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1968-08-09 第59回国会 参議院 石炭対策特別委員会 第3号 公式Web版

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  1. 当面の石炭対策樹立に関する調査 (会議録情報)

    昭和四十三年八月九日(金曜日)    午前十時十三分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         阿具根 登君     理 事                 鬼丸 勝之君                 川上 為治君                 大矢  正君                 藤原 房雄君     委 員                 石原幹市郎君                 剱木 亨弘君                 徳永 正利君                 西田 信一君                 二木 謙吾君                 松平 勇雄君                 吉武 恵市君                 米田 正文君                 小野  明君                 小林  武君                 森 元治郎君                 片山 武夫君                 須藤 五郎君    政府委員        通商産業政務次        官        熊谷太三郎君    事務局側        常任委員会専門        員        小田橋貞寿君    説明員        通商産業省鉱山        保安局長     西家 正起君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君    参考人        北海道炭鉱汽船        株式会社社長   原  功一君        北海道炭砿汽船        株式会社保安部        副部長      和田 秀雄君        日本炭鉱労働組        合副委員長    我妻  勇君        日本炭鉱労働組        合北海道地方本        部政治局員    竹内 重雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○当面の石炭対策樹立に関する調査  (北海道炭砿汽船株式会社平和炭鉱における坑  内火災事故に関する件)  (炭鉱災害防止のための緊急対策に関する件) ○継続調査要求に関する件 ○委員派遣承認要求に関する件     —————————————
  2. 委員長(阿具根登君)(阿具根登)

    委員長(阿具根登君) ただいまから石炭対策特別委員会を開会いたします。  当面の石炭対策樹立に関する調査を議題とし、前回に引き続き、北海道炭砿汽船株式会社平和炭鉱における坑内火災事故に関し調査を行ないます。本日は、お手元に名簿を配付してございます参考人方々の御出席を願い、本件の調査を進めます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  参考人方々には、御多用中にもかかわらず、本委員会のために御出席くださいまして、まことにありがとうございます。厚くお礼申し上げます。  なお、本日の議事の進め方でございますが、最初に原参考人及び我妻参考人から今回の事件に関し御発言をいただき、そのあと委員からの質疑に入っていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  それでは、原参考人からお願いいたします。
  3. 参考人(原功一君)(原功一)

    参考人原功一君) ただいま御指名を受けました原功一でございます。資料はお手元に差し上げてございます「平和炭鉱災害報告」でございますが、少し詳し過ぎますので、かいつまんで私からお話申し上げます。  去る七月三十日、当社平和鉱業所平和坑におきまして発生いたしました事故につきまして、とうとい殉職者九名を数え、行くえ不明者二十二名を出すに至りましたことは、両議院、関係官庁並びに関係先の皆さまに多大の御心痛と御迷惑をおかけいたしまして、まことに恐縮の至りでございます。ここに衷心より深くおわび申し上げます。また、本事故発生につきましては、本委員会よりさっそく調査団を御派遣くださいまして、現地を御調査くだされ、お手数をわずらわしましたことを御礼申し上げます。  事故の概要を申し上げますと、七月三十日午前三時五十分ごろ、平和坑西部ベルト斜坑、第二原動機付近におきまして坑内火災が発生したものでありまして、同時刻ごろ第二原動機風下におりました西部第一下段ロングゲート第一ダブルチェーンコンベヤー運転手野村運転手ベルトゴムの焦げるような臭気を感じまして、西部ベルト運転手伊藤鉱員電話連絡いたしました。この伊藤運転手が直ちにベルトを停止いたしまして、同ベルト斜坑をおりていきましたところ、前述いたしました第二原動機付近白煙が出ていたので、ゲート連絡のため再び第一原動機に戻りました。また、同時刻ごろ西部第二ガス抜き坑道におりました斉藤係員鉱員六名とともに昼休み中、この臭気に気づきまして第二原動機付近に走り、煙を発見いたしましたため、直ちに上方の第一原動機室にまいりまして、先ほど申し上げました西部ベルト伊藤運転手消火ホースの用意を命ずるとともに、各所に電話をかけまして呼び出しを行ないましたが、応答がなかったので、電話による非常信号を送ったが、この時刻は四時五分ごろだと申しております。その後両名は消火作業に入りましたが、煙のため果たせず、再び第一原動機室に戻って第二回目の電話による非常信号を鳴らし続けたのであります。この非常信号を鳴らし続けたことによりまして、手の指はまっかに現在もはれ上がっているそうでありますが、この電話による非常信号と申しますのは、普通電話に使っている電話を連続回転いたしまして、それが拡声機によりまして非常信号に変わるものでございますが、この時刻が四時十五分ごろと申しております。さらに採炭場ゲートにおりました山村係員臭気を感じまして第二原動機に向かったが、煙が多いために引き返しまして、付近におりました係員鉱員等を引率いたしまして、坑口方向退避指示いたしました。そうして坑口方向に向かっております。そうして事故上司近藤主任報告いたしましたが、このときはすでに火災の発生しておる西部ベルト斜坑は煙のため進入困難となっておりましたので、係員に命じまして、午前五時五分ころ上司報告せしめたと申しております。連絡によりまして、坑務所より非常警報による電話連絡を午前五時二十分に行ないました。次いでメルカプタンによる退避指示を発しました。メルカプタンと申しますのは、非常にくさいにおいのするもので、風上から風下に向かってその臭気を流がす警報装置でございます。  その後、午前五時三十五分、救護隊を招集するとともに、対策本部を設置いたしまして、同日午前六時四十五分救護隊を入坑させまして、消火作業を行ないました結果、午前七時三十分ごろ、先ほど申し上げましたベルト斜坑の煙が晴れましたので、水による消火の結果、七時五十五分、一応消火いたしましたのですが、その直後午前八時ごろ天盤の矢木が類焼のため、坑道の一部が崩落いたしまして、入気側よりの救護隊進入は困難となったのであります。このため、救護隊排気側より進入を開始いたしまして、順次九名の遺体を収容したのでございますが、煙と高温に妨げられまして、その後の救出作業は困難をきわめております。風管通風方法による煙の排除が限度に達しましたため、八月一日以降は風管通風をやめまして、坑道張り分け方法というのに切りかえまして、救出全力を注いでおりますけれども、遺憾ながら坑道張り分け作業高温と煙のために視界がほとんどきかない。いまだ二十二名が坑内に残されている状況でございます。  お手元に差し上げました平和炭鉱災害報告書の四ページをお開き願います。そこに当日三番方の番割り配置の図面がございますが、当日平和坑の三番方入抗人員は、職員が十八名、鉱員が百九十五名、組夫が十五名で、計二百一十八名が入っておりました。そのうちこの場所西部区域には、その表にございますように、三番方番割り配置は総計六十五名となっております。そのうち脱出者が三十四名でございます。そうして残った者のうち罹災者が九名、行くえ不明二十二名、合計三十一名というものが、罹災者並びに行くえ不明の合計でございます。  この大災害に際しまして、会社側といたしましては、今後どうしたらいいのかという点で、ございますが、第一に、この事故が通常考えられない個所からの火災発生によりまして、火災発見が非常におくれたこと、第二番目といたしまして、一たん火になったら意外とベルトの延焼が早かったこと、第三番目として、災害の程度の判断に誤算があったのではなかろうかということ等の悪い面が重なりまして、一面の煙の中で適切なる処置がとれなかったこと等が、かくも大きな災害を起こしてしまったことを考えまして、会社は今後は坑内監視体制強化いたしまして、早期に事故発見をはかるとともに、事故発生時の警戒連絡体制を一新する必要を痛感いたしました。ただいまお話し申し上げましたように、電話機による非常信号と、メルカプタンによる退避指示も、ともにこの場合役に立っておりません。特に電話機による非常信号でありますが、これは係員の話ですと、まず電灯が消えた、それから非常信号を四時五分ごろ送った、この場合非常に非常信号のベルが重かった、重い場合はなかなかうまく通じていないんだというような感覚を持った、こう言っておりまして、それであやしいので第二回目の指示も行なった。しかし、いままで逃げて来た者の聞き取りをやっておりますが、だれもこの信号を聞いておりません。したがって、これは電灯線が切れたと同じように電話線不通になってしまった、何かの原因不通になってしまったとしか思われません。またメルカプタンも、ちょっとおそい時間に発しておりますけれども、これを風上から発して風下に流していく場合は有効でございますが、このように煙の立ち込めたところではどうにもならぬ、こういうことがよくわかりました。そのために坑内無線電話活用をはかろう。この坑内無線電話につきましては、すでに災害発生前に気がついておりまして、いま平和坑で試験の最中でございます。どうしてもこの坑内無線電話に切りかえなければならないということを強く痛感いたしました。できてしまってからまことに申しわけない次第ですが、もう少し早くこれを取り入れておったらと考えております。さらにとっさの場合にも役立つ退避訓練実施しなければならぬということを痛感いたしました。COマスク定置式のものが西部区域に二百二十五個ございました。平和炭鉱全体では九百十五個となっております。行くえ不明者二十二名はわかりませんが、脱出者並び罹災者のうち数名の者が携行しておるだけで、あとはこの定置式COマスクを持っておりません。初めは全員持っておりませんと御説明申し上げましたが、その後聞き取りの結果数名は持っておりました。しかし、だれもが使用しておりません。生存者に聞きますと、なぜ使用しないかといいますと、逃げるだけが精一ぱいでそんなものは考えられなかったと申しております。そのために実際に役立つ訓練の必要を痛感いたしました。  当社は社員、鉱員教育の必要を痛感いたしまして、昨年九月から本部の中に教育係を新設いたしまして、さらに人事部の中に本年四月から教育課を設けまして、山元の人事課の中には教育係を置きまして、本年四月から人事部保安部一体となって教育を進めてまいりましたが、それも早急に効果のあがるように研究をいたしたいと思います。いまだ人命救助に追われておりまして、確たる会社のとるべき態度もあまりはっきりいたしておりませんが、今度こそかかる災害を起こさないように会社全力をあげて、さらに徹底的な保安施策教育に万全の対策をいたす決意でございますので、関係各位の御指導を伏してお願い申し上げる次第でございます。  なお、今般とうとい犠牲者となられました九名の方々及びその御遺族、並びにいまなお坑内に残置されておる二十二名の方々の御家族に対しましては慰めのことばもありませんが、会社といたしましては誠意をもって対処し、できるだけのことをいたす所存でございます。  なお、技術並びに保安面につきまして、詳細な点につきましては、当社佐野社長生産部長保安部長、いずれも救出作業に当たっておりまして、本委員会出席できませんが、本日私のほかに参考人としてここに出席しております和田保安部部長がおりますので、答弁をいたさせるつもりでございますので、御質問がございましたら、御遠慮なくおっしゃっていただきたいと思います。  以上を持ちまして、おわびかたがた、ごあいさつを申し上げます。
  4. 委員長(阿具根登君)(阿具根登)

    委員長(阿具根登君) ありがとうございました。   では、次に我妻参考人にお願いいたします。
  5. 参考人(我妻勇君)(我妻勇)

    参考人我妻勇君) 日本炭鉱労働組合委員長をやっております我妻勇でございます。同時に、今度の平和炭鉱災害にあたりまして、現地災害対策委員長をつとめまして、直ちに現地にまいって、つぶさにこの災害状況についてその対策問題点をとらえて今日まで努力してまいりました。この災害にあたりまして、非常にお忙しい中を先生方には現地までわざわざ調査に行っていただいて、さらにまた非常に御懇切な御指導をいただきましたことを心から厚く御礼を申し上げます。  災害の概況と経過については、いま経営者のほうから述べられました内容について相違ございません。私はその災害問題点とその対策という点についてここで申し上げたいと思う次第であります。  第一に、この炭鉱災害でありますが、最近非常に多くの災害が発生しております。その災害の発生しておる原因等については、保安当局のほうですでに発表いたしております監督官活動状況、この中に明らかなとおりでありますが、ちなみに、その一例を申し上げますと、昭和三十七年の第一次抜本策政府石炭政策として出発いたしました三十七年当時の災害件数に対しまして、四十二年度の災害件数、あるいはまた監督官指摘件数というものは非常に多くなっておる事実を私たちはこの場合に見のがすことができないと思うわけであります。三十七年当時の山の実数は、炭鉱数は六百八でございます。現状、四十二年の末では百六十五という数字に相なっております。人員については炭鉱労働者が十五万九千四百八十五人であったものが、すでに今日では九万二千百五十人、能率にいたしまして二十四・九トンという能率が、これが四十二・五トンと、実に倍率を数えるに至っております。したがいまして、このような状況炭鉱合理化が推移してまいりましたが、三十七年度におけるこの炭鉱保安監督官指摘件数に対して、しかも四十二年度における指摘件数が非常に多くなっておる事実を私は残念ながら申し上げざるを得ません。しかも、この坑内火災関係する保安監督官違反指摘件数というものは、四十一年におきまして三百九十九件という件数を数えております。そして四十二年度において、なおかつ三百五十三件の件数を数にておるわけであります。支柱規格違反件数に至っては実に三千二百件というような違反個所指摘があるわけであります。しかも、この防火構造、あるいはまた爆発の伝播防止施設作業場、通行個所可燃性ガス、散水、通行遮断、必要な通気量、こういうふうなものも相変わらずその件数が多くて、全体的に炭鉱数が先ほど申し上げたように減っているにもかかわらず、このような件数を数えていることが非常に大きな問題点一つとして、いわゆる現状における炭鉱合理化内容を如実に物語っている問題点一つだと思っております。  第二は、今度の平和坑火災の問題でありますが、平和坑火災といえども、この問題に関係しないとは言いがたい、こういうふうに私たちは考えております。いわゆるこの火災場所というのは、これはベルトコンベヤーの原動機付近とされておりますが、しかもこの原動機という——そういうふうな坑道では千立方の風が通っておるわけであります。この坑道の大きさは特号坑道でありますから、加背にいたしますと、多少地圧で変化いたしておりましても、現状では二メートル七十の高さの坑道であります。その坑道に干立方の風が通っておるわけでありますから、一たんベルトに火がついた場合、どういうふうな状態になるかということは想像できることと思います。したがって、この場合における問題点一つは、リモートコントロールをしておる、いわゆる無人原動であったという点が一つであります。  炭鉱は日増しに窮状の一途をたどりまして、あらゆる手段を講じて、今日のこの炭鉱経営を継続しておるわけでありますが、その過程には、このような合理化が進められておるわけであります。したがって、この現状というのは、実際に災害が起きて、それが入気側運転手がおるために、排気側におけるところの——排気側のほうに通気が行っておりますから、その関係でここで火災が起きても、事実上これに気がつくというのは時間的な差がございます。風下におる者がこの発見をしなければならない、こういうふうな状況にあったわけでありまして、この災害に気がついたときには相当な手おくれになっておるのはこういうような事実からであります。しかも、ここの中で問題点の二として数えられるのは、不幸にして災害が起きたわけでありますが、この災害発見と同情にとった措置であります。あの発見と同時にとった措置は、坑内火災というこういうような性格からして、当然直ちに待避命令でなけりゃならなかった、こういうふうに私たちは考えております。これか待避命令でなくして、いわゆる上司に対する報告とその指示、しかも、いま経営者側から発表されましたように、電話機の故障、こういうふうな事情の中で、しかもこの連絡に一時間二十分を経過した、この時間差の問題点であります。非常にこのような坑内状況の悪い中で、貴重な一時間二十分という時間が今日の大災害につながった、こういうふうに私たちは考えております。したがって、直ちにそこの発見と同時にとるべき処置がこれがとられてなかったところに問題点がひそんでおるというふうに考えております。  それからいずれにいたしましても、この場合における連絡系統というものが、あるいは非常時の場合におけるそういうふうな配置状況が完全であったのだろうか。完全であったとしても、そのことに手落ちはなかったのだろうか。日常の訓練というものが完全になされておれば、そういうふうな配置されておる人員の緊張というものが、これが日常続けられ、しかも監視体制になければならない。残念ながらそういうふうな結果になった事実をもってしても、これらにはやはり問題点があった、こういうふうに判断をせざるを得ないわけであります。  第三には、この連絡と同時にとった救護隊出動までに至る経過であります。これもこの時間に書いてありますように、二時間半を経過いたしております。今日私たちは一般の火災を見ても、あるいはまた炭鉱を想像するにむずかしくないデパートの火災状況を見ても、えんとつ状況になっておるという火災の激しさや、その結果起きてくる災害等判断してみた場合、二時間三十分たって、しかもここの坑道における多量の通気、先ほど申し上げましたような千立方の風の通っている状態の中で、はたして坑道はだまってこの時間を見過ごしているわけがないと思うのであります。したがって、このような状況の悪化に拍車をかけていったような状態であり、したがって、私たちはこういうふうな問題点をとらえてみると、まず第一には、災害を起こした原因、不幸にして起こった場合の措置、こういうようなことを考えてみたときに、それらの問題に対する私たちなりのこの問題点を考えて、次の対策というものを考えざるを得ません。したがいまして、私たち現地に直ちにかけつけてくださった藤井政務次官に、次のような問題点を私たち労働者側の要望として申し上げているわけであります。  第一には、坑内機械化並びに電化に伴って火災危険性が増大しつつあるわけでありますから、抜本的な防火耐火対策強化をはからなければならない。こういうふうなことが第一点であります。第二点目は消火設備の充実をすることであります。坑内における消火設備は旧態依然たるものがございます。坑内消火機器の開発を含めて徹底した対策を講ずること。こういうように私たち問題点の二を申し上げておきます。第三番目は、保安対策を前提とした適正人員配置すること。四点目は自己救命器個人携行を即時実施すること。国内生産が間に合わないときは緊急輸入措置を講ずること。五点目は保安教育の徹底であります。全般的な保安教育実施をするとともに、特に退避訓練は今次災害を契機として各炭鉱一斉に実施していただきたい。この場合に実施訓練は、これは職場の実質訓練、それから図上の訓練坑口におけるところの訓練等を徹底的にやっていただきたい、こういうふうに私たち申し上げておるわけであります。  六番目は、近代的装備機動力のある常設救護隊を国の予算で設置していただきたい。地域ごとに設置する救護隊は各炭鉱より派遣して交代制とする。先ほどことば足らずの点がございましたが、二時間にわたるこの救護隊出動というのは、居住区におるために、居住区にこの緊急の出動命令がまいりまして、それからその呼び出しに応じて出動いたします。同時に重装備をいたしまして坑内にかけつけるわけでありますから、時間的にはこの一時間あるいは一時間半という時間が通常のこととされております。残念ながら三池炭鉱の場合においても、夕張炭鉱の場合においても、あるいはまた太平洋炭鉱火災の場合についても、同様にこの時間差が認められるわけであります。今度の平和炭鉱の場合についても、先ほど申し上げたように、二時間以上の時間を経過している事実を見たときに、こういうような地域に第一緊急時における出動する数というものを確保する必要性を私はこの点で訴えておるわけであります。  それから七番目は、保安監督官現状災害に対するところの対策に追われている現状を考えてみた場合、この人員の不足ということについて私たちは痛感をいたしております。したがって、監督官の大幅な増員と監督指導体制強化をはかっていただきたい。  最後に、坑内無線電話活用をはかって連絡警報円滑化をはかっていただきたい、こういうようなことで藤井政務次官に御要望申し上げたわけであります。  それから私は、今日の段階に至って特に痛切に感じておる三つの問題点がございます。その第一は、炭鉱の場合には特に予防体制についてであります。坑内不燃化、先ほども申し上げたけれども、ベルトやケーブル、こういったものについては不燃化に努力すべきである、こういうふうに考えております。第二は消火設備であります。機械化、スプリンクラー、こういったものを取り付け、そして対策に当たるべきだ。それから防火構造基準の引き上げ、この問題点についても再三再四保安協議会では問題になるけれども、二十四年に  この防火基準をつくってから今日、この基準が変更になってない事実を私たちは十分に検討してみなければならないと思うわけであります。  さらに管理機構の問題であります。先ほど申し上げたように、一、二番方の場合については管理機構でこれらの人員配置についても十分であると、こうしても、はたして三番方まで同じような人員配置管体制下にあるのかどうか。こういうふうなことを考えてみた場合、実態調査をしてみた場合、残念ながらこれらの問題については不十分さを指摘せざるを得ません。したがって、管理機構の問題についても十分な措置をしなければならないと考えております。  それから、問題の災害に直接つながっておる骨格構造の問題であります。私は冒頭に炭鉱災害指摘件数の多い実態炭鉱数を並べました。なぜ炭鉱数がこれだけの数字になっていながら、この何千件という指摘件数が各項目ごとによって、しかも法の違反個所というのが全般にわたって出てきておるということについて私たちは不審さを感ずるわけでありますが、この骨格構造の変化、いわゆる炭鉱の大型化に伴ってこれらの問題の措置完全に行なわれてないことを私たちはこの中で指摘をせざるを得ません。したがって、この前進払いとか、あるいは独立通気の問題について十分なる配慮をする必要がある。こういうような強化を私たちは訴えたいと思うのであります。  大きい第二番目は監視体制であります。これは、この災害の中で言われますように、実際にベルト、その原動機付近における自動警報器はどうなっていたのであるか、実際に火災発生と同時に自動警報器なり自動制御器というものが働かなければならないようになっておるわけであります。ところが、実際にはそういうような働きを示しておらない場合、これらの問題についても十分に経験にかんがみて私たちは次の対策強化をしなければならないと思う次第であります。  それは、巡回体制の問題であります。巡回体制については、これは完全にその任務を遂行するような人員配置、そしてこの巡回体制を強化して未然にこういった災害発生を発生と同時にこれを発見して、それに対して措置を行なうようにしなければならないと思うのであります。  その次は教育の徹底であります。残念ながらこの私たちの組合員の中にも教育が未熟であって、この大災害になった事実を黙視するわけにいきません。私たち労働組合といえども、経営者側にだけその責任があるのではなくして、私たちにも十分にこの事故と同時に、この事故原因を究明し、労働組合がみずからこれらの問題に対する改善をしていかなければならない点も幾多ございます。しかしながら、生きた教育、その実地の教育をして、初めてこれらの災害が不幸にして起きた場合であっても、最小限度にとどまる、こういうようなことになると思うのであります。残念ながら今日の炭鉱の中では、この教育はただ単なる机上の教育だけにとどまっていると指摘せざるを得ません。かりに炭鉱の場合にはガスが通気の停止に伴って、たとえば停電等の事故発生と同時に、どの程度ガスの量がたまるか、そのガスの量のたまった自体の中でどのように本人たちは行動すべきか、こういうような生きた訓練、この調査をするのがいわゆるガスコンターと称しておるわけでありますけれども、このガスコンターは機械的に行なわれ、ガスコンターによるこういうような教育基準を設けて、現場の実態に合わせた生きた教育がなされてない現実を指摘せざるを得ません。したがって、その結果がこういうような大きな問題点になると思います。先ほど経営者のほうから、マスクは本人たちが持っておった。マスクというものは持っているものじゃなくして、つけるものである。したがって、日常ふだんにこの教育が徹底されておったならば、瞬間的に、本能的にマスクは身につけたと思うのであります。ここでも教育の未熟さが事実を示していると思うのであります。したがって、この問題については徹底的に、この経験にかんがみて、あらゆる方向から教育の徹底をしていかなければならないと考えております。  最後の三つ目は、救護体制の問題であります。これは第一に警報連絡であります。この警報連絡、これらにつきましては手落ちはなかったのか。全般的に本人たちが非常に驚愕をして、災害と同時にそういうような自信を失って、とるべき措置も見失うという実情については理解できても、これまたその連絡、指揮系統、人員配置の問題について完全に私たち教育の徹底を行なっておけば、問題点はもっと解決したはずだと思っております。  その次は、この退避訓練の問題であります。退避訓練についても、今度の場合に助かった人たちは、自分でマスクを取りに行く時間なくして、タオルを自分の口にくわえて、そしてはうようにして坑道を上がってきた人たちは助かっております。不幸にしてこの坑道をはわずに、しかも立った姿勢のままで走ってきた人たちは、この中でも倒れている実情を私たちは見のがすわけにはまいりません。ガスは上を走るわけであります。軽いわけでありますから上を走るわけで、したがって、そういうふうなその退避の行動というものが、実情にあわせた行動というものが絶えず訓練されておれば、この時点ではもう百メーターで助かった人たちもおるわけでありますから、そういうふうに地底をはうようにして、しかも自分でとるべき措置を敏速にとって上がってきたならば、もっとこの災害は少なくて済んだと私たちは思うわけであります。したがいまして、この退避訓練の問題について、徹底した退避訓練というものを行なう必要性を私たちは強調したいと思うのであります。  それから、先ほど申し上げましたからこれは簡単に申し上げておきますが、救護隊の常設の問題、それからこの救護の設備の問題についても、単なるCOマスクだけじゃなくて、その他のハッパ機の問題にしてもいろいろ種類もございます。したがって、泡沫ハッパ機等も使いながら、私たちはその設備に努力をしなければならないと思うわけであります。  もう一度繰り返しますが、予防体制監視体制と救護体制に分けまして、根本的にこの欠陥を私たちはこの際に改めるように、現在行なわれておりますところのこの保安協議会において、通産大臣の諮問によって抜本策が答申されることになっておりますおりからでございますので、これらの問題点の改正方もあわせて御要望申し上げまして、現場における実態とその措置問題点を申し上げて、私の発言内容にかえさせていただく次第でございます。
  6. 委員長(阿具根登君)(阿具根登)

    委員長(阿具根登君) ありがとうございました。  それではこれより質疑に入ります。なお、政府側からは熊谷通産政務次官、鉱山石炭局長、鉱山保安局長、石炭部長、村上労働基準局長が見えておりますので、お含みの上、質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 須藤五郎君(須藤五郎)

    ○須藤五郎君 この間から、この事件が起こってから私たちも常に心を痛めておりますが、炭鉱の代表者の方が見えた機会に、私は、犠牲者に対してわが党を代表して深い弔意を表したいと思います。  この七日の当委員会におきまして、災害を根本的になくすためにどうしたらよいかという点につきまして、私たちの党の考えを率直に述べました、炭鉱の労働者の代表の方が見えておりますから、その内容を一応お聞き取り願いたいと思うのです。  一、労働組合と専門技術者による民主的保安委員会をつくり、保安施設の調査、施設の拡充、施設に関する勧告、さらに緊急の場合作業停止を命ずる権限を同委員会に与えるべきこと。これはいまも代表の方が申されました退避措置がとられていなかったということです。こういう緊急の場合は、作業中止をして、労働者の自主的な立場に立って作業を中止して退避するという措置をとるべきだと、こう思うのです。そういう点、この閥、政府当局に対しまして、自主的に作業中止をする権利があるではないかと申しましたら、政府当局もあるというのです。義務はないけれども、権利はあるというような意味の答弁を政府当局もしておりますので、この点もよく今後処置をとるために念頭に入れておいていただきたいと思うのです。  それから第二は、炭鉱に、千人に一人の割合で労働者から選出された代表が国家から給与を受け、労働基準法、労働安全衛生規則、鉱山保安法など安全衛生について諸法規の履行を監督する制度を確立すべきである、これが第二の私たちの要求です。  第三は、労災保険を改善し、休業補償を現行六〇%を一〇〇%に引き上げること、障害給付を障害前の生活基準に引き上げるほか、遺族補償は現行規定の上に遺族一時金三百万円を新しく設け、支給させるようにすること、遺族補償年金を大幅に引き上げる。さらに、休業補償、障害補償、遺族補償年金を物価の上昇に応じてスライドするようにすべきだ、こういうふうに私は政府に要求いたしました。  ところが、椎名通産大臣は、これに対しましてこういうふうに答えております。これも今後の労働組合の要求の御参考にしていただきたいと思うのです。椎名大臣は、きわめて示唆に富んだ意見だ、今後の保安行政をとるにあたって十分参考にさしてもらいたい、こういうふうに椎名大臣は答えておりますし、小川労働大臣は、補償問題についてあなたの御意見に根本的には賛成だ、現在労災保険は拡充の方針で労災保険審議会で検討してもらっているので、御意見を伝えるとともに、労働省でも十分検討していきたい、こういうふうに両大臣が答えております。これは今後の皆さん方の闘争に御参考にしておいていただきたいと思うのです。  いろいろ話を伺っている間に問題点がたくさん出ましたが、これはこの前政府当局との間にもいろいろ質疑をかわしまして、相当結論を得ている問題がたくさんありますので、私は労働代表に対してはそう質問する点はもうないと思うのですが、何でしたら、私たちの機関紙でもごらんくだすったらよくおわかりと思うのですが、いまちょっと問題になりましたのは、合理化が進むとともに災害の倍率が増加するというような意味の発言が我妻さんからあったように思うのですが、そこの合理化災害関係ですね、そこをもう少し私は詳しく伺っておきたいのです。なぜ合理化が進むと災害がふえるかという点をもう少し説明をしておいていただきたいと思います。  それからもう一つは、通産省に調査官と申しますか、要するに保安状況調査に行く係官があると思うのですが、これが世間では、常に行く前に予告されて、抜き打ち検査になっていないということが言われておるのです。それは皆さんのほうではどういうふうにつかんでいらっしゃるか。そういうことが事実ならば、これは許すことのできない問題であって、検査というのはやはり抜き打ち的に行って徹底的に調べるのが私はほんとうだと思うのですが、通産省の係官がもしも経営者と一緒になってこういうことをしているというならば、これは見のがすことのできない問題だと思いますので、これも労働組合の代表の方にひとつ伺っておきたいと思います。  ほかの方の質問もありますから、この程度にとどめておきます。
  8. 参考人(我妻勇君)(我妻勇)

    参考人我妻勇君) ただいまの質問に対してお答えいたします。  第一点目の、炭鉱合理化と同時になぜ災害が進むのかという御質問の要旨でございます。これは私は、炭鉱が大型化をしてくることによって、そのことによって起きてくる問題を指摘したわけです。それから特に炭鉱の場合は深部化していきます。だんだん坑内が深くなっていくのです。そうすると、その坑内が深くなっていくのに骨格構造が実際についていってない。たとえば通気坑道についても従来のような考え方の上に立った通気坑道の維持、たとえば保安法では、問題点として出されているくるま風の防止策については、これは保安法に規定されていない。ところが、入気坑道ベルトコンベヤーで炭が運ばれてくる。炭が運ばれてくるというのは実際に切羽で掘られた炭が運ばれてくるのですから、いろいろなものが入っている。それがしかもこの入気坑で、坑道の中でこのベルトコンベヤーに積まれてくるわけですから、実際にその入気がそこで汚染されるという問題が出てくる。それでは改善のいろいろな防止策がとられているか、坑道をもう一つつくって添加坑道をつくっておるか。こういう点については不十分さが目立つわけです。ですからそういうような深部化されていく、大型化されていく、坑道が単純化されてくるのだけれども、その中でそういうようなもののいわゆる掘進おくれが目立ってくる。近代化についていっていない。それから施設の面でも、先ほど言ったようにどんどん施設は新しくなっていくけれども、法律があとでできてくる。先につくられるのではなくてあとになる。こういうような傾向が目立つわけです。私は、私たちのつくった数字ではなくして鉱山保安局が出した数字を先ほど御紹介申し上げました。この例を簡単に申し上げますと、ガス測定では、昭和四十二年に三十五件の違反個所指摘、これは法の百二十一条です。ガスに関する措置についての百二十四条では二百三十八件、それから百三十九条の炭じんの処理については四百四十六件、同じく百四十一条のほうでは五百九十五件、百四十二条のほうで三百四十八件、それから爆発伝播防止施設、これは法の百四十六条ですが三百八十一件、それから同じく百四十七条の規定のほうで百二十一件、局部通気の設置については八十六件、維持管理の百三条のほうでは五百七十三件、実にこういうふうな数字が出されているわけです。それで先ほど申し上げました支柱規格の問題、この百五十九条と百六十条、支柱の取りかえ措置を行なうのは百六十条ですが、これらを合わせて三千百八十六件、こういうような指摘個所になっております。それからこの坑道の幅でございますが、これは二百七十条の第一項、これで八百二十八件、それから二百七十一条の車道通行の禁止の条項で百六十件、逸走防止、炭車が走っていくやつを防止するものでございますが、二百四十九条の第一項の逸走防止で五百一件、それから先ほど申し上げました耐火構造で三百九十三件という数字を数えております。  これは項目別に直しますと、実にその数字というのは各項目で違反しない個所はないというふうに行われているぐらいこの数字があげられているわけです。ですから、私たちはなぜ炭鉱の数が先ほど言った六百鉱から百六十に減っても、なおかっこの件数というものがこんなに多くなっているのか、しかも各種炭鉱における保安の違反というものが多く目立っておる、この実情は何を物語るものであるか、これは今日の石炭産業の実態を物語っているものではなかろうか。だから政策的に問題点をとらえて、そして今日の石炭産業の抜本策を出していただかなければならない、こういうふうにお訴え申し上げたわけでございます。  それから第二点目の保安の監督官の抜き打ち検査の御質問でございますが、これはやられてございます。抜き打ち検査についてはやられてございます。ただ私たちはその抜き打ち検査が十分であるかどうか、こういうふうなことについて疑問を感じておるのが一つであります。それからもう一つさらに重要なことは追跡検査だと思います。いわゆる指摘件数というものをこう何千件とあげていって、そしてその定期検査によるこの件数発見だけであってはならないわけであります。同時に、この問題については絶えず勧告措置を行なうと同時に、さらに追跡検査によって問題点を解決をする方法に私はもっと具体的に努力すべきではないか、こういうふうな問題点指摘しておきたい。以上御答弁申し上げます。
  9. 委員長(阿具根登君)(阿具根登)

    委員長(阿具根登君) 須藤君、時間が非常にございませんし、他にも質問の通告がございますから……。
  10. 須藤五郎君(須藤五郎)

    ○須藤五郎君 わかりました。それで今度は経営者の方に質問しますが、いま労働者の代表がお答えになったのですが、合理化が進むにつれて災害が進むという意味の御答弁でした。私たちは政治家として考えるのですが、合理化は産炭量をふやすのみでなく、要するに最も重要なことは災害をなくすということに私は合理化の主点がなくてはならないと思っておりますのが、それが逆になっておるのが一点、どうしてそういうことになるのかということを一つ質問いたします。  それから、石炭鉱山保安規則の中に一酸化炭素のために救命器具をつけていなければならないという法律がある。その次にただし書きで、監督官庁の許可があればその限りでないという矛盾した法律があります。これをこの間の委員会で追及した。そうしたら、この器具が全部そろっていない、こういうことになっておる。来年の三月にそろうことになっている。そのときにこのただし書きも削除するということを通産大臣も言明しておりましたが、いま聞いておりますと、どうも救命器具をつける上の教育の点について非常な手抜かりがあるように思われるわけです。経営者として、この保安に対してどこまで深く注意をしていらっしゃるのか、ふだんどういう教育をやっていらっしゃるのか、今度の生存者もマスクをつけるというのは、持っておったのは二、三あったけれども、つけていなかったというようなことで、どうしても救命器具をつけることに対して、避難教育に対する手抜かりがあるような感じがしてならないのです。経営者はこれに対してどういう教育をしていらっしゃるのか。もう少し詳しい説明を——いままであなたたちのやっておったことで万全と考えておられるか、今後どういうふうにやろうと考えていられるのか。
  11. 参考人(原功一君)(原功一)

    参考人原功一君) お答え申し上げます。ただいまの第一の御質問の大型化による災害の大型化、こういう御質問だと思いますが、確かに大型化と申しますと、ロングが昔と違いまして非常に長くなっておりますし、いままでは災害が局部局部で小さく処理できていた。災害と申しますか、災害発見も早かったし、小さくおさまっていた。それが今度はロングが長くなるに従いまして非常に大きなものになってくる。特にそれがガスの場合によく言われるのでございますけれども、非常に大きなものがふえてくる。しかし、これは昔に大型の災害がなかったか申しますと、必ずしもそうは言えないのでございますが、概してそういうことが言われると思います。私ちょっと技術屋でないものでございますから、あまりその点に関しては自信はございませんが、確かに合理化が進むにつれて災害が大型化してきた、こういうことが言えると思います。これはどこまでも合理化が進むに従って災害というものはなくさなければならないというふうに考えております。今後は努力をしたいと思っております。  それから第二の問題の使用マスクの件でございますが、確かにお話のとおりでございますが、四十四年三月までには全部携行しなければならないということになっておりますが、非常にその製作が時間がかかりますために、来年のそれまでは暫定的に持たなくてもいい、こういうことになっております。しかし、使用マスクの携行は、製造能力その他の関係実施がおくれておりますけれども、定置式と申しまして、その各坑のどこに置いてあるということではっきり貫いてございます。平和炭鉱におきましても、全部に対しては九百十五個置いてございました。今度の場所につきましては二百二十五個、こういうことになっておりますが、概要はいままで申しませんでしたが、平和炭鉱というものは災害がわりあい少なかった。一番危険なのは夕張炭鉱でございます。この携行のガスマスクを優先的に夕張に持っていっている。平和炭鉱のほうがおくれていた。こういうことが今度の災害の大きな原因になっております。  それからCOマスク教育でございますが、教育につきましては完全だと申しておりません。非常にこれは考えなければならないと先ほどよく申し上げました。しかも、一たん急な場合に何の役にも立たなかったということを認めておりますが、教育につきましては、いままでやっておりますところを申し上げますと、言いわけがましくなりますが、新採用時、退避訓練、安全週間、繰り込み教育及び係員による日常の教育時を利用いたしまして、COマスク教育実施しております。教育内容につきましては、構造とか、使用法とか、使用時期とか、こういうものに対して現在は教育しております。  それからいまもって定置式のものを持ってこなかった、こういうことにつきましては、先ほどもお話申し上げましたように、非常にあわてていた。そして生存者の聞き取りをいたしますと、持ってきたことは持ってきたんだが使わなかった、生きるだけが一生懸命で走った、あれをつけるとなかなか走れないので、早く走るためにつけないでおれは走ったのだということと、そこまで考えつかなかった、もう生きることだけで夢中だったというような答弁をしております。これはまことに遺憾なことで、日ごろの訓練の至らなかったことをお認めいたします。今度の場合のようなことのないように、もう煙を見たら退避命令を発しなさい、それはだれでもかまわぬということと、それと同時に、必ず煙を見たらガスマスクを持って逃げなさい、ガスマスクを持って逃げなければ必ず死ぬぞ、こういうことを徹底的に教育していくつもりでございます。以上でございます。
  12. 大矢正君(大矢正)

    ○大矢正君 先般の平和炭鉱事故に関連をいたしまして、後刻この委員会委員会決議とされると思われる事項を重点にして五、六点お尋ねをいたしたいと思うのでありますが、平和炭鉱のような災害が再びわが国の炭鉱において起こらないように政府はもとより、経営者、そして労働組合、その他関連の機関が全力をあげるべきであることは申すまでもないところでありますが、ただ残念ながら、今日のわが国の石炭産業の現状は、先ほど我妻参考人が述べておりましたとおりに、炭鉱の大型化に伴う合理化によって事故がますます増加をしているという現状にありまするし、また、いつどこで事故が起こり得るのか予測できないほどきびしいものが今日あると思います。したがって、単に精神的な内容のものだけで今日の炭鉱保安というものを守ることは私はできないと思うのでありまして、具体的な一つ一つ措置を積み重ねていくことによって、かりに事故が起こったとしても、その事故を最小限度のものにするような努力と配慮が常になされなければならぬと思うのであります。私ども、先般調査団として平和炭鉱におもむきました際に、労働組合側から非常に克明な、しかも的を得た、要点のみをとらえた非常にりっぱな提案がなされまして、喜んでおる次第でありますが、そういうような現場で働いておられた人々の趣旨も含んで私は質問をいたしたいと思うのであります。  まず第一の問題は、保安局長にお尋ねをいたしたいと思います。これは一昨日の当委員会におきましても議論されたことでありますが、緊急事態に対処して、坑内のそれぞれの地域にたとえば退避、待機、そういうものの緊急の指揮なり指示なり、あるいは指令なりを伝える、言うならば伝達方法に、一つには今日の炭鉱としては欠陥があるのではないか。したがって、爆発ではなくて、坑内火災であれほどの人命を失う結果になったのではないかと考えまする際に、これからの一つ対策としては、いかにしてすみやかに退避、待機等の指令、指示を行ない得る設備を整えるかということも私は一つの焦点だと思います。そこで、従来ありまするような電話による警報装置、あるいはまた避難の伝達、またガスによる——ガスと申しましても、これは坑内ガスではなくて、退避を知らせるにおいのある、何といいますか、私は正確にはわかりませんが、そういうような連絡手段の方法がありますが、それだけではなくて、たとえば無線連絡の装置をつくる等、退避のための具体的な措置をすみやかにに政府として指導をし、必要とあらば助成を講じて行なうことが大事ではないかと私は考えるのでありますが、まず第一点としてお尋ねいたしたいと思います。
  13. 説明員(西家正起君)(西家正起)

    説明員(西家正起君) 今回の災害にかんがみまして、ただいま先生から御指摘のございましたとおりだと私は考えます。従来から電話メルカプタン等にかわる方法といたしまして、誘導無線等の設置につきまして、これは強制はいたしておりませんでしたが、一応行政指導によりできるだけつけさせるように、かつ、それらは保安融資の対象としておったのでありますけれども、今後なお一そうこれらを強力に行政指導いたしたいと、かように考えます。
  14. 大矢正君(大矢正)

    ○大矢正君 企業の自主性にだけまかせるのではなしに、やはりもっと強力な国の行政指導を私は今日必要としていると思うのであります。もしかりに、その山が経済的にそういう装置、装備をすることが困難であるとすれば、やはり政府は融資あるいは補助金、その他一切の予算上の措置を講ずるために私は全力をあげてもらいたいということを希望いたしたいと思います。  それから次に、COマスク個人携行でありますが、これは先日の委員会でも議論をされましたとおりに、まだ日本の国内においての生産では早急にこれを個人携行するに至らないということは私も理解をいたします。だがしかし、外国からの緊急輸入によってまかない得るということもありますから、この救命器具の個人携行は一日も早く、経営者の自主性にゆだねるのではなしに、政府のそれこそ思い切った措置によって実行をしてもらいたいと思いますが、その決意があるかどうか、重ねてお伺いしたいと思います。
  15. 説明員(西家正起君)(西家正起)

    説明員(西家正起君) 御指摘のとおり、政府が積極的にこれは一日も早く各個人が持って入坑できるようにいたしますことを約束いたします。
  16. 大矢正君(大矢正)

    ○大矢正君 同じく保安局長にお尋ねをいたしますが、先般のこの平和炭鉱の場合に限定をしてお尋ねをするわけでありますが、炭鉱災害は何も平和炭鉱だけでないことは御承知のとおりでありますけれども、ただ、あのことに限定をしていった場合に、緊急事態を想定しての避難の訓練であるとか、退避訓練であるとか、そういうようなものは過去においてどの程度行なわれておったのか。一説によると、一年に一度とか二度とか、あるいは三カ月に一回とかいろいろありましたが、現実にはどうなっていたのか、そのことをお伺いいたします。
  17. 説明員(西家正起君)(西家正起)

    説明員(西家正起君) 退避訓練につきましては、甲種炭鉱におきましては六カ月に一回以上退避訓練をしなければならないというふうに規則で定められておりまして、すべての鉱山におきまして、この規則は、一応一カ月に一ぺん以上の退避訓練はなされておったことは大体事実でございます。ただこの問題につきまして、いろいろわれわれも実態調査をいたしまして、どういう方法をやっておるかというようなことで調査をいたしたのでございますけれども、なかなか実地に向くような訓練というものが実際には行なわれていないのじゃないかというような反省もただいまいたしているような次第でございます。したがいまして、回数ばかりでなく、実態面におきましても、もう少しこれは内容を充実するような訓練が必要じゃないか、こういうふうに考えております。
  18. 大矢正君(大矢正)

    ○大矢正君 局長のいまおっしゃられたことでは私ども納得いかぬわけであります。たとえば一カ月あるいは三カ月、あるいは六カ月こういう長い月日がかかりますると、結果として、これはたとえば地層が変わってしまったとか、通気が変わるとか、坑内には非常に大きな変化が二、三カ月の間に起こることは常識なんですよ。したがって、そのつど退避方法なりあるいはまた避難のしかたなりというものに変化があらわれてくると思うのであります。ですから、いままでかりに半年に一回とか、一年に一回というような退避訓練のしかたでは、すでに坑内の構造が変化をしている以上、私は適切な退避ができないということが考えられると思うのですが、そこで私どもとしては、おおむね坑内のそういう構造上の変化に沿うて月一回程度の退避訓練訓練のしかたはいろいろ濃淡があるだろうと思いますけれども、そういうものはやはりやらせるように行政指導すべきじゃないかと思いますが、あなたの見解を承わっておきたい。
  19. 説明員(西家正起君)(西家正起)

    説明員(西家正起君) 実は退避訓練に立ち会いまして、その実態につきまして、監督官炭鉱に行って、退避訓練をその場でやらしたというようなところまで従来はやっていなかったわけでございまして、ただいま先生のおっしゃいますように、半年に一回くらいでございますと、炭鉱の中の状況も変わりますので、やはりそれぞれ実情に応じて、これはもう当然大事な鉱山労働者の生命に関係する問題でございますので、必要に応じて回数はもっとふやして訓練をやるべきじゃないか、かように考えます。
  20. 大矢正君(大矢正)

    ○大矢正君 それから同じく局長に次の問題として、これは非常に大きな問題であって、おそらくあなたが御答弁することも非常にむずかしかろう。だとすれば通産大臣からお答えをいただく以外にないが、通産大臣の代理が来ておられるから、私は代理の熊谷政務次官にお尋ねしておきたいと思うのですが、先般の災害に見られますとおりに、まあ災害の起こったことそれ自身はまことに遺憾なことでありますが、しかしこれは結果でありますが、考えてみますると、たとえば救護隊が常駐体制をしいているとか、退避あるいは避難に適切な措置が講ぜられておるとすれば、あのような多くの生命を失わずに済んだことはだれの目から見ても明瞭ですね。そこで考えられることは、単に平和炭鉱だけの災害ではなくて、過去の幾多の災害から想定いたしまして、救護隊が非常駐の体制にあるということが、一つには多くの人命が失なわれ、災害が拡大している傾向はこれは事実として認めないわけにはいかないのであります。そこで、あすから直ちに常駐体制に入りなさいということを、むちゃなことを私ども申すわけではありませんが、すみやかに救護隊の常駐体制というものをしくべきではないか。もとよりいまのような石炭産業、そして企業の中にあって、すべて経営者の負担でやらせようとしてもなかなか困難な状態に私はあると思う。したがって、鉱山の保安全部を政府が管理できないとすれば、政府のほうはいやだとおっしゃるのだから、せめて常駐体制だけでも政府の責任において私は早急に行なう必要性があるのじゃないかということを考えておりますが、政務次官のひとつお答えを賜りたいと思います。
  21. 政府委員(熊谷太三郎君)(熊谷太三郎)

    政府委員熊谷太三郎君) いまお話しのとおり、きわめて重大な問題でございますから、いまここで直ちにそういうことをやるということは申し上げられませんが、十分にひとつ研究をいたしたいと存じます。
  22. 大矢正君(大矢正)

    ○大矢正君 北海道と九州に炭鉱鉱山の保安センターを多額の政府の金によって設置をしているのでありますから、かりに救護隊政府の予算と責任において常駐体制をしいたとしても。私はあなた方が考えておられる立場から見ても、そう私は間違いではないのじゃないか、むしろそうすることが今日炭鉱災害をより小規模におさめる意味においても必要ではないか。災害がないならば救護隊は必要ないのだが、幾らないほうがいいとは思いつつも、災害が起こっていることは間違いないので、残念なことではあるが、起こるという前提で議論を進めていけば、やはりそういう結果になるわけですから、これはいずれあらためてお答えをいただくことにいたしまして、とにもかくにもすみやかにひとつ検討を願いたいと、こう思うわけであります。  それから基準局長に。一昨日の委員会でも私から質問をいたしまして、今回のすでに死亡が確認された九名の方々の年金、一時金、そうして葬祭料について、政府も十分検討さしていただきたいという御答弁は得たのであります。そこで、今回の年金額を見ますると、一番最低の方が十五万三千八百円ですよ。そうすると、一万円をわずかこえる年金しかもらえないという現状で、しかも遺族は奥さんと子供さんと合わせて三人おられる。月にすれば一万円の年金額では生活ができるはずはないから、何かしなくちゃいかぬということになるわけですが、しかし今日の世の中というものは、それがたとえ炭鉱で殉職された遺家族といえども甘い就職状況には私はないと思うし、しかもその就職については、ほとんどがその企業の責任にまかされているというのが実態なわけですよ。そういたしますると、どうやってこの遺族が生活を守っていくことができるかということになりますると、どうしても行き当たる問題は、いまの労災法というものを大幅に私は変える必要があるのじゃないかという気がするわけであります。年金の前払い金が四十一万九千二百円という金額がこの間基準局から示されておりますが、年金の前払い額がこの程度であります。そこで、世の中においては、たとえば飛行機事故でなくなった場合には、最近は六百万円から一千万円という通り相場で、自動車事故でなくなった場合には三百万円、炭鉱で奥深い地底でなくなったその遺族に対する年金あるいは一時金というものが、どうしてこんなに少額で済まされなければならぬのかという疑問が出てきます。今日の石炭経営必ずしも楽ではない。楽ではないから抜本策と称して政府がいろいろな措置を講じているのでございますが、そういう遺族のたとえば生活保障を含めて一切が炭鉱の企業なりあるいは産業に負わされたとしても、それ自身またまた炭鉱が崩壊をされるという方向になっていくわけであります。どうして一体三百万円程度まで——これはもちろん私が申し上げているのは、年金制度はこれをやめろと申しておるのじゃありません。年金制度もけっこうでしょう。過去のような一時金制度もけっこうでしょう。あるいはそれを二つかみ合わせることもけっこうでありましょうが、問題は生活保障に足るような遺族補償になぜならないかという問題なんですよ。そこで、まあ基準局長として、しばしば起こる炭鉱災害、しばしば指摘されているこの種の問題に対して、どういう見解を持っておられるかお尋ねをいたしたいと思う。
  23. 説明員(村上茂利君)(村上茂利)

    説明員(村上茂利君) ある事故がありまして、それによって自動車事故でなくなる、あるいはそうでない場合もありますから、この業務上で死亡した場合の補償の考え方でありますが、これは先生御承知のように、使用者の無過失責任という制度に立脚いたしております。責任原因を問わない無過失で補償する。その場合の補償の限度と申しますか、どういう理論的根拠によって補償するかということが一番問題なわけでございます。先生御承知のように、これは日本のみならず各国ともその原理は、災害によって労働者が持っておったアーニングキャパシティー、稼得能力を喪失した、そこで災害時点における賃金収入を基礎にいたしまして補償額を算定する、こういう結果になるわけでございます。したがって、たとえば前払い一時金で四十一万しかもらえない、それがどうかという問題になりましたときに、まあその人のもらっておりました平均賃金を算定いたしますと千四十八円になります。そこで、かりに三百万円払えというのでどういう計算にするかと申しますと、これは千円を基礎にして三百万円計算すると、これは三千日分の計算になる。そこで、この問題は出発点として、労働者の失われたアーニングキャパシティーをてん補するという考え方を捨てるか、あるいは社会保障的な観点から一般的な社会生活を送り得るような基準で定額制にするかといった基本があるわけでございます。それはそこまで発展いたしますためには、使用者の全額負担という考え方が、労災も国も負担をするといったような、一般的な生活水準を保障するという観点に転換してきておるのが先進国の一、二の例であります。そこで、使用者の無過失責任という原則にのっとりまして、しかも従来得ておりましたところの賃金収入、その失った分をてん補するという形をとるかどうかということが基本の分かれ目であるわけでございます。そしてまた自動車の損害賠償ということになりますと、まあ三百万円とそういう定額になるわけでありますが、使用者に故意過失があった場合の一般の民事責任はどうなるかという問題があるわけでございまして、その民事責任を追及することが可能でありますならば、労災のいわゆるアーニングキャパシティーだけじゃなくて、精神的な慰謝料とか、物的な損害とか、そういうものを算定いたしまして請求できますから、三百万であろうが五百万であろうが六百万であろうが、いろいろな計算のしようが出てくると思います。その基本的構造が違いますので、いろいろ今後検討いたします際に、基本構造をどう考えるかというのが非常に大きな問題でございます。ですから、その基本構造をどうするかということについては、ただいまここで私からどうこう申し上げることは適当でないと思いまするが、ただ事故発生時点における賃金を基礎にして計算するとしても、それに掛けるパーセンテージはもっと上げることができないかどうかということは、これは検討に値すると思います。ただ、それにいたしましても、本人が生きておったときと同額を与えるかということになりますと、本人ももう死亡いたしておるわけでございますから、それだけの分が減額されるということになりまして、理論として一〇〇%補償というのはなかなか出てこない。外国の例を見ましてもそういった点をかげんをいたしておるわけでございます。まあそういう点を彼此勘案いたしまして、より手厚い補償を現在の労災補償の原則を維持しながらどうやって考えていくかという点、これは非常に大きな問題でありますから、そういった点につきましては、私どもも今後鋭意検討を進めてまいりたい、かように考えておる次第であります。
  24. 大矢正君(大矢正)

    ○大矢正君 いまあなたがおっしゃられた議論の展開は、長い間これは労災法を審議検討している段階でずいぶん議論があった問題だから、いま私はここでそういう議論を繰り返してどうこうと言う考え方はないが、たとえば今度すでに遺体が確認されて葬祭料を支払われておる人々を見ましても、十五万三千円というのが年金額として最低、ところが片方職員の場合には三十九万二千七百四十円、約四十万円、これだけの違いがあるわけであります。したがって、同じ坑内で働いていた者が、それが職員であるから鉱員であるからということによって、これだけのはたして差というものをすなおに働く人が認めるか認めないかという問題があるわけですけれども、やはりあなたの言われたような議論は、われわれの国会の中でする議論としては通用するが、現実に坑内で働いている人々にそういう議論をしても通用しないと思います。  そこで、いまの法律の根本を変えるかどうかという根本的な思想的な問題もありますが、今日生活保護でさえ東京の場合には月々二万四、五千円の金をもらっているのに、炭鉱で殉職した遺族がどうして一万円くらいしかもらえないのか。そういうところに問題がありますし、いろいろ議論が多いわけですが、少なくとも坑内において災害にあわれて殉職された人々に対しては最低限度どの程度まで補償するか、もちろん今日の最低限度はありますが、その最低というものを大幅に引き上げるような意欲と考え方を持ってもらいたい、こう思うわけであります。  最後に、原社長にこの機会に決意のほどを伺っておきたいと思うのでありますが、かって夕張炭鉱におきまして一坑、二坑の重大災害が発生し、そうしてまた今回は平和炭鉱において、災害の規模は爆発ではないし・それほど大きなものではなかったにもかかわらず、指揮命令系統なり、あるいは職員の意識なり、それから保安の責任を持つ職階上のそういう責任体制の欠陥によって多数の生命を失なってしまったということは、まことに残念でならないわけであります。私はそういう意味において、石炭産業はこれからもなお生き残っていかなければならない、しかもそのことのためにいま全力をあげて新たな道を見出そうとしている中にこのような事故が起こったということは、返す返すも私は遺憾だと思うのであります。特に過去の災害等から見ましても、やはり一段と経営者の責任と決意が私は今日望まれていると思うのであります。特に原料炭山として、どうしても一般炭山と比較して災害が多いということは過去の実績、事実において証明されておりますし、ガス量が多いことは当然なことである。しかも坑内が、坑道が長い深いというそういう自然条件の悪化もありまして、経営者自身もこれは心を引き締めてかからないと災害を二度と再び繰り返すことがないようなそういう体制を確立することは困難だと思うのでありまして、最後にひとつ社長の決意のほどを承わりまして、私の質問を終わりたい、こう思うのであります。
  25. 参考人(原功一君)(原功一)

    参考人原功一君) ただいま大矢先生のおっしゃいましたとおり、私昨年十一月に社長に就任いたしまして、私の代こそ絶対に災害は起こさないぞと強い決意のもとに、保安、人事、労務その他を叱咤いたしまして、二度と災害を起こさぬという決意でやってまいりました。いまここに平和炭鉱の大事故を起こしまして、おっしゃるとおりの何か手おくればかりやっておりまして、こういうような重大災害にしてしまったということに対して、深くおわびを申し上げます。先ほどは、まだいま思いついただけの対策を申し上げましたが、これからは徹底的に警戒体制、それから連絡体制、それから退避体制というものを確立いたしまして、二度とこういうことの起こらぬように、十分気をつけるどころか、さらに決意を新たにいたしまして、二度と事故を起こさぬようにいたしたいと存じております。ちょうど時も時、国会及び政府当局におかれまして、石炭鉱業の再建のために特段の御苦心をいただいておりますさなかにかかる事故を惹起いたしまして、炭鉱の保安につきまして世論に動揺を与えましたことを深くおわび申し上げまして、今度こそ二度と災害の起きないように、細目の点にわたって検討して、即刻実施するという覚悟でおりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  26. 小野明君(小野明)

    ○小野明君 簡単に一問ずつお尋ねをしたいと思います。いまの社長のお話によりまして、会社側の気持ちはわかったのでありますが、まあ近く石炭の再建策といいますか、三回目の抜本策あとのまた手直し策というものが出される時期になっておる。こういった時期を前に、今回の事故、しかもこの事故がですね、私はあの一時間二十分のロスがなければ、十分にこれは救い得た事故ではないかと、このように考えますために、非常に残念でたまらないわけであります。  我妻さんにお尋ねをしたいんですが、この石炭産業の抜本策が出される前になりまして、この事故を起こしましたこの事故の責任というものをどのようにお考えであるか、あるいはこの事故を起こしまして、今回の事故がこの山の労働者に与えた気持ち、今後の石炭産業に対する期待というようなものも含めて、簡単にひとつお話をいただきたいと思います。
  27. 参考人(我妻勇君)(我妻勇)

    参考人我妻勇君) 第一に責任の問題でありますが、私はこの責任の所在について、第一に労使の当事者はもちろんでありますが、やはり石炭政策を立案するにあたって、今日のこの実態を十二分に見ていただき、その上に立ったほんとうの石炭政策を立てていただく、こういうふうに私は考えておりますし、やはり今日までの至らなかったこの経過が一連の責任の範囲に私たちは入ると思います。ですから、もう少しはっきり申し上げますと、労使の責任は、それらの事故を未然に防止し得なかったここのところに、はっきり私たちの努力の足りなかったという意味において認めております。しかし、同時に石炭産業の今日の状態は、二回、三回の手直しによってもなおかつ今日立っていけるような事態になっていない。しかも、その何とかしなければならないというあせりが、今日の炭鉱の大型化、そして合理化、こういうものによって次から次の災害になっていっている現状も考えていただいて、この責任については十分に政府の政策を立案する審議会の場でも私たちも申し上げているところであります。したがって、政府のほうとしても十分に経過を御検討願って、真の政策を立案していただきたいというふうに私はお願いしたいと思います。  それから私たちは、この石炭政策について、確かに災害が起きると同時に、若手労働者ばかりでなく、炭鉱に働くすべての人あるいは周囲の人たちまで動揺をいたします。であるがゆえに、私たちは第一に炭鉱のこの将来の安定というもののためには、不可欠な条件として保安問題を取り上げているわけであります。私たちはこの災害を起こさない、そのことが今日の炭鉱に若い労働者を含めて定着させることである、こういうふうに考えておるわけであります。したがって、私たちはこの災害を契機にいたしまして、徹底的な、先ほど申し上げました諸対策の上に立って、これから災害を起こさない対策を進めて、この石炭労働者としての自覚をもって問題の解決に努力してまいりたい、こういうふうに考えておりますということを申し上げておきたいと思います。同時に、この石炭産業に従事している者の願い、労働者の願いというのは、やはり何といっても労使が努力すれば残れるのだ、こういうふうな問題点をひとつ先生方にも十二分に御検討願いたい。それはもちろんのことでありますが、根本の政策に要因があるわけであります。根本の政策にどういうふうに努力しようと、そのやっていけない要素を含められておったのでは、私はこの労働者の努力も実らないと思う。いかに決意をしても、そのことが災害にだけつながっていくようなことでは私はならないと思います。したがって根本的にこの際、この石炭政策というものについては、将来展望のある、あるいはそういうふうな災害というものの起きないような方向においての見きわめ方をお願いして、ほんとうの政策にしていただきたい。炭鉱に従事する者は、もちろんその自覚と信念の上に立って私たちは今後このような災害を起こさないような努力をしてまいりたい、こういうふうな決意の一端を申し上げて御答弁にいたしたいと思います。
  28. 小野明君(小野明)

    ○小野明君 会社の保安の責任者の方もお見えでありますから、多少重複の点があるかもしれませんけれども、一点だけお尋ねをいたしておきたいと思います。  三池災害で四百五十八名を一瞬にして死亡させたこの事故の際の教訓に、非常の際にタオルを当てまして、坑道をはって逃げれば無事逃げられたということがあったわけですね。これが今回は全然この炭鉱災害の際に生かされていなかった。この点前の災害を自分の山に生かしていかなければならぬ、教訓を生かさねばならぬ、この考え方が、あるいは処置というものがなされていないところに一つの問題があるように思うわけであります。それといま一つ我妻さんのほうから言われた中で、非常警報ではなくて退避命令でなければならなかったという話がありました。それでこれは鳴らなかったというのが一番大きな問題なんですけれども、私も実はしろうとなんで、非常警報なるものがどういうものかわかりませんけれども、たとえば水であるとか、ガスであるとか、あるいは火と、こういった非常の原因というものはこの警報によってわかるようになっておるのか。位置がわかって、もちろんその事故災害の発生した場所もわかる、あるいは事故の種類というものもわかるようになっておるのか。あるいはただ単に非常というだけを知らせるものであるのか。これと退避命令との関係というようなものはどういうふうになっておるのか。その訓練の問題もあわせましてお話をいただきたいと思います。
  29. 参考人(和田秀雄君)(和田秀雄)

    参考人和田秀雄君) ただいま先生から御指摘の過去の災害の教訓が生かされてないという点は、現実に確かにございました。それで社内でどういう教育をしているかと申しますと、集合教育と都度教育というのがございまして、都度教育はその現場に巡回したたびに、その場の現場の状況に応じて教育をしております。集合教育といいますのは、ある程度の人員に集まってもらいまして、そこで教育しております。その際に過去の災害教育もいたしております。あわせて係につきましては、先ほど社長から説明のあったように、保安部に教育課を設け、人事部の中に教育係を設けまして、これは係員をすでに四十数回、約三百人にわたって教育しておりまして、そのほかにも、学科のほかに過去の災害の教訓の話もいたしております。ただ、先ほど申し上げましたように、今回生かされてない点もございますので、今後さらにそういう点の教育については意を尽くしたいと思っております。  次に、退避命令の件でございますけれども、非常警報装置は各現場には全部いっておりまして、平和坑の場合には約十三個の拡声装置がございます。平和坑の拡声装置としての話ではなくて、現在の当社でとっております非常警報装置は、連続信号を送った場合には非常警報である、非常警報を受けた場合には、警報を受けたものが直ちに電話に出る。電話に出た場合に、災害の位置及び災害の規模というものを伝えて、必ずその個所にはメルカプタンがございますので、メルカプタン等の処置をするということになっておりまして、非常警報下の中ですぐその災害の位置あるいは災害の規模というものがわかるようになっていません。直ちに電話に出て指示を受けて、あるいは報告を受けて知るという形になっております。
  30. 小野明君(小野明)

    ○小野明君 そうしますと、童話が故障の場合は全然何にもできないということですね。
  31. 参考人(和田秀雄君)(和田秀雄)

    参考人和田秀雄君) 具体的に例で申し上げますと、平和坑の場合には六系統ございまして、その系統別に全部鉱務所のほうに電話線が入っておりまして、先ほど社長が申し上げました電話ケーブルの短絡といいますのは、西部火災地における短絡でございまして、西部区域だけが電話警報が死にまして、そのほかの系統は全部生きてございます。
  32. 小野明君(小野明)

    ○小野明君 石炭局長がおられないようですが、保安局長がおられますからお尋ねをいたしたいと思いますが、近く答申も出されるようになっております。それで、私はいま申し上げましたように、過去の災害の教訓というものが全然今回も生かされていないという、あるいは実地に訓練もされていなかったということが指摘されるわけです。この答申の中に、当然出炭量の規模だとか何とかにいろんな問題もありますけれども、やっぱり労働者の安全、あるいは山に期待をつなぎ得るような福祉対策、補償対策、そういったものが労働者に重点を置いた答申がなければ何にもならぬ、こういうことが私は言えると思うのであります。あなたも当然メンバーの一人だろうと思いますけれども、この保安の問題、労働者を中心にした答申というものがなされなければならぬと私は考えます。あるいはその答申が実際に生かされてこなければならぬ性質のものだと思います。この点についてどういうふうになっておりますか、現状を少し御説明いただきたいと思います。
  33. 説明員(西家正起君)(西家正起)

    説明員(西家正起君) 先生御指摘のとおり、石炭の保安のない生産というものはこれは認められないものでございます。石炭部上長も見えておりますが、石炭鉱業審議会の中においても、当然鉱山保安という面に十分、配慮をして答申がなされるもともと性質のものであろうと思います。そのほかに特に鉱山保安の問題は非常にむずかしい問題でございますので、特別にこの石炭鉱業審議会と並行いたしまして、中央鉱山保安協議会に大臣を今後の保安の、長期対策につきまして諮問いたしておりまして、この中央鉱山保安協議会の場におきまして保安問題を検討いたしておるわけでございます。一つは保安管理機構とか、保安教育、その他労使双方、あるいは監督官庁のみずから、えりを、正すべき事項も一つの項として検討いたしておりますし、もう一つは、やはり石炭鉱業自身との関連におきまして、やりたくてもできない点がありはせぬかというようなことで、資金面あるいは労働面につきまして、かなり突っ込んだ論議を保安協議会でやっております。したがいまして、この保安協議会の中身は、常に石炭鉱業審議会のほうの事務局と連絡を密にいたしまして、中央鉱山保安協議会で出される答申、これは八月末を目標にしておりますが、これが十分石炭鉱業審議会の中に反映されるようにわれわれは努力をいたしておる次第でございまして、そういう関係になっておるわけでございます。
  34. 小野明君(小野明)

    ○小野明君 最後に政務次官に要望なりお尋ねをしたいと思いますが、お聞きのように、我妻参考人のほうから、今回の事故につきましてきわめて詳細に、しかも的確にこの原因というものが、あるいは今後の対策というものが述べられたのであります。この意見が、会社側から述べられた反省も含めまして、今後の石炭政策に十分生かされるように御配慮をいただきたいと思うのですが、その御決意のほどを承っておきます。
  35. 政府委員(熊谷太三郎君)(熊谷太三郎)

    政府委員熊谷太三郎君) いま小野先生の御意見につきましては、通産省といたしましても十分にそういういろいろな経験が生かされますように検討してまいりたいと思います。
  36. 小野明君(小野明)

    ○小野明君 終わります。
  37. 小林武君(小林武)

    ○小林武君 多小の重複があるかもしれませんけれども、原参考人にお尋ねをいたしたいと思います。  最近頻発しておりますところの事故につきまして、私は労働者の皆さんに非常にお気の毒だという気持ちが特に深いのは、石炭産業の先行きというようなものがきわめて重大な段階になっておる。閉山に次ぐ閉山というような問題があって、労働者がそれに心をいためておる、そういうたくさんの労働者の悩みの中にこういう問題が起きるということは、私はこれは重大なことだと思うのです。一体こういう状態で、これはひとり経営者だけ責められるべき性質のものではない、しかし、これは労働者の責任ではないと私は思うのです。だから、私はそういう意味で率直な御意見を申し上げてみると、先ほどは原参考人からたいへん謙虚な、これから万全を期してやっていくというお話があった、こういうことが再び起きないようにというお話がございましたけれども、私はこういう企業というものの性格を考えて、そうして現在置かれているこういう石炭産業というものを考えて、これに対する財界なりあるいは経済各方面の石炭産業に対するこれからの考え方というようなものを考えました場合に、私は必ずしもただ精神的にたいへんなことだからというだけでは、労働者の皆さんが安心してやっていけるような状況はなかなか出てこないという気もするわけです。だから経営者の側としても、これは政府の立場にしても、石炭産業をこれからどうするかという問題と、それからもう一つは、こういう災害をなくする、絶無にするというあれとが二本からんでこないというと話はまとまらない、こう思うのです。この点は我妻さんもそういう点についてお話しになったと私は思うのです。私はだからここまできたら、きれいごとなんかばかり言ってたらだめだと思う。万全の策だとか十全の策だと言うけれども、十全の策応万全の策ということばはずいぶん聞いた。そのあとからどんどんと万全の策がくずれていくというのはどういうわけかということになるのですが、私は参考人にお尋ねいたしたいのは、ほんとうはこういうことでないかというような推測があるわけです。経営者の側から言わせれば、いわゆる保安に対する設備、それに対する投資というようなものについて積極的にもうとにかく思い切った手を講じられないというようなことが経営企業自体の中にあるんじゃないかということなんです。あるならば、ぼくは率直にここで言ってもらいたいという気持ちがするのです、先行きのことがあるから。それは邪推ではないと私は思っているのです。皆さんの心境を考えれば考えるほど、そういうことがあるならば、この際やはりはっきりするべきだ。それをとにかく一時的に善意とか万全とか何とかということでこれは解決することのできない問題ですから、そういうことがあるかないかということを私はお伺いしたいわけです。  それからもう一つ保安局長にお尋ねしたいのですが、あなたの話を私は間違ってとったかどうか知らぬけれども、保安協議会の中でこれだけのことをやればいいというようなことがあっても、なかなか企業の実態としてやれないというような実情もあるというふうな意味のことをおっしゃったということは、いまのぼくの議論に大体似たようなことだとこう判断したのですけれども、これは間違いであれば別ですけれども、そういう観点に立ってひとつ考えれば、私はまあ政府としては、これは政務次官にもお聞きしたいのです。これは佐藤総理をはじめ、出てきてとにかく何べん万全の策を言ったかわからないのです。ところが、阿具根委員長も実に涙の出るような質問演説をやった。そのときは、かかることは将来絶対起こらないように万全の策と、こう言ったのですが、万全の策が出てから何べんこういう事故が起こるのか、だから万全の策はなかったと私は判断しているのです。しかし、それはなかなか一がいに責められないような石炭産業というもののやはり体質の問題だということを考えておるから、これはやはり一企業の問題ではなくて、やはり国家的な判断をくだして、将来の石炭産業のあり方とともに保安の問題を抜本的に考える時期にきたと考えるから言っているのですが、そこであなたにお尋ねしたいのは、一体政府の中であれほど万全万全と言ったのだから、炭鉱一つ一つのあれについて、これだけの保安上の設備をやるべきだという青写真はあると私は判断するのですが、あるのかないのか、なかったら私はおかしいと思う。あっても、しかしそれを一〇〇%実施できないで実は六〇%ぐらい——その内容のことをパーセンテージで言うのはおかしいけれども、ここらでがまんしているというのがあるのかどうか、そういう点を私は具体的に政府に話をしてもらいたいと思うのです。そうでないというと、われわれの話はいつでも空転しているのです。もしそれがあるならば、私は政務次官にひとつ先ほど来のたとえば大矢理事の質問の中にもありましたが、一体政府はやるのかやらぬのか、常備の救援のあれはどうだとか、こういうようなことになると、重大な問題ですからここでなかなか即答できませんというようなことをおっしゃるのは、私は実はおかしいと思うのですが、政務次官も前から何年もやっておるわけじゃないから、そういう責め方をするのはちょっとあれですが、これだけの人命をとにかくここ数年の間になくしたというようなことを考えますと、私はほんとうはそういう点についてもうすでに研究されて、実施の段階になければならぬと思うのであります。だからそういう点が一体どうなのかということなんです。それをひとつお伺いしたい。政務次官には、私は言われない気持ちはわかりますからあれだけれども、今度もやはり答弁さえしておけばいいというような気持ちではやってもらいたくない、そういう気持ちがあるのですか。ひとつそういう決意——決意といってもおかしいのですが、そういう気持ちがあるかないか、私はお尋ねしたいわけです。これだけです。
  38. 参考人(原功一君)(原功一)

    参考人原功一君) ただいまお話がございました保安上の設備というようなことに関しまして、確かに御指摘のように石炭は合理化合理化と、常にコストの低減、そういうようなことで合理化をしいられてきておりました。それは先生方のほうがよく御承知のとおりでございますが、保安上の設備に関して私はぜひお願いしたいと思います、ちょうどいま先生のおっしゃってくださった機会ですので。この保安上の設備も確かにコストの低減というものにつながっておりまして、思うようにいかない。たとえばベルトのようなもの、うちはほとんどベルトで、夕張炭鉱、幌内炭鉱、すべての炭鉱ベルトでやっております。しかし聞くところによりますと、英国ではもうすでにゴムのべルトを使っていない。絶対燃えないベルトを使っておるということを聞いております、真偽はわかりませんが。しかもゴムのベルトでも不燃性のベルトがあります。しかしそうたくさんは出回っておりません。ところが、これに切りかえれば幾ら金がかかるか。それこそ私のほうのようにべルト専門で使っている会社ですと、たいへんな金がかかってしまう。これはぜひ政府に融資していただきたい。企業でいたしますから融資していただきたい。英国式のベルトでなくても、少なくとも燃えないようなベルトにしたい、こう考えております。  それともう一つCOマスクです。COマスクの件ですが、これは四十四年の三月からになっておりますが、これはぜひできるだけ早い期間に全員に持たせるようにしていただきたい。これは製作能力が足りないとか、先ほど大矢先生からのお話がありましたが、輸入したらどうだというようなお話もありますが、これはやはり当局の御尽力がなければできないことでありますけれども、これはぜひともできるだけ早い機会に全員に持たしていただきたい。このCOマスク定置式で置いておきますと、今度のようにあわてて持ってこない、こういうことであります。ちょっと話は余談になりますが、先ほどタオルのお話がございました。今度の脱出でも係員の指揮でタオルをくわえてきているものが数名おります。これは水に浸したタオルで、しかも下をはって出てまいりました。これはみんな生きております。タオルでさえ生きておるのでありますから、この定置式のマスクを持ってきたら必ず生きておった。あと百メートルというところで六名も倒れております。約二分かかれば出られるところであります。携行式マスクにしておれば、必ずこういう連中は生きておった。ただあわてたために持ってくるのを忘れたというだけであります。このCOマスクのことについてはぜひお願いしたい、こう考えております。  その他、非常警報でございますが、電話線は、先ほど申し上げましたように切断されてしまって連絡がとれない。おくればせながら平和鉱業所において無線機の使用をいま実験中でございますが、この無線機も全山すぐ行き渡るようにいたしたい。自力でこれはいたしたい。しかしこういうようなことはできる会社はいいですが、できない会社がたくさんあると思います。これに対してはぜひ御当局の御援助をお願いしたい、こう考えております。  そのほか、常に警戒体制を厳重にする必要を痛感いたしました。職員がいない、人間がいない、人手不足だ、こういうことのために警戒体制を怠るようなことのないように、常に警戒人員をいつも要所々々には置いておく、常置しておくというふうにして絶えず警戒を怠らないということが一番大事なことだと思います。これは人間をさいて、コストが上がろうが、保安経費が上がろうが、何でもこれはやっていきたい、こう思っております。それと同時に、先ほどお話が出ましたが、ぜひ救護隊は常置していただきたい。これが通知を受けて出てくるまでには、やはり平和鉱業所におきましても二時間かかっております。一番早くやっても一時間半、あの重装備をして集まると一時間半かかるそうであります。これはいつ起こらないとも限らない。この警戒体制と救護隊の常置につきましては強く要望いたします。
  39. 説明員(西家正起君)(西家正起)

    説明員(西家正起君) 先生の御質問でございますが、非常にむずかしい問題でございますが、現実の災害につきまして分析をいたしました場合に、いろいろな原因がございまして、やはり経営者あるいは関係者に責任ある場合と、それからもう少し広く見まして、長期的な炭鉱骨格構造そのものに問題があるという場合と、これはその現実の災害につきましてはいろいろケースがございまして、そういう二つに分かれるのではないかと考えるのでございますが、先ほど鉱山保安協議会で検討している最中であると申し上げましたのは、後者の特に炭鉱骨格構造の問題でございます。これはわれわれといたしましては、まず理想的な炭鉱の中の骨格構造を描きまして、そこにいくためにはどのくらい現状が不足しているか、こういうことを実はいろいろな方法調査いたしておる最中でございます。いままでのところでは、やはりたとえば炭鉱骨格構造の中で一番大きな問題は、坑道掘進のおくれとか、坑道維持のおくれとか、こういう点につきましておくれがちであるという点を、総体的に見ましてつかんでいるようなわけでございまして、こういう点につきまして、当然保安の長期対策として今後あるべき姿を描き出しまして、これに対して当然これはやっていかなければ、炭鉱自身もできない問題でございますし、そういう面についてかりに資金的な面でできないような面がありました場合には、これらについての従来の援助措置というものを大幅に強化をいたしたい、こういうような趣旨でただいま検討をいたしておるような次第でございます。このほか具体的に保安の機器とか設備、保安機器の関係でございますが、これにつきましては、従来から補助金、保安融資等出しておりまして、これらにつきましても、やはり最終的には国の援助措置というものを強化いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  40. 小林武君(小林武)

    ○小林武君 原参考人のお話を伺いまして、私けっこうだと思います。  ただ、いまの保安局長のお話は私は納得いかないのです。とにかく日本の国に石炭産業というものが起こってから、とにかく今日まで私は幾多のあれがあったと思います。私はそういうことを調べたことはないが、調べてみたら、一体そういう災害原因ははっきりすると思うのです。今度の場合だって、これは何も想定されないような災害じゃないと思うのです。先ほど来、原参考人のお話を聞いていると、不燃性のベルトというようなものをほかの国でも考えてやっているというようなことは、ちゃんとそういうことはわかっておるのですから、あなたのほうで大体それぞれの山についてちゃんと一々知悉しているというのはあたりまえじゃないですか。ここの山は一体どうなんだ、ガスの問題じゃどうなんだ、あるいはここの山はどういう点で災害に注意しなければならないということはわかっていなければおかしいと思うのですよ。一体この山は保安上の設備が必要なんだということがあなたのほうでたいへんむずかしい問題でわからないというなら、私は重大なことだと思いますよ。先ほど来、原参考人からお話があった、不燃性のベルトがあれば今度の問題は起きなかったということになると、私は労働者は殺されたと言ったら、はなはだどうも変な話になるかしらぬけれども、私は労働者は実際そのために捨てなくてもいい命を捨てたということだけは間違いないのじゃないですか。われわれのような口の悪い者なら、殺されたと言ってもいいくらいだ。あわてたとかあわてないとかいう話はありますけれども、その場合になったらだれだってあわてますよ。ぼくなんかだってあわてたと思う。あわてない人間がいたらおかしいですよ。それは訓練によってそういう場合に危機を脱出するという努力はお互いやらなければならないけれども、あわてるのがあたりまえなんですよ。しかし、あわてても、とにかくその災害を抜けられるということが日ごろ準備されていなければならないと思うのです。だから私はお話をいま承っておって、原参考人やあなたのお話を聞いても、やはり労働者というのはいまのような状況の中で、石炭産業の方々は非常に気の毒だと思う。そういうことを考えましたら、やはりあなたはしっかりそれを知っておって、この山にはこういうことが必要なんだ、こういう設備が必要なんだということを考えたら、考はわからぬはずがないと思うのです。問題は金だということをあなたがおっしゃるなら、ぼくはなるほどと言ってある程度納得します。問題は金だと。いま原参考人のお話だと、やはり企業によっては設備のできるところもあればできないところもある。投資できないところもあるということになったら、できないところにはどういうことをするのだということをやらなかったら対策じゃないのじゃないですか。そういうことをやるのがすなわち万全の策じゃなかったのですか。佐藤総理大臣が万全の策を講じてと言われてから一体何回こういう大事故が起こったのですか。私はそれを言うのですよ。だから災害というのは思いがけないところに起こるわけだから、絶無の状況にするということはなかなか困難にしろ、こういうような悲惨なことが再々起こっても、いまのような答弁をされるというのじゃぼくは心外ですよ。あなたとぼくとのやり取りが食い違っていれば別ですけれども、あなたのあれは実際ぼくは心外ですよ。これは追及するばかりが能じゃないけれども、調査をしてそういう設備についてはほんとうに万全の策というものを立てるべきである。どうしても設備ができないというような企業があった場合には、それに対してどういうことをするのだというようなことも含んでやらないと、石炭産業の中ではほんとうに貴重な命を失うところのたくさんの労働者がこれからも出てくるということですよ。それをわれわれがどういうふうに未然に防ぐかということが、こういうところでわれわれが議論する理由だと思うのです。だからそういうところでちょっとあなたの答弁については私は不満です。  政務次官に私は先ほどから申し上げていますが、先ほど来の原参考人のあれでも融資ということをやはり希望意見として述べられておる、それについては一体どうなんですか。その融資の問題などについて、ひとつ政務次官からはっきりした政治家らしい答弁をしてもらいたい。
  41. 政府委員(熊谷太三郎君)(熊谷太三郎)

    政府委員熊谷太三郎君) たいへん抽象的なお答えになりまして申しわけありませんが、ひとついろいろの御意見等も十分検討いたしまして、できるだけのことはいたしてまいりたいと、かように考えております。また、具体的に出ましたお話、たとえばベルトの問題で融資云々というようなお話も出ました。そういうことにつきましては、十分ひとつそういう問題について御相談に応じて善処してまいりたいと、このように考えます。  そのほか、いろいろ具体的な問題につきましては、それに応じまして、ひとつ十分善処してまいりたいと、そういうふうに考えております。
  42. 森元治郎君(森元治郎)

    ○森元治郎君 一つ我妻さんに伺いたいのですが、さっき違反個所とか違法の個所が何かたくさんあるというので指摘された、指摘したあとはどう処置されたか、その結果ですね。それから原さんにお伺いしたいのは、もうかねがね、私はしろうとですが、私の企業としての限度にきているんじゃないかと思うんです。先ほど不燃性のゴムの話が出ましたが、とたんに国の力をまた借りたいというようなお話がある。一体自力で石炭産業を継続していけるのかどうか。ことに石油とか原子力とかという競争相手がどんどんこれから目ざましい勢いで進んで、コストダウンなんていう簡単なことだけじゃなく、あらゆる面で、経営の面でも保安の面でも、これは非常な配慮と資金が要るだろうと思うが、一体これに対抗して私企業でやっていけるのか、その限度がきていると思うんだが、原さんは、いやこうすればなお自力でやっていけるんだという確信がおありなのかどうか、その点だけを伺います。
  43. 参考人(我妻勇君)(我妻勇)

    参考人我妻勇君) ただいまの御質問でありますが、私が申し上げたのは、この保安の違反個所指摘については通産省の監督官が行なった、監督官指摘事項である、こういうふうに私申し上げております。したがって、その後のこの指摘事項に基づいて問題の処理が逐次はかられていっておりますけれども、さらにその傾向として、これを減少するどころか、増大の方向にあるということを申し上げたいのが第一点。それから組合側としては、現在独自の調査を行ないまして、この違反個所について現在保安局長あてに申告してございます。したがって、この行政措置と相まって、私たちのほうは問題点を具体的に法を管理する側の立場に立って解決を求めるように要請してまいっております。そういうふうな経過も含めて御答弁申し上げます。
  44. 参考人(原功一君)(原功一)

    参考人原功一君) ただいまの私企業の限度、こういうお話でございますが、これは石炭といいましても原料炭と一般炭、この二つに分けて考えられると思います。この二つは同時に考えるというのはちょっとむずかしいと思います。ただ私企業の限度でございますが、現在でも原料炭——製鉄用炭でございますが、製鉄用炭につきましては負担増対策をしていただいている。たとえば外国から安い石炭が人っております。そのために外炭との差額だけを補償していただいている。要するに負担増対策といっておりますけれども、負担増対策によりまして、コストを補償していただいている。そのためにこれをいただいていることが私企業じゃないんじゃないかといわれれば、私企業ではございません。やはり国民の血税によって負担増対策をしていただいているのだから私企業とはいえないじゃないかといわれれば、私企業ではないということでありますが、この負担増対策によってコストの補償がされておりますので、原料炭につきましては大きな意味での私企業はやっていかれます。ただし、一般炭につきましては、一般炭というのは電力用炭、主として電力用炭でございます。これもやはりある意味の負担増対策はしていただいておりますが、電力その他の買い入れ価格が低いということで非常に一般炭を出している山は困っております。買い入れ価格が低いので非常に困っております。困ってきますと、いろいろの面で私企業の限度がくるじゃないかとおっしゃられればそのとおりでございます。原料炭につきましては、負担増対策によりまして生きてはいかれる、生きてはいかれますが、一般炭につきましてはなかなか生きていかれない、そのために今度の抜本対策をお願いしているわけでございますけれども、いまの私企業でやっていくか、私のほうは幸い夕張、平和ともに原料炭でございます。全量原料炭です。幌内が約四〇%原料炭になってまいりました。それから空知炭礦その他は五〇%、六〇%が原料炭です。私のほうの側でいきますと、負担増対策を続けていただけばやっていかれます。こう申し上げたいと思います。しかし、大きな意味で税金で負担してもらっておいて、なぜ私企業といわれるかといわれれば、私企業の限度ということがいえるかと思います。ちょっと的はずれかもしれませんが。
  45. 委員長(阿具根登君)(阿具根登)

    委員長(阿具根登君) 他に御発言もなければ、本件に関する調査は、本日はこの程度にとどめます。  参考人各位に申し上げます。本日は長時間にわたり貴重なる御意見を賜わりまして、まことにありがとうございました。本委員会といたしましては、皆さま方の御意見を参考といたしまして、炭鉱災害の絶滅のために適切な措置を講ずるよう努力をいたす所存でございます。本日はどうもありがとうございました。重ねて厚くお礼申し上げます。     —————————————
  46. 委員長(阿具根登君)(阿具根登)

    委員長(阿具根登君) 委員長の手もとに、自由民主党、社会党、公明党及び民主社会党の四党共同提案により、炭鉱災害防止のための緊急対策に関する決議案が提出されておりますので、本決議案を議題といたします。
  47. 鬼丸勝之君(鬼丸勝之)

    ○鬼丸勝之君 私は、炭鉱災害に対処する緊急対策について、自由民主党、社会党、公明党及び民主社会党の四党共同提案になる次の決議案を提出いたします。    炭鉱災害防止のための緊急対策に関する決議(案)  相次ぐ炭鉱災害の惨状は目をおおうものがある。よつて政府は緊急に左記の対策を講ずべきである。  一、緊急指令、避難の伝達は、既存の設備のみに頼ることなく無線連絡等、早急に設備の充実強化につとめること  一、自己救命器は速かに個人携行ができるよう措置すること  一、緊急事態を想定しての退避訓練等は月一回以上必らず実施させること  一、遺族年金は遺族の生活を保障し得る年金とするよう労災法の改正を早急に検討すること  一、最近の災害救護隊が常駐体制にないため到着が遅れ救出作業が難航し、災害の拡大を招いている。よつて救護隊が常駐体制をとれるよう配慮すること  一、政府は、事故の多発にかんがみ鉱山保安法、鉱山保安規則の再検討、保安設備の充実強化を図り、保安の万全を期するため、責任をもつて措置を講ずること   右決議する。  委員の皆さまの御賛成をお願いいたします。
  48. 大矢正君(大矢正)

    ○大矢正君 私は、ただいま提出されました四党共同提案の緊急対策の決議案に賛成をいたします。  ただ、私が所属をする社会党は申すに及ばないところでありますが、公明党さんにおかれましても、また民社党さんにおかれましても、この際緊急対策だけで事足れりと考えているわけではないのでありまして、まだまだ多くの内容と、そして強化しなければならないことがあると存じておりますが、しかし、各派共同提案というたてまえ上、賛成をいたしたところであります。  そこで、この内容の完全実施はもとよりのこと、この趣旨を尊重しての政府当局の積極的な対策と努力、あわせて石炭に対する重ねての抜本対策検討中のおりからでもありますから、その中に保安確保という内容を十分盛り盛んで対策を樹立されるよう強く希望をいたして、賛成をいたしたいと思います。
  49. 委員長(阿具根登君)(阿具根登)

    委員長(阿具根登君) 他に御発言もなければ、これより採決に入ります。  炭鉱災害防止のための緊急対策に関する決議案を問題に供します。  本決議案を本委員会の決議とすることに賛成の諸君の挙手を求めます。   〔賛成者挙手〕
  50. 委員長(阿具根登君)(阿具根登)

    委員長(阿具根登君) 全会一致と認めます。  よって、本決議案は、本委員会の決議とすることに決定いたしました。     —————————————
  51. 委員長(阿具根登君)(阿具根登)

    委員長(阿具根登君) 次に、継続調査要求についておはかりいたします。  当面の石炭対策樹立に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、議長に提出する継続調査要求書の作成等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 委員長(阿具根登君)(阿具根登)

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  53. 委員長(阿具根登君)(阿具根登)

    委員長(阿具根登君) 次に、委員派遣承認要求に関する件についておはかりいたします。  閉会中、委員派遣を行なう必要が生じました場合の派遣委員の人選その他手続につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 委員長(阿具根登君)(阿具根登)

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十二分散会