○小林委員
大臣の
お話は、何か筋が通っておるようですが、私がいつも気にかかる点は、あの状態ではどうしようもない、いまどうするということもできないと、いま
大臣がおっしゃられました。そうすると、そういう御意見の中に、いまのような学生もみんな一緒に含められて罪悪視されてしまう。そして、そういう状態であるからやむを得ないのだということで、いわゆる政治的な
責任として解決しなければならぬ問題も隠されてしまう。いわゆる良心的な学生の、この踏み切るというふうなものもちゅうちょさせられてしまうし、そして
改善をすべき問題も、
改善をされなくてもいいような形になってしまう。今度のあの人
たちとは、私はそういう学生と接しておるのですが、全く何というのですか、自分が医者になろうとして心がけたから医者にならなければならないというふうなものではなくて、もっと
大臣が心配しておると同じようなものを
考えているわけなんですよ。
一つ例をあげてこの際申し上げますが、学生
諸君は、私のところに来ましてこういうことを言いました。なぜ厚生省は
——われわれまだ資格のない者が、卒業試験も受けていない、国家試験も受けていない、そういう者がアルバイトに行きますと、大体さっきの
局長が言った青医連でもってきめてある相場は一日四千五百円だそうです。しかし、四千五百円ははしただから五千円くれ、もし夜勤までやってくれというなら一万円くれ、一日にですよ。五千円ないし一万円の収入がある。そういう違法行為によってアルバイト学生というものが救われている。そのアルバイト学生の中に埋没してしまって、何とかして学生の本分であるものをしっかりつかんで、そしてわれわれの
考え方を実現するような道を開こうとする、そういう
努力をしておる人
たちが私のところに来て、なぜ厚生省ではこの違法行為を取り締まらないのか、もし取り締まってくれれば、そういうアルバイトでもって逃避行をしておる人
たちも、自分自身も学生の
責任としてこの問題を解決しなければならぬというふうに、ほんとうに糾合してくれる、こういう学生
諸君が私のところに何回か来て、そういう問題を言ってきておることがございます。
私はその人
たちの心境を聞いて、
局長が言われたように、
大学の教授の指導よろしきを得たから、いま卒業試験を受けるのに踏み切ったなんという、そんなことでは
文部省の見方というものは私は間違っておると思う。もっとそういう学生の真実というものを
——私にできるならば、やはり
文部省の皆さんにもできるはずなのだ、そうして学生の実態というものをつかんで、ただ簡単に、
理由はどうであっても暴力はというふうなことだけではなく、もう少し詳細なものの上に立って
大臣をはじめ
局長がものを言うならば、もっと何か学生
たちにも希望が出てくるのではないかと思うのです。大体医局生になって一万五千円というものが支給されるそうですが、これではせっかくこういうものが生まれてきても
意味がないのじゃないか。少なくとも三万円ぐらいにしてほしい、こういう要求があることも
御存じだと思うのです。
あるいは教育病院というものが出てくるけれ
ども、そこの指導医は一体どういう人
たちがなるか。いまのところ、東大の中のいわゆる教授陣の中でもって、上がつかえておる、しかし、いつになっても教授になれないという人
たちが、おそらくそういうところへ今度は回っていって指導医になって、そしてこれはまた医師会にもあるように、医者の世界にいままで頑としてあったいわゆる系列的なものが、またここにも生まれてくるのではないか。そういうものが生まれてくるならば、せっかく教育病院をつくって研修医
制度がしかれても、また新しく封建的な医局というものが生まれてくるのではないか。こういうものをどうしたら
改善できるかというところまで学生
諸君は
考えているのですよ。
だから、卒業試験を受けようとする学生
諸君も、簡単に、医者にならなければ親が心配するからなんという問題ではなくて、そこまで自分
たちはあくまでもいこうとしておるんだ、こういう意欲に燃えて、そのためにはここで踏み切って卒業試験を受けようじゃないか、そういう意向の中に
学校側も動いて、卒業試験も臨時ではあるけれ
ども行なおうというふうに動いたと
考えてもいいと私は思うのです。そういう見方をする中で、学生
たちに対してもっと正しい見方を政治もしておるのだ、
文部省もしておるのだと言うことができると思うのです。
とにかく、
大臣、私が申し上げることは、これは単に東大だけの問題ではございません。きょうもはっきりニュースで言っておりました。日大問題は、これはおそらく五十一の問題を持つ
大学に何らかの形でもって影響するだろう。それが警官導入ということにおそれをなして学生
たちが引っ込むならばいいけれ
ども、自分のところには警察官の導入はなくても、そういう
措置をするならば、ということで、学生全体が
一つの抵抗的、反抗的なものを持ったとしたらこれはたいへんだ、こういうふうに放送しておりました。私はそうだと思うのです。そうしてせっかく昨今報道されておりますように、東大の中にも、臨時の卒業試験を受ける学生
諸君が、ほんとうに決意をして出ておる。しかし、これもおそらく同じ行動をとってきたという点から、東大の中の学生同士の中に大きな問題が出てくると思うんです。これはかえっていままでの対
学校的な問題よりももっと深刻なものが出てきやしないかと思うのです。そういうものを、学生のそれぞれの動きというふうなものをしっかりつかみ、思想的なものをしっかりつかんだ中で
文部省というものが善処しなければならぬし、
学校側はこれに呼応して善処しなければならぬと思うのです。私はそういうふうに
考えて、次の文教
委員会が開かれるまでには卒業試験が行なわれるようなことを
考えますときに、ぜひこれだけは、
大臣並びに文部当局に私の
考えを申し上げておかなければならぬという点を
委員長にも訴えまして、非常に時間がおくれましたけれ
ども、時間をいただいたわけなんです。だから、私の
考えというものは、決していま
文部省を攻撃しようとか、
大臣を非難しようとかいう問題ではなくて、また
一つの新しい危機が来ようとしておる。これに対してもっと実態というものをしっかりつかんでいただいて善処していただきたい。これが私の念願であります。できたら、
大臣の御意見を承りたいと思うのです。それで終わらしていただきます。