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1968-08-08 第59回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年八月八日(木曜日)    午後一時四十分開議  出席委員   委員長 堂森 芳夫君    理事 鹿野 彦吉君 理事 神田  博君    理事 田中 六助君 理事 野田 武夫君    理事 岡田 利春君 理事 多賀谷真稔君    理事 池田 禎治君       大坪 保雄君    佐々木秀世君       西岡 武夫君    八木  昇君       渡辺 惣蔵君    田畑 金光君       大橋 敏雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  椎名悦三郎君         労 働 大 臣 小川 平二君  出席政府委員         通商産業政務次         官       藤井 勝志君  委員外出席者         通商産業省鉱山         石炭局長    中川理一郎君         通商産業省鉱山         石炭局石炭部長 長橋  尚君         通商産業省鉱山         保安局長    西家 正起君     ───────────── 八月六日  石炭対策の確立に関する陳情書外一件  (第八  七号)  石炭産業の長期安定に関する陳情書  (第八八号)  炭鉱離職者緊急就労対策事業費国庫補助に  関する陳情書  (第八九号)  新田川炭鉱ガス事故に伴う炭鉱保安強化等に  関する陳情書(第  九〇号)  美唄炭鉱災害対策に関する陳情書  (第九一号)  石炭五千万トンの出炭確保に関する陳情書  (第九  二号)  石炭産業危機突破に関する陳情書  (  第一〇一号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  石炭対策に関する件(石炭対策の基本問題及び  石炭鉱山保安問題等)  派遣委員からの報告聴取      ────◇─────
  2. 堂森芳夫

    堂森委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。北海道炭礦汽船株式会社平和炭鉱災害実情調査を行ないました派遣委員より報告聴取いたします。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 去る七月三十日、北炭平和炭鉱平和坑発生いたしました災害について、現地調査の概要を御報告申し上げます。  まず、報告に先立ち、今回の災害により、とうとい人命を失われました犠牲者の方々に対し、衷心より哀悼の意を表する次第であります。  当調査のため派遣されました委員は、委員長堂森芳夫君をはじめ、鹿野彦吉君田畑金光君、大橋敏雄君と私、多賀谷真稔の五名であります。なお、このほか現地より篠田弘作君が参加されました。  調査日程は、一昨六日午後六時二十分羽田発の航空機にて札幌に参り、七日早朝より調査開始し、同日午後十時二十分羽田に帰着する予定のところ、天候不順のため本日午前十時十分羽田に帰着し、調査を終了したのであります。  この間、夕張市役所平和鉱業所において札幌通商産業局札幌鉱山保安監督局北海道労働基準局夕張当局並びに当該会社側労働組合職員組合等の代表よりそれぞれ説明聴取、あわせて要望等を受けてまいった次第であります。  次に、平和炭鉱現状について申し上げます。  同鉱は、良好な炭層に恵まれた原料炭炭鉱であり、近年強力な近代化が行なわれた優良炭鉱であります。ごく最近、地質条件の変化によって能率の低下を来たしておりましたが、従来年約百万トンを産出し、五六・三トンの能率を維持してきた炭鉱であります。  ちなみに、昭和四十二年度における出炭量は九十五万六千トンでありまして、再建整備計画による四十三年度生産見込みは百九万トン、能率約六十二トンとなっております。  平和坑坑内構造は、東部、西部北部区域に大別され、今回坑内火災発生を見た西部区域は、鉱山労働者約四百五十名で、月産二万二千トンを産出しております。  次に、災害概況について申し上げます。  災害は、去る七月三十日午前三時五十分ごろ、坑口より二千二百四十五メートルの西部ベルト斜坑第二原動機付近において火災発生したもので、当時西部区域には六十五名が配番されており、火災発生後三十四名は自力で脱出し、残り三十一名が坑内に閉じ込められたのであります。  災害発生と同時に平和炭鉱真谷地炭鉱夕張炭鉱等関係炭鉱から二十九個班の救護隊編成され、行くえ不明者救出作業及び消火作業に当たったのでありますが、崩落、煙の発生、温度の上昇等のため作業はきわめて困難になり、現在遺体を収容した者九名、いまだ行くえ不明となっている者二十二名という悲惨な現状であります。行くえ不明者救出がまず第一とされており、本格的な原因の究明は救出作業後に行なわれることになっております。原因はともかくとして、第二原動機付近石炭搬出用ベルトコンベヤーが燃焼したことによる災害であることは明らかであります。  なお、第二原動機付近における異常を最初に発見したのが午前一二時五十分ころであって、坑内入坑者全員に一斉退避の指令を発したのは五時二十分ころであります。この間約一時間半を費しているのでありまして、異常発見と同時に何ゆえ退避措置がとれなかったか、また何ゆえ連絡が迅速に行なわれなかったのか等が問題の焦点となり、関係者に対して質疑が行なわれました。  さらに、脱出者並び死亡者のほとんどが救命マスクを携帯していなかった事実、また三番方にあっては坑務所当直員一名しかおらず、退避命令を出す責任者が配置されていなかった点、その他ベルトコンベヤー不燃性坑内における消火設備強化坑内無線通信機の活用、常設救護隊設置等についてその必要性が論議されました。  次に、現地における要望事項のおもなものを申し上げます。労働組合側より次のごとき要望がありました。  まず、当面する問題として、一、遺家族に対し十分な援護措置を講ずること、二、今次災害原因を早急に究明すること、三、医療対策の樹立、特に医師の招聘につき特段の配慮を講ずること、四、坑内火災対策強化をはかること、五、自己救命器個人携行を完全に実施すること、六、坑内無線通信機を採用すること、七、保安教育徹底化並びに退避訓練の一斉実施、八、常設救護隊を設置すること、九、保安監督官を大幅に増員すること等でありまして、さらに根本問題として一、炭鉱災害頻発現状につきその真因を追及されたい、二、石炭対策抜本策をつくるにあたっては、保安中心石炭政策を確立されたい、三、個別企業における保安対策は限界に達していると考えられるので、保安に関しては国の責任において運営の適正を期すべきである等々の強い要望があったのであります。  最後に、今回の調査の結果、特に私たちが痛感した点を申し上げます。  第一は、人命尊重があらゆることに優先すべきであるということであります。最近、頻発する炭鉱災害の実例を見ても明らかで、この際、労使を問わず関係者すべて謙虚にこの事態を反省し、人命尊重の意識を高揚せしめることが肝要であると存ずるのであります。  第二に、今回の災害は多分に人災的な面が見受けられ、平素の保安教育退避訓練等がいかに大切であるかを痛感した次第であります。  御承知のとおり山の様相は日々変化しており、それに伴う適切な保安措置を早急に講ずることが必要であり、訓練を反復実施し、身をもって体得するものでなければならないと考えます。少なくとも全炭鉱が月一回保安の総点検と総訓練等実施を義務づける必要があるのではないかと考える次第であります。  第三に、われわれが非常に遺憾に思うことは、本院において自己救命器個人携行が決議され、それが規則として制定されたにもかかわらず、機器製造能力の制約から完全実施に至らず今回の災害に遭遇したことであり、このような人命に関する機器については緊急輸入等措置が必要であり、早急に整備すべきものであると思います。先般の三池の大災害においても自己救命器の備えつけが実施過程において災害を招いたことをあわせ考えれば、一そうその感を深くするものであります。  第四は、現行保安法規を早急に検討するとともに、予算措置を講ずる等、炭鉱災害の絶滅をはかり、さらに災害原因を究明し、責任の所在をきびしく追及することが災害を防止するゆえんであると考えます。  最後に、行くえ不明者救出が一刻も一早く行なわれることを祈念いたしますとともに、遺家族援護措置の万全を期待して報告を終わります。
  4. 堂森芳夫

    堂森委員長 これにて報告は終わりました。     ─────────────
  5. 堂森芳夫

    堂森委員長 次に、去る六日発生いたしました三池炭鉱災害について政府報告聴取いたします。西家鉱山保、安局長
  6. 西家正起

    西家説明員 相次いで災害発生いたしましてはなはだ遺憾に存ずる次第であります。  三池炭鉱災害につきまして簡単に御報告をさせていただきます。  災害の起こりましたのは、三池炭鉱四山鉱でございまして、この鉱は鉱山労働者二千六百五十名、出炭量は月に十三万八千六百トンの炭鉱でございます。災害の種類は落盤でございまして、四十三年八月六日午前二時三十五分に発生しております。災害が起こりました個所は坑口から約五キロくらい入りました四百六十メートル坑道上層の二十二号払いという採炭切り羽でございます。罹災者は、現在死亡者二名、重傷者一名、軽傷者五名、計八名の災害でございます。  災害概況につきまして御説明申し上げますが 災害発生いたしました四百六十メートル、坑道上層の二十三号払いと申しますのは、炭壁の面長が百三十メートルでございまして、傾斜が五度でございます。炭層山たけが二・一メートルという炭層でございまして、大体ワク間六十センチに水圧鉄柱を設けまして、ホーベルを使用いたしまして漸進式にいわゆる長壁払い採炭をしておったわけでございます。採炭開始払い開始をいたしましてから、約六百メートル進行しておったのでございます。  災害の当日、三番方といたしまして二十八名の方が払い配番になったのでございますが、採炭作業を行なっているとき、払い肩部、すなわち上のほうでありますが、肩部のほう四十九メートルの間にわたりまして全長崩落をいたしまして、作業している方が四名埋没されたわけでございます。そのうち二名は救出をいたしましたが、ほかの二人は救出後死亡されまして、そのほかに四名の方が擦過傷を負われたのでございます。  この払いには、天盤状況でございますが、直接の天盤は三十メートルほど厚さがございまして、下盤は七十センチばかり石炭の下に約九メートルの炭質結岩があるような状態でございます。現在までの調査では、払い肩部事前に多少乱れておって、あと山つり天井になっておったような状態であったようでございますけれども、これが災害と直接関係があるかどうか、目下詳細に検討いたしておるような次第でございます。  なお、崩落の高さは約二メートルというふうに報告を受けております。  はなはだ簡単でございますが、御報告をいたします。
  7. 堂森芳夫

    堂森委員長 これにて政府報告は終わりました。     ─────────────
  8. 堂森芳夫

    堂森委員長 石炭対策の基本問題及び石炭鉱山保安問題について質疑の通告がありますので、順次これを許します。岡田利春君。
  9. 岡田利春

    岡田(利)委員 石炭産業現状にかんがみて、この石炭産業長期安定対策のために、通産大臣は四月の末に石炭鉱業審議会にその対策について諮問されたわけです。しかもこの答申は、今日の石炭産業現状にかんがみて八月一ぱい答申をしてほしい、こういう形で諮問されたわけですが、その後審議会は六回にわたって開催をされておるわけです。しかし、今日の審議状況から判断をして、通産大臣が諮問いたしました八月中の答申というのは、事実上不可能ではないか、このように私ども判断をいたしておるわけです。しかし、この答申がおくれるということは、今後の石炭あり方について討議がおくれるという意味でありますから、そういう意味ではますます石炭産業の各企業現状から考えますと、私はむしろ多くの困難が出てまいるのではないか、こういう点で今日の状況判断をし、非常に憂慮いたしておるわけです。すでに通産大臣はこの審議状況については報告を受けておると思いますけれども、一体八月中に答申が得られないとするならば、通産大臣としては当然今日の石炭産業現状認識から考えて、日にちを切って答申を求めるべきでないか、審議を積極的に促進してすみやかに答申を求めるべきではないか、私はこのように考えるのでありますけれども、この点についての大臣考え方を承りたいと思うわけです。
  10. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 八月末の答申を期待しておったわけでありますが、事務当局から中間的に報告を受けたところによりますと、なかなかはかばかしくないようであります。事柄事柄でございますから、真剣に討議をされておる、しかもきわめて慎重にやっておることは大体想像がつくわけでありますが、私といたしましては、なるべく早く結論を得ることを期待しておるわけであります。しかし、ただ急いで、審議を中途半端にするということは絶対に避けなければなりません。もう最終の結論に近づきつつあるのでありますから、最も入念審議を完了することを切望しておるわけであります。いたずらに期限のみを急いで事を誤るということは絶対に許さるべき段階ではございませんので、早急に結論を得ることは期待しておりますけれども、なお十分に審議を完了することも同時に期待しておる次第でございます。  以上で御了承を願います。
  11. 岡田利春

    岡田(利)委員 もちろんきわめて重大な問題でございますから、ただいま大臣が答弁されたように慎重に、しかも誤りのない一つの答申大臣として期待されておる、こう患うわけです。しかし、いたずらにまた答申の時期がおくれるということは、これまた与える影響がきわめて大きいと申さなければなりませんし、また、審議状況から判断いたしますと、答申そのものがすでに事前に固定化されて、固まって答申をされるという、こういう側面も非常に強めておるように私ども判断をするわけです。したがって入念に、しかも一誤りのない答申を期待されておると思いますけれども大臣としては今日の石炭鉱業現状から考えて、やはり一定の時期というものが当然なければいかぬのではないか、このように私は思うわけです。入念であるならば十月でも十一月でも十二月でもいいのかということにはならないと私は思います。そういう意味でおおよそのめどというものが当然諮問した大臣としてなければならないと思うのですが、この点はいかがですか。
  12. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 八月末というのは、これを過ぎてはどうしてもいかぬというわけでもないのであります。結局石炭産業の今日の事情というものに相当の配慮をしなければならぬ。それとまた同時に、国のこれに対する施策をできるだけ早くきめまして、そしてこれを来年度予算等に確実に反映することができるよう、そういうことを考えて八月末とこうやったのであります。そういうわけで十月になっても十一月になってもよいというようなものではない、答申を得てからそれに対して政府としてもこれに対する審議を相当すべき時間が必要でありますし、また、関係方面との打ち合わせ等についても万遺憾なきを期するということも必要であります。そういうことを考えて八月中にしたわけでございますが、必ずしもこれが九月に入ったからといってどうということは私はないと思いますが、できるだけ早く答申の出ることを期待しております。
  13. 岡田利春

    岡田(利)委員 大臣として八月一ぱい答申を願いたいということで諮問をされたわけですから、八月中に答申が出ることを期待されておると思うのですが、現状では、もう八月中に答申をすることは不可能なわけですね。私は、これだけは明らかになっていることだと思いますし、大臣もその認識については私と同じだと思うわけです。そうしますと、八月中という一応のめどをつけて大臣は諮問されたわけでありますけれども、その審議現状から考えて、急いでも、これは万全なものでなければいかぬわけですから、八月中がむずかしいとするならば、九月一ぱいというのか、あるいは十月ということなのか、あるいは九月の中旬ごろまでには出してほしいという考えを持たれておるのか、諮問された大臣としては、審議状況にかんがみて、当然そういう面についても判断というものは持たれなければいかぬのではないか、こう思うのです。おおよそのめどについていかがですか。
  14. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただ期限だけで問題が片づくわけではございません。すでに、審議状況によっては、結論としては大体ここらであろうというような推測のつくものもあるかと思います。いずれにしましても、九月の中旬でなくてはいかぬとか、二十日までにやらなければいかぬとかいうような、そういうただきちょうめんな区切りをつけるばかりが能じゃないと思うのです。そこらはひとつ適当に考えていきたいと思います。
  15. 岡田利春

    岡田(利)委員 大臣、問題は、大臣も初めは八月一ぱい答申を得たいという考えで諮問されたということは、その後答申を得てもちろん政府部内としても検討しなければいけない、あるいはまた政党政治ですから与党の関係もあるでしょうし、また予算関係もあるでしょうし、そういう一応の日程というものを考えながら、石炭産業現状も考慮して、八月一ぱい答申が望ましい、こういう考えでやはり諮問したのだと思うわけです。しかし、審議状況が、問題が問題だけになかなか進まない。しかも、八月一ぱい答申はもう今日ではむずかしいということだけは明らかになったとすれば、そういういろいろな日程から考えて、大体いつごろまでには答申してもらわなければならない、また、いろいろネックがあるとするならば、むしろそういうネックは積極的に解決するという積極的な気持ちを示して、やはり答申はいつごろまでが望ましいのだというものは当然あると思うのです。もちろん何月何日といったことにはならぬでしょうけれども、おおよそのめどというものは私はあると思うのです。その点程度を明らかにしてもらわないと、何のために八月一ぱい答申大臣は求めようとしたのか、こういう点で、私どもは非常に多くの疑問を感ぜざるを得ないわけです。そういう点ではいかがですか。
  16. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 もうこれ以上は、碁の例を出すわけじゃありませんが、秒読み段階なんです。とにかく早いほどよろしい。
  17. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういたしますと、秒読み段階ということは、八月中に大体答申がなされる、こういう理解になるのじゃないかと思うのです。きょうはまだ八日なんです。
  18. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いまあなたが八月中は不可能だというふうにおっしゃられましたから、かりにそれを前提にして言うわけでありますが、八月中にどうしても出ないということになったら、九月一日から秒読み段階に入る、こういうわけです。
  19. 岡田利春

    岡田(利)委員 大臣が今回石炭鉱業審議会に諮問された認識の問題について、私は若干承っておきたいと思うのです。いわゆる石炭長期安定対策について諮問したということは、従来の抜本策が失敗をした、そういう上に立ってこれからの長期安定策を諮問したわけですが、その底流にあるものは、石炭の再編成、来年やるあるいは三年後にやるということは別にして、石炭産業の再編成ということはもう不可避の現状にある、私は、こういう認識に立っておられたのではなかろうか、こう判断をするわけです。そういたしますと、石炭産業あり方石炭産業再建の方途、こういう点を問題にしてまいりますと、当然それぞれの組織問題、第二には生産と安全の問題第三には販売と需要の問題第四には労働問題、第五にはスクラップ・アンド・ビルドに伴う首切り、配転の円滑的な処理第六点には産炭地振興自治体対策、第七点には鉱害の処理、私は、この七つの課題が総合的に解決されなければならない、そういうものでなければならない、こう思うわけですが、私のこの認識に対して、大臣認識は相違がございますか、そういう認識でよろしゅうございますか。
  20. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大体御指摘の点は要点だと思います。
  21. 岡田利春

    岡田(利)委員 今日審議会審議状況、第六回目で、第七回目の審議が近く予定されておるわけです。私ども一の承っておるところでは、第七回目の審議会には、石炭産業のいわゆる組織問題統廃合の問題そういう点について、そういう将来のあり方について議論されると仄聞しておるわけです。この点については間違いがないかどうか。それと同時に、この第七回の審議会開催めどは大体いつごろを予定されておりますか、この機会に承っておきたいと思います。
  22. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 石炭の組織問題はもちろん含まれると思いますが、そればかりではないと思います。そうしていつごろかということでございますが、大体中旬ごろじゃないかと思います。
  23. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、今日の第六回の審議会が終わって、一応これは新聞等にも一すでに報道されておりますし、また、世上いろいろ問題点として出されておるように私自身承っておるわけですが、いわば今日の石炭長期安定策審議にあたって、財源問題を中心にし、将来の石炭産業あり方に関して、大蔵省当局としては積極的な意見を持ち合わせておる、たとえば石炭特別会計については四十五年までの時限立法でありますが、これを石炭石油特別会計にするとか、総合エネルギー特別会計にするとか、これまた真偽のほどは別にしてすでに新聞等には報道されておるわけです。したがって、石炭問題は、財源措置ができなければその対策は成り立ちませんし、また、それが不十分であれば結局中途はんぱな政策に終わってしまう危険性が非常に強いわけです。そういう点から判断いたしまして、これらの問題については、私ども報道関係で承っておる点、あるいはまた聞いておるようなそういう動向というものがあるのかないのか、そういう点について、一体大蔵省として積極的な意見が反映されておるのかどうか、こういう点について承っておきたいと思います。
  24. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大蔵省当局の一部の意見として私に伝わっておることはございます。ございますけれども、それは大蔵省責任ある意見であるとは私は信ずることはできない。どういう機会にどういうことを言っておるのか知らぬけれども、とにかく一部の当局者意見として私の耳に入ったところでは、通産省の当局に対してはっきりと大蔵省意見を固めてそれを話しているというようなものじゃない。でありますから、これを基礎にして大蔵省と折衝をするというようなことは全然考えておりません。
  25. 岡田利春

    岡田(利)委員 今日の審議会審議されておる内容について私が質問しましても、審議過程でありますから、それに対していまここで積極的に見解を述べるということにはならぬだろうと私は思います。したがって、私は二、三の問題点について私の考え方を述べつつ、特にその点について答弁でき得る面があればひとつ見解を承っておきたいと思うのですが、今日までの審議過程はいろいろございましたけれども一、第六回の審議会としては一応石炭部門を切り離して第二会社にする、そうして、その第二会社に移行し、負債については肩がわりをする、それが資産を対象にするのか、あるいはまた先般行なった、いわば単純な異常負債肩がわりという形になるかは別にして、いずれにしても肩がわりをする、そういう考え方の上に立って、今後国民に対して、石炭産業に対する政策をきめるにあたって国民理解をする石炭産業あり方について審議を進めていく、こういう審議がなされておるように私は聞いておるわけです。しかも、この政策を進めるにあたって当然スクラップ・アンド・ビルド方向がより強化されてまいるわけですから、閉山が伴う、あるいはまた、集中的な開発が伴ってまいりますことは、きわめて当然な話なわけです。その場合に、極端な不採算炭鉱については自主的な閉山を待つ、こういう方向が特に強調されておることも間違いのない事実であります。しかし私は、今度の石炭政策が最終的なものである、こういう決意と認識に立つならば、当然スクラップ・ジャッジ、こういう点については計画的に進めてまいらなければなりませんし、また国民認識からいっても、当然政府自体として責任を負ってやるという決意がなければ、国民理解を求めることはむずかしいのではないか。そういう意味では、何かイデオロギー的なものにとらわれ過ぎて、結局肝心なポイントを落としてしまうということになることを私は非帯に心配をしているわけです。たとえば、私企業体制で進めているベルギーの場合でも、ベルギーの、石炭合理化事業団がこういうジャッジを行なう、そうして社会摩擦を避けて、転換する労働者はスムーズに転換させる、地域経済についても計画的に配慮をしていく、こういう方向が当然とられておりますし、今度の西ドイツの石炭鉱業の再編成の場合でも、当然そういう点については連邦政府代表がそういう点についてぴちっとする、こういう対策が進められているわけです。ですから、今日ここまで押し込められた石炭産業を、ほんとうに責任をもって安定対策を講じ、その政策の結果安定させるとすれば、そういう決意がなければならぬのではないか、私はこう思うわけです。そういう点については非帯に重要なポイントであると思うのですが、特にこの点について大臣としてお考えがあればこの際承っておきたいと思うわけです。
  26. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いずれにしましても審議の途中でございまして、これが一体全体的な結論を生み出す直前の項目であるか、それともまた、この問題は考え直されるべき問題であるか、あるいは手直し、修正を要することになるのか、まだわからぬと思うのであります。そういう段階においての断面について一々責任当局として申し述べることは差し控えたいと考えます。
  27. 岡田利春

    岡田(利)委員 次に私は、二点について私の見解をこの機会に申し述べてみたいと思うわけです。  第一点は、社会党はすでに国有公社案という一つの案を本委員会にも提示をいたしました。この案によっても、いわゆる株式については保証する、そうしてまた権利義務については継承されますから、負債は保証される、こういう内容を明らかにいたしておるわけです。ところが、今日進められておる内容を私ども判断をいたしますと、資本主義の原則に立ち、あくまでも自律性というものを尊重するという前提に立ちながら、この点については非帯にあいまいではないのか。特に負債肩がわりということは、結局金融機関に対してその負債を保証するというだけに終わり、従来の企業対策、こういうものごとの考え方から出発することになるのではないか。あるいはまた、資本主義の原則からいって、負債よりも資産が多いのにそういう資産というものが保証されないということになりますと、これまた大きな問題があると思うわけです。いずれにしても統合の問題は避けることができないわけですから、一時第二会社にされると仮定をいたしましても、当然これはその先には統合されてまいるわけですから、そういう原則的なものについては整理をする必要があるのではないか。この点が、いままでの審議状況から判断をして私自身理解のできない問題点であるわけです。  第二の問題は、第二会社にし、ある一定期間、二年前後の期間を置いて、これは資本別あるいは地域別になるかは別にして、地域別なら地域別に統合するということになってまいりますと、とにかく一定期間過ぎれば統合されるのだということが、すでに政策として明らかにされる。そういう前提が示されてできた第二会社というものは、これはどっちつかずの第二会社になる可能性が強いのではないか。いわば人工授精的な第二会社といいますか、そういう労働者にとっても経営者にとっても愛情のない第二会社になる。しかも二年先には統合されていくのだということになりますと、ここに政策と実際上の大きな矛盾というものが出てくる可能性があるのではないか、こういう点を実は非常に心配をいたしているわけです。むしろ今日の石炭産業は、安全で、しかも労働者の生産意欲というものを十分起こして、そして積極的に協力をしてもらわなければ、石炭産業の安定というものは、どういう形態をとっても、維持することは困難になってまいるわけですから、そういう意味において、その山自体に働いておる人、現場で働いておる人々がほんとうに意欲をもって働いていける、こういう政策でなければならないのではないか、こういう見解を私は持っているわけです。この点は今後さらに審議を深められていくと思いますけれども、そういう点について、私は特に本委員会を通じて、私自身長年炭鉱坑内でも働いておりましたし、現場の第一線でもおりましたし、根っからの炭鉱人でありますから、そういう私自身の審議経過から受けた感じ、また心配点というものを、率直にこの機会に本委員会を通じて披瀝をし、ひとつそういう面について十分検討願いたいということを申し添えておきたいと思います。  特に私はこの機会に、いままでの石炭政策がなぜ失敗したのか、これはこの委員会でもずいぶんその反省についてはいろいろな形で議論されてまいりました。まず私は第一には、日本の石炭産業、これを動的に審議会として受けとめることができなかった、非常に不十分であった、そういうことがやはり石炭政策を間違った第一の理由であったと思うのです。いわゆるわが国の石炭産業坑内構造というもの、そういう体制というものをほんとうに認識できなかった。その点からほんとうに間違いのない方針というものは生まれるはずはないわけです。この点に欠けるところがあったんだと思うわけです。  第二の問題は、政策が常に時期を逸しておる。特に抜本策も約二年半時期がずれている。二年半というのは今日の経済成長のテンポからいっても大きなズレです。そういう点がやはり石炭政策を根本的に誤らした大きな理由であったと私は思うわけです。そういう反省に立つ場合には、結局審議会答申を受けて財源的にもあるいはまた実施に移すタイミングについても、また移行させるしかたや方法についても、相当これは勇断と決意をもって当たらなければならないのではないか、このように私は考えるわけです。特に政権を担当しており、この問題の解決にあたっている大臣として、石炭鉱業審議会審議がむずかしければむずかしいほど、大臣としての決意が私は要望されると思うわけです。そういう点についての大臣の決意のほどをこの機会に承っておきたいと思います。
  28. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 何事によらず、タイミングということは非常に大事なことであります。しかしタイミングだけではいかぬので、やはり方法というものが肝心である。それから問題解決の基礎である御指摘の財源問題、こういったようなことは御指摘のとおりでありまして、きわめて重要な要素をなしているものと私も考えております。御指摘の点はまことに同感でございますが、その趣旨に沿うて今後問題の解決に努力をしてまいりたいと思います。
  29. 岡田利春

    岡田(利)委員 終わります。
  30. 堂森芳夫

  31. 鹿野彦吉

    鹿野委員 私は、今回の北海道の炭鉱の炭害を昨日調査団の一員として調査をいたしてまいりましたので、そのことに関連をして、石炭産業に対するところの政策の問題について大臣の御所見を伺いたいと思います。  石炭産業が非常にむずかしい事態に置かれておることは、ただいまの岡田委員の質問の中にもありますし、まただれでもがわかっておるものでございますが、こうしたむずかしい、ちょうど最もきわどいときに今回の災害発生を見たわけです。その災害を見てまいりまして、避け得られなかった災害ということでなく、ある程度避け得られた人災の部に属するんではないかという感を私は深くいたしてまいったわけでございますが、保安問題に対するところの石炭産業の経営と関連いたしまして、どんな形で今後の石炭産業が経営されていきますか、まだ未確定の状態にありますけれども、こうした際に保安というものが絶対の前提条件になって、しかも経営が行なわれていけるという感じを私は持っているわけですが、こうしたことについて大臣はどのように考えておられるか、この際承りたいと思います。
  32. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 産業のあり方にいろいろ差異がありますけれども石炭産業は事業経営すなわち保安と申しますか、事業の進むところ、同時に災害発生の可能性がつきまとう。ですから、保安ということは離るべからざる問題である、こういうふうに考えます。
  33. 鹿野彦吉

    鹿野委員 確かにそのとおりですが、なぜ保安というものに関心の度が比較的経営者の中に少ないかという現実の姿を見るとき、ほんとうは自由経済の中にあって、経営者は、従業員もあわせて安心して最大の能力を発揮せしめるような状態をいかにつくるかということが命題であり、そのような状態をつくれる状態が自由方式の中からのみとられるという考えをわれわれは持っているわけです。そういうようなことですから、ほんとうは経営者自体がもっと真剣に、経営を自己の負担において、自己の責任においてやろうという気持ちがあった場合、こうした災害というものをもつと妨げるんじゃないかという気がするわけですけれども、このようなある程度責任のない親方日の丸的な政府まかせの、あなたまかせの経営という方向に持ってまいりましたことについて、私は過去の政府石炭政策にも大きな原因があるんじゃないかという気がいたすわけです。ということは、正直者がばかを見ないように、努力する者が努力しない者よりも恵まれなければならないというこの原則を無視して、そうして石炭産業全体に対するところの保護、助成の方向を、経営がうまくなかった人に保護するというようなこういうような助成のやり方をやってきたところに大きな原因があるんじゃないかと私は思うのですが、大臣どのようにお考えになりますか。
  34. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 事業経営即保安、仕事よりも、保安の問題というものは寸刻もこれを忘れてはいかぬというわけでありますけれども、とかくどうもそういう方面が忘れられがちである、こういうことは意識的にそういうことを考えているわけではないだろうが、重大なるミスの連続がそこにあったと、こういうふうにいま考えるわけでありますが、今後はますますこの政府保安監督行政の問題と、事業経営者と、働く労組の人たち、この三者が一体になって、そしてそこに緊密な連携をとりまして、この問題に対処するということがますます必要になってきておる、そういう点がとかくおろそかにされがちであったことはまことに遺憾でございますが、今後三者のほんとうの心からなる提携によって私は災害の大部分というものが克服できるのではないか、こう考えております。
  35. 鹿野彦吉

    鹿野委員 私が質問したことに大臣はおとぼけで肝心なところに触れない。これはしかしながら追及はいたしません。追及はいたしませんが、ただ、どうぞこれからの石炭産業に対するところの政策あり方については、あくまでもやはり、過去のそうしたことを大臣はよくわかっておるでしょうけれども、やはり努力する者が恵まれるような姿、われわれ自由民主党の政策考え方に基本を置いた石炭政策の推進をぜひひとつ推し進めてもらいたいと強く希望いたしまして私は終わります。
  36. 堂森芳夫

    堂森委員長 渡辺惣蔵君。
  37. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 私は、平和坑災害中心とする災害対策につきまして質問をいたしたいと思います。  質問にあたりまして、九名の人々がなくなり、いまなお総数三十一名の人々が救出されずにおられます。絶望だと考えますので、心から哀悼の意を表しますと同時に、委員の諸君が非常に困難をおかして視察を終えられてこられたことに対して敬意を表する次第であります。  いま、鹿野委員の御質問に対して、大臣災害についての御意見を言っておられますが、私は今度の平和坑災害というものは、今日の石炭産業の合理化政策にからまる基本的な問題だ、非常に重大な意味を含んでおる、こう感ずるのであります。特に去年からことしの一年間で、北海道を中心にして起こっております災害を見ましても、この一月二十日に美唄でガス爆発、十六名が死んでおります。五月九日には雄別の落盤で四名、五月十百には美唄の山はね、火災で十三名、それから滝口炭鉱が六月五日にガスが爆発して六名、七月三十日にただいまの平和炭鉱の三十一名、八月六日には先ほど報告がありました三池の落盤で二名という連続災害が起こっておるわけであります。しかもこれを昨年の一月から七月三十一日まで、今年の一月から七月三十一日まで、前年と同期の対比をいたしますと、四十二年七月末で百四十七人が死亡しております。これは死亡だけの数でございます。それから今年に入りまして、この七カ月間で百五十六名、非常に急速に大事故が連続しておるわけであります。  ここで、参考までに申し述べるのですが、一体この十年間に生産がどういうように進んでおるかと申しますと、山が三十三年度には北海道だけで見ましても百四十二あったのが、四十二年度になりますと六十二と非常に減っているわけですね。そうして人員は十年前には十万四千人おりましたのが、現在は全部ひっくるめて五万五千人、半分に減っているわけです。ところが人数が半分に減っておりますのに、出炭量のほうは十年前には千五百万トンの北海道の出炭量が、十年後には二千百七十万トンにふえているわけです。個人別の出炭量からいきますと、昭和三十二年の状態は一六・五トンの出炭量であったのが、現在ではあべこべに四六・六トンという三倍に出炭量がふえているわけです。山がつぶれて半分以下になり、人数が半分以下になって出炭量が三倍に増加している。この事実を踏んまえて災害問題をもう一ぺん考えてみていただきたいと思うのです。そうすると、この災害発生している原因は、単に自然状態の問題だけでなしに、明らかに急激な合理化の中で働く労働者に対して非常な犠牲が強要されてきているのだ。明らかにこれは石炭合理化の犠牲であると断言してちっともさしつかえないと思う。大臣もたぶんそう思われると思いますが、この数字に対する事実をどうお考えになるかということをひとつお伺いいたしたいと思うのです。
  38. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 数字はいまおあげになったとおりでございます。これを非常に高度の合理化である、こういうふうに言われるならば、それもごもっともじゃないかと思います。そのとおりであると思います。
  39. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 そういたしますと、この急激な、しかも高度な合理化政策を推し進めていく。そしていまあなたがさらに石炭鉱業審議会に対して、日本の石炭産業あり方に対する重要な最終的な諮問をされておる。当然それは合理化の総集約の段階に来ておると考えるのですが、その大臣の諮問の中において、先ほど岡田委員から質問されたように、一体保安の問題をどういう位置づけをもって諮問されているか、その所信を伺いたい。
  40. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 一人当たりの出炭量ということからいいますと、結論においては合理化政策を実行した形になるわけであります。  それで今度の諮問のことでございますが、別に中央鉱山保安協議会というのがございますので、これに——もともとがそっちのほうが専門の機能を持っておる機関でございます。そちらのほうに今後の災害防止の方策について諮問をしておる次第でございます。
  41. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 問題は、いまの大臣の答弁の姿勢にあると考えるのです。それは先ほど岡田委員も指摘しておりますように、諮問の重要な問題の中にはもちろん生産保安、労働あるいは産炭地振興その他のもろもろの問題を幾つかの柱を立てて諮問しておる。問題は、保安の問題だけを全体の生産体制の中に総合的に含めないで、保安の技術面だけを独立して問題を処理していこうというところに生産体制と保安の問題がつながらない一番の盲点があると思うのです。この点をどうお考えになるか明らかにしていただきたい。
  42. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先ほど申し上げたように、石炭生産は即保安である。保安のことを考えないで生産ということは考え得られないというぐらい生産保安の問題は密接につながったものであります。表裏をなしておるということを言って差しつかえないと思うのであります。そういう問題でございますから、保安上無理のある生産というものはわれわれは初めから認めない、そういう趣旨でこの問題を取り扱っておりますので、特別に石炭審議会のほうにそのことを重ねて申すということはいたしませんでした。当然これはその問題を含めて考えてもらう。  もう一つ、保安の問題については、いま申し上げたような協議会がございますので、そのほうにこの問題を特に切り離して——切り離すということは語弊がありますけれども保安の問題としてその方面から石炭の問題を考究してもらう、こういうことにしておるのでありまして、決して問題を軽微に取り扱っておるという趣旨ではありません。
  43. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 そこで具体的に平和坑災害の実例で所見を承りたいのですが、問題は今度の災害原因について目下追及中である、調査中であるという答弁であります。これも私、実は非常に遺憾に思っておるのですが、まだ、昨日衆議院の調査団も一入り、すでに参議院の調査団も四日に入り、私も現地に入って調査をしてきたのですが、きょうまでの報告では、災害原因が何であるかということが明らかに答えが出ていないのですね。きょう八日ですから、災害発生してから十日目ですね。ところがいろいろ調べてみると、その当時坑内に入坑しておった関係者がいま救護隊の中に含まれて入坑して救護第一主義で救護隊に参加しておるので、その人に十分事情を聞いて最終的な調書をとるに至っていないんだ、こういうことのように承っておるのですが、一体、いわば当日入坑して坑内から脱出して相当疲労しておる休息を要する人を救護隊の中に含めて入坑せしめておるという上に立って、その調査が、きわめて今日では簡単なんですが、今日の段階で、その簡単な結論が明確についていない。そうすると、一方大臣は、一昨日ですか、石炭鉱業会の大槻会長以下、北炭の原社長その他関係者を集めて何か警告をされたというのですが、その警告はどこをねらって何を警告されたのか。まだ原因調査がもし明らかでないとすれば、どこを一体大臣は警告されたんだ、警告の内容は何なんだ。実態が、その保安の問題も、災害原因が明確に、しかもわれわれの調査は別としても、監督官庁の調査結論が出ていないで、一体石炭協会の会長やその他の関係者にどういう視点から何の内容を含めて警告をされたのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  44. 西家正起

    西家説明員 先生御指摘のとおり、災害原因は、最終的に確かにまだはっきりきまっていないわけでございます。火災発生したのは現場のベルトコンベヤー原動機付近ということははっきりいたしておりまして、かつベルトコンベヤー関係から火災発生したということもはっきりしたわけでございます。それがどういう原因火災が起こったかということにつきましては、まだ現物のベルトコンベヤーのございますモーターのありますところに監督官が入っていっておりませんので、その点の最終の責任ある原因というものがまだ発表できない、こういうことが一つでございます。  もう一つは、先生御指摘の中に入っておりました鉱山労働者の方、係員の方、それから運転工の方、それから脱出された方すべての方、それから経営者、すべての方々の供述が現段階ではまだ全部終わってないわけでございますけれども、もちろん災害原因を確定する意味で一部は供述をとっているわけでございます。これは全部の関係者の供述をとりまして、場合によりましてはその関係者二人の方の言い方が変わる場合がございます。したがいまして、全部終わりました上で最終的にこうであったという判定をすることにさしておるわけでございますが、その点がまだ確定をいたしていないわけでございます。しかしながら、火災発生してから後の連絡が非常におそかったとか、あるいは連絡がうまいことつかなかった、これは客観的事実でございます。そういう点につきましては、これは現段階でも言えるのではないか、かように考えるわけでございます。したがいまして、大臣が八月の六日に、石炭協会長、それから中小の日本石炭鉱業連合会の会長、それから北海道の連合会の副会長、北海道の場合は副会長がいらっしゃったのでありますが、それから北海道炭砿汽船株式会社の社長を呼ばれまして、とにかく最近災害が非常に多いので、あくまでも人命尊重の立場から強く警告をされたわけであります。そのあとで具体的な指示事項といたしましては、ただいまはっきり確定はいたしておりませんけれども、はっきりした範囲内において、とりあえず傘下の全炭鉱に対しましてそういう坑内火災発生しないような具体的な措置、それから事故が発生した場合に早期発見、監視体制の強化、警報、連絡体制の充実、さらには事故が発生した場合、その事故を局限化するための待避訓練、救護訓練の徹底実施、こういうことを指示されたような次第でございます。
  45. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 私のおそれますのは、災害結論が出たためしがいままでないのです。とにかく関係者は死んでおりますし、中は焼けてしまっておるのですから。いま局長は原動機の事故の状態をそこまで入って実態を調べた上で明らかにしたいとおっしゃったが、一体そういうことが可能性があるのかどうか。現実の問題として、もう全く焼けただれてしまって実態が明らかでない。しかも現場にいた人は死んでいる。しかもおのずから明らかなのは、地下二千四百メートルも奥に第一と第二の原動機が二つあって、管理者が一人しかいない。その第一の原動機と第二原動機の間は五百メートルの距離がある。電話は故障だ。警報機も何もない。一体こういう労務管理について具体的に事実を指摘して指導したのかどうか。事実合理化によって当然原動機に対して、それぞれ、五百メートル離れているところですからね。それぞれの原動機の管理者がいなければならないんですよ。そういう重要な要素を持つ機械が敷設してあるのだから、その機械の周辺には当然電話なり通報機が架設されておらなければならない。それが電話も通じなければ、管理者は一人だ。片方で煙が出てくると、あっちへ行ったりこっちへ行ったり、通報がおくれている理由がどこにあったかということは明らかでしょう。そういう具体的な合理化の結果、一番大事な生産点に対して人を減らしておいて、一体生産保安だなんてどこをついてそんなことを言っているのか。私はほんとうに現地のあの家族たちの前で怒りを感じますよ。何べんこんな答弁や結論を繰り返しているのか。現実にそういう事態があることを認めないのですか。もしそういう事実を認めるとしたら、六日の警告にあたってはそういうことについて適当なる指導をしたのですかどうですか。そういう具体的な例証を示さずに、単に注意をしなさいなんで適当なことを言ったってするような人たちじゃないですよ。そんなことを言ってやるなら、とっくに解決がついている。もう少し具体的に、どういうような中身で警告したのか、そういうことを具体的に指示したのかどうか、明らかにしてもらいたいと思います。
  46. 西家正起

    西家説明員 大臣の指示されました事項をここで読ましていただきます。  最初の、警告でございますが、  石炭鉱山においては本年に入り再度の美唄炭鉱災害等の災害が頻発しているが、またしても平和炭鉱において坑内火災により多数のとうとい人命を失なうに至ったことはまことに遺憾である。石炭鉱業各社においては、その責任を十分自覚し、人命尊重の基本理念に立って災害につながる諸要因を徹底的に除去し、保安確保に万全を期するよう、強く警告する。これが警告でございまして、指示事項といたしましては  保安を確保するためには、まず災害発生自体を防止するため、全力をあげることが必要であるが、不幸にして災害発生した場合に、これを早期に発見し、被害を最小限に食いとめる措置が必要である。このためには各般にわたる保安対策の積極的推進をはからなければならないが、今回の坑内火災事故にかんがみ、特に次の諸点について努力を促したい。  一、坑内施設の大型化に伴い、坑内火災危険性が増大しているので、安全装置の整備、難燃化の促進をはかるとともだ、施設の整備、管理に万全を期すること。  二、事故が発生した場合に、その早期発見をはかるため、坑内監視体制の強化、警報連絡体制の充実を期すること。  三、事故が発生した場合に、被害を局限化するため、退避訓練、救護訓練の徹底的実施をはかること。  以上が指示事項でございます。
  47. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 その警告というのは、一体あなたのほうの判決でどういう地位なんです、役所で警告というのは、どの程度のときに警告とか勧告とかという程度が出てくるのです。
  48. 西家正起

    西家説明員 特に具体的にどういう場合ということはきめていないのでございますが、大臣が直接警告されましたのは、昭和四十年の四月に伊王島で炭鉱災害がございました。その前二月にやはり北炭夕張災害があったわけでございますが、その続いた伊王島の災害のあとで、大臣が大手の社長を招致されまして警告されまして以来、その間には一回もなかったわけでございます。
  49. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 その警告の効果というものはあったのですか。
  50. 西家正起

    西家説明員 警告をいたしましただけで済ますわけではございません。警告に基づきましてわれわれのほうも非常にやかましくこれを追及しておるわけでございまして、大臣の警告が行なわれました場合には、かつては非常に効果があったというふうに考えておる次第でございます。
  51. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 それでは次の具体的な点を承りますが、災害発生したのは七月三十日の午前三時五十分ですね。それから、ここで多賀谷委員報告した内容で、調査報告の部分で非常に疑念があって会社及び労働組合関係者意見の食い違いがあった問題があった、そのために報告書の調製がおくれたと、私的な事情を承ったのですが、その部分は、三時五十分から五時十分か五時二十分か、坑外に災害状態を連絡、通報する時間がおくれているのが食い違っておる、こう承るのだが、これはおたくの昨日の日づけで本省からの報告書に基づいて、私はここで質問しているのですが、この所見はどうなんですか。
  52. 西家正起

    西家説明員 先ほど申し上げましたように、最終的、確定的なことは、各人の、みんなの供述書をとりまして、その食い違いがもしありました場合には再度供述をとる。非常に最終的なものを求めるには時間がかかるわけでございまして、ほんとうに確定したものではございませんが、ただいままで聞き取りが終わっておる部分で申し上げられますことは、三時五十分ごろに斎藤係員が火災を発見いたしております。そして坑外に連絡をいたしまして、坑外に通じたのが五時から五時十分の間、こういうふうに私のほうではただいまのところつかんでおる次第であります。
  53. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 そういたしますと、ここで五時十分という不確定な時間をかりに確定して議論を進めるのでありますが、まず一時間二十分かかっているのですね。坑内火災を外部に連絡するまでの間に一時間二十分の時間を要しておる。それからもう一つ五時十分から五時三十分まで二十分間、外部に察知されてから会社の社内連絡が二十分かかっているのですよ。そして五時三十分に初めていわゆる救護隊の招集発令が出ているわけです。それから五十五分、約一時間を要して六時二十五分に四個班の救護隊が入坑したとなっているのです。そういたしますと、通算二時間半くらい、この坑内災害発生してから坑口まで救護隊がかけつけ、入坑したということを確認するまでの間相当の時間がかかっているのですが、この原困は何であるか承りたいと思います。こういう措置が適当であったのか、何でこうなったのか。二時間半も燃えている中にぶん投げておいたのですね。
  54. 西家正起

    西家説明員 火災発生いたしましてから坑外に連絡がとれるまでの間に一時間二十分近くかかっておりますことは事実でございまして、その内容につきましては、ただいま斎藤係員その他の供述によりますと——これもただいま若干供述に食い違いのところがございまして、はっきりしたことはまだ言えないのでございますけれども、大体坑内の連絡装置は、坑外から災害のございました西部地区に通じます警報装置といたしまして電話がございまして、災害の起こりました西部斜坑ベルトの手前の入り口のところに一つ、西部の区域内には作業個所に二つ、それからベルトコンベヤーの終点のポケットの下のところに一つ、これが大体西部地区の連絡系統でございまして、この電話は相互間通じることになっておるわけでございますが、その第一原動機付近の電話で坑外に連絡したところが通じなかった。その間関係者は発見した係員とベルトコンベヤーの運転工ともう一人、途中で出会いました主任、この三人の間の関係になるわけでございますけれども、何らかのその間の事情がまだはっきりわかっておらぬのでございますが、おくれまして、主任が別のところの、西部地区と関係ない地区まで電話をかけに参りました。その電話で五時ごろに坑外に連絡がついた、こういうような状態でございまして、この点につきましては、はなはだ申しわけないのでございますけれども、目下鋭意、もっとこれを詰めて、正確な時間的関係を明らかにいたしたい、かように考えておるわけでございます。  それから五時過ぎに坑内から連絡を受けまして、坑外の主任が救護隊を招集いたしまして、大体は一時間未満で招集をいたしたのでございますが、極力われわれは救護隊を早く招集するようにかねがね山のほうにも注意をいたしておりますし、規則も改正いたしましたような次第でございまして、六時二十五分に招集されまして、六時五十五分に坑内救護隊が入り込んだ、こういうような状況に相なっております。
  55. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 そうしますと、局長のただいまの答弁ですと、坑内から坑外への連絡がおくれたのは、機械の故障その他の手落ちがあったのだという事実はお認めになるわけですね。
  56. 西家正起

    西家説明員 連絡方法がまずかったのか機械の故障であったのか、いずれにしましてもまずかったというふうに考えております。
  57. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 そこでお伺いするのですが、私が平和坑に入りましたのは三十一日の早朝であったわけですが、三十一日には五人一組の二十九個班が入ったわけですね。きのうの鉱山保安局の報告書によると、昨日の現在では三十三個班入っているということですね。  そこで私がお尋ねいたしたいのは、ここで平和坑以外の炭鉱保安救護隊が動員されて、非常な御苦労をかけて参加しておられるわけです。大体参加しておりますのは、平和坑は北炭ですから、北炭の資本別の鉱業所がくまなく動員されているわけですね。平和はもちろん、夕張、新夕張、登川、真谷地、幌内、空知等ですね。ここで私が承りたいのは、こういうような地下の火災ですから保安の問題が非常に重要になってまいりますが、たとえば地上、海上その他の大災害の場合、緊急災害の場合は、常識上からいっても治安からいっても、当然警察も動員されなければならないし、あるいは民間の消防隊、消防署も動員されるし、場合によったら自衛隊の救援出動も行なわれていますね。地下の場合は特殊な条件だから、そういうような広範な動員は技能上できないことはもちろんわかっています。狭いからよけいな者が入っていくと仕事ができません。だからそれはわかりますけれども、ここで私が疑問に思っていますのは、夕張の地元の北炭系統の山は大体行動半径は二十分から三十分以内に集結できる山です。しかし、同じ北炭の資本別ですけれども、幌内炭鉱の場合は、ここまでかけつけますには、出動命令が出ても、装備して車に乗って入るだけで一時間から一時間二十分以上かかりますね。空知炭鉱になりますと、ここまでかけつけますには完全に二時間半かかりますよ。しかし資本別であるから、かけつけてくるのは当然だと思う。これはいいのです。そこで私がどうも納得できないのは、こういう異常災害であるのに、同じ夕張の地積で三十分以内で出動可能の状態にある三菱系統の大夕張あるいは北菱とか鹿島とか北夕とかいう炭鉱が周辺にあるわけですね。当然それぞれ救護隊を持っているわけだ。ところがここには全然出動の要請はない。それは資本別で違いますから、北炭は自分の責任においても名誉にかけても、自分の山で発生した災害ですし、ほかの資本別の人々にお手伝いを願うということは、危険を伴う作業ですし、経済補償その他のことも伴うことだからそれはなかなかようやれないことだとは十分私は察しておるのです。しかしこの事態は、私からいわせれば、私が現地調査した当時の状況からいくと、もっと早く火災の鎮圧や遺体の搬出が可能であると判断をした。そこにミスがあったと思う。こんなに十日間もかかって、私が行きましたときには四十度から四十五度の熱風だったのが、きのうの報告ですと、六十度になっていますね。そうすると、日時がたつごとに激しくなってきているのですね。事態収拾ができなくなってきていますよ。この災害対策に対して、短期決戦であれば短期決戦の処置を講じなければならなかった。ところが、短期で可能であると思ったから、動員計画その他についても十分の手配をしないでそのままでやった。しかし報告を受けておられるとおり、坑道は斜坑を含めてこの地帯まで五、六百メートルの坑内を行きますのに、作業員、救護隊は最高一時間から一時間十分しか労働できないんですよ。過熱と高温それから煙で視界の見通しがきかないために進行できない。そのためにすぐ疲労度を高める。坑口から往復一時間十分の間には、三、四百メートルから五、六百メートルの困難な中を通りますから、それで実際に救援する実働の時間は幾らもないのですよ。そうしますと、これらの救護をやるには相当の予備救護隊を動員して、相当の時間休養させて交代し、疲労度を低めて、そして救援しなければならない。とすれば、もっと広範な救護動員をしなければならない。  ところが、これは公に北海道の炭労が正式な姿勢として要請したかどうか知りませんが、聞くところによると、炭労の関係者から現地の鉱山保安局に対して、これは非常に重大なことだから、こういう非常事態には他の資本別の救護隊も動員したらどうかと——これは私的であったか公的であったかわかりませんが、そうしたら、そのときの話では、鉱山保安局のほうでは、それは資本別に違っているので、その被害を受けておる当該会社から要請がない限り、当局のほうとしては処置ができないのだという答えがあった、こう承っているのです。これは公式発言であったかどうかは別ですよ。  そこで、私は係官の方においでを願っていろいろ事情を聞いてみますと、それは鉱山保安法の第四条の規定において、その鉱業所内に起こった災害は当然鉱業権の所有者が責任を負って執行するのだ、こういうことになっているわけですね。国有化ができると、鉱業権者は国ですね。あるいは植村試案による全国一社ができれば——全国一社になるかどうかわかりませんが、そういう案ができれば、その会社が鉱業権を持つことになるわけですね。もし全国三社案ができれば、北海道の独立社が鉱業権を持つことになるのだから、そうすると、そういう一つの機構が変わるとすれば、この鉱山保安法第四条の解釈は、ある特定の会社が鉱業権を持っているから、その特定の会社で起こった災害は特定の会社まかせだ、あるいは特定の会社に対する救援動員というものはその会社自身の了解と要請がない限りは、鉱山保安局としてはのどから手が出そうでもやれないのだ、こういうことになっているわけですね。しかし、こういう場合において、鉱業権者が保安責任者であるけれども、そこから要請があった場合は、動員体制が整えられる条件は行政指導によってあると思うのです。このような不測な大災害で、しかも見通しを間違って、三日か五日で救出できると思ったやつが十日間たってもまだ幾らも進まないという状態の中で、一体そういう行政指導をする意思がなかったのかどうか。機構上、いまのような資本別的組織の中におるから、救える人も殺してしまった。救援の可能な条件のあるものでも、機構がそうであるために機構の犠牲になって、ここでも二重の犠牲者を出しているんだ、私はこう思う。この点についてはどうお考えになりますか。鉱山保安法の第四条、その関連した法律に対する解釈、それからそれをどうするか、今後の問題として承りたいと思います。
  58. 西家正起

    西家説明員 炭鉱におきます災害のときの救護でございますが、これは第一次的に、もちろん炭鉱の鉱業権者に責任がございまして、炭鉱救護隊が活躍いたしまして救護をするというのがたてまえであることはもちろんでございますけれども、自山の炭鉱救護隊だけで間に合わない場合には、関連の自分のところの救護隊をまず頼んだり、あるいはそのときの判断の問題でございますけれども、もしどうしても、さらにいま何個隊か急につぎ込めば助かるというような見込みがある場合には、これは当然鉱業権者が他の鉱山の救護隊にも出してくれというような要請を監督局に持ってくるのではないか、かように考えるのでございますその際、もちろん監督局といたしましては、要請に応じまして別の炭鉱の鉱山救護隊に対して依頼をするということも、これはやった例もございますし、あるわけでございますが、その間もちろん鉱業権者だけの判断にまかさずに、監督官もずっと炭鉱につきっきりでおりましたので、その間の判断がどうであったか、この辺はただいまのところではわかりませんが、わりあい早急に相当多数の鉱山救護隊炭鉱のほうに招集されておりますので、おそらく要請するところまでいってなかったんじゃないか、かように判断するわけでございます。しかしながら、やはり先生のおっしゃいますように、すぐそばのよその炭鉱が全然その炭鉱に応援に行かないというかっこうは、私は法律とかそういう問題を離れまして、やはりあまり感心しない感じもいたしますので、そういうすぐそばのほかの会社救護隊がもっとスムーズに出動できるような何かその辺の方策につきまして、至急検討さしていただきたい、かように考えております。
  59. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 私が言っていますのは、局長は感心しない、いわゆる大夕張その他三菱系統の山で応援出動しないのは感心できない、こういうお話でありましたが、三菱系統の山が出動しようと思ったかもしれませんよ、頼まれれば、要請があれば。しかし要請がなかったから、人の会社に出しゃばって出ていくわけにいかない。これはわかるのです、企業体が違うんだから。ただその場合に、鉱山保安法の第四条の第一次責任の主体がそうだとしても、行政指導によってそのことは道を開くことが可能である。その場合救済するのは行政指導であるのだ。そうすると、救護隊ももっと新鮮な休息をさせながらどんどん補給し得たのではないか。そこで短期にやれるかどうかということの見通しもそこにからまっておったんではないかという一つの不安が残される。もう一つは、やはりこれは調査の結果承ったのですが、かつて昭和三十五年の八月に、同じ地帯の旧兼松炭鉱がガス爆発をしたときに、この兼松炭鉱は非常に小炭鉱で、そういう救護の能力が非常に低いので、そこで当時の鉱山保安監督官が行政指導をされ、呼びかけあるいは了解をつけて、その周辺の朝日炭鉱であるとか美流渡炭鉱であるとか、資本別には全く関係のない小炭鉱救護隊を出動した事実があるわけだ。そしてその結果は、一名を救助して七名が死亡しておりますが、とにもかくにも、近隣の救護隊が行政指導によって出動しておる前例があるわけですよ。そうしてそういうことによって災害を一刻も早く食いとめて、そうして関係者の不安を一掃するという努力をしておるわけです。だからこういう前例もあるんだし、あなた自身も前例があったということは、このことを指摘するのかその他の例証を含めて言われておるのか知らぬが、こういうことは大災害発生の場合においては、近隣の資本別を乗り越えていって救護をするという行政指導をする意思があるのかないのか。私は特に今度の夕張という密集地帯のことを申しているのであって、将来のこれから起こる問題について、たとえば空知地帯、歌志内、赤平地帯もみなそうですが、みんな資本別に食い違っておる。そういう場合に、そういうことは違う資本別からは要請困難だから、その中にこそ監督官庁である行政官庁の行政指導が必要である。私は国会であればこんなものは一ぺんに解決つくと思う。社会党の要求する案を諸君が認めてくれれば、国が鉱業権者であるから一ぺんで全部動員できますよ。いまのような行政機構の中では、行政機構に期待する以外にないから言っているので、そういうことに対しても今後前向きの姿勢で行政指導をするという意思があるかどうか、承りたいと思う。
  60. 西家正起

    西家説明員 私といたしましては、そういう強力な行政指導をやらせる意思はございます。ただ形式上は、まず災害を起こしました炭鉱に要請を出させましてやるようにといったような形にいたしまして行政指導をいたしたい、かように考えております。
  61. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 次に承りたいのは、こういうようにわれわれは不幸なる災害が頻発するという前提で言っているのじゃない。しかしいつ起こるかわからない状態の中で、常にわれわれは防備の体制を整えておかなければならぬと思うのだが、もう一つ問題は、炭鉱地帯は交通その他の完備によって、実質上地理的には圧縮されてきているのです。そこで問題は、こういう集合地帯、集約地帯における保安体制を確立するために、いわゆる救護隊ですね、常設救護隊を設置して常時出動可能の——大体行動半径一時間前後で行けるのですが、山元から二時間も二時間三十分もかかっているのですから、もっと単純な連絡があれば、もっと早く出動が可能なことができるところまで交通路線が発達してきている。たとえば岩見沢に保安センターを設置してやられた。大体岩見沢を中心にすれば夕張まで長くかかったと踏んで、平和坑まで一時間もしくは一時間二十分。岩見沢を中心にすれば、大体三笠の全域炭鉱、美唄の炭鉱、それから砂川近くまで大体一時間くらいの行動半径で救護隊が出動する可能性が出てくるわけですね。これは炭労からもかつて要請したことがあると思うのですが、そういう保安センターまでつくって、保安の指導育成、技術の訓練等をされるということで、こういう集約地帯における災害の防備のために、そういう常設の救護隊をこの際踏み切って設置をする必要があると考える。これはもちろん社会党の炭鉱国有化ができれば直ちに解決できますよ。できることなんだ。おかしな案を出して諮問をしているから、いよいよ困難になってくるんだから、この際、そういう災害を防備するために救援の常設隊を設置する意思があるかないか、特に大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  62. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ごもっともでございます。まず第一は、各鉱山における救護体制の整備充実をはかることが最も効果的であることは、申し上げるまでもないと思います。進んで近隣の鉱山を一括しまして共通の保安体制を整備することは、お説のとおり適切な措置であると考えます。
  63. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 保安体制を整えることが大事だということは意見が一致しているのですが、私は、一つの具体的な建設的な意見として、いまの常設救護隊保安センターを中心に設置する意思がないかどうかということをお尋ねしているわけです。
  64. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御提案の趣旨に全く同感でございまして、そういう趣旨においてお答え申し上げておるのであります。
  65. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 時間がございませんので、あと一、二の点を承って私の質問を終わりたいと思います。  今度の災害で見ますと、炭鉱の非常に高度な合理化によって、機械化が進行しておるのに機械の管理が行なわれておらない、非常にルーズであるということは、原動機の例で申し上げた。そこで問題は、罹災者の諸君が脱出するのにほとんど備えつけの事故救命器が完備してなかった。昨日の報告ですと、救命具は二百二十五個あるというように会社の台帳に載っておる、こういうことを承っておるのですが、私が現地で承ったときには百九十一個しかなかった。いずれにしても、これはまるきり半分くらい足りないのです。それで、鉱山保安行政の上から事故救命具を設備することを義務づけるようにきめられた。しかし実際上製品が不足しておるので、平和坑の場合は十一月までに個人携行実施するということで、余裕期間を置いて行政指導しておる、こう言われるのですが、一体これは十一月にそれを完全にする可能性があるのかどうか。また、その他の山においてもどういうような状況なのかどうかという問題。  もう一つは、暫定措置はそういう猶予措置を講じたのはいいが、救命具というものは一体完全なのかどうか。いまのように口にくわえてかぶると、暑くてとても耐え切れない。どうも短い時間で命がけだから、脱出するのに少々の期間苦しくてもそれをかぶってはいずり回ることはできるじゃないか、自分の命が大事ならそれくらいの苦しみはやれるじゃないか、こういうことを言われると思いますが、しかし、これを製造するメーカーは日本にたった一つしかない。重松RE型というのが日本の唯一の品で、これは四十分しかもたない。西ドイツの、もっと効力のあるドレーラー式というのは、日本よりももう十分間、五十分もつと承っておるのだが、こういう命の綱である大事なものを、一体通産省は本気になって、人命を保護するための有効なる機械をもっと積極的に開発するという方策を考えていないのかどうか。  それからもう一つは、開発に手間どったらそのうちに命がなくなりますから、同時に国内製品で不完全製品であったり、あるいはそれなりにも配備するにしても、生産能力から見て不可能であるとすれば、ドイツその他の先進的な高度に開発されている機械をこの際輸入をしても、こういうものの設備の完ぺきを期する指導行政ができないのかどうか、この点について所見を承りたいと思います。
  66. 西家正起

    西家説明員 一酸化炭素マスクの件でございますが、先生御指導のとおりでございまして、災害前までは規則改正をこの一月にやったのでございますけれども、製造能力との関係で一応附則で、四十四年の三月までにそろえるというふうに規則の上ではなっておるわけでございます。しかしながら、事生命に関係する問題でございますので、もちろんできるだけ早くということで、大体一月ごろまでには会社に増産をさせまして、全部に行き渡らせる、こういうことで計画的に補てんをさしてまいったようなわけでございます。当平和坑におきましては、十一月に完備する予定であったわけであります。しかしながら、今回の災害にかんがみまして、十一月じゃおそい、こういうことで緊急輸入等も含めまして、現段階で一番最短時間で各自に渡るような、最善の方法を実施いたしたいというふうに考えておるのであります。一つは増産命令、一つは暫定的に一の方、三の方の共用や、あるいは定置式でも使える、期間が短ければ有効でございますので、そういうものをできるだけ個人に配付をいたしまして、短期間の間に各自に持たせるようにいたしたい、かように考えております。  それから救命器の性能の問題でございますが、これは現在つくっておりますSR10E型の、もともと通産省のほうで補助金等により技術的に研究をさしたものであります。逐次改良されてまいっております。現在の個人携行用のものは、確かに一酸化炭素が一%以上になりますと非常に暑くなるというような欠点もございますけれども、持続時間は一時間半くらいもつ、テストによりましてそういう結果が出ておりまして、安全性にいたしましても一時間半以上だいじょうぶである、こういうことで、ドイツ、ソ連、アメリカにございます世界的な一酸化炭素マスクと比較いたしまして、一長一短はございますけれども、大体同レベルに達しておる、こういうふうに考えておるわけでございます。しかしながら、必ずしもこれでもまだ一〇〇%だいじょうぶかというと、その点は問題がございまして、一番いいのは酸素のないところでも使えるようなマスクということで、酸素を発生するような、酸素発生式マスクにつきまして、現在メーカーに補助金等を出しまして、新しいマスクを開発研究中でございまして、これができればさらに一そう効果のあるものができると思いますけれども、現段階では日本製の一酸化炭素マスクも、十分世界のものに比して劣らないものである、こういうことが言えると思うのであります。
  67. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 それではひとつ鉱山監督管理官の任務について承りたい。北海道を例にいたしますと、札幌の中につとめておられる保安監督官はたしか五十一名と思うのですが、これをお役所では第一種、第二種、第三種、第四種と四つに区分けをして任務についておる、こう承る。一種に指定された四十七鉱については月に一回査察をする。それから二種に属する二十八の炭鉱には、二カ月に一回査察をする。三種に属する炭鉱は六カ所あって四カ月に一回査察をする。第四種は五十四あって、六カ月に一回査察をする。これは亜炭の山や露天掘りの山だから、あまり査察をする必要がないので半年に一ぺん、こういうように割り振りをしておる、こう承るのだけれども、大体、監督行政——保安監督官ですかの配備あるいは監督、査察の状態はこのとおりですか。一級四十七炭鉱が月に一回というのは事実ですか。私の質問か違っていますか。
  68. 西家正起

    西家説明員 北海道の監督局には監督官は八十六名、ほかの技官等の職員も入れまして現在百十六名おるわけでございます。これらのうちで、監督官が炭鉱の仕分けをしまして、月の巡回回数はただいま先生御指摘のようなことで、一般検査というのを実施をいたしておるわけで、ございます。そのほかに、いろいろな追跡検査とか総合検査とか、あるいは性能検査、そういったような特殊な検査を監督官、技官でやっておるような次第であります。
  69. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 大体、一種から四種までを含めて、それぞれこういう度合いで監督しておる。そうすると、いろいろな保安の問題のある山でも最小限度月に一ぺん、倍に考えても二回くらいしかやらないわけですね。問題がない限り、ほとんど山を回っていない。月に一ぺんくらいなら、行ったか行かないかわからない。同じ山で二度も三度も災害が起こっているところがたくさんあるのですから、そういう点についての何と申しますか、重点的な指導行政というものはどうされるのか。それから、こういうような平面的ないわゆる保安指導の体制をさらにくふうして現地に、たとえば夕張なら夕張に常駐させるとか、空知地帯に常駐者をふやすとか、何かもっと機動性を持った中身の伴う指導ができないのか。局へ帰ってきて監督書とか指示書とか、文書だけをつくり上げてそれを送達して、その結果がどうなったかわからないような指導行政では、何ぼやったって、災害はなくなりませんよ。われわれは監督官の手によって災害が防止できるとは思っていないし、会社の十全なる対策と、働く労働者の防衛訓練を伴わない限りできないことはわかっていますが、少なくとも、監督書や指示書を出しても実行しない会社、たとえば原動機に管理義務者を一人も置かない。電話も故障が起こっているような、そういう設備の中で、何月前に行ったのかしらないけれども、あるいは二日前に来ていたのかもしれない、あるいは直前に来ているという話を聞いているのですが、しかし、来ても、現実にこういう問題を発見して、しかも指示した事項が完全実施のできるようなことでなければ、働く労働者の生命を守るというようなことはから頼みなんです。やはりわれわれは、今日の資本主義体制の中で利潤を追求する資本家をチェックしていけるのは、行政官庁の強力なる指導が必要だと思う。あとは労働者の戦いしかなくなりますよ。そういうことを、われわれは非常におそれるのです。そうすると、通産大臣を先頭とする行政出目庁の、そういう事実に対する適正なる行政指導こそが望ましい。国会でできるものならわれわれが解決するが、あなた方の仕事だから、あなた方の責任においてそういう行政指導の完ぺきを期する必要があると思う。いかがですか。
  70. 西家正起

    西家説明員 先生御指摘のとおりでございまして、私ども先ほどのような基準で、いわゆる一般検査をいたしまして法規違反状況を調べさせておりますけれども、もちろんそれだけではだめでありまして、そのほかに法規違反の重なっておりますような場合には、そのつど追跡検査というものをやっておりますし、また一人の監督官が目の前だけで、自分の目に映る点の安全状態を確かめるだけでは不十分だということで、いわゆる総合検査ということをやっておりまして、要するに目にあらわれないような採炭法あるいは計画、そういった総合的な面で、これは一挙に相当の数の人間を出しまして総合検査をやる。あるいは特定の施設を対象にした特定性能検査をやる。そういうような検査を含めますと、月かなりの——かなりと申しますか、月一回といったような少ないものではない、監督官も、もう少し鉱山の検査をしておるのが実情でございます。しかしながら、確かに先生御指摘のように監督官にも限度がございますけれども、われわれも大いに今後ともこういう事例をもとにいたしまして、監督を十分に厳にいたしまして、少しでも災害が減りますように最善の努力をいたしたい、かように考えるわけであります。
  71. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 災害の起こりますたびに、お互いに二度とこれを繰り返すまいということを話しもし、誓い合ってきたのですが、そのことばの終わるあとから、次から次と発生いたします。先ほど申し上げましたように、いまのような高度な合理化の体制のもとにおいては、犠牲になるのは労働者ばかりだ、命までも犠牲になるということをほんとうにひしひしと感ずるわけです。この際、大臣石炭鉱業方向に対する答申を受けられるにあたって、働く労働者の方たちの保全と生命を守って、安心して炭鉱再建のために働けるように、一般の御努力を期待し、重ねて要望いたしまして、私の質問を終わります。
  72. 堂森芳夫

  73. 岡田利春

    岡田(利)委員 質問の前に資料の提出要求をいたしたいと思います。第一点は、退避訓練及び鉱山救護隊訓練の内容を一切保安規程で定めることになっておるわけです。もちろんこれ以外、坑内火災その他についても保安規程で定める部面が多いわけですが、ちなみに平和坑における保安規程ですね。この点をひとつぜひ御提出を願いたい。それと同時に避難訓練及び救護隊訓練報告書があると思うのですが、これの資料をぜひ御提出を願いたいと思います。  それと一点、いま渡辺委員が質問しましたように、鉱山救護隊の場合には北海道、九州、それぞれ救護隊連盟の組織がある。救護隊連盟の規約の趣旨に基づけば、資本別、企業別をこえて、鉱山災害対策のためにお互いが協力する、こういう組織があるわけです。したがって、鉱業権者が出動を要請すれば、救護隊の場合には出動しなければならない、こういう精神的な内容になって、共同訓練等も行なっておるわけです。そういう点から考えますと、問題は坑内火災、ガス爆発、自然発火、この三つの災害が起きた場合には、一体どの程度の、何班の救護隊が必要なのか。その山だけの救護隊であれば、三班以上、整備班が一班ということであれば、災害が非常に小さな場合には一応役に立つのですが、大きな災害の場合には、なかなかそれだけでは手が回らないという実情であるわけです。そういう点から考えますと、当然地域の救護隊の共同、それと同時にそういう爆発、坊内火災、自然発火があって自己の救護隊の発動を要請する場合には、その炭鉱規模に基づいて一体どの程度、何班程度の救護隊を至急常備をしなければならないか、こういう点についてやはり保安監督局のほうで研究すべきではないか。要請をする、消防ならばすぐ自動的にどんどん連絡してくるのですが、救護隊はそういうわけにはいかぬのです。やはりそういう点について検討する必要があると思うわけです。私どもの長年の経験によれば、災害が起きれば自分のところで消しとめてしまいたい、こういう本能がまず働くわけです。まず消すことに一生懸命になりますから、そのうち火災が大きくなって、手に負えなくなって報告するという傾向があるわけです。また、鉱業権者や保安管理者はできるだけそこでとめたい、こういう本能が働くことは当然なんです。しかし、炭鉱の重要災害を調べてまいりますと、大体出水や落盤は別でありますけれども、爆発と坑内火災と自然発火、これについてはその救護隊が使われなくても、やはりそれだけの体制をとる。出動できなくて終われば幸いでありますから、そういう点について検討しなければならぬではないか。いずれにしてもあす決議を出しますから、全般的に少なくとも法一部改正と規則の改正についていままで議論してまいっておりますけれども、ぜひひとつそういう側面から検討を願いたいということを要請しまして、いまの二点の資料の提出を求めたいと思います。
  74. 堂森芳夫

  75. 田畑金光

    田畑委員 私も今回の事故調査に加わりまして現地でいろいろ話を聞いたり調査をいたしてまいりましたので、二、三お尋ねをしたいと思うのです。     〔委員長退席、岡田(利)委員長代理着席〕  私は今度の事故を見まして感じたことは、人災というにおいが非常に強いという感じを受けたわけです。また、関係者がもっと保安という問題について理解を持ち、そしてまた保安教育というものが徹底していたとすれば、あれほど悲惨な事故に至らずして未然に防ぎ得たのではないか、こういう感じを強く受けるわけです。またもう一つ、私は監督行政の監督の強化あるいは監督官の充実等々、いろいろ具体的に要望したいと考えますが、大事なことは、自主保安という体制を山全体が確立するというこの取り組み方が私はもっと大事じゃないかという感じを受けたわけです。現実に坑内火災発生した、煙が出た、それを確認してそのあとの措置をいろいろ聞いてみますと、調査してみますと、非常にそごが出ておるわけです。伝えられるように、三時五十分に煙が出た、第二原動機の部分で出ておるということを確認した。そのあとの措置をわれわれが逐一追うていったときに、三時五十分に発見して、そうしてそれが坑内に連絡がされて、そうして緊急避難指令か出されたのが五時二十分といわれておるわけです。     〔岡田(利)委員長代理退席、委員長着席〕 一時間半の時間が経過しているわけです。私はここに保安という問題に対する、坑内火災に対する取り組み方というところに根本的な欠陥があった、こう考えるわけです。坑内火災が起きた、そうしてそれが確認された、その段階でもし退避の指令が出されてそれぞれの係員の指導のもとに退避していたならば、私は今日の三十一名のあの不幸な事態はなかった、こう考えておるわけです。これらの事情について私たちは会社の人方からも職員組合の人方からも、そうしてまた労働組合の人方からも、もちろんその前には鉱山保安監督局なり関係者から、官庁からも聞きましたが、特に私が残念に感じたことは会社の副社長さん、この方は何年か前この災害の起きた山の所長さんを経験された方というし、技術担当の最高責任者であるように承ったわけですが、あんなときにはすぐ避難をさせるということが大事じゃないでしょうか、こう聞いたのです。これに対してこの副社長さんは、いやそういうことはわれわれとしてはやるべきでないと思う、まず確認すべきだ、ベルトのところから火が出た、煙が出たとすればまずそれを確認する、そういうことが前提であると考える、こういうお話です。そうして過去三十年間とにかくうちの山はここだけではなくてすべてこういうベルト坑道で作業をやっているが、過去三十年間事故がなかったんだ、この三十年間事故がなかったということが、絶対唯一の間違いないという法則を打ち立てて、このような災害があってもまず確認することが大事だ、こういうような取りきめ方にそもそも問題を誤らしめた大きな事情がある、こう私は判断しておるわけです。その後お互い話し合いを進めているうちに、この副社長さんも、確かにいままでの私たちの保安に対する取り組み方がどうも軽率だったと思う、やはり保安教育においては煙を見た、火事だというときにはすぐ退避をする、こういうような方向保安の教育を改めるべきだと私も考えますというふうに話を訂正されたわけでありますが、私はこういういわば会社の管理者と申しますか、最高主責任者と申しますか、鉱業権者の考えに、そもそも誤らしめている大きな事情があった、私はこのように認識しておるわけでありますが、こういう点について通産大臣の所見並びに鉱山保安局長の所見を承りたいわけです。  私は監督行政を担当しておられる監督官の皆さんに特に好意的にものを申すつもりではないが、幾ら指導しても経営者の頭が過去何十年間のわれわれの経験から見ればこれはだいじょうぶなんだ、こういうようなことで指導を受けつけない、注意もいわれない、勧告も受け入れない、馬耳東風に聞き流す。通産大臣の先ほどのお話によれば、あの事故の直後何か警告を発せられたというが、ほんとうに警告をはだに受けとめるという態度に出るならば、私は将来この不幸を再び繰り返さぬということになろうと思うが、私はいまの石炭の事情や、特に石炭の経営者のもあの考え方を見たときに、またまたこういうような事故がありはせぬかということをおそれるわけであるが、こういう点についてひとつ所見を伺って今後の指導のあり方を聞かしてもらいたい。
  76. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 お話のとおりだろうと思います。  なお専門の局長から所見を申します。
  77. 西家正起

    西家説明員 私も全く先生のお考えどおりだというふうに考える次第でございます。
  78. 岡田利春

    岡田(利)委員 まことに田畑委員の質問中でありますが、労働大臣が時間がないそうでありますから、二点だけ労働大臣にお伺いいたしておきたいと思います。  第一点は、炭鉱災害が最近続発をいたしておるわけです。過去において労働大臣の勧告が出された実例もございますけれども、最近の炭鉱災害の実情にかんがみて、労働大臣の勧告権について、これを発動する考え方があるかどうか、そういう措置についてこの際見解を承っておきたいと思います。
  79. 小川平二

    ○小川国務大臣 私ども、労働者の生命と安全を守りまする立場から、鉱山における災害の防止には、申すまでもございませんが、強い関心を持っております。ただ、御承知のとおり、労働基準法の安全衛生に関する諸規定が鉱山の保安については適用されておりませんし、労働基準監督機関の権限がここに及んでおりません。したがいまして、ただいま御指摘をいただきました鉱山保安法に基づく勧告権をあとう限り活用いたしまして、災害の絶滅を期してまいりたい、このように考えておるわけでございます。  最近におきましては、昭和四十二年十一月に、三池三川鉱の災害に関しまして勧告をいたしております。この勧告の趣旨を受けまして、通産省におかれては、本年策定いたしました鉱業労働災害防止基本計画、それから昭和四十三年度鉱業労働災害防止実施計画、これに盛り込んでおられまするし、また自己救命器個人携行につきましても、この点については説明もあったと存じまするが、四十三年一月十三日付で石炭鉱山保安規則に規定をされておるような実情でございます。今後ともこの勧告権を活用することによりまして、労働災害の防止につとめてまいりたいと存じます。  今回の事件はまことに悲惨な事件でございまして、痛ましい限り、遺憾しごくでございますが、何ぶんただいまの状況は、現場をあげて被災者の救護に没頭しているという状況でございます。私どもといたしましては、事態が平静に復するのを待ちまして、火災原因等につきましても、今後現場に到達することができました暁には、さらに詳細に研究をすることもできるであろうと存じまするので、冷静な雰囲気のもとで徹底的な調査をいたしまして、それに基づきまして、勧告を必要とするという判断に到達いたしました場合には勧告を行なうつもりでございます。
  80. 岡田利春

    岡田(利)委員 次は、労働大臣としてまた国務大臣として、労働災害防止のために労働者の安全を期するという点で、石炭鉱山石炭及び亜炭の鉱山のみに限って鉱山保安監督局が通産省内部に設置されておるわけです。他は労働安全衛生規則に基づいて措置されておるわけですが、この機会に労働者の生命を保護する、そういう立場に立って労働安全行政というものを一元化すべきではないのか、このことが望ましいということを私どもはかねがね主張してまいったわけです。特に、鉱山保安局の行政の大体七割ないし八割は石炭関係に重点が置かれておりますし、石炭そのものはいま抜本的な長期安定策通産大臣は諮問いたしておるわけです。そういう点で、特にこの機会に労働安全行政の一元化について御意見があれば承っておきたいと思います。  それと同時に、現在災害でなくなられた遺族に対しては、先般法が改正になって年金制度が採用されておるわけです。炭労及び石炭経営者の間では、従来約百万程度の弔慰金が、新しい交渉の結果、百三十万円支給するということで、先般妥結をいたしております。しかし、われわれの調査では、装置工業の場合には、多いところは死亡に対して五百万の弔慰金——百七十万、二百五十万、三百万、いろいろございますけれども、最近年々企業の弔慰金が多くなってきているわけです。このことは労災法のいわゆる遺族補償が万全でないということを意味いたしておりますし、先般労働省としても、これらの問題は当然調査をし、検討しなければならぬという基準監督課長の御意見もいただいておるわけですが、そういう民間のいわゆる自主的な弔慰金の協定の実情にかんがみますと、すでにもう労災法による遺族補償は低い、実情に合わないということを意味しているのではないか。だから、企業家側も一労働者の要求に対して、いま申しました弔慰金の支給を約束している、これは明らかだと思うわけです。そういう現状から考えますと、すみやかに遺族補償のために、なくなった場合には遺族のことは万全な対策をとりますということを約束するわけですから、この点についてはすみやかに検討して、実情に合うように改正すべきだ、こう考えるわけです。この二点について、大臣の所見を承っておきたいと思います。
  81. 小川平二

    ○小川国務大臣 ただいま御指摘をいただいた問題は、一つの根本問題でございます。私どもといたしましては、労働災害防止の行政は一元的に所管されることが望ましいと考えておるわけでございますが、通産省には通産省の主張もあることでございますし、この問題につきましては、長い間にわたる御高承のような経緯もございますので、ここで結論的なことを責任をもって申し上げることができないわけでございますけれども、何ぶんこれは大切な問題でございますから、これからも政府部内でまじめに研究をいたしていきたいと存じております。  それから労災の補償につきましては、今回のこの事件につきましては、すでに万全の手配をいたしまして、請求書が提出され次第支給できるような体制を整えております。現行の制度のもとでは、きわめて大ざっぱに申しまして、大体四割相当の金額が大体四十年間にわたって支給されるという制度になっておるわけでございます。これは諸外国の事例あるいはILOの規定等から見まする場合に、はなはだ低きに失するという状況では必ずしもないと存じますけれども、給付の改善をも含めまして、今日の労災保険の制度全体をさらにりっぱなものにする必要、これはますます緊切な問題になっておると存じます。現にこの点につきましては労災審議会で御検討もいただいておるわけでございます。  ただいま御指摘をいただいた弔慰金の点は、実は、私はなはだ申しわけないことですが、御指摘をいただいて初めてそういうことがあったのかなと気がついたような次第でございまして、さような御指摘もいただいておりますので、この点につきましては、これからも労働省といたしましても大いに検討をいたしまして、改善につとめていきたい、かように考えております。
  82. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 関連をいたしまして、いまの点ですが、日本の遺族補償、並びに障害補償でも同じですが、平均賃金を基礎に係数をおかけになっているわけです。そもそも外国と日本と違うものは、平均賃金にあるのです。それはすなわち、日本ではあと払い賃金の性格が非常に多い。第一に、期末手当というものがある。これは実際その会社の経営のいかんにかかわらず、ある。さらに退職金制度がある。外国の場合は、御存じのように退職金制度というものはほとんどありません。しかし、それは年金という社会保障が包括をしておる。ボーナスというものが外国でもありますけれども、これは経営というものと非常に関係がある。ですから日本のようにあと払い賃金というものではない。そこで、日本では一年間の収入あるいは生涯を通じての収入のうちで多くの部分が平均賃金に入らない。そこに——外国、たとえばILOの基準に比しても必ずしも低きに失するということではないとおっしゃっておるけれども、そもそも基礎ベースのとり方が違っておる、ここに一つ問題があると思う。基準そのものもなるほどILOの最低の基準には一応達しておるやに見えますけれども、御存じのように、フランスでもドイツでも八五%ないし七五%出しておる。ですから私は、現在人命尊重といわれる中で、しかも交通災害等の保険金が相当上がりつつあるという情勢の中で、これはきわめて低い、こう考える。ですから現実に訴訟をしてみると、いままでの千日分というものはほとんど訴訟では敗れている。そして御存じのようなホフマン方式その他の方式がとられておる。そこで日本でも年金に改正がありましたけれども、依然としてこの問題は解決しないのです。ですから、日本の場合は平均賃金ということになれば全体に及ぼす影響もあるだろうけれども、しかし私は、もうこの法律ができました当時の終戦直後の昭和二十二年、二十三年の状態とは違うと思うのです。期末手当というものを包含をすれば、比較的この一時払いという賃金は少なくなっておる。でありますから、私はこの点は十分検討をするに値する、かように考えるわけですが、御所見を承りたい。
  83. 小川平二

    ○小川国務大臣 ただいま御指摘のありました点は、確かにこれは一つの問題点だと存じております。  そこで、その問題につきましても一、ただいま審議会で御審議をいただいておるわけでございます。私どもといたしましては、死亡された方が生前現実に受け取っておられた賃金を基準として算定することは明らかに望ましいと実は考えておるわけでございます。審議会における検討の結果の結論を待って改正について検討いたしたいと思います。
  84. 田畑金光

    田畑委員 局長は私の質問について同感の意を表されたですね。そうしますと、端的にお尋ねしますが、今回のような事故が起きた場合はすぐ退避する、そうして退避訓練が行き届いておれば、こういうような事故がここまで深刻にならなくても処理できたと私は思うのですが、保安にあたってはそのような教育がなされておるのかどうか、この点どうですか。
  85. 西家正起

    西家説明員 今回の災害につきましてさらにまだ不明の点もございますので、全般的に調べてみないとはっきりと申し上げることはできませんが、ただ現在までの段階判断いたしました場合、先生御指摘のとおり、私はやはり退避が早ければ相当災害は軽減できたんじゃないか、かように考えておる次第でございます。  退避訓練ということにつきましては、これは各鉱業権者の義務といたしまして、現在六カ月に一回以上訓練をやるということになっておりまして、当炭鉱におきましては昨年三回、ことしは一月に一回退避訓練はやっておったわけでございます。そこで、しかし私の考えを申しますと、実際に実戦的な役立つ訓練をやっておったのか、あるいは効果ある訓練ができておったかどうか、むしろこの点に非常な疑問を持っておるような次第でございます。  大体そういうふうに感じる次第でございます。
  86. 田畑金光

    田畑委員 私は、特に大事なことは、あくまでも、坑内火災発生した、それはいかなるところ、いかなる原因に基づくにしろ、直ちに退避させる、こういう趣旨を徹底する、指導する、保安教育もそういう方向で指導していくことが一番大事だ、こういうことを私はまず第一に認識したわけですが、この点についてはひとつそういう方向で今後とも保安教育の指導に全きを期せられたい、こういうことです。  もう一つ、私非常に残念に感じたことは、局長御存じのように、某係員が発火個所、煙を発見してすぐ電話で坑内にあるいは坑務所に連絡をとったわけです。ところが坑務所は電話連絡してもいなかった。結局そこには夜警しかいなかった。主任と言っておりましたが、大事な主任の方は三番方が全部坑内に入っていた、こういうことです。もしあの節、あの四時前後に坑務所に主任がいて、そうして適切な判断を下して直ちに退避の指令を出したとすれば、その時刻において適切な措置によってあの惨害を見ずに済んでいたのじゃないか。そこでわれわれは会社側に対して、一体どういうわけで責任者がいないのですか、こうただしてみたところが、三番方の節には置いておりません、こういうことです。ずっと置いていないということです。会社全体が三番方についてはそういう責任ある人は坑務所に置いていない、こういうことなんです。私、実は驚いたわけですが、その他の山においてもそうなのかどうか、よく私はわかりません。しかし、当然置いてあるもんだという私たちは理解のもとに確かめたわけでありますが、置いてない。こういうことなどは、これは規則を改正しなければ置けないのか、あるいはまた、山自体の保安その他の管理運営の面から見て、当然これは置くものという前提で保安当局は指導なさってきておるのか、あるいは保安当局も知らずしてこのようなことを見過ごしていたのかどうか、この辺はどうなっているのですか。
  87. 西家正起

    西家説明員 三番方といえども坑内には鉱山労働者の方が働いておられるわけでございますので、私といたしましては、当然坑外の坑務所にはその連絡を受けて判断できる方がおるべきものだと考えるわけでございます。その一点につきまして、私、特に事前にそういう指導をしたかどうか、いまこちらでわかりませんが、当然指導されなくても、それは中に働いておられるのですから、坑務所におられるべきものであるというように考えます。
  88. 田畑金光

    田畑委員 局長も当然そうだという理解のしかたですが、われわれもそういう頭で臨んだわけであるが、責任ある立場の人から私がさきお話し申し上げたような答が出ているわけです。こういうようなルーズな管理体制と、私はあえて言いますが、そこに今回の大きな事故発生原因があると私は思うのです。こういうことをとくと御了承願いたい、こう思うのです。  さらにもう一つ、われわれは職組の委員長の方からもいろいろお話を承りました。この人は同時に坑内の係員の身分のようでした。今回のような事故の場合には、確認するとか、火を消すとかいう前に、とにかく火が出ておる、煙が立っておるということならば、すぐ退避させるということが本来のとるべき措置ではなかったのか、こういう質問に対して、その職級の委員長も、やはりまず第一には確認することだ、こういうような返答が来たわけです。これはさっきの副社長の指導方針から見るならば、一係員がそのような方針をとっておるということもやむを得ないという判断をするわけです。同時に、その係員の答えの中には、もし確認しないで、煙が出た、すぐ退避した、これだけでやってみて、たいした事故でなかったとすれば、労働者を再配置する、もとの職場にまた戻してくるのにこれは容易なことではない、そういう趣旨の発言があるわけです。これは私はいろいろな理由が含まれておると思いますが、やはり炭鉱労働者の賃金は請負賃金だということ、もし退避させると、これによって何でもなかったということならばやはり係員の責任という問題が出てくる。上から締められる、また、労働者の賃金というものはそれだけ削られる、カットされる、こういうことになってきますと、そういう職組の委員長の立場というものを理解できないわけでもない。ここあたりにやはり検討すべき問題があろう、私はこう思うのです。同時にまた、私は今回の場合、係員が坑内からの連絡をとっておるが、この鉱山法なり規則を読めば、一係員であってもこのような緊急非常の事態の場合にあっては、当然私は係員の責任において、判断に基づいて退避措置をやり、後ほど上司に報告するというような処理でなされても、これは法や規則の精神に決して抵触しない。いや、むしろ法や規則は求めておるように私自身はこれを見て読み取るわけですが、こういう点については一体どうお考えなのか。もし、こういうようなことなどがやはりいま私が申し上げたとおりであるとするならば、私は今回のあの平和坑における保安の管理体制、教育、こういう点について根本的に考え直すべき点があると思うのだが、この点について局長見解を承りたい。
  89. 西家正起

    西家説明員 先生御指摘のように、事故が発生いたしました場合に、すみやかにやはり退避させるということは、これは特にこういう坑内火災のような場合、当然の措置だと思います。係員といたしましても、保安法規上はそういう義務を持っておりまして、とりあえずそういう措置をやったあとで管理者に報告する、こういうことになっておるわけであります。それから退避の場合の一般的な事項につきましては保安規定に、それぞれ炭鉱におきましてその際どうやるかということをこまかく規定しておるわけでございますけれども、その規定がどうあろうと、緊急の場合には当然避難をさせるべきものである、かように考える次第でございます。
  90. 田畑金光

    田畑委員 大臣が何か先に帰るから、質問があれば先にやってくれ、こういうわけです。実は私は大臣にも、われわれが先日現地を見てこの事故の実情に即した質問というのは大臣は答えなくても聞いておられれば大いに勉強になると思うので最後までいてもらいたい、こう思うのですがどういう事情によってか知らないけれども、出ていくから質問があれば早くやってくれ、こういうことでまことに残念です。  そこでやむを得ませんから私は大臣に一、二点承っておきたいのですが、先ほど岡田委員の質問に対して抜本策答申については八月がはずれたとすると九月に入れば秒読みだという。秒読みとは一体どういうことなのか。私は秒読みというと人工衛星を打ち上げるときの秒読みだって一時間か二時間、せいぜい三時間でしょう。その他の秒読みというと一時間もやる秒読みはありませんよ。私は大臣に特に一つ頭に入れておいてもらいたいことは、前国会において、今度の抜本答申についてはいつごろをめどにされるのか、こういう質問に対して、大臣も、今度鉱山石炭局長におなりになった中川さんも、八月末をめどにする、こういうことをはっきり答えられました。めどにするというだけでなく、八月末に答申を出して、そして四十四年度の予算措置には必ず間に合わせます。しかしいまの石炭事情というのは、そこまで待つわけにいかぬだろう。そこで、これは石炭局長の答弁だったと私は記憶いたしておりますが、最悪の場合は閣議決定、こういうことで、年末の資金繰りその他については緊急の措置をやりたいということばではっきりお答えになっておるのです。ところが今日の政策懇談会の小委員会がいろいろ難渋しておるということ、議論が分かれておるということなども、そしてそのよってきたる原因どもいろいろ私は私なりに見ておるわけでありますが、先ほどのお話にも一ありましたように、前回の昭和四十年六月、三木通産大臣が当時諮問をして、それに答申が出て政府政策となり、法律となり、予算となって、抜本策というものが動き出して二年半経過しておる。この大きな時間的なズレが石炭を助けるときに手だてができないでますます深みに入って、手を打っても手おくれという結果になっておるのですよ。この点を十分に顧慮されるならば、秒読みというお話ですが、あなたの秒読みとはどういうことなのか。九月に入って早々に答申が出されるように御努力なさるつもりかどうか、これが第一点。  第二点として私が特に遺憾に感ずることは、すでに石炭特別会計について大蔵省筋は財政硬直化打開の名目を掲げながら、あるいはまた総合エネルギー対策という角度から取り組むというようなことで、電力についてもあるいは石油の資源開発などについても、関税財源をもって総合エネルギー特別会計という形に質的にこれをかえていこうということに動いておるやに聞いておる。現実に私は局長以下の事務当局大蔵省との窓口の話し合いがなかなか難渋して困っておるのではないか、このようにこれは推察しているわけです。大体大臣御承知のように、石炭特別会計というものは、四十二年度を起点として四十五年度まで、そうなっておるのでしょう。二年が経過し、四十三年の予算がいま運用されている段階です。当初の約束からいっても四十五年度までという約束になっていると思いますが、すでに四十二年度の予算の中で石炭特別会計の性格を質的にかえて、総合エネルギー特別会計にもっていこうという考え方、そういうところに私は石炭の今後の問題について非帯に関係者に深い苦痛を与えておる、せっかくの希望をそいでおる、こういうことを考えたときに、まことに遺憾であると考えておりますが、しかし通産大臣と大蔵大臣を並べたときに、通産大臣の政治力でもって、事務当局ではしこたま大蔵省の窓口に痛めつけられているかもしれないが、大臣段階ではこういうことを乗り切って諮問された趣旨に基づき答申が出たならば、ほんとうに石炭の抜本的な安定施策について前進したものを政治的に処理できるものと私は期待しておるのですが、大臣、またどっちみちおとぼけの答弁でわかりにくい御答弁になるかもしれませんが、この際、ひとつ大臣の決意のほどを承っておきたいと思うのです。私は特に大臣にお願いしたいことは、もう大事な予算編成の時期に入ってきているわけで、ほんとうに石炭が大事であるという考え方に立つならば、真剣にこの問題に取り組んで、そうして今度の答申がほんとうに今後の石炭の、安定に終止符を打てるように懸命の努力を願いたい、このことを強く要望しておきます。
  91. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まことに恐縮でございますが、秒読みというのは一種のたとえ、比喩の表現でございまして、一秒一秒読んでとにかくせかせるというような意味ではございません。もう約束の八月の期限が切れたのですから、あと半月待ってやる、あるいは一カ月待ってやる、一カ月たってもあと一月待ってやる、そういうようなずるずるべったりにいくのではなくて、もう八月期日の大事な期限が切れているのだから一刻も早くやってくれと詰め切って、たださあさあと考える余地も与えないでせかせるということではいけませんので、とにかくできるだけ早くお願いしたい。それ以上は期限は切れません。期限というものは一ぺんしか切れないのですから。あとは秒読み、こういう意味の表現であります。これでひとつ御了解願いたいと思います。あとは大蔵省の一角で何かいろいろなことを言っているらしいのですけれども、そういうことは私は正式には全然聞いておりませんし、そんなことを聞こうともいたしません。
  92. 田畑金光

    田畑委員 大臣がそれだけはっきりと答弁なされたので、私はこれ以上追及しようとは思いませんが、ただ一つ念を押したいのは、今度の答申は、補正予算を組むかどうか知りませんが、補正予算なり四十四年度の政府石炭政策の中には必ず取り入れて実施するのだ、これだけは約束できますね。この点だけ大臣から答弁をいただきたいと思います。
  93. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういう意味において答申をできるだけ早くお願いしたいということは、結局答申を急ぐということ自身に目的があるものではなくて、その答申に基づいて来年度の予算問題を中心にしていろいろ計画を早急に立ててまいりたい、こういう趣旨からそういうことを言っているのであります。
  94. 堂森芳夫

  95. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私も今度平和坑災害調査団の一人として行ってきて、きょうは大臣にいろいろとお尋ねしたいと期待してきておったのですが、いま時間の関係で急ぐと聞きましたので、二、三点にしぼりましてお尋ねしたいと思います。  お尋ねする前に、私は椎名大臣が非帯に人間性豊かな人格の方だと聞いておりますし、ほんとうに期待を込めてお尋ねするわけですが、ごく平凡な質問になりますけれども炭鉱災害が次から次に起こるわけです。この続発する悲惨な炭鉱災害に対して、大臣は率直にどのようにお感じになっているか、まずそれをお尋ねしたいと思います。
  96. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 担当大臣としてまことに申しわけない、非常に高度の意味における責任感を感じます。同時にまた一個の人間としても、災害にあわれた御当人はもちろんのこと、遺族の人たちあるいは関係者の人たちに対してまことに断腸の思いであります。
  97. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 そのお気持ちは大臣も私も同じでございます。  ところがいま大臣のおっしゃるとおり、こうした事故、今度の北海道の事故も、犠牲者の平均年齢を聞きますと四十二歳だというのです。というのは一家の大黒柱という人が倒れておるわけです。なくなった本人もほんとうにかわいそうだと思いますが、残る家族の人もこれは路頭に迷うような心境ではないだろうか。したがいまして、私は炭鉱災害については特に配慮をしていただきたい。ことしに入りまして大きな事故が十件も起こったわけです。そのつど対策を立てねばならない、何とかしなければならないときてはいるものの、災害はあとを断たないわけです。これは一体どこに問題があるんだろうか。とにかくいろいろと検討されてはきておりますものの、先ほど田畑委員からも災害のほとんどは不可抗力というよりも人災的な要素が多分に含まれておるということが言われておりましたが、私もそのように思います。したがいまして、これはある意味では施策一つで大いに打開できる問題ではないか、こう感ずるわけです。  今度警告を発せられた中で、退避訓練、救護訓練を徹底的に実施するということを述べてありますけれども、これは具体的にどういうところがその内容に入るのか、大臣の立場からお答え願いたいと思います。
  98. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 結局核心は通報連絡というものをすみやかにやって、そしてそれが前提となって所要の救護のための活動がスムーズに展開されるということだろうと思います。
  99. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 現地で聞いた話でございますけれども災害を発見したら規定によりまして上司へ、上司へと連絡をとらねばならない。それを上司の指示を受けないままに処置判断するとあとで非常におしかりを受けたりする場合があるということで、今度も煙を見ながらも処置かおくれたということも聞いておりますが、こういうところにも大きな問題点があるのではないかと思いますが、そういうことについてはどうお考えでしょうか。
  100. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあいろいろ炭鉱によって行儀作法をきめておるかもしれませんけれども、結局通報連絡を早くして、措置をスムーズにやるというところにポイントを置いておやりになるのが一番いいのではないか。
  101. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 これは実際に現地に行って現地の人の話を直接に聞かないと実感はわきません。というのは退避訓練にせよ、保安訓練にせよ、年に二回しなければならないという立場で実際に行なわれておるらしいのですが、いざとなった場合、実際の場合はそれがそのとおりにはならないというのは、結局訓練を受けておる人々の身についていない、体得していないという感じを受けるわけです。それと同じように全般的に指導なさっていかなければならぬ総責任者である通産大臣も、できましたら、今度の休会中に、北海道でもよし、九州でもよし、とにかく現地に乗り込まれまして、労働者、経営者側の人々から事情を聴取して、もっと根本的な対策を立てられるような考えはお持ちにならぬでしょうか。要するに休会中ぜひとも現地に行って事情を聞いてもらいたいというわけですが、それはどうでしょうか。
  102. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 できるだけそういうことを現地について学びたいと思いますけれども、いろいろ所用がございますので、それぞれつかさ、つかさに信頼しておまかせをしておりますので、私があまりいろいろなことに手を出すのもいいか悪いか……。
  103. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 炭鉱は経済といい、労務状態といい、あらゆるものがぎりぎりの線まで追い詰められておることは百も御承知と思います。大臣もそれこそあそこ、ここと忙しい用務がございましょうけれども、万難を排してこの炭鉱問題に取っ組んでもらいたいという強い要望をしておきます。  次にお尋ねしたいことは、確かに大臣炭鉱事情については深い関心を持たれまして、このたび山の病根といいますか、それにメスを入れるという立場から第一線の学者あるいは専門家によって炭鉱保安調査団というものを組織されて、先月の初めごろから具体的に調査に乗り出しているということを聞いたのですけれども、それは間違いありませんでしょうか。
  104. 西家正起

    西家説明員 先生御指摘のとおり、中立の学識経験者を中心といたします炭鉱保安調査団を北海道の場合は七月一日から十二日間、九州の場合は三日から十四日までそれぞれ派遣いたしました。
  105. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 その報告は来たのですか。まだ来てないのですか。
  106. 西家正起

    西家説明員 調査団の正式の報告はまだ大臣のところには到達いたしておりませんが、中身につきましては私どもも一緒に入りまして十分検討をいたしておる最中でございます。
  107. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 大臣にお尋ねしますが、このような重要な調査団を組織してなされておるということを聞いて私は非常に嬉しく思ったのですが、大臣はあまりこのことについてお知りでないような感じを受けるのですが、その点はどうなんですか。
  108. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 直接最近報告はございませんでした。
  109. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 局長の話ではまだ正式の報告はなされてないけれども、手元には来ているという話がありました。連絡が悪いですね。  では局長さんの代弁でけっこうですけれども大臣が横にいらっしゃる間に答えてもらいたいのですが、三池鉱が九州の場合は対象炭鉱になっていますね、間違いありませんか。
  110. 西家正起

    西家説明員 三池炭鉱と山野炭鉱を九州で調査いたしました。
  111. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 では、すでにそうした調査団が実地に中に入ってやられたということだと思いますが、実はきょう報告があった三池鉱の落盤事故、これについて私は少し疑問を持つのですけれども、地震が影響しているのではないかとわれわれは相当心配してこれを見守っておりましたけれども、地震は炭鉱坑内にはあまり影響がないのだという声も聞きましたけれども、そういう点はどうなのでしょうか。
  112. 西家正起

    西家説明員 今回の三池の落鉱と、先日ございました九州地区の地震等につきまして、現地からの報告によりますと一応関係ないというような報告が参っておりますけれども、しかし、地震と炭鉱災害関係と申しますのは、どういうようにして判断するのか、非常にむずかしい問題だと思いますので、これは十分検討する必要があるというふうに考えております。
  113. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 三月二十九日に同じ四山鉱火災事故が起こったということですが、五月の十七日にも同じく三川鉱で火災事故が起こっておりますね。これは御承知でしょうか。この三月二十九日、五月十七日の火災事故。
  114. 西家正起

    西家説明員 私存じております。
  115. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それから五月から六月にかけまして宮浦鉱に落盤があっておりますね。このように事故が続発するもので、労働者の皆さんもたまりかねて、とうとう労働者の中から保安の総点検をやろうということで仕事が始まったそうです。会社側やあるいは政府側の指示が非常に緩慢だということで労働者みずからが組織をして総点検をやったという。たまたま五月から六月にかけまして落盤があった。宮浦鉱に対しては事故のある前の日、八月の五日に点検をやったそうですね。一つ一つ克明に内容を調べていったということでございますが、あの震度四というほどの地震を受けながらも、宮浦鉱のほうは事故がなかったのです。ところが水圧鉄柱という近代的なそういう設備のもとでなされた四山鉱のほうに事故が起こった。私はこれを見て、今度の調査団の報告を読ませていただきたいと思いますが、これは問題だなと思うのです、というのは、同じ地震がありながら、労働組合の皆さんが真剣に点検したほうは事故が起こっていないし、そうでないほうに、まさかと思うほうに大きな事故が起こっている、こういう点についてどのようなお感じを持たれますか。
  116. 西家正起

    西家説明員 地震と落盤との関係につきまして実はまだはっきりいたしておりませんが、先生御指摘のように、労働者の方たちが真剣に点検されたところは、やはり点検しないよりははるかにいいことはもう明らかだと私は思うのであります。地震につきましての関連につきましては、ただいまのところちょっとよくわかりません。
  117. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 時間がないようですので、最後大臣にお尋ねしますが、とにかく炭鉱災害保安教育退避訓練等々が最も大事な要件になるわけでございます。現在のところ年に二回のいわゆる保安教育ですか、訓練等の規定になっているというわけでございますが、これをむしろ毎月総合的なこうした訓練を行なうほうがいいのではないか、私はこのように思うのですけれども、どんなものでしょうか。
  118. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 年二回というようなことではどうも少な過ぎるというような当局考えを持っているようでございますので、いろいろ費用その他の関連した問題を一応考慮しなければならぬ問題かとも思いますけれども、できるだけ頻度を高めてまいりたいと思います。
  119. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 これはまた委員会のほうで先輩委員の方とよく検討いたしまして、われわれでその方向を示唆いたしますので、よろしくお願いいたします。  では、これでけっこうでございます。
  120. 堂森芳夫

  121. 田畑金光

    田畑委員 続いて今度は局長に二、三質問をいたします。質問の途中、いろいろまた別の質問が出たりしたので、なかなか……。あと二、三の点だけひとつ質問してみたいと思います。  そこで、先ほど私、お尋ねしたのは、坑内保安係員があのような事態の場合、連絡がとれない。電話も出てこぬ。こういうような事態においては、その判断で緊急の退避命令を、指令を出しても差しつかえない。それを後刻上司に報告する、そういうようなことで、いまの規則ができておると理解しておるのだが、それでいいのかどうか、差しつかえないのかどうか、また、そのような指導といりものがなされておるのかどうか、こういうようなことを承りたいと思うのです。
  122. 西家正起

    西家説明員 係員でそういう場合の判断かできるものとわれわれは考えておりまして、緊急命令を出しても差しつかえない、これは当然のことだと考えております。  それから、係員に対するそういう教育でございますけれども、係員になるためには一定の資格もございますし、いろいろな国家試験等を受けてなるわけでございますけれども、係員の保安技術に対するいろいろな教育につきましては、一部国のほうも保安技術講習所というところを通じまして、係員の再教育等も一部実施をしておるようなわけでございますけれども、緊急の場合に自分の部下をまとめて避難させるということは全く当然のことのようにわれわれは考えておる次第でございます。
  123. 田畑金光

    田畑委員 そこで、当然ここで問題が出てくることは、保安係があの事態において臨機応変の措置をとり得なかった、とらなかったということも、いままでのあの会社の業務系統と申しますか、保安の指導のあり方そのものに問題がある。このように私は見受けるのです。  いずれにいたしましても、これは救出作業を終わったあと、現地保安監督局なり、あるいはすでに札幌の検察庁が捜査に乗り出しておりまするから、いわゆる事故原因あるいは責任あるいは刑事問題等は今後の捜査に待つといたしましても、ただ私は気の毒に思うことは、そういう体質の経営方針の中にある末端の係員だけが責任を問われる、こういうようなことであっては私はいかぬと思うのです。もっと責任を負うべき者は上のほうにある。私は直截に申し上げたいのです。ひとつそういうようなことも念頭に置かれながら今後の保安行政を進めてもらいたい。監督行政についてもそうあってほしい。これは私の希望です。  それからもう一つ、私、ここでただしておきたいことは、山元の労組の委員長からもお話を承りました。われわれ委員の一行から、ああいう事態の場合には、あぶない、身に危険が感じられたという場合には、当然労働者は労働者として、かりに上から指示がなくても避難すべきではないか、こういう質問に対して、いや保安についてはこういう系統の指示、命令に基づいてわれわれは行動しなければならないように法律も規則もなっておるし、また今日までの監督官の指導もそういったふうなことなんだ、こういうことなんですね。確かに法律を読み、規則を読むと、労働者はかくしなければならぬ、こう書いてあるのですね。かくかくの急迫の事態が発生した場合には、労働者の判断でかくかくやるんだというような仕組みになっていないわけですね。この点はどうなのか、ああいう事態において一時間有余も一待機させられている。そうして結果においては、あれだけの犠牲が出たということを考えたとき、やはり私は労働者は労働者自体として、緊急避難、そういう行為に出ても、これは刑法の緊急避難の趣旨に照らしてもやむを得ない、当然またあり得ることだ、こう思うのですが、その辺の解釈についてはどのように解釈すべきなのか、この点を局長から承っておきたい。
  124. 西家正起

    西家説明員 鉱山保安法規では、鉱山労働者の義務というかっこうではあまり規定がないわけでございます。いまのような場合に、自分がまず同僚等に知らせて逃げるということは、これはもう当然やっていいことでございます。しかし同僚に知らせるとか知らせなくちゃいかぬといったような義務は、特別に保安法規上規定をいたしておりません。しかしながら自分が逃げ、あるいは同僚と誘い合って逃げるということは、これは当然できることであるし、当然やるべきことであると考えております。社内規定で、あるいは災害の場合に連絡あるいは係の指揮下に入るとかいろいろなことがあるかと思いますけれども、これがもし労働者が逃げることを阻止するような、あるいは逃げることを時期を失するような規定であれば、これは全然意味がないものであります。当然労働者はこれはみずから逃げることができる、こういうふうにわれわれは考えておる次第でございます。
  125. 田畑金光

    田畑委員 私はいまの局長の答弁が当然そうだろうと考えているわけです。常識だと思うのです。ところが、やはり末端の労働者の中にそれが周知徹底していない。法規や規則の解釈が適切に理解されていないところに、やはり問題点がある。このように私は感じておるわけです。  これを要するに私が申し上げたいことは、監督行政のあり方について、行政機構はたとえば生産行政と保安行政が通産省の中にある。これはまずいから、やはり保安行政とか、こういう労働者の安全衛生の問題は全部労働省に一括すべきだとか、いろいろな意見もあろうと思うのです。あるいはまた、保安だけは国家の責任でやれ、保安即国家管理というような考え方もあるやに私は聞いております。まあいずれがいいかどうかということは別にいたしまして、ただ私が感じておることは、いかなる行政機構ができたとしても、まず現行法や規則の運用という面においては十全を期さなければ、それは単なる形式的な保安に終わってしまう。こういう感じを持つわけですね。日本人はともすれば、行政機構ができれば、それで問題が処理されたように考えがちだが、私は、それは正しくないと思う。今回の事故を振り返って見たときに、いまの法規則のもとにおいて当然保安教育の面で、あるいは退避訓練の面で、あるいは救命器具の操作の面において、あるいはまた非常の場合の縦横上下の連絡の面において、もっと日常から訓練がされておったならば、私はあのような事故にならずして済んだのじゃなかろうか、こういうことを痛感するわけです。何と申しましても大切なことは、自主保安体制を築くことが一番大切なことだ、私はこういう感じを持つわけです。そのために保安監督行政というものを適正に指導助言、勧告、臨機応変の措置を講ずべきである、こう思うのです。そういう意味におきまして、今後保安の問題については特段の留意を願いたいと考えますが、先ほどのわれわれ調査団の報告書の中で、現地の組合、その他からいろいろな要望が出されておりますね。たとえばあの事態において、もし坑内無線機があるならば、すぐ連絡が取り得たのではないか、こういう問題。それから不燃性のベルトになっておれば、ああいう問題も防げたのじゃないか。結局これは予算の問題、そして炭鉱の経理の問題になってくるわけで、こういう面について、政府としては予算措置の面等においても、今後とも一そうの努力を願いたいということ、これは特に希望として申し上げます。  さらに、それぞれの地域にできます保安センター、この保安センターは、ただ単にそこへ教室を設けた、そこへ泊れる、それだけの施設であってはならない、私はこう思うのです。やはりあそこにしかるべき資材を置く、あるいはあそこでしかるべき実技を教える、保安要員について、あるいは保安係について徹底した訓練が行なわれ、新しい器具が出てきたとすれば、やはりしかるべき炭坑の現場においてその器具の実験をやる、そうすればそのような実戦の中から初めて優秀な保安要員が出てくるし、優秀な保安要員のもとに初めてまた労働者の保安に対する理解も深まり、このような災害も防ぎ得ると私は考えておるわけでありますが、保安センターなどについて、そういう意味でこれを今後予算措置の面などから強化していくべきだと思うのでございまするが、この点について御所見いかがですか。  さらにもう一つ、私は現地に参りまして、道炭労が今後例の保安法の第三十八条に基づいて、いろいろ山の点検もやり、保安について非常に問題がある、不安がある、あるいは是正すべき点があるような場合には、どんどん鉱山保安監督局長に事案を申告する、こういう運動を繰り広げようというような記事を私は読みましたが、私はその内容などについてはお聞きいたしておりませんが、けだし適切なことじゃないかと考えておるわけでありまして、こういうようなことについては、十分保安当局といたしましても労働者の側、組合の側の注意あるいは要望などを取り入れて善処すべきだと考えておりまするが、こういう面について、今後の鉱山保安局長の指導行政をひとつ承って私の質問を終わりたいと思います。
  126. 西家正起

    西家説明員 保安教育、再訓練等につきまして法規の厳正なる運営につきましては、今後とも厳正に運用してまいりたい。  それから自主保安につきましも、自主保安が行なわれますように一そうの努力をいたしたいと考えるわけでございます。  また各方面からの要望に対しましては、十分御意見を尊重いたしまして、中央鉱山保安協議会、その他の場合におきまして十分これを練りまして、今後の対策考えてまいりたい。  保安センターの予算の拡大の面につきましても、私どもといたしましては精一ぱい努力をいたしたい、かように考えるわけでございます。  また労働者の三十八条の申告につきまして、私まだ詳しく聞いておりませんけれども、これが出てまいりました場合には、これにつきましても誠意を持って善処いたしたい、かように考えるわけでございます。
  127. 田畑金光

    田畑委員 質問を終わります。
  128. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 一つお尋ねしますが、今度の平和坑の事件で大きな問題点になったのは、COマスクをつけずに出た。つまりそうした救命具が一応整備されていたにもかかわらず、犠牲者のほとんどがそれを使っていないということを聞いたわけでございますが、これはいろいろな問題をはらんでおりますけれども、この救命具につきましては、COマスクについては、ことしの一月に自己携行、個人個人が携帯するということが義務づけられたということであります。しかも来年の一月ですか、それまでにはそれが整えられるのだという方向での途中の事件であるだけに非常に残念に思うのでありますが、大体全体的にいまどのくらい普及しているのか、そしてやはり来年の一月にならなければ徹底できないのかどうかという問題をお尋ねしたいと思います。
  129. 西家正起

    西家説明員 マスクにつきましては、当初全体の個人携帯の総数が約十万二千個必要でございます。それに対しまして、七月末現在でもう各人にわたっている数が五万六千個ございます。当初規則を改正いたしましたときは、四十四年の三月末までの余裕を与えまして、計画的に四十四年一月ごろまでに終わるという予定でありましたが、その後メーカーのほうも逐次増産をさせまして、今度もさっそく八月からまたふやすように命じましたので、現在の考えでは、できるだけ最善の手を尽くしまして、各人が坑内に入るときに必ず持っていけるという状態に持っていくために、あと九月末くらいまでには強力に実現をいたしたい、かように考えております。
  130. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 わかりました。これはもう九月末までにはということでございますので、それが一日も早くこのような状態になることを望みます。  次にお尋ねしたいことは、先ほど質問しました炭鉱保安調査団の報告内容を資料として要求いたします。  次にもう一つお尋ねしますが、保安教育の点でございますけれども、いわゆる口で教育する分と目で見る分、つまり実験だとか映写だとか、こういう訓練もあることを聞いておりますが、実はついこの前福岡のほうで炭じん爆発の実験が行なわれました。私は直接見たわけではありませんが、それを見た人々の話を聞くと、もう百聞は一見にしかずだ、あれを見るならば、いわゆる保安に対する関心度が一変させられる、こういうふうにも聞いておりますし、やはりあくまでもはだで感じさせる教育が大事じゃないか、こういう立場から一つ提案をするのですけれども炭鉱災害の映写教育といいますか、そうしたものを持ってもらいたい。きのう現地で聞きましたところ、何か四巻はあるのだ、わずか四巻で全山に回るわけでしょうから、おそらくまるでなきがごときものじゃないか、こういうふうに感ずるわけですが、この映写教育について何かおわかりだったらお話いただきたいと思います。
  131. 西家正起

    西家説明員 保安教育は、これは鉱業権者の義務ではございますが、その保安教育の資料の一つといたしまして国のほうも、非常に少ないのでありますけれども若干予算をとりまして、先生申されたような映画とかそれからオートスライドをたくさんつくるとか、こういったようなことは毎年大体二、三百万程度の金額で予算を組みまして防災協会に委託してつくらせまして、それぞれ監督局部に置いておきまして、それを炭鉱の方、鉱山の方が借りたいときは自由に無料で貸す、それからまた、そういう保安協会がつくりましたものを特にほしい炭鉱につきましては、それだけの費用を払っていただいて分配する、こういったようなことで保安局のほうでも現在及ばずながらやっておるわけでございます。先生おっしゃいますように、これは非常に効果のある教育法でございますので、今後ともそういう点はやっていきたい、かように考えております。
  132. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 今度の事故でも立って走っていっている人はなくなったけれども、地をはっていった人は幼かった、こういう実例もありますし、そういういろいろな体験等を含めた映画をつくって、こういう場合こうあるべきであると見せておけば、いざというときにはそういうものが直感的に患い出されて事故を防ぐのではないか、こういうふうに思いますので、こうした映写教育の点について一段と考慮を払ってもらいたい、こういう点でございます。要するに炭鉱災害は、先ほど申しましたように人災的要素が非常に大きいということでございますから、まずこの絶滅には事故原因を正しく究明し、それを把握することが大事じゃないか。先ほどから賛同がありましたけれども、いつも原因があいまいになされているというような感じを受けますので、今度の事故に対しては原因の究明には徹成した内容をもって進んでもらいたい。それに対して意見を聞いて終わりたいと意います。
  133. 西家正起

    西家説明員 過去におきまして、炭鉱坑内災害でございますのでいろいろ密閉をしたり水没をいたしたりしまして、原因の探求がおくれたりあるいは不明確になった場合もあったわけでございます。できるだけ今後原因究明については徹底してこれを明らかにいたしたい、かように考えます。
  134. 堂森芳夫

  135. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 同僚議員からかなり質問がありましたので、重複を比較的避けまして数点質問してみたいと思います。  まず第一に、重大災害が、御存じのように海外保安調査団が三池災害編成をされて海外を視察しました後の報告書によりますと、過去十カ年で十名以上一時に死んだ事故がドイツで三件、イギリスで四件、フランスが六件、しかるに日本では当時二十六件と報告をされております。それは昭和三十八年であります。しかるにその後夕張あるいは伊王島、山野さらに空知、美唄さらに美唄あるいは今度の事件等三十数件になるわけであります。一体保安局長は、なぜ日本には災害がかように多いか、ことに出炭あるいは労働者の比例にいたしますとこれは著しく格差があるわけです。まさに当時のドイツの一億四千万トン、イギリスの二億トンに比して日本は五千万トン程度であったのでありますから、非常に差がある。これは保安責任者としてあなたはどういうようにお考えであるのか、これを総括的にお聞かせ願いたいと思います。
  136. 西家正起

    西家説明員 先生御指摘のように、日本の炭鉱におきます重大災害は、海外の炭鉱に比べまして確かに多く発生をいたしております。この原因でございますが、個々の災害につきましては、これは個々の原因によるわけでございますけれども、総括的にこれを取り上げました場合に、まず一つは、確かに自然条件が海外よりも必ずしもよくないというのが一つの理由かと思います。しかしそれよりさらに大事な問題といたしまして、やはり企業全体の問題これは経営者がもちろん第一でございますけれども、経営者、労働者含めまして、鉱山保安というものに対する徹底したものの考え方と申しますか、そういう点におきまして、私は海外のことはよく知りませんのですが、日本の現状から見てやはり海外と相当差があるのではないか、かように考えるわけでございます。さらにまた最近におきまして、企業自身が意識のほかにいろんな面で——印象的に申してはなはだ恐縮なんでありますが、場合によりましてはついうっかりしてほかのほうより保安がちょっとあとになる、こういったようなケースも間々見られるようなことでございまして、こういうような点から日本の災害が多いのではないか。もちろん監督をいたします私ども責任を回避するわけではございません。監督行政といたしましても、あるいは場合によっては海外に劣っているのではないか、こういうことも十分に反省をいたしておるような次第でございます。  以上、大体そういうような感じを持っておるわけでございます。
  137. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 まず第一には自然条件が悪い。確かに欧州に比べると、日本はいわば石炭紀の石炭ではなくて、その後に生成された石炭である。そうしてそれが地殻の変動によって炭化が進んだ結果、褶曲が多いし断層も多い、こういうことがあります。しかし私は、いまおっしゃいましたように企業全体の意識というのが大きな問題だと思います。  まず、日本の坑内における——日本全体ですが、この産業における機械がほとんど防災装置というものがない。これは外国では必ず防災装置をつける。ですからその機械の費用は約一割から二割、かなり高い。高いけれども必ず防災装置をつけておる。この点がまず第一ものの考え方が違うという点であります。  それから次には、人命軽視の傾向が今度の事件にもあるわけですが、とかく坑内は安全だというような意識を逆に植え付けておる。先ほど大橋君が若干質問をしておりましたが、とにかく坑内においては地震の影響がないのだ、こういう伝説、迷信が依然として通用しておるということです。これははからずも昨日北炭の佐野副社長に聞きましたところが、自分もそう思っておった、こう言う。ところがこの前の北海道の地震の際に炭粉だなが非常にゆれた。それで、いや坑内にも地震の影響があるということに気がついた。こういうことが非常にいわれるというところに問題がある。たとえば先般国会で問題になりました美唄の山はねの問題、これは地震が影響あるのじゃないかと言ったら、ある人が私に注意をして、地震が影響あるなんと言ったらとんでもないことだ、坑内には地震は影響ない、こう教えてあるのだ、こう言うのですね。ですから、そういった坑内は危険なところでないという意識をいままで植えつけてきたところにその問題がある。今度のこの大きな災害を見ますると、まず、坑内火災というものを非常に軽視しておるわけです。ですから、係員でも労働者でも、いやこの火災はたいしたことはない、こういう考え方がある。そこで、すぐ待避というような訓練ができてない。こういう点が私はきわめてはっきり実感として感じ取ってきたわけであります。まさに今度の事件というのは人災といっても過言でない、きわめて単純な坑内火災が大事件になった、こういう事件です。  そこで、いままでいろいろな点が論議されましたが、まず第一に、坑内には災害の要因になるようなものは一切避けるという意味で、たとえばベルトの不燃性のものを使う、こういったことができないのかどうか、そういう指導は今後されないのかどうか、これが一つの点であります。  それから、次には、すでに誘導無線機の開発をされておる。ところが、北炭においては、それが一機も入っていない。なぜ誘導無線機等の機械を購入して、こういう危険な時期に連絡するようなことがなされなかったのか、これは非常に遺憾に思いますが、これらの点は今後義務づける必要が法律上あるんじゃないか、こういうように感じたわけであります。  まず、機器の問題について御答弁願いたい。
  138. 西家正起

    西家説明員 坑内のベルトの不燃性の問題でございますが、現在、平和炭鉱にございますベルトは非常に燃えやすいものであったわけでございますが、燃えにくいベルトが最近製作されておるわけでございます。若干こまかくなりまして恐縮でございますが、非常に燃えにくいのと燃えにくいのと二種類できておるわけでございますが、非常に燃えにくいのと燃えにくいのと合わせまして、現在、できるだけこういうベルトを使うように行政指導は現在までもやっておったわけでございます。北海道で申しますと、太平洋炭鉱をはじめといたしまして、現在そういう意味の難燃性のベルトを使っておるのはもう過半数を過ぎておりまして、そういうベルトを使っておるほうが、ベルトの総延長からいたしますと、多くなっておるわけであります。当平和炭鉱につきましては、そういうベルトを使っていなかったわけでございます。今後そういうベルトよりも、やはり燃えにくいベルトというものをできるだけ使わせるように、これは強力な行政指導をいたしたいと考えておるわけでございます。  なお、非常に燃えにくいという、これはもっと強烈な摩擦をしたテストに合格するような強力なベルトを基準にしたらいいのか、それとも、いままでよりもはるかにいい燃えにくいものを基準にしたらいいか、そういう点につきまして、若干技術的な問題が残っておるわけでございます。  それから、誘導無線機につきましては、これもいままでもちろん保安融資の対象といたしまして、これを黙っておってもなかなかそのまま融資を使いませんので、極力こういうものを買うようにと具体的に一応行政指導をやってきたようなわけでございますけれども、近時これがだいぶ普及化してまいりましたのでございますけれども、残念ながら、当炭鉱にはなかったようなわけでございます。これを義務づけるかどうかというような点につきましては、一応全体の状況調査をいたしまして、協議会等にはかりまして検討さしていただきたい、かように考えるわけでございます。
  139. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 平和炭鉱は幸いにしていままで比較的事故の少なかった山でありますが、御存じのように、原料炭の山であるし、ガスの誘発量の多い山で非常な危険性を持つ山であります。しかも北炭といういわば日本では優良の会社である。それが、多くの炭鉱においてすでに実施をされておる燃えにくいベルトが使われていないということ、それから、誘導無線機も、保安融資があるにもかかわらず受けていないという事実、この事実は、私は、まさに見のがすことのできない問題だと思うのです。それは義務づけてはいないけれども、これだけの優良の会社においてできないということはないはずです。そこに私は、先ほど第三の点と言われました、保安をあと回しにしておるという点が見受けられると思う。ことに、私は、同僚からもお話がありましたが、人員確保の面において非常に問題がある。もう指摘だけをしておきますが、ベルトマンが従来一方に二名いたそうですが、それが一名になっておる。それから、坑内に多くの労働者を下げておきながら責任者がいない。そうして電話当番が一人いる。こういう無責任な体制というものは常識上われわれ考えられない。しかし、これは実はわれわれがやかましく言ってもあまり感じないのですよ、会社の幹部は。そこに私は問題があると思うのです。いや、それは電話で連絡を自宅にいる責任者にすればいいんだという考え方ですね。そうして平和坑においてはそういうふうにしているのです。三番方には責任者を置かないことになっているのです。ですから、おそらく平和だけではなくて、夕張もそうかもしれませんね。北炭全体がそういう体制であるのかもしれない。副社長が言うわけですから。ですから、私は、こういうところに大きな問題がひそんでおる。たまたま私どもはこの点について気がつき発見をしたわけでありますが、非常に大きな問題がある、かように思うわけです。  それから、訓練がきわめておざなりである。なるほど訓練をしたとこう言うけれども、これは交代時にしているのですよ。しかもこれは御存じのように、一年に二回ぐらい交代時に訓練をして一体身につくだろうか。ですから、ほとんどの者が自己救命器すら持ち出していない。これは何度も訓練をしてもう瞬間的にすぐCOマスクのところへ手がいくような、こういう訓練が必要だと思うのですね。これが行なわれていない。そこで、私は、必ず坑内には、その坑内に労働者が下がっておるときには、いわば指令を出す坑務所においては責任者を配置をするということは義務づけてもらいたい。と同時に、訓練は、先ほどお話がありましたが、少なくとも一全炭鉱一カ月一回は総点検、総訓練日を設けるべきだと思うのです。そうして坑内の事故といいましても、坑内出水もありますし、ガスもある。炭じん爆発もある。でありますから、全炭鉱がそう行なうべきである。個別の炭鉱を指摘すべきじゃなくて、全炭鉱一律に行なうべきである。それを一斉にするかどうかということは、これは問題があるでしょうけれども……。そうして、事務屋を含めて、保安監督官はその日は行って、一応点検をすべきである。その訓練をしたかどうかというのは、あなたのほうは、何月何日訓練をしました、簡単な書類だけで見ておるわけでしょう。それでは全く徹底を欠くわけです。優良炭鉱においてこういうことでありますから、他は推して知るべし、かように考えるわけです。これらの点について御答弁を願いたい。
  140. 西家正起

    西家説明員 坑内鉱山労働者が入っております際に、坑外に責任者がおるというのは当然のことでございます。これは、はたしてこういうことを義務づけなければやらないというようなことであれば、これは当然義務づける必要があるんじゃないかと思いますが、これは当然のこと、先生の御指摘のとおりだと思います。  それから訓練がおざなりであるという点は、実はこれは先生御指摘のように、訓練をやったかどうかはいまのところ書類でやっております。ただ、どういう訓練をやっておるか。たとえばどういう時間にやっておるか、あるいは予告をしてやっておるか、あるいは予告をしないでやっておるか、そういったような実態につきましては、実は調査をいたしまして、それぞれの炭鉱におきましてある程度実態をつかみまして——これは実は三月鉱山保安協議会の場におきましても議論になった点でございます。     〔委員長退席、岡田(利)委員長代理着席〕 しかし、総体的に見て何回やってもおざなりであるし、これはやはり中央鉱山保安協議会の意見としては、むしろ現場に即した図面教育等を併用して、ほんとうに身につくように、回数ばかりでなくその内容を充実させるようにやる必要がある、こういうことを最近指摘されておるようなわけでございます。したがいまして、これの回数をふやすこと、それから内容を充実させることにつきまして、法規の改正につきましてはむしろ前向きに検討さしていただきたいと考えるわけでございます。  それから、一カ月一回の総点検、総訓練の問題でございますが、当炭鉱におきましてはやはり前月に総点検をかなりきびしくやっておるわけでございます。三十四項目ばかり修正をしておりますので、これをどういう形でやらせるかという点は研究する必要があるかと思いますけれども、必要に応じて総点検をやらせることは、これは有効なことだと考える次第でございます。  以上でございます。
  141. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 鉱山石炭局長、大体三百日の操業日に、一月一回総点検と総訓練をやれば、一年間に十二日やるわけです。私は全部休めとは言いませんけれども、そのぐらいさいてもいいんじゃないかと思うのですよ。ですからそれが総員で保安の総点検と総訓練をやるというぐらいにこの際やらないと、とてもいままでの惰性と慣習というものは直らない。私は北炭だけがこんな訓練をやっておるのかと思ったら、そうでない。聞いてみると、まあ大体そんなものですよとある労働組合の幹部は言った。これは私は非常に大きな問題だと思う。どこもそういうような程度の訓練をやっておるならば、これは非常災害の起こった場合は、事故がますます拡大をすることは、火る見るよりも一明らかですね。最近御存じのように三池であれだけの大災害を起こしたけれども、その次にまた御存じのように昨年事故があった、事故のときでも、訓練が足らないということが指摘をされた。ですから、要するに実践に役立たない訓練になっておるわけです。それはそうでしょう。一年に二回ぐらいやっても、徹底しない。これはあなたのほうに聞くのは、結局一月に一回ぐらいひとつ総訓練、総点検をして、あるいは出炭がかなり落ちるかもしれないけれども、それは石炭行政の面から見てどうなんだろう、こう考えるわけです。
  142. 中川理一郎

    ○中川説明員 ただいまのような大災害が起こりまして、これをかりに生産面だけから見ましても、事故の事後措置その他を含めて、生産活動がストップするわけでございますから、そういう事柄が起こることを防ぐためにさく時間と、こういう災害によって起こるロスの時間というものはどういう関係に相なるかということを考えたときに、お気持ちとしてはわかるような感じもいたしますが、はたして、どれくらいの頻度がいいのか、この辺のところは、それこそそういうものはほんとうに必要だという気持ちを労使が考え、その意見に強制させられてやるというのではなくて、自発的にそれが必要だという気持ちになるかどうか。それからもう一つは、鉱山保安局のほうで絶対これは必要なことであるとお考えになるかどうか。それらの意見に従って私ども考えてよろしいのではないかと思います。事故防止のためにとる措置について、単なる生産面からだけの、あるいは採算面だけの観点で反対を申し上げるということでは許されないのではないかと思います。
  143. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この災害は全国的な労働者に与える影響も非常に大きい。労働力の確保の面からもきわめて遺憾なことです。でありますから、相当抜本的な保安対策をやらないと、幾ら国会で決議をしても、あなたのほうで幾ら規則をつくっても、実際は実施されない。ことに、最近は長時間労働をやっておる。そうして賃金は安いから、どうしても多くの出炭をあげようとするし、労働者も請負賃金ですから——請負賃金なんというところも問題があるわけです。先ほどなぜ退避を早く命令を出さないか、いや、もし失敗したら経営者にもおこられるし、労働者にもおこられるというのが職員の偽らない気持ち、それは結局請負給であるという問題が一つある。ですから、生産第一主義にあらゆるものができておるというところに問題があるのです。しかし、これらの根の深い問題はおいおいやるにしても、何か心気一転保安徹底化をやらなければ、私は簡単なことでは解決できないのじゃないか、こういうように考えるわけです。この点をひとつ十分両局長は検討していただきたい。  さらに、最近、申告制度の活用がいろいろいわれておる。それで鉱山によりますと、労働者が経営者に申告をしてくると、ほうびをやるという、こういう炭鉱もできてきておる。どこどこが悪いということを書類に、カードか何かで出しますとほうびをやるというところも出ておる。ひとつこういうものも活用して、やはり全知を集めて保安の点検をやる必要があるのではないか、こういうように考えるわけです。そこで構造上の保安面におけるおくれはないのかどうか、この点をひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  144. 西家正起

    西家説明員 実は、このたび中央鉱山保安協議会に大臣が諮問いたしました今後の保安対策の中で、そういう構造上の問題を中心といたしまして検討がなされておるわけでございます。     〔岡田(利)委員長代理退席、委員長着席〕 事前に、以前は保安教育保安管理体制その他当然鉱業権者あるいは監督官庁、労働者がみずからえりを正すべき事項につきましての答申が何回か調査の結果なされておるわけでございますけれども、今回はそういう面のほかに、経営者あるいは労働者がやりたくても実際にできない、こういう面があるかどうか、こういうような点を中心にしまして、特にこれは資金問題、労働問題に関係するわけでございますが、そういう意味で構造上坑道維持あるいはその他の面において不足はないかどうか、これは実は現在中央鉱山保安協議会で吟味しておる段階でございます。ちなみに経営者から事前にとりました調査によりますと、特にそういう構造上のおくれが非常に大きいというような数字は出ていないのであります。われわれはこれをさらにもう少し掘り下げまして、どのくらいおくれがあるか、なるべく正確につかみまして、これを答申の中に織り込んでいく、こういうようなことにいたしたいと考えておるわけであります。
  145. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 先般の新田川の事故、これはやっぱり構造上のおくれ、先進ボーリングがおくれたということが指摘されるわけです。それから盤下坑道の問題とか独立分流の確立とか、後退式採用の問題、ことに前進から後退への転換期における問題、それは経営者に聞きましても、経営者のほうは、いや生産のほうは若干おくれても保安のほうの構造上のおくれがあるなんということを言いやしませんよ。ですから、まああなたのほうは、カードを出されるのはいいですけれども、実際はそういう申告をしてこない。しかし実際の事故を見るとそのおくれがはっきりしておるということがいえるのではないか。こういう点に現在の要するに経営の不振がある。保安に圧迫の形になってあらわれておる、こういうことがいわれるわけです。何にいたしましても、最近における頻発する災害に対してひとつ抜本的に改正をしてもらいたい。そうしていままでただ慣習、おざなりのことでは炭鉱は自滅するのではないか、こういうように考えるわけです。労働力の確保のできない炭鉱は自滅、その労働力もこんなに災害があれば結局自滅せざるを得ない、かように思うわけでありまして、これは何よりも優先してその処置をすみやかにとっていただきたいと思います。  そこで保安機器については明年度どのくらいの予算を要求するつもりであるか。ことに依然として自己救命器もやってみるけれども、暑いとか長続きがしないとか、自己救命器を当てて実際使用した者の話を聞くと必ずしも好評でない。この程度ぐらいは金をつぎ込んでひとつやったらどうか、こういうように思うわけですが、要するに保安機器の開発について相当の予算を組んでいただきたい、このことをお願いし、質問をして終わりたいと思います。
  146. 西家正起

    西家説明員 抜本的な問題につきましては、中央鉱山保安協議会で十分検討しまして何らかの措置をいたしていきたいと思います。  それから保安機器予算の点につきましては、開発の問題と整備の問題と二つございますが、開発につきましてもこれは従来の予算を大幅に増加をいたしたい。それから整備のほうにつきましては、ただいま御指摘のございましたようないろいろな機械につきまして、できれば保安融資あるいは補助金の制度の拡大をはかりたい、かように考えている次第であります。      ────◇─────
  147. 堂森芳夫

    堂森委員長 参考人の出席要求に関する件についておはかりいたします。  石炭対策に関する件について参考人の出席を求め、意見聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  148. 堂森芳夫

    堂森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の出席日時及び人選などにつきましては、委員長にすべて御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  149. 堂森芳夫

    堂森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、明九日金曜日午後一時より理事会、一時十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十五分散会