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1968-08-07 第59回国会 衆議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和四十三年八月一日)(木曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次の通 りである。    委員長 秋田 大助君    理事 青木 正久君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 田中 榮一君 理事 野田 武夫君    理事 福家 俊一君 理事 石野 久男君    理事 穗積 七郎君 理事 曾祢  益君       石田 博英君    宇都宮徳馬君       大平 正芳君    小泉 純也君       世耕 政隆君   橋本登美三郎君       福田 篤泰君    松田竹千代君       毛利 松平君    山口 敏夫君       山田 久就君    木原津與志君       黒田 寿男君    田原 春次君       高田 富之君    戸叶 里子君       帆足  計君    松本 七郎君       渡部 一郎君    川上 貫一君       斎藤 寿夫君 ───────────────────── 昭和四十三年八月七日(水曜日)    午前十一時四十分開議  出席委員    委員長 秋田 大助君    理事 青木 正久君 理事 田中 榮一君    理事 野田 武夫君 理事 戸叶 里子君    理事 曾祢  益君       世耕 政隆君    松田竹千代君       毛利 松平君    石野 久男君       黒田 寿男君    田原 春次君       帆足  計君    松本 七郎君       伊藤惣助丸君    川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         外務政務次官  藏内 修治君  委員外出席者         法務省入国管理         局長      中川  進君         外務大臣官房領         事移住部長   山下 重明君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省条約局長 佐藤 正二君         外務省国際連合         局長      重光  晶君         厚生省援護局庶         務課長     福田  勉君         参  考  人         (日本赤十字社         社会部長)   高木武三郎君         参  考  人         (日本赤十字社         外事部長)   高杉  登君         専  門  員 吉田 賢吉君     ───────────── 八月五日  委員帆足計辞任につき、その補欠として河野  密君が議長指名委員に選任された。 同日  委員河野密辞任につき、その補欠として帆足  計君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員渡部一郎辞任につき、その補欠として伊  藤惣助丸君が議長指名委員に選任された。 同日  理事石野久男君同日理事辞任につき、その補欠  として戸叶里子君が理事に当選した。     ───────────── 八月六日  非核武装宣言に関する陳情書外一件  (第一五号)  ベトナム和平促進に関する陳情書  (第一六号)  非核武装及び核兵器禁止に関する陳情書  (第六〇号)  原子力潜水艦寄港中止に関する陳情書  (第六一号)  在日朝鮮人帰国事業継続に関する陳情書  (第六二号)  非核武装宣言等に関する陳情書  (第九九号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  閉会中審査に関する件  国際情勢に関する件      ────◇─────
  2. 秋田大助

    秋田委員長 これより会議を開きます。  おはかりいたします。  理事石野久男君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
  3. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。  これより理事補欠選任を行ないたいと存じますが、先例により委員長において指名するに御異議ありませんか。
  4. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認め、委員長は、理事戸叶里子君を指名いたします。      ────◇─────
  5. 秋田大助

    秋田委員長 国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  本委員会といたしましては、国際情勢に関する事項について調査をいたしたいと存じますので、この旨議長承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。
  6. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  7. 秋田大助

    秋田委員長 この際、北朝鮮帰還の問題につきまして、高木武三郎君及び高杉登君を参考人として本委員会おいでを願い、実情を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
  8. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ────◇─────
  9. 秋田大助

    秋田委員長 この際、三木外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。三木外務大臣
  10. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、去る七月三十日から八月一日まで三日間、豪州のキャンベラで開かれました第三回アジア太平洋閣僚会議、俗にASPACといわれる会議出席をいたしました。これは韓国タイに次いで第三回目の会議でありますが、この会議を通じてASPAC基本的性格というものが定着をしたと申し上げてよろしいと思うのであります。  その第一点は、ASPACは他の国あるいは他の国のグループに対して対抗し、敵対する排他的な結合体ではない。したがって、域内における参加を希望する国はどこの国でも歓迎する。  もう一つは、ASPACはしいて結論を求めあるいは合意を求める会議ではなくして、自由に意見を述べ合うことによって理解増進し、その理解増進を通じて地域的協力の基盤を拡大していく、こういうことがこのASPAC性格として、参加国一同の一致した見解でありました。むろん、ASPACとしても、国際機関と重複しない適当な、ASPACにふさわしい事業があれば、共同の事業として取り上げるけれども、やはり自由な論議を通じて理解増進の場である、これがやはりASPAC性格の中で一番大きいものである。  今回の会議は、アジア情勢の不安定を反映して活発な論議がなされましたけれども、しかし、結局は、相互の理解を通じて地域協力を進めていくことが一番適当である。軍事同盟あるいは反共同盟、そういうふうなことにASPAC発展を目ざすことはいけないということが各代表から強く発言をされたのでございます。  ASPACの第四回の会議につきましては、参加国一同の強い要望があり、御承知のように、韓国タイ豪州と各地域がみな主催国を引き受けたのでありますから、今度は日本が引き受けてほしい、こういう要望にこたえて、第四回のASPACの大会は日本において開くことになりました。来年の夏を予定いたしております。わが国としては、ASPACの健全な発展をこいねがうわが国として主催国を引き受け、そして一そうASPACの所期の目的を達成いたしますることができますよう、責任をみずからとりたいと考えておるものでございます。国民各位の御理解、御支援をこいねがって御報告といたします。      ────◇─────
  11. 秋田大助

    秋田委員長 国際情勢に関する件について調査に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。戸叶里子君。
  12. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま三木大臣からASPACの問題についてのお話がございまして、この問題は私あとから御質問を申し上げたいと思いますが、最初に伺いたいことが二、三点ございまして、そのあとからASPACの問題で二、三点質問をしたいと思います。  原爆が広島、長崎に落とされましてからもう二十数年たちますけれども、いまだに私たち放射能というものの不安からのがれておりません。私は最近テレビを見ておりまして、ほんとうに涙を流したことが二つあります。それは、佐世保原子力潜水艦が寄港したあとで残された異常放射能事件で、お魚屋さんの前にたくさんぼう然として立っておる主婦の姿を見たときが一度です。もう一度は、最近広島で原爆問題で慰霊祭が行なわれておりますけれども、ちょうど当時八つ、九つのお子さんが孤児になって、そして孤児院で育てられて結婚をした、こういう奥さんたちの昔の思い出を聞いて、ほんとうに私は心から涙を流しました。そして憤りをしまいには感じました。放射能というもののおそれをほんとうにことしこそなくしていかなければいけないのだ、これからなくしていくことが日本ほんとうの急務ではないかということを痛切に感じて、いろいろどうしたらいいだろうということなども考え合わせていくうちに、大きな問題としてはいろいろございます。政府考え方、私ども考え方、違う点もございます。しかし、いま目前に迫った問題として、まず伺っておかなければならない問題は、先ごろの佐世保異常放射能調査につきまして、日本科学者は、あれは原子力潜水艦寄港によるものであるという結論を出し、アメリカ側からは、わざわざ調査に来て、そうではないという結論を出した。そして、その後どうなったかということは、私が入院をしていたために知らなかったかもしれませんが、何の情報も聞いておりませんが、その後その関係がどうなっているかということを私はこの機会に聞かせていただきたい、こう思います。
  13. 三木武夫

    三木国務大臣 佐世保事件は、日本学者グループは、アメリカ潜水艦によるのではないか、断定はいたしていないのでありますが、そういう疑いもあるということで、日米両国専門家調査が、残念ながら意見が一致してない。どちらもきめ手を持っておらない。これだ、これだからこうだと言えるきめ手がないということは、まことに不幸な事件でありました。したがって、あの異常放射能に対して原因の追及というものが、真実一つしかないんでしょうから、これはもっと前広くいろいろな準備をしておけば、その真実を探求できたでしょうが、いまとなっては、結局この問題がこれだという原因究明されないままに、あの問題はいまとなっては究明する方法もないという不幸な事件に終わったのであります。したがって、われわれとしては、こういうことがあってはいけない、この真の原因究明されないということは国民に対して不安を与えますから、今後は断じてこういうことがあってはいけない、そういうので、調査体制といいますか、測定体制というものを整備して、また新しい器具なども備えつける必要がありますから、これは予備費の支出を求めて、いまそういう測定体制整備を急いでおるわけであります。また、そういう体制ができるまではアメリカ原子力潜水艦入港は認めない、こういう前提のもとで体制整備をいたしておるわけでございます。先方原子力潜水艦による放射能ではない、こういうのでありますから、そこに非常に食い違いがあるのでありますが、とにかく原子力潜水艦による放射能ではないかという疑いもあるので、冷却水と申しますか、原子力潜水艦が新しく出動する場合に冷却水を排出いたしますから、そういうことをできるだけやめるようにしてもらいたいというこちらの要請アメリカに対して伝えて、そしていまアメリカでも検討し、これは日米間の外交折衝に移っておるわけでございます。アメリカは、まだこれに対してアメリカ政府回答はよこしておりませんが、これはそう遠くない将来に、アメリカ政府からも、冷却水に対するアメリカ態度というものが回答があるものと期待しております。これが現状でございます。
  14. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私、いま三木大臣お話を承っておりまして、非常に不安に思うことが二つございました。  それは、日米交渉をしている、冷却水を捨てないようにしてもらいたい、それに対する答えは——こういう交渉は何でもいろいろなすっていただいてけっこうだと思います。しかし、測定体制が不十分であったから、だからこれから測定体制をよくするのだと、これももちろん必要なことですけれども測定体制ができるまでは入らないようにしてもらう、こういうふうななまやさしい態度で臨まれては私は困ると思います。と申しますのは、もちろんきめ手がないとおっしゃいますけれどもきめ手がないから、話が両方の間で、アメリカのほうは、私のほうには責任がないという、日本のほうは、あるのじゃないかというたいへん控え目な言い方をしていらっしゃるようですけれども、私は、原子力潜水艦以外にああいう異常放射能がくるなんということは、しろうとが考えてもあり得ないと考えるわけですし、学者の人もそれを認めているのですから、そういうふうな状態にある中で、なぜもっと積極的にその問題をお互いにとことんまで追求していかないかということが非常に不満であるわけです。あの問題は、日本はこう思うのだが、アメリカは、私のほうではそうじゃないのだ。しかし、こうじゃないか、ああじゃないか、その点である一致点が見られるまでは絶対入れないのだ、このくらいの覚悟をもって第一段階は臨んでもらいたいと思うのです。測定準備が整ったからまあまあしかたがないだろうなんといういいかげんな形では臨んでいただきたくない、話し合いがきちんとつかないうちは絶対どうか入らないでいただきたい、このくらいの気持ちで私は臨んでいただきたいと思いますが、この点はどういうふうにお考えになりますか。
  15. 三木武夫

    三木国務大臣 戸叶さんのお話一つだけ私無理があると思うのは、話をとことんに詰めて、そして原子力潜水艦による放射能かどうかの話が詰まるまでは原子力潜水艦入港認むべきではない、こういう御主張であります。しかし、これは日本学者もいろいろ検討したけれども原因はこれだ、だからこう断定するというまで、日本学者疑いは差しはさみましたけれども原因というものに対してこれだという断定はできなかったのであります。したがって、幾らこれを時間をかけてみても、やはりこういうものに対しては事実の上に立って立証しなければ、感じだけではだめですから、時間をかけることによってこれが究明できるという性質のものではないのであります。そういうことで、これらに対して、こういうふうな両方意見が一致しないというようなことは国民に不安を与えますから、以後のそういう放射能測定に対しては一点の疑いもないような調査体制整備していこうということで、弱腰とか強腰とかいうものではない。これはきわめて科学的なことですから、感じだけではいけない、やはりだれが見てももっともだという一つの学問的なといいますか、科学的な究明がなされないと、感じだけで不安だ不安だということで、両方意見が一致しないから、原子力潜水艦に対しても入港を認めるべきでないということは、ちょっと科学的な態度ではない。われわれとしても、アメリカ回答ももらうし、また調査体制整備して、その上で原子力潜水艦入港を認めるということになるわけでありますから、それまでの間は原子力潜水艦入港は認めないのですから、まあ現在のところでは、私はそういう政府処置が妥当な処置である、こう考えております。
  16. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私、間違っておればおわびをいたしますが、入院中にいろいろと情報新聞やラジオ、テレビで見ておりましたところが、やはり委員会で、アメリカとの間の意見の調整がつくまでは原子力潜水艦日本には寄港させないというような答弁をされたように私の記憶にあるものですから、そのお考えには変わりがないかなと思って、もう一度念のために伺ったわけですが、いまの外務大臣の御答弁ではちょっとあの当時とニュアンスが違うので、少し不安な感じがいたします。  もう一つの問題は、感情だけで不安だとか心配だというようなことを考えているのでは困る、もちろん私はそうだと思うのです。感情だけではなくて、そういうことが現実に起きたからこそああいう問題が起きてきたわけです。ですから、事実の上に立っての心配なのですから、再びこういうことが起きないように根本的に解決していかなければならない。そのためには、やはりこの問題をとことんまでアメリカと話し合っていただきたい。いいかげんな形で、あなたのほうはそういう結論でしたか、うちのほうの学者もちょっと不安な面もありましたけれどもという形で話し合っていただきたくない、このことを強く要望いたします。  もう一つは、いろいろ測定の完全な方法をとるとおっしゃいますけれども日本側が完全な測定方法として考えてみましても、やはりアメリカ原子力潜水艦には日本は入ることができないのですから、いろいろな面で私は日本がタッチできない、知り得ないことも出てくると思うのです。そういう意味からいえばやはり何といっても、私たちは寄港することに対しては絶対反対ですけれども、私ども政府のお立場に立ってものを考えてみるならば、せめて合同調査機関、こういうようなものでもつくるようなお話し合いをしていただけないかしらということを私は考えたわけでございます。そうでなければ、日本だけで完全なものだといってみたところで、またアメリカがどういうふうに言われるかわからない。せめて合同調査機関というところまで持っていかなければ、日本アメリカ原子力潜水艦に乗ることもできなければ内容もわからないのですから、そういう点も考えていただきたいと思いますが、この点についてどうお考えになりますか。
  17. 三木武夫

    三木国務大臣 合同といいますか、アメリカ協力を得なければならぬことは御指摘のとおりだと思います。先方に対しても必要なデータの提出その他、合同ということばが適当であるかどうかわかりませんが、一緒になって調査体制整備をするようにしてもらいたい、これはアメリカに申し出てあるわけでございます。とにかく、人体被害を与えるような放射能原子力潜水艦入港によって出るということは、これは日本ばかりでなしに世界の問題です。アメリカ自身の問題でもございますから、これは私としましても、中途はんばでこの問題を処理するという考えはございません。
  18. 戸叶里子

    ○戸叶委員 中途はんばで終わるようなことは絶対にないようにしていただきたい。  それから、私は繰り返して申しますが、私どもはいまそういう案を出しましたけれども、私どもはできるだけそういうものが入ってこないほうが安心だという、そういう観点に立っておりますので、つけ加えて申し上げておきます。  それから、それにちょっと関連して、沖縄海岸児童が水泳をしておりましたら、何か皮膚病にかかって入院をした人があったとか、あるいは目が痛くなったとかいろいろあった。その地域は、アメリカの弾薬をたくさん扱っておる倉庫があるとか、いろいろそういうふうな情勢の海であったというようなことが新聞に出ておりましたけれども、この点は当然私は日本でもお調べになったことと思いますが、お調べになったか、その後どういう手をお打ちになったか、当然これは日本の国としてやるべきことだと思いますが、この点をお伺いしたい。外交権を利用して、そうして何なりの措置をおとりになったことと思いますが、いかがでございましょうか。
  19. 三木武夫

    三木国務大臣 アメリカ局長が参りまして、戸叶さんの御質問にお答えいたします。
  20. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣はこのことを御存じないのですか。
  21. 三木武夫

    三木国務大臣 どういう措置をとったかということは、私存じておりません。したがって、アメリカ局長が参りましてお答えをいたします。
  22. 戸叶里子

    ○戸叶委員 どういう措置をとったかということに対して、アメリカ局長からお聞きしてけっこうですけれども大臣としては、やはりこういうふうな問題が起きたということに対して、どういうふうにお考えになりますか。
  23. 三木武夫

    三木国務大臣 これは沖縄に限らず、世界のどこにおいても、やはり放射能によるいろんな人体への影響ということは、これは見のがすことのできぬ問題だと思います。したがって、こういう問題が、原因というものがどういうところにあるのか、これはやはり科学的に究明しなければなりませんが、放射能によって人体に非常な被害を受けるということは、これは見のがすことのできぬ問題であるというふうに考えております。
  24. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは、アメリカ局長おいでになったようですから、答弁してください。
  25. 東郷文彦

    東郷説明員 沖縄の、場所の名前ははっきり覚えませんが、海岸で、児童が遊泳中皮膚炎を生じ、その他の障害があったということはございました。さっそく琉球側の地元の警察及び琉球政府、那覇からの警察、両当局が現地の水を採取し、原因究明につとめました。同時に、民政府側関係当局もその調査参加しました。その現場付近には工場が四つほどあるそうでございます。工場廃液等についていろいろ検査もしましたが、まだきめ手となる薬その他はわかっておらぬということでございます。  なお、米軍関係につきましても、過去はおいて、化学薬品か何かを絶対にこわれないコンクリートづくりのものに入れて、沖合いに沈めたという事実が数年前にあったという記録もあるようでございます。そういう点も含めまして、なお調査継続中でございます。その間の連絡はわがほうも常に受けておりますし、東京において大使館レベルでさらにやる必要があれば、いつでもやる態勢をとっております。  なお、調査は引き続き行なわれておるということでございます。
  26. 戸叶里子

    ○戸叶委員 相当日もたっておりますから、調査ももう結論が出ていいころじゃないかと思いますけれども薬品等によるということになりますと、日はたつかもしれません。しかし、もしもそれがその付近にあるアメリカ工場薬品によってそういう問題が起きたということになりますと、日本政府としては、当然外交保護権を適用をして、先方に適当な措置を要求することはできると思いますけれども、この点はいかがでございますか。
  27. 東郷文彦

    東郷説明員 いま申し上げました工場と申しますのは、沖繩側工場でございまして、もしその他の理由によるもの、すなわち、米軍側理由によって何らかそういうことが起こったというきめ手がございますれば、むろんおっしゃいましたように、わがほうとしてのとるべき措置をとる次第でございます。
  28. 戸叶里子

    ○戸叶委員 沖縄の問題は、非常に重大な問題でございまして、いまの問題から、私は二、三点沖縄の問題に入りたいと思います。  今度の代表質問でも、大体どの方も沖縄問題についていろいろと質問をされました。そして佐藤総理答弁も、私はよく聞いていたわけでございますが、それを要点だけしぼってみますと、佐藤総理が、両三年のうちに沖縄返還めどがつく、こういうようなことをおっしゃったのに対して、スナイダー日本部長が、それと違うような言い方——違うような言い方ではございませんというふうに佐藤総理は言うにしても、はっきり両三年のうちに返すということは言っていないということを言っておるわけでございますから、このスナイダー部長発言と、佐藤総理の言われていることば、この間の私どもがはっきり見る違い、その違いというものに対して、外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。私、ほんとうにわからないのです。ほんとうにわからないですから、教えていただきたいと思います。
  29. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、違わないと思っています。違わない。それは佐藤総理は、両三年以内に沖縄返還めどをつけてもらいたいと強く要請をしたわけですね。これに対してジョンソン大統領は、よろしゅうございましょう、よろしい、三年以内にめどをつけましょうという答えはしていないのです。三年以内にめどをつけましょうという直接の答えはしていない。しかし、そういう日本発言も頭に入れながら、日米間で沖縄返還方針のもとに協議をいたしましょう、こういうのでありますから、否定もしないのですよ。しかし、直接によろしいという約束はしていない。スナイダー日本部長の言うとおりだと思うのです。しかし、そういう総理の強い発言も頭に入れながら、日米間で外交交渉をやろう、しかもその外交交渉は、沖縄返還の方針のもとにというのですから、佐藤総理がいろいろ発言しておるということも、事実に反してはいない。だから、スナイダー部長の言うこともほんとうであるし、佐藤首相の言うこともほんとうである。両方が間違ったことは言っていない。
  30. 戸叶里子

    ○戸叶委員 三木大臣、私、少し頭が悪くなったかもしれません。わからないのです。そのことがどうしても。スナイダー部長が言っているのは、共同声明にいわれている以上は約束していない、こういうことを大急ぎでおっしゃいましたね。初めは、両三年以内に返すなんということは言っていないということをおっしゃって、反響が大き過ぎたものだから、共同声明にいっているとおりなんだ、こういうことを言い直したわけです。共同声明というものは私も読んでみました。読んでみると、いまおっしゃるように、佐藤総理大臣はそれを非常に強く強調したわけです。両三年以内に返してもらいたい。ところが、大統領は、日本国民要望は十分に理解しているところである、こういうふうにおっしゃったわけです。だから、何かそこで裏づけのあるような約束をしていらっしゃるなら、私はわかります。何か、裏づけをしていらっしゃるから、佐藤総理大臣が自信を持って、両三年以内に返すというふうに言っているのだと国民におっしゃっていらっしゃっるのでしょうか。それとも自分の言った希望的観測を押しつけているのじゃないか、こういうふうに考えるわけなんですけれども、ところが、いま三木外務大臣のおっしゃった、スナイダー部長の言うのも正しいし、佐藤さんのおっしゃるのも正しい、それは、それだけをとってみれば、スナイダー部長もそうお考えになるでしょう、佐藤さんもそうお考えになるでしょう、これならわかりますよ。しかし、相関連性ということから考えたときに、一体どういうことになるかということが私はわからないのです。
  31. 三木武夫

    三木国務大臣 この共同コミュニケを見ましても、佐藤さんは、三年以内に沖縄返還めどをつけてもらいたい、こう言っておるわけですね。それをジョンソン大統領は、よろしい、これは返しましょうということは言ってないわけです。しかし、日本国民の願望も要望も十分理解しておる、したがって、今後日米両国返還しようという方針のもとに話そうというのですから、佐藤さんの要望スナイダー部長とで発言の食い違いというものは、よくわかるというのでつないであるわけです。両方つないである。よくわかるので、ひとつ返還交渉をやろうではないかというので、ぱつり切れてないのです。日本総理大臣の言う気持ちはよくわかるというのでつないでありますから、これはあまり矛盾をした発言ではないと私は思います。
  32. 戸叶里子

    ○戸叶委員 つないであることはわかります。そういうふうなお考えなんでしょうから、そういうふうに御希望でしょうから、だから私どももそういうことはわかります。わかりますまではわかるのです。だけれども、そうしましょうまではおっしゃっておらない。そこに問題があると思います。そうしましょうというような裏づけがあったかのような印象を国民佐藤さんが与えていらっしゃる。だから、そうしましょうという印象を与えていらっしゃるその裏づけがありますかありませんかということを聞いているわけです。それをはっきりさしていただきたい。
  33. 三木武夫

    三木国務大臣 これは明らかに佐藤総理もしばしば言っておるように、アメリカ大統領は両三年以内にめどをつけるということを直接に約束していない。これは佐藤さん自身が言っているのです。ただ、そういうことを頭に入れながらという——ジョンソン大統領の頭にはちゃんと総理大臣が望んでおることがあるわけですね。そのことを頭に入れながら日米間で話し合いをしようではないかというのですから、これは関連はありますね。その発言と関連はある。しかし、直接の形で、よろしゅうございます、そのようにいたしましょうという発言は、共同コミュニケからは、それはそういうふうに解釈すべきではない、こう考えております。
  34. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そこで、わかりました。スナイダー部長はやはりジョンソン大統領と同じ考えである、ジョンソン大統領のおっしゃったことを裏づけする発言をしたのだ、こういうふうに受け取っていいわけですね。そうなってくると、やはりきのう参議院で、亀田さんが、この問題は主観的な確信を佐藤総理がおっしゃったにすぎないではないかと言われたことと同じじゃないか。佐藤総理はそういう気持ちでいるけれどもジョンソン大統領スナイダー部長とは同じ気持ちである、その間に、頭の中はよくわかりますけれども、しかし、そういうふうにやりましょうとまでは言っていない、こういうふうに理解していいわけですね。ですから、佐藤さんは少し日本国民に多くの希望を持たせ過ぎたのだというふうに私は理解いたします。それでいいわけですね。
  35. 三木武夫

    三木国務大臣 希望を持たせ過ぎたというと、これは、そういうふうに佐藤総理発言をとることは少し適当でない。総理として熱心に言ったんでしょう。そのことはよくわかる、だからひとつ外交交渉でやろうというのですから、三カ年間にめどをつけようということと、あとの外交交渉話し合いをしょうということと、全然無連絡ではないのですから、だから、日本総理大臣として、三年以内にめどをつけられるものという一つの確信を持つということは、私はあり得ると思うのですね。それをそれまで否定していないのですから、よくわかる、そういうことを頭に入れて外交交渉をやろうではないかということは、やはり当面の総理としては、これはアメリカも自分の言うことをよく理解しておる、これは三年以内にめどがつくだろうという確信を持つことは無理からぬ点がある。だから、佐藤総理が特別に現実以上に国民に希望を持たすようなことを意識的に言っておるとは私は思いません。意識的にそういう宣伝をしておるとは思わない。しかし、それは、佐藤総理要望ジョンソン大統領が、よろしい、いたしましょうという答えは共同コミュニケにはない、これは明らかです。
  36. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は意地悪くとるわけではないのですけれども佐藤総理があまり両三年中にめどがつく、めどがつくというような発言をされたものですから、これはジョンソン大統領をある程度かばっておかなければたいへんだと思って、スナイダー部長が共同声明のとおりですよというふうにわざわざ発表されたのだろうと、私はそう思います。そうでなければ、わざとそんなことをおっしゃるはずがないというふうに考えるわけでございますけれども外務大臣としては、いまの政府外務大臣ですから、佐藤さんを弁解するので、それ以上のことはおっしゃれないでしょうが、論理的な外務大臣としては、論理に合わないような御発言だというふうに私は考えます。  そこで、次に伺いたいことは沖縄の問題で、これもいままでよく言われていることですが、沖縄の基地のあり方というものは白紙で臨む、白紙で臨むということをおっしゃっていらっしゃる。私は、外交用語というものは、しろうとですからわかりません。ですから、それで伺うのですけれども、白紙で臨むと言っても、白紙で交渉をするというようなことは、一体どういうことなんでしょうか。あり得るでしょうか。交渉をするというからには、何かの考えを持っていかなければ交渉はできないと思う。向こうも何かの考えを持ってこなければできないと思う。それを白紙で臨みます、白紙で臨みますということを言っていらっしゃるので、私も一生懸命考えてみたのですが、わからない。地方へ行きますと、白紙で臨むとは一体何のことですかと聞かれると、私も説明に困るのです。やはり交渉とか話し合いというものは、お互い何か考えていなければいけない。先ほど三木外務大臣がおっしゃったように、やはり何かあるのだ。頭の中に何かあるけれども、いま言えないというのならまだわかります。けれども、ただ白紙というだけでは私は了解に苦しむのです。交渉というものは、日本が黙ってただ臨んでいて、アメリカから何か問題を出されたら、初めてそれを討議する、そういうあり方で臨むのか、それとも向こうから言われたとおりに、はいと言うのか、その辺のところをはっきりさしていただきたい。
  37. 三木武夫

    三木国務大臣 沖縄の一番むずかしい焦点は、基地のあり方であると思います。ところが、政府が説明しておるのは、極東の情勢、軍事科学の進歩、世論の動向などもにらみ合わしたい、こう言っているわけですね。いますぐに結論を出せない要素がうしろにひっついているわけですね。政府がいま基地のタイプというものをここできめないというその原因の中に、極東の情勢の不安定、あるいはまた軍事科学の進歩、どういうふうに進歩していくかということが、必ずしも結論づけた見通しまではつけていない、世論の動向というものも見きわめる、こういう不確定な要素があるので、これを見きわめて——基地のタイプというものについても、政府が、政府自身の見解は戸叶さんの言われるように持つべきだと思いますよ。しかし、こういう不確定な要素がたくさんある中で、初めからきめて、旗を立てて、日本の方針はこうだ、そういう外交交渉のしかたもあると思います。しかし、いろいろ不確定な要素もあるから、そういうことも勘案しながら、まだこの段階では、基地のあり方はこうだという政府の方針をきめないでアメリカとの間に話をしてみるという外交交渉の方式もある。政府はうしろのほうをとろう。言われるように、初めから方針をきめてぶつかっていく外交交渉というもの、これは当然にそういうやり方はあり得ますが、今度の場合はそういう不確定な要素がたくさんあるから、それを見きわめながら最終的な日本の基地のあり方に対する態度というものはきめたい、こういう慎重な態度ということは、私は無理からぬことである。こういう極東情勢が不安定な中に、やはり基地のあり方をこの段階できめるということが適当だとは私は思わないのであります。そういう点で、政府が慎重な態度をとっておることはやはり理由のあることである、そういうふうに考えております。
  38. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、白紙であるということを分析すると、いろいろな極東情勢というものを見きわめながら、日本はかくあってほしいという気持ちはあるけれども、それをいま出せない、いま出さないで、そういう情勢をにらみ合わした上で、あるときにいったならば出すと、こういうことなのですね。そうすると、両三年のうちにそういう態度をおきめになるわけですね。そのことも一ぺん伺いたい。  私が白紙であるということに対して非常に心配をいたしますのは、たとえば安保条約が最初に出されたときにも、国民はほとんど何にも知らないうちに調印をしてきて国会に出されました。第二次に出されましたときにも、改定も何もできないで出されたわけです。こういうふうないろんな白紙で出されたという苦い経験を持っておりますので、沖縄の基地の問題も、政府自身の中でもいろいろ考えて、またアメリカからこうだと言われて、しかたがないからという形でいかなきゃいけないから白紙であるというふうに考えなければならないかもしれない。こういう点でもって、私は過去の経験から非常に心配をするわけでございます。この点についてはっきりさせておきたい。
  39. 三木武夫

    三木国務大臣 沖縄返還に対する日米交渉ということになると、一から十まで日本考え方で押しつけることはできません。しかしまた、アメリカ考え方をすんなり押しつけられるという解決は、真の解決では私はないと思っています。これはよく話し合ってみるべきですが、そのみるのに対して、日本会議が始まってからいつまでも、基地はどうすべきかという日本の見解を言わないで、白紙でございます、白紙でございますという外交交渉はあり得ない。ある段階がくれば、日本もこういう考えであるということで、日本考え方を述べる時期があるはずである。その述べるのは、いま言ったようないろいろな不確定な要素があるから、その見通しを立てて、日本政府はこういう考えであるということを述べていいのではないか。いまここで拙速といいますか、こういう不安定な中で考えるよりも、そういう落ちついた環境の中でこの問題を、基地のあり方を考えていくことが慎重な政府態度である。しかし、ある時期がくれば、日本政府考え方はこうだということをアメリカとの交渉の場合に言わなければ、最後まで白紙ということでは交渉は進まないことは、戸叶さんの御指摘のとおりであると思っています。
  40. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう一点沖縄のことで伺いたいのですが、それじゃ、これはちょっと答弁できないとおっしゃるかもしれませんけれども、両三年というふうに総理大臣がおっしゃっていらっしゃるからには、一体いつごろそういうふうなお考えをお出しになりますか。その点ちょっと伺っておきたいと思います。
  41. 三木武夫

    三木国務大臣 やはり両三年のうちにめどをつけるということになれば、めどをつける場合には、おそらくやはり基地のタイプということは問題になると思いますよ。そういうことでめどをつけて、何年、いつならいつ沖縄を返すというような話し合いになっていくわけでしょうからね。そのときに、やはり基地はどうなるのかということが話し合いに出なければ、なかなかやはり返還の時期というものの決定にも至らないのではないか、私個人ではそう思っています。したがって両三年以内にめどをつけようとするならば、その間における日本の基地は、日本政府としてはこうあるべきだという見解が出ることが当然だという、私は個人的見解を持つものでございます。
  42. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私、実はこれからASPACの問題を質問しようと思いましたら、何か時間らしいですね。時間のようですから、私もあまり時間を守らないことはいけないと思いますから、やめますけれどもASPACについてせっかく説明されたので、二、三点やはり伺っておきたいので、ちょっと五分ぐらい時間をいただいて、質問を詰めて伺いたいと思うのです。  このASPAC会議が三回目であることは私も知っています。最初に開かれたとき、二回目、三回目、ずっと注目をしておりました。それで、今度の共同声明をまだよく読んでいませんけれども、ちょっと読んでみて気になることが、読んだ中だけでも二、三あるわけです。  その一つは——一緒に続けて申しますと、中国についての共同声明、これが中国に対して非常に不信感を持っている点。それから、何か脅威感がここに非常に入っているという点。それから、中国というものに対する排他的な感じがある。監視をしていこうなどというような見方、こういう見方というものを中国についてして、そういう共同声明というものを出すことによって、アジアの平和と安全というものを守るのがこのASPAC考え方であるとおっしゃっているのに、一体そういうような共同声明でその目的が達せられるかどうか、これがまず一つです。  それからもう一つは、この中で非常に南ベトナムを支持することが出ています。支持するということは、第一回、第二回のASPAC会議でおっしゃっていました。いままではこれを同情するということばでしたか、だけでしたけれども、今度はそれに対して、支持するという強いことばを出しているわけです。     〔委員長退席、青木委員長代理着席〕 そうすると、私たちから考えますと、パリでいまベトナムの和平の話し合いをされているときに、南ベトナムだけに対して支持する、同情するというような、こういう強い線が出されますと、何かパリ会談に水をさすような結果になるのではないか、こういうことが非常に心配になる。これが第二点。  第三点は、三木さんが、来年は日本ASPAC会議を開くんだ、アジアの新しい意味の外交政策を立てなければいけない、こういうことを記者会見でおっしゃったと思うのですが、そういうふうな中には、当然、アジアの新しい外交政策というものは、アジアの平和なりそれからまた安全、そういうことを考えていらっしゃるのですから、中国問題を抜きにしてアジアの平和、安全ということはあり得ないと思う。とするならば、中国問題に対しても、この間の佐藤総理答弁のように、国連ではいままでと変わった態度はとりません、こういうようなおっしゃり方をしているようでは、ASPAC会議日本でしたときに、中国問題に対して積極的に平和共存の立場をとりましょうという、この説得力というものが弱くなるのではないか、こういう点を私は心配します。  もう一つ佐藤さんが、日米共同声明で中国の脅威ということを述べている。こういうふうな考え方アメリカとの間で言いながら、外務大臣が、日本へ連れてきたアジアの人たちに対して、中国と平和共存をすると言っても、その間に非常に矛盾が出てくるのではないかということを私は心配をいたします。  この問題についていろいろと伺いたいことがあるのですが、時間がないので、たいへんに意を尽くせず、質問の要項だけを申し上げましたが、その問題等についてお答えを願いたい。
  43. 三木武夫

    三木国務大臣 第一点の、中共に対しての不信、対抗、そういうものがこの共同声明の精神の中に含まれているのではないかという意味のお尋ねであります。そういう意味は全然含まれておりません。共同声明の中に書いてあることは、いわゆる中国大陸の現状がまだ非常に流動的だから、この推移をよく見ようというのであります。もとの英語の原文でも、フォローということばを使ったのは、監視というような意味ではなく、推移をじっと見ようということです。この中には、何ら中共に対しての不信あるいは敵対的な意図というものは全然含まれておりません。また、ASPAC会議を聞いておりましても、いろいろアジア情勢が非常に不安だという発言がありましたけれども、だからといって、ASPACの中で中共に力で対決していこうというような発言はなかったのが事実であります。中共といいますか、中国大陸の状態が流動的だということは、これはだれが見てもそのとおりですから、やはり静かにその推移を見よう。こういうことは、いま言われるような点は少しも含まれていない。  それから第二点のベトナムでありますが、これは御承知のように、結局ベトナム問題の解決は、一九五四年のジュネーブ協定の精神によるほかない。そうなってくれば、南と北とを分けて、将来外国の軍隊も撤退したりして、自由にものが考えられるような環境で、ベトナムの運命はベトナム人がきめるべきだと私は思いますよ。しかし、この戦争を片づけるという休戦の条件というものは、やはり南北に分かれるよりほかない。したがってそのコミニュケの中にも、北のことは何も触れていないのです。南ベトナムが自分たちで領土独立、あるいはまた自分たちで自分たちの行き方をきめる、そういうふうなことを確保しようという努力に対しては同情と支持を与える、こういうことで、これが何か北のほうへの戦争をけしかけるような意図は全然ないので、南ベトナムで結局自分の主権や独立を守るという努力に対しては同情もし、支持も与えようということで、このことが、戦争に対して日本が激励して、パリの和平会談に対して水をさすような意図はありません。現に、パリ会談というものは成功することを心から望むということを共同声明の中にも掲げており、また、参加する各国もみながやはりパリの和平会談が成功することを心から望んでおるのですから、パリのベトナム和平会談に水をさすような意図を持つ、そういう声明が出てくるはずはないのであります。全部がやはりパリ会談の成功を望むという声が参加国一同の声であったことは明らかでございます。  それから、中国の問題でありますが、国連においてどういうふうに今年の国連の決議が出るかということはまだ確定はしてないのであります。従来、日本が重要事項指定方式によっておるのは、あの決議というものは、単純な、中共が国連に入るという決議ではないのであります。国府を追放して中共が国連に入る、代表権は中国にあるというので、単純な中共の加盟ではないのであります。それは代表権という問題で出ておるのですから、その代表権という問題は、国府を追放して中共を入れるというのですから、単純な中共の加盟というものではない。したがって、そのような重要な内容を含んでおる決議案は、過半数というようなものではなくして——過半数の決議というのはたいてい国連のほんの手続き問題だけですから、みな三分の二の決議によっておるのですから、過半数ではなくして三分の二の決議によるべきである、こういう見解は、国連憲章の上からいっても、そういう重要な内容はみな三分の二ですから、それに従うべきだというので、中共を締め出す手段としてこういうのを考えておるのではなくして、重要な事項であるから、重要な事項として三分の二の議決が要る、こういう態度で重要事項の指定方式というのに賛成をした。今次国連総会にはどういう形で決議案が出るかということはまだはっきりしてないのであります。しかし、重要事項指定方式が出れば、その考え方というものは、これを変えるという考え方はございません。しかし、まだどういう形で出るかはっきりしないので、これが具体化したときに政府が検討することになると思います。
  44. 戸叶里子

    ○戸叶委員 時間ですからやめますけれども、私が伺った質問答えがちょっと違うところがあるわけです。時間がないものですからそういうことになるかと思いますけれども、私が伺ったのは、水をさすような共同声明になっているのではなくて、これを読んでいけばそういうところが見られるという意味で言ったのです。たとえば共同声明の中で、米国と北ベトナムの代表間でパリで話をされている会談に対しても、「同会談が、ベトナム共和国が当然主要な役割を演ずると思われる公正にして名誉あるかつ永続的な平和のための交渉への道を開くものとなるようにとの強い希望を表明した。」これを読めばそのとおりなんですけれども、このことは、南ベトナムがやっていることは全部正しくてというような、そういう書き方がこの全体の声明書の中にあるものですから、私はよく読んでいって非常に心配しているわけです。これはやはり一問一答でやっていかないと意思が通じないと思いますので、いつか機会をいただきたいと思うのです。  それから、私が伺ったのは、その手続上の問題もですけれども、それよりも、もう一つ根本的に、今後においての日本アジア政策、外交政策というものは非常に重要だから、来年を迎えるにあたって変えなければならぬときだ、こういうふうに発表されておりますけれども、それはどういうところに重点を置こうとされているかということを最後に伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  45. 三木武夫

    三木国務大臣 ベトナムの和平会談、われわれとしても心からその和平会談というものが何らかの円満な解決点を見出すことを願っておるのであります。ベトナム戦争が片づくということは、アジア情勢の重大な変化です。これはいろんな点で影響があると思います。だからこれは片づけられなければならぬ。いつ片づけられるか、どういう形で片づけるかということはまだ不明確でありますけれども、いつかはベトナム戦争は終らせなければならない。無制限にああいう戦争が続いていいわけではないわけでありますから、そういうことを頭に入れながら、いわゆる変わっていくアジア、この上に立って外交政策というものは新たにやはり検討をする必要があるであろうと言ったのであります。われわれとしてはそういうことを頭に入れながら、アジアの外交はどうあるべきか。外交の対象にいろいろ変化が起こってきているのですから、そういうことを申し上げたのであります。  戸叶さん、時間がなくて、いろいろ御質問があるようですが、長い間けがをされて、非常に元気な戸叶さんのお姿を拝して、私も心強く感じましたことを最後に申し添えておきます。
  46. 青木正久

    青木委員長代理 帆足計君。
  47. 帆足計

    帆足委員 きょうは、在日朝鮮人帰国の問題について御質問いたしますが、この問題はもう常識的な問題でございますし、人道上の問題でありますから、くだくだしくは申しません。ただ、私は、いまだにこの問題が解決いたさず、多くの帰国望の朝鮮人の諸君が、この暑さの中をえんえん長蛇の列をなして、そして帰国の要望を訴えておる姿を見まして、黙視するに忍びず、あえて、人道主義的な政治家として、また中庸の道を得、ヒューマンなタイプの政治家としてビジョンを持っておる三木外務大臣に、簡潔でけっこうですから、責任のあるきわめて人間的な答弁をしていただきたいと思う次第でございます。またそれに関連いたしまして、日本赤十字の副社長はお留守でございますから、両部長に御来席いただきまして、そして問題の解決を人道的立場からはかりたいと存ずる次第でございます。  現在約五十万の在日朝鮮人の諸君がおられまして、すでに協定の有効期間中に一万七千人前後の人たちが帰国の意を表明せられた。また、これを社会学、統計学的に見ましても、五十八万の朝鮮人の諸君がおりますから、おおむね月に百人くらい帰国希望者が出るであろうということは、良識ある人たちが予想しておるところでございます。これを政府は軽率にも一般外国人並みに帰らせればよいではないかという表現で説明されましたけれども、これは法制上の表現としては適当であろうと思いますけれども、常識的な表現としては、在日朝鮮人は特殊な事情に置かれておりまして、特に南北国交断絶、日本との国交も回復いたしておりませんために、事実問題として帰国の便がないのでございます。しかるに、この問題につきまして、下級役人の一部の人たちはかってなことを放言いたしまして、必ずしも公務員としての良心によるものでなく、きわめて低級な観点から、帰国の貨物船は幾らでもあるではないかとか、ナホトカ線で帰れるではないか、飛行機で帰れるではないか、香港を通って帰れるじゃないか、このようなことを申しますために、予算分科会主査の野原さんは、保守党の方でありますけれども、聞くに聞き余って、政府のその態度は何事であるか、それはあまりにも不親切でばかばかしい答弁である、注意を望む、したがって、予算分科会主査としては、この問題は、事実として帰る手段が原則的に非常に困難であるから、赤十字等にお願いして便宜をはかろうと言うて、せっかく政府は努力しておる状況ではないかという御注意があったのでございます。また、翌日外務大臣からファクトはファクトとしてやはり認めねばならぬから、これに対しては赤十字精神でタイミングを得て解決したいと思うというおことばがありました。しかるに、その属僚さんは、その後も態度を改めずに、また香港とかナホトカとかいうことを繰り返しておりまして、世上では多少精神異常ではあるまいかという世評すら立っておる状況で、速記録を見ておるならば、この外務大臣のおことばと予算会科会主査のおことばに対して恐縮するのがほんとうであろうと私は思いますが、まことに官吏服務紀律上遺憾なことであると思います。ただ幸いにして、先日のコロンボ会談が相互に一部意思の疎通の不十分な点があってこじれまして、これに対しまする質問に対して、佐藤内閣総理大臣から、この問題に対しては、申すまでもなく帰国のことは人権上自由である、しからば、その方法を一体どうするかということになると、今回日赤を中心として交渉し、たぶんこれは成功するであろう、成果をあげるであろうと実は心に期待しておりました、私はこの話がどういうわけでこわれたか、こじれたか、詳しく存じませんし、せんさくするつもりもございませんけれども、人道上の見地から話し合いを続ける、こういう立場に立てば、また再び相手のほうとも協議する、こういうことであれば協議をして、私はそういうものをぜひまとめたい、かように思っております、ただいまこれが不調になったことはまことに残念に思っております、総理はこのような良識ある答弁をいたしておられるのでございます。どうぞ関係官庁の方もこのことばを肝に銘じてひとつお聞き取りのほどを願いたい。  さらに、一昨日の本会議におきまして、三宅野党代表から質疑がございましたのに対して、総理は、北朝鮮人帰国問題についておふれになりましたが、これは人道上の問題でありますから、政府といたしましては日赤の意向をも十分に尊重いたしまして、今後とも解決に努力するつもりでございます、このような答弁をいたしておられるのでございます。私は、この佐藤総理の御答弁に関する限りは敬意を表する次第でございます。  しかるに、事実はどうなっておるかと申しますと、問題は遅々としてはかどっておりません。法制的に一般の外国人と同じ取り扱いをするというのはけっこうでございますけれども、しかし、実務上にファクトはファクトとして帰国の便宜はないとか、二、三の行政上の便宜と申しますか、通常の取り扱いについて打ち合わせをする必要がありますので、これは赤十字ベースで話し合うことが妥当であろう、赤十字の良識で話し合ったことについて、日本政府はこれに深く立ち入らず、ただ実務上の面について必要なことは、淡々として赤十字精神の範囲で政治的雑音を入れずに善処せられる、このように佐藤総理ことばを私どもは解釈して期待しておるのでございます。  しこうして、三木外務大臣がしばらくまた御旅行中でございましたので、本日はこれをもって最後の討議にいたしたいのでございますが、外務委員会理事会の御許可を得まして、この問題につきまして、外務委員会の権威におきましてもそうでたらめな取り扱いをいたしたくないというので、逐次御質問いたします。  まず、ただいまの総理の三宅議員並びに楢崎議員に対する答弁は、私は懇切にして誠意のある答弁と存じますし、筋道の合った答弁と存じますが、もとより昨日の法務大臣答弁もこれを確認されました。厚生大臣もそれを確認されました。外務大臣はお留守中でございましたけれども、もうきのう、おとといの本会議には御出席のことと思いますから、この総理答弁を御確認なされますかどうか、ひとつ明確な御答弁をいただいておきたいと思います。
  48. 三木武夫

    三木国務大臣 総理答弁はきわめて妥当な答弁だと思います。
  49. 帆足計

    帆足委員 外務大臣からきわめて簡潔に御答弁をいただきまして、私は満足でございました。要は、あと実務上の処理の問題になるのでございます。外務大臣は赤十字精神という問題をどのようにお考えでございましょうか。私はしろうとでございますけれども、人道上人権を守ることについては、イデオロギー、政党、政派または政治的雑音等から離れて、そして人間の人権と人道の原則を守る精神から赤十字というものが生まれておるものと存じますが、外務大臣の正確な御認識を伺いたいと思います。
  50. 三木武夫

    三木国務大臣 しろうとというのは御謙遜でありまして、よく御存じになっておる帆足さんのお説のとおりだと思います。
  51. 帆足計

    帆足委員 実ははれものにさわるような気持ちで謙虚に御質問を申し上げておる心中のほどもお察しくださいますようお願いいたしたいのでありまして、そうであるとするならば、人道と人権の仕事、戦争中にでも赤十字の旗をひるがえして参るならば話し合いもできる、その代表は赤十字国際儀礼をもって迎えられるというふうに私は伺っております。子供のときからナイチンゲールの歌もたいへん好きでございまして、私ども男女共学でございましたから、よくあれでワルツを踊ったものでございますけれども、まことになつかしい思い出でございます。したがいまして、この問題にいわゆる内外の政治的雑音を入れないで解決するというのが原則であろう。かつてこの原則を貫きましたときに、かの悪名高き李承晩殿ですら一言の苦情も申しませんでした。そして数年間帰国の仕事が藤山外務大臣の勇断によって——当時は椎名官房長官、椎名さんはそれほど急進的な立場に立っている方ではございません。しかるにかかわらず、やはり賛成されている。さすがの、いまの朴政権よりももっと右といわれている李承晩殿が賛成、一言も言わなかったのでございます。したがって、内外の政治的雑音から離れるということも、人道を守る上における、配慮すべき事項の一つと思いますが、外務大臣の御見識にかけて、どのようにお考えでしょうか。
  52. 三木武夫

    三木国務大臣 それは、双方ともそういう態度であるべきだと思っております。
  53. 帆足計

    帆足委員 まことにけっこうな御答弁で、満足でございます。  せっかく赤十字代表がお見えでございますから、赤十字は、私は詳しくは存じませんが、法人組織でありまして、法律によってまた定款がきまっておるように存じております。また、国際組織でございまして、国際赤十字の権威というものは、国際法上非常に高く認められておるものと存じております。赤十字を無視して今日の外交はあり得ないと申しても過言ではないくらいでございまして、戦争の、まだ不幸の過渡期でございますけれども、その間を縫うて、なお人類の理性は互いに連らなっておる。その役割りを演じているのが第一に赤十字であり、第二にユネスコまたは国際連合その他の、それぞれ適切な機関でございますから、私は、国際赤十字委員会に対し、やはりエチケットを失したり権威を失したり、または乱暴に取り扱ったりするようなことは、特に新憲法を持っております日本のような国柄といたしまして、また貿易と平和を必要とする国柄といたしまして、非常な慎重な考慮と取り扱いが必要と存じております。赤十字の精神及び組織につきまして、時間がございませんから、一、二分でけっこうですが、赤十字のほうから基本精神と基本機構について御説明を願いたいと思います。
  54. 高杉登

    高杉参考人 先生も長い間赤十字に御協力くださいまして、赤十字のことはよくご存じだと思いますが、先生の御指摘なさいますように、赤十字国際委員会は、赤十字活動の中心をなすものでございまして、そしてこれが赤十字活動の生みの親でございまして、したがいまして、先生のおっしゃるように、赤十字の場におきましては非常に権威の高いものでございます。したがいまして、北鮮帰還問題が開始されました当初から最近に至るまで八年間、国際委員会には非常な協力を仰いで、そのもとにこの帰還の事業が行なわれたわけでございます。私も、赤十字におりまして、国際委員会から派遣されておる人々の代表と一緒に仕事もいたしますし、またできるだけの便宜、それからお世話をするように努力はいたしましたけれども、私の行き届かない点があったかもしれません。したがいまして、あるいは御批判を受けるようなことがあるかもわかりませんが、私が知っておる限り、赤十字国際委員会からの日本赤十字が受けております手紙によりますと、この代表一行が日本滞在中は非常に世話をしてくれて非常にありがたかったという、正式な手紙も、日本赤十字はいただいております。また、最後まで国際委員会代表として残っておりましたドクター・テスチューがここを四月に立ちましてカンボジアへ行きまして、カンボジアから私によこしております手紙によりましても、東京滞在中は非常にお世話になってありがとうという感謝の意を表しております。まあ、人間はいろいろ腹の中では思うことも違うかとは存じますが、また、私もいろいろ不行き届きな点があったことではないかと思いますが、いろいろ金の問題もございますし、十分そういう点は反省いたしております。
  55. 帆足計

    帆足委員 時間がございませんから論旨を進めます。現在、さればこそ、赤十字の御協力によって約九万人近くの流離の旅に苦しんでおる朝鮮人がふるさとに帰ることができました。これは大きな歴史上の仕事の一つでありました。しかし、同時に、協定期間中に一万七千近くの帰国申請者があり、そのことごとくが直ちに帰るとは限りませんけれども、一応帰りたいという意思を表示し、その後も景気不景気、社会の変動、年齢の移り変わり等によりまして、年に若干名の、すなわち、ときに五十名ないし百名ぐらいの帰国者がおるであろうということは、だれしも予想しておることでございます。こういう帰国希望者が現在すでにあり、将来もまた予想されるということは、役所の人たちもよく知っておりますが、赤十字の常識においても御認識でありましょうが、高木さんに御意見を承りたいと思います。
  56. 高木武三郎

    ○高木参考人 ただいま帆足先生からお話しの件につきましては、すでに申されましたように、一万七千余人の人が正式の協定有効中に申請をせられておるのでございまして、その人たちの何%に当たられますか知りませんが、その中で相当帰国を急いでおる人があることも事実であると思っております。それから、そのときまでに申請はしなかったけれども、いまの時点において、あるいは将来においても帰りたいという人がだんだんと出てくるであろうということも想像にかたくないのでございます。ただ、数の問題に言及いたしますれば、大量の人が短期に帰るという時代はすでに過ぎまして、これからは、数の上からいえば、それらに比べれば少数の人が——数が何人であるかということは判定いたしませんけれども、帰る人があることはある、数はそんなに大量ではない、そういう人がだんだんと帰っていくであろうということを予想いたしておるのでございます。
  57. 帆足計

    帆足委員 全く同感でありまして、一時は、十数年とめられておりましたから、決河の勢いで帰国者が出ましたが、現在は谷川の水のごとく、夏はふえ、冬はかれる。ふえたり減ったりしながら、人生の流れのごとく、適当数が帰国していく。しかし、それは十人、二十人の問題でなくて、すなわち、貨客船、イルクーツク行き飛行機、香港航空機等に乗れるような人数でないことは明確でございます。そこで、すでに申請した人たちに対しては、国際赤十字は、やはり法律的というよりも、道義的責任があるではないかという感じを持っておりますし、将来引き続いて帰る人に対して、やはり一定の見通しと配慮を持っておることは必要であろうという常識的意見を、私にも国際赤十字委員長から漏らされましたが、赤十字並びに国際赤十字は、一般外国人同様の法律上の手続であっても、帰国の実際の便宜がないから、外務大臣の言われたように、ファクト即事実問題として便宜がないから、そこで赤十字精神に基づいて、帰国の実務的便宜、すなわち、予算的金銭的というよりも、実際上の便宜について赤十字同士が話し合ったらよかろうというアドバイスを心に抱いておるように私は伺いましたが、日本赤十字もそれが必要だ、すなわち、帰国者の世話をせねばならぬであろうし、またすることが人道的に必要であるという御認識をお持ちでございますか。
  58. 高木武三郎

    ○高木参考人 もちろん、ただいま御指摘なさいましたとおり、赤十字といたしましては、人道精神に立脚して仕事をいたしておるのでございまして、これが普通の国のように、それぞれの外交ルートがございますとか、あるいはりっぱな便船が備わっておれば、これは赤十字のタッチする場面ではございませんが、今日のように、朝鮮は日本と正式な外交もございませんし、したがって、それに予想される便宜な船舶もない時代におきましては、それらの問題がスムーズに行なわれるように赤十字がお手伝いをする必要があるということを深く感じておるわけでございます。それならばどういうやり方がいいかということにつきましては、具体的にはいろいろな意見がございます。と申しますのは、いままでの八万八千人の人が帰られたように大量、短期なやり方をいまも踏襲しなければならないと考えてはおりませんが、少なくとも帰れるルートが、帰還者が自分の国へ帰るということにつきましては、帰る道が問題だと思うのでございます。つまり、旅行の安全と簡便というものがなければ帰れないのでございますから、旅行の安全と簡便のルートができるということを前提にいたしまして帰れなければ意味がないので、地球はまるいからどこを回っても帰れるといったようなのは暴論でありまして、最短距離を安全に帰れるということを考えなくてはならぬということを深く考えておるし、この考え方は、赤十字国際委員会が初めて帰国問題を日本に提案をいたしましたときに、最初から朝鮮側は帰った人に職業や住宅を十分に与えるべきであるし、日本側はその輸送の手段について安全な簡便なルートを考えてやるべきことが赤十字の仕事であるということをアドバイスしておることに見ても、自明の理であると考えておるのでございます。
  59. 帆足計

    帆足委員 時間が少のうございますから結論に進むといたしまして、私も全く同感でございまして、よく世俗的には、一人の帰国者でもおる限りはということばが使われますけれども、私はそうではなくて、帰国の便宜が十分平常に安全にあるならば、たとえ五百人おってもその便宜で御自由にお帰りになればいいのであって、現在は数が減りましても、帰国の便宜がないから、安全にして正確な、そして経済的な便宜がないから、これが本質でございます。それを否定するような議論が役所からときどき漏れますことはまことに遺憾で、かくのごとき雑音を発する者の学歴詐称なりやいなやを調べねばならぬと思うくらいでございます。  そこで問題は、ここまで問題がはっきりしてまいりますると、帰国船を朝鮮赤十字がソ連の好意によって雇いまして、そして入港させる。私はその法的手続を調べましたところ、運輸省においては、国際法上何ら異存もなければ拒絶する理由もない、また、船員が日本に短期間上陸することも、運輸省の規則によって何ら問題はない。ただ問題は、両者が互いに連絡して、どういう船が来るから自分はいつ帰りたいというめどをつける、めどをつけて帰国申請を出さねばならず、めどをつけて退職願い、家の受け渡し、荷づくりをせねばならぬ。そういう実務上の必要があるということ、及び赤十字代表が一定のまとまった人の世話をいたしますために、実に短時間新潟で上陸するためにビザをもらう必要がある。問題はこのことだけであるということが明確になりました。これに対しまして、国際赤十字は、かくのごとき例は戦争中においてもよくあることであって、そしてそういう代表に対しては赤十字儀礼をもって処理することがおおむねの例であるから、日本のごとき文明国においてはもとより問題はあるまい。ただ問題のあるような場合には、ケース・バイ・ケースでその後に処理し、または相手に注意を促すことはあるけれども、通常の場合においては、いずれの国においても赤十字の健在な国においては問題はない、このように承っておりました。しかるに、今日それが事務的な問題の処理を何らすることなく、利用するときだけ赤十字を利用しまして、あとの方策を示さずして赤十字の帰国送別会をいたしましたことに対しては、私は帰国協力会の幹事長でありますが、個人としては赤十字は不快の念を持っておる。利用するときには利用して、将来の見通しもなく、ただ帰れと言われたのでは、この送別もそううれしい気はしない。まるで古ぐつを捨てるがごとき態度ではあるまいかということをコンフィデンシャルに漏らしておるのでございます。私は、だれであってもそうであろうと思います。まことにこの点は遺憾なことでありました。  したがいまして、日本政府といたしましては、ただいまの高本部長の示した事実、赤十字の要望しておることに対しまして、外務大臣は居眠りをなされずにひとつお聞き願いたいのですが、ここは大事なところですから、私は遠慮しいしい申し上げておるのですから、これはファクトはファクトとして聡明な外務大臣は認めておられるが、それを総理が言われたと同じ精神で認めておられるか、くどいようですけれども、もう一ぺん確かめておきたいと思います。
  60. 三木武夫

    三木国務大臣 先ほど御質問のありましたように、総理のお答えのとおりだと思います。
  61. 帆足計

    帆足委員 それでは、もはや結論あと実行が伴うということだけが必要でございまして、私は、国際赤十字を利用するときだけ利用して、弊履のごとく捨てたというがごとき感情を個人的にも与えることはまずいと思います。また、将来の日本このとを考えましても、両国赤十字の関係及び国際赤十字との関係が円滑にいくように、特に大臣級において御配慮を願いたいと思います。幸いにして総理の御了解があり、聡明な官房長官がおられ、そうして人道主義者の厚生大臣がおられ、理性派の三木外務大臣がおられ、常識のある赤間法務大臣がおられて、もう問題はこれで解決したのではないか。同じことで、このようなことをはれものにさわるような態度外務大臣に申し上げねばならぬということは、もうこれで解消した。属僚諸君は、以後一切口を差しはさまぬこと、総理の命令に従うこと、もう本日をもって笛吹次長をはじめ笛を吹かれぬこと、尺八を御家庭で吹くことは御自由であるけれども、外務委員会において笛を吹くことはやめていただきたい。  以上をもちまして、最後に、外務大臣、官房長官、厚生大臣間において、ただいまの御答弁の向きに従って、そして赤十字におまかせください、それで政府はなるべく直接こういうことにはタッチなさらずに、すなわち、政治は政治家の——これは行政官庁の責任ではなくて赤十字の行なうことである、こういうふうになさればいいと思いますが、こまかなことまで赤十字に今後干渉をなされるか、また、どういう点を干渉しようと、今後まさかこういうことをたくらむことがあるとは思いませんけれども、たんたんとして赤十字にまかせようという総理の御心境を尊重されるか、外務大臣の権威においてひとつお答え願いたい。
  62. 三木武夫

    三木国務大臣 干渉といいますか、そういうふうな考えはありませんけれども、いろいろ予算にも関連することですから、赤十字のほうとしても政府といろいろ打ち合わせする場合がある。たんたんと打ち合わせをするつもりでございます。
  63. 帆足計

    帆足委員 満足でございます。ただ私が北朝鮮だけ、すなわち朝鮮民主主義人民共和国だけをひいきして申したというわけではありません。私は、自由人権協会の実は専務理事をしておりまして、どこの国に対しても、人権に関する限りすべて関心を持っております。  一言だけ。時間をとりません。原爆被害者のうちに、韓国で千人をこえる原爆被害者がおられるわけです。何となれば、山口、広島、長崎在住の朝鮮の諸君は、韓国生まれの方が大部分であったわけです。朝鮮人民民主主義共和国のほうは人数は少のうございまして、また社会保険も徹底しておりますから、問題はあまり深刻でありませんけれども韓国における原子病患者につきましては、私は道義的責任がわれわれにもあるように思われます。したがいまして、外務省におきましては、せめて原子病医学の見地から技術的な協力でもなさるというようなことでも関心を持っていただきますならば、これは国境を越え、イデオロギーを越えて、よいことではあるまいか。社会党は韓国の政権をあまり高く評価しておりませんことは御承知のとおりでありますけれども、しかし、原子病に関する限りは、日本国民として責任がありはしないか。外務大臣の御注意を促しておきたいと思いますから、一言お答え願いまして、以上をもちまして、この問題はこれでさっぱりしたものと私は理解したいと思います。
  64. 三木武夫

    三木国務大臣 韓国の問題はよく検討いたします。
  65. 帆足計

    帆足委員 それじゃどうもありがとうございました。赤十字の皆さんも御苦労さま。属僚の皆さんも以上のことをよく速記録を御回覧くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
  66. 青木正久

    青木委員長代理 曾祢益君。
  67. 曾禰益

    曾祢委員 ちょっと赤十字並びに中川局長に、私の質問に入る前にと言ったらいいのか、私の質問の順序を変えまして、同僚の帆足委員が触れられた北鮮帰還問題に関連して、きわめて簡単に、私の意見を申し上げながら、さらにこの問題の処理についての質問等を申し上げたいと思うのです。  御承知のように、私は日韓両国の国交調整に賛成した立場で、これは私は正しいと思う。また、北鮮側の諸君のすべての言い分に必ずしも賛成しているような態度でなく、きわめて自主的な態度で、そのつどイエス、ノーをはっきり言っている立場です。しかし、この帰還問題については、私は前から、とにかく、言うならば、これはことばはいい悪いは別として、一種の日本の終戦処理みたいな性格のものであるから、これだけは人道的に取り上げて、韓国側が何を言おうと、帰還問題はそういう見地から取り上げていくのが正しいということを常日ごろ主張しており、したがって、必ずしもできた協定を毎年必ず延ばさなければならぬという意見には賛成できない。それはある程度に区切りをつけるのが正しい。しかし、いま協定が終わった後に、帰国したい意思を表明した者が相当たくさんいる。この問題については、やはり大体協定に準じて帰してやるという方針が正しい。それから、帆足君も述べられたように、今後長らくの間、毎年毎年新たに帰国の希望者があるだろう、だから、その協定に準じて、たまった人たちを帰してやる。     〔青木委員長代理退席、委員長着席〕 それから、正常化した場合の問題についても、普通の国交ある国の場合と違うのだから、さてその点についてどうしたらいいか。これは協定ではないだろう。日本からいえば、日本の国法上の行為であろうけれども、現実には、そういうときにこそ、赤十字機構等を使って現実の便宜の措置を了解してお互いにやっていったらどうか、かような意味で私は言っておって、また政府当局には、特に官房長官にはその意向をしばしば披瀝をして、そのような取り扱いを要求してきたわけです。ところが、おととい、何事にも口がかたくて、まるで野党の質問に対してろくすっぽな答弁もしない総理大臣が、この問題についてははっきりと、この問題は赤十字にまかすというような非常にいいことを言ったので、これはたいへんけっこうなことだ。私は、そこで、コロンボ会議が決裂したことについては、公平にいって日本側だけの責任だとは思わない。北鮮側も非常にある意味ではこだわり過ぎていたものがあるだろう。しかし、いずれにしても、一万七千という相当多数の人が帰りたがっているし、この問題は社会問題にすらなりかけているので、これを解決するためにも、とりあえず会談したいと言ってきたならば、あまりやかましく日本の言うとおりにならなければしてやらぬと言わぬばかりの態度でなく、そこはおおらかに話し合いはやる。しかし、日本の基本的態度のあらましはコロンボで出ているぞということを注意として言うならいいけれども、何か日本の言うことをそのまま認めなければ会談しても意味ないじゃないかと言わぬばかりの態度で、電報でやり合いしたり声明を出しっこしたりしているのは、あまりおとなのとる態度ではない、私はそう考える。したがって、まずこの一万七千人と称せられるたまっている人の送り出しの問題については、すみやかに、大体実質的にコロンボでできておったようなラインの了解でこれを送り出しを始めるということの会談をやったらいいと思うのです。これをもし、総理大臣の言明にもかかわらず、外務であろうが——私は外務じゃないと思う。しかし、外務であろうが法務であろうが、そういうところから政治的制肘を加えているとすれば、それはそのほうがおかしい。そういうことではなく、やはりこれはとにかくスムーズに動き出させるための会談をやらしたらいい、やったらいいと考えられます。  第二に、それに関連して、たとえば日韓条約ができたときに、日韓条約によるいろいろな権利義務は、これは日本韓国との間の条約の権利義務関係で、在日朝鮮人の方でも、理屈からいえば、日韓条約による永住権や何かの問題等はいわゆる韓国側の人しか権利はないということになっているけれども、実際上北鮮系と称せられる人々を全然差別待遇していいはずのものでもないし、それもできないだろう。だから、北鮮側の人がときたま彼らの本国に帰る、そういうときに、再入国については、便宜赤十字等で何らかのもう一ぺん来てもいいのだよというような証書を発行してやるくらいな便法をやってやっていいじゃないか。むろん、これはケース・バイ・ケースという制約はあろうけれども、こういうことを言っているのですが、そこもまだやっておらぬらしい。これも帰還協定の問題とは違いますけれども、そういう点についてもこれは入管あたりで、これも外務省と法務省の関係かもしれぬが、もう少し現実的な血の通ったことをやるほうがいいのではないかという意見を持っているわけです。そこでまず、これは赤十字の諸君の応援演説みたいになっちゃったけれども、あなた方の意見は聞かなくてもぼくに賛成にきまっているのだから、外務大臣と入管の局長からひとつ御意見を伺いたいと思います。詳細はいいですけれども、基本方針です。
  68. 三木武夫

    三木国務大臣 この問題は人道的な問題として処理する。これはやっぱり北鮮側においてもこの問題についてはその態度であるべきである。しかし、この問題がいろいろ政治問題化する傾向にあることはまことに残念である。そういうことになれば、この問題の解決ということが、政治問題でなくして人道的な見地から両国で処理するということならば処理しやすい問題ですが、これに政治的ないろんな配慮が加わってくると、曾祢君御想像してもおわかりのようになかなかむずかしくなる。したがって、いまの問題については、日本赤十字社と北鮮側でいろいろやりとりをやっておるようでありますから、こういう交渉の経過等も見守ってまいりたい。そしてコロンボ会議のときに日本政府の意向は申し述べてあるのですから、あれが日本の基本の考え方ですから——これでわれわれもまとまるものだと期待したのですよ。それがどういうものかまとまらなかったのですが、この基本ラインを中心にして北鮮側と赤十字社のほうでいろいろやっておるようでありますから、冷静に両方でこの問題が処理されることを期待いたしておるわけでございます。
  69. 中川進

    ○中川説明員 いま政府の方針につきましては外務大臣から申されましたので、私から何も蛇足を加えることはございませんが、入管としても、この前のコロンボ会議でまさに妥結せんとしましたあのラインで話がつくことを、そしてそのラインでまたこの帰還業務が円満に実施されることを欲しております。
  70. 曾禰益

    曾祢委員 一時帰国者の再入国の便宜の問題を言っている。
  71. 中川進

    ○中川説明員 この問題は、先生御承知のごとく、外交的な影響なり反響なりというものが非常に多いことでありますので、月並みな回答ではなはだ恐縮でありますが、やはりケース・バイ・ケースに善処するよりしかたがないと思います。たとえば三年前の冬に、御承知のごとく、二人の北鮮出身の老人が、お米屋さんとメッキ屋さんでありますが、ともに東京の老人が……。
  72. 曾禰益

    曾祢委員 それはいいや。ほんとうに善処してくれればいい。
  73. 中川進

    ○中川説明員 はい。
  74. 曾禰益

    曾祢委員 ぜひ善処していただきたいと思います。  さて、外交問題に触れたいのですけれども、同僚委員が待っておられるので、時間がなくて非常にまいってしまうのですが、一つは、軍事基地と安全保障条約との関係については、これは大きな問題でして、私も過般本会議でやりました議論をここで本格的にもう一ぺんやるつもりはございません。ただ、外務大臣に伺っておきたいのは、新聞等に伝わるところによれば、アメリカ側におきまして主として軍事専門家が、これは日本方面だけでなくて、全世界的に軍事基地の実態、今後どうあるべきかということを含めての調査に来ておる、あるいはこれから来るのですか、こういうことになっておるようであります。私は多くは申しませんが、日本が独立したときには、ほんとうにサンフランシスコ平和条約で独立を回復したときには、全く完全な無防備だったので、日本防衛のためにもアメリカにいてもらわなければならない、それが実は最大の駐留の目的だったと思うのです。しかも、朝鮮戦争は継続中であるから、したがって、基地としても全面的に使うのだ。国連軍に協力する。しかし、その後ずいぶん変わってきまして、六〇年の新安保においては、なるほど日本防衛のための駐留基地もあるけれども、むしろ極東の平和と安全と称するための駐留並びにそのために基地を使う、ただし、事前協議で縛る、日本政府の意向を尊重する、こういうふうに変えたので、総理の説明のしかたは私はちょっとおかしいと思うのだけれども、ある意味の外交的の取引からいえば、アメリカ日本の防衛を引き受ける、日本は、それに対応する一種の義務という見方は賛成できないのだけれども、事実上それに見合うような形で軍事基地を提供し、駐留を認める。そのウェートは、これはむしろますます極東のためといふうにウェートが移りつつあると思うのです。そういうふうに、そういう点を一つ考えてみても、基地というものの内容が歴史的に非常に変わっている。それは、もう旧安保と新安保とは条約のたてまえが違うけれども、今後さらに日本アメリカとが、これにはいろいろ意見があるようだけれども日本の自主防衛の補完としてアメリカとの日本地域を守るための協力アメリカの抑止力、リストレイントを日本の防衛に使っていくことは必要であるし、日本アメリカとは非常に深い政治的な理解と防衛上の協力も必要である。それからまた、極東のアメリカの行動については、場合によっては日本と非常に意見が違う。中国問題でもベトナム問題でも違う場合がある。しかし、そうなればなるほど、この基地のある駐留というものの取り扱いはますますデリケートだ。  そこで、せっかく安保条約の十年の再検討期が来るというのに、何とはなしに両事務当局、すなわち国務省と外務省のほうは、どうも安保条約そのものに触れると、これはびっくり箱をひっくり返すようになってたいへんだから、なるべく自然延長みたいな形で臨むという気持ちはわかるけれども、たとえばいま基地問題をとらえてみても、アメリカ側のその基地を検討するという意味とむろん違うと思います。いま申し上げたように、純粋に軍事的な立場から全世界の基地の問題を考えるでしょう。日本政府、特に外務省の立場からいって、今後安保の基本的な問題に関連して——安保については、日本政府態度は、それこそいまのところは白紙という形になっている。基地問題については、現行条約がある限り、むろん基地を内部からひっくり返していくのだなどという、そういう意味の空洞化とか基地反対闘争という形の行き方はよろしくないけれども、しかし、七〇年という事態を考えれば考えるほど、これは根本的に、ことに極東との関連においても、基地という問題が日米協力に暗影を投げかける可能性は非常に多い。現に暗影を投げかけていると思うのです。この問題を真剣に考えて、その上でアメリカと基本的にどうするかということを、いつかの機会に、遠からず、七〇年六月二十三日を待たずして、その前に日本態度をきめなければならぬ。そういう意味で基地問題を、ただその付近の住民が困るからひとつ何とかしてくれというような——これも必要ですし、整理も必要だし、縮小も必要だけれども、もう少し深い、広い観点から安全保障上の協力と基地という問題を考えていく必要があるのじゃなかろうか、私はそういうふうに考えるのです。一体外務大臣は基本的にどういうふうにお考えか、また、当面アメリカの人が来るに際して、こういう問題を外務省のどのレベルでどういうふうに話させるかというようなことについての基本的な態度だけでけっこうですから、お示しを願いたいと思います。
  75. 三木武夫

    三木国務大臣 安保条約を継続していきたいというのが、自民党の考えですが、基地の存在は前提にする。基地を撤廃せよという運動に対しては、われわれは反対である。これは安保条約の必要というものを認めておるのでありますから、基地というものの必要は当然にそれと関連性を持っておる。しかしながら、いろいろ時代の経過とともに基地というものに対しても変化が起こってくることは当然でありますから、絶えず基地のあり方というものに対しては検討を加える。あるいは基地というものは、いままで必要であったような基地が必要でない場合もできてきておる。現にもう非常に少なくなって、二千何百というのがいま百四十七カ所くらいになっている。それもやはり施設とか事務所とか倉庫とかいうものが非常に大きな部分を占めておる。こういうものに対して検討をすべきだと思います。だから、基地というものはもう要らない、こういう前提にはわれわれは賛成できませんが、基地というものを前提にして、基地のあり方、その必要性あるいは時代、いろいろな客観情勢の変化に応じて検討をすべきであるという曾祢君の説に対しては、われわれもさように考えて、今後日米の間にも基地の問題をいろいろ話し合う機会を最近においても持ちたいと考えております。
  76. 曾禰益

    曾祢委員 かみ合ってないのですけれども、これをやると基本論になって時間が足りませんから、次に移ります。  これは本会議質問の際に外務大臣にも答弁を求めたのですけれども、なかったので、ここで御答弁願えばけっこうですけれども、ライシャワーさんの「ベトナムを越えて」という著者を引用いたしまして二、三点伺いましたが、その中で直接外務大臣に伺いたかったのは、要するに中国問題、中国代表権問題といってもいいと思うのです。これについて、これはどうもライシャワーさんのことを引っぱってくるのがいいか悪いかは別ですけれども、私ども考えに非常に近いから、私の意見としてもいいのですが、要するに、国連における代表権としては中華人民共和国、中共に代表権を与えるべきである、少なくともライシャワー氏は、総会においてはまずやれという意見です。それと同時に、しかし、国民政府には議席を留保しておいてやる。その意味は、中国代表権問題あるいは中国政府の処遇の問題を、一つの中国あるいは一つの中国プラス台湾、フォーミュラとしてはいわゆる継承国フォミュラ、いろいろと方式はあるだろう。しかし、方式よりも基本的には、台湾については住民の民族自決権ということが尊重されなければならぬ、私はこれは正論だと思うのです。これでこそ自主性があるので、いつまでも台湾の国民政府が全中国の主人だということも、これはフィクションにすぎない、フィクションは長続きしないのです。同時に、一つの中国、絶対台湾はその中に入るのだ、おれの言うことを聞かない者はけしからぬ、はい、さようでございますと言うのでは、これはもう一つの面の台湾問題が持つ国際的緊張の観点からいって、そういった扱い方に必ずしも賛成できない、わが国の自主性から見ても。もう一つは、国際法あるいは憲法の精神とからめても、私は住民の自決権というものの原則が尊重されなければならぬと考えます。そういうので、いま直ちに政府に対して、ただ重要事項指定方式はけしからぬとかなんとかいってみても、理屈を考えれば、中国の代表権問題は内容的に重要なんだという外務大臣答弁もあったが、そうじゃなくて、問題はそのことだけでなくて、台湾の処遇の問題も含めて、国連総会でいつまでも手続論として、中国の代表権問題のほんとうの審議——すぐ採決じゃなくて、どっちに代表権を与えるか、どっちの信任状を採用するかというような行き方でなく、中国の代表をだれがどういうふうに代表するのだ、台湾の処遇も含めて、そういう問題の真剣な実質的審議に入るほうが正しいのじゃないか、もうその時期が来ているのじゃないか。そういう意味から、ライシャワーさんの方向に対する御意見も含めて私が申し上げたのは、ことしの国連総会ぐらいには、単なる重要事項指定方式にいつまでも賛成だ、あるいは積極的提案者になるという逃げの姿勢でなくて、むしろこれは案としてはイタリア案その他のかっこうですでに出ている案ですけれども、総会の議決によって、この総会中に決定できないかもしれないなら、ちょうど軍縮委員会のように次の総会までにこの中国代表権問題を真剣に前向きで協議する機関をつくれ、そのくらいなことにもう踏み切るのが正しいのじゃないかということを申し上げて、いまのライシャワー氏の意見と、その点についての外務大臣の所見を本会議で実は伺うつもりでしたけれども、ここで伺ってけっこうですから、国民に対してひとつ明らかに所見をお述べ願いたいと思うのです。
  77. 三木武夫

    三木国務大臣 ライシャワーの所論を引用になりましていろいろお話しになりました。問題は、まあ中共も国民政府もいままでは中国は一つであるという立場に立っておりますから、したがって、国連でそのように中国問題を解決できるであろうか、私は非常に疑問に思います。その根本の問題が解決できないで、国連の採決によって中国問題が解決できるであろうか、これは私は疑問に思っておる点であります。この問題は現在の状態においてはなかなか大問題でありますけれども、いい知恵はないのであります。だから、もしそういうふうな決議といっても、そういう国連だったら両方参加してこないでしょうし、解決にはならない。中国問題というものがどういう形で解決されるかという本体が解決されないで、国連だけでこの問題を解決するということに、私は無理があるような感じを持っておるのでございます。だから、ライシャワー氏の説は、いわゆる国連というワクの中でこれを現実に適用できる案だとは私は考えておりません。   、  それから、中国問題というものに対して、何かやはりこの問題をどうするかということを国際的関心事であるから検討したらどうかというので、イタリアがそういう考え方のもとに毎回国連に決議案を出し、日本もこれに賛成をしておるわけですね。しかし、残念ながらまだそこまで成熟してないと考えておるのですか、どういうのですか、案外にこれが賛成国が少ない。いま曾祢さんの言われたような意図でしょう、イタリアが提案しておるのも。これが案外に賛成国が少ないということで、いま御指摘のような方法で国連加盟諸国が中国問題と取り組むということも、これまた現実の課題にはなってきてない、これが現状でございます。大問題であることはわかっておりますが、それならどうこの問題を打開するかということは、なかなか現在のところ、これならばという解決策は容易に見つかり得ないというところに中国問題のむずかしさがあると思います。
  78. 曾禰益

    曾祢委員 これも議論すれば果てないのですけれども、ただ、外務大臣の言われたことで納得できないのは、なるほど、国連でこうやれば両方が納得するかというと、しないでしょう。しかし、両方が納得する行き方もほとんどないので、片方が屈服するか、その屈服のしかたが謀略的に、たとえば台湾が内部からひっくり返るという形になるのか、そんなことをすれば、これは国際紛争の大きな問題になるんですね。だから、中国問題のむずかしい面はわかっているけれども、平和機構である国連の場を通じて何らかの解決の方向を出して、そのことに国民政府あるいは人民共和国のほうも不承不承でもくっついてくるような方向を考えたらどうか、こういう意味なのであって、一発でこんなものは解決しっこありませんよ。そんなことをいったらオール・オア・ナッシングで、それこそ私は外交にならないと思います。  まあ、それはそれといたしまして、次に、核防条約だけに触れさせていただきたいのですけれども、これは選挙中でしたし、まあ超党派といいますから、各党の代表を招致して相談されなかったことに手続上文句を言うわけじゃありません。しかし、国連総会で米ソ案に大体賛成だという決議が相当強い勢いで支持を得てきている。日本としても、基本方針としてはその方向に反対できないじゃないかというような気持ちから、これと条約そのものに対する賛否とは別だという形で、一応この決議案には、要するにこれはいい案だぞという趣旨の米ソ案賛成的の意味の決議案には、日本も内容についていろいろ条件はつけたけれども、賛成の討議をされた。私はそれを一々過去のことまでいって文句を言うつもりはありません。しかし、そのことは、やはり何といっても、日本が最後的にはこの条約の内容あるいは条約に伴ったいろいろの点に改善がなくても賛成するのではなかろうかという印象を内外に与えていると思うのです。また逆に、日本は、西ドイツその他のように、あるいはインドのように、最終的には反対するかもしれないという感じを持っている国もあるかもしれません。いずれにしても、これから私は非常に重要だと思う。この間の総会の決議に対する態度は、過去だから言いませんけれども、重要なのは、非保有国会議に際し、会議を通じ、あるいは会議以外の方法により、日本意見をどういうふうにして通していくか。これは条約案そのものの改善の問題もありましょう。条約案に直接出てこなくとも、いろいろの問題がありましょう。たとえば保有国の核兵器禁止あるいは核兵器制限へのもっと明確な義務づけを、条約案あるいはそれ以外の点においてどう出していくかという問題も、これは一つの中心でしょうし、それからこの条約に賛成する国に対するいわゆる共同の核保障の問題も、相当可能な程度まで前進はあったと思うけれども、なおかつ、それをもっと決定的なものにならしめる方法がないのか、そのことによってインド等が最終的にこの条約案から漏れないようにするということが非常に重要であるが、その点はどうなんだ。特に一番問題の点は、条約案の問題よりも、むしろ実際上の査察の取り扱いですね。平和利用に関する査察の取り扱いで、条約の中で、ソ連も平和利用だけ査察を受けるという条約案の改正は至難としても、実際にIAEA、国際原子力機関による査察が、ほんとうに保有国の中でも、これに賛成すると条約に書かなくても、イギリスやアメリカは同様な査察を受けるというのですから、保有国と非保有国の間の平和利用に関する査察の区別が現実にないということ。それから今度は、非保有国側のEECグループですね、西ドイツその他のEECグループと、それ以外の日本との間の査察の実質的な差はないという、この点をよほど突き詰めてからでなければ、私は日本がにわかにこの条約に署名することに非常なちゅうちょを感ずる。われわれは、趣旨としてこれに絶対反対する理由はないと思うのですが、条約のでき方並びに条約に伴う日本の平和利用の権利等について、あくまで慎重にならなければいけない、こういうふうに考えるわけです。そこで、そういう点を含めて、特に非保有国会議は非常に重大だと思うのです。政府としては、一体どういう代表を送られるのか。これは場合によったら、私はほんとうは閣僚級がこの会議に行くくらいの重要性は絶対あると思うのです。外務大臣おいでになればベストだと思うけれども、そのくらい重要だ。これは決して外交官諸君に対する底い評価ではなくて、日本の内外に対する姿勢からいえば、閣僚を送るというくらいな決意と準備があって当然だと私は思いますが、その非保有国会議代表の問題と、いま申し上げた内容についての今後の行き方、これについて外務大臣の御答弁をお願いいたします。
  79. 三木武夫

    三木国務大臣 核防条約にはいろいろな言い分があります。言い分があるということは、この条約が不平等なものであるとか、いろいろあると思います。しかし、結局は、これは選択の問題になってくる。われわれとすれば、やはり核兵器の拡散は世界の核戦争の危険を増大する、こういうことから、この条約の趣旨に賛成である、これはもう終始貫いてきた方向であります。したがって、この条約に反対をするということで理由を発見する努力をしておるわけではないのであります。賛成の方向において努力をしておる。したがって、非核保有国会議も重要な会議で、現在のところは、二十八日から始まる会議には国連大使を派遣することになっておりますが、その後のことについては、いろいろ御指摘があったことは検討はいたします。しかし、最初の開会のときには国連大使を会議参加せしめる予定でございます。この問題は、やはりいろんな問題がここに出て、そうして、あの条約が改正されるという余地はありませんけれども、しかし、非核保有国のほとんど全部の国が参加するわけですから、この声というものは、やはりいろんな意味において今後の条約の実施に影響を持つものだと考えております。したがって、この会議は重要視しておる。  そこで、いま最後に御指摘になった、IAEAの査察とユーラトムの査察との間に差があるとか、IAEAの査察そのものに原子力の平和利用を非常に阻害するようなことがあってはなりませんので、この点は今後われわれとして一番注目し、この推移というものは見きわめたいと思っておるのであります。この点は、条約の内容というものではなくて、実施に関して、査察の問題というものは今後話し合いもいたしますし、推移というものも注目して見てみたいと思っております。イギリスに先般参りましたときに、査察を受けるということでございます。アメリカは受ける。ソ連には私も話を強くしましたけれども、ソ連は根本的に見解が違うということで、いまのところ査察を受けるという意図ではありませんが、ソ連のいかんにかかわらず、英米はIAEAの査察を受けるということでありますから、これは、非保有国と保有国との査察の不平等という点については多少の公平さというものが出てくるということで、われわれとしてもこれはけっこうなことだと思っておるものでございます。
  80. 秋田大助

    秋田委員長 伊藤惣助丸君。
  81. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 外務大臣質問いたします。  先ほどASPACの報告がございましたが、三木外務大臣は、今回のASPAC会議については反共色を出させないように努力した、このように報ぜられております。その点については、この共同コミュニケの中にも「ASPACか排他的なグループではなく、正式な結論に到達することに関心を有するというよりは、むしろ率直な意見交換を通じて相互理解増進を計る外向的な組織であるという既に示された意見を再び表明した。ASPACは、如何なる国家ないしグループに対しても敵対する組織として意図されたものではなく、」云々と、こうあります。これはASPACが反共組織ではないかという世界の非難に対する言いわけでもあると考えられると思います。  しかしながら、ASPACというものは、韓国の提唱によって反共組織を結成する目的で始められたことは、これは世界周知の事実であります。そのことは、第一回の会議の共同声明において、朴大統領は、「この会議の重要性と意義を強調し、アジア・太平洋地域の自由諸国がすべての共産主義の侵略または侵透に対し、各国の独立を守り、保全をはかり、その国民経済を発展させようと努力するに当ってより一層の協力と連帯をはかるよう呼びかけた。」これは第一回の共同コミュニケにあることばであります。こういうことからも、反共の組織であるということが明らかになっているわけであります。  そして、今回の会議の共同コミュニケにおいても、その反共性がはっきりあらわれている。これもまた共同コミュニケにある。これを見てまいりますと、この四番目でございますが、「中国大陸における情勢から生ずる諸問題は閣僚が特に関心を持った問題であり、事態は不確定であり注意深く観察すべきことに同意した。」こういうふうにございます。コミュニケにおいてこのような表現をしなければならなかったということは、ASPACが反共色の強い会議であるということを証明している、私はこのように思うわけです。これは中国を脅威的な存在であるというふうに見ておる証拠ではないかとわれわれは思うわけです。外務大臣に、このコミュニケを通して、中国を脅威と感じているのか、また、このASPAC会議参加した諸国は中国をどのように考えているのか、その点について伺いたいと思います。
  82. 三木武夫

    三木国務大臣 中国の動向ということは、単にASPACの加盟国に限らず、世界の大問題であります。われわれがASPACの前に、西欧諸国を、三カ国でございましたが、回ってみても、中共というものは一体どうなっていくのだろうか、これは世界的な関心事であります。ことに中国と接近しておる国々の集まりでありますから、中共がどうなっていくかということについて関心を披瀝することは当然のことだと私は思っております。しかし、この会議に出た意見は、中共に対してASPACの加盟国が団結してこれに対抗していこうというような意見は少しもありませんでした。みなが、やはり中共がわれわれと協調していけるような、そういう中国になってほしい。だから、われわれ自身もやはり柔軟な態度をとらなければいけないということがASPAC一つの基調であった。これが中国に対する加盟国の基調であったということがまた申し上げられると思うのであります。コミュニケをいろいろ御指摘になりましたけれども、中国というものが流動的であることはそのとおりですから、これの推移を監視——監視というふうに訳しておったけれども、それはちょっと外務省の訳が少し強過ぎるのじゃないですか、フォローということですから。推移を見ようということを監視と訳している。観察でも少し強いです。フォローですから、推移を見よう、こういうことです。観察というのは、日本語で少しきつい。英語のニュアンスとしては、推移を見ようということです。何か監視とか観察というのは強いので、そのコミュニケの原文は英文ですから、それは少しそういうものよりもやわらかい表現になっておりますが、いずれにしても、伊藤さんが御心配になるような、そういう中国と対抗したり、中国を敵視しようという考え方ではない。コミュニケにも気を配ってある点が、そのことからでもおわかりだと思うのでございます。
  83. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 三木外務大臣は、羽田での記者会見におきまして、ASPAC参加していないインドネシア、シンガポール、カンボジア、ビルマ及びラオスにも参加するようにすすめた、そして名実ともにアジア太平洋諸国の会議としたいと語った、こう報ぜられております。しかしながら、新聞報道によりますと、インドネシア、シンガポールは参加の意思はないということもいわれております。これらの諸国がASPAC参加しない最大の原因はどこにあるのか。それは先ほどから、指摘しておりますように、その強い反共性、反共色にあるというふうに私たち考えます。そこで、ASPACが反共組織でないということがまず世界から認められるためには、これらの諸国に参加を呼びかけるだけでなくて、特に中国ですね、先ほど観察なさるとおっしゃいましたが、とにかく中国というのはアジアにおいてはもう確固たる地位を占めているわけでありますから、中国と同時に北ベトナムだとか北朝鮮にも参加を呼びかけるべきではないか、このように思うわけです。外務大臣の所信を伺いたいと思います。
  84. 三木武夫

    三木国務大臣 ASPAC地域的な理解増進の場であり、また地域的な協力推進の場でありますから、できるだけ域内の国が多数参加することが好ましいと思っております。現在の段階では、いま日本の大会、それにすすめたいと思っておるのはいま御指摘のような国々でありますが、これはもしASPACというものの性格について誤解があるならば十分に解きだいと思っております。私も会議に二回出ましたが、そういうものはないのですよ。ASPACの軍事的性格、反共的性格、このASPAC全体として、国によっていろいろ立場は違いますが、それをそういう軍事同盟反共同盟に持っていこうというような意図はないということであります。これをそういう未参加の国々にもよく説いてすすめてみたい。新聞でも見ましたけれども、シンガポールは、いまノー、イエスは言えぬと総理大臣答えていますね。絶対に反対だというような答えでなくして、いまノー、イエスは言えぬ。インドネシアも、ほかにもいろいろ外交上のなにがあって、そこまで入るということはなかなかむずかしいのじゃないかというようなことでありました。これは日本政府が説明した結果得られた回答ではないのです。新聞記者諸君が行ってインタビューをした。日本政府としては、これから十分にそれを説明して、できるだけそういう国々が何らちゅうちょなく入ってこられるASPACにしたいものである、こう考えております。
  85. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それに加えて、北朝鮮あるいは北ベトナムについてはどういうお考えでございますか。
  86. 三木武夫

    三木国務大臣 現在の段階としては、まだそこまで広げていくという考えはございませんが、これがだんだんと加盟国が広がっていくという原則に私は反対するものではありません。しかし、現在の段階で、いま御指摘のような国々を日本の大会に誘い入れるというところまでは考えておりません。
  87. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 次回のASPACを東京で開くことが決定したようですが、その利益なり目的はどこにあるとお考えでいらっしゃるのか、伺いたいと思います。日本アジアにおける先進国として、アジアの平和と安全を築くために、またそのアジアの繁栄を築くために貢献する責任日本にはあると思います。また特にアジアにおいて確固たる地位にある中国を除外しては真のアジアの平和と安全というのは確立できない、このように思うわけです。そのためにも、特に国際情勢が、ベトナムの問題を通じまして、次は大きく中国問題であろうというふうにクローズアップされているわけでありますけれども、いずれにしても、現状のままの中国の脅威または敵対視するASPACを、このような状態の中で、またその最初の共同声明というものをそのままにしておいて東京で会議を開くということについては、これは大きな問題があるのではないか、特にアジアの緊張を緩和する上において、むしろ百害あって一利ないのじゃないか、こういうふうに考えるわけですか、外務大臣の所信を伺いたいと思います。
  88. 三木武夫

    三木国務大臣 私はいままで申し上げておるように、ASPACは中共に対抗したり敵対する組織でない、この点は皆さん方もひとつ御理解を願っておきたいのでございます。国会内部でそういうような考えがもしあるとするならば、今日のASPACについては私はどんなにでも御説明をして、今日のASPACがそういう性格のものでないということを、これは与野党を問わず御理解を願っておきたいのであります。そういう上に立って考えないと、そういう性格のものだということになれば、いま御指摘のような、日本主催国になることの弊害があるでしょう。しかし、ASPACというものが今日そういう団体でないということは事実でありますから、日本がそういう大会の主催国になり、そしてお互いに理解増進の場とし、あるいはお互いの地域協力を促進していく場になることは、とりもなおさずアジアの平和と安定に寄与する道になる。日本は一人ぼっちで生きていけるわけではないので、これだけの国力を日本が身につけてまいりますと、アジアの平和と安定のために寄与するということは、当然な日本の国際的責務で、それをみずから、他の国々の要望があった場合に、要望があっても引き受けないというのではなくて、進んで御要望があれば引き受けましょうといって、ASPACの精神の上に立って理解増進協力の基盤拡大、こういうことに寄与することは、日本の将来にとっても大きな意義のあることだと考えております。
  89. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は外務大臣に特にお願いしておきたいわけですが、外務大臣がそのようにおっしゃっても、ASPACのそれこそ結成された意義というのは、はっきりしているわけです。外務大臣はそうおっしゃいますが、それは外務大臣三木外務大臣になられてから、また三木外務大臣が二回にわたってASPAC参加して、そのように変わってきたというふうに私は理解するわけでありますが、いずれにしても、わが国が特に対共産圏、また反共産色を強めていくというような体制の中にいつまでも日本を置くということは、日本の将来にとって決してプラスにはならない、−このように私たち考えているわけです。したがって、一日も早く北ベトナムについても、北朝鮮についても、中国についても、もっともっと、日本アジアの先進国であるという上からも、そういうASPACの中にそれらの諸国を含めて、そして会議を開いていく、また、そういう方向の次回のASPACにしていただきたい、このことを要望いたします。  次に、中国問題について伺いたいのですが、いままで申し上げましたように、アジアの平和と安全は、中国をどう扱うかということにあり、またアジアの繁栄と安全というのは、中国を除いて考えられない。したがって、イデオロギーであるとか、世界観の相違であるとか、そういうことによって対中国問題を扱ってはならない、こういうふうに私たちは思うわけです。そういう現実を踏まえていろいろ考えてみますと、今度の秋に開かれます国連総会に、また中国代表権問題が出てくるわけです。いままで日本は米国といつも同調して、重要事項指定方式の共同提案国になってきたわけです。ところが、このことは、同じ自由主義諸国であるカナダを見てまいりますと、いままでは賛成をしておったけれども、今度の秋の総会には中国のその重要事項指定方式に反対して、むしろ中国を承認する方向に回るだろうというふうにいわれております。カナダの行き方は二つの中国論でありますから、それはそのまま私たちは見ることはできませんけれども、いずれにしても、自由主義諸国の中においても、たとえばイギリスにしても、フランスにしても、西欧においても数カ国が中国を承認したほうがいいというふうに、また重要事項指定方式についても反対しているわけです。その点について、わが国が今後どのような形でその問題に対するか、これは世界的に大きな関心があるわけです。そこで、先ほど、まだ態度はきめていないという外務大臣の話は聞きましたが、もう間近に迫っておるわけです。しかも今回の臨時国会はもうすぐ終わろうとしております。次の通常国会等においては、その後のいわゆる経過報告といいますか、報告を聞くようになるのではないかと思います。したがって、いまが一番大事なときであります。外務大臣がその国連総会に日本代表を送るにあたって、なぜ共同提案国になるのか、またどうして賛成をしていくのか、その点について国民がはっきりわかるように、いままで提案国になってきたのだから、いまさらそれを破るわけにはいかないというような、単純なそんなものではなくて、かくかくしかじかだから、われわれはそうなるのである、またそういう方向で行きたいということを、はっきりと外務大臣から所見を伺いたいわけであります。
  90. 三木武夫

    三木国務大臣 この国連の重要事項指定方式という決議案が出てきた背景をなしたものは、アルバニア決議案というものがあって、国府を追放して中共を国連に迎え入れて代表権を持たそうということで、そういう決議案が出てきた。したがって、そういうふうな重大な内容を含んでおる決議案は、過半数できめるべきではない、やはり三分の二という重要事項に採用されておる決議の方式によるべきである、これをどう思うかというのが、重要事項指定方式に対する決議案の賛否であります。私も、中国問題、アルバニア決議案というものが、そう単なる手続問題だとは思っていないのである。これは重大な内容を含んでおる。したがって、これを過半数すれすれということでこの重大問題を決せられるとすれば、問題の解決にはならない。こんな重大な問題を一票、二票すれすれの差で解決するということになれば、やはり問題はあとになって非常に残っていく。したがって、国際的世論というものが、三分の二ぐらいの世論がこの問題に表示されるという決議案、これが議決されることが適当であるということで、重要事項としていくべきである。重要事項というのは、三分の二の多数決でいくべきだというのが日本態度であります。いまどういう形で中国問題が出てまいりますか、まだはっきりはしておりませんが、同じような形であれば、この重要事項であるという考え方を変える必要は私はない。これは手続事項ではない。重要事項である。そして提案国の問題は、これはやはり外交技術上の問題で、そんなに大きな問題だとは私は思わない。むとろ重要事項なのか、過半数でいいのか、三分の二でいくのか、この態度こそが基本的な態度だと私は思っておるのであります。したがって、この問題は、具体的に中国問題の決議案ということが出てきて検討してよろしいと思うのでありますが、同じような決議案が出れば、これは単なる手続の事項ではない、重要事項であるという考え方は、変える意思は持っておりません。
  91. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 同じような趣旨のものが出てくれば共同提案国になる、こう外務大臣は申し述べられましたが、これは重要事項指定方式に賛成するということが、また大きな問題になってまいります。このことは、いまの方式でいいますと、もちろん重要事項指定方式によりますと否決されるでありましょう。これは事実上中国の代表権を拒否して、中国の国連加盟は拒否する態度である、このように見えるわけです。これは国連憲章から見ましても、何も重要事項指定方式にせずとも、代表権問題については、憲章の第十八条第三項の過半数によって決定される単純な問題であるわけです。したがって、私は、共同提案国になる、また賛成するという行き方に、非常に問題がある。事実上それが国連加盟を拒否しているというふうに考えるわけです。したがって、国連加盟を促進すると、ことばの上ではそう言いながら、国連総会におけるその態度とは目語相違ではないか、このように思うわけです。その問題について簡単に答弁を願いたいと思います。  次に、日中間の友好と相互理解を深めるものとして、日中貿易というものをいまやっております。現在その日中貿易の発展を阻害するものとして、いわゆる吉田書簡というものがあります。この問題については、選挙中についても、また外務大臣答弁についても、あるいは中曽根運輸大臣答弁についても、若干の相違があるわけです。そこで、日本政府の窓口としてその一切をやっていらっしゃる外務大臣に、この際はっきりと伺っておきたいわけですが、このことについては、蒋介石総統が、台湾を訪れた記者団に対して、吉田書簡というのは、日華条約の不備を補完するものとして作成されたものだ、この書簡を破棄するということは、日華平和条約の破棄を意味する、このようにも強い態度で警告を発した、このようにいわれておりますが、この問題については、最近、政府としてはこれを超越する、こういう表現で言われているわけです。この超越するということは、一体どういうことなのか、伺いたいと思います。
  92. 三木武夫

    三木国務大臣 この重要事項指定方式という問題について、政府考え方は、先ほど申したように、国府を追放して、中国の加入を認めて代表権を与えよ、こういう決議案は、単なる手続ではない、やはり重要事項であるから、三分の二の議決が必要である。そういう決議案が出たら、こういう考え方——まだとういう形で出てくるかということははっきりしませんが、もしそういう形で出てくるならば、そういう考えは変える必要はない。提案国の問題は、外交技術上の問題であるから、そういうものが出て、そのときになってきめたらいい。いまから何も決議案もまだ具体的には出てないときに、いろんなことを何もかもきめる必要はない。ただ必要なことは、いわゆる国府を追放して中国を加入さして代表権を与えることが、単純な手続事項であるか、重要な内容に触れる事項であるか、これに対する政府の解釈というものは重要である、日本政府は、これは重要な事項である、単なる手続事項ではない、こう考えておるということを申し上げたのでございます。
  93. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 吉田書簡についてはいかがですか。
  94. 三木武夫

    三木国務大臣 吉田書簡については、超越するということばをだれが使ったのか、いろいろなことばが出てくるのですけれども、超越というのはどういう意味か知りませんが、私は常に申し上げていることは、吉田書簡は、条約とかあるいは二国間の取りきめというようなものではない。だから、吉田書簡は緩和するとか撤廃するとかいう性質のものではないではないか。これは両国間の取りきめでないのですからね。したがって、そういうものにとらわれないで、この輸銀の使用問題は、具体的な問題ごとに処理いたします。これは私の判でついたような答弁でございます 超越ということばは使ってないのでございます。
  95. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これは、総理大臣がいつも、中国問題については政経分離でいく、このように言われております。その政経分離でいくというならば、吉田書簡がどうしても引っかかってくる、こういわれているわけです。非常にまた事実上影響を受けているわけです。たとえ政府間の公式なものではないといいながらも、非常に影響があるわけです。この事実をどうするかということだと思うのです。そしてまた、吉田書簡というのは、何も三十九年に日華条約を補完するもの、その一つだけではない。二十七年に、いわゆる吉田総理大臣と、それから向こうの当時のダレスですね、その人と、中国問題についてやはりはっきりと言っていることがあるわけです。それはどういうことかといいますと、「わたくしは、」——これは吉田総理です。「わたくしは、日本政府が中国の共産党政権と二国間条約を締結する意図を有しないことを確言することができます。」これが対中国問題、対中国政策について非常に大きな影響を与えている書簡の一つでもあるわけです。したがって、私たちは、三十九年の吉田書簡の破棄は当然のこと、この二十七年の吉田書簡についても、政府はことをどのように考え、また将来どのように扱っていくのかということをはっきり伺っておきたいわけであります。
  96. 三木武夫

    三木国務大臣 伊藤さん、吉田書簡というのは、国民政府に出した輸銀の使用などに対しての書簡だと思うのですが、また別にそういう書簡がいま出てきましたようなお話ですけれども……。(「吉田・ダレス交換公文のことだよ」と呼ぶ者あり)このことについては、事務当局答えますか——この問題は、私ども研究さしてください。
  97. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 時間がまいりましたので、終わります。
  98. 秋田大助

  99. 川上貫一

    川上委員 質問に入る前に委員長にちょっとお断わりしておきますが、私はちょっと健康を害して、無理に出席しておりますので、はなはだ軽装しておりますけれども、御了承をお願いいたします。  第二点は、これは外務大臣にお願いですが、時間がありませんから、一括して質問しますから、一問でその内容は数々ありますから、それに一つ一つ答弁をお願いしたい、こういうことであります。  これは 外務大臣御承知のとおり、山口県の下松市、ここに本籍を有する二見寛という青年です。この青年は、昭和二十九年に渡米して以来、在留邦人として米国に居住しておったわけです。これが先ごろアメリカの「普通軍事訓練及び兵役法」によって徴兵されて、アメリカの部隊に入隊を命ぜられた。同君は入隊後、ベトナムに派遣されるとの不安と過酷な訓練に耐えられず、本年三月二日にカナダのバンクーバーへ脱走したことは、御承知のとおりだと思います。しかし、カナダは日本人の亡命を認めていないため、カナダ政府は本人の希望に従うて日本へ強制送還する手続をとって、同君は、四月二十八日ビクトリア発の新山下汽船の諏訪春丸によって五月十日に名古屋へ着いておるはずです。これも外務大臣御承知のとおりだと思います。以後、同君は千葉県のおばの家に保護を受けていた。ところが、外務省は在日米軍司令部から脱走米兵の逮捕引き渡し要求があった、こう称して、同君が日本に居住することを希望しておるにもかかわらず、同君に対してアメリカへ戻ったほうがよいと説得を続け、ついに同君をアメリカに送り返して、所属部隊に出頭させておる、こういう事実がある。これは外務大臣重々御承知だと思うのです。  右の事実に関して、以下数点を私は質問して、御答弁をお願いしたい。  この事例で、二見君に対して説得に当たったという係官の氏名、官職及びその経過、この問題に関する外務大臣の指示の内容、これを具体的にお知らせを願いたい。これが一点です。  第二点は、この事例において、日米政府は二見君を米国政府に引き渡すといういかなる義務も負うていないと思う。すなわち、二見君が所属していたのは、在米部隊であって、在日米軍ではありません。したがって、日米安保条約に基づく地位協定第十七条の五項、この五項は時間の関係で私は読みませんが、読まないでも外務大臣御承知のとおりです。在日米軍ではありませんから、この五項(a)の対象には全くこれはならぬはずであります。ことに安保条約のもとにある日米の協定、この協定にあるはずはない。まして、二見君は日本国籍を有している。自国民に対して引き渡しをしないという国際法上の原則があります。自国民不引き渡しです。日本政府は、二見君を米国政府に引き渡す義務を絶対に負うていない。これは明瞭だと思う。これは一体どうしたのか。してみれば、一体日本政府はどういう根拠で、どういう理由と手続によって二見君をアメリカに送り返したのであるか。これが私の次の質問なんてす。  第三点は、日本政府は、日本国民の基本的人権を守る責任を負うていると思うのです。それにもかかわらず、日本国籍を有する二見君が日本に居住することを望んでいることを無視して、米国に送り帰した。これは明らかに人権じゅうりんではないかということです。それはかりではなしに、日本国民は、憲法第九条で戦争の放棄、軍備及び交戦権の否認を全世界に誓うておる。本件において、二見君を米国に送り返す、こういうことは、日本国民にすなわち軍隊への入隊を強制することである。さらに、二見君の所属する部隊がベトナムに派遣される可能性を持っているということから考えて、日本政府日本国民アメリカのベトナム侵略戦争に参加させることを意識的に強要しておると言うて差しつかえないと思う。この問題において、日本政府が同君を米国に送り返したことは、明らかに日本国憲法に違反する行為ではないか、これが一点です。  大きい第二点は、本件における二見君のように、米国に滞在中の日本国民が「普通軍事訓練及び兵役法」によって徴兵された事例は、これまでもたびたび聞いておるのです。報道されてもおるのです。このように米国で徴兵された日本国民が、今日まで一体何人おるのか。その氏名、それが戦死したかどうか、負傷したかどうか、この数、アメリカからベトナムに派遣された日本人の数、これをお知らせを願いたい。  日本国民がこのように米国で徴兵されることについて、日本政府はこれまでどういう措置をとってこられたのであるか、この問題です。現在日本とパキスタンとの間では、友好通商条約第三条三項(a)に、「いずれの一方の締約国の国民も、他方の締約国の領域内において、すべての強制軍事服役及びその代りに課されるすべての課徴金を免除される。」こう明記してある。こういう趣旨は、イギリス、インドネシア、ノルウェー、ユーゴとの間でも条約で明確にされておる。ところが、アメリカとの間には、条約上こういった軍事服役免除が取りきめられていないのではないか。この理由は一体何か。今後このような条約上の取りきめを米国政府との間で行なうお考えはあるのかどうか。これもやらぬのか。この点についてどうお考えになっておるかということを明らかにしてもらいたい。  概要以上の点ですが、私は非常にはしょって質問しましたが、この要点だけは外務大臣お聞き取りだと思うのですが、この質問について、その一つ一つを、時間がありませんからまとめて質問しましたので、お答えをお願いしたい。
  100. 三木武夫

    三木国務大臣 川上委員の御質問、事実問題に関連することが多いので、事務当局からお答えをいたさせることにいたします。
  101. 山下重明

    ○山下説明員 二見寛さんの件についてお答えいたします。  いま先生が御質問になった点、先生が得られた情報が若干間違っておるというところに基づいておるのだと思いますが、まず第一に、外務省がアメリカに帰るように説得したという事実はありません。われわれが心配したのは、むしろ本人が日本にいたいというときに、アメリカ軍との間に何かトラブルがあるといかぬという点は、若干心配しましたけれども、何らその間にトラブルはありませんで、結局、その次の第二番目に入りますが、アメリカ軍から引き渡し要求があったかということに対しては、引き渡し要求はございませんでした。それで、われわれとしては、もちろんこれは地位協定に含まれていないと考えております。  それからその次に、日本に居住を望んでいたのを帰した、それで軍隊に入れたという御質問ですけれども、これは御本人が自発的に帰りたいと言い出したわけであります。それは、御本人の方は五、六歳のころから長く米国におられて、日本語はしゃべれないし、お母さんやきようだいの人もみんなロスアンゼルスで永住権を持っていて、日本に来ておばさんのところにいましたけれども、やはり自分は結局アメリカへ帰って、兵役を済ませて、アメリカの市民権をとったほうがいいというような、親族の説得なんかがありまして、それで外務省に、自分は帰りたいから帰りますということで、その費用も自分で払った。親威の人から借りたのだそうですけれども、払って、民間機でロスアンゼルスへ行って、ロスアンゼルスから自分で原隊に復帰したというふうに報告を受けております。  それから四番目に、米国滞在中に選抜徴兵にとられた人の数、それからベトナムに派遣された者の数、それから死亡した者の数というものは、残念ながらわれわれのほうは正確な数字はつかんでおりません。ただし、この選抜徴兵のことですが、これは選抜徴兵法で、半年以上滞在すると登録するということになっているのですが、短期の旅行者なんかでもよくそういうケースができまして、その場合でも、御本人が、自分は二年勉強に来たのだからということで、登録免除を要請すると免除されているようです。その場合に、すぐ帰れというようなことはないので、あるいは将来市民権をとるときにそれは若干影響があるかもしれませんけれども、実際上は多くの人が登録を受けないでおるようでありまして、この点は、われわれとしても、海外に旅行される人にもう少し十分に説明する必要があるかと存じます。  それから、選抜徴兵法が妥当なものであるかどうかということになりますが、これは、やはりそれぞれの国が自国民並びに自国に来る人をどういうふうに取り扱うかという、多分に国内的な問題で、もちろんパキスタンその他先生が申されたようなほかの国のようにそういうものが免除されればいいですけれども、免除されないからといって、こちら側でこうしろと言うわけにいかない問題でありますので、われわれとしても十分検討して、将来善処していきたいというふうに考えております。  以上非常に簡単にお答えいたしました。
  102. 川上貫一

    川上委員 いまの答弁は、ちょっと聞いてそのままにするわけにいかないのです。外務大臣がおられますが、この私の質問は抽象的にしておるんじゃない。相当の調べをしているのです。家族もはっきり言うておる。外務省の人が来て、そうして帰れということを説得したというのです。そこで、家族の人は、むしろ率直に言うと、外務省に感謝しておる。行かなかったらえらい目にあったんだ、外務省が来て帰れ帰れと言われたから助かったということまで言うておる。これは抽象的なことを言うておるんじゃない。相当に調べてある。いまの御答弁は間違いないだろうと思いますが、このままではちょっと聞き捨てになりませんから、もっと証拠も出さなきゃならぬから、外務大臣にお聞きしますが、いま事務当局が言われましたあれには間違いありませんか。
  103. 三木武夫

    三木国務大臣 事務当局が申し上げたことは間違いはないと思います。
  104. 川上貫一

    川上委員 間違いない——もし将来間違いだったということが出たら、外務大臣責任をとりますか。
  105. 三木武夫

    三木国務大臣 それは、国会という国権の最高機関で私の部下が無責任なことを言うとしたら、私は責任を感ぜざるを得ないことは申すまでもございません。
  106. 川上貫一

    川上委員 もう一つだけ。外務大臣、この事件のいきさつを知っておりますか。
  107. 三木武夫

    三木国務大臣 いろいろ詳しくは知りませんけれども、こういう事件があったことは報告を受けております。
  108. 川上貫一

    川上委員 詳細に知っていますか。
  109. 三木武夫

    三木国務大臣 詳細には知りませんから、事務当局をして答えさせたのでございます。
  110. 川上貫一

    川上委員 私の質問あとへ残します。これは正確に文書で質問するかもしれません。外務大臣は事務当局のは間違いないと言われますが、必ず間違いだと思いますから、この点については、外務大臣に今後責任をとってもらいます。      ────◇─────
  111. 秋田大助

    秋田委員長 閉会中審査に関する件についておはかりいたします。  本委員会といたしましては、閉会中もなお国際情勢に関する件について調査をいたしたいと存じますので、この旨議長に申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。
  112. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、閉会中審査のため、委員を派遣し、実情を調査する必要が生じた場合は、その人選、派遣地及び期間その他議長に対する承認申請の手続等、すべて委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  113. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後二時三十三分散会