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1968-08-05 第59回国会 衆議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年八月五日(月曜日)     —————————————  議事日程 第四号   昭和四十三年八月五日    午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑     ————————————— ○本日の会議に付した案件  裁判官訴追委員選挙  裁判官訴追委員予備員選挙  検察官適格審査会委員選挙  国務大臣演説に対する質疑    午後一時五分開議
  2. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  裁判官訴追委員選挙
  3. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 裁判官訴追委員選挙を行ないます。
  4. 山村新治郎

    山村治郎君 裁判官訴追委員選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
  5. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 山村治郎君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。  議長は、裁判官訴追委員濱野清吾君を指名いたします。      ————◇—————  裁判官訴追委員予備員選挙
  7. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 次に、ただいまの選挙の結果、裁判官訴追委員予備員が一名欠員となりました。この際、同予備員選挙を行ないます。
  8. 山村新治郎

    山村治郎君 裁判官訴追委員予備員選挙は、その手続を省略して、議長において指名せられ、その職務を行なう順序議長において定められんことを望みます。
  9. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 山村治郎君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。  議長は、裁判官訴追委員予備員齋藤邦吉君を指名いたします。  なお、その職務を行なう順序は、齋藤邦吉君を第二順位とし、第二順位予備員である岡崎英城君を第一順位といたします。      ————◇—————  検察官適格審査会委員選挙
  11. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 検察官適格審査会委員選挙を行ないます。
  12. 山村新治郎

    山村治郎君 検察官適格審査会委員選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
  13. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 山村治郎君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。  議長は、検察官適格審査会委員鍛冶良作君を指名いたします。  なお、故森清君の予備委員である古屋亨君は、鍛冶良作君の予備委員といたします。      ————◇—————  国務大臣演説に対する質疑
  15. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) これより国務大臣演説に対する質疑に入ります。三宅正一君。   〔三宅正一君登壇〕
  16. 三宅正一

    三宅正一君 明八月六日は、二十三年前、世界最初原子爆弾が広島に投下された日であります。この日を迎えて、全国民が覚える激しい心の痛みと、未来永遠戦争核兵器の惨害を絶滅しようとのかたい誓いと、その同じものが、はたしていま佐藤総理の胸中に宿っているであろうか。私は、この点に関して、多大の疑いを表明せざるを得ません。(拍手)  原爆被害の実態を明らかにすべき被爆者白書の作成を、いまなお怠っているのはなぜであるか。アメリカから返還された原爆映画全面公開を押えるのはなぜであるか。野党が一致して要求いたしました非核武装宣言を、理屈にならぬ理屈をつけて、握りつぶすのはなぜであるか。昨年十月、国連に提出されたウ・タント事務総長核兵器白書にしても、口に国連中心主義を唱え、広報宣伝に熱心な政府が、これを出版する手続をとっているとも聞きません。何がおそろしいのか知らぬが、これら一連の態度をもってみれば、核アレルギーなどと不遜な言辞を弄するあなた方は、むしろ核不感症というべきではないか。(拍手)あげくには、日本核武装に導こうという底意がないと佐藤君は断言できるであろうか。原水爆禁止運動が起こってすでに久しいが、政府こそ、率先してこの運動に協力し、真の世界的運動にまで広げ、高める努力をなすべきであります。五月三日の憲法記念式典をサボタージュする政府の態度と、核兵器絶滅への努力を回避する態度とは、決して別個のできごとではない。(拍手)過去の悲痛な国民的体験と将来への民族的、全人類的悲願こそ、戦後政治の初心でなければならないのに、この初心に対する忠誠と熱意を持たざる佐藤君とその政府が国政の座にあることに対して、国民多数が覚えるであろう不満を冒頭にまずお伝えせざるを得ないのであります。(拍手)  佐藤君、同じ不満と疑惑は沖繩返還問題についても高まっております。すでに周知のように、去る三月二十五日、米下院秘密会において、スナイダー米国務省日本部長は、「佐藤ジョンソン会談において、大統領沖繩返還について何の約束もしなかった」と証言している。これは総理の強調する「両三年内に返還のめどをつけるとの合意がなされた」という発言とは明らかに食い違うものであります。一体ジョンソン大統領との間に何らかの密約があったのか、それとも佐藤君は共同声明翻訳文に小細工を弄して、両三年内に返還のめどをつける約束があったと主張しているにすぎないのか、明確な答弁をお願いしたいのである。(拍手)  沖繩早期返還は、あなたも言うがごとく、全国民の悲願であります。しかし、日米共同声明によると、あなたは沖繩における基地が将来も引き続き重要な使命を果たすことを認めておられるのであります。その口の下で早期返還は必ず実現すると言い張るのはどういうことなのか。これは単にひとりよがりといって済まされるものでなく、国民を欺くものというべきでありましょう。(拍手)実はあなたは、「日米関係の友好と信頼」に名をかり、その実、アメリカの言いなりになって、沖繩核基地つきのまま受け入れる方向に国民を追い込もうとしているのではありませんか。  沖繩返還の方式について、総理は白紙だと言われます。その白紙には、核持ち込みもあり得ると書くかもしれないという意味での白紙なのか。そうとすれば、それは日本国民の総意に対する裏切りといわなければなりません。(拍手)あなたは、本土並みなどの条件をつけたら話が進まぬとも言われるが、それは、アメリカの意向をこちらが代弁していることばで、いやしくも日本の首相の言うべきことではないでありましょう。総理の立場は、あまりにアメリカの意思をそんたくし過ぎた卑屈な態度といわねばならない。沖繩返還の手続や条件について、いつまでも国民を疑惑の雲の中にどとめておくことなく、総理のこれに対する明確な意向をこの際表明されたい。  佐藤君はまた、「沖繩百万の同胞が現実に祖国へ復帰するまでの間は、本土との一体化を各分野において着実に推進する」と述べているが、私は、ここにも佐藤君の言行不一致の見本を見るのであります。何ゆえなら、われわれ社会党は、沖繩県民が現在じゅうりんされている日本国民としての固有の権利を行使できるよう、沖繩県民代表をこの議場に迎えるための沖繩県における公職選挙法の適用の暫定措置に関する法律案を、民主社会党、公明党の諸君とともに本院に上程してあります。しかるに、政府自民党は、これに対して協力を示さず、対米折衝においてもこの問題を提出しておりません。もし佐藤君が真に沖繩と本土との一体化を推進するつもりなら、なぜこの問題に正面から取り組もうとしないのでありましょうか。  なお、国政参加の問題について、先ごろ沖繩県民代表が上京し、総理に会見を申し入れたのに対し、あなたは、沖繩自民党代表とは直ちに会いながら、祖国復帰協議会代表諸君に対しては会見を拒否いたしました。このことは、十一月の主席公選を前にした党利党略もはなはだしい行為であり、沖繩百万の同胞に対する首相の誠意を疑わざるを得ないのであります。(拍手)  過般の参議院選挙においても、また、一昨日の所信演説においても、佐藤君は、日本の安全と繁栄は安保条約おかげであると強調されましたが、佐藤君が本気にそう思っておられるならば、その無知さかげんはとうてい総理の重職にたえるものでなく、また、本気にそう思わずに言うておられるとすれば、希代のデマゴーグといわなければなりますまい。(拍手)戦後二十三年、日本の安全と繁栄が保たれたのは、日米安保条約があったがためではなく、実に平和憲法あってのおかげであります。(拍手)もし日本平和憲法がなかったならば、日本の青年は朝鮮戦争にかり出されて、アジア人同士殺し合う悲劇に追い込まれていたことは明らかであり、また、今回のベトナム戦争においても、平和憲法がなかったならば日本も出兵せざるを得なかったことは明らかであって、長くアジア人同士が恨みを結ばずに済んだのは、全く平和憲法おかげであるといわなければなりません。(拍手)  また、朝鮮戦争の戦局が困難になったとき、当時のマッカーサー元帥が、鴨緑江周辺に原爆を使おうと決意したことは周知の事実であります。幸い当時のイギリス労働党内閣アトリー首相が、もし満鮮国境においてアメリカが原爆を使えば、ソ連、中国の公然たる参戦となることをおそれて、トルーマン大統領マッカーサー元帥の罷免を要求し、シビリアンコントロールの伝統あるアメリカは、かくかくたる戦勝の栄誉に輝くマッカーサー元帥を直ちに罷免したのであります。もしこのことなく、鮮満国境に原爆が使われておれば、日本もまた原爆の報復を受け、佐藤君も私も、生きてこの議場にまみえることはなかったでございましょう。(拍手)  今回のベトナム戦争にいたしましても、幸いにしてパリ会談の開催にこぎつけましたが、もしこれがエスカレートして米中戦争に発展するがごときことがあれば、米軍進発の基地を持つ日本は、当然戦争に巻き込まれざるを得ないのであります。日米安保条約が常にこの危険を包蔵していることに、佐藤君は目をおおわんとするのでありますか。あなたの恩人吉田元首相が、サンフランシスコ平和会議において、池田、星島、一萬田君等の全権団全員講和条約には調印されながら、安保条約のみは吉田茂ただ一人の責任において単独調印した事実は、あなたもよく御存じと存じます。吉田氏は、安保条約にこの危険な面もあることを洞察して、歴史に対して責任を負うたことと私は考えておるのであります。(拍手)  ともかくこの危険を包蔵する安保条約を、日本の守り神のごとく宣伝して、国民にこの危険な一面を知らさないような政治家は、ステーツマンとはいえず、一介のポリティシャンといわなければならないと存じます。(拍手佐藤君の所見をお伺いいたします。  日本が安全と繁栄を保持し得たのは、平和憲法によって戦争放棄国家意思として世界に向かって宣言したからであり、他国の脅威となる戦力を保持するに至らなかったからであり、国内に、この憲法をたてに平和と戦争反対を要求する強い世論の形成があったからであり、さらにまた、重い軍事費負担を免れて余力を経済建設や民生の向上に振り向けたからであります。(拍手)  佐藤君は安保堅持を強調もれるが、あなたは、核時代における世界の安全と平和はいかにして保たれると考えられますか。現に、米ソ二大強国の保有する核は、世界人類を百回以上もみな殺しにする戦力となり、恐怖の均衡をますます拡大しつつあり、予算の半額を国防費に使いながら一日も安心せず、さらにさらに軍備費をエスカレートしている状態であります。この核兵器保有国がフランス、中国その他にさらに広がっていくならば、やがて人類はみずから開発した核によって滅亡する運命をたどることは自明の理でございます。  いまわれわれがやるべきことは、平和憲法を改悪することではなく、平和憲法擁護の信念をますます強固にし、この平和憲法アメリカにもソ連にも中国にも適用させ、核兵器の廃棄はもとより、世界の国々は一国の軍備を持たず、軍備は国連の警察軍のみとなし、国際紛争国際司法裁判所の判決に服するという、新しい世界の秩序を創建することにあると信ずるものであります。(拍手)  日本総理は、毎年の国連総会に出席して必ずこのことを訴え、人類の英知がこの新しい世界秩序を支持するよう働きかけるべきであります。この秩序を創建することに成功したときにのみ、初めてこの地上より戦争がなくなり、人類が貧乏から解放されるのもまたこのときであります。そのためには、国連の普遍性を一そう広める等の努力がもとより必要であり、そのためにも中国国連加盟の実現は緊急の要務であります。重要事項指定発議国ないし賛成国になるがごとき愚を避けて、中国国連加盟を推進しなければならない。と同時に、中国も台湾も、ともに一つの中国を主張しておるのであるから、平和的に中国が一つになるよう努力すべきであると考えるが、総理の所見はいかがであるか。(拍手)  また、昨年十一月以降、政府、日赤が帰国申請を受け付けた一万七千余名の在日朝鮮人の帰国問題については、人道問題の見地からいっても、国に帰りたい外国人を一日も早く帰国さすことが日本国際的義務ではないか。総理は、予算委員会で、「帰国は自由だ、その方法を日赤が政治とは別に人道上の見地から話し合いを続けるということであれば、ぜひそういうものをまとめたい」と答弁しているが、また例によってその場のがれのことばだったのでありますか。帰国事業を妨げているほんとうの事情は何であるかを明らかにされたいと存じます。(拍手)  ここで私は、社会党の主張する非武装中立論について一言いたします。  核時代における世界の平和と安全を守る方途は、核が万一にも使われれば世界の破滅につながることを考えるとき、仮想敵国を想定する軍事同盟方式ではなく、いわゆる武装中立論でもなく、非武装中立政策こそ、最も有効にして実際的方策であることを確信するものであります。(拍手)私の属する社会党も未熟な点が多いのでありますが、しかし、百年の後を考えると、非武装中立論こそ、社会党の民族と世界に対する大きな功績であったことを歴史が証明するものと私は確信しておるのであります。(拍手)  日本国憲法をすなおに読む者から見れば、世界第七位の戦力を持つ自衛隊憲法違反の存在であることは明らかであります。国の基本法である憲法をごまかしておいて、小さなことで順法精神を説いても通用するものではありません。(拍手)われわれは、戦争の反省の上に、国民の大部分が心から喜んで賛成した平和憲法を初心に返って守る意味からも、憲法違反自衛隊などを存続させるべきではありません。(拍手自衛隊憲法違反の日陰者としておく限り、彼らのコンプレックスは、汚職等の堕落に走るか、クーデター等の暴発へおもむく危険をはらむかのいずれかであると存じます。(拍手)われわれは、勇断をもって自衛隊を解体し、一部は国民警察隊として、万一の天災地変その他の社会事変に備え、また、密入国等の海上の警備に当たらせ、その一部は平和建設隊として、国土の建設と災害その他の復旧、救援に役立たせ、開発途上国に対する技術協力に参加させる等、非武装憲法に抵触せぬ存在とすべきであると存じます。(拍手)  この上に立って、世界の各国と積極的に友好関係を樹立する積極中立の立場をとれば、世界日本を尊敬し、信頼こそすれ、この国を侵略するものなどないことは明らかであります。世界局地的紛争の起きている国は、大国の横暴から、同一民族の国家が分割されたり、国境を接しての紛争があったり、民族や宗教が異なるために、国内に紛争が起きるという事例におおよそは局限されているのであり、海を隔てた同一民族で構成した日本などを侵略する国などはあり得ないのでありまして、戸締まり論のごときは、子供だましの愚論にすぎません。(拍手)  第二次大戦後、植民地は続々と独立して、その数は百をこえるに至りましたが、大国の領土や保護領を続々独立させざるを得なくなった今日、侵略などのできなくなった世界の情勢を物語るものと存ずるのであります。最近の最もよき実例として、かつて欧州にハプスブルグ大帝国としてその勢威を誇ったオーストリアは、第一次世界大戦後分割されて、ウイーンを中心とする小国に転落しましたが、第二次世界大戦中ナチ・ドイツ占領下に置かれ、終戦まぎわにソ連の占領するところとなりました。しかし、一九五五年永世中立を宣言し、ソ連軍の撤退を求めるにあたって、米ソ英仏の不侵略保障を獲得いたしました。それより以後、三、四万の観兵式の兵隊を持つごとき非武装に近い中立国として、欧州大陸まん中に安全に存在しておるのであります。(拍手)欧州の中央に位するオーストリアソ連軍が駐在することは、独仏に対する大脅威であり、ドイツ軍が駐在することは、ソ連にとって耐えがたき恐怖でありまして、ソ独ともに撤退して、中立のオーストリアまん中におることは、かえって大国の緊張緩和にもなることになるのであります。  米ソ中三大国の谷間にある日本が、どの国と軍事同盟を結んでも、他の国を脅威することは当然でありまして、非武装積極中立の立場に立って、どの国とも軍事同盟を結ばぬことが、米ソ中三国ともに安心するゆえんであり、アメリカ共産圏への武力封じ込め政策を放棄した暁には、中ソ両国のみならず、米国もまた日本の非武装中立を歓迎することは、オーストリアの例に見ても明らかであります。(拍手)  明治百年の歴史を顧みて、明治の先輩の最大の偉業は、四百の諸侯の藩籍を奉還さして統一日本をつくり上げたことであります。今日の世界は当時の日本よりなお実質的に狭くなっておるのであり、各国の自主性は尊重しながらも、世界を打って一丸とする世界連邦をつくり、一国は軍備を持たず、国際司法裁判所国連警察軍の権威に各国とも服する新しき世界秩序をつくり上げることこそ、日本の安全を永遠に守るとともに、世界の平和を守るゆえんでもあります。核時代人類が生き抜く道は、これ以外にありません。日本民族のビジョンをここに統一し、世界国家創建に一億の全日本民族が努力することこそ、やがて八月十五日の終戦記念日を迎えるわれわれが、数百万の戦死者と、また日本の侵略に倒れたアジアの同胞に対しその霊を慰める最良の道であると考えるが、総理の所見はいかがでありますか。(拍手)  次に、内政について質問をいたします。  選挙中、佐藤総理福田幹事長は、食管制度の堅持を約束し、福田君のごときは、日本武道館で全国の農民代表数万人を前に、「わが輩は何よりも農民を愛す」、「米価は自民党がきめる」と大みえを切って農民を喜ばせておきながら、選挙が済んだら手のひらを返すごとく食管制度の改正を問題にし、関係各省はあげて米価の抑制に動いたのであります。選挙のときは票がほしくて農民に顔を向け、選挙が済んだら財界の要望にこたえるというカメレオンのごとき場当たりをやるあなた方の言動は、国民政治不信の念を植えつける以外の何ものでもありません。(拍手)  食管法は、昭和十七年成立以来、戦中戦後の食糧危機農民から保有米以外は全額を供出させて、あの困難な時期に食生活の安定に寄与し、日本人の生活を守った重大な法律であります。しかるに、昨年の大豊作でちょっと余剰米が出ると、大蔵省は米の買い入れ制限自由米構想を打ち出して、農民に動揺を与えております。さらに、この問題につき木村官房長官は、政府統一見解として、「保有米以外の米は全量を政府に売り渡すべきものだとの規定は、農民への義務規定であって、農民権利規定ではない」と答えておるのであります。何たる暴言でありましょうか。これでは、政府の考えは農民を敵とする封建的支配者の考えと同一であって、絶対に許すことはできません。(拍手食管法は、生産者たる農民にはその生産費と所得を補償し、消費者には家計を安定させる価格で米を売り渡す、いわゆる二重価格の制度をとっているのでありまして、この法を基本的に改めぬ限り、生産者米価消費者米価をスライドするがごときは、自由米制度とともに明白な法律違反であります。法律違反をあえて犯すつもりかどうか、総理の所見を伺います。(拍手)  農業基本法は、制定以来七年、われわれが初めから指摘したとおり、むざんに失敗いたしました。  失敗の第一は、農村から多数の中堅労務者を工業や土建業等に引き抜きながら、農家戸数はほとんど減っておらず、農業経営零細性はそのまま残ったのみならず、農業自体はいわゆる三ちゃん農業に転落して、老人と婦人に重労働をしい、出かせぎ農家を激増させて、戦争でもないのに半年後家、十カ月後家をつくって、人道上もゆゆしい社会問題を起こしながら、五百五十万農家の八割を低い生産性に停滞する兼業農家に追い込んでいるところにあります。  農業基本法失敗の第二は、農林省に巣くう戦前からの保守的観念から、二町そこそこ自立農家の育成を目標として、社会党が主張した農業共同化の方向に背を向けた結果、大機械体系による近代農業等に発展する余地もなく、個々の小農がそれぞれ数十万円もする耕うん機や百万円をこすトラクターを買っても、これを使うのは年間十日そこそこという機械貧乏に泣き、それだけ生産費が高くなり、生活は苦しくなるという悪循環を生み、今日では政府のいう自立農家の生活が最も苦しく、農外収入にたよる兼業農家のほうが生活が楽だという、農村荒廃に追い込んでいるのであります。農業以外に仕事の少ない山村地帯幽霊部落過疎地帯に転落しつつあるのも、かかる農政の貧困も一つの理由であるのであります。  失敗の第三は、選択的拡大と称して、米の生産は抑制し、米以外の乳、肉、くだもの、野菜、麦、大豆等選択的拡大をはかろうとしたのが、拡大を目ざした作物はことごとく減産して自給度を下げ、食糧輸入を昭和三十五年度の八億八千四百万ドルから、四十年度の二十二億六千三百万ドルと激増さしたのであります。これらの作物には、米のごとく価格の安定が保障されていぬことからくる暴落、暴騰を繰り返す不安定さがここに至らせたのであり、価格の安定した米作のみは、勢い不適地にまで耕作が広げられるという結果になったのであり、この惨たんたる失敗の責任はだれが負うのでありますか。派閥操縦の都合で経綸なき閣僚をところてんのごとく半年、一年で入れかえた無責任政治の結果であって、その暴政にほんろうされる農民こそ救われないといわなければなりません。(拍手総理はこれに対しいかなる責任をとられますか。  現在、世界食糧事情は、西欧並みの三千カロリーの食糧を南の人々にもとらせるためには、世界食糧生産を三倍にしなければ足らないといわれておるとき、日本農政の使命は、まず、主要食糧自給化を達成するとともに、南の国々の人々の餓死と栄養不良を防ぐため、進んで後進国食糧援助をもなし得るだけの余裕を持つべきであると信じます。(拍手)  そのためには、一、全額国庫の負担による土地基盤の整備、二、大機械による作業一貫体系を可能とするように経営規模耕地区画を拡大し、これを少なくとも作業集団化で活用することであります。三は、そしてそれに必要な所要営農資金長期低利融資の道を確立し、四には、価格支持の制度を米以外の主要農産物にも及ぼすべきであり、かかる一連の方策をとりまするならば、十年を出ずして日本農業の底力は、外国食糧より高くない値段で消費者食糧を供給しながら、しかも農家生活水準都市勤労者の水準を抜き、かつ、主要生産物を自給する体制を実現することは可能であると信じます。この農業経営革命を達成するためにも、農民の努力と天候の恩恵で戦後初めて米の一〇〇%自給という金字塔が打ち立てられたとき、これを天と農民に感謝することも忘れて、寄ってたかってけちをつけるようなことだけは慎んだらどうでございますか。(拍手政府の猛省を求める次第であります。総理の所見を承ります。  以上、私は、数項目にわたって国民の抱く疑問と不満をいささか代弁したのでありますが、その向かうところはすべて佐藤君の政治姿勢の根本に触れるものであります。佐藤君は、現実政治を言われるが、そのことばは、やる気のないことはやらずにごまかす、有言不実行を正当化する隠れみのにすぎないのではありませんか。食管制度の問題といい、政治資金規正の問題といい、あるいはまた沖繩問題といい、何ゆえ佐藤君は二枚舌、三枚舌を使われるのであるか。かつてある新聞があなたを評して、慢性虚言症と述べた事実は御記憶にないのでありますか。(拍手総理たる者、「民に信なくんば立たず」ということばを思い起こして、深く反省すべきではありますまいか。  あなたは、一部学生の暴力行為を非難されました。暴力そのものには、われわれも、もとより反対であります。しかし、彼らが口にする政治不信、議会無視の声は、一笑に付し去ることのできないものを含んでいるとは思われませんか。あなたとその政府の時代となって、にわかに体制不信の声と行動が高まったのは、決して単なる偶然ではありません。  先日の毎日新聞の世論調査によれば、自民党支持率は四一%であるが、佐藤内閣に対する支持率は二七%であったという。数字の物語るものは冷厳であります。議会政治擁護そのことには、賛成こそすれ、反対すべき理由はありません。議会政治を守り、政治への信頼を回復するために、一国の総理が他に先んじてなすべきことは何でありましょうか。この問いに身をもって答えることこそ、いまや佐藤君にとって最大の急務でなければならないが、われわれは、はたして心の底からこれを期待することができるでしょうか。深刻なる疑問を表明して、私の質問演説を結ぶものであります。(拍手)  社会党を代表してということばが抜けておると言いますので、あらためて、社会党を代表して質問をいたしました。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
  17. 佐藤榮作

    ○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 三宅君にお答えいたします。  われわれ日本国民は、世界における唯一の被爆国民として、核兵器のもたらす悲惨な経験から、核兵器はつくらない、持たない、持ち込ませないという原則を国民の総意としてきめております。また、この基本方針のもとに、世界じゅうの核兵器が絶滅されることを念願しており、国際間の現実から見て、当面実行可能なところから核兵器の国際的規制や管理を行ない、核軍縮を実現するよう最善の努力を払っている事実は、国民各位の御理解と強い支持を得ているものと私は確信しております。(拍手)  しかしながら、戦後二十数年にして世界第三位の先進工業国としての地位を占めるに至ったわれわれ日本人は、科学技術の進歩という面については、あくまでも積極的でなければならないと思います。したがって、人類を破滅に導く核兵器と、人類の福祉と繁栄のかぎを握る原子力の平和利用については、はっきり区別して考えなければならないのは当然であります。被爆国日本であればこそ、この点について勇気をもって国民各位の理解を求めていくことが、科学者だけでなく、私ども政治家責任であると信じます。(拍手)  このような意味から、わが国の原水禁運動が、イデオロギーや政治的な葛藤の具に供されていることを私はまことに残念に思います。(拍手)  また、原爆被爆者の実態については、昭和四十一年、現存被爆者の健康面及び生活面について全面的な実態調査を行ない、昨年二月と十一月の二回に分けてその結果を発表いたしましたが、政府としては、被爆者の実態を明らかにするため、できるだけの努力を払っております。  次に、沖繩問題についてお答えをいたします。  しばしば申し上げているように、日米間の友好信頼の基礎に立って沖繩早期返還を実現するというのが、私の基本的な態度であります。昨年の私とジョンソン大統領との会談の結果は、日米共同声明に明らかにされているとおりであって、それ以上でも、またそれ以下のものでもありません。あの共同声明そのままであります。すなわち、私は、両国政府がここ両三年内に双方の満足し得る返還の時期につき合意すべきであることを強調いたしました。これに対しジョンソン大統領は、これら諸島の本土復帰に対する日本国民の要望は十分理解していると述べました。そして討議の結果、両者は、日米両国政府沖繩施政権を日本返還するとの方針のもとに、かつ以上の討議を考慮しつつ、沖繩の地位について共同かつ継続的な検討を行なうことに合意いたしたのであります。  この共同声明を受けて、去る五月、沖繩返還に関する継続協議は第一回会合を行なったのであります。以上の協議を通じましても基地のあり方については、その核心に触れるところまではいっておりません。  私は、この問題は、国際情勢の推移、科学技術の進歩、世論の動向等を見きわめながら慎重にきめる方針であり、現段階においては白紙であります。いずれにいたしましても、沖繩百万同胞の願望を一日も早く実現したいというのが私の基本的な政治姿勢であり、両三年内に返還の時期についてめどをつけるという私の信念には、いささかのゆるぎもありません。はっきり申し上げておきます。(拍手)  また、祖国復帰が実現するまでは本土との一体化についてあらゆる努力をいたしますが、それについて、沖繩国政参加の問題についてのお尋ねがありました。私は、沖繩住民の国政参加については、本土との一体化の推進という観点から、沖繩住民の要望にこたえ、何らかの方法でこの国政参加を実現するよう努力しております。去る七月一日の第十四回日米協議委員会において、米国政府に対し、この問題についての配慮を要望したところであります。今後ともこの問題については鋭意努力してまいる考えであります。  また、施政権返還が一日も早く実施するように努力すべきはもちろんでありまするが、祖国復帰が実現するまでの間は、本土との一体化を進めることは政府の方針であります。このために、日米琉諮問委員会は活発な活動をしておるのであります。一体化調査団の調査報告もこの委員会に提案されましたので、一体化施策のために委員会の活動が今後期待される次第であります。  次に、日米安保と憲法の問題についてお尋ねがありましたので、お答えいたします。  安保条約のもとで平和が保たれたのは偶然の結果によるという三宅君の御意見、これは三宅君だけでなく社会党全体の御意見のようでありますが、全く私は承服できません。平和憲法のもとで他国の内政に干渉せず、いずれの国とも仲よくする、すなわち、自由を守り、平和に徹する国是によってわれわれは戦後の繁栄をかちえてきましたが、これも基本的な安全確保の手段として日米安保体制を基調とし、自衛力を整備するという平和確保への努力を怠らなかったからであります。私は、今度の参議院選挙におきまして、このような基本的政策を訴えた結果、国民大多数がわが党の基本方針に賛成であるという強い確信を得ました。(拍手)  われわれ日本国民は、その主義主張のいかんを問わず、戦争には反対であります。したがって、戦争に巻き込まれないために、戦争を抑止する手段を講じなければならないのは当然であります。日米安保体制が、現実の国際情勢の中では最も有効適切な戦争抑止の方法であることは、戦後二十数年の平和の歴史によって証明されております。われわれは、現行憲法を貫く自由主義、平和主義、これを維持するために、日米安保体制を選択しているのであります。(拍手)私は、その意味におきまして、平和憲法も高く評価いたしますが、しかし、三宅君のように、平和憲法ソ連にも中共にも及ぼせと、これなどは、私は内政干渉はいたさないつもりでありますから、その説には賛成しないことをはっきり申し上げておきます。(拍手)  次に、非武装中立について申し上げます。  非武装中立論国民の支持を得ていないことは、もはや明らかであります。この点について多くを申し述べる必要はないと思います。国の安全確保という問題は、かりそめにも実験の具に供すべきことではなく、言うならば、石橋をたたいて、たたいてたたいて渡る、そのくらいの慎重さが必要だと思います。冷厳な国際情勢に目をつぶり、そうして侵略する国はどこにもあり得ないと、かように大みえを切られましたが、国の安全確保に伴う国民負担考えずに、中立論に名をかりて、国民がみずからの手でみずからの国を守る気概を否定するような論は、きわめて遺憾といわなければなりません。(拍手)  三宅君は、中立国オーストリアの例をあげておられますが、オーストリアにせよ、スイスにせよ、スウェーデンにせよ、これら中立国がいずれも重武装中立であり、国民に重い負担がかかっていることを認識されなければならないのであります。  また、自衛隊の改組について御意見が出ましたが、自衛隊員は、国の独立と平和を守るために、侵略を未然に防止し、万一の場合、これに対処することを使命としております。そしてその存在は、あくまでも憲法にのっとっているもので、国民大多数の支持を得ており、また、隊員の一人一人もその使命を自覚し、これに誇りを持っておるのであります。自衛隊を改組する考え、これは私どもには全然ありません。(拍手)  北朝鮮帰還問題についてお触れになりました。北朝鮮の帰還、これは人道上の問題でありますから、政府といたしましても、日赤意向を十分に尊重して、今後とも解決につとめるつもりであります。  次に、中国問題についてお触れになりました。中国問題について、一つ中国を解決しろ、二つの中国ではいけない、こういうようなお話でありますが、私は内政には干渉いたしませんから、誤解のないようにお願いしておきます。そうして、この中共の態度につきましては、ただいまのところ、基本的な、わが党の、またわが政府考え方を変えなければならないような変化は全然ございません。誤解のないようにお願いしておきます。  次に、日本のビジョンについてお話がありました。なぜだか特別に明治百年ということばはお避けになったようでありますが、私どもはこの明治百年ということばを使っております。ただいま三宅君がビジョンということを言われましたのも、おそらく、明治百年のこの機会に日本人はビジョンを持て、こういう御意見だろうと思います。その考え方には私どもも賛成でありますし、明治百年を記念すると申しましても、いわゆるお祭り騒ぎをする考えは毛頭ございません。私は、ただ、明治時代に明治の先人がりっぱな日本をつくった、その意気込み、それに学ぶべきものが今日もあるのではないだろうか、今後の百年に対しまして、私どもも先人から学んで、そして新しいエネルギーを結集してりっぱな日本国をつくりたい、これが私の念願であります。  次に、米価、食管会計についてのお尋ねがありました。この点は私が所信表明で申しましたように、収穫期も近づいておりますので、できるだけ早く政府は決定をいたします。いずれその決定を見ました暁におきましては、御批判は十分承りたいと思います。また、同時に、その決定前におきまして、今日私どもがさらに考慮すべき点等につきましては御注意を願いたいと思います。ただいまのお尋ねもそういう点について触れたようでありますが、私は、この食糧管理法、これを無視するようなことはいたすつもりはございませんし、食糧管理法第三条第一項の規定による政府買い入れの数量などにつきましても、十分私も理解しておるつもりであります。したがいまして、政府が法を無視する、かような前提からきめつけられることだけはおやめをいただきたいと思います。  次に、学生運動についてお触れになりました。一部学生の反社会的な集団暴力につきまして、たいへん私も心配しております。おそらく三宅君も御心配ではないかと思います。このような学生の行為がすべて戦後の教育制度に基因するものかどうか一がいに申せませんが、国家の将来につながる問題として、あらゆる角度から真剣に取り組まねばならないと思います。一部学生の無軌道な暴力行為を放置することはできませんが、といって治安取り締まり的な観点だけでこの種の行為がなくなるとは私も考えておりません。教育の場や社会生活の場におきまして、自由に伴う責任、自由と規律というような本質的な規範が理解される環境をつくっていくことが必要であります。これはまた学校や家庭教育だけではできないことであります。新聞やテレビ等、マスコミ関係者の御協力を特に切望してやまない次第であります。  以上によりましてお尋ねについて一応お答えしたつもりでありますが、なお私の政治信念についていろいろ御批判がございました。御意見は御意見として謙虚に伺っておくつもりであります。(拍手)     —————————————
  18. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 堀昌雄君。   〔議長退席、副議長着席〕   〔堀昌雄君登壇〕
  19. 堀昌雄

    ○堀昌雄君 私は、日本社会党を代表して、一昨日総理大臣の述べられた所信についてお尋ねをいたします。質問はすべて佐藤総理にいたします。総理の答弁を補足される必要があると感じられた閣僚は、どうぞ補足してお答えいただければ幸いです。  さて、これからお尋ねする問題が、はたして国民がほんとうに佐藤さんの答えを求めているものとなっているかどうか必ずしも自信はありませんが、つとめて私自身を一人の国民立場に置いて伺うことにいたします。佐藤さんも、お答えは社会党の代議士堀昌雄にしていただくというよりも、日本政治責任者である佐藤さんから、今日の課題について、また明日の課題について、ほんとうのことを聞きたいと静かに耳を傾けている国民に向かって、責任のあることばで答えていただきたいと思います。(拍手)  私は、土曜日の佐藤総理の所信を聞いて、率直なところ、きわめて不十分だと感じました。私たち国民の暮らしについては、ただ「物価、減税、住宅、公害、交通など、国民生活に大きな影響のある問題の解決に努力することを約束いたしました。今後これら諸問題の解決を通じて、国民生活の安定と向上に全力をあげてまいります。」と述べられただけで、中身が一つもないのに驚きました。もっとも、きょうの私の質問に答えるためにわざと省かれたのかとも考えてみましたが、どうでしょうか。私がもし総理大臣であったら、十分だとか十三分だとかと、けちなことは言わないで、いまの時期に国民が聞きたいときっと思っているに相違ない事柄を、十分詳しく述べただろうと思います。なぜこのようになったのか、お答えをいただきたいと思うのであります。(拍手)  昨年来心配されておりました国際収支の状態はとみに改善をされて、ようやく引き締めもゆるめることができるようです。大きな会社からのしわ寄せで、次々と倒産に追い込まれていた中小企業の方たちは、さぞやほっとされることでしょう。国民の一人として私もうれしいことだと思います。しかし、やがてことしも昨年に引き続き、年度の初めに予想したよりもかなり大幅に経済は成長することになるでしょう。この三年続きの高度成長の中で、私たち国民生活は一体どのような影響を受けているでしょうか。  ことしの経済の規模は、アメリカソ連に次いで世界で第三位となるそうですが、一人当たりの国民所得は、一九六六年で七百九十一ドルであります。イギリス、フランス、西ドイツの千五百ドル台の国と比べてみますと、半分にしかなりません。また、暮らしの中身について経済白書は、イギリス、フランス、西ドイツの平均を一〇〇とした場合の日本の指数を示していますが、日本がすぐれているのは、テレビが一六七%、電気洗たく機が一五三%の普及率で、肝心な生活のかなめともいうべき食生活では、一日当たりカロリーは七七%、一年間の肉と卵と魚の消費量はわずかに四七%と、これらの半分にも足りません。野菜は一二二%ですが、これは動物性蛋白質のかわりにとられているとも考えられるのであります。  一方、生活環境について見れば、住宅の部屋数では一人当たり六八%、下水道の普及率は二二%、自動車一台当たり舗装道路の長さは二〇%と、比べようもありません。確かに、国民生活の内容をよくするためには、資源に乏しい日本の場合、生産をふやして輸出を多くしなければなりません。しかし、それにしても工業生産第一と比重がかかり過ぎて、私たち国民の暮らしのほうが二の次となっているために、このような姿となってきているのであります。次に、土地の値上がりも、経済の成長に見合ってたいへんな値上がりです。工業地が上がり、引き続いて商業地、つれて住宅地と順に値上がりをしております。この十二年間に工業地は十倍、宅地は八・九倍と、たいへんな値上がりをしています。そのために、国民の手で建てられた家は、建設省によれば、部屋数は三つくらい、十五畳から二十一畳というのが一番多くて三七%、十二畳未満が一七%、敷地も百平方メートル以下が半数近いという状態で、これではいかに自分が建てた家とはいえ、あまりに狭くてマイホームの夢をかなえるというわけにはいきません。家を建てられない人たちの場合、家賃は三十一年から四十年までに普通の借家で十倍、間借りで四倍強という値上がりですから、この間の収入増加などではとても追いつかないというのが現状であります。この狭いわが家に、テレビや電気冷蔵庫や洗たく機が所狭しと置かれ、冷蔵庫の中には野菜やみそが入っているといういまの国民の暮らしを、佐藤さんはどうお考えになりますか。「一将功なりて万骨枯れる」ということばがありますが、「大企業栄えて国民枯れる」では困ります。(拍手繁栄の陰にこのような不十分な国民生活があることを真剣に考え、まず経済第一主義のいままでのやり方を、もっと国民生活を充実させるための新しい政策態度に切りかえるべきではありませんか。佐藤さんのお考えを承りたいと思います。(拍手)  次に、公正取引委員会の機能の強化について伺います。  引き続く物価の値上がりの中で、いま国民は公正取引委員会の活発な活動を期待しております。ところが、公正取引委員会は本来物価のための委員会ではありません。それにもかかわらず公正取引委員会に国民が期待をしているのは、不当な再販売価格維持や、やみカルテル、再販類似行為等、わが国の会社が手段を選ばず利益追求に走り、消費者の正当な利益が無視され過ぎているところに問題があるわけであります。しかし、どうもいま一つ歯切れが悪く、牛乳の問題や松下電器の再販問題等、国民が大きな関心を寄せている事件の解決も遅々として進んでいません。一方では、大型合併の問題等、最近では公正取引委員会の役割りは国民生活にとみに重要な関係を持つことになりました。ところが、仕事の増加に見合って人員が増加しているかというと、本年度でもわずか五名しかふえていません。現在、中央地方を含めてわずかに三百四十一名です。一方公正取引委員会が取り扱っておる審査件数は、三十八年八十七件、三十九年九十三件、四十年百十九件、四十一年百九十一件と、年を追ってふえています。これではすべての仕事がおくれがちとなるのは全く無理からぬことです。さらに、公取の調査や審査を必要とする事案は、今後一そうふえこそすれ当分減る見込みはありません。  事情は十分おわかりになったと思います。この際、佐藤さんは、国民の期待にこたえて、四十四年度こそ公取の予算と定員を大幅にふやして、公正な取引を通じて物価の安定をはかることを国民約束していただけないでしょうか。お伺いいたします。(拍手)  ここで、公正取引委員会にも関係のあるカラーテレビの問題に触れておきたいと思います。  昭和四十一年の十二月、私たち社会党は、大蔵委員会でカラーテレビの問題を取り上げました。当時輸出用のカラーテレビは六万五千円で輸出されているにもかかわらず、国内では十九万円台で売られておりました。なぜこのように値段に開きがあるのかという点について、通産省は、輸出向けはキャビネットが鉄製でアフターサービスが不要であるからと答えましたが、納得できません。私たちの要望に基づき、公正取引委員会は、調査の後、カラーテレビは価格協定の疑いがあるとして、電機メーカーに勧告をいたしました。あたかも総選挙中の一月中旬、ついにサンヨーが十六万円のカラーテレビを発売することを発表いたしました。ようやく競争が行なわれることになりましたけれども、いまでも全体としてはカラーテレビの価格は依然として高過ぎるのであります。それゆえ、先日九万八千円で三越がカラーテレビを売るということになりますと、買う人たちが殺到するというのが現在の状態であります。一体、電機メーカーはなぜ輸出用と同じカラーテレビを国内で安く売ることができないのでしょうか。(拍手)輸出は安くしないと売れないが、国内ではキャビネットを少し上等にして高く売ればよいというのであれば、あまりに国民がばかにされているのではないかと思うのであります。  そこで、私は国民の皆さんに提案をしたいと思います。今後、国民の皆さんが、カラーテレビは十万円以下でなければ買わないことにしたらどうだろうかと思うのであります。ことしのカラーテレビの生産は約二百万台、国内向けがおよそ百五十万台ですから、もしほんとうに国民が十万円以下でなければカラーテレビを買わないということになりましたならば、そういつまでも滞貨をかかえているわけにはいきませんから、必ずそのうちに十万円以下になることは、私は間違いがないと思うのであります。(拍手)で、そうなれば、国民はどんどんカラーテレビを買うことができましょう。会社もそれによって薄利多売によってもうければよいのであります。電機メーカーも消費者のことをもっとまじめに考えるべきではないでしょうか。そうすれば、アメリカからダンピングなどといわれるようなこともなくて済むことになるのであります。  このような日本の有力な輸出商品の価格の問題は、当面重要な検討課題です。佐藤さんは私の提案をどのようにお考えでしょうか、お答えを願いたいと思います。(拍手)  暑い夏の一日の仕事を終わって、まず私たちの頭に浮かぶのは、一ふろ浴びて汗を流したいという気持ちだと思います。蒸し暑い日本の夏は、入浴をしないでは過ごせません。しかし、収入の少ない、家族の多い家庭にとって、毎日おふろ屋さんに行くのはかなりの負担になっています。いま東京の入浴料金は、おとなが三十二円、中人十五円、小人八円、洗髪料五円です。所得税の標準世帯として大蔵省がきめている、夫婦と子供三人の家庭では、一家そろって入浴すると百二十四円かかります。一月毎日入れば三千七百二十円となりますが、一方、自宅にふろのある家庭では、五人入って、追いだきを含めてもガス代が約六十円、水道代は三円三十銭です。都合六十三円くらいです。収入の少ない家庭の人たちが、収入の多い、自宅にふろのある人たちの倍もの費用を入浴料としてかけている矛盾については、すでに昭和四十年十二月の予算委員会で取り上げました。総理も御記憶のことだと思います。都内でのおふろ屋さんの利用者は、東京都の経済局によれば、一日当たり五百十万人と推定しています。東京都の人口の半分は公衆浴場の利用者であります。国民の一割が住む東京で、その半ばが自宅にふろを持てないという実情は、国民の半ばは政府の皆さんが考えているほど楽な暮らしはしていないということを物語っていると思うのであります。(拍手)私が重ねて入浴料金に触れたのも、こうした実情を理解していただきたいからにほかなりません。  これらの家庭にとって、秋に予想される消費者米価の値上げは、これをきっかけに起こる諸物価の値上がり毒とともに、きわめて大きな負担の増加となることは明らかであります。さらに、生産者米価の決定に伴って、逆ざやの価格を直したいと政府考えているようですが、そうなれば、さらに大幅な消費者米価の引き上げとなります。そのようなことを国民は一体納得するでしょうか。泣く子と地頭には勝てないというような政治を今日してはならないと私は思うのであります。(拍手)  また、ことしも現在のところお米は豊作のようですから、とても政府の予定している買い入れ額では済みますまい。政府考えておられる総合予算主義なるものは、もうすでにくずれておるのではないでしょうか。何にしても、物価の安定は消費者米価の安定からだと思います。必要な補正予算を組んで、消費者米価をできるだけ押えてほしいと国民は願っていると思います。私もそうすべきだと考えます。  ここで少し総合予算主義なるものについて触れておきますが、佐藤さん、国の予算というのは、行政を運営していくためにのみあるのではなくて、私たち国民の暮らしを少しでも豊かにし、しあわせな日々を送ることができるように政治を行なうための手段としてあるのではないでしょうか。(拍手)いまの政府の皆さんが言っておられることを聞いていると、総合予算主義を貫くことが、あたかも目的であるかのように感じられてなりません。私は、ことしの予算は、何も総合予算などとこと新しく呼ぶまでもない、現在の財政法を正しく実行した予算にすぎないと思っています。私は、数年来、財政法を正しく守るためには、このような予算を組むべきことを主張してきましたけれども、それは必要があれば、国民のために必要があれば、必ず補正予算を組むという現在の財政法を正しく守るということにもとを置かなければならないと思うのであります。(拍手)国の予算は、大蔵省のために都合のよいことが必要なのではありません。国民のために財政が適切に運用されれば、それで目的は達せられておるのであります。政治家としての佐藤さんは、この問題をどう考えておられるか、お答えを願います。  なお、つけ加えておきますが、ことしの経済成長は、当初は名目で一二・一%を見込んでおりましたけれども、現在の情勢では、名目一五%をこえることは間違いがないと思います。自然増収は十分期待できますから、補正予算の財源にこと欠くことはないことを申し添えておきたいと思うのであります。  次に、公務員のベースアップについて伺います。  総理府の調べによれば、四十三年上半期の消費者物価指数は、前年同期に比べ五・五%上昇しています。秋には、すでに触れたように、消費者米価の上昇が必至で、ことしの物価は、政府の見通しの四・八%に落ちつきそうにもありません。公務員の方たちは、民間も公労協の人たちも昨年を上回るベースアップが行なわれている際でもありますから、物価の上昇も激しい今日、人事院勧告を心待ちしておられることでしょう。一方では、同じ公務員でありながら、財政硬直化の名のもとに、できるだけ押えたいと財政当局は考えていることでしょう。また、行政管理庁は、国家公務員の三年間五%削減の案をまとめ、八月中ごろの閣議で決定の上、今年度から定員縮減を実施に移す考えであると新聞は伝えているのであります。これまで公務員の給与は、いつも人事院勧告が値切られて、それでも昨年は八月実施とこぎつけましたが、なお五月、六月、七月の三カ月は切り捨てられております。  国民は、公務員が公僕として勤勉に働いてくれることを望んでいますが、その仕事に見合った給与が支払われることも当然だと考えていると思います。さらに、高能率、高賃金ということばがありますが、公務員に高能率を期待するためにも、ことしは思い切って勧告の完全実施を行ない、その上で公務員の納得のもとに、定員の検討に入るというのが筋ではないでしょうか。  佐藤さんは、国家公務員の最高責任者ではありますが、その立場を離れて、一人の公務員の立場に立って、ことしは勧告を完全に実施をいたします、その上でひとつ皆さんと定員の問題を話し合いたい、こういうことにどうしてならないのでしょうか。財政硬直化の打開は、少なくとも人間味豊かな政治によってのみ行ない得るものではないかと私は思うのであります。  ここで特につけ加えておきたいのでありますが、国の権力を代表して国民に接する仕事に携わっておる警察官や税務職員については、その仕事の性質が、必ずしも国民に好まれることだけではありません。職務のために困難な仕事を続けている人たちでありますから、その給与の改善については格段の配慮がされて当然だと思います。特に佐藤さんに、この点をつけ加えてお答えをお願いいたします。  七月十二日の厚生省の発表によりますと、日本人の平均寿命は、男子が六十八・九一、女子が七十四・一五歳と、昨年より約〇・五年延びてきました。喜ばしいことだと思います。しかし、寿命が延びただけ、お年寄りの方たちがしあわせに暮らしていただくのでなければ、およそ意味のないことになってしまいます。老齢福祉年金の制度は、お年寄り一人のときは、年額一万九千二百円支給されますが、夫婦二人のときは、おのおの三千円ずつ減額されることになっています。  北海道にお住まいの牧野さんが、この夫婦受給制限は憲法に違反していると、東京地方裁判所に、国を相手どって行政訴訟をしておられましたが、七月十五日、杉本裁判長は、この受給制限は憲法第十三条、第十四条に反しているとして、牧野さんの勝訴となりました。この訴訟で、国の側は、夫婦減額の必要な理由として、一人で暮らすより、二人のほうが家賃や電気代が安くて済むと、こう主張していました。しかし裁判長は、年金を受ける老人のほとんどは、収入の少ない子供の世帯にやっかいになっている。とすれば、一人より二人のほうがよけい子供たちの生活に負担をかけていることになるとして、その主張を退け、さらに、ただでさえ年金は少な過ぎる、その上に夫婦受給制限を加えることは、財政の都合で老齢者の生活実態に目をおおうものであるとしています。心あたたまる判決だといわなければなりません。(拍手)  ところが新聞の伝えるところによると、園田厚生大臣は、十六日の閣議で、国会で成立した現行の法律に違憲性があるというのは重大な問題なので控訴する、しかし、夫婦受給制限については来年度から廃止すると述べ、閣議もこの方針を了承したとのことです。日本人の平均寿命をこえて長生きをされた御夫婦に、おめでとうございますというのなら話はわかりますが、このような冷たい仕打ちが続けられていて、たびたびの国会で附帯決議までつけて、この受給制限の廃止を求めていたことが、裁判所の判決でようやく廃止されることになったことについて、日ごろしばしば人間尊重に触れておられる佐藤さんは、一体どのように感じておられるでしょうか。行政というものは本来冷たいものだと思います。そこにあたたかい血を通わせるのが政治家のつとめではないでしょうか。今後お年寄りの数はだんだんふえてきます。しあわせな老後をこの方たちに送っていただくために、いま何をなすべきか、佐藤さんのお考えを承りたいと思うのであります。(拍手)  次に、医療保険の抜本対策について伺います。  先ほどわれわれの寿命が延びてきたことに触れましたが、それはわが国の乳幼児の死亡率が近年急激に減ってきたことに基づいているのであります。欧米諸国に比べてもわが国の乳幼児の死亡率は著しく低く、千人に対して日本は十八・五人、アメリカは二十四・七人、イギリス十九人、フランス二十二人と、先進諸国で最低であります。このことは日本の医学、医術の進歩と社会保険医療の普及によってもたらされたものであります。にもかかわらず、日本の医療の問題は、常に政府と医療を担当するお医者さんたちとの間の、政府と野党の間の激しい争いなくして行なわれたことは一度もないのであります。  暮らしの指標の中で、ただ一つ先進諸国に誇り得る日本の社会保険医療、それがどれだけ国民のしあわせに役立っているかを、佐藤さんは一度冷静に考えていただきたいと思います。ところが政府は、ただ単に財政上の見地からのみ、科学である医療にいろいろの制限を加えてきました。しかし、国民の命も健康もお金で買うことはできません。ここでは、経済第一主義というのは通用しないのです。これまでの争いの責任政府の側にあったことは明らかです。今日、社会保険の医療は、国民生活にとってはなくてはならぬものとなっています。その抜本的な改革は、保険経済の合理化だけを目的として進めるべきものではなく、国民が安心して治療が受けられる制度を、医療の専門家であるお医者さんたちとも十分話し合って進めるべきものです。再び争いを繰り返してはなりません。  このことは、明日の政治課題として、国民のしあわせにかかわるきわめて重要な事柄ですから、厚生大臣にまかせ切りにするのではなくて、総理大臣の責任において進めるとのはっきりしたお約束をしていただきたいと思います。お答えを願います。(拍手)  七月三十日、北海道夕張市の北炭平和炭鉱でまたしても坑内火災が発生し、死亡九名、行くえ不明二十二名と報じられております。その後の様子では全員死亡のようですが、まことに痛々しいことで、心からお悔やみを申し上げます。  昨年からことしにかけて、北海道の美唄、夕張地区には事故が続出。昨年上半期の事故死者六十四人に対し、ことし上半期は九十三人と激増しています。今度の火災の原因は、いまのところベルトの過熱ではないかと見られています。この炭鉱は、昭和三十、以来徹底的な合理化をやっているので、五百メートルのベルトに原動機が二つ、係員は一人ということです。はたして一人で、五百メートルのベルトとその端にある原動機を点検できるのでしょうか。さらに、火災の発生したのは三時五十分ごろなのに、地上で気がついたのは一時間二十分もたってからだということですから、近代化、合理化のみに重点が置かれて、保安のための人手が不足していたことは明らかです。  こうして見ると、採算に合う保安対策には限界があるのではないかという疑問が生まれてきます。このような危険な状態で人々を働かせるということは、はたして許されてよいことでしょうか。最近の大きな、そして最も悲惨な事故はすべて炭鉱の事故です。そして緊急質問のたびに、このようなことの起こらないよう善処すると繰り返されて、またしてもこの事故です。炭鉱に働く人たちもその家族の方たちも、どんなに不安な気持ちでおられるか。胸の詰まる思いがするのであります。特に優良炭鉱といわれる平和炭鉱ですらこのありさまですから、今後のことが思いやられます。鉱山保安について、根本的に再検討を加え、事故の責任を十分にとらせるとともに、監督を一そうきびしくして、いやしくも保安要員不十分な炭鉱では、就業を禁止するくらいの強い態度で臨む必要があります。佐藤さんのお考えを伺いたいと思うのであります。(拍手)  最後に、参議院選挙が終わりまして、今日参議院の選挙制度のあり方や、地方区の有権者の数と議員の定数の間に著しいアンバランスが認められることについて、国民は大きな関心を寄せているのであります。  一例をあげますと、鳥取県の有権者と東京都の有権者との間には、一対五・二の開きがあるのであります。大阪府の場合は一対四・二の割合になっておるわけでありまして、都市の有権者がきわめて不利な条件に置かれていることは、これからも御理解いただけることと思います。法のもとにおける国民の平等の権利を守るためにも、東京、大阪等の地方区の定数是正というのは当然行なわれなければならない問題なのであります。すでにこれらは、第五次選挙制度審議会で取り上げられて審議中のものでありました。政府はひとつすみやかに第六次選挙制度審議会を設け、次の参議院選挙までに定数是正を行なうべきだと思いますが、これについて佐藤さんのお考えを承りたいと思います。  現在なぜ第六次選挙制度審議会が開かれないのか。これは御承知のように、あの第五次選挙制度審議会における政治資金規正法の答申に、自由民主党が少しも誠意を示さないことに端を発しておるわけでありまして、(拍手)第六次選挙制度審議会を開く自信がないことを実は物語っておると思うのであります。しかし、このままでは問題は解決いたしません。われわれは、前の国会に提出された法案、このような政治資金奨励法には、どうしても賛成するわけにはいかないのであります。  そこで、私は一つ提案をいたします。第六次選挙制度審議会をさっそく設けて、そこに現状を考慮した政治資金規正の方法についてあらためて再諮問を行ない、この際、次に出られる答申については、総理大臣の責任において、答申そのものをそのとおりの法案にして、国会に提出することを約束をしていただけないかと思うのであります。(拍手政治資金の現状をこのまま放置することは、国民も許さないことであります。どうかひとつ、一歩前進のため、審議会の委員の良識を信頼して、再検討を求めることにしてはいかがでしょうか。佐藤さんの決心を伺って、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
  20. 佐藤榮作

    ○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  本会議の施政演説あるいは所信表明、たいへん限られた時間である、どういうわけでそういうことになるか、これは私が皆さん方に申し上げるまでもなく、国会運営のベテランでありますから、よく御承知のことだと思います。あるいは事柄によりまして、本会議で説明することが適当な場合もありますし、あるいは他の委員会に譲るほうが適当な場合もあります。したがいまして、それらのことを勘案いたしまして、在来からの経験を主にいたしまして、一通りの型ができております。しかしながら、ただいまもお話がございましたが、その経験による型ばかりにたよらないで、新機軸を出せ、こういうような御主張かと思います。しかし、これらの事柄につきましては、さらにさらにベテラン同士が十分想を練っていただきたい、かように私もお願いいたしておきます。  ところで、最近の経済についてのいろいろな御批判がございました。私も政治の目標、同時にまた経済の目標、これはすべて国民そのもののしあわせにつながるものであり、それを増進することによって初めて経済の目的が達せられる、かように私も考えます。最近の経済の動向を見ましても、御指摘になりましたように、ただいままでの高度成長、それが直ちに国民生活と直結していない、そういうようなきらいはございます。これは堀君の御指摘のとおりであります。私どもは、これらの点について十分今後考えていかなければならないと思います。私がさらに詳しく申し上げるまでもなく、過去十年間、日本の経済の規模は年々増大しておりまして、大体平均一〇%の成長を示しております。今後二十年間の平均成長率は七ないし九%にする、かように見てまいりますと、将来日本の経済成長、これはすばらしいものがあり、そうしてそこに繁栄が持続するものだ、かように考えます。しかし、ただいま申し上げましたように、急激な経済成長に比べまして、生活環境の整備や食生活の面においては、欧米諸国よりも相当の隔たりがあるということは、御指摘のとおりであります。国民生活の安定をはかり、国民福祉を向上させることは、先ほども申したように、最終目標であります。私が、高度成長期のあとを受けまして、社会開発を提唱したのも、かような趣旨からでございます。  政府としては、今後とも均衡のとれた、経済の安定した、持続的な成長をはかりつつ、よりよい生活環境の整備、消費生活の充実と、豊かで平和な国民生活、住みよい社会の建設に一そう努力してまいる考えであります。このためには、すでに経済社会発展計画を作成しておりまして、住宅や上下水道、あるいは公園、緑地、道路等の生活環境の整備に重点を置いて政策を進めております。また、先年行なわれました国民生活審議会の答申等も、これらの趣旨を尊重して、御指摘のとおり、今後とも一そう国民生活の充実を目ざして各般の施策を講じてまいる考えであります。  次に、公取の機能を強化しろ——私とも政治に課せられた課題のうちで、いろいろの重要な問題がございますが、当面するものとしては物価問題がたいへんな問題であります。これは政治の重大課題だ、かように考えております。そこで、公取がこの物価問題と取り組んでおりまして、違法な価格協定であるとかあるいは再販行為等の規制につきましても、公正取引委員会が今後一そう活動しなければならないと思います。私は、今日までのこの努力を高く評価するものでありますが、公取が一そう積極的にその職務を遂行していただきたいと思います。かような意味で、ただいまお話のありましたような四十四年度の予算編成の際には、公取の人員増加、その他また活動に便するようなそれぞれの所要の経費を計上しろというお話でございますが、私も同じような考え努力するつもりであります。  そこで、お話しになりましたカラーテレビについての一つの御提案がございました。ただいま国内価格、これを輸出価格並みにひとつ下げるような方法はないか、そうして、具体的には十万円以上のものはもう買わない、ひとつ不買同盟をつくったらどうか、かようなお話がありますが、私は、ちょっと穏当を欠く処置ではないかと思いますけれども、これらの具体的な方法につきましては、さらに理解ある生産者協力を得まして、また、公取の適正なる活動と相まちまして、価格を引き下げることに一そうの努力をいたしたい、かように思います。  また、入浴料金についてもお触れになりました。私は、この入浴料金——まあ暑さのこの際でありますので、生活に即したたいへん身に迫まるような思いのする問題だと思います。そういう意味で、あるいは公設の入浴場ができないものだろうか。ただいまの御提案に対しまして、私からもさような意味の御提案をいたしてみたいと思います。そうして、この入浴料金をできるだけ安くするようにいたしたいものだと思います。  また、消費者米価の問題についてのお話がありましたが、御指摘のとおり、生産者米価消費者米価の間を正常化しなければならないこと、これはもうすでに御承知のことだと思います。しかし、生産者米価は引き上げろ、消費者米価は据え置け、かように言われましてもまことに困難なことであります。この点では私どもは、生産者米価におきましても適正な価格、また、消費者米価におきましても正常化された消費者米価と、ひとつ納得をしていただきたい、かように思いまして、両者の間の調整をはかっている、これが政府のいまの考え方であります。私は、米の値段はいわゆる二重米価であり、消費者米価が安かったら政府でこれを補えという、かような御意見がございますが、必ずしも二重米価そのものがよろしいというわけのものではないだろうと思います。さような意味でこの問題と取り組むべきだと思います。  そうして、総合予算主義についてお触れになりましたが、総合予算主義は、四十三年度予算編成に際しまして、国会の承認を得た基本的な方針であります。財政硬直化を改善するためにもこの総合予算主義でなければならない、かような考え方であります。私は、総合予算主義をただいま変更する考えはございませんが、しかし、われわれが予想しなかったような事態が起これば、それはもちろん補正予算も組まなければならない、かように私は思っておりますが、とにかく、基本的な方針でありますから、これを守っていくようにあらゆる努力をするつもりであります。  次に、公務員の給与についての人事院勧告をどういうように扱うかというお尋ねでありますが、在来から公務員の人事院勧告、これは尊重する政府態度であります。今回ももちろんその基本的な態度のもとに、これの実施につきまして善処する考えでございます。それで、その際に、警官や税務職員や教員等について特別な配慮をしたらどうかという御提案でございますが、それらの点も特別な配慮ができるかどうか、その辺もよく検討してまいるつもりであります。  次に、社会保障についていろいろお話がありました。私は、日本の社会保障制度は、その中身におきましてもまた水準におきましても、まだ低い、他の先進国に比べましてこれは低いと思います。したがいまして、総体の水準を高めるように努力いたしますが、同時にまた、各項目につきましても、ときにまだ全然配慮されてないというような問題もあるのではないか、これらもさらに掘り下げて検討するつもりであります。  そこで具体的な問題として、老齢福祉年金の夫婦受給制限の件についてお尋ねがありました。私は、これはまだ政府意向を決定したわけではないとかように言われましたが、このただいま裁判になっております控訴の結果いかんにかかわらず、裁判の結果いかんにかかわらず、この老人の夫婦受給制限、これは廃止する方向で検討したい、かように思っております。そのとおり、ただいま言われますように、これをやめる方向に検討するということをお約束しておきます。  次に、国民のしあわせのために最も大事なのが医療保険である、かようなお話であります。私もさように考えます。したがいまして、医療保険の抜本対策というものにつきまして、これを十分考えていかなければならぬと思います。単に医療保険制度だけではなく、医療制度、公費負担制度等、関連制度を含めた国民医療全般にわたる総合対策でなければならない、かように思います。政府としては、現在、各方面の意見を参考として、その具体策について鋭意検討中であります。各方面にも納得の得られる成案を得るように、一そうの努力を重ねるつもりであります。  次に、炭鉱災害の問題についてお話がありました。私が申し上げるまでもなく、先般平和炭鉱の災害によりまして多数のとうとい人命を失うに至ったことは、まことに私も遺憾にたえない、かように思っております。政府といたしましては、人命尊重を第一義として、従来から鉱山保安の確保、これをはかってまいりましたが、ただいまのようにたびたび事故が起こる、こういう現況にかんがみまして、堀君からも具体的な御提案がございましたが、今後とも保安対策につきましては一そうの拡充強化をはかりまして、災害防止に万全を期してまいるつもりであります。  最後に、選挙制度について、御意見を交えてのお尋ねがありました。この参議院選挙の結果、確かに地方区等におきましてアンバランスが生じておる。衆議院の場合はそれぞれ人口調査の結果、それに合うように定員を直しておりますが、参議院の場合はややおくれております。したがいまして、第六次審議会を招集して、そうしてその審議の結果、この定数の改正をはかったらどうか、かような御意見でございます。私はこの問題も十分考えなければならない。参議院地方区の場合、確かに御指摘のような非常なアンバランスが生じております。これを適正に直すことは今日の急務ではないか、かように思います。もちろん、これら審議会におきましても、こういう点について第五次の場合もすでに意見が交換されたと思いますが、しかし積極的な答申を得るには至らなかった、かように思いますが、今回はそういう点もこの審議会の答申を得たい、かように思います。  また、政治資金規正の問題につきまして、一つの具体案として、審議会の答申どおりそのままひとつ変更しないで法制化しろ、こういうような御意見でございますが、これは御意見として伺っておきます。私は、一つの理想論はともかくとして、実施可能なもの、一歩でも前進する、かような態度でありたい、かように思っております。(拍手)     —————————————
  21. 小平久雄

    ○副議長(小平久雄君) 曽祢益君。   〔曽祢益君登壇〕
  22. 曾禰益

    ○曽祢益君 私は、民社党を代表いたしまして、一昨日本院におきまして行なわれた総理の所信表明に対しまして、若干の質問をいたしたいと存ずるものであります。(拍手)  総理は、三日、本院において、参議院選挙を通じて、政府並びに自民党の政策が国民大多数の支持と理解を得たと確信し、心を新たにして政局を担当すると胸を張って述べられました。私は、首相のこの姿勢、すなわち、佐藤内閣の施策に対する国民の強い批判と不満に耳を傾け、反省する謙虚さを失い、楽観的ムードに浸り、権力的姿勢を強めようとするこの首相態度そのものの中に、わが国の民主主義の前途に対する危険信号を見出すものであります。(拍手総理は、選挙戦のさなかにおいて、国民の六割以上が生活の現状に一応満足しているという世論調査を引き合いに出され、また、二十一世紀においては、日本国民一人当たりの所得はアメリカを凌駕するというハーマン・カーン博士の夢物語を引用されまして、軽率にも昭和元禄時代の到来を謳歌されたのであります。  さらに、選挙後発表された四十三年度経済白書は、経済成長を通じて国民福祉の増進をはかるという旧態依然たる姿勢を示しております。なるほど一千二百億ドルをこえる国民生産、二千万台のテレビ、一千万台の自動車保有に象徴されるわが国の高度経済成長は、確かに世界を驚かせるものがあります。しかし、この経済成長は、はたして国民に福祉と安らぎをもたらしているといえるでありましょうか。いな、むしろこの急激、無計画な高度経済成長、特に巨大民間企業による設備投資の競争こそが、大都市に対する人口の集中、交通戦争、公害、住宅環境の悪化、青少年の非行化と、他方では農村における過疎地帯の出現と労働力の不足、出かせぎ留守家族の悲劇等々の幾多の人間性疎外の現象を引き起こしている元凶でもあるのであります。  今日わが国は、まず高度経済成長、次いで国民福祉の増進という段階ではなく、成長のもたらしたひずみを是正し、失われた物心両面の福祉を補うことなくしては、もはや成長すらあり得ない段階に達したのであります。(拍手)したがって、いまや経済力の量的な増大と物質的な欲望の充足に狂奔してきた従来の池田、佐藤両内閣の経済政策、いな政治方向そのものをここに転換いたしまして、国民生活の質的な向上と精神的な福祉の増進に重点を置く、均衡ある発展と清潔な政治を打ち立てることが緊要だと信ずるものであります。(拍手)  学生の集団暴力にしても、基本的には政治の貧困に責任があると思うのでありまするが、首相が、その所信表明の中で言及された比類のない繁栄の二十一世紀とは、経済至上主義を意味するのか、それとも物心両面のバランスを得た社会を意味するのか、ここに明らかにされたいのであります。  国民政治に対する不満の最大のものは、言うまでもなく物価高であります。よって政府は、最重点施策として、消費者米価を含む一切の公共料金の据え置きを断行し、かつ、消費者物価値上がりの四割を占める生鮮食料品の価格安定のための実効的な措置をとるべきと思うが、総理の見解を承知したいのであります。(拍手)  次に、最近輸出の増進と国際収支の改善が顕著となったため、すでに政府や財界の方面に、公定歩合の引き下げ、銀行の窓口規制の解除等、一連の金融引き締め緩和の要望が高まりつつあります。しかしながら、従来の政府の景気調整の実績が示すように、今回の金融引き締めの緩和もまた民間設備投資の増大、景気の過熱、輸入の増大と国際収支の悪化、したがって金融の再引き締め、不況の到来という悪循環を繰り返すであろうことはあまりにも明瞭であり、このような景気の波動は、そのつど中小企業や勤労大衆に過酷な犠牲をしいることも周知のとおりであります。よって、政府は、この機会に、漫然と従来の金融面のみからする景気調整策にいずることをやめ、設備投資の直接規制及び国際通貨制度に触れた円価格の維持策等の総合対策を樹立するとともに、とりあえず、すでに欧米で実施されている、金融操作に法人税を併用する行き方や投備投資調整基金の創設等、多角的な対策を採用すべきと考えまするが、総理の見解を伺いたいのであります。(拍手)  次に、過般の日通事件に露呈された政界の腐敗、業界の道義の退廃は、単に一握りの人物の司法処分をもって払拭されるようななまやさいものでないことは言うまでもありません。そこで私は、首相所信演説の末尾に述べられた「政治が正道を歩み、正しい指針を示す」とか、「清潔な政治に徹し、綱紀を粛正する」という決意が、またもや単なることばの羅列に終わらないためには、何よりもまず、先ほど堀議員も指摘されましたが、政治資金規正について前国会に提出した悪名高い政府案の再提出はいさぎよく取りやめ、選挙制度審議会答申を忠実に守る立法のため、あらゆる党内外の障害を乗り越える勇断とリーダーシップを首相に期待したいのでありますが、率直な御答弁をお願いいたします。(拍手)  米価問題については、その実質的な審議を委員会段階におまかせしたいので、私は、米価に取り組む政府、なかんずく首相の姿勢についてのみ言及するものであります。  まず、選挙中に、米価自民党がきめる、いやきめてやるのだと豪語して、米価問題を選挙戦の道具に供するやり方を容認した首相態度は、不見識もはなはだしいと存ずるのであります。(拍手)しかも、選挙後の米価問題の経緯は、一そう奇々怪々であります。政府は、米審に対し政府試算米価を提示し、その答申を受けながら、中立であるべき米審の意向を無視して、みずから政治加算を上積みするという混乱をあえてしました。さらに、与党たる自民党が、総裁選挙にからめてゆさぶりをかけ、ついに政府・与党は、本年度生産者米価の決定を本臨時国会終了後に持ち越すという前代未聞の醜態を演ずるに至ったのであります。(拍手)  政府並びに自民党のこの態度は、米価決定に関する食管法規定を無視し、その財源を負担する国民立場をそこない、議会主義の権威に挑戦し、生産農家消費者を愚弄するものであり、特に議院内閣制の運用に欠くべからざる政府・与党の権限の適正な区分を破壊するものといわなければなりません。(拍手)ここに、首相の深い反省と誠意ある釈明を求めるとともに、食管制度の根幹を維持しつつ所要の改善を行なうとは、一体何を維持し、何を変更するものであるか、この点を明らかにされんことを要求するものであります。(拍手)  次に、外交問題に移ります。  総理は、一昨日、選挙の結果、日米安全保障体制を基調とし、自衛力を整備して、わが国の安全を確保する政府の基本方針が国民の理解を得ているとの確信を深めたという自画自賛の楽観論を展開されるとともに、基地提供の義務を強調されました。  選挙の前後に行なわれた二、三の有力なマスコミ機関による世論調査が一致して示すように、国民の大多数は、安保即時破棄、自衛隊解散のいわゆる非武装中立論に賛成していないことは明らかであります。しかし、同様に、多数の国民が、自衛隊強化、安保長期固定化に対しても、強く反発していることもはっきり示されておるのであります。このような国民の両極に対する警戒的な態度は、この困難な、複雑な選択にあたり、国民はよく良識を示していることの証左でありまして、まことに慶賀にたえないと存ずるのであります。首相が非武装中立論の弱点に安易にもたれかかり、政府安保堅持と、その上に立った自衛力整備の基本方針が国民の支持を得たとひとり合点することは、はなはだ危険であります。特に、前述の世論調査にあらわれている世論の動向が、過度の対米依存に対する反発、わが国の自主外交、自主防衛への共感、安保の軍事的な面を薄め、逐次解消に導く方向への傾斜と、駐留と基地に対する反感という形で明らかに読み取れることは、総理もまさか否定されないところだと信じます。  したがって、総理は、非武装中立安保堅持かというような子供だましの二者択一をもてあそぶことをやめられ、安全保障に関する中庸を得た道の探求とコンセンサスの形成に努力を傾けるべきであります。その上で一九七〇年の再検討期に際する具体的方策が、廃棄通告でなければ所要の改正か、その改正は、長期固定化か駐留と原則的基地の排除の方向か、それともいわゆる自然延長——自然継続かの点を明確にすることが、政府の当然の責務であります。事態は、もはや船田安保調査会長試案の形で自然延長の方向を模索する段階ではなく、首相の決断が要請されております。お答えを願います。  次に、駐留並びに基地問題と安保との関係については、総理の説明をまつまでもなく、現行条約のもとでは、第六条に基づき米軍に基地と施設の使用を認めることは、わがほうの義務とされております。したがって、現行安保の終了または改正を外交交渉によって行なわずして、裏面から基地の空洞化をはかり、または実力による撤廃闘争をあおる行き方は、議会主義に反するもので、賛成し得ないところであります。さりながら、首相のごとく、基地の提供が、日米安保の根幹に触れる問題であるばかりでなく、米国側の日本に対する安全保障の約束に対応する日本の義務とまで公言しておきながら——ついでながら私はこの見方には賛成できないのでありまするが——運用上だけで基地の不安と不便は何とかしてやると国民約束する態度、私はこの態度にこそ少なからざる不安を覚えるものであります。(拍手)われわれも、現行条約のもとにおける基地の整理縮小に賛成であります。しかし、そこには大きな壁があり、やがては基地問題をめぐって、国民の欲求不満アメリカ側の対日不信とがぶつかり合うであろうことを、私はここに予言しておくのであります。  さきの二月六日、本院予算委員会で私が指摘したごとく、安保条約の欠陥に目をつぶり、基地問題をその日暮らしで糊塗していくやり方は、日米両国の理解と協力をむしばみ、基地に関するトラブルの激化は、極東の情勢が緊迫するほど高まり、ついには有事の際に日米の防衛協力が円滑に作動するという、安保の戦争抑止力としての有効性と信憑性がそこなわれるに至るおそれが大きいといわなければなりません。(拍手)  したがって、私は、ここに総理に対し、安保の十年目の再検討期を迎えんとするにあたり、日本自主性の増大、自主防衛を基調としつつ、その補いとして位置づけられる日本防衛についての日米協力は、これを国際緊張の緩和、国連機能の完備を目途とし、当面継続するという両国共通の利益に立ちつつ、かつまた、極東の安全に果たすアメリカの抑止力と、これに対する日本の便宜供与はどうあるべきかということについて協議するという、前向きの態度安保条約そのものを再検討するための日米間の対話を行なうことを求めるものであります。  特に、私は、この際、日米国務、外務両当局が、議会や国民の説得が困難だろうとおそれをなして、条約そのものをタブー視する傾向が強いこと、しかし、それを乗り越えることがステーツマンシップであり、日米間の永続した友好協力の道であること、また、現行安保が結ばれてからの十年間のこの画期的な情勢の変化に対応して、特に駐留、基地をめぐって所要の改正を行なうことがむしろ当然であることを強調しておきたいのであります。(拍手)  さらに、首相の注意を喚起したいことは、米軍の駐留と某地の使用の目的が、日本の防衛のためよりもむしろ極東の平和と安全のためであるという、このことの重大性についてであります。  このような条約上の権利の設定は、あらゆる安全保障条約のパターンとして全く類のない例外的なものであります。最近のソ連、チェコの間の紛争中心課題の一つが、東ヨーロッパ共産圏の安全のためのチェコ領内のワルシャワ条約軍の演習、または駐留権の問題を含んでいることを他山の石として、この際、自由な国々である日米の間においては、いつまでも占領時代の遺物である米軍の常時駐留や、極東のための基地の使用を、権利義務の問題として処理することはやめていく方向で日米間の会話を開くことを首相に強く要望したいのであります。(拍手)  関連して、中央公論八月号に掲載された、元駐英大使西春彦氏の安保条約中の、いわゆる極東条項を削除すべしという意見にも触れて、総理の見解をここに表明されたいと存ずるのであります。  次に、前に三宅議員等が触れられた沖繩問題については、私は、過般の米国下院におけるスナイダー証言の発表が内外に波紋を広げたことは承知しておりまするけれども、ワシントン巨頭会談の日米共同声明によれば、沖繩返還を目途とする日米間の継続的な検討に入ることについては、確かに両首脳間に合意が成立いたしました。しかし、「両三年中に返還の時期について合意したい」という首相の希望表明に対して、ジョンソン大統領は、「よくわかっている」と言ったが、同意したとは言っていない。このことは、当時われわれがはっきりと指摘したところであります。したがって、スナイダー発言に驚くとすれば、それは国民に対し、ジョンソン大統領との公式の約束と、これに加えた佐藤首相の希望的観測とを混同した説明ぶりそのものの責任であります。返還後の沖繩基地のあり方に対し、神経質過ぎるほど白紙白紙と言い張る首相が、沖繩返還約束と時期については、冷厳な事態をバラ色の夢で着色しようとするのでありましょうか。あらためて首相の決意を披瀝されたいのであります。(拍手)  私は、スナイダー発言の内容そのものよりも、この時期にこれを発表した米国側の意図を重視したいのであります。われわれは、米国国会の空気をありのまま伝えてもらうことを歓迎いたします。だが、もし米国側が、沖繩県民中心とするわが全国民返還の要望にブレーキをかける意図でこのような公表を行なったとすれば、それは日米友好の前進に役立つ意味の率直な意見開陳とは考えられないことを米国側にわかってもらいたいと思うのであります。(拍手)  同様に、日米間の率直な対話という見地から、総理に向かって特に一言したいのは、沖繩返還の際における基地のあり方についてであります。  アメリカ側の沖繩基地に対する評価は、量的、質的に本土以上のものであるといたしましても、その法的な地位につきましては、施政権返還後は本土と同様でなければ、断じて首尾一貫しないことは言うまでもないところであります。したがって、米側との折衝の場合の日本側の基本的態度としては、沖繩基地もまた核基地を認めず、かつ事前協議制のもとに置かれるという、いわゆる本土並みでなくてはならないと信じます。このたてまえは、米側に対しあらかじめ明確にしておくほうが、かえって双方の間に誤解や思惑を防止するゆえんと信ずるものでありまするが、総理の見解を披瀝されたいのであります。(拍手)  最後に、中国政策に言及したいと存じます。  元来、政府中国政策、すなわち政経分離、国連からの中共締め出しの政策は、現実を無視するものであるから、早晩行き詰まらざるを得ない運命にあったのであります。いまやベトナム戦後が展望されるに至ったので、国民が歴代保守内閣、特に佐藤内閣の中国政策の転換を求めるのはきわめて当然と存ずるのであります。そこで必要なのは、あくまでわが国の自主的立場に立った中国政策でなければならないということであります。それはむろんアメリカ迎合や台湾追随でないが、さりとて対中共媚態ではない真の自主的な政策であります。  たとえば国府及び中共関係については、政経分離などというフォーミュラに束縛されるべきではなく、総理がその政治的指南役であった故吉田氏の教えを正しく受け継ぐならば、台湾との平和条約が国民政府の実権の及ばない地域には適用されず、したがって、大陸中国日本との関係の成立を排除しないという原則は、とくと御承知のところと思うのであります。さすれば、ここに国府との条約を守りつつ、中共との間に弾力的に経済、文化、政治関係を進展させる余地を活用すべきではないか。この日華条約の解釈について三木外相の答弁を、また、この基本方針について総理の答弁をそれぞれ求めたいと存じます。  また、吉田書簡に今日に至ってまで拘泥することは、おそらく吉田翁をして草葉の陰から苦笑せしめているであろうことは想像にかたくありません。筆者の吉田翁とともに静かに眠らせるお考えはないか、首相に伺いたいのであります。  なおまた、国連総会においては、わが国は、重要事項指定方式をやめ、積極的に中国代表権問題審議委員会を設置するよう提唱すべきと存ずるのであります。他方、中共に対しても、わが自主性を守ることは当然であります。われわれは、中華人民共和国を中国の主権者として、これに国連代表権を容認する方向に賛成いたします。しかし、台湾の処遇を含めて中国代表権問題は国連の場で処理することは当然であり、かつ、台湾住民の運命をみずから決定する自決権は、国際法の原則として尊重されなければなりません。  この点に関し、ライシャワー前駐日大使の近著「ベトナムを越えて」——「ビヨンド・ベトナム」の中に、中共の国連承認、同時に台湾に国連の議席と自決権を与えよという示唆に富んだ提案がなされておりますことは、おそらく総理も御存じのところと思いまするが、この案に対し深甚な考慮を払うべきものと考えまするので、総理及び外務大臣の御所見をお伺いいたしたいのであります。  さらに、選挙中に西村民社党委員長の提唱したごとく、中国問題に関して超党派的に国民合意に立った前向きの政策をつくることが可能と思われまするが、総理の所信をお聞きいたしまして、私の質問を終わるものであります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
  23. 佐藤榮作

    ○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 曽称君にお答えいたします。  参議院選挙が終わって、私の所信表明について謙虚さがないという御注意でございます。この御注意はありがたくそのまま伺っておきます。私、申し上げるまでもなく、政治を担当する者は国民の声を聞く謙虚さがなければなりません。そこに初めて国民の支持を得、また、政党としても大をなすゆえんだ、かように平素から考えております。重ねて御注意のありましたことを御礼を申し上げておきます。  そこで、お尋ねに対しましてお答えをいたしますが、経済が成長し、社会機構が複雑化するにつれまして、とかく人間が疎外されがちになります。私が政権担当直後、人間尊重と社会開発を提唱いたしましたのもこの趣旨であります。特に、わが国のように都市化の波が急激に押し寄せた国におきましては、過密、過疎対策、これがたいへんな問題であると思います。社会生活の面におきまするいろいろの現象が出ております。したがいまして、国民の福祉対策も、これらの問題とあわせて解決していかなければならないと思います。その点は御指摘のとおりであります。ただし、このような現象は、単に政治の分野だけで解決ができるものではありません。国土の総合開発という大きな柱を立てて、物的な面、精神的な面、これを合わせて新しいビジョンが必要であると、かように思います。  私は、明治百年を迎えて、政府としても二十一世紀または次の百年にどう対処するか、その理想像の形成につきまして取り組んでおりますが、曽祢君のお説も、これからの日本が、単に経済力だけで強大な国ではなく、人間性豊かな自由の国家でなければならないということを御指摘だと思います。そのとおりであります。最近の一部学生の集団暴力事件を見ましても、これらの若いエネルギーを真に建設的な方向に向けるのでなければ、次の世紀におきまして、精神、文化を兼ね備えた真に世界一流の国家として発展することはできないのではないかという気がいたします。  次に、物価問題についてお答えいたします。  物価対策は、先ほどもお答えいたしましたように、政府に課された重要課題であります。したがいまして、政府といたしましては全力をあげて取り組む所存でありますが、一切の公共料金、消費者米価をも含めてこれを据え置けという御提案に対しましては、残念ながら、現実の問題としてはやや無理ではないか、かように思いますので、賛成いたしかねます。しかし、個々の公共料金の取り扱いにつきましては、国民生活に与える影響や物価に関連するというような点もございますから、慎重な上にも慎重にこれを検討してまいらなければなりません。そうして、消費者米価生産者米価問題に引き続いて検討課題にのぼるということは、お説のとおりであります。私は、一般消費者物価の動向や国民生活の各面に与える影響を考慮いたしまして、家計米価の範囲内で極力その抑制につとめるとともに、便乗値上げの防止に遺憾なきを期してまいるつもりであります。  生鮮食料品につきましても、その生産性の向上をはかり、供給の円滑化につとめるとともに、卸売り市場等流通機構の整備を進めるなど、価格の安定のための諸般の施策をさらに一そう進めていくつもりであります。したがいまして、値上がりにつきましてはできるだけこれを避けていく、かように抽象的には考えていただきたいと思います。  次に、景気調整策について、金融引き締め、これはもうすでに緩和すべき時期に来ているのではないか等々、いろいろの御意見がございました。多くは御意見として私が拝聴しておけばいいのではないか、かように思っております。私も、景気動向につきましては絶えず神経をとがらせております。しばしば、ときにこれを引き締めたり、ときに成長に力をかしたり等々の方策をとっております。しかし、長期的には、一つの長期的な総合的な計画のもとに、ただいまのような情勢に相応したそれぞれの対策を立てるということでありますので、全然無計画というようなものではございません。その点をひとつ御了承いただきたいと思います。その点で、欧州におきましてとられた政策なども御披露になりました。しかし、私は今日までのところ、わが国の政策はそれぞれ成功しておる、かように考えておりますので、御注意の、欧州における諸国のとりました具体的政策、これは参考として伺っておきます。  次に、政治資金規正法についての御意見でございました。この政治資金規正法は、私どもは、一歩でも政界浄化のために前進する、かような考え方で前回提案をいたしたのであります。この政界浄化に一歩でも前進する、先べんをつける、こういうことにすら実は反対をされまして、苦い経験をなめておる次第であります。今後の扱い方といたしましては、これらの経緯にも考えまして、これを慎重に検討してまいるつもりであります。  次に、米価食管制度についての御意見がございました。私の姿勢を御批判になることは、これは御自由でございますし、また、御意見もそれぞれ伺っておきます。私は、収穫期を控えた今日、米価はできるだけ早く決定すべきだ、かように考えておりますので、さらにただいまのような御意見も伺っておきます。しかし、私自身が法を無視する、かような乱暴なことをするつもりはありませんし、私は民主主義のもとにおける総理大臣として、皆さま方から選ばれたものであると、かように考えておりますので、法律を無視する、かようなことはいたさないつもりであります。  また、食管会計につきまして、これはすでにその根幹を維持しつつ、所要の改善方策を検討すべき時期に来たもの、かような所信表明をいたしました。いかなる改善をはかるかということにつきましては、まだ私きめておりません。もちろん、これは簡単に決定すべきものではありません。慎重に扱うべきものだと思います。各方面の意見を十分に聞きまして、そうして最終的な決定をいたしたい、かように考えております。  次に、安保条約についての再検討のお話がありました。平素から伺っておるような点を重ねてお話しになりましたけれども、私ども、すでに基本的な問題で安全保障条約体制、これを堅持する、かように私は、しばしば機会あるごとに申しております。その意味政府並びに自民党の主張は国民大多数の方がよく理解してくれておると、かように私は考えております。しかも、その点では大多数の支持を得ておる、かように私は考えておるのであります。所信表明でも申しましたように、アメリカ日本の国を防衛してくれる、日本政府は米国に対しまして基地及び施設を提供する、これが条約上の相互の権利義務でございます。したがいまして、これを十分に理解していただきたい。しかしながら、何でもこれは義務だからといって、基地周辺の地域住民に生活上の不安を与えるというようなことがあってはならない。危惧、そういうようなものをできるだけ解消すべきだ。これは当然政府の責務だ、かように私は思っております。しかし、国民の皆さん方も、安全を確保しておる現状から、基地あるいは施設の提供等につきまして、ある程度のごしんぼうを願うということにつきましても御理解いただいておる、かように私は思っております。したがいまして、今後とも安全保障条約そのものにつきましては、先ほど申すように、これを堅持する考え方でございます。  それにつきましていろいろ具体的に米国とさらに対話を重ねて、そうして所要の改正をしたらどうか、こういうような御注意であります。私も、それらの点がもし必要であれば、日米相互間の理解と信頼のもとにただいまのような対話を続けることが必要だと思いますけれども、ただいまのところ、私は、この現条約体制は現下の国際情勢のもとにおきまして国の安全を確保するゆえんだ、かように考えておりますので、これを再検討するような考えは持っておりません。これははっきり申し上げておきます。  次に、西春彦君の論文を引用されまして、そうしてソ連、チェコ等の紛争等をも、これは他山の石とすべきではないかというようなお話がございました。私は、西春彦君の論文は十分読んではおりません。しかし、ただいまのお話を通じてみまして、そうして安保条約のいわゆる極東条項、これを除いたらどうかという点にお触れになったのではないかと思っております。私が申し上げるまでもなく、わが国の周辺地域における平和と安全なくして、わが国の平和と安全はあり得ないということは自明の理であります。また、アジアの平和と繁栄は、そのままわが国の平和と繁栄につながるものであるということも、いまさら申し上げるまでもありません。したがいまして、ただいまのような、極東条項を削除すべし、かように主張される西君、これはどういう意味からさような主張をされるのか、私にも十分理解いたしかねます。ただいまこの極東条項を削除するという考えは、政府におきましては全く考えておりません。はっきり申し上げておきます。  次に、沖繩問題について。さすがに曽祢君は外交畑の出身でありますから、スナイダーの発言等につきましても事態をよく御認識いただいておる。スナイダー発言は別に問題にしないが、これで政府がどうも問題をすりかえているのじゃないのか、どうも総理自身の言い分は希望的観測が主になっていて、それがいかにも現実であるかのような主張をしておる、そこに間違いがあるということを御指摘であります。私は、しばしば申し上げましたように、ジョンソン大統領との間に忌憚のない意見の交換をいたしました。そうして沖繩返還されるというもとに継続的な協議をしよう、そうして結論を出そうということを、いまやっておるのであります。第一回の協議もすでに開かれたことは御承知のとおりであります。これらの事情を十分御理解いただくならば、曽祢君が外交畑の出身であるだけに、私が両三年内に返還めどをつけ得るという確信を得た、このことも御理解いただけるのではないか、かように私は思うのであります。  沖繩基地のあり方につきまして、いまから一定の結論を持って米国との協議に臨むということではなく、今後沖繩における基地の現状、極東情勢の推移、用事技術の進歩等、また世論の動向等を考慮して、慎重に検討していくとの私の考えは、すでにしばしば申し上げたとおりであります。これでその点もはっきりしたかと思います。民社党の御意見は、先ほど曽祢君から詳細にお話がございました。私も十分敬意を表してその点を伺ったのであります。問題は、やはり日米誤解のないようにするということが、最も大事なことだと思います。私は、相互信頼友好の間におきましてこの問題を解決したい、かように思っております。  次に、中国問題についてお答えをいたします。  これまでどおり、中華民国との間には正式の外交関係を持続し、中共との間には政経分離の原則にのっとり経済、文化の交流を促進していくということが、現下の国際情勢のもとでは最も現実的な政策であり、かつ、わが国の国益に合致するところである、かように考えております。  御提唱の方式は、何だか私自身は、伺っておりまして、一つ中国一つの台湾、ないしは二つの中国、かような点につながるものではないだろうか、さように聞き取ったのであります。これは、二つの中国論に対しましては、国府並びに中共、これが現在の立場を固執する限り、双方から強い反発を招くだけで、問題の実質的解決にはなり得ないものであります。私は、先ほども社会党の三宅君にお答えしたのでありますが、やはり、中国の問題は、中国のその内政に干渉しないというのがわれわれのたてまえではないか、かように思いますので、この説には賛成をいたしかねます。  また、吉田書簡についていろいろ御批判をいただきました。さすがに吉田先生の薫陶を受けられた曽祢君、さような意味におきまして、たいへん理解のあるお話のように思いますが、私が申し上げるまでもなく、政府がしばしば主張しておりますように、吉田書簡というものは、政府の取りきめあるいは政府約束、かようなものではございません。したがいまして、これを緩和するとかあるいは撤回するとか、そういうものでないことを御了承いただきたいと思います。また、吉田書簡の問題がありましても、現状におきましてさしたる支障はないように私は考えております。  次は、中国の代表権問題につきましても、先ほど申し上げますように、基本的に二つの中国論は私ども賛成できない、かように思っておりますので、この点では遺憾ながら賛成ができません。そうして、重要問題指定方式、これは特にお尋ねがございませんでしたが、私は、現状におきましては対中国政策、これを変更したり、これに加えたりするような何ものもないという、そのことをはっきり申し上げておきます。  また、中国問題を審議するための委員会、これは積極的にはお尋ねはなかったと思います。中国問題が大事でありますだけに、いろいろの国でいろいろな議論をいたしております。かつてカナダの提唱によりましてこの審議をするための特別委員会を設置されたことがありますが、結論を得ることができないで、そのまま解消したような経過もあります。また、わが国も、この中国代表権問題について、解決ができるならばひとつ十分検討したいという新しい試みを支持するにやぶさかではございません。また、かような意味でイタリア案に賛成をいたしたのでございますけれども、この案も、二年も続いていろいろ審議されましたけれども、賛成者がきわめて少数、支持国がきわめて少数であった、かように考えておりまして、結局否決された。その問題がいかにむずかしいかということが、これらの例でもわかるかと思います。  次に、西村委員長の提案の点でございますが、私は、外交問題におきまして、たとえば中国国連代表権問題などで超党派に意見の一致が得られるなら、これにこしたことはないと思います。外国にはそういう国がしばしばあります。いろいろ内政上の問題ではお互いに与野党しのぎを削るけれども、外政の問題については各党が超党派的に話を進める、たいへんけっこうなことだと思います。しかしながら、国の安全を確保するという基本的な問題につきまして全く意見が異なっておる、そういうような政党同士がお互いに話し合いができるだろうか。現状におきましては、私はまことに残念に思うのであります。少なくとも国民的な合意が得られるように、この上とも各政党とも努力すべきではないだろうか、かように思います。ただいま直ちにとは申しませんが、少なくとも各党が、こういう基本的な問題については、党利党略にこだわることなく、国民のために、また国のために、お互いに胸襟を開いて話し合う、そういうことが望ましいように思います。  お答えいたします。(拍手)   〔国務大臣三木武夫君登壇〕
  24. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 曽祢君の御質問にお答えをいたします。  日華平和条約、その効力の及ぶ範囲が施政権の及ぶ範囲であるということは、曽祢君の御指摘のとおりでございます。しかしながら、世界の大問題である中国問題の解決にあたって、台湾の政権と中国大陸の政権、二つの政権というものを認めて中国問題を解決しようという考え方は、国民政府も、あるいは大陸の中共政府も強くこの考え方には反発をいたしておる現状において、その御提案は現実的な解決策にはならない、政府もまたその考え方を採用する考えはないのでございます。(拍手)     —————————————
  25. 小平久雄

    ○副議長(小平久雄君) 正木良明君。   〔正木良明君登壇〕
  26. 正木良明

    ○正木良明君 私は、公明党を代表して、国民の最も関心の深い問題を取り上げ、佐藤総理の明確な考えをお聞きしたいのであります。  私は、まず、きわめて残念なことを指摘せねばなりません。それは、総理の所信表明演説が全くおざなりであって、流動する世界情勢に対処する外交方針の明示もなく、国民が最も強い関心を示している物価問題についても、何らの具体策も示していないのであります。これは全く国民の期待を裏切るものであると言うよりほかありません。これに対し、総理は、すべては本年初頭の施政演説に述べたとおりだと言われるのでありましょうが、参議院選挙後初の国会において、政府考えを明確に発表することは、国民に対する当然の義務といわねばなりません。(拍手)いわんや、総理も指摘するように、このたびの参議院選における高い投票率が示す国民政治的関心の深さを思うとき、なおさらそれが必要であることを確信するのであります。いかに複雑な自民党内部の党内党事情があったとしても、それは明らかに責任回避であり、そこに佐藤内閣の反国民性を見るものであります。それとも四〇%台の支持率をもって、国民の大多数の支持と理解を得たと揚言するに至っては、思い上がりがきわまったというべきでありましょう。私は国民の一人として総理に申し上げたい。総理明治百年の先人の努力を口にするたびに、国民の多くは、明治百年の最後を飾る総理大臣が後世に誇り得るものでないことを最も悲しく思うでありましょう。  さて、ベトナム和平会談が開始された現在において、日中関係の新しい展開がわが国にとって最も必要な外交課題であります。アジアに占める中国の地位を考えるとき、中国の参加しないアジア問題の解決はあり得ないというのは否定できない事実であります。世界の趨勢も対中国政策の改善の方向に急速に進んでいると見るべきであります。カナダは北京政府承認に踏み切ろうとしており、アメリカの指導層にもこの論議はきわめて活発であり、また前向きであります。したがって、いまこそわが国の確固たる前向きの対中国方針が樹立されねばならないのにもかかわらず、今回の所信表明演説においても、一言も言及されなかったのであります。政府の対中国方針が十七年前のダレスあて吉田書簡に縛られ、アメリカの極東政策に追随して、何の具体的目標もなしに、政経分離論でとうかいしているのは許されることではありません。佐藤総理は、昭和三十九年十一月二十一日、本院における初の所信表明演説において、「中国問題の持つ重要性がますます強まっている、今後真剣にこの問題に対処する」と言われたではありませんか。総理は、現在なお中国問題をこのままにしておいてよいと思っているのでありましょうか、見解を承りたいのであります。  わが国の今後のアジアにおける役割りは、あくまでもアジア緊張緩和をはかるために、あらゆる平和的努力を重ねていくことであります。この中心課題は、何といっても日中関係の改善でなければならないのであります。これまで、アメリカは、中国敵視政策を中心として、極東に軍事政策を推し進めてまいりました。わが国が依然としてこのアメリカの軍事政策に盲目的に追随する限り、日本の経済的自立はあり得ず、日本国民はおそるべき核戦争の危険を避け得ないのみならず、このようにしてつくり上げられている極東の緊張の継続の結果、沖繩同胞百万の悲願である祖国復帰も実現困難となるのではありますまいか。政府は、わが国に仮想敵国はないということを常に口にしながら、事実上、中国を敵国とする立場に立っているのであります。中国を孤立化させるために、一九五一年二月、アメリカの圧力によって行なわれた国連総会中国侵略者決議に対し、日本は毎年その確認のたびに共同提案国となって、積極的な中国敵視姿勢を続けております。さらに、その決議を根拠とする国連軍の地位協定には中国を敵国としての規定をしている。かつまた、、中国代表権問題を重要事項指定方式とする決議の共同提案国として敵視政策を推進して、いたずらにアジアの緊張激化を増大しているのであります。わが党は、本年秋に予定せられる国連総会において、少なくとも、わが国は、中国敵視決議の再確認及び中国代表権に関して、重要事項指定決議の共同提案国となるべきではないことを主張するものでありますが、政府は、なお、日本代表をして、従来どおりの頑迷にして危険な態度をとり続けるつもりかどうか伺いたいのであります。  沖繩返還について、総理は、昨年秋の日米首脳会談以来、「両三年内に返還めどをつけることで合意ができている」と、しばしば強調し、あたかもアメリカとの約束であるかのごとき印象を国民に与えてきたのであります。しかし、先日スナイダー米国務省日本部長は、米議会下院歳出小委員会において、「沖繩返還については何の約束もしていない、大統領は、沖繩の地位について、日米共同で検討を続けることを約束しただけだ」と証言したのであります。これまでも、わが党は、再三にわたり、政府の両三年のめどという甘い期待の見解と、アメリカ態度との間に、明らかな解釈の食い違いがあることを指摘してまいりましたが、総理は、いかにも意味ありげに、三年以内にめど、さらにその後、あまり遠くない期限内に返還が実現するのだということを強調してまいりました。総理の発言は、いまや、アメリカ自身によって、全く否定されてしまったのであります。このような事態になると、総理はあわてて、沖繩返還の日米の考え方は、共同声明以上でも以下でもないということに逃避してしまったのであります。しからば、沖繩返還の希望は何か、それはアメリカ側の関知しない総理の確信だけということになるのであります。いままで自分の確信だけで、国民に甘い期待を与えていたとするならば、あまりにも不誠意きわまる態度であり、国民を欺き、国民を愚弄したものであると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  しからば、官房長官談話にあるように、「沖繩返還の具体的な約束共同声明にはないが、日米両国政府の最高レベルの合意である」とあえて強弁するならば、ジョンソン大統領の引退が明らかとなった現在、だれにも知らされていない了解事項がどのようにしてあとの政府に継承される確信があるのか。もし何らかの合意が存在するというならば、その内容をこの場において国民の前に示していただきたいのであります。(拍手)外交上の秘密という口実で回避することは許されないのであります。  次に、沖繩施政権返還交渉の最大の問題である米軍基地の取り扱いについてであります。  総理は、本問題に対して、かつては白紙論を再三繰り返しておきながら、去る七月五日、参院選遊説の際、千葉市において、「本土並みでは話が進まない」と述べ、沖繩早期返還を望むのであるならば、本土並みでは困難であると発言しております。総理は、核つきでなければ早期返還は無理であると考えているのかどうか。真意を伺いたいのであります。総理のこのたびの所信表明で言われた早期返還とはどういうものであるかを明らかにされたい。核基地の承認、軍事行動の自由ということを意味するのかどうか、伺っておきたいのであります。政府は、具体的にどのような形式で沖繩早期返還を実現しようとするのか。その青写真をすみやかに明示し、国民の支持を背景として、アメリカとの交渉をすべき時期ではないかと考えるのでありますが、この点について総理の見解を承りたいのであります。  政府は、まず第一に沖繩復帰のビジョンを明確に示さねばならないにもかかわらず、ここ一両年、佐藤内閣は、下田発言等に見られるように、核基地の承認を示唆するような世論操作をはかってまいりました。私は、総理に対し、この根本的外交姿勢の反省を強く求めるとともに、わが国政府が、沖繩返還を目ざし、アメリカ沖繩政策をリードしていくべきであることを主張するものであります。  沖繩における最近の世論調査は、沖繩の米軍基地が平和と安全を守るためのものではなく、緊張を激化させる、きわめて危険なものであるとの結論を出しているのであります。これは、戦争の惨禍をみずからのはだで体験している沖繩同胞の心からの叫びなのであり、佐藤首相には不信を抱きつつも、対米折衝の最大の窓口としてあなたにたよらざるを得ない沖繩同胞の心情を総理は深く銘記されたいのであります。(拍手)これは、わが党が沖繩百万の県民にかわって強く総理に訴えるものであります。  次に、沖繩住民の国政参加について伺いたい。沖繩住民の国政参加については、さきに、表決権のない代表の参加という西ベルリン方式、すなわちオブザーバー方式が論議されておりましたが、最近の佐藤総理考え方は、それさえ不可能であるというきわめてうしろ向き、いな、アメリカ向きの姿勢であると断ぜざるを得ません。日本政府沖繩事務所長ですら、「沖繩住民の国政参加を純然たる国内法の問題として処理することが可能である」と発表いたしております。「日米関係友好信頼」とは、日本アメリカ政府に対する盲従を意味するものではありますまい。総理は、日本首相として、沖繩住民の強い希望をかなえるために最大の努力を尽くすべきであろうと思うのでありますが、御所信のほどを承りたいのであります。(拍手)  政府は、日米安保条約による米軍に対する百四十数カ所に及ぶ基地提供は日本の義務であるとして、国民に多大の犠牲をしいてまいりました。総理はこれを所信表明演説にも強調したのであります。この米軍基地は、現実には日本の防衛のためというよりは、むしろアメリカの極東戦略の重要な軍事拠点として米軍の利用に供されているというのが実体というべきであります。アメリカ日本防衛義務と引きかえに、極東条項に基づく米軍の無限定な行動権をまるのみにした現行条約の構造は、わが国にとってあまりにも高価な代償であるといわねばなりません。しかも日常の基地公害はもとより、その危険はすべて国民が背負っているのであります。最近のベトナム戦争あるいはプエブロ捕獲事件以来の朝鮮半島の緊張によって、国民は実感としてその危険を意識しているのであります。さらに、安保条約第三条の防衛力増強義務は二兆三千四百億円という膨大な三次防予算となってあらわれており、その結果、日米安保体制のもとにおける権利と義務のバランスは、日本が重大な危険と膨大な軍費を負担するという意味において、わが国にとってはるかにマイナス面が強くなっていることはおおいがたい事実であります。総理はこれらの点をどう評価しているのか、承りたいのであります。  総理は、日米安保条約の長期堅持をしばしば主張してきております。日米友好関係は無条件に軍事的な運命共同体であってよいものではありません。わが国が欲せざる戦争に巻き込まれる可能性を持った危険な日米安保は、決して国民の求めるものではないのであります。この際、一九七〇年の日米安保再検討期に対し、総理はどういう態度で臨むのか、明確に承りたいのであります。  また、在日米軍基地の弊害は、かつての砂川基地反対闘争、水戸射爆場移転問題から、最近の佐世保港放射能汚染事件、王子野戦病院の開設、さらには九州大学ジェット機墜落事件など、枚挙にいとまがないのであります。また、上瀬谷基地付近の住民は、米軍の電波障害緩衝地帯設置に伴い、さまざまな規制把受け、普通の家庭生活すら営むことができなくなっているのであります。あまつさえ、米軍はこの電波障害緩衝地帯を全国十三カ所にわたって設置することを要求してきていると聞くのでありますが、これに対する政府態度を明らかにせられたいのであります。  元来、政府基地対策は自主性のないことにおいて貧困の一語に尽き、国民の犠牲に対しほおかむりを続けてまいりました。最近の佐藤内閣の態度は、国民の利益の確保よりもアメリカの利益の代弁者的傾向を強めていることにわれわれはきわめて危険なものを感ずるのであります。総理は、「基地周辺の住民に生活上の不安や危惧を与える」ことを認めながら、単に「最善の努力を尽くす」と言うのみで、何ら誠意ある具体策を示していないのであります。地位協定においては、合衆国軍隊が使用する施設、区域は、必要でなくなったときはいつでも日本国に返還しなければならないと規定しております。また、米国側は返還を目的として絶えず検討するとも規定しております。現在百四十数カ所の米軍基地についてわがほうが徹底的な総点検を実施し、返還要求を強力に行なわない限り、この協定の規定は実行されないでありましょう。この規定を実効あらしめるため、政府の具体策を明示されたいのであります。(拍手)この際、国民生活を守るため、わが党の主張する米軍基地の総点検を行ない、善処すべきであることを総理に提案するものでありますが、その考えがあるかどうかを承りたいのであります。(拍手)  次に、核拡散防止条約の調印についてであります。核兵器の全面撤廃を主張するわが党は、もとより、この核の拡散防止という趣旨には異論を唱えるものではありません。しかし、この条約に存在する不平等は、非核保有国であるわが国にとってきわめて重大であることは、いまさら申すまでもありません。本条約は、本年秋ごろには調印の予定ともいわれておりますが、政府の本条約に対する基本的理念を明らかにされたいのであります。  また、修正されたとはいえ非核保有国の安全保障の問題、平和利用の不平等性、査察の不平等、長過ぎる条約期限、核保有国の事実上の拒否権、核軍縮の不徹底など、多くの疑義が残されております。また、それらがわが国にとって重大な不利益を招来するものではないかということも、なお十分に解明されたとは申されないのであります。また、フランス、中国の不参加によって条約の効果は大幅に後退することは明らかでありますが、これらの重要問題に対し、どう対処しようとするのか、具体的な御説明を伺いたいのであります。(拍手)  特に核保有国の核軍縮を義務づけ履行させることが本条約上きわめて重要でありますが、この要求をなお政府は続けるのかどうかを聞きたいのであります。また、そのために、わが国の核兵器との絶縁を世界に向かって証明されねばなりません。したがって、非核三原則の決議をみずから行ない、また核兵器不使用宣言を、核保有国に行なわせることが必要であると思うが、総理の見解を承りたいのであります。  佐藤内閣は、将来核兵器の持ち込みを許そうとする下心があるために、積極的に行動しないのではないかとの疑いは、決してわれわれだけではないことを銘記されたいのであります。また、わが党は、核大国の核独占と支配体制を恒久化するおそれのある核防条約の締結については、慎重な検討を要するものであることを指摘せざるを得ません。総理の明確な答弁を求める次第であります。  次に、人事院勧告が近く提出されることが明らかになりましたが、政府はこれまで財政上の理由をたてに完全実施を一度も行なっておりません。まして、今年度のごとく、予算編成時に総合予算主義をたてまえとして五百億円程度を予備費に計上し、補正予算を組まないという政府態度は、当初から人事院勧告にあらかじめワクをはめ、その自主的勧告を無視するものであり、公務員は政府に対し不信の念を抱かざるを得ないと思うのであります。総理は常に勧告を尊重する、誠意をもって実施するというような抽象的な発言をしておりますが、この際具体的な方策を明確にお示し願いたい。  次に、米価問題について佐藤総理にお伺いいたします。  米価の算定方式と値上げ幅をめぐって、政府自民党が激しく対立し、ついに米価の決定は、農民の期待を裏切って臨時国会後に持ち越されるという事態に立ち至った原因は、佐藤内閣に農業基本政策がなかった証拠であると同時に、佐藤総理のリーダーシップの欠除であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)去る七月三十日に政府自民党との折衝で、おそ出し奨励金六十億円と総合農政推進費百二十億円を出して、実質生産者米価六%の引き上げについて決定をいたしたようでありますが、これ以上の引き上げを考えておられるのか、あるいは妥当と考えておられるのか。この点につきましては、総理、農林、大蔵、経企庁長官の各大臣に所信のほどを明らかにしていただきたいのであります。(拍手)さらに、生産者米価におそ出し奨励金や総合農政推進費のような政治加算金についての見解を承りたいのであります。  政府は財政硬直化打開と食管赤字解消を理由に、総合予算主義に基づく米価のスライド制を強調しておりますが、生産者米価の値上げ分だけ消費者米価に上積みをする、いわゆるこのスライド制は、消費者の家計を安定せしむるという食管法第四条二項の精神に反するものであります。このようなスライド制の実施は、食管制度の二重価格制度のたてまえを根底から破壊するものであるといわざるを得ません。政府は今日まで三年連続して消費者米価を上げてまいりましたが、また今回値上げが行なわれるとするならば、諸物価の便乗値上げを誘発し、低所得者層の家計に与える影響ははかり知れないものがあります。政府は、この際、国民生活の安定という立場に立って、消費者米価の値上げを取りやめ、逆ざや分は補正予算を組むべきではないかと思うのでありますが、総理の御所見を承りたいのであります。  次に、食管制度についてであります。今日食管法国民経済に寄与している意義はまことに重要であります。この法律が制定されて以来二十年の歩みを振り返るとき、この制度が米作農民の米作安定と所得水準の向上をはかり、また一方においては、消費者生活を守るために果たしてきた役割りは大いなるものがありました。今日においても、生産者消費者立場における価格の安定と国民食糧自給が絶対に必要であります。公明党は、現在の食管制度堅持を強く主張してまいりました。最近に至って政府は、食管制度は改善すべき時期に来たと主張いたしておりますが、総理は、現在の食管制度に対し、具体的方策を国民の前に明らかにしていただきたいのであります。(拍手)同時に、米価審議会に、生産者代表並びに消費者代表を加え、それぞれの声を直接米価決定に反映させる構成に改組する意思はないか伺いたいのであります。  五月以来、国際収支は大幅の黒字を続け、外貨基準高は二十一億ドルに迫っている現状から、政府、日銀は、公定歩合一厘引き下げを含む引き締め緩和政策を具体的に検討していると伝えられております。昨年九月の金融引き締め以来、特に引き締め政策の中小企業に及ぼす影響は、過酷な窓口規制、選別融資となってあらわれ、倒産は異常な増大を続けてきたのであります。これに対して政府は、政策の影響よりもむしろ、人手不足、経営失敗による原因をあげて、企業の責任に印象づけ、中小企業の合理化には何ら手厚い施策を講じてこなかったのであります。特に申し上げたいことは、引き締め政策により苦境に置かれている中小企業に対する窓口規制及び選別融資を大幅に緩和し、公定歩合を引き下げ、低生産性部門の設備合理化推進を意図的に含めた緩和政策を早急に実施すべきであると思いますが、その実施時期を含めて、総理はどのように考えておられるか、お答え願いたい。また、金融引き締め緩和についてタイミングを失することのないよう強調したと聞く宮澤経企庁長官の答弁もあわせて求めるものであります。  最後に、日通事件に関し、政治献金を受けた政界関係者四十数人は、ついに法の追及を受けることなく、その氏名さえ発表されず幕を閉じたことに、国民は大きな疑惑政治不信を残しております。明らかに不正の金と見られるものが政界に流れていながら、それを現行の刑法並びに政治資金規正法で罰することのできない不合理に、国民は強い憤りを感じております。(拍手)せめてそれならば、日通から政治献金を受けた者の氏名を発表すべきであります。私は、総理に対し、国民の名においてこれを要求するものであります。(拍手)  いま国民政治不信を除く最良の方途は、国民信頼にこたえられる議員のモラルを正すことにかかっていると私は思います。したがって、国民は、政治資金規正法の改正強化もできない政府自民党が、みずからえりを正す清潔な政治家とは認めがたいという見方をしていることを知るべきであります。従来とってきた政府自民党政治資金規正法改正に対する不逞な考え方を捨てて、政治献金は個人に限る規制をすべきであり、少なくとも選挙制度審議会の答申を率直に実行する改正をすべきであると思いますが、総理責任ある答弁を求めるものであります。(拍手)  以上をもって、私の代表質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
  27. 佐藤榮作

    ○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 正木君にお答えいたします。  まず最初、中国問題。中共が排他的な対外姿勢を改め、現実的、平和的な道をとるに至ることが、アジアに真の安定と平和をもたらすために不可欠の条件であることは、申すまでもありません。政府といたしましては、従来より、政経分離の原則にのっとり、忍耐強く、中共がアジアの近隣諸国に対し友好善隣の政策をとるに至るよう、待望している次第であります。しかしながら、現在、中共内部における情勢や、中国をめぐる国際情勢に根本的な変化があったとは認められません。したがって、これまでどおり、政経分離の政策を維持することが、最も現実的であり、かつ、わが国の国益にも合致するものと、かように確信しております。この私の意見は、先ほど社会党民主社会党の方にもお答えしたとおりであります。  中国代表権問題につきましては、基本的に従来のわが国の立場を変える必要があるとは考えておりません。この点は、はっきり申し上げておきます。  吉田書簡の取り扱いにつきましても、先ほどお答えいたしましたので、これは省略さしていただきます。  ただいま正木君から、中国の敵視政策をやめろと、かように言われましたが、私は、いまだかって中国の敵視政策をとったことはございません。その程度に私を理解しておられること、まことに残念であります。(拍手)はっきり申し上げます。  沖繩返還アジア緊張緩和についてお答えいたします。  沖繩返還問題を日米関係友好信頼の基礎に立って一日もすみやかに実現するという決意は、私がしばしば申し上げたとおりであります。アジアの安定は、それ自体、わが国の平和と繁栄につながる重要な問題であります。私は、中国をめぐる諸情勢が一日も早く安定し、また、ベトナムにおける公正にして永続的な平和が一日も早く到来することを心から念願し、そのため、できる限りの努力を続ける考えでございます。  私とジョンソン米大統領との会談は、日米共同声明に盛られたとおりであります。いわゆるスナイダー日本部長の議会における証言につきましては、先ほど三宅君からもお尋ねがありましたが、その一部が報道されて、誤解を招いた面もあるようでございますが、その後ラスク長官の発言——これは記者会見でございますが——でも明らかなように、両三年内に返還の時期についてめどをつけるという私の確信は……(「私のだ」と呼ぶ者あり)私の確信はゆらいではいません。日米会談については、共同声明以外の秘密合意は何らありません。おそらく諸君も、沖繩自身が早期に祖国復帰すること、これを心から願っておられると思います。私も同様でございますから、その線に沿って御協力を願いたいと思います。  次に、国政参加の問題についてお答えいたします。沖繩住民の国政参加につきましては、本土との一体化の推進という観点から、沖繩住民の要望にこたえて何らかの方法でその国政参加を実現するよう努力しております。去る七月一日の第十四回日米協議委員会において、米国政府に対し、この問題についての好意的な配慮を要望したところであります。今後ともこの問題については鋭意努力してまいる所存であります。  基地公害の問題についてお答えいたします。  所得表明演説で特に国民各位の御理解を求めたように、米国は安保条約によってわが国を防衛する責務を負っており、わが国はこれに対して基地及び施設を提供する義務を持っているのであります。わが国に駐留する米軍及びその使用する基地、施設は、日本の安全に直接寄与し、また、極東の安全と平和に重要な役割りを果たしております。この点は、国民各位の十分な御理解を得ているところでありますが、政府は、日本の安全を確保するという見地から、今後とも日米安保体制の堅持について国民各位の御理解を得るよう努力してまいります。しかしながら、米軍基地が大都市周辺に多くあるため、とかく基地周辺住民に生活上の不安や危惧を与えていることを考え政府としては、その不安や危惧を取り除くよう最善の努力を払ってまいります。  米軍基地は、国際情勢の推移、科学技術の進歩等を反映し、数においては当初の約二十分の一、面積においては約六分の一に縮小されておりますが、今後ともさらに整理縮小する方向で、近く日米両国政府の話し合いを開始することになっております。私は、絶えず総理といたしましてこの点を事務当局にも指示しております。  ただ、ここで特に御理解を得たいと思いますのは、この基地問題は、日米安保体制を基本的に否定しようとするいわゆる安保反対運動と、安保体制は是認するけれども基地周辺住民の生活上の不安をなくしてほしいという国民の率直な声とが、ともすれば混同されている面がありますが、国民各位は特にこの点を十分見きわめていただきたいと思います。(拍手)  次に、電波障害の緩衝地帯の問題についてお尋ねがありました。全国十三カ所にのぼる緩衝地帯の設置は、施設周辺に与える影響も大きいので、米軍要求の必要性につきまして十分調査し、一方、周辺の開発計画と地元の利害関係をも勘案の上、本問題の解決をはかりたいと考えております。それにつきましても、私は日本総理でございますから、誤解のないように、アメリカの利益、それのみを追求するとか、かような表現は、ひとつ取り消していただきたい。(拍手)  次に、七〇年問題の具体策につきまして、政府といたしましては、現下の国際情勢にかんがみ、一九七〇年以降においても安保体制を堅持する方針でありますが、いかなる形でこれを堅持するかは、世論の動向を十分見きわめた上できめたいと考えております。  核拡防の問題であります。わが国は核戦争脅威をなくするため、この条約の精神には一貫して賛成してきております。しかしながら、この条約はわが国の将来の国益に影響する重要な問題を含んでおりますので、国民各位にもさらに御理解を得て、最終的態度を決定したいと考えております。  核兵器に対する考え方は、先ほどもお答えしたのでありますから、省略さしていただきます。  人事院の勧告につきまして、これも先ほどもお答えしたのでありますが、人事院の勧告を受ければ、政府はこれを尊重し、この実施につきまして最善の努力をする、このことをはっきり申し上げておきます。  次に、食管会計の問題についてお話しいたします。この米価の決定は、ただいままだ決定いたしておりませんが、できるだけ早くこれを決定するつもりでございます。また、申し上げるまでもなく、この食管会計の問題につきまして、改正について考慮する時期に来たとかように申しましたが、具体的な方向はまだきめておりません。もちろん、この問題はまことに重大な問題であり、国民経済生活に及ぼす影響も大きいのでありますから、政府は慎重にこの問題と取り組むと同時に、各方面の意見を十分伺いまして、しかる後に断を下すべき問題だと思います。この方針、姿勢を申し上げておきます。  消費者米価につきましては、物価への配慮から、従来ともこれを抑制ぎみに運用してきたところであり、今後も物価対策の観点から、種々意見のあるところであることは十分承知しておりますが、生産者米価消費者米価の関連を正常化することが、食管制度の円滑な運用上ぜひとも必要であること、総合予算主義のたてまえを堅持すること等の見地から、生産者米価の引き上げに関連して、消費者家計の許容し得る限度において消費者米価の引き上げを行なうことはやむを得ないものとかように考えております。  金融引き締め緩和の具体的方針につきまして、最近の国際収支は著しい改善を示しましたが、これは昨年後半より回復に転じた世界景気、特に米国経済の急上昇等、輸出環境の好転に負うところが大きいと考えられ、また、国内経済面におきましても、最近の生産、投資、消費等にはなお相当底がたいものがあります。したがいまして、引き締め緩和を検討するにあたりましては、これらの点の先行きにつきなお慎重な配慮が必要と考えられ、いましばらく情勢の推移を見守るべきとかように考えます。  なお、この問題につきまして、金利等が問題になりますが、公定歩合、これは日銀総裁の判断にまかせてありますから、いま私がここでお答えするというのはひとつ省略させていただきます。  最後に、政治資金の規正について御意見を述べられました。私は、政界の浄化、これは国民のひとしく心から念願しておることだと思います。したがいまして、所信表明におきましても、わずかな時間ではありましたが、特にこの点にも触れたつもりであります。私は、この政界の浄化のためには一歩でも、少しでも前進する、そういう態度でお互いが努力したいものだと思います。いたずらに、それぞれの立場におきまして、そうして高度の政治資金規正の問題を取り上げましても、実際にはなかなか実現はしにくいのではないかと思います。私は、一歩でも前進して、この解決への努力をする、かような方向でぜひともありたいと思います。しかし、前国会における苦い審議の経験にもかんがみまして、私は、今後ともこの問題には真剣に善処していくつもりでございます。  以上、お答えいたします。(拍手)   〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
  28. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 米価生産費が十分に補償されるようにきめられなければならぬと思いますが、同時に増産の奨励となる、奨励を目途とした、意図した従来の計算方式の中に、最近の急激な需給事情の変化というものも反映されるようにすべきであるという審議会の意見もまた妥当であると私は考えます。したがいまして、それらの点を、答申の意見を十分に勘案し、他面、与党の意見も十分にお聞きいたしまして、政府としましては、適切妥当な米価というものを早急にきめたいと考えております。(拍手)   〔国務大臣西村直己君登壇〕
  29. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) ただいま大蔵大臣から答弁あって尽きておりますが、生産者米価の上げ幅等についての御質問でございます。生産者米価につきましては、過日、米価審議会の答申は受けました。その後、政府と与党の間におきまして慎重に意見を調整しておる段階でございまして、私といたしましては、食管法の適正な運用に基づきまして、すみやかに決定する考えでございます。ただいま、上げ幅等については申し上げる段階ではございません。(拍手)   〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
  30. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 昨年九月に国際収支の均衡を目標にして引き締めに入ったわけでございますが、国際収支は、目途としたところの均衡をすでに回復したということを私は申したわけであります。しかし、先ほど総理の御答弁にもありましたように、国内の設備投資その他いろいろなことがございますので、最終的な判断は金融当局にまかせるのがよろしいのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。  米価につきましては、先ほどまで答弁のございましたとおりでございます。(拍手
  31. 小平久雄

    ○副議長(小平久雄君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  32. 小平久雄

    ○副議長(小平久雄君) 本日は、これにて散会いたします。    午後四時十七分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 赤間 文三君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 園田  直君         農 林 大 臣 西村 直己君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 中曽根康弘君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 小川 平二君         建 設 大 臣 保利  茂君         自 治 大 臣 赤澤 正道君         国 務 大 臣 木村 武雄君         国 務 大 臣 木村 俊夫君         国 務 大 臣 田中 龍夫君         国 務 大 臣 鍋島 直紹君         国 務 大 臣 増田甲子七君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君      ————◇—————