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参考人(
我妻勇君)
日本炭鉱労働組合副
委員長をやっております
我妻勇でございます。同時に、今度の
平和炭鉱の
災害にあたりまして、
現地災害対策委員長をつとめまして、直ちに
現地にまいって、つぶさにこの
災害の
状況についてその
対策と
問題点をとらえて今日まで努力してまいりました。この
災害にあたりまして、非常にお忙しい中を
先生方には
現地までわざわざ
調査に行っていただいて、さらにまた非常に御懇切な御
指導をいただきましたことを心から厚く御礼を申し上げます。
災害の概況と
経過については、いま
経営者のほうから述べられました
内容について相違ございません。私はその
災害の
問題点とその
対策という点についてここで申し上げたいと思う次第であります。
第一に、この
炭鉱の
災害でありますが、最近非常に多くの
災害が発生しております。その
災害の発生しておる
原因等については、
保安当局のほうですでに発表いたしております
監督官の
活動状況、この中に明らかなとおりでありますが、ちなみに、その一例を申し上げますと、
昭和三十七年の第一次
抜本策、
政府が
石炭政策として出発いたしました三十七年当時の
災害件数に対しまして、四十二年度の
災害件数、あるいはまた
監督官の
指摘件数というものは非常に多くなっておる事実を私
たちはこの場合に見のがすことができないと思うわけであります。三十七年当時の山の実数は、
炭鉱数は六百八でございます。
現状、四十二年の末では百六十五という
数字に相なっております。
人員については
炭鉱労働者が十五万九千四百八十五人であったものが、すでに今日では九万二千百五十人、
能率にいたしまして二十四・九トンという
能率が、これが四十二・五トンと、実に倍率を数えるに至っております。したがいまして、このような
状況で
炭鉱の
合理化が推移してまいりましたが、三十七年度におけるこの
炭鉱の
保安監督官の
指摘件数に対して、しかも四十二年度における
指摘件数が非常に多くなっておる事実を私は残念ながら申し上げざるを得ません。しかも、この
坑内火災に
関係する
保安監督官の
違反指摘件数というものは、四十一年におきまして三百九十九件という
件数を数えております。そして四十二年度において、なおかつ三百五十三件の
件数を数にておるわけであります。
支柱規格の
違反件数に至っては実に三千二百件というような
違反個所の
指摘があるわけであります。しかも、この
防火構造、あるいはまた爆発の
伝播防止施設、
作業場、
通行個所の
可燃性ガス、散水、
通行遮断、必要な
通気量、こういうふうなものも相変わらずその
件数が多くて、全体的に
炭鉱数が先ほど申し上げたように減っているにもかかわらず、このような
件数を数えていることが非常に大きな
問題点の
一つとして、いわゆる
現状における
炭鉱の
合理化の
内容を如実に物語っている
問題点の
一つだと思っております。
第二は、今度の
平和坑の
火災の問題でありますが、
平和坑の
火災といえども、この問題に
関係しないとは言いがたい、こういうふうに私
たちは考えております。いわゆるこの
火災場所というのは、これは
ベルトコンベヤーの
原動機付近とされておりますが、しかもこの
原動機という
——そういうふうな
坑道では千
立方の風が通っておるわけであります。この
坑道の大きさは
特号坑道でありますから、
加背にいたしますと、多少
地圧で変化いたしておりましても、
現状では二メートル七十の高さの
坑道であります。その
坑道に干
立方の風が通っておるわけでありますから、一
たんベルトに火がついた場合、どういうふうな
状態になるかということは想像できることと思います。したがって、この場合における
問題点の
一つは、リモートコントロールをしておる、いわゆる
無人原動であったという点が
一つであります。
炭鉱は日増しに窮状の一途をたどりまして、あらゆる手段を講じて、今日のこの
炭鉱の
経営を継続しておるわけでありますが、その過程には、このような
合理化が進められておるわけであります。したがって、この
現状というのは、実際に
災害が起きて、それが入
気側に
運転手がおるために、
排気側におけるところの
——排気側のほうに
通気が行っておりますから、その
関係でここで
火災が起きても、事実上これに気がつくというのは時間的な差がございます。
風下におる者がこの
発見をしなければならない、こういうふうな
状況にあったわけでありまして、この
災害に気がついたときには相当な手おくれになっておるのはこういうような事実からであります。しかも、ここの中で
問題点の二として数えられるのは、不幸にして
災害が起きたわけでありますが、この
災害の
発見と同情にとった
措置であります。あの
発見と同時にとった
措置は、
坑内の
火災というこういうような性格からして、当然直ちに
待避命令でなけりゃならなかった、こういうふうに私
たちは考えております。これか
待避命令でなくして、いわゆる
上司に対する
報告とその
指示、しかも、いま
経営者側から発表されましたように、
電話機の故障、こういうふうな事情の中で、しかもこの
連絡に一時間二十分を
経過した、この時間差の
問題点であります。非常にこのような
坑内の
状況の悪い中で、貴重な一時間二十分という時間が今日の大
災害につながった、こういうふうに私
たちは考えております。したがって、直ちにそこの
発見と同時にとるべき
処置がこれがとられてなかったところに
問題点がひそんでおるというふうに考えております。
それからいずれにいたしましても、この場合における
連絡系統というものが、あるいは非常時の場合におけるそういうふうな
配置状況が完全であったのだろうか。完全であったとしても、そのことに手落ちはなかったのだろうか。日常の
訓練というものが完全になされておれば、そういうふうな
配置されておる
人員の緊張というものが、これが日常続けられ、しかも
監視体制になければならない。残念ながらそういうふうな結果になった事実をもってしても、これらにはやはり
問題点があった、こういうふうに
判断をせざるを得ないわけであります。
第三には、この
連絡と同時にとった
救護隊の
出動までに至る
経過であります。これもこの時間に書いてありますように、二時間半を
経過いたしております。今日私
たちは一般の
火災を見ても、あるいはまた
炭鉱を想像するにむずかしくないデパートの
火災の
状況を見ても、えん
とつ状況になっておるという
火災の激しさや、その結果起きてくる
災害等を
判断してみた場合、二時間三十分たって、しかもここの
坑道における多量の
通気、先ほど申し上げましたような千
立方の風の通っている
状態の中で、はたして
坑道はだまってこの時間を見過ごしているわけがないと思うのであります。したがって、このような
状況の悪化に拍車をかけていったような
状態であり、したがって、私
たちはこういうふうな
問題点をとらえてみると、まず第一には、
災害を起こした
原因、不幸にして起こった場合の
措置、こういうようなことを考えてみたときに、それらの問題に対する私
たちなりのこの
問題点を考えて、次の
対策というものを考えざるを得ません。したがいまして、私
たちは
現地に直ちにかけつけてくださった
藤井政務次官に、次のような
問題点を私
たちは
労働者側の要望として申し上げているわけであります。
第一には、
坑内の
機械化並びに電化に伴って
火災の
危険性が増大しつつあるわけでありますから、抜本的な
防火耐火対策の
強化をはからなければならない。こういうふうなことが第一点であります。第二点目は
消火設備の充実をすることであります。
坑内における
消火設備は旧態依然たるものがございます。
坑内の
消火機器の開発を含めて徹底した
対策を講ずること。こういうように私
たちは
問題点の二を申し上げておきます。第三番目は、
保安対策を前提とした
適正人員を
配置すること。四点目は
自己救命器の
個人携行を即時
実施すること。
国内生産が間に合わないときは
緊急輸入の
措置を講ずること。五点目は
保安教育の徹底であります。全般的な
保安教育の
実施をするとともに、特に
退避訓練は今次
災害を契機として各
炭鉱一斉に
実施していただきたい。この場合に
実施訓練は、これは職場の
実質訓練、それから図上の
訓練、
坑口におけるところの
訓練等を徹底的にやっていただきたい、こういうふうに私
たち申し上げておるわけであります。
六番目は、
近代的装備と
機動力のある
常設救護隊を国の予算で設置していただきたい。
地域ごとに設置する
救護隊は各
炭鉱より派遣して
交代制とする。先ほど
ことば足らずの点がございましたが、二時間にわたるこの
救護隊の
出動というのは、
居住区におるために、
居住区にこの緊急の
出動命令がまいりまして、それからその
呼び出しに応じて
出動いたします。同時に重
装備をいたしまして
坑内にかけつけるわけでありますから、時間的にはこの一時間あるいは一時間半という時間が通常のこととされております。残念ながら
三池炭鉱の場合においても、
夕張炭鉱の場合においても、あるいはまた
太平洋炭鉱の
火災の場合についても、同様にこの時間差が認められるわけであります。今度の
平和炭鉱の場合についても、先ほど申し上げたように、二時間以上の時間を
経過している事実を見たときに、こういうような
地域に第一緊急時における
出動する数というものを確保する
必要性を私はこの点で訴えておるわけであります。
それから七番目は、
保安監督官が
現状災害に対するところの
対策に追われている
現状を考えてみた場合、この
人員の不足ということについて私
たちは痛感をいたしております。したがって、
監督官の大幅な増員と
監督指導体制の
強化をはかっていただきたい。
最後に、
坑内無線電話の
活用をはかって
連絡、
警報の
円滑化をはかっていただきたい、こういうようなことで
藤井政務次官に御要望申し上げたわけであります。
それから私は、今日の段階に至って特に痛切に感じておる三つの
問題点がございます。その第一は、
炭鉱の場合には特に
予防体制についてであります。
坑内の
不燃化、先ほども申し上げたけれども、
ベルトやケーブル、こういったものについては
不燃化に努力すべきである、こういうふうに考えております。第二は
消火設備であります。
機械化、スプリンクラー、こういったものを取り付け、そして
対策に当たるべきだ。それから
防火構造の
基準の引き上げ、この
問題点についても再三再四
保安協議会では問題になるけれども、二十四年に
この
防火基準をつくってから今日、この
基準が変更になってない事実を私
たちは十分に検討してみなければならないと思うわけであります。
さらに
管理機構の問題であります。先ほど申し上げたように、一、二番方の場合については
管理機構でこれらの
人員の
配置についても十分であると、こうしても、はたして三番方まで同じような
人員配置と
管体制下にあるのかどうか。こういうふうなことを考えてみた場合、
実態の
調査をしてみた場合、残念ながらこれらの問題については不十分さを
指摘せざるを得ません。したがって、
管理機構の問題についても十分な
措置をしなければならないと考えております。
それから、問題の
災害に直接つながっておる
骨格構造の問題であります。私は冒頭に
炭鉱の
災害の
指摘件数の多い
実態と
炭鉱数を並べました。なぜ
炭鉱数がこれだけの
数字になっていながら、この何千件という
指摘件数が各
項目ごとによって、しかも法の
違反個所というのが全般にわたって出てきておるということについて私
たちは不審さを感ずるわけでありますが、この
骨格構造の変化、いわゆる
炭鉱の大型化に伴ってこれらの問題の
措置完全に行なわれてないことを私
たちはこの中で
指摘をせざるを得ません。したがって、この前進払いとか、あるいは独立
通気の問題について十分なる配慮をする必要がある。こういうような
強化を私
たちは訴えたいと思うのであります。
大きい第二番目は
監視体制であります。これは、この
災害の中で言われますように、実際に
ベルト、その
原動機付近における自動
警報器はどうなっていたのであるか、実際に
火災発生と同時に自動
警報器なり自動制御器というものが働かなければならないようになっておるわけであります。ところが、実際にはそういうような働きを示しておらない場合、これらの問題についても十分に経験にかんがみて私
たちは次の
対策の
強化をしなければならないと思う次第であります。
それは、巡回体制の問題であります。巡回体制については、これは完全にその任務を遂行するような
人員配置、そしてこの巡回体制を
強化して未然にこういった
災害発生を発生と同時にこれを
発見して、それに対して
措置を行なうようにしなければならないと思うのであります。
その次は
教育の徹底であります。残念ながらこの私
たちの組合員の中にも
教育が未熟であって、この大
災害になった事実を黙視するわけにいきません。私
たち労働組合といえども、
経営者側にだけその責任があるのではなくして、私
たちにも十分にこの
事故と同時に、この
事故の
原因を究明し、労働組合がみずからこれらの問題に対する改善をしていかなければならない点も幾多ございます。しかしながら、生きた
教育、その実地の
教育をして、初めてこれらの
災害が不幸にして起きた場合であっても、最小限度にとどまる、こういうようなことになると思うのであります。残念ながら今日の
炭鉱の中では、この
教育はただ単なる机上の
教育だけにとどまっていると
指摘せざるを得ません。かりに
炭鉱の場合にはガスが
通気の停止に伴って、たとえば停電等の
事故発生と同時に、どの程度ガスの量がたまるか、そのガスの量のたまった自体の中でどのように本人
たちは行動すべきか、こういうような生きた
訓練、この
調査をするのがいわゆるガスコンターと称しておるわけでありますけれども、このガスコンターは機械的に行なわれ、ガスコンターによるこういうような
教育基準を設けて、現場の
実態に合わせた生きた
教育がなされてない現実を
指摘せざるを得ません。したがって、その結果がこういうような大きな
問題点になると思います。先ほど
経営者のほうから、マスクは本人
たちが持っておった。マスクというものは持っているものじゃなくして、つけるものである。したがって、日常ふだんにこの
教育が徹底されておったならば、瞬間的に、本能的にマスクは身につけたと思うのであります。ここでも
教育の未熟さが事実を示していると思うのであります。したがって、この問題については徹底的に、この経験にかんがみて、あらゆる方向から
教育の徹底をしていかなければならないと考えております。
最後の三つ目は、救護体制の問題であります。これは第一に
警報連絡であります。この
警報連絡、これらにつきましては手落ちはなかったのか。全般的に本人
たちが非常に驚愕をして、
災害と同時にそういうような自信を失って、とるべき
措置も見失うという実情については理解できても、これまたその
連絡、指揮系統、
人員配置の問題について完全に私
たちは
教育の徹底を行なっておけば、
問題点はもっと解決したはずだと思っております。
その次は、この
退避訓練の問題であります。
退避訓練についても、今度の場合に助かった人
たちは、自分でマスクを取りに行く時間なくして、タオルを自分の口にくわえて、そしてはうようにして
坑道を上がってきた人
たちは助かっております。不幸にしてこの
坑道をはわずに、しかも立った姿勢のままで走ってきた人
たちは、この中でも倒れている実情を私
たちは見のがすわけにはまいりません。ガスは上を走るわけであります。軽いわけでありますから上を走るわけで、したがって、そういうふうなその
退避の行動というものが、実情にあわせた行動というものが絶えず
訓練されておれば、この時点ではもう百メーターで助かった人
たちもおるわけでありますから、そういうふうに地底をはうようにして、しかも自分でとるべき
措置を敏速にとって上がってきたならば、もっとこの
災害は少なくて済んだと私
たちは思うわけであります。したがいまして、この
退避訓練の問題について、徹底した
退避訓練というものを行なう
必要性を私
たちは強調したいと思うのであります。
それから、先ほど申し上げましたからこれは簡単に申し上げておきますが、
救護隊の常設の問題、それからこの救護の設備の問題についても、単なる
COマスクだけじゃなくて、その他のハッパ機の問題にしてもいろいろ種類もございます。したがって、泡沫ハッパ機等も使いながら、私
たちはその設備に努力をしなければならないと思うわけであります。
もう一度繰り返しますが、
予防体制と
監視体制と救護体制に分けまして、根本的にこの欠陥を私
たちはこの際に改めるように、現在行なわれておりますところのこの
保安協議会において、通産大臣の諮問によって
抜本策が答申されることになっておりますおりからでございますので、これらの
問題点の改正方もあわせて御要望申し上げまして、現場における
実態とその
措置と
問題点を申し上げて、私の発言
内容にかえさせていただく次第でございます。