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1968-09-24 第59回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年九月二十四日(火曜日)    午後零時四十三分開議  出席委員   委員長 八百板 正君    理事 小笠 公韶君 理事 砂田 重民君    理事 武部  文君 理事 和田 耕作君       坂村 吉正君    中山 マサ君       武藤 嘉文君    村山 達雄君       山下 元利君    伊賀 定盛君       木原  実君    戸叶 里子君       大野  潔君  出席国務大臣         農 林 大 臣 西村 直己君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局長    柿沼幸一郎君         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         経済企画庁国民         生活局物価政策         課長      佐上 武弘君         経済企画庁総合         計画局参事官  伊藤 俊三君         国税庁間税部長 佐藤 健司君         農林省農政局長 太田 康二君         農林省畜産局長 立川  基君         食糧庁長官   桧垣徳太郎君         食糧庁次長   田中  勉君         水産庁長官   森本  修君     ───────────── 九月二十四日  委員有島重武君辞任につき、その補欠として大  野潔君が議長の指名で委員に選任された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ────◇─────
  2. 八百板正

    八百板委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武部文君。
  3. 武部文

    武部委員 最初に、企画庁長官にお伺いをいたしたいと思いますが、当委員会で、物価問題について、いろいろ具体的な問題について、政府の所信なり対策なりを求め、私ども意見も申し上げてきたわけであります。消費者米価値上げの問題が起きまして、このことは昨年の一四・四%値上げの際にも申し上げましたように、その波及効果が非常に大きい、したがって、消費者米価について私ども値上げ反対である、こういう点をるる申し上げたわけであります。しかし、閣議は、すでに十月一日からこの消費者米価値上げを決定いたしておるわけであります。最近のテレビ新聞、ラジオ、すべて、物価値上がり問題を報じない日はない。国民からは、物価問題は非常に注目の的であります。  最初にお伺いをいたしたいのは、物価現状企画庁長官はどういうふうにお考えになっておるか。一体このようにここ一、二年の——若干数字昭和三十七、八年当時よりも一応下がっておるように見えますけれども、ことしの物価値上がりは異常な数字になるのではないか。これはあとでいろいろ例を申し上げたいと思いますが、その値上がり原因は一体何か。一昨日テレビ座談会で一時間ばかり、宮澤さんは、中山さんや小坂さん、岩井さんと話し合いをおやりになっておりました。私も、一時間ばかりでありましたが、聞いておりまして、いろいろ参考になりましたが、非常に時間が短かかったせいか、よくわかりにくかった点がございます。特に、いま私が申し上げる値上がり原因について、長官は三点について言っておられました。人手不足あるいは中小企業賃金上昇がコストに反映をするとか、あるいは古い制度の慣行が守られておる、これはビールや米がそうだ、あるいはまた、都市人口集中によって生鮮食料品値上がりがあるのだ、こういうような意味のことを三点ばかり冒頭に述べておられまた。しかし私は、この三点がいまの物価値上がり原因だとは思わない。おそらく長官もそうだろうと思うのですが、舌足らずの点があったと思うのです。しかし、一応あのテレビ座談会を聞いておりますと、いまの政府の姿勢、考え方の中に、物価値上がり原因を一体どのようにつかんでおるのかという点について、私は、国民の皆さんもあれをお聞きになってあるいは疑問を持たれたと思う。私もそう思いました。そういう点で、舌足らずの点があったと思うので、一体原因は何か、これを大まかにひとつ述べていただきたい。さらに、今後の見通しについてどういうふうにお考えか。最後に、それならば、一体政府は、この物価問題についてどのような対策をお考えになっておるのか。この間の十六日のある新聞に載りました婦人との座談会記事は非常に大きなものでありましたが、これも相当スペースをさいて報道されておりました。そこでも、この対策問題について婦人代表長官に非常に強く意見を述べておったようであります。この機会に、この四点、物価現状をどう見ておられるか、値上がり原因は一体何か、今後の見通しはどうか、政府としてこれに対してどういう対策をお考えになっておるか、まず最初にこれをお伺いしておきたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昭和三十五年ごろからいまのかなり高い消費者物価上昇が始まっておりますが、それ以前は一%台くらいの消費者物価の動きでありまして、したがって、その三十五年あたりから新しい問題が出てきたのであろうというふうに考えておるわけであります。  その一つは、やはり毎年賃金上昇があり、しかもだんだん人手不足になってまいりましたから、賃金上昇生産性の高い部門から始まってそれが生産性のなかなか上昇し得ない部門にも波及し始める、これはやはり一つの大きな原因であると思います。ことに中小企業サービス業においては、そういう波及してまいりました賃金上昇生産性上昇で吸収するということが短期間ではできませんので、やはり価格サービス料金にそれが転嫁されてきているということは疑いのないことであろうと思います。  それから、ものによりましては、自由競争の原理がいろいろな事情から十分に働いていない。その結果、下がるべきものが十分に下がっていないというものもあるように見受けます。  それから、この三十五年以来の物価上昇原因を分析してみますと、中小企業の製品あるいはサービス料金及び生鮮食料品といったような三つが、寄与率で申しますと、もう九割近いものを占めておるわけでございますから、そこで、生鮮食料品について考えますと、これはやはり都市への急激な人口集中に対して生産側の体制が十分整わなかったこと、及び、本来都市人口集中しいわゆるスプロール現象を起こせば、農地であったものが宅地になるという場合が多いのでございますから、勢いそこから需給のバランスがまたはずれるといったこともございます。大体それらのものが物価上昇のおもな原因であろうかと考えておるわけでございます。  そこで、見通しでございますが、いまの段階で、今年度の物価上昇が非常に大きいのではないかということについて、国民的な関心が集まっておること、私はそれは決して悪いことではなくて、問題にそれだけ関心が高まっておることを大切なことだと思っておりますけれども、この四十三年度中を通して、政府が掲げた四・八%というものはもうとても維持できないだろうと考え理由は、私はまだないというふうに思っておるのでございます。どうもそう申し上げると、いかにもがんこに初めに言ったことに執着しておるのではないかとお考えの向きがあるようでありますけれども、しかし、御承知のように、昭和四十二年度という年が年度の初めにかなり消費者物価が下がりまして——いま四十三年度の前年対比を申しております、その対比される前年の時期というものは、消費者物価がかなり下がった時期でございます。そして四十二年度は後半になってかなり急上昇しておるわけでございますから、そこでいままで対前期比あるいは前年同月比でかなり高い率を示しておることは、ある程度昨年の側の事情によっているものが多い。ある程度そういう部分がございます。これから後の数カ月というものは、昨年度がかなり上昇しておるわけでございますから、いままでの数カ月程度の前年対比の幅が今後もあるだろう、あるのもやむを得ないと考えるのは、実はやむを得ないと考えてはならないのであって、私は前半はこういうことを当然予測をしておりましたが、後半でも昨年と同じくらいの幅を見せて消費者物価が上がっていく、そういうふうにあきらめて考える必要はないと思っておるのであります。ことに、先ほど御指摘のように、昨年の消費者米価引き上げが十月から一四・四%であったわけでございますが、今年は八%程度を予定しております。そういうことから考えますと、何もこれから後も昨年と同じくらい、上半期と同じくらいの幅で昨年より上回る、そうあきらめてしまわなければならないものではないというふうに私は考えておるわけでございます。ですから、やはり四・八%というものは、これを目標として、引きおろすつもりはないのでございます。  さて、そこで対策ということでございますが、生鮮食料品等については、これはもう特に申し上げるまでもない。やはり生産と最終的な消費との間にいろいろなクッションをこしらえておくということ、これは技術の進歩等によってもそういうことがかなりできるようになりましたから、生産者にとっても消費者にとっても、ある程度安定的な価格が生まれるというような対策は今後とも必要だろうと思います。指定産地制度どもやはりそういう性格を持っておるわけでございます。また、物によりましては、輸入政策を必要とする物もあろうかと思いますが、物が農産物でございますから、これはかなり留意をしてやっていく必要があるように思います。  それから先ほども申し上げましたように、生産性の高い部門から賃金の伝播が起こっておるわけでございますから、生産性の低い部門生産性上昇を促すための施策、これは中小企業にも農業にも当然そういう問題があるわけでございます。これは非常に長い期間をかけて継続的にそういう努力をしていかなければならない。御承知のように、中小企業高度化であるとか、協業化であるとか、あるいは農業基盤の整備であるとかいうものはそれに当たるわけでございます。  さて、そこでもう一つ、この賃金上昇という一般的な問題をどうするかということでございますが、結局経済成長というものと物価の相対的な安定というものとをどういう関係考えていくかということにこれは帰着をいたしますわけで、この点についてはときどき所得政策というようなことがいわれますけれども所得政策ということばには、在来使われておった限りでは、何か非常に激しい賛成反対があるような意味で使われておりますから、どうも私は、そのことばをそのまま使うことは適当ではない。やはりほんとうの意味でそういうものがあるとすれば、それはどのような考え方で、どのような環境の中で考えられるものかということについて、国民的な合意が先立たなければならないであろうということはかねて申し上げておりますが、昨年の七月に私が経済審議会を通じてお願いをいたしました五人の学者たち共同研究がもう間もなく発表になりますので、これをテキストブックとして、賛成反対を言う前に、まず問題はどういう性格で、どういう背景を持っておるかということをしばらくの間国民各層研究をしてくださることが望ましい、こういうことを考えております。
  5. 武部文

    武部委員 いまの値上がり原因のことについて、やはりテレビ座談会と同じようなことをおっしゃっておるわけですが、いまの急速な物価値上がり、これはあらゆる新聞が全国的に調べたものが、各新聞によって違いますけれども出ておりますが、やはり一貫して流れておるその内容は、公共料金値上がりが口火になったということについては各社とも異論がないようです。そういう世論になっておるようであります。いまのお話を聞いておりますと、たとえば消費者米価が八%上がったが、去年は一四・四%で、そのときの家計に与える影響はしかじかであった、したがって八%だから前よりも低い数字だろう、こういうことをお述べになっておるわけです。ところが、これはあと数字にも影響するわけですが、金融界物価上昇観測というものは去年とはたいへん違っておるのであります。去年ずっと金融界物価上昇観測内容を調べてみると、ことし勧業銀行が出した六・五%というようなことをいった金融界は、実は私の調査にはないのであります。去年はなかったものが、ことしになって最高六・五%あるいは五・五%、こういう幅の中で各銀行物価上昇を推定をいたしております。これはおそらく長官も御承知だろうと思います。私がいまお尋ねをいたしたことに対し、値上がり原因の中に公共料金の問題については一言お触れになっておらぬ。私どもは、少なくともいまの現実便乗値上げ等がどんどん出てきておるという背景、これは公共料金、特に消費者米価値上がり——あとで申し上げるビール等もそうでありますが、公共料金値上げ、特に消費者米価値上がりパンやうどんやその他のめん類にまで波及をし、続いてほかの物価にも大きな影響を与えている、こういう点については一言お触れになっておらないわけでありますが、一体公共料金をどういうふうに長官はお考えになっておるか、その点が一つであります。  対策について、指定産地制度であるとかあるいは輸入対策であるとかというようなことをおっしゃっておるわけでありますが、これはごく微々たるものであって、根本的な対策にもならぬと私は思うのであります。政府としては物価安定推進会議からたびたび提言、勧告を受けておられる、あるいは各省の物価担当官会議というものをしばしばおやりになっておる、あるいは当委員会が提出をいたしまして国会で成立した基本法に基づいて、消費者保護会議というものも総理大臣を長としてつくられておる。ところが、去る十七日の閣議でこの便乗値上げを一体どうしようかというお話が出たそうであります。これは大々的に報道されて、官房長官談話として記者会見で発表されておる。もうどうにもならぬ、お手あげだ、打つ手はない、こういうことが官房長官談話として発表されております。たまたまその内容を見ると、どうにもならぬから、統制外物価については需給関係の調節を通じて間接的に値上がりを押えるしかないだろう、あるいはまた行政指導によって対処するか、そういうふうなことしかないのだ、こういう程度のことしか発表されておらない。閣議でどうにもこうにもきめ手がないのだということでは、これは国民として非常に政府に対する不信は強まるだろうと思います。その点について再度ひとつ長官のお考えを承りたいのであります。  さらに宮澤長官は、婦人との座談会で、米やみそパンあるいはジャガイモや肉といったようなものだけは値段が動かないものだというふうに国民が思い込めるような世の中にならなければ政治がうまくいっているとはいえないということを言っておられる。全くそのとおりだと思う。ところが、お述べになったその品物は、全部たいへんな値上がりなんです。こういうものが安定しなければ政治はうまくいっておらぬ、全くそのとおり政治はうまくいっておらない。私がいま申し上げた米だって、みそだって、パンだって、ジャガイモだって、肉だって、全部値上がりをしておる。そうすれば、いまの佐藤内閣物価政策というものは政治の場で全くこれは失敗をしておる。あなたの御見解の裏を返せばそのようになるわけですが、対策についてさらにお伺いしたい。  もう一点は、この機会公共料金値上げを一斉にやめる、そういう昭和三十九年におやりになったような——たった一年間でしたが、そういうことをおやりになった。このときには確かに物価が前年比半分に下がっております、たった一年のうちに半分に下がった。一年間何もしなかったら、またもとどおり数字になったでしょう。ですから、公共料金値上がりということが物価指数に与える影響が非常に大きいということは、三十九年の例が端的にこれを示しておるわけであります。一体、公共料金については政府はどうお考えなのか、この機会にひとつお伺いしたい。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 公共料金のことに触れていないではないかと言われますが、そのとおりでございます。それはなぜかと申しますと、問題の地元が違うというふうに考えたわけです。つまり物価がなぜ上がるのかというときに、公共料金が上がるからと申し上げたのでは、それは物価が上がるから物価が上がるというお答えになってしまうので、公共料金が上がるのはなぜかということをお答えしなければ本来ならないわけだと思うのでございます。  そこで、公共料金が上がってきた原因というのは、やはり先ほど申し上げましたような原因に分解されるのではないか。たとえば米価が上がったのはなぜかといえば、いろいろ理由はありますが、一番大きな理由労働報酬部分であります。これはもう御承知のとおりでございます。これが三分の二でございますから、したがってそういう労働賃金の水準が春につくられれば、それが生産者米価の計算の中へ入ってくる。三分の二という大きなウェートで入ってくるのでございますから、結局、公共料金の上がるのはなぜかという分析を申し上げなければいけないのであろう、こう考えたわけであります。たとえばことし国鉄の定期券割り引き率を下げたわけでございますが、これなどは一番典型的な公共料金引き上げでございました。しかし、それによる増収は全部三公社五現業の解決のときに原資として使ってなお足りなかったというようなことは、最近の顕著な例でございます。したがって、原因としては、先ほど申し上げたようなことに分解されるのではないか。  さて、その次に、政府公共料金を動かすことがいろいろ連鎖反応を誘うということは、もうそのとおりであって、決してそれを否定いたしませんが、最近あれもこれも、あれもこれもと、こう幾つか罪状を列挙されるようなやり方が報道機関でもしきりになされておりまして、これはそれを読むほうからいいますと、みな同じウエートを持っておるような印象をもってお読みになる方が多いわけですが、実際は、たとえば米と塩とか、米とみそとかということになりますと、たいへんにウエートが違うわけでございますから、そこでたくさん罪状を列挙されると、いかにもこれは死刑ではないかというような感じを読まれる方はされるでしょうが、実際はもう少し合理的に考えてみますと、数でもって——これは私そういうことがいいと言っておるのじゃございませんけれども、やはりウエート一つずつ考えていけば、そんなに敗北主義になることはない。世の中が非常に心配しておってくださいますので、私は心配要りませんなんということを申しておるのじゃございません。むしろ心配してくれることを消費者の観点からもいいことだと思っておるのでございますけれども、数がそろったので、これはもうどうにもならぬじゃないかというような見方は、私はしておらないわけでございます。お手上げということもございませんので、やはりこれはそのおのおのについて理由のあるものもありましょうが、あまり理由のないものもある。行政の面でも、また消費者側の防衛という面からも、私は、言われておるものがみなああいうふうに上がっていくというようなことは、全部が全部そうではないだろうと考えております。
  7. 武部文

    武部委員 長官はかねがね物価指数について、当委員会でもそうでありますし、いろいろなところで、物価が五・五%上がったならばその政策失敗だということを言っておられる。その根拠は、言うまでもなく銀行郵便貯金定期預金の利子であります。これもその根拠であることはよくわかっております。前回の当委員会でも同僚議員から、長官が四・八という数字に非常に固執をされる、そのことについていろいろ意見が出たわけであります。しかし四・八という数字はあくまでも努力目標としてこれを捨てない、こういうことをおっしゃっておる。先ほど申し上げるように、金融界の具体的な資料によれば五・五から六・五という数字が出ておる。さらに、これはごく最近のものでありますが、東京都が「くらしむき物価)に関する世論調査」というものをまとめております。これは最近のもので、詳細な資料であります。これを見ますと、東京都民の中で、物価がどのくらい上がったかという点について回答がでておりますが、その回答を見ますと、五九%、六割までは物価が二〇%以上上がったという回答を出しておるのであります。そういう数字がこの中に出ております。これは生活実感の中から出た数字だと私は思うのであります。非常に詳しい数字であります。三〇%以上上がったというのも、もちろんその中に入っておりますが、相当な数になっております。これはごく最近の東京都の調査であります。近ごろの新聞投書欄等を見ましても、物価数字ということについて、非常に生活実感からかけ離れた数字だ、こういう記事が載っております。また長官がしばしばお出になる座談会でも、この数字が常に問題になっておるのであります。三百六十四の品目とり方等についても、いままで何回かここでやりとりいたしました。しかし、総理府統計局の一応の基準が定まっておる以上、あの基準をいまここで変えるとかどうとかということはできないと思います。しかし、それはそれとして、実際問題として、家庭主婦生活の中から実感として、物価値上がりにこうこうこういう意見を持っておる、こういうことを政治に期待をしておる、これは無視できないと思うのであります。総理府統計局が三百六十四品目を毎月、十二日を中にはさんで連絡をとって出すというその数字が出ておる、これも一つ数字であると思います。しかし、私ども統計調査員ではないわけですから、少なくとも、現実家庭生活国民生活を通して、一体いまの物価政策がどうあるべきか、物価についてどういう政策をとるべきかということを論議をし、決定をするのが私どもの任務であると思うのです。そういう意味からいうと、四・八に固執をされておることについては納得できないと思います。むしろこの際、四・八というようなことに固執されないで、現実の姿を直視して、そうしてその中から、いまの日本の自民党としてはこうこうこういう政策をするんだ、こういう対策をするんだ、こうしたことをおやりになるほうが国民政治不信をやわらげることになりはしないか、私はそう思うのです。むしろ率直にいまの国民生活現状物価値上がり数字を把握をして、その上に立って物価政策というものをおやりにならなければ、四・八だ、四・八だというようなことを言っておって、いつまでたってもこの数字固執されるとするならば、国民政治に対する不信というものはますます高まるだろう、私はこう思うのであります。これについて、長官どういうふうにお考えでしょうか。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その生活実感というものが実際何であるかということには、やはりいろいろ問題があるように思うのでございます。一番おちいりやすいといいますか、起こりやすい錯覚は、家庭主婦にとって毎日買う物あるいは非常にしばしば買う物の値上がりを強く感じる、これは私はやむを得ないことだと思いますけれども、そういう傾向がございます。ですから、先ほど申し上げましたように、現在の物価高の中の相当の部分生鮮食料品であるということ、これはたまたま主婦が一番しばしば買う物でございます。たとえばほかの品物くつ下ならくつ下をとりますと、こんなものを三日に一ぺん買う人はおりませんが、生鮮食料品は非常にしばしば買いますので、この値上がりというものを、これは確かに値上がりいたしておりますから、ウエートをはずれて強く感じる、それは私はきわめてありそうなことだと思うので、決して偽って感じを述べているのではなくて、非常に起こりそうなことだと思うのでございます。しかし、それをやはりウェートで分けて考えるとすれば、統計局のやっておられることが一番正確である。おまけに、これは昭和四十年に内容を入れかえておるのでございますから、そんなに昔のものとも申せない。私はやはりこの点は、統計局の発表を一番正確なものとして、客観的なものとして考えていくしかほかにないのではないだろうかと考えております。  四・八については、先ほど申し上げましたように、これは何もそう悲観をした、敗北主義になるほどのことではないと思っておりますので、昨年も四・五%ということを申し上げておる段階で、そんなことは実現性がない、これは武部委員がおっしゃったのではございませんけれども、そういう御批判もかなりありまして、結果としては四・二というようなところへ落ちついたのでございますが、そんなに、いまできそうもないことを私は申し上げておるのではないと思います。他方で、これを別のものに置きかえたところで、どうも私は、いいことよりは悪い影響のほうがあるのではないかという気もいたしますが、いまとしては、この四・八というものを取り下げるということを考えておらないわけでございます。
  9. 武部文

    武部委員 この論議は、結果が明らかにするわけですから——見解の相違もごさいましょう。しかし私どもは、いまの国民生活の実態の上から見て、四・八などという数字が全く家庭生活からは遊離をした数字だ。これは国民生活実感の中から出た声ですから、おそらく政府自身が全国の統計をおとりになってもそういう声が出るだろう。そういう声を物価政策の面に反映をする、そういうことでなければならぬ。いまの総理府統計局の統計のとり方をいまここでどうとかこうとか私は申しません。しかしそういうことではなしに、国民の声というものはそういう実感があるのだということを、ぜひひとつ長官自身がお考えいただいて物価政策に取り組んでもらわなければならぬ、私はこういうことを言いたいのであります。  先を急ぎますが、便乗値上げということがたびたび出ておりますけれどもあとでまた具体的に申し上げますが、たとえば先般の当委員会で硬質小麦の一・二%の値上がりの際に——農林省が来ておられると思うのですが、食糧庁は、一・二%硬質小麦が値上がりをすればパン値上がりになるではないか、こういうことを申し上げたところが、いやたいしたことはない、一斤四十円のパンに直せば十二銭だ、こういう答弁がありました。ところがどうですか、今度のパン値上がりは、三百七十グラムという一斤を三百九十グラムにして、五円値上げをしておる。一体、三百七十グラムというのを三百九十グラムにして二十グラム入ったという証拠は、買う者にはわからぬのです。また新しい製品を販売するという、古い製品を売らなかったら新しい製品しかないわけですから、両者選択するとしても一つしかない。そういうふうにして、たったの十二銭しか小麦の値上がりがはね返らないといっても、現実にはそれが五円の値上がりになってあらわれてきておる。第一屋製パンなどは二割の配当をしておる。今度は山崎パンもやりますが、こういうふうに皆さんのほうで、わずか十二銭程度ということをおっしゃっても、これは便乗値上げになるのだ。私は、そういう気配があったからこそ、あの際にそういう質問をいたしたのであります。これが一つの例であります。  それからこれも一つの例としてお聞きいただかなければなりませんが、長官は総合予算主義ということを私どもにたびたびお述べになりました。この間の座談会でも、総合予算主義というものは、これは全くりっぱであって、生産者米価が上がれば消費者米価が上がるのだ、こういう方針ですね。受益者負担だというようなこともお述べになりました。私は、北朝鮮に行ったことがございましたが、そのときに北朝鮮の二重価格制度というものを見てまいりました。ところがごく最近、北朝鮮からお帰りになった人の報告によれば、北朝鮮では、農民から一キロ四十銭、日本の金に直して五十六円で生産者から買う。その米を消費者には一キロ八銭、日本円に直して十一円で——五十六円で農民から買った米を十一円で消費者に売っておる。これは全く典型的な二重価格制度だと思うのです。これを現実に北朝鮮はやっておる。私が行ってきたときには、もうちょっと幅が広がっておりました。それは価格の変動等があって縮まったと思いますが、やはり五年前もいまでも相変わらずそういう制度をやっておる。これは北朝鮮の例です。こういうように、現実に金額には多少の違いがあったにしてもやっておるのです、北朝鮮では。人口の例からいって、必ずしもこれと同じことができるとは思いません。しかし今日まで食管制度というものは、その本質をずっとこうしてきておる。そういうものを総合予算主義という名において今回のような措置をとられる。そのことが消費者米価の八%値上がりになり、便乗を誘発しております。私は、これを言いたかったわけであります。だから、そういう点について、小麦粉の問題にしても、あるいは総合予算主義に基づく消費者米価値上げにしても、非常に意見があります。そういう点は、ぜひ参考としてお聞きをいただきたいのであります。  そこで、きょうは国税庁にきていただいたわけでありますが、当委員会で私は何回か酒とビールのことについて長官意見を聞きました。全くりっぱな意見でございまして、感心しておりました。感心はしておりましたが、現実は上がってしまったのであります。最後には総理大臣までおいでになったけれども、ツルの一声はツルの一声にはならなかった、蚊の声ぐらいで済んでしまった。結果的には、あの総理の一言が出たのは、四つのうちの二社が上がってしまってから声を出されたわけですね。そうすると、公取もきておいでになりますが、一体これに談合のあれがあるかということを前から問題にしておったわけです。ところが二社が上がって総理が口を出して旬日を出ずして上がった。それで談合の証拠がないということに実はなってしまったと私は思うのです。むしろそういう言いくさを政府自身が——これは言い方が悪いのですけれども、四社の寡占の協定、秘密談合、そうしたことを、政府の口に乗って、やっておりませんという一つの証拠になったような気がしてならぬのです。  これは余分なことですからやめておきますが、一体長官は今度のビール値上げについて、あれだけ当委員会で大みえを切られたわけですから、これについていろいろ意見があるだろうと思うのです。ちょっとお聞かせいただきたい。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大みえを切ったことはないと思いますが、感じていることを申したことはございます。私はやはりこれは自由経済であるからああいうことが起こったというのではなくて、十分に自由でなかったからああいうことが起こったのではないか。申してみれば、何もビールの四つの銘柄の価格が同じ価格であるということは、本来どっちかといえば普通のことではないように思うのでございます。会社によっては、自分のところはシェアも大きいしよく売れるから、もっと高く売りたいというものもあるかもしれませんし、また会社によっては、少し売り上げを上げるために一ぱい一ぱい下げて、苦しいけれども競争をやろうかというところもあるかもしれない。普通の業界というものは私はそうだと思うのでございますが、今日までそれが全く同一価格でそろっておるということは、よその業界とは様子が異っておる。しかも、これが非常に国民経済に基礎的に必要な基礎資材であるとかいうようなことかといえば、別にそうではないわけでございますが、やはりこれは長年の行政というのがあって、それが十分に時代の要請に即応していないというところがあったのではないか、こういう感じを持っておるわけでございます。
  11. 武部文

    武部委員 結果として上がっておるわけですから、そのことについてはもう触れません。問題はこれからのことであります。私の質問したいのは、これからのことであります。  ビール値上がりが決定された直後、宮澤長官は、自由競争の原理の問題に触れて、免許制について触れておられるわけであります。これは九月十二日であります。この免許制について触れられた中で、これは記者会見で、国税庁もその後酒類行政の自由化について本気で考えておると、十二日、その日ですね、亀徳国税庁長官からその旨私に連絡があったという新聞記者への発表がされておりますが、それに間違いございませんか。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは間違いございません。私は一貫して酒類行政を自由化の方向に向かって考えてもらうという表現を使っておるのでございます。国税庁もそういう基本的な考え方はやはり最近持っておるように思うのでございますが、私の立場も実はなかなかむずかしいのでございまして、やはりものをきめつけてしまいますと、なかなか相手方の協力が得られない。そこにはいろいろなテクニックが必要でございますので、まあ国税庁にもできるだけ協力してもらって、そういうふうに前向きに考えてもらいたい。国税庁も原則としてはそういうことに異存はない、ここらあたりのところでございます。
  13. 武部文

    武部委員 非常に遠回しな御回答なので、ちょっと私は不満でありますから、これから申し上げます。  その前に国税庁からちょっとお聞きいたしますが、三十四年の卸売り業者の数、四十三年の卸売り業者の数、同じように三十四年と四十三年の小売りの軒数、中間は要りませんから、この十年間の数字です。
  14. 佐藤健司

    佐藤説明員 酒類の販売業の推移でございますが、三十四年の卸売りの免許場数というのは、全部合わせますと六千二百六十三という場数になります。これが四十三年にはどうなっているかといいますと、五千九百四十三という数字になります。それから小売りの免許場数でございますが、三十四年当時は九万九千六百二十七、これが一般的な酒全体についての販売免許を持っておるものでありまして、そのほかに、洋酒でありますとか、特殊な観光地等におきまして、臨時に免許場を持っておるものもありまして、そういう場数を全部合わせますと、三十四年では十二万二千四百十九になります。それから四十三年の数字でありますが、いわゆる全酒類、三十四年当時の九万九千六百二十七に対応しますものが十一万二千六百八十三、それから十二万二千四百十九に対応いたしますのが十三万八千百六十八ということになります。
  15. 武部文

    武部委員 卸売り業者を六千幾らとか言われましたが、私どもの聞いておるのでは千台ですが、間違いありませんか。三十四年では卸売り業者が千六十三、四十三年三月千六十五、これと違いますか。
  16. 佐藤健司

    佐藤説明員 ただいま申し上げましたのは免許の場数でございまして、これをまた各会社で二場持っておりますものとか、いろいろなふうに見てまいりますと、卸につきましては、全酒類卸とそれからビール卸というものがございます。合わせまして約二千でございます。
  17. 武部文

    武部委員 ビールの蔵出し量はわかりますか。——私のほうから言いますから間違っておったら訂正してください。三十三年にビールの蔵出し量は六十三万キロリットル、四十二年に二百四十六万キロリットル、約四倍になっておる。大体そのように推定できますか。
  18. 佐藤健司

    佐藤説明員 三十三年度におきましては六十三万キロリットル、それが四十二年で見ますと二百四十六万二千キロリットルでございます。
  19. 武部文

    武部委員 合っているようであります。そこで再度お伺いをいたしておきますが、これは新聞に出たことですから、そういうことを言った覚えがないというなら覚えがないでけっこうですし、そういうことを言ったということならばそれでけっこうです。これはあとで申し上げることに関係をいたします。九月十日の新聞記事でありますが、国税庁は全国国税局の酒税課長会議を十二日に開きましたか。
  20. 佐藤健司

    佐藤説明員 十二日に酒税課長会議を開いております。
  21. 武部文

    武部委員 そこで、それまで既存の酒販売の業者に対して、新しく免許交付をすることについてはストップをしておったが、その中でスーパーマーケット、大量販売店へ積極的に免許を与えることに踏み切った、そういう点が注目される。「国税庁はさらに卸と小売りの共通適用など販売免許の改善も考え、免許の上にあぐらをかいていた業者に大きく反省を促すという。」こういう記事が載っておりますが、そういうことをこの国税局の酒税課長会議の席でお述べになりましたか。
  22. 佐藤健司

    佐藤説明員 この会議におきまして、私どもいろいろ検討をいたしましたものとしましては、やはり最近の免許制度の運用の問題でございまして、この運用につきまして、最近、たとえば都市ごとに団地ができますとか、あるいはむしろ都市の中央部よりも郊外地にやはり住宅がだんだんできていくとかいうようなことが全国的にいろいろ起こっておる状態でございますので、そういう住宅、人口の移動あるいは経済の情勢の変化に応じて、はたして免許が適応して行なわれておるかどうか。そういう点について、いろいろ資料等不十分でありますけれども、全国的にもう一回よく検討してみようという会議でございます。
  23. 武部文

    武部委員 少し内容が違っておるようでありますが、これは参考にお聞きをいたしたわけであります。  そこで、免許制度根拠は酒税法第九条にあると思います。それでよろしゅうございますね。——そこで、お伺いをいたしたいのは、国税庁長官通達昭和四十年八月四日、この通達、これに基づいて新規の販売業者の申請というものは取り扱っておられる、このように理解してよろしいですか。
  24. 佐藤健司

    佐藤説明員 免許制度の運用につきましては、基準となりますものを、通達を定めて運用いたしております。
  25. 武部文

    武部委員 それならば、この通達の第一の「申請者の人的要件」という中に、「酒関係、調味料関係営業従事実績五年以上」こういう申請者の人的要件が載っておりますが、これはなぜそのような実績が必要なのか。なぜこういうふうに五年以上の調味料とか酒関係とかの営業に従事した実績がなければ申請者の人的要件が整わないのか。これは営業の自由の原則に違反をするというふうに私は考えますが、どうですか。
  26. 佐藤健司

    佐藤説明員 酒税の負担といいますのは相当高いことは御承知のとおりでございますが、こういう酒税を負担しております商品でありますだけに、免許の運用につきましては、人的な要件としてはたして適当なものであるかどうか、あるいは需給関係等においてその地域において適当であるかどうか、これを新規免許をいたします場合には十分に検討した上で免許をすることになっておるわけでありますが、その中に、ただいまお話しのありました五年以上というものでございますが、これは人的要件の中で絶対要件として置いてあるわけではございませんので、ここをお読みいただけばわかるわけでありますが、おおむね五年以上そういうものをやった経験のあるものということは、酒類を扱います業者といたしましてはそういう経験を、まず、五年ということを絶対の要件とはしませんけれども、やはりおおむねそのくらいの経験年数のあるもののほうが適当であろうということでここに規定をいたしておるわけであります。
  27. 武部文

    武部委員 酒やビールを売るのになぜ五年もそういうことに従事した者でなければ免許を与えないか。私はこれは非常にふしぎだと思うんですよ。ビールを買ってきて売るのにまさか酒とビールを調合して売るのじゃないですよ。そういうことになぜこういう条件をつけるのか、私は非常に不可解でならぬのです。あとまだたくさんありますので言いますが、なぜこういうことを言うのか、私はたいへん奇怪に思う。こういうことは営業の自由の原則に違反をしておるのですよ。あくまでも長官の通達は違反です。ですからこういうものは撤回をすべきだと思う。  次に、そのあとのほうにこういうことがありますね。「その他の要件」で「次の各号に該当するものに対しては」、距離とか需給調整上の世帯ですね、そういうものの免許要件に該当していても「当分の間免許しない」。当分の間免許しないというのは「設立の主旨からみて販売先が原則としてその構成員に特定されている法人又は団体である場合」、これは何ですか。「販売先が原則としてその構成員に特定されている法人又は団体である場合」、これはどういうことですか。
  28. 佐藤健司

    佐藤説明員 法人または団体の構成員の大半がその法人または団体の販売地域に居住しておる場合という規定は、主として生活協同組合等の関係におきまして、やはりその利用者の関係におきまして、はたして十分に小売りの機能を発揮できるかどうか、それらの点を検討するために置いてあるのでございます。
  29. 武部文

    武部委員 そうすると当分の間免許しない者に該当する者は生協、農協、労働組合の売店、そういうものですか。
  30. 佐藤健司

    佐藤説明員 その利用者が限定されておる協同組合員でありますとか、そういう、ことにその対象、利用者が限定されておるような場合でありますと、やはりそれらの点から見まして不適当なものであるという点等から、その辺を検討していくということであります。
  31. 武部文

    武部委員 理由は何でしょう。
  32. 佐藤健司

    佐藤説明員 やはりその地区におきます生活協同組合員でなければ利用できないというような状態におきまして、そこで一つの免許場を設けるということはどうかということでございます。
  33. 武部文

    武部委員 それは回答にならぬ回答です。  そこで、それは酒税法の第何条に根拠がありますか。
  34. 佐藤健司

    佐藤説明員 これは「免許の要件」という酒税法第十条の第十一号によっているわけでございます。
  35. 武部文

    武部委員 酒税法第十条第十一号というのに「酒類の需給の均衡を維持する必要があるため」適当でない場合は与えないと規定されているんですね。これが根拠になっておると思うのです。そうすると「需給の均衡を維持する必要がある」ということは、裏を返せば、過当競争では困る、こういうことですね。過当競争では困る。その反面、過小ぎみにしておくほうが酒税を確保する上からいっていいんだ、このように解釈できるわけですが、それでいいですか。
  36. 佐藤健司

    佐藤説明員 これはやはり需給が適切に行われることが必要でありますので、過当であってもいけませんし、やはり過小であってもいけないだろうと思います。
  37. 武部文

    武部委員 そういうのでは納得できぬのです。これは、さっきあなたがお述べになった数字を、十年間のをずっと調べてみますと、ふえておらないのです。十年間に一割もふえてない。これは卸売りはほとんどふえてない。小売りにしたって、十年間に一割もふえてない。あなた方は結局認めないのです。認めないどころか、いま認めておるところの業者が少しでも安く売ると、私は例を申し上げますが、とんでもないことを言うのです。  私は四日ほど前に北海道に行ってまいりました。釧路の税務所長がこういうことを言っている。あなた方は御承知ですか。その税務署管内の二つのスーパーマーケットで洋酒を建て値より下げて売ったのです。安く売ってももうかるわけですから安く売った。ところが、税務署長が難くせをつけて、建て値より安く売っては困る、もとへ返せ、こう言ったわけです。もとに返せない、こう言ったところが、それならば、免許更新の際にわれわれとしては考慮せざるを得ないというおどかしをかけたわけです。免許更新の際に、建て値から引くようなところは考慮せざるを得ない。これは十条スーパーともう一つのスーパーですが、そういう二つのスーパーです。そこで、泣く泣くそのスーパーは建て値へ戻したわけです。建て値へ戻したから値段が上がった。消費者はそれを行政監察局に投書をした。そこで問題になって、北海道で行政監察局とあなた方の出先機関の国税局とやりとりして、とうとう世論が勝って国税局が負けたわけであります。またもとの建て値から割った金額にしてしまった。こういう例があります。  先ほどのあなたのお考えを聞いておると、私がいま言ったようなことがうかがえるわけです。免許もしないが、免許したところが安く売ったら、安くしたところに税務署長が文句をつける。こんなばかげたことがありますか。いまのあなたのおっしゃったような、過当競争でもいけないし、過小競争でもいけない。だからいまのままでいい、こういう理屈は成り立たぬのです。先ほどビールのことを申し上げましたが、ビールの蔵出し量は十年間に四倍になっておるのです。業者の数だって一つもふえてない。あなた方のやり方というものは、酒税の保全上ということがどこまでも先に立っておる。税金さえ取れればいいのだ、消費者なんかどうでもいいのだ、こういう一貫した精神が動いておる。私どもはそう感ぜざるを得ないのです。酒税確保のためには、消費者が物を安く買うことすらあなた方は規制をする。それでたくさんの人が申請をしてもほとんど却下しておる。ここへ全国のスーパー、生協の申請を却下された数字を私持ってきておりますが、ほとんど全部却下です。その理由は、さっきお述べになった国税庁長官通達の、四十年八月四日のこの通達に根拠があるのです。さっき私が読んだ「当分の間免許しない」、これに基づいて各税務署はすべてスーパーマーケットあるいは消費協同組合、労働組合、そうしたところから酒の免許を申請しても全部却下をしておる。ごく一部を除いてほとんど全部が却下されておる、こういう現状であります。  そこで、先ほど宮澤長官は、このビール値上げが行なわれた直後、免許制についてお述べになった。亀徳国税庁長官も大体賛意を表した、こういうことであります。われわれは、この酒類の免許制は廃止になって、自由に申請者がこれを販売できる、こういうふうに理解をしておりますが、国税庁もそういう方針ですか。よろしゅうございますか。
  38. 佐藤健司

    佐藤説明員 御承知のように、酒税はことしの予算におきましても五千五百三十三億という非常に高いものでありまして、収入全体の中におきましてやはり一一%以上を占めておるわけであります。しかも、酒類の価格の中に占める負担率におきましても非常に高いものでございますが、その税収を円滑に確保するということになりますと、やはり免許制度を廃止するというようなことは、現在の状態ではとうていできないというふうに私ども考えております。ただ、需給関係等におきまして、最近の情勢に適応しておらないというような部面がございますとしますと、やはりこれは私どもとして常にそういう点を反省し、検討し、そして適切な運用をすべきものでありますので、それらの点について十分に注意をして運用をしてまいりたいというふうに考えております。
  39. 武部文

    武部委員 いまの通達にからんで、もう一つ質問します。  農協や生協には当分の間免許しない。また免許しない中の(ロ)に「酒場、旅館、料理店等酒類を取扱う接客業者である場合」もだめなんです。「ただし国税局長において免許を与えることがやむを得ないと認めた場合を除く」、こうなっているのですよ。まことに奇怪なことにただし書きがついておる。生協や農協や労働組合ではだめだが、バーや旅館では国税局長に陳情すればよろしい、こういうしり抜けの通達がこれですよ。全く国民をばかにするのもいいところです。一体、宮澤長官、これをどう思いますか。悪代官まる出しです。こういうばかな通達が出ているのですよ。ですから、酒場やバーは税務署に陳情すればいいのですよ。農協や生協は行ったって全部却下です。こういうやり方は一体どうでしょう。経済企画庁長官はどうお考えでございましょうか。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その辺のところがやはりいろいろ問題なのでございまして、私どもが国税庁といろいろ話をしてみようとしておりますのも、ただいまいろいろ御指摘になりましたが、そういうような点に関するものが多いのでございます。この行政のほうの責任者は国税庁でございますから、私ども同じ政府部内におっていろいろ話をしてみて、できるだけより自由な方向に持っていってもらいたい、こう思っております。そういう努力をただいましておるところでございます。どうも国権の最高機関の前で、政府部内のいろいろ意見の食い違いなどをそのまま申し上げることもいかがかと思います。私どもの間でもう少し検討させていただきたいと思っております。
  41. 武部文

    武部委員 それじゃ、この問題は最後にいたしますが、実は私が先ほど十二日のことをしつこくお尋ねいたしたのは、去る十九日、参議院の物価委員会に国税庁長官が出席をしておられるのですよ。つい先日ですね。そのときの答弁が、宮澤さんに回答されたことと全く違ったことを答弁されておる。先ほど間税部長は運用の面ということを言われた。したがって、通達を撤回をするとか、あるいはこの免許制度を変えるとか、こういうことを考えていない、どうもそういう方針のように受け取ったのであります。十九日に参議院の物価委員会で、国税庁長官はこのように答弁しております。いまあなたがおっしゃったとおり、五千五百三十三億円の酒税の重要性を考えるならば、免許制を自由にして業界に混乱を生ずることは好ましくない、免許制をやめる考えはないと答弁しております。こういう答弁を正式に国税庁長官はいたしておるのであります。  私は先ほど通達のことを申し上げました。まだ通達がほかにも出ています。時間の関係上やめますが、こういう通達の中を見ると、いまの国税庁が地方の国税局長や税務署長を通じて、免許制度についてどういうことをしておるか。たった一つ、私は釧路の例を申し上げましたけれども、この釧路の例を聞いても、この免許制にからんで、全く旅館やバーには自由に許可を与えるが、そうでないものには一切許可を与えない。既得権として業者を手厚く保護しておる、こういう姿がありありと見えるのであります。長官がたびたび、ビール業界がこれだけ利益をあげておる、それなのにさらに三円の利益をあげることはおかしいということをおっしゃった。私は時間がないので言われませんが、ビール業界の実績というものはたいへんなものですよ。一本あたりの単価でたいへんな資料が出ておりまして、これを読んでみました。ビール一本分の換算で全部出ておりました。これはおそらくいいかげんなものじゃないと思うのです。数年間のビール一本あたりの四社の値段がずっと出ております。利益の配当から利益率から小売りのマージンから全部書いてある。これを読んでみても、ビール会社がどれだけもうかっているかということは一目瞭然であります。こういうわけで、酒は上げるわ、免許制は国税庁がちゃんとそれを握っておるわというようなことでは、消費者というものは踏んだりけったりだと思うのです。たまたま大阪で一円二十銭、主婦連が値引きをさせたということは聞きました。それでもなお圧力がかかって、あれは一円二十銭引いたんじゃない、何かおまけをつけるとかなんとかという話が出ておるようにまた回答が変わっております。一たん約束をしても、そのあとから圧力がかかるからまた答弁が変わってくる、こういう事例が大阪のあの一円二十銭の値下がりのときにも出ております。そこでぜひひとつ、私はこんどは国税庁のほうに検討を願いたいと思います。この国税庁長官通達、これを撤回すべきだ。そして経済企画庁長官がおっしゃっているように、免許制についてはこれは抜本的に改正する、こういう必要があると思うのです。あなたは間税部長ですから、ここで自分自身の見解を述べられることは困難だと思うのですが、ぜひひとつ政府としては見解を統一して、これは相当関心を持っておることですから、ぜひひとつ結論をお出しいただいて、当委員会で見解を述べていただきたい、このように思います。  この問題は終わりまして、最後に一つだけお伺いをして終わりますが、これも十七日に佐藤さんが豚のことを初めて言われました。豚の値段が下がらない、これは畜産振興事業団にお役所仕事的なことがあってそうなっておるのではないか、こういうことで検討しろというようなことが報道されております。当委員会で先般の赤字の問題及び豚肉の在庫がゼロだというようなことから緊急輸入等の点について質問をいたしました。まずお聞きいたしたいのは、この事業団が今日どのような役割りを果しておるというふうに政府としては思っておるのか。農林省の指導というものが、ただ単に事業団にまかせきりで、生産の確保の問題とか長期の需給の調節とか、そういうことについて全然指導していない、そのことが今日豚の値段がキロ五百円をこえるとか、先般五百十七円まで上がっておりますね。最高ですよ。豚の白の上で五百十七円というのは最高です。いま若干下がっておりますね。おそらく四百九十円くらいをこしていると思いますが、その値段を言っていただくということ、それから農林省としてはこの豚の価格の問題についてどうお考えになっているか、これをひとつ最後にお伺いしたいと思います。
  42. 立川基

    ○立川説明員 ただいま御指摘のように、豚肉につきましては一昨年から昨年までは生産が非常に過剰でございまして、御案内のように約八十九万トンに近いものを買い入れておったわけであります。その後生産が若干減じてまいりまして、需要が増大してまいりました関係上、昨年の夏以降におきましては、政府が事業団において保管しておりました豚肉を放出いたしまして、年末からことしの春まで大むね順調な価格できたことは御案内のとおりだと思います。最近におきまして依然として生産の回復が若干ゆるく、需要が増大いたしました関係上、先ほど先生が御指摘になりましたような、一時は五百円をこえるというような数字になってきたわけでございます。この間におきまして、政府は持っております在庫につきましては逐次市場に放出いたしまして、なるべく価格を下げるべく努力をしてきたわけでございますけれども、本年の夏に至りまして在庫がほとんどなくなりましたので、先般お話ししたかと思いますけれども、四千トンを海外から緊急輸入をするということをきめた次第でございます。  それから御指摘のように、そういうふうに現在の事業団は、われわれが考えております長期的な意味での、御案内のように豚につきましては三カ年ないし四カ年でのいわゆる飼育サイクルというものがありまして、この生産関係はなかなかむずかしいわけでございますが、これも御案内のように、買い上げて買いささえることによって、要するに山と谷との幅をなるべく縮めていく、そういうふうに努力してきておることは事実でございますけれども、必ずしも十二分にいっていない点はあると思います。以上でございます。
  43. 武部文

    武部委員 四千トン緊急輸入するといったって、四千トン着いていないでしょう。幾ら入っておるのですか。
  44. 立川基

    ○立川説明員 大体約八五%程度でございまして、契約済みのものが三千四百七十二トンというわけでございます。通関済みが七百二十一トンでありまして、契約済みのものは大体今月から来月の初めには来るはずでございます。
  45. 武部文

    武部委員 それで今後六千トンの輸入をはかるというわけですが、いままでの経過から見ると七百トンしか通関していない。それで今月末から来月と言っておるのですけれども、実際入ったトン数は非常に少ないんですよ。あなた方四千トン契約したって、九月一日現在で七百トンしか入っていないでしょう。今度六千トン契約したって、いつ入ってくるかわからないですよ。それから今度入ってくる豚だって冷凍でしょう。冷凍はまずいし値段はあまり違わないんです。そういう点が問題なんですよ。ですから私は前回もいうように、振興事業団という事業団ですね、このあり方に問題がありやしないか。これは佐藤さんでさえ言っておるのですからね。問題はここなんですよ。佐藤さんもとうとう豚に目をつけた。あなた方、ゼロなんですよ、在庫は。三百十九円の上肉が四百円、五百円になっておるんですよ。こういう状態でこのままほっておいたらたいへんなことなんですよ。きょうは時間がないので申し上げませんが、例の輸入の問題にしたって、中国の牛の問題にしたって結論は出ておりませんね。きょうは時間がありませんので残念ですが、この次にもう一回豚と中国産の輸入問題でひとつ農林省の見解を承ることにして、たいへん時間が経過いたしましたので同僚議員に譲りますので、終りたいと思います。
  46. 八百板正

    八百板委員長 戸叶里子君。
  47. 戸叶里子

    戸叶委員 企画庁長官に一、二点だけお伺いしたいと思います。  ただいまの武部委員企画庁長官との質疑応答を伺っておりまして、この前の委員会でもそうでございましたけれども長官消費者物価値上がりを四・八%程度に押えていくというその御努力、そしてまた、そういうふうに一生懸命しようとしていてくださることはたいへんありがたいことですし、もっとそんなに上がらないようにしていただきたいというのが真実の私たちの声でございます。しかし現実の問題として、私はどうもそういう数字には納得できないのですが、それは別にいたしまして、ちょっとふしぎに思いますのは、昨年たしか経済企画庁が発表されましたことは、米価が一〇%上がると消費者物価は〇・五%程度は上がっていくんだということをはっきりと発表をされております。そういうふうな観点からいきますと、米価が今度上がったのですからそれに関連して、それに伴ってある程度消費者物価が上がっていくんじゃないか、昨年そうおっしゃってことしは全然上がらないで済むということがどういう根拠からあり得るのか、私はふしぎに思うものですから、ちょっとお伺いいたしたいと思います。
  48. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は、私の御説明の申し上げようが少し簡単過ぎたのかもしれません。私の申し上げておることは、今年度の消費者物価上昇を四・八%と申し上げておりますのは、昨年度との対比において四・八%上昇だと申し上げておるわけであります。そこで、今年消費者米価が八%上がりましたら、それが今年度に影響を与えることはもちろん確かなことでございますが、昨年度との対比におきましては、たまたま昨年が十月という時期に一四・四%消費者米価を上げておりますから、今年度内としては上がることは確かであっても、昨年度との対比においては昨年度の上がり分が多うございますので、いわばこの両方の二つの線の開きが幾らかそこへいくと縮まっていいはずだ、こういう意味でございます。
  49. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、昨年度はぐっと上がった、しかし今年度は少ししか上がらない、去年の上がり分から比べれば少ししか上がらないのだ。それで去年おっしゃったのは、一〇%米価が上がれば、その前の年と比べれば〇・五%程度上がるというふうな答弁をこの前にしているわけなんです。それで私は今度の四・八%という数字が少しおかしいのじゃないかというふうに感じたわけなんです。
  50. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、私どもの申し上げておりますことは、配給の米をとりますとそのウエートが大体四九〇幾つ、ほぼ五〇〇でございますから、そこで一割消費者米価が上がりましたら〇・五上がる。それはその年度内ででございます。もっと申しますと、それが十月からではその半分ということになるわけでございますが、それは今年度でもやはり同じでございまして、たとえば今年度八%消費者米価が上がれば、配給だけで申しますと、八%のウエートが五〇〇でございますから〇・四ということで、それが十月からでありますから、年度に対する影響はその半分、〇・二ということで、つまり今年度内でそれだけ坂が上へ上がっていくということ自身には間違いがない。それは昨年の場合も同じでございます。ただ前年対比物価指数で申せば、先ほど戸叶委員がまさに申されましたとおり、前年の山が非常に高くて、今年も上がるけれども山よりも少し丘ぐらいだから、両方の間が縮まるという意味でございまして、まさにそのようなことを申し上げております。
  51. 戸叶里子

    戸叶委員 それで四・八%という数字を離れて私ちょっとお伺いしたいと思いますのは、先ほどの御議論を伺っておりますと、たとえば東京都の数字を先ほど武部委員が御引用になりましたけれども、五九%が物価が二〇%以上上がったという数字が出た。そういうことに対して宮澤長官はお認めになったわけです。それに対しておっしゃったことは、家庭主婦が直接に感じるもの、たとえば毎日買う生鮮食料品なり何なりが上がれば非常に上がったという感じがするから、だからこの数字は間違いでないでしょうというような答弁をされたわけです。私はそれを伺っておりまして、何か家庭主婦生鮮食料品を中心にして物価値上がりということを考えていることが、長官からいえば、そういうものを中心に置くから、だから物価値上がりが響くのだというふうなお気持ちのようにとれたわけです。それではたいへんなことであって、家庭主婦が毎日毎日買うものがどんどん上がっていく、生鮮食料品がどんどん上がっていくということは、すなわち生活が苦しくなるということで、たまにしか買わないものが上がってもそれほどわからないですけれども、毎日必要なもので買わなければならないものが上がっていくと、ぴんぴんと台所に響いてくるわけです。ですから、消費者物価というものの中に生鮮食料品というものが相当のウエートを占めているというふうに私は考えていましたけれども、何かしら長官の答弁を伺っておりますと、そういうふうなウエートがあまりないように伺えたのですけれども、この辺のことをもう一度詳しく教えていただきたいと思います。
  52. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど武部委員に申し上げましたのは、統計と実感との乖離の問題について、主婦がそう実感されるということは私はいつわりではないと思いますけれども、より厳密に統計の立場からいえば、しばしば買うものが即ウエートが高いということではございませんから、マーケットバスケット全体で申せば統計局の統計のほうがやはり正確だと思いますと、こう申し上げたのであります。  それでウェートでございますけれども、生鮮魚介のウェートが三〇〇でございます。一〇〇〇〇のうちで三〇〇でございます。野菜のウェートが三一五でございます。大体そんなウェートでございます。
  53. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは一番ウエートを置いておるのは何ですか。
  54. 八塚陽介

    ○八塚説明員 ウェートでございますから、一番高い順、いろいろございますが、主食が九四二、そのうちのいわゆる配給が先ほど長官が申し上げました四九八、約五〇〇でございます。そういたしまして、食糧全体が大体四割二分五厘ということで四二四〇、さっきは生鮮魚介あるいは野菜についてのあれでございますが、肉類が三六〇、乳卵が三四〇等々でございます。それから別のものといたしまして、比較的大きいのは菓子、くだものが五三〇、それから家具什器、これが五七一等々でございます。これはいろいろな品目がたくさんございます。そういうものを含めまして住居が約一〇〇〇、それから被服が大体一二八〇、一割三分でございます。それ以外に非常にたくさんございますけれども、いわゆる比較的問題になるのは雑費でございますが、これが二九〇〇、約三〇〇 ○近いものでございます。教育費がやはり主食より少し多くて五二五、教養娯楽費が九七〇というようなことになっております。
  55. 戸叶里子

    戸叶委員 いま急の数字で私もいろいろ検討するあれがないのですけれどもあとでその数字を速記を見まして検討した上でまたほかの質問に入りたいと思いますが、ただ長官物価が非常に上がってきている。ことにいろいろなものは、先ほど武部委員が御指摘になりましたように、大衆にとってほとんど必要なあるいは必要に準ずるもの、そういうものが非常に上がってきているということが私は問題だと思うのです。私も実は野菜の問題で、少し去年のいまごろとことしのいまごろと一体どのくらいの差があるかということを家計簿で調べてみました。そうしましたら、御参考までに申し上げますけれども、ほんの少しずつ上がって、価格の上がらないものというのはジャガイモとタマネギだけは全く同じ価格を示しております。しかしナスとかキュウリといったものは、こまかいですけれども、去年が五個四十円くらいでことしは五個五十円、一個二円くらい上がっております。それからキュウリでもことしは一本百円で去年が一本五十円というふうに差がついております。それからニンジンが安いところで買っても一本二十円するというので、大体五円上がっているとか、白菜も上がっているとか、大体さっき申し上げましたようにタマネギとジャガイモだけが同じくらいというような結果を出しておるわけです。レタスなんか三倍以上にもなっておるというような結果を出しておるわけで、私はずっと毎日使う食料というものの統計を去年、ことし、おととしというふうに比べてみますと、とてもおもしろいなあということを発見したわけです。というのは、やはりものが上がるのだ、ものが上がるのだという心理的な影響もあって、そして八百屋さんなんかが売る場合に一円くらいのことはちょちょっと高くしちゃうわけです。そういうことを考えますと、やはり政府がもっとしかとした物価政策をつくっていただかないと困ると思うのです。たとえばビール値上げの問題も、長官がこれは上げるべきではないとおっしゃって、たいへん私どもは力強く思っておりましたら上がってしまったわけです。ところが同じいまの自民党の議員さんの中でも、選挙のときに、ビールは三分の一しか本物でなくて、あとはあわだけですよ、こんな高いものを飲まされてたまりますか、ということを、私どもと一緒に演説していらっしゃるわけです。それがまた上がったのです。みんながそう言っていてなおかつ上げられてしまうということに、私は疑問を感じるわけです。疑問を感じるというか、私たちが何とかしなければいけないと思ってもできない。政府でどうしてそういうことができないのだろうということで、ほんとに悲しみを覚えるわけなんです。ですからもう少し大衆の必要なもの、必要に準ずるもの、そういうものが安定するように、もう一ふんばり長官に骨折っていただきたいということを重ねて要望いたしまして、御意見を伺っておきたいと思います。
  56. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 冒頭に武部委員から物価上昇原因は何か、その対策についてどう考えるかというお尋ねがございました。それで申し上げたことに、抽象的に申せば私は尽きると思いますが、大量生産の可能でないもの、ただいまおあげになりました野菜類などが概してそうだと思いますが、これはやはり人件費であるとか地価であるとか、あるいは流通距離が長くなるとか、そういったようなことはすべてそれらのものがある程度上がる内在的な理由を持っておるということになるのではないだろうか。ことに農業でございますと、米価というものが逐年上がってきたということは、やはりその他の農産物の価格に無関係ではないというふうに考えるわけでございます。私は、わが国の社会構造がこれだけ、経済構造もある程度急激に変化してまいりますと、それらのわが国の農業の持っておる性格からいいまして、大量生産が可能でないそれらのものの価格が逐年ある程度上がっていくことは、これは避けられないのではないだろうかと思っております。問題は、それが非常に急激であってはいけないということと、何かやはり産地に対して政府がいろいろな形での助成をすることによって、基調はそうであっても、幾らか上昇の基調をゆるめるような生産性向上の方法はないか。これはやるべきことだと思うのであります。それから大量生産の可能なものについて、しかも大量生産現実にしておるものについて、コストがなお非常に上昇するということでありますと、これはどこかその他の仕組みに問題があるのではないだろうか。ビールの話がございましたけれども、もしこれが小売りなり卸なりの段階でコストが上がっていくからというのなら、私は幾らかがまんができるという感じでございますけれども、三円のうちの何がしかをメーカー自身が取るというに至っては、私はまことにこれは理由のないことである。そういうことが行なわれるのは何かものごとの仕組みのどこかに間違いがある。それは政府として改めていかなければならない、こう考えております。
  57. 八百板正

    八百板委員長 和田耕作君。
  58. 和田耕作

    ○和田委員 宮澤長官にお伺いいたします。  先ほどから、行政指導の問題と自由価格制の問題が問題になっているわけでございますけれども、この問題は、私は現在の物価政策の問題を考える場合に、思ったよりも重要な問題だというふうに感ずるわけなんです。つまり、政府が一般的にどういう態度をとるかという問題、予想以上に重要な問題ではないかと思うのです。そして行政指導が悪い、自由化がいいという二者択一の態度では、この問題は解決できない問題ではないかとも思うのです。  そういうことでひとつ御質問申し上げたいのですけれども、まず一般論として長官、最近物価はどんどんと上がっております。所得もずいぶんふえております。需要力は非常に強い。こういうふうな状況のもとで、自由価格制というものを採用して物価を引き下げることはできなくても、安定さすことができるかどうかということについて、御所見をお伺いしたい。
  59. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 完全に統制がきくということでありましたら別でございますが、そうでない場合には、むしろ完全な自由競争にしたほうがまだそういう可能性が高い、そう考えております。
  60. 和田耕作

    ○和田委員 つまり、いわゆる景気が非常によくなる、需要の力が非常に伸びていく、物価はどんどん上がっていく状況があっても、そう思われますか。
  61. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もう一つそれに加えまして、賃金がある程度上昇いたしましても、たとえばいまの自動車の生産などというのはそのいい例ではないかと思いますが、まだわが国では下がり得る余地がある——行きつく先はどこかということはございましょうけれども、いまのところ、そういう余地があると思います。
  62. 和田耕作

    ○和田委員 確かに特殊な部門ではその余地があると思いますけれども、自由な物価の機構にまかして物価が下がり、あるいは少なくともあるところで安定さすということができるのは、一般的に言って景気が後退していく、需要が減っていく、そういうふうな状況においては、確かに自由物価制というものは物価を引き下げることができると思いますけれども、一般的に需要力が強くなっていくという前提においては、私は自由物価制度というものは、物価を安定したり、あるいは引き下げたりすることは可能性が非常に少ない。そのような前提が、この問題を考える場合に必要ではないか、こういうふうに思えてしかたがないのです。  そこで、いろいろ御質問申し上げたいのですけれども、昨年から牛乳の問題がございました。あるいは今年は酒、ビール、ウイスキーの問題がございました。それでいろいろと行政指導あるいは自由化の問題、特に宮澤長官は自由化の先頭的なチャンピオンなんですけれども、それに引きずられていろいろな人たちがそれを主張しておりますけれども政府の大部分は面従腹背であって、実態はそれに抵抗しておるというのが実情のように私には思えるのです。その場合に、いずれにしてもそんなに大きな問題になっておりますから、企画庁のほうでもずいぶんその実態をお調べになっておると思いますけれども、現在各省で行政指導をしておる品目、あるいはその実情について、長官でなくても、局長さんでもけっこうですけれども、お知らせいただきたい。つまり、行政指導といってもいろいろあると思います。米あるいは牛乳ほどでなくても、たとえば原料を管理しているとか、いろいろな問題があると思いますけれども、何らかの形で行政指導をしているというその実態を教えていただきたい。
  63. 佐上武弘

    ○佐上説明員 お答え申し上げます。  御案内のように、公共料金と申しまして、政府が直接関与するのは御案内だろうと思います。そこで公共料金以外に対します行政指導、これはいろいろあるかと存じます。一つの典型的な例は、すでに御指摘のございましたように、間接税の課税対象となっているために、その商品の価格について、自由価格ではございますけれども、徴税確保といった面から行政指導というか、これに準ずるものが、酒、ビールあるいは物品税の課税物品については行なわれておるように聞いております。それから御存じのように、農産物の安定価格帯、たとえば豚肉などというものは下限三百二十円、上限三百九十円、そして安定帯の間におさまるよう、その意味において、個別価格について行政指導を行なう。砂糖の価格につきましても、そういう農産物の価格支持制度というものがございますが、さらに政府行政指導で設けました価格安定制度で、価格について行政指導を行なっている。現在ではその効用はあまりございませんが、鉄鋼の公販価格制度、こういうのも一つ行政指導——こういうところまで、これ以上は上げないという一つ制度がございます。そういった一つの類型が、大体私どもが理解しているところでは、公共料金以外の分野ではあるのではないかというふうに考えております。
  64. 和田耕作

    ○和田委員 いまの問題ですけれども、これは内容的に非常に複雑な問題があると思いますね。実態の行政指導といいましても、たとえば法律によるものを含めて、お米なんという問題はもっと急速に自由化していく方向にしなければならないと、私個人は感じております。その他のいろいろな問題を検討しますと、必ずしも行政指導イコール悪だ、物価を上げるものだ、というふうには言い切れない面もあると思います。  そういうようなことで、私はこの問題を考える場合、宮澤長官にぜひとも御一考願いたいと思うのは、いままでの日本の行政全般にわたって、生産者中心ということがございました。この五月の消費者保護基本法をつくるときにも、長官みずからが、いままでの行政生産者中心であった、もっと国民消費者の立場を考え行政に切りかえなければならない、これは宮澤長官総理大臣も申しておられました。私どももそういうふうな意識で消費者保護基本法というものをつくったわけですね。したがって、この場における物価の問題についての行政指導も、そういうふうな面から見直してみる必要があるのじゃないか。私が先ほど一般論として申し上げたとおり、景気が非常によくなっている、需要力が非常に高まってくる、いろいろな物価がほっておいてもどんどん上がっていく、こういう条件のもとで、自由化にだけこの問題の解決をまかすということは、これは私は政府行政責任の回避じゃないかという気がしてならないのです。したがって、生産者中心の行政から消費者中心の行政へ切りかえるという観点から、行政指導の問題を考え直してみる、再検討してみるということが、特に経済企画庁の姿勢として必要ではないだろうか、こういうように考えるのですが、あらためて長官に御意見をお聞きしたいと思います。
  65. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、お考えになっていらっしゃることの意味は私にもよくわかるわけでございます。でありますが、少なくとも従来の行政というものは、わが国が、どちらかといえば物がない、また富国強兵あるいは戦争をしたということから、生産者サイドに片寄っていたということはやむを得なかったと思いますけれども、いま消費者のサイドからという、ものの考え方の切りかえを促しましても、なかなか長年の習慣というものが離れない。とすれば、私はむしろそういう行政指導ならばしないほうがいいということを申しておるわけでございます。  さてその次に、しかし頭が切りかわっていった場合に、今度は行政指導というものがいいか悪いかということになると思います。これは考え方の分かれるところだと思いますけれども行政が、かりに価格について消費者の側に立って行政指導をするということをいたしますと、おそらくはそのコスト計算というところに立ち入っていくことになると思うのでございます。しかし事業にとってコストというのは、もう御承知のように、一番大切な機密の部分でございます。それを役所に一一言わなければならないということは、はたしてどういうものであろうか。そして役所がそれを見ましても、どうしても実業家のほうが役人よりは実業はじょうずでございますから、そうでなければおかしいわけですが、役人がコストを見て、それをもっと下げられるとかなんとか、議論がほんとうはできるはずがないと私は思っておるのでございます。ですから、どんなに消費者の側に立ったつもりでも、その行政は結局実業家のペースになってしまいやすい、きわめてなってしまいやすいと思いますから、それくらいであれば、業界はみんな自分のコストを秘密にしておいて、そうしてお互いでもって競争し合うということのほうが有効なのではないか、そう私は思うのでございますけれども、しかしこれはいろいろ考え方の分かれるところであろうと思います。
  66. 和田耕作

    ○和田委員 その問題で、私は昨年来の牛乳の価格の問題を注視してきたのですけれども、つまり牛乳の価格に対する行政指導はずっと行なわれてまいりましたが、昨年の五月からそれを撤廃して自由価格制にした。その後一年半近くになりますけれども、牛乳の価格は下がってもいず、安定してもいないという事実がありはしないかと思うのですが、その問題はどういうふうにお考えになっておられましょうか。
  67. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはやはり、昨年あれだけ議論がございまして、ことしは原料乳が少し上がったわけでございますが、しかし市乳の価格にはそれが響かなかった。これなどは、やはり消費者側のいろいろな意味での認識の深まりというものが昨年は全般的には成功いたしませんでしたけれども、今年の値上げを防いだという考えを持ったように判断しております。
  68. 和田耕作

    ○和田委員 その問題で、昨年の六月二十日に、いまの物価安定推進会議が牛乳の問題で所見を発表しておりますけれども、それにはこう書いてあります。「農林省が実行した牛乳価格水準の行政指導廃止による公正な競争の導入の基本的な考え方を正しいとするか、正しくないとするかの判断は、これを容易に下しうるものではないが、」云々として、以下のことを書いてありますけれども、その次の、内容の第一項として、「今回の牛乳値上げ問題に対する消費者の側の運動が展開されてゆくなかで、業者側による荷止め、安売り店に対する妨害、あるいは、合理化努力を行なおうとする業者に対する他の業者の圧力などの行為が各地にみられるようであるが、」、つまり公共団体その他の者はしっかりせい、こういうことを第一項に書いておりますね。つまり牛乳のあの段階で自由化をした場合に、このようなことが起こり得るし、現に起こっているのだということですね。これに対して、国あるいは公共団体その他の力が、合理的にこのマイナスをチェックできれば自由化のメリットは出てくることは確かでございます。しかしこれがチェックできるかどうか。おそらく私は、事実困難ではなかったかと思います。あとで公取の方から、いろいろ問題にした問題についても、審判の報告なんかも承りたいと思いますが、大体この一年半の結果から見て、いま申し上げたような問題についての効果的な処置ができなかったという判断を私はするのですけれども、これは長官どうでございましょうか。
  69. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かにいろいろな妨害、圧力の排除について公取委員会、と、そういうふうにすぐ行政はうまくつながらない。それはすべての人が善意であってなおなかなかつながらないということじゃないかと思いますから、頭で考えますように、いろいろな共同行為というものが簡単に排除できるものとは思いません。思いませんが、冒頭申し上げましたことは、それならばもう一ぺん行政指導に返せばどうなるかというと、おそらく同じような値上げが、今度は公認という形で行なわれるにすぎないのではないだろうか、そういうふうに私は思うわけでございます。
  70. 和田耕作

    ○和田委員 この物価安定推進会議でもこういうふうに問題を提起して、牛乳問題調査団というものを各関係専門家によって組織しまして、そして今年の四月に報告書を出しましたが、その報告書には、その肝心の問題についての現状並びに対策に全然触れておりませんね、少なくともこれに要約したところでは。これは実際にはうまくいっているということでしょうか、こういうことを言うたらやぶへびになるからやめておこうということでしょうか、どちらでしょうか。
  71. 八塚陽介

    ○八塚説明員 御承知のように、いま先生が御引用になりました申し入れに基づきまして、調査団が各地へ派遣されました。それの報告、あるいはそれを受けまして物価安定推進会議というのが一応意見をまとめたのも御承知のとおりです。その際、やはり調査団の報告の中で、消費者運動のいわば評価をどう考えるかということが主眼になっておりまして、これのうらはらにある、しからば行政機関がどうこうという問題は主題ではなかったわけです。そういう意味で、報告なり推進会議の提言におきましては、当初の行政指導の評価、具体的な牛乳についての評価についてはあまり触れてはおりません。  ただ私ども、参考に申し上げておきますと、一般に牛乳だけではなくて、行政指導というものについて、さっき物価政策課長から申し上げましたように、なおいろいろな種類があるわけです。そういう点については、一度洗い直しをしたいというふうに考えます。
  72. 和田耕作

    ○和田委員 いま長官、そういうふうな問題はあるとしても、行政指導の従来の線に返した場合には問題解決しないので、やはりもっと悪いことになるというお考えを示されたのですけれども、私もそう思います。そこで、行政指導をやめるというのではなくて、行政指導内容を新しくくふうしていく必要がある、こういう段階だと、私はさっきから考えているのです。いままでの行政指導に戻るのではなくて、この段階における行政指導のやり方について、もっとくふうしなければならないのではないか、こういう考え方を持っておるものですから御質問申し上げておるのです。  そこで、お酒の問題になりますけれどもビールの問題については天下に有名でございます。宮澤長官がたいへんなアピールを国民にしたということは、私ども長官のそういう熱意を十分買っておるし、こういう熱意を持っておる方はただ一人なんですから、今後ともがんばってもらいたいと思いますけれども、しかし長官、あれをごく客観的に見ますと、おれは言うことは言うたけれども業界には通じないのだ、国民が何とかしてくれということですね、あのアピールは。つまりこれは、いわゆる物価に対する行政責任というものを放棄しているというふうに、悪くとればとれないこともない。私は最近非常に悪意なあれを聞いたのですけれども佐藤内閣というものは、とにかく物価がどんどん上がるということはやむを得ないのだと思っているのだ、そこで宮澤長官のような優秀な影響力のある人を一人置いておいて、そして一生懸命考えておるのだというポーズをとらして、そして内閣全体は逆の方向に行くのだ、そういう意見を聞いたのですけれども、これは客観的に見ればそういうふうな感もなきにしもあらずだと思うのです。つまり、自由な価格制度にすればよくなるのだというふうな御主張をなさって、実際は、自由な価格制度になっても物価は安定しないという状態が現に進行しておる。佐藤総理大臣すら途中で困るということを言ったら、ある業界の人は、総理がもっと先にはっきり言ってくれればわれわれも考えたのだということを、私は事実聞いたことがある。そういうふうな状態が続いておるだけに、つまり、自由価格制にすれば物価はよくなるのだという主張だけではぐあいが悪いという気がしてならないのです。  そこで、酒の問題をもう一ぺん考えてみたいと思いますけれども、お酒の問題で、これは政府の公式の方向ですね。総理大臣も言っているように、行政指導をだんだん緩和していくという、宮澤長官が代表している方向に対して、何年何年と、すぐはできないとかできるとかいうことは別として、大蔵省の見解としては、大蔵省の部長さんはどういうふうにお考えですか。
  73. 佐藤健司

    佐藤説明員 酒類の価格の問題でございますが、洋酒の関係につきましては、御承知のように昭和二十五年の四月に統制価格をやめております。それから、そのほかの酒類につきましては、三十五年の十月に統制価格を廃止いたしております。その後しばらく基準価格制度というものをとっておりました。基準価格を設定しておったわけでございますが、これも三十九年になりまして、基準価格というものをやめておるわけであります。その後は、全体としまして、やはり自由な価格設定のほうに持っていきたいということで全体を考えておりまして、洋酒につきましては、ずっと自由な形が長い間続けられております。その他の酒類につきましても、全体として自由な方向になっておるわけでございます。ただ、清酒でございますけれども、これは何しろ三千七百近くの業者がおりまして、しかも非常に零細なものが多いわけでございますから、こういう関係のものにつきましては、業者のほうからはいろいろな要望が出てくるわけでありますけれども、私どもとしまして、やはり消費者を保護するという見地もかたわらございますし、あれこれとこれを検討いたしまして、一つの指導を先般やったということでございますが、これも全体として成長してまいります過程におきましては、やはり自由な方向にこれを持っていくというのが望ましいのではないかというふうに考えております。
  74. 和田耕作

    ○和田委員 いまのビールの問題で、大蔵省は強力な行政指導をしておられるわけでございますけれどもビールの問題は、外見上は指導したけれども、だめだった、やはり自由の方向にはしょうがないのだという形をとっておるのですが、内容的には強力な行政指導をしてこられた、こういうことですけれども、この基準として、つまり問題になっております業者の、限界的な業者の一定の利潤というものを問題にしておやりになったのか、あるいは平均的なものを基準にされたのか、その点どうですか。いままでの価格指導の基本態度。
  75. 佐藤健司

    佐藤説明員 清酒について申し上げますと、限界的な状態のものをもとにして指導しておるわけではございません。やはり平均的と申しますか、限界のほうから見ますと相当上のほうのところを中心にいたしまして検討をいたしております。
  76. 和田耕作

    ○和田委員 今後だんだんと自由化していこうとすれば、たとえば特級とか一級とか二級とかありますけれども、今度は税金も二級のほうは上げなかったということがありますが、段階的にやっていきますか。特級をはずして一級をはずすという、そういうあれですか。
  77. 佐藤健司

    佐藤説明員 先般の値上げがございましたときも、やはり特級等につきましてはこれを自由にさしていきたいということで、格別な指導をいたしておりません。
  78. 和田耕作

    ○和田委員 一級と二級だけについて行政指導を行なったということですか。
  79. 佐藤健司

    佐藤説明員 主として二級についてやっておるわけでございます。
  80. 和田耕作

    ○和田委員 つまり、そういうふうな御説明をするところからわかる点は、大蔵省の現在の行政指導というものは、特級については——値段が非常に高くて、わりあい裕福な者が飲むと思われておる特級については自由価格にするのだ、値段の安い二級、つまり一般の勤労者の飲むと思われるものについては行政指導を強くしておるのだ、という御説明と承っていいのですか。
  81. 佐藤健司

    佐藤説明員 私ども考えとしては、先生のおっしゃるとおりでございます。
  82. 和田耕作

    ○和田委員 つまり、これを額面どおり受け取るならば、あながち悪い指導ではない面がありますね。つまり、一般の二級酒は上がらないように押える、他のものは上がるにまかせるという御説明なんですから、特級とあれとは、そういう行政指導の面が、かりに大蔵省の説明のようにあるとするなれば、行政指導というものは、いまの段階で必ずしも悪い面だけではないということになるわけですね。それは宮澤長官、どういうふうにお考えになりますか。
  83. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かにそんなに悪くはないのでございますけれども、私どもからいうと、まだいろいろ注文があるわけでございます。つまり、ことし清酒の価格がきまる経緯を聞いておりますと、国税庁、ことに間税部長は、かなりきびしいところで数字をはじき出して、これでひとつ泣いてくれというような指導をされたように思うのでございます。それは、その姿勢は私はよくわかりますけれども、泣いた人もいると思いますが、笑った人もいるのだと、実は思っているのでございます。ですから、その辺まだまだ、いろいろなことを一度に注文するわけにいきませんから、だんだんに頼みたいことがまだあるわけでございます。
  84. 和田耕作

    ○和田委員 つまり、私が申し上げたいことは、牛乳の問題にしましても、自由価格にするというものは相当の価値を持っておると思いますけれども、しかしその市場の立て役者の小売り業者が、もう大企業の系列下に大部分がずっと組織されておる、こういうふうな条件をそのままにして、自由化というものだけにたよっていこうということに一つの問題点があるということですね。たとえば、お酒の場合は牛乳と違って、お酒の卸売り業者は六千ですか、ずいぶんたくさんあるわけで、しかもその数からいえば大企業は十八とか十九、つまり九九・何%まで中小企業だ、また十八程度の大企業の持っているシェアは三〇%足らずだ、というような資料があるようですけれども、こういうことでなくて、現在一般的な物価が上がってくる条件のもとでは、大企業の意思で物価を上げるというよりは、中小企業の人たちが大企業のチャンネルを通して物価を上げていこうという、こういう傾向がかなりあると思いますね。中小企業の者が上げたいと思ってもできないから、大企業さん、おまえさんが来てやってくれ、こういう話し合いが行なわれる可能性が非常に強い。つまり物価がどんどんと上がっていくときに、なかなか価格が押えられないというのは、そういう作用があるからと私は思うのです。寡占企業が形の上であるかないかということは一応別にしましても、お酒の場合には、ほとんど寡占とかなんとか、そういうものは感じられませんけれども、しかし中小企業の人たちが大企業のチャンネルを通して価格を上げよう、価格を上げるについては全部一致するという状況がある。こういうふうな状況のあるときには、自由価格にするということだけで問題を解決しようとすることには問題があるのじゃないか、私が最初から申し上げている点に返るわけですけれども、こういうことが考えられてならない。したがってこれを他の面から行政指導というものは考えなければならないということが、先般来お尋ねいたしました、たとえば八幡、富士の大型合併の問題にしましてもそうです。確かにああいうふうなものが合併していくという傾向は否定できないけれども、できた場合の弊害というものは、これは過小評価することはできない。したがって政府は適当な監視機構というものが必要じゃないかということを、長官にも総理大臣にもお伺いしたのでございますが、長官はあまりぱっとしなかったのですけれども総理大臣はその必要があるというお答えを、私一度いただきました。いただいたけれども、そのあとは、あるやらないやら、ないほうがましなようなお答えになったと思いますが、そういうところに、この物価問題に対する行政考え方全体が混乱しているとは、私は申しませんけれども、まだはっきりしていない点がある。そういうことを感ずるわけですね。こういう点は、長官にひとつ率直な御所見を承りたい。
  85. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前段のことでございますけれども、確かにそういう例がございます。リーダーである大企業自身は必ずしも値上げをしなくてもいいのですが、実は業界代表として、採算の悪い中小のほうをどうしてもめんどうを見なければならない。そこでやむなくと申しますか、そういうために値上げをするのですという場合が間々ございます。プライスリーダーといわれるようなケースはそういうケースでございますけれども、結局それは中小の企業が、どういう形でか、やはり生産性を上げていく、それを助けながら時間の経過を待つということになるのじゃないだろうか。実際そういう場合に、中小の企業はそれならつぶれてもいいだろうというようなことは簡単に言えるものでございませんから、加工食品なんかは確かにそういう例があるように私は思うのでございます。それはやはり、それこそ監督者である行政のほうが、そういう企業の高度化とか、あるいは合併の場合もあるかもしれません、そうして能率の悪い中小を能率のいいように持っていくという責任を持っておるのじゃないだろうか。行政指導というものは私はそういう面で、あっていいのではないかというふうに思うのでございます。  それから、監視機構の問題ですが、やはり寡占化するということになれば価格協定が起こりやすいというのは、傾向としてはそのとおりでございます。ただこれを何か外部から監視をするということになりますと、先ほど申し上げましたように、またコストとかなんとかいうめんどうな問題になってまいりますので、何か適当な仕組みがあれば、そういう機構があるにこしたことはないのでございますが、どういうふうにしたら、それがあまり弊害なく行なわれ得るか。ある方々のお考えによりますと、それは労働組合がむしろボードに入って、そして価格についてはまず内部から調べるというようなことが効果があるのではないか、ということを主張されるお方もございます。これは、しかしほんとうにうまくいく方法があれば、そういう機構があればよろしいのだと思いますが、私自身にはいまのところ、利害得失を比べてみて、これならいいということがなかなか考えつかないというのが現状で、したがって、共同行為があれば公正取引委員会に、というような話になっていくわけでございます。
  86. 和田耕作

    ○和田委員 つまり共同行為という、公取法できめてある問題、現象なしに共同行為を実際に行なうというのが寡占の特徴ですね。そういうことですから、たとえばずっと見ていて、物価が必要以上に上がってくると思われる業種に対しては、コスト計算というかなりシビアーなところまでいかなくても、ある一定の警戒線を政府は見ておって、ある一定の、これはあぶないというところに上がってきたという場合には、この上がった業界に対して警告を発するということがまず第一番だと思いますね。そういうふうないろいろな形で行政指導というものがあり得ると思うのです。そういうふうな方向で、いまの労働組合というものをあるそういう関係のボードに入れるということもあるでしょう。いろいろな方法があると思います。現実にそういう機能が必要なんですから。ただそれをやれば弊害がある。こういう弊害があるという心配も明らかにありますけれども、といって行政指導は必要でないかといえば、新しい条件のもとで正しく国民消費生活を守るためには、したがってまた、消費生活を守れなければ生産自体も守れないという状態なんですから、そういうふうな要請に応じた行政指導というものを、ひとつ何とぞつくり上げていただきたいという考えがしてならないのでございます。  最後に、大型合併の問題です。紙のほうは、企画庁の内面指導があったと思いますけれども、ああいうことになった。八幡の問題について、長官率直にどうお考えになりますか。あれはこの段階においても正しいと思いますか。あるいは適当な監視機構があれば正しいというふうに思われますか。率直な御意見はどういうことでございましょう。
  87. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 鉄の場合については、かりに旧日鉄関係の合併がありましても、私は、十分な競争関係がその後にあるというふうに、いまだに思っております。
  88. 和田耕作

    ○和田委員 その場合の何らかの監視機構というものについてはどういうふうにお考えですか。寡占価格に対する警戒あるいは用心のためのそういう問題については、どうお考えですか。
  89. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は十分競争関係が成り立つと考えておりますから、価格は自由に形成されるであろうというふうに思っております。他方で、従来の設備調整のようなものは、これに事実上行政指導があるわけでありますけれども、そういうことはもう必要がないのではないか。また公販価格というものがはたしていかがなものであろうか、少なくとも現在きめられておる公販価格というものは高きに失するのではないかというようなことも、あわせて指摘ができると思いますけれども、もしそのように自由な競争関係が存在するということであれば、私は今回の問題として、価格監視機構というのはさしずめ入り用だとは考えません。ただ一般論として、今後ますます寡占という傾向になっていくということが、これは御指摘のように必然だと思われますので、そういうことに対処しながら、広く利害得失を考えて、明らかにプラスのほうが多いというような何か監視機構が考えられましたら、それは設けることが消費者のために望ましいであろう。一般論としてはそう考えております。
  90. 和田耕作

    ○和田委員 ありがとうございました。
  91. 八百板正

    八百板委員長 砂田重民君。
  92. 砂田重民

    ○砂田委員 私は、きょうは消費者の側からした米の問題をお伺いしたいと思うのですが、農林大臣が間もなくお見えになると思いますので、宮澤長官にしばらくお待ちいただきまして、食糧庁長官にお見えいただいたので、初めに配給制度のことをお聞きしたいと思います。  桧垣長官、米の問題、消費者の意向というものは、長官も大体つかんでおられると思いますけれども、三つあるのですよ。一つは、消費者米価を据え置いてもらいたい。これはもう閣議決定が済んだのです。配給制度をもっと実情に合ったものに直してもらいたい。もう一つは、おいしいお米を食べさせてもらいたい、こういう三つの消費者意向というものがあるわけなんです。  大臣がお見えになりましたら途中でやめて、農林大臣と経済企画庁長官お二人に、違う問題を別に先に伺いたいと思いますが、それまでの間、長官伺います。  こういった、配給制度をできるだけいまの実情に合わせていこう、それから消費者意向の、おいしいお米を消費者に配給したい、おそらくそういう考えから、配給制度の改善案というものを食糧庁長官は打ち出しておられるそうですね。時間の関係で、私のほうから申し上げますが、新聞にたびたび、いろいろな形で食糧庁長官談話というものが出ておりますものをまとめてみますと、一つは特別卸というものを新設する。これは大都市で二百馬力の大型精米所を持つ者、その特別卸には小売りを兼ねることを許す。これは、小売りの場合は袋詰めに限るというような、何か制限を付しておられるようでありますが、それが一つ。それから、消費者は同一市町村内では小売り屋を自由に選択ができる。登録制をやめるという問題。それから三つ目に、人口急増地域に小売りの新設を認める。さらに配給量を一カ月十五キロにふやして、各種加配米の制度をやめる。大体こういう柱を建てておられると思うのですが、配給制度の上に安住してきた米の販売業に競争の原理を取り入れて、米の流通に近代化の刺激を与えていこう、こういうお考えからこういう柱を建てられたと思うのですが、いま私が申し上げたほかに何か大きな改善の柱がございますか。
  93. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 当面、私どもが配給の改善を検討し、実行いたしたいということを考えておりますのは、いま砂田委員から御指摘のあった点であります。
  94. 砂田重民

    ○砂田委員 そこで、いま私が申し上げたように、やはり配給制度の上に安住してきた古い業界に、近代化の刺激を与えていこうということを目的にしておられると思うのです。いまの柱のことについて、ちょっと消費者としてはもう少し理解をしたいと思うものですから伺っておきたいと思います。  長官、米の問題、もちろん私はしろうとですし、大ぜいの消費者というものは私同様にしろうとばかりなんです。消費者に説明をしていただく、そういうお心づもりでお答えをいただきたいと思うのですが、大型精米所というものを奨励しておられるわけですね。そこでひとつ、消費地精米と生産地精米、どっちを奨励しておられるか。わずかの補助金で大型精米所を奨励しておられるのだけれども、販売業者は、大きな都会では非常に高い土地を手に入れてその大型精米所をつくっていかなければならない。ところが、農林省が産地にも同様な精米所ができていくことを自由放任していかれると、非常にきびしい競争がそこに起こってくるのじゃないだろうか。せっかくつくった大消費地での大きな精米所の設備にかけた金を償却する前に、今度は産地の大型の精米所とたいへんきびしい競争をしてしまうのではないか。消費地での大型精米所をつくっていこうということを奨励しておられますけれども、その奨励策に水をかけるような考え方が、どうもお米屋さんにはあるのじゃないか。産地精米と消費地精米と、どちらにウエートを置いて農林省は考えておられるのか、それが一点。  それから、卸を統合しようというお考えが農林省にはあるのですね。この特別卸を許可するということは、卸を統合していこうという考え方と矛盾しているのじゃないだろうか。小売りの団体、組合が、大型精米所をつくって特別卸を申請した場合に、これを許可するということをいっておられるのですが、この卸の統合の問題と、新たに大型精米所を持った特別卸を別にふやしていこうという考え方、統合とふやすということの矛盾をどういうふうにお考えになっておられるか、伺っておきたいと思います。
  95. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 現在、消費地の米はほとんど玄米で輸送されまして、消費地で精米されるという形をとっておるわけでございます。私から申し上げるまでもなく、全国各地で生産されました米は、産地で完全に保管するわけにはまいらないわけでございます。需給の調整上、玄米の形で消費地に回送し貯蔵をしておるということは、ある程度どうしても必要なわけでございます。このお米は消費地で精米せざるを得ない。御案内のように、精米を長期保存することは、現在の技術ではほとんど不可能でございます。そういう意味で、消費地の精米の役割りは、私は将来もやはり重要性を失わないというふうに思うのでございます。ただ産地で、御案内のように、農林省の奨励いたしておりますカントリーエレベーターというようなことで、一定の品種統合をいたしまして、そうして大規模なサイロに、もみ貯蔵いたしまして出荷をするというような場合に、単に玄米調製だけをして出したほうが有効であるか、精米までやって出すほうが有効であるかは、これは現在まだ実験中でございます。これには、やはりいわゆる産地にぬかを落とすとか、あるいは一貫調製作業でコストとして有利であるというような問題もございますが、需給調整上は、精米をいたしまして輸送したものは早期に配給がされるという、そういう流れに乗るものでなければ扱えないのでございます。でございますので、私はやはりこの段階で、産地精米に割り切るのか消費地精米に割り切るのかという単純なわけにはまいらないと思います。産地精米の場台は、むしろそういう今後の流通の姿というものに適合し得るかどうか、またそれが経済的に行なわれるかどうかというような問題を慎重に検討しつつ、実験的にやっていくという段階であろうと思うのでございます。また、産地精米が絶対にすぐれているというふうに私たちは割り切るには、時期尚早かと思います。
  96. 砂田重民

    ○砂田委員 産地での大型精米所と消費地での大型精米所というものが、非常に苛烈な競争をしてしまうというふうなことは避けていく、そう理解してよろしゅうございますか。
  97. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 私どもは、おのずから、ただいま申し上げましたように、玄米輸送をせざるを得ないものというものがあるわけでございますので、産地精米と消費地精米が意味のない競争をするというような状態はつくりたくないということでございます。
  98. 砂田重民

    ○砂田委員 農林大臣おいでをいただきましたので、配給制度改善の問題は、両大臣に私は別の角度からお伺いして、そのあと宮澤長官もきょうはお時間があまりないようでございますから、両大臣に伺ったあとで、また食糧庁の長官から配給制度改善案の内容を、少しこまかいことを伺っておきたいと思います。  大臣、ただいま実は食糧庁の長官に、お考えになっておられる配給制度の改善の内容のこまかいことを少し伺い始めていたところでございます。きょう、私は、消費者の立場から、米の問題を大臣に伺っておきたい、こう考えたわけでございますが、ただいまも檜垣長官お話しをしておりましたのですが、消費者の米の問題に対する要望と申しますか消費者意向と申しますか、三点あると思うのです。一つ消費者米価をひとつ据え置いてもらいたい、二つ目が、配給制度をいまの世の中の実情に合うものに直してもらいたい、もう一点が、もっとおいしいお米を食べさせてくれないか、こういう三点でございます。消費者米価の問題は、もう閣議決定を見て、来月からこの価格が変わってまいることでもございます。ただ、やはりお米というものは毎年値段がきまってくることでもあります。もう閣議決定をしたとは言いながら、消費者米価の問題、消費者の側からの考え方を大臣に申し上げて、大臣のお考えを伺っておくことも、そう死んだ子の年を数えるばかりでもないと思います。御意向を承っておきたいと思うのです。  消費者米価の議論はもうすでに出尽くしたような感がございますけれども、これは消費者の側から申しますと、どうしても矛盾、不合理な感じを受けているわけなんです。一つは、昨年あれだけ値上げした古米を——これは食糧庁では古米という名前ではお呼びにならないと思うのですが、昨年値上げした米をことしさらに値上げしたこの矛盾。二つ目は、今日の制度のなせるわざとは言いながら、需給事情が反映していない。三つ目が生産者米価につけられたあの三%の政治加算というものを、そのまま消費者に転嫁をしてしまわれたこの不合理。私はあえて矛盾、不合理ということばを使いますけれども、ただいま消費者はそういう受け方をしておりますので、私はこういうことばを使わしていただきます。このような矛盾、不合理について伺っておきたいと思うのですが、私は、生産者米価政治的に決定されるということに異議を申し立てる気はさらさらない。日本経済の中での農業のポジションあるいは国民総所得の中での農家所得などを考えますと、今日の食管制度のもとでは、いわゆる政治米価であってしかるべきだ、こう私は考えます。ただ政府原案、米価審議会の答申に対して三%の政治加算のあったことはこれも事実でありますが、同じような考え方をいたしますと、生産者米価を、そういう意味合いから政治米価的に決定されることに異議のない私といたしましては、同じようなものの考え方をするのならば、日本経済全体の中での消費生活考え国民生活、経済全体の中での庶民の生計費を考慮をするならば、生産者米価に三%の政治加算があったように、消費者米価に対しては三%の政治減算があってしかるべきではなかっただろうか、こういう感じを実は受けるわけなんです。ウエートの置き方が公平でなかったという感じを受けるのです。四十三年度は総合予算主義による予算編成をなさいました。食管会計の赤字解消を念願としながら、二千四百十五億円を計上したのでございますが、しかしこの予算編成をいたしますときには、政府の買い入れ量というものは、こんなに九百万トンをこすような買い入れ量は予定しておられなかったはずなんであります。二千四百十五億円というこの食管の計上というものは、八百五万トン政府に買い入れ量が予定をされて、七百九十七万トンの売り渡しをする、こういう基礎的な数字の上で二千四百十五億円ということが計上されたのではなかっただろうか。そういたしますと、九百万トンをこすような買い入れ量がその当時には予定されていなかったはずだ。そうすると、政府の買い入れ量が八百五万トンをこした瞬間に、四十三年度の総合予算主義の一部分はもうくずれたといってもよかったんじゃないだろうか。家計の可処分所得の限度内という非常に狭い視野からの制度をたてにとって、昨年に続く八%の消費者米価引き上げによって、この総合予算主義の一部分、破けたところをつくろわれたのではないか。消費者米価がたいした政治的な配慮もなしに八%値上げが決定された。それ以降の便乗的の値上げ考えてみましても、次々に幅の広い便乗値上げが伝えられております。こういうことを考えてみましても、可処分所得の限度内という制度自体、庶民の家計全体を考えれば、まことに冷たい、きわめて官僚的な制度である、こういう印象を私どもは実は持つわけでございます。これでは、財政は国民のためのものではなくて、財政のために国民生活が犠牲になっているという感がございます。こういった問題から波及をして、先ほどから宮澤長官も四・八%を守ることについて非常に苦慮なさっておられるような御答弁もあったのでございますが、総合予算主義は長期的には物価安定に大いに寄与すると長官のおっしゃっておられる議論に私も同感なんです。しかし、米価問題の消費者実感は、いま私が申し上げたとおりでございます。この総合予算主義という政策と、国民の、消費者の持つ米価についての実感のズレについて、私は、政府の側では国民に理解させるだけのそういう説明がたいへん不足しているような気持ちがしてならない。この点について、いま私が申し上げたような消費者実感に対して、ひとつ両大臣からそれぞれ御所見を承っておきたいと思います。
  99. 西村直己

    ○西村国務大臣 おっしゃることはみんなごもっともです。私も国民の一人として、その実感というものはまことにそのとおりだと思います。私も、実は呼ばれるたびに喜んで主婦の会合に進んで出ております。昨日も実は都内の主婦の会合に出まして、よく話し合いをしてみたのであります。そうすると、まず、お米が余っているのに値段を上げるとは何だ、これは正しいと思います。それが一つ。それから、味のいいものをつくれ、これも正しいと思います。それから、配給についても、一体いまごろ何か配給所というような看板をかけて、それで通帳で配給してやるという感じを持つのはおかしいじゃないかという実感は、私はまことにそうだと思います。ただ問題は、御存じのとおり政治でございますから、その実感だけを取り上げて、それでできるなら、これはもう政府万々歳の政治になって、皆さんから委員会でおしかりを受けたり、御批判を受けたり、新聞で御批判を受けるようなことはないわけです。  現実の状態はどうなっているかというのは、御存じのとおり、一つは、基本には農林省の総予算というものをお考えいただくと、その中でもって、もうすでに米の赤字というものの占める率が三八%あります。さらにその上に、米に対していろいろとられておるそのエネルギーというものと農民の努力が、今日の米価の安定あるいは食糧安定を来たした、こういうことも、あまり多くしゃべると申しわけありませんが、また一面の事実だと思います。それから、農業のいわゆる格差是正といいますか、少なくとも農家の生活の向上をはかっているということも事実なんです。こういうような、いわゆる国民経済全体のバランスの中から考えてみますと、政府としては、直すべき点は直していかなければならない。  そこで、私としては、まず第一に考えましたのは、農林省はもちろん生産者の再生産意欲というものは守っていかなければならぬが、同時に、米をはじめ各般の国民の食生活関係しているものを扱っておりまして、みそ、しょうゆ、かん詰め、コンニャク、要するにデパートの地下室に並んでいる品物はみな農林省の責任のように私は感じます。ですから、農林省であると同時に食料省的な性格というものもはっきり体していかなければならない。これが、私の大臣就任以来の考え方です。そこで、農政についても、総合農政というものを考えるときに、一つの指針としてそういう性格をはっきり出すように、たとえば市場の問題は、これは先生御存じのように、市場の近代化につきましてはいろいろな手を打ちつつあることは事実です。それから消費者保護につきましても、皆さんのような御熱心な方々がおつくりになりました消費者保護基本法、あるいは保護のいろいろな体制というものができております。これをできるだけ生かすように、たとえば規格の問題とかいろいろな面できめこまかくやっていかなければならぬ。いろいろ御質問が出ておると思いますが、価格につきましても、やはり価格というものをきめこまかに考えていかないと、大ざっぱないき方では各方面の満足は得られない。いわゆる国民実感にくっつかないから、国民政治が非常に距離のあるような印象を与える。これだけはやはりわれわれの責任として努力していく、こういうことであります。  それからいま一つ大事な点は、生産面におきまして、やはりこれだけ過剰になってきておる米の中において、国民感情に対しては、一つはやはり量から質への転換ということを叫んで、私はできるだけその努力をしていきたい。少しでもその努力をしていきたいということと、もう一つは、そういう中でもって農林省のいわゆる予算の組み方あるいはあり方、使われ方というものを、国民の求めておる、需要のふえておる面に合うように、畜産なり果樹なりあるいは動物性たん白質源のほうの質のよいものの増産と安定供給のほうに、少しずつ力を注げるような方向にいくべきではないか。これが総合農政の思想で出しておる、非常に範囲が広いのでございますが、また抽象的だとおしかりもありますが、そういう気持の中でやっております。  それから今度は現実の米の問題に入りまして、米の位置づけというものを、何といってもこれからも主食でございますから私は問題にはしてまいりますが、しかし、私の思想は、できるだけ主産地というものを——国土の総合利用ということも総合農政の基本でありますが、その中において、主産地においてやはりごめんどうを見ていくということになりますと、米のおいしいものをつくる地力を持ち歴史を持つ、そういうところは当然いいお米がつくれる方向に持っていけるのではないか。こういうような、すべて主産地というものによく目をつけて、何でも量さえつくればいいのだという事態から質のほうへ方向づけするような努力をしていきたいと思うのであります。  それからもう一つは、価格の問題で、消費者価格というものは、私は四年も連続して上げないほうがいいと思います。したがって、来年あたりに対しましても、いずれは年末を控えての予算、あるいは少なくともこれからの将来の見通しとして、政府全体として一体どうすべきかということをよく慎重に考えないと、ただ財政の都合とか計算上とかで出すべきでない。やはりお米を食べておられる国民実感、それからくる波及というものをいろいろ考えていかなければならない。しかし、一方におきまして、先ほど申し上げましたように、農林省の予算の中で現実にそれだけの一種の赤字の王座を占めておる、これもどう直していくか。そうなりますと、末端の価格まで逆ざやで置いておいていいのか、末端の逆ざやまで今日置いておいて、犬に食べさせる御飯にまで補助金をつけて配給をしていく、この現象だけくらいは早いうちに直していかなければならないのではないか、これが今回の消費者米価のときに、特に農林省としては、消費者の方々には御迷惑でありますけれども、そういうふうな努力をいたしまして、そしてある程度のものは解消さしていく。しかしまだ残っております。  それからいま一つは、味に関連いたしまして、早場米のようなものはもう時代に合わないと同時に、早場米ということによって、急いで収穫することによって味を落とすのを少しでも、まあ農民のいわゆる既得権を一挙に奪うとか、そういうショックを与えないような方向の中で、時期のかきねをとってしまった暫定加算の形で、早場米奨励という、早場米で、ただある時期までに持ってくれば高く買ってあげます、そして悪い米を出すというようなこと、そういうものを、いろいろな御意見もありましたけれども、やめさせていただいております。こういうようなこともやっております。  もう一つは、確かにおっしゃるように、生産者の場合にも相当いろいろな意見が出たのだから、消費者の場合にも考慮すべきではないかと考えましたけれども、さっきも私申し上げましたように、農林省予算の中に占めておる大きな食管の逆ざやその他から——もちろん大きな逆ざやもございます、それから小さい末満の逆ざやもある、そういうようなものを少しでも解消していく方向へ努力していくことが一つ。  いま一つは、やはりそこに政府全体として総合予算主義というものをとっておる、これを破壊してまでこの段階にやることと、どっちをとるべきかという判断の問題、これは正直に申しまして、国民はそれはおれらにはわからることだ、関係ないことだという点があろうと思います。しかし、それは長い目で見ますと、やはりインフレ防止であるとか、ぐるぐる回りであるとか、ただ見せかけの一時の糊塗の財政よりはそのほうがいいのだという御説明で御納得をいただく以外にないのじゃないかと思っておるのであります。  それから配給面でも、御存じのとおり食管の経理その他から考えますと、現実に先にできているお米をいただいていって、あとからきたものはそれだけ保存がきくのだから残していけば一番いいのでございますけれども、それだけをやっていることはいわゆるただ数をたよった政治になりますので、その問題は十分あるとは知りながらも、新米を繰り上げて、食味を増すと申しますか、そういう方向をとって、五〇%ずつの配給混入緩和をやっていることは事実でございまして、ここいらのところをひとつ勘案していただきますと、実感としてはぴたっとくる御納得がいただけない面が残ると思いますけれども、私は政治の誠意としてそういう形でもって努力をし、さらにわれわれとしては配給面もすぐできるととから、これから時間は少しかかりますけれども国民の当然考えられておるような方向のいろいろ配給改善というものをやはり抜本的に検討して、できるところからやってまいりたい、こんな気持ちでおります。
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私にとりましては、総合予算ということは実は昨年のいまごろ考え始めたことであったのでございますが、これは財政エゴイズムというようなことではありませんで、補正予算という逃道を封じておけば、従来いろいろ踏襲されてきた制度の中で改善すべきものがあれば、その改善が議題にのぼるであろう、そういうことから考えたことであったわけでございます。特に食管制度のように長い歴史を持っておる制度でございますと、そこにおのずから、これを改善しようとすれば相当激しい利害の衝突というものがなければなかなか改善することはむずかしいであろう、こういうふうに見ておりました。そこで今年の場合、砂田委員の言われますように、もし財政が補正予算でこれに入りましたら、問題はそこへ逃げ道をつけてしまうわけで、今年の場合、先ほど御提言のようにすれば消費者物価問題はかなり緩和されたと思いますけれども、しかし同じことを来年も、また再来年も、いままでのとおり繰り返すということになったであろう、その利害得失がどちらであろうかというふうに考えまして、私としては今年、消費者にとっては非常な負担になりますけれども、そのことが問題を明年に向かって展開する契機になるならば、これは対極的に見てがまんをしていただきたい、物価問題を担当する私としても当然忍ぶべきことだ、そういう判断をいたしました。
  101. 砂田重民

    ○砂田委員 米の値段の問題をもう少し伺っておきたいのですが、時間がございませんので次に進めたいと思います。  ただいま農林大臣、総合農政のことをおっしゃいました。農林大臣が総合農政の展開を約束をなさいまして、私たちたいへんこれに期待をしているものでございます。私のような都市出身者が農政の権威者の西村大臣に農政問題についてものを申すのは実は少々心もとないのですが、一つだけどうしても申し上げて御意見を伺っておきたいと思うことがあります。どうか宮澤長官も御一緒にお聞きを願いたいと思うのですが、これからの総合農業政策というものを検討されるときに、農業というワクの中だけで農政をお考えになるのはどうも視野が狭いのではないだろうか、実はこういう感じがいたすわけでございます。私どもが提案をいたしまして成立しました消費者保護基本法も、農林大臣が政務調査会長をしておられるときに御相談に参りまして、政務調査会長に、進めという号令をかけていただきましたので前に進むことができました消費ということをもう十分よく御理解いただいている西村大臣でございますので私は申し上げたいと思うのですが、農業農業というワクの中だけで考えないで、消費という角度から、消費者消費生活という角度から農業を小手をかざして見直す必要があるのじゃないか、こういう感じが実はするのです。たとえば消費者一人当たりの一年間の米を食べる量は一石だということをいっておりましたのはそう古いことではございません。つい何年か前までそういうことがいわれておりました。今日では六斗ぐらいではないかと思います。この米の消費量が減った分がみんなパン食にかわっているわけではございません。米の消費量が減った分がいろんな食品に置きかえられていっているわけですね。でん粉性たん白の摂取量というものが欧米型に変わりつつある、こういうことが言えると思うのです。日本人のでん粉性たん白質のとり方は、すべての食生活の中で将来一体何十%ぐらいになってくるのか、それと組み合わされる食品というものはどういうことになってくるのか、肉は幾らぐらいそうすると必要になってくるのか、魚はどうか、野菜はどうだ、くだものはどうだというような、五年先、十年先、二十年先の食品の消費生活見通しを立てて、これらの食品それぞれの自給率はどう考えていったらいいか、どういう農業政策を打ち出していったらいいか、この自給力というものを確保するために農政はどうあるべきかというふうなことを考えていっていただかなければほんとうの農政になってこないのじゃないだろうか、こういう考えを私は持つのでございます。このようにいたしまして、日本経済の成長の中で当然考えられる日本人の食消費生活の変貌と調和した農業を検討して初めて農業にも十年先、二十年先のビジョンが描かれる。農民が農業生産に生きがいを持ち得るような青写真というものは、やはり消費の角度からも見てみなければ書けないのじゃないか、こう考えるのでございます。農林大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  102. 西村直己

    ○西村国務大臣 おっしゃるとおり、当面の短期の期間でとりますと、農業はどちらかというと、つくる人という面から見れば生産者生産者というものは消費者と利害が対立するというような、したがって当面の具体的な問題にぶつかってくると、御存じのとおり生産者消費する面との利害の調節に関係するものは苦労する場合もございます。しかし、それがそれではほんとに国民経済として両者に得であるかというと、長い目で見ると、ただ価格が上がっていけば得だとか価格がただ下落すれば得だとかというだけではきめられない。基本はどうするのだということと、やはり先生おっしゃるように長期の見通しというものがまず大事だと思う。そこで総合農政という一つの抽象論、方向論を出しましても、それだけではいけないので、すでに私のほうでは昭和三十七年に農産物の長期見通しをつくりましたが、すでにもうこれは時期がずれておりますので、現在の段階において今後十年間の長期の需給見通しというものを、精細なものをいま作業中でございます。いずれこれを年内に農政審議会の御審議も経まして確立しておきたい、こういうふうに考えております。  そうすると、おっしゃるとおり最近は需要と供給との状況がかなり変わってきている。これは当然今後も変わっていくであろう要素を取り入れなければならぬと思うのは、生活高度化しますればでん粉質から動物性たん白質であるとかいろいろ変わってまいりますから、国民の米の消費量というものは個人的には伸びない。あるいは減るものもある。人口増があったにしても加工用原料があるにしても横ばいになる。そこで米の位置づけというものと他のものとの関係から生産対策でも変わってこなければいかぬというようなことになる。しかし一方において、農政というものは工業生産のようにあしたにぱっと切りかえができませんから、その間に農民に不安感を与えないようにいろいろ気をつかっていかなければならぬと思います。ただ生産制限すればいいという簡単なものではございませんから、やはりそこにフェードアウトするだけの国としての用意、施策としての用意をしつつやっていく、そういうむずかしさはございますけれども、率直に申しますと、はでな手ぎわのいい形でないにしても、方向を誤らないことと、それから安定的な供給と安定的な需要、これをねらいつつやっていかなければならないのじゃないかと思います。したがって、私どもはお米というものを、総合食糧の中の王座を占めるお米、こういうふうな考え方で、単に米を別ワクにしておいてという考え方ではなしに、総合食糧の中の米は何といっても主食だということで、需給見通しの問題としては、やはりお米というものは国産と申しますか、国内で維持をしていかなければならぬことは間違いないと思います。それから果樹、野菜あるいは肉、これはできるだけ努力していかなければならぬと思います。そういうものもございます。それからそれ以外に麦はどうするか。これは日本の国情からいくと必ずしも自給ということは困難ではないが、ある程度これは輸入に待つという計画になるだろうと思います。それから問題は、一つは飼料でございます。えさでございます。このえさにつきましても、草地というものをできるだけ入れて、自給の飼料というものをなるだけふやすような方向に持っていって、畜産の基盤というものを固めていくような努力を、長期見通しから出てくる政策の一環として扱っていくことが、いまの国民の需要の度合いに合うんじゃないか。  そうして、これをもって初めて国民経済の中における、農業であれば農業もりっぱに国民のためになって、しかも農業自体が、後継者が多少でも未来へのビジョンを持っていけるような方向へ用意をしていきたい、こんな気持でおるわけであります。
  103. 砂田重民

    ○砂田委員 おっしゃるように、農業の問題はきょう言ってあしたから変えられる問題ではございません。工場の機械の入れかえのようにはまいりませんが、米の河野構想というものが打ち出されてからもう六、七年たつわけでございます。あのときからすでに少し方向を転換しておいたならばと、何か悔やまれてならない気持ちがいたすのでありますが、やはり消費者米価というものは上げるばかりが農民のためではない。これは釈迦に説法でありますが、イタリアの人絹の糸と日本の人絹の糸がアメリカの市場で競争する場合に、イタリヤの人絹の糸を紡ぐ女工さんの食糧を確保しているイタリアの農民と、日本の人絹の糸を紡いでいる日本の女工さんの食糧を提供している日本の農家と、この提供するそれぞれの食糧の価格というものが人絹の糸に姿を変えてアメリカで競争をするわけでございますから、こういう米の値段が上がるばかりが必ずしも農家のためならずということを、農家の方々にもひとつ農林大臣積極的に御指導をいただいて、方向転換を勇気をもって取り組んでいただきたいと思うのでございます。ほんとうの総合農政がなければならないという感じがいたします。地域開発の問題やら雇用の調整やら、いろいろな問題が出てまいりましょう。農林省だけで答の出ない問題がたくさん含まれてくると思うのです。また総合農政ということから考えましたならば、総合という言葉の中に消費の問題、消費の場の問題も含めていっていただかなければなりません。自給率の問題も消費面を考えてきめられていくべきだと考えます。たとえば、わずかな自給率にこだわって輸入砂糖に重税を課しているというような現状は、経済社会や消費生活の変貌を考えていないという感じが私はいたします。およそ総合的ならざる一典型ではないかという感じがいたすのであります。したがって、総合農政は農林省だけで進めていけるものではない。政府全体が農林大臣に対して支援協力体制を強力におとりにならなければなかなか困難な問題だ、このように考えますので、各省にまたがる行政の調整を任ともしておられます経済企画庁長官にも、これからの総合農政との取り組み方の姿勢について伺っておきたいと思います。
  104. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まことに御指摘のとおりだと思っております。今年度の米価の決定等につきましても、消費者の観点からいえばいろいろもっと望ましい形があったかと思いますが、総合農政全体を転換していくとすれば、その一面だけでものは片づかないであろうと考えましたし、今後も私どもの持ち分において、農林省がそういう総合農政を展開されることに積極的に協力を申し上げたいと思っております。
  105. 砂田重民

    ○砂田委員 農林大臣、農林大臣がおいでになりますまでに配給の改善の問題で食糧庁長官伺いかけておりました。たいへんこまかい問題をお伺いしてみたいと思いますので、食糧庁長官からお答えをいただけたらけっこうだと思います。  先ほど大型精米所のお話を伺ったのですが、今度食糧庁でお考えになっておられます配給制度改善の一つの柱に、消費者は自由に小売りを選べるようになる、こういうことがありますので、小売り業者に競争原理が導入されるというので消費者はその成果をたいへん期待しているわけであります。  そこで、消費者は小売りを自由に選べますが、小売りは卸を自由に選べますか。
  106. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 末端の米穀の小売り商を、同一市町村内である限り、消費者はいずれを選んでもよろしいということにいたしたいと思いまして、現在検討し、なるべく早く実施に移したいと思っております。  小売りと卸の関係は、やや感情的答弁になるかと思いますが、現在の食糧管理制度のもとにおける配給の機構そのものでございますので、消費者と配給機構との関係と同一に見るわけには簡単にはまいらないというふうに私は思うのでございまして、現在の制度のもとでは、小売りが卸の選択をする、つまり従来の卸との手を切って他の卸へ移りたいという場合には、旧来の取引のあります卸、また新しく結びつきたいと思う卸の双方の同意がある場合、もしくは小売りが業務を営んでまいります場合にそれに非常に支障があると認められる場合というふうにしぼっておるのでございます。これを自由に選択ができるということにいたしますと、これはかなり取引の信用の関係によってつながっておる面もございますので、現段階で完全に自由にするというわけにはまいらない。ただ現在の規制のもとでも、運用上は、行政上の指導方針としては、小売りが卸を選択する際に、現在の実情から見て十分の理由のある場合には、これを従来のようにきびしく制限をするという態度は緩和をしてまいりたいというふうに思っております。今後の問題としては、小売りと卸の関係をできるだけ自由な方向へ向けていくということを検討はいたしております。
  107. 砂田重民

    ○砂田委員 消費者は小売りを自由に選べるようになる、小売りは卸を自由には選べないけれども、いままでやってきた行政よりは幾ぶん緩和をしていく、そういうふうに受け取っていいですね。  卸は農林省を選べませんね。卸は農林省を選ぶわけにいかない。そこでひとつ伺っておきたいと思うのですが、各県の食糧事務所というのは従来どおりの方式で卸に米を売り渡していかれますか。何かの改善策が考えられておりますか。
  108. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 従来と大筋において変更はない。当面は変更する考えはございませんが、ただ徳用上米の売り渡しについては原則的に全量ポリ袋詰めで配達するという約束のもとに売るということだけは変更いたしております。
  109. 砂田重民

    ○砂田委員 そういたしますと、小売りをわれわれ消費者が自由に選べるということから小売り屋さんに競争原理が持ち込まれる。実は、消費者は、小売り屋さんに競争原理が持ち込まれると非常に米がうまくなるような、私にしてみればちょっと錯覚を持つのじゃないかという気がする。それがあるので伺っておるのですが、食糧事務所が卸に米を売られますときに調整売却、セット売却ということばがありますね。このセット売却ということばは今日では食糧庁用語として使われておる。特別卸の問題以外については従来どおりの売り渡し方をするのだとおっしゃったけれども、きわめて品質の悪い常熟米のようなものを食糧事務所が卸に売り渡すときに、これをとらなければ次の内地米を売り渡すのを減らすぞ、あるいはとめるぞ、こういうような売り方を食糧事務所は従来は卸にしておられたわけです。これをとらない米屋にはその次の内地米は渡さないぞということが現にあった。こういうことをいままでどおりやるとおっしゃったのですが、これは品質の点にからんできますけれども、その卸は食糧事務所を選択できないのですか。食糧事務所がこういうセット販売を、いままでにあったような、まことに好ましからぬ米までそういう条件でお売りになるということも、いままでどおりにおやりになりますか。
  110. 田中勉

    ○田中説明員 ただいま食糧事務所の段階において調整売却と称して、その一つの例として常熟米のことをおっしゃられたわけですが、常熟米につきましては、昨年の消費者米価改定までは上米、並米みという配給品目の中の並み米のワクの中に入れておりました。昨年の消費者米価改定にあたって、徳用上米と徳用米は今後も継続していくわけでございますが、常熟米は希望配給の徳用米ということにいたしておるわけでございまして、少なくとも昨年米常熟米のセット売却ということはもうなくなっているということでございます。  それから、卸が食糧庁を選べるかという一つの例としてセット売却の問題を御質問いただいたわけでございますが、御承知のように、国内米とは称しますけれども、東北の米、北陸の米あるいは西日本の米、それぞれできた場所によって持ち味が違うわけでございますが、そういう東北の米、北陸の米あるいは西日本の米というものを消費地において、これを搬入いたしました場合には卸ごとにその辺の割合がおおむね均一化されるような売却を極力いたしておるわけでございます。ただ、内地米等につきましても、いろいろ北海道米のように評判の問題がある米もなくはないわけでございますが、こういうものもやはり見方によれば一部の卸なり一部の特定の人に片寄ることのないように、それを悪く申しますとセット売却ということになるかもしれませんが、現在は内地米につきましてはできるだけ各地帯ごとのものをなるべく均一になるような形で卸さんに売る、こういうことでございます。
  111. 中山マサ

    中山(マ)委員 ちょっと関連して伺っておきますが、私が考えておりますことは、政府が予約米だけを買って、そしてそのあとは自由に販売させるというようなことはお考えになったことはないでしょうか。農民はすべて生産米を政府に売らなければならないという原則には、もう何にも変更をお加えいただくことはないのでございましょうか。これはある農政の大家のお話を聞きますと、予約米だけを買って、あとは自由に売ったほうが消費者も得心するということでございます。大阪あたりではこのごろ四十三円の値切り運動が婦人団体によって始まっております。結局市から出ている消費者団体の代議士が少ないから農村代議士にしてやられて、あなた方には力がないのだと、私ども消費地の代議士は非常に責められておるのでございまして、それならば私どもは値切り運動を始めますと言って、堺のほうでは四十三円値切って、団体としてお米を小売り業者から買うているというような妙なことが始まっておるのでございます。こういうことを考えますと、小売り業者がまことにお気の毒な立場に追い込まれていくのではなかろうか。大阪はいわゆるがめつい人間がおるというような定評もございますし、そういう運動が広がっていくと、私は小売り業者の方々に対して非常にお気の毒なことができるのじゃないかと思ってこの運動を静観しているわけでございますが、このいわゆる根本理念、すべての生産された米は政府に売らなければならないということには、今後お手かげんを加えていただくようなことはあり得ないのかどうかということをちょっと伺っておきたいと思います。
  112. 西村直己

    ○西村国務大臣 基本の問題でございますので、私からお答えをいたしたいと思います。  一つは、買い付け制限をしたらどうか、こういう論も相当あることは事実でございます。ただいまの食管法の精神、たてまえは、基本的には、米が足りないときに、戦争中にできて、どちらかというと消費者保護のようなたてまえで、生産者につくっていただいたものを、飯米を残してあとはできる限り出していただく。政府が命令をしたものは義務供出をする。そこで食管法のたてまえとしては、政府の命令するものは出しなさい、こういうことになりました。政府が命令したものは義務で出しなさい、あとは飯米でとっておいてよろしい。飯米で食べないものはどうするのだ、こういう理屈が法律上は出ます。ところが政令のほうで今度はもう一つ縛りまして、米をつくった人はよそへ売ってはいけないという制限が一本ついているわけでございます。そういうようなかっこうでございますので、現在の法律と政令を組み合わせますと、結局いまのような、自由流通の面ができないようなかっこうに一応なっております。  そこで、それをどうするかは一つの大きな制度上の問題、やはり農民としては、つくったものは買ってもらえればいいという安心感がございます。しかし、一方において、悪口になるかもしれませんが、安易感が出まして、それなら量をつくって、極端になれば量だけ売ればいいということになりますと、消費者のほうの保護の面が抜けるような印象がございます。量だけつくって、自分のつくったいいものは食べてしまって、あとはどんどん政府に押しつければいい。そうすると質も上がらないでいくという、確かに消費者のほうからの御不満が強くなってくる。少なくとも当分いまのような需給緩和状態は続くという前提でありますれば、ことしもそれを何らか価格に反映さしたい。少なくとも、制度の問題は抜きましても、価格形成の上で需給状況を反映すべきじゃないかといって、御存じのようなシグマ、いわゆる限界反収のところは少し遠慮していただいて、多少平均反収に近づけたらどうかという政府の原案の時代もありましたが、すでに刈り取りの時期に来てそういうことをいっても生産農民に通らぬであろうというようなことから、ことしはそういう論が実行になりませんが、少なくとも来年に向かっては米価審議会に、政府といたしましても需給の状況を価格に反映する方法はとります。ただその方法をどういう方法でとるかは、いまの食管法あるいは食管法に基づくまた付帯したいろいろな制度、同時にこれは各方面の御意見というものもありましょう、そういう中で需給が緩和してきた情勢というものを価格のほうへ反映することが一つ。  それからもう一つは、ことしは予約というものを取りつけておりましたが、ああいうような行き方でみんな買ってもらうつもりでどんどん予約をしますれば——一応九百三十三万トンという予約申し入れになっておりますが、そういうような行き方がいいのか、あるいは別の形で、農民がせっかくつくったものをこの程度は買うという何か、制限でいくのか価格でいくのか、少なくとも需給の緩和を反映させることと、それから何らかの形で消費者生産者も安定しながらやれるところをくふうをしていかなければならぬ。ただ、事柄が、関係者があまりにも多いことでありますから、こういうことは理屈だけでドラスティックにやっていくといって、何にも結果がうまく成功しないのでは混乱だけ残りますから、十分各方面の意見を徴しながら、しかし最終的には私がいま申し上げましたような結果というものを打ち出すように努力したい、これが私のただいまの心境でございます。
  113. 武部文

    武部委員 砂田委員の質問にちょっと関連して……。  前の委員会で私が質問をしたときに、次長から答弁がありましたが、はっきりしなかった。はっきり私のほうとしては受け取りにくかった問題です。それをいま砂田委員から質問がありました。  小売りが卸を自由に選択できるかどうか、また、すべきじゃないか、こういう点について、これは食糧管理法施行規則第十八条の四項にそのような規定があるので、その規定をうまく運用すればできるんだ、こういう話がありました。ところが、長官は当時欠席しておられましたが、御存じのように、北海道の留萌、帯広で紛争が起きました。北海道庁が出たけれども、これはもう問題にならない。公正取引委員会の手にかかっているわけで、熊本県の人吉でも裁判ざたになっておる。この十八条の四項というのは全く死文化しておるのですよ。だから裁判にかかったり公正取引委員会が出たりしておるのです。したがって、小売りは卸を自由に選択できるように、十八条の四項というものは撤廃すべきじゃないか。消費者が小売りを自由に選択できるなら、小売りは卸を自由に選択できる、これは当然なことじゃないか、こういうふうに考えるのですが、ひとつ長官の答弁をいただきたい。
  114. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 先ほど砂田委員にもお答え申し上げたのですが、小売りについて消費者が自由に選択できるというのは、現在の配給機構と一般国民との関係でございますので、同一市町村内では自由に選択できるということから、いろいろ小売りの指摘されております問題を、消費者の選択ということである種の競争原理を働かせるということから、より適正な、あるいはより消費者に対するサービスを向上させていくということに役立てたいという考えでございます。  小売りと卸の関係は、食糧庁、それから卸売り業者、それから小売業という配給の機構でございまして、配給の機構というものには、やはり少なくとも現在の制度運用の中では、一定の安定と秩序というものが必要だろうということでございますので、お話しのように全面的に自由に選べるということは、私は時期としては尚早であるというふうに思うのでございます。ただ、御指摘のように、施行規則に選定がえをする場合の規定が置かれておりますので、小売りが選定がえをしたいという場合に、正当な事由があるというふうに認められる場合は、従来はどちらかといえば秩序なり安定ということに重点を置いた運営をしてまいりましたが、今後この規定の運用にあたっては、小売り商の言い分に正当な事由があれば弾力的な運営をしていきたいということを申し上げたのでございまして、現段階で直ちに完全に自由な選択を認めるということは、私はやや時期尚早ではないかというふうに思っております。
  115. 砂田重民

    ○砂田委員 次長の御答弁で大体わかりました。     〔委員長退席、武部委員長代理着席〕 昨年までは、常熟米のようなああいう悪い米は、十分考慮を払いながら配給していくということであります。そして各種の配給米が食糧事務所から卸に売り渡されますね。そうすると、そのときに卸の側では選択の自由なしにそれを買って、小売りもまた卸からたいして選択の自由なしに仕入れなければならない。そうすると、小売りが消費者のために混米してこの米をうまくするというのですか、格上げすべきどういう米があるのか。一体、小売り屋さんに競争原理を持ち込むというけれども、小売り屋さんに持ち込む競争原理というのは何を競争させるのか、長官いかがですか。
  116. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 御指摘の御趣旨は私もよくわかるのでございます。元来完全な意味の競争原理ということであれば、価格の面における競争の原理か、あるいは品質の面における競争の原理か、あるいは付帯するサービスの競争かというようなことに相なろうかと思うのであります。価格なりあるいは品質の問題になりますれば、仕入れについての自由がなければ完全な競争ができないという意味では、私は御指摘のとおりだと思うのであります。ただ、現在の段階におきましても、小売りの段階でくふうをすれば、消費者の嗜好に合うようにする余地は皆無ではない。たとえば、私はほとんどの小売り業は誠実にやってくれてるとは思いますけれども、規定の歩どまりをきちんと守って配給をするかどうか、あるいは場合によっては、この品質の米はやや歩どまりを上げ、あるいは一、二等のような歩どまりの高いものについてはそれなりのくふうをするというようなことで、混米をするというようなことも、それはなお余地があると思うのでございます。いわんや、世上伝えられておりますように、小売りが消費者のほうから見れば好ましからざる売り方をしておるというような事情のもとにおいては、やはり消費者の小売りの選択ということを通じて、私は是正の方向は期待できるのではないかというふうに思っておりまして、今回考えておりますことは、むしろ将来の小売り業界のあり方というものに対する先行的な措置という意味のほうが、私は意味があるのではなかろうかというふうに思うわけであります。
  117. 砂田重民

    ○砂田委員 不徳義な小売り屋さんを消費者の選択によって排除していく、そういう効果を期待しておられるように伺いました。そういうふうに考えてよろしゅうございますね。
  118. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 善良誠実な小売り商を選択すれば、その反対のものはおのずから取り扱い量が減るという結果が生まれましょうし、それが度を越せば、一定の限度になれば、むしろ小売り商としての適格を失うということにもなるかもしれないと思います。
  119. 砂田重民

    ○砂田委員 いま歩どまりの話が長官からあったのですが、歩どまりといいますか、精白度といいますか、これは農林省がおきめになるわけですけれども、四十二年産米の歩どまりが幾らで、四十三年産米の歩どまりが幾らになるのか。
  120. 田中勉

    ○田中説明員 歩どまりの問題につきましては、食糧庁が米屋に売ります場合に、売り渡し価格の中にマージンということで大体見込んでおる歩どまりがあります。これは全国平均、一−四等では大体九〇・八三%ということで、マージン算定の基礎に使っておるわけでございます。もちろん県ごとには多少の違いはあるわけでございますが、一応全国一本でマージンを算定する場合におきましては、一−四等平均九〇・八三%ということになっております。それは昨年まで実施しているわけでございますが、これから消費者米価を改定いたしますので、改定をいたします場合におきましては九〇・六九ということで、その間の過去における実績歩どまり、また歩どまりの低下傾向というようなものを織り込みまして、今度は九〇・六九ということにいたしておるわけでございます。
  121. 砂田重民

    ○砂田委員 マージンの計算の基礎になっておるというところで精白度がきまってくるわけですね。ですから、小売り屋さんが自分の採算上、精白度というものはあるいは若干の上がり下がりがあるかもしれない。そこで古米の現在の乾燥度からすれば、八九%くらいに歩どまりを押えたならば消費者の苦情がない味が出せる。なぜ精白度を少し今回の消費者米価改定の機に変えないか。古米古米といってあれほどきらわれるのですから——私は古米古米といってきらうほうもちょっとおかしいんではないかと思う。いまわれわれ食っている米のことなんですから、古米古米というものも。だけれども、うまい米を望んでいる消費者意向というものに沿って、歩どまりをもう少し変えて、もう少しよくついて出せば消費者の喜ぶ古米になるんじゃないか、こういうふうなことを考えるのですが、こういう消費者要望に今回は全然こたえていない。歩どまりの点ではこたえようとしていない。米屋に競争原理を導入することも必要ではありますけれども、精白度を高めて、うまい米を消費者にという、消費者の強い要望にこたえるということをお考えにならなかったですか。
  122. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 いま次長からお答えいたしましたのは、ごくわずかでございますが、標準精米の歩どまりを実証的に検討いたしました結果、従来の歩どまりよりもやや下げたわけでございますが、そのほかに、明年の一月以降三月までの間は、古米について歩どまりを一%引き下げるという措置をとるつもりでございます。
  123. 砂田重民

    ○砂田委員 若干歩どまりを下げたほうが米のうまくなることは事実ですね。忍者米というのを御存じですね。忍者米というのは、檜垣さん、あけるとかびがわあっと煙のように立って、向こうであけた米屋の姿が見えなくなるから忍者米というのですよ。こういうものが——先ほど田中次長は、常熟米の配給については考え直しているんだとおっしゃったけれども、いまだにこういう忍者米というものがやはり食糧事務所から卸に配給されている。現に私はこの間私の郷里で、福島四号という、幾らついても白くならない米も現についているところを見てまいりました。こういう米がたくさん出ているんです。消費者がうまい米を食わしてくれという要望が非常に強いことは御承知なんだけれども、この歩どまりをもう少し考慮して、消費者米価を上げるけれども、これだけのうまい米にして出すんだというようなことはお考えになっていない。私はまことに残念だと思うのですね。こういった米を選択の自由なしに卸は食糧事務所から配給々受けているわけです。やはり精白度というものをぼくは高めるべきだという感じがするのです。これはひとつ研究、御検討いただきたいと思います。  時間があまりありませんから先へ進みますが、先ほど同僚議員から関連質問がありましたお米の値下げ運動のことを伺っておきたいと思うのですが、幾つかの消費者団体が米を安く買う運動を起こして、先ほど堺のお話がありました。これは、物価統制令による政府の配給価格、小売り価格というものは最高価格であって、消費者は配給の小売り価格を値切ってもいいんだという食糧庁長官の発言が根拠となって、こういう値切り運動が始まったというふうに新聞は報道しておりますけれども、そういうお考え、そういう解釈が正しい解釈なんですね。
  124. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 新聞の報道にすべて私が責任を負うわけにまいりませんが、この問題が起こりましたのは、米価審議会の際における委員との問答の過程において起こったものであります。現在の末端の消費者価格というものはいかなる法律根拠に基づくものかという御質問がございましたので、私は、物価統制令に基づく価格統制でございます。それに対して、そうすれば、物価統制令のたしか第三条だったと思いますが、統制価格がきめられればそれをこえて販売をしあるいはそれをこえて契約してはならないという規制があるので、最高販売価格以下で売ることは法律違反ではないなという御質問がありまして、私はそのとおりでございますということを申し上げたわけでございます、それでは、消費者が最高販売価格である消費者米価をもっとまけてほしいという言い方は、違法を強制するものではないなという、非常に巧妙な質問がございまして、それは違法を強制するものではございませんという答弁で終わったのでございます。私はその際に、法律解釈は以上のとおり間違いないと思いますが、最高販売消費者米価は、私ども政府としては、マージンにいたしましてもあるいは加工賃にいたしましても、厳正な査定を加えまして計算をいたしておるものでございますから、誠実に配給をする小売り業者にとっては、私どもとしては適正価格であるというふうに承知をいたしております。したがって、かりに値切るということが違法でないにいたしましても、値引きが行なわれるということはなかなか期待できないことであろうというふうに私は思います、ということをつけ加えて答えたのでございます。それが真相でございます。
  125. 砂田重民

    ○砂田委員 長官のお考えはよくわかったのですが、現に、先ほど同僚議員からお話しのあったように、堺では値下げを承知した米屋さんが出てきているのですね。その値切ったほうの消費者団体の団地の奥さん方がけさもテレビに出ておったわけです。その方々がおっしゃる話を聞いていますと、値切った値段のことばかりを話しておられる。しかし私は、消費者というものは値段と質、味のかね合いが問題だろうと思います。いまおっしゃった小売り屋さんのマージンというものが適正なものであるとするならば、値切られた小売り屋さんはそれじゃどこへ逃げ道を見つけるだろうか、たいへんな問題だと思いますので、もう少しこまかいことを伺っておきたいと思うのですが、消費者と小売りの間で、あの堺の団地の奥さん方のように、いわゆる最高価格以下できめられた価格消費者と小売りとの両方が相談をして最高価格以下できめられた価格というものは、政府が公示した価格ではなくて、消費者が選択をした価格というふうに理解をしていいですか。
  126. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 最高販売価格でございますが、私は先ほども申し上げましたように、誠実な業務を行なっておる米屋については適正価格であると信じております。事例について私も詳しく承知をいたしません。ただ新聞紙上では私も見ました。その場合に、私推測いたしまするに、私どもが適正な価格であるというゆえんは、戸別に配達をするという労賃等を織り込んでございますので、集団的な配給等を行なう場合に、若干のそういうコスト低下というものを消費者にサービスとして提供するという場合は絶無と私は言えないと思うのでございます。その場合に、かりに何がしかの値引きをいたしたといたしますれば、それは最高販売価格の範囲内で消費者と販売業者との合意した価格であるというふうに私は理解をいたします。
  127. 砂田重民

    ○砂田委員 わかりました。そうすると、小売りがそういう集団的に配給すれば手間が省ける、人件費の節約ができるというふうな場合にのみ考えられるかもしれないのであって、小売り屋さんが、消費者が選んだ価格をきめるときに約束した味と品質を維持していく努力をするのでしょうけれども、それに対しては卸、食糧事務所というものは何の協力もする余地はありませんね。そういうことですね。
  128. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 政府が卸売り業者に販売します価格水準は農林大臣の告示をもって定めるのでございますので、これは一般的にいって協力のしようがないのでございます。卸と小売りの関係については、これは消費者と小売りの関係に準じて御理解を願ってよろしいかと思います。
  129. 砂田重民

    ○砂田委員 そこで、そういう消費者と約束をした価格消費者と約束した味と品質というものを小売り屋さんが引き続いて維持、努力をしていくわけですが、小売りが卸に、卸が食糧事務所に対して選択の自由がないのですから、せめて消費者、小売りが望むような味についての選好を幾ぶんなりとも可能ならしめるような、そういう政府売り渡し段階での米の幾つかの分類くらいはできそうなものだという感じが私はするのです。この趣旨から新しい検査方法もまた考えられるのじゃないか、こういうふうな減じを私は受けるのですが、小売り屋さんにばかりこういう努力をさせないで、味のことも含めた売り渡し段階での何らかの分類ということについては、食糧庁は検討しておられませんか。
  130. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 先ほど次長からの答弁もございましたように、食糧事務所としては、全国各地から参ります米を、大体常識的な意味では産地あるいは銘柄によりまして、消費者の嗜好というのは推測ができるわけでございますので、それの組み合せをなるべく公平にするということに努力をしておるということでございまして、この段階で、御指摘は、いま一歩突っ込んで産地、銘柄別の把握をした上で、それなりの売り渡しをしたらどうだということのように承れるのでございますが、完全統制下における産地、銘柄の格差の問題はなかなかこれは設けようがないのでございます。私ども、先ほど農林大臣からもお答えいたしましたように、消費者の選好によって生産が刺激され、あるいは価格が形成されるというようなことに何らかのくふうをこらして制度改善ということを考えてまいりたい。私はむしろ今後の食糧管理の改善の方向の際に考えるべきことではないかというふうに思っておるわけでございます。
  131. 砂田重民

    ○砂田委員 米屋のマージンというのは何月にきめるものですか。
  132. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 米屋のマージンをきめますのは、原則的には予算編成の際でございます。ただその時期、その年の事情によりまして、一部それ以外の時期、たとえば消費者米価改定の時期等に一部それに触れることもございますが、原則的には予算編成のときでございます。
  133. 砂田重民

    ○砂田委員 そうすると、来月から消費者米価が改定されますけれども、小売屋さんのマージンというもの、卸屋さんのマージンというものは来月改定されますか。
  134. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 先ほど申し上げた、ごく微細ではございますが、それでも二十数億の財源を要するのですが、歩どまりの修正は、これはある意味でマージンに関係することでございます。それ以外の問題については、消費者米価の改定において小売り、卸のマージンに手をつける考えはございません。
  135. 砂田重民

    ○砂田委員 参議院で長官は、小売り屋さんが旧価格に基づいた差益を消費者に全部還元するといいますか、新価格と旧価格の差益を小売り屋さんは消費者に還元するように売ってはどうかという発言をされたそうですが、この点どういうふうなお考えでおられるのか。
  136. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 消費者米価の改定がございますと、卸なりあるいは小売りの段階において、いわゆるランニングストックがあ程度あるわけでございます。その分は、言うなれば米穀商の何らの努力関係のない所得増になる、不労所得であるということから、国民感情としてこれは政府が回収をすべき性質のものではないかということで、かねがね決算委員会等で御指摘があった点でございます。卸の問題につきましては、私ども従来から一部を納付させておりますが、ことしもまた私どもはもっと前向きに、業界と話し合いの上、措置をいたしたいと思っております。ただ小売りにつきましては、全国に五万六千以上の米屋がございまして、それの価格改定時点における在庫量を一々把握をして公正に回収をさせるということはほとんど不可能に近い。これも御承知のことと思いますが、差益回収に関しての何ら法的根拠もない。かつて物価統制令にありました差益回収の根拠法規も廃止されておるというような段階で、業界の納得の上で納付してもらう以外はないのであります。しかも政府とは直接契約関係がない、小売りと政府の間には何らの契約関係もないわけでございますから、ほとんど回収ということは不可能に近い。ということになればその差益が発生する。そのいわゆる旧価格による仕入れの米というものについては、小売りが当然利得をしてよろしいともこれは言いかねるわけでございますので、消費者に還元する、消費者にその利益を与えるというような考え方で処理することが、一番具体的には適当ではないかというふうに私は申し上げたのであります。
  137. 砂田重民

    ○砂田委員 そうすると、新価格で来月から小売り屋さんがお米を消費者に売るわけであります。その価格差益は全部まけてしまう。そうなると、いまお話しがあったような新価格からの値引きといいますか、ある消費者団体からの要望による値引きというものは、新しい価格になればそれだけ値段が上がるわけですから、小売り屋さんはいまのマージンを続けていくので、新しい価格が上がった価格ということになると、運転資金についての金利その他考えた場合には、小売り屋さんの必要経費はむしろふえるのであって、ここからも消費者の要望に沿っての値引きというものは、小売り屋は非常に困難だというふうに解釈してよろしゅうございますね。いいか悪いかだけでいいです。
  138. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 確かに、末端において平均八%の値上がりがあれば、その限りにおいて運転資金に対する金利の負担が加わるということになるわけでございます。ただ、その部分は差益の部分から控除していいとか、こまかい話は実際問題として私は現実にはできないと思うのでございます。八%の金利の部分についてどう考えるかは、私どもも次のマージン改定の際に念頭に置く必要があるだろうとは思いますが、それがあるから差益は当然小売りの利得として見のがしてよろしいものであるというふうにも言いかねますので、現在の配給の段階で、小売りの規模等にもよりますけれども、いろいろ苦しい事情もわからぬではございません。ございませんが、そういう価格の改定という行政行為によって利得が生じますものは消費者に還元していく、そういう小売りの態度が望ましいというふうな考え方で申し上げたのでございます。
  139. 砂田重民

    ○砂田委員 こまかい問題をもう一つだけ聞いておきたいのですが、現行マージンの中にはぬか代が計上されておりますね。いまのマージンをきめるときにぬか代を幾らに見ておられるか。いま、ぬかの値段は大体どのくらいしておるのか。
  140. 田中勉

    ○田中説明員 三十キロ五百七十円ということで現在のマージンの中に計上されております。それから現在の価格は、夏場の状況と秋場になってまいりましたのとでは若干違ってきておると思いますが、五百円という、全国必ずしも一律でもございません、地帯によってもだいぶ違うようでございますが、織り込みの五百七十円を相当下回っておるというような現状であります。
  141. 砂田重民

    ○砂田委員 ここからも、お米屋さんが消費者団体から幾ら交渉を受けても、いわゆる政府のきめられた価格を値引きするような余地が非常にない、こういう印象を受けるわけなんです。  農林大臣、食糧庁長官から非常にこまかい話をいま伺ってきたのですが、お米屋さんの努力だけでは、うまい米を食わしてもらうのは非常に困難なような感じを私は受けました。  私はここに家庭用米の政府の売り渡し量の四十年から四十三年までの比較をした表を持っているのですが、全体的に消費需要がたいへん減っております。しかしその中で上米の需要はふえて、並み米、徳用米の需要がべらぼうに減っている。全部計算してみると需要が全体に減っている。やはりこれは私は、消費者がうまい米を食べたいという意欲がここに非常に如実にあらわれているという感じがするのです。  それからもう一枚、私はここに水稲の主要品種の作付状況の推移のリストを持っております。一つ例を申し上げますと、昭和三十七年には上位十位に入っていなかったフジミノリという多収穫米が——味はまずいというふうに聞いておりますが、味はまずいけれども非常によくとれる米が、昭和三十七年には上位十位に入っていない。昭和三十八年には第五位。昭和三十九年には第二位。四十年、四十一年、四十二年と、フジミノリが作付率と出回り率のトップを占めております。  やはり私は、うまい米を食べさせてもらいたいという消費者の意向に沿っていただくには、米屋さんの努力だけ、食糧庁の配給部門での努力だけではなかなか実現がしにくいのではないだろうか。農家の方たちに、うまい米をつくるのがもうかる道なんだという気持ちを持ってもらうことが、消費者がうまい米が食えるただ一つの道じゃないかという感じがする。これから総合農政と農林大臣が取り組んでいかれますについて、農家の方たちに、うまい米をつくったほうが得だ、金もうけはうまい米をつくることなんだという意欲を持たせていただくような、そういう方向で総合農政と取り組んでいただけるかどうか、これだけを農林大臣に伺って、私の質問を終わります。
  142. 西村直己

    ○西村国務大臣 一番大事な点でございます。確かに配給面だけでは、消費者の選好にこたえるようにするのには限界があると思います。きのうも配給関係の業者からも、私会いましたが、配給業者の努力というのは農林大臣がいまやっている、代弁しているようなもので、非常に限界があるという。確かに私は限界があると思います。しかしそれはそれなりで、当面の措置としてやっていただきたいと思います。同時に今度は、経済の原理というものがある程度生産の面にも入れるような仕組みはやはりくふうしなければ、おっしゃるようなことはできないと思います。ただこれになりますと、全国に広がっています生産農民に不安定な状態を起こさないようにどうしたらやり得るかというようなことを十分考えた上でいきませんと、いたずらにただ摩擦だけが残って、何ら結果が得られなかっただけではまたいけません。そういうところを私は政府の立場におきまして、また民間なりあるいは全般の広い政治の視野からもいろんな御意見伺いながら、その御協力のもとで、できるだけ国民経済の中で、何といっても農業消費もすべてが国民経済の中で有効適切であるということが本来の姿でなければいかぬ、そういうふうな方向へ私は努力をしてまいりたいと思います。
  143. 武部文

    武部委員長代理 木原君。
  144. 木原実

    ○木原(実)委員 だいぶ時間が経過をいたしまして、大臣のおられる時間も乏しいようでございますので、簡潔にお伺いしますので、ひとつ大臣から基本的なことをお答えをいただきたいと思います。  米の問題でございます。同僚委員からのお尋ねもあったかと思いますけれども、食管の改正につきまして、御案内のように政府部内でもいろいろな意見があるやに聞いております。この際、特に来年の予算の編成等とも関連をいたしますけれども、食管の改正について、農林大臣はいまの段階でどのようなお考え方を持っておるのか、ひとつかいつまんでお話しをいただきたいと思います。
  145. 西村直己

    ○西村国務大臣 私といたしましては、一つは来年の予算編成の中において、食糧管理体系と申しますか、そういうものがどういうものであるべきかというのは、現在の需給量を考えてまいりますこと、それからもう一つは古米処理も大きな問題だと思います。それからいま一つは、ただいままでもお話しがありましたように生産者消費者、これの利害の長い目の調節の中におきまして、食糧管理の制度なり運営なりという問題が当然やはり検討されなければいかぬ。しかしそれはそれなりで、それだけの部門を取り上げてはいけませんから、かたわら私どもはやはり農政全般の中でそれを取り上げていくという努力をする。こういう三つの柱で考えてまいりたいと思います。  一つは、予算編成のときにこういうものに対する考え方というものは当然立てなければいかぬだろう。いま一つは、食糧管理制度あるいは運営という問題。それからもう一つは、生産者もあり国民の他の需要もあります。そういう総合農政的な面も考えていく。この三本の柱の中で考えていく。  それで、食管制度そのものにつきましては、できるだけ整理をしてまいりたい。これは法律的にやれるものもありましょう。あるいは運用でやれるものもありましょう。あるいは政令と申しますか、そういう分野にあるものもありましょう。それからもう一つは、それがどういうふうな関係方面にいろいろ影響を与えるかということも十分見届けながら整理をしてまいりたい。したがってそういう意味では、単に官庁で内部的にきめたものをただ押しつけるというよりは、できれば広い視野で、他の意見もあわせて十分聞きながらやってまいりたい。これが、私の持っておりますただいまの基本的考え方でございます。  具体的に運んでまいりますには、当面運用上すぐできるような事柄は、ただいまの配給面の選好的な事柄である。食糧庁長官が先刻来答弁されましたように、十月一日からでも、あるいはものによっては一月一日からでも、運用面でできるものはやはりやってまいりたい。それから、たとえばこういう問題も御議論は出ているところでございます。くず米というものが相当出ます。それでも、これだけ国民食糧が余ってきているときに、くず米であっても何でも従来どおりただ買うのがいいのか。あるいは、災害というような場合には買わなければならぬけれども、それ以外にはひとつ自由な形で御処理願うほうをとるべきか。そういうようなことも、私どもとしては運用上の問題として、一歩一歩前進さすように努力をいたしておるのが現状でございます。
  146. 木原実

    ○木原(実)委員 もう一つ伺いしておきたいのですけれども、特に食管改正の問題が論議の対象になり始めました基礎には、需給の緩和ということがございます。私ども見ておりますと、この需給の問題につきましてはたいへん波があると思うのです。したがいまして、この一、二年はたいへん需給が緩和した形になっておりますけれども、やや長期的に、十年、二十年とは申しませんけれども、少なくともあと五、六年くらいの見通しの中で、一体需給見通しについてはどういうお見通しでございますか。
  147. 西村直己

    ○西村国務大臣 これは先ほど申し上げましたように、長期の見通しとしては、全体の食糧というものを正確なデータによりまして、十年間くらいの食糧あるいは農産物の長期見通しというものをつくり上げて、それをさらに政府の正式の諮問機関であります農政審議会でも検討してもらいましてやってまいりたい。実は三十七年につくったものがございますが、もう時代がだいぶ変わっております。  それからもう一つは、米自体の需給見通しにつきましては、私はむしろ政治の立場でございますから、あるいはそういうものについては権威がないかもしれませんが、専門家方面でこの点につきましては、ずいぶん検討もしたようでございます。そして七月十三日に、当分の間、米の需給の緩和はここしばらくは続くであろうという前提のもとに、それならば従来の足りなかったということを前提にしたような形での食管制度についてはくふう改善を加えるべきではないか、こういう意見を出しております。そこで、当分の間という考え方でまいりますと、先ほど来議論が出ておりますように、米の消費が横ばいと申しますか、個人当たりの消費は多様化し高度化しておりますから、米自体の消費は伸びにくい。農家においてもしかりでございます。一方、平年作におきましても、今日の技術水準なり農民の努力なりあるいは肥培管理、水の管理等々を全部考えてみますと、千三百万トンあるであろう。消費のほうは千二百五十万トンで大体横ばい状態ではないか。そうなると、平年作をとりましてもそこに毎年累積されていく余剰米が多くなっていく。こういうような判定のもとに、当面しばらくの需給状況というものは緩和される、こういうふうに見ておる状態です。
  148. 木原実

    ○木原(実)委員 それに関連して、特に昨年からことしにかけての米が余ったという問題ですけれども、これは私どもの判断では、四十二年度の作柄が非常によかった、こういう直接の原因があると思うのですが、これはどういうふうにおとらえになっていらっしゃいますか。
  149. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 米の需給が急に緩和いたしましたのは、四十一米穀年度からでございます。四十一年産米が、御案内のように千二百七十四万トンというような生産量になりまして、初めて持ち越し量が約六十万トンばかりのものが出たわけでございます。その上に、四十二年産米が史上最高の千四百四十五万トンというような量になりましたために、本年十月末の持ち越し量が精米で二百六十五万トン、玄米にいたしますとおおむね三百万トン、正確に申しますと、二百九十二万トンばかりになるわけでございます。  需給が非常に緩和しましたのは、いま申し上げましたように、生産がふえたということが一つでございますが、同時に消費が実は減退いたしておりまして、昭和三十五年に総消費量が最も多かったのでございまして、消費量は千三百四十万トンばかりの消費量だったわけです。ところが、昭和四十一米穀年度の総消費量が千二百五十万トンということで、五年間に約百万トンばかり総消費量が減っておるのでございます。四十二年の総消費量もおそらく千二百四十万トン、十万トンぐらい減っておるのじゃないかと思われます。現在の生産水準は、平年作で、昨年の作付面積と同じといたしまして千三百二十二万トン程度というふうに計算いたされるわけでございます。でございますから、平年作の水準を続ける限り、現在の需要量が急増するとも思えませんので、やや過剰の状態が続くことになるというふうに思われます。ただ、長期の見通しはそう簡単には申し上げられませんが、当面の需給は、そういう関係になっております。こういうことでございます。
  150. 木原実

    ○木原(実)委員 いまの問題につきましては、大臣お帰りになってから、あとでもう少しやりたいと思いますけれども、大臣おいでの間に、もう一つ伺っておきたいのです。事は主食の問題でございますから……。  米という問題につきまして、米麦斜陽論なんということばがあるわけですが、いまの日本の農業生産構造の中で、米というものについての一つの位置づけといいますか、     〔武部委員長代理退席、委員長着席〕 だんだん比重が減っていくのか、それともほかの要因もあって、農業生産の構造の中で米の持っておる特殊な位置といいますか、基幹作物としての位置づけというものは、ここ当分変わらないのかどうか、施策の上での大臣のお考え方を承っておきたいと思います。
  151. 西村直己

    ○西村国務大臣 米は、先ほど来申し上げましたように、主食のキングと申しますか、食糧の中のキングでございます。ただ米だけを心配して他のものは全然理解しないでもいいのか。特に先ほど来申し上げますように、農政費の上で、米の生産というものに対して、食管の赤字、それから米のいわゆる共済の補てんであるとか、あるいは米のための土地改良であるとかいうのに相当部分が今日まで充てられてきております。残った部分で、畜産なり果樹なりあるいは他の水産その他がずっとやられていくような形でまいる。しかもその上に、さらに食管の赤字で財政負担がふえてまいります。かりにどう努力を農林予算につぎ込みましても、これが三千億なり四千億なりになっていきますれば、やはり他の部分が伸びない。そうなりますと、これはむしろ国際的な輸入にたよっていく、こういうような片よった姿になります。一方、当面は、しばらくの間は米の需給が相当緩和し、ある段階には、二つゆを越してしまうというような古米が相当量できる事態が近づいてきております。そうなりますと、食糧の中のキング、王座を占めておる米は、米なりで大事にはいたしましても、私どもといたしましては、ある程度そこに、農政の中でバランスをとっていく段階ではないか。そこに総合農政という考え方一つは持ったわけでございます。  それから、したがって、私どもは米をいじめるという考えは絶対にございません。米はやはり大事にしなければならない。しかし、それでは米だけでいいのか、こうなると、やはり国民の需要に合ったものでなければ、長い目で見た場合に、つくられる農民自体がはたしてそれでほんとうに安定されるのかどうか、疑問に思う点もございますから、むしろそういう努力を続けていきたい。かりに非常に国民にきらわれると申しますか、供給しても受け取りにくいような、形は米であっても——たとえば一番いい例がビニール栽培、これにも多少補助金を出さざるを得なかった必要があると思います。しかし、これは私は一種の人造米と思います。地力のない、化学薬品によってつくった人造米、こういうものまでを、国なり県なりの段階で世話していく段階ではないのではないか。そういうようなもの。それからもう一つは、本来地力を持つ、それに適した米産地というものは、日本の中に相当ございます。その主産地というものにやはり相当努力していくというようなことも必要じゃないか。米の値段がいいから、何んでもかんでも米に転換していくのだ、排気ガスの相当強いようなところまでが米にどんどん移っていくとか、それだけではいけないのじゃないか。そういう意味で、米は大事にしますけれども、米をいじめるというような考えはございません、大事にはするが、大事なりに、全体の中で王座を占めて、その王座が安定していくような形での調和のとれた農政、また食糧全体の調和がとれるように、こんな気持ちでございます。
  152. 和田耕作

    ○和田委員 関連して一問だけ。  いまの米の需給の問題と関連するのですけれども、将来米の需要がだんだん減っていくということは、かなり確実に予想されると私は思うのです。つまり、昨年と今年と豊作ですが、将来についてどのような見通しを持っておられるのかということと、それから輸入米ですね、輸入米の量についてどのような見通しを持っておられるのかというようなことについて、一言だけお聞きしておきたい。  つまり、これをお伺いしますのは、食管制の改革ということまで、私は必要な感じがします。しますけれども、その説得力が——どういう根拠に立って需給見通しておるのかということが、もう一歩はっきりしないと思うのですね。この辺ひとつ……。
  153. 西村直己

    ○西村国務大臣 数字その他は食糧庁長官のほうから申し上げますが、基本的な考えは、私自体は、食管法の精神は、国民の必要な食糧を確保し、そして再生産を可能ならしめるように農民には再生産意欲を持たせる、家計の安定をはかる、この三本が柱だと思う。何でもかんでも買うというようなことは、必ずしも食管法は求めていない。国民経済の中において、食糧を安定的につくってもらって、必要なものを確保する。そして再生産の意欲、その再生産も、あまり極限地帯の再生産まで予期しているかというと、ある程度常識的な再生産、それから消費家計の安定、この根幹というものは、私はやはり食管制度の中で維持はされていかなければならぬが、その根幹を維持するために、ただ何でもかんでも変えてまで、食管法自体は拡張解釈まですべきではないのではないか。しかし、同時にそれは、先生のおっしゃるような長い目あるいは当分の間の需給というものに対して、しっかりした見届けをすることが一つ。いま一つは、つくっておられる農民というものは、そういう大所高所の気持ちをお感じにならぬのでございますから、あくまでも国家としてはやはりそれに対して、転換なりあるいは誘導なりの用意というものを考えていかなければ政治にならぬ。そういうようなくふうをこらしつつあるというところにむずかしさはありますけれども、私はそういう方向を目ざして、制度なりあるいは運営なりの改善をはかりたい。  なお、需給その他の関係につきましては、大事な問題でございますから、もう一度、食糧庁長官から答弁いたさせます。
  154. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 先ほど申しましたように、たとえば十年後の米の需給というような問題になりますと、これはいろいろな角度からの検討が要りますので、まだ農林省も対外的に御説明申し上げるような段階になっていないのでございます。当面のことになりますと、本米穀年度、つまりことしの十月末の持ち越し量は、精米で二百六十五万トン、玄米で二百九十二万トン、約三百万トンの持ち越し量、これは一般消費者への配給量としては、全国の五カ月分に相当するわけでございます。本年の作況は、最終的にはまだわからないのでございますが、私どもは、少なくとも平年作よりはいいであろうという見通しのもとに、需給考えておるわけでございますが、本年の作況から見まして、平年作の千三百二十万トン前後よりは上であろう。したがって政府への売り渡し量も九百万トンには達するであろう。九百万トン政府に集荷されますと、政府は、一般消費者への配給用、それから加工用等を含めまして、本米穀年度の需給計画で約八百万トンを見込んでおったのでございますが、やや上回るわけでございます。でございますので、かりに八百万トンの総売り渡し量があるといたしましても、百万トン以上の繰り越しの増ということになります。こうなりますと、非常に大ざっぱな言い方でございますが、過去十年間におよそあり得なかったような作況の悪い状態というのが起こるにいたしましても、需給はびくともするものではありません。したがって、私はここ四、五年の間に、国内の米需要に対して、国内産の米が、在庫を含めまして対応しきれないというようなことはあり得ないというふうに思います。  輸入について、昭和四十一年度までは相当大量の輸入をいたしております。年によりましては、会計年度とそれから歴年と米穀年度、いささか混淆するのでございますが、米穀年度計算でいたしまして、多い年には、砕け米等も含めまして、百万トンに達するような買い入れをした年もございます。でございますが、生産がただいま申し上げましたような状態になり、また需要も減退あるいは低滞ぎみでございますので、もうことしの十一月から始まります米穀年度以降は、私は、工業用の砕け米等特殊用途のものを除きましては、およそ外米の輸入は全く必要ないといったふうに思っております。また、外米の輸入を全く必要としないという状態は、ここ数年継続すると思っております。
  155. 和田耕作

    ○和田委員 輸入の問題につきまして、たとえば貿易の問題で、タイの米を買わなければ物が売れないという、そういう必要性はないのですか。
  156. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 日本の従来輸入してまいりました国というのは、タイ国、それから台湾、ビルマ、それからアメリカの加州米、それから中国産でございますが、南方諸国にとりましては、現在、米の世界的な需要は伸びておるが米の生産がそれほど伸びないということで、輸出余力もそれほどない、むしろ輸出余力は減退ぎみでございます。でございますので、確かに日本との貿易の関係では、米を買ってほしいという要望は出ると思いますけれども、それほどシリアスな問題ではないであろう。四十二年度の輸入量が約二十七万トンばかり、四十三米穀年度の輸入量がまた二十七万トンばかりでございますが、その大半が中国からの輸入でございまして、むしろ私ども従来の経験からいいますと、南方諸地域の米の輸入の問題は、それほどシリアスな問題であるとは思っていないのであります。
  157. 木原実

    ○木原(実)委員 長官に続いてお伺いしますけれども、いまの需給見通しの問題ですね。これは現行の食管制度を維持するという前提でございますか。
  158. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 食管の制度現状維持するということとは全く無関係に、現在の作付反別がほぼ変わらないというたてまえで、現在の標準平均反収というものが変わらないというたてまえで、ものを見ておるのでございます。
  159. 木原実

    ○木原(実)委員 見通しを立てる一つのメルクマールだと思うのですけれども、平常よくいわれるように、たとえば食管制度の中の買い入れの制度は、いろいろな問題が変わっていくということになりますと、かなり変動することが予想されませんか。あるいはいま農林省としては、当分の間はそういうことはやらないという前提にお立ちになっているのか、いかがでしょう。
  160. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 総理大臣が本会議でも施政方針の中でうたっておりますように、今日のように需給事情が非常に変わってまいりますれば、米の不足を前提にいたしております現在の食管法ないし食管の運営というものについては、私どもも検討すべき時期に至っておるというふうに思うのでございまして、農林省として、現行のまま食管制度の運用を続けていくという考えではございません。ございませんが、食管制度の運用について何らかの変化があれば、需給事情にも変化があるのではないかというお話でございます。確かに、たとえば現在は全面買い入れ全面配給ということで、画一的統制をいたしております関係上、生産にいたしましても量の生産に傾いておることは否定できないのでございます。これがたとえば、産地、銘柄等による価格差が出てくるというようなことになってまいりまして、より消費者の需要に適合するような品種を選択されるということになりますと、私は若干生産量は落ちる可能性があると思いますけれども、そのことで現在の、端的に言って過剰状態というものは解消するとは、私はどうも思えない。制度といいますか、現在の需給事情のもとで、消費者に適合するような品種の選択をしていくということは必要でございましょうし、またそいう方向をとれば、生産の量には変化が起きるということは、私はあり得ると思います。
  161. 木原実

    ○木原(実)委員 長官もなかなか大事なことをおっしゃるのですけれども、かなり私は問題じゃないかと思うのです。先ほどもちょっと大臣にお伺いしたのですけれども、いまの食管制度のもとで、ともかく農民にとりましては、米の価格は一番安定しているのですよ。つまり米作が安定しておるから、それを軸にして、輪作的にほかの作物をやる、よかれあしかれ、そういう複合的な生産形態になっているわけですね。その一番大きな大黒柱が、何らかの形で制度上はずれていく。そうしますと、そこには当然価格の不安定という要素が米の中にも入ってくる。そうすると、米自体の減反の問題も出るだろうし、ある意味では一番安定した柱がくずれるわけですから、他の農作物に対するいろいろな影響も出てくるだろう、こういうようなことを、少なくとも私どもはいまの農家の状態を見ていて感ずるわけなんですが、どうも長官も、需給の問題と同時に、財政的な圧迫の問題が、食管の問題を考える場合に、多分に頭にあるのじゃないでしょうか。それだけで何か問題を考えられておるのではないかなという感じがするのですが、どうでしょうか。
  162. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 私は、やはり食糧管理制度というのは、国民の必要とする米穀の再生産を確保し、それを公平に配分するということがスタートであったと思う。そういう意味では、量の確保については、当面少なくとも心配な事態は起こり得ない、そういう状態のもとでの考えようというものが、私はあり得ると思うのでございます。ただ、米が日本の主要食糧の大宗であり、また農家経済をささえる最も大きな作目でございますから、これを、単に需給事情の変動があったからということで、不安定にさらすということは、私は許されないことだと思うのでございます。少なくとも私ども農政を担当する者としては、米の生産の安定性を害するような制度改善にはくみするわけにはいかないとうように思っておるのでございますが、ただ従来の不足な事態を前提にした全面統制ということの必要性があるかどうかは、私はここで慎重に検討する必要があるのではないかということを申し上げたわけでございます。  なお、財政負担の問題も、われわれ政府の者といたしましては、われわれ農林省だけで申せば、農業への投資あるいは融資というものが、農業の総生産の増大のために、あるいは消費者から期待されますバランスのとれた作目の伸びというものを期待するのに、適当な投資の方向であるかどうかはやはり関心を払わざるを得ないというふうに思うのでございます。単に財政的な見地からのみ、私どもも食糧管理制度について消極的態度をとるということではございません。
  163. 木原実

    ○木原(実)委員 お答えいただきました前段の問題でございますけれどもことばじりをとらえるようですけれども、改正の方向というものは、世上いわれるような間接統制の方向へ切りかえていくのだというふうに理解してよろしゅうございますか。
  164. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 たいへん御質問がおみごとと申しますか、巧みでございますので、これから私は危険状態に入るわけでございます。私は、現在の食糧管理法というものは間接統制の方式をとっていないということでございますので、にわかに間接統制に切りかえることには問題がある。また世間に伝えられております間接統制というような事柄は、実はすべての仕組みを十分に詰めてやるというふうにも思えませんので、早まって制度の改正を間接統制というふうに踏み切りますと、かえって当事者の言うような結果にはならないということもあり得ますから、私は間接統制というようなことはきわめて慎重な態度で臨むべきだと思っております。
  165. 木原実

    ○木原(実)委員 私は先日東北を回ってきたわけです。農林省がたいへん力を入れました八郎潟にも参りましたが、ことし初めて去年入植した人たちの米がとれた。こういうことで農林省の第一線の人たちも米つくりに一生懸命励んでおるわけですね。そうしますというと、何だか米をたくさんつくってしかられるような状態というものは耐え切れないという話も、特に東北関係の農民諸君からは聞いたわけなんです。なかなかむずかしい段階に来ておるわけなんですけれども、食管についての改正の要因が幾つかあるということは私ども認めるわけです。しかしながら、どうも需給の問題にしましても、先ほどお話がありましたように、四十年度でございますね、たいへん底の時代がつい三年くらい前にあったわけですね。そうしますと、三年か四年かの間に何かがらりがらりと需給見通しについても変わってくる。おそらく、いまお述べになりましたこれからの需給見通しについては、安定的な均衡のとれた状態になるだろうという、そういう御発言、そのとおりだろうと思うのです。しかしながら、なかなかどうもいままでの、米だけに限りませんけれども、農林省の作物等についての需給見通しというのは当たらぬ場合がかなりあったわけですね。やはりそういう不信感が農民諸君の中や私どもの中にあるわけなんですが、そういうことになりますと問題になってくるのは、食管改正はある程度やらなくちゃならぬだろう、しかしその方向というのが実は問題になってくるわけなんです。  そこでお伺いするわけなんですけれども、何とかしなくちゃならぬという長官のおことばはいただいておきたいと思うのですが、たとえば、私が一番心配をいたしますのは、米なら米の価格が安定する状態は農政上の問題として何とかやりたいというのですけれども、かりに、たとえば間接統制といわれるような議論の中に、生産者の米を買い入れる場合には最高価格をきめる、一定の量は買い入れる、あるいは消費者米価については最高価格をきめて売り渡す、こういうような形のものを言われているわけなんですが、要するに間接統制に移すということは、何といいますか、自由な市場のメカニズムの中に米を一ぺんおろしていくということにほかならないと思うのですが、そういうふうなことをお考えでございましょうかね、いかがですか。
  166. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 非常に突っ込んだ御質問でございますのでお答えがしにくいわけでございますが、私はそういう議論が世上にあることは承知をしておりますけれども、まだ私どもがこういう方向でいくんだということをきめておりませんので、批判をする尺度を現在持っていないということでございますから、少なくともそういうようなことを農林省として決定をしておるのではないということだけお答えして、お許しを得たいと思います。
  167. 木原実

    ○木原(実)委員 そうでございましょう。  それではもう一つ伺いますけれども、そうしますと、食管の問題についての改正の議が起こってきたし、議論されておるわけです。農林省としましては、これでいくんだという方針はいつごろお出しになるおつもりでございますか。
  168. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 食糧管理の改善の問題は、農林大臣のお答えにもあったと思いますが、農林省として今後の総合豊政を展開していくということの一環として、政策調整をはかった上できめたいということでございますので、私どもとしては、いずれその問題は農林省あるいは政府の何らかの機関の意見も聞く必要もございましょうしいたしますので、来年度の予算編成までには農林省としての態度をきめなければなりませんし、また、その前に諮問等の手続も必要とするということでございますれば、やはり私どもとしては十一月末ないし十二月の初旬までには、食管改善の方向をほぼ明らかにする必要があるだろうというふうに心得ております。
  169. 木原実

    ○木原(実)委員 そこでもう一つ。こういう委員会ですから、腹を割ってあれをしてもらいたいと思うのですが、世上いろいろこの問題をめぐって議論もあるし、迷いもあると思うのです。消費者にとりましても生産者にとりましても迷いはあるのですが、もし十一月ごろということになると、あまり日もないのですが、改善をしていく方向の問題と同時に、限度がどういうことでございますか。いまの食管制度をまるまるなくしてしまうのか、それともおのずから限度というものがあろうと思うのです。あるいは順を追ってという考え方も成り立つわけですが、第一段階の限度はどの辺に置いておられますか。
  170. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 このお答えは実は私では荷が重過ぎるのでございます。したがいまして、食糧管理法あるいは食糧管理制度をすっかりなくするということかという御質問でございますが、それは私がどうこう申し上げるのはどうも出過ぎたことになりそうに思うのでございます。ただ、私が食糧庁長官として、大臣を補佐する一職員としても考えざるを得ない、また進言せざるを得ない立場にありますので、日ごろ考えておりますことは、食糧管理制度昭和十七年に発足以来、長い間、生産者にとっても消費者にとっても、制度としてなじんでき、また流通業界においてもこの制度の中で機能を果たしてきたという、非常に国民各層に深い根をおろしておる問題でございますから、紙に書いたり舌の先で扱うことは容易でございますが、この大問題を軽々に処理をすることはむしろ混乱あるいは思わざる悪い副作用が起こる可能性が強いということでございますので、事態の進展というものを見届けつつ漸進的に改善をはかっていくのが、こういう大きな問題にとっては根本的に正当な姿勢ではないだろうかというふうに思っておるのでございます。
  171. 木原実

    ○木原(実)委員 どうも意地が悪いようですけれども、もう一つ伺いしたいのですけれども、漸進的にやるのはいいのですけれども、ともかく初年度に手をつけたいというところはどの辺でございますか。
  172. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 事務的にざっくばらんに申しまして、まだ暗中模索の段階でございますので、農林大臣からも具体的な指示を受けていないのでございます。でございますので、現段階では、いろいろ各方面の提言等もございますから、それの分析等を行ないまして、徐々に、何が最も穏当な方法であるかということを求めたいと思っておる段階でございます。
  173. 木原実

    ○木原(実)委員 事は来年度の米の買い入れの問題や価格の問題等にも関連をしてくるわけなんですが、ひとつそれじゃ別の角度からお伺いをしたいのですけれども、少なくとも米が自由な市場の流通機構の中に投じられて、言ってみれば市場のメカニズムによって米価が左右をされる、こういう側面についてはどういうふうにお考えでございますか。
  174. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 この問題についても必ずしも私見がないわけではございませんが、お答えのしようによりましては非常に誤解を受けることにもなりかねないのでございますが、私が考えておりますような検討の態度から申せば、何らかの市場メカニズムというものの働く余地というのはあり得るにいたしましても、かつてありましたような取引市場でありますとか、そういうような問題を考えるのは、私は時期尚早であるというふうに思っております。
  175. 木原実

    ○木原(実)委員 だんだん詰めるようで私も申しわけないのですけれども、私が一番心配いたしますのは、いまの農家自体が、農村自体がたいへんいろんな形で追い詰められておる状態があると思うのです。総合農政というようなことをおっしゃいますけれども農業生産にとってはなかなかたいへんなところにきておると思うのです。ですから、この制度のはずしよういかんによっては、米という、農家にとっては一番安定をした作物が自由競争の中に巻き込まれてしまって、自由競争の中に巻き込まれますと、数多くの生産分野では寡占の状態が常態になって進んでおる、そういう経済機構の中で、零細な農家の集団の生産するものがそのまま市場の中に投げ込まれてくるというと、はたして農業自体の、大きなことばで言えば崩壊という問題にも通ずるでしょうし、またはたして消費者の望むような安定をした価格の米が食べられるようになるのかとか、いろいろな問題がからんでくると思うのです。ですから、取引所をつくるということについては確かに私はべらぼうな話だと思うのですが、その前の段階で、たとえばこれくらいの限度は政府のきめた価格で買い入れるのだ、こういうようなメルクマールはお立ちになりませんか。
  176. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 その御質問にお答えするには、私どもまだ検討が十分進んでいない段階でございますので、はっきりお答えいたしがたいのでございますが、ただ、申し上げて誤解をいただかないようにお願いをしたいという意味でございますが、米が現在の日本の農業で非常に重要なウエートを持っているということは、申し上げるまでもないことでございます。でございますので、その米について非常な混乱が起こるというようなことは、どんなことがあっても避けなければならないことであるというふうに私は思っておりますので、単純な自由市場機構で米が扱われるというようなことは、私は今日的な課題ではないというふうに思っておるのでございます。  ただ、一つ抽象的に申し上げますれば、食管制度という制度の中で、米がおよそ商品としての性格、商品性というものを圧殺された形になっておりまして、私ども消費者の意向はわかるにいたしましても、一向に銘柄についての客観的な判断をいたしかねるというような状態を続けてまいりますことは、むしろ今後の米の消費の維持、増進というようなことにも益がないでございましょうし、また消費者の期待にも沿えないことでございましょうから、私は、非常に抽象的に言えば、そういう圧殺された米の商品性といいますか、そういうものが消費者の選好によって回復されるというような道だけは、開く必要があるのではないだろうかというふうに思っております。
  177. 木原実

    ○木原(実)委員 話をちょっと変えたいと思うのですけれども、米が消費者の立場から見て非常にまずいという話がございますね。政府のほうでは、いまは三段階に分けて米の配給をしておる。ところが、東京あたりで別米と称するものがございますね。何か内地米あるいは徳用上米、徳用米以外に、別米と称して、価格は大体千七百円くらいで売られているものがあるのですが、その中に、たとえば当然配給の中に含めるべき新米であるとかあるいは上質米が入ってきておる、こういうような面があるのですが、これはどういうことなんでございますか。その根拠といいますか、米屋さんにそういう選択を許した時期があったのでございますか。
  178. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 現在政府の管理しております米を配給いたします際には、いわゆる内地一−四等を一本にいたしました内地米と、それから徳用上米と徳用米の三種類の米を売り渡しをいたしておるわけでございます。でございますので、世間に伝えられますような上米とかあるいは特選米とかいうような形で、私どもがおよそ想像もできないような値段で売っておるということは、これは明らかに政府の米穀統制あるいは価格統制に違反するものだといわざるを得ない。そういうものを政府が認め、あるいはそういうものを特別に売り渡しをしておるということはございません。
  179. 木原実

    ○木原(実)委員 そうしますと、それは米屋さんが実際にやっておるわけなんですけれども、もし米屋さんがやっておるとすると、これは違法な行為であるということでございますね。
  180. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 もしも万が一そういう事例がございますれば、違法であるということでございます。
  181. 木原実

    ○木原(実)委員 それはどうも私も不勉強でございましてあれなんですが、これはかなり普遍的にあるやに聞いておるのです。私どもの周辺でもそういう事例があるわけなんですが、事実上のやみ米をわれわれは買わされておるというか、買っておるというのですか、そういう状態がほぼ普通のことになっておると思うのですよ、そのパーセンテージその他のことはわかりませんけれども。それはそうすると、いずれにせよ違法の行為であるというふうに、これははっきりおっしゃるわけでございますね。
  182. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 明らかに違法行為でございます。ただ、一般的に、私どもの統計では、確かに配給米というのと非配給米というのが家計簿記上出てくるのでございますが、その記帳されました価格水準というのは、それほど大きな差はないのでございます。もっともこれは全国平均になっておりますから、東京の一部とかいうようなところでは、私も詳細存じません。ただ申し上げたいと思いますことは、政府が配給米について、末端消費者価格を最高販売価格ときめておりましても、米の価格に非常に無関心な層がかなりあるようであるということだけは事実だと思います。
  183. 木原実

    ○木原(実)委員 私はその面からも、これは長官もあまり——違法であるが存在があるだろうということですが、私どもも事実そういう形で、すでにいまの食管制度そのものが、たとえば配給面においてもそういう形でくずれておる側面が多い、そういうことから考え合わせてみますと、どうもわれわれが配給米がまずいと言っておるのは、当然配給米の中に入らなければならない米がそういう形で売られる、つまり食管制度がくずれたから逆にまずい米をくわされているのではないかという感じも持つのですが、いかがでしょうか。
  184. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 法治国家でございますので、すべての国民が配給制度を守ることが最も望ましいということは言うまでもないのでございますが、農林省が米の総体需給を推算いたしますと、農家が政府以外へ売り渡した米の数量というのは、大体七十万トン前後あるようでございます。でございますので、その米が何らかのルートを通って、いわゆるやみ米として販売されておるのか、配給米の中の上質米をひっこ抜いて違法に売っておるのか、その辺、実は私どもわからないのでございますが、いずれにいたしましても違法であることは間違いございません。
  185. 木原実

    ○木原(実)委員 だいぶ時間が経過しましたのでそろそろやめたいと思いますけれども、もう一つ伺いをしておきたいのですが、輸入米でございますね。先ほど和田委員からもお話がありましたけれども、たとえば加州米ですね、こういうような米を長期に入れるという、そういうお考え方はございませんね。と申しますのは、昨年のいま時分でしたか、ちょうど宮澤経済企画庁長官と米の問題で少しやり合いましたときに、宮澤さんのお考えの中には、たとえば加州米のようなものを、いわゆる長期に契約をして入れてくることによって、一つの競争の原理を入れたいのだというようなこともちらっとあったものですから、私の頭の中に、政府全体の考え方の中にはより安い米を外から入れるということも、需給のいかんによってはあり得るのだ、こういう考え方があるのじゃないかなという印象があるのですが、いかがでしょう。
  186. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 加州米の長期輸入契約あるいはそれに類するような取りきめというようなことをする考えは毛頭ございません。また現在の需給事情のもとではその必要は全くございませんし、昭和四十三米穀年度では加州米は買っておりません。ただ、一部醸造米の試験用にほんのわずか入っておるのがあるだけでございます。
  187. 木原実

    ○木原(実)委員 私の結論を申し上げたいわけですけれども、私の結論は、ともかく食管制度というものは、長管のおっしゃるように、米の需給の逼迫した段階から出発をしたものだ。こういう性格を持つのは歴史的に見て確かにそうだと思うのです。しかしながらその性格が、長年の運用の中で、今度は逆に日本の農業をささえる少なくともかなり大きな柱になっておるのだという側面があるし、それからまた、今日では米があり過ぎて困るという形になっておりますけれども、しかし少なくともここまで持ってきた食管の功績は大いに私はたたえたいと思うのです。私は農林省の仲間のつもりで言っているのですけれども、そういう側面があると思うのです。そしてここにきて米ができ過ぎたから、もう用はないのだという形だけでは律せられない側面が——つまり日本の農業の体質の中に、あるいはまた将来を展望した農業の体質の中にも、食管制度の中でのプラス面というものが生きておる。それがあるから、いろんなことをいわれますけれども消費者のほうも総体的にはかなり安い米、安定をした価格の米を食べることができておるという状態があると思うのです。ですからこの一、二年、米は非常に余ったということを理由づけにして、特に財政当局あたりが米の問題について大きな口をきくような時代になってきたわけですけれども、また総合農政の中身については異論がありますけれども、しかし日本の農業のあり方、米全体の安定した需給の問題、それからまた消費者が総体的に安定した価格で、安心をして主食が食べられるという状態を長期にわたって維持するためには、あまり軽々しく食管の問題に手をおつけにならないほうがいいんじゃないのか。改善はいいですけれども、少なくとも改悪については慎重であってほしい、こういう要望を実は申し上げておきたいと思うのです。  それともう一つ、ついでで恐縮なんですけれどもパンの問題があるのです。パン値上げの問題については、これは農林省はどうしようもない問題でございますか、おわかりでございましょうか。
  188. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 パンもたしか前回、四十年に値上げが行なわれまして、その後そのままであったわけですが、最近値上げの動きがあるということを聞いております。その理由は、労賃の上昇でありますとか原材料費の値上がりというようなことをあげておるようでございます。パン価格については、これは申し上げるまでもなく自由価格でございます。私は、物価が上がらないことが望ましいということは国民の一人として当然そう思うのでございますけれどもパンの業界のように相当激しい競争が行なわれておりますところでは、何らかの形で不当な価格値上げというのは抑制されるはずであるということでございます。私どもとしては、従来パンについては中小企業の近代化促進法に基づく施設改善等について、金融その他の指導に当たっておるわけでございますが、公正な競争を促進するように、また合理化を促進するようにするということが本筋であって、いま全国数千のパン屋さんに、私どもがどうしろこうしろと言っても、むしろ混乱が起こるだけではないだろうか。ただ私ども非公式に、パン屋で値上げをしそうだというところに聞いてみましたところでは、実質的には値上げではないのだけれども、競争条件として内容を充実させて、ノミナルに値上げをするということを考えておるのだということでございましたが、そういうようなことをしましても、消費者の立場からいえば、質をよくして高いパンというのもあるいは消費者に応ずる道かもしれないが、また据え置いて従来の品質のものを提供するということも、商業のやり方として一つの道ではないかというようなことについては、私ども意見を申し述べておりますが、私根本的には、行政的な強い指導でこれを取りやめさせるとかいうようなことは、ほとんど可能ではないのではないかというふうに思っております。
  189. 木原実

    ○木原(実)委員 時間がありませんのでこれでやめますけれどもパンの問題につきましては長官の所管外のことにも関連するのですが、いろいろなことがあるようです。ただ、行政指導はこれをやらないというように受け取れる御答弁でございましたけれども、何といいましてもパン業界に対して持っておる農林省のウエートは大きいわけですから、でき得べくんばもう少し立ち入って、現在行なわれておるパン値上げの状態についてさらにお調べになって、でき得るならば消費者の立場で適切な行政指導があってしかるべきではないか、そういう感じがいたします。こまかいこと、いろいろ資料がございますけれども、あらためてこの問題はひとつ御論議をしたいと思います。  それでは以上で終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  190. 八百板正

    八百板委員長 和田耕作君。
  191. 和田耕作

    ○和田委員 いま食糧、米の問題でいろいろお話を承りましたが、この状態は、米の需要がだんだんと減っていくということに見合ってパンと牛乳並びに乳製品がどんどんふえていくということですね。そういう状態を考えた場合に、米の食管制問題は、いまの長官お話では、合理的に改正していく、しかし農民の生産を混乱させるようなことは絶対にしない、つまり一つの目安をつけてのあれなんですが、パンと牛乳の問題は、牛乳は昨年自由価格にした。パンについても、いまのお話では価格の統制、価格に対する行政指導は不可能だというようなお話だったのですけれども、このアンバランスをどういうふうにお考えになるか、食糧庁長官から……。
  192. 桧垣徳太郎

    ○桧垣説明員 米の消費が全体として落ちておりますのは、一人当たりの消費量の減少が著しくて、人口の増以上に激しい。また加工用は伸びてはおりますが、それも一人当たりの消費量が落ちておることに打ち消されてしまうということから、減退ないし停滞の状態になっておるわけでございます。この傾向は、最近までは米の消費の減退の一方で、小麦製品の消費の増がかなり目立ったのでございますが、最近になりまして小麦製品の消費動向も停滞的になってきておるのでございます。総じてでん粉質食糧の摂取が減ってきたということと理解をされます。それは牛乳、乳製品あるいは肉類というような動物性のたん白質、脂肪の摂取によって置きかえられておるということでございまして、言うなれば日本の食生活の構造も欧米型のパターンに変わりつつあるということではないかと思うのでございます。しかしこれもすっかり欧米型になると私どもは思わないのでございまして、傾向としてはそういう傾向を相変わらずたどるだろう。そこに食糧需給の問題あるいは生産の問題に問題があるということは私どもも感づいておるわけでございます。そういう意味で、総合農政の中で各重要農作物についての需要と生産の長期見通しを詰めてみようという動機があるわけでございます。なお畜産物につきましては、畜産局長が参っておりますので、お答えをしてもらいたいと思います。
  193. 立川基

    ○立川説明員 先ほど食糧庁長官からお話がございましたように、牛乳、乳製品の消費はほぼ順調に伸びつつございます。御指摘のように、若干気候の不順なような場合におきまして、年によって若干でこぼこがございますけれども、ほぼ順調な伸びを示しております。生産も、昨年の春までは生産の伸び率が非常に悪くて、二〇%というふうにいわれておりましたけれども、昨年の後半からはだんだん調子を回復してきております。いまのところ需給はほぼバランスしておるような状況であります。  それから今後の見通しをどうするかということにつきましては、先ほど長官からお話がありましたように、今後長期的に見まして、国民消費動向を過去から類推いたしましてどういうふうに見ていくかという検討をいま省内でやっておりますので、それに見合わせまして一応の計画を立ててまいりたいというふうに考えております。  それから、先ほどちょっと企画庁長官のほうからお話がございました乳製品の価格の問題でございますけれども、御案内のように一昨年価格の指導を、少なくとも生乳につきましては各地域地域の実情に応じて自由にやるべきであるということによりまして、自由にしたわけでございます。ところが、先ほども先生御指摘のございましたように、価格の決定の時期の問題があり、結果的にある程度値上がりがあったという問題があります。それから、その他関連いたしまして生産者に響くような問題でもございますので、先ほど企画庁のほうからお話がございましたように、物価安定推進会議でいま各品目ごとに洗っておりますので、この結果を踏まえながら、実際に先へ伸ばさなければならない消費及び生産につきましてどういうふうな政府の関与のしかたをすべきかということについては、目下検討中でございます。
  194. 和田耕作

    ○和田委員 いまの酪農の問題、つまり生乳を提供する側を拡大する問題ですね、これは乳価を引き上げていくということで勝負しようとするのか、あるいは総合農政といわれるように、他の財政的その他の援助でやろうとしておるのか、現在どういう方針でございますか。
  195. 立川基

    ○立川説明員 将来の問題といたしまして、価格現実に上がるか上がらないかということをいまここで申し上げるわけにいかぬと思いますけれども、やはり一応基本の問題としては生産性を上げるということが第一点だと思います。しかし、御案内のように、現行の加工乳制度という制度もございますので、両者を勘案しながらこれから考えていくということだろうと思います。
  196. 和田耕作

    ○和田委員 まあ生産性を上げるということはこの際あたりまえのことでございまして、それを上げさすのに、つまり牛乳の値段を上げることによってそういう刺激を与えるのか、その他の、生産その他を援助する方法によって与えるのかということを質問しておる。これは、つまりお米の場合は、生産者価格消費価格という二つの食管制になっておる。両方とも立つようになっておるわけですけれども、将来牛乳の問題でも、牛乳の値段を押えるとやはり生産者の酪農のあれも押えなれけばならぬというふうな問題が出てくるので、二つの問題を両建てに考えるという可能性も、これは私は正しいとは思いませんけれども、そういう問題も出てきやしないかということを考えながら質問をしておるわけです。
  197. 立川基

    ○立川説明員 先ほど申し上げましたように、要するに生産の刺激を価格に求めるのか、あるいは生産対策といいますか、合理化対策に求めるのかという、いずれか一つかということでは、必ずしもそうではないのじゃないか。当然、できるものなら生産対策生産性を上げることによって、安い価格で供給すべきだと思います。しかし需給の状況で、非常に不足する物資なり非常に余る物資の場合に、価格対策というものはおのずからそこできまっていくべきじゃないか。現在の段階で、畜産物につきまして需要と供給をどういうふうに見ていくか、どういうふうな価格支持制度をしていくかという点は、目下検討中でございます。
  198. 和田耕作

    ○和田委員 つまり、お米に次いで重要な食料になっておる牛乳の問題、この問題を昨年から自由価格にしていったということの持っている現在及び将来の意味ですが、たとえば自由価格になった場合、生産者価格あるいは消費者価格を設定しない場合に、片一方それを使うほう——飲む人は一般ですけれども、使うほうはたいへんな寡占化しておる大企業ですね。そうなった場合に、売り手市場の場合はいいのだけれども、やがてこれが買い手市場になった場合に、生産者、酪農は自由市場であれば大いにたたかれてしまうという状態が出てくる。つまり逆の問題が出てきて、安定して生産者を刺激していくということはできなくなりますね。酪農業者そのものも非常に不安定になるというところから、米と同じようにこの問題についても、ある一定の政府行政指導と申しますか、正しい意味の指導というものが必要になってくるわけですね。こういう問題について、つまり昨年の乳価の問題では、いろいろな物懇その他の方々の意見に表面的にあおられて——それはどうか知りませんよ。知りませんけれども、とにかく自由販売したほうがいいのだということで、うんそうだとやってきたところが、何も物価は下がりはしないということですね。こういうのに問題がありやしないかと思うのです。したがって、私は、宮澤長官にも言っておりますように、いままでの行政指導が正しいとは絶対に言っていないのです。間違っています。宮澤長官が自由化しなければならないという意図もわかりますけれども、いままでの状態が間違っているからといって、行政指導、つまり公共的な国家権力が介入しないで国民生活の安定あるいは酪農業者の発展ができるかどうかということですね。そういう問題は一時的な行政の再任回避だというふうに私は申し上げたのですけれども、そういうような問題を考えて、いままでの行政指導とは違った新しい行政指導をつくり上げるべき時期だ。ちょうどお米の場合に食糧管理法という戦時統制的なものから、いまどういうふうなものかまだはっきりしないようですけれども、新しい管理方式に変えていこうとお考えになっているようです。それと同じような問題を、この一年半の小さな例からいっても考えるべき時期じゃないかと思うのですよ。そういう問題を畜産局長としてどういうふうにお考えになっておられるか。
  199. 立川基

    ○立川説明員 いまの点はきわめてむずかしい問題だと思います。第一点の現在の乳業界そのものが寡占状態であるかどうかという問題でございますが、御案内のように、市乳につきましては大手四社で大体五五%程度のシェアだろうと思います。したがいまして、こういう状況のものを寡占だというふうにして取り扱うかどうかという問題が一つございます。それからもう一つは、御案内のように、市乳そのものにつきましては各地域地域の実情が非常に変わっております。それで各会社なり各消費者なり各処理業者なりとの間の関係が非常に変わっているので、一律にはなかなかやりにくいという問題もございます。原則としては、先ほど御議論がございましたように、中小なり何なりを、いま特別に融資をしておりますから、育成して競争させるということは適当だと思いますけれども、先ほども繰り返しましたように、一昨年やったやり方そのものがそれじゃほんとうに全然問題がなかったかどうかについては、私自身若干疑問を持っておりますので、今後どういうふうな方法によりまして消費者なり生産者なりあるいは途中の処理業者の方々の納得のいくような形で仕組みが仕組めるか、目下検討中でございます。
  200. 和田耕作

    ○和田委員 これで質問を終わります。また別の機会に……。
  201. 木原実

    ○木原(実)委員 ちょっと質問を残しましたので、水産庁長官、たいへん時間をとらせましてどうも申しわけございません。  一つだけノリの問題についてお伺いをしておきたいのですが、最近どうもノリの小売り価格がたいへん上がっておるという状態は御存じのとおりだと思うのです。昨年等に比べましてもたいへん値上がりをしておると思うのですが、どういうことなんでございましょうか。
  202. 森本修

    ○森本説明員 現在市場に出回っておりますのは四十二年産のノリであります。四十二年産のノリの作柄は、ことしの初めごろまで、御案内のように九州がかなり大きな産地でありますが、そこで白腐れ病のようなものがかなり発生をしたということで、相当な減産になるのではないかという見込みが立っておりまして、そういう関係から買い付けの価格がさらに高騰をしたというような関係がございます。昨年に比べまして約二割から二割五分程度上がっておるというふうな状況でございます。ただ結果的な需給関係から見ますと、御案内のように最近は冷凍網といったようなものが技術的に進歩いたしております。そういう関係から、当初見込まれたほどは減産にはならなかった。それから春先の天候の関係がありまして、行楽時に雨が降ったというようなことで、ノリの需要なり消費が例年ほど伸びていないというような関係がございまして、ノリの本年産の買い付けを行ないました当時の需給関係と、その後の需給の変化との間に多少の相違が出てきておる。結果的に見ますと、ノリの価格は現在の需給状況から見ますと割り高になっておるというふうな現象でございます。
  203. 木原実

    ○木原(実)委員 要するに、減産の見込みがあったのでかなりな見込み買いがあったというふうに考えられるわけなんですけれども、その際にやはり韓国ノリの輸入について——これは農林大臣にお伺いすればよかったのですが、何か韓国との間に約束その他がございまして、いま手持ちがあるのでございますか。
  204. 森本修

    ○森本説明員 ことしの韓国ノリの輸入は四億八千万枚ということで、二回に分けて輸入をしておりまして、二回目のほうは八月の中下旬に市場に放出をされておるという状況でございます。現在の需給関係からいえば四億八千万枚というのがまず適当な数量ではなかろうかというふうに私ども思っておりますが、その後八月の下旬に、御案内のように日韓の閣僚会議がございました。そこで韓国側からは、日韓の貿易関係がたいへんな逆調である、したがって日本側で輸入の促進について努力をしてもらいたいという強い要請がございまして、その一つ品目として、現在韓国にまだ相当数量のノリが在庫をしておる、これをひとつ例外的ではあろうけれども輸入をしてもらえないかという要請がございまして、その要請を受けて私どもは目下輸入について検討しておるというのが現在の状況でございます。
  205. 木原実

    ○木原(実)委員 そうしますと、新しい輸入については検討中であって、たとえばそれを放出することによって、あるいは買い付けることによって、いまのかなり割り高になっておる小売り価格を下げていく、そういう方面のことはお考えになっていらっしゃいませんか。
  206. 森本修

    ○森本説明員 御案内のように、一次産品の生産と海外からの輸入というものは、かなり慎重な調整をとって進めなければならぬというものでございます。ノリにつきましては、十月から三月まで国内のノリが出回ってまいります。従来は、出回り期には外国産のノリを輸入し放出するということはしないというような扱いでずっとやってきております。  いま検討しておりますものは、一定の手続を経て輸入されるといたしますれば、こちらへ参りまして放出をいたしますのに、あと若干の日時を要するわけでありますが、そういう関係からいきますと、従来の原則から見れば、国内に放出しないというふうな扱いになるようなことになろうかと思いますが、いずれにせよこの問題は、私どもいま、ノリの関係者が集まっておりますところのノリの協会にはかっております。そこでもほぼそのような感触が強い、そういう方向で検討されておるというところでございます。
  207. 木原実

    ○木原(実)委員 もうこれで終わりますけれども、そうしますといまたいへん割り高になっておるノリについて、何か農林省としての特別な対策はございませんね。いかがでしょう。
  208. 森本修

    ○森本説明員 先ほど申し上げましたように、本年産のノリが十月ごろから出回ってまいります。そういう状況を目前に控えておるわけでありますから、私どもとしましては、現在のノリ価格はおそらくこれ以上に上がらない、また新しいノリが出回ってまいりますれば相当落ちついた価格になっていくのではないかというふうに考えております。
  209. 木原実

    ○木原(実)委員 ではこれで終わりますが、最後に、どうもこういう声を聞くわけなんです。たとえば韓国のノリの新しい輸入の問題の話もあるのにそれを放出しない、したがって、どうも農林省は見込み買いをやった業者のほうに傾いて、あまり消費者のことを考えないのではないか、こういう非難もあるわけなんですけれどもいかがでしょう。こういうふうに非常に高くなった場合に調節するような、もう少しそういう配慮の余地というものは将来もございませんか。
  210. 森本修

    ○森本説明員 私ども考えておりますのは、先ほど申し上げましたように、一どきに出回ってまいります際に、あるいは生産の予測が十分立ちにくいというふうなときに、価格が国内で形成される、その問題は流通体制をもう少し改善することによって、結果的に需給価格とが乖離をしないというようなやり方が業界で行なわれないだろうか。たとえばもう少し平均的に物が流通する、あるいは価格が形成されるような方向にまいりますれば、昨年のような事態が防げるということもございます。また流通段階で、問屋間で品物が転々売買されるというようなこともよくいわれておるわけであります。したがいまして、生産者団体からノリが問屋に渡ります際には、できるだけ需要者をつかんだような方面に販売をしていくというような点等、販売体制なり流通体制に改善を加えるよう指導いたしまして、できるだけノリの価格が安定的にいくように配慮をしてまいりたいと思っております。
  211. 木原実

    ○木原(実)委員 ありがとうございました。終わります。
  212. 八百板正

    八百板委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十八分散会