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1968-10-14 第59回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年十月十四日(月曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大竹 太郎君 理事 田中伊三次君    理事 高橋 英吉君 理事 中垣 國男君    理事 濱野 清吾君 理事 猪俣 浩三君    理事 神近 市子君       鍛冶 良作君    岡田 春夫君       河野  密君    佐藤觀次郎君       中谷 鉄也君    柳田 秀一君       岡沢 完治君    山田 太郎君       松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 赤間 文三君  委員外出席者         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         法務大臣官房長 辻 辰三郎君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省人権擁護         局長      上田 明信君         法務省入国管理         局長      中川  進君         公安調査庁長官 吉橋 敏雄君         外務大臣官房領         事移住部長   山下 重明君         外務省条約局条         約課長     中島敏次郎君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         最高裁判所事務         総局刑事局長  佐藤 千速君         専  門  員 福山 忠義君     ───────────── 八月十日  委員田中昭二辞任につき、その補欠として山  田太郎君が議長指名委員に選任された。 九月十七日  委員山田太郎辞任につき、その補欠として大  橋敏雄君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員大橋敏雄辞任につき、その補欠として山  田太郎君が議長指名委員に選任された。 同月十九日  委員堂森芳夫辞任につき、その補欠として渡  辺芳男君が議長指名委員に選任された。 同日  委員渡辺芳男辞任につき、その補欠として堂  森芳夫君が議長指名委員に選任された。 同月二十一日  委員松本善明辞任につき、その補欠として林  百郎君が議長指名委員に選任された。 十月九日  委員林百郎君辞任につき、その補欠として松本  善明君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員佐々木更三君、堂森芳夫君、成田知巳君及  び西村榮一辞任につき、その補欠として佐藤  觀次郎君、柳田秀一君、中谷鉄也君及び岡沢完  治君が議長指名委員に選任された。 同日  委員佐藤觀次郎君、中谷鉄也君、柳田秀一君及  び岡沢完治辞任につき、その補欠として佐々  木更三君、成田知巳君、堂森芳夫君及び西村榮  一君が議長指名委員に選任された。     ───────────── 八月十日  一、死刑の確定判決を受けた者に対する再審の   臨時特例に関する法律案神近市子君外七名   提出、第五十八回国会衆法第三号)  二、刑事補償法等の一部を改正する法律案(横   山利秋君外七名提出、第五十八回国会衆法第   三一号)  三、裁判所司法行政に関する件  四、法務行政及び検察行政に関する件  五、国内治安及び人権擁護に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政に関する件  法務行政に関する件  検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ────◇─────
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件、検察行政に関する件、人権擁護に関する件、及び裁判所司法行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大竹太郎君。
  3. 大竹太郎

    大竹委員 司法権が外部のいかなる力にもゆがめられることなく、厳正に中立な立場で行使されることが、国家存立の基礎である法秩序の維持のため第一の条件であることは申し上げるまでもないところだと思います。近代国家がとっている三権分立制度もまた、この配慮に基づくものであります。三権分立制度における司法権すなわち裁判権検察権を包含していないことはもちろんでありますが、裁判権発動の前提をなす検察権厳正中立性は、これなくして裁判権厳正中立性を期待することは不可能であります。私が本日質問をいたします日通事件捜査のまっ最中において、検察官としての最高指揮者の地位にある検事総長並びに事件の渦中にある当時自民党池田衆議院議員自民党福田幹事長の三者が料亭において会談したという事実は、少なくとも世人をして検察中立性を疑わしむるに十分な事実であると考えるわけでございます。以下、本件について率直に疑問の点を質問いたしますので、大臣以下当局におかれましても率直に御答弁をくださいまして、世間が誤解している点があればこれを解明していただきたいのでありますし、また、検事総長において不都合の点がありといたしますならば、この責任を追及していただくことはもちろんでありますし、監督者としての大臣において監督に遺憾の点があるということになれば、みずからその責任を明らかにしていただきたいと思うのでございます。  それでは質問に入りますが、まずこの事件の全貌についてお確かめをいたしておきたいと思います。日にちは四月十九日の夜、場所は新橋の料亭花蝶会談した人は、先ほども触れましたように、井本検事総長、当時自民党に属した池田衆議院議員、並びに衆議院議員でもある自民党福田幹事長、この三者が集まり食事をともにした、この事実は間違いございませんか。
  4. 赤間文三

    赤間国務大臣 その事実は間違いありません。
  5. 大竹太郎

    大竹委員 次にお尋ねを申し上げたいことは、まず、この会合趣旨、目的について御説明をいただきたいと思います。
  6. 赤間文三

    赤間国務大臣 この会合趣旨についての御質問でございまするが、井本総長は昨年の十一月の二日に検事総長に新任をせられたのでございます。同月中旬ごろ池田氏から就任祝いに招かれたことがあるので、その返礼として井本総長が招いたものであります。福田氏は井本総長学校時代以来の友人である関係から、池田氏の意向もあり、同様井本総長招待したものと聞き及んでおる次第でございます。
  7. 大竹太郎

    大竹委員 私はこの事件については、当時の新聞または週刊誌等による知識しか持ち合わせておらないのでありますが、この十一月の総長就任祝いにおいては、池田氏のほか数人の人が同席をして総長就任のお祝いをした、こういうことになっておりますが、そのとおりでありますか。
  8. 赤間文三

    赤間国務大臣 井本総長は、昨年の十一月中旬ごろ料亭花蝶池田氏から就任祝いを受けた由でございます。井本池田両氏共通知人が二、三名同席したように聞き及んでおります。
  9. 大竹太郎

    大竹委員 この数人の同席した人については、井本検事総長その他の方々が、名前を聞かれてもどうも言えないというようなことを週間誌その他で言っておられるのでありますが、その名前をお聞かせいただけないでしょうか。
  10. 赤間文三

    赤間国務大臣 同席者の氏名についての御質問でありまするが、私はこの会合は公の会合とは考えておりません。全く私的な会合であると承知いたしておりまするので、名前を明らかにすることは差し控えたい、かようにお答えする次第でございます。
  11. 大竹太郎

    大竹委員 それでは、名前はわかっておるけれども、この席では言うべきじゃないと思うから言わないでおきたい、こういう趣旨に解してよろしゅうございますか。
  12. 赤間文三

    赤間国務大臣 ただいま言いましたように、公の会合でありますればこれはもう問題ありませんが、全くの私の会合でございまするので、そういうところに出た人の名前を申し上げることを差し控えたい、こういうふうな意味でございます。その点御了承願いたいと思います。
  13. 大竹太郎

    大竹委員 これも確かめておきたいのでありますが、いまほどの御答弁によりますと、この十一月の会合には福田幹事長は出ていなかった。そのときは福田幹事長は出ていなかった。事実はそうなのでありますか。週刊誌その他を見ますと、福田幹事長は、自分も何かそのときに池田氏とともに、就任祝いの席に連なったよう発言をしていられるのでありますが、それは間違いでありますか。
  14. 赤間文三

    赤間国務大臣 福田幹事長は出ておらないと承知いたしております。
  15. 大竹太郎

    大竹委員 次にお聞きいたしたいのでありますが、そういたしますと、呼ばれたのが十一月、呼んだのが四月の十九日ということで、その間非常に期間があるわけであります。もちろんこの三者いずれもお忙しい人々でありますのでそうなったわけかもしれませんが、それならば一体この四月十九日の宴会と申しますか会食と申しますか、この会食を四月十九日にやるということがきまったのはいつでありますか。その話が出て、それなら四月十九日にやろうということがきまったのはいつでありますか。
  16. 赤間文三

    赤間国務大臣 四月の上旬ごろにきまったように聞き及んでおります。
  17. 大竹太郎

    大竹委員 そういたしますと、その就任祝いをされてからお返しということのこの会食の間に約半年期間があるわけでありますが、通常の常識からいたしますと、この期間が非常に長過ぎるというふうに思うのでありますが、その点についてはどういう事情によるものでありますか。
  18. 赤間文三

    赤間国務大臣 非常に何かと忙しい方ばかりでありまするので、都合によっておくれたように聞き及んでおります。
  19. 大竹太郎

    大竹委員 次に、先ほど来おっしゃったように、もちろん検事総長のプライベートな会合でありますけれども、料亭の席をとるとか、あるいはどういうような費用でどういうよう宴会をするというようなことを、もちろん総長自身が電話その他で連絡されたものではないと思いますが、これらの設営とでも申しますか、その他は一体だれがしたのでありますか。
  20. 赤間文三

    赤間国務大臣 井本総長はかねてから池田氏に返礼したいと考えていたのでありまして、ただいま申し上げましたように、四月上旬に池田氏に対して招待連絡をとったように聞いております。そうして双方の都合で四月十九日に決定をした。招待場所は、客である池田氏が懇意にしておる料亭がよいという考えから、井本総長において花蝶ときめて、みずから花蝶に申し込みをいたした由でございます。福田氏については、井本総長池田氏に招待連絡をした際に、井本福田両氏友人であることを承知していた池田氏から、自分が誘っていってよいかとの話があったので、井本総長は、それは別に異議はないという旨の回答をしたように聞き及んでおります。  なお、この会食代金は、会食の終わりに福田氏が、おれが出そうというように言ったように聞いたのでございまするが、井本総長趣旨が違う旨を強く言いまして、福田さんが出すのを辞退して、早く支払っておかねばならぬと考えて、福田氏が支払うことになるおそれがあるかもしれぬと考えて、翌日の四月二十日に秘書事務を取り扱うておる者に依頼して、代金花蝶に持参をさせて現金支払いをいたしたというふうに聞き及んでおる次第でございます。
  21. 大竹太郎

    大竹委員 次に、ちょっとさかのぼるかもしれませんが、井木総長福田幹事長との友人関係は、高等学校時代からの友人であり、昭和二十三年の昭和電工事件当時の福田幹事長弁護人でもあったというよう関係新聞その他で出ておるのでありますが、井本総長池田代議士との関係につきましては、どうも就任祝いをしたりまた返礼をしたりするほどの親密な間柄であるかどうかというようなことが、新聞その他でははっきりしない面もあるように思うのでありますが、その点についてはっきりしたところをひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  22. 川井英良

    川井説明員 井本総長池田さんの関係は、井本さんが十二、三年前に法務省刑事局長をいたしておりました、その関係国会に出入りをする機会がございまして、その関係で知己を得たのが初めでございます。自来国会関係で普通の交際があったとのことでございますけれども、その後井本総長地方検事長に出ましたので交際がなかったわけでございますが、昭和四十年に東京高等検察庁検事長に転任をしてまいりましたので、再びまた東京池田さんとの通常交際が始まったようでございます。その間特別の関係というわけではございませんで、いま申し上げたようないきさつから知り合いになったということで、通常国会関係知人というふうな関係にあったものと聞いております。
  23. 大竹太郎

    大竹委員 次に、これが一番問題になる点でありますが、四月十九日の夜の会談におきまして、いま問題になっております日通事件についての話が何か出たか出ないかということが一番の問題だと思うのでありますが、その点はいかがでありますか。
  24. 赤間文三

    赤間国務大臣 四月十九日の会食におきましては、日通問題には何ら触れたということはないように承っております。
  25. 大竹太郎

    大竹委員 それで、これも雑誌からの私の知識でありますが、十九日の前日、四月の十八日という日は、この日通事件ですでに逮捕されておった福島日通社長の次男である秀行氏が、たしかこれは取り調べ中に抜け出して飛びおり自殺をしたという日であるわけでありまして、したがってその翌日ということでございますので、常識的に考えても、世間話としてもこの日通事件の話が何か出たというふうにも考えられないわけではないのでありますが、全然この日通事件についての話がなかったということは間違いないのですか、もう一度念を押しておきたいと思います。
  26. 赤間文三

    赤間国務大臣 四月の十九日の会食の際にはさきに申し上げましたとおりに、この日通事件関係する事柄については全く話題となっていない、さように聞き及んでおる次第でございます。
  27. 大竹太郎

    大竹委員 それならば、この日通事件に関連して二、三お聞きいたしておきたいのでありますが、この日通事件捜査を開始したのは一体いつごろであったか、おわかりになっておれば承っておきたいと思います。
  28. 川井英良

    川井説明員 四十二年の十月の終わりごろでございます。
  29. 大竹太郎

    大竹委員 それで、たしか福島社長そのほか、一番最初にはたしか管財課長ですかが逮捕されたと記憶しておるのでありますが、表面にこの日通事件捜査があらわれ、逮捕その他を始めたのはいつごろでありますか。
  30. 川井英良

    川井説明員 四十三年の二月の二十一日ごろからでございます。
  31. 大竹太郎

    大竹委員 そうすると、福島社長を逮捕したのはいつでありますか。
  32. 川井英良

    川井説明員 四月八日でございます。
  33. 大竹太郎

    大竹委員 次にお伺いいたしたいのは、大倉参議院議員捜査線上に浮かんだのはいつか、そして大倉議員を逮捕したのはいつか。
  34. 川井英良

    川井説明員 五月の中ごろからかと思いますが、逮捕いたしましたのは六月の四日でございます。
  35. 大竹太郎

    大竹委員 それで、雑誌その他に池田代議士発言をしているのを見ますと、四月十九日の三者会談後十日ぐらいして自分の問題がいわゆる捜査線上に浮かんだのだ、こういうことを発言していられるようでありますが、そのとおりでありますか。
  36. 川井英良

    川井説明員 これは実は具体的に詳細はわかっているのでございますけれども、大倉議員並びに池田議員の公判はやがて開廷される運びに相なっておりますので、その際にそれらの関係を立証するよう書類が当然公判廷に提出されるわけでございますので、いまここで、その前に具体的に何日と、こういうふうに申し上げることはお許しをいただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、五月ごろになってからそういう問題が起きてきた、この程度で御了承いただきたいと思います。
  37. 大竹太郎

    大竹委員 それで、池田さんがそう言っていられるのでありますが、私非常に勘ぐって申しわけないのでありますし、またこれは御本人に聞かなければわからないような気もするのでありますけれども、池田議員が、この会談十日くらい後に自分名前が出てきたというふうに言っていられることが事実だといたしますと、その十日前の四月の十九日ころには検事総長があるいは池田代議士の問題を御承知になっていたのではないかというようなことも勘ぐりたくなるのでありますが、その点はいかがですか。
  38. 赤間文三

    赤間国務大臣 この会食のときにおきましては、池田議員名前というものは全然出ておらなかったのでございます。この点ははっきりと私は申し上げられる。そのころは池田さんのお名前は全然出ていなかった、かように御了承願います。     〔発言する者あり〕
  39. 大竹太郎

    大竹委員 これは、いまもそこでいろいろの雑音が入ってあれなんでありますが、それ以上、私多少弁護士その他をやった経験もありますから、さらに勘ぐりますと、はっきりわかっていたかわかっていないかということは別といたしまして、池田さんにおよばれをしておった、いいかげんすっぽかしておったけれども、何というか、どうもおよばれになりっぱなしになっているのは何となしにおかしい、自分としても気が済まぬというようなことで、あわてて相当期間がたってから、こういうお返しをされたのでないかやというようなことも、これは私の勘ぐりでありますけれども、そういうような気もしないわけではないわけでありますが、その点についてはもう一度念を押しておきます。
  40. 赤間文三

    赤間国務大臣 いまのその御質問でございますが、私はさようには聞き及んでおらないのでございます。返礼をやろうやろうということは前から考えておりましたが、忙しい人でありますので、じんぜん日が延びて四月の初めにそういう話が起こって——十九日に起こったというふうに聞き及んでおります。いまお尋ねようなことについては、私は一切さようには聞いておりません。御了承いただきたいと思います。
  41. 大竹太郎

    大竹委員 次に、こういうよう捜査秘密とでも申しますか、こういうことが漏れ、しかも新聞雑誌その他に大々的に掲載されたというようなことは——捜査秘密ということで、公表されてもいいようなことでも、なかなかこの委員会その他ではお聞かせいただけないものが多いわけでありますが、こういうようなことが公になるということは、機密保持の面から見ましても非常に重大な問題じゃないかと思うのでありますが、この会談の事実は、どこから、なぜ公になったものであるか、お調べになっておわかりになっておったら、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  42. 赤間文三

    赤間国務大臣 総長会食問題がどういうふうな事情明るみに出たかという点につきましては、私はまだ承知をいたしておりません。しかし、この会食問題が部内から漏れたというような事実はない、かよう確信をいたしております。
  43. 大竹太郎

    大竹委員 現在おわかりになっていないということでございますので、それ以上は追及したくないのでありますが、やはりこういうことが漏れるということは非常に重大なことでございますので、ひとつ徹底的にこれをお調べいただきたいと思いますし、今後はこういうことがないようにお願いをしたいと思います。ただ新聞雑誌その他で出ております料亭花蝶領収証写しでありますとか、その日呼ばれたホステス五人の名前でありますとか、そういうようなものが事実ぴったりであり、そしてそういうものは、花蝶日通のお得意の料亭でもあるというようなことで、花蝶からこの領収証写しその他いろいろその日の会食のことを記載した書類を証拠として役所任意提出させてある。そしてそれから、いまほど内部から漏れたことはない、こうおっしゃっているのでありますけれども、役所のほうへ任意提出させたそのものから漏れたんじゃないかというような話も出ておるわけでありますが、役所のほうへこれらに関する書類任意提出をさせてあるという事実はほんとうでありますか。
  44. 川井英良

    川井説明員 そのとおりでございます。
  45. 大竹太郎

    大竹委員 これも週刊誌その他の知識にすぎないのでありますが、そういうものによりますと、これらが漏れたのは法務省内部に俗に言う派閥があり、ことにその派閥というものは、いわゆるいままでの思想犯系検事系統経済犯系統検事との二つの派閥があり、現在の井本検事総長思想犯系の人であるので、経済犯系検事との派閥争いの結果こういうものが明るみに出てきたのではないかというふうなことが書かれておるわけでございますが、これらについての大臣の御説明をいただきたいと思います。
  46. 赤間文三

    赤間国務大臣 こういう問題が部内から漏れたのではないかという疑いが一部にあるようでありまするが、この点はさきに申し上げましたように、私は部内から漏れたものではないと確信をいたしておる次第でございます。  なおまた、こういうことが明るみに出たのは検察内部派閥等からではないかという御質問趣旨に思いますが、私はそのようなことはないと考えておる次第でございます。
  47. 大竹太郎

    大竹委員 次に、こういうよう派閥があることによって、この問題の池田代議士検察人事に、一口に言えばくちばしをいままで入れてきた人であるというようなことも言われておるのでありますが、そういう事実はいかがでありますか。
  48. 赤間文三

    赤間国務大臣 そのような事実は全くないと考えております。検察人事は、法務大臣が御承知よう法務事務当局及び検察部内の意見を徴してこれを十分に尊重しつつ大臣責任において人選を行なっておる実情でございまして、その他の人がこれに介入するような余地は、現在のところでは全くないよう実情でございます。いまお申し出ような事実は私は全くない、かよう考えます。
  49. 大竹太郎

    大竹委員 次に、同じようなことで恐縮でありますが、たしか東京地方検察庁次席検事であった河井信太郎検事が最近において最高検に転出されたのが、この事件関係があるというようなことも言われておりますが、その点はいかがでありますか。
  50. 赤間文三

    赤間国務大臣 河井信太郎君が最近最高検検事に転出いたしましたことは、こういうこととは全然関係がないのであります。全く関係がないと御了承を賜わりたいと存じます。
  51. 大竹太郎

    大竹委員 検察官適格審査会に社会党の方々から、井本検事総長の問題を提起されたやに聞いておりますが、審査会はこれを取り上げないことになったということが言われておりますが、そういう事実があるのでありますか。また、取り上げないことになった理由は何でありますか、お聞かせいただきたいと思います。
  52. 赤間文三

    赤間国務大臣 この際に井本検事総長問題だけを特に取り上げて検察官適格審査会を開くことはしないことになった、こういう報告を聞いておるような次第でございます。
  53. 大竹太郎

    大竹委員 それならば、それだけを特に取り上げて会を開かないということでありますが、最終的にこの問題をいわゆる問題にしないということではないようにお聞きするわけでありますが、その点はもう少しはっきりさせていただきたいと思います。
  54. 辻辰三郎

    辻説明員 検察官適格審査会随時審査定時審査と、審査の形がございまして、随時審査と申しますのは大体いままでの慣例によりますと年に一回、十二月ごろに開いていただいているわけでございます。本件の場合には、この際これだけを取り上げては開会しないということでございまして、おおむね十二月に開かれます定例の、随時審査のときにおきましてこの問題を取り上げるかどうかを検討しようということになったものと聞き及んでいる次第でございます。
  55. 大竹太郎

    大竹委員 それでは、この問題についていろいろ御質問になる議員がございますので、最後に一つだけ伺って私の質問を終わりたいのでありますが、先ほども申し上げましたように、井本検事総長責任について、不都合の点があったかどうか、そして、その責任について大臣はどうお考えになるか、また、大臣として監督の面において不行き届きの点があったかどうか、またその責任についてどうお考えになっているか、それを最後にお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  56. 赤間文三

    赤間国務大臣 井本検事総長会食の問題でございますが、よく調べてみましたところが、さっきから申し上げましたように、前によばれたから、そのお返しの私的な会合である、かよう承知いたしておる次第でございます。したがいまして、これは個人の会合で、しかも何ら法務行政を論じたことも、また何もそういう具体的事実がありません。ただ、いろいろなお話があったというだけでございますので、特にこれにつきまして井本総長責任を云々することは適当でない、かように私は考えております。
  57. 大竹太郎

    大竹委員 終わります。
  58. 永田亮一

    永田委員長 猪俣浩三君。
  59. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 日本の刑事訴訟におきましては、犯罪の捜査権は警察及び検察、両建てになっておるようでありますが、本件日通事件については、検察官が中心となって捜査されたと思うのでありますが、さようでございますか。これは川井さんから……。
  60. 川井英良

    川井説明員 そのとおりでございます。
  61. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そこで、政治献金その他、日通と政界との関係捜査線上に浮かび出たのはいつごろでありましょうか。
  62. 川井英良

    川井説明員 昨年の秋に脱税事件で、この事件捜査東京地検が取り上げまして、脱税事件関係についての証拠を収集いたしました。そして、先ほども申し上げましたように、脱税事件関係が一応終わりまして、起訴いたしましたのが翌年の昭和四十三年の三月十三日で、その関係を一応終わったわけでございます。それから三月十八日に、脱税事件の中心になっておりました管財課長の田村某をあらためて業務上横領で逮捕いたしまして、そしていわゆる使途不明金の解明に当たったわけでございます。それから、四月の八日に社長の福島と副社長の西村の両名を、同様業務上横領の疑いで逮捕いたしまして取り調べを始めている。その結果、五月の十四日に至りまして、この関係の業務上横領の関係について一応起訴いたしまして、それから六月の四日になって、先ほど申し上げましたとおり、大倉議員関係について逮捕が行なわれているということに相なっておりますので、この国会議員関係がこの事件関係に関連いたしまして浮かび上がってまいりましたのは、この四月八日に福島らを逮捕した以後のことである、こういうふうに申し上げることができるかと思います。
  63. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、もう三月中に脱税問題、それから使途不明金が出てきて、四月八日には福島の逮補となり、そのころ政界に対するいろいろな政治献金その他の問題が明らかになったという御答弁でありますが、これはいろいろの当時の新聞もありますが、いま問題になっておりました新日本新聞というのが相当早くから書き立てて、もう四十一年の十月、四十一年の十二月——四十一年十二月十二日の新聞なんぞには「佐藤  ”粛正“政権の足元に爆弾」こういう大きな見出しで書いてある。それから四十二年の一月、四十二年の七月、いずれも政界に波及するというようなことが書いてありまするし、私は、これは一般紙は持ってきませんが、一般紙にも日通事件が、少なくとも福島を逮捕した前後から政界に波及するということを全部書いてある。そうすると、四月十九日現在において、福田幹事長に、日通事件が政界に波及するというようなことの知識があったと思うことが常識であるか、なかったと思うことが常識であるか。その話が出た、出ないは第二といたしまして、もうすでに四月十九日時点に立ちますならば、この日通事件は政界に波及するということはほとんど常識になっておったと思う。それに対しまして、一体赤間さんは絶対関係ないとおっしゃるか。あなたは不審に思わぬかどうか。その当時、あなたは全然政界に波及するということは思っておりませんかどうか。また、いま政党内閣だ。一党の幹事長福田氏に——政界に波及する、しかもある新聞のごときは、自民党に大きな波及をする、佐藤政権に爆弾が落ちたというようなことを書き立てておる。それを幹事長が全然知らなかったということは思われないのですが、法務大臣、どうお考えになりますか。
  64. 赤間文三

    赤間国務大臣 四月十九日ころにおきまして、政界に波及するということを私たちは考えておりませんでした。私たちは、やはりこの刑事問題は、御承知ように証拠があがり始めてから考えるのでありまして、四月十九日ころにおきましては、政界に波及するであろうという考えは持っておらなかったことをはっきり申し上げます。
  65. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これははなはだうかつな話だと思うのだな。まああなたは高いところにいらっしゃるから知らなかった。これはうかつだと思うのだな。検察の最高の一般指揮権を持っておる法務大臣として、あれだけ世間が騒いでおるのに、そういうことはちっとも考えなかった——これは水かけ論になりますから、私はこれはどうしようもない。そんなことはないと言ってみたところで、考えないと言ったら、これはどうもならぬ。どうもならぬが、これは刑事問題として、被疑者の立場に立ちますと、そんなことで検事は許しませんよ。情況証拠からして、そんなばかなことがあるかということになってしまう。しかし私どもは、そういうふうにあなたを責めてもしかたがないと思うが、一体刑事局長はどう考えておられますか。
  66. 川井英良

    川井説明員 事務当局ですので、すこし具体的に申し上げたいと思いますが、四月八日に福島と西村、両名を逮捕して取り調べが始まっているわけでございますので、おそらくそれらの人たちから、政界に関する事柄についての供述が出たものではないかというふうに考えられるわけでございます。そこで、西村それから福島の両名につきましては、四月の二十九日に業務上横領について起訴が行なわれております。この段階においては、両名についての個人的な業務上横領の事実だけがおそらく証拠によって固まったと思うのでございまして、それからさらに、この両名につきまして、いま申し上げましたような政界に関する関係というふうなものの取り調べが始まったのではないか、こういうふうに予想されるわけでございまして、そういうふうに追ってまいりますと、六月四日になって大倉議員名前が上がってきたということが、時日の経過として、また捜査の経過として一応納得できるわけでございますので、少なくとも四月十九日ころにおきましては、具体的に証拠に基づいて政界のだれだれが関係があるというようなことは全く捜査線上に浮かんでいなかったということは申し上げられるわけでございます。このことは、いずれ開かれる公判廷におきましては、おそらく福島なりあるいは西村なりあるいは池田幸人なりというふうな人たちの供述書類が証拠に公判廷に出ると思いますので、それらの日付を見るならば、おのずから私がいま申し上げましたような時の経過ということが間違いないということがおわかりいただける、かよう考えております。
  67. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私どもは、調書をとり、起訴するまでには相当の準備期間があることはわかるわけであります。四月八日に、すでに福島が起訴、収容されておるわけだ。その前から相当の捜査が行なわれたはずだ。それでなければ、また人権侵害になりますから、相当の捜査が行なわれたと思う。そしてそれが相当マスコミに乗っておるのですよ。今度も花蝶の問題が新聞雑誌にみんな暴露されておるごとく、マスコミに相当検察庁はいろいろのことを知らしておる。ですから、マスコミの一線記者の報告に基づいて、各紙に、政界に波及かということはもうすでに四十二年の初めから出てきていると思うのです。だから、ほんとうに犯罪の証拠ありとして固めて起訴するのは四月八日でありましたでしょうが、しかしそれ以前から政界に対する関係は洗っておったと思うのです。それでなければ新聞がそういう論調を書かぬと思うのですが、これはまあ、刑事局長といえども検察の第一線に立っておられない方ですから、私はあとで検察官自身を証人として申請したいと思うので、それに譲りますけれども、大臣及び刑事局長答弁は、どうもわれわれの常識と違っておる。たとえつまらない新聞でありましても、新日本新聞なんというのは各党の代議士にみんな無料配付されておる。福田さんのところへも行っておるはずです。これはすでに四十一年の末には、佐藤政府に爆弾が足元に落ちたぞというようなことを書いてあるのです。それを四十三年の四月ごろ、福田さんが全然無感覚でおったというようなことは私は想像できない。これは福田さんに聞いてみないとわからぬから、福田さんを証人として申請しますが、検察当局は全く気がつかなかったというなら、これは私は怠慢じゃないかと思う。しかし水かけ論になりますから……。私としてははなはだ釈然といたさぬのであります。  次に、いろいろ聞きたいことがありましたが、同僚から相当の質問がありましたので、私はかなり省略いたします。ただ、念を押しておきたいことは、井本さんが、いま大臣がおっしゃるように、これは私的の会合であるということをおっしゃったけれども、検察権のあり方、公平なるべき検察官というものに対する国民の期待といいますか、そういうものが相当裏切られたような印象を与えたことはいなめない。あなた方はそんなことは感じておらなかったようですが、あなた方よりも国民が敏感なんだ。こういう天下を騒がしました日通事件の最中に、一党の幹事長や池田君という人とこういうところで会食するというようなことは、多大の疑惑を与えることだと思う。だから新聞紙なんは一斉に、李下の冠、瓜田のくつだと書いてある。これは、好意をもって言ってもそうですよ。好意をもっていたしましても、一国の検事総長が大疑獄事件の発展最中に一党の責任者と会食するというようなことは、瓜田のくつ、李下の冠、私はこれでも好意あって言ったことばだと思うのですが、少なくともそういう疑いは免れない。  ところが、これに対しまして井本検事総長ははなはだこう然たる態度をとっておられる。私はこれも一つ問題だと思うのです。これは各新聞にみな出ております。「「花蝶」でやったのがいかんように書いてるんだが、「花蝶」だって立派に税金払ってやってるんでね、しかも、検事総長はそこへ行ってはいかんという法律でもあるんならともかく、自分の金で、自分の友達と遊びに行ったっていかんことないでしょ。私はあの前後、何回となく「花蝶」へ行ってますよ。神様や聖人君子じゃないんだからね。検事総長はそんなところへ行っちゃいかん、家でじっとしてろということですか。それに、池田代議士が思うところあるんなら、向うが招待するんでね」こういうことを検事総長自身が言っている。  なおまた、福田幹事長はこう言っているんだ。「払いは、オレが払うよといっておったんだが、何がなんでも(井本氏が)払うよといって払っていった。オレは感心した。これほど気をつけて、堅いな、と。だから、井本さんのそういうやり方は、むしろホメられていいので、非難されるべきじゃないんだ」こう言っている。  この検事総長自民党の幹事長の考えは、一体、国民常識と非常にかけ離れている。どうしてもこれは福田幹事長井本さんに来てもらって、その心境を聞かなければならぬと思う。こういうことを言っておられる、これに対して大臣はどう感じられますか。
  68. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は必ずしも、いまお述べになったよう考えとはやや違う考え方を持っております。検察官、特に検察全体を指揮する立場にある者が、検察という狭いからの中に閉じこもって、ひとり独善におちいるというようなことは私は好ましくない。からの中に閉じこもって自分だけいいという独善主義になるようなことは、検察当局としては極力避けなければいけないと私は考えておる。むしろ適当な機会を利用して、広く検察というような重要な仕事をする者は、国民各界各層の人々と会って意見を交換する、あるいは国際情勢、社会情勢等についてもいろいろと話し合いをする、また世間のものの考え方、世間の人々の考え方、また国民の感情等についても、常日ごろやはり豊富な知識を吸収していくということにっとめることも、一つのとるべき道である、かように私は考えております。そのことが、検察という仕事の妥当適正な運営に役立つところがきわめて大きいものがあると考えておるような次第でございます。  ただ、本件の場合は、たまたま池田議員があとから起訴をせられたというよう事件が起こったために、むしろあとから見て、私はこれがいろいろと議論になった点も考えられるんじゃないかというような気がいたす次第でございまして、個人の会合で公の職務には何らその影響を与えなかったという事実が明確であるならば、やはり個人の会合についてとやかくとこれを批判することについては、私はいささか所見を異にしておる点があるのでございます。  私の見るところでは、また私の知っておるところにおきましては、この日通事件につきましては、厳正公平に事務が処理をせられて、何ら私は非難をされる点はない、かよう確信をいたしておりまするし、四月の十九日の会合はこれはさっきも申し上げましたように、全然個人的な会合である、こういうふうに私は承知をいたしておるのでありまして、たまたま会食をされた方の一人があとから起訴をせられたのをもって、いろいろと個人的な会合について議論をするということも、やむを得ないとは存じまするが、私はいささか違う考え方を持っておることを申し上げる次第でございます。
  69. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私も、検事総長が料理屋へ行って政治家と酒を飲むことまでかれこれ言うのは行き過ぎだと思う。私ども、あなたのおっしゃったように、そういうことをとがめているんじゃない。検察官といえども、広く交際してしかるべきだと思う。しかし今回の場合は、四月八日に福島が逮補され、四月十八日には福島の子供が飛びおり自殺をしておる。天下騒然といたしまして、日通事件は毎日のよう新聞に報道され、そして政界に関係者があるということがしょっちゅう書かれておる。こういうさなかに検事総長が、親しい仲であればあるほど福田という大自民党の幹事長と——あなた池田と会見したことをいけないように言っておるが、私どもはそれよりも福田氏が会見したことが問題だと思う。一党を牛耳っております幹事長が、天下騒然としておる中に、検察の最高峰の人ととにかく会食するというようなことは、それはあなたがおっしゃったように何ら日通事件の話も出なかったし、何ら不都合なことはなかったといたしましても、民主主義の今日においては、検察官といえどもやはり世論の支持を受けなければ、検察の権威というものは確立いたしません。世論がこの事件について、検察権の行動に対してはなはだ疑惑を持っておることは事実であります。これは法務大臣といえどもお認めでございましょう。だから瓜田にくつを入れ、李下に冠を正したことだけは免れない、これは好意を持っても、それだけは認めなければならぬと私どもは思う。あなたはそれも認めない。こういう疑獄の最中に検事総長が一党の幹事長と会ったって、私的のことで何ら不都合なことはなかったんだからそれでいいんだ、こういうお考えであるかどうか、そうだとするとはなはだ憂うべきことだと私は思う。やはり万人の信頼する検察官であってこそ、検察の権威というものは保たれるのだ。事実、何でもなかったかもしれぬけれども、かような疑獄の最中にそういう行動をやったことは、大いに私は反省してしかるべきだと思う。しかるに、検事総長はこういう放言をしておるし、幹事長もこういうことを言っておる、感心なやつだなんてほめておる。こういうことが法務大臣としていいことですか。一体、この検事総長の態度に対して、それはそんなことはやったってかまわぬという態度なんですか。私は検事総長をやめさせるとかなんとかいう意味じゃありません。しかし、一般人に与えた疑惑というものは、どうしたって残っちゃって、自分自信はりっぱなことをやったといたしましても、世間に誤解を与えたということは、これは検察権の威信のために私は憂うべきことだと思う。それに対して法務大臣は一体どう考えておられるのか、それをお聞きするんです。そんなことはかまわぬ、どんな疑獄の最中でも、会ったって何が悪いんだという御態度であるのかどうか。これは検事総長はそういう態度だ、なお福田さんは感心なやつだとほめてまでいるんだ、こういうことでいいのかどうか。私は、検察行政の最高の直接の責任者である法務大臣——検察行政といえどもこれは行政権でありますから、最高の責任者は内閣総理大臣佐藤さんにあると思います。佐藤さんの意見も聞かなければならぬと思うんだが、まずあなたが佐藤さんの代理としての最高の監督官だと思う。やはり検察行政がき然としておらないと、これは検察の権威にかかわります。私はそういう意味において質問を申し上げておる。あやまちはあやまちだ、今後気をつけるなら気をつける、私はこれによって井本さんをやめさせようとか傷つけようという意思は毛頭ありません。しかしあれは何が悪いんだと開き直られたよう考えであり、法務大臣またそれを支持するようなことであると、これはゆゆしき問題だと私は思う。どうでしょう。
  70. 赤間文三

    赤間国務大臣 この問題につきましては、たびたび申し上げましたように、私は全然私の会合である、こういうことを申し上げたのでございます。結果としていろいろな論議が行なわれた、論議を呼んだということについては、これは法務大臣といたしましても残念に思っております。そういうことは残念に考えておる。しかし、この問題によりまして、検察中立性がそこなわれたというようなふうには私は考えておりません。私は、検察は、いつも厳正公平、不偏不党の立場を堅持して国民の信頼にこたえていくということに力を尽くしていくべきである、かよう考えております。
  71. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私どもは、こういう事件ははなはだ遺憾だと思うのであります。ことに社会党は、元社会党の議員であった大倉氏の問題がある。それに対して強く反発しておったわけであります。これは選挙目当ての何かの謀略でないかというように反発しておった。それは御存じであろうと思うのです。検察ファッショということまで言い出した。その真偽のほどは裁判がさばくといたしましても、とにかく社会党から、大倉逮捕については検察官に対する猛烈な反駁が出ておるわけです。そういう際におきまして、かような、自民党の幹事長が検事総長会食するようなことになりますと、社会党のみならず一般の国民に疑惑を生ぜしめることは、私は当然だと思うのだ。それに対して法務大臣は、もう少し私は、はなはだ遺憾であったという意を表していただきたかった。どうもあなたの考え方はっきりしない。どうも何でもない私の会合であるような御主張ですが、しかし、検事総長であることは間違いなく、一党の幹事長であることは間違いないんだ。それは私的な会合であったでしょう。私もそう思います。そこで何か取引するなんということまでは考えたくありません。いやしくも料理屋で芸者をはべらせてそんな密談ができるはずはないと思いますけれども、しかし、一般人にはなはだ妙な印象を与えたことも、これまた事実であります。私は、将来かようなことのないように、いわゆる大疑獄の最中に検事総長が一党の責任者と会食するようなことは、今後十分留意するようにという、ぼくは法務大臣のおことばをいただきたかったのだ。そういうことは言われませんか。あれはあたりまえで、私的の会合で何でもないのだ。私は検事総長が料理屋へ行ったことをとがめているのじゃないのです。ちょうど環境がこういう大疑獄事件の最中、それを背景にして考えた場合にどうかというふうなお尋ねです。いかがでしょう。
  72. 赤間文三

    赤間国務大臣 さきにも申し上げましたように、幹事長は昔からのお友だちに聞き及んでおる次第であります。党の幹事長として御出席になったものとは私は考えておりません。昔仲間、しかも私的な会合で、わかり切った花蝶というようなところで個人的なめし食いの会合をやられたよう承知をいたしておるような次第でございます。そういう点が、たとえば一党の幹事長とし、あるいは何々としての会合の場合とは非常に違うのじゃなかろうかというような感じもいたしますので、さきに言いましたように、個人的な会合、公でない会合についてとやかくと批判することについては、私は差し控えるのが適当じゃないか、こういうふうな気持ちが相当私の中にありますので、以上のようなお答えをしたのです。御了承を願いたい、かようにお答えを申し上げます。
  73. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 水かけ論になりますからやめます。ただ、少なくとも瓜田にくつを入れ、李下に冠を正したおそれがあって、これは気をつけなければならぬという私は法務大臣のおことばをいただきたかったのだが、はなはだ不満であります。不満でありますが、これ以上は打ち切ります。  六月二十四日の朝日新聞に「法務省検察が対立」という題でもって池田代議士の強制捜査をめぐって法務省検察庁の意見が二つに分かれた。二十二日夜から二十三日の午前三時まで、さらに二十四日の午後、続いて二十五日の午後と再三にわたり検察首脳会議が開かれた。この二十四日の会議には「井本検事総長、高橋最高検次長検事、山本同刑事部長、竹内東京高検検事長、神谷同次席検事、武内東京地検検事正、河井同次席検事川井法務省刑事局長らが出席、二時間にわたって事実、証拠関係、法律適用の判断などを検討した。東京地検側は、池田代議士日通前社長福島敏行らから三百万円を受取った事実は、関係者の取調べなどから証拠の上ではっきりしており、収賄罪は成立すると説明した。これに対し、井本検事総長法務省川井刑事局長らからかなり細部にわたって質疑が出された。」こういう記事がありまして、結局池田君を留置するかどうかについて、地検側は強制留置を主張し、法務省側は留置の必要なしということで、結局それが勝って留置されなかったという記事があるわけであります。これには川井法務省刑事局長も出席いたしておるようでありますから、一体どういう模様であったか。と申しますのは、こういうことと、この花蝶検事総長福田池田会食というものがつながるような印象を世間に与えております。そのためにまたこういう具体的のことがみな新聞に書かれるということにひとつ問題があるが、検察庁の最高首脳部の意見が分かれたことまで世間には出ちゃった。しかも、法務省側は池田を勾留する必要はないという、検察側は勾留する必要があるということで激論になったというようなことまで出ておる。川井さんはそこに出席なさっておるのですが、さような事実はどうでありますか。具体的におっしゃっていただきたい。
  74. 赤間文三

    赤間国務大臣 私が大臣として詳細に会議の状況その他は報告を正式に受けておりますので、私からお答えをいたします。  全会一致でもって法務大臣のところにこの報告がなされたのでございます。それから会議におきましては、結論はいま言いましたように全会一致の結論でございまするが、会議におきましては、その会議に限りません。いつもいろいろと議論が行なわれることは、これは当然のことでございまして、積極、消極各方面からの議論が十二分に討議をせられる慣例になっております。その前のいろいろな事件につきましても、全部内部におきましては非常な議論が行なわれたことに承知をいたしておるのであります。私は、思い切ってこの議論が行なわれることにむしろ賛成の意を表しております。ただ一、二の者が権力めいたようなことでものをきめるようなことは、中立性、それから最高の責任者として、私は好まないのでございます。いまの検察としては、あらゆる面から十二分な討議を尽くして、そうしてまとまって法務大臣のところに報告があることになっておりますので、新聞に何と出ましても、何ら検察の権威、中立性を害するような点は一つもなかった、かよう考えるので、御了承を賜わりたいと思います。
  75. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 大倉精一君は二百万円、池田君は三百万円、二百万円の大倉君は二十日間ばかり勾留されたんですが、池田君は在宅起訴になっておる。そこで、その首脳部の会合でも、検察側ではこれでは公平を欠くじゃないかという主張が非常に強かったので、とうとう法務省側の説得で、特に検事総長が先頭に立っての説得のために、地検の検察側の主張は敗れたというふうに報道されておるのですが、大倉君と池田君に対してこういう違った捜査方法をとられた理由はどこにあるわけですか。この、検察官が公平じゃないじゃないかという地検の検察側の主張に対して、これはもっともじゃないかと思うのだが、それに対して、どういう理由でこういう区別をつけることが合理的だということになったのですか。その実情をお話し願いたい。
  76. 赤間文三

    赤間国務大臣 法務省といたしましては、御承知ように、なるべく逮捕せずして調べるということを原則にいたしております。できるだけその線がわれわれの望むところであります。しかしながら証拠隠滅のおそれがあると見る者につきましては心ならずも逮捕をやらなければならぬという立場にあると考えております。大倉議員が逮捕せられ、池田代議士が逮捕せられなかったのは、私は、全くこの証拠隠滅のおそれの有無によって片一方は逮捕せられ片一方は在宅の調査になった。かように報告を受けておる次第でございます。その点ひとつ御了承を願いたい。証拠隠滅のおそれありやいなやということによって逮捕したり在宅調査をしたり——できるだけ在宅捜査を原則として、なるべくその線に沿うていきたい、こういう方針を持っていることも御了承をいただきたいと思います。
  77. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 なお、河井最高検検事が「現代」という雑誌に論文を書いていられますが、それによりますと、ぼくらはマスコミ屋が国民の代表者だと思うから、マスコミとは緊密な連絡をとっているんだというふうなことを書いておられる。さっき大竹氏の質問にもありましたが、当委員会捜査中のことにつきまして質問しましても、これは捜査秘密と称して、なかなか答弁なさらない。そこで、国会の国政調査権と検察行政との関係について、これは一つの大きな問題として、前に内閣総理大臣の意見まで聴取したこともあるわけでありますが、しかしひるがえってみれば、捜査秘密ということもありますので、洗いざらいみな、こういう委員会に報告することも困難かと思うのであります。しかし、一体国会が国民の代表機能じゃなくて、マスコミが代表だというよう検察官の御意見だと、私は、はなはだこれには疑義があるわけであります。憲法に認められた正式の国民の代表である委員会——もしマスコミが国民の代表であるからということでいろいろ捜査のことも知らせるのだというならば、この委員会では国民の代表だと認めないから捜査秘密は守るのだというのか。私は時間がありませんので省略いたしますが、あとほかの委員から質問が出ると思いますが、実は検察捜査の状況が、実にマスコミ諸君には早くからわかるのです。実に早くからわかる。そういうことは、やはり河井信太郎君が言っているように、マスコミを国民の代表として密接な関係を持たれるのであるのかどうか。それならば当法務委員会でも、捜査の点について詳しく説明してもいいのじゃなかろうかと私は思うのですが、これは、この河井さんの意見は、法務大臣、どう考えられますか。
  78. 赤間文三

    赤間国務大臣 いま御指摘になりましたような表題の個所はあるように聞いておりますが、そのお述べになりました項の内容は、要するに同検事は、検察に対する国民の代表であるマスコミを通じて、検察の真の姿を知ってもらうということで、記者会見には誠意を尽くして応対し、言えないことは、はっきり言えないと言う態度で臨んできた、こういうふうにもいっておるのであります。何ら不当視されるものではない、かようにわれわれは河井君の書いたものを読んでおるのであります。言われぬものは言われぬということをはっきりさせるというふうに、河井君の書いたものの、いまお述べになりましたところを読んでおるのでございます。少し、ここの書いた内容が違うように私は承知しておるのであります。ただ、はっきりと申し上げますが、われわれはやはり捜査中のものにつきましては、検察当局秘密を守る義務があると考えております。絶対に、いままで秘密を漏洩した者、守るべきものを守らなかった者については処分するという考え方を、私は持っております。ただ、過去の実際の例から申しますと、地検から出たのじゃなかろうかというように言われる問題がたびたびありましたので、そのつど私は、これは調べなければいかぬと考えて調べたことも、過去の問題ではあるのでございます。多くの場合は、私の調べた範囲内では、地検から出たということのようにいわれておっても、調べてみたところが地検からは出てなかったという例が非常に多い、私はかようにいままでの経験から考えております。守るべき秘密というものにつきましては、検察当局が十分守ってもらわなければならない、かよう考えておる次第でございます。私は今後とも、この種のいまお述べになりましたことは重大な問題でございますので、秘密保持の問題を含みまして、検察庁の綱紀の粛正ということには一そう——これはいまの御注意の点からも一そう綱紀粛正を徹底さしていこう、こういうふうに考えておる次第でございますので、御了承を願いたいと存ずる次第でございます。
  79. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私の質問はこれで終わりますが、委員長にお願いしたいと思うのですが、いま政府当局説明では、私どもどうもはっきりしない点が多々ある。そこで、井本検事総長及び河井信太郎検事、それから福田赳夫氏、それから池田正之輔氏、これらの人たちを当委員会へ呼んでいただきまして、事の真相をなお明らかにしていただきたいと思います。これは委員長に要望しておきます。
  80. 永田亮一

    永田委員長 この問題につきましては、委員会終了後理事会を開いて御相談をいたしたいと思います。  松本善明君。
  81. 松本善明

    松本(善)委員 この日通事件に関連して先ほど来問題になっております福田幹事長池田正之輔氏と井本検事総長が会ったという問題は、検察のあり方の問題として非常に重大な問題だと思います。私は冒頭に言っておきたいことは、この問題について井本検事総長が九月の二日に記者会見をしておる。その後今日まで一カ月以上もたたなければ、この事態が国民の前に正式に明らかにならないという、これはきわめて遺憾なことであると思います。先ほど同僚委員が申しましたけれども、井本検事総長、それから河井最高検検事あるいは池田正之輔氏、福田幹事長、やはりこの重大な疑惑を晴らすために、責任をもって、あるいは進んでこの委員会に出てきて明らかにすべきであると思いますし、法務大臣にもこれからの質問について要望しておきたいのは、そういう重大な問題だ、私たち国民すべてが——ほとんどすべての新聞が取り上げ、ほとんどの週刊誌が取り上げている重大な疑惑を寄せられている問題だということを認識して答えていただきたいと思います。  最初にお聞きしたいのは、法務大臣、この井本検事総長の記者会見がありましたあとの読売新聞の記事によりますと、これは取るに足らないものだと思っているということを語られたというふうに出ておりますけれども、そういうお考えでおられますか。
  82. 赤間文三

    赤間国務大臣 私はこの問題は私的な問題である、こういうふうなことを根幹に申し上げたと承知をいたしております。職務に直接関係がない、ただ人から呼ばれたからお返しに呼んだという個人的な交際だ、こういうふうに当時聞いたのであって、あんまり個人的な事由をとやかくと批評するということはどうであろうか、こういうふうな考えを当時持っておったことを申し上げます。
  83. 松本善明

    松本(善)委員 私のお聞きしておりますのは、読売新聞では取るに足らぬものだというふうに法務大臣が語ったということが報道されておるのであります。そのような認識で現在でもおられるかどうかということをお聞きしておるわけです。
  84. 赤間文三

    赤間国務大臣 個人的な問題であるから、私個人としてはあまりどうとかこうとか批評することについては私は差し控えたいというような気分を持っておりまして、公の問題であれば私はあくまで正しいか正しくないか、どうかこうか、利害得失なり——全然個人的な会合の問題をとやかく言うことについては法務大臣としてはなるべく差し控えたいという気持ちを持っておったことを申し上げます。
  85. 松本善明

    松本(善)委員 この問題が公の問題に関係をするということを多くの人が言われて、それで大事な問題になっておるのだと思います。法務大臣はこの四月十九日の会合についてお調べになったということでありますが、だれから事情を聞かれたのでしょうか。
  86. 赤間文三

    赤間国務大臣 この問題につきましてはいろいろな方面から聞きました。特に必要であると思う面は調査をいたしました。その他あらゆる——あらゆると言ってはおかしいのですが、いろいろな人から話を承ったことを申し上げます。
  87. 松本善明

    松本(善)委員 われわれが国会法務大臣質問するのは、国民にかわりまして、法務大臣はこれについて何ら問題はないのだという趣旨のことを再々答弁されておるので、一体その結論はどこから出てきたのか、だれとだれとだれからどういうことを聞いてどういう調査をした結果がどういうふうになったのかということを聞きたいのです。それをいろいろの方面から聞いたというようなことで、私は結論的に何でもないと思うと言うだけで、国民が納得すると思いますか。
  88. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は法務省の人々からいろいろと調べてももらい、いろいろと事実を承りました。なお新聞記者の人からも私は多くこの問題について意見なりお話を事実上承りました。その他の人からもこの問題についていろいろ聞いたのであります。私は事実を率直にお答え申し上げる次第でございますので、いろいろな方面から聞いたというのは、聞かないのとは違って非常に勉強したことを御了承願いたいと思います。
  89. 松本善明

    松本(善)委員 それでは当事者の三人の方からはお聞きになりましたでしょうか。福田幹事長池田正之輔氏、それから井本検事総長、この会合趣旨について、あるいはそのときにあったこと、あるいは池田正之輔氏とそれから井本検事総長との関係、そういうことについて直接お聞きになりましたか。
  90. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は直接は聞きません。しかしながら、私のかわりの人が会いましていろいろとお話を聞いた。それを私が聞いたのであります。
  91. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、法務省からだれかが行って三人の方々からその当時のことを聞いた、こういうことですか。それならば、だれがいつお聞きになったのか、どういう人が行って聞いたのか、そのことを明らかにしてもらいたいと思います。
  92. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は、いつ幾日だれそれをどこに派遣して、だれからどういうふうな意見を聞いてきたということを申し上ぐることについては、御遠慮願いたいと思います。
  93. 松本善明

    松本(善)委員 それでは、その三人にとにかく全部法務省としては当たって聞いたということだけははっきり言えるのですか、それをお答えいただきたい。
  94. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は、御承知ように、いろいろ新聞週間誌その他、また本人のいろいろお話しになったことについても、あらゆる方面からいろいろできるだけ事実を承知をしておることだけをあなたに申し上げれば御了承いただけると思います。
  95. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、三人に対して法務省から人を派遣して聞いたかどうかということについてはこの委員会では明らかにできない、こういうことでありましょうか。私の聞いたのはそのことなんです。そのことにお答えいただけないというのは、三人に人を派してこの事情その他を聞いたかどうかということは言えない、こういう答弁ですか。
  96. 赤間文三

    赤間国務大臣 会って聞いたのであります。正確に、人を派してとかどうとかいうような……(松本(善)委員「三人ですよ」と呼ぶ)問題になっている三人のほうに、同じ人間が行った場合もありますから、三人とか二人とかいうことも申し上げられません。三人に会ったり、いろいろな印刷物やその他の話やら、私としてはできるだけの情報を収集して勉強をいたしましたことを申し上げます。
  97. 松本善明

    松本(善)委員 数日前に池田正之輔衆議院議員から親展の手紙が参りました。各国会議員に来ておるわけであります。その手紙の中には、少し読んでみますが、「昨年十一月初めに行なわれた検察庁の最高主脳人事で、当時検事総長の馬場君が停年退職となって、その後任に馬場君が当時の法務事務次官竹内寿平君をあて、事務次官には当時の最高検部長検事、大沢一郎君、東京地検検事正に河井信太郎君を推薦し、この人事が内定、佐藤総理の了解をとりつけ」たというようなことが書いてあって、これは馬場前検事総長自身の派閥を温存するための乱暴な人事だということで、池田氏が福田幹事長に会い、さらに佐藤総理大臣に会い、さらにそれから田中当時の法務大臣に話をして、この人事を変えた。その恨みが今度の自分の起訴だという趣旨のことが書かれてある。検察庁に政党顔負けの派閥抗争がある、こういう趣旨のことが書かれている。もし池田氏に法務省として当たられれば、当然こういうようなことも池田氏が言っているということはわかっただろうと思いますけれども、そういうことは全く事実に反しておるのか、池田氏が言っておることは荒唐無稽であって、そしてでたらめのことを言っておるのかどうか、そういう点について法務省としてはどういう考えをお持ちか、お聞きしたいと思います。
  98. 赤間文三

    赤間国務大臣 その点は私から明確にお答えをしたいと思います。  検察首脳の人事は、法務大臣において法務事務当局並びに検察部内の意向を徴して、これを十分に尊重して人選を行なう。いわゆる認証官については、閣議にはかった上内閣から、その他については法務大臣から任命の発令をしておる、これ御了承がいただけると思います。その筋を曲げたことは過去においてもありません。こういうことによって、人事を公正にやっていることを御了承願いたい。だれがどう言うた、かれがこう言ったというようなことについて一々答弁することは差し控えたいと考える。いま申し上げたルールをちっともゆがめずに、厳正公平な人事を行なったことを御了承願います。
  99. 松本善明

    松本(善)委員 いま法務大臣のお答えになったようなことは、法務大臣からお聞きしなくても、法律を見ればわかります。私がお聞きしておりますのは、先ほど来同僚委員質問をいたしましたが、井本検事総長がなぜ池田衆議院議員から就任祝いをしてもらい、そして就任祝いお返しをしなければならないよう関係になっておるのかということが問題になっておるから聞いておるのです。こういう問題について池田代議士が動いたということが事実かどうかということを聞いておる。こういう問題について、福田幹事長あるいは佐藤総理大臣に会って意見を言ったということが事実かどうかということを法務省は調べたかどうか。これは全く荒唐無稽の、事実無根のことかどうか、そういうふうに考えているかどうかという点をお聞きしたいわけです。
  100. 赤間文三

    赤間国務大臣 人事その他につきましては、いろいろな話があり得る場合がありますが、私が申し上げましたこの人事の問題は重大でございまして、責任のある者が責任のある仕事をやるのでございまするので、さきに言いましたような方法によってすべての人事が行なわれた、こういうことをはっきり申し上げて、それだけ申し上ぐれば当然おわかりになると私は思う。それを、だれがどう言うたのはどうかとか、だれがこう言うたのは事実か、そういうのは一々調査しないです。全部私は、法務大臣責任において、法務事務当局及び検察部内の意向を十分聴取して、これを十分に尊重して人事を行なう。重要な認証官については、閣議にはかった上内閣から、その他について法務大臣が任命する。このルールを厳重に行なってきておるということを申し上げておるのでありまして、個々の人がどう言うたからそれはほんとうか、うそかとかいうようなことについて、一々私は申し上げることは差し控えたい、かよう考えていますので、御了承願いたい。
  101. 松本善明

    松本(善)委員 これは、池田氏の問題については、直接御本人からの手紙で知ったのは初めてですけれども、週刊誌でももう知らない人はないといっていいくらいこのことは報道されております。こういうことがほんとうなのか。火のないところに煙は立たぬといわれる。こういうことを、絶対にないのかどうか、当然に調査をするべきであるにもかかわらず、それは調査をしていない、こういうことでありますか。そういうことは調査すべきことではないというふうに法務大臣はお考えになっておる、こういうふうに伺ってよろしいでしょうか。
  102. 赤間文三

    赤間国務大臣 法務大臣といたしましては、人事はこれは一番大事なんです。私の省はこれに最大の努力をする。これがうまくいけば法務行政はうまくいく。これをゆがませればうまくいかないということはもう御承知のとおりでございまするので、厳正公平な人事をやる。ただ一、二の人がいろいろな意見を申されても、この原則をわれわれは十分守って遺憾のないことを期していくのでございます。  それで、どなたがどういうことをおっしゃったから、それはほんとうかうそかとかいうようなことについては、私はお答えを差し控えたい、かように申し上げておるのでございます。私の言うルールがわかっておりますか。(松本(善)委員「わかっております」と呼ぶ)要するに、法務省首脳の人事は、法務大臣が全力をあげて、ただひとりよがりをしてはいかぬ。やっぱり多年練達たんのうな法務事務当局の意見を十分尊重しないと、ひとりよがりで自分の好きなことをやったってなるものじゃない。そのために人気が落ちてしまう。法務大臣にしても、事務当局の意見も聞かぬで、これでよかろうなんとやったらたいへんなことになって、回らなくなることは御承知のとおり。なお、幾ら法務省だけがひとりよがりでやっても、検察部内の意向を十分確かめてうまくいかないと、またこれが横を向くと能率を阻害することもありますので、検察当局の意向を十分に尊重して、厳正なる人事を、認証官については、御承知ように当然閣議にかけていく。こういうふうな事柄をゆがめず正しく行なってきた。私はずっと過去においてもそういうふうに承っております。  私は、人事は重大だから、さらにひとつ、いま申し上げました方向で人事をやっておるのであります。何も深い問題はないのじゃないかというような気がいたしますが、だれがどういうことを言うたとか言わぬということが、ほんとうだとかうそだとか、人事はいろいろ言います。たとえばいろいろな問題があると、どこから出たのじゃないかとか、そういうのは私のほうはとても多いのです。しかし、法務省としては冷静に出所をはっきりさせなければなりませんが、一々それを、これはどこから出たとかなんとかいうのも、また一利一害がありまするので、私はあまりものを多く言わない。そして筋のたがわぬように、ほんとうに日本の治安に全力を尽していこう、こういうふうな考え方を持っておりますので、御了承願いたい。
  103. 松本善明

    松本(善)委員 法務大臣は私の質問を御理解されていないのか、あるいは故意に変えてお答えをいただいているのかわかりませんが、私の聞きたいことは、法務省の人事についてルールがどうなっておるかということは、ここで詳しく御説明をいただかなくても法律を読めばわかることです。そんなことを国会でやるだけ時間がむだなんです。そういうことではないのです。池田代議士がなぜ井本検事総長就任祝いをやったり、就任祝いお返しをしたりという関係になるのか、それについて重大な疑惑のあるようなことを池田代議士本人が言っておるではないか。この問題を調査すべきではないというのかどうかということを聞いておるのです。いまの法務大臣の言われておることでは、そういうようなことは調査すべきではないのだ。いろいろ人事はありますよ。そういうようなことに法務大臣はお考えになっているのかどうかということを聞きたい。そんなことは取るに足らぬことだ、そんなことは言うだろう、だけれど、そんなことは調べる必要はない、法務大臣がきめていくのだから。これだけ答えればいいのだ、こういうふうにお考えになっているのかどうか。いままでと御意見が変わらなければ一言でけっこうです。     〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕
  104. 赤間文三

    赤間国務大臣 私は、たびたび申し上げましたように、一、二の人の意見でとやかくされるような人事は、法務省においては行なわれなくて、さきに言いましたような厳正な方法で人事が行なわれておるということを申し上げて御了承を賜わりたい、かよう考えておるものであります。
  105. 松本善明

    松本(善)委員 法務大臣にこれ以上お聞きしてもわからないと思います。私たちは、直接この会合に出席していた人たちからこの関係を聞かなければならない。私は確信をします。この点について、先ほど川井刑事局長は、池田代議士井本検事総長は特別の関係がないということを言われました。特別の関係のない場合でも、検察官というものは政治家から就任祝いをしてもらう、あるいは就任祝いお返しをするというのが検察庁の通常でありますか。
  106. 川井英良

    川井説明員 人間と人間の関係でございますから、個々の場合によっていろいろ度合いが違うと思います。しかし、一々その関係を吟味するというわけにもまいりませんので、一般的に申し上げたわけでございますが、私どもの常識的な考え方でもって、井本さんと池田さんの関係は、それほど特別な関係というのではなくて、先ほど申し上げましたように、国会に長らく刑事局長として出席しておったというようなことから面識を得て、そういうふうな関係があったのだということでございます。そういうふうな関係の場合に、検事総長という特別な地位に、その知っている者がついたということでもって、どういうような人がどういうような機会でもって就任のお祝いをするか、あるいはお祝いをしなくても何らかのお祝いを差し上げるか、あるいはことばでもって祝意を表するかというようなことは、これは個々の人の考え方なり、あるいは個々の人の日常の生活というふうなものから、いろいろ個別に割り出されてくるものでありまして、一般論、原則論として、こういうふうな関係があるから、こういう地位についた場合には必ず宴会をやってやるのだとか、あるいはそういうふうな場合には宴会をやらないほうがいいとか、理論的に割り切ることは、私は非常に困難ではないかと思います。やはりその人その人の主義と申しますか、人生観と申しますか、生活態度と申しますか、そういうふうなものに、私的な関係というものはまかせることが適当ではないか、こう考えます。
  107. 松本善明

    松本(善)委員 私の聞いておりますのは理論的な問題ではない。池田代議士就任祝いをやった。そのお返し井本検事総長がやったというのでしょう。それが普通だれが見ても、それは当然やるよう関係だろうというふうに理解をされなければおかしいと思うのは当然じゃないですか。そうでしょう。それは人それぞれの考えだということではないでしょう。当然に国民の前に、なぜああいうことが起こったのかということを明らかにする義務があるのと違いますか。だから、私のお聞きしておるのは、検察官というものは、特別の関係がなくても、政治家とこういうふうに就任祝いをされたり、そのお返しをしたりする関係にあるのかということを聞いておるのです。川井刑事局長先ほど答えられたところでは、特別な関係はないと言われた。特別な関係がないにもかかわらず、こういうことを料亭において再々にわたって検察官はやっておるのかどうかということを聞いておるのです。
  108. 川井英良

    川井説明員 検察官一般論といたしましては、そのようなことはあまりないのじゃないかと思います。
  109. 松本善明

    松本(善)委員 検察官一般としてそういうことはないと言われるならば、それではなぜ井本検事総長池田代議士からの就任祝いお返しをするという関係になったのかということを究明するのが当然の役目ではありませんか。それは何ら関係ないということをいまだに言われますか。
  110. 赤間文三

    赤間国務大臣 会食することの意味でございますが、これはもう会食というのは重大なことであって、めったにやらないというふうにはなってないと私は考えます。(松本(善)委員刑事局長の言うことと違う」と呼ぶ)刑事局長の理論と何も矛盾するわけでもありません。好きなときには会食をやりますので、あまり親しくなくてもやる場合もありますし、親しくても会食をやらない場合もありますし、千差万別でありまして、一々会食する程度の親密さはどの程度かとか、どういう慣例かというわけには私は一がいに言えない。われわれでも親しくない人と食事をする、親しい人と一つも食事をしない。また偶然会ったからめしを食べようかということもありますので、私的会合のものは、一々そう重要な意味は探究することが困難じゃないか、かように私は考えます。千差万別でありまして、一々めしを食うたからどうとかこうとか、めしを食わなかったから親しくないとか、祝いをせぬから親しくない、祝いをしたから親しい——一番親しい人が何もせぬで、親しくない人が祝いをする場合も、これは千差万別、その人その人の考え方によるので、一々それに理屈をつけて言うことは非常に困難じゃないか、かように私は考えます。
  111. 松本善明

    松本(善)委員 刑事局長のことばから出たので刑事局長に聞きたいと思いますけども、刑事局長は、池田代議士井本検事総長と特別な関係はなかったということをここで言われ、それから一般に検察官はそういうことはないんだということを言われました。特別の関係がない検事総長池田代議士就任祝いをしてもらい、そしてそのお返しをするという、検察官としては普通でないことが行なわれたということについて、刑事局長は何らの疑問も感じられないのですか。これは社会に当然あってしかるべきことだ、こういうふうに考えておられるのかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
  112. 川井英良

    川井説明員 検察官一般としては、政治家とやたらに会食をするというようなことは一般論としてはないものと思います。こういうことを申し上げたつもりでございます。ただ私が申し上げたいのは、たった一人しかない検事総長というポストについた人の交際の範囲でございます。先ほど他の委員質問にお答えして大臣から申し上げられましたように、検事総長という地位にある者がからに閉じこもっておるということはやはり適当でない。視野を広げて、そして検察一般の指導をするに足るような高邁な識見と豊富な常識を備えているということはやはり必要だと思います。したがいまして、そういうような意味からしまして、検事総長という立場の人は、一般の検察官より違ったかなり広い交際の範囲を持つということは、その地位にかんがみましても、社会的な立場から申しましても、当然のことではないか、こういうふうに私申し上げているわけでございます。これも一般論でございまして、具体的に井本検事総長池田正之輔氏と四月十九日に会食をしたということがどういうふうなことになるかということは、おそらくこれからまた続いて御質問があると思いますので、その際具体的な私の感触を申し上げたいと思っていたわけでございますけれども、一般論としては一般の検察官に比べまして検事総長という立場の人の交際の範囲はかなり広く深いものがあるのではないか、こういうふうな理解でございます。
  113. 松本善明

    松本(善)委員 検事総長といいますのは全国の検事を指揮する立場にあるわけであります。汚職事件捜査が発展しているようなときに、いささかでも疑惑を持たれるようなことをすべきではないと思いますが、法務省はそれについてはどうお考えですか。一般的に、検事総長というような立場にある者は、汚職事件についての捜査が行なわれておるときには、その身をうんと慎まなければならないものであります。こういうふうに思うけれども、どうですか。
  114. 赤間文三

    赤間国務大臣 やはり人の上になる人ほどお説のように身を慎むということはあなたと同じ考えであります。上になる人ほど身を慎むということについては、やはり一般には常識だと思います。しかし私は、また上になる人ほど交際が広くなることもやはり認めなければならぬと考えております。  ただ、検察というところは、たとえ知っておろうが知るまいが、どの党派であろうと、だれであろうと、地位が高かろうが低かろうが、とにかく公正厳正なる処置をどんなことがあってもやるというところに検察官の値打ちがあるのではないかということを私は考えておるのであります。それで私が非常にやかましく言うのは、公と私というものをいつも下の人には言うが、厳重に差別しなければならない、幾ら親しい親友であっても、罪に該当する者を親しきがゆえをもって幾分寛大にするということは、私としては絶対に許すべからざることであると考えます。仕事が厳正公平、国民の信頼にこたえるだけの正しいことをやるというところに生命があると私は考えております。今度の事件も、このために何か仕事をゆがめたとか、あるいは不公正なことをやったというなら大いに議論になると私は思うのですが、今度は、私のいままでの調査によれば、前にごちそうになったからお返しを、人の出入りの激しいところで、花蝶でやられたということで報告を受けておりますので、それをもって、法務大臣としては、私行にわたるものについてはあまり論議をすることは私は個人的に差し控えたい。職務につながるものは私はやる。私の見るところでは、職務につながってないというふうに考えております。そういうふうな趣旨でおりますので、その辺御了承を賜わればと思います。
  115. 松本善明

    松本(善)委員 裁判官には回避という制度がありまして、そして自分に親しい人が事件になっているというような場合には裁判に携わらないという制度があります。検察官自分にきわめて親しいという人の事件を扱わなければならないというときには、それはしかるべき配慮をしなければならないはずだと思いますけれども、それについては法務省ではどう考えておりますか。
  116. 赤間文三

    赤間国務大臣 検察官は裁判官の場合と異なりまして、除斥、忌避、回避に関する規定は御承知ようにございませんが、検察官事件関係者と親族関係その他これに準ずるような特殊な関係にあって職務の公正を保ちがたいと認められるような場合には、その事件の処理に関与することを避けるのが妥当ではないかと私は考えます。井本総長池田議員とは通常知人程度の関係にすぎない、かように私は見ております。検事総長としての職務の公正に影響を及ぼすような特別な関係にあったわけではございませんので、池田議員の処分についてみずから回避すべき理由はなかったものと考えております。
  117. 松本善明

    松本(善)委員 そういたしますと、法務大臣考えでは、検事総長になったことについての就任祝いをしてもらうとかあるいはそのお返しをするとか、そういうよう関係通常関係であって、何ら特にここに言うような親しい関係でない。その程度の関係を持っておるという場合であっても、検察官——私たちからいえばきわめて親しい関係だと思いますが、そういうよう事件を処理するのは一向に差しつかえない、こういうふうにお考えだ、こういうことですか。
  118. 赤間文三

    赤間国務大臣 そう非常に親しい、自分からそれにあずからぬほど親しい間柄だとは、法務省は見ておりません。
  119. 松本善明

    松本(善)委員 報道されているところによれば、あるいは池田議員の言われることでは、井本検事総長検事総長になったについては池田議員がたいへんな力があった、こういうことだそうであります。そういうよう関係がもしありとするならば、私は当然に捜査会議には出ないで、あるいはそれについては発言をしないというのが検察官としてのあり方ではないかと思う。ところが、事もあろうに、また報道されているところによれば、井本検事総長は強力に池田議員の逮捕をするなということを主張したということが言われております。池田議員井本検事総長との関係がどのような程度のものであったかということについて詳しく調べるということは、検察庁のあり方としては当然のことではないかと思いますが、それについて法務大臣の意見を聞きたい。
  120. 赤間文三

    赤間国務大臣 ただいま申し上げましたように、みずからそれに関係しないほど親密であったとは法務省考えておりません。われわれは客観的にものを見ますので、その関係は、自分からそういうものに関与しないというほど親しかったとは考えておらないと申し上げたいと考えております。  それともう一つは、会議のことは申し上げにくいのでありまするが、この会議はなかなか議論も活発にやりまして、正しきことに決定することになっておりまして、たとえ一人がとやかく言っても、わが検察の者は正しきに従うという慣例になっておる。一人がたとええこひいきをやるようなことが——前はありませんよ。全然関係ないのです。たとえあっても、何らの影響がないような組織が組み立てられておることを、ここに重ねて申しますと、池田氏と井本氏との関係はそう親しいものではない、かよう法務省は見ております。
  121. 松本善明

    松本(善)委員 だんだん法務大臣も、そう親しいものではないが親しいものであるということは認めるようになってきたようであります。先ほど通常関係だということであったけれども、そういう説明ではとうてい国民は納得しないと思います。私はやはり直接池田氏あるいは井本検事総長から聞かなければならないと思います。それが国民の疑惑を晴らす道だと思います。  さらにお聞きしたいのですけれども、この日通事件については政界に波及するということは考えていなかったということを言われておりますが、三月二十三日の参議院予算委員会におきまして公明党の鈴木一弘議員が、この日通事件で伊豆の富士見ホテルに福田幹事長が泊まったという問題を取り上げております。そうしてその直後に福島日通社長が辞職をしておるのであります。これもまたたいへん疑惑の深いことであります。検事総長とするならば当然こういうことは知っておらなければならない。政治情勢について私は法務大臣と意見は違って、いろいろな政治家と会ったりするのは慎まなければならないと思いますけれども、国会のこういうような動きについては十分に気をつけていなければならないはずだと思う。それならば、そういうような問題の起こっている事件があるわけです。この四月の十九日に福田幹事長池田正之輔氏と会うというようなことはしないというのが検事総長としての当然のことではないかと思います。こういうふうに日通事件国会で取り上げられているというようなことは検事総長は知らなかったのでしょうか。
  122. 赤間文三

    赤間国務大臣 私も検事総長も、この四月の十九日ころにおきましては、これが政界に波及するかせぬかというようなことについては存じませんでした。
  123. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、いま私の申しました三月二十三日に参議院予算委員会で問題になったようなことは、全く歯牙にもかける必要のない、何ら考慮を払う必要もないような問題、こういうふうにお考えになっていたということでありますか。
  124. 赤間文三

    赤間国務大臣 世の人のおっしゃるようなことは、非常な熱意をもって、国会ではもちろんのこと、国会内外でも聞いておりまするが、われわれのやりまするのは、うわさとかいろいろな風聞とかでは絶対にわれわれは動かないのでございます。あくまでも堅実な証拠主義によって動いていくというたてまえをとっておる。証拠が出始めておったとかいうのであるならば私は意味が違うと思いますが、ただわれわれとしては、証拠が何ら出てない、またそういうことについては非常な注意は払いましても、そういうことにわれわれ考えていなかった、波及せぬことを希望し、かつまた、おそらく波及せぬであろうというふうに希望的観測をもって四月十九日ころには、露骨に、はっきりと申し上げますると、いろいろなことがあるが波及せぬことが望ましいし、波及しなければいいがという考えを持っておった。波及するというよう考えは持っていなかった、これははっきり申し上げたい。
  125. 松本善明

    松本(善)委員 法務大臣のいま言われたことを聞きますと、検察官は、汚職事件についての証拠が出てくるまでは、その関係の政治家と——出てきたら会ってはいけないけれども、出てくるまでは別にそういうことは気にする必要もない、そういうふうに受け取れます。私は多少違うのです。この事件は政界に波及するかもしれないというようなおそれのある事件検察庁の中で大きな問題になっておるときには、検事総長たる者は、いかに親しい関係があろうとも、与党の幹事長などとは絶対に会うべきではない。ましてや、その会ったあと、会った中の一人が起訴をされるというような事態になるならば、これはもう当然に、事がどういうものであろうと、証拠について知っていようと知っていまいと、自分の職責についてほんとうに責任を感じておるならば、当然に辞任をしなければならないし、それから法務大臣は、これをやめさす、そうして検察というものがどのような疑惑もないのだ、どういう政治的なことにも動かされないのだということをはっきりさすべきじゃないかと思いますけれども、法務大臣、そういう点は、そういう考えについてはどういう御所見をお持ちですか。
  126. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答え申し上げます。  法務大臣としては、厳正公平なる捜査をやる、厳正公平なる処置をやるということに徹する、これがわれわれの生命であると考えております。個人的な会合、個人的にいろいろなものについてとやかく論議するということは、私としてはあまりそういうものは取り立てたくない。ただ、いやしくもそのことが、そのために公にどんなことに不正が行なわれたか、そういうことが問題となるならば、これは大いなる議論になりますけれども、ただ個人がめしを食うた、それがときたまたま何かの事件の最中であったということだけでとやかく言うということは、あまりやるべきじゃない。私はあなたと少し考えが違うわけであります。私は、いやしくもやるべきことをやらない、不正義なことをやった、好ましからざる事実が現実に起こってきたならば、断固たる処置をとらなければならぬと思うが、個人の交際でめしを食ったことについて、そのことが非常に好ましくないじゃないかということについては、私はあなたと幾ぶんか考えが違う。ただ、さきにも言いましたように、人からとやかく言われるようなことは、慎むべきだということは、何もこの事件に限らず、人間として私は常のことであると思っておる。事柄のいかんを問わず、人からとやかく言われることのないようにやるということについては、私は全然同感であります。  そういうことで、この日通事件の処理について私の考えを率直に言うならば、厳正公平にこの処置が行なわれたということを私は信じておりまして、めしを食うたのはお返しでめしを食うたんじゃないか、それをいろいろ、ときがあるから、何か不正義を思わしめるようなことを言うことは、またいろいろな問題にぐあいが悪くなるのじゃなかろうか。私はほんとうに厳正に日通事件については行なわれたということを信じておりますから、そういうことを言うのです。検事総長交際をしちゃ悪いというふうにはいかぬというように私は思います。法務大臣から、えらい者は他人と一切めしを食うたらいかぬと言うわけにはまいりますまい。将来あやまちをおかすような人物は、事前に調査してめしを食わなければいかぬというわけにもいきにくいのじゃないか、こういうように私は考えておるのです。それで、四月十九日ころに、われわれは、政界に波及するということを信じておった人はあまり——私はあるかないか知りませんが、われわれは一つも波及するという考えは持っていなかった。さきに言いましたように、証拠が出てこなければわれわれは人を疑うたりいろいろなことをしない。極力勉強はしますけれども、証拠のないところから、この辺にひとつ行きやせんかなんとかいうことは、法務当局としては考えないようにいたしております。この辺の考え方があなたのほうと私と食い違うておるところが幾ぶんかあるんじゃないかというような、ざっくばらんに言うと、そういう気がいたします。
  127. 松本善明

    松本(善)委員 少しくらいの食い違いではなさそうであります。もし法務大臣の言われるように、これがただめしを食った、私的な会合だけというなら、なぜこれだけたくさんの新聞記者が記事にいたしますか。これを記事にしてない新聞週刊誌のほうはないんですよ。私の持ってきた資料だけで、こんなにあります。幾らでもあります。法務大臣の言うようなことなら、記事にならないですよ。法務大臣のそういう説明では、とうてい国民は納得しない。日通事件が厳正公平に行なわれていると言うけれども、これについてみんな疑惑を持っておるのです。数億の金が政界に流れたといわれながら、どういう国会議員に渡ったのかということは明らかにされていない。何がどうしてそれが正当であり、どこが不正なのかということは、国民の前に明らかになっていないのです。大もとがこうなっておるから、みんなおかしいんじゃないか、こういうことになる。そういうやり方では、検察の公正というのは絶体に保てないです。検察に対する外からの疑惑だけではなくて、内部検察官自身が、こんな仕事をおれはやっているのかということになりますよ。情けない仕事をやっておるということになりますよ。検事総長は政治家にこういう機会に幾ら会ってもかまわないのだ、法務大臣が堂々と国会で弁護をしてくれる、こう下のほうで働いておる検察官はみんな思いますよ。私はそういう意味で、これは単に井本検事総長池田代議士と会って食事をした、あるいは福田幹事長と会って一緒に食事をしたという問題だけではない。その背景に、日通捜査についての疑惑が国民全体にあるということなんです。そういう意味で、日通捜査はやり直さなければいかぬ。徹底的に綱紀を粛正するということ、先ほど検察内部の綱紀を粛正すると言われたけれども、それは検察首脳自身の綱紀を粛正しなければならぬはずだと私は思います。そういうことを要求し、この問題については決してこれで終わらない、もっと明らかにしていかなければならない問題が残っている、きょうはこの程度で終わるということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  128. 大竹太郎

    大竹委員長代理 岡沢完治君。
  129. 岡沢完治

    岡沢委員 すでに昼食時間を一時間以上経過しているわけでございますけれども、すでに質問されました三人の質問とも関連いたしますので、引き続いて会食問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  先ほど松本委員に対する答弁の中で、刑事局長のほうでたった一人しかない検事総長だからという意味のことばがございました。文字どおりに解しますればそうでございますけれども、検察庁法第七条によりましても、検事総長は「すべての検察庁の職員を指揮監督する。」という立場におられます。また、刑事訴訟法第二百四十七条によりますと、「公訴は、検察官がこれを行う。」検察官だけが公訴権を持っておるのが日本の法律上の規定であります。しかもまた、二百四十八条にはいわゆる起訴便宜主義という規定がございまして、犯罪がありましても検察官が訴追を必要としないときは公訴を提起しないことができるという、非常に大幅な裁量権を検察に与えております。それだけに、万一検察行政が、検察権の行使が政治的に行なわれるということになりますと、単に検察への不信だけではなしに、民主主義あるいは日本の憲法体制、あるいはいま大学問題が大きく表面化いたしておりますけれども、体制への不信ということにもつながるかと思いまして、きわめて重要な意義を含んでおると私は考えますので、あえて時間の超過をも顧みず質問を続行させていただく次第でございます。  最初に、ことばじりをつかまえるようで恐縮でございますけれども、先ほど松本委員質問に対しまして、池田氏の逮捕不逮捕に関連して、検察庁、法務省で首脳会議があったということの御答弁の中で、いわゆる合議制のような感じで大いに議論を尽くすから、検事総長一人の意見ではどうにもならないという意味の御答弁法務大臣からございましたけれども、裁判所の合議体制とは全く違いまして、検察庁の指揮監督検察庁の処分につきましては、検事総長法務大臣以外の指揮を受けないわけでございますし、合議をいたしましても、最後の決裁権は検事総長にあると私は感じますけれども、その点についての法務大臣の御見解をあらためて聞きたいと思います。
  130. 赤間文三

    赤間国務大臣 この会議につきましては、さっき申し上げましたように、いろいろな意見が出ることはたびたびあります。ただ、実際の状況を見ますと、ほかがみんなAならAと言うのに、検事総長だけがBと言うても絶対に通るものでない。露骨に言いますと、そういうことを話して、合議的にこれが行なわれて、それで合議が正しきに向かって行なわれる、こういう意味のことを私は申し上げたのであります。要するに、もともと合議制でやるのは、誤りがないように、正しき道が見出されるための会議だという前提のもとに私はお答えを申し上げたような次第でございます。それで、どっちかといいますと、これは何も井本事件について言っておるわけでも何でもないので、会議の性質が、要するにあやまちのないために、最高の者が寄って知能をしぼって、何が正しいか、適切なものであるかという協議をやって、その方角に進むようになっておる。ただそのうち一人二人がとやかく言ってもやっぱり正しき方角に行くことに間違いがない、こういうふうな心持ちのことを説明したのでございます。御了承を願いたいと思います。
  131. 岡沢完治

    岡沢委員 いまの法務大臣の御答弁、私はきわめて重要な問題を含んでいると思います。私も決して井本事件だけを聞いておるわけではないのでございまして、これは法務大臣が法曹の御出身でないから、あまりことばじりをつかまえるのはほんとうにどうかと思いますけれども、検察の基本体制というのは、いまの法務大臣のお答えとは法制上違うのではないかと私は考えます。望ましいあり方としては、法務大臣がおっしゃるように、合議制の、あるいはそれに参画した多数意見の、あるいはそれの真実正しい方向に従うということは望ましいことでありますけれども、少なくとも検察庁法あるいは日本の法体系からいたしますと、検事総長はすべての検事を指揮監督できるわけでありまして、他のいかなる補佐役の意見と違いましても、最後の政治的な判断で検事総長が決裁を下すというのが現在の検察庁法上の規定ではないかと私は思います。そうなればこそ、たった一人しかない検事総長という意味が出てまいりますし、検事総長等の職責あるいは今度の事件が大きくクローズアップされた理由もそこにあると見るべきだと私は思うので、私は、むしろ専門家であります刑事局長のこの点についてのはっきりした御答弁をいただきたいと思います。
  132. 川井英良

    川井説明員 検察庁法に規定されておる検察の指揮命令系統は、ただいま仰せになりましたとおりでございます。ただ、運用の問題でございますが、検察庁の中へ入っていただきますと、検察事務の運営、特にその指揮命令系統というものの運用の実態がよくわかるのでございますが、これはきわめて特殊な組織の中になっておりまして、通常の方が必ずしもやたらに入り込めないよう事情になっておりますので、かなり変わった運用といいますか、実態に相なっております。形は非常にいかめしいかっこうになっておりますけれども、事件の具体的処理につきましては、上と下の者とが証拠に基づいて十分に意見を戦わせまして、そして、最も妥当な結論を得るというのが、長年検察官がとりきたってまいりました伝統でございます。ですから、検事正と検事長の意見が違う、そこで検事総長がそこへ出ていって、どっちがいいかということをその場でぴしゃりときめてしまうというようなことは実はないわけでございます。やはり三者が集まりまして、そして十分に時間をかけてあらゆる面から検討いたしまして、三者みんなが納得するような線を出していく、そういうような処理をしていくのがこの実務の運営でございます。検察官一体の原則というものは掲げられておりますけれども、一人や二人の人ではなくて大ぜいの者が一体となって、そして個々の事件の起訴不起訴をきめていく。また、きめていくためには、だれかたった一人の人が最後の断を下すというようなことではなくて、十分下の者の意見をくみ取って、そして意思の疎通をはかって、みんなが納得するような形において最後の結論が出るというのが検察の実態でございまして、いまだかつて、明治の古いことは知りませんけれども、過去何十年間、この意見がきまらなくて、最後結局検事総長が断を下してきまったというふうな重大事件は私はなかったと思います。  ただ問題は、検事総長法務大臣との関係でございまして、これは特殊な関係にありますので、場合によりましたら指揮権の発動というようなこともないわけではございませんけれども、これも過去にたった一回、造船汚職のときにあっただけでございまして、その他いずれの事件におきましても、入念な、また綿密な話し合いの結果、妥当とするような結論が出ておるというのがこの運用の実態でございます。かたい法律的な仕組みはただいま御説明のとおりでございますけれども、運用の実態というのはただいま私がるる申し上げたとおりでございます。
  133. 岡沢完治

    岡沢委員 この問題の議論をしておりますと本筋から離れますので、具体的にこの会食の問題に触れさせていただきたいと思います。  大竹委員質問に対しまして大臣のほうで、福田幹事長に関する限りは井本総長のほうから招待したという意味のことばがございましたし、現に支払いは井本総長がすべてやっておられるようであります。もしそのとおりだといたしますと、私は、池田議員との会食以上に大きな問題が、この福田幹事長と現職の検事総長との会食という点にあるような感じがいたします。それは、先ほど大臣から、検察の公正厳正な処分、中立性、厳正な態度の必要性ということを強調されております。それはもちろんそのとおりであります。それが単に具体的な個々の事件について厳正公正に行なわれるということはもとより必要であります。しかし、国民から見て、あるいは検察部内から見て、公正な検察行政が行なわれる、あるいは検察人事の政治性が排除されるというところにも大きなウエートがありはせぬか。そういう観点からいたしますと、時の与党の幹事長と検察の最高の地位にある検事総長とが会食をなさる。法務大臣は、重ねて個人的な会合だ、私的な会合だということをおっしゃいますけれども、私は、わが党の先輩のことばを出して恐縮でございますけれども、書記長個人ということばがございました。くしくもこの問題の福田幹事長あるいは井本検事総長が関連しておられます昭電疑獄のときに生まれたことばでありますけれども、やはり私は、検事総長あるいは与党の幹事長、こういう特別な地位にある方の行為の場合は、やはりその官職と切り離せない解釈を国民もいたしますし、また部内から見ても解釈せざるを得ないのではないか。単にこれが私的な会合だから問題にならないという御見解は国民感情と反するし、先ほど松本委員が指摘いたしましたように、世論あるいは報道機関が大きく取り上げられる理由もそこにあるのではないかというふうに感じました。この点はきわめて遺憾であると私は思います。法務大臣は、それでもなお私的な会合だから、大臣としては問題にする必要はないとお考えでございますか。
  134. 赤間文三

    赤間国務大臣 この福田幹事長を呼んだ理由は、幹事長だからといって呼んだのではないのじゃないか。昔からの友だちという関係で呼んだ、私はこういう解釈で、またそれが事実に合うのじゃなかろうか。それで、お話のようにそれは切り離せないというふうにおっしゃいますが、私は、事柄がああいうだれでも出入りするようなところで飯を食べるというのだから、何か重要な会議でもやるというならば、これは私個人の想像だが、もっと適当なところもあるのじゃないか。人の出入りの激しい花蝶ようなところで、ただ昔からのなじみでよく知り合っておるから飯を食べるというよう考え方を私は持っておりますので、個人的な会合と見ても間違いがないじゃないか、こういうような解釈を持っておる。しかし、さきにも言いましたように、人からいろいろなことを言われるような種は慎むということについては、これは人間全部慎むべきである。人からいろいろ論議せられるという種をまくことは、まかないように慎むべきである。これは一般論として……。今度のこの問題は、幹事長の資格で自民党の幹事長を呼んで飯を食おうというような意味でなくて、あれは昔からのなじみだからひとつ一緒に飯を食おうという意味で呼んだ、こういう意味から私的の会合じゃないか。私的の会合と見ることが実際に当たるのじゃなかろうか。私的な会合であると、それについてとやかく言うことについては、法務大臣としては私はなるべく差し控えたいというような気がする、こういうふうな気持ちなんでございます。その辺御了承賜わればよろしいと思います。こういうふうに考えております。
  135. 岡沢完治

    岡沢委員 この論議はあまり実りあるものとは言えないかもしれませんが、しかしまた、ある意味では実りあるきわめて大事な問題を含んでおると思います。私も一年生の代議士でございますから、一年生の代議士と東京地検の一検事が飯を食うというのとはやはり違う。しかも、時が先ほど来指摘されたようなときであり、そして人との関係花蝶という場所を非常に小さくごらんになりますけれども、やはり私は、日本の過去の政治の実態からいたしまして、あるいはまた国民から見た政治の感覚からいたしまして、かえって重要な秘密会談料亭が、あっさりしたところが使われるということが考えられるわけでありまして、私、このとき、人、場所等を考えた場合に、これは簡単に私的なものだということで済ます人があってもいいかもしれませんけれども、法の元締めであります法務大臣がそうおっしゃることは、やはり国民感情から乖離いたしますし、また法の威信という点からいたしましても問題ではないか。繰り返して申されていますように、検事総長という日本にはたった一人しかない存在から考えますと、先ほど来李下に冠を正さず、瓜田にくつを入れずということをこの際こそかみしめて考えてもらうべきではなかったか。せめて私は、法務大臣として遺憾であったというくらいの表明は国民に対してなさるべきじゃないかと感じますが、いかがでございましょうか。
  136. 赤間文三

    赤間国務大臣 とにかくいろいろと多くの人からとやかく言われるようなことは、上に立つ人はもちろんそういうことはなるべく避けるべきである、こういうふうに私は考えております。
  137. 岡沢完治

    岡沢委員 先ほどの最初の大竹委員質問に関連いたしまして、今度の事件の情報は部内から出たものではないと確信するということを法務大臣はおっしゃいました。確信されるからにはそれだけの理由があるのだろうと思います。むしろ逆に、大竹委員のほうからは、部内から出たらしいと思われる根拠、たとえば押収書類等をあげて御質問になりました。法務大臣があえて部内から出たものでないと確信されるその根拠を明らかにしていただきたいと思います。
  138. 赤間文三

    赤間国務大臣 これは、私は直接調べたわけではないですけれども、法務省の人に十分その点は調べてもらって、私としては、地検から出たのではないかといういろいろなうわさが事実かどうかということを調べてみましたところ、そういう事実はないという報告も受けておりまするし、報告以外にも、いろいろそういうことについて私のできる限りの調査をいたしましたが、部内から出たものでない、こういうふうに私は確信を得たのでございます。しからばどこから出たかということになりますが、これがまたなかなか——書いた「赤旗」なんかがありますので、ああいうところに書いた人からでも言うてくれると調子がいいのですが、なかなかこれはむずかしい。「財界」なんかにも出ておりますが、これまたなかなかむずかしい。まあ手の届く限り——どこか出どころがわかると非常にぐあいがいい、はっきり言えると思いまして調べてみておりますが、だれがそういうことを出したか、どういう経路かということはまだつかめておりません。ただ、地検だけは私らの調査によると出たところでない、こういうことでございます。過去におきましてたびたびあそこから出たのじゃないかという場合がありましたから、そのつど私は、秘密を守るということは捜査関係者として非常に大事なこと、これをゆるがせにされると人権を阻害する、いろいろな悪弊が伴うので、検察当局としては秘密厳守ということは私どもの一つのモットーになっているのでございます。出たということがはっきりするならば、私はそれ相当の処分をやって綱紀の粛正をしなければならぬ、こういう考えを常々持っておりますので、注意してみましたところが、いま言いましたように私の調べたところでは、地検から出たものではない、こういう確信を得ておるような次第でございます。御了承願いたいと思います。
  139. 岡沢完治

    岡沢委員 検察人事の政治性という問題につきまして、先ほど法務大臣自身、人事の公正、人事は自分の行政の中でも一番大事なものだという意味のお話がございました。私もそれは一面の真理だと思います。そういうふうに感じますと、今度の事件先ほど松本委員からも、池田議員のわれわれ議員に対する親書をお出しになっての御説明がございました。今度の会食事件が、池田議員に対しては、時期は別として会食のお礼だ、返礼だということにかりに解釈されるといたしましても、福田幹事長に関しては、与党の実力者が自分検事総長にしてくれたお礼だというふうな解釈を国民がいたしましても必ずしも行き過ぎではない、そういうことは十分国民も考えるほうがあたりまえじゃないかという感じがいたします。ことに福田幹事長井本検事総長が同窓であり、そうしてまた福田幹事長のかつての事件弁護人であったというようなことを考えますと、やはりこの際、検察人事の公正、これが井本検事総長の適任、不適任という問題を離れまして、先ほど申しましたように、部内からも国民からも、検察人事は政治から独立しておるのだ、少なくとも与党の幹部の意向によって変わるものではないのだということを示していただく意味からも、井本検事総長個人に対しては非常に忍びない点がありますけれども、やはり日本の検察への国民の信頼あるいはまた部内からの上層部に対する信頼ということを明らかにしていただくという意味からも、他に人材もないとはいえない検察庁の実態だと私は思います、やはりきれいな、国民の納得する処置がこの際とられてしかるべきではないかと大所高所から判断をした場合に考えますし、おそらく井本検事総長といたしましても、自分の個人の単なる地位の問題よりも、日本の検察の威信を保つということのほうに喜びを感じられる人格者だ、識見者だと考えるだけにそう思いますが、法務大臣としていかが私の意見に対してお考えであるか、お聞きいたしたいと思います。
  140. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答えを申し上げます。  問題となっておりまする行為は、たびたび私が申し上げましたように、井本君個人の私的な交際の範囲に属する事柄で、私は、そこに特に非難をすべき理由というものが見当たらない以上は、検事総長の進退について云々する必要はないものと考えております。
  141. 岡沢完治

    岡沢委員 いまの大臣のお答えには、私個人も、大部分の国民も納得しないのではないか。特に非難すべきものがないという明言をなさいましたが、私はもちろん刑事的な事件として非難すべきだと申し上げているのではございません。検事総長という地位からして、道義的にあるいは職業の立場上非難すべき点がなかったと法務大臣が言い切られるのがこの事件に対する対処のしかたかどうか、私は非常に疑問を持つものであります。特に私の聞き間違いでなければ、先ほど来の特に松本委員質問に対しまして、この問題が問題化したこと、論議化されたこと自体が悪い、単なる個人的な問題がなぜ問題になったかということに対する不満めいた御発言大臣からあったように私は感じますが、もしそうだったとすればなおさらのこと、何をか言わんやであります。問題にならなくとも、検事総長は時の与党の幹事長と少なくとも公式の場で会われるとかというならもちろん問題はございませんけれども、幹事長は内閣の一員ではもちろんございません。それだけに、党を代表する立場にあられますその人が、検察行政の最頂点におる人と会食すること自体は、やはり私は、いかに私的であろうと、いささかの非難にも値しないという解釈は、どうしても納得できないということを明らかにさしていただきます。  それからもう一つ、これもまたことばじりをつかまえるようで、私の聞き間違いであればおわびをいたしますが、最後質問として、四月十九日ごろの法務大臣の感想として、日通事件が政界に波及しなければよいがという自分は希望は持っていたという意味の先ほど発言がございました。私は、国民の立場あるいは当事者の立場なら波及しなければいいがということばはわかります。また、われわれとして政界が汚職に包まれないということを望むことはもとよりでありますけれども、しかし、検察行政に携わる、あるいは法務大臣の地位からいたしますと、ことにまた法秩序の維持者というお立場からいたしますと、やはり不正と戦う気持ち、不正は許さない、不正をやって免れる者は許さないという職務上の義務的な感覚が大臣としておありであったほうが正しいのであって、一代議士としてあるいは一自民党員として政界に波及することは望ましくないと考えることは自由でありますけれども、法務大臣としてはやはり事件は徹底的に調べるのだという気迫こそ、私は検察への国民の期待じゃないかと思うわけでございますが、大臣の見解を重ねてお聞かせいただきたいと思います。
  142. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答え申し上げます。  全くあなたと同じ考えを持っております。やはりこの事件がとにかく起こらぬことがもう一番私は好きでございます。起こってもそれがなるべく広がらぬということを非常に希望をいたします。しかし、法務大臣としては、お述べになりましたように、起こったものはこれにふたをするというようなことはやめて、断固としてこれを徹底的に捜査もやるし、徹底さして信頼を得る、こういうことが私の今日までやってきた主義でございます。起こったものにふたをするというような主義は絶対にとらない、あくまで不正というものを正す勇気と努力を過去においてもやっておるし、将来においてもやる、全くあなたと同じ考えでございます。ただ、個人的な考えとしては、やはりなるべく事件が起こらぬことが望ましい、波及するとほんとうに身を切られるような思いがします。しかし、公の法務大臣としては、断固としてこれは許しません、正していくという考えに燃えておりますので、どうぞその点全く同じ考えでありますことを御了承願います。
  143. 岡沢完治

    岡沢委員 終わります。
  144. 大竹太郎

    大竹委員長代理 午後二時三十分より再開することとし、暫時休憩をいたします。     午後一時四十三分休憩      ────◇─────     午後二時四十三分開議
  145. 永田亮一

    永田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。神近市子君。
  146. 神近市子

    神近委員 金曜日の新聞に出入国管理令の改正を大臣考えておいでになるということが伝えられておりました。私は、何にも国籍的には関係がないのですけれど、初めて衆議院に入ったときに、小さな子供が追い返された事件があって、それを頼まれたことから病みつきになって、入管の問題というと私が頼まれるということになっている。いまいろいろの情勢を考えますと、入管をもうちょっと公平に、迅速におやりになってください。それで今度大臣が出入国管理令を御改正になるということについて、私は少し質問申し上げたいと思うのです。大体社会党では亡命者の救護の法を考えている方があるので、そのためにこの間大村入管も見に行ったくらいでありますけれど、大体改革の構想というものをお持ちになっているなら、ちょっとそれを伺わせていただきたいのですが……。
  147. 赤間文三

    赤間国務大臣 大体出入国管理令の改正を、目下盛んに準備をやっておるという状態であります。改正の方向としましては、短期の旅行者について出入国の手続を簡素にしようというのが要点の第一点。要点の第二は、外国人の在留管理をより適正にしようというのが第二の点であります。第三の点は、在日朝鮮人及び台湾人の地位には変更は加えない、こういうことが大体いま考えておる骨子になるのでございます。この三つでございます。
  148. 神近市子

    神近委員 大体新聞にもこのお考えが出ていたようでありました。亡命者の保護ということは、国際的に行なわれている。日本から亡命者が行ったということは聞かないけれど、百数十カ国の小さな国、そして特に南米のようなところでは、非常にいろいろの混乱がある。そういう場合の亡命者は相当大事に保護されているのですけれど、日本だけが亡命者を保護しないというようなお考えは、どこから一体生まれてきているのですか。われわれは国交のない国を幾つか控えているということもありますが、これはぜひひとつ人道的に考えて持つべきだと私どもは考えるのですけれど、法務大臣は、その点どういうふうに考えていらっしゃいますか。
  149. 赤間文三

    赤間国務大臣 いわゆる政治的亡命者を庇護する旨の規定につきましては、御承知ように、国際慣習法上政治的亡命者という概念はまだ熟していないよう考えますし、わが国の憲法におきましても、これに関する規定がまだございません。わが国は、また難民条約にも加入していないというような状態でございます。いろいろ困難な問題がありまするので、この点をなおさらに慎重に検討しておる最中でございます。少なくとも、私がいまはっきりと考えておりますることは、亡命者を本国に送還することが適当でない、ざっくばらんに言いますと、身の危険があるというふうに認められるような者については、そういうところには送還をしない、あぶないようなところには送還をしない、こういうようなことは、はっきりとやりたいと考えております。
  150. 神近市子

    神近委員 日本に亡命者の保護法がないから、この間からのような、ベトナムの兵隊をベ平連というようなところで——ベ平連は、この間新宿の問題で家宅捜索かなんか受けたようですけれど、それまでの一般の気持ちというものは、よくやっているなあというような気持ち、そうして資金カンパが来ても、ベ平連にはみんなインテリの人たちは喜んで大きな金を出したのですよ。そういうような国民の感情というようなものを一つも考慮なさらないという——私はいまこの亡命法についてのあなたのお考えが大体わかったような気もしますが、近い将来に必ずこれはつくらなくては、日本の面積は小さくても、大国の一つとしての日本の面目にかかわると私は考えます。その点どうかひとつ考えていただきたいと思います。  それからもう一つ伺いたいことは、朝鮮の問題であります。私は、この間あるところで、これは証人に呼べばいつでも出てこられると思うのですけれど、北鮮人に対する態度のことをいろいろ伺いました。この人は終戦時に北海道におりまして、三千四、五百人の朝鮮人が——そのときは南北の区別はないのですから、南北の朝鮮人、その人たちが強制労働をさせられていて、終戦ということになったら追っ払われたというこの状態、それに対して何にも保護を与えないで、みんなこじきのようになって内地に帰ってきて、知己をたよってきた、あるいは帰られるようになったら帰っていったというような状態、これを聞いたときに、私どもはこの北朝鮮の問題をもう少し考え直さなくちゃならない。そのときは南も北もないのです。ですから、一様に扱われて、そして強制労働させられて、日本が終戦ということになると、おっぽり出された、こういうことなんです。そして、ひとつ考えていただかなくちゃならないことは、朝鮮は一九四五年の終戦のときには朝鮮共和国というちゃんとした南北一体の共和国をつくっていたのです。それがスターリンとトルーマンとの話し合いですか、それで北をソビエトが守る、南をアメリカということに、外国人がかってにこれを処理したことによって、統一した共和国ができていたのを南北に分けたということになるのですよ。それは南北の朝鮮人には何にも責任のないことで、それを受け継いだわれわれが彼らを非常に差別待遇するということ、南の人にはよくいらっしゃいました、お金も貸しましょう、こっちにいらっしゃい。北のほうには——終戦後二十三年ですよ。親の顔が見たくても、先祖の墓参りがしたくても、これをお許しにならないというようなことは、非常に非人道的だ。日本のやり方については、非常に非難を受けるべきことがあると私は考えるのです。たとえば、この間の建国二十年の北の祝典、この間ソビエトで聞いたことですけれど、あそこに入る人はみんなソビエトを通って、あるいはほかの国を通って日本から入っているんですよ。国会議員はビザが出るようですけれど……。そういうような状態に私どもは置くべきでない。あんなにひどい強制労働をさせられて、終戦となると無一物で追っ払っておいて、そして今日南だけはよろしい。だけれど、北のほうは親の顔を見にいくこともできない。また、墓参りもできない。親とか墓とかいうものは、日本人よりも以上に大陸の人たちは重く見ているような感じがする。それで、墓参りに行きたい、あるいはもう親が八十何歳ですから、ちょっと親の顔を見ておきたい、喜ばせておきたい、こういう感情は、私は東洋的とばかり言えない、非常に人間的なものだと思うのです。これをあんなにきびしく規制なさる。私は大臣はそういう点で、いままでの大臣のどなたよりもわかりのいい方だと見ているのです。これを何とかいまの改革の中に入れて、もう少し緩和をして、期間をきめたら、親の顔を見にいくとか、そういうことを許すというようなことは、案に出ておりませんか。それから、あなた御自身はやらなくてはならないというようにお考えになっていませんか。それを伺ってみたいと思います。
  151. 赤間文三

    赤間国務大臣 今度の入管令の改正法案の中には、さきに言いましたように、在日朝鮮人及び台湾人の地位には変更を加えぬ、こういうことが骨子になっております。改正の中には入っておりません。この点、御了承願います。
  152. 神近市子

    神近委員 だから、この報道によりますと、それが入っていないようですから、これはお考えになって——いままでの大臣方をずっと拝見してきておりますけれど、いまの大臣はそういうことに非常にナイーブにお考えのできる方のように私は感じて、いつも尊敬しているのです。それで、この入管の改革案ですが、いま局長も来ていらっしゃるようですけれど、その局長さんもずいぶんかたい人で、この話をしていて私はずいぶん困ったことが何度もあるのです。大臣がこんなナイーブな考え方をお持ちになっているなら、この機会にぜひ入管の制度——これはこの書きかえの期間を一カ月延長する、これも確かに便利ですよ。だけれど、もう少しわれわれと朝鮮人との関係が、——昔のことを考えて、われわれがずいぶんいじめた国民でありませんか。そして私どもは良識を備えた国民であるはずなんです。ですから、その昔の自分たちの残虐、あるいは圧制、そういうものを反省するという気持ちで、もう少しやわらかい、あるいはあたたかく扱ってあげるべきではないかということを私は考えて、こういういやなことをあなたにお願いするのです。  それかもう一つ、第三者の審議会を置かずに、相変わらず大臣の自由裁量としているということが書いてあります。この亡命の問題ですけれど、大臣の自由裁量で、審議会にかけない。ところが、私、それはやはりほかの法制と同じように、何人かの考え方を聞いて、その上でおきめになるべきだ。大臣の裁量一つということになると、さっきもいろいろ問題がありましたけれど、官僚というからの中でおやりになるということは危険です。というのは、役人方は自分の上長に対しては非常に弱いです。これはよく頭に入れておいていただかなくちゃ……。そうすれば、この審議員というようなものを三人でも五人でもいいから、相談相手にいろいろの考え方を持つ人をお置きになるべきだということ。これは亡命者の問題だけでないですよ。たとえば朝鮮問題、北鮮問題のようなことを審議なさるなら、なるべく早くそういうような一般国民——さっき国民だ、国民だという声が出ていましたけれど、これは私自身の個人の声でなくて、私ども国民を代表する声だということをお考えになって、ぜひその改革には、あなたお一人の独断によらないで、審議員の意見を聞いてから亡命者の問題もおきめになるということが必要じゃないかと思うんですけれども、これはいかがなものでしょうか。
  153. 赤間文三

    赤間国務大臣 先般発表しましたのはごく大綱の方角を示しただけでございまして、個別的にどういうふうにするという要綱もまだできておりませんので、どうすることが日本の国益に合うか、こういうことを中心にひとつ十分研究をしていきたい、かよう考えております。
  154. 神近市子

    神近委員 じゃ、私はきょうたいへん質問としてタイムリーに御質問申し上げているわけで、まだおきめになっていないのだったら、その点、自分だけの独断でなく、審議員の意見も聞いておきめいただくということが一つ。それからさっき申し上げたように、朝鮮の人、これはこの間からずいぶん陳情が来まして、女の人の陳情もお伺いしたり、写真も送ってきていました。それで北鮮の問題ですが、この南と北との離反というものは、人為的につくられた、スターリンとトルーマンの話し合いで便宜的にあれを分けた。そのことが南がアメリカ、北がソビエトというようになったのですから、同一の国民ですから、あれはやはり一体にすべきだと思うんです。たとえば政治のやり方がどういうように違おうと、それはその民族自身の問題ですから、私は北鮮の、親の墓に参りたい、あるいは老人になったから親の顔を一度見ておきたい、そういう人たちには、特例でも何でもいい、あるいは審議員をつくってもいいから、ぜひ帰してやるべきだというよう考えます。私どもはずいぶん彼らにはひどいことをやってきた過去を持っているんですから、この運動がいろいろ起こっている。それは大臣こそひとつぜひ英断をもってやってくださるようにお願いして、私の質問を終わります。
  155. 永田亮一

    永田委員長 鍛冶良作君。
  156. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私はかねてから心臓移植に関する法制についてお聞きしたいと思っていたのですが、この前の法務委員会のときには決算委員会もあったしするので、どうしても出られなくて、きょうやるわけです。厚生に関する問題ですから厚生省が主じゃないかと思うのですが、厚生大臣はきょうおいでにならぬので、少し逆になるかもしれませんが、法務大臣にお考えだけをお聞きしておきたいと思いますから、そのおつもりでお願いいたします。  心臓移植に関する問題は、今日、学界及び医学上において大問題になっております。かねてからわが日本でもこれを法制にするという議論はありまするが、法制にするとすればおそらく厚生省で立案せられるのでないかと思いまするが、厚生省で立案せられるにいたしましても、法務大臣に御相談のあることと考えます。そしてまた、法務省としての御意見が重要なるポイントになるものかと考えまするので、この点そういう考えが厚生省にあるかどうか、あるとすれば法務省ではこれに対してどのようなお考えを持っておいでになりまするか、大綱でよろしゅうございますから、まず承りたいと思います。
  157. 赤間文三

    赤間国務大臣 この心臓移植に関する問題でございまするが、これは非常に重大なことに考えております。専門家の立場から十分な検討が現在行なわれておりまするし、これはいずれ厚生省としましてもその審議状況等を勘案した上、法制化することにされることと想像をいたしております。  それで、特に法務省として関心を持っておる二つの重要な点があると考えております。その点を私は申し上げたいと思います。  第一点は、心臓移植問題で心臓の提供者がいまだ生体と認められる場合には、殺人罪の成否が問題となりやしないか、こういう問題であります。しかし、一般に移植のための心臓の摘出は死亡と認定された者から行なうものと理解されるのでありまして、その限りでは殺人罪とかこういうものに当たることはないと考えます。したがって、問題は死亡の認定基準であると法務省としては考えております。ところが、死亡の時期ないしその確認の基準は法律で定められていないので、実務上はその認定をめぐっていろいろ困難な問題が実際は起こってくるんじゃないかとわれわれは思います。いずれにいたしましても、殺人罪の成否は法律問題であり、刑法上の責任を論ずるには死亡の認定も法律問題でありますから、個々の具体的事案に即して死亡の認定が法律上相当であったかどうかということによって決定されるものである。この死亡の時期、死亡の問題、これが厚生省等において法制化するときに大きな一つの問題になると私は思います。  それからもう一つわれわれが法務省として考えますのは、本人もしくは近親者の承諾を得ても、適法となる根拠はない。第三者が殺人罪で告発したらどうかというような御意見がある場合があります。それで医学上、法律上生体と認められる場合は、承諾があっても刑事責任が生ずることは言うまでもありません。そのような場合に告発があれば、当然捜査することになる、かように私は考える次第でございます。特に考えているのは、死亡といまの承諾の二つの点が、われわれ法務省としては一番大事な点じゃないかと考えておる次第であります。
  158. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 いまの大臣答弁はわれわれの考えと重大なる違いがございますが、心臓を移植して人を助けるという場合は、生きておる心臓を持ってこなければならぬものだと聞いております。またそのように書いてあります。生きておる心臓を持ってくるということは、生きておる人間から心臓を摘出してこなければならぬものだ、こう思うのです。いま大臣おっしゃるように、死んだのを持ってくるなら、これはだいぶ話が違うのです。生きているのを摘出して持ってくるから、生きておる者を殺して心臓を取ってくる、こういうことになるのですから、これが私は重大だと思うのです。その点はどうもいまのお答えでははっきりいたしておりません。もっともこの間から私注意して新聞なり雑誌なりを読んでみますると、死んでから十分くらいならよろしいというような説を吐いた人もあります。ところが、それもみんなごまかしだという説も、また出ております。この点がよほど重大だと思いますので、この点をどのよう考えておられるか、これを法制されるというなら、もっとはっきりしておいていただくことが私は重大な問題だと思いますが、いかがでしょう。
  159. 赤間文三

    赤間国務大臣 刑事局長から答弁いたさせます。
  160. 川井英良

    川井説明員 心臓移植の問題は、刑事責任の観点から考えますと、人間の死亡というものをどういう科学的な根拠に基づいて、法律上それを死と認定するか。言いかえてみるならば、人間の死亡ということを認定する基準を科学上並びに法律上どこに置くかということで、御指摘のような殺人罪になるかどうかということがきまってくるのではなかろうか、こう思います。先ほど大臣からも死亡の認定の時期が問題だということを答弁申し上げたわけでございますが、それは、やや説明すると、そういうことに相なるわけでございます。  そこで問題は、いままでのいろいろ科学的な、医学上の説明によりますと、かりに心臓がとまりましても、たとえばじん臓とか肺臓とかというものはなおかなりの時間生存をしておる。人間の各臓器というものは一度にすべて活動を停止するのではなくて、それぞれいろいろな病気ないしはいろいろな事故によりまして、段階をたどってそれぞれの臓器の活動が停止していくんだ、こういうことでございます。したがいまして、心臓が停止したということ、脈拍が永久に停止したということ、それによって呼吸が停止してしまったということをもって死亡した、こういうふうに認定いたしましても、まだそれ以外の臓器というものは、かなりな時間にわたって生存を続けているということでございますけれども、いままでは心臓の永久停止、脈拍の永久停止をもって人間の死亡の時期と認定をしておった、こういうことが、いままでの実務の処理として、また学説として申し上げることができると思います。  ところが、医学の進歩によりまして、さらに科学的な検討が進んでまいりまして、たとえば最近いわれておりますように、かりに心臓がまだ活動しておりましても、脳波の永久停止をもって人間の死亡を認定することが医学上妥当だ、こういうふうな学説が出てまいったようでございます。そうしますと、人間の死亡の認定の時期というものは、具体的には心臓の鼓動のあるなしにかかわらず、その前の段階において死亡の認定ということが科学的に医学上行なわれることが、一応新しい科学の進歩として言われ始めたわけでございます。その辺のところは、学界におきましても、法律界におきましても、まだ必ずしも、十分煮詰めておりませんけれども、ただいまの段階におきましては、御案内のように、死亡の認定をめぐっていろいろな学説が出てきておる、こういうことでございますので、かりに脳波の永久停止説をもって人間の死を認定することが適当だということになりますれば、かりに心臓がまだ活動を停止しておらない段階におきましても、人間の死亡というものを法律上認定するということは学問的には可能ではなかろうかというふうな気がするわけでございます。その辺のところは、まだ必ずしも学説と実務が一致しておりませんけれども、これから学界あるいは私ども行政官庁と迅速に検討を尽くしまして、その辺のところについて、遺憾のない死亡時期の認定について的確な基準を迅速に出さなければならない、こういう段階ではないかと思っております。各方面と折衝いたしまして検討中でございます。
  161. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 大臣がおられる間にもう少しこの点を明らかにしておきたい、大臣によく頭に入れておいていただきたいと思います。  いまおっしゃったように、死亡したといっても、臓器おのおのはまだ生きておることがある、こういうことでしたが、心臓が永久に停止した、それでも生きておるといえるのか。心臓が永久に停止すれば、人間が生きておるのかどうか、これが第一。それから臓器としての心臓が生きておるのかどうか、これが第二。その次に、永久停止したる心臓を摘出して持ってきても、心臓移植になるのかどうか。それはやはり生きておる心臓を持ってこなければ、移植にならぬものと心得る。私は、その点が明瞭でなければならぬ、こう思うので、この三つの点をはっきりしていただきたい。よろしゅうございますか。かりに死んだといっても、各臓器が生きておる、心臓もまだ生きておることがある、こう言われる。それから、さっき言われたように、永久に心臓が停止しても、ほかの臓器が生きておると言うが、永久に停止した心臓を持ってきたのでは、移植にならないのではないか、助からぬのじゃないか。やはり生きておるのじゃなくては、停止しておらぬのでなくちゃいかぬのじゃないか。そうすると、生きておるものを持ってくるということになると、生きた人間から引きずり出すのですから、引きずり出せば人間が死ぬのですから、人間を殺さなければ持ってこれぬということになる。この点はあとで詳しく専門家にも聞きますが、ここでひとつ明瞭にしておいてもらいたいと思います。
  162. 赤間文三

    赤間国務大臣 なかなかむずかしい御質問ように拝聴しました。しかも非常に重大な問題でございます。われわれのほうからいうと、個々の具体的な事案に即しまして、死亡の認定が法律上適当であったかどうかということによって刑事責任その他が論ぜられるものだ、かように私は考えております。具体的事案に即して死亡の認定が法律上相当であったかどうか、その実質をなすものはいまお述べになりましたように、脳波説と心臓永久停止説、あるいはまたそのほかに新たな学説が出るかもしれませんが、そういう点についてはまだ十分研究が完成をいたしておりませんので、これは今後厚生省と連絡をとって、その実体その他は結論を得べくさらにひとつ努力をしてまいりたい。ただわれわれ法律の点からいえば、個々の具体的事案に対して死亡の認定が法律上相当しておったかどうか、こういうことによって決定する、こういう考え方であります。
  163. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 大臣も時間がないそうですから、あとでまたやります。
  164. 永田亮一

  165. 中谷鉄也

    中谷委員 一点だけお尋ねをしておきたいと思います。私、きょう刑事局長あるいは外務省等にお尋ねをしたいのは、米軍復帰を拒否した日本人の青年清水徹雄という人の問題についてですが、安保条約の問題、あるいは地位協定、さらにまた刑特法等いろいろな問題について法律的な問題点を提起をいたしますが、大臣お尋ねしたいのは次の点です。  要するに、日本人米兵といわれておる人について、刑特法が適用できないのではないか。これは私はあとで法律論を申し上げますけれども、私はできないということを確信をしている。いずれにいたしましても、昭和二十七年四月十九日、当法務委員会におけるところの会議録を検討いたしますと、この問題が出てきておる。当時の岡原政府委員が猪俣委員の「日本人で義勇兵か何かの形でアメリカ軍隊の中に入り込むような者があるかないかはわかりませんが、さような者が起った場合に、こういう者はどういう取扱いになりますか。」という質問に対して、政府委員は「日本人は全然これには入らぬ、」要するに、刑特法の適用などということはない、「さよう趣旨でございます。」という趣旨答弁があります。  そこで、まず大臣お尋ねをいたしたいのは、一体刑特法がこういう日本人米兵というものに適用があるかどうかという問題を、私は大臣答弁としてお聞きしたい。これは事実関係がかなりいろんな場合がありますから、あとでその事実関係をただしていきますが、その点と、いま一つは、この日本米兵の問題について、政府はどういうふうに措置をするか。清水徹雄君という青年が、聞くところによりますと、現在あるいは刑特法を適用されるかもしれないなどというところの不安を持つのは、これは当然で、非常に不安定な生活をいたしておる。そういう不安定な心理状態というものに日本国憲法のもとにおいて置くことは、私はいけないと思う。政府としてはどのように措置をするか、どういう方針をお持ちになっておるか、これはひとつ政治的な判断としてもお聞きをいたしたい。大臣にお聞きしたいのはこの点です。
  166. 赤間文三

    赤間国務大臣 お答えを申し上げますが、日本人である米軍構成員が、日本の国内において米軍から逃亡した行為は、わが国の法令上は御承知ように何らの犯罪も構成しない。わが国の官憲が進んでこれを逮捕するというようなことは、私は考えられぬと思います。しかし、その行為は米軍法に違反し、米軍の専属的裁判権に属するということも事実でございます。したがいまして、本件について米軍当局裁判権を行使する場合には、米軍当局から日本当局に対して逮捕の要請をすることがあるいは考えられる場合がありますが、その際にわが国の当局がいかなる態度をとるべきであるかということが、非常な問題であると思うのであります。地位協定上は、日本の国籍を有する者であっても、地位協定の第十七条第五項(a)の規定によりまして、逮捕協力義務があるといわなければならぬ、われわれはこういう解釈をいたしております。したがって、米軍の当局から逮捕要請があるときは、刑特法に基づいて逮捕及び引し渡しの手続をとらざるを得ない、こういう結論に達すると存じます。  それからなお、しからば実際の場合においてはどういうふうになるか、どういうふうに考えるかとの御質問でございますが、、法律の上ではそういうふうに解釈がせられますが、しかしながら、このような法律上の問題は別といたしまして、具体的な事案の解決にあたりましては、そのようなことにならないように政府として善処していきたい。実際においてはそういう法律問題が出てこないようにうまく善処していこうというのが、政府の態度でございます。御了承願います。
  167. 中谷鉄也

    中谷委員 それじゃ大臣にあと一点だけ。  刑特法の解釈その他事実関係において、全く政府と私と見解を異にします。これはあとで刑事局長に詳しくお尋ねをする。しかし、では大臣お尋ねをいたしたいが、そうすると、政府としては具体的な措置の中において刑特法を発動するようなことのないように措置をしたいということであるけれども、これは私はアメリカ待ちの態度じゃなく、積極的に政府はそのようなことをすでに交渉しておられるべきだと思う、また現におられると思う。だとするならば、政府としては現にどのような交渉をしておられるか、またどのような措置を現在しておられるか、されたか、この点ひとつ簡単に大臣の御答弁をいただきたい。
  168. 赤間文三

    赤間国務大臣 法務省といたしましては、そういう手続はまだアメリカととっておりません。これは私は外務省がそういうことには当たるものと考えております。
  169. 中谷鉄也

    中谷委員 政府としてどのような交渉をされたかというふうに、私はお尋ねをしたわけです。閣僚の一人としての御答弁をいただきたいと思いましたが、この問題については、私はあと詳しい問題に入っていきますから、大臣への質問はこれでございません。  そこで、事実関係、いまの大臣ような御答弁の結論には出ないという前提でお聞きをいたしたい。  まず、外務省にお尋ねをいたしたいと思いますが、条約課長さんにお尋ねをいたしたい。清水徹雄君というこの青年は、アメリカの第一騎兵師団の所属の軍人であったわけでございますね。その点をひとつ確認をいたしたい。
  170. 中島敏次郎

    ○中島説明員 私ども所管をちょっと異にしておりますので、別の部局からお答えいたします。
  171. 山下重明

    ○山下説明員 清水徹雄さんがいかなる部隊に所属しておるかということについて、われわれは第一騎兵師団に所属しているということを聞いておりますけれども、実際に確認はしておりません。
  172. 中谷鉄也

    中谷委員 第一騎兵師団というのは、そうすると、どこに存在し、どこに配置されておる軍隊であるか。私の知るところによると、これはベトナムに配置され、ベトナムに司令部を有するところの軍隊であるというふうに聞いておるが、この点は事実関係としていかがでしょうか。
  173. 山下重明

    ○山下説明員 正確に私存じておりません。
  174. 中谷鉄也

    中谷委員 その点が正確に御調査になっておられない。この点の事実関係が、以下述べる刑特法適用の問題と関係をしてくると私は考える。そこで、そうだとすると、一つの私自身のそういう主張というものを前提にして、政府が知らないのだから、お尋ねをせざるを得ない。第一騎兵師団というのは、ベトナムに駐在し、ベトナムに配置されておるところの軍隊である、これが前提です。そういたしますと、すでに予算委員会において、たとえば昭和三十九年の十月の六日、藤崎外務省条約局長の答弁、在日米軍というのは、一つは「常住日本に駐留する軍隊」という意味だ。二つには、「そう時間的に長くいるわけじゃなくても、ちょっと日本に入港するとか着陸する、いずれにしても日本の施設、区域を使用するすべてをさしていう場合と、」両方あるというふうに言っておる。そこで、第一騎兵師団というのは、ベトナムに駐在をしておるということになると、これは在日米軍ではないということに当然事実関係においてもなると思いますけれども、条約課長さんのこれは御答弁をいただけることだと思いますが、あるいはまた刑事局長からも私は御答弁をいただきたい。刑特法に関係をしてまいります。いかがでしょうか。
  175. 中島敏次郎

    ○中島説明員 ただいまの点でございますが、私いま具体的にはっきりしたいままでの政府委員答弁をちょっと覚えてございませんが、一般的に申しまして、新しい安保条約及び地位協定のもとでは、いわゆる在日米軍という法律上の観念は条約上はない、こういうふうに理解しております。
  176. 中谷鉄也

    中谷委員 予算委員会でも、岡田委員はそういう趣旨質問いたしております。当然そのとおり。要するに在日米軍ということばはよく使っている。これは協定上の用語でないことは当然で、いわゆる慣用語として使っておる。そういたしますと、次のよう質問を、正確と申しまするか、いま一つ質問の角度を変えると、こういうことになりますね。いわゆる安保条約に基づいて駐留しているアメリカ合衆国の軍隊、ベトナムに常駐しておる、ベトナムに配置されている軍隊というのは、日米安保条約に基づいて、そうしてたとえばこれは引用するまでもなしに、日本国の領域内におけるそういう軍隊でないということは、当然のことだというふうにお聞きいたしますが、課長いかがでしょうか。
  177. 中島敏次郎

    ○中島説明員 先ほど申しましたように、私どもといたしまして、私の理解しておりますところでは、特定の軍隊がどこの地域に駐留するかということが問題なのではなくて、日本国に米国の軍隊の構成員なるものがいるかどうかということが問題かと理解しております。したがいまして、いまのようなお話で特定の師団がベトナムに常駐しているかどうかということは、安保条約及びこの地位協定との関係では直接の関係は出てこないのじゃないか、こういうふうに理解しております。
  178. 中谷鉄也

    中谷委員 もう一度条約課長お尋ねをいたします。これは刑事局長のほうからも御答弁をいただきますが、条約を受けたところの刑特法第一条第二項には、次のようにありますね。合衆国軍隊というのは、日米安保条約に基づき日本国にあるアメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍をいう。こうなっておりますね。規定は当然でございますね。そうすると、もう一度お尋ねしますけれども、ベトナムにおるその第一騎兵師団というのは、刑特法第一条第二項による「合衆国軍隊」ではない。これは当然そういうことになると思いますが、刑事局長と条約課長の御答弁をいただきたい。
  179. 中島敏次郎

    ○中島説明員 とりあえず私からお答えさせていただきます。  ただいまの刑特法につきましては法務省のほうからお答えいただくべき筋かと存じますが、私ども国内法を所管してございませんけれども、私のほうの理解する限りでは、刑特法上も第一条三項におきまして、「合衆国軍隊の構成員」とは地位協定第一条に規定する合衆国軍隊の構成員だというふうに定めてありまして、地位協定上、ただいま問題になっております軍隊の構成員につきまして、特に範囲の違いというものはあり得ないのじゃなかろうか、こういうふうに理解いたします。
  180. 中谷鉄也

    中谷委員 私がいまお聞きいたしましたのは、一条の二からお聞きしているわけですね。いま問題になっておるとおっしゃるそのことの前提たる事実をお聞きしているわけです。そこでもう一度お尋ねしますよ。私が聞いたことはこうなんですよ。第一条の第二項に、「合衆国軍隊」とは、日米安保条約に基づき日本国にあるアメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍をいうというのだから、ベトナムにおる騎兵師団というのは、刑特法一条の二項の軍隊ではございませんねと。それをとにかくあなたのほうは先回りして心配されて、一条の三項を持ってこられた。話はあとからそこまで行くのです。一条の二項の軍隊ではございませんね。第一騎兵師団というものはどこに司令部があるか、あなた方は調査してくれてないんですよ。ベトナムなんです。だから、第一条の第二項にいう軍隊ではないですね。そのことについてだけ答えてくれたらいいのです。
  181. 中島敏次郎

    ○中島説明員 私の理解します限り、先生のおっしゃられるように第一騎兵師団なるものが現在ベトナムにいる限りにおいて、その第一騎兵師団なるものがここにいうところの合衆国の軍隊でないことは、これは事実だろうと思います。
  182. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、次にお尋ねをいたします。清水徹雄という青年は、帰休兵だといわれております。外務省にお尋ねをいたしたいのですけれども、帰休兵というのは、どんな手続でどういうふうに日本に来るわけですか。たとえば日本に来る場合、帰休というものはどんな手続で来て、その帰休というものは身分はどうなっているのか、どういう状態なのか。帰休の手続と帰休兵というもの一般についてお尋ねしたい。
  183. 山下重明

    ○山下説明員 われわれのほうは、実際に米軍の中でどういう休暇の手続をとるか、そういうことは調査しておりませんが、実際に米軍のトラベルオーダーを持って入ってくる。そうしていわゆる一般の旅券ではなくして、入管手続も済ませないというのは、一応これは軍の構成員というふうに取り扱っております。
  184. 中谷鉄也

    中谷委員 どうも外務省、きょうは御準備が非常に不十分ではないかと思うのです。私は、そういう事実関係の中から、刑特法の適用はないということを論証しようとしておる。  そこで、刑事局長に次にお尋ねをいたしますが、地位協定の第一条の(a)でございますね。その中には「合衆国軍隊の構成員」そうしてずっと続きまして「日本国の領域にある間におけるアメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍に属する人員」こうなっておる。そこで「ある」という意味は軍にかかってくる、そうして人員というのにはかからない。ことばをかえて言いますと、清水という青年は在日米軍の構成員ではなく、少なくとも在外米軍の在日構成員であることは、先ほど答弁の中からそういうふうに説明ができる。もう一度言います。清水という青年のみならず——だから、この場合は、日本人米兵であるとか、あるいはフィリピン米兵であるとか、あるいはまたその他のキューバのそういうのがおるとすればそういう米兵だとか、そういうことに何にも関係なしに、いわゆるこういうふうな第一騎兵師団のような場合は、少なくとも在日米軍の構成員ではない。在外米軍の在日構成員だというふうに言ってしかるべきだと思うけれども、刑事局長いかがですか。
  185. 川井英良

    川井説明員 その条文にいうところの「ある」というのは、在日米軍の構成員として日本国領土内にある、こういう意味だと思います。
  186. 中谷鉄也

    中谷委員 なるほど、じゃ「ある」がそういうふうにかかるとおっしゃるのはわかりました。ただしかし、少なくとも事実関係においては、私が後段において説明した在日米軍の構成員ではなく、在外米軍の在日構成員というふうな表現は当たりますね。
  187. 川井英良

    川井説明員 その問題になっている人が日本国の領土内にあるかどうかということは、これは法律問題ではなく、事実問題として認定が可能だと思います。問題はその男が在日米軍の構成員として日本の領土内にあるかどうかということでありますから、在日米軍の構成員であるかどうかということは、私、一時的には在日米軍がその在日米軍の構成員の一人として取り扱っているかどうかということできまるのではないかと思います。
  188. 中谷鉄也

    中谷委員 局長の御答弁はおかしいと思うのです。在日米軍の構成員として取り扱っているかどうかということの事実関係の論議をしたいから、帰休兵というのはどんな手続でどうなって来ているのですかということを私はお尋ねした。外務省、手続知らないじゃないですか。刑事局長、じゃその帰休兵というものの手続は、御存じなんですか。第一騎兵師団がありまして、第一騎兵師団と来日してきた帰休兵との指揮命令関係は、いまなお続いているはずなんですね。しかし、片一方はベトナムにおる。そうすると、一体帰休兵が日本に来た場合に、日本の別の部隊にでも編入されるのだというようなことを、刑事局長知識としてお持ちなんですか。そういうことはないはずなんですよ。ですから、在日米軍とおっしゃいますけれども、在日米軍に編入をされているかどうか、されていないと私は考えている。いかがですか。
  189. 川井英良

    川井説明員 在日米軍として編入されているかどうか、私は編入されていないと思う、こうおっしゃるのも、私は、必ずしも明確な根拠に基づいて断定されているのではない、こう思います。私はその間の関係を必ずしもつまびらかにいたしませんけれども、およそ考えてみまして、軍隊というものは何万何千の固有名詞を一々つけまして、それがいま日本におるのだ、これは一兵たりといえども一足も日本から外に出てはいけないのだ、こういうことではなかろうと思います。ある部隊が必要に応じていろいろなところに転用され、またその補充として別なものが来るというようなことは、常時行なわれているようであります。そういたしますと、その人数におきましても、その編成におきましても、それから具体的にだれがこの日本に、どういう名前の兵隊がいるかというようなことが、常時——もっとも一番えらい人はあまり動かないでしょうけれども、階級の下のほうの兵隊というふうなものは、かなりの異動のあることが、駐留しておる軍隊の性格並びにその目的からいいまして当然に予想されるところだ、こう思うわけでございまして、出たり入ったりがございますので、帰休という形で来たものか、あるいはまた別な形で来たものか、その辺はまだ事実関係をよく調べてみませんとわかりませんけれども、要するに一、二の者が出入りをし、そうして入ってくる者を在日米軍の構成員として取り扱うということでありますれば、それは在日米軍の構成員である、こういうふうに法律上その協定上は言わざるを得ないのじゃないか、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  190. 中谷鉄也

    中谷委員 そうじゃないと思います。もう一度刑特法の規定によりますと、合衆国軍隊というのは、安保条約に基づいて「日本国にあるアメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍をいう。」わけなんですね。そうすると、第一騎兵師団というのは、日本国にないわけなんですね。そうでございましょう。そういうことになったら、その安保条約に基づくアメリカ合衆国の陸軍というものには、第一騎兵師団というものは存在しないわけなんです。これは人権に関する問題ですよ。ですから、一体清水徹雄という人は在日米軍のどこの何という部隊の構成員になっているのかというふうなことが説明されなければ、質問している中谷委員がその点について詳しく知らないからそんなに断定するのはおかしいと言うけれども、そういうことがわからなければ、むしろそういうふうに有利に解釈すべきなんです。帰休兵だという前提で私質問しているわけなんですね。そうすると、局長の御答弁は、帰休兵かどうかもはっきりせぬ。そんなに話を横に飛ばしてもらったら困ると思うのです。そうでございますね。帰休兵として入ってきた清水徹雄君がという前提なんです。じゃ、局長お尋ねいたしますが、帰休兵じゃないと言う局長は、一体何かそういうふうな資料でもお持ちなのかどうか、かえってお聞きしたくなりますよ。私のほうが資料をたくさん持っているんだから、そういう前提をくずして私はこの議論をしたくはありません。  そこでもう一度お尋ねしますけれども、われわれの友人の間でこんな話をいたしました。そうすると、たとえば合衆国軍隊の構成員だということで一条の三項に書いてあるというようなことでおっしゃっておる。しかし、少なくとも刑特法というのは、安保条約との関係においての法律でございますね。そうすると、ドイツに駐留しておるアメリカ合衆国軍隊の構成員の高給将校、こんな人が休暇をとって日本へ来た。日米安保条約という一つの大きな柱の中において、この刑特法をおつくりになっておる。刑特法については非常に問題があるのですが、そういうふうな人についても刑特法の対象にするんだなどという、これはまさに荒唐無稽だと思うのです。これは安保条約の非常な拡大解釈です。危険な傾向です。だから少なくともここの場合の構成員というのは、前提として当然慣用語で言う在日米軍の構成員以外では考えられない。たとえば、そうでないとすれば、先ほど言ったように、ドイツへ駐留しているアメリカの高級将校が日本へ来た場合に、一体刑特法の対象になるのかという問題だって出てくる。とにかくそんなおかしなかっこうでこの法律は審議されてつくられたのではない。立法趣旨が違うと思うのです。いかがでしょうか。
  191. 川井英良

    川井説明員 おっしゃる御趣旨はよくわかるように思うのでありますが、私はかつて徴兵制度に応じてシナ大陸に兵隊として行った者でありますけれども、途中で野戦で病気になって、北京でしばらく療養しておったことがあります。そういうふうな場合に、野戦におる自分の所属の部隊から一時離れまして、北京にある部隊に転属を命じられて、北京で療養中の段階におきましては、部隊、指揮命令系統が変わってくるということがあるわけでありますので、アメリカの軍隊には幸か不幸か入ったことがありませんのでよくわかりませんけれども、およそ軍隊というものの本質から言うならば、休暇とかあるいは結婚とかいうふうな全く私的な理由でもって部隊の許可を受けて、そして私人として甲地から乙地に移動したという場合には、おそらく身分関係は変わらないのでありましょうけれども、ベトナムというところでもってアメリカが戦争をしておる、そういうふうなさなかに、帰休という名目であるかどうか、どういう名目であるか知りませんけれども、ベトナムから一時東京というか、日本に位置を移動しておるという場合には、やはり軍人たる身分のままで甲地から乙地のほうへ移動したというふうに考えられますので、米軍の取り扱いがどうなっておるかということは調べてみないとわかりませんけれども、おそらく本件の場合におきましても、ただぶらりと遊びに来たのではなくて、その間におきましては、在日米軍のしかるべき部隊の中に一時編入をして、そして指揮系統を明らかにして、その間における行動については、その身分関係について監督者が明確になっておる、およそ軍隊でありますから、たぶんこういうような取り扱いをしているんじゃなかろうか、こういうふうに考えましたので、先ほどよう答弁をしたわけでございます。したがいまして、問題は、問題になっておる人が帰休という形で来たものかどうか、アメリカにおけるいまの段階でのベトナムと東京との間における帰休というものは、軍の取り扱い上どういうふうな取り扱いになっているかという事実関係でもってそれがきまる問題ではないか、こう思います。
  192. 中谷鉄也

    中谷委員 では、この問題については次のように私のほうで整理をいたします。私のほうの意見を申し上げておきます。  要するに、率直に言って、外務省にしろ、法務省にしろ、事実関係について詳しく御調査になろうという意欲をお持ちになっておらないと私は思うのです。そういうふうな前提の中で、刑特法の適用は当然だなどという主張をされることは、私はもってのほかだと思う。その点が一点。  第二点は、私は帰休というのは休暇をとるという意味に理解して、帰休の場合には、少なくともこういうふうな場合には刑特法の適用を受けない。しかも、その刑特法の適用を受けないのは、単に日本人米兵のみならず、いわゆるベトナムにおいて帰休をとって日本に来たすべての米兵に共通する。そういうふうな在日米軍、いわゆる在日米軍ということばを使いますけれども、在日米軍でないところの在外米軍の帰休兵について、刑特法は適用を予想しているものではないというふうに——これ以上この問題ばかりやっておりますと、とにかく二時間も三時間もかかる、ほかの質問も多いようですから、そういうふうに私の見解を申し上げておきます。もう一度申し上げまするけれども、要するに、ベトナム帰休兵は、刑特法にいう合衆国軍隊の構成員ではあり得ない。したがって、かりに離脱しようが、脱走しようが、刑特法によるところの適用は受けない。これはとにかく安保条約との関係でいうと、そういうことが言えるというふうに見解を申し上げておく。  次に第二点ですが、法制局にお尋ねをいたしたいと思います。法制局に対するお尋ねは一点だけです。刑特法の十八条二項によりますと、日本国民に対する家宅捜索の場合などについて、要するに、裁判官の令状が必要でございますね。そこで、先ほど私が引用いたしましたけれども、当時の政府委員は、刑特法については日本人は全然これに入らないんだということを申しております。そうすると、日本人米兵というふうなものが当然予想されておらなかった。これは、だから、清水徹雄君という場合に限りますが、清水徹雄君というのはあくまで日本国民なんですね。日本国において日本国憲法の適用を受けることは当然です。日本国憲法の保護と、また保護を求める立場にあることは当然です。そうすると、逮捕せざるを得ないとか引き渡さざるを得ないという法律論があるということをおっしゃいましたが、憲法の三十三条によれば、令状によらなければ強制処分はできないことになっております。そうすると、一体三十三条は、日本人米兵という関係において、条約の関係において、いわゆる欠缺するといいますか、抑圧されるというか、抑制されるというふうなことでいいんだろうか。少なくともこれは基本的人権条項なんでございますから、人をつかまえる、これは単なる行政検束とか、そういうふうなものでございませんね。逮捕ですね。いわゆる日本国民であるところの人間が令状によらないで、公正な手続を経ないで逮捕されるというふうなことが、条約上の義務の履行だなどということで説明できていいことなのか。だから、結論を申し上げまするけれども、私は、少なくとも刑特法は十八条の二項との関係において、日本の裁判官が令状を出さざるを得ない問題だろうと思う。こういうような場合については、そういうふうな手続が刑特法に記載されていない以上、刑特法の行政手続だというふうなこの条文は、憲法違反であるというふうに私は考えます。いずれにいたしましても、法制局の御答弁をお伺いいたしたい。
  193. 真田秀夫

    ○真田説明員 お答え申し上げます。憲法の三十三条に、御指摘の令状主義の規定があることは当然でございますが、あの規定は、要するに、わが国の刑事司法手続に関する規定であるという、ふうに理解されております。     〔委員長退席、田中(伊)委員長代理着席〕 ただいまお述べになりました刑特法の十八条一項ないし二項、いずれにいたしましても、これはわが国の刑事司法権の手続として行なわれるものじゃございませんで、アメリカの軍法の、つまりアメリカの裁判権の行使の前提手続として行なわれるわけでございまして、わが国の法律の面から見ますれば、これは一種の行政手続である、かよう考えられますので、憲法三十三条にじかに触れる問題ではないというふうに解釈いたします。
  194. 中谷鉄也

    中谷委員 この点についても、私は先ほど申しましたけれども、要するに、清水徹雄という青年、これは日本国民であることはまぎれもない事実なんです。そういうことになってきますと、そういう強制処分を受ける側の人間、立場に立って考えた場合には、日本国憲法の適用と保護を受ける、人権が守られるのは当然である。したがいまして、いま部長が御答弁になったよう考え方を私はとりません。要するに、憲法三十三条との関係において、行政手続だなどということで裁判官の令状がないままで逮捕されるというふうなことは、私は、少なくとも日本人に限っていうならば違法だというふうに考えます。同時に、これがもし一歩進めていわゆる外国人であったとしても、私はやはり日本国にその人がおる以上は、むしろ同様に理解すべきだと思うけれども、少なくとも日本人においては、日本国民においてはそうであるべきだというふうに、これは私の見解を述べておきます。  そこで、この機会に最高裁判所お尋ねいたしたいと思うのでありまするけれども、最高裁判所としては、要するに、十八条の逮捕の場合は裁判所を通らないわけなんですけれども、ひとつ憲法三十三条との関係は一体どういうようになるのかということについての裁判所の御見解を、もし伺えるならば私は伺いたい、これが第一点です。  第二点といたしましては、十八条の二項のいわゆる家宅捜索などの場合について、実際の現在までの例、令状発付の状態は一体どうなっているのか、こういうような点について、資料関係がありましたら御答弁をいただきたい、こういうことでございます。
  195. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 まず第一点でございますが、具体的な事件ではございませんし、抽象的な解釈の問題でございまするので、裁判所といたしましてはむしろ差し控えさしていただきたいと存じます。  それから第二点でございまするが、そのような事例は、実は調べてもまいりませんでしたので、私の知識といたしましては、従前承知いたしておらないのでございます。
  196. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、整理をいたします。最高裁判所と法制局のほうは、私あとお尋ねすることがないと思います。ただ、法制局については、あるいはお尋ねしないかもしれませんが、一点残っておりますが、最高裁判所についてはございませんので、それだけ申しておきます。  次に、私は次のようなことをお尋ねいたしたいと思います。八月九日の法務委員会において私が質問したときに、政府の答弁の中に、自国民不引き渡しの原則について若干の引用がありました。そこで、私がお尋ねしたいのは、次のようなことでございます。法律の制定の経過と申しますか、過程を申しますると、日本逃亡犯罪人引渡条約と逃亡犯罪人引渡法との関係においては、逃亡犯罪人引渡法が刑特法のあとに制定施行されているということは、これははっきりした事実なんです。そこで、まず最初にお尋ねいたしたいんですけれども、すでにこの点については別の角度からの質問もありましたけれども、逃亡犯罪人引渡法に、日本人引き渡しの禁止という規定がございますね。これとの関係は一体どうなるのか。この点が一点です。  それから、いま一つ、あとの質問に関連をいたしますので、逃亡犯罪人引渡法第二条第一号にいう「政治犯罪」というものの基準は一体何か。この点が第二点でございます。  要するに、もう一度整理をいたしまするけれども、第九号の、日本人引き渡し禁止という逃亡犯罪人引渡法との関係において、刑特法と逃亡犯罪人引渡法とはどんな関係にたつのか。いま一つ、逃亡犯罪人引渡法第二条第一号にいう政治犯罪という場合についても、保護がある、引き渡してはならぬ、この場合の政治犯罪の基準は一体何か。この点でございます。
  197. 川井英良

    川井説明員 まず第一点にお答えする前の前提として、自国民を引き渡さないという原則が国際法上どういうふうな評価を受けておる原則であるかということについて、私の考え方を先に述べたいと思います。  いろいろ説が分かれているようでございますけれども、自国民を他国に引き渡さないというのは、確かに国際法上の一つの慣習であることは否定できないと思いまするけれども、この原則は、今日、国際公法上絶対の確立された国際法規とまでいえるかどうかということにつきましては、私どもはかなり疑問を持っております。これは申し上げるまでもなく、この逃亡犯罪人引渡法の二条のただし書きとか、あるいは日米犯罪人引渡条約の第七条とかということをごらんいただければ、この条文それ自体に場合によっては自国民を引き渡すことがあり得るということを前提としてそれらの条文が掲げられておるということからいきましても、この原則について日本政府がいままでどういうふうな見解をとってきたかということは、一応推定が可能ではなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、いまお述べになりましたこの逃亡犯罪人引渡法と日米犯罪人引渡条約との二つのとりきめの中に、いずれも場合によっては自国民を引き渡さないという原則が掲げられております。ところが、この逃亡犯罪人引渡法にいうところの逃亡犯罪人というのは一体何だろうかということを吟味してまいりますというと、それは、ある甲の国においてその領土内において犯罪を犯した。そしてそのことについてその国において刑事手続が進行しておる。そういう段階において、その国から乙の国に、すなわち自分の国にその犯罪人が逃亡した、こういうふうな場合に、最初の犯罪地となったところの国から逃亡して現在犯罪人がおる国に対して、逃亡犯罪人として身柄を引き渡してもらいたいときめたのが、この逃亡犯罪人引渡法であり、また、日米犯罪人引渡条約の基本的な構造に相なっておるわけでございます。そして、この法律にいうところの逃亡犯罪人とは、そういうふうな趣旨であるというふうにきめられておるわけでございます。ところが、地位協定に基づく刑特法、そういうふうなものを検討してまいりますと、これは日本という領土内にあり、そしてその在日米軍に使用を日本政府が許可しておるところの施設の中から米軍の構成員である日本人が脱走したといいますか、逃げた、こういうことでございますので、アメリカで犯罪を犯して日本へ逃げてきたというのじゃなくて、日本の領土内でもってアメリカの軍法を犯すような行為をして逃げたけれども、依然として日本の領土内におる、こういう関係に相なっておりますので、ただいま問題になっているような事案につきましては、事実関係が必ずしもまだ不分明なところがございますが、それを一応捨象して話を進めてまいりますと、いまの地位協定とかあるいは刑特法の関係におきましては、当然に逃亡犯罪人引渡法ないしは犯罪人引渡条約というものが適用になる関係にはない、こういうことがいえるかと思うわけでございます。  そこで問題は、それじゃそういうふうな法律なり条約が適用がないということになれば、自国民引き渡しの原則も適用がないのか、こういう問題に理論が進んでくるかと思いまするけれども、それは、先ほど申しましたように、自国民引き渡しの原則が今日国際法上の原則としてどの程度の評価を受けておるかということによって、本件ような場合に、その精神が準用される、あるいはその精神に基づいて適当な措置がとられるというようなことになろうか、こういうふうに思うわけでございまして、純粋法律的に申し上げるならば、自国民引き渡しの原則というふうなものは、地位協定ないしはこの刑特法の関係におきましては、そのものずばりでは適用がない、こういうふうに理論上は言わざるを得ない、これが私の理解でございます。  それから第二点は、こういう法律に掲げられておる政治犯罪とは何をいうのだ、こういうことでございますが、これはよく御承知ように、この政治犯罪の定義につきましてはかなり前から非常に対立、争いのあるところでございます。いわゆる主観説と客観説が対立しておるだけではなくて、最近には折衷説まで出てきているようなわけでございますので、一がいに、ここでぴたりと政治犯罪とは何だという定義を申し上げることはたいへん困難でございまするけれども、まあ政治的な事項を動機として行なわれた犯罪というようなことが、一応この政治犯罪の定義として、実務の運営の面ではそういうふうな一応の理解でもって政治犯罪であるかどうかということを判定する一つの基準になっているのではないかというふうなことを考えております。
  198. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、もう一度お尋ねをいたしますけれども、逃亡犯罪人引渡法の政治犯罪というものについては、なお基準が確定しないものがある。逆に言うと、解釈の幅が非常に広い。清水徹雄という青年の取り扱いをめぐっても、主観説、客観説、折衷説というようなことで、主観説の立場をとって事実関係に当てはめていけば、政治犯罪だということだっていえないことはない。しかし、それはさておいて、そうすると、極端な場合、とにかくベトナム戦争にはもう絶対反対なんだ、こういうアメリカの国策というようなものについて反対をするという主観説の立場をとる、そういうようなことで政治犯罪だ、そのことによって脱走するというような場合は、政治犯罪という学説も私はあり得ると思う。また、現にあるというふうに聞いている。そういう政治犯罪についても、逃亡犯罪人引渡法と刑特法との関係においては、刑特法が優先をするなどという考えをお持ちなのかどうか。そうなってまいりますと、従来のいわゆる逃亡犯人、政治犯罪者というものについては特にかくまうのだ、保護するのだという考え方は、私は基本的にくずれてくると思いますけれども、いかがでしょうか。
  199. 川井英良

    川井説明員 本件の具体的な場合が逃亡犯罪人引渡法の規定するところに条件が合うのかどうかということで、私は非常な疑問を持っているということをいまるる御説明申し上げたわけでありますので、本件の具体的な場合がはたして逃亡犯罪人引渡法にいうところの政治犯罪であるかどうかということにつきましては、ここでもってそうだともそうでないとも言うことがたいへん困難だというふうに思います。と申しますのは、このいま問題になっておる事柄は、日本の法令では何ら違反にならない事柄であり、ただ米軍の軍法だけに違反しておるというふうな事柄でございますので、そういうふうな犯罪というものが逃亡犯罪人引渡法の中にいうところの政治犯罪であるかどうかということを議論する実益と申しますか、また実益のあるなしにかかわらず、その議論がたいへんむずかしいのじゃないかというふうに考えられますので、軍法に違反したというふうな行為が日本の法律にいうところの政治犯罪であるかどうかというふうなことは、もう少し慎重に考えた上でもってまた御答弁を申し上げる機会があろうかと思います。
  200. 中谷鉄也

    中谷委員 じゃ、最後質問をまとめていたします。  主として外務省になると思いますが、まず最初にお尋ねいたしたいのは、いま刑事局長答弁されましたけれども、具体的なこの日本人米兵といわれている清水徹雄君は、文字どおり日本国の法令に違反したのではない。アメリカの法令に違反したとされておる。じゃ外務省にお尋ねいたしますけれども、一体アメリカの何という法律に違反したことになるのですかという点。そしてこれの公訴の時効は一体何年ですか。これはずいぶん説が分かれておるらしい。こういうふうなことは、外務省としては当然調べてもらわなければいかぬ。 これが一点。  その次に、選抜徴兵法というものについては、学者の中で非常に国際法違反の疑いが濃いという疑問があることを私は強調いたしますが、その中で八月九日にお尋ねをいたした点、日本国籍を有する者で米軍に徴兵された者の数は一体どの程度あるか、その後調査が進みましたかという質問です。  それから選抜徴兵法の運用の実態は、具体的にお調べいただいたでしょうか。本日米国徴兵制度という訳文をいただきましたけれども、たとえば運用の実態についてお尋ねいたしたい。観光ビザ延長のために、徴兵のための住所登録をさせられておる。あるいはまた徴兵免除申請をしたというふうなことで、いわゆる更新できないために帰ってきたというふうな青年が一体どの程度おるのか。こういうような点についての実態は一体どの程度お調べになったか。  次に、清水徹雄君の場合を具体的に聞いてみますと——これは要するに、英語がわかるかわからないかということの試験の実態についてお調べになったか。清水徹雄君の場合は、何か試験を受けておったら、答えをうしろから教えて、それで結局一のA、合格というようなことになっておる。試験の実態がもしそうだとすると、正確な英語の能力というものはためされない。とにかく、いうてみれば一人でも多くアメリカ合衆国の軍隊に取り上げたらいいというふうな考え方で日本国民が徴兵されては、たまったものではない。こういうふうな実態について、外務省はお調べになっておられるかどうか、この点でございます。  それから最後に、外務省においては、この清水徹雄君の具体的な問題をめぐって、先ほど大臣はこれは外務省の所管だとおっしゃったが、どういう交渉を今日までしておられますか。この点についてお尋ねをいたしたいと思います。     〔田中(伊)委員長代理退席、大竹委員長代理   着席〕
  201. 山下重明

    ○山下説明員 第一の逃亡ということがどういう米国内の法律に違反するのかということですが、この点もわれわれはっきりつかんでおりません。また事実、清水徹雄さんが実際に逃亡という資格になっておるのかどうかということも、われわれははっきりつかんでおりません。  その次に、具体的な数字であります。これはこの前も申し上げしましたが、実際にはワシントンにおいても米国内にアプローチしておるわけですが、米国側もそういうふうに各国の出身別の統計をとってない。そこで実際にはどの程度いるかわからない。またわれわれも、ベトナム大使館あたりでずいぶん調査に努力しておりますが、実際には数名いるという具体的な事実はありますけれども、統計的にとるということは、現在のわれわれの領事館の活動では不可能に近くて、実際の正確な数字は把握しておりません。  また、更新の実態でありますが、これは更新する場合に結局帰されるということで、この点は調べましたけれども、わが国でもそうでありますが、一般的に観光で渡航して半年たっというような場合には、なかなか延長はむずかしいということがアメリカでも実際ありまして、その場合、もしそういう登録のようなことをやれば特別に延長してやるという形で、清水さんの場合も登録に応じたということになったのじゃないかと思います。これはたまたま半年の更新時期に登録ということが起こったために、そういうことになったと考えられます。  また試験の実態ですが、これは確かに非常に簡単なもので、われわれのほうでつくったこの資料の中にも書いてありますが、ほんのちょっと受け答えして、あとは申請書にマークをつけてそれで終わりというのが、実態のようであります。
  202. 中谷鉄也

    中谷委員 答弁漏れです。私が最後お尋ねしたのは、大臣はこれは法務省のなにじゃなしに、外務省の管轄だと言われた。清水徹雄君にはいろいろな事情があるにしても、清水徹雄君という青年のために外務省はどういう交渉をされたか。これを最後にお聞きしたい。
  203. 山下重明

    ○山下説明員 この清水徹雄さんの場合には、九月十六日に実際発表されまして、その後すぐ外務省としてはアメリカ大使館を通じて米側と折衝に入って、その後も鋭意急いで交渉を継続中であります。
  204. 中谷鉄也

    中谷委員 終わります。
  205. 大竹太郎

    大竹委員長代理 鍛冶良作君。
  206. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 心臓移植に関しては、世上ずいぶん議論が行なわれておりますが、そのうち特にわれわれの聞きたいことは、わが日本においてはこれを法制するということを聞いております。法制をするというならばおそらく厚生省の所管であろうかと思いまするので、厚生省の方に承りたいのですが、心臓移植に関する法制を考えておられるのかどうか、考えておられるとすればどのようなことを考えておられるか、大綱だけでよろしゅうございますから、まず承りたいと思います。
  207. 松尾正雄

    ○松尾説明員 心臓の移植問題が出まして、心臓を含めました臓器移植全般の問題が、御指摘のとおり表面に上がっておるわけでございます。その心臓を含めました臓器全般の移植に関します法律をつくりたい、こういうことで、御存じのとおり、移植学会の中にこの準備研究会が設けられておりまして、厚生省の方や法務省の方もその中に加わりまして、いろいろ専門的な角度からただいま検討を続けておるという段階でございまして、厚生省としては、その学会の意見がある程度まとまりました状況を見きわめた上で、さらに次の準備にかかりたい、こういうつもりでおるわけでございます。  その場合、法制化をいたしますという場合に、どういう点をおもに具体的に考えていくかという御質問でございましたが、この基本的な私たちの気持ちといたしましては、これを法制化するという場合に、大きくいって二通りのポイントがあろうかと存じております。一つは、真に医療上そういう移植という問題がきわめて必要な治療であるというふうに考えられておる、そういう段階の場合、それがいわゆる治療といたしまして合法的に行なわれてほしい、こういう観点からいろいろ法の規制をするということが一点でございます。またもう一点は、そういうことのために行き過ぎといっては悪いかもしれませんが、やはりそういうことがないようなことを考えていくべきだ、こういうことが大きな柱かと存じます。  したがいまして、具体的に臓器移植というものの中にどのような臓器を加えていくのか、いろいろな種類がございますので、たとえばじん臓、そういったものまで含めていくかどうかという範囲の問題。それからさらに、一番問題になります心臓のような場合には、死亡の認定というものをどう取り扱うかということが非常に大事な問題であろうと思います。おそらく私どものいまの予想といたしましては、死亡というものをどういう認定をするかという純医学的な問題は、医学界の結論のほうにまつべき問題であろうと存じますけれども、ただ、それを認定をするという場合に、だれが一体それを認定をするのかという、認定をする人をどういうふうに限定したらいいかという問題が当然起こってくるかと存じます。それからまた、そういう臓器移植を行ないます場合でございましても、それはどのような場合に行なうべきであるかという問題、あるいはそういう移植を行ないます医師なり施設なり、これは当然一定の設備能力を持ったものでなければやれないわけでございますので、そういったようなものを限定するかどうか、それからさらに、こういう提供されるよう方々関係者の意思というものを、どういう範囲内でその同意というものを認めればよいか、また角膜のようにそういうあっせんをするというような場合に、それを規制する必要があるかどうか、おもにこういった点がスケジュールに上がる場合には問題点ではなかろうかと予想いたしておるわけでございます。
  208. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私は医学には何の知識もありませんから、いろいろな臓器の点は申し上げません。心臓だけを申し上げておきます。  心臓移植は、生きておる心臓を摘出してこちらの人に移植するものと心得ておりますが、生きておる心臓を取れば、生きておる人間の心臓を取るわけですね。したがって、生きておる人間の心臓を取れば、その生きておる人間は死ぬものと私は心得ますが、要するに、一人を殺して生きた心臓を取ってきて植えなければならぬものだと私は考えておりますが、それは間違いですか、いかがです。
  209. 松尾正雄

    ○松尾説明員 心臓を取り出します場合には、やはり死んだ人間の心臓を取り出す、それでなければ困るわけでございます。また、現実に死んだという方から心臓を取る、それでなければ許される問題でもないわけでございます。その場合にたいへんむずかしくなる問題がございます。また、その点につきまして世界じゅうの学者もいろいろ議論を続けておりますのは、人間の死というもののとらえ方が、要するに人間の個体というものが一応死亡するという全体死とでも申しますか、これが死んでいくという考え方、それから死んではいますけれども、個々の細胞なり臓器なりはまだ動いておる、こういうことがあり得るわけでございます。したがいまして、細胞でいえば、死んでいく細胞と、かなり長く、いわば死んだ方であってもその細胞自体は死んでいない、こういう状態があるわけでございます。それが臓器の場合にもやはりそういう形としてあらわれてまいる。したがいまして、それを要するに移植にたえる段階で取り出す。しかしながら、その患者さん自身はやはり死亡、完全に死んでおるというふうに判断された段階で、それを摘出する、こういうことになるわけでございますので、生きたままで生きた人間から取り出すということは絶対あり得ないというふうに考えております。
  210. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうなると、ずいぶんむずかしいことになる。それでは死んだ者から取るのだということを断定されるならば、議論はよほど楽なんですよ。生きた心臓を取る、こう言われるから、そこで問題になるのですよ。かりにあなた方、死んだ者からといっても、死んだ者に生きた心臓があるという、ここに——私はこの間からいろいろ議論しておるのを読んでみましたが、十分くらいならいいとかそんなばかなことがあるかという議論も出ておるようですが、この点問題だと思いますが、死んでから取るのだ、こう言われるならこれは何をかいわんです。そうじゃないのじゃないですか。心臓が生きておるということは、人間が生きておるということじゃないですか。少なくとも心臓を取ってしまえばその人間は絶対もとへ戻りませんね。この点は間違いありませんでしょうね。どうですか。
  211. 松尾正雄

    ○松尾説明員 心臓を人間から取ってしまいましたら、御指摘のとおりその人間はもう絶対にだめでございます、この点はおっしゃるとおりであります。
  212. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そこで生きた人間から取るのじゃないか、私はこう言うのですが、あなた方のほうで死んだ者でも取れると言うなら、だいぶ議論は変わってまいりますが、とにかく取ってしまえば命は戻らぬことは間違いございませんね。そうすると、あなた方の言われる死んだ、死んだのだが、心臓が生きておる、こういう認定はどのようにしてやるものなんですか。これはむかずしいことだから、私はいまここで一応聞いておきたい。死んだのだが、まだ心臓は生きておる、これをひとつ聞きましょう。
  213. 松尾正雄

    ○松尾説明員 たいへんむずかしい問題でございますが、私もまたそういうほんとうの専門家でございませんが、ただいま死亡という段階を認定するために取り上げられておりますのは、従来のように心臓がとまったとか呼吸がとまった、あるいは瞳孔反射がなくなった、筋肉が動かないというような、いわば臨床的に見てそこから判断しておりましたものから、さらにいろいろな測定をいたしまして、前段階といっては変でございますが、それと別な角度から死亡というものをつけたい、それの代表的なものとしていまあがっておりますのが脳の死、悩が死んでいるということでもってその生命の終わりを告げたい、このために、これを客観的に死亡と判断する方法として、脳波による測定ということが世界じゅうでいま批判されつつあるわけでございます。したがいまして、方法としてはおそらくそういったものをもって判断をするということに医学的にはなろうと思います。ただ、すでに報道されておりますように、世界的に脳波というもので判断をしたい、こういっておりますけれども、日本脳波学会では、単にそういう外国の言っておりますような現在の脳波というものだけで判断をすることはやはり無理ではないか、やはりその大脳だけではない、脳幹と称される呼吸その他の中枢を支配する機能がだめになるという判定をすべきだ、そのためには単なる脳波だけでは完全に把握できないのではないかと、こういう非常に慎重な態度でいま特別委員会をつくりまして、その脳波学会ではその点についての日本としての態度をきめたい、研究を進めたい、こういうふうに非常に慎重な方法をとって研究を進めておるようなわけでございまして、その点、医学的にはやはりそういう脳波なりその他の方法で死亡したというふうに医学界全体が認めるようになれば、それはやはり死亡したと認定せざるを得ないのではないかと考えておるわけでございます。
  214. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これはあなたのほうがよくお調べになっておるだろうが、この間の新聞を見ますと、新潟の学会か何かで出たはずですが、脳波の消失は死の認定にならぬという議論が出ました。これを読んでみると。驚くべきことが書いてありますよ。心臓を取ってしまうということは殺すことだと、こう言われるものだから、心臓だけで死は解決せぬでもいいのだ、脳波でも解決できるのだというので、死んだ者の心臓を取るんだという言いわけのために脳波ということを考えたのであって、脳波がほんとうに死の認定にならないというえらいことが書いてございますが、これはお読みになったでしょう。そうすると、これはたいへんな話で、やはり心臓を取ることが死なんだ。ところが、心臓を取って殺したといわれるのがいやなものだから、脳波でも死んだことがわかるから死んだものを取ったのだと、こういう言いわけをするために考えた逆説だと、こう言っておる。そうだとすれば、これは全く私は殺人の言いわけに脳波を出したにすぎないことだと思うが、これをどう思いますか。
  215. 松尾正雄

    ○松尾説明員 先ほど来申し上げましたように、脳波といっても、やはり日本の学者のほうはもっとそれをきわめまして、そして単に表面的な脳波だけじゃない、もっと深いところの機能を判定できるような、そういう測定の方法なり判断ができなければいけないのだ、こういうことで、その死亡というものに取り組もうとしておるわけでございまして、したがいまして、私は、少なくとも日本の学界は非常にこの点についてはほかの国に先がけまして慎重な、もっと科学的な方法をいまとろうとしているのではないか、こういうふうに実は判断しておるわけであります。ただ、それがどの程度の時期にどの程度実現するかというのは、私はまだはっきり断言はできない状態であろうと存じております。ただ、先生がいまおっしゃいましたような問題は、これからだんだんにそういうおそらくむずかしくわからない問題が出てくるのではないかと存じますのは、やはり人間のからだの中のある臓器というものを、かりにその人間が死亡しておられましても、別の方向でその臓器だけを何とか生かしておくという方法が可能になってくる。だんだんできてくる。私どもは、医療の本体としては、そういう第二の人に生かすということよりも前に、まずその当人の、相手の方の生命を守るということに全力をあげる、これが医療の本体だと思いますが、いわゆる蘇生術というものが一面また急速に開発されてくる。そうしてその死ぬべかりし人を助けていく、これがほんとうの医療でございます。こちらのほうが大いにこれから伸びてくると思いますが、そういうものと関連しまして、全体がなくなっておられましても、部分的な臓器だけを何とか生かしていくという方法、こういったものがやはり世界的には研究されてまいります。そうなりますと、ますます死亡というものをどういうふうに理解をするのか、判断するのかということは、やはりむずかしい問題になってくると思います。いずれにいたしましても、私は、日本の医学界、これは決して移植全体がすべていいのだ、それが唯一の方法だと考えておられる方ばかりではありません。いろいろな方面の方々が学問的にこの問題は解決していくものだというふうに考えている次第でございます。
  216. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私は、ひとつ刑事局長に法律的にお答えを願いたい。  私はしろうとですから断言できませんが、私の常識からいいますと、心臓が生きておればまだ人間が生きているものだと思います。少なくとも生きかえる可能性があるものだと私は思う。それを取ってしまう。取ってしまえば、いま言ったとおり、絶対生き返らぬことは間違いない。これは生き返るであろうものを絶対生き返らぬようにしたのだから、これは殺したのですよ。間違いない。そうしたら殺人罪だ、こう言うて出たら、刑法上どうお考えになるでしょう。  それから、先ほど実は先ばしって言われたが、近ごろどうも遺族の承諾を何か条件にしているよう——幾ら遺族が承諾したからといって、殺人はなくなるわけではございません。二人で相談して心中やっても、片方生き残れば誘導殺人罪になるのですから。いわんや、どうもほかの者が承諾したからといって、殺人が消えるわけではないと思う。この点、私がそう思うてもし告発したら、あなた方はどうお取り扱いになりますか。その点を……。これはとくと考えてもらわなければならぬ。
  217. 川井英良

    川井説明員 法律、特に刑法的には、具体的な案件について、生体である、また生きておる、こういうふうに認定ができるものからあえて心臓を摘出したというふうな事実関係になれば、十分刑法上の問題になる可能性がありますので、捜査をしなければならない案件だろうと思います。またそういうふうな場合には、遺族といいますか、まだ生きておれば遺族ではなくて、親とか兄弟とかいうふうなものでございましょうけれども、そういうふうな者の承諾がありましても、それは犯罪の成否に何ら影響を持つものではない、こういうふうに考えます。
  218. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これは法律をこしらえるとするならば、法務省もその考えからとくと意見を述べていただきたいと思うから申し上げるのです。心臓の生きておる限りは私は生き返る可能性があるものだと思う。取ってしまえば二度と絶対に戻らぬのですから、これに取り返しのつかぬことになるので、何といっても方法はないのですから、それは遺族なり第三者からでも、今日の人間尊重の点からいって、そういうことは困ると言って出るのはあたりまえだと思うから、よほど考えてもらいたい。  それからもう一つ、私がこう申しますのは、私自身でいろいろの例を知っておりますから、その例を申し上げて、ひとつ厚生省及び法務省で御参考にしていただきたいと思います。よほど考えてもらわなければならぬ。私の親友に山口久吉という男が、いま生きておるかと思いますが、八王子の医者で弁護士がおります。医者がおもしろくないというので、弁護士試験を受けて弁護士になって、それで仲よくなったので、私は話を聞いておるのです。その男の経験談が第一ですが、医者をしておって——会社の医者だった。そこで職員が、工員がひどく悪いというので、肺結核だったと思うのですが、女の子だった。見に行った。そうしたらどうしようもない。手の施しようがなくなっておった。時間の問題だ。もうこれはしようがないといって帰ろうかと思ったが、ただ帰っては気の毒だと思うので、申しわけにカンフル注射をして帰った。そうして、いまもう死んだと言うてくるか、いまもう死んだと言うてくるかと思っておったら、何も言うてこぬものだから、次の朝になって、あの患者はどうなったかと言ったら、だんだんよくなって意識を回復しました、そこで驚いて行ってみたら生き返っておった、こういうわけです。それで今度はこれならばと思って治療したら、ほんとうに生き返ってなおった。そのときに、われわれは医学上いろんなことを言うけれども、学問上でいう死ということと人間の生命を断つ死ということとは違う、これは学問上の死では判断できないものだ、人間の生命には霊という偉大なるものを持っておるのだということがわかって、私はそれから考え直した、こういうことを言いました。その医者はやぶだからそうだったのだといわれればそうかもしれませんが、彼は真剣で、私らにそういう話をしてくれました。だから人間の命だけはほんとうに死んでしまうまではおろそかにすべきものではない、こういうことを言っておる。したがって私は、いま言うように、心臓が生きている以上はいつ生き返らぬとも限らない、やり方によっては返るものだ、こう思うのが第一です。  第二に、私の郷里に私と特別の親友の医者がおりました。これが、二人で一ぱい飲んでばか話をしたときに、おまえにだけ一生一世の私の秘密を打ち明けるといって話をしましたのは、彼の義母、女房のおっかさんが伝染病にかかってたいへん苦しんだ。それで迎えに来たので行ってみたら、どうにもならぬし、苦しんではねてしようがない。しかも伝染病であるからもう動かれたりされるとたいへんだというので、困って、どうすればいいと思っていたら、おやじさんがその医者を呼んで、おまえも親子じゃないか、一体見込みがあるものか、こう言うので、見込みはない、見込みがないものなら、こんなに苦しんで人に恥かかすんだったら、いまのうちに楽に往生させてやったらいいじゃないかと言うので、それもそうだと思って注射をして往生させた。そうしたら、親戚じゅうから、おとうさんはいい医者を親類に持ったものだ、大事なときにきれいに片づけてもらってよかったといって、みんなからあいさつを受けた。けれども、その後何年たっても、機会があるごとに、もしもあのときにあの注射をしなかったら生き返ったのでなかろうかということを思い出す。何か機会があると思い出す。絶対に返らぬものだと思うけれども、とにかく殺したのはおれの注射なんだから、あれをやらなかったら生き返ったのじゃなかろうかと思うことがしばしばある。いかなることがあっても人を殺すということだけはやるべからざることだ、だれにも言わぬがおまえだけに話をする、こう言いました。これは死にましたが、そういう例がございます。これは第二の例です。  第三の例は、ことしになって死にましたが、東京の私の友だちの大島正恒という弁護士で、私と同期です。それはことしの三月に死にましたが、去年の二月に一ぺん死んだのです。私はあなた方にこの質問をしようと思うから、家族なり看病した者のところにわざわざ行ってこまかに聞いてまいりました。たとえば一ぱい飲むと、おまえは香典を二度もらったやつだからと笑い話をしたくらいだが、いまここであなた方に申し上げるにはもっと根拠がなければいかぬと思ったから、聞いてきました。  四谷三丁目の先の大京町の大木戸の角のところのこちら側に、まだ未亡人が残っております。ことしの三月に死んだのです。それは去年の二月、入れ歯をしておったからでしょう、御飯を食べると歯を洗いにいく例になっておった。それで二月の寒い日、朝飯を食べて八時過ぎに、一人で立っていって台所へ行って歯を洗っておった。そのうちにばたんという音がして、行ってみたらそこにひっくり返っておった。もともと心臓が悪くて、狭心症で倒れた。それから医者を呼んできましたら、医者が見て、これはお気の毒だがもう死にました。脈はなくなっておる、呼吸はなくなっておる。瞳孔を見たら、瞳孔は開いたままでふさがらぬ、肛門を見たら、肛門も開いたままでふさがっておらない。そこで、これはもう何としても方法がないから、早く呼ばなければならぬ人を呼びなさい、こう言われたものだから、女房は親戚みんなに電報を打った。さすがにどうも、いま死んだというのでは親戚に気の毒なもんだから、これは危篤というて打ったそうですが、電報を打ったら、みんなからどうしたのだと言われて、いや実は死んだのだ。そうかといって、お弔いの支度をして、みんながかけつけたそうです。かけつけましたら、一時間ほどしたら、ううんとうなりだして、今度はあばれ始めた。そこでまた行って医者を呼んだところが、これはどうもふしぎな人間だ、もう死んでしまったものが生き返った、これならば命はあります、こういうことになった。私は、そのときに体温があったか、冷たくなったのを見たかと奥さんに言ったのだが、いや医者が死んだと言うものだから、その死骸を片づけるのに一生懸命やっておりましたから、それどころではない。そして、それがこの間まで生きていまして、それからちょいちょい倒れるようになったそうですが、しばしば倒れたままで、一年二カ月ほど生きておって、ことしの春死にました。  これなんかも、いまの脳波がどうとか何とかいう、申しわけで言っているような説ではないですよ。息もとまれば脈もとまる、瞳孔ももう開いてふさがらぬ、肛門もふさがらぬ、医学上間違いなし死んだというので、死んだ宣言をしたのですよ。それでも生き返ったのです。これをあなた、いいあんばいだ、死んだというのでもしなにすれば、もちろん死んだと言ったのですから問題はないかもしれないが、心臓だけは生きておるからということで切ってとられたら、まさしく殺人されたことになりますよ。  そういうことがありますが、それでも心臓が生きておるのに死という宣言ができるのか、医学上間違いなく死んだのか、心臓を摘出したのは殺したのではないのだ、こういうことが断言できるものであるかどうか。これは単なることばのなにではありません。現実上の人間の生命の問題ですから、そういうことがあったということを聞いてどうお思いになりますか。ひとつ、医務局長、経験のあるところからお答えを願いたい。
  219. 松尾正雄

    ○松尾説明員 おっしゃいましたような例というものがありますことは、私も当然予想できることだと存じております。  先ほど来申し上げましたように、私どもはやはりそこにいる方の——とにかく最後最後まで生き返らせるといいますか、それに全力をあげるというのが従来の医療である、この線は私は絶対はずしたくないと考えております。おそらくこういう問題につきましても、もちろんそういう実際の例がなにされておるということもございますが、日本の医学界の中でも、いろいろな測定データその他の中からも出ておりますように、いま申し上げましたような脳波の問題にいたしましても、それだけではよくないのではないかという反論も出ておるような状態でございますので、そう軽々にこの死亡認定を、形式的なそういうあるものが出ればいいのだというふうに、簡単にそういうふうな結論で押し切ることはまず決してあるまいと私も考えております。  先ほど来申し上げましたように、したがいましてかりにこういう問題を法制化するといたしました場合には、その死亡認定という問題につきまして、これは最も慎重さを加えてやるべきである、こういうふうに考えております。決して軽々に死亡認定をやって、心臓移植をやる、こういうようにはまいらぬのではないかと私は考えておるわけでございます。
  220. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ことに、この間新聞を見ますと、アメリカ、アフリカあたりでは、重病人が出るというと、その心臓をくれと言うて医者があとを追っかけていく。新聞に出ている。危険千万な話だ。あとを追いかけて歩く。そういうものを法廷でどう認められるか。かりにだれかが承諾したらいいということになると、殺人を法律が認めることになりますよ。われわれは、人間尊重としてこれほど重大なことはないと思いますからこれだけのことを申し上げるのですが、生きておる者ならばもちろんのこと、生き返る可能性のある者でもやってはいかぬものだ、やれば殺人罪になるものと私は思う。この点を前提にして、ひとつ厚生省、法務省、両省で研究していただくことを希望いたします。先ほど言われたように、死んでから臓物だけを生かしておく方法、それを私は言いはしませんよ。けれども、その死んだということが問題になるんですよ。先ほど来言うように、これは死ぬにきまっておる、そんなきまっておるぐらいのことでできるならば、私はこのことを言いはしない。だからこの例を出すんですよ。もっといい例はたくさんある。しろうとである私自身が経験した例だけを三つ四つあげたのですが、そういうようなことで、死んだ者をやるならよろしゅうございます。よろしゅうございますが、それにしても死んだということを認定するということに対しては、これはただでは認定できるものじゃない。学問上においてはいろいろのこともありましょうけれども、人間尊重という点はこれは何より大事なことですから、人一人生かそうかということで人一人殺したんでは、それはたいへんなことになりますから、この点ひとつ十分お考えおき願いたいと思いまして申し上げたわけです。いずれ法制に関するものが進みましたならばもう一ぺん伺うことにして、きょうのところはこれだけを御参考に申し上げて、私の質問を終わります。
  221. 大竹太郎

    大竹委員長代理 神近市子君。
  222. 神近市子

    神近委員 たいへん時間がおそくなりましたから、私は簡単に二、三問御質問ようと思います。  問題は、きょうは人権擁護というような申し合わせでしたから、私は前からやっている国士館大学の問題をもう一度伺いたいと思います。あの問題は不当解雇が行なわれて、四人の人が不当解雇についていま民事訴訟になっているはずでございます。その中でどういうものか、この裁判が一向に進捗しないんです。大学に関係のある方々がいろいろ有名人がおいでになるから、そういうことがおおきに原因になっているんじゃないかというように私どもは疑いを持っているわけです。この人たちが解雇されたのは、非常に不当な事情からです。たとえば暴力を館長がやるということに反対するとか、また教授がいろいろ話し合いをしたほうがいいのでないかというような教授会、そういうものをつくったということが解雇の理由になっているのであります。それで、民事訴訟になって相当長くかかっております。それで鈴木局長——いま人権擁護局長は鈴木さんですか。
  223. 上田明信

    ○上田説明員 上田でございます。六月十五日にかわっております。
  224. 神近市子

    神近委員 お伺いしますけれども、昨年の三月に前の局長が、年間七千件あって、そして一年以内に七割五分は処理する、そして二割五分が年を越す。で、国士館の問題は重要案件だから調査を急いで、四十二年六月ごろまでには調査を決定する、こうおっしゃっているんですよ。ところが一向それが進捗しない。この問題、あなた引き継いでいますか。
  225. 上田明信

    ○上田説明員 六月十五日に人権擁護局長に着任いたしまして、その後引き継いでおります。
  226. 神近市子

    神近委員 何も聞いていらっしゃらないのですか。
  227. 上田明信

    ○上田説明員 いや、聞いております。
  228. 神近市子

    神近委員 これは簡単な問題なんですよ。たとえば暴力を館長がふるったとか、あるいは生徒に政治的加入をさせるとか、ちょっとおくれると罰則で停学にして、掃除をやらせるとか、門番をやらせるとか、そういうふうなことで、これに反発する教授があったことは事実だろうと思うのです。  それで、一体なぜこんなに長く、訴訟が起こって三年もかかるほど長くなさるか。三年かかっておりますよ。それでどういうことが一体支障になっているのか、それがわかっておれば伺いたいと思います。
  229. 上田明信

    ○上田説明員 お答えいたします。私が引き継ぎました限度では、本件は、事件の内容が証拠の上でも非常に複雑だということが一つ。そしていろんなことがあったその評価が、たとえいけないことであっても、どの程度いけないかというその程度問題、そういうもので非常にむずかしいのでいままで延びていたのだ、こういう引き継ぎを受けております。これが引き継がれましてから、さっそく記録を取り寄せまして読ませてもらいました。そして私のほうでは大体一応まとめまして、事実認定、その評価について、なるほど微妙な問題が多々あるようであります。これが延びた原因ではなかろうかと思います。こう延びましたのは、人権擁護局といたしましてはまことに申しわけなく存じております。私も、あまり言いますと、前局長のことをとやかく言うことになって恐縮なのでありますが、そういう意味ではなくて、かなり微妙な部分も含んでいる。つまり事件の数が非常に多いんですね。なぐったとか、あるいは写真を掲げてたなざらしにしたとか、あるいは理由なく首を切ったとか、そのケースが非常に多いものですから、その一つ一つについて証拠上の問題、それがなかなか集まりにくかったのでありますが、それにしても三年という年月は、非常に長くかかったという点は申しわけないと存じますが、現段階においては、ようやく事実認定について証拠上の問題、しかもその事実に基づく評価の問題、これはどういうふうに評価すべきかという問題について、われわれは現在局内において会議をしております。局長と申しましても、従来のいきさつがありますので、各課長を集めまして、時間があれば議論を重ねております。局議中でありまして、私ども一といたしましては、いかにおそくても今月中までには何らかの結論を出して適当な処置をとりたい、それ相応の処置をとりたいというふうに考えております。
  230. 神近市子

    神近委員 今月の末までですね。
  231. 上田明信

    ○上田説明員 今月の末までというのは最大限というのですか、それまでに事実認定その他をして、そのした認定について何らかの処置——人権擁護局の処置いろいろありますが、その中の適当な処置を、できればそれ以前にもとりたいと思っておりますが、万一おくれても申しわけないので今月末までにと申し上げたわけでありまして、それ以前にやりたいと思っております。
  232. 神近市子

    神近委員 ぜひ早くそれは実行していただきたい。この問題は馘首が理由のない馘首であったということがはっきりしているものですから、いま署名運動を一生懸命やっているのです。この四人が帰ってこられては困るものだから、この大学の先生方全部に反対というような署名を書かせている。それはまことに申しわけないけれど、書かなければわれわれがまた首にされるから、書いたからあしからずという手紙が何通か来ているのです。それは良心的な人たちの書いもので、あとの人は手紙も書かないで、ともかく署名させられている。これはもう去年のうちに出すというお約束だったのですよ。それで、今月末までにはというお話があれば、私はそれでけっこうだと思いますから、いろいろ問題も持っておりましたけれど、これで打ち切ることにいたします。ありがとうございました。     〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕
  233. 永田亮一

  234. 松本善明

    松本(善)委員 公安調査庁の仕事は、国民の人権にたいへん関係があるわけで、特に破防法の三条で「思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し、及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を、不当に制限するようなことがあってはならない。」ということが明記をされております。長官、新任されて、こういう点についての所信をまず伺いたいと思います。
  235. 吉橋敏雄

    ○吉橋説明員 お答えいたします。ただいま松本議員から御指摘がありましたとおり、その線に沿って公安調査庁といたしましては調査をいたしております。
  236. 松本善明

    松本(善)委員 私の手元に、こういう資料が入ったわけなんです。「経営開発センター経営教育部」というところの講座ですね。これは「恐るべき日共・民青があたの職場に何人侵入していますか、それをどう処理していますか?」「戦術転換する日共・民青の現状と企業の防衛対策を探る」「経営者・工場長・人事・労務・勤労課長の特別セミナー」そしてこれに「日共・民青を侵入させる企業の弱点は何か」「日共・民青に対する説得工作のポイントは」「じわじわと迫る職場要求にどう対処するか」「二つ組合のある場合の日共・民青の扱い方は」「ゆるぎない管理体制をどう確立するか」この講師に公安調査第一部長、島田純一郎氏がなられている。そうしてこれは十月の七日月曜日、ごく近いわけですけれども、この島田純一郎氏がしゃべる内容は「70年闘争に備える日共・民青の基本性格と組織現況について」「日共・民青の根本性格の特徴は何か、その歴史は」「日共の綱領・規約・民青のよびかけ・規約の解明−特に企業・労働組合とその運動と関係ある点を中心に−」「細胞・班の性格と基本任務は何か」それから「日共・民青の労働組合に対する最近の戦術は」「職場や組合における最近の「低姿勢」戦術とその狙い」「職場からすべての闘争を積み上げようとする方針とは」「企業や職場の実態調査の徹底と、それに基づく職場政策の推進にみられる具体的な特色」「激増する「高校班」をどうみるべきか」「日共・民青の企業及び組合に対する破壊活動」、こういうふうになっておる。  こ内容について、いろいろ問題にするのはまた別の機会にしたいと思いますけれども、この公安調査庁の職員が——これは調査第一部長というのはこういうことの調査をしておると思うのですけれども、こういう職員が職務上知り得た内容をもとにして、こういう——相手は私企業の労務、人事であります。それの講習会に講師として出かけていく。そうして自分知識を提供する。しかも組合対策の指導もする。こういうようなことは、一体公安調査庁の職員としてやってよろしいことと考えておられるかどうか。
  237. 吉橋敏雄

    ○吉橋説明員 お答えいたします。公安調査庁設置法の四条の十一号に、「所掌事務の周知宣伝を行うこと。」というのがございまして、公安調査庁の所管事務の周知宣伝ということは、これに基づいてやっておるわけであります。それで、これまでも公私の団体等から依頼がございますと、公務に支障のない時間において、また公務の機密にわたらない範囲内におきまして、内容を御説明いたしておるのであります。
  238. 松本善明

    松本(善)委員 所管事務の周知徹底というのは、これは公安調査庁がどういうことをやっておるかということの内容であろうと思う。私企業の労務対策をするところに出かけていって、そうして労務対策の指導に当たるようなことをやる、あるいは反共演説会に出かけていく、こういうようなことを無制限にどんどんやってよろしい、そういう方針でやっておるのですか。
  239. 吉橋敏雄

    ○吉橋説明員 御承知ように、国家公務員法におきまして、国家公務員は、政治目的を持って政治活動をしてはならないという規定がございますので、それにもちろん抵触しない範囲内において、かよう会合等に職員が出て御説明申し上げておるのであります。
  240. 松本善明

    松本(善)委員 いま、たまたま言われたから言うけれども、国家公務員法の政治的行為の禁止の規定に基づく人事院規則によれば、特定の政党やその他の政治団体を支持し、これに反対する目的を持って、そうして講演活動をするということは、これは政治的行為に当たるのではないか。これは禁止に当たるのではないかと思いますが、どうですか。
  241. 吉橋敏雄

    ○吉橋説明員 公安調査庁といたしましては、業務上調査の結果等について、いわゆる公然資料その他によって知り得たことを説明申し上げておるのでありまして、特に政治的な目的、どの政党を支持する、あるいは反対するというような意図でやっておるのではございません。
  242. 松本善明

    松本(善)委員 先ほど読んだのでおわかりのように、日本共産党に反対をする目的を持ってやっておることは明らかではありませんか。先ほど言ったようなことが、日共対策、日共民青への対策という形でやられておるわけです。これは日本共産党に反対する目的を持ってやっておるのではないということになりますか。
  243. 吉橋敏雄

    ○吉橋説明員 調査の結果に基づいて、主として公然資料に基づいて得たその結果を客観的に説明申し上げておるのでございますから、政治的な目的があるものではないと解釈しております。
  244. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、日本共産党に反対をする、あるいは民青同盟に反対をする、そういうような講習会、こういうものにはほとんど無制限に出ておるのですか。公安調査庁の職員は、公然資料に基づくならばよろしいという方針で、公安調査庁設置法基づいて、周知徹底をさせるということで、こういう講演会のような機会にはむしろ積極的に参加をしておるのですか。
  245. 吉橋敏雄

    ○吉橋説明員 お尋ねような各会合に積極的に出席しておることはございません。当該団体から要請があった場合にまかり出て、客観的な資料に基づいた内容を御説明申し上げておるのであります。
  246. 松本善明

    松本(善)委員 そういう場合に、限度はありませんか。それは要請されるならば何でも出ていく、一向に差しつかえないんだ、こういう考えですか。
  247. 吉橋敏雄

    ○吉橋説明員 別に無制限ということはございません。いろいろ要請があっても、必ずしも全部出席しておるわけではないのでありまして、業務に支障のない時間において、やむを得ないところに出席いたしておるのであります。
  248. 松本善明

    松本(善)委員 時間的に業務に支障がなければ行くという方針のようですけれども、これは、結社の自由、日本共産党——公然たる政治活動をしております共産党の政治活動、こういうものに対するはっきりした侵害ではないか。先ほど私が破防法で読みましたような、結社の自由、思想、信条の自由、そういうものを不当に制限をするような、そういう活動をするということになるのではないか。なぜかならば、その企業の中で公安調査庁の役人がやってきて、共産党はこうだ、民青はこうだ、おそるべき民青とか、おそるべき日共、こういうようなことを書いた、こういう集会ですよ、そういう講演会に講師として参加をする、これは憲法に保障されたそういう自由に対する侵害ということになりませんか。
  249. 吉橋敏雄

    ○吉橋説明員 これまで十年ほど前から国会において、日本共産党は破防法に基づく一つの調査対象団体であるということは、歴代の次長、長官が申し述べております。それに基づいて現在も日本共産党の調査をいたしておりまして、したがって、特に共産党の結社の自由を侵すというようなことでなく、調査によって得た結果の客観的な資料に基づいて、それのみを——先ほども申しましたように、当該団体から要請があった場合は常に必ず行っておるということはございません。それもなるべくしぼって、出席いたしておるのであります。
  250. 松本善明

    松本(善)委員 共産党を調査の対象にしておるということ自身が不当なことであって、われわれは正しくないことだ、これも憲法に違反をしていると考えておりますけれども、それはいま問題にしておるのではないのです。かりにそういう立場でやっておるとしても、そのやっておる結果を私企業の労務対策に利用させるというようなことが、公安調査庁のあり方としていいのかどうか。それは必要な範囲を越えていないか。あなた方のいままで言っている立場からいっても——根本的にわれわれは破防法にも反対をし、あなた方の調査のやり方に反対をしておるけれども、しかし、あなた方がいままで国会で言っておる態度からしても、その調査をした内容をどんどんみんなのところに発表していく、労務対策に使う、これは労働者の団結権にも影響するような重要な問題ではないか。重ねて意見を聞きたいと思います。
  251. 吉橋敏雄

    ○吉橋説明員 何度も繰り返して申し上げますように、あくまで公然資料に基づいたものを要請のあった団体にしぼって申し述べておるのであります。
  252. 松本善明

    松本(善)委員 できるだけ機会もしぼっておる、すぐすべてに行っておるわけではないということですけれども、どういうものは行ってどういうものは行かないというようなことはありますか。
  253. 吉橋敏雄

    ○吉橋説明員 先ほど来申し上げますように、業務に支障のない程度において、しかも客観的な資料を提供するというので、それが当該団体が何に利用しようとかいうようなことを意図してわれわれは申し述べておるのではありません。それで、団体によっていろいろたくさんありますが、特に私企業の個々的な会社とかいうようなところへは参っておりません。たとえば連合体で年に一回何か会を催すといったような場合に、特に要請されて、客観的に現在日共の動向がどういうふうになっておるかというようなことを御説明申し上げておるのにすぎないのでございます。
  254. 松本善明

    松本(善)委員 ことしの三月にも、やはり調査第一部長の弘津恭輔氏が日本経営センターの経営開発部の主催する講演会に同様趣旨で出席しております。こういうことは、これは公安調査庁が、俗なことばで言えば、資本家の手先になっている。これは資本家団体の講習会ですよ。これに出席するのは一向に差しつかえないのだ、そういう見解を聞くということは、全く驚くべきことだと私は思います。こういうことは当然やめなければならない。この破防法の趣旨に反するものであります。人権の擁護という観点から、厳重な反省を求めたいというふうに思います。  公安調査庁のやり方についてはさらにいろいろ問題があるわけですけれども、きょうは時間もありませんし、あらためて法務大臣にも意向をただしたいと思います。公安調査庁長官に新任されたけれども、いままでの陋習を改めるという考えで、もう一回再検討しなければならない。私たちは根本的に反対をしておりますけれども、あなた方の立場であっても、結社の自由でありますとか、国民の自由侵害は最小限にしなければならないということになっておるわけです。そういう趣旨でやらなければならない。厳重な反省を求めて、私の質問を終わります。
  255. 永田亮一

    永田委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十九分散会