○渡辺(惣)
委員 そこでお伺いするのですが、私が
平和坑に入りましたのは三十一日の早朝であったわけですが、三十一日には五人一組の二十九個班が入ったわけですね。きのうの鉱山
保安局の
報告書によると、昨日の現在では三十三個班入っているということですね。
そこで私がお尋ねいたしたいのは、ここで
平和坑以外の
炭鉱の
保安救護隊が動員されて、非常な御苦労をかけて参加しておられるわけです。大体参加しておりますのは、
平和坑は北炭ですから、北炭の資本別の鉱業所がくまなく動員されているわけですね。平和はもちろん、
夕張、新
夕張、登川、真谷地、幌内、空知等ですね。ここで私が承りたいのは、こういうような地下の
火災ですから
保安の問題が非常に重要になってまいりますが、たとえば地上、海上その他の大
災害の場合、緊急
災害の場合は、常識上からいっても治安からいっても、当然警察も動員されなければならないし、あるいは民間の消防隊、消防署も動員されるし、場合によったら自衛隊の救援出動も行なわれていますね。地下の場合は特殊な条件だから、そういうような広範な動員は技能上できないことはもちろんわかっています。狭いからよけいな者が入っていくと仕事ができません。だからそれはわかりますけれ
ども、ここで私が疑問に思っていますのは、
夕張の地元の北炭系統の山は大体行動半径は二十分から三十分以内に集結できる山です。しかし、同じ北炭の資本別ですけれ
ども、幌内
炭鉱の場合は、ここまでかけつけますには、出動命令が出ても、装備して車に乗って入るだけで一時間から一時間二十分以上かかりますね。空知
炭鉱になりますと、ここまでかけつけますには完全に二時間半かかりますよ。しかし資本別であるから、かけつけてくるのは当然だと思う。これはいいのです。そこで私がどうも納得できないのは、こういう異常
災害であるのに、同じ
夕張の地積で三十分以内で出動可能の
状態にある三菱系統の大
夕張あるいは北菱とか鹿島とか北夕とかいう
炭鉱が周辺にあるわけですね。当然それぞれ
救護隊を持っているわけだ。ところがここには全然出動の要請はない。それは資本別で違いますから、北炭は自分の
責任においても名誉にかけても、自分の山で
発生した
災害ですし、ほかの資本別の人々にお手伝いを願うということは、危険を伴う
作業ですし、経済補償その他のことも伴うことだからそれはなかなかようやれないことだとは十分私は察しておるのです。しかしこの事態は、私からいわせれば、私が
現地で
調査した当時の
状況からいくと、もっと早く
火災の鎮圧や遺体の搬出が可能であると
判断をした。そこにミスがあったと思う。こんなに十日間もかかって、私が行きましたときには四十度から四十五度の熱風だったのが、きのうの
報告ですと、六十度になっていますね。そうすると、日時がたつごとに激しくなってきているのですね。事態収拾ができなくなってきていますよ。この
災害対策に対して、短期決戦であれば短期決戦の処置を講じなければならなかった。ところが、短期で可能であると思ったから、動員計画その他についても十分の手配をしないでそのままでやった。しかし
報告を受けておられるとおり、坑道は斜坑を含めてこの地帯まで五、六百メートルの
坑内を行きますのに、
作業員、
救護隊は最高一時間から一時間十分しか労働できないんですよ。過熱と高温それから煙で視界の見通しがきかないために進行できない。そのためにすぐ疲労度を高める。
坑口から往復一時間十分の間には、三、四百メートルから五、六百メートルの困難な中を通りますから、それで実際に救援する実働の時間は幾らもないのですよ。そうしますと、これらの救護をやるには相当の予備
救護隊を動員して、相当の時間休養させて交代し、疲労度を低めて、そして救援しなければならない。とすれば、もっと広範な救護動員をしなければならない。
ところが、これは公に北海道の炭労が正式な姿勢として要請したかどうか知りませんが、聞くところによると、炭労の
関係者から
現地の鉱山
保安局に対して、これは非常に重大なことだから、こういう非常事態には他の資本別の
救護隊も動員したらどうかと——これは私的であったか公的であったかわかりませんが、そうしたら、そのときの話では、鉱山
保安局のほうでは、それは資本別に違っているので、その被害を受けておる当該
会社から要請がない限り、
当局のほうとしては処置ができないのだという答えがあった、こう承っているのです。これは公式発言であったかどうかは別ですよ。
そこで、私は係官の方においでを願っていろいろ事情を聞いてみますと、それは鉱山
保安法の第四条の規定において、その鉱業所内に起こった
災害は当然鉱業権の所有者が
責任を負って執行するのだ、こういうことになっているわけですね。国有化ができると、鉱業権者は国ですね。あるいは植村試案による全国一社ができれば——全国一社になるかどうかわかりませんが、そういう案ができれば、その
会社が鉱業権を持つことになるわけですね。もし全国三社案ができれば、北海道の独立社が鉱業権を持つことになるのだから、そうすると、そういう一つの機構が変わるとすれば、この鉱山
保安法第四条の解釈は、ある特定の
会社が鉱業権を持っているから、その特定の
会社で起こった
災害は特定の
会社まかせだ、あるいは特定の
会社に対する救援動員というものはその
会社自身の了解と要請がない限りは、鉱山
保安局としてはのどから手が出そうでもやれないのだ、こういうことになっているわけですね。しかし、こういう場合において、鉱業権者が
保安の
責任者であるけれ
ども、そこから要請があった場合は、動員体制が整えられる条件は行政指導によってあると思うのです。このような不測な大
災害で、しかも見通しを間違って、三日か五日で
救出できると思ったやつが十日間たってもまだ幾らも進まないという
状態の中で、一体そういう行政指導をする意思がなかったのかどうか。機構上、いまのような資本別的組織の中におるから、救える人も殺してしまった。救援の可能な条件のあるものでも、機構がそうであるために機構の犠牲になって、ここでも二重の
犠牲者を出しているんだ、私はこう思う。この点についてはどうお
考えになりますか。鉱山
保安法の第四条、その関連した法律に対する解釈、それからそれをどうするか、今後の問題として承りたいと思います。