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1968-09-17 第59回国会 衆議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年九月十七日(火曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 藤本 孝雄君 理事 河野  正君    理事 田邊  誠君       海部 俊樹君    佐藤 孝行君       齋藤 邦吉君    中野 四郎君       中山 榮一君    中山 マサ君       丹羽 兵助君    本名  武君      三ツ林弥太郎君    湊  徹郎君       加藤 万吉君    後藤 俊男君       西風  勲君    野間千代三君       平等 文成君    有島 重武君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 中曽根康弘君         労 働 大 臣 小川 平二君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田中 龍夫君  委員外出席者         内閣官房長官 亀岡 高夫君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         給与局長    尾崎 朝夷君         総理府人事局長 栗山 廉平君         大蔵省主計局次         長       海堀 洋平君         運輸省鉄道監督         局長      町田  直君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働衛生         研究所長    山口 正義君         日本国有鉄道総         裁       石田 禮助君         日本国有鉄道常         務理事     井上 邦之君         専  門  員 安中 忠雄君     ───────────── 九月十七日  委員澁谷直藏君、世耕政隆君、増岡博之君、箕  輪登君、渡辺肇君、八木昇君及び大橋敏雄君辞  任につき、その補欠として中山榮一君、佐藤孝  行君、本名武君、丹羽兵助君、湊徹郎君、野間  千代三君及び有島重武君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員佐藤孝行君、中山榮一君、丹羽兵助君、本  名武君、湊徹郎君及び野間千代三君辞任につ  き、その補欠として世耕政隆君、澁谷直藏君、  箕輪登君、増岡博之君、渡辺肇君及び八木昇君  が議長指名委員に選任された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件      ────◇─────
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。
  3. 田邊誠

    田邊委員 前々回の当委員会におきまして、去る八月に出されました人事院勧告中身についていろいろと質問いたしました。特に上薄下厚といわれる今回のいわば是正内容についても、かなりの問題がございまするし、その中でも初任給については、総裁もいまだ完全、あるいは十分とは言い切れない、こういうお話もございました。そしてまた、いわゆる春闘の積み残し分に対する調査精密度は、かなり落ちるものである。そしてまた、今回の勧告が、五月実施を目標としておりまするけれども、四月実施の民間の賃金から見ました場合に、一カ月のズレがあることに対する指摘を私はいたしたのであります。これらのいわばいろいろな問題点がございまするし、中には、総裁も今後是正をはからなければならぬことを痛感をしておられる部分もあったと思うのであります。私は、私の質問に対し、かなり共感を得られた点もあると思っておるのでありますが、いずれにいたしましても、これらの内容をわれわれはしさいに分析をいたしまして、今後の正しい公務員給与あり方に対して検討を加えてみたいと思っておったのであります。あと総務長官等がお見えの際に実は質問をいたしまするけれども政府は、八月二十七日の当該委員会において、私が総務長官に対して、九月にまた委員会を開くんだが、それまでに閣議決定とまではいかないにしても政府方針は出るのではないかというふうに質問をいたしましたところが、それに向かって努力をいたしますという通り一ぺんの答弁で終わったのであります。ところが、その一日おきました二十九日に、関係閣僚打ち合わせ会をやって、今回の勧告に対する政府決定方針を大体おきめになって、翌三十日には閣議決定、こういうことになったのであります。  そこで、総裁にお伺いする前に、大蔵省主計局がお見えでございますから、今度の人事院勧告を八月から実施をする、通勤手当については五月から実施をするというのでありますけれども、これに要するところの国家公務員に対して必要な財源は、一体何ほどになりまするか。そしてその財源一体どこからまかなう御予定でございますか、お伺いいたします。
  4. 海堀洋平

    海堀説明員 八月実施、ただし通勤手当は五月からという計算にいたしますと、国の一般会計負担は六百一億円ということになります。特別会計負担は百三十二億円ということに相なります。国の負担としましては、そのまま足しますと七百三十三億円ということになりますけれども一般会計から特別会計へ繰り入れられる分がございますので、それを差し引きました国の純負担といいますか純計におきましては、六百四十億円の負担でございます。  どういうふうに措置をとるかということでございますが、これは総合予算主義のもとで給与費の中でどの程度過不足が出るか、現行予算においてどの程度過不足が出るかという見通しを立てまして、それの純不足分予備費によって措置をとるということに相なると思います。  それから申し落としましたが、この六百一億円というのは、人事院勧告の対象の一般職公務員だけではなくて、人事院勧告一般職公務員給与改定に準拠いたしまして、防衛庁職員等特別職公務員についても、同様な給与改定が行なわれるということを前提とした場合の所要額でございます。
  5. 田邊誠

    田邊委員 そうしますと、今年度の当初予算に盛られておる千二百億の予備費の中からこの給与改定に要する財源は生み出せる、こういう御判断でございますね。
  6. 海堀洋平

    海堀説明員 まだ年度は半ばに達していないわけでございまして、今後の追加財政需要というものの推移を確実に見通すことはできないと存じますけれども、いままでの災害の発生状況、それから現在見通される追加財政需要等各般の観点から検討した結果、非常に苦しいとは存じますが、何とか予備費範囲内で処理ができるという見通しを一応立てまして、八月実施ということを決定したのでございます。
  7. 田邊誠

    田邊委員 政治的判断は、あとでそれぞれ閣僚にお伺いをいたします。  ここで総裁閣議決定がなされまして、再び三たびというよりも、おそらく十一回でしょうか、にわたって人事院勧告勧告どおり実施をされない、こういう事態になってまいったのであります。どうでしょう、これに対して佐藤総裁はどんなような御感想でございますか。
  8. 佐藤達夫

    佐藤説明員 十分お察しいただけると思いますけれども、いまおことばにありましたように、これは十年近く完全実施の形が実現しておらないということで、ことしは千二百億予備費もありますし、私どもの八%の勧告でいって五月にさかのぼっても八百二十億そこそこで、十分おつりがくるはずだという期待を持ちながら実はおったわけでございますけれども、遺憾ながら御承知のような結果になってしまいました。これを遺憾だとか残念だとかいうようなありきたりのことばで言いあらわすもう時代ではないような気がするのであります。  特に、社会労働委員会でありますから、特に強調して申し上げておきたいのは、おそらく当委員会の御所管だろうと思われます公労委仲裁裁定実施ぶりが過去どうなっているか、少なくとも十年以上はずっと四月にさかのぼって完全実施がされております。ことに近年は、ある公共企業体のごときは非常に大きな赤字をかかえて四苦八苦していらっしゃるその中にあって、なおかつ完全に四月にさかのぼってこれが実現しておる。ことしの場合などもどのくらいお金がかかるかと思って、ちょっとしろうと考えに当たってみましたけれども、大体公社現業で八百何十億程度ですか、ちょうどわれわれの五月実施に要する経費ととんとんに当たると思うのですが、これがあちらのほうは完全にいっておるというようなことを考えあわせますと、何とかならないものかと、まあ女性的な表現ではございましょうけれども、くやしくてたまらぬというのが真情でございます。  ただし、公労委裁定の場合と違って、われわれの勧告国会に直接申し上げている、これはたいへんな強味だろうと思います。内閣にもお出ししておる、にもと特に言いたいくらいの気持ちで私はおるわけで、したがいまして、内閣の一応の態度は御決定ありましたけれども、まだ国会に対する勧告は、ものをいうのはこれからである、また私ども国会に対する勧告をいまさら取り下げたり、あるいは訂正したりなどという気持ちは毛頭持っておりません。ぜひ勧告どおり五月からの実現をお願いしたいという立場でずっと、まだあきらめてはおりませんから、ひとつ今後よろしくお願いしたいと、あわせて御要請申し上げておきます。
  9. 田邊誠

    田邊委員 これは特に与党がこれに対してよく耳の穴をほじくって聞かなくちゃならぬのでありますけれども、いずれまた臨時国会等においてわれわれは給与法の問題を審議をし、本題に対する本格的な討議をする際に、さらに所信を戦わしていただきたいと思っているわけでございますが、いま総裁お話にございましたとおり、いわゆる三公社現業といわれる公企体関係職員については、仲裁裁定完全実施が、これは当然のことでありますけれども、はかられておるわけであります。これに比べて、いわば手足をもがれておる公務員労働基本権代償として人事院が創設されて、今日までいわば厳正な立場でその存在を権威づけてきたであろうと私は思うのであります。  ところが、この人事院存在する中で、最も重要な要素であるといわれる給与に関するところの報告なり勧告なりが踏みにじられておるという事態は、いま総裁がおっしゃったように、ただ単に残念だというだけでは済まない、公務員労働基本権にかかる問題だろうと私は思うのです。ひいては、やはり政府が直接雇用をしておる労働者公務員、この人たち政府の間におけるいわば不信感の増大というものは、私はこれの及ぼす影響というものは、決して無視できない状態じゃないかと思うのです。  いま大蔵省主計局次長が、総合予算主義のたてまえから何とか予備費でまかなえる、こういう話でありますが、財政当局がそういう話をするのは、私はまあその是非は問いませんけれども、しかし、そういった、目的手段を取り違えた形でもってこの問題に対処されることについては、政治的に大きな問題だろうと思うのです。これを受けて人事院総裁は、一体どういうように対処されるかということを私どもは非常に注目をしているわけです。われわれはわれわれでもって、もちろん国会の場所において勧告を受けて、これに対する是非判断をさらに突き詰めていきたいと思っておりますけれども、いま申し上げたような公務員労働基本権にかかる問題である、人事院存在自身にかかる問題である、このように考えてまいりますと、公務員給与の問題、それにかかわる人事院勧告あり方、これに対しては、もういわば十年たっている、勧告はこういうように値切られてきているという状態の中で、総裁がいわばあげてこれに対する打開の方策を講じなければならないだろうと私は思うのです。  これは話が前後いたしますので、ちょっと質問の都合として悪いのですけれども総務長官労働大臣がお見えでありませんから、私の質問の結論の部分に先に入らせていただきますけれども政府は何かこれを受けて、いわばそういう事態を解決する方途として、人事院勧告あり方に対して、あるいは公務員給与改善やり方に対して、何か検討を始めたともいうのであります。ところが、検討中身は、まだもちろん固まっておらないかもしれませんけれども、そのおもむくところは非常に危険な、いわば人事院総裁がいまおっしゃったような、勧告完全実施というたてまえからいいますならば、逆コースめ方向にこの検討がいくのではないかという心配すら私はしておるわけであります。したがって、総裁もこの公務員給与改善方途、それと予算の組み方との関連の中で、いま検討を始めておられるいわば段階の中で、今後の給与改善といわゆる予算編成、そして勧告、この三つの問題に対して一体どのような考え方でもってあなたはこの検討会議に臨まれようといたしているのか、将来の重大な問題ですから、この際ひとつ総裁構想なり考え方なりの基本——基本でけっこうです、お聞かせいただきたいと思うのであります。
  10. 佐藤達夫

    佐藤説明員 閣僚協議会で、御指摘のような勧告あり方の問題を取り上げて検討されましたのは、以前も、過去何回かあるわけであります。私も出席していろいろお知恵を期待しておったわけでありますけれども、遺憾ながら従来はこのままで、現状どおりでいくほかなしということできておるのでありまして、いま御心配の点は、過去のそういった場面においては、確かに勧告そのものを、きわめて端的な言い方をすれば、もう少し政府のみやすいものにしてくれれば完全に実施します、いわば小さく産ませて小さく育てようというようなお考えも、それもあたりまえのことでありまして、そういうお考えがあるわけであります。完全に実施をさせるためには、勧告そのものが小さな勧告であれば完全に実施できるということは、そういう意味であたりまえであるということを申し上げました。それらしいようなお気持ちをうかがえたこともありましたけれども、ことしの場合は、まだ私この間第一回の初会合に伺っただけでありますし、その限りの空気においてはことしは非常に善意にこれに取り組んでくださっておる。田中総務長官も、私にはしきりにそう言っておられました。その雰囲気そのものは、そういう心配は必要ないというふうに私は受け取っておるわけです。  ただし、問題のむずかしいことは、過去の検討の結果からいっても依然としてむずかしいわけです。しかし、労働大臣も来られましたけれども、新しい閣僚の方々も加わられておりますから、いままでになかった名案が飛び出す可能性もないとはいえない。私どもはそういう意味でこれに進んで参加するような気持ちで御一緒に検討さしていただきたいという態度をとっておるわけであります。ただし、飛び切り名案が出なかった場合をいまから想定するのは早過ぎるかもしれませんけれども、これはかねがねこの席でも申し上げてまいりましたように、問題は予算備えいかんにかかることはきわめて明僚なことであろう。またその考え方がことしの総合予算制度になってあらわれた。これは口幅ったい言い分でありますけれども佐藤構想はそこに芽を出したというような見方もできると私は思うのでありますが、残念ながら補正予算のない総合予算補正予算なしということが私の構想とは違っておるものですから、事、志とは若干違った方向にいま進行しておりますけれども、さっき申しましたように、公労委仲裁裁定やり方を見ても、当初予算のやりくりだけで八百何十億というお金が出ておるということからいえば、これは不可能なことではあるまい。したがって、飛び切り名案のない限りは、やはりそのほうでたっぷりと財政上の保留をあらかじめしていただくということではあるまいか。もちろんいまのところ暫定的な考え方でありますけれども、そういう気持ちでおるわけです。
  11. 田邊誠

    田邊委員 佐藤総裁にしては、珍しく歯切れの悪いいまの発言でありますね。あなたの意見を言われない。これはごもっともですよ。いまの段階で、あなたがこれに対する明確な主張を述べられないことも私はわかります。ただ私が心配をし、総裁にき然として対処してもらいたいのは、何かあなたの佐藤構想が実ったようなことを言っておりますけれども、全く逆の方向なんです。しかも、今度のいわば検討することに対しても、どちらかといえば財政当局は積極的な立場をとっておる。こういうことは、言うなれば予算編成に合わせて、なるべく少ない、低額の勧告を作成してもらうか、あるいは予備勧告予算編成期に合わせるなり、あるいは本勧告をずらすなりという方法はあるけれども、それができない場合には、消費者物価の上昇の範囲も見越して、その程度のものを当初予算に組もう、大体五%以上が勧告ということになるとすれば五%程度を組んだらどうかというような、いわば総合予算主義にとらわれて、そのワクの中ですべてを処理しようとする、そういう財政当局の、勧告趣旨を生かそう、勧告を完全に守ろう、こういう立場で発想されておらないところに重大な問題があるわけでありまして、これは形の上で佐藤総裁の言われる総合予算主義というものがとられたような錯覚を私は持ちますけれども、実は事実は逆でありまして、あなたの勧告は完全に守られない、こういう一里塚であります。そういった点からいいまして、私はこの考え方に対して実はたいへんな警戒心を持って臨まなければならない、こういうふうに思っております。  そこで、総裁に対する御質問もございますけれども労働大臣がおいででございますから、さかのぼりましてお聞きをいたしまするけれども大臣公務員給与に対して八月十六日に勧告が出されてからいろいろと検討されたようでありまするが、八月の三十日に閣議決定をなされました。例年十月の半ば過ぎにようやく閣議決定をされるというのが、いままでの大体いきさつでありました。早目にこしたことはないといえばそれまででありますけれども、この八月三十日に閣議決定さをされた政治的ないろいろな考え方には、非常に危険なものが含まれておると私は思っておるわけです。一体なぜ八月の三十日に、例年に合わない早い時期に、この公務員給与に対する閣議決定をなされたのですか。いきさつについてひとつ簡単に御説明していただきたい。
  12. 小川平二

    小川国務大臣 例年より早く決定をいたしましたについては、格別の政治的配慮というようなものはなかったわけでございます。毎年は、補正財源を求めなければなりませんので、九月期決算がどうなるかというような事情を十分究明する必要があったと存じます。今回は、予備費に組んでおりますので、そういう意味から、いたずらにこれを遷延させる理由はない。もちろん決定をいたしますについては、十分慎重に論議を尽くす必要がございますので、短い期間の間においてではございましたけれども、前後五回にわたって研究をし、論議をいたしたわけでございます。さような次第で、何らかの政治的意図を持って早目決定したという事情はございません。
  13. 田邊誠

    田邊委員 そこで、労働大臣労働者の権益を守る立場大臣であります。公務員賃金については、御案内のとおり、公務員労働協約締結権なり、団体行動権なりというものを奪った代償として、人事院給与改善勧告される。したがって、政府はこれを完全に実施する責任がある、こういう立場であります。  ところが今年も、いま、早く決定をしたのは政治的なねらいはないとおっしゃいますけれども、昨年と同様の八月の実施閣議決定されたのであります。この八月から公務員賃金の引き上げを実施することをおきめになった。八月実施にしなければならなかった最大の要因は一体何でありますか。
  14. 小川平二

    小川国務大臣 これは、いわゆる総合予算主義のたてまえをこの内閣がとっておりまするので、予備費範囲内で対処するほかない。したがいまして、予備費内容等について、財務当局説明主張等を十分聞きまして、非常に不本意ではございますけれども、八月という判断に到達せざるを得なかったわけであります。
  15. 田邊誠

    田邊委員 大体五月実施で、さっきの人事院総裁の御発言で八百二十億というのであります。これはもちろん先ほど大蔵省からの答弁でもって理解をいたしまするとおり、この給与改善のために要する財源が、はたして予備費ワクの中でまかなえるかどうかということについてはいろいろ判断はございましょう。しかし千二百億の予備費をとっている中で、八百二十億の五月実施が絶対に不可能だという理論的根拠は、ないと私は思うのです。ございますか。問題は、いま大臣がいみじくも言われた総合予算主義のたてまえをとって、どうも八月実施にせざるを得なかった。こういう考え方自身に、これは根本的な誤りがあるはずです。いま労働大臣が、あなたの職責からいいまして、仲裁裁定実施をした、当然のことであります。あと質問がありまする国鉄については、いろいろと経営上問題があるそうですけれども、しかし、ともかくもこれは当然の義務として仲裁裁定実施をはかった。それ以上に、労働基本権を奪っておる公務員に対して人事院勧告を守るというのは、仲裁裁定以上に、法のたてまえからいえば私は政府義務であろうと思うのです、責任であろうと思うのですね。それを例年値切ってきて、今年はいわゆる総合予算主義のたてまえからこれを突破できなかった、こういうことは、さっきも私が話しをしましたように、これは目的手段を取り違えているのです。総合予算主義はあくまで手段であります。そういうたてまえからいって、これにとらわれてこの五月実施がはかられなかったということに対して、一体労働大臣はいかなるお考え方でございますか。
  16. 小川平二

    小川国務大臣 非常に不本意な結果だと存じております。
  17. 田邊誠

    田邊委員 人事院勧告を尊重したということは、一体この八月実施は、尊重したということなんですか。尊重する、するとしばしば言明してきました。一体、八月実施というのは、尊重したことになるのですか。ひとつこの際見解を承っておきましょう。
  18. 小川平二

    小川国務大臣 文字どおりに勧告趣旨を実現したという結果ではないことはもちろんのことでございます。昨年は八月からでございましたから、これを完全に実施し得ないまでも、せめて一月でも半月でもさかのぼらせたい、こういう気持ちで、あとう限りの努力をいたしたわけでございますが、かような結果を見ましたことを非常に遺憾に存じております。
  19. 田邊誠

    田邊委員 いま申し上げたとおり、もう十回以上に及ぶこの人事院勧告の値切り、完全な実施をしない、こういう状態というものを見た場合に、これは公務員に対する挑戦ですよ。公務員団体行動権の問題を討議されておる公務員制度審議会がいままた発足をしよう、こういう状態の中で、私は国際的にもゆゆしい問題だと思うのです。この公務員労働基本権にかかわる不履行に対して、労働省という立場を背負った労働大臣としては、一体今後どういうふうに対処しようとするのか、公務員賃金あり方、そして公務員労働基本権あり方、これとの関連からいって、あなたはどういうふうにお考えでございますか。
  20. 小川平二

    小川国務大臣 人事院勧告制度は、あらためて申すまでもなく、スト権を制約をされておる公務員のために、給与の適正を期する、そういう趣旨制度でございますから、これを尊重して完全実施を期するのが当然でございます。しかるに、毎年これが実行されず、これに伴って紛争が繰り返されておる、こういう事態をこれから先も続けるべきではないということを痛感いたしております。  そこで、先ほど御質問も出ておったかと存じますが、早急に、現行制度改善の余地があるかいなかを検討いたしまして、完全に実施ができる方法はないものか、そういう趣旨でこれから関係閣僚会議も開くことになっておるわけでございます。いろいろ仕組み等検討いたしまして、ぜひ来年度から、一歩でも二歩でも問題が前進するようにしなければならない、このように考えております。
  21. 田邊誠

    田邊委員 総務長官、この間私質問いたしました。八月二十七日に当委員会であなたに質問いたしましたところが、なるべく早く閣議決定をしたい、九月に委員会をやるときには、決定にならぬでも方針ぐらい出したらどうかと言ったらば、まあそれに向かって努力しますと言ったのですが、その三日おいた八月三十日に閣議決定されました。たいへん早いので驚いているわけです。ところが、その中身は昨年どおり八月実施、こういう人事院勧告の不履行に終わったわけであります。いまは労働大臣にお聞きをしたのですが、八月実施をしなければならなかった、五月実施ができなかった原因は一体那辺にありやと、この公務員給与に対する責任のある立場に立つ総務長官はお考えでございますか。あなたは一体どういうふうに考えてこれに対処されたのか、二つお伺いいたします。
  22. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内のとおり、私ども人事院勧告をあくまでも完全に実施したい、それに向かって最善の努力を尽くすということを申し上げたわけでございます。これがどうしても八月実施がやむを得ないような状況に相なりましたのは、これは主として国全体の財政の問題からであることは御承知のとおりでございます。
  23. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 関連労働大臣にお聞きしますが、いまの勧告労働者基本権の代償機能としての人事院、そしてその勧告、この問題は私はこういうように思うのです。ドライヤー勧告で、いわゆる代償機能としての問題が満足にはほど遠いと勧告してますね。二一四二号でしょうか、そこに「この目的のための現行措置が十分であるということについては満足すべき状態から程遠いのである。」こういうふうに言っているわけです。  それからいま一つ、最高裁で判決が出まして、この判決はこのように言っているわけです。 「労働基本権が勤労の生存権に直結し、それを保障するための重要な手段である点を考慮すれば、その制限は、合理性の認められる必要最小限度のものにとどめなければならない。」こう言っているわけです。 「必要最小限度のものにとどめなければならない。」というように最高裁の判決が出ている。そうしてそのあとに、御案内のようにこの「代償措置が講ぜられなければならない。」こう最高裁は言っているわけです。「必要最小限度のもの」で、しかも「講ぜられなければならない。」というように最高裁では判決をしたわけです。  そこで私は、労働大臣というよりも、むしろ国務大臣として大臣にお聞きしますが、この最高裁の判例から見て、一体いまの「必要最小限度」ないしは「措置が講ぜられなければならない。」ということが、八月実施という具体的な点で適合をしているのだろうか、いわゆる合憲性を持つのだろうか、これに対する見解をお聞きしたいと思う。
  24. 小川平二

    小川国務大臣 ただいまドライヤー報告を引用しての御質問でございました。私の記憶いたしておりまするところでは、ドライヤー報告は人事院勧告制度そのものには触れておらないかと存じます。同時にまた、ILOの一貫した見解といたしましては、公務員基本的権利を制約するについての代償としては、勤務条件を法令で定めれば足りるというように規定されておると存じます。  最高裁については、必要な代償措置を講ずべしという趣旨のことが書いてございますが、代償措置内容がいかなるものであるべきかということを具体的には書いてないと存じます。  ただし、ここで私がいろいろ理屈を申すつもりは毛頭ないのでございます。人事院勧告制度存在しております趣旨は、あらためて申すまでもなく、基本権に制約を加えられておる人々のために適正な給与が支払わるべきだ、こういう考え方のもとに立脚いたしておるわけですから、これを尊重して、完全実施を期すべきであるということは、これは当然のことだと存じます。しかるに、これが満足に実行されていないということにつきましては、非常に遺憾でもございますし、自分の責任を感じ、また非力を嘆いてもおるわけです。何とかこの制度改善の余地があればさらに改善をして、少しでも完全実施に近づけていかなければならない、こう考えております。
  25. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 もう一点だけ。閣僚協議会が終わったあと、新聞の報ずるところでは、政府はもし実施をしなければ無責任のそしりを免れない、こう言われておるわけですね。これは閣僚会議の中でいろいろな意見がありまして、労働大臣はそういうふうに言われたと新聞では報道しておる。無責任のそしりというのは、単に勧告実施するとかしないとかいう問題よりも、最高裁の判例、あるいはドライヤー報告等に指摘をされる、いわゆるスト権代償措置としての合憲性といいましょうか、あるいは行政府の法に対するかまえといいましょうか、そこが一番ぼくは重要だと思うのです。したがって、無責任のそしりを免れないとすれば、それは法に照らしても無責任のそしりを免れないというふうに大臣はお考えになっておりますか。もしそうだとすれば、これは私は、民法になりますか、あるいは国家賠償法になりますかわかりませんけれども、とにかく民法でいけばいわゆる債務不履行ですね。債務不履行条項になるわけです。国家賠償法でいけば、賠償責任を追及される政府立場に私はなると思う。これは近々組合員が政府に対して賠償請求をするという提起がされておるそうでありますから、それは法廷にまかしてもいいのですが、一体そういう無責任のそしりとは、単に不本意でありましたとか、不合理でありましたというのではなくて、最高裁のそういう判例、これに照らしてどういうふうにお考えになっておりますか。またもしそれが私が言うような意味であったら、当然本来五月実施すべきものが八月実施なんですから、その間に債務不履行でぼくは問題が提起をされてしかるべきだと思うのですが、大臣、この見解についてどうでしょう。
  26. 小川平二

    小川国務大臣 その点につきましては、問題がいま裁判所に係属いたしておりますし、政府が被告になっておるわけで、法務大臣が訴訟代理人という立場にあるわけでございますので、私がここで、その内容につきましてとかくのことを申すということは差し控えなければならないと存じます。私、無責任のそしり云々という表現を用いた記憶はございませんけれども、法律の趣旨現行制度の設けられております趣旨から申して、これを完全に実施することは当然だと存じます。しかるに、政府がこれを完全に実施しないということは、非常に遺憾だと考えております。
  27. 田邊誠

    田邊委員 私は五月実施が、総合予算主義の壁を絶対にぶち破るというふうに考えることはもちろんないと思うのです。これは比較の問題だと思うのです。オール・オア・ナッシングじゃないのですから、八月実施、五月実施というのは、あくまでも比較の問題ですから……。簡単でいいのですけれども大蔵省、いわゆる八百二十億というあれですね。五月実施をした場合には、総合予算主義なり、あるいは予備費の使用なりというものがほとんどできない、絶対不可能であるというふうにお考えでございますか。
  28. 海堀洋平

    海堀説明員 先ほども申し上げましたように、実は年度の半ば——九月一ぱいまで年度の半ばでございます。それで、予備費の使用というものをどういうふうに見通すかという問題は、非常にむずかしい問題ですが、結局その場合には、ことしの具体的な需要と、それから過去非常に古い時代は別として、去年、おととしというふうなものの需要というものを見通さなければいけないだろうと思います。それで、災害については、まずその当時の報告としては、一月から七月までの災害は、暦年のものを年度で出すものでございますから、本年の一−七月の災害については実績が出ております。それをとりまして、八月から十二月につきましては、過去四十年、四十一年、四十二年という三カ年の災害の平均というものをとって、そうして支出見込み額を算定したわけでございます。これがおよそ四百六十億見当の所要額、これももちろん災害の推移によりますので、ことしの八月以降の災害が過去三年の平均であるかないかというのは今後の推移にかかるわけでございますが、その時点におきましては、それ以外に将来の見通しを立てる方法がないものですから、そういう見方をいたしました。  それから、その他の予備費の需要につきましては、一応各省に聞き合わせ、それから大蔵省自体の問題もございますので、そういう推算をしまして大体二百五十億円程度と見たわけであります。ちなみに、その二百五十億円というのは、これは見込みでございますので、大きいか小さいかという観点でございますが、去年とおととしというものを一応とってみますと、災害、公務員給与というふうなものを除きましたその他の項目の追加財政需要、すなわち予備費と、それまでは補正を組んでおりましたので、補正追加しました金額を申し上げますと、去年、四十二年度が二百五十四億円であります。四十一年度が二百八十九億円でございます。したがって、二百五十億円程度というものが、過去二年間の実績というものから見ますと、まあそう多いということもいえないのではないか。そういたしますと、約二百五十億円程度、四百六十億円程度と見ますと、この公務員給与が八月実施といたしますと六百一億ということでございます、これを全部足しますと大体千三百億円余りになろうかと思うのであります。  しかし、先ほど申し上げましたように、まず、公務員給与につきましては、所要額だけを算定いたしておりますので、実行の過程で多少余裕が出ないかという問題がございます。それから災害につきましても、過去三年の平均で八月以降をとりましたので、これにつきましてももう少し少なくて済む可能性がないかというふうな問題がございます。それから、その他の財政需要につきましても、まあ各省と折衝しまして、来年に延ばせるようなものがはたしてないかどうかというような点もあろうかと存じます。したがって、いまの見込みとしましては、千三百億円をこえるということには相なりますが、それを何とか千二百億円のワク内に持っていきたいというのが、現在の総合予算主義のたてまえを守ろうとしております大蔵省立場でございます。
  29. 田邊誠

    田邊委員 質問に対して正確にお答えがないのですが、五月実施であっても、必ずしも予備費の使用なり、総合予算主義のたてまえというのが直ちにくずれるのだということは、これはないと思うのです。これはもちろん見込みですからね。大災害が幸いにして今年はまだない、今後災害があることは、私どもはもちろん望まないのでありますけれども、そういう際には、また別個の考え方に立って補正予算なりという道を講じなければならぬ。今年の経済の成長見込み、税収の伸び、いろいろなものを見込みましたときに、必ずしも五月実施が不可能だという断言をすることは私はできないと思うのです。いずれにいたしましても、いまの八月実施閣議決定されたことは、本末を転倒されて、あくまでも総合予算主義というものを目的として、いわばそれを最大の任務として貫こうという硬直した考え方に立っていることは、これはもう疑いない事実でありまして、国際収支の悪化の状態でこのことを考えられた当時とは、現在の状態というものは違うことも考慮しなければならぬと思うのです。内容的に見ても私はいろいろと問題があります。人事院勧告中身についても、私がさきの委員会指摘をしたとおり、いろいろと問題点があるわけであります。  いずれにいたしましても、これらのことを考えたときに、この八月三十日の閣議決定というのは、あまりにもイージーゴーイングな、何か従来の習慣にとらわれた形でもって、八月か九月かというようなことで論議をして、八月にしたという形ではないかと思うのでありまして、まことに権威のない形ではないかと私は思うのであります。そういった点から見ますならば、この公務員基本にかかわる問題、労使間の不信をさらに深刻にするようなこういうやり方、これを改めることは政府の当然の義務であると私は思います。したがって、人事院勧告を完全に実施をする義務を怠っている現在の状態でありますから、八月三十日に閣議決定をされたそうでありますけれども、私どもは私どもなりに、国会の中でさらに論議を深めるつもりでありますが、政府は、いまのような状態というものはきわめて不満足であり、きわめて不誠意であり、不誠実であるという点にかんがみますならば、当然この八月三十日の閣議決定を、さらにひとつ白紙に戻して再検討する道が必要ではないかと私は思うのであります。最近核防条約の批准等についてもいろいろと意見が分かれておるようでありますけれども政府考え方というのは朝令暮改だということはいつもいわれていることでもありますから、何も今度の問題に限って固執をされることはないと思うのであります。労働大臣等のお話を聞くと来年以降についていろいろと検討するようですが、まだ時間があるわけですから、さらにひとつ今年のこの不履行に対して再度検討して、これに対するところの人事院の五月実施に対して、誠意のあるところを見せなければ、国民に対し、あるいは公務員に対して、何としても政府責任を全うしたといえないと思うのでありまして、そういう再検討をする御用意があるかどうか、公務員給与責任をお持ちの総務長官の御意見と、各省の取りまとめをされる立場にある官房長官代理の官房副長官から、それぞれひとつ誠意ある御答弁をお願いして、将来に向かってこれを努力するというようなことでなくて、これはまだ間があるのですから、守るべきことは当然守る、こういう政府考え方をこの際明らかにすることが至当であると思うのです。再検討する御用意があるかどうか、ひとつそれぞれからお聞きしたいと思います。
  30. 田中龍夫

    田中国務大臣 御質問に対してお答えいたします。  今回の八月三十日の決定が、完全実施に至りません線におきましてまとまりましたことは、私どももまことに残念に存じます。しかしながら、閣議決定はあくまでも閣議決定でございます。さような意味におきまして、本年度の決定に対しましては、私どもこの既定の、決定に対してこれを守ってもらわなければなりませんが、しかしながら、先ほども労働大臣からお話がございましたごとくに、われわれが完全実施を目途にいろいろ努力いたしまして突き当たる点は、財政事務的な処理の面でまだ打開の道があり得るのじゃないか。ことに人事院勧告時期というものと、それから予算編成の時期というものとの事務上のズレというのが、そこに思い設けないような本質的な欠点をあらわしておるように思うのでございます。さような意味から、われわれは閣議決定はいたしました。と同時にこの欠陥はすみやかに取り除いて、ぜひとも完全実施のできるような方途に持っていかなければならぬということから閣僚会議を引き続きいたそう、かような次第で鋭意その点を掘り下げていく努力をいたしておるところでございます。
  31. 亀岡高夫

    ○亀岡説明員 お答え申し上げます。  ただいま給与担当大臣田中大臣からお答えのとおりでございまして、国政全般から八月実施ということが適切であるという閣議決定をしていただきました以上、今年度の人事院勧告に対する政府といたしましての措置は、再検討をする考えはいまのところ持っておりません。ただし、田中大臣からお答えのございましたとおり、やはり真剣に働いておられる公務員の諸君の基本的労働権というものを考えました場合に、現在のままでは不十分であるという点は政府としても十分考えているところでございますので、八月三十日に閣議決定をいたしたあとにおいても閣僚協議会を開催いたしまして、改善措置をとりたいということで、現在誠意をもって検討をいたしておる段階でございます。
  32. 田邊誠

    田邊委員 いろいろと今後また質問いたしたいと思いますけれども、いかような言辞を弄されても、人事院が持つべき代償機能としての役割りに対して、政府責任をもってこたえてない、こういう状態であります。言うなれば公務員に対しても国民に対しても説得力が全くない、こういうふうに私はいわざるを得ないと思うのです。今後この問題に対してまたいろいろな事象が起こってくることを私は非常におそれるわけでありますけれども政府はやはりこれに対して明確にその義務を遂行する立場を貫いてもらわなければならぬ、こういうふうに思うわけでございまして、私はさらに機会を得てこれに対するところの質問を続けさせてもらいたい。きょうは人事院総裁に対してさらに質問したかったのでありますけれども、約束の時間でございますから残しまして、あらためていたしますが、ぜひこの給与改定の問題については、ただ単にいままでのいきさつや習慣にとらわれて、この程度でお茶を濁せばそれで済むのだというような考え方に立たないで対処してもらうことを私は政府人事院に要望しておきたいのであります。  関連質問があるそうでありますから、関連質問をしていただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  33. 八田貞義

    八田委員長 後藤俊男君。
  34. 後藤俊男

    ○後藤委員 実は八月の十六日でございますが、人事院給与勧告と同時に寒冷地手当の勧告が出ました。これは振り返ってみますと、いままで四カ年間、寒冷地手当の勧告については人事院のほうとしても出されなかった。しかも、われわれが仄聞し、いろいろ聞いてみるところによりますと、寒冷地手当の勧告についてはおそくとも昨年の年末までぐらいには出るだろう、そういう方向人事院としては努力が行なわれておるのだ、こういうふうな話も重々われわれ聞いておったわけでございますけれども、それが延びて延びて、ことしの八月十六日、こういうふうなかっこうになりまして勧告が出されたわけでございます。なぜ一体四カ年間も寒冷地手当の勧告人事院として出されなかったのか、さらに昨年末に出そうになっておったのが、なぜ一体ことしの八月まで遷延されたのであろうか、この点がわれわれは非常にわからぬわけでございますけれども、特に公務員の、いま論争になりました給与勧告と合わせて、やはり寒冷地手当の問題につきましても、公務員の生活には大きな影響のある問題であります。しかも、物価はどんどんどんどん毎年上がってくるのに、四カ年間そのままになっておる。ことしになってようやく出た。その辺のいきさつを、簡単でけっこうでございますが、ひとつ御説明いただきたいと思います。
  35. 佐藤達夫

    佐藤説明員 昨年末に出かかってという御推測の御発言がございましたけれども、私どもは昨年末にそういうような方向のことを他へ申し上げたことは絶対ございませんからして、昨年末どうこうということはわれわれの関知するところではないわけであります。  そこで、四年もたってというお話でございますけれども、御承知のように昭和三十九年に一度相当大幅の級地の是正をやりました。私どもはあれ自身相当立ち入った検討の結果、自信を持って勧告申し上げたわけでございます。すぐ手のひらを返してそのあとにこれを訂正するというようなことはなかったわけでありますけれども、各方面の御要望もございますし、もう一度謙虚に検討し直そうということでじっくりと検討してまいって、級地のほうもさることでございますけれども、近年の検討の結果、一番問題としてクローズアップされましたのは、御承知の定率優先主義——ほとんど定率一本やりの現行制度、これがもう発足当時とは全然事態が変わってしまっておる。御承知のように毎年毎年の給与の引き上げによって、定率分というものが非常に妙なかっこうになって、ことに非常に高給をもらっていらっしゃる方々については、特にそれが顕著であるというようなことにひとつメスを加えなければということで、御承知の今回の勧告のごとく定率制度を新しく分解したことにいたしたのでありますが、なかなかこれは寒冷地手当法制の基本的な大改革でありますために、これにはわれわれとして十分慎重な態度で臨んでまいった、かようなことからこの八月にこれが出されました、こういうことでございます。
  36. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、いま言われたようにいままでは大体率で支給しておった、これを定額と定率、こういうふうな内容の大幅の改善であるので手間どったのだ。一口に言えばそういう説明だったと私思うわけでございます。そこで定額、定率という問題になってまいりますと、それなら一体、たとえば人事院勧告がいま申し上げましたように四カ年間放置されておった、四年目に出ました。これからまた二年、三年、四年、こうそのままのようなかっこうでいきますと、定額部分というものは一体そのままなおざりになっていくのかどうか。たとえば今回定額どれだけと金額的に決定されておるのじゃないかと私思うわけですが、これが二年たち、三年たっても定額部分はそのままにされてしまうというようなことになりますと、物価の変動とにらみ合わすと、そこにまた一つの問題が起きてくるのじゃないかというふうに思うのですが、その点いかがでしょう。
  37. 佐藤達夫

    佐藤説明員 御承知のように、手当そのものが寒冷対策のための生活費の増高ということを押さえておりますからして、したがいまして、たとえば今年の石炭関係の加給分、それから薪炭関係の加給分でも、御承知のとおりこれはやはり値上がりを見て手当てをしたわけであります。今後もやはり石炭、薪炭関係の分はこれは別建てにしておりますから、同様なことが考え得ることでありますし、かたがたいまお話に出ました旧定率分から分解された定額分ということにつきましても、もうきめた以上はてこでも動かぬぞと、じっくりすわり込むということはわれわれ考えておらぬのであります。これはやはり諸般の社会環境というものを見渡した上で、どうしても手直ししなければならぬというときは、これはまたしなければならぬ場面があり得るということで、絶対にこれを動かさないというかまえでおるわけではありませんん。
  38. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、いま総裁が言われたのは、絶対に動かさぬというものでもないけれども、大体動かさぬのが原則だ、絶対動かさぬということではないと、こういうふうな、絶対動かさぬということではない、というところへ力を入れて説明されたわけですね。それなら、定額部分がことしきまって、来年も再来年もそれに基づいて公務員は寒冷地手当が支給される、当然来年も再来年も物価の変動によって定額部分というのはスライドするのが当然のことだと私は思うわけです。ところが、いま総裁の言われるのは、そうではなしに、動かさぬというものではない、情勢によっては動かさぬこともない、こういうふうな説明だと、ことしきまった定額部分が二年も三年もそのままのかっこうで進んでいくような気がするわけですけれども、いま説明されたのはそういうふうに解釈していいわけですか。
  39. 佐藤達夫

    佐藤説明員 結局、先ほど触れましたこれは寒冷増高費がどう変化していくかという問題でございますから、これと見合わせながら、われわれは常に見守っていくということしか申し上げられません三二年たったら上げますとか、五年たったら改定いたしますとかいうことは、めどはただいまのところ全然ついておりません。
  40. 後藤俊男

    ○後藤委員 そう言われますと、私は別にそこにえらく執着するわけでございませんけれども、大体今日物価の変動というものは一年間に五%、六%あります。そういうかっこうで、これから産業その他が進んでまいりますと、ことしはなるほど人事院が定率と定額部分ということで大改造の大幅の勧告をされた。それの実施が行なわれた。そうしますと、その定額部分というものは、物価がそれだけ変動があるのであったら、人事院は当然来年も定額部分に対してはこうすべきである、再来年は再来年で、定額部分についてはこういうふうにすべきであるという義務があるのじゃないかと思うのです、そういう勧告をされた以上。それに対して、一体どういうふうにお考えですかということなんです。
  41. 佐藤達夫

    佐藤説明員 たとえば物価とおっしゃいますけれども、全体の物価ではないので、寒冷対策のために必要なものの、その物価の問題でございますから、なかなかそれは全体が上がったからこれもというわけには必ずしも結びつかない。そういうなかなかデリケートなところがございますから、慎重なかまえでまいりたい、こういうことでございます。
  42. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、解釈としては、毎年の景気の変動、というとおかしいのですが、関係物価の変動によって、定額部分というのは改正されていくのだ、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  43. 佐藤達夫

    佐藤説明員 石炭、薪炭については、先ほど申したとおり実績もあります。その他の、いまの新しい定額部分についても、絶対にこれは将来動かしませんというものではございません、ということだけ申し上げておきます。
  44. 後藤俊男

    ○後藤委員 さらに、いまの問題は、私はそういうふうに解釈できるわけですが、今回級地の是正の問題、これは全国で非常に微々たる数ではないかと私考えておるわけです。今回、一体何を基準にして級地の是正を行なわれたか。将来、一体これをどういうふうに考えておられるか。あわせて二つの問題をお答えいただきたいと思います。
  45. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 寒冷地手当の地域区分につきましては、できるだけ地域間の寒冷条件に基づきまして公平をはかるということが重要でございます。現行の格づけにつきましては従前から引き継いできたという点もございまして——従前の区域と申しますのは、だいぶ前に県単位でやっておったという関係を引き継いできたという関係がございまして、現在の基準から見ますとやや不公平といいますか、公平が問題になるというようなところがございます。そういう関係も考えまして、今回基準につきまして若干の調整を加えるということで、上げるべきところはそれによって上げ、下げるべきところは今後下げることとして検討するということを今回検討をいたしたのでございまして、それによって新しい格づけ基準ということによりまして、今回上げるべきところについて三十ほど合格したところについて勧告を申し上げたわけでございます。その基準によってなおかつ合格という関係では非常に困難だというようなところもございますので、そういうところにつきましては、直ちにこれを引き下げるという点につきましては、やはりいろいろ従前からのあれもございますので、今後の検討にまちたいというふうに考えたのでございます。
  46. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、いま言われましたのは、今度全国的に三十三カ所でございますか、級地の是正勧告を行なった、これで不公平が全部なくなったわけではございません、やはり基準から見れば、甘いところもあれば、からいところもあるだろう、この問題についてはこの不合理を直すために、今後とも級地の是正については人事院として勧告をしていきたい、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  47. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 今回の地域改正の趣旨はただいま申し上げたとおりでございますけれども、この新しい基準ということによりまして、上げるべきところを一応すべて上げたということでございますが、さらに下げるべきところについては今後検討をしたいということでございます。  なお、やはり新しい気象資料といったような関係につきましては、もちろん引き続き検討したいというふうに考えております。
  48. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま言われたことは、前に言われたこととほぼ同じようなことを言われたのですが、ただ私の聞きたいのは、今回三十三カ所やられました是正勧告については、これによって全部公平になったのだから直す必要はないのだ、このまま当分これでいくのだということでなしに、あなたがみずから言っておられるように三十三カ所を勧告、級地の是正を行なったけれども、まだまだ甘いところもあるし、辛いところもあるのだ、これについては今後の問題として解決したい、こう説明をしておられると思うのですが、それだったら来年、再来年、やはりこの寒冷地手当の級地の是正については勧告が行なわれるのかどうか、こういうことを聞いておるわけです。
  49. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 ただいま申し上げましたように、新しい基準によって全国をよく調査をしてみたのでございますけれども、これによって合格、不合格という点については、原則として引き上げるという立場をとりまして今回の勧告を申し上げたわけでございまして、なお下げるべき地域につきましては今後の検討をいたしたいというふうに考えておるのでございますけれども、一応そういう意味で、新しい基準によって、私どもとしては現段階におきましては、合理的という形に、全国的に公平という形に考えておりますので、今後の問題につきましては、下げるべきところの問題、あるいは気象資料における新しいデータ等につきまして検討は続けるつもりでございます。
  50. 後藤俊男

    ○後藤委員 では、総裁にお尋ねします。いまのお話は、私大体わかりました。ですから、今回の勧告によって級地の不公平というのはまだ残っておると思うのです、どこにどうということは申し上げませんけれども。だからそのことについては、今後も引き続いて人事院としては資料をそろえて、公平な方向へできるだけ早い機会に勧告をしたいのだ、方針としてはこういうようなことだと私は考えるわけですが、そのことをひとつお答え願いたいと思います。
  51. 佐藤達夫

    佐藤説明員 方針としては、おっしゃるとおりの気持ちでおります。ただいま給与局長が申しますように、これをきれいに合理化するためには、沿革的によ過ぎたところにおりていただかないと、理論的にはきれいにそろわないということが、実はわれわれの苦慮しているところなんであります。それを見さえすればもう何でもありませんけれども、しかし、これは沿革もありますことですし、そう勇断をふるうわけにもいかぬ、そういうこともかね合わせて考えながら検討を続けてまいりたいということであります。
  52. 後藤俊男

    ○後藤委員 それでは、この寒冷地問題については、やはり公務員関係も特に関係がございますので、いま言ったような点については、不公平はやはりたくさんあると思うのです。この点の是正について人事院、引き続きできれば来年も級地是正に対する勧告を、ひとつぜひ行なっていただく方向努力をしていただきたいと思いますし、それから先ほど言いました定額部分の問題については、総裁もえらいかたいことを言っておられましたけれども、やはりいろいろな変動に応じて定額部分は改正していく方向努力していくのだ、一口でいえばそういうことだと思うのです。そういう方向でぜひひとつ御努力を願いたいと思います。  終わります。
  53. 八田貞義

    八田委員長 河野正君。
  54. 河野正

    ○河野(正)委員 国鉄の五万人合理化問題をめくりまして、今日国鉄労使の間で紛争状態が続いておりますことは御承知のとおりでございます。先般十二日には十二時間のストライキ、これは私ども仄聞するところによりますと、組合結成以来初めての大規模の実力行使だった、こういうふうにいわれております。しかも、さらに二十日にも第二波が予定されておることを聞いておりますし、また事と次第によっては、十月一日のダイヤ改正にあたっても、第三波が警告をされておるというふうに私ども承っておるところでございます。したがって、こういう紛争が続いてまいりますと、貨車あるいは客車のダイヤが乱れるし、そのことが結果的には国民の経済、あるいはまた社会的に及ぼす影響というものは、非常に甚大なものがあると私ども考えるのでございます。したがって、こういった紛争状態が依然として続いていくということは、私ども国民の立場から、まことに遺憾だといわざるを得ぬと思います。そういう意味で、きょうはいろいろと国民の側からこの問題についての論議を深めてまいりたい。そうしてこの問題が円満解決の方向に導かれることを私どもは心から期待をいたすものでございます。  運輸大臣は、いろいろ時間の関係もあるそうでありますから、そういう意味でまず運輸大臣に伺っておきたいと思いますことは、こういった状態を拱手傍観をしてじんぜんと見のがすべきではなかろうし、特に運輸大臣は、運輸行政におきます国の最高責任者でもございます。また国務大臣でもございます。そういう意味でこの問題に対してどういうふうに踏まえておられるのか、ひとつ建設的な御意見をまずもって伺っておきたい、こう思います。
  55. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 国鉄の合理化問題につきまして、労使間の話が妥結しないことはまことに残念であります。国鉄側は、膨大な赤字や借金をかかえ、また相当な能率化とスピードアップを要請されて人員を必要とする情勢でもありましょうし、また動力車労組のほうは動力車労組のほうで、いろいろ御主張もあることと思いますが、何といっても国鉄は公共企業体でありますから、やはり公共の輸送というものは労使の紛争に優先する、やはり国民の利便ということをまず第一に中心に考えてもらって、労使間でできるだけ早く話をつけて問題を妥結するように強く希望しております。労使間においてもいろいろ努力されて、十五項目のうちただ一、二点を除いてはすでに解決したようでありますから、最後の詰めのところをうまくお互いで話し合って、話し合いによってぜひこれを解決するように希望しております。  合理化の問題は労使の問題でありまして、運輸省が直接その労使の協議内容に立ち入るということは、今日の状態では適当でないと思いますし、労使間においてうまく話しをつけて解決すべき問題であると思います。もう一息であると思いますが、大いに両方で努力してもらいたいと思います。  ただ大事なことは、保安上の問題がございまして、これがためにいささかも事故や何かが起きないように、これは労使とも気をつけてやっていってもらいたいと思う次第であります。
  56. 河野正

    ○河野(正)委員 労使間の問題ですから、労使の間で自主解決することが望ましいことは、私ども十分承知をいたしておりますが、ただ自主解決だけで解決するかといいますると、やはり経営上の問題には財政上の問題も伴ってまいります。したがって、今度の問題の中にはいろいろな問題点がございますけれども、一つには、経営第一主義でいくべきかどうか。また組合の立場からいえば、やはり安全輸送の立場というものを重要視しなければならぬというような、いろいろな議論がございます。ただその中で、自主解決、自主解決といいましても、この経営上の問題を論議する場合には、国の財政措置の問題というものも当然出てくるわけですから、そういう意味では、この自主解決と同時に、国が、特に運輸行政の最高責任者でございまする運輸大臣というものが、その経営上の問題、特に経理上、経済上の問題、そういう問題に対してどういう積極的な措置をとってまいられるかというようなことも、私は解決の方策としては軽視することのできない条件だろうと思うのです。そういう意味で、私は特にきょうは運輸大臣の御出席を願って、いろいろと見解を承ってまいりたい、こういうことを考えているわけです。  そこで、労使間の問題は、なるほど労使間で自主的に解決するということが理想であり、また望ましいことでありますけれども、単にそれだけではいかぬ。いまの経営上の問題については、財政上の問題が伴ってくるという問題もあるわけですから、そういう意味で、運輸行政の最高責任者でございまする運輸大臣としては、やはりそれ相応の対処というものが必要であろう、こういう意味で申し上げておるのでございますので、重ねてひとつ御見解を承りたい。
  57. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 国鉄財政の問題につきましては、これは別個の観点から国策として取り上げなければならぬ問題であると思いまして、国鉄財政再建推進会議を通じて、いま三分科会に分かれて検討していただいて、その答申を得て処理しようと思っておりますが、私個人の考えでは、国鉄はいまやまさに転換点にきておりまして、この際相当な国家援助その他の措置をしてやりませんと、ちょうど石炭が参っちまったように、手おくれではもうだめになります。国鉄も、いまそういう注射を打てば、十分将来性と見込みがある、そういう状態であると思いますので、各般の対策を講じようと思っております。
  58. 河野正

    ○河野(正)委員 単なる自主解決というだけでなくて、その誘い水としてそういう経済上の問題が大きくあることを、ぜひお含みの上対処をしていただきたい、こういうふうに申し上げておきたいと思います。  そこでさらに、今日の紛争状態に対しまして、私ども国民の立場から、この問題に対しまする見解を述べてまいりたいと思うわけでありますが、今度の紛争に際しまして、私は一つの特色的な現象だと思うわけですけれども、従来実力行使を行ないますと、一般の世論というものは、特にマスコミというものは、ややもいたしますると、実力行使を行ないます側にきびしい態度があったと思います。ところが今度の問題は、やはり安全問題を伴っておりますから——安全問題というものは、単なる労使間の問題ではございません。私どもに言わせますならば、むしろ国民の問題だと思います。そういう意味だと思いますけれども、今日のマスコミの論評というものは、商業紙でもむしろ当局側にきびしいものがあるように私どもは受けとめております。  そこで私どもは、客観的にこの問題に対処する意味におきまして、一、二このマスコミの見解を御紹介いたしたいと思います。その一部でございますけれども、その一部を御紹介いたしますと、「組合側、特に動労をこのようにかたくなな対決姿勢に追い込んでいる裏には国鉄当局に対する強い不信感がある。動労のように、同じ職種の労働者で構成している職能別組合には、合理化に対して、〃生理的〃に反発する体質がある。機関士中心の動労に向かって「電気、ディーゼル機関車の機関助士を全部廃止する」という原則をいきなり頭からのませにかかった当局のやり方にもやや無理があったようだ」。これは特に、二人乗務を一人乗務にするということの問題に対する取り上げ方だと思いますけれども、これは電修場の問題にいたしましても、やはり信号というものが安全にも大きく関連を持ちます。また安全の上からは、一人乗務がいいか二人乗務がいいかということも非常に大きな問題点だと思います。ところが、いずれにいたしましても、今日のマスコミというものが、むしろゴリ押しをする当局側に対してややきびしい態度をとっている。そのことが私は今度の紛争における特徴的な点だと思います。こういうマスコミの動向に対して、当局側はどのような受けとめ方をなさっているのか。これが従来の紛争と若干趣の違っている点であります。その意味で私は、特にいま商業紙に報道されております原文をそのまま御紹介申し上げたところでございます。この点についてひとつ国鉄側の御見解を承りたい。
  59. 石田禮助

    ○石田説明員 お答えいたします。  今度の労使の紛争につきましては、国鉄としては、これが社会、経済各方面に対して非常な悪影響を与えますので、何とかしてわれわれとしては平和的に解決しようということで、最善の努力をいたしてきた。今度の問題につきましては、さっき運輸大臣から申し上げましたように、大体十五項目に分かれておったのでありますが、去年の三月から本交渉に入りまして、そのうちの十四項目というものは妥結をした。残るところは二人乗務を一人乗務にするという一項目だけになったのでありますが、これに対して、ただいまのお話では、マスコミの論評というものは、組合のほうよりは国鉄に対してきびしいような考えだというようなことを申されますが、これは必ずしもそうではない。マスコミでも国鉄の立場というものを相当に理解しておるのでありまして、マスコミの大部分は、国鉄に対してアンチというふうには考えておりません。いずれにいたしましても、われわれとしては、この輸送の安全ということについては最大の関心を持っている、つまり輸送の安全があって初めて輸送力がある、安全でない輸送力なんてナンセンスだということでありまして、この二人乗りを一人乗りにするということについては十分に研究いたし、また過去のレコードも調べまして、ほんとうにだいじょうぶだ、こういうことで強く主張しているのでありまして、決してなまはんかにやっておるのじゃないということを申し上げておきます。
  60. 河野正

    ○河野(正)委員 総裁はいろいろ小さいことについては、十分御承知願う機会も少なかろうと思います。そういうことで、主として係、担当官のほうからいろいろ御注進を受けて、この国会で御答弁なさっていると思うのです。そういうことで、若干私ども立場から申し上げますると、認識に欠けておられる点があるやに感じます。そこで、いろいろ時間の関係がございますから、議論しょうとは思いませんけれども、たとえばいまの、この三月より交渉に入ったということ、それは合理化計画についてはそのとおりでございましょうけれども、この一人乗務、二人乗務の問題等については、必ずしもそうではございません。実際には具体的に提案されましたのは、十二月の二十二日でございます。要するに、合理化計画の案があるということについては、なるほど総裁がおっしゃったとおりでございましょう。しかし、いまいろいろ論議されておるのは、それは電修場の問題もございましょう。あるいは一人乗務、二人乗務の問題もございましょう。ところが、そういう具体的な例については、十二月の二十二日に初めて具体的な提案がなされておるということでございますから、この点についても若干、総裁に対しておことばを返して申しわけないけれども、認識に欠けられる点があろうかと思います。これは私どもは的確な資料で申し上げておるわけですから、もうあえて総裁のお答えは受けたいとは思いません。  そこで、マスコミの大部分がアンチではないんだというお話でございましたので、できるだけ私は主観をまじえないで客観的に国民の立場からものを申し上げて、そしてできるだけひとつ公正にこの問題の解決をはかりたい、そういう意味で私はきょう建設的にこの問題を取り上げているわけですから、ひとつ謙虚にお聞き取りをいただきたいと思うのです。  そこで、マスコミの大部分というのは必ずしもアンチじゃないんだという御指摘でもございましたから、あえて私はもう一例だけ申し上げます。  今日、非常に不幸なことですけれども、御茶ノ水駅の国電の追突事故など次々に事故が続発しておりますので、したがって、この安全輸送の問題というものは、もちろん労使間にとっても重大な問題でございましょうけれども、むしろ私ども国民側がより重大な関心を持っておるということでございます。そこでやはりこういう安全性の問題というものが今日提起をされておるわけです。したがって、国鉄側には四十年からの第三次計画の遂行という問題もございましょうけれども、やはり安全性という問題が提起されている以上は、単に経営という面からだけでなくて、利用者でございまする国民がほんとうに安全だという、そういう納得する形でこの解決というものをはかっていかなければならぬというように私ども考えるわけです。  そこで、いま総裁からも若干意見がございましたから、私は今度は新聞の名前も出して指摘をいたしてまいります。これは九月十一日の朝日新聞でございますが、この朝日新聞によりますと——原文をそのまま申し上げたいと思います。これは私どもいろいろ主観を入れますと、またいろいろ誤解も出てまいりますから、原文をそのまま御紹介申し上げます。「合理化の対象になっている機関助士は約七千五百人であり、当局側の説明によれば、原則として機関士、運転士に昇格させることになっているという。理くつの上では解雇ではなく配転問題であり、それが当局側の強気を支えているように思われる。しかし、安全性が問題にされている以上、経営第一主義の面からだけでなく、利用者である国民が納得できる方法で解決されることが望ましい。たとえそれが国鉄当局にとって回り道であったにせよ、である。」ですから先ほど総裁がいろいろ努力したんだとおっしゃったわけですけれども、やっぱり世論というものは、マスコミというものは、いろいろ努力しておろうけれどももう一段のその努力というものが必要であるということを指摘しておると私は考えます。そこで、私ども経営上の問題があることはこれは無視できぬわけですから、完全に無視するわけではございませんけれども、やはり率直にいって、国民の側からいいますと、経営がどうであろうとこうであろうと、安全に輸送してもらいたい、これが率直な国民の念願だと思うのです。ですから、むしろ私どもは国民の側に立って申し上げますと、経営上の問題よりもやはり安全輸送にぜひ重点を置いて解決してもらいたい、こういう批判があると思うのです。そういう意味で、マスコミが全部が全部アンチではないということでございますけれども、この朝日新聞の十一日の論評におきましても、あえて、そういうようにいろいろ努力したろうけれどももう一段の努力が必要であった、そのことが国民がほんとうに安全だという意味で納得する方策でございますということを、指摘しておるわけです。ですから私どもは、国鉄が労使間でいろいろ解決のために努力を払っておられることについて、決して軽視するものではございません。その点については私どもは敬意を表します。表しますけれども、やはり国民としては、安全問題がいろいろいわれておるわけですから、正直いって、安全ではないですよと組合側から提起されれば、それは困るじゃないか、こういわざるを得ぬと思うのです。組合がたとえ安全でないと言っても、国民としては安全だと納得すればそれで事は済むと思います。そういう意味で、マスコミのすべてがアンチではないということでございますけれども、いま申し上げますような、批判と申しますか、そういう声があることは現実の問題でございます。そういうことを踏まえて、もう一度総裁の謙虚な気持ちを聞かせていただきたい。
  61. 石田禮助

    ○石田説明員 さっき申し上げましたように、国鉄というものは、輸送の安全あっての輸送力——安全のない輸送力なんというものはナンセンスだということで、輸送の安全を確保するにつきましては万全の努力をしている。それで、この一人乗り、二人乗りの問題なんかにいたしましても、決してそろばんそのままでやっておるわけではない。これはひとつぜひとも誤解のないようにお願いしたい。われわれといたしましては、組合の言うこともよく聞き、また過去におけるレコードもよく考え、全く一人乗りでだいじょうぶだという確信のもとにやっておるのでありまして、決してそろばんのために、利益のためにやる——利益のためというよりは、つまり安全を犠牲にしてやるということは絶対にない、こういうことを私は申し上げておる次第です。  とにかく、私が総裁になりましてから一番いやなのは事故なんです。いかに私が国鉄の輸送の安全というものに対してこれまで努力したかというものの第一は、御承知か知らぬが、青函連絡船の問題。あれは戦標船を使っておった。それでお客さん千人以上の生命をあの戦標船というぼろ船で運んでおった。私はこれは総裁になる前から言っておったのですが、総裁になりましてから、船をておったのですが、総裁になりましてから船を全部かえまして、いまや日本一のいい船でやっておる。さらに宇高線の問題にいたしましても、あれは非常に危険だと思うのです。そこでいろいろ研究した結果、とにかくほとんど不沈鑑みたいなりっぱな船だ。横腹からやられても急には沈まぬ。沈むには、悪い場合においても一時間はかかるだろう。その間に、救命具というものを十分備えておいて、のがれる道をつけるというようなこと。それから今度の第三次計画におきましても、国鉄は輸送安全装置のために二千数百億を投じて安全の確保につとめる、こういうことにやっておるのでありまして、この安全のためには万難を排していかなることでもやるということでありまして、この二人乗りの問題なんかにいたしましても、決して利益のために、そろばんのためにやっておるのではないということは、ひとつぜひ御了解願いたいと思います。
  62. 河野正

    ○河野(正)委員 総裁は事故が一番大きらいだ。国民もそのとおりです。事故を期待する者はおらぬわけであって、国民としても、総裁同様事故が一番きらいだと思います。むしろ事故を受けるのは国民ですから、国民のほうがもっともっときらいだと思います。ですから、その点は異論ないわけですけれども、ただ、万全の努力をいたしておると言われましても、問題は、そういう万全の努力をしておるかどうかということに対して、国民が納得するかどうかという問題ですね。私ども何も組合の言い分を聞いておるわけじゃない。いま安全問題というものがマスコミの上でもいろいろ論議されているのです。ですから、そういういろいろな論評を受けて、私どもは、一体安全であるかどうかということをいまここで論議を展開しておるわけです。ですから、国鉄側が安全のために万全の努力をなさっておることについては、私ども否定しているわけではないのです。ただ、そういう努力をなさっておってもなお安全でないという議論もあるわけですから、その議論に対してどう国鉄側が具体的にこたえるか、そして国民を納得させるか、その努力というものが必要ではないですかと、マスコミは指摘しておると思うのです。ですから、総裁は自分個人として非常に努力されておるから、おれは努力したんだ、その気持ちはわかります。わかるけれども、それを納得するかどうかというのは国民の側にあると思うのです。そういう意味で、回り道であるけれどもさらに努力すべきであるということを、朝日新聞は指摘をしておるのだろうというふうに私ども考えておるわけです。ですからこれは私どもは、国民の側から納得さしてもらいたい。総裁は、もう一切努力は終わったんだ、そういう意味に聞こえますけれども、そういうことではいつまでたっても進歩はないのであって、国民の側がなお納得しておらなければ、さらに納得させる努力というものが当然必要だと思うのです。     〔委員長退席、田邉委員長代理着席〕 その謙虚さというものが、やはり私は国鉄側にあってもよろしいと思うのです。その点が欠けておりますることを、私は残念でございますけれども遺憾といわざるを得ないと思います。  と申し上げますのは、ここで指摘しておきますが、たとえば前回の委員会で後藤委員のいろいろな質疑に対して、井上常務理事は、むしろ一人乗務のほうが事故が少ないのだというふうなお話もございました。ところが、そういうお答えを聞いただけで、私ども、一人乗務のほうがほんとうに事故が少ないのだろうか、率直にいって必ずしも納得できない面がございます。それはあとで、きょうは労働衛生研究所長もおいでを願っておりますから、この労働衛生と安全問題というような問題についても、少し科学的に論議を深めてまいりたいと思います。いずれにしても私ども、前回の委員会でいろいろケースをあげて常務理事から御見解の発表がございましたけれども、その発表では納得のできない面がございます。やはりそれは納得ができないという国民の側の意見があれば、それを納得させるだけの努力というものが必要だ。それが朝日新聞が言っておる、回り道であるけれどもその努力をしなければならぬということだと思うのです。ですから、オールマイティで、おれがやったことは最善だというようなことでは国民は納得ができないわけですから、やはり国民がそういう安全問題に対して疑惑を持っているならば、さらにその疑惑を解くという、こういう謙虚さがあってもよろしいと私は思うのです。そういう意味で、実は先般井上常務御指摘の暴進事故のケースでございますが、この点についても納得のできないことをひとつあえて御指摘を申し上げておきたいと思います。その点についてさらに御見解がありますれば、御見解を承りたいと思います。
  63. 井上邦之

    ○井上説明員 事故の発生率の問題につきましてはまたお答えいたしますが、その前に、基本的な問題として先生から、国鉄当局は安全に対して努力もしておる、また組合に対して説得の努力もしておる、しかしそれが組合の納得するところにならず、また国民もまだ十分に納得していない、その面の努力が欠けておるではないかという御指摘がございました。その点について私の考えをお答えいたしたいと思いますが、まことに先生御指摘のとおりでございます。その点は率直に私ども認めますし、また謙虚な気持ちを失ってはおりません。  ただ、納得させる相手方は組合と国民と二つに分かれるわけであります。組合に対する納得という問題につきましては、実はこの一人乗務の問題の安全論議につきましては、先ほど先生から、一人乗務の問題は昨年の十二月の末に当局から問題を提起したばかりではないか、こういう御指摘がございましたけれども、確かにそれは提案としてはそうでございます。ただ、この一人乗務が安全であるかどうかという問題につきましては、EC、DC協定、電車、ディーゼルカーの協定を結びます場合に、すでに十分論議をし尽くしたのです。その結果、現在、電車、ディーゼルカーにつきましては八割が一人乗務になっておるということでございまして、この安全論議につきましては、少なくとも私どもは組合に対しては十分論議しておる。ただ組合側は、いかなる観点からいたしますか、それはわかりませんけれども、それは組合の立場もありましょうから、納得しない、納得しないと言っておりますけれども、この問題については少なくとも組合に対しては十分論議をし尽くしておる。残るところは国民に対する説得の問題でございます。説得というのはおこがましい言い方でございますけれども、国民の皆さまにまだ十分御納得がいただけていないという点は、これは私どもも率直に認めざるを得ません。したがいまして、この点につきましては、今後あらゆる手段を払って国民の皆さまに御了解をいただくように努力いたしてまいりたい、かように存じております。私どもも、新聞で最近ちらほら出ておりますような、たとえば第三者の協定というような問題が新聞に出ておったこともございますが、ああいう問題も、私ども決して、もし組合側からの御同意があるならば、そんなことはいかぬというようなむげに退ける態度でなくて、謙虚に取り上げていきたいという気持ちは持っておりますが、まだ組合側との間ではその段階に至っていないということだけを申し上げておきたいと思います。  それから事故の発生率について、前回私が説明したことについては納得できないというお話がございましたが、もし数字を示せとおっしゃれば、数字はここに持ち合わせておりますけれども、数字を一々申し上げてもなにだと思いますので、お答えだけを申し上げておきますと、すでに先ほど申しましたように、電車、ディゼルカーについては八割が一人乗務になっております。二割が二人乗務という形になっております。したがって、二人乗務の場合と一人乗務の場合とで事故の発生率を調べますと、おのずから統計的にその数が出てまいるのであります。それで、この事故ということを取り上げます場合に、たとえば衝突事故でありますとか重大事故、そういう観点からこの事故を調べても、これは無意味でございまして、たとえば衝突事故というのはトラックとぶつかるような事故も含まれておりますから、その場合にたまたま二人であったか一人であったかということは、問題外でございます。二人か一人かが問題になるのは、信号を二人で見たほうが安全なのか、一人では危険なのかという問題なのでございます。したがいまして、二人、一人の問題に関連する事故の取り上げというものは、信号暴進事故の発生率が問題になる。この信号暴進事故の発生率を見ますと、過去、昭和二十五年以来の統計が出ておりますが、明らかに一人乗務の場合が事故の発生率が少ないのです。それから、最近ひんぴんとして起こっておりまして国民の皆さまに御迷惑をかけております居眠り事故、この居眠り事故だけをその中から拾い上げてみましても、はっきりと一人乗務のほうが事故の発生率は少ないという数字が出ておるのでございます。  ただ、私がここで申し上げたいことは、その数字だけを見れば一人乗務のほうがむしろ何か安全なような感じが出るけれども、私どもはそこまでは言わない。数字の上では一人乗務のほうが事故の発生率が少ない数字になっておるけれども、それをもって直ちに一人乗務のほうが安全だとまでは言わない。ただ言い得ることは、安全度に関する限り一人、二人は同じであるということだけを申し上げておきたいと思います。いま国鉄の置かれておる現状からして、経営合理化に徹底しなければならぬ今日、安全度について同じであるならば、二人乗っておる必要はないではないかということを申し上げておるだけでありまして、事故の発生率からすれば、確かに一人のほうが事故の発生率が少ないが、一人のほうが安全だとまでおこがましい言い方はしない、こういうことでございます。
  64. 河野正

    ○河野(正)委員 なかなか答弁がじょうずにやられておるようでございますけれども、たとえばこの重大事故の場合は一人乗務、二人乗務無関係だ、こういうように逃げられた。ところが、実は私聞いてみたところが、重大事故の場合は、一人乗務のほうが事故が多いわけです。二人乗務の場合が事故が少ないわけです。私がいろいろ調査をしてみたらそういうことのようです。ですから、重大事故については一人乗務、二人乗務無関係だ、こういうふうな、これはあなたのおことばを返して失礼ですけれども、少し詭弁的な答弁がなされておる。それから、この一人乗務、二人乗務いずれがいい悪いは言わぬというようなお話でございます。しかし前委員会において、後藤委員に常務が答えられた答弁内容というものは、計数をあげてお答えになったようでございました。それは一人乗務のほうが事故の発生率が少ないということのようでございました。ところが、これも詳細な資料を私どもはいずれいただきたいと思いますが、私どもが仄聞するところによりますと、この一人乗務、二人乗務という分け方で事故発生率の資料はない、ただ車種によって事故が多かったか少なかったか、そういうところから一人乗務がどうだ、二人乗務がどうだというような見解で、いまのような数字が示されておるというように、私どもは仄聞をいたしております。そこで、正直いって、私どもはそういう事情を聞きますと、いろいろお答えいただきましたけれども、今度は国民の側からどうも納得いかぬという回答を出さざるを得ないわけです。  それからもう一つは、アメリカで一人乗務をやってみた。ところが、一人乗務をやってみたが、結果的には一人乗務によって事故発生率が高まった、こういう見解を経済学者、統計学者が述べておる資料を私どもは持っております。いろいろその中身についてここで私ども御紹介してもけっこうでございますけれども、これはあえて紹介する必要はなかろうと思いますので、はしょりたいと思いますが、一度二人乗務を一人乗務に切りかえたアメリカにおいてすら、その後の経過を見てまいりますと、だんだん事故発生率が高まってきた。アメリカの機関士は、われわれにもう一度助士を返せという叫びが起こってきたというようなことがいわれております。一九六五年の統計によりますと大体一六・二%、それから過去三カ年間はさかのぼって統計をとりますと四二%、事故発生率が高まってきたというようにいわれておる。日本の国鉄は一人乗務のほうが事故が少ないという、アメリカでは実際やってみたが事故が高まったという、こういうことになりますと、私ども一体どっちを信用してよろしいのか、ここに国民が納得のできない点がございます。アメリカでやってみたところが、なるほど一人乗務のほうが事故が減ってきた、それで日本側もそうだ、これなら、一応いい悪いは別として、やはり一つの筋でしょう。ところが、実際二人乗務を一人乗務に切りかえたところが事故発生率が高まった、こういう結果が、残念でございますけれどもアメリカで出てきた。こういうところから、実はせっかく井上常務理事の御答弁がございましたけれども、国民の側から納得ができない。これは組合ではございませんで、そういう資料を受けて私ども判断するわけですから、そういうことを指摘せざるを得ないと思います。これは、私はいま具体的資料を通じて申し上げているわけですから、お答えは要りません。 (井上説明員「お答えしたいのですが……」と呼ぶ)いま申し上げますような具体的資料をとらえて、お答えについては納得できない。私どものほうで納得できないわけですから、お答えは要りません。  それから、一人乗務と二人乗務とどちらが安全かという議論についても、いろいろ私ども率直にいって納得ができない点がございます。この点についても、統計は別ですけれども、具体的に納得のできない例がございますから、そういう意味で、私ども若干この問題について触れてまいりたい、こういうふうに思います。  そこで、きょうせっかく労働衛生研究所長もおいででございますから、この安全問題と労働衛生の関連の問題について若干科学的な見解を聞いてまいりたいと思うのです。たとえばロングランの問題がございますね。これは具体的な例をあげたほうがお互いに論議が発展しやすいと思うので申し上げますが、このロングランと安全性確保の問題についてお伺いをしてみたいと思います。  列車が長距離を走ります場合には乗務員が何回か主要駅で交代をする、こういうたてまえでございます。     〔田邉委員長代理退席、委員長着席〕 ところが国鉄側では、合理化の一環としてスピードアップが行なわれるわけですから、そこで乗車時間が短いということで乗り継ぎの機会というものをなくそうという方針が出ておるわけでございます。ところが、これは私も医者ですから考えるわけですけれども、スピードアップすれば、同じ距離でございますと乗っている時間が短いわけですね。それだから、乗務時間が短いからその疲労度は同じだという理論は成り立たぬと思うのです。条件が同じでございますれば、乗っておる時間が短かければ疲労度は軽いと思うのです。スピードアップして乗務時間が短い。ところがスピードアップしているのですから、そのことがやはり身体的にも心理的にも当然影響を与えると私は思うのです。それを、スピードアップされて乗務時間が短くなったのだから乗り継ぎはしないでよろしいという議論は、どうも科学的に理解しがたいと思うのです。  いま具体的に一例をあげましたけれども、こういうロングランの問題について、科学的に、医学的に見て所長はどういうふうにお考えでありますか、ひとつ見解を承っておきたいと思います。
  65. 山口正義

    ○山口説明員 ただいま河野先生は具体的なロングランの問題を取り上げての御質問でございます。私ども労働衛生の仕事をしておりますものは、各種の労働条件が労働に従事する人にどういう影響を与えるか、特に健康上の面からどういう影響を与えるかということをいろいろ研究をしているわけでございます。私どものほうでは、いま特にこういう輸送機関の乗務員についての研究を別にやっているわけではございません。国鉄には、先生御承知だろうと存じますが、労働科学研究の特別の研究機関がございまして、それぞれ専門家がおられていろいろ研究をしておられますが、重複を避ける意味もございますので、私どものほうでそれを手がけておりませんので、あるいは先生の御質問に対して的確な御答弁にならないかもしれないのでございますが、ただいまおっしゃいました、スピードアップされてそれだけですぐ労働時間が短くなるから、距離をもっと長くやってもいいというようなことの問題、これは、単にスピードだけの問題でございますと、いまのようなお話が出てくるかと思いますが、スピードアップされるに従ってほかの条件も改善されているのではないかというふうに考えるわけでございます。これは、先ほどから御議論になっております一人制、二人制の問題にも関連いたしますが、国鉄ではそういう際に、それぞれの専門機関の意見もしんしゃくされてやっておられるというふうに考えるわけでございます。いま先生の御指摘のように、単にスピードアップだけの問題でございますと、その御指摘の点はもっともだと思います。ほかにスピードアップに伴って、安全性の問題とか、いろんなことが改善されてまいりますれば、必ずしもそれだけのファクターでは云々できないんじゃないかというふうに私としては考えております。
  66. 河野正

    ○河野(正)委員 いま所長から見解を承ったわけですけれども、いま所長がおっしゃっている意味は、たとえば踏切がなくなる、あるいはカーブの見通しが非常によくなったというような改善が行なわれれば、スピードと人体、心身に及ぼす影響との関連というものは、あるいはそう重視しないでもいいかわからぬ。私もそう思うのです。ところが、そのカーブの問題だとか踏切の問題とかいうのは、なかなかうまく改善されておらない。旧態依然としていままでの悪条件が続いておる。そういう中で、単にスピードアップしたから、乗務時間が短くなったから長い距離乗ってよろしいじゃないかという理屈にはならぬと思うのです。それは、おそらく所長もそういうような御見解だろうと思うし、私もそういう見解です。ですから、このロングランの場合に乗り継ぎしないでよろしいということになれば、それ相応の条件というものがやはり改善されなければならないと思うのです。踏切の問題だとか、あるいは信号の問題だとか、カーブの問題だとか、それと関連をしながら、いまの乗り継ぎの問題というものが考えられなければならぬと思うのです。ところが、そういう問題は全然たなに上げておいて、そうしてスピードアップして乗務時間が短くなったから長い距離乗ってよろしいじゃないかという議論にはならぬと思うのです。特に、所長が言いたいところもいま私が補足して申し上げましたから、そういう条件というものが改善されないまま、スピードアップされたのだから長い時間乗ってよろしいということにはならぬだろうと思うのです。いかがですか。
  67. 山口正義

    ○山口説明員 先生のおっしゃいましたように、外部のいろんな条件、踏切とかカーブとか、そういうこともございましょうし、あるいは乗務している内部的な乗務室のいろいろな問題というようなこともあるのではないか。私、勉強が足りませんので、列車乗務に関して十分勉強しておりませんから、的がはずれているかもしれませんが、そういう点も考えられるのではないかというふうに考えております。  それから、スピードアップ即長時間というふうに算術的におやりになっているのではないのじゃないかというふうに私も考えるわけですが、先ほども申し上げましたように、国鉄のほうでも科学的なことを研究している専門家も十分おありでございますから、それらの点、十分御相談の上でいろいろの措置をおとりになっているのだろうというふうに私は考えるわけでございます。
  68. 河野正

    ○河野(正)委員 そういう処置がとられておれば、当然、国民を納得させる意味において、そういう処置をとったということが明らかにされなければならないと思うのです。そこに私どもが納得できない理由があるわけです。そこで、私いま申し上げまするように、スピードアップされたから長い時間乗ってよろしい、長距離乗ってよろしいということにはならぬと思うのです。それは、そういう事態になるまでには、もろもろの条件を改善していかなければならないということだと思う。その点については所長も異論ないと思うのです。  そこで、もう一点お聞きをしておきたいと思いまする点は、夜行列車等で特に緊張度というものが高まると思うのです。そういう場合に、責任感あるいは孤独感というものが当然出てくると思うのですが、そういう際に、一体心理的に一人がいいのか、二人がいいのか、この点はいかがですか。
  69. 山口正義

    ○山口説明員 一人制、二人制の問題に入ってまいりましたが、全般的に申しまして、河野先生も御存じのように、結局その乗務の条件によって、肉体的にあるいは精神的に疲労がどういうふうに変わるかということが問題ではないかというふうに考えるわけでございます。疲労の問題は、これは非常に複雑で、先生も御存じでございますから、こまかいことは申し上げませんが、自覚的に疲労を感じる場合、それから他覚的に疲労症状として知り得る場合がございます。自覚的には自分の訴えでございますが、他覚的には、生理学的に、あるいは生化学的に、あるいは心理学的にいろんな調べ方がございます。それらを総合して疲労というものを測定しておるわけでございますが、もう一つ、その疲労が加わったか、加わってないかというようなことには、生産高がどういうふうにあらわれてくるか、あるいは災害率がどういうふうにあらわれてくるかというようなことが疲労の判定になるのではないかというふうに考えるわけでございます。精神的にどういうふうに感じるかということは、これは自分の訴えでございますから、なかなか他覚的にはむずかしゅうございますが、生化学的とか生理学的、心理学的、それから生産高、災害率というようなものは、他覚的に判定ができるわけでございます。  いま夜行列車の問題もございましたが、結局そういう場合に、先ほど井上常務もお話しになりましたが、災害率とかあるいは事故率というもののあらわれが、やはり疲労の一つのあらわれではないかというふうにも感じますので、そこら総合して、これが疲労が増しているか増していないかというようなことはなかなか一がいに言いにくいということは、御専門の先生ですからよく御存じだと思うのでございます。したがいまして、いま、夜行列車が非常に精神的な緊張を与える、そういう場合に一人がいいか二人がいいかという問題が出てまいることは当然考えていかなければならないことでございますが、それがどういう形になって結果としてあらわれてきているかというようなことを見ながら、やはり対策をとっていくべきではないかというふうに私は考えております。
  70. 河野正

    ○河野(正)委員 出てきた現象を、たとえば事故の発生率というようなことから検討するということになりますと、事故というものは、潜在事故もございます。当然起こるべきだったけれども、二人乗務であったために防止し得たという問題もございます。ですから、事故の発生率についてだけでは、顕在した事故、潜在した事故がございますから、それだけではなかなか見解を加えることはむずかしいと思うのです。ただ、私どもがはっきり言えることは、精神的な負担というものは、緊張の高まる中で一人か二人かということになれば、それは一人のほうが心理的にこうむる負担というものは高まるだろう。これは感じとしてはそのとおりだと思うのです。ただ、それを科学的にどういう形であらわすかということが問題だ。おそらく労働衛生研究所ではそういう実験はやっておられないから、そういう明確な答えが出てこなかっただろうと思いますけれども、私どもの感じとしては、夜行列車の中で非常に緊張が高まる、あるいは孤独感に襲われるというような場合には、これは当然一人のほうが負担が大きい。これはいまの宇宙飛行では非常に重要視された問題ですね。そこで、やはり一人よりも二人乗せる、二人よりも三人乗せるという方向で、世界の科学者というものは検討を進めておるわけです。宇宙にロケットで行って、一人の場合はものすごい孤独感に襲われる。そういうことで、宇宙に二人を飛ばしたり三人を飛ばしたりという方向で研究が進められておることは、所長も御承知のとおりだと思う。そういう意味からも、一人のほうが心身に及ぼす負担が大きいということは、少なくともいまは宇宙医学時代ですから、宇宙医学というものがはっきりそういうことを表明していると私は思う。ただ、残念ですけれどもそれは科学的データがないということで、所長も見解を渋っておられると思うけれども、いまの新しい医学は宇宙医学ですから、宇宙医学の中では、いまの孤独感については非常に大きな負担だということで現在研究を進めているわけです。ですから、そういう意味からも、私はこの問題については、一人乗務のほうがより大きな精神的な負担がかけられるというふうに理解せざるを得ぬと思うのです。これはおそらく所長もそのとおりお考えだろうと思いますが、いろいろ見解を遠慮されておる面もございますから、あえてこの点論議を重ねようとは思いません。思いませんけれども、いまの宇宙医学の趨勢から私の見解を申し述べておきたいと思います。  そこでもう一つ、国鉄の運転取扱基準規程というのがあることを私ども承っております。この規程の中には、明らかに助士の任務はかくあるべきだという任務の規定づけが行なわれておるわけでございます。そこで、この運転取扱基準規程から申しましても、やはりそういう規程がある以上は助士の任務というものがあるわけですから、そういう意味では、私ども、やはりこの助士の必要性というものを、現時点においては理解せざるを得ぬと思うのです。それはいろんな条件が克服されますね。改善されますね。そういう場合にはこの規程が改善されるということだろうと思うのですけれども、現時点において、それならば、はたしてそういう規定が削除されるだけの条件が満たされておるかどうか、残念ですけれどもどもは疑問を持たざるを得ないと思うのです。そういう意味で、この点についていかがお考えでございますか、ひとつ御見解を承っておきたい、かように考えます。
  71. 井上邦之

    ○井上説明員 確かに現在の運転取扱基準規程には、機関助士の任務というものを規定いたしております。ただ助士は、御承知のとおり、蒸気機関車の助士と、それから現在は電気機関車、ディーゼル機関車の助士と、二通りに分かれるわけであります。蒸気機関車の助士は、ふん火作業、すなわち石炭のかまたきの作業という使命がございます。それが一番大きな使命でございまして、そのほかに、信号を確認するとか、指さし、指差とか、こういった任務を負っておるわけであります。電気機関車、ディーゼル機関車の場合には、はっきり申し上げまして、いままでの沿革上助士が乗っておる、乗っておるから何もさせないというわけにもいかぬから義務づけておるというだけでございまして、実際は電気機関車、ディーゼル機関車の場合には、助士はいなくても何ら差しつかえないわけです。ただ沿革的に乗せておるものですから、乗せておる以上は規定づけなければいかぬということで、運転取扱基準規程の三十三条に、電気機関車それから電車、ディーゼルカーの場合には助士の任務を従来定めておりましたものを、何年でございましたか、その規定は要らないということでたしか削除いたしたわけでございます。この削除いたしたのは、そういうことで本来要らないということで削除いたしたものであります。蒸気機関車の助士と電気機関車、ディーゼル機関車の助士とは任務が本質的に違うということだけは申し上げられると思います。
  72. 河野正

    ○河野(正)委員 たとえば蒸気機関車のごときは、かまをたかなければならないということで任務というのが非常にはっきりしていますね。しかしそうだからといって、この助士が要らぬということにはならぬと思うのです。というのは、この運転取扱基準規定によりますと、機関士が見にくい信号の場合には機関助士がこの確認をする。こういうことでこの規程の二百九十一条においてはそういうことが明示されておるわけです。ですから、これは四つの目か二つの目かという議論にも通じていくと思うのですけれども、私は、やはり二つの目よりも四つの目のほうがより安全だ、こういうところから——総裁もいろいろ見解があるらしいのでかまえておられるようですけれども、やはり目が多いということがより安全だということははっきり言えると思います。  それからもう一つは、この規程にも規定されておるわけですけれども、たとえば私ども九州ですからしばしば「あさかぜ」にごやっかいになるわけですけれども、この「あさかぜ」が踏切事故を起こしました。そのときは機関士は死亡したわけですけれども、助士がいち早く進行中の列車に信号をして、そして未然に大惨事を防止した、こういう具体的な例がございます。こういうこともかまえてこの規定というものが作成されております。そういう意味で、やはりいまの助士を完全になくすということになれば、それだけの条件というものが整わなければならぬと私どもは思うのです。ところが現状においては、この運転取扱基準規程というものがある以上は、やはりこの基準というものが順守されなければならぬというように私どもとしては理解せざるを得ぬと思います。そういう意味で、率直に申し上げて、この取り扱い基準というものがある以上は、この助士問題というものはなお検討の余地が残されておるというふうに理解しておることは、はっきり申し上げておきたいと思います。  それからさらに、いまの問題と関連をして、時間もございませんから申し上げておきたいと思いまするが、それは新聞も指摘しておるわけですけれども、お召し列車、それから要人の乗る列車、こういう列車には大ぜいの熟練した運転士や助士を乗り込ましておられる。そういう意味から、やはり目は多いほうが安全である、こういう議論がございます。これも私は中正を期する意味において、毎日新聞の九月十一日の記事をそのまま紹介いたします。 「お召列車や要人の乗る列車には大ぜいの熟練運転士や助士を乗込ませるのをみれば〃目〃は多いほど安全なことは間違いなさそう。」  こういうように九月十一日の毎日新聞は指摘をいたしております。そこで、いろいろ議論がございますけれども、国民としては、この一例をもっていたしましても、目は多いほうがよろしいという理解に立たざるを得ないと思います。これについて御異議ございますか。
  73. 石田禮助

    ○石田説明員 ただいま、目は多いほうが安全だ、こういう仰せでございますが、これには私は反対なんです。要するに、幾ら目が多くあっても、居眠りの目なら何にもなりゃせぬ。要するに目は一つあればいい。問題は運転士の精神ですよ。いわんや二つあればそれで十分なんだ。最近における事故や何かを見ても、運転士と助士と乗っている、目は四つあるのだけれども両方とも寝ている、こういう点は——いまの目は多いほうがいいということは、かつて総評の書記長が私に言いましたから、それじゃ四つが六つあったらいいかといえばそうじゃない。これは結局他力本願でいかぬ。ことに最近における運転士、助士のあれでもって、居眠り運転なんというのは、どうもだんだん調べてみると、だれが先に居眠りをやるかというと助士のほうだ。私は医学上のことはわかりませんが、あれは何かうつるのじゃないですか。そういうことで、この二人が乗るのは、両方とも居眠りして事故が起こったというようなことを考えますと、これはどうも目は多ければ安全だというほどの定義は、私ははなはだ遺憾ながらアクセプトすることはできないということを申し上げておきます。
  74. 河野正

    ○河野(正)委員 総裁、非常に偏見があると思うのですね。そういうケースもありましょうけれども、そういうケースというものはむしろ特異なケースだと思うんです。私は、総裁ですからもう少し親心があってほしいと思うのです。そういう意味で、いまの総裁ことばは、実はこの問題を取り上げると、そういうお答えがあると思って聞いておったら、筋書きどおりの答弁です。ですから、そういう御答弁なすったならば、四十万も五十万も従業員をかかえている総裁として少し穏当を欠くのじゃなかろうか、あまりにも親心がなさ過ぎるのじゃなかろうかということをぜひ指摘しようと思って、先ほどから総裁かまえておられたから、やはりそういうお答えがあるなと予期しながら実はこの問題を取り上げたわけです。私は、いやしくも国鉄大総裁ともあろう者が、そういう特殊なケースを取り上げて、そうだから一人乗務でなければいかぬのだというきめつけ方は、非常に危険だと思うのです。それなら私は正直いって、お召し列車においても一人だけ、自信をもって総裁がおやりになる決意が必要だと思います。ところがこれは、二つの目がいいか四つの目がいいかという、いろいろな議論をしたのです。そうしたら新聞記者の諸君が、やはりそれは多いのがいい、やはり天皇が乗る場合には大事をとってこうやっているじゃないかというて、私は忠告を受けたのです。ですから総裁がおっしゃっておるように、丹下左膳みたいな例を一例取り上げられたけれども、丹下左膳がおるから、だから一人の目がよろしいという議論は、少し暴論過ぎます。それは大総裁として、見識ある総裁のいろいろテレビでおっしゃることは、私どもは非常に関心を持って聞いておるわけですけれども、きょうの一言は私どもはちょっと受け取りにくいということを、率直に申し上げておきたいと思います。これは私は、特にお召し列車を取り上げた、要人の乗る列車のことを取り上げましたけれども、こういう問題をあえて取り上げる気持ちはなかったわけですけれども、特にこの二つの目がいいか四つの目がよろしいかという問題を解決するために、あえてこういう問題を取り上げなければならなかったことを、非常に残念に思います。  そこで、いろいろな紛争の原因があると思うわけですけれども、いまのような議論ですと、やはりいつまでたっても労使間の不信感というものは回復できぬと思うのです。私はやはり労使間の不信感というものはこの際払拭してもらいたい。労使間が何でも話がうまくいくということになれば、国民も安全問題についても安心すると思うんです。にらみ合っておるから国民もやはり心配するのです。  そこで、私はそういう点から、老婆心でございますけれども、具体的に一例を取り上げて、ひとつ反省を求めるといえば少し言い過ぎがありますけれども、ひとつ考え直してもらいたいということで一例を取り上げてみたいと思います。  それは国鉄列車にタコグラフをつけるという問題です。もともとタコグラフというのは神風トラック、砂利トラですね、これが暴走してしょっちゅう交通事故を起こすものですから、そこでこの神風トラックを監視しよう、そういうことでできたのがこのタコグラフですね。どうもタコグラフの問題についても私どもつくづく感ずるわけですけれども総裁にしてみればわが子同然の従業員でしょうけれども、そういう従業員を何か神風トラックと同じような立場で取り扱われる。いま丹下左膳の話が出てまいりましたから、そこで私はあえてこの問題を言うわけです。これが出てこなかったら、私はこの問題は言わなかったのです。片目でもよろしいのだ、安全だというようなことをおっしゃるから、どうもそういう気持ちでこのタコグラフについても方針決定されたのじゃなかろうか。大総裁というものが自分の部下に対して、おまえから神風トラックと同じような運転士だから信用ができぬのじゃというような気持ちでこの問題も処理されたのじゃなかろうかという気持ちを持つわけです。そこで曲がって考えますと、事故が起こるものですから、事故が起こった際に当局側が責任を回避する。タコグラフを見て、これは運転士が悪かったのだ、そういう意味でこのタコグラフの問題でも処理されたのじゃなかろうかという印象を、実はいまの丹下左膳問答で痛感をしたわけです。そういうことでは国鉄の労使間の問題はなかなか円満に解決しがたいと思うのです。やはりいま大事なことは、労使がお互いに信頼感を回復することだと思うのです。安全輸送の問題だって、国鉄がお示しになれば、労働組合だってそれを承服すると思うのです。ところがなかなか労働組合が当局側の言い分を聞かない。そういう点はお互いに不信感があることだと私は思うのです。ですから、国民側が安全輸送の問題について安心する道を——やはり労使間が常に円満に話し合いでものごとを解決される、そういう形の中から国民が安全輸送に対して確信を持つと思うのです。納得する条件というものはそういうところから出てくると思うのです。そういう意味で、どうもまことに残念なことでございましたけれども総裁のいまおっしゃることについては納得しがたいし、また先ほどの表現については私ども遺憾と言わざるを得ないと思います。そういう意味で、この点はむしろもう少し総裁は——それは総裁の言い分はあろうけれども総裁は大国鉄の総裁ですから、もう少し恩情ある態度で労使間の問題について臨んでいただきたいということを特に私は希望いたします。これについて総裁の御見解を求めます。
  75. 石田禮助

    ○石田説明員 タコグラフの問題が出ましたけれども、実はこのタコグラフの問題は私この間初めて聞いたわけで、要するに採用するかしないかということは専門家の決定にまかしたのでありまして、私としてはこれは何とも意見はありません。さらにこれが輸送の安全につながるということなんで、それならいいだろうということで私ども賛成した次第であります。  さらに輸送の安全の問題につきましていろいろ御注意ありましたが、これはひとつよく御意見を伺いまして、さらにまた顧みるところがあれば顧みて、できるだけ安全に徹したい、こういうことで善処いたしたいと思います。
  76. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで、いま総裁として非常に謙虚な態度を示されましたから、その点についてはことばを重ねる必要はなかろうと存じます。やはり一人乗務、二人乗務の問題もございますし、それから電修場の問題、それは信号上の問題と関連ございますから、非常に安全と関連が深いわけでございますから、こういう問題ございますけれども、いずれにしてもやはり国民の納得のいく形でこういう問題の処理に当たってもらいたい。たとえば助士の廃止の議論にいたしましても、私どもこれはしろうと考えでございますけれども、最低現在の新幹線並みの安全装置ですね。これは私の見解が当を得ているかどうかわかりませんよ、しろうとですから。少なくとも現在の一番新しい施設並みの設備というものが完全に実施されて後、その一人乗務をどうするか、二人乗務をどうするかという議論というものが展開さるべきではなかろうか。何か一人乗務、二人乗務が、そういう国民が安心する設備の問題よりも先に飛び出てきておるような気がするのです。私は、やはり一人乗務にするならば、それだけの条件を整えて、その上に立って一人乗務がしかるべきだ——これは山口さんもおられますけれども、労働衛生の面から見てだいじょうぶだという条件を示して、その上に立って一人乗務されるということになれば、国民も納得すると思うのです。ところが、そういう前段の条件というものが示されぬもんですから、国民はこの安全問題に対して非常に大きな疑惑を持っておると思うのです。  そこで、労働大臣の時間もあるそうですからこの辺でそろそろ労働大臣の見解も承りたいと思いますけれども労働大臣として、やはりこの問題は、一つには労使問題、一つには国民の立場、これは、国務大臣でございますから、国民の立場も当然考慮に入れながら、いろんな政策ないし問題に対処される必要があろうと思います。そういう意味で、いまいろいろと運輸大臣なり国鉄当局と議論を展開してまいったわけでございますけれども労働大臣としても、こういう安全問題という問題が国民の納得のいく形ではかられていく必要があるということは、もう当然お考えのところだろうと思うのです。そこで、こういう問題の解決のために労働大臣としてどう対処されようとしておるのか、ひとつ労働大臣からも御見解を承っておきたいと思います。
  77. 小川平二

    小川国務大臣 安全確保の問題は、申すまでもないことでございますが、乗務員のみならず、乗客あるいは一般国民の生命にも重大な関係を持ってくる事柄でございます。したがいまして、国鉄当局も安全の確保を最も大きな使命と考えて今日まであとう限りの努力をしてこられた、先ほど総裁ことばにあったとおりだと存じます。この安全の問題について、労使双方の見解が正面から対立をしておってなかなか議論が掘り下がっていかないという現状は、非常に遺憾に存じております。これから先も、両当事者が誠意をもって精力的に話し合いを遂げ、問題を煮詰めてもらいたい。おことばにありますように、国民にも納得のいく形で解決してもらうことを切望しておるわけでございます。
  78. 河野正

    ○河野(正)委員 特に二十日に第二波が想定をされます。それからまた十月の一日にも第三波が想定をされます。このことは、冒頭に申し上げましたように、やはり社会的、経済的に及ぼす影響も非常に甚大でございます。そういう意味で、私ども国民の立場から言いますると、一つには、やはり安全問題というものは国民にとって非常に重大な問題でございますから、納得のいくような形でこの問題がすみやかに解決をされ、そして、この二十日に予定されておりまする第二波、あるいは十月一日に予定されておりまする第三波、こういう実力行使というものが回避されることを特に希望をいたすものでございます。そういう意味で、今後いろいろ解決方法があろうと思いますが、私どもは、国民の立場から何とか安全問題を解決してほしいという、これは熱望でございます。非願でございます。そういう感じを強く持っておるわけですから、ひとつ国鉄当局も、当然解決のために、朝日新聞あるいは毎日新聞が指摘しておりまするように、さらに格段の前向きの努力をしてもらいたいし、また労働大臣としても、国務大臣としてひとつ具体的に解決のためにさらに格段の努力を願いたい、こういうように考えているわけですが、そういう意味労働大臣から重ねて御見解を承っておきたいと思います。
  79. 小川平二

    小川国務大臣 先ほど申したとおりの考えで、労働省といたしまして事態の平和的な解決に役立つ機会がありますれば、あとう限りのお手伝いをしたいと考えます。
  80. 河野正

    ○河野(正)委員 これは解決のしかたは、要するに、どういうしかたでございましても国民が納得すればいいわけであります。ですから、どういう形で解決すれば国民が納得するかということについても、いろいろ御見解はあろうと思います。十分ひとつ考慮されて、できれば二十日の第二波あるいは十月一日の第三波、こういうものが円満に回避されるということが望ましいわけですから、そういう意味でひとつ最後の御見解を承っておきたいと思います。
  81. 小川平二

    小川国務大臣 要は、両当事者が問題の重要性を念頭に置いて、誠意をもって話し合ってもらうことだと存じます。方法はいろいろあろうかと思いますが、先ほど国鉄の井上さんから御答弁もあったようでございますが、第三者機関の意見を問うてというような形も、学使の話し合いの過程でさような方法が望ましいという結論になりました場合には、一つの方法であろうかと存じます。いろいろな方法があるでございましょうけれども、一日も早く問題を煮詰めてもらいまして、円満な解決をしてほしいと望んでおります。
  82. 八田貞義

    八田委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後一時二十六分散会