○
亀田得治君 私は、
日本社会党を代表し、八月三日の
総理の
所信表明に関し、当面の
財政・
経済並びに
外交・防衛に関し若干
質問をいたします。
本論に入ります前に、本日は広島に原爆が投下されて二十三年目になりますが、私は、皆さんとともに、なくなられた多くの同胞の方々に心からの冥福を祈るとともに、
現存被爆者の健康と
生活を守るために、また全
世界から核兵器をなくするために、
全力を尽くしたいと思うのであります。(
拍手)
財政・
経済の分野におきましては、きわめて重要な諸問題が山積しておりますが、これらの問題を個別的に取り上げる前に、まず私はいわゆる
総合予算主義に
反省を求めたいと思います。
すなわち、去月以来
米価問題をめぐって非常な
混乱と紛糾が起き、近く
人事院の
勧告が行なわれた場合においても、同様のことが起こると思われますが、このような
事態が起こるそもそもの
根本原因の
一つは、言うまでもなく、
政府のいわゆる
総合予算主義にあるのであります。現在の
制度のもとにおいては、
米価は忠実に
食管法の規定に基づいて決定さるべきものであり、その結果、
食管会計に赤字を生じた場合には、
政府は
補正予算を編成してこの赤字を補てんする義務があります。
人事院勧告が出た場合も、
同様政府は
勧告を
完全実施する義務があり、当初
予算でまかなえない場合には、当然に
補正予算を組まなければなりません。法律や
制度自体を改めることをしないで、
予算成立後に初めて具体的に決定される未確定の問題に対し、事前に
総合予算の名においてワクをはめてかかるということは、本末転倒であります。(
拍手)
さきに
政府は、
財政硬直化打開の第一歩として、
総合予算主義を採用したのでありますが、
財政の
硬直化自体は、
歴代自民党政府の
責任であり、それを直すには、根本的に今日の
財政の収入、支出全部にわたって洗い直す必要があります。しかるに、そのような抜本的な
手段をとろうとせず、
予算成立後の正当な
理由によって必要とされる支出を、
総合予算の名のもとにこれを押える
やり方は、断じて承服できません。たまたま本
年度の
経済成長率は
政府の当初
見通しを上回ることは確実であり、したがって、租税の
自然増収も相当の額が期待されるのでありまして、
補正予算の財源にもこと欠かないのであります。
政府は、
総合予算の矛盾を率直に
反省し、必要なれば
補正を組むとの
方針に改めるべきだと思います。
一体、
政府は、どんな
事態が起きましても、絶対に
補正はしないと、こういう
考えなのかどうか、
総理並びに
大蔵大臣の
考えを承っておきたいと思います。(
拍手)
次に、
米価問題について
質問いたします。
今年の
生産者米価の決定が紛糾した最大の
原因は、
政府が
日本の
農民と
農業について長期にわたる正しい計画を持っていないことから由来しているのでありますが、それに油を注いだのは、
佐藤総理の
参議院選挙中の公約であります。すなわち、
総理は
選挙中、
農業県に参りますと、
農民が満足する
米価をきめるように言って回ったのでありますが、
選挙が終わったとたんに
態度が変わり、そのために
自民党内においても大きな
混乱を起こしておることは御承知のとおりであります。そのため、
生産者米価の決定は、ついに
臨時国会後、八月中旬までも持ち越されたのでありますが、このようなことは全く前代未聞であります。しかも
総理は、
米価問題があれほど紛糾していても、みずから乗り出して
事態をおさめようともされなかったのでありまして、遺憾のきわみであります。
選挙中の公約といい、その後の紛糾といい、また
最高責任者の
傍観的態度といい、
国民に対して大きな
不信感を与えておると言わなければなりません。(
拍手)
佐藤総理の
所信を伺いたいと思います。
以下、私は
米価に関する重要な
問題点六つを指摘しまして、主として
農林大臣の
所信を承りたいと存じます。
第一に、
政府と
自民党間の
米価に関する交渉の過程で、次々と違った案が出されたのでありますが、七月三十日の
最終案はいかなる
内容のものでしょうか、明らかにしていただきたい。すなわち、昨年の
生産者米価に対し何%アップになるのか、
出荷調整費六十億の
内容、融資百二十億の
内容、さらに、
政府から党に対して
条件として持ち出された
食管制度改革に関する
内容等を明らかにしてほしいと思います。なお、右の
最終案は、結局
交渉決裂のため白紙に戻されたものなのかどうか。この点について同日の
大蔵大臣と
官房長官の
記者会見の記事を拝見いたしますと、相矛盾しておるところがありまするので、確かめておきたいと思います。
次に、米は
食管法によって取り扱われておるのでありますが。結局、それは
政府と
農民間の
売買行為であります。したがって、従来続けてきた
売買条件に大きく変更を加えようとする場合は、事前に、すなわち
作付前にそのことが
農民にわかるようにしなければなりません。そのようなことを怠っていて、
作付も終わり、稲刈りが始まろうとしておるときになって一方的に重大な
条件を変更し、値切るような
やり方は、
農民に対しまことに不親切な仕打ちと言わなければなりません。(
拍手)このような背信的、詐術的な
やり方は撤回すべきものと思いますが、
所信を伺います。
第三に、
政府は今回の
生産者米価算定の
基礎として、
限界農家ではなく
平均農家の
生産費を目標にする
方針を打ち出したことは、きわめて重大であります。すなわち
政府は、
農民に対して、今後は無理してまで米をつくってもらわなくてもよいと言ったことになるのであります。
政府は、いままで盛んに
農民に対して米の増産を求めていたのでありますから、大きな
方針の転換になると思いますが、
政府の
考え方をこの際はっきり示していただきたいと思います。
次に、
各種農産物の
家族労働報酬を比較いたしますと、米が一番高く、しかも安定しているのであります。米に比べると、畜産ははるかに低く、くだものは物によって格差が大きく、野菜も時期的に不安定であります。
政府が
農民に対して他の
作物への転換を希望するのであれば、他の
作物についても安心できる
条件を整えてやらなければなりません。そのような
条件を整えようともせず、いたずらに米作を圧迫し、他の
作物へ追いやることは、結局
農民の所得を全体として低く押えることになるのであります。もちろん
日本の
農業を守り、発展させるには、そのような
価格政策のみにたよることはできません。
日本農業の体質を強くするためには、
価格政策とともに、第一に、草地をも含めて、
農業適地に対し大
規模な
土地改良を実施すること、第二に、
個人的経営規模の拡大にのみ重点を置かないで、思い切った
協同化の推進によって
規模の拡大を行なうことが必要だと思います。
農林大臣は、今回
米作農民に鉄槌を食らわせておいて、どろなわ式にあわてて
総合農政ということを言い出しておりますが、しかし、その中身は明確でありません。この際あわせてその
大綱をお示し願いたいと存じます。
第五に、
政府は
日本における今後の米の需給をどのように見ておられるのでしょうか。また、適正な
備蓄米の量をどのように計算しているのか、明らかにされたい。昨年の大豊作の
原因について、たとえば、佐賀県
農事試験場の発表によりますと、
技術向上による
寄与率が四〇%、好天候による
寄与率が六〇%と言っております。まだまだ悪天候による減収を無視してかかるわけにはいかないのであります。その上、
政府が今回打ち出したように、
平均農家の
生産費を
基礎にする
方針のもとでは、米の
作付は将来減少すると思いますが、それでも
日本に必要な米は、
適正備蓄量も含めて、今後とも自給できるとの
見通しを持っておるのかどうか、
所見を承りたい。
最後に、
食管制度の改革についてお尋ねいたします。米が余るのであれば、それに応じた対策を
考えることは当然であろうと思います。たとえば、米の
生産を合理的に抑制するとか、
外国米の輸入をやめて
配給米は全部
国内米で行なうことにするとか、あるいは
学校給食用に米を使うなど、いろいろ打つ手はあると思います。しかし、そのことは、直ちに
現行食管制度を後退させることに通ずるものではありません。
政府も
参議院選挙中、
食管制度の根幹を堅持することを公約してこられたのであり、また、三日の
所信表明におきましても同じことを言っておられます。
一体、
政府がいう
食管制度の根幹とは何を
意味するのか、具体的にお示しを願いたいと存じます。
特に、七月二十四日、
米価審議会は
農林大臣に対する
建議書の中で、「
マ-ケット・メカニズムを活用する道を開く」ことをうたっております。これはどのようなことを
意味しておるのでしょうか。
政府買い上げ量を制限し、残りの米を
自由米とする、あるいは進んで、
米穀取引所の再開などまで
意味しておるのでしょうか。この建議の意義並びにそれに対する
農林大臣の
所見を伺いたいと存じます。
次に、
公務員給与の問題について
人事院総裁に三点お尋ねいたします。
本年も八月中旬には
公務員給与に関する
人事院勧告が出されることになっております。こまかい数字は省略いたしますが、最近の
消費者物価及び
常用労働者の賃金の
上昇などを
考えますと、今回の
勧告は八%を上回ることは必至だと思いますが、その
見通しを明らかにしていただきたいと思います。
第二に、実施についてお伺いします。すなわち、
政府は
昭和二十三年以来一度も
勧告を完全に実施したことがないのでありますが、これでは
政府みずから
人事院制度を破壊するものであり、まじめにつとめる
公務員の
生活を苦しい
立場に追い詰めているのであります。今年こそはそのような不当なことが起こらないよう
人事院総裁として職を賭してでも努力すべきだと
考えますが、決意のほどを伺います。
第三に、財源についてただしたいと思います。
政府は、本
年度の
予算審議の過程では、
勧告を完全に実施するために
予備費をたっぷり組んだ、こういうふうに説明したのであります。もしその説明のとおりだとすれば、今
年度の
予備費千二百億のうちから
勧告の
完全実施に必要な金額を全額使用して差しつかえないと思うのであります。この点、
人事院総裁だけでなく、特に
大蔵大臣の見解をもあわせて承りたいと思います。
次に、
物価問題について、主として
経企庁長官に四点にわたりお尋ねいたします。
まず、
政府は、本年十月より
消費者米価を八%引き上げる
方針のようでありますが、その場合それが
消費者物価指数に及ぼす影響をどれくらいと見ておられるか。その直接の影響だけでなく、米の場合には諸
物価に対する
波及効果が非常に大きいのでありまして、特に後者の点についての見込みを明らかにしてほしいと思います。
次に、本
年度の
物価上昇率は、
政府の当初
見通しは四・八%でありましたが、とてもこのような線でとめることはできないばかりでなく、人によっては七%くらいには必ずなるというのであります。その
理由は、今年四月、五月、六月の
全国消費者物価指数を対前年同月比で見ると、それぞれ五・二、五・九、五・六%の増となっております。
東京都区部の四、五、六月の
消費者物価指数を対前年同月比で見ると、それぞれ五・一、七・〇、六・〇%の増となっております。このようにすでに
物価は上がってしまっておるのであります。そこへ十月から
消費者米価の
値上げその他が加わるのでありますから、年間で見ると必ず七%ぐらいにはなるというのであります。
長官の
所見を伺いたい。
第三に、
政府の
消費者物価に関する統計は、
勤労者の
生活実態に合わないという点であります。先日、東京都で行なった
世論調査によりますと、一年前に比べて
物価が二〇%以上も
上昇したと感じている者が五九%もおるのであります。すなわち、
政府の数字は全体を平均して出されるのでありますが、その中身を分析すると、
勤労大衆にとっては
物価値上がりの重圧が平均以上にかかっておると思うのであります。この点に関する
長官の
所見を伺います。
最後に、
経済の
高度成長の場合に若干の
物価上昇があることはやむを得ないといたしましても、それは三%くらいが限度だと思うのであります。しかるに、
日本経済の
現状は、
昭和三十六
年度から四十二
年度までの七カ年間の
消費者物価上昇率を算術平均いたしますと五・八%であります。このように
国民は長い
間物価値上がりのために苦しんでいるのであります。したがって、
政府は、この際十月からの
消費者米価の
値上げを思いとどまるか、少なくとも可
処分所得の
伸び率八%の
限度一ぱいまで上げるのではなく、できるだけ低い線でとどめるべきではないでしょうか。
物価問題の
立場から
経企庁長官の
所見を伺いたいと存じます。
次に
外交・防衛問題に移ります。
今回の
参議院選の大きな課題は
安保論争でありました。私はいまこの
選挙の結果についての分析をいたしませんが、
自民党がほぼ議席の
現状を維持できた、それだけのことからして、
安保に対する
総理の
考え方が、
所信表明で言われましたように、
国民大多数によって支持されておる、このような
考えに立って高姿勢に転ずるとしたならば、これは非常な間違いをおかすものであるということであります。(
拍手)
たとえば、
選挙中の六月十四、五の両日に毎日新聞が行なった
世論調査を総合して言えることは、
第一に国を守る
手段としての
軍事力の強化については、これを積極的に評価するものが少なく、反対に、
平和外交推進など他の
手段に対する評価が高まっているのであります。いわゆる
平和志向型が逐次定着しつつあります。
第二に、
外交の
基本姿勢として、
中立ということが多くの人によって支持されております。もちろんこの中には、
武装中立も非
武装中立もありますが、両者を合わせますと、
日米安保条約に依存しようとする者の数をはるかに上回っておるのであります。すなわち、
平和志向型とともに、
中立志向型が次第に定着しておることをあらわしておるのであります。
総理はよく、
外交防衛について、
国民的合意の
必要性を口にされますが、真の
国民的合意に到達するには、為政者が自己の信念を高飛車に押しつけるだけでは不可能であります。そのような一方的な
やり方は、ますます国論を分裂の
方向に行かせるにすぎません。これらの点についての
総理の
所信をまず承りたいと存じます。(
拍手)
次に、一九七〇年における
安保条約の取り扱いについて、
政府はいままで公式には白紙であると説明してきたのでありますが、今回の
選挙戦のさなか、六月十七日に
自民党の正規の機関である
船田安保調査会長は
自動延長論を発表しました。この
船田会長の見解は、一九七〇年問題に対する
自民党の
方針として理解してよいのかどうか、
総理の
所見を確めたいと思います。
次に、
米国の
スナイダー日本部長が、ことし三月二十五日の
米国下院歳出委員会対外活動小委員会において行なった証言問題についてお尋ねいたします。
すなわち、その証言によると、「
佐藤総理が当地を訪問したとき、
大統領は、
沖繩の
返還について、何らの約束もしなかった」というのであります。ところで
総理も、この問題については、従来、
共同声明のみを根拠にして、「両三年のうちに
返還の時期についてはっきりできる」、こういう説明をしてきたのでありますが、
共同声明をそのまますなおに読む限りでは、「両三年のうちに
返還の時期についてはっきりできる」ということは
総理の一方的確信であって、いわゆる約束というものではないのであります。
スナイダー発言はまさしくそのことをはっきりと証明したものと言わなければなりません。ところが、新聞の報ずるところによると、
総理は、最近七月二十六日の
首相官邸における
知事会議の席上、再びこの問題に触れ、「両三年以内にめどをつけるという点は
大統領も了承した」旨述べたようであります。
一体、
総理は、
共同声明にははっきり書いてないが、この点について
大統領も承認しておる、合意ができておる、こういう
意味のことを言われようとしておるのかどうか、明確にしてほしいと思うのであります。(
拍手)
さらに同じ場所における
スナイダー証言によりますと、「従来からわれわれの基本的な
方針は、将来のいずれかの時点で
沖繩を
返還するとしても、
基地をそこに維持しておきたいということであった。この二つの点は区別されるべきである」と言っております。この
基地の維持とは、もちろん核を含む
沖繩基地の
現状維持の
意味と解されます。ところが、今年七月五日、
佐藤総理は、
千葉県庁で
記者会見を行なった際、「私どもは
日米間の
友好関係を
基礎にして
沖繩問題を話し合っていきたい、一部の野党のように、
本土並みと言っていては話にならない」旨語ったのであります。このような
発言は、相手の
米国側から見れば、外務省の
高官諸君の
発言と同様、
佐藤総理も
核つき返還を了承しておると受け取りかねないのであります。結論的に念を押したいと思いますが、
総理は、
核つき返還になってもいたし方ない、腹の中ではそう
考えておるのではないでしょうか。本日は
原爆記念日、この日にここで
核つきの
沖繩返還はいかなる
事態においても絶対認めない、こういうことをはっきり言い切ることはできないのでしょうか。(
拍手)
なお、
沖繩問題について、つけ加えてお尋ねいたしたいことは、
沖繩代表の
国政参加の問題であります。今秋の
沖繩主席選挙ともからんで、いろいろ情報が乱れ飛んでおりますが、次の二点、すなわち、第一に、この問題はいつごろまでに結論が出せる
見通しか。第二は、
国政参加の
内容でありますが、完全な資格を付与することを
考えているのかどうかという点についてお尋ねをいたします。
次に、私は
基地問題に触れたいと思います。
現在、
在日米軍基地で多くの事故が発生しております。騒音、
放射能汚染、墜落、
電波障害など、枚挙にいとまありません。その結果、
板付基地をはじめ、全国的に
住民及び地方自治体から
基地移転の要請が出ております。しかし、この問題は
移転先住民の強い反対が予想されるのであって、その
解決は容易でないと思います。結局、
政府としては、
基地公害に悩む
住民の要求を尊重するのであれば、
基地の移転ではなく、端的にその撤去を求める以外に
解決の
方法はないと思うのでありますが、
総理はどのように具体的に
解決しようとしておられるか、
所信を承りたい。
この際、私は、
総理に対し、
戦争の
原因及び
米国の
アジア政策について
所信を伺います。
総理はよく口では平和に徹すると言われますが、今日の
戦争の
原因を突きとめ、それを除くために
全力を傾けるのでなければ、真に平和に徹する
態度とは言われません。
私の
所見を端的に申しますと、特殊な場合は別として、今後の大きな
戦争は原則として
体制間の問題として持ち上がると思います。ある国が
資本主義体制から
社会主義体制に移行する、あるいはその逆の場合に、両
体制側からの働きかけ、介入が行なわれやすいのであります。それはいつでも大戦に発展する要素を持っております。このような
戦争を防止するためには、
世界の各国が
民族自決を絶対の原理として確認し尊重する必要があると思うのであります。この
民族自決は、今日では、単なる政治上の概念、原理ではなく、
国際法の中で実定法としての
権利にまで成長しているのであります。
民族自決がこのように
権利としての
国際法上の地位を獲得するに至った
理由は、それが
世界平和維持の上で最も大切な
基礎と認められたからであります。ある
民族がどのような
政府をつくるか、また、どのような
方法でそれをつくるのかということは、その
民族にまかすべきであり、
民族固有の
権利であり、たとえ
他国から見てそれがおもしろくない
方向を目ざしているとしても、介入する
権利はありません。このようなことは当然のことでありますが、この当然のことがおかされようとするところに
戦争の危機が生まれるのであります。
第二次大戦後
アジアにおいて起こった
戦争、すなわち、
朝鮮戦争、
米中紛争、
ベトナム戦争は、すべて本来その
民族が独自に決定すべき問題に
他国が介入したことから発生したものであります。すなわち、これらの地域は、自然の成り行きにまかしておけば、その全体が
社会主義国となったのでありますが、
米国は
軍事力を使ってこの
方向をねじ曲げようと決意し、これらの
民族を分断し、その一方を援助したことが、これらの地域における
戦争の最大の
原因であります。
米国はその
軍事行動を起こすためにさまざまの
理由を並べ、あるいは
社会主義国の侵略を宣伝し、あたかも自由を守るために犠牲を払っているように唱えるのでありますが、
米国が
資本主義体制維持のために、他
民族の問題に介入し、
民族の
自決の
権利を侵害していることは、客観的事実として明白と言わねばなりません。(
拍手)
昨年の
総理と
ジョンソン大統領との
共同声明において注目すべきことは、
総理がこの
米国の
アジア政策に完全に同意していると思われることであります。
総理もまた、
アジアにおいて
社会主義国ができることに対し、力をもってしてでも介入してよいとする
米国の誤った
方針に心の中でひそかに同調しているのではないでしょうか。
しかしながら、最近、
米国においても、
ベトナムで手を焼いた結果だと思いますが、ようやく
他国の内部問題への介入に対する
反省が生まれているようであります。これは
一つの前進であると思います。
総理がほんとうに平和に徹するというのであれば、正しい
意味で
民族自決権を尊重し、
米国の出過ぎた
アジア政策に対し逆に忠告するとともに、
日本自身としても、北京、ハノイ、平壌、これらに対する非友好的な
政策を改めるべきではないかと存じますが、
総理の
所見を伺います。(
拍手)
最後に、
都市問題につき簡単にお尋ねいたします。
言うまでもなく、政治の目的は、究極において、
国民に人間らしい
生活を保障することであります。そのような
立場から見る場合、いまや
都市問題は一刻の猶予もできないほど緊急の課題であり、その
解決がおくれれば、ついには手の施しようもなくなるでありましょう。
自民党は、今次
参議院選に臨むにあたり、五月二十七日、
総務会の承認を取りつけ、
都市政策大綱を発表したのでありますが、
自民党の総裁たる
総理は、これをどのように実行しようとしておられるのか、伺いたい。なかんずく、私は、第一に、これらの盛りだくさんな計画についてどこから着手されるのか、第二に、この完成には何年ぐらいかかる
見通しなのか、第三に、
資金量はどれくらいかかると見ておられるのか、
大綱でけっこうですから説明していただきたいと存じます。
この際、私は、
自民党案を拝見し、大きな疑問を抱いた点につき
一つだけ指摘し、
総理の
所信を伺います。すなわち、
自民党案によると、
都市改造の
基幹的部分については、国が直接これに取り組むが、その他の大部分、たとえば、
高層共同住宅、
有料道路、
産業関連港湾、
工業用水、下水道などは、可能な限り
民間開発業者に行なわせる。そして、そのために、
都市改造銀行をつくり、債券の
発行権を与え、国庫から
利子補給も行なって、
民間開発業者への資金をつくり出そうというのであります。もしこのような
やり方がとられますと、結局、それは企業の
立場が優先し、企業のために好都合な
都市づくりとなり、
住民のための
都市づくりという最も重要な点が軽視されかねないのであります。そして業界が必要以上に
都市行政に介入することにもなると思うのであります。私は、
都市の
開発整備の主体は、今年五月二十九日、
社会党発表の
都市再建綱領が主張するごとく、あくまでも
地方公共団体の
責任とし、国がそれを援助するような
方法で進めるべきだと思うのでありますが、
総理の
所信を伺いたい。(
拍手)
以上、私の
質問は、はなはだ多岐にわたりましたが、再
質問の時間もないようでありますから、それぞれ明確にお答えくださるようお願いをいたしまして、質疑を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君登壇、
拍手〕