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国務大臣(
増田甲子七君) 旧軍のことを言うのは、ほんとうは
自衛隊にとってよくないことでございますけれども、御参考に申し上げまするが、明治以来今日まで治安出動することは、旧軍時代にございましたので、
自衛隊法七十八条が規定してございますが、教範というのはない。一般隊員の教範というのは治安出動に関してはございません。たとえば昔のことはちょっと例としてはよくないのでございまするが、戒厳令等の場合に出兵をすることがございます。その場合の教範はございません。地方
長官の要請あるいは内務大臣の要請により出兵をすることがございます。国内治安の維持のために出兵することがございますが、その場合でも旧軍時代は教範がございせん。
旧軍と
自衛隊は性質が違いまして、必ずしも例にならないわけでございますが、
自衛隊になりまして七十八条、治安出動の規定がございまするが、これに対する
訓練はしておく。これは衆議院において私が、非常に治安出動をする対象というものは、そのケース、ケースが多種多様であるということは、与野党の諸君いずれも認めておるわけでございまして、大は間接侵略から小は
——と申しましても、七十八条によって出動する場合の小でございますが、そういう場合まであります。でございまするから、これに共通する最大公約数としての教範ということはあり得ないということをいまもって私は考えております。
それから
自衛隊法は昭和二十九年にできたわけでございまするが、旧安保条約には内乱条項というものがございまして、一国もしくは数国の思想干渉に基づく内乱、暴動、騒擾等でもって、
政府の明瞭なる要請があれば、米国の軍隊は出動する、これはいわゆる治安出動でございます。そういう条項は新安保条約によって削除されております。しかしながら、間接侵略というようなものは旧安保条約には明瞭に規定されてございまして、
米軍すら出動するといったような大規模なものもありまして、現象的には直接侵略と何ら異ならないというものもあり得ると私は思います。たとえば
飛行機のしるしを消して日本に侵入してくるというような場合は、これはそういう場合もありとすれば、間接侵略でございます。その場合にやはり直接侵略に対処するような方法の教範が要るのではないか、少なくとも心得が要るのではないかと私は考えております。
自衛隊法におきましては七十六条に直接侵略のことを書いてあるだけでございまして、今度は、
自衛隊法は昭和二十九年にできたのでございますが、第一回の安保条約においては、
米軍は間接侵略の場合といえども出動することがあると書いてあるにもかかわらず、
自衛隊法七十八条には、間接侵略並びに警察力をもってしては維持することが困難であるという事象に対しては、内閣
総理大臣は
自衛隊の出動を命ずることができる、いわば、十ぱ一からげに書いてあるわけでございまして、侵略戦争類似の間接侵略と、それから国内の外国の思想もしくは干渉に基づかざるものであって、大規模でないものというようなものを一緒くたにして七十八条を書いてあることは、これは立法論上問題ではないか。
私が教範を研究する、教範というものは一体あったほうがいいか、ないほうがいいかということを、ただいまのところ私は教範をつくる意思はございませんということを前国会で申し上げたことは事実でございます。しかし、これはやっぱり真剣に私は
検討しなくてはなりませんから、
検討の過程において、立法論上も問題が出てきたということでございます。間接侵略等の場合は、多くは、いま二百二十の直接侵略に対処する教範がございまするが、その教範を準用するといったような形でなければ治安は維持できないのではないかという印象を、私が勉強した結果持っております。それから、間接侵略以外の内乱、暴動、騒擾等の場合は、一般警察力が不足の場合にこれを補う意味において出動する、それはそういう場合もございましょう。それに対する規範というものか、心得というものは、いまのところ、国家公安
委員長と
防衛庁長官との協定がございます。それから、赤城宗徳さんが
防衛庁長官のときに、昭和三十五年に出しました、治安出動に対する治安出動時における訓令というものがございます。この訓令にのっとってあらゆる現象に対処するというわけでございまするが、この協定なり訓令もカバーできないようなこともある。すなわち、警察との協定によるというと、治安出動してももっぱら警察の後拠を支援をするということが書いてございまするが、これが間接侵略をも含むものとすれば、これは非常に
事態をよくわきまえていない協定ではないか。警察の機動隊が間接侵略にもっぱら対処していく。それから後拠支援として
自衛隊が補給的の活動をするというようなことは、間接侵略に対してはおもしろくない。私は、国内治安の維持、また、日本を含む世界全体の平和と安全を保持するたてまえから、警察力の後拠支援をもっぱらするというような約束は、
事態によってはそういう約束にならない場合もある。
事態は非常に、野党の諸君もおっしゃっておりまするが、複雑多岐である、また、事柄が非常に違うのであるということでございまして、勉強すればするほど、間接侵略に対しましては、間接侵略並びに国内における間接侵略でない、警察力をもってしては不足な場合に対処するものを、十ぱ一束にして教範というものをつくることはよくないという印象を持っておるわけでございます。そこで心得というものをいま研究しておりまするが、特に峯山さんに対するお答えになりまするが、七月中にはまだできておりません。まだ勉強中でございます。