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1968-08-26 第59回国会 衆議院 交通安全対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年八月二十六日(月曜日)    午後一時二十六分開議  出席委員   委員長 門司  亮君    理事 大久保武雄君 理事 大竹 太郎君    理事 登坂重次郎君 理事 板川 正吾君    理事 河村  勝君       浦野 幸男君    亀山 孝一君       丹羽 久章君    太田 一夫君       加藤 勘十君    只松 祐治君       沖本 泰幸君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 中曽根康弘君         建 設 大 臣 保利  茂君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田中 龍夫君  委員外出席者         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         内閣総理大臣官         房陸上交通安全         調査室長    宮崎 清文君         内閣総理大臣官         房参事官    川上 幸郎君         警察庁交通局長 鈴木 光一君         警察庁警備局警         備調査官    津田 武徳君         行政管理庁行政         監察局長    諸永  直君         運輸省自動車局         長       黒住 忠行君         気象庁長官   柴田 淑次君         建設省道路局長 蓑輪健二郎君         消防庁調査官  永瀬  章君     ───────────── 八月二十六日  委員松本忠助辞任につき、その補欠として沖  本泰幸君が議長指名委員に選任された。 同日  委員沖本泰幸辞任につき、その補欠として松  本忠助君が議長指名委員に選任された。     ───────────── 八月十日  一、交通安全対策に関する件   の閉会中審査を本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  交通安全対策に関する件(飛騨川バス転落事故  に関する問題)  飛騨川バス転落事故に関する件      ────◇─────
  2. 門司亮

    門司委員長 これより会議を開きます。  交通安全対策に関する件について調査を進めます。  この際、飛騨川バス転落事故の概要について説明を求めます。田中総理府総務長官
  3. 田中龍夫

    田中国務大臣 どうもたいへんお待たせいたしまして恐縮でございます。  飛騨川バス遭難事故につきまして、その概況を御説明させていただきます。  奥様ジャーナル社及び名鉄観光サービス社の募集いたしました乗鞍登山者を乗せましたバス十五台は、十七日二十二時二十分ごろに犬山に集合いたしまして目的地に向かいましたが、豪雨のためにモーテル飛騨から引き返しました。十八日の午前一時ごろ、土砂くずれのために通行不能と相なりまして、国道四十一号線の事故現場に停車中、五号車と六号車の中間に山がけから沢水とともに土砂流が押し寄せてまいりまして、これら二台のバスを、道路に平行して流れております飛騨川に押し流して水没させたものでございます。  なお気象関係といたしましては、大雨洪水雷雨注意報が十七日十七時十五分に解除されました後に、二十二時三十分に大雨警報洪水注意報が発表されておりました。  転落いたしましたパスの乗客及び乗務員は百七名と推定されておりまして、うち三名が救出されております。被害者遺体捜索収容につきましては、四百十六名の警察官、二百十五名の自衛隊、その他消防団海上保安部等が協力いたしまして行なっておりまして、現在までに御遺体八十三体が収容されております。  次に、政府措置につきまして御説明を申し上げます。  まず政府におきましては、総務長官主催のもとに関係省庁局長構成員といたします飛騨川バス遭難対策連絡会議を設置いたしまして、第一回会議を十九日午後三時から開催いたしまして、情報を交換いたしまするとともに、当面、御遺体捜索収容に全力をあげることといたしまして、また、その原因の究明、今後の対策等検討することといたしました。  また、二十日の閣議におきましても、今後の安全確保被害者救済に対しまする対策検討されました。  さらに二十三日には、弘津総務長官を団長といたしまする政府調査団現地に派遣いたしまして、翌二十四日、同調査団報告を中心に第二回の対策連絡会議を開催いたしました。  次に、被害者救済措置につきましては、自動車損害賠償保障法によります責任保険バス会社の契約いたしました任意保険及び旅行をあっせんいたしました名鉄観光サービス社の契約いたしました傷害保険による保険金支払い考えられます。このうち、傷害保険につきましては、支払いに問題はないものと見受けられますが、責任保険及び任意保険賠償保険でございますので、事故原因調査が必要でございまして、政府におきましても、自動車損害賠償保険法等の解釈につきまして、内閣法制局をはじめ、関係各省担当者によります打ち合わせを行ないまして、被害者救済のために必要な措置がとられますよう検討を進めておるところでございます。  以上、簡単でございますが、飛騨川バス遭難事故につきまして御説明をいたした次第でございます。     ─────────────
  4. 門司亮

    門司委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。丹羽久章君。
  5. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 委員長のお許しを得ましたので、八月十八日未明岐阜県の飛騨川で発生したバス事故について、ただいまより関係諸官庁に対してお尋ねをいたしたいと思います。  この事故新聞テレビ等で報じられたように、バス二台が転落し、死者が百四名、そしてけがをした人が三名、未曽有事件でありますが、質問に先だち、この転落事故でなくなられた人々に対して心からの冥福をお祈り申し上げるとともに、つつしんで私は哀悼の意を表するものであります。また、負傷された方々の一日も早く全快されることを念ずるものであります。ここで特にお願い申し上げたいことは、いまだ行くえのわからない方々捜査であります。きょうまでの自衛隊警察消防関係、役所の方々の御協力に対して、心からの感謝のことばを申し上げます。御遺族のお気持ちを察するとき、なお一そうの御努力をお願いする次第であります。  私は事故の悲報に接し、さっそく現地にかけつけたのでありますが、一家団らんの楽しみを前にして、突然の災害にあわれた方々が見るもむざんな姿と変わり、引き揚げられた遺体は、大きな傷あとを至るところに残し、正視しがたい状態でありました。私は棺におさめられた御遺体にお参りをさせていただきましたが、童顔の小学生の遺体近親者の方が入れられたかランドセルがおさめられているのを見、あるいはリュックサックを拝見して、私は涙をとめることを知りませんでした。全く痛恨のきわみでありますことを御承知願いたいと思います。  このたびの事故遭難者は、ほとんど名古屋市にお住まいの方であり、私は遺族方々と今後の対策を涙のうちに御相談申し上げたのでありますが、きょうはいわば遺族の代表という立場お尋ねをいたしたいと思いますので、政府当局におかれましても、でき得る限りの救済の手を差し伸べられるよう御答弁をお願いすると同時に、真剣な御答弁をいただきたいということをお願いする次第であります。  きょう御出席いただく方が、大臣として運輸大臣あるいは建設大臣総理府総務長官等とありますけれども、いまだ総理府総務長官がおいでいただいただけでありますので、順序を変えて総務長官お尋ねをいたしたいと思うのでございます。  災害救助法適用範囲について、今回の集中豪雨に対し岐阜県に災害救助法が発令されました。飛騨川バス転落に関しても、同法の適用が認められたと聞いております。同法の第二十二条には救助の種類が明示されているが、今回のバス事故に関する被災者に対し、具体的にどのように適用されるのか、御説明を願いたいと思います。
  6. 田中龍夫

    田中国務大臣 今回の救助法適用地区は五市町村——一市二町二カ村でございます。  なおまた、その他の法制上の詳細なことにつきましては、担当官からお答えをいたします。
  7. 川上幸郎

    川上説明員 ただいまの災害救助法適用範囲の問題でございますが、これにつきましては、災害救助法を所管いたしております厚生省から御答弁すべきかと存じますが、いまおりませんので、私のほうからかわりましてお答えいたしたいと思います。  ただいま先生から御質問ございましたように、救助法範囲につきましては相当ございます。この範囲につきまして、バス転落事故によりますものにつきましてどの程度救助法適用になるかという問題でございますが、これにつきまして、いろいろ範囲につきまして問題がございますので、現在厚生省総理府消防庁等におきまして、その範囲につきまして打ち合わせ中でございます。
  8. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 長官お尋ねいたしますが、百四名のとうとい人命を失い、そのとうとい人命救助法適用せられたということは、適用せられたのか、せられていないのか、その点はっきりしていただきたい。いまの話を聞くと、適用せられたような答弁ではありますけれども、先ほどの一市二町二村であって、このバスに対しては適用されているのかいないのか、いるとすればどのような方向でこれをやっていただけるか、その点をはっきりしていただきたい。——そんな打ち合わせがまだできていないのですか。
  9. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま申し上げましたように、一市二町二カ村でございまして、これは御案内のとおりに厚生省の指定でございます。それにつきまして、災害対策連絡本部といたしましては協議をいたして進めてまいっている次第でございます。  御質問の詳しいことにつきましてさらに担当官から申し上げます。
  10. 川上幸郎

    川上説明員 ただいま長官が申しましたように、一市二町二村につきまして適用がございます。災害救助法は町につきましてあるわけでございます。この場合におきましては相当大規模な被害が出ておりますので、この町について適用がございますから、この町が支払いました費用、たとえば遺体捜査費用その他いろいろな費用がございます。これにつきまして適用がございますが、バスにつきましてどの程度適用があるかということにつきまして厚生省打ち合わせ中であるということでございます。
  11. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 打ち合わせ中で何ら結論的なものは出ていないというのですか。
  12. 川上幸郎

    川上説明員 おっしゃるとおりでございます。
  13. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 これ以上の追及はいたしませんけれど、相当日にちがたっているのですから、もっとしっかり早くやってもらいたいと思う。  それから被災者救済に協力された一般民間人、これはそれぞれの現在の仕事犠牲にいたしました。それでこれらの方々にお報いする方法は何か考えていらっしゃるのか、救助法の中で考慮するような考えをもって厚生省なんかとの打ち合わせをせられるのかどうか、この点長官からお答えをいただきたいと思います。
  14. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内のとおりに、この町村の負担につきましての救済処置でございます。いま御質問の出ましたようなこういったケースがいろいろございます。といいますのは、普通の災害でありますと災害現地の復興、復旧というような問題が対象になります。今回のようなのは罹災されました方々がたまたまその罹災地地元の方ではない。名古屋市や何かの方が非常に多い。そういうふうなことで、こういうふうな問題につきましてどのように一体措置をとるかということにつきましていろいろと研究を進めております。
  15. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 それじゃ長官にお願いというのか申し上げておきますけれども、遺体があがった、そうすると親戚、地元方々だけでなくて、その町内会から、名古屋市からかけつけた人々遺体が戻ってきたらそれをお通夜して、そしてそれを火葬に付し、そしてお葬式を済ます。すべての仕事を一切犠牲にせられておる方々に対して何らかの考えをせられる意思があるのかないのか。この点も救助法の一部に取り入れてお考えいただけるかどうか、この点をひとつお尋ねいたしておきたいと思います。
  16. 田中龍夫

    田中国務大臣 御質問の御趣意のほどはよくわかりました。しかしながら、法の適用なり救済措置範囲につきましては、まだきまっておる次第ではございません。御趣旨のほどを十分心得まして今後の連絡会議を進めてまいりたい、かように考えます。
  17. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 それじゃ総理府質問を一応終わりまして、運輸大臣中曽根大臣がおいでいただいたようでございますから、運輸省に対してお尋ねをいたしたいと思うのであります。  甲府の韮崎で発生いたしました修学旅行事故をはじめ、最近バス旅行事故が目立つ。本日の配付資料通達はいままで出されたことがあるのか。私が席にすわりましたらこういうような通達がございました。こういうようなことを再三いままで出していらっしゃったのか。きょう初めて、こういう事件が起きたから至急局長を通じて各県へお出しになったのかどうか。この点を一点お尋ねいたしたいと思います。  続いて、時間的関係からお尋ねいたしたいと思いますが、大編成のバス旅行に際しては、運行管理者を同行させるとか、安全についての万全を期すべきであると思われるが、観光サービス会社及びバス会社に対する安全管理についてどのような行政指導をしてきたか、こういうような点ですね。事故があったから通達を出したのなら、もしそうであったとするなら、それはおそきに失するということを私は思うのです。この点について大臣から事情をひとつ御説明願いたいと思います。
  18. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 だいぶ前に学生の修学旅行事故がありましたときにさっそく通達を出しまして、バス旅行等に関するいろいろな注意事項についてバス会社その他に指示をいたしました。  それから昨年の暮れ、年末年始の安全総点検をやりましたときに、また同じようにかなり具体的細目にわたりまして安全維持の見地から指示を行ないました。それから今回またこういう事件が起こりましたので指示を行なったところでございます。  なお今回の指不等にも特に書いておきましたが、三台以上のバス旅行するというような場合には、相当な練達な誘導者指揮者を設けなければいけない。今回のような場合でも、ドライブインでUターンをしましたときに、状況判断をもう少し綿密にやっておればあるいはこういう事故はなかったかもしれません。そういう意味で、バス会社にいなければたとえば警察署長退職者とか自衛隊退職者とか、そういう老練な人を嘱託にしてもいいから、三台以上の場合には必ずそういう責任者をつけるように、そういう指示を行なっておる次第でございます。
  19. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 そういう指示大臣は常にせられておられるにもかかわらず、一向に守られていないように思うけれども、それが守られておるとお考えになっておったのですか。今度の際でもそうでありますけれども、十五台からのバスが行って、はたしてそれに対してそのように、あなたのほうの指示どおりにやったかのかどうか。この点についての調査はすでに済んでおるはずだと思いますけれども、あなたのところへ報告が来ておると思いますが、一体どのような報告が来ているか、御答弁を願いたいと思います。
  20. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 陸運局から参りました報告によりますと、大体においてバス会社としては指示どおりのことをやっておるようであります。先導車をライトバン一台つけまして、そこに要員を乗せて先行させて、いろいろ情勢を見たり、それから運転手予備員を一人ずつみんなつけておりましたり、そういうような点は大体守っておるようなのであります。ただ、たまたま気象状況の問題で、解除になりましたときに出発して、途中でまた注意警報その他が出た、そういう不幸な事態がありました点はまことに遺憾でありますが、これらの点につきましては、さっそく気象庁等にもいろいろ具体的に至急に気象状況を周知徹底させるような措置を命じております。
  21. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 ただいま気象庁のお話が出ましたから、その前の問題については大体守っているからという話でありますから、これ以上のことを聞こうとは思いませんが、それじゃ気象庁に対して、大臣責任にあると思いますから聞きたいと思いますが、事故当時の気象状況は台風七号の接近で悪天候が予想されたが、観測警戒状況はどうであったか、その結果について警察道路管理者等に対する連絡措置はとられたか、また、主催者あるいは関係者からは天候の見通しについての問い合わせはどんなような問い合わせをしてきたか、この点はどのように大臣の耳に入っておるか、ひとつお聞きしたいと思います。
  22. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 具体的なところは関係者から答弁させますが、私のところに来た報告によりますと、いままでどおり命ぜられた処置気象庁としてはすべてとっておったようでございます。
  23. 柴田淑次

    柴田説明員 注意報警報が出ました場合に、それを確実に伝達したかどうかという初めの御質問に対しましては、私のほうから名古屋あるいは岐阜地方気象台に対しまして調査をいたしました。その結果、命ぜられたとおり伝達をしております。  それからまた、その関係業者のほうからどういう問い合わせがあったかということなのでございますが、これは、あのバス名古屋バスでございましたので、名古屋には御承知のように気象協会というものがございまして、この気象協会に対しまして観光業者から天候問い合わせが三回ございました。それに対しまして気象協会のほうからは答弁はしております。
  24. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 気象協会というのは、これは公認的なものであるのか、一体民間的なものであるか、それとも許可制度でそういうようなものを認められておるのか、その点どうなんですか。
  25. 柴田淑次

    柴田説明員 気象協会と申しますのは、気象に関する法人でございまして、運輸大臣の主管に属する財団法人日本気象協会というのがございます。これの出先が名古屋にありまして、そこで仕事をしているのでございますが、どういう仕事をしているかと申しますと、気象とかあるいは地象あるいは水象に関する、一つは、順序不同でございますけれども、講習会講演会刊行物等による気象知識及び防災思想の普及、それからその次はラジオテレビ予報解説、それから気象情報電話——電話と申しますのは、一七七を回しますと気象電話が聞こえてまいります気象状況のことでございますが、電話のための気象通報あるいは山の気象など、そういうような各種気象通報伝達並びにその予報利用についての相談などをやっております。また三番目には、大気汚染観測調査等気象に関する観測調査研究並びにその受託でございます。その研究自分のほうで頼まれてやっておるということでございます。それからもう一つは、気象観測それから予報及び調査に関する技術指導などをやっております。
  26. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 気象協会に対してお尋ねをした、そこから答えをもらった、それがために出発をした、そしてこういうような事故が起きてきた、というようにも一面考えられる面があるのですが、そういうような協会というものでなくて、たとえば、それなら新聞ラジオテレビ等は、その気象協会からの情報によっていろいろのことを新聞に書いたりラジオテレビで放送するのですか、そうでなくて、気象庁自体が、新聞社から問い合わせがあったならばそこで答えるというような用意をしてあるはずだと私は思っておるが、そうじゃないのですか。そしてそれは、しかも気象協会というものは有料でやっておるというような話であるけれども、そういうようなことを認可をして、そして的確なものを教えているのかどうかということに対して、私は疑問を抱かざるを得ない。その点どうですか。
  27. 柴田淑次

    柴田説明員 気象協会に対しての天気予報問い合わせのほかに、天気予報利用者が直接気象台に問い合わしてくる、そういう場合もございます。そういう場合は、もちろん協会協会としておいて、気象台でもできるだけそれに対しての回答をするわけでございます。  その次の問題といたしまして、気象協会に対する気象庁立場というものでございますが、これはその気象協会自分考え天気予報を出すということではございませんで、気象台から発表されます天気予報に基づきまして、その天気予報解説をするのが、大体気象協会仕事になっておるわけでございます。したがいまして、気象庁天気予報協会天気予報と食い違ったりなんかするようなことは、現在絶対にございません。
  28. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 制約せられた時間がありますから、これ以上のことは聞きませんけれども、こういう事故が起きたことに対して、気象庁としてももっと慎重な態度をとっていただき、そして協会に対してももう少し、どのような制度でやっているかということに対しての検討を加えていただきたい。ただ単なる天候はどうですかということに対して、天候はよろしい、その方向に対してはどの方面を伝わって行かれますかとか、どの方向を通行せられますかというぐらいのことは、そういう協会があったら、そのくらいのことは親切に聞いて、そしてそれはあなたのほうで情報をとったものを与えるべきであると私は考える。今度の際も、ある程度——乗鞍はお天気はどうですかという問いだったそうです。それに対して、乗鞍はあすは天気はだいじょうぶですよ、霧はかかるかもしれませんが、だいじょうぶですよ、というようなことだったから、そういう意味で車は出発したということが巷間伝えられておる。そういうことについての対策は今後どう考えておるのですか。簡単でけっこうですから、その点ひとつお答えいただきたい。
  29. 柴田淑次

    柴田説明員 今後は、先生おっしゃいます趣旨によりまして、できるだけ懇切丁寧な回答をするように、協会を指導したいと思います。
  30. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 それでは、運輸省関係はもう一点だけ、大臣お尋ねいたしたいと思います。  最近こういうような事故が非常に多いのでありますから、バスに対する、あるいは観光サービス業者に対する、そしてそれを募集する人々等々に対して、今後の方針をどのようにお考えになっておるか、いままだ固まっていないのかどうかということをお尋ねいたしたいと思いますから、お答え願いたい。
  31. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まず観光部に対しまして、いわゆるレジャーという考え方を改めるように指導しなさい、レジャーというのは物見遊山ひまつぶしというように考えられやすい、われわれの考えておるのはレクリエーション——エネルギーを休め、またあすに備えてこれを増強する意味の休養、こういうように考えなければいかぬ、だから、人が集まっておるから自分も行く、由比ケ浜に何十万も集まるというああいう考え方観光政策としても考えなければいかぬ、そういう基本観念から改めさせるということを、私指導いたしまして、これはいろいろの観光業者やいろいろなガイドその他に対しても浸透させるようにしていきたい。つまり疲れに行くのではない、増強に行くのだ、そういう考え方で、まず基本観念を改めさせたいと思うのです。  それから第二に、計画を立てるときにもつと各方面が協力して、周密にして安全確実な計画を立てさせる。これはバスにしてもガイドにしても、観光会社にしても旅館にしても、御本人にしても、みなそうであります。  それから、その途中におけるいろいろなチェックについて、情勢が刻々と変わりますから、それがわかりやすいように、いろいろ措置を講ずる必要がある。そこで、ドライブインとかモーテルとかレストランとか、そういうところに至るまで、気象情報を知らせるような手配を、協会その他を通じてやらせるようにいたしたいと思う。  それから状況の変化に対応する判断力をしっかりさせなければいかぬ。これは先ほど申し上げましたように、三台以上のバスが行く場合には必ずそういうふうにするし、三台以下の場合にもそういう訓練をやらせる必要がある。  それからもう一つ、今度の場合は書いてありませんが、運転手を休ませるということが非常に大事だ。ああいう旅館やなんかに行きますと——運転手は千円くらいの日当をもらっておるようですが、大体ただで泊まるくせになっておる。そうすると、せせこましい部屋に何人か詰め込まれて運転手が休むということになると、はたして十分休まるかどうか、一番大事な運転手が休養できないという情勢では、非常に遺憾なことであります。そういう意味で、運転手を十分休ませるような措置を、いろいろな方面にわたって講ずるようにいたしてまいりたい。
  32. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 どうもありがとうございました。そのような指示を十分していただき、そして監督を厳重にしていただくように、心からお願いをいたす次第でございます。再びこのような事故の起きないように、ひとつ大臣は監督していただきたいと思います。  それから、きょうは自治大臣が御出席にならないそうでありますので、警察庁にお尋ねいたしたいと思いますが、鈴木局長がかわって出ておられるようであります。鈴木局長お尋ねいたします。  伊勢湾台風以来、私の地元名古屋では災害訓練というのを行なっておりますが、山間地帯の国道として、今回の事故現場付近では、日ごろの事故対策の配慮がなされておるかどうかということをお尋ねいたしたい。それからまた、今回の事故に関して、遺体の確認については相当困難をしておられる。その実情を私は現地で見てまいりましたが、指紋の照合など苦労が多かったが、今後どのような対策をとられるか、御方針をお尋ねいたしたい。
  33. 鈴木光一

    ○鈴木説明員 災害対策全般につきましては、実は交通問題も含めてのことでございますけれども、災害につきまして、日ごろから警察の体制につきましては万遺憾なきを期しているつもりでございます。最近は風水害等による人家の被害あるいは河川の溢水による人家、田畑の被害といったものに加えまして、交通の問題もやはり大事な問題になってきておりますので、道路交通の問題も含めまして、災害警備計画というものをつくっていかなければならないということで、その線に沿ってのいろいろな対策を講じておるわけでございます。今回の事案につきましても、岐阜県警本部におきましては、気象情報との関連におきまして、八時過ぎごろから、もう県下は警戒態勢に入っておったわけであります。かねて道路交通の問題につきましては、土曜、日曜に、非常にレジャーに関連する自動車の事故が全国的に頻発しておりましたので、そういう観点からも、道路交通の指導体制もあわせて警戒態勢の中に繰り入れて、実は実施しておったわけでございます。その中において生じた事故でございまして、まことに遺憾な事故だと思います。そういうことで処置しておりますので、はなはだ抽象的ではございますけれども、御了承を願いたいと思います。  それから、遺体の確認等につきましては、鋭意努力をしております。実は岡崎観光のバス六台がありましたが、その中の乗車区分等につきましては、必ずしも最初の名簿どおりには行なわれておらないというようなこともございます。 いわゆる、私は行けないからかわって行ってくれというような人もございましたし、それから、今度の事案につきましては、飛騨モーテルで折り返す際に、当初の乗車区分とは違った乗車区分になっておる面もございまして、行くえ不明者等の死体の捜索に入る前の確定には非常に困難をきわめたわけであります。いざ遺体が出てきた場合に、しからばどういうことであるかという確認をすることにつきましては、御指摘のように指紋等によりましての確認もあわせて行なっております。そういうことで、遺体の確認につきましてはいろいろな努力をしなければならない面が残されておるわけでございますが、鋭意努力いたしております。  なお詳細につきましては、警備、指紋の関係以外の問題もございますので、補足的に説明いたしたいと思います。
  34. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 いま局長からの答弁を聞いておりますと、遺体の確認なんかに対しても非常に困難を来たしておる、そのとおりでしょう。現地に行ってみますと、ほとんどの方々が、水の強いのに流されて裸になってしまって、何もまとっていないというようなことである。それから品物もなかなか出てこない、出てきてもだれのものやらわからないというような場面もある。そこで、最後に残されてきたものは何かというと、指紋をたよりにして確認をさせるということであるが、この指紋に対して、もっと指紋採取が普及せられ、そうして国民が指紋を全体的にとっておるならば、どうしてもわからないときには、指紋照合でその遺体の確認ができるということになると私は思うが、それについてはどういうお考え方を持たれたか、それについてひとつあなたのお考えを率直に聞きたいと思います。
  35. 津田武徳

    ○津田説明員 遺体の確認につきましては、一番大事なことは近親者の認定でございます。それから近隣の人たちの認定、そういうものを土台にいたしまして、からだの特徴、年齢あるいは容貌、そういうことでなるべく近親者の明確な証言を得て認定をいたしておるわけでございます。そういう認定でもなおかつ、御指摘のようにもうすでに一週間以上もたっておりますので、腐乱状態になっていて、認定が困難でございますので、その場合には必ず遺体より指紋をとりまして、その家族と思われるところの家に行きまして、家の中に残された指紋によって、符合をして認定するというふうな要領で認定をいたしております。  先生からただいま御指摘いただきましたように、日本国民全体の指紋につきまして採取をいたしておりますれば、こういう事故のときには何のためらいもなくその照合ができて、非常に便利でございますけれども、現在のところでは、強制的に全部をとるということはできませんし、現在の段階におきましては、任意協力を求めて指紋をとっているという状態でございまして、なかなか全国民の指紋を採取して保存するという点に至らないわけでございますが、その点、私たちも非常に不便を感じておりますけれども、現行法上、協力をしていただくことによって指紋を採取するということで限度がありまして、たいへん不便を感じておるところでございます。
  36. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 運輸大臣には何か御都合があるそうで、時間の関係もございますから、どうぞ関連質問の方に質問をお許し願いたいと思います。
  37. 門司亮

    門司委員長 板川正吾君。
  38. 板川正吾

    ○板川委員 運輸大臣の時間の関係もありますから、大臣にしぼって質問をいたします。  今回の飛騨川バス転落事故は、一瞬のうちに百四名の生命を失い、世界じゅうにもその類例を見ない大規模な惨事といわれております。最近これほど国民に衝撃と不安を与えた事件はないと思います。しかも皮肉にも、事故は、生産世界第二位といわれる文化国家日本の国道、国が管理をしておる国道上に起こった事故でございます。そして市町村道路と違いまして、国道ならば安全に交通が確保できる、こういう国民の期待を裏切った事件でもあろうと思います。事故が起こった当初、関係当局の談話等では、全く予測できない雨量で、天災だからいたし方があるまいというように伝えられておりますが、そうした国民に対しては口では人命尊重を唱えながら、実際には人命を軽視している政治の本体を国民は見たのではないかと思うのでありますが、私は以下、不幸にも遭難された百四名の霊に心からの冥福を祈りながら、今後この種の事故が再び繰り返されないよう、事故原因責任を追及し、さらに今後の対策について、政府当局の方針を伺いたいと思います。  大臣にまず伺いますが、新聞等の報道によりますと、今回の事故被害者には自賠法が適用される、自動車損害賠償保障法適用されるという報道がございますが、適用されるのならば、どのような事実認識、事実の上に立って適用されるというふうになったのか、この適用されるという政府の方針が固まったという報道について、その真意をまず伺っておきたいのであります。
  39. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 自賠法の適用が行なわれるということは、決定したわけではございません。自賠法の第三条に規定してありますように、自動車の運行によって人的損害があったのであるかどうか、そういう責任関係調査がいま警察当局で進められておりまして、あと一週間ないし十日のうちにそれが決定する由であります。それを拝見しました上で、運輸省としては考えを決定いたしたいと思っております。法はやはり厳正公平に取り扱わなければならぬと思っておりますが、しかし情状酌量ということもございますし、今度の事故等を見まして法の許す範囲内において、できるだけ愛情を持った措置をとるように心がけたいと思っております。
  40. 板川正吾

    ○板川委員 いまのように、バス側にミスがなければ自賠法適用ということにはならないのであります。ですから、私はこの場合に、万が一バス側に若干のミスがあるとするならば、こういう点に問題があったんじゃないか、これはまあ新聞報道関係を基礎としておりますから、事実関係はまたどうかわかりません。この点、ひとつ見解だけを披瀝しておきますと、主催者側が山頂の天候等は確認の問い合わせをしておるようであります。しかし、行く途中の行程の気象、交通安全の気象の確認をする意味問い合わせはしていなかったやに新聞報道等がありますが、こういう点でまず一つの問題点があると思います。  もう一つは、犬山で出発するときに、もし一七七番の電話気象条件を聞いておれば、これまた一つの要注意をする時期であったのでありますから、時間等の関係もあるかもしれませんが、そこでひとつ聞くということもあり得たと思うのであります。  第二は、二回も消防団の制止を聞かずに前進したという、これは新聞報道であります。その危険な場所については、地元消防団等のそうした意見を大いに参考にしなくてはならないのでありますが、それに耳をかさなかったということであれば、これはまた私は問題点の一つであろうと思います。しかし、これもまた新聞報道であるのでありまして、事実はどうかということは、私は確認しておりませんが、一つの問題点でありましょう。  次は、上麻生駐在所の森藤巡査が十七日の夜の十時半から十二時にかけて麻生橋のたもとに立って交通指導をした、危険だから折り返したほうがいいと説得した、その中にバスがあったかどうか知らぬという新聞報道がありますが、この時間に森藤巡査部長がそういう説得、指導をしたのかどうか、またその中にバスが入っておったのかどうか、入っておったとすれば、これはまた一つの問題点でありましょう。  次は、モーテルに到着するまでその行く途中に、すでに山くずれの前兆として小石がばらばらとバスの屋根の上に落ちていたという乗客の話というのがあるそうであります。これもまた私、確認しておるわけじゃないのでありますが、こうした状況のもとで、豪雨をついて帰路を急いだ、こういう状況判断等に若干のミスがあったとするならば、そういう点ではないかと思うのであります。  ところで、以上の四つの問題点について、一番目については気象庁関係者、二番目については消防庁関係者、三番目については警察関係者、四番目については気象台関係者運輸省、この関係者から以上の点について事実関係、事実はどうであったかということをひとつ発表願いたいと思います。
  41. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 運輸省として、まず総括的にお答え申し上げたいと思いますが、以上のような諸点は御意見として拝聴いたしまして、今後それらの諸点について慎重に検討いたしたいと思います。おそらく警察当局の確定的な話があるまでは、行政官庁としては中間的な考え方は出しにくいのではないかと私は思います。やはり責任論というようなものはあくまでまた広範囲に問題を引くものでありますから、皆慎重に取り扱う必要があるように私は考えます。  以上のような点は、今後とも慎重に検討いたしたいと思います。
  42. 板川正吾

    ○板川委員 わかるだけ事実関係を言ってください。新聞報道と違う点は違うと言ってください。
  43. 柴田淑次

    柴田説明員 一番の問題についてですが、奥様ジャーナルですか、会社側のほうから問い合わせがあったということは先ほど申し上げたとおりでございますが、その問い合わせの内容につきまして、私のほうから現地問い合わせました。どういうような問答をしたかということを問い合わせた結果、その問答は録音テープにも何にもとってございませんので、当時を思い出しての回答でございますので、あるいは誤りがあるかもしれませんけれども、大体のところ、いま先生のおっしゃいましたように、乗鞍山頂の明日の天気について問い合わせた、その回答をしたけれども、その途中のことについては回答はどうもしてないような、そういう次第でございます。
  44. 永瀬章

    ○永瀬説明員 白川町の消防団が制止をしたかどうかということについてでございますが、私どものほうから県を通しまして白川町のほうに事実の有無につきまして問い合わせをいたしておりますが、まだ正確な回答は参っておりません。
  45. 鈴木光一

    ○鈴木説明員 警察庁からお答えいたします。  御質問の点の中にありましたいろいろな問題につきましては、ただいま警察といたしまして事故原因調査を進めておるわけでございます。その中に御指摘のようなものを含めまして、いま鋭意調査を進めておる次第でございます。ただその中で、二点ばかり非常に具体的な新聞に報道された事実がございますので、その点につきましては特に岐阜県本部に命じまして調査を進めましたので、それだけ取り出して申し上げたいと思います。  一つは、新聞記事によりますと、消防団が本件のバスに説得を続けたというような記事が出ておるわけでございます。この点につきましては、岐阜県警を通じまして地元白川町の消防団幹部から事情を聴取したところによりますと、同消防団員の招集は八月十八日の午前零時十分ごろ発令されまして、団員が消防団詰め所に参集いたしましたのは、おおむね午前零時三十分ごろでございますので、新聞に報道されたような時刻には本件のバスの集団はすでに白川橋を通過して南下していたものと推定されますので、そのような事実はなかったということでございます。  それからもう一点の上麻生駐在所の警察官が警告をしたにもかかわらず進行を続けたというような記事が出ておりますけれども、これにつきましても、この上麻生駐在所の森藤巡査長に対して事情を聴取いたしました。この巡査長は警戒体制ですでにいろいろな活動をしておりましたけれども、十七日の午後十一時二十五分ごろに本署のほうから下油井地内における土砂くずれのため、国道四十一号線の北上禁止の交通規制を七宗橋の上で実施せよとの電話指令がありまして、それによって七宗橋の上に立ちましたので、その時刻は十一時二十五分ごろから三十分ごろだと思います。そういうことでございますので、本件のバス集団が七宗橋を通過した推定時刻と関連いたしますと、この網にはすでに中に入っておりまして、ひっかからなかったということでございます。ただその立っておる間にほかのバス、車が相当参りまして、それに対しては所要の措置を講じたということは事実でございます。
  46. 板川正吾

    ○板川委員 自賠法の適用というのは、単に気の毒だから何とか自賠法を適用して、それで三百万の保険金をおろして救済したらいいということだけで問題が解決することじゃないことは大臣も言うとおりであります。これは同時に刑事責任と、さらに民事的な責任という問題がつきますから、厳正な事実関係に基づいて適用をきめるという以外には私はないのじゃないかと思うのであります。ぜひ明快なる事実関係に基づいた判断をしてもらいたいと思うのであります。  この際、言っておきますが、私は、自賠法の適用よりもこれは国家賠償法の適用を受けたほうがより具体的ではないかという考え方がありますから、そういう点を申し上げておきます。  さらに大臣に伺いますが、今日の観光バスの業態を見ますと、全国で五百三十社、車が一万五千台、そうして一年間に六割三分が稼働して、一日平均しますと一万台の車が動いております。輸送人員は一億八千万人といいますから、国民は毎年二回ずつ観光バス利用するということになっておる。しかも道路が改善をされてスピード化が進み、さらに観光バスが非常に長距離を行く、あるいはいままで日帰り、一泊で行ったのが、三日、三泊四日というふうに長日化する傾向になっております。そうなりますと、当然土地に不案内な、あるいはなれない運転手が地図をたよりにそういう地方に行く。あるいは出発日時の天候はよくても、旅行先でこういう暴風雨等にあうような場合がある。予測できない天候の変動等があるわけであります。こういうようなときに、乗客の安全を確保するためには、大臣報告のように、いろいろ通達で指導しておりますが、この気象通報の徹底化、それから、これはいま事実行なわれておるそうですが、電話で一七七番を回せばどこでも、いつの時間でも、その地方の天気予報が傍受できるという指導法をさらに強化する必要があるのではないか。山の中のガソリン屋に連絡するということもあるかもしれませんが、そういううちに飛び込んで、危険だと思ったらば一七七番を回して、その地方の気象条件を聞いて判断をする、こういうような指導が私はさらに必要じゃないかと思うのであります。今回のこの事故——時間の関係がありますから私の意見を申し上げますが、自賠法の適用もされない、国家賠償法も適用されないというと、国民は何としても割り切れないという気持ちであります。会社は、聞くところによりますと、一人五十万円の旅行傷害保険に入っておって、少なくともなくなった方々には五十万円が支払われるそうでありますが、私はこの経験をこの際生かしたらいいのじゃないかと思うのです。たとえば旅行あっせん業者を代理店として、安くて、もっと簡単な手続で旅行中の危険を担保する保険制度を創設したらどうだろうか。現在旅行傷害保険が五十万円払われるというような保険がありますが、これは非常に高過ぎるのですね。三日間で旅行して一人百万円の保険金で保険料が幾らかというと、二千五百万円という勘定になるようでありますが、これじゃとてもかける気にならない。少なくとも一旅行について百円見当の保険料で、そして二百万見当のいざというときに旅行中の傷害に対する保険、川口市が市民共済という制度をとったような、こういうもので、自動車賠償法も適用されない、国家賠償法でも救われない、こういうような旅行中の災害に対して、そういう保険制度をこの際考えられてはどうだろうか。これは観光バスが非常に国民生活の中へ入ってきておる、しかも長期化する、長距離化する。どうしても、どういう手だてをしてもなかなか安全を確保できない場合も、万が一今回のようにあり得るわけであります。こういう保険制度をこの際考えられたらいかがでしょうか、この点、大臣の見解を承っておきます。
  47. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は今後大いに検討してまいりたいと思います。  ただ、われわれのほうの心がまえとしましては、保険の世話にならぬように、事前にこういう事故を起こさぬような指導をモットーとしていきたいと思っておりす。
  48. 門司亮

    門司委員長 河村君。
  49. 河村勝

    ○河村委員 自賠法の点だけ、時間がないようですから、先にお伺いいたします。  運輸大臣、先ほど運輸大臣は、まだ自賠法の適用はきまったことではないという御説明でありましたが、今回こういう事故が起こったあとで運輸省からあらためて、先ほど大臣の言われた三台以上もバスを連ねていくような場合には有能な責任者をきめろというようなことをはじめ、具体的な項目についての指示をされておりますが、これは従来やっておりました運行の安全対策が必ずしも十分でなかったからこういう指示をされたのだというふうに理解をいたしますが、それでよろしゅうございますか。
  50. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 今度のようなこういう未曽有事故を経験しまして、いろいろ反省をしまして、こういう点についてもっと注意をする必要があると思いましたのでやったのであります。従来としてはいろいろ知恵の及ぶ限りの指導やら指示はしてきたつもりであります。
  51. 河村勝

    ○河村委員 さっき大臣もおっしゃったわけでありますが、役所が指示したことだけは守っておったとさっきおっしゃって、それだから責任が一応ないのだという意味にとられる発言がありましたけれども、およそ役所の指示というものはそう効果的のものがあるわけでもないので、安全運行の責任というのは本来運行者が持っているわけですから、役所の指示以外のことでも、当然安全については必要なことはやるべき責任があるものと考えますが、いかがでしょうか。
  52. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 役所の指示する範囲内、範囲外を問わず、全知全能を傾けてこういうものをやるべきものであると思います。
  53. 河村勝

    ○河村委員 自賠法につきましては、民法の損害賠償の責任と違いまして、挙証責任が転換をされて、車の所有者並びに運行者が積極的に注意を怠らなかったことを証明しなければならないことになっております。これについてはもちろん十分御承知のことでありましょうけれども、その趣旨はどういう趣旨でございますか。
  54. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 立法の趣旨については自動車局長から答弁させます。
  55. 黒住忠行

    ○黒住説明員 いま先生御指摘のように、わが国の不法行為に関しまする基本的な民事責任の賠償責任につきましては民法七百九条でございまして、これは被害者側から加害者の故意、過失を挙証することになっております。それに対しまして自賠法の第三条は例外規定でございまして、一般の不法行為に対する原則よりも被害者に有利に規定をされたものでございます。
  56. 河村勝

    ○河村委員 大臣、いま自動車局長答弁にあったように、被害者救済をより有利にするためにできた法律であります。そうしますと、先ほど大臣自身も、飛騨川ドライブインでもってUターンしておれば避けられたかもしれぬということをおっしゃいました。そうしますと、こまかい具体的な事故検討は別として、包括的に積極的に注意を怠っていないことを証明するだけの行動はとっていなかったというふうに認定せられると考えますが、いかがですか。
  57. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう点も含めまして、これは警察当局のより具体的な詳細な見解をまず聞いてみたいと私は思っております。
  58. 河村勝

    ○河村委員 どうも最後のところになりますとお逃げになりますが、しかし刑事責任とこれは別の問題であります。この自賠法の場合には、積極的に過失があったということではなしに、過失がなかったことを証明できなければ責任があるという趣旨ですね。そうであれば、私は今回の事件については、そうこまかなせんさくをしなくても、当然適用があると考えることが至当だと思いますが、いかがですか。
  59. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう事実関係の詳細なデータを克明に正確に知るということがまず第一だと思いますが、私らのところへはそういう正確な克明な権威あるものとしてはまだ提出されておりませんので、それが出てきてから判断したいと思います。
  60. 門司亮

  61. 沖本泰幸

    沖本委員 運輸大臣にお伺いします。  最近とみに新聞紙上でも問題化されておるわけですけれども、観光事業の一元化ということが強く叫ばれておるわけですけれども、その一元化について大臣はどういうふうなお考えをお持ちでしょうか。
  62. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この間、一元化の問題で、行管長官と厚生大臣、文部大臣、私と会談をいたしましたが、私はまず観光というものの理念を統一しようではないか、そういうことを言いまして、レジャーとかそういうような考え方はこの際指導し直さなければいけない。むしろレクリエーションという考え方にしなければいけない。レジャーというのは、ひまつぶしとか物見遊山とかいう意味が加わってきて、もう人がいればそこへ人が集まる。由比ケ浜や富士山などに人が集まるという現象が出てきております。これは観光という本来の意味とは違う。観光という意味は、その国土を知り風土を知り、人情風俗とかあるいは文化とか伝統とか、そういうものを知りながら、そして心を楽しませる。それがまた明日の活動の源泉になる、あるいは国を愛するところの源泉になる。そういう意味の観光ということばに考え直さなければいけない。特にこれだけ日本が経済成長をして、一億の人間のうち大体七千万人くらいがいろいろ移動しておるようです。これだけの摩擦度の強い高密度社会、これだけの経済成長をしているのですから、この民族のエネルギーを大切にしなければならぬ。この民族のエネルギーが働き通しで、すり切れたらたいへんなことになる。そういう意味でこれを休めて、そしてまたあしたの生産に備える。そういう意味のレクリエーションという考え方にまず考え方を統一しようではないか。そういう意味のレクリエーションというものの観光というものを実現していくために各省庁はいかなることをなすべきであるか。文部省あるいは厚生省あるいは運輸省あるいはそのほかの各官庁、みんなそういう使命があるでしょう。そういう意味において、それを徹底していくためにいまのようなばらばらの体制でいいかどうか。私は、むしろいまのような停滞している現状の物見遊山的なレジャーというものをレクリエーションという考え方で統一していくためには、より強い中央からの指導が必要であると思うのです。さもなければ、いまのような現状は続いていくよりほかない。そういう意味において、観光一元化ということを観念や思想の統一から始めて、それを機能の一元化の方向に持っていきたい、こう考えておるのであります。
  63. 沖本泰幸

    沖本委員 そういうことに関しまして、現在の運輸省管轄の観光関係の業者並びに交通事業者はどの部類に属しているのでしょうか。おもにレジャーのほうに属して事業の主体性があるのでしょうか、あるいはその中にレクリエーションというものをうたい込んで事業の主体が進められておるのでしょうか。
  64. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは目下玉石混淆でありまして、修学旅行とかああいうものはレクリエーションという意味はありますが、しかし、また一般のバス旅行なんかには物見遊山というようなものがあります。しかし農協の婦人部がいろいろ研究所を見たり、ついでに温泉回りというようなのは両方の意味がありますが、目下のところは玉石混淆だと思います。しかし、もっとそういう高尚な、国民的な意味を持ったレクリエーションという方向に強力にこの際指導していく必要があると私は思います。
  65. 沖本泰幸

    沖本委員 これは現在のあり方としては、マスレジャーという点に重きを置かれておって、そういう面からPRが盛んに行なわれているということはみな御承知だと思うのです。そういう点に関して、もっと行政を一元化していただくのはもちろん、運輸省のほうとしても観光に関するもっと指導体系を明らかにして、そういう問題を具体的にさらけ出して解決していただく、こういう方向へ向いていただかないと、こういう問題はやはり続出してくる、こういうふうに考えるわけですが、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  66. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 同感であります。御趣旨方向に私たちも持っていきたいと思っております。
  67. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 それでは中曽根大臣は何か他のほうにも用件があるそうでありますから、お尋ねしたい点はまだたくさんありますけれども、また後日お尋ねすることにしまして、大臣にはお帰りいただいてけっこうでございます。  それでは建設大臣においでをいただきましたので、建設大臣お尋ねいたしたいと思います。  国道四十一号線は、過去においても落石、土砂くずれの多い危険区間が相当あったと聞いておりますが、今回の事故にかんがみて、今後このような山岳道路について管理面での対策はどのようにされるのか、御意見をひとつ伺いたいと思います。
  68. 保利茂

    ○保利国務大臣 今回の事故ははなはだ遺憾に存ずるわけでございますが、日本の国土がどうしても山岳地帯に道路を敷設しなければならないような事情になっているものでございますから、道路をつくりますについては可能——これは専門領域に属することですけれども、道路の安全をはかっていきますためには、可能な限り手を尽くして安全を保つように努力をいたしておりますけれども、実際問題としては、高い山から土砂がやってくるというようなことは——山があればすぐそう考えるわけですが、それではその山をどうかしてでなければ道ができないかというと、そうもまいらぬわけでございます。したがって、ただいま道路当局でもその方向検討をいたしておりますが、たとえば大地震がくる、あるいは集中豪雨がくるというようなことをできるだけ早く把握いたしたい。把握できたならば——ある程度あとでは利用者からお小言をいただくかもしれませんけれども、なるべく事前に通行規制をするというような措置を各道路別にとっていかなければならぬのじゃないか。たとえば、どこでも同じというわけではなしに、同じ山岳地帯でありましても、土質の相当堅牢な地帯もありますし、非常に脆弱なところもあるでしょうし、また平たん地帯もあるでしょうから、同じ五十ミリ、六十ミリの雨でも何でもない場合もありましょうし、あるところでは今回のようなことになることもあるわけでありますから、そういうようなところを、ただいま国道の危険個所の再点検をいたしまして、そして集中豪雨等のときには、危険が予想されるというところについては、あらかじめこの道路は五十ミリなら五十ミリ、四十ミリなら四十ミリの時間雨量が予想される場合には通行規制をするというような措置を具体的にとって、事故の未然防止につとめるということもあわせて考えていかなければならないじゃないだろうかというようなことを、ただいま道路当局で検討いたしておる次第でございます。
  69. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 特に四十一号線は、最初に質問を申し上げたように、いままでにもそういう土砂くずれがあったという例が明らかになっておるようでありますから、今度の問題はいまおっしゃったように、土質によっては山岳地帯であっても少々の雨が降ったってだいじょうぶである、大雨が降っても土がかたい、岩石がかたいために心配がないというところもある。そういうように色分けしてくるといろいろの面が出てくるだろうと思うが、この四十一号線に対しての今度の事故から考えて、今後この四十一号線に対しては、もう少し悪い個所に対しては直していかなければならぬというような責任を感じておられるかどうか、それをお聞きしたいと私は思うのです。もうこれで十分である、天災であるからもうこれ以上は何ともいたし方がないとお考えになっておるのか。これはある程度まだまだ直すところはあったんだ、いまになってみれば、あのような大雨があるとは思わなかった、これで十分であると思っていたのだけれども、この大雨考えてみた場合に、やはりもっと直さなければならぬとお考えになっているかどうか、この点をお聞きしたい。
  70. 保利茂

    ○保利国務大臣 四十一号線の現場を私は通ったことはございませんので、ひとつ近いうちに通らしていただきたいと思っていますが、今回の事故個所、あの沢については何らかの防災措置を講ずべきであるということを、この事故が起きて一そう認識をされて、農林省も大体砂防工事を進められるというように、両省で相談をしてやっておるわけであります。この四十一号線は、御案内のように日本海と太平洋の連絡の幹線になっておりますから、したがってこの道路の管理につきましては、地方建設局、道路局においても非常に注意をいたしておる道路でございます。しかし、具体的にそれじゃどこがあぶなかろうかというようなこと、ただいま点検をいたしておりますから、措置を講ずべきところにつきましてはできるだけ、ひとつこれからでも措置を講じていかなければならない。いままでも講じてきておったと思うのですれけども、とにかくこういう事故があったわけでございますから、相当の金もかかりましょうけれども、かえられるものではございませんから、ひとつ道路局にもそういうように指示をいたしまして、とにかく危険個所等で手がつけられるところがあれば遅滞なく手をつけるようにということを指示しているようなわけでございます。
  71. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 大臣答弁で大体了としましたけれども、どうかお願いいたしたいことは、百四名のとうとい人命を失った、しかもがけくずれで川べりのほうの道路が破壊せられて落ちたのじゃなくて、上から落ちてきた土砂によって自動車が押し流されて、そして川に転落して百四名のとうとい人命を失った、そういう意味を十分に御存じのはずでありますから、そういうようなことが二度と繰り返されないように、先ほどのお話しのように日本の道路は山岳地帯の道路が非常に多いということであります。土質の研究やらあらゆる研究を十分していただいて、いまおっしゃったように、農林省関係ともあるいは他の省との関係も十分な連絡の上において、再び事故を起こさないように、ひとつ御配慮を願いたい。心からお願いをいたす次第であります。
  72. 保利茂

    ○保利国務大臣 四十一号線は、丹羽さん御承知のように東海地方と日本海との連絡幹線道路、私が報告を受けておりますところでは、二車線ではあるけれども、八メートル五十というようなかなりのゆとりを持った道路を築造して、しかも工法においてもあのとおり現場の事態が証明しておりますように、道路自体には少しも——少しもということはないでしょうけれども、損壊を来たしていないというように、かなり入念な工事をしておる。よけいなことでございますけれども、もう一つの連絡国道であります百五十六号線、これはまた四十一号線よりもっと非常に危険な条件にあるようであります。したがって、最終的な路線の決定も道路局はちゅうちょをしておるように、非常に慎重にかまえておるわけであります。そういうふうに非常に大事な国道でありますから、入念な築造をいたしてまいっておりますけれども、何さま道路以外のこういうふうな事態で、こういう事故が起きたということは、やはり道路に関することであるのでありますから、きびしく反省をして、とにかく四十一号線のかくのごとき事故を再び起こさないように——きょうも何か報告を受けておるところでは、三時から道路を閉鎖しておるというような措置をとっておるわけです。
  73. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 どうもありがとうございました。あなたのときにこういう不幸が起きたことは、まことに大臣お気の毒でありますが、なくなられた方の気持ちを察していただいて、ひとつ十分に今後ないように御配慮いただきたいと思うのであります。  最後に被害者救済措置についてお尋ねをいたしたいと思いますが、これは運輸大臣関係になるかもしれませんけれども、もう大臣おりませんから……。今回の事故に関して任意の自動車保険についてはこの観光会社が自動車一台一千万円、旅行傷害保険については一人当たり五十万円の保険に加入しておると聞いておるが、その保険金の給付についてはどのように措置をされたか。また名古屋市の交通災害共済については、その給付はどうなっておるか。ひとつ知っていらっしゃる範囲で担当していらっしゃる方から御説明を願いたいと思います。
  74. 黒住忠行

    ○黒住説明員 保険の関係でございますが、第一は先ほどからお話が出ております自動車損害賠償責任保険でございます。第二が対人賠償の責任保険でございまして、ただいま先生が任意保険として御指摘になったものでございます。この二つは、自動車側の責任の有無によりまして支払いが決定されるのでございます。すなわち賠償保険でございます。その二の任意保険につきましては、お話のように一事故につき一千万円当てのものが二両の車についております。それから第三が旅行傷害保険でございまして、この旅行傷害保険は、名鉄観光サービスが今回の旅行につきまして、一人につき五十万円というわけでございます。それからこれは賠償保険の性格でなくて、一般の生命保険、傷害保険の性格でございます。したがいまして、これの支払いはさように承っております。  それから最後の名古屋交通災害共済納付金でございますが、これにつきましても、詳細な約款は現在入手しておりませんが、聞くところによりますというと、この保険は生命保険、傷害保険に類似する性質のものでございまして、したがいまして、損害賠償責任保険ではないようでございます。その生命保険あるいは傷害保険につきましては、事故が起きますと支払い得るのではないかと思います。その他被害者の中には一般の生命保険に加入になっている人が相当あるわけでございますが、その詳細につきましてはわれわれのほうでは存じておりません。保険関係につきましては以上でございます。
  75. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 そうすると、旅行傷害保険については問題なしに五十万円は払う、これは決定したわけですね。それから一千万円というものに対しては、これは自賠と同じような関係になるから、まだ調査をしておる。その結果でなければ答えは出てこないということであります。名古屋市の保険に対しては、これは関係ないから、お支払いになるのはけっこうでしょう、任意であるからけっこうでしょう、こういう結論ですか。時間がありませんから簡単にひとつ御答弁願いたいと思います。
  76. 黒住忠行

    ○黒住説明員 いま先生がおっしゃったとおりでございます。
  77. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 それから自動車損害賠償保障法適用についてでありますが、これはすでに聞かれた方もありますけれども、これは自賠法の第一条には「自動車の運行によって人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立することにより、被害者の保護を図り、」ということを目的としているが、名古屋市や民間が保険金の給付を決定しているのに、政府は、本法による保険金の給付をもう少しすみやかに決定して、一日も早く被災者救済になぜ当たっていただけないのか。これが、なくなられた方々遺族や家族の方々がやかましく言われることでありまするが、先ほどから聞いておりますると、なかなかむずかしくて、いろいろの面を調査しておるから困難だ、こういうことであるが、一体いつごろこれらの答えが出るか。自賠法によって払えるものなら払う、払えないものは払えない、どういうふうになるかという答えはいつ出るのですか。
  78. 黒住忠行

    ○黒住説明員 生命保険、傷害保険等につきましては、事故の損害によって支払われるわけでございますが、賠償保険でございますので、賠償責任があるかどうかということを確定しなければ支払いができないわけでございます。賠償責任を確定いたしますためには、事実関係が明白にならなくてはならない。その事実関係は特に警察のほうで詳細に調査されております。事実関係が明白になりました場合におきましては、その事実関係を基礎といたしまして、刑事責任の有無、そしてまた民事責任の有無が問われるわけでございます。われわれといたしましては、事実関係調査につきまして、警察調査がただいま進行いたしておりますので、その結果を待ちまして、すみやかに結論を出していきたいというふうに考えております。
  79. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 もうこの事件が起きてから日にちは、御承知のとおり相当たっておるのだが、いつになったらこれがはっきりしてくるかということに対して、実は先ほども言ったようにみんな非常に心配しておりますし、それから同時に苦しんでおるということなんです。  そこで、赤澤自治大臣は、過日の参議院災害対策委員会で、自賠法の適用については来週中に結論を出すと述べられておるが、何か見通しがあってのことか、その根拠をお尋ねいたしたいと思うのですが、これはどなたからか、局長からでも御答弁いただけるか。この点について赤澤自治大臣は、来週中に結論を出すという答弁をしておりますが、必ずそのとおりになるのですか。どうですか。
  80. 保利茂

    ○保利国務大臣 丹羽さん、私から御参考までにお答えいたしておきますが、この間の参議院の災害対策委員会へ赤澤自治大臣と一緒に出ておりましたが、事故原因について追及いたしておって、一週間か十日ぐらいのうちには結論が出せると思うという答弁をされておりました。したがって、一週間か十日——この間から見ればもう一週間になりましょうか、そういうことで、原因調査がそれで判明すれば、そこで判断を下す、こういう意味のようでございます。
  81. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 建設大臣が同席していらっしゃったのだから、あなたから御答弁いただいてけっこうで、非常にうれしく思うのですが、もう一週間はたったのだから、大体ここ二、三日のうちに答えが出てくるということになるのですか。
  82. 保利茂

    ○保利国務大臣 あれは先週の金曜日だったと思います。一週間か十日、結論を出すまでにはかかりますということを言っておりましたから、時間的にそう、一日どうという——自治大臣は公安委員長の職責も持っておられるわけでございますから、したがって、そういう見通しを持って調査を急がせておるということでございましたから、それ以上私はつけ加えるわけにはまいりません。
  83. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 あなたも、責任者の一人として、できるだけ早く結論を出してあげてください。そうしてやってあげてください。  それから、二十三日の読売新聞によれば、政府は、内閣法制局が中心になって研究した結果、同法の適用に見通しをつけたと報ぜられ、ほかの新聞にも同じような記事が出ているのでありますが、きょう現在その適用がきまっていないとすれば、新聞の記事をどう解釈したらいいかと思うのですが、これはちょっと変な質問のようでありますけれども、どうですか。
  84. 保利茂

    ○保利国務大臣 きょう午前中、参議院のほうの交通災害の特別委員会運輸大臣お答えをされておりますが、まだそのことについての結論はついておりませんということを運輸大臣は申されておりました。
  85. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 これはことばのあやや、テクニック的な答弁ということでなくて——私は、最初に、ちょうど大臣がいらっしゃらないときに、質問をする前提として、私はほんとうに遺族の一人として、その気持ちでお尋ねをしまして、そして遺体をながめてみるときに、棺のふたをとっているときに、ランドセルを、だれが入れたのか、その姿を見たときには、涙なくして見られません、こういうことを私は申し上げて、この質問に対しての答えは慎重に、そうして、そのかわいそうな人々のために何かいい方法があったらひとつ考えてもらいたいということを考えつつ、念じつつ質問に立ったわけなんです。  そこで、今回の事故はもう大臣はよく御存じだと思いますが、全滅のうちが四世帯あるのです。両親を失った遺児家庭が八世帯ある。この人たちは一体だれをたよって生きていくんでしょうか。そういうことを考えてみると全く気の毒にたえないのです。そして、しかもこの中で小学生が十六人死んでいるのです。もう報告が来ておることだろうと思います。中学生が六人、高校生が五人、大学生が二人、そういうような状態のなくなった人々である。それが、いまだに自賠法が云々、あれがこうだ、といったようなことで、名古屋市なんか、とにかく任意保険であろうとも、これは率直に認めるべきであるということで認めておるのです。だから、私は総理府が中心になられるのか、あるいは運輸省が中心になられるのか、あるいは建設省が中心になってやっていただけるのかは別といたしまして、至急すみやかに、自賠法に当てはまらないのか、当てはまるのか、どうなのか、そして、それには運転手責任があるのか、あるいは観光バス会社責任があるのかないのかということは、私はもうこう日がたってくれば大体答えが出てこなければならないはずだと思う。私はきょうのこの委員会で当然答えを出していただいて、こういうふうに政府は決定いたしましたという御答弁をいただけると思って質問をしたわけです。いまだその答えをいただかないことはまことに心残りがいたしておるわけでありますけれども、他の方々もずいぶん質問があるようでありますし、建設大臣もどこかへお出かけになるようでありますから、私はもう質問を打ち切ります。どうぞひとつそういう点について、いままでは交通対策に対しての責任的取りまとめをしていただくのは総理府でありますから——ちょうど長官、どこかへ行ってらっしゃったけれどもお帰りになったようでありますから、長官も十分この点についてお考えいただき、そしてこの処置をひとつとっていただきたい。  それからもう一点申し上げておきますが、この帰る時間に帰ろうと思っても帰ることができなかったということは、土砂くずれがしてきて、そして前の車がストップしていた。だから待避するとか待避しないとかというよりも、帰ろうと思って帰ってこようとするのにどうしても帰ることができなくて、そこでストップしたのです。それで山くずれが来たということは実地検証の上においても明らかになっているようであります。あるいは巡査がとめたとかとめないとかいう問題はさておいて、実態はそういうことになっておりますから、これを私は道路が悪いとかいいとか言うのじゃない、そういう機会にあったということは、もう少し離れておりたらみんな助かった、ところがそういう悪い場所にいたがためにこのような事故が発生したということをお考えになったら、当然自賠法なりそのような方法はとられてもあえて国民は批判をするようなことはないと思うのです。先ほどもどなたかが何かこれにはっきりした態度をしてめんどうを見てやれとおっしゃったが、私はそのとおりだと思いますから、どうぞその意味においてよくお考えいただいて、至急すみやかな結論を出していただくことを望んで質問を打ち切ります。
  86. 板川正吾

    ○板川委員 建設大臣にお伺いいたします。時間の関係がありますから急ぎます。  道路法の四十二条によりますと「道路管理者は、道路を常時良好な状態に保つように維持し、修繕し、もって一般交通に支障を及ぼさないように努めなければならない。」ということをうたっております。これは建設大臣として当然承知であろうと思います。そこで伺いますが、今回の土砂崩落によるような事故道路管理者として全く予測できなかった事態であったのかどうか。この点をまずお伺いします。
  87. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは四十一号線の沿線の土質等からいたしましても、先ほど丹羽委員にも申し上げましたように、四十一号線の築造にはかなり入念な方法を用いてやっておりますだけに、どんな事態になっても全然事故が起きないという確信を持った人はおそらく一人もなかろうと思うのですけれども、通常考えられるような事態においては大きな災害が起きることのないようにということで道路管理をやっておったということは申し上げられると思うのです。特に当日の中部山岳地帯の気象等からいたしまして、午後四時ころから数回にわたって。パトロールをいたしておるというように、かなり警戒し、気をつけておったようでございますが、ああいう異常ともいえるような、百ミリをこえるような集中豪雨のために思わざる事故を起こしてきたことははなはだ遺憾に思っているわけであります。
  88. 板川正吾

    ○板川委員 現場付近には落石注意という立て札があちこちに立っておる、こういう新聞報道があります。事実見てきた人もそう言っておりますが、落石注意という立て札はどういう条件のもとで立てるのですか。これは大臣でなくても、事務当局でもいい。
  89. 蓑輪健二郎

    ○蓑輪説明員 落石注意という標識につきましては、道路にはどういう標識をつけるかという標識令がございます。その中でやはり落石のおそれがあるところにつきましては標識がきめられております。その標識は一応山の形に点々と岩が落ちておるような絵の標識であります。ただこれだけでは落石の注意もなかなか徹底しないということで、日本語で落石注意というようなことを書く場同が非常にに多いと思います。また日本にはこういうような地形上山の道路が非常に多いために、落石注意というような標識は相当出ております。こういうところでやはりいまの切り取り面その他山側からいろいろ落石のあるような場所、ときどき現場を見ておりますと上からばらばら落ちてきたような、砂がたまっておるようなところ、こういうところについては落石注意の札を立てておる次第でございます。
  90. 板川正吾

    ○板川委員 新聞の投書等でも、国民の側からいうと落石注意というのはどうやって注意していったらいいだろうか、全く建設省の責任のがれの立て札だという批判があるわけです。だからそういう意味で一応聞いてみるのですが、現場付近では落石注意の立て札を立てておったとすれば、この事故現場の付近の道路には相当ひんぱんに落石があるおそれがある、事実そういうのがあっておそれがあるから立て札を念のために立てる、こういうことではないかと思うのですが、この現場付近で落石事故が過去においてどういう件数であり、落石規模がどうであり、交通禁止をしたものしないもの、さらにそれと降雨量の関係等の実情について調査をしたことがありますか。
  91. 蓑輪健二郎

    ○蓑輪説明員 実はこの区間につきましては昭和四十年三月から国の管理指定区間になりましたが、その後四十年、四十一年にはほとんど大きな落石はございませんで、昨年の七月九日に大体雨量が百九十一ミリ、これは一日でございますが、この降雨量に対して、白川町、今度の事件のありましたより上流でございますが、そこで落石が起こっております。
  92. 板川正吾

    ○板川委員 建設省の資料を要求すると、落石事故というのはなるべく最小限の報告をするのですね。四十二年の七月九日にあったのは、これは災害予算を支出したものの実績であって、災害予算は使わなかったが相当の落石がその間にあったのじゃないですか。それからことしの三月に下山地区で土秒崩壊があって交通どめをしておるのじゃないですか。七月九日ばかりじゃなくて、ことしもあるでしょう。ちょいちょい起こっているのじゃないですか。落石で交通どめをしたものしないもの、そういう調べはしてないのですか。その現場の土木出張所なり事務所の日誌を見れば、大体この道路に幾月幾日に何時ころ雨のあとに石が落ちたかどうか、これはわかっているのじゃないですか。調べたことはありませんか。
  93. 蓑輪健二郎

    ○蓑輪説明員 いま申し落としましたが、三月の落石の問題は参っております。ただそれ以外に、四十年に指定区間になりまして、いままで何回あったということになりますと、非常に落石の規模がございまして、なかなかうちのほうに報告にならないような小さなものについては、いまのところ私のほうに資料がないわけでございます。非常に落石が多いところにつきましては、われわれ道路の管理をやっておりますと、そう大きな落石でなくても、常に道路面に、朝行ってみますと多少土なり、二、三石が落ちているというようなこともございまして、そういうところに落石注意というような標識を立てまして、できるだけ利用者の注意を促しておる次第でございます。
  94. 板川正吾

    ○板川委員 あとでけっこうですが、現地から、当時の日誌等から拾ってどういうような規模で落石事故があり、交通遮断をした場合としない場合とのそういうような報告を、あとで資料で出していただきたいと思います。  それから、これは建設省関係か運輸関係かになりますが、この国道四十一号線の現地付近の自動車交通量、特に夏季の土曜日、事故がありましたのは夏休みの土曜日ですが、この土曜日などでは、観光道路として交通量が非常に多いと思うのですが、大体一日どのくらいの自動車が交通しておるか、調査をしておりますか。
  95. 蓑輪健二郎

    ○蓑輪説明員 大体この交通量につきまして聞いてみますと、普通の日が大体三千台くらい、土曜、日曜の観光そういう休みの交通の多いときで五千台くらいになっておるように聞いております。
  96. 板川正吾

    ○板川委員 私の調べによると、去年の七月下旬のある土曜日が三千二百三十三台、ことしはまだ七月十四日ごろの統計ですが、これは日曜日で五千十一台、しかし夏休みになっておりません。去年の八月の夏休みの土曜日というと、四千五百二十四台。ですから、七月よりも八月の上旬ごろ、中旬ごろのほうが去年等でも二倍くらい多いから、おそらくことしの七月十四日の五千台というのはことしの八月の十七日ということであれば、七、八千台、こういうふうに通っておるんじゃないかというふうに、これは推定ですが、思うのです。私は、一万台近い自動車がこの道路利用するということは非常に重要な交通路だと思うのですが、この道路の交通量から見てこういうふうに考えていいんでしょうか、いかがでしょうか。
  97. 保利茂

    ○保利国務大臣 四十一号線は、先ほども申し上げましたように、日本海側と太平洋側をつなぐ幹線道路でございますから、したがって、それだけでも相当の交通は期待できる。そこへもってきまして、近来の観光ブームでございます。集団旅行等がかなりふえておりますから、この事故の当該者も乗鞍山頂へ登るといったようなことでございますから、したがって、土曜、日曜等の休日の利用というのは相当多いということは、もうそのとおりでございます。
  98. 板川正吾

    ○板川委員 わかりました。あとでやはり重要な証言になると思うので……。  次に伺いますが、これは道路局長新聞談話に出ておるんですが、山間部の国道の設計では、雨量強度が一時間五十ミリを限度としてある。この国道四十一号線の雨量強度は何ミリを基準として設計してありますか、これを伺います。
  99. 蓑輪健二郎

    ○蓑輪説明員 雨量強度で道路を設計するという、その全体の道路の設計の中にどのくらいの雨量を見込みなさいという一つの基準はございません。ただ、道路をつくりますと沢の上を土を盛って渡らなければならないような場合がございます。そのときに沢の中にどのくらいの暗渠を入れるか、このくらいのときには、沢の流域面積を検討いたしまして、その場所によって違うと思いますが、まあ普通だと大体時間五十ミリくらいの雨の量で集まる水をはけるような暗渠を設計しておる次第でございます。その他の道路本体の安全につきましては、やはりこれは雨は道路本体の中に入りますと非常に道路が弱くなりますので、いかにして外の水を道路本体に入らないように排水をするか、こういうことで道路の本体の設計をしておる次第でございます。
  100. 板川正吾

    ○板川委員 いま話がありましたように、現場には山側に沢があります。その沢の流れ来る水を排水するために暗渠がある。これは道路の下に施設してありますが、これのパイプの直径が一メートル二十だとこう言われております。この一メートル二十のパイプの容量で、その地域の沢に流れ集まる雨の流量計算をして、この一メートル二十のパイプが適当であったのかどうか。感じとして、この一メートル二十が実は小さかったのじゃないだろうか。そこで一時に集中豪雨が出たために土砂等が流れてきてそのパイプをふさいでしまった。そしてそのパイプの上に土砂が詰まったから道路の上に水が流れておる、そこに上から土砂が鉄砲水が流れてきたから、道路の上を押し流した、こういう結果になったのじゃないかという感じがするのです。これはしろうと流の考えかもしれません。もしその。パイプが大きくて、流れ来る土砂なりがその下をくぐっておれば、たまたまそういう土砂崩壊があったとしても、あるいは自動車に当たったかもしれませんが、自動車を一挙に川の中へ押し流すような、大きな、道路上をすべり落ちるようなことにならなかったのじゃないか。その辺に道路の建設上ミスがあったのじゃないかという感じがする。これはしろうと流の考えですが、この点について建設省はどういうような考え方を持っておりますか。
  101. 蓑輪健二郎

    ○蓑輪説明員 現在事故のありましたところは一メートル二十のパイプがあります。これでどのくらいの水がはけるかというのは、やはりパイプの径とパイプの勾配に関係してくると思います。私のほうにこの水利資料がございませんが、一メートル二十であのくらいの勾配で設置しておけば、雨量については相当な水がはけるというように考えております。ただ今回のような土石流が出てまいりますと、これはなかなかああいうパイプではもちろんはけない。ちょうどこの事故のありましたときに、事故の地点より下流でございますが、大洞橋というところがございます。これは沢を橋で渡っておりますが、そこについても上流の沢から土砂が流れてまいりまして、ほとんど橋の下は一ぱいになりました。その上を水が流れているような状況でございます。どうも上の土砂流に対して安全な、それが道路の下を流れるというような設計はなかなかとりにくいものだと思っております。
  102. 板川正吾

    ○板川委員 落石注意の立て札があるくらい土質の状況が悪いというところですから、水と一緒にそういう土砂が流れ来たった。私建設省から数字を計算した資料をもらって持っておるのですが、水だけなら心配なさそうだというのですね。しかし土砂までは計算に入ってない。しかし、そういう地域ならばやっぱり私は土砂の流れもある程度計算に入れるべきではなかろうか、これは私の見解ですが、そのように思います。  そこで、今度は行政管理庁に伺いますが、新聞報道によりますと、現地の行政監察局長二名が、今度の事件道路管理者にも責任があるんじゃないか、一つとして、土砂くずれが起こった四十一号道路は、山側に二百メートル入った地域は、明治四十一年五月に政府が保安林の指定をした、また、同じく明治四十三年七月には砂防指定もしておるが、二台の観光バスを押し流した土砂の地点は砂防法指定もしていなかった、こういうこと以下、道路管理者に管理上の大きな瑕疵があるというやに報告をされたというのでありますが、この現地の行監の報告書は、中央の行政管理庁に来ましてどういう結論になりますか。この見解はどういう扱いをするのですか。
  103. 諸永直

    ○諸永説明員 お答え申し上げます。  現地岐阜行政監察局長から、二十三日の土曜日に報告がございました。これはあくまでも行政管理庁長官に対する部内の報告でございます。しかも、その内容は、新聞報道と若干違いまして、各行政庁の責任を問うというような内容ではありません。今後こういうふうな事故の再発防止のための行政上の教訓事項というような内容でございます。したがいまして、われわれとしましては、まだ事実関係もよくつかんでおりませんし、現地報告もまだ中間報告的なものでございますので、はたして現地の職員が正しいかどうか、この点もまだ関係省庁とも詰めておりません。十分慎重に検討いたしまして当庁の見解をきめたい、かような考えでございます。
  104. 板川正吾

    ○板川委員 私はこの見解はなかなかりっぱだと思うのです。国民の立場からいってりっぱだと思うのです。そういう意味で、ひとつ早急にこの報告書を中心に結論を出してもらいたいと思います。  それから、これは建設大臣に伺いますが、道路管理者の義務というのは、道路管理者にどこまでどういう義務があるのかという問題があります。これについては、昭和四十年四月十六日に仙台高裁で、例の穴ぼこ判決がありました。オートバイで来た者が穴ぼこへ落ちて死んだ、それは穴ぼこをちゃんと修繕をしておかなかった道路管理者に責任あり、こういう結論であります。もしそういう悪いところを直せなかったら、事前にそこを通行どめしたほうがいい、こういう判決がありますね。これは昭和四十年四月十六日の道路管理者の一つの義務というものを明らかにした判例であります。また、昭和三十八年十一月三十日には大阪地裁で、雨上がりの路肩のやわらかいところをトラックが大きな荷物を積んで走ったら路肩がくずれて死傷者を出したそのときも、これは道路管理者の失態であるということが大阪地裁の判決になっておりますが、それは、路肩注意じゃいけないんだ、危険な場所だというなら、そこへちゃんとなわ張りをしてわかるようにしたらいいじゃないか、ただあぶないから気をつけろというだけでは、どこまでがあぶないのかわからない、道路管理者はもっと国民の安全を確保するために、安全交通を守るために、あぶないならあぶない場所になわ張りをして、そしてここはあぶないぞというふうにやりなさいという判決があるのですね。この事件を見ますと、岐阜国道事務所美濃加茂出張所長の村田さんは——これまた新聞報道を基礎としておりますから、私は事実を調査しているわけじゃないのですが、新聞報道によりますと、十七日の夜十時にパトロールして帰ってきた。そうして十一時三十分に土砂くずれの通知を警察より受けた。これは先ほど報告がありました。そうして、その現場を確かめるために第二回の。パトロールを出したが、そのパトロールは、この監察局長報告によりますと、現地まで行かないで引き返したといっておりますが、そういうように現場を確認するために第二回のパトロールを出した。当時のその時刻のその地方の気象台の記録を調べてみましたら、十時から十一時の時刻の間には、下山地区では一時間八十ミリの集中豪雨が降っております。一時間八十ミリというのはたいへんな集中豪雨であります。十時から十一時の間です。ですから、十時半ころ土砂くずれの通知が——先ほどの警察庁の話ですと十時ごろになるわけですが、土砂崩壊の連絡があったというのですね。一般の人なら別ですが、警察から土砂が崩壊したという通知があったならば、一時間八十ミリというたいへんな雨量からいって普通の落石崩壊ではあるまい、これだけの雨量ではあるいは大きな落石崩壊が起きそうになっているかもしれぬというような判断を下すのが常識的ではなかったか。その時刻に一時間八十ミリ降っておりますからね。しかし、この村田という所長は、これまた新聞報道ですが、ことしの四月十七日に赴任したばかりですから、その地方の状況に精通していなかったと思う。おそらくこの所長が古参職員に聞いたならば、この場合の土砂崩壊というのは、従来の例から、あるいはたいへんなことになっているかもしれないから、現場を確認しに行く前にまず道路の通行禁止をして、それから現場を確認するという措置をとってもよかったのではないかと思うのです。普通の雨で土砂崩壊があった、その崩壊は片側通行をして行けば通れる程度の土砂崩壊なのか、それともたいしたことはない、ちょっと片づければいいという程度の土砂崩壊なのかどうかを確かめに行ったのだろうと思います。しかし、気象庁の調べによりますと、同じ時間に八十ミリの雨が降っているんですから、それで警察からの連絡等もあって、村人が石ころが落ちていますよという程度じゃない、だから、この雨量等から考慮して通行どめをして、それから現地確認という手段をとってもいいじゃないか、道路法四十六条で危険だと判断すれば交通どめができるはずです。ですから、これをしなかったというのは、その現場扱い者にはまことに酷な話だけれども、しかし判断上にやや誤りがあったのではないかと思いますが、この見解はいかがですか。
  105. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは事実関係でございますから、私が報告をいただいているのが違えばこれはもう何とも申し上げられませんけれども、大体大雨注意報が再発されたのが十時半、それで美濃加茂及び金山両地区で警察と連絡をいたしまして十一時に通行どめの札を出した。ところが、そのときは十時半の警報が出ましてから、十一時の通行どめをする間に、数十台の自動車がすでにその地区に進行しておった。たまたま十五台のバスもその中に入っておった。それで、この前後を考えてみますと、警報が出たのが十時半、美濃加茂、金山で通行どめをしたのが十一時。もちろん警察とも連絡をとって、合意の上でやったことでございます。それは時間的にはもっとてきぱき早くやっていいじゃないかというおしかりもあろうかと思いますが、私はかなり敏速な措置をとり得たものだと実は思っておるわけです。しかし、事実関係が板川さんがお持ちになっているのと違いますれば、これは事実関係で明らかになるわけでございますけれども、そういうことで、当日四時に警報解除にはなっておりますけれども、しかし四時からパトロールもやって、その日に三回、翌深夜にも一回、前後四回のパトロールをやってくれておるようでございます。そういう点で、もう少し早く通行どめをやれば何とかよかったんじゃないか、この辺にやはり気象観測の強化あるいはその気象状況の各機関に対する伝達、あるいは住民に対する伝達等が、今後大いに検討されなければならないところであろうかと考えておるわけであります。私が報告をいただいておりますのはそういうことでございます。
  106. 板川正吾

    ○板川委員 新聞報道によりますと、パトロールに出ました出張所長村田さんですか、それの談話として、どうも道路管理者として車を通すというのが使命だものだから、まず現場を確認した後、ひとつその結果を見てと思って、現場確認に出かけてしまった、あとで考えて、この場合にはやはり通行どめをしてから現場確認に行ったほうがよかったと悔やまれておるという本人の談話というのが新聞にあります。だからそこを、私、本人の責任がどうこうというのじゃないんです。道路管理者の全体の責任——建設省としては、道路を通すという気持ちはわかるのです、道路は通行するためにつくるんですから。しかし、道路を通すという使命はありますが、それは安全に通すという、安全というのが前提になっておることを承知してもらって、やはりそういう場合に、異常な雨が降っておる状況の場合に、土砂崩壊という連絡があったならば、まずひとつとめて、それから現地を確認するという措置のほうがいいのじゃなかったか。これはあとからの話ですが、この土砂崩壊というのは道のまん中にばたばたとおっこちるのですから、いいつもりで走っていけば、これはたいへんな事故になるのです。そういう意味では非常に危険な事故を誘発するのですから、そういう場合にはとめて、現場確認という方向にやる。そういう意味では、道路管理者として私は若干の瑕疵があるんじゃないかという感じがするのです。  そこで伺うのですが、国家賠償法第二条には、「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」とあります。道路の設置及び管理に瑕疵あるとは、瑕疵とは必ずしも過失という意味ではないでしょう。したがって、いままでの判例等から考えまして、私はこの場合に、道路管理者が、たとえば先ほど言いましたように、落石注意という、しょっちゅう石の落ちるところ、あるいは道路の地下を沢水を流すパイプが、水は計算しておるけれども、土秒はおそらく計算してないということ、あるいは豪雨の中でそういう連絡を受けて十全な遮断措置をとらなかった、そういう結果によってこの事故が起きたやに感ずるのであります。したがって、私はこれは国家賠償法で政府は賠償の責に応ずることが妥当ではないかというふうに考えるのですが、この点、総務長官建設大臣の見解を伺いたいのです。
  107. 保利茂

    ○保利国務大臣 国家賠償法のことは別といたしまして、とにかく道路当局者として非常に困難を感じますことは、日本の国土の状況からいたしまして、また今日の道路需要からいたしまして、相当無理なところにも道路をつくらなければならぬ。つくる以上は安全に交通を確保してまいる処置をとらなければならぬ。これはもし完全に、もういかなる大地震があっても、いかなる天災地変があってもびくともしないというようなものは、とても財政の許すところじゃないと思うわけです。そこで、現代の進歩した技術に期待をいたして、できるだけ効率的な、しかも安全が確保できる道路を整備してまいるということが基本であろうと考えておるわけです。今回の事故の場合にいたしましても、板川さんも言われますように、時間雨量八十ミリのときに自動車なんか一体通れるのかどうか。実はそれで、道路局長ともこの間も話したわけですけれども、あの道路が先ほども申しましたようにかなりむずかしい地帯を通るものでございますから、入念につくっておるのでございます。で、道路はすばらしいりっぱな道路、それだけに通行者もまたよけい安心される。まあこの道路だからという安心感も働いておる。それが意外な事故を起こしたもとじゃなかろうか。普通であれば時間雨量五十ミリ以上では自動車は動けないと私どもの常識では思うのでございますけれども、どういうわけでこういうふうななにがあったか。その証拠には、半分以上のバスはとまって待避しておられたということであるし、どうもこの事故というものは私どもの想像の域を越えた状態に起きることを、今回もまざまざと味わっておるわけでございますが、何としても申しわけのない遺憾なことでございます。ただ、これがすぐ、それだったら国家賠償につながるのだとかいうことにつきましては、私、ちょっとお答えいたしかねます。
  108. 田中龍夫

    田中国務大臣 今回のようなこういうふうな災害にあたりまして、何とかして罹災された方にほんとうに補償しなければならぬという気持ちは別といたしまして、ただいま御質問の問題は、国家賠償法二条に基づく損害賠償責任の求償権の根拠であろうと存じます。御案内のとおり管理者の瑕疵、責任問題、これはただいま建設大臣から詳細申し上げたような次第でございまして、私どもも、事道路の管理の問題につきましては、大臣と全く同じような見解を持っております。
  109. 板川正吾

    ○板川委員 法制局に伺いますが、いま私が言ったようなことが、事実かどうかはまだわかりませんが、もし事実と仮定したならば、どうでしょう、国家賠償法の適用になると思いますかどうか、いかがでしょう。
  110. 真田秀夫

    ○真田説明員 お答え申し上げますが、私のところは御案内のとおり具体的な事案につきまして法律を適用して責任がどうのこうのということをきめつけたりするようなことを任務とする役所でございませんので、一般論としてしかお答えできないことを御了承願いたいと思うのです。  先ほどお読みになりましたように、国家賠償法には公の営造物の設置、管理に瑕疵がある場合にはもちろん国の責任が生ずるわけでございます。ただ、いかなる場合に瑕疵があったといえるかというのが一番問題なんでございます。先ほど来先生がおっしゃいましただけの事案では、これまた判断のいたしようがないわけでございまして、やはり具体的な事件が起きた場合に当該事案に応じまして一体国としてどれだけのことをしておったか、また、起きた損害の原因として考えられる、一体降雨量がどうであったか、平素の平均的な降雨量はどうであったか、傾斜はどうであったかとか、損害の事故の発生する頻度はどうであるか、各般の事情を見なければわかりませんので、一がいにはお答えすることができないと思います。
  111. 板川正吾

    ○板川委員 それでは、これは法制局と思うのですが、本件のように自賠法の適用もいろいろと問題があるように感じます。これまた事実関係がはっきりしませんが、あります。自賠法の適用というのも問題があるが、しかし、自賠法でも若干の責任があるやに感ずるのです。若干あるだろう。それから道路管理者にも国家賠償法にいう瑕疵が、これはないでもない、やはりある。どっちかというと、私は道路管理者のほうにあると見ておるのですが、その割合は二対一か、三対一かは別として、合わせて一本というような感じがするのです。バス側に何ぶんの瑕疵があり、道路管理者側にもある、合わせて一本だという感じがするのですが、この場合に、被害者として自賠法で賠償要求をし、国家賠償法で賠償要求をする。両方に請求をするということが法的手続として可能なんですか。どっちか一方しかできないのか、両方にできるのか。これは被害者立場からいえば、自賠法が適用されないということになり、国家賠償法でもだめだということになれば、おそらく裁判を起こしていかなくちゃならぬと思うのです。そういう意味で、一体両方に損害を要求し得る、両方から二倍取るという意味じゃなくて、両方に請求し得る、こういうふうなことが可能であるかどうか、ちょっと手続として伺っておきたい。
  112. 真田秀夫

    ○真田説明員 お答え申し上げます。  具体的な事件についてどうこうというのじゃなくて、全く一般的な法律諭としてお答えするわけでございますが、ただいま御質問にありましたように、両方の責任が幾ぶんかずつ入りまして、つまり、両方の責任の上に結果が発生したというような場合のことだろうと思うのです。これはいわゆる民法で申します共同不法行為ということになるのだろうと思います。共同不法行為の場合には、その不法行為の結果の発生に関与しました責任のある二人ないし三人、つまり関与者はいずれもその損害について賠償の責めに任ずる。これは民法で言います不真正連帯債務ということでございまして、被害者のほうで初めから分割して請求しなければならないというものではございません。両方に全額ずつ請求いたしまして、一方が幾ぶんかでも賠償すれば、その限度について全員が弁済したと同じことになる、こういう関係に相なります。
  113. 河村勝

    ○河村委員 時間もなくなりましたからごく簡潔に建設大臣に伺います。  先ほどから大臣のお話を伺っておりまして、今度の場合、国道四十一号線につきましても、これで完全だとお考えになっておるわけではない、できればもっとよくしたいのだ、なかなかできないのは結局財政上の問題である、こういうふうに理解してよろしいわけですか。
  114. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは全体の問題からいえば、実際平たん部でも山岳地帯でも、道路整備がおくれておるという全体の感じからいたしますと、何が一番大きな障害であったか、やっぱりこれは何といいましても国民の力というか、財政力といいますか、それにかかってくると思います。
  115. 河村勝

    ○河村委員 先ほど建設省から資料をいただきまして、いろいろな損害賠償関係の判例が出ておりますが、その中で落石関係のものが出ております。高知の一級国道五十六号線の土砂崩壊、昭和三十八年六月十三日、これは通行中の貨物自動車に、右側山地から自然風化と降り続いた雨が原因して、砂、岩石が落下して、助手が即死した。こういう事件がありまして、これは国が高松地裁においても高松高裁においても敗訴をして、三百二万円の賠償を支払えということになっておりますが、これの内容は御存じですか。
  116. 保利茂

    ○保利国務大臣 いまお話しになりましたようなことだということを承知しております。
  117. 河村勝

    ○河村委員 これの国で払えという判決の理由を御存じでしょうか。
  118. 保利茂

    ○保利国務大臣 私はこまかく存じませんが、道路局長は知っておると思います。
  119. 蓑輪健二郎

    ○蓑輪説明員 この場合の判決の要旨でございますけれども、五十六号線というのは重要な幹線道路であるにもかかわらず、防護さくとか防護おおい等の整備、それから落下しそうな岩石の除去、また交通規制等の通行の安全が確保できるような措置を講じていなかったということを、通常行なうべき安全を欠いておったということで原告の言い分が通ったということだと思います。
  120. 河村勝

    ○河村委員 その判決の理由の中で、財政上の理由だけでは弁解にならない、予算の範囲内でやったからといって、予算の制約があるからこれ以上のことはできないという理由によって、営造物の設置管理の瑕疵がないということにはならないという判決になっておると思うのですが……。
  121. 蓑輪健二郎

    ○蓑輪説明員 そういうことも承知しております。
  122. 河村勝

    ○河村委員 本件が一番よくこの事件と似ておる案件です。常識的には財政上、このくらいのところでしかたがないからというところまでは認められても、その場合でも、災害が起きたならば、国の財政を理由にして責めを免れることはできない、こういうことであるわけですね。ですから、この判決をごらんになれば、本件の場合にもやはり国家賠償の責任ありとお考えになるべきではないかと思いますが、建設大臣いかがですか。
  123. 保利茂

    ○保利国務大臣 道路局長からお答えいたします。
  124. 蓑輪健二郎

    ○蓑輪説明員 これは非常にむずかしい問題だと思いますが、今回の場合は落石ということではなくて沢の上流の民有林で起こった土砂流、これが沢に沿って出てきたという場合です。こういう場合は、民地で、いわばそこまで通常の管理の義務が負わせられるかどうか、こういう問題があろうかと思います。
  125. 河村勝

    ○河村委員 事柄は石と土砂とは違いますけれども、石と土砂が違うだけであって、道路の構造上の瑕疵ではなくて、のり面の上のほうから、何らかの雨なり何なりで事故が発生して、そこから石なり土砂なりが流出したという点については変わりはないし、この裁判所のほうでも、通常ここまでは手当てができまいというところもある程度認めながら国に責任を認めているという点においては変わりはないじゃありませんか。
  126. 蓑輪健二郎

    ○蓑輪説明員 この場合高知と違いますのは、高知も、これも道路の敷地にありますいろいろな施設がございます、それよりさらに上のほうの民地で落石が起こったのでございます。これはしかし雨の降ったそのあとでございまして、今度の場合は通常あそこの沢の上にあれだけの雨が降った場合に、はたしてあそこの土砂流が出てくるか出てこないか、これは技術的に非常に問題があろうかと思います。
  127. 河村勝

    ○河村委員 それは落石についても同じなんです。私はあまり弁解にならぬと思います。ただ、時間もありませんから結論を言いたいと思いますけれども、道路というのは、これは公共の用に供する公の営造物ですから、地すべりとか山くずれで民家がつぶれるという場合とは全然違うわけですね。営造物を国としてつくって、そこを安全運行させる義務があるのですから、一般の山くずれや何かの場合でうちがつぶれるのとは違うと思うのです。ですから、こういう種類のものについては、たとえば地震による事故であるとか、あるいは北陸の沿岸のような山くずれ、要するに地殻の構造的な原因によるああいう事故、こういうものは別でありますけれども、それ以外に、財政的に無理かもしれぬけれども、やればできるという種類のものについては、やはり起こった責任だけは国がとるのだというたてまえをおつくりになるのが私は至当だと思いますが、大臣いかがですか。
  128. 保利茂

    ○保利国務大臣 それは立法論としてりっぱに成り立つ立法論だと思います。しかし、昨年の七月九日の集中豪雨等の事例を見ましても、何人も予想しがたいところに中小河川、都市河川のはんらん、はるかなところから土石流が流れてきて、そして全市どろに埋まるというような状態も出ておるわけであります。そういうのを全部なくするようにしなければならぬと思いますけれども、一度にはなかなかそうはいかない、そういうものを全部国家が賠償責任を持つかどうかということについては多くの議論があろうかと思います。私は河村さんのように簡単には結論を出し切れません。
  129. 河村勝

    ○河村委員 私は立法論でなしに解釈論として、そういう解釈をとれば必ずしもそう範囲は広がらないだろうと思って言っているわけです。  まあそれはよろしいのですが、この落石事件の公判は国で争っていま最高裁にいっているはずです。最高裁でこれが決定されれば、これは最終ですね。そうすれば国がいやでも応じなければならぬ、そういうことになりますね。そうしますとこれと性質において、具体的な事柄は違いますよ、しかし本質的にほとんど変わらないこの事件というものは、当然同じように扱わるべきだと思いますが、これはまあ最高裁で国が負けたという仮定に立ちますけれども、その場合いかがですか。
  130. 保利茂

    ○保利国務大臣 これはしかし土石流といいますからすぐ防ぎ止められる、手をある程度加えれば何でもないのではないか、今回のことは私どもが通常いいます山津波だと思うのですよ。時間雨量百ミリをこえるような状態で襲ってくるものは一種の山津波だというように思いまして、これを未然に防ぎ得るか防ぎ得ないか、それはやはり次善の策としては私ども道路管理者として考えることは、そういう危険が起こるおそれがあるときは、せっかくの道路だけれども通行規制をするというような措置を誤たずやるということにむしろ重点を置いて考えていくべきではなかろうか、こういうように考えております。
  131. 河村勝

    ○河村委員 最後に、大臣おっしゃった交通規制や何かに重点を置いてやるべきだということは、これは逆にいえば設置上の瑕疵ではないけれども管理上の瑕疵になるわけですね。これ以上議論してもどうせあれですからいたしませんが、高松の高裁の決定がどうなるか楽しみにしておりますけれども、もしこれと同じような鉄砲水で沢があふれて鉄道の上で汽車が流されたとしますと、たいていの場合これは国鉄に責任ありということになる。これは鉄道だって道路だって理屈は同じですね。ですからあまり範囲が広がるということは心配されないで、建設大臣前向きでひとつ検討されることを期待いたします。
  132. 板川正吾

    ○板川委員 大臣もう一つ、栃木県の鬼怒川の奥の栃木県道でバスの折り返し点というのがあって、そこへ石が落ちてきてバスの中の客が死んだりけがをしたという事件がことしあった。その結果どういうふうに処理されたかと思うと、これは道路の落石を予防できなかった道路管理者が責任を負って示談をしております。こういう事実があるのを御存じですか。これは道路局長でもいいです。
  133. 蓑輪健二郎

    ○蓑輪説明員 そういう事実を承知しております。この場合は天然の現象その他が異常なものでなかったということで示談にしておるわけでございます。
  134. 板川正吾

    ○板川委員 いずれにしても道路管理者がそういったおっこちやすい石をそのままにしておったということで管理上の責任を負って八百万円かの賠償に応じましたね。その事実がわかっておればいいのです。  気象庁に伺いますが、今度の事故の発生の一つの要因と思われる中に、八月十七日の五時十五分にそれまで出されておりました大雨洪水・雷雨の注意報が解除された、こういうことで旅行主催者側は解除されたということで気象条件がしたがっていいほうへ向かっておるのだということで、それまでちゅうちょしておった決行するかいなかを決行することにきめた、こういうふうにいわれておりますね。そうしますと、当時の気象判断としてその解除について誤りがあったのか、実際はそういうふうにまた逆転をして大雨が降ったのですから、この五時十五分に従来の注意報を解除したということは、その気象判断において誤りがあったんではないかという疑問があるわけであります。この点において、気象庁はどういうような判断のもとに解除をされたのか、その点をお伺いしたいと思います。
  135. 柴田淑次

    柴田説明員 当時、十七時十五分に注意報を解除したということは、事実でございます。それにつきまして、気象庁といたしましても、なぜその時点において解除したのか、そのときにどういうような気象状態であったかということを現地にできるだけ詳しく問い合わせまして、現地が使った資料、その他についてもできるだけ詳しく集めました、全部ではございませんけれども。  その結果、一つは、名古屋気象レーダー及び富士山の気象レーダーを十七日の午前中から連続運転をして、その集中豪雨の雲を監視をしておりましたところ、午後になりまして、だんだん雨を降らす雲が少なくなってきたということが一つでございます。気象レーダーの映像のその写しも現地から取り寄せまして、はたしてそういうように判断ができるかどうかということを、われわれ本庁におる人間も判断をしてみました。そうしますと、どうもやはり、予報官といたしましては、なるほどそのとおりでございまして、非常に雲が少なくなっておりました。これならば注意報を解除するのも無理はないということでございます。  それからもう一つの問題といたしまして、岐阜県の県内から、雨の情報岐阜地方気象台に集まってまいります。その雨の情報につきましても、大体何時に、どこから情報が来たかということを、ずっと午前中から調べてみましたが、たぶん先生のほうにもその資料は提出済みだと思いますが、その十二時過ぎ、大体午後になってまいりまして、いま雨が降っているという情報がだんだん少なくなってまいりました。それから一方、そういうような状態でございますので、注意報を解除するということをします上においては、あらためて岐阜地方気象台あるいは名古屋地方気象台から現地のほうへ電話をかけて問い合わせまして、現地の雨の状態はどうかということを、何カ所でしたか、ちょっと個所を忘れましたが問い合わせたのでございます。そうしますと、現地のほうでは、もう雨が小降りになっているとか、あるいはやんだとかというような回答でございました。  それからもう一つ、ちょうどいま雷のシーズンでございますので、特別に雷雨観測所というものがございまして、そこから雷があったかないかという報告が来るのでございます。その雷雨観測所からの報告も、もう雷はやんだというような報告も参ったのでございます。  そういうような現状から判断しまして、また岐阜の市内では、もう十七時ごろには青空も見えてきたというようなこともございまして、注意報を解除したような次第でございまして、本庁のわれわれのほうの予報官から見ましても、決して無理な解除ではなかりたというように現在考えておる次第でございます。
  136. 板川正吾

    ○板川委員 では、その五時十五分の注意報の解除は、そういう意味では決して判断の誤りはなかった、こういうことですね。  そこでもう一つの疑問点は、解除後、午後の十七時三十分に今度は大雨警報を出しましたね。従来からいえば、まず注意報を出して、そして注意報を出した後、さらに警報を出す、こういうのが一つの順序だろうと思うのです。予告と警告、ところがその予告である注意報を出さないで、十時半に突然大雨警報を出したということは、気象観測上に若干のミスがあったのか、発表上に手違いがあったのか。この点はどうなんですか。
  137. 柴田淑次

    柴田説明員 先生御承知のことと思いますが、十七日の二十二時三十分に大雨警報洪水注意報を出しましたが、その約二時間半前の八時に——午後の八時でございますが、雷雨注意報を出しております。雷雨注意報というのは、これは雷も鳴るし、雨も降るぞという心配があるというものでございますので、これは決して十時半に突然警報を出したということではございません。
  138. 板川正吾

    ○板川委員 八時に雷雨注意報が出ていますね。それだから、雷雨注意報が出ているから、それはいわば雨が降るぞという注意報が出ておるということになるのですね。——では、その点はわかりました。  もう一つは、過去において一時間当たりの集中豪雨ですね、集中豪雨の記録というのは、最高が幾らで、あと十番目ぐらいまでにどんなふうに降ったのか。降ったときに水害等があったのかどうか。その点ちょっと……。簡単でいいです。一番多いのはいつ、どこですか。  もう一つは、この岐阜地方には、今度の百十四ミリですか、百十四ミリというのは、全く前例のない豪雨であったのか、一時間当たりの集中豪雨で。あるいは過去十年、二十年のこの記録をひもとくと、八十ミリ、九十ミリというのがあったのかどうか。その点、二つちょっと伺います。
  139. 柴田淑次

    柴田説明員 最初の問題で、過去にどの程度集中豪雨——集中豪雨と申しますか、時間当たりでよろしゅうございますね。(板川委員「時間当たり」と呼ぶ)これには気象庁の記録としまして、第一位、第二位、第三位というように、ずっと第十位までとっておる記録がございますが、これは気象庁の職員が勤務しております、たとえば地方気象台とか、測候所とか、通報所とか、そういうところの記録についての順番でございます。そのほかに先生御承知のように、気象庁は、一般の方に雨の観測を委託いたしましてやっておりますが、それはこの中に入っておりません。それで第一位と申しますのは、百五十ミリでございまして、これは昭和九年の十月十七日に四国の足摺岬におきまして降ったのでございます。これは低気圧と、もちろん低気圧に伴います不連続線でございます。それからその次は銚子、それから尾鷲で百四十ミリ、百三十八ミリ、こういう順番でございます。それから一般の方に委託しておるほうにおいて——私、いま手元に持っておる限りにおきましては、昭和三十六年の十二月十二日に、これも前線でございますが、豊橋に百四十九ミリというような雨が降っております。  それから岐阜県につきまして、過去に百十四ミリをこえるような雨が降ったかどうかという御質問につきましては、ちょっとここには資料がございませんので、お答えすることはできませんが、申しわけございません。
  140. 板川正吾

    ○板川委員 まあそれはいいですが、今度の災害という点から考えますと、大雨注意報洪水注意報雷雨注意報、あるいは風雨注意報とかあるでしょう。そういう注意報警報等が通報されておるのですが、一番被害が大きいのは集中豪雨ですね。短時間のうちにざあっと降るという集中豪雨が一番被害が大きい。大雨——まあ大雨というのは長い間にたくさんの二百ミリとか三百ミリとか降るというのもあるでしょうが、二日間に三百ミリ降ったよりも一時間八十ミリ降ったほうが被害が大きいという場合があると思います。で、こういう大雨洪水や雷雨の注意報いろいろありますが、なぜ集中豪雨について予報制度ができておらないのでしょうか。この雨雲の様子からいくと集中豪雨が起こるらしい、その山岳地帯は危険じゃないか、大体集中豪雨というのは、起こるところもそのまわりの気象条件も見当がつくんじゃないかとしろうと流に考えるのですが、どうして集中豪雨予報というのができないのでしょうか、その点ひとつ。
  141. 柴田淑次

    柴田説明員 集中豪雨と申しますと、御承知のとおり非常に局地的に、たとえば半径大体三十キロ、もっと狭いこともございます。三十キロないし五十キロくらいの範囲内に短時間に非常に大きな量の雨が降るというのが、集中豪雨と称しているものだろうと思いますが、現在集中豪雨が起こるような天候であるということは判断できます。そしてたとえば不連続線が本州にひっかかっておれば、そして南のほうに台風、ちょうどきょうのような場合に、これは集中豪雨に対して警戒をする必要があろうかと思います。そういうことがございますけれども、たとえば岐阜県の飛騨バス転落事故を起こしたあのところに、あの時間にあれだけの雨が降るというようなことにつきましては、いまのところ予報はできないのでございます。ただし、予報はできませんけれども、レーダーでその雨雲をつかまえることはできます。ただし、このところが大切だと思いますが、レーダーで雨雲をつかまえましても、その雨雲があれば必ず集中豪雨が降るとはわからないのです。そこのところが非常にむずかしいところでございまして、そこのところがまた集中豪雨予報を少しでも早くするために大いに研究しなければならない面だとわれわれは考えておりまして、集中豪雨というものは一般の天気予報とは相当大きな差がある、そういう現状でございます。
  142. 板川正吾

    ○板川委員 集中豪雨について、では当分予報対策なしということですか。
  143. 柴田淑次

    柴田説明員 集中豪雨を少しでも基本的に考えまして、一時間でも三時間でも早く予報するためには、集中豪雨の機構というものを十分研究いたしまして、どういうような局地性の気象状況のところに集中豪雨があるか、どういうような局地性の気象状況のときに集中豪雨があるかということを十分研究する必要があるのでございます。それにつきましても、もちろん気象庁としましても、従来から研究をやっておりましたが、昨年から集中豪雨研究体制を整えまして、組織的に研究するようにしております。しかし、現在のところ集中豪雨に対してお手あげとかいうことでは決してございませんで、幸いレーダーで集中豪雨の雲があるかないかということは確認できますので、もちろんその雲があっても降るかどうかは別にしましても、雲がなければ雨は降らないのでございますから、雲があればそれはレーダーで確認できるのでございます。だから、そういうようなあやしい雲が発生すれば、これはレーダーで確認できますので、すぐに体制は整えることができるのではないかと思っております。
  144. 板川正吾

    ○板川委員 いずれにしましても、ひとつ集中豪雨のメカニズムをつかまえて予報ができるように大いにやってくださいよ。三日間で三百ミリ降るのよりは、一時間で五十ミリ降ったほうが被害が多いわけです。特にこういう山間地帯にはそういう傾向が強いわけですからね。ぜひひとつ集中豪雨予報ができるような体制を実現するように取り組んでもらいたいと思います。  次に警察庁に伺いますが、新聞によると、上麻生駐在所の森藤巡査長があぶないからということで、橋のたもとで折り返したほうがいいだろうと説得をしたということがいわれておるのですが、時間的に多少の食い違いがあったとしても、それから本件に直接関係があったかないかも、それは調査の結果でなければわからぬとしましても、警官はその地域の地理、地形等に非常に詳しいと新聞にありました。この雨ではこれは相当石がおっこっておってあぶないなという判断を下したならば、私はその橋のたもとで説得をしたというのが、どうも状況判断からいって妥当でない感じがするのです。そうした異常な豪雨の中で、あぶないなと思ったらば、道交法七条によって交通禁止の措置がとれるのに、説得をして、あぶないから帰ったほうがいいだろうという言い方は、この場合適切な指導ではなかったのじゃないか、処置じゃなかったんじゃないか、この警官もまことに一生懸命やっておって、そういうことばを言うのは酷な感じがしますが、いまとなって考えてみると、そういう場合には交通遮断をしたほうがよかったんじゃないか、こういう感じを持つのですが、当時の実情から判断してどういう感じがいたしますか。
  145. 鈴木光一

    ○鈴木説明員 ただいまの件につきましては、先ほど私から御説明申し上げましたように、上麻生の巡査長が橋の上に立ちましたのは、交通規制を実施してからでございます。したがって、そこに立ってからは完全な交通規制をやっておるわけです。
  146. 板川正吾

    ○板川委員 わかりました。さっきはちょっとほかのことを考えていたものだから……。  じゃ総務長官に伺いますが、政府飛騨川バス転落事故対策連絡会議を設けた、総理府が主催になっておるようですが、この会議の目的は何でしょう。たとえば自賠法が適用になるかいなかというのは、ここの会議できめるのですか。これは運輸省の主管でありますが、何かここできめるやに伺っておるものですから一応伺いますが、この対策会議というのはどういう目的を持った会議です。
  147. 田中龍夫

    田中国務大臣 この飛騨川バス遭難対策連絡会議の目的でございますが、今回の事故被害者は非常に多数にのぼっておりまして、その御遺体捜索もきわめて困難な状況にかんがみまして、関係各省庁の連絡を緊密にいたすことによって、御遺体捜索とか収容に一そう努力をいたしますとともに、被害者救済処置、また事後処理に必要な事項をこの連絡会議によりまして十分に検討するために設けたものでございます。なお、この連絡会議の座長と申しますか、これは、総務長官関係各省局長クラスの人々を集めまして構成いたしております。
  148. 板川正吾

    ○板川委員 この会議救済までも考えている、こういうふうに言われている。ぜひひとつ事件の処理と同時に、救済まで手厚く考えていただきたいと思います。  これは念のためですが、これまた新聞によりますと、政府は本件の被害者に弔慰を表する意味で、一——三万円の弔慰金を出すやに報道されておりますが、お出しになりましたか。
  149. 田中龍夫

    田中国務大臣 こういうふうな事故につきまして、政府が見舞金を出しますこともなかなか根拠が見当たらないのでございまして、また過去におきましてもそういった例がございませんので、これをひとつ慎重に考えさしていただきたいと思います。
  150. 板川正吾

    ○板川委員 いま出すという方向ではないらしいと考えていいですか。
  151. 田中龍夫

    田中国務大臣 これは、なかなか出します根拠がむずかしいということと、政府のいたします処置というものはやはり一つの前例にもなりますので、今後こういうふうな問題につきましては慎重に考えてもいかなければならぬ。と申しまして、まあ非常にお気の毒な方々が多数おられるということで、私どもも何とか適切な措置を講じたい。善処方をこちらのほうからは積極的に要望いたしておりますが、なかなかむずかしいことでございます。
  152. 板川正吾

    ○板川委員 これも念のためですが、飛騨川バス事故遺体捜索をいま続けておられるわけでありますが、大体今度の事故の処理の費用というのはどのくらいかかったか、またかかる見込みでございますか。それからその負担はどういうことになるのでしょうか。
  153. 田中龍夫

    田中国務大臣 詳細な点は担当官からさらに御必要がございますれば申し上げさせますが、被害者捜索活動につきましては、これは地元消防団でありますとか、警察自衛隊、海上保安庁等、非常に各方面にわたっておりまして、いろいろと御協力をいただいておる次第でございます。地元の市町村に対しまして、その負担が軽減されるように処置をしなければならぬと考えておるのでありますが、これは御案内のとおりに捜索活動にいたしましても、その他、救援措置につきましても、非常に目に見えない金が相当出ます。と同時にまた、普通の災害復旧事業でございますと、全くその地元の改良復旧だとか復興になります。ちょうど、たとえば群馬県や山梨県や長野県で、山で遭難した方の捜索活動に対して、見えない資金がやはり出ると同じようなケースがここで出ておるようなわけで、こういうふうな問題につきましても、非常に今後ともわれわれはこれを参考にいたしまして、今後の問題も前向きに考えていきたい、こういうふうに考えております。
  154. 宮崎清文

    ○宮崎説明員 遺体収容に要する経費につきましては、目下作業がまだ続行中でございますので、計上いたしておりません。
  155. 板川正吾

    ○板川委員 これで私、質問を終わるわけでありますが、先ほども言いましたように、最近これほど国民に大きな不安と衝撃を与えた事件はない。そして新聞ではいろいろと、自賠法を政府適用したというから、聞いてみると適用していない。一万円ないし三万円政府は弔慰金を出すんだと新聞に書いてあるから、これは出すのかと思ったら出していない。あるいは行政監察局長がいろいろいい意見を言っているから、この意見を妥当だと思って、新聞紙上で発表されておるから確めようと思って聞くと、実はまだ正式な検討ではない。まあいろいろと確めてみますと、何か被害について救済なりに政府なりが取り組んでいるやに伺っておるけれども、事実は何ら実体がないという感じがします。しかし国民の側では、これは自動車賠償法であろうがあるいは国家賠償法であろうが、とにかく何らかのこれに対する救済措置がないということは国民の気持ちとしてどうもしっくりしないような感じがします。何らかの救済措置があっていいのじゃないか、救済されていいのじゃないか、こういう気持ちを持っておると思うのです。これで自賠法も適用されない、国家賠償法も適用されない、あるいは両方合わせても適用されない。全く救済の方法がないということになると、国民は割り切れない感じを持っておるのが実情じゃないかと思うのです。私の感じからいえば、これはやはり道路管理者に管理上の瑕疵ありという考え方に立って国家賠償法で国が賠償の責めに応ずるというのが私は妥当じゃないかと思うのでありますが、ともかくひとつ何らかの救済措置を具体的に考えてほしいということを強く要望いたしまして私の質問を終わります。
  156. 太田一夫

    ○太田委員 関連をして二、三点お尋ねをしておきたいと思います。  先ほど来のいろいろの御説明の中に大事なポイントが幾つか隠されておるような気がするのですが、一つ運輸省観光部長さんの通達がございますね。これは大臣が御説明なさいましたが二一四号の二、これを見ますと、三台以上のバス旅行を実施する場合には、危険防止のため適切な判断ができる者をバスに添乗させることとあります。これは、適切な判断ができる人をバスに添乗させるというその有資格者はだれかという例について中曽根大臣は、一つの例として警察署長をやった経験のある者という例示をなさいました。これは非常に大事なことでありますが、今後そういうぐあいに警察署長をやった者とか、それに準ずるような者を観光バス団体旅行の添乗者にしなければならないということは、これできまったのでありますか。これは運輸省のほうのどなたでもけっこうでありますから、どういう人をそこの適格者としてさらに考えていらっしゃるか、例示してほしい。
  157. 黒住忠行

    ○黒住説明員 これはいま御指摘のとおりでございまして、直接私が出しました通牒ではございませんが、観光部長のほうからバス旅行を三台以上を実施する場合におきましては「危険防止のため適切な判断、避難誘導等を行ない得る者をバスに添乗させる」とあります。これはバスの運行につきましての責任バス会社あるいは当該運転手でございますけれども、団体を募集しましてあっせんいたしますあっせん業者としても万全を期するために、今回のような経験にかんがみて適切な添乗者を添乗させるようにしようということだと思います。その場合におきまして「相当の能力を有する部外の者に」とありますが、具体的には大臣がきょう御答弁になったようなことだと思います。要するに、この気象条件あるいは道路条件等につきまして、運行の継続、中止等につきまして、バス会社に十分サゼストし得る人を選べということだと思います。
  158. 太田一夫

    ○太田委員 観光部長さんでないのですから、自動車局長さんにお尋ねしてはいかがかと思いますが、おそらく御相談があったことと思いますのでお尋ねするのですが、かりに警察署長の前歴のある者とか、御例示になりました大臣のお話によれば、自衛隊の何か相当な指揮官のごとき方とかというのが適格者かどうかは大問題だと思うのです。その中に、残念ながら自動車行政に携わっておるところの陸運局の課長以上の職をやった者とか、警察庁の何々以上のものをやったとかというのが入っておらない。これは単なる思いつきであったのでしょうか。そういうことは相当具体的に討議されておのるですか。これはまだ十分討議されないままの通達であったのか。
  159. 黒住忠行

    ○黒住説明員 先ほど申し上げましたように、バスの運行に関しまして相当な意見を申し述べる人という意味でございまして、その中の具体的な例示として大臣からお話があったと思うのであります。したがいまして、いま先生が御指摘のようなものにつきましては、至急取り調べまして観光部伝達したいと思います。
  160. 太田一夫

    ○太田委員 それではもう一つお尋ねいたしますが、的確な判断というのがこの際非常に問題になるような気がするのです。そこでバスが例の遭難場所に停車しております十二時過ぎの話でありますが、遭難時間までの一時間半の間にどこやらの消防団の方がパトロールをしていらっしゃって、前方にも非常に土砂くずれがあって通れないのであるが、この辺も落石の多いところだから落石網を設置したところに駐車してもらってはあぶないからいけない、そういうものの施設のないところに避難をしてほしいという御指示、御注意があった。それでそれぞれの車が移動したわけであって、最後遭難車は沢のところにおったのでありますけれども、沢というのはそういう落石防止装置のあったところじゃないし、消防団の方もそういうところは安全である、あなたはここから動いてはいけませんよという御注意があったくらい、安全とみんなが見たところである、こういうことは事実でございますか。消防の方でけっこうです。
  161. 永瀬章

    ○永瀬説明員 消防団の当時の活動につきまして、白川町に問い合わせを、県を通してまた直接にいたしておりますが、いまだ正確な回答を得ておりませんので、事実につきましては判明いたしておりません。
  162. 太田一夫

    ○太田委員 非常に大事な点だと思いますから、そういうポイントについては徹底的に調べてください。あなたのほうもそういう情報とか条件というものを把握をしていらっしゃると思うのでありますから、事実であったかどうか、どうして五、六、七号車が先に先頭になり、三、二、一号車と先頭に置いておった車がうしろのほうにバックしたかということは、実はバス運転手の自己の判断ではなくして、その消防の方の御指示によるものであったという点から考えても、この問題は事実であるかどうか、ひとつ十分お調べをいただきたいと思うわけです。  そこでもう一つお尋ねをいたしますが、先ほどの、これは運輸大臣のお話やらあるいはその他で出てくるのでありますが、Uターンしたときの飛騨モーテルにおける処置というものに軽率のそしりはない、だろうかということばの節々があるわけです。Uターンするときにそのバス梯団はどういう処置をとったか。聞くところによりますと、一度指揮者を集めて相談をし、モーテルの主人、従業員、ガソリンスタンドの主人等に、この際いかにしたらいいか、前方は土砂くずれでもう通れない、交通規制はされておる、これ以上進むことはできない、もうあと残るはここにとどまるか引き返すだけだが、どうしたらいいだろうかという相談を持ちかけたわけです。すると、その土地の事情をよく知っているモーテルの御主人とか、スタンドの御主人はともに、いまのうちなら帰ったほうがよろしいという意見を一致しておっしゃっていらっしゃる、これも皆さんのほうではそういうことをお聞きになっていらっしゃるかどうか、これは自動車損害賠償保険にひっかけて聞こうと思うわけだから、どっちですか、運輸省ですね。
  163. 黒住忠行

    ○黒住説明員 引き返しの地点におきまして、自動車側としまして奥様ジャーナルの社長、それから名鉄観光の鈴木次長、そして運転手諸君で打ち合わせをしたということは聞いておりますが、その前、モーテル関係の人たちとどういう話をしたかということは、私のところはいまのところ確認いたしておりません。それらの関係については、警察のほうで種々調査されていることだと思います。
  164. 太田一夫

    ○太田委員 自賠保険を適用されるかされないかの重大な判断の一つがその辺にあるわけですから、あなたのほうは今度苦心をして何とかして自賠保険を適用したいとお考えになっていらっしゃるならば、できるだけその大事なポイントについては事実の徹底的な御調査をしていただきたいと思う。  さて、そこで警察のほうはそういうことについては全然お聞きになったことはございませんか、御報告も受けていらっしゃいませんか。
  165. 鈴木光一

    ○鈴木説明員 先ほども御説明申し上げましたように、現在先生御指摘のような諸問題につきまして、関係者から慎重に詳細に事情聴取を行なっておる段階でございます。消防団員の問題につきましても、消防庁のほうに関係があるわけでございますが、この問題も同様に調査しておる次第でございます。
  166. 太田一夫

    ○太田委員 御調査は非常に入念であることを要しますから慎重でいいと思いますが、あまり遅々として進まないような調査でも困ると思うので、十分ひとつ急いでお調べいただいて、自賠保険の問題について遺族を安心させていただきたいと私は思う。  そのことについて、Uターンする当時の天候並びにその前方飛騨モーテルへ行きます場合の道中の雨というものはどの程度でございましたか。気象庁のほうでどの程度の雨が降っていたと御判断なさいますか。
  167. 柴田淑次

    柴田説明員 ただいまのところ、私のほうであのバス遭難地点には観測所がございませんので、現場の雨というわけにはまいりませんが、それから少し南に下りまして、久田見というところの雨、それから一つ山を越えまして向こうになりますが美並というところ、それからずっと北のほうになりますが、萩原と申しますところ、それから加子母、そこの四カ所の毎時間雨量が手元にございますが、これはどこが現地状況を一番よくあらわすかということになりますけれども、一番近いところは久田見だと思います。そこの雨量を見てみますと、雨が降り出したのは二十三時から二十四時——十一時から零時という間で約二十九ミリ降っております。それからずっと三十九ミリ、四十五ミリ、二十一ミリ、三十四ミリというような時間降雨量を記録しております。それからなお、山を一つ越えました美並のほうは——もっとも山を一つ越しますと、気象状況、特にこういうような局地的の降雨量はずいぶん違うものでございまして、それの一つの如実の例でございますが、美並におきまして二十ミリをこしたのは二十時から二十一時までの間に五十一ミリ降っております。それから二十一時から二十二時までの間に八十三ミリ降っております。そういうようにしまして、美並では大体八時過ぎから雨が降り出したというふうに考えられます。残念ながら現地の降雨量はそれから推定するよりしようがありません。
  168. 太田一夫

    ○太田委員 わかりました。  それでは警察庁に伺いますが、事故原因を探求なさる場合に、その事故車についておりましたタコグラフは御検討済みでございますか。
  169. 鈴木光一

    ○鈴木説明員 検討済みでございまして、事故の起きました時刻、午前二時十一分というふうに確認いたしましたのはタコグラフがもとでございます。
  170. 太田一夫

    ○太田委員 事故の起きました二時十一分というのが大体正確であるという、これはそのことはよろしいのですが、問題は道中に無理をおかして北上し、あるいは無理をおかして南行したかどうかという点が相当大きな問題になると思うのです。ところがタコグラフを見ると、飛水峡、いわゆる事故の現場の七曲がりのところにさしかかるまでは、六十キロをこえる快適なスピードでバスは走っておる。あのカーブの多い飛水峡でもって四十キロにダウンしておりますが、その雨の多いのはいまの気象庁のお話によりますと、どちらに近いかちょっと推定しがたい。四十キロに落として進んでおりますけれども、決してその際に動けない、前方注視ができないというような雨でなかったことは事実のようです。そこで飛騨モーテルに着きましてから、今度こちらに引き返すときもそのようでございまして、返すときにはやはり六十キロに近いスピードで南下しておるわけで、白川口の駅の前等も通過しておるわけでございますから、雨足というものはそんなにすごいものとは思われない。というのは、ワイパーがきいておるというわけです。これは交通関係の方なら、ワイパーがきいておる限りは視界はあるということでございますから、ワイパーでこの視界で走れる。四十キロなり六十キロで走れる視界を持った自動車の運行ということを考えると、その際の雨というものは推定できると思うのです。いわゆるしのつく雨というか、滝の中を走るがごとき雨ではなかったということ、問題はとまってしまってから、それからすごい雷鳴と滝をぶちあけるような雨が降った、こういうことに問題があろうと思うわけです。ですからそういう点もひとつタコグラフも事故原因事故の発生までに至る経過を分析するものとして十分ひとつこれは検討してもらいたい。  そこで伺いますが、その際に、そういうような状態で帰ってきておる、その状態をいま運輸省状況判断は適切な人を乗せなければならぬというその問題からいうと、そういう状態で帰ってくるのは、状況判断としてはどこかに危険があったか、間違いがあったか、その際の状況判断、向こうまで北上し、そして帰ってくるのに、uターンして帰ってきます。その行程に具体的事例としては何か状況判断に欠くるところがあったという点がありますか、もし検討されていたらお答えいただきたい。
  171. 鈴木光一

    ○鈴木説明員 警察庁といたしましては、事故原因調査の一環として、これは主として刑事責任があるかどうかということに主眼を置いて調査しているわけでございますが、いまおっしゃいましたような点も含めまして検討しておるわけでございます。
  172. 太田一夫

    ○太田委員 けっこうです。鈴木局長それでいいですが、十分ひとつやってください。  それでは最後に道路局長さん、「カギ止め」があったならばという声が現地の人たちに非常に強いのですが、今後の際には「カギ止め」工事をなさる御所存でございますかどうか、いかがでございますか。
  173. 蓑輪健二郎

    ○蓑輪説明員 ただいまのお話は、よく鉄道なんかでも見られます沢を渡る場合に、沢側にコンクリートの擁壁をつくりまして、それにレールその他を立て込めまして土砂を防ぐという構造物だと思います。この場合現地でもいろいろ検討させておりますが、いまの道路の近くの沢は約四十五度くらいの傾斜になっておる。さらにその上がもつと傾斜のゆるいような沢になっておりまして、土砂の崩壊はそのゆるい沢のほうでできたものと推定されます。こういう非常に四十五度のきついような沢に、はたしてコンクリートの擁壁を置いて、それでうまく土砂をそこでとめられるか、これはほとんどポケットがありませんので、かえって今度はそれを飛び越してくるようなおそれもございます。その辺いま砂防ともあわせまして検討しておる次第でございます。
  174. 太田一夫

    ○太田委員 それでけっこうです。検討してください。現地におきましては「カギ止め」工事がなされていたらなという、いわゆる砂防工事とよく似ているのですが、非常にそのことを残念がっておる向きがありますので、ちょっとお尋ねしたわけです。鉄砲水でなくて鉄砲岩というんですから、岩が鉄砲になるなんというのはずいぶんひどい話で、鉄砲岩を防ぐような工事は、それは建設省は私はたいへんだと思いますけれども、知恵と技術の限りを尽くしてひとつ発見していただきたいと思います。  総理府長官田中さん、最後にひとつお尋ねいたしますが、かつての関東大震災のときには、あのようなたくさんの方がなくなったにかかわらず、生命保険が免責条項を超越して支払われたという先例がございますが、一つの美談であると思うのです。今度の場合も、これを自賠保険というのを適用する場合、ああだこうだ、運転手側に過失がなければいかぬなんという、運転手側の過失を根掘り葉掘りするんじゃなくて、関東大震災の前例をさらにこちらは超越して、新しい時代の今日の時代にふさわしい自賠法の適用、これをひとつ思い切って考える必要があると思うのですが、長官どうですか、御感想は。ことばじりをつかまえてとやかく言いませんから……。
  175. 田中龍夫

    田中国務大臣 私ども何とかこれは救済してあげなければならぬという気持ちで一ぱいでございますので、寄り寄りその問題につきましては真剣に取り組んでおる次第でございます。よろしくどうぞ……。
  176. 門司亮

    門司委員長 それではこれにて質疑は終了いたしました。     ─────────────
  177. 門司亮

    門司委員長 ただいま委員長の手元に大竹太郎君、板川正吾君、河村勝君、沖本泰幸君から、飛騨川バス転落事故に関する件について決議せられたいとの動議が提出されております。  この際、本動議を議題とし、提出者から趣旨説明を聴取いたしたいと思います。大竹太郎君。
  178. 大竹太郎

    ○大竹委員 私は自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党の四党共同提出にかかる飛騨川バス転落事故に関する件につきまして、提出者を代表してその趣旨説明を申し上げます。  まず案文を朗読いたします。    飛騨川バス転落事故に関する件(案)   去る八月十八日未明の飛騨川バス転落事故にかんがみ、政府は、道路における交通の安全確保及び被害者に対する救済措置等について、次の事項につき、万全の措置を講ずべきである。  一 集中豪雨研究を促進する等気象観測体制の整備を図るとともに、関係行政機関及び民間輸送機関に対する気象予報及び警報の迅速かつ適確な伝達体制を強化すること。  二 バス事業者及び旅行あつ旋業者に対し、道路事情及び気象条件の事前把握、運行経路に適合した乗務員の配置、無理な運行計画の排除、運転者の指導養成について、必要な措置を講ずること。  三 落石、がけ崩れ等のおそれのある個所については、その防止施設を早急に整備するとともに、集中豪雨等による危険時における迅速な交通規制体制の強化を図ること。  四 被害者に対する救済措置については、遺憾なきを期すこと。   右決議する。  決議案の内容につきましては、ただいまの質疑の経過等で明らかになったことと思いますので、説明は省略いたしますが、何とぞ委員各位の御賛成をお願いいたす次第でございます。
  179. 門司亮

    門司委員長 本動議について採決をいたします。  大竹太郎君外三名提出の動議のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  180. 門司亮

    門司委員長 起立総員。よって、大竹太郎君外三名提出の動議のとおり決しました。  この際、政府から所信を求めます。田中総理府総務長官
  181. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまの御決議に対しましては、政府といたしましてもその御趣旨に沿いまして、関係省庁と十分に連絡をとりまして早急に対策検討して措置をいたしたい、かように考えておる次第であります。よろしくお願いいたします。
  182. 門司亮

    門司委員長 なお、議長に対する報告及び関係方面に対する参考送付につきましては、その手続等、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  183. 門司亮

    門司委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十一分散分