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1968-09-26 第59回国会 参議院 石炭対策特別委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年九月二十六日(木曜日)    午後一時二十八分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         阿具根 登君     理 事                 鬼丸 勝之君                 川上 為治君                 大矢  正君                 藤原 房雄君     委 員                 伊藤 五郎君                 石原幹市郎君                 徳永 正利君                 二木 謙吾君                 米田 正文君                 片山 武夫君                 須藤 五郎君    事務局側        常任委員会専門        員        小田橋貞寿君    説明員        通商産業政務次        官        熊谷太三郎君        通商産業省鉱山        石炭局長     中川理一郎君        通商産業省鉱山        保安局長     西家 正起君        労働省職業安定        局失業対策部長  上原誠之輔君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○当面の石炭対策樹立に関する調査  (石炭鉱業再建施策に関する件)  (石炭鉱山保安問題に関する件)  (産炭地離職者対策に関する件)     —————————————
  2. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ただいまから石炭対策特別委員会を開会いたします。  当面の石炭対策樹立に関する調査を議題といたします。石炭鉱業再建施策に関する件について調査を行ないます。  まず、石炭鉱業審議会答申の件につき、政府から説明を聴取いたします。中川鉱山石炭局長
  3. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 御承知のように、現在石炭鉱業が当面しております問題は、じんぜんとして日を送ることを許さない窮状にございまして、少なくも来年度予算に間に合わせるべく、新たな石炭政策というものを確立しようという趣旨に基づきまして、石炭鉱業審議会諮問を発しまして、答申を待っているという状況であることは御承知のとおりでございます。ただ、何せ非常にいままでにない窮状石炭鉱業が置かれておりますために、在来政策の何と申しますか、単純な手直し等で処理できるという状況でもなかなかないものですから、審議対象事項は非常に広く、かつそれぞれがからみ合っておるという状況でございまして、総合的な検討を、審議会の小委員会基本方向の確定という努力をしていただいているわけでございますが、現在までのところ、なおいろいろな考え方がございまして、中間的なまとまりというものさえなかなか見出しがたい状況でございまして、あとどれくらいの時間を必要とするかということも率直に申しまして予測しがたい状況にございます。ただ問題の性質上、なるべく早くこの答申をいただきたいという気持ちでございまして、当初は各省が大蔵省予算要求をいたします八月末を、この答申の出ることを期待した時点と考えておったのでございますが、すでに九月もほとんど終わろうという状況でございます。事務的には大蔵省当局もその実態のむずかしさということをよく承知しておりますので、九月初めの予算要求提出期におきましては、石炭関係についての予算要求は未定ということで話をいたしまして、先方も拙速よりも十分詰めてひとつ出してもらいたい、こういうことで、私どもとしては一刻も早く審議会基本的な考え方がまとまることを期待しておる状況でございます。
  4. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本件につき質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 大矢正

    大矢正君 局長、いま簡単に、審議会経過でもないように聞こえるのですが、中身の点について若干お尋ねしたいと思うのですが、植村さんが新聞記者会見をされて、たとえば出炭ベースの問題とか、あるいは新しい企業のあり方の問題とか、いろいろ御意見を述べておられるわけですが、そこで、いまあなたが言われた限度においては、質疑ということになると、何も議論する余地はないわけです。ですから、私のお尋ねしたいのは、すでに局長お読みになっておると思われる植村さんの意見というものが、審議会の中でどういうような位置づけになっているのか、あの植村さんの私案というものは、かってに植村さんが述べているものなのか、そうではなくて、一応あれが骨子というか、骨格というか、そういうものになって審議会議論を展開しているのか、そのことについてお答えをいただきたい。
  6. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 御承知のように、通産大臣から石炭鉱業審議会諮問いたします時点のすでに前に、審議会会長というお立場でなくて、財界の長老という意味植村さんが御自身意見をお持ちになっておる、仮案をお持ちになっておる。それが石炭産業全体がひとつこの窮状において、何らか業界として案を提示すべきだということを、業界首脳部に対して会長が個人的に申されました際に、参考意見として御自身意見をサゼストとして若干述べられた。それを植村構想ということで植村さんのお気持ちとは別に、つまり業界に対する参考意見として述べられて、公表されるおつもりはなかったもののようでございますけれども、受けた業界の一部のほうからそれが外に出たという形で、審議会諮問の以前に植村さんの案が外に出たという事実が一つございます。それから石炭鉱業審議会総会を開きまして、通産大臣から諮問をいたしました際に、私どもがいま置かれておる石炭鉱業実態と五年くらい先の予測現状のまま推移したときの予測というものを事務当局から御説明をいたしまして、これらの実態並びに将来の予想というものから見て、石炭鉱業というものはいまの政策のままで放置すべきでないと考えられるので、ひとつ新しい政策を考えてもらいたいという諮問をいたしたわけでございます。その後、総合部会を一回開きました上で、基本的な構想というものを把握するためには、ごく少数の中立委員と申しますか、学識経験者からなる小委員会で案の骨子を固めていって、おおよそのものが出ました場合に、それを総合部会なり総会なりの審議にかけていくという手順をとろうではないかということにおきめいただきました。以来小委員会を数回にわたって開いておるわけでございますが、その際、何と申しましても、議論を進める上での議論たたき台というものが必要である、このために植村会長の個人的な案というものも一つの有力なる参考意見である、それから社会党、炭労から出ております案も一つの案である、業界有力者筋から出ております個人的な意見一つの案として見るということで、いろいろな出ております案のそれぞれの審議をいたしました上で、植村構想というものをひとつ主たる議論たたき台にしようということで、小委員会が運営されてきたのでございます。  そこで御質問の趣旨は、いわゆる植村案というものが、この小委員会の中でどういう評価に相なっておるかということだろうと思います。全体の支配的意見なのか、依然として植村会長個人の案であるのか、こういうことであろうかと思いますが、方法論は別にいたしまして、植村会長がおっしゃっておられますことは、いまの状況並びに将来の予測というものを考えました場合に、徹底的に経済的な合理主義ということだけで貫きがたいものを石炭産業が持っておることは事実であるけれども、ある程度経済主義という冷酷な、あるいはきびしいものさしに当てはめて議論することも一つ立場である、そういう意味からいうと、いかんせん、現在とられております五千万トンという想定出炭規模というものを今後継続していくというわけにはいくまい。数量的にはまだ結論を得ておりませんけれどもかなり縮小ということを考えざるを得まいということが一つございます。とはいうものの、いま置かれております状況が、金融面その他から見ましても、手をつけませんと、急激な崩壊に通ずるという可能性を持っておりますので、秩序のあると申しますか、なだらかな縮小ということを片方に考えないと、ある時点でほしいと、少なくもこの程度のものは場合によっては成り立つのではないかと考えられる規模さえその前の時点で喪失することになるということに対して、十分な政策手段を用意しなければいかぬ、この二つが私どもの理解しております限りにおいての植村さんの基本的な考え方だと思います。一言で言いますと、なだらか、かつ秩序のある、急激な崩壊ということを防止できるような形で全体規模をある程度縮小せざるを得まい、こういうことだと思います。  一方、この議論に対しましては、少なくも小委員の各位におきまして、基本的な考え方としてのいまの思想というものは大体皆さまが納得されているところだと思います。そこで、それから先にそういう政策理念と申しますか、目標を確保する上でいろんな手段方法があるわけでございます。たとえば縮小過程における規模のなだらかさというものを確保する手段としてどういうものがあるか、在来的な考え方で申しますと、もしいままでのようなスクラップ・アンド・ビルドを続けながらも全体としての出炭規模が大体横ばいになっていくという場合でなくて、総量が減っていくということであるならば、閉山に対して従来よりもより閉山を容易にする仕組み、こういうものが必要であろうということには皆さんなっておるわけでございますが、この手段を、たとえば伝えられておりますような肩がわり手段がそういう目的にどれだけ役立つのか、あるいは従来の閉山交付金制度というようなものを改善することがその方向なのであるか、あるいはそういうものの併用がそういう目的に合致するのであるか、それからこれくらいのものは残したいというものに対してどういう措置をとればそれが確保できるのであるかというような方法論につきましては、たとえば助成費をふやしただけでいいのか、あるいは計算上は助成費助成によってある程度維持が可能であるという計算であっても、現実の資金繰りの上でこれが確保できない、計算は合っておるけれども企業経営として続けていかれないという事態が出るかもしれない。そういうものにどういう手段方法が一番合致しておるだろうかという諸点につきましては、これは方法論上の問題でございますので、必ずしも小委員の全員がこれだということでおきめになっておる答えが出ておらないということが現在まだ審議を継続しておるゆえんでございます。そういう意味合いにおきまして、何と申しましょうか、会長の考えておられる基本理念には小委員は大体一致しておる。それから方法論としての植村構想手段方法については必ずしも一致をしておらない。植村会長がどういう形で御自分の意見新聞等におっしゃったかはつまびらかにしておりませんけれども、先生おっしゃるような分離問題とかいうような形態論、これを植村構想だと考えますと、これはまだ小委員会結論とはなっておらない。その限りではまだ植村さんの御意見であると、かように理解していただいてよろしいかと思います。
  7. 大矢正

    大矢正君 石炭局長、あなたの立場は私は二つあると思うんですね。一つは、審議会事務局をあずかるという立場、これはまああなたはあなたなりで石炭局長としてその中にみずからの意思をある部面では反映をさせるということはあるけれども あくまでも事務局であるということになりますと、審議会のいま言った小委員のメンバーの意見中心になっていく。そうすると、審議会が具体的にどういうことを考え、何をやろうとしておるのかということをあなたに質問することは無理だと私は思うんですね。したがって、その部面については小委員会人たちがどういう考えを持っているかということをあなたを通して間接的に私が承わるということになると思うんです。しかし、もう一つ立場からいくと、石炭行政をあずかるあなたはまあ非常に重要な役割りを果たす立場にあるわけで、小委員会は小委員会審議会審議会としても、やはりあなたは行政当事者としてのあなたの意思なり判断なりというものはおのずからまた別個なものとしてある。したがって、あなたの立場二つ立場がおありになると思うし、その立場は必ずしも常に一致するとは限らないと、私はこう思うんですが、そこでいまの段階はこの審議会中心にした議論のことであなたにお伺いをするわけで、あなたの意思を求めているわけではなくて、審議会が何を考えているのか、どういう議論をしているのかということを承りたいと、こう思うんです。これは最も基本的な問題なんですが、私が聞いている限りによると、審議会通産省大蔵省、そういう一切を含めての中で考え方がどうも二つあるようだ。一つは、何年後ということは別にしても、石炭というものは結局のところ将来消えてなくなるんだ、そうして、そうあるべきが今日のエネルギー基本的な立場だ、したがって、ただそこにあるものは、それが五年後か、八年後か、十年後かわからないが、ともあれ将来は石炭は一トンも、極端な表現だけれどもエネルギーの中にもう入るほどの比率もない状態石炭がなるのが当然であるし、それを基調としてこの当面する石炭対策を立てるべきだ、したがってこの石炭対策というものはあくまでも、いまこのまま放置すればあまりにも崩壊の速度が早くて社会的にも与える影響が甚大であるし、社会的だけではなくて、経済的にも混乱を起こす危険性があるので、ともあれ漸次縮小し、最終的には石炭産業というものはなくなるということが、これが政策基本でなきゃならぬとする考え方一つと、それからもう一つ立場というものは、出炭、すなわち生産規模が三千万トンであるか四千万トンであるか、そのトン数は別としても、日本の国内の唯一のエネルギー資源であるという立場から、量はどの程度としても、ある限度までの石炭はこれをあくまでも守っていこう、すなわち温存をしていこう、こういう考え方、これをさらにせんじ詰めていけば、結局のところたとえば四千万トン、たとえば三千五百万トンという生産計画を樹立した際においては、一つにはそれに見合う需要の開拓、一つには万一そこで経理上財政採算が合わぬ場合には、国の財政資金によっての補助政策なり保護政策なり、あるいは一方においては炭価問題の話し合いなり、解決を通して経済的に立ち行く姿をして、向こうそれが十年、十五年あるいは二十年というような長期にわたっても、ともあれ石炭は一定のトン数はこれを確保していくべきである、こういう考え方二つ基本的に私分かれるのじゃないかと思うのですよ。なぜ、そういう議論が今日生まれてくるかといえば、かつての答申に基づく抜本策の際に、五千万トン程度出炭と、これを供給面需要面双方において維持していこう、こういう考え方でなされたんですが、事実今日、昨年は四千七百万トン、ことしは計画は四千七百万トンですが、またまたこれを下回る可能性が強くなってきておりますね。なぜこうなるかといえば、結局のところ、五千万トン程度というような抽象的な数字の出し方だけではもう石炭というものが生きられないきびしい状態にあるわけです。ですから、ただ出炭トン数需要面だけをきめても経済的に採算が合わない。あるいはもう一つ保安上、それからもう一つ労務対策上、とにかく立ち行かないという状態になって、これは黙っていても崩壊をしていくという、崩壊してきたといういままでの経過がありますね。したがって、ここまできてほんとう意味抜本策を立てるというならば、いま私が申し上げたように、将来は、何年後になるかは知らぬが、石炭が一トンも出なくてもやむを得ないのだ、ただそれが極端な影響を与えてはいけないという配慮だけが施策基本になるというやり方か、あるいは三千五百万トン、あるいは四千万トンという出炭というものはこれからぜひともこいつを守る、そうして使わせる、そのためにかりにコストが高くなったら、そのコストの高い分をどうやって助成をするか、炭価で反映をするか、こういう二つの道しかない。これを忘れた石炭対策がかりに立てられたとすれば、それはこの以前の答申に基づく石炭対策と同じで、一年もたたないうちにまたまたおかしくなってしまいますし、同時にそのことは、金融労務対策保安対策や一切につながる問題なんですね、どう考えてみても。ところで、私がそういうふうに二つに分けて基本的な立場があると申し上げたんだが、これらの問題について審議会はどういうような御議論をなされておられるか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  8. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 世間には、時期の長短は別にして、石炭は消えてなくなってもよろしいんだという考え方を持っている方もいらっしゃると思います。エネルギーの中での役目は終わったんだということを言っていらっしゃる方もおられます。ただ、御指摘のように、国産エネルギーとして石炭というものがなお役目を果たし得るという期待もございます。そこで、審議会議論を、これはいろいろ人によってニュアンスがございますので、私が概括的に申しますことは、あるいは私の理解範囲内にとどまっていて、一人一人の方のお感じとは若干違うところが出てくるかもしれませんが、概括的に申しますと、気持ちとして、やはり国産エネルギーというものとして石炭にある程度役割りを今後ともになわしたいというお気持ちは皆さんあると思います。その際、特に原料炭一般炭とを区別いたしますと、エネルギー事情状況から申しますと、一般炭について非常に長い時間までこの役割りを期待する値打ちがあるかどうかということに対しては、やや消極的な感じでございますが、原料炭はある程度のものは持っておくべきではないか。しかも世界の原料炭状況というものも少し先を考えますと、現状とはかなり違ったものとして想定することもあながち間違いではない、こういう感じでございますので、原料炭中心にしてある程度石炭というものを何がしかの形で確保しておきたいという気持ちは皆さんのお気持ちにあると思います。ただ、従来と若干違いますのは、数字を固定的に考えまして、コストあるいは労働力状況、その他あるいは海外石炭状況、他のエネルギー状況というものと無関係に絶対的な数字として、どんなことがあってもそれをささえるという判断になるのかどうか、このことについてはやはり国民経済的な立場での財政負担というものも考えた上での判断がそのつど必要であろう、こういう感じでございます。したがって、原料炭といえども極端に採算のとれないもの、これらも原料炭であるがゆえに確保しなければならないという判断では必ずしもないわけでございますが、かなり部分原料炭というものについては優先的にひとつ考えたい。しかも、その場合現状助成ベースで考えましたならば、それも維持できないことははっきりしておりますので、従来よりも相当助成を加えるということで、その限界を見きわめた上で相当程度規模石炭維持を考えていきたい、こういう意見が支配的だと私は理解しております。
  9. 大矢正

    大矢正君 これは大臣に聞きたいことだが、大臣がおられないから、ひとつ政務次官と局長十分直談をして御答弁をいただきたいと思うのですが、いま石炭混乱をしているという最大の原因は、これから石炭がどうなるのかということに対して、だれもがはっきりした見通しというものを持っていない、持てないということなんですね。で、たとえば災害が続発する、続発する理由は一体どこにあるのかということをずっとさかのぼっていきますとね、やはり石炭産業というのは三年後、五年後になったらどういうふうになるかわからぬというような実態から、結局のところそれが坑内保安にまで響いてくるという事実もあるわけでして、結局大事なことは、何かわからぬが、国がこれだけ助成をする、だからこの範囲内でやれるものはやればいい、できないものは自然につぶれていくんだ、そうすれば五年後にはどのくらいに減るかもしれないし、八年後にはどのくらいになるかわからないというような、さっぱり先行きわからぬような形で、これからもなお石炭産業を残すんだということだったら、これは何も抜本策の値がないわけですよ。いま労働力が非常に流出をするという原因もまたそこにあるわけでして、たとえばそのおおむねの出炭トン数なり生産規模というものが、それが三千万トンであろうと四千万トンであろうと、そこに一つの線を引いて、それが画一的にはいかないにしても、これこれこれだけの炭鉱はぜひこの際残して、わずかな部分ではあっても、日本エネルギー役割りを果たさせるんだという基調となる考え方がない限りは、絶対に石炭産業は立ち行かないと思うんです。それは働く人間にその意思がなくなりますよ。いま災害がしばしば起きるという原因一つには、肝心な坑内保安をあずかる職員がやはり自信がないし、見通しがないし、その日その日を過ごしていればいいんだという現状で、何ら意欲がわいてこないですよ。  ですから、このまま参りますれば、少々のことをやったって、結果としてはそのことが石炭産業の将来には何もプラスにならないわけでしてね、そんなに基本的な見通しを持たないような抜本策ならば、むしろこの際私は出さないのと同じ結果になると思うんですよ。それはもうこの前の答申に基づいていろんなことをやって、それが半年足らずのうちにくずれたと同じことになるわけですからね。ですから、計画経済でないからむずかしいんだという議論はあるけれども、しかしある程度計画性を持ってこれからの石炭産業というものを見ていかなけりゃ、私はもうそれこそ崩壊をすると思うんです。  それから金融機関立場からいっても、この炭鉱は残すんだ、この炭鉱はやむを得ないんだというような一つ方向が出れば、それに従って金融機関協力というものも出てくるけれども、そういうものがない中で金融機関協力をせいと言っても、いつつぶれるかわからないようなそういうような形の中で、金融機関協力だけせいと言ったってできるものじゃない。ですから、せんじ詰めていくと、私はいろいろ議論があるが、最終的にはやはりもう何年か後には石炭産業というものは消滅してしまうんだという立場をとるのか、それとも何千万トン程度日本の全体的なエネルギーの分野やそういう立場から見れば、それほど経済的に大きな負担でもないから、その限度においては残す。それに従ってあらゆる一切の計画を立てていくということになるのか、どちらかをとらざるを得ないところにもう現に追い込まれておりますし、ですから、ひとつ審議会がどういう議論をされているか知らぬが、石炭行政をあずかる通産省として、どういう立場を持っておられるか、この際ひとつ承りたいと思います。
  10. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 御指摘のようにいろんなことがさだかでないものですから、石炭鉱業に従事する各般の人たちに大きな不安感を与え、そのことがまた石炭鉱業の悪さをより悪くする悪循環を生んでおるという点は御指摘のとおりだと私も思います。ただお話のございましたように、個別の炭鉱につきまして、この山は閉山すべきでありこの山は残すべきであるという、そういう判断を国がいたすということには実は私どもは多大の不安を感じております。と申しますのは、これは先生方のほうがお詳しいわけですけれども、かりに相当有望な山だと考えておりましても、もしそこに従事する人たちの気分がほんとうにその山を守るというふうに能率的に働いていない場合、あるいは最近頻発して御心配をかけておりますような大災害が起こりましたときなどには、かりに残すに値するという判断が一般的な判断である山であっても成り立ちがたくなることはあり得るわけでございます。また現状では相当悪いと、こう見ておる山でございましても、在来よくその例にありますように、たとえば親会社がある意味で腹の中では放棄をして第二会社に移した、第二会社の労使がほんとうに一生懸命になって相当努力をして思わざる成績をあげておるということもございます。また自然条件に非常に大きく依存することでございますので、将来の採掘予定地の状況というものが、現採掘区域までは大体有望な山だと思っておったのが悪いということにぶち当たることもありますし、さきほどの価値がないと見ておりました炭層が、いざ着炭してみると意外に有望だということもありますわけで、それぞれの人たち努力というものを求める意味合いにおいて、国がこの個別の山についてよしあしをあらかじめ先のことについて予測をし、これを判断するということは、どうも石炭鉱業の場合、私どもは適切ではないのではないか、こう考えるわけでございます。ただしかし、そう言っておりますと、御指摘のように、ある一定の幅の助成は増強するけれども、あとは君らのやり方次第だと、こういうことになって、行政当局者もおそらくそういう政策でどのくらいのものが維持できるのであろうかということについてもかいもく見当がつかない、あるいは先生御指摘のように、金融機関あたりも判断しがたいというような事態が起こり得ることも必至でございますので、私どもとしましては、やはりそれぞれの経営者が判断できるような予測をわれわれとしては持つべきである。そういう想定出炭規模と申しますか、そういうものを念頭に置いて、およそどのくらいの施策を講ずるならばどのくらいの山が残ると思われるのがほんとうであるという前提を置いた話ではございますけれども計算に立って施策を考えなければいかんだろう、かように考えておるわけでございます。
  11. 大矢正

    大矢正君 この炭鉱が近代化する、あるいは合理化するというような問題が、将来のコストとか労務費が上昇する、あるいはその他一般の物価が上昇する、資材費その他の上昇分を何とかカバーしていくということになると思うのだが、現実には近代化、合理化というものは大きな壁にぶつかってるわけですよ。いまの日本石炭企業というものは、あなたが言われた原料炭というものにたとえば限定して考えてみましても、原料炭を産出する炭鉱というものは特殊な炭鉱を除いてはほとんど古い炭鉱で、やはり坑道が長い。通気の関係があるというようなことでたとえば排気立て坑を一つおろせば非常によくなると考えても、十五億も二十億も金をかけて排気立て坑を一つおろして、それではたして採算が合うかどうかということになれば、古い坑道でも生かしておいたほうがいいという議論にいま現になりつつある。それほどきびしい状態にあるわけですよ。それから近代化の面ではいま言ったような問題が現に出て、それから合理化の面でどうなるかといえば、たとえばこの間の平和炭鉱災害をひとつながめてみましても、原動機番がかっては二人おったと思うのですよ。人員縮小で一人にして、一人で二台の原動機を見るようになった。したがって遠距離を一人で見なければならぬ、目が届かない。あるいは係長が本来ならば三番方までおらなければならぬものが、これも人員削減ということで一人当たりの能率を上げる意味で一番、二番しかいない。三番は係長がいない。したがって電話がかかってきたらあわてて走っていかなければ話が通じないというような、そういう苦しい合理化というものが現に行なわれていて、それが災害原因になっているわけです。第二坑のこの間の崩落の問題にしたって、古い鉄柱をまだ使っている。しかしそれを新しい鉄柱をかりに使ったとするならば、一ロングでも何百万、何千万と金がかかってしまう。その金が出てこないから旧式の鉄柱を使って崩落が起きたということになるわけですよ。だからいま炭鉱をこれ以上合理化しようと思っても合理化はされ切っている。しかも深部にいく一方だ。近代化しようと思っても、その近代化が現在の助成範囲では、現在の炭鉱の内容をもってしては絶対にコスト上合わないという状態であって、近代化も合理化も目一ぱい行なわれているわけですよ。したがって、ここで考えられることは、私はさっきから申し上げているとおりに、やはりこの程度石炭はぜひひとつ掘らしたいという一つの前提を立てて、もちろんそれは使われる前提ですが、そのためにどういう助成をすればどれだけのものが掘れるかという、そういう立て方を石炭対策でやらなければ、私は何にもならなくなるとこう思うのですよ。しつこいようだけれども、これは基本だと思うのですよ。
  12. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) ただいまの御意見には私も大筋においてそのとおりだと思います。非常に各炭鉱が悪い状況にございます。ございますから、いままでどおりの量を確保するという意味合いでこれに助成の手を加えると申しましても、いま先生がお話になったような状況で、経営運営されている山におそらく二階から目薬程度助成が及ぶことになって、全体が悪い状況になるということになるのではなかろうか。それよりはこの程度助成をやれば、全体にかけるトン数は少なく考えましたという前提でございますけれども、対象をしぼってこれくらいの助成を加えれば、いまのようなみじめな状態でなくて、炭鉱経営ができるということをやはり目ざすべきだろうと考えております。ただ、そこで先ほど私が申しましたように、ABCDEというような炭鉱について、これをやめてもらい、これを残すから、この残すほうにはうんと助成をするのだという考え方が、なかなか政治と申しますか、行政の立場ではやりにくい点がございますので、その点はやはり各鉱山がこれから見出されるだろう、私どもが期待しておりますような政策を前提にして、ほんとうにまじめにそれでやっていける、自分たちはやっていける、大いにやろうじゃないかという気持になるか、この程度助成ではこの炭鉱はとてもやっていけんと、もしやれるということをいって無理をしていけば、また前回と同じような結果になるという判断は、よほどしっかりしてもらわなければいかんだろう。もしその判断をしっかりしてもらうために、必要であれば、事前にあらかじめ私のほうはやめるという決意をした炭鉱については、従来と違った閉山の仕組みというものを考慮すべきではなかろうか、まあかなり私見はございますけれども、そこまで徹底すべきじゃないかと私どもは考えております。
  13. 大矢正

    大矢正君 中川さん、その四十三年度のあなたのほうの合理化計画を見ましても、原料炭はおおむね千三百万トンぐらい、それから電力用炭ですね、これは九電力の二千百五十万トンを含めた電力用炭がおおむね二千七百万トンちょっとありますが、合わせますと四千万トンという数字が出てくるわけですよ、ほかに需要一つもなくても。電力と鉄鋼以外にガスが入りますが、それ以外に需要一つもなくても四千万トンという石炭はこれは需要があるという計算になってくるわけですよ。電力会社石炭を使わなければ油をひとつどんどん使ってください、いままで二千百五十万トン取ってもらったけれども、今度は千五百万トンでけっこうですということを言わない限りにおいては、四千万トンの需要というものはそこに出てくるわけです。ところが、いまのまま多少の手直し程度をやっていって、はたして四千万トンの石炭が出るかどうかということになったら、これは逆に需要の開拓の問題じゃないのです、今日は。四千万トン掘れるだけの炭鉱が残り得るか残れないかという問題になってくるわけです。いままで五千万トン程度というものをきめた時代は、需要が五千万トンあるのかないのかというのが先だったわけです。ところが、今日はまるっきりそれがさかさまになって、需要はもうそんな特別の政策需要を考えなくても、最小限度四千万トンでしょう。暖房用炭その他幾らかあるはずですから、黙っていても四千四、五百万トンの需要は炭価との折り合いがつく限りにおいてはあるはずですよ。ところが、石炭のほうがそこまで出すだけの体制にないというところに今度の抜本策を立てる基本的な考え方立場の相違があらわれているわけで、そいつをあなたによく考えてもらわないといかぬわけです。だから、私が申し上げるのは、生産をするための体制をどうするのかと、生産というのは当然のことながら、裏にやはり安全を維持しながらという前提ですが、それをどうするかというところに施策の焦点を合わしていかなきゃならぬ時代にきているんだということを再三申し上げているわけです。それで、まあ植村さんは三千五百万トンというようなことを言われているわけですが、五年後だと、四十八年ごろとこうおっしゃっておられるが、しかし、ずいぶん矛盾したことを私言われるなと思うんだが、私企業でそしておまえさんの能力の限界においておやりなさいと言って、どうして五年後に三千五百万トンになるのか私わからないのですよ。政府が一つ計画を持って計画的にやるならば、五年後には三千五百万トンぐらいということは出てくるかもしらぬが、そういうものは一切なくて、経営者の自主裁量にまかして、自分の会社の経理上、それから将来の展望上からやらしておいて、どうして五年後に三千五百万トンになるのか、それがわからないのですよ。もし三千五百万トンに五年後になるというんだったら、何かその根拠があるはずだと思う。その根拠が示されないで、ただ三千五百万トンと言われるのはどうも私はよくわからない。現にいま言った需要からいけば黙っていても四千五百万トン以上はあるはずだから、その辺お答えを願いたいとこう思うんです。
  14. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) ただいまの御指摘はまことにそのとおりでございます。植村さんもそこは十分御承知のことでございまして、審議会等で議論しておりますのは、一つ政策を立てます上の、もっと具体的に言いますと、助成なり何なりの厚みというものを決定します場合の判断要素としてかりに三千五百万トンということで考えて、これはもちろん企業が継続するかしないかを選択すべきことではありますけれども、まあ採算を割って継続するということはあり得ないことでございましょうから、利益が出ないにしても収支とんとんでやれるという計算をやってみて、その限りにおいては成り立つであろう、継続をしていくだろう、こういう前提をとったときに、どれくらいの助成の厚みというものを考えなければいかぬか、これを求めるための手がかりとして、四十八年度時点出炭規模というのをたとえば三千万トン、三千五百万トン、四千万トンというふうに前提を置いて計算をしてみて、そのときに四千万トン維持に必要な経費と国側から出る経費というものを計算をいたしまして、それが可能であるかどうかということを吟味をいたしておるという状況でございます。したがって、かりに三千五百万トンという数字結論が相なるといたしましても、そのワク内で皆さんが一生懸命やってくださってこれが三千六百万トン、三千七百万トンになっても、無理に三千五百万トンまで生産制限をしてもらわなければならぬとか、閉山してもらわなければいかぬという趣旨ではないわけです。また逆から考えてみましても、人間の想定でございますので、百万トンや二百万トン下回ることはいまの不安な情勢から見るとあり得る。ただ私ども計算上の論拠といたしまして、かりに三千五百万トン維持しようとすればどれくらいの厚みの助成費を考えなければいかぬか、こういう立場議論をいたしておるわけでございます。で、そこいらの数百万トンのでこぼこがあっても一向かまわないというゆえんのものは、いま大矢先生おっしゃいましたように、需要から見ればそう無理な操作をしなくてもその前後の数字なら幾らでもある。ただ、そこで採算がとれておるかとれておらぬかという問題なんだ。ただとれるには、遺憾ながら大矢先生御指摘になりましたように、これ以上の能率アップということはなかなか期待できない、もっぱらそこは助成費の出し方にからんでくる、こういう判断でございます。
  15. 大矢正

    大矢正君 あれですかね、植村さんの試案によると、いまの石炭企業の中の石炭部門は分離して新会社にするという構想がおありのようですが、これはどういうことになるのですか。各社別に分離された新しい会社ができますね、そうすると、その会社の新会社なんですよ。新会社の株式というのは一体どこが持つのかね。ああいう構想が出るのですから、その程度のことはおそらく議論済みのことだと思うのですが……。
  16. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) いまの御質問にお答えします前に、私なりの理解で恐縮でございますけれども植村さんが分離ということを考えておられる動機をひとつ申し上げてみたいと思います。  御承知のように、これはもう程度の差がずいぶんございますけれども、それぞれの会社石炭採掘を業としておりますほかに、従来の合理化過程における人員吸収その他のことを考え、あるいはまた石炭採算の悪さをほかの仕事でカバーすることを意図して、いろいろな兼業業務をおやりになっておるケースが、程度の差はございますけれども一般的にあるわけでございます。そしてまた、石炭とその他の仕事とをやっております際に、一つ会社でございますので、会社としての負債と申しますか、赤字をかかえておるわけでございます。大部分石炭部門の不振による負債であり赤字であるわけでございますけれども、個別に見ていきますと、兼業部門で収益を出しておるところもあれば、兼業部門で赤字を出しておるところもあるというようないろいろなばらつきがあります。そこで石炭というものはある程度残したいという考え方で考え、しかもそれを残すには、いままで以上の助成を加えなければいかぬのだ、こう考えましたときに、他のファクターのある、他の仕事をやっているものを一体として救済していくというようなことをやると、その助成が一体石炭助成なのか、ほかにも回ることなのか、けじめがさだかでなくなるという感じ一つあるわけでございます。それから著しく債務超過になっておるという形におきまして、植村さんの分離論というのは肩がわりと密接不可分な形になっておりますので、少なくとも分離されたあとの石炭会社というものについては、負債ゼロという形で端的に助成費を考えて、その原価を考慮してやっていけばやっていけるという目安を持ちたいという気持ちもあるわけでございますので、そういう点からいうと、会社全体として持っている借金、これを全部肩がわりしてやるというわけにもいくまいし、これは大義名分上、ほかで起きた借金なり赤字をなぜ石炭政策でかわってやらなければいかぬという議論もございますので、かりに借金が残るとすれば、その残っておる借金の金利負担ということで、石炭部門の助成をどう考えたらいいかという判断が非常に混乱してくる。あるいはまた資金繰りでそちらのほうに引っぱられて、石炭だけが単純に外に出ておれば、あるいは助成との見合いでやっていけるかもしれないものがやっていけないということもあり得るんじゃないか、こういう実際上のマネーフォローを考えた判断一つあるかと思います。したがいまして、なるべく石炭政策としてクリアなものにしたいという気持ち一つあるわけでございます。そういうことでございますので、植村さんのおっしゃっている分離の構想というものは、分離そのものと肩がわりというものが密接不可分になっている。しかもその肩がわりというものは全額ではなく、残った借金は他部門のところに置いておくという思想でございますので、もし肩がわり論拠上の問題点があったりいたしますと、これは直ちに分離問題に響いてくる問題でございます。  それから、これから先があるいは大矢先生のいま御質問になった真意だろうと思いますが、分離されたあとで第二会社と親会社の関係というものはどういうものになるだろうかということでございますが、これは植村さん御自身考え方もまたいろいろ曲折がございます。一番最初会長が考えておられたのは、分離された石炭部門についての第二会社の総体というものについて一つのコントロール機構を別個につくる、いわば世上管理会社構想として伝えられたものでございまして、植村さんの一番最初の考え方の原形は、まず現在の会社から石炭部門の資産というものを無償で提供させて第二会社をつくる。で、第二会社の株式というもののこれは割合まではさだかじゃございませんけれども、ある割合のものを第一会社が持つと、それから管理会社がこの第二会社に対しての株を持つと、こういう考え方であったようでございます。で、管理会社が第二会社の株を持つという場合に、管理会社の今度構成員というものを考えました場合に、これに消費者その他を入れるというようなことで、石炭の全体の規模の調節というものをこの管理会社にやらせていこうという思想であったようでございますが、その後、この管理会社構想というものが将来の成り行きとして非常に国有的なものになりやすい危険を持っているというところから、だいぶお考えを変えられたのではあるまいかと思っておりますが、現時点における分離時の株式を一〇〇%親会社が持つのであるか、あるいは他にもこれを認めるのであるかというところはさだかではございません。現在どういう御心境でいらっしゃるかは私どももまだ十分承知しておりませんが、そのあり方というのは、一つには財産の無償提供を理由にして第一会社に起こった赤字というものを肩がわりの理由に認めようという構想でございます、もともとの構想が。その辺とのからみで一〇〇%第一会社が第二会社の株を持っていて肩がわりの理由が生まれてくるかどうか。自分の同系のところにただ形の上で譲っただけというその形ですべてが成り立ち得るかどうかということは相当まだ苦慮されているのではないかと思います。
  17. 大矢正

    大矢正君 これはいまの点は、これからの石炭企業のあり方について非常に重大だと思うのでお伺いをしますが、たとえば法律でその会社を分離するとか、あるいは法律で石炭というものはそれが政府直轄であるか、あるいはまた半官半民の公団的性格であるかは別にして、一切の経営権、株式も含めて持つというそういう形ならば、これは簡単だと思うのですよ。ところが、そうではなくて、まあ抜けがらみたいなもので、新会社に無償で石炭の今日の資産を与えるわけですがね。それは借り賃を払ってやることになるのか、ほんとに無償で新会社がもらうことになるかわからぬが、ただ、そこで問題として残ってくるのは、そういう無理な形で結局やろうとすれば、そこに現在の株主というものがあくまでも了承しないという点が出た場合にどうなるかという問題が出てくるわけですよね。その辺が私どもよくわからぬことなんだが、一体何を考えているのか。たとえば、石炭部門を全部切り離した、そうしてそいつを無償でもう新会社にやってしまいますね。そうすると、負債がまず膨大に残りますよ、資本金も含めて。その残った会社自身は多少関連会社があるから、まあ利益があるかもしらぬが、これは比較にならないものが残るわけですよ。極端な表現をすれば、その事業主体の一つもない株式会社だけがあとに残るかっこうになる、そうでしょう。そうして、しかも国がその旧会社に残った借金を直接肩がわりをしてやる、どの程度やるかは別にして。そうして株主だけはそのままのかっこうで結局何ら保証がないという結果になるわけでしょう。さすれば株主は絶対にそれは分離認めないと、かりにその会社がつぶれてしまっても。あるいはつぶれるような事態になって買い上げをしてもらっても、金が入ってくるわけだから、その分でとにかく幾らかでも自分の持ち株に見合うものは戻ってくるけれども、いまのようなそういう構想でいけば、結局のところ株主には何にも戻ってこない。そうすれば株主は分離は反対だ、こういうことになる。さすれば新会社はできないと、こういうことになってくる。あるいはそれで賛成する株主もあるかもしれない。それで賛成してでき上がる会社もあるかもしれない。できない会社もあるかもしれない。これは非常に矛盾しているのですよ、やろうとすることがね。ただ、頭から公社とか公団とか国有化とかいうのはいやだという観念だけが先に走っているのだから、そういう非常に矛盾した、わけのわからないようなかっこうになってしまうわけですよ。そういうものに一体国がまだまだ肩がわりをしてやるというようなことで、はたして国民が納得するかどうかということになると、私非常に疑問があると思うのですよ。しかも万一それぞれ肩がわりしてやって、今度は新会社の株式をこの旧会社がこれまた全額持つなんというような、そういうものが構想としてしかるべきかどうかということになると、これは非常に疑問の多いところだと思うのですよ。  それで、いまのあなたの説明では、明確ではない、まだはっきりしたものではないと言うが、いま答申が出る段階に来て明確でないというのは、どうも私にはわからないわけですよ。おそらくそれは石炭生産規模なり、助成策なり、スクラップ計画なりというものと付随してその今後の企業のあり方はどうすべきかという問題が出てくるのだから、それなのにあなた、十分議論済みのことを隠して言わないのかどうか。速記をつけていて言いにくいのなら、速記をとめて言ってもらってもけっこうだがね。もう少しやっぱり具体的にほんとうにどんな議論がされているのかということを聞かしてもらいたいと思うのですよ。
  18. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) それじゃおことばでございますので、多少私なりの解釈になりますので、速記をとめさしていただければ幸いと思います。
  19. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記とめて。   〔午後二時三十一分速記中止〕   〔午後二時五十五分速記開始〕
  20. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を起こしてください。
  21. 大矢正

    大矢正君 保安問題について、保安局長に強く審議会反映してもらいたいという意味で希望したいと思うのですけれども、先般の平和炭鉱の事故やあるいは夕張炭鉱における崩落事故、これだけじゃございませんが、ことしは特に例年にないほど重大災害が続発している。その理由の根本となるものは完全に合理化の行き過ぎなんですよ。なぜ合理化が行き過ぎるかということは、いまさら申し上げるまでもないように、やはり国の助成あるいは炭価、これとコストのつり合いがとれないところにそのしわがくるわけですよ。ですから、人員を徹底的に削減をする。そのために結局一つには坑内保安に対する手抜きが多いという問題があるし、同時にその保安に関しての予算も極力削減をされるというような結果があるわけですよ。ですから、やっぱり監督を幾ら強化してみても私は今日の炭鉱災害というものを根絶することはできないと思うのです。やはりその基本にさかのぼってやらない限りできないと思うので、今度の審議会答申については、明確にいまのような行き過ぎた合理化というものはやはりこの際改めて、もっと炭鉱保安に関しての施設の面と人的な配置の面について十分な配慮を払えるようなことを基調として石炭対策を立てるべきである。それがない限り重大災害の続発を防止する道はないということを私は局長から強く審議会反映をしてもらいたいと、こういうように考えるわけです。
  22. 西家正起

    説明員(西家正起君) ただいま通産省では、この保安問題につきまして、石炭鉱業審議会と並行しまして中央鉱山保安協議会で長期対策につきまして検討しておるわけであります。ただいま先生御指摘のありましたような点は十分にただいま議論されておる最中でございます。全部が全部と言えない点もあるかと思いますけれども基調といたしまして、そういう線で答申が行なわれるように努力をいたしたいと思っております。
  23. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 関連。いまもいろいろ議論があったわけでありますが、私も炭鉱災害のことについてちょっとお聞きしたいのでありますが、いまもお話がありましたように、非常に機械が進んでおりながら事故が一向に減っていない、こういうことを非常に憂えるわけでありますが、炭鉱災害を防ぐということは困難な問題だということがいつも言われ、今後しっかりやっていくというようなことでいつも終わっているわけでしょう。これはちょっと聞きたいわけでありますが、やはりこういう災害が起きるには起きる原因があるわけであります。この問題につきましては、いろいろな研究機関等において研究もし、対策もいろいろ講じられているのではないか、このように思うのでありますが、最近の著しい技術開発についてこういう事故が続発するということは、傷あとが非常に深くなっておる最近の現状に即応した研究がおくれているのではないかという感じがするわけでありますが、こういう問題につきまして研究機関、通産省関係にどういう機関があってどうなっているか、この点ちょっとお聞きしたい。
  24. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 保安については、このあとでまた当局の報告があって、それについて質問時間もございますので、含めておいていただきたいと思います。
  25. 西家正起

    説明員(西家正起君) ただいま先生の御指摘ございました災害防止についての原因の研究機関、どういうものがあってどういうことをやっているか、こういう質問でございますが、今年に入りまして重大災害が御指摘のように非常に多発しております。ちょっと参考資料の「鉱山保安対策現状」という資料がございますが、それの一番うしろから三枚目の別表でちょっと参照していただきたいと思いますが、昭和四十二年の一月から四十二年九月までの重大災害、重大災害と申しますのは、同時に死亡者三名、あるいは同時にけがをされた方々を含めて五名以上の災害につきまして網羅をいたしておるわけでございます。ここで見ますように、四十二年と四十三年を比べました場合に、四十三年のほうは件数は必ずしも四十二年よりもそう多くはないのでございますが、一回の災害に対する死亡者の数が非常に多い。こういうことになっておりまして、さらにその災害の種類を見ました場合に、まあガス爆発を初めといたしまして落盤、坑内火災、あるいは運搬装置、こういったように災害の種類は非常に多くなっておるわけでございます。こういうことに対しまして、したがいまして災害原因につきましても、それぞれの災害の種類によりましていろいろと、原因が変わってまいります。これらの原因について研究すべきことは通産省において研究をいたしておるような次第でございますが、特に私ども現在保安技術という面で特に考えておりますのは、同じ資料でございますが、三十九ページ以下に書いてあるのでございますが、「保安技術対策の強化」ということでございまして、現在鉱山保安局、通産省にございます中央鉱山保安協議会の技術部会というところで、これらの災害防止に関する研究開発体制の総合調整を行なっておるわけでございまして、これに基づきまして毎年テーマを取り上げまして、保安に関する原因の研究をやっておるわけでございます。まあ原因の研究と申しましても、保安自身がやっているわけでございませんで、その一つ前に第十一表という表がございますが、それぞれの研究機関にいろいろ委託をいたしましたり、あるいは鉱山保安局で専門家を集めて議論をいたしましたり、そういうことによりまして、それぞれの項目につきまして検討をいたしておるわけでございます。  研究機関といたしましては、通産省の中に資源技術試験所というのが右の下のほうに書いてございますが、資源技術試験所あるいは大学、あるいは石炭技術研究所、こういつたようなところに試験を委託いたしまして、災害を未然に防ぐための研究をいたしておるわけでございます。  それからいろんな技術基準の作成というようなことにつきましては、その上のほうで鉱山保安局が中心となりまして、各専門の先生方、技術者等に集まっていただきまして、保安技術の基準の作成等をやっているわけでございます。  また、鉱山の合理化に即応した保安体制という点では、鉱山保安新技術懇談会というものを設けまして、これらの中で調査審議をいたしておるような次第でございまして、そのようなものを取りまとめまして、これをそれぞれの炭鉱に参考として送るなり、あるいは技術改正を行なったり、あるいは規則の技術基準に取り入れるということでやっているわけでございます。現在特に重点的にやっておりますのは、炭層の中のガスの状態、あるいはいろんな変化による炭層の実情を事前につかむといったように炭層調査の問題あるいは現在でも防止がむずかしいのでございますが、ガス突出の防止、これを三年がかりでやっておるわけでございます。それから海底下の石炭の採掘の認可基準、こういうものが従来必ずしも理論的な裏づけのあるものではないわけでございまして、これも現在継続してやっているわけでございますが、そういったような点、それからその他いろいろございますが、そういうことをこれらの研究機関を通して研究いたしておるような次第でございます。  なお、そのほかに四十四ページのところにちょっと書いてございますが、災害の要因分析というかっこうで、これは実際に起こりました災害の実情というものを非常にこまかくカード式にとりまして、これを電子計算機等を使いまして、まあどういうところにどういう要因が——実はその要因が重なっている場合に、その要因がどのくらいのウエートで起こったかといったようなことを分析いたしまして、これを取りまとめて炭鉱等の指導に当たる、こういうようなこともやっておるような次第でございます。  後ほどまた御説明いたします今回の災害の落盤につきましては、実はまだ現在きめ手のある災害防止対策というものがなかなかむずかしいような状態でございまして、現在やっておりますのは、盤の圧の変化に伴う支柱の密度とか、あるいは支柱をやる場合の上に押し上げる力をどうするかというような点も研究をいたしているような次第でございます。簡単でございますが……。
  26. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 いまいろいろお話がございましたが、この災害炭鉱問題につきましては非常に重大な問題であります。と同時に、答申の上においてもこれらの問題については重々検討の上取り扱っていただきたいと、このように思うわけであります。
  27. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 いま石炭対策でいろいろ問題になって、植村私案がきょう新聞にちょっと発表されたり、ところが、まだ抜本的対策がいつできるかわからないというような状態ですが、この審議会におきまして、審議はただ石炭エネルギー全般の中の一つ石炭の問題として審議して、ほかのエネルギー全般についても審議をされておるのか、ただ石炭部分だけ審議しておるのか、どういう状態なんですか。
  28. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 石炭鉱業審議会は、率直に申しまして、いまの石炭鉱業の今後のあり方ということだけを審議いたしております。ただ、先生の御質問にもう少し御親切にお答えしますと、エネルギーにつきましては、総合エネルギー調査会というものがございまして、石炭審議会委員である人も相当数この調査会に入っておりまして、ここで全般的なエネルギーのバランスというものをたえず審議をいたしております。そこで、今回石炭対策審議するにあたりまして、私のほうからエネルギー調査会を開いていただきまして、石炭政策をこれから石炭鉱業審議会審議をいたしますと、そこでいまお話の出ておりますように、石炭全体の出炭規模、想定規模あたりを多分変更することに相なろうと思いますが、なりました節は、そのエネ調にまた報告をいたします。エネルギー調査会でまたそれを踏まえて全体のエネルギー対策を用意していただきます。それから石炭政策エネルギー調査会としてなお御意見があれば、石炭鉱業審議会答申についてもエネ調から中間段階で一回石炭鉱業審議会のほうから御報告を申し上げますから、所要の意見はそのとき承りますということで経過しておりまして、ただいま申しましたように、まだ石炭についての骨格的な構想のめどもついておりませんので、エネ調には申しておりませんけれども、少なくとも石炭鉱業審議会総合部会で答えが出たくらいの段階では、これを他のエネルギーとの調節をはかる意味におきましてエネ調に報告しなければならない、かように考えております。
  29. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、これはエネルギー全般的な立場に立ってこの石炭の抜本対策というもの、これを審議しなかったら非常に中途半端なものになってしまって、石炭の抜本的対策というものがはたして出せるものかどうか。ことし出してもまた来年これがぐらついてくるというような状態になって、エネルギー全般の中でほんとう石炭の抜本的な対策というものが生れてこなかったら、私は実際のものができない、こういうふうに私たちは思うのですが、局長はどういうふうなお考えですか。
  30. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) いま申しましたように、エネ調の主要メンバーが実は石炭鉱業審議会の、先ほど来申しております小委員会のメンバーでもございますので、石炭鉱業審議会には石炭対策ということで諮問をし、審議をしてもらっておりますけれども、メンバーの各位は大体においてエネ調的な立場判断をもともとお持ちの方でございますので、人的に調節はとれている。ただ総合エネルギー調査会の場に移りますと、たとえば私もいま兼ねて見ることにさせられているわけでございますけれども石炭の落ち込む分をたとえば重油でどうつじつまを合わせていくか、あるいは原子力をどう見込んでおいて石油との調節をとっていくかということについては当然問題になってまいりますけれども、御承知のようにエネルギー全体を議論する立場におきまして、いまの出炭規模の五千万トンが、かりに三千五百万トンとか四千万トンとかということに相なりましても、その対応が、非常に先に準備をしておかないと間に合わないというほどではございませんで、ということは、全体のエネルギーの中における石炭の比率はすでにもう五千万トンでも小さくなっておる、こういうことでございますので、さしたる支障はない。ただ、数字が非常に確定的なものとしてはっきり出ますならば、所要の措置はとらざるを得ない、とるつもりではおりますし、石炭鉱業審議会答申を受けて、その調節をとっていくという時間的には十分余裕がある、かように考えております。
  31. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 きょう日経に出ましたこの植村さんの私案ですね、これに、「四十八年度までに出炭量を年三千五百トンにしぼれば、それ以後は生産状況が好転するヤマもあろう」こういうふうに書かれておるわけですが、この三千五百万トンという数を出された根拠を少し説明していただきたいのと、それから「好転するヤマもあろう」、こういうふうなことばを使われているのですが、これは何ですか、三千五百万トンよりもっと好転した時期にはもっとたくさん石炭出炭量をふやす必要があると、こういうふうな見解ですか。そうすると、四十八年度で三千五百万トンという数を出しておるけれども、それ以後はふえる、こういう見通しなんですか。それとも、その後もまた減っていくと、こういう見通しなのか。これはあなたの見解でいいのですがね、見通しなのか。それからあなたは、火力発電のために一体最低現在幾ら石炭を使っておるのか、それから最低どのくらいは確保しておかなきゃならぬのかというこの点を伺いたいと思います。
  32. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 審議会審議に当てるために、私どものほうが材料として審議会に提供いたしております資料の基本的な考え方を申しますと、これはいまの御質問の想定出炭規模を見当づけるための資料としてどういうものをつくったかということを御説明したほうがわかりやすいかと思いますが、いずれにいたしましても、四十八年度時点のことでございますので、現在の各炭鉱の損益バランスをひとつ山別につくってみました。現状でどれくらいのトン当たり赤字になっておるか、これを五年間引き伸ばしたときに、先ほど大矢委員からも御質問ありましたが、若干の能率アップは期待できますけれども、先ほどの御質問にもありましたように、かつて第一次肩がわりをやったような伸び率はとても見れないという判断一つありまして、私どもなりに手がたい能率の向上をひとつ見ております。それからその際のコストの上昇というものについても私どもなりのひとつの想定を加えております。で、主たるものは原価の半分が人件費でございますので、全体の労賃の上がり傾向、これを最近のトレンドで押えまして、前の肩がわりのときには七%と見ておったのですけれども、ことしの実勢あたりはそれより高いものでございますので、これを修正して人件費はもっと増高する、こういうふうに見てまいります。それから坑木その他いろいろな諸資材がございますので、こういうものの想定計画期間内における上がり率というものも考えまして、そのときの能率でそれぞれに計算をいたしまして、四十八年度時点にはおおよそ全石炭産業で毎年の発生赤字額がどれくらいのものであるかということを押さえてまいりまして、そして政策を考えます場合の一つの大きな前提は、石炭特別会計の収入財源というものはおそらくマキシマムの額であろう、こういうふうに考えまして、その財源内でいろいろな助成を加えるということを前提に置いて、どのくらいの炭鉱までが一定の政策助成を前提にして採算がバランスとれるかということを考えまして、一つ一つの山に検討を加えまして、おおよそこれくらいの助成費であれば成り立つ、こういう前提のもとにこの出炭規模その他を想定づけておる。この場合、したがいまして仮説でございますから、三千五百万トンにすればどれくらいの金がかかるか、四千万トンならどれくらいがかかるか、三千万トンならどれくらいになるかというような諸指標をつくりまして、それである規模のところにがくんとその規模以上の出炭を期待すると、経費が非常にふえるという段落がございますので、そういうところを見ながら判断をしてまいっている、こういうことでございます。したがって一言で言いますと、財政支出を効率的に使うという意味合いで、ある一定の財源を前提にして過度の助成でなくて効率的に助成ができて維持できる、総出炭規模というものはおおよそどれくらいのものであろうかということを逆算したものを出しておるわけであります。したがって、この結論は、いまわかりやすいように三段階のきざみぐらいでお話しておりますけれども、積算のもとには個別の山の原価予想がございますので、端数がついたって一向かまわないことでございますから、その辺のところを勘考してもらいまして、最終的にきめていただこう、こう思っておるわけであります。  それから電力関係の石炭需要が現在どうであるかということでございますが、現在の電力用炭は約二千六百万トン消費されております。ただ、これから先おおよそどれくらいあれば、ミニマム必要な、電力側が期待する石炭量であるかということは、いろいろまた前提がございまして、御承知のように現在石炭しか使えないような形で、石炭需要開拓のためにつくりました設備もございますけれども石炭と重油とを混焼できるような設備というものもございまして、これは石炭生産量が多くて、政策的にこれをとってもらいたいというときには石炭も使えるし、石炭のほうの供給力が不足であれば直ちに重油でもって置きかえられて、設備に必ずしも変更を加えなくてもいいという状況のものがかなりのものがございますので、見方でございますから、いろんな考え方がとれると思います。それからもう一つ、電力側から見ますと、発電所の地点によりましては重油を使いますことが、いわゆる亜硫酸ガスの公害問題を引き起こすので、石炭を使ったほうが亜硫酸ガス濃度を低くできる、そうしなきゃいかぬという地点もありますので、これらは公害基準その他の設定がどこにとられるかでも変わってくる状況でございまして、こういう可変条件がいろいろございますので、必ずしもどこまでということは言えない一定の幅だろうと思います。そういう意味で見ますと、おそらく石炭の供給力を小さく考えました場合、電力側にあまり大きな影響を与えないという量で考えますと、千五百万トンから二千万トン程度のものが、幅で申し上げて恐縮でございますけれども、無理のない数字ではなかろうかと考えております。
  33. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この三千五百万トンというのは、石炭の出た必要量が三千五百万トンだというんではなしに、金のほうから計算して三千五百万トンという数をはじいた、こういうことですね。現在の発電——水力も火力も使っている総発電量の中で、石炭の占める%というのはどのくらいになっていますか。
  34. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) ちょっといま手元に資料を持っておりませんが、これはすぐにわかりますから、後刻すぐお答えをいたします。
  35. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は数を持っているんですが、私の数が間違っているといけないと思って、ちょっと伺っておきたいと思っています。大体四一%じゃないかという数を持っておるんですが。
  36. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) そんなに大きくはございません。
  37. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 発電量の四一%が火力ということで……。
  38. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 火力といいます場合は、重油も入れて……。
  39. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 重油も入れて四一%ですか。石炭だけではどのくらいでしょう。
  40. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 参考までに三千五百万トンくらいというふうな出炭規模を想定しました場合の石炭需要がどんなものかということをお答えしておきます。  大体原料炭を千二百万トン、こう見まして、一般炭が二千三百万トン、そのうち電力用炭が千九百万トン、三千五百万トンの場合は大体そんな想定をいたしております。先ほどお答えしました千五百万トンから二千万トンという幅で申しますと、そのまあいわば上のほうの数字でございます。その場合、一般炭の二千三百万トンの中の千九百万トンが電力用炭と考えました。残りの四百万トンの内訳でございますが、このときの想定では暖房用炭が大体二百十万から二十万くらいの間、残りの百八十万前後のものが一般産業向け、これはぐっと減っていくという想定をいたしております。三千五百万トンの中で原料炭と電力用炭で三千百万トン、こんな感じで考えております。
  41. 大矢正

    大矢正君 ちょっといまの数字のことで。局長ついでの機会があったら調べてもらいたいのだが、北海道電力のように一〇〇%石炭火力というものはこれは問題外だけれども、たとえば北海道からきている東北電力、それから東京電力、それに中部電力、この辺までは北海道から炭がきているわけですね。関西電力も行っていると思いますが、ここら辺の言ってみれば石炭を従にしてたいているところの火力の会社の、石炭をたくことによって、重油火力をやる場合の比較をして、石炭をたくがゆえに一体キロワットアワー当たり幾らの負担増加になるのか、そういう計算はおそらく出ているのじゃないかと思うが、いまじゃなくてもよろしいですからお願いしたい。ということは、私ども考えてみて、北海道電力のような石炭一〇〇%とか、あるいは九州電力なんかのように、これは九州は重油もありますが、石炭が主力になっているところは別として、重油を中心にして水力あわせて石炭をほんのわずかやっているところだとすると、キロワットアワー当たりの石炭をたくがゆえのその上積みの部分なんというものは、それこそほんとうにわずかなものじゃないかという感じがするのです。それを知りたいものだから、機会があったら……。
  42. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 大体わかりました。数字はある程度あると思いますが、なければ作業させましてつくらせます。ちょっと念を押しておきますが、おっしゃっております趣旨は、当該会社の総発電力アワーにおけるところの石炭をとっていることによる負担でございますね。
  43. 大矢正

    大矢正君 それは社別によって多少変化はあると思いますがね。
  44. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私さっき言ったのはちょっと言い違っていると思うのです。私は総発電量の中の石炭の占めるパーセントは四一%と申しましたが、そうじゃなしに、火力発電の中で占める石炭の占める率は四一%だ、こういうことなのですが、どうでしょうか。
  45. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) それはあとでもうすぐくると思いますから……。  それでは本件についての質疑は本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  46. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、石炭鉱山保安に関する件につき、政府から報告を聴取いたします。西家鉱山保安局長
  47. 西家正起

    説明員(西家正起君) また九月に入りまして、北海道におきまして重要災害が発生をいたしまして、まことに遺憾に存じている次第でございます。最初に、夕張災害の御報告をいたします前に、最近の災害状況につきまして簡単に御報告申し上げたいと思います。  お手元の三枚とじましたグラフのついた資料でございますが、これに基づきまして、最近の災害につきまして傾向を御説明申し上げたいと思います。  一番上にございます災害の推移でございますが、これは石炭鉱山の鉱山保安法ができまして以来の災害率の趨勢でございます。実線は罹災者の数、三日以上休業いたしました罹災者、死亡者の全体の数を稼働延時間で割った率でございます。点線のほうが死亡者だけの死亡率でございます。ごらんになりますように、罹災率のほうは鉱山保安法ができまして以来昭和三十一年ごろまで非常に低く減少してまいったんでございますが、三十年代に入りまして若干上向き傾向を示しました。最近ではかなり高いところで横ばい状態を示しており、昭和四十二年度におきましては、稼働延百万あたり九百八十八という数字になっておるわけでございます。この数字は四十三年に入りまして、現在までこれよりはかなり下回っておるようでございます。一方死亡率のほうでございますが、これは昭和三十八年と四十年に非常に大きなピークがございまして、これはまあ三池の大災害、それから山野の四十年の災害こういったことで非常に高い数字を示しておりますが、昭和四十二年におきましては非常に死亡者数が減りまして、災害率におきましても六・三七というようなまあ満足すべきものじゃございませんが、比較的低くなっておったわけでございます。四十三年に入りまして、また死亡者の数が四十二年よりは若干増加をいたしまして、現在のところでは一昨年まではまいりませんけれども、昨年よりは高いような死亡率の状態になっておる次第でございます。  二枚目の紙は死亡者と罹災者の絶対数の変化でございます。これは総体的に非常な減少を示しておりますが、これは労働者の数も減っておりますので、これは一枚目の紙のほうが災害の傾向としては適当かと思います。こういう状態に相なっておりまして、昭和四十二年には死亡者二百四十八人、明治四十一年以来の最低値を示したわけでございます。四十三年に入りましてこれを上回っておることは、一昨年まではいっておりませんけれども、これを上回っているような状態でございます。  一番最後の半ペラの紙のところに昨年の一月から九月二十日現在と、ことしに入りましての一月一日から九月二十日現在の死亡者だけの会社別の比較をしてみたわけでございます。で、この大手、まん中のちょっと下のほうに大手の計がございますが、大手の計で昨年より十一名の死亡増になっております。それから中小では下から二行目の昨年より二十五名の増、合計いたしまして、昨年は九月二十日まで百七十八名という死亡者数が四十三年のことしは二百十四名と、合計いたしまして三十六名の増加を見ておるような次第でございます。ところが、この表で見ました場合に、それぞれ大手、中小でふえておりますけれども、特に大手の中では一つ会社、これでございますとCという記号が書いてございますが、Cの一会社で昨年より約三十四名の増加をいたしております。したがいまして、大手の計では十一名の計でございますが、このC以外につきましては昨年よりもかなり減っているということが言える。同じく中小につきまして見た場合に、Rという会社がございますが、これが二十九名の増加と、こういうことに相なっておりまして、全体で二十五名の増でございますが、大部分の増加、それ以上の増加をある一鉱山でやっておる、こういうような状況でございまして、特に二つ会社に非常に大きな増加の原因がかたまっておる。これなかりせば非常な減少になっておると、こういうような状態を示しておる次第でございます。  次に、鉱山保安行政の概要につきまして簡単に御説明申し上げたいと思うのでございますが、お手元には資料が配布してございますけれども、時間の関係もございますので、はしょりまして簡単に御説明を申し上げたいと思います。ただいま私どものほうで鉱山保安行政としてやっております考え方といたしましては、あくまでも自主保安体制ということを大原則といたしまして、経営者、労働者が一致をして保安を確保するということを大前提といたしておりますけれども、そうして国といたしましては、それをサイドチェックをするという意味で監督検査の充実をはかっております。しかしながら、最近の石炭鉱山の自然条件の悪化あるいは経理条件の悪化等非常にきびしい環境にかんがみまして、ただそれだけではなかなか災害は減らないということで、この自主保安体制を側面から強力に助成する意味で、ある程度予算を使って側面から助成も行なっておるわけであります。現在保安行政の柱は、したがいまして監督指導体制の強化ということと、保安教育の強化、保安施設、機器の整備、保安技術対策の強化、こういったことを柱といたしまして実施をいたしておるわけでございます。  監督指導体制の強化といたしましては、年々いろんな監督検査をやっておりますけれども、それからの実質的な効果があがるような日数の増加等をやっております。それから監督官が回りましたときには、改善事項の指示あるいは技術面の指導等を行ないまして、法規違反がありました場合には追跡検査を徹底してやる。なおそれでも直っていない場合には、改善命令あるいは作業停止命令等を発動する等、かなりきびしい態度をとってまいっております。  それから監督検査の面ではそういう点を強化いたしておりますが、さらに監督指導だけではなかなか災害は減らない。こういうような対策として保安意識の高揚なり保安技術の向上という点から保安教育ということが非常に重要であるということでございまして、これは従来からやっております保安教育のほかに、四十二年度から政府が予算を取りまして、特殊法人の鉱業労働災害防止協会に補助金を出しまして、この協会で、九州、北海道、それから東部——これは常磐でございますが、この三カ所に近代的な教育訓練施設を完備した鉱山保安センターというものを現在建設中でございます。これはことしの十二月には完成いたしまして、来年の一月から運営に入る予定でございますが、これができました暁には、教育担当のスタッフの養成教育と、あるいは合理化に即応した新技術教育、あるいは係員のリーダー教育、あわせて鉱山救護隊の実践的救護訓練を行なう予定にいたしておる次第でございます。  さらに三番目の保安施設、保安機器の整備、開発の促進でございますが、これにつきましては、石炭鉱山保安確保に必要な保安施設の整備を促進するために石炭合理化事業団を通じまして、融資率五〇%の無利子の融資を行なっております。四十三年度は必要な二十七機種を対象といたしまして、十八億三千七百万円という貸し付けを行なっております。それに必要な出資を合理化事業団のほうにいたしておるような次第でございます。さらに、中小炭鉱におきましては、融資と申しましても、融資の残りの額がなかなか金融面で確保しにくいという点で、四機種につきましては補助金を出している次第でございますが、これは額といたしましては、四十三年度二千六百万程度でございますが、こういうものを出しておるわけでございます。  それからさらに、もっと炭鉱保安を確保するためにすぐれた性能を持った保安機器の研究と開発ということをやる必要があるということでございますが、なかなか保安機器と申しますと需要の市場が非常に狭い。それからつくっておるメーカーが中小企業であるということでなかなか進展をしないものでございますので、現在財団法人の石炭技術研究所とそれに研究を共同にするものに対しまして、新しい保安機器の開発研究費というものを補助金として出しておるような次第でございまして、四十三年度は六つの機器につきまして千八百万円の補助金を出しておるという状況でございます。さらには、最も保安の根本でございます保安確保坑道というものの掘進を促進するために、坑道掘進に対する補助金というものもこれは石炭局の予算で補助金を出しているような次第でございます。保安技術対策の強化につきましては、先ほど藤原先生の御質問にございましたので省略させていただきますが、以上のようなことをやっておるわけでございますけれども、なかなか災害が思うように減らないということを非常に残念に思っておるようなわけでございます。  前置きを終わりまして、九月の三日に発生をいたしました夕張炭鉱災害につきまして御報告させていただきます。お手元のパンフレットに基づきまして御説明いたしますが、災害が起こりました炭鉱は夕張炭鉱第二坑でございます。夕張市にございまして、鉱業権者は北海道炭礦汽船株式会社、社長は原功一、災害が起こりましたのは、四十三年九月三日の午後二時二十分ごろでございます。災害の発生いたしました場所は後ほど図面で御説明いたしますが、三区左二片十尺ロングという個所でございます。災害の種類は落盤でございます。同炭鉱出炭量は月に九万三千七百トン、鉱山労働者数は八月末で三千二百名でございます。今回の災害によりまして罹災された方は死亡八名でございます。  災害の概況でございますが、夕張炭鉱は第一坑、第二坑に分かれておりまして、全体で三千二百名、月に九万三千七百トンを出炭いたしておりますことは先ほど申し上げましたとおりでございますが、今回災害を発生いたしました第二坑は鉱山労働者数が約二千名でございます。十尺層及び上層の六払いをつくりまして採炭を行なっております。月に六万九千七百トンの出炭をいたしております。災害が発生いたしました三区左二片十尺ロングは山丈と申しますか、稼行丈、稼行いたしております炭の丈が一・五メートルでございます。これに使っております支柱は摩擦鉄柱でございまして、これを千鳥枠に使っておりまして、一・四メートルのカッペを用いております。カッペのタイプはピンタイプということで、これによりまして支保を行なっておりまして、災害当時はピック採炭、ピックを用いた採炭を行なっておったのでございます。当払いは直接天盤である含媒と頁岩の構造でございます。含媒と申しますのは、まだ炭化をしていないようなものでございますが、この含媒と頁岩との構造が直接天盤で一・二五メートルでございますが、その上に十八・八メートルにわたりまして、十八・八メートルの厚さの砂岩がこの上にございまして、これを大天と言っておりますが、大天となっております。災害が起こりました払いの面長は全長百三十五・八メートルでございます。傾斜は十八度でございます。前に述べましたような支保で稼行をしておるわけでございます。ちょっとミスプリントがございますが、「災害発生の数日前」というのはちょっととっていただきます。こういうことで稼行しておったのでございますが、払いの上のほうでございますが、肩部のほうでございますが、肩部のほうに断層が出現いたしましたために、八月二十二日から払いの下のほうから八十・六メートルのところより断層に沿いまして切替を昇上げておりまして、この切替昇が八月三十一日に上添坑道に貫通をいたして完了いたしております。この払いはもともと七月二十二日から採炭を始めておりまして、災害時におきましてはまだ二十メートルしか進行していなかったのでございます。  災害当日は、一番方として係員が一名と鉱員の方が三十三名がこの払いに配番をされまして採炭と山固め、ステーブル座作り等の作業に従事しておったのでありますが、十四時二十分ごろ払いの深部から四十一メートルの地点、そこから上部に十八メートルの間にわたりまして突然崩落が起こりまして、係員一名を含む八名の方が崩落硬の中に埋没して罹災したものであります。災害発生と同時に六十六名の救出作業隊が罹災者の救出作業に従事をいたしまして、翌四日の十九時二十三分に全罹災者を収容したのでございますが、すでに死亡をしておられたわけでございます。災害発生直後には札幌の鉱山保安監督局から石炭課長以下七名を現地に急行させまして、罹災者の救出作業の指揮に当たったのでございますが、鉱山保安局からも外山監督官を急遽現地に派遣をいたしたような次第でございます。  災害原因につきましては、罹災者の救出作業と並行して調査中であったのでございますが、罹災者の収容が完了いたしましたので、その後本格的な調査に入っておるわけでございます。ただ、まだ現地では崩落個所が残っておりまして、まだ本格的調査が終わったというような段階には立ち至っておりません。原因の推定でございますが、崩落個所には何らかの異常現象、これは断層か盤折れか、こういうものがありましたために突然崩落したものというふうに推定をいたしておりますけれども、やはり災害現場を全部取りあけてみなければそうだという断定をすることはできない状態にございます。ここには書いてございませんが、今回の災害に対しましてとりました措置といたしましては、原因究明につきましては、現地の調査の終わりましたあとで正式の処分はいたしますけれども、とりあえず北海道炭礦株式会社が七月三十日と九月三日、二回にわたりまして重大災害を発生をいたしましたので、そういう点を通産省は重視をいたしまして、九月の十二日に北炭の社長に事務次官のところに来ていただきまして、厳重な警告をいたしたわけでございます。炭鉱側といたしましても、相続きました災害に対しまして相当な決意を示されまして、自主的に会社の機構の改革、人事の交代、あるいは今後の決意等につきまして述べられたような次第でございます。なお保安局長はさらに九月の九日に、それより先立ちまして石炭協会に各社長、石炭の大手の社長に集まっていただきまして、今回の災害につきまして、対岸の火災視をしないように厳重に警告をいたしたような次第でございます。  次のページに災害の位置の図面がございますが、これが夕張第二坑でございますが、左のほうに「中央竪坑」と書いてございますが、この坑から入坑するわけでございまして、これをずっとおりまして、あとは運搬坑道を水平に右のほうに行きまして、一番右のほうの端に三区左二片十尺ロングというのがございます。一番左のところの災害の発生いたしました場所でございまして、坑口から約二千六百メートルということに相なっておる次第でございます。  簡単でございますが、御報告にかえさせていただきます。
  48. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本件について質疑のある方は順次御発言を願います。
  49. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 本年は特に大きな災害が続きまして、この保安ということが非常に重要なことは論をまたないと思います。生産保安、これは表裏一体として私どもは真剣に取り組まなければならぬ問題だと思うのでありますが、まあどんな優秀な炭鉱であっても、一たび災害が発生してしまえばもう大打撃を受けてしまう、これは事実でございますが、さらにまた労務者に与える精神的な負担というものもたいへんなものである。こういうことで真剣に取り組まなければならない問題だと思います。先ほども一応質問したわけでありますが、この対策として、毎度の事故のたびに絶滅を期すというようなことを言われ、またそれに対するいろいろなことも論議されておるわけでありますが、一向にその後減っていないというような非常に憂うべき状態である。こういう問題から先ほど質問いたしましたように、もっと学問的な面についてはどうかというこれは行政上の対策ももちろんでありますが、ある一面としては、これは学問的な研究と相まって、坑内条件にマッチした技術開発というものが進んでおるかどうか、こういうこともひとつは考えなきゃならないことだと、このように思うわけであります。それで先ほど質問したわけであります。先ほどのお話である程度のことはわかったわけでありますが、いずれにいたしましても、最近は坑内条件がずっと初期のころとは異なっておりまして、だんだん深く入っているような状態であります。特に最近言えることは、非常に労務者が老齢化しておるということで、昔の経験または技術だけでは最近のこの坑内条件に適応しないのではないか。こういうことから新しい保安教育、また坑内の一切のものについては新しい技術がどんどん教育されなければならない、このように思うわけであります。先ほどお話がございましたように、工業技術院その他このような政府機関、研究機関がございまして、いろいろ研究しておるようでありますけれども原因の究明すらもなかなか的確に行なわれないような面も非常に見受けられるわけでありますが、いち早く原因の究明とともにそれに対する対策、これらのことが適切に行なわれているかどうか、それで同じような原因の事故を再び起こすなどという愚は決してなさないという、そういう真剣な態度でこういう技術開発とともに、それが即現場にそういうものが導入されておるかどうか、こういう点を非常に心配するわけであります。こういうことに対して今後とも強力に力を入れて推進していただきたい、このように思うわけであります。
  50. 西家正起

    説明員(西家正起君) 先生御指摘いただきましたことは、まことにそのとおりでございまして、われわれといたしましても、現在やっていない問題につきましても、技術開発につきましても、今後とも積極的に大いにやってまいりたい。また保安教育につきましては、先ほどお話を申し上げましたように、保安センターの有効活用等によりまして、できるだけ効果のあがるような方向に持っていきたい。なおまた原因の究明につきましては、できるだけすみやかにこれをいたしまして、その責任を明らかにいたしますとともに、法的な原因追及につきましては、若干証拠その他がございまして時間がかかりますけれども、技術的なもう少し幅の広い原因究明ということは、これは比較的早くできますので、そういう点につきましては、これがはっきりいたしました際に、すみやかに各監督局部を通じまして、それぞれ炭鉱のほうにその資料を流しまして、同じような原因によって同じような災害が起こらないように努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  51. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 ちょっとお尋ねするわけでありますが、そういう面でいろいろ技術の開発があった、そういうことを現場に導入する場合にはすみやかに実行できるように行政指導というか、強力な指導をするわけですか。
  52. 西家正起

    説明員(西家正起君) 今回の場合も、災害の起きました直後に大体の災害状況を、推定も含めまして、これをまとめまして監督局部を通じまして各炭鉱のほうに流してございます。各炭鉱でそれを参考といたしまして、同じような災害の起こらないように各炭鉱のほうでやっているわけでございます。それから技術開発をいたしまして、技術開発をした場合の導入でございますが、これはしばらくは試験的な使用ということもございまして、直ちに強権をもってそれを使わせるというわけにはいきませんけれども、極力いいものにつきましては行政指導で行なう。それが完全なものであるという場合には、規則に織り込んでこれを強制的に使わせる、こういうような方法をとりたいというふうに考えておる次第でございます。
  53. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 特に落盤とか、この前のような火災とか、そういう問題が多いわけであります。先ほどからも繰り返して言っているんですが、非常に坑道が深くなって、長くなって、坑内条件が異っている。こういうことから地質調査とか、こういう面については非常に力を入れなければいけないのじゃないかと思うわけであります。大学等においてもいろいろ委託して研究している面もあると思いますが、政府としても当局としても、これは強力にこういう機関を一本化して、今後ともひとつ事故の絶滅を期していただきたい。このことを心からお願いするわけであります。以上であります。
  54. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ほかにございませんか。
  55. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 先ほどの須藤先生の御質問に対して、いま四十二年度の数字がちょっと手に入りませんので、四十一年度、ちょっと古うございますが、お答えいたします。なお、四十二年度はいまラフな数字をうしろで計算しておりますので、問に合い次第申し上げます。  四十一年度の総発電量が千五百七十六億キロワットアワーでございまして、そのうち水力が五百七十三億キロワットアワー、火力が千三億キロワットアワーでございますので、水火比は、水が三六%、火力が六四%でございます。  それから先生の御質問は、火力の中で石炭のウエートがどうか、こういうことでございます。四十一年度の数字で申しますと、これは混焼分をそれぞれ石炭と油に分解して合計した数字のようでございますが、これによりますと、石炭による発電量が五百三十八億キロワットアワー、油によります発電量が四百六十五億キロワットアワーということでございますので、火力を一〇〇といたしまして石炭が五三%、油が四六%という数字に相なっております。
  56. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もう一度質問していいですか。
  57. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) どうぞ。
  58. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、大体昭和五十年台における火力に占める石炭のパーセントというものははじけますか。
  59. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) それはいま私持っておりませんけれども、大ざっぱな計画数字は公益事業局が持っておりますので、なるべくすみやかに先生のお手元に参るようにいたしたいと思います。これはわかります。  なお、四十二年度の石炭と重油の比率でございます。四十一年度は油が四六%で石炭が五三%でございます。四十二年度では逆転しておりまして、石炭が六百四十億キロワットアワー、重油が六百八十三億キロワットアワーでございますので、石炭四九%、重油五一%、大体半々ですが、ちょっと地位が逆転をしておる、こういう状況でございます。
  60. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本件についての質疑は本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  61. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、産炭地離職者対策等に関する件について質疑を行ないます。  本件について質疑のある方は順次御発言を願います。
  62. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 時間もだいぶ経過いたしましたので、簡単にお伺いいたしますから、簡潔明快にお答えをお願いします。  産炭地域の振興対策という問題でございますが、もちろん離職者対策を含めましてのことでございますが、御承知のように閉山、終山、相続いて荒廃した山を持っておる産炭地域は、これは地方経済といたしましても非常な地盤沈下を起こしております。またその当該町村は極度に財政的に逼迫してきておる。近年いろいろ政府におかれても手を打たれてはおりますが、その中で産業基盤の整備のための公共事業として道路なりあるいは工業用水の開発、また工業用地の造成とか、ある程度効果をあげておりますけれども現状はなお地域経済が非常に疲弊してきておる。どうもそのために一方では失対あるいは生活保護というものがどんどんふえてきておりまして、これは地域開発にはむしろプラスになっておらぬ、そういう状態に追い込まれてきております。そのよってきたる根本原因を考えますと、政府はいろいろあるいは事業団を通じてやっておりますけれども、総合的な地域再開発の計画がない。したがって、その計画に基づく事業が行なわれてないというところに、私は産炭地域の地盤沈下の回復できない根本の原因があると信ずるものでございます。  そこで、まず考え方といたしまして、産炭地域振興の眼目は、まず第一にいままで炭鉱離職者中心に考えられておりましたが、それだけでなく、地域住民全体を、中小零細企業の経営者なり従業員を含めてその地域住民全体を対象として総合的な計画を考えていかなければならぬ。第二は、その地域に雇用機会を造出するような対策を考えていかなければならぬと思うのでございます。そういう考え方に立って地域の総合的な再開発計画を、これは通産省中心になって石炭対策の一環として考えられるべきだと思いますけれども、考えておられるかどうか、今後考えられるかどうか、まずお伺いいたしたいと思います。
  63. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 産炭地域全体を総合的な地域計画的なもので考え直していって地盤沈下を防ぐ、その際炭鉱離職者だけでなくて、地域住民全体を考えて雇用の造出をするということを、在来も何がしかはやっておるようであるけれども、もう少し広い角度から考え直すべきではなかろうかと、こういう御趣旨だと了解いたします。産炭地域振興問題というのは私ども中心になる役目ではございますけれども、全政府ベースで各省の協力を得ながらやっていかなければならぬ。そういう意味で、御指摘のとおり広い視野に立った広い範囲計画というものが望ましいことはそのとおりでございます。道路等の公共事業をまずしっかりやってもらうということが全般的に必要でございますし、他産業を誘致するという基盤づくりとして、私どもはまた産炭地域振興事業団を中心にいたしました工場団地の造成だとか、誘致企業に対する出資あるいは融資といったようなことをやっておりますが、いまだ不徹底で、筑豊地区のごとくなお離職者が累積して滞留をしておる、こういう状況は先生御指摘のとおりだろうと思います。ことに、今後の石炭政策が、なお相当閉山を余儀なくされるということでございますので、私どもも今回の石炭対策を考えますにあたりまして、産炭地域振興問題というものをよほど大きく考えていかなければいかんという気持ちに相なっておることは御指摘のとおりでございます。そこで石炭鉱業審議会もさることながら、産炭地域振興審議会で数次にわたりまして各地域の特性をも考慮に入れまして、地元の方々の御意見、これは知事に代表していただいて聞かしていただくというようなことをやりながら、いま進めておるわけでございます。なお私どものほうでも実効のあがらない点、施策の足らざる点はなおあると思いますので、いま御指摘のような広い角度での計画というものを全政府ベースで私どもが声をかけながら進めていくということには、さようにいたしたいと考えております。ただ残念ながら、産炭地域振興計画も毎年度予算で処理をしていくということからいいまして、基礎になります公共事業の先行き何カ年かのワク組みをつくるというようなことが、実際問題としてなかなか困難でございますので、できるだけ御趣旨に沿ったような努力をいたしたいと思っております。
  64. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 そこで、いま御答弁にちょっと出ていましたが、筑豊地帯の例を見ますと、三十五年から昭和四十年の五カ年の比較によりますと、この地域の就業人口は五万一千人減っております。時間がないから詳しいことは言いません。三十万から五万一千減っておる。そのうち鉱業関係の就業人口は九万一千から五万八千減っておる実情でございます。したがいまして、鉱業関係の付加価値額について見ると、これが百五十四億円減少しておる。こういうことから見ましても、筑豊地帯が特に疲弊の極に達してきておるということは申すまでもない。私はこういう筑豊地帯についていえば、直方、飯塚、田川という現在あるあの小都市を拠点といたしました総合地域開発、これら一応県を中心としてすでにプロジェクトの案を固めております。これは農林業の振興も、それかは工業地域地帯の振興も、あるいは住宅用地、商業市街地、こういうものをすべてこの地域の実情にマッチした計画を立てていくべきであるということで、大体固まってきております。こういうものをいまお話のように、全政府ベースにおいてオーソライズしてもらいまして、その地域の特別な公共事業を重点的に集中的に実施してもらうと、こういう必要があると思うのでございます。そこでこれは筑豊地帯だけじゃございません。まあ全国のこういう地域が相当あるという前提で私は申し上げておるのでございますが、そこでこういうふうにして総合的な地域再開発計画を立てて、事業を実施するということになりますると、当然のことながら事業予算をふやす、さらに国庫負担なり補助率を引き上げまして、離島振興事業並みの施策を講ずる必要があると信ずるものでございますが、この点についてのお考えを伺いたい。産炭地域の住民は、炭鉱離職者を含めまして、これは大きな経済の流れとともに、国の政策によってのみじめな境遇に追い込まれてきたと、こういう感覚を持っておることはこれは現実でございます。そこで、離島は本来離島であった、本来離島であったところに特別に政府があたたかい手を差し伸べておる、産炭地は国の政策によってこういう状態になったんじゃないかということから考えましても、少なくとも離島振興並みの国の手厚い援助措置を考えなきゃならぬと、かように考えるものでございますが、この点ひとつ……。
  65. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 産炭地の地方自治体、市町村等が御指摘のような公共事業を行ないますときに、いま特別の方式での地方財政援助をいたしておるわけでございますけれども、御指摘のように、もともと財政力が弱くなって、やりたいという公共事業もなかなかやれないという状況のときに行なわれた公共事業に援助するという形をとっておりますために、財政力の弱い、それこそ公共事業を大いに起こさなきゃいかぬところになかなか思うような本来の趣旨助成がいかないということは御指摘のとおりでございます。実は昨年以来問題に相なっておりまして、前年度の予算折衝のときにあるところまで詰めたんでございますけれども、これはむしろ法律問題でございまするので、必ずしも予算時期でなくてよろしいということで一回延期になっているという経緯がございます。ことしもなるべく早い時期に先ほど申しました産炭地域振興審議会意見等も反映いたしまして、地方財政援助につきまして離島方式にならぬだろうかと、つまりいまの方式が新産方式に近い形でございますので、離島方式を参考にしたものでもう一回努力をしてみたいと思っております。
  66. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 そこで、いまの御答弁に関連いたしまして、実はそういう計画的な地域の再開発を目的とする公共事業がどんどん行なわれることになりますれば、これはほんとう産炭地域が振興されると信じますが、労働省においては雇用安定の立場から、産炭地域の離職者をその地域で就職の機会を与えて雇用の安定をはかる、これは地域振興とうらはらの問題であると信じますが、実は福岡県におきましても、知事以下県会等、非常に熱心にこの問題を検討いたしまして、特に雇用安定の面から産炭地域雇用安定法というような新しい法律制度をつくってもらいたいという強い要望もございますが、雇用安定というのは申すまでもなく、地域の開発という点から見ると、一つの大きな手段であると思いますが、先ほど石炭局長から御答弁のありました公共事業の特別の増大、計画的な公共事業の集中的な施行というような問題とからめまして、労働省としては、この雇用安定について特別な措置を法律制度として考えられるかどうか、お伺いいたします。
  67. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) 筑豊地区におきますところの非常な失業状態、これは私のほうの統計で申し上げますと、昭和四十二年の求人、求職の状況を見てまいりますと、求職がこれは常用でございますが、二万一千、これに対しまして求人が四千九百ということになっております。求職倍率が四.三でございまして、全国平均の求職倍率を申しますと、一・〇ということでございますので、非常な労働市場の窮迫の状態だというふうに私どもは見ておるわけであります。  なお、先ほどお話の出ました失対事業の状況を見てまいりましても、筑豊地区だけで一万人をこえる失対就労者がおる、県全体で一万をこえるというのはそう多くないのでございまして、本地域で一万人というのは非常に大きな数字だというふうに私どもは考えておるわけでございます。したがいまして、さらにこの上に今後の炭鉱の合理化ということに伴いまして、炭鉱労働者の離職者の発生、それから関連する産業からの失業者の発生ということが見込まれまして、現に非常に窮迫しておる状態の上にさらにつけ加わってくるということになりますので、この事態に対します雇用安定対策というものは非常にこれは重大な問題だというふうに私どもは考えておるのでございます。これに対しまして、お話のように、福岡県当局のほうから雇用安定対策を法案化してやるべきであるという意見が出されております。最近私ども聞いたわけでございます。しさいな点につきましては、現在検討をいたしておるのでございますが、根本の考え方は先ほどお話がございましたように、単に外に求職者を、失業者を雇用紹介で出していくということでなくして、やはりそれだけの労働力があれば、これを有効に活用してその地域の振興に役立たしていく、そういうふうな考え方骨子でございます。先ほどの産炭地域の振興対策とうらはらをなすものであります。そういう趣旨におきましては、この法案の趣旨基本的には賛成でございます。ただ、たとえばこの内容になっております公共事業の調整の問題、あるいはまた公共事業で就労しております状態が一定の時期において消えてきた場合に、これをどう調整していくか、そのためにどういう事業をやらなければいかぬかというような非常にむずかしい問題があるわけでございます。そういう問題はあるにしても、基本的には賛成でございまして、なお、関係各省とも非常に関連する問題でございますので、通産省はじめ建設省その他とも十分連絡をいたしまして、善処してまいりたいと思っております。
  68. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 先ほど申しました福岡県が取りまとめて要望しております産炭地域の雇用安定制度の中では、特にそれの一番のねらいは、産炭地域開発調整事業という特別な公共事業をその地域の総合計画に基づいてやらさせよう、こういうことでございますから、もちろん労働省ばかりでなく、関係各省これは打って一丸となって協力してやっていただかなければなりませんが、何といっても雇用安定の面からいえば労働省が中心でございますから、労働省において、ひとつしっかり取り組んで努力していただきたいと思います。私は失対事業とか生活保護予算をふやすことは、むしろこの地域開発にとってマイナスになる。一つもプラスになっておりません、少なくとも。ですから、前向きのそういう開発効果のある事業を特別な制度によってぜひ集中的に実行してもらうように、これは通産政務次官にも特に御所見を伺って、労働省、建設省あるいは経済企画庁、各省庁とひとつしっかり手を組んでやっていただきたいと思います。
  69. 熊谷太三郎

    説明員熊谷太三郎君) ただいま鬼丸先生のいろいろ御要望の点につきましては、十分各省と連絡、調整いたしまして、産炭地の振興のために処置してまいりたいと考えます。
  70. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 それから産炭地域の問題で、鉱害復旧のことでひとつお尋ねしたいのですが、鉱害復旧が、いわゆるもとの閉山になっておる山主の無資力申請が出ないために行なわれない。つまり山主の私利私欲といいますか、のために鉱害復旧が阻止されておるという事例が全国的に相当ございますか。その点をまず……。
  71. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) すでに採掘の作業をやめておりながら会社の解散をしておらぬ、したがって行政の立場では無資力認定ができなくて鉱害復旧事業が行なわれないというケースが筑豊にままございます。御承知のような鉱害問題自体が全国に非常に多いと申しますより、非常に集中的に筑豊にございますので、二、三私はその話を実際に現地から聞いております。
  72. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 いまのお話のとおり、筑豊地域、また宗像郡の地域にもございます。そこで、これは旧山主のそういうかってな都合で鉱害復旧という大事な公益的な事業が進まないということではいけないと思います。職権によってそういう場合に無資力認定をして進めるということは、そういう道はございませんか。
  73. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 実はこの前、宗像郡のケースからいろいろと検討を加えておりまして、いま御意見のように、直接的に職権で無資力認定をするということは不可能でございますが、実は前国会におきまして、鉱害復旧事業団と鉱害基金との総合の法律改正をいたしました際に、鉱害問題の円滑なる推進をはかりますために仲裁的な制度を一つ項を起こしまして、これはもちろん最終的に意見が合わぬときには、事柄の性質上また裁判所に戻るのでございますけれども、いまのように鉱業権者が横に寝ているために被害者はものが言えない、無資力認定ができない、国もそこに職権に入っていけないというこの実態は、いまの法律改正が非常に役立ちます。これは当事者の一方が申し立てれば、その手続に入れるような仕組みにいたしましたので、実際問題として被害者側から、いまのところまだ無資力認定されていないわけですから、鉱業権者としてはまだ相手はおるわけですから、鉱業権者が賠償なり復旧なりの仕事をしないということを被害者側から追及をさせて和解に一回かける、仲裁の手続に一回かける。それでどうしても会社が解散せざるを得ないところに追い込める、こういう感じでございますので、いまの改正法を十分利用して対処できるものといま考えておりまして、現地の通産局にもその点、被害者側にひとつその手続に進ませるように指導を加えますと同時に、半面、そういうことになる前に鉱業権者側もはっきりしろということで問題を詰めていきますならば、私は解決可能ではないかと考えております。
  74. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 その仲裁制度はもう施行されておりますね。
  75. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) さようでございます。
  76. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 そこで、被害者側にも、あるいは山主に対しましても、いまお話のように新しい制度ですから、ひとつ通産局を通じて親切に指導をしていただいて、急速に復旧が進みますように考えていただきたい、お力添えを願いたいと思います。
  77. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) よくわかりました。
  78. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 それから、これはいままでの産炭地域の振興の問題と別でございますが、大牟田を中心とする有明新産都市、御存じの新産都市に指定されておりますが、その一角に御承知の日鉄有明炭鉱、これが御承知のとおり約九十億以上ですか、金を注ぎ込んでストップされております。で、この炭鉱の開発のストップは有明地区の新産都市の建設計画に非常なそごを来たしつつある。この炭鉱一つの大きな軸となって新産都市建設計画のあるいは海岸の道路とか、港湾とか、その他いろいろ計画がきめられておりますので、干拓の問題もからんできておりますが、この日鉄の有明炭鉱の開発の再開についての通産当局のお見通し、あるいは原料炭を国内で確保する政策の点から、この炭鉱原料炭がどういうウエートをもってその政策に入っておるか、今後どういうふうに考えられておるか、この辺をひとつ御所見を承りたいと思います。
  79. 中川理一郎

    説明員中川理一郎君) 日鉄鉱業の有明鉱開発は、御指摘のように多年巨額をかけまして日鉄鉱業で立て坑をおろしたのでございます。全体の坑道展開から見ますと、おそらくいまの時点は半分まで来たというところだろうと思います。立て坑がおろされて今度水平に坑道展開されるという状況だと思いますが、その過程におきまして非常に出水が多うございまして、実は保安上、技術上の難点にさしかかってきております。なおかつ、これが一時的なものであるにせよ、今度水平に坑道展開します場合に、同じような水量が出ることはまた必至ではあるまいかという見方が出まして、当初日鉄が計画をいたしましたときの投資額——予算投資額から見ますと、よほど大きい資本投下にならざるを得ないというのが一つの問題点でございます。そこで現状では当面この水の対策をどうするかという技術問題これはもう保安問題にもつながるわけでございますが、この問題が一つと、それからいま申しましたように、当初もくろみよりもよほど投下資本額が大きくなるという問題と二つございまして、第一番目の問題につきましては、日鉄側の希望もございましたし、私どもも残された有望な原料炭鉱区でございますので、純粋に技術的な見地での専門家による調査団を派遣いたしまして、水対策調査をしてもらったわけでございます。これは私専門的なことはよくわかりませんので、もし御必要でございましたならば計画課長から説明させますが、技術的には解決不可能ではないというふうに私は理解しております。ただ、二番目の点の、技術的では不可能でないにしても、よほどの追加投資が必要である。また全体の工事量からいってもまだ半分ぐらいしか終わっていないというところから考えまして、企業側においてそれだけの資本投下をしてなおペイすると判断するかしないかというのを苦慮しておるのだと思います。現状におきましては、原料炭対策と申しますか、今度の新対策の中で、当然に石炭全般と申しますよりは、原料炭に傾斜のかかったような助成制度がとられることになるのではなかろうかと私は予想しておりますが、その際とられるであろう原料炭採掘についての助成度合いというものがまだ未決定でございますので、これが出ますと、日鉄側も進むか停止するか判断しやすくなるのではなかろうか、こう思っておりますが、現状ではこちらもきまっておりませんので、私としても見通しはなかなか的確には申しがたい状況にございます。ただ、非常に投下資本額が大きそうな感じがいたしますので、全体として考えますと、かなり暗い見通しになるのではなかろうか、こういう感じはいま持っております。
  80. 鬼丸勝之

    ○鬼丸勝之君 いまのお話で、非常に投下資本がふえる、そのために経済性がペイするかどうかという問題があって、技術的には解決可能だけれども企業として将来の採算性からいって暗い感じがするというお話でございますが、その点きょうは時間もございませんから、一体投資予定額は幾らで、それに対してどのくらいふえるのか、それから技術的ないまの通産省のほうの御検討になった結論、その点を少し詳しくあとで私に資料として出していただきたいと思います。  そこで、ただそうはおっしゃいますけれども原料炭対策として傾斜的に今後助成していくという御方針ならば、そういう原料炭の振興開発助成というものをひとつ——これはそうケースとしてはたくさんないと思いますから、十分御検討いただいて、日鉄側としてはこれは政府の方針待ちというかっこうに見受けられるようです。私は日鉄とは全然話もしておりませんし聞いておりませんけれども、どうかひとつ最初に申し上げましたように、新産都市の基幹的な事業の計画がこれでとんざする、あるいは根本的にやりかえなければならぬという大きな問題になっておることを十分理解していただいて、早急に省としての御方針を決定していただきたいということを要望しておきます。
  81. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本件についての質疑は、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれをもって散会いたします。    午後四時三十三分散会