひとついたします。  それから、しかしながら同時に、今度の大統領選挙並びに上下両院の選挙、並びに知事選挙を通じまして、きのうも中村さんが御指摘になったように、保護主義的な色彩がやや濃くなったことははっきり出ておるわけでございますが、そういうことに対して十分の警戒をしておかないといけないんじゃないか。基調において大きな変化はないけれども、この保護主義的な傾向がどのような姿で出るか、それに対して先行的にどのような対策を講じなければならぬか、出た場合にどういう対策をもって対応しなければならぬか、これは今後私どもが十分神経を緊張させて注視しなければなりませんし、また対応策を考えていかなければならない問題だと思います。
  80. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで私は、いまの大臣の答弁に関連して質問を続けたいと思うのでございますが、いま言われておる残存輸入制限自由化ないし資本取引自由化、特恵供与もそうでありますが、これらの問題は、日本が高度に経済が成長し、国際的に競争力強化された、そういう形の中で経済の国際化に対応するためにもこれらの措置は必要だということで、ガットなりあるいはOECDなり、それぞれの形の中における要請に基づいて日本政府当局としては取り組みをしておる。そういうような形の中で、いろいろな見解が発表されておるわけですが、私はそれらはひとつのいわゆる国際機関としての要請、それに対応するため日本政府措置であろうと思うのですが、その内容を突き詰めていけば、結論的には、一辺倒ではないかもしれないけれどもアメリカの強い要請に帰着するような気がするわけです。帰着するんじゃなくて、事実そうだと思うのであります。そうなりますと、いま日本経済が非常に重大な関心を払っておる輸入制限自由化資本取引自由化あるいは特恵供与の問題、これらの問題がアメリカの政策の変更に対応して非常に微妙な変化をしていかなければならない。そういうように考えざるを得ないとする場合、政府が今月の二十七、八日か、八、九日かわかりませんが、交渉をされる際に備えて、きのう発表されたこういうような自由化措置も、結局アメリカに対応するために、日本がそれぞれの機関に対する約束を実施するということではなくして、アメリカの強い要請に対処するために、残存輸入制限自由化措置もきめたんだ、こういうような気がするわけです。気がするわけですが、それは事実かどうか。  それからもう一つは、いろいろありますからこれでやめますが、それに関連して資本取引自由化は、御存知のように一九七一年ですか、昭和四十六年ですから七一年までにこれをやろうということで、いま第二次の取り組みをしておる、こういうことになっておるということですね。これもやはりアメリカの強い要請ということにならざるを得ないということになってくると、いまお話しのように、ニクソン政権にかわったけれども、民主党の議会勢力が多数であるから、そう大きな基調の変化はないではないか、こういうようにお考えになられるということは、若干情勢分析の面において甘いのではないかというような気がするわけですが、それらの点について、アメリカの具体的な要請に基づく措置としてこれらの措置をおとりになるのか、あるいは日本が自主的な立場に立っておとりになるのか、次の質問関連もありますので、この際お聞きをしておきたいと思います。
  81. 大平正芳

    ○大平国務大臣 結論から申しますと、日本の利益と名誉のためにやるわけでございまして、決してアメリカにお義理を立てたり追随したりするつもりはないのです。ただ、好むと好まざるとにかかわらず、アメリカという国はわが国の最大の輸出入の相手でございまして、この国の意向というものをわれわれはそれなりに評価してかからなければいけないと思うのでございます。アメリカが好きとかきらいとか別にいたしまして……。そこで、これはガットとか国際的な関連のあるなしにかかわらず、日本経済を運用していく場合には、常にそういう問題があると思います。いま御指摘のガットとかOECD、そういう仲間入りをいたしておりますから、そのコードにわれわれが入ったわけでありますから、われわれがその規制を受けるのは当然なんでございます。私どもいま御指摘の年末からアメリカとの交渉に入ろうというのは、そういう国際規約の中の問題というよりも、むしろ、きのう中村さんの御質問にも答えておいたのでございますけれども、そういう国際機構の場で議論をするという前に、でき得れば二国間で問題を片づけておいたほうがいいわけでございまして、そういう意味アメリカとの間にこういう問題が出てきたわけでございまするから、この問題は日本の利益のために割り切っておくということが必要でないか、こういう考えでやろうとしておるわけでございます。しからば、アメリカが今度日本にそういう輸入自由化資本自由化に対して新たな要求をしてきたかというと、そうでなくて、これは従来からもう執拗にジョンソン政権の時代、ケネディ政権の時代、ずっと前々から絶えず、日本はかたくな過ぎるじゃないか、もう少し同じベースでフェアに貿易取引も資本取引もしようじゃないかという呼びかけはあったわけでございまして、今度の呼びかけが、新政権ができたから、それと直接関連があるとは私は思っていないわけでございます。ただ御指摘のように、こういう交渉を続けておる段階におきまして新政権ができたわけでございますから、新政権が今度はどのような表情で臨んでくるかということは、十分注意しなければいかぬと思いますけれども、これが初めてのことではないというように思います。
  82. 佐野進

    ○佐野(進)委員 ここばっかり話をしていると次に進まなくなりますから、ここでこの項について締めくくりの質問をしてみたいと思うのでございますが、そうなりますと、愛知外務大臣がきのうの新聞記者発表の中で、わが国のこれらの問題、いわゆる残存輸入制限自由化ないし資本取引自由化も含まれると思うのですが、自主的な立場で外部の力による圧力に屈した形の中でこの問題に取り組むべきではない。こういうような表現をしておられたのは、それが真意かどうかわかりませんが、私は新聞記事を読んだのでありますが、外務省当局がそういうような見解をお持ちになっておられるとすると、直接通産行政を担当する通産大臣としては、いま言われた程度の表現ではちょっと何かもの足りないのではないか。いわゆるアメリカと国際機構上におけるところの話し合いよりも、地ならし的にアメリカと話し合いをしたほうが非常に都合がいいんじゃないか、しかもその中で、相手側の意向をくんだ上で処理したほうがいいのじゃないか。アメリカ側にはっきりと三十七品目は最優先である、ASPが条件になろうというような具体的な要請日本に提示しながらするということが新聞報道で明らかにされておるときに、それに対応する措置として幾つかの原則を立てて日本政府も進もうとしておる。そうすると、資本自由化ないし残存輸入制限自由化、これは通産省だけではございませんが、通産省に相当影響のある品目もあると思うのです。そうなったとき、これらに処する通産大臣としての所見としては、冒頭に申し上げましたように、世界経済の動向等の関連の中で日本経済を将来どうするかということについては、いま少しく強いいわゆる自主的な決意、こういうものをもってやはりこの会議に臨むということでなければならぬと思うのですが、その点ちょっと締めくくりでお聞きしておきたいと思います。
  83. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは非常に自主的な措置以外にやりようがないのです。あなたのほうもおっしゃるからこう思いますというような、そんなばかなことはないと思います。われわれは多数の業界を背後に控えておるわけでございますから、非常に緊密な協議をいたしまして、日本産業のたえ得る限界をよく見ながら、国際的な公準として、われわれが将来国際的に名誉ある貿易国としての地位を確立して躍進してまいりますためには、あなたが最初に言われた越えなければならない試練でございますから、そういう点をあくまでも自主的に判断いたしまして、主張すべきは主張し、譲るべきは譲り、向こうに譲歩を求めるべきものは求めて、ちゃんとした仕上げをしなければならぬ、そう思っております。
  84. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それでは次へ進みます。  等二番目の問題は、大臣は、国内的には労働力の需給の逼迫、都市過密化、公害、物価問題等々云々こう言われております。全くそのとおりだと思います。そこで私は、この労働力需給の逼迫ないし都市過密化や公害、物価問題が発生し、発生しつつある現況が一体どこにその原因があるのかということを分析していきますと、結論的には、いわゆる池田内閣当時以後の高度経済成長政策に基因する日本経済の異常ともいうべきこの成長が、これらの問題を必然的に伴ってきたというぐあいに考えるわけです。     〔委員長退席、海部委員長代理着席〕 そう考えざるを得ないと思うのです。これについて御意見をお聞きしたいと思うのですが、私はそういうように考えざるを得ないわけです。これについて、あとで質問をいたしますけれども大臣の見解はどうか、お聞きしておきたいと思います。
  85. 大平正芳

    ○大平国務大臣 池田内閣以来の高度成長政策がもたらした結果だという御評価でございますが、私は必ずしもそう考えません。これは戦後世界経済が大きな技術革新のしぶきを浴びまして、いわば歴史始まって以来の空前の大きな変革期に来ておるということ、そうしてその変革期に処して日本人の知性、新鮮な労働力、組織力、こういったバイタリティが相当活発に展開してきたわけでございまして、歴代の政府はそういう状況を見まして、あるいは所得倍増計画というようなものについて、そのバイタリティの展開を秩序あるものにできないだろうかと試みたし、佐藤内閣は社会経済発展計画というような姿において秩序ができないものかと努力を試みたのでございますけれども、この点について、それでは成果が十分あがったかと問われますならば、遺憾ながら私は十分あがっていないと思うのです。そこにいろいろ御指摘の物価問題とか、過密過疎の問題公害問題その他が、われわれが予想しておったより大きな規模と深さにおいて出てきておるということはいなめない現実であろうと思うのでございまして、政府の政策から出てきたその結果だという見方には必ずしも私は賛成いたしかねます。
  86. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣は池田内閣の主要閣僚であったし、佐藤内閣で自民党の政調会長をやられておるわけですから、私の言うことがそうだなどという答弁はないとは想像しておりましたけれども、しかしいずれにいたしましても、いま日本大臣みずからが、所信表明演説で、国内的に最も重大な問題となりつつあるのが通産行政の面からするならばこれこれだ、こうおっしゃっておられるわけです。したがって、これこれだと言われることが、今日、日本国内問題については、単に通産行政の面だけでなく、政治全体の面において、政府全体の面において最大の解決をしなければならない課題になっております。経済の面から見るならば、これこそまさに成長に相対する意味において解決していかなければならぬ課題だと思うのです。そこで私はこういう面について、何が原因で発生してきたかといえば、高度の急激な経済の成長——ともかくきのうからけさの新聞にかけて、いわゆる国民総生産、国民所得の面が出ておりまするけれども昭和三十二年当時の国民総生産が約三百億ドル、それが四十一年にもう約一千億ドルになり、昨日の発表では一千百九十八億ドルというような急激な伸びを示しておる。こういうことが、去年に対してことし、ことしに対して来年と、やはり成長が続いていくということが当然予測されるわけです。しかもこの成長の度合いというものは、現在の経済情勢を見通した場合、設備投資の急激な膨脹その他との関連の中で、本年度より来年度経済成長の伸びのほうが大きいのではないかという予測すら成り立つわけです。こういう面について、それでなくともこのように四十一年から四十二年にかけては一応いわゆる経済的に鎮静期にあったといわれる年であっても、そういうような経済の急激な成長が行なわれたときに、四十三年は経済がきわめて好況だといわれておるわけですから、この成長力というものはきわめて強いと思われる。したがって、大臣は、こういうような諸問題の発生の原因である——全部ではないとはいっても原因の大部分を占めておるといわれる経済の高度成長の現況に対して、これからの通産行政を担当する意味において、来年度に対してはどのような手を打っていかれるお気持ちであるのか、この際ひとつお聞きしたい。具体的にいえば、経済の成長率を通産大臣としては一体来年は実質、名目ともに何%にしていきたいとお考えになっておるか。
  87. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私は産業行政をお預かりしておるものでございまして、国の経済全体の成長率をどうするとか、経済運営の基本的態度をどうするとか、なまいきなことを申し上げると、私の職分からちょっとはずれることになります。これは英邁な経済企画庁長官がおられますから、いずれ本委員会でも御質疑があろうと思いますので、そのほうは菅野さんにお願いするのが礼儀であろうと思います。ただ、依然として根強い成長が続くであろう、何となればわが日本エネルギー、活力というものはまだ若さを持っておるし、成長の余力を持っておると思うので、ヨーロッパなんかと比べまして、まだ弾力が相当残されておると私は思うのであります。したがって、御指摘のように来年も相当の成長を見るであろうということを前提にいたしまして、この間所信表明で申し上げたようなもろもろの問題をまず焦点といたしまして、鋭意施策しなければならぬ、そのように思っているのです。
  88. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は大臣の前段の答弁はそれでけっこうだと思うのですが、ただ、きのう大蔵大臣が大蔵委員会の席上において、経済の成長率を来年は実質一〇%に押える、そのための具体的な措置をとるのだ、こういう見解の表明をされておるようでありますね。そうすると、大蔵省は、財政的な面から経済の成長率というものは日本経済の現在の状態に対応してどの程度が適当かという判断を示されたと思うのです。私は、通産大臣がもちろん経済の自律的な成長はどの程度あってもいいのだとお考えになられる立場なら、何もそういう質問を申し上げることはないと思うのですが、しかし今日の経済の実態が、政府施策の一環として成長なりあるいは停滞なり——停滞とまでは言いませんけれども、一応そのコントロールがされつつある経済情勢にあるとき、経済の成長の側面を重視する通産当局のいままでの政策のあり方から判断したとき、大蔵省が一〇%で押える——あさってですか、これは堀先生のほうから企画庁のほうへおそらく御質問されると思うのですが、それに対して菅野さんからお答えがあると思うのです。しかし通産行政を担当する通産大臣として、これらの面に対する現在の経済情勢の中、特に四十一年度から四十二年度、四十三年度という実績を見越した上に立っての一つの、来年度はこうあるべきではないかという見通しはもうお持ちになっておられるのではないか。それでないと、大蔵大臣は少し行き過ぎた見解の御表明をなさっておられると思うのですが、こういう点をひとつ次への関連からお伺いしたいと思うのです。
  89. 大平正芳

    ○大平国務大臣 拝察するに、大蔵大臣は目下おそらく来年度予算をどういう規模においてやるか、どういう規模財政投融資をもくろんでまいるかというようなことを寝てもさめても考えておられるだろうと思うのです。したがって、そういう御計画をもくろまれるについては、経済の成長率をどう見るかということは、大蔵大臣については重大な関心事だと思うのです。かりに大蔵大臣がそういう想定で予算案の構想を編まれましても、私どもとしましては、さようでございますか、それじゃそのワク内で通産省予算財政規模も仰せのとおりおとなしくやりますという立場ではないと私は思うのであります。御案内のように、われわれは非常にきびしい国際環境のもとにありまするし、設備投資が物価高を来たしておる大きな原因だから、これを鎮静化せねばならぬとか、いろいろな議論は、経済全体をながめているほうからはあるでしょうけれども産業行政を持っておる私の立場から申しますと、極力日本企業の体質を改善せねばならぬし、とりわけ低生産性部門については光を当てていかねばいかぬわけでございますから、企画庁や大蔵省が渋いことをおっしゃいましても、そんなこと言わぬともっと出せという立場におるわけでございまするから、私から経済の成長はこのあたりに押えたいなんと言ったらなかなか商売にならぬと私は思います。
  90. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私はだからそういう意味において、前段御質問申し上げたとおり、いわゆる労働需給の逼迫ないし都市過密化、ないし公害、物価等の諸問題を通産行政として非常に重視しなければならぬとあなたは所信表明演説をされたわけです。しかし、これらの問題は、どこからきておるかといえば、すべてではないけれども、その大部分は急激に高度に成長を続けつつある日本経済のひずみの一面としてこれが出てきておるではないか、したがってこれらの部面を度外視して、ただ経済の急激な成長のみに目を向けることはでき得ないことをあなたみずからが所信表明でお話しになっておるのではないかと私は考えたから、そういう部面において来年度こういう政策を実施なされる場合はどの程度が最も適当であるかという判断を、もちろん自律的に発展をする産業を担当する通産大臣としてはむずかしいだろうけれどもどうですかということをお聞きしておるわけです。いままで過去の実績の中でいろいろ役割りを果たしてこられたのをいいとか悪いとかいうことを申し上げておるわけじゃないですから、その点は誤解のないようにあとの機会でひとつ御答弁を願いたいと思います。  そこで私は、時間がだんだんたってまいりましたから、次の質問を続けてまいりたいと思うのでありますが、まず第一に、この所信表明演説の中で「貿易の振興と経済協力の推進が緊要であります。」こう書かれております。今日貿易の振興なくして日本経済発展があり得ないということはだれしも否定するわけじゃございません。がしかし、冒頭私はベトナム戦争の問題とニクソン新政権の経済政策ということについてお伺いをいたしたわけでありますが、この貿易の振興について、それぞれ通産当局としては対策をお立てになっていると思うのでありますがことしは百三十五億一千万ドル、これは通関ベースで去年の実績二五%増の目標輸出会議で発表された、こういうことで、当初われわれがことしの初めにこの委員会で議論した当時から比較いたしますと、非常に輸出が順調に伸びていったという判断に立たざるを得ません。あのときの課徴金問題をはじめ、アメリカのドル防衛がどういう影響を日本経済に与えるかということから見れば、そういう杞憂を吹き飛ばした輸出の伸びだったと思うわけです。したがって、これが平均において前年度実績二五%増といわれておるわけですが、はたして来年度はこれらの実績がどういうように変化していくか、非常にむずかしい質問にはなるかと思うのでありますが、通産当局としては、大臣がもしあれなら局長でもけっこうですから、見通しの問題ですから、ちょっと見解を答弁してもらいたい。
  91. 原田明

    ○原田説明員 ことし幸いにして二五・四%程度の輸出の見通しを立てられる状態になりましたわけでございます。これは年度当初に、とてもそうはいくまい、国際環境は非常にきびしい、アメリカは課徴金をやりますし、その他国際収支対策、ポンドの動揺その他非常にむずかしい情勢が重なっていたわけでございますが、実際の推移がわりあいに幸いをいたしまして、アメリカの景気もさほど引き締めにならないで、増税もおくれて実施をされて、その結果日本からの輸出も相当に伸びてまいった。そういう国際環境の好況ということが非常に高い輸出を伸ばしてくれた。したがいまして、二年も続けてこういう高い輸出増加率を実現するということは、いまのままいきますとなかなか容易ではあるまいと申しますわけは、依然として国際通貨不安というような問題がまだ根強く残っております。それから先生も先ほどから御指摘になっておりますような、日本輸出がどんどん伸びました場合に、これに対する各国の抵抗というものもかなり起こってまいっております。また発展途上の国も依然として外貨不足が解決しておりませんので、さほど急激に落ちる心配はございませんし、また少なくとも来年の初めのうちはまあまあだいじょうぶではなかろうかという見通しが一般的のようでございますが、年度間を通じましてことしほど高くはあるまい。したがって、私どもは、相当に緊張いたしまして、経済の安定的な成長と国際収支の好調というものがどちらも並んで実現されましたような、ことしみたいな状態が続くようにまいりたいということでやっております。具体的に何%になるかという数字は、来年度経済見通しともからみまして目下まだ検討中でございまして、数字を申し上げる段階にまで至っておりません。御了承をお願いしたいと思います。
  92. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それでは、いま局長の御説明になったような情勢については、私、大体理解しておるわけですが、そこでそういうような実績と冒頭のベトナム戦争の終結あるいはニクソン大統領の就任、こういうところからまいりますと、日本経済がいわゆる貿易の振興という形の中で繁栄を続ける一番大きな条件を持っておるわけですがそれがことしは若干、いわゆる暗雲とまではいわないけれども、多少の危惧の要因があり、前年度比二五%増というような増加を続けること相当の困難が予想されるのではないか。そうすると、その困難をそれでは一体どこで打開して日本経済発展を引き続き行なっていくかということが政治の中心的な目標になっていかなければならぬと思うわけです。私はそこで大臣に後質問申し上げたいのですが、経済の高度成長いわゆる日本経済の国際的な力の高まりという関連の中で、いま経済協力ということがよく叫ばれておるわけです。経済協力の具体的な面についてはあとで質問するといたしまして、当面する課題として、いま政府が一番力を入れておる問題としていわゆるASPAC——アジア太平洋閣僚会議というものがあるわけです。この東南アジアにおけるところの経済協力の進展というものが日本経済日本貿易について相当の影響を与えるであろう、こういうようなことをあらゆる場所で政府関係者のほうからいわれておるわけですが、このASPACとの関連の中で貿易の振興をどのようにとらえておられるのか。いわゆる貿易面における振興対策としてこれをどのように位置づけられておるのか、ひとつ大臣にお答え願いたいと思います。
  93. 大平正芳

    ○大平国務大臣 正直に申しまして、私どもが位するアジアの隣国は貧乏でございまして、まず第一は大いに相互の貿易をふやしてまいらなければならぬし、教育から行政から技術から衛生からみんな基盤ができておりませんから、そういうところに経済技術援助をやりまして、本格的な貿易ができるような状況を相当時間をかけてつくり上げてまいらなければならぬわけでございますから、アジア政策というのは非常にロングレィジにおいて、しんぼう強く積み重ねていかなければならぬ課題であることは、佐野先生も御案内のとおりだと思うのです。しかし、そうはいうものの、いま御指摘の、当面一体それでは貿易促進に何をやるかということでございますが、これは御承知のように日本貿易構成を見てみますと、何といってもアジアには輸出超過でございまして、アジア諸国からこのアンバランスをいつも指摘されておるわけでございます。しかし、彼らが売るものといったら第一次産品が多少あるだけでございまするから、とりあえず第一次産品を貿易レベルに乗せる道がないか。そのためには日本財政に豊富な援助資金がありまして、それを買うだけの余力があること、それからそれが国内産業にどえらい影響がないという条件がございますならば、その要請にこたえられるわけでございますけれどもも、第一に、そんなに輸銀にいたしましても基金にいたしましても金がございませんから、そこで通産省としては、私の所信表明にもありますように、アジア貿易開発事業団というようなものを構想いたしまして、第一次産品を買って差し上げて、日本国内産業とそうひどい摩擦が起こらないようなものを買い入れて、そしてそれを国内に売りさばいて、そこで得た差額をある部分農業等の構造改善に使い、ある部分は購入原資として活用するというような構想を立てておるわけでございます。これがことしの予算要求をいたしておる項目でございまして、これから財務当局と十分相談して何とかものにしたいと考えておるわけでございますが、それとても一つのアプローチでございまして、前途はなかなか遼遠だと思います。
  94. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで私、質問を続けたいのですが、いわゆる東南アジア開発閣僚会議——ASPACにおいてこれらの部面における経済協力というか、これらの面に対する輸出の振興、こういうことが当面直ちに来年度日本経済貿易振興対策としてはそう大きな力がない、なかなかむずかしいことだといま大臣が言われた。そういうことになってくると、結局貿易振興の具体的な対象としては、アメリカとの貿易を現状を維持しかつ伸ばしていくのだ、こういうことにならざるを得ないと思うのですが、それでは私はたいへん消極的な面があるのではないかと思うのです。そこで、こういうようないろいろ貿易を振興させていくという点を見てまいりますと、必然的にどうしても東南アジアからアジア全域にかけての貿易を伸ばす、そういう形の中でやはり日本貿易振興の基盤を確立する。もちろんアメリカとの貿易についても、それを持続的に向上させる努力をするけれども、そうせざる限り前年度比二五%というような高度な貿易実績を伸ばしていくというようなことがなかなかむずかしいのではないか、こういう点を感ずるわけです。     〔海部委員長代理退席、委員長着席〕  ところが、そういう点については、いまのところ政府としては、昨日の中村先生に対する質問にも明らかに大臣が答弁されているように、輸銀使用というような、いわゆる海外経済協力の一環としてのこういうアジア地域全体についての貿易を伸ばそうとする意欲をお示しにならないということは、どうも私、たいへん残念だと思うわけです。昨年経済協力の問題で議案が出たとき、私もその点はたびたび各大臣質問したのですが、総理大臣、大蔵大臣等においても相当積極的な見解の表明が聞かれたわけですけれども、しかし昨日の答弁を聞いておりますと、輸銀使用については、通産大臣はことしの春の時点よりも一歩下がったような御見解を示されておるように私は聞いたわけですけれども、いわゆる輸銀使用について、中国なりあるいはその他の諸国に対してどうしても通産当局としてはこれを使用するということはむずかしいとお考えになるのかどうか。この際貿易振興の面と海外経済協力の両面からひとつお尋ねをしておきたいと思います。
  95. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのとおり自由圏ばかりでなく、またアメリカばかりでなく、グローバルに貿易を伸ばさなければいかぬ、これは私どもの希望でございまして、そういうことで道を開いていきつつあるわけでございます。御承知のように対ソ貿易もだんだんと拡大されてきましたし、かく申す中共貿易も年々伸びてきたわけです。ただ、輸銀使用という問題になりますると、きのう私が中村さんの御質問に答えたような、経済的とだけは言えないような諸般の事情がございまして、実行という段階に至っていないことはたいへん残念でございますが、しかし共産圏でございましても、ほかの地域はやっておるわけでございまして、そういう特殊な事情、そういう条件が解消してまいらないとできない事情も御賢察賜わりたいと思うわけでございまして、通産省といたしましては、どういうすき間を見てでも貿易を伸ばしてまいるということに対しては、人後に落ちない決意で当たっておるわけです。
  96. 佐野進

    ○佐野(進)委員 時間がだいぶなくなりましたが、その点については、昨日の答弁だけでは、私たいへん心配だと思うので、通産当局は一番熱心なはずなのに、きのうの答弁では何か消極的な面がとられましたが、通産当局としては条件が整うため努力もするし、さらに努力し実現するために一生懸命やるということについて、新大臣として積極的に取り組む、こういうぐあいに理解してよろしいですね。それでは次の質問に進みたいと思います。次に資本自由化の進展の問題について質問をしてみたかったのでございますが、時間がなくなりましたので、これは省略せざるを得なくなったわけであります。  そこで最後に、三つ目の、中小企業関連する発展途上国からの追い上げの問題に関連して質問を申し上げてみたいと思います。  特恵は一九七一年までに——七〇年までにですか、ガットの協定によってこれを供与しなければならない。したがって、その供与の方法等について目下検討をされておるようでありますが、実際上の問題として、いま日本におけるところの繊維をはじめ、いわゆる政府構造改善施策の一環として取り上げつつある企業は、主として、これら発展途上国競合関係にある、そういう企業対象になっておる、こういうぐあいに考えられるわけでございますが、特恵供与の問題に関して、これは時間がございませんから簡単でけっこうですが、いまどの程度進展しているか、御説明を願いたいと思います。
  97. 原田明

    ○原田説明員 特恵供与の問題につきましては、先進国の間で、どういう方式でやろうかという案をまず練っております。ただ、この案がなかなか意見が一致しておりませんので、とりあえず、来年の三月くらまでをめどにしまして、各国がどういう品目を大体考えて、どういう方式でやろうかという考え方を出し合ってみようではないかというところまで進んでおります。したがいまして、私どももその線に沿いまして日本考え方を出さざるを得ないということですが、ただいま先生指摘の、特にわが国発展途上国産業と競合する国内産業、したがって影響を受けやすい産業が非常に多うございます。そういうものを十分考えに入れました上で、日本立場をそこなわないような方式、品目の出し方というものを検討している段階でございます。
  98. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、時間がないのがたいへん残念なんですが、この問題はこの程度で打ち切らざるを得ないわけですが、私はこれらの特恵供与の問題と、労働力の不足の問題、こういうような問題、大臣所信表明の中で指摘された事項等が、中小企業の当面する、特に最も脆弱なまさに破局に瀕しているような企業にとっては重大な問題になりつつあるわけですから、それに対処するため中小企業庁当局がいま取り組もうとする政策については、私は賛成を申し上げておる一人でございます。したがって、これらの問題については、私はそう意見はない——意見がないというか、もっと積極的に取り組んでくれという意味における意見しかないわけであります。そこで大臣に御質問申し上げたいのですが、大臣中小企業問題というものを、日本経済の現況の中でどのように位置づけられておるか。たいへん抽象的な質問で恐縮でございますが、いわゆる中小企業対策というものは社会保障的な、いわゆる破産するとか、あるいは人員不足で経営に苦しんでおるとか、あるいは生活難で苦しんでおるとかという、そういうような人たちを少しでも向上させるという意味における対策として中小企業問題をお考えになっておるのか、あるいは、日本経済全体の中における中小企業というものの占めるいわゆる産業発展、維持に対して果たしつつある役割りを評価し、この役割りをさらに向上させようというような面でこれを評価されておるのかどうか、その点についてひとつ御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  99. 大平正芳

    ○大平国務大臣 経済政策として考えてまいるわけでございます。いま言われたように、わが国産業構造の中で、構造的にも大きなウエートを持っておりまするし、機能的にも半分の生産力を持っておるわけでございます。従業員に至りましたらもっとも多いわけでございますから、その中小企業近代化されて、技術の水準がみがかれて、労働者の福祉が向上して、新しい時代に堂々たる生存権が主張できるようなものにすることこそ私どもの任務である、そう思います。
  100. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、大臣のお考えと今度の一いままでもそうですが、今度の通産当局の中の中小企業予算といいますか、施策というものをここにいろいろ書いてありますけれども、それの取り組みが、いまのお考えと対比いたしますと、たいへん消極的だと思うのです。予算全体の伸びについても、いわゆる一二五%という一つのワクをはめられて、その中で若干伸びたとはいいながら、今日中小企業が置かれておる立場、それに対する対策を行なうにふさわしい予算の伸びでは全然ない金額しか大蔵省に対する予算要求としてすら計上されていない。こういうことはいまのお考えと全く違う実態にあるのじゃないかということがひとつ感ぜられます。  それからもう一つは、中小企業対策というもの、いわゆる中小企業問題というものを、そういう産業対策の一環として、日本経済発展ために不可欠な一つの位置づけといいますか立場にあるもの、こうお考えになるなら、日本における中小企業対策、これを専門にもっと積極的に取り組む、いわゆる予算要求についても、通産省の一企業庁としての中小企業庁という形の中でこれに取り組むということでなくして、やはり専任の大臣を置かれ、堂々とそれらを要求することが、そういうようないわゆる産業政策の中における中小企業というような省、そういうものを置かれることのほうが、過去においてはそれはだめだとかどうだとか議論があったにしても、いまの日本経済全体を見渡したときに、私は非常に必要なことではないか、必要なときになりつつあるのではないか、そういうように感ずるのですが、ひとつ大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  101. 大平正芳

    ○大平国務大臣 おことばを返すようでたいへん恐縮ですけれども予算を多くとれば中小企業対策が進むというようなものではないと思うのです。これは中小企業全体の政策を、実のある効果をねらわなければいかぬわけでございますから、政府予算だけにたよるというわけのものでなくていきたいと思いますが、しかしあなたの御指摘のように、予算も大事だと思います。そればかりじゃないけれども、そう思います。それから、中小企業について特別なお役所をというわけでございますけれども、私は、佐野先生のお考えにかかわらず、あまり賛成しないのです。伴食大臣一人つくってどうなるものではございません。通産省一つの力でも、私は弱いと思うくらいのものでございまするから、むしろ既存の行政機構の全体の機能を十分この政策に吸収するように考えていったほうが効果的があるのじゃないか。一つの符所、城をかまえて、いろいろ、机やいすをかま身てみても、そんなに効果がある政策が生まれようとも思いませんので、せっかく通産省がいま担当いたしておりますから、御鞭撻いただきまして、与えられたる条件の中でベストな成果がおさめられるように、ひとつ御指導、御協力を賜わりたいと思います。
  102. 佐野進

    ○佐野(進)委員 時間が参りましたようでありますから質問を終わりたいと思うのでありますが、私は大臣非常に熱心に丁寧に答弁をしていただいたように思うのです。いろいろ考え方の違いなり、あるいはもっと突き詰めていかなければならぬ点もありますけれども、これはこれから新しい常任委員が再任されますれば一年間やることになりますから、その間十分ひとつお互いにもっと理解を深めるように質問を続けてまいりたいと思います。い、ずれにいたしましても、当面する日本経済は、幾多の重大な課題をかかえながら来年に向かってさらに前進を続けていかなければならぬわけですから、せっかく御健闘なさるとともに、私どもも言うべきところはどんどん申し上げますので、取り上げていただきたいということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  103. 小峯柳多

    小峯委員長 橋口君、保留の分の発言を許します。十分間です。どうぞその時間を守ってください。
  104. 橋口隆

    橋口委員 きのうの大臣所信表明演説に対して、午前中大臣のおいでをお待ちしておりましたが、おいでになりませんので、各政府委員にお聞きいたしました。そこで一番大事な点について大臣の所見をただしたいと思います。  ただいまも残存輸入制限自由化の問題につきましては、佐野委員から詳しく質問がございましたが、私もこれについて若干質問したいと思います。きのうの新聞によりますと、アメリカ側は三十七品目要求している、その中には電子計算機、農産物など日本に非常に重大なもの、なおそれから例外品目を軽飛行機など二品目要求しておるようでございますが、これについては大臣はどういうふうに対処しようとお考えになっておりますか、その御所見を承りたいと思います。
  105. 大平正芳

    ○大平国務大臣 きのうの朝の閣議で御決定いただきましたように、基本方針によりまして、通産物資について成果をあげていかなければならぬわけでございます。そこでいませっかく私どもとしては、原局が個々の関係企業業界との間でいろいろ事情を聴取いたしておる段階でございまして、これが一応そろったところで通産省としての判断を持たなければいかぬわけでございます。そのタイミングはおそらく臨時国会を終えさしていただいて下旬になるのじゃないかと思います。そこでいろいろな角度から評価を加えて、私どもの判断を持ってそれで対米交渉に臨もう、そういう手順でございまして、いまのところ個々のものについておまえはどうだという意見を聞かれても、実は私はそういう過程をまだ持っておりませんので、たいへん恐縮でございますけれどもお許しをいただきたい、しばらく時間をかしていただきたいと思います。
  106. 橋口隆

    橋口委員 アメリカ側はこういう非常にきびしい要求日本に対してしているのでございます。きのうも国務省の意見発表によりますと、逆に日本側の要求は一方的であると向こうが言う。そして鉄鋼や繊維など自主規制の名目で事実上対米輸出を制限しているような問題、あるいはASP制度の廃止などを交換条件として米側に要求するということには、これは交換条件にはならないから応じない、こういうことを言っております。わが国としては非常に重大な問題だと思うのでございますが、これに対してはどういうふうに対処しようとしておられますか。
  107. 大平正芳

    ○大平国務大臣 従来からアメリカアメリカとしての御意見があり、私どもも聞いております。ただ問題は、輸入規制、自主規制というものも、きのう私がここで御答弁申し上げましたように、実態をよく見まして、それが日本の利益になり、双方の利益になるという穏やかなものか、それとも相当の強制力が加わったものか、そのあたりをよく実態を見きわめまして、主張すべきことは先方の御意見にかかわらずどんどん主張していかなければならぬと思っております。
  108. 橋口隆

    橋口委員 いまの大臣の御意見のように、これはぜひ強力に推進をしていただきたいと思います。  そこでこの輸入自由化をした場合に大体どれくらいの輸入量がふえるか、これはどういうふうに想定をされておりますか。
  109. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢(鉄)政府委員 具体的に貿易自由化をどの程度やるかということは、いま大臣のお話にありましたように、個々のものについてこれからきめることでございまして、したがって何を対象にするということがきまってまいりませんと、どのくらいふえそうかということはわからないと思います。
  110. 橋口隆

    橋口委員 国際収支にどれくらい影響があるかまだ見通しはつかないということでございますが、これにつきまして、きのうの閣議のあとで福田蔵相は、今後は金外貨準備を年間貿易量の三分の一程度の水準にまで高めたい、そして当面三十億ドルくらいといわれておった外貨準備はさらに四十億ドルの水準にまで引き上げたい、こういうような意見を述べておられますけれども、いまのような自由化の問題に関連してこの目標は妥当だと通産大臣はお考えになりますか。
  111. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私どもは帳じりの結果よりも輸出をどうして伸ばすかということで一生懸命でございまして、外貨準備をこれだけにするためにこうするというよりは、むしろ険しい国々との貿易関係を打開いたしまして、せい一ぱい輸出を伸ばしまして得た外貨は大蔵省、日銀がどのように有効に管理されるか、それはその人たちにおまかせしたい、かように思います。
  112. 橋口隆

    橋口委員 この際輸出の振興は非常に大事だと思われますが、わが国貿易の盲点と思われるような感じがしますのは、先ほどからお話のありましたアジア貿易とEECに対する貿易ではないかと思います。EECは現在世界最大の貿易圏になりながら、わが国輸出量は非常に少ない。向こうにおける比重もわが国から出す比重も非常に少ないと思うのでございます。このヨーロッパについては、国際通貨不安の震源地でもあり、またわが国に対して特に不利な条件を課しているようでございますが、ヨーロッパ特にEECに対する貿易対策というのはどういうふうにお考えになっておりますか。
  113. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのようにいま通貨不安が特にフラン、ポンド等で云々された将来が案じられているわけでございますが、ヨーロッパはいままでわが国に対して比較的なじみが少ない地域でございまして、アメリカに比べまして非常に輸出が少なかった。文化的には、十分の関係を持ちながら、経済的な面は意外に希薄であったということは非常に残念であると思いますので、橋口さんが御指摘のように、いまからのポテンシャルなマーケットとして大いに打開につとめていきたい、そう思います。
  114. 橋口隆

    橋口委員 最後にアジア貿易の問題をお聞きしたいと思います。先ほど佐野委員から詳しく御質問がございましたので省略いたしますが、特にアジア貿易開発事業団構想については、これをぜひ強力にお進めいただきたいと思います。それとあわせて海外経済協力の問題でございますが、これは世界的にもアジアが中心になると思われます。ところが、わが国経済協力というのはあまり実効的でない。たとえば去年のインドネシアに対する経済援助を見ても、商品援助などが含まれておって、ほんとうの開発援助があまり重視されていない。また総合的に各省の機能が統合されていないようにも思うのでございます。そういう意味通産省としては、ぜひこれを統一的に推進をしていただきたいと思いますが、大臣のお考えいかがでございましょうか。
  115. 大平正芳

    ○大平国務大臣 アジア貿易開発事業団構想につきましては、その実現に努力いたしたいと思います。皆さま方におかれましても御声援をお願いいたしたいと思います。  それから海外経済協力、技術協力の問題でございますけれども、これは南北問題として、国連の貿易開発会議等で取り上げられてまだ間もないのでございまして、ちょうど入り口に入ったくらいのところだと思うのです。これから容易ならぬ問題になると思います。したがって、いまあなたは制度の面から言われましたけれども制度の而も、それから財政面もちゃんとしたかまえをもって推進しないといけないのではないか。御指摘のように、これが日本経済の中で占める地位というものを、ちゃんとすわるいすをまずつくらなければいかぬのじゃないか。私もそういう方向で一閣僚として努力したいと思います。
  116. 橋口隆

    橋口委員 これで終わります。
  117. 小峯柳多

  118. 永井勝次郎

    ○永井委員 大臣にお尋ねをいたします。  ことしは、景気は非常に好調であります。来年もさらに続くであろう、息の長い景気が続くであろう、こういわれております。こういう大型景気の好調のかじとりとして、私は通産大臣としては、大平さんはまさに適格者である、こういうふうに思うのであります。それは一つは、今日の高度成長に火をつけたのは池田内閣、その池田内閣の中の大きな柱として私は大平さんはそのプランなりあるいは実施なりこういう面を担当されてきたと思うのです。そういう一応の緒戦における高度成長経済を手がけて、その功罪を静かに反省する時間を持ったと思うのであります。池田内閣では官房長官あるいは外務大臣、そうしてあと内閣を去って、政党の中から自分のやった足あとやその後の経過を静かに見る機会を持ったと思うのであります。その後、党の政調会長をやって、そういう党の立場から政府の高度成長を、参画し、批判し、助言してきた。こういう立場からいえば、今日国内だけの経済ではなくて、国際的な激動期の影響の中で、国内の好調な景気をどういうふうにかじをとっていくかということに対しては、体験的にも、あるいは大平さんが携わった行政の分野と領域から見ましても、広い視野からもあるいは現実的な面からも、まさに私はこれから勉強してというのではなくて、いままで野にあって、いいか悪いか、いままでやったことに対する反省の中で、今度やれば今度はこうやるぞという気合いのこもった登場ではないか、こう思うのです。そこで、大平さんは池田さんのあと継ぎ、こういわれておるのであります。そういう立場から率直に、池田内閣時代における高度成長経済政策に対する何が功であり、何が罪であったか、こういうシビアーな批判と反省をひとつこの際お聞かせいただきたいと思います。
  119. 大平正芳

    ○大平国務大臣 たいへん激励やら御注文やら伺って実は恐縮なんですけれども、私は池田総理には、おまえは経済はわからぬといってしょっちゅうおしかりを受けた落第生のほうですから十分資格がないかもしれませんけれども、ただ私は、先ほど佐野さんの御質問にも答えたとおり、日本の国民の持っておる大きな意味における活力というものが成長をもたらした根因であって、池田内閣並びに佐藤内閣——池田内閣の御質問でごさいましたが、池田内閣はこれをもっと秩序ある、あまりひずみを生じないバランスのとれたものにしたいという、主観的であったと思うのですが、その願いをもちまして所得倍増計画という一つの絵を描いて、国民経済をそういう方向に誘導しようというて試みたのでございますけれども、御案内のように所得倍増計画は昭和四十五年が最終目標であったわけでございますけれども、四十五年を待たずして当初もくろんだ目標なんかとうに突破してしまったのでございます。言いかえれば、一つの成長の活力があるということを見通したことは功であったと思いますけれども、しかし活力の力を評価できなくて、あとばかりを追っていったという点は不明を恥じなければいかぬと率直に思っておりますが、ただ、今日の時点に立って私自身の感想といえば、当初八年前の倍増計画を政府がきめたときよりは、われわれも乏しいながら彫りの深い理解を持ってきたと思うのでございます。その功罪ともにもう一度かみしめまして、もう少し賢明なハンドルを握らなければいけないのではないか、そういうことがいま私の胸中を去来しておる考えでございます。
  120. 永井勝次郎

    ○永井委員 私は池田内閣が、民族の活力、エネルギーがどこに潜在しているか、そういうものを引き出して、そうして爆発させていったということに対しては一つの烱眼であったと思う。しかし経済の高度成長にこだわるあまり、そこから出てくる一つのひずみなり階層分化なりあるいはいろいろな格差というものにあまり気を配らないで、弱い者は踏みつけて強い者はどんどん伸びるのだ、こういう一つのやり方をやったことが今日いろいろなひずみになってまだ残っている。ですから繁栄の中の窮乏、あるいは繁栄の中の自殺というようなものが各地に起こってきたわけであります。そういう反省に立ちますならば、私は今日、三十年代の池田さんの手がけた高度成長政策の時代よりはもっと大型に、もっとやりようによってはそういうひずみを補正しながら安定的な成長へ持っていく、そういう愛情のある、あるいは知恵のある、経験から出てきた行き届いた具体的な政策というものがここに生まれてこなければいけない。それが私は今日の大型景気にかじとりとして臨む大平さんの、一面では初めてじゃないぞ、おれには経験があるぞという自信と、一つには二度と同じことは繰り返さないぞという敬虔な反省、こういうものがあると私は思うのであります。そういう一つの過去の経験に照らして、今日の大型景気あるいは展望される来年の大型景気の発展、こういうものに対してどういう心組みで、どういう一つ方針で対処されようとしておるのか、この大型景気の分析をどういうふうに把握されておるのか、それをひとつもう少し具体的に、大まかでよろしいから、踏み込んだ意見を聞かしていただきたい。
  121. 大平正芳

    ○大平国務大臣 初めにお断わり申し上げておくのでございますけれども、ひずみがない成長なんて私はないと思うのです。静態経済ではないので、まさに成長経済でございますから、経済は変動があるから成長するわけでございます。ひずみという字は「不正」と書いてあります。ああいうことばが普通使われておりますけれども、そういう摩擦が起こるとかいうことであって、ひずみということばはぼくは非常にいやなことばだと思うのです。成長には必ずそういう摩擦が伴うもので、摩擦が起こらない成長なんてないと思うのでございます。したがいまして、いま永井さんが御指摘のように、ことしも成長、来年も相当の強い成長が見られるであろうという見当につきましては私も同感でございます。そうだとすれば、来年もまたそれ相当の摩擦が経済に起こるだろう、それは覚悟しなければいかぬと思うのでございます。それをまず最初にお断わりを申し上げておきたいと思います。  で、来年の景気をどう判断するかということでございますが、これは、正直に告白いたしまして、毎年政府予算編成前に、明年度経済の見通しというのを立てます。それから運営の基本的態度というのを立てて、それから予算の編成方針をつくるわけでございますけれども、これが合ったためしがないのです。もう年度途中で必ずこれを直さなければいかぬ事態が起きておるのでございます。したがって、的確な見通しなどというのは景気についてできるはずがないということも第二にお断わりしなければいかぬと思います。人間のやることでございますから。それで、このままの調子でまいりますと、昔のように景気の循環がなだらかな波を持ちながら、山あり谷ありという姿をとりません最近の景気の型として、賃金を景気が悪いからカットするとか、労働組合も低い賃金でがまんするとかいうような時勢じゃございませんから、個人の消費、国民全体の消費は依然として非常に強いだろうというごとは想像にかたくないところだと思います。  それから設備投資も、最近役所側でも日銀側でも来年の国際経済の環境は相当きびしいぞという警告をいたしておるにかかわりませず、非常に強気でございまして、設備投資意欲は相当強い状況でございますし、巷間伝えられているように、企画庁がいまいろいろ作案いたしておるようでございますけれども、設備投資は九兆をこえるのじゃないかというようなこともいわれております。そうすると、そういう需要もふえてくる。その次は財政でございますが、これは福田さんがいま苦心して構想しておるところだと思いますけれども、すでにもう食管を全然度外視いたしましても七千億をこえる当然増が黙っておってもついてくるというわけでございます。そういう状況でございますから、財政需要も政府の需要も減る見通しはないわけでございます。そうすると、今度は問題はわれわれの担当しておる輸出でございますが、輸出のほうは、アメリカの景気がスローダウンするであろう。財政もカットしたし、増税もしたし、ベトナムも終結するのだから、アメリカの景気はスローダウンするだろうと前々からいわれておるのでございますけれども、その予想に反しまして、依然としてアメリカの景気は強い。ことしの輸出を見ましても、対米輸出は非常に伸びてきた。だから、来年一体どうなるかというこの輸出の見通しは、いま原田君から、まだ自信を持って答えられる段階じゃないというお答えでございましたけれども、的確な見通しはまだ立たないのでございますが、全体として総需要がことしよりも相当大幅にふえることだけは間違いないようでございますから、永井さんが、そういう各要素を踏まえて相当の大型景気じゃないかと言われる断定は、私はそのとおりだ、こう思うわけでございます。  しからば、そういう状態を想定して一体政府としてどうするのだということでございますけれども、この一つ一つをとってみまして、正直に申しまして、政府がこれを冷やしたりあっためたり、伸ばしたり縮めたりすることはなかなかできないのでございます、自由経済、自由企業体制を基調にしてやっておるわれわれの体制でございますから。それで、民間の力がこんなに強くなり、ある意味において手に負えないくらいの強さを持ってきておるのでございますから、政府のやり方と限界というのは、私はあると思うのでございます。  そこでまず第一は、あまり調子に乗って、もう前に進め進めで、馬のけつにむちを当てていくという、そんな姿勢政府はとったらいかぬと私は思う。そうでなくても、日本の国民というのは活力が奔放に横溢しているのですから、政府としては、いま大蔵大臣その他がいわれておるように警戒中立型というような感じ方でムード的には指導していくのが賢明な態度じゃないか、こう思います。  しかし、そういうような活力が展開されて、私どもの部面では設備投資も行なわれておるという段階でございますから、せっかく設備投資が行なわれておる以上は、それが将来日本産業の国際的な地歩を確立するのに役立つように、自主的な技術がほんとうに定着するように、大事な産業の体質が改善されるようなぐあいに投資調整その他を通じまして懸命に指導してまいらなければならぬと思いますし、輸出につきましては、ともかくちょっとしたすき間を見てでも輸出をはかっていくという最大の努力をしなければならぬと思います。  ただしかし、輸出輸出ばかり言うて、輸入のことも考えなければ、なかなか世の中は承知しませんので、われわれは輸出輸入のバランスのとれた拡大というような点を用心深くもくろみながら賢明な指導をしていけば、大きな誤りなく、まあ来年の山が越せるのではないかという感じがいたしますが、しかし経済というのは、先を見通すということはなかなかむずかしいのでございまして、薄氷を踏む思いでございます。
  122. 永井勝次郎

    ○永井委員 大型景気が長く続くであろうということには、いま大臣の言われたように根拠があると思うのであります。自由主義圏の中でGNPは第二位、それから政府経済社会発展計画では、四十六年度に八兆九億円ぐらいの投資計画であったものが、もう二年目で民間設備投資が九兆円に達するというような数字を示して、ずいぶん早目に早目に来ておるというような点は、確かに根拠のある腹にこたえる一つ発展だと思いますが、お話のように、そういうふうに進め進めだけでは、非常にこれは一つのリスクが大きすぎはしないか。だから、政府は警戒型中立予算を組むと言っておりますけれどもことばだけの、ムードだけの問題で、ほんとうに具体的にどういうふうに警戒型を具体化していくかということになると、私はいろいろ意見の分かれるところだと思うのであります。国際収支にいたしましても、外貨準備高が多くなったとか、そういうことだけではなしに、本年度輸出成約高が、大商社関係の成約高は下期は少し減ってきておるのではないか、それからその反面に内需が上向いてきておるのではないか、こういうふうにそれが輸出に対する圧力を弱めているのではないかということが言えると思いますし、また長期外貨の流入がいま鈍ってきている。株式投資をしたのが今度は売りに回っておるというような情勢が見られるというふうに、一面繁栄のように見える中に、逆流してくる次の場面に対する警戒警報もあるのではないか、こう思われるわけです。それらの、国内における非常な好調、それから貿易収支に見られるや警戒警報的な徴候、そういうものを大臣はどのように評価され、そうしてまた一つの大きな転換期における日本経済というものを、そう動揺なしに安定的に、もし一つの危機が来るとすればその危機に備えてどのように乗り切るかというかまえも私は必要であろうと思うのですが、それらの状況判断と、それからそれに対処する政策というものを、いま具体的にある程度表明できますならば表明していただきたい、こう思います。
  123. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日本銀行が、まだ引き締め政策と称して、公定歩合いを二厘上げて一厘下げたままになっております。本来ならば、国際収支がこのように回復いたしたわけでございますから、国際収支理由だけから申しますと、もう引き締めは解除していい時期でございますけれども、いま永井さんが御指摘のように、こういう状態でなお消費は強いし、設備投資意欲も強い状況でございますので、なお解除しないまま続けておるというゆえんのものも、政府が用心深くやっておる証左の一つだと思うのです。それから、そうでなくとも、民間側におきまして将来を案じて、いまから将来に備えた用意、姿勢をしておる、これはもう賢明な日本人でございますから、必ずや各領域におきましてそういった方々がおられ、そういった目に見えぬ努力日本経済を用心深くささえておる一つの大きな柱だと私は思います。したがいまして、政府としては、いま言った警戒ぎみの基調を終始変えないで続けてまいるということが第一に必要だと思います。  それから国際的に申しますと、ほんとうに通貨不安というのはことしいろいろありましたけれども、各国の協力によって、どうにか貿易の縮小というようなことを伴わずに今日まで経過してきたわけでございますけれども、伝えられるところによると、ポンドをめぐる情勢が非常に楽観を許さない状況になってきておるようでございます。なるほどポンドは昔のような力、昔のような栄光は持っていませんけれども、これに対する先行き不安というのは国際貿易を見通す場合において無視できない要素だろうと思うのでございます。したがって、海外経済的には、国内の景気に酔うて目がくらんじゃいかぬと思うのでございまして、非常に用心にも用心を重ねた対処のしかたを常に考えておかなければいけないのじゃないかと思います。幸いに、去年の暮れはいわゆる国際的な劣等生でございましたけれども、ことしはずいぶん名誉を回復したわけでございます。こいねがわくは来年もこういう名声を何とか維持していきたいものだと考えておるわけでございまして、仰せのように緩急のハンドルは非常に用心深く握り通していかなければならぬ、そう思います。
  124. 永井勝次郎

    ○永井委員 景気をささえている三つの柱、個人消費の支出、政府の財貨サービスの購入、民間の住宅建設などは、これは大体安定的に拡大されておる。この増加寄与率が大体六四%というようなところにあると思うのであります。しかし私は、大臣でお話しのように、高度成長の陰には必ず犠牲が伴うのだ、そういう立場から言えば、このタイムラグの問題もありましょうし、それからその中で整理統合されるものも、倒産していくものも、転換しなければならぬものも、斜陽なものと成長部門といろいろな問題が出てくる、それは経済の領域における問題と社会問題としての提起といろいろあると思うのでありますが、高度成長の陰には必ずそういう熱が出るのだ、そういうタイムラグができるのだ、あるいはひずみができるのだということになれば、私は一つの国の政策としては、そういう面に対する社会政策的な手が伸びなければならない、それがこの人間開発という一つの問題提起でないかと思うのでありますが、通産大臣は池田さんのあと継ぎだといっても、中小企業の十人や二十人死んでもしかたがないのだというようなあと継ぎはまさかしないだろう、こう思うのですが、そういう面における一つの国務大臣としてのかまえ、そういう考え方が、先ほど来ずっと佐野君なんかもいろいろ話しているように、中小企業の問題とか、農村の問題とか、いろいろ私は出てきておると思うのですが、これらに対するお考え、日の当たらない部面に対する配慮というものはどういうふうにお考えになるのか、お尋ねをしたいと思います。
  125. 大平正芳

    ○大平国務大臣 成長経済はだてや酔狂で運営されておるのではなくて、これは当然のこととして労使はじめ消費者を潤すものでなければならぬわけでございますが、さらに、それが生み出した経済力財政化されまして、社会保障の本源的な原資になるわけでございます。社会保障の充実すること、多きことを望めば望むほど私どもはみずからの国の経済力というものを培養していかなければならぬと思うのでございまして、私ども産業政策も、産業政策プロパーの目的のためにのみやっておるわけではなくて、そういうあなたの言われた高次元の福祉追求のための手段として大きな責任、使命を持っておるという意識を絶えずわれわれは念頭に置いて産業政策の立案と運営に当たってまいりましたし、今後も変わらずそういう信念でやってまいるつもりです。
  126. 永井勝次郎

    ○永井委員 これらの問題については、時間がありませんからまた次の機会に譲りまして、日本経済をささえていく一つの大きなファクターはやはり対米貿易です。対米貿易における共和党政権の転換、ジョンソンからニクソンへの転換、こういうようなことにおける考え方というものは、やはりいろいろな角度から追及してこれを把握し、そうしてそれに対処する方向を、こう出ればああ、ああ出ればこうということは、私はしておかなければならないと思うのであります。先般も推名大臣に話したのですが、そんな飛び上がったことをまだする必要はないというようなお話でもあり、抽象的なことより聞けなかったわけであります。今日の段階では、もう来年度予算編成も入っていかなければなりませんでしょうし、あるいはガットの残存輸入制限に対する措置年度内にはきめなければならないという問題もありましょう。UNCTADの問題も問題になってまいっております。そういうような中で、私はもう少し、何もそんなに遠慮して言うべきことも言わないというのでなくて、国内で問題を提起して論議するという段階はあってよろしいのではないか、こう思うわけであります。  そこで、私は、民主党から共和党への転換によって伝えられる問題をまとめまして、これについてはどういうふうにお考えかということを一つ一つ伺いたいと思うのであります。  一つは、民主党の政策の中では高度成長の方向でずっとやってきた。そうして失業者をなくすというところに重点を置いた。これに対して今度の共和党は、いままでのところは、物価対策重点を置いた安定成長の方向へいくのではないかということが一般の論議でありますが、これらの成長政策に対する民主党から共和党へのこの転換というようなことについては、どのように評価し、どのように受け取っておられますか。まずこれらの問題について伺いたい。
  127. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私もよくつまびらかにいたしませんけれども、永井先生おっしゃったように、民主党と共和党の間にニュアンスの相違が政策上あると思います。仰せのように、共和党は非常にオーソドックスな経済政策、財政政策の党といわれておりまするし、民主党はその名のように、もっとデモクラティックな党だといわれておりまして、その支持層から申しましても、労働組合や黒人、そういったものが民主党を支持して、ウォール街をはじめとして経営者層が共和党を支持しているという、支持層から見ましても仰せのような大きな差はあるといわれております。しかしながら、先ほどの佐野さんの御質問にも申し上げたのでございますけれども、共和党の政権ができたから、それじゃ全部の政策がそういう方向でやられるかというと、私は必ずしもそうは思わない。ニクソン政権そのものはコングレスにおいてはきわめて弱体でありまするし、なるほど知事は共和党のほうが若干多いようでございますけれども、上下両院におきましては民主党のほうが多いわけでございますから、議会運営上において相当の妥協をはからざるを得ないのではないかと思いますので、必ずしもそういう鮮明な政策の転換ということはまずあり得ないのじゃないか、大きく変化はないものと見て間違いないのじゃないかということは第一に考えられます。しかしながら、もういよいよ閣僚もきまったわけでございまするから、日本政府といたしましては十分この人たちとの話し合いを持つ場を、いま在米大使館もいろいろ考えられておると思いますけれども、早急に接触の場を持ちながら、わがほうの立場考え方というものは前もって十分耳に入れておく必要があると思います。
  128. 永井勝次郎

    ○永井委員 大臣のお話のように、私も、民主党八年間の政権の中に築き上げてきた経済政策というものは、一朝にして手の裏をひっくり返したようなことのできるものでないことはもちろん理解をいたしております。しかしながら、いわゆるその政策を批判して、そうしてその党本来の政策を実現しようという方向では、そういう姿勢をだんだんとらざるを得なくなってくるのではないかというふうに私は考えますので、対立点をドライにはっきりさせてお尋ねをしておくわけであります。  そこで第二は、財政金融政策でありますが、民主党は従来拡大的に運営をしてまいりました。それに対して共和党は、ニクソンは、インフレ政策だ、インフレだ、こういうので批判をし、今度は私は抑制的に運営をする方向をとるのではないか、こういうふうに思うのでありますが、その点はいかがですか。
  129. 大平正芳

    ○大平国務大臣 伝統的な財政政策からいうと、あなたのおっしゃるとおりだと思うのでございます。しかしながら、民主党政権の末期からもうすでに、末期というか民主党政権を通じまして国際収支はずっと赤字を記録してきたわけでございますから、ドル防衛の必要上、増税を迫られ、財政の縮減を迫られて、それを実行に移しておるアメリカでございますから、民主党政権時代すでにそういう萌芽は見えておるわけでございますから、より一そうそういう方向へ進むとまず見ておかなければいけないのじゃないかと思います。
  130. 永井勝次郎

    ○永井委員 次には基本政策でありますが、基本政策については、民主党のほうは完全雇用、国民生活の向上、社会開発、こういうところを重視いたしまして、場合によっては経済の運営の中に政府が介入してくる、あるいは鉄鋼なり何なりの値上げという問題については力で押えるというようなこともあえてしたというような、政治が経済に介入するというようなこともあり得たわけであります。これに対して共和党のほうは、企業利潤こそが経済社会発展の原動力であるという基本的な立場に立って、経済界の自由な活動を刺激していく、したがって減税をやって活動を刺激する、経済の中には政治は介入しない、こういう方向をとってくる、こういうふうに思われるわけであります。そういうふうなことが期待されるなら、今度は繊維関係とかなんとか、向こうと個々の商品目についていろいろな問題が新しく出てくるのではないかということも予想されるのでありますが、これらについではいかがですか。
  131. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それは、伝統的な理解からするとごもっともであると思うのでございますけれども、現実に私はそんなに大きな政策の転換があり得るかどうかという点には若干疑問を持っております。何となれば、民主党政権の長い実績をかかえておりまするし、いまの合衆国の政策全体の構造から申しまして、必ずしもオーソドックスなドクトリンで組み立てられておるものでもございませんで、仰せのように、社会政策的なウェートが非常に強くなっておりますから、それを払拭するなんということは容易なことではないと思うのでございます。ただ、ニュアンスとしてややそういう方面に傾斜しがちな方向で努力は続けられるであろう、それに対して十分警戒するところがなければならぬ、そういうことだけを申し上げたいと思います。
  132. 永井勝次郎

    ○永井委員 次は対外政策でありますが、民主党は国際協調を重視してきた。これに対して共和党のほうは米国の立場を強調している。自分のところに有利なものについては貿易自由化資本自由化を強める、それから不利な部門については保護政策でやっていくというようなことになってくるのではないか。そういたしますと、この月末に控えておりますガットの関税残存制限の問題についても、品目の選定は、もちろん対米だけではなくて、ヨーロッパもにらんでいろいろおやりになることでありましょうけれども、相当考えていかなければならないのではないか、こういう問題に含めて、関税制限、残存制限の扱いについて、ことに農産物その他いろいろありますから、伺っておきたいと思います。
  133. 大平正芳

    ○大平国務大臣 きのう中村さんの御質問にも申し上げたのでありますが、今度の日米交渉は民主党政権のほうから打ち出された要請でやるわけです。これは私の理解は、つまりニクソン政権が間もなく発足するであろう、その場合におきまして、あるいは保護主義的なことが起こらないとも限らない。したがっていまのアメリカ政府といたしましては、その前にいままで懸案になっておりましたいろいろな問題をできるだけ片づけておきまして、国会方面の気流が険悪にならぬような国会対策上の配慮もあるように私には考えられるのでありまして、ニクソン政権になってまず第一発に打ち出したものではない、そのように理解しておるのでございます。中村さんにもお返事申し上げておいたように、私どもは、この機会に精一ぱいなことをやりまして、将来日米関係で非常にけわしい場面が出ないように、これは双方にとって、とりわけ日本にとって不利ですから、そういうことにならぬように筋道の通った解決をしておかぬといかぬのじゃないか、そうして国民の協力を求めなければいかぬのじゃないか、そういう気持ちでございます。
  134. 永井勝次郎

    ○永井委員 次は金とドルの問題ですが、民主党は金の廃貨の方向で対処しようとしておる、そういう姿勢を出しておる。共和党のほうは変動レート制の採用に関心を持っておる、こう伝えられておるのですが、通貨不安定の現状においては相当影響するところ多いと思うのですが、これについてどういう感触を持っておりますか。
  135. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私もそのほうの知識は十分ないのでございますが、すでに金準備はやめたわけでございます。その法律の改正、準備制度の改正をやったわけでございますから、純然たる管理通貨になったわけでございますから、問題は、ドルという管理通貨をどのようにその価値を維持して貿易通貨としての機能をそこなわずにいくかということが新政権の課題になってきたのじゃないか。その場合の通貨政策につきましては、仰せのように相当きびしい態度でおやりになるのじゃないかと思いますし、またそのほうが世界の通貨安定には一面寄与するところがあるのじゃないかというような感じがいたします。しかしながら、もっともそういう専門的なことは私も詳しい素養を持っておりませんので、そんな感じがするということだけをお答え申し上げておきます。
  136. 永井勝次郎

    ○永井委員 アメリカのアジア政策は軍事面にも経済面にも私はそんなに甘くない、ニクソンは相当手きびしい線を出してくるのではないか、こう警戒されるわけであります。最近アメリカ資本のアジアへの進出というものが目ざましいものがある。ことに韓国に対しては、アメリカのフォードの組み立て工場ができた、あるいはイタリアのワイアット工場をいま建設中である、あるいは電子産業のコントロールデータ、モトローラ、IBM、こういうものの進出も予定されておる。あるいは台湾に対しましては、アメリカにおける自動車のビッグ・スリーが進出をねらっておる。そうしてそこを通じてアジアへの進出もねらっておる。そのほかマックスファクターなどの化粧品とかなんとかいう……。台湾には日本化粧品も五〇%のシェアを持っているのですが、マックスファクターがあそこに進出してくるというように、アジアへの資本の進出、企業の進出というものは相当きびしいものがあると思うのですが、それらにおける情報をどういうふうにつかんでおられるか、これらに対してはどういうふうに対処されようとしておられるか、それらについて伺っておきたいと思います。
  137. 原田明

    ○原田説明員 最近、アジア地域の発展途上国におきまして、どの国も非常に外資を必要とする状態が出ているようでございます。特にやや発展途上に乗ったような国、ただいま先生が御指摘になりましたような国では、かなり急速な工業化計画なり、経済発展計画を実施したがっています。そのため民間資本に依存する度合いがかなり強くなっております。その結果、日本に対しましても同じような民間資本の導入の要請がございますけれども、どちらかといいますと、先生指摘のような、非常に資本力の大きい会社、産業といったようなものがこういう国々に進出する環境といいますか度合いが高まってまいっておるような情勢にございます。この点は幾つかの影響を持ってまいりますので、私どもとしましては、まず第一に、その国にとりまして、そういう企業が進出するということが、経済発展上バランスをこわさないでうまくいくかどうか、また特にその国に対します日本からの輸出及び企業進出に悪影響を及ぼさないかというような、非常に多くの観点から検討いたしまして、一方でわが国中小企業、競合企業などに影響を及ぼさないかということを考えながら、他方、特に近隣諸圏の市場、あるいは企業に対する進出の機会というものを失わないように、おくれないように出かけていくという、両方の立場から対処をしたいと考えておる次第でございます。
  138. 永井勝次郎

    ○永井委員 農林省の方にずっとお待ち願っているのですが、少し時間がなくなったのでまとめていろいろお伺いしたい。  今度の月末にきまると予定されておる関税残存制限の問題については、農産物が一番問題になるだろうと思うのです。いまでも小麦は八割、大豆は九割、あるいはでん粉は六割、もう国内はほとんど輸入農産物で席巻されている。さらに木材などに至っては、ソ連材、アメリカ材、そういうものを入れたら、もうほとんど押しまくられている。そこへもってきて、国内で高くつくものはやめて、外国から輸入したらいいのだ、こういう政策でこういう問題を扱うとするならば、私はたいへんなことになると思うのですが、まず雑豆あるいは肉、ジュースその他果汁の関係がありますが、それらの問題をどういうふうに扱われようとするのか。順序としてまずこちらのほうは、どことどこと相談して、それが持ち上がっていって、最後はどこでするのか、こういうこれからの運びの手順、方法、スケジュール、そういうものをひとつ明確にしていただきたいと思います。
  139. 小沼勇

    ○小沼説明員 蚕糸園芸局の参事官でございます。今度の残存輸入制限品目につきましては、畑作物が非常に多いわけでございますが、先生承知の雑豆等もその中に入っております。雑豆につきましては、北海道におきます畑作農業として非常に重要な位置を占めておりますし、それに従事しておる農家も非常に多いことでございますので、自由化農家に与える影響も大きいであろうというふうに思われます。そういう状況でございますので、これにつきましては慎重に検討してまいりたい、こう考えております。昨日閣議基本方針が決定されましたので、その線に従いまして早急に検討を進めてまいりたい、かように考えておる次第であります。現在の段階では、私どもは、それぞれの品目につきまして、私のほうの局の中で検討をし、農林省内で意見をいろいろ交換しつつあるという段階であります。今後農林省として意見をまとめて、関係各省と折衝に入るというふうに思っております。
  140. 永井勝次郎

    ○永井委員 きょうは時間がありませんから、その問題についてはあらためてまた伺います。  ソ連との貿易あるいは中華人民共和国との貿易というのは、やはり相当に努力して拡大していく前向きの姿勢が必要である。いまMT協定にいたしましても漁業協定にいたしましても、この十二月で切れるわけです。これを延長するかしないかということは、これは非常に大きな今後の問題であろうと思うのです。これについては向こうの牛肉の輸入の問題であるとか、あるいは来年度予定されておる北京、上海の展覧会に対する出品の問題、ココムの制限で相当きびしいやり方、こういうものが全部一連の関連性において延長するかしないかの評価にかかると思うのであります。何も向こうさんのごきげんばかりとる必要はない、こっちは売るので、何であればかってにしろ、これならばこれは取引ではないのでありまして、そういう点においてもう少しそれらの問題を現時点に立って局面をどう有効に展開していくかという政治的判断で対処すべきだと思うのですが、これらについてどのようにお考えか。それからもう一つ肥料のごときは、二法は来年期限切れになるわけです。これは来議会に延長の法案を出すか出さぬか。それから、中共等に対する肥料の今後の商況や展望等、その二つについてお尋ねをいたしまして終わります。
  141. 後藤正記

    ○後藤政府委員 肥料価格安定等臨時措置法いわゆる肥料新法は、法律の規定によりまして明年七月末までに廃止することになっております。これは御承知のとおりでありますが、その後の取り扱につきましては、肥料に関します客観情勢の推移とか関係業界の意見等を参酌いたしまして、目下通産農林両省で研究中でございます。  それから次の点でありますが、中国向けの輸出の見通し、それから現況の問題でございますが、四十二年度の中国向けの化学肥料の輸出契約は、硫安換算にいたしまして二百三十八万四千トン、今年度は二百七十九万トンでありまして、塩安の一部を除きまして、本年十二月末までに全量輸出される見込みでございます。明年度につきましては、まだ契約を見ておりませんが、現在趨勢といたしまして他のアジア地域向け輸出が非常に減少をいたしております関係から、肥料の生産業界といたしましては、対中国向け輸出の増大を強く希望いたしておりまして、すでに業界といたしましては日中覚書貿易事務所、いわゆる高碕事務所と俗名いたされておりますが、これに対しまして明年度はぜひとも三百五十万トン程度輸出がしたいということを希望しているように見ております。
  142. 大平正芳

    ○大平国務大臣 覚書貿易につきましては、国交のない状態における中において秩序ある貿易拡大していく上において私ども十分それを評価しているわけでございまして、こいねがわくはこれが延長になりまして、日中貿易拡大してまいりますことを期待しておるわけでございます。  それから、いま御指摘の食肉の問題でございますが、本件は、私ども立場から申しますと、貿易政策上輸入が望ましいと思っております。ただ、農林御当局では、家畜衛生の立場からいろいろ十分の責任をお持ちにならなければならないお立場がございますので、いま私どものほうと農林省との間でせっかく協議をいたしておる段階でございます。
  143. 小峯柳多

    小峯委員長 玉置一徳君。
  144. 玉置一徳

    ○玉置委員 時間がございませんので、的確に明瞭にお答えいただきたいと思います。  まず、繊維局長にお尋ねを申し上げたいのですが、特定繊維構造改善事業の実施状況についてでございますが、まず当初計画で二百五十万錘の廃棄を考えておりましたのが百万錘になり、しかも、それが一括廃棄は六十万錘、あとは任意の廃棄が四十万錘、こうなった次第でありますが、一月の末日で期限切れがまいります。この見通しと政府のこれに対処する態度をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  145. 高橋淑郎

    ○高橋説明員 ただいまお話しのように、いわゆるプロラタ分につきましては、すでに全対象事業者から事業協会への売り渡し申し込みを完了して、その限りにおいて処理は順調に進んでおります。  一方、任意処理分につきましては、一月末までに事業協会で売り渡しの申し込みを行なうということになっておりますが、まず、何といっても業界内部で任意処理の実現方につきまして考え方を統一する、これが必要と考えますので、先般来業界の方々に対して、でき得ることならば本年内に任意処理の大筋についてめどをつけていただきたいということを繰り返し要請をしてきておる状況でございます。  任意処理の規模につきましては、いま業界がいろいろ真剣に中身を検討し、この問題に真剣に取り組んでおりますので、いまの段階で一体四十万錘確実に出るか、あるいはそれに近い数字かどうかということについて明確なことは申し上げかねますけれども、決して私容易な事業とは思っておりませんが、できるだけまとまった規模になるように指導していきたい、このように思っております。
  146. 玉置一徳

    ○玉置委員 なるほど、これは民間の任意の自発的な問題ではございますけれども繊維産業が置かれておる立場、したがって、構造改善事業そのものの真意をよく理解できれば、当然この程度のものはできなければならない問題だと私は思いますので、ひとつよく指導方をお願いをしておきたいと思います。  次に織布の構造改善事業の実施状況でございますが、この問題につきましては、初め集約化と適正規模化を当然考えてやったわけでありますが、零細な規模企業でございますので、なかなかこの方向に引っぱっていくことは種々きょうまで困難を伴ったわけでございますが、無籍織機問題でございますが、今後この織布業の構造改善事業をどういうふうに考えていかなければならないか、御所見を承りたいと思います。
  147. 高橋淑郎

    ○高橋説明員 織布の構造改善につきましては、四十二年度にスタートいたしまして、いま御指摘のようなむずかしい問題がございます。たとえば家内労働への依存傾向が強まってこのため零細化していくというような現象も見られないことはございません。しかしこれは、国際競争力をつけるため構造改善をやるわけでございますから、一時的あるいは過渡的にそういう人手不足に対処する、そういうやり方はやはり本来の筋じゃないわけでございます。最終的な問題解決のためには、やはり幾ら困難はあっても、零細企業あるいは小規模企業を含めてグルーピングを積極的に推進していくことを一つの柱にして、かたがた中堅企業が大事でございますから、その労働力不足のためにいま申し上げた零細企業化するというようなことがないように徹底的な省力設備を進めていくということを片一方の柱にいたしておるわけでございますけれども、こういう考え方のもとにいろいろ啓蒙指導につとめておるという次第でございます。
  148. 玉置一徳

    ○玉置委員 明年度より実施される予定で諸準備を整えていただきましたメリヤスと染色、これは大体準備ができて業界構造改善に踏み切るというところまでいっておるかどうか、ひとつこの際明確にしていただきたいと思います。
  149. 高橋淑郎

    ○高橋説明員 染色業、メリヤス業両業界とも、実は業界内部にいろいろむずかしい問題を抱えておりますが、この際どうしても積極的に根本的に構造改善に取り組まなければいかぬということを決意いたしまして、準備を着々と進めております。かたがた今年の八月に繊維工業審議会、産業構浩審議会からの答申もいただきました。現在グルーピングを前提とした設備近代化あるいは商品の開発あるいは取引構造の改善、こういうような点か中心にしました総合的な構造改善対策を実施するために必要な予算措置要求あるいは法制化等の準備、これを進めておるという状況でございます。
  150. 玉置一徳

    ○玉置委員 それから明年度構造改善ための計画樹立に予定されております縫製品のことでありますが、仄聞するところによりますと、内需じゃなしに輸出向けだけがその対象になるというように伺ってもおるのですが、そうすれば輸出品そのものは輸出検査の場所でチェックできるわけでありますけれども、そうじゃなしに、生産過程におきましては、同じミシンで下請けして生産をするというようなときに、これが区別ができ得ないと思うのですが、こういう問題をどうとらえておいでになるか。
  151. 高橋淑郎

    ○高橋説明員 輸出向けの縫製業界中小企業団体法によります工業組合をつくっております。その上、同法に基づきまして、輸出向けの出荷の数量制限もやっております。こういうようなことで、輸出縫製業者、それからその生産の実態についてははっきり把握することができるという状況にございますので、確かにその内需向けの縫製業者との若干のダブリとかいうことはありましても、まずまず分類区別ができるのではないかというように考えております。  それから、その対策実施の問題でございますが、実は先般内地向けを主体とする業界の意向も徴したわけでございますが、いままでの現行制度の活用である程度の成果もあげておるということで、特別なきびしい条件を課せられて特別な助成措置を受ける、こういう特別方式の構造改善対策、あるいはその前提となるような調査ということについては、いまの段階では必ずしも必要ではないというような意向を表明されましたので、それで輸出向け縫製品を中心にして調査をいたしておるという状況でございます。
  152. 玉置一徳

    ○玉置委員 通産大臣にお伺いしたいのですが、かつては日本輸出の大宗であり、現在もなお非常に重要な部分を占めております繊維産業が、開発途上国の追い上げを受けまして、逐次構造改善を実施していっているわけでありますが、しかしながら、生産段階におきまして、こうした生産性の向上をはかっておるけれども、流通部面におきまして非常に複雑多岐にわたっております。したがって、せっかくの生産性の向上が消費者にそのまま均てんし得ないような部面が日本の流通部面には多いのじゃないだろうか。これに対して近代化のメスを思い切って加えなければ、このごろのやかましい消費者行政になり得ないのじゃないかということも考えられるわけでありますが、こういった流通面に対する通産当局としての今後の対策というものについて所見を承りたいと思います。
  153. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これから本格的に手をつけていかなければならない分野であると心得ておりますが、とりあえずいま私ども構想いたしておりますのは、まず卸段階におきまして、こういう過密化の状況になり、交通状況がこうなってまいりました段階で、卸商が十分の機能をこのままの状態で果たし得ない。したがいまして、卸商団地を新しく設けて流通基地を形成するというようなことはすでに始めておりますけれども、これをもう少し大規模推進してまいりたいと思います。  それから、小売りの段階におきましては、これは申すまでもなく、近代化、協業化と一口に申しますが、いろいろチェーンストアその他の整備拡充、そういった方面施策を進めてまいりまして、これは時間もかかるし手間もかかるしお金もかかるわけでございますけれども、そういう方向で精力的に進めてまいりたいと考えております。
  154. 玉置一徳

    ○玉置委員 そこで繊維局長にお伺いしたいのですが、そのうちでも一番複雑多岐にわたっておるのが繊維製品だと思うのです、流通の問題は。そこで、来年度からこの繊維製品の流通の実態調査をお始めになるようにわれわれは常に要請をしておったわけですが、そういった踏み切りをなさるかどうか、この際ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  155. 高橋淑郎

    ○高橋説明員 繊維の流通問題は、従来からも、規模は小そうございますが、いろいろと調査をしてまいりました。しかしなかなか複雑多岐でございまして、この際相当思い切った調査を、国内それから海外の事情をも含めてやる必要があるというように考えまして、四十四年度予算要求をいまいたしております。
  156. 玉置一徳

    ○玉置委員 企業局長中小企業庁長官にお伺いしたいのですが、ただいまの流通の問題でありますが、消費者行政のやかましい今日でもございますし、スーパーの進出等でそういったものが大きく変わろうとはいたしておりますけれども、そのスーパーやあるいは百貨店等の進出が地元の商店街との摩擦を起こすことも間々見受けられる現象でございます。そこで通産当局といたしましては、この消費者行政と中小企業対策という行政をどのようにからみ合わせて調査をさしていくのか、疑似百貨店問題を含めましてこの際明確にひとつしていただきたいと思います。
  157. 大慈彌嘉久

    ○大慈彌政府委員 ただいま御指摘いただきましたように、消費者行政ということと中小企業対策ということをどういうふうに調和させていくか、たいへんむずかしい問題ではございますが、バランスをとって調整をしていく必要があると思います。御承知のように生産体制自体が大型化をしております。それから消費者の好みといいますか生活態様、それも変わっておりますので、流通関係が大型化していくということは、物価対策なり消費者対策の点から望ましい方向でございます。そういう点から、これを無理に押えるということは好ましくない、できれば中小企業の商業関係自体を力をつけまして、これに対抗できるということが一番望ましいわけでございますが、こういうふうな変革が非常に早く行なわれますと、必要以上に中小企業にショックを与えましたり、倒産を起こしたり、いろいろな障害が出るわけでございます。     〔委員長退席、天野(公)委員長代理着席〕 そういう点から、現実に問題が起こりました場合には、できるだけ第三者を加えるなりいたしまして、先ほど御指摘いただきました疑似百貨店の問題も同様でございますが、商工会議所あたりに第三者を加えた委員会等で現実に調整をしていく、大型化のほうも必要以上に中小企業に負担を与えましたり刺激をしないように、そういう行政指導をしていく、こういう方向で対処していきたいと考えております。
  158. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 流通段階に従事しております企業は大部分中小企業、特に小売り段階におきましては零細企業が非常に多いわけでございます。いままで労働力の豊富でありましたときには、それなりに競争力を持っておったのでありますけれども、労賃が非常に労働力不足の結果高騰する。一面また、いま企業局長のお話のように、消費態様はすっかり変わり生産態様が変わる。それに伴って流通のいわゆる近代化が行なわれざるを得ない。その両方から小売り商、特にその零細小売り商がいま窮地に立っているわけであります。で、考えます方向、大きな線といたしましては、いま企業局長から答弁ございましたように、小売り商の近代化を進めますことによりまして、小売り商を近代的小売り商に脱皮させていくことによって体質改善を進めていくということが絶対に必要でございますので、中小企業庁といたしましては、流通近代化に対しまして、ボランターチェーンを進めますとか、あるいはまた特に金融上の特別ワク、特別金利というものを来年度は特に進めたいとか、さらに大臣が答弁されましたように、団地を活用していくとか、こういういわゆる近代化合理化対策を進めていっておるわけであります。ただ若干これにはひまもかかりまするし、そのひまをかせぐ、ざっくばらんに申しますと、その意味におきましても何とか調整を、量販店なりスーパーなりの過激なというか急激な進出に対しては調整をはかっていく必要がある。そのやり方は、いま企業局長が申されたように、地元で利害調整をはかっていく、これがためには一面におきましては百貨店法をその根本精神を体して運用していくという方法も必要でございましょうし、また小売商業調整法を活用していく方法も必要であろうかと思うわけであります。なお、それとともに私が必要であると思いますのは、量販店なりスーパーなりにつきましても、これが合理性を持った競争力は消費者のためにもなるのでありますけれども、あまりに取引秩序を乱す、たとえば目玉商品を非常に乱用するとか、取引時間を非常に長期にやるとか、こういう取引条件を乱すということは、決していいことではないと思いまするので、この辺は企業局にも十分お願いして取り締まっていくというふうな方向で対処していく必要があるだろうと思います。
  159. 玉置一徳

    ○玉置委員 私は、スーパーその他の進出の実態を見まして、千五百平米という百貨店法の規定がかえって——今日スーパーなんかも規模の利益を追求しつつありまして、小さいものでは立ちいかないようになりつつあるようなことを伺いますと、こういう千五百平米という百貨店法の最低限というものが、現状において正しいかどうかという問題と、中小企業庁長官が申されましたとおり、現在でも小売調整法そのものの利用によって、もう少ししっかりした指導行政、監督行政ができるのじゃないだろうか。公取におきましても同じことです。そのことが実際に、また厳格に行なわれてないような感じを非常に持ちます。私は、今後とも一そうそういった消費者行政、その他の小売調整法等の、各地方局の努力をひとつ鞭撻していただかなければならないのじゃないか、かように希望いたしておきます。  大臣にお伺いしようと思ったのですが、残存輸入制限品目貿易自由化につきましては、各委員の皆さんから御質問がございましたので、取りやめますが、どこまでも自主的であって、双務的であって、しかもこちらから世界の貿易業界を指導するような、一つの大きな指導理念を貫いた形でやっていただきたい。特に、両三年の間にある程度思い切った貿易自由化をしなければいかぬものだとするならば、当然にしわ寄せを受ける現存の、ことに中小企業構造改善を思い切ってやっていくということが前提でなければ、この問題は、ほんとうは相当な社会問題を惹起するのではないか。こういう点について、これから政策の中に十分織り込んでいっていただきたいということをお願いして次に移りたいと思います。     〔天野(公)委員長代理退席、委員長着席〕  通商局長にお伺いいたします。特恵関税問題でございますが、先ほども若干お触れになりましたけれども、一九七〇年までには何らかの具体的な策、内容が検討されつつあるわけで、十一月末ジュネーブにおきましてもこの問題を検討されたわけであります。そこで、今後のこれに対する政府の態度、その次に、特に政府のいう負担の公平の原則というようなものがいまになって通用するのかどうかということが一点。それから、このことは一九七〇年までには何らかの形で実施されることと思いますし、また年を追ってそういう方向に進まざるを得ない。そうなれば、日本国内産業の保護というものにこれまた大きな力をいたさなければ、大きな社会問題が起こると思うのですが、特恵関税問題に対する政府の態度と申しますか、明確にしていただきたい。
  160. 原田明

    ○原田説明員 特恵問題に関しましての基本的な考え方は、いま先生指摘ございましたように、この問題が、発展途上国の問題を解決する一つのキイポイントになっている問題でもございます。また、そういう地域の経済力を培養するということが、わが国輸出という点から見ましても非常に重要であるというような自主的な判断から、やはりこういう方向に向かって進まざるを得ない国際情勢にあるということを考えまして、いままで世界の先進国とどういう方式で、どういう品目について、いつごろからやるかという考え方について相談が行なわれていたという状況でございます。この際、特に日本といたしましては、ほかの欧米先進国に比べますと、繊維産業はじめ、特恵を与えるということによりまして影響を受けやすい国内産業が非常に多いわけでございます。また、その受けます範囲も、まず第一には、いままで輸出に出ていたものが発展途上国へ出なくなる、第二には、日本国内に入ってくるということもございますけれども、特に中小企業の産品などを中心にしまして、アメリカやその他に出ておりました第三国の輸出市場で影響を受けるというような点がございますので、輸入面のみならず、輸出面における負担の公平ということを、特に日本が一番強く主張いたしました。どうやら、まだ全面的にだれもかれもこの方式でやろうというところまでいっておるようではございませんけれどもわが国の意図がほかの国にもわかりまして、そういうことも確かに考慮に入れるべきである、しかしこまかい、特恵のやり方をどういうふうにしてやるかというところまでは、各国の立場がそれぞれございましてまとまらない。特に、英国とかフランスとか、昔から特恵をやっており、なれておる国々につきましては、態度が非常に違うところもございますが、いずれにしましても、来年の三月くらいをめどにしまして、それぞれの国でどういうことができるか、ひとつ考え方を出し合おうではないかというくらいの大きなめどが出たわけでございます。このめどに従いまして、私どものところでも、現在、日本考え方品目といったようなものについて、どういうものが出せるかということを検討しておる段階でございます。しかしその場合、もちろん先生指摘のような、国内産業が著しい被害を受けない、特に輸出の面でも被害を受けない、これは最初からの考慮事項でございますので、その点につきましては十分配慮したようなやり方、品目の選び方というものを考えて出していきたいと思います。いまのところは、先生指摘のような、大体七〇年くらいまでにはやることになろうか、特に発展途上国は早くやってくれ、しかもラディカルなことをやってくれという要望が非常に強うございます。それから、発展途上国との話し合いの場所などが始まりますと、どういうことになるか、はっきりした見通しをつけることは困難でございますけれども、方向といたしましてそういう方向にこれから進めていこうじゃないかと思います。
  161. 玉置一徳

    ○玉置委員 大臣と通商局長にお伺いしたいのですが、これに関連しまして付加価値関税、税制の問題でございますが、付加価値関税の問題につきましては、昨年の第一回会議で韓国からの要望が出されましたときに、当時の菅野通産大臣が、影響のないものには考慮しよう——影響のないものというのは、事実は私はほとんどあり得ないと思うのです。しかしながら、まあ、ある程度考慮しよう、こういう意味だと思いますが、これはわが国のメリヤスあるいは縫製品、しぼり等の業界にとりましては、ひょっとすると致命的な影響すら受けるんじゃないかということをおそれます。来年の通常国会には関税定率法十一条の改正を国会に提案して付加価値関税を認めようというように提案される意思があるのか、これに対する政府考えをお答えいただきたと思います。
  162. 原田明

    ○原田説明員 付加価値関税制度一般に俗にいわれておりますような制度、つまり原材料部分に当たります製品に対する関税を減免をするという制度、この点につきましても、先ほど特恵の問題につきまして先生が御指摘になりましたことと基本的には同様な問題が存在するわけでございます。したがいまして、同じような考え方で、わが国産業に影響が及ばないということでやりたいという考え方は、変わっておらないわけでございます。ただ、その後韓国等におきましてこの制度を特に実施してもらいたいという要望が非常に強うございまして、また一方わが国におきましての労働力不足の問題でございますとか、あるいは経済協力的な立場からの考え方というようなもの々考えますと、これを無視しまして全然こういう制度をつくらないというわけにもいかないという工うな考え方が出てまいりました。一応、いまの段階では、制度としては現在ありますような制度の中に、付加価値関税という名前ではございませんが、実質的にそういう制度が可能になるような仕組みをつくるということを考えまして、関係各省の間では来年度の国会に提案をする運びになるのではなかろうかというような段階にあるように承知をいたしております。ただ、韓国のほうでも、再三にわたりましてこの制度わが国産業に与えます影響について私どものほうから説明をしました中身は、かなりわかってまいりました。たとえば、しぼりといったものはもうやってもらう考えはありませんというようなことを、はっきり向こう側でも明言をされております。まだ品目別に作業をして、これはやる、やらないというような、きめる段階にまいっておりませんけれども、そういうふうな品目について、明らかに影響があるとわかったようなものについて、やるというようなことにはまずならないというように考えております。
  163. 玉置一徳

    ○玉置委員 大臣はどうです。
  164. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま局長からお答え申し上げたとおり、いま韓国の側から強い要求がございまするし、この前の経済閣僚会議でお約束をいたした経緯もありますので、国内産業に影響の度合いが少ない領域においてどういうことが考えられるかというような点について検討中でございまして、これならという案ができましたら、通常国会に御審議を願いたいと思っております。
  165. 玉置一徳

    ○玉置委員 韓国のことでありますので、影響のない、いいものが見つかったら大いにやってあげていただきたいのですが、影響のある限りはひとつ慎重なやり方をやっていただかなければ問題が大きいんじゃないか、こう思います。  そこで、以上、残存品目貿易自由化を見ましても、あるいは特恵関税を見ましても、いまの付加価値関税を見ましても、しょせん日本中小企業をすみやかに近代化せなければいかぬ諸要請に全部取り巻かれておるということは、大臣も御存じのとおりであります。したがって、そのことを行なうのは、現行の制度施策といたしましては、中小企業庁のもとにあります中小企業振興事業団予算を盛ってあげることしか、口で言うても実際に行なうことができ得ないというのが実情でございます。  そこで中小企業庁長官にお伺いするのですが、非常に要望が多いと聞いておるが、どのくらい要望があるのか、それに対してどのくらい予算要求しようと思っておるのか。通産大臣は、大臣の一番初めのお仕事の柱としてどこまでこれを熱意をもってやろうとするか、この問題についてお伺いしたいのです。
  166. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 数字を申し上げます。  中小企業振興事業団に対します申し込みは、府県から出てきているわけであります。業界府県にお願いをし、府県事業団に融資要請をするということでございますが。本年の総事業費は三百四十億であります。それに対しまして、来年度府県からきております要求額は、千百九十億円でございます。千百九十億円の総事業費をまかないますために、これは御承知のとおり、総事業費の三五%だけは、手金と申しますか、民間が負担をいたしまして、あとの六五%のうち二五%を県が負担する、あと四〇%残りますので、県から事業団に四〇%分の融資要請がある、そういうことでございますが、この四〇%はまた二つに分かれまして、一般会計から二五%の出資があり、一五%分を事業団事業団債を発行するということで金を調達するわけであります。この千百九十億の総事業費に所要の二五%の一般会計出資分でございますが、これは三百四億円にのぼるわけでございます。通産省予算要求はとてもこういう多額のものは計上できませんので、事務要求といたしまして現在大蔵当局に出してありますのは百四十三億円、府県要請出資分三百四億円に対して百四十三億円ということでございますので、したがってこれを事業費に換算いたしますと、府県要求の千百九十億円の事業費に対しまして、五百四十八億円をまかなうのに足りるということでございます。府県要求そのものは、実は八月にこれはとってございますので、要求等で実は若干固まっていないもの、ないしはまだ詰めの足らないもの等も相当ございますけれども、大ざっぱに申しまして、府県要求の半分程度を事務的に要求しておる、こういう段階でございます。
  167. 大平正芳

    ○大平国務大臣 その予算の確保に極力努力いたしたいと思います。
  168. 玉置一徳

    ○玉置委員 最後に中小企業庁長官に一点お伺いいたしたいのですが近促法と特定繊維工業構造改善、この二つの法律の系列がございまして、たとえば綿、スフ織物あるいは絹化繊維物は構造改善にかかっておる、毛織物その他は近促法だ、こういう並列して行なわれておるものを、今後どう調整するか。それから、おいおいと期限切れが参ります近促法の今後の措置はどういうようにしておおきになるか、この一点をお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  169. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 近代化促進法のほうは、実は指定業種も百以上にのぼっております。中小企業近代化すべき重要業種は大体網羅しておる、こういうことでございますが、その中で、追い上げでございますとか国内の労働問題でございますとかいうことでほっておけないというものを特に強い政策をとる、強い政策をとる場合には、当然それに相応する業界のほうの態度も、よほどこれは強い態度をとってもらわなければいかぬわけでございますが、そういう強い態度をとってもらう業種として、繊維のいま先生指摘の織布の二業種があるわけであります。この織布の繊維特別構造改善の法律というのは、実は非常に強いスクラップを強制する、そのかわり国も思い切って多額の金を出す、こういうふうなやり方でございますが、このやり方を百余の全業種に適用することはとても無理だろと思います。ただ百余の業種の中でも、警指摘のように相当後進国の追い上げ等々で急激に近代化脱皮を迫られているものもございますので、この中で相当数のものはもう少し近促法のやり方を強化する必要があるのではないか。強化と申しますのは、政府の支援措置強化するが当然業界でやっていただくこともよけい強くしていただく、ギブ・アンド・テークと申しますか、両方強くする、こういうふうな一つのグループをピックアップする必要があるのではなかろうかということで、実はこれを近促法の強化でまいりますか、ときには必要があれば法律を一部改正せねばいけないか、その辺は勉強しておるのでありますが、実は税法ではすでにそういう業種につきましては二分の一の特別償却が本年度から発足しておりますし、また財政投融資においても特別のワクを設けておりまするし、中小企業振興事業団の運用でもそういう特定の数業種は優先的に扱っておる、こういうふうなことでございまして、結論的に申しますと、特繊法のような非常に激しいグループが一つと、それから第二段として相当程度急いでやらなければいかぬ、政府業界努力するというものが一つと、一般的な近代化要請される近促法業種一つ、こういうふうに考えていいのではないだろうかと思います。
  170. 小峯柳多

    小峯委員長 塚本三郎君。
  171. 塚本三郎

    ○塚本委員 大臣に最初にお尋ねしますが、昨日農林水産委員会におきまして、長谷川農林大臣のほうから残存品目についての見解が若干述べられたようでございます。私はその中のトマトの問題につきましてお尋ねしてみたいと思っておりますが、農林大臣は、両三年のうちはまだ国内における企業が弱体だから、トマト加工品の自由化はしないというふうな発言があったように報道されております。通産省としましては農林省のその態勢に協力をするというたてまえで間違いないと思いますが、それでようございますか。
  172. 大平正芳

    ○大平国務大臣 通産品目につきましても、御答弁申し上げましたように、個々の品目につきましてはレベルまでまだ参っておりませんので、いわんや農林省物資につきましてとやかく私が判断するというような段階ではまだございませんので、そのお答えはごかんべんをちょうだいしたいと思います。
  173. 塚本三郎

    ○塚本委員 それでは公取のほうにお尋ねしたいと思いますが、実は不当景品類及び不当表示防止法という法律の第二条の中に「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に附随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であって、公正取引委員会が指定するものをいう。」こういうふうになっておりまして、取引に付随しなければならないというのが条件だというふうに受け取られるわけでございますが、それ以外のものであるならば不当景品などについてもこれを取り締まることができないのでしょうか。その点どうでしょうか。
  174. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 先生ただいま御指摘のように、不当景品類及び不当表示防止法におきましては、商品の取引に付随して提供する景品の取り締まりをいたしておるわけでございます。この「付随」というのもどの辺までいうのかということは従来いろいろ議論がございまして、商品を買ってくれた人だけに提供する景品ということで現在告示ができておるわけでございますけれども、実は最近非常にすれすれのケースと申しますか、脱法的にその商品の購買に結びつけたような懸賞が横行しておりますので、現在公正取引委員会におきましてはその附随の意味を若干拡充した告示改正をいたすことを検討しております。
  175. 塚本三郎

    ○塚本委員 昨年でしたか、たしかトマト工業につきまして公正競争規約を適用すること、これが実は外資に対する第一の適用になったと記憶いたしております。前委員長のときに適用して、不公正な景品やその他のことについて、一応その不正競争に一段落が来たように受け取られておったわけです、ところが、外資系の会社の中で、今度はいまの話、取引と付随せずに、関係のない大衆消費者からアンケートを受けることによってその会社がアメリカ旅行などまで実施しておることは御承知のとおりだと思います。そうすると、これは一種の脱法行為だと思うのです。これらはやはりいま事務局長が言われたような形で何らかこれを対象にしなければ、業界としてはたいへん混乱が来るのではないか。そうすると大ない小なり脱法行為を各業界においてもする危険性がある、こういうふうに受け取れるのですが、どうでしょうか。
  176. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 トマトの業界につきましては、実は零細のメーカーが非常にたくさんございまして、その中で一社が非常に大きなかっこうだというのが従来のトマト業界の構造でございまして、外資系の大きな会社が二社ほど出てまいりまして、従来の一社と三社の間で非常に激しい競争が行なわれておるわけでございます。景品につきましては、先般公正競争規約が業界に取りまとめられまして、一応自粛体制ができたわけでございますけれども、その公正競争規約の対象にならないようなかっこうの競争も行なわれておるようでございまして、その辺はこの法律で取り締まり対象になし得るような部分につきましては、解釈を拡充して対策を講じていきたいというふうに考えております。
  177. 塚本三郎

    ○塚本委員 もう一つ、いまのような第二条とは違いますけれども、メーカーがやらずにスーパーマーケットがこのような不当景品を出す、そういたしますと、いわゆる公正競争規約はメーカーの組合によるところの適用であって流通業者のそれではないというふうな立場から、スーパーマーケットが不当景品その他のことをやっておっても、これを取り締まる方法はないのでしょうか。
  178. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 公正競争規約は、多くの場合、メーカーに従来その業界の団体がございますので、メーカーの規約として制定されておるものが多いわけでございますけれども、卸売り商あるいは小売り商の販売段階において公正競争規約を持つということも可能なわけでございます。ただ、ただいま御指摘いただきました商品につきましてそういうことが直ちに実現するかどうかということは、業界の自主的な申し合わせを基本といたすものでございますので、私どもなお検討させていただきたいと思いますけれども、販売段階におきましても不当な顧客誘引に相当するようなケースが出てまいりました場合には、私どもといたしましても、それに対処する方法を検討していきたいと考えております。
  179. 塚本三郎

    ○塚本委員 外資系の会社がどんどん出てまいりますと、けた違いの資本を持っておりますから、このトマトの業界に見られるようなことは、おそらくおしなべてこれから出てくる会社においても行なわれると想定しなければならぬと思うわけです。御承知のように、この中の一社、デルモンテでございましたね、これは業界の推定によりますと、いまのアメリカ旅行であるとか、あるいはまたアンケートによりましてあるゆる景品を配りました。この金額、宣伝費合わせると、この一年間だけでも総額十億をこえておるのではないかと想定されております。しかるに、総販売量はこれまた約三十億と想定されております。十億のいわゆる販売促進費を使って三十億の品物を商ったということになりますると、これは完全に採算は成り立たないことはわかっております。こんなことを何年も繰り返されたならば、もちろん外資系の会社はシェアは拡大するでしょう。それはおのが資本力から見るならば微々たるものであるか知れませんが、日本の、特に中小企業、零細メーカーは完全にこれによってなぎ倒されてしまうという結果が出てくることは、火を見るよりも明らかでございますね。だから、このデルモンテだけを認める認めないの問題ではなくして、これが実は日本の外資に対する市場の戦いの中のモデル的な姿だと見なければいけないと私は思うわけでございます。これをしも自由競争なんだといって放置するわけにはまいらぬと思うのでございまするが、いかがでございますか。
  180. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 実は昨年の初めから、外資系の一商品につきまして非常に大きな景品販売が問題になっておるケースが三つほど出ておるわけでございます。一つは、ルームクーラに対してカラーテレビをつけるということ、それから二番目は、最近自動車の販売について非常に大きな景品をつけたということ、それからごく最近では、コカコーラの販売についてそういうことがあるんじゃないかというような問題が提起されておりまして、私どもそれを調べておるわけでございます。ただ、調べましたこの三件につきまして申しますと、その二件については独占禁止法違反だということで、その景品販売は取りやめていただきましたし、それからもう一件につきましては、向こうが自主的にやめたという形になっているわけでございますけれども、生産性が非常に向上いたしまして、景品つき販売でなしに、非常に低コストに基づく低価格でもって出てきた場合には、より深刻な競争問題が出てくるんじゃないかというような要素をこの三件については持っておるわけでございます。  そこで、ただいま御指摘になりましたトマト業界の問題につきましては、私、十億円という販売促進費はただいま初めて伺うわけでございまして、前に若干関係いたしましたときには、やはり国内に出ている会社は相当程度独立採算をとってやっているというふうに私ども承知しておったわけでございますけれども、その辺いろいろな角度から検討いたしまして、独占禁止法なり不当景品類及び不当表示防止法で対処できる部面につきましては、私どもとして対処いたします。それで対処し切れない問題につきましては、別途関係各省で措置をとってもらうように要請したいというふうに考えております。
  181. 塚本三郎

    ○塚本委員 いみじくも事務局長からお話のありました不当景品だけの問題ではない。九州地方におきましては、デルモンテは四十円のジュースを二十三円、こんな価格で乱売をしておるところがいまだに残っておる、こういうようなことで、業界でも困っておるという状態です。こんな大きな赤字は、実はこれもすでに三年になりますか、繰り返しておるというふうに想定されるわけでございます。これがドルでやってくる場合においては、おそらくその入ってくる過程ににおきまして政府はこれをすぐとらえることができるというふうに見受けられるのでございますが、聞くところによりますと、外資系の日本の会社が定期的に会合いたしまして、そして日本の中で円でもって貸借を行なっておって、その決済はアメリカにおいてドルで決済をする、こういうことがもはや業界においては当然のごとく、いわばドルと円に対する交換のところでもって一生懸命政府がにらんでおりまするとき、円同士でもってもうかる会社の金を融通して、おいて、ドルでアメリカで融通するという形をとるならば、これはいかんともすることができない。こんな形でけた違いのいわゆる販売促進費を使って、そうして同じ仲間の国内の業者をなぎ倒していくというような結果になることは、これからの資本自由化政府一つ一つ実施していく場合に、これまた変なところでこういうものが障害になってきてしまいはしないかというようなことで、いわゆる貿易拡大についても、こういうふうなことを先に来た外資がやりますると、変なところでこれがネックになってしまう危険性さえも生んでくるのでございます。だから、先に来た外資は、その点もっと国内の法律に忠実でなければならない。にもかかわらず、日本カルパックは事ごとに脱法行為を重ねておる。本委員会においても再三このことが取り立てられて、そして公取から公正競争規約を適用されたにかかわらず、いま申し上げような幾つかの方法でもって、いまだにアメリカ旅行等まで実は行なっておる。こういう事態をもはや黙視することはできないんじゃないかというふうに考えられますが、いかがでしょう。
  182. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 宣伝広告でございますとか、販売促進の方法につきましては、アメリカわが国やヨーロッパに比べて先進国だと申しますか、いろいろな奇手をもって販売努力をやっておるという点で、一歩先んじておるところがあるように存じます。すべてそういうようなものが違法になるかと申しますと、にわかにそうとは言えないのではないかと思うのでございますけれども、逐次そういう方法がわが国に導入されてまいりました場合に、独占禁止法なり不当景品類及び不当表示防止法の運用を拡充いたしまして、わが国としてもそういう新しい事態に対処していくことは当然考えていかなければならないと思うわけでございますけれども、その場合には、やはりあくまで国内の業者も外資も一応公平な立場で法律は適用されることになるかとも考えております。
  183. 塚本三郎

    ○塚本委員 これはあなたに決意だけをお聞きしておきたいと思うわけです。  宣伝会社にとっては、これはたいへん問題になる事項だと思いまするが、該当食品に対して、採算を度外視して販売促進の費用をかけて宣伝をするというやり方、これは自由競争ではあろうけれども、やがては、このことは結論として弱肉強食になってしまう。だから、この品目ならこの品目のいわゆる売り上げの何%までは宣伝広告費が許されるというようなある程度のめどでもつけないことには、幾ら損してもどんどんと宣伝をすることによって市場のシェアを拡大する。そうしておいて仲間が全部野たれ死にをしてしまって、あとから投資した資本を回収することが商業道徳だなんというようなことでもって居すわられて、独占的な価格で、いわゆる仲間がつぶれてしまってから投資したものを回収するというやり方が、これから出てくるおそれがあると思うのでございます。現にいわゆる外資系の会社の中には、実は公然とそういうことを言っておることさえも耳にするわけでございます。そうすると、日本の特に中小メーカーなどはたまったもんじゃないと思うのです。だから、法律で押えはないということよりも、先ほど事務局長が言われたように、何らか解釈を拡大するなり、現実に合うように、先日も通産大臣が言っておられたように、独占禁止法なりあるいは公取にまつわる法を運用、解釈でもって適用することも、私は政治の妙味だと思うのでございます。そういう意味でこのものを放置していくということになりますると、お互いにわれもわれもと、小さいものは小さいながらに出血をしてでもこういう形に巻き込まれてしまうということですから、まつ先に行なっております資本自由化の、それが全く悪い例として日本において行なわれたとき、私は、日本産業が偏狭な民族主義に変わっていく危険性さえ実は出てきてしまうと思うのです。これは貿易拡大にとって決して好ましい姿ではない。だから私は、該当品目に対して実はその売り上げ高の何%までくらいならばいわゆる宣伝費が許されるというようなことについて、いまどうせよというわけではございませんけれども検討すべき段階にきたのではないか、こんな気持ちがするわけです。見解だけお聞きしておきたいと思います。
  184. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 営利企業の行動でありますから、採算に合わないようなことはしないと思うわけでございますけれども、ただいま御指摘のように、こちらが非常に短い目で見ているのと、非常に長い目で商売をするという場合に、通常予想できないような大きな力をある時点に発揮するということは、これはあり得るかと存じます。そういった独占的な力でもって、それが不公正だと見られるような競争がございました場合には、独占禁止法上の不公正な取引方法として私ども対処していきたいというふうに考えております。何が不公正な取引方法であるかということにつきましては、やはりその時代時代の常識なり経済的な考え方があろうかと思いますので、独占禁止法といたしましても、常に前向きの姿勢で、その運用のよろしきを得ていくように努力したいというように考えます。
  185. 塚本三郎

    ○塚本委員 公取はけっこうですから……。  通産大臣にお尋ねしたいと思います。  先日私ども小峯委員長にお供をいたしまして、有志議員が韓国をたずねました。そのとき韓国側としては、片貿易を非常に嘆いておりまして、これを多少とも是正する意味でもぜひノリを多くとってほしい、こういう強い希望がわれわれ委員に要望されたわけでございます。  この件で私これからお尋ねをしてみようと思っておりまするが、それに先立ちまして、先ほど大臣から東南アジアの貿易拡大については、いかなる困難があってもこれを拡大するため努力をしたいという発言があって、たいへんけっこうなことだと思うわけでございまするが、このノリの輸入につきましても相当の困難はあると思いまするが、しかし日韓の貿易のあの片寄った姿を見たときに、これを是正する、これはもう金額的にはそう大きな問題でございませんけれども、しかし彼らは、それを一つの精神的にも自立して貿易がいき得る、片貿易を是正するところのめどとしても強く希望しておるようでございまするが、今後大きく輸入を促進するお考えをお持ちいただきたいと思うのでございますけれども、どうでしょうか。
  186. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そのことにつきましては農林御当局と協議して対処してまいりたいと思います。
  187. 塚本三郎

    ○塚本委員 対処ということは、拡大することに前向きで検討していただけるということでしょうね。
  188. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私ども貿易拡大を欲しておるわけでございますから、そういう方向で農林省とも十分協議していきたいと思います。
  189. 塚本三郎

    ○塚本委員 実はこの韓国ノリのことにつきまして、十二月七日の朝日新聞にこういう記事が載っておりますので、これをお尋ねしてみたいと思っております。  水産庁の調べによると、韓国ノリの輸入は、輸入業者二十七社のうちの一社が代表して韓国と交渉することになっている。ことしは東食が輸入したが、これをノリ問屋へ払い下げる交渉は東食と社団法人のり協会代表の小浅商事の間で行なわれた。その結果、去る八月に輸入した二百六十六万八千余束の値段がきまり、この分の代金三十六億八千余万円が同月十日にのり協会から東食に支払われたが、この取引で小浅聞事は一束につき二十五円、合わせて六千七百万円のリベートを受けたことが明るみに出た。こういうふうに実は水産庁の調べによるとという前書きでもって——これは新聞は「韓国ノリでリベート」と大きく見出しが出ておるわけでございますが、水産庁の調べはそれで間違いございませんか。
  190. 森本修

    ○森本政府委員 私どもが調べましたところでは、多少ただいま読み上げられました新聞の記事の表現の細部につきましては正確を欠く点があろうかと思いますが、ほぼ筋道はさようなことであろうかと思います。  念のために私どもが調べました要点を申し上げますと、その新聞にも書いておりますように、本年当初韓国との問に輸入をすることになりました数量が四億八千万枚、その第二回の入船といいますか、こちらに到督した分につきましての価格の交渉上、のり協会のほうの買い入れ価格の中に単価当たり二十五円が実質上上積みをされておったというふうな形のことが判明をいたしました。私どもが調べました限りでは、そういう事実が明るみに出てまいりましたので、それに対する善後措置をのり協会に対して私どものほうから指導をしたという関係になっております。
  191. 塚本三郎

    ○塚本委員 この取引で小浅商事は一束につき二十五円、合わせて六千七百万円のリベートを受けたことが明らかになった。小浅商事が受けたということは水産庁の調べでは明らかになっておるのですか。
  192. 森本修

    ○森本政府委員 細部の点で表現上問題ありと申し上げましたのは、そういうことも含んでおりまして、私どもの知り得た限りにおきましては、輸入の組合のほうから問屋さんの組合のほうへ六千六百万円という金が一時繰り込まれたということを耳にいたしました。したがって、ただいま読み上げられました新聞の記事の細部の表現につきましては、必ずしも正確ではないように思います。
  193. 塚本三郎

    ○塚本委員 これは私はこれからずっとお聞きしていかなければなりませんが、小浅商事が受けたのではないということになると、小浅商事は業界に対してたいへんな不名誉を受けたことになるわけでございますね。だから、これは一業界のことではあるけれども、のり協会の運営についてこれからお聞きしなければなりませんから申し上げるのですが、ここであなたのいまの発言によりますと、問屋の組合にそれが入ったことであって、小浅商事に入ったのではないという言明をそこでされるだけの自信がありますか。
  194. 森本修

    ○森本政府委員 繰り返して申し上げますが、私どもが知り得た事実は、ノリの韓国からの輸入組合のほうから問屋協会のほうにその金が一時繰り込まれたという事実でございます。
  195. 塚本三郎

    ○塚本委員 それでは水産庁調べということになっている朝日新聞のこれは、全く小浅商事という一企業のことは間違いであったというふうなのが水産庁の調べだというふうにはっきりと受け取っていいわけですか。
  196. 森本修

    ○森本政府委員 さようなことに御了承いただきたいと思います。
  197. 塚本三郎

    ○塚本委員 それではもう一つここでお聞きしたいのでございますが、「のり協会は六日東京で緊急理事会を開き、森本水産庁長官も同席して、小浅商事の白羽社長から実情を聞いたが、同社長は、一束千三百五十五円で買うべきところを、金利、倉庫料の考え違いで二十五円高く買ったことがわかった。余分の金は協会に返したと語った」というふうにあなたの名前がここに出てきて、そして実は金利、倉庫料の考え違いであったというふうなことを、小浅商事の白羽社長があなたに語ったようにこの新聞記事になっておるわけでございます。ところが小浅商事では、そんなことは言ったことはありませんということを私に個人的に通告しておるのでございますが、あなたこれに立ち会われたと、この朝日新聞に書かれておりまするが、それも問題いであったかどうか。これもせっかくおたくが立ち会われたのだから、その立場を言明していただきたいと思います。
  198. 森本修

    ○森本政府委員 私が伺いましたのは、白羽さんはのり協会の理事、それから問屋協会の会長、そういう立場で私はものを伺ったというふうに了解をしております。
  199. 塚本三郎

    ○塚本委員 そんなことを聞いておるのじゃないですよ。私の聞いておるのは、金利、倉庫料の考え違いで二十五円というものを高く買ってしまった。この二十五円の性格を、これから私が聞きたいところから聞くわけでございまして、白羽正一なる社長は、これは問屋組合の組合長であることは承知いたしております。問題の焦点は、二十五円というその金額がどういう性格のものであるかということをたださないと、これからの話が進んでいかぬからお伺いするわけです。
  200. 森本修

    ○森本政府委員 そのとき私どもが伺いましたところでは、二十五円についての積算の基礎並びにその性格といいますか内容といいますか、そういうものについては必ずしも明確なお答えをいただけなかったということでございます。
  201. 塚本三郎

    ○塚本委員 それじゃ長官にお尋ねしますが、これは今回だけではなくして、いままでものり協会に対して二十五円ずつは上積みして金が納められておったということを、長官は御存じないわけですか。
  202. 森本修

    ○森本政府委員 のり協会のほうから、問屋さんあるいは加工業者の方にノリを販売する、その販売をすることに関連をいたしまして、二十五円といったような金を、これはいろいろな中身はあるようですが、代金としてではなしに徴収をしておった例があるということは、私ども伺っております。
  203. 塚本三郎

    ○塚本委員 そうしますと、これは販売に対するいわゆる必要の経費として、問屋組合にいわせますと一束について十円が荷を仕分けるところの分荷費、それから十五円が調整費——韓国から入ってくるから、いいやつ悪いやつがありますから……。この費用のために流通業者が自分たちの手数料やあとからの調整費として実は使うべきものであって、ほんとうは最初からこれを上積みして渡すということは間違いで、実際にはそんなものを上のせずに実は問屋のほうに渡しておって、そしてあとから各業者から取り立てて調整費に使う、こういうことが正しい筋合いであったにかかわらず、いままではそれが最初から業者に渡すときに上のせされておった、このことに問題のポイントがあるというふうに私は見ておりますが、どうでしょうか。
  204. 森本修

    ○森本政府委員 先ほど申し上げましたようなことを従来やっておったようでありますが、のり協会の内部におきましても、さような取り扱いがはたしていいか悪いかということが問題になり、あるいはまたそういう経費が、機械といいますか電子計算機を使う等のことによって徴収をする必要がないといったような事情の変化等もありまして、そういうやり方を二回目からはやらないことにしたというふうに私どもは伺っておるわけであります。
  205. 塚本三郎

    ○塚本委員 やらないことにしたということは、それはどこできめられたのですか。
  206. 森本修

    ○森本政府委員 のり協会の理事会におきましてさような話し合いがなされたというふうに聞いております。
  207. 塚本三郎

    ○塚本委員 この金はもともと業者から集めて、そして最後にこれを業者に案分すべき性質のものだということは長官もお認めになっておられたはずだと思うわけでございます。その業者から集めるというやつが、集めずに、いわゆる放出をするときに上のせして、最初から値段の上に積み上げておったところに問題があるというふうに私は見るのですけれども、どうでしょう。もう要らなくなったという問題じゃないと私は思いますが、どうでしょうか。
  208. 森本修

    ○森本政府委員 さような金がはたして現在の段階においてどの程度必要であるかということは、もう少し私ども実情を精査しないと言い切れないことであると思います。いずれにいたしましても、従来のやり方については、内部的にさような相談によりましてやらないことになったということでありますし、輸入業者と問屋協会の間の売買の価格にたとえさような考え方の金でありましても織り込むことば、これは私どもとしては適正ではないというふうに思っております。
  209. 塚本三郎

    ○塚本委員 私もそう思うのです。それを今日まで慣例として行なってきたということ自身、監督官庁としての長官は、そういう点過去において放置してきたことは間違いであったとはっきり言明できるわけですね。
  210. 森本修

    ○森本政府委員 過去におきましては、さような考え方の金を価格に織り込んだことはないというふうに私どもは思っております。
  211. 塚本三郎

    ○塚本委員 責任を持ってそういうことが言えますか。過去においてそういうことを、のり協会に上積みした金が振り込まれたことがないということを長官は責任を持って言うことができますか。いいですか。
  212. 森本修

    ○森本政府委員 私どもは少なくとも賢い入れ価格にさような金を織り込んだことはないというふうに承知しております。
  213. 塚本三郎

    ○塚本委員 いや、買い入れ価格ではなくして、いわゆる問屋にそれが渡されるときには、その価格というものが上積みされて、そしてのり協会にその金が振り込まれておったという昨年までの事実というものはお認めにならなければならぬと思うのですけれども、それはないというふうに言われますか。
  214. 森本修

    ○森本政府委員 先ほどお答えを申し上げましたように、価格としてはさようなものは入れられてない。ただ、売買をいたします際に、二十五円何がしといったような金が別途に同時に徴収をされていた、そういう関係だと了解をしております。
  215. 塚本三郎

    ○塚本委員 そうでしょう。そしてそれはそのままのり協会に過去に納められておったということはお認めになるのでしょう。
  216. 森本修

    ○森本政府委員 価格ではなしに、別途の金として、のり協会があるいは関係団体にかわって徴収をするというふうなことをやっておったように承知をしております。
  217. 塚本三郎

    ○塚本委員 わかりました。それでいいと思うのです。  それで問題は、業者から、価格ではなくて、取り扱いのための分荷費であるとかあるいはまた調整費であるとか、価格ではなくて別個に集められておったのですね。だから、もともとこの金は流通の業界ために別途に集めて一時のり協会に入れておいて、そしてもう一度あとでこれはいわゆる問尾さん等の流通業界に使われるための金でなければならなかった。問題は、それを集めるだけ別途に集めてのり協会にいきながら、それが完全に再び出したほうの自分たちの調整費等に戻らかったというところからこの問題の発端が出てきたのだというふうに私たちの調査では受け取られるのですけれども、どうでしょうか。
  218. 森本修

    ○森本政府委員 今回かようなことが行なわれました動機、並びに先ほど申し上げました金額の積算及びその内容については、この前の際には私ども関係者から必ずしも正確に伺うことができませんでした。
  219. 塚本三郎

    ○塚本委員 私がこういうこまかいことを申し上げますのは、問題は、価格形成の中心にありますのり協会の存在というものを再検討しなければならぬ段階にきたと判断をして、このような金の出し入れを、こまかいことのようでございますけれども、いま長官にお尋ねをしなければならなかったわけでございます。その点、監督の責任者として実はお聞きいただきたいと思うわけでございますが、実は別個に徴収してあった金だから、再び問屋のほうに戻さなければならぬのにかかわらず、ある部分金額を問屋に戻さず、違ったほうにこれが使われたところから問題が出てきているというふうに私たちの調査では出ておるわけです。  もっとはっきり申し上げてみましょう。実は問屋の組合や加工業者の組合にはその金は戻っておるのです。けれども、未組織の問屋さんであるとかあるいはアウトサイダー等の一八%の業者に対してその金が戻らずに、逆に生産者団体のほうに七百何万円という金が使われておった。ここから実は問屋さんたちの未組織の諸君から非難ごうごうの声が出てきた。これがのり協会に対する非難となって出てきて、問題がこういうところから発生したのだと私は見ておるのでありますが、どうでしょう。その点お調べになったことはありませんか。
  220. 森本修

    ○森本政府委員 さようなことを言っておる向きもあるやに伺っておりますけれども、正式に私どもが二日にわたって関係者から聞きましたときには、さような証言はございませんでした。
  221. 塚本三郎

    ○塚本委員 はっきり申し上げておきましょう。問題になった東食もそうなんです。あるいは大森だとか千葉だとかという組織をつくっております問屋の業者は、おれたちの金だから寄こせということで六千数百万にのぼります金は、実はそういうところへは戻っておるのです。だけれども、アウトサイダーや問屋の組合をつくってない一八%の人たちのところへは実は戻ってこなかった七百数万円の金があるわけですよ。それは生産業者がかってに使ったものだから、のり協にその金を返すと流通業者の金まで持っていってしまうではないか。しかもそれは多数決で、流通業者のほうが理事の構成が少ないわけです。ここに、今日の韓国輸入ノリの一番ポイントがあると私は見ております。そんな大事なことを長官が聞けなかったということはおかしいと思うのですが、どうでしょう。
  222. 森本修

    ○森本政府委員 二日にわたりまして関係者から率直に事情を言ってもらいたいということで、私自身お願いをして、同席をいたしたわけでありますが、残念ながら、それほどの詳しい事情はお聞きすることはできませんでした。
  223. 塚本三郎

    ○塚本委員 それでは、恐縮でございますけれども、私が教えてあげましょう。  東食自身も、自分たちは未組織の業者なので、自分たちが金を出しながら戻ってこぬから、この際のり協会へ入れたのでは、自分たち流通業者の中の金を生産業者が持っていってしまう。だからこの際は取らぬということにしておいて、直接に東食から問屋組合に金を出してくれ、こういうことの暗黙の了解のもとに問屋組合へ入ったというわけですね。問題は、そういうことでもともとのり協会に入ったものが、自分たちのものじゃなくして流通業者の金として集めたのだから、流通業者が分荷費あるいは調整費として使うのだから戻す。当然のことが、実は理事の構成が、生産業者九で流通業者が六ということで多数決で強引に持っていかれてしまうというこのやり方に対して、これらの業者が非常に不満を述べている。だから、のり協会に入れてくれるな、こういう形になったわけですね。それを長官が、そういうことをお調べにならぬからというようなことで、何かしら流通業者が不正をしておるような形や、あるいは新聞記事等によりますと、どういう間違いか、個人あるいは小浅商事というものが悪いことをしたような形でもって、背任罪も成立するかもしれぬから調べてみるというような発言まで出てきてしまっている。そういう記事まで新聞に出ているわけでありますが、一小浅商事の問題ではなくして、韓国ノリを庶民の台所に少しでも安くという国民の声に従ってきておるときに、問題をそういう形にすりかえられてしまっておることは、私はたいへん残念なことだと思うわけです。もう一ぺんこれからお調べになる気持ちはありますか。
  224. 森本修

    ○森本政府委員 監督上必要なことにつきましては、私どもできるだけ調べたいと思います。しかしなお、たとえそういう事情にありましても、今回判明いたしました事実は必ずしも適当な措置ではないということで、私ども是正の措置をとりましたことは関係官庁としては必要な措置ではなかったかというふうに思っております。
  225. 塚本三郎

    ○塚本委員 私もそう思うのです。先ほどから申し上げておりますように、こんなものは価格に上のせしたわけじゃない、手数料としてだけれども、渡すときに先に取るから、どうしたって価格の上のせになってしまう。だからこのやり方は、のり協会も問屋の組合連合会も誤りであったと用います。だから、それは全然関係なしに、それか上のせせずに業界に渡しておいて、あとから自分たちで——それは韓国ノリだからあんまり上等でないやつもあります。穴のあいたのや、ふちの如けたのもあります。私は委員長と一緒に買って、見てまいりました。日本のと比べて若干落ちます。そういうものは包装してあるからわかりません。一枚について十五銭程度の調整費というものは私は業者として当然必要な金額だと思うわけです。だから、そういうものはあとから取るべきかということで、長官のそのようにおとりになった処置は正しかったと思うわけです。それは業者の団体も、これからはあとから取ろう——千三百社というような多くのこまかいところから、こちらから五千円、こちらから一万円という金になりますから取りにくいけれども、それを取って自分たちに充てないと、放出するときに先に取れば、価格の上のせという形になるから、これはやはりあなたのおっしゃったような措置が正しいと思うし、業者の団体もそういうふうに見ておるわけであります。しかし問題は、一枚二十円近くの価格で売られておるところに、十五銭あるいは十銭の分荷費、合わせて一枚について二十五銭くらいのことは、業者としては商業道徳としてそういうようなことはあり得るべきことだという感じはいたすわけでございます。  しかし一番問題になっておりますのは、そうではなくして、価格形成にあたっても、のり協会の問題をここで再検討しなければならぬ段階にきたのではないか。もともと韓国ノリの価格形成あるいは放出にあたりまして、流通業者や消費者の代表の意見が少なくて、発言権の圧倒的多数を生産業者にまかしておるという、こののり協会の構成そのものに私は問題があるというふうに見るのですけれども、それを再検討なさる意思はございませんか。
  226. 森本修

    ○森本政府委員 御案内のように、従来から韓国ノリの扱いにつきましては種々問題がございまして、たしか二、三年前だったと思いますが、関係者が相当衆知を集めて、そのような組織をつくり上げまして、それ以来、従来よりは問題が比較的少ないような形で推移をしてきたように私は承知いたしております。  ただ今回、かような問題が起こりまして、これものり協会の運営その他について反省すべき点がないとは私は言えないと思います。したがいまして、監督官庁としても、さようなことについては十分実態を調べた上、しかるべく検討をいたしたいと思っております。
  227. 塚本三郎

    ○塚本委員 通商局長にお尋ねしますけれども、このノリの価格がたいへん高くなっておる最も大きな原因がどういうところにあるかということを御検討なさったことがありましたら、ちょっと発表していただきたいと思います。     〔委員長退席、海部委員長代理着席〕
  228. 楠岡豪

    ○楠岡説明員 先生指摘のように、ノリの価格は四十三年の一月、小売り価格二百九円が十一月には二百二十八円、若干の値上がりを示しておるわけでございます。この値上がりの状況は、結局国内の生産者価格及び需給の状況を反映するものと考えます。
  229. 塚本三郎

    ○塚本委員 水産庁長官、ノリの業界において、売買のときに不渡りということばがありますが、それはどういうことかということを御存じですか。
  230. 森本修

    ○森本政府委員 必ずしもよくわかっておりません。
  231. 塚本三郎

    ○塚本委員 申し上げてみましょう。実は自由に入札でもってこれを売りまするが、しかし生産者の団体が思うような値段、いわゆる値が上がってこないときには、最高価格でもそれは落とさないで、売るのはいやだという、値をつけてしまってから売り渡さずにおいてしまう制度を実は不渡り、こういうふうに業界では言っておるようでございます。それは初耳ですか。
  232. 森本修

    ○森本政府委員 私、寡聞にして存じておりません。
  233. 塚本三郎

    ○塚本委員 大体ことしのノリの生産原価を調べてみますると、平均一枚当たりが七円六十銭、これが生産費のいわゆる大体の原価だそうでございます。ところが今日業界に渡されるときは、これが十六円から十六円五十銭で渡されております。このときに、最高の落札が十二、三円の場合には、不渡りといって渡さぬそうでございます。いわゆる自由に購買をしておる席上で、一番高い値段でも渡さないという形が平気でこの業界では行なわれておる。しかも生産原価を割るような値段ならばともかくとして、それよりもはるかに高い価格であっても渡さないということが慣例になっておる。こういうことを長官が御存じないということになりますると、これは局長、おたくのほうの管轄ですか、この問題は。
  234. 楠岡豪

    ○楠岡説明員 これは農林省の管轄でございます。私も不渡りということばを存じませんでした。
  235. 塚本三郎

    ○塚本委員 それじゃ、なぜこういうように業者団体が強気に出られるかということについて、思い当たる点があったら長官のほうから述べていただきたいと思います。
  236. 森本修

    ○森本政府委員 ノリの流通につきましては、いろいろ近代化されていない部面も多々あると思います。先ほど言われましたのは、生産者団体の共同販売のあり方ということであろうと思います。私はどのくらいの値段が適正であるかということは必ずしも一がいに言えないと思いますけれども、共販のあり方として、もちろん受託者でありますところの協同組合が、組合員のためにできるだけ有利に売りたいというマインドといいますか意思が働きますことは、これはあながち悪いと言うことはできないと思います。ただ全体の消費の動向、あるいは消費者のことをよく考えて、大局的に生産者団体といえども考慮すべきであるということは、監督官庁としての農林省も言うべき筋合いのものであろうというふうに存じております。
  237. 塚本三郎

    ○塚本委員 知らぬことが多いようでございますが、少なくとも物価の安定という立場から、私たちは庶民に対してそういうことを主張する義務があると思うわけです。しかも生産者がそれによって犠牲になるならば、あるいはまた流通業者が犠牲になっておるとかいうようなことなら、こんなことをやかましく私は申し上げるつもりはございません。しかし今日のいわゆるノリというものは、生産者が過保護の形になっておって、ある産地におきますると、いわゆる一年の冬季におけるところの取り上げ高というものは、二戸について一千万円平均であるというようなところがざらだということを長官は御存じでしょうか。
  238. 森本修

    ○森本政府委員 ノリの生産者の経営の規模も、かなり最近は大きいものがあり、小さいものがありということになっておりますから、大きいものについてはさような経営体もあるいは出現しておるかというふうに存じております。
  239. 塚本三郎

    ○塚本委員 生産者がほんとうに冷たい中で苦労してやっているのだから、それ応分の収益をあげることはけっこうなことであり、われわれもそれに対する協力を惜しまないと思うのです。しかしながら、ほかの産業に比べてみて、ある地域によってはそういうところさえも出てきておるほどになっておる。にもかかわらず、価格形成の面でこういうような措置がとられておる。長官あまり御存じないようですから、ざっと述べてみますると、たとえば今年におきまして、約六百億というのが国内のノリの売り上げの総計になるようでございまするが、このうちのいわゆる外口銭として二%、十二億の金が実は動いておるということ、このことについてはお聞きになったことございませんか。約二%の金が地方の漁連等の組織に入っておるということでございます。
  240. 安福数夫

    ○安福説明員 お答えいたします。共販の場合、単協あるいは県段階の県連がそれにタッチするわけでございます。その際の手数料として二%ないし三%、その程度の金を徴収しておることは事実でございます。その金額は大体その辺にあたるのではないか、こう思います。
  241. 塚本三郎

    ○塚本委員 これは手数料でございますか、生産者のほうの金ではないですからね。これが生産者団体の、いわば彼らの政治資金、正確なことではございませんが、彼らのいわゆる価格形成のための資金に使われたにおいがすると私は思っておるわけでございます。それだけではないのです。私は聞いて驚いたのでございますけれども、いわゆる買い付けの業者に対しては連帯保証の制度をとらしておる。だからここに保証基金まで六億という金を業者は積まなければならない形になっておる。そして実は売るほうの生産者の立場になりますると、連帯保証になっておりまするから、購買力の弱い業者であっても、これがつぶれてしまったって連帯保証でよそから取れるからということでどんどん売らせるから、弱い業者でも入札に入っていって、値をつり上げて値が上がってしまう、こういう形が値が上がっているところの一つの要素になっておる。これは私の判断でございます。そして、買い入れたところのノリをさらに担保に置いて、漁連からまた金を借りて、その金でまた買い付けをやるというような形になります。もちろん時期的な問題もあるから、これは必ずしも全部悪いというわけではございませんが、買ったノリ、それを担保にしておいて、そして金を貸して、その金でまた生産者のものを買わせるものだから、どうしたって品薄になってしまうというような形で、実は資力があって、十分に市場に対して売るだけの自信のない業者でも、連帯保証だから売ってやればいいじゃないかということで、取りそこないがあるといって普通のことならよう売らないけれども、そういう連帯保証制度があるからよけいに売り手市場になってしまっておる。しかもそれには約二銭四厘という利息だけではない、その金を貸したときにはなお別に、その利息のほかに、金を貸したとき、いわばそういう生産者団体が質屋的な業をすることによるところの別に約二%の金をさらに内口銭として取っておる。だから、この金もいってみるならば二億か三億の金になる。実はこういうふうな金が積もり積もって生産者団体に対する保護姿勢になっておるという形でございますから、七円六十銭でございましたか、その価格に対して、相当利がのっておっても売らないということで、倍以上の値段をつけてこないことには不渡りという形が今日の慣例になってしまっておる。そこに業者が自分たちの手数料やあるいは問屋のマージン、小売りのマージンをかけてまいりますと、たいへんな値段になってしまっておるというようなことが判明してきておるわけでございます。だから私は、根本的にこういうような制度というものを一つ一つ検討しなければならぬのではないか。あるいは長官がそれができないとおっしゃるならば、何とかの形で——調べたところによりますと九十数%の人たちがノリを食べておるようでございますが、これが万が一行政としてできないということになりますれば、別個の手段でもって、最初大臣にお尋ねしたように韓国ノリ等をたくさん輸入することによってこの値のバランスをとるということだって、私は決して悪いことではないという意味で、さらにこれを促進することによって、内は内としてそれを改善することとともに、少なくとも年間十五億枚程度輸入をするならば、今日の消費者価格というものは三割程度は下がるというのが業界の専門家の見方でございまするが、大臣どうでしょうか。
  242. 大平正芳

    ○大平国務大臣 たいへん詳しい御調査を拝聴いたしまして、農林当局のほうでもいろいろ御言明がありましたように御検討されることでございましょうし、私ども一も、流通形態がだんだん近代化されて物価政策が志向する方向に進んでまいりますことを期待いたしまするし、私どももそういう方向で協力すべきものは十分協力してまいりたいと思います。
  243. 塚本三郎

    ○塚本委員 最後に、ノリの問題は、少なくとも輸入のことに関してのことを論議するときには、生産者はどうしたって一円でも高くということは人情の常だと思うのです。だから、どうしてもそういう形で韓国の輸入の問題に対してはストップがかかってみたり、そういう形の意見が大勢を占めてしまう形になる。私は九月になぜストップしたか、このことを私のほうの調査で調べてみましたけれども、先ほどから委員長が時間のことを気にしておるようでございまするから、このことは私はやめておきたいと思いますが、先ほども何回も申し上げておりまするように、生産者中心の運営であってはならぬと思うのです。今日の段階になれば、少なくとも消費者の意見というものもここに加味されるような審議会があるようでございますけれども、価格決定のあとにしか開かれないといういままでの運用等も私は聞いてみたいと思っておったのでありますけれども、こんな形を行なっておると、とかく痛くもない腹を探られなければならぬ、黒い霧等のことが出てきてしまうのではなかろうか。しかも、そういうことを変な形で新聞に書き出されてしまっておることは、私はたいへん残念なことだと思うわけでございます。だから、のり協会に対して再検討をしていただきたいということを御要望申し上げるわけでございます。ノリの問題につきましては、小峯委員長以下私ども有志が行ってまいりましたときに通産大臣のほうに強く要望しておりましたが、これは国内業者の生活を圧迫するような段階にいってはならぬと思うのです。少なくとも今日四十億枚といわれております国内生産に比べてみますと、十五億枚程度、約三割くらいを輸入してきましたならば国内の消費者価格は三割くらい下がるのだという大体の計算が出てくるわけでございますが、もしそうでなければ、消費者自身ももはやノリは食べられないものとして、そのことは、かえって業界も生産者自身も結局見放されてしまう形になってしまうのではなかろうか。九月のときに放出しておけばよかったのに、世論がやかましくなったいまごろあわてておやりになりますから、これから生産して出てくるものと放出のものとが一緒になってしまうと、これをかかえているところの組合や問屋さんはえらい迷惑をしてしまって、生産者団体もこれを担保としてかかえているうちに金を貸した問屋がつぶれてしまうから、逆に生産者団体がこれを売らなければならぬが、それを売るまでは韓国ノリの放出をとめてくれということまで生産者団体が言わなければならぬような形になるということも一つの原因ではないかというふうに思うわけですから、簡単にお二人の所見だけ伺いまして私の質問を終わりたいと思います。
  244. 森本修

    ○森本政府委員 のり協会は、元来韓国ノリの輸入国内生産の調整ということを主たる目的として設立し運営されてまいりました。農林省も、これに対する監督の立場といたしましては、生産者に対してはある程度の配慮をしなければならぬが、しかしまた消費者のこともございますので、過保護にわたるようなことは戒めなければならぬというふうに思っております。したがいまして、生産と消費の両方を十分均衡をとるような形でこれの指導監督につとめてまいりたいと考えております。
  245. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど申し上げましたように、農林省と協力申し上げまして、円滑に輸入ができるような環境をできるだけ整備してまいるように努力したいと思います。
  246. 塚本三郎

    ○塚本委員 終わります。
  247. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 近江巳記夫君。
  248. 近江巳記夫

    ○近江委員 いろいろと聞きたい問題がありますが、時間の関係もありますので、しぼって二、三お聞きしたいと思います。  まず第一は、最近問題になっております中共肉の輸入の問題でありますが、政府はこの禁止の解除に内定をしたとか、あるいは前向きに検討することにしたとか、こういうような報道がなされておりますが、その真相というものを具体的に聞かせてもらいたいと思います。
  249. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、農林御当局におきましては、家畜衛生上の責任当局として、この問題について関心をお持ちであるばかりではなく、具体的な行政当局として真剣に検討しなければならぬ課題であることは御案内のとおりでございます。私どもといたしましては、そういう条件が満たされて貿易拡大の方向にいくことを希望しておるわけでございます。したがって、いま農林省と通商当局との間で協議しておるのが真相でありまして、何かきまったとかなんとかいうのは、まだそういう段階ではないのであります。
  250. 近江巳記夫

    ○近江委員 いままで通産省は中共肉の輸入についてはむしろ反対の立場をとってこられたわけですが、今回そうした報道がなされたということについて、最初通産大臣のほうから農林省のほうに指示して、その指示に従って農林省のほうで検討しておる、こういうことですか、もう一度お聞きします。
  251. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私は農林省指示する権限はないのでございまして、いま申し上げましたとおり、通商当局と畜産行政当局と両方で協議中であるということであります。
  252. 近江巳記夫

    ○近江委員 新聞では中共肉の輸入ということが非常に近いような、そういう内容に受け取るわけでありますが、そこで、先ほど通産大臣のお話では、これからまだ検討、そういう非常にまだワンテンポ置くというか、そういうような雰囲気に受け取ったわけです。そこで、そういうような一般の受け取っておる感覚とだいぶずれがあるように思いますが、そのずれをなしておる原因というのはどこにあるわけですか。これは農林省のほうと通産と両方答えてください。
  253. 平松甲子雄

    ○平松説明員 中共肉の輸入につきましては、すでに御承知だと思いますけれども、中国大陸が戦争前に口蹄疫であるとか、牛肺疫であるとか、牛疫であるとか、家畜の急性伝染病、悪性伝染病が相当蔓延しておった地域であるということが、われわれの記憶にも明らかなところでございまして、戦後中共治下になりまして鋭意改善に努力をしたということは、私ども承知いたしておりまする三回の調査団の報告でもはっきりいたしておるわけでございますけれども、なおかっ口蹄疫なり、牛疫なり、牛肺疫なりというような家畜の急性伝染病につきましては、その害悪といいますか、その被害と申しますか、これは相当なものでございまして、日本は幸いにして処女地でございますが、一たんこれが入ってまいりますと、去年の秋からことしの春にかけましてイギリスにおいて口蹄疫が流行いたしました際に、四十万頭の牛、豚、羊が殺されるということで、間接被害まで合わせまして千二百億円の被害を生むというような状況でございますので、国内の畜産の家畜衛生関係技術屋さんにお集まりを願いまして、最後の田中調査団の報告をもとにいたしまして検討していただきましたところ、五項目と称しておるわけでございますけれども、過去における中共治下の口蹄疫の発生状況及びその実害、それから撲滅の具体的な経過、それからワクチンの使用状況なり種類なり性状、それから口蹄疫の診断方法、その他疾病の発生状況、そういうようなものについて、中共側に回答を求めるという意味において質問書をMT事務所を通じてお送りいたしたわけでございますけれども、その点についてまだ具体的な回答に接しないということでございますので、先ほど申し上げましたように、口蹄疫なりその他の家畜伝染病というのが国内の畜産業なりあるいは畜産物の流通なり国民生活に相当大きな影響を持つものでございますので、この中共からの肉の輸入につきましては、そういうものについていま申し上げましたような事情が明らかになりませんと、安心して輸入するということにはまいらぬであろうということで、五項目について質問を発しておるという状況でございます。
  254. 近江巳記夫

    ○近江委員 それではいままで言われてきた理由と何ら変わりがないわけですよ。あれだけの報道がなされるということ自体は、政府にやはりそれだけの前向きの姿勢、何らかのそういうような状況の変化がつた、私はこう見ておるわけです。いまあなたがおっしゃった理由なら、もう前からずっと言われていることですよ。しかも、イギリスの口蹄疫の例を出されましたが、中共において現実に発生しておりますか。私の聞いておる範囲では、それは話でありますから何ですが、六年前からそれはない、このように聞いております。田中調査団のその内容も、あなたも読まれたと思いますが、非常に安全度は高いと結論は出ておりますよ。その辺の背景ですよ。それじゃいままでのと何ら変わりがない。何ら前向きの姿勢がありませんよ。
  255. 平松甲子雄

    ○平松説明員 ただいま私がお答えいたしましたのは、今日に至るまで支障になっておった案件は何だというふうに私は理解いたしたものでございますから、ただいままで支障になっておったのは、こういうことでおくれておったということを申し上げたわけです。で、大臣が就任されましてから所管事項について御説明をいたしました際に、中共肉の問題については、かくかくの事情でございますということを申し上げましたところ、五項目について回答を求めるということで、先方から回答が来ないという状況のままほうっておくという形でなしに、確かに畜産業立場から家畜の安全を確保するという意味においていろいろ承知しなければならぬということもわかるけれども、現在の五項目についての質問を発したという状態のまま推移することなしに、何らかわれわれが軸とするような、畜産業に関する安全性の確保ということの目的が達成されるような有効適切な手段がないのかどうか、そういうことについて検討しろという大臣からの御命令がございまして、目下鋭意検討いたしておるということでございますので、現在の段階ではそういう検討をいたしておるということで、新聞の報道で前向きになったということが報道されたのではないかと思います。
  256. 近江巳記夫

    ○近江委員 あなたも早口で、五項目というのがあまり詳しくキャッチできなかったわけでありますが、結局高碕事務所を通じて向こうからそのデータを取ろうとしておる。打っている手はそれだけですか。中共肉がすでにヨーロッパに輸出されておるという事実はあなたは御存じでしょう。どうしてそういうところから実情を調査しないのですか、やっておりますか。
  257. 平松甲子雄

    ○平松説明員 今日までのところ、私どもは中共との間に国交がございませんので、貿易関係についてはMT事務所が日本側と中共側にございますので、このルートを通じて調査をしていただくということをやっておるわけでございます。また、別途この家畜の病気の関係につきましてはOIEという国際機関がございますが、その国際機関の報告書では、中共についてはその発生のおそれありという、事態が明らかでないということのためであろうと思いますけれども、そういうふうな報告がずっと続いておる。それから一九六二年には発生したということは、中共側のほうでもおっしゃっておるようでございまして、口蹄疫という病気の特性といたしまして、大体牛の更新期間が十年周期くらいでございますが、口蹄疫の流行は十年くらいだ。一九六二年に終息をしたということを中共さんはおっしゃっておるわけでございますが、まだそれから六年程度のものである。それから口蹄疫について清浄国といわれておる国につきましては、かりに口蹄疫類似の病気が出ました場合におきましては、牛なり豚なりを殺しまして、焼くか埋めてしまうという対策を講じておるわけでございますけれども、過去三回の調査団あたりの報告を聞きますと、埋めてしまう、殺してしまうということでなしに、牛の自然治癒を待ちまして、自然治癒したものはそのまままた飼養を続けるということでございますので、この口蹄疫という病気はビールスによるものでございますから、そういうような形で飼養しておるということでございますと、完全に撲滅したというふうには理解できないのではないかというふうに心配されるものでございますから、また田中報告を受けてわが国の畜産の技術屋さんに寄っていただきまして話を聞いた際に、そういう点が心配だということでございますし、その集まりで、五項目について中共に確認をして、その上で検討をすべきであるということになったわけで、その結論を踏まえて私どもは中共に聞き合わせておるということでございます。
  258. 近江巳記夫

    ○近江委員 いままで調査をやっている点ですけれども、いかにも何回も政府が積極的にデータをとるように言っていますけれども、前の岡田畜産局長だって一回高碕事務所に電話しただけですよ。あとの資料請求もしない。結局牛肉の輸入だって、真剣にやっていますと、ゼスチュアだけやって、現実にやっていない。そうでしょう。現実にパリの先ほどの機関がありましたが、そこだってほんとうにいままで真剣にやっておったか、資料をとっておったか、中共は毎月データを送っておるのですよ。高碕事務所にだってきておりますよ。それを農林省は手元にありませんだ。高碕事務所にあるんじゃないですか。だからいかにあなた方が中共肉を輸入するなんとか言ったって、そういうかけ声だけで、なぜ真剣にやろうとしていなかったか。私はいまの食生活を考えてみますと、肉の状況なんてこれはひどいですよ。三十二年に牛肉一人一年当たり供給量一・二キロですよ。四十二年だって一・二キロですよ。これだけ食生活が改善されたといいながら、一人当たりは十年間の使用量というのが全然ふえていない。豚は三五四%ふえております。一・三キロから四・六になっている。鶏においては〇・三から二・四キロ、八倍になっております。以上、鶏とかそういうことで間に合わしている。みんな半肉を食いたいですよ。高いから食えない。それに対して政府はどういう手を打ってきたか。結局生産高がそれだけ追いつかない。だから当然これは国民の最も大きな要望なんだ。それをただそういうゼスチュアのような状態で、データを取っていますという。  それじゃ私は聞きますが、あなたはいま五項目と言われましたが、アルゼンチンから肉を入れておりますが、五項目取っておりますか。その他の国はどうですか、この点。
  259. 平松甲子雄

    ○平松説明員 アルゼンチンとの間にはアルゼンチンの政府と協定を結びまして、日本から技術者が参りまして、向こうの家畜衛生状況を調べまして、口蹄疫の発生していない地域、相当な広さの発生していない地域を選びまして、それから牛を殺す屠殺場、それから口蹄疫の菌は熱に弱いものでございますから、なま肉ではあぶないということで、煮沸をするというその煮沸工場を私のほうの技術屋が見てまいりまして、この工場とこの工場ということで指定いたしまして、その工場にほかのものが入らないような、加工する措置をいたしまして、その工場から港まで清浄地域を通って出るという仕組みの取りきめをアルゼンチンと結びまして、その上で輸入をいたすことにいたしておるわけでございます。
  260. 近江巳記夫

    ○近江委員 実際において五項目のデータはないでしょう手元に。あなたはそういうような、問題をすりかえるようなことを言っておりますけれども、手元にはないでしょう。貿易商社などから通じて取っているということを聞いていますよ。中共には五項目のそれを厳格に言って、結局アルゼンチン等からの資料はあなたの手元にはない。やるなら公平にやればいいじゃないですか。そうでしょう。
  261. 平松甲子雄

    ○平松説明員 アルゼンチンにつきましては、アルゼンチン自身がOIEに加入いたしておりますし、アルゼンチンには、通常のアルゼンチンと取引している国は全部自由に立ち入りをいたしまして、おのおの調査をいたしておる。アルゼンチンの家畜衛生上のステータスと申しますか、どういうふうな地位にあるかというようなことについては、中共に問い合わせいたしましたような五項目のようなことはすでに周知の事実になっておるという前提に立っての話でございまして、なおかつ口蹄疫のビールスは熱に弱いということがはっきりいたしておりますので、その熱による処理をいたした上で輸入をする。もし、中共のほうでそういうふうな御要望がございますならば、その点についてはアルゼンチンと取り扱いを異にする必要はないということは、国会でも農林大臣なり局長なりが明言をいたしてきておるところでございます。
  262. 近江巳記夫

    ○近江委員 一つは、アルゼンチンあるいはカナダでも一時発生しておりますね。カナダから豚が入っておりますがその点はどうするか、これが一点です。  それから、ヨーロッパに送られた中共肉、それを輸入しておる諸国のそういう実績ということを、それだけ口蹄疫が危険だというなら、それをどう評価していくか。  それから、戦前青島牛という名前で輸入をしておりましたがあの当時も口蹄疫が非常にはやっておった。ですから現在ビールスの形も全然わからないというようなことは、そのときに関係しておった獣医師なんかに聞けばわかるわけですよ。そんなにビールスの形がばんばん変わるわけじゃないでしょう。その辺のところの結集ができていない。また、口蹄疫ビールスというのが結局そういうような家畜からだけ伝染するのか。これは考えてみればいろいろな貨物が入ってきますし、人体からもやはりそういう危険性もあるわけです。それだけ危険だといいながら、そういう貨物とか人体等に対してはどれだけの防疫措置をとっておるか。  それから最近の試験輸入の問題ですね。いろいろな点があるわけですが、その辺のところを長くならないで簡潔に答えてください。
  263. 平松甲子雄

    ○平松説明員 カナダからの輸入ということにつきまして、カナダに発生をいたしておるということを御指摘になったわけでございますが、私どもはカナダに最近発生したということは承知いたしておりません。  それから、欧州諸国が中共から肉を輸入しておるではないかということでございますが、欧州諸国の中で偶蹄類の肉を輸入しておりますのは、イタリアがここ二、三年輸入をいたしておるということでございますが、イタリアは汚染国として、わが国でもイタリアからの輸入禁止いたしておる状況でございまして、欧州諸国の中ではイタリアが輸入をいたしておる、ギリシアが少量輸入しておるということでございます。  それから、戦争前に青島あたりから輸入をしておったのだから、ビールスについてはわかっておるはずだという御指摘でございますが、ビールス病理学といいますか、ビールスについての研究というのは、電子顕微鏡ができまして初めてビールスについてのいろいろな研究が進んだということでございまして、戦前にはビールスのカビの種類についての研究ということは全然ございませんので、青島牛を輸入しておった時代は、はっきりした知識としてはわが国のほうには残っていないということでございます。  それから、貨物なりその他のもので伝染するということもあるではないか、御指摘のとおりでございますが、これは確率の問題でございますから、そういう事態も起こり得る。たとえば非常に危険な地帯からそういうものが入ってくるということで、そういう事態でも一ぺん起こりますれば、その後その地域からの輸入については、入国については必要があれば人間についてもそういうことをやる。ニュジーランドあたりはやっておる例もあるようでございますから、そういうことも考えられるということでございます。  それから試験輸入の問題でございますが、中共からの試験輸入につきましては、試験輸入の申請が出たということはございますけれども、試験輸入が行なわれたという例は、私ども承知いたしておりません。
  264. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど煮沸肉、これはアルゼンチン等がやっておりますが、そういう非常に危険性があるというなら中共もそうしたらどうか。けれども中共の立場は何もそこまでして輸入してもらわぬでもいいという態度をいままで何回も表明しておるわけですよ。日本が煮沸肉ならどうだ、中共はだめだ、そうしてきた場合、日本は中共の牛肉の輸入ということについては、今後の交渉としてどうするつもりですか。
  265. 平松甲子雄

    ○平松説明員 先ほどお答えをいたしましたように、五項目について回答がこない。回答がこないという状態で停滞しておるということは前向きでないから、何か畜産業についての安全性が確保できるというような有効適切な方法がないかどうかということを検討しろという農林大臣からの命令で、目下鋭意検討いたしておるという段階でございます。
  266. 近江巳記夫

    ○近江委員 それじゃいままでの進展と状況から見て何も進みませんよ。いままでの五項目だって中共はものすごく腹を立てているわけですよ。非常に侮辱したような内容だと現実に言っておるわけですよ。そういう感情を持っておるわけです。ですから、同じような条件をそのままつけておって現在まで解決されなかったが、解決する見込みはあるのですか。ということは、中共肉を輸入しようといっていたって、口だけだということじゃないでしょうか。あなたはどういう手を打ったのですか、向こうから回答がなければ、進展さすために。これは通産大臣それから農林省
  267. 大平正芳

    ○大平国務大臣 まさにそこがわれわれの問題点でございまして、鋭意いま農林省に、ぎりぎりどこまで条件が満たされれば自信が持てるか、そのあたり腹をきめていただかなければ進まないのじゃないかと思いまして、お話し合いをしているところであります。
  268. 平松甲子雄

    ○平松説明員 五項目という形に拘泥するのでは事柄が進まないので検討するということでございますが、先生おっしゃるように、確かに牛肉の輸入ということが牛肉の価格を見ましても必要である、多元的に輸入することが必要であるということは、私どもかねがね頭に持っているところでございます。検討いたしたいということは、大臣指示に従って検討いたしておるところでございますが、ただ私どもといたしましては、国内の畜産業、家畜、そういうものを対象に行政を行なっておるわけでございますから、処女地であるということで、欧州大陸のように口蹄疫にかかっておるという国については、口蹄疫なら口蹄疫の死亡率は五%から二〇%程度で済むということでございますが、日本の場合は、極端な場合は七〇%程度の死亡率になるのじゃないかということを言っておられる方もございますし、それから現在の日本国内の家畜の取引状況は、鹿児島の豚が東京に来るということでございますし、畜産物の国民生活の中に占めるウエートというものは相当高くなってまいっておりますので、もし口蹄疫が入ってまいりました場合に、畜産物の取引を停止する、遮断するというようなことが起こりますと、国民生活に非常に大きな混乱を起こすということもございますので、それと両立させることをいかにして考えていくかということで、目下検討をいたしておるわけでございます。
  269. 近江巳記夫

    ○近江委員 田中調査団の報告書を見れば、非常に安全だ。どんなことでも一〇〇%ということはそれはあり得ない。一〇〇%だいじょぶかといわれれば、それは言えない。だけれども非常に安全である。あれだけの経験を積まれた団長が、それだけの正式な報告書を出しておるわけですよ。そうでしょう。そこまでの状態にきて、いままでのそういう態度、考え方から一歩も域を出ないということは、私はおかしいと思うのですよ。ほんとうに輸入するという気持ちがあれば、もっと前向きの、そこに何らかのそういう方法なり何なりがあってもいいと思うのです。たとえば提案ですけれども、最も安全と見られる最小範囲の地域の牛に限定する。中共の状態もそれは断片的なことしかわかりませんが、国境にまでそういう家畜の侵入、口蹄疫等の侵入を防いでおる、防疫体制としてみれば世界で中共のようなところはない、そこまでのことを報告しておるわけですよ。もちろん内蒙古のほうが多いとおっしゃるかもしれないけれども、第一次としては内蒙古なんか入れなくともいいのじゃないですか。そういう完全であるという一地域、あるいはまた日本側の技術者のそうしたチェック、あるいはまた日本側の輸入港を限定して、厳重な検疫の体制を実施していく、あるいは先ほども話がありましたが、ヨーロッパ諸国のそうした実情調査、何らかの突破口をつくるべきだと私は思うのです。そういう点を通産大臣どういうふうにお考えになりますか。農林省
  270. 大平正芳

    ○大平国務大臣 せっかく農林省がいま苦心して御検討中でございますので、その結果を期待いたしておるところでございます。家畜衛生学のほうの問題は、私は全くしろうとでございますので、責任あることは申し上げられないことはたいへん遺憾に思います。
  271. 平松甲子雄

    ○平松説明員 田中報告書では、確かに中共治下で人海戦術をもちまして特別に努力しておる、この努力というものは世界にも例がないだろう、これは私ども認めるに決してやぶさかではないわけでございます。ただ、先ほども御説明いたしましたように、治療の方法として、普通のところでございますと、殺して焼いたり埋めたりするということで、ビールスでございますからそういうことで絶滅をはかるということでございますけれども、そういうやり方をしないで、生かしたまま隔離しておいて、あと飼い続けるということでございますので、ビールスというものの特性からいたしまして、そういうやり方ではたして安全なのかどうなのか、こちらは処女地でありますだけにその点についての心配をいたしておる。ただ私どもは、先ほどから申し上げておりますように、従来の五項目を固執して返事を待っておるという形では先へ進まないではないかという大臣の御指摘でもありますので、五項目にこだわることなしに、畜産業の安全ということと両立し得るような有効適切な方法がないかということを検討いたしておるということでございます。
  272. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま大臣から前向きの答弁をいただいたわけですが、五項目にただわらずにさらに解決法を見つけていく、私はこれは国民のために非常にけっこうなことだと思います。しかしそうは思っておっても、大体のめどというのは私はつけなければいけないと思うのです。大体あれだけマスコミにも報道されたわけですから、マスコミだって何にもないところであれだけの報道をされないわけですから、それだけの根拠は一はっきり大臣もそれだけの話し合いもされておりますし、非常に前向きと見ております。しかし、そのめどとして、いろいろな問題を解決して十年も二十年もかかるか、あるいは私としてはほんとうにこの時期に輸入をしたい、それまでに五項目の問題それからさらに方法を見つけて解決をしてやっていきたいというお考えは、大体のゴールというものは置いておかれておると私は思うのです。全然そんなゴールもなしにどうだこうだ、それじゃむしろ政府は国民の信頼を失う一方ですよ。そういうわけで、大体の輸入の時期はいつごろのめどを立てておられるか。それから、輸入品目は牛肉あるいはマトンあるいはその他豚等の計画をどのようなものを持っておられるか。それから、数量は大体どのくらいを目ざしておられるか。その二点についてのお考えを聞きたいと思うのですが、大臣農林省から。
  273. 大平正芳

    ○大平国務大臣 まだそこまではいかないわけでございまして、問題は五項目に必ずしもとらわれないが、農林当局として責任が持てる条件はこういうことであるがということが一応出たといたしまして、それを覚書事務所を通じて先方に申し上げて、先方がそれに対してどういう反応があるかというのが当面の踏むべき過程でございます。先方がそれを承知するかしないかわからぬわけでございますから、私どもといたしましては、まず先方に覚書事務所がオファーされる場合にどういうことを申し上げるかという内容をそう遠からないうちに固めていただきたいものだ、そういう考えで進んでおるわけでございまして、具体的な輸入計画云々というようなものは、双方の意見が一致しましてからそういう目標は立てなければならぬと思っております。
  274. 平松甲子雄

    ○平松説明員 めどにつきましては、通産大臣からお答えがあったことと同じでありますから、省略をいたします。ただ、農林省のほうの見当という点につきましては、大臣からの御趣旨も御趣旨でありますし、できるだけ急いでやるという形のものであろうと思います。  それから、どの程度のものをどういう種類でということでございますが、先方からこの前日中友好商社が中共側と協議書を役所の認可つきで締結したという中身を見ますと、牛肉、羊肉合わせまして二万トンということを計画いたしたようでございますが、これはMTルートとはまた別のルートでございますが、牛肉につきましては御承知のとおりIQ物資でございますので、大体いまのところ年間一万五千ないし二万トンを世界全体から輸入するというので、中共について幾らという形のものでは考えておりません。
  275. 近江巳記夫

    ○近江委員 この点は、非常な牛肉の高騰のおりから、国民は強い関心を持っております。政府は、いままで輸入に踏み切りたいという態度をちらりと見せながら、まただめだ、何回もそういう場面があったわけです。いろいろなことが予測はできますが、国民的な立場で、この点は大臣もおっしゃったように、前向きの、必ず結果を出すという姿勢でひとつ進んでいただきたい、このように思うわけです。この問題について最後に通産大臣一言お願いしたいと思うのです。
  276. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま先生が言われたような方向で処理したいものと念願しております。
  277. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、牛肉が出てきましたので、若干の関連質問をいたします。  最近、お正月を控えて、先ほどから問題がいろいろ出ておりましたが、ノリあるいはまたタラとか、カズノコとか、これからそうした国民が必要とするものが非常に出てくるわけでありますが、問題は、これも価格は非常に高騰しております。そこで私は、いろいろ物価問題等委員会で話されたことも議事録を読んでおりますし、いろいろな点で感ずるところがあるわけです。お聞きする前に前提条件として、一つは、先ほどからも問題になっておりましたが、ノリの問題です。あるいはカズノコ、私が申し上げたタラ、一つ一つのそうした質問について非常にあいまいなのです。私はここで、農林省なり通産省なり、その商品について追跡調査をしたか。もしもしておらないとすれば、今後どうするか、この問題をまず一番に聞きたいと思います。
  278. 安福数夫

    ○安福説明員 お答えいたします。一部商品につきましては追跡調査をした例はございますけれども、全般的にそれの徹底的な追跡調査をしたという例はあまりございません。
  279. 近江巳記夫

    ○近江委員 国民がこれだけ値段が高いということで苦しんでいるわけですよ。それをいかに解決すべきか。それを追跡もせずして対策が出るわけありませんよ。部分的なことだけ、自分の守備範囲だけ−もちろん全部関連の守備範囲です。それをほんとうに限定されたその分だけで、どうやって国民的な利益を還元することができるのですか。そうでしょう。これだけ国会でもいろいろ問題になりながら、ノリなどは追跡調査やっておりませんよ。ですから今後早急にその追跡調査をするのかしないのか、まずそれを一番に聞きたいと思うのです。
  280. 安福数夫

    ○安福説明員 お答えいたします。ノリにつきましては、最近新聞紙上でも報道されておりますように、韓国ノリ中心になりますけれども、当然それは国内産のノリとの対比の形で追跡調査をやることになっております。その他の御趣旨につきましては、物価の面からいろいろ流通問題が非常にやかましくなってまいっております。われわれといたしましても、そういう流通問題を解決する一環として、できるだけそういうものは必要に応じてやってまいりたい、こう考えております。
  281. 近江巳記夫

    ○近江委員 たとえばカズノコ等についても、ノリについても、輸入価格と小売り価格が大きな差があり過ぎるわけですよ。これはみな疑問に思っているわけでしょう。だからそうした点も追跡調査もし、さらに流通機構についてもまた考えなければならない点は、このように改善していこうとか、あるいはまた業者に対しても、このようにいろいろ保護していこうとか、やはり傷つくところは手当てをして、そして国民が潤っていく、そういう手もやはり打てると思うのです。いまなぜそれだけ高いかということを聞いていきますと全然時間がありませんから、これはこの次の段階にいたしまして早急にこうした北洋製品——先ほどのタラとかカズノコですね、またノリとかいろいろありますが、これらの商品について、正月は目の前に来ているわけです。どういう対策をとって国民に少しでもプラスを与えていくか、その具体策をここで聞きたいと思うのです。まず農林省から聞いて、それから通産大臣に聞きたいと思います。
  282. 安福数夫

    ○安福説明員 ただいま御指摘にありました品目について具体的に申し上げたいと思います。  カズノコでございますけれども、御承知のとおりカズノコはニシンからとるものでございますが、三十年を境にいたしまして、国内のニシンの漁が非常に激減いたしました。これはまた従来戦前の非常に大衆魚でありまして、三十万トン前後の漁獲があったわけでありますが、三十年前後が一番凶漁でありまして、その後若干生産を回復しておりますけれども、まだまだ消費にマッチするほどの生産になっておりません。三十五年でございますか……。
  283. 近江巳記夫

    ○近江委員 聞きたいことはたくさんあるのです。いままでの経過は次にします。要するに、国民は現時点、高いので困っているわけです。だから応急対策としてどうするか、それをいま聞いているわけです。その中間の問題は今度にしますから……。
  284. 安福数夫

    ○安福説明員 応急対策ということになりますと、カズノコなり新巻きなり、ノリにいたしましても、すべて生産時期がありまして、現時点においてその応急対策として何があるかということでは非常に時期的に解決ができないという問題があるわけであります。ニシンの場合には、三月から、おくれましても七月くらいまでの漁が対象になるわけでありますから、その時点に対策をやりませんと年末対策にならぬわけであります。したがいまして、われわれといたしましては、国内生産の事情も十分勘案しながら、将来に向かいまして、国民、消費者物価との関連も考慮いたしまして、できるだけ輸入量をふやしてまいる、こういうふうな措置考えております。ただニシンにいたしましてもカズノコにいたしましても——具体的にカズノコでありますけれども、現在輸入割り当てをいたしております量が完全に入り切らないという輸入事情であります。本年度の場合にも四百トンの輸入割り当てをいたしましたけれども、従来四百トンをかなり下回っております。本年は幸い四百トンに近い数字の輸入が実現しております。そういう情勢で、海外からの供給のソースもございますので、一がいに輸入をいたしましても、それが解決しないという問題もございます。その次の新巻きにも同じようなことが言えるわけでありますが、これは輸入対策といたしましても自由化品目でございます。したがいまして、大体毎年千五百トンくらいの輸入はコンスタントにあるようでありますけれども、それ以上の輸入は期待できないという状況であります。たまたまカズノコにいたしましても新巻きにいたしましても、本年度国内生産がやや下回っているということで、年末に向かいまして価格は若干反騰してまいる、そういう事情であります。ノリにつきましては、先ほど来いろいろな論議があったわけでございますけれども国内生産がかなり伸びております。戦前であれば最高の場合に十三億くらいの数字でございましたのが、戦後、先ほど来問題になっておりますように四十億くらいの生産が例年確保できる、こういうところまで生産が伸びております。したがいまして、国内の需要量を満たすだけの生産のキャパシティーはあるとこう考えております。いろいろ技術革新もどんどん出てまいっておりますので、将来に向かいまして生産量の確保はできる。ただ物価面の問題で先ほどもいろいろ議論になっておりますけれども、確かにノリの流通の問題、非常に問題があるということをわれわれも十分承知をいたしております。この点は生産団体に対しましても、われわれ十分指導いたしているつもりでございます。先ほども問題がございましたように、ノリの流通についての問題、生産の売り方の問題、おのおの複雑な要素がございます。しかし生産団体としましても、いたずらに高く売りつける、こういう思想で事を処している、こういう実情にはないわけでありまして、本年度のノリの場合にも、姿勢を正すという意味もあり、問屋、流通団体、生産団体、おのおの従来のやり方が変則的であったという反省はお互いに持っております。したがいまして、生産団体としましても、高く売るのではなくて、やはりコンスタントに国民に喜ばれる価格、そういうところを目ざしての、指導者としての指導もやっておるようであります。そういう点の指導に期待を持って物価対策を進めてまいりたいと考えております。
  285. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは、農林省の所管でございますので、通産省で申し上げることはございませんが、政府の一員といたしまして、御指摘のように年末対策、生産面ばかりでなく配給、輸送、そういった手段が迅速的確にとられまして、御不自由がなく越年ができるように希望いたしております。
  286. 近江巳記夫

    ○近江委員 結局、いまとなってはどうしようもないという結論のように思います。いずれにしても、何かずるずると来たような感じが、いまの答弁を聞いておりまして私はするわけです。ですから、できる限り、いまとっさに言われるとなかなか名案も浮かばないと思いますし、もう一度この問題を関係当局で相談していただいて、たとえ小さなことでも国民のためを思って何らかの手を打つ、そういうように前向きの姿勢で行ってもらいたい。そしてまた、これからも毎年こうしたことは年間を通じて繰り返すわけですし、無気力なそういうあり方ではなくて、もっと国民を思った、そういうところにポイントを置いて行政的にやってもらいたい、このように思うわけです。これを要望しておきます。  それから、時間がありませんので、項目的に行きたいと思いますが、一つは、通産大臣所信表明の中でいわれたように、中小企業の問題については、非常に今後力を入れていきたい、このようにおっしゃっておるわけです。中小企業の問題につきましてはあらゆる機会を通じて私も要望してきたわけであります。  ところで、年末になりまして、いつもデータというものを私目にするたびに胸が痛くなるのでありますが、今年度中小企業の倒産というものは戦後最高なんです。十一月末で一万九十三件、前年度が八千二百六十九件、四十一年度が六千百八十七件、四十年度が六千百四十一件、三十九年度が四千二百十二件、三十八年度が千七百三十八件、以下大体千件台です。この十年間さかのぼって急激な増加を示してきているわけです。ですから、この所信表明を見ておっても、確かに構造改善をするとか、いろいろありますが、非常に、中小企業の中でも何か日の当たる場面ばかりを強調したような感じが私はするわけです。陰の中でどれだけ多くの中小企業、零細業者が泣いているかわからないわけです。正月も越せないで路頭に迷うておる人もあるわけです。零細企業とか中小企業はデータに出ないのです。ここにあるのはかなり大きなところなんです。それだけでもこれだけの件数がある。表面に出てないのがどれだけあるかわからない。この陰の、日の当たらないところにどのように今後してあげるか。年末の融資もこのようにやるというデータを私もらっておりますから、ここでわかります。しかし、前年からこれだけのパーセントが出てくる。過去ずっと見てみれば同じパーセントぐらいですよ、これは。去年これくらいだから、いままでのデータが何%増だから、このくらいにしておけばいいじゃないか、そのような感じがするわけです。中小企業はこれだけ倒産に追い込まれている。これでは前回こうであったけれども、これの何倍かの手当てをしなければいけない、年末の融資にしてもそういう積極的な姿勢がないわけですよ。その点、中小企業庁長官も来ておられますし、今後中小企業に対して、ちょうどいま四十四年度予算編成のときでもありますし、基本的なお考えというものを簡単に聞かしていただきたい、このように思うわけです。簡潔にお願いします。
  287. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 簡潔に事務当局からまずお答えをいたします。  お説のとおり、中小企業問題のポイントは中小企業の中の特に日の当たらない層であると思います。御指摘のように、倒産は一千万円以上の負債総額のものは統計がとれておりますが、その下はございません。これではいけませんので、本年度この点はピックアップの調査をしておりますが、来年度は京浜地区におきまして特に集中的に零細小規模層の倒産調査をいたしたいということで予算を組んでおります。これは追跡調査もいたしたい、こういうことでございます。  第二に年末金融でございますが、前年度に比べてそう伸びておらぬではないかという御指摘ではございますが、昨年に比べますと、本年は何といいましても金融はゆるんできております。すでに倒産は六月を境にして八月、九月漸減をしておりますので、現在中小企業金融機関に対します政府融資及び市中金融機関に対します協力要請、この二つをとりましておおむね平穏に越年ができるというふうに考えておりますが、しかし、特に日の当たらない層につきましては御指摘のようでありますので、国民金融公庫を活用し、さらに十一月末に公正取引委員長通商産業大臣連名をもちまして、下請中小企業層に対します取引条件について特に注意するようにという通牒を出しておりますが、そのような手を打ってまいりたいというふうに考えております。ただ、なかなか数が多いので、手のなかなか到達しない層でございますので、一生懸命やっておりますけれども十分ではないという点は非常に反省をしておる次第であります。
  288. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先生も御承知のように、いまの体制は自由企業体制でございまして、計画経済ではございませんから、全部の中小企業対策政府施策に盛るというものではございません。本体は金融にいたしましても市中の金融機関が土台になりまして、補完的に政府がいま企業長官が言われたような趣旨でお手伝いをしておるということでございます。仰せのように、これはあくまでも深い愛情をもって、きめこまかくやらねばならぬことと、それから日の当たらないところを掘り当てていくという行政の心づかいが大事だということは御指摘のとおりでございまして、そのように心がけていきたいと思います。
  289. 近江巳記夫

    ○近江委員 次に大型合併の問題についてちょっとお聞きしたいと思いますが、通産大臣は、過日大臣の就任直後に記者会見において、鉄鋼二社の合併が必要なことは常識だというような意味の発言をなさったわけでありますが、なぜ八幡、富士が合併することが常識であるか、その理由をお聞かせ願いたいと思うのです。
  290. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私は、その合併問題ばかりでなく、行政は本来常識に根ざしたものであるべきだと思うのでございます。したがって、こういう問題について学界等もいろいろ議論があるようでございますし、産業界におきましてもいろいろな議論があるようでございますが、要するに、健全な常識というようなものが生きている限りそう見当はずれの結論にはならぬのじゃないかという意味の感じを申し上げたまでです。
  291. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、その当事者の間で、国際競争力強化するためには企業規模というものを大きくする必要がある、このように当事者は主張しておるわけでありますが、その主張に通産大臣は賛成ですか。
  292. 大平正芳

    ○大平国務大臣 大きくすることによって、いい面も悪い面もあると思うのでございます。きのうも本委員会で御答弁申し上げましたように、私は産業政策の担当者でございますから、産業政策の立場から申しますと、どちらかというと勧迎すべき面が多いのじゃないかという感じを申し上げたのです。しかし、この問題は、産業政策だけに傾斜して結論を出すわけにまいりませんから、公正取引委員会でいろいろな観点から御審理が行なわれておるようでありますから、とやかくただいまの段階で論評を差し控えたい、そういうことでございます。
  293. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、プラス、マイナスいろいろなことはありますが、結論としては、企業規模は大きくなれば大きいほどよいということになるようなお話のように、いま私は聞いたわけです。そうすると、理論的にいくとどうなるかというと、独占形態というのが望ましいというような方向になるのではないか、このように思うわけです。その点はどうなんですか。
  294. 大平正芳

    ○大平国務大臣 必ずしもそう簡単なものではないと思うのです。つまり、規模拡大することによって利益、効果があがる面もあります。それからまた、規模拡大することによって、そういう規模の利益がないものもあります。一がいに、大きくなればいいというものではないと思いまするし、同時に、価格面から申しますと、いわゆる管理価格になるのではないかという懸念もあるわけでございまするから、私は別に独占謳歌論者ではないと思っております。
  295. 近江巳記夫

    ○近江委員 たとえばアメリカのUSスチールなんかを見ても、ことわざにもありますが、大男総身に知恵が回りかねるといいますか、USスチールなんかも、結局効果の点においてはあまり納得させられるものがないわけですよ。そういうような事実がある。ですから、合併が大体常識じゃないか、その辺のニュアンスはむずかしいけれども、この辺がそういう考えでおられるということは、ここで考え直しをやってもらわなければいけない。そうはいっても、むずかしいことばですけれども、その辺のニュアンスは……。
  296. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いや、常識的に考えていいんじゃないかということですよ。合併が常識だという意味ではないのです。
  297. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう意味ですけれども、現実としてむずかしいですね。現在百人以上のそうそうたる経済学者がやはりそうした問題に反対もしているわけですね。通産省なりあるいは産業界はこれに対して、たとえば、学者は、臨床医みたいなものじゃないか、だからわれわれはそうしたものを、ことば悪く言えば負け惜しみというか、そういうような発言もちょくちょく聞くわけでありますけれども、私はそうした反対の学者とかそういう人と堂々と議論をやるべきだと思うのですね。ところがこの間も、これはたしか東洋経済の臨時増刊と思いましたが、座談会を催したわけですね。そのときに、通産省、財界、学者、この三グループの参加を要請したけれども通産省関係は全然参加を得られなかった。こういう事実もあるわけです。私は、こうした場こそ堂々といろいろと議論をやるべきである、このように思うわけです。もう時間がありませんから、私一方的に話をしますが、ここで、通産省の態度というのは、どうも合併の、そうした方向に何か賛成するような態度をいつもとっておるような感じがするわけです。そういう点で、いまいろいろ公取のほうで審査もやっておりますし、その点は中立の立場でいくべきである、私はこう思うのです。この点に関して大臣どう思われますか。
  298. 大平正芳

    ○大平国務大臣 通産省という政府の権力機関でございまするから、これがある意見を発表するということになると穏やかじゃないのでございまして、えてしてとやかく言われますので、あつものにこりてというわけではございませんけれども、今度はみな慎重にこの合併問題についての言い回しは注意しようぜとわれわれ言っておるわけでございます。他意はないのでございます。あなたがおっしゃるとおり中立的なんです。またわれわれの権限でもないわけでございますから。ただ私は、就任したら、そうするとどうしても記者会見をしなければいかぬし、雑誌や新聞等の対談みたいなことにどうしても引っぱり出されるのです。それまで逃げ回るわけにまいりませんから、そのときにそれは聞かないようにしてくれと言うてそれを強制する力もないわけで、結局聞かれるわけでございます。聞かれるときに、私の用語の組み合わせがなかなかうまくまいりませんで、あるいは若干の誤解を与えやしないかと実は自分は心配して薄氷を踏む思いでしゃべっておるつもりでございますが、そういうような点は御同情を賜わりたい。
  299. 近江巳記夫

    ○近江委員 もうすぐ終わりますが、これは御参考に申し上げておきますけれども、本年の経済白書でも、企業の集中が進むと価格は硬直化する、そのようにこれははっきり経済白書の中にも書いてあるわけですよ。あるいはまた学者のそうした弁、そうした点で、いま産通大臣も白紙でいきたいとおっしゃっておりますし、そういう点で業界べったりのそういうような態度がはっきり見えるといえば私も言い過ぎになりますし、その辺のところは、そういう態度を見せない、またそういう態度をとってはならないし、その辺のところをひとつ慎重にやってもらいたい。  それから、物価問題懇談会あるいは経企庁の熊谷委員会のあれを見てみますと、独禁政策は強化する方向が示されておるわけですね。ところが、全体に何かゆるくなるような、そういうニュアンスが最近多いわけですね。ですから、そういう点で独禁政策の強化が必要であるということは、これはもう世論になってきておるわけですね。そういう点で、早急に政府としてはっきりとしたそうした統一を、いろいろと真剣な討議をし、やっていくべきではないか、このように私は思うわけです。白紙というのは全然無責任という立場ではまたないわけですから、その辺のところはわかっていただけると思いますが、そういう点で、合併ということは、国民も物価問題で非常に苦しんでおりますし、大きな独占価格というような問題もありますし、この問題について慎重にやっていただきたい、このように思うわけです。この点を要望いたしまして、これで終わりたいと思います。
  300. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 本日の議事はこの程度にとどめます。  次回は、明後二十日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後六時十八分散会