運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1968-10-01 第59回国会 参議院 決算委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年十月一日(火曜日)    午前十時三十分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         木村禧八郎君     理 事                 黒木 利克君                 温水 三郎君                 松井  誠君                 黒柳  明君                 高山 恒雄君     委 員                 岡村文四郎君                 小枝 一雄君                 今  春聴君                 佐藤  隆君                 菅野 儀作君                 若林 正武君                 小柳  勇君                 上林繁次郎君                 峯山 昭範君                 渡辺  武君    国務大臣        通商産業大臣   椎名悦三郎君        国 務 大 臣  鍋島 直紹君        国 務 大 臣  宮澤 喜一君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        総理府内閣総理        大臣官房臨時引        揚者特別交付金        業務室長     川合  武君        科学技術庁科学        審議官      高橋 正春君        厚生政務次官   谷垣 專一君        厚生省環境衛生        局長       金光 克己君        厚生省環境衛生        局公害部長    武藤き一郎君        水産庁次長    森沢 基吉君        通商産業省化学        工業局長     後藤 正記君        建設省道路局長  蓑輪健二郎君        建設省河川局砂        防部長      木村 正昭君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国家財政経理及び国有財産管理に関する調  査  (国家財政経理及び国有財産管理に関する  件)     —————————————
  2. 木村禧八郎

    委員長木村禧八郎君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  国家財政経理及び国有財産管理に関する調査を議題といたします。  御質疑のある方は、順次御発言願います。
  3. 小柳勇

    小柳勇君 私は産業公害の中で、特に現在問題になっております水俣病などを中心に質問いたしたいと思います。  再三、予算委員会その他の関係委員会質問しておる問題でありまして、新しい問題でございませんが、最近厚生省並び科学技術庁見解発表され、その発表されたことによって、さらに問題は深刻であり、しかも具体的になりましたので、その具体的な問題を解明するという意味で、きょう質問をいたしたいと思います。  私は、昨年の五月八日の参議院予算委員会総括質問及び五月二十二日の分科会で、水俣病罹災者犠牲者救済質問いたしました。そのときの関係大臣答弁によりますと、昨年の七月には政府見解発表される、政府見解発表されたならば、政府行政的措置も直ちにやるということが答弁されたのであります。ここに速記録がありますからこれを読み上げるがよいと思いますけれども、時間の都合上省略いたします。したがって、政府としては、各委員会で問題になったので、でき得れば昨年の七月には政府見解発表して、罹災者並びに犠牲者に対して、行政的措置あるいは会社救済措置などを取り計らうつもりであったと思うが、結果は、ついに一年二カ月有余延びまして政府見解が先日発表されました。九月二十六日に科学技術庁並び厚生省見解発表された。その間、一年二カ月の時日を要したのでありますが、犠牲者並び罹災者は、その間わずかな金で療養しておる、また生活苦の方も相当あるようであるが、かようなことを考えると、政府の怠慢というものについて、私は社会的な義憤を感ずるのでありますが、科学技術庁並び厚生省担当官から、なぜ昨年の予算委員会などにおける答弁よりも一年二カ月も時日経過したか、その間の技術的な見解について発表願いたいと思います。科学技術庁を先に発表してもらって、次に厚生省からその間のいきさつについて発表願いたいと思います。
  4. 高橋正春

    説明員高橋正春君) お答え申し上げます。  ただいま小柳先生の御質問にございました、昨年の五月八日の予算委員会時点におきます経緯を簡単に申し上げますが、当時、本慢性水銀中毒に関します技術的な見解の解明の段階はどのようになっていたかと申しますると、四十年の九月に、科学技術庁から厚生省並び農林省に対しまして、今回の中毒事件原因究明いたしますために、特別研究促進調整費を移しがえをいたしまして、これに基づきまして両省庁が御研究を願ったわけでございます。四十一年の三月に、農林省から御報告がございました。さらに厚生省からは、四十二年の四月に御報告があったわけでございます。その際、厚生省の御報告は、疫学、試験研究並びに臨床という三つの研究班の御報告を提起いたしまして、科学技術庁のほうに御報告があったわけでございますが、三研究班の内容につきまして、多少その結論におきましての差異がございました。したがいまして、これらの三研究班研究の結果を総合的にお示しいただきたいということで、厚生省に対しまして総合的な見解を求めました。この段階が先ほど御質問にございました昨年の五月八日の時点だろうと思います。したがいまして、当時の二階堂長官先生の御質問に対しましてお答え申し上げましたのは、そのような時点におきまして、厚生省の三研究班報告の総合的な見解が六月中には出るだろう、これを科学技術庁が受けまして、そうして政府といたしましての統一見解をまとめる、こういう意味合いでお答え申し上げたのだろうと思っております。  そのような経過をとりまして、厚生省のほうからは、四十二年の九月に、食品衛生調査会に諮問されました結果をもちまして、厚生省見解といたしますという旨の御回答を得ました。さらに通産、農林、経企各省庁からは、四十二年の十二月に、それぞれ御見解を私どものほうにいただいたわけでございまして、各省庁の見解の相違がございますので、それ以降、私どものほうで調整をいたしまして、ようやく今日に至りまして、その間私どもの努力が足らないということを率直にお認め申し上げる以外ないわけでございます。非常に本研究というものは、疫学的な思考によりますものでございますけれども、非常に要因が複雑である。しかも、その事象というものが過去のものでございまして、再現性のないというような、非常にむずかしいような種々の要素を含んでおります。したがいまして、各省庁の食品衛生調査会答申に対しますところの御見解が種々でございましたので、当庁といたしましては、極力その調整につとめました結果、慎重に検討いたしました結果、先ほどお話がございました九月の二十六日に至りまして、ようやく各省庁の意見調整ができ上がって、これをもちまして政府統一見解といたしまして発表いたしました次第でございます。どうぞよろしく。
  5. 金光克己

    説明員金光克己君) 阿賀野川水俣病政府見解発表が今日に及びました経過につきましては、ただいま科学技術庁高橋審議官から御説明があったとおりでございまして、厚生省研究をいたしておりました研究班の三班の研究報告が、厚生省になされましたのが昭和四十二年の四月でございます。それで、これを食品衛生調査会にはかりまして、食品衛生調査会から答申をいただきましたのが八月三十日でございます。それをもちまして科学技術庁のほうに厚生省見解として報告したような経過をたどった次第でございます。  その後、その政府見解のまとめが今日に及びました経過につきましても、先ほど高橋審議官からの御説明のとおりでございまして、熊本県の水俣病原因究明につきましては、いろいろと関係する因子が非常に多いという関係上、いろいろと技術的にも十分検討しなければならぬという面があったために今日に及んだ次第でございまして、若干延びました点につきましては、まことに遺憾でございますが、一面、医療的な面につきましては、厚生省といたしましても、できるだけ地元とも話し合いながら進めてまいったような次第でございます。  以上でございます。
  6. 小柳勇

    小柳勇君 昨年のこの予算委員会政府答弁を読んでみます。これは厚生省環衛局長、「水俣病の前例を考えますと、このときにはおおむね二カ月間の審議期間を要しておりますので、今回も一同じ程度の審議が行なわれるといたしますと、四月七日から二カ月ということで審議の結果の結論がいただけるかということを期待いたしておるわけでございます。厚生省といたしましてはこの審議の結果をちょうだいいたしましたところで早急にこれを科学技術庁報告をいたしまして、おそらくはこれが厚生省意見の基礎になるということで科学技術庁各省のこの試験に関しまする意見がまとめられまして、科学技術庁主宰のもとに関係各省寄りまして国としての意見を出す、こういうことになる手配でございます。」、これが環衛局長答弁であります。科学技術庁大臣二階堂君はこう言う。「さらに厚生省の統一した見解結論が六月中には出ると、こう承っておりますので、できるだけ早くその統一見解科学技術庁に受けまして最終的な結論を急ぎたいと、かように考えております。」、このあと私は、七月ごろこの統一見解が出ると考えるが、ちょうど国会が休会中であるから問題もあろう、なぜもっと早く出さぬか、こういうことで私は質問を終わっているわけなんです。いま科学技術庁のほうは、昨年の十二月に各省意見がまとまったとおっしゃるが、関係各省が何月何日におたくのほうに届けたか、発表願います。
  7. 高橋正春

    説明員高橋正春君) 各省庁の本研究に対します御意見につきましては、経済企画庁からは四十二年の十二月十五日、農林省からは四十二年の十月二十日、それから通産省からは四十二年の十二月二十八日、以上でございます。
  8. 小柳勇

    小柳勇君 わかりました。各省についてはあとでまた質問いたします。  経企庁長官が御出席のようでありますから質問いたします。  私がいま冒頭に質問しているのはこれは本論ではありません。この水俣病が発生いたしましたのは、もう十二年前です。昭和三十一年に発生いたしております。そして研究されて、昭和三十四年には、熊本大学有機水銀であろうという見解発表した。そのころ一応まとまりかけた。ところが、政府がこの結論を取り上げなかった。当時われわれが国会で論議したのは、大産業政府圧力をかけて、有機水銀というと産業公害一切が企業責任になる危険性がある、可能性があるから、大産業政府圧力をかけて、この結論を延ばすのではないかという懸念をもって質問をしたので、厚生省に対しましても、関係各省に対しましても、早急に結論を出すようにハッパをかけてまいって、ついに結論が出ないまま、昭和四十年には第二水俣病、いわゆる新潟阿賀野川事件が発生した。そして去る九月二十六日に、科学技術庁の一応の見解、これは技術的見解であって、その後厚生省がこれをさらに解釈をして、第一、第二の水俣病政府見解発表しました。世論は——新聞がここにこれだけありますが、報道機関国民もどう考えたかというと、もっと早く第一水俣病原因はわかっておったのであるから、政府はこれを取り上げて、政府が早く見解発表しておったなら、新潟の第二水俣病は発生しなかったであろうと、こういうことをどの新聞も書いております。座談会でも学者がそういう見解発表しております。その過程の中で、経済企画庁関係のあることは、こういうことがわかっております。昭和三十四年に厚生省食品衛生調査会で一応の結論を出した、そのあと、これがまとまらないで各省がもたもたしておって、経済企画庁の主管として水俣病総合調査連絡協議会というのができた、ところが、これは四回会議を開いたまま結論を出さないで自然消滅している、こういうものもございます。自然消滅するようなぶざまなこと、政府のやり方が第二水俣病を発生させたのだということも各紙とも一様に書いている。言うなれば経済企画庁長官が主宰するこの会議自然消滅とか、あるいは各省役人学者研究に消極的であったり、あるいは工場企業責任に対する積極的な取り組みが足らなかったりして、問題を先に延ばしたために、現在まだこの問題が解決していない。水俣のほうでは百十一名の罹災者新潟事件のほうでは三十数名の犠牲者が出ている。したがって、経済企画庁長官質問いたしますのは、せっかく前向きに問題を早くまとめようとしてつくった水俣病総合調査連絡協議会が、なぜ四回の会議自然消滅したか。その背後のほうにはこういう邪推がある。参加の全学者が、その原因有機水銀説をとったが、そこで有機水銀説をとると、その責任一つ工場になるということが明らかになったから、この会議自然消滅されたのではないかという邪推もいま横行している。こういう邪推政府国民から受けてはならぬと思う。私ども政治家も、これを十二年も取り上げてきたのですから、早く解決しなければならぬ責任がある。もしも政府がその産業を守らなければならぬという立場からこの結論を先に延ばす、結論をうやむやにするということがあったら許せぬと思う。なぜ経済企画庁はこの連絡協議会自然消滅させたか。そのいきさつと現在の大臣の心境を聞いておきたいと思う。
  9. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまお話のございました協議会は、三十五年から六年にかけまして四回ほど開かれているわけでございます。この当時の記録を調べてみますと、この協議会では、関係各省がこの問題について活発に議論しておりますけれども、結局この結論を出すきめ手がなかった。各省一致した——これは厚生省通産省農林省水産庁でございますが、経済企画庁はその総合調整をするということでこの会議幹事役になっておりますが、結局各省の合意が得られなかった、まとまらなかったということのようであります。しかも、他方で工場操業中止をする、それから補償等についてある程度の話し合いが始まるというように、現実の問題が片づく方向に向かっておったこともあって、結局この協議会としては最終的な結論を出さずに、三十六年の第四回を開きましてから、その後開いておりません。私思いますのに、当時この協議会結論を出さなかったのは、出せなかったということのようであります。出せなかったということは、企業圧力があったということとは無関係であって、結局まだこういう問題を学問的に関係者が大体疑いのないまで解明するという当時の資料なり、あるいは学問そのものでございますか、そういうものがまだ確立していなかったというのが、いまからかれこれ七、八年前でございますけれども、当時の実情であったように思うのであります。それからまた社会的にも公害ということが今日のように重く取り上げられるような環境になかった、こういうことであったのではないかと思います。今日、公害ということがこれだけ人々の関心を集めることになり、また企業側においても、公害を起こした企業側社会的責任、あるいは起こしてはならないという社会的な責任というようなことも、当時と今日では格段にやはり認識が違ってきております。そこで、どう申しますか、世の中のものごと考え方の変化というものが、やはりこの七、八年前と現在とではかなり問題の処理考え方を異ならしめておる、こう考えるべきではないかと思います。
  10. 小柳勇

    小柳勇君 昭和三十四年のことでありますから、いま大臣責任を追及をしてもしようがないことでありますけれども、この連絡協議会ができたのは、その年の十一月十三日、厚生省食品衛生調査会が、有機水銀水俣病の主因であると答申をした、これを受けて連絡協議会ができているわけです。その月の十八日、この答申が出た五日後にこの連絡協議会ができたのですから、しかも、その連絡協議会のメンバーである学者は、ほとんどすべてがこれを支持しておる。それが四回会議をやって原因がわからないで解散をしたというのが、やはり疑いを持たれる大きな原因であろうと思われるわけです。そこで、いま責任を追及してもいたし方ございませんが、経済企画庁もこういう連絡協議会自然消滅さすほど、産業公害については不熱心であったし、そのためにこれだけの犠牲者が再度新潟に出た、こういうふうに言われておるが、この現在言われておることに対して、経済企画庁はどういうふうに釈明しようとされるか、大臣見解を聞いておきたいと思います。
  11. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 何人かの学者がほとんど意見か一致したと——三十四年当時でございます——言われますが、これはたとえば現在の阿賀野川の問題についても、政府と所見を異にする学者もおられるわけでありますから、何人かの学者がそうであったからといって、行政全体がそれをそうだと認定するのには、少しやはり当時として根拠が十分でなかったと思います。私ども水質保全について行政責任を持っておりますから、できればその水質というものは汚染されずに保たれるということに当然関心を持っておるわけでありますが、それを私企業側にもそういう観念を定着させて、そうして水質を汚染させないための施設を企業側において行なうことが、企業としての社会的な責任であるというものの考え方を今日のように定着させるのには、やはり何年か時間がかかってしまった、そういうことというふうに私は見ております。
  12. 小柳勇

    小柳勇君 長官のいまの答弁についてはまだ非常に不満でありますけれども、各大臣ともきょうお急ぎのようでありますから、次の問題に入りますが、私は、もう少し政府が前向きにスムーズに問題を解決する意欲を持つと同時に、国民に対して信頼を受けるような措置をしなければならぬと思うのです。  次の質問は、水質保全責任長官にございますが、現在このように産業公害が騒がれておる。特に沿岸漁業の被害も含めて水質保全というものが非常に重要な問題でありますが、五十八国会公害対策特別委員会の決議にもございますが、水質保全について、この問題を契機にして経済企画庁長官はどういう御決意をお持ちであるか、お聞きいたします。
  13. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 企業側責任感というものがかなり定着してきたように思いますので、従来水質保全基準設定を次々に行なっておりますが、設定された基準が守られるということが、だいぶんここへきまして無理なく行なわれるようになってまいりました。そこで、基準設定もこれから問題のありますところは次々とやってまいりたい、こう考えております。
  14. 小柳勇

    小柳勇君 経企庁の技術的な問題は、あと担当官質問いたします。長官には御苦労でした。  通産大臣質問いたします。  いま、水俣病及び阿賀野川事件政府見解が、九月二十六日に厚生省並び科学技術庁から出ましたから、これに関連して具体的な問題の質問に入っていくわけですけれども、その発表のありました九月二十六日及び翌日の新聞を見ますと、どの新聞も、あるいはラジオ、テレビなども一せいに書いておりますのは、通産省などの役人が、産業を守るという立場であったろうが、原因究明に協力しなかった、逆に妨害した事実があるということを書いている。通産省としては産業を育成することは大きな任務でありましょうけれども水俣病のように死亡者並びに半身不随の犠牲者を出しておる、こういうような原因究明に対して、直接工場を監督する通産省がその原因究明について消極的であったり、妨害してはならぬと思う。これは一つ新聞でありますが、こういう大きな見出しで「通産省から圧力」「秘密主義徹底調査妨害」「会社のため逃げ道捜す」「もたついた原因究明」と書いてある。こういうことが堂々と新聞に出て、通産省責任者である通産大臣としてはどういうお気持ちであろうか、大臣見解を聞いておきたいと思います。
  15. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 指摘されておる事実はだいぶ以前の事柄のようであります。当初厚生省食品衛生調査会におきまして、水俣食中毒部会というものを昭和三十四年の七月に設置し、検討を行なった結果、病気原因である物質究明につきまして一応の結論を得たが、発生原因であるとか、生成過程分布状況等について、さらに総合的な研究を行なう必要があるという答申を行なって、これが同年の十一月に解散をいたしました。これについて新聞に報道されているような、通産省圧力をかけて解散させたというような事実はございません。政府としては、さらに厚生省通産省水産庁経済企画庁が、学識経験者を含めまして、それぞれの分野を担当して総合的な調査研究促進をはかるために、水俣病総合調査連絡協議会というものを設けた、これは昭和三十五年の二月から翌年の三月まで四回協議会を開催しており、当時の学問的水準では、病因、物質発生原因等につきまして、これを確定することはきわめて困難であり、昭和三十六年度以降は、協議会を開催しないままで最近まできておるのであります。これらの事実を新聞が取り上げて、通産省妨害したとか、あるいは圧力をかけたというようなことを書いておるようでありますが、これは事実と相違いたします。
  16. 小柳勇

    小柳勇君 通産省大臣によく話を連絡しておかなければ……。通産大臣はきょうここヘおいでになるまでに、私がどんな質問をするか、大体聞いてきておられますか。このことを答弁してください。
  17. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 最近の水質保全の問題に関連して御質問があるということを聞いております。
  18. 小柳勇

    小柳勇君 私が質問しているのは、いまあなたが言ったようなことはたくさん例があるわけです。それは、ただ連絡協議会がつぶれただけじゃないと思うのです。たとえば、熊本大学の教授とか、あるいは委員の方々が座談会ではっきりおっしゃっているわけですよ。会議をまとめようとしたところが、妨害の発言がいろいろあった、あとで聞いたら通産省役人であったとか、あるいは分析するからといって水を取りに行ったら、工場通産省の許可を持ってきてくださいと言ってやらせなかったとか、いろいろあって、その結論としてこういう新聞の記事が出ているわけですから、だから、あなたはその当時の通産大臣じゃないんですから、あなたの責任を追及しようと思わないが、いま新聞にこういうふうに出て、産業公害が出ても通産省圧力をかけて、その原因究明をやらせぬのだと国民一般が思っている。これに対して大臣はどう対処されるか、その見解を聞いているわけです。
  19. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その問題については、通産省といたしましては、こういったような原因を学問的に究明するということは非常にむずかしいんです。しかしながら、この間、政府統一見解を出しましたように、長い間汚染があって、その上に短期的な濃縮汚染というものが加わって、そうして発病したようである。そういうところから見るというと水俣病についてはチッソ、それから新潟阿賀野川の問題については長い間昭和電工鹿瀬工場から流れ出た汚水のために、それが一つの根底としてそういうものが作用をしておる。魚の体内にそれが蓄積されて、それを食べるということによって、長い間かかって人間の体内に蓄積された。そうして今度は短期濃縮汚染というものが、あるいは新潟の地震のためであるか、あるいはまた昭和電工工場処理操業方法を変える際に大掃除をした、そういうときに濃縮汚染というものが起こったのであります。そのいずれであるかということははっきりわからない。わからないが、それはそれとして長い間やはり長期にわたって水質汚染というものが昭和電工によって起こっておったということが言えるので、つまりこれが結局その基底といいますか、長期の水質汚染というものがやはりこの問題の基盤をなしておると、こういう政府見解統一見解が今般決定発表されたわけであります。これについては、通産省としても、政府統一見解というものに従っております。しかし、まあ問題は、それによって公害が発生して病人が出ておる。この救済はこれは急がなきゃいかぬ。だから、あくまで学問的にも一点の疑いのないところまで究明しようと思ってもなかなかむずかしい。むずかしいが、一方においては病気が出ております。だからこれを究明するまでほうっておくということはできない。でありますから、それはそれとして、これの救済政府としては乗り出さなきゃいかぬ、こういう考え方に立っておるわけでありまして、言われているように、ただ企業側に立って弁解にこれつとめておるというようなことは、これはまあ著しい誤解であるということをこの際はっきりと表明しておきます。
  20. 小柳勇

    小柳勇君 その答弁がピントが狂っておるんですよ。私の質問していることに答弁されぬものですから長くなりますが、原因の問題なんかあとでやりますから、私の言っているのは、簡単に言うと、こういったように各紙が通産省役人原因究明妨害したと書いておる。国民もそうであると思っておる。あなたがこれに対して、そのままほうっておいては、今後も産業公害が起こりました場合に、通産省企業側だけに立って国民生活は無視するのだととられるが、何か釈明することはございませんか。釈明するとすればどんな方法でやられますか。でないと、国会政府も、国民からそっぽ向かれます。したがって、通産大臣としてはこんなものをそのままほうっておいていいのですかと、このことだけを質問しておるわけです。
  21. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) でありますから、いま政府統一見解、最近に発表された統一見解、そういうものをわれわれはもちろん政府の機関としてこれを支持する。それからまた、これによって引き起こされた公害、ことに病気、この点については、これはこれとして速急に対策を講じなきゃならぬ、かような立場に立っておるのでありまして、言うがごとく、この問題の処理にあたって反対の立場をとるとか、あるいはことさらに企業側をただ弁護することに終始するとか、さようなことはございません。これは誤解であるということを申し上げております。
  22. 小柳勇

    小柳勇君 それでありますと、こんな新聞出ておりますけれども、過去に名前をはっきり書いているんですよ。名前をはっきり書いて言っておられるんですよ。それでもそんなことはございませんでは、それは通りませんよ。現在はあなたの心境としてはそうでしょうけれども、この十二年の間に、原因究明会議などで、あるいは分析をするために資料収集に行ったところが、通産省の許可を得なさいとか、あるいは会議通産省役人妨害をする発言をして、その原因究明をおくらしたと書いてある。そういっておるんです。書いてある。おくらしたといっておるんですよ。そういうものに対して通産省としては、いや、そんなことはありませんでしたでは通らぬのです。
  23. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 新聞にそう書いてあることは承知しておりますが、これは過去にさかのぼって調べてみましても、さような事実はないということを私は聞いておりますし、そうであろうとかたく確信しておる。でありますから、さような報道が出たことはまことに遺憾でございますが、さような態度をとったことはない、これだけ申し上げておきます。
  24. 小柳勇

    小柳勇君 じゃ、あとはもう水かけ論になりますから、通産大臣見解としては、過去にもそういう通産省役人はいなかったのだと、こういうことをもってこういうような現在のマスコミの宣伝に対しては釈明にかえたいと、こういうことですね。  じゃ、さっきの企業責任の問題、今度の直接原因の問題でありますけれども、それに関連して質問いたしますが、あの政府統一見解が出まして、チッソの社長は工場長と患者並びに死亡者の家を一軒一軒訪問されて、手をついてあやまられた。これはもう大臣も御存じと思う。ところが、新潟事件のほうの安西社長は、私が知るところによりますと、自分としては直接の原因ではないと思う、もっと検討したい、その上で、真相をただした上でそして対策したいということで、チッソの社長のように政府統一見解に対してまだ釈然としておられない。しかも、あれだけいま新潟でも死亡者並びに罹災者があるにもかかわりませず、それに対して済まないというようなことばを聞いておらない。政府統一見解が出て、政府見解として同じことと思うが、チッソの社長の場合と昭電の社長の場合は、全然受け取り方が違う。いま大臣答弁の中で苦しんでおられるようであるが、私どもは、厚生省が出した、あるいは科学技術庁が出したこの統一見解というものは、両方とも原因は大体同じだと見ておる。両社の社長の取り方がうんと違うものですから、政府もそういうように考えておるのかどうか。具体的な問題あるいはこの字句の問題は厚生大臣質問しますけれども通産大臣がただいま答弁されましたから、発言がありましたから、大臣見解を聞いておきたいと思うのです。
  25. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私としては政府統一見解を支持する立場にあります。安西社長はこういうことを言っておるようであります。水俣病については発病個所と工場との距離がきわめて近接をしておる、ところが、昭和電工鹿瀬工場と病気発生の場所との間には六十キロの距離がある。こういうこと一事をもってみても、その間に非常な因果関係があるということはどうも承服できない、こういう見解——これは見解の一端かもしれませんが、そういうことを非常に強調しておられるようであります。しかしながら、たくさんの専門家が現地について再三調査いたしました。その結論がさっき申し上げるような結論に到達したわけでありまして、政府の一員としては当然この統一見解に従うべきである、かように考えております。
  26. 小柳勇

    小柳勇君 大臣答弁よくわかりませんけれども厚生省解釈の中で、こういうように私どもとるが、通産大臣もこれでいいかどうか、簡単に御説明願いたいと思うのですけれども、昭電鹿瀬工場の事業活動に伴って排出されたメチル水銀化合物が大きく関与して中毒発生の基盤となったものと見て、公害病として今後措置する。これは厚生省の解釈。これは長期汚染の原因は主として昭電の排水によるものであると解釈してよいかどうか、簡単に答弁願います
  27. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 政府見解のとおりに私は考えております。あまりいろいろな修正をいたしますと、とかく誤解を生じまするので、結局、長期汚染というものと、それに加えて短期濃縮汚染というものが加わっておる。この両方とも鹿瀬工場原因であると、こういうふうには言ってない。短期の濃縮汚染は震災によって農薬等がかたまって流れ出たものか、それともまた鹿瀬工場の従前の工場運営のやり方というものを変えたんだから、その際に——大掃除の意味なんでしょう——そういう場合に農縮汚染というものが起こったのか。それはどうもいまから判断はできない。いずれにしても、長い間鹿瀬工場の操業から汚染というものが発生して、長い間かかって魚の中に蓄積され、それがまた人間の体内にだんだん蓄積されたと、それだけでは病気の発生原因にはならなかったかもしらぬけれども、それに短期汚染、濃縮汚染というものが加わって、こういうような病気というものが発生したんだと、こういうふうに見ているのですね。でありますから、その統一見解には私はあくまで従いたい。あなたのおっしゃるのは、多少これをモディファイしてお述べになっておりますから、私は政府統一見解に従って厳密にそれを解釈していきたい。かように考えております。
  28. 小柳勇

    小柳勇君 最後のことばわかりませんでしたけれども、私の言っているのは、何もこれは曲げているのではないですよ。いまあなたの言った農薬説は、否定しているのですよ、政府見解は。何か農薬説を、短期濃縮汚染というのは、農薬も加わっているような発言をしておりますけれども、それこそ政府見解を曲げてますよ。あなた、大臣は相当あれ違いますよ、統一見解の解釈が。私のほうを何かひっかけているけれども、私のほうはそのままとっているのです。そういうところに問題があるのですよ。
  29. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私も少しよけいなことを言ったかもしれません。説明ではそうなっておるのです。しかし、出た字句は、「長期汚染は本中毒発生に関与しており、寄与の程度は明らかでないが、本中毒発生の基盤をなしたものと考えられる。」ここがポイントです。結局、一体基盤とは何だということなんでありますが、結局これだけではないかもしらぬ。短期の濃縮汚染というものがこれに加わったように思われる。思われるが、しかし、長期にわたって汚染が行なわれておったということは、これはやはりこの中毒発生の基盤をなしておる。その程度は明らかではないけれども、本中毒発生の基盤をなしておるものと考える。こういうような考え方のようであります。
  30. 小柳勇

    小柳勇君 そういうことはもう見解は出ているのです、あなた読まなくても。私が言っておりますのは、まだ大臣も第一水俣病と第二水俣病、すなわち新潟阿賀野川事件というものは別のように考えておられるところに問題があるのではないかと言っているのです。通産大臣が思っているように、そのように安西社長も企業責任というものを欠いておられるのではないかと私は考えるものだから、通産大臣見解を聞いているのです。それではあとの紛争処理の問題にしても、救済制度の問題にしても、あなたは積極的にやるとおっしゃるけれども、できないのではないか。チッソの社長は一軒一軒行って玄関に手をついて、あるいは仏さまにお参りをして、その企業責任をわびておられる。安西社長は全然そういうことは聞いたことはない。いま通産大臣は何か安西社長の代弁をするような答弁国会でやっているのではないか。そういうようなことが通産省役人がこの原因究明妨害していると新聞が書くほどに国民は誤解するのじゃないか。そういうことでは今後企業の、公営責任が出ましても、通産省が全部これを妨害するととってもしかたがないのじゃないか。大臣見解をもう一回聞いておきたいと思います。大臣、ちょっとお待ちください、もう一回私読みますから、これでいいかどうか。これは私が言ったのじゃないですよ、厚生省が、厚生大臣が記者会見で言ったことですから、統一見解に従うと、あと訴訟の問題あると困りますからわざわざきょう私が国会で取り上げているわけですから、こういうことです。「昭電鹿瀬工場の事業活動に伴って排出されたメチル水銀化合物が大きく関与して中毒発生の基盤となったものとみて、公害病として今後措置する。」すなわち「長期汚染の原因は主として昭電の排水によるものである。」そう解釈している。これだけでよろしいかどうかを聞いているのです。
  31. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 統一見解にあくまで私は従っているわけでありまして、別に企業を弁護するとかあるいは安西社長に同調するとか、さようなことはこれはどうぞひとつ控えていただきたい、決してそういう気持ちでやっているわけではありません。あくまで政府統一見解というものに忠実に私は従っていく。なおかつ、この問題については裁判がただいま係属中であります。でありますから、その裁判の点も考慮して、しかし現に発生している状況に対してどういう手を打つべきであるか。これはどうも一刻も猶予できない問題でありますから、これの対策については通産省といたしましては誠意をもってこの解決に当たるつもりであります。
  32. 小柳勇

    小柳勇君 私の質問についてぼかされるものですから、全然これでは国会の討論になりません。裁判があろうとなかろうと、国会はその責任において原因究明していかなければならないのです。裁判を言うならば、裁判の証人に出られたこれは厚生省調査班長松田心一教授が、昭電廃液が原因であると証言しておられる。裁判よりむしろ私は国会のこの論議こそがこの公害問題についての基礎にならなければならないと思う。だからわざわざきょう質問しているわけです。したがって、私はいま何回あなたと言い合いましても平行線になって、正確な答弁されませんようでありますから、監督官にまたあとで具体的に質問しますけれども、もう一回私は大臣に言っておきます。これは私がつくった文章ではなくて、統一見解発表されたあと、厚生大臣の解釈として記者会見された文章です。したがって、これを通産大臣がOKされないならば政府統一見解は統一になってないということになりますから、もう一回…。
  33. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それじゃ私ははっきりこれを読みますわ。  「中毒が阿賀野川のいかなる汚染の形態のもとに発生したかについては、次の二通りの形態が考えられる。すなわち第一、阿賀野川が長期にわたって継続的に汚染された結果、中毒が発生したという形態、それから阿賀野川が長期にわたる継続的な汚染に加えて、比較的短期間に相当濃厚にに汚染された結果、中毒が発生したという形態、この二つであります。  この場合、本中毒が阿賀野川の一または二のいずれの汚染形態のもとに発生したものかを判定するために、必要な資料は満たされていないので、本中毒発生が第一の場合または第三の場合のいずれによったものかは断定しがたい。しかし、長期汚染は、本年中毒発生に関与しており、寄与の程度は明らかではないが、本中毒発生の基盤をなしたものと考えられる。」これが統一見解であります。でありますから、私はあくまでこの統一見解のとおり、その考え、これに準拠して私はこの問題を処理すべきである。これを厚生大臣が、病気発生の対策の主務大臣として、どういう場合にどういうことばで表現されたか、それは知りませんけれども、それは相当敬意を表しておかなければなりません。ただわれわれは、冷静にこの問題に対処する場合に、政府統一見解はいま申し上げたとおりであるということを申し上げておきます。
  34. 小柳勇

    小柳勇君 その統一見解、少し文章集約してありますけれども、それでは、あの政府統一見解と同時に出ました厚生省の解釈というものは、これは通産大臣はこれを認めるか認めないか。
  35. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どういう場合にどういうことを言われたのか知りませんが、とにかくこういう統一見解に従って、そして現実に病人が発生している問題に対する処理の方法を考えなければならぬ。その処理の方法は、主として厚生大臣がこれは主務大臣でございますから、厚生大臣がこうだということは私はあくまで尊重してまいりたいと思います。しかし統一見解はいま私がここで述べたとおりであります。
  36. 小柳勇

    小柳勇君 そのあとの病人の対策を立てることが厚生省の解釈じゃないわけです。科学技術庁発表いたしました技術的な見解というものがとにかくわからぬから、したがって解決を担当大臣として、あとの人間全体に関係する補償措置などの担当大臣として厚生省が解釈をやっておる。したがってこれは政府統一見解と同じものだと私どもは理解しておったし、それを厚生省はどんな考えで出されたかなんて通産大臣おっしゃっては、厚生大臣に聞かなければならぬが、厚生大臣きょう残念ながら出席不可能のようだから……。それじゃ厚生次官からその見解を聞いておきたいと思います。
  37. 谷垣專一

    説明員(谷垣專一君) 科学技術庁のほうで政府統一見解発表されたのでございまして、ただ、その表現等につきましてもう少し明確に厚生省として大臣が申し上げたわけでございます。で、ここで言っておりますように、先ほどの長期汚染の問題と短期汚染の問題の、先ほどの見解の点でございますが、阿賀野川の汚染形態といたしましては、長期汚染の事実と、それから比較的短期間の濃厚汚染が加わった可能性がございますが、いずれにいたしましても長期汚染が関与しておるということは、これは統一した見解でございます。その程度は明らかでございませんが、長期汚染なくしては本病の発生はない。その程度は明らかでないが、本中毒発生の基盤を長期汚染がなしておる、こういう見解でございます。それから先ほどお話がございましたように、農薬等の問題があるわけであります。先ほど……。
  38. 小柳勇

    小柳勇君 内容はわかっているから、政府統一見解はどうかを言えばいいんです。
  39. 谷垣專一

    説明員(谷垣專一君) 先ほどの、通産大臣がお読みになりましたのが、これが統一見解、その統一見解の趣旨を明瞭にいたしましたのが、ただいま私が申し上げた趣旨でございます。これが厚生大臣が言われた趣旨でございます。
  40. 小柳勇

    小柳勇君 だからその厚生大臣が解釈されたのは、ただ厚生大臣だけの解釈じゃなくて、われわれは、政府統一見解と聞いているのだが、そうじゃないのかと聞いているのです。
  41. 谷垣專一

    説明員(谷垣專一君) 政府見解と考えております。
  42. 小柳勇

    小柳勇君 そうだな。通産大臣、どうですか。
  43. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは厚生大臣発表したものとして、こういう解釈、阿賀野川の汚染形態としては長期汚染の事実と、これに比較的短期間の濃厚汚染が加わった可能性とがあるが、いずれにしても長期汚染が関与し、その程度は明らかでないが、本中毒発生の基盤をなしたものと考えられる。このとおり、私もそう思っております。
  44. 小柳勇

    小柳勇君 そのことを言っているのじゃない。それはわかっていますが、厚生大臣がわざわざここに厚生省解釈というのを出している、一緒に。これは政府がちゃんと閣議で、この阿賀野川事件のやつは発表したんだから、それにわざわざ厚生省の解釈を出したのだから、厚生省ひとりが先走ってやったのじゃなくて、政府と一緒に統一見解として出したものと理解するが、それでいいのかと、こういうことを聞いているわけですよ。
  45. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ですから統一見解はいま読み上げましたが、これは厚生大臣考え方政府統一見解とは全く一致しております。
  46. 小柳勇

    小柳勇君 それじゃ通産大臣お急ぎですから、あともう一つ公害紛争処理公害救済を急がなければならないとおっしゃったから、通産大臣、いま審議会の答申が出ました。審議会の答申が出ただけで問題は一切解決したように国民の皆さんは思っている。そうではないわけです。問題は、これをしなければならないですね。紛争処理も、あるいは救済制度も、一番の根本の問題は、この審議会のこの答申通産大臣としては支持するかどうかが一つ。これをさかのぼって、十二年前の水俣病の発生にさかのぼって、これが適用されるものと考えて立法されて、それを支持するかどうか、御答弁願いたい。
  47. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 公害病というものに対する主務大臣は、当然厚生大臣でありますから、厚生大臣見解に従ってこれを支持するようにしたいと思います。この公害の解決のためにどういうような手を打つかというようなことについては、まだ厚生大臣は所見を明らかにしておりません。今後これを具体的に提示することになるだろう。主務大臣としての厚生大臣がおやりになることについては、私はどこまでも従っていく、これを支持してまいりたい、こう考えております。
  48. 小柳勇

    小柳勇君 私の質問をよく聞いておいてもらわないと、速記録あとで見ますから……。審議会の答申を、きのうテレビで言っておりますように、いま出しますと、その答申の内容については御存じと思うけれども、厚生大臣としては、主務大臣としてこれを国会に出そうと、それで本制度の救済制度を確立したいとしているが、これを支持されるのかどうかということですね。十二年前に水俣病が発生をしておる。この法律が通るだけでは何も問題は解決しないのです。十二年前にさかのぼって水俣病を解決するという立場でこの立法を支持されるかどうか、そういう質問をしているわけです。
  49. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これについては厚生大臣の主管の問題でございまして、厚生大臣の具体的な主張が政府内において提供されるだろう。そういう場合には厚生大臣の指示に大体従わなければならないと私は考えております。
  50. 小柳勇

    小柳勇君 こまかい点についてはあと担当官質問しますが、もう一つは、たとえば、遠賀川、あるいは鶴崎、あるいは延岡などに公害の危険があるし、各県それぞれ有機水銀をキャッチした。福岡県は遠賀川で二十九日から追跡調査を始めたようであるが、もし有機水銀が発生して、人やその他に被害が大きいと見た場合には、工場排水等の規制に関する法律などによって、工場に厳重なる措置をやることを通産大臣としては決意されているかどうか、質問いたします。
  51. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはもうたびたび申し上げるとおり、主管は厚生大臣でございます。厚生大臣を中心にこの問題の解決に当たるはずになっております。厚生大臣に大体従って私の役目を果たしてまいりたい、こう考えております。
  52. 小柳勇

    小柳勇君 主管大臣通産大臣ですよ。通産大臣速記録を見ますから、いまひとつ答弁願いたいと思いますが、工場排水によりまして、有機水銀などが出てまいりますと、その工場については、浄化装置など緊急に取りかえなければならない。ある場合には工場の操業を停止しなければならない。現在九州の各地区に有機水銀の発生がいわれておる。あと担当官に聞きますけれども、そういう場合には非常措置がありませんと、工場企業責任を感じないのじゃないかと私は思うわけです。さっきは安西社長の例を申し上げましたが、あれだけ政府統一見解が出たにもかかわりませず、水俣のチッソの社長と全然態度が違う。そういうものを考えますと、通産大臣がしっかりしませんと、企業責任によってこの公害というものはなくならぬのではないかという気がしますから、工場排水等の規制に関する法律を適用して、操業停止までしてでも早急にこの浄化装置でもつくるという措置通産省がやらなければならぬのです。そういう御決意があるかどうかということを聞いておるわけです。
  53. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 病気の対策は、先ほど申し上げましたように厚生大臣、それから工場公害の発生に対して直接の責任通産大臣でありますから、これを防止、排除するということについては、もちろん万全の措置をいたします。
  54. 小柳勇

    小柳勇君 科学技術庁長官質問します。いま質問しているのは、先般の政府統一見解に対して、実は昨年の五月、予算委員会総括質問で私質問いたしましたときには、昨年の七月には政府見解が出るという答弁があった、二階堂長官から。にもかかわりませず、九月の二十七日まで延びた。その原因については、技術的にはさっき聞きました。長官としてどういう御見解であるかどうかお聞きしたいと思います。
  55. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) 御承知のとおり科学技術庁各省からのそれぞれの意見が異なっておりましたので、前二階堂長官国会答弁の中で、科学技術庁としての統一見解を明らかにするようにというのが昨年であったと思います。したがいまして、これに伴って経過を申し上げますと、各省、いわゆる経企庁農林省厚生省通産省のそれぞれの省としての正式な阿賀野川水銀中毒事件についての見解がまいりましたのが、実は昨年末からことしの初頭にかけてでございます。したがって、私といたしましては三月ないし四月、おそくとも夏前には統一見解を出すべくあらゆる努力をいたしたわけでございますが、各省との見解が相当違っておりまして、一応統一見解を出す以上は、通産省通産省農林省農林省厚生省厚生省として、また、科学技術庁は独自の見解というのじゃなくして、政府としての統一見解ということで、その調整役を仰せつかっておりますので、やはりそれぞれそれに従って納得せしめたものを出さなければならなかったわけでございます。したがって、そういうことで各省が納得していただくということと、それをいかに表現していくかということについてのいろいろな問題等につきまして、調整が非常におくれまして、この点は申しわけございません。しかし、現実の問題として、あるいは農薬の問題、あるいは長期汚染の問題、それに短期汚染の問題、科学技術庁独自の調査をして結論を出すのじゃなくして、各省からそれぞれ出た各省のいわば正式見解のもとにそれを調整して、政府統一見解を出すという作業でございましたので、たいへんおくれたのでございます。この点は申しわけないと考えておりますが、ようやく九月にこれができて発表することになった、こういう経過でございます。
  56. 小柳勇

    小柳勇君 水俣のほうでは、はっきり原因がチッソの廃液だということがわかりまして、なくなった方の霊も慰むだろうし、病人も安堵し、またチッソの社長自体が一軒一軒回っておわびしておられる。ところが、阿賀野川事件のほうは、安西社長はまだ原因は別だというような気持ちのようだし、患者の皆さんも長官に抗議並びに陳情をされたように聞いておる。私のほうの見解として、実質的には厚生省研究班調査した、これが科学的な、医学的な原因であろうと思う。長官はあれだけまとめられて、しかもはっきり、いま通産大臣がもたもたされたように、その排水が原因であるということを言い切れないような情勢にある。どういう現在の御心境でしょうか。
  57. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) 阿賀野川の問題は、水俣病と比べていろんな意味において、これは私の考えでございますが、複雑であったと思います。水俣病は十五年かかっております。阿賀野川政府統一見解は四年目でございます。したがいまして、そのような意味で多少その原因究明の内容がやはり違っておるといいましょうか、水俣病とは多少異なったところがあるかと思いますけれども、私としては、ようやくにしてここまでとにかく統一見解を出して、あと厚生省見解によってこれに伴う、あるいはこの事件のみについて申しますと、救護措置とか救援措置ということが行なわれるべきであり、さらにまた、この水俣及び阿賀野川の問題が公害病に認定されたときを機会といたしまして、今後かかることが起こらないように、徹底した事前の研究と、それに伴う科学的な基礎的な研究というものをやはり国として考えていくべきであるというふうに考ます。
  58. 小柳勇

    小柳勇君 あなたの発表された文章の中の寄与、関与するという、あるいは基盤という強いことばを使っておられるが、原因ということばとどう違うのでしょう。
  59. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) じゃちょっと技術的に審議官から申し上げます。
  60. 高橋正春

    説明員高橋正春君) 御質問の中から基盤ということばでございますが、全体として申し上げますのは、私どもの今回の統一見解を出します際の前提となりましたものは、厚生省食品衛生調査会答申でございます。この食品衛生調査会答申の中に、基盤という字句が入っておりますけれども、具体的に申し上げますと、非常に不鮮明なことかと思いますが、関与いたしますということは、すべて関係がある、非常に範囲が広いわけでございます。その中で基盤と申しますのは、土台と申しますか、それがなければ起こらない程度に患者の体内の水銀の蓄積量が増大しておったものもそこに含まれておる。厚生省食品衛生調査会と私ども統一見解との差異は、御承知のとおり食品衛生調査会におきましては、いわゆる長期汚染というものが基盤になっておる、この状態のみにおいても患者が発生する可能性があるということで、これは将来につきましての見解でございます。  今回の患者発生そのものにつきましては、長期汚染に「加えて」と書いてございますけれども、短期汚染が加わったということが推定される。私どもの今度の統一見解は、先ほど通産大臣がお読み上げになりましたとおり、(イ)及び(ロ)、すなわち長期汚染のみによって発生した可能性もあるだろうし、長期汚染プラス短期汚染によって起こった可能性もあるだろう。したがいまして、前段の長期汚染のみによって起こりました場合におきまして、これは基盤という概念が多少明確でございますけれども、土台ということは表現上私は不適当だと思います。したがいまして、関与というのは非常に広い範囲でございまして、基盤はその中に含まれておる、このように御解釈してけっこうだと思います。
  61. 小柳勇

    小柳勇君 そうしますと、原因というものの、その関与及び基盤に含まれておると、こう解釈していいですか。
  62. 高橋正春

    説明員高橋正春君) 非常に医学的にいって複雑でございまして、要するに問題は川の汚染ということにつきましては、かなりの確定度をもちまして断言し得ると思いますけれども、それは要するに発病したかどうか、その寄与率と申しますか、たとえば長期汚染が六〇%とか八〇%とかいうようなことを比喩的にいわれますけれども、そういうような寄与率はわからぬ。しかし必ずそこのところには長期汚染というものがすべての場合のもとにあっただろう、こういう意味でございます。
  63. 小柳勇

    小柳勇君 時間が少ないので簡潔に質問しますから、簡潔に御答弁願います。で、長官厚生省が何か解釈を出しておりますが、その解釈については政府統一見解だと考えていいですか。
  64. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) 科学技術庁技術的見解による厚生省見解でございますから、私たちは異議ございません。
  65. 小柳勇

    小柳勇君 次に、あと紛争処理並びに救済を急がなければならぬのでありますが、長官質問いたしますが、審議会からの答申が出て、この国会ではぜひひとつ立法化したいというのが厚生省の願いのようでありますが、私どもの考え、まあ私の気持ちはその審議会の答申が出るということを新聞が流しただけでもう問題が解決したように国民に錯覚させているが、問題はこれからでありますが、水俣病発生原因にさかのぼってこの法律をあるいは行政措置をやらなければならない、私はそう考えております。長官見解を聞いておきたい。
  66. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) 科学技術庁といたしましては、統一見解を出した時点であって、あとは技術的に厚生省及び労働省があるいは予防措置なり今後の対策措置をおやりになるわけでございます。したがって、われわれとしては、再びこういうことがないように、いわば予防措置についても、あるいは公害病と厚生省が認定せられたわけでございますから、それに基づいて、手厚い救護の手が伸べられることを私は心から望む次第でございます。
  67. 小柳勇

    小柳勇君 厚生省質問いたします。  救済並びに紛争処理の問題でいま審議会からの答申が出ようとしておりますが、この来年度の予算案にもうすでに入っておるのかどうか。それからいま申し上げましたように、さかのぼって適用しなければならないが、現在までどういう救済をしておられますか。水俣及び新潟の患者の現在までの救済はどういう法的根拠によってやられておるか。今度これが立法化された場合には、企業責任にかわっていくのでしょうが、その切りかえについてはどういう措置をされるのか、引っくるめて質問をいたします。
  68. 谷垣專一

    説明員(谷垣專一君) 現在救済基金制度といいますものはいろいろ構想を練っておりますが、これは法律を必要といたしますし、来年度の予算要求をいたさなければならない案件でございますが、これは審議会からの正式答申を待ちましてやってまいりたいと、かように考えております。しかし今年度の予算におきましても、この救済の基金制度そのものは実は予算的にもできていないわけでございますけれども、こういうような公害救済に充てまするために、救済ということばは表面的には使っておりませんが、一種の研究補助金という形におきまして、公害病と認定いたしました患者に対する施療その他の研究費、これは国のほうで現在四十三年度において予算を持っておりますので、それによりまして、対策を講じておるわけでございます。  それからもう一つ審議会でいろいろと御意見を練っていただいておりますところの紛争処理の制度の問題でございますが、これもこの審議会の答申を待ちまして、来たるべき本国会におきましてぜひとも法案を提出していく方向に入ってまいりたい、かように考えております。その救済基金制度が、——これは法律その他予算等がこれからの問題でございますが、発足いたしましたあとに振り返ってどうなるか、こういう問題でございますけれども、これはまだそのいまの基金制度そのものの形がはっきりいたしておりませんので、ちょっといまのところここで明確にお答えができないかと思いますが、現在水俣病あるいは先ほど問題になっております阿賀野川等の現在の患者に対しまする方策といたしましては、先ほど来申しました今年度すでにございます予算による措置によりまして患者負担等はなくしていける方策で進めておる、こういう実情でございます。あと公害部長のほうから少し詳しく……。
  69. 武藤き一郎

    説明員(武藤き一郎君) 概要はただいま政務次官のほうからお話がございましたが、昨日、中央公害対策審議会の小委員会で小委員会としての紛争処理並びに救済制度についての意見がまとまったわけでございますが、これを本審議会にかけまして、いずれは近いうちに政府のほうから意見具申がなされることと考えております。事務当局といたしましては、小委員会の大体の方針が出ましたので、さらに各省と折衝を重ねまして、それぞれ法案なり予算の追加要求の検討を進める段階に現在あるわけでございます。  それから、現在水俣阿賀野川公害関係の患者にどういうふうな予算措置が行なわれておるかということでございますが、本年度の予算で約二千万の医療研究補助金というものが厚生省にございます。そのうちの一千万をいわゆる純然たる患者の治療に当たっておられます先生方に研究費として配分をし、残りの一千万を患者の保険で見られていない自己負担分について、府県なり市町村と一緒にこれを負担しておりまして、大体水俣につきましては、約二百万の研究費と国としての医療費についての補助を約百万今年度は大体見ておる次第でございます。
  70. 小柳勇

    小柳勇君 いまの部長の言う二千万の研究補助金なんですけれども、患者のほうの負担の一千万の法的根拠は何ですか。
  71. 武藤き一郎

    説明員(武藤き一郎君) 法的な根拠でございませんで、いわゆる予算的な補助でございます。
  72. 小柳勇

    小柳勇君 十三年もほうっておいたんですから、行政責任があると私どもは考えるが、一千万をただ予算措置ということでは説明がつかぬのだが、どういうことで出しておるのですか。
  73. 武藤き一郎

    説明員(武藤き一郎君) 現在、市及び県で患者の医療費の自己負担分について患者にかわって地方公共団体が負担しておるわけでございますが、それをいわゆる実質的に医療研究補助金という形で国が支出するということになっておりまして、ただいま申しました救済制度の案がまとまり、法律ができ、予算措置ができますれば、そういう問題は法律に基づきます措置として行なわれることになると思いますが、それまでの間は、現在の予算的な補助の運用でやっていくほかはないと、かように考えております。
  74. 小柳勇

    小柳勇君 それは担当委員会で詳しくまた質問いたしましょう。  あと、中毒の有機水銀発生の問題で、遠賀川の流域及び大分市の鶴崎地区、宮崎県の延岡地区に有機水銀の発生があったということでございます。現在、通産省並びに厚生省で現状を把握しておられるかどうか。その上で農林省質問したいと思いますから、その現状について報告並びに対策について見解をお伺いいたします。
  75. 後藤正記

    説明員(後藤正記君) お答えいたします。  住友化学工業の大分の鶴崎にございます大分工場で、一部有毒性の水銀を排出しておるという報道が九月十八日の一部の新聞でございました。これにつきまして大分県当局は、十八日の県議会におきまして、県は全水銀についての分析は行なったが有機水銀については分析を行なっていない。それから資料採取地点は同工場の水銀を含む排水が流入していない小中島川であったということを表明しておりました。さらに今後同工場の排水あるいは乙津川の水等を調査して結論を出したい、こういうように県会で意向を表明しておられます。したがいまして、通産省といたしましては、現在大分県御当局の調査の結果を待ちまして必要な措置をとりたい、かように考えておる次第でございます。
  76. 小柳勇

    小柳勇君 農林省質問いたします。  いまのように、大牟田川の追跡調査及び延岡及び別府湾の漁業協同組合などが非常に不安を持っておる。したがって有機水銀の検出などがあった場合には当然漁業補償の問題などがあるが、現在どういう状況把握をしておられるかという点。それからもしそういうものが発生した場合の措置について見解を聞いておきたいと思います。
  77. 森沢基吉

    説明員(森沢基吉君) いま先生の述べられました一般の事象、われわれも県並びに通産省あるいは厚生省経済企画庁等から承っております。特に大分県の小中島川の事件につきましては、事件の発端と申しますか、出ましたのが、その付近の車エビの斃死問題が起こったということからきた事実があるわけでございます。それで現在水質等の調査が行なわれておるようでございますので、私どもはその結果を見て、関係各省とも御協議をして措置をしたいと思っておりますが、現在漁業者が非常に憂慮しておりますのは、そういううわさが立ちますと魚の値段が下がるのではないかという点を憂慮しておるようでございまして、まだ県あるいはわれわれに対しまして漁業補償の問題としては提起されておらない段階でございます。
  78. 小柳勇

    小柳勇君 時間がなくなりましたから、まだ水質汚濁防止等の具体的な質問をしたいのでございますけれども、次の機会にいたしまして質問を終わります。
  79. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 前回法案で決定しました引き揚げ者の補償問題についてその取り扱いに非常な差異があるじゃないか、こういうふうに考えるのですが、そういう点について二、三質問をしたい、こういうふうに考えます。  まず第一に、この海外の居住者でございますが、過去この居住者に対する一時金としての給付をしたことがございます。そのときの対象者となる方は大体六カ月以上居住しておった者が、その該当者であるという基準でこの処置をしておられるのです。今度はその六カ月を削って、一年以上の居住者ということに変更されたわけです。この内容を申し上げますと、六カ月の居住者であっても実際は帰るときには二年もたって帰郷せざるを得ないという実情の人がかなりあるわけです。そういう意味で給付金を出した場合には、六カ月という基点をとったと思うのです。今度は一年に変更するという政府の処置というものは、どうして一年にせざるを得なかったのか。そういう終戦直後、居住が六カ月であったけれども、実際には一年半も二年もおったという事実はなかったという見解に立っておられるのか。この点をひとつお聞きしたい。
  80. 川合武

    説明員(川合武君) お尋ねの点でございますが、現在私どもは、法の執行に当たっております特別交付金の点についての考え方の基本でございますが、引き揚げ者が海外でその生活をささえていた一切のもの、生活の基盤と申しますか、それには財産はむろんのことでございますが、あるいは人間関係とか、あるいは向こうで要するに安定して生活をしておったという精神的なものとか、一切のものを含めてでございますが、要しまするに、生活をささえていたそのものがなくなったという点に眼点を置いているわけでございます。   〔委員長退席、理事松井誠君着席〕 したがいまして、その打撃がどの程度のものか、要するに一年間居住したものをその対象とするか、六カ月のものを対象とするかということになるわけでございますが、お話のございました前の厚生省で扱いました給付金でございますが、これは御承知のように引き揚げてきた人が立ち上がる援護的な目的でもって立法され、また行なわれたものでございまして、そこに現在の私どものやっております交付金と、前回の給付金との差異の基本があるわけでございます。で、前回は繰り返しますが、生活再建の援護ということでございましたので、六カ月ということをもって基準といたしておりますが、私どものような、今回の法律の立場といたしますと、やはり一年というものが必要最小限度、要するに向こうで生活の基盤を構成した年月としてどの程度見るかということで一年以上ということが適当ではないかと、こういうふうに判断をいたしまして、法律がさようになっておる次第でございます。
  81. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 いまのお話を聞いておると、前の給付金はなるほど立ち上がり資金のような見舞い金ですね。しかしそれは海外から引き揚げたという戦後の実態をやっぱり考えて、六カ月というきめになったと思うのですよ。ところが終戦の直後の計算では、居住の時期は帳面づらでは実際は六カ月しかないけれども、終戦後一年も半年もおったという人は多数あります。それは居住してなかった、食べていなかったという見方ですか。その点ちょっとおかしいじゃないですか。
  82. 川合武

    説明員(川合武君) お尋ねの点でございますが、御苦労なすったと、平たいことばで申し上げて恐縮でございますが、——という点ではお話のような方の御苦労は十分考えなければならない。それからまた向こうでとにかく終戦後までいたじゃないかと、こういうことも御指摘のとおりだと思います。思いますが、この今度の法律のたてまえが、形式的に申しますと、これは原則として終戦の日で時点を押えているわけでございますし、それから、先ほど申しましたことを繰り返すようで恐縮でございますが、向こうで生活の基盤をつくっておった年数をいかんという点に眼点を置きますと、終戦後で御苦労の点はあるとしても、これを私どもの法律で言う在外年数の基準とするわけにはいかない。こういうことを申しますと、なおそれじゃどうだと先生おっしゃるかもしれませんが、たとえば、かえってやぶへびのようなことを申し上げるかもしれませんが、前回の法律でございますと、抑留された方、長期抑留の方なんかでございますね、非常に苦労されたということで、生活援護という意味で非常に優遇というか、特別な考え方をしております。しかし今回はお気の毒ではあるということはありますけれども、今回の法律の対象ではその問題は要素にはなっておりませんで、さような点の法律の、立法の一番の基本のところの違いがございますもんで、私どもは、前回六カ月であったが、今回一年ということは、これはさように考えておる次第でございます。
  83. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 あなたが法律のたてまえをおとりになるなら私も法律のたてまえで言いますが、六カ月の居住者に対しては財産がなかったと言うのですか。いいですか、人が一人住むのに、六カ月おろうが、一年おろうが、財産があった。政府は今度の補償に対して、財産の検討をしてこれを補償するわけじゃないでしょう。そうですね。財産をやっぱり、五年居住者、三年居住者、二年居住者、一年居住者、六カ月居住者、こういうものをお調べになって、いわゆる財産を基本とする基準で私は補償されるというならば、あなたの御意見はある程度うなずけます。けれども、半年おった人でも一年おった人でも、相違はございましょうけれども、精神面だけじゃなくて私は大きく損失もある、こういう見方をしなきゃいかぬと思うのです。したがって、この法の決定は報償にするか補償にするかという問題で相当もめたことはあなたも御承知のとおりです。私は両面を含んだ中の報償だということで解決ついたとこの問題と思うのです、その点は。そのたてまえが前回の基金としての給付とは事が違うという、その主張は私はちょっと納得いかないのですが、どうですか、その点。
  84. 川合武

    説明員(川合武君) 私が法律解釈——まあ法律解釈をもちろん申し上げているわけでございますが、前回の給付金と今回の交付金との、なぜ六カ月と一年との差異というものがそこにあるかということの答弁といたしましては、私先ほどから申し上げている点でございます。さらにそれでは六カ月でもやっぱり生活の基盤があったじゃないかと、こういう御指摘の点については、それは現在の法律の解釈を離れましてならば、それは六カ月で生活の基盤があったと、こういう見方も先生お話のような見方を私頭から否定しているわけじゃないのでございますが、前回の法律と今回の法律とが違っておる一年、六カ月というところのあれは、ただいま申し上げましたとおりでございます。なお蛇足というか、もうよく御承知の点で、釈迦に説法になると存じますが、法律は昨年の国会で御審議をいただいて、こうなりましたが、その前のいきさつ、沿革は、審議会でいろいろお話のように論議もあり、一般的にもいろいろ国会でも論議があられたわけでございますが、そこを通じました流れというものが、生活の基盤というもの、ささえというものの打撃というものに報いるのにその基盤はどうかというときに、一定年数のものは必要であろうということのお話も出ておったというふうに承ります。むろん一定年数がそれは一年ということを絶対言っているわけではございませんが、私どもはこの打撃に報いるその期間というものをいろいろ検討いたしました結果、一年というふうに法律でもって定められたものと、かように考えている次第でございます。
  85. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 その点はまあそういう見解の上に立っておられるということであれば、私はこの問題の取り扱いですが、大体政府としてはどのくらいのこれは見通しですか、国債にして。国債のこの補償の額はどのくらいの見通しですか。
  86. 川合武

    説明員(川合武君) 国債の発行額の見通しは千九百二十五億円でございます。
  87. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 千九百二十五億円という国債を基礎にして、政府としては、それに何とかしてはめていきたい。こういう考え方でやっておられるのじゃないかと思うのですが、そういうなにはないですか。何もかも予算にやっぱり縛られて、結果的にはそれ以上はみ出すものを削っていこうと、こういう考えではないかという私考え方をしておるのですが、その点はどうです。
  88. 川合武

    説明員(川合武君) そういう考えはございません。私どもも、この千九百二十五億円というのは一応積算をいたしました積み上げでもございますので、こういう端数にもなっておるわけでございますが、それで無理やりにきめて、したがって、いろいろなそこに、何といいますか、配分の原理を考えておるというようなことはございませんのです。
  89. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 もう一つお尋ねします。この窓口ですが、これはほとんど県知事に窓口を一本にしぼっておるわけですね。ここが受付であると同時に認可ということになるわけですが、これから起こってきておる問題ですが、非常に手続がむずかしい。そうして引き掲げ者には、御承知のように、あなたは、精神的にも苦しみがあるということはよくわかりますと、それは詭弁じゃなくてほんとうにわかっておるのでしょうが、そういう立場から言いますと、その資料のない、証明のないようなものに対する取り扱いですね、何とかこれを一本に中央に吸い上げて、そうしてそうした人もやっぱりその対象に該当するような方法をとる必要があるのではないか。ある県では非常にまあ厳重な受付をしてやっておる。一方においてはまあまあということでやっておる。それが中央に持ってこられると、——もう大体ある程度きておると思いますが、中央にくると、ああそうかということで通っちゃう、こういう危険性があるという感じを持つわけです。また、引き揚げ者の中にもそういう意見をかなり持っております。こういう点を改める意思はないのですか。もっと簡素化するという立場に立っての親切なやり方はないのですか。同情だけじゃなくて、ほんとうにこれはやってもらいたいと思うのですが。
  90. 川合武

    説明員(川合武君) おことばを返すようでございますが、実は私昨年この室長になりましてから、もっとも前室長もむろんでございますが、ちょうど十月に業務を始めましたのですが、実際はまあ十一月ごろというふうに見たほうがあれですが、そのころから私この仕事に従事しておるわけでございますが、いままでやってきました仕事のエネルギーの非常な多くの部分は、そう言うとどうもあれでございますが、ただいま御指摘の点についての私どもの配慮をやってきたつもりでございまして、まあ具体的に申し上げるべきかもしれませんが、一応それは省略さしていただきまして、ただしかし、と申しましても、またいま御指摘のような点がある、そしてわれわれの努力というものが何もまだ、これで足りない点も多々あるということは、これはまた常に私ども反省している点でございます。したがいまして、特に本日御指摘もあったことでございますので、さらにその点についての努力を傾けたいと、かように思います。
  91. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 これは私もう法的な問題でも何でもないので、手続でありますので、別に理屈を言おうとも考えていないんです。たとえばある県で非常に熱心に窓口の取り扱いをして、そしてある程度めんどうも見てやるという地域と、もうなければしかたないという地域、非常に格差があるということを私は引き揚げ者のいろいろな団体の方から聞くんですけれども、そういう問題が私はほんとうにもっと簡素化した形における中央の吸い上げをやって、できるだけ統一ある処置をとってもらいたい、これは私の希望意見として申し上げておきたい。  次に進みますが、それから一部母子家庭の方とかあるいはまた非常に生活困窮である方ですね、こういう人には国債を直ちに現金化してやるというような処置をとられておるということは私も十分承知いたしておりますが、まあ早く言いますと、五十歳で引き揚げた人も、 いまは七十歳です。そういう高年齢層の方の処置を考えてやる必要があるんじゃないか。これも十年の国債をもらって、それで十年間持って楽しんでおったって、どうにもならぬでしょう。できるならば、それをやっぱり母子家庭のそうした方と同様の取り扱いで、できるだけ何とか現金化さしてやる、こういう政府として統一ある処置をとるべきだと思うが、これに対してはどうお考えか。
  92. 川合武

    説明員(川合武君) 国債の買い上げの問題でございますが、現金化の問題でございますが、これは八月に第一回の国債が償還を始めました。これは一般的にでございます。したがいまして、九月から買い上げの措置を行なっております。これは生活に困窮な方、こういう方を対象にしております。むろん生活に困窮と申しましても、いわゆる生活保護を受けている方というだけではございませんで、そこら辺の認定は何といいますか、もっと弾力性のあるものでございます。  それとこれはもう余談になりましてあれですが、もう一つは災害の場合の買い上げでございます。それでいまの高齢者にというのは、これは御趣旨としてよくわかりまして、あれでございますが、現在のところ高齢者としてはいたしておりませんが、ただいま申しました一般の買い上げの生活困窮の買い上げのときに、生活保護の方はこれはもうむろん買い上げになりますわけですが、実際問題として。あとのそのほかの方の場合に、高齢者の方を優先するようにというふうなこれは措置といいますか、私どもの指導をいたしておりまして、九月から始まりましたので、まだその姿の全貌を、姿の模様を御報告するちょっと資料を持っておりませんですが、さような点について配慮を加えていきたい、かように思っておる次第でございます。
  93. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 これは非常にあなたのほうもむずかしいことのようではあるけれども、私はやろうと思えばそう買い上げをやるということはむずかしいことではないと思うのです。たとえば、しからば生活困窮者ということでそれをやった。一方、養老院に入っている人をどう見ているか。養老院以外の高年齢層の方がおられますね。したがって、それは養老院にいる人は生活困窮者と見ていくのか、それには養老院にもいろいろあります。有料もあれば無料もありますが、いろいろ見方がこれは幾つもあると思うのです。したがって、やはり年齢で区切って、そういう年齢の該当者にはやはり買い上げてやるという処置が望ましいと思うのです。その点をあなたのほうで、私はそうむずかしい問題ではないと思いますので、ひとつ責任もってそれを実施していただくことを私は要望しておきますが、どうですか。
  94. 川合武

    説明員(川合武君) 先ほど申し上げましたように、この運用につきましてのまだ私ども現状での姿というものを正直のところちょっと時間的につかみ得ておりませんのでございますが、私が申しましたただいまの買い上げ、高齢者の買い上げずばり、ずばりというのは失礼な言い方ですが、そのことでの買い上げということの措置は現在いたしておりませんのでございますが、先ほど申し上げました生活困窮者の場合に、高齢者の人を優先する、こういう指導をいたしておりますものですから、その模様をいましばらく見さしていただきたいと、かように思うわけでございます。
  95. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 この問題はこれだけです。  次に、飛騨川バスの遭難事件について私は御質問申し上げたいのですが、この事件は歴史的にみてもほんとうに交通事故としては最大のもの、同時にまた、いまなお八名の遺体が発見されてないという現状からみて、全く遺族に対して私は衷心から哀悼の意を表したいと、こう考えるのです。そこで衆参両院でこの問題は相当細部にわたって質問がなされております。特に二十七日ですか、岐阜県県警としては、刑事上の責任はないという断を下したのでありますが、この結論は多くの専門家の方が総合的な結論として、特にその当時起こった時点をとらえて刑事的な責任はないという結論が出ていると思うのです。その結論の賛否の問題よりも、私は遺族の今後の生活問題をどうするか、これをどうしていくかというような問題は、まさにそのほうが重大だと思います。そういう意味で、同日発表されると同時に、官房長官のほうから、今度の問題については自賠法を適用するということの指示をしておる。こういう新聞発表がなされておるんです。で、これはあなたのほうでその回答をしていただけるのかどうか、私はもっと責任ある人を出してもらいたいと言ったんだが、あなたでできればそれをひとつ聞かしていただきたい。自賠法の適用の結論を一週間以内にやるという新聞報道がなされているんですが、それはどうなっているのか。
  96. 蓑輪健二郎

    説明員蓑輪健二郎君) 飛騨川の八月の十八日の非常に悲惨な事故に対しては、私、道路管理者として、今後こういうことが起こらないような対策に全力を尽くしていきたいというふうに考えております。ただ、いまの先生お話の自賠法の問題は、これは実は運輸省のほうで所管しておりまして、私のほうはちょっとこれについてはまだ何も関係しておらないんでございます。
  97. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それで、私は責任ある者を出してくれと言ったんだが、それじゃよろしい、時間もありませんから。  ほかの問題で質問します。昭和三十九年ですか、「昭和三十九年度において防災に関してとった措置の概況」という本が出ております、あなたのほうから国会に提出されておるんです。この昭和三十九年のその報告書に直轄事業として砂防事業をやっておられるんです。それで、継続施行中の利根川のほかに大災害により甚大なる災害を受けた天竜川と木曽川について、引き続き直轄特殊緊急砂防事業を実施した。なおこのほか、必要な砂防調査を実施したと、こう書いてあるんです。これは木曽川ということになりますと、飛騨川は上流なんです、加茂市太田で二つに分かれておりますが、実際は上流なんです。そのときに調査の対象になったのかどうか、これを聞きたいんです。
  98. 木村正昭

    説明員木村正昭君) 先生のおっしゃいます三十九年の災害というのは、例の天竜川災害をさしておるものでございまして、その災害で天竜川、木曽川の非常に災害を受けたところを直轄事業として緊急に実施したということでございまして、その道路沿いのいまの問題の飛騨川につきましては、当時実施はいたしておりませんし、それから調査といたしましても、実は直接現在人家に関係があるというものを重点的に取り上げて調査したということでございまして、道路だけが被害を受けるというものについては、実は当時調査をいたしておりません。
  99. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 これは砂防のつまり調査をやったんでしょう。これに書いてあるのは、あなたがおっしゃるように三十九年の災害に基づく天竜川と木曽川の砂防をやった。そこまではいいんですよ。「このほか必要な砂防調査を実施した。」こう書いてあるんですが、「必要」というのは、これからやろうということでしょう。
  100. 木村正昭

    説明員木村正昭君) そうです。
  101. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そうでしょう。したがって木曽川というものはそのときにもう災害を受けておるんです。むろん木曽川の上流と飛騨川の上流と二つで加茂市太田でこれは一本になっておるわけですが、したがって木曽川の上流も飛騨川もそれに該当になるのではないか。そのときにやらなかったとおっしゃるのですか、全然やってなかったと、調査も何も。この点はどうですか。
  102. 木村正昭

    説明員木村正昭君) 直轄の調査はいたしておりませんけれども、補助事業として取り上げるべく調査はいたしております。
  103. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 補助事業としての調査をしたとおっしゃいますが、そのときの危険度というものはどうお考えになっておったですか。あの飛騨川の周辺における危険度ですね、いまも皆さん御承知のように、私もあそこを自動車に乗って何回か通っておりますが、両方に、落石の危険あり、注意してもらいたいという札が立っていますが、あれを立てなくちゃならないほど危険度があったんですから、調査の結果はどうお考えになったのか、それを聞きたいんです。三十九年から四十年——四十一号線というのは四十年に開通したんですから、そうでしょう、これは間違いないでしょう。四十年に開通して、三十九年のそういう災害に対して復旧事業としてやられた。その他にも調査をした。したがって、その他を調査したということは、木曽川沿いということは危険性があるからこそ調査をされたと私は思うんです。そういう調査をされた結果の中で、その飛騨川の上流に対して何を調査——該当ではなかったけれども調査はしたとおっしゃいますが、その調査をしたという中で、危険度というものはどういうふうにお考えになったのか、それを聞きたい。
  104. 木村正昭

    説明員木村正昭君) ただいま申し上げました調査をいたしましたのは、非常に人家に直接影響があって、その人家が危険だというものについて調査をしたのでございまして、先ほども申し上げましたように、道路だけが被害を受けるというものについては実は調査いたしておりません。
  105. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そこで私はそのとき調査をしていないというならば、このときも相当の費用を使っておりますが、あれだけ両方にやはり危険信号を立てなくちゃいけない落石の多いところなんです。この落石というのは何も、今度の集中豪雨のために大きなのが出ましたけれども、あれは日ごろからあるんです。日ごろからあるから落石に注意してくれということで立て札が立っておる。そういう個所があると同時に、今度の工事をやられた中においてはいわゆる民有——所有権を持つ個人のものがあったから、拡大はできるだけしないような砂防工事もやりたいということでやったということも新聞に載っております。それは拡大するに及ばないで、危険さえ避けられるならば、それはいいでしょう。いいけれども、四車線のあれだけの拡大した道路において、そうして魔の沢と称する今度の地域においても、前方と後方、両方に土砂くずれがしておるわけです。そうしてこの両方の中に身動きもできないほど三十台のトラックと乗用車が入っておったわけです。したがって、身動きができなかったから、魔の沢と称するその沢にとまらざるを得ないという危険があったんだと私は思うんです。したがってこれでどうですか、国は責任ありませんか、その点はどうです。私は国に重大な責任があると思う。落石の注意をしておきながら、前方にも後方にも落石の注意をしておきながら、しかもあれはどこでしたか、モーテル飛騨からあとへ帰ろうとした、ところがあとも前も土砂くずれがした、そうして沢は危険だということはだれしもわかります。どこの災害を見ても沢でですよ、皆さんのほうが御承知でしょうが、沢です。その沢のところにとまらざるを得ない現状が起こっておったところに、私は問題があろうかと思うんです。この点は、皆さん行政監督の立場から責任を感じませんですか。
  106. 蓑輪健二郎

    説明員蓑輪健二郎君) 今度の不幸な事件をかえりみて、私、現地も行って見ましたが、いま先生の御指摘のように落石注意という標識は立っております。これはやはり、なぜこういう標識を立てるんだということからでございますが、やはり道路をつくりますと、ああいう川沿いのところでございますと、やはり道路の幅を広げるために山側を切らなきゃなりません。切ったあとの岩盤が出ておりますところ、これも次第に風化するとぼろぼろ落ちるというのが一般の岩の現象だと思います。そういうのを防ぐためにいろいろモルタルの吹きつけとか、そういうようなことをいたしまして、落石を防ぐことをやっておるわけでございます。一番そういうことをやりまして問題になりますのは、岩盤とその上の表土のこの境でございまして、この辺はなかなか表土——土でございますと、水が浸透してまいります。雨が降りますと水が浸透してまいります。そういうところにモルタルの吹きつけをやりましても、これはほとんどもたないということでございまして、やはり問題は、そういう岩盤と表土との境、それからその上の表土を切ったところ、こういうところに道路をつくるときの落石を防ぐためのいろいろくふうがしておるわけでございます。なかなかああいう山でございますと、上から雨が降ってまいりますと多少土砂が流れると、それに伴って小石も流れるということでございます。そういうような危険をなるべく道路を利用しておる、交通しておる人に危険がないようにということで落石注意ということを出しておりまして、今度の事件の原因を見ますと、どうも落石でいろいろ前後がとまっておったということは事実でございますが、やはり直接の原因は、あの沢の中で異常に、沢の七百メートルくらいの上流で相当大きな土砂くずれがございまして、これが小規模の土砂くずれでございますと、その沢の途中で一時堆積するわけでございます。その堆積したものがある限界以上になりますと、急に押し出されて土砂流となって出てくるわけでございます。そういうような現象であの沢に大きな土砂流が出まして、それが道路の上を越えて飛騨川に入った。ちょうどその土砂流の中に、そこにとまっておった車が巻き込まれたというのが原因かと思います。私、道路管理者といたしますと、今後どういう場合でも、やはり利用者の安全を考えなきゃならぬということから、こういうことが二度と起こらないようにするには、どういうことをしたらいいかというのが私たちの今後の一つの大きな問題かと思います。それで、考えられますのは、やはりそういう土砂くずれを防いで土砂流が流れないようにするということ、これが一つかと思います。そのためには、現在あの沢に災害復旧工事といたしまして、道路側といたしましては、沢のすぐ道路の近くにコンクリート擁壁をたてまして土砂を一時そこで食いとめるという方法、さらに上流部につきましては、農林省の林野庁にもお願いいたしまして、上流のほうの治山工事をやって土砂くずれを防ぐということをお願いして、これもやっていただけるようになっております。さらにもう一つの考えは、そういう危険な状況を早くドライバーに知らせる、そういう情報の伝達の強化、これがまず第一に必要かと思います。全国の道路を見ますと平地ばかりございませんで、相当山の中の道路もございまして、山の中の道路というのは多かれ少なかれ土砂くずれの、豪雨の場合の土砂くずれの危険は相当あるわけでございまして、そういうところについてはやはり道路の状況を早く知らせて、そこの危険なところに入らないようにするということ、これは一つの消極的な方法ではございますが、まず交通の安全をはかる上に必要なことかと思います。そのために今後の対策といたしましてはやはりこれは道路のパトロールの強化ということもございますが、やはり民間の、国道でございますと、御承知のようにレストハウスとかそういうものもございまして、そういう民間の人の協力を得まして、いわゆる、まあ私たちモニターということを言っておりますが、そういうところからなるべく道路の状況を早く知らせてもらう。キャッチして、それを、国道だとかなり遠距離の交通がありますので、要所要所に交通規制なりそういう道路の状況を周知させるような措置を今後強化してこういう事故を二度と起こさないように防いでいきたいと考えております。  先生のおっしゃいましたように、道路側の責任はどうかということになりますと、これはやはり私いま政府の一員といたしまして、政府というのはこういう災害を防ぐというような責任は確かにあると思います。ただ、この事件そのものをとりまして道路の管理に瑕疵があったかどうかといいますと、私たちもよく現地を調べますと、やはり現地のパトロールなり現地の状況ではあの当時やれるだけのことはやったんではないかというように考えております。
  107. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私はまあそんなに余分なことを聞いておるのじゃないのです。パトロール、管理が悪かったと言うのじゃないのです、私が言うのは。あなた御存じないのだ、あそこを、実際。あそこはあの四車線の国道四十一号線に昇格する前から非常に土砂くずれの多いところなんです。私はよく通って知っておるのです。普通の日でも危険性があるのです。それから雨期に入っても危険性があるのです。それだけの地質なんです。あなたおっしゃるように、なるほど二百メートル以上はその地質も違います。その地質の違うところが、今度くずれて一定のモルタル吹きつけ工事やっておるでしょう。そういうものもむろんたまっておる。それが一ぺんにたまっておる、それが原因でしょう。私は、そうじゃなくて、それももっと拡大の方法の工事をやる必要があったんじゃないか。たとえば個人の所有権はできるだけ侵さないような方法で、そうして砂防の工事をやりたいということはいわれておりますけれども、それじゃなくて、やっぱり完全なものにするということが、道路をつくる限りにおいては安心して通れるということでなければ、その責任を全うしたとは言えないと思うのです。しかし、まあ例年にない、六十年目に一回しかこない、こういうこと。しかし、六十年目に一回しかこないという表現は、六十年もたつと人がいないようになるからわからないです。そんなことで道路の危険を私は防げないと思うのです。しかも集中豪雨というようなことは地震と違うのです。全然違うのです。そういう立場からいえば私は双方に、前方も後方も土砂くずれがきておったと、身動きができなかったという点に問題があるというのです。もっと先に行けたんじゃないか。前もくずれておった。うしろもくずれておる。それは二百メートル以上のところからくずれておるのじゃないのです。それだけ土砂くずれの多いところなんです。これは四十一号線に昇格する以前から。そういう地域であるがゆえに、私は先ほども聞いたのは、三十九年度に木曽川としての皆さんが調査をしておられる、どうして飛騨川まで……これが調査したのかどうかということをお聞きしたのは、そのときにほんとういえばやっておくべきじゃなかったか。同じ木曽川の上流です。それを怠っておるという点からみても、今度の問題についてはもう一つ手落ちがあったと、そういうために双方が山くずれし、そこに身動きができない、自動車が停車せざるを得ない。したがって、たまたまそこが沢であった、その沢が二百メートル、いわゆる吹きつけ工事もやっておられる、その上がくずれてきたところにその問題があるでしょう。だから、私はそういう点からみて、これは工事面からみると、皆さん方の大きな手抜かりもあったんじゃないか。もっと完全なものにすべきじゃなかったかという点を指摘せざるを得ないのです。  それからもう一つ聞きたいのですが、これに関連してです。この地図を見ますと、同じ昔県道であったのですけれども、この七宗村から金山に出るのに、最も危険な地域を汽車に並行してこれをつくったわけですね。ところがこの七宗村の本郷というところから県道が入っている。この本郷から万場にいって金山に、これは昔の飛騨街道です。飛騨街道の一部、これは県道じゃなくて一般国道になっております。これをつなげばよかったのではないか。むしろここに道を持っていくべきでなかったという、これはあとから私らが見てそう感ずるのでありますけれども。私は局長にお願いしたいのは、これは考えていただかなくてはいかぬことは、これからのモルタル吹きつけ工事とか、あるいはまたコンクリート工事等において完全無欠なものをつくると断言されるなら別ですが、少なくとも距離としても違いがない、この県道と一般国道に対して七宗村の本郷から入っていく、そうしてこの飛騨の金山に抜ける道をもう一本つくるべきだ、この道を昇格して、あるいは県道のままでもいいから、こういう危険地域の完全な砂防ができないということであるならば、私はできまいと思う。あなたもおっしゃるように、二百メートル以上の地域についてはできない、これはモルタル吹きつけなんかできやしません。土の上にはできない、水が出てできないでしょう。そうするなら、そういう不完全な地域は天気の日はいいとしても、少なくとも雨期においても、山くずれのするような地域においては、私は現在あるこの県道を昇格せよとは言わぬけれども、直ちに雨期あるいはまた危険を生ずる場合については、管理上ここで分けて、そうしてこの万場から旧飛騨街道に抜けて金山に出る、こういう道をひとつ早急に私はやるべきだ、こういうふうに考えるのだが、それがもしいけなければ、関に抜ける道もあるのです。現在としてはあるのです。けれども、この道はそうあまりよくありません。したがって、やっぱりどうしても四車線になっているところの四十一号線を通ろうとした。しかしここまで来ますと、ここの七宗村の本郷まで来ますと、左から行こうが、右から行こうと、距離においてはあまり変わらない。ただ現在では道が悪いから、危険な地域はできるだけ避けるという意味からも、この本郷から入って、そうして現在の県道、それから一般国道、これの道を改修してもっと安全をはかるべきだ、こういう意見を持つわけですが、この点は政府としてぜひひとつ考慮願いたいと思いますが、これについてひとつ責任ある回答を願いたい。きょうは大臣も来てもらいたかったのですが、大体局長の言うことは大臣も聞かれるだろう、こう思いますから、私も局長でよろしいという御返答を申し上げたのですが、ひとつこの点御答弁願いたい。
  108. 蓑輪健二郎

    説明員蓑輪健二郎君) ただいま先生の御指摘のように、現在の四十一号線のほかにこれのバイパスになるような県道もございます。これは一番大きなバイパスといいますと、関から金山に行く、これは主要地方道になっている関——金山線でございます。これはいまのところ全部の延長が四十三キロくらいでございますが、このうち五メートル以上の幅員というのは、まだまだ五キロぐらいしかございません。かなり整備がおくれております。またその途中からこれは上麻生に出てくる一般県道の神淵——富加線、神淵——上麻生停車場線というのがございますが、これはまだまだ関——金山線に比べて整備がおくれておる状況でございます。これにつきまして四十一号のバイパスをこっちに通したらということもございますが、私たちいまの四十一号線そのものは、これは相当ほかの道路に比べますと、そういう防災工事もやられておりますが、まだまだ今度の事故を見ましても足りないところがあるということを痛感いたしまして、さらに落石の防止とか、そういう災害の防除を全力を尽くしてやりたいと思います。ただ、いま先生のおっしゃいましたバイパスになるような県道、これはやはりそういうことを四十一号線でやっておりましても、いざというときに何があるか、これは全然事故がないということも保証できません。やはりこういうような道路というもの、県道というものは一般的にいいまして、国道を補完する道路になるのでございますので、こういう線の整備をできるだけ進めていきたいと思います。ただ非常に、これも地図の上で見ますと相当山の中を通っておりまして、これを四十一号と同じようにりっぱな道路にするのには相当な金もかかりますので、まずあぶないところから直していくというような形で、四十一号に何か事故がございましたら、こういう別の県道を通っていけるというようなバイパス的な役目を果たすというような道路につきましては、私たちも大いに整備を促進してまいりたいというふうに考えております。
  109. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私が申し上げておるのは、いまあなたが四十一号線の完璧をはかる、これも当然のことで、やっていただかなくちゃいかんけれども、よし、それだって簡単にはできないと思うんです。いまでも雨期あるいはまた雨が三日も連続して降った、そういうような場合には危険だと感ずる人がおるんです。そういう人はみんなここを通っているんです。それは県道のままでもいいから、もっと通れる道にこれをまず先にやるべきだ、これは四車線にしたくてもこれは無理がありましょう、簡単にはいかないでしょう、経費も多くかかるのでしょう。けれどもいまは簡易舗装でやっているだけです、いまでも通っているんです、こういう事態をお考え願って、わずかな距離であるのですから、私は並行的に、一方の四十一号線の落石の多い道を完備するということも一つでありますけれども、それ以前にこちらのほうをやって、一方を次々に漸次解決をつけていくという方向にしないと、いまでも通っている人が一ぱいです。こういう点をひとつ考えていただいてやる必要がある。そうでないとまた災害が起こる。起きないと断言もできないし、われわれもそう思って心配しておる。どうかその点ひとつ考慮願いたいと思います。  私の希望意見として申し上げまして、これで質問終わります。
  110. 蓑輪健二郎

    説明員蓑輪健二郎君) ただいまの先生の御質疑よくわかりました。私、やはり県道でございますので、よく県にもこういうような国道のバイパスになるような県道の整備を県自身として促進するように指導していきたいというふうに考えます。
  111. 松井誠

    ○理事(松井誠君) 本日はこれにて散会いたします。    午後一時散会