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1968-08-28 第59回国会 衆議院 文教委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年八月二十八日(水曜日)    午前十時五十三分開議  出席委員   委員長 高見 三郎君    理事 久保田藤麿君 理事 河野 洋平君    理事 坂田 道太君 理事 谷川 和穗君    理事 小林 信一君 理事 長谷川正三君    理事 鈴木  一君       稻葉  修君    中村庸一郎君       加藤 勘十君    唐橋  東君       川村 継義君    斉藤 正男君       山崎 始男君    有島 重武君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君  委員外出席者         文部政務次官  久保田円次君         文部大臣官房長 岩間英太郎君         文部省初等中等         教育局長    天城  勲君         文部省初等中等         教育局特殊教育         課長      寒川 英希君         文部省大学学術         局長      宮地  茂君         文部省社会教育         局長      木田  宏君         文部省体育局長 安嶋  彌君         文部省管理局長 村山 松雄君         専  門  員 田中  彰君     ───────────── 八月十日  一、文教行政基本施策に関する件  二、学校教育に関する件  三、社会教育に関する件  四、体育に関する件  五、学術研究及び宗教に関する件  六、国際文化交流に関する件  七、文化財保護に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  文教行政基本施策に関する件  特殊教育振興に関する件      ────◇─────
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。長谷川正三君。
  3. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 去る八月十六日に人事院公務員給与に関する勧告が出ておりますが、本日実はこの内容について人事院総裁以下関係方々にいろいろお尋ねをしたいと思っておりましたけれども、連絡上のそごがあってきょうは出席をいただけないということでありますので、ごくしぼった二点について文部大臣の御所見をこの際伺っておきたいと思います。  人事院勧告全体について、私どもは、今日の民間の水準や物価の問題と照らして、これは不当に低いというふうに思っておりますが、その内容については本日は申し上げないことにいたします。ただ一つ、どなたも指摘しているところでありますが、教職員給料表につきまして、かつて教職員につきましては特に二号俸スタートから上がっているというような時期もありまして、通し号俸時代はそれで教員一つ優遇策になっていたと思いますが、その後の変遷を経て現在顕著な例は、他の地方公務員等と比べて大体三十五歳前後からあとになりますと、いわゆる給料表が交差して、ずっと教員が低くなってきています。これはどうしてもここで直さなければならないことであるというふうに考えておるわけでありますが、教職員給与について非常に責任のある文部大臣として、この点についてどういうふうにお考えになっているか、まず最初に御所見を伺いたいと思います。
  4. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 教職員給与の問題につきまして御指摘のような点があるということは、私もよく承っているところでございます。一般行政職と直ちに比較するということも困難な点もあろうかと存じますけれども、御指摘のような問題につきましては、われわれとしましてもその改善について今日までも努力してきたつもりでございますし、今後ともこの問題につきましては努力を継続してまいりたい、そのような心持ちで今日もやっておるわけであります。
  5. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 その点について、担当局長のほうで何か補足があったら、もう少し突っ込んだ点お聞かせ願いたいと思います。
  6. 天城勲

    天城説明員 ただいま大臣からもお答え申し上げましたことでございますが、現在、先生お話にもございましたように行政職員教育職員が一本の俸給表でございませんで、教育職が別の表になっておるわけでございます。したがって、俸給表自体のいろいろの見方があろうかと思いますが、まあ並べて見たときに、せっかく初任給教員特殊性を見たそのカーブが、大体十三年目、十四年目くらいでクロスしてしまうというので、これはわれわれのほうでも教員給与体系の中で一番の問題点だというふうにかねがね考えておるわけでございます。人事院勧告の前にも、われわれのほうからもその点を指摘いたしまして、改善方について申し入れいたしたわけでございます。人事院も確かにこの点は十分に意識していただいておるわけでございますけれども、まだ希望するような姿の勧告をいただいていないのは残念でございますが、この点につきましては、実は教員給与体系基本的にどう考えるかという問題に関連があるものですから、私たち本年給与実態調査をいたしておるのでございますが、その結果も含めまして、教員給与体系基本的に考えるという体制をとりますその中で、おそらく一番考えなければならぬ点はこの辺の点だ、現在のところはそういう考え方でおるわけでございます。
  7. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 もう一点この際大臣にお聞きしておきたいのは、実は新聞等で伝えられるところでは、灘尾文部大臣は、閣議その他の席で、人事院勧告内容の是非の問題は抜きにして、少なくとも勧告政府は完全に守るべきである、こういう見解をしばしば表明されているやに聞いておりまして、この点は大臣として今日の文教行政担当する上に大きな配慮をされておるというふうに受け取っておりまして、人事院勧告そのものに不満を持つ私どもといたしましても、最低大臣のそのようなお考えはぜひ貫き通して政府全体をそのように持っていっていただきたいものだと考えますけれども、この点についての大臣の御所見並びに決意をこの際明らかにしていただきたいと思います。
  8. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 人事院勧告につきましては、申すまでもなく政府としましてはこれを尊重するのが当然だと思うのでございます。従来の例からいたしまして、その点におきまして私どもとしましてもいかにも残念だ、ことに多数の地方教職員の問題を考えますときに、何とか少しでもよくしたいという気持ちを持ち続けておったわけでございます。今回の勧告につきましても、私としましては極力その完全実施を目ざして努力をいたしておるところでございますが、まだ政府部内としましては決定には至っておりませんが、最終結論を得るまでの間、できるだけ努力してまいりたいと思っております。
  9. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 大臣のそのお考えは、閣内でも有力な灘尾文部大臣でありますので、ぜひひとつがんばっていただきたいと思います。人事院勧告問題につきましては、肝心の人事院がきょう来ておりませんので、本日はごく概略その程度にとどめます。  次に、今日教育界あるいは教育行政上非常にたくさんの問題が山積しておりまして、われわれ文教委員をつとめている者としても非常に心を痛め、あるいは非常に責任を感ずる、あるいはもっと努力しなければならない、こう感ずる点が多々あるわけでありますが、その中できょうは一、二の点を拾って質問申し上げたいと思うのです。  まず第一は、これは教育の世界ではあってならない最低の条件として、少なくとも教育界腐敗汚職があってはならない、こう思うのでありますが、今年に入りまして、私がざっと新聞等を拾って記憶をたどってみましても、毎月のようにいろいろな事件が続出しております。例の福岡教育大学付属小学校贈賄事件収賄事件、あるいはまた五月に非常に問題になりました群馬県におきます校長あるいは教師の中卒の求人あっせんにからむ汚職事件、さらにまた最近非常に私どもの耳目を聳動させております奈良県の教員異動に関する汚職問題で前の県教育長が逮捕され、続いてまた元の県教育委員長も逮捕されるというようなことが相次いでおります。これらに対しましては、もちろん今日教育地方分権ということを守らなければならない一面がありますから、すべてが文部大臣責任であるというふうに申し上げるわけでありませんけれども、しかし、文教の府にある大臣として、このような傾向についてはその原因がどこから来ているかというようなことについて、おそらくいろいろとお考えをいただいておることと思います。  そこで、まず第一に、これら一連の全国的に最近起こっている教育腐敗汚職事件について文部省でどのように把握されておるか、今年に入っての分でもけっこうであります。それから私立大学の経営に関する問題についてまで間口を広げますと、これはまたたいへんなことになりますから、そこまで広げなくてもけっこうであります。それは別の問題として、さらに独立した問題としていずれ扱いたいと思いますから、一般的に主として公立の学校で起こっているこういうような問題について、まず担当局長のほうから概略お話をいただきまして、これに対して文部大臣としてその原因をどのように考え、その責任をどのように受けとめ、そしてこれを正すためにどのような方針を持たれておりますか、そういう点についてひとつお聞かせいただきたいと思います。
  10. 天城勲

    天城説明員 たいへん残念な不祥事件が次々に起こっておりまして、私たちもいろいろ憂慮いたしておるわけでございますが、いま御質問のございました幾つかのケースを、ごく簡単にどんなことがあったかということを最初に申し上げたいと思います。  本年の三月に、入学者選抜に関する収賄容疑でもって福岡教育大学付属小学校教員が起訴されまして、やはり三月に、北九州市におきまして教員人事異動に関するやはり収賄容疑でもって教育委員会事務局幹部職員が起訴されたわけでございます。五月には、群馬県におきまして生徒の就職あっせんに関することでやはり収賄容疑校長教員が起訴され、八月になりまして、奈良県において、教員人事異動に関する収賄容疑で前教育長はじめ教育関係職員、それから高校入試に関する収賄あるいはあっせん収賄容疑校長教員が逮捕されるという事件が相次いで起きたわけでございます。  先生の御質問にございましたように、こういう事件をどういうふうに文部省考えるかということが一番問題でございまして、もちろん出た現象に対しまして、広く教育関係職員が職責を自覚して、およそ疑惑を招くような行為があってはならないことは当然でございますし、その面では綱紀粛正ということが基本でございますけれども、同時に、このたびのケースを調べてまいりますと、教育行政関係職員も非常に関連いたしております。御指摘のように前教育長あるいは教育委員まで関係がございますし、また人事行政にまつわるものでございますので、人事担当の主事ですとか、かなり行政関係にまで問題が入ってきております。そこで、これはもちろん綱紀粛正ということが基本でございますけれども、それ以上に、やはり行政上の仕組み、機構、従来の慣行というような形でやっている問題について点検をし直してみる必要があるのではないかということもいま考えておりまして、行政運営の適切を欠いている点がいろいろあるというふうにも考えられますので、広く問題を解明していきたい、このように考えているところでございます。
  11. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 本年に入りまして、新聞で報道せられ、事件として取り扱われております事柄につきましては、ただいま局長が申したとおりでございます。この問題について、私ども文教関係を持つ者といたしまして、まことに不祥事件であり、行政担当者といたしましてはいかにも不始末である、こう申さざるを得ないのでございます。心から恐縮もし、また一般的な指導の任に当たっております文部省としましても心から反省をしなければならぬところである、かように存じておる次第でございます。  どういうふうなことがこのような事件原因になるか、この問題になりますと、個々のケースについてはいろいろ今後取り調べも行なわれることと存じますけれども一般的に申しますと、何と申しましても当事者モラルの問題ということがまず第一に指摘せられなければならぬと思います。同時にまた、このようなことを、たとえば福岡教育大学事件のごとき問題になってまいりますれば、受けたほうは教育者である、出したほうは父兄の方である、こうなりますと、受けたほうも不都合でございますけれども、また一般父兄方々にも、そういうことでものごとが通るんだというような風潮がもしありとするならば、これも大いに考えてもらわなければならぬ点であろうかと思うのであります。と同時に、ただいま局長も申しましたように、人事関係事務取り扱いの上において、そのような根本的な心がまえの間違っておる点はもとより直さなくちゃなりませんが、またそういうふうなことが起こり得るような事務取り扱い上の何か欠陥がありはしないか、こういうことも考えられるわけでございますので、私も今回は、ことに管理職立場にある者、特に教育長とかあるいは教育委員長であるとか、こういうふうな地位にある人がそのようなことに関与したということは非常に大きなショックを受けましたような次第でございますが、(「氷山一角だ」と呼ぶ者あり)教育人事につきまして、いま氷山一角というおことばもございましたが、ひとりただあらわれたこの事件だけの問題ではもとよりないと私は思います。そういうふうなことが、あるいは多くの地方においてありはしないかということをおそれておるものでございますが、常々このような問題につきましては、文部省としましては地方当局に対しまして注意もいたしております。教育委員長あるいは教育長会議等におきましても注意を促しておるところでございます。これは先般御承知のように私、特に命じまして、地方に対しましてあらためて警告を発するような意味で通牒も出したわけでございますが、それにとどまることなく、いま局長が申しましたように、この人事行政そのものについてもっと掘り下げた検討もしてみたい、こういうことでその事務を進めるように事務当局にも指示いたしておるような状況でございます。何にいたしましても、まことに不祥なことで、ことに教育界においてそういうことがひんぴんとして起こるというようなことになりますれば、これは日本教育全体あるいは教育行政全体についての大きな問題でございますので、私といたしましても責任の重大なことを痛感いたして、できるだけ努力して改善につとめたいと思っております。
  12. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いろいろ人事行政あり方等についても掘り下げて考えてみたいというおことばであります。そこで、いま氷山一角というようなことばも出ましたけれども、取り調べに当たった検察陣側のほうで、これはもう全く氷山一角の感じだということを言っておられます。そこで私は念を押してもう一度お尋ねしたいのですが、いま局長から報告されたような一連事件は、たまたまその地域に特殊な変わり者、悪い人間、悪い父兄、悪い行政官がいてこういう事件が起こったとお考えですか、それとも検察陣指摘されているように、氷山一角で、このようなことは実は非常に全般的にびまんしている、全国的に教育職場なり教育行政担当官の間にびまんしている風潮であるというふうにこれをおとらえになっているのか、その点をひとつ明快にお答えを願いたいと思います。
  13. 天城勲

    天城説明員 最近のこのような不詳な事件に関連いたしまして、検察側からも氷山一角じゃないかという話が出ておるということも、私も直接じゃございませんが、新聞紙上で見ております。ただ、私たちといたしましては、いまおっしゃるようにこれが教育界全体の雰囲気であるということを毛頭信じたくないわけでございますし、また事実が明らかでないのに、私どもとしてそういう軽々な判断を下すべきじゃない、このように思っております。しかし、やはり関係者モラルの問題が基本ではございますけれども、それをゆがめるようないろいろな動きというものが行政施策の中にあるとすれば、やはりこれは十分考えなければならぬ問題だという考え方でおるわけでございまして、全体について教職員あるいは教育関係人たち雰囲気がそうであるということは私は毛頭信じたくないわけでございますけれども、しかし、いま申しましたような状態でございますので、これは真剣にいろいろな面から検討いたしたい、このように考えております。
  14. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 局長立場で御答弁なさるとそういうような御答弁になるのかもしれませんが、信じたくない、信じたくないということとそういう事実が相当あるかもしれないということとは私はうらはらだと思います。率直にいうとどうですか、信じたくないけれどもありそうだとお考えになっているんじゃありませんか。
  15. 天城勲

    天城説明員 ですから、いまの私のことばで、同じことになりますが、事実を知らないでこういうことについて断定的なことを申し上げるのは控えなければならぬと思うので、私は信じたくないということを申したのですが、そういう話も出ているときでございますので、その問題を十分事実も調べ対策考えなければいけない、こう思っておるわけでございます。
  16. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 この問題は、私は一般社会風潮とか世道人心の退廃とかいうようなことで簡単に責任を転嫁できない問題だと思うのです。私は残念ながら相当全国的にこういう傾向を帯びているということを指摘せざるを得ないのです。これは実際教育の現場へ行って腹を割って教師の声を聞いてごらんなさい。ああ、あんなことはもううちの県だって茶飯事のように行なわれている、こういう声を各所に残念ながら聞くんですよ。私も全国を全部回って聞いて歩いたわけではありませんけれども……。これは一口に申すと、やはり過去二十年の戦後の政府並びに自民党が推進されてきた文教行政一つの集積の中から出てきたひずみでありうみである、こういう反省をきびしくしないと私はこれは非常に問題だと思う。もっと端的に言うと、それはどういうことか。これは私は文教行政に次第に権力行政というものが確立してきている。戦後の民主教育というものが、教育内容について民主化されただけでなく、教育行政において思い切った民主化がはかられて非常に明るくなったのもつかの間で、その後残念ながら職場はだんだん暗くなってきた、ここに私は根本の原因があるように考えられます。私も神さまでありませんからそれがすべてだとは断定いたしませんが、何と申しても教育行政が強い権力のもとに運営され、民主的な声というものが十分反映されないような形が年を追うて強化されてきている。そういう中からこういううみが必ず胚胎してくる、こういうふうに考えるのでありますけれども、この点について大臣並びに担当の方の率直な御意見反省を聞かしていただきたい。
  17. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほど申し上げましたように、このような事態が生ずる原因等をもちろん探求してまいらなければならぬと思いますが、教育行政につきましても、先ほど申し上げましたように一ぺん洗い直してみるというような意味検討を加えてまいらなければならぬと思っております。ただ、御指摘になりましたようにいま日本権力行政的な教育行政が行なわれているという御指摘に対しましては、私は賛成するわけにはまいりません。現在の制度が直ちにいまのような汚職を生むものとも考えません。これはその制度の中でいろいろ事務的な手続その他の問題もございましょうが、問題は、やはりこれに携わる人の問題ということが大きな要素をなすものではないかと思います。制度そのものについては、私はせっかくのおことばでございますけれども御賛成申し上げるわけにはまいりません。
  18. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 灘尾文部大臣権力行政ということばが気に入らないようで、そこに原因があるということに賛成できかねる、しかし行政あり方についてはやはり全面的に検討してみる必要がある、そこにやはり灘尾さんの良心の一端があると私は思います。しかし、要するに人事の問題につきましても、もうちょっと民主的な明るい運営がなされればこういうことは起こらないのですけれども福岡県で高等学校校長赴任の拒否問題というのがあり、それに対して非常にきびしい行政処分が起こり、紛争が続き、最近この問題について何らかの解決の道を見出すために努力されているということも聞いておりますから、この点についてきょうは別に触れませんけれども、やはりああいうような形の中で前の福岡高等学校では腐敗は起こってないのです。おそらくそれが、今度非常にそういうものを押えつけて、人事権があるのだ、人事権があるのだということで、民主的な意見というものを、あるいは実際職場教員との対話というものを断ち切ってしまって、あくまで法的な権力の所在だけを振り回してやっていく点からやはりこういうことが空気として非常にできてきているということを、これはやはり文部大臣否定できないのじゃないですか。私が政府自民党などということばを使ってあえて挑発的なことになったとすれば、そのことばは改めてもいいのですけれども、そうではなくて、やはりいままでの文教行政の中から出てきた一つのひずみとして——私は全部が悪かったとは言いませんよ、大いに進歩した部分もあるでしょう、大いに充実さした部分もあるでしょう、けれども、しかし反面、この点についてはもうちょっとやり方を変えないといけない、このことについてはかみしもを着たしゃっちょこばった形でなしに、もうちょっと率直に教育を憂える同士という気持ちで信念を披瀝していただきたいと思うのです。
  19. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は、制度上の問題ということになりますれば、先ほどお答え申し上げましたようにあなたのおっしゃることに必ずしも賛成はできないということを申し上げているわけでございますが、ただ、その制度のもとにおいて行政運用していくわけであります。その行政運用につきましては、もとよりそれが陰惨なものになるとか暗いものになるとかということは最も望むべからざることだ、望んではならぬことだ、常に明るく朗らかに行なわれていくということが一番望ましいことであります。そういうふうな運用のしかたはすべて当事者考えてもらわなければならぬことではないか。いまおことばの中にありましたそれを一々とらえて言うわけではございませんけれども、何か、私もしばしば言われたのでありますが、法律法律というようなことを言うとか、あるいは権限がどうだとかこうだとかというようなことを言うとかいうような御批判もございますけれども、私は、ただ法律があるからどうだとか、権限があるからどうだとかということだけをとらえての御批判もいかがであろうかと思うのでありまして、またそう言わざるを得ないような場合もあるわけでございます。これはやはり関係者それぞれがそれぞれ節度を守って、そうしてお互いにいわゆる平静のうちにものごとを相談しながらやっていく、こういう空気を持つということが何より大事なことではないかと思います。権限を振り回すとか、法律を振り回すとかいうことは決して望ましいことではありません。しかしまた、それを無視されても困る、筋道だけはちゃんと立ててものごとを進行していくということを考えていかなければならぬ。こういうこともあろうかと存じますが、これはしたがってそれぞれの関係者が、みんなが一緒になって考えるというふうな形で進んでまいりたいものと存じます。
  20. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 大臣としてはそれ以上の御答弁はできないと思います。私の申し上げたことも、おそらく大臣はある程度腹の中では御納得いただいているのではないかとも思うのです。  そこで一つだけ申し上げたいのですが、特に人事行政等にからんで腐敗が起こる、これについてもっと民主的になってほしいということを申し上げたわけですけれども、やはり公選制教育委員会制度任命制になり、その後相次いで大臣教育長の承認権を持つというような法の改正が行なわれる。こういうような中央集権的な権力集中的な行政ということにやはり問題があるということを、いまの大臣のおことばを伺っても私はどうしても払拭はできないのであります。特に人事行政、特に教育職場の問題は、やはり管理者の立場から見ている目と横の立場から見ている目と、そこがおのずからすなおな形で融合されて、つまり横からの目と縦からの目がきわめて合理的にしかも自然に結合されて、そういう中から的確な人事行政が行なわれる、こういうことが私はやはりこういう腐敗を防ぐ大事な要諦だと思うのです。そういう意味では校長教員の対話がもっと深まる必要があるし、その市町村の教育委員会とそこの教師との対話というものがもっと——単なる上下関係という形、指揮、命令とこれに服従するという関係の形でなしに確立する必要があると思います。大きくいえば日教組と文部大臣という問題もあるでしょう。しかし、これらはすぐ政治問題化されて、ほんとうに教育的な立場で処理されない残念ないまの情勢でありますから、私はいまここでそのことを取り立てて大臣にすぐ答弁を求めようとは思いませんが、ぜひひとつ、私がいま申し上げたようなことは十分配慮に値することである、こう考えますので、そのことを申し上げたいと思います。  そこで、最後にもう一つ伺いたいのですが、いまの制度で、私ども批判をしてそのことは直したいと思っておる例の文部大臣県教育長に関する承認の問題でありますけれども、これは臨時行政調査会や地方制度調査会の答申もあることであり、私は一日も早く法律を直すべきだと思います。しかし、いまこのことについて御質問するのではなくて、とにかくいまそういう制度になっている。京都の教育長の問題でもこのことは大きな問題になってきている。こういう中で奈良県の教育長、これはおそらく文部大臣が承認をされて、それで任命された教育長でしょう。それがなおかつこういう国民を驚かすような事件の爼上にのぼる、教育界にまたこんな大きな汚点があるというふうに、新聞等も大々的に報道するような対象になる。このことについては、私はよほど責任をお感じになっているのではないかと思うのです。同時にまた、一方、京都の問題は依然として停滞をしておるようでありますけれども、一体この点についてどういうようにお考えになっておるのか、あわせてひとつ御見解をこの際ただしておきたいと思います。
  21. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回の問題の中に教育長であった人が事件関係をしておるということは、先ほど申しましたように私としましても大きなショックを受けたわけであります。文部省がその承認ということを取り扱っております以上、文部省としましても、もとよりこのような事態が発生した場合にその責任を感ぜざるを得ないのでありまして、まことに相済まぬことと申し上げざるを得ないのでございます。これを推薦する県の側におきましても、またこれを受け取るわれわれの側におきましても、もっと慎重に事柄を運んでいかなければならぬということを痛感いたしておる次第でございます。  教育長人事につきましては、前々から問題になっておる案件もあるわけでございます。私はこのような問題はやはり文部大臣がほんとうにその責任を果たすという心持ちでもって慎重に扱っていかなければならぬ問題だと思っております。今回のような事件が起こればなおさらその点を考えていかなければならぬと思います。現に懸案となっておる事項につきましても、さらに慎重に検討いたしまして結論を得たいと思っております。
  22. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 教育汚職の問題につきましてまだいろいろ聞きたいと思いますけれども、時間が限られておりますので、本日はこの程度にとどめて次に進みます。     〔委員長退席、久保田(藤)委員長代理着席〕
  23. 川村継義

    ○川村委員 関連して。大臣ちょっとお耳に入れておきたいのですが、これは私答弁をいただこうと思っておりません。  いろいろ長谷川さんからございましたが、次のようなことを私が申し上げると、おそらく大臣は、そういうことがあり得るだろうかと驚きなさるかもしれないことであります。というのは、私、こういう場所でございますから、ちょっと名前など申し上げないことといたしますが、八月上旬熊本県の委員会で、新しく教育大学を出て新任した中学校先生方と小学校先生方とを集めて数日の研修会をやっております。そのやられることについては私とやかく申し上げませんが、その中で私も驚いた事実がある。ある日、その会場で一人の講師がいろいろと話をした。あといろいろ質問があったらひとつ質問をしなさいということになって、その研修会に参加したある中学校先生が、教師の勤務時間、勤務条件、これは各種の法律に規定されておるわけですが、そういうことについて質問をし、実はわれわれの職場においてはこういう実態なんだ、そういう質問を二、三やりとりしましたら、その講師が非常におこりまして、そういう質問をするような者は学校をひとつやめてもらいたい、私たちは、あなたたちどうぞ学校においでくださいと頼んで来てもらったのじゃない、あなたたちが希望して学校に入ったのだ、ぜひひとつ職場をかえてもらいたい、こういうようなおしかりを受けた。その後、参加者の諸君が一言も質問をしなくてその時間は終了した、こういう実は事実がある。これはおそらくお聞きになれば、どなたも、いまの時代と申しますか、この昭和の時代にそういうことがあり得るだろうかと驚かれるのです。実際そういうことがあったんですね。これはもちろん、そういう研修会等に出ていた講師の皆さん方が全部そういうような人だとは言いません。たまたまそういう人があって、そういう若い諸君が驚いてしまうような、えらい強いんだなあとみんなが口をつぐんでしまうようなことがたまたまあったに違いありません。しかし、これはよほど気をつけなければならぬ問題だと思いまして、長谷川先生がいろいろ権力問題について言われたようなことがありましたが、いま大きく教育界を見るときに、いろいろな問題が実は錯綜しております。文部省大臣におかれましても、ほんとうにそういう気づかないところに驚くような事実があるということをひとつお耳にとめていただきまして、十分なる御指導を願いたい。私これだけ実は関連をしてお願いをしておきます。
  24. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いまの、大臣よろしいですか、お答えありませんですな。
  25. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ありがとうございました。
  26. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 それでは次の質問を申し上げます。  文部省が学問の振興やあるいは私学の振興あるいは社会教育の振興その他でいろいろと補助金をお出しになっているということはよろしいと思うし、もっともっと努力を要する面も多々あると思います。しかし、それが学問の自由を侵したり、私学の自主的な教育を制肘したり、あるいは正しい学生運動をまで圧迫阻害をしたり、こういうことになってはならないと思うわけです。そこで今日東大をはじめ公私立を問わず大学の紛争が、これは世界的風潮でありますけれども起こっておりまして、大臣も非常にこれは心労されているであろうとお察しをいたしております。私どももこの問題については重大な関心をもっていろいろと考えておるところであります。文教委員会でもこれらの点は十分お互いに論じなければいけないと思うのでありますけれども、本日はその中で特に一、二の問題についてこの際見解をただしておきたいと思います。  一つは、私立大学に対する教育研究費につきまして約三十億予算化されていると思いますが、この配分をめぐりまして、紛争が起こっている学校は除外するというようなことが新聞等で報道されております。紛争にもいろいろございます。日大の事件のように経理その他が非常にずさんで、国がうっかり軽々に、これはとうとい国氏の血税を出すわけにいかない、よほど慎重に検討しなければならぬ、こういうような場合の紛争というのはわかりますけれども、これは広く解釈すると、たとえば学生運動が一つの紛争という形に見えるところに至っていると、これも除外する、あるいは学内のいろいろな民主化の運動の中で、何か多少それが紛争らしく見えると、それも除外する、そういうような形で結局補助金行政を通じて私立大学を、あるいはその研究の方向を支配するというようなことになれば、これはたいへんな誤りをおかす。かつて私はこういう問題について当委員会質問した際に、当時の愛知文部大臣が、この補助金というものについては、あるいは私学の振興の問題については、援助して支配せずというのが基本でありますということを明快にお答えになっておりまして、私も全くそのとおりであると思うのでありますけれども、紛争校には補助を除外する、こういう方針を出されたように承っておりますが、一体その実際はどうなのか、いま私が指摘したようなおそれはないのか、その点について大臣並びに関係局長から御答弁をいただきたいと思います。
  27. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 本年度から新たに私学に対しまして援助の一方法として教育研究費という補助の方法を講じましたことは御承知のとおりであります。それについてのお尋ねだろうと思うのでありますが、この中に、紛争を起こしておる学園に対して補助金を打ち切るのじゃないかというふうな印象を与えた字句があろうかと思います。私どもの心持ちを申し上げますと、何もただ紛争があるからといって直ちに補助を打ち切るとかなんとか、そういうふうな考えをいたしておるわけでもございませんし、いわんや政治的な意図を持って何か考えておるということは毛頭ございません。積算の方法等をごらんになりましてもおわかりいただけるように、特定の目的のために補助金を使うとかなんとかいうふうなことを考えておるわけでも何でもございません。その扱いにつきましては、何と申しましても国費を支出するわけでございますので、どなたが考えても、あんなところにあのような補助を出したといわれるようなことのないようには気をつけてまいらなければならぬと思います。そういう心持ちを持ちまして補助の一つの条件として紛争云々の字句が入っておるわけでございます。扱いにつきましては局長から御説明いたさせます。
  28. 村山松雄

    ○村山説明員 ことし積算されました三十億の私立大学教育研究費補助金の交付につきましては、別段法律の根拠がございませんで予算補助でございますので、交付要項を文部大臣限りできめましてそれに即して執行するわけであります。  その中で補助対象校の選定方針といたしまして、設置後完成年度をこえていないもの、それから学園紛争により学校運営が正常を欠くに至ったもの及び教育研究条件が低くて補助効果が期待できないもの、それから三番目に起債償還が計画どおり行なわれない等財政事情がきわめて不安定なもの、この三つの条件に該当するものは補助対象から除外するということがきめられております。  お尋ねはそのうちの学園紛争とは一体どういうことかということかと思います。申し上げましたように、学園紛争があるものすべてを除外するということではなくて、学園紛争により学校運営が正常を欠くに至ったものを除外するわけであります。正常を欠くに至ったものというのは客観的に判断を要するわけでありまして、去る八月二十日に関係私立大学方々を集めまして説明会をやりまして、そこで説明をいたしております。二つの例示をいたしましたが、一つは、たとえば理事者間で正統争いの紛争が起こって訴訟になる、そういうことになると、だれが学校の代表者であるかわからない、そういう場合には補助金を出すすべがない。それからもう一つは、紛争といっても非常に深刻であって、きわめて長期にわたり授業も行なわれないというふうなことになりますと、この教育研究費の補助は私学の教育研究内容の充実向上をはかるのが目的でありますので、教育研究が事実上行なわれていないとすれば、この補助金は全額補助でなくて、私学がこのような教育研究費を支出しておるものに付加されるものでありますから、授業が長期間停止状態で教育研究が行なわれていないというような状態があれば、この補助金も出すすべがない、こういう場合には除外する趣旨であって、決して紛争があるからたちどころにとめるというような趣旨ではないということを御説明して、私学側にも御了解願っております。
  29. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いまのおことばの範囲では、すなおに聞けば私が心配したようなことはないようにもとれます。具体的に、それではいまの説明会以降どういうふうに進行をしておるか、ちょっとお聞かせいただきたい。
  30. 村山松雄

    ○村山説明員 説明会によりまして、私学側で補助の申請をする段階に来ております。補助の申請を受け付けまして、補助金の交付決定をするまでに、除外例に該当するかどうかということを判断するわけであります。その際に十分内外の情勢を調べまして、申請者に即して調べ、判断をいたすわけであります。  なお、紛争校につきましては、私学団体側からも運用を慎重にするように要望がありまして、具体的に判断をする場合に私学団体側の御意見も徴するということを申しております。そういうようにきわめて慎重な手続、判断をいたしまして決定するものであります。
  31. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 重ねて伺いますが、見通しとしていつごろ最終の配分決定をするか。それから、これは学校自体の研究に付加するものであれば、おおむねその研究規模のどのくらいの部分を見ようという一つのめどをお持ちになっておるのか、この二つをお尋ねいたします。
  32. 村山松雄

    ○村山説明員 初めてのことでありますので、文部省側にも私学側にも不なれの点がありまして、極力急いで、めどといたしましては今年中に決定いたしたいと思っております。  それから第二の点の、補助金は私学側が自主的に支出する当該教育研究費とおおむね同額を補助するというたてまえでございます。
  33. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 総研究費の半額を見るというふうに考えてもいいわけですね。
  34. 村山松雄

    ○村山説明員 そのとおりでございます。
  35. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 それではきょうはその卸方針を一応承って、そのおことばどおり実践されて、その配分が決定されたときに、これはずいぶん不当な排除をしておるのではないかというようなことの万々ないように強く要望申し上げるとともに、慎重は必要でありますけれども、今年中と申しますと、年半ばを過ぎて十二月までも考えられるわけでありますから、せっかくの年度の研究費がそういうふうにおくれるということは望ましいことではないと思いますので、できるだけすみやかにその配分が終わるように強く要望を申し上げまして私の質問を終わりたいと思いますが、その点についてもし何か重ねてお答えがあればお願いします。
  36. 村山松雄

    ○村山説明員 十二月一ぱいまで待つわけではございませんので、手続を極力促進いたしまして、両者の間の手続が早く完了すれば十月でも十一月でも極力早くいたしたいと思っております。
  37. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 もう一つ国から出る研究費の問題で、いわゆる科学研究費につきまして新しい配分の方式に今年度からなったと思いますが、これをめぐりまして学術会議といろいろ意見の対立等もあったように聞いておりますし、最近その配分を最終的に決定をされたようでありますが、これを返上するというような事態も起こっておるように聞いております。たいへん残念なことだ。大切なこういう科学の研究というようなものが当事者と研究費を出す文部省との間で意見が対立するというようなことは望ましくないと思うのでありますけれども、この点につきましては前にもいろいろこの委員会で議論があったところでありますけれども、その概略の実態、経過を御説明いただきたいと思います。
  38. 宮地茂

    ○宮地説明員 お尋ねの点でございますが、学術会議との関係につきましては、実はこの科学研究費の配分方式並びに種目を改正いたしましたのが今年度からでございますが、それは昨年の十二月一日に学術審議会からかねていろいろ改善を要するこの問題についての改善の答申をいただきました。文部省といたしましては、この趣旨に沿いまして今年度から改善を行なうことにしたわけでございます。  その要点は、科学研究費の種目でございますが、これが学術研究の実態に即し、あるいは本来の性格を明確にする、こういう観点から必要な改善を行なう。それから二番目の問題としましては、学問にはいろんな専門の分野がございますが、その区分によりまして審査が行なわれます場合に、審査の責任体制を整備する。慎重公正な審査を行なうために、審査委員の数をふやすと同時に、審査の段階も、ただ合議審査だけでなくて、書面審査を最初にやり、次に合議審査をやるといった式に、いわゆる二段審査を採用する、こういう二点でございます。  この点につきましては、この答申が出ますまでの間におきまして、審議会と学術会議との間でいろいろ非公式に協議をいたしまして、ほぼ審議会としましては学術会議側の御意向をこの答申の中に盛ったあかつきに答申をされた次第でございます。しかしながら、それにしましても完全に学術会議側の御要望どおりの答申ではなかったという点でございます。  それは二、三ございますが、根本は、いわゆる先ほど申しました一段審査、二段審査というふうにやります審査委員の推薦方式に関してでございます。学術会議側といたしましては、その推薦する審査委員候補者を一段審査委員と二段審査委員にそれぞれ分ける、そしてそれぞれに順位を付して推薦して、それを文部大臣が、まあことばは適切でないかもしれませんが、推薦されたものを大体順位どおり文部大臣が形式的に任命するといったような趣旨のものでございます。これは答申の出ますまでに数カ月にわたりまして、審議会で検討いたしました。その審査委員につきましては最終的には文部大臣責任をもって任命すべき問題である。したがって、学術会議としては審査委員の定数を若干上回る候補者を出して、あとは推薦を求めたという経緯もあるのであるから、文部大臣の良識において任命権者が適切に任命する方向がよいのだという、それと若干学術会議側は——根本的に異なるという表現でございますが、     〔久保田(藤)委員長代理退席、委員長着席〕  その点が異なったわけでございます。それでその後、いろいろ学術審議会の会長さんと学術会議の会長さん等との間でいろいろ非公式にお話もいたしましたし、わかりやすくいえば学術審議会の会長が調停案を出すといったような経緯もございました。しかしながら、最後まで学術会議の完全な了解が得られませんので、学術会議からは四十三年度の審査委員の候補者の推薦はなかったわけでございます。  そこで文部省といたしましては、大ぜいの学術研究者が一日も早くこの補助金の配分を待っておるわけでございますので、以上の経緯から文部省としては学術審議会の委員なりその他学識経験者の御意見を聞きまして、独自に審査委員を選考した、これが経緯でございます。そして文部省といたしましては、そういうことで審査委員の御推薦はございませんでしたが、以上のやむを得ないことを通知いたしますと同時に、四十四年度におきましては、この審議会の答申の趣旨に沿って推薦を期待するということを申し上げております。  そこで、こういう経緯によりまして審査をいたしました結果、先ほどお話しのように若干の方々が辞退をしております。それは新聞にはいろいろ載っておりますが、私どもが承知いたしておりますところでは、本年度の補助金の交付内定を通知いたしましたのは七月三十一日でございます。内定をいたしますと、これに基づいて正式に補助金の申請があるわけでございます。それを一応八月二十四日までに申請書は提出されたいということを申し上げたわけですが、それにつきまして八月二十四日を過ぎまして今日まで、正式に辞退をするということを申し出てこられたものは四件ございます。これは総合研究Aと申します分野と、総合研究Bというものでございますが、総合研究Aというのは、いろいろ実際に研究なさる経費、それからBと申しますのは、大ぜいの人が集まって研究上の連絡をされるという研究連絡の経費でございますが、それぞれ二件ずつの御辞退がございます。これは学術会議が言っておる審査方式、それをよしとされ、文部省が行なった今回の配分方式が不満だから辞退をするという趣旨のものが二件。それから理由はございませんが今年度はともかく交付を辞退したいというのが二件でございます。  以上が経緯でございます。
  39. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 辞退された件、二つあるようですが、不満の旨を申し出て辞退したのと、理由なく辞退したのとあるようですが、一体これはどう始末するつもりですか。
  40. 宮地茂

    ○宮地説明員 実はこの補助金の申請は、先ほど総合研究Aと総合研究Bがそれぞれ二件ずつ辞退があったと申しましたが、総合研究Aのほうは申請が九百四十五件ございました。そのうち、これは予算総額五十億でございますので、その範囲内で採択をいたしまして内定いたしましたのが四百三十九件でございます。九百四十五分の四百三十九ですから大体二分の一でございます。それからBのほうは百一件の申請に対しまして五十四件、百一分の五十四ですから、ほぼこれも申請に対して採択が半分ということになります。したがいまして、辞退されましたものにつきましては、なおまだ申請をされておるものが非常に多うございますので、そちらに回していきたい、こういうふうに考えております。
  41. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 その辞退された件、具体的にAはどこのだれのどういう研究、Bはどういう研究、そしてそれをその後どことどこに配分をしたのか、それをはっきりおっしゃっていただきたいと思います。
  42. 宮地茂

    ○宮地説明員 総合研究Aのほうでは——これは総合研究と申しますのは、たとえばある特定のAならAという大学の先生だけといったような、いわゆる機関研究ではございませんで、いろいろな大学の先生方が集まって研究をする、そういったものですが、その辞退された一つは、研究の代表者は東大宇宙航空研の西村教授が申請では代表者になっておられます。グループは二十五名でございます。テーマは超高エネルギー物理でございます。申請されました経費は三千万円くらいですが、補助内定額は百三十万円でございます。それから同じく総合研究Aのもう一つのほうは、京都大学の理学部の林忠四郎教授が代表者で、構成人員は八名でございます。テーマは天体核現象の理論、申請経費は百四十六万円、それに対して補助内定額は百十五万円でございます。総合研究Bのほうは、京都大学基礎物理研究所の小林稔教授が代表者で、構成は二十二名、これは原子核と素粒子高エネルギー現象の理論、それを研究するための研究連絡会でございますが、申請経費は九百九十九万円、それに対して補助内定額は百七十万円。最後にもう一つは、名古屋大学の坂田昌一理学部長が代表者になっておられまして、構成人員は二十三名、テーマは素粒子の基礎理論の研究ということで、申請経費は千六十五万円、それに対して補助内定額は八十五万円、大体こういうことでございます。(「その断わってきた理由を聞いている」と呼ぶ者あり)断わってきました理由は、先ほど申しましたように、西村教授を代表者といたしましたものは、審査委員の推薦方式について賛成できないので辞退をする。それからもう一つの林京都大学教授のほうのは、分担者多数の意見によって辞退します。それから京都大学の小林稔教授のほうは、審査配分方式が不満であるということ。それから名古屋大学の坂田昌一教授のほうは、今年度は交付を辞退する、こういうことになっております。
  43. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 辞退されてきた理由が、二つは審査委員の構成に不満ということのようです。あとの二つは理由なしに辞退。しかし、これはいずれも不満であることには間違いない。それはいまのような配分の取りきめ、あるいは審査のやり方の仕組み、これを今後このままやってもらっては困るということのように受け取れます。それとも金額がたいへん近いのと、百四十万の申請に対して百十五万出るのと、九百九十九万に対して百七十万、千六十五万に対して八十万ですか、もうまるきり問題にならないから、これじゃもうとてもできないから辞退するというのか、その辺はどうなんですか。
  44. 宮地茂

    ○宮地説明員 新聞にはいろいろ出ておったようでございますが、いま申しておりますものは、私のほうへ正式文書として出ておりますものをかいつまんで理由を申し上げました。これには金額が多いとか少ないとかいうことは書いてありません。それから念のため申し上げますが、総合研究Bのほうの、いわゆる研究そのものではなくて研究者の連絡でございますが、こちらのほうは、積算としましては一件大体百万円ということになっております。それに対しまして、百万円程度では連絡ができないということで、京都大学の小林教授のほうは九百九十万円かかるのだといったようなことはございますが、一応積算としては約百万円でございます。それから総合研究のほうは大体百八十万円くらいの平均値でございます。これは平均値を出すこと自体が無理かもしれませんが、非常に大きいのは東大の西村教授のほうの三千万円で、京都大学の林教授のほうは百四十六万円というふうに申請しておられるわけでございます。したがいまして、これは全体の金額がきまっておりますし、それを全部平均いたしますと——いわゆる私ども充足率と申しておりますが、ほしいとおっしゃる金額を全部足して、それに対して出せる金を出しましたが、それが半分にいかないということでございます。
  45. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 それで辞退がありまして、それについてさらに誤解等があってはいけないということで説得された事実があるかどうか。それから辞退があったからこれだけ金が浮いた、ぱっと次の順位のほうに回してすでに終わったとすると、それはどことどこへどう配分してしまったのか。それをちょっと聞かせてください。
  46. 宮地茂

    ○宮地説明員 時間が長くなりますから、たとえば一例を申し上げますと、先ほど申しました京都大学の基礎物理研究所の小林教授を代表者といたしますその件に例をとって申しますと、御本人からは、今年度の審査配分方式を不満として交付を受けないという大多数意見ですから辞退します、これが一つきております。それからそれに対して京大の総長からは、こういうことは全く不本意のことではなはだ遺憾に存じております、事前には何の連絡もなかったものであり遺憾である、したがって辞退をします、しかるべくといったのがついております。そういった御本人だけではなしに、その代表者が京都大学なら京都大学の教授ですと、私のほうは総長に連絡し、総長から——書類は正式に御本人あてになっているわけであります。そうして代表者は御本人であっても、その所属する機関にも連絡し、御本人にも連絡して、その御意見を承っております。そういうことで右から左に、交付したが、一応辞退をしてきているから、それをすぐ次の順位のものにというふうな機械的なことは考えておりません。  それから、こういうものに対して話し合いをしたかということにつきましては、大体こういう人々は御賛成ではないであろうといったようなことも、私どもいろいろ聞いてもおりましたし、一応正式に言ってこられたのをお話し合いしても、そうですかというふうに納得のできる問題とも考えませんので、話し合いとおっしゃる先生の御質問のようなことはいたしておりません。
  47. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 これを深く突っ込む時間がありませんから、また次の機会に譲りますが、もともと研究をしたいので科学研究費がほしいということで、その中から選定したわけなんで、最初から金が要らないわけではないのです。これはもう明らかなことです。ただその経過について、もし今後こういう方式を許すと、だんだん科学研究というものが政治的な制肘と申しますか、いわゆる時の政府なら政府の好ましいものと好ましくないものによって研究が左右される、こういうようなことになっていってはたいへんであるという一つの抵抗の姿として辞退という方式が一つとられたのではないか、こういうふうに私どもは客観的に見ておって受け取れるわけです。ですから、辞退があった、はあそうですか、どうせ話したってむだだ、こういう態度は、辞退をしてきたということ自体、これはやはりきわめて重大なことでありまして、もっとこの問題については慎重に、かつ誠意ある——もし意見の食い違いがあるにしても、調整の努力というのは必要じゃないかと思うのだけれども、どうもいまの局長の御答弁では、そうすぐ、辞退したから簡単に次に回すということはいたしませんと言いながら、実際は何もやっていないわけでしょう。そうしてまた、来年もこういうことがもっと拡大してふえるか、そういうようなことになったらどうなんでしょう。そういう点について、やはり直接担当局長は、もうちょっと深い考え努力が必要じゃないかと思いますし、大臣も、この点についておそらくやはりいろいろ気にしておられるだろうと思いますが、もうちょっとやはり、科学の研究というものが科学者自身の自主性というものを十分尊重する形の中で、国のこうした援助というものが、いわゆる愛知文部大臣ことばではありませんけれども、援助して支配せずという考えで、愛知さんの言ったのは私立大学の問題でありましたけれども、こういう科学の研究というものについては一そうそういうことが大切だ。私は、話はちょっとそれますけれども、大学の紛争問題について灘尾文部大臣が非常に慎重な態度をとられた、こうした一時的な現象そのもので直ちに大学の自治が根本的にゆがめられることについては、非常に深い考え大臣が慎重に処しておられるように私は見ておりまして、その点は敬意を表しておる、心の中で。しかし、科学研究費の配分についても、どうもいまの局長のようなお考え、姿勢では、私はたいへん欠けるところがあるのじゃないかという感じがいたしますけれども局長ことばが足りないのでしたら局長からも御答弁いただきたいし、大臣からもこういう問題についての御見解をこの際承っておきたいと思います。
  48. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 科学研究費の配分について、昨年来学術会議との間にいろいろやりとりがありましたことは、先ほど申し上げましたとおりでございます。残念ながら、私どもの配分方法の改善考えております点につきまして、本年は学術会議の同意を得るに至らなかった、そしてわれわれの希望するように委員の推薦もしていただけなかった。こういうことから、今回は文部省が各方面と御相談をいたしまして審査委員をお願いして、そうして事務を処理した、こういう経過でございます。願わくは明年度におきましては、学術会議がわれわれのほんとうに意図しておるところを十分に御了解願って御協力願いたいものだ、そのように考えております。  ただ、これはざっくばらんに私は申し上げたいと思うのでありますが、いま二、三の研究グループから補助金の辞退ということが出ております。これはいかにも残念なことだと思っております。せっかく申請書をお出しになっていらっしゃる。それに対して、不十分かもしれませんけれども、とにかく補助金を出すことにした。これに対して辞退をせられるその考え方というものが、どうも委員の選考方法に不満があるというところにあるように見受けられます。これはただ単にそれらの方々だけの問題ではないと私は思います。その点について日本学術会議と私どもとの間に、ものの考え方に若干の相違があるというところから胚胎しておるのではないかと思います。それさえなければ学術会議はもちろん御協力いただけるものと思います。  その要点はどこにあるのかということを考えますときに、この科学研究費の配分という仕事が日本学術会議の仕事である、日本学術会議がこれを配分する主体である、そのような考え方を今日持っていらっしゃる方が日本学術会議の中に支配的な空気になってきておったために、いまのような事態が生じてきたのではないかと思うのであります。私ども、もちろんおっしゃるとおりに——くちばしを出そうなんということは毛頭考えておりません。それぞれ専門の方々の公平な慎重な検討の結果、これを尊重して私どもやってまいりたい、こう思っておるわけでございますけれども、しかし、あくまでもこの科学研究費というものは文部省が配分すべきものでございます。私自身にわからぬとしましても、終局の責任は私の責任においてなすべきことであります。この筋道だけはあくまでも立てていただきたいと思うのであります。それがあたかも日本学術会議の当然なすべき仕事であるかのごとく何か錯覚でも起こしていらっしゃるのではないかと思いますけれども、そういう考え方のもとに文部省考え方に対して賛成をしていただけないということは、私は筋道から申しましていかにも受け取りかねる考え方ではないかと思うのであります。日本学術会議につきましては、もとよりその組織が設置せられました趣旨から申しましても、政府としてこれを尊重するのは当然のことでありまして、十分尊重し、また従来もいろいろな問題について貴重な意見もいただいております。また、それに従って私どもやっておることもございます。尊重すべきは当然でございます。けれども責任の所在を明確にする必要は私はあろうと思う。そこらの点に何かお考え違いがあるのじゃなかろうかというふうなこともございますので、こういうふうな点については、私はこれは筋道の問題である、筋道の問題だけは正しておきたい、そのような趣旨で今後もよくお話はしたいと思っておりますけれども、願わくは、私どもがただ政治的に科学研究費を支配するとかなんとか、そんな考えは毛頭ございません。ございませんけれども、しかし学術会議責任の主体ではないのでありますから、そこがみずからが、これはおれたちがかってに配るべき科学研究費であるということで考えていらっしゃるとすれば、たいへんな考え違いであるというふうに私は思うのでありまして、そういう筋を正してまいりたいというのが私ども考え方でございます。学術会議がよくその点を御了解になって御協力を願えれば幸いである、かように考えております。
  49. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 大臣のお考えはどういうお考えであるかはわかりました。やはり非常に法理論的あるいは権限論的なお考えがそこに顔を出しているように思います。しかし、同時に半面、科学者の自主的な研究というものに容喙しないということは、一つ考えとしては十分御理解をなさっているというふうにもいまの御答弁では受け取れる。この科学者の研究の自主性というものと文部大臣権限というものと、そこのところの接点のところに問題があってこういう紛争が起こる。たいへんな考え違いをしているという言い方なんですが、私はそこにやはり一まつの不安を感じます。この点はきょう時間がありませんからこれ以上議論いたしませんが、もうちょっと掘り下げて、少なくともこういう事態が今後続くことは決して望ましくないと思うのですね。その接点が円滑にいくように、科学者の自主的な研究態度なり要求というものと責任ある大臣権限というものがしつくりと合っていくような道を見つけることがわれわれの使命だと思う。そういう意味で、学者はかってなことを言うなというような御態度とは思いませんけれども、さらにひとつ慎重に検討を進められ、来年には少なくともこういう事態にならないように適切な方途を講じていただきたい、このことを強く要請を申し上げて、私のこの件についての質問を終わります。
  50. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御質問ではないようでございましたが、私は何も日本学術会議と対立して抗争しようなどという考えは毛頭ございません。ただ、私どもがまじめに考え、誠意をもって考えておることについてぜひすなおに御了解を願いたいものだ、かように存じておる次第でございます。
  51. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 私に与えられた時間もなくなっておりますが、来年度の予算に関して後ほど唐橋委員から質問があると思いますけれども、一、二の点だけ簡単に伺って終わりたいと思います。  一つは、もうすでに今日非常に社会問題となっておりまして、大臣も十分御配慮いただいているやに新聞等の報道では伺っておるのですが、人口の過密あるいは反面の過疎、これに対しまして何らかの方途を講じなければならないところにきているのじゃないか。特に過疎問題につきましては唐橋委員から突っ込んだ御質問があると思いますので、過密のところ、きわめて急速な人口急増、社会増の激しいところについて、今日の地方自治体の財政状態を見ますと、全般的な行政における超過負担というような問題も大きな政府自体が解決しなければならない問題でありますけれども、特に教育費の面で非常な圧迫になっている。これに対してはどうしても来年度の予算で具体的な措置を講じ、必要があれば立法措置を講ずる必要がある、こういうふうに思うのでありますが、この点についていまどのように検討をされ、どういう御方針であるのか、これをひとつ承りたいと思います。
  52. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 過密、過疎の問題は、もちろんひとり教育だけの問題ではない。いろいろな角度から検討をなされ、またそれに応じた施策ということも必要であろうかと存じますが、私どもとしましても、その問題のために、教育の実際において、また地方公共団体の財政状況その他の事情において考えなければならぬ点があると考えます。過密、過疎対策は、私どもとしても最も力を入れて進めていかなければならない仕事の一つと、そのように考えましていろいろ検討もいたしておるところでございますが、明年度予算につきましてもその趣旨をあらわしてまいりたいということで、いま検討中でございますので、その考え方内容等につきましては局長から御説明をいたさせます。
  53. 村山松雄

    ○村山説明員 いわゆる人口の社会増、過密現象と申しますか、それによる学校施設への影響は、何と申しましても増加する児童の収容をはかるために必要な教室の確保をはかるということであります。  それでその対策としては、従来の公立文教施設費の中でまず必要な事業量を確保する。それからその次は、これは負担金でありますから、半面事業量が増加すれば地方の負担分もふえるわけでありまして、地方の負担分は、現在は起債と、それから交付団体については交付税ということになっております。そこで文部省としては、できれば国庫負担率をこの際過密地域については引き上げたい。それから国庫負担の裏となります起債並びに交付団体についての交付税措置についても増強をはかるように——これは形としては、具体的に申しますと、自治省にそのような措置をはかるように要望ということになりますが、この要望をいたしております。  それからさらに問題は、建物のほかに用地の取得が困難になっておるという問題がございます。これについて関係の団体からは新しい国庫負担あるいは補助の制度の創設というような要望もございますが、用地についての国庫補助、負担の例はきわめて乏しくかつ例外的でありますし、また、検討いたしましたけれども成案を得るに至りませんので、現在用地の取得は起債によってやっておるわけでありまして、起債は必要な量だけは認められておりますものの、問題はその起債の中身が公共団体にとって有利な政府資金のワクが乏しい、こういうことになりますので、この用地取得の起債の政府資金ワクを所要額を満たせる程度に増額する。これも担当は自治省ということになりますので、自治省に対して強く要望をいたしております。そういうことで、来年度できるだけの予算措置をはかっていきたい。  抜本的な立法措置というような御意見もあるわけでありますが、負担率を上げれば現行の公立文教施設費国庫負担法の改正、若干の立法措置が必要になるわけでございますが、抜本的特別立法というようなことは現段階ではまだ考えておりません。できるだけ従来の予算措置を綿密に、かつ具体的に進めていく、それに必要な立法措置は講じたいと考えておりますけれども、根本的な立法措置についてはさらに事態の推移とともに検討してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  54. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いま管理局長からお述べになったことで問題の指摘はほぼ尽くされておるようにも思います。いずれも大切な点を全部指摘されておりますが、私どもは、単独あるいは臨時の特別立法でもよし、あるいは基本的な法律の改正によって事実が満たされればなおけっこうであると思うのです。そこで、たとえばそういう特別の地帯については国庫負担率の引き上げ等について、建物についての三分の一あるいは二分の一というような小中の制度を全部三分の二にする。あるいは起債、交付税の引き上げ、特に起債については、御指摘のとおり有利な政府資金が乏しいために、全く高い利息で借りて借金で首が回らない、それが累積していくというような市町村が私の近辺にもたくさんございます。ですから、これはもうどうしても最低所要額だけは一番有利な起債のワクが政府資金で裏づけられるように、これはぜひやってもらわなければならぬと思います。しかし、それよりも国庫負担率の引き上げあるいは交付税の引き上げについては一体具体的に検討されてどの程度のことをお考えになっておるか、もうちょっと突っ込んでひとつ御説明願いたい。
  55. 村山松雄

    ○村山説明員 公立文教施設費の国庫負担率は、御承知のように現在小学校三分の一、中学校二分の一でございます。在来は義務教育一本化という要望がたいへん強うございまして、小中学校とも二分の一にしたいという予算の要求をしてまいっております。今度は過密の特別措置という要望がからんでまいりましたので、いろいろ検討いたしましたが、現段階では義務教育一本化という年来の希望を捨てるわけでもございませんけれども、この際は過密地域の急増学校に対象をしぼって、ひとつ小中学校ともできれば思い切って負担率を引き上げたい、かように考えておるわけであります。その具体的な数字につきましては、間もなく予算要求もきまるわけでありますので、その際文部省の方針も同時にきまるわけであります。  それから交付税の問題は、最近は自治省も社会教育にもたいへん認識してくれておりまして、いわゆる人口急増補正ということで、人口急増ということについては、これは単に学校教育だけでもないようでありますけれども、かさ上げを考えておるようでありまして、文部省としては学校についてさらに一段とこの急増補正の率を高めてほしいということで、具体的には自治省のほうに御検討願っておる段階でございます。
  56. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 その問題については、私その程度にとどめて、ぜひひとついまの方針は貫いて成果をあげていただきたいと思います。われわれも大いにひとつそういう世論を喚起して、政府自体がそういう方策に踏み切れるように力を合わせたいと思いますので、大臣におきましても、この点は非常に緊迫した状態でありますから、ぜひひとつ御努力をお願いしたいと思います。  それから、まだたくさんありますけれども、時間がありませんが、一つだけ最後に小さいことをせっかく体育局長来ていらっしゃいますから伺います。  学校安全会の費用がまた倍近く値上げになるということで、しかもこれは金額からいえばたいした金額じゃないはずなんですが、これはもう何とか公費負担で全部まかなえるようにできないものか。そのために事務的に教師にもたいへんな負担になっておりますし、私の聞くところによると、東京の場合、小中学校は現在五十八円、父兄負担がその半額、あとは設置者が負担しているということになるのですが、これがどうも百八円になりそうだと聞いております。高校がいま百円が百八十円くらいにはね上がりそうだ、こういうことなんですけれども、この点について文部省は一体どういう態度か、ひとつこの点伺いたいと思います。
  57. 安嶋彌

    ○安嶋説明員 御承知のとおり、現行の掛け金は四十一年にきまったものでありますが、安全会が発足以来の給付の実情を見てみますと、給付の額におきましては、平均年額一六・二%の上昇がございました。また給付の率につきましても、平均年四・六%の上昇がございます。四十三年度末におきましては若干の赤字がすでに予想されておるわけでございますが、このまま推移いたしますと、四十六年度末におきましては約二十六億の赤字が発生をするというようなことでございます。したがいまして、私どもは四十六年度末に安全会の給付経理が収支相見合いますように、四十四年度から掛け金の引き上げを行ないたいということでございます。ただ、この引き上げの内容は、ただいま申し上げましたような現行水準の維持に必要な部分、これが大部分でございます。ほかに給付内容改善をこの際行ないたい。一例を申しますと、死亡見舞い金、廃疾見舞い金の額、これを三倍程度に引き上げたいといったような内容も、前向きの内容を含めまして、ただいま御指摘のような義務教育につきましては百八円、こういった金額に改定するよう現在作業を進めておるわけであります。  これを公費負担に切りかえられないかという趣旨のお尋ねでございますが、御承知のとおり、学校安全会は父兄の自主的な組織でありまする財団法人組織から転換をしたものでございますし、また現在のたてまえも、共済掛け金あるいは共済災害給付ということで、共済という趣旨を基本にいたしておるわけでございます。したがいまして、掛け金の一部につきまして国が補助するというような思想はとっていないわけでございます。今後も私どもは給付の内容につきましては、そういう方向をとる考えはただいまございません。ただ事務費につきましては、これはぜひ全額補助を実現していきたいというふうに考えております。そのことがひいては父兄負担の軽減にも連なる問題かと思います。現在本部の人件費、物件費は全額国庫補助、それから支部につきましては全額国庫補助でございますが、物件費の一部につきまして加入者負担の部分がございます。こういう部分はこれはぜひ解消していきたい。来年度予算の要求におきましても、それを重点として取り上げていきたいというふうに考えておりまして、公費で負担をするという部分は、そういう部分に限ると思いますが、そういう部分の拡充にまちたいというふうに考えておるわけであります。
  58. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 ちょっと一つ念を押します。制度上の根本的な考えの相違というものはある、その点はわかりまして、これは今後の課題ですが、何ぶんにも学校で扱うお金が零細なので、そういうものに多くの労力を費やすということに非常な矛盾を感じておる。だからこの程度のことはぱっと公費で出してしまえばいいじゃないか。制度上いまのような共済の思想だったら別ですけれども、私どもは公費にしたほうがいいと思っております。しかし、この点は論争になりましょうから、きょうはとどめますが、来年度予算で完全に人件費、物件費は支部、本部を通じて公費になるという方向で努力されていますか。それでなお百八円あるいはということになるのですか。
  59. 安嶋彌

    ○安嶋説明員 ただいま申し上げましたように、人件費、物件費の全額が国の補助になりますような方向で努力をいたしております。それを実現いたしましても、なおかつ義務教育につきましては百八円に値上げをする必要がある、こういうことでございます。
  60. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 それじゃ終わります。
  61. 高見三郎

    高見委員長 唐橋東君。
  62. 唐橋東

    ○唐橋委員 時間がありませんので、ごくおもなる点をお聞きし、そして残りました点は、ちょうど時間のところでやめますので、次回の委員会等で質問させていただくことにいたしまして、質問させていただきたいと思うわけでございます。  現在要求予算編成の時期であり、それらについては社会党といたしましては部会でその内容等もお聞きし、そして社会党の立場からこういう点も入れていただきたいというような点についての話し合いも行なわれる予定にもなっておると思うのでございますが、ともかく現在において要求予算の右の取り組みはどれくらいまでに進んでおるのか。特にその中においておもなる点、こういう点を最も重点とするというような点についてまず第一に御説明をお願いしたいと思うのでございます。
  63. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 予算の問題についてのお尋ねでございますが、ただいまだんだん概算要求の提出期限も迫っておりますので、最終的にいろいろ検討をいたしておるところでございます。なるべく早く取りまとめをいたしたいと存じておりますけれども、まだ最終的な決定を見るには至っておりません。もうここ数日しか残っておりませんので、鋭意取りまとめに努力いたしておるところでございます。  重点施策ということでございますが、私はざっくばらんに申し上げますが、特に柱として従来と変わったというものはございません。やはり重点として今日まで追求してまいりました仕事をさらに一そう努力して、これを拡充するにつとめたいということになろうかと思うのでありまして、目新しいものとして特別な柱というふうなものは特に申し上げるものはないように私は存じております。したがって、公立文教施設の整備の問題でございますとか、ただいまお話にも出ておりました過密、過疎の対策の問題でございますとか、あるいは教員定数の問題でございますとか、各局にわたりましてそれぞれ従来やっておりますものを一そう推し進めていこうという姿勢をもって予算を要求したいと考えておる次第でございます。そのように御了承いただきたいと思います。
  64. 唐橋東

    ○唐橋委員 大臣の要求予算への取り組みはわかりますが、私は、いままでの経過、国会の論議の中で手をつけておるもの、そういう中において特に一歩前進させなければならない、このような点をまず取り上げさしていただくわけでございます。  その第一は、直接予算要求ということではないのですが、大臣、特に実力ある大臣として一番にやっていただきたいのは教育費の税控除なんです。いわゆる教育免税なんということばをいわれますけれども、生命保険をかけても所得から税金の控除になります。しかし、教育費については、これだけ大きな父兄の負担になっておるのに対して、所得から控除されておる事実はございません。これはいまの日本の税体系の中で最大の欠陥ではないだろうか、私はこう考えざるを得ないのでございます。詳しいことはいろいろ議論があると思うのですが、いま申しましたように、当然これは所得の中から自分の子弟にかける義務的なものであり、そのものに対して明らかにその経費がはっきりしております。これをいわゆる税控除していくというようなことは当然であろうと思うのでございます。段階的にはいろいろのやり方があるでしょう。国立の場合、たとえば授業料その他年間の経費の証明書をもらう、私立の大学の場合でも同じです。それだけは所得から控除していくんだ、そしてそれに対して税が課税される。こういうことになっていくとするならば、いま国立あるいは公立と私立との学費の大きな差というものを現実に認めながらも、急速に改善できないとしたならば、父兄の負担を今度はその実情に応じて軽減していくことができる。こういうことをするならば、やはり教育ママの問題も、先ほど福岡の問題等もありましたけれども、好んであれほど激烈に国立に集中させなければならないというような問題も解消する基本になる。学制全体の中のいろいろの問題はあるが、それと取り組んでおる日本の税体系の中で、教育費の支出に対して所得から控除されて、そして課税されるという、いわば基本的なものが欠けておる。この基本的なものに対するいろいろの取り組みは現在までございました。議論もされました。しかし、この新しい予算編成の時期において、実力ある大臣としてこの際思い切って教育費の控除ということをはっきり打ち出していくということが非常に要望されており、また、大臣として取り組んでいただかなければならない基本的な問題ではないだろうか、こう考えますときに、この点に対する来年度の取り組みをはっきりとひとつ大臣所見としてお伺いしたいのでございます。
  65. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 なかなか大きな問題だと思います。また、むずかしい問題のようにも考えられるのでありますが、お考えのお気持ちはもちろん私もよくわかります。わかりますが、教育費控除ということがはたして直ちにできることか、できないことか、こういう問題になりますというと、いろいろ検討しなければならぬ点もあろうかと思うのであります。政府は、御承知のように年来所得の基礎控除を大きくしてまいりました。だんだんそれを高めていくということを考えておりますが、これらも確かに家庭のいろいろな負担の軽減といいますか、そういうことにはお役に立つことではないかと思うのであります。教育費を控除するといたしましても、一体どの程度どういうものについて考えるか、こういうふうなことになりますと、なかなか把握に困難な問題も私はあろうかと思います。いま直ちに私の考えをお答えをするだけの用意も持ち合わしておりませんけれども、ひとつ十分検討さしていただきたいと存じます。
  66. 唐橋東

    ○唐橋委員大臣 この点については自民党の中においても従来相当議論されたということも聞いております。教育費の控除ということについて大臣のお答えを聞くと、非常にめんどうな基本的な問題だ、こういうように御答弁ですが、私はもう少し議論が煮詰まってきていたのではないだろうか、こんな推測の上に立ちながら質問をしておるのですが、とらえ方その他はいろいろ問題があるので、義務教育費の場合はどうなのか、それから今度高等学校、大学の場合はどうなのか。義務教育費の場合の父兄負担はいろいろな部面において考えられておりますけれども高等学校はほとんど義務教育と同じになりましたし、進学率等は向上しております。そしてそれに対する授業料というようなことは、正式に学校が、公の機関が領収証を発行して取っておるわけです。大学の場合も同じでしょう。そうすれば、そういうような明白なものだけ、何も東京に下宿していて、それにかかる食費はどうのこうのという問題ではなしに、少なくとも着手していくということになっていけば、基礎的なものは私はできると思います。基礎控除ということの上昇は国民全体のものでありますけれども文部省として、教育費というものの基本的な父兄負担の軽減ということならば、これに対して真剣に取り組んでいくこと、そしてその第一年度の着手はどう、第二年度はどう、こういうことになっていけば解決がつくんじゃないか。こう思うときに、何かいまの答弁では積極的な姿勢というようなものがうかがえないので非常に残念なんですが、もう少し積極的な姿勢に対する御答弁をさらにいただかなければ何か私も了解できないのです。もう一度御答弁願いたい。
  67. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 なかなかむずかしい問題でありますので、私もきわめて慎重なお答えを申し上げたつもりでございますが、文部省としましては、唐橋さんのおっしゃるような程度に至っておるかどうか存じませんけれども教育費の控除という問題は、問題としては常に申しておることなんであります。税制改正等の場合にも常に考えてほしいということは要望してまいっておりますけれども、しかし、その取り扱いが非常にむずかしいということもございましょうし、もっと先に解決すべき問題がありはしないか、こういうふうな問題で今日までわれわれの要望というものがその実現の緒についておらないというのが今日までの経過であります。そういう事柄でございますので、私どもとしましては、決してその点無関心でおるということではございませんけれども、でき得ることならどこからかでもひとつ突破してみたいという気持ちはございますけれども、重要な問題であり、なかなか困難な問題でございますので、つい私の答弁も慎重になった、こういうふうにひとつ御了承願いたいと思います。
  68. 唐橋東

    ○唐橋委員 この問題についての大臣のお気持ちはわかりましたので、議論はいたしません。ざっくばらんに申し上げまして、来年度ひとつこれに積極的に取り組んでみる、こういう文部大臣としてのお考えはどうなんですか。
  69. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 文部省の態度としましては、従来からもこの方面に対する配慮を要望しておるところなんであります。したがって、私どもとしましては、来年度についてはその要望を撤回するというふうな気持ちはもちろんございません。もちろん要求してまいるつもりでございますけれども、事柄はそう簡単ではないということをひとつ御承知おき願いたいと思うのでございます。
  70. 唐橋東

    ○唐橋委員 予算要求の内容、項目に触れると思うのですが、そういう中で、先ほど長谷川委員のほうから過密の問題、過疎の問題を取り上げられましたが、私は過疎地帯といわれる地域に住んでおる者でございますが、過疎地帯の問題等も、ほんとうにいろいろ問題がございます。しかし、過疎地帯は過密と違って、また問題が非常に深刻であるということを一つ申し上げざるを得ないし、それに対する施策というものを充実していただかなければいけない、こう考えております。過密地帯は、私から言わせるならば、あるいはおしかりを受けるかもしれませんが、二年、三年たてば明るい希望が出てくると思います。しかし、過疎地帯は二年、三年、たてばたつほど何か暗い谷間に追いやられるという、希望が持てないところに本質的な違いがある、こう考えざるを得ないのでございますが、これらに対するいろいろな具体的な問題は省略するといたしまして、四十二年度の予算等を取り上げましたときに議論いたしまして、ともかく僻地の再改定、再検討をいたす、そしてさらに、この過疎というものを考えながら、従来の僻地指定の基準等も根本的に検討していきたい、こんなようなことで着手されていたと思うわけでございますが、その結果、文部省としてはどのようにとらえ、そして今度のこの予算要求の中に実現していこうとするのか、その点についてひとつお伺いしたいと思うのであります。
  71. 天城勲

    天城説明員 僻地の問題につきまして——先生の御質問はいろいろ広範でございますが、いま最後に僻地の問題にお触れになったと思いますが、僻地でございますね。——僻地の問題に限ってお答えいたします。幾つかの問題がございますが、一つは僻地基準の改定ということがあるわけでございます。これにつきましては、いろいろ新しい事態に応じた基準改定の作業をしてまいっておるのでございますが、何ぶんにも社会の変貌が激しいので、実地に即しながら繰り返して検討いたしますと、率直にいって、なかなかまだいい基準がきまりません。そこで、現在の措置といたしまして、四十三年度で終わることになっておりました従来の暫定基準というものがございましたが、新しい基準がきまりませんので、その暫定基準の問題をもう二年引き続いてそのまま残しておくという措置をとりあえずいたしまして、その二年の間に、いま指摘されております過疎問題の一環といたしまして、もう少し検討を進めていきたい、いまそういう態度でございます。したがいまして、四十四年度の問題につきましては、まだ暫定基準の形で進んで、その間に基準を検討していきたい、こういうふうな基本的な態度でございます。
  72. 唐橋東

    ○唐橋委員 過疎問題の中心と考えているこの僻地の問題ですが、一つの施策だけでなしに、これは総合的なものでなければならない、こう考えております。御答弁等も、私のお聞きしたいこともいろいろ多種にわたるわけでございますが、それらは省略いたしまして、いまおっしゃったような暫定基準ということとともに、やはりこういう点について総合的な施策を考えている、こういうようなことが答弁の中に出てくるものと私は考えたのですが、暫定基準の問題だけでなしに、教員の定数についても僻地の補充というものはしなければならないし、先ほど申されましたように、その僻地のいままでの段階というもの等についても、いつをめどに根本的に検討するとか、あるいはまた当然出てくるであろう寄宿舎の問題等、いろいろな問題を僻地という中において当然総合的に考えている、こういう点についていま取り組んでいるというようなことを私はお聞きしたかったのですが、時間がないのでことば足らずだったのですが、僻地問題、さらにそれに加えて、特に僻地の中の僻地といわれる豪雪地帯、そういうものに対する施策というものはほんとうに必要ではないかと考えておりますが、それらに対して時間がありませんので、十分な御答弁はいただけないと思いますが、基本的な一つその態度、それの中でいま着手していこうとする各項目等ぐらいは御答弁をお願いしたいと思います。
  73. 天城勲

    天城説明員 たいへん失礼いたしました。御質問の趣旨を取り違えたものですから、また僻地対策を全国的にどう考えているかということになりますと、たいへん広範な問題にわたりますので……。別に僻地基準だけのことで僻地問題を考えておるわけではございませんので、その点はお断わり申し上げ、おわび申し上げておきたいと思います。  いろいろ施策はあると思います。教員の定数の問題もございますし、児童に対する対策もございます。施設の問題もございます。それらを一々申し上げますとたいへん時間もかかってしまいますので、とりあえず私の所管の範囲内で申し上げますと、一つは単級複式問題をとらえて、ここにおける教員定数の充実をはかっていきたい。方法はいろいろ検討しておりますが、問題としてはその点が一つ。さらに小規模学校、これは必ずしも僻地に限りませんけれども、小規模学校における定数基準の改善をはかっていくということも問題点じゃないか、こういうふうに考えております。それから子供の問題につきましては、御指摘のように通学とか寄宿舎の問題も従来からございますが、これもできるだけ実態に即してその面の充実をはかっていきたい。その他環境の問題もいろいろございます。それらの点につきまして、現時点においてできるだけのことははかっていきたいと思っておるのでございますが、ただ基本的に、過密、過疎という問題につきましては、僻地の問題も含めまして、非常にいろいろな条件が加わっておりますので、それに対する教育の観点から見た施策というものは、さらに調査なり実態把握なりを進めながら、明年度だけで解決しない問題がたくさんあろうかと思っておりますので、前向きに問題を考えていく、明年やり得る問題は明年の問題、こういう仕分けをしながら進んでいくつもりでございます。
  74. 唐橋東

    ○唐橋委員 大臣、この点ひとつ御検討をお願いしたいと思うのです。  過疎地帯は地方財政が非常に特殊な市町村、固定資産税が入るというような点を除いては、非常に財政力が困難なんです。したがって、補助率の引き上げと同時に、地方財政の規模に応じてその補助率を多少補正していく、このことがない限り、私は地方、特に義務教育関係の過疎地帯の振興はあり得ない、こう考えざるを得ないわけです。  一つの例を申しますと、私のほうの選挙区なんですが、統合のために学校をある工場に建物も土地も売却しました。そうしてその売却の工場は誘致工場なんです。相当高く売れるだろう、売れれば、それによって幼稚園をつくってやりましょう。こういうことで、幼稚園をつくることを一つの条件として工場誘致したのです。しかし、入る工場は、そんなに高いところに入れないということで、最初の予定より非常に安く譲渡になった。そうしますと、いまの幼稚園の設置が今度は宙に浮いてしまった。幼稚園の設置などは全く小さな金だと思いますけれども、それは今度町から見れば大きな負担になる、こう言わざるを得ない。そんなことで、文部省のほうでも、そのために二カ所になったのですが、それに対して二カ所を一つの市町村には認められない、一カ所だけを認める、こんなことで、こちらのほうは認めるのからはずれた。だから町長なども非常に苦境に立ってしまった。幼稚園はつくるといったって——、しかし、もう学校は工場に売られてしまって、地元では今度は非常に大きな問題になった。このことは係のほうにも私は連絡してありますから、ここで御答弁はいただかないで、あとで、担当のほうでも、十分事情はわかるので考慮いたします、そんなように御答弁がありますので、たぶん善処いただけるものと、こう考えておるわけです。実情はそうなんですよ。  したがって、地方財政の規模に応じたいわゆる国からの補助、起債というものを考えていかなければ、過密地帯でも同じだろうと思うのですが、これは根本的な解決はあり得ない。三分の一が二分の一になったからいいのだといっても、その二分の一がまた出せないからいまのような事態が生じておる。それは何かといえば、やはり過疎地帯が今後おちいらんとする地方財政の困窮なんです。そういうところへ地方財政に応じた補正をやっていただかなければならない。これは地方財政のたてまえ上、文部省としても当然考えていかなければならない基本的な問題だと私は思うのですが、これに対してひとつお伺いしたい。
  75. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 過疎現象というものがだんだん進んでまいっておりますので、いろいろな問題がその地域において起こってきておるわけでございます。その中で、いま御指摘になりましたような地方の財政力の問題というものも確かに大きな問題に違いないと思います。財政力の貧弱なそれらの町村が、他地域におくれをとらないようにいろいろなことをやっていこうとすれば、そのために負担が非常にきついものになってくるということはよくわかることでございます。私どもとしても十分留意してまいらなければならぬ点であろうと思います。その対策ということでいま補助率の問題にもお触れになったわけでございますが、それも一つの方法であろうかと存じますし、また一般的な地方の財源についての特別なくふうをするというようなことも一つの方法ではないかと存じますが、いまにわかにどうしたらということもお答え申し上げにくい問題でございますけれども、私どもも、また地方財政を担当しておる自治省等におきましても、いわゆる過疎対策として財政力問題をどうするかということについて真剣に検討さしていただきたい、そういうふうに存じております。
  76. 唐橋東

    ○唐橋委員 時間がありませんので、これ一つお聞きいたしまして、あとの問題は次回の委員会等に残していただかしていただきたいと思います。  先ほど大臣からも話がありましたように、手をつけたものの中で消化していくという方向でございまして、特殊教育の問題であります。来年度の特殊教育の予算要求の中でどんなように取り組んでいこうとされるのか、これをひとつお伺いしたいわけでございます。さっきの理事会等でも一、二出ておったのですが、私が大臣にお伺いしたいのは、この前の委員会で私が質問した場合に、四十五年度、こう剱木大臣が言われたと思っていま記憶しておりますが、速記録がないので、この年度は多少違っておるかもしれませんが、盲ろう学校と同じように、いま残されておる特殊教育の部門について、少なくとも義務設置をしていきたい。こんなような明快なる方針が明らかにされていたわけでございますが、これに対してはどんなように予算要求の中で取り組まれているのか、また取り組んでいこうとするのか、この点についてお伺いし、残ったいろいろな問題、たとえば過疎地帯における複式の問題とか、あるいは父兄負担の軽減の中における寄宿舎の占める位置、あるいは交通の事情、そういうような各種の事例等については後日にいたしまして、特殊教育の問題をお聞きして、私のきょうの質問は終わらしていただきたいと思います。
  77. 天城勲

    天城説明員 特殊教育に対する基本的なこれからの推進方策、特に明年度の予算ということになりますと、かなり範囲が広いので、時間もありませんので、ごく簡単に基本的なことだけ申し上げたいと思います。  一つは、総体的な言い方でございますが、盲ろうに対して養護学校の設置が非常におくれております。この養護学校の設置をさらに推進いたしまして、一日も早く義務制の形をしきたいということが一点でございます。  養護学校の中身はいろいろございますが、こまかく申し上げますと時間がかかりますが、とにかく養護学校施設を充実していく。昨年度身体障害児童の調査をいたしまして、実態が新しくわかってまいりました。この基礎の上に立ちまして施策をこまかくやっていきたい。と申しますのは、重症の障害児と、それから軽症と申しますか、程度の軽い障害児と、それから重複の障害児、それから、従来他の領域に明らかに顕在的に出ておりませんでした、情緒障害児ということばでわれわれが言っている一群の障害児、それから言語障害児、そういうものが実態的にかなり明らかになってまいりましたので、特殊教育の盲ろう、養護学校という学校以外に、普通の学校におきます特殊学級、これももう少しきめこまかくやっていかなければいけないじゃないかということを考えておりまして、それに対する学級増設の問題ですとか、あるいは新しい障害に対しまする研究を始めるとか、いろいろの点を考えておるつもりでございます。  なお、総合的には、過去二年ほど、私たちのほうで特殊教育の総合対策のための調査会を設けまして、専門の方々のお知恵を拝借しておりましたけれども、いろいろな角度から見て、やはり基本的な特殊教育の総合研究の体制を樹立する必要があるという結論になりかかってきておりまして、それは単に心理学とか教育学だけではなくて、医学とか、いろいろな分野がこの中にもございますが、進んで工学関係方々の協力を得た形で特殊教育対策に向かわなければならないという大体の結論に近づいておるわけでございますから、もうじき御答申をいただくことになると思いますが、方向としては、私たちは、できれば総合教育研究所の設立の方向に進みたい。これも明年度その方向の予算をいま検討しておるところでございます。  いろいろ申し上げることはたくさんございますが、ごく基本的に申し上げるとそういうことでございます。
  78. 唐橋東

    ○唐橋委員 次回に問題を残します。      ────◇─────
  79. 高見三郎

    高見委員長 この際、特殊教育振興に関する件について鈴木一君より発言を求められております。これを許します。鈴木一君。
  80. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 私は自由民主党、日本社会党、民主社会党、公明党、四党共同提案によります特殊教育振興に関する件につき決議案を提出し、その提案理由を簡単に申し述べたいと思います。  まず、原文を朗読いたします。     特殊教育振興に関する件(案)   特殊教育の重要性とその振興の必要性にかんがみ、政府は、すみやかに左記事項について検討し、その実現を図るため必要な財政的、法制的措置を講ずべきである。         記  一 特殊教育の対象児の実態を把握するため、基礎的な調査を行なうとともに、特殊教育を医学、心理学、教育学等関連諸科学の各分野にわたり総合的に研究することを目的とする国立の中央機関を設置すること。  二 特殊教育内容及び方法を刷新改善し、これに適応する教員の養成と待遇の改善に努めるとともに、施設設備の整備充実を図り、特に養護学校について、その設置を促進し、もつて義務制を完全実施すること。  三 心身障害児に対する職業教育は、社会復帰への重要な前提要件をなすものであるから、これが改善充実について、格段の意を用うべきこと。  四 心身障害児のうち幼児については、早期発見早期教育が特に重要な課題であることにかんがみ、幼稚部の計画的増設を図り、これが対策に遺憾なきを期すること。  五 特殊教育学校への就学に伴う父兄の経済的負担の軽減に資するため公費による就学奨励費の支給の拡大を図ること。  六 心身障害児の治療に当る専門医師の計画的養成に努めるとともに、特殊教育機関と治療機関との緊密な連けいを図り、治療教育の徹底を期すること。  以上でございますが、国は、教育基本法に基づき国民に対して就学の義務を課すると同時に、児童の保護については児童福祉法を制定し、国並びに地方公共団体の児童福祉保護に関する責任を定めております。さらに児童憲章第十一条には「すべての児童は、身体が不自由な場合、また精神の機能が不十分な場合に、適切な治療と教育と保護が与えられる。」とはっきりその責任の所在が規定してあります。このように児童保護、福祉、教育に関する基本的な法律はりっぱに制定されておるのでありますけれども、これを具体化する行政面については、いまだはるかに道遠しの感を深めるものがあります。特に特殊教育の現状は、ごく一部を除いてはほとんど野放しというか、特に見るべき施策がないことをまことに遺憾とするものであります。昨今、このようなわが国の特殊教育の現状打開に関し、ようやく世論も高まりつつあり、本委員会においてもしばしば論議の対象となったところであります。したがって、いまこそ政府においては特殊教育振興について積極的な施策の実施に踏み切るべき絶好の機会と考えられるのであります。  以上をもって、まことに簡単でありますが、特殊教育振興に関する件の決議案の提案理由の説明といたします。何とぞ皆さまの御賛成をお願いいたします。 (拍手)     ─────────────
  81. 高見三郎

    高見委員長 本件について御発言はありませんか。——谷川和穗君。
  82. 谷川和穗

    ○谷川委員 ただいま私の手元に第三十八回国会の参議院文教委員会においてなされました「特殊教育の振興に関する決議」がございまするが、年度は非常に古いのでありまするが、昭和三十六年六月六日でございます。この中の文面に「その後の政府の施策はこれらの教育の振興に可成りの進展をもたらしている」という条項がございます。しかし一方、ことしの八月に発表されました文部省の「児童生徒の心身障害に関する調査」、われわれが長らく主張いたしておりました実態調査がようやくなされて、この調査に関する結果が発表されました。これを見ますると、今日全国でこの種児童生徒の数は五十四万、そのうち特殊教育を受けている児童生徒数、これが十三万四千、約二五%弱であるという資料が出ております。さらには、たとえば精薄関係の養護学校、これがまだできていない県が三十三県ある。あるいは病弱、虚弱児童、その養護学校の未設置県がまだ二十九県ある。まあいろいろむずかしい問題もあると思うのであります。たとえばやはり両親や保護者を含めた社会全体の理解を進めなければ、この在学率を高めるということはなかなかたいへんなことだと思いまするし、その他施設設備の改善充実、これもやらなければいけないでしょうし、それから教員の養成、こういったことも必要であろうと思います。しかし、いずれにいたしましても、ただいま鈴木委員の御発言の中にございましたように、いまやまさにわれわれとしてもそれを期待いたしまするし、それから教育行政をになっておられます文部省においても、先ほどの唐橋委員の御質問に対して局長からの御答弁にございましたが、いよいよ力強くさらに前進をさせたい、こういうことでございました。われわれはそれをこの際大きく期待をいたすわけでございます。特にいままでのいきさつを考えてみますると、まず第一に、早期発見をして早期教育に踏み切るということと、それからわれわれとしてこの際ぜひやるべきだというふうに判断をいたしますことは、総合研究をして、いままでのいわばばらばらに行なわれておりましたこの種行政をひとつ基本的に、体系的にあるいは関連的に、さらに科学的に大きく前進をする一歩を踏み出してもらいたい、こう考えるわけでございます。その意味で、ただいま鈴木委員が四党共同提案で提出をされましたこの特殊教育振興に関する決議に対して、ひとつ行政当局におかれましても、この院の趣旨を十二分にお感じ取りいただきまして、この分野においてさらに一そうの努力をつとめられますよう私はお願いをいたしたい、こう考えておる次第であります。  (拍手)
  83. 高見三郎

  84. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 ただいま鈴木委員の御提案になりました四党共同提案にはもとより全面的に賛成でございますが、このほかにちょっと一言要望を申し上げたいと思います。  と申し上げますのは、いま申し上げたとおり、特殊教育については早期発見をし、そして早期に対処する、したがって幼児のうちからこれを見つけるということも大事でありますが、同時に、調査に万全を期し、かつそれについて対策を講じていただきたいのは、非常に重症の心身障害児につきまして、たとえば特殊学校にも通いがたい子供をかかえて悩んでいる家庭というものが非常に多いということであります。したがって、巡回教師制度というようなこともあわせてこの対策の中には十分考慮して、置き忘れられ、捨て去られるような子供が皆無になりますように、義務制の確立ということはそういう点まで含めて配慮さるべきである。このことを一言だけ申し添えまして、心から賛意を表するものであります。 (拍手)
  85. 高見三郎

    高見委員長 他に御発言はございませんか。——御発言もないようでありますので、直ちに採用いたします。  鈴木一君外三名の御提案のとおり、特殊教育振興に関する件を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 高見三郎

    高見委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  この際、ただいまの決議に対しまして、政府所見を求めます。灘尾文部大臣
  87. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 特殊教育につきましては、その緊要性は十分自覚いたしておるつもりでございますし、また、かねてからその振興には政府努力してまいったのでございますが、まだまだ整備すべき点が多々あるということも十分承知いたしております。御決議の趣旨につきましては、財政上の問題等もございますが、十分調査、研究をいたしまして、御趣旨の実現に努力いたしたいと存じております。
  88. 高見三郎

    高見委員長 なお、ただいまの決議につきましては、関係当局へ参考送付いたしたいと存じます。その手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 高見三郎

    高見委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時二十分散会