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1968-08-27 第59回国会 衆議院 社会労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年八月二十七日(火曜日)     午前十時五十六分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 田川 誠一君 理事 橋本龍太郎君    理事 藤本 孝雄君 理事 粟山  秀君    理事 河野  正君 理事 田邊  誠君    理事 田畑 金光君       海部 俊樹君    佐々木義武君       齋藤 邦吉君    増岡 博之君      三ツ林弥太郎君    箕輪  登君       森田重次郎君    加藤 万吉君       後藤 俊男君    西風  勲君       平等 文成君    山田 耻目君       山本 政弘君    本島百合子君       和田 耕作君    大橋 敏雄君       谷口善太郎君  出席国務大臣         労 働 大 臣 小川 平二君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田中 龍夫君  委員外出席者         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         任用局長    岡田 勝二君         人事院事務総局         給与局長    尾崎 朝夷君         総理府人事局長 栗山 廉平君         経済企画庁総合         開発局長    宮崎  仁君         法務省民事局第         四課長     田邊  明君         法務省人権擁護         局調査課長   宮代  力君         大蔵省主計局次         長       海堀 洋平君         厚生省医務局次         長       北川 力夫君         農林省農地局建         設部愛知用水公         団監理官    島崎 一男君         労働大臣官房長 石黒 拓爾君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 八月二十七日  委員世耕政隆辞任につき、その補欠として森  田重次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員森田重次郎辞任につき、その補欠として  世耕政隆君が議長指名委員に選任された。     —————————————  八月十日   一、駐留軍労働者雇用の安定に関する法律     案(河野正君外十一名提出、第五十八回     国会衆法第九号)   二、国有林労働者雇用の安定に関する法律     案(河野正君外十一名提出、第五十八回     国会衆法第一〇号)   三、家内労働法案河野正君外十一名提出、     第五十八回国会衆法第一一号)   四、港湾労働法の一部を改正する法律案(島     本虎三君外十一名提出、第五十八回国会     衆法第二六号)   五、身体障害者雇用促進法の一部を改正する     法律案田邊誠君外十一名提出、第五十     八回国会衆法第二七号)   六、労働基準法の一部を改正する法律案(河     野正君外四名提出、第五十八回国会衆法     第三四号)   七、労働者災害補償保険法の一部を改正する     法律案加藤万吉君外十一名提出、第五     十八回国会衆法第三七号)   八、柔道整腹師法案小沢辰男君外二十一名     提出、第五十八回国会衆法第四〇号)   九、建築物における衛生的環境の確保に関す     る法律案齋藤邦吉君外六名提出、第五     十八回国会衆法第四五号)  一〇、厚生関係及び労働関係基本施策に関す     る件  一一、社会保障制度、医療、公衆衛生社会福     祉及び人口問題に関する件  一二、労使関係労働基準及び雇用失業対策     に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生関係及び労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  厚生関係及び労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。田邊誠君。
  3. 田邊誠

    田邊委員 人事院は、今月の十六日に公務員給与についての報告勧告をいたしましたが、これについては、他の委員会においてもそれぞれ質疑があったようでございますので、私は、きょうは時間がございませんから、端的にその中身と問題について人事院総裁あとでお見えになる給与担当大臣である総務長官なり労働大臣に対して質問いたしたいと思います。  まず、人事院総裁にお伺いいたしますけれども、これは言わずもがなでありますが、公務員給与に関する人事院勧告というものは、一体何を目標にされて、どういうところをその勧告の基本的な要素として、基礎として、これをなされておるのか、まずお伺いしたいと思います。
  4. 佐藤達夫

    佐藤説明員 非常に深遠なお尋ねでございますが、要するに一般賃金と申しますか、それに相当する、と一口に言えば申し上げることができると思います、勤労の対価であり、また、それが生活のかてであるというところから公務員給与も出発するわけであります。  ただ昔は、公務員たる名誉を保持するとか、あるいは品位を保持するとかいうようなこともありまして、いわば白紙で給与のあるべき姿を俸給表の形であらわしておったわけであります。  したがって、民間がどうあろうと、そういうことにはわき目も振らずに、直接官吏としての俸給、これにふさわしい俸給表ということを考えておったわけでありますが、近年におきましては、やはり公務員といえども労働者の一部である、憲法にいう勤労者の中に入るということで、特権的な存在ではないということが、もう一般に周知されておるわけであります。  いわんや近年のような経済情勢のもとにおいては、給与問題、賃金問題というのは非常に深刻な情勢のもとに置かれておる。したがいまして、公務員給与としてあるべき姿をわれわれが勧告いたしますについては、まず何よりも民間給与水準というものをとらえまして、そうしてこの水準には絶対に追いつかせていただきたい、その水準を下回るようなことがあってはならぬということで、いわゆる官民給与比較ということをいわば鉄則としてまいっておるわけであります。今回の給与勧告も、そういうものでございます。  一応そういう程度、お答え申し上げておきたいと思います。
  5. 田邊誠

    田邊委員 公務員給与のあるべき姿については、いろいろと中身はあろうと思います。そうしてまた、その現実的な重点は、いわゆる民間給与との差をなくすということ、これには絶対に追いつかせるという、こういうお話がありました。そのとおりだろうと思うのです。  しかも、公務員が使命とするところは、いわゆる公務員人たちが、現実には団体交渉なり、あるいは団体協約締結権なり、そういうものがない代償として、人事院がそれにかわって労働者労働条件を維持改善するという立場に立っていることも御案内のとおりであります。そういう立場で今度の勧告を見た状態の中では、私はいろいろと問題が内包されていると思うのであります。  そこで、お伺いいたしたいのは、昨年は御案内のとおり総体で七・九%の人事院勧告がなされておりまするが、例年その中身についてはいろいろ問題点指摘されて報告されておりまするけれども、特に今年の勧告にあたって、いまの情勢の中で考慮された点は一体何であるかお伺いしたい。
  6. 佐藤達夫

    佐藤説明員 まず、大体例年そうであったと思いますが、やはり俸給表と申しますか、本俸をあくまでも中心に立てて処置をしていくべきであろう、これは今回の勧告においても大きな基盤としておるところでございます。したがいまして、その大部分の、七・一%に当たる部分本俸引き上げに充てたわけであります。ただ、本俸引き上げにつきましては、たとえば昨年の場合は、各階層ほとんど同じパーセンテージで上げておったわけでありますが、ことしは、上薄下厚とあまりいばって申し上げるとまたしかられますけれども、去年に比べればパーセンテージの上では上薄下厚の形をとった。民間給与上がり方も大体そういう傾向が見られます。特に民間の場合、後に触れますように、初任給相当上顕著な上がりを示しておりますことから、やはり下のほうに厚くなってきておる。それはわがほうとしても、そのまま取り入れるということを申し上げるという言い方もできると思うのであります。したがいまして、いま触れましたように、民間の場合、初任給に非常に顕著な変動が見られるということから、公務員給与につきましても、初任給相当力を入れておるということもつけ加えて申し上げることができると思います。  それから、手当関係では、御承知のように国鉄の定期が、この春大幅に値上がりになりました。これに対応いたしまして、民間でも通勤手当について相当増額しております。わがほうといたしましてもそれを受けまして、非常に大まかな言い方でございますけれども通勤手当従来の五割増しというような形で勧告をしておるわけでございます。なお、手当関係では、お医者さんの関係官民格差が非常に大きいものでございますから、少しでもこれを埋めなければいかぬということから、お医者さんの本俸も上げましたが、なお初任給調整手当について相当思い切った措置をいたしました。  なお、一般の観察といたしましては、先ほど触れましたように上薄下厚ということに当たるかどうか、そういう傾向をとっておるということと、いま申しました医師給与について格段の配慮をしたということ、それから、なお研究職の人、それから技能労務職の人について特に改善に意を用いた、大体そういうことが申し上げられると思います。
  7. 田邊誠

    田邊委員 いまお話のありましたように、上に薄く下に厚い、上薄下厚と申されましたが、そういう形の賃金体系に対して特に配慮したという点や、それから、初任給についてはあとで触れまするけれども民間あるいは公企体等職員と比べての初任給引き上げをしなければならぬ、こういう事態医師技能者に対するところの現在の状態というものが非常に不満足であり、人員が逼迫しているという点の配慮、あるいは通勤手当等のそれらの要素があったことはうかがい知れるのでありますが、大体総裁は、いまあなたのお話のあった点は、今回の勧告満足すべきところまで到達したとお考えでございますか。
  8. 佐藤達夫

    佐藤説明員 この満足、不満足の問題は、これはきわめて相対的な問題でございまして、私どもは精一ぱいやったというつもりでおりましても、さっぱり御満足にならないという事態相当ございます。したがいまして、率直に申しまして、これは完全に満足したとおっしゃることはおそらくないと思いますけれども、しかし、よくやってくれたわいというお気持ちだけは持っていただけるという自信は持っております。
  9. 田邊誠

    田邊委員 たいへん努力をされたことのお話がありましたが、以下、まず内容について簡単に触れていきたいと思います。  今回の勧告中身総体で八%というのでありますが、これは間違いないですな。——現在の一般職国家公務員給与平均は何ほどになってございましょうか。八%が三千九百七十三円というのでありますから、改定をいたしました場合における公務員給与平均は一体何ほどになりましょうか。
  10. 佐藤達夫

    佐藤説明員 給与局長から答弁させます。
  11. 尾崎朝夷

    尾崎説明員 お手元の印刷されてございますところの給与報告の中に別表第一というのがございますけれども、そこには民間比較いたします場合の俸給表種願がございまして、その民間比較いたします場合の給与平均、通常のいわゆる月給の平均でございますけれども、これが四万九千七百九十二円というふうになっておるわけでございます。これと民間の同じ条件にございますところの職員比較いたしましたところが、その間に二千六百七十八円の違いがございまして、この違いをただいま申し上げました四万九千七百九十二円で割りますと五・四%、さらにコンマ以下を申し上げますと五・三八%という数字になっておるのでございます。それを表示のしかたとしましてはコンマ以下一けたで表示いたしまして、五・四%という形で表示してございます。それに、いわゆる四月に支払われなかったけれども四月分としてあとで遡及されるという分の影響分といたしまして、二・六%考慮いたしたわけでございますが、それが千二百九十五円、合わせまして三千九百七十三円の格差があると認定いたしまして、その三千九百七十三円を、先ほどの四万九千七百九十二円という官民給与比較する場合の比較俸給表平均で割りますと七・九八%、表示のしかたとしましてはコンマ以下一けたとしまして八・〇%という形になったわけでございまして、この三千九百七十三円が官民格差ということになりますので、その分を埋めれば民間に追いつくという形になるということでございます。
  12. 田邊誠

    田邊委員 改定後は平均五万三千七百六十五円ということになるわけでありますけれども、したがって、これは、総裁、厳密に言いますと八・〇%ではなくて七・九八%、通称八%、こういうわけでございますな。今度の改定率は、厳密に言いますと七・九八%、まあ若干切り上げた、こういう形で、外部的には八%、こういう中身でございますね。数字の問題でありますから、私はとやかく言いませんけれども、まあ八%台に乗ったという印象でありますけれども、実際には八%弱でありまして、私どもはその結果というものを正確にとらえていく場合には若干誤差があることをあらかじめ認識しておきたいと思うのであります。  次にお聞きをしたいのは、いま総裁が言いました、何といっても給与改定の最も重要な基礎というのは、官民の差をなくすということであります。民間賃金との格差をどうやってなくしていくかということであります。その点からいいまして、この目標となるのは、今年の春の賃金引き上げ民間給与は一体どのくらいになったかというのが基礎であります。  労働省にお聞きしますけれども、今年春の春闘によるところの民間賃金引き上げ率は、総体でどれほどですか。
  13. 松永正男

    松永説明員 昭和四十三年の春、いわゆる春闘におきます賃上げ状況は、労働省調査をいたしましたところによりますと、大手百五十五社の平均におきまして、額におきまして五千二百十三円、賃上げ率一三・五%でございます。この額、率の中には、定昇込みになっております。
  14. 田邊誠

    田邊委員 人事院の場合は、この春闘における賃金引き上げ率をどれほどと実は考えていらっしゃるのですか。
  15. 佐藤達夫

    佐藤説明員 私どものやっております勧告基礎データの算出につきましては、この春闘相場等は実は直接のデータにはなりませんで、御承知のように、四月中に支払われた民間における給与というものをそのものずばりとらえますために、御承知の六千何百の事業所を一々当たり、四十七、八万人の民間従業員に個別に当たって、そして四月中にもらった給与の額というものを集めまして、それの水準一つとるわけで、片やこれに対比すべき公務員側として、四月中にもらった給与の額というものを調べて、そして突き合わせて、その隔たりがどうなっておるかということを見るわけであります。  今回の勧告についての一般予想におきましても、御承知のように、八%を大きく上回るだろうというような予想一般にされておった。この予想は、いま労政局長からもお答えしましたように、ことしの春闘がすごく上がったとか、あるいは民間における一年間の上がりが、たとえば労働省調査によればこうだということから推測をされての一応の判断であったわけでありますが、私どもとしては、いま申しましたようなたてまえでこれを突き合わせておりますから、民間も上がるでしょうが、公務員側もどの程度上がっておるか、公務員側上がりもやはりわがほうのデータに入ってまいりますから、突き合わせて、そう十何%というようなものにならない。ことにことしの場合は、これも御承知でありますが、昨年の勧告によってお認めいただきましたいわゆる暫定手当というものの本俸繰り入れ措置がことしの四月にちょうど行なわれた、それと同時にまたその一部の支給も行なわれておりまする関係等もありまして、それが相当響いて公務員給与が上がっておったということは申し上げられるわけです。したがいまして、これを突き合わせた場合においては、先ほど申し上げたように、大まかにいって八%という勧告になった、こういうことであります。
  16. 田邊誠

    田邊委員 総裁、そう言いますけれども、実際には春闘の上がっている中で、四月から実際に引き上げ分について支給をしているものが対象であることは間違いない。ただ、その対象調査事業所の数や対象人員等において若干の誤差があっても、趨勢としてはこの春の賃金引き上げ状態というものが現実的に基礎になっていることは、これは人事院労働省とも違いないわけです。もちろん、その中に定期昇給あり、あるいはいま言った調整暫定手当引き上げ分あり、これらは当然その中に含まれることは理解される点でありますけれども総体的に言った場合には、これはやはりそんなに違う中身のものではないことは、これはもう御案内のとおりだと思うのです。そういった点から見ますと、労政局長が言ったようなことが、常識的な意味における春の民間給与がどのくらい上がったかという、概括的な意味における一つの結論だと私は思うのです、一三・五%というのは。そういった点から見ますと、公務員定期昇給分が四・〇%といわれておる、それから暫定手当調整手当伸び率というのが、〇・七%といわれておる、これを単純に差し引いたときに、民間給与公務員比較をしたときに八・八%上がっている。今回の勧告は八・〇%であるという点からいって、やはり人事院勧告が、いかなる資料の取り方があったにいたしましても、低きに失しておるじゃないか、こういう批判は私は免れることはできないと思っているのです。  しかも昨年は、民間給与は一二・一%の引き上げ率であります。ここ毎年非常に高くなってきておるわけであります。これは、毎年の趨勢として見た場合に、ある程度比較対象になっているだろうと私は思うのです。一昨年の民間給与一〇・四%、四十年が一〇・三%、三十九年一二・四%、これらと対応して人事院勧告がなされている状態というものを私は拝見いたしますと、やはりこの民間給与賃金引き上げ率にやや見合った形でこれがなされているということを見受けるわけであります。したがって、四十年の民間が一〇・三%上がったときに六・四%、四十一年が一〇・四%に比較して六・五%、両者はちょうど〇・一%の差であります。四十二年は民間が一二・一%、約一・七%に対し、公務員が七・九%、一・四%上がっている、こういう状態であります。そういった関係から今年を推しはかってみますならば、昨年に比べて一・四%の上昇民間では見ているわけです。人事院勧告の場合には〇・一%しか、厳密にいいますと〇・〇八%の上昇率しか見受けられない。これは私は、やはりいま歴史的に申し上げた経緯から見ますと、どうしても今年の人事院勧告——たとえばあとで時間があれば御指摘申し上げるのですが、事業所の数等によっていろいろとこれは問題にされるわけでありまして、従業員の数と比較をした際に、その格差比較的少なくとれる、こういう利点があることも人事院勧告中身としては指摘をされるわけでありますけれども総体的に見て、やはり今年の人事院勧告は、その率において低きに失しているじゃないか、こういう批判は免れないと思うのですけれども、この点に対してはあなたはどうですか。
  17. 佐藤達夫

    佐藤説明員 先ほども触れましたように、民間上がりだけをとらえて判断をされれば、それは確かに低きに失するというお感じをお持ちになることは否定できないと思うのです。先ほどのお話で申し上げました公務員側上がりというものも、ことしは四月の上りが、暫定手当の五分の一を本俸に繰り入れて、それがまたいろいろな関係にはね返る等のことを考えますと、相当上がっているということは、ことしの場合はっきり言えるわけであります。したがいまして、出ましたこの数字というものは正しい格差を示すものというふうに考えます。これは、民間上がりだけ——労働省の毎勤統計もありますし、春闘上がり調査等いろいろありますけれども、これだけによって勧告をするならば、われわれのほうとしてはきわめて仕事も楽なんであります。何も六千何百の事業所に一々当たって、四十何万人から一々個別の表を集めるなどということは全然要らないわけでございます。それはそれとして、やはり正確を期し得るゆえんではない。われわれとしては、どこへお出ししても恥ずかしくない正確なデータをやはり自分で責任を持って積み上げた上で、それに基づいて勧告を申し上げるということから、いま申しました大規模な作業をやって、しかもこれは精密に職種別にもちゃんと分析しております。いわゆるラスパイレスの方式でデータを整理した上でのことでございますから、その点は御信頼いただいて決して間違いないというふうに確信をしております。
  18. 田邊誠

    田邊委員 いま総裁そういうふうにおっしゃいましたけれども、私は、民間賃金比較においても、人事院はなお考慮すべきファクターがかなりあると思っているのであります。たとえば、民間賃金比較する際の事業所規模あるいは職務内容、いわゆる公務員との職務重要度比較、これを一々実はきょうお聞きしたがったのでございますが、その時間がございませんが、さらにもう一つ指摘をしたいのは、民間の場合において、早期退職をいたしました者の再採用によるところの賃金のいわゆるレベルダウン、こういったものが含まれていると私は聞いておるわけでありますけれども、そういった点を比較した際に、この再雇用の低賃金を含めるということは、私は、公務員給与との比較においては適当でないと思うのでありますけれども、この一点だけはいかがですか。
  19. 佐藤達夫

    佐藤説明員 その一点は、いま給与局長から答えさせますが、その根本について、私どもがとっております民間企業規模というものにおそらく第一の問題があると思うのです。二千人とか三千人以上の規模のものをつかまえたらどうかということを前々から伺っておりますけれども、私のほうとしては、企業規模は百人、事業所規模五十人ということでいっておりますから、率直に言ってその辺にもう一つ問題があると思いますが、これは、われわれとしてはわれわれの立場からいたしまして、やはり納税大衆を含む一般の国民の方々に御納得をいただけるものでなければならぬ。先ほど申しましたように、公務員だけが特権的な地位を持っているものではないという世の中だということに前提を置いてのことでございます。したがって、百人以上の企業規模ということで押えておけば、日本の労働者の大体過半数をそれでカバーできますから、その人たち水準をとらえてやっておるということが根本出発点になっておるということをひとつ申し上げておきます。  したがいまして、初任給なんかも、大企業初任給と比べますと、民間水準に合わせたと申しながらも、これは及ばないところがあるということはひとつ申し上げたい点でございますす。
  20. 尾崎朝夷

    尾崎説明員 中途採用者初任給でございますけれども、その関係につきましては、やはり民間における事情をいろいろ調査をいたしておりまして、公務員におきましても中途採用もございますし、民間においてもあるわけでございますから、その関係を、できるだけ中途採用初任給のきめ方というものを合わせるような形で絶えず調整をしつつございます。現在の状況におきましては、学卒ですぐ入った人たちに比べまして、一年おくれで入ります場合には二%ぐらい、したがって、十年おくれれば二割くらいおくれるという感じが現在の状況でございますけれども、そういう関係で、民間初任給のきめ方に絶えずこちらのほうも合わしていくということで現在やっているところでございます。
  21. 田邊誠

    田邊委員 問題は、いわば定年が早まっておる民間給与において、定年後においてほとんど安い給与で再雇用されておる老齢者、中高年齢層、こういったものがかなり企業によっては含まれておるわけでありまして、実はそれらの追跡をしておる調査というものが一体正しいのかどうかということを私は指摘したかったのでありまして、いまお話のようなことは、若干その中身について私の言っておることは違うのでありますけれども、いずれにいたしましても、そういったふうに民間賃金との比較内容については、総裁もみずから言われましたが、一考を要することが含まれておるのではないか。これらに対しては今後さらに検討してもらう必要がある、こういうように実は私は指摘をしておきたいと思います。  そこで、いま春闘における民間賃金引き上げ状態についてお話がありました。問題は、その比較の中においても、特にいわゆる春闘の積み残し分といわれる、五月以降においていわば賃金引き上げが決定をして四月に遡及をした、こういった事業所調査というものが、一体どの程度なされてこれが積み上げになったか、この点だろうと私は思うのであります。二・六%といわれておりますけれども、私は、五月以降において賃金引き上げが決定した民間企業というものは、比較的大企業だろうと思うのです。ことしの春闘状態から見ましても、大きい企業はかなりおくれておる、こういう状態があります。この積み残し分に対する四月分の遡及をしておる、こういう状態を二四・三%というように見られておるというのでありますけれども、私はこの見方というのはきわめて概括的で精密度が落ちておるのではないかと思うのですが、いかがですか。
  22. 佐藤達夫

    佐藤説明員 これは正直に申し上げますが、精密度においては相当落ちておる、これははっきり申し上げるべきことだと思います。  問題の出発点は、要するに、なぜ四月という月を調査月に選んだかということにさかのぼることになると思いますが、御承知のように、この四月にきめました当時は、大体四月に民間賃上げが全部そこに集中して行なわれる、その月をとらまえて比較をすればまあだいじょうぶということでずっとやっておるわけでありますが、数年前から、これも御承知のとおりに、春闘なるものがおくれてきた。そこで積み残し問題というものが起こってまいりました。私ども立場からいえば、四月中に現に支払われたというものに限って出発しておるわけでありまして、春闘の積み残しがあっても、それは現に支払われた時期が五月以降になればこれはしようがない、あきらめなさい、来年のお楽しみというようなことでいかざるを得ないことでありますけれども、そう言っておったのではいかにも現実に積み残しが大きい、公務員諸君も不満だ、また来年に持ち越して変な時期に格差がふえてくるのもおかしいというので、われわれとしては相当勇断をふるって、調査に参りましたときにいわゆる付帯的な調査として私たちはとってきましたから、四月にさかのぼって払うことがきまりましたか、きまりました、というところは、四月中に現に支払われたものを拾って集めてきて、その事業所の数は二十何%ということになるわけであります。このくらいあれば、それを見てよかろうということで出発したことであります。そういったきわめて大まかなことで実はやっております。少しでも、内払いになるかもしれないけれども、翌年に持ち越すものは少なくしようということで出発したわけであります。したがいまして、これを精密にやれということになりますと、そういう付帯調査ではいけないので、本調査でいきませんと、職種別その他のデータが出ませんから、したがって、春闘をまた昔のように早めていただくか、あるいはわがほうとして、今度は、春闘がおしまいになったころを見込んで、六月か七月ごろを調査月にするか、この二つのうちどっちか——あるいは従来とおり切り捨てて来年のお楽しみということにやるか、この三つしかないということになるわけであります。これはきわめて不徹底でラフだといわれてもやむを得ない。ただし、不徹底でラフであったかどうかは翌年の格差に出てきます。前の年に積み残しの拾い方が少なければ、翌年に格差がその分だけ持ち越されますので大きく出るわけです。ところが幸いにしてことしの場合五・四%、昨年五%ということから見ますと、相当拾っていたという見方はできる。という意味で、今日の条件のもとではこれは合理的なやり方だ、あまり春闘がおくれますと、これはいよいよ考えなければならぬということは心の中に思いながらも、ことしはそれで終わったということであります。
  23. 田邊誠

    田邊委員 総裁、積み残し分は毎年ふえる傾向ですね、若干妥結の時期がおくれてきて。そういった点からいうと、いわゆる積み残し分の割合が去年より多くなる。これはやはり、だんだんふえる傾向じゃないかと思うのですが、いかがですか。
  24. 佐藤達夫

    佐藤説明員 それで実は困っておるわけなんです。これは国会の決議かなんかで春闘を繰り上げろという決議でもしていただければ別でございますけれども、そうでなければ、おくれほうだいにおくれるということになると、どうしても私どものいまのようなやり方ではとてもいかぬということで、先ほど触れましたように、調査時期をもっとずらして、皆さんお済みになった時期をねらってやるよりほかないという方向につながってまいるわけであります。
  25. 田邊誠

    田邊委員 そこで、時間がございませんから、内容の点についてもう二点だけお聞きをしてそれぞれの締めくくりの問題に入りたいと思うのですが、まず第一点は、初任給についてであります。先ほどお話がありましたけれども初任給はかなり引き上がりつつある、こういう状態であります。私がお聞きしたがったのは、公務員試験を受ける人たち、上級職試験なり、初級職試験なりを受ける人が、毎年少なくなる、こういうことが一つあるそうですね。それから、合格をしたけれどもその後辞退をする人たちがかなりふえてきておる、こういう状態だそうであります。これは非常に憂うべき状態ですね。公務員の質の低下ということからいっても非常に憂うべき状態です。実はそういう点を数字的にお聞きしたがったのですが、これは省きます。  しかし、いずれにいたしましても、大学卒については約一〇%の増加を今年はかったのでありますが、これとても六大都市において三万円をちょっとこえる初任給。それから都市手当のないところは二万八千九百円、こういう状態でありますから、これでは実際にはいわゆる三公社五現業といわれるところや民間の大企業に比べてみても、大学卒業者を公務員に吸収するという点からいって、私は必ずしも万全であると思いません。  さらに、高校卒業の場合には、今回は約八・七%の増を初任給において見ておるのであります。しかし、どうでしょうか、高校卒業者の民間における初任給引き上げ率は、私の調べたところでは約一二・一%になっていると聞いておるわけであります。三公社五現業の場合においても大体二万二千円から二万三千円、民間においてもいまや高校卒業者といえどもかなりの企業において二万一千円−二万三千円くらいのところの初任給支給するところまできたと私は聞いておるわけでありまして、この程度の初任給引き上げでは、大学卒業はもちろんですけれども、特に一番の働き手である高校卒業者の場合において非常に不足ではないか、こういうふうに私は思うのであります。約千六百円引き上げるという形でありますけれども、私は少なくともこの倍額くらいの引き上げをしなければ、実際に実務として働く公務員採用することは今後ますます困難になるのではないか、こういうふうに思っておるわけでありますけれども、いかがですか。
  26. 佐藤達夫

    佐藤説明員 全く御同感でございます。おっしゃるとおりなんで、公務員試験の志願者が去年、あるいはことしにかけて非常に減りつつある。ことに高校卒の人たちの場合には、去年にくらべて一七%くらい減っておるということで、御同様の心配を私どもしておるわけであります。ただ民間との初任給比較の問題になりますと、いまのお話の場合には、たとえば公務員の場合調整手当というものがありますから、それらも勘案の上で御判断願わねばなりませんけれども、それにしても先ほど触れましたように、大会社に比べたらこれは及ばないということははっきりしております。しかし、さればといって、じゃ大会社並みに合わせていいかということになると、また先ほどの過半数の労働者をカバーするだけの百人以上の規模という原則との間に板ばさみみたいになるもので、われわれとしては求人開拓その他について十分努力をしながらいまの局面を打開していくほかない。初任給関係においても少なくとも百人以上の企業規模の場合と比べれば決して遜色はない、多少上目になっておるかもしれない。そういうことでいかざるを得ないというのがほんとうのところでございます。
  27. 田邊誠

    田邊委員 いまは公務員で細く長く生きられればいいというような、そういう世代ではなくなっておるのですね。やはり現実主義でありますから、たとえば初任給のいいところ、いろいろな厚生施設の行き届いておるところ、昇進の早いところ、こういうような現代的な青年の考え方というものを私どもは見たときに、いま総裁も言われたとおり、まだまだ十分な初任給引き上げじゃないと思います。この点に対しては、私はあと総務長官なり労働大臣にお聞きをしたいのでありますけれども、実際にやはり公務員の質を高めるという点から言いますならば、この引き上げ率はきわめて不満足である、こういうように私は言わざるを得ないと思うのであります。総裁は異例の総裁談話を発表されて、この勧告あとのほうでもって、公務員給与は、国民の負担によってまかなわれているのであるから、全体の奉仕者としての自覚のもとに、綱紀の厳正を期することはもちろん、行政サービスの向上と公務能率の増進に一そうの努力を傾注されたい、こういう異例の談話を発表いたしました。私はこの談話についてはいろいろ注文があるのですけれども、これはおきますが、一番最後のほうに、「公務能率の増進」ということを書いてあるけれども、しかし、実際には、初めて職場に入った若い人たちを、あなたの談話が要望するような形でもって職務に精励させる点については、私はこの引き上げは少なきに失しておる、こういうように思わざるを得ないのでありまして、ひとつ今後についてさらに検討をわずらわしたいと思っております。  もう一つ問題点は、正式の勧告にはございませんけれども、今回の勧告でもって特別昇給のワクを現行の一〇%から一五%に広げたのであります。一体この特別昇給のワクを拡大したのはどういう意味でありますか。今後、一体この特別昇給のワクについてはどのような方針で臨まれようとされるのか、その点お伺いしたい。
  28. 佐藤達夫

    佐藤説明員 いまのお尋ねは、御引用をいただきました私の談話にも関係があるとごらんいただいてけっこうであります。昨今、世間の公務員に対する目がなかなかきびしいものがございまして、われわれとしてもお互いに奮起しなければならぬという気持ちをまざまざと抱かせられるのであります。何ぶん公務員の場合には、年功序列型、あるいは「三ず」とか、われわれとしてはそんなことは絶対にないと大きな声で否定したいような批判も世の中にあるという認識をしております。それとこれとは直接関係ありませんけれども、要するに勤務成績、実績によって待遇をしていかなければならないというのは、公務員法あるいは給与法についての基本原則であります。その原則にのっとって今回の手当てをいたしたということになるわけであります。勤務成績が特に優秀とされるもの、これが勤務成績の評定等する場合には、制度上、三割までは勤務成績特に良好という判定をしてよろしいというワクが一応あるわけであります。それに対応いたしまして特別昇給のワクは、御承知のように現在その役所の定員の一〇%というワクがあるが、それじゃちょっとパーセンテージが少な過ぎやしないかということで、今回、勤務実績に応じての特別昇給のワクを広げまして一五%にしたということがいまの報告にあらわれたことであります。
  29. 田邊誠

    田邊委員 私の質問に対して的確に答えてないけれども、私はこの種の問題に人事院が手をつけるについては、相当いろいろな要素を加味しなければならぬと思うのであります。あなたに私がお伺いした一番最初の御質問は、御案内のように、民間給与との格差をどう縮めるか、このいわば最重要な柱に沿って今度の勧告はなされたと私は思うのでありますけれども、いわば職務内容職務のやり方によって昇給が違ってくるというこの特別昇給のワクを広げることは、私は現状において人事院が今回の勧告の中に含める必要はないのではないかと思うのであります。まだまだ重要な引き上げをしなければならない要素がたくさん、いまあなたのおっしゃったようにあったわけでありますから、そういった点からいって、特別昇給のワクを今回広げたことの意図を私どもは疑うわけであります。結論についてのお答えはございませんでした。なぜ一〇%から一五%に引き上げなければならぬか、今後は一体どういう方針で臨むかということに対して、明確なお答えがなかったのでありますけれども、私はこの特別昇給については、現状の中でもって人事院がここに手をつけるということに対しては大いに疑問とするところでありまして、さらに私は、今後この問題に対しては十分な考慮を払ってもらわなければならない問題ではないかと思うのであります。  実はこれを追及をしていたいのでありますけれども、時間がございませんので、大臣と総務長官お見えでございますから、最後に人事院総裁、いまお聞きをしてまいりましたことから勘案をして素朴に疑問に思うのは、民間給与引き上げは四月でありますね。なぜ五月に勧告はなされなくちゃいけませんか。
  30. 佐藤達夫

    佐藤説明員 民間給与引き上げは、必ずしも四月に限ったことではないので、あるいは秋に上がるところもございますし、これはばらばらに上がっておりますけれども、四月が一番多いということで先ほど触れましたように調査月を四月としたということであるわけです。ただし、四月に調査したということならば、四月にさかのぼったほうが合理的ではないか、なぜ五月にするのか、これは先回りして申し上げますけれども、そういう議論があるわけです。私どもとしては、なるほど四月説も一理なきにしもあらずということで謙虚に検討はいたしておりますが、これは何ぶん長い間五月にやってまいっております。これはこれとして、決して間違いではないということでありますので、今回も五月ということにいたしましたというわけであります。
  31. 田邊誠

    田邊委員 いままで理論的なお答えをいただいておった人事院総裁としては、この五月勧告というのに対するあなたのお答えは、まことに支離滅裂であります。四月であってはならないという理由はごうもございませんね。民間給与をわざわざ積み残し分についても四月遡及の分について二四・三%見たという点から推しましても、四月が起点でありますから、したがって、人事院勧告四月実施をあなたのほうで言われることも、理論的にはごうも間違いございませんな。これは間違いない。そうでございますね。
  32. 佐藤達夫

    佐藤説明員 ちょっとお答えさせていただきます。  四月に上がるからというわけではないので、おことばがありましたけれども、われわれとしてその四月遡及の御意見に対して一理あると思うのは、四月に調査した結果出てきた計算ならば、四月にさかのぼって埋めるのが当然ではないかというお考えが当然出てきたということですね。しかし、それはなるほど、一がいにこれは間違っているということでわれわれは無反省にいこうとは思いません。なるほど考えてみれば、そういう論も立つかなというところまで謙虚に反省をしながら、なお検討を続けておるということが真実でございます。
  33. 田邊誠

    田邊委員 ひとつお答えを大臣と総務長官にいただきますが、それとの関連で総裁、今回の勧告は、政府が称しておる総合予算主義なるものとの関連においての勧告というようなお考えは、当然なかったわけでございますな。これは全然関係ございませんな。
  34. 佐藤達夫

    佐藤説明員 総合予算主義というのは、大体言い出したのは私じゃないかと思うのであります。それは国会委員会でも前に申し上げております。とにかく賃上げのための財源だけは、当初予算でたっぷり保留をしていただきたい、足らなければ補正予算でそれを継ぎ足していただけば完全実施は楽じゃないですかということで申し上げてきたわけであります。私どもはその頭でやっておりますから、いまお話しのような点には心配なしに、この格差が出ました、この格差は完全に埋めていただきたい、それ一本やりで臨んでおるわけでございます。
  35. 田邊誠

    田邊委員 総務長官、たびたび公務員給与に対しては各委員会でもって質問があったと思うので、あなたおわかりのとおりでありますが、すでに勧告を出されてから十日以上経過しておる今日であります。したがって、内閣委員会や地方行政委員会等でお答えをいただいたことは私も承知しておりますけれども、もうきょうあたりは、給与担当のあなたとしては、これに対するところの一つ判断をなすべき時期ではないかと思うのであります。そこで、人事院勧告中身について、私はいろいろと問題点がありますけれども、これはこれとして、政府は中身についてもいろいろとお考え合わせいただくと同時に、この完全実施は、当然政府の責任のことでありますから、またあなたが中心になっておる責任でありますから、これに対してあなたは、相当な決意をされておると思うわけでありますけれども、長官の政治的な判断と決意を端的にお伺いしたいと思うのです。
  36. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 私どもは、たびたびお答えをいたしておりますように、人事院勧告はあくまでも尊重をするというたてまえのもとに、勧告が出ました今日におきましては、完全実施を最高の目標といたしまして鋭意努力いたしておる次第でございます。もちろん政府といたしましていろいろとこれに対します議論がございますけれども給与の責任者といたしまして、ぜひともこれが尊重を、十分に目的を達したい、こういうふうな意図のもとに閣内で努力いたしております。
  37. 田邊誠

    田邊委員 尊重ということばは非常に適当なことばでありまして、言い回しとしては非常に適当なことばでしょうけれども、しかし、あなたのほうのつとめは、人事院勧告を守ってこれを実施することにあると思うのです。そういった点で、少なくとも昨年よりも大幅な民間賃金引き上げがあったことに基づいて人事院勧告がなされました。総裁とのやりとりで、いわば民間賃金引き上げ率に比べて、人事院勧告引き上げ率は低きに失していると私は指摘をしたのでありますけれども、いずれにいたしましても、そういった勧告がなされた今日において、政府がこれを守ることは当然の義務であります。したがって、いままで尊重するというたてまえで、いわばなしくずしにこれが実施の時期をおくらしてきたという経緯がございますけれども、ほんとうにあなたに、公務員給与人事院勧告に基づいて改善をするんだという意気込みと決意があれば、この完全実施は不可能ではないでしょう。不可能ですか。
  38. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 そういった情熱を持って対しております。
  39. 田邊誠

    田邊委員 可能でありますか、可能でないですか。
  40. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 いまだ諸般の情勢の総合的な結論は出ておりません。
  41. 田邊誠

    田邊委員 あなたは可能であると思うか、可能でないと思うか、どちらですか。
  42. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 最善の努力を尽くします。
  43. 田邊誠

    田邊委員 委員長、注意をしてもらいたい。質問に対して正確な答えをしてないじゃないですか、総務長官
  44. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 最終的な結論は、まだ申し上げられない段階でございます。
  45. 田邊誠

    田邊委員 労働大臣はいかがお考えでありますか。労働者の権益を守る立場から、あなたも閣議では完全実施に迫るべきであると発言をしているように私は聞いているわけでありまして、その熱意を買っているわけでありますけれども、ひとつ本委員会において、労働者の権益を守る立場に立って労働大臣はいかがお考えですか。
  46. 小川平二

    ○小川国務大臣 これはあらためて申し上げるまでもないことでございますが、人事院による勧告の制度は、公務員が基本的な権利に制約を加えられておるという事実に対応して給与の適正を期するために設けられた制度でございます。したがって、この勧告の趣旨を尊重して、完全実施に努力するということは、私の義務だと存じております。ただ、これが完全に今回実施できるかいなかということは、ただいま折衝いたしておる最中でございますから、この場で私が全責任を負って御答弁を申し上げるというわけにはまいりかねますけれども、これから先も鋭意努力する決心でございます。
  47. 田邊誠

    田邊委員 そこで総務長官、時間の関係でひとつ端的にお伺いしますが、やはり毎年毎年賃金引き上げをしておりまするし、さっきお話の出ましたように、初任給引き上げてもなかなかいい公務員が集まらぬじゃないかという、こういう状態も出てきておるわけであります。そういった点の苦心が今度の人事院勧告ににじみ出ておるわけですね。これは、私は満足すべき状態ではないと思っておるのですけれども、そういう時代の要請があるわけです。このことを考えるときに、やはり労働力の不足という現実の事態ということを考えたときに、この公務員給与をいかにすべきかということは、大きな現政府の政治的な課題であることは言わずもがなであります。そういった点からいいまするならば、昨年まで努力をされたと言いますけれども、私どもはたいへん損失を公務員に実は与えておると思うのです。そういった点からいいまするならば、今年はさらに前進的な立場をとるであろうということは、これはもう私ども大方の一致した意見であり、国民の声だと思うのです。昨年までに比べて総務長官の努力というのが、さらに前進的な立場であるということについては、これはもう間違いない事実ですな。いかがですか。
  48. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 全力をあげております。
  49. 田邊誠

    田邊委員 あなたに全力をあげてもらうのは当然なんですよ、これは。しかし、全力をあげた結果というものが、より前進的な状態になるのか。結果として後退になったのでは、いかに全力をあげてもこれはどうにもならぬ。そういった点からいいまして、やはりさらに前進的な立場をとってもらいたいという私のことばの意味は、あなたはおわかりになっていただけると思うのです。そういった意味合いで、そういう私の質問の観点に立って、その実現に向かって邁進をされているというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  50. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 邁進をいたしております。
  51. 田邊誠

    田邊委員 大臣、総合予算主義の問題については私も実はいろいろと質問をいたしたいのですが、時間がなくなりましたからあえて言いませんけれども、これはあくまでも目的ではなくて手段でありますからね。したがって、いま予備費が一千二百億あるというのでありまするけれども、五月実施でも八百億をこえるというところでございましょう。そういったことでありまするから、いずれにいたしましても政府の決意と努力があれば、この完全実施は決して不可能でないわけです。いわば給与担当のあなたの先行的な努力というのがなされることが、この解決のために非常に力になっていくだろうと私は思うのであります。そういった点で総務長官も、やはりこれから先も最大の馬力をひとつかけてやっていただきたいと思うのですけれども、一体いつごろ閣議決定をされるのですか。
  52. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 総合予算主義のたてまえから申しまして、本年はできる限り早い時期にきめたい、こういうふうに努力する所存でございます。
  53. 田邊誠

    田邊委員 本委員会は、また来月委員会を開くだろうと私は推測するのでありまするが、来月の中ごろには大体めどをつけられる、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  54. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 さようできたらいたしたいと思っています。
  55. 田邊誠

    田邊委員 きょうは、官房長官も見えておられませんからこれ以上追及できませんけれども、私は、政府が何かイージーゴーイングな形で、ある程度実施時期を早めることをしたらいいとか、あるいは人事院勧告中身についてはうのみにしてやればいいとか、いろいろといままでの習慣に基づいたようなやり方ではいかぬと思うのであります。ことしは、優秀な総務長官もおいででありまするし、誠実な労働大臣もおいででございまするから、この際、ひとつ早期の決定と同時に、この完全実施についてあなたもいままでにない馬力をかけていただいて、これが決定を見ることを私は強く要望したいと思うのです。この次の委員会までにぜひひとつこの努力が結実するようにさらに拍車をかけていただくことを特にきょうは要望しまして、きょうのところは一応質問を終わっておきたいと思います。
  56. 八田貞義

    八田委員長 大橋敏雄君。
  57. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 限られた時間でございますので、答弁はイエスかノーか、明確に簡単に答えてもらえればけっこうでありますが、具体的問題に入ります。  愛知用水公団というのがありますけれども、そこにも労働協約があるはずであります。実はきょう私がお尋ねしたいことは、公団につとめている一職員が、病気であるにもかかわらず、また本人の意思にもかかわらず、強制的に他に転属させられたという問題から入りたいわけであります。異動に際しては本人の意向を考慮して、公平に行なうというのが労働協約の中にもあるはずでございますが、その点はいかがでしょうか。
  58. 島崎一男

    ○島崎説明員 仕事の関係で、いろいろな組織相互間に計画的に人事異動を行なっておりますが、その際は組合とも了解を得た上で行なうというたてまえをとっております。
  59. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私がいま聞いているのは、愛知用水公団にも労働協約があって、その中にいま私が言いました、異動に際して本人の意向を十分考慮し、そして公平な取り扱いを行なうという内容が明確にあるかどうかと聞いているのです。
  60. 島崎一男

    ○島崎説明員 協約はございますが、本人の意向をたてまえにするという明確な規定はございません。そういう趣旨の、本人の意向を中心にするという明確な規定はございません。
  61. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 ちょっとお尋ねしますが、その協約の三十四条に「業務の運営上職員の異動を行なう場合には本人の意向、労働条件、技能、各職場間の業務量の均衝等を考慮して公平に行なう。」こうあるのですよ。これは認めるでしょう。
  62. 島崎一男

    ○島崎説明員 その点は認めます。
  63. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 昭和四十二年の四月の一日付をもって愛知用水公団東京事務所勤務から同公団の豊川事務所に転勤を命ぜられた職員の小林幸雄という人がおりますが、この人の転勤についてはこの労働協約の規定どおりに本人の意向が考慮されたかどうかという問題です。
  64. 島崎一男

    ○島崎説明員 転勤につきましては、本人のほうは家庭の事情等を説明いたしまして、希望としてば転勤したくないという事情もあったようでありますが、先ほどの労働協約にもありますように、仕事の全体の配置等もございまして、本人はかなり能力を持っておる、東京事務所のほうは人間のわりに時間の経過とともに仕事の量も少なくなりまして、豊川事務所は現場のほうの仕事を中心に行なっておりますが、そちらのほうに行って能力を発揮したほうがいいではないかというような大局的観点で異動をしたわけであります。
  65. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまの答弁の中では、本人からはその意向に従えない趣旨のお話があったように聞きましたけれども、その事実は三月の二十五日ごろ、名古屋の公団人事課長から本人に直接豊川事務所に配置転換したいので考慮してほしい、このように話があったそうです。したがいまして、本人はそのときに家庭の暮らし向き、あるいはおかあさんの病気、その上に自分の病気、肺浸潤療養中であるので悪条件が重なっておりますから、この際は赴任できませんというように断わったそうです。そうしますと、人事課長はそれを了解して名古屋へ帰った。ところがその後、直接上司であるところの東京事務所長から、事前に何の話もなく、突然四月の一日付をもって転勤が発令になった、こういうわけなんですけれども、この点の事情はどうなんです。
  66. 島崎一男

    ○島崎説明員 個別的の人事異動に農林省として一々タッチしておりませんので、その明細にわたったことにつきましてはただいま資料を持ち合わしておりません。
  67. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 先ほどから何べんもくどいように言っておりますが、本人の意向が最重点的に尊重されねばならないと私は考えるわけであります。本人からははっきりとたずねてきた公団の人事課長——この人からそうした話がくること自体が異例なことでありますけれども、それにしても事情を明確に、ぐあいが悪いということなどを言っているわけですね。ところが、その後いま言ったように、四十二年の四月一日付で東京の所長のほうから何の連絡もなく突然発令された。本人は驚いてさっそくかかりつけの病院の医師の診断書を東京事務所長あてに提出しております。そして診断書のとおりであるので発令どおりに赴任できない、こう申し出をしているわけでありますが、その所長はこれを拒否して発熱中であるにもかかわらず無理やりに所長自身が本人を豊川まで連れていって着任させた、こういうことになっておるのです。こういうことを私は聞いたときに、まるで悪質な手配師ではないかというように思われるほどの人権じゅうりん的な感じを受けるわけでありますが、こういう事実があったとするならば農林省の立場としてどうお考えになりますか。
  68. 島崎一男

    ○島崎説明員 その点、事実の認識を間違っておるといけませんので、私の了知しております範囲で御説明申し上げますと、四月一日に豊橋転任という辞令が出ておりまして、四月十二日に豊橋に着任しております。十三日には名古屋の事務所にあいさつ回りをしております。それから以降、四月十四日から二十二日までは年次休暇を一身上の都合ということでとっております。それから二十四日から二十六日には豊橋に出勤をしまして、本人の名前で赴任旅費の請求を行なって受領しております。その際本人は赴任の点については納得したものと公団のほうでは考えておるようでございます。
  69. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いま十二日に転任しているということですけれども、これは発令後いわゆる赴任までの猶予期間の期限なんです。ぎりぎりの日なんです。本人はまだぐあいが悪かったわけでありますが、それを所長がみずから連れていったというわけです。私は本人のその後の状態を聞いてみたんですが、必要にぐあいが悪かったので、すぐあくる日に東京に帰ってきて、さっそく診断を受けた、そうしたところが結核の病状とともに、肋膜炎までも併発していたというような診断書が出ているのを私は見たわけでございますが、この事実から推察していきますと、かなり無理な転任をさせたな、こう考えるわけであります。この点について法務省、また労働省の基準局の方から見解を聞きたいのです。
  70. 宮代力

    ○宮代説明員 配置転換の問題につきましては、労働協約の内容とかいろいろな点を十分検討いたしませんと、何とも申せないと私ども考えております。  ただ一般的に申しまして、先ほど農林省のほうからお答えがありましたように、やはりその配置転換の必要性とか、それから先ほどお話の出ましたような、もし本人が病気であれば、その病状とかいう問題をいろいろ検討した上でないと、直ちにこれが人権上いけない、あるいは人権侵害になるということは申せないというように考えます。ただ、ほんとに本人が病気で、そういうふうに無理に配置転換させれば病状も非常に重くなるとか、その生命に危険があるということであれば、もちろん人権の面から許されないであろうというふうに考えております。
  71. 村上茂利

    ○村上説明員 労働省のほうで承知いたしておりますのは、御当人が豊橋の労働基準監督署に対しまして、本年の六月分からの給料が支給されていないので、それを支払ってくれるようにいろいろお話があった旨を聞いております。  ただいま御指摘の配置転換の問題につきましては、この席で初めて私伺うわけでありますが、一般論といたしましては、労働協約の配置転換に関する条項の解釈、そうしてこれが実際に実施されるにあたりまして、ただいま法務省からもお答えがありましたように、業務の状況なり、本人の健康状態なりる総合的に判断して処理せらるべきものと考えますが、現在具体的な調査をいたしておりませんので、本件につきましてどうこうという判断は差し控えたいと思います。
  72. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 先ほど言いましたように、四月一日付の発令ですけれども、本人から四月五日付の診断書が出ておりますが、その内容の一部を読みますと、「全身倦怠及び微熱を発したので、X線撮影の結果再発の傾向を認める。依って当分の間軽労務のみに限って、治療を必要とする」、これは確かに重症ではないけれども、そのときには病気中であったという一つの証拠であると思います。このような病人をどうして無理に転任させねばならないかというその理由は一体どこにあったのか、これは農林省としては了解しておられますか。
  73. 島崎一男

    ○島崎説明員 労働協約にもありますように、やはり考慮事項の一つとして各職場間の業務量の均衡というような問題がございますが、公団の業務は四十二年度で豊川の基幹業務を完了するということで百三十二億の事業費を計上しまして、最終段階になったというようなことで、職場の事業量から見ますと豊川の職員数がかなり足りなかったと思います。それで小林氏の件につきましては先ほど診断書の件にありましたように、当分の間軽労働という診断もございましたので、豊川の庶務の仕事であれば差しつかえはなかろうというような事情を考慮いたしまして転勤を発令したというふうに聞いております。
  74. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 この辺、非常に不可解な問題がたくさんひそんでいるようであります。推理小説ではありませんけれども、いろいろと推理してまいりますと、ほんとうにいま言ったような不可解な問題がありますので、今後これを正確に調査を願いたいと思うのです。  時間がないので次に移りますけれども、本人はいまも自宅療養を続けているわけでありますが、公団当局としては、本人があたかも無届け欠勤であるかのような扱いをしているというわけですね。これは診断書が出ているわけですけれども、なぜこういうふうな扱いになっているのか。つまり医師は、結核であるとはっきり診断しているわけでございますが、そういう人をつかまえて、無届け欠勤である、——まるで人権無視ではないかあるいは人権侵害ではないか、こういうふうに私は感ずるのですけれども、これは法務省、どうですか。
  75. 宮代力

    ○宮代説明員 具体的な事案がわかりませんと、ちょっといまここでお答え申し上げることはできないと考えます。
  76. 島崎一男

    ○島崎説明員 その点につきまして、私の存知しておることを説明させていただきますと、本年の六月に入りましてあらためて診断書の追加が出ておりますが、その診断書によりますと、漸次快方に向かっているという診断でございます。その点公団のほうも、やはり従来のごたごたがございましたので、直接医者に問い合わせましたところ、公団との関係等も考慮しまして、保健所あるいは公団のかかりつけの医師等の診断を受けられたほうがよいのではないかという返事がございまして、それに対しまして、本人に対して、医者のほうはそう言っているが、ひとつそういう診断書を出したらどうかという連絡をしましたところ、本人からはその後連絡がないというような現状のようであります。
  77. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 では、次に移りますけれども、先ほど基準局長から、六月、七月分の給料が払われてないという連絡を受けている、こういうお話がありましたが、これは私は重大な問題ではないかと思うのです。法律公務員職員の身分を保有している者に対して、公団当局は給与規程に従って給与を支払わねばならぬ責務を負っていると私は思うわけです。これに違反することは、政府機関たる公団としてきびしい制裁を受けねばならぬと思うのでございますが、こういう点に対してどうお考えになりますか。
  78. 村上茂利

    ○村上説明員 本件につきましていろいろ調査をいたしておるところでありますが、公団の給与に関する規程等を私ども見ますと、結核療養で、一年までは俸給の一〇〇%そのままを支給する。一年を経過した場合には休職させることができる。休職が発令になりますと、八〇%に給与が減額されるわけでありますが、本件につきまして療養のための休職発令をしたという事実はございません。そこでどのような扱いになるのか、その事実関係を調べておるわけでありますが、突き詰めてまいりますと、結局は医師の診断が問題であるようでございます。医師の診断書が、なお今後療養を要するというような形で出てきて、それを公団側がどう処理するかという扱いの問題になるわけでありますが、その間、医師の診断の問題がありますし、診断があった場合にどのような処理を公団がなすのか、その間の問題処理につきまして、現在の給与規程をどのように読むべきかという点について明確でない点がございます。そこでそのような点を中心にいたしまして、豊橋の監督署といたしましては、当事者間でこの事実関係をさらに明確にして処理するように、話し合いをさらに継続するようにというふうにいろいろ申し上げておる段階でございます。
  79. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 実は四十三年六月二十日付の診断書を見ますと、「病名肺浸潤、右症により先年来治療中の処、経過良好なるも、尚時々微熱を発することがあるので、向后約六ケ月間の療養を要するものと認める」、六月にこうして診断書をとって送っているわけですがね。そうしますと、いま言う六、七、そして八月分、この給料は何らかの形で本人に来るのがたてまえですね。
  80. 村上茂利

    ○村上説明員 先ほども申し上げましたように、療養のために引き続いて休業しなければならないという状態が明確でございますと、休職発令をするかどうかという問題になってくるわけでございます。しかし、ただいまその診断書をお読みのとおり、だんだん快方に向かっておる。療養は必要だが、それが通院療養の程度であるのか、仕事は絶対してはいけないのか、そういった点の判断が必ずしも明確でないわけでございます。したがって、先ほど農林省の監理官からも御答弁がございましたように、そういった程度をさらに明確にするために他の医師の診断も受けたらどうか、いろいろ度合いを確認いたすためにさらに慎重な診断等を要するということでやっておりますので、この関係がはっきりいたしませんと支給せらるべき給与が支払われていないのか、そうでないのかという点がつかめませんものですから、いま慎重に調査をいたしておる次第でございます。
  81. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 慎重に御調査願います。  次に進みますが、東京の事務所長は、ことしの三月三日付で定年退職になっておると聞いておりますが、間違いありませんか。
  82. 島崎一男

    ○島崎説明員 そのとおりであります。
  83. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 そして、そのあくる日の三月四日付で嘱託に採用されているということも聞いておりますけれども、どのような業務を嘱託したのか、お尋ねいたします。
  84. 島崎一男

    ○島崎説明員 東京事務所長事務取扱ということになっております。
  85. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 東京事務所長といえば、公団では本部の部長あるいは現場の事業所長と並んで、公団組織では最右翼の重要ポストであると私は思います。このような幹部のポストを職員でない嘱託にやらせるということは、私はいままで聞いたことがないのですけれども、これは一体どういうことなんでしょうか。公団法の定めからいってこれは可能なんでしょうか。
  86. 島崎一男

    ○島崎説明員 公団では嘱託服務規程というものがございまして、「一定期間継続して公団に雇用され常時公団の業務に従事する者であって理事長が嘱託として任命した者」を嘱託というふうに定めておりますが、現在の所長事務取扱は、従来正規の職員として東京事務所長の職務を果たしてきたわけでございますが、御承知のとおりこの十月一日付をもって愛知用水公団は水資源開発公団と合併するという法律が通過しておりまして、目下その引き継ぎの諸準備をやっておりますので、その期間が短く、しかも従来のいきさつがございますので、その従来のいきさつを踏まえて終戦処理をどうするかという観点に立ちまして、従来のそういう事項に習熟している人がいいんではないか、そういう判断で、服務規程に従いまして嘱託を委嘱したということになっております。
  87. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私が聞いているのは、嘱託になったことはわかるのですが、その嘱託の身分で東京の事務所長という権限をそのまま履行できるのかどうかという問題を聞いているわけですよ。もう一度聞きますけれども、その公団組織規程五十二条に「必要に応じて嘱託を置くことがある。嘱託は上司の命を受けてそれぞれ命ぜられた職務を行なう。」——いわゆる特命ですがね。——とあって、決してある権限を与えられ、人事を管理したり、会計上の責任者となるなどはできない、私はこのように思うのですけれども、その点はどうなんですか。
  88. 島崎一男

    ○島崎説明員 愛知用水公団組織規程第五十二条の二項によりますと「上司の命を受けてそれぞれ命ぜられた職務を行なう。」とありまして、職務内容に限定がございませんので、上司の判断によってその職務内容を与え得るというふうに解釈しております。実情を考慮して先ほどのような形にいたしたのでございます。
  89. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 もう一度お尋ねいたしますが、従来分任契約担当役とか分任物品管理役とか、また分任不動産管理役あるいは分任出納命令役等は、これは嘱託の身分でできるのですね、こういう仕事は。
  90. 島崎一男

    ○島崎説明員 上司の命があれば可能と考えております。
  91. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は、民間会社だって、こんな嘱託がそれほどの権限を有するようなものはない、こう心得ておりますが、いわゆる愛知用水公団が今度合併されるという、その期間だからそれを認めているのである。——上司の許可というのは一体だれの許可なんですか。
  92. 島崎一男

    ○島崎説明員 辞令は理事長名で出しております。
  93. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 理事長名で出ればどんな仕事をやってもいいわけですね。
  94. 島崎一男

    ○島崎説明員 おのずから組織のルールがございますから、先ほど申し上げましたように、合併の経過事情がございますので、そういう点を特に考慮した措置であるというふうに考えております。
  95. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 時間がありませんから簡単に申し上げますと、三月四日以降今日まで愛知用水公団東京事務所振り出しの小切手には、東京事務所長前田正義の名義がはっきり出ていると聞いておりますが、これはこれでよろしいのですか、嘱託の名義で。名前は東京事務所長前田正義、身分は嘱託ですね。これは違法ではないのですか。
  96. 島崎一男

    ○島崎説明員 その嘱託の辞令とともに、東京事務所所長事務取扱を命ずるというのが出ておりますので、職務権限はあると考えております。
  97. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 法務省の方に聞きたいのですが、いまのような場合どうなんですか。
  98. 田邊明

    田邊説明員 お尋ねの点は、小切手の振り出し名義人に関してのことだと思うのでございますが、小切手法上は、その名義が要するに東京事務所である、愛知用水公団の東京事務所を代表しておると見られれば小切手は有効だろう、こう考えます。
  99. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 もう一回確認しますが、嘱託という身分であって、小切手に押されている判が嘱託という名前さえなければいいというわけですか。
  100. 田邊明

    田邊説明員 小切手上の表示としては、東京事務所長を表示しておられても小切手法上は有効だろう、要するにそれは機関の代理人として小切手を振り出しておるわけでございますから、要するにもとの振り出し人は愛知用水公団だ、こう考えられるので、代理判さえあればよろしい、こういうふうに考えるわけです。
  101. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私はこれは問題だと思いますので、この次の委員会にこの問題は引き継いでみたいと思います。  時間がありませんので、最後にもう一つ聞いて終わりたいと思いますが、経企庁の方来ておりますか。——十一月一日付をもって愛知用水公団が水資源開発公団に合併されると聞いておりますけれども、その際愛知用水公団の職員の身分はどうなっていくのでしょうか。
  102. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 先般の国会で成立をいたしました水資源公団法の改正によりまして、附則第二条によりまして愛知用水公団の持っております権利義務一切を水資源公団に承継をするということになっております。当然この職員は水資源公団の職員として取り扱われる、こういうふうになっております。
  103. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 現在在職している人は、そのまま水資源公団に移ると了解してよろしいですね。
  104. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 そのとおりでございます。
  105. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 法務省、また基準局長さんにお願いですけれども、この小林さんのように、ある意味では人権じゅうりん的な扱いを受けて、給料の支給停止までやられた職員がおるわけでございますが、法務省、労働省は、それぞれの立場から至急この実態を調査して、適切な処置をとられることを望みます。  さらに、この合併のどさくさにまぎれて、このような悪意に満ちた、私は首切りのような感じを受けるのですけれども、そういうことがないように十分配慮していただきたい、それに対して見解を述べてもらって終わりたいと思います。
  106. 宮代力

    ○宮代説明員 御指摘の、先ほど御質問のあった点かと思いますが、人権擁護局といたしましても調査してみたいと思います。
  107. 村上茂利

    ○村上説明員 先ほども御答弁申し上げましたように、目下調査をいたしておるところでございますので、今後も慎重に調査を進めたいと思います。なお当事者でよく話をしていただきたい、かように私ども望んでおるわけでございますので、この点につきましては、公団側はもちろんでございますけれども、御本人におかれましてもよく話し合いをいたしまして、事実関係の明確でない点は明らかにしていただきたいといったような点についても御要望申し上げたい、かように存じておる次第でございます。
  108. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 終わります。
  109. 八田貞義

  110. 谷口善太郎

    ○谷口委員 厚生大臣、政務次官、医務局長等に御出席願っておったのですが、医務局次長の北川さんにきょう御相手をいただくわけです。  最初に伺っておきますが、もちろん次長がここで御答弁なさることは厚生大臣が御答弁なさる、そういうことと伺ってよろしゅうございますね。
  111. 北川力夫

    ○北川説明員 本日、大臣並びに医務局長が出席できないので、まことに申しわけないことであります。私どもといたしましては、このハンセン氏病患者の取り扱いにつきましては、もちろんただいま御指摘のとおりいろいろ問題もございますけれども、厚生省として検討しております内容についてお答えを申し上げるつもりでございます。
  112. 谷口善太郎

    ○谷口委員 ハンセン氏病のことを聞くかどうかわからぬじゃありませんか。大臣がお答えいただいたと、そう理解していいかどうかを聞いている。あるいは大臣とすでにしめし合わされて、責任をもって御答弁いただいていることになるかどうかを伺っているわけです。はっきりおっしゃってください。
  113. 北川力夫

    ○北川説明員 そのとおり御理解願ってけっこうでございます。
  114. 谷口善太郎

    ○谷口委員 それじゃおっしゃったとおりにハンセン氏病をお尋ねします。  ハンセン氏病患者対策問題でございますけれども、この問題について具体的な点に入る前に、あなたに確認しておきたいことがあります。それはこの病人は、非常に長い間一つの療養所に閉じ込められている。現在では少し違うようでありますが、戦争中、それからそれ以後強制入所をさせられた人々でございます。しかも病気がなおりましても、事実上社会復帰が不可能な、非常に困難なそういう立場にあって、したがって療養生活それ自体、いわば飼い段しの一種がそこに起こるという実情にある。そういう特殊な患者たちである。この点確認しておく必要があると思うのであります。  そこで私は最初に伺いたいのですが、実は七月十九日にハンセン氏病患者の組織と厚生大臣の園田さんとの間でいろいろな患者たちの要求について交渉がありました。私も立ち会っております。そのときに問題が二つ出ました。最初の一つは、現在ハンセンス氏病患者が国からいただいておりますいわゆる日用品費というもの、これは非常に低くて、慰安金とかあるいは物品費とかいう名前で千百三十三円、これじゃとてもやり切れないので、せめて五千円くらいに引き上げてもらいたいということが一点ありました。私どもは、日用品費というのは、患者自身の療養所内における生活の上でたいへん大切な経費でありますから、五千円だって安いと思いますが、しかし患者たちが一応五千円を実現していただきたいということを言っていますのは、生活保護の医療基準でも三千百三十円ですか、これが日用品費になっておりますが、それから見ても非常に低いということで、ぜひここは解決してもらいたいということをお願いしておったのであります。これに対して園田さんは、これはわれわれもそう考えておるのでぜひとも善処するというふうに答えておりましたが、その後これについて厚生省はどういうふうに具体的にこの問題に対処されたか伺いたい。
  115. 北川力夫

    ○北川説明員 ハンセン氏病患者の方々の特殊な療養環境でございますとか、あるいは療養即生活といったような特別な事情につきましては、ただいま先生御指摘のとおりでございます。ただいま問題になりました日用品費につきまして、患者さんのほうから月額を五千円に増額してくれという要求があったことも事実でございます。私どもも毎年この日用品費につきましては、できるだけ患者さんの生活内容にそぐうように増額をしてまいっておりますけれども、確かに御指摘のとおり、十分であるというふうには考えられません。したがいまして、明年度におきましても、もちろんその増額を要求いたす所存でございます。その場合の一つの基準といたしまして、ただいまお話に出ました生活保護の入院患者の日用品費というものを念頭に置きながら検討をしていく、こういう考えで現在は進んでおるわけでございます。なお日用品費に限らず、こういった日用品費も含めまして、全体が療養生活即日常生活という状態でございますので、ほかのいろいろな面の処遇の改善も考慮をいたしまして、その一環としてこの問題を取り扱ってまいりたい、かように考えております。
  116. 谷口善太郎

    ○谷口委員 何かたいへんいい話のように聞こえてちっとも中身はないのですが、これはどうなんです。五千円にするということですか、あるいは少なくとも生活保護基準に引き上げるということですか、その点具体的にはどうなのですか。それを目途になんということをおっしゃっても、これははっきりしません。ここでそんな遠慮は要りません。あなたとさしですから、はっきりおっしゃっていただきたい。
  117. 北川力夫

    ○北川説明員 私が申し上げましたのは、明年度の予算要求におきまして、患者さんの御希望もございますし、生活の実態というものもございますので、生活保護の入院患者の日用品費の額を目途として、この額を基準として要求の検討をする、こういうふうに申し上げたのでございます。
  118. 谷口善太郎

    ○谷口委員 そうしますと、現在の生活保護基準と同じ額を来年度の予算要求として出す、こういうことですか。
  119. 北川力夫

    ○北川説明員 ただいま申し上げましたように、生保の入院患者の日用品費の額というものを基準にして考えておる、こういうことでございます。
  120. 谷口善太郎

    ○谷口委員 あなたはなかなか額を言わないが、つまり来年度の生保患者の額を目途として要求する、こういうことですな。
  121. 北川力夫

    ○北川説明員 これは谷口委員も御承知のとおり、来年度の生保の額というものは現在の段階ではなかなかきまらないわけでございます。また予測もつかないわけであります。そういう意味で、私どもが現在の段階で考えておりますのは、今年度の生保の入院患者の日用品費というものを一つの基準として考える、こういうことでございます。
  122. 谷口善太郎

    ○谷口委員 それならその三千百三十円を目途にという意味ですね。この額ということになりますね。はいならはいとおっしゃってください。
  123. 北川力夫

    ○北川説明員 おっしゃるとおり、その額は三千百三十円でございます。
  124. 谷口善太郎

    ○谷口委員 それでは第二点の問題に移りますが、これも厚生省よく御承知、あなたもよく御承知なでんす。患者たちの要求しておりますのは、例の障害年金の問題。御承知のとおり、現在一万人くらいの患者の中で、拠出制国民年金の障害年金をもらっている人は、約二百名前後のように私伺っております。第一級六千円、第二級が五千円。ところが、過半数に近い患者はそうではなくて福祉年金、これは二千五百円ということになっている。そういう状況に置かれている。ところが、この拠出制の年金をもらっている人も、実際は拠出と申しましても、低所得者の恩典ですかで掛け金はしなかった人たちです。それから福祉年金をもらっている人も同じことですね。国民年金の加入者であるということが大半じゃないかと私は思っておるわけです。ところが一方は六千円ないし五千円というものを、わずかでありますけれどももらっている。他方は同じ障害を持っていながら二千五百円の福祉年金で済まされているということ、そこにやはり矛盾があるのであって、同一療養所内でこれが患者たちの間に、かなり大きないろいろな意味で影響を与えている。療養の上でも影響を与えるような、そういう日々の生活の上にあまり芳しくない状況が出ているということであります。この点をぜひ解決してもらいたいというのが患者の切実な要求だ。これは御承知のとおりです。これでも、いま申しました七月十九日の交渉では、ぜひ六千円の一級障害の拠出年金をもらっている人と同じように埋めてもらいたい、こういうふうな要求でありましたが、これに対してもぜひひとつ前向きで努力をしたいというのが厚生大臣のお答えであったと思うのです。これもどうなっておりますか、伺いたいと思います。
  125. 北川力夫

    ○北川説明員 ただいま御指摘の年金給付を受けております者とそうでない者、あるいは年金給付を受けております者相互間における実質的な給付面の不均衡ということは、まさに御指摘のとおりでございます。ただこの問題は、先生も御承知のとおり年金制度という問題もからんでおりまして、非常にむずかしい問題でございますけれども、不自由者の間において、同じ療養所の中で同じような生活形態で共同の生活をしているというふうなことを考えますると、実態的な関係といたしましては、やはりそういった不自由者相互に所得上の格差の生じますことは、決して好ましい状態だとは思われないわけでございます。したがいまして、きわめてむずかしい問題でございますので、どういう方法でこの問題を解きほぐしていくか、私どもも最終的な結論には達しておりませんけれども、できるだけその格差の是正、解消というふうな方向に向かって努力をいたしたいと考えております。その場合の考えといたしましては、やはり不自由者グループ相互間の均衡、それからまた、ものごとを判断いたします場合にはやはり障害の度合いというものも問題になりますので、そういった面を総合的に考え合わせまして、たとえば現在すでに支給をいたしております不自由者慰安金というふうなものの増額をはかる等の措置を講じまして、ただいまのような御要望の線に沿って検討してまいりたい、こういう状況でございます。
  126. 谷口善太郎

    ○谷口委員 この不均衡のあることが好ましからぬ影響を与えておることはお認めになっておるわけですが、そいたしますと、この六千円という拠出制障害年金をもらっている人々に相当するようなものに、何らかそういう形で現在福祉年金をもらっておる人たち引き上げていく、あるいはその他にも若干たとえば外国人その他がございますがそれを抜きにして——それを含めましてその差額をなくするという方向でやっていきたい、こういうことであるようでありますが、これはどうなんですか。来年度の予算要求の中で厚生省はどういうふうに具体的になさっておられるか、金額などを加えてお答え顧いたいと思います。
  127. 北川力夫

    ○北川説明員 ただいまお答え申し上げた中に申し上げたつもりでありますけれども、そういった年金給付を受けている患者さんの中における不均衡、またもらってない人たちとの不均衡、両面あるわけでありますけれども、これを年金制度のサイドで解決していくといたしますと、これはまた制度全般の問題といたしまして非常にむずかしい問題も出てまいりますので、そういう意味合いで、ただいまお答え申し上げました趣旨は、年金制度という問題とは一応離れまして、そういう現にできております格差というものを、何らかのかっこうで是正をし、補てんをし、均衡がとれるようにしていきたい、こういう方向で来年度予算の要求に盛り込んでまいりたい、以上のように考えております。
  128. 谷口善太郎

    ○谷口委員 年金制度以外のやり方ということになりましたら、すでに厚生省はハンセン氏病患者に対しましては慰安金という制度をつくっているわけですね。これは法的根拠がどこにあるかを私いろいろ調べたのですけれども、厚生省の善意から出しておる金らしくて、国民年金制度にもその他の公的年金の中にも、何にもこんな慰安金というものはないわけです。そういう意味ではすでに道が開かれておるわけですから、それは私は年金制度そのものを改正してやるべきだという意見は持っておりますけれども、当面それがむずかしいならば、いま言いました、厚生省の別なところでのお話で伺えば、つまり人間を尊重し日本の憲法を尊重するというたてまえから特別なこういうやり方を考えておるのだというお話を私伺っております。その立場から慰安金制度をもっと拡大すればいいというわけですから、どういう制度を拡大されてもけっこうなんですが、ここで伺いたいのは、六千円にまで上げるかどうかということを伺いたいわけなんです。そういう予算要求をされたか、あるいはされるかということを伺いたい。具体的なんです。
  129. 北川力夫

    ○北川説明員 具体的な額につきましては、先ほどからお答え申し上げておりますとおり、実際上の障害の度合いというものもございまして、六千円というのは、いわば障害程度で申しますと最高の場合でございます。したがいまして、そういった障害の度合いというふうなものから、最高六千円でございますけれども、それに一律に合わせるか、あるいはまたそこに若干の障害度合いというものを中心にした合理的な根拠というものを見出して処理していくか、そういう点を十分に詰めました上で予算要求をやっていくつもりでございます。
  130. 谷口善太郎

    ○谷口委員 その障害の度合いの問題を申しますと、福祉年金をもらっておる人たちは、大体一級障害相当のそういう障害を持っている人たちじゃないですか。したがって、ここで問題になるとすれば、そうでない、福祉年金をもらっていない、たとえば外国人だとかあるいは二級障害の人たちですね、そういう人たちは問題になるかもしれませんが……。だからそういう障害の度合いの問題よりも、私がここで伺いたいのは、一級障害で拠出年金をもらっている人が六千円なんでありますから、そこまで引き上げるつもりでやっているかどうかということを聞きたい。そこのところがあなたはどうもなかなかはっきりしない。なかなか言いにくいことだと思いますけれども、ここではっきりしておいてもらいたい、こう思う。
  131. 北川力夫

    ○北川説明員 谷口委員もこの問題のむずかしさを十分に御理解を願っていると思うのでございます。私どもも私どもなりに、制度上の問題と、それからまた実態上の問題といろいろからみ合ってまいりますから、どういう措置が一番いいのか、患者さんで要求されておりますような形が最も望ましくかつまた合理的であるのか、あるいはまた、そういうところを目標にしてできるだけそれに近づけるということがいいのか、いろいろ御議論はあるだろうと思います。この際申し上げておきたいことは、そういった、いま先生が御指摘になりました最高六千円というものを私どもも目途にして、できるだけ合理的な根拠を見つけ出しながらものごとを考えていきたい、こういうことでございます。
  132. 谷口善太郎

    ○谷口委員 六千円を目途に大体来年度予算編成に向けて御努力されるということでありますが、私どもも、あなたのおっしゃるとおりに、いまの制度それ自体をやはり根本的に改正しないとどうもうまくないのじゃないか。こういう矛盾が起きましたのは、これはハンセン氏病の患者だけではなくて、その他の分野でも同様の矛盾があるだろうと思いますが、特に冒頭に申し上げましたような立場にある方々にとりまして、特別な体制を緊急にやる必要があるというので私この問題をきょうはお尋ねしたわけでありますけれども、問題は、やはり根本的にはいまの保険制度そのもの、年金制度そのものの根本的な改正がなければならぬだろう。これは私は、二年ほど前にこの委員会でこの国民年金法に関する改正案が出ましたときに、この問題についてかなり根本的な話をしたことがあります。これはやはり拠出制年金と福祉年金とでそこに差があるというところに矛盾の根本があるというふうに私どもは考えている。これはハンセン氏病の諸君が事実上そうなっていると同様に、すべてがやはり福祉年金の方向へいくべきである。内容的に言えば、国が負担して、そしてこういう人々に対しては、十分に生活なり療養なりできるような、そういう保険制度をつくるべきだ、年金制度をつくるべきだというのが私どもの主張であります。そうしませんと、現行の国民年金制度それ自身が、私は一昨年かここで非常にはっきり数字をあげて話しましたが、これ自体の法則の中でつぶれていくという、そういう内容を持っております。国が国の財政でもってこの問題を取り上げない限り、拠出させて、つまり掛け金を出させてやっていくとすれば、いまのインフレーション時代には、必ず掛け金のほうが非常に加速度的な大きなものになって、事実上保険制度は破壊されるということは、これは法則的に持っておるということを指摘したことがありますが、そういう点でやはり、いまあなたがおっしゃった、どういうことでもいいですよ、どういうやり方でもいいが、考え方としては、つまり厚生省は慰安金という制度をつくられたという趣旨ですが、これは自民党政府の中でも非常に珍しい考え方だと私は考えている。これは憲法の精神を生かして、そしていまの法律になくても、それ以上にもっとあたたかい気持ちでこれらの人々を救っていくという立場からなされた制度だというふうに聞いているのですが、これは非常に正しい態度だろうと思う。  こういう問題は、これは金勘定の問題ではだめなんで、だから大蔵省とか何かが問題を金の面から取り上げましても、これは問題にならない。やはり問題の根本は、こういう病人だとか、あるいは老齢者だとか、あるいは障害者に対する対策という問題は、主管省であります厚生省、厚生大臣、ここでいま言った憲法の基本的な、原則的な立場から解決するという態度をとって、これを堅持すべきだと私どもは思うのです。そういう意味で、今度の皆さん方の御努力で若干でも上がったことは、これは当面の問題としては私どもは非常にけっこうだと思いますが、しかし根本的にはそういう方向にいくべきだという意見を持っております。これはいずれまた時間があるときにゆっくり話したいと思います。この点について最後に申し上げまして、いまあなたのおっしゃった日用品費と障害年金に相当する額、現在のアンバランスをなくするという方向、これを今度は必ず実現してもらいたい、こういうように思います。  以上で終わります。
  133. 八田貞義

    八田委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十六分散会