○斉藤(正)
委員 過日、私は参考人にも伺ったわけでありますけれ
ども、秋葉、佐久間両ダムとも、発電オンリーのダムであって、多目的ダムではない、特に秋葉ダムは佐久間ダムの逆調整ダムであって、天龍川の水利の
関係からいけば発電オンリーだ、こういう御
発言がございました。実はこのことは、私は実に意外に感じたわけでございます。と申しますのは、事実はそうであって知っているわけでありますけれ
ども、私は長い間県議会におりました。この佐久間ダムが建設されるいきさつについても
承知をいたしておるわけでございますけれ
ども、昭和二十七年三月の静岡県議会におきまして、一体佐久間ダムや秋葉ダムをつくることによって天龍川はどうなるかという
質問をいたしました。この
質問に対し、当時の土木
部長は、「ただいま県で取り上げておりまする総合開発の中に、
下流の発電事業がうたわれておりますが、私はこの発電事業は非常に当を得た仕事だと思っておるのでございます。と申しますのは、この度の総合開発にうたわれております佐久間の貯水池、あるいは秋葉第一、第二の貯水池、これらはそういう面から
考えて、非常に有効なのであります。と申しますのは、佐久間は約三十五万キロくらいの発電を起すために、いままでなかった百五十米の高い堰堤を築きまして、これによって発電をするわけでありますが、その
下流に五十米くらいの低い堰堤を造ることになっております。この堰堤は発電はもちろんするわけでありますが、この第一の目的は上流の平岡とか、佐久問から流し出す水を、一番具合のいいように使ふことと、先ほ
ども申しましたように、それにつれて上の大きい貯水池の水の変動を調整いたしまして所謂逆調整いたしまして、
下流に水を流すのであります。この秋葉第一、第二の貯水池の目的は何も発電だけをねらっておるのではないのであります。ただいまのところ泰阜、平岡だけでは、
下流の水の変動に困難するわけでありますが、将来秋葉第一、第二と、佐久間まで同時にできますならば、変動で苦しむということは、全然なくなります上に、」この次です、問題は。聞いてください。「洪水の水を調整いたしまして、
下流には水が大体平均して流れるようになりますので、非常にこの点はよくなると思っております。」、
責任ある当時の仁科土木
部長の
発言であります。知事もまたほぼ同じような
発言を何回かいたしておりますけれ
ども、
重複いたしておりますからやめます。
さらにまた、こういう事実もあるのであります。ある議員が「本県出身の土木界の長老であり、現在磐田市に在住する青山氏の言によれば、昨年十二月十一日の朝日新聞に、天龍川を解剖するという見出しで、電源偏重の感が強いと論じ、すなわち次のごとくいうておるのでございます。省略しましてごく主要な部分だけを読みますと、「電源開発と、国土保全が両立して総合開発になるわけだが、天龍川の場合は電源開発に重点がおかれ、国土保全の面がいまのところ軽視されている感がある。せっかく起した電力をどう使うか、これをうまく
計画化しないと、水害だけは
地元がうけて、電力はよそにとられるという結果になる。現に富山県は他
地域に電力を送っておるので、これを
地元に還元してもらいたいとさけんでおるが、なかなか思うようにならず困っておる。電力を送って県に入る料金は、流域の補償費にたりない。電源開発によって河床が再び変化すれば、既設の護岸工事にも新らしい変化が生じ、技術的にも十分な研究
調査が望ましい。ところが本県の場合は政治活動ばかりで、技術的の
調査が余り活発でないように
考える。ダムができ、調節するというが、これはむずかしい問題で、例外はあるだろうが、ぼくは発電と出水とは利害相反するものと思っている。これをダムができれば出水がなくなるという政治家の宣伝はどうかと思う。」」こういうことを郷土出身の土木界の先輩である青山氏が言ったということをある
質問者は言い、知事もこの点は考慮しなければならないという
答弁をなさっておるのであります。
私は、なぜこのように古い資料を持ち出してここで言っているかといいますと、ダムをつくるまでは、逆調整ダムだというような言い方も
現地の人にはなかなかわからない。村長さんや、村
会議員のうちでもごく優秀な人はおわかりだったでしょうけれ
ども、調整調整と言うものだから、農業用水も工業用水も上水道用水もとれる、水害もこれによってぴたっととめられて、上から幾ら大きな水が来ても一時はとめるのだ、そうして徐々に放流するから下は安全だ、こういう宣伝を、現に用地買収のおたくの係はした。横山
地区へ行ってしておるのです。しかし、もう少し上の技術
関係の人は、そういうダムではありません、こういう説明をしている。いいですか。そういうところがら
考えてまいりますと、今度の水害によって起こった水窪町における死者の四人、水窪町における重傷者の三人、水窪町における全壊の五、佐久間町の四、半壊の佐久間町における百七十三、水窪町における三、
床上浸水の天竜市における百六十一、佐久間町における百五十九、床下浸水の四千何ぼという、これは県全体でありますけれ
ども、これらの大
被害は、水窪を除いては、いずれも天龍水系、特に秋葉、佐久間両ダムの
関係地域に起こった問題である点は間違いないのであります。
私はこういう観点から、やはり古老も言っている、そうして最近もこういうことが三十六年、四十年、本年と続発したということから
考えますと、過日配付をいただきました資料によりましても、特に横山
地区におきましては、浸水の始まりが十時三十分、最高位になったのが十時五十分、水の引き始めたのが十二時五分、干上がったのが翌朝の午前三時という、この経過から見て、ダムの六千三百七十トンの放水が十一時二十分に行なわれたということから、やはりこの横山
地区の浸水は、秋葉ダムの放水が原因だというように断定せざるを得ない。特に古老の言によれば、明治以来、あれよりも大きい出水は、鹿島地先において三回あったそうであります。しかし、そのうちの一回は、上流泰阜ダムのダム操作の誤りによる異常な出水であって、二回があれ以上の出水だった。そのときでも、横山
地区、浦川
地区にはあのような浸水はなかったというのであります。よろしいですか、あれより大きい水がいままで三回あったけれ
ども、そのときでも、横山でも浦川でも、あんな浸水事故はなかったというのです。昔からあんな浸水事故があれば、だれが好んであんなところに住むものですか。とっくに移っていますよ。それが都市の形態をつくって今日あることは、過去の歴史にそんな出水はなかったということで、あそこに土地を求め、商売をやっていると思うのです。この点を一体、全然ダム側に
責任がない、おりてきた水は、ただ流しただけだとおっしゃるのかどうか、
責任ある
答弁をいただきたい。