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1968-11-14 第59回国会 衆議院 商工委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年十一月十四日(木曜日)     午後一時三十九分開議  出席委員    委員長 小峯 柳多君    理事 海部 俊樹君 理事 中村 重光君    理事 堀  昌雄君 理事 玉置 一徳君       小笠 公韶君    大橋 武夫君       木野 晴夫君    塩谷 一夫君       田中 六助君    丹羽 久章君       橋口  隆君    武藤 嘉文君       岡田 利春君    佐野  進君       多賀谷真稔君    楯 兼次郎君       千葉 佳男君    中谷 鉄也君       永井勝次郎君    三宅 正一君       吉田 泰造君    近江巳記夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  椎名悦三郎君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局長    柿沼幸一郎君         食糧庁総務部長 小暮 光美君         水産庁次長   森沢 基吉君         通商産業省通商         局長      宮沢 鉄蔵君         通商産業省企業         局次長     三宅 幸夫君         通商産業省繊維         雑貨局長    高橋 淑郎君         通商産業省鉱山         石炭局長    中川理一郎君         中小企業庁長官 乙竹 虔三君         労働省労働基準         局監督課長   細野  正君         専  門  員 椎野 幸雄君     ————————————— 十月三十一日  委員中谷鉄也辞任につき、その補欠として佐  々木更三君が議長指名委員に選任された。 同日  委員佐々木更三君辞任につき、その補欠として  中谷鉄也君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 小峯柳多

    小峯委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。永井勝次郎君。
  3. 永井勝次郎

    永井委員 通産大臣お尋ねをいたしたいと思います。  アメリカ政権交代が行なわれました。この交代時点は、国際的には激動しております。アメリカ国内はいろいろな分裂が起こっております。非常に重要な時期における政権交代でありますから、普通の場合とは違うと考えます。単にジョンソンからニクソンへ、民主党から共和党へという、こういう政権の移り変わりだけではなくて、激動する国際情勢に対してどう対処するのか、あるいは国内問題をどう処理するのか、あるいはベトナムの和平をどういうふうに仕上げるのか、あるいは国内におけるドル防衛であるとか、あるいはインフレ抑制であるとか、物価を安定させる問題であるとか、貿易の振興であるとか、非常に大きな問題を控えておると思うのであります。  そういう時点における政権交代であり、そして、ジョンソンニクソン関係においては、ニクソン選挙中もいろいろ公約をいたしております。また、共和党は伝統の政治姿勢があります。そういうようなところから、これらの重要な問題をとらえてどう対処するかということは、これは対米関係における重要な地位にある日本としてはゆるがせにできない重要な問題であると考えるわけでありますが、まだ政権の座にすわるのは来年の一月でありますけれども、すでにいろいろな問題が動いております。それらの動きつつあるアメリカの新しい政権への移行の過程におけるいまの情勢はどのようにとらえておられるのか、それからそういう動きの中からどういうことが展望されるのか、単にうわさ話ではなくて、政府現実の具体的な動きの事実、あるいは両党、あるいはニクノンの公約の科学的な分析の上に立って、どのように政府はこれを分析し把握しているのか、まずこれらの諸問題における情報を正確にひとつお伝えを願いたいと思います。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いろいろ見方があるようでございますが、いまお話しのとおり、現実政権の座に着くのが来年の一月でございます。そして例の行事を済ませて、そしてニクソンのスタッフをどういうふうにそろえるつもりか、まだいまのところはうわさ程度にとどまっておりまして、それが逐次現実化されて、そうしてこれらの人によって新しい政策が打ち出されるというのは、まあ数カ月後に初めて現実動きとして出てまいるのではないか、こう思います。でありますから、それを待ってというのは少しゆっくりし過ぎておるかもしれませんが、大体顔ぶれがそろってどういうことをこれから打ち出すであろうかという見通しがつくのは、少なくとも三月、四月以降ではないか、こう考えております。そういう状況を的確に見きわめた後に、日本としてはこれらに対する判断なり、あるいは対応策なりというものを考えなくてはならぬのではないか、こう考えておりますが、しかし総括的に言えることは、やはりジョンソン政権のいままでの対外的なベトナム問題、あるいはまたドル防衛に関するいろいろな経過がございまして、その上で一体新しい政権として何をやるだろうかということが、まあ、ある程度考え得ることもあると思います。しかし現実日本対策として、まだ打ち出すのは少し早過客るんじゃないか、こう考えるのであります。考えられることは、やはり保護主義相当傾いていくのではないかということは一応考えられますが、さてそれじゃ何をどういうふうにしてやってくるのかというようなことはどうもこれからでありまして、いまのところその傾向考えられるが、具体的にこういう政策に出るだろうというようなことはどうも少し早過ぎる、これを要するに、早過ぎる、もう少しよく見守ってからやるということのほうがいいように思います。
  5. 永井勝次郎

    永井委員 いまの時点で、何をニクソン政権はやろうとするかということについては早過ぎる、数カ月後だ、その的確性というか、内容について一分一厘違わないような分析、観測をしろ、こういうのではなくて、いまの時点で知り得るいろいろな情報を集めておられるだろうが、その情報はどうなのか、その情報に基づいてどう科学的な基礎によってこれを分析して判断されるのか、そういう判断をいま聞いておるわけです。大臣は、数カ月しなければわからないのだ、早過ぎると言うが、ガット総会はもう十二日からジュネーブで開かれているわけであります。また、UNOTADは今月の末には招集されるわけです。もしニクソン政権経済的にいろいろな措置をこれから講ずるといたしましても、それに対応するとすれば、その現実的な対応の場はこのガット総会であり、UNCTADの場である、こういう問題がいまもう現実にあるのに、まあ数カ月わからないのだから適当にやれ、こういうようなことでガット総会に臨んでおり、あるいはUNCTADに臨もうとしておるのであります。私は、椎名大臣はのんきな人だということは個人的には聞いておるのでありますが、国の通産大臣として、対米貿易における重要な、これはいま先手を打つか後手に回るか、こういう一つ取引の場に立たされておると思うのであります。その時点でそんないまのようなのんきなことを言っていたんじゃお話にならぬと思うのですが、一体ガット総会なんかにどういうふうな姿勢対応しようとしておるのですか、伺いたい。
  6. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 あなたは、ニクソン政権というものを中心にしてお尋ねになりましたから、まだ少し早過ぎる、こう申し上げたのです。  ガットはちゃんと用意されておって、ニクソン政権ガットに対して新しい方針で臨むとは考えられませんし、それほどのあわて者でもないと思う。これは何といっても、従来から問題になっております残存輸入制限の問題を早く緩和あるいは軽減すべきであるという大きな主張が流れておりまして、これはもうニクソンが立とうが立つまいが、ガットにおいてはそういう問題が出てくる。日本といたしましては百二十一品目はまだ閉鎖しておる。これを早くもっと軽減すべきであるという世論というものが、このガットの場において相当猛烈に起こってくるだろうと思う。これに対する用意はいたしております。これはニクソン政権の問題じゃない。もうすでに予定のコースであると考えております。  それからUNCTADはことしの二月にインドのニューデリーで開かれまして、これは主として低開発国の特恵問題に対する一つの原則的な取りきめが行なわれまして、それの延長がこの次には展開されてくる、こう思うのであります。この際は日本といたしましては、先進各国と違って、国内中小企業というものをかかえておる。低開発国の特恵問題については原則的には同調しておりますけれども、具体的な問題になってくるとそう簡単には乗れないというものがたくさんあります。その問題を具体的に審議して、そして日本国内中小企業というものがそうまごつかないようにしなければならない、こういう点が重要なポイントになっておると思います。
  7. 永井勝次郎

    永井委員 そうすると通産大臣考え方は、ニクソンはまだ政権についていないんだ、そうしてニクソン政策を検討するのは数カ月後だ、来年の四、五月ごろにならなければこれはわからないんだ。そうしていまのガット総会なりいろいろな国際的な動きというものはこれとは無関係で、ニクソン政権ができて、ニクソンがどのような経済政策をやるか、あるいは貿易政策を持ってくるかというようなことを、わからないながらも現在の時点で知り得るあらゆる情報、あらゆる分析をして、そういうものの考察、判断を背景としてそれぞれの国際会議に対処していく、こういう態度ではなくて、そういうものは無関係なんだ、こんなものは関係ないんだ、だからガットガットでやるんだ、UNOTADUNOTADでやるんだ。それから、ニクソンのこれからの経済政策というものはまあ四、五月ごろになったらゆっくりやりましょう、こういう一つ基本的態度でいまの国際的な会議に臨み、あるいは経済政策に対処しておるのかどうか。それが通産大臣基本的姿勢なのかどうか、ひとつ明確に伺っておきたい。
  8. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いや、こういうものはニクソンになろうがなるまいが全然不変だと、そう言い切っているわけではございません。ニクソンのほんとうの新しい政策がもし出てくるとすれば三、四カ月あとになるだろう、その上でこれに対処する方針を十分に立てていかなければならぬ、こう思いますけれども、現在目の前に控えておるガットあるいはUNOTADの場においては、それほど、ニクソンになったからといっていままでのものが、三角のものが四角になるというようなことはなくて、やはり従来の問題の重点というものは予想されるのでございますから、それに対する従来の日本の研究、方針というものを十分に固めて、そしてこれに対処してまいりたい。そういう場合に、あるいはニクソンならニクソン政権として新しい人が従来の方針に多少でも変わった色彩を持ち込むかもしれません。そういうような場合には、出会いがしらに発見するのじゃなくて、やはり事前に大体の傾向がわかりますから、それはそれとして十分に見守ってこれに対処したい、こういう考えです。
  9. 永井勝次郎

    永井委員 それなら伺いますが、大統領選挙の期間あるいはその前後、ニクソン経済政策についてどのような公約をしておるか、どのような発言をしておるか、これらについて大臣の知れる限りを伺いたいと思います。
  10. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 どうも選挙のときの演説というものは日本と同じようなもので、それをあまり大事に、こう言ったからというようなことを言ったって、見当もつかないような、ごく原則的なことにすぎない場合もございます。たとえば通商政策としては、原則としては自由貿易を確保する、そういう立場を守るということを言っておって、ただ従来のアメリカ通商国際金融上の立場からバランスを失して、アメリカ産業及び労働者にそのしわ寄せがふりかかるのは黙っていられない、それは不公平である、したがって産業に対する保護政策を若干一時的にも採用していくことは、これはやるべきだ。これだけのことは言っているようです。だけれども、ただこれだけで実際の具体的なこっちの対策というものは出てこないのですな。そういったようなことをずいぶん言っておるようであります。たとえば繊維製品取りきめの厳格な実施と、化合繊及び毛製品について国際綿製品取りきめに類似したような国際的な規制を行なうために必要な措置をとらざるを得ないといったようなことを言っておるようでございます。これぐらいのことは民主党の場合だっていろんな動きがございまして、民主党の場合でも保護主義者がずいぶんおりますから、もっと具体的なことを言って政府に迫っておるようなこともございますので、これだけで非常にアメリカ政策が変わったぞというようなこともいえないのではないか。だからやはり保護政策に傾くかもしれない、こういうことを言っているのですから、それだけの覚悟はして、すでに十分に準備をしてかからなければならぬとは考えておりますけれども、選挙公約日本アメリカとたいした違いはないので、それはそれとして記録はしておりますけれども、具体的な対策の資料としてはまだはっきりしないという点がございます。
  11. 永井勝次郎

    永井委員 これからの新しい経済政策の大きなファクターになるのは情報活動だと思います。たとえば犯罪の捜査にしても、小さな問題でも、事実関係は事実関係でこれを重視していく、そうして取捨選択はその中でやっていく。つまらないデマもあるだろうし何もあるでしょうが、情報活動相当に広く心を配って集めていかなければならぬ。その判断判断で、またそれをどういうふうに整理するかということは整理能力の問題でありまして、いまの大臣答弁では、選挙中の公約なんか、そんなものはへのようなものだ。大臣はそういう選挙公約を、選挙本位当選本位のことをやっているかもしれないけれども、やはり政治家としての公約というものは、選挙中の発言というものは、いろんな逃げ口があるにいたしましても、そういう方向はそういう方向として出てくるわけです。それを具体的に経過的に時間的に、量的に質的にどういうふうにやるかということは、これはいろいろなそれぞれの動いていく経済の中における一つの具体的な表現としては、いろいろ変わってくるでありましょう。いま、局長からのメモ答弁しているようですが、大臣ニクソン選挙中にどういうことを言っているのか、またその発言に対してニクソンの周辺の経済学者やあるいはブレーンがどのようにこれをふえんしているのか、あるいは批評家がこれをどういうふうにやっているのか、金融界経済界がこれをどう判断しているのか、そういうことについて気を配っているのかどうか。へのようなものだとしてこれは相手にしないというような軽い扱い方というものは、これは通産大臣としては、少なくも近代的な通産大臣としては失格者である、私はこういわざるを得ません。大臣は、いまのように、選挙中の発言は一顧に値しない、こういうような考えで、いろいろな情報活動にはあまり目を通さない、メモ程度議会答弁としてお茶を濁す、こういう程度扱いなんですが、どうですか、まず情報活動重要性というものをわれわれは強く考えるのですが、大臣はこんなものは問題でないとお考えになっているのかどうか、この点まず明らかにしていただきたい。
  12. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 全然そんなものは問題じゃないとは申し上げて安い。ですからこの発言に対しては、やはり傾向としては相当保護主義に傾いていくだろう、こういう見当はつけております。そういう見当をつけておりますけれども、さて繊維なら繊維あるいは製鉄なら製鉄機械なら機械、そういったようなものに対して、個々の具体的な政策というものにどういうふうにあらわれてくるかということは、これはある程度期待感を持って注目していかなければならぬ問題でございますから、それはそれとして無価値だとは申し上げません。でありますから、選挙中の発言、だからしてこんなものは無視していいのだということは申し上げてないのです。具体的な対策というものの対象としてはまだはっきりした形をとっておらないというだけの話で、傾向はやはり傾向として相当の注意を払っていくべきものである、こう考えております。
  13. 永井勝次郎

    永井委員 できるだけ情報を早くとって、ほかの国よりも早くそれに対する対応策をとっていく、対策を立てる、これが日本通産大臣としての任務であろう。目標を最初から四、五月ごろに設定して、そのころにならなければだめなんだ、その前にいろいろなことをやるのは飛び上がりだ、こういうふうなみずからの怠慢とみずからの無知を反省しないで、そうしてそういうふうな設定をして現実をごまかすということは、私は通産大臣として反省してもらわなければいかぬ、こう思う。  そこでお尋ねいたしますが、ニクソン保護貿易をとるのではないかとみんながいろいろ観測する。そういう発言もいたしております。そういう発言をせざるを得ないような、そういうアメリカのいまの経済情勢、あるいは国内における、あるいは対外的なそういういろいろな具体的な条件が私はあると思うのです。それをどういうふうに判断し、どういうふうに対策を立てるかというところに、これは価値判断の差が出てくると思うのでありますが、そういういろいろニクソンがこれから取り組んでいくであろう、まただれでも大統領になる者が避けて通ることができない現在のアメリカの当面している経済の諸政策について何が問題になるか、こういうふうに御判断をされておるか、その分析をひとつ伺いたいと思います。
  14. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 傾向としては、国際金融あるいは国際貿易等いろいろな経済上の問題に対して保議主義者の意見を、民主党政権よりもよけい取り上げていくかもしらぬということは、まあほぼ推測し得るのではないかと思います。思いますが、具体的に一体それではどういう問題を取り上げてやってくるかということは、どうもいまの情勢下において、これを何かもう少し的確に、具体的にとらえろと言われても、むしろとらえることが問題解決のためにはたして適当であるかどうか、少し急ぎ過ぎて仕損ずるほうが多いのではないか、こう思いますので、何を、どういうふうに分析していくべきかということは、やはり向こうの出方によって考えていかなければならぬと思うのでありまして、あらかじめ予想してかかるということは、私はかえって問題を混迷におとしいれることになるのではないかと、こう考えております。
  15. 永井勝次郎

    永井委員 私は判断の問題を聞いているのではありません。事実関係をいま伺っているわけです。通産大臣判断判断で伺います。伺いますが、その判断基礎になる事実関係はどうなのか、アメリカ国内経済はどうなのか、国際貿易はどうなのか、あるいは通貨状況はどうなのか、これがニクソン政策を樹立していく上における重要な課題なんだ、その課題の実態がどうなっているかという、私は事実関係を聞いているわけです。その事実を示してください。
  16. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ごく概括的な問題のとらえ方になると思うのでありますが、国内的にはインフレを極力押えていく。それから国際的には貿易バランスというものを非常に重視してくるのではないか。そうすると、国内的のインフレ抑制一つの飛ぱっちりがやはり間接に日本経済というものに影響を及ぼさざるを得ないだろう。しかし、貿易バランスというものを取り上げて、より貿易健全化ということをとることになりますと、日本輸入に対する制限措置あるいはアメリカの対日経済攻勢、その最も顕著なものは自由化政策、その自由化政策というものをも一つ日本に迫ってくる、しかも性急に迫ってくるというようなことになるかもしれない。そういうようなことは考えられることでございますけれども、いまそういう問題が起こっておるわけでもないのでありますから、これを大騒ぎして、ニクソンはこういうことをやろうとしておるというようなことをいって、国内的に騒ぎ立てる必要もない。そういう問題が起こってきた場合にはどうするか。いろいろ静かに検討して、その時期をしばらく静かに待つ、備えを十分にしながらその時を待つ、こういうことにあると思います。
  17. 永井勝次郎

    永井委員 大臣、どうも先回りしていろんなことを予測的な発言をしてもらうと困る。大騒ぎをする——何も東大の全学連みたいに旗立ててわあわあするのが大騒ぎではない。騒ぐのではなくして、注意深く関心を払う、問題点を追及する、こういう態度はいかなる場合でも必要でしょう。大騒ぎするといって、から騒ぎしても、こんなものは解決できるものではないのですから、酒を飲んで騒ぐような、そういう騒ぎ方をしてもしようがない。そういうことではなくて、十分に問題点をとらまえて、そしてたとえばアメリカインフレ抑制——抑制はへたにやれば縮小再生産の方向に行くだろうし、失業者が出るだろうし、いろいろプラス、マイナスの政策があるが、共和党には共和党政策があり、あるいはニクソン公約という問題がある。そういう問題から、いまのアメリカインフレの現状からすれば、そういう一つ公約からいって政策を立てるとすればどういうふうになるか、こういう判断があってしかるべきだと私は思う。大騒ぎとかなんとかいう抽象議論ではなくて、そういう判断をひとつ聞かしてもらいたい。  それから財政政策に対してどのようにとるだろうか、金融政策に対してどのようにとるだろうか、一〇%の付加税の問題も、これは時限立法でありますが、これがニクソンの中ではどういうふうに扱われるだろうか。一連のいま提起されている景気対策あるいは物価対策貿易政策金融政策通商政策、そういう一つの総合的な判断に立ってニクソンがやるとすれば、こういう公約からいえばこういう方向をとるだろう、それをとるについてはこういう一つの危険な落とし穴もある、だからそういう問題はこうだという一応の、いまの時点に立っての、経済指導力を持つ通産大臣としての見識ある御判断を私は伺いたい、こう思う。
  18. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ニクソンになったからといっていきなり……(永井委員「それはどうでもいいのです」と呼ぶ)どういう法案を国会に出すかというようなところから始まってくるのでありますから、もしもそれが引き締め政策というのをニクソンが強行するということになれば、アメリカ景気が締まってまいりますから、勢い日本の対米輸出というものがにぶってくるだろう、こういうことにならざるを得ない。  それから、貿易バランスというものを非常に重視してくるとなれば、先ほども申し上げたように、日本のいろいろな品物に対する圧力というものがもっと加わってくる。いま自主的な規制をやっておりますが、自主規制程度をもっと締めることを要求してくる。そうして日本自由化というものをもっと時期を早めて、そうしてもっと早く拡大して、アメリカに対する自由化問題をもっと緩和するようにというような、たとえば自動車問題であるとか、あるいはIBMの問題であるとかいったような、従来の日本としては相当慎重に、これらの部門については自由化を漸次、日本企業強化育成を十分にやって、しかる後に国際的な要請にこたえようとしておるのでありますが、それよりももっと性急に迫ってくるというようなことになると思います。
  19. 永井勝次郎

    永井委員 大臣答弁さっぱり理解できないのですが、それでは具体的にひとつお尋ねをいたします。  このニクソン公約その他から考えて、保護貿易の色合いが強まっていくだろう。それから景気政策については、景気よりも物価の安定というような方向をとるだろう。それから財政については引き締めをやるだろう、金融政策については金利水準の引き下げをやるのではないか、こういうふうに金融界産業界あるいは政界、そういうところのいろいろな判断があるわけでありますが、それは見方によっていろいろ違うでしょう。そういういろいろな判断を総合して、日本のほうではいろいろな具体的な対応策の問題を提起しているわけです。その提起している問題について、大臣の御判断を伺いたいと思うのです。  一つは、ジュネーブにおけるガット総会残存輸入制限の問題が問題になるわけでありますが、これは今度の対米貿易における保護貿易との関連において重要な関係があると思うのです。これを日本の通産省の関係は、大臣は知らないかもしれないが、通産省では残存輸入制限の再検討が必要だ、こういっているのですが、どのように再検討をなさるつもりか、この点ひとつ具体的にお示しを願いたい。
  20. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 再検討を迫られるということは、いまのまだ自由化しておらない百二十一品目をどの程度まで減らしていくかということになると思うのでありますが、これは絶えず日本としてはそういうことを要請されておるという情勢でございますから、絶えずこの問題については検討を加えておりますので、再検討とかなんとかということではない、もうすでに相当検討を迫られている問題であります。こういったようなことはやはり国際折衝の場におけるかけ引きと申しますか、ネゴシエーションの問題でありまして、できるだけ国内相当な用意がなければやれぬはずのものでありますけれども、しかしそうも言っておられぬ。しかし、ぎりぎりのところ一体どこまでいけるかといったようなことにだんだんなっていくわけでございます。この場においてここまではやるつもりだということは、まだ申し上げる段階になっておりません。
  21. 永井勝次郎

    永井委員 いま大臣からガットの領域だけで再検討するというのでなくて、私は、ニクソン政策の中で保護貿易の色合いが強まっていこうというそういう出ばなにあたって、それに反応して残存輸入制限の再検討をする、そういう立場からどういうふうにこれは基本的に考えようとしているかということを聞きたかったのですが、単にこの再検討は前から迫られているんだという、いまの新しくできた事象に対する反応というものが少しもないので、それはそれでしかたありません。  第二にお伺いいたします。  第二次資本自由化に対して積極的な姿勢をとる必要がある、こういうふうに日本政府筋は言っているのですが、具体的にはどのような内容で検討しておるのか、その検討の内容を伺いたい。
  22. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 せっかく検討中でございまして、まだ結論に達しておりません。
  23. 永井勝次郎

    永井委員 検討しているのですから、その検討の、まだ結論を得ない過程でどういうファクターで検討しているのか、どういうウエートで検討しているのか、それをお伺いしたい。
  24. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢説明員 第二次資本自由化の進め方につきましては、昨年の七月から実は第一次の自由化をやったわけでございますが、第一次の際に決定されました自由化のワク組みを前提としながら、来年二月ごろを目途に自由化業種の追加を行なうということで現在各省で検討しております。この自由化の内容といたしましては、五十対五十の合弁会社を認可する業種、すなわち第一類の自由化業種を中心に考える、こういうような方針で現在やっておるのでございます。
  25. 永井勝次郎

    永井委員 それでは局長にちょっと伺いますが、ジュネーブのガット総会アメリカは国境税、輸入課徴金制度、こういうようなものをあるいは表明するかもしれない、こういわれておるのですが、それの見通しはいかがでありますか。そういう問題が表明された場合に、日本はそれに対してどう対処しようとしているか。
  26. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢説明員 いま御指摘の国境における税調整の問題に関しましては、ガットの場におきまして作業部会が設けられておりまして、そこで先般来いろいろ各国の間に検討が続けられておるわけでございます。今度ガット総会の場におきましては、その検討の結果を一応総会に報告するという形になろうかと思いますけれども、わが国といたしましては、いままでやってまいりました作業部会の作業をさらにもろもろの角度から検討を続けるのが適当であろうという考え方を持っておりまして、したがいまして、いや先生御指摘のようにアメリカが非常に性急に何かの結論を出そうというようなことを言ってまいりました場合には、やはり性急な結論を出すよりは、むしろ作業部会において今後なお十分検討を続けるほうが実際的であるという態度で応酬したいというふうに考えております。
  27. 永井勝次郎

    永井委員 資本自由化にあたって国際的な圧力が相当強まってくるにいたしましても、これを迎えて受ける日本産業界の自主的ないろいろな条件というものをやはり十分に検討しなければならない。品物や何かの貿易自由化でありますれば、水ぎわでいろいろな措置ができます。また、それに対応する経済的な措置もある程度可能であります。しかし、資本が上陸して、そして外国の資本が日本の安い労働賃金、あるいは弱点である流通分野のおくれ、そういうようないろいろな弱点をとらえ、あるいは長所を活用して国土の中で動き出すということになれば、これは日本産業界は非常な打撃が出てくる。あるいは資本でフィフティ・フィフティの割合といっても、それは生きて動いていく経済でありますから、その中で力関係で操作されてくることはいなめないと思う。そういう点をいろいろなにすれば、まずニクソン政権をとってやるとすれば、ゼネラルモータースからの強力な支援を受けて今度当選したというニクソンの背景から見て、自動車分野は相当強力にやってくるのではないか、私はこういうふうに思われるわけでありますが、それらに対して取り組む基本的な姿勢、そしてそれに対する対処の具体的な措置、そういうものがあればひとつこの際承りたいと思います。
  28. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢説明員 資本自由化にからみましていろいろ問題がありますことは、いま先生御指摘のとおりだと思います。したがいまして、この自由化業種を決定いたします際には、当然各産業の技術開発力がどうであるとか、あるいは資本力がどうであるとか、販売力がどうであるとか、そういった点の格差をどう評価するか。また、中小企業に与える影響等につきましても十分配慮して、そして慎重に判断してまいらなければならないと考えます。いま御指摘のような傾向というのは当然予想されるわけでございまして、その辺は慎重に判断しなければならない、こう考えております。  なお、資本の自由化だけでなしに、物の自由化の面におきましても今後非常にいろいろ外国から強い要請があると思うのでございまして、資本の自由化について慎重な判断をしなければならないと同様に、物の自由化の面につきましても、やはり日本の特殊性を十分考慮しながら考えていかなければならない。全般的に見れば、日本の場合には、国柄としてやはりできるだけ日本自由化する、外国のほうもいろいろな制限をなくしていくという方向に向かうことが、日本のためにもなるということはわれわれも考えておりますけれども、それを具体的に実施に移す際には、やはりいろいろな摩擦を急激に日本経済に与えるようなことを避けながらやっていくという配慮は当然しなければならないというふうに考えております。
  29. 永井勝次郎

    永井委員 次に大臣お尋ねしますが、通産省ではこういう情勢に対して、金融、税制で輸出振興をはかる必要がある、そのためには実効ある経済協力などを通じて輸出市場の開拓をしなければならぬ、こう言っているのですが、これは作文だけではいけないのでありまして、金融なり税制なりの輸出振興についての質なり量をきめる場合に、相手方がわからないでめくらめっぽうにやるというわけにはいかないのでありますが、こういう関係についてはどの程度の規模、どの程度の範囲をお考えになっておるのか。そうして、それには作業としてあるいは来年度予算の編成に間い合うようにやるというのか。大臣のように、ばたばた大あわてすることはあほうなやり方で、来年の四、五月ごろにならなければわからないのだということになれば、これはタイムラグが出てくる、こういうふうに思うのですが、この関係は一体どういう扱いでどういうふうにお考えになっておるのか、伺いたいと思います。
  30. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 輸出市場の開拓のためには輸出市場開拓準備金制度を設けまして、そしてそれに対しては税制上のフェーバーを与えるということを従来からやってきております。いろいろな輸出対策の努力がだんだん成果を示して予想以上の輸出を見ておりますが、来年度に対しては新しい輸出市場開拓のためにどういうことを考えているかということにつきましては、ただいませっかく勉強しておりますが、まあ従来からの問題をもっと強化する、そうしてその効果をはっきりあげていくということも、これは同時に考えなければならぬ問題である。  それで私どもは、来年度は輸銀の資金量を確保強化する、そうして条件を緩和とまでいけばけっこうでありますが、とかく従来の条件というものがくずされるような状況にありますので、その条件を少なくとも確保してまいる、こういうようなことを考えております。さしあたり私どもは、従来の施策のうちで最も力を入れていかなければならぬという点は、輸銀資金量というものを確保する、条件というものを少なくとも維持する、できたらこれをもっと改善をしていきたいのでありますけれども、少なくとも従来の条件を維持するということを念願しております。
  31. 永井勝次郎

    永井委員 輸出所得控除はどうですか。
  32. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 所得控除は一度やりましたが、ガット違反ということで、これをいま他の有効な方法に振りかえておるという状況でございまして、さしあたりこれを復活しようという気持ちはただいまございません。
  33. 永井勝次郎

    永井委員 いろいろお伺いをしたいと思ったのですが、大臣があまりぼうばくとした答弁ばかりで、つかみどころがないものですから時間を食いましてなんですが、私は大臣にもう一つ具体的に伺いたい。  ASPACがこれから相当重要な舞台となって、軍事的な面、防衛面あるいはベトナムにおける日本の役割り、あるいは開発途上国に対する援助の肩がわり、こういういろいろな新しい局面がここの会議に持ち出されてくるのではないか、こう思うのです。第四回の会議が東京で開かれる予定だということでありますが、これらに対処して——国全体の問題、これは無理でしょうけれども、貿易経済に関する分野においては、私は具体的に問題が提起されてくると思うのであります。大臣は、それらの肩がわり的、あるいはアメリカ貿易の赤字あるいは国内インフレ抑制のいろいろな補助的な役割りの押しつけがくると思うのですが、それらに対処して、この場所において相当の理解を深めさせていくという努力が私は必要だと思うのですが、それについてはどのようにお考えでありますか。向こうから軍備が要求されればある程度はやるのがほんとうだろう、あるいは後進地域に対する肩がわり援助については力がついたのだから同様だ、この量の問題だけで値切るという対処のしかたですか、基本的にそういうものはすべきでないのだという対処のしかたでありますか、それをひとつ伺っておきたいと思います。
  34. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ASPACはいろいろないきさつでこういうものが設けられたのでありますが、日本といたしましては、東南アジア経済開発のためには、ただそれだけ、端的にその問題をねらうという趣旨で、東南アジア開発閣僚会議というものを、関係国の全面的な賛成を得てやっておりまして、すでに三回、今度やれば四回、これは来年やると思います。ほぼASPACもこれと前後してできた会合でございまして、これには豪州、ニュージーランドが加わっております。初めは反共的な機運のもとに生まれたような事情もありましたが、日本が参加する以上はアジアに新しい対立をつくるとか、あるいは対立を強化するというようなことはもう必要がないので、これを反共の政治的な色彩の団結というようなことにすることは絶対に賛成できないということで、すでに経済の問題もあるわけでございまして、具体的には取り上げない、具体的には文化あるいはその他の経済、政治の面においてできるだけ情報を交換して、そしてアジアの国の共栄をはかっていこうというような色彩の団体になっておるわけであります。でありますから、今後貿易経済の問題を力強く取り上げていこうとするには、必ずしもこれは適当な組織ではないと思われます。ASPACよりも、ニュージーランドと豪州だけははずれてはおりますけれども、東南アジアの国を網羅して、そして主として経済の建設というものを中心にしていこうという経済開発閣僚会議というものによって問題を取り進めていくということになると思うのであります。すでにこれの派生組織として農業開発会議というものができて、これも二、三回すでに会議を続けております。それから、これに関連しているというわけではないが、アジア開発銀行、こういったような、主として経済の開発というものの協力機関が、以上申し上げたようなことになっておりますが、今後問題が起こればこれを取り上げてやることになるわけであります。
  35. 永井勝次郎

    永井委員 時間がなくなりましたから、繊維の問題と農産物の問題についてお聞きいたしたい。  局長に伺いますが、輸入制限なり、あるいは保護貿易的な色彩が強まってくれば、繊維が一番大きな打撃を受けてくるのではないか。これについては自主規制もいまございます。いろいろ対応することについて折衝もデリケートな分野もあろうと思うのですが、簡単にそういう保護貿易の色合いが強まっていくであろうという前提に立ちまして、日本繊維はこれにどう立ち向かうか、どういうふうに伸縮ある対応策を持っていくか、その点をひとつ伺っておきたいと思います。
  36. 高橋淑郎

    ○高橋説明員 現在アメリカとの間で繊維につきまして規制が行なわれておりますのは、御存じのように綿製品取りきめがあるわけでございます。それで、従来から非常に根強い繊維についての保護主義的な動きがございます。この動きは残念ながら強まっていくのではないかということを非常に憂慮いたしておりますけれども、現在具体的な動きなり、あるいは先方からの接触というものはございません。しかし、先ほどのお話のように、常時注意深く情報を集めて分析をして、そして適時適切な措置をとるという以外にないと思います。  かつて国際取りきめ式のものを考えてはどうか、あるいは自主規制考えてはどうか、あるいは一方的な輸入のクォータをつくるというような趣旨の法案が出されたこともございますし、そういうようなこともよく頭の中に入れて、これから関係の業界の方々と一緒になって対策考えていかなければならない、このように思います。ただしそればかりではなくて、国内繊維の業界の体質の改善ということをこの際早急にやらなければいかぬということで、すでにその対策にも着手いたしておりますし、なおまた輸出のあり方、やり方についても、やはり秩序ある輸出ということを考える。またできるだけ市場を分散化していくということも対策一つかと考えております。
  37. 永井勝次郎

    永井委員 次に農産物関係について通商局長にまずお尋ねいたします。  綿花とたばこの関係について、売り込みの使節団がアメリカから十二月の中旬に来日する、こういうことが言われておるのでありますが、その事実はどうなのか、その中身はどうなのか。  それから農産物の輸入というものを国内でも歓迎するし、アメリカも盛んにこれを売り込んできておる。たとえば大豆なりえさ穀物の使節団が本年の一月に来ておりますし、小麦の使節団も参っております。またアメリカンフェスティバルが、本年の四月に晴海で相当大規模なショーを開いて売らんかなの態勢を強めてきている。   〔委員長退席、海部委員長代理着席〕 あるいは牛肉関係では、九月から十月にわたって、東京、大阪でこれを売り込んできておる。サンキストレモン等についても、日本の総代理店の西本貿易を通じまして売り込んできている。こういうふうに、外からは非常な勢いで余剰農産物の売り込みが活発になってきておる。それに対して最近国内経済界においても、国内でコストの高いものは国内でつくらなくともいいじゃないか、国際的流通のものならば外国からどんどん輸入したらいいじゃないか、こういう動き相当に強いのでありますが、これに対しては、農林大臣に伺えばいいのでありますが、とりあえずこれらの売り込みの動きに対してどのようにとらえ、そして方針としてどのようになっているのか、一応伺いたいと思います。
  38. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢説明員 十二月に綿花の何かミッション、あるいはたばこのミッションが来るということは、実は私は寡聞にして知らないのでありますが、(永井委員「きょうの日経に出ています」と呼ぶ)今度調べておきますけれども、いままで、ことしに入りましてから、いろいろな形でいろいろな売り込みがきておることは先生御指摘のとおりでございます。アメリカあたりからは、もっと買ってもらいたいとか、あるいはもっとはっきり自由化してもらいたいとかいう要請が機会あるごとにきておるわけでございます。先般物価安定推進会議におきましても、国内のそういう食料品の問題に関連しましていろいろ議論が出まして、非常に高いものにつきましては輸入政策も併用したらいいじゃないか、こういうような意見も出ておるわけでございます。ただ、やはり国内の農業関係の合理化、近代化ということも、いま農林省でいるいろ進めておる際でございますし、そういうこととの関連も考えながら、国内農業にあまり急激なショックを与えるというようなことは避けながら、一面においてそういう高いものの輸入をして価格をある程度安定させるというような方向に持っていくということは必要なことではないか、こういうふうに考えております。  いずれにいたしましても、一つのプリンシプルだけで割り切ってほかのほうにショックを与えるということはやはり好ましいことではございませんので、この農産物輸入については、私どものほうとしてはやはりできるだけ自由化する、あるいは量をふやすというようなことの方向考えたいという気持ちは持っておりますけれども、具体的な案件の処理につきましては、農林省と十分連絡しながら、あまり大きな悪影響がないようにという配慮を同時にしながらやりたい、こういうふうに考えております。
  39. 永井勝次郎

    永井委員 農林省から、食糧庁の総務部長、政策論議でありますから、事務答弁は別として、一応伺っておきたいと思いますが、通産大臣も国務大臣でありますから、そういう点でお答えをいただきたいと思います。  私は、経済界関係について、農産物を、安ければいいんだということで外国からどんどん輸入するということについてはどうであろうということで、だいぶ個人的にお会いをいたしました。生産性が今日ほど上がっておるのに、その低所得分野に大量の人口を持ち、労力のむだ使いを農村でしている、そういうような状態を放置することは国家的に不利益だから、そういう付加価値の低い分野、労働の生産性の低い分野の労働力は、これを高い分野に動員すべきである、こういう意見がやはり相当に多い。ところが、そういう財界の意見を理論づけ、それを推進しているのが下村博士でないかと思うのでありますが、下村博士は、いま農村に一千万の労働人口がいる。非常におくれた低所得層の労働力、これをできるだけ早く三百万くらいの労働力に減らせ、そうしていま非常に労働力不足で生産性がどんどん伸びて高度成長しておる中で、そんな低所得層の農村にぼやぼや労働力を眠らしておく必要はないのだ、どんどん生産性の高いほうへ移動させろ、こういう議論が論文として相当出ておるわけです。そういう考えでまいりますと、現在でも、小麦は八二、三%は輸入であります。でん粉なども、コーンスターチなどやはり百二、三十万トンの国内消費に対して五十五万トンぐらいの輸入をいたしております。大豆などはもう九二、三%は輸入であります。乳製品は三割以上輸入、こういうふうに、大部分が外国の生産に依存するということになっているのですが、それをさらに大幅に入れろ、そして農村人口は三百万くらいでいいんだ、こういうような財界の意見があり、それを裏づける理論担当として下村博士がそういうことを言っているということは、これは単に食糧政策としてだけでなくで、国土の高度利用というような見地から申しましても、あるいは国民生活の長期展望に立った安定施策という点から見ても、私はそろばんずくだけで、そのスポットで、その局面だけで対策を左右すべきではない、こういうふうに考えておるのでありますが、いま言ったように、アメリカからはどんどん農産物を売り込もうと次から次と送り込んでくる、こちらではどんどん買おうじゃないか、買おうじゃないか、こういうような動き国内にある。それに対して、国のほうもそれに対応するように橋渡しをするような動き相当にしている。そしてそれを裏づける人口移動なりあるいは農村の近代化なりに国家投資を相当やって、そして経過的に混乱のないような総合的な施策があるかといえば、ほとんど何もない、こういうひどいやり方というものはないのでありますが、これに対して通産大臣は国務大臣としてどういうふうにお考えになっているか、あるいは通商局長はどういうふうに考えているか、それから食糧庁の総務部長は、食糧政策として内部でどんな討議がなされておるのか、これらについてひとつ納得のいくような答弁をいただきたいと思います。
  40. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 明らかに海外の値段が日本のそれに比して非常に安い、場合によっては半値でも輸入ができるというような状況にあるものは、これはどうしても考えざるを得ないのではないか。急激にこれを実行するということが、もしもあまりフリクションが大き過ぎるというのならば、漸進的にそういう方向にものを考えていく必要があるのではないかということを考えております。しかし、実際の衝に当たる農林省としては、国内のいろいろな複雑な問題をかかえておるのでありますから、やはりその意見を尊重していくべきである、そういうように考えております。
  41. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢説明員 国内の資源を一番効率のいい形で活用するということが、日本経済を発展させる一番基本的なプリンシプルの一つであるというふうには私も考えておりますけれども、しかし現実にそういう施策をやりました場合には、当然あまり急激なショックを与えるというようなことは避けなければなりませんし、したがいまして具体的に輸入政策を展開いたしますためには、先ほども申しましたけれども、具体的にそういう分野の責任をとっていろいろ指導しております農林省とも十分打ち合わせいたしまして、急激なショックを与えるというようなことなしに望ましい方向に施策を展開するということが非常に必要なことではないか、こういうふうに考えます。
  42. 小暮光美

    ○小暮説明員 食糧の需給を安定させる、農業生産の安定と消費生活の安定をはかるというのが私ども食糧庁の職務だというふうに思っております。その角度から考えまして、食糧の生産されます場合の労働の生産性の比較というのは、確かに考慮すべき重要な項目だとは思いますけれども、これは食糧管理の運営に当たります際に考慮すべき幾つかの要素の一つにすぎない、これのみに偏した判断ということはいたすべきでないというふうに考えております。やはり労働の有効利用の問題は、先生御指摘のように構造政策の進展ということと相まって行なわれなければならない問題と考えております。そのほかに国土の有効利用という農業の一つの使命もございます。こういった角度から国内米麦生産の安定につきましては、食糧管理制度を通じて万全の措置を講じたいというのが食糧庁の考えでございます。  なお、先ほど来いろいろお話のございましたガット等との関係におきましても、ガットに加盟いたします際に、日本は現に食糧管理制度を施行しております。この形は守るという前提でガットに加盟いたしまして、ガットもこれを認めておるわけでございますので、ただいま申しましたような角度で今後も進んでまいりたいというふうに思っております。
  43. 永井勝次郎

    永井委員 時間が参りましたのでやめますが、アメリカニクソンにかわりまして以後における国内的な困難ないろいろな問題、あるいは共和党の持っている伝統的な政策ニクソン選挙中に公約したいろいろな政策、そういうものを総合すると、どうしても保護貿易傾向を持ってくる、あるいは景気抑制していく、安定させるというところに重点を置いた政策がとられてくるという心配が多分にあります。それらに対して、日本は対米貿易が三割以上のシェアを持っておるのでありますから、日本への経済的な影響というものはこれは甚大であると思うのであります。さらにこれらの問題については論議を深めたいと思いますが、さらに農産物の輸入国内農業政策とのかね合いにつきましては、もっと時間をかけまして十分論議をする場を持ちたいと思います。きょうは時間がなくなりましたので終わります。
  44. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 佐野進君。
  45. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は、いま永井先輩からニクソン大統領誕生に伴うアメリカ経済政策、さらにそれが日本経済に与える影響、こういう点についていろいろな角度から質問されましたが、それに引き続いて質問をいたすわけですが、私は主としてきょうは資本自由化とこれに関連する流通対策、特に流通対策面における中小企業に与える影響、こういうようなことを中心にして、通産大臣並びに各局長に質問をしてみたいと思います。  さっき永井さんの質問に対して大臣は、目下検討中でございますというような形で答弁をして、通商局長は抽象的な表現の中でいろいろなことを言っておりましたが、もう少し私は突っ込んで質問をしてみたいと思うわけです。  いわゆる資本の自由化は昭和四十六年までに、OECDとの話し合い、決定によって、日本はこれを実施するということになり、先ほどのお話では来年二月までに第二次自由化をするんだということでございますが、私ここに資料を持っておるのですが、第二次自由化業種として予想されるものとしてすでに通産当局のほうでもある程度の面については対外的に発表をされておる、あるいは予測されておる事項について論議を深めておる、こういうようにお聞きしておるわけです。この中で特に流通関係に関連するもの、それから第二次産業に関連するもの、こういうようなものがここに幾つかあがっておるわけですが、これらについてはさっきお話があったようにまだ全然検討中で、これらを土台にしてどうだこうだというようなことまで何ら話し合いになっていないのだ、こういうようにさっきの答弁では聞かざるを得ないわけですが、いま少し具体的に業種をあげてここで御説明願いたいと思うのです。これは局長でけっこうです。
  46. 三宅幸夫

    三宅説明員 第二次資本自由化の進め方につきましては、去る十月の中旬に外資審議会に対しまして正式に諮問が出されまして、その結果を受けまして現在検討中でございます。外資審議会の大体の考え方は、すでに昨年の七月に第一次の資本の自由化が行なわれましたそのときに、新設企業と既存企業の株式取得を分離する、それから既存企業の株式の取得につきましては一外国人投資家当たり七%、累積で外人が全体の二〇%、制限業種につきましては一五%、こういうルールがきまっております。また新設の場合につきましても、いわゆる第一次業種につきましては向こうと日本側とが対等の条件で、すなわち五〇、五〇の合弁比率で認める業種、それから例外的に第二類として非常に力の強いものは一〇〇%までも認める、こういう分類をいたしまして、先般、昨年には約五十業種が自由化業種として自動認可の対象にあがったわけでございます。今般第二次の資本の自由化を進めるにあたりましてそのワク組みをどうするかということが一応議論の対象になりましたけれども、むしろ第二次の進め方につきましては、ワク組みをいじるよりも、先般の昨年の五十業種につきまして今回さらに業種の数をふやしていったらどうか、さらにその際第一次においては見送られました流通部門、中小企業性のややある業種につきましても昭和四十六年までに相当の分野の自由化をするというテンポを前提にいたしまして、第二次においては自由化業種に拾うことを検討してはどうか、こういうことに議論が相なったわけでございます。したがいまして、その外資審議会の空気をわれわれ受けまして、現在通産省のみならず関係各省それぞれ所管の分野につきまして自由化業種ないしは自由化分野の拡大につきまして検討中でございます。  ただいま御質問のございました業種について発表したかどうかということでございますが、これにつきましては全然まだ発表したこともございませんし、また内部的にまだ全然きまっておりません。大体来年早々までに結論を固めたいということで現在通産省のみならず各省が作業中でございます。その結果はいずれ外資審議会との調整をとった上で正式決定を見る、こういうことになる予定でございます。
  47. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それではその対象として論議をしておるといういまの次長の説明をそのまま受けて、こういう点についてはどう考えるかという考え方について通産当局の見解を聞いておきたいと思うのです。流通部門の自由化を進めるということは、流通部門を近代化するために絶対必要なのかどうか。いわゆる流通近代化は近代の経済問題の中における相当重要な部門をなしておると思うのですが、そういう中において流通部門はおもに中小業者がその対象ということになっておるわけですが、その中小業者の中でも特に経済の発展に即応するという形から見るならば、おくれておる層というぐあいに一般的にいわれておるわけですが、こういうものをひとつ近代化していかなければ、日本経済の中で特に物価問題をはじめとしていろいろな弊害があらわれつつある中で非常に大きな課題だ、こういわれておるわけですね。そうすると、そこに今度の第二次としていますぐ手をつける考えであるのか考えでないのか、こういうことについてはどういうような観点から議論しておるか。
  48. 三宅幸夫

    三宅説明員 四十六年度末までにわが国経済のかなりの分野について自由化を実現したいということは、社会経済発展計画でもうたわれておりますし、昨年の外資審議会の答申、並びにそれに相応いたしました閣議でもきまっておる方針でございます。ただしかし技術力、販売力あるいは総合的な企業の力、特に中小企業分野における大企業との格差、外資に対する対抗力が弱いという点ももちろんございますので、この点は双方勘案して進める必要があろうかと思いますけれども、四十六年度末までにかなりの分野の自由化を実現するために、弊害のない限りにおいて、第二次の自由化においては、中小企業性の強い分野も、あるいは流通分野も検討の対象になっておることは事実でございます。ただ、あくまでもそれは中小企業に急激なショックを与えないということ、ないしは技術力、販売力その他の総合的な企業の競争力において、日本経済に著しいインパクトがこないようにという点は、十分配慮しながら現在検討中でございます。
  49. 佐野進

    ○佐野(進)委員 検討中だということは、やるということを意味しておると思うのです。だから、やるということを意味しておるということが、中小企業に影響を与えないということだけを考えたら、いつまでたってもできないと思うのです。資本の自由化ということは、影響を与えないのだということだけを考えたら、いつまでもできない。しかも年次は四十六年度で、目睫に迫っておるのです、実際上の問題として。したがって、どこかから手をつけていかなければならぬということになるわけです。どこかから手をつけていかなければならぬということになると、いまの時点の中で、流通部門の中でどこを自由化の対象として手をつけるか。一番先にウエートを置くべきものはどこなのか、その次はどこか、二つ三つでもいいですから、ひとつ言ってください。  それからもう一つは、中小業者に対する影響は資本自由化で一番受ける。したがって、その受ける対象として、流通部門は一番大きな猛烈なショックを与えられる。しかしショックを与えられることによって病気がなおることがある。病気がなおるというか、非近代化が近代化として促進される場合がある。こういう意味において、この問題は非常にいろいろな問題をはらんでくると思うのですが、しかしそういうむずかしい問題、たとえば心臓移植をやって、病人がなおればよかったが、病人がなおったと思ったら死んじゃった。その原因がどこにあるかということはわからないわけだけれども、いずれにしてもそういうことが考えられるとき、流通部門における自由化というものがはたしてどうかということは、実は検討を要する課題だと思うのですが、それをひとつ、さっき言ったように教えてもらいたいと思うと同時に、あなたがさっきから言っておる、これが通産省全体の考えということになろうと思うから、これは大臣にお聞きしたいのですが、大臣、第二次産業の中でいわゆる外国資本と十分対応し得る、その力を持っておる企業、そういう部面に対して、第二次の資本自由化の対象としてこれを入れるということは、もう常識になりつつあると思うのです。たとえばアメリカ保護貿易をとるであろうということは、さっき永井さんの質問の中で強調されておったわけです。これはだれもが考えておると思うのです。そういう保護貿易をとるということは、アメリカ保護貿易主義というものが悪いものだということを日本立場から言うわけです。たとえばアメリカのほうからいえば、日本が資本自由化を渋っていることは悪いことだということになるわけです。そうすれば資本自由化ということは日本の存立のために必要だということになる。そういう理論も成り立つわけです。われわれもこれに対して若干の議論があるのですが、一般的な意味で指摘してみたいのですが、たとえば具体的に言えば自動車であるとかあるいは鉄鋼、車両であるとか、あるいは重電機であるとか、こういうような企業については当然資本自由化の対象となってくる、ならなければならないだろう、こういうようなことが巷間言われておるわけですね。通産省もそういうような面については非常に強気でやられておると思うのですが、このいわゆる流通部門に対する自由化の問題と、それから第二次産業の中におけるところの自由化の問題について、いま少し具体的にひとつお答えを願いたい。たとえば自動車はどうか、たとえば流通部門におけるところの百貨店はどうか、スーパーはどうか、商社はどうか、こういうようなことについて、ひとつ御答弁願いたい。
  50. 三宅幸夫

    三宅説明員 第一次のときもそうでございましたが、いわゆる製造業といいますか生産企業につきましては、業種別に力がついたもの、それを順次自由化業種に拡大していくという方針がとられております。そしてその方針が今度の第二次資本自由化の作業においてもおそらく貫かれるであろうと考えております。ただし第三次部門といいますか、流通分野は今度が初めてでございますので、第一次のあとを受けまして、第二次のときにおいても製造分野を拡大するというような形の確たる省の方針はまだきまっておりません。したがいまして、業種別に自動車の流通部門をどうするか、そういう議論まで至っておりませんけれども、ことしの春産業構造審議会から出ました意見では、そういう業種別の組み合わせも若干考えながら、しかし特に形態別に考えたらどうか。たとえば輸出専業あるいは輸入専業、あるいは単独店舗による単品小売り業、あるいは単独店舗の卸売り業、こういったようなものから順次総合化の分野にだんだん拡大していったらどうか。したがってスーパー、百貨店等々のことは後段のほうではなかろうかというような御意見が出ておることも事実でございます。われわれのほうといたしましては、第二次の際に、何らかの形でもし成案が出ますれば、流通部門の自由化の第一歩を踏み出してみたいと思っておりますけれども、それを業種別にするかあるいは形態別にするかまだ慎重に検討中でございます。しかしいずれにいたしましても、大規模なショックを国内に及ぼすつもりは毛頭ございませんので、適当な刺激療法を与えながら、漸次流通企業が外資と協調しながら国民生活並びに国民経済に寄与し得るような形で、モデレートな形の自由化をはかってまいりたい、かように考えておる次第であります。
  51. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣、あとでまとめてひとつ答弁してもらいたいと思います。  そうすると、いま言われたように、百貨店なりスーパーなり、いわゆる大資本の自由化ということについては、一応その対象になっておる、こういうような言い方でわれわれは判断していいのですね。
  52. 三宅幸夫

    三宅説明員 自由化の対象としてはすべてが対象になるわけでございますが、第二次の場合といいますか、流通部門の資本の自由化を進める場合には、単一商品を扱うものから複数商品を扱うものへと順次拡大していく。あるいは単独店舗による進出形態のものから複数店舗による組織的な進出形態へと考えておりまして、前段階のほうが資本自由化の第一歩、複数店舗ないしは複数商品、多角経営といったようなものは自由化の場合にはあと回しになる、こういう意味でございます。自由化の初期にあたっては、単独店舗、単品店舗あるいは輸出入業というものから発足すべきではないかということが外資審議会の空気であります。
  53. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それではクリーニング業は具体的にいうとどうなるのですか。
  54. 三宅幸夫

    三宅説明員 個々の業種についてはまだ成案を得ておりませんので、一応申しかねると思います。
  55. 佐野進

    ○佐野(進)委員 さっきの大臣答弁でもそうなんですが、来年の二月にやるのでしょう。二月ということは、十二月、一月というものは御存じのように日本の慣習からすれば、相当政策面に時間をかけることができない月になるでしょう。予算の編成期もあるだろうし、あるいは暮れだ正月だということもあるでしょう。そうしたらもう十一月中旬のこの委員会でいまのような答弁しかできなくて、二月にどうやってやるのですか。それから自由化というものが政府の仕事じゃなくて、さっきあなたが言われているように外資審議会の仕事であるということ、そこの意見が出なければできぬ——もちろん参考になるだろうけれども、そこでいわゆる自由化の品種をきめれば、何でもそのとおりやる、こういうことなんですか。
  56. 三宅幸夫

    三宅説明員 外資審議会は大蔵省の審議会でございますが、中小企業も含めまして各界の有力メンバーがお集まりになっておる審議会でございます。十月の中旬に第二次の資本自由化の進め方についての答申を求めたわけでございます。したがいまして、この審議会から答申が出てくるのをわれわれは待っておるわけでございますが、同時にわれわれとしてはその審議会にわれわれの意見も十分説明する機会も持ちたいと思っております。ただし、まだ私のほうといたしまして、意見をまとめて業種面について審議会の意向を打診するという段階には至っていないわけであります。昨年の場合におきましても、初めは自由化のワク組みについて相当の検討を加えまして、そのワク組みが終わったあとで二カ月ぐらいかけまして業種面をやったわけでございます。私どもとしては、おっしゃるとおり作業の日程は相当つらい日程でございますけれども、今後年末から年始にかけて鋭意努力したい、かように考えておる次第でございます。
  57. 佐野進

    ○佐野(進)委員 たいへん不満だけれども、時間がたってきたから、次の質問に進みたいと思います。  そこで私は、いわゆる流通部門の近代化を促進するために資本の自由化一つのショック的な役割りを果たすものだ、こういうような考え方が政府の通産当局の考え方の中にある。しかしその内面に持ついろいろな問題点、そういうものがいわゆるショック的な療法の中ではたしてどう影響を与えてくるかということがわからないし、それだけの力もないではないかという判断もあって、いま若干時期をおくらしておって慎重に検討しておるのだ、こういうような答弁になってきておるのだ、こう思うわけですが、そこで私はこの際その流通近代化の面に関連して、いずれにせよそのショック的な療法だと言われるほど弱い基盤に立っておるこれら流通部門、流通部門ということはもっと具体的に表現すれば、いわゆる百貨店であるとか、スーパーであるとか、小売り商であるとか、あるいはその他のサービス部面に関連する企業に従事するそういう経営者なりそこに働く労働者なり、そういうような人たちの問題についてこれから少し質問を進めてみたいと思うわけであります。  まず第一に、いわゆる流通部門の中でも大型な流通部門、これを近代化するということについて——大型も小型も含められたものですが、通産当局のほうでは、審議会の答申を経て一応中間報告というような形の中でわれわれの前にも示されておるわけですが、こういう点についてその大型の流通部門に対する対策というものについて、関係者から簡単でいいですから、考え方の中心をひとつお示し願いたいと思います。
  58. 三宅幸夫

    三宅説明員 大型という意味がどういうカテゴリーを意味するか、いろいろ複雑な概念でございますが……。
  59. 佐野進

    ○佐野(進)委員 小売り商に対する……。
  60. 三宅幸夫

    三宅説明員 百貨店の店舗の増設ないし新設につきましては、現在百貨店法によりまして百貨店審議会に諮問することになっております。百貨店審議会はさらにその具体的な事例に関しまして、個々の該当地域の商工会議所の意見を聞く。商工会議所はさらにその管内に設けられました小売り商業調整協議会、ここの意見を聞くことになっておりますが、この小売り商業調整協議会には地元の小売り代表も入っておりまして、その場において百貨店の新増設について完全に了解のついたものを百貨店審議会が答申を出し、通産省が認可する、こういう形をとっております。また大型スーパーにつきまして、これは百貨店法の関係ではございませんけれども、私どもとしては特に営業方針なりあるいは地元に与える急激なショックを回避するために、通産局を中心としまして強い干渉と指導を行なって、できるだけモデレートな形でスーパーが発展するようにということで指導しておる次第であります。
  61. 佐野進

    ○佐野(進)委員 労働省のほうで課長が別の会議を中座してきたからよろしくということですから、ちょっとまだそこの段階まで至っていないのですが、質問をしてみたいと思うのです。  私いま質問申し上げていることは、結局流通が近代化しなければ日本経済の将来の発展のために、特に資本の自由化を前提とし飛躍的に前進しようとする日本経済の面から見て、一番おくれている面として非常に力を尽くさなければならないということを通産当局も強調しておられるし。われわれもまたそういう面については、その考え方については何ら反するものじゃないという立場で実は質問をしてみたいと思って続けておるわけですが、その際一番問題になることは、外国資本が、外資がどんどん日本の流通部門の中に入ってくる。入ってくる中において経営の問題をはじめとし、いろいろなおくれている部門に対する外国資本の進んでいる部面における対策というものによって、日本の流通部門における混乱——混乱というか、そういうことによる弊害が大きくなってくることは困る、そういう面をどうやっていまのうちに防ぎとめておくかということが必要ではないかという観点から質問をしているわけです。そういう意味で、いま大型流通部門に対する対策はどうかと聞いたのもそういう点にあるわけです。  そこで、労働省の質問に入る前に私がお聞きしたいことは、一番おくれておるといわれておる流通近代化の中で一番問題になることは、この経営者が中小業者であるということと、働く人たちあるいは経営者自体を含めて、労働時間の問題についても経営の内容についても、いわゆるきわめて古い慣習に支配された形の中でいままでの運営をやってきていると思うわけです。したがってそういう点について、政府のほうでどういうような対策が立てられておるのかということをこの際お聞きしたいと思っていろいろ研究をしたわけです。そういたしましたら、政府のほうでもいまいろいろな面から通産当局のほうで検討しておられるということについて参考に見せていただいて意を強うしておるわけですが、実はそういうことでお聞きしてみたいことは、まず第一にそこに働く労働者の問題と、それから百貨店と小売り商との問題、こういう問題についてひとつ質問をしてみたいと思うわけです。  まず第一に、これは労働省の監督課長のほうにお聞きしますが、先日港湾労働者が日曜と祝日を休日にさしてもらいたいということで一日ストライキをやったために、荷役はほとんどとまって日本じゅうの港湾業務がストップされた、こういうような新聞報道があったわけです。そうすると、港湾に働く労働者が日曜と祝日を休日にさしてくれと言うということは、労働基準法上のいわゆる祝日なり日曜がいま休日として認められておらない、日曜と祝日を含めて全部労働しておるのだということになるわけですね。そういうことがはたしていまの日本の労働行政の中で認められる状態なのかどうか、この点をひとつ御質問申し上げておきたい。
  62. 細野正

    ○細野説明員 御承知のように労働基準法のたてまえといたしましては、原則的に労働時間を一日八時間、一週四十八時間というたてまえで、それをオーバーする場合に、時間外労働に対しては時間外労働手当を支払えという形で、できるだけ長時間労働にならないように配慮する。また実際に時間外労働をやる場合には、職場の過半数を代表する労働組合、ないしは労働組合がない場合には個人との協定に基づいて初めて残業ができる、こういうたてまえになっておるわけでございます。したがいまして、望ましい形としては恒常的な長時間労働というものが継続的に行なわれるということがないことのほうが望ましいということでございますが、しかし先ほど申しましたように、時間外協定を結んで割り増し賃金等がきちんと支払われておる場合には、法律そのものにとっては違反ではなくなるというふうな状況でございます。
  63. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私も基準法をよく見ておりますから、法律違反ではないという点はわかるわけですよ。  それでは、法律上違反でないということと、そういう港湾労働者というような、一応目ざめたと言ってはどうかと思うのですが、組織せられた労働者の団体を対象とする経営者の中においても、日曜でも祝日でもともかく港湾荷役をさせるのだということで仕事をやることに対して、労働省は何らそれらに対する指導監督ということをしていませんか。  それから、世界各国はみな同じような状況でそういうような港湾荷役を日曜、祝日にさせておりますか。
  64. 細野正

    ○細野説明員 各国の状況は私もあまりつまびらかでございませんが、休日は日本に比べればかなり確実にとられておるということでございます。  したがいまして、先ほども申しましたけれども、のべつに休日労働が非常に続くというような状態は望ましい状態ではございませんが、同時にまた直ちに法違反というわけではございませんので、漸次業界等と話し合って実態に即しながら時間が短くなっていくということを私どもも努力をいたしておりますが、今後ともそういう点で指導監督をつとめてまいりたいというふうに考えております。
  65. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、こういうような問題についてはその指導監督を強めるという形で、結局その荷役業者の自主的な自覚というか、そういうものにまつ以外、労働省としてはしようがない、こういうようなお考えですか。
  66. 細野正

    ○細野説明員 現在のところ、基本的にはそういうたてまえでございますが、先ほど申しましたように指導を強める、できるだけ実情に即しながら時間が短くなるようにしていきたいというふうに考えております。
  67. 佐野進

    ○佐野(進)委員 時間が短くなるようにしたい。そうすると祝日や日曜日を休日にするということについては、これは荷役業者の自主的な判断によらざる限り実際上日本においては実現が不可能だ。政府のほうの関係としては、こういう面については積極的に介入して指導をするということはなかなか無理だ、こういうような見解であるかどうかちょっとお聞きしたい。
  68. 細野正

    ○細野説明員 時間外労働なり休日労働をいたします場合には、御存じのように先ほど申しました事業場の過半数を代表する労働組合、それがない場合には過半数を代表する者との間に協定がなければ延長ができないわけでございます。そういう意味で、時間外労働なり休日労働の協定自体が非常に恒常的に長時間、過長な時間になったような協定にならないような指導をやっていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  69. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私なぜこういうことを回りくどく質問しているかと申し上げますと、日本における流通部門の大部分を占めるのがいわゆる中小業者、特にその中小業者の中でも二つの層があって、零細と中というように分かたれると思うのです。そういう中で、いま最も劣悪な労働条件あるいは経営内容をもって、企業を維持し生活を維持しておる人たちは、いわゆる小売りと称せられる商店その他の経営者だと思うのです。こういうようなところに働いておる人たちは、もちろん経営者もそうですが、時間にはそう制限がない。日曜日にもそう休みがない。早朝から深夜まで、そして日曜、祝日にも休みなく働いておるわけです。働かされておるわけです。近時、労働省その他における指導がある程度徹底してきて、商店街等が日をきめて休むような状態になりましたが、まだ日曜、祝日を休日にするなどというようなことは、ほど遠い現状にあると思うのです。港湾荷役労働者の人たちですらそういうことが行なわれ得ない現状の中で、一般小売り店等が、そういうような流通部門のおくれた部面に携わっておるといわれておる人たちが、日曜、祝日を休日にするなんということはなかなかでき得ないのじゃないか。そういう点を考えるから回りくどい質問でしたが申し上げたわけです。  ところが外国はほとんど、近代国家と称される国、特に英国等をはじめとして、日曜、祝日の休日はもちろんのこと、商店法とかあるいはそれに類する法律によって、明らかに時間を切って営業をする、あるいは日曜、祝日をほとんど休日にする、こういうようなことが行なわれておる。それがやはり流通近代化の一つの柱になっておる。こういうことを私ども聞いておるわけなんですが、日本の労働省はこれについてどうしてそう不熱心なんですか。その点ひとつ聞いてみたい。
  70. 細野正

    ○細野説明員 ただいま御指摘のございました商店等につきましては、これはすでに先生からもお話ございましたように、一斉週休の普及というふうなことについて私どもかなり努力をしてきておるわけでございます。特に先ほども御指摘ございましたように、基準法そのものの規定にすら違反している部分がかなりございます。それからさらにいま先生御指摘のように、基準法の中であっても三六協定等によって時間外ないしは休日にかなり長い労働が行なわれているという場合もございます。とりあえず私どもとしましては、まず法律そのものが守られるように厳正な監督指導をするということに重点を置きまして、こういう恒常的でない業種につきましても、かなり重点を置きながら毎年毎年、たとえば手法といたしましては一斉監督をやってみるとか、あるいは定期的監督の中にそういう業種を交えるように、各局へ指示をするとか、いろいろな形で努力をいたしておるわけでございます。しかしながらその監督結果等を見ましても、先生御指摘のようにかなり違反が見受けられる。もちろん監督しましたところはすべて是正措置をとっておるわけでございますけれども、数が非常に多いために、違反がかなり残っておるというのが現実かと思います。
  71. 佐野進

    ○佐野(進)委員 したがって、残っておるということだけではないのですが、これ以上はあなたに質問することも無理かと思うわけですけれども、現実の問題として、商店街あるいはその他小売り商ですね。あるいは流通部面に関係する零細な運輸業とかその他いろいろありますね。こういうような人たちが一番過酷な条件の中で、経営者も労働者も働かなければなかなか成り立たない。しかしそういう面について一番救いになるのは労働省の労働基準監督署ですか、そういうところから労働条件をよくする。あるいは経営内容をよくするような形の上に指導が行なわれて、それらが経費なり何なりの面に反映して、そしてりっぱな企業的な基盤もあるいは人間的な権利も保障されるような条件がつくり出されなければ、日本における近代的な経営、いわゆる流通部門の近代化などということは幾ら言ったって不可能だと思うのです。そういう面において労働省が果たさなければならぬ役割りが非常に大きいと思うのです。労働省がいま一生懸命やっておることはいろいろ知っています。知っているけれども、しかし特にこういう面に対する取り組みがおくれておるのではないか。特に先ほど申し上げた港湾労働者というような人たちがやってもなおかつそれができないというようなことになると、これは百年河清を待たなければ日本の全小売り商——それは世界どこもやってない、日本だけやりなさいというなら別なんだけれども、世界のあらゆる国で実施されておるときに、世界の生産力第三位だという日本の国がいまだそういうことについて全然手がつけられないということはおかしいじゃないかという気がするわけですから、そういう点を強くあなたに御希望申し上げておきたいと思います。ぜひ労働省当局として積極的に取り組んでもらいたいと思います。あなたに対する質問はこれで終わります。  そこで私はいまの問題に関連して、中小企業庁のほうになろうかと思うのですが、お聞きしてみたいと思うのです。これは中小企業庁になるかどうかわかりませんが、小売り商の方々がいま幾多の困難な情勢の中で、特に資本の自由化をはじめとし、日本経済の変動の中に苦しみ、もがきながら、その生活を維持するために長時間働いて埋め合わせをしなければならぬし、金融の面においても高い金利を払ってお金を借りてそういうようなことをしなければならないことになるわけですが、これはいまでさえ、いまの状態をよくするということのために、いわゆるこう薬ばりのことすら十分できていないところだから、週休制とかあるいは夜間営業の禁止であるとか、こういうようなことはほとんど不可能だというような考え方に立たざるを得ないだろうと思います。これはやむを得ないと思いますが、中小企業庁当局としてこういう問題についての対策をどうやっておられるかをひとつこの際お聞きしておきたい。
  72. 乙竹虔三

    乙竹説明員 先生御指摘のとおり、ポイントといいますか根本は、むしろ中小企業の経営者が旧態依然たる気持ちで従業員を使っておるのではなくして、そうやらなければ店が張れないからだということでございます。したがいまして、私たちといたしましてはいかにしてこの中小商業者の収益力を強くするか、一言でいえば体質を改善するかということが、中小商業対策のポイントであると思います。したがいましてこれから先は、御高承のとおりでございますけれども、金融の面でございますとか、特にボランタリーチェーンとか共同店舗の組織化の問題でございますとか、税の面でございますとか、こういうような対策で体質強化をつとめますとともに、特に商店街を活用していくということで、集団指導をしていくという方策が非常に大事ではなかろうかということで、特に商店街振興組合でございますか、ここに対する指導力を今後強化してまいりたいと思っております。
  73. 佐野進

    ○佐野(進)委員 長官にはあとでまたいろいろ質問しますが、そこでいまのような考え方になると、いわゆる世界的な趨勢、それから日本が流通機構の近代化を果たして、日本経済を世界的な規模の中に置いて、どこの資本が来てもそれに対応できるような状態に持っていくというためには、いわゆる小売り商をはじめとする零細な企業に対する強力なてこ入れ、そういうものをやっていかなければならぬと思うわけです。思うわけですが、その前に、こういうような人たちについてすら、労働時間なりあるいは経営の基盤強化なり、そういう問題についていろいろ対策を立てなければならぬとするならば、それの上にある——上にあると言ってはちょっと言い方が適切でないかわかりませんが、それよりもうちょっと大型な、ある程度の資本力を持つ、そういうような企業に対してどういうような対策をとるかということが一番必要だと思うのです。特に外資審議会ですかあるいは通産当局ですかのほうで審議している資本自由化の対象の中に、さっき言った百貨店ないし大型スーパーですか、そういうようなものについては資本自由化の対象として取り上げられるのだ、こういうようなことが先ほど来言われておるように聞いておるわけですが、そういう場合、こういうような百貨店とかスーパーとかというところにおけるところの労働時間あるいは休日、こういうような問題についてはどう通産当局としては対処していかれるのか。これはだれになるかわかりませんが、ひとつ次長から……。
  74. 三宅幸夫

    三宅説明員 私の舌足らずで、今度の資本自由化の際に百貨店や大型スーパーが検討の対象になるというぐあいにお聞き取り願ったとすれば訂正させていただきます。そういうものは単品店舗その他と比べて非常に問題が多いということでございますから、その点御了承いただきたいと思います。  それから、百貨店や大型店舗の営業時間につきましては、百貨店につきましては百貨店法によって閉店時間、休日等の規制が行なわれております。いわゆる百貨店にあらざる大型店舗につきましては法の規制がございませんが、近隣の小売り商との間に、営業時間あるいは二重価格制、目玉商品等々を含めまして、非常な摩擦を生ずることのないように、通産局その他を中心にして行政指導を強化したい、かように考えております。
  75. 佐野進

    ○佐野(進)委員 通商産業省の昭和四十三年企業局第千百六十九号で、通商産業省企業局長の名前で、七月五日に「百貨店法施行令に基づく許可の運用方針の改正について」ということで、百貨店の営業時間の延長を大幅といっていいほど認めておるわけですね。ところが昭和三十一年だと思うのですが、ともかく百貨店法ができたとき、その経過の中で、いわゆる百貨店の営業時間とか規模とか近隣の小売り商業者に与える影響とかいうことを考えてあの法律ができたわけですね。あの法律ができた時点の中から今日の時点、十何年たっているわけです。この時点の中で通産当局がいわゆる営業時間を延長さしていこうとして延長さしたということですが、これはいかなる意図があるのか、私がさっき以来質問している関連の中で、ひとつ御説明願いたいと思うのです。
  76. 三宅幸夫

    三宅説明員 今度比較的に甘くいたしましたのは、七大都市を中心にいたしまして、歳末期間中十六日間は午後七時まで、残余は六時三十分までとなっておりましたのを七時まで延ばしたということ、並びに土曜、日曜、祝日についての閉店時刻の延長につきましても若干の手直しをしたということでございまして、特に大幅というほどの緩和の措置はとっておりません。
  77. 佐野進

    ○佐野(進)委員 ですから、私がさっき以来質問しているとおり、労働時間を短縮し、祝日なり日曜などを休日にするということ、そしてそういう世界の各国の体制と相対応できるような状態にすることが日本の流通近代化をはかるための基礎的条件を打ち立てることにつながるわけでしょう。そういうとき、日本は流通近代化をしなければならないといって、あなた方は幾つかの本を出しているでしょう——本を出すというか、説明しているでしょう。そういう中で、どうして百貨店とかそういう業種については十何年前以上に逆行するような措置をおとりになるかということを私は聞いているのです。
  78. 三宅幸夫

    三宅説明員 これは通産局でそういう申請があれば許可し得るということで、あえて労働時間を延長することを企図したものではございません。国民生活、消費者の便宜も考えまして、あるいは地方地方における大型スーパー店との問題も考えまして、そういう申請があればもちろん審議の上許可し得るという通達でございまして、大幅に時間延長をはかったということではないわけであります。特に一部誤解がありましたので重ねて通達を出しまして、組合等との関係は十分百貨店としては調整をした上で申請を出してほしいという通達を出しております。また地元の小売り商との調整についても特に十分なる理解をさせ、急激なる反発を与えないようにということで通達を出しております。決して慣行的に労働時間を延長しようあるいは閉店時間を全面的に延長しようというのではなくて、十二月の師走の期間並びに土曜、日曜あるいは国民の祝日における夕方三十分ばかりの延長をはかったものでございます。
  79. 佐野進

    ○佐野(進)委員 ですから、私の言っていることは、あなたのお考えでそういうことにしたということは、いまお聞きしていれば、一つの言いわけというような形に聞かざるを得ないと思うのですよ、これは私の判断だけれども。労働時間を短くしようというのは世界的の趨勢でしよう。そして営業時間についても短くしよう、中間的な休みの時間なりあるいは休日なりを多くしようという状況、それは世界の中ではあらゆる国で法律化しているでしょう。そういう日本の中においても小売り商店の時間を短くしていかなければならぬというときに、その小売り店を保護するために百貨店法をつくっておる、その百貨店法の施行令の中でそれを認められておるとは言いながら、いまの時点の中でなぜやらなければならないのかということになると、たいへんおかしいじゃないかということになると思うのです。時代に逆行しているのじゃないですか。通産行政というものは、時代に逆行しないで、一歩進んで経済的な情勢を把握しなければならぬ、手を打っていかなければならぬときに、通産省の企業局というものはたいへんおかしいじゃないか、こういわざるを得ないのです。  もっと進んで言いますならば、この百貨店法はいまの状態の中でいろいろな不備が出ていますね。疑似百貨店あるいは寄り合い百貨店その他いろいろ、いまの法律そのものを解釈するだけで現状とその政治とは全く情勢に即応しない面もたくさんあるわけです。そういう点についてあなたのほうで百貨店法を改正するとか、あるいは小売り時間、営業時間の問題について商店法とかあるいはそういうような新しい状態に即応した法律をつくるべき機運にきておる、百貨店法を改正し、それらの新しい法律をつくるべき機運に来ておると思うのですが、こういうことについて検討したかどうか。私はこういうことがなければいいけれども、こういうことがあるだけにたいへん心配になっておるわけですから、その点をお聞きしたい。特にこの点については大臣——通産大臣、ちょっと焦点でないからあれだろうけれども、次長から大臣に言ってください、あなたには大臣のあとで答弁してもらいますが……。
  80. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 百貨店法の改正はただいま考えておりません。それからまた労働時間短縮の問題について、商店法の制定についてもただいまのところその準備はありません。
  81. 佐野進

    ○佐野(進)委員 次長、ちょっと補足して答弁してください。
  82. 三宅幸夫

    三宅説明員 重ねて申し上げますけれども、世界的趨勢に反して労働時間を延長したとは考えておりません。国民の生活が非常に忙しくなっておる昨今、土曜日、日曜日あるいは祝祭日あるいはまた一番忙しい師走について終了時間を若干三十分程度の刻みで延長したわけでございまして、これは消費者の保護、消費者の便益という点と商業政策との調和点として考えたつもりでございます。  それから、お尋ねの百貨店法につきましては、激動する流通業界の中におきまして、御指摘のございました疑似百貨店、寄り合い百貨店等の問題は十分存じております。しかし、これにつきまして、この際法規制の強化あるいは法域を広げるということではたして立法技術的に、あるいはまた法の運用面でどれだけの実効と自信が持てるかという点についてはなはだ疑問でございますので、現在のところ、疑似百貨店その他につきましては、百貨店に近い形態のものはできるだけ百貨店法の許可の申請を受けるように、百貨店と実態の違うものが誤解を招いている場合にはその誤解を解くように、同時にまた疑似百貨店が近隣の小売り業者に非常な摩擦と刺激を与えないようにという行政指導を強化することによって対処をしてまいりたい、かように考えております。
  83. 佐野進

    ○佐野(進)委員 これはまだ相当問題点のあることですから、われわれは何回も質問してみたいと思いますが、あまりやっていると時間がなくなりますから、一応次の問題に進んでみたいと思います。  いま言われたように、百貨店と小売り商の問題、これはいずれも流通面を受け持つ重要な単位であるわけです。したがって、こういう方々が流通近代化に対応して、いわゆる世界的な情勢対応できるような近代的な経営のシステムあるいはその中における労働時間なりあるいは休日なりあるいは融資なり、そういういろいろなものを総合的に通産当局としては考えて積極的に取り組んでもらいたいと思うのですが、それはそれとして要望しておきます。  そういう反面、私は、今日、日本の経営者、いわゆる零細、中小経営者を含めて特に非常に大きな問題になっている商業部門を中心にしてきょうは質問をしているわけですが、そういう点について公取に若干質問をしてみたいと思うわけです。  まず第一に、昭和二十九年十二月二十一日、公正取引委員会告示第七号で、「百貨店業における特定の不公正な取引方法」として告示をしておられるわけです。その中で問題となっておるのは、百貨店業における特定の不公正な取引方法として納入した商品の返品の問題、それから六項に「百貨店業者が、自己の販売業務のために、納入業者にその従業員等を派遣させて使用し、または自己が直接雇用する従業員等の人件費を納入業者に負担させること。ただし、」云々というようなことが書いてあるわけです。こういう点について公正取引委員会がいまどのような措置とこれに対する排除命令というか、そういうようなことをどの程度出されておるか。実績についてひとつお答えを願いたいと思います。
  84. 柿沼幸一郎

    ○柿沼説明員 百貨店の特殊指定につきましては、二十九年に特殊指定が行なわれましてから毎年実情の報告をとりまして、ただいま御指摘のありましたような点が適正に行なわれているかどうかということの監視をいたしております。そういった点につきまして外部からときどき苦情の申し出がございますので、その場合には調査いたしまして、是正をさせるというようなことをいたしております。ただ公正取引委員会の正式の審決というような形で排除措置をとったことはございません。
  85. 佐野進

    ○佐野(進)委員 ということは、結局具体的にこういうことについて、不公正取引方法に関して指定された条項に適応した具体的な措置をとられたことはないということですね。
  86. 柿沼幸一郎

    ○柿沼説明員 特殊指定の条文をごらんくださいましてもわかりますように、実は取引のきわめてデリケートな関係を規定したものでございまして、たとえば返品と申しましても、現在平均的な統計では、これは年間約六%ぐらいの数字が出ておりますけれども、納入者側にいろいろ理由があって返品をする場合も、ここに列挙されているように非常に多いわけでございます。ただ百貨店が優越した地位を乱用して返品させるというようなことは、この特殊指定で禁止されておるわけでございます。  それから手伝い店員の問題でございますが、その問題は、最近特に人手不足もございまして、そちらのほうがやや問題が多いわけでございまして、これまた納入問屋の立場から見ますと、自分の商品を特に売りたいというようなケースも相当あるわけでございます。専門家を派遣するということもございます。苦情が出まして、ぐあいが悪い場合に行政的に注意をするということはございましても、これが正式の審決として排除しなければならぬというような点まで至ることはないというのが実情でございます。
  87. 佐野進

    ○佐野(進)委員 事務局長、あなたひとつ、東京というと近過ぎますから、関西のほうの百貨店を、四店でも五店でもいいから具体的に、特別何月何日に行くよということでなく行ってお調べになってみたらどうかと思うのですがね。いま、いわゆる派遣店員の問題は、百貨店が納入業者に対する一種の特権的な状況の中においてこの禁止されている条項をそのままやっておるというのが常識になっておるということを私ども聞いておるわけですがね、具体的な面からいうと。私は何もあなた方の仕事がどうだこうだと言うのじゃないのですよ。いわゆる流通を近代化するという大義名分の上に立って、日本のおくれておるこの層における状態をどうするかということになってきたときに、昭和二十九年に告示されたことが、今日平然としてじゅうりんされるどころか、この当時よりもなおかつ悪い条件の中で実施されるということになっておったのでは、もちろんあなたの言われる人手も不足だし、なかなか仕事ができないという面もあるけれども、これはたいへんなことじゃないかと思うのです。したがって、本年の予算でできないということであればこれはしようがないということになろうと思いますが、しかし、予算というのはそうたいしてとるわけじゃございませんから、これから調査項目の一つに加えていただいて、こういう面について、これは単に百貨店の経営の問題だけじゃないのですね、流通部門全体に非常に大きな影響を与える、こういう面から私は特に質問申し上げておるわけで、そういう点についてひとつあなたのお考えをこの際聞いておきたいと思います。
  88. 柿沼幸一郎

    ○柿沼説明員 手伝い店員につきましては、二十九年に制定いたしましたときは、手伝い店員というものを焦点にして規定ができておるわけでありますけれども、その後いろいろ新しい取引方法ができてきておるようでございます。たとえば売り上げ仕入れというような方法で同じような目的を達しますとか、それから売り場貸し、これは契約上はっきり別になるわけでございますけれども、その中間に属するようないろいろな形態がございまして、特に関西と関東では取引の仕法も違うように聞いております。御指摘のような点、私どもといたしましても十分注意しておかなければいけないと存じます。具体的にも当たってみまして、さらにこの特殊指定の趣旨が励行されるように勉強してまいりたいというふうに考えております。
  89. 佐野進

    ○佐野(進)委員 まだ流通近代化の問題については聞きたいことが一ぱいあるわけですが、約一時間たちましたし、きょうは年末金融の面を聞きたいということで中小企業庁長官をわずらわしておりますので、若干の時間をそちらへいただきたいと思います。流通近代化の問題についてはこれで打ち切りたいと思うのですが、最後に大臣、先ほど来私が約一時間にわたって資本の自由化並びに日本経済の当面するあるいは今後の課題として流通近代化が与える小売り商ないし百貨店、疑似百貨店、そういう部面における、いわゆる商業部面におけるところの影響について、企業局の次長をはじめ各局長、公取の意見を聞いたわけですが、こういう部面におけるところの通産省としての基本的な考えと今後の方向について、ひとつ私の質問した意図も理解した上で見解を明らかにしておいていただきたいと思います。
  90. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 小売り業は非常に弱い。でありますから、これの部面における自由化というものはよほど慎重にやらなければいかぬと思います。  それから百貨店の面でございますが、私は日本の百貨店というものは相当に発達しておると思うのです。こういう面における資本自由化は、これは小売り業者に対する方針とはよほど趣を異にすると思います。百貨店の国内の活動に関する問題について、小売り業に対する百貨店の与える衝撃という問題については十分に考慮してこの問題を取り扱いたいと存じます。  それから小売り業の将来についてはできるだけこれを協業化あるいは共同化、そういう構造改善のほうに今後相当の力を入れてまいりたいと考えております。
  91. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣は忙しいようで、堀さんがあと質問があるそうですし、あした中村さんから中小企業金融については質問されるということですから、協力して私は質問を終わります。
  92. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 堀昌雄君。
  93. 堀昌雄

    ○堀委員 実は通産大臣にはこの前、きょうお伺いをいたしますところの姫路・播磨地区の出光製油所の建設についてこれらの漁業関係者と一ぺんお伺いをいたしましたから、問題の所在は大臣も御承知だと思います。そこでその問題の最初に、十月十一日の産業公害委員会におきまして水産庁の森沢次長が答弁をしておられる問題からちょっと入りたいと思います。  この日、森沢次長はこういうことを言っておられます。「私たち水産サイドにおります者としましては、製油所の設置によりまして考えられます水産被害というのは、冷却水から出る油分の問題、それからさらに、かなり大規模のタンカーを接岸あるいはシーバースをつくって陸上に油を供給いたしますので、そこに海上におきます漁業の操業に対する被害が起こる可能性もあります。ここらがポイントである。」とこう言っておられて、「現在出光興産のほうで計画をいたしております処理が完全に行なわれれば、希釈前の油分の濃度が一PPMということでございますので、ほかの海域におきます例等を見ましても、まずそのとおり行なわれれば、排水については必配はないと、私たちは技術的に考えておりますが、ただやってみまして、いろいろ異臭魚が出たりすることがかりにありとすれば、それに対する対策は、企業側並びに県に対しても十分講ずべきであるということを申しております。」こういう答弁が実はなされております。  ここで問題が二点ありますのは、あなたのほうでは現在出光が計画をしておるとおりにやられれば一PPM以下になるだろう——なるだろうということは期待をもって言っているのだろうと思うのですが、それならば他の海域等の関係で問題はない。だから、これは一PPMということが一つの限界として問題が提起されている。おそらく県なり出光なりにはそういう趣旨で水産庁はものを申しておられる、こう思いますが、その点いかがですか。
  94. 森沢基吉

    ○森沢説明員 いま堀先生の言われましたとおりでございまして、兵庫県でこの問題を、兵庫県の公害審議会というものがございまして、技術的にいろいろ詰めてきた経過は御承知のとおりでございます。その中に水産庁のほうからも水質汚濁の専門家の新田博士を委員として参加させまして、いろいろ出光のほうから出ました計画につきまして検討いたしました結果が、この前の産業公害委員会で答弁いたしました私の答弁の趣旨でございます。
  95. 堀昌雄

    ○堀委員 ところが県が、「出光興産株式会社姫路製油所建設に伴う主要協定事項」というのを実は出しておるわけでありますが、この主要協定事項の実施細目の中には、水質汚濁対策指摘事項としまして、「油分は、日間一PPM以下を目標とし最大三PPM程度とすること。」こういうふうにはっきりなっているわけですね。それで措置状況の中には同じように、「油分は、日間平均一PPM以下を目標とし最大三PPM程度とする。」こうなっておると、最大三PPM程度とするほうが主体であって、片一方は目標になっているわけですね。これはあなたの答弁と非常に大きな食い違いが一対三であるのですが、ここはあなた方は一体どう理解しておられるのですか。
  96. 森沢基吉

    ○森沢説明員 この一PPMないし三PPMというのは、これは冷却水で希釈する前の、要するに排水時の濃度でございまして、これが海に排出をされます場合には、当然河川水あるいは海水等によって希釈されるわけでございます。それにはいろいろ前提条件がございますけれども、私たちが異臭魚が発生しない限界として技術的に検討いたしておりますのは〇・〇一PPMでございますが、この出光の場合に、希釈前に一PPMないし三PPMということであるならば、それが海水で希釈されました場合にはさらに低い濃度になりまして、私たちが一般的に水産サイドで異臭魚をつくらない限界といたしております〇・〇一PPMという基準に比べまして安全であるという意味で申し上げているわけでございます。
  97. 堀昌雄

    ○堀委員 しかし、あなたはさっき一PPMと言われたでしょう。会議録には一PPMということで指導しておる、こう言っておられるし、私はだから初めに念のために詰めたわけです。三PPMという話はそのときには出なかったわけです。しかし実際には三PPMまでになっていて、一PPMというのは目標になっているわけですからね。だから私はちょっとそこに問題があると思うのです。そして漁業組合のほうは、やはりこれは一PPMにしてくれという問題を出しているわけですね。そこのところをあなた方がもう少しはっきりしないと、これは非常に問題があると思います。私がきょうこれを取り上げましたのは、この漁業組合との関係の中に、できることと、できないことがあるのではないのか、きちんとしておかないとあとで紛争の種が残って、実は工場はできてしまったわ、あとは、いろいろなものが出てきても、できた以上はしかたがないのだというようなことになったのでは困るから、実は私は少し詰めた問題を処理しているわけです。そういう点が一つ。これはあと大臣がお出になってからでいいのですが、ただ大臣の頭に入れていただくためにいまの問題を一つ申し上げたのです。  その次に、いま水産庁のほうで言っておられる異臭魚という問題ですね。要するに油くさい魚は全部買い上げてくれというふうにこの中で漁業組合はいっているわけです。一体油くさい魚という判断はだれがするのかという問題ですね。水産庁は一体だれがすると考えていますか。
  98. 森沢基吉

    ○森沢説明員 率直に申し上げまして、非常に異臭魚の程度の高いものでありますれば、市場に出ました場合に商品としては流通いたしませんので、そこらで流通関係のものが排除するというようなことが常識でございましょうけれども、さらにそれ以前の問題でございましょうから、これはやはり県の水産試験場なりあるいは県の水産課なりというものが技術的に判断をいたしまして、そういう第三者的な地方公共団体がまず判定すべきものだ、こういうふうに水産庁としては考えております。
  99. 堀昌雄

    ○堀委員 実は大臣、魚をとりまして、一体その魚が油くさいかどうかというのは、食べてみないとわからないのですよ。要するに国民が食べてみて、この魚は油くさい、こうなったって、実はその魚はどこの魚かということは必ずしも明確にいかないのじゃないか。そこで実際問題としては、一体この問題がどこからこう出てくるのか、異臭魚というのはどうかということは一体どこから出てくるのかという問題が一つあると思うのです。実はこれは非常に問題のある取り扱いだと思います、異臭魚は全部買い上げろといっているわけですから。そうすると、漁獲をした諸君がやはり自分たちが漁をしたからというので少しは食べるかもしれませんが、一番最初の発端は、漁をしておる者がどうもこれはくさいぞ、これは商品に出したら問題があるのではないかというようなところから出てくるのではないか、私はこう思うのですけれども、それを一々県の水産試験場が検査をするなんといったって、鮮魚のことですから、もうすぐ外へ出してしまわなければ、そんなものを置いておいて水産試験場が判断をして、においがしないといったら売らなければならぬし、においがするといえば買い上げてもらう、こんなことが現実の問題としてそんなにうまくできるのかどうかということに非常に私は疑問があるわけです。大臣もおそらく一般的な常識からお考えになれば、異臭魚は全部買い上げろという協定の問題が出されておる、ここは大臣、どんなふうにお考えになりますか。私も常識的な判断しかできない。あなたも常識的な判断でけっこうです。
  100. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは常識的に、問題の異臭魚であるかないかといったようなことは、当事者同士の話し合いによってきまる問題じゃないでしょうか。
  101. 堀昌雄

    ○堀委員 いま当事者同士といわれると、漁民のほうはくさいという。これは感覚ですからね。いいですか、油くさいなんということは感覚だから、ものさしで出てくるわけじゃないのですよ。何か機械へ入れてどうかしたら何PPMなんということが出てくるのなら、これはしごく簡単ですが、油くさい魚というのはこれはにおいの問題だから、漁民のほうは油くさいと言い、会社のほうはいやこんなものは何でもないですよと言ったら、これでおしまいになってしまうのですね。それではいまの水産庁のように水産試験場へ持っていく。持っていくのはいいですよ。そんなことをする間に鮮度が落ちてしまって、さあこれはだいじょうぶだといったら、売りものにはならぬということに結果としてなってくるのではないか。この取り扱い方の中には非常にむずかしい問題をはらんでいるわけです。  これは私、いま常識的な話で申し上げているのですが、私が心配をするのは、こういう問題はそのあとに非常にトラブルを起こす取りきめになるおそれがあると思っておるわけですよ。しかし、水産庁はそこらでは何かそういう指導をしているのか、何かそういう答弁がここにあるわけですね。「いろいろ異臭魚が出たりすることがかりにありとすれば、それに対する対策は、企業側並びに県に対しても十分講ずべきであるということを申しております。」。十分講ずべきであるということを申したって、それは申すぐらいは幾らでも申せるけれども、あと始末は一体どうなるか。この中には実は非常にたいへんなことが含まれておると私は思うのです。だから、これをずっと見ておりますと、この漁民との話し合いの中にこういうようなことがすでに合意に達したというふうにいわれているわけです。「事故が発生したときは、次の補償を完全に行なうこと。油臭魚が発生したときは、発生源の如何を問はず、会社において買上げるとともに、一般値下り魚に対しても補償すること。」こういう項目が実は入っているわけです。その次にもあります。まだいろいろありまして、下へ行きますと、「会社は、上記各事故補償を完全且、早急に実施できるよう「補償準備基金」を造成すること。基金の規模は播磨海区総水揚げの一ケ年分以上とすること。」こういうふうになっているわけですね。水産庁、この一カ年分というのはいま幾らですか。この播磨地区の一カ年分の水揚げ、これは具体的に金額を明示しているわけですからね。これを幾らで指導しているわけですか。
  102. 森沢基吉

    ○森沢説明員 いま先生のおっしゃっているのはまだ最終的にセットした話ではございませんで、要求だろうと思いますが、現在播磨などの漁業金額が幾らという数字を私いま正確に持っておりませんが、たしか兵庫県の瀬戸内海側だけで約六十億円ぐらいであっただろうと思います。数字に不正確な点があったらおわびを申し上げます。
  103. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、兵庫県の瀬戸内海側といいますと、もうあとは明石の辺から東のほうですから、まあ幾らあれに見積もっても六十億円の半分より多いと思いますけれども、半分として三十億円。一体三十億円の基金などというものは、鉱山局長、できる見通しはあるのですか。これはどうですか。
  104. 中川理一郎

    ○中川説明員 いま御指摘になっております点は、先ほど大臣から御答弁がございましたように、いま会社側と漁業関係者側とでそれぞれ交渉をされている事項でございまして、明らかにしておきたいのは、会社側ももしいまの異臭魚の発生があり、かつその異臭魚の発生が会社側の責任であるとかいう場合には当然補償を行なうのだということは考えておるようでございます。ただ、いまおっしゃったように、どういう場合にこれを異臭魚として取り扱うか、あるいはその場合の補償のためにどういう準備をしておくかという要件なり条件なりというようなものにつきましては、これはおそらく今後いろいろ不明な点もございますから、当事者間の相談で、たとえば異臭魚の認定について水産庁がお話になったように、県の水産試験場とか水産課に判断をゆだねるということで両者の意見が一致すれば、それも一案でございましょうし、そうでなくて、こういう要件、こういう条件でということがきまれば、それもそうだ、こういうことでございまして、大臣が申し上げましたとおり、当業者間の交渉、折衝によりまして、いま御指摘の不明な点がだんだん固まっていく、こういうふうに御了解いただければよろしいのではないかと思います。
  105. 堀昌雄

    ○堀委員 固まればけっこうなんですが、固まらないだろうと思われるような問題がこの中に少し入っているわけです。  もう一点、これは非常に私は気になる点がありますからちょっと触れておきたいと思うんです。これはすでに会社側が了承したということになっているわけですが、「他社との石油化学コンビナートは建設しない等、会社が意思表示している事項は必ず厳守すること。」こういうことについてはすでにもう同意を与えておるというふうに実は聞いておるわけです。  そこで通産大臣にちょっとお伺いをいたしますが、企業がどこかでやろうというときに、石油は石油業法でこういうふうにコントロールされておりますが、石油化学は業法のようなものはないから、ここへ二十万バーレルの石油精製工場ができた、ずいぶんナフサやいろいろなものができる、石油化学をここへつくりたいという申請があったときに、出光は、この約束に基づいて、私は賛成しませんというかもしれない。しかし出光が賛成しないといったって、そんなものは阻止する力はない。うちはつくりますよといえば、新しい石油化学工場ができるということについて、これは拘束力はないと思うんですよ。そういう何か見せかけ上のこの協定があるので、漁民たちはもう石油化学の工場はできないんだ、こう思っている。そうじゃないので、それはできるのだ、ただ出光は賛成しませんということがここに書かれているだけのことになるということになると、あとで問題が起きたときに、漁民は一ぱい食わされたということに必ずなると私は思うんです。そこでこれをきちんとするためには、通産省として工業立地の法律その他もあるわけですから、通産大臣としてはこういうことを確認するという——通産省が確認をするわけですからね。結果としてはやはりこれが合意に達したということでなければ、石油審議会のほうでは調整につとめるものとするということになって、この場合鉱山局長はこの前の国会では、話し合いがつかなければ許可を延期することがあるのだ、こういう答弁をされておるわけですから、そこのところをちょっとはっきりしておきませんと、これは漁民が一ぱい食わされるということになると思うんですが、どうでしょうか。出光はこういう表現ですよ。「他社との石油化学コンビナートは建設しない等、会社が意思表示している事項は必ず厳守すること。」厳守しますと答えている。この点どうですか。
  106. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 出光がかわっても、別な企業の相手方は県、市ということになるでしょう。だからいきなり一晩のうちに新しい会社ができ上がるということはないので、やはり県、市と交渉して、そして新しい石油会社がその地方に設置されるということになりますから、県、市のほうで、そういう出光との間のいきさつがあったわけなんですから、今度第二の石油会社がきてやるという場合には、少なくともこれ以上の制限規制を守るということでないと、常識上はそこへつくれないわけでございますから……。
  107. 堀昌雄

    ○堀委員 答弁が違うのです。いま私が言っているのは、石油精製はもうこれ以上できないのですよ。面積の面から見ましても二十万バーレル以上のものはできない。石油化学の工場は私はできる可能性はまだあると思うんです。だから石油化学の工場は、憲法の定めるところによって、つくりたければ自由にできるということになったら、出光は自分のところはしませんよというけれども、石油化学の工場ができるということについては可能性がないということにならぬという点をちょっといま伺ったわけです。
  108. 中川理一郎

    ○中川説明員 大臣答弁をちょっと私のほうから補足いたします。大臣もそれは御理解になっての答弁なんです。ちょっとことばが、石油会社と、こうおっしゃいましたが、石油化学会社を含めてのことでございまして、いまの出光側が石油コンビナート計画等はやりませんといっておることは、そのとおりでございます。しかもそのことは、いま大臣が申しましたように、県と市と出光の三者協定の中でそううたっておるわけでございます。そこで先生の御指摘のように、他の石油化学会社が出光製油所があるという前提の上に、隣接して石油化学コンビナートをつくれば非常に経済的に便利であるということで進出する可能性があるのじゃないか、それについてはいまの協定は働かないではないかというのが先生の御質問で、私は論理的にはそのとおりだと思いますが、ここで大臣が申し上げたことは、出光が地元民に約束しているだけではなくて、県、市が当事者として約束しておる、そうであれば、県、市側においても出光の意向と別個に出光と連携する石油化学工場をつくりたくないという趣旨で協定しておるということでございますから、この気持ちが県、市にある限り、それを押しのけて石油化学会社が進出しあるいは通産省がこれに合意するということは起こり得ない、こういうふうに大臣はお答えになったのだと思います。
  109. 堀昌雄

    ○堀委員 それではもう一ぺん聞いておきますけれども、要するにそれは県、市が反対すると思いますが、私は実際は行政の問題というのは、また市長や知事がかわったらどうなるかわからぬと思うのです。われわれは国の段階からですから、通産省としてはそういうものができることについては同意をしないということをここで一言言ってもらいたい。それでしまいです。
  110. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 通産省も大臣局長がかわればどうなるかわかりませんが、結局通産省としてはこういったようなことは明々白々の問題でございますから、たとえ人がかわってもこういうことは許さない、そういう方針がもうすでに確立したものだ、こう思って差しつかえないのじゃないかと思います。
  111. 堀昌雄

    ○堀委員 もう一つ、実は補償の問題が出てきましたときに、一体補償を受け取る相手方がどうなるのかということが、実はこの協定書の中ではちっとも明確にされていないわけです。ところが補償の問題というのは、三十幾つもの組合がありますと、広い範囲にわたっておりますが、問題が起きるのは局地的だと思うのです。全体的に起こる問題もありましょうが、部分的な問題が起こる場合もある。そうすると、その補償をめぐって常に公平に分配されることになるかというとそうではなくて、一番うちが被害が大きいのだ、おまえさんのところは二の次じゃないかということで、三十幾つかの漁業組合が常に同一歩調になるとは限らない、こういう問題が次の段階になると起こる可能性が十分あると私は思うのです。こういう場合についてはこの中に少しも触れられていないのだけれども、水産庁はそういう場合には一体どういう指導をこれまでしてきておるのか。漁友会という名前が出ておるけれども、これは単に親睦団体であって、法的な規制を受ける団体ではないということになっているわけですね。これについては水産庁は一体どう考えているのですか。
  112. 森沢基吉

    ○森沢説明員 御指摘のとおり、播磨漁友会は、歴史は深うございますけれども、あくまで親睦的な漁業の振興とか調整を話し合う団体であります。したがいまして、播磨漁友会の中に公害対策委員会というものを漁民が自主的につくりまして、いろいろ基本的なラインで会社とか県に折衝を開始いたしておりますが、しかし具体的な補償の金額等の段階になりますれば、これは漁友会がやるものではございませんで、当然漁業協同組合なりあるいは直接漁業を経営する人を相手にやるということでございます。たとえば協同組合の場合には、地元に共同漁業権を持っている組合がございます。いわゆる姫路市の協同組合五組合がございます。これなどは協同組合が補償折衝の主体になるわけでございます。それから許可漁業あるいは自由漁業等につきましても、実害がある場合についてはそれに対して補償するというのが通例でございますので、この場合には個々の漁業の許可を持っておる者あるいは個々の経営者を対象にして補償がなされるということでございますが、従来から私たちがやっておりますラインは、いま申し上げたように、許可漁業、自由漁業で違いますけれども、たくさんの漁民に個々にというわけにもまいりませんので、最終的には会社とその漁民の属する協同組合との間に折衝が行なわれる、その間に県が立ちましていろいろあっせんを行なうという形で、従来都道府県が相当それにつきまして指導いたしております。
  113. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、時間がありませんから御退席の前に一言だけ伺っておきますが、漁業組合のほうからいろいろな要望が出されておりまして、その中には会社側として協力してくれるものもあるかと思うのですが、いまの異臭魚の問題というのは非常にあとに残る問題だろうと私は思います。ところが私この前四日市へ調査に行きますと、四日市沖の海域はたいへん異臭魚になっているというのが実は現実の姿なんです。だから石油化学の工場なんかつくってもらいたくないという問題が付随してきていると思うのですけれども、これらの話のつかない限りは、この問題は許可は出ない、こう理解をしてよろしいですね、通産大臣。この前、局長もこういう表現で言っていますから、大臣にあれしておきましょう。「またその話し合いが十分行なわれていないということがあれば、行なわれるまで、許可書を交付するということは、当然のこととして、遠慮申し上げなければならない。」こういうふうに言っておるわけです。そこで、私は、話し合いが行なわれればいいのではなくて、話し合いがまとまるということが——石油審議会の「公害対策、漁業問題処理等、地元との調整に努める」調整に努めるということは、ただ話し合いしておればもうそれでいいのだではなくて、話し合いが円満に解決したらということに理解をすべきだと思いますから、そうすると、こういうふうな問題は、まだかなりいろいろと水産庁にきちんと指導をしてもらわぬと、あと問題が非常に漁民の側に残ると思うのです。あなたは少なくとも漁民側の利益を守る立場にあると思いますから、これらについてあとの紛争の種にならないようなかなりきちんとした取りきめを指導してもらわぬといかぬと思うのですよ。だからそういう話がきちんとできるまでは、これは許可書は出ない、こう理解をしたいと思うのですが、大臣どうですか。
  114. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大体いままですったもんだでもめてまいりまして、そして出光のほうでも、今日わかっておる範囲のことはもうあらゆる防止対策を講ずるということを言い、またそれが実行されるという確認を得て、そして許可をするということになったのであります。これは、それ以上のことは絶対に起こらないというわけにいかない。起こるかもしれない。起こるかもしれないので、大綱においてはこれは許可するけれども、なお引き続き努力をする必要がある、こういうことで、そこで、その部分については許可後に話し合って、万全を期するようにしてもらいたい、こういう趣旨だとひとつ御了解を願いたいと思います。
  115. 堀昌雄

    ○堀委員 椎名さん、いまのお話ですと、工場を許可して、できてしまえばあとはいいんですよ。ともかく少々ぐずぐずもめたところで、もうこわいものはないのですからね。私は、やはり政府として、まあ水産庁も政府の一部だと思うのだけれども、政府としてやはり漁民の問題を考え、石油審議会がこういうようなコメントをつけたということは、ある程度のめどもつけないのにもう——私はいまちょっと通産省から話を聞きますと、たくさんある中で、やりやすそうなところだけはもうすでにオーケーしているのですが、肝心なところは一つもオーケーを出してないわけですよ。肝心なところは、実は水産庁の言っているポイントでございますというところは、あまりオーケーが出ていない問題がある。特に異臭魚の問題なんかは全然触れられていない。こうなると、これは四日市の例から見ると、今後漁民にとっては非常に重大な問題になると思うのですよ。案外それが知らされないで、漁民が安易な妥協をして、あとでたいへんなことになるのじゃないかと思うものですから、私はやはりその人たちのことを十分考えてやらなければいけないと思って、きょうも問題にしておるわけですが、それはある程度重要な、少なくともいまの異臭魚の問題というものが片づかないうちに、いや、あとで話をすればいいではないかでは、これはちょっと行政として私は問題があると思うのですが、大臣どうでしょうか。やはりそういう可能な問題だけはケリがつくということにしてもらわなければ困ると思うのです。
  116. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 許可後と言いましたが、ことばづかいが少し荒っぽかったかもしれません。大体これでよさそうだ、しかしまだ許可はしてない、許可はしてないが、許可をする方針でこちらは進めるが、その間にも十分に話し合いをして、そしてほんとうに許可がおりた場合には問題が起こらないような大体見据えをつける、こういうくらいの気持ちでこの問題を処理したいと考えております。
  117. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの最後のところ、ことばがちょっと明確でないんですね。もう一ぺん言ってください。このくらいなら何と言われたのか、よくわからなかったのですが、めどをつけようということですか。
  118. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 このくらいの程度ならば大きな問題が起こるまいというようなめどをつけて、それで許可をする方針である。でありますから、いま直ちにこの段階において許可ということで問題を解決するわけじゃないが、許可する方針で問題を取り運ぶ、その間にも、いよいよ許可という場合には十分にめどがついていくようにする、こういうわけであります。
  119. 堀昌雄

    ○堀委員 わかりました。要するに、それはたくさんありますから、私は枝葉末節のことを言っているわけじゃないのです。将来の漁民の生活について重大な問題が起こる可能性があるのは、実は異臭魚の問題なんです。もう魚がくさくなったといったらだれも食べないですよ。日本人は潔癖ですから、魚がもし油くさかったらだれも食べませんよ。それの判断というようなことは、実は非常にむずかしい問題で、さっき申しましたように、鮮度の関係いろいろあるわけですけれども、こういうようなところが解決つかないうちに許可をされたんでは、漁民はたいへんなひどい目にあうだろうということを心配して申し上げているので、私は枝葉末節——全部ここにあるとおりにしなさい、それでなければ許可をしてはならぬとは言いませんけれども、漁民の今後の生活にかかわりがあり、少なくとも水産庁の考える範囲の問題については、十分水産庁と協議をして、水産庁の了解を得た段階において善処をするということにしてもらいたいと思います。それでいいですね。頭を下げたんじゃ速記録に出ないから、それでいいですと言ってください。
  120. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そのとおりでございます。
  121. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは、大臣けっこうです。  そこで、水産庁にもう一つ伺っておきますが、最初に私が伺ったときでも、あなたのほうでせっかく一PPMということでやりたいと言っておられたのが、なぜそこで三PPMにまでなったのか。こういうものは企業側としてみれば、何にしたってやはり多いほど楽なわけですよ。だからこれは一PPMを限度として、それは例外としてたまにはあるかもしれない。この書き方はそうなってないのですよ。私は、一PPMを目標とし、最大三PPM程度とするとしとあると、常に最大になると思うのです、こういう表現は。ここらの問題は、まだ漁民のほうは一PPMにしてくれと言っているわけですが、県でも漁民が一PPMにしてくれということについては水産庁の考えと同じだと私は思うので、この点はひとつあなたのほうでちょっとオーソライズしてもらいたいと思うのです。ただ、県は三PPMと言っているけれども、これは漁民が言うとおり一PPMとするということが、いまの私の言う条件の一つだということをちょっとここで確認をしておいてもらいたい。
  122. 森沢基吉

    ○森沢説明員 PPMの問題で、多少御説明が不十分であったところもあると思いますので補足をいたしますが、普通、水質の基準を表現いたします場合に、日間の平均がどのくらいであるか、それから最大がどれくらいであるかというのは、工場排水のことでございますから、平均の水準は守らなければなりませんけれども、機械の都合によって、それより高い濃度のものが出るということが現実にあり得るわけでございます。これは出光の問題に限らず、すべてそういう表現をとるわけでございます。この「実施細目」にございます数字は、日間平均が一PPM、最大が三PPMということで、堀先生のおっしゃるように、三PPMまで常にいいんだということでは決してないわけでございます。したがって、あくまで日間平均が一PPMという前提に立って、さらに一万一千トン・パーアワーの冷却希釈水をもってすれば、異臭魚の限界より下回るから、だいじょうぶであろうということを私が御答弁を申し上げているということを、補足的に説明をさせていただきます。
  123. 堀昌雄

    ○堀委員 それじゃ、こういう表現なら私はいいと思うのですよ。油分は日間一PPM以下とし、最大三PPMとするとなれば、あなたの言うとおりになるのです。ところが、これはそうなっていないのですよ。「油分は、日間一PPM以下を目標とし」ですからね。目標としたって、これがもし日間二PPMになったって目標だから問題はない、それで最大限三PPMとすることということは、あなたの表現の、部分的には三PPMになる、部分的には〇・〇五PPMだから日間が一PPMにおさまるということでは、私は日本語の解釈としてはそうならないと思うのですよ。あなたの気持ちはそうかもしれないけれども、この文章ではそうなりませんよ。表現を改めて、油分は日間平均一PPM以下とし、最大三PPMまでを認めるものとするというふうに書いてあれば、もうきっちりと一PPM以下におさめなきゃいかぬ。そうすると、単位時間的な濃度においても三PPMをこえてはなりませんよということなんです。三PPMが十二時間出る、ところが、あとはもう十二時間ですから平均したら一PPMになりませんが、要するに、そういう形の表現になるようになっていなければ、いまあなたが言われたようにはなりませんよ。問題が起きてきたら、目標だから、最大限三PPMでしたから、日間平均三PPMになっておりました、こういうことになって、三PPMが二十四時間続いたって問題はない、こういうようにこの文章はとられると思うのですよ。そこはどうですか。目標ということばを削除しなきゃ意味がないんですよ。
  124. 森沢基吉

    ○森沢説明員 この実施細目は、これは出光のほうの計画に従いまして、県が公害審議会等で審議をいたしました資料でございますので、私が表現を自由にかえるわけにはまいりませんが、漁業者の要望も一PPMだということを申しております。この一PPMというのはあくまで基準でございまして、一日平均一PPM、さらにそれに希釈水が加わりますと安全度に達する、そういう解釈をいたしておりますが、先ほど申し上げましたように、ときとしてこえる場合がございまするので、正確にこれは記述すべきであるということでございます。
  125. 堀昌雄

    ○堀委員 会社とあれがやったものをあなたのほうではどうにもできないから、漁業者と会社側が協定をする場合には、あなたのほうからサゼスチョンをする——あれはこうなっているけれども、いまあなたの言ったような内容ならばいいんですよ。だから、そういう取りきめでなければだめだということですよ。あなたのほうで漁民を指導すべきだと思うのです。それがやはりいまの異臭魚に関係してくるから、それを十分進めておって事実行なわしたなら、あなた方の経験的な状態からは異臭魚は出ないだろう。異臭魚を出さないことが問題なんで、私は異臭魚を出して買い上げさせるために言っておるのじゃないから、いかにして異臭魚を出さないか、そのことが、私は魚を食う国民のためでもあるし、同時に漁民のためでもあると思って、いろいろ議論をしておるわけですから、その点はやはりきちんとした指導をして、会社側との間に、漁民のためあとに悔いが残らないように、異臭魚を買い上げさせることのないように、そんなところを詰めたところで処置をしてもらいたいということでありますから、よろしいですね。ちょっと答弁してください。
  126. 森沢基吉

    ○森沢説明員 私たちもいま堀先生のおっしゃったことと同じように考えております。異臭魚を出したのでは漁業サイドでは元も子もありませんし、それを全部買い上げることは膨大な金額でありますが、これは、これからもいろいろ会社との協定というものもあります。したがいまして、異臭魚を出さない水質にして放流をさせるということでございますので、いまのラインは、県や市も協定の中に入っているわけでございますから、水産庁といたしましては、県を通じて漁業者の安心のできる線で実際汚濁が起こらないように指導いたしたい、こういうように考えております。
  127. 堀昌雄

    ○堀委員 最後に鉱山石炭局長にお願いしておきますけれども、どっちかというと通産省というのはやはり企業サイドに立ちやすい。もちろん産業政策をやる以上企業サイドの問題は考えなければなりませんが、しかし産業というものは国民のためにあるのであって企業のために産業があるわけではありませんから、その点はひとつ十分考えていただいて、せっかくこういうコメントがついているわけだから、これがあなたの希望されるような円満な解決がつくように通産省として企業側を指導して、かりそめにも、もう許可する方針だからなんていうようなあいまいなことでやらせないで、きちんとやってくれ、その暁にはいつでも許可をする、こういう形にしてもらわないと困る。安易な態度企業側に臨んでもらっては、結果として企業も困るだろうと思うのです。漁民も困るし、国民も困るし、そこには何ら得るところがないと思いますから、その点は、やはりき然とした態度で処置すべきものは処置してもらわないと国の機関として不十分だと思いますが、その点はどうでしょうか。それだけお答えをいただいて質問を終わります。
  128. 中川理一郎

    ○中川説明員 御趣旨なり精神なりにおきましては私も全く同感でございまして、現状における技術的な能力というものと社会一般の許容度というものを公正客観的な立場で、企業サイドでない立場で客観的に見てそれを満足させる努力はすべきだと思っておりますが、反面、あまりそういうことはないかと思いますけれども、欲得に走ってごね得だということを容認するわけにもいきませんので、ただいま申しましたように、企業サイドでもなく漁民サイドでもなく、技術的な能力について最高の努力をさせる、社会的な容認度合いというものについて、それをこえるような無理なことはさせないという御趣旨において公正を期したいと思っております。
  129. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  130. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 本日の議事はこの程度にとどめます。  次回は、明十五日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十七分散会