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1968-08-08 第59回国会 参議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年八月八日(木曜日)    午前十時三十分開会     —————————————    委員異動  八月七日     辞任        補欠選任      船田  譲君     大谷藤之助君  八月八日     辞任         補欠選任      矢追 秀彦君     鈴木 一弘君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         金丸 冨夫君     理 事                 剱木 亨弘君                 近藤英一郎君                 土屋 義彦君                 小柳  勇君     委 員                 大谷 贇雄君                 大森 久司君                 川上 為治君                 玉置 猛夫君                 平泉  渉君                 山本敬三郎君                 阿具根 登君                 近藤 信一君                 竹田 現照君                 塩出 啓典君                 鈴木 一弘君                 田渕 哲也君                 須藤 五郎君    国務大臣        通商産業大臣   椎名悦三郎君        国 務 大 臣  鍋島 直紹君        国 務 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        通商産業政務次        官        熊谷太三郎君    事務局側        常任委員会専門        員        小田橋貞寿君    説明員        公正取引委員会        委員長      山田 精一君        科学技術庁研究        調整局長     梅沢 邦臣君        科学技術庁原子        力局長      藤波 恒雄君        大蔵省主税局税        制第二課長    田辺  昇君        通商産業省重工        業局長      高島 節男君        通商産業省重工        業局次長     本田 早苗君        中小企業庁長官  乙竹 虔三君        労働省職業安定        局業務指導課長  保科 真一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (八幡富士製鐵合併に関する件)  (自動車自由化に関する件)  (クリスマス用電球の対米輸出に関する件)  (海洋開発に関する件)  (原子炉安全管理に関する件) ○継続調査要求に関する件 ○委員派遣承認要求に関する件 ○岩手県に中小企業総合レクリエーシヨンセン  ター設置に関する請願(第三号) ○原子力発電所地帯の整備、開発安全確保に関  する請願(第四三号)     —————————————
  2. 金丸冨夫

    委員長金丸富夫君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、船田譲君が委員辞任され、その補欠として大谷藤之助君が選任せられました。     —————————————
  3. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題とし、八幡富士製鐵合併自動車自由化海洋開発原子炉安全管理クリスマス用電球の対米輸出の諸件に関し、これより順次調査を行ないます。  質疑のおありの方は順次発言を願います。
  4. 小柳勇

    小柳勇君 私は、八幡富士合併の問題を中心に、大型企業合併に対する政府見解及び合併後にあらわれますその企業の他地域への移動などによって生ずる残された地域経済発展の問題などを中心質問をいたしたいと思います。  具体的な例は、去る四月の十七日に突如として某新聞八幡製鐵富士製鐵との合併がスクープされた。ところが、その日に通産大臣はこれに賛意を表しておられるところであります。日本鉄鋼産業の第一、第二を自他ともに許しておる大企業合併新聞社のスクープによって発表されて、急速度にこれが進展すること自体、奇異の感を持ちますが、この合併がスクープされると同時に、通産大臣はこの合併賛意を表する、そうして具体的な事例をもって賛意を表された、こういうことで、地域住民、特に八幡製鐵を持つ北九州などは、相当住民も動揺いたしました。われわれの見解は、現在公正取引委員会もあることだし、日本一つ企業発展だけを考える国ではない、日本国全般経済発展していかなければならぬのであるが、こういうようなとっぴともいわれる合併に対して、十分の検討もないとわれわれは考えますが、ないまま政府見解発表された、こういう点に対して通産大臣はどういう資料で、どういういきさつでこの合併に賛成の意を表されたか、大臣見解をお伺いいたします。
  5. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは両社合併の記事が一部の新聞に報道されまして、それに関して記者会見をいたしました。その際の質問に答えたのが私の談として出ておるわけであります。私は、いま資本自由化が、経済界黒船来襲といわれておるような資本自由化が、だんだんこれから発展していこうとというときでございまして、日本経済界も非常な大きな試練にあうときに際会しておるわけでございまして、その際でもございますので、これに対抗するという立場から日本企業を見ると、いろいろと対応していかなければならぬ点が多多あるように考えられておったわけであります。そういう際でもございましたので、資本自由化を控えて、かような合併が進捗することは、方向としては好ましい方向である。こういう趣旨の発表をしたわけであります。
  6. 小柳勇

    小柳勇君 通産大臣は、いま産業生産体制が、いわゆる太平洋ベルト地帯に集合いたしまして片寄っている、不均衡を生じつつあるという点については、どのような見解を持っておられますか。
  7. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 企業というのは、やっぱり一番住みよいところに住みつくものでございまして、これを人為的に強制するわけにいかない。それで、いま、いわゆるベルト地帯企業が集中するということは、これは決して全般的に見てどの地方にもいいというものじゃもちろんないと思うのでありますが、しかし、最も適したところを求めて企業が集中するという、この傾向弊害があれば、これは矯正しなければいけない。弊害がなければ、これを認めていくと、こういうことであろうかと思います。人為的にこれを強制する、統制するということは、日本経済政策としてはとっておりませんから。ただ、あまりに今度は一方に集中して、片方が非常に日陰になっては困るというようなことがありまして、それが経済政策の上からいってもあまり思わしくない、好ましくない、多少の手かげんをするということによって、あるいは社会資本というものをもっとそういう方面に充実するということによって企業が喜んで他の日陰であったその方面に今度は集中していくというような情勢が馴致されるということがわかれば、それは、まあ特に企業に向かって強制するというわけじゃないけれども、環境を整備する、そういうことによって企業の集中というのがもっと緩和できるということがありますれば、その社会資本の充実によって、そういう情勢を馴致する。こういうことは政府としても考えておりますが、それ以上のことはやっておりません。  それで、いまのように一方に傾斜するというようなことは、やはり起こるべくして起こった、いわゆる理由のあることでございますので、それはそれとして、おくれた地方にもう少し均てんさせるというようなことが、国の力でできるものならば、その環境を整備するということにつとめております。
  8. 小柳勇

    小柳勇君 通産大臣は、こういうことを言明しておられるわけです。国内過当競争を避け、国際的な基盤を強める意味からも好ましい。独禁法の運用にあたっては角をためて牛を殺すことになってはならない。自由化の今日国内シェアが四〇%でも独占状態とは言えない。こういうことを新聞及び衆議院の商工委員会で答弁しておられますが、現在公正取引委員会がまだ十分の検討を経ておりません、非常に慎重に認可の問題を検討中であるにかかわらず、通産大臣としてこのような大胆な見解発表しておられますが、現在この見解は変わりございませんか。
  9. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この問題は、もちろん公正取引委員会において厳正な審判を仰ぐ問題でございます。われわれは助長行政をやっておりますから、助長行政立場から、意見をしいて求められれば、この国際化時代において、大型化というもの、企業合併というものは、国際競争力をつける上において好ましいことである。それから従来国内市場というのを一応想定して、そしてその市場占拠率といいますか、それが三五%以上であれば、これはよほど競争関係を制限するものであって好ましくないということで取り締まりの対象にすべきものであるというような意見がありましたことは承知しておりますが、今日においては、一国の市場というものを限定して考える時代はもう去りつつある。広く国際的に門戸が開放されたのだから、国際的に見て競争独占化というような傾向があれば、これは別問題でございますけれども、国内において三〇%、三五%を少しこえたからといって、すぐ独占力を持って自分の意思を遂げようというようなことをいたしましても、どんどん今度は国際的な競争によってこれは目的を達成されないという状況が開けてきておりますので、その面においても少し問題の考え方を変える必要があるのじゃないかということを言っておるわけです。この考え方は今日においても私は変わりません。
  10. 小柳勇

    小柳勇君 細部の問題は担当局長に聞いてまいりますが、もう一回冒頭の質問に返りまして、通産大臣、このような重大な大型企業合併の問題を取り扱うのに、公正取引委員会がまだ見解発表しない、そういうときに政府が、担当大臣が、十分の検討する時間もなく、その日のうちにこのような重大な発表をして企業合併を推奨する、督促するかのような発言をすることに対して、大臣は妥当と思っておられるかどうか、この点だけ確かめておきたい。
  11. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) つまり、通産大臣といたしましては、日本経済というものをどこまでも助長し、これを強化していこうという立場に立っております。この点も、すでに当事者である企業合併ということを世間に公開して、そして助長行政に携わる当局として何もこれに対して意見がないということはむしろおかしい。これに対して一応の意見を述べることは一向さしつかえない。ただ、この問題を終局的に判断し、これを処理する、それは公正取引委員会の厳正な審判によってやる問題である、そういうことを承知の上で、われわれの立場として意見を言うことは何ら差しつかえない。むしろ黙っているのがおかしいと思います。
  12. 小柳勇

    小柳勇君 そういたしますと、このことばの中に過当競争ということばがありますから、八幡富士のほかに同じような企業同種企業があって競争しておるということを認めておられる。しかもその合併によって、たとえば具体的に言いますと、八幡製鐵は、最近の新聞発表によるというと、大部分作業所君津のほうに移動するということも、他地域移動するということも、いま新聞報道せられておるところであるが、地域的なもの及び同種の他の企業のことは考えないで、二つ合併する企業のことだけを考えて、これが合併すればその二つはよくなるであろう、そういうことで、日本全体の産業発展よりも、その二つ企業合併することによってこれが利潤を極力蓄積することができるというような、具体的に言えばそうなりましょうが、そういうような具体的なものを頭に入れながらこのような重大な発言をされておるのかどうかお聞きしておきたいと思う。  簡単に言いますと、もし同種の他の企業のことも考えないで、あるいは地域的な産業の全体の結果のことも考えないで、この二つ八幡富士、これが合併すれば国際競争力が強くなって栄えていくだろう、こういうようなことでこの合併を推奨されたのであろうと判断するが、そうでしょうか。
  13. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そうではないのです。私は、八幡富士合併の問題について、業界意向自然耳に入っております。ある大企業最高首脳者は、これはもう、ちっともわれわれは痛くもない。こういうような、きわめてこれに対して楽観的な意向を抱いておるというようなことすら耳にしておりまして、別にこれを聞いたからどうというわけじゃないけれども、そうそうたる企業鉄鋼業界に数社存在しておりまして、何といいますか、競争的な意欲を持って盛んにおのおの相切磋琢磨しておる、こういう状況でございまして、鉄鋼界全体のことを決して考えないで、ただ二つ会社だけを考えたというようなことでは絶対にございません。
  14. 小柳勇

    小柳勇君 過当競争の問題は、またあと局長から具体的に数字で聞きますが、それでは、八幡富士合併することによって八幡作業所八幡製鉄のほうのこの地域的なものの移動、あるいはその地域に及ぼす経済的な沈下、衰退、そういうものはないと判断して賛意を表したと、こういうことですか。
  15. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そういうことも——私は、まあ若いときから通産省の前身である商工省のめしを食って育った者でございまして、八幡の事情もよく存じております。この合併によってある産業、ある地域というものが非常な致命的な打撃をこうむるというようなことに関しては、かつて心配したことはございませんし、そういう問題について、その事後いろいろ研究の爼上にのぼってきておりますけれども、そういう点については決して悲観的な考え方を抱く必要はないと、こう考えております。
  16. 小柳勇

    小柳勇君 合併によって八幡のほうの地域のたとえば中小企業なり下請産業なりが倒産を起こしたり沈滞したり、あるいは経済沈下するようなことはないと、こういう判断でございますか。
  17. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) さようでございます。
  18. 小柳勇

    小柳勇君 その根拠をひとつお示し願いたい。
  19. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 八幡はどっちかといったら発祥の地でありまして、非常に功績のあった土地柄でありますけれども、何といっても設備がもう陳腐化しておる。それで、こういったようなことがなくとも君津であるとかあるいは大阪湾一角等、新しい進出をしておりまして、それで近代的な設備をどんどんつくっておりまして、そうして一部陳腐化した溶鋼炉等は、これをリプレースするというような状況になってきております。きておりますけれども、何といってもあそこはもう港湾の問題あるいは水の問題あるいは陸上輸送の問題、それからあの地域全体が八幡製鐵というものを中心にしてずっと何といいますか、繁栄して新しく都市が起こってきておるようなわけでございまして、下請関係においても非常にスムーズな関係がちゃんとでき上がっております。これはただ一つ二つ設備を新しくほかにリプーイスしたようなことによってこれが死滅するようなものではないし、また、非常にたっといものではないか。そういう意味におきまして、もしも陳腐化したものをほかに移して、なお新しくこれにかわる、あるいは同種あるいはまた同じ製鉄関係施設というものが生まれていく、その立地的な好条件に恵まれておるのでありますから、私は、あすこが、ちょうど炭鉱が閉山して、そして産炭地振興というようなことをやかましく言わなきゃならぬような、そんな状況には絶対になるものではない、こういうふうに考えております。
  20. 小柳勇

    小柳勇君 非常に抽象的に言っておられますけれども、まず具体的に言いますが、まあ過当競争を避けると言われている。現在、合併する前の競争状態、それからシェア、それから八幡富士合併いたしまして、八幡事業所移動など、地元新聞では相当大々的に報ぜられているけれども、いま通産大臣はそういうことないと言っている。局長からそれを数字的に少し御説明願いたいと思います。
  21. 高島節男

    説明員高島節男君) まず第一点の各社の競争状態でございます。御承知のように、製鉄業は約一五%程度の平電炉業者生産を除きまして、いわゆる大手六社というものが現在生産の根幹をなしております。そのうちで八幡富士合併によりまして、約三五%、その両社でそこを占めます。他の企業状態を見てみますと、御承知の住友金属それから日本鋼管、それに川崎製鐵、この三社、いずれも八幡富士よりはあとから事業を起こしましただけに、相当斬新な設備を持っておりまして、かなり競争力が質的に豊かな部分がございますが、こういった連中がおのおの一一・二%のシェアを占めているとお考えいただけばいいかと思います。そういう状態でございますので、先ほど大臣から御説明がありましたように、両社合併いたしましても、この三社はめいめい自分競争力合併後の八幡富士との対抗、そういう点においては非常に闘志を燃やしておる状態でございまして、りっぱにやり抜いていきたい、また、いけるという自信があると、こういう感じのことを漏らしておるということがございます。  それから第二点の、八幡製鐵所というものの将来、これが合併によりまして、確かに全体の合理化への一つの大きな流れでございますから、ここを整備して他地域溶鉱炉を建てるとか、そういったことも起こる問題ではあると思うのです。現に君津の二号高炉を建てますことに今回決定になりましたが、八幡製鐵としては合併の問題と離れてはおりますが、八幡東田高炉を整理いたしまして、このリプレースとして君津第二高炉を持とうとしていることは事実でございます。しかし、先ほど大臣からお話がございましたように、八幡製鐵地区というものは、大きな港湾投資をし、かつ、北九州は水が御承知のように少のうございますので、用水の確保等にも大きな投資をいたして、また、そのほかいろいろな製鉄所としての機能を果たすために本格的に建設投資をしている面が非常に多うございます。したがって、八幡において東田溶鉱炉というのは、御承知のように、小柳先生のほうがおくわしいかと思いますが、非常に古い設備でございます。この古い部分をこの際スクラップダウンして、そして君津の二号高炉を建てるという動きも、これは合理的な動きであると思いますが、それと関連して八幡地元に大きな影響がまいるかという点でございますが、これはなかなかそうはならないと思います。といいますのは、あれだけの大きな構内を持っておるところでございますから、会社具体的計画によりますけれども、さらに戸畑溶鉱炉を建設するということも、これは余地がある問題でございます。逆に東田のほうの地区は、むしろほかの設備を、溶鉱炉をつぶしたあとにつくっていくという可能性もございまして、従って、会社の具体的な計画のいかんによりまして、合併と直接的に関係があって影響があるとは思えない。さらに君津への移駐の問題に関連して、北九州地区に対して八幡が大きく経済の力としてダウンして影響を及ぼすようなことは起こらないのではないだろうか、こういう予測をいたしておるわけでございます。  なお、下請企業との関係という点でございますが、製鉄所下請は、先生承知のように、大体まあ工場にくっついているという感じでございます。機械下請等でございますと、相当広くあちらこちらから部品を買ってまいるというふうな関係がございますが、製鉄所の場合は、輸送とかあるいは機械の修理とか、その土地についた形でございます。したがって、第一段に申し上げました土地自身において工場規模が全部なくなるとかあるいは半減するとかいうような大きな問題が起こらない限りは、大きな影響下請関係についても起こってこないという予測をいたしております。合併後いかなる計画をとっていくかということもございますけれども、その点は八幡全体のむしろ本質的な問題として考えてみる必要がある問題ではないか、こういうふうに考えております。
  22. 小柳勇

    小柳勇君 局長、いまの最後の八幡の、十分わからなかったのですけれども、本質的な問題ということ、それをもうちょっと説明してください。
  23. 高島節男

    説明員高島節男君) ことばが足りませんで恐縮でございますが、結局、古い工場を持っている会社というものは、ある程度リプレースをしていかないと追っつきません。やはり会社全体が競争に負けるということになります。したがって他の土地溶鉱炉を建てる、二千立米以上の大きなものを建てるという方向は、八幡製鐵という企業としては当然考えられていいことだと思うわけでありまして、そういう方向全般に動いていく程度の問題というものは、合併とは必ずしも関係しないのではないか。もし、このまま合併しないでおりましても、八幡としてはやはり君津の着工ということは、これは避けられない問題ではないだろうか。同じ君津に着工いたしましても、八幡自身がらがらのあき家になってしまうという方向にはいかないのではないだろうか、込み合っているところに御承知洞海湾方面にある高炉というものが君津に建ちまして、将来の計画としては、これは私の独断かもしれませんが、戸畑地区あたりに建てる、そうしてあと圧延関係その他の施設が混然としているのが整理されて、そうしてやっていくということは、八幡プロパーの問題として考えるべき問題じゃないだろうか、合併によりましてその間の大きな促進が行なわれるかどうかは、むしろ第二段の問題ではございますが、あまりそれは影響はない。第一段八幡自身の行くべき道としては、それが合理的であり、また、北九州にも大きな影響がなくてやれるのではないか、こういうふうな感じでございます。
  24. 小柳勇

    小柳勇君 大臣局長説明で具体的にいま話がありましたが、大臣説明局長説明も、現在通産省の持っている資料によって判断すると、八幡富士合併しても、八幡戸畑など、いわゆるあの地域中小企業倒産なり下請産業が極度に衰退し、経済が沈下するような材料はない、こういうふうに判断をしておられるが、逆に、もしかって六月の中旬に地方紙に大々的に発表されましたのは、八幡作業所が三分の二ぐらい移動するだろう。したがって作業員労働者に換算すれば九千名近くの者が移動を余儀なくされるだろうという新聞が出されております。それによると、地域的にも相当の困惑と不安を感じておるわけであります。だから、大臣局長も、現在通産省が把握しておられるこの八幡富士合併によっては、あの地域のそういう経済変動はないと判断しているが、もしこれ起こるとするならば、いままで言われたこの合併賛意を表している見解より変わってまいりますか。
  25. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まず第一の点でございますが、合併ということがなくともとにかく八幡の内容というものは、相当に変わっていかざるを得ないという運命にあったということは、いま局長からお話し申し上げたとおりでございます。そういうことによって、しかし八幡というもののスケールがずっと縮小されて、そうして人員もずっと減ると、あの地方の問題としてはずっと繁栄の度が縮小されていくというような、そういうものではなかろうと、こういう見解は、通産省としては一致しております。とにかくあの洞海湾の築港の問題をはじめ、とにかくあれだけの世帯があそこに腰をすえて、そうして何十年やってきたわけでありまして、いろいろなその基盤の問題があそこに整備されておる、そういうような関係がありまして、あそこを捨てるという考え方は、八幡当局も全然考えていないように思います。われわれとしてもそれが当然であると思います。まあ今度の合併によってどうかということは、これはどうもいまのところ何ら合併によって八幡規模が縮小するとかなんとかいうことは全然いま考えておりません。でありますから、あなたの心配されるようなことはないと思います。
  26. 小柳勇

    小柳勇君 もう一回重ねて。私がいまきょう質問しておるのは、そういう問題について、いま地域住民の不安を取除こうとするために、きょうわざわざ質問の時間をとってもらっておるのですから、いま地域で心配しておるのは、八幡富士合併につきましては、国際競争力を強めて、あるいは鉄鋼業界の前進のためにはあるいはやむを得ないかもしれないが、そのために大部分作業所君津なりあるいは新たな合併したところに移動して、この移動したあと地域経済が陥没したらどうなるだろうか、そういう心配、それは具体的には新聞に出ましたものですから、八幡作業所の三分の二ぐらいが移動するであろうと、そのために九千何百、一万人近くの者が移動しなければならぬ、こういうことが出ましたものですから、そういう心配をしておるわけです。したがって、いま重ねて質問しても同じ答弁だと思いますけれども、八幡の今後の具体的な計画が出ているか出ていないか、あとで公取委員長に聞きますけれども、もし具体的な計画が出て、八幡作業所の三分の二くらいが——あるいは戸畑に若干ふえるかもしれませんが——あるいは君津移動するということならば、それによって地域経済に沈没が起こる、変化が起こるとするならば、新たに、たとえば産炭地振興臨時措置法のように、当面とりあえず具体的な、臨時的な取り扱いをやる決意があるかどうか、次にそういう質問をしておきたいと思うのです。
  27. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どういう新聞記事か私は読んでおりませんからわかりませんが、全然それはデマであります。それから君津のほうの第二溶鉱炉がもしできたと仮定いたしますと、いま御承知のとおり労働力が非常に不足しておりまして、新しくその工員を大量的に募集して、それに相当な基礎教育を与えて訓練をして、そうしてこれを使うということはなかなかむずかしいのでありますから、既存のやっぱり熟練した連中をそちらのほうに移動して使うということは、これは当然やむを得ないこととして考えられる問題だと思います。その場合に、三分の二も行くようなことは、いずれにしても全然考えられない問題でありまして、これは少しオーバーなデマじゃないかと思います。デマであることは間違いない。多少の職員、労務者の移動ということは考えられますけれども、いま申し上げたような理由で、それ以外のことは考えておりません。
  28. 小柳勇

    小柳勇君 重ねて。いままだ通産省としては、正確に合併の今後の会社の方針なり規模なりについては、具体的な数字は掌握してないと思うのだけれども、もし、それがいま巷間に伝えられておるように、一万人近くの労働者移動といいますと、企業相当移動であろう、下請産業相当移動であろうと思うけれども、そういうものが起こってきた場合には、一体通産省はどうするのか、全然そういうことは考えておらぬのか、もう一回聞いておきたいと思います。
  29. 高島節男

    説明員高島節男君) いま大臣から御答弁ございましたように、その新聞記事については私も存じておりませんが、当然八幡の場合も、ほかの企業の場合も、現在熟練した労働者というものはこれは非常に貴重なものであり、限られております。したがって、事業場が変わります際には、そういった移動があることは否定できない事実でございます。ただ、労働環境その他から見て、むしろ好んで移動をしていくという傾向がありまして、組合ともいろいろ了解をとって動いている状態にございますが、ただ、地域影響といたしましては、やはりこれだけの製鉄所の基礎になる現在の工場規模というものを持っておりまして、そこに投資をしていくことが相当やはり合理性が残ることは、これは事実だと思います。御承知のように港湾が基礎であり、また、その工場立地になっている土地というものが非常に貴重なものであります限り、溶鉱炉を何本というところの大きな工場というものは、これは急に減ってしまうというようなことはないのではないかと思います。なお、現在の段階においては、君津が先に行なわれておりますが、将来戸畑の着工の問題も当然日程にのぼってまいる、八幡製鐵全体が効率のある工場として生まれ変わっていくという方向にいくのではないか、その際の地域経済というものは、下請問題等を含めまして大きく陥没するというようなことは、どうも考えられない。こまかく会社側の今後の計画というものは、あるいは合併をいたしまして、その後も着々と考えていくのだろうと思いますから、詳細なものをつかむわけにはまいりませんが、大きな線としては、そういう判断をすることは間違いではないのではないかというように検討いたしておる次第でございます。
  30. 小柳勇

    小柳勇君 中小企業庁長官質問しておきたいと思います。非常に重要な問題でして、国会も閉会中であったものですから質問できなかった。地域の人は、大臣はのんきにかまえて、だいじょうぶという答弁でありますけれども、非常に心配しておるわけであります。中小企業庁としては、八幡富士合併について、あの地区、これはどちらでもいい、八幡でも富士でもいいですが、合併したことによって地域的に中小企業下請産業が全然影響がない、こういう見解に立って措置をしようとしておられるのかどうか、お聞きしておきたいと思います。
  31. 乙竹虔三

    説明員乙竹虔三君) 八幡富士合併中小企業に対します影響につきましては、いままで大臣、重工業局長が答えたと同じ見解といいますか、判断をわれわれは持っております。ただ、これは将来のことでございまして、具体的にいかなる影響中小企業に起こるか、これはわれわれ中小企業庁といたしましては十分注意をして見守っていかなければならない問題であると思います。特に、私、中小企業庁長官立場といたしましては、第一義的には中小企業者の立場に立ちまして、この利益を保護するというのが私の使命でございますし、何にいたしましても、大きな合併が行なわれる場合には、いろいろなかっこうで中小企業者に影響が及んでくることも考えられますので、今後とも十分そういう意味で見守ってまいりたい、注意をしてまいりたいというふうに考えております。
  32. 小柳勇

    小柳勇君 少し答弁が抽象的ですけれども、現在の八幡産業については掌握しておられないのですか。
  33. 乙竹虔三

    説明員乙竹虔三君) 重工業局長の答弁の補足に若干なりますけれども、八幡富士下請ですが、これは八幡作業所に従属と申しますか、ついているものは、主として作業請負、整備の請負、それから輸送荷役、その他ということでございます。承知しておりますところによりますと、作業請負の事業数は五十二、整備請負は七十九、輸送荷役は四十、その他が百二十八、その他は清掃その他でございます。いずれもこの下請の種類が示しておりますように、作業所に完全にくっついているものでございます。したがいまして作業所の作業がとまるないしはこれが非常に大幅に減少するということでない限り、さしあたり下請の地位には変更がないというふうにわれわれは現在は判断をしておるわけでございますけれども、しかし、先ほど申しました意味は、再編成が行なわれるということになりますると、現在われわれが判断しておる以上の事態も起こるかもしれないということもございまするので、私の立場としては十分注意をして、この後の状況を見守っていく必要があると、こういう答弁を申し上げたわけでございます。
  34. 小柳勇

    小柳勇君 もう一問長官にいたしますが、もしも、いまおっしゃったような業種、私も大体知っていますけれども、それがおのおのの合併によりまして、あるいは作業所移動などによりまして影響を受ける場合には、たとえば金融措置なりその他業務上の指導なり特別にやる。この大企業合併による措置として特別にやるというような意欲がございますか。
  35. 乙竹虔三

    説明員乙竹虔三君) 八幡製鐵と、いま申し上げました下請とは、いままで持ちつ持たれつの関係にあったわけであります。したがいまして、私たちは道義の問題としても、八幡製鐵に対しこれが再編成で下請に非常に急激なショックを与えるということは、道義上の問題としても許すべからざることであるという立場に立ちまして、十分重工業局を通じ、ないしはわれわれ直接に八幡製鐵に対してそのような急激なショックを再編成によって下請に与えることのないよう、これは連絡と申しますか、指導をしておる次第でございます。これが第一でございます。  それから第二に、なお、これはほんとうに将来のことでわかりませんが、また、そういう事態は現在のところはあまり想像はできませんけれども、もししかし効率化のために非常に急激な再編成が行なわれる、したがって転換等をせざるを得ないという場合には、それに必要なる金融措置は十分やる覚悟でおります。
  36. 小柳勇

    小柳勇君 経済企画庁長官が見えましたから、通産大臣と長官と一緒に、基本的な問題を質問いたします。  いま八幡富士合併についての具体的な例を中心にして、大臣見解を承りましたが、ことしに入りましても二、三大型企業合併が起こっておる。今後もこういう趨勢にあるようでありますが、大型企業合併することによって受ける利益は、その企業だけがこれを受けるものであるか、あるいは国民各層の歓迎すべきものであるか、また、通産大臣経済企画庁長官も大型企業合併については推奨する方向見解を述べておられる。したがって、そういうメリットに対して具体的にひとつ御説明を願いたいと思うのです。経済企画庁長官いまおいでになりましたから、長官のほうからひとつ見解を聞いておきたい。
  37. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 一般論として申し上げるわけでございますが、企業合併をするということは、おそらく両社ともそれによって能率を向上しようというのが目的であるに違いありませんので、したがって、そうやって能率が向上しました場合には、当然その当該会社自身が利益を受けるでございしょうし、また、その結果その向上されました余地を消費者に還元するということも、少し長期をとって見れば、私は当然起こってくるであろうというふうに考えております。なお、一般に合併と申しましても、それによって完全に一社独占になってしまう場合もございますし、寡占の場合、いろいろございますから、一がいに申すことはできませんが、いわゆる寡占という状態は、私は独占とは関係のないことでございますから、寡占というのはことば日本語としてはちょっと熟さない表現になっておると思いますが、御承知のように独占の場合はモノポリであり、複占の場合はデュオポリであり、寡占はオリゴポリでございますから、二つになってしまうという意味ではない。したがって、そういう場合に独占の弊害が起こるというふうにすぐに考える必要はないというふうに思っております。
  38. 小柳勇

    小柳勇君 通産大臣見解を聞く前に、「経済社会発展計画」の三二ページに、こういうふうに書いておられるわけです。いも長官の言われたような思想なんですけれども、「寡占化には利点のあることを認めるとともに、寡占化に伴う競争制限的傾向が制度的に排除される手段を確立し、消費者等の利益を保護しなければならない。」こう書いてある。さっきからの論争によりまして、この過当競争にある鉄鋼業を八幡富士合併することによってこれの過当競争を薄め、そうして経済発展をやらせるというような大臣見解でございますが、この寡占化に利点はあろうとも、「競争制限的傾向が制度的に排除される手段を確立」しなければならぬと書いてある。これは具体的には長官はどういうことを考えておられるのですか。
  39. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは、もし合併の結果、公正な競争が制限される。害される。そのおそれが非常に高いということであれば、これは公正取引委員会において当然そういう合併は適当でない、あるいは合併の内容についてそのままでは認めがたいというような御判断がございましょう。そうでない場合には、そういう心配がないということになると思いますが、やはり私どもとしましては、その合併の結果、競争制限的な行為が起こらないような意味での当事者間のむろんそういう確認も必要でございましょうが、さらにそれをもう少し保障するために、具体的な点について公正取引委員会が、あるいは営業の秘密にわたるというようなこともあろうと思いますが、やはり役所という立場から、しばらくの間報告を徴されるとか、そういったようなことはお願いをできないものであろうか。それによって競争制限的なことになっていないということを、やはり消費者も公正取引委員会を通じて知ることができる。確認することができるというようなことは、一つの方法ではないかと思っております。
  40. 小柳勇

    小柳勇君 通産大臣質問いたします。まあ六つにいたしましょう。この六つの会社競争していく、頭の二つ合併する、あとの四つは野放しになりますが、これはいままで一生懸命に競争をしていたのが競争が薄れてまいる。制限される。この競争制限を排除しなければ物価の安定、物価の値下げにならないというようなことが、長官の見解の中にあるわけですが、そういう制度的な、こちらだけ二つ合併させ、あと四つは野放しにしておいて、一体この合併の効果というものが、この二社だけがどんどん受けて、あと四社というものはどうなりましょうか。こちらのほうは競争はおそらくできないでしょうがね。その場合に、行政指導かあるいは制度をつくると書いてあるんですが、そういうのを考えておられますか。
  41. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いま競争が非常に制限されるとか鈍くなるというようなことは、どうもちょっといまの日本鉄鋼界では考えられないと思います。まあ総括的に申しまして、非常にそのあとの四社もかなり意欲的にやっておりますから、いままでのやり方でも。でありますから、決してこれはとてもかなわぬというようなことで、ゲームを放棄するような、そういう連中じゃない。ますます意欲が強くなりまして、そして競争の激化があるいは起こるかもしれない、そういうこと。  それからもう一つは、国際的な関係ですね。これは日本鉄鋼界というものに対して、世界の鉄鋼界は野心を持っておったとか、おるとか、十分にそれはわかりません、表面に出てまいりませんから。自動車や何かの業界でいいますと、非常にアメリカの自動車業界は意欲的である、日本市場に対して。そういうことは鉄鋼界では少なくともいまあらわれていない。あらわれていないけれども、どういうことが起こるか、これはわかりません。国際競争というものは、日本国内で起こらなくても、今度は日本のいままでのどんどん進出しておった外国市場において、もしこういうようなことがなかったならば、相当にやられてしまうというようなことがあるいはあるかもしれない。そういうような点では、日本の国際市場における競争力というものが、これによってまずだいじょうぶな点までいき得るのじゃないかというように、われわれは安心感を持つわけであります。そういうわけで、内外の情勢はいろいろ生きて動いております。この二つ会社のビッグツーの合併によって、決して内輪もあるいは外部に対しても停滞するというようなものじゃない。ますます競争のために臥薪嘗胆をしなければならないという情勢であろうかと思います。
  42. 小柳勇

    小柳勇君 現在まで設備投資については、通産省ではコントロールしておったと私は承知しておるが、今後八幡富士合併によって他の鉄鋼業については設備投資について野放しでやってよろしい、いま大臣競争はますます激化するであろうとおっしゃったが、コントロールはもういままでのようにしない、こういうことですか、こういうふうに理解していいですか。
  43. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) コントロールといいましても、どうも内容はいろいろ考えられますのですが、そう強いコントロールをやっているわけではない。自主規制という形でやってきております。それで、いまこの二つ合併後には、野放しにするとかしないとかいう問題が、したがって起こらない。ただお互いの間に相当な意欲的な競争が潜在的にも顕在的にも将来続いていくものと、こう考えております。それで、これが業界に、一般の経済界に非常な悪影響を及ぼすというような時期、段階になりますれば、通産省としてもこれに対して適当な指導監督を加えていかなければならないと思っております。
  44. 小柳勇

    小柳勇君 これは独占禁止政策懇談会の大型合併についての意見書全文ですが、その中に「一定の取引分野における競争を実質的に制限することになる」という、こういう意見がある。百四人の学者の中で九十六名の者がそういう意見を出しておられる、通産大臣なり通産省は、今日までの行政指導の面からそのような見解をとっておられると思うのですけれども、この独占禁止政策懇談会の学者のこのような多数の意見については全然考慮する余地はないのか、大臣及び担当局長意見を聞いておきたいと思います。
  45. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 少なくとも責任をもって業界の行政をあずかっている者といたしましては、簡単に学者の連中に同調するわけにいかない。われわれとしては特殊の責任ある立場でありますので、違ってもいたし方ないと、こう考えます。
  46. 高島節男

    説明員高島節男君) 大臣から基本的な姿勢をお話しくださいました。あの意見書が出ておりますのは、一つは近代経済学者といいますか、そういう方向からの競争の存在ということが経済の分野において強いということの主張のもとに言われているかと思います。私も競争の必要ということは、経済全般について絶対のものであると思います。ただ八幡富士合併は、ただいまいろいろと御議論がありましたように、いろいろどうなるかという結果の予測につきまして、予測の立て方についての相互の主張の相違があろうかと思います。およそ合併をすれば競争が制限されると断定してしまうのは、私個人の見解といたしましては、いかがであろうかという点で、これが競争の自主的制限になるかならないかは、先ほど申しましたように、二位以下の業界の連中が粒ぞろいで、闘志を燃やして本件についても立ち向かっておるという事実から見まして、競争はむしろある意味で激化こそすれ、競争の制限の方向に向かうということは考えられない事例ではないかという判断をいたしております。そのあたりで両者の意見は違うわけでございますが、現在産業構造審議会の部会におきましてこの問題を取り上げまして、そういう見解を持たれた方の御意見も十分聞きながら、いろいろと討論を尽くしておる段階にございます。
  47. 小柳勇

    小柳勇君 少し派生的な問題ですけれども、産業構造審議会の委員のメンバーを見ていると、近代経済学者が三名しか入っていない。いま大臣が言われたように、学者の意見などに引っ張り回されぬというような考え方ですと、有力な学者の意見などはもう構造審に入れないという方針が通産省にあるのですか。
  48. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いや、学者を向こうに回してどうするという立場にこちらは立っているわけじゃありません。あくまで実際の現実の行政を担当するものとして、十分責任を痛感しながらその任に当たっておるわけであります。それで、競争は進歩の母だと言われているくらいで、これは非常にいいことであり、これは非常な鉄則であるという、そういう点はわかります。わかりますけれども、今日日本鉄鋼界というものをよく見て、そして八幡富士合併が、そんなに国内市場において、もう競争というものはほとんど押えつける、抑圧されてしまったというような状況が起こるだろうかということは、もうほとんど考えられない。いわんや国際面に目を向けますというと、これはもうどんどん資本が自由化されている。そして日本国内において外国の鉄鋼は入ってきておりませんけれども、日本は何といっても立つためには相当輸出を伸ばしていかなければならない。資源の不足な日本がとにかくここまでやってきているのは、全く国際貿易によるものでありまして、ただいま日本の鉄鋼が世界の国際市場において相当な活躍をしておる。これがもし参ってしまうというようなことになりますと、やはり日本経済にとっては非常に大きな打撃であります。それによる欠陥というのは、相当著しいものがある。そういうわけでございまして、日本経済の防衛の点からいっても、私はこういうことは進めていかなければならないし、また、これによって競争環境がずっと低下するというようなことを考えるのは、これはとんでもない見当違いじゃないかということすら考えております。別に学者をどうするというわけじゃない。学者は学者として尊重したいと思います。したいと思いますが、現実の行政面で非常に独断的なことをおっしゃる場合には、どうも大いに学問は尊重して、学説は享受をしたいのだけれども、どうも自分の責任を度外視し、学者の言うことを聞いているわけにはいかない、そういう気持ちでございます。
  49. 小柳勇

    小柳勇君 その利益を社会に還元するのは価格の低下です。コスト引き下げあるいは価格の引き下げになりますが、競争については制限することは考えていない。したがって、あとは鉄鋼価格を引き下げながら国民にその利潤を分けてやらなければならない、これはさっき経済企画庁長官がおっしゃったとおりであります。その価格の監督機関などについてどのような見解を持っておられるか、長官にお聞きします。
  50. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 本来、価格は自由競争の中で形成されるのが本則でありますし、そうあるべきものであると思いますので、特に価格形成について監督をするというようなことは、一般論として私は必要がないと思います。ただ、この具体的ないま問題になっております合併の場合には、御指摘のような意見の方もあり、また学者もそういうことを心配しておられるのでありますから、これがかりに許されましたときには、やはり公正取引委員会としてもいろいろ意見も述べられるでありましょうし、また、その後においても経理の内部の必要と認められる資料、報告等をとられますならば、価格形成が公正にいっているか、いっていないかということが公正取引委員会には私は御判断がおできになるであろう。営業の機密に属するものもあると思いますから、それを一般に公表せよという意味では必ずしもございません。やはり監督官庁である公正取引委員会には、そういう報告をしてもらうといったようなことは、公正な価格形成に私は役立つのではないかと思っております。
  51. 小柳勇

    小柳勇君 公正取引委員長質問いたしますが、ただいままでの質問は、八幡富士合併中心に具体的に質問いたしました。一般論として大型企業合併について、その認可の基準などについて見解をお聞きしておきたいと思います。
  52. 山田精一

    説明員(山田精一君) 一般論としてのお尋ねでございますが、私どもは独禁法を運用する立場にございます。独禁法の第十五条、よく御承知のとおり、一定の取引分野において競争の実質的制限にならないようにいたす、これが判断の基準でございます。その方向調査を進めてまいりたい、かように考えております。
  53. 小柳勇

    小柳勇君 いまの基準の大体の数字ですね、たとえば衆議院などであなたの見解を聞きますと、シェア三〇%ぐらいが一つの限度であろう、こういう見解を述べておられますが、いまでもその見解については異議ございませんか。
  54. 山田精一

    説明員(山田精一君) ただいまお尋ねの業界におけるシェアでございますが、これだけを基準にいたすというわけにはまいらないと思います。ただ、何ぶんシェアというものは一つの構造的の基準といたしましては大きなものでございますから、ある程度のウエートをもって判断資料にいたすわけでございます。先般申し上げました三〇%ということを申し上げましたのは、一応三〇%ぐらいをめどにいたしまして、それをこえる場合は警戒ラインとして、逆に申しまするというと、三〇%に達せざる場合においては、それほど慎重な調査をいたさずともよろしかろうと思いますけれども、三〇%をこします案件については、十分慎重な調査をいたして判断をしてまいりたい、こういうことで申し上げたわけでございます。したがって、シェアのみでなく、同業者との関係、あるいは関連業界との関係あるいは需要者との関係あるいは代替品との関係、これらを総合的に勘案をいたしまして判断をいたす、かように考えておるわけでございます。
  55. 小柳勇

    小柳勇君 八幡富士合併についての事務的な処理ですね、申請書の受理とか、検討、現段階におけるそういうものを御説明を願いたいと思います。
  56. 山田精一

    説明員(山田精一君) ただいま御指摘の件につきましては、まだ正式な手続というわけではございませんで、いばわ事前法律相談のような形で提起されておるわけでございます。御承知のように成規の手続といたしましては、当該会社合併の決議をいたしまして、それから私どものほうに事前届け出をいたすわけでございます。そうしますると、法定の期間内——これは一応三十日が基準になっておりますが、これを公取の判断によって短縮することもできますし、また、最長九十日まで延長することもできますが——その法定の期間内には判断をいたしまして、適当でないと認めました場合には、合併をしないほうがいいであろうという勧告をいたす。これに従わない場合には審判手続に付する。かようになるわけでございます。  まだ御指摘のケースにつきましては、当該会社において合併の決議をいたしたわけでもございませんで、正式な届け出は出ておりません。ただ、何と申しますか、事前相談と申しますか、ネガティブ・クリアランスと申しますか、一応の話、相談を受け付けましたわけでございます。これが四月の末に、こういうことを、合併をしたいがという趣旨の説明がございました。関係会社両社から膨大な資料が先月の二十五日に提出されました。非常に膨大なものでございますから、ただいま調査に着手をいたしておる段階でございます。
  57. 小柳勇

    小柳勇君 その調査に着手いたしまして、どのくらいで——会社がもちろん決議しなきゃなりませんけれども、新聞などでも、もう来年の四月一日には合併をして新しく会社発足ということなんですが、公取のほうで見解が出るのが大体いつごろと予想してよろしゅうございましょうか。
  58. 山田精一

    説明員(山田精一君) ただいまお尋ねの件は、要するに、事前相談のものでございますから、私どもといたしましては、できるだけすみやかにその相談にこたえたいと考えておりまするけれども、何ぶん関連業界も非常に広いものでございますし、それから事柄の性質自体きわめて重大な問題でございますので、十分慎重に、また厳正な判断をいたしたいと思いますので、いつまでというスケジュールはちょっとと申し上げかねるわけでございます。なるべく早く処理をいたしたいと、かようには考えております。
  59. 小柳勇

    小柳勇君 八幡富士合併は四月の十七日に新聞一社がスクープいたしまして、その日に政府見解が出て、その政府見解は、もう合併を推奨する方向で、いま大臣のおっしゃったとおりです。公取は、これから半年、ずっとこうやっていきますが、公取委員の皆さんの心証なり判断の上に相当大きな影響を与えておるのではないかと、私は心配するわけです。政府がそういう方向でやっておるのに、公取が逆な方向にやったら、これは公取としても相当のまた責任もありますし、将来の行政指導の面でも力がない。したがって、そういうことを私は冒頭に通産大臣に言ったのは、慎重にしなければならぬ。公取まで、まだ全然資料はない、検討できないときに、政府は、特に担当通産省大臣が、大きく賛成と花火を打ち上げることは、けしからんじゃないかということを冒頭に申したのですけれども、公取委員長としては、将来もありますから、こういう事態に遭遇した場合に、やってもしようがないとおっしゃるのか、政府はもっと慎重に考えなきゃならぬとおっしゃるのか、見解を聞いておきたいと思います。
  60. 山田精一

    説明員(山田精一君) 各方面の御意見は十分拝聴いたしたいと存じますが、ただ、私どもの役所は、御承知のように独立してその権限を行なうことに法律によって定められておりますので、十分各方面の御意見を拝聴はいたしますが、必ずしもこれに拘束されるものではないことを了承いただきたいと存じます。
  61. 小柳勇

    小柳勇君 経済企画庁長官に質問いたしましたことと同じことを公取委員長にお聞きしておきたいと思いますが、それは価格監視機関の問題です。総理も四月の二十五日の衆議院の物価対策特別委員会で、「適当な監視機構の設置を考える」、こういうことを述べておられるわけでありますが、公取で、まあ現在は合併そのものを認めておられないようですけれども、公正な監視機関というものが考えられるかどうか。第三者としては原価計算もできぬのでありますから、公正な価格監視機関などというものは考えられぬのではないかと思うのですけれども、総理大臣もおっしゃるし、これだけの、これからも大型企業合併してまいりますから、これが独占化をどんどん打ち出してまいったら、物価安定どころじゃございません。その関係がございますから、公取委員長見解を聞いておきたいと思います。
  62. 山田精一

    説明員(山田精一君) 独占禁止法の精神は、よく御存じのとおり、第一条に明瞭に書いてございますように、価格形成は、その過程において公正にして自由な競争を通じて決定させる。この方式を確保する。これに尽きておるのでございまして、したがいまして、個々の商品についてこれが原価計算をした結果、幾らの市価で販売されることが適当であろうとか、こういうようなことを監視をするとか監督をするとか、これは独禁法の範囲以外のものでございまして、独禁法は、要するに市場においてマーケットを通じて需要供給の均衡から価格が形成される、この過程をどこまでも確保してまいりたい、これが独禁法の目的であるように考えております。
  63. 小柳勇

    小柳勇君 合併を認可し容認して、発足しました会社が、もし初めの意図、皆さんの見解と反して価格の問題にもシェアの問題も、独占禁止法を逸脱をするような場面で十七条の二は公取で発動することができるのですか。あるいは行政指導でしょうか。
  64. 山田精一

    説明員(山田精一君) 法律上それはできないと、かように考えております。
  65. 小柳勇

    小柳勇君 経済企画庁長官は、これも参議院の物価対策委員会でしたか、十七条二については発動できるような見解を述べておられるが、もう一回見解を聞いておきたいと思います。
  66. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そのときに申し上げましたことはこういうことを申し上げたのであります。条文を読んでみますと条文だけではそういうことができるように私には読めるのでございますけれども、しかしこの点については、有権的な解釈は公正取引委員長がなさるのでございますから、私の申しておりますことがあるいは違っておりましたら、公正取委員長から後日なりお聞き取りを願いたい、こういうふうに申し上げておったのであります。そこで、後日いろいろ伺ってみますと、どうも公正取引委員長は、この条文はそういうふうに読むのではないという御見解だそうであります。私としては、したがってそれに従わざるを得ないと思います。
  67. 小柳勇

    小柳勇君 前言を取り消しますか。
  68. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 前言を取り消さざるを得ないわけであります。  補足させていただきますが、少し広く立法論の立場で考えましたならば、門を入るときに非常にきびしい審査があって、しかしこれは将来のことですからだれも予測できない要素がいろいろにあるわけでございますが、門を入ってしまえばもう比較的楽になるという立法のやり方もあると思いますが、なかなか予測のできない場合には、一応門を通過させておいて、あとでそれについて必要があれば排除措置をするというようなことは、私は立法論としては考えていいのではないかという頭がございましたので、この排除措置はそういうふうに広く解釈できないかと思っておったのであります。これは所管の公正取引委員長がこの条文はそういうふうには扱えないと言われれば、私はそれに従わなければならない、こう思っています。
  69. 小柳勇

    小柳勇君 労働省に質問いたします。  さっきから通産大臣並びに経企庁長官の答弁によりまして、八幡富士合併によって直ちに八幡の労働力の移動というものは起こらないであろう、こういう見解が述べられました。私どもはまだ十分安心はできぬわけです。労働省としては、この八幡富士合併について、八幡の労働力の移動及び下請産業の労働力の移動及び関連産業の労働力の移動について、どのような調査をしておられるか、どのような把握をしておられるか、見解を聞いておきたいと思います。
  70. 保科真一

    説明員(保科真一君) 八幡富士合併後の事業計画につきまして、まだはっきりした計画になっておりませんので、この事業計画の推移につきまして、今後通産省と十分連絡をとりまして、今後の推移によりまして検討してまいりたいと、かように存じます。
  71. 小柳勇

    小柳勇君 八幡は、君津のほうにも逐次移動を起こしつつあるわけでしょう。現在の実態と、それからまあ新聞であれだけ騒がれると、労働省としては当然労働力はどういうふうに移動するであろうか、そのあとの失業者なりあるいは職業訓練なり、どうしたらよかろうかということは、当然前もって対策を立てなければならぬと思うが、労働省として今日までそういう問題についてはまだ全然手をつけておられないのであろうか、聞いておきたい。
  72. 保科真一

    説明員(保科真一君) ただいま申し上げましたように、事業計画がはっきりいたしませんので、その見通しが立たない段階でございますけれども、人員整理等はいまの計画ではあまりないように聞いております。通産省の御説明もそうだったように聞いております。今後の問題につきましては、労使間で十分話し合いを行なわれまして、配置転換、それから新規採用人員の抑制等によりまして離職者が出ないようなことにいたして、仮定でございますけれども、合併によりまして離職者が出るような事態がもし起こりました場合には、従来からやっております職業指導、職業紹介をさらに一そう強化いたしまして、必要な方には職業訓練あるいは広域紹介の措置をとりまして十分対処してまいりたいと思います。
  73. 小柳勇

    小柳勇君 八幡の労働組合も合併については反対はしていないようです。八幡の本雇いなり八幡作業所自体の労働者八幡という会社がありますから、私もあまり心配していません。ただ作業所移動によりまして、これに関連している産業あるいは下請中小企業労働者移動を大きく心配しているわけです。したがって、現在はまだ十分の調査もないようでありますから、ひとつ早急に通産省なりその他と連係をとって、中小企業労働者あるいは下請産業労働者が悲惨な目にあいませんように、万全の対策をとっていただきたい、これは希望しておきます。  時間がありませんから、全般的な質問は終わりますが、福岡県及び近県の住民にとっては八幡製鐵移動というものは非常に大きな問題です。石炭産業が衰退いたしまして、いま八幡中心になって鉄鋼産業中心にして北九州経済というものが進んでおる。したがって。これの縮小などにつきましては、相当の大きな問題でありますから、その地域住民の不安をなくすという立場からきょう質問いたしました。経済論争はまた別の面があると思いますから、これはまた別のところで経済的な質問をいたしたいと思いますが、きょう各省担当官の意見を聞きまして、そのとおりに報告しておきますから、もしこれに異同がありました場合は、休会中といえども直ちに地域の皆さんに安心できるような措置をとっていただくように希望いたしまして私の質問を終わりたいと思います。
  74. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  75. 金丸冨夫

    委員長金丸富夫君) 速記をつけて。
  76. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 ここ一両年来、先ほど大臣も言われましたように、第二の黒船がやってくるというお話がありましたが、ことに自動車をめぐりまして、日米の資本合戦とかいうようなことが新聞、雑誌等をにぎわしております。これは自動車産業業界の人のみならず、一般国民にも非常な関心を与えておるのでありますが、ことに昨年、わが国の自動車生産が、西ドイツを抜いて世界の第二位に躍進をしたというようなことから、米国の業界のわが国の市場に対する攻勢が非常な激しさを増してきたようであります。  そこで、これについて政府は、去年の九月の日米貿易合同委員会、また暮れの日米自動車会談等を通じまして、アメリカ側からどういうような要望がなされておるのか、その点を承っておきたいと思います。
  77. 高島節男

    説明員高島節男君) 経緯のお話でございますから、私から申し上げまして、大臣あと基本的なところをおっしゃっていただきます。  御指摘のように、昨年の九月の日米合同委員会、それから十二月には日米自動車会談等ございまして、先方から自動車問題についていろいろ要求が出てまいっております。  で、米国側が言っておりますことは、大型乗用車について関税を引き下げろ。これは米国本土でつくっております大型の乗用車が日本に輸出しやすくなるようなところをねらっております。それからエンジンあるいは若干の部品等が輸入を自由化されておりませんので、これについて強く輸入の自由化を要望してまいっておるということでございます。その他、資本取引の問題、すなわち企業進出を容易にするような方向へいってほしいということが常にそこにつきまとっておるような大体感じでございます。  で、わが国の自動車業の現状は、ただいま世界第二位という御話がございましたが、実は、これはトラック、バス等を入れましての話でございまして、乗用車だけですと世界の第六位というようなところでございます。まあ何位ということで必ずしも判断はできませんが、ビッグスリーに比べてその企業力というところに問題がございますので、全体として前向きの姿勢をとりながら努力をするという方向には腹をきめておりますけれども、しかし、具体的の措置については、きわめて慎重に臨むべきであるという見解で回答をいたしてまいってきております。おおむねの方向は、エンジン及びエンジンの部品につきましては、青天井の自由化をやるということではなくて、来年早々から、現在ほとんどエンジンのワク等は与えておりませんが、輸入のワクを与えて拡大をしていこうという方向を打ち出しましたことがこれが一点でございます。  それから中古車等について、割り当て数量を増加をするというような小さい問題につきましても、付随的に出ております。  それから関税につきましては、これは大型乗用車の問題でございますが、ケネディラウンドにつきまして関税の一括引き下げというようなことをやっております。したがって、これのルールを大きく破るわけにはいきませんし、また、関税はすべて国会の審議事項でございますから、慎重に臨むべきでございますが、努力の目標としては、ケネディラウンドを実行していく過程において、若干実施の時期を繰り上げていくとかいうような方向の努力等を検討する旨を申しております。  それから第四に、そのほかいろいろ資本自由化の問題等も折りに触れて出ておりますが、これは企業進出になりますから、きわめて慎重に扱うべきであるという姿勢で臨んでおります。そうしてこういったいろいろ出しました条件につきまして、日本側のほうは、米国側が貿易制限的な効果を持つ措置をとるようなことがあった場合は、これは撤回せざるを得ないということを条件にいたしまして、先方に提案をいたしております。そういう提案をいたしましたままで、まだ日米間の交渉はある了解点と申しますか、妥結点に至っていない段階にございます。今後いかなることになるかは、目下のところ予測しがたいわけでございますが、相当向こうに対してはっきりした姿勢を示しましたので、先方からの回答次第でございますが、もしこれが合理的な回答でありますならば、比較的近い機会に妥結点に到達する可能性はあり得るのではないかという程度予測を持っておるのがいわゆる経過でございます。
  78. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 そこで、いまエンジンのお話が出ましたが、新聞の報道によると、来年から三万台入れるというような回答をされたというような報道がありますが、それはほんとうですか。
  79. 高島節男

    説明員高島節男君) 台数につきましてはいろいろと世間に憶測が出ております。私どもとしては、この数字は対米折衝の必要上外には申しておりません。しかし腹がまえといたしまして三万台という数字についての主観的な気持ちは、一つのその辺がめどではないだろうかという感じはいたしますが、これでやるということは対米交渉のやはり内容に触れてまいりますので、これでやる、あるいはこうふやすということの具体的数字は外に申さないたてまえにいたしております。
  80. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 それからいま乗用車の関税の問題が出ましたが、これはこの間日本に来ましたGMのコール社長が、株主総会で、日本は輸入車に対して三五%から四〇%の非常な高率な関税をかけて輸入の制限をしておると言うて非難をしておる。あるいはまた、ワシントンで下田大使に対してフォードの役員がこれを詰問したというようなことも聞いておりますが、聞きますると、いまの関税の問題については、来年からケネディラウンドを繰り上げて三五%を一〇・五%に下げろ、あるいは物品税を一五%にせよという要求をしておるというふうにも伝えられておりますが、その点はどんな状況ですか。
  81. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 高島局長、ちょっと、もう少し声を上げてもらわないと、よくわからないのですが……。
  82. 高島節男

    説明員高島節男君) 関税につきましては、現在大型乗用車は三五%、これがねらわれているわけでございます。それで、その点につきましてはケネディラウンドでは一七・五、これは一括引き下げの問題の一環として半分の一七・五にもっていくことに一般的の姿勢を打ち出しております。こちらの態度といたしましては、ある程度これを繰り上げていってもいいのではないかという感触で交渉に臨んでおりますが、これは先方との交渉でございますから、先方の出方を見ながら、どこに落ちつけるかということを考えていかなければならぬ問題でございますので、まだセッテングいたしておりませんので、そういう方向にあるということだけを申し上げてごかんべんいただきたいと思います。  物品税のほうは、これは大型車について、先方に言わせますと、やはり大型車が高いということは、おれのほうを差別しておるという感じが前から強うございました。しかし、これは日本の物品税の体系、大蔵省筋の一つの税の理論というところがらいきますと、やはり大型のほうがこれは奢侈的なものという見方をせざるを得ませんので、この点について引き下げるという感触を現在のところ出すわけにはいかないと。ことにこれは税法でございますから、関税同様国会の御審議を経なければならぬ事項でございますので、行政府限りで約束することはできない。結局そういう面の向こうの要求があることはわかっておりますが、どういう努力をするかという程度のところが、譲っても最大限度でございまして、したがって、先方の出方を見ねばならない。ここでどういう姿勢をとるかということを最終的に申し上げ得ない、交渉中ということに相なるわけでございます。
  83. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 それから、いまあなたのお話の中に、アメリカが貿易を制限するような、そういう措置をとらないようにということを向こうのほうに申し入れをしてあるというお話でございましたが、これはしかし鉄鋼、繊維等についても輸入制限をしようとかなんとかというようなことを伝えられておるし、あるいは一昨日の新聞によりますと、日本のトヨタ、日産、これはアメリカに急激に進出をしておると。したがって、それに対して対抗するためにビッグスリーのヨーロッパの子会社で、自社系の小型車をつくって、そしてそれをアメリカに輸入をすることを積極的に進めておるというようなことが伝えられております。これはまあ日本との友好国として、またアメリカのような自動車産業の非常な先進国として、どうもふに落ちませんし、はなはだ遺憾なことだと思いますが、それに対してはどういうようなお考えを持っておられますか。
  84. 高島節男

    説明員高島節男君) 米国の輸入制限問題のうちで繊維、鉄鋼と自動車との関連、これは情勢判断いかんでございますが、そう直接に結びついたものでは現状においてはないようでございます。繊維は、ホーリングス法案、鉄鋼につきましてはいろいろな法案が出ておることは事実でございますが、いずれも審議自体は進んでいないように承知をいたしておりますが、しかし、そういう底流があるということは常に頭に置かねばいかぬ点だと思います。したがって、さらに自動車の問題につきまして、いま御指摘のような、ヨーロッパ筋に増産させてアメリカが輸入して日本車と対抗していくということでありましたら、これは自由な生産と自由な輸入で行なわれることでございますから、制限的措置ではないと思いますが、逆にこちらの車をアメリカで買うのを輸入制限をするとかというような手をとりだしますと、これはりっぱに貿易制限の問題になってまいるので、そういうことはやっぱり避けてまいるという前提のもとにこういうものの自由化についてワクを与えて漸進的にやっていこうという姿勢、税金についてもいろいろ検討していきたいという姿勢、そこを言います以上は、そういった措置は向こう側にも避けてもらいたいし、また向こうが実施しました場合に、こちらが口がきけるような立場にはおらなければいかぬという意味で先ほどのような点を条件にあげて交渉いたしておる次第でございます。
  85. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 それから最近財界の一部には、政府自動車を過剰に保護をしておるというような意見があったり、まあ自動車のメーカーは半期に百億ももうけているというような、やっかみからの意見であろうと思いますが、そういうようなことや、あるいはまあ自由化を早く促進しろというような意見もあるようでありますが、私はこの機会に、先ほどあなたも仰せになりましたが、なるほど自動車が非常な目ざましい発展をしておる、トラック、バスを含めた全部の自動車生産数が三百十四万七千台にも達しておる、したがってアメリカの言うように世界第二位になっているじゃないかということには間違いないと思いますけれども、しかし乗用車の生産台数では世界中で第六位の状況であります。しかも乗用車の生産台数の中で、いわゆる排気量三百六十cc以下の軽自動車がその中には約四分の一入っておりますから、それを除いて考えますと、わが国の乗用車の生産台数というものはアメリカの七分の一にすぎない、輸出も四十二年度には四十万五千台だけれども、これまた世界の第八位にすぎないという状況であります。輸出の比率をながめてみても、全自動車で一%、乗用車では一六%でありまして、西ドイツが五〇%をこえており、イギリス、フランス、イタリアが三〇%前後であるということと比べますれば、はるかに低いのであります。また、世界の自動車輸出台数に占めているウエートも五・三%というような状況で、欧州諸国に比べてさえ非常に少ない状況であります。また、国内自動車生産を行なっているメーカーが十二もあるのですから、したがって各会社にとってみますというと、多種で少量の生産よりしておらぬという状況であります。企業規模を比較してみた場合に、四十一年度で日本最高のトヨタが、売り上げ高でGMの二十二分の一、フォードの十三分の一、クライスラーの六分の一にすぎないという状況で、フォルクスワーゲンと比較をして見ましても三分の一という状況であります。生産台数を見ましても、トヨタはワーゲンの半分以下、したがってわが国の自動車工業は、かなりなテンポで成長はしてきましたけれども、戦後十数年の短時日の歴史より持っておらぬのですから、これは当然のことだと思うのであります。したがって、今後本格的な国際的地位をかち得まするためには、国際競争力に耐え得るような措置をとることが大切だと思いますが、これに対しては通産大臣はどういうようなお考えを持っておいででしょうか。
  86. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いま御指摘のとおりでございますが、日本自動車工業の発達の経緯からいいますと、それでも非常なスピードアップした発達状況ではないかと思います。ただ、この自主的な技術の開発をもう少し進めまして、そうしてこの自動車産業発展向上に寄与し、また、海外市場における声価を高める意味において、一そう努力をすべき段階にある、かように考えておる次第でございます。なお、この点につきましては局長から詳細に……。
  87. 高島節男

    説明員高島節男君) 日本競争力の基礎になります点、すなわち外国との比較につきまして、売り上げその他で御指摘のありました大谷委員のお説は、いずれもごもっともだと思います。特に乗用車部門について、日本の現在の体制は競争力が非常に劣っておるということは、これは争えません。特に企業力としての競争と申しますか、大臣のお話にございました技術力あるいは販売その他資金の調達というような面で負けておることが、乗り込まれた際の日本国内の混乱を招くおそれがある原因ではなかろうかと思います。ちなみにビッグスリーが一年であげます利益だけでもって日本の総売り上げ金額の倍でございます。したがって利益の半分をさいて日本の車を全部買ってしまうたということも、非常に奇想天外でございますが、数字の上では考えられるというくらい、企業間の格差がございますので、企業の力というものをつけていかねばならないと思います。で、基本的には大臣のおっしゃいます技術力、あるいは経営力というものの充実を、企業自体について進めていかねばなりませんが、現在自動車各社も日米交渉等にいろいろと刺激を受けまして、現在の態勢では、まずみずから提携あるいは合併をしたところもございますが、大体においてこれから各社間に提携関係を成熟させていって、それを具体的に進めていきたいと、こういう傾向にございます。日野自動車等がトヨタと提携をいたしておる。日産はプリンスと合併をしたというところが大きな流れでございますが、そのほかに三菱、いすずの業務提携が先般行なわれました。さらに他の企業等も、今後いろいろと動向を見ながら、めいめい最も妥当と思う方向にいくのではないかという予測もできる情勢になりました。そういうことによりまして、やはり量産体制というものを確保してまいりませんと、日本の車というものは先方にまともに企業競争力で向かった場合に、はね飛ばされてしまうという心配をいたしておりまして、そういう方向に向かってくれることを念願しつつ諸般の指導をしておるという状況になるわけでございます。
  88. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 いま大臣から、研究開発力、技術の高揚をしなければならぬ、さらに局長からは、技術提携あるいはまた合併等をすることによって企業力の強化をはかって対抗しなきゃならぬ、いずれもごもっともでありまして、私は、実はいまおっしゃいました研究費の問題を調べてみましたところが、もう日本と比較しますというと、段違い、けた違いなんですね。GMが一年間に二千五百億円研究開発費を使っておる。フォードが千三百二十億、クライスラーが五十億。ところが日本のほうは全体の会社でもってわずか七十億円にすぎない。こういうようなことを考えてみると、もうまるでけたが違っておるのでありますから、したがって、さっきお話がありました八幡富士合併等、当事者にとりましては非常な御苦心なり、あるいは従業員に非常な動揺があると思いますが、自動車業界も同じだと思うのです。しかし大局的に考えますと、どうしても技術開発を強化をいたすためには企業体制を強化をするというようなことが必要だと思うのですが、一体その二千五百億円も研究開発に使い、日本は全体四社で七十億なんていうようなことでは、これは外国の技術の上にいままで乗ってきたからやっていけるのであって、これは実に驚き入った状態ですが、これは一体どうお考えでしょうか。
  89. 高島節男

    説明員高島節男君) ただいまお話のございました研究開発費の絶対額でございますが、二千三百億円は単なる大きい企業、世界一の企業である自動車のみならず、全企業の中で大きい、ビッグスリーの中のトップに立つGMの研究開発費であります。それに対しまして七十億円は日産の開発費でございます。日本全体としましては、二、三百億円ぐらいのところではないかと考えます。しかし、いずれにいたしましても、研究費において非常な差があることは事実でございまして、御指摘のとおり、ここがしつかりいたしませんと、今後安全構造その他で、新しい技術分野の開発を大いに促進しなければ、自動車をつくって売っていけないという立場になってまいることははっきりいたしております。したがって、政府といたしましても、各種の技術助成制度等によりまして、これに対して援助をしていくという姿勢で、目下せっかく努力を続けている段階でございます。
  90. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 それでは大臣が時間がもうあまりないようですから、大臣質問が二人あるそうですから、大臣に対する質問だけをしまして、あと政務次官、局長にお尋ねすることにしますが、その第一は、自動車工業のさっきお話がありましたが、資本自由化をしきりに要求をしてきておって、一部には四十六年には、資本の自由化を許すというようなことを聞いておりますが、それについてはどういうお考えでございましょうか。
  91. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 資本自由化の問題は、いずれにしても日本としては、これは世界の大勢でございますので、これにおつき合いをしていかなければならぬのでございますが、自動車、その他まだ自由化が実現しておらない状況でございます。いずれはこれは自由化しなければならぬという運命にあるのでありますけれども、いまお話がありましたとおり、世界の、アメリカの自動車工業と比較すると、まるきりどうも貧弱で、お話にならないような状況でございます。しかし、これに対抗するだけの規模というものを別に考えているわけではありませんが、十分に体制を整えまして、そうして自動車自由化のために押しつぶされないように、それにともかく対坑して何とかやっていけるという体制は、これは決して望みなきことではございませんので、その体制づくりにいま日本業界が一生懸命になって努力している最中でございます。政府といたしましても、その状況については十分に理解いたしております。そういうわけで、もう少し準備を整えた上で自由化に踏み切りたい、こういう考えでやっております。時期等についてはまだ残念ながらはっきりと申し上げる段階ではないので、御了承願いたいと思います。
  92. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 さっき局長から、販売秩序の問題がちょっとおことばの中に出ましたが、後ほど局長にディーラーの問題については詳しくお尋ねいたしたいと思いますが、この間の箱根会談の川又社長からのレポートによりますと、やはり販売秩序の維持ということを盛んに言っておられるわけですが、ディーラーの状況をながめてみますると、なかなか資金の点について非常に困っておるわけです。したがって、これはアメリカなりイギリスがやっておるような販売金融会社というようなものの設立をおはかりになる御意思がないかどうか、大臣からひとつお答えを願います。
  93. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘のとおり販売秩序の維持、これを健在な姿に維持するということは、結局資金の問題だと思います。この問題につきましては、ただいま審議会において研究中でございますが、なお詳細は局長から申し上げます。
  94. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 あとでよろしいです。  どうかディーラーの健全な発達のために、いま申し上げましたように、すでにアメリカでもやっているんです、イギリスでもやっているんですから、販売金融会社の設立というようなことにつきましても、十分ひとつ御検討をいただきたいと思います。  それから、後ほどディーラーの問題、部品工業の問題は局長にもお尋ねしますが、大臣に最後にお尋ねをいたしておきたい。御要望をしつつ御意見をお尋ねをいたしたい問題は、ドイツなどでは御承知のとおりビッグスリーがいつの間にやら入り込んで、イギリスもフランスもイタリアも同じですが、したがって、民族資本を擁護しなければならぬということで、政府が五割も株を持っておる、フォルクスワーゲンに対して。というような措置を講じて民族資本の擁護をはかっておるわけですが、日本としましてもそういうように自動車工業はきわめて重要な産業でありますから、したがって、そういうような国費をもってこれに投資をするとか、あるいは政府関係の金融機関がこれに投資をするというようなことをして民族資本を守っていく、こういうようなことについて大臣はどんなふうにお考えでございましょうか。
  95. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日本では外資法の運用によりまして、簡単に外国資本によって席巻されるというようなことを防いでおります。そういう意味で、ドイツでは国の資本で株を持っているようでございますけれども、日本としては、いまの外資法の運用によって、とにかく障壁を設けてこれを擁護しておる、民族資本を擁護しておるということで、行き方は違いますけれども、ねらいは大体同じでございます。いずれにしましても、そういったような形はやはり決して正常ではございませんので、まあとにかくこういう国の擁護をいつまでも維持するということは適当でございませんので、いずれはこれを開放しなければならぬ。その期間はもう少しお待ちを願いたいと、こういうことを先ほど申し上げたような次第でございます。
  96. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  97. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 速記を始めて。
  98. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それでは自動車自由化の問題について質問いたしたいと思います。先ほど大谷委員から質疑がございましたので、重複する面はできるだけ避けまして質疑をいたしたいと思います。  現在、自動車自由化の問題について外国からの要請も非常に強まっておりまして、また国内においても種々の論議がされております。メリット、デメリット論、あるいは保護、過保護論、慎重論いろいろとされておりますけれども、ややもすれば産業界の利害とからんだ発言もされておるのが現状ではなかろうかと思います。私は、こういう問題は単に一企業産業あるいは一階層の利益から云々すべきではないと思います。基本的な考え方としましては、やはり国民経済の基幹をなしておる重要産業については、これが外資の支配下に置かれるということはまことに重大なことであって、できる限りこれは避けるべきであるというように考えております。というのは、かかる基幹産業においては、単に一企業産業の利益を考えるだけではなくて、国民経済立場からその経営がされるべきである、こういう公共的な使命を当然持つべきであると考えます。その意味で、外資の世界的市場支配あるいは利潤追求の具にこれが供せられることは絶対に避けるべきであるというふうに考えるわけであります。特に自動車産業は、生産額あるいは付加価値、雇用の面においても、日本産業の中で非常に重要な地位を占め、また輸出産業の中核ともなっております。しかも雇用人口においては、関連部門を含めてその影響下にある人口は約百万といわれております。この労働者の雇用条件に関する重大な決定が、外国の人たちによってなされるということは、一時的には賃金の高騰その他によって労働者の利益ということは考えられても、長期的に見れば、これはまことに大きなマイナスであろうというふうに考えるのであります。確かに国際協力の必要性ということはわかるわけでありますけれども、しかし、資本の自由化という問題は、産業の支配権に関する問題である。それだけに、自由化の問題については慎重な態度で臨んでもらいたいと思います。特にアメリカのビッグスリーの過去の経過あるいは力を見ましても非常に強大な力を持っており、しかも非常に侵略的であるということが過去の例からあげられると思います。そうして力で押して世界的独占を目ざしており、資本の自由化が国際協力のために必要であるといっても、このような強大な独占的な資本の侵略を認めるということは、正常な国際協力に対して効果があるということは考えられないわけであります。したがって、私は守るべきものは守るというはっきりした態度を日米の自動車交渉においても打ち出すべきではないか、これに対する通産大臣見解を伺いたいと思います。
  99. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘は、そのとおりと思います。アメリカの自動車資本がヨーロッパにおいてどういうことをやったかというその実績は、もはや明瞭に私どもも承知しております。日本のやっぱり民族資本というものを擁護いたしまして、そうしてこの影響下に多数の人々が所属しておるというような状況を考えると、自動車産業影響力というものはたいへんなものである。こういう行き方は全然考えられない。あまりわれわれの、何と言うか、国民の一般の者がなれない影響力が入ってくるということは、いろいろな意味において私は避けなければならぬというふうに考えておりますので、全く御指摘のとおりであります。  それで、いずれにいたしましても自由化問題は、いつまでも戸を閉ざしておくわけにはまいりません。そのためにはやっぱりどうしても急いで国内の体制を整備いたしまして、そうしてまずこれならばだいじょうぶという確信を持ちまして、そうして自由化に踏み切りたい、こう考えております。
  100. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 アメリカのビッグスリーの場合、ヨーロッパの例を見ましても、当面は一部の資本参加というかっこうで入っても、最終的には一〇〇%の資本の取得、それによる完全な支配ということを目ざしておることは明らかであります。またダンピングによって低価格の車を出し、それによって市場支配をはかる、これも常套手段として使われておりますけれども、こういうアメリカのこの攻勢に対抗するために、一つは外資法の問題でこの制限というものについてはやはり慎重に考えていくべきではないか。それから次はダンピグによる市場支配を防ぎ、日本国内市場の混乱を防止するためには、やはり独禁法の整備等によって規制措置というものを強化することが必要ではないかと思いますけれども、以上のお考えがあるかどうか、お伺いしたいと思います。
  101. 高島節男

    説明員高島節男君) 方向大臣が先ほどおっしゃいましたので、私から具体的な方法論についてお答え申し上げます。  まず外資法によりますところの規制は、現在自由化の問題はございますが、一般の業種について四十六年度の末までにかなりの部分において自由化するということになっております。ただ自動車工業については、先ほどからお話のありましたように、再編成の途上でございます。それから国際競争力状況というものもまだ見きわめがついておりませんので、慎重にやはり時期を考えて自由化のやり方については私ども考えたい。したがって、それまでは外資法上あくまで個別審査によって認可されるということになってまいりまして、既存の会社の株式を特に御指摘のように取得するという動きに対しましては、現在一外国投資家当たり七%、全体を通じまして外国投資シェア二〇%というものを引き上げるということは当面考えないで臨みたい、これが外資法における方針でございます。  それから独禁法との関係は、結局経済力の乱用という角度からとらえ得るかと思いますが、公取委員長がお帰りになりましたので、私から申し上げますと、ダンピングとかあるいは差別価格等で市場を席巻したり、あるいは景品の不当な提供によって顧客を奪取したりするようなことが一つの困った問題として予想せられるわけであります。その際には、独禁法で不公正な取引に対しての規制というものがございます。これは不公正というのが何であるかという、非常にむずかしい具体的な判定としていろいろと争いが出ると思いますが、その条文を基礎にいたしまして、これにあまりにもはなはだしきものに対しては臨んでいくという方向一つあるのではないかと思います。それから不当な景品や不当な表示等をやったものに対しての取り締まりの法律もございますので、そのあたりを動員して臨むべきではないかと思いますが、要は、やはり日本に進出してきてからそういうところを押えていくということは非常に外交上もまたむずかしい問題を起こしますし、むずかしい話になってまいります。したがって、市場進出それ自体に対して、やはり外資法上の自由化の問題として慎重な態度をとっていくのが大事ではないだろうかと思います。
  102. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 大臣の時間の御都合で私の質問も前後して質問しなきゃならぬことになるのですが、それはあとでいたすことにいたしますが、まずクリスマス用の電球が最近アメリカに四億個も出ておるわけなんですが、これが非常なダンピングをされるためにそのしわ寄せが生産者、メーカーにまいりまして、非常にメーカーが困っておるということを御存じでしょうか。
  103. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) とにかくクリスマス用電球業界が、業界の内部においていろいろなごたごたがあるということを聞いております。
  104. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そういう点を、ずっと前からの質問によって明らかにした上であなたの判断を仰ごうと実は思っておったのですが、それが前後するために非常に不備な点が出てくると思うのでありますが、実は、私が簡単に事情を申しますならば、この業界には五つ六つの大きいメーカーと、それから貿易業をかねている人たちがあるわけですが、この人たちがアメリカに対して輸出をするときに非常に安い値で輸出をするわけです。それが結局はメーカーにしわ寄せされて、メーカーの製品が非常に買いたたかれるという事実が起こっておるわけなんですね。そのために、最近メーカーの自殺者が六名も出ておるということを、昨日メーカーの一人が私のところへ陳情に参りまして、非常に苦しいと、こういう状態を何とか政府がひとつ救ってもらえないだろうか、手を打ってもらえないだろうかということを実は訴えに参ったわけなんです。ひとつ死んだ人の例を申しますならば、本名も全部わかっておりますが、まあその人たちの名誉を考えまして私は本名を明らかにせずに申しますが、実は品川区で起こっている問題なんですね。品川区の電球会社の社長さんのFという方は、これは従業員が十二、三名の小さい企業で、資本金も百万円ほどのものなんですが、ところ昨年五月、借金二千万円をかかえて青酸カリ自殺をしてしまった。どうにもならなくなったということなんです。それからもう一つは、これも最近起こった話ですが、品川区の豊町のSという方です。これはS電球製作所の個人経営のほんとうに家内工業、家族だけでやっておる人ですが、これは理研真空工業から堀内電気の下請になりまして、そこで非常に値段を買いたたかれてしまったということです。しまいには子供に食わせるものもなくなった。子供は四人ですが、その子供たちの上の二人は電球界にあいそをつかしてほかの産業に行ってしまった。そうすると、家内工業自体が成立しなくなって非常に困ってしまって、ある晩ウイスキーの角びんを、やけ酒だろうと思うんですが、三本一ぺんに飲んでしまったわけですね。そうして心臓麻痺を起こしてテレビを見ておって死んでしまった。これは毒薬ではないですから自殺とは言えないかもしれませんが、角びん三本を一ぺんにやけ酒飲めば、そういう問題が起こるというか、予測できるということです。そのほかにまだ四人ほどあるわけなんです。こういうふうに、今日輸出用のクリスマス電球生産者は、実に惨たんたるありさまに置かれておるということを、私は通産大臣椎名さんに深く認識をしておいていただきたいと思うんです。C−9電球、私も初めてこの名前を知ったわけですが、C−9は六円八十銭だというんですね。それからC−7が四円五十銭だと、こういうわけなんです。こういう実にばかげた価格があってよいものかどうかということ、この物価高に、とにかく灯がつく電球がせんべい一枚よりも安いキュウリ一木買うためにはC−7の電球を二個売っても足りないというような今日ですね、私たちは一体どうしたらいいのか。座して倒産を待つというわけにもいかないし、一体どうしたらいいのかと言って、きのう私のところに訴えに参ったわけです。こういうことになりますると、簡単に、それじゃ廃業したらいいじゃないかという御意見もあるいは出るかもわかりません。ところが廃業というものは、転業というものは、なかなかできるものではないと思うんです。電球をつくるということは、この人たちにとっては長いことやってきた、いわゆる生きていくための生業であって、簡単な職業ではないと思うんです。だから転業しろと言っても、それはむずかしい。かつて東京都が六百七十八万坪の埋め立てをしましたときに漁民に三百三十億の金を出しました。そして漁民は一度おかに上がったわけでありますけれども、しかし転業はうまくいかなくって、再びこの漁民たちは海に帰って釣り船稼業を始めておる。これを見ましても転業ということはなかなか私はそう簡単には、口では言えても実際にはできない。それではこういう困難な状態に追い込まれておるこの零細企業の人たちを、一体政府としてどう処置をなさるのか、どうしたら救えるのか、この点を、大臣に政治的な立場意見を伺っておきたいと思うのです。
  105. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この雑貨工業には、えてして何といいますかな、メーカーはそんなことは考えてないのですけれども、中間の取り扱い業者の人々がうまく海外の市場に対して秩序ある取り引きをしないで、われかってに行って市場をあばれ回るというようなことになると、せっかくこれまで相当な値段で買ってやろうというのに、あとからあとから、いやもう少しまけてやるからおれのやつを買ってくれと、こういうようなことをやって乱売をする。乱売をするというと、結局はそれを一時的に買う人は何か律したような気がしますけれども、値くずれがしましてそれで市場がだめになってしまう、そういうことで、全くそれは、アメリカならアメリカの市場において声価が落ちて、あんなあとからあとから安物が出てくるようなものは取り扱わないということがあって、しっかりした商人は相手にしないというようなことがよく昔あったものですね。そういったようなことがあるいはあるのかもわかりませんが、とにかくクリスマスの電球というものは、まさかすたっているわけじゃないだろうと思います。だから、どこからか買って使っておるのだろうと思います。ですから、どういうわけでそういうみじめな落伍者が出てくるようなことになったのか、そういう点をよくひとつ私の手元で調べてみます。そしてもう少しメーカーあるいは取り扱い業者、そういう人たちが一致して共存共栄の体制をつくって、そして再出発することによって従来の市場というものを取り戻すということが可能であるか、それとももう絶対にだめなものなのか、そういう点から直さないと、ただ、個々の現象だけを追っかけておってもどうにもなりませんから、よく調べてみます。
  106. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その業者が来ましてこういう意見を述べました。この窮状を救うために暫定措置として、適正価格を実現するために輸出の規制を相当強くやってもらえないだろうかという意見を業者の一人は私に述べました。これは私の意見ではないのですから誤解をしないでいただきますが、そうすると、輸出の規制をするとなると、今度は製品の規制までしなくちゃならぬことになる。製品の規制をするとなると労働者の規制ということになっていく。これは労働者の生活の問題にも影響してくるわけなんですね。非常にむずかしい問題だと私は思うのですよ。しかし、ここで対米輸出電球総額は、大体年間百億ですね。クリスマス用電球はこのうち四十億を占めているということを聞くんです。この四十億の電球を政府が買い取って、そうして適正価格に戻すというような操作を政府がやってもらえるものかどうか、やったらどうだろうということ。そんな先例は、実は新潟県の燕市で洋食器具が同じような状態になりましたとき、燕市でそれを買い取ったという先例もあるわけなんです。だから、そういうことができるものかどうか。どうしたらよいのか。どういうように具体的に指導なさるべきか、この通商産業六法の中小企業基本法の中の第三条の第六項には「中小企業生産する物品の輸出の振興その他中小企業の供給する物品、役務等に対する需要の増進を図ること。」という項目すらもあるのですから、やはり通産省としましては、こういう人たちに対して私はある責任を負わなければならぬと思うのです。で、どういうように通産省としてこういう困難をしておられる人たちに責任を感じておるのか、どういうように実際は対処されようとするのか、指導されようとするのか、もう少し具体的にひとつ意見を述べていただきたいと思います。
  107. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 燕市の例をおあげになりましたが、やはり業界がかたまってないと、何をするにも——かりに国がどういう助成策を講ずることができるかできないか別にして、いずれにしても業界が一致結束してかたまらないといけません、それからなんです、いまは。だから、よく調べまして、どういうふうに業界を組織化したならばうまくいくか、そういう点をよく調べてみます。
  108. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 業界でもメーカーが組合をつくって自発的にいろいろの方法を考えて政府に要望しなければならぬということも言っていました。おそらくそういうことになるだろうと思うのですが、ここで、かつて山一証券がああいう困難になったときに、政府は無期限、無担保、無利子というような、ああいうべらぼうな条件で山一証券に三百億からの金を融資したんでしょう。だから、まず当面できることは、こういう困難な状態にある業者に、やはりそういう好条件で金融するということが私はやはり必要じゃないかと思うのですが、通産大臣、そういう積極的なお考えがありますか。なければ大いにそういうふうにやっていただきたいと私は思うのですが、その点お伺いします。
  109. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあとにかくよく調べてみないと、どうしたらよいのか、いまここで山一のなにを持ち出されても、ちょっと右左申し上げるわけにまいりません。御希望の点はわかりますが、とにかく業界の内容をよく調べてみましょう。そうしてどうすれば更生されるかということを考えてみなければいけないと思います。
  110. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それじゃ業界からの代表が直接行くかと思いますが、ひとつその際はよく話を聞いてあげて、この困難な、自殺者が六人も出るということは容易なことじゃないと思います、放置しておくべき問題じゃないと思いますので、この点よくお考え下さって、みな業界が救われるように、ひとつ善処していただきたい、指導と対策を立てていただきたい、こういうことを申し上げまして大臣に対する質問はこれで終わります。
  111. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  112. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 速記をつけて。  これで午後二時まで休憩をいたしまして、二時再開し、自余の質疑を継続することにいたします。    午後零時五十分休憩      —————・—————    午後二時十二分開会
  113. 金丸冨夫

    委員長金丸富夫君) これより商工委員会を再会いたします。  所属委員の変更がございました。  矢追秀彦君が辞任され、その補欠として鈴木一弘君が選任されました。     —————————————
  114. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 休憩前に引き続き、産業貿易及び経済計画等に関する調査を行ないます。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  115. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 先ほど来、自動車産業の防衛体制について大臣からも局長からもいろいろお話がありましたが、結局デトロイトは、究極的には資本の自由化を求めてくることにはもう間違いないと思います。したがって、よほど慎重に当方としては対処をしなければならぬと思うのですが、それについてまあ先ほど来メーカーの体質の改善、整備のお話がありましたが、同時に販売体制の強化ということが非常に必要であろうと思うので、それについてのお考えを承りたいのですが、去年自動車販売連合会が行ないました調査によりますると、通産省の調べでは、ディーラーの五分の一と書いてあるが、この自販連の調査によりますと、三分の一が赤字経営をしておるといわれております。これにはいろいろな原因がありましょう。昨年の九月期の収益税率を見ますると、税引きの〇・七%というような状況であります。イギリスの商工省では、税引きの三%くらいの利潤がなければとうていやっていけるものじゃないと言っておりますが、日本のディーラーの状況は、そういうような状態であります。先般通産省では、東京、福岡、香川県等の調査をされたそうですが、値引きが九・七%ぐらいもあるということで、表示価格というものが全く無意味、無視されておるばかりでなしに、セールスマンは何ぼ売ったらどれだけという報償金が出ておるそうですが、そういうものまでつぎ込んでしまって割り引きをしておるという状況であるということですが、これは結局過当競争の結果だと思うのですが、そういう点について当局はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  116. 高島節男

    説明員高島節男君) 販売部門の関係でございますが、赤字の経営をやっておりますのが、五分の一というのが最近の状況でございます。自販連の調査は若干時間的に前でございまして、それはちょうど一番不況の状態がありましたとき、自動車の伸びがちょっと落ちたときの数字ではないかと思っておりますが、最近、御承知のように一般的な金融引き締めがあるにかかわらず消費の強さが非常にまだ激しゅうございまして、それに、ミートしまして最近の状態は赤字経営者は五分の一くらいのところに相なっておる状態であろうかと思います。しかし、全般といたしまして、自動車業界の体制を見ますと、メーカーのほうの経理というものも比較的いいところに保ちまして、販売競争の面において非常に熾烈にやらせておる。その結果、販売業者の経理がメーカーに比べて悪いというだけでなく、場合によっては非常に追い込まれた状態、赤字経営にもなっておるというのがどうも実態ではなかろうかと思います。御指摘の販売業の実態調査は、おっしゃいますとおり部分的でございまして、数県にわたって調査いたしましたところ、割賦販売条件等が相当に乱れておりまして、頭金をスタンダードでは二五%を守っているものが三割ぐらいは守っていない、あるいは販売期間の二十カ月というのも、二割程度守っていないのがございます。これは基準を示すだけの法制のたてまえになっておりますが、こういう状態でございますと、勧告等の措置もとらねばいけませんが、それには、やはり全般的にとらえて見まして、抜き検査でなしに全国調査をしまして方向をきめる必要があると思いまして、目下全国調査調査票を配りはじめている段階でございます。九月の末あるいは十月ぐらいにはその辺の実態が、これはたいへんな数でありますから、どういうふうにあれされるかわかりませんが、いま少しコンクリートにつかめるのじゃないか、そうしてその上で対策を考えてまいりたいと思いますが、とにかくいわゆる販売業者というものが、メーカーに金融関係で隷属いたしておる面もございます。そこいらの点についても午前中申し上げましたように、割賦販売審議会等の審議もさらに続行していただきまして、いかにあるべきか、金融体制等にわたっても掘り下げてもらいたいと思っております。
  117. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 したがって、どうしても適正な販売資金の体制が確立をしておりませんことには——ここいらにディーラーの悩みがあろうと思います。ですからディーラーの経営が安定化しておらぬということでありまするというと、ちょうど、戦前にフォードが来て、それで月給を三倍以上出したので、すっかりそのほうにとられてしまったという例も聞いておりますが、外資が自由化になりますれば、もうまっ先にディーラーが襲われるのではないかという心配が出てくるわけであります。したがって、この販売資金の調達について、十分に当局のほうでも配慮をし、行政指導をしていただかなければならぬと思っておりますが、その点についても伺いたいと思います。現在の状態ではディーラーは銀行から借りたりあるいはメーカーに資金を仰いでいるというような状況で、割賦制が行なわれております今日、その負担は非常に重いと思いますが、それらの点。それらのディーラーが繁栄をしなければ、自動車産業全体の繁栄ということはあり得ぬわけですから、したがってそういうような点についてはいかがお考えになっていらっしゃるか、その点をさらに伺いたいと思います。
  118. 高島節男

    説明員高島節男君) 御指摘のとおりディーラーの部門が弱いということが、いまの自動車業界一つの欠陥であろうかと思います。ただ、ディーラー個々に対して対策を打つというよりは、やはりディーラー、メーカーを相通じて一つの姿勢ができなければならないかと思います。ディーラーは結局源はメーカーに関係をいたしておるわけでございますから、一つのメーカーからディーラーへの流れというものは、現に御承知のとおりできておるわけで、やはりメーカーが外資に対してやはり近づくという姿勢でなしに、独立独歩あるいは国内のお互いの協調でやっていくという姿勢が高まっていくことが、ディーラーを外資から守る一番大事なところではなかろうかと第一点として考えます。ただ、ディーラーの対策というものも、御指摘のとおり、これはないがしろにできないような状態になっておりまして、これをこれ自体として強化しなければならぬ面もあるのでございますが、その際には、やはりメーカーの自覚というものが何よりも先行すべき問題ではないかと思っております。メーカーは、現在までのところ、どちらかといえば悪いところはディーラーに押しつけて、メーカーから系列ができているにかかわらず、過当競争をこれにしいておるような感じがどうもいたすのでございまして、先般自動車工業メーカーの団体の集まりがございましたときにも、特にメーカーとディーラー、部品業者等々を含めた全体が、一体になった形での将来の繁栄と競争力の強化ということがなければいかぬという意識が、メーカー間にも特に強く盛り上がったようでございます。その原因は、やはりアメリカにおけるこういった問題がございますので、これはほうっておけぬ、自分たちの力で、ディーラーをやはり生かさず殺さずの状態から、もっと強いものにしないと、向こうさんに取られるという、こういう心配が現実化してきたのではないかと推測されます。姿勢としてもそれを含めてこれを強化していく、そういたしますと、そこに金融なり何なりもつきやすい。採算に乗るという形の結果が出てくる、これがやはり基本であろうかと思います。で、さらに先生の御質問の金融問題自体につきましても、確かにいまの形態は問題があるかと思います。現在一兆二千億円程度の割賦金融をいたしておりまして、これが苦しみのもとでありますが、このうち半分は金融機関から大体資金が出ておるようでありますが、残りの半分はメーカーから借りておる形でございまして、メーカーの信用が基礎になり、それの支配関係に属する原因になっております。でき得べくんば、何か独立の金融機関が考えられないだろうか、こういうことを一つのアイデアとして持っておる段階でございます。ただ、これは金融全体の流れにしいてさからいまして、外国資本のやり方をとりましても、いたずらに摩擦を起こし、かえってピンチを起こしてうまくいかない面もあると思います。したがって、これは割賦審議会でディーラー資金の供給のあり方につきまして、専門的にも十分検討していただきたいということを諮問いたしまして、片方、メーカーがディーラーをかわいがってといいますか、そういう精神の盛り上げと結びつきまして、外からの刺激を機会に、この際、立て直しの方法を検討していきたいと考えます。
  119. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 私もお説のとおり考えます。そこで、先ほど割賦販売会社の点について大臣意向をお尋ねしたのも、まあその一つ考え方であるわけですが、自動車工業会のこの間の案は決定事項ですか、私も拝見をいたしました。どうかひとつこの文章だけでなしは、それが一体化していけるように、ひとつこの上とも行政的なサゼスチョンを続けていっていただきたい、かように思います。  それからさらに自動車の部品工業でありますが、これも自動車工業が盛んになっていきまするにつれて、非常に規模も増大をされてきていて、非常に目ざましい発展をいたしております。年間六千五百億円の生産があるといわれておりますし、また輸出も四百何十億円かいたされておるというような状況でありますが、しかし、これまた欧米諸国の企業と比較をいたしますると、その規模が非常に小さい。格差が大きいわけであります。したがって、この生産方面の体質の改善、ディーラーの経営合理化、資金のありかた等を検討するとともに、部品業界の再編成、体制整備も一そう進めなければならぬと思いますが、それらについてどういうようにお考えになっていらっしゃるか、またどうしたらいいかという点についてお示しをいただきたい。
  120. 高島節男

    説明員高島節男君) 部品業界に対しましては従来から機械工業振興法の対象といたしまして、その体制の整備を自主的にはからせつつ、これの後援を金融等によりましてまいったわけでございます。機振法対象業種の中で関係融資等を受けております一番大きいものは、この自動車部品工業であります。ただ日本の特性といたしまして、自動車シャシーメーカーに対しまして、部品工業は、個々の部品、部品のまたそのコンポーネントをそれぞれ生産して納めているという、いわゆる単体生産主義といいますか、というような姿勢をとっております。部品は部品でもシリンダーならシリンダー、あるいはブレーキならブレーキというものをまとめて納めるというような体制に育っていない形でございまして、したがって単体としてだけであって、総合部品として責任がまだ負い得ないような状態になっておるところに欠点があります。これはだいぶよくなってまいりましたが、多種少量生産体制機械全般についてのこういう姿勢でございますが、それが非常に強かったわけでございます。これはいろいろと苦心いたしてまいりました結果、大体各部品の中の七、八割見当が上位三社程度生産される。すそ野は非常にたくさんメーカーが散らばるということが比較的少ないところに追い込まれております。この方向をさらに本年度以降シャシーメーカーについての自由化問題等々が迫ってまいりますものですから、一そう拍車をかけまして、資金の援助等を活用しつつ、体制の整備に努力してまいりたいというように考えまして、目下その指導にあたっておりますが、これもさらにシャシーメーカー自身が強い自覚を持って、部品工業を力を入れて、ちょうどディーラーに対する自動車屋さんの姿勢と同じように自覚を持ってほしいことを、先般の工業会でも要望をいたしました結果、この両者と共存共栄と申しますか、協調的繁栄ということでないと、これらの自動車業界は生き得ない。当然のことでございますが、この際反省を新たにいたしまして、進めようという体制になってまいりました。この力がないと役所のほうでわき役がやきもきいたしましても思うようにまいりません。周囲にその気分が出てまいらないと思います。問題はこれからの実行にあるかと思いますので、さらに努力をいたしてまいりたいと思います。
  121. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 私もお説のとおりだと思います。  そこで最後に、いずれにしましても近代工業国家におきまする自動車工業というものは、まあ最大最強の産業でありまするし、その経済影響はもちろんのこと、社会的政治的影響力も非常に大きいのであります。こうした重要産業を保護育成するということは、国策としてもきわめて大切だと思いますがわが国のこのモータリゼーションが活発になるにつれまして、今朝来の話のように、外国資本の対日進攻は刻一刻と激しくなってくることと思うのであります。先ほどもお話がありましたように、ヨーロッパのビッグスリーの制覇いたしました事例を思いますというと、まことにはだえにアワの立つような思いをするのであります。そこで、政府といたしましては、いま国内のメーカー、ディーラー、部品工業が共存共栄の姿勢を十分に持っていかなきゃならぬというお話ですが、アメリカに対しても、強くひとつ共存共栄の方針を求めていっていただきたいと思うのであります。国内ではいまの三つの部門が効率的な、総合的な体制をとって、国際競争力を強化する措置をひとつおとりをいただきたいと思います。いずれは、まあこれは資本自由化はしなければならぬことはもとよりでございまして、ことにIMF八条国に移行しましてからの日本は、自由化に対しまして積極的でありますが、国内体制の整備を急ぐことがきわめて必要だと思います。今後の自動車産業は、まあ花形産業としてますます発展をしていく。輸出においても本年は九億五千万ドルの目標ですが、十億ドル、二十億ドルをかせぐということは容易でありまするし、またその努力をすることが日本経済発展の原動力であると思うのであります。したがって、これらの自動車産業の輸出振興というものについても、国内市場ばかりでなしに、海外に進出するという点につきましても、十分にひとつ通産当局としましては行政指導というか、奨励というか、政府業界一体となって国民経済発展のために努力していただきたいと思います。その点だけを伺いまして私の質問を終わることにいたします。
  122. 高島節男

    説明員高島節男君) これからの自動車産業は非常にむずかしい段階にさしかかってきたと思います。この点はアメリカ問題を契機にして、業界自身も自覚をいたしてまいりましたし、部品販売業等の面にもしみわたり、また日本国内でもいろいろと議論がありますため、自動車というものに対しても一般の関心及びこれの分析も徹底いたしてまいるかと思いますので、政策の進め方としては、ある意味では非常に機運が熟してまいる時期に入ったのではないかというように感じております。  で、先方から参ります企業の共存共栄という点でございますが、これは国内の体制よりも、ひとつ非常にむずかしい点がございます。それはビッグスリーという名前が示しますように、この三企業は世界の大企業番付の中の一位と二位を自動車に限らず占めておりますのが二つ、第五位に下がって自動車業界における三番目というくらいの大きなものでございます。午前中御説明申し上げたような売り上げ高、利益率を上げている企業である。しかもヨーロッパにおいて、どちらかといえばその進出はかなり強引な動きを示しているのが通例でございます。したがって、これが参ります際も、共存共栄ということは、口頭で申すだけではなかなかむずかしい、日本側としては慎重な態度をとっていかなければならぬかと思います。したがって、日本の体制整備というものが、現在進行中でございます。その機運がようやく出てきて、しかもそれが実行されるというには相当の年月がかかると思います。その年月のかかり方、進みぐあい、これをにらみ合わせつつやっていくということを向こうに求めるのが、ビッグスリーに対する産業としての共存共栄の道ではないかと思います。したがって、外資法の運用等について、非常に慎重に進めてまいりたい、こういう感じでいるわけであります。国内のほうは、先ほど来御意見を承りましたとおり私も努力をいたしてまいりたいと思いますが、今後自動車業界として自分だけではなく、部品あるいは販売業界というものを一体にかかえて、かつ御指摘のありましたように、輸出産業として一つの使命を担っている、現在の輸出率が一一%程度のところでございますが、これがもっと上がっていくような、業界全体が努力をしなければならぬ、そのためには、外資の進出ということが必ずしも世界の例を見ますと、有益ないい効果を来たしていないという点もあって、こちらもいろいろな措置をとっておるところでありますから、その期待にやはりこたえていってもらいたい。おそらくそれでまいりました場合には、自動車工業としては、現在の百二十七億程度の輸出の中で、御指摘のとおり八、九億ドルを占めておりますが、将来の自動車の需要というものは、全世界にわたってあるわけであります。これは造船等と違って大いに伸びがあるわけであります。そうすると二十億、三十億というのは、やはり稼いでもらわなければ日本経済成長全体に響いてまいるということになってまいりますので、そういうことを他業界、国民全体に理解をしてもらいまして、自動車業界はその期待と責任にこたえてこれからやっていかなければならない時期ではないかと考えます。
  123. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 自動車自由化に関連いたしまして国内の体制整備についての質問をいたしたいと思います。  まず第一に、業界の再編成の推進についてお伺いしたいと思います。現在完成車メーカーについては、やはり多車種少量生産の問題、また部品メーカーについては小規模企業の乱立、近代化のための投資のおくれ等、数々の問題をかかえているのが現状であります。先ほどお話のありましたような販売業界の問題にしても、その根本は完成車メーカー同士の過当競争のしわ寄せが販売業界にきているといっても過言ではないと思います。現在の状態のまま資本の自由化を迎えるならば、これはかなりの混乱が予想される、特に中小企業並びにそこに働く労働者に対するしわ寄せというものが避けられないと思われます。したがって、この再編成による体制整備の促進が急務でありますけれども、しかし、現状としてはそのテンポがかなりおそく、十分な効果をあげていないように思うのであります。そこで、私はまず第一点としては、再編成促進のために企業合併、あるいは業務提携の場合の金融面あるいは税制面での優遇措置をさらに充実強化することが必要ではないか。第二点としましては、再編成についての世論づくり、行政指導の強化が必要ではないか。以上のように思うのでありますけれども、これに対しまして通産省見解をお伺いしたいと思います。
  124. 高島節男

    説明員高島節男君) 基本的な問題でございまするが、私から輪郭をお答えいたします。  まず再編成につきましての業務提携、あるいは一歩突っ込みますと合併というような方向にまいります際の援助の手段でございまして、現在までも再編成体制に入りましたものに対しまして、従来から開発銀行で、特に再編成をやって、再編成の効果のあるような投資を行ないます際には、これに対して資金援助をいたしております。この制度は、片方で自動車業界が先ほどからお話のありましたように、相当のこれは保護手段をとって守っているわけであります。その結果、業界相当の利潤もあがってまいってきていることでありますので、なけなしの国家資金を配分いたします際には、とかく議論のあるところ、自動車業界自身も反省しなければいかぬ点がだいぶございますが、しかし、今後も提携等について、有意義な形でそれが使われる場合には、いろいろと問題はございましょうが、やはりその提携に対しての援助措置を継続してまいりたい、こういうように考えております。  それから税制上の問題といたしましては、現在合併税制というものに対しては、相当の特典があることは御承知のとおりでございます。ただ、いろいろと再編成をしております過程で、単に提携をしたというところで税金の恩典が受けられるか、あるいはは最近事例が起こっておりますが、若干いろいろな事業を行なっておるのも、むしろ自動車部門を切り離したりいたしまして、再編成の方向へ向かうという際に、どうこれを援助するかということになりますと、税法上きわめてむずかしい体制になってまいりまして、いかようにこの難問を解くかということを目下検討いたしておるわけでございます。この業界に対しての最大の援助といいますか、政府のやり方というものは、やはり相当の高関税を設け、従来は輸入制限までもしております。輸入は自由化いたしましたが、そういう障壁の面で、外国からの輸入に障壁を設けてきた。これは非常な援助であったのではないかと思いますが、一面過保護等の問題も出てまいります。あわせまして、現在資本取引の自由化についてきわめて慎重な態度で、アメリカ側の企業進出に臨んでおるということは、これもまた当該業界に対しての非常な援助であり恩典であるかと思います。ここはやはり業界自身も自覚をして、国民的な理解を得ないといけないポイントではないかと考えております。したがいまして、第二の世論の形成ということと関連いたしてまいりますが、やはり単に通産省が、自動車業界というものが、何も感情的にかわいいからやっているということではない。将来の輸出のにない手として、船等が横ばい状態になってまいります。軽い品物はこれはなかなか出にくい。それに後進国からの追い上げというものもありまして、軽機械類等は、相当これに将来食われていくという構造的な変化を来たしているのではないか。そうしますと、やはり日本的な伸びる産業というものは、自動車あたりにとどめをさすのではないか。これがうまくいかぬと、将来二百億ドルをこすような輸出によってその範囲内において結局成長をいたしますわけでありますから、成長のもとが切れてくる、こういう意味で、一般世論に訴えてまいりますと同時に、業界自体としては、やはり資本自由化にも前向きには取り組んでいかざるを得ない事態にあるのございますから、そういう時代に備えて業界としての努力はこういうふうにやっているのだというところのPRを徹底させてまいりまして、シャシーメーカーだけでなくて、部品とか販売という面までひっ固めて協力しながら競争力をつけていくという意味の対国民的、あるいは他業界に対してのPR等を、場合によっては経団連とか、同友会という場所、あるいは商工会議所という場所に積極的に出ていくべきではないか。その辺がどちらかというと、あとからできた産業でございますから、非常に端的に言いまして、私どもの目から見ても見劣りする、行き届かないという点が多分にあるようであります。それには十分注意して、今後も積極的な活動をしていただきたいということを強く要望いたしておる次第でございます。
  125. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 確かにいまのお話のように、自動車に対する保護育成というのは、関税障壁さらに資本の自由化の時期の延期、こういった面で、かなり強力になされているということは認めたいと思います。しかし現在日本のこの産業に対するいろいろな政府としての助成措置を考えた場合に、いわゆる伸び悩みあるいは斜陽の産業に対して金を出すということも必要でありますけれども、これら斜陽産業に金をつぎ込んでも、それが将来発展し、日本経済をになう産業になるということは非常に困難である。むしろ新しい産業がこれから外資と対抗してやる時期において、この政府の強力なてこ入れというものが、これは将来何倍にも有効な結果となって返ってくるのではないか。その意味において、何とぞ優遇措置というものについてお考えいただきたい。  なおそれに関連いたしまして、特にこの再編成の問題につきましては、中小企業、零細企業等をたくさんかかえ、これらを底辺として成り立っておる部品工業の近代化が最も大きな問題だと思います。特に部品工業の中でもいわゆる中堅クラス以上の企業の近代化は、ある程度進んできておると思われますけれども、二次下請あるいは三次下請等の零細企業に対しては、現在の機械工業振興臨時措置法の適用もなかなか及ばず、近代化がなおざりにされている傾向が強いように思います。通産省はこれら底辺にある零細企業の近代化、体質強化にどのような対策を持っておられるか、お聞きしたいと思います。   〔委員長退席、理事剱木亨弘君着席〕
  126. 高島節男

    説明員高島節男君) 衰退産業と成長産業とございまして、政府として資金なり何なりを使ってまいります場合、やはり衰退部門、たとえば石炭でございますとかというようなところは、影響度が非常に大きいエネルギー革命があれば出てまいります。これをほうっておくわけにまいりませんので、どうしても巨額の金をこれに直接援助的に使っていく。また造船業が非常に一時赤字で弱っておる時代がございました。これに対して、各般の援助措置が行なわれましたが、やはりそういう衰えていくという段階における緊要性ということは、一般に一つの統一された認識が出てまいりますが、成長部門に対しての援助というものはなかなかむずかしい。手段としても一般の納得としても非常にとりにくいところでございます。確かにおっしゃいますように、いま自動車産業に対してある援助を与えて、そしてこれからの伸びを期待すれば相当の効果があって、結局日本全体の経済成長に寄与するではないかとおっしゃる点、まことにその点はごもっともだと思いますが、財政なり何なりが踏み込んでまいります分野としては、どちらかといえばあとに回すほうではないか。やはり衰退部門等のほうがとかく優先をいたしてまいりまして、自動車産業に対しては外からの侵略といいますか、進出というものに対して一つの防波堤を築いて、あとは自然国内業界の力がついてまいっておりますから、その力を活用して、おのずからいくべき体制をそこに固めてもらうという行き方がやはり本筋をなすのではないかと思います。ただ、おっしゃいますように、ここである程度の金を使えば非常に将来にわたって有益な効果を生むのではないかという点は、確かにそのとおりでございますので、特にわれわれのほうが努力いたしておりますのは、そういった体制が整備された際の融資のほかに、特に最近問題になっております安全公害関係、アメリカにはやかましい基準ができ、日本にも世論によって一つの基準ができてまいりました。こういった面には相当の技術開発が要るわけでございまして、日本として非常に立ちおくれております、この立ちおくれを取り返すためには、通産省機械試験所等が中心になりまして、安全公害問題の研究を、相当巨額の金を毎年投下いたしまして、民間ともタイアップしつつこれを援助をいたしております。そのあたりに、この際特に政府として出ていく場所があるのでないだろうかという感じがいたしておるわけでございます。  それから御指摘の部品工業の場合、一次系列と二次系列以下とに問題は分かれるのではないか。一次のほうが、先ほど御指摘のありました資金の問題ともからみまして、新法によって一次部門に対して強力な推進、てこ入れ、再編成をやっておるわけでございます。そうすることが結局これに密着いたしております二次系列以下を育成していくことになる一番のポイントではなかろうかと思います。二次系列それ自体をとらえましてこまかく援助をいたしてまいるということは非常に至難のわざでございます。やはり一次系列に力を注いでいく。車の部品工業のあり方を、単品生産的なものから総合的なものにし、力をつけていくということが、下請のさらに再下請に対しての一番強化策に結局はなってくるのではないかという感じがいたします。
  127. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 この零細部品工業についてでありますけれども、自動車工業といえば非常に近代的産業のようにわれわれは考えております。しかし、現実に二次下請、三次下請の部品工業のケースを見た場合に、こういう非近代的な、また、能率、生産性の悪いところで自動車の部品をつくっておるということは、信頼できないような気もするほど程度の低いところがたくさんあるわけであります。したがって、私は、現在中小企業庁が進めておる業種ぐるみの構造改善政策の一環として、この部品工業の業種ぐるみの近代化政策を進めることが必要ではないかというふうに考える次第であります。このために、現在の機振法の抜本的改正を行なう必要があると思いますけれども、これに対する考え方を明らかにしていただきたいと思います。
  128. 高島節男

    説明員高島節男君) 現在の機振法のとらえどころは、やはり自動車の部品で申しますと、一次中心になってまいると思います。したがって、これを中心にテコを入れていくということになりますが、御説明いたしましたように、そうすることが、結局、二次、三次の企業というものはこれに密着をいたしておる関係に立つわけでございますから、二次、三次企業それ自身として援助措置を講じていくというよりは、やはり部品メーカー自体が、いかように一次の部品メーカーとしてあるべきかというところが、構造的にはっきり把握されるということが大事ではないかと思います。したがって、やはり相当小さな業界に対しましても、これはと思うところは、中小公庫等から資金の援助をいたしておりますが、やはり基本の場合には、開発銀行の融資対象になる程度のところでとらえまして計画を立てていきませんと、計画としてやはり根本的なものになり切れないという悩みをしょっております。ただ、一般の零細企業対策として考えます際に、零細企業の段階だけをとらえてはぐあいが悪い、総合的な一つのシステムを考えて、その中で生かしていかねばならぬということ、これはもうまことにごもっともだと思いますし、その点は異論はないわけでございますが、最近、そういう観点も含めまして、自動車部品企業で関連中小企業というものの研究会というものを持ちまして、部品メーカー、あるいはさらに進んでシャシーメーカーの動向というものも、一番トップでございますが、これのあり方も影響いたしてまいりますので、そういう分野で構成をいたしまして、そうして、いま申し上げました一次部品のあり方と、そのさらに下請になるところの分野との間に、いかような動き方を持っていったらいいか、いま一歩具体的に掘り下げてみたいという動きをすることにいたしまして、官民合同の研究会を持とうということに相なっておる次第でございます。
  129. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 最後に、物品税をはじめとする自動車諸税に関する問題についての質問を行ないたいと思います。  資本の自由化を目前に控えまして、産業の体質を強化するため、やはり生産規模の拡大ということが非常に重要な点となってまいると思います。しかし、最近、税制面において、自動車の需要を抑制するような税の設置、あるいはそれに対する論議というものが行なわれつつあるように思います。たとえば、七月一日より自動車取得税が実施されておりますけれども、七月の登録台数は、六月に比べて三六%の減、昨年同期比三七%の減となっております。また、軽自動車においても、これも同様の傾向があらわれておる。これが一次的な現象でとどまるかどうかは、今後の推移を見なければわかりませんけれども、このような税制というものは、産業の体制整備の促進措置とは逆行するものであるということは事実であろうと思います。最近、貨客兼用車、すなわち、バンに対する物品税の課税が云々されておるように思いますけれども、この観点から考えて、私は、このバンに対する課税をするということは、やはり現在資本の自由化を目前に控えた自動車工業の体質改善に対しては、これを妨げる役割りというものを持つのではないか。また、バンに課税をする根拠としては、バンがレジャーに使われておる、したがって、乗用車の要素もあるから課税を云々だという論議もあるようでありますけれども、しかし、バンの使途の主体はやはり事業用であります。特に中小企業中心として、生産財として使われておる。たまたまそれが日曜日においてレジャーにも使われておるということは、言うならば、日本の消費形態の後進性を示すものでありますけれども、これがために、バンに対する課税をするという根拠は非常に薄弱ではないか。むしろ、バンに対する物品税の課税が、日本経済、特に中小企業の経営者には、物価面に及ぼす影響も少なくないというふうに考えるのであります。したがって、この種の税金の問題につきましては、資本の自由化を前にした自動車工業の体制整備の問題と関連して、慎重な配慮をお願いしたいと思う次第であります。これに対して大蔵省の御見解をお伺いしたいと思います。
  130. 高島節男

    説明員高島節男君) 大蔵省からもお見えになっておりますが、基本的な点につきまして私の考え方を申し上げまして、補足をいたしていただきたいと思います。  税と自動車の再編成と申しますか、この関係は非常にむずかしい問題で、私個人としても、いろいろな点で迷うことが多いわけであります。すなわち、いま申し上げましたような事情から、資本の自由化あるいは関税等においては、相当の保護をやってまいっており、その結果、自動車業に対し、これは景気の情勢いかんにもよりますけれども、相当の所得がふえてまいっているということは事実であります。それによって自動車業界としては、当然設備投資等に振り向けまして、近代化、合理化を進めているという状況でございます。全体の国民経済の中での公平といいますか、そういう観点からといいますと、現在の自動車の伸びぐあいというものに対して、やはり苦しい財源の中からは、いろいろな意味でこれに対する要求が出てくることもまた必然であろうかと思います。ちょうど七月の売り上げが落ちたというのは、逆に言いますと、自動車取得税というものが、いま私が申し上げましたようにいろいろな角度から、道路の財源たることをねらいとして、財政上の理由から取られることになった。これらについては、いろいろ角度から議論もあるようでございます。その結果、ちょうど税金のかかる前に出荷をしているという傾向にどうしてもなりまして、六月と七月の間に断層ができたというような感じ動きぐあいに最近なっておりますので、これは一時的な現象として、税のショックというものは、ならされていくのではないかかという感じを持っております。産業情勢は、やはり自由化に迫られる立場から申しますと、これはもっと税金は軽いほうがいいにきまっておりますが、片方の財政の立場あるいは税金の中の均衡論というものからまいりますと、その点は簡単に結論がつけられないというような面が総論としてあるかと思います。  それで第二に、具体的にバンというものについてどう考えるかというところでございます。これは非常にむずかしい問題で、いろいろわれわれの中でやってみましても、議論がいろいろと出てくる、乗用車なのかトラックなのかというような観点から争われるわけでございますが、乗用車としての性格を相当持っているのではないか。いや、荷物を積んでかなり貨物輸送的にやっているのだから、乗用車にかっこうは似ておっても、これはやはりトラック並みの扱いであるというような辺が、いろいろとそのときどきに議論が出てまいります。われわれとしましては、乗用車と性格の差、あるいは使用面の実態、あるいはユーザーにおいてかなり中小企業のウエートが多いというような事情も考えまして、バンに対して税金をかけることは、慎重にやらなければいかぬと考えておりますが、一方税制調査会等では、むしろ負担の公平といいますか、アンバラ是正といいますか、そういう見地から、これはやはりひとつ考えるべきではないかという御意見もありまして、この辺いろいろと見解の分かれるところでございますので、今後大蔵省のほうとよく御連絡をとりつつ、調整をして慎重に考えたいと思っております。ただ、現在直ちにこの問題が起こってくるとは思いませんが、当然そういう議論のある問題ではなかろうかと思っております。
  131. 田辺昇

    説明員(田辺昇君) お答え申し上げます。  ただいまお話のございました貨客兼用車、いわゆるライトバンの課税問題につきましては、具体的に検討がされているという段階ではございません。ただいま重工業局長からお話がございましたように、現在物品税の課税されておりますものにつきまして、課税されていないものとの間の課税上の公平というものが、いろいろな角度から検討されまして、過般税制調査会の答申が出ましたが、その中にも、かつて課税されて、現在課税されていないもののみならず、現在課税されていないものと現在課税されているものとの間に、明らかにバランスのとれていないもの、たとえばというようなことで触れている点がございます。事実、昨年暮れ、税制調査会の委員の方々の御審議された中に、乗用自動車、また、オートバイに課税されておりまして、なぜライトバンに課税されておらぬのか、という角度からの検討がなされました。その理由は、貨客兼用車と申しましても、その車の使用なり、それからメーカーのテレビ、ラジオの宣伝を拝見いたしておりますと、何やら乗用車の点を盛んに宣伝されておるのではないかと見られる点もございますし、さらに、実際に乗っておられる方が、特に最近海べなどに行きますと、相当数の貨客兼用車が見られるというような実態関係が、はたして全然課税されなくてよろしいかという角度からの議論で取り上げられたかと存じております。しかしながら、お話のように、いわゆるライトバンにつきましては、中小企業の方が使っておられるという事実もまた明らかでございますし、さらに大きく問題を取り上げられた、お話のような今後の自動車産業自由化を控えた場合の体質改善という議論も、直接的にはつながらぬと思いますが、そういうことをも考え、税制調査会の答申なり、その審議経過とのからみをつなげながら今後検討を続けていくことになるかと思います。
  132. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は、休憩前の当委員会で、椎名通産大臣に私の質問をしてしまっておるわけですが、椎名通産大臣に対する質問に至るまでの過程の質問をこれからいたしたいと思います。非常に質問がさかさになっておかしなことになりますが、その点はよく考慮して答弁していただきたいと思います。  最近、先ほども申し上げましたように、クリスマス用電球製造業界で非常な問題が起こって、六人の自殺者を出すというような、そういう悲惨な状態になっておるわけなんですが、クリスマス用電球製造業界の最近の事情を、通産省はどういうふうに把握していらっしゃるか、ひとつ詳しく述べていただきたいと思います。
  133. 高島節男

    説明員高島節男君) 私から概略申し上げまして、行き届きませんところは次長から補足をしていただくようにいたしたいと思います。  クリスマス用電球業界の最近の状況といたしましては、午前中にお話がございましたような事件というものが、はたして表象的に結びつくかという点は、私は若干疑問があるかと思います。それは情勢が悪くなりましたのは四十二年の夏ごろから、確かにこれは売れ行きも、輸出の数量も減って、それから値段も下がりまして苦境に落ち込んでおります。御指摘のような事情が起こりましたのが四十二年の五月ごろといいますので、これはクリスマス電球だからということで、まあ一般的ないろいろ借財その他での不振問題というのか、そこいらはなかなかわからないところはあるかと思いますけれども、一般的な考えといたしまして受けております印象は、非常に苦境にこれは立ってきている状態ではないかと思います。  実は昨年の秋でございましたか、クリスマス用電球業界は、かなり一時値段が上がりましたので、それに幾ぶんつられた傾向もこれはございまして、生産調整を従来とっております。それから、輸出入取引法での輸出の規制もやっておりますから、その両方をやめたいという強い御要望がございました。私どものほうは、係官を数次にわたって派して、これは一時的な現象でやめるということは、悔いを将来に残すぞということで、一生懸命これはなだめるようにいたしたわけでございますが、しかし、生産者の筋も、また輸出業者の筋も、それぞれたくさんおられますし、利害関係はいろいろ複雑でございます。そのために、なかなかそこがおさまり切れない。それで少し形勢がよくなりますと、そういった規制のワク内に入ることはなかなかむずかしい。また、過去におきましても、これは前任者等からいろいろ聞いてみますと、これくらい苦労をする業界はないといいますか、業界も苦しいだろうけれども、役所もこれくらい話をまとめるのに骨の折れるところはないという印象をつくづく漏らしておりまして、先行きの情勢は悪いにかかわらず、やはりそういった統制なり何なりがうまくいかない。やっておっても歩どまりが非常に悪いというような情勢で今日に至っておるわけでございます。したがって、海外の相場次第という動きが見られまして、非常にその点は心配であると私は思っております。それが最近の情勢でございます。確かに買いたたきというような問題も国内的に見るとある。と同時に、なぜ買いたたかれねばならないかというところのもとは、やはりアメリカにおける価格の下落、値段の下がり方というものを、よく原因分析をしてみないといけないと思います。その点は、先ほど大臣がおっしゃいましたが、安値輸出をして向こうの市場を撹乱しているのか、あるいは先方の需給が、何かの形で先方のメーカーが発展をしまして、適当なものがつくれて、代用品的に伸びているのか、あるいは台湾とか、そのほかの後進国が低賃金にものをいわせて押し出してきているのか、いずれも可能性があるように思います。したがって、値段が下がったそこの原因を、まず正確に突きとめねばならぬと思います。御承知のような中小企業業界でございますから、みずからの手でなかなかこれが状況把握ができない。それが、たまにおいでになりまして、いや、日本のわれわれはだいじょうぶだというような印象を受けられる方が非常に多いようでございますが実態はなかなかそうはいかない。その苦境、影響を非常に大きく受けるというような形でございまして、どうも現在聞くところによりますと、アメリカにかなり在庫がたまっているのではなかろうかというような感じがいたすわけでございます。  それで、四十一年のときにブームがありまして、その影響を受けて、わりあいいい判断をしたといいますか、先行きを楽観したのが、どうも残念ながら、一つの悪い材料になっているのではないかという点に、われわれも業界も反省をしなければいかぬと思います。したがって、今後、大臣が先ほども申しましたように、いよいよ特恵問題等も本格化してまいります。後進国からの追い上げも激しいも一のがあろうと思います。そういうことに備えてまいりますためには、まず業界が、一々、これは立場立場よって御意見があるだろうと思いますが、大同団結していただいて、一本の思想にまとまっていただくということが、まずいろいろな施策を講じていくときの先決問題じゃなかろうか。この点は、先ほども大臣もつくづくその点を言い残してまいりましたが、非常にむずかしい問題であると思いますけれども、われわれのほうも、いろいろのトラブルを極力なくしまして、その点もまとまりをつけていくということをしませんと、いかように体制を整えてみましても、また団体法の規制等を復活をいたしてみましても、基礎がくずれてくる、こういうような心配をいたしておりますので、いま根本的に、四十一年のブームにさそわれた体制の解散というものを再編成していくべき時期ではなかろうかという点を痛感いたしておる次第でございます。
  134. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 アメリカ国内におけるクリスマス用電球の需給状態というのですか、これはどういうことになって、どれほど電球がアメリカに必要とされ、そしてアメリカ国内においてどういう会社がどのくらいの生産をして、そしてアメリカはどの国からどれほどの電球を輸入しているか、その辺どういうことでしょうか。
  135. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 数字のことでございますので私から御答弁させていただきます。  米国の生産が各社別にどうかというのはつまびらかにいたしておりません。年間の生産数量で申し上げますと、一九六五年、四十年には約二億七百万個。
  136. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 会社は。
  137. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 会社はつまびらかにできないのですが、総計の統計といたしまして、大体八割ぐらいがゼネラル・エレクトリックといわれております。それから四十一年、六六年は約二億四千七百万個、二億五千万個ぐらいに近い数字、四十二年が二億五千万を若干オーバーするということで、この辺の生産の増加は、四十年から四十  一年に二割方増加があって、四十一年から四十二年は横ばいに近い生産数量、こういうことになっております。  それから輸入統計によりますと、六五年、四十年は二億八千六百万個となっておりまして、そのうち日本が九三・八%の二億七千万個弱になっております。ところが、その翌年の一九六六年は四億三千八百万個の輸入統計になっておりまして、日本がそのうち約四億個、九一%の輸出になっております。それから四十二年は若干の増加の四億五千二百万個、そのうち日本が三億八千四百万個、約八四・五%、そして台湾、韓国は四十年度におきましてはほとんどたいした数字ではございません。四十一年にはそれぞれ一千万個強になっております。それから四十二年は三千万個前後という数字になっております。これを総計いたしますと、六五年の総供給量は、米国市場としては四億九千三百万個ですから四十年は約五億個、それから六六年、四十一年は六億八千五百万個、七億弱ということです。それから四十二年、昨年が七億ちょっとオーバーするという程度になっております。したがいまして、先ほど局長から説明いたしましたが、六億八千あるいは七億、この総供給量がこれは過大であったのかなかったのか、この辺がまだつまびらかになっておりません。それから四十一年、四十二年の米国の生産数量は二億五千万個前後ということになっておりまして、本年に入ってこれが増加したのかどうか、この辺の検討も必要だろうと思います。  それから台湾、韓国の本年に入っての生産、輸出状況がどうかという点もあろうかと思いますが、これは、聞くところによりますと、それほど増加しておらない、最近の価格の低落によってむしろ控えようとしておるというような情報も聞いておりますが、この辺の事情も調査の対象としては明確にする必要があると思います。
  138. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 大体アメリカ国内の一年間の需要は七億個見当と見ていいんじゃないかと思います、いまの話で。そのうち四億個前後が日本からいっておる。そうすると、大体二億五千万個ぐらいの中の八割がGEの製品だということになると、アメリカではGEの製品が非常な多数を占めておるということになろうかと思うんですが、GEは一体建て値はどのくらいになっているんですか、GEの建て値は。
  139. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) いま須藤先生のお話で、六六年、六七年は、大体アメリカとしては需要が七億個と推定されるとおっしゃいましたが、これは実は供給数量でございますので、需要として七億かどうかというのは、調査の対象として必要だというふうに考えております。それからGEが二億個前後の供給になるということでございますが、そのとおりだと思います。この価格はどうかということにつきましては、大体通常の輸入価格より一割ぐらい高のところで安定しておるというふうに聞いておりますが、この辺もはっきりしていませんが、一割高くらいと聞いております。
  140. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 一割高というのは日本のですか。どこの一割高ですか。
  141. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 通常の輸入価格ということでございますので、これはいまのように下がりますと価格差はだいぶ大きくなると思います。
  142. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 わかりました。  そうすると、GEの建て値と日本の輸出の値段とでは、もう今日では相当に開きが出ていると思うんですね。GEの価格が安定しているのに、日本の輸出だけが何でそんなに価格が変動して安くさせられなければならないのか、どこに原因があるんですか。
  143. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) その辺は明確にする必要のあるポイントだと思いますが、GEはクリスマス用電球のメーカーであると同時に、これを組み合わせてセットにするメーカーでございまして、しかも大手の卸売り業者である。自分でセットにしてそれを売るということまで全部一貫してやっておるわけであります。したがいまして、GEの価格が安定しておるのに、日本の輸出価格はかなり変動するという点につきましては、向こうが一貫だという点が一つの要因だろうと思いますが、この辺は市場調査一つの大きなポイントだと思います。
  144. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 対象がずっとたくさん出てくるんですが、あなたのほうは何も調査していないということになるんですよ。調査しなければならぬという問題がたくさんあるわけですよ、いま話している中でも。ところが、調査の結果というものが一つも報告されない。これは調査の対象でございますと言うけれども、それじゃ少し通産省として不勉強じゃないですか。やはりそれをもっと積極的に調査して、日本の業者が困らないようにしていくこと、それが重要なあなたたちの仕事じゃないですか。何だか話を聞いていると、たよりないですよ。どうなんですか、その点は。
  145. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 最近の価格の低落、先般の調整事業の廃止後におきましてクリスマス用電球の輸出事情、価格の変動が非常に大きく出まして、その辺の調査をジェトロを通じて行なうということにいたしておりますので、その調査結果が出ておらないので、かような御返答を申し上げておるわけであります。
  146. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そんなことは早くやらなければだめですよ。ジェトロにまかして、ジェトロを通じて調べるのもいいですけれども、いつまでたっても調査結果が出てこないというようなことでは、日本の業者にとっては非常な不幸なことだと思うんです。だから一日も早くその結果を出して、それに対する対策を通産省として出すことを私は要求しておきます。  日本の電球が非常に安く買いたたかれるという一つの理由として、私はこういうことを聞いておるんですが、どうなんですか。そのGEの電球をセットする業者と、それから日本の電球をセットして売る業者とが競争した結果、日本の電球をセットする業者が負けてしまった、そのために日本の電球が非常に安く買いたたかれることになったということも、私はちょっと耳にしておるんですが、どうですか。
  147. 本田早苗

    説明黄(本田早苗君) はなはだ申しわけありませんが、先生のおっしゃるような情報は得ておりますが、その点はっきりと調査の結果として握るところまで至っておりませんが、そういう話は聞いております。
  148. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もう一つ日本のメーカーの非常に大きいところに理研真空工業というのがありますね。これは日本クリスマス用電球のメーカーとしては最大のメーカーであると同時に、このメーカーは、メーカーだけでなしに貿易業も兼業しておるということなんですね。ところが、最近GEと三井物産、こういうところが一つの結びつきをつくって、それで理研真空工業という会社を使って日本クリスマス用電球の値を引き下げるという、こういう工作をしておるのではないかということもいわれておるのですが、これに対して通産省はどういうふうに考えておりますか。
  149. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) いま仰せのメーカーが、物産を通じてクリスマス用電球以外のものの取引をしておるということは聞いておりますが、クリスマス用電球についての話は聞いておりません。
  150. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 クリスマス用電球なんというのは、これはほんとうに何かお添えもののようなかっこうで、三井物産ともあろうような大きな貿易業者にとっては、ほんとうにたいしたものじゃないだろうと思うのですよ。ところが、そういうことでGEとの間に結びつきができて、そして理研真空工業を通じて日本の電球を非常に買いたたいているのではないかと、こういう疑いが持たれておる。まだ調べがつかないならば、この点もあなたのほうで積極的に調査してもらいたい、こう思います。  それで、日本の輸出業者のおもなものは、一体どのくらいあるのですか。おもなものでいい。名前だけわかっていたらちょっと言ってください。
  151. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) いま名前は明確にいたしておりませんが、クリスマス用電球のメーカーのうちの約三分の一が輸出商をかねております。そのほかに、二十ほどのものが輸出取引だけを専業にしておるというものがございますので、約八十数社ぐらいが輸出に関係しておるということでございます。
  152. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 メーカーだけやっているのは大体約百ぐらいあるのですね。三分の二。それから製造と輸出業を兼業しておる人が三分の一、こういうことだと私は承っております。その大きい輸出業者の中には理研真空工業、それから南産業、東和電業、東輝ランプ、東光産業、こういう連中があるわけですね。ところが、こういう人たちが零細のメーカーの製品を買いたたいて、そうして、要するにダンピングをやっておる。この人たちはダンピングをやっても、その下の小さいメーカーにしわ寄せしてやるわけですから、こういう連中はダンピングをやってもやっていけるのですけれども、そのダンピングの結果をしょい込まされるところの中小の下請けのメーカーこそえらい迷惑なんですね。この人たちがいま非常に困っておるということを私は言っておるわけです。三十三年の輸出には、こういう人たちが輸出のワクをつくったはずなんですがね。そのワクは一体守られておるのですか、守られてないのですか、どうなんです。
  153. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 先ほど申し上げました、昨年の秋に調整事業を廃止いたしましたが、その廃止前の調整規則では、一応輸出のワクをきめておるわけなんです。このワクの規定のしかたは、ルーズと申しますか、ルーズな内容になっておりまして、その点につきましては、そういう意味もあってのことと思いますが、調整事業の廃止というふうに結論づけられまして、昨年の秋に廃止したということになっております。
  154. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 せっかくワクをつくって健全な発展をしていこうというのに、それを業者が守らなかったということを理由に、あなたのほうでそれに対して積極的な指導をなさらなかったということは、これはやはりあなたたちの責任として問われなければならぬ問題だ。三十三年には一億五千万個というワクをつくっているんですよ。それから三十八年、三十九年には二億個というちゃんとワクが守られておったわけなんです。ところが、当時ライセンスの偽造をやった。そうしてダンピングがやられた。こういう事実があるのですが、その事実を通産省は知っているんですか。知っておったらその間の事情をちょっと話してもらいたい。
  155. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) ライセンスの偽造の話については、いま私としては聞いておりません。
  156. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そんなことは重要なことですよ。三十九年にライセンスの偽造が発覚しているんですよ。そのライセンスの偽造をやった人は、堀内電気、ここの番当さんの倉田さんという人です。倉田さんが首になっちゃったんです。それで、このライセンスの偽造を暴露したわけです。それで、堀内電気は起訴されておるのですよ、このライセンスの偽造のために。ここから非常にくずれてしまった。それでダンピングがどんどんなされたわけです。そのころから非常に輸出量が多くなった。そんなあなた方の所管にあることを通産省が知らぬじゃ済みませんよ。こういうところからやはり姿勢を正していかなければいけないのじゃないでしょうかね。それで、このダンピングを政府は知らないでは済まされない。ダンピングがなされておるとするならば、このダンピングに対する行政府としての責任は一体どうするのですか。
  157. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 先ほど先生から調整事業について、これを継続する努力を怠ったのは問題があるというふうに御指摘を受けたわけでありますが、実は、先ほど局長からも御説明しましたように、昨年秋の調整事業の廃止の結論を出す前におきまして、担当官がしばしば業界とも話し合いをいたしまして、クリスマス用電球の今後の輸出の見込みからいって、調整事業の廃止は非常に問題があるし、この継続が必要だということの説得を繰り返したわけでございますが、組合内部の御意見としては、私の聞くところでは、韓国、台湾がおいおいクリスマス用電球生産をし、輸出をする。条件のいい後進国がどんどん数量を伸ばす際に、条件が悪くなっておる日本側が数量を制限するというようなことをすれば、ますます追いつかれるというふうな考え方が、結局結論につながりまして調整事業を廃止することに相なったということで、当時われわれとしては、はなはだ残念に思ったわけですけれども、自主規制の問題が、自主的に廃止ときまったので、これは、それを認めるということに相なったのでございます。
  158. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでダンピングに対する責任は……。商売人が、貿易商が幾らダンピングしても、そんなことは通産省としてはおかまいなしに知らぬことだと、こうおっしゃるのですか。やはり、それに対する指導なりをやっていく必要があるのじゃないですか、通産省としては。
  159. 本田早苗

    説明員(本田早苗君) 三十九年のそうした事件を契機にして、値段がくずれて問題が生じたということで御指摘いただいたわけですが、四十一年におきましては、むしろ価格は非常に上がりまして、最近における輸出価格はピークをなしておるというふうに、回復したわけでございます。そしてその後調整事業について、廃止かどうかという議論が出たわけでございますが、輸出の価格について、ダンピングかどうかということになりますと、これは業界としてこれを立て直すことについて非常に熱意を持たれる問題でもございますし、われわれとしても、そうした動きがあればいつでもこれを御援助申し上げて、組合活動によって調整効果をあげていくというふうにいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  160. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もう一問。  三十三年から四十一年まではずっと好景気だったのですね。そのときは、C−7が千個について二十七ドルから二十八ドル、C−9が三十五ドルから三十六ドル、こういうふうな好景気だったわけですね。現在ではC−7が十八ドルから十九ドル、C−9が二十三ドルから二十四ドル、こういう値下がりになってしまったですね。この値下がりのしわ寄せが全部中小企業のメーカーの側に寄せられておるわけですが、だから私は朝も申しましたように、どうにもならなくって、負債をかかえて子供を養っていけないような状態になって、六人の者が自殺をしたというわけです。すなわち、これは、このような無理な出血輸出ですね、そこから起こっている悲劇ですよ。この出血輸出に対して、どう通産省は対処しようとしておるのか。この六人も犠牲者を出しているこの業界の苦難に対して、通産省はどういう措置をしよう、どういうふうに援助をしようと考えているか。まあ中小企業庁長官として、ひとつはっきりとこの際述べていただきたい。朝、通産大臣意見は伺いました。通産大臣は、業界が分裂しているから困るのだ、だからまずやってもらわなければならぬことは、業界が一本になってもらいたいのだ、そうすれば通産省としても配慮します、相談にも応じましょう、こういうことを通産大臣は言っていました。まあ当面の責任者である中小企業庁長官としては、一体どういうふうに——この出血貿易をこのままでほうっておくのか、そしてこういう悲惨な状態をいつまでこのまま放置するのか、どういうふうに対処しようとするのか、その点最後にはっきりと答えておいてください。
  161. 高島節男

    説明員高島節男君) 中小企業庁長官おりませんので、私から貿易問題としてお答えをいたします。  ダンピングかどうかの認定というものは、これ非常にむずかしい問題でございます。海外のいま市況というものが、一体どういう原因でこういうふうに低迷をしておるか。いま先生おっしゃいました七億個というものが供給された事実がございますが、その供給がむしろ過剰で在庫でアメリカ側に残っているのではないか、そのあたりをよく突きとめてみないと言えない点でございますが、出血輸出をしなければならぬというのは、もちろん、その商社自身の過当競争にもよるわけでございますが、その商社の中に過当競争があるような面では、これはさらにわれわれのほうとしても呼びかけまして、そして極力規制の体制に持っていきたい。また同時に、メーカーのほうもそれと歩調をそろえて全体の体制として調和のある協調というものがとられるようになっていかなければならぬかと思います。特に商社側のほうでしっかりワクをはめて臨むということになりますと、逆に、場合によってはメーカーに対して強く当たる力も出てくる面もございますので、そのあたりは総合的に、メーカー側のほうも、過剰な生産にならないように、商社側のほうも、売り込みでダンピングにならないようにという両面のほうからこれを見ていかねばならないかと思います。したがいまして、海外の値下がりの原因というものをもう少し——これは調査不十分でまことに申しわけございませんが、われわれは徹底的にこの機会に洗ってみたい。  それからさらにこの秋は、実は口がすっぱくなるほど、輸出体制の解除あるいは生産調整の解除ということについては、時期尚早である、もっと模様をおながめなさい、四十一年度に価格が上がったものは、そう長続きするものではない、これからいよいよきびしくなりますということは、いろいろ説いたわけでございますが、現在の体制といたしましては、業界の底の協調が基礎になって政府が乗り出してまいるという形にならざるを得ないし、それがまた限界でございますから、その点を申し上げたのですが、おそらく業界でもこのままではいかぬというお気持ちは現在あると思います。それと、さらにアメリカ側のほうの実情と照らし合わせまして、今後この問題を、何とか価格の安定、業界の秩序の立つ体制に持っていって善処をはかりたいと考えております。
  162. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 朝、大臣にも同じような意見を述べました。低利、長期な金融をして一応困難を救済すべきじゃないかという意見を述べました。そうしたら大臣は、一本になっていろいろな話を持ち込んできてもらいたい、そうしたら相談に乗ります、応じますという意味の答弁をしていらっしゃるわけです。実際これは今日苦しいのです、この人たちは。だからそう長く役所としてもほうっておくわけにいかないと思う。これは今日ほんとうに自殺しなければならないようなところへ追い込まれている。この苦しい人たちを今日どういうふうにして救うかということです。どういうふうにして援助するかということです。これは切実な問題だと思う。そんな余裕のある問題と思わない。だからそういうふうに切実に考えてもらいたい。役所はのほほんとして、調査しておきますとかなんとか言って、そんなことで済む問題ではないでしょう。だから役所としましても、この人たちのことを考えて、至急にとにかく有効な手を打っていただきたい。こういうことを私は申し上げて、これで質問を終わります。
  163. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 だいぶん暑いですから簡略に質問をいたします。  先般佐藤・ジョンソン会談が行なわれまして、その際、共同コミュニケが出ております。その中に、「総理大臣と大統領は、増大する世界の人口のための食糧源として、また鉱物資源として、海洋の重要性が高まりつつあることを認識して、天然資源の開発利用に関する日米会議を通じて、海洋資源の利用のための調査ならびに技術開発の分野で日米両国の協力を一層拡大する手段を求めることに意見の一致をみた。」かようにあります。その後さらにことしになりましてから、ジョンソン大統領からの特別教書を発表いたしまして——海洋資源の調査についての教書を出しまして、その中に、やはり「日本との海洋科学面での協力を強く要望し、期待している。」かように述べているのであります。先般長官は、宇宙開発並びに海洋資源の問題で渡米されたんですが、そのときの実は状況をお聞きしたかったのですが、その機会を得ませんでしたので、きょうは、幸いこの委員会に御出席をいただきましたので、簡単でけっこうでございますから、それらの状況をひとつお知らせいただきたいと思います。
  164. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) 海洋開発につきましては、いま大谷委員が言われたとおりでございます。簡略に申し上げますと、アメリカは、昭和三十六年前後からこれに関心を持って委員会等をつくっておりましたわけでございますが、その後、昭和四十一年になりまして、海洋開発の——正確に申し上げますと、   〔理事剱木亨弘君退席、委員長着席〕 海洋資源技術開発会議というものを設けまして、ハンフリー副大統領を委員長に、各省庁の長官がそれにならいまして、まあいわば中枢的仕事をして海洋開発に乗り出すという形をとっておるわけでございます。それは、大体海底資源の開発、その海底資源の事業化、あるいは利用するところの海洋土木といいますか、海洋工学、そういうものの開発という点に重点を置いております。しかし、日本におきましては、ずいぶんおくれておりまして、協力といいましても、実をいうと、いまいった点はアメリカから教わるといいますか、学ぶ点が多いわけであります。アメリカのみならず、フランスも進んでおりますので、そこで日本におきましては、一応佐藤・ジョンソン会談のあとを受けて、日本海洋開発をどういうふうに持っていくかということを考えながら今日にきておりますが、一応四つに分けております。  その一つは、海洋開発というものは非常に広範でございますから、その第一点は、御承知のとおり、海流とか海洋気象とか、黒潮とか寒流とか暖流、そういったいわば調査及びそれに伴ういろいろな利用計画を考えていく、これは今日まで相当行なわれておる。第二点は、水産関係でございます。漁獲あるいは養殖、増殖あるいは海底牧場といわれるいわば大陸だなを開発して、そこに海産物をつくっていくといったようなことでございます。第三点が、実をいいますと、いま問題になっておる海底資源の探査と、それをいかにして開発していくか、利用していくかという問題で、これは日本はまだほとんど手がついていないという実情であります。第四点は、それを行なっていくために、海洋土木あるいは海洋工学の開発でございます。  その中には、アメリカのシーラブ計画といわれておる、いわば海底実験室あるいは無人操作をして土木事業を行なう海底居住というよういろいろな問題がございますが、これは行なわれておりません。まだ日本としては手をつけていない。そこで、そういう点の問題を実は指摘いたしまして、私は、先般渡米いたしましたのは、第一回の日米原子力委員長会談に参りまして、主として原子力高速増殖炉の開発関係の交渉に行ったわけでございますが、その後におきまして、アメリカの内務長官のユードルに会い、それからユードル長官のあっせんでアメリカの海洋開発関係の人々に十数人集まっていただきまして、そこで日本の段階を申し述べまして、これに対する協力体制をまあお互いにやろうではないか。——簡単に申しますが、アメリカのほうでは、海洋気象や海流方面調査、探査は、これはある面においては、日本に学ぶべきこともあるし、お互いに協力できる態勢にある。それから水産資源、特に養殖、増殖等に関しては、場合によっては日本のほうが進んでおる面がある。アメリカのほうはそこまでしなくても、魚がいるものですからいいということもございますけれども、少なくとも彼らにとってみれば、日本のほうが養殖、増殖、そういった点は進んでいるような気がする、学ぶ点が多い。そこで、海洋の資源開発と海底、海洋の工学、土木といったような技術的な開発の点については、お互いにこれは協力しようということで、私のほうの科学技術庁の、前に資源局長をしていました鈴木審議官を担当官に任命し、アメリカはユードル長官がすぐアメリカの、スクリップスの海洋研究所がございますが、そこの前の所長をしておられたシェーファーという人、内務省の顧問です。それを任命されまして、実は八月の初旬からこれの具体的な問題について、もうすでに会談を行なっておるわけでございます。一応会談は終わりましたが、アメリカに持って帰って、具体的な日本との交渉は、おそらくこの秋に大体協力態勢をきめてくるということになるかと思います。そのようなことでようやく、実は海洋開発として政府としても取り上げてこれを実行しようという段階に現在至っているわけでございまして、わが国では海洋審議会というのがございます。この八月にこれのちょうど任期がきて改選期でございますので、八月中に海洋開発審議会を発足させて、それに基本的な機構の問題、あるいは体制の問題及び今後の海洋開発の長期計画等の問題、それ等を至急におはかりして、一方アメリカにおきましては、今度の会談による技術協力の点をこの秋にきめていって、至急に日本海洋開発を軌道に乗せてまいりたいという段階に至っておるというのが現状でございます。
  165. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 よくわかりました。  そこで、フランス、イギリス、それからソ連等の海洋開発に対する現状、これも簡単にひとつ。
  166. 梅沢邦臣

    説明員(梅沢邦臣君) 海外のことでございますが、まずアメリカにつきましては、大体いま大臣が申し上げましたが、いわばシーラブ計画が進んでおりまして、海底居住も、三十人の者が約六十二メーターのところで三十日ぐらいいられるという計画、それから第三次計画をいまやっておりますが、その関係でいいますと、約二百メーターのところで、それくらいの滞在をして作業できるというところまでの研究は進んでおります。そのための測定器そのほかの開発をいま進めております。その実施をやっております会社は、やはり宇宙関係会社が二百ぐらい関係している、そういうふうなことがいわれております。ただ、フランスにつきましては、実はアメリカより一年前に、ドゴールの宣言に基きましてやり始めました。最初のところは、御承知のバチスカーフで非常に深いところの研究をやりました。その後、大陸だなの調査を始めました。これも大体アメリカと同じように、海底居住というところから進んでまいりまして、あと調査船の開発、その点大体私たちの見ているところでは、アメリカより劣っていない程度の進み方をしていると思います。それから英国では少しおくれております。英国は教育省のほうに委員会がございまして、その委員会の中に、海洋関係の部会ができております。その部会の中で計画を少しずつ進めておりますが、現在その体制を整えておるというところのように感ぜられます。それにつきましては、海洋をやっているということはよくわかりますが、まだ私たちのほうに、どういう計画でどういうところをやっているかという明細はございません。しかし、海洋については、相当のところまで研究を進めているというのが現状だと、そう思っております。
  167. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 そこで、いま長官から、日本のほうはまだ緒についたばかりだというお話ですが、先般経団連でも、海洋開発の懇談会をつくるという、ようやく財界の諸君も目が開いてきたようなことですが、アメリカなどと比べますというと、非常にテンポがおそいわけなんですね。日本としましては、四面ことごとく海でありまして、大陸だなの面積は本土の八〇%に及んでいるといわれております。その大陸だなの水産並びに鉱物資源の開発利用は、この狭い国土と乏しい陸上資源にあえいでおりますわが国の面目を一新いたすものであり、ひいては海洋国としても一大発展の道を開くものだ、そのように私は以前からかたく信じているわけであります。先般、科学技術庁の予算で海上保安庁ですか、調査船が建造されることになりまして、まことに喜んでおります。民間でも、さすがに読売新聞の正力さん、先見の明があって、すでにもう数年前から調査船をつくっておられる。そのほか、民間でもそれぞれ努力をしておるという状況ですが、いま申しまするような、わが国としましては四面海であり、その国土の八〇%の大陸だながあるという、それこそ金・銀・サンゴ・あやにしきがどっさり幾らでもあるように思われる。海洋資源をほうっておくという手はないと思うのであります。したがって、幸いアメリカとの協力を要請されておりまする今日ですから、大いにひとつ科学技術庁としては指導力をとって、いまもうこの説明をいかがと思ったのですが、これであまり時間をとりますからやめますが、各省ばらばらでやっておいでになるようであります。したがって、これは科学技術庁でひとつ一元化をしていただいて、そうしてもう実行時代にこの海洋資源の開発というものは入っているわけです。もう空理、空論の時代ではなしに、海の中にもアパートができるかもわかりませんというような状況でありまするので、ぜひともひとつ宇宙開発と同時に、海洋開発に関する一元化を政府にもお考え願って、もう予算もおそらく本年度は各省あわせてどのくらいになりましょうか、それをちょっとお知らせ願いたいのですが、したがって、来年度はどのくらいの予算を要求なさるつもりか。アメリカなどは、もういま長官のお話しのように、三十六年からやっているというのですから相当膨大な予算を立てていると思うのであります。しかしながら、まだまだアメリカといえども、これは十分な業績を示しておらぬと思いますので、日本がおくれてはおるけれども、ひとつこれから大いに力を入れていただいて、来年度の予算編成を前にして、ぜひともひとつこの問題に取組んでいただきたい、かように思います。その点についてひとつ伺います。
  168. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) いま大谷委員の言われたとおりでございます。  今年度の予算は、大体、全部各省関係取りまとめまして約三十億前後でございます。そこで、いま言われました機構、体制の問題でございますが、四月で実は海洋審議会という既設のものの任期が切れております。そこでどうしてもこれの再発足を今日まで、いろいろ選挙等があっておくておりますが、少なくとも八月には新しい委員による海洋審議会をこれは内閣直属で、総理大臣に対する答申をする審議会でございますが、これを発足させまして、しかも、その委員の方の中には、まあいままでは概して言えば、水産関係、あるいは海流調査、海洋気象といったような方が多かったわけでございますが、やはり今度の委員構成の中には、すでに経団連でも委員会をつくられておられますように、実際、資源の探査であるとか、あるいはその探査をし、利用していくいわゆる海底土木工学技術といったような面の方々等も入れまして、そうして新しい一つのその中枢部をつくってまいりたい。そういうことによりまして、いま言われました日本周辺の大陸だな開発、特に日本の場合は、石油資源が一番大事であろうと思います。うわさによれば、外国の大きな商社が十数億の金で石油資源の探査に本格的に乗り出したいと考えておるような、今日、日本の周辺の海は、だいぶよそから目をつけられておる状態でございます。したがって、そういうことに積極的に乗り出していくようにしていきたい。まあ予算がどのくらいになりますか、各省に分かれておりますので、やはり科学技術庁としては、海洋開発予算の取りまとめという形を最初はしていかなくてはならぬ。そうして足りない分は、特に土木工学の面であるとか、そういった点には独自の予算を組んで、やはり開発に乗り出さなくてはならぬと考えております。なお、本年度調整局に特別研究調整費というものがございますので、それから、数千万円になりますか、一億になりますか、出して、少なくとも富山沖の海底資源、特に石油資源の探査をひとつ行なってまいりたいと考えておるわけでございます。なお「しんかい」という海底六百メートルまでもぐってある程度調査ができる船をつくっております。本年進水をしまして、本年秋過ぎに引き渡しになるかと思います。これは海上保安庁に委託をして、そうして海上保安庁と共同でこれに乗り出しますが、実際にこれがまあいわば役に立ってくるのは、もう一年あとになるのじゃないか。一年間は、もちろん調査もし探査もしますけれども、何せ六百メートルぐらいまでもぐらせるための安全性の問題であるとか、あるいはいろいろ居住性とかといったような点、十分研究をしながら、実際に使う段階まで入っていかなくてはなりませんので、そういうことで、今年度といいますか、昭和四十四年度予算にはそれに付随する母船といいますか、この「しんかい」という海底探査船——潜水船ですが、それに伴う母船を海上保安庁の御協力を願って借りるか、つくるか、とにかく何とかしなくちゃならぬ。そういたしますと、海洋開発予算等も相当多額になってくると思いますので、これはまあ大蔵省との今後のかけ合いでございますけれども、三十億ぐらいの金ではとても足りやしないと考えます。
  169. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 どうぞひとつ大いにがんばってやっていただきたいと思います。お願いいたします。涼しくなりましたらまたさらに質問をいたしますが、きょうはこれでやめておきます。
  170. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 塩出でございます。どうぞよろしくお願いします。  私は、原子力の安全性というものについて問題をしぼりまして、長官並びに関係の方に御質問したいと思います。  これからどんどん原子力というものが開発をされてまいるわけでございますが、先般内閣の広報室が世論調査をした結果が新聞発表になっておりましたが、その結果によりますと、国民の大多数が原子力というものに非常に恐怖を感じている。そうしてまた、自分の家の近くに原子力発電所ができることに非常に反対だ、そういうような人が非常に多いわけであります。今後の原子力の平和利用という面から考えるときに、われわれとしてはあまり好ましくないことではないか、そのように心配をするわけでございますが、そういう点に関しまして、どのように考えておられるか。そうしてまた、そういう問題に対して今後どのように手を打っていくお考えか、それをお伺いしたいと思います。
  171. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) 原子力の問題につきましては、ただいま御指摘のとおり結果が出ております。中にはいわば発電用の原子炉が爆発するものだとお考えになっている方が二〇%前後もあったというようなことで、その結果にはわれわれは十分反省しなければならないと考えておるわけでございます。で、もうすでに御承知のことで申し上げるまでもございませんが、日本のわれわれが担当しております原子力の問題は、あくまで原子力基本法にございますように、平和利用であること、そうして自主開発であること、それから民主的運営をすること、その結果はすべて公開をする、自主・民主・公開というこの三原則の根本は、平和利用であることを原子力基本法はうたっておるわけでございます。したがって、それに基づいて日本の原子力開発を、たとえば発電であろうとも、あるいは原子力商船をつくる場合でも、ラジオアイソトープのいろいろな利用の場合におきましても、これを基本にしてそれから以外には出ないわけでございます。その点の御認識といいますか、それをまずどうしても国民の方にしていただかなくちゃならぬ。さらに原子力発電をやっていく場合、あるいはラジオアイソトープを利用して、きょうも新聞に出ておりましたが、新しい品種をつくっていくとか、あるいはいろいろ医学に利用するとか、そういった場合等におきまして、確かにいま御指摘のとおり十分認識がございません。まあPR費用として千万円前後をもってあらゆる機会に実は。パンフレットをつくりお話をし、進んでおりますけれども、ともすれば、日本の特別な事情とも申しましょうか、いわば原子爆弾を連想されるということになりまして、この点は、まことに私としては遺憾にたえない次第でございますので、何としてもそういった点の御理解を国民にしていただく、そうして次の段階において原子力を平和利用していくんだ、それなくしては、やはり今後日本の電力事情も十分でありませんし、あるいは商船、原子力船にしてもラジオアイソトープの利用にしても、あるいはそれは医学、農学、工学に利用しておるわけでございますから、日本の技術水準というものが世界に進んでいくことができないということにつきましてPRをする、そうしてわかっていただくということに全力を尽していきたい。具体的にはいろいろあろうと思います。しかし、まあ千万円くらいの予算では足りませんけれども、来年度はさらにこの予算をふやして、PRの費用にしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  172. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 PRももちろん大事であると思いますが、私はそれとともに現在東海村に原子力発電所等がすでに運転が始まっておる。そうしてまた福井県のほうにも建設されておると聞いておりますが、そのような原子炉が非常に安全であると、そのためにはやはり断じて事故を起こしてはならないと思うわけであります。ところが、最近新聞等におきましても、あの東海村の原子試験炉の配電盤等が事故を起こして、そうして炉がとまったとか、また大洗の材料試験炉の水漏れがあった。そうして運転がとまった、そういうような事故が非常に新聞等で大きく出ておるわけであります。やはりそのようなことがあったんでは、幾らPRをしても結局国民としては不安がぬぐわれない、またそういう事故に対しても、じゃ事故の原因が一体どこにあったのだ、そういう点につきましても、ただその事故のときにぱっと記事が載るだけで、あとは何ら解明がなされていない、そのように思うわけでございますが、最近起こったそういう事故の内容といいますか、そういう点について御説明を願いたいと思います。
  173. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 最近におきます原子炉施設関係の事故の模様につきまして御説明を申し上げたいと思いますが、ただいまお話の中にございました第一の日本原子力研究所の東海村におきます配電盤の事故と申しますのは、原研に二台目、第二番目につくりましたJRR2という研究用の原子炉のコントロール関係の配線が火災を起こしました事件がございます。これは去る七月十二日のことでございました。原子炉はとまっておったわけですが、その火災につきましては所内の防災体制の組織によりまして、当夜の間に当然消火作業は終結をいたしたわけでございます。幸いにしまして、原子炉本体に及ぶ事故でございませんので、放射能災害には至らないで済んだということは幸いであったわけでございますが、いずれにいたしましても、このような事故が起こりました場合に、夜間でありましても、もう少してきぱきとスピーディに処理ができるようにまだ改善の余地があるということをわれわれも認めまして、原子力研究所に対しましては、今後の改善につきまして厳重なる要請をいたしておるところでありますが、原子力研究所においても、当然その原因の探究並びに復旧の努力、それから今後の保安体制の一そうの敏速化といったようなことにつきまして鋭意努力を続けておる、こういう段階でございます。この修理には約三カ月ぐらいを要する見込みでございます。それからその原因につきましては、配電コントロールパネルの中のリレーの一部が接地あるいは短絡をしたということが原因のようでございます。そのためにその制御台のその部分が焼けたのと、それにつながっております計器用変成器の焼損を起こしたと、こういうことでございます。  それから、第二番目にあげられました大洗研究所の水漏れの件というのは、大洗研究所に現在建設中でございまして、まだ完成はいたしておりませんが、材料試験炉というのがございます。この原子炉の底のほうに、厚いコンクリートのピットがあるわけでございますが、その境目から三回ばかり水漏れを発見したということで、その後それのトレースをしておるわけでございます。水漏れは一分間数百立方センチぐらいであるわけでございますが、一時出てはときどきまた水漏れがとまるといったような現象でございまして、原因を調べておりますが、おそらくは工事中にそのコンクリートを打つときの水が、そのコンクリートの内側にステンレスのタンクがあるわけでございますが、その間にたまったものが漏れ出してきているのではなかろうかというようなことで、いまそれの原因を突きとめると同時に、そういう水をとる措置をいまいたしておると、こういう段階でございます。
  174. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 東海村の原子二号炉の原因の件でございますが、これはまあ配電盤の故障であると、私どもは、配電盤だけの故障ならば、三カ月も修理にかかることはないんじゃないか、現在動いてないのは動かせる状態にあるのか、それはやっぱり三カ月間は動かせない原因は、やはりこれは配電盤であって、炉のほうには何ら関係はない、こういうことになるのでございましょうか。われわれ考えますと、配電盤だけの故障ならばあまりたいした故障でもないし、すぐ直るのじゃないか、そのように考えるわけでございますが、その点どうでございましょうか。
  175. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 配電盤でありましても、やはり原子炉施設を動かすには必要な施設でございますので、それが完全に直った上で原子炉を運転する、こういうことに相なるわけでございます。一応施設の復旧というものは十月の十五日ごろというぐあいに原子力のほうでは予定しておりますが、それができましたら、われわれのほうでも立ち入りまして念のため性能試験をやった上で炉を動かすことを認めたいと、こう思っております。
  176. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから、この保安体制でございますが、新聞等の報ずるところによりますると、火災が発生してから消防隊が来るまで二時間かかったと、そしてまた、関係者に全部連絡をしたけれども、その関係者が一時間以上たっても一人しかやってこなかった。まあそういうような原子炉の事故であるならば、たちどころに目の色を変えて関係者が集まってくる、そういう態度が私は必要じゃないか、そのように思うわけでございますが、まあ先ほど言ったのは、新聞の報道でございますが、そういうことが事実であったのかどうか。そういう保安対策であるならば、そういう安全対策に対して非常に足らない点があると思うわけです。そういう点、当局としてどのような指示をなされたか、現在はそれは改善されたか、その点をお聞きしたいわけでございます。
  177. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 当時の模様をわれわれといたしましてもつぶさに調査をいたしました。その結果によりますと、ああいう事故が起こりました場合に、どういう体制でどういう措置をとるべきかという体制そのものはできておりまして、当直員等もそれぞれ配置されておったわけでございます。しかしながら、火災が自動警報装置によりまして発見されてから、それらのあらかじめきめられました組織並びにルールに従いまして行動する過程の敏速度においては、相当に欠ける面も認められたということは事実でございまして、今後改善すべき点があると認めましたので、原子力局のほうからも、文書をもちまして原子力研究所に対しまして厳重な警告、注意を発したわけでございます。  なお、組織面におきましても、さらに改善すべく、当直員をさらに一名をふやしまして将来に備えるというようなことも現実に行なうことにいたしておる次第でございます。
  178. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 では、まあそういう安全対策の面には一応ちゃんと手を打ったと、そのように改善されたと、そう考えてよろしいわけですね。  で、まあ非常に原子力開発も未知の世界をいくわけですから、そういう多少の事故はあるかもしれませんが、開発を急ぐあまりにその管理が非常にずさんになって事故を起こしては、冒頭申し上げましたような理由でいけないと思うわけであります。そういう点で、安全管理の点についてはさらに万全の体制をもって管理をしていただきたい、そのことをお願いする次第であります。  それで、次に、いままでいろいろそういう原子炉関係の事故はあったと思うのでありますが、そういう事故で特に爆発の危険性のあるとか、そういうような事故は、日本国内またアメリカ等においてどうであったか、その点をちょっとお聞きしたいわけでございますが、お願いします。
  179. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 原子炉が爆発事故を起こしたということは、いまだかつてございません。原子炉の性格上、原子爆弾のような爆発はむしろ起こり得ない一応性質を持っておるといっても過言でないと思います。その意味におきまして、先ほど長官の御説明の中にも触れました先般の世論調査の中に、原子炉も原子爆弾と同様な爆発を起こすと考えるか、そういうふうに思うかという質問に対して、われわれの予想以上に、そう思うという答えが多く出たというのは、われわれ実は意外に思っている次第でございます。それから爆発事故でないにしても、その他の事故につきましてどうかと申しますと、いわゆる商業用の発電炉、原子力発電所というものの原子炉の事故、放射能事故につながる事故というものは、現在日本にもございませんが、外国にもございません。ただ普通の火力の発電所等でも、かつてしばしば経験いたしましたような故障、こういうものは相当出ております。たとえて申しますれば、日本でも東海村にございます日本原子力発電所の設備につきましても、たとえば熱交換器のパイプに小さな亀裂が入って、それの対策のために数カ月工事が延びたとか、オイルポンプから油が漏れてそれが火災になったとか、それからファンのモーターに振動が多くて、それの手当てのために日にちを費やしたとか、そういったような種類のものは日本にもございますし、外国にもございます。これは過去に普通の火力発電所でも、次々と新しい技術水準のものにジャンプするごとに、しばしば経験してきたことでございまして、原子力発電所はまだその意味では技術確立のまだ初めの段階にある、こういうことで十分時間をかけて技術の確立をはかっていかなければならん面というものは残っていることは事実だと存じます。幸いにして先ほど申し上げましたような原子炉の放射線災害に関係あるような事故は、現在内外に経験しておりません。
  180. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 その事故の件でございますが、これはある資料で、そういう原子炉の爆発の危険のあるような事故が過去に二回か三回かあったということをちょっと読んだことがあるわけでございますが、そういう過去の原子炉に関する事故の資料、そういうものはちゃんとそちらのほうで検討して、それは日本の内外を問わず、そういう検討はなされておるわけでございますか。
  181. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) いろいろの原子炉に関連をいたします事故、故障等につきましては、私のほうでもつぶさに資料を集めております。あるいは先生いまお触れになりました外国でそれに似たような事故があったのではないかとおっしゃられるのは、あるいはアメリカ等の研究所の中の研究炉でありますとか、そういうものの中には多少の事故があったということは、われわれのほうの手元の資料にもございます。それからかつて原子力開発の初期に、だいぶ前でございますが、イギリスのウインズケールというプルトニウム生産炉——これは現在の炉のタイプとだいぶ違いますけれども、これも爆発ではございませんけれども、燃料の一部が溶けまして、それが煙突から燃料が出たわけでございませんけれども、揮発性のヨードの放射能を帯びた空気が若干出たというような例があるわけでございます。これは現在の商業用発電炉のものとは全然違うタイプではございますが、そういったような例をあるいは引用されたのではないかと思います。
  182. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そういう事故の内容についてそれが爆発に危険性のない事故であったということを知ることは、やはり原子炉に対する安全性を高める上にも必要じゃないかと思うわけです。そういう過去の原子炉関係のそういう事故について、その内容等ですね、次の国会等でもいっかの機会に御報告願いたい、そのようにお願いいたします。  それから次に、これは原子力研究所の外郭団体として、放射線照射振興協会というものができたということを聞いておるわけでございます。これはこの外郭団体というものはどういう内容のものか、御説明をお願いしたいと思います。
  183. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) ただいまおっしゃられたのは、おそらく日本原子力研究所の高崎研究所に関連する問題だろうと思いますが、従来あそこのコバルト六〇を使いましての照射設備がございますが、それを使いまして機器の殺菌、具体的に申しますと、たとえば注射針の大量同時殺菌といったような業務を、要望に応じましてやっておったわけでございますが、この仕事がだんだんふえてまいりましたので、そういう業務でそれから一般の放射線同位元素の利用等に関する調査、PR等を目的とする法人を別につくりまして、社団法人をつくりまして、で高崎研の先ほど申し上げましたコバルト照射施設のあいている時間を借りて、先ほど申し上げました業務をやる、こういう構想ができまして、その法人はすでに設立認可いたされました。しかしまだ現実にその業務を開始するには、原子力研究所のほうのやはり体制がそれぞれの許認可等の手続がございますので、そういうものはまだ終わっておりませんで、研究所の業務は行なっておりませんが、法人はすでに設立されています。
  184. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 原子力研究所の施設をそういう外郭団体に貸して、そういう仕事をするわけでありますが、私どもの感じでは放射能のような危険なものを外郭団体に貸して、はたして安全性の面においてだいじょうぶだろうか、一体その運転の責任者はだれなのか、そういう点を非常に心配するわけであります。そういうその運転の責任はだれが責任を持つのか、また安全性という点についてはどうなのか、その点御説明を願いたいと思います。
  185. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 従来委託業務をやっておりましたのを別法人に分けてやるという趣旨は、原研本来の研究業務とそれからそういったまあ公共的ではありますけれども、委託を受けてやる仕事をできるだけ分難をいたしたい、はっきりさせたいと、こういう趣旨でございます。で、安全の確保でございますが、おっしゃるとおり、これは非常に大事なものであると思います。で、照射施設はもちろん原研の所有、管理するところでありますので、原研が全面的に責任を持つわけでありまして、主任者等もおるわけでありますけれども、なお使うほうの法人も障害防止法に基づく許可が必要でありまするし、それからそれに基づきまする主任者の設置も業務づけられております。両面で安全を確保する、こういうことにいたしておる次第でございます。
  186. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いま障害防止法のお話が出ましたが、そういう障害防止法による技術的基準、それが安全であるというそういう判定はだれが下すのか、そしてまたそれを審議するのはどこで審議するのか、その点お伺いしたいと思います。
  187. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) これはまだ許可はこれからでございますけれども、安全性の懸念は科学技術庁が申請を受けまして、審査をして許可をする。こういうことになっております。原子炉と違いまして、御承知のように照射施設というのは、厚いコンクリートで防護されました中に、鉛の容器に入った非常に小型のものでございますが、コバルト六〇を照射するときだけ外に引っぱり出して照射し、終わったらその中に戻す、こういう比較的シンプルな機構になっております。全体の施設をつくるときの構造設計等の審査が大事でございますが、あと使用目的の変更その他の審査は比較的簡単にいけるのではないか。この点まあ原子炉等の複雑な機構につきまして、安全審査会というものを別途設けまして時間をかけて審査するものと、おのずから差異があると、こういうぐあいに考えております。したがいまして従来やっております許認可手続で十分安全確保ができるものとわれわれ考えております。
  188. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 では、この放射線の関係は科学技術庁でやるわけで、そういう審査をする、まあ審査会、そういうものは別にないわけですね。  では、次に原子炉のこの安全については、原子炉審査会があるということをいま言われたわけでありますが、この安全専門審査会のメンバーはどういう方がメンバーなんでしょうか、その点ちょっと。
  189. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) 全部記憶しておりませんけれども、審査会長は東大教授の向坊博士でありまして、あと構成といたしましては大学の理学、工学関係原子炉施設につきまして非常に造詣の深い方、たとえば構造関係でございますれば東大の機械の内田教授でありますとか、あるいは燃料関係でありますと三島博士でありますとか、その他そういう関係の人たちでございます。それからさらに放射線医学研究所の方々、それから厚生省、運輸省、通産省のそれぞれ技術関係の責任の方々、それからさらに耐震構造の関係、地震の関係等も審査しなければいけませんので、それぞれ建築研究所のその方面のエキスパートでありますとか、あるいは大学の地震関係の教授であるとか、そういう方々、それからさらに気象関係の学者も必要でございますので、気象研の方々とか、そういう方も入っておりまして、総勢三十名で構成されております。
  190. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 先ほどいろいろ事故をお聞きいたしましても、炉以外の付属設備に非常に事故が多いように思うわけでございますが、その審査が、そういう炉の審査ということに非常に重点を置かれて、付帯設備に対する審査が非常にゆるいのではないか、そういう点をわれわれもちょっと感ずるわけでございますが、その点はどうでございましょうか。
  191. 藤波恒雄

    説明員(藤波恒雄君) やはり放射線障害防止というのが、最重点に考えられておりますので、炉の関係中心になっておるということは確かでございます。しかしながらその他の設備機械的機構につきましても、一応カバーするように機械工学関係の方も入っておられるし、それからさらには廃棄物処理の関係で衛生工学関係とかといったような関係の方も入っておるわけでございます。それぞれの設備に対応いたしまして、いまの三十人の方々が分担をして審査をしておられる、こういうのが現状でございます。
  192. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 冒頭申し上げましたように、将来の原子力の発展の上からも国民の皆さんに恐怖感を持たせないためにも、そういう事故の点については、たとえ爆発に関係のない些細な事故であっても、それを防止するようにしていかなきゃいけない。またそういう原子炉関係する方たちは、またそれだけの自覚を持ってやっていただきたい。そういう点も、ひとつ科学技術庁のほうも厳重にお願いしたいと思います。  最後に、きょうの新聞に沖繩の那覇港に原船が参りまして、コバルト60が海底の土から検出された、そのようなことが載って、非常に沖繩はまた騒いでおる、そういうことを新聞で見たわけでございますが、その中に琉球政府は本土の科学技術庁にも放射能の測定を依頼したい、そういう考えを持っておる、そういうことがちょっと新聞の記事に載っておったわけでございますが、そういう現地のほうから科学技術庁のほうに連絡か何か、そういうものはあったかどうか、その点お聞きしたと思います。
  193. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) 沖繩のほうからはそういうものは、端的に申し上げますとございません。私たちは、もし依頼をされればいつでもそういった分析なり、あるいは調査なりに御協力申し上げることにやぶさかではございません。ただ沖繩は施政権はアメリカにございますし、琉球政府とアメリカの施政権といいますか、軍との、アメリカ政府との間にまだ話がつかないようでございます。端的に申しまして、海中の泥を日本に持ってきて調査するというようなことも一部は考えられた様子でございますけれども、これも実現していないわけでございまして、私のほうとしては、もし依頼があり、それが外交ルートを通じて正式にまいりますればいつでも御協力申し上げる体制は、いつでも整っておるわけでございますけれども、それはまだ実現しておりません。
  194. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 新聞によりますと、非常にアメリカ側がそれに難色を示しておる、そういうことが載っておるわけでございます。やはりそういうようなことのために、そういう測定が中止になるということは非常に国民に対しても大きな疑惑を招くんじゃないかと思うわけであります。そういう点で科学技術庁といたしましては、私はむしろ積極的に真理の追求という面においては何ら政治的なそういうものに左右されてはならないと思うわけであります。そういう点で、まあ積極的にそういう問題についても、アメリカばかりを気にするんではなくして、ほんとに安全性というものを国民の皆さんに納得をさして、そうして安心さしてもらうためにも、私はもっともっと積極的にこういう問題についても出ていくべきじゃないか、そのように思うわけでございますが、そういう点どうでしょうか。
  195. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) これはアメリカ自身としても、自分のほうで調査し研究するほうにやはり自主性を持っているのではないかと思います。この点が沖繩の今日ある施政権の問題といたしまして、非常にひっかかりがあると思うのでございまして、やはりそこに難色を示しているかどうかわかりませんけれども、要するに自分のほうで、アメリカはアメリカとして一般の調査をするからというような気持ちがあるいはあるのではなかろうかと思います。われわれのほうとしては、もしそういうことがわかればいつでも調査をすることについてやぶさかではないという態度で、そのことはわかっておるわけでございまして、今回外交ルート等を通じて、そういった意思も正式に伝えたいというふうに考えます。
  196. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 その点やはりアメリカに持って帰ってやったのでは、沖繩の人も信用しないと思うんですね。この前の佐世保の場合でも、アメリカの科学者に対する信頼度はわれわれは全然ないわけであります。そういう点からもただこっちが外交ルートを通してくればやるというのではなくて、向うの科学者に対しても、もっと積極的に働らきかけて、そうしてやっていかなければならない。私はそれがほんとうに科学技術庁としての使命じゃないかと思うわけであります。そういう点で、願くはそういう消極的な態度ではなくて、もっと積極的にやっていただきたい。そのことを要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  197. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 他に御発言もなければ、本調査はこの程度にいたします。     —————————————
  198. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 次に継続調査要求についておはかりいたします。  この会期中に、産業貿易及び経済計画等に関する調査を完了することが困難であると考えられますので、閉会中もなお調査を継続することとし、継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  199. 金丸冨夫

    委員長金丸富夫君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。  なお要求書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  200. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  201. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 次に委員派遣承認要求に関する件についておはかりいたします。  閉会中に産業貿易及び経済計画等に関する調査のため、委員派遣を行ないたいと存じますが御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  202. 金丸冨夫

    委員長金丸富夫君) 御異議ないと認めます。つきましては、派遣委員の人選、派遣地、派遣期間等はこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  203. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、議長に提出する要求書の作成等も、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  204. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  205. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 次に請願の審査を行ないます。  ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  206. 金丸冨夫

    委員長金丸富夫君) 速記をつけて。  次に、請願の審査を行ないます。  第三号、岩手県に中小企業総合レクリエーションセンター設置に関する請願ほか一件を一括して議題といたします。  両請願につきましては、慣例により、理事会において慎重に検討いたしました。以下お手元に配付いたしました資料によりまして、その結果を御報告いたします。  第三号、岩手県に中小企業総合レクリェーションセンター設置に関する請願を本院の会議に付するを要するものとして、内閣に送付するを要するものと決定いたしました。以上御報告をいたします。  ただいまの報告のとおり決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  207. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  208. 金丸冨夫

    委員長金丸冨夫君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。  本日は、これをもって散会いたします。    午後四時四十二分散会      —————・—————