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1968-08-09 第59回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年八月九日(金曜日)    午後一時二十二分開議  出席委員   委員長 堂森 芳夫君    理事 鹿野 彦吉君 理事 神田  博君    理事 田中 六助君 理事 野田 武夫君    理事 岡田 利春君 理事 多賀谷真稔君    理事 池田 禎治君       佐々木秀世君    石野 久男君       八木  昇君    渡辺 惣蔵君       田畑 金光君    大橋 敏雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  椎名悦三郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       藤井 勝志君  委員外出席者         通商産業省鉱山         石炭局長    中川理一郎君         通商産業省鉱山         石炭局石炭部長 長橋  尚君         通商産業省鉱山         保安局長    西家 正起君         参  考  人         (日本石炭協会         会長)     大槻 文平君         参  考  人         (日本石炭鉱業         連合会顧問)  植田  勲君         参  考  人         (日本炭鉱労働         組合中央執行委         員長)     山本 忠義君         参  考  人         (全国石炭鉱業         労働組合中央執         行委員)    平川久米蔵君         参  考  人         (全国炭鉱職員         労働組合協議会         副議長)    遠藤 一三君     ───────────── 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  石炭対策に関する件(石炭鉱山保安問題)  石炭鉱山保安確保に関する件      ────◇─────
  2. 堂森芳夫

    堂森委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件につい調査を進めます。  本日は石炭鉱山保安問題について意見をお述べいただくため、参考人として、日本石炭協会会長大槻文平君、日本石炭鉱業連合会顧問植田勲君、日本炭鉱労働組合中央執行委員長山本忠義君、全国石炭鉱業労働組合中央執行委員平川久米蔵君、全国炭鉱職員労働組合協議会議長遠藤一三君の御出席をいただいております。  この際、一言ごあいあつを申し上げます。  本日は御多用中にもかかわらず、本委員会に御出席を賜わり、まことにありがとうございます。  御承知のごとく、石炭鉱山における保安問題は、事人命にかかわるきわめて重大な問題でございますので、参考人各位におかれましてはそれぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  それでは大槻参考人からお願いいたします。
  3. 大槻文平

    大槻参考人 私は日本石炭協会会長大槻でございます。  石炭対策に関しましては、日ごろから格別の御配慮をいただきまして、まことに感謝にたえない次第でございますが、本日はまた鉱山保安確保について意見を申し述べる機会を与えていただきまして、厚く御礼を申し上げます。  石炭鉱業が御承知のように総くずれの危機に直面しておりますとき、特に本年に入りましてから数次にわたりまして重大災害を起こしまして、多数のとうとい人命を失いましたことにつきましては、深く責任を感じておる次第でございます。去る六月二十五日、鉱山保安局長から、私ども大手系列炭鉱を主とする保安確保に関しまして御注意がありましたので、それぞれ万全を期すべく努力をいたしておったのでありますが、たまたま七月三十日になりまして、北海道北炭平和炭鉱におきます災害が起こりまして、貴委員会からもわざわざ調査団を御派遣くださるというようなことをしていただきまして、御迷惑をおかけ申しまして、申しわけない次第でございます。これに関しましては、去る六日に椎名通産大臣からも保安確保に万全を期するように強い警告をいただきました。私どもといたしましては、翌七日に評議員会――これは各社社長会議でございますが、評議員会を開催いたしまして、警告の趣旨を各社に伝えると同時に、この際、保安に対する総点検、また従来にも増して万全を期するようにということを話をしたわけでございます。  私ども業界といたしましても、人命尊重の観点から、保安確保につきましては、従来とも万全を期しておるつもりでございまして、四十年以来実施してまいりました保安検討班による各炭鉱の巡回は、かなりの成果をあげておるものと考えております。ことに去る五月十五日当委員会におきまして石炭鉱山保安確保に関する決議がなされました際には、保安確保全力を尽くすことを私どもは申し合わせをいたしますと同時に、政府鉱業労働災害防止基本計画に呼応いたしまして、災害減少運動実施することを決定し、すでに七月から運動を展開いたしておったのであります。また、労使協力しまして無災害報告運動等をも各所推進いたしておるようなわけでございます。  御承知のように、保安確保対策は、設備近代化保安管理保安教育強化、この二つに大別されると思います。  第一の設備近代化につきましては、生産保安は一体のものでありますので、掘進、採炭機械化水圧鉄柱の導入、ガス抜き実施等を進めてきておりますが、これを直接的な保安施設の面だけを取り上げてみましても、年々多額費用を投じて強化につとめておるのであります。しかし企業の力だけでは不十分な点もありますので、施策の上でもより一そうの強化拡充をお願いしたいと存じております。  これをやや具体的に申し上げますと、まず第一に、現在同じ対策でありましても、大手炭鉱に対しては融資中小炭鉱に対しては補助というふうに区別されておるものもございます。これらはすべて補助に切りかえていただきたいと思う次第であります。たとえば自動警報器とかあるいは炭車逸走防止器とか、こういうものは現在は大手につきましては融資でございますけれども、これは補助金というふうに切りかえていただければ非常にしあわせであると存ずる次第であります。また、COマスク自己救命器でございますが、これなどは融資もないのでございます。これは昨年の予算で、聞くところによりますと、大蔵省で落とされたということを聞いておりまして、私どもとしましては非常に残念に存じておる次第でございますが、ぜひともひとつこの自己救命器につきましては補助金というものを出していただきたいと存ずる次第でございます。  このほか、たとえば大型化学消火設備とか、あるいは難燃性のコンベアベルトというようなものにつきましても、なるべく補助ないしは融資をしていただきますならば、強化に非常に役立つと存ずる次第でございます。  また、保安設備に伴う技術面作業、たとえばガス抜きボーリング作業といったような範囲まで助成対象にしていただければ、これまた非常にいいのではないかと存ずる次第であります。  現在、御承知のように坑道進費補助というものが交付されております。しかし炭鉱坑道というものは、でき上がったときには規格に当てはまっておりましても、やはり山押しがあり、荷がかかってくるというようなことによりまして、ある時点をつかまえると、相当法規違反のような坑道になっているような場合が非常に多いのであります。で、この追い切りと申しますか、坑道維持、仕繰りに要する費用補助金というものをやはり出していただきまして、そして坑道の万全を期するようにいたしたいというふうに思う次第であります。  実例を申し上げますと、自分のところを申しましてはなはだなんでございますが、北海道の私どもの大夕張炭鉱におきましては、やはりこの坑道維持費というものが、トン当たりにしまして七百円ぐらいかかっております。これは原料炭炭鉱であり、また自然条件もかなりむずかしいところでありますので、そういう多額費用を要するわけでございますが、おしなべて大体三百円見当の坑道維持費というものが必要ではないかというふうに思われますので、この点もひとつお含みの上、補助金対象にしていただきたいものであるというふうにお願い申し上げる次第であります。  第二の保安管理保安教育強化につきましては、業界といたしましても、特に保安教育救護訓練につとめてはおりますけれども、今回関係業界政府補助のもとに設立しました保安センター設備が、本年末までには北海道、九州、常磐の三地区とも完成いたしますので、この保安センターの有効な運営をはかることによりまして教育訓練徹底を期したいというふうに考えております。つきましては保安センター運営面におきましても助成強化をお願いしたいと考える次第でございます。  以上、要望を申し述べまして、私の意見として第一回を終わります。
  4. 堂森芳夫

  5. 植田勲

    植田参考人 私は、石炭連合会顧問をやっています植田でございます。本日保安問題に関しまして意見を述べる機会を与えられましたことはまことに感謝にたえません。  私たちのほうは中小炭鉱の集まりでございまして、御存じのとおり一社一山経営のものが非常に多いのでございます。鉱主鉱山長とも保安問題は最重点に考えているのであります。不幸にして一度大きな災害発生しましたならば直ちに閉山ということにつながるものでございますから、大きな災害があるたびに通産大臣から警告を受けておりますが、われわれは警告のあるなしにかかわらず常日ごろから保安確保全力を尽くしているものであります。  災害絶滅対策としましては、私は経営者従業員ともども保安確保に万全の対策をとることであると考えます。すなわち鉱主鉱山長あるいは保安責任者、こういう方々が従業員に対して常に保安教育徹底を期することが絶対必要であります。従業員の一人が不注意のために多くの従業員を死傷に追いやるというような、人災とも考える事故もあるのでございますが、従業員一人一人に人命のたっとぶべきことをよく認識せしめ、すなわち友を愛する友愛の精神を植えつけることが最も必要と思うのであります。人災というのは人間注意とか訓練とか努力によりまして絶滅し得るものと思うからでございます。また、天災という不幸な災害もございます。あるいは地震による落盤とか山はねとかその他人間の知恵ではどうにもならない不測な災害もあろうかと思います。不幸にしてさような災害が起こったならば、その対策について早急に万全を期してその復旧に当たり、早急に考えをまとめて対策をやる、こういうことが必要であろうと思います。それには常々係員従業員ともども保安教育というのが絶対必要なものでございます。  それから、これは第三の点になりますが、とにかく石炭山に明るい環境をかもし出すことが必要と思うのであります。それには、現在程度石炭は絶対必要であるということを明らかにしまして、石炭政策によって石炭産業安定産業に持っていく、こういう対策が必要だろうと思うのであります。  ごくあらましのことでございますが、以上でございます。
  6. 堂森芳夫

    堂森委員長 次に、山本参考人に願います。
  7. 山本忠義

    山本参考人 炭労委員長山本でございます。  諸先生方には日ごろから石炭問題につきまして格段の御配慮をいただいていることについて感謝を申し上げている次第でございます。本日はまた私どもの重大な関心を持っておりまする保安問題について所信を述べさせていただく機会を与えていただきましたことについて厚くお礼を申し上げたいと思います。  御承知のことと思いますが、政府鉱業災害防止計画を作成し、本年度は人命尊重を第一義として重大災害防止頻発災害減少をはかる方針であることを明示しました。  しかるに最近における炭鉱災害はますます多発傾向にあり、連日百数十件の災害が頻発しています。そればかりでなく、本年一月以降今日まで美唄、大夕張、滝口各炭鉱ガス爆発、太平洋、明治佐賀雄別夕張三池、各炭鉱の大崩落、新田川炭鉱ガス突出、そして美唄に引き続き今次北炭平和炭鉱坑内火災と十一件に及ぶ重大災害が頻発して、この災害によりましてすでに百六十六名の炭鉱で働いている者のとうとい命が失われ、いまだに二十二名の生命が絶望のふちに追い込まれている実情でございます。  このようになぜ炭鉱保安体制は崩壊しているのでしょうか。炭鉱災害根本原因はどこにあるのでしょうか。この点についてメスを入れてみたいと思います。  御承知のとおり、政府はこの十年来、重油など盆畳目エネルギーに対する石炭経済性の回復ということを理由に、非能率炭鉱のスクラッップと高能率炭鉱のビルドアップを基本とする石炭政策をとってまいりました。この政策推進は、炭鉱労働者にとっては首切り、労働強化労働条件切り下げ以外の何ものでもなかったのであります。  すなわち、昭和三十一年当時八百四十三を数えていた炭鉱は、本年五月末にはわずか百五十六鉱にすぎません。これと並行して、炭鉱労働者は二十九万七千人から本年五月末で八万六千三百人と三分の一以下に減少をしております。このようなスクラップ化と並行して、いわゆるビルド鉱を中心として生産が集中し、能率は三十一年の十四・三トンから四十二年には四十三・八トンと三倍以上に引き上げられたのでございます。私ども能率の引き上げがけしからぬということを言っているのではございません。問題は、どうして引き上げられたかということです。機械化が進められたことも、その大きな要因の一つでありましょうが、機械化進行とともに、採炭切り羽における労働時間は著しく延びているのであります。言うまでもなく、採炭作業は摂氏三十度、一〇〇%近い湿度のもとで、騒音と炭じんの渦巻く中で絶えず落盤などの脅威にさらされながら、採炭機炭壁を切りくずしたあとをドリルでハッパ孔をあけたり、石炭をコンベヤーに詰め込む、天盤をささえる重い鉄柱を移設するなどの作業で、いわば典型的な重筋労働ですが、この職場で昼休み一時間の休憩をとっている山は全体の半分にも満たない状態です。また、一応昼休みをとっているところでも二十分ないし三十分です。そして、ほとんどの炭鉱で一時間ないし二時間の残業が行なわれているのが今日の実情でございます。そして、能率があがれば、これに比例して賃金が上がるのではなく、逆に標準作業量が引き上げられたり、基準外割り増し率が引き下げられたり、諸手当の廃止などにより労働条件切り下げが最近行なわれた次第でございます。これを取り返すために超過勤務となり、労働強化が生まれるという悪循環を繰り返しているのが今日の実情だと考えております。  政府炭鉱資本から見ますと、このような推移を、合理化が着々と進行しているといわれるかもしれませんが、炭鉱労働者にとっては合理化進行災害の増大であり、死の行進とも言えることではないだろうか、こう考えている次第です。  労働者百万人当たり災害率推移を見ますと、昭和三十年を一〇〇としますと、三十四年は一一一、三十七年は一六九、四十二年には一七〇と七〇%も増加しているのでございます。また、保安局調査によると支柱保持に関する違反事例保安規則百五十九条関係一つをとってみても、三十七年に千四百三十三件であったものが、四十一には二千六百三十七件と倍増をしております。炭じんの集積にしても、三十八年二百三十七件が四十一年には五百十五件と倍以上です。一例にすぎませんが、坑内保安規則違反個所だらけと言っても過言ではないのではないかと思います。  以上述べましたように、炭鉱災害根本原因政府石炭資本推進してきました石炭政策推進のひずみにあるといわなければなりません。決定版最後的手段抜本策といった、すなわち過去三次にわたる石炭対策は、労働者にとっては死に通ずることになる内容のものであったことを考慮に入れないまま実施に移したところに原因があったと思います。  いま各炭鉱ではきわめてきびしい生産増強が強制されています。このことは、言いかえると、いつ重大災害発生するかわからない一触即発の状態にあると言っても過言でないと思います。  では、どうすれば災害防止し、保安確保することができるか。この点について今次平和災害を通じて具体的に指摘してみたいと思います。  今次平和災害は、過去私ども重大災害発生するたびに繰り返し指摘してきた多くの問題点を含んでいます。  第一に、災害発生したと思われる時間から退避命令が出される時間があまりにも経過し過ぎております。このことは、日常の保安訓練が行なわれていないことを物語っているのではないかと思います。また、異常を発見したときの措置、連絡の不徹底は、生産にだけ頭が走り、経営者みずからを含め、保安に対する関心、すなわち教育をなおざりにしていたことを証明しておるものではないかと思います。このことは、ひとり北炭のみが責められることではなく、すべての炭鉱業者にもいえることではないか。以下述べることも同じであります。  第二に、COマスク個人携帯だったらほとんどの仲間は助かっていたであろうと想定されます。COマスク個人携帯は、炭労から正式要求として中央鉱山保安協議会に提起したのはたしか三十四年ころだったと記憶しております。これに対し経営者側委員は、研究課題として実施に応じなかったのですが、三十五年二月夕張炭鉱ガス爆発を契機に、中央鉱山保安協議会の議題となったのですが、その際、炭労代表委員個人携帯を主張していたのでございますが、経営者側委員は、破損する、保安上困難を理由に反対をし、多数で坑内必要個所に備えつけておくことで十分ではないかと主張したのでございます。三十八年十一月九日三池三川鉱の大炭じん爆発は四百五十八名の生命を奪い、八百人をこえるCO患者を出したのですが、爆死はわずか二十名足らずであります。もしこのCOマスク個人携帯であったら、大部分が助かったであろうし、いまなお解決を見ず、大きい社会問題となっておりますCO中毒患者問題は発生していなかったと断言してはばかりません。あれから五年を経過したいまなおCOマスク個人携行が完全に解決しないのはなぜでしょうか。各自携行では破損すると経営者が言っておるように、人命より支出経費が惜しいからにほかならないのではないかといわざるを得ません。政府当局も輸入しても取りそろえようと言っておりますが、直ちに実施をしていただくように特段の御配慮をお願いしたいと思う次第でございます。  第三に、救護隊の出勤時間が災害発生から二時間以上も経過しているのでございます。坑内災害は、発生から数分ないし三十分くらいがきめ手ではないかと思います。ところが、二時間以上たってからでは、救出ではなくて遺体搬出がおもな目的になってしまうという過酷な坑内条件のあることを絶えず頭の中に入れておいていただかなければならないと思います。私どもは数年前から常設救護隊設置を要求しております。常設されている消防署が防災教育を行なっておるように、常設救護隊保安教育訓練指導、進歩する保安技術波及指導等に当たるようにすることによって労働者生命が守られるだけではなく、資源の有効的開発もまた大いに伸びることは言うまでもないところでございます。  いま私が述べておりますことは、保安確保基本ともいうべき点を指摘しておるつもりでございます。すなわち、何よりも保安が優先することを実際に実行するには、口先だけで「このような災害は二度と繰り返さないように取り組みます」というのではなくて、「実際にこのようにします」ということを具体的に示し、実行することでないかと思います。  さらに強調したいことは、今日までの石炭政策が示しておるとおり、現在の私企業体制のもとでは、もはや炭鉱保安確保はあり得ないということであります。したがって、何よりも第一に保安面から労働者意見を取り上げて、国の指導徹底する体制をつくる必要が今日緊急の課題としてあるのではないか、このように強く考えておる次第でございますので、以上の点を強く御要望申し上げまして、先生方のより一そうの御協力を心からお願い申し上げる次第でございます。  以上をもって終わらしていただきたいと思います。
  8. 堂森芳夫

  9. 平川久米蔵

    平川参考人 全炭鉱保安を担当いたしております平川でございます。  石炭産業エネルギー革命によりまして企業の安定のために合理化を余儀なくされてまいりました。その合理化を進める過程の中で、ガスあるいは炭じん爆発坑内火災等、いわゆる重大災害が相次いで発生いたしております。そして多くのとうとい生命を失い、また傷ついておる次第でございます。その犠牲となるわれわれ坑内第一線で働く者にとって、まことに遺憾にたえない次第でございます。  過去、重大災害発生いたしますと、そのつど保安対策強化が叫ばれ、そして何らかの形で強化されてまいりました。しかしながら、重大災害はそのあとを断つことができません。また落盤運搬等による災害も、災害率は近年ますますその上昇の傾向を示しております。  炭鉱災害は、その原因が千差万別であり、一口に原因はこれだということは非常に困難でありますが、このように災害が頻発し多くの犠牲者を出していることは、その原因が多くは次の点にあるのではないかと思います。  その第一は、坑内骨格構造に問題があると思います。それは生産に追われ、また労働力不足により保安上必要な坑道が整備されていないということです。すなわち、坑道掘進のおくれから、盤下坑道による後退式採炭法採掘することが保安上よいとわかっていても、それができない。同じ通気が幾つもの作業個所を回って排気に流れていく、また、ガス抜きを十分行なわないまま採掘しているというのが実態と思います。このことがガスを湧出させ、自然発火原因となり、通気各所を回るため、災害発生いたしますと被害がますます増大するという結果になると思います。  第二に、石炭産業の現状から、炭鉱に働く者全体が石炭産業の将来に望みを失い、無気力になっており、したがって保安意識が低下していると思います。特に保安確保上最も重要な地位にある現場の第一線で働く保安技術職員が、生産に追われるあまり、経営者側労働者側の板ばさみにあい、自分の意思が十分発揮できないところから、みずから進んで事を運ぶという気力を失っているのではないでしょうか。  以上原因となる問題点を二点申し上げましたが、このほかに、保安技術の問題、保安機器設置不足あるいは採掘装備問題監督行政あり方あるいは保安管理体制あり方等災害防止するためにはいろいろな対策が必要でございます。  まず坑内骨格構造を整備し、保安上最もよいといわれている盤下坑道による後退式採炭法による採掘と、通気独立分流とすること、並びに従業員保安意識を高揚させるための保安教育強化保安運動を積極的に展開することと思います。  全炭鉱では、保安意識高揚対策の一環として、保安の改善について全員が提案するシステムとして、一昨年より保安診断提案運動実施を主唱し、経営者にその実施方を要請いたしております。そして、この運動実施して実効あるものにしている炭鉱が全炭鉱傘下に二山あります。その一つ山陽無煙炭鉱がございます。この炭鉱は、従業員が約二千人ぐらいですが、過去毎年数名の殉職者を出しており、災害率も千人当たり一・一から一・二という高率を示しておりました。特に四十一年は十一名もの殉職者を出しており、何とかしなければいけないということでこの運動を取り上げて実施いたしましたところ、最近では災害率も千人当たり〇・八から〇・七程度に下がってまいりました。四十二年に七名も出ました殉職者が、本年はいまだ一人も出ておりません。  このように従業員全体の保安意識を高揚させることが災害防止上いかに重要であるかということがおわかりになると思います。しかしながら、全炭鉱傘下三十数炭鉱のうち、この運動実施しているのは、いまだ二炭鉱のみにとどまっております。このことはまことに残念に思う次第でございます。  最後に、いずれにいたしましても、基本的には石炭産業を真に魅力あるものにし、将来に希望が持てる産業とすることが最も重要なことと思います。一日も早く抜本的対策を立てていただきますようお願いいたしまして終わりたいと思います。
  10. 堂森芳夫

  11. 遠藤一三

    遠藤参考人 炭職協の遠藤でございます。  前の四人の方々がるる述べられましたものでございますから、重複を避けまして二、三点保安対策につきまして申し述べてみたいと思います。  まず一つには、石炭産業の置かれている現状でございますけれども、各山とも非常に暗いムードで、いつ自分の山はどうなるのか、こういうような暗いムードの中で、不安感と焦燥感とが入りまじって生産保安に励んでいるというのが実態ではなかろうか、こういう暗いムードが直接的な原因とは申しませんけれども、遠因としてあるのではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。  そこで、現在抜本策と申される政策がいろいろ検討されているわけでございますけれども、私どもとしましては、現在の長時間労働を基底とした抜本策を練ってもらったのではますます長時間労働に拍車をかける、こういうことになりかねないと思いますので、どうか八時間労働に立脚した政策を練っていただきたい。これを冒頭にお願い申し上げたいと思います。  それから管理体制の問題でございますけれども、現在いろいろいわれておりますけれども、何、といっても自主保安が第一でございます。したがって、自立保安の確立のためには、まずその総元締めでございますところの保安統括者がえりを正し、姿勢を正す、これがまず基本でなければならないのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  それから末端のほうにいきますと、何といっても係員の任務が遂行できる体制にしなければならない、こういうふうに考えるわけでございます。重大災害発生は係員以上の責任でございますから、重大災害の撲滅には、何といっても係員の任務の遂行できる体制をつくる。これがぜひ必要だ、こういうふうに思う次第でございます。  それから頻発災害が非常に多うございます。これは昨年度の実績によりますと、大体延べで重大災害を含めて百万人、こういうふうにいわれている実績でございますから、この頻発災害防止には、何といっても職場規律の確立が第一ではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。もちろん、部分的には保安規則、山元の保安規程を含めました保安法規の改正が必要かと思いますけれども 現段階ではその現行の規則すら守れないのが実態ではなかろうか。まず現在の規則を全面的に守る、いわゆる順法精神の高揚が大事ではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。  以上申しました保安統括者から一般労働者までの保安に対しての姿勢をまず正すべきではないか、こういうことでございます。  それから監視体制、いわゆるチェッカーでございますけれども、これを包む体制でございます。自主保安の中で監視体制につきましては、現在保安監督員並びに補佐員、あるいは保安員というものが選任をされているわけでございますけれども、はたしてこの保安監督員なり補佐員がほんとうに役割りを果たしているかどうかということになりますと、きわめて疑問ではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。したがって、いろいろ壁もございましょうが、この壁を破るためには、やはり保安監督員並びに補佐員の身分のあり方と申しますか、雇用のあり方と申しますか、こういう方々をどこか一カ所に、あるいは労働災害防止協会でもけっこうでございますけれども、雇用関係まで含めた対策を練らないと、なかなかこの壁と申しますか、限界点を破ることはむずかしいのではなかろうか、こういう制度上のことに若干波及しなければならぬ問題ではなかろうか、こういうふうに考えているわけでございます。  次に、保安教育でございますけれども、現在の保安教育は、各企業とも全く壁に突き当たったと申しますか、あるいはマンネリと申しますか、その実効があがっていないというのが現状ではなかろうかと思います。したがって、私どもが中央保安協議会で意見を述べております、係員は年間十日間、一般労働者は一週間、あるいは新規労働者につきましてま三十日間、こういう徹底した保安教育を、しかも国が一歩足を踏み込んだ形で行なうべきであるというふうに考えるわけでございます。  その他退避訓練の問題それから保安機器の問題、先ほど平川さんが申しましたように、坑内骨格構造の問題いろいろございますけれども、質問の過程であるかと思いますのでお答え、参考意見を述べてみたいと思います。  非常に簡単でございますが、以上で終わらしていただきます。
  12. 堂森芳夫

    堂森委員長 これにて参考人各位の御意見の陳述は終わりました。     ─────────────
  13. 堂森芳夫

    堂森委員長 これより質疑に入ります。質疑の通告がありますのでこれを許します。田中六助君。
  14. 田中六助

    ○田中(六)委員 本日は暑いところを各委員とも非常に御苦労に思います。  御承知のように、災害が頻発いたしまして、私ども衆議院の特別委員会でもいろいろ頭を痛めているわけでございますが、私どもこの災害は天災と人災と両方から来ていると思いますが、こういう点、国民も、どうしてこんなに石炭関係で事故が起こるのだろうかというような不安感と、それから大きな注目をしておると思います。これはたまたまけさの朝日新聞の投書欄、「声」欄に、一番先に載っている投書でございますが、見出しは、「炭鉱災害に賠償請求を」、「会社の保安無視を追及せよ」という見出しでございまして、東京都の岡村さんという二十六歳の弁護士でございます。参考のためちょっと読んでみますが、「“またしても”炭鉱災害である。北炭平和礦業の先月三十日の事故は、死者九人、なお二十二人が絶望視されている。「おとうさーん!」の悲痛な絶叫が何度くり返されたのだろうか。今回の事故原因が会社の保安無視にあることは明白である。西家通産省鉱山保安局長も「火災発生後適切な処置をとれば、一人の死者も出さずに防げたはず」と明らかにしている。あたりまえである。火災発生後一時間二十分もたってからしか」――山本さんは二時間と言っておられますが、一時間二十分。こういうことはどうでもいいだろうと思いますが、「非常警報が伝わらないのでは……。明らかに民法に規定する工作物の瑕疵責任のみならず、不法行為責任が会社にはあるといわなければなるまい。「自動車事故だって三百万円、飛行機事故でも八百万円の補償が出たというのに、炭鉱事故の人の生命は、なんでこんなに安いのだろうか」とある炭鉱事故犠牲者の未亡人が訴えていた。それは、会社の責任の有無を度外視した労災補償の請求に甘んじているからである。北炭のように、会社に責任がある場合には、民事の損害賠償請求の訴えを提起して、きびしく会社の責任を追及することが何よりも大切であると考える。労働組合は、会社との労災補償協定にとらわれず「生命を守るたたかいにふさわしい援助を、犠牲者の損害賠償請求の訴えに対して与えることが、保安闘争を前進させる上でも、最も肝要といわねばなるまい。北炭平和坑の犠牲者の方々が、十万や五十万の涙金で丸めこまれることなく、民事損害賠償の追及に立ち上がられることを切に祈る。」という投書でございますが、この中でもすでに指摘されておりますように、西家さんはこれが適切な処置ではないというふうに断定されておるわけで、こういうのが投書欄に載りますと、新聞社の意図がどこにあるとかないかとかいうことではなくて、やはり私どもは痛切に責任を感じます。それから人命を第一にしなければならない。口ではいつも私ども保安対策で決議案を、これは数たびこの国会でもやっておるわけですが、それが実行されていない。それとうらはらに皮肉にも事故が非常に頻発しておる。そういうことを感ずるわけでございますが、ただいま参考人の人たちも、まあ私に言わせれば、目新しいことを言った記憶はほとんどないわけでございまして、やはり方策は一つしかないと思う。そんなにいろいろあるわけじゃない。いま皆さんがお考えになっていることがたびたび繰り返されているわけでございますが、やはり炭鉱保安あり方経営者にも、労働者にも私はもう少し何か共同一致した立場がなければならないのじゃないかと思いますが、特に先ほど平川さんが労働組合と経営者の間に立って非常に気を使って無気力な組合の人たちができておるのじゃないかというようなことをおっしゃっておりましたが、こういう点について、まず経営者側大槻さんにお話を伺い、また山本さんのほうにもこの見解から意見を述べていただきたいと思います。  もう一度繰り返しますと、私の質問は、経営者労働組合の板ばさみにあって働く人々が自分の意思が失なわれておるということを平川さんはおっしゃっておりますが、この点について大槻さんと山本さんの御意見を伺いたいと思います。
  15. 大槻文平

    大槻参考人 ただいまの御質問でございますが、どなたでしたか、全炭鉱の代表者でしたかが述べられていますように、十数年にわたる炭鉱の斜陽化的なムードというものが、やはり知らず知らずのうちに炭鉱のすみずみまで流れておって、そうして炭鉱第一線の係員というような連中にも積極的な職務遂行意欲というものが多少減退しておるという傾きがあるのではないかということを私は非常に心配しているわけでございます。そういうことを、経営者といたしましては、できるだけ払拭するようにつとめてはおりますけれども、その根本は、何といってもやはり石炭鉱業がかつかつやっていけるような程度対策が講じられるということが非常に大事なことではないかというふうに考えております。  第一線の会社側と組合側との間にはさまってどうこうという話がございますが、これは一般論としてこうだということはなかなか言い切れないのではないか、山の組合あるいは職場協議会といったようなもののあり方というものが相当影響しますので、やはりケース・バイ・ケースで論ずべき筋のものではないかというふうに考えます。
  16. 山本忠義

    山本参考人 会社と組合の双方にはさまって云云という点についてどういうことをおっしゃったのかよくわからないのでございますけれども第一線保安係員というのは、ある面ではそういうような心情になるような場合もあるやもしれないというようなことは予測をされます。それが炭職協の遠藤さんのほうからおっしゃられたように、マンネリあるいはいつも同じようなことの繰り返し、創意とくふうがない、こういうことは、石炭を出す前に保安第一主義でやったほうがいいじゃないかというように末端の係員が考えたとしても最高方針としての経営の予算上の措置等から、もっと安く効率をあげるというような点での職員層の板ばさみというような点ではないかと思ったりしておりますが、私のほうの立場で端的にお答えをいたしますと、これは決して誇張でも何でもございませんが、幾多の大災害の事例がはっきり示しておりますように、ほんのちょっとした手抜かり、保安管理者の責任、こういうものによっていわゆる生産第一主義、少しでも石炭をよけい掘りたいというところで、保安第一主義になっていないところに大災害原因がある、こういうふうに考えております。三池の大災害にしてもしかり、あるいはまた夕張災害にしても、あるいは今度の真新しい平和坑の災害にいたしましても、経営を監督しておられる人の頭の切りかえをきちっとして、あるいは合理化の行き過ぎで必要以上に人が足りなくなってしまっている、監視ができない、こういうようなことをほんのちょっとゆるめる、保安にもう少し気を使う、こういうことによって大災害は防げたのではないか、こういう気持ちで一ぱいでございまして、そういう点から考えますと、全くこれらの大災害は私どもにいたしますと無念やる方ない気持ちがいたすところでございます。したがって、そういう組合と会社との板ばさみ云々というようなところではなしに、炭鉱災害原因というのは、もう少し保安責任を持っております――私どもから言わせますと、命と生活というものをお預けしている会社側のほうの生産計画それ自体に、人命は尊重しなければならぬ、多少の石炭は出なくたってけがをさしては何にもならぬ、大災害を起こしてしまえば銭金にかえられぬ大損害を起こすではないか、こういうことの上に立った日常の作業を行なってもらうことによって防げる大災害が数多くある、こういうふうに考えておる次第でございます。
  17. 田中六助

    ○田中(六)委員 これは大槻会長植田石炭鉱業連合会顧問のほうに聞きたいんですが、いろんなきめのこまかい保安整備あるいは大きな保安対策ということは考えられます。考えられるだけで実際にこれが実現できないというところにやはり問題が大きくあると思うのです。山本さんは、現在の石炭私企業体制では保安のことをいろいろいってももうだめだ、体制の変革を考えなければいけないということをおっしゃっておりますが、大槻さんと植田さんはこの点どのようにお考えになりますか。
  18. 大槻文平

    大槻参考人 保安確保は私企業ではできないのではないかという御意見でありますが、保安というものは経営の一部でありまして、経営を私企業でやれないかどうかという問題とつながる問題でございます。なるほど現在の炭鉱は、非常な借金の重荷に苦しんでおる、財政資金が六〇%も出ておる、そういう状態から見れば、すでに私企業ではないんじゃないかという議論も成り立つかもしれません。そういう意味ならば私はなんでございますけれども、しかし私どもといたしましては、私企業の立場で経営はできるという見解を持ち、また現にやっております。ただ、現在の炭鉱の資金繰りその他の状況から、どうしてももう少し、保安ばかりじゃございませんけれども保安に関しましても補助その他の手厚い手をひとつ差し伸べてもらいたい。それがありますならば、私は十分私企業としてやっていけるものであるというふうに考えております。幾ら体制が国営あるいは公社営というようなことになったといたしましても、それだけで天災というものがなくなるという筋のものでは私は決してないというふうに考えております。
  19. 植田勲

    植田参考人 私は私企業であるから保安確保できないとか、できにくいとかいうようなことはないと思います。私企業であっても保安確保は十分にやっていける、こう考えるのであります。従業員おのおのが、私が最初申し述べましたように、どうしても保安が第一であるということを認識してそれでやっていくならば、幾ら私企業であっても保安確保はできる、こう考えます。
  20. 田中六助

    ○田中(六)委員 よくわかりましたが、いずれにしても働く人々が、事故の頻発、しかも先ほど参考人のどなたか述べましたように、湿度が一〇〇%、摂氏三十度の、しかも地下奥深いところで働くという悪条件のもとで働くのですから、無気力にもなるでしょうし、一般の地上で働いている労働者と同じように考えること自体が無理だと思うのですが、大槻会長植田さんは、結局国の手厚い補助がもう少しあれば、つまり金の面でふんだんに使えるものがあれば希望の持てる職場になっていくのだろうということも含まれておるようですが、山本さんと平川さんと遠藤さんにお聞きしたいのですが、ほんとうに将来に希望が持てるということで働くにはどうしたらいいかということを、いまずっと述べておった中にもありますが、もう一度具体的に、ほんとうにこの職場が将来とも希望が持てるというふうにするにはどうしたらいいかということを、それぞれの組合の立場から述べてもらいたいと思います。
  21. 山本忠義

    山本参考人 炭労の場合には従来から一貫をして主張をしておることでございますから、諸先生方は十分おわかりをいただいておると思うのですが、やはり私どもは、体制的にも私企業というのをやめて、国の責任で全面にやってもらう。将来安定をした職場産業というものをつくることによってのみ、災害なり何なりというものは防止の方向なりあるいは減少の方向へいくことができる。基本的には、いま石炭産業全体がもうスクラップをされてあすもわからぬ、こういうような不安な情勢にあるというのを、どうしても私どもの、主張しておりますように国有国管という方法でひとつぜひやっていただきたい、こういうふうに考えておるところでございます。  それから、詳しい数字は忘れましたけれども、確かに私企業の中でも経営者の非常な努力等によって災害は未然に防止することだってでき得ると思います。いままで申し上げましたが、大災害原因というものはほんのちょっとした手抜かり、銭金のほうが優先をするというやり方、こういうのが大災害を起こしている事例でありますから、そういう点ではあるいは防げるかとも思いますけれども、イギリスが私企業から国管になりました際に、たった一つ国民の前に胸を張って言えることは、いままで頻発していた災害が数字的にいってこれほど少なくなったではないか、こういうのがたしかイギリスの石炭燃料省の長官でございますか、その方の発言にあったと思うわけでございます。したがって私どもは、今日のようにあすもわからないような石炭産業それ自体の中でやはりどうしても、私企業をそのまま延命させるということになりますと、すぐ銭金になるわけですから一トンでも石炭をよけい出したほうがいい。どうしても恣意的に無視をする、積極的に人命は軽く扱うのだ、こういうような気持ちではなくても、こういうふうになってしまうことになる可能性のほうが強いのではないか、こういうふうに考えております。  それから、年来主張しているところですけれども、いまの段階の中でも、国の責任といいますとおかしい表現でございますけれども保安監督行政の中である程度カバーすることができるのではないかということを考えております。その一つには、もっと保安監督行政を強化してもらう。会社はどうしても生産第一主義に走る部面を国の権力によってある程度チェックしてもらう、そのためには保安監督官の増員ということは当面絶対必要ではないか、こう思っております。  それから、ガスの爆発であるとかあるいはガスの多いというような山は、いままでの例の中で明らかになっておって、そんなにたくさんあるわけではありませんから、そういうようなところには保安監督官を常駐さしてもらいたい。会社の事務所の一室を借りてでもいいですから、そこへ監督官が常駐して、日常作業の末端等を通じても保安問題というものについて、生産計画あるいはその作業の日々についてチェックをする、こういうようなやり方を積極的にやることによって多少でも改善することができるのではないか、そのことは国のほうで踏み切ってさえもらえばいますぐにでも、そうさしたる障害がなくてできることではないのか、こういうふうに考えている次第でございます。
  22. 平川久米蔵

    平川参考人 将来希望の持てる炭鉱というものはどうすればいいかということでございますが、まず私は、石炭産業を総合エネルギーの立場から石炭の地位を確立していただいて、そしてそれに必要な財政の助成を行なっていただくということであろうかと思います。  次に、第二点目は、幾ら石炭産業の地位を確立いたしましても、現在の労働条件では人は集まってまいりません。御承知だろうと思いますが、一番重労働をしいられております炭鉱労働者が全産業の中で賃金、労働条件は十二、三番目くらいに位置づけられております。私は、石炭産業に働く者は他産業の高位の労働条件にする必要があるのではないかと思います。  そういうことで、まず第一点は石炭産業の総合エネルギー対策としての地位を確立して、それに必要な資金を援助していただくということと労働条件の向上が、希望が持てる産業につながるというように考えております。
  23. 遠藤一三

    遠藤参考人 大体前者の方が言われたことに尽きるわけでございますけれども、やはりいま一番問題になっておりますのは、新聞紙上をにぎわしておりますところの体制問題と申しますか、位置づけの問題、四十八年度では三千万トンじゃないか、三千五百万トンじゃなかろうか、こういうことがいま盛んに報じられております。したがって、私どもはこれが一つの大きな不安の要素でございます。したがって、政府として、ひとつ今後、炭量枯渇以外の山は閉山をしないということが、まずわれわれの将来に対する希望の第一点ではなかろうか、こういうふうに考えているわけでございます。  その他、基本的な問題でございますけれども労働条件は他産業並み、災害のない安定した明るい職場、これが私どもの最も希望するところでございます。  以上、三つの柱ではないかと思います。したがって、体制的な問題、再編成を含めました体制的な問題よりも、これに伴う政策の中身の充実が最も必要ではなかろうかと思うと同時に、希望もするものでございます。  以上でございます。
  24. 堂森芳夫

    堂森委員長 鹿野彦吉君。
  25. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員 私はおもに経営者側に立ちます大槻さん、植田さんですが、特に大槻さんにお尋ねしたいのですが、あなたは事業の経営もやっておられる。そうして代表して、大企業経営者として石炭協会の会長をやっておられる。あなたの御意見を承りまして、私はまことに失望の一語に尽きるわけです。私は自民党所属の代議士でございます。はっきりお断わりしておきます。補助がなければ、補助がなければという徹頭徹尾の今回の災害に対するあなたの御意見ですが、まことに残念だと思います。私は保安対策というものを確立することは、経営上、経営者側からいっても絶対損じゃないと思う。実際上政府補助にたよらない、自主独立して経営をしなくてはならないという立場に立たされたときに、私は、経営者保安というものに第一番の重点を置くべきであるし、置かなければならないし、また置かないような経営者は無能な経営者といわなければならないと思うのです。私は、実は今回この平和炭鉱に参加をして行ってまいったのですが、まことに心からなる憤りを感じて帰ってきた一人でございます。  この際お尋ねいたしたいのは、政府補助というけれども北海道炭艦汽船株式会社のあの財産のある会社が、この保安補助がなくしてできなかったのだろうか、それを私は承りたい。
  26. 大槻文平

    大槻参考人 私はただいまの先生のお話に対して特別に反抗する意思は毛頭ありません。もちろん私企業経営者としまして、政府補助とかなんとかいうことばかりたよるべきではないことは百も承知しております。しかし現在の石炭鉱業自体が、保安といわず生産といわず、異常なる債務にどうにもならないような状態になっている実情から、私はそういうことを希望申し上げておる次第でございまして、これが普通の状態になったときに、また補助補助だというようなことを申し上げる意思は毛頭持っておりません。ですから、私ども三菱鉱業といたしましてのことだけを申し上げますならば、苦しい中から保安については相当やっているつもりです。たとえば、すでに個人携帯のマスクにしましても、高島二子においては個人に携帯させておるという状態であります。また、たとえば難燃性のベルトにしましても、大体ほとんど全部が難燃性に変わっております。そういうふうに、私どもは苦しいながらも保安というものについては相当やっておる。しかしさらにやるためには、一般的に言うならば、やはり補助というものが必要ではないかということを申し上げておる次第であります。北炭の問題については、これは北炭の会社のことでございますので、私がかれこれ申し上げるべきものではないし、また事情もわかりません。しかし北炭といえども保安に対しては相当に力を尽くしておるものであるというふうに信じております。今回の事故がどういうふうにして起こったかということにつきましては、私は十分つまびらかにしておりませんから批判はできません。しかし炭鉱経営者として、北炭も保安というものには相当に力をいたしておるということを信じております。
  27. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員 私も、あなたがおっしゃられる程度において、当然保安という問題についていずれの鉱山も一生懸命になっているだろうということは想像できます。あなたがお留守だったのかもわかりませんが、昨年石炭対策特別委員会から北海道の各炭鉱調査いたしましたおりも、私は各炭鉱経営者にくれぐれも頼んでまいったのは、保安という問題については最善の努力をしてほしい、一生懸命自主的にやるだけやって、足らないことについて政府補助するということについてはこれは当然のことであるから、われわれ国会議員としても大いに努力いたしましょう、こうしたことをどの鉱山に行っても繰り返し繰り返し私は頼んでまいったわけでございます。私はあなたと――北炭の問題について、人の会社のことだからということで、確かにそのとおりです。ただ私は心がまえとして、石炭協会の会長でございますから、こうしたことについてもっと別の観点から、この保安という問題についてもっともっと労働者諸君、働く人々の気持ちを端的に聞かれる機会を持っていただきたいと思う。私は石炭に関係のない者ですが、ですから労働者諸君の話を聞く、まことに耳新しいもので、この人々の話を聞いて、非常に驚きの感を深くするわけです。あなたは最初から石炭業界に入られて、石炭のエキスパートであります。ですから、働く人々の話をもっともっと身近に聞いていただければ、いまのような考え方に変えていただけるのではないかと思います。石炭産業が私企業では保安の問題がだめだ、このようなことを言わせること自体に私は問題があると思います。石炭産業では保安は一部だといわれるけれども、私はそうではないと思う。現在の少なくとも人命の尊重というものを第一番に考えなければならない近代的な産業のあり方からするならば、保安全部石炭産業石炭産業全部保安だ、ここに私は重点を置かれるべきものだと思うのです。経営面の一部だというような考え方を持たれるところに根本的な誤りがあると思います。きょう私が鋭く言うことについて、あなたは反感を持たれることなく、石炭協会の会長として、帰ってからも何回も、鹿野のあのやろう、こういうことを言ったということを頭の中で繰り返し繰り返し考えていただきたいと思います。保安なくして経営はあり得ない。ことに石炭産業の問題はまことにむずかしい問題、他産業に比較して石炭だけが保護助成を受けておる、こういうような問題についても多くの批判があるわけです。しかしまた、それだけの補助を出すには出すだけの国家的な使命を持っておるから、当然それはなされたんでございましょう。しかしながら私の考え方では、まことにこれは残念だけれども、現在の経営者補助を取ることだけにまず考え方が先になって、自主的な経営をしていくというこの精神的な面に欠除があるんじゃないかという感を深くいたすものです。このような状態において、いま国営がよろしいとかあるいは何とかというようないろいろな議論が出てまいります。私は少なくとも国営ではだめだ、私企業でなければならない。こういう根本的な経営のあり方に信念を持つ一人として、働くところの人々から、私企業の面ではこの保安の問題は解決できないのだという絶望感を吐かせるところに残念ながら問題があると私は思うのです。あなたを攻撃するわけじゃございません。攻撃するわけじゃございませんけれども、お互いに統制経済方式、国家管理、国家経営というものによってはますます国の発展がうまくいかないと信ずる者には、それだけの責任をもってそうでない安心感を従業員に与えていく努力がなくちゃならないと思うから、私はこのようなことをあえて申し上げるわけです。あなたの反感を買うこのようなことを私はなぜこの委員会で申し上げるか、このことも特に私は考えていただきたいのです。きょうの労働者諸君側のあの参考意見の中にまことに聞くべき意見が数々あると私は思うのです。いわゆる経営者もあるいはまた働く人々も不安と焦燥感にかられて、そうして無気力の状態になっておることが今回のこの大きな災害をなさしめたところの原因である。あるいはまた法律できめられたところの保安規則の違反だらけであるというような、こうしたことがこの委員会において述べられること自体、経営者を代表されるところの協会長さんとして考えていただかなければならない問題があるんじゃないかという気が私はいたします。規則で縛られる以上に経営者保安という問題に十分なるところの注意をすることが得だ。損得からいって得だ。私は、こういうことになっていただけるんじゃないか。ごくわずかの金を保安にかけることによって災害が防がれるならば、会社の経営上これほど得なことはない。それを労働者側から要求があるにかかわらず、あるいはまた規則上きめられたところの保安規則を無視して、そうして金がないから金がないからとじんぜん日を送るというところにこの大災害が次々と起こってくる。避けることのできないところのこうした問題もあるでしょうけれども、避けることのできる問題が大部分だと告白されておるこの問題について、私はほんとうに深刻に考えなければならないと思うのですが、まことにこれは質問で意見を申し述べるような結果になりましたけれども、あなたの御意見を聞いてもまた同じことであると思いますので、私は再びお願いします。鹿野という自由民主党の代議士が、あのばかが――私の地元には石炭産業は何もありません。関係のない者が、腹に据えかねるようなことを言うたということを記憶に残していただいて、そうしてあなたも大きな石炭業界指導者として立っておられるから私は申し上げるのですが、相ともに手を携えて、日本の石炭業界のためにみんながしあわせにいくようにしていただきたい。そのためにはあくまでも石炭産業保安だ。保安石炭産業だ。このようなことで働く人々に安心感を与え、そうしてその問に合理化というものがはばまれるようなことなく、合理化をやったために災害が起こるのだというような観念を与えること自体、私は残念だと思います。合理化をはかって、そうして一人当たり生産量を増し、会社の経営もよくなり、労働者諸君の賃金もどんどん上がるというようなことにしていただくことがわれわれの目標でなければならぬ。これほどわかり切ったことを言わなければならないというところに、保安問題について、私は見直して考えていただきたい。  政府当局に申し上げたいのは、ただ補助補助というようなことをやってきたところに、しかも経営のへたな者がより多くの補助をもらうというようなことをやってきたところに、大きな原因があるということを繰り返し私は申し上げて、私の質問を終わります。
  28. 堂森芳夫

    堂森委員長 岡田利春君。
  29. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 いま鹿野委員からも非常にきびしい御意見がありましたけれども、いまわが国の石炭産業は、まさしく長期的な安定策を樹立をする過程にあるわけです。こういう時期にあたって、炭鉱災害が続発することは、われわれ炭鉱に特に関係のある議員として非常に遺憾に感じておりますし、むしろこういう災害が続発することは、石炭産業を残すよりも、むしろ石炭産業というものは国民の生命を守るために思い切ってなくしてはどうか、こういう意見が国民の中からむしろ出てくるのではないか、こういうことを私は深刻に実は考え、心配をいたしているわけです。  私はそういう前提に立って考えてみますと、昔から貧すれば鈍するということばもありますが、まさしくこの災害はそういう感じを与えておるのではないか、特に炭鉱災害に対しては重大な頭の切りかえをする必要があるのではないか、私は実はこういう意見を持っているわけです。と申しますのは、今日、日本の炭鉱で無理をしないで、きわめて標準的な努力石炭生産している山が一体あるだろうか。私は一つもないと思うわけです。非常にアブノーマルな状態においてわが国の石炭産業生産がささえられている。まずその一つの証拠には、労働時間で見れば、時間外労働が全国平均一・九。ですから一時間五十六分程度の時間外が平常に行なわれているわけです。その上でなおかつ経営が成り立っていかない。ここに非常に基本的な問題がまずあるのではないかということを第一点感じているわけです。たとえば、いままでの再建計画を経営者が出しておりますけれども、一応計画は出す。しかしその計画どおりに実行できない。もちろんいろいろな要因はあります。しかしその計画の出し方自体にも、また受けとめ方自体にも問題があるのではないか。初めからやはり無理な計画を出すから、当然この実行というものがなかなかできない。予定どおり出炭というものができないから経営が苦しくなっていく。そういう点でさらにこれを挽回するために、無理な生産体制を進めていかなければならない。こういう状態にあるのがわが国の炭鉱だと私は思うのです。この認識が、政府もまた経営者労働者もわれわれも、そういうぐあいにほんとうに一致するかどうか。これが一致するとするならば、そういう無理な過程における保安対策というものは、より従来の感覚と違った形で対策を立てなければならないのではないか、こう私は思うわけです。  そこで、私はそういう前提に立って、大槻参考人に質問いたしたいと思うのですが、いまこの石炭再建途上の過程における保安対策をどうするか。これはやはり緊急な対策を自主的に立てる決意と必要があると思うわけです。もちろんそれぞれ企業は違いますけれども石炭協会には評議員会もあるわけですから、そういう意味でこの保安問題についてはこれだけの災害の実例にかんがみて、まず自主的にお互いに研究をなし、考え方を持ち寄って、こういうことをお互いにやっていこうではないか。そういう態度、そういう非常に前進的な経営者自体の態度というものが非常に望まれるのではないか、こう実は私は考えるわけです。きょう参議院ではすでに保安に関する決議が行なわれておりますし、当委員会においても、参考人への質問が終われば、私どもは私ども独自の立場で決議をする予定に実は相なっておるわけです。そういう意味で、そういう点の決意があるかどうかということが第一点であります。私はぜひそういうものを私どもにも示してほしいし、国民にも示してほしいし、そして今後の再建についての協力を仰ぐ、こういう姿勢の確立が大事だと思いますので、この点をまずお伺いしたいと思います。  第二点の問題は、いろいろ問題点はございますけれども、まず重大災害、なかんずく死亡災害をどう絶滅をするのか、これが私は炭鉱保安の最大の目標であろうかと思うのです。もちろん災害はすべて撲滅できることが望ましいのでありますけれども、当面石炭の場合には、重大災害、死亡災害をどう一体撲滅するのか、ここにまず重点を置いていかなければならないと、こう考えるわけです。そういたしますと、重大災害の場合に、坑内火災とか、自然発火ガス爆発あるいはまたガス突出あるいは異常出水、もちろん運搬炭車事故その他落盤、倒炭等の問題については、それぞれ個別にその状況において対策は立てなければなりませんけれども、この重大災害については、私はやはり統一的な対策を立て得るのではないか。とにかく最近の炭鉱というものは、坑内合理化が進んで、重機械がどんどん導入をされておりますから、能率をあげるためには電動機を持つ、いわゆる電気の導入をすることによって重機械を動かす、この点は非常に急速に進んできたわけです。そういたしますと、坑内はどこでも火源がある、一応こういう理解に立たなければならないわけです。ですから、坑内で火災を起こす要因はいつでもある。しかも燃えやすい石炭である。石炭であるがゆえに自然発火、これはもう古くから研究はされておりますけれども自然発火は当然起きてきます。ガスがあっても火源がなければ爆発はしないわけです。どんなにガスがあっても、火源がなければ爆発しないわけですから、結局ガスと火源との分離をはかる、あるいはまた異常出水等についてはそれぞれ地質上、構造上、対策も立て得ると思いますので、こういう重大災害の要因に対しては統一的な対策、方向というものが立てられ得るのではないか。先ほど鹿野委員が述べられた意見は、今度の平和の災害の場合には、まず坑内から災害の通報が非常におくれた。なぜ一体すぐ通報できる体制をとらぬのだろうか。たとえば日本の炭鉱では、大槻さんの会社の高島のように、もうテレビで全体の坑内が、事故が把握できるという装置を備えておる炭鉱もあれば、あるいはまた、誘導無線をみずから開発をして連絡をとり得る体制炭鉱もあれば、いろいろくふうをしてやっておるところもあるわけです。こういうことが一体なぜ業界全体として取り上げられていかないのか。もちろん古い炭鉱の場合には近代的な体制をとることがむずかしいとしても、でき得るものを取り上げて、まず通報体制というものを強化をする、こういうことをなぜ一体統一的にできないのだろうか、私は、当然こういう疑問が出てくる。あるいは一、二、三交代の現場であって、経営者は一番方に出勤をする、もちろん保安管理者あるいは鉱長は一人でありますから、当然一番方が出れば帰るわけです。そうすると、二番方、三番方にも相当の人間が入っているわけですから、通報が来た場合に、その自宅に通報しなければ対策が立てられない。措置ができない。指令ができないという、こういう事態が平和であったとするならば、これはゆゆしき問題だと思うのです。少なくとも高級技術職員か、あるいはまた経験のある管理係長あたりが二交代、三交代をして坑口にいて、どこの災害があっても当面緊急な指令だけは出し得る、こういう人が待機をし得る姿勢でないということは、これまた国民の失望を買うということも当然だと思うわけです。こういう点が出てきているわけですから、この点についてはやはり統一的に問題を解決していく、私はこういう積極的な姿勢が出なければいかぬのではないか、実はこういう見解を持っているわけです。私はやはりそういうものが積極的に出てまいらなければ、今後の石炭産業を進める上において非常に支障を来たすし、むしろそういう立場で心配をしているわけです。むしろそういう面ではわが国の石炭産業というものは、私に言わしめれば、半永久的にこれはいろいろ政治との関係を持つ宿命下に置かれた、国際エネルギーの動向から見れば、そういう状態に置かれた、こういう認識を持っておるわけですから、特段にそういう積極的な態度というものが要望されるわけです。こういう点についてひとつ見解を述べていただきたいと思います。
  30. 大槻文平

    大槻参考人 ただいまの御質問の第一の点でございますが、私はまず第一に、やはり士気高揚ということが一番大事じゃないかというふうに存じます。第二点としましては、経営者といたしましては、やはり働く環境の整備、保安の問題に関連するならば、保安関係諸設備の完備ということに全力を尽くすということ。第三には、従業員、職員の徹底した訓練ということだと思います。私はこの三つをほんとうに遺漏なきように取り行ない、しかも特に訓練の場合、教育の場合に、それが現実に移されるような形になっておりますならば、重大災害というものはかなり防げるのではないかというふうに考えております。そしてまた、石炭協会といたしましては、そういう観点から今後一そうその方向に向かって努力をしたいというふうに考えております。  第二点のうちの一つの二番方、三番方に高級係員を配置してないという問題これはごもっともな御意見だと思います。私は全く賛成でございまして、私の会社におきましては、二番方には高級技術職員を配置することにいたしております。私はやはり他の会社にもこういうことをおすすめしたいというふうに考えております。また保安の警報設備の問題でありますが、先ほどもお話がございましたように、ぜひとも誘導無線というものをひとつ徹底さしたいものである。電話でありますと、電話当番がたまたまいないというようなことも考えられますし、また何かの用事でどこかちょっとかけておるというようなときにあるということがありますから、やはり誘導無線というようなものをどこからでもかけ得るという状態の形にして警報の迅速化をはかるべきである、的確さをはかるべきであるというふうに私は考えております。これもまた私のところでは、高島ではもう大体やっておりますが、ほかの炭鉱についても同様なことをぜひおすすめしなければいかぬというふうに考えております。  また坑内火災の問題にいたしましては、お話のように坑内は相当いろいろな火源がある。火源がありますけれども、その火源も近代化によってかなり予防され得るような措置を講ぜられつつある。しかしそれだけにたよってはいけませんから、やはり先ほども申しましたように、大型の化学装置、ボンベ式の大きな消化器、化学消火器というようなものもやはり配置することを考えるべきではないかというふうに考えております。  いずれにしましても、坑内の重装備の取り扱いにつきましては、従業員そのものがやはりかなり高い保安知識というものを持たないと、なかなかうまくいかぬ面が相当にございます。そこでやはり私は、教育徹底ということがますます必要だということを痛感しておる次第であります。
  31. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 先ほどずっと参考人の御意見を聞いたわけですが、私は最近のわが国の炭鉱重大災害をずっと調べてまいりますと、ここでは重大災害の起きるはずがないというところに限って重大災害が起きているわけです。三池において、あの三川の大斜坑において爆発が起きた。田川においては特免区域で爆発が起きた。あるいはまた今度の平和の場合でもそうでありますし、あるいは先般太平洋の災害はもう山が崩落して、係員が二人もついていて、係員もろともに災害にあう。それだけの人を配置していれば普通ああいう重大災害は起きるはずがないというのが普通常識なわけです。そういうところでとにかく重大災害というものが起きているわけです。あるいは三菱大夕張のような場合、ここでは爆発するなんて考えられないところで、立て坑で下のほうからガスが出てきたというようなことで、とにかくどれを考えてみても重大災害発生するはずがないというところで重大災害発生しておるわけです。こういたしますと、私は炭鉱保安について普通切り羽の場合とかあるいは山が悪いとかガスが多いということになりますと、それぞれ積極的に対策を立てておるように見受けておるわけです。ところが、一方、そういう特免区域とか普通の人気坑道とか主要坑道のような場合には、普通災害がないというのが常識になっているわけです。ところがそういうところで重大災害があるとすれば、これは考え方をやはり変えなければいかぬのではないか。これに対する対策というものが非常に大事ではないか。こういう意味では私は最近の重大災害にかんがみて炭鉱保安というものはむしろそういう入口における、胃までいかない食道における、入口における災害というものが起きているのでありますから、これに対する対策というものを検討しなければならないのではないか。これまた法規でもって厳格に縛り過ぎると生産上重大な影響も出てまいるわけであります。ですからむしろこういう点については予知できれば絶対に災害が起きないわけですから、そういう面の警報機の配置とか、あるいは管理人員の配置とか、巡回の定期化とか、あるいは巡回した結果というものが総括でき得るような体制、それがさらに別な人間がほんとうに巡回して検査したかどうかということが把握できるような体制をつくらないと、何百人、何千人と坑内に入っている、ところが人気坑道でぽんとやれば何百人という人間が死亡する、何十人という人間が死亡するという結果になるわけですから、そういう点では煙突の中で仕事をしておるようなものでありますから、結局従来の常識にこだわらないで、そういう面における保安対策というものを立てるべきだということを最近の事故の経験は教えておると思うのです。こういう面について協会自身も保安部長もおるわけですから、ぜひ保安部長会議等積極的に開いて、自主的にそういう対策を検討するとか、また労働者側においても、そういう意味では従来の常識と違うわけですから、こういう点についてもひとつ山元の保安協議会をまず生かして、あるいはまた労使交渉もあるでしょう、こういうものを生かして一度具体的に話し合ってはどうか、こう思うのですが、この点について労働組合側からそれぞれ御意見を承りたいと思います。
  32. 大槻文平

    大槻参考人 起こり得るような場所でないところで変災が起こる、そういうことがたびたび繰り返されております。いまもお話の中に私どもの大夕張の例が出ておりましたが、これなんかは全くだれしもが起こらないと思っておるところで起った変災ですね。しさいに事後に点検してみますと、やはりその係員の判断が誤っておったというふうに指摘しなきゃならないことがあったわけであります。その他の変災におきましても、私は係員の判断というものが相当大きな結果を招いているという場合が場合が非常に多いと思います。そこでやはり優秀な係員というものを養成して、そしてその適切な判断、緊急の場合における適切な判断をするような養成を常日ごろからやっておかないといけないのじゃないかというふうに考えております。ところがわれわれは一番心配しておりますのは、炭鉱状態がこういうような状態でございますので、優秀な職員、技術者を得るということが非常に困難であります。御承知のように、たとえば大学にしても、最高学府に行く者はほとんどないといったような状態でありまして、この点まことに憂慮にたえない次第でございまして、やはり石炭抜本策が急がれるゆえんはこの辺にもあるのじゃないかと私は考えております。
  33. 山本忠義

    山本参考人 いまそれぞれの炭鉱にある既存のたとえば保安協議会であるとか、山元の経営協議会であるとか、いろいろな場を利用して活用するということも、確かに御指摘のとおり大事な保安防止に役立つ要因ではないかと考えます。しかし、私どもとしましてはそういうことはどの山でもそれぞれいままでやっておられると思います。しかし、それが形式的に流れてマンネリ化の方向にいっておるという点が先ほど遠藤参考人のほうから係員の立場として指摘があったわけでありますから、そういう面も十分に反省をしなければならないと思いますし、やはり私は根本的にそういう会議運営する場合には、生産計画を会社側が労働組合に提示する段階の中で、日常保安の違反個所なりあるいはまた危険なところなり、こういうものはよくわかっておるわけでありますから、そういう点については生産計画を修正してでも保安第一主義を貫き通す、こういう基本的な思想というものがなければ、形式的に山元の民主的な機関運営だけにたよっては改善される余地がないだろう、こういうふうに思っております。だから当然組合側ももっともっと反省をして、組合のみんなとよく話し合いをして――とうとい命でありますから銭金にはかえられません。確かに炭鉱労働賃金やその他は安いわけでございまして、その日暮らしの伝統がございますので、もう少しやはり金を取りたい、多少ここはあぶないなと思っても働いてしまう、こういうような悪弊がないわけでもありませんので、これらの点は直接山元の指導者の皆さんとも話し合いをして、とうとい命というものは銭金にはかえられないのだ、こういうような思想をより一そう高めていく、こういう相関的な関連の中でのみ前進することができるのではないのだろうか。これは当然会社側に一方的に責任だけを押しつけるということではなしに、われわれのいまの体制の中であってもわれわれの努力次第によってはほんの少しでも改善する余地があるとすれば、組合は真剣に取り組む必要がある、こう考えております。
  34. 堂森芳夫

  35. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、今度の平和炭鉱災害について現地を視察いたしましていろいろ感じましたのは、石炭政策の変動期、いまいろいろいわれておるわけでありますが、いわば切りかえの時期における一つの典型的なあらわれではないかという感じがするわけです。それは経営の圧迫が保安に来ておるというだけではなくて、これは会社首脳部の考え方でありますが、要するに切りかえが行なわれる、どういう形態になるかわからない、だからいわば率直に言うと炭鉱の投資、ことに保安の投資についてはあまり重点を置かないという点があらわれておるのじゃないか、こういうことを感じてきたわけであります。  それは第一には、北海道炭鉱というような日本におけるきわめて優良会社において難燃性のベルトを全然使っていないという事実、さらにまた、誘導無線機がすでにかなり使われておるにかかわらず一機も各炭鉱ともない、こういう事実を見ると、どうもここに一つ問題がある。もしこのままで推移するならば、ことにいまいろいろいわれております、いままでの会社を石炭部門を第二会社に移すとか、分離をするとかあるいは統合の方向にいくとか、この切りかえの時期には、経営者、経営首脳部の考え方いかんによってはたいへんな事故になる可能性がある。要するに石炭投資をなるべく少なくしていこう、あるいは会社によってはその新しい会社が自分のものであるからという気持ちであるならばこれはともかくとして、変動期においてことに炭鉱投資ということになれば、  一番どうしても軽視されるのは保安の面であるというような感じがしてならない。これは一体私は、今後いろいろな政策転換の問題、あるいは分離から再編成、統合へとつながっていく過程において起こる問題ではないかと思うのです。保安だけでなくて、生産についてもいえると思う。坑道をなるべく掘進しないで採炭だけやっておる。こういうことだって、経営首脳部の考え方いかんによってはできるわけです。それは御存じのように、すでにわが国においては経験したところである。要するに国家管理体制から自由企業に移ろうとしたあの昭和二十三年から四年の状態、配炭公団に粗悪炭ばかりがどんどん出るということはあり得ない。ところが現実には粗悪炭ばかりが出てきた。こういうことは、やはり経営者、最高首脳部の考え方いかんによっては十分考えられることです。社内においても実はそうです。第二会社になるときに、現場の幹部はなるべく掘進をして、そうして第二会社が発足したときには増産しようと考える。逆の場合もありますけれども、こういうことはよくあるのです、切りかえの際には。でありますから、私はいまこの切りかえの行なわれようとする際に、ことに保安施設についてサボられるんではないかという心配をしてなりません。これについて、協会並びに石炭鉱業連合会のほうから意見を承りたい。私は、保安だけでなくて、非常にこの点は心配している。そうして新会社が発足してみたら炭が出ない、急に出炭が落ちたなんていう現状が起こらぬとも限らぬ。これは私は全般のことを言っておるわけじゃないし、個々の経営者の考え方によって行なわれる問題である、かように考えておるわけであります。これをひとつお聞かせ願いたい。
  36. 大槻文平

    大槻参考人 石炭鉱業の最後的な段階と申しますか、転換の時期に際して経営者はいいかげんな気持ちでやっているんじゃないか、特に保安についてそういう考えを持たれるのじゃないかというふうな御指摘でございますけれども、先ほど鹿野先生からもおしかりをこうむったのでありますが、われわれ石炭生産というものに従事しておる者が保安を考えない、保安を重視しないでやっておるというような、そんな無定見な経営者は一人もおりません。たまたま災害が起こったということのために、言いわけができないような形にはなっておりますけれども、変災を起こすことを好んでやるような経営者はもちろんおりませんし、したがって、保安を軽視しているという経営者はないと私は断言いたします。  ただ、現在のような炭鉱状態下において、多賀谷先生が御指摘になりましたような経営者がありとすれば、これはまことに申しわけないことでございますので、私は不旦評議員会を開きまして、両先生の趣旨を十分各社長に徹底さしておきたいと思います。  どうぞ、御了承いただきます。
  37. 植田勲

    植田参考人 私は、この四月まで連合会の会長をしておった者でございますが、私の考え方としては、天はみずから助ける者を助ける、こういう指導方針でおったのでございます。それで、どうしても自力更生ということを一番に重きを置いて指導してきたわけでございまして、今度の変革、第二会社をつくるというようなときにも、第二会社はつくるかっくらぬかは自由という話でございますが、私のほうの中小炭鉱のほうでも、第二会社をつくるところもありましょうし、あるいはつくらずに自力でやっていこう、現在のとおりやっていこうという炭鉱もあるかと思いますが、いずれにしてもわれわれの炭鉱中小炭鉱は全部自分でやっていこうという自力に燃えておるわけです。     〔委員長退席、鹿野委員長代理着席〕 企業自分のものだということに徹しておりまして、それで自分でやっていこうという信念に燃えておる人が多いのです。そういうことで、生産が落ちるとか、それはいろいろ、個々の炭鉱によってはあるいは炭量が少ないところもございますから、そういう点はあるかもしれませんが、炭量のあるところは、いまの生産を続けていくという信念に徹しておると私は思うております。  以上でございます。
  38. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 さらにこの管理体制の点についていろいろ同僚から質問がありました。まず、パトロールがなぜできていなかったのか、あるいは先ほどお話がありました三番方には夜警を除いては坑務所に責任者がいない、それが通常の状態であるとおっしゃった。これは現地でわれわれが会社から聞いた話であります。さらにまた、訓練は実際は規則によって年に二回ということになっておりますけれども、実際、非常事態に役に立つような訓練が行なわれていない。こういうことは事実が残念ながら証明をしたと思います。  そこで、私は一月に一回少なくとも総点検、総訓練日を設けてやる必要があるんじゃないか。これは個々の災害が多い炭鉱というのを指定してじゃなくて、全炭鉱それを行なう必要があるんじゃないか、こういうように考えておるわけですが、これに対してどういう考えであるかお聞かせ願いたい。  それから構造上のおくれということを全炭鉱の方からお話がありました。それは独立分流の確立の問題であるとか、盤下坑道の掘進の問題であるとか、あるいはまた後退払いの問題であるとか、ボーリングの問題であるとかいろいろおっしゃったわけです。ところが役所のほうから各会社に対して保安の構造上のおくれはないかといういわば回答書を要求したところが、ほとんどそういうおくれはありません。     〔鹿野委員長代理退席、委員長着席〕 たとえば運搬系統のおくれとかという生産のおくれはあるけれども保安の構造上のおくれはないという回答があったということを昨日も保安局長が話しておる。大槻さんは、いま融資補助に変えてもらいたいという希望的な話がありました。もう少し率直にそういう点は申請をされたらいいと思うのですよ。調査をしたところが、構造上の立ちおくれはないという調査がくれば、だれも補助金なんかを出そうという話にはならない。ですから、私はこの点は率直に行なう必要があるんじゃないか、かように考えるわけです。会社を通じてやったか、直接鉱業所を通じてやったかはわかりませんけれども、こういう問題が出ておる。これについてどういうようなお考えであるかをお聞かせ願いたい。  それからもう一つ申告制度といいますか、申告運動といいますか、あるいはこれは社内でもいいのですが、あるいは役所でもいいのですけれども、役所の場合には法律に基づくものでありますけれども、やはりそういう不備を発見したら、どんどんそれを上に持っていくということを、慣習を確立する必要があるんじゃないか。何人といえども保安の不備を発見した者はどんどんそれを申告する、それをひとつ運動にする、このことも必要ではないか、かように考えるのですが、以上の点について各氏からお聞かせ願いたい。
  39. 大槻文平

    大槻参考人 ただいま全鉱の退避訓練というものを年に二度という規定ではあるけれども、月に一ぺんぐらいやったらどうかというお話ですね。私は訓練ということはたび重なるほどいいものであるということは承知しております。また、訓練はやがて不可能を可能にするものであるということもわかってはおりますけれども、全鉱退避の訓練はやはり現行制度の二度ぐらいでいいのじゃないだろうか。相当広い坑内が多いので……。
  40. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ちょっと違う。全炭鉱に適用するという意味です。要するに各社全部やる、各炭鉱全部やるという意味です。特定の炭鉱でなくてという意味です。
  41. 大槻文平

    大槻参考人 そうですが。しかし全然ガスの出ないところとか湧水の危険のほとんどないという炭鉱で、いますぐに毎回、毎月やるということまでの必要はないのじゃないか。ただ毎回やるということであれば、私は、ある坑の災害発生可能性の強い個所についての退避訓練というものを繰り返してやったほうがむしろいいのじゃないかというふうに考えます。  それから、坑道追い切りについての不備な点の申告の問題でございますが、これは私も実は実情承知いたしておりません。よく取り調べまして、もしそういうような状態になっておるのだとすれば、お話しのようにやはり申告して、そして当局からも対処していただくほうがいいのじゃないかというふうに考えます。  それから第三点の保安の申告でございますね。それはもう非常におもしろいことじゃないか。従業員から申告させるという意味ですか。――それは非常にけっこうなことじゃないかと私は思います。
  42. 植田勲

    植田参考人 一番初めの退避訓練の問題これは中小炭鉱はもうときどきやっておるようです。それで申告の問題もだいぶやっておるようですが、中興鉱業ですか、あれは非常に訓練なんかよくやっておるようです。テレビなんかつけて連絡も非常に充実しておるようですから、あれにならってみなやろうというようなことに、訓練の問題ですね、そういうことです。  それから申告の問題は、それは私現場で現在やっておらぬものですからよく把握しておらぬのですが、申告すべきものは申告さすように指導いたしましよう。
  43. 山本忠義

    山本参考人 退避訓練その他保安教育徹底というのは、いまの範疇の中だけではなかなか効果をあげることはできないだろう、こう思います。したがって、何でも国、国とこういうことで恐縮ではありますけれども、国の前向きな予算措置を含めた実行をしていただかなければ、当面すぐ実効があがるというようなことにはならないだろう。たとえば各会社の中でも、いまリーフレットであるとかあるいは幻燈写真であるとか、そういうことで保安教育というのは一応形式的にはやっておりますけれども、実際血となり肉となるようなことにはならない。また、かつて茂尻鉱で大災害がございました際には、それぞれの関係の諸組合では一週間に一ぺん必ず操業を休んで、生産をとめて保安点検をやる、こういうことは実施をされた例がございますけれども、その後の合理化攻勢の中ではこれは非常にむだの多いことだ、こういうことで廃止されておるというのが実情でございまして、私どもは当面それぞれ当局のほうを含めて要求はしているところでありますけれども、ぜひひとつ諸先生方のお力添えをいただいて、そういう面では生きた実際に役に立つ教育というのは、会社の生産中の埋没するのではなしに、やはり一日ぐらいは、保安教育を一週間に一ぺんは必ずやるのだ、こういうことはたいへん有意義なことではないかと思ったりしているところです。そのほかになおまた組合員といいますか、従業員一人一人の教育実施してもらう、学問的にもきわめてもらう、そういうためには予算をつくっていただいて、いきなりすぐ理想を追うようなことでは決してだめだろうと思いますが、前々から御要求を申し上げておりますように、鉱山保安学校のようなものを、北海道の場合なら空知炭田のどまん中につくって、そこで若手の労働者を、中学を出た人を教育して、石炭産業のほうの労働力にするということとあわせて、それぞれの鉱業所から従業員を派遣して、一週間なり十日なりをびっしりそこで教育をして、もう一度現場のほうに戻してくる。こういう思い切ったことをやってもらわなければ、なかなか生産に追われての教育というのは身になるものにならぬのじゃないか。こういう点は従来から御指摘を申し上げているところでございますので、諸先生方のお力添えでそういう点も一日も早く実現をさしていただきたいと思います。  それから次に違反個所についての申告でございます。それは経営者がどうそのことを正しくとらえて実効のあがるようにするかということのほうがポイントではないだろうか、こう思います。私どものほうは、数重なる大災害で矢もたてもたまらなくて、いまそれぞれの現場に指示をして違反個所について全部申告をして、会社のほうにも通知をいたしますし、また交渉も持ちたいとは思っておりますが、とりあえずは当局のほうに対して、これだけの違反個所があるじゃないか、こういうものについて当局の保安監督官として、監督行政としてどう措置をするんだ、こういう点についてこの間も椎名通産大臣のほうにもお目にかかりまして、それらのことについて保安協議会等を通じてやっているところでございますので、これもまた当局のほうを十分に督励していただいて、多少私ども作業中止命令が出るとかなんとかということになると、実際の収入が低下をするという点で困るという面も出てまいりますけれども、その点はやはり先ほど来申し上げておりますように銭金にはかえられない人の命でありますから、そういう点は徹底をして組合員とも十分に話し合いをして、不便は忍ぼう、そのことが究極的には石炭産業を安定させ、安全なければ労働なしという安定職場を築き上げる唯一の道だ、こう考えていま実行に移しているところでございます。
  44. 平川久米蔵

    平川参考人 まず退避訓練でございますが、現行法律で年間二回実施するようにきめられております。退避訓練であれば、これが実のある退避訓練実施するということであれば、私は十分二回で足りるのではないかと思います。しかしながら、まだまだこれが形式的に流れている傾向が多多見受けられるので、その点は改善をする必要があるのではないかと思います。  次に、一カ月一回全炭鉱一斉に保安点検をしたらどうかということでございますが、これもできればそういう運動を起こすことも必要だろうと思いますが、それぞれ山によって実情が異なっております。そういたしますと、これも長く実施するようなことになりますとマンネリ化する危険性がなきにしもあらずというふうに考えますので、現在私たちの炭鉱では一カ月に一ぺん、保安委員会を開催する前に、保安委員会のメンバーで坑内を総点検いたしまして、保安委員会の議題に供しているということを実施いたしておりますので、これで坑内の点検については足り得るのではないかというふうに考えております。  次に、坑道掘進のおくれを私当初申し上げました。保安局からはおくれてないというお話があったようでございますが、私たちも保安協議会でその資料をいただいております。昨年度に限り保安関係については一〇一%か掘進は進んでおるようでございますが、その他の坑道についてはまだまだそれまでいっておりません。全般的にはたしか八六%でありますか、そのくらいしか遂行いたしておりませんので、私は坑道掘進全部正常な形で進んでおるというふうには考えておりません。  次に、申告制度でございますが、これは法律できめられております。したがって、これは大いに活用するのが当然であろうと私は思います。ただ、これが直接監督局に行くということでなくして、全炭鉱では保安提案運動実施いたしております。そしてそれぞれ気がついたことを保安統轄者に提案する、そして改善するという方法をとっております。したがって、これは保安統轄者、会社上層部がその気になれば十分改善できる。改善の実際の例も、当初申し上げましたとおり、作業部面ではこれが成功いたしておりまして、実施する以前から比べると坑内が見違えるようになったということで、以前入坑した者が最近入坑したらそういうふうなことも言っております。したがって、申告制度は当然活用すべきであろうけれども、その以前にやはり保安改善運動というものを展開する必要があるのではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  45. 遠藤一三

    遠藤参考人 月一回の総点検でございますけれども、いま平川参考人が申し上げましたようにほとんどの炭鉱が、保安委員会あとになるか先になるかは別にしまして、保安委員のメンバーによりまして総点検をやっておるというのが実情ではなかろうか。なお進んだところにつきまして、いま切り羽はほとんど重装備化でございますから、午前中と午後に分けまして機械を一斉にとめまして、五分間の総点検をやっておるという山もあるやに聞いております。したがって、これをどう中身を充実していくかということが大事ではなかろうか、こういうように考える次第でございます。  それから退避訓練につきましては、現行年二回というふうにきめられておりますけれども、これも数多くやるうちに何か年中行事というかっこうになりはせぬかという気がいたしますものですから、これもやる方法と運用面でひとつ効率的なことをやったほうがいいのではないかというふうに考えます。特に退避訓練につきましては、災害時には係員の判断、われわれの判断というのが非常に大事な問題である。私どもが、災害事故が起きますと応急措置をまずしなければならない。たとえば火が出たということになりますと、火も消さなければならない、連絡もしなければならない、退避もさせなければならない、こういうことで係員の判断が非常に大事になってくるわけでございますから、実質的な退避訓練も大事でございますけれども、それ以上に大事なのは図上による訓練、判断の養成と申しますか、判断するための養成と申しますか、この図上訓練が非常に大事ではなかろうか。これは一カ月に一回に限らず、保安講習会のたびごとにでも保安図上訓練というものをやるべきではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。  次に坑内構造上の問題でございますけれども、確かに平川さんが申し上げましたように坑道補助融資等がつきましてから、保安確保のための坑道は非常に延びておるように私ども保安局のほうから知らされております。しかしこれはあくまでも、私の考えでは予防という立場に立っての坑内構造の整備でございまして、もう一歩進んで先制保安、いわゆる先を制するのだ、こういう形の保安に徹するならば、若干でもいい、たとえばうちの山では前進でもよろしいのだ、前進でも支障がないのだ、こういうことがありましても、後退払いのほうがよいわけでございますから、ひとつ積極的に後退払いに切りかえる。こういう先制的な意識が必要ではなかろうか、こういうように考えておるわけでございます。ただその際に、何といっても坑道掘進を急ぎますと、坑道掘進を強化するということになりますと、いまの人員の問題それから資金の問題ということになりまして、勢い生産がダウンする、こういうことが起こる可能性が非常に多いわけですから、生産の落ちた分、人員配置の面、この辺もやはり政策的に考えなければなかなかできない問題ではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。  それから申告制度の問題でございますけれども、それは非常にけっこうなことでございますけれども、それを実施するにあたっての記帳が非常に大事ではなかろうか。一つには労使関係と申しますか、係員を含んだ労使関係がまず一番の問題ではなかろうか。われわれが受け取りまして、ほんとうにありがとうございました、そこが悪かったかということですなおに受け入れる体制と、それからそれを実施するにあたってすなおに実行できる体制、いわば労使関係が非常に大事になってくるのじゃないかというような気がいたします。これが一歩間違いますとあげ足とりだ、あるいは労使紛争の種だということになるものですから、ひとつ記帳だけはきちっとしておいてこの運動を進めるべきではないか、こういうように考えます。  以上でございます。
  46. 堂森芳夫

    堂森委員長 田畑金光君。
  47. 田畑金光

    ○田畑委員 重複しますので、しない限度で一、二お尋ねしてみたいと思いますが、私も今度の災害調査に加わりまして、平和炭鉱災害実情を見てきた一人であります。先ほど来いろいろ指摘されてまいっておりますが、私も全く同じような気持ちで見て帰ってきた一人です。今回の災害のごときは、私はもう少し日常から特に保安というものが重視されてその教育趣旨が徹底されておるならば未然に防止できたものだ、こう考えて帰ったわけです。私、ことしの四十三年度の重大災害の資料を鉱山保安局からもらっておるわけでありますが、今回の災害まで入れますと十件にのぼっております。ことに私この資料を見ていささか疑問を感じたことは、将来の日本のビルド山の期待を一番集めておる北海道に、ことしになって災害が非常に多いということです。また、近来起きている災害大手に非常に多いということ、あるいは大手の第二会社に多いということです。北海道に行ってみまして、中小の場合にわりに災害が少ないということを聞いたわけでありますが、これは一体どういう事情に基づく、あるいはどういう理由に基づくものであろうか、こういうことも私いささか疑問を感じた点です。そういう点においては、今回の災害を見てもやはり一番大事なことは、自主保安体制を労使ともに確立するということが大事じゃないか、こういうことも感じたわけです。中小がわりあい災害が小ないということは、そういう面においてさきの植田さんのお話にもありましたが、とにかく保安に対して取り組む気持ちが中小の場合にわりに強く出ておるのじゃないかという印象も、私ないでもなかったわけです。  それと、特に私は大槻会長にお尋ねをしたいと思うのですが、私はいろいろ石炭協会の機構についても伺っておりますが、石炭協会においてはこの種災害の頻発に対してどういう指導なり、あるいは業界の自戒なりを申し合わせあるいは実行なされておるのか、こういう点についてまず第一に承っておきたいと思います。  さらに私、今度の事故を見まして、冒頭申し上げたように、これは起こるべくして起きた事故だというような感じがするわけです。平和炭鉱という北炭においても最も有望な、はたから見るといわば北炭の中でもドル箱といわれる条件の整っている山でこういう災害が起きたということは、起こるべくして起きた事故ではないか、こういう感じすらするわけです。先ほど来指摘されておりますように、事故が起きてから緊急の退避命令が出されるまでに一時間半の時間が経過しておるというこのことです。私が特に会社の最高責任者にこの辺の事情を承ったわけでありますが、どうして煙が出た、火災が起きたというときに即時待避の指令を出さなかったのか、こういうことを承ったわけであります。これに対してその会社の責任ある立場の方は、過去三十年間うちでは災害が起きたことないんです、こういうことです。だから、こういう場合はまず消火作業に当たるとか点検するとか、こういうことをやって、その後しかるべき措置をとるのだ、こういうことです。それはそのとおりかもしれぬが、しからばその後の具体的な措置が緊急にとられたのか。とられていないからこういう災害が起きているわけです。また、係員が一人でいろいろな仕事を担当して、そうして電話連絡をとっても電話が通じない、こういう事態です。三十年問うちの山は災害が起きていないのだ、このベルトで火が出たことはないのだという経験だけを唯一のたよりにして、その経験が至上だというものの考え方、取り組み方、こういうがんこな頭であり、がんこな態度であっては、いかに監督官を強化して監督官がいろいろな注意を与え、監督をしても受け入れないような経営者にがんこさがあるとすると、幾ら行政監督機構を強化してもこれは問題の処理にはならぬ、私はこういう感じがするわけです。元来炭鉱経営者、特に技術担当の人がたには非常に自信が――いい意味においてりっぱな自信を持っておられる、あるいはまた自信が過剰で、ときにはがんこというような性質にまでなっておる。こういうような態度であっては今後の保安の問題の処理は容易でない、私はこういうような感じを受けるわけでありますが、やはり保安の一番責任を持ってもらわねばならぬのは鉱業権者であり、あるいは管理者の皆さんであると考えておりますが、こういう問題について、私は協会として十分御指導をお願いしたいと考えておるわけで、こういう点について大槻さんの御見解を承っておきたいと考えるわけです。  また、もう一つ先ほどの質問の中にありましたが、大槻さんの答弁では明確にこれについては答弁なすっておりませんが、ちょっともう一つ質問します。  もしあの三番方に責任者が坑務所にいてあの電話連絡が直ちに通じていたとすれば、そしてそれに基づいて責任者が臨機の措置をとったとすれば、あの事故はあのような形にならなかったと思うのです。ところが残念なことには三番方にはうちの山はそこには置いてないんだ、こういうことですね。これはおそらくその他の山においても同様であろう、こういうわけです。やはり三番方においても何らかの事故がいっどこで発生するかもしれぬということを考えるならば当然置くべきだ、私はこう思うのです。先ほど大槻さんのお話を承りますと、うちの山では二番方については優秀な保安責任者、技術職員を置いておるというお話がありましたが、三番方についてはどうなっておるのか。置かなくてもいいのか、置かないという、そういうようなことで今日まできておるのかどうか、この点をひとつ明確に承っておきたいと思うのです。まず第一それを承りたいと思います。
  48. 大槻文平

    大槻参考人 第一点であります日本石炭協会の機構の問題でございますが、石炭協会と申しますのは連合体でございまして、時期によりましては生産等につきまして統制をしたような時代もございますけれども、大体において情報連絡ということがおもな協会なのであります。したがって、石炭協会の中に保安部というものがありますけれども、この保安部は現地の現場の仕事のやり方その他について指導するとかどうするとかいうことはあまりやっていないわけであります。ただ、もう少し高い次元からこういう機械を使ったらどうかとか、こういうふうなやり方をやってみたらどうかという、そういう意味の指導はやっております。したがいまして、現在たとえば今度の北炭の変災に関しましても、協会としてより積極的にひとつ指導なりあるいは応援なりすべきじゃないかというような意見も出ておるような次第でありますが、いままでのところそういった職責しかない、こういうようなのが実情でございます。  それから三番方に上級係員を配置しているかどうかという問題でありますが、大体三番方というのは採炭作業というものをやっておらないのが大部分だと思います。そこで翌日の一番方の準備作業というようなことが大部分なので、やはりそういう意味から各社とも大体高級職員なり技術員なりというものを配置しておかないのが実情ではないかと思います。しかし、相当多数の従業員坑内で働かしている以上、やはり責任ある指示をなし得る係員というものは当然配置すべきものであるというふうに考えております。この点につきまして私、各社の事情をつまびらかにしておりませんから、後日評議員会でよく話をいたしておきたいと思います。
  49. 田畑金光

    ○田畑委員 私は特に大槻会長にお願いしておきたいことは、その第三の点でありますが、やはり私は、三番方というものはそういうものであるにいたしましても、今回のような事故を振り返ってみますと、当然これは非常の場合に直ちに措置を指示できる責任ある者が配置されてしかるべきだ。これは昨日この委員会鉱山保安局長にもその辺の事情をただしたわけでありますが、当局といたしましても、それは常識だというような見解でおるわけでありまして、われわれから見ましてもまた当然それは常識の問題だと考えるわけでありますが、この辺については今後ひとつ十分善処されることを希望したいと思います。  それから先ほどのお話の中で、平川参考人のお話の中にありました、坑内係員が一方は上からの指令を尊重しなければならぬ、また下から労務者のいろいろな注文を受けなければならぬ、そういうような立場において非常に仕事のやりにくい、あるいはまた、その責任を遂行するについていろいろ困難な事情も立場もあるやに私は今回の調査の結果見受けたわけであります。ことに私はいろいろな調査の中で、あれだけの事故が発生したのにどうして係員が緊急の待避措置をとらなかったのか、こういう点も率直に疑問に思った一人です。ところが、これについては先ほどの会社の最高責任者のことばと同じように、やはりこういうようなときにはまず点検だ、あるいは消火だ、こういうようなことをやって、待避が二の次三の次になって今回の事故に至ったということ。これは私はいまの坑内の技術職員の立場ということを考えてみたならば、会社の最高の管理者、経営者が先ほど申し上げたような頭であり考え方であるとすれば、そのもとに使われておる職員が、坑内の係員がいろいろ思いめぐらすことは、当然これは考えられることだと思うのです。また職員が直ちに緊急の退避をさした、しかし事故が大事に至らなかった、そういうようなことになれば、今度は賃金の問題その他から職場の労働者からいろいろ苦情が出てくる。そういうような問題等を考えてみると、私は抗内の技術職員の身分の安定あるいはその職責の行使にあたって、その遂行に十分な権限を与えておくことが必要だ、こういう感じを持つわけです。いまの鉱山保安法の規則のもとにおいては、当然坑内保安の係員はそれだけの権限は付与されておるが、現実の石炭産業の状況、あるいは追い詰められた炭鉱経営の実態のもとにおいては、保安技術職員が正当な権限を行使するのにも行使できぬような立場に置かれておるのじゃないか、こういうことを私は見てきたわけでありまして、この点についても私はやはり大槻会長にお願いしたいのは、根本的には保安を大切にする会社の姿勢が問題だと考えるわけです。もしこれが今後災害原因の究明あるいは責任の追及あるいは刑事責任の問題等々になってくるならば、気の毒な第一線に立つ坑内の係員が問われて、一番責任を関わるべき会社の人たちが責任を免れる、最高の責任者がその責を免れる、法律的にこういうようなことになりはせぬかということを私はおそれるわけでありまするが、こういう点について協会長さんとそれから職組の遠藤さんに見解を承っておきたいと思います。  時間もありませんのでついでにもう一つ、私はこれは炭労山本参考人にお尋ねしたいわけでありまするが、先ほど来いろいろ保安の問題について、やはり保安を全うするためには国有国営、体制を切りかえなければ全うされないというようなお話がございましたが、私はこれも一理あると考えるわけです。国有になったということは、いわば労働者の側から見れば雇用の安定、石炭産業の安定、こういうようなことで、そして喜んで働ける職場で初めて保安も守れるという意味においては私は同感でありまするが、またお話の中にもありましたように、国有をとっておるイギリスやフランスの例などにおいて非常に災害が少ないということも、またそのような論拠を与える一つの事実だ、こう考えております。  ただ私は、今回の調査を通じて感じたことは、生産保安を分離しなくちゃならぬ、すなわち生産行政は通産省、保安行政はやっぱり労働省、こういうような形でやることによって初めて炭鉱保安確保できるというような、行政機構の分離による保安確保という見解もあると思います。あるいはまた、保安についてだけは国家の管理によってやるべきだというようないろいろな意見もあろうかと考えておりますが、いろいろ機構を変えることによってメリットもあるかと思います。しかし私は、一番大切なことは人命を尊重する、自分生命を大事にする、この権利の意識というものが何よりも根本ではないか、私はこういう感じを受けるわけです。  ことに私は、今度の調査の現場で当たって、現地において組合の代表の皆さんからもいろいろ御意見を承りましたが、なぜああいうようなときに労働者個人の判断で緊急避難しなかったのかという私たちの問いに対しまして、保安については保安規定やその他の規則に基づいて命令、指示系統があるから、その命令、指示によらぬ限りわれわれは職場を動くわけにはまいらぬ、こういうようなお答えであったわけでありまするが、しかし私は、ああいう異常な事態において労働者自分生命を大事にする、自分自分生命、身体に襲う危機からのがれようというならば、みずからの判断で当然あのような場合は緊急に退避すべきであった、こういうふうな感じを受けるわけでありますが、申すまでもなく刑法上にも緊急避難の行為というのが正当な行為として許されておるわけで、そういうことを考えてみますと、この法律、規則のもとにおいてもああいうような事態においては労働者の自発的な退避も当然のことだ、こういうふうな考えを持つわけです。そういうような点等を考えたときに、私は、国有化に移行することによって確かに保安確保されるという一理もあろうかと考えられますが、これらの事情についてもう少しく、ひとつ保安と国有化という体制を切りかえることのメリット、こういう面についていま少しく御見解を承ることができれば幸いだと思います。
  50. 大槻文平

    大槻参考人 御質問の第一点にあります保安係員の職責を尽くす上において支障のあるようなことがあってはならない、これはもちろんのことでありまして、私は、現在の炭鉱保安係員が自分の職責を果たす上において、上のほうからあやまった指示をされておるというようなことは絶対にないのではないかと思っております。また、そういうようなことがあってはそれはもうたいへんだというふうに私は考えております。もしそういう傾向がありとするならば、やはり経営者といたしましては厳重にそれを是正しなければならぬというふうに考えるものであります。  ただ、今回の変災についての責任の所在の問題がございましたが、私の聞いておる範囲では、やはり係員の判断というものが、連絡すべきか避難命令を出すべきか、消火を先にすべきかという判断を――やはりそういうとっさの間の判断でありますから、よかった悪かったということを言うわけでありませんけれども、結果的にはやはり間違っておったのではなかろうか、したがって、保安というものは先ほども申しましたように、係員の判断というものが非常に重大な役割りを演ずるものでありまして、それだけにやはり係員の平素からの訓練保安に対する考え方だけでなくて、保安技術面における技能の向上ということを、ひとつ十分努力しなければいかぬことであろうということは常から考えておりましたけれども、今度の変災についても非常に強く感じさせられたわけであります。
  51. 遠藤一三

    遠藤参考人 私ども保安技術職員は法的には保安責任を負っております。しかし実際面におきましては生産をもになっておる、責任を持つと申しますか生産をも担当しておるわけでございますから、この辺を両立させることが私どもの重大な責任だ、こういうふうに感じておるわけでございます。常日ごろ保安を重視しながら生産を行なう、こういうことが一つのたてまえになっておるわけでございます。  しかしながら現実に災害が起きたわけでございますから、先ほど、冒頭私が申し上げましたように、やはり係員の任務が遂行できる体制経営者の方々も人員配置を含めて考えてもらいたいというふうに思いますし、また係員の指示が徹底するという職場規律の問題を完備しなければならぬじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから緊急退避の問題でございますけれども大槻参考人が申し上げましたように、ほんとうに判断というものが非常に大事なわけでございまして、確かに平和の災害におきましては、応急措置とはいえ、消火のほうに重点を置いてやったやに聞いておりますけれども、同時に、連絡ということも同時に行なったならば今次災害は防げたのじゃないか、こういうふうに深く反省をしておるわけでございます。  それから先生先ほど三番方の件につきまして質問があったようでございますけれども、私どもとしましては、現地から聞きましたところによりますと、三番方のいわゆる上席係員、これは平和坑には二名置いておるやに聞いております。ただこの上席係員の方が二名とも同時に入坑しておる、こういう話で聞いたわけでございまして、この辺は運用の面で必ず一人は坑務所に残る、こういうことでしなければ今後問題がまた起きるのではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  52. 山本忠義

    山本参考人 石炭産業の場合にはとにかくいろいろなきれいごとをいいましても、先ほども統計的な数字で御説明を申し上げましたように、いまのやり方の中でとにかく一・九時間という超過労働坑内の条件というのは、数次の合理化にわたって労働者のほうにきわめてしわ寄せがきている。あるいはたくさんの殉職者が出てきている。大災害が起きてきている。ちょっと気をつけてさえくれればこんな不測の事態が起きなくてもいいではないか。そのことが経営者の側にしてみたところが大きな損害じゃないか、こういうふうにいわれている。これは技術でありますから、そういう面から脱皮をして長期的な展望を持つと同時に、国の経済の発展のために寄与するエネルギー源として安定をした産業にさせるためには、どうしても、この炭鉱の場合にけがと弁当は自分持ちというような悪弊があるわけでありますから、そういうことのないように、安全な職場としてしかも長期的に石炭というのは必要な産業だ。そこで安心して働けるようにしなさい、こういうふうにやるためには何といっても一元的な指導が必要ではないのか。その過渡的なやり方としては、いまのそれぞれの私企業でばらばらにやっていることを、一挙に合併なりの方向へ持っていくためには、やはり何といっても国の責任で国の権力をかりて国民の財産に返す。国民的利益と合致する方向に産業を再編成する、こういう高い次元での判断が必要ではないのですか。いろいろな議論をすることもいいですけれども、現実にそこまできているときではないでしょうか。こういうふうに問題提起をしております。したがって、国管の場合等に保安で完全に守られるだろうかということでございますけれども、私どもは必ず守られる、こういうふうに思っております。多少そのことによって一時的に生産が低下するということがあっても、無理をして背伸びをして、つま先立って、大災害を起こして炭鉱もろともおかしくしてしまう。とうとい人命を失ってしまう。こういうようなことに比べるならば、一時的な生産の低下というのは長期的な視野の上に立つならば必ずしも絶望を意味するものではない。そういう中にあって労働者がほんとうに協力をして長い将来に生きる道を必ず切り開いていくことができる。炭鉱労働者はそれくらいの気概を持っておるし、それくらいのことはできる、いままでのいい例があるじゃないですか。能率はこれだけあがっているじゃないですか。これは炭鉱労働者が一生懸命働いておるところじゃないですか。こういうふうに申し上げておるわけでございまして、事あらためて自分の主義主張の面からものごとを申し上げておるのではない点はおわかりいただけると思うわけであります。きびしい今日置かれている石炭産業をどう国民的利益に合致をさせ、人命を失わせないようにさしてりっぱな産業にするか、安定をした産業にするかというのはこういう方法しかありません。私どもの経験ではこれしかありません。こういうふうに申し上げているところであります。  それから次に、指揮命令がなければ重大な災害であっても退避をしないのか、こういうことでありますが、そういう意味で御質問をされておるのではないと思いますが、もちろん命は大事でございますから、そういう場合には当然私どもはむちゃな命令なり、そういうものにそのまま忍従し、服従するということでは決してございません。しかし炭鉱の場合はよくお考えおきをいただきたいし、調査をしていただいてわかっておられると思いますけれども採炭現場でカッター機械がうなってぐんぐん言っている、炭じんは舞い上がっている、こういう騒音の中で働いている者が、人が教えてくれなければ、すぐそばで起きた、自分の切り羽で起きた火災なら予知することができますけれども坑道の向こうのほうで火災が起きたなんというのはわかりっこがない仕組みになっていますから、そういう意味で一人一人の保安教育ももちろん大切だけれども、会社の管理機構の中における、保安をしっかり守るという指揮系統、命令、こういうようなことがより大事ですよ、私どもの命というのは、働くことは一生懸命働きます。会社のほうのそういう機構、仕組みの中にお預けをしているのですから、より大事に扱ってください、こういうふうに申し上げている次第でございます。
  53. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 参考人の皆さまはたいへん長い間お疲れになっていると思いますが、私で最後でございますので、もうしばらくごしんぼうのほどお願いします。  先ほど同僚委員から、石炭産業は即保安である、保安は即石炭産業である、このような根本的な思想に立って石炭産業をやっていかねばならぬぞというようなことを言っておりましたが、なかなか名言だと私は思いました。私は皆さまに御意見申し上げるような気持ちはさらさらございませんけれども、先ほど大槻会長さんも、保安について、それをおろそかに考えているような経営者というものはまずない、私はそう信ずる、こう仰せでございました。また植田顧問さんも、中小企業こそは自力でやり抜こうという信念の上に立って、保安に対してもそれ相当に力を入れているはずだ、このようなお話がありましたが、お二人ともごりっぱな御意見であり、御信念だと思いますけれども、そのお話の反面に、ないそでは振れぬではないかという意味のお話がありました。つまりわれわれは苦しいんだ、いまの炭鉱産業の経済の中で精一ぱいのことをやっているのだからしかたないじゃないかというような印象を受けるお話があったわけでございますが、私どもは、何も一企業がその経営能力、その経済範囲で保安整備をはかりなさいと言っているわけではないわけであります。つまりこれだけやってなおかつ労働者の安全を保つためには、また企業の安定をはかるためには必要なんだという事柄に対しては、それこそ労使協調して前向きの姿勢でぐんぐんと政府なり、われわれなりに要望を持ってきてもらえばそれ相当にわれわれも活躍していくことをまず申し上げてみたいわけです。  そこで、時間が来ておりますので、簡単に二点だけお尋ね申し上げますが、平和坑の教訓から特に感ぜられましたことは、監視体制の重要性、これはあらためて心深く確認したわけでございますけれども、たとえば危険個所に対する坑内の巡回といいますか、こういうのがあっているということを聞きましたけれども、その巡回の時間とかあるいは員数ですね、最低ここまでなければならぬけれども、現在はこうなんだ、組合側の方から一つの具体例をあげてもらいたいと思うわけです。それに対して会社側のほうから、そのように言われるけれども、実際はこうできないのだというものがあれば言ってもらいたい。これが一点でございます。よろしいでしょうか。巡回点検などをなさるそうした時間とか、あるいは員数、これが現状ではあぶない、このように改めるべきであるということを具体的に組合側から言ってもらったことに対して、会社側から、そう言われているけれども、実はこうこうでそれはなされないんだというようなものがあれば言ってほしいということ。
  54. 山本忠義

    山本参考人 先生まことに恐縮ですが、いま私手元に資料を持ち合わしておりませんが、政府のほうには、私どもの要望書として、具体的にこうこうこういうふうにしてもらいたい、こういうものを出しておりますので、書類のほうがおわかりいただけると思いますから、お手元のほうに説明するものもつけ加えて、後ほどおじやまをしてお答えにかえたいと思います。  一口に――炭鉱別にいろいろございまして、なかなか平和坑の場合には云々だということが、確かにあります。ありますけれども、科学的にまだ事故の原因の究明が立証されておりませんので、私どもの推測の域を出ないというようなことであれば非常に困る面もございますので、手控えております。したがって、そういうことも一切合わせて、全体的に言えますのは、いわゆる保安担当係員という人たちの数が絶対的に不足だ、こういうことだけははっきり言えると思います。これは会社側との団体交渉で、山元なんかでもいろいろ行ないました際に、係員はもっと増員をする必要があるんではないか、巡回係員をふやしたらどうか、いわゆる採炭現場を見る、あるいはこっちの掘進現場を見るというふうに、係員が二カ所も三カ所も受け持つということで、ほんとうの意味で保安の実現ができるのか、できないわけだ。八名を十六名にせい、そういうようなことは随時やっているわけでありますから、そういう事例等も含めて、しっかりした資料の中で御説明をいたしたほうがよろしいのではないか、こう思っております。
  55. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 失礼ですけれども、たとえば坑内の危険個所に対して、いわゆる保安要員という方が回るわけですね。そういう事例に対して私は、たとえば現在は三名なら三名いるんだ、しかし、それはどうしても六名にしなければならぬのだ、その理由はこうなんだ、こういうふうに一つの例をあげてもらいたいのです。一つでいいのですよ。
  56. 山本忠義

    山本参考人 それが多様性がございまして、むしろ先ほど申し上げましたように、個々に足りないという例がございますから、たとえばある山では、これだけの増員要求をしております、こういうような例がございますので、そのことから御説明をしたほうが全体的に把握することが容易ではないだろうか、しかも正しくやることができるんではないか。ただ、はつり言えることは、会社側の代表の方から何かあれば別でございますけれども、係員が絶対に満ぱいでございます、こういうことにはなっていませんと、これだけははっきり言うことができます。私どもは、係員が足りない。とりあえず、もっと係員をふやすということをやりなさい、こういうふうに要求していることは事実でございます。
  57. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いま組合の代表の方のお話を聞いて、係員は満ぱいではないんだ、絶対にそれをふやしてもらいたいんだということなんですが、経費もかかることでしょうけれども、会社側として、そういう要望に対して、いままでどのような態度をとってこられたのか、今後またどのようなお考えでいかれるのか、そこを聞かしていただきたいと思います。
  58. 大槻文平

    大槻参考人 ただいまの御質問は、これは全く現場の問題なんでございまして、現場には労使双方からなっております保安委員会というものがございまして、その保安委員会の中で、そういった具体的な問題は論議されて、そしてお互いに生命を守る問題ですから、それは適当に話し合いの上でやっていくのが実情なので、具体的にどこのところが、どこがどうだと聞かれてもちょっとお答えできませんが……。
  59. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 そこで具体的に保安委員会で話し合いをなされて推進していっているんだという話ですけれども、その保安委員会での話し合いが現実に進んでいないから、いつまでもいまのような要求が出るんではないでしょうか。なぜそのように要求を満たされないかという理由を私は聞きたいわけですね。
  60. 大槻文平

    大槻参考人 それは数炭鉱を持っているというような非常に多くの会社があるということで、全く個々的な事情でありまして、一般的にこうだああだということは言えませんですね。それは、現場によってはもちろん係員の十分なところもあるでしょうし、あるいは何かの事情で足りないところもあるでしょうし、それはその現場でもって適当に処理すべき問題だと思いますね。
  61. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 会社側から見た場合はこれで足りる、組合から見た場合はとても足りないというところで意見が食い違って、そこの調整をなされると思いますけれども、やはり災害の起こっている現状から推測しまして、やはり絶対的には係員が足りないんではないか、これはもう結論として感ずるわけであります。したがいまして、会社側としても、係員の増員については特段の配慮をしてもらいたいという要望を残しまして、この質問は終わりたいと思います。  もう一つ、つまらない質問かもしれませんけれども、先ほどから災害を発見したときの判断ないしは処置、これが重大問題だという話がありました。私もそう思いますが、この前平和炭鉱の視察に行ったとき、こういう話を聞いたのですよ。  実は火災が起こったから消そうと思うけれども、上の指示がないから待て、こういうふうな気持ちも起こる。またもう一つの話は、災害だ、避難させようと思うけれども、もしかしたら避難するほどの内容じゃないかもしれない。待て待て、こういう気持が起こるんだ。その心境をずっと尋ねていきますと、たとえばあやまって避難しなくてもいいものを避難させると、労働者のほうから、何だ、変な命令指示を出しやがって――つまり、われわれの労働賃金がカットされるじゃないか。このようなやかましい話が出てくるんだということで、あぶないと思っても、ほんとうにこの目で見、はだで感ずるまでは指示が出せないというような話を聞いてきたのですけれども、こういう点、労使でそれこそよくお話し合いをなさって、賃金カットなど、もうほんとうにあぶないと思った際の指示というものは、かりにあやまっていても、そういうときは賃金カットをしないとかなんとかいうような配慮はなされないものだろうか、このような考えを持って帰ってきたのですけれども、この点についてよろしくお願いいたします。
  62. 山本忠義

    山本参考人 働いている者の生命に関することで、労働者の側のほうからおまえなんだ、こんなことをしてというようなことは絶対にあり得ないと思います。そういう措置をとった場合には、話をすれば労働者のほうは納得してくれると思います。あそこは崩落しそうだと思った。だから避難命令を出した、あるいはあそこのほうで、向こうのほうの坑道で火災が起きているから、こっちのほうへ来たらたいへんなことになるかと思って避難命令を出したんだ、何を文句を言うかと、それは係員のほうが胸を張って言うことだと思います。こういうことについて組合側から何だ、けしからぬということで文句を言ったことはないと思います。ただ会社の機構の仕組みの中で、会社の代弁ということで命令を出すわけでありますから、当然一日働いていれば一千五百円なり二千円なりもらえるものを、そういうことによってできた補償については、これは当然のことであります。労働協約上いろいろきめていることがありますから、賃金の協定書の中でもきめていることがありますから、補償給なり何なりというものをやはり払うというのが当然なことになります。だから、むしろ労働者のほうからおこられることが頭の中に去来するということよりも、そんな措置をして、何でもないのに避難をさせたら、会社のほうからおこられやせぬか、石炭は出さないのに、賃金補償もある程度しなければならぬ。おまえそういうようなことでは係員としてりっぱな資格はないぞというようなことが、むしろ働くというような状況になっておるのではないか。私らのほうはむしろそういうことではなしに、協約上しっかりそういう問題については、たとえば災害が起きて退避をしているときには賃金の何%とちゃんときまっておるわけですから、そういうふうに労働条件を取りきめて、係員もやはりあぶないというようなときには遠慮なくそういう退避命令を出すとかなんとかいう措置をとった者について、会社側のほうからその係員を指摘するというようなことのないようにする思想を確立することのほうが、いま当面必要ではないか、こういうふうに考えております。
  63. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまの組合側の代表者のお話しのように、そうした突発事故のような場合、たとえ判断処置を誤ったとしてみても、それが安全なほうの処置判断であったときは、会社側も、いま言われたように大目に、むしろそういう人を激励していくくらいの大きな気持ちになっていただきたいことを指導していただきたい、こういうように要望しまして終わりたいと思います。
  64. 植田勲

    植田参考人 大橋さんがちょっと申されたのですが、私がないそでは振れないとか絶対そういうことは言っておりません。そういう気持ちもありません。ここで私はもう確言しておきます。それから泣き言は申しておらぬわけです。これは私のこれを読んでもらったらわかるのですが、最初に申し上げたのはいいことばかり言って、こういうことだといって大橋さんが言われましたが、私はそういうことは絶対に言っておりません。一生懸命やっています。
  65. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いま、植田顧問さんがどうも私の言ったことを誤解していらっしゃるようでございますので、そこの点だけ言っておきますが、中小企業こそ全力をあげて保安体制にも手を尽くしている。だけれども、一面さらにこうやりたい、ああやりたいと思っていても金がなくてできぬじゃないかという場合もあるんだ。そういう点を私は言わんとしたわけですよ。それはあるでしょう。
  66. 植田勲

    植田参考人 それはわかりました。わかりましたが、私は指導方針として大手と中小と絶対公平の政策をやってくれ、泣き言は言わない。それは前の上田委員長もそういう方針でやっておりました。運動はしておったのですから、どうぞそういう点を誤解のないように。
  67. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 そちらも誤解のないようにお願いします。
  68. 堂森芳夫

    堂森委員長 これにて参考人各位に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には御多用中のところ長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。      ────◇─────
  69. 堂森芳夫

    堂森委員長 岡田利春君より発言を求められておりますので、これを許します。岡田利春君。
  70. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党を代表いたしまして、四党共同提案にかかる石炭鉱山保安確保に関する決議を提出し、皆さんの御賛同をいただきたいと存じます。  まず、最初に案文を朗読いたします。    石炭鉱山保安確保に関する件(案)   第五十八回国会当委員会において、石炭鉱山保安確保に関する件について決議を行なつたが、依然として炭鉱災害が続発し、去る七月三十日には北海道炭艦汽船株式会社平和炭鉱における大災害発生を見るに至つた。   かかる現状にかんがみ、政府は、速やかに石炭鉱山保安確保のため、次の諸点につきその実現を期すべきである。  一、炭鉱関係者特に経営者に対し、保安確保の重要性を再認識せしめ、保安優先の経営を実施せしめるよう強く指導すること。  一、全石炭鉱山保安点検を更に強化するとともに、鉱山保安法及び関係法規の再検討を行ない所要の改正を行なうこと。  一、保安管理体制の万全を期するため災害通報について、即時その対策を指示できる管理者の三交代制の実施及び巡回、機器管理体制を再検討し強力な行政指導を行なうこと。  一、退避訓練徹底するため月一回の保安日を定め、保安検査並びに退避訓練実施すること。  一、保安技術職員は、坑内火災自然発火ガス爆発及び突出、出水の場合、その災害箇所下手に位置する労働者に対し、災害の大小にかかわらず、速やかに避難を命ずるよう指導すること。  一、自己救命器生産確保、自己携行実施及び救命器の政善に更に努めること。  一、災害報知の迅速を図るため、坑内誘導無線の全面的採用及び各種警報装置の強化を図ること。  一、地域別、地方別に救護隊を編成強化するとともに、常設救護隊についても検討し、迅速な出動態勢の確立を図ること。  一、保安確保のため労働者、係員の申告制を採用するよう強力に指導すること。  一、遺家族対策の万全を期するため、労働者災害補償保険法の基準を実情に即応するよう改正を速やかに行なうこと。   右決議する。  以上が内容でありますが、私は、この各項目についての提案理由については、すでにきのうきょうの質疑を通じて明らかでございますので、この際、その説明を省略をいたしたいと思います。  よろしく御賛同の上、この決議を可決していただきますようお願いをいたしまして、提案の説明を終わります。
  71. 堂森芳夫

    堂森委員長 ただいま岡田利春君より石炭鉱山保安確保に関する件について決議をされたいとの動議が提出されました。  本動議について議事を進めます。  岡田利春君外七名提出の石炭鉱山保安確保に関する件を本委員会の決議とすべしとの動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  72. 堂森芳夫

    堂森委員長 起立総員。よって、動議のごとく石炭鉱山保安確保に関する件を本委員会の決議とすることに決しました。  ただいまの決議について政府の所見を承ることにいたします。椎名通商産業大臣
  73. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 保安確保は人名尊重の見地からいささかもゆるがせにできないことはもちろんのこと、石炭鉱業存続のための基本的前提でもあり、政府といたしましても、ただいまの御決議の趣旨を体しまして保安確保に万全を期してまいる所存でございます。
  74. 堂森芳夫

    堂森委員長 なお、本決議の政府への参考送付等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 堂森芳夫

    堂森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  76. 堂森芳夫

    堂森委員長 今会期中参考送付されました陳情書は、全部で七件であります。印刷してお手元に配付いたしておきましたので、御了承願います。      ────◇─────
  77. 堂森芳夫

    堂森委員長 閉会中審査申し出の件についておはかりいたします。  石炭対策に関する件について、議長に対し閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 堂森芳夫

    堂森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、申し出の手続につきましては、委員長に御一任願います。  参考人出席要求の件についておはかりいたします。  閉会中審査案件が付託になりました場合、審査のため参考人から意見を聴取する必要が生じました場合は参考人出席を求めることとし、その人選及び出席日時等につきまして、すべて委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 堂森芳夫

    堂森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  委員派遣承認申請に関する件についておはかりいたします。  閉会中審査案件が付託になりました場合、審査のため委員派遣を行なう必要が生じました際の手続などに関しましては、あらかじめすべて委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 堂森芳夫

    堂森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十九分散会