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1968-11-11 第59回国会 衆議院 地方行政委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年十一月十一日(月曜日)    午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 吉川 久衛君    理事 大石 八治君 理事 細谷 治嘉君    理事 山口 鶴男君 理事 折小野良一君       辻  寛一君    渡海元三郎君       永山 忠則君    井岡 大治君       太田 一夫君    田邊  誠君       三木 喜夫君    山本弥之助君       依田 圭五君    門司  亮君       小濱 新次君    渡部 一郎君       林  百郎君  出席国務大臣         自 治 大 臣 赤澤 正道君  委員外出席者         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         大蔵省主計局次         長       相沢 英之君         大蔵省主計局主         計官      秋吉 良雄君         大蔵省銀行局保         険部長     新保 實生君         厚生省環境衛生         局公害部長   武藤琦一郎君         運輸省大臣官房         観光部長    蜂須賀国雄君         建設省住宅局建         築指導課長   前川 喜寛君         自治省大臣官房         参事官     宮崎  剛君         自治省行政局長 長野 士郎君         自治省財政局長 細郷 道一君         自治省税務局長 松島 五郎君         消防庁長官   佐久間 彊君         消防庁次長   山本  弘君         専  門  員 越村安太郎君     ───────────── 十月十八日  委員永山忠則辞任につき、その補欠として内  田常雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員内田常雄辞任につき、その補欠として永  山忠則君が議長指名委員に選任された。 十一月十一日  委員河上民雄君及び大野潔辞任につき、その  補欠として田邊誠君及び渡部一郎君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員田邊誠君及び渡部一郎辞任につき、その  補欠として河上民雄君及び大野潔君が議長の指  名で委員に選任された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  地方自治地方財政警察及び消防に関する件      ────◇─────
  2. 吉川久衛

    吉川委員長 これより会議を開きます。  地方自治地方財政警察及び消防に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林百郎君。
  3. 林百郎

    林委員 委員長並びに理事各位の御了解を得まして、諏訪湖汚水問題についての発言の機会を与えていただいて感謝しておる次第でございます。  いま副知事からの話もありましたように、これは長野県だけに限りませんけれども、実は自治大臣に御質問したいのは、各自治体における公害問題がその地域住民に非常に大きな損害を多面的に与えておる。そしてその直接の窓口地方自治体、県なり市町村なりになっているということから、これはやはり厚生省とかあるいは通産省というようなところだけにまかしておくわけにいかないという状態になっておるわけでございます。たとえばいま副知事から陳情のありましたこの風光明媚と美食で、淡水魚で有明な長野県の諏訪湖が新産都市の指定とともに、日本におけるスイスといわれるほどの工場地域が変貌いたしまして、重工業をはじめ精密工業食品工業の多数が誘致されて、その結果、それらの工場排水がほとんど何らの化学的な処理もされずにそのまま実は諏訪湖に放水される、こういう結果になっているわけですね。諏訪湖は一変して実は工場排水汚水のため池に化しつつあるといっても過言ではないような状態になっているわけです。そのために諏訪湖からとれます魚族に対しては、学者の科学的な調査の結果によりますれば、湖底の汚泥、沈でんした重金属類等によりまして、それが内臓に蓄積され、それがさらに人体危害を及ぼす。たとえばクロームとかカドミウム、シナン等によって魚が汚染される。それを食用に供すると人体危害を及ぼすんだということが学者によって実は警告されるようになったわけでございます。そのために千名に近い漁民が漁獲の売り上げがほとんど不可能で、月に約八百万の損失だというような事態が起きてきておるわけでありますが、漁民にとっても生死の問題になってきております。同時に諏訪湖は、これは大臣も御承知のとおり観光地帯で、新宿から三時間ちょっとの観光地帯なわけです。これは観光業者にも大きな影響を及ぼしますし、そしてまたその工場排水諏訪湖に流し込んでおる業者メッキ業者が、ほとんど資金一千万円前後の中小企業が多いということですね。ここにも一つの問題がある。大企業自体がやっているならば、大企業経済能力排水処理ができるのですけれども、その大工業の下請をやっておる中小企業がそのメッキ排水諏訪湖に流し出すという事態が起きておるわけであります。そこで、これらの利害関係者は、まずどこよりもさきに地方自治体相談を持ちかけるわけですね。そこにいる諏訪市だとかあるいは岡谷市だとか長野県とかですね。ところが、県も含めて地方自治体公害規制するについての権限もまた財政力もほとんど中央からは与えられておらないという状態であって、相談は受けるけれども、問題を解決する権限能力を持っておらない、こういう事態が起きておると思うわけです。そこで私は、この地域住民にとって重大な問題である産業公害と、その窓口となって相談を毎日直接受けている地方自治体に対しては、政府としては将来どのような対策を講じていくべきであるか、これは自治省としても放置することのできない問題でありますので、やはり一定の見識を自治省産業公害に対して持つべき時期がもう十分来ておる、こういうように思うわけです。そこで、その点について自治大臣に、どういうお考えか、まずその点をひとつお聞きしておきたいと思うのです。
  4. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 公害問題が全国至るところに発生しつつありますが、これは地域住民の健康にとりまして一番大切な大きな影響があることでもあります。そこで国のほうでも公害対策基本法の策定をいたしたわけですけれども、まだ関連法が形がついておらぬわけでございまして、私どもは一日も早く日の目を見るようにしなければならぬと考えておりますが、ただいまも林さん御指摘のとおりに、こういった点で全的に地方住民責任を持つのは何といっても地方団体でございます。そこでやはりこういう対策を講じます際におきましても、都道府県あるいは市町村にその権限を一元化いたしませんと、国がやるやると申しましても、なかなかかゆいところに手が届くようにはまいりませんので、そういった努力をいま至急重ねつつあるところでございます。
  5. 林百郎

    林委員 そこで、具体的にこの公害に対する条例ですけれども、この条例のできている県とできていない県とあるし、できていても、公害に対して非常に寛大なところもあるし、ある程度厳重な規制をするところもあるわけです。こういうてんでんばらばらな産業公害に対する県並びに市町村条例についての指導条例についての自治省考えというものはどういうものか、お聞かせ願いたいのです。これはどうしていったらいいのですか。つくっているところもあるし、つくっていないところもあるし、またつくっていてもたとえば汚水関係を入れているところもあれば、汚水関係を抜いているところもあれば、立ち入り検査をするという条項があるところもあれば、それはそれでできないというところもあるし、てんでんばらばらになっているわけです。これは自治省としてはこのままで放置できないのじゃないかと思うのですけれども、それは大臣どう考えられますか。
  6. 宮崎剛

    宮崎説明員 お答えいたします。  林先生承知のように、公害問題と申しますのは地域的にたいへん差のある問題でございます。したがいまして、国のほうでは、公害基本法をはじめ、いろいろ法律をつくりまして、全国的な取り締まりなり規制なり助成なりを行なっておるわけでございますが、各地域の特性に応じまして、それぞれ国の規制では足りないところを補う、こういう趣旨で条例を制定しておるわけでございます。したがいまして、自治省といたしましては、この条例を全国的に統一するというふうなことは考えておりません。各地域実情に応じてそれぞれ条例を制定して、法律では足りないところを補っていくというふうに指導してまいりたい、このように考えておるのでございます。
  7. 林百郎

    林委員 たとえば人体に関する点については厚生省、あるいは工場指導については通産省、それから水域地域指定については経済企画庁、こういうようになっておるわけですね。あなたの言うように、地方自治体はそういう国の施策を補てんするという意味での条例をつくるような指導をするつもりだといいますけれども、そういう国の方針が確定して出てくるまでには二年から三年、長いのは五年もかかるのですよ。たとえば特別な地域公害水域指定をするかどうかというような問題を決定するまでには。ところが現実にそこで公害の発生は毎日毎日起きているのですよ。そしてそのことは市町村なり県へは持ち込まれているわけですね。それが、国の方針が出るまではおまえのほうは待っていろということでは現場と方針が合わないですよ。それを中央のほうの方針が出るまでは条例のほうも見合わしていたらいいだろう、そのうちに国のほうから方針が出るから、出たらそのとき条例考えたらいいだろうということで間に合いますか。全然実情と合っていませんよ。それでいいでしょうか。ちょっと大臣、重要な点ですから答えてください。
  8. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 国の方針が出るまでなにも条例をつくることを差し控えている必要はないと思います。これはやはり先ほど申しましたように、地域住民の実生活に非常に大きな影響を及ぼすことでございますので、それぞれ実情に応じて当該公共団体条例はつくっているわけであります。ただ、公害は水だけでなくして、大気その他非常に広範にわたっておりますので、こういったものについて、公害対策として国のほうで基本法中心に、各個ばらばらでなくして、ひな形と申しますか、条例にとってはやはり一貫したものをつくり、また指導していきたい、かような考え方は持っておりますが、国の扱いがきまらないからといって、そのままほっておいていいというものではございませんので、それはおのおのの地方団体でそれぞれ考えてやっていただかなければならぬ、かように考えております。
  9. 林百郎

    林委員 そうすると、たとえば千葉県あたりはたしか最近、工場排水についての条例を、ある程度規制力を持ったものをつくっているわけで、また、大阪や東京には前からあるわけですけれども、かりに国のほうの一定の基準が示されなくても、各府県条例をつくるということ自体については自治省としては自主性にまかせる、こう聞いておいていいのですね。
  10. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 そのとおりでございます。
  11. 林百郎

    林委員 その次に中小企業に対する金融的な措置なんですけれども、大工場はみずからの工場汚水排水、それから産業公害を自主的にみずからの責任処理するのは当然ですけれども、それだけの能力を持っておらない中小企業が、何とかそれらの金融の道を開いてもらえないだろうかということで、とりあえず市町村なり県に相談に行くわけです。そういうことに対して、将来地方公共団体に対して、そういう公害防止のための資本力のない中小企業に対して金融の道を開くような方法自治省としてもまた考える必要があるのではないかと思いますが、その点については大臣どう考えておりますか。
  12. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 その対策の進め方につきましては、先ほど申しましたように、第一義的にはそれぞれ地方団体のほうが責任を持って措置するわけでございます。ですから、現に地方団体でもこれに対していろいろな前向きの処理をしておるわけでございますが、しかし国のほうでも案件によっては当然そういう扱いをしなければならぬ場合もあるわけでございまするので、前向きで検討いたしたいと考えております。
  13. 林百郎

    林委員 具体的には、たとえば公害に対する金融措置も、公害基本法に基づいて、非常に不十分ですけれども若干はあるわけです。しかし、各府県市町村はとりあえず、たとえば漁民損害について、見舞金という名前にしろ、いずれにしてもある程度損害を補てんしてやったり、あるいは中小企業に対する工場排水浄化のための施設に対して金融措置の援助をしてやったという場合に、自治省としては、それを交付金だとか特別交付金とかあるいは何らかの名目助成金だとか、そういう項目の中に入れて見てやるという考えはないですか。
  14. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 排水を浄化するとか、いろいろなそういう前向きのことにつきましても、もちろん相談を受けまして、中小企業などの場合には金融措置等につきましては相談に乗っておるはずですが、こういう公害による水質汚染のために、たとえば漁業その他生産物損害を与えたというような場合も考えられますが、これもなかなか十分なことはできませんけれども特交などでこういうめんどうを見る措置は現にやってもおりますし、考えております。
  15. 林百郎

    林委員 そうすると、かりに十分なことはできないにしても、もしそういうような緊急な措置として、産業公害のために自治体が財政的に負担を負ったような場合には、特別交付金で見てやるということも考慮している、こう聞いていいですね。――それでよかったら次に進みます。  次の問題は、公害対策が、先ほども私言いましたように、厚生省通産省経済企画庁というような、同じ問題を取り扱うのにたとえば諏訪湖なら諏訪湖で魚の中に重金属類がどの程度蓄積されているかという人体に及ぼす影響の問題は厚生省が調べる、それから工場排水を中和したりあるいは排水人体影響を及ぼさないようにする指導通産省がやる、それから公用水域指定だとかあるいは蓄積された泥土だとか水だとか、そういうほうは経済企画庁がやるとか、地域住民からいうと相談するのに、あっちに行ってこっちにいって、こっちに相談して、それがまたいま調査中であります、いま調査中であります、もう二年かかります、もう何年かかります、こういう実情になっているわけですね。こういう中で、適切な措置を最もすみやかにとらなければならないのは御承知のとおり地方自治体であります。毎日窓口相談を受けるわけなんですから。こういう状態の中で、こういう各省のなわ張りのために地域住民が非常に困難を来たしておるということに対して、自治省がとりあえず地方自治体として統一的な適切な措置をとる、こういうような指導方法あるいはそういう道というものはないのでしょうか。それは中央のそういう各省通産経企厚生が数字を出すまでは県のほうも、地方自治体も黙って見ておるほか道がないというのでしょうか。ひとつ赤澤さん、この点を真剣に考えていただいて、これは地域住民にとっては重大な問題でございますので、もう少し強力な地方自治体権限も与えてやらなければ、たとえば工場の中へ入って調べる権限すら、条例でもあれば別ですけれども、断わられればそれまでということなんで、立ち入り検査権も、県あたりですら持ってない。ましてや市町村自治体は断わられればそれまでだということになるわけですね。そういう実情に対して、やはりすみやかに適切な措置窓口である地方自治体がとれるという、そういう措置自治省としてやはり真剣に考えなければならないと思いますけれども、その点どう思いますか。
  16. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 国全体としてそういった問題について真剣に検討をしておるわけでございますが、かといって、検討が終わるまで待っておれない事態もあるわけです。そういう際には、やはり中心はそれぞれ当該地方公共団体でございますので、これは積極的にやっていただく。ただ、基本になる法律などは、何せ国はずうたいが大きいから、それが出てくるのを待っておりましてもなかなか時間的に間に合いませんが、しかし各省庁で関与しておりましても、実施の段階ではやはり地方団体に統一、総合されるわけでございまするので、ここで積極的にしかるべく対処をしていただけばいいと思います。
  17. 林百郎

    林委員 そうしますと、一つの方策としてこういうことは考えられないでしょうか。公害に関する地方自治体条例の制定と、ある程度の規制権について、中央各省、たとえば厚生通産、企画、各省の持っておる規制権強制権調査権等地方自治体に、主として県ですけれども委譲する。委譲して、そしてそれを条例の中へ具体化する。特殊な条件がそれぞれありますので、各省権限をある程度知事委譲、移管する道を開いて、地方自治体は行政的な指導権を、ある程度委譲を受けて持つことができる。もう一度繰り返しますけれども、こういうことです。公害基本法やいろいろ見ますと、地方自治体が財政的な負担をする部分は規定があるわけですけれども、しかし同時に、中央の各官庁の持っている権限をある程度地方自治体委譲して、そして強制的な捜査権立ち入り権規制権を与えなければ、実際の指導地方自治体としてはできないわけなんですよ。そういうものを自治体に、あるいは知事委譲する。そして事実上の規制県段階でもできる。一々中央厚生通産経企の結果が出るまで待たなければならないというような状態でなくてもできる、そういう道を開くことを考えておらないかどうかという点です。
  18. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 それは言うまでもなく、地域住民めんどう地方団体並びに自治省で見る立場でございますので、各省権限地方団体に大幅に委譲することにつきましては、そういった面も激しく働きかけておるわけでございますが、なかなかまだ十分なところまでいっておりません。しかし、そういう努力はさらに続けていかなければならぬと考えております。
  19. 林百郎

    林委員 もう一つだけ。自治大臣、ひとつ真剣に考えていただきたいと思うのですけれども、これはやはり自治行政の中の重要な一つの部門になると思うのですよ。現在なっております。また将来なります。私のほうの考えとしては、民主的な調査委員会をつくって、公害調査をしてその責任を明らかにし、そして大きな資本をもって企業を行なっておる企業に対して公害責任を明らかにさせ、国、県にもその責任を明らかにさせる道をすみやかに講じろという方針を私どものほうの党としては持っておるわけですよ。それでは、県が具体的に調査に行って断わられた場合ですね。私のほうは何もお見せする義務もありませんし、必要もありません。そういう場合、県や自治体としては一体どうしたらいいでしょうか。ああそうですかといって帰ってくるより道がないのでしょうか。
  20. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 やはり個人、自然人であれ法人であれ、それぞれ法律によって保護されておりますから、地方団体といえども法律範囲内でしか権限を行使するわけにはいかぬことは当然なことでございます。そういった面で、ただいま御指摘のような問題が出てまいりますので、そういったことについて権限地方団体委譲することをいま進めておるということを申し上げたわけです。
  21. 林百郎

    林委員 法律範囲内で権限を行使するよりしかたがない。そうすると、条例の準備中だ、条例をつくるための実情調査をしたい、しかし実情調査に行けば、いや私のほうの工場はいまお見せするわけにはいかないと言われれば、それでそのまま帰ってこなければならないということになれば、地方自治体としては条例をつくる資料すら集めることができないということになるのじゃないでしょうか。ですから自治大臣としては、公害の問題について自治省として、一定権限自治省自体も持つし、また自治体にも一定権限委譲して、直接の当事者としての地方自治体、直接の地域住民窓口としての地方自治体が、産業公害について十分な資料を集めることのできるような、そういう権限を与えるということを赤澤自治大臣考えませんと、どうもさっきからあなたの答弁を聞いておると、公害問題については非常に消極的で、警察問題は非常に積極的だけれども、どうも心細いと思うのです。これは自治省の重要な将来の行政問題として、自治省地方行政理事者自治体との間に公害問題についてもっと基本的によく意思を統一し、一定権限を与え、直接の地域住民窓口としての自治体にその責任を果たさせるような、もっと積極的な姿勢を大臣とれないでしょうか。どうもさっきから聞いていて、それでは県や市町村では手が出ないんですね、赤澤さんのその答弁では。結局あなたが、大きな企業利益のためには見て見ぬふりしておこうじゃないかというお立場ならそれでいいですよ。私は佐藤内閣の閣僚だもんだから、林君、言われてもしかたないよというならば別として、ほんとう地方自治責任者としてお考えになるなら、自治省でこの公害問題、これは安中にも出ております。四日市にも出ております。イタイイタイ病もありますね。それから水俣病もありますよ。これは私は自分の選挙区で起こったことを言っているだけですけれども、どこへ相談に行くのでしょうか。とりあえずその市と県に行くしか行くところがないんですよ。地域住民も、一々多額の費用を出してたくさんの人が東京に来て、厚生省それから通産省、それから経済企画庁を回って歩けないですよ。その場合に、やはりイタイイタイ病やそれから水俣病の起きてる当該市町村や県が、ではとりあえずこういう措置をいたしましょう、そしてこういう権限でもって交渉しましょうというものを与えられていなかったら、これから非常に拡大される危険のある公害問題についての地方自治体の適切な措置というのは、これは不可能ですよ。もっと真剣にほんとう考えていただきたいと思いますけれど、どうでしょう。
  22. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 それは林さんに自治大臣としては全く同感なんです。しかし御案内のとおりに、産業公害につきましても通産あるいは厚生それぞれ所管をしておりますので、私どもがいま努力しておりますことは、少なくとも産業公害についてはやはり条例の作成その他地方団体に一元化する、ここで総合的に処理するという道が開かれるような努力をしておるというわけでございまして、関係各省にそれぞれ強く働きかけておる最中ということを申し上げたわけですが、残念ながらいまこういった広範の権限自治省では持っておりませんので、いま努力は重ねております。
  23. 吉川久衛

    吉川委員長 林君、理事会の申し合わせがありますので……。
  24. 林百郎

    林委員 これで、あと一問で終わります。  公害審議会地方自治体を代表して自治省が参加する、この考えは持っておられるかどうかということを一点として、時間がありませんからまとめますけれども、とりあえず地方自治体として、さっき言ったように、漁民が月に八百万くらいずつ魚が全然売れなくなっているわけですね。御承知のとおり、公害防止法には公害審議会がありますから、この審議会自治省として各地方自治体利益を代表するものとして参加するという道を考えているかどうかということが一つ。先ほどの、とりあえず漁民などに対する見舞金とか損害金とかいうものを地方自治体が若干でも予算に出してみたり、あるいは中小企業に対する公害防止のための施設補助金などを県や市町村で見ているところがあるわけですね。現実にもう見ているのですよ。大臣知ってるかどうか知りませんけれども。まあそれは名目見舞金という形で出したり、損害補償金の一部として出したりする。それからまた一部の県では中小企業に対する、御承知のとおりこれは法制的にはありますけれども助成金の一部に出しているわけですね。そういう財政的な地方自治体負担に対しては、もう一度聞きますけれども、これは特別交付金なりあるいは特別行政奨励助成金なりという形で、財政的にも見てやる考えがあるということを、もう一度大臣から答弁をお聞きしまして、私の質問は終わりたいと思いますけれども、御承知のとおり大企業が利潤のためには地域住民利益はさておいて、利潤中心のためのいろいろの産業公害が続発しているわけですね。これに対する政府自体の姿勢も非常に消極的だと私は思いますけれども、しかしきょう私たちが一番質問の重点として自治大臣にお聞きしたいのは、窓口として毎日毎日それの相談を受けている市町村や県に、自治省としてはもっともっとやはりこの問題について真剣に相談に乗ってやり、権限も与えてやり、財政的な援助もしてやる。そうして地域住民の苦しみを――一番地域住民と直接接触している自治体に解決の道を開いてやるということが非常に重要だ、こう私は考えて、あなたに質問しているわけですけれども、いまの二点、公害審議会――たしか公害審議会だと思います、いまここに持っておりませんけれども、それに自治省としても参加する考えがあるかどうか。とりあえずのそういう補償並びに中小企業に対する助成として財政的な負担をした場合の地方自治体に対する助成、その二つの点をお聞きして、委員長、時間がまいりましたのでこれで終わらせていただきます。
  25. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 審議会公害対策会議のことでいろいろここで議論もしておるのですけれども審議会のほうでしたら自治省そのものでなくて、やはり地方団体の代表が、知事の場合は愛知県知事と岡山県知事と入っております。また市長の場合は川崎市長が入っているわけですから、地方団体側の意見は十分ここで述べることができるわけでございます。  それから財政的な面では、四十三年度が交付税で五億六千万円、地方債で一般単独下水道整備事業などで大体四十三億円ばかり計画しております。去年は特交で四億七千万円措置しております。
  26. 林百郎

    林委員 これで終わりますが、厚生省の方、来ていますか。いま大臣の言われた中で下水道等の施設の問題について特交そのほかで起債で見てやったという話があったわけですけれども、御承知のとおりあそこの汚水対策の重要な施策の一つとして、諏訪、下諏訪、岡谷、あの湖水全体に下水道をつくるという問題と、それからあそこを広域水域地域としての指定をしてもらいたいという希望が非常に強いわけですね。これはあなたのほうのお話を聞きますと目下調査中、目下調査中で、調査の結論が出るのは来年あたりになるだろうというお話ですけれども、この二つの地元の要求については、広域にわたる下水道の完備とそれから広域水域地域の水質指定、この問題については、再来年とか来年とかなんとか言わなくて、早急に指定される考えがあるかどうか、念のためにそれを聞いて私の質問を終わらせていただきます。
  27. 武藤き一郎

    ○武藤説明員 実は広域下水道――下水道の問題は建設省が所管しておりまして、私の直接の責任ではございませんけれども、ただいま先生がおっしゃったことにつきましては厚生省としても非常に関心がございますので、前々から建設省にその点は申し入れてあります。強く建設省に申し伝えます。
  28. 林百郎

    林委員 広域水域地域指定……。
  29. 武藤き一郎

    ○武藤説明員 その問題は経企庁が担当しております。
  30. 林百郎

    林委員 経企庁、来ているでしょう。
  31. 八塚陽介

    ○八塚説明員 御承知のように諏訪湖は四十一年度に調査をいたしまして、その後県といろいろ連絡いたしておりましたが、いままでのところ、八月ごろまではあまり県のほうも指定についてはお話がなかったのでございます。最近のような事態になりましたので、さらに県と御相談いたしまして、早急に態度をきめたいと思います。
  32. 林百郎

    林委員 それでは時間が参りましたので……。
  33. 吉川久衛

    吉川委員長 細谷治嘉君。
  34. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は、なるべく要領よく短時間で、一つは、せんだっての有馬温泉の火災事故を中心とした点、それから第二点は、地方公営企業に対する対策、第三点は、五十八国会で地方団体の税、財政の問題がいろいろと検討されて、附帯決議もついておるわけでありますが、予算要求、概算要求もされておりますし、いまどういう方針でこれに取り組んでおるのか、そういう三点について質問をいたしたいと思うのであります。  最初に、先ほど「有馬温泉旅館「池之坊満月城」火災概要」というものを消防庁のほうからいただいたのでありますが、満月城が落城したのについて、これは水上温泉の例もありますし、あるいはいまの資料にもありますが、湯河原の旅館の火災とか、観光地ばかりじゃなく、いろいろな旅館の火災というのがたいへん頻発いたしております。きょうもまた消防白書をいただいたのでありますけれども、火災件数も死亡者の数もあるいは被害額も、いずれも戦後最高を記録する、こういう事態になっております。  そこで、消防庁長官、一体この池之坊満月城の落城の原因はどこにあったのか、これにも書いてありますけれども、ひとつそれをお聞かせいただきたいと思います。
  35. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 この火災が大惨事を招きました要因といたしましては、いろいろなことが考えられるわけでございますが、私どもがいままで調査をいたしましたところを要約して申し上げますと、まず第一番に、火災の発見及び通報がきわめておそかったということでございます。第二番目は、夜間における旅館側の防火管理の体制がきわめて不備であったことでございます。第三番目は、いわゆる新建材、煙を多く出す材料でございますが、これが多く使われておりました関係で、火の回りが非常に早かったということでございます。第四番目は、自動火災報知設備を消防法の規定によりまして設けなければならないことになっておったのですが、これが再三の勧告にもかかわらず不備であったということでございます。第五番目には、避難経路の案内あるいは避難誘導というようなことがなされなかったということが考えられております。
  36. 細谷治嘉

    ○細谷委員 ただいま大惨事を招いた原因として五点あげられたわけですけれども、火災の発見及び通報がきわめておそかった。新聞等によりますと、火災が起こってから通報には相当の時間がかかったようですね。どのくらいかかったのですか。
  37. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 これは火災の発生いたしました時間が推定二時三十分ごろと考えられるのでございますが、消防署のほうで覚知いたしましたのが三時六分ということでございますから、三十分以上経過いたしております。
  38. 細谷治嘉

    ○細谷委員 消防というのは五分が勝負だ、こう言われているわけだ。三十分もたったら勝負はきまっちゃうのじゃないですか。それまで一体どうしておったんですか。
  39. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 旅館の従業員が火元と思われる近くで煙を発見いたしましてから旅館の本館のほうに参りまして、それでほかの者を呼び起こし、さらに有馬消防のほうに電話をするというその過程におきまして非常に時間がかかっておるということであります。
  40. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そういうふうに時間がかかった原因というのは、あなたのほう突きとめてありますか。
  41. 山本弘

    山本説明員 大体二時三十分ごろに出火したと思われるのでございますが、三十六分現実にかかっております。三時六分は、これは一般人の二九番による通報でございます。同時に、火災旅館の従業員からもほとんど同時には通報が入っております。三十六分経過したことにつきましては調査をいたしておりますが、実は第一発見者と思われる従業員がその本館のところへ行く間、火事だ火事だと叫びながら行ったわけでございますが、なお火災発生の通報が三時六分まで結果においてはおくれたというのが実情でございます。
  42. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私はそこの、三十分もしてやるようでは、これはいかなる消防施設を持っておってももう対応できないと思うのです。そこに一つの問題がある。これだけをちょっと申し上げておきたいと思います。  その次に、第三番目にあなたがあげました、内装が不燃材料でなかったので煙の量が多く、火の回りも早かった。三十名なくなっておりますね。水上温泉でもそうなのですが、三十名なくなったうちの大部分は一酸化炭素中毒ですでにもう致命的だったのでしょう。焼け死んだんじゃないのでしょう。その辺はどうなんですか。
  43. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 そのように推定いたしております。
  44. 細谷治嘉

    ○細谷委員 三十名のうち、一酸化炭素中毒でもう決定的だと思われた人はどのくらいおるのですか。
  45. 山本弘

    山本説明員 三十名なくなっておりますが、木造部分で十八名、それから耐火建築物の中で十二名なくなっております。十二名の者はほとんどこれが煙による中毒あるいは窒息死、かように考えられます。なお、現地警察によるところの解剖は、そのうち解剖可能なものについて行なっておりまして、三体行なっておりますが、大体いま申しましたように、耐火建造物内の死者は窒息あるいは中毒死であり、十八名の焼死者につきましては、これは一応外形上歴然でございますので、焼死というふうにいたしておりますが、その焼死の中で、場合によっては、一酸化炭素中毒の後にからだが焼けたというものもあろうかと思います。
  46. 細谷治嘉

    ○細谷委員 焼け死んだのじゃなくて、一酸化炭素中毒というのが過半数なんですね。私は、ここに問題があると思うのです。あなたがあげられました、避難経路の案内も、避難誘導もなされなかったというけれども、私は行ったことはありませんけれども、きょうは神戸市出身の河上代議士が、委員会がありますけれども、わざわざ現地の視察に行っております。新聞等によりますと、この略図を見ましても、たいへんな迷路ですね。そうしますと、これは逃げようとしたって逃げられない。その上に不燃材料でない新しい建築材料、その建築材料というのはものすごく煙を出す。排煙施設はない。その煙は当然一酸化炭素がある。中には、シアン化ガスも発生するような材料を使っておる。こういうことになってまいりますと、水上温泉の場合もそうでありますが、今度の場合もそのとおりでありますが、建築基準法そのものに、今日の観光地等を中心とした旅館の施設に問題があるのじゃないかと私は思うのです。これについてどうお思いなんですか。あなたは消防法令違反ということについては、自動火災報知設備が設けられていなかったということだけしかあげていないわけだ。現在の消防法あるいはそれに基づくいろいろな施行令、省令、そういうものについてはあとでまた触れたいと思うのですけれども、建築基準法についてすでに違反が起こっているのじゃないですか、どうなんですか。これは建設省の関係だからおれは知らぬということですか。
  47. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 建築基準法の違反もあったように建設省関係から伺っております。  それから、なお、お尋ねの内装材料の問題でございますが、これは従来のたび重なる火災の事例に見ましても、早急に法的措置を講ずる必要があると私ども考えております。この点につきましては、昨年、消防審議会から答申をいただきまして後、建設省のほうと折衝をいたしておりまして、この建築材料に属するもの、いわゆる新建材というものにつきましては、建築基準法のほうで法的な措置をとる。それから、カーテンとかどんちょう等の類につきましては、これは消防法の関係で規制をする、こういう申し合わせをいたしまして、消防法関係につきましては、すでにさきの国会におきまして御審議をいただきまして、明年から防煙措置をとるということにいたしております。建築基準法関係につきましては、建設省のほうを督促いたしておりましたが、さきの国会につきましては、提案されるまでには準備が進まなかったようでございます。次の通常国会にはぜひ御審議をいただくようにということで、現在検討をいたしておる状況でございます。
  48. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いつの答弁でも、起こったことはしようがない、それをもとにしてやります。いま最後に、建築基準法も検討して次の通常国会には出す、こう言っておりますが、その内容はどういうことなんですか。次に出す、次に出す、これを大きな経験として、二度と再び起こらないようにしますと言うけれども、これは繰り返しているじゃないですか。どういう内容なんですか、どういう考えを持っているのですか。
  49. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 これは法律事項と政令事項とあるようでございますが、建設省から連絡を受けております事項は、耐火建築物の旅館、ホテルにつきましては、現行法令では内装制限ができるようになっておらないようでございますが、これを適用するということでございます。それから、避難階段、避難廊下等につきましても内装制限を強化する。さらにまた、その内装制限の適用除外というものが現在規定があるようでございますが、そういうものをできるだけしぼるというような内容のことを現在考えておるようでございます。
  50. 細谷治嘉

    ○細谷委員 まあ制限について、しぼる――いまのは建築基準法の三十五条の二、内装についての規定でしょう――しぼるということでありますけれども、その場合に、消防庁としてはどういう発言権が保証されるのですか。
  51. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 この制限の対象となります難燃材料の基準を建設省で検討しておるわけでございますが、これにつきましては、私どものほうと十分合議をした上できめるということにいたしております。  なお、建築基準法で規定ができました暁におきましては、建設の際、消防の同意を得ることになりますから、その機会におきまして、消防機関としては、この点につきましても見てまいるというようなことでございます。
  52. 細谷治嘉

    ○細谷委員 消防の同意を得るといって、どういう段階で同意を得るのですか。
  53. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 建築機関が、建築主事が建築の確認をいたします際に、防火上の見地から、消防機関の同意を得ることになっております。そのことを申し上げたわけであります。
  54. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私が申し上げたのですが、命令はできた、そして新しい建材が使われる、そういうことなんですよ。その設計は建築基準法に基づいてやるのでしょう。こういう建材はいかぬというけれども、日進月歩だ、いろいろな建材ができてくるんですよね。あなたのほうは、消防設備士という形で、そういう問題については消防設備士が設計には文句が言えない。現場の施工について消防設備士はタッチできるわけだ。しかし、できてきて、その許可権というのは、建築基準法によって建設省がお持ちなんだ。言ってみれば、県の出先等にある建築課、建築の主任技師が握るわけだな。神戸の場合は、指定都市でありますから、それは市長の部下である人が握っておったんでしょう。  大臣、私はここで質問したいのですが、かつてこういう問題について東京都は、これからの近代建築をやっていく場合には、設計についても消防の専門家がくちばしを入れるような立場をとっておかなければ、これからの近代建築に対して、あるいは近代内装に対しては対応できませんよ。現に、東京都では、消防設備士というものが設計にまでくちばしを入れることができるわけだ。それを、国の法律をつくる段階になったら、設備士がくちばしを入れることができなくなったわけですから、都の条例よりも後退したのですよ。ですから、設計は一方的に一級建築士か二級建築士がやるわけだ。その設計を今度は監督する場合に、消防部分については設備士が見てやるだけだ。自治法の十四条によって、せっかく地方がそこまで設計にまで消防上の立場を堅持しようというのを後退させた責任ですよ。今日出てきているでしょう。どう思うのですか、大臣。私はずばり言えば、一級建築士であろうと二級建築士であろうと、消防設備士の免許を持っておらぬ、資格を持っておらぬ人たちでは、一人前の今日の近代建築はできないんだ、消防設備士の手を借りなければ設計が完了しないというならば、おとりになったらいいんですよ、一級建築士が。それでなければだめなんですよ。もうどういう材料を使われるか政令できめたって、そんなもので今日のこういう火災を防ぐことはできない。責任は私は自治省にあると思うのですよ。消防庁にあると思うのだ。せっかく都がりっぱな条例をつくったときに、一歩後退させたのはあなた方じゃないですか。大臣どうですか。そこまで消防上の立場を堅持しなければ、柱を入れておかなければ、くぎをさしておかなければ、これからはいよいよこういう問題については私は安心してやるわけにいかない、生命を守るわけにいかないと思うのですが、大臣の所見を伺いたい。打ち合わせるだけではだめですよ。大臣大臣
  55. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 ちょっと私さっきお答え申し上げましたからひとつ……。  消防設備士の制度を法制化いたします経過におきまして、先生の御指摘になりましたようなことがございましたことは私も承知をいたしております。この点は、消防設備士制度を今後どのように活用していくかという観点から、さらに研究をしなければならない問題だと私も存じております。ただ、先生いま新建材の検査に関連してのお話でございましたが、あるいはおことばを少し誤解している点があるかもしれませんが、新建材が使われているかどうかということは、消防設備士の任務の対象とはちょっと違う分野のように存じております。
  56. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そんなことないですよ、あなた。設計をやる場合には内装はどういう形でやる、こういうことでありますから、私が申し上げるのは、建築のスタートそのものに消防上の立場が貫かれておらなければ迷路もできちゃう、あるいは新建材による塗装ができる、一酸化炭素が発生する、場合によってはシアン化ガスが出てくる、そういうようなことになるわけですから、厳重な法的な立場消防の中で確立しておかなければ、これはもう二度と再び起こしませんといったって、これはその場限りの逃げ口上にすぎない、こう思うのですよ。あなたのほうはいつでも中途はんぱじゃないですか。あなたのほうは力が弱いんだよ。いってみれば、別表でも同じことですよ、消防の。同じ石油類でありながら、ちょっと半歩か一歩進んだけれども、LPGについても従来発言権がなかったでしょう。若干今度できてきた。こんなことで、今日のような新記録を毎年つくっていっているような消防責任が持てますか。私はそこを申し上げているんだ。ですから、消防庁としては、今日の段階においてはここまでとにかくもち屋はもち屋、消防立場から設計もしてもらわなければいかぬ、材料も使ってもらわなければいかぬ、こういうことを正確にチェックできる立場が法令上確立されておらなければならぬのに、確立されておらぬじゃないか、こう言っているわけだ。しかも、おらぬどころじゃない。都の条例等でりっぱなものができている。それを後退させた。その責任はあなたのほうにあるじゃないか。ですから、こういう状況に対してどう対処しょうとしていくのかという大臣の覚悟のほどをお聞きしたいわけなんです。
  57. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 悲惨な事故でございましたので、今後こういうことを起こさないように私たちもいろいろ検討を加えておりまして、今度建設省に対しましても重大な要望をいたしております。それは一つは、やはり新建材がどんどん出てまいりますので、それも内装に多く使われる、そこで、それが燃えまして、いまの一酸化炭素なりいろいろな有毒ガスを出す、これに巻き込まれて死んだ人が多いということも承知をいたしました。あれは三階の建物ですが、窓から飛んだ人は一人も死んだ人はいない。中におって毒ガスによってほとんど死んだというように私どもも判断しております。そこで、私どもの要求は、建築基準法にも内装制限を十分に強化するということ、それからいま迷路の話が出ましたが、やはり建て増し、建て増しをするものですから、勢いそういった形に建物全体がなりがちでございますので、総合的な防災設備について十分考えてほしい。それにはやはり屋外階段をつける、あるいはバルコニーなどの避難施設を設置する、こういう問題一切含めまして、建設省には強い要望を出しました。しかし、これをどうして保障するかということについての細谷さんからの御質問であろうかと考えますが、そういうことにつきましても、今後の反省といたしまして、十分検討して、こういう間違いを起こさないようにいたさなければならぬ、かように考えております。
  58. 細谷治嘉

    ○細谷委員 これはひとつしっかりやっていただかなければだめです。マスターベ-ションをしておってもだめなんです。  もう一つ、これに関連してお尋ねしたい。新聞によりますと、あなたのほうの消防法及び消防法令関係はあとで質問するのだけれども、あそこには消防施設がなかったのだ、とにかくシュノーケルか何かあったのですか。神戸のほうへいったのでしょうけれども、避難ばしごを持ったような消防車はなくて、普通の消防車が二台くらいしかなかったというのですね。そうでしょう。そこで、消防車がかけつけても活動できないような消防体制であった。いってみれば、道幅が狭い、消火用水も十分ない、こういうことですな。これはどうしておったのですか。これは都市計画の問題でありますから、建設省の問題であります、建築基準法の問題でありますとおっしゃるのですか。これは水上のほうでもそうでしょう。湯河原でもそうですよ。いつの場合でも必ずこれは起こっている。消防活動はできませんでした。水の問題はあなたのほうの問題だけれども消防活動はできませんでした、道路が狭くて、こういうことですよ。この事情はどうだったのですか。
  59. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 今回の消防活動の点におきましては、覚知をいたしますまでの間非常に時間がかかったということが一番残念な点であったと存じております。しかし、その点を別にいたしまして、お話のように、有馬に神戸の消防の出張所がございましたが、その出張所には常時二台のポンプ車でございます。あと消防団が持っておりますし、あとは神戸市の本署のほうから応援に行ったわけでございますが、観光地の所在市町村における消防力の基準をどう考えるか、体制をどう考えるかということにつきましては、なお私ども検討すべき問題があったと思っております。
  60. 細谷治嘉

    ○細谷委員 消防活動ができなかった。この場合にはもう三十数分しているのだから、勝負はきまっているのですから、燃えるにまかしたということでありましょうけれども、大体あなた、かりに――この場合にはポンプがなかったからいいけれども、もしあったとしても、活動できないような道路の状態、街路の状態、こういうことになると、これはたいへんですよ。この問題について今後どう対処していくのですか。たとえば都市計画の問題になりますと、私も実例を知っておりますけれども、相当焼けた。焼けたことはたいへん悲しいことでありますけれども、これを機会にごみごみしたところがクリーニングできる。これを機会にやらなきゃならぬといっておりますけれども、地元の人が、いやもとどおりやらしてくれといってどんどん建てていっちゃう。もとのもくあみで、また建て上がったものは昔のような状態にごみごみして、消防活動ができないようになっておる。その場合に消防庁はどういう立場でいるのですか。
  61. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 御指摘いただきました点は、私も温泉旅館街の火災を見まして、そういう問題が非常に大きな問題であると痛感をいたしております。道路が非常に狭くて、いざ火災になりました場合に消防活動が十分できないというようなところに、そもそも非常に多数を収容するような旅館、ホテルが建築上認可されております。あるいは営業許可になるというようなことにつきましても、根本的には将来の問題として、検討しなきゃならぬ問題があるように思います。実は大臣からの御指示もございまして、この事件後、関係省庁との間の連絡協議会を持つことにいたしまして、私どもだけの立場で解決できない問題がいろいろ多いものでございまするから、関係省庁と十分協議を尽くしまして、こうした問題についての対策検討いたしたいということで、すでに第一回を開いて、さっそくまた今週も開くことといたしておりますが、そういうことでよく協議いたしたい、かように思っておる次第でございます。
  62. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私はいま二、三の例をあげて、消防庁が消防上の立場を貫くことができなくて他省におまかせきりであった、これが今度の災害の非常に重要な一つの側面だった、こういうことを申し上げておるわけです。  そこで、次に申し上げたいのは、それではあなたの消防庁は完ぺきであったかと申しますと、これはそうじゃないのですね。ですから、私は少しさかさであった。自分のふりがよくないのに人のことを文句言えとあなたに言ったのは少しなんですけれども、私は、非常に重要な側面でありますから、それを申し上げたわけだ。あなたのほうのものはと見ますと、さっきの原因の四番目に「自動火災報知設備が設けられていなかった。」こういう報告が書いてありまして、そして消防、建築関係法令違反ということでは、消防法令違反がこの「自動火災報知設備及び電気火災警報器の未設置、避難設備の基準不適合」これだけあげております。建築基準法については、さっき建設省が調査しておるからおれは知らぬと、こういうことであります。法令違反はこれだけですか。
  63. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 新聞に伝えられましたところでは、昭和三十五年以来十五回も立ち入り検査をして、いろいろと指導勧告をしてきておるということがございまして、私ども調査いたしましたところもそのとおりでございますが、これは昭和三十五年から今日まで十五回立ち入り検査をいたしたということでありまして、そのつど注意をいたしましたことが逐次改善されてきてはおりますが、今日火災が起こりました時期におきましてなお実行いたしておりませんでしたことはただいま申し上げたところでございます。
  64. 細谷治嘉

    ○細谷委員 あなたのほうの報告によりますと、「昭和三十五年以来十五回も立入検査を実施し、その都度、消防用設備等、火気取扱い、危険物の取扱い、電気設備等について指導、警告をしてきている。近時のものを掲げても昭和四十二年に二度、今年になって二度行なっており、最後のは、十月三十日に行なっている。」これは十一月二日でありますから二、三日前だ。こんなに注意もし、査察もし、勧告もしてきたのに、昭和三十五年以来十五回もやってきたのに、なぜできないのですか。新聞によりますと、行管のほうが神戸市に対して、あなたのほうの神戸市のやるべき任務を果たしておらないじゃないかということをきびしくいったと書いてあります。それも事実だろうと私は思う。これなら何べんやったって同じではないですか。十五回もやってまだ法令違反だというのだから。何のために査察するのですか。これは消防庁及び現地の消防署の責任ですよ。どうなのですか。
  65. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 私も御指摘のとおりに存じます。そこで、われわれの反省といたしまして、従来、現地の消防機関が消防法令違反の事態に対していろいろ査察をし、注意もいたしますが、それが実行されなかった場合に、あくまでも実行させるために断固たる措置をとるというような点において欠けるところがあった、この点は率直に反省をしなければならぬ、かように思っております。
  66. 細谷治嘉

    ○細谷委員 四十一年の水上温泉の事故、湯河原の問題、この委員会でも常に問題になっていることですよ。あなたも今度やる、今度やると言っているのですよ。十五回も査察し、ことし二回もやり、去年も二回やって、依然としてできておらぬというのなら、法律もへったくれもないじゃないですか。新聞によりますと、神戸の市長は、観光地についての消防の特別法をやってくれ、こういうことを発言なさっているようでありますけれども、どんな法律ができたって、十五回も査察してそれが完全にできないようではこれはだめだ。もっとも私は神戸だけ追及しているのではないのです。おひざ元のあなたの人事院ビルとかこの辺の大きなビルを見てごらんなさい。みんな消防法違反ですよ。救命施設等にしてもおそらくみな違反でしょう。東京消防庁管下でも違反がばらばら出てくるでしょう。違反はないですか。あそこだけですか。(「国会はどうだ」と呼ぶ声あり)消防法の基準にのっとって合格するのは衆議院と参議院会館の三つの建物ぐらいだ、こういわれているのだ。あとは全部、本省の官庁だってみな消防法違反ですよ。ですから、神戸市だけではないわけだ。消防庁みずから、人事院ビルだって違反しているはずだ。そんな態勢ではこれはどうにもならないと思うのですよ。
  67. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 この十五回もやったということでございますが、その間に増築も何回か次々やっておりますので、そのつど新しい問題が出て新しい指導もいたしておるわけでございまして、三十五年当時指摘したことが今日直っていないというわけではございません。その点はございません。しかし、先生のおっしゃるように、満月城に限らず全国の旅館、観光地における温泉ホテルについて、なおいろいろと違反の事故があるということは、私はおそらくそうであろうと思います。したがって、その点につきましては、今回の事例をまつまでもなく、水上温泉のあとから、それらに対する予防査察を厳重にやるようにということは指導いたしてまいっておるわけでありますが、今回のような事故が起こりましたことはたいへん遺憾な点でございます。
  68. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大臣、満月城だけじゃないのです。残念ながら、大臣が住んでおる人事院ビルでも、厳格にいって消防法令に違反しているのですよ。そういう状態なんです。これではどうにもならないと私は思うのです。ですから、消防法令をきちんと、査察したらば、半年以内なら半年以内、三カ月以内なら三カ月以内にぴしゃっとやはり実行させなければいけないと私は思うのです。と申しますのは、私はそんなにきびしいことを申し上げているわけではないのです。あとで、いまの消防法令の基準自体が不十分だということを例をあげて申し上げたい。その不十分なことすらも監督官庁自体がやっていないものですから、それは下のほうはやりませんよ。観光地はもうければいいのですから。まあ、もうければいいというのはたいへん失礼な言い方ですが、人命を守らなければならない。大臣、そういう状態なんですから、どうしてもやはり現行消防法令というのは即時実行させなければ、そこに私は――消防設備なんというものは、法律で制度ができたけれども、役をなしておらぬという根本的なものがある。消防庁の言うことなど聞かぬでいいのですからね。もっと活躍してもらいたい。いまのままなら、予算を食って、なくてもいいのですよ。消防庁なんかそう思うのですが、大臣どうなんですか。
  69. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 少し極端な御表現ですけれども、それに近い面も確かにあるわけだと思います。だから、こういう災害が起こりましたのを契機として、非常に強い決意をもって関係各省と協議会をつくって対策をきめたいと申しますのは、そこでございます。消防法にはちゃんと罰則もあるわけですから、それは調査いたしまして、告発する場合もあり得るわけです。それがいままで一回も出ていない。しかも、御指摘のとおりに、都内にもたくさん違反建築があるわけでございます。しかし、そういう姿勢を今後改めて、そして消防施設というものの万全を期したいという考え方を持っておりまするので、ひとつ今後に御期待をいただきたいと思います。
  70. 細谷治嘉

    ○細谷委員 時間がありませんから、そこで私は、大臣、この報告によりますと、いや消防庁としては努力しているんだ、一一パージ「旅館、ホテルの火災予防について最近消防がとった措置、(1)消防用設備の設置強化」こう書いてある。何が書いてあるかと思いますと、「昭和四十一年十二月消防法施行令を改正し、旅館、ホテルの収容人員三十人以上の階には避難器具を置くこととし、その個数は収容人員百人までごとに一個とした。(それ以前は五十人以上の階で耐火構造の二階以外の階に収容人員三百人までごと)」と書いてある。こんなこともやっているんだぞと、締めくくりのほうではたいへん自慢しているのです。大臣、この四十一年十二月の消防法施行令の改正というのは、専門家でない労働省が労働者の宿舎等に設けておる消火基準より低いのですよ。専門家である消防庁が、専門家でない労働省の労働者の宿舎等に対する避難施設等の基準よりも低いものを法令として改正したものがそれですよ。それで、こんなことをしているんだといばっておる。たいへんな穴が抜けておって、そうして、こんなことをやっておりますといばっておりますけれども、こんなことでは話にならないと私は思うのです。ですから、現行法令も守っていない。現行法令自体がきわめて不十分。専門家でありながら、専門家でない人にも及ばないという、そんな基準をつくったわけだ。こんなことではだめです。ですから、私は極端に、消防庁はこんなことでは要らぬじゃないか、こう言っておる。大臣は、それは極端だけれども、それに近いというのですから、あまり違わぬですよね。相当しっかりしてもらわなければならぬと私は思うのですが、どうなんですか。
  71. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 まあ、建築をする人が人命の保全に対して十分な配慮をしなければならぬというのは、あたりまえのことでございまして、労働省がそういうことを考えておるというのは初めて聞きましたけれども、非常にけっこうなことだと思います。しかし、消防庁の場合は、人間の住む建物は全部に及ぶわけですから、あまり過酷過ぎたことを取りきめまして、そうしてあとまた処罰の対象なんかにするということもいかがかと思われる面もありますから、まあどちらかといえば、一番人命に対して慎重過ぎるほど慎重なところまではなかなか全般的な規制はいかないと思います。しかし、少なくとも観光地のような、何でも無責任に人をたくさん集めるようなところは、こういう悲惨なことが起こる可能性が多いのですから、まず最初これに手をかけて、そうしてかかるあやまちを正すという意味で、私、現に言っておいたのですが、有馬温泉の事故につきましても、建物で焼け残った部分は使用停止、これはあたりまえのことです。この経営者に対しましては、措置命令に従わなかったということで、市長の了解を得た上、きょうじゅうに告発するということにいたしました。これは先ほど消防法上の罰則のことを申し上げましたけれども、違反者がありましても、一ぺんもこれが動いたことがございません。しかし、今度からはやはり厳密にやっていくというつもりでございまするので、いままでお目こぼしにあずかっておった向きもだいぶん考えることになるとも思いますけれども、今後はさらにこれを頂門の一針として、十分こういう災害を避けていくつもりであります。
  72. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いまの大臣のことばに重要な点がある。労働省の労働者の寄宿舎等の基準というのは、人命を守ることだからいいけれども、一般の消防の法令というのはそこまではやれないのだということは、労働者の生命と一般の生命というのは軽重があるのですか。たいへんな発言ですよ。あなた、これは無責任ですよ。少なくとも専門外の労働省が寄宿舎等に設けておる基準、それ以下であることはおかしいのじゃないかと私は申し上げておるのです。寄宿舎におる人の生命も大切であります。旅館におったって――新婚夫婦が死んでおるのです。新婚夫婦の生命ばかりが大切じゃありません。みんな大切であります。この点、大臣消防法の勉強が少し足らぬですよ。一体いまの消防法令で、たとえば収容人員三十人以上百人まで一個とした避難器具ですね。いまの法令で書いてある避難器具を使ったとしますと、一人大体どんなに早くても三分ぐらいかかるのですよ。これは施設にもよりますけれども、この法令に書いてある施設だと、大体一人おりるのに三分かかる施設がある。百人で三百分――三百分というのは五時間です。五時間火事で燃えておったらどうですか。そんな基準でそれでいいのですか。常識でわかるでしょう。ですから、これは非現実的な――一般の財政上のこともあるでしょうということで大目に見たでしょうけれども、こんなことでは助かりません。避難器具があったってないと同じです。あわてふためくだけですよ。そんなような状態なんですから、現行法をしっかり守りなさい。しかし、現行法はそのまま十分かというと、不十分きわまりないものなんですよ。ですから、消防法そのものについても検討を要すると思う。あるいは罰則のことを言っておりました。こんな違反をやったって、五万円ぐらいの罰金を納めればいいのでしょう。五万円なら、団体客が一晩来たら五万円もうかりますよ。そうでしょう。非現実的ですよ。そんなことでは、罰金でものごとを規制しようということは正しい姿じゃないでしょう。もっとやはり消防体制を強化していくという正攻法でいかなければならぬと私は思うのですけれども、その正攻法を指導し、強化する役割りをになっておる中心的な消防庁の現状がそういうことなんです。これはたいへんな問題だと私は思うのですよ。ですから、大臣、さっきのような考えでは、それは労働者の生命は大切だけれども、一般の人はそれほど大切じゃないのだという意味にとれるような発言では困るのですから、その辺しっかりと勉強していただいて、ほんとう消防庁としての役割りが果たせるような、これだけ自分の言うことを聞いて守ってくれさえすればだいじょうぶなんだという施設は、少なくとも旅館等には義務的にさせなければならないと私は思うのです。人の命を預かっているのです。しかも地理は不案内で、部屋割りとかは不案内なんですから、大臣どうなんですか。
  73. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 どうもたいへん厳密な御意見で、それには困るわけですけれども、先ほど労働省のことを例に引いて、労務者諸君の人命と観光客の人命との間に軽重の差をつけるのはけしからぬというお話でございましたが、決してそうではありませんので、一応の基準を消防法できめたわけでございまして、それ以上どういうりっぱな救助手段をおつくりになろうが、基準をおつくりになろうが、それは御自由で、それは非常にけっこうだということを申し上げただけでございます。  それから罰則のことも、単に罰金だけで済むということはございませんので、私の記憶では、六カ月以上の懲役もあるはずであります。みな極刑に処せられるというわけではありますまいけれども、しかし、やはりいままで一つもこの罰則が生きて働かなかったということもおかしいと思いまして、私はすぐ告発の手続をとるように命じたわけですけれども、これはどういう処断になりますか。また警察当局、司法当局との検討の結果も、いろいろな御判断が生まれてこようかと思います。  それから人命の保全についてですけれども、とにかくここの建物には三百人、宿泊できるから三百人分の避難具を必ず設備しなければならぬというわけにもいくまいが、これは火事を出さぬのが一番賢明なことでございますから、消防という全般につきまして、避難具ももちろん設備も必要です。しかし、やはり火事を起こさない、また広がらないという設備もあわせて考える必要がありますので、そういうことを総合いたしまして、人命の保全については万全の策を講じたい、かように考えております。
  74. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いろいろ問題点はありますけれども、現在の消防法あるいはそれに基づく施行令、省令というものもきわめて不十分なんだ。その不十分なことすらも実行されておらない。しかも重大なことは、十五回も査察したけれども、これが何にもなっておらぬ、こういうところに私は問題があると思いますから、ひとつ消防庁しっかりやっていただかなければならぬ、こう思うのです。佐久間さん、あなたはずいぶん張り切って行政局長から消防庁長官になったわけだけれども、一生懸命やっていることは認めますけれども、たいへんな穴ですよ。あなた消防庁長官になってから何年になるですか。特に私は新聞の論説等も指摘しておるわけですけれども、やはり観光地における市町村財政力、こういう問題もあると思うのです。こういう辺についても何らかの措置をやらなければ私はいけないと思う。端的に言いますと、交付税で基準財政需要額に算入されてある消防費を一〇〇%使っておらぬところだってあるのだ。これじゃ、一般財源でありますから、ひもつきじゃありませんからしようがないといえばしようがないけれども、平素は何事もありませんけれども、災害というものは忘れたときにくる。そのときに最近の火災の特徴というのは、必ず人命が失われているという特徴が非常に顕著になってきているわけですから、ひとつしっかりやっていただかなければならぬということを要望して、時間がありませんから、次に進みたいと思います。
  75. 吉川久衛

    吉川委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  76. 吉川久衛

    吉川委員長 速記を始めて。  午後一時三十分に再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十五分休憩      ────◇─────     午後一時四十九分開議
  77. 吉川久衛

    吉川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。細谷治嘉君。
  78. 細谷治嘉

    ○細谷委員 地方公営企業のことについて二点ばかり御質問いたしたいのでありますが、最初に、地方公営企業の四十二年度の収支の状況はどうなっておりますか。
  79. 細郷道一

    細郷説明員 損益収支では、単年度の純損失三百七十億円。事業別にそれを見てまいりますと、そのうち、交通が二百五億円、あとは水道、病院等でございます。  それから累積の欠損金で見てまいりますと、千四百四十二億円でございまして、そのうちの九百七十九億円が交通事業、あとは水道、病院等でございます。  それから財政再建に伴う不良債務たな上げ措置によりまして、不良債務額は前年度よりやや減少しておりますが、なお千億円ほど残っております。  それから建設改良費は、前年と比べますと一割程度の伸びでございますが、地下鉄、上下水道等は、ここ数年かなり建設改良費がかさばっております。その大きさというものは依然として続いているということが言えると思います。  大体そんなようなことでございます。
  80. 細谷治嘉

    ○細谷委員 四十二年度の法適用事業についての収支、ただいまお聞きいたしたわけでありますが、純損失が三百七十億円。そのうち、交通関係が二百五億円、水道関係が七十二億円、こういうことであります。  そこでお尋ねいたしたいのでありますけれども、ここ数年の累積赤字の移動状況、大体単年度で三百七十億円の赤字が出ているわけですから、移動状況はどうなっておりますか。
  81. 細郷道一

    細郷説明員 累積欠損金で見てみますと、全体では千四百四十二億円で、前年度より二百三十九億円増加をいたしております。千四百四十二億円のうち、交通関係が約七割の九百七十九億円、水道事業が百九十六億円、病院が百十億円、こういうことでございます。  ここ二、三年度の推移を見てみますと、たとえば昭和三十八年度におきましては、交通が二百五十七億円、全体が三百七十六億円、こういうことでございまして、交通事業の累積欠損金がここ三、四年の間に相当大幅にふえておるということが、決算の上では申し上げられます。
  82. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大まかに言いますと、大体四十二年度で全体として三百七十億円ぐらい。四十一年度は、これもやっぱり三百億円ぐらいになっておるのじゃないかと思う。四十年度もやっぱり三百億円ぐらいになっているんじゃないかと思う。大まかに言いますと、地方公営企業の経営問題、赤字問題というのが言われ出したのは、三百億円ぐらいになったころ問題になっている。それから六百億円という台があって、それから九百五十億円という台があって、そして千二百四十億円ぐらいという台があって、そして四十二年度に千四百五十億円、こういうことになったわけでありまして、年々三百億円ないし三百五十億円程度の累積赤字が積み上げられていっておる。その相当部分というのは都市交通、しかも、言ってみますと、大都市の交通関係の会計にそういう赤字が大きくしわ寄せされておる、こういうことが言えると思いますが、そのとおりですか。
  83. 細郷道一

    細郷説明員 数字その他は別としまして、大体そういう傾向でございます。
  84. 細谷治嘉

    ○細谷委員 現在の地方公営企業法というのは、いつ改正になりましたか。
  85. 細郷道一

    細郷説明員 改正は幾つかございますが、おそらく御指摘のは大きな改正のことであろうと思いますが、それは四十一年七月五日の改正であります。
  86. 細谷治嘉

    ○細谷委員 その中に、地方公営企業の再建問題というのが取り上げられたわけですね。その再建問題というのは、地方公営企業法という本法の中に入れるべきか、あるいは一般会計の場合のように特別法によるべきか、こういうことが議論されたのでありますけれども地方公営企業法の中に入れられたわけです。そしてこの再建整備をやるんだということで、すでに満二カ年、ことしで三カ年目でしょう。あの再建整備という形がとられてから、よくなったとお思いなんですか。どうなんでしょう。赤字はほとんど変わりませんね。どう財政当局は考えていらっしゃるのですか。
  87. 細郷道一

    細郷説明員 私は、全体としては地方公営企業の行き方に一つの方向を示したもの、こう考えて、それだけの値打ちがあるもの、こう思っております。ただ、赤字の額だけから申しますと、ただいま申し上げましたように、交通、特に大都市の交通企業において非常に大きな額が出て、したがいまして、そういった問題につきましては、私どももやはり大都市交通のあり方なり地方公営企業としての将来の姿というようなことについて、いろいろと研究をいたしておる段階でございます。
  88. 細谷治嘉

    ○細谷委員 再建整備というのは、法律が施行されて効果がそれなりにあった、こういうことであります。しかし、残念ながら累積赤字は減少をしておらない。そのよってきたる主たる原因というのは、大都市交通にあるんだ、こういうような財政当局の御答弁であります。なぜそれでは大都市関係だけにあるのですか。効果があったというのは――財政再建整備というのは、財政の収支を合わせよう、これが主目的でしょう。それが達成されないで効果があったというんならば、何が一体効果があったんですか。そして大都市で集中的にそういう赤字が起こったという原因は、一体何なんでしょう。
  89. 細郷道一

    細郷説明員 公営企業法が改正になりまして、全国で百五十五の再建団体が指定され、現実に再建計画をつくる。そしてそれの着実な執行をいたしておるわけであります。特に大都市交通に相当片寄っておるということにつきましては、いろいろ原因があろうかと思います。一つには、交通再建企業の再建計画の際に除外をいたしました地下鉄の問題が、ただいま申し上げた数字の中にも入っておることがございます。それから再建計画をつくりましても、当時の計画のスタートのときの赤字額が、翌年からすぐ落ちるということではなくして、再建計画期間を通じて徐々に落ちてまいるわけでございますが、最初の年は再建計画が赤字が多少ふえるというのも、計画上出ておる点でございます。したがいまして、この数字だけから全部を判定するわけにもいかないと思うのでございまして、やはり個々に見てまいりますと、先ほど申し上げましたように、私はやはり再建計画はそれなりの値打ちがあったものと、こういうふうに考えております。
  90. 細谷治嘉

    ○細谷委員 少しもわからないのです。それなりの値打ちがあった、その理由としては、再建計画の最初のスタートから一、二年のうちは、逆に赤字がふえることもあるわけだから、表面上のここ二年、三年目の動きだけを見て、赤字がふえておるからといって財政再建計画の効果はあがらなかったとは言えない、こういうことでありますけれども、財政再建計画の効果があがったという証明にはならぬでしょう、それは。証明にはならぬでしょう。少なくとも財政再建計画というのは、これは数字の問題でありますから、必要にしてかつ十分な条件、そういう理由を御説明いただかなければ、これは私ども納得できないですよ。ですから、抽象的に、それはそれなりに効果があった、こういうことなんでありましょうけれども、いまの御答弁では、私はわからない。  そこで、いまの財政局長のお話から私は考えるのでありますけれども、大都市に集中的に起こっておる赤字問題というのは、地方公営企業法に規定するような再建の行き方では再建できないんじゃないですか。どうなんですか。とてもとても企業内がどう努力しようとも、企業外の要因というものが大きく働いておって、再建できないんじゃないですか。それをお認めになりますか。
  91. 細郷道一

    細郷説明員 再建の期間というのが、大都市交通あたりでも七年あるいは十三年とあるわけであります。再建計画をつくって再建に乗り出したというやはり一番大きな目的は、それまで累積しておりました赤字を年度計画によって解消をしていく。その解消にあたってはいろいろ具体的な方法があろうと思いますが、歳入の面では適正なる料金を実施する。あるいは歳出の面では企業の合理化をはかっていく。そういうようなことにあわせまして、過去の赤字債のたな上げをし、それに利子補給をするといったようなことをつけ加え、また再建のために軌道を撤去するかわりにバスが要るといったような場合に、バスの建設資金を計画どおりに供給をしていくというようなことが、いろいろ合わさって再建計画ができておるのでございます。したがいまして、私はまだ始まって一年あるいは一年半程度でございますので、大都市の交通についてこれはもうだめなんだという断定を下すべき時期ではまだないだろう、こういうふうに思っております。現に再建計画をつくりました百五十五の団体の中で、いま申し上げましたような基本方針にのっとって漸次それを実施しているところもあるわけであります。ただ、大都市につきましては、計画にいろいろ見込んでおりました、あるいは計画を設定いたしますときになかなかそこまで見込みがつかなかったといったような、いろいろな諸要因がございます。そういったような問題につきましては、私どもも、この計画の執行と並行してやはりその解決に努力をしていきたい、こういう考え方であります。
  92. 細谷治嘉

    ○細谷委員 諸要因があります、計画を始めるときから、その諸要因は具体的におわかりになったんでしょう。諸要因の解消に具体的にどういうふうにおつとめになりましたか、具体的に御答弁いただきたい。
  93. 細郷道一

    細郷説明員 一つは、やはり地下鉄の問題でございまして、地下鉄についてはなかなか将来の見通しがむずかしいということから、交通再建のワクから一応はずして、いまペンディングになっておるわけであります。そのほか、諸要因といいますのは、これはもうもちろん一般的に知られておることでございまして、たとえばバスに転換した場合のバスの乗客数がどういうふうになっていくか、こういうふうなものが多少見込みといまの段階で違ってきておるといったような問題もございますし、あるいは軌道自身が撤去ということを計画の中に織り込んでおりますが、軌道の赤字状態といいますか、軌道の利用者が意外にも少なくなって、計画どおりにこれをやっていくことがはたしていいのかどうか、これを繰り上げていくことも考えていいんじゃないかといったような問題もございます。そこで、そういったようないろいろな問題については、私どもも再建計画をつくっていただいたわけでございますから、それぞれの問題に対処していろいろ対策考えていかなければならぬ、こういうことで、地下鉄の問題にいたしましても、あるいは交通の規制の問題にいたしましても、あるいは企業の合理化の問題にいたしましても、あるいはこれから先のこととしての建設コストの引き下げであるとか、あるいは過去のものについても一部は借りかえをしていくとか、こういうようなことをいろいろやっておるのでございます。もちろん社会経済情勢が非常に急激に動いておる時代でございますから、私どももいままで考えたことだけですべてを足れりとは実は考えておりません。やはり刻々に時代の動きに応じて対策を講ずべきである、かように思っております。
  94. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いまの財政局長の答弁を聞きますと、いろいろ具体的な手を打ったようでありますけれども、それだけでは今日の都市交通という問題は解決しないでしょう。現にこの委員会の席上で、四月か五月ごろと記憶するのですけれども、政務次官が公営企業、特に都市交通の問題はもはや外的要因が決定的な状況に来ておるので、企業内だけさか立ちしてもどうにもならない段階に来ておる。したがって、抜本的な具体的な対策を講じなければならぬ時期に来ておる、こういうふうにこの委員会で明確に答えておるわけですよ。その政務次官のおことばとあなたのことばは少し食い違いがあるように思うのですが、どうなんでしょうか。
  95. 細郷道一

    細郷説明員 表現のしかたの問題が多少あるのかもしれませんけれども、気持ちはそう違っていないと考えております。
  96. 細谷治嘉

    ○細谷委員 気持ちとしては、政務次官が答えられた気持ちとそう違っていない。そうというのは――そうという字句が入りますからね。どうなんですか、違っておらないのでしょう。政務次官のことばと財政局長のことばが違うなら、たいへんですよ。そうなんということばを使うと、日本語はややっこしいから、政務次官のことばと違っておらないということと、そう違っておらぬということは、受け取り方がずいぶん違いますよ。どうなんですか。
  97. 細郷道一

    細郷説明員 やはり人間でございますから、それぞれ持ち味もございます。表現その他で必ずしもどんぴしゃりと判で押したようにきまるということも、私はむずかしいと思います。しかし、先ほど私からお答え申し上げましたように、なかなか地方公営企業、なかんずく大都市交通企業の将来は非常にいろんな問題を持っているという認識は、私も政務次官も違わないと思います。それじゃどういう点かといえば、これは全部網羅して、ここで申し上げるまでもなくいろんな問題もございましょうし、またその問題の取り上げ方等につきましては、多少政務次官が申し上げたのと私のとは順番が違うかもしれない。しかし、その基本のかまえ方は、先ほど申し上げたようなことになるかと思います。
  98. 細谷治嘉

    ○細谷委員 基本の姿勢はかわらないということを確認されました。そこで私はお尋ねしたいのでありますけれども自治省が昭和四十四年度の一般会計の歳出予算として概算要求をなさっておるわけでございますが、その概算要求を拝見いたしますと、公営地下鉄事業交付金に必要な経費として四十二億七千七百万円。別に運輸省が三十九億円ばかりの計上をしておるそうであります。それから地方公営企業再建債の利子補給に必要な経費、十八億二千五百万という数字のようであります。この四十四年度の十八億二千五百万という利子補給も、私どもの審議の段階では、大体二十四、五億程度要るんではないか、こういうふうに言われておったのでありますけれども、四十三年度が十八億七千万、四十四年度は十八億二千万で、五千万程度減ってまいっております。ですから、私どもがこの委員会で聞いた数字は、二十四、五億という数字からはかなり低いものであります。それから工業用水道事業企業債の利子補給に必要な経費十億円、どういう基礎かわかりませんが、いままではない、これは新規要求。公営企業金融公庫の補給金に必要な経費四億五百万、公営企業金融公庫の出資に必要な経費として九億円、昨年は産投会計から二億円の出資をしているのですけれども、今度は一般会計からの九億円という要求であります。これを見ますと、深刻になっておるにかかわらず、昨年の自治省の要求よりも後退していると私は思うのです。後退していないとおっしゃるのですか、どうなんです。あるいはまた私が後退しているというのは、おまえ、それは水道のほうの利子補給をしていないから、高料金の水道についての利子補給をしていないところをつかんで言っているだろう、すぐこういうふうな御返答があるのじゃないかと思うのですが、私は、全般として、姿勢としては後退している、こういうふうに申し上げざるを得ないのでありますけれども、いかがですか。
  99. 細郷道一

    細郷説明員 要求そのものの内容を比較いたしますと、私は、後退どころか、非常に前進をしている。水道の問題をいまおっしゃいましたからこれは省きますが、公営企業金融公庫の金利を全般的に引き下げる、こういうことを今回は打ち出しております。したがいまして、このこと自体は、要求としては非常に前進をしたもの、こういうふうに思っております。なお、そのほか来年、公営企業公庫の貸し付けの対象を広げたい、あるいは貸し付けの条件を延ばしたいといったようなことも、それぞれわれわれとしてはやりたいものとして考えておるわけでございます。
  100. 細谷治嘉

    ○細谷委員 後退はしていない、前進している。後退はしていないということだけおっしゃっているのならいまあなたの気持ちはわかるのだけれども、前進しているなんということはよけいなものですよ。どこに前進しているのですか。前進と後退というのは、全く反対ですよ。私は後退しているのじゃないかと言っているのに、あなたは、後退はしていません、大体基本姿勢はかわりません、こういうことならいいと思うのですが、どこに前進しているのですか。前進していないでしょう。前進なんということばは取り消していただきたい。前進という証拠はありますか。どこですか。
  101. 細郷道一

    細郷説明員 四十三年度の要求においては、公庫の貸し出し金利の一般的引き上げは要求しておりませんでしたが、今回いたしております。
  102. 細谷治嘉

    ○細谷委員 それは水道の高料金のやつの利子補給というのはやったので、それはパアパア。公庫でありますから、全体として前進しているということなんですが、前進なんということは言えませんよ。  秋吉さん、大蔵省は前進と受け取っているのですか。もともと地方公営企業のことについて、どうも再建の面がないということを言っているのです。そして人の前では前進前進と言っているのですが、あなたは、こういう要求で前進と受け取っているのですか。もともとそのうんと手前であなたのほうはカットしているのだから、ものは言えないかもしれませんがね。
  103. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 前進か後退かというのは、いろいろ見方があろうかと思いますが、いずれにいたしましても、自治省から公営企業問題についていろいろの概算要求が行なわれておりまして、その点につきましては、ただいま自治省から内容的に御説明があったとおりでありまして、自治省といたしましては、従前とかわりなく、また従前と同じように、場合によっては財政局長いまおっしゃったように、非常に力強く要求されておるのじゃないかと考えております。
  104. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大臣にお尋ねしたいのですが、前進しているというなら、内容のことはあなたは言ってはいかぬ。大臣がこれに取り組むのは、去年よりも前進しているということを認めます。大臣以下全員のことですけれども、取り組む姿勢ということについては、昨年よりも前進しているということは認めますけれども、内容的にはあまり前進してないのですよ。  そこで大臣にお尋ねしたいのですが、九月十日に自治大臣、積極的に閣議において発言されまして、そしてこのままではどうにもならぬ、どうも国鉄の再建問題に関連して自治大臣の強力な発言になったと漏れ承っておるわけですが、閣議が済みますと、さっそくその日にテレビでは、総理大臣が、国鉄ばかりじゃなくて、地方公営企業についてはもっともっと国が財政的なものも含めたバックアップをすべきだ、こういう発言をなさったということが報じられておりました。私どももそう受け取っております。ところが残念なことには、その後あまり前進しておらないのでありますけれども大臣、いかがなんでしょうか、これについてのお見通し、総理大臣の指示もあったわけなんですから、かなり強いバックアップがあると思うのです。その間いろいろの事情があったようでありますけれども大臣、非常に強力に交通関係閣僚協議会のリーダーシップをとってきたわけなんですけれども、これについての大臣のお考えをひとつただしておきたい。
  105. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 あのときの発言は、公営交通の経営難についてであったわけです。先ほど私ちょっと中座いたしましたけれども、事実企業外要因がいろいろ支障になりまして経営がなかなかむずかしいことになっておる、いまぎりぎりの段階まできておると私は認識しておりますから、実は激しいやりとりがあったわけでございます。民間の同種企業なんかと比べましても、やはり公営企業の場合は自己資本がきわめて少ないものですから、どうしても資本費の重圧がかかる。ですから、こういう段階だから、特にただいま問題になりました公営企業金融公庫あたりの資金のみならず、政府のほうで良質な資金を提供してもらわなければ、資本費の重圧すら防ぐことはできないということを言いましたところ、大蔵大臣のほうから、まだ企業努力で十分検討しなければならぬ問題があるのではないかと言われるから、総理が中をとって、それは自治大臣の言うとおりである、もうぎりぎりの線にきておるから、大蔵大臣のほうもそういった面では考えなければいけないぞということで御発言があったわけです。そこでそれを受けた形で、やはりただいま財政局長が申しましたように、公庫のほうも金利を引き下げてもらうとか、またこれは、御案内のとおりに大都市のためにつくられておるわけではありませんので、いま一番問題を起こしております公営交通あたりはその対象になりませんから、やはりそういった扱い範囲を広げていくとか、いろんな点で非常に前向きで取り組んでおると思います。しかし、大事なときに大蔵大臣が腹を切られまして――腹を切ったって、盲腸炎で御入院になりましたために、この秋そういった問題についてずいぶん議論を詰めなければならない時点でちょうどそういう事故があったわけでして、少し私もまだ大蔵大臣の働きかけは十分だとは思っておりません。しかしながら、そういう取り組み方をいましておるということは、ひとつ御理解をお願いいたします。
  106. 細谷治嘉

    ○細谷委員 要点だけでいきますけれども大臣、私は非常に真剣にこの問題に取り組んでおる姿に敬意を表するのですが、残念ながら相手が腹を切っちゃったというので、ちょっとストップ状態になっているわけです。私はいままで財政局長とやりとりしてきたんですけれども、現在の形で地方公営企業の再建というものを叫んでも、外的要因、これは言ってみますと、大別して言えることは、地方公共団体条例で水道のように料金を上げるものについては、赤字はありますけれども、まあまあいいんです。しかし、政府の認可を得なければ料金はどうにもならないという運輸関係なり公立病院関係には、どうにもならない決定的な外的要因、その上に過密過疎という問題が働いてまいっておりますから、どうにもならぬところにきておる。しかも再建に入った団体の再建債は、利子補給をいたしますということを言いますけれども、大体において六百億円弱。今日すでに千四百四十二億円というのが、ことしの四月末までに不良債務ができているわけです。ですから、利子補給もたった五、六百億円の部分を利子補給をしておったのじゃ、これはとても本丸に行き着くことはできない。ですから、再建債外のものについても、積極的な元利についての何らかの補給の財政的なてこ入れをしてやらなければならぬと私は思っている。これが一つ。それからもう一つは、あまりにも独立採算だという。できもしない、そういう環境にもないのに、それを金科玉条として押しつけていっておるから、犠牲は住民とそこに働く労働者に一方的にしわ寄せされてきておる、こういうことでありますから、いわゆる自治省考えておるような独立採算というものについては、現状に即するような、緩和ということばは少し適切じゃないのでありますが、少なくとも現状に即するような方途を講じていかなければならぬのじゃないか。もう一つは、借りた金の利子、これがたいへん高いのでありますから、たとえば水道については、簡易水道ばかりでなくて、国の補助を、昭和二十八年以前の状態のように補助金制度をつくっていったらどうか。これも何でもかんでもということじゃありません。少なくとも幹線管渠等については、やはりそういう二十八年以前の補助金制度を導入していくべきじゃないか。あるいは地下鉄なりがてんから立っていかぬのでありますから、その道路に相当する部分についてはこれは当然国が見べきだということも、具体的にこれは要求四十二億円出ておりますから、そういうことをし、さらには公営企業金融公庫というものが真にやはり公営企業金融機関として役立つように、たとえば政府資金を大幅に投入する、そして利子は大体は六分五厘くらいでやつていける、こういうところに公営企業金融公庫の体制を整えていただきたい。これ以外にないと思うのです。四つばかりあげましたが、こう思うんですけれども大臣いかがでしょうか。この自治省の要求ではだめですよ。おそらく秋吉さんがおるから、腹を切っても出さぬと、こういうふうに大蔵は言っているので、いままでのことは伏せておこう。先のことでも、ひとつ地下鉄の国からの財政助成を、補給金をとろうという形で考えている。そんなことじゃない。もう足元に火がついちゃっているのですから、一年待ってくれなんということは許せないから、私が申し上げた点が総合的に四十四年度の予算で措置されなければ私はできないと思うのですけれども大臣いかがです。
  107. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 私は企業経営の経験もありますし、いま現にしているわけですが、やはり金利は大きな負担になっております。世界的に見ましても、日本は高金利の国だと思います。しかし、金利体系全般に手をつけるということは、御案内のとおり、なかなか容易じゃない問題がありまして、貸し出し金利だけじゃなくして、預金の金利だってやはり高いわけですし、いわゆる資金コストというものは安くない。にもかかわらず、やはり企業経営という面から考えますと、できるだけこれを低めていく努力はお互いにしていかなければならぬと思います。冒頭こういう行き詰まった状態下においては、独立採算制を維持するということだって無理じゃないかということですが、しかし、無理な点はわかるけれども、やはり企業の性質上、私どもは無理でも独立採算制というものをとって、そうして企業努力を積み重ねていく努力というものは、決して捨ててはいかぬという考え方に立っております。ですから、やはりできるだけ高金利の部分は借りかえ債を発行するとかいたしまして金利を軽くしていかなければなりませんし、政府の良質の資金のシェアも広げてもらいたいということは、始終働きかけておるわけです。かりに補助政策をとるにいたしましても、ほんとう言うと、すでにもうとっておりまするけれども、つまり経常費に対する赤字が出たから補助ということは、私は企業という性質からして望ましくない。先ほど申しましたように、株主はみな地域住民ですから、住民が理解して、もっと自己資金をふやしてやろうじゃないかと言って、その企業そのものの必要性を認めてやろうというお考えだと、それだけの部分というものはもちろん一般会計の負担になるでしょうけれども、私個人としては、そういう面で企業が合理的に経営が成り立つ方向で進むべきものであるのじゃないかと考えております。しかし、何と申しましても、やはりただいま大きな重圧になっております資本費の負担というものをできるだけ軽めるということで、そういった措置を大蔵当局にもお願いしておるわけでございまするので、一ぺんになかなか思い切った措置はできぬかもわかりませんけれども、その点は十分努力していかなければならぬ、かように考えております。
  108. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は、何もかにも一ぺんにということはなかなかできかねるでしょうけれども、少なくともたいへんな自己努力は当然しなければなりません。人に言う前に自己努力というのが前提になることは、これは当然なことであります。しかし、今日いまや自己努力ではいかんともしがたい決定的な重圧というのが、特に地方公営企業の中の都市交通、しかも大都市の交通に起こっておるということは、これは当然なこと。反面、また過密地帯ばかりでなく、過疎地帯では経営上に同じような原因も起こってきておることは事実です。したがって、私は、少なくとも最低生活ができるような条件というのを整えて、そうしてひとつこういう点こういう点であなたのほうももっとしまってほしい、こういう指導でなければ説得力がないのじゃないか、また事実不可能じゃないか、可能性はないのじゃないか、こう思うので、ひとつ大臣、せっかく真剣に取り組んでおるようでありますから、特に地方公営企業法律ができたからあれで終わりだ、あとは独立採算でやればいいのだ、こんなようなばかなことはできませんから、ひとつがんばっていただきたいと思うのです。  これに関連して、私が一言質問いたしたい点でありますけれども、この公営企業に働いておる人たち、これは都市交通ばかりではありませんが、たいへんな問題点が各所で起こっております。それを私はきょうは一々申し上げません。しかし、集中的に起こっておりますのは、都市交通の人、しかも大都市の交通労働者であります。大体ことしは人事院勧告、これは九次といわれておるのですけれども、去年のやつはどうなっておるのでしょうか。いわゆる第八次というやつのベース改定は行なわれておるのでしょうか。
  109. 細郷道一

    細郷説明員 先ほど申し上げました再建計画を樹立いたしました団体百五十五のうち、大部分はいわゆる八次は実施いたしております。残っておりますのは、たしか七つくらいであったかと思います。その中に大都市交通が入っておる、こういうことでございます。
  110. 細谷治嘉

    ○細谷委員 七つばかし残っておる、その中に大都市交通が入っておるというのでありますが、全部が大都市交通でしょう。そうじゃないですか。
  111. 細郷道一

    細郷説明員 大都市交通以外にも、一、二ございます。
  112. 細谷治嘉

    ○細谷委員 一、二ある。しかし、まあ決定的なのはそういうところですな。ところで、まだ行なわれてない。去年の八月実施ですね。ことしはもうそれから一年以上たって、やがて九次のことしの八月十六日の人事院勧告も出ておるわけですけれども、いまだに解決してないということはおそれ入ったわけですけれども、これは自治省のほうで許可してないわけですか。あるいは当局のほうでそれが出てきてないのですか。あるいはどういうかっこうになっておるのですか。
  113. 細郷道一

    細郷説明員 再建計画をつくっておりますので、もしそれを八次をやるとなれば、計画の変更という問題が起こるわけであります。計画の変更という形ではまだいたしておりません。
  114. 細谷治嘉

    ○細谷委員 計画の変更はされておらない。そうしますと、全然もう去年の八月十三日ですか、十五日ですか、勧告があったいわゆる八次のベースの改定というのは行なわれていないわけですね。そういうことでしょう。
  115. 細郷道一

    細郷説明員 先ほど申し上げましたように、再建計画の変更としては行なわれておりません。
  116. 細谷治嘉

    ○細谷委員 再建計画の変更としては行なわれていない。何か行なわれているわけですね。何か行なわれているのですか。
  117. 細郷道一

    細郷説明員 個々の団体がどういうことをやっておるかということは、私は承知をいたしておりません。
  118. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大臣、少しくどいようでありますけれども、これは私はたいへんなことだと思うのです。地方公務員ですよ。これは国家公務員に準じてやるというのが原則です。去年のことがいまだに行なわれていない、しかも七つの団体において、こういうことなんであります。これは事実たいへんなことだと思うのですね。だから、自治省は許可してない。財政再建計画の変更を許可してない。むしろ当局のほうからは財政再建計画の変更をしたいという申し入れがあったのかなかったのか、その辺がわかりませんけれども、これはたいへんな問題ですね。私は先ほど陳情があったときにちょっと聞いたのでありますけれども、この十五日にはそういう状況を打開するために、残念ながらやはり都市交通としては具体的な対抗策の行動を起こさなければならぬということを言われておったわけですね。こうなってまいりますと――私は詳しくいろいろと質問したいのでありますけれども、時間がありませんから……。これはもう問題だと思うのですね。いま国鉄がたいへんな赤字であるわけです。これについては、再建計画というものはこの間の答申に基づいてこれからつくられるでありましょう。四十三年度の予算においても、五十四億円程度の財政援助の措置も講じられた。赤字であることは間違いないわけですね。これはまあ完全に、公労法に基づいて仲裁裁定委員会の決定が一〇〇%実施されております。国家公務員なり公共企業体の職員については完全に実施されておりますけれども地方公務員は五月実施が八月に値切られた。都市交の人たちは、去年のことがいまだに何ら措置されておらぬ。こういうことになりますと、これはたいへんな問題だと私は思うのですが、そうお思いにならないですか、大臣。秋吉さん、そういうことを大蔵省は知っているかどうか、ちょっとお聞きしておきたい。
  119. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 まことに不合理な状態になっておると思います。
  120. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大蔵省は知っておるの。
  121. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 御指摘のとおりのことは、存じております。
  122. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大原則は国家公務員に準じて地方公務員もやる――それは高いからだとか安いからだとか、地方公営企業法三十八条の規定で、企業の「経営の状況」という字句が入っているから、それが決定的に働いているんだ、こういうことかもしれませんけれども、赤字である公共企業体の職員は一〇〇%仲裁裁定が実施されて、そして値切られた人事院勧告も都市交の人たちには一年前のやつが今日実施されておらぬというのは、たいへんなことだと私は思うのですよ。もういまや地方公務員は国家公務員に準ずるという大原則も吹っ飛んでおる、こう私は申し上げなければならぬと思うのです。大臣、ひとつお願いしたいことは、いろいろな事情があったでしょうが、あったにしても、もう国会でも十二月の初旬には国家公務員の人事院勧告の問題が法律として出される状況にきているわけです。いま、一年前のやつがここに問題になっているわけですから、これを早急に解決するように、自治省としても努力をしていただかなければならぬと私は思うのです。いかがでしょうか。
  123. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 それはおっしゃるまでもないことであると思いますし、そのために私どももやかましくいって作業を進めておるわけでございます。昨年の八賃だって、具体的にはどの団体がどうしておるかということはつまびらかにいたしませんけれども、しかるべきことはやっておると思うのです。それがやはりしかるべきことというのははなはだ間違ったことでありますので、やはり再建計画を正式に変更するならして、書類の上でも明確にする。次には九賃がすぐ控えておるわけでございますが、そうほっちゃらかしにして年を重ねるということは最もよくないことでございますので、そういうことのために事務当局も督励し、そして関係のそれぞれの企業においても御苦労を願っていま話し合いしている最中で、もうぎりぎりまでにきているというふうに私は承知しております。
  124. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大臣はしかるべきことと、こういう話でございまして、なかなか意味深長であります。私も、大臣とその辺は同感なんです。しかるべき措置ではなくて、ぴしゃっとやはり国家公務員に準ずるという原則にのっとって問題は処理さるべきであったのを、何かわかりませんが、大臣がおっしゃるようなしかるべき措置措置すべきものでないことは明らかでありますのに、そういうことで何かしかるべきことをやったとすれば、これは間違いだ。今日、いままで財政局長ともやりとりしたのでありますけれども、自力ではいかんともしがたい外的要件というものは、自治大臣努力を願うばかりじゃなくて、大蔵大臣はむろんであります。同時に、地方公営企業をやっておる当局が、どうしてもここまでは努力できますけれども、これから先のことはもう自治体としてはどうにもなりませんということを、率直に自治大臣なり政府に訴えて、その解決の善処方を強く要請していく努力を重ねるべきであると私は思うのです。そういう点では自治大臣独走みたいにして、うしろを向いてみたらわかったのは大蔵大臣が腹切ったことと、あまりついてこなかった、こういうことで大臣としては残念だという気持ちがあるかもしれませんけれども、問題が問題で、これは言ってみれば地方公務員法の原則からはずれておりますし、また大臣がこの委員会において、地方公営企業というのは六千もあるので一律にはこれを律することはできないけれども、ケース・バイ・ケースで善導をいたしますと、こういうふうに言っているわけです。そのケース・バイ・ケースというのが、いまや七つしかないというわけです。ですから、七つのケース・バイ・ケースが一年もかかるようなはずはないわけですから、これは一日一つやったって一週間のうちには片づくわけですから、ひとつ積極的にこの問題に取り組んでいただきたい。いまこそ、七つしかないのですから、ケース・バイ・ケースで善導していけば、私は解決できるものだと思うのであります。そういう点で、ひとつ大臣、ぜひ取り組んでいただきたいと思うのですが、よろしいでしょうね。
  125. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 一番むずかしいやつが七つ残っておりますので、なかなかそのために苦労もしておりますが、なんぼ苦労があったって、ただいま申すように、ほっておけないことには間違いないことでございますので、すみやかに結論を出したい、かように考えております。
  126. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大臣の、ぜひとも処理せねばいかぬ問題で、むずかしいことでありますけれども真剣に取り組むということでありますから、ひとつ大臣に全幅の信頼を置いて、私はきょうのところはこれでこの点は終わっておきたい。  最後に一点、大臣と税務局長にお尋ねいたしたいのでありますけれども、第十三次の地方制度調査会の第一回の総会におきまして自治大臣が諮問されたことは、第十二次の制度調査会の中間答申に基づいて、それをひとつ深く広く掘り下げて結論を出していただきたい、その場合の当面の重点というのは、過疎、過密とありますけれども、過密のほうから入っていただきたい、こういう大臣の諮問の姿勢がございました。そこで私はお尋ねしたいのでありますけれども、新聞等を拝見いたしますと、すでに税制調査会は四十四年度の税の問題に取り組んでおります。今日、国債の削減かあるいは減税か、その減税も勤労者の所得税の累進税率の手直しだ、こういう二点をどう調整するか、こういうことでたいへん問題になっているわけでありますけれども、私は率直に言って、削減か減税かなんという問題の設定というのはおかしいと思っているのです。しかし、それはきょう議論いたしませんが、この委員会では都市財政の問題というのがたいへん問題になって、そして四十四年度においては具体的にこれに対処する、こういう附帯決議がつけられまして、自治大臣はこれに真剣に取り組みますという御答弁をいただいたのであります。ところが残念なことには、そういう地方財政の問題、特に都市財政の問題については、あまり新聞に出てきておりませんね。言ってみますと、都市計画税の税率を上げたらどうだ、償却資産を目的税である都市計画税の中に含ませたらどうだ、こんな程度のことで、何らの成案が新聞に発表されておりませんけれども自治省は真剣に取り組んでいらっしゃるのかどうなのか、これを承っておきたいと思います。
  127. 松島五郎

    ○松島説明員 来年度の税制改正につきましては、国税につきましては、先生が御指摘になりましたような問題が新聞にしばしば出ております。政府の税制調査会は、現在の段階ではまだ一般的な税制全体についてのフリートーキングが行なわれている段階でございまして、明年度の国税につきましても具体的な税制改正についての問題を審議するという段階に至っておりません。したがいまして、新聞等に出ておりますことも、その方向で現段階で進んでいるかどうかということになりますと、少なくとも税制調査会ではまだそういった方向で進むとか進まないとかいうところまでいっていないというふうに私は考えております。  なお、地方税の問題につきましても、これから御審議をいただくことになろうと思いますので、実際問題といたしましては、おそらく今月の後半以後になるのではないかというふうに考えております。  なお、御指摘のございました大都市税制の問題につきましては、附帯決議もございますので、私どもとしては慎重に部内において検討を続けておる段階でございます。新聞に出ないから検討しているとか検討していないとかということとは別のことではないだろうかと考えております。
  128. 細谷治嘉

    ○細谷委員 新聞に出ないからと言うけれども、新聞に出ると、私は知りません、その新聞の記事は責任を負えません、そうおっしゃるけれども、大体新聞に出てきたことは具体的なんだ。あなたのほうは、新聞に出ないというときになると何らの動きを示してないから、火のないところに煙は立たぬ、こういうことで積極的に取り組んでおらぬのじゃないか、こう思うのです。「大都市については、その財政の実態にかんがみ、税源の充実を検討して明年度において具体化に努めること。」こう書いてあるわけです。大臣、私は、地方財政は不如意であることはもう何ですけれども、先ほど来都市交通の問題を質問したのですけれども、やはり都市財源というのが今日の緊急の問題の一つであることは申すまでもないと思うのです。  ところが、たとえば二、三年前にできた経済社会発展計画というのももう現実とはだいぶ差が広がってきたのです。広がってきたからやむを得ず今度は新総計画というのができた。新総計画については、自治省は、新聞によりますと、何か地方制度のことにも触れるらしいけれども、具体的じゃないから一つもわからぬ、態度がきめられぬというようなことを私はけさ汽車の中で新聞を読んできたのでありますけれども、なるほど抽象的であります。ですから計画はしつばなし、そして格差は是正、格差は是正というけれども、格差は拡大されておる。その一番根本の原因というのは、大衆負担の税収にたよって、そして法人等についての税というのは軽減ばかりしてきたところに、せっかくできた経済社会発展計画も総くずれになっておる。そういうことに一つの原因があると私は思うのです。税体系のことも、根本的に国と地方との間の税財源の配分という問題もありますけれども、都市の税制という問題については真剣に取り組んでいただいて――新聞のことについて責任は持たぬでいいけれども地方の人たちは非常に注視しておるのですから、自治省はやっているわいというくらいの、煙がときに立つくらいのことはやってもらいませんと、大蔵省に言い分を通すことはできませんよ。そう私は思うのです。ですから、この間大臣から制度調査会で、これもまた大臣非常に高姿勢でありました。地方財政がどうだこうだというけれども地方団体の姿勢が悪いじゃないか。毒になると思っておる補助金でも、補助金であれば何でもかんでももらっていく、こういうふうな地方団体の姿勢も悪いのじゃないか。自治大臣として、おれもやるけれども地方団体ももっとしっかりしなさい、地方自治を拡大する方向でがんばりなさいとあなたはハッパをかけた。私ども感心したんですよ。ですから、ひとつそういうつもりで、地方団体の頼みの綱は自治省なんですから、自治大臣も税務局長も、いや腹の中ではあるのだけれども、いま発表できない。いま発表できないというのはどういうことかといいますと、あっちへいくとぶつかる、こっちへいくとぶつかるというので、ぶつかるのがこわくてやれないのでしょう。当たらなければだめですよ。砕けなければものになりませんよ。ひとつがんばっていただきたいと思うのですが、大臣の決意のほどを承って、私の質問を終わっておきたい。
  129. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 地方団体の行政水準を高めますために、非常にいまおくれておりますから、そのための財源確保ということについてはずいぶん検討も加え、またいろいろな要請もしておりますが、これも先般大蔵大臣が病気をされたために、地方財政面について何となくいろいろなニュースが新聞に出ておりましたから気にしておりました。今度やっと大蔵大臣もなおられたわけですから私もものを言いたいと思っております。税制につきましては、私どもの部内では、大都市だけではありませんけれども住民税の免税点を思い切って上げたいとか、あるいは事業税だって減免の措置をとって、多少でも喜んでもらいたいとか、いろいろ考えておるわけです。  それから、新しい税源の確保、これはむずかしいことですけれども、余地があるとかないとかいろいろ部内で検討もしております。しかし、一番私たちが心配いたしますことは、先ほどの、地方団体だって多少ゆとりができたのじゃないかとかといったうわさを立てられる向きもあるものですから、これにはたいへん困っておる。決してそういう事態ではないことは全国民みな知っておる。一部そういう説をなす人は、何か誤解しておられるのじゃないかと思っておるわけでございます。しかし、あれこれ思い合わせて、私どもはいま社会資本の充実、これは実際は地方団体がその第一線に立って年々汗をかいて積み上げておるわけでございますので、いまこういったことが中断されては将来に大きな禍根を残すと思いまして、財源の確保等につきましては格段の努力をする決意はいたしております。
  130. 細谷治嘉

    ○細谷委員 一言。税務局長、あの附帯決議が具体的に盛られない地方税法なんという法律案が来年の春出てきても、これは毎年毎年の地方行政委員会の決議でありますから、今度はそれが具体化され納得できる程度のものでなければ、地方税法という法律は通らない、こういうふうに私は思うんですよ。そのくらい私ども真剣に取り組んでおりますから、あなたもそういうつもりで、それが具体化されなければ今度の法律は通らないのだ、われわれこういう決意をしておりますから、ひとつあなた、事務当局の決意のほどを、大臣からはいま聞きましたけれども、言ってください。
  131. 松島五郎

    ○松島説明員 大臣の御指示のもとに私どもとしては最善の努力をいたしてまいりたいと考えます。
  132. 吉川久衛

  133. 田邊誠

    田邊委員 地方自治法に直接請求という制度がございますが、これは御案内のとおり議会の解散あるいは議員の解職あるいは長の解職、役員の解職等、住民の直接の手によって行なうという制度でございまして、地方自治のたてまえからいいますならば、地方自治は常に住民の手にある、常に住民とともに歩む、こういう精神からいいまして、きわめて重要な意味を持っておると思うわけでございます。ややもすれば、議員は選出をされると、その任期中は安泰である、そういう気分もございますけれども、実は直接請求の制度によって、常に住民の批判の手が、その地方自治体地方政治なり地方行政なりに及ぶことができるというところにたいへん重要な意義を持っておると私は思うわけでございます。     〔委員長退席、大石(八)委員長代理着席〕 したがって、この地方自治法上における直接請求の制度というのは、今日民主主義の立場からきわめて重いものである、こういうふうに私は認識をいたしておるわけでございますけれども大臣も同様なお考えではないかと思うのですが、いかがですか。
  134. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 そのとおりでございます。
  135. 田邊誠

    田邊委員 したがって、この直接請求の制度を実施する場合には、一つには住民の意思を最大限に尊重する、また一方においては、選挙で選ばれた議員の身分なり長の身分なり、いわば政治的な生死というものを決定をすることでありますから、いずれの側からとってみましても、この制度の活用については、きわめて厳正公平に、しかも完全に行なわれなければならない、こういうふうに私は考えておるわけでございますけれども、この点に対してももちろん御異論はないと思いますが、いかがでございますか。
  136. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 そのとおりでございます。
  137. 田邊誠

    田邊委員 そこで、私が実はお聞きをいたしたい具体的な例は、群馬県の前橋市におきまして、去る七月七日に施行されました参議院通常選挙において、自民党の佐田一郎議員の選挙違反にからんで、前橋市の保守派といわれる政和会所属の議員三十一人中二十七人が買収、被買収の容疑に問われ、現在裁判執行中でございます。まさにいわば今度の参議院選挙の選挙違反の中では最も悪質であり、最も大がかりなものであるということで、その後、新聞、テレビ等で喧伝をされたのでありますが、こういう悪質な選挙違反に対して市民の批判の声が上がることは当然でございます。前橋市民も、違反議員は当然辞職すべきである、議会は特例法に基づいて解散をしてもらいたい、こういう声が上がったのもまた当然といわなければならないわけです。ところが、残念なことには、これら関係をいたしました議員が何ら自省の色を示すことなしに、七月三十一日から臨時市議会、九月に定例市議会が開かれましたけれども、そういった市民の声あるいは社会党、公明党、共産党ないしは民社党等のそういう要求にもかかわらず、この特例法の解散はもちろん、三名の議員が辞任をいたしましたけれども、大かたの議員は居すわりを策してまいったのでございます。たいへん残念な事態であります。  そういう状態でありますので、やむなく前橋市民は、市議会の早期解散を望むところの世論が高まりまして、この地方自治法上の直接請求によりまして九月七日から署名運動を開始をいたしました。十月七日の一カ月間において集めた署名は、前橋市の選挙管理委員会の発表によりますと、八万七千百三十六であります。前橋市は有権者が約十五万でございますから、過半数を制すると思われる署名が集録をされたわけであります。  そこで私は、ひとつ大臣もお聞きを願いたいのでありますが、行政局長にお伺いいたしますけれども地方自治法施行令によりますと、条例の制定並びに改廃、監査請求等によるところの署名及び印を求める期間は、市町村においては一カ月間、こういうふうに規定をされておるのであります。さらに集めました署名簿の提出の期間は五日以内に提出をしなければならない、このように規定をされておるわけであります。署名運動、いわゆる署名を集める期間は一カ月以内でなければこの請求を求めることはできない、こういうように施行令九十二条に規定をされておるわけであります。これは条例の制定及び改廃の適用条項でありますけれども、この施行令の条項は、すなわち議会の解散署名の期間にも準用すると規定をされておると思いますが、そのとおりですか。
  138. 長野士郎

    長野説明員 そのとおりでございます。
  139. 田邊誠

    田邊委員 この施行令で規定をいたしております条例の制定、改廃、これは御案内のとおり有権者の五十分の一以上の署名を要することになっております。ところが、一方において、議会の解散、議員の解職、長の解職等の請求は有権者の三分の一以上の署名を要するのであります。この五十分の一の署名で足りるところの条例の制定等の署名と三分の一以上の有権者の署名を必要とする議会の解散、議員の解職等の署名の期間が同じ一月であるということはきわめて不合理であると思いますが、いかがですか。
  140. 長野士郎

    長野説明員 直接請求につきまして、現在御指摘のように条例の制定、改廃の直接請求が成立手続として準用になっておりますが、議会の解散請求の場合には署名者が五十分の一じゃなくて三分の一である、非常に多いわけであります。しかし、市町村という単位で考えました場合には、署名収集というものがいつまでも長く続くということになりますと、その間に非常にいろいろな意味での混乱も招きやすいというようなこともございますので、大体一カ月という期間を考えれば、五十分の一と三分の一では非常に人数において差があるけれども、まずまずそういう請求というものの達成は可能であろう、私はいまの制度としてはそういうふうに考えておるのだろうと思います。
  141. 田邊誠

    田邊委員 そういたしますと、この施行令によって一月以内に解散の請求をしなければならない、こうなっておるわけでございますね。一月以内で、幾日か署名の期間が延びてこれをまとめて提出をした場合には解散の請求をすることはできない、こういうことになるわけですか。
  142. 長野士郎

    長野説明員 施行令に九十四条という条文がございまして、その一月以内の署名収集期間の満了の日の翌日から五日以内に条例制定の――いまの場合なら議会の解散の請求でございますが、請求者の署名簿を選挙管理委員会に提出する、こういうことになっております。これらの条文の規定というものは強行法規でございますから、期間をやはり厳守するということに相なると思います。
  143. 田邊誠

    田邊委員 具体的に、前橋市は九月七日から十月七日まで署名運動できる期間がありましたが、十月八日に署名した者は、この請求の期間に入らない、こういうことになりますね。
  144. 長野士郎

    長野説明員 そのとおりでございます。
  145. 田邊誠

    田邊委員 そういたしますると、一カ月以内に署名しなければならない、これは住民に対していわば拘束をする義務規定です。義務としてこれを規定しておる、こういうふうになるわけでございますね。
  146. 長野士郎

    長野説明員 そのとおりでございます。
  147. 田邊誠

    田邊委員 そういたしますると、私が先ほど申し上げたように、この施行令は条例改正、すなわち有権者の五十分の一の人たちによるところの請求、これに解散、解職の条項を準用して当てはめている。こういうところに、そもそもの無理があると私は思いますけれども、しかしいま、局長の御説明によって、市町村段階であればこの期間で何とかこの請求ができるのじゃないか、こういうふうにして、これを住民に対して順守をさせ強制をさせておる、こういうことになってまいるのであります。私は、この施行令の中身については、たいへん実情と即応しない点があるのではないかと実は判断をいたしておるのでありますけれども、しかし、一応あなたの言い分というものを、私はこれでもって了解いたします。  そこで、住民に対してはこれを義務規定として順守させる、これの期間を守らなかった署名、五日以内に提出を怠った場合においてはこの効力を失わしめる、こういうことになっておるわけでございますね。そういたしますると、そのあとは、今度は選挙管理委員会の審査にゆだねられる。ところが、この市町村の選挙管理委員会が審査をする期間は一体幾日でございますか。
  148. 長野士郎

    長野説明員 その点につきましては、地方自治法の七十六条の議会の解散の請求の規定におきまして、七十四条の二、つまり条例の制定、改廃の請求におきますところの署名の審査に関する手続を準用しております。したがいまして、その関係の手続は七十四条の二という規定が準用になるわけでございます。この条文におきましては、市町村の選挙管理委員会は、署名の審査につきましては、提出された日から二十日以内に審査を行なう、そして署名の効力を決定してその旨を証明しなければならない、こういうことになっております。
  149. 田邊誠

    田邊委員 そういたしますならば、いまの御説明によって地方自治法七十六条の規定、すなわち七十四条の二に基づいて二十日以内に審査を行なうということでありますから、これは当然選挙管理委員会に課せられた義務規定である、こういうふうになりますね。
  150. 長野士郎

    長野説明員 そのとおり、一応法律上の義務を課しておるのでございます。
  151. 田邊誠

    田邊委員 そういたしますならば、当然、市の選挙管理委員会は二十日以内に審査を終了しなければならない、こういう形になるわけであります。これを守らなかった場合は一体どうなりますか。
  152. 長野士郎

    長野説明員 法律におきますところの二十日以内に審査をしなければならないというのは選挙管理委員会に審査期間を義務づけておるということでいま申し上げたとおりであります。しかし、二十日以内に審査が完了しなかったという場合に、その署名の審査というものが行なえないから請求そのものについての手続が完了しないということに相なりますと、それはかえっていわゆる有権者の権利の行使を妨げるおそれが出てくるわけであります。したがいまして、実際問題として、この関係規定の法律解釈、いわゆる公定解釈というものは、この二十日以内というのは、そういう意味では訓示規定なんだ、効力規定ではないといわざるを得ない。なぜならば、それはそういわないと、二十日を過ぎてしまうと手続に欠陥ができるとか、瑕疵ができるというようなことになってはいかぬから、やはり二十日を過ぎても審査をできるだけ早く完了して、住民基本的権利の行使に一日も早く支障を来たさしめないようにするということであれば、かりに二十日を過ぎたといえども、そういう手続を完了させるということのほうが必要だ、こういうのが大体現在の一致した公定解釈になっておると思います。
  153. 田邊誠

    田邊委員 それは長野士郎著「逐条地方自治法」の中にこういうふうに書いてございますね。「この審査期間内に署名の効力の決定が終了しなければ、やむを得ずその期間を経過しても、審査を続行せざるを得ないけれども、法の趣旨に従って、二十日以内に完了するよう努力しなければならない。この意味においては、二十日以内の規定は訓示的規定であるといい得る。」こういうようにこの著には書いておるのであります。ところが、いまあなたは、私の質問に対して、二十日以内に終了することは義務規定だと明言されたのであります。これは明らかにあなたの前後の答弁が食い違っておると思うのです。住民に対しては一カ月以内の期間を義務づけ、強制づけて、それが一日でも過ぎた場合はその署名の効力を失う、こういうことを強制しておきながら、今度は審査をする選挙管理委員会の場合は、二十日を過ぎてもこれはいいというような解釈は、私はまことに一方的なお役人の解釈ではないかと思うわけであります。大体、審査をする側は、署名がどのくらい集まって一体どのくらいの期間を見ればこれが終了するという予定が立つはずです。前橋市は八万七千百三十六、こういうように即日、前橋市の選挙管理委員会は発表いたしました。そういたしますならば、これに即応する行政事務の体制をとれば二十日間に終了することは可能であろうと思います。また、そうしなければ住民のいわば意思に沿うことにはならない。私はこういうように思うわけでございまして、あくまでもこれは多少の無理がある。そういうことを言われても、さっきの条例改正の五十分の一と、議会の解散の三分の一の期間を施行令において同じにした、これは二十日以内は地方自治法の本法で規定しておるのでありますから、これを順守すべきことは当然の義務であろうと思いますが、あなたの前の御答弁とあとの御答弁が食い違っておりますから、その点はどちらがほんとうなんですか、もう一度。
  154. 長野士郎

    長野説明員 私の申しようが不十分であったかと思いますが、いま二十日間の問題についてお答え申し上げましたのは、やはり二十日間というものについて一応法律は、もちろん二十日以内に審査しろということを命じておるのでございますから、その限りにおいては市町村の関係機関がその期間内に審査を完了するように職務の準備を整えて、おっしゃいますようにやっていくということは、私は当然の義務であると思います。しかし、その義務と申しますのは、いわゆる法律上何もないということではなくて、二十日間でやれという意味でございますから、法律上義務を課しておる、こういって差しつかえないと思うわけでございます。  しかしながら、反面、その二十日を過ぎた場合にどうなるか、これは実際の事務処理の上で、二十日を過ぎるということが適当だというようなことを考えて申しておるわけではございません。ございませんが、現実に二十日を過ぎた場合にどうなるかということについての意味をやはり考えておかなければならないということに、法律解釈としては相なるわけでございます。その場合に、二十日を過ぎた場合にはその署名の審査ということがもうできないということになることはやはり問題でありまして、そういうことであれば署名の審査というものが、手続というものが中断してしまうということに相なりますというと、かえって直接請求権の行使というものが妨げられるというおそれが出てまいります。そこで、そういう場合のことを考えますと、二十日を過ぎても、すみやかに審査を終了して住民の権利行使に支障なからしめるようにするということは、解釈として当然立てなければならないことに相なるわけであります。そういう意味では、したがってこの二十日以内に審査を終わらなければならないという規定は、いわゆる法律屋の用語で申しますと、御承知のようにこれは強行法規ではなくて、訓示的な規定といわざるを得ない、私はこういうことになろうと思うのでございます。
  155. 田邊誠

    田邊委員 私が先ほど説明いたしましたとおり、今度の前橋市における直接請求というのは、さきの参議院選挙にからむ違反議員に対して、市民がその地位を退いてもらいたい、そういう選挙違反を犯したような議員を含めた議会は解散をして出直すべきである、いわばこういう意思によって行なわれてきたのであります。したがって、いわば時間的に早期に議会の解散を望むという市民の声がこういう署名になってあらわれてきた。これは当然のことであります。言うなれば、議会を解散して、早期に議員は出直すべきである、議員たる地位を失わしめる、ここに唯一最大の目的があるわけであります。すみやかに議会は解散してもらいたい、こういうことにあるわけであります。  前橋市のように、大きな都市でもって八万七千以上の署名が集まったことは、私はいまだかつて例がないと思うのであります。そういうような例を聞いてもよろしゅうございますけれども、いずれにしても例はないのではないかと思います。しかし、いずれにしても、そういう無理な施行令に基づく規定がありますけれども、それを住民は守って、なおかつ早期に議会を解散してもらいたい、こういう要望がこの署名を生んだろうと思うのであります。五日以内、すなわち十月十二日にこの署名は提出された、こういう形であります。住民の側はそういう要望を持ち、そういう意思に基づいて、あなた方のきめたところの政令によってこれが守られてきた、一方の審査をするところの選挙管理委員会は、本法によるところの二十日以内の規定を守っていない、こういうことになったら一体どうなりますか。住民の意思は全くじゅうりんされているといっても過言ではないだろう、こういうことに私はなるだろうと思います。  そこで、あなたは何か法律屋の用語として訓示的な規定だと言うけれども、これを唯一無二の金科玉条のごとく解釈をして前橋市の選挙管理委員会は事務を停滞させ、おくらしてきたというのが現状であります。  そこで、実は私の意見をあなた方に合わせながら質問するので非常に遺憾なんでありますけれども、二十日以内に審査が終えなかったら、これは実際にあなたのいまおっしゃるように、最大限の努力をしたけれども終えなかったのかどうか、この判断が住民の側からできるかできないかということが一つの問題点であろうと私は思うのであります。事実問題としてできなかったのでありますから。十一月一日に終了しなかったのでありますから。そういたしますと、この二十日以内に審査が終了しなかったことは、前橋市の選挙管理委員会の怠慢であり、なおかつ故意にこの審査を終了させなかった、おくらしてきたのではないかという疑いを持つことは当然であろうと思うのであります。もし選挙管理委員会が故意にこの事務を怠ってきた、遅延をさしてきたということであれば、これは私はたいへんなことだと思う。市の選挙管理委員会が故意に事務をおくらしてきた、故意に審査を終わらせなかったことに対して、いかなる罰則がございますか。
  156. 長野士郎

    長野説明員 選挙管理委員会が御指摘のように故意におくらしたというふうには私は聞いておりませんが、選挙管理委員自体責任が十分に全うされていないということでございますと、これはまた選挙管理委員自体に対するところのいろいろな措置というものを考えなければいけないということに相なると思うのでございまして、そういう意味では、選挙管理委員会に対する解職請求というようなものもあるわけでございます。また、選挙管理委員会につきましては、これは議会で選挙しているものでございますが、そういう意味で、選挙管理委員会の責任の追及の機会というものはいろいろな段階考えていくことが可能だと私は考えております。
  157. 田邊誠

    田邊委員 正確に答えてください。いまの例が当てはまるか当てはまらないかは別にして、故意におくらした場合は一体どういう罰則があるか。行政実例があるでしょうに。
  158. 長野士郎

    長野説明員 選挙管理委員会が故意に事務の処理をおくらしたというようなことについて、私ども地方自治法の中ではそういうものの考え方をとっておりませんので、それについての罰則というようなことは直接に規定はしておりません。
  159. 田邊誠

    田邊委員 あなたの持っていらっしゃる自治六法にありますけれども、実例として、故意にそれを終わらせなかった場合には公職選挙法二百二十六条による職権濫用罪に問われるという、こういう規定がございましょう。はっきり言いなさい。
  160. 長野士郎

    長野説明員 いまお話しのような具体の事件の場合に職権乱用ということがいえるのかいえないのかということになりますと、私どもが聞いておりますところでは、具体の問題になりますと、市の選挙管理委員会の事務局というのは、前橋市においては常時六人の定員だそうでございますが、この場合には市の職員八十四名をもって審査を始めたというふうに聞いております。そういう意味では、選挙管理委員会としても、市の当局としても、最大限の努力をしておるというふうにいえるのじゃないだろうかという気がいたすわけでございまして、私どもは、そういう意味で、さっき申し上げましたように、市の選挙管理委員会に対する直接の罰則の規定の適用というものは一般論としても考えられません。したがって、選挙管理委員会の委員をそういう意味で糾弾するとかなんとかという方法は、やはり地方自治法に基づくところの原則に従いまして是正をさせるということに出ざるを得ないのじゃないかというふうに考えております。
  161. 田邊誠

    田邊委員 私は、その故意であるかいなかについては、あとでもって逐次前橋市の実例についてお伺いいたします。しかし法の規定するところによって義務規定として設けられておる二十日以内という審査期間で審査が終了できなかったという事実がございます。この審査期間が守られなかったという事態に対して前橋の選挙管理委員会がとった態度が、故意にそれを守らなかった、故意に終了しなかったということになれば、それは職権濫用罪に当てはまるのではないかというふうに私は言っているのであって、それに対する答えがないのであります。当てはまるのか、当てはまらないのか、どちらですか。     〔大石(八)委員長代理退席、委員長着席〕
  162. 長野士郎

    長野説明員 そのおっしゃいます意味が、二十日という期間が法律上規定してあるから、その二十日間の審査期間を過ぎれば故意に審査をおくらしたというふうに見られるのじゃないかというような御意見であるとしますと、私どもは、先ほど申し上げますように、それは具体の実態に即して判断をさるべきことであろうと考えます。そういうことでございまして、いまの故意に職務を怠ったかどうかというような点について、直接に罰則の適用があるということは、私どもはいまのところそういうことはないというふうに考えております。
  163. 田邊誠

    田邊委員 局長、私は別にこれについて引き続いて追及しようというのではないのです。ただ今後、この種の問題が起こったときにおける基礎的な考え方として聞かなければならぬ、こういう立場で私はお伺いしているのでありまして、前橋市の場合にそのことをすぐ云々しようという立場で質問を展開しているのではございませんから、御安心をいただいて、どうぞ正確にお答えいただきたいと思うのです。  したがって、二十日の審査期間に故意に終わらせなかった、こういう場合には公職選挙法の規定によって職権濫用罪に問われる、これは当然のことですね。問われないというなら、問われないでいいのですよ。
  164. 長野士郎

    長野説明員 職権濫用罪に問われるとは思いません。
  165. 田邊誠

    田邊委員 そうすると、あなた方の行政実例にある、いままで示してまいったところのこの二十日間の期間が正確に守られなかったという場合は、この二百二十六条にいう職権濫用罪に問われることは絶対ない、こういうふうにあらためて新しい解釈をあなた方はされるわけですね。どちらですか。この行政実例、あなた方の出している自治六法の昭和二十七年十一月の日付でもって出ている実例によっても、故意に同期間経過後も審査を行なわない場合には、職権濫用罪が成立する、こういうふうに載っているわけでございますけれども、これは誤りでございますか。
  166. 長野士郎

    長野説明員 当該実例におきましては、故意に審査期間経過後も審査を行なわないという、初めから全く審査を行なわない著しい事例のことをさしているわけでございます。私はこれについても、具体の事情との関係で考えてみなければならない状況もあるかと思いますが、一般論と申しましても、結局は具体の事件との関連があるわけでございましょうが、私は現実のこの問題については直ちにそういう問題とは関係がないというふうに解釈いたしているわけでございます。
  167. 田邊誠

    田邊委員 時間をとらずに簡単にやりたいと思って、お約束の時間に従ってやっておるのですが、分けてください。私は実例については言いますけれども、前橋市の場合には職権濫用罪に問うべきだという質問をいたすつもりはございません。ただ、あなた方は、解釈によって、故意に審査を行なわなかった場合は職権濫用罪が成立するというように解釈をされているのでしょうから、職権濫用罪が成立するという場合もございますね。全然ありませんか。どちらですか。
  168. 長野士郎

    長野説明員 私どもの行政実例で示しておりますような場合には、職権濫用罪の適用される場合もあるということでございます。
  169. 田邊誠

    田邊委員 いろいろ質問をしたいので私はあえて固執しませんが、法律の厳格な順守というのはあなた方に課せられた任務でございますから、その法が守られなかった場合における措置に対しても当然正確でなければならぬように思いますので、ひとつ誤りのないように対処していただくことを私は要望したいと思うのです。  そこで、現実に前橋市は二十日間で審査を終了しなかったのでありますが、これが終わらなかったという事態の場合、残ったものに対して審査をするというわけですね。二十日以内であった場合は、審査に必要な関係人の出頭や証言を求めることができるように地方自治法はなっています。しかし、二十日間という大前提がございますから、これが経過した今日においては、この審査に必要な関係人の出頭や証言を求めるということを住民に求めることも事実上はできないのではないかと私は思いますけれども、いかがでございますか。
  170. 長野士郎

    長野説明員 その問題は、二十日間の審査期間の前後で審査の手続が異なることはあり得ないと私は思います。
  171. 田邊誠

    田邊委員 大前提である二十日間という本法の規定が守られなかったとなりますならば、これは選挙管理委員会あるいは行政機関が、第三者に、その後において法の規定を押しつける権限はないと思う。第三者に対抗する権限はないのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  172. 長野士郎

    長野説明員 はなはだ残念でございますが、先生の御見解と私どもとはその点では非常に違います。審査というものは、審査し得る審査権の発動という範囲内では、二十日を過ぎておりましても、従前の審査の義務もございますし、審査に必要な関係人の出頭とか証言を求めることができなければ、審査を継続して審査を完了するという意味を失うわけでございます。したがいまして、二十日間を過ぎたらばそういうことができないということにはならないというふうに解しております。
  173. 田邊誠

    田邊委員 「二十日以内に審査を行い、署名の効力を決定し、その旨を証明しなければならない。」という規定をされておるわけですね。したがって、そういう義務規定が守られないということになれば、その後においても、他の施行令だけは生きて住民に対してそういったものを押しつける権限というのは当然失われるのではないか。しかもこれは予備的な署名なんです。その後において住民投票がある。しかも証明をすればあと一週間の縦覧期間がある。その間において異議申請があれば、さらに二週間の間においてその是非を決定できる期間がその後においてあるわけです。したがって、もし住民が不利益措置を選挙管理委員会においてとられた場合は、その救済する規定がその後において残されているわけです。そういうことでありまするならば、そういう機会が与えられているということになれば、あとの証人の出頭や証言というのは、そういう規定というものは当然有効として発動することはできない、こういうように解釈することは決して無理じゃないと思うのですが、どうですか。
  174. 長野士郎

    長野説明員 どうも、はなはだあれでございますが、前に申し上げたとおりでございまして、審査に必要な限り、二十日間を過ぎておりましても、参考人の出頭、証言を求めることはできると解しております。
  175. 田邊誠

    田邊委員 私はここでもって論争をさらに展開をしたいのでありまするけれども、時間を経過することを避けたいと思いますので、非常に不本意でありまするが、締めくくりの質問に入りたいと思うのです。  いま現実には、前橋市はお話しのように、二十日というリミット、それが十一月一日でございましたけれども、ここでは終了しなかったということをいっておるのであります。私は、故意であるかないかという質問をさっきしたのでありますけれども、局長は先回りをして、故意でなかったろうと言っているのであります。故意であるかないかというのは、やはり請求をした人たちあるいは住民、前橋市民、そして第三者に対して明らかにしなければならない。法で規定をされた二十日間でもって終了しなかった。とするならば、当然終了できなかったところの理由を具体的に説明する、請求者に対して当然知らせる、したがって、十一月一日という二十日間の終了した時点で、いま審査をしているところの状況、その中において、たとえば有効署名は幾ら、無効署名は幾ら、そういった内容、こういうものを発表すべきであることは当然であると思う。  それから第三番目には、二十日で終了しなかったけれども、あと幾日かかるのか、あと幾日あれば審査を終了するのかという今後の審査の方針、期日、これを明示すべきだ。  この三つは、故意でないということをもし証明をするとすれば、当然市の選挙管理委員会がやらなければならない事柄であろうと私は思いまするけれども、いかがでございますか。十一月一日の時点においていかがでございますか。
  176. 長野士郎

    長野説明員 お話しのように、二十日というのは、少なくとも法律で明定された期間でございますから、二十日を過ぎても審査が終了しないというような場合に、どういう事態であるか、どういう理由で審査が延期されておるかというような点を明らかにするべきでないかという御意見、それは、事情の説明というものは私はできる限りいたしまして、請求代表者のみならず、これに関心を持っておりますところの市民にその点の了解を求めるということは適当な措置であろうと思います。  そこで、第二番目には、見込みがつけばつけるべきだという御議論でございます。私もつけるべきだと考えてもいいと思いますが、あとどれくらいたてば審査が終了するか、こういうようなことが言える段階であれば、私は当然にそういうことも明らかにすることが適当だと思います。  ただ、いろいろお話がございました中で、たとえば、現在までのところ、どのくらいの署名についての審査が一応完了したか、そうしてその中に有効な署名が幾らあり、無効だと一応考えられる署名が幾らあるというような点になりますと、やはり審査が全体が完了しないのでございますので、その署名の有効無効というものは最終的に結了してない段階でございます。と申しますのは、同一署名なり、そういうものがその後の署名の中で混在しているということも考えられるわけでございますから、現在のところの、審査の過程の中におけるところの選挙管理委員会としては、全体の審査の終了した後に明らかにすべきものを、途中経過として発表するという中で、有効署名が幾ら、無効署名が幾らというようなことまであらわすことは、私は適当じゃないというふうに考えております。
  177. 田邊誠

    田邊委員 局長は大前提を非常に軽んぜられておる。いまあなたのおっしゃる趣旨は、二十日以内に中間発表するという場合は、それはあなたの言われるような中身について発表することはこれは避けなければならぬという、こういう点については私は理解がいくんですよ。しかし、これは法の命ずる二十日間というリミットを過ぎているんですから。とするならば、その具体的な内容について発表することは私は当然の義務だろうと思う。と同時に、さっき私が言いましたように、故意におくらしてきたんじゃないという実証をするためにも、一体どのくらいの審査が終了し、その中身はどのくらいあるのか。もちろんまぎらわしいものとの比較はございましょう。しかし、私の言うのは、これまでに確定をしたところの有効署名、これを発表することは何ら差しつかえない。なおかつ、一体いつまでにこの審査を終了する。二十日というリミットを守れなかったんだから、あと二日あれば終了する、あと三日間あれば終了するという、こういうことを明示することは、これは当然の義務でしょう。これは期日の明示ができないという理由がございますか。そんな理由はないでしょう。二十日を守れないというんですから、あと幾日間でこれは終了します、これは当然でしょう。そう思いませんか。私の意見に対して反論があるんなら言ってください。
  178. 長野士郎

    長野説明員 その具体のケースは、私も事情はよくわかりませんけれども、二十日という一応の期限があり、二十日を過ぎたならば、どういう理由で過ぎたか、今後どの辺で審査が終わる見込みだというようなことは、予定してものが言えるときにはこれは言ったほうがいいと私も思います。ただし、署名簿というものは、これは選挙管理委員会だけの問題じゃございませんで、署名簿のできぐあいの問題もずいぶん影響いたします。したがいまして、まぎらわしい署名や疑わしい署名や選挙権のない者やいろいろなものが中に混在をいたしておりますと、この署名し印を押した者が本人であるかどうかということを確認する場合、非常な困難のケースも私はあると思うのです。したがって、そういうことを申しますと、これは相互関係でございまして、きれいにできている署名簿の審査であれば非常に早くいくだろう、そういういろいろな事情もございますから、必ず明示できるということはこれは断定しかねるのでございますけれども、大体従来からのテンポなり何なりというものから考えて、どのくらいで終わる予定だということは、まあ立てられるというのが普通じゃなかろうか。いま申し上げましたように、例外もございますが、立てられるのが普通だと思います。
  179. 田邊誠

    田邊委員 そうすると、おくれた場合は、あとは選挙管理委員会の自主的な判断で幾日おくれてもかまわぬというような、そんなことはないでしょう。法の命ずる二十日間を守れなかった場合、これは国民に対して法が守れなかった理由、したがって、あと幾日したらばその審査が終了するんだと言うことは、私は当然選挙管理委員会の義務だろうと思う。ここに法の明示がないならば、あとだらだらやられてもいいですよ。あなたはだいぶ詳しいじゃないですか。事情を知らぬといまおっしゃるけれども、前橋市の選挙管理委員会が通例何人の職員がおって、今度の場合は何十人の職員をいわば補助に任命をしてその審査に当たっているかという報告をちゃんと受けて御存じです。そうするならば、二十日間で大体終わるだろうと見込みを立てられたと思う。ところが、二十日で審査を終わろうとしておったところが、十日なり十二日たってもどうも終わりそうもないといったら、その事務職員をもっとふやせばいいんですから、これがたとえ無理があっても、法の命ずる趣旨に従った答えだろうと思う。これができなかったとすれば、十一月一日というその二十日の期限が切れる際に、一体、今日から以降何日間にこれを終わらします、こういうことはできるはずですね。しかも審査の中身については、その市町村の選挙管理委員会の裁量にまかされている点があるのです。これは選挙の開票と違うのですね。立ち会い人がいるわけじゃない。選挙管理委員会の判断によって、有効、無効について最終的な一つの結論を出すことができるのです。そうでしょう。とすれば、その見込みを立てて、あと幾日間で終了するというリミットを示すことは当然のことでしょう。その状況判断によるんじゃないのです。法を守るという立場からいえば当然のことであります。あなた方はそういう指導をしたんじゃないのですか。どうなんですか。
  180. 長野士郎

    長野説明員 どうも、状況がいろいろございますが、私も、先ほどから申し上げておりますとおり、期限もおくれたことでもございます。大体先生と同じような意見でございますけれども、この次審査の完了する期間というものが明示できるようであれば明示したほうがいい、こうは考えます。当然の義務であるかどうかということになりますと、先ほど申し上げましたように、いろいろな状況がございますから、一がいに必ずしも申し上げられないのではないだろうか、こういうことでございます。
  181. 田邊誠

    田邊委員 あなたのほうは、前橋市の選挙管理委員会なりその事務局からいろいろと指示を仰がれたようでありますが、その際に、私が質問をし、あなたも私の意見に同調されてきているようですが、そういう指導をされたのですか。具体的になされていないでしょう。あなたのほうは何を指導したか。中間発表をしてはいけないという――その人の名前も知っているけれどもきょうはあえてその人の名前は言わないが、中間発表はいかぬ、そういう指導だけしているじゃないですか。前橋市の選挙管理委員会は、当然のことだろうと思って中間発表をしようと思った。常識判断ですよ、法によって。したがって選挙管理委員会の判断でもって、一体この十一月一日に終了できなかった理由は何である、それまでに審査をして、有効署名は幾らであった、こういう発表をしようと思った。ところが、中間発表まかりならぬ。中間発表でないのですよ。二十日以内の場合なら別ですけれども、二十日を過ぎているのだから。まかりならぬという指導だけしかしていません。なるべく早くこれを明示しなさい、早く終了するようにしなさい、そういう具体的な指導をしましたか。
  182. 長野士郎

    長野説明員 選挙部のほうに照会がございましたのは、確かにこの件については、御指摘のございましたような、有効無効とか審査はどこまで終わったかというような内容について、特に有効無効について幾ら幾らということの発表をすべきだろうかどうだろうかということを、県を通じて照会があったようでございます。それ以上の照会はございません。それに対しまして、先ほど申し上げましたように、審査の完了しない間に有効幾ら、無効幾らというようなことは適当じゃないという回答を選挙部のほうから県に対して答えている、こういうことのようでございます。
  183. 田邊誠

    田邊委員 きわめて不親切な行政指導ですな、これは。問題は、一体いつまでに審査を終了するか、早く住民の意思に沿ってやるべきである、法のたてまえからいって、二十日が守れなかったとすれば、一日も早く終わらすべきである。こういう指導をするのが当然のことであります。そういう指導はしないで、中間発表だけはまかりならぬ、これはまことに片手落ちであります。これからすぐ、きょうでも私の質問が終わったら、――あなたも私の意見に大体同調した。早く終わらすことが趣旨だというのですね。一両日に終わらすようにあなたのほうから行政指導をする、こういうことを約束しますか。
  184. 長野士郎

    長野説明員 現在の状況とこれからの見込みにつきまして、群馬県を通じまして再度照会いたしてみたいと思います。
  185. 田邊誠

    田邊委員 照会じゃないですよ。もうきょうは十一日でありますから十日間過ぎている。署名は一月間、審査は二十日間が十日過ぎていまもう住民はじりじりしているんですよ。しかも違反を犯したところの議員は、おくれればおくれるだけ命拾いをするというので、なるべく長く引き延ばされるのを待ち望んでいるのです。したがって、推測によれば、市の選挙管理委員会が何か圧力を受けて審査を故意におくらしているのじゃないか、こういう心配を実は住民はしているのです。これは当然のことですよ。一体いつ終わるかわからぬ、こういうような事態では。住民が自分たちの意思で行なった署名に対して答えが出ないのですから。二十日間でもって答えを出すべきであるのに二十日で出ない。一体いつ住民投票が行なわれ、いつ議会の解散があって新しい明るい前橋市政ができるのかということを待ち望んでいるけれども、その見込が立たない。たいへんなことですよ、あなた。それは単に訓示規定だから、守らなかったけれどもやむを得ないというものじゃありませんよ。そうでしょう。とすれば、私は自治省がそういった誤った指導をしているとは思いませんよ。当然思いません。しかし、願わくはこの住民の意思が一日も早く結論が出ることは当然の望むべきことであり、また行政機関が守るべきことだろうと思うのです。果たさなければならぬことだと思うのです。最初に私は大臣にお伺いしたように、この種の問題は厳正にしかも完全に行なわれなければならぬ。そのとおりですと大臣はお答えになった。いま厳正に守られていない。とすれば、即刻法の本来の趣旨に沿ってこれが守られるように指導することが自治省の当然の責任である、こういうように思うのでありまして、きょう当委員会が終わりましたら、さっそく群馬県を通じて前橋市の選挙管理委員会なりその事務局に対して、即刻この終了をして結論を発表する、こういうことに行政指導すべきであると思いますが、大臣いかがでありましょう。大体聞かれておわかりだと思いますが、そういう趣旨に対して御賛成だろうと思いますが、いかがでございますか。
  186. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 結論は目に見えませんけれどもすでに出ているはずですから、やっぱり急いで公表すべきものであるとは思います。しかし、いまいろいろ御質問の内容を私承っておったのですけれども、やはり故意にということはなかなかむずかしいことでして、故意に足を踏んだか、わざと踏んだかということでよくけんかの種になっておるわけですが、あまり故意にやっておるようなことを言いますと、今度は拙速主義ということになってきて、何でも故意だ故意だと言われるから早くやれということになるのも考えものであります。何万というものを一々点検するわけですから若干時間もかかります。しかし、こういうものを故意におくらせるなどということは考えられません。もちろん、せっかく署名されたものを紛失するとか、あるいはこういうものが失われるとかいうことになると、その間にまた犯罪などが起こってきまして、また綿密に検討をしなければならぬということもあるが、ただ時間的に何日間何時間を争ってやっておるわけですから、そこらのところは、あまり故意だ故意だということをおっしゃっていただかぬほうがいいのじゃないか。行政指導としては、やはりこういうものはできるだけすみやかに結論を出して住民に公表するのが正しいと考えますので、そういう指導をいたしたいと考えております。
  187. 田邊誠

    田邊委員 最後に……。  大臣、私は別にこの種のことで故意なんて言っていないのです。故意であってはならない、故意に見られてはならない、こういう立場で私は質問しているのでありまして、二十日間のリミットがありますから、その以前に早くやれと言ったならこれは言う側が無理だと私は思うのですよ。二十日間という法の趣旨があるのですから、それも十日間でやれとか一週間でやれというのは無理だと思うのです。しかし、二十日間を終えているのですから、これを督促し、発表しないのは一体どういうわけだ、それは一体故意におくらせているのじゃないか、揣摩憶測を生むこともやむを得ないじゃないかということを言っている。そういうことを生まないためには、一日も一時間も早くこれを終了して、住民の意思に沿うことが当然の責任ではないか、したがって、その趣旨に沿って自治省は行政指導をすべきである、こういうことでありまして、ひとつ即刻問い合わせをして、いま大臣の言われた趣旨に沿って行政指導をされることを私は強く要望したいと思いますので、局長ひとつ大臣の意を受けてやるということで御答弁をいただけますね。
  188. 長野士郎

    長野説明員 大臣の意を受けて行政指導いたします。
  189. 吉川久衛

    吉川委員長 門司亮君。
  190. 門司亮

    ○門司委員 私は、非常におそくなっておりますので、二、三の重要な点についてお伺いをしたいと思います。  最初に、すでに委員の各位にはきょう配付されましたし、それから問題の焦点については、先ほど自治省の財政局長の手元まで届けて検討しておいてもらいたいということで一応の予備審査といいますか、そういう形をとっておりますので、長くくどいことは申し上げないつもりでありますが、要旨はアメリカ軍隊に対しまする課税の問題です。これは安保条約からくる、要するに米軍の地位の協定に基づきまして、米軍の軍人並びに軍属については大体税金が課せられない、大まかに言えばこういうことになっております。そこからきた問題としていろいろな問題がございますが、ごく端的に申し上げてまいりますと、御承知のように、米軍の軍人、軍属というのが、施設の中におればまだよろしい、同時に、それがアメリカの軍の施設である、あるいは宿舎であるということになれば、私はたいした問題もないかと存じますが、これが基地外の町の中に点々としておられる。そうすると、地方自治体では結局法に基づいて外国人であるからといって差別するわけにはいかない。ごみも取らなければならないし、し尿の処理もしなければならない。いろいろな問題が出てくる。これらが地方の公共団体の負担になるということは当然であります。したがって、それらに対してどう対処するかということが問題点でございます。  いま大臣の手元にも神奈川県の大和市長からの要望書がいっておると思いますが、これはごらんを願えばわかるわけでありますが、大和には厚木の飛行場関係その他の諸君がここにたくさんおって、そして住民の比率からいえば約一割程度の米軍人がここに所在しておる。したがって、それらの諸君から、固定資産税等については、土地が日本人の所有であり、家が日本人の所有である場合には、これは当然いただけますから別に問題はないのでありますが、住民税を賦課することができない。しかし要る経費だけは市が負担をしなければならない。しかもいま申し上げましたように非常に大きなウエートを占めておる。これは大和だけではありませんで、三沢にもかなりこういう問題があったかと私は思います。その他米軍の基地の所在地付近の市町村ではこういう問題で悩まされておる。したがって、これに対して政府はどういう処置をされるつもりか。戦後二十三年もこれをずっと負担してきているわけです。いつまでもこういうことではとてもたえられないという事態にまで今日追い詰められてきておる。したがって、何らかの財政措置をするということが政府の当然の義務だと考えておるが、政府はどういうふうにお考えになっておるか、ひとつこの際明らかにしていただきたいと思います。
  191. 細郷道一

    細郷説明員 御承知のように住民税が取れないのでございます。しかも反面、その種の行政に影響を及ぼすということもございます。したがいまして、本来からいえば何かすかっとした対策ができれば非常にいいんだろうと思うのでございますが、なかなか諸情勢からそういうわけにもいかないというのが現状でございます。特に地方団体の場合には、現実に毎日の行政をやっていくわけでございますから、問題の解決のむずかしさのゆえに放棄しておくというわけにもまいらない、かように考えまして、私どももそういった市町村に対しましては、そこの財政状態等も見ながら、あるいは地方債あるいは特別交付税といったようなものによって、当面の措置をやってもらおうという態度をとっておるのでございます。
  192. 門司亮

    ○門司委員 その答弁は実におかしな答弁なんですね。負担分任の原則というのがあるわけであります。ただ米軍であるから、軍人であるからということで、特例によってこれが認められておる。しかし負担分任の原則はどこまでも原則であります。と同時に、いまのお話のように、そういうことを勘案して、基地交付金だのあるいは特交だのというようないろいろな財政負担をすることがあろうかと思います。しかし、それとこれとは違うということなんです。これを同一に扱われては非常に迷惑だということです。私はやはり負担分任の原則だけは明らかにする必要がありはしないかということです。その徴税技術の中には非常にむずかしいものがあろうと思います。彼らの収入を調べることができるかできないかというような、徴税技術の上では多少の問題が残ろうかと思いますが、原則としては負担分任の原則をほっておくわけにはいかない。そういうことがあるからほかの方面で補っているのだというが、ほかの方面で補われているのはこれとは全然筋が違うのであって、これは連中がいることのために、地理的の立地条件からくる非常に大きな損害を受けているとか、あるいは住民のいろいろな方面に及ぼす影響というものが勘案されて、いまのような基地に対する交付金ができているわけであります。それとこれとは全然違うわけなんです。それを自治省が混同してものを考えているところに私は誤りがあると思う。したがって、この問題に対して、そういうおざなりな答弁ではなくして、政府に一体責任があるのかないのか、一般的の行政処置としての責任というよりも、むしろこれははっきりしているのだから、これだけ住民に直接迷惑をかけているということであって、固定資産税とはやや趣を異にしているのですね。固定資産税は物件税なんです。これは人頭税なんです。税の原則から見ても、物件税と人頭税との差はどこにあるかということです。いまの基地交付金というようなものは物件税としての取り扱いをしているので、決して人頭税としての取り扱いをしているはずはないわけです。したがって、私はやはり人頭税としてのものの見方からくれば、負担分任の原則というものをのがれるわけにはいかないのではないかと思うのです。この点はどういうふうにお考えになっているか、ひとつ大臣から御答弁を願いたいと思います。
  193. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 駐留軍は条約によって非課税に大体なっておるわけですが、やはり基地外に居住しておる者もたくさんある。これに地域住民として人頭割りの税金を課するということは一応当然と考えられます。しかし、財政的な面で国が全然めんどうを見ていないわけではございませんので、御案内のとおりに交付税上の扱いも、非課税部分については基準財政収入額に加えないとか、その他財政局長が申しましたように、歳出面でもいろいろこれと見合って、カバーも十分ではございませんが、特交どもありますので、全然この問題について国のほうで考慮していないとはいえないと思います。しかし、残念ながらこういった人たちがまだ国内におるということは、私たちはけっこうなことだとは決して思いません。しかし、いまの扱いとしてはやむを得ざるものと考えております。
  194. 門司亮

    ○門司委員 いまの大臣答弁ですが、やむを得ざるものだということでは、私はこの種の問題の解決はつかないのだ。さっき申し上げましたように、基地交付金であるとか、あるいはその基地周辺の何か助成金であるとかいうようなものは、大まかにいえば一般的のきわめて抽象的なものの見方からくるものであって、たとえば基地交付金にしても、それなら固定資産税相当額というものがはじき出されておるかどうかというと、必ずしもそうじゃないでしょう。上できめておるものを下で案分してくるのでしょう。だから政府が言っておるのは、実際はそういう形の筋の通らないものなんだ。だから、もし政府がそういうお考えならば、この基地交付金というようなものも、もう少し明確に積算された基礎の上に立って支給されることが望ましいのであって、こういう基地交付金というようなものでなくして、これを当然税のかわり財源としてはっきりとした態度で政府が肩がわりするということで、税金の肩がわりだということを明確にしておいていただきたい。ところがそれが行なわれておらない。しかもさっき申し上げましたように物件税である。物にかけた税金である。したがって動かないものにかけておる。それから、同時に、それがあるからといって一体どれだけ地方に迷惑をかけておるかというと、そんなに迷惑をかけてない。ところが、住民税の関係からまいりますと、これは人に税金をかけるのであって、当然市町村に所在して市町村の行政上の恩恵、行政上の保護を受けておりますからこの税金を納めるということであって、単にさっき申し上げましたじんかいやし尿だけではございません。御承知のように、身体、生命、財産を守らなければならないということは、ちゃんと自治法の二条に書いてあるとおりである。これをやはり施行しなければならない。基地内におるならば、基地の管理の中でMPその他でちゃんとある程度身体の保護は受けておる。しかし外におる人は、やはりそういうことで行政上の恩恵あるいは行政上の保護を受けておるのである。したがって、これは人頭税として、御承知のように基礎的の基礎額というものは、貧乏人も金持ちもちゃんと納めなければならないように税金はできておるはずだ。こういうことを考えてまいりますと、税の本質論からきて、いまの大臣答弁では済まされぬのじゃないか。もし大臣がそういう御答弁をなさるなら、いま申し上げました行政上の恩恵と行政上の保護を受けておるものの代償というものは、国が約束をしたから税金が直接とれないというなら、国が当然カバーすべきだ。これは地方の財政がいいとか悪いとかいうわけじゃございません。私がなぜそういうことを言うかというと、交付税にしたって、地方の財政の規模を見きわめて出しておるのですから、おまえのところは財源があるからそういう費用は見なくてもよろしいという理屈は成り立たぬと思うのです。その理屈だけでは、やはり政府がめんどうを見るというたてまえを当然とるべきだと思う。この点は大臣どうですか。どうしてもそういう固定資産税とおのずから趣を異にしておるのですが、家屋については消防施設その他の行政上の多少の恩恵がないわけじゃございませんが、しかし、土地についてはたいした行政上の恩恵というものはないかもしれない。道路ができるとかなんとかいうようなことで多少の地価が上がるとかなんとかいうことは、あるいは行政上の恩恵といえるかもしれない。しかし、これは直接のものではない。しかし、人間は直接行政上の保護と同時に行政上の恩恵を受けておることは間違いがないのであるから、やはりこの種の税金は、いま大臣の言うようにとれないということになれば、彼らからこれが徴収困難だということになれば、これの見積もりの相当額は、その地方の財源があろうとなかろうと、それにかかわらず、国がこれを負担してやるというのが私は当然だと思うのだが、この点はどうなんですか。
  195. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 考え方としては私も同感でございます。同感と申しますのは、とにかくアメリカの軍人には課税できないことは条約ではっきりしておるわけでして、条約でも改正しない限りは、これを課税の対象に扱うことはできない。しかし御指摘のとおりに、地域住民としていろんな行政上その他の恩恵を受けておるわけです。そこで、それにはやはり財源はどうかということなんですが、そういったために、これはちょっと意味が違いますけれども、基地交付金だってやはり私どもは必要額を大蔵省に年々要求はしておりますけれども、なかなか十分な措置がしてもらえないわけです。しかし、そういった財源等につきましては、自治省といたしましても、特別交付税であるとかあるいは起債などを通じまして、できるだけ地方団体に迷惑がかからぬようにという措置はしておるつもりでございます。
  196. 門司亮

    ○門司委員 いまの大臣の御答弁ですが、大臣のお考えのようになりますと、条約は国が結んでいるのですね。地方自治体が条約を結んでいるわけじゃないのです。その国の結んだ条約によって地方自治体のあるべき姿というものがゆがめられておるとするならば、国の力でこれを直さなければならぬというのは、私は国の義務だと思うのです。さっきから申し上げておりますように、交付金あるいは所在市町村の何とかといわれるような金でこれをカバーしておると言われても、それは一般論であって、私は必ずしもこれには当たらないと思う。少なくとも人に関係をするものから考えれば、地方住民としての負担分任の責任というものは当然果たすべきである。したがって、もしこれが課税できないとするなら、地方自治体に対して国がその分だけは、地方の財政がよかろうと悪かろうと、そんなことに関係なく負担することが当然の責務だ、こういうように私は考えております。そういたしませんと、地方自治体は非常に迷惑であります。御承知のように大和の陳情書をごらんになればおわかりでありますが、たとえばごみの処理にしても、約九軒に一軒くらいの割合で彼らがいるということから出てくるし尿の処理あるいはじんかいの処理をすることのために、それだけの施設をやはり拡張しなければならぬ。これは不必要な費用とは私申し上げませんが、やむを得ざる押しつけられた費用であって、ことに大臣のことばの中で私が聞き捨てならぬと思うことは、起債その他でと言われておりますが、何も国が条約を結んで、そのことのために地方が借金をしなければならないというようなばかげたことは考えられないじゃございませんか。どう考えてもつじつまの合わぬことは、大臣あまり言ってもらいたくないのです。起債というものは将来払うのですから。しかもその当面の責任者理事者が払うのでなくして、後世の住民がその負担の義務を負うということになっておって、起債というものはそう簡単に考えるべきはずのものではないわけです。ことに地方債というものは非常に大事なんです。後世の住民がみんな払うことになる。当面の理事者がみんな払ってやられるならけっこうですけれども、町長さんだって、市長さんだって、みんなやめられてあとの人があと始末するんだから、そうものを簡単に考えられては非常に迷惑なんです。だから、国でめんどうを見るということをひとつぜひ明らかにしてもらいたい。 これはさっき申し上げましたように固定資産税その他とは全然違うのでありますから、直接の行政上の恩恵なり保護を受けておるものでありますので、これをひとつぜひ自治省考えてもらいたい。  大蔵省は一体これをどう考えるのだ。大蔵省は、そういうものは出さなくてもいいというような考え方を持っているのじゃないですか。自治省から要求があれば、大蔵省は当然認めてしかるべきだと考えるし、そうだと思うのだが、大蔵省の意見も一応この際聞いておきたい。
  197. 相沢英之

    ○相沢説明員 駐留軍の駐留中のそういう課税の問題について、私どもは従来、自治省からは、先ほどもちょっとお話しいただきましたが、国有提供施設の固定資産税のいわゆる補てん問題として提供施設等所在市町村交付金の増額をめぐりましていろいろ折衝がございましたが、いまお話のございましたような住民税等の税金が取れない、その補てんをどうするかという問題、私どもまだ、そういう問題の提示もございませんし、十分検討もしておりません。そういうお話がございましたらよく検討させていただきますが、これは結局日本とアメリカとの取りきめにもよることでございますので、いろいろと響く点はあろうかと存じております。
  198. 門司亮

    ○門司委員 いまの大蔵省の答弁は一向煮え切らない答弁で、自治省が請求しないからというようなことに大体聞こえるのでありますが、そうすると犯人は自治省ということになります。  それからもう一つ自治省考えてもらいたいのは、みんな交付税、交付税と言われますけれども、アメリカ人の頭数というのは交付税の算定の基準の中に入っていないのですよ。これは人口の中に入っていないのですよ。だからこれが交付税の中に含まれているとは私どもちっとも考えられないのです。ぴしゃっと、外国人がここに何人いるからという戸籍のなにとは違う、日本の戸籍簿に載っていない連中ですからね。しかし現実にはいるのです。したがってこれを交付税でカバーしているなんということは、これはまるきりナンセンスみたいなことを言っているので、実際上の問題として対象になっていないのですよ。そして人一倍といっていいほどじんかいなどはよけい出すのですね、ここは。水はよけい飲むだろうし、いろいろなことをやるのです。地方自治体は非常に迷惑なんですよ。交付税の割り当ての算定の基礎の中にもこれは入らない。ほんとうに宙に浮いた、ばけものということばはどうかと思いますが、基準に乗ってこない連中なんですね。表面に出てこない連中なんです。ですからそれを地方自治体は非常に大きな負担をしなければならないということであって、国が交付税でそれを見ているとかどうとかいうことは当たらないと私は思うのです。交付税で見るというけれども、外国人の人数を全部調べたり何かまではできないでしょう。そういう答弁では私は承認できないので、これは何が何でもやはり国が責任を負わなければ、交付税の対象にもなっていないことは当然であって、したがってまた基地交付金の対象になっていないことも当然でありまして、そうするとこの施設以外の軍人軍属の在住に対しては、政府は何らめんどうを見ていないという結論が当然出てくるわけでありまして、これを二十三年続けておるのだから、もうこの辺で政府も少し考えたらどうなんですか。
  199. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 実際その米軍の軍人軍属の収入を調べるといいましても、なかなか方法はありませんし、住民税と同じような課税をしようと思っても事実上むずかしいことはおわかりのとおりでございます。  先ほど起債その他と申しましたのでちょっとおしかりを受けたわけですけれども、排せん物その他じんかいにいたしましても、米軍の軍人だけが出すものだとはっきりいたしますけれども、また地域の中にぽつんぽつんとおるわけですから、そういうものの終末処理その他にいろいろな施設が要ります場合には、そういったものに対して起債あるいは交付税等でめんどうを見るということを申しました表現が、ちょっと誤解を呼んだわけでございます。しかし、そういった余分といってはおかしいけれども、実際ほんとう地域住民外にこういった方々がおられる、それも一応考慮いたしまして、特交の配分その他については手かげんを加えておるはずでございます。
  200. 門司亮

    ○門司委員 どうもそういうことだから困るのだな。手かげんをしているというのでは私は承知ができないのですよ。あなた方のほうで手かげんをする場合の基礎というのはどういうことかというと、やはりこれらの諸君を除外したあとの計算をやっているのですからね、事実上は。だからこれだけはどこまでいっても含まれていないのですよ。しかも大和のように、全部で八万近い人口の中で、向こうさんが五、六千おるわけでありますから、一割近い人間がここにおるわけであります。だから当然それだけのものが減になっておることは間違いない。しかし大和市全体の日本人だけを対象にしてやった収支決算からくれば大体財政的にはいいじゃないかというので、こういうものが交付が一つくっついておる。したがって私は、筋を通すには、これは大臣がどうお考えになろうと、大蔵省がどういう考え方を持とうと、国が肩がわりをするということが、そして筋道を通すということが当然だと思う。さっきから申し上げておりますように、徴税技術の中では、連中幾ら月給をもらっておるかということを調べるということは、なかなか困難だと思う。しかしそれは何もむずかしい仕事でありませんで、こちらでそういう筋を通していけばアメリカはある程度発表すると思うのですよ、月給などは。こちらから調べるといってだれかが行ってやれば、むずかしいことを言うかもしれません。しかし政府のほうから、こういう事情でこうなっておるから、あらかじめどのくらいの額になるかということを知らしてもらいたいというぐらいのことは向こうは応じると思うのですよ。また応じなければおかしいと思うのですよ。そうすればおそらく算定の基礎というものは出てくるのじゃないかと思う。そうすると、それに相当した額をやはり筋を通してお出しになることが適当であって、それをいまのようなごまかしで、いや特交で見ておるだの交付税で見ておるだの、交付税で見ようたって見ようがないわけですね。それは全体に浮かんでこない連中ですからね。そういうことですから、もう少しはっきりしたこの際答弁をしていただかぬと、この種の問題は大和だけじゃありませんで、日本全体の基地の周辺には多かれ少なかれ実際はみんなあるのですよ。たとえば青森県の三沢などでも大和に次ぐものがあろうかと思います。そのほかにもそういうものがたくさんあろうと思う。したがって、この辺でどうですか、これは固定資産税その他と全然違った性格だから、ひとつできるだけ調査をして、そしてそれに見合うお金を国が肩がわりをする、こういうことは私は筋の通った話であり、これはちっとも無理でないと思うのです。無理なことを私は頼んでおるわけじゃないですよ。そして地方自治体住民と一体化した政策こそが、地方自治体を運営していく理事者には非常によろしいと思う。またこれが日米間の感情についてもよろしいと思うのですよ。大和のようなところで一割近い向こうさんがおって、これらの連中は市民税も納めない、何も税金を納めないで、ごみは出しほうだい、し尿は出しほうだいで、そのあと始末はおれたちがやるというのでは、市民感情は必ずしもよくないと思う。やはりどうしてもこれらの問題についてはそういう政治的な配慮も含んで、そして政府が処置をするということが、地方自治行政を円満にやっていくには最も大事なことであると私は考えるのですが、大臣はどうお考えになりますか。
  201. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 なかなかお答えがむずかしいところですが、米軍人だってこの地域で相当消費もいたしますし、またその町のいろいろなこういう米軍人と接触しておる方々にはあるいは何がしか別のプラスもあるかもしれません。しかしそういうことは別として、米軍人が何ゆえにおるかということは、皆さんの党とは立場が違うけれども、私どもは国の安全保障上必要だという判断に立って条約を結んでおる結果がそこに出てきておりますもので、むしろここで話しておるのは、自治省というより、防衛庁や外務省にも御尽力願って大蔵省に共同で要求して、やはりこういう費用は捻出できないものか。いま門司先生の御指摘になることは、自治省としてはやはり同じような感覚に立ちます。
  202. 門司亮

    ○門司委員 それから、これも大臣のあげ足をとって悪いのですが、米軍は消費すると言われるけれども、それは私はあまり感心しないのですよ。あまり消費しないのですよ。ドル防衛の形から、最近では域外調達をほとんどやめておるのですよ。彼らは石けん一つまで本国から持ってくるという制度をとっていまして、日本ではできるだけ消費に金を使わせない。ドル防衛はこのごろはきびしいですよ。あとはキャバレーやそのほかに行って多少酒を飲んだりしておることは、これも向こうから持ってきたウィスキーばかり飲んでいるのじゃなかろうから、あろうかと思いますけれども、そういう抽象論ではこの問題は片づかぬと思う。  そこで、きょう私は大臣からもう少しはっきりした答弁を聞きたいのですが、もしこれが行なえないということになりますと、これはやはり地方財政法十二条その他の関係からきて、国を相手どって訴訟するというようなケースが出てこないとは限らないのですよ。何といってもこれは固定資産税やその他と全然違った人頭税である限りにおいては、政府が負担すべきものだと考えている。そして、先ほどからの御答弁のように、施設庁それから外務省というようなお話でございますけれども、問題はやはり自治省の問題である。自治省がそういう考え方をお持ちになれば、施設庁といってもこれに反対する理由はどこにもないと思う。むしろ施設庁としてはそうしていただいたほうが地元の融和のためには非常によろしいのではないかということで、施設庁に反対のあろう筋合いではありません。外務省は少しアメリカさんに腰が弱いから少しへなへなするかもしれませんが、しかしそれとても筋を通してもらって話をすれば、固定資産税その他とは全然税の性格の違うものですから、話のわからないはずはない。そうすれば、さっき大蔵省から答弁がありましたように、要求されれば大蔵省も考えようと言っておりますから、いま言ったことはうそじゃないと思うので、要求がないから考えないというのなら、少し要求をしてもらいたい。またここで大蔵省も、そういうお話もいたしましたが、聞いていただいていると思いますから、これも要求があったもの、国会から要求のあったものとして考えておいていただきたい。  最後に、ひとつそういうことでこの問題についてはできるだけすみやかにまとめてもらいたい。地方自治体も大体予算編成期に入りますので、これらの問題がやはり議会でも問題になりましょうし、財政的にも行政的にも問題になる一つの課題ですから、この際、大臣からもう一回御答弁を願っておきたいと思います。
  203. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 耳新しい御提案ですけれども、先ほど申しましたように、自治省としてはやはり十分前向きで検討してみなければならぬ課題だと思います。ただ、条約に淵源しておりますので、なかなかむずかしいかと思いますけれども、大蔵当局などともよく協議をいたしていきたいと思っております。
  204. 門司亮

    ○門司委員 この問題でいつまでも長く押し問答している時間もないかと思いますが、いま申し上げましたように、間違えば、というよりもむしろ地元の自治体理事者としては、行政訴訟でもしなければ地元がおさまらぬのですよ。議会はなかなか承知しませんよ。そうなってきますと、結局だれが得をするか、だれが損をするかといったところで、みんなが損するということになる。国もあまりかっこうのいいものじゃないと私は思う。したがって、すみやかにこの問題は――いまの大臣のお話のようにいろいろの関係のあることは私も知っています。がしかし、それを乗り越えたというか、それはそれとして、これはこれとして処置をぜひしてもらいたい。大蔵当局においてもあまりやかましいことを言わないで、大蔵省もやはり日本の一つの行政官庁なんだし、地方自治体一つの行政官庁です。だから十分考えていただきたいと思います。  それから、その次にもう一つ聞いておきたいと思いますことは、この間自治省が発表いたしました広域市町村圏の構想というものがございます。しかもこれは話が進んでおって、明年度に対しまする二億五千万円の予算要求がされておるということは私も聞いております。これは一体自治省の独創なんですか。それとも地方制度調査会の答申なんですか。その点をひとつ明確にしておいていただきたいと思います。
  205. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 国土の均衡ある発展をはかるためにはどうすればいいかと各省でいろいろ苦慮いたしておりますが、自治省自治省の構想がございます。これは制度調査会で結論が答申で得られたわけでありませんけれども地域住民に一番密着しておる官庁であります自治当局といたしましては、やはりそういった面から一応予算要求はことしからいたしております。
  206. 門司亮

    ○門司委員 予算要求をされておるということになりますと、大体具体案がまとまっておると思うのです。あらかじめ簡単に御説明を願いたいと思うのです。
  207. 細郷道一

    細郷説明員 私、御承知のように直接の所管ではございませんけれども、いろいろ中の相談にあずかることでもございまして、私の知っております範囲で申し上げますと、御承知のように過疎、過密の問題が出ておりまして、それらに対して将来どういうふうに持っていったらいいであろうか。当面は過密の問題では過密対策をやる、過疎の問題では過疎対策をしていく必要があろうと思いますが、長い目で見ました場合にどういうふうに持っていったらいいかというのが私どもの最大の課題であろうかと思います。それにあたりまして、地方におきます地域的あるいは社会経済的に一つのつながりを持った市町村ができるだけ一体的な計画のもとにそれぞれ自分の持ち分を執行していく、そういったようなことが必要ではなかろうか。いういう意味合いにおきまして、広域市町村圏といったような構想を出したものでございます。明年度の予算の要求につきましては、そういった広域市町村圏におきまして、数市町村がまとまって一つの将来計画をつくる、その計画の策定に必要な経費を要求する、こういう立場に立って予算要求をいたしております。
  208. 門司亮

    ○門司委員 いま財政局長からきわめて抽象的な答弁がありましたが、実際はそれとは違うんじゃないですか。今月の「自治研究」にあなたのほうの役人が書いているのを見てみましても、それから「市政」に報告をされておる内容を見てみましても、この予算要求というのは補助金ですよ。補助金というからにはいままでの調査費とは違うのですね。そう書いているのですよ。そうして、しかも一つの圏の中に入るものを来年度は百ぐらいこしらえたいということまで書いてあるのです。そうすると、これはもう具体的なものがかなり進んでいなければ国庫補助を要求するわけにはいかぬでしょう。大蔵省のえらい人がおいでになるけれども、具体的なものが出てこなければ大蔵省から補助を出すわけにはいかぬでしょう。だからいまのような答弁では私は困る。もう少し内容を明らかにしていただきたい。もしあなたのほうで明らかにできないというなら、私のところにあなたのほうで書いたのがありますから読んでもいいですよ。それではあなたのほうでかえってお困りになりはしませんか。私はなぜこういうことを言うかといいますと、国のほうではすでに府県の合併の法案を出してみたり、それからまたこういうものを出してみたりしておる。しかもこの広域市町村圏の構想というものの中には、大体一圏域当たり人口十万人ないし十五万人というようにして、全国に三百ないし四百程度設けるということで、とりあえず来年は百ばかりこしらえるということが書いてあるのです。これと政府並びに自民党の皆さんが執拗に迫っておいでになる府県合併との関連性が、ここに地方行政考える限りにおいてはこれを切り離しては考えられないことなんですね。行政というのは御承知のように一元化することが一番いいのです。だから地方自治体にできるだけの権限を与えて、そうしてその能力を遂行することができる財政規模を与える、むろん地域もそれに与えて――現実の仕事としては地域を与えなければならぬ。したがって今日のような事態になって広域行政についてどうするかということは、当然地方自治行政の中から考えられるということは私どもも知っておる。しかしそれにはいま申し上げましたような条件がやはり整わなければならないのであって、その条件を整える一つの仕事としてこういうことを思いつかれて、そうして一方では進められる。地方制度調査会はこれと別の考え方をかりに持っておるとすれば、非常に大きな問題がそこに出てくる。と同時に、府県合併とはおおよそ変わった構想の中にこういうものが私は行なわれていると思うのです。市町村の広域行政をこういう形で進めていこうとすれば、きょうは時間がないから私は議論いたしませんが、その背景となる議論は、当然府県の廃止論でなければこういう議論は出てこないはずである。これは大臣もそうお考えになるでしょう。そういう背景を私どもは知りたいのです。それならそれでよろしい。二重行政をなくそう、そして国の行なうものは当然国が行なう、地方自治体の行なうものは当然地方自治体に行なわせるということになれば、非常に経費が節約される、国全体の経費が節約されることは事実です。それから事務も非常に迅速に行なわれることは事実です。だからそういう方針をとるというのなら私はそれでよろしい。しかし一方には府県合併を進めながら、一方ではこういう広域行政を進めていくということになりますと、一面県も大きくなるのだから、市町村も大きくなるのだから、それでいいじゃないかという議論も成り立つように思いますけれども現実の姿としてそれは効果がないということでございまして、同じことを繰り返している。こういう市町村の広域行政の構想を持とうとするなら、その背後には府県の廃止論というものが出てこなければ私はこういう構想にならぬと思うのだけれども、その点はどうなんです。大臣はどのようにお考えになっておりますか。
  209. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 非常に深刻にいろいろな分析と申しますか、想像をまぜていらっしゃる。私ども府県合併の道だけは開こうといたしましたが、なかなかうまくいかなかった。しかし中にはやはり道州制までいけとか、あるいはもう府県というものをやめてしまえという議論のあったことも耳にしておりますけれども、それとこれとは全然考え方の根底が違うわけでございまして、もちろん広域行政という点では大ざっぱにいえば一致するかもしれませんけれども、広域市町村圏というのはそうでなくて、やはり地域住民をその地に定着させるためにはどういう方法があるか、通産のほうでは産業分散ということから新産、工持その他いろいろ策を講じましたけれども、これとて十分所期の効果をあげておるとは思いません。何としてでも全国、あえて過疎地域だけとは申しませんけれども、やはり各省、建設省は社会生活圏ですか、また農林省は農業経済圏、それぞれこういう圏を設定いたしまして、少し広域的に産業その他考えていこう。私ども住民の生活面を考えました場合にも、地域住民が定着しないのはやはり地域に高度な医療施設あるいは文化施設などがなかなか整いませんので、どうしても東京、大阪へ去っていく、また農家にとってみれば兼業収入の機会が少ない、そういうことから落ちつかない面があると判断しておりますので、生活圏域的な考え方で人口十万あるいは十五万、いずれが適切かわかりませんけれども、とにかくその地その地に住民を定着して、そして過密地帯への移動を防ぎたいということでいろいろ知恵をしぼりましたあげく、わが省としては前には中堅都市構想、中堅都市というのは都市にだけ力こぶを入れるような誤解を生みますので、少し考え方を広げまして、中身は同じことですけれども、広域市町村圏という構想を打ち出したわけでございます。ですから、これは全国一ぺんに同時に手をつけるわけにはまいりませんから、やるとしても端からということになりますが、これは何もはっきり制度調査会で答申をいただいたわけでもありませんし、また府県合併や府県の廃止などは関係なく、現実の過密過疎対策の一環としてこういう考え方に到達して、こういう方向へ行政を誘導しよう、かように考えておるわけでございます。
  210. 門司亮

    ○門司委員 いまの大臣のお話ですけれども、御承知のように国土総合開発法をこしらえたのは昭和二十五年と私は記憶しております。それから、これが三十七年までそのまま大体何もしないでほったらかしのような形になっている。やったとすれば、東北振興とかなんとかいろいろなことは多少やったと思いますが、これではいけないということで、新しく御承知のように新産都市というものを九つ指定するつもりが十三になったか十五になったかわかりませんけれども、そういうことで国はやはり過疎対策、過密対策等についてはそういう産業の分散政策をずっとやってきている、しかしこれはいずれもうまくいっておらない、そして今日に至っておる。そして人口は大体六大都市にほとんど半分くらいの人口がまごまごすると集中しそうな状況になっている。それを行政的にこういう形で防げると考えたら私は非常に大きな誤りだと思う。むしろこれはそういう大臣のいまの答弁のようなお考えならば、もう少し高度の考え方のもとに、これに具体的についてきたものがなければならない。内容を見てみますと、いずれもこれは行政事務の広域化なんですね。し尿の問題をどうするか、焼却場をどうするか、あるいは病院をどうするかというようなこと、そういうことは一々いまの時点のもとでは考えられます。たとえばいまのような小さな地方の実態があったとする。先ほど消防の問題もありましたけれども消防についても小さなところではもうどうにもならない。あるいは救急業務なんというものは交通災害が多くて困っているけれども、小さなところではどうにもならない。病院もどうにもならない。焼き場といっても、人間の始末を、いなかでは従来土葬であったのがそうはいかなくなってきている。どんないなかに行っても最近は純農家というものは少なくなって、そしてじんかいの処理も自家処理はほとんどできない、し尿の処理も自家処理はできない。したがって、従来農村地帯になかったこれらの行政事務をどういうふうにしてまとめていくかという一つの構想として私は考えられる。それにはある程度の地域の構想、大きなものでなければそういう施設をやるわけにはまいりません。したがって、市町村が共同でそういうものをこしらえる。下水の問題にしても、地理的に高いところにある市町村と低いところにある市町村と、これをどういうふうに結びつけて汚水処理場の設置をするかというような具体的の行政関係からくる仕事について、これをどうまとめていこうかという構想なら、ある程度こういうことが考えられるかなという気はしないわけじゃございません。またそうすることが一つ方法だと考えております。下水だって非常にやかましいことを言われておりますけれども、し尿処理を完全にやろうとするには、下水をこしらえようとするには、私ははっきり言えば一市町村では、普通の市町村では困難だと考えております。やはり一つの大きな構想を持ったものが、中心下水のばかばかしく大きいと考えられる、そんなものを一つ通して、それに市町村がつないできて、共同である地域の終末処理場をこしらえる。同じようにじんかいの処理場もそういう形が望ましい、そういう事態が来ていることはわかっているのです。それならそれで、それに対処する、こういう構想があるというならまた一つ考え方。しかしいまの大臣の御答弁のように、何か過疎地帯と過密都市をこれで解消するなんということは、どんなことしたってできはしない。それは産業との関係がありますから、私はその点をもう少し大臣にはっきりしておいてもらいたいのです。これはさっき言いましたような行政事務からくる広域圏でなければそういうものはうまくいかない。だから過密、過疎とは関係なく、むしろ過疎地帯にこういうものが必要だ、弱小の市町村にはそういう大きな仕事はできない、しかしやらなければならない、だからこれがまとまってやるには、いま特別地方交付団体には事業団というものができていますけれども、事業団の構想だけではうまくいかぬから、むしろそれにもう一つ大きなフクをかけてということになろうかと思う。しかしそういうことで、これが構想が出ておるとすれば、私ここでこれ以上といいますか、こまかい議論は避けますが、もう一つ大臣から明確に聞いておきたいと思いますことは、こういうものができたら一体行政上の位置づけはどうされるつもりですか。その点をひとつこの機会にはっきりしておいてもらいたいのです。
  211. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 これは先般来進行いたしました町村合併も必ずしも完全にでき上がったとは考えておりませんが、単に町村合併といいましても、なかなかそれ自体むずかしい問題も含んでおります。それはそれとして、やはり地域住民一定地域で生活をともにするという形になれば、それが住民定着の一つの原因になるであろう。と言いますことは、いま文化施設あるいは医療施設の水準のことを申しましたけれども、いま門司先生のところはどうか知りませんけれども地方ではやはり兼業の機会と申しますか、農家でも過疎地帯の人たちでもみな家族のだれかは都会へ通勤して、そこで兼業収入を得ておるというのが今日の実態になっておる。それが全部東京や大阪の過密地帯に集まるのをどうしたら防げるかということにいろいろ知恵をしぼりますけれども、なかなか名案がない。そこでやはりこういう地方の小都会にも人が集まればそこで産業が生まれてくる。労働力があればこそいろいろな企業もあり得るわけですから、そういう方面に小さいながらも次第に基盤づくりをいたしまして、そうしてとにかく通勤可能――自転車でも通勤できれば一番いいが、もう少し範囲を拡張して一日通勤圏くらいな構想で一つのそういう地域づくりをするということは、やはり過密過疎の大問題とは決して無関係ではないという考え方に立っておるわけでございます。いまみな国民あげて町へ町へ住みたがるものですから、やはりそういったようなまずまず町としてのいろいろな利便を享有できる地点を全国至るところにつくる、こういう考え方に発想しておるわけでございます。
  212. 門司亮

    ○門司委員 その発想のことであまり議論しておると長くなります。いまの大臣のような発想でそんなものができるものではないと私は考えておる。ただ私の聞いておるのは、自治法の中にどう位置づけするかということですね。一体特別地方公共団体にするのかどうかということです。これを明確にしておきませんと、いよいよ出てきたときの処理に困りますよ。これは一体どうするつもりですか。特別地方公共団体にするつもりですか、しないつもりですか。
  213. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 いま、するともしないとも明確に申し上げられません。そういった問題をまっ正面から議論しなければならない日が必ず来ると思う。そこまでいけば私ははなはだけっこうだと考えております。
  214. 門司亮

    ○門司委員 あなたけっこうだと言っておりますけれども、これは広域でそういう事業をいろいろ共同してやりますね。事実上はやらなければできないのです。既成の町村もあるのですから、いずれもこれは共同になると思う、町村合併とは違いますから。これは構想が一つ別で、そしてさっき言いましたような府県の統合だとか廃止だとか、あるいはそういうようなものと関連させて地方自治体の行政をどう取り扱うかということ。そしてこういう問題を含んで地方自治体のあるべき姿という規模はどのくらいがよろしいかということが考えられて、その上に立っておるものならまだ話のしようもあるのです。しかし町村がそのまま残っておる。そうしてただ広域圏であるからこういうものを共同してやろうとすると、その事業の遂行に当たる責任の所在は一体どこにあるかということです。ところがこういう仕事をやっていこうとすると、ここに書いてありますような病院であるとかなんとかいうものをやろうとすると、いま特別地方公共団体として事業団があるのですから、財政措置も十分にできる、起債もすることができる事業団というのはこの特別地方公共団体の中に入っているということです。だからそれにやらせるのか、あるいはこういう問題について特別地方公共団体として新たな位置づけをするのか、一体どっちかということを私は聞いておる。これがきまらぬことにはこれから先の話の進めようがないじゃないですか。お金をどういうふうに出してどういうふうに始末するのかということを――ただ絵にかいて、これからこうは生活圏だから、ひとつ地方市町村の広域行政でやるといったって、具体的な一つ一つの問題は財政の措置も要りましょうし、役人も使わなければなりません。だから、その場合の地方の広域圏に入る地域の自治法上の位置づけをどこにするかといって私は聞いておるのです。いまのようにこれから先の問題だと言われるなら、もうこれは議論も何もできやしませんわ、そっちを先にきめておいていただかないと。
  215. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 地方自治法上には、そういう新しい地域をどこに位置させるかといっても、いまのところはめようがないわけです。しかし、おっしゃるようなこういった法律的な扱い等につきましては、それこそいよいよ制度調査会その他にもお尋ねする必要もありましょうし、また実際法の改正も必要になってくると思うのです。しかし私ども考えましたのは、さっき言いましたとおりに、地域住民定着のためには地方にやはり中堅都市的なものをまず育成するということを自治省としては考えていかなければ、実情がこういうことになっておりますので、なかなか地域住民の定着はむずかしいということから進みまして、そしていま中堅都市ということになって、広域市町村圏といっておりますけれども、中身は同じことです。ですから事業によってはやはり一部事務組合でやるものもありましょうし、それから産業の基盤的なものを育成いたしますためにはその中核になる都市が中心になるでしょうし、いろいろ私はあると思います。しかし、いまのところ、地方自治法上の位置づけといわれますと、広域市町村圏的なものが明確になるということはきまっておらぬわけでございます。
  216. 門司亮

    ○門司委員 そうなると、これはどの法律でおやりになるのですか。新しい法律をこしらえられるのか、そして自治法との関連をどこで結びつけるのか、これはどうなんです。  それではここに書いてありますのを読んでみましょうか。「同構想の骨子は①住民の生活圏を基礎に広域市町村圏を形成する②都道府県内の市町村は、いずれかの圏域に属するものとする③市町村は広域的な行政体制を整備する④広域市町村圏は各種の振興策を総合調整して計画を策定する⑤振興計画は広域行政機構または関係市町村が行なう-などで、とくに広域市町村圏の施設整備に当たっては①総合病院、老人ホーム、高校、図書館、市民会館、卸売市場などは中心市に整備する②し尿処理、ごみ処理場、火葬場などは拠点集落に整備する③診療所、保育所、小・中学校などは各集落において整備する-など施設の機能に応じた配置をすべきだとしている。」こういうふうに書いてあるのですね。  そうすると、これは実際はいまの行政事務だけなんですね。大臣のお考えのように、これでそこに人間が集まろうとはあまり考えられない、当然やるべきことがやれないから。これはもう一つ水を加えておかないとぐあいが悪いのです。こういうことをお書きになるなら、水道もみな一緒にやれとお書きになっておらぬとぐあいが悪い、水道とか下水とかいうものが当然ついてきますから。したがって、いまの大臣のお話のようなことでは、舌足らずというかもの足らずというか、これはほんとうの思いつきじゃないですか。いま人間を集めるといわれますけれども、なるほど、こういう行政組織を完備して、そして住みよい環境をつくっていくということは、一つの大きな目的もあり、またそれなりに価値もあると思います。しかし大事なことは、いま申し上げました水ですよ。いまの工業は水を離れてできますか。それにちっとも触れてない、これを読んだ限りではですよ。大臣は、産業構造でも改革しなければというようなお考えでは、人間も定着しやしません。ただ、こういうことによって、住居しておる地域の環境整備をすることによって都市も農村も同じような生活環境の中で生活ができるという構想を打ち出していきたい、そうすることによって、何も都会へ行かなくてもいいじゃないか、ここだってもうすでにごみの処理もできるし、し尿の処理もできるし、環境衛生も完備するじゃないか、何も都会にあこがれていかなくてもいいじゃないかという議論なら、私はこういうことで一応いいと思う。しかし大臣のいままでの答弁はどうもそうでないようでありまして、何かもう少し大きな構想がないと……。人間を定着させるということになると、ここにやはり産業を持ってこなければならない。産業を持ってくるということになると、道路と交通機関と、もう一つ大きな問題は水の問題がどうしても出てこなければならぬ。こういうものはいまのあなたのほうで書いたものを読んだだけではちっとも書いてない。だから私がさっきから聞いているように、きわめて中途はんぱなものであり、思いつきのものであって、どう考えても大臣答弁のようなことはここには引き出してこられない。もし私どもがいまこういう構想を持とうとするなら、一番先にやはり水をどう考えるかという問題がある。そして工業立地の整備をしていく。いままでの日本の工業立地関係でうまくいかなかったのは、一つは水の問題があります。それから一つは交通の問題があります。交通をすべて整備しないで、ここだけをきめたからといって、それで発展するものじゃありません。ことに資本主義の社会でそんなことをいったって、それは企業家が来るものじゃございません。十万、十五万の人の生活圏の一つの基礎ができたから、そこへ行って仕事をしましょうなんというしおらしい企業家はいやしませんよ。もうからないところに行きやしません。だから、いまのような答弁ではちょっと私の考え方とは違うということです。  きょうは時間も五時になっておりますので、皆さんも迷惑だと思いますからこれ以上申し上げませんが、もう少しこの構想については、こういうことでなくて、さっき申し上げましたように、二億五千万円の予算要求をして――これは補助金と書いてあるんですね、国庫補助と書いてある。そうすると、私はこれはもう少し具体的なものを聞けると思ったけれども補助金をふやすのについて具体的なものが何もないのでは大蔵省もお困りになると思う。具体的なものを出さないで補助金をよこせといったって、ちょっとやっかいだ。きょうは、まあこのくらいでおいておきます。  もう一つだけ最後に聞いておきたいと思いますが、これは先ほどから細谷委員から公営企業のことで聞かれておりますので、これ以上私から聞く必要はないと思いますけれども、この機会に大蔵省の考え方をひとつ聞いておきたいと思います。  大蔵省はいまいろいろのことを言って、問題の処理にあたってきわめて不親切であると申し上げても差しつかえないと思いますが、ことしの水道の会計の帳じりを見てみましても、大体水道事業の赤字というのは七大都市が一番多いということですね。それからその次に赤字の多いのは一万五千人以下の町村だということです。この現象を私どもが一応考えてみますると、どういう結果が出てくるかということです。と同時に、工業用水については不良債が非常に多いのであります。前段のだけをひとつ考えてみますときに、なぜこういう形になるかということです。この社会的な現象が大蔵省には一体把握できておるかということです。七大都市が公営企業の赤字が非常に多い最大の原因というのはどこにあるかというと、都市の爆発的な膨張だといわれております。横浜なども大体二百万をこえておる。毎年十万から十五万の人間がふえている。これに対処することのために結局先行投資をしなければならぬ。これは何も横浜市がやったことではない。やはりこれは一つの社会増であることに間違いない。だとするならば、その社会増の分については国が責任を持つべきではないですか。地方自治体がこういう急激な社会増までめんどうを見るということは地方自治体能力を越えていると私は思う。地方自治体能力を越えたものを地方自治体に押しつけようとするところにどうにもならぬところができてくる。したがって、これに対して大蔵省はどうお考えですか。やはり自治体の仕事だ、おまえたちのせいで人口がそうむやみにふえるのだというようにお考えになりますか。
  217. 相沢英之

    ○相沢説明員 公営企業、特に水道、工業用水等につきまして相当な赤字をかかえておるところがあり、かつまたそれがふえておるところがあることは私ども承知しております。従来、上水あるいは工水につきましては、財政上も起債に関しましてできるだけ政府資金をふやすとか、あるいは公営企業金融公庫の貸し出しの利率を下げるとか等の対策はとっておりますけれども、しかし根本的にはやはり水道料金の水準の問題になるのじゃないかというふうに考えております。人口の社会増の責任が、そういう社会増がございます都市にあるとかないとかという議論はさておきまして、ともかく人口の増に伴って、必ず現在あるいは将来において住民税その他の形で地方団体としても収入の増加になる面もございますし、また大都市の水道料金は必ずしもほかの都市に比べて高いという現状ではございません。したがいまして、水道料金はやはり公営企業でございます以上、できるだけその採算をとるという意味におきまして料金の是正を行なうことが必要でございましょうし、またそれが地方公共団体として必要であるならば、その限りにおいて普通会計から水道会計に何がしかの援助を行なうということも必要になるのではないかというふうに考えております。
  218. 門司亮

    ○門司委員 いま大蔵省のお考えを聞いたわけでありますけれども、どうも私ども考え方といささか違うところがございます。それはさっき言いましたように、爆発的に膨張する地域における水というものは、これはもう大都市だけではありません。全体の一つの大きな社会問題といっても私は差しつかえない問題ではないかと思います。  それから料金が安いとか高いとかいわれておりますが、料金についてはいろいろ問題がありまして、いわゆる負担能力というのがある。これはお米の値段が議論されるのと同じであります。人間に不可欠の問題でありますから、水を飲まないで済むという問題ではございませんから、したがって、そこには負担能力の限度というものが当然出てくる。これを考えてまいりますと、私はやはり低額所得者が比較的多い大都市等においてこれを上げていくということは市民生活の圧迫になるということは事実であります。したがって公共料金の苦しいのはそこにあるのであります。よけい使った人がたくさん納めりゃいいのだ、お前たちの水だから収支の償うようにするのはあたりまえだという議論が一応成り立つかもしれない。しかし負担にはおのおの限度がある。したがって取水料というものと料金の差額が今日の赤字の最大の原因だ。取水料一つとってみましても、御承知のように、先ほど諏訪湖のことが問題になりましたけれども、日本で一番安いのは岡谷です。岡谷はトン当たりたしかまだ五十円ぐらいでできているんじゃないですかな。一番高いのが秋田県の男鹿だと思いますけれども、ここは七百八十円くらいになっているでしょう。そういう非常に大きな開きがあります。しかし、だからといってそれに見合うものをとるわけにはいかぬでしょう。東京だって取水料はいまのところ、私の計算では大体三百六十円くらいについている。そうしてそれが末端で、一番安いところは二百八十円ぐらいに売られておる。その差額が赤字になって出てくるから、結局二百億をこえる赤字をいま東京都はかかえている。これを上げることによって収支は償うであろうが、市民の負担の関係からいけばどうかということである。したがって私はここで率直に申し上げておきますが、水道等の問題については国がもう少し社会増として、国の今日の経済の発展の最大の基礎はこの水道にあるのでありまするから、結局水道に対して一般会計からそこへ入れろなんていうことでなくて、やはり国がめんどうを見るということ、したがって国が何がしかの補助金を出すというような考え方はできませんか。
  219. 相沢英之

    ○相沢説明員 水道料金を上げるということになりますと、もちろん家計に何がしか響くということになりますが、しかし家計費に占める水道料金の割合は、全国平均を申しますと一万分の二四程度でございます。私どもの家計における実感としましても、とにかく電気とかガスとかに比べて水道料金が高いということはないのじゃないかという気がいたします。湯水のごとく使うというふうに、従来から水については相当安いものだという観念があるからかもしれませんけれども、しかしながらやはりこれだけ人口が集まってきて、そのために水源施設その他の施設に膨大な投資が要るということに相なれば、そこのところはやはりある程度の負担住民にしてもらうということもやむを得ないのじゃなかろうかという感じがします。電気とかガスとかというものは、大かた公営企業ではなく、会社企業として行なわれて、その料金の問題が公営企業の料金ほど議論にならないということも一つはあろうかと存じますけれども、ただ水道料金だけがとらえられて、その引き上げがあまりに問題にされ過ぎるというような点もあるのじゃないかという気が、率直に申しますとするわけであります。公営企業につきまして、それが収支の面で赤があるからといって、国が直ちにこれを財政的にめんどうを見ねばならぬというふうには私どもとしては考えておりません。
  220. 門司亮

    ○門司委員 いまの大蔵省の意見というのは実におもしろい議論なんです。電気だとかなんとかいうものは取捨選択ができるのですよ。三つつけるのを一つでもよろしい。しかし、水は飲まなければ生きていられないでしょう。人間の生存に密着したものです。水の料金をきめるときには、それらの負担能力というものを十分勘案しなければならないのである。それが水道料金を上げるか下、げるかというときにはいつでも焦点になっている。何も私企業のほうはよろしくて、公営企業のほうはまずいからという理屈にはならぬと私は思う。それは取捨選択できるものはいいですよ。三つ電灯つけるのを、うちは払うのがめんどうくさいから一つにしましょうといえばできるのです。その人ががまんするのならそれでいいわけであります。しかし、水はそうはいきますまい。米もそうはいかない。米の値段を七%上げたところで、八%上げたところで、家計の全体の経費に響くのはそう大きなものではないと私は思っていますよ。しかし、これが問題になるのは、欠かすことができないものであるから、どんなに低額所得者であってもこれを避けるわけにはいかないから問題になるのである。その認識が大蔵省にないということになりますと、これはたいへんなことである。と同時に、今日この水道の赤字あるいは交通の赤字を出している分は、何もその都市のせいじゃないのであって、国の産業の発展の陰にこういう一つのしわ寄せがきているということである。したがって、国は、産業発展の過程において当然こういうもののめんどうを見ていくということが当然なんじゃないだろうか。所得税は免税されても、水を飲まぬというわけにはいきはしませんから、だから、私はこの問題についてもう少し話をしたいのですが、もう時間がほとんどないことになっておりますので、これ以上申し上げませんが、これと同じように、今日の交通の問題が先ほどから議論になっておりますが、ことしの帳じりを見てみますと、交通関係にしても、人件費総額が二百五億であって、累積赤字というものは九百七十九億です。不良債務が大体四百九十七億、約五百億、これをどうするのですか。これも、一体地方自治体の交通行政が行き詰まったわけじゃないのですよ。運行しようといったところで、市電は運行できないから、横浜の市電もやめる、東京の都電もやめる。規定された十六キロなら十六キロでずっと走れるなら何も赤字になりはしない。それができないからこういうことになる。明らかに社会現象である。にもかかわらず、これが地方自治体責任だという考え方は、私は少しおかしいと思う。走らせようにも走らせようがない。バスにしても同じことである。ことにバスなどに至っては、運行に対しまする規制がかなり強いのである。従来都市の経営するバスというものはその地域内だけである。いまこういうふうにだんだん膨張していって、そして通勤圏が広がっておる今日の時代で、にっちもさっちもいかないほど自動車がある。運行の非常に困難な都市の中心だけを持っている公営企業地方からどんどん通ってくる事態になっておる私営のバスとの運行上のアンバランスというものは非常に大きなものである。私営のバスはこれは成り立つのであります。やっかいなところだけじゃありませんから、通勤する都市の諸君を運ぶ一つの大きな機能を果たしております。ところが、公営の交通機関はそれができないのである。そこに今日の公営企業の交通企業の行き詰まりが生じておるわけですね。これは何も市役所のせいでもなければ、市民のせいでもない。やはり今日の日本の産業の発展の陰にこういうひずみが出てきた。そうして国は、財政上から見ましても、そんなに大きな赤字があるわけでもなければ、そんなに窮屈な財政でもないはずである。地方自治体はその借金を全部背負っておる。  そうして、今後は交通問題で考えてもらいたいのは、今後この借金を払うのはだれかということである。公営の交通機関を利用することのできない市民がこの借金を払わなければならない。どこに一体受益者関係が出てくるか。受益者でないのであります。市電がなくなれば、その交通機関は使えないのである。バスがなくなれば、それは使えないのである。しかし、借金は残っておる。これは払わなければならぬ。こういう奇現象が出てくるわけであります。したがって、こういうものについてはやはり――よく政府のほうでは受益者負担、受益者負担といわれるが、これは受益者負担の逆の形であって、全然利用しないが、しかし、昔の借金を払わなければならぬという形が出てきている。これでよろしいかどうか。私は、やはりこういう問題については大蔵省も少し目をあけてもらいたい。そうしなければ地方自治体の公営企業というものは成り立たない。この点を大蔵省からもう一応御答弁を願っておきたい。いまの都市交通は現実にそうなんですよ。バスもなくなれば、都電もなくなる。そして、これの残した借金を利用しない都民が払わなければならぬ。これは受益者負担とは全然逆な形です。こういうものについてどうお考えになりますか。
  221. 相沢英之

    ○相沢説明員 受益者負担ではないと申されますけれども、しかし、これは、もしそういう公営企業としての都市交通機関の損失が、かつて受益者であったものの受益の負担が乏しいというようなことに――つまり端的に申しますと、料金が安かったということが原因となって、そういうような赤字が累積をして残ったということに相なっておれば、やはりそれはその受益者であったものが後においてなしくずしに負担していくということが、私はあたりまえのことじゃなかろうかというふうに思っております。公営企業としてある限り、その設置主体が財政的な配慮を行なうということが当然なことなので、国としてめんどうの見れる範囲というのは、やはりそういう公営企業に対して種々の資金のファイナンスを行なうということ、それから現在行なっておりますように、再建会計となった場合に、これに対して利子補給等を行なう、そういうところが限度ではなかろうかというふうに私は考えております。
  222. 門司亮

    ○門司委員 基本的な意見が違いますので、幾ら聞いたってこれは満足なものにはならぬと私は思いますけれども、実際の問題として、そういう現在の赤字ができておる原因、これを将来どうするかということ。いま再建団体云々と言われますけれども、再建団体というところで払うものは払わなければならぬのであって、利用しない市民が払うということ。かつてお前たちは使っておったじゃないかというのだけれども、再建団体を見てごらんなさい。何年のうちに払えばよろしいか。あの赤字がいつなくなるか。これは全然関係のない諸君の負担にならざるを得ないのであって、したがって、これが社会増というか社会現象からくる一つの問題であり、ことに政府のとってまいりましたいわゆる産業の高度成長政策のひずみの一環として出てきた以上は、国の施策の一つとして国が当然めんどうを見るべきである。同時に、これから先ふえていこうとする水道事業等に対しても国が出したっていいじゃないですか。いままで国が水道事業に補助した例はあるでしょう。ないわけではないでしょう。
  223. 相沢英之

    ○相沢説明員 上水道の補助の問題につきましては、従来非常に議論がございましたが、現在工業用水に補助しておることとの関連もございまして、四十二年に七億円を初めて計上し、四十三年度では十一億九千三百万円を厚生省に計上いたしておりますが、これは水源開発等の施設に対する補助ということになっております。
  224. 門司亮

    ○門司委員 もうこれでやめますけれども、そういう意味で、何も水道事業に補助金の道が閉ざされているわけではございません。それから水源地と言われますけれども、いまの水道事業というものを見てまいりますと、単に流れておる川をせきとめて、そして水を配るというか使う時期は過ぎております。私は、もう少なくとも今後の都市行政の中の水道問題を議論しようとすれば、そこには当然水がめが必要だ。そしていつでも渇水にならないように水の確保をすることのためには、いま流れている水をとめて、飲み水と、ある水と、消費だけを勘定してはいけないのであって、そこにためた水がめというようなものがどうしても必要になってくる。それがなければ今後の都市行政はやっていけない。都市は生きていけない。そういたしますと、そこに施設をするだけの費用というものは、バランスのとれない費用であることは間違いがない。私は、こういう問題はやはり国がめんどうを見て、そうして自治体の水道行政等に対してはほんとうに遺漏のない措置をとってもらいたい。いまの全体の行き方というのは、あとからあとから追っかけるのです。人がふえるから施設をふやしていく。どこにも安全弁がないわけだ。水道自体について私はそういう考え方を持っておりますが、ここでこれ以上は議論はいたしませんが、自治省もさることながら、大蔵省がこの点についてもう少し目をあけていただき、そうしてやっていただきませんと、都市の行政というのは行き詰まって、そして都市が破産する時代が来やしないかと私は思う。私は極端なことを言うのですが、この間も、ある市長さんが来ていろいろこぼすから、ストライキをやったらいいじゃないか。赤字が出るなら一ぺんやめてしまえ。バスも電車もみなやめてしまいなさい。そうすれば一体どうなる。赤字をなくするのにはそれが一番手っとり早いのです。赤字を毎年毎年こしらえるよりもやめてしまったほうが早い。しかし、それはやりたくてもできないでしょう。そこに地方自治体の苦悩があるのです。私がこういうことを大蔵省にお願いするということもそこに問題がある。苦悩している今日の地方自治体を見ていられますか。一番いいことは、さっき申し上げたように、バスで赤字が出るならバスをやめてしまえ、電車で赤字が出るなら電車をやめてしまえ。これを地下鉄に移管してごらんなさい。また赤字になるのです。日にちがかかる、時日がかかるでしょう。しかし、地方自治体は赤字になるからといってやめられない。赤字になるからといって水道のせんを締めるわけにいかない。そこに現場で仕事をいたしております、現実の政治を行なっております地方自治体の苦悩がある。この苦悩を知らないということは、私は政治の上では非常に大きな問題だと思う。これに対する自治大臣答弁を最後にお伺いして、私は質問をやめます。
  225. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 その苦悩のことにつきましては、先生おられたと思いまするけれども、朝からかかってさっきまで盛んに議論をいたしました。私はよくそのことも承知をいたしておりまするので、やはり地方公営企業の今日の経営状況にかんがみて、抜本的な策を講ずる時期にきているという判断は同感でございます。  それからさっきの御質問ですね。お手元にある文書は私は拝見はしておりませんが、財政局長も知らぬところを見ると、何か行政局のだれかが夢物語をたたき台として書いたものではないかと思う。ただ気になりましたことは、そういう広域町村圏をつくった場合に、地方自治法上の位置づけは何になるか、検討不十分じゃないかと言われたら、大蔵省は少しほっとしたような顔をしておったけれども、そうでなくて、いま地域住民を定着させることに名案があるでしょうか。通産省のほうでは産業分散の策を講じた。言うまでもなく、生産の三要素のほかに、水も要れば電力も要れば燃料も要る。そういうものがある地域なら工業も自然に発展するのですが、そういうところは自然的条件は限られているから、たとえば国の手をつけている新産都市だって工特地域だって、やはりそれはそれなりに役割りはあるだろうけれども地方自治体地方自治体のそれぞれ地域内の開発計画、振興計画を持っておるわけです。企画庁がやっております全総計画一部、二部の発表はできたけれども、私は、第三部として地方団体が持っておる地域内の開発計画というものも加えていかなければならぬ、そうして根本的な国土全般の均衡ある発展をはかるための計画を早くつくり上げてほしい、それは自治省自治省として意見を述べるのだということを言ってきたが、まだそこまでいっていない。しかし、次の段階で予算要求をだれが大蔵省へしていくことになるか知りませんけれども、私どもとしては、地域住民の定着ということについてはずいぶん意を用いて、真剣にない知恵をしぼってやっておるわけだから、行政的にこういう指導をすることは、私はあくまで非常に意義があることだと考えておる。しかし、まだ十分かたまったものではありません。研究の過程だけれども、しかし、その際には、私どもは強い決意で要求するものはしていきたい。この間の予算要求の中で三億ばかり助かったなんて思ったらとんでもない間違いだと思いますので、そこのところは、大蔵省のほうもいまの門司さんの御質問もそのままほっておけという意味ではないと思うけれども、しかし、ちょっと気になりましたので、自治大臣として、門司先生への答弁にかえて自治省の心境を申し上げさせていただきます。
  226. 吉川久衛

  227. 渡部一郎

    渡部委員 だいぶ時間がおそくなりまして恐縮でございますが、私は、自治大臣も御存じのように兵庫県一区の選出でございまして、有馬の池之坊満月城の火災につきましては、火災が発生して間もなく現場に飛び込んでいきまして、現場を視察してまいりました一人であります。その立場から、最高のとうとい人命というものを守るためにはより適切な手が打たれなければならない、したがって、この問題についてただいまから質疑を試みたいと思うのであります。長時間経過しておりますので、簡にして要を得た御答弁を承りたいと存じます。  第一に、私は、先ほど社会党の尊敬すべき同僚議員が御質疑になりました際に、自治大臣消防庁長官も、なくなられた三十名の人々と傷を受けられました四十数名の人々に対して何らの御発言がございませんでしたが、国会の発言としては異例のことのように存ずるのであります。これらのとうとい犠牲者、むしろとうといというよりも、悲惨な犠牲者に対して、どうその責任を感じられておられるのか、私はまずそれを承りたいと思うのであります。と申しますのは、一切のこういった議論の成り立ちというものが、政治家としてあるいは為政者としてその責務を痛感するところから始まると思うからであります。したがって、一体どんなことをするかという前に、どういう姿勢をもってこの問題に対処するかが大事だと思うのであります。これらの人々は、旅館の主人のそれこそ乱暴な設備に対する節約によって殺されたのか、あるいは消防庁の対策の甘さがこれらの人々を殺したのか、あるいは自治大臣の監督が不十分なためにこれらの人々は犠牲になったのか、それはいまだ議論の途中において明らかにされておりません。しかし、だれもが責任がなかったのではなくて、だれかが責任があり、だれかが何分の一かずつの責任を持っておったのであり、それがこの痛ましい犠牲者を出したのであります。  私が行きましたときに、地元はまだまだ炎々と火を吹いておりました。そして消防の皆さん方はその熱い火の中へ飛び込んで消火活動をやっておられました。私は現場の一線の人々に対して深い敬意を表すると同時に、その悲惨な災害の上に立ちまして、これが政治の貧困というものかと悲しく思いました。そして政治のむなしさを私は思いました。私は焼けあとに立って死骸のにおいをかぎ、そして焼けくずれたトタン屋根の上を歩いて私は思いました。これは一体だれがしたのか、だれが責任を感じなければならないのか、私は、この問題について、先ほどからの質疑においては明らかにせられておらないように思うのであります。私はこれらの人々の冥福を祈り、今後のわれわれの政治行動をきめるためにも、まず関係大臣であられる自治大臣消防庁長官から、今後の施策の具体的方向について御決意の一端を明らかにしていただきたいと思うのであります。
  228. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 まことに悲惨でお気の毒なことでございまして、あの事故が起こりましてから幾たびかいろいろな席に出ましたときに、弔意は十分表しております。  この対策をどうするかということが一番大事なことでございますが、いち早く閣議でもこの問題を報告いたしまして、私も一つの決意を披瀝したわけでございます。これはいままでの消防法上の扱い等につきまして反省を要する点も多々ございます。それからまた、関係の建築基準法では建設省に対する要求もある。それから、夜回りその他従業員の扱いでは労働省に対する要求もあります。また、経営者の人の生命の保全ということに対しては運輸省にもやはりいろいろ御教育願わなければならぬ点もある。こういったこともそれぞれに連絡をとりまして、また消防庁の部内でも関係各省と協議会をつくりまして、自後こういうことが起こらないための措置につきましても、現に検討しております。  それから、だれが起こしたかということにつきましては、いろいろ消防法上、建築基準法上欠陥もありましたけれども、とりあえず火災責任者はだれかということで、いろいろ神戸の消防署を中心検討をいたしました。この刑事責任云々ということにつきましては、まだ検討する段階ではありませんけれども、しかし、きょうも申し上げましたとおりに、経営者を神戸市長らと協議の上、本日告発に踏み切っております。ですから、次第に責任等も明らかになっていくと思います。そういうことを弔意にかえたいと思っておる次第でございます。
  229. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 私も大臣がただいまお述べになりましたお気持ちと全く同じでございます。私ども行政をやってまいります上に人命が一番大事でございまして、いかなる場合におきましても人命の損傷を起こさないようにということを一番重点に考えて仕事をやっていかなければならぬ、かように存じておるわけでございます。
  230. 渡部一郎

    渡部委員 私はただいまのお話を伺いまして、残念ながら、それは弔意にはならぬのではないかと存じます。その第一は、告発をすべきであったのはその以前ではなかったかと思うのであります。なぜかといえば、この池之坊満月城に対するところの数々の査察というのは十五回にわたって行なわれたと申しますが、その十五回の期間の間、次長のお話によれば、話し合いによって何とか行政効果をあげたいというお話でございました。そして十五回の長きにわたってゆっくりとした指導が行なわれております。その結果として、人は三十名が死んでしまいました。話し合いの効果をあげるという名目のもとに人の命を失うということは、私は許されないと存じます。そして告発をもしするのであるならば、告発をもっと早くして、そしてまたもっと強力な行政措置をとることによって、このような危険な旅館が営業を続けていくということに関して適切な処置がとられるべきではなかったかと思うのであります。  この有馬の中には、池之坊満月城と同じように自動消火器がつけられていない旅館があるのを私は存じております。私は長官に伺いたいのでございますが、次長でもけっこうですが、その旅館の名前はどれなんでしょう。そしてそれに対して、やはりお話し合いによって燃えるまで待たれるのでありましょうか。どうしてもこういう問題が明らかにならなければ、人々は安心して有馬の宿には泊まれない。そして、それによってまた災害が起こったら何と言って弁明をなさるおつもりであるか、私は伺いたいと思うのであります。
  231. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 現在、私どもの手元にございます資料におきましては、たいへん残念でございますが、具体的にどこの旅館でどうだということまで持ち合わせておりません。
  232. 渡部一郎

    渡部委員 そうしますと、先ほどから押し問答が続けられておりましたように、この有馬地区査察実施対象旅館ホテルの中に、避難通路がない、誘導灯がない、防火シャッターが有効に作動しない等々があげられているこういう旅館、それからここに書かれておりませんが、非常警報装置のないもの、こういったものがやはりお話し合いによってそのまま続けられるのでしょうか。私は、そんなやり方で、一体これが弔意になるかどうか、伺いたい。
  233. 山本弘

    山本説明員 当該池之坊満月城旅館につきましては、三十五年以来十五回の立ち入り検査、予防査察を実施して、そのつど不備の点について注意を促しております。そのつど指導によりまして何か改善はいたしておったのでございます。  自動火災報知機について申し上げますならば、これは、いわゆる本館の満月城部分とそれから木造部分については、自動火災報知機の設備がございません。四十年に確認申請をいたしました本丸部分につきましては、これはございます。本丸をつくったときに、すなわち四十年に確認申請を出したときに、満月城部分とそれから木造部分の自動火災報知機の設置の法的義務を生じたわけでございます。以後、自動火災報知機の設置について警告をいたしておるのでございます。一番最終的には、七月二十六日におきましてそれまでの査察の結果をまとめまして、そして自動火災報知機の設置について警告という形でこれが是正を命じております。それによりまして、満月城の部分、いわゆる表本館でございますが、この部分につきましては、業者との設計工事書を添えまして設置行為を行なう旨を提出いたしております。それによりまして、十月一ぱいで大体八〇%程度の配線設備を完了して、あと数日をもって完成をするというところまでこぎつけておったのであります。  木造部分につきましては、これはそのときにおきましては設置の計画は出されておらなかったのでございまして、十月三十日には関係者を呼び出しまして、誓約書をとるという状態にまで至っておったのでございます。  はなはだ弁解のような立場になるのでございますが、予防査察すること十五回に及んで漫然と指導しておったということじゃなくて、やはり予防査察ごとに注意を喚起するという積み重ねによって行政指導の強きを加えておったのでございます。その点は御了承願いたいと思うのでございます。
  234. 渡部一郎

    渡部委員 私はそれを伺っているのじゃないのです。あなたがいませっかく申されたことだから、私は話を始めますけれども、人が生きる死ぬの問題ですから、私はこうとげとげしく申し上げておるのであって、申しわけないと思うのですけれども、それはあなたが前にお話しになったときに、十月三十日に最後の視察をなさった。そのときは警報装置が不十分であったために、それはもうだめだとおっしゃった。ところが、こちらのほうを見ると、警報装置があったために――警報装置がこのときに一部着工が行なわれておったというふうなことが書いてある。いかにもみんなを瞞着する言い方であると私は思うのです。  それからまた、私がいま申し上げておるのは、有馬の旅館は自動警報装置がついてない旅館がある。それについてどう警告措置をとられておるのか。また、十五回警告をしておるけれども、まだついておりませんという旅館がほかにもあるじゃございませんか。それを知らないで済んで、また火災が起こったらだれが責任をとるのか、私はそれを申し上げているのです。神戸の消防局に責任をとらせるのか、長官が責任をとられるのか、私はわからないけれども、私には名前まで来ています。それを知らないでは済まない。そんなことではほんとうに反省していることにはならない。また事故が起こったらどうするのかということを私は申し上げたい。それをさっきから伺っている。知らないなら知らないで、どうも申しわけない、さっそく調べて、今後はそれに対する処置をとりますということを言われるのがほんとうじゃないでしょうか。長官、どうでしょうか。
  235. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 先生の御指摘になりましたように、事故が起こりましてから告発等の措置をとっても、これはおそいではないかという御指摘は、まことにそのとおりだと思います。私どもも事前に、今後必要がございますれば、そういうような断固たる措置をとっていくというような方針指導をしていきたい、こういうふうに反省もし、決心もいたしておるわけでございます。  それから、先ほど御質問のございました有馬地区での査察の結果でございますが、私どもは、神戸の消防局長のほうから、概数といたしましてこういうものが何件あったということの報告を受けましたので、それでは具体的に何という旅館かということにつきましては、資料を受け取っていなかったわけでございます。しかし、御指摘のように、今後このような災害が二度と繰り返されないようにいたしますためには、むろん個々の旅館につきまして、それぞれ具体的にこういう施設についてはこういうふうに改善をしろということを指導をし、そのとおり実効のあがるようにやっていかなければならないということは当然のことでございまして、それは神戸の市の消防局の責任としてやるわけでございまするし、私どももそのやり方をよく見まして、指導上なお注意をしなければならぬ点がございますれば注意をいたします。また指導の足らない点がございますれば、その点については十分に反省をしていかなければならぬと思っております。
  236. 渡部一郎

    渡部委員 私はこの火災概要を拝見して、実はこれを見て、ぼくはふざけているんじゃないかと思いました。それはなぜかというと、小川委員が先回の災害対策委員会でみなさんのほうからこれをいただいたようであります。私、見せていただきました。これは、神戸に住んでおるものがこれを見たらみんなあきれかえるようなことが書いてある。第一は、ここに「消防隊の出動状況」というのがあります。この「消防隊の出動状況」というところに灘本署というのがございます。灘本署三時十分に出動となって、三時三十分、二十分間で到着した。これは御存じあるかないか知らないし、小川さんはそのときに神戸の出身でないからわからなかったでしょうけれども、五十分はかかりますよ。これは一体羽がはえて飛んでいったのではないかとみんな言っています。こんないいかげんなことが書いてある。また、ここのところで兵庫本署というのがあります。第三出動に入っている。ぼくは大まかなところだけ申し上げますが、三時十四分に出動となって、着いたのが三時三十九分、二十五分で着いたようになっている。これは一時間以上かかるところですよ。消防庁は消防車にいつの間に羽を着けて飛び上がったかと地元ではいわれているくらい、こんなおかしなデータを出して、消防隊がさもさも稼いだようにみせる。私は、そのこと自体がもうそれこそなくなられた方に対する最大の冒涜じゃないかと思いますが、どうでしょうか。これは一体だれがおつくりになられたのですか。これは私の家の裏ですよ。
  237. 山本弘

    山本説明員 火災発見、火災を覚知いたしましのが三時六分でございまして、直ちに消防車一台が第一出動でございまして、以後第二、第三、第四出動というふうに出動いたしております。その出動の状況、いわゆる出動発令時間並びに現場到着時間を神戸消防局の報告に基づきまして作成をいたした次第でございます。なお、これは夜間の出動でございまして、私も大体旧神戸市内から三十分ないし四十分はかかると聞いておりましたが、夜間の出動でございまして、何と申しますか、普通の車で行った場合よりも若干早くなっておるという点は、そういった事情によるものであるというふうに考えておるのでございます。
  238. 渡部一郎

    渡部委員 若干どころじゃないでしょう。ぼくが申し上げておるのは、一時間が二十五分にならないのですよ。時速四十キロで走るものが八十キロで走れるかというのですよ。消防のあんな大きな屋台なんですから、そんなスピードで走れやせぬと思うのですよ。私が申し上げておるのは、一事が万事、内容がいいかげんだということを申し上げたいのです。こんなのじゃ論議の対象にならない。しかも、ぼくはあなたにこの問題をさらに詰めるつもりはないのです、あなたはだまされただけなのですから。もっと厳重に監督していただきたい。これが私どもの念願なのです。ほんとうをいうと、ここであなた方を締めあげているのではない。あなたは、現地の報告だといって電話を受けたのは三時六分で、現場の有馬出張所の消防が到着したのが一分後に到着したというふうに小川委員に説明されました。小川委員が何メートルあるところだと聞かれましたら、次長さんは三百メートルあるところである、こう言われました。三百メートルあるところを一分間で消防車が行ったら、これは表彰ものであると小川君は言っております。これは私はほんとうにうそもいいかげんにしてもらいたいと言たいくらいです。そんなことはありません。どんなスピードで飛ばしたって、ここは五分かかります。こんな一分間なんて、そういうことを先回の委員会で言われたということは、なくなられた人に対する冒讀だと思う。あなたはとんでもないことを言われた。謝罪なされてしかるべきだと思う。しかも、そのときの消防の配置というものはめちゃくちゃでした。ともかく、あなたは一分間三百メートル走ったというのだけは取り消していただきたいと私は申し上げたい。
  239. 山本弘

    山本説明員 御指摘の出動状況につきまして、実は私も当日三時半ごろに現場に参りまして、混乱しておる消防対策本部の中に入りまして、いろいろ聞きました。そのときどのくらい出したんだという話をしました。そのときに、距離が何百メートル――要するに何キロというのでなしに、何百メートルというところだから、出動すれば一分くらいで行きましたという話を聞いておりました。そういうことを聞きまして、私はそう申し上げたのでございまして、第一出動状況の話を聞きますと、三時六分に覚知をいたしまして、三時十分に到着いたしておるという表になっておるわけでございます。それで、実は金曜日の日に消防局から局長が参りまして、さらにこの点につきまして、お聞きしましたところ、正確には出張所と池之坊との間の距離は九百メートルだそうでございます。したがって、走行距離としては夜間においては一分半くらいでは行けるけれども、到着したのは十分だ、こういうお話でありました。そういう意味では、私の先日の災害委における発言につきましては誤解がありましたので、訂正させていただきます。
  240. 渡部一郎

    渡部委員 それはけっこうですが、今度は消防ポンプがそのときに到着したのは、二十一台ですか、二十二台というふうにここに説明が行なわれております。ところが、そのとき、実際には放水は何本で水をかけられたのですか。
  241. 山本弘

    山本説明員 当初に到着いたしましたところの有馬出張所並びに北神分署は第一出動をいたしまして、これはそれぞれ消火せんによって放水をいたしております。その後、順次出動をしてまいりまして、下に合計がございますが、消防ポンプ車十九台、救急車二台、専任救助隊一台、可搬式ポンプ六台、補給車一台、これはいわゆる消防団のものも入っておるわけでございますが、これだけの数になりました。しかしながら、到着いたしました当初の分につきましては、それぞれ最初に記載してございますけれども、到着いたしました現場では、火災が相当激しくなっているということでございまして、主力は、あくまで残されておりました満月城本館、扇型の部分の延焼防止、救出活動ということに主力を尽くしたわけでございます。したがって、この台数のうち、全部が火災戦闘を行なうような状況ではなかったように聞いております。しかしながら、消防戦闘そのものには格別の支障なく行なわれたものである、かように考えておるのでございます。ただ、何度も申し上げますけれども、火災覚知と通報が非常におそかったというために、結果的には消防隊の出動が、有馬出張所の分を除いては、時間が三十分ないし四十分かかっておるという状況でございました。
  242. 渡部一郎

    渡部委員 私、もう議論するのはやめますけれども、このときには実際にはホースは二本しか水が出ておりませんで、長い間ちょろちょろとしか水がかけられていなかった。三十分たってからかけつけたというのは、非常な手おくれであります。しかし、三十分後にかけつけて、猛然と取りかかりましたならば、まだ何とかなったわけであります。ところが、いろいろな状況のもとに、道路が細かったり、指揮が不完全だったり、いろいろな原因がありましたけれども、実際には水はあまりかけられていなかったというのが実情であります。これはよく御存じのとおりです。私が言うのは、このデータの中にそういったことを全部オミットして、さもさもやったように書くこと自体が、これは正確な報告にはならぬと思います。  私はもう一つ申し上げておきたいと思います。この図面が違っています。ここにあるのは、満月城側が発行した地図です。それで、ここのところにあってこっちに載っていないのは、本館の一階と二階は載っておりません。そればかりじゃなくて、階数が違っているのです。それは正面玄関を中心とする階になっております。これは当満月城側の階数です。また県警本部もこれを使っております。ところが私は、何で階数をわざわざこういう見取り図があるのにそういう正面玄関から書き直したのか、ずいぶん首をひねりまして、やっとわかりました。それは救助綱あるいは救助袋、そういうものを一階には配置する必要がないからです。二階、三階以上あるいは地階は救助袋や救助階段等の設置が必要ですが、一階には必要ではない。そこで、そこのところは、地面に多少ともくっついているところは、全部一階と書いてあります。だから、ただ地図を見て、この建物がどういうかっこうをしているか、だれもわかりはしない。こんなおかしなことは、地元でも言っていない。何でこんなおかしな図をかかなければならないのか、私はこういう姿勢を問題にしているのです。こんなおかしなことをすれば、一体救助綱や救助袋、そういったものが幾つ必要になるかということもわからなくなる。みな一階のようになっている。変なところに一階があります。そこらじゅうに一階があります。この地図を見て、建物が何階かわかる人がいるでしょうか。だから私は、先ほど先輩の方が御質問になりましたので、それ以上この問題について言いませんけれども、この資料にはそこらじゅうにそういうまやかしがあります。私は、それではならないと思うのであります。  私は、質問を進めるために申し上げておきたいのですが、消防法の施行令の中に――もちろん御承知でございましょうけれども、第二十五条の中に、二階建て三階建て、四階建て、五階建てというふうに、避難用ロープ、救助袋、そういったものが百人の間に一個の割合で常備されなければならないということが書かれております。そうしたら、ここの旅館には一体何が何個常備されておったか。これについて、私のほうの調べでは、この旅館にはロープが五本、はしごは二つしかありませんでした。こんなもので逃げ出せるわけがない。十五回にわたって査察が行なわれた。非常に盛大に査察をおやりになったような報告もきておると思いますが、実際の査察は何かというと、ロープをふやすこともできなかった。ロープなんて何ぼのお金でもないはずです。はしごがたった二本、こんなものは逃げ出す足しにはならない。また自動火災報知機、こういったものについては二百万円、三百万円もかかるかもしれない。お金がないといって断わられた事実があるそうでありますけれども、ロープとか救助袋のごときものが何ぼかかるでしょうか。それを視察に十五回も行って、そんなことも向こうに納得させられないというのなら、視察に行ったのではなしに、遊びに行ったとしか考えられない。一体視察に行って一回ごとにどんな効果をあげたのか。そうしてこういう実際的な問題が長官あるいは次長に報告されているかどうか。私がさっきから申し上げているのは、要するに本気でなかったのだ、そこに原因があったのだということを申し上げているわけです。
  243. 山本弘

    山本説明員 実は私のほうで提出いたしました資料のうちの池之坊満月城の略図でございますが、これはこの建物の構造をどう見るかということでございますが、こういった傾斜地へ建てられた建物につきましては、たとえば対岸から見ますと五階に見えましても、それを正面のほうから見ますと、地上三階、地下二階ということになるわけでございます。そういうわけで、この構造をどう把握するかということにつきましては、建設省と目下打ち合わせをいたしまして、その結果、この建物は地下二階、地上三階――この地上三階は一部四階でございますが、そのほか木造建物二階あるいは鉄骨モルタルの地下があるとか、そういうふうにしたわけでございまして、このことをもちまして避難用設備等の器具について、いわゆるよけいに水増しをしたという気持ちで申し上げているわけではございません。この建物の構造をどう見るかという問題なのでございます。  それから次に、池之坊旅館におけるところの避難設備の設置状況でございますが、これは先生御指摘のように、避難器具につきましては十分ではございません。したがいまして、二階以上の分につきまして、政令の基準どおりに設けるように指示をいたしております。避難器具は基準数が十、現在数が八、不足数が二ということになっておりまして、これを設けるように指示をいたしている次第でございます。
  244. 渡部一郎

    渡部委員 私が申し上げたいのは、それじゃこれのまん中が一階であるということを御決定になったのは、それでいいかもしれませんが、そうしたら地下から上にはい上がるために――脱出するのに上から下へ行くだけではない。下から上に行くためにもずいぶんいろいろなものが要るわけです。よけい避難袋や何かがたくさん要るはずだのに、何も用意されていない。私はそれもふしぎであります。また、こういういやなうわさが地元に広がっているので、私は一言伺っておきます。  満月城の経営者が七日に神戸消防局に出した計画では、自動火災報知設備に関する計画書が提出されているが、そのときに、全体で五百万円の経費を要するが、自分のほうでは新しい建物を建てているから二百万円しかない、あと三百万円のほうは待ってもらいたいと神戸消防局に要請した。これはもう要請なんていうこと自体がまがまがしきできごとだと私は思う。人を殺しておいて、かんべんしてくれと初めから警察にかけ合うようなものであるが、こういう具体的な事実があったかなかったか。もしあったらどうするのか、その点を伺いたい。
  245. 山本弘

    山本説明員 十一月七日にそういうことを申し出たということでございますか。
  246. 渡部一郎

    渡部委員 そうです。
  247. 山本弘

    山本説明員 その点につきましては、承知いたしておりません。ただ、かりに話し合い――話し合いと申しますか、何か自動火災報知機の設置について話があったとするならば、その以前、すなわち七月二十六日に警告書を出したときに、いわゆる満月城の本館部分に自動火災報知機を設置するために設計業者の設計書を添えて出しておりますそのときに、消防局側といたしましては、木造の部分も自動火災報告機をつける法的義務があるから、これも一緒に計画をして出すように言っております。そのときに満月城側のほうで、その点については実は新しく裏のほうに十一階あるいは十二階の大きな本館を建築中であるので、金繰りがっき次第計画をして出します、こういうふうに言った事実は聞いております。
  248. 渡部一郎

    渡部委員 そんな事実を受けて、それを承認なさったんですか。
  249. 山本弘

    山本説明員 その点につきましては、先刻申しましたように、十月三十日には木造部分についても自動火災報知機をつけるように誓約書をとろうというところまで決心を固めておったところでございます。
  250. 渡部一郎

    渡部委員 私は、そういう人命に関するような問題について、それを値切ろうとするような行き方というのは、人の生命を値切る行き方だと思うのですけれども、まことにもってけしからぬできごとだと思うのですが、長官どうでしょうか。
  251. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 仰せのとおりに存じます。
  252. 渡部一郎

    渡部委員 これについては、しかるべき措置をお願いしたいと私は思います。  それで私は、次に満月城の査察についてでございますが、これは神戸市消防局の本局が担当されたのか、兵庫本署が担当されたのか、有馬の出張所が担当されたのか。十五回も実効があがらなかった理由は、有馬の出張所というものが実質的には地元団員を含むために、業者側と密着したために実効のあがるところの査察というのができなかったのではないか、こう考えるのでございますが、これについて教えていただきたいと存じます。
  253. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 春、秋と時期を定めまして一斉に査察をいたしておりますような場合におきましては、それは本局のほうが応援いたしまして実施をしておるようであります。しかし、平素の査察につきましては、分署のほうが担当をしております。
  254. 渡部一郎

    渡部委員 十五回のうちに何回分署が担当されたか。そのほかのことはおわかりになりませんでしょうか。
  255. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 ただいま判然と承知いたしておりません。
  256. 渡部一郎

    渡部委員 私は、こういうような人間の生命に関する問題でありますから、こういうような場合においては、分署等で、たとえば有馬分署のような各分署において何回指導しても言うことを聞かないような問題については、行政指導において本局が担当してこれを直接査察をし、直接こういう問題に手を入れるべきであるのが長官のお立場だろうと思うのですが、いかがでございましょうか。
  257. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 私もその点同感に存じます。
  258. 渡部一郎

    渡部委員 今度は神戸で市長さんの了解を得られて、実際には向こうで旅館の主人に対して告発をなさるということでありますが、私はこの問題について、消防の指示に従わない建築物、業者に対して、これを告訴し、罰金刑五万円あるいは懲役六カ月以下に処することができる、こう消防法の四十二条においてはなっているようであります。私はここでまた妙なことにぶつかるのでありますが、この旅館の今度の火災保険の保険金等は、数億円にのぼるものであります。またこの旅館にとっては、二百万、三百万円のお金の調達は容易であります。これを告訴し、罰金刑五万円に処したりするということは、いまの時点で一体いかなる意味があるのか。これは五万円のごときはたちまち支払うことができるとさきに議員が指摘されましたけれども、これは一体いまごろ何でこんな告訴なんかをなさるのか。死んだ子の年を数えるということばが日本にはありますけれども、どういう意味があるのか。この法令の消防法第四十二条の改正を考えるならともかくとして、これでは簡単な罰金刑、こんなものに処しただけで、三十数人の命を奪ったということが帳消しにできるのか、私は深い疑問を抱くわけでありますが、いかがでありましょうか。
  259. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 私は三十数名の犠牲になられました方の帳消しができるなんということは、毛頭思っておりません。現行法のもとにおいてなし得る処置を消防としてとったということでございます。  なお四十二条の罰金ということでございますが、これにつきましては六カ月以下の懲役もあるわけでございまして、これは量刑がどうなるということは今後の問題でございまするけれども、現行法のもとにおいて消防としてとり得る最高の措置として、告発ということに踏み切ったものでございます。なお、この条文の改正云々ということにつきましては、これは将来の問題として私ども検討してまいりたいと思います。
  260. 渡部一郎

    渡部委員 私は、ここまで相当きびしいことばで消防庁の長官及び次長に対して申し上げましたけれども、私のまことに不本意とするところでございますが、これほどの士気の厳正を欠いた組織、また報告のでたらめ、また指導の不適切というのが重なれば、災害が食いとまらないのも当然ではないかと私は思うのであります。私が先ほどから申し上げておるのは、かかる意味で死者の霊の前に消防庁の幹部は厳重な反省とざんげをもってこれに対応せられなければ、このような災害というものは、いかに法律を変えようとも、再び起こる可能性がある。また有馬だけを考えてみても、先ほど申し上げましたように、満月城と同じものがあと五軒もある。神戸の旅館だけが悪いわけではなくて、全国に行ったら、それこそ数では勘定ができないほど多数の旅館が、このような規制からはずれたものが存在すると思われるわけであります。これについて十分な調査をなさり、かつはそれに対して対策をお立てになる、消防庁全指揮下の消防官に対して厳格なる、厳正なる監督と指導というのが、必要なんではなかろうかと私は考えるわけであります。その点について、長官にもう一言お願いしたいと思います。
  261. 佐久間彊

    ○佐久間説明員 ただいま先生の申されました気持ちを私どもも持って、この善後措置に当たりたいと思っておるわけでございます。もちろん有馬だけに限らず、全国の温泉、観光地におきまする旅館、ホテルにつきまして、消防法上の規定が励行されてないという事実があることは、事実だと思います。そこで、従来からその点につきましては、特に旅館、ホテルに重点を置きまして、火災予防運動の機会を利用いたしまして、厳重な査察をし、それらの欠陥を補正するように指導してまいっておるわけでございますが、今回の事件の教訓を十分生かしてまいりたい。いままでのような指導のやり方では効果があがらぬじゃないかというようなことで、何かもっと実効のあがるような指導方法を私どもとしても検討しなければならない、かような心組みですでに検討を始めておるわけでございます。さしあたって先般全国に通達をいたしまして、一つは、従来のような査察による勧告をやりっぱなしではなくて、実効があがらない場合については、消防法の規定する使用停止の措置なり、あるいは必要によっては告発なり、そうした断固たる措置をとることもちゅうちょすべきではないということを申したのであります。それから秋の火災予防週間が近く始まりますので、この機会を一つの契機といたしまして、温泉観光地におきましては、旅館、ホテルにつきまして査察の実施計画を立てて、こういうような要領でやれということを申しました。従来は査察をやれということだけ申しておりましたが、それだけでは徹底しない点がございますので、こちらで査察の具体的な様式を示しまして、そしてそれを行なわせ、その結果をこちらに報告をさせるというようなやり方に改めることにいたしたのであります。ただ、それにいたしましても、なお実効を期するに十分でない点がございますので、それらにつきましても、私どもだけでは徹底しない。やはり建築関係も一緒に連絡をとってやらなきゃならぬ、あるいは運輸省、厚生省等関係省庁とも協力してやらなきゃいかぬというような点が多いものでございますので、先刻細谷委員の御質問にお答えいたしました際に申しましたように、関係省庁の連絡協議会を設けまして、そこでこうした問題について各省庁の御協力もいただいて検討をし、従来と違った実効のあがる方法を案出し、ひとつ実行に移していくようにしたい、こういう心持ちでおるわけでございます。
  262. 渡部一郎

    渡部委員 私は、いまお話しになりましたことがほとんど実行できないんじゃないかという疑いがたくさんございます。それはなぜかというと、財政的な基礎とか、それから政府監督官庁におけるところの実効ある機関の存在がないことであります。したがって、単なる精神論に終わるんじゃないかというおそれがあります。  私は、今度は建築のほうの問題に少し移りたいと存じます。建設省関係の問題でございまするが、建築基準法によりますと、施工主が行政官庁に確認申請を出し、確認した場合は行政官庁が検査済み証を発行し、それがない場合には使用させてはならない。病院とか、劇場、映画館、百貨店、旅館、公衆浴場、そういったようなものについてでございます。そうして防火構造、避難口については定期的に報告をさせるということになっているそうでありますけれども、池之坊満月城というのは、実際にはこの報告が行なわれていなかった。また、神戸市においては施行細則で旅館を特にこの項から省いておったということが明らかになったそうでありますが、これについて建設省の御見解を賜わりたい。
  263. 前川喜寛

    ○前川説明員 御質問の点で、最初のところの旅館その他のもので確認申請をしまして、あとで検査を受けなくては使ってはいけないという点につきまして、神戸市が検査をしてないで旅館が使っていたという点は、御指摘のとおりでございます。  それから次の、こういう特殊な建築物につきまして、定期的に建築士なり何なりに検査をしてもらって報告しろというふうな規定がございますが、それは実際上いろいろその地方の特殊事情その他がございまして、市のほうで指定した場合というふうになっております。その辺は、いろいろな事情から能力、行政のいろいろなことがございますので、ある程度まで市にまかせておるという形を法的にはとっているわけでございます。それで、われわれ建設省といたしましては、できるだけこのあがっております百貨店とか旅館とか病院はやるべきだというふうにしております。それを先ほどからもいろいろ出ておりますことで、ある意味ではこちらの手ぬるさといいますか、そういったことがございますので、ある程度まで自治体にまかせていたという点がございます。それで今回の災害の際にかんがみまして、できるだけはっきりこういった旅館とかを定期的にやるというふうな体制をとりたいというふうに考えております。
  264. 渡部一郎

    渡部委員 私は、そういうようななまぬるい言い方がこれだけの人を殺した一つの原因だと思う。ということは、これは増築に次ぐ増築で細長い迷路のような建物がつくられまして、焼けた満月城三階の天主閣本丸十八室の部分は、三十九年八月建築確認申請が出されたまま、でき上がったという完工届けは出されていなかったし、渡り廊下は全部無届けだった。そうして焼けた建物が一体申請どおりの構造になっていたかどうかということが、三年間放置されている。こんなことでは、もうそれこそ話にも何にもならないのではないかと私は思うのであります。これは行政当局の弛緩なんです。さらに、神戸市側にいろいろ事情があるからというような言い方をなさるのは、とんでもない間違いではないか。私は、もうそれこそ今度の件は消防よりもむしろ建設省の人殺しだと思う。神戸市においてだけの話でありますが、建築の確認申請が四十二年度に二千二百三十一件、検査済み証が発行されたのは六百四十一件で、全体の三分の二が野放しにされており、三分の一しか調べておらない。これで火事が起こったらどうするのか。また、神戸市と建設省との間でも、それは一体どっちの責任か、おれのほうは関係がないとか、向こうも事情があるんだとか、そんなことを言わなければならぬ。この問題に関して、これほどの問題が起こったのだから、むしろ直接市当局と建設省が積極的な前進的な意味で話し合いをすることが大事ではないか。そうでなかったなら、こんな災害は食いとまらないんですよ。このような無神経が人を殺したということに対して、私はほんとうに怒りを覚える。これに対して、そういう点をどうなさるか、御返事を賜わりたい。
  265. 前川喜寛

    ○前川説明員 私の御説明のしかたが悪かったかと思いますが、先ほどの検査を受けないで使っていたという点は仰せのとおりであります。  それから、まかせてあったという点は、定期的に建築士等の検査を受けて報告しろというふうな義務づけを旅館業者とかそういったものにすることは、自治体にまかせてあったという意味でございます。  また、特にいま御指摘になりました次から次へと増築が行なわれていたが、それを知らずに検査していなかったという点は怠慢であるとおっしゃる点も、確かにわれわれも同感でございます。これは神戸市だけということよりも、建設省自身もこういった点に対する積極的な指導監督を行なっていなかったという点についても、非常に反省するわけでございます。そういった点につきましては、先ほど消防庁からもいろいろお答えがございましたが、われわれも同様な気持ちでおるわけでございます。  なお、実は必ずしもこれだけに限らず、建築基準法は、御存じのようにいろいろな事情から相当違反が多いという点で、ある意味ではいわばざる法だというふうな一般の非難が出ているわけでございます。これにつきましても、できるだけ建築基準法を実際にどういうふうに守ってもらうか、また守らせ得るかという点につきましても、鋭意検討しておりまして、建築基準法全体の体制を立て直したいということで、その改正という点も検討して、近く成案を得る見込みでございます。
  266. 渡部一郎

    渡部委員 その問題はそれまでにいたしまして、今後の十分な御検討対策を必ずお願いしたいと存じます。また、自治大臣にも、関係各省庁の連絡会議をおやりになるようでありますが、その際にぜひ話題にしていただいて、しっかりやっていただきたいと思います。  それから道路でございますが、建築基準法四十二条に幅員四メートルというような規定がございますが、これはいろいろな建物が現実に先に建っている地域については、ずいぶん小さい道路でも認めるような現実的処置がとられているようであります。実際問題からして、今回の有馬におきましては、道路の幅が非常に狭かった。これは新聞の報道でありますが、有馬温泉街には六キロの車道が坂道になっているが、消防車が通れる幅三メートル以上の道路は三キロで、残りは二メートル以下の急坂車道となっている。このような狭い道路になっております。事実上は消防車が入れない。またポンプ車なんというような大型のものになると、全然入れない。こういうような道路行政全般の立ちおくれというものが、その地域全体の力というか、その地域全体の効用というものを失うに至らしめた。今回の満月城の時点においては、ポンプ車は下から全然上がれない。消防車は何とかもぐり込んで入ってきたけれども、一列縦隊に並んだだけである。この道路について、こういう状態ではいけないから何とかしなければならないという方策が、建設省においては監督官庁としてそれが行なわれたかどうか。また、行なわれないとしたら、こういうような災害多発を予測されるような地域が、その他にも多数ございます。たとえば兵庫県の川西市なんというものは、火が上がったら一ぺんに三百世帯、五百世帯が燃えるような形になっております。消防ポンプは全然入れない大密集集団ができております。これに対して監督官庁はどうしていらっしゃるのか、私は緊急の具体的措置をお願いしたい。どうですか。
  267. 前川喜寛

    ○前川説明員 いまの御質問の件でございますが、建築基準法の範囲も一部ございますが、主として都市全般の問題のほうが大きいかと思います。建築基準法のところからまず申し上げますと、いま御指摘になりましたように、既成の市街地のようなところでは、中心をある程度振り分けて、そして家の建築を認めるというふうな形がございます。これには、現実消防自動車が走れないというふうな道路もございます。今回の池之坊のところは、これ自身は前面が多少あいておりまして、基準法の違反という形は起こっておりません。一般的にそういった狭い道路が相当あるというふうなことでございます。ただ、これを広くすれば非常に望ましいのでございますが、実際問題として、広くないと家がつくれないということになりますと、また現実に今度家を建てる人たち自身の相当大きな負担になってくるというふうなこと、その辺をいわばどういう形で調節をとるかということが、現在の建築基準法のところの、いわば既存の道路の中心振り分けというふうな程度の規定になっております。これが、いわば規制でやっております、こういうところでは家をつくってはいけないという条件とします一つの限度かとも思います。特に大きな市街地とかたとえば漁師町なんかにも、相当の面積で道路のちゃんとしたものがないというふうなものになってまいりますと、やはりそこに何か計画的ないわば消火用の道路とかいうものをある意味で事業的に考えていかないと、ちょっとできないのじゃないか、こういうふうに考えております。いわば都市計画全体の問題まで響いてくるのではないかと思います。
  268. 渡部一郎

    渡部委員 私は、これは実際具体的にやっていただきたいと申し上げたので、今後早急な措置をつくってください。  それから、先ほど細谷議員から非常に適切な指摘がございましたが、排煙設備について――煙によって中の人々がまかれて死んでしまったという事実がございます。ところが、煙感知器のようなものを設備したいということは、消防庁側ではおっしゃっておられました。新建材、内装に使う材料の問題については、これは規制しなければならない。その規制については、消防庁側としては建設省の判断をまちたいと先ほどおっしゃいました。しからば、建設省では新建材に対する規制というものは、一体いつになったらお出しになるのか。これが三年なり五年かかるのだったら、また人が死ぬ。それこそ早急な返事を賜わらなければどうしようもない。ここで御無理かもしれませんけれども、次回委員会等において明らかにしてもけっこうでありますが、新建材等の内装材料についてはこういうようなものであるべきだという規制に関する原案を、消防庁あるいは自治省と御相談の上、ここへ早急に御提出になるべきじゃないか、こう思うわけであります。したがって、そのお約束だけ御返事を賜わりたい。
  269. 前川喜寛

    ○前川説明員 新建材の規制の問題でございますが、これは実は問題としては二種類ございまして、一つはどういう場所とか、そういったところにそういった煙をたくさん出す材料を使っていけないという規制をするかということと、その前にどういう種類の材料がどの程度煙を出すからいけないのだというふうな、いわば材料の区分の問題とがございます。そこで、実はこの煙の問題非常に複雑でございまして、最近非常に力を入れて研究を進めておりまして、大体骨格は見当がついてまいりました。まだ多少細目的に研究を詰めなくちゃいけない部分がございます。ちょっとまだ全貌をお出しするわけにはいかぬのじゃないかと思います。ただ、先ほどちょっと触れましたように、煙の問題非常に問題でございますので、できるだけ建築基準法の改正とかいう機会にやっていきたいというふうなことで、いわば最重点でやっております。ある意味で大体一年見当の間にはできるのじゃないか、こういうふうに考えております。ただ、非常にいまのようにいろいろ問題がございます。それから従来の思想で、ある程度の見当がついてまいりました。この点は現行法内でもやれる部分は今回政令でやるという形で、たまたま今度の池之坊の事件の前から煮詰めていたわけでございます。旅館、ホテルは、従来はいわば鉄筋のような耐火建築物では、こういった室内の仕上げの制限がなかったわけでございます。これを制限をするというたてまえで、この政令も実は法制局審議の段階へ入っているので、これは近く公布できるのじゃないか、こういうふうに考えております。
  270. 渡部一郎

    渡部委員 ただいまのお話を聞いておりまして、政令のほうは早く出るといたしましても、一年もかからなければこの問題が解決しないというのは、それはとんでもないことじゃないか。先ほど消防庁のほうでいろいろ熱心なことをおっしゃいましたけれども、こういう点に問題があるのだと思うのであります。自治大臣、こういう問題については、関係閣僚の会合の際にぜひ強力に推進していただきたいと私は思います。  それから、時間がもうだいぶたっておりますので、私はあと二、三の点について伺いたいと思います。一つは保険の問題であります。現地におきましては、この池之坊満月城が多額の火災保険、損害保険等をかけておりまして、そのために焼けた建物というものは、そのままその火災保険で再建ができるといわれております。またそれによって焼け太りではないとしても、池之坊満月城としては全然こたえない、そういううわさが立っております。また、このなくなられた人々に対する賠償については、賠償責任保険がかかっているそうでありますが、一体この二百万円のお金を節約して人を殺したような会社であるならば、実際には正確に払わないでおいて、自分らの商売のほうに充当するのではないかといううわさも呼んでおりまして、被害者の遺族にさらに大きな不安を与えているようであります。したがいまして、損害保険、火災保険等の総額は、満月城の場合には一体幾らかかっておったのか、また賠償責任保険のごときものは一体幾らぐらいかかっており、幾らくらい支給さるべきものであるか。また、正確に被害者の遺族に対してこれが支給されるものであるかどうか、簡単でけっこうでありますから、保険部長さんにお願いしたいと存じます。
  271. 新保實生

    ○新保説明員 池之坊満月城の保険の契約状況でございますが、建物に関しましては四口、四件ほどありまして、それの保険金額の合計は二億五千八百万円でございます。契約先の保険会社は同和火災、安田火災、興亜火災、こういうふうになっております。それから従業員の家財につきまして、普通家財保険がかかっております。これが二百万円でございます。日動火災が契約先になっております。  それから賠償責任保険でございますが、これは交通公社の協定旅館連盟契約、そういう形式で、対人賠償は一事故最高一億六千万円、これが契約されております。契約先は東京海上ほか十六社でございます。仰せのとおり、対人賠償保険につきましては、これは被害者の賠償に充当さるべきものだ、当然そういうふうにさるべきものだと考えております。
  272. 渡部一郎

    渡部委員 そうしますと、この旅館の賠償責任保険のほうから、負傷者も含めて申しますならば、一人約二百万円、死者だけに関して申しますならば一人当たり約五百万円見当の金額が、この賠償責任保険だけでも出てくる。そのほかに、この旅館と被害者との間の交渉によって幾らかの賠償が望まれる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  273. 新保實生

    ○新保説明員 この賠償保険に関しましては、賠償責任の額は、法令なりあるいは約款に従いまして加害者、被害者間において話し合いで、示談できまるわけでございます。一人当たり幾らになる かということにつきましては、いまの段階でははっきり申し上げられませんけれども、一事故につきまして最高一億六千万円という契約でございますから、それは被害者の賠償に充てらるべきものである、こういうふうに思います。
  274. 渡部一郎

    渡部委員 そうしますと、この会社は、やはり当初予想されておりましたとおり、ほとんど同じようなホテルが新築で建ち上がることになります。私は、この新しく建ち上がったホテルが、同じようなやり方でまた人を殺すためのおりにならないようにしてもらわなければならない。それが私たちこの問題を扱う者たちの責任のように思うのであります。  ただ、私は、旅館業者ばかりに責任を負わせようというのではないのであります。というのは、現在国際観光ホテル整備法によって、国際観光ホテルのほうに関してはかなり政治的にいろいろな配慮が行なわれ、融資措置等が行なわれておりまして、そうしてそのために火災事故等についてほとんどない。事故があるのは全部一般の旅館業である、こういうふうに伺っておるのでありますが、これについてどの程度の優遇措置が行なわれておるのかということに関して、観光部長さんに伺いたいと存じます。
  275. 蜂須賀国雄

    ○蜂須賀説明員 御承知のように、国際観光ホテル整備法は、国際観光旅客の接遇の向上を目的としてつくられたものであります。したがいまして、これは登録制をとっておりますが、外人が宿泊できるような施設にするようになっております。御指摘のような優遇措置でございますが、登録ホテルにつきまして、登録ホテルの業の用に供する建物に対しまして、地方税の不均一課税が適用になっております。いま一つは、固定資産の耐用年数が短縮されております。なお、国際観光ルートにあるものにつきまして、あるいは地方開発というような面から、開銀融資等が行なわれております。
  276. 渡部一郎

    渡部委員 私は、いまのお話でわかりましたように、国際観光ホテルに関しては非常な優遇措置が運輸省の指揮のもとに行なわれておりますように、一般の旅館業に対しても金融措置その他というものが十分行なわれてしかるべきものだと存ずるのであります。  以上、私の質問は、細目にわたる分はこれで終わりとしたいと思うのであります。私がいまここで積み上げてまいったことは、要するにこの事故に関してすべてが責任があったということであります。行政官庁がもっとしっかりしておったら、現行法規でも何とかなったのではないか。失礼ながら消防庁においても、自治省においても、あるいは建設省においても、このとうとい犠牲に対して深いざんげをもって、今後具体的な処置をもって、このような悲惨な災害の二度と起こらないような処置をされんことを望むものであります。  最後に臨みまして、自治大臣から一言、決意とそうして今後の方針について言っていただきたいと存じます。
  277. 相沢英之

    ○相沢国務大臣 まことに悲惨な事故でございましたので、こういうことを繰り返さないためにも、今回の教訓をよく生かして、ただいま申しました協議会にも具体的ないろんな指示をいたしたいと考えております。いま先生のなかなか行き届いたいろんな御質問がございましたが、そういうものもぜひ生かしたいと考えております。なお、法律改正を要する面もありますので、次の国会にはその準備をいたしたい、かように考えます。
  278. 吉川久衛

    吉川委員長 大臣にちょっと申し上げておきますが、細谷君、渡部君、両議員からの質疑を聞いていて私どもも実は驚いたわけですが、各省庁に関連をしているようなものはとかくその責任の所在が明らかでなくなって、それで質疑の中にあったような、何かたるんだ、ルーズな扱いになっておるということをおそれますので、自治大臣がイニシアチブをとられて、関係省庁にひとつ強く再びこのようなことのないようにみなに呼びかけて、御指導願いたいものだと思います。  それから建設省の前川課長、こういうときには住宅局長を連れていらっしゃい。まだかわったばかりで事情がわからないでしょうけれども、よく聞いてもらっておく必要があるのです。これから気をつけてください。  大臣のお答えをお願いします。
  279. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 委員長にお答えします。  ただいま法律改正を要する面もあると申しましたのは、自治体消防ですから、査察するといっても、権限市町村にしかないのです、ここで消防庁の長官あるいは私たちがとやかく言われましても。ですから、そういう点については私たちの反省もあるので、法律改正をして、やっぱり責任関係を中央にもつなぎたい、こういうことを言っておるわけなんです。ですから、そういう点も含めて十分将来に向かって改めるところは改めていきたい、かように考えておりますので、御了承を願います。
  280. 吉川久衛

    吉川委員長 次回は、明十二日午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十九分散会