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1968-11-21 第59回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年十一月二十一日(木曜日)    午前十時十五分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     理 事                 鹿島 俊雄君                 丸茂 重貞君                 大橋 和孝君                 上林繁次郎君     委 員                 上原 正吉君                 高田 浩運君                 徳永 正利君                 山崎 五郎君                 山本  杉君                 横山 フク君                 小野  明君                 藤原 道子君                 渋谷 邦彦君    国務大臣        労 働 大 臣  小川 平二君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        内閣法制局第三        部長       荒井  勇君        法務省刑事局長  川井 英良君        大蔵省主計局次        長        海堀 洋平君        労働省労政局長  松永 正男君        労働省労働基準        局長       和田 勝美君        労働省婦人少年        局長       高橋 展子君        労働省職業安定        局長       村上 茂利君        労働省社会保険        労務士法施行準        備室長      八木 高生君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働問題に関する調査  (川岸工業株式会社労働問題に関する件)  (政府関係特殊法人の給与問題に関する件)  (社会保険労務士法施行に伴う諸問題に関する  件)  (ILO第五十二回総会の決議等に関する件)  (労働省の機構問題に関する件)     —————————————   〔理事鹿島俊雄委員長席に着く〕
  2. 鹿島俊雄

    理事鹿島俊雄君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  労働問題に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  3. 大橋和孝

    大橋和孝君 川岸工業仙台工場閉鎖の問題については、過去もう三回にわたって衆議院の社会労働委員会山本政弘代議士あたりから質問が行なわれておりますが、私は、いままだこれが解決に至っておりませんので、この件につきましてきょうはじっくりと労働省なり法務省なりに御見解を伺いたいと、こういうふうに思っておるわけなんでありますが、時間の制約もございますので、要点をかいつまんでお話を承りたいと思います。  まず、この件に入る前に、きのうの「毎日新聞」に、新潟県にありますところの東洋館印刷、この労働組合から新潟地裁に出されましたところの「別会社従業員の時間外、休日労働禁止仮処分申請」に対しまして、「別会社を作って、その従業員に時間外、休日労働をさせることは労働基準法違反だから直ちにやめるよう」という仮処分決定し、会社側に通告したという記事が載っておるのであります。会社側は、第二組合をつくったり、あるいはまた新会社を設立して、このような時間外労働をやらせたり、あるいは擬装、計画倒産等、その形を異にしても、労働者の生活を奪い、あるいはまた権利を侵害するような行為が方方で起こっておるのであります。この川岸工業の場合を見ましても、これと同じようなにおいがすると思われるわけであります。私は、ここに、数数の会社側組合側、その他のデータを集めて持ってまいったわけでありますが、そういう観点からこの問題についての政府見解をちょっと尋ねておきたい、こういうふうに考えておるわけであります。  まず、川岸工業入社案内書有価証券報告書では、従業員の数に食い違いが大きいのであります。有価証券報告書の四十二年九月三十日の報告書を見ますと、従業員は二百十二名と、こうなっておるわけです。ところが、入社案内では二千三百五十名いると、十倍以上の開きがあるわけであります。これを考えてみますと、職安法六十五条の九号では、虚偽広告労働者募集を行なった場合には六カ月以下の懲役もしくは五千円以下の罰金に処すと、こういうふうになっておるわけであります。また、有価証券報告書虚偽報告をした場合には、証券取引法二十四条、(報告義務)のところの違反になって、これは二百五条の二の二で罰金三万円に処するということになっておるわけでありますが、これはどちらを見ましても抵触するわけで、証券取引法職安法かのどちからに違反するということになるわけでありますが、労働省または法務省のこれに対しての御見解をひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  4. 小川平二

    国務大臣小川平二君) ただいま御指摘のございました新潟地裁仮処分につきましては、まだ正文を見ておりませんので、いかなる論拠、論旨で仮処分決定いたしたのか承知いたしておりませんけれども、きわめて一般的に申しますれば、会社設立の形式的な要件を具備しておりましても、その会社が、たとえば、同じ事業工場、同じ設備、経営スタッフも同じというようなことで、実質上同じ会社とみなすべきような場合には、これは明らかに脱法行為ということになろうかと存じます。  それからただいまの募集の問題でございますが、川岸工業といまの仙台工作社とは、これは商法上は別の法人でございます。他社の従業員を自己の会社従業員であると称して募集をいたしたとしますと、これは労働時間とか賃金という雇用条件の問題ではございませんけれども職安法違反する場合もあり得ると存じます。もっとも、この会社は、この二年ほどの間職安で求人を受理しておりませんので、実はいかなる形で募集をやっておるか、その実態についても正直のところ十分把握をいたしておりません。調べまして、もしそのようなことがわかりますれば、直ちに是正をさせる考えでございます。なお、安定局長から補足いたさせます。
  5. 村上茂利

    説明員村上茂利君) ただいま大臣が御答弁なされましたように、当該事案に対する実態調査はまだ十分いたしておりませんので、職業安定法違反になるか否かという点については、これからの調査をまって判断しなければなりませんが、職業安定法では第六十五条に罰則規定がございまして、「左の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。」と。その中に、「虚偽広告をなし、又は虚偽条件を呈示して、職業紹介労働者募集若しくは労働者の供給を行った者又はこれらに従事した者」と、こうなっておるわけでありまして、この六十五条の第九号に該当する構成要件については、事実を十分判断いたしまして処理する必要がございますので、暫時調査のための時日をお貸しいただきたいと存ずる次第でございます。
  6. 川井英良

    説明員川井英良君) いまの職安関係その他につきましては、検察庁としましてはまだ事実をつかんでおりませんので、直接の捜査をしておりませんが、関係当局のほうにおきまして調査の結果、また犯罪容疑があるということで告発があれば、それを受けまして直ちにその関係についても検察庁において捜査をする、こういうことになると思います。
  7. 大橋和孝

    大橋和孝君 いまの事実があるのは、いま法務省見解であれば、何かがあったらするということでありますが、これは会社のやっているいままでの——これからあといろいろお話をするつもりでありますけれども、そういうところから考えまして、こういう問題は根っこに大きな問題があるように思いますので、私は、労働省のほうにおきましても、職安法にかかっているかかっていないかというのを早急に調査をしてもらいたいし、もうこれは出されてからかなりたっている問題でありますからして、特にこれを早急に調べてもらいたい。また、法務省のほうにおきましても、こういうようなことを会社がどんどんやっても野放しになっているというようなことではいけない。どうか、ひとつ、いまの問題に対しては、早急に結論が出るようにしていただいて御報告を願いたい、こういうふうに思うわけであります。  その次に、四十年の末に、総評代表村上基準局長との交渉におきまして、昭和四十年九月一日で賃金不払い基準法違反が三万件もある、その金額だけでも十数億になっておる、その違反のほとんどが建設関係に多いので、労働省としましても、その賃金未払い常習者が新たに新会社をつくってやっても、政府公共事業関係仕事なんかを発注しないというふうなことを言明しておられたわけですね。ところが、仙台工作の場合を考えてみますと、その株の一〇〇%を支配しているのが川岸工業である。いまの言明立場から言うならば、当然この川岸工業該当者に当たるのではないか、こういうふうに考えられるわけであります。特に、仙台工作重役が、今日、川岸工業重役を兼ねている。そのような会社政府関係仕事を発注することは、先ほどの言明では当然問題がある、こういうことになるわけであります。しかるに、川岸工業は、現在、建設省施行するところの宮城県の釜房橋工事施行中でありまして、これは元請は佐藤工業、富山県がやっておる。また、さらに、サッポロビール仙台工場鉄骨工事施行中である。これは大成建設が元請であります。仙台には仕事がないからという理由でもって工場閉鎖をしておきながら、一方では親会社仕事をどんどん受けておる。こういうようなことがやっぱり先ほどの言明からいいましても大きな問題になるのではないか、こういうふうに思うわけでありますが、御見解をひとつ聞かしていただきたい。
  8. 和田勝美

    説明員和田勝美君) 先生指摘のように、昭和四十年の十一月ごろ、ここにいらっしゃいます当時の基準局長が、御指摘のようなことで総評代表お話しになりました。労働省としましては、建設省その他関係省との打ち合わせをいたしまして、四十一年の四月から以降、賃金不払いがきわ立つようなものにつきましては、建設省その他への通報制度を設けまして、いま御指摘のように、工事の発注の際には十分その点を考慮をしてもらう、こういうことでやっておるわけでございます。その際におきまして、親会社自身賃金不払いがあればもちろんそうでございますが、ある特定工事におきます下請との関連の問題がございます。これは親会社下請代金支払いがたいへん遅延をしておるそのために賃金不払いが出ているというように、下請と元請との関係におきまして経済的に相当な相関関係があるというような例がありますと、こういうことだという事実を通報することになっております。したがいまして、具体的に工事請負との関連でございまして、別の工事の場合また別の問題が出てくるということで、いわゆる俗にいいます親会社子会社というのと、通報制度で言っております元請・下請と多少違うのじゃないかと思います。いまのお話川岸工業がいろいろの工事をやっているということでございますが、ある特定工事の場合において仙台工作社というものがやっている。そういう関係賃金不払いが出ておるかどうかということに一ついては、その事実を私どもいま多少つまびらかにいたしませんので、この場合に直ちに適用されるかどうかは問題でございますが、先ほど申しましたような元請・下請関係は、四十一年から実施をいたしております。
  9. 大橋和孝

    大橋和孝君 それはちょっとあいまいな答弁であって、この委員会だけのがれていこうというようなあいまいさを私は感ずるわけです。これはそのものずばりであるかないかはわからぬとおっしゃっているけれども、きょうは時間がないから要約して私は言っているんだから、そのことをあなたのほうでもうわかっているんですから、それをよけいなことを言わせないようにはっきり解釈してやらないと困る。あなたが、もしその関係がつまびらかでないというならば、私はここに材料を持っているから、材料を全部言わなければならぬことになる。しかし、親会社子会社ということは間違いない。いま言ったように、重役も同じであれば、何かの指示も全部やっている。あなた全部知っているでしょう、名刺まで一緒だということは。そういう関係でやっているんだから、間違いであるかないかつまびらかでないという、そんなあいまいな返事のしかたじゃだめじゃないですか、はっきりと返事をしなければ。該当しているかどうかもう一ぺん言わなきゃならぬということになる。わかっているでしょう、そのものずばりになっているということ。それだったら、こういうことに該当するんだから、これに対してはどうするかということをはっきりしなければだめじゃないですか。
  10. 和田勝美

    説明員和田勝美君) 先生指摘のように、川岸工業仙台工作社というものは経済的にはきわめて密着した関係にあるということは、私ども承知をいたしております。ただ、先生が先ほど例としておあげになりました宮城釜房橋工事という問題につきまして、その下請仙台主作社がやっているということについては、残念ながら承知をいたしておりません。そうなりますと、その前の例におきまして、そういう事実が、川岸工業支払い遅延があったので仙台工作社賃金不払いがその原因に基づいて相当程度不払いになっているというようなことが必ずしもはっきりしていない。経済的に両者が密着しておりますが、ある特定事件のときの賃金不払い事件というものが親会社のそういういま申しましたような責任遂行上の欠点があるかどうかは必ずしもはっきりしないということを申し上げたわけであります。
  11. 大橋和孝

    大橋和孝君 おかしいですよ。それはもう少しあとから議論いたしましょう。  川岸仙台工場労働者は、四十二年の六月分以降の賃金不払いのまま四十二年八月五日付で全員解雇されているわけですね。そうして、八月十日に、仙台地検仙台労働基準監督署にそれぞれ告訴、告発を行なっております。それに対しまして、四十三年の四月三日に、地検は、仙台工作支払い能力がないから犯罪は構成しない、また、川岸工業支払い義務は認められないとの理由で不起訴処分に付されておる。それを言っていまあなたはそれをつまびらかでないと、こうおっしゃっていると思うのでありますが、しかし、川岸工業が、事実上、仙台工作労働条件あるいは賃金決定を行なっているという事実もたくさんあるわけです。これはもうあなたのほうにもおそらく証拠書類がおわかりになっていると思いますから、何によってということだけを指摘しましょう。乙の第二七号証の一、乙の第二七号証の二、乙の第二八号証、乙の第二九号証、それから乙の第三〇号証から続いてずっと四一号証までの会社の文書で明白ですね。これは地検のほうへ出されておりますからおわかりだろうと思いますが、そういうものをずっと見てみましても、仙台工作従業員賃金あるいはまた労働条件、こういうものに関しては、当然川岸工業責任を行なうべきではないかと私は思うわけです。会社法人組織を利用した悪質な行為だと私は断ぜざるを得ないわけですけれども基準局検察庁では、不起訴処分についての事実を詳しく調査をされているはずだと思います、不起訴になっているのだから。ところが、これに対して私は非常に疑問を抱くわけでありますが、法務省及び労働省のこの問題についての見解を聞きたいと思います。
  12. 和田勝美

    説明員和田勝美君) 先生ただいま御指摘の現地の労働基準監督署におきましては、仙台工作社において四十二年の六月分の賃金について未払いの事実があるので、これは払われることのほうが優先でございますので、いろいろ努力をしまして、会社に話をしたり、それから実質的に非常に関係の深い川岸工業に対しましても、何とか援助をして支払いをしてやれないのかという手だてを講じましたけれども、どうしても払えない、こういうことでございますので、監督署としましてはこれでは何ともしようがないということで、送検処分にせざるを得ないということで検察庁のほうに送検をいたしました。検察庁のほうで不起訴処分になりましたが、その点は法務省の方がいらっしゃいますので、そちらのほうにお聞きをいただきたいと思いますが、私どもといたしましては、行政的にはいろいろの措置を講じましたけれども、どうしても支払い不能であるということで、最後の送検処分というようなことに至ったわけでございます。
  13. 川井英良

    説明員川井英良君) 五月の何日でしたか、この委員会でほかの委員から御質問がありまして、その際、私はほかの委員会に出ておりましたので、私のところの担当課長から御答弁を申し上げておることでございますが、時間がないようでございますので、そこで申し上げたことは繰り返すことはいたしませんが、要点はこういうことだと思います。  労働基準法の二十四条というものに罰則がかかっております。これはどういうことかといいますというと、御承知のように、雇用契約に基づいて使用者労働者賃金を支払う、労働力提供を受ける、こういう契約でございますが、その契約に対して、労働基準法は、一定のきめられた日時使用者従業員に対して賃金を支払わなければならないと、こうきめまして、その日時に支払わなかった場合は刑事罰が加わる、こういうことになっておりますので、これは御承知のとおりでございますが、非常に異例な法体系になっておるわけでございます。言いかえてみますと、民事上の約束に基づいていろいろの契約をして、その契約違反したような場合には刑事罰が加わるのだ、端的に申しますとこういうことでございます。民事上の契約に対して違反した場合には、債務不履行責任とか、せいぜい不法行為に基づく損害賠償責任とかいうようなことで民事上の責任にとどまるのが法律上の体系でございます。ところが、この場合におきましては、近代的な労働関係の構造にかんがみまして、労働者保護ということを優先するというふうな立場から、このような場合におきましても刑事罰をもってこの点を保障していこうと、こういう大きな目的に基づいた規定だと思うわけでございまして、世界じゅうのこの種の法律をさがしてみましても、私の記憶しておるところでは、フランスに似たような規定がございます。それからアメリカのニューヨーク州かカリフォルニア州か、どっちか忘れましたけれども、どっちかの州に似たような規定がございますけれども、ほかにはこういうふうな規定を持ったところは世界じゅうないわけでございます。日本労基法二十四条というのは非常に進歩した規定でありますので、この運用につきまして非常に解釈がむずかしい。最高裁判所判例もまだ確定しておりませんで、高等裁判所判例が数個出ておりますけれども、それも非常に、何といいますか、厳密な解釈をしているということが問題点一つでございます。  それからもう一点は、日本商法規定というようなものについても特別な関心を向けなければならないと思います。甲という会社が成立しておりまして、それがまた何かの事情でもって乙という会社を設立すると、それで商法規定に基づきまして登記をするというふうな場合には、新しく乙という会社がそこに成立いたしまして、社会上の関係におきましては甲と別個な人格を持って乙が成立すると、こういうことになるわけであります。アメリカなんかの商法規定に基づきますというと、簡単に、脱法的な場合には法人格を否認するというようなことで、先般御指摘になりましたような、一昨日出ました新潟地裁決定のような判断をとることがたやすくできますけれども日本現行商法規定におきまして、法人格が一たん成立しますというと、それを否認するということは非常に困難でございます。  そういう法律上の二つの重要な点がございます。そこで、いま御指摘になりましたような問題点というのは、その二つ法律上の問題をめぐりまして非常に困難なことが出てきておる、こういうことでございます。  結論といたしましては、先般も御指摘がございましたし、私どもも御指摘を受けるまでもなくこの報告を検討いたしまして、川岸工業仙台工作というものはどういうふうな関係があるものなのか、その実体についてさらに詳細な検討を尽くした上でもって、仙台工作というようなものが幽霊的な存在であって、川岸工業というものが実体存在であるのか、労基法に言うところの使用者に該当するものはそもそも法律上だれなんだということをさらに確定することができるならば、そういう点についても検討すべきではないか、こういうふうな見解を持っております。  仙台地方検察庁に照会をしておりますけれども、その後におきまして組合側からのいろいろ新しい資料提供があるようでございますので、そのような提供を受けてさらにまたこの件につきまして、別個の観点から地検調査をいたしておりますので、私どもとしましては、その結果を待って適当な機会に御報告を申し上げたい、かように思っております。
  14. 大橋和孝

    大橋和孝君 私も、どちらかといえば、法理論という形に実に弱いわけでありますから、わかりませんが、しかし、こういう状態をいろいろ資料の上から見て、われわれ国民代表する者として考えるならば、こういうようなことを許しておいてはこれはいけないのじゃないか、私はそう考えるわけです。法理論でこうだああだということは、私は至って何も知らないわけです。知らないけれども国民全体の立場から考えて、この会社側の系統がこうであるからこれでもうそれはのがれられるんだ、金がないからしてこれでいいんだ、こういうことになって、条件商取引労働力を売ってそれに何ぼ払うという契約でやっているんだから、これは契約だと、したがって、これは刑法とはまた違うんだと、それはいろいろ理論はあるでしょう。私はそういうことは全然わからない。わからないにしましても、国民の側から考えてみて、働く者が忠実に働いて、そうしてそこで生産がされていくのだ。いまの資本主義の中では、それがうまくいかなければ、両方ともにうまくいかないわけですね。そういう立場から考えてみて、未払いになっているのが十何億、三万件の件数がある、これは会社をつぶしておけば、支払い能力がなかったらそれでいいのだということになったら、働いている者にどんどんしわ寄せがいくばかりですね。こういうことを法律的にどうやっていかれるかということも、私どもは実際皆さん方に考えてもらたい、こういうことだと思うわけです。そういうことを代弁してここで話をしているので、労働省におきましても、法務省におきましても、この問題はずっとひとつ掘り下げてもらって、そして国民が納得できるような、将来またそういうことでもっと不安がなしに働けるような、また働くことによって生産が上がるような、こういう仕組みにしていかなけりゃいけないと思う。それは一体だれが責任を持つんだ。法務省は、法律解釈ではこれは不起訴ですと、こうやってしまう。労働省においては、これはまた職安法にもひっかかりません、あるいはまたこうこうでありますといってはねてしまうとなれば、これはもう全く暗やみの状態になってしまう。こういうことがあり得てはどうしても相ならぬということから、この問題は、一つの小さい問題であっても、労働省におきましても、法務省におきましても、ひとつ見解を明確にしてもらってその結論を出していただきたい。そしてほんとうに労働者が安心をして働けるような状態にしなければ、生産も拡大もしないだろうし、あるいはまた、働く者もふしあわせになる。こういうようなことで、私は、いまの問題は、うんと早く、期間を早めて見きわめていただきたい、こういうふうに思います。  それからもう一点は、川岸工業は、三十九年の九月期の決算では一割五分の配当を行なっていたが、四十年の九月期決算では無配となって、四十二年九月期決算まで無配を続けてきたわけです。その間に、各工場合理化をやって、そして鉄骨の受注なんかが好調になって、収益が立ち直ってきた、これがめざましく上がってきた、こう伝えられておる。その結果、四十三年の九月期の決算では二割配当にまで復活しておるわけです。株価も、現在では百七十円から百八十円に上昇しておると、こう聞いております。そうすると、川岸工業というのは、もう非常な好況をたどりつつあるわけですね。仙台工作との関係からしましても、こういう川岸工業の好況の現状からしましても、工場を再開するとか、あるいは従業員の再雇用をするとか、あるいはまた賃金不払いに対して解決をするとかいうことに当然乗り出すべきであると思うが、やっていないわけですね。だからして、こういうことは、四十二年十二月二十日の衆議院の社労委での労働大臣の答弁からいたしましても一年を過ぎようとしておるわけでありますからして、労働省のほうにおいてもこういうようなことはひとつ行政指導をしてもらって、先ほど私が申したような観点から、非常にもうかっている親会社があるのに、一方のほうにはその子会社がそうだからというので、法律的な解釈がまだ不明確なところがございますということでもっていま局長がおっしゃっているようなことでおってはいけないんじゃないか。それらのことについて、一方がこれだけ収益が上がっておる、そういうような条件でもう少し何とか行政指導をやろうという気持ちがあるのかどうか、ひとつ局長あたりの考え方を聞いておきましょう。
  15. 和田勝美

    説明員和田勝美君) 御指摘のように、川岸工業は最近非常に好況の状態になってきておるということでございまして、この点につきまして宮城県のほうは実はこれは誘致工業だそうでございまして、宮城県当局といたしましても労使紛争という形でございますので地労委のほうでこの問題を処理しておられますが、宮城県当局は地労委において解決のための努力をいろいろとなさっておるようでございます。労使紛争の問題でございますから、基準局としてはなまの姿で入ってくるのはいかがかと思いますが、それらの関係向きの御努力を拝見しながら、適当な機会、チャンスというものをつかまえて基準局のほうでも努力すべきところについては努力をしてまいりたい、かように考えております。
  16. 大橋和孝

    大橋和孝君 いま宮城県のほうの話も出ましたが、あれは誘致条例で金を出しているんですね、この会社に。そういうようなことからいっても、県からも国からもいろいろ援助を受けながらやっている工場なんですから、この問題は、先ほど申したように、特に私は明確にしていただきたいと思うんです。  私は、最後に、ちょっと労働大臣にもお話しして、先ほどの集約的なことをお考えを尋ねておきたいと思いますが、結局、労働基準法の法の趣旨というものを考えてみると、賃金なり退職金の不払いがあったというような場合に基準法違反として告発する趣旨は、支払いをしない事業主を処罰することが目的であるのか、あるいはまた、労働者労働条件を確保してやるということに最終の目標が置かれているのか、こういうようなことの二通りの見方があると思うのですが、どちらに重点が、まあ両方にあるわけなんですけれども労働行政の任務の中から考えてみるならば、この違反を監督する労働省としてのいろいろな手段があるわけでありましょうが、最終目標が労働者労働条件を確保してやろうということにあるとするならば、こういうような基準法違反事件が司法的にあるいは刑事的に成立しない、このような場合に不起訴になったというような場合にでも、賃金なり退職金なりを受けずに解雇されるところの労働者に対して特別の救済措置を講じてやることが労働行政の当然の任務ではないか、こういうふうに私は考えるわけです。労働者を守る最終のところはやはり労働省であり、その最高の責任者は労働大臣だ、こういうふうに私は解釈をするわけであります。そういうようなたてまえで、仙台工作と川岸とは、法律上は別個のものであって、先ほどから話すように、よく調査してもらうようにお願いをいたしましたけれども、却下になったところからみれば、経済あるいは経営的には実際においては一体である。そういうふうにするならば、たとえて言ったならば、仙台工作というのは川岸工業の手足みたいなものです。胴体や頭脳はほとんど全部がもう川岸工業にある。こういうことはもうほとんどいままでの衆議院の段階で論議されて言い尽くされておりますし、ここに出ているいろいろな資料からも判断がつくと思う。こういう点は、先ほどもお話し申し上げたように、うんと早く調査をしてもらって明確にしてもらいたいと思うのです。労働大臣のほうからも、法律的な解釈はともかくとして、実体を考えていただいて、私が先ほど申したように、やはり労働者が守られていかなければ経済の発展もなく、経営もいかないだろうし、また、労働者の生活もいけないという状態を考えてみるならば、ここに十分な働きかけをしていただきたい、私はこういうことを労働大臣にお願いしたいと思うのですが、これについての所信を聞かせてもらいたいと、こういうふうに思うわけです。
  17. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 労働者のために適正な労働条件を確保したいというのが私どもの願いであることは、申すまでもございません。法律の目的もまたそこにありますことは、これまた申し上げるまでもないと存じます。この問題につきまして、私どもの当面の見解、また、今日までやってまいりましたことについては、先ほど来お耳に入れたとおりでございますが、申し上げましたように会社がいかなる方法で募集をやっているかという実態についてもまだ研究が足りないわけでございますし、それらの点につきましてはさらに掘り下げて実情を調べてまいりたいと存じます。  また、賃金不払いの問題につきましては、あらゆる手段を講じてなおかつ解決いたしませんので送検をいたしたわけで、その後のことについては、検察当局の判断にかかるわけでございますから、これに対してとやかく言うべき筋のものではないと存じます。よって生ずるいろいろな問題、あるいは離職者の問題等につきましては、あとう限り善処してまいりたいと存じます。     —————————————
  18. 大橋和孝

    大橋和孝君 それでは、その問題はそれで終わりまして、次に、政労協の賃金問題についてちょっとお尋ねいたしてみたいと思います。  政府関係特殊法人労働者賃金問題でございますが、大蔵省その他の関係当局のほうでは、いろいろ拘束するような内示をしていらっしゃるようでございます。賃金は、申すまでもなく、労使の自主交渉によって決定すべきものであり、これは賃金決定の基本原則であります。賃金労働力の対価であるわけでありますから、これをどのようにきめるかは、売り主であるところの労働者と、買い主に当たるところの使用者との契約によってきめられていることは、資本主義の経済のもとではもちろん当然の筋道なわけでありますが、政府関係機関等におきましてもこの原則は曲げてはならないはずであります。やっている仕事が何であろうが、あるいはまた、事業の資金がどのようなところから出ておりましょうとも、このたてまえ、筋道というものは同じことだと思うわけであります。もし何らかの理由で団体交渉権に制約が加えられるべき場合は、これにかわる代償措置が講じられることも当然なことだと思うわけでありますが、大蔵省は、政府関係機関等に対して、今次賃金改定について恒例の内示を示したが、これは使用者に対して改定の目安を示したというふうに解釈すべきものだと思うのであります。各使用者がこの内示に絶対的あるいはまた法律的に拘束されるという性質のものであってはならないのではないかと思うのでありますが、この点についてはどういうふうにお考えになっているか、お考えを聞いておきたいと思います。内示は、改定率、初任給、あるいは実施の時期、あるいはまた昇給率など、賃金改定の重点事項にわたって示されておるが、これらの事項が労使交渉で変更すべからざるものとするならば、団体交渉権というものの保障はもう有名無実になる、こう考えなければならぬわけであります。これでは、政府関係機関等の賃金は、もし内示がそれほど大きな拘束力を持つものとするならば、結局、大蔵省が決定するということになるわけで、全くこれはたいへんな考え方であると思うのでありますが、この点については大蔵省のほうでどういうふうに考えておられるのか、内示というものについてのお考え方をひとつ聞いておきたいと思います。
  19. 海堀洋平

    説明員海堀洋平君) いま問題になっております政府関係機関と申しておりますのは、いわゆる政府関係機関予算として国会の承認を受けている機関、それからその給与の準則につきまして主務大臣の認可を受け、その主務大臣が認可をする際に大蔵大臣に協議をしてくる法人、主として公団、事業団等でございますが、これについての御質問と解して御答弁申し上げたいと存じます。  先生がおっしゃいますように、これらの法人につきましては、労働関係を規制します法律の適用を受けておることは、私のほうも重々承知いたしております。しかしながら、他方、これらの法人は、その設立に際しましては国の出資を受け、もしくは、その業務の遂行は、国家のいわゆる一般会計予算からの金、あるいは財政投融資等による金によって行なわれており、さらに、その行なっている事業は、国の事業の代行といった公共的な性格を帯びておるということは、先生重々御承知のところと存じます。したがいまして、現在労働三法の適用を受けながら、他方、一部の法人につきましては、国会における予算の審議を経なければならなくなっており、その他の公団、事業団等につきましても、その事業計画等につきまして主務大臣の承認なり許可を要するということになっておるのは、そうしたその法人の持っておる公共的性格から来ている制約ではなかろうかというふうに存じます。給与につきましても、その点が、労働三法が一方で適用になりながら、ある公共的な観点から来る制約を受けているということになっているのではなかろうかと存じます。  大蔵省がいわゆる内示と申しておりますのは、まずこれらの法人の給与というものにつきましてどういうふうに考えていくかということにつきまして主務大臣から協議を受けて、その基本の点につきまして大蔵省がそれにつきまして御意見を申し上げるわけでございますが、それがどの程度のところであるべきかという点につきましてあらかじめ主務大臣との間で協議をしておいたほうが、諸般の手続上、あとで協議を受けるよりもものごとが円滑に進むであろうという趣旨に基づきまして、大体この程度の経費の積算でやることにいたしたいということ、それから初任給等につきましてあらかじめ主務大臣と御相談申し上げているわけでございます。  したがいまして、その拘束力いかんという点でございますが、これはもともと営利的な会社ではございませんので、その給与の高さの考え方というものは、やはりそうした公共的な性格からどの程度であるべきかという点につきましては、現在の政府の考え方といたしましては、一般職の公務員の給与に準拠して、それにある格差を常に保持していくという観点に立って処理をいたしております。したがいまして、主務大臣からの協議の前における御相談におきましても、そういった基本的な考え方で経費の積算、それから二、三の基本的な事項について御相談申し上げておりますので、その点につきましては、その各法人の持っている公共的性格から見まして、拘束力を持つと申し上げるとどうかと思いますが、そういった考え方に基づいて給与を考えていただきたいという意味では、その基準に従っていただくほかはないのではなかろうかというふうに考えております。
  20. 大橋和孝

    大橋和孝君 いまの海堀さんのお話を聞いておると、政府の考えとしてあなたが示しておられることが全部基準になって、そしてあなたが内示されたいまの問題はみな従ってこいと、それが正しいんだというふうな考え方でおられるわけですか。そうすると、結局は、いま申した労使関係の対象には、あなたの大蔵省のほうへ話をしていかなければ話は進まないということになるわけですか。私のいま言ったのは、そういう内示は、こういう範囲内が正しかろうと思うがという内示を出して、あとは各使用者とそれからまた労働者との間に自主交渉をさして、多少のでこぼこはありましてもほぼそういう線に近づけてやってくれという内示だと私は解釈するのでありますけれども、あなたのいまおっしゃっているのは、かくかくの性格のものだから、この内示によってやれと、この内示は守らなければならないと、こういうふうなものであるのかどうか、そこのところをよく聞かしていただきたい。
  21. 海堀洋平

    説明員海堀洋平君) 先ほど申し上げましたように、それらの法人が公共的な性格を持っておりますので、いわゆる民間の会社のようにこれこれの利益があったからこうするのだというふうな形のものでないことは、御理解いただけると思います。したがいまして、その法人の給与がどうあるべきかということにつきましては、やはり政府として基本的な線だけは立てていかなければいけないのではないのか。それが、国家公務員の給与にある格差を持った高さ、それを常に維持していくというふうな基本的な考え方に立っていることは、御承知のとおりと存じます。したがいまして、大蔵省が各省主務大臣からの協議を受ける前に御相談申し上げている点は、要するに、給与を改定する率——額ではなくて、率でございます。率でございますから、やはり格差は維持されると考えていいと思うのでございますが、給与の改定の率、それから実施の時期、それから初任給——初任給を問題にいたしますのは、政府関係機関、公社、それから一般の国家公務員、この新規に採用されてくる人間の能力の均等さを求める意味におきまして、初任給を特に問題にいたしているわけでございますが、そういった基本的な線は、政府関係機関職員の給与のあり方についての政府の基本的な考え方に基づきまして、どうしてもお守りいただかなければならない。それ以外の点につきましては、その財源の範囲内でそれぞれの公団の事情によりまして、非常にピラミッド型のところもございますれば、あるいは、非常に肉体労働に近い、したがって労働条件が均一のところもございましょうし、それぞれ特別な事情もあると思います。それは、それぞれのその範囲内における給与の準則の決定は、主務大臣が妥当と考えられる線につきましては、大蔵省はそれに従っているつもりでございます。
  22. 大橋和孝

    大橋和孝君 最後のあなたのおことばですね、主務大臣がある程度了承をしてやれば、使用者側と労働者側との話し合いでいくということは、ある程度認めるとおっしゃいましたね。私は、それをひとつ十分認めていただきたい、こういうふうに思います。少なくともいままでは、ずっと過去を振り返って考えてみたならば、いまのあなたのお話のように、働く部門によって多少の差はあるわけですから、それに合うような条件で多少は差があるけれども、大まかにあなたがおっしゃいまして、その性質上から国家公務員のペースに似ているんだ、それになるたけ合うようにしていくという方針はあるんだと。これは私はわかるわけです。ですからして、そういうことから言えば、やはりこの内示というものに対しては、絶対従わなければならないんだというふうなものじゃなくて、内示の線に沿うてそうしてほぼそういうふうな状態に合わしていこう、こういう努力をするというふうに解釈をして、多少のやはり働いている条件が違いますからして、それに合わしてやっていくようにしなければならない、こういうふうに、いまの御答弁はそうであると思って私も了解をいたします。特に内示というものの性格というものは、できるだけそういうものは守られないであろうとも、まあしかし個々の場合については別にまた配慮しながら主務大臣がそれを調整をしていくというふうな形にとっていってほしいと、こういうふうに思います。  私は、この問題は、二重の規制になっているように思うわけですよ。というのは、内示による賃金改定は、当初予算のワク内でまかなえるものかどうか。政府関係機関の給与総額は、当初予算の予算総則ですでにきめられている。そうして、少なくともそのワクの中で執行するようにきめられておる。それからまた、今度は、内示によってかくかくせよというふうな形で、二重に行なわれているようなふうに思うわけでありますが、このようなワクを二重にかけるのは少し過酷ではないかと私は思うのでありますが、その点はどういうふうにお考えでありますか。
  23. 海堀洋平

    説明員海堀洋平君) いま問題になっております政府関係機関につきましても、国会並びに政府の規制につきまして多少の差異がございまして、いわゆる銀行それから公庫といっているものは、公社と同じように、政府関係機関予算といたしまして国会の承認を受けているわけでございます。それから公団、事業団等につきましては、そこに対する出資といわゆる関連資金等につきまして国会の審議をお願いしている点がございますが、公団、事業団等それ自体の事業計画につきましては、主務大臣の認可という形になっているかと存じます。その場合に、予算は、その時点におきます、つまり予算編成の時点におきます給与準則に基づきまして、現員現給といいますか、そういうものに考えられる昇給財源をもって給与予算を編成し、それから公団、事業団等の事業計画も、その時点におきます現員現給、それに予想される昇給財源を入れまして給与予算を認可いたしておるわけでございます。ただし、いずれの場合におきましても、これが各公団まちまちに勝手に変更されては困りますので、それぞれ国会に予算を提出するものにつきましては、予算総則におきまして、それから国会に予算を提出しない、事業計画によるものにつきましては、事業計画の総則におきまして、その定数なり給与をみだりに変更してはならないという規定を置いているわけでございます。これは、これらの機関が国の仕事でありながらこういった独立の機関をもって執行いたしておりますのは、事業の遂行上、特に経理面における弾力性を付与して、事業の執行の円滑を期する趣旨によるものでございます。ただ、人件費につきましては、やはりある一定の基準に基づきまして統一をとっていかないと、そこにそれを規制するものが、あるいは利潤とか、そういった私企業のような準則がございませんので、一定の考え方に基づいて一応の規制を行なっておるというのが、現在の予算並びに事業計画におきます給与の規制のしかたでございます。  これに対しまして、一般職公務員につきましては、人事院勧告に基づきまして年々給与の改定が行なわれてきております。その場合におきましては、国家公務員に準拠いたしまして政府関係機関職員につきましても給与の改定を実施していただくということに相なるわけでございまして、前における予算並びに事業計画における給与の規制は、その時点におきます現員現給を基本としているものでございまして、いまここに問題とされておりますいわゆる内示という点は、年度の途中においてそれを変更する場合の基本的な点につきまして主務大臣と協議いたしているということでございますので、そこに二重の規制という意味ではないのじゃなかろうかというふうに考えられます。
  24. 小野明

    ○小野明君 関連して。先ほど、内示の問題について、次長は、最終的には主務大臣の判断にまかしておるのだと、こういうふうに言われておるのだが、給与改定率を押える、それから実施時期を押える、初任給を押える、こういうふうに押えてしまいますと、主務大臣の配慮にまかせると言っているが、一体何をまかせるのか。まかせるものはないじゃないですか。  それと、もう一つは、あなたのことばの中で公務員と一定の格差を認めておるんだと、こういうことを言われておるんだが、その中身がどうも私には理解ができないんです。これをひとつ……。
  25. 海堀洋平

    説明員海堀洋平君) 先ほども申し上げましたように、これらの法人は公共的な仕事をいたしておりまして、それがために、これが資金も、あるいは資本金等も、一般会計の金、あるいは財政投融資による資金運用部の資金等によっているわけでございます。したがいまして、これらの機関がいわゆる私企業のような利潤追求の機関でないがゆえに、その公共的性格にかんがみまして、給与がいかにあるべきかという点についての基本的な政府の方針がなければならないのではなかろうか。その基本的な考え方といたしましては、国家公務員とある格差をもって給与の基本を考えていくということでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、給与の改定率、それからそれを実施する時期、それから初任給、それ以外に多少あろうかと思いますが、そういった基本的な点はやはり主務大臣とあらかじめ協議をいたしておりまして、その線は守っていただかざるを得ない。したがって、その範囲内で何があるのかということでございますが、これはそれをいかに配分していくかという問題等が残ろうかと存じます。しかし、確かに、それだけの規制を行なうとすれば、そこに労使間の自主交渉の範囲が狭いことは、その機関の持っている公共性から来る制約、現在の法制上の制約からやむを得ないことではなかろうかというふうに考えております。  それから格差の内容は何だというお話でございますが、これはなぜこれだけの格差をつけているか、それぞれの機関によって多少違いがございますが、これもそれぞれの機関の性格によるのだと存じますが、一〇%ないし一五%程度国家公務員よりも全体としては高くなっているように存じます。なぜ一〇%ないし一五%程度高くなっているのかという点につきましては、種々まあ理由があるのだろうと存じますが、大きな理由といたしましては、共済制度と厚生年金制度との違いも一つの大きな理由ではなかろうかというふうに存じます。それから、そもそも初めにこういった政府の代行機関的なものが発足いたしましたときには、多少臨時的な性格を帯びたものから発足いたしておりますので、その臨時性といいますか、そういうものが初めごろ配意されたかに伺っております。ただし、現在におきましては、その臨時性というものは払拭されておりますので、そこに給与の高さに違いを設けている理由というものは、一番大きな理由はやはり厚生年金制度と共済制度との厚さの相違を現実に支払う給与によってある程度カバーしていこうというふうな考えに基づいているのではないかというふうに想像いたしますが、何といいましても、そういうふうにして出発をしておりますので、何がゆえにそれだけの格差を認めているのかということになりますと、給与に関する経験の残い私には基本的な考え方がどこにあるのかと言われますと、非常にはっきりした、これなるがゆえにこれだけの格差なんだというふうな確信を持った答弁を申し上げかねるので、その点はおわび申し上げたいと思います。
  26. 小野明

    ○小野明君 結局、あなたのほうで主務大臣の配慮というものを認めているのは、所管内におきます能率給とかあるいは職務給とか、そういった配分だけでやれと。総ワクについてはきちっと押えているんだと。ですから、これは、何ら大臣にまかしておらぬ、財布だけはきちっと押えてしまっておる、こういうことが言えますね。
  27. 海堀洋平

    説明員海堀洋平君) 先ほども申し上げましたように、くどくなろうかと存じますが、それらの機関の持っている公共的性格にかんがみましてそのとおりにせざるを得ないのではなかろうかと存じます。
  28. 大橋和孝

    大橋和孝君 ただいま、小野委員からも、ちょうど私が話してみたいことをおっしゃったわけで、非常にあれなんですが、いまのお話の中にもありましたように、結局、いまのような形でいきますならば、使用者の交渉態度は、当事者としての責任回避になってしまうし、場合によっては不誠実団交として実質的には団交拒否ということになってしまうと、私はこう思うわけですが、労働省のほうではこれはどういうふうにお考えですか。
  29. 松永正男

    説明員(松永正男君) 政府関係機関と一がいに申しましても、先ほど来御説明がございましたようにいろいろの形がございまして、大多数のものは、たとえば、給与に関する基準を定める場合には主務大臣の認可を要する、主務大臣は大蔵大臣と協議をして認可をする、あるいは、給与については主務大臣の承認を要する、承認する際は主務大臣が大蔵大臣と協議をする、こういう法律規定になっておりますものが数が多いわけでございますが、そういう規定のない団体もございます。そういう規定のない団体におきましては、たとえば賃金決定の時期等におきましても、必ずしもいまの秋の時期にはやっていないというような結果も出てきておるわけでございますが、先ほど来御説明がございましたように、大蔵省のほうの法律に基づく行為といたしましては、主務大臣の認可の際の協議に応ずるというのがもとでございまして、団体の数が非常に多いわけでございますので、その際に、労組法適用によりまして団体交渉で労働協約を結んで、いざ結んでから認可、協議という際に、これはだめだというようなことになりますというと、かえって混乱が多い。そこで、法律の運用をスムーズにやるために、あらかじめ大蔵省として基本の方針、協議に応ずる態度の基本を示しておいて、それでスムーズにやりたい、こういうことになっておると思うのであります。  そこで、御指摘がございましたように、そのような労組法適用ではございますが、各事業団法、公団法等もそれぞれ国会で制定された法律でございまして、そのような規定がある。そうしますと、労使の団体交渉という問題と、そのような公共性から来るところの財政的な規制というものをどのように調整していくかということが、現在の法律制度における運営の仕方の重点になるかと思うのであります。そもそも、制度といたしまして、一体このままでいいのかどうかという問題は別にあるかと思うのであります。公共性の最も強い国家公務員、地方公務員から、準民間というところに至るまでの間におきまして、たとえば三公社五現業、公労法適用、あるいは地方公営企業というような団体と、それから労働三法は適用になるけれども、事実上、財政面におきまして、いわば政府の補助金、交付金等のまるがかえの団体といったような、そのような事実上の財政面からの規制があるわけでございます。そこで、それらをどう調整するかということになるわけでございますが、確かに、公団、事業団によって差がございますが、最も窮屈なところでは、やはり団体交渉の内容がそういう財政面、法律規定面からも相当大きな制約を受けておるということは事実だと存じます。
  30. 大橋和孝

    大橋和孝君 時間がないので気が急いでおるのですが、もう少し詰めて話を聞かないとどうもよくわからないので、私はきのうも官房副長官にお目にかかっていろいろ話を聞いてみました。きょうは副長官は来られないから、ここにおられませんが、政府がこのようにいろんなところに逐一介入することが、経営の能率とその独立性をも著しく阻害するようなことになるのじゃないか。あるいはまた、理事者の経営意欲と職員の働く意欲をむしろ阻害してしまうのじゃないか。こういう大事な政府と民間との中間的な、ことに政府からのそういう資金でもって運用する多くの機関がこのようにされては、働いておるところの労働者も、職員も、みな働く意欲をむしろ阻害されるようになる。特に私はここで問題になることは、初任給の問題は国家公務員よりベースが低いわけですが、このことが内示されてしまう、これがどうしてもいけないということになれば、いい人はそこへ入らないということになるのじゃないかと考えるし、また、政府関係機関があまりにもそういうふうな点でいろいろ介入をされるならば、自主性のある運営を期待することができないようなことになる。私は、そういうふうな意味においても、だいぶ臨時行政調査会の中でも意見が出ておったと思うわけですが、問題があると思うのです。  賃上げ率は政府がきめるものであって、使用者にはそのワク内でしか交渉能力権限がない、こういうのならば、賃上げ率をどうするかの交渉は、むしろ政府が直接に受けるべきである。それはあくまで労使の交渉でというのならば、使用者にそれだけの自主交渉能力を認める、こういうのが必要だろうと思うのですが、この自主的な交渉能力というものを認めないのかどうか。  それからまた、私はここで一つもうほんとうに聞いておきたいことは、一体、真に責任をもって組合と交渉ができる当事者がだれだかということですね。いま話を聞いてみれば、主務大臣もどうやら与えられるものは何もない。もうワクをがちっとはめて、二重でないといっても二重のような形で予算をきめておきながら、また内示をきめてしまうということで、何か自主交渉能力もどうかと疑われるような状況になっておる。実際問題としては当事者がだれなのか、だれに交渉するとこれをきちっとやってくれるのか、これを一ぺん聞いておきたい。私はよくそこのところがわからない。これが明確でなかったら、非常に困るわけですね、たくさんの業態があるわけですから。労働省のほうではどうお考えになりますか。
  31. 松永正男

    説明員(松永正男君) 法律のたてまえにおきまして労使交渉の当事者は、事業団当局とその労働組合ということになるわけでございますが、実質的にそれでは当事者能力がフルにあるかということになりますと、これは、三公社五現業等におきまして、公共性から来る制約、また、国の予算、国会できめました予算との関係という点から、当事者能力が問題になっておるのでありますが、実質上どうかということになりますと、いま申し上げましたような制約が相当ある、これは認めざるを得ないと思うのでございます。そうして、その制約は、国の財政の方針というものから、予算支出についての大蔵省の協議に応ずる方針というものによってそれが大きく影響をされておるということも事実だと思います。そこで、団体交渉は労使の間で事業団、公団等の理事者と労働組合の間で行なわれるわけでありますけれども、実際はそういう実情がございますので、やはりこの実情をふまえまして、たとえば、大蔵の当局、海堀次長等が政労協の労働組合の人とも会って意見を交換するというようなことは事実上行なわれておりますし、私どもも政労協の皆さんとお話をするということも事実上行なわれております。そこで、法律のたてまえはどうかといえば、先ほど申し上げたとおりでございますが、これを処理する実際の処理の仕方といたしましては、実質的に関係する人と話をするということを補足的に行ないつつ、全体がまあ円満に処理できるようにということをしておるのが現状でございます。
  32. 大橋和孝

    大橋和孝君 きのうも総務副長官と話したら、こんな話は持ってきてもらうのがかえっておかしいのだ、もっと早くきめてくれたほうが当然じゃないかと思う、筋がおかしいと思うというくらいな話があったわけですね。そうなってくると、結局は、いまおっしゃっておるのでは、法律のたてまえからは各公団がやるのだといっても、公社に力はないし、それでしかも海堀さんも大いに押えにかかって、もう一番押え役をやっておる。まあ労働省のほうもまた労働省のほうでやっておるというような、あっちこっちたらい回しでやっておるわけですね。それではいかぬわけで、こんなような状態が続けば非常に不鮮明なものが続くばかりだ。いま申し上げたように、こういうことになれば、働く意欲がなくなってくるし、あるいはまた、いい人も逃げていくということになれば、これは非常にたいへんな問題ではないか、私はこういうふうにも考えておるわけです。  また、内示を上回って労使協定、労働協約がかりに締結されたという場合に、大蔵省は、これに基づく認可申請は拒否せざるを得ないと、こういうふうに言明していられるようですね。しかしながら、政府は、政府関係機関等におけるところの労使の協定については、公共企業体等労働関係法第十六条の精神によって、むしろその履行に努力すべき立場にあるべきだ、こういうように私は思うのですが、この点についてどうお考えになるか。  その次には、政府が労使協定に基づく認可申請を拒否する場合には、不認可についてその事由を明らかにすべきであろうと思うわけですね。こういうようなことの内示に反する協定は一切無条件に認可しないというのであれば、これはやっぱり団交権の事実上の否定ということにもなるわけでありますから、こういうようなことなんかに対してはどうか、こういう点もひとつ知らしてもらいたい。  かりに政府が認可を拒否した場合でも、使用者組合に対してはあくまで協定履行の義務を負うべきであろうと、こういうふうに思うのですが、労働省及び法制局ではこういうような見解は一体どういうふうになっておるか、ちょっと知らしてください。
  33. 松永正男

    説明員(松永正男君) 大蔵省のほうでどのような方針で言われましたか、その点は大蔵のほうから御答弁があるかと思うのでありますが、ただいまのような法制になっておりますので、事実問題といたしまして労働協約というものが労使の当事者の合意でございますので、理事者側がこれを合意をして労働協約を結ぶという際には、やはり関係の方面との折衝をいたしまして、そしてそれが認可されるという前提においてやるのが実際処理の態度だと思います。したがいまして、法律論といたしまして、協約を締結した場合にその効力がどうなるかということは、法律論としては議論があるかと思うのでありますけれども、実際問題といたしましては、労働協約を結ぶ際にはそれが有効に働くような条件におきまして結ぶということになるのではないかと思いますので、有効か無効かというような法律論になりますと、これはまだ裁判例もございませんし、はなはだいろいろ議論のあるところかと思うのでありますが、理事者としましては、主務大臣を通じ大蔵大臣と折触をいたし、交渉をいたしまして、そうしてこのような実情でこの労働協約が必要であるということを認めさせて協定を結ぶということになると思うのであります。
  34. 荒井勇

    説明員(荒井勇君) 公社、公団等の職員の給与の支給の基準につきまして、これを設定し、あるいは変更する場合には、主務大臣の認可を受けることを要すると、あるいは承認を受けることを要するというふうに立法例は二通り書かれております。そのうちの認可というのは、一般的には行政庁の補充的な意思表示であって、その認可によって法律行為を有効に成立せしめるものであるというふうに解されておりますが、承認については、必ずその認可と同じであるというふうには一般論として解釈はされておりません。で、承認なり認可というものを必要とするということになっておりますので、公社、公団等の理事者といたしましては、それは監督上の規定としてこれに従わざるを得ない。また、必ずこれに従うことを法律は予定しているということでございますので、それに違反した場合の効力問題ということは法律としては予想していないというふうに考えざるを得ませんので、いま労政局長答弁されたように、実際的にそこは解決されるべき問題ではないかというふうに考えております。
  35. 大橋和孝

    大橋和孝君 いろいろな点で考えてみましても、いまのような現段階で本筋をずっと聞いてみれば、やはり公務員のあれよりは上回ったものを認めていこう、それはいろんな理由があろうとも認めていこうと、こういうことになっておるのに、いまもう、何と申しますか、第四波のストライキを打って、状態は非常に悪い状態に入っておるんですね。そういう段階でいまの状態を見てみるならば、初任給については幾らか上にみんならぬと言っているのに、それまでいってない点で現在ぶつかっておる。時期についてもまだ明示をされていない。少なくとも時期はどういうふうにするんだと。あるいはまた、上げ率はどういうふうにするんだと。そういうふうなことなんかも、一体どこで早く詰めて出してもらえるのか。これはもう内示しているからそれ以外一歩も引かぬとか、その内容は実際いまおっしゃっていることとは違って、初任給あたりはむしろ低いんだと、こういうふうになっておったら、話は初めから言われておることと実際と違ったような形になってくる。ですから、そういうことであれば、なかなかよけい進まないわけでありますが、一体それをどこで解決してもらうのか。そういういうことに対していま申せば、法律的にはこうだと、あるいは三者でもって話し合うんだということであっては、なかなかぎしぎししているんですね。きのうあたり官房副長官のところに行ったら、むしろわしのところへ持ってくるのは間違っているくらいだ、早くそちらのほうで解決してもらいたいんだと、こうおっしゃっている。一体どうなるのか。私どもは、詳しい法律的な立場、あるいはそういうふうな紛争処理に対しての経験はありませんけれども、こういうような不合理なものがいつまでもほっておかれてはたいへんな問題じゃないかと思うんですが、そういうような問題については一体どういうふうに考えておられるのか、お考えを聞きたいと思うんです。  それからもう一つ、大蔵省に聞いておきたいことは、住宅公団当局は、去る十月十九日の団交で、本給改定にあたっての考え方を組合に示されておるのでございます。公団当局は、この中で、組合の強く反対しておる給与体系の変更、これは職務給も含めてだそうでありますが、これを提案しているわけであります。この体系変更の是非論は一応ここでは別といたしまして、これにからむ財源の問題について当局は注目すべき点を明らかにしておるわけであります。それは何かと申しますと、七・九五%の原資のほかに、特に本年度は号給表の改善のための若干の原資を加えて改定を行なう。この結果、従来の通し号俸の職員号給表で改定を行なった場合と比べて、総体としてより高い本給になると考えると、こういう内容と伝えられておるのです。大蔵省は、各政府関係機関等に七・九五%を一律に内示をして、その変更は一切まかりならぬと、こう強く言っておられながら、一方ではみずから望むところの体系変更には別途財源を認めていると、こういうふうなことをやっておられるわけで、これはあまりにも身勝手であり、首尾一貫していないわけですね。そうすると、大蔵省のいま言っている内示というのは、都合によればそれ以外にプラス・アルファの財源をみてやるのだ、こういうことになるのだから、あなた方がいまおっしゃっておられる内示の厳密な言い方というものは、何かここらとは矛盾を来たしているように思うのですが、どうですか。
  36. 鹿島俊雄

    理事鹿島俊雄君) ちょっと、御答弁の前に、日程が詰まっておりますから、できるだけ御答弁は簡潔にお願いします。
  37. 海堀洋平

    説明員海堀洋平君) 住宅公団がそういうことをやっておりまして改定原資を上回るというふうな話を主務大臣からの協議はまだ受けておりません。ただ、給与体系を変更する場合には、いわゆる現在の給与をただ平均的に上げていくというのと多少違いますので、給与改定時に行なうか、それともほかのときに行なうかという問題はあると思いますが、給与改定時に行なう場合、あるいはそれ以外の場合に行なう場合もございますが、そういう俸給体系を変える場合に多少やり方によって財源が上下するということはあり得るわけですが、これは技術的な点で出てくるので、別に財源率をどうこうするというようなことはございません。従来も、給与改定時に給与体系を変更したために、初めに内示したものを多少こえてきたということはありました。それはほんとうに現実的にその体系がよくて、そしてやむを得ない結果であったという場合には認めた例はございます。しかし、それはほんとうにわずかなものでございまして、特にその財源率を変更するというふうな数字ではないと御理解いただきたいと存じます。
  38. 大橋和孝

    大橋和孝君 もう一つ、同じ政府機関でも、日本開発銀行あるいは日本輸出入銀行の場合には、給与面での規制がゆるやかになっておるように見られます。この二つ政府銀行は、仕事の性質においても、また、先ほどからおっしゃっていましたように、資金が一般会計や財政投融資から出ている点におきましても、他のいま論じられているところの政府関係機関と類似したものだと私は考えるわけです。しかるに、給与面では、次のように、より民間に近い姿となっております。すなわち、給与基準の決定は総裁に一任されておることになっておるわけです。ですからして、予算の移流用についての制限もゆるやかであるし、また、給与の改定を四月に実施されておるですね。だからして、こういうふうなことから考えてみると、同じような性格の機関でそういう事実があるわけでありますからして、これを並べて考えてみると、どうもやっぱりいまおっしゃっているような内示の問題も、非常に理解に苦しむ点があるわけです。同じような点から考えてみれば、もう少しこういうようなものも多少のゆとりを考えていいということにはならないものですか、どうですか。
  39. 海堀洋平

    説明員海堀洋平君) いまの輸出入銀行、開発銀行につきましては、むしろ予算規制の面につきまして、公庫、公団よりも、国会の審議を要しているだけに、予算総則におきまして、予算に書いてあります定数とその給与の定額をみだりに変更してはならないという国会からの規制を受けておりますので、より強い規制を受けておるわけでございます。  それから御質問のような、四月から給与を改定しているというふうな事実は、絶対にございません。ただ、初任給につきまして、これは人をとる関係から、他の銀行との関連で、八月に上げるときには上げないでおきまして、そして来年の四月からそれを上げる、むしろ一年ずらして上げております。したがいまして、今回の給与改定の結果、たとえば大学卒をとりますと、公庫、事業団につきましては三万二千円になりますが、輸銀、開銀におきましては三万五百円に据え置きまして、来年の四月から三万二千円程度に上げる、こういうことになりますので、むしろ八月から来年の四月まで、現在入っておる人においては据え置かれるという不利な点が残ることに相なります。
  40. 大橋和孝

    大橋和孝君 最後に、まだ尋ねたいことがたくさんありますが、時間を食い過ぎてはあれですが、一つだけ労働大臣にお考えを聞いておきたいと思うわけですが、先ほどから話して、法律のたてまえでは各事業団が交渉の窓口だと。あるいは、それには大蔵省できつい内示があると。労働省のほうも、やっぱり考えてみれば、働いている人の最後の身分なりいろんな問題に対しての総責任を持ってもらうのは労働省だと、その最高に大臣がおるんだということになると、私どもとしては、必然的に労働省のほうに非常にウエートを持って考えていかざるを得ぬ。ところが、官房副長官のほうもいろいろされておる。これはなかなかむずかしいわけでありますけれども、だからといって、これをほうっておくわけにはいかぬ。いま申しているように初任給も低いわけですね。少なくとも初任給ぐらいは上げてやって、むしろ上にしなきゃならぬ、こういうふうに思うわけでありますし、また、時期についても、少なくとも公務員より以上の条件に持っていってもらわないといかぬ。大体のところは煮え詰まっておるわけですね。一方では、四波のストまで打っておるというきびしい状態にあるわけでありますからして、ここのところはどうかひとつ大臣のほうからも各関係のほうに対してあれをしてもらって、そして早く解決をして、少なくともより低くなるようだとか、あるいはまた、内示で縛られるようだということではなくて、少々の上げ幅は認めさして、そしてまた、大かたその内示は受け入れられるというような形でもっと自主的な交渉も認めていく、こういうようなことを大いに入れながらこの問題解決に対して積極的な働きかけを大臣にしてもらいたい、こういうふうに思うわけですが、どうですか。
  41. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 先ほどから答弁を申し上げておりますように、政府関係機関が、公共的な性格、特殊な性格を持っておりますために、政府あるいは地方公共団体の出資等で設立をされておりまするし、運営の面でも補助金、交付金等が出されておる。そこで、給与の改定につきましても、主務大臣あるいは大蔵大臣の承認にかからしめている。たてまえといたしましては労働三法が適用されておるわけでございますが、事実上の制約を受けることはこれはやむを得ないと存じます。こういう仕組みそのものが、労使関係の安定という観点から、あるいは勤労意欲を高めようという観点から、真にやむを得ない制度であるのかどうか、よりよい仕組み、制度というものが考えられないかどうか、これは確かに根本的な問題であろうと存じます。私といたしましては、現行制度のもとにおいて、関係者が話し合いましてすみやかに円満に事が処理されていくことを切望いたしておるわけでありまして、内示につきましても、従前は、公務員の給与についての法律が成立いたした後でなければ内示が行なわれなかった。一昨年から、閣議決定後すみやかに内示をしてもらうというようにいたしておりますし、この点につきましては本年も閣議決定の際に発言もいたしまして、すみやかに内示をしてもらいたい、その方向で処理してもらうことを切望しており、現に政労協の傘化の組合二十一の組合についてすでに回答がなされておると聞いておりますし、残りも遠からざる機会に回答が行なわれるという予定となっております。当事者が、これらの機関の任務の特殊性ということをも念頭に置いていただいて、円満に事を処理していかれることを切望いたす次第であります。     —————————————
  42. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 私は、社会保険労務士法が十二月から施行されるわけでありまして、れども、この施行を前にしての段階で二、三お尋ねをしてみたいと思います。特に、この法律そのものでなくて、この法律施行された場合に、後に発生してくる弊害といいますか、そういうような問題を二、三取り上げてお尋ねをしてみたいと思うわけです。  御承知のように、この法律が成立したのは、五十八国会で四党共同提案のもとに成立したわけでありますけれども、その後総務課で準備室等が設けられてこの施行にあたってのいろいろな準備がなされてきているわけであります。その準備段階において、いままでの経過ですね、この法律施行するにあたってどういうことが主眼とされて検討されてきたか、そういった経過についてまずお尋ねをしてみたい、こう思います。
  43. 八木高生

    説明員(八木高生君) 準備室が六月に発足いたしまして、それから私たちがやりました仕事は、これに基づく施行をいかに円滑にやるかということで、まず政令、それから施行規則、それから附則関係において選考に伴う告示の検討をしております。それで、この労務士法は、御存じのように、主務大臣が厚生大臣と労働大臣の共管になっておりますので、厚生省と密接に連絡いたしましてその作業を進めてきたわけであります。  それで、政令、省令、そういう施行事務の段階は大体完了いたしまして、近く公布される段階になろうかと思いますが、その中で一番考えましたのは、選考の仕事におきまして、まず第一は事務処理をいかに円滑にやっていくか。これは厚生、労働の両方の関係の機関の仕事になりますので、その関係の事務処理をできるだけ円滑にやるように処理していく。それから一般の人たち、いわゆる申請者あるいは労務士の業務を開業する人たちに行政機関としてできるだけ事務処理を便利にするようにするということで、その行政の処理としまして、地方の出先機関といたしましては、都道府県、労働基準局の両方の機関を事務処理機関として活用いたしますけれども、そのどちらかの機関に対しての申請書等は、申請者の意思によって選択できる。その結果、出された機関で一貫して処理する。それで、あとはお互いの中央地方の協議組織によりまして意思を統一して処理していくというような形で事務処理をやっていきたいと思います。  それから経過措置としての選考の関係でございますが、この関係におきましては、法制定の段階におきまして御承知のように四党了解の線の基本的な試案がございます。その線によりまして、それを忠実に法文化していくという線で立案しております。  大体以上のようなことであります。
  44. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 この法律施行それ自体には私は問題ない、けっこうだと思うんです。ところが、この法律施行されますと、労務士の資格ですね、この資格取得についていろいろな問題があるのじゃないか、こう思うわけです。この資格取得についてはどういう形でこれをなされるのか、こういった点をちょっとお尋ねしたいのです。
  45. 八木高生

    説明員(八木高生君) 資格取得につきましては、さっき申したように、立法の際における四党の了解の線によってやっていきたいと考えております。その考え方を申しますと、まず、法律におきまして、国家公務員、地方公務員につきましては、短大卒で八年を基準にしまして選考の対象にするというふうに例示してございます。それに基づきまして同等の知識及び能力ある人を主務大臣が認定するという形になっておりまして、この形を告示案で出すわけであります。それが四党で了解された線でございまして、この内容は、労働社会保険関係法令の事務を施行する国家公務員以外の公務員、それから民間の労務担当の人たち、それから労働組合におきましてそういう関係仕事をしておられる方々、これにつきましては、公務員の経歴八年——短大卒を基準としました八年でございますが、それに二年積み上げまして十年の線で選考の対象とするというのが基本的な考え方でございます。  それから現に業として開業されている方につきましては、法律施行の際、これは十二月二日になろうかと思いますけれども、それまでに業として六カ月以上開業されている方、これを選考の対象にするという考え方でございます。  それで、選考の中におきましても、さらに無考査とする方、いわゆる書類選考だけで資格を取得される方があるわけでございます。その基準は、労働社会保険関係法令の事務を施行している公務員につきましては、短大卒、大学卒で二年積み上げまして十年の経歴を持っておりますと、一応無考査の対象にする。その中におきましても、その十年の中において特に基本法令と申しまして、法律の九条で試験科目になっている法律がございます。基準法、労災保険法、失業保険法、厚生省関係では健康保険法等、そういう関係の法令の施行事務を少なくとも三年やっていかなければならぬ。十年のうち三年はやっていかなければ無考査の対象にしない、そういうふうなことになっております。それで一般の民間の関係の実務経験者におきましては、無考査の対象にはしない、全部一応考査をするということになっております。実際業として開業される方につきましては、大学卒の方々で法律施行の際までに二年以上開業されている方、これにつきましては一応無考査の対象にするというふうになっております。  それで、この無考査は、試験と違いまして、簡単なる一種のテスト、実務関係に必要な簡単な知識のテストという程度に考えておりまして、試験より非常に簡単なものをやっていきたいというふうに考えております。
  46. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますと、大学卒業の場合には、開業して二年以上の対象は、これは簡単なテスト、こういうことですか、無試験ということですか。
  47. 八木高生

    説明員(八木高生君) 大学卒業程度の方でありましたら、法律施行の際までに二年以上開業していたら、無試験いわゆる無考査でございます。半年以上から二年までの間の方は、いわゆる考査という簡単なテストを受けていただくということになると思います。
  48. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そこで、現実的な具体的な問題に入るわけですが、半年から二年までの間といえども実際に開業しておる、こういうことなんです。もし、簡単なテストということでありますけれども、そのテストに合格しなければ、これは不合格ということであります。当然そういう場合があり得ると思う。そういう場合には、そういう人たちの、いままでそれでもって開業しておって生計を立てておられたそういった点はどういうふうになりますか。
  49. 八木高生

    説明員(八木高生君) 開業テストを受けまして落ちられましたら、実際選考過程におきましても労務士の資格を得られないわけでございます。だけれども、テストというのは、非常に簡単で、実務の関係でございまして、実際実務をやっておられたら私は全員合格されるのじゃないかというふうに、その程度のことを考えておりますけれども、実際、不合格になられる方は全くないとは言えないと思いますけれども、その方々は、来年正規の試験を受けていただく、あるいは、ほかの試験を合格された方々の事務所でそのお手伝いをしていただく、そういう形にならざるを得ないのではないかというふうに考えております。
  50. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 いま、開業している者を対象にしましたけれども、開業はしていないけれども実際に経験を持っておる人、こういう人がいるわけです。こういう対象はどうなりますか。
  51. 八木高生

    説明員(八木高生君) いま御質問の点は、開業していないけれども経験は持っておられるという方につきましては、一般の実務経験のあるものとしまして、さっき申したように、大学卒程度なら、十年以上の経歴のある人、これにつきましては選考の対象にするというふうになっております。
  52. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そうしますと、そういういまお聞きしたような立場の人たちは、十年以上経験があれば、これは試験がなくてそのまま資格が取得できる、こういうことですね。
  53. 八木高生

    説明員(八木高生君) 十年以上の実務経験のある人でございますが、これは無考査というのではございません。全部考査をするということになっております。
  54. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そこで、先ほど申し上げたように、簡単なテストとはいうけれども、実際に落ちた場合、廃業せざるを得ないような——開業している方は、そこには必ずそこで働いている人がおるわけですね。こういう人たちも含めて、開業している人がテストにはずれた場合には、廃業しなければならないという立場に置かれると、そこで働いておった人たちも全部そういった余波を受けるわけですね。また、それと同時に、この仕事は会員制度である、いままで。会員になると、大体半年分の会費といいますか、これを納めるわけですね。納めているにもかかわらず、開業している人がテストにはずれた場合に、そこにいろいろな問題が発生してくると思いますね。こういう問題についてはどういうふうに処理していくのか、どのように考えているのか。
  55. 八木高生

    説明員(八木高生君) 現在開業しておられる方は、私たちとしては、そういう実際の実務経験がおありですし、まず落ちられることはないと思っていいんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。それで、いまお話がありましたように、実際に労務管理の仕事をやっておられる方々でいろいろな団体をそれぞれつくっておられます。その会におきましてもそれぞれ自主的に講習会とかやられまして勉強されておりますし、そういう努力を各団体それぞれやられておりますので、そういう成果も実りまして、おそらく開業されておる方は全員合格されるのじゃないかというふうに私たちは考えております。それで、各団体においても、それぞれもし会員の中で不合格者が出た場合には、さらに会員の中で今後ますます努力するというように、各団体でそれぞれ対策を考えられておりますので、現在開業されておる方で落ちられる方はまずないのじゃないかというふうに考えております。
  56. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 そこのところが一番心配な問題だろうと思うのです、実際当事者にとってみればですね。それは、あなたは、落ちる人はないだろうと、こういうふうに言われますけれども、ないだろうということはあるかもしれないということですからね。ですから、その辺のところが私は問題だろうと思うのです。実際にこれはそういう立場に立った場合には、その人たちにとってみればほんとうに大問題だから、廃業しなければならない。会社との関係もある。そこに必ず問題が生じてくることは間違いない。その問題が生じてきたときにどうこれを処理していくかということはその辺も含めて私は考えておく必要があるんじゃないかと思うのですね。法の施行、これはもう非常にこういう面での向上のためにけっこうなことなんですが、その反面、いま申し上げたような問題が発生しないとは言えないわけなんですよ。前にたとえば税理士法あるいはまた計理士法司法書士法、こういうものが成立したときに、いままでたとえば六カ月なら六カ月の経験を持っている人は一この人たちは、大体、これらの法が成立するときには、施行されるときには、反対をしたのです。こういう立場でいたけれども、半年以上の方は無試験でこの資格を得られた、こういうように聞いておりますけれども、こういう前例があるわけです。内容的には違うかもしれませんが、そういう前例があるのです。そういういま申し上げたような問題点、心配点が出てくるわけなんですが、その点はもう少し私は明らかにしてあげたらどうか、こう思いますが、どうでしょうか。
  57. 八木高生

    説明員(八木高生君) まず、この基本的な考え方は、最初立法の際に四党で了解された線でございます。それで、開業後法律施行の際までに六カ月たっておれば選考の対象とする、二年以上たっている者は一応無考査の対象にする、その間は一応考査をするということで四党で了解された線でございますので、この基本方針に従って忠実に私たちは立法化したわけでございます。しかしながら、そういう実際に現に開業されておる方でもし考査に合格しなかった場合、そこに現実にいろいろな問題が起ころうかと思います。考査の際において、さっき申したように、私たちとしては、実際実務をやっておられる方々は、考査は簡単な実務的なテストでございますので、まず不合格になられることはないと、こう考えております。その辺はまた考査のいろいろな告示におきましても、最終的に一つの率直に申しまして弾力規定を事務当局としてはつくりまして、選考委員の意見を聞きまして主務大臣が同等と認めた場合には認めることがあるというような弾力規定規定してございますので、その辺を十分活用いたしまして、できるだけ個々の問題については対処していきたいというふうに考えております。
  58. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 わかりました。  で、たとえば、半年以上二年まで、あるいはまた二年以上、そういう開業してからの営業年数ですね、その調査はどういう形でもって行なわれるのですか。
  59. 八木高生

    説明員(八木高生君) 御存じのように、いままでこの関係を監督指導する法律がございませんので、どういう実態であるかということは全体を私ら把握してございません。ただ、いろいろな団体がございますので、その団体を通じてのいろいろな関係はわかっておりますけれども、そのほかにあるいは団体に加入せられないような方々も相当あろうかと思いますので、その全体については十分把握してございません。
  60. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 それじゃ、たとえば開業してから二年以上だと申請すれば、そのまま受けるということですか。
  61. 八木高生

    説明員(八木高生君) 問題は、その業としてというものをどういうふうに解釈するか、運用するかという問題があろうかと思います。それで、まず証明する方法としまして私たちが一応事務的に考えておりますのは、業としてやっておられた方々は、そういう労働社会保険関係諸法令のいろいろな実務を事業所にかわりまして代行してやっておられる方でございますから、大体そういう関係の官庁に出入りされる方がほとんどじゃないか。また、出入りしなければその仕事ができないのじゃないか。それにつきまして、現実に、労働基準監督署とか、あるいは職業安定所とか、社会保険事務所とか、そういうところで実際そういう人たちがある程度——ある程度というより、そういう人たちが業としてやっておられるかどうかわかるのじゃないか。そういう点で、いずれかの行政機関の証明書があれば、まずその点を一応信用するということで、それと、さらに、そういう出入りしておられない方がたまたまあるとしますと、そういう業としてやられる以上は、一定した収入があられるわけでございます。それで、税務署に申告されておる。そういう申告書の写しとか、あるいは、業としてやられておる以上、中小企業の方々といろいろな契約を結んでいるわけでございます。そういう事業所との契約書の写し、そういうことでそういう人たちが実際業としてやっておられるかどうかを判断していきたいというふうに考えております。
  62. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 わかりました。やはり年限の問題が資格を取得できるかどうかという一つのわかれ目であります。これはやはり本人たちにとってみれば問題点だ、こう思います。職安とか、あるいはまた労働基準監督署ですか、そういう方面での調査といいますか、それによってわかると、こういうわけです。最後に税務署の問題も出てきました。それで、その辺のところが、税務署なんかを基準にしますと、営業をしてすぐ税務署に届け出ているというのはあまり少ないようですね。ですから、ほんとうの実態というものは、税務署をもし主体にしてそういう年月の調査をしていくということであれば、これはほんとうの実態というものはわからぬのじゃないか、こう考えるわけですね。その辺のところを、ほんとうの実態をつかむためには最もこういう方法が一番いいのじゃないかという点ですね、どういった点を考えているのか、そういった点について伺いたい。
  63. 八木高生

    説明員(八木高生君) 私たちは、その出入りしているところの行政官庁の証明書、あるいは税務署の申告書の写しとか、あるいは事業所との契約書の写しとか、そういう三つの要件を備えなければならないというふうに考えておるわけではございません。どれかの一つ要件があれば一応業として認めていきたいというふうに考えております。     —————————————
  64. 小野明

    ○小野明君 労働大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  先般の委員会でも、ILOの五十二回の総会の決議の問題についてお尋ねをいたしております。こういった決議があるにもかかわらず、この問題については留保されたままでありまして、そして明治百年ということで恩赦をきめられたわけですね。明治百年で恩赦をきめられて、しかも一方の国際機関におけるこの決議は無視をされておる。この点について大臣の御見解をいただきたいと思います。   〔理事鹿島俊雄君退席、理事大橋和孝君着席〕
  65. 小川平二

    国務大臣小川平二君) この件につきましては、前回の委員会でお申しつけもございましたので、その後法務省とも重ねて協議をいたしたわけでございますが、ただいまのところ、結論的には、従来お耳に入れておりますところと異なる結論が出ておらないわけでございまして、労働者組合活動に関連をして逮捕されたり、刑の言い渡しを受けておりますのは、日本の国内法令に違反をしておる、あるいはまた、それだけでなく、正当と認めることのできない行為をしたからであるわけでございますが、現に適用されております刑罰法令は、ILOの基準ないし原則にもとるものだとは考えておらないわけでございます。  さらに、また、これも前回申し上げましたとおり、組合活動を理由に逮捕その他の処分を受けた者についてだけ恩赦を行なうということになりますると、その他の事由によって処分を受けた人たちとの間の均衡を破る、まあこういうことになろうかと思いますので、この決議についてこの際特別の措置をとる必要はないのではないか、そういう考え方を当面変えておらないわけでございます。  しかし、さらに引き続いて法務省その他とも検討を続けてみたいと思います。
  66. 小野明

    ○小野明君 法務省や総理府では、明治百年ということでいろいろな行事をおやりになっているわけです。対比をすることが適当であるかどうかは別といたしまして、ことしは国際人権年であるということは、もう大臣の御承知のとおりであります。ところが、そちらの所管の問題だけはああいった恩赦というようなことでおやりになられて、労働省関係のものは一向になおざりにされておる。この点で非常に均衡を失するというふうに私は感ずるのであります。政府が明治百年の恩赦の問題だけやりまして、しかも国際人権年のこの問題だけはほったらかしておる。この問題についての御見解を、一体いかがなものであるかとお尋ねしておるわけです。
  67. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 国際人権年の意義ということにつきましては、もとより私よく承知をいたしておるつもりであります。これを祝うために恩赦を行ないたいという提案の趣旨そのものについても同感でございます。わが国の場合に、これをそのまま実行できないと考えられます理由は、いまお耳に入れたとおりでございます。明治百年の恩赦は、これは一般的な形で行なわれるわけで、選挙違反だけが対象になっておるわけではないのでありますから、これはまあ別々のそれぞれ問題ではなかろうかと思います。
  68. 小野明

    ○小野明君 別々の問題ではありますよ。しかし、組合運動による逮捕あるいは刑罰に基づくものを恩赦をしないというのはILOの原則にもとるものでないと、こういうふうに大臣は言われたと思いますが、そうですか。
  69. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 日本の国内の諸法令がILOの原則にもとるものではない、かように申し上げたわけであります。
  70. 小野明

    ○小野明君 しかし、この決議によりますると、いかなるものであったにせよ、この国内法がILOの原則に基づく基づかない、こういう規制といいますか条件というものは、このILOの決議には何もついていないわけです。組合運動によって逮捕され云々ということで恩赦あるいは大赦というものが行なわれるべきである、こういうことが宣言としてある以上は、非常に政治的であり、あるいは選挙違反を重点にしか考えられぬような恩赦というものが一方では行なわれて、このILOの決議が無視されてしまっているという印象を持つのは当然のことではなかろうかと思うのです。ですから、このILOの決議が実行されないのは、あるいは、留保されたといっても、総会で大臣が留保をされているといいましても、それだけで話の済む問題じゃないのです、現に決議をされておりますからね。この辺は一体どういうふうになさるお考えであるか、再度お尋ねいたします。
  71. 小川平二

    国務大臣小川平二君) これは、先ほど申し上げましたように、組合運動以外の理由で処分を受けた人々との均衡の問題ということは、これは現実の問題として考慮しないわけにはいかない問題だ、これだけを取り出して恩赦をするということはやはりちゅうちょせざるを得ないというのがただいまの考え方でございます。
  72. 小野明

    ○小野明君 いや、他には、もう大臣、明治百年の恩赦は一方で行なわれてしまっているわけですよ。これは取り残されているわけですよ。ですから、国際人権年という問題は取り残されて、一方の一般的なものが優先している、これは不均衡ではないか。どうも大臣の答弁が要を得ていないように思いますが、再度お尋ねしたい。   〔理事大橋和孝君退席、理事鹿島俊雄君着席〕
  73. 松永正男

    説明員(松永正男君) 補足して御説明申し上げますが、多少議論に行き違いがあるような感じがいたしますが、ILOの決議におきましてこの問題を取り上げております文言は、ILOの原則及び基準に適合した労働組合活動を理由として逮捕された者云々という表現になっておりまして、私ども解釈では、別のことばで言えば、いわば正当な組合活動というものを行なったことで、なお国によりましては弾圧等によりまして処罰をされるというようなことがあった場合に、 これを大赦、刑の執行の免除等をしろというのが決議の趣旨のようでございますので、先ほど大臣が申し上げました日本の国内法令は世界のレベルに決して劣らない、レベル以上であるという意味は、このILOの原則及び基準に適合した労働組合活動を理由として云々ということに関連して申し上げたというふうに考えます。
  74. 小野明

    ○小野明君 そうしますと、いま日本の国内における労働組合運動のゆえに刑罰を受け、処分をされている者については、このILO宣言決議にはずれる、こういうことですか。
  75. 松永正男

    説明員(松永正男君) 先ほど大臣が御答弁で申し上げました中に、現在組合活動に関連して逮捕され、あるいは刑の言い渡しを受けている者は、日本の国内法令に違反するものである、そうして正当な行為として認めることのできない行為を行なったからであるということを申し上げておりまして、さらに、現実に適用されておる刑罰法令はILOの原則及び基準に反するものとは考えられないということを申し上げておりますのは、そういう意味でございます。
  76. 小野明

    ○小野明君 どうも意味がわからぬのですが、私がまあこれは頭が悪いから理解しにくいのかもしれませんが、日本における労働運動のゆえによって刑罰を受けている者は、このILOの決議に沿わないものである、このワク外のものである、いわばあなたの言う正当な労働組合運動のゆえに処分を受けたその範疇外のものだと、こういうことですか。
  77. 松永正男

    説明員(松永正男君) 決議におきましては、ILOの基準に合致した組合活動であるのに処分をされたという者について大赦等をやれと、こういうことを言っておるわけで、そこで、日本組合活動に関連をして処分をされたものかどうかということにつきましては、たとえば誤審等があれば別でありますが、日本労働組合の基準についての国内法制は世界的レベル以上であるということがわれわれの確信であるわけでございまして、したがいまして、組合運動との関連がありましても、そこで処罰をされたというものについては、正当でない活動のために処罰をされたのだというふうに考えておるわけでございます。
  78. 小野明

    ○小野明君 レベルが高いとかなんとか言われるのだが、ILOの批准は、まだ一〇〇号のみで、一一一号、一〇五号というのはまだ未批准ですね。こういったことをもって、あなたの言うように政府がやることはみんな正しいのだと。こういう条項の未批准というのは一体どうなっておるのですか。
  79. 松永正男

    説明員(松永正男君) 未批准条約につきましては、それぞれまあ内容によりましていろいろな議論があるわけでございますが、たとえば一〇五号条約につきましては、ILO自体におきまして、この条約の解釈につきましてまだ明確でない点がいろいろございます。たとえば、イギリス、あるいは西ドイツ等におきまして、この条約を自分の解釈において批准をしたのでありますが、それが抵触するというような問題が起こっておりますが、これに対して、それぞれの国は抵触をしないというようなことで論争になっておる例もございます。そうして、一〇五号についてのいろいろな討議がなされておりますが、その中でたとえば条約勧告適用委員会の専門家会議の議論におきましても、この点はこういうふうにも考えられるけれども、これは予備的な意見であるというような表明もなされておりまして、条約自体の具体的な解釈についていろいろ不明の点があるということが、批准につきましての未批准のまあ一番大きな理由でございます。その他未批准条約……
  80. 小野明

    ○小野明君 それでいいです。それで、私が言うのは、一一一なり一〇五号というものが緊急を要するものであって、これの批准を何ら積極的にあなたのほうはやろうとしない、こういうことを申し上げたいし、日本労働法というものが先進的なものであるというふうには私は思わない、労働状況の実際から見ましてね。それで、それはまあ焦点から少しはずれますから別として、再度私は大臣に確認をしたいのですが、これはきわめて重大な問題なんですが、日本のいままでの労働運動によって不利益処分あるいは刑事処分を受けた者は、ILOの今回五十二回総会の決議にはずれるものである、ILOの原則なり基準にもとっておる、こういう言い方だと私は受け取るのですが、再度大臣の見解を承りたい。やらんという以上は、そうでしょう。
  81. 小川平二

    国務大臣小川平二君) ただいま局長から答弁申し上げましたように、正当な労働組合運動を行なったにもかかわらず処分を受けておるというような事例は、裁判に誤審等があれば別だけれども、わが国においては存在はしておらない、こういうふうに考えております。
  82. 小野明

    ○小野明君 正当な労働運動なら処分を受けないのですよ。だから、そんなことを言うんじゃないのですがね。日本労働運動によって処分をされたものは、このILOの宣言、決議、こういうものの該当範囲外であると、こういうことですね。——大臣の見解を聞いておるんですよ。だから、日本のこれは該当しないと言ってもらえばそれでいい。
  83. 小川平二

    国務大臣小川平二君) この決議の意味しておりますところは、正当な労働組合運動が不当に弾圧を受けておるというような場合を想定いたしておるのではなかろうかと存じます。したがいまして、見解はどうかとおっしゃいますれば、いまおっしゃったとおりだと申し上げます。
  84. 小野明

    ○小野明君 そういたしますと、とにかく日本の場合は、日本労働組合運動によって処分をされておるもので、私どもはみなこれは不当な弾圧であり、不当な処分であると申し上げており、当然ILOの原則あるいは基準にこれは合うものだ、こういうように私ども解釈をしておるわけですよね。それで、大臣の御理解というのは、日本の場合にはとにかくこのILO宣言、決議というものは該当をしないと言い切られましたが、日本の場合は、そうすると、永久にこういう恩赦または大赦というものを行なう意思はないのだ、こう見てよろしいのですか。
  85. 松永正男

    説明員(松永正男君) 補足御説明申し上げます……
  86. 小野明

    ○小野明君 いや、大臣。
  87. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 当面、この際決議をそのまま実施することについては、繰り返して申し上げましたような難点があると存じます。まあ永久にということになれば、これは将来のことは別途に考えなければならぬ事情、場面が出てくるかもしれません。今回のことに関します限り、かねて申し上げております見解を変えなければならぬ事情はないと思います。
  88. 小野明

    ○小野明君 それは、私どもは、ILOの原則なり基準というものにいまの日本労働運動はすべて該当しておると、こういうふうに解釈をしておる。したがって、国内法であろうと、これはILOの労働法令、ILOの宣言、決議というものが優先をするわけですから、これに基づいて当然やはり恩赦というものが行われなければならぬ、このように考えるのです。しかし、それはそれといたしまして、私は非常に不当なことだと思うのですが、これはやはり国内法に違反をしておるわけですね、今度明治百年の恩赦になっておるものがね。これだけやられてこっちはやらぬというのは、私は労働大臣として多少おかしいものを感ずるわけですが、大臣は、その点で、明治百年の恩赦というものについてこれは均衡を失するのではないかというお考えはないわけですか。
  89. 小川平二

    国務大臣小川平二君) それはやはり明治百年の恩赦は一般的な恩赦でございまして、対象は限定されておらないわけでございます。繰り返して申し上げるようですが、労働組合活動を理由に処分を受けた人だけを対象に恩赦を行なうということは、ほかの人たちとの均衡という立場から確かに難点があると思います。趣旨そのものに反対をするものではございませんけれども、さような点から今回これに踏み切るというわけにはまいりかねると思うわけでございます。明治百年恩赦については、そういう均衡を顧慮しなければならない事情というものはないと思います。その点が違っております。
  90. 小野明

    ○小野明君 これはILOの原則や基準というものから議論を始めませんと水かけ論になりますから、きょうのところはこれで終わるといたしまして、もう一つ、人事院勧告の扱い方について非常に後退したと私は受け取っておるわけです。それで、若干の最近の経過というか、それについて大臣の説明をいただきたい。
  91. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 公務員給与につきましては、本年度は、関係閣僚から申し上げましたような経緯で、やむを得ずしてはなはだ不本意な結論になったわけでございますが、今後これを何とか完全に実施をしなければならない、こういう趣旨で今日まで数回にわたって関係閣僚の協議を続けてまいったわけでございます。その場で行なわれました論議ははなはだ多岐にわたっておりまして、要領よく要約してお耳に入れることができますかどうか思っておりますが、従来人事院の勧告が完全に実施できませんでしたのは、年度の途中で大きな補正の財源を求めなければならないという困難があったからだと存じます。そこで、本年度は、勧告に備えた予備費を計上しておるわけでございますが、これは、そういう年度途中で補正財源を求めなければならないという困難を避ける意味においては、確かに一歩の前進であったと存じます。今後も、相当大幅な給与改定の勧告が出ました場合にも十分これに対処できるだけの予備費をたっぷり組んでおきまして、かつ、勧告をまじめに実行すれば、それで事は済む。しかし、実際の問題といたしましては、予算編成の際には、いろいろの要求が出てまいります。さまざまの財政需要が競合するわけでございますから、予備費というような形で相当なものを確保しておくということは、実際の問題としてはいろいろ困難な場面が出てくるいうことが想像されます。そこで、もっとよい方法がないだろうかということについていろいろ研究をいたしたわけでございます。政府自身が自分の手で給与表をつくって給与費を計上するというようなことも研究をいたしたわけでございますが、給与の改定に関しまする限り例外なしにこれは人事院勧告を待って行なうということが従来の慣行でございましたし、また、これが筋でありましたので、ちょっとさような案をとるわけにもまいりかねる。しからば、人事院が予算の編成にタイミングを合わせて勧告をしたらどうだろうかということになるわけでございますが、これは将来に向かっての勧告でありますから、その際どういう基準で勧告をしたらよろしいのかということが直ちに問題になってくるわけでございます。それも一つ問題点でございましょう。従来の実績等を考えて人事院が独自の基準を設けて勧告をするのか、あるいは経済企画庁の経済見通しに基づいて勧告をするのか、こういう点も実際問題としてはなかなかむずかしい問題になるわけでございます。その際、どのような勧告をするのか。最終的には、いままでやっておりますように、民間給与の実績を五月の時点で調査いたしまして、八月に勧告をするという本勧告の制度は、これはいかなる場合にも残しておかなければならないわけでございますが、いま問題にしておりますのは予備的な勧告でございます。どのような形で勧告をするのか。一律にたとえば五%なり何%引き上げるという形で勧告をする、政府はこれを受けて給与表をつくらずに給与費として計上するということ、これは実質的には予備費みたいなことになるわけでございますが、これができるかできないかということもこれは一つのむずかしい問題であろうと存じます。  いろいろな観点から真剣に検討をいたしたわけでございますが、昨日までのところ、残念ながら、これならば必ず勧告が完全に実施できる、勧告を完全に実施する上において現在の予備費でやっていくという制度にまさる具体的な方法であるという、そういう結論に到達することができなかったわけでございます。ただ、政府といたしましても、関係の閣僚が、何とかして来年からは人事院勧告を完全に実施したい、こういう心がまえで真剣にきょうまで研究を続けてきておりまするし、また、このことが新聞などにも報道されておりまして、大きな期待も持たれておるわけでございます。二十七日には自民党の総裁の選挙も行なわれるわけでございまして、現内閣のもとでこれ以上重ねて閣僚会議を続行するというわけにもまいりませんので、申し合わせといたしまして、「今後の公務員給与の取扱いについては、去る八月三十日の閣議決定の注(一)——この注は、私、文言を記憶いたしませんが、ぜひとも完全実施をやりたいという趣旨の注でございますが一の線に沿って人事院勧告制度の趣旨を体し、勧告の完全実施の基本方針に従い幾つかの具体案をめぐって数次に亘り、人事院をもまじえ、関係閣僚会議に於いて真剣な検討を重ねられた。」という事実を第一に述べております。第二に、「本日の会議に於いて最終的な結論を出すべく努力したが、新しい方式を新年度予算に反映せしめるためには、なおいくつかの点について最終的なつめを行なう必要が残された。これらの点について来るべき明年度予算編成に際し、右の基本方針を踏まえて更に具体的に検討を続け、できるだけ速かに最終的な結論をうることとする。」と、これを給与関係閣僚会議の了解事項といたしたわけでございます。新しい内閣が発足すると同時に、この基本方針を踏まえて、さらに掘り下げた検討がなされることを期待いたしておるわけでございます。
  92. 小野明

    ○小野明君 時間もありませんのですが、   〔理事鹿島俊雄君退席、理事大橋和孝君着席〕 完全実施の基本線というものがそれでは確認をされておらぬのではないか。聞くところによりますと、大蔵省の主計局に引っぱり回されて完全実施ということができなかった、それで何もかにもできないというような一歩後退の結論が出たのではないか、こう私は見ているわけです。過去何回か大臣も完全実施をいたしますと明言をされているわけですから、その辺を最後にお尋ねをしておきます。
  93. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 主計局に引き回されたという事実はございません。もっとも、主計局は大いに啓蒙する余地があるとは存じておりますけれども、決して主計局に押えられて関係閣僚がぐうの音も出なかったというようなことではございませんから、その点だけはひとつ御了承いただきとうございます。繰り返して申しますけれども関係の閣僚が数度にわたって時間を相当かけてまじめに研究をするというようなことは、かつてなかったのでございます。政府の熱意だけはぜひおくみ取りをいただきたいと思います。
  94. 小野明

    ○小野明君 とにかく、完全実施という基本線は、そうすると、くずれておらぬ、こういうことですか。
  95. 小川平二

    国務大臣小川平二君) ぜひ完全実施ができるように、現在の制度にまさる、さらによい制度を発見して実行に移さなければならない、こういうことで研究が続けられることになっております。     —————————————
  96. 藤原道子

    ○藤原道子君 時間もあまりございませんし、大臣の御退席のお申し出がございますので、私は、まくらことばはやめまして、そのものずばりでお伺いしたいと思いますので、当局側でも、粉飾なく、誠意をもって御答弁を願いたいと思います。  私は、労働省で機構改革を進めているということは伺っておりました。今日、高度経済成長のために、労働力が非常に不足してきておる。その争奪戦とか、あるいはまた労働基準法違反が随所で行なわれておるというようなことは、御案内のとおりだろうと思います。労働者のサービス省として発足された労働省として、この際こそ労働者保護を重点的にお考え願わなければならないと思いますときに、今度の改革案を見ますとき、何だか時代逆行ではなかろうか、こういうふうな感じがいたしまして、納得のできない点が多々ございますので、この点についてのお尋ねをしてまいりたいと思います。  労働省では、十一月の十八日に、十数人の県労働基準局長を集め、あるいは、十九日には、本省の局部長会議で、地方労働行政機構改革案の概要を初めて正式に次官、官房から示したといわれますが、その内容はどうなっておるのか。機構改革案の作成についての過程はどういうふうにしてきょうまで進めてこられたか、この点についてまずお伺いしたいと思います。
  97. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 行政機構の改革につきましては、手始めに許認可事務の整理等をやったわけでございますが、これに引き続きまして、最近、社会経済の状況も変化をいたしておりまするし、それに伴って出てまいりますいろいろな要求にこたえまして、行政の機構もそれにふさわしいものに改めていく必要が出てきておるのではなかろうかという判断から、いろいろのことをただいま検討をいたしておるわけでございますが、率直に申しましてまだ成案を得ておらないわけでございます。これをきめてまいります場合には、行政管理庁の意見も聞かなければならない、あるいは自治省とも相談をしなければならないわけでございまして、まだ結論に到達をいたしておりませんけれども労働省として考えております一つの方向といたしましては、この際、労働行政の施策を、ばらばらでなしに、一体的に運用していきたい。今日、労働省の出先は、ばらばらになっております。打って一丸としてもっと強力な能率のあがる姿にしたいということを考えております。  それから第二には、行政の運営を広域的なものにしていきたいということでございます。  三番目には、一面において行政の全国的な統一性をはかっていくとともに、他面ではそれぞれの地域の住民に対するサービスの向上をあわせて確保できるような体制をつくりたい。  まあこれは抽象的なことを申し上げて恐縮なんでございますが、こういう三つのことを基本的な方向としてただいま研究をいたしておるわけでございます。中身の具体的なことは、まだ研究の過程でございまして、だんだんこれから変わってもまいるでございましょうし、この際地方事務官問題というような問題が問題の焦点になっておりまするし、これは人の身分にも関係をする問題でございます。研究の過程で私が断片的にこの際お耳に入れた結果、いろいろ不安動揺を起こすようなことがあっても困ると思いますので、こまかい点は御容赦をいただきたいと存じますが、方向としてはさような方向でただいま各省と相談をいたしておるわけでございます。
  98. 藤原道子

    ○藤原道子君 それでは、まだ煮詰まっていないというわけなんですね。概要といって発表されておるのでございますが、その詳細はこれから煮詰めていくと、こういうふうに理解してよろしいのですか。その過程においていままでの方針が変わることもあり得ると、こういうことですね。
  99. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 変わる場合もあり得るということでございます。
  100. 藤原道子

    ○藤原道子君 それでは、この問題については、地方の労働基準局の意見だとか、婦人少年室の管理者にもその具体的な案を示して御相談をしていらっしゃるのでしょうか。
  101. 小川平二

    国務大臣小川平二君) かりにかような方向で解決する場合にどうだろうということにつきましては、もちろん念には念を入れまして、現にそれらの仕事に従事しておる人たちの意見をただいま聞いておる段階でございます。
  102. 藤原道子

    ○藤原道子君 ところが、これは私が仄聞するところによると、十八日に初めてそういう人たちに案を示したというふうに聞いておりまして、たいへん非民主的なやり方だなあと、こういうふうに思っていたんですが、それは私の誤りですか。
  103. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 別に非常に先走って労働省としての具体的な結論を持っておったというようなわけではないのでございまして、ただいま非民主的というおしかりでございますが、これはもう現に仕事をしておる人たちの意見を聞くことは当然のことでございますから、私はさだかには存じませんが、数日来それぞれ意見を聴取いたしておるはずでございます。もちろんそういう人たちの意見を十分聞きまして、これを反映せしめつつ、機構改革の問題を考えていくつもりでございます。
  104. 藤原道子

    ○藤原道子君 大臣がよく知らないようなことじゃ私も困るのですが、実は、その機構改革案の基本部分である県の労働基準局と県婦人少年室の廃止と、一部を県労働部へ移管することと、地方労働局の新設については、どんな意見が省内や地方から出ても、この案を変えることはできないとはっきり言っているんです。首にかけてもこの問題は通してみせる、こういうことを発言していらっしゃる。これはどういうわけなんですか。意見は聞くけれども、どんな意見が出ても変えない、この主要部分は、ということになれば、意見を聞く必要はないんじゃないでしょうか。
  105. 小川平二

    国務大臣小川平二君) まことに仰せのとおりでございまして、首にかけても云々ということは私関知いたしておりませんけれども、現に各地で基準局なり婦人少年室の仕事に従事している人たちの意見を聞いておりますのは局長でございますから、局長から答弁させます。
  106. 和田勝美

    説明員和田勝美君) ただいま先生からお話しでございますが、今週に入りましてから、官房のほうから、地方の基準局長代表的な者を十四人、それから婦人少年室長の代表的な者を集めまして、現在考えておる案についての概要の説明がございました。その際、私ども列席をいたしましてその席におったわけでありますが、ただいま大臣からお答えになりましたとおり、十分諸君の意見を聞いて考えていきたいと、こういう話でございましたので、首にかけても云々というのはどういう席で言われたことか存じませんが、私どもの内部の会議においてはそういう発言はございませんでした。
  107. 藤原道子

    ○藤原道子君 二十日、きのうですか、大臣官房の遠藤総務課長が、労働省参事官室で、全労働代表三十名に明言しております。私は、こういうやり方は、非常に非民主的であると同時に、労働者の権利を民主的に守る行政機関としては納得がいかない、こう思うのですが、どうですか。
  108. 和田勝美

    説明員和田勝美君) 総務課長が全労働と交渉というかっこうで会ったということは私ども承知しておりますが、どういうことばのやりとりの結果そういうことになったかにつきましては、事情を承知しておりません。しかし、私どもが公式に受けました、先ほど御説明の会合においては、事務次官も出まして、事務次官から先ほど大臣がお答えになったような趣旨の発言がございましたので、私どもとしては、公式にはその辺が妥当だと。で、総務課長がそういうことをどういう場面でどういうやりとりの結果言ったかということにつきましてはわかりませんし、それが省全体の意見であるのか、遠藤君が持っておる一つの気持ちの表現であるのか。気持ちの表現であるとすれば、省の意見でございません。そういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  109. 藤原道子

    ○藤原道子君 そういうふうに逃げられちゃ困るのですが、そういう態度は、上部でそういう意見があるから、勢い課長が発言したものだろうと思います。私は、もし言った言わないということになりましたら、私も一方的に全労働から聞いたことを公の機関で言うのですから、間違いがあると私には責任がございますから、対決して話し合ってもいい、こう考えております。お含み願いたい。  それから大臣は、もっとサービスが行き届くように地方の実情に合ったように変えるんだというようなお話でございましたが、私は、こう拝見いたしますと、どうもそれが腑に落ちないわけです。同時に、労働省は、八十一号条約に純粋法律的に違反していなければ、労働監督組織の一部にしろ、地方へ移してもかまわないというふうに考えているようでございますが、二十号勧告の第十項では「地方機関に対し何ら責任を負わざるべきこと」という趣旨があり、いままでは労働省自体がそれを主張してきたように考えますけれども、この点はどうお考えでございましょうか。
  110. 和田勝美

    説明員和田勝美君) 藤原先生から御指摘のありました勧告は、そのとおりでございます。それと、条約につきましては、条約の純粋な法律解釈論ということにつきましてはいろいろと問題がある。ただ、労働基準局といたしましては、現行制度を維持することがいままでの段階では妥当であるという判断に立ちまして従来国会で御答弁を申し上げておりますが、それは法律解釈上必ずそうなるという意味合いばかりではないように私ども承知をいたしております。
  111. 藤原道子

    ○藤原道子君 それはずるい御答弁だと思うのです。私は労働問題の専門家でないので、しろうとなんです、労働問題に対しては。だからごまかしやすいと思われたら困るのです。もっと誠意をもってお考え願いたい。きのうはこういう方針、だがきょうはこうなるんだ、これでは不安じゃございませんか。私はそういう点は納得がいきませんが、きょうは何しろ時間がないので、あまり深追いしていると途中でやれなくなる。委員長、これからはもう少し時間を十分いただきたいと思う。いつもしり切れトンボです。
  112. 大橋和孝

    理事大橋和孝君) そうですね、申しわけありません。
  113. 藤原道子

    ○藤原道子君 先ほどの大臣のおことばですけれども、この機構改革案で、現在の県の労働基準局の監督課、安全課を地方に移せば、結局どうなるとお考えでしょう。いままででも、監督官が監督に行くと、圧力があったのですよ、地方の業界から、監督をお手やわらかにと。こういうところから、これはまあ各界ですけれども、とかく変なものが起きておるのです。そこで、これを地方に移せば、県知事の指揮や県議会の介入干渉が当然予想される。地方産業の実情にあわせてというような言い方は、監督での摘発をかんべんしてくれというようなことにしかつながらないことは、基準監督局では御承知だろうと思う。まして、非常な人手不足なんですよ。争奪戦が起こる。時間延長してくれとか、いろんな陳情が行っているでしょう。ことに、県に移ると、地方の企業家は県議会に働きかける。県議会というところは、そういう面の力が非常に強いのですよ。そうしたら、監督行政がいまより以上にうまくいくなんていうことはとんでもない言い方であって、ここに非常な危険を感じるので、それがうまくいけるとお考えでございましょうか。いままでの監督署でも、圧力を受けて困ったという例は幾つもあるじゃございませんか。  それからいまでも平均で十年に一回ぐらいしか監督官が事業場を視察できないような手薄でやっていらっしゃる。これは四十二年の監督実施状況というものに明らかになっておる。その貧弱な行政機能に加えて、地域の権力が、つまり、産業、県会議員、商工業者等が陰に陽に圧力を加えてくれば、もっともっと監督がやりにくくなって、労働条件の基準の低下を来たすことは明らかだと思うのです。この点についてはどういうふうにお考えになっているか、まずお聞かせ願いたい。
  114. 和田勝美

    説明員和田勝美君) 先ほど大臣からお話がございましたように、機構改革によって労働者労働条件が守れない、そういう状態がさらに深まっていくというようなことでは、意味のない機構改革だと私どもは考えております。機構改革によりましていろいろの確かに長所短所はございましょうが、全体として長所の多いほうの機構改革をとるのが当然の姿勢だと思います。  ただいまお話しになりました監督の問題等は、まことに先生指摘のように、府県に基準局が入るというようなことがかりに考えられた場合におきまして、そういう心配のあることは、私どもとしてもよくわかります。いろいろの具体的な事例でそういう心配がある。しかし、そういう心配は払拭できないものかどうか。そういう心配を具体的に地方基準局の諸君が感じておるその感じ方に対して、そういう心配をしなくてもいいような機構ができないものかどうか。そういう点につきましては、実は、私どもとしましては、非常に慎重に検討すべきものである、こう考えておりまして、先生指摘のような問題点は確かにございますので、それらのものに対してはどう対処するかということで私どもないし地方の基準局の諸君も真剣に考えておる段階だと、かように考えております。  確かに、御指摘のように、監督関係におきましては人手不足でございます。その人手不足という問題もございまして十分な監督が行き届いているということはにわかには申し上げかねますが、いろいろなことを勘案しながら、人手不足問題等も考えあわせながら、いま御指摘のような問題点につきましては、基準局としては、重大な問題でございますので、真剣に考えさせていただきたいと思います。
  115. 藤原道子

    ○藤原道子君 もしございましたらと言うけれども、私どもは火を見るよりも明らかだと思うんですよ、地方におりますから。  それから司法処分等がございますね。基準法違反の司法処分にするときには、いままでは必ず府県の基準局の監督課に合議して送検していたでしょう。ところが、この改革案でいけば、ブロック局になる。十ばかりのブロックをつくる構想でしょうが。隠さぬでもいいけれども。そうすると、一一そこまで出向かなければならないわけですね。そうなりませんか。合議は必要でないことにするんですか。一つ一つこういう司法処分にするときにはブロック局まで出かけて行かなければならないということは、悪質な事業主の処分は、事務手続に時間がかなりかかって、むずかしくなるのではないか、これも一つございます。それから労災保険審査も、ブロック局に行かなければならないのじゃないでしょうか。ということになれば、結局、その窓口が遠のいていくんじゃないでしょうか。いまは各県にあるんですよ、これが。地元で済む。それがブロックになれば、幾つのブロックに分けるか知りませんけれども、そこまで出向かなければならない。こういう不便はどういうふうにお考えになっているでしょうか。産業面から、あるいは土地のボスからいろいろな圧力がかかって働きにくいところへもってきて、直接にこういう不便も起こってくる。こういうことについては、お考えになったことはあるんでしょうか。とにかく、一々遠くまで出かけて行かなければならないんですね。こういうことはどうお考えですか。
  116. 和田勝美

    説明員和田勝美君) ブロック問題というのが、いま一応話題にはのぼっております。そのブロック局問題につきまして、事務処理としてどういう形でいくかという点につきましては、確かにそういういま先生の御指摘のありましたようなものを含めながら私どもとしては検討しなければいけない問題であるということでございまして、基準局としてはまだ結論を出しておりませんで、地方の局と一緒に私どもいま検討を進めておりますが、十分いま先生の御指摘になったようなことを意識しながらわれわれとしては検討させていただきたいと思っております。
  117. 藤原道子

    ○藤原道子君 うまく逃げないでくださいよ。案は相当固まって、もう変えないんだとさえ言っている人がいるんですよ。ですから、いまのあなたのすなおな御答弁を私はそのまま聞くわけにはいかない。非常な不安を持っておりますことを申し上げておきます。  大体が、民主的な権利を守り、労働者国民に奉仕するのが労働行政です。それからこれからいよいよ心配されます年少労働者の問題、それから婦人労働の問題。今日、人手がないために、非常に無理をして婦人の労働力の確保ということが行なわれておる。と同時に、最近、非行少年を調べましても、定着率の悪い年少労働者、これらが非行に落ちていく原因が指摘されておる。いまこそ、今後ますます、年少労働者や婦人労働者の保護ということが必要になっているんですよ。御存じでしょうか。こういうときに、大切な基準局が地方へあれされる。あるいは地方の婦人少年室が廃止される。どこへやるかわかりませんけれども、県県で、いまの地方財政から見て、県がそれを肩がわりしてやりましょうというところまで婦人に対してあたたかい気持ちがあるでしょうか。だからこそ、婦人少年局の使命というものは非常に重大なんです。こういうときに、地方の婦人少年室をこういうふうに廃止して、中央の婦人局だけを残して、ちょうど手足をもがれたカニのような存在にして、それで、はたして、今後、大切な行政が、大切な使命が果たされるでしょうか。ことに、私、いま母子保健について心配していろいろ調べているのですけれども、いまでさえ、とにかく家庭婦人と労働婦人の中では、異常産とか流産とかというものが、家庭婦人が九%、勤労女性は二三%の高率を示している。それから農村の婦人でもそうです。最近、献血の血をとりましても、婦人が過労のために比重が薄くなり、輸血に役に立たないような血がふえているのです。こういうときに、だからこそ婦人少年局をもっと拡大強化していかないと——婦人少年局の使命というものを十分認識しているのでしょうか、大臣。私はこれは大臣からはっきり聞きたいのです。地方の婦人少年室は、じゃ、どうなるのですか。さっき基準局の方に聞いたら、明確な答弁ができますと言ったから、明確な答弁を聞かしてください。
  118. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 御論旨はことごとく私は同感でございます。また、これは非常に大きな根本的な問題だと信じております。それから労働基準行政が外部からの不当な圧迫を受ける、あるいは地方ボス等の干渉を受けるというようなことのために筋を曲げなければならないような事態が起こってくる、そういう場面が予想されるくらいならば、これはやらないほうがよろしいのでございます。あるいは、おことばにございます年少労働者の保護、婦人の保護はますます大切な仕事になってくるわけでございますから、かりにこれを府県に移しました場合においても、それによって行政の質が低下しないような、そういう弊害を除去できるような、何かしっかりした仕組みを同時に考えていかない限りは、これはやらないほうがよろしいと考えております。いろいろなことをただいま研究いたしておりますが、さような場合にも、御指摘のような弊害が起こらないように、その点については念には念を入れて研究をするつもりでございます。
  119. 藤原道子

    ○藤原道子君 もう起こることは明らかなんですよ。それで、これはちょっと例ですけれども、十月六日付のこの新聞にこういう記事が載っている。「産業界が強い態度——人手不足から緩和を望む」「労働基準法の就業制限」、こういう見出しで取り上げられております。それによりますと、「労働基準法の就業制限は、日本の経済産業の成長を阻害している——と、同法の改正を望む声が産業界でにわかに高まってきており、労働省実態調査にハッパをかけるいきおいにあるようだ。労働省は長期的な雇用対策を立てる立場から労・使と政府の三者構成で、産業別の雇用会議を四業種について開いてきた。」云々ということなんです。その中に、「鉄鉱者雇用会議では、業界側から「欧米諸国でも例をみないほど厳しい労基法の中の就業制限は国際競争力を弱める要因だ」と改正がつよく打ち出された。」と。それから何というんですか、これは私よくわからないんですが、「同業界が現在の三直三交替から四直三交替に移行する動きをしており、現行労基法では休憩・交替時間のとり方が問題となるため、改正を要望している。」と。それから「自動車産業でも女子の就業時間、危険有害業務禁止の制限緩和をすでに打ちだしており、技術労働者不足から女子の大幅な活用を求めている状態であり、労基法の再検討では各業界ともほぼ一致している、といえるようだ。一方、中小企業でも同じように人手不足対策として、女子の就業時間の延長、休日出勤を認めるように、との声は高まっている。」と。また、「たとえば、東京工場団体連合会では、労基法改正の要望に加えて、1女子労働者と時間外労働関係を専門委員会で検討し、2また、諸外国の実態はどうかを調べ、理論的に立証したうえで労働省はじめ関係当局に対して陳情するかまえをみせている。」と。それから紡績業界でも女子労働の依存率が高いこともあって、すでに「女子の深夜労働を認めるよう法改正すべきだ」との立場日本紡績協・労務委員会で明らかにしている。」と。ところが、「一方、総評、同盟など労働団体では、この動きに対して、労働時間の短縮に逆行する労基法の改悪である一と、強く反ぱつする態度をとっている。」と、こういう記事が出ております。  そこで、世界的に時間短縮が問題になっているそういうときに、労働省が業者に押されて、女子の問題の緩和だとか、労働基準法がやかましいから国際競争におくれるんだと。冗談じゃございません。外国の新聞は何て書いております。日本の高度経済発展は、労働者の勤勉さとその低賃金にある、こう指摘しておる。いま自由競争等がやかましいときに、こういう労働基準法の改悪というようなことは世界じゅうが見詰めておるんですよ。日本の恥になると私は思う。そういう点からもこうしたことには私は反対だ、こういうことですが、大臣はいかがですか。業者に押されて改悪に踏み切ったという感じが、もうそれこそ大衆の中の評価でございます。
  120. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 労働基準法が、何ぶんにも、二十年も据え置きでございます。その間に、社会、経済の情勢も大きく変化いたしております。技術の革新も絶え間なく行なわれておるわけでございますから、実情に合わざる点は出てきておるに違いない。そこで、労働基準法を根本的にもちろん自主的に研究をしようという考えは持っております。ただ、申すまでもなく、労働条件の適正を期していこうという決意にも方針にもいささかの変化があるわけでございません。業界の圧力に押されて云々ということは、毛頭ございません。ただいま、いろいろの例を引用なさってのお話でございますが、たとえば鉄鋼の業界からおことばのような提案もございます。いま時間短縮が世界の趨勢であるというお話でございますが、この問題は実は鉄鋼の業界で週五日制をぜひ実行していきたい、その問題と関連をして出てきておる要望でございます。私どもこれを研究いたしますのは、決して圧力に押されてどうこうという考えは持っておりませんので、その点はそう先生意地の悪いことをおっしゃらないでください。
  121. 藤原道子

    ○藤原道子君 ところが、世間で言っているのは、業者に弱く労働者に強い労働省、それはもうみんな言っておりますよ。だから、そういうことでは恥ずかしいことですから、特に理解のある大臣に私は苦言を呈するわけです。まあ悪く思わないでください。  それから特に業界から要望がございますが、女子の労働時間や、危険有害業務の就業制限の緩和を少しでも考えているのでしょうか、これをちょっと伺っておきます。
  122. 和田勝美

    説明員和田勝美君) 基本的には、ただいま大臣からお答えを申し上げましたように、二十年以上たちました基準法でもあり、それが実際に動いておる姿である。そういう社会、経済の実態が非常に変わってきておりまして、そういう変わってきたものと現在の施行というものとで労働者の保護の見地から見てどう変えるべきかという問題は、私どもとしては、実態に即しつつ研究をさしていただきたい。しかし、これはそう簡単に結論の出る問題ではないと思います。そういう際に、女子の就業制限の問題もございますが、女子の就業制限という問題が、たとえば危険有害というようなことのほかに、いまではもうむしろ女子の雇用の場の問題との関連で考えなければならぬこともあるだろうし、技術革新の世の中で危険と言われる範囲でなくなったと思われる向きもあるやにまあ諸外国の例等から見ましてもあるようでございます。そういうものから考えますと、女子の雇用機会を確実に確保していくという見地からの検討もなされてはいいのではないかという意見も、これは御婦人の側にもあるように聞いております。詳しいことは婦人少年局長のほうがお詳しいですが、そういうようなもののいろいろな意見がございますので、私ども全体的なものを実態的につかまえて研究していきたい。ただ、目標は、大臣もお話しになりましたように、決して女子を過酷な労働の中に入れる、危険な職務につかせようと、そんなような意味合いのものではございませんで、職場の確保とか、あるいは危険有害というものの状況の変化とか、そういうものに即していきたい、こういうことでございますので、御了解いただきたいと思います。
  123. 藤原道子

    ○藤原道子君 うまくお逃げになりますけれども、確かに二十年経過しているんですね、労働基準法が。だから、マンネリを打破して日本経済の現状に即応して、労働行政、婦人少年行政を再編するというなら、形式だけでなく、もっと実態を見詰めてやっていかなきゃ困る。そして、各方面の民主的な意見を聞き、ほうぼうから情報を集めるべきである。ところが、現在まで、次官でも、官房長でも、総務課長でも、ことごとくこれを押しつけるかのごとき感がある。公言するということは、そういうあれがあるからだと私は考える。ですから、ここであなたがはっきり言われたように、大臣も言われたように、それが労働者の利点になる、福祉につながる、こういう観点からもっと意見を聞いて御決定を願わなければ、われわれは納得がまいりません。  それから婦人少年室の廃止は、労働基準法の女子年少者の事項についての調査や監視の目を事実として弱めることになるだろう。こういうことに対して、いいですか、有馬さんは、県の中に女の城は残したい、こういうことを言っている。女の城とは何ですか。これが女をべつ視している一つの証拠じゃないですか。そういう感じを受けることをおそれて、県の中に女の城は残したい、こういうことを言っているんです。私は、こういうことは許されないと思う。むしろ、現在の地方の婦人少年室を拡大強化すべきだろうと思いますけれども、今度の廃止で婦人少年室の存在はどうなるのですか。ただ名目的に県の中に女の城を残すだけじゃ困る。このことばがどういうときに使われるかを考えると、あまりにおちゃらかした言い方だと思う。明確に御答弁を願いたい。——高橋さんより、そっちのほうが……。
  124. 高橋展子

    説明員(高橋展子君) 婦人少年行政関係のことについての御質問でございますので、今回の機構改革との関係で一応お答えさせていただきます。  先ほど基準局長がお答えいたしましたように、十八日に私どもの出先の室長も招かれまして、同席したところで一応官房の提案がなされたわけでございます。これに次官、総務課長等も御出席になりまして、室長たちにその改革案についての意見を求めている段階でございます。私といたしましても、室長たちの意見を集約いたしまして、それを十分に尊重して慎重に考えたいということでございますが、まあ基本的には、婦人少年行政の重要性というものはますます高まっておる今日でございますので、どのような案が考えられるにいたしましても、婦人少年行政が後退するようなことはないような線で考えていきたい、むしろ発展的に拡充強化されるという線で考えてまいりたい、このように存じております。
  125. 藤原道子

    ○藤原道子君 だから、県のほうへどういう形で残されるのか。県で、いまやっている婦人少年室の仕事をやれるとは私は断じて考えられない。いまでも、調査に行くと、脅迫を受けたりなんかしているんですよ。こういう事実は局長も知っていると思う。やりにくいんですよ。それをあえてやらなきゃならない今日の状態なんです。それが県知事なんかの支配下に置かれて、豊かでもない県がそういうことをやらせるなんて思うのは甘っちょろいですわ。やりっこない。それを大臣も百も承知の上で言っていることだろうと私は理解いたします。  私にもう約束の時間がまいりましたので、残念でございますけれども、申し上げたいのは、各方面からこの改革案に対してはこんなにたくさんの建議書、要望者が来ているはずなんです、労働省へ。それから県の基準局からも要望書が出ておりますね。みんな、日本の産業を憂え、労働者の福祉を憂えて言われることだと私は理解いたします。ことに、婦人少年室の廃止は、ことごとくおこっている。いままで何回あなた方はいじめつぶそうとしているか、わかりません。そのつど世論に押されて、まあまあ残したんです。ところが、今度、地方婦人少年室を廃止すれば、重ねて申し上げますが、手足をもがれたカニのような存在になって、婦人少年局だけが残っても十分な仕事ができないことは明らかです。そうなったら、婦人少年局は無能である、必要がないと、ばっさりやろうとする下心があるんだろうと思う。省内でも婦人少年局は実につらい存在で来ているのです、わずかな予算で。今度婦人少年室を廃止したって、人員は幾人ですか、百九十九人ぐらいでしょう。二百人に足らないのです。予算は幾らですか。スズメの涙にも当たらない。しかも、この予算と人員に倍した仕事をしているのは、婦人の使命感からやっている。年少労働者を守ろうとする母心、婦人の母体を保護しよう——いま、何だかんだと言われますけれども、世界で有力国家群といわれる中では、妊産婦の死亡は第一位なんですよ。乳幼児死亡だってそうです。いま問題になっております心身障害児だって、妊娠中に三〇%の原因がある。周産期に六〇%、生後起こる故障はたった一〇%だということは統計で明らかになっている。こういうことでまあ、何だかんだとおっしゃるけれども、婦人労働の吸収はほんとうにたいへんなんです。きょう重ねてお伺いしようと思ったパートタイマーでも、そういうところからきているんですよ。酷使されておるでしょう、パートという名において。そういう事業所に行ってみると、パートばっかりでやらしているのです。これは、労働者の保護規定を守らなくてもいい、必要ならばいつでも首が切れる。こういう企業側の、非常に労働力はほしいけれども、人間をただ労働力としてしか見ていない今日の産業人に対して、その働く人を守る、特に年少婦人労働者を守るのは、あなた方しかないんですよ。   〔理事大橋和孝君退席、理事鹿島俊雄君着席〕 これをお考えになって、先ほど来繰り返し御答弁のございました、まだ煮詰まっていない、首にかけても変えないということはうそだとおっしゃいましたね、あなた。首にかけても基本線は変えないのだということを言ったということは、その人の個人の考えで言ったものであって、われわれは知らない、十分に検討した上で変えることもあり得ると、こういうふうに私は伺っている。  しかし、大臣、きょうはたいへんお忙しいときに時間をとりましたけれども日本の産業の発展は、健康な労働力を得てこそはじめてできる。中小企業の罹病率が高いことは御案内のとおり。それを夜業の時間延長を認めろとかなんとかいうような声が産業界からあがっているということもお考えを願いたい。そうして、もしこれが地方に委譲された場合に不便はないというけれども、圧力がある。加えて、一つ一つの届けがブロックまで行かなければならない。九州なら九州に一カ所しかないとすれば、福岡でしょうね。そうすると、端の端からここまで来なきゃできない。そういうことに対してどのようにお考えになるか。きょうは時間がございません。私も、きょうは徹底的に伺うつもりで、いろいろ資料もつくり、ゆうべ二時ごろまでかかって原稿も書いたのです。ところが、原稿抜きにして要点だけをお伺いいたしましたが、私はあなた方の御答弁をかたく御信頼いたしまして、強行するものじゃない、民主的に各方面の意見を聞くのだ、そうしていまの案はまだ煮詰まっていないのだから変えることもあり得る、産業人に押されて変えるのじゃない、労働者の福祉のためにやるのだ、これをしかと私は承っておきます。きょうは、大臣、十五分というのが時間が若干延びましたので、残念ながら。パートタイマーに対しましては次回に譲りまして、この程度で質問は終わりたいと思いますが、その覚悟を最後に……。
  126. 小川平二

    国務大臣小川平二君) いろいろの御懸念は、ことごとくごもっともであると存じております。今回の行政機構の問題を考えまする場合における私どもの関心は、もっぱらその点にあるわけでございます。おことばにありましたようなもろもろの弊害を防ぐためには、しっかりとした仕組みが確立されるということを絶対の条件として、この問題をもちろん今後いろいろな仕事に従事しておる人たちの意見も取り入れつつ研究していくつもりでございます。  それから婦人少年室でございますが、これを県に移すということについてもただいま研究はいたしておるわけでございます。今日まで非常に熱意にあふれた有能な女の人たちが婦人少年室というところで結束して仕事をしてきておるわけでございます。したがいまして、女の城ということばもそういう意味で好意的に御解釈をいただきたいと思っておるわけでございます。県に移しました場合にも、これが何となく県の中に埋没してなくなってしまうというようなことは決してあってはならない。少なくとも婦人少年室とか婦人少年課という形で残すことが最低の絶対の条件であると心得て研究をいたしておりますし、関係官庁ともそういう前提で話をしておるわけでございます。府県におきましては、児童福祉、あるいは学校教育、社会教育、あるいは職安仕事もやっておりまするし、警察もございます。年少の労働者の問題に対処していきます場合に、ことごとくこれは密接な関連を持った仕事でございますから、同じ屋根の下でそういう仕事に携わっている人とも密接に協力をして、行政の能率をあげ、効果を高めていくような方向で問題を検討していくつもりでございます。どうぞひとつ御信用をいただきたいと思います。
  127. 藤原道子

    ○藤原道子君 ゆうべのニュースとけさの新聞で大々的に取り上げられておりますけれども、元の従業員を監禁した事件が出ています。年少労働者がなぜ定着しないかというようなことをもっと真剣に考えてもらいたいと思う。私はこれは重大だと思う。この問題一つでも一時間ぐらいありますよ。非常に重大だと思う。あれは氷山の一角ですよ。いろんなことがやられているんですから、これを特に心にとめていただきたいということを強く要望して、終わります。
  128. 鹿島俊雄

    理事鹿島俊雄君) 本日の調査はこの程度にとどめておきます。  次回の委員会の開会につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十二分散会