○
説明員(西家正起君) また九月に入りまして、北海道におきまして重要
災害が発生をいたしまして、まことに遺憾に存じている次第でございます。最初に、夕張
災害の御報告をいたします前に、最近の
災害状況につきまして簡単に御報告申し上げたいと思います。
お手元の三枚とじましたグラフのついた資料でございますが、これに基づきまして、最近の
災害につきまして傾向を御
説明申し上げたいと思います。
一番上にございます
災害の推移でございますが、これは
石炭鉱山の鉱山
保安法ができまして以来の
災害率の趨勢でございます。実線は罹災者の数、三日以上休業いたしました罹災者、死亡者の全体の数を稼働延時間で割った率でございます。点線のほうが死亡者だけの死亡率でございます。ごらんになりますように、罹災率のほうは鉱山
保安法ができまして以来昭和三十一年ごろまで非常に低く減少してまいったんでございますが、三十年代に入りまして若干上向き傾向を示しました。最近では
かなり高いところで横ばい
状態を示しており、昭和四十二年度におきましては、稼働延百万あたり九百八十八という
数字になっておるわけでございます。この
数字は四十三年に入りまして、現在までこれよりは
かなり下回っておるようでございます。一方死亡率のほうでございますが、これは昭和三十八年と四十年に非常に大きなピークがございまして、これはまあ三池の大
災害、それから山野の四十年の
災害こういったことで非常に高い
数字を示しておりますが、昭和四十二年におきましては非常に死亡者数が減りまして、
災害率におきましても六・三七というようなまあ満足すべきものじゃございませんが、比較的低くなっておったわけでございます。四十三年に入りまして、また死亡者の数が四十二年よりは若干増加をいたしまして、現在のところでは一昨年まではまいりませんけれ
ども、昨年よりは高いような死亡率の
状態になっておる次第でございます。
二枚目の紙は死亡者と罹災者の絶対数の変化でございます。これは総体的に非常な減少を示しておりますが、これは労働者の数も減っておりますので、これは一枚目の紙のほうが
災害の傾向としては適当かと思います。こういう
状態に相なっておりまして、昭和四十二年には死亡者二百四十八人、明治四十一年以来の最低値を示したわけでございます。四十三年に入りましてこれを上回っておることは、一昨年まではいっておりませんけれ
ども、これを上回っているような
状態でございます。
一番最後の半ペラの紙のところに昨年の一月から九月二十日現在と、ことしに入りましての一月一日から九月二十日現在の死亡者だけの
会社別の比較をしてみたわけでございます。で、この大手、まん中のちょっと下のほうに大手の計がございますが、大手の計で昨年より十一名の死亡増になっております。それから中小では下から二行目の昨年より二十五名の増、合計いたしまして、昨年は九月二十日まで百七十八名という死亡者数が四十三年のことしは二百十四名と、合計いたしまして三十六名の増加を見ておるような次第でございます。ところが、この表で見ました場合に、それぞれ大手、中小でふえておりますけれ
ども、特に大手の中では
一つの
会社、これでございますとCという記号が書いてございますが、Cの一
会社で昨年より約三十四名の増加をいたしております。したがいまして、大手の計では十一名の計でございますが、このC以外につきましては昨年よりも
かなり減っているということが言える。同じく中小につきまして見た場合に、Rという
会社がございますが、これが二十九名の増加と、こういうことに相なっておりまして、全体で二十五名の増でございますが、大
部分の増加、それ以上の増加をある一鉱山でやっておる、こういうような
状況でございまして、特に
二つの
会社に非常に大きな増加の
原因がかたまっておる。これなかりせば非常な減少になっておると、こういうような
状態を示しておる次第でございます。
次に、鉱山
保安行政の概要につきまして簡単に御
説明申し上げたいと思うのでございますが、お手元には資料が配布してございますけれ
ども、時間の関係もございますので、はしょりまして簡単に御
説明を申し上げたいと思います。ただいま私
どものほうで鉱山
保安行政としてやっております
考え方といたしましては、あくまでも自主
保安体制ということを大原則といたしまして、経営者、労働者が一致をして
保安を確保するということを大前提といたしておりますけれ
ども、そうして国といたしましては、それをサイドチェックをするという
意味で監督検査の充実をはかっております。しかしながら、最近の
石炭鉱山の自然条件の悪化あるいは経理条件の悪化等非常にきびしい環境にかんがみまして、ただそれだけではなかなか
災害は減らないということで、この自主
保安体制を側面から強力に
助成する
意味で、ある
程度の
予算を使って側面から
助成も行なっておるわけであります。現在
保安行政の柱は、したがいまして監督指導体制の強化ということと、
保安教育の強化、
保安施設、機器の整備、
保安技術
対策の強化、こういったことを柱といたしまして実施をいたしておるわけでございます。
監督指導体制の強化といたしましては、年々いろんな監督検査をやっておりますけれ
ども、それからの実質的な効果があがるような日数の増加等をやっております。それから監督官が回りましたときには、改善事項の指示あるいは技術面の指導等を行ないまして、法規違反がありました場合には追跡検査を徹底してやる。なおそれでも直っていない場合には、改善命令あるいは作業停止命令等を発動する等、
かなりきびしい態度をとってまいっております。
それから監督検査の面ではそういう点を強化いたしておりますが、さらに監督指導だけではなかなか
災害は減らない。こういうような
対策として
保安意識の高揚なり
保安技術の向上という点から
保安教育ということが非常に重要であるということでございまして、これは従来からやっております
保安教育のほかに、四十二年度から政府が
予算を取りまして、特殊法人の鉱業労働
災害防止協会に補助金を出しまして、この協会で、九州、北海道、それから東部——これは常磐でございますが、この三カ所に近代的な教育訓練施設を完備した鉱山
保安センターというものを現在建設中でございます。これはことしの十二月には完成いたしまして、来年の一月から運営に入る予定でございますが、これができました暁には、教育担当のスタッフの養成教育と、あるいは合理化に即応した新技術教育、あるいは係員のリーダー教育、あわせて鉱山救護隊の実践的救護訓練を行なう予定にいたしておる次第でございます。
さらに三番目の
保安施設、
保安機器の整備、開発の促進でございますが、これにつきましては、
石炭鉱山の
保安確保に必要な
保安施設の整備を促進するために
石炭合理化事業団を通じまして、融資率五〇%の無利子の融資を行なっております。四十三年度は必要な二十七機種を対象といたしまして、十八億三千七百万円という貸し付けを行なっております。それに必要な出資を合理化事業団のほうにいたしておるような次第でございます。さらに、中小
炭鉱におきましては、融資と申しましても、融資の残りの額がなかなか
金融面で確保しにくいという点で、四機種につきましては補助金を出している次第でございますが、これは額といたしましては、四十三年度二千六百万
程度でございますが、こういうものを出しておるわけでございます。
それからさらに、もっと
炭鉱の
保安を確保するためにすぐれた性能を持った
保安機器の研究と開発ということをやる必要があるということでございますが、なかなか
保安機器と申しますと
需要の市場が非常に狭い。それからつくっておるメーカーが中小
企業であるということでなかなか進展をしないものでございますので、現在財団法人の
石炭技術研究所とそれに研究を共同にするものに対しまして、新しい
保安機器の開発研究費というものを補助金として出しておるような次第でございまして、四十三年度は六つの機器につきまして千八百万円の補助金を出しておるという
状況でございます。さらには、最も
保安の根本でございます
保安確保坑道というものの掘進を促進するために、坑道掘進に対する補助金というものもこれは
石炭局の
予算で補助金を出しているような次第でございます。
保安技術
対策の強化につきましては、先ほど藤原先生の御質問にございましたので省略させていただきますが、以上のようなことをやっておるわけでございますけれ
ども、なかなか
災害が思うように減らないということを非常に残念に思っておるようなわけでございます。
前置きを終わりまして、九月の三日に発生をいたしました夕張
炭鉱災害につきまして御報告させていただきます。お手元のパンフレットに基づきまして御
説明いたしますが、
災害が起こりました
炭鉱は夕張
炭鉱第二坑でございます。夕張市にございまして、鉱業権者は北海道炭礦汽船株式
会社、社長は原功一、
災害が起こりましたのは、四十三年九月三日の午後二時二十分ごろでございます。
災害の発生いたしました場所は後ほど図面で御
説明いたしますが、三区左二片十尺ロングという個所でございます。
災害の種類は落盤でございます。同
炭鉱の
出炭量は月に九万三千七百トン、鉱山労働者数は八月末で三千二百名でございます。今回の
災害によりまして罹災された方は死亡八名でございます。
災害の概況でございますが、夕張
炭鉱は第一坑、第二坑に分かれておりまして、全体で三千二百名、月に九万三千七百トンを
出炭いたしておりますことは先ほど申し上げましたとおりでございますが、今回
災害を発生いたしました第二坑は鉱山労働者数が約二千名でございます。十尺層及び上層の六払いをつくりまして採炭を行なっております。月に六万九千七百トンの
出炭をいたしております。
災害が発生いたしました三区左二片十尺ロングは山丈と申しますか、稼行丈、稼行いたしております炭の丈が一・五メートルでございます。これに使っております支柱は摩擦鉄柱でございまして、これを千鳥枠に使っておりまして、一・四メートルのカッペを用いております。カッペのタイプはピンタイプということで、これによりまして支保を行なっておりまして、
災害当時はピック採炭、ピックを用いた採炭を行なっておったのでございます。当払いは直接天盤である含媒と頁岩の構造でございます。含媒と申しますのは、まだ炭化をしていないようなものでございますが、この含媒と頁岩との構造が直接天盤で一・二五メートルでございますが、その上に十八・八メートルにわたりまして、十八・八メートルの厚さの砂岩がこの上にございまして、これを大天と言っておりますが、大天となっております。
災害が起こりました払いの面長は全長百三十五・八メートルでございます。傾斜は十八度でございます。前に述べましたような支保で稼行をしておるわけでございます。ちょっとミスプリントがございますが、「
災害発生の数日前」というのはちょっととっていただきます。こういうことで稼行しておったのでございますが、払いの上のほうでございますが、肩部のほうでございますが、肩部のほうに断層が出現いたしましたために、八月二十二日から払いの下のほうから八十・六メートルのところより断層に沿いまして切替を昇上げておりまして、この切替昇が八月三十一日に上添坑道に貫通をいたして完了いたしております。この払いはもともと七月二十二日から採炭を始めておりまして、
災害時におきましてはまだ二十メートルしか進行していなかったのでございます。
災害当日は、一番方として係員が一名と鉱員の方が三十三名がこの払いに配番をされまして採炭と山固め、ステーブル座作り等の作業に従事しておったのでありますが、十四時二十分ごろ払いの深部から四十一メートルの地点、そこから上部に十八メートルの間にわたりまして突然崩落が起こりまして、係員一名を含む八名の方が崩落硬の中に埋没して罹災したものであります。
災害発生と同時に六十六名の救出作業隊が罹災者の救出作業に従事をいたしまして、翌四日の十九時二十三分に全罹災者を収容したのでございますが、すでに死亡をしておられたわけでございます。
災害発生直後には札幌の鉱山
保安監督局から
石炭課長以下七名を現地に急行させまして、罹災者の救出作業の指揮に当たったのでございますが、鉱山
保安局からも外山監督官を急遽現地に派遣をいたしたような次第でございます。
災害の
原因につきましては、罹災者の救出作業と並行して
調査中であったのでございますが、罹災者の収容が完了いたしましたので、その後本格的な
調査に入っておるわけでございます。ただ、まだ現地では崩落個所が残っておりまして、まだ本格的
調査が終わったというような段階には立ち至っておりません。
原因の推定でございますが、崩落個所には何らかの異常現象、これは断層か盤折れか、こういうものがありましたために突然崩落したものというふうに推定をいたしておりますけれ
ども、やはり
災害現場を全部取りあけてみなければそうだという断定をすることはできない
状態にございます。ここには書いてございませんが、今回の
災害に対しましてとりました措置といたしましては、
原因究明につきましては、現地の
調査の終わりましたあとで正式の処分はいたしますけれ
ども、とりあえず北海道炭礦株式
会社が七月三十日と九月三日、二回にわたりまして重大
災害を発生をいたしましたので、そういう点を
通産省は重視をいたしまして、九月の十二日に北炭の社長に事務次官のところに来ていただきまして、厳重な警告をいたしたわけでございます。
炭鉱側といたしましても、相続きました
災害に対しまして
相当な決意を示されまして、自主的に
会社の機構の改革、人事の交代、あるいは今後の決意等につきまして述べられたような次第でございます。なお
保安局長はさらに九月の九日に、それより先立ちまして
石炭協会に各社長、
石炭の大手の社長に集まっていただきまして、今回の
災害につきまして、対岸の火災視をしないように厳重に警告をいたしたような次第でございます。
次のページに
災害の位置の図面がございますが、これが夕張第二坑でございますが、左のほうに「中央竪坑」と書いてございますが、この坑から入坑するわけでございまして、これをずっとおりまして、あとは運搬坑道を水平に右のほうに行きまして、一番右のほうの端に三区左二片十尺ロングというのがございます。一番左のところの
災害の発生いたしました場所でございまして、坑口から約二千六百メートルということに相なっておる次第でございます。
簡単でございますが、御報告にかえさせていただきます。