○野津
説明員
新聞紙上等に見られております米ぬか油によります中毒事件の
経過につきまして御
説明申し上げます。
事件の端緒でございますが、これは十月の四日に、大牟田市にございます大牟田保健所から福岡県の衝生部に対しまして、油によると思われます中毒患者が発生したということの通報があったわけでございます。現行の食品衛生法の場合でございますと、大牟田市は政令市でございますので、特別に通報する義務はないわけでございますが、油によります中毒事故ということでございまして、非常に珍しい例だからということで、県のほうに通報があったわけでございます。
これに基づきまして、九日に、同大牟田保健所の
調査によりまして、患者が九大病院の治療を受けているということがわかりましたので、さっそく県のほうでは九大に参りまして主治医の方とお会いしまして、いろいろ
状況などをお
伺いしたということでございます。そうしましたら、ほかに同様な患者が四名現在九大で受診しているという
報告を受けたわけでございます。また一方、大牟田保健所のほうとしましても、八日に患者の宅に残っておりました油約五百ミリリットルをいただきまして、これを衛生部のほうに送ってまいったわけでございます。
それで、同日福岡県の衛生部は、県下の各保健所、それから各市に対しまして、患者の発生の
状況を
調査しろということを指示たしいますと同時に、工場に対しまして、北九州市にございますので、北九州市と打ち合わせた上で、自主的に
販売中止をしてはいかがというふうな勧告をいたしたわけでございます。
以上の
状況につきまして、十一日に厚生省に
報告があったわけでございまして、厚生省といたしましては、この
報告に基づきまして、福岡県に対しまして、関係機関等と十分な連絡をとりながら、原因の究明あるいは何か物質が入っておればその汚染経路等を解明するために、努力をしてもらいたいということを指示したわけでございます。その後、福岡県といたしましてもいろいろ患者の資料等をまとめていた段階でございます。
それから十月十五日に、全国の
都道府県の衛生部長に対しましても、これに類した患者の発生が届け出がございましたら至急
報告してもらいたいということを通知いたしたわけでございます。
なお、当時の
状況によりますと、かん入りの油から患者が出ているというふうなことがありましたものですから、一応食品衛生法の四条四号違反ということで、一斗かんに入っております油の
販売停止を十五日の時点で各市、各保健所に通知いたしたわけでございます。また同日付で北九州市の衛生局も、食品衛生法四条四号違反ということで、カネミ倉庫
株式会社に対しまして一カ月間の
営業停止を命じたわけでございます。
十月十六日に、厚生省は現地に食品衛生
課長及び係官を派遣いたしまして、現地の
状況調査、今後の方針等について、いろいろ現地と打ち合わせをいたしたわけでございます。同日付で、先ほどはかんだけでございましたが、びんに入っております油につきましても
販売、移動禁止をいたしたわけでございます。
また、福岡県におきましては十六日付で、副知事を本部長といたします福岡県油症対策本部を
設置いたしまして、この対策に全力をあげて当たる体制を持ったわけでございます。
また、同日厚生省は全国各県の衛生部長に対しまして、同社製の米ぬか油に対しまして食品衛生法四条四号違反があるから、この
販売の停止及び移動の禁止の措置をとるようにということを指示いたしました。なお、それにあわせまして、この油の検査及びそれ以外の油の製造工程につきましても点検あるいは製品の検査を行なうようにということを通知いたしたわけでございます。
十月十七日に現地福岡県におきまして、当時一番患者が発生しておりました一府七県三市の関係者を集めまして、さらに九州大学、久留米大学の専門の教授、講師に集まっていただきまして、厚生省主宰によります油症対策関係打ち合わせ
会議を実施いたしまして、各府県におきます
現状を聴取すると同時に、今後の方針につきまして指示を与えたわけでございます。その今後の方針の
内容といたしましては、患者の発見と同時に、その患者が使用いたしました油の原因物質、さらにはその油を収去いたしまして分析するということを
中心といたしまして、さらには患者の発生につきましては逐次厚生省に
報告をしてもらいたいということを指示したわけでございます。
なお、当時
新聞紙上等で砒素の含有があったということが
報道されましたので、まず検査の
対象といたしましては砒素を重点としてもらいたい、そのほかに、有毒性がございます重金属、それから有機塩素系化合物、
農薬でございますが、その他の
農薬、それから油の脂肪酸の状態あるいは酸化いたします状態というものについて重点的に
調査しろということを指示したわけでございます。
さらに厚生省といたしまして、厚生省の医務
局長名をもちまして全国の地方医務
局長と
国立病院長に対しまして、同一疾患と思われるような患者についての資料を
整備するということ、さらには各関係の
都道府県と十分連絡をとってもらう、さらには治療法で非常に効果のあるものがあれば至急連絡をしていただくということなどを、各
国立病院に対しまして指示いたしたわけでございます。
さらに、実はこの症状そのものが非常にむずかしい疾病でございまして、発見いたしましたのが九大の医学部の付属病院の皮膚科で発見いたしたわけでございまして、診断に非常に困難な問題がいろいろございまして、各県といたしましても、この届け出があるという状態がございましても、一体これがどういう疾病であるかということにつきまして非常に判断に困っている状態がございましたので、十月十七日にお願いいたしまして、十月十八日に九大を
中心といたしまして関係の専門家が寄りまして、その疾病の症状はこういうものであるという典型的なものをおまとめいただきまして、二十二日に各県にその症状
概要につきまして送付をいたしました。
さらに、この問題は油の製造工程あるいは原料になりますぬかの問題等、非常に大きな広い問題がございますので、十月二十三日に農林省と第一回の打ち合わせ会をいたしたわけでございます。
さらには、非常に多府県にわたっておりますので、疫学的な
調査を行ないます場合でも、各県まちまちにやっておりますのでは十分な原因究明ができないというふうな
状況がございますので、患者の疫学
調査の方法あるいは試験項目はこのようにというふうな中身で、厚生省から各府県に対しまして通知をいたしたわけでございます。
現在、患者の数は、昨日の十六時現在で一万一千十二名の
方々が届け出をしておられます、この届け出の内訳といたしましては、医師によります届け出、それから患者が自分でその油を使用しておりましてそういうふうな症状がありましたということで、積極的に本部に申し出ていただいた数というふうな、いろいろな状態があるわけでございますが、まぜまして一万一千十二名が届け出られた数になっておるわけです。
内容は二十三府県にわたっております。
以上、簡単でございますが、
概要を申し上げました。