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1968-09-19 第59回国会 衆議院 運輸委員会 第2号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和四十三年九月十九日(木曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 大野 市郎君    理事 木部 佳昭君 理事 砂田 重民君    理事 福井  勇君 理事 小川 三男君    理事 野間千代三君       大竹 太郎君    小渕 恵三君       菅  太郎君    中川 一郎君       水野  清君    井上  泉君       板川 正吾君    久保 三郎君       神門至馬夫君    堂森 芳夫君       内藤 良平君    矢尾喜三郎君       神田 大作君    沖本 泰幸君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 中曽根康弘君  委員外出席者         法務省刑事局参         事官      吉田 淳一君         社会保険庁医療         保険部船員保険         課長      吉村  仁君         水産庁漁政部長 安福 数夫君         運輸省船舶局首         席船舶検査官  高田  健君         運輸省船員局長 高林 康一君         運輸省港湾局参         事官      見坊 力男君         運輸省鉄道監督         局長      町田  直君         海上保安庁長官 河毛 一郎君         労働省労政局長 松永 正男君         自治大臣官房参         事官      岡田 純夫君         日本国有鉄道総         裁       石田 禮助君         日本国有鉄道常         務理事     長瀬 恒雄君         日本国有鉄道常         務理事     長浜 正雄君     ───────────── 八月九日  委員板川正吾君、内藤良平君及び米田東吾君辞  任につき、その補欠として久保田鶴松君、八百  板正君及び松前重義君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員久保田鶴松君、八百板正君及び松前重義君  辞任につき、その補欠として板川正吾君、内藤  良平君及び米田東吾君が議長指名委員に選  任された。 九月十七日  委員井上泉辞任につき、その補欠として實川  清之君が議長指名委員選任された。 同日  委員實川清之辞任につき、その補欠として井  上泉君が議長指名委員選任された。 同月十九日  委員米田東吾君、渡辺芳男君及び春日一幸君辞  任につき、その補欠として久保三郎君及び神田  大作君、堂森芳夫君が議長指名委員選任  された。 同日  委員久保三郎君、堂森芳夫君及び神田大作君辞  任につき、その補欠として米田東吾君、渡辺芳  男君及び春日一幸君が議長指名委員選任  された。     ───────────── 八月十日  一、新東京国際空港公団法の一部を改正する法   律案内閣提出、第五十八回国会閣法第四四   号)  二、都市鉄道整備促進法案久保三郎君外九名   提出、第五十八回国会衆法第二八号)  三、自動車損害賠償保障法の一部を改正する法   律案久保三郎君外十四名提出、第五十八回   国会衆法第三五号)  四、陸運に関する件  五、海運に関する件  六、航空に関する件  七、日本国有鉄道経営に関する件  八、港湾に関する件  九、海上保安に関する件  一〇、観光に関する件  一一、気象に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  日本国有鉄道経営に関する件(赤字路線に関  する問題等)  港湾に関する件(港湾運送事業の集約に関する  問題)  海上保安に関する件(第八昌徳丸転覆事故に関  する問題)      ────◇─────
  2. 大野委員長(大野市郎)

    大野委員長 これより会議を開きます。  日本国有鉄道経営に関する件について調査を進めます。  この際、国鉄当局から、赤字路線に関する国鉄諮問委員会意見書について説明を求めます。長瀬常務理事
  3. 長瀬説明員(長瀬恒雄)

    長瀬説明員 本年の九月四日に、国鉄諮問委員会から原委員長を通じまして、ローカル線輸送をいかにするかという意見書を受け取りました。この内容につきましては、詳細は省略いたしますが、最初諮問委員会の態度を明らかにいたしております。さらに、ローカル線輸送国鉄財政にどのような影響を及ぼすか、さらに、鉄道自動車輸送部面はいかにあるべきか、ローカル線輸送に関しまして論述いたしております。さらに、ローカル線輸送をいかにするかということにつきまして、現在の鉄道のうち、二千六百キロ程度自動車にゆだねるのが至当であるという勧告でございます。最後に、新線建設をどうするかということがしるしてございます。  結論といたしましては、一万八千三百キロ程度国鉄基本鉄道網である、それ以外は、ローカル線につきましては、自動車輸送にゆだねるのが至当であるという結論になっております。  報告を終わります。
  4. 大野委員長(大野市郎)

    大野委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。中川一郎君。
  5. 中川(一)委員(中川一郎)

    中川(一)委員 ただいま報告のありました、国鉄諮問委員会から答申のありました問題について御質問をいたしたいと存じます。  御報告にありましたことを裏返しますと、八十三線二千六百キロは、これを廃止して自動車輸送に転換すべきだという結論になるようであります。私どもから見るならば、これはたいへんな間違いではなかろうか。国鉄が今日いろんな大きな問題をかかえておることは、よく承知をいたしております。通勤輸送の問題もありましょうし、あるいは国鉄がいろんな資金を必要とするのに、財政投融資等でもう少しめんどうを見る必要がなかろうか、あるいは昨日来新聞にも報道されておりますように、合理化をいかにすべきか、五万人に及ぶ合理化という問題もあります。その中の一つローカル線であろうかと存じます。そのローカル線の、しかも今度の発表には路線名まで名を連ねて発表されております。  このことは、まず国鉄総裁にお聞きしたいのは、国鉄総裁諮問に応じて答申が出されたのか、諮問委員会が独自にこれを出されたのか、この経緯についてもう少しお聞きをいたしたいわけであります。
  6. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 お答えいたします。  これは国鉄総裁として、諮問委員会にこの検討を委託をした次第でありまして、根源は国鉄総裁責任であります。
  7. 中川(一)委員(中川一郎)

    中川(一)委員 そうしますと、具体的に路線名まであげて答申してくれという諮問のいたし方をしておるわけでございますか。
  8. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 そこまでは詳しく申しませんが、いろいろ検討をするにつきまして、最も解決を要する線ということについて、あらゆる方面から検討した結果、こういうふうになったのであります。私からはどの線をどうしろということで申したわけではないのです。さらに、あれが出ましても、何もあのままやるというわけではなくて、さらにこれを国鉄として検討し、また地方へ行ってよく検討した上で、慎重にやるということが国鉄考えであります。
  9. 中川(一)委員(中川一郎)

    中川(一)委員 国鉄諮問委員会のお歴々を見ますと、まことにりっぱな方々ばかりであります。非常にりっぱな、いい委員会をつくっておられて、けっこうでありますが、基本的な問題については非常にりっぱでありましょうけれども、一本一本の路線について、これは廃止すべきだ、残さないというような結論を出すような委員のメンバーとは思われないわけであります。したがって、路線名、どれをどうするべきかという各個の問題については、これは国鉄がやられたのじゃないかと思うのでありますが、その辺はどうなっておりますか。独自でやられたのか。これは大事な問題ですから……。
  10. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 もちろんこの諮問委員会の中には、地方線内容などに対してほんとうに調べた方がないのです。知らぬ人が多いのです。そこで国鉄といたしましては、その諮問に応じまして、実際の赤字線の現状及び将来の見込みというものを委員会に参考として提出した次第であります。
  11. 中川(一)委員(中川一郎)

    中川(一)委員 その点については、私ども国鉄事情はわからぬわけではありませんけれども、出し方としてまずかったのじゃなかろうか。行政整理をやる場合に、五万人の合理化をやる、五万人のうちのどの人どの人を整理するのだというような発表のしかたであるとしか受け取れないのであります。このことによって、対象となった関係地元町村は大騒ぎをいたしております。この点は、先ほど大臣のところにももう代議士がずいぶん押し寄せてきておるということでもあらわれております。総裁のところにも相当来ておるだろうと思う。そこで国民は、あるいは関係者は、これを受け取った国鉄一体どうするかという非常な関心を持っておるわけであります。  そこで、まず最初運輸大臣にお尋ねをいたしたいと存じます。国鉄の持つ悩みについては、大臣、御承知でありましょう。ありましょうが、ローカル線をこういった形で整理するということについては、運輸省当局はどのように考えておられるか。この諮問が出る経緯について相談があったのかどうか。その点が一つと、出た以上、これに対してどうするのか。国鉄の長期的なその他の問題にも触れて、この問題についての取り扱い方について、大臣の所信をこの際はっきりお聞きしておきたいと存じます。
  12. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 国鉄赤字線といわれておりますが、これは経済的な考え方で呼んだ名前、あるいは国鉄が経理上呼んだ名前で、私はこれを政治家としてみると、赤字線というよりもむしろ閑散路線といったほうがいいんじゃないか。なるほど確かに国鉄はこれらの路線を抱えて非常にお困りになっておることは事実でありますし、年間四百数十億に及ぶ赤字の原因になっておることも事実であります。しかし、これらの路線が建設されました背景は、鉄道敷設法とかあるいはそのほかの法律的根拠をもちまして、しかも各党の幹事長以下の首脳部が参画した新線建設に関する審議会の議を経て、きわめて民主的に建設されているものであります。したがって、単に経済的理由で一片の行政措置をもってこれを廃止するということは適当でないと私は思います。それで運輸省としましては、大局的な見地から、政治的観点からもこういう問題は取り上ぐべき問題であると思いますし、格差の是正とか住民福祉の均衡とか、そういう政治要請もまた十分考えなければならぬと思うのであります。しかも、いまのような手続をもって建設されたものでありますから、これが取り扱いについては、またきわめて民主的に住民意思とか、あるいは地元皆さん方の御意見をよく承って、納得の上でこういうものは行なわるべきであると思います。  しかし、最近は自動車交通が非常に発達してまいりまして、場所によってはそちらの代替輸送のほうがいいという場所もないとは限らないのです。現に一、二それが地元で歓迎されたという例もございます。また、一部の閑散路線については、地元側においてもこれを適当に改革するということを内心希望しているやの路線もないとはいえないのです。  しかし、大部分路線はそういう事実でなくして、存置を熱烈に希望しておるというのが現実でございます。したがって、そういう代替路線のあるもので、地元側が御納得のいける分については、時代要請に沿うように改革することもしかるべきである。しかしそれらの場合には、やはりあくまで地元民の了解を得て、地元民が喜ぶような形をつくるということが大事だと思います。この問題を解決するについては、国鉄運輸省だけでできることではないので、これは内閣やあるいは国会も含めて一体となってやるべき問題であると思います。  たとえばバス路線にするというような場合には道路の舗装の問題が出てきましょうし、こういう場合には建設省が特別のサービスをしなければできる問題ではありません。あるいは、バスにかわるという場合には運賃が鉄道より上がるという問題も出てきますから、そういうものの補給の問題も国あるいは地方公共団体等協力してやらなければできませんし、国鉄もそういう点については考えなければならぬ問題もあるでしょう。あるいは平衡交付金という問題も、自治省で考えてもらわなければなりません。そういうようないろいろな問題を総合的に考えながら、地元住民意思を十分に尊重し合いながら、改革できるものについては改革するというのが穏当な処置であろうと思います。やはり政治の大きな目的は日本国民にわたって福祉を均てんさせるということであると思いますので、そういう大本は十分踏まえてやるべき問題であると思います。この諮問委員会諮問につきましては国鉄が独自の見解でおやりになって、そして国鉄に対して答申がなされたものでありまして、おそらくこれは国鉄財政確立推進会議国鉄側提出してくるのではないかと思います。その提出されたものに対して推進会議がどういうような見解を持つか。その見解も、あるいはその議論の過程も伺ってみたいと思いますが、その国鉄財政全般に関する推進会議答申が出ましたら、それをよく検討いたしまして、われわれはわれわれの独自の考えから判断をいたしたいと思っております。  ただ、ここで申し上げたいと思いますのは、日本国有鉄道というものは、いまや重大な転換期に逢着しているように思います。これは自動車交通発達によっていままでの国有鉄道という概念が変わりつつあり、独占的な貨物輸送機関旅客輸送機関というものが、もっと優秀な強い代替輸送物件が出てきたために、国鉄立場というものが非常に苦しくなってきたのであります。しかも、相当な公共負担国鉄独自の経費で負担させられているというところもあるわけです。したがって、そういう公共負担国鉄がやっている部分については、国あるいはその他が十分めんどうを見てやらなければできないわけです。今日、国やその他が国鉄活入れをしてやれば、国鉄も息を吹き返して必ず発展する場にまだあると思います。この時期を逸すると、もう非常にむずかしい段階になると思います。もしこれが普通の民間会社であったら利子の切り捨てとか債務のたな上げとか、そういう更生措置をやるべき段階でしょう。しかし国有鉄道なるがゆえに、まだ信用力その他でもっておるようなものだろうと私は思うのです。そういう面からすると、この機会に国会先生方の御協力を得まして根本的な国鉄の改革、刷新案、と同時に助成法案助成方法というものを講じまして、これを機に再び措置しなくてもいいような発展のめどをつくってやることが大事です。これが経営者並び従業員に対するわれわれの大きな責任でもあると思うのであります。そういう意味におきまして、先生方の御協力も得まして、国鉄発展、現在の苦境脱出に関するいろいろな施策を講じてまいりたいと思いますので、ぜひとも御指導のほどをお願いいたしたいと思っております。
  13. 中川(一)委員(中川一郎)

    中川(一)委員 運輸大臣の回答はまことに明快であるように思います。と申しますのは、財政だけで、あるいは赤字、そういった経済問題だけで解決すべきではない、見たところ、あの路線の中には残しておかなければならない路線が相当多いのじゃないか、廃止していい路線も若干含まれておるようだ、全体について、国会あるいは政府協力を得て全体問題として解決をしていきたい、まことにけっこうであります。ぜひともそうしていただきたいのでありますが、国鉄総裁にもう一回お聞きしたいのは、運輸省当局がいまおっしゃったように、全体問題として助成の道を講じていきたい、こういうことで国鉄財政推進委員会もつくっていま検討中であります。こういうときになぜ、国鉄財政が苦しいから赤字路線廃止をするんだといったような、ああいったような答申を受けたのか。受けたのですから、向こうが意見書を出したのだからしかたがないといえばしかたがないと思いますが、やっぱり全体として検討すべきではなかったか。赤字路線だけを取り上げて、しかも線名まであげて発表するということは、これは大きな間違いではなかったか。無用の混乱を起こしたのではなかろうか。逆に言えば、できるものもできなくなってしまったのじゃなかろうか。私ども北海道の中にも、これならば話し合いに応じてもいいという路線もないわけではないのです。ところが、ああやってまとめて、北海道でいえば十五線ぶった切るなんという発表をされると、これは一線の協力国鉄に対してできなくなるというふうに私は考えるわけです。なぜ、全体としてそういったことを考えて、その中のこれですという持っていき方を進めなかったのか。石田総裁は非常にりっぱな方だと思っておりますが、この点については少し早まったのじゃないか。率直な石田総裁の御見解を承り、これをどう処置していくか、いま運輸大臣お話に関連をして、国鉄としての考え方もこの際お聞きしておきたいと存じます。
  14. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 実はこの赤字線の問題につきましては、何も急に起こった問題じゃないのです。ずいぶん古い問題であります。私は、国鉄総裁といたしましては勇気のないほうじゃないのだが、この赤字線の問題につきましては、政治その他のことを考えまして、非常にデリケートな問題だということで、三十八年に国鉄総裁に就任したのでありまするが、遅疑して一向決断がつかなかった。ところが昨年あたりから国鉄財政状態が非常に悪くなってきた。しかも、将来どうかというとますますこれはいかぬ。そこで大蔵省あたりは非常に声を大にして勇敢にこの問題を出してくれたということになると、国鉄総裁としてもこの問題はひとつシリアスに考えなければいかぬ、こういうこと。さらに、この赤字線というものは御承知のとおり、要するに地方輸送需要に対して過大の設備、しかも赤字線マイナスというものが年々歳々大きくなってきた。ところが、国鉄というものは御承知のとおり独立採算制のもとに経営をしなければならぬ。独立採算制のもとに経営しなければならぬということになると、この損というものはできるだけ軽減しなければならぬ、こういうことから私は国鉄総裁責任上、運輸大臣にも話をしないでこの諮問委員会調査を依頼した次第でございます。これは私は国鉄総裁として当然の責任を果たしたものだと考えています。  ただこの問題につきましては、地元人たちには相当誤解があると思います。現在ある路線をとるだけのことで問題を解決しようと、こういうことではないのです。これはもうこれにかわるのにハンディな、経済的な輸送機関をもってして地方の人の足なり荷物をケアしよう。さらにこの問題につきましては、これは国鉄総裁の独自の権限内ではないのであります。これはもう、さらにこの問題につきましては、各路線路線について徹底的に研究した上でやるのでありますから、その前に大体運輸大臣の御承認を得ましてやるということなんで、この点はさらに運輸大臣からさっきお話がありましたとおり、いろいろ運輸大臣がこれに対してオーケーをしてくださっても、これはやはり地方人たちとよくひざを突き合わしてほんとう納得づくの上でやる。どうしても国鉄としてこれはやらなければならぬ、しかも国鉄経営の上に非常に大きなマイナスである、それにもかかわらずそれを継続しなければならぬということであるなら、ひとつ国なり地方公共団体というものは、これに対して国鉄にその補償をしてもらうということに私はせざるを得ない、大体こういうように考えているわけです。
  15. 中川(一)委員(中川一郎)

    中川(一)委員 そうしますと、最後の発言が大事なんですが、国がめんどうを見てくれるならば赤字線廃止しなくてもよろしい、こういうようになるわけですか。
  16. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 国鉄立場から言えば、独立採算制を堅持する上においてやりたくない。しかし国なり地方人たちがぜひともこれはやらなければならぬ、こういうことであるならどうしたらいいのか、私はやはり独立採算というものをどこまでも堅持しなければならぬという立場上、これは私は当然に出る帰結といたしまして、国なりあるいは地方公共団体というものがそれではその損を負担してくれる、こういうことにいかざるを得ぬ。これはまだ私の考えでありまして、結論じゃありませんから、その点だけはひとつ御了承を願いたいと思います。
  17. 中川(一)委員(中川一郎)

    中川(一)委員 先ほど大臣が、赤字線はそう軽々に処分すべきではない、廃止をしなければならぬものもあるけれども、見たところは大部分が大事な地元の必要な路線である。しかし国鉄事情からいくならば苦しいこともわかるので、廃止するな廃止するなだけではなく、国としても国会あるいは政府の問題として助成について考えていきたい、こう言っているわけですから、運輸大臣がここではっきり言うのですから、そういうことであるならば、ああいった発表はしたけれども、ひとつそういうことのないようにぜひとも国においてめんどうを見てもらいたい、めんどうを見るようにやりなさいという国鉄立場に切りかえていただきたい。あの発表でいくと、もう国がめんどうを見ないのだという前提のもとにあの路線発表したわけですから、いま大臣が明らかに当委員会で、政府の問題としてこの問題を考えていきたいと言った以上は、国鉄としてはあの八十三線については考え方を変えてもよろしいということをはっきり言明をしていただきたいと存じます。
  18. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 中川さんの言われることはきわめて簡単明瞭でありまするが、私は事をそういうふうに運ぶまでにはやはりこれを相当検討する必要があると思う。これは赤字だから、ひとつ政府で出してくれ、それなら継続しましょうということは、これはどうもむずかしい。簡単にいかない。大体この問題の赤字線なんというものをつくった時分には、その地方輸送需要に対して大き過ぎるということは初めからわかっておったのです。けれども、その時分には鉄道以外に輸送がない。そういうことはわかっておったにもかかわらずやったということは、政府の命でもあり、しかもその時分国鉄というものが独占性を発揮してきわめてふところがあったかかった時分です。それはもう大部分というものは終戦前につくったものです、御承知のとおり。そういうことできたのですが、しかしその後の情勢を見るというと、輸送需要に対して大き過ぎるということでつくったものの、さらにその大き過ぎるのがますます大き過ぎて、ということは、つまり道路発達自動車の利用ということで、国鉄をいままで利用しておった地方の人及び荷物なんというものも、そのほうに走っちゃう。そうすると国鉄からいえば、何のための一体鉄道かというような、こういうような疑問を抱かざるを得ぬ。そこでわれわれとしては、とにかくわずかではあっても地方人たちがこれを利用している以上は、これはどうも引き合わぬからひっぱずす、そういうことは決してすべきではない。どうしたら私どもは、地方の人の便益を軽減しないようにして、しかも経済的にこれができるか、それにはつまり地方輸送需要に適合した輸送規模をもってする、あんな大きな、でっかい鉄道なんというものは、これはもう時代錯誤だ、これは私は国民経済的に見ても、また国鉄経営責任から見ても、当然やるべきことじゃないか、こういうことに考えるのであります。
  19. 中川(一)委員(中川一郎)

    中川(一)委員 国鉄総裁としてはそう言わざるを得ないかもしれませんが、われわれから考えるならば、それほどそういった問題でしっかりした姿勢を示すならば、それと見合うのは都市近郊通学対策の問題があると思う。これこそはたいへんな七百億から八百億くらいの公共負担として、通学通勤に国がというか国鉄負担を負っているのです。そしてこの答申の中には、新線建設の中では七線だけやるべきだ、六十六線のうち七線だけがやることが適当である、その七線を見ると、みんな東京周辺通勤輸送対策、この赤字のほうだけは国鉄責任をもって一生懸命にやるようにする、そして末端の過疎地帯——日本政治でいま一番困るのは、東京周辺その他大阪、こういった方面に人が集まり過ぎる、これは日本経済の大きな悩みなんです。そういった観点からいうならば、都市に集中するような通勤対策と過疎地帯とのかね合いというものはどうしたらいいかということを考えるならば、いま総裁の言うように地方のやつは切っていいという結論にならないと思う。地方の人口がどんどんふえてきた、あるいは国鉄がなくなっても地方のほうはりっぱに開発が進んでいきます。いまお話があったように、バスをやるにしても何をやるにしても、やはり国がめんどうを見なければできない地帯ばかりなんです。そういうことから見ると、もう少し全体として考える必要があるんじゃないか。赤字路線、過疎地帯に拍車をかけるような政策をこの際思い切り出したところに、私のわからない点、国民のわからない点があるんじゃないか。通勤対策とのかね合いにおいて国鉄の苦しいことはわかっております。合理化あるいは運賃を上げない、いろいろな問題がある。問題の中で一つ切り離して、具体化したものを出すから問題になったわけで、複雑になりますから、いまの通勤対策、過疎対策、過密対策、逆行してないか、この点についてお伺いいたします。
  20. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 通勤対策でありますが、私はこれはこの間も運輸省委員会において申し上げたのですが、最近の東京、大阪とかその近所の通勤輸送の状況というものはとにかく金がかかる、しかもその収入というものは、御承知のとおり非常な大きな割引をやっている結果きわめて僅少である、いわゆるネグリジブルである、そういうものを国鉄がやらなければならぬということは、これは財政的には耐えられぬ。とにかく最近の都会の人口集中、したがって起こる団地の作成というえらいことです。しかもその団地というものは、土地の値段に関係してだんだん遠くへ行く。団地をつくる以上は、その人の足を一体どうするのか。政府は団地ばかりつくって、足のことをてんで考えていないのだ。これはびっこの人間をつくるようなものじゃないか。そのびっこをびっこでないようにするということは、国鉄がいままでやっていることなんです、通勤輸送。これは中川さんがひとつ新宿の駅あたりへ行きまして、ラッシュアワーのあの状態を見ると、まさに交通地獄だ。これは私は、国鉄としては、そろばんの問題をはずれても責任上どうしてもやらなければならぬ。やるが、しかしこれに対してはひとつ政府でもって出資するなり補償してくれということを言っておるのであります。すでに国鉄というものは昭和二十四年以来公共負担というもので、その大部分はこの通勤通学の割引でありますが、そのために一兆以上の犠牲をしいられているんだ。外国あたりではみんなこんなものは政府が補償していますよ。していないのは日本あるのみだ。私はこれは、運輸大臣もここにおりますが、ひとつ徹底的に考えてもらいたい。いまや時世はすっかり変わっている。国鉄独占性というものは大きなひびが入っちゃってどうにもこうにもしようがない。この形勢はますます悪化するんだということになれば、政府としては、国鉄を愛するという気持ちがなければ別ですが、愛する以上はこれは何とかしてくれなければならぬということに考えています。通勤輸送のためにこの飛ばっちりが赤字線のほうにいったというふうに考えていただくのは、これは別です。赤字線赤字線通勤輸送通勤輸送、こういうぐあいにちゃんと区別してやっておりまして、この点はどうぞ御了解願いたいと思います。
  21. 中川(一)委員(中川一郎)

    中川(一)委員 時間がありませんので、最後に……。  その辺はちょっとわからないのです。やはり国鉄が苦しいから赤字線廃止するんだ、こう言うわけです。苦しいけれども通勤輸送対策だけは政府めんどうを見るべきだと言ってがんばられる。なるほど外国ではずいぶん鉄道はなくなりました。道路にかわっている。ところが北海道日本の辺地の道路というのは、道路じゃないのです。ほこりの立つ、ほんとうに悪い、冬になったら通れないような道路が非常に多い。道路の中に入っていない。舗装のないものは道路じゃないのです。舗装のないような道路の状態のときにひっぺがしてしまうというから大騒ぎなんであって、通勤輸送政府めんどうを見るべきである、同時に赤字線についてもわれわれは、地方開発に非常に貢献をしているんだから、通勤対策同様政府めんどう見よという総裁の姿勢であるべきじゃないだろうか。どうして赤字路線のところだけは道路でいいんだ。ずっと見てごらんなさい。舗装ができているような赤字路線の代替線はないはずです。少なくとも北海道の十五線について見てみますと、舗装ができていない道路——それは何かありますよ、全くないとは言わないが、道路らしい道路のないところをひっぺがす。これは総裁ひとつ思い直していただきたい。もうしばらくの間、道路らしい道路ができるまで、代替してもかまわないまで、政府に言うべきことは国鉄総裁のいまの勢いでもって言い、地方開発もやって、それから徐々にそういう方向に持っていくようにしていただきたい。最後にこれだけお願いと質問にして終わります。
  22. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 さっきから申し上げますとおり、赤字線といったって、取っぱずしちゃってあとはおれは知らぬ、こういうことじゃない。これにかわるのにハンディな、便利な、そして経済的な輸送用具にかえる、こういうことなんです。これは北海道のごとき、こういうところでは道路の関係でできないところはあるかもしれない。そういうところに対してもわれわれは何も鉄道線路をひっぺがすということは絶対にしない。やはり国鉄が唯一の輸送用具でもって、それなくんば地方の人が非常に困るというのであれば、われわれは政府に対して、地方の人のために何とかこれをやらなければならぬからひとつ考えてくれ、しかも国鉄としては独立採算立場からして、これはほんとう政府に補助してもらわなければならぬ、こういうことで政府に嘆願する。嘆願した場合に、政府がなお言うことを聞かぬ、こういうことになれば、国鉄総裁としては、これは独立採算というものが維持できてもできなくても、これは私はやめなければならぬものだということに考えている。
  23. 中川(一)委員(中川一郎)

    中川(一)委員 もう一つだけ、大事ですから……。そうすると、廃止をする場合は、いまの鉄道よりはもっといい代替路線をつくる、そうして地元納得したとき以外はやらない、こういうように確認していいですか。
  24. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 これは主観的の問題でして、われわれから言えば、距離が短いところなら何も多きな鉄道なんかによらぬでも、運転回数の多いバスをつければ、地方人たちは、ああこれは自分たちの考えが間違っておった、これはバスのほうがいいわいというようなことは私はたくさんあると思うので、これは中川さん、あまり心配せぬほうがいいと思う。
  25. 中川(一)委員(中川一郎)

    中川(一)委員 それじゃ安心して質問を終わります。
  26. 大野委員長(大野市郎)

  27. 野間委員(野間千代三)

    ○野間委員 赤字線問題等についてはまた別の機会に、私ども考えがありますので質問したいと思いますが、きょうは当面、明九月二十日に国鉄が、合理化問題から発生をした労使の紛争が激化をして、大きな問題が発生をするというふうに予想をされております。この問題について、実はその背景にあるのは、主として二人乗務を一人乗務にするという問題が重点になっておるようで、私もいろいろ勉強いたしまして、この二人乗務を中心にした安全問題についても多少の考えを持っておりますので、そういう方面について政府なり国鉄なりの見解をただしたいというふうに考えておったのです。いま労使双方で特にその問題を重点にして交渉が進められておるというふうに推察がされます。労働組合並びに国鉄総裁を中心にしてたいへん熱心に、特に昨夜あたりから深く突っ込んだ論争、折衝が行なわれて、何とかして九月二十日の——しかもこれは新聞に発表されている予定を見ると、たいへん大きな問題で、おそらく空前の混乱が予想される。これを回避するために労使双方がたいへん熱心に折衝を続けておられますので、きょう私どもが運輸委員会でその問題で論議を進めることは必ずしも適当でないというふうにも考えますので、私はこれは運輸大臣に、いま推察をされるような事態が明日来ないように、運輸大臣として、あるいは労働大臣もお呼びしたのですが、労政局長が見えておりますけれども、これは別の機会にまた必要があればお願いすることにして、労働省のほうでは引き取っていただいて、労働大臣に、運輸委員会での質疑の内容についてよく伝達してもらって、また担当の一部門である労働大臣の大きな善処を期待したいというふうに思うのであります。そういう気持ちで私ども国民の一人として、何とかして九月二十日の事態については回避をされるように、労使双方の一そうの熱意を期待したい。また運輸大臣としてもおそらく、監督の立場にあり、かつまた中曽根さんのいわゆる政治を担当する者としても、やはり国民の生活を考え、事態の回避に努力をしなければならぬという考えでおられると思いますので、きょうはそういう意味で私ども運輸委員会としても、おそらくこれは与野党を通じて事態の回避に強い関心を持っていることは明らかでございます。したがって、ただ、いまのところ労使の主張の中に大きな隔たりもあるようではございますけれども、なお数時間時間がございますので、この際、総裁がおられますので、総裁としても解決のために一そう努力をしていただくということを希望いたします。それから大臣としてもそういう方向でこん身の努力をふるっていただきたい。  特に、この種の問題をいろいろ調べてみますと、諸外国でも相当長期にわたって、あるいは大統領の仲介であるとかあるいは労使の良識であるとかということで論議が続けられたあとで、それぞれ解決をしておるようにも勉強しております。歴史上そういうふうに残されておりますが、そういう問題は別にして、何とかして明日の事態が回避できるように大臣としても積極的な御努力をいただけないものかというふうに存じますので、この件についての大臣の決意といいますか、考え方をお述べいただきたいと思います。いかがでしょう。
  28. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 いま野間委員がお述べになった御趣旨に、私も賛成であります。国鉄、動力車労組及び国鉄労組が、安全の問題につきまして第三者委員会の判定を求むるという構想を持っておられるようでありますが、私は、きわめて賢明な、時宜を得た措置ではないかと思うのです。しかしその具体的処理についてまだ意見が合わないとするならば、もう大筋においては大体同じ方向に行きつつあるように思いますので、この際国鉄当局においても大乗的見地に立ち、組合側におかれても強硬な態度をもう少し検討を加えられて、そうしてもう一息で両方が歩み寄りできると思いますから、また国民も強くそれを期待しており、新聞の論説等を見ましてもその線を強く支持しておるようでありますから、いま申し上げたような精神に沿って早く妥結していただきたい、それを強く熱望する次第であります。
  29. 野間委員(野間千代三)

    ○野間委員 当然お互いにこういう考え方は変わらぬと思うので、いまの大臣のお考えによって、労使双方の中でなお解決をしにくい状況になったときには、ひとつ、大臣の大きな考え方で円満な解決ができるように、いまの考え方を進めて努力していただきたい。  それからこれは総裁おられますので……。いま大臣が述べておられるとおりであろうと思うので、われわれもきわめて大きな関心を持っておりますので、これはぜひ総裁のほうでもそういう考え方で、円満解決ができるように、あと数時間、今日まで以上の御努力を願いたいというふうに——これは当然でありますので別にお答えは要りません。大臣のいまのお答えのとおり実現ができるように、一そうの努力をお願いいたします。  終わります。
  30. 大野委員長(大野市郎)

    大野委員長 井上泉君。
  31. 井上(泉)委員(井上泉)

    井上(泉)委員 この委員会が始まるのもたいへんおくれたわけですが、おくれた理由の一つとして、大臣赤字路線廃止の問題についての陳情者の応対のためにおくれた、こういうお話でありました。ほんとうにこの赤字路線廃止発表いたしまして以来というものは、関係の地方団体をはじめとして、住民が非常な不安の中にこの問題の行き方を凝視をしておるということが言えるわけです。  そこで、時間がないので私は簡単にお尋ねいたしたいと思いますが、大体この諮問委員会がこういう意見書を出されたというその裏には、一つ国鉄のいわゆる五万人の合理化の問題、一つ国鉄の運賃の値上げの問題、一つは市町村に交付する国鉄の納付金の問題、この三つを国鉄考えどおりに、五万人の合理化もぐあいよくやりたい、それから運賃の値上げもやりたい、交付金の廃止もしたい、こういうふうなことから、PRするために、赤字路線だからもうおまえの線路はやめますよというような、きわめて意図的なもとに国鉄諮問委員会とが話し合って、軌を一にして出したように思われてならないわけですが、この点についての国鉄総裁見解を承りたい。
  32. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 さっきから申し上げますとおり、国鉄のいまの収支の状況というものは、きわめて警戒を要するところにきている。ということは、独占制というものに非常に大きな傷がついている。これはいわゆる自動車発達道路発達、そのために、収入は年々増加をするが、そのぺースというものはきわめて弱い。しかも経費のほうは、物価アップその他の事情による人件費の増で年々増加する。しかもこれは大きな増加で、とても収入の増加をもって経費の増加はカバーできぬ。すると、どういうことになるかというと、つまりある人は、利用者負担にもっていけばいいじゃないか、コストが上がるんだから運賃を上げるのはあたりまえじゃないか、こう言うのです。これは簡単明瞭です。しかしそこまでいくまでに、国鉄というものは、顧みてできるだけ積極、消極の合理化に徹して、それをとことんまでやって、どうしてもいけないというところで利用者負担、乗客の犠牲をお願いするというところにいかざるを得ぬ。そういう意味におきましてこの赤字線というものが出てきたのでありまして、別にそういう込み入った動機というものは全然ないのです。簡単明瞭であります。
  33. 井上(泉)委員(井上泉)

    井上(泉)委員 簡単明瞭ではありますけれども、そういう赤字線廃止という地元、地域の住民にとっては非常に関係の深い、廃止されては困るというそういう弱みにつけ込んで、国鉄が運賃の値上げをやったり、納付金を廃止したり、あるいは労働者に犠牲を負わせたり、そういうふうな形で一つ仕組んだ演出ではないか、こういう感じを深くするわけなんで、そういうことは政治としてなすべきことではないと思いますので、ここはそういう意図ではないように了解をして、私は臨みたいと思います。  ところで路線廃止の問題に関連をして、具体的な例を引いて質問いたしますが、たとえば四国の窪江線で、窪川と江川崎との間に鉄道がつくられておる。これは昭和四十六年に仕上がることになっている。それから同じく中村線というのが佐賀から中村の間が四十五年に仕上がることになって、建設公団はどんどん建設工事を進めておるのです。ところが窪江線でも、江川崎から宇和島の間の宇和島線は廃止しようということが諮問委員会では出ている。それから中村線でも、現在通っている窪川から佐賀の間は廃止をしようとする。ところが佐賀から中村の間はもう一、二年のうちに建設が完了しようとしている。あるいはまた牟岐線という徳島から室戸を回って高知へ来る線でも、牟岐線を廃止しようとする。こっちのほうでは牟岐線にくっつけようとして鉄道をつけておる。こういうふうな形で赤字路線廃止というものが出されておるのでありますが、こういう新線建設とそして赤字路線廃止の問題とは、どういうふうに国鉄当局としては考えておられるのか、説明を承りたいと思います。
  34. 長瀬説明員(長瀬恒雄)

    長瀬説明員 諮問委員会意見といたしましては、国鉄路線輸送量というものを一つ目安にいたしております。その関係で日本鉄道網というものをまず形成したわけであります。さらにそれぞれの線につきまして、これがバスで代替できるか、あるいはトラックで輸送できるかということを一つの目安にいたしております。この関係で、いま御指摘のような線につきましては、いずれも輸送量がきわめて少ないということから結論が出たわけであります。同時に新線の問題につきましては、諮問委員会といたしましてはやはり同じような尺度で将来の輸送量を想定いたしまして、先ほど質疑がありましたとおり、現在建設をいたそうといたしております六十六線のうち七線、これは大都市の通勤線、貨物線というものにつきまして、これはやるべきである。残りは同じようなものさしで計算いたしますと、当然これは自動車輸送すべきである、こういう考え方から出ているわけです。したがいまして、目下建設中の線等は、そういう輸送量の面あるいは自動車で代替できるという面から判定をしたものと考えております。
  35. 井上(泉)委員(井上泉)

    井上(泉)委員 新線建設の問題と関連をするわけですけれども鉄道建設公団が八月二十六日に、夢の全国新幹線計画網を発表された。たとえば四国でも、松江から高知への中四新幹線、あるいは青森から大阪、四国というような第二縦貫新幹線というような膨大な計画を発表された。これは政治家が思いつきでこういうことを言うことはあるかもしれませんけれども、建設公団という技術中心の、また同じ政府の機関でそういう構想が発表されたのでありますから、これはかなり根拠があるのじゃないかということで、関係の住民が非常に喜んだ。ところがそれから四、五日たつと、今度は赤字路線だから廃止だ、こういうふうに国鉄諮問委員会意見書国鉄へ出した。これでは、そういうことを受ける国民の側から見ますと、同じ日本政府の中にある団体、つまり国鉄あるいは鉄道建設公団、こういうようなものから出てくる方針に戸惑うわけです。全くこれは国民に対して不親切きわまる政治の姿だ。この点について、中曽根運輸大臣はどういうお考えを持っておられるのか、お尋ねをしたいと思います。
  36. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 先ほど赤字線の問題については答弁したとおりでありますが、新線建設との関係につきましては、これはやはり重点的に新線建設もやっていく必要があると思います。ただ、予算とのからみ合いというのがありまして、われわれはやりたいと思っても、予算が足りないためにどうしても数量をふやしたりあるいは進度を早めることがむずかしいのはまことに残念であります。できるだけ予算の許す範囲内において重点的にやるということが好ましいのではないかと思っております。
  37. 井上(泉)委員(井上泉)

    井上(泉)委員 重点的にやるということではなしに、建設公団がいろいろな構想を発表される、こういうことは自由というふうに——建設公団がこういうできもしない計画、夢のような計画を発表して、そしてそのあとでは赤字路線廃止するというような、同じ国鉄の部内から、国鉄諮問機関である諮問委員会から赤字路線廃止するという案が出される。受ける国民にとっては、建設公団がこういう計画を出す一方において、赤字路線廃止するのだというようなことを出すことは、何か合点のいかないものがあるわけです。だから新線の計画とかいうものについては、やはり運輸省なり国鉄なりの間において、新しい構想が出されるべきであって、公団だからかってにやってもよろしいというようなことは、あまりにも国民に対して混乱を与えることになりやしないかと思うので、建設公団のあり方というものはこの際再検討せらるべきではないか。また新線建設にいたしましても、現在営業しているその向こうもどんどん建設をしておるのでありますから、そうなりますと、そこには必然的に既存の鉄道とのつながりがあるでありましょうし、そういう点から考えても、建設公団と国鉄との関係というものはもっと密接な関係を持たなくてはならないのじゃないか、ばらばらに方針が出されて進められていくということは、かえって混乱を来たすのじゃないか、こんなふうに思うわけですが、その点についての運輸大臣見解を承りたい。
  38. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 日本の長期的な国土開発計画を見ますと、いずれ新幹線方式というもので五本国土を張りめぐらされるようになると思うのであります。下村さんの計算によりますと、大体二、三年で国民所得はパーアヘッド二千ドルになる、七年で約三千ドルになる、十年で四千ドルになる、そういう試算をしておりますが、当たらずといえども遠からずだろうと私は思います。そういう情勢を見ますと、日本経済自体を維持していくためにも非常なスピードと大量貨物の輸送ということが要請されてきますので、日本全土を開発しなければ間に合わぬという情勢になるだろうと私は思うのです。したがって、国鉄あるいは公団でそれに対応する長期的なビジョンを立てるということは必ずしも悪いことではないと思いますが、いずれこれは調整しなければならぬと思っております。その時期は、国土開発計画の確定を待ちまして、企画庁等ともよく相談をして、適当な時期に調整するようにいたしたいと思っております。
  39. 井上(泉)委員(井上泉)

    井上(泉)委員 赤字路線廃止というものは簡単にできるものではないし、また簡単に廃止をするということは考えていない、こういう大臣の先ほどの答弁で、私はこの赤字路線の問題につき、あるいは個々の路線についての質問は終わりたいと思いますが、最後に一点。  十月一日からダイヤ改正に伴って非常に急行がふえる。普通が減って急行がふえるわけですが、そうなりますと、近距離の通勤通学者でも、普通に乗れなくて、急行に乗らなくてはならない。こういう場合には勢い運賃に急行料金が加算をされるというわけですが、これは、近距離の運賃の改定というものを考える前に、こういうように急行列車をどんどんふやすという段階において、急行列車の通勤通学者に対する急行料金の割引というものを考えるべき時期ではないか、かように思うわけですが、国鉄当局はどういうお考えですか。
  40. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 ただいま急行列車による通勤通学者に対する割引というものは考えておりません。われわれは、通勤通学者に対しては——今度のダイヤ改正におきましても、ローカル線を廃したところはあります。これは要するに輸送需要がないからです。急行というものはふやしましたが、これはやはり輸送需要が非常に多いからふやしたということで、需要に対する供給ということが主でありまして、決して国鉄は収入というものに目がくらんで一部の人を犠牲にしたというわけではないのであります。さらに、さっき申しましたような、急行料金を通勤通学者に提供するということは、私は実際に必要はない。やはり通勤通学者というものは、五十キロぐらいの範囲内でありますから、これは私は普通のローカルな列車でやるべきだということを考えております。
  41. 井上(泉)委員(井上泉)

    井上(泉)委員 それは国鉄総裁は現状をあまり知らないからそういうことを言われると思いますけれどもほんとうに普通の回数が減って急行がそれに取ってかわって、非常に通勤通学者が不便をかこっておるというのが現実ですから、そういう点をよく調査をしていただきましたら、決していまのような答弁は出ないと思うのです。その点は調査の上でまた後日あらためて承りたいと思います。  続いて、運賃の値上げあるいは国鉄の納付金の廃止とかいうようなことは、今日の段階では、今年度中はそういうことは——納付金の問題は四十四年度になると思いますけれども、四十四年度においても納付金の廃止とかいうようなことは考えるべきでないと思うのですが、運賃値上げ、納付金の廃止、そういうふうな地域の住民負担をかけるようなことは、国鉄当局としては、少なくとも今年度中はなすべきではないと思う。その点についての当局の見解を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  42. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 国鉄は、運賃値上げをするときは、もうやむを得ず、それ以外には独立採算制のもとに経営できぬからという全く最後の手段でありまして、それまでに、いまお話のあった地方納付金の問題だとか、あるいは赤字線の問題だとか、あるいはさらに公共負担の是正だとかいうようなことを解決することにひとつ全力を尽くしまして、どうしてもそれがうまくいかぬ、あるいは一部うまくいってもそれだけでは国鉄の収支のバランスがとれぬという場合にはこれはやむを得ませんので、利用者にひとつ考えてもらうということで運賃の値上げに進まざるを得ないというように考えております。
  43. 井上(泉)委員(井上泉)

    井上(泉)委員 終わります。
  44. 大野委員長(大野市郎)

  45. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 国鉄廃線問題と私鉄における同様の廃線問題について当局の見解を伺います。  国鉄総裁に伺いますが、この国鉄諮問委員会答申発表されて、八十三線二千六百キロの廃止案が答申されたのですが、先ほどの発言を聞いておりますと、政府が何らかのめんどうを見ないならばやめるほかはないという趣旨のことも言われたと思うのですが、政府めんどうを見ないときには、最後の状態の中には一体どういう扱いを今後しようとするのでしょうか。たとえば財政委員会ですか、そこへはかった結果、そこでいいというならあるいはやめよう、その場合にはどういうような時期までにこの廃線をしようという考え方なんですか。これを扱う今後の日程を念のために伺っておきます。
  46. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 国鉄といたしましては、さっき申し上げましたように、いまやっているやつを経済的な、ハンディな自動車にかえる。しかも、そういうことをするだけの価値もないというような線があるかもしれない。たとえば、あまりにも利用者の数が少ないという場合には、これは国鉄としてはやはり多少めんどうを見るということも責任上やらなければならぬでしょうが、この場合には、私はできるだけ政府の補償をまず求める。しかしどうしてもできない場合には、さらに運輸大臣と相談して決定いたしたいということで、国鉄総裁として独断でやろうということは考えておりません。
  47. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 政府めんどうを見ない場合にはさらに運輸大臣とその措置について話し合うということになるのですね。これは鉄監局長でもいいのですが、国鉄は従来こういう廃止をしようという場合には、手続的にはどういう手続をいたしておりますか。
  48. 町田説明員(町田直)

    ○町田説明員 法律的には国有鉄道法に基づきまして運輸大臣廃止の許可申請が出てまいります。それで、事案によりますけれども、原則として運輸審議会諮問いたしまして、その答申を待って運輸大臣が許可、不許可を決定するということになっております。
  49. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 従来廃止問題は、地元が反対して、利害関係者が反対しておるという場合には、申請を受け付けないというような扱い方をしておりましたか。法律上は別として実際上の扱いはいかがですか。
  50. 町田説明員(町田直)

    ○町田説明員 受け付けないというほど強いものではございませんけれども、できるだけ地元の了解を得るように、こういうような行政指導はいたしておったと思います。
  51. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 この諮問委員会のメンバーを見ますと、先ほども議論が出ましたように、財界の人が大部分ですね。おそらくこの人たちはこういうローカル線に乗ったこともないだろうし、おそらく将来も乗らぬという人たちであろうと思うのであります。実際にローカル線を必要とする方々、そういう人々の代弁者というのはこのメンバーの中に一人もいないと言ってもいいと思うのです。繊維産業労働組合の同盟顧問の上条さんという人がおりますが、この人も現状からいって、おそらくたいして利用するものじゃないし、財界の人が大部分、あとは評論家ということであって、いわばこういうローカル交通問題をただ単に経営という視点のみでとらえてこれを答申させた。これは答申したと言うけれども国鉄がさせたのであって、こういういわば都合のいい委員だけ集めて都合のいい答申をさしたというのでは、やはり国民納得しないと思うのです。こういう段階で、ほんとうにそういう地元関係者等の意見を聞くというなら別ですが、全くいわば国鉄の御用学者と言っていいかもしれません、そういう人たちだけ集めて意見答申さしたというのは、国民のほうから言えばどうも納得できない、こう思うのですが、いかがですか。
  52. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 仰せのとおり、委員になられた方というのは財界人が大部分であります。それでいま板川さんは、彼らは地方線に乗ったことはないだろうということを仰せられるが、私は、かりに地方線に乗らぬにしても、地方人の立場になって考えるというだけの頭はあると思います。これはあまりにも、ひとつ見下げてくださらぬように私は委員のために弁解したいと思います。
  53. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 そう言わざるを得ないのでしょうが、あえてここにある人を申し上げません、わかっておることですから。しかし、おそらくこの人たち地方交通に理解もない人であると思います。  そこで一つ伺いますが、この八十三線、二千六百キロの区間は、年間赤字は幾らになるか。いまのところで計算して幾らになる予定ですか。
  54. 長瀬説明員(長瀬恒雄)

    長瀬説明員 四十三年度で二千六百につきまして試算いたしますと、二百七十五億円ということに相なります。
  55. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 四十年度で計算してみましたら百二十一億円ですね。この百二十一億円という計算で実は考えついたのでありますが、四十三年度に地方に納付するいわゆる納付金は百二十四億円ですね。間違いありませんか。
  56. 長瀬説明員(長瀬恒雄)

    長瀬説明員 百二十五億です。
  57. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 百二十五億円。大体地方の納付金と八十三線のローカル線赤字というのが、バランスがとれるような数字だと私は思うのです。だから、国鉄側としては、この八十三線、二千六百キロをやめることに地方が反対ならば納付金はかんべんしてくれ、こういう作戦から八十三線というものが選ばれたのですか、どうでしょう。
  58. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 われわれの主張は、赤字線赤字線地方納付金は納付金ということで、両方ともこれは何とかしなければならぬということで、片一方が解決すれば片一方はいい、こういうことではないのであります。これはひとつ誤解のないように願いたいと思います。
  59. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 国鉄総裁としてはそう言わざるを得ないでしょう。しかし、数字がちょうど見合っておるものですから、なかなかいい戦術を出してきたなと見ておるのです。自治省、この国鉄の戦術、地方ローカル線八十三線をやめては困るというなら納付金をかんべんしてくれというような戦術に出た場合に、自治省はどういう見解をとりますか。いずれをとりますか。
  60. 岡田説明員(岡田純夫)

    ○岡田説明員 これにつきましては、ただいまも国鉄総裁が言われましたように、赤字線の問題と納付金の問題というのは全く別個の問題であるというふうに考えております。自治省といたしましても、と申しますか政府といたしまして、納付金はそもそも固定資産税である。これは私鉄にもかかっております。国鉄の場合には、公社でもございますので納付金として納めていただいておりますが、本質は固定資産税であります。したがってこの問題については、やはり納めていただかなければならぬのではないか。赤字線の問題は赤字線の問題として、地方に関係してくる問題としてまた考えなければならない別個の問題であるというふうに考えております。
  61. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 運輸大臣と自治省関係。先ほど国鉄総裁もちょっと触れたのですが、西欧諸国では鉄道赤字で、たとえば廃線しようというときに、国が許可しないということでそれを継続して運営された場合に、その赤字を国なり自治体が補助するという方式が多いのですね、先ほど言われたとおりであります。これは、過疎地域における住民の足は国なり自治体なりが確保する責任がある、こういうたてまえに立っておると思うのであります。国鉄としても確かに独立採算制を一方において強要される、しかし赤字赤字でやれ、こういう状態では永久にそういう事態が続くはずはない、われわれもそれはわかります。ここで一つの合理的な解決策を見出さざるを得ない段階に今日来ているのではないかと思うのです。従来運輸当局というのは認可、許可、免許、こういう問題の取り扱いばかりやっておって、いわゆる運輸政策というものに対して見通しを持った政策立案というのが欠けておったのです。だから、この合理的な解決というものに対してあまり手をつけない。しかし今度は実力大臣ですから、この問題の解決を避けないで、国民立場からも考え、あるいは国の開発、格差の是正というような面からも考えて、私は合理的な解決策を運輸大臣考えてもらいたいと思うのです。これは運輸大臣いかがでしょうか。自治省も、問題があると思いますが、御見解を伺っておきたい。
  62. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 国鉄の問題はもはや国鉄だけでは解決できない段階にありまして、一面においては国鉄側合理化その他の努力を要請いたしますが、一面においては国といたしましても公共負担その他について大幅なめんどうを見てやる必要があるように思います。また地方自治体等も、この際いろいろ国鉄協力してもらわなければならぬ場面が非常にあるだろうと思うのです。そういう意味において、この間も閣議におきまして、今日の段階では国鉄の問題は閣議全体の問題として取り上げらるべき問題である、大蔵省、自治省あるいは建設省、そういう各方面協力を得て根本的に解決する策をつくりたい、こういうふうに発言いたしまして、総理大臣もこれを支持されて了承されたのであります。そういう精神にのっとってやっていくつもりであります。
  63. 岡田説明員(岡田純夫)

    ○岡田説明員 自治省といたしましては、国鉄の将来のあり方の問題も大きな問題になってまいると思います。国と地方団体——広い意味において国と申し上げますけれども、国と地方団体、あるいは府県と市町村の事務のあり方の問題、持つべき範囲の問題、これは前提として大きな問題になると思います。したがいまして、国鉄が再建されていく姿と見合いまして、そういうふうな事務の再配分といいますか前提を頭に置いて考えてまいりたい。現在はいわゆる鉄道行政と申しますか、地方団体におきましてもいろいろな関係で鉄道行政そのものを引き受けましたり、あるいはまたあっせんの労をとっておるというようなことで相当の財政負担にもなっております。こういうふうなこともございますが、広く全般的に総合的に考えてまいりたい、時期を見まして対処してまいりたいというふうに考えております。
  64. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 ひとつぜひこういう機会に、この問題の解決の方途を政府も真剣に取り組んでもらいたいと思います。  そこで、次に私は地方私鉄問題を伺いますが、福井鉄道の紛争問題について鉄監局長に伺います。  福井鉄道ではこの春賃上げ闘争の争議がありまして、地労委のあっせんで組合側はあっせん案をのんだが、会社側はあっせん案を拒否した。その後会社側は重役がほとんど総辞職をして、経営者がいなくなるという事態を招いておる。やむを得ず裁判所によって代行管理者が三名任命されて、その代行管理者の管理が今日まで五カ月間も続いておる。こういう状況を御承知と思うのでありますが、公益事業である交通事業が長期にわたってこのような変則的な経営者によって経営が行なわれているということは、運輸行政上からもまた保安上からも問題だと私は思うのでありますが、当局の見解はいかがですか。
  65. 町田説明員(町田直)

    ○町田説明員 福井鉄道につきましては、ただいま先生御指摘のとおりでございまして、現在一時代行者が三名で経営をしておるということでございます。先生のおっしゃいますように、こういう状態がいつまでも続くということは決して正常なことではございません。そもそも一時代行者はその字のとおり一時的のものでございまして、一日も早く正常な運営をする方が選出されるということが望ましいわけでございます。  ただ、いままでの経過をいろいろ見ておりますと、一時代行者の手によりまして、先生御承知のとおりと思いますけれども、臨時給与の一部を支払い、それから会社の一部の合理化というようなものの話し合いを続けておりまして、その調印ができまして、福井鉄道の現状におきましては、一歩でございますけれども前進したというふうな形と存じております。したがいまして、この段階で次にやりますことは、早く新しい役員を選出するということに一時代行者も努力をする必要がありますし、関係株主といたしましてもそういう努力をすることが必要であるというふうに存じております。私どもといたしましては、再々一時代行者に来ていただきまして、その後の経過などを伺っておりますが、つい最近のお話では、新しい役員を選出するための選定委員というものの選定をいたしておるという状況でございますので、この選定委員がきまりましたら、できるだけ早い機会に正式の役員が選任される段階になるのではないかというふうに存じておる次第でございます。
  66. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 経営者が総退陣して次の経営者が選ばれない、一時代行管理者がやっておるというように紛争が長期化した原因はどこにあると思いますか。
  67. 町田説明員(町田直)

    ○町田説明員 いろいろあると思いますけれども、表面的にはやはり労使の話し合いがうまくいかなくて、その結果使用者が全員辞任してしまったということが直接の原因であろうというふうに考えております。
  68. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 それは一つの事件の発端ではあるのです。労使の紛争が事件の発端ではあるのですがね。しかし、そういう春闘なり春の賃上げ闘争というのは、赤字会社はずいぶんありますけれども、全国の私鉄は全部解決している。解決していないのはここだけです。しかもあっせん案が出ているのに会社がのまないということなのですが、そのことよりも経営者が、最近の地方鉄道赤字経営上うまみがない、だからもうこれを経営していこうという意欲を持たなくなってきておる、これが一つだろうと思います。もう一つは、地元資本といわゆる県外資本との確執がある。これが大きい原因です。地元資本側は、力はないが経営の実権だけは握っていたい、こういうような気持ちがあるから、どうも県外資本のほうは金だけは出すけれども、少しもこっちの言うことを聞いてくれぬじゃやれぬというような、いわば地元資本と県外資本との確執がこの会社の紛争を大きく長引かしておるんじゃないかと私は思いますね。そのほか、経営者の無責任ということもあるでしょう。公益事業という立場を忘れて全員突如としてやめてしまう。しかし最近になって情勢を聞いてみると、また元の社長が、やっぱりおれが出なければだめだろうと、こういうふうな、一たん投げ出しておきながら、またそういう野心を持っておる。そういうところに、なかなか会社内の正常な経営者を選び出すということができないのでおる原因があるようであります。  一方、組合としては賃金もきまらない、ボーナスもきまっていない、半分くらい内金は払われたけれども。そして最近一時代行者の中に福井銀行から指名された人が、盛んに福井銀行の貸し金を取り立てておる。そして銀行側としては貸し金を全部取り立てて、ある段階へいったら投げ出すというような、いわば高利貸しのような扱いをするんじゃないか。地方交通を守るという立場じゃなくて、借金を取ってしまえばあとはどうなってもいいと、こういうような動きがあるんじゃないか。最近の会社の経理状況の動きを見ますと、そう判断したようであります。そうして、そうであれば、半年間も交渉する相手がいない、一体これではどうなるのだということで、最近、九月末と十月初旬にかけてストという、好ましくないけれども、そういう手段に訴えても解決の目途を立てたい。ところが十月一日は、御承知のように、福井地方で国体があって天皇もおいでになるという状況がある。そういう時期だそうでありますから、この機会に私は正常な経営者が生まれて、そして組合側と話し合って——組合側も必要な合理化、のめる合理化ならのんでもいいと、こういう気持ちでおるのであります。いままでの合理化も、ほとんど組合ものんで解決をしておるようなんですね。だからこの労使の紛争というのは、いわば労働省の問題で運輸省の問題ではない、こういうお考えもあるかと思うのですが、しかし正常な交通業者、経営者がいないということは、私は運輸行政上の問題でもあろうと思うのです。ですから早急に経営者を選んで正常化するように、運輸当局が勧告なりあるいはあっせんなりする必要があるのじゃないか、こう思うのでありますが、いかがですか。
  69. 町田説明員(町田直)

    ○町田説明員 ただいま御指摘になりましたいろいろな問題等も、私どももある程度お話を伺っております。  それで、やはりこういう地方私鉄の問題は、まず株式会社として株主がどうするかという責任を持ってものを考える。それから第二番目には、いま先生のお話がありましたように、地元一体どうするのだということを、地元の株主なりあるいは利害関係者なり、あるいは知事さんなりという方が相当関心を持ってこの問題に向かっていっていただかないと、なかなか解決しないのじゃないか、こういうふうに考える次第でございます。  そこで株主は、先生のお話にありました地元の株主と県外株主との関係があると思います。しかし、やはり同じ株主でございますので、大株主である方々、それに地元ほんとう関係者である住民の代表である方々、たとえば県知事さんとかそういう方々の間で、どうするかということを早くきめるということが必要ではないかというふうに考えておる次第でございます。  いままで、先ほど申しましたような途中いろいろ経過がございましたけれども、こういう段階になりますまでに、私どもは再々、先ほど申しますように一時代行者の方々に来ていただきましてお話を伺い、かつまた大株主の一部の方には直接私どもお会いいたしまして、いろいろ御相談をしたこともございますが、ただいまお話がありました勧告というような形よりも、やはり実際の行政指導と申しますか、あっせんと申しますか、そういう形を強力にやってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  70. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 地元資本でうまくやるのなら、それはけっこうなんです。ただこの間株主を集めて意見を聞いたところが、全部解散しちゃえ、こういう暴論が圧倒的なんです。その地方の交通を独占しており、ある地区では京福鉄道と競合しておるかもしれませんが、それを全部解散しちゃえというような株主の集まりじゃ私は問題だと思うので、ぜひひとつ大きな株主を説得するなり、あるいは住民の代表としての知事なり市長なりそういう人を通じて、この問題が一日も早く解決するように、ひとつぜひ強力なあっせんなりあるいは勧告なりをしてもらいたい、こう思います。
  71. 大野委員長(大野市郎)

    大野委員長 関連質問の申し出があります。堂森君。
  72. 堂森委員(堂森芳夫)

    堂森委員 板川委員の質問に関連しまして、国鉄当局に福井鉄道の問題につきまして質問を申し上げたいと思います。  私の地元の県に二つある私鉄の一つの会社が福井鉄道であります。そして先日来、私、知事にも会い、あるいは福井市長、あるいは福井鉄道の会社のある地域の市長にも会いました。あるいは福井銀行の方等にもいろいろ会いまして、板川代議士の協力を得まして、数日前、二人で二日間いろいろ話し合いをしたのであります。  そこで、私の県では十月の初めから国体があるわけです。そして組合は、こういう状態が続くならば一日からストに入る、こう言っておる。そして電車がとまるだけではなしに、県内の大きなバス事業を経営しておる会社でありますから、これがとまりますと、国体の輸送というものに非常に大きな障害があるわけであります。そして私鉄総連の協力を得まして、他府県からも応援に来られるという決定もある、こういうふうに聞いておるのであります。われわれも何とかしてこの問題を解決したい、こう思っております。ところが私の知っておるところでは、第一に地労委があっせんした案に対して、労働組合がのんでおるのに、経営者のほうはこれはのめぬ。そこでストライキに入ろう。そうしますると、急遽経営者のほうは総辞職した。そこで組合側は一応スト体制を解きまして、そして正常な状態に入って今日までストも何もないのです。非常な過当労働とも思えるような、人員もかなり減らしました。そして正常な員数から申しますと、かなり無理な仕事も割り当てられてやっておる。こういうような、組合としては非常に譲歩した状態にある、こう思うのです。  私の聞いておるところでは、あなたのほうに、さっきのあなたの答弁では、会社の臨時代行といいますか、一時代行といいますか、今後のいろいろ再建案というものを持ってきた、こう言っておられますが、私の聞いておるところでは、ある代行が持ってきたら、こんなものはだめだ、何を言っておる、こう言ってあなたは突っ返しておられる。私が聞いておる範囲ですよ、そう言われておる。今度はまたほかのもう一人の代行が来て、一体きのう来たあの代行はどんな再建案を示したでありましょうか、そんなことをあなたに言う。お互いに連絡がない。いわば代行三人の間にもそこがほとんどうまくいっていない。こういう状態がある。こういう事情をいろいろ申し上げておる時間がありませんから申し上げませんが、やはりこれは重要な意味を持っておる。国体があるとかないとかにかかわらず、私の県としては、県民の足を頂かっておる非常に重要な公共事業でありますので、会社側に対して、私はあなたのところの責任からいってももっと強い指導監督というものをしてもらいたいと思いますが、この点につきまして、私はもっとはっきりした確たる御決意のほどを聞いておいて、また県のほうに行っていろいろ、特に国体を控えておりますので、あっせんをきのうもおとといもやったのですが、したいと思いますので、その点運輸当局のお考え方等も聞いておきたいと思うのであります。
  73. 町田説明員(町田直)

    ○町田説明員 いま先生お話しのとおりの実情でございます。現在の段階では一日も早く正常な代表者を選ぶということが、会社の再建のためにもあるいは労使の問題のためにも必要ではないかというふうに考えておりまして、その件で先ほど板川先生からもお話がございましたように、組合もそういうことを強く要望しておりますし、われわれもそういうふうに考えておりますので、そういう形で動いてきております。  そこで、なお、私どもとしては、先ほど触れましたように、大株主の方々、それから地元の代表の方々が積極的に新しい正式な代表者を選ぶということについてできるだけ早く努力していただくように、あっせんなり行政指導なりお願いなりということをしていきたいというふうに考えておる次第でございます。会社再建の問題はその次の問題というふうに一応考えざるを得ないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  74. 堂森委員(堂森芳夫)

    堂森委員 もうちょっとだけ、すぐ終わりますから……。もう国体が十月一日に始まるわけですね。それでともかくあと十日しかないのですから、当局としては会社側の臨時代行を呼びつけられまして、もっと強く指導監督をしてもらうように重ねて要望しておきます。
  75. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 もう一点ひとつ、恐縮ですが……。鹿児島交通南薩線の廃線問題についてちょっと伺いますが、鹿児島交通の南薩線伊集院——枕崎間約五十キロを赤字を理由に廃線したいという会社側の意思表示があったのです。その後組合や沿線の二市九町約二十万住民を代表して自治体が反対運動を展開して、最近会社側も運行回数を減らして存続するような方針にかえたと聞いておりますが、これを御存じでありましょうか。
  76. 町田説明員(町田直)

    ○町田説明員 実は会社側から九州の陸運局にも、また私のほうにも何ら正式な意思表示はございません。それで新聞なりあるいは先生方からのお話等で、事実上そういう動きをいたしておるということは承知いたしております。
  77. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 南薩線の伊集院——枕崎間は延長五十キロですね。それを従来十二回、貨物列車二回、十四回運行しておった。これを二百三十五人程度で運行しておったのでありますが、今度の案をわれわれ聞くところによりますと、二百三十五人で運行しておって、それを赤字だからといって希望退職を募った。そして二百三十五人が百五十人になった。しかし百五十人でも赤字は解消しないのだといって会社側は四十人でやりたい、こういう案を出してきたのだそうであります。五十キロの区間を従業員四十人。まあ駅はほとんど駅員無配置駅になるでしょうが、四十人で、十二回、貨物列車二回というのを旅客だけ八回にする、こういうことのようであります。五十キロ区間を四十人で運転するというようなことは、地方鉄道がいかに人員を節約しようとするにしても、これでは運行上の保安を確保するということにならないのじゃないかと思うのです。運行回数を変更する場合には、これは陸運局長の認可事項になっておると思います。ですから陸運局長は、ただ運行回数が減るというだけでなくて、その運行上に要する人員の配置、保安上これでいいのかどうか、こういうことも当然この認可にあたって検討事項として入ると思いますが、いかがですか。
  78. 町田説明員(町田直)

    ○町田説明員 当然入ると思います。特に保安の関係につきましては十分調査しなければならぬと思います。
  79. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 会社側は四十人でやれるのだと言っております。これはちょうど石炭業者が保安要員は抜かしても何とかやっていけるのだ、こういうような気持ちを持つのと同じですね。ところが石炭災害、炭鉱爆発がしょっちゅう起こっておるのですから、会社側が四十人でやっていけるというようなことを言っても、そういう運行保安上の観点からぜひそういう点を慎重に取り扱うように現地の陸運局長を指導してもらいたい、こう私は思いますが、いかがですか。
  80. 町田説明員(町田直)

    ○町田説明員 そういう申請が出てまいりました場合には、当然のことでございますけれども、要員の問題、保安の問題、あわせて厳重に審査するようにということは十分申し伝えたいと思います。
  81. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 時間がきたようですから最後に、これは運輸大臣に申し上げたいのですが、国鉄赤字廃線問題、今度問題として出された八十三線、二千六百キロの問題、またいま各地で行なわれておる地方私鉄の廃線問題、さらにやがては地方バス業者も赤字路線廃止しようという傾向が出てくるように思うのです。国鉄赤字だから廃線を容認するということであれば、私鉄側からいうならば、国鉄は配当もしない、税金も納めない、しかも低利な資金を使っておる、こういう条件のいいところで赤字だから廃線するというならば、私鉄企業としては配当もしなければならないし、私営企業だし、当然赤字路線はどんどんやめてもしかたがないじゃないか、国鉄でもやめるのだから私鉄がどんどんやめても当然じゃないか、こういうような気持ちになって、地方私鉄の廃線申請というのがやがて殺到してくるのじゃないかと私は思います。国鉄の廃線が進み、私鉄の廃線が各地で行なわれるということになれば、バス業者も赤字路線はどんどんやめて、いい線だけ残していこう、こういう形になるだろうと思います。こういう傾向が地方交通というものを重大な危機におとしいれるのじゃないかと思うのです。ですから、国鉄がやめ、地方の私鉄がやめ、バスがやめるとなったならば、一体地方住民の足というものはだれが確保してくれるのだろうか。風なのか地方自治体なのか。地方住民の足を確保するという主体は一体どこなのだろうか、こういうふうに考えざるを得ないのです。運輸省として、一体国鉄をはじめとするそういう過疎地域における住民の足というものをどういう感覚で確保しようと考えられるのか、運輸大臣の決意というものを伺っておきたいと思うのであります。
  82. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 基本方針としまして国鉄、私鉄またはバスの足を確保しておくということは非常に大事なことであるだろうと思います。三つ一ぺんに確保できれば一番いいのですけれども、やむを得ない場合にはそのうちの一つだけでも必ず確保しておいて地方住民に不便をかけない、そういうやり方が正しいと思っております。  なお、地方のそういう問題に対処するために、陸運局長諮問に応じて地域住民意見を反映させるための場としての協議会を設ける。この協議会を通じて中小私鉄、バス等について地域の実情に関する検討を行ない、不採算路線の存続、転換または廃止の計画を作成させたい。存続すべきものとされた中小私鉄及び路線バスについては徹底的な近代化、合理化を行なわせることとして、そのため必要な場合、資金について補助金の交付または融資のあっせん等を行なうようにいたしたい。存続すべきものとされた中小私鉄及び路線バスであって、適正な運賃のもとに合理化を行なってもなお欠損を生ずるものについては、国または地方公共団体が欠損補助を行なうようにしたい。国鉄閑散路線については先ほど申し上げたとおりであります。  以上のような方針に基づいて地域住民の足を最低限確保するように努力していくつもりであります。
  83. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 私、前国会からの大臣との約束にもなっておるのですが、地方交通問題で、最近新聞の報道によると、地方交通振興法というような法律を大臣は次期通常国会に出したい、こういうことを言っているやに伺っておりますが、そういった新聞報道のとおり、いま大臣が言われたような内容も込めて地方交通振興法というのを出す用意があるのかどうか、この点を伺います。
  84. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 これは地方交通のみならず、都市の通勤輸送等も含めて、私鉄の使命というものは非常に公共性を持ってきて大事な段階になってきたので、中央地方相ともに通ずるような振興助成法をつくりたいと思って鋭意検討させて、でき得べくんば通常国会提出したいと思っております。
  85. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 時間がありません。もう一つですが、この国鉄の場合でも地方鉄道の廃線問題でも、住民の側からいうと突然廃線申請というのは全く寝耳に水のような感じを持つんですね。住民の側からいうと、鉄道があるから工場をつくり、住宅をつくり、通勤をするという約束がされているわけです。廃線というようなことは過去においてはあまりなかったのでありますが、突然廃線というと住民は全く寝耳に水ということで驚くわけであります。ですから私は、たとえば私鉄の場合でも、赤字が続いておるならば、やめるという前にまず、地方鉄道軌道整備法というのがありまして、赤字を続けておるような場合には一定の条件のもとで赤字を補助しよう、欠損を補助しよう、こういう規定が現にあるんですね。ところがその運用について非常にきびしい制限があるために、実際的にはそれが効用を果たしてない。ですから法律は、文章としてはまことにりっぱな法律になっておるのに、実際運用上動いてない。だから地方鉄道軌道整備法の運用を緩和して、廃線しようという前にまず補助の申請をしたらどうだろう。そして補助の申請の中で、補助する必要があるかどうか財務監査もするでありましょうし、あるいは補助をして当分また生き長らえるということもあるでしょう。そういうことになれば、これは赤字線で補助を受けているのだということになれば、あるいはどうしてもだめな場合は将来やめることになるかもしらぬということで、住民のほうも多少予告をされるような扱いを受けると思うのです。ですから、特に社会問題化しているのは、やぶから棒に廃線というから住民が驚くのでありまして、そういうような地方鉄道軌道整備法の運用を緩和して、まずやめる前に補助の申請をしろ、こういうような扱いを段階を経てやっていく必要があるのではないかと私は思いますが、この点をどうお考えでしょう。
  86. 町田説明員(町田直)

    ○町田説明員 ただいまお話のございました地方鉄道軌道整備法は、新線の補助あるいは災害補助というようなものもございます。欠損補助というものもございます。ただ、そのうち欠損補助につきましては、あの法律の考え方は、いわば陸の孤島のようなものという考え方になっておるわけでございまして、代替輸送機関がそばにあるものについて、欠損であるから補助するということは、法律のたてまえ上なかなかむずかしいというふうに考えるわけであります。  それで、先ほど大臣から御答弁申し上げました地方鉄道並びにバスについての考え方は、鉄道がいいか、バスがいいかという問題も一つございますし、どうしても鉄道として残すべきであるというものについては、合理化をまずやっていこう、そして企業を合理化して鉄道として残せるというふうに持っていこう、こういう考え方でございますので、初めから欠損補助という形でもっていくというのは、なかなかむずかしいのではないかというふうに考える次第でございます。その上でなお、合理化してもどうしても赤字が出てどうにもならないという場合に初めて、欠損と見るかどうかという段階になるというふうに考えている次第でございます。  それから、一年ぐらい前から予告したらどうかというお話でございますが、これもまことにごもっともな御提案と思いますけれども、大体先ほどちょっと触れましたように私鉄が、国鉄の場合もそうでございますけれども、やめたいという場合には一般的に地元の御了解をできるだけ得られるような行政指導をいたしておりますので、そういう段階がいろいろございまして、やめたいというような意向が出てまいりましてから実際にそれが実現するといたしましても、実現するまでにはおよそ一年ぐらいの期間はかかるというようなことでございますので、法律的にそれを一年前に予告するというふうにするかどうかという問題については、なお十分に検討させていただきたいと存じます。
  87. 大野委員長(大野市郎)

    大野委員長 約束の時間も過ぎておりますので、結論を急いでください。
  88. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 これで終わります。  欠損補助を申請させろというのは、合理化しなくても欠損を補てんしてやれというのではないのですよ。欠損補助申請をさせるのですよ。そして合理化をして適正な経営をしてもなおかつ赤字だという場合、そういう場合には欠損を補助したらどうだろうか。代替線があるとか、全業で三カ年間赤字だとか、いろいろないまの運用上の内規があるでしょう。代替線があるから欠損補助をしないのだという。それでは代替線があるからやめてもいいんだということになる。しかし、代替線があってもやめてはいかぬというから、いま地方鉄道が廃線する場合に社会問題になっているのじゃないですか。だから、地方鉄道軌道整備法のいまの運用ではどうも最近の実情に合わぬから、検討して緩和するように——法律を変えなくたっていいのですから、運用を緩和するように運輸当局は強力に大蔵省に話しかけたらいいのじゃないですか、こういうことなのですよ。あなたの言うとおりなら、では代替線があるからやめましょう、やめてもしかたがない、こういうことになっちゃうのじゃないかと思うのです。だから、補助申請をさせて、代替線があってもやはり朝晩の通勤通学の客を輸送するため必要だというならば、赤字補てんをするような、運用の幅を緩和していったらどうか。そうすれば廃線問題がこれほど社会に深刻な影響を次々に与えてこないだろう、こう思うのです。検討要請します。  時間ですので、以上で終わります。
  89. 大野委員長(大野市郎)

  90. 神田(大)委員(神田大作)

    神田(大)委員 時間もありませんから簡単に質問を申し上げます。  まず第一に大臣国鉄総裁にお尋ねしますが、今回国鉄諮問委員会が八十三線のローカル線廃止答申したのでありますが、この中で国鉄の使命は終わったというようなことをいわれておりますが、はたして国鉄はその使命を終わったかどうか、その見解について大臣並びに総裁から答弁を願います。
  91. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 国鉄は使命を終えたとは思いません。国鉄は今日の日本の陸上輸送等について、まだ重大な使命を持っておると思っております。
  92. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 私は国鉄の使命というのはこれからだと思う。決してこれで終わっているとは全然考えていないのであります。
  93. 神田(大)委員(神田大作)

    神田(大)委員 それでは、廃止発表いたしました八十三線のローカル線についてはどのようにお考えになっておりますか、大臣並びに総裁にお尋ねします。
  94. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 先ほど申し上げた閑散路線の問題につきましては、中川委員にお答え申し上げたとおりでありまして、非常に慎重に、政治的な配慮も行なってやりたいと思っております。
  95. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 八十三線の赤字でありまするが、これは要するに交通輸送需要に対して国鉄の施設というものが大き過ぎる、つまりバランスがとれておらぬ。そこに非常な不経済な点がある。だからしてわれわれはこの赤字線解決というものにつきましては、最も不経済な、アンバランスな鉄道機能にかうるのに、ハンディな自動車その他をもって地方人たちの足の問題を考える。決してやめるということじゃないのであります。
  96. 神田(大)委員(神田大作)

    神田(大)委員 それでは、この八十三線の廃止答申に対しまして、大臣は慎重にこれを考慮したい、国鉄総裁としてはこの引き合わないこのような線に対しましては代替のバスあるいはその他のことを考えていくということでありますが、国鉄のこれらローカル線赤字は、何も最近出たわけではないのですね。これはもともと赤字である。しかるに最近これを大々的に発表いたしまして、沿線住民に非常な不安と動揺を与え、毎日これら関係者が上京して陳情しておるというようなこのようなやり方は、国鉄当局として行なうべきことではない。大臣も先ほどおくれてきた理由に、陳情者が押しかけてきたのでおくれたんだとおっしゃいましたが、遠い北海道あるいは九州から何十人何百人という人が出てくるということは、容易なことではない。私はこのような発表はまことに当を得ない軽率な発表ではないかと思うのですが、この点どのように考えるか、大臣総裁にお尋ねしたいと思います。
  97. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 国鉄当局国鉄合理化及び経理内容の改善について真剣に取り組んでおりますので、そういう改善策の一つとして諮問したのだろうと思いますので、これは国鉄としては一生懸命やっているあまりのことであって、十分了解できるところであります。
  98. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 いまの問題になっておりまする赤字線というものは終戦前につくられたものでありまして、国鉄の状支状況がきわめて良好な時分で、赤字は出てもこれをのむだけの余裕はあったのでありますが、いまの国鉄は、昔の独占性というものに大きなひびが入ってしまって、収支の状態は年々悪化しつつある。それで国鉄というものは、損を出したときには政府が出してくれればいいのだが、独立性というものはやはり堅持していかなければならぬ。その場合に、ではどうするかということになると、いまのような不経済な交通機関にかうるに経済的な、地方民に対してはハンディな交通手段を確保するというので、これは国鉄独立採算制というものに対してひとつ十分に敬意を表していただきたいと思います。
  99. 神田(大)委員(神田大作)

    神田(大)委員 私はこれは重大なことだと思うのです。国鉄が最近ローカル線赤字になった、これでは独立採算制がとれないから何らかの廃止の方向をとって、それにかわるバス路線というものを考えるということであれば、これはまた一考を要する。建設当時から赤字は十分覚悟の上で、地方産業の開発のためにやってきた。長い間それなりの、赤字を出しながらも地方の産業の開発に貢献してきたのであります。今日国鉄財政赤字であるから、これらローカル線廃止するということは、国鉄がいわゆる大都市周辺の国鉄の改装、新設その他のためにたくさんの投資をいたしまして、その金が累積いたしまして二兆円と称しております。その利息が一年に一千億円、このような財政的な圧迫のために国鉄赤字なんです。これが大きな原因なんです。それをローカル線に転嫁してこれを廃止しようというようなことは、政治としてこれはなすべきことじゃないのです。ローカル線はますます強化して、地方開発、これら恵まれない土地の産業開発のために役立つべき使命を国鉄は持っておると思うのです。国鉄赤字ローカル線廃止に転嫁するようなそういう政治は、われわれは納得できない。また国鉄のそういうやり方に対しても、われわれは納得できぬ。それよりも、二兆円のこの膨大な借財を何とか整理するために政府に強く要求すべきではないか。その点、総裁はどう思いますか。
  100. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 さっきから申し上げますように、地方線の今度の解決に踏み出したゆえんのものは、何も通勤輸送の増強をする、それによる負担がどうとかいうことではありません。これは、地方線の問題につきましては、いま運輸大臣を通して政府に強く交渉しております。これはこれ、それはそれで、しかもその地方線赤字は年々歳々悪化こそすれ、決して好転しない。これは利用度が少ない。この利用度の少ない赤字線に対しては、利用度に応じた輸送機関をもってするということでありまして、これは私は十分御了承願いたいと思います。
  101. 神田(大)委員(神田大作)

    神田(大)委員 この発表された八十三線の中には利用度はふえておる、しかしながら経営の合理性を欠いているために、利用度はふえているけれども赤字は増しておるという路線もあるわけですね。だから私は、この諮問委員会において発表するときには国鉄全体の総合合理化計画のもとにおいてこういうローカル線を今後整理しなくちゃならぬという段階があるというような発表のしかたならば、これはある程度納得するでしょう。しかるにそれら一千億円の利息払いの話や、あるいはまたローカル線が年々利用度が増しておるにもかかわらず赤字であるという不合理、運賃の問題もあるでしょう、あるいはまたその他サービスの問題もあるでしょう、あるいはまた行きどまり線になっておって、当然接続すべき線路が接続されない問題があるでしょう。そういう問題を総合的に諮問し、答申させるべきなんです。この八十三線だけを取り上げて、この線は赤字だから廃止するなんて、そういう不親切な不合理な話はわれわれは絶対これは聞けないのであります。この廃止の理由といたしまして、よくバスにかわるといいますが、主として通勤通学に使っておるこのローカル線、たとえばわれわれのところにある真岡線のごときは、一日二千五百人から三千人の学生が乗っておる。これを運ぶためには少なくとも四十台から五十台のバスを用意しなくちゃならぬということになる。はたして、バスでもってこの赤字を克服して経営ができると思いますか。そういう詳細な検討をいたしましたか。あるいはまた、この真岡線の沿線には関東で一番大きいところの工業団地を計画して、神戸製鋼をはじめといたしましてたくさんの工場がいままさに誘致されんとしております。これらの産業の誘致による首都圏内におけるところのそういう経済の変化に対しまして、私はいつか国鉄の副総裁のところに行って、こういう状態のところに国鉄は増強すべきであるのにこれを減らすというのは何事かと言ったところが、そんな工業団地があるというのは知らない、こう言う。そういうようなずさんな調査をしてこの八十三線の発表をしたのじゃないか。全国、北は北海道から南は九州まで、これらの廃止線は当たった住民は上を下への大騒ぎをしておる。これはたいへんな精力の消耗であり、また金銭的にもばく大な損害をこれら沿線の住民にかけておる。国鉄はもっと緻密な計画をし、実行できる具体案を持ってこれらの問題と取り組むべきであろう。私は線路をはずそうというようなことは一番愚の骨頂であると思う。日本はまだイギリスやフランスのように道路も整備されていなければ車の台数も少ない。バスに直すの、あるいはほかのものにするのと簡単に言っても、そんなことはできっこない。また、住民の生活状態が非常に低い。国鉄の線路が唯一の経済の基盤になっておる。そういうときにやすやすとこのような国鉄の線路をはずすという重大なことを諮問し、答申させ、これを実行に移そうというようなことであれば——大臣は今後慎重に考えるということでありますから、私は政府並びに大臣の良識を信ずるものでありますけれども、これはひとつ大臣といたしましても、国鉄はもう赤字でどうにもせっぱ詰まってしようがない、自分の手を切るよりほかないということで、こういう重大なことを安易に発表してこういうように世論をわかしておると思うのでありますけれども、これらについては政府並びに運輸省といたしましては慎重に検討いたし——少なくとも何十年と親しんできた国鉄の使命というものは今日まだなくなっていない。今後私は重大な国鉄の使命があると思うのでありますからして、これらローカル線廃止の前に合理化の問題でも、あるいはまたその他いろいろ国鉄としてなさなければならぬ問題がある。また政府としては、これら国鉄赤字独立採算制にのみこれを押しつけるべきではなしに、当然これは政府責任においてこれら公共性のあるところの事業は見るべきものであるからして、この点について国鉄合理化を促進すると同時に、政府はこれらのあと始末に対しまして誠意を尽くすということで、ローカル線廃止は撤回させてもらいたいと私は強く要望いたすものであります。大臣の所感を伺います。
  102. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 神田委員の御説はよく参考にいたしまして、慎重に処理してまいりたいと思います。
  103. 神田(大)委員(神田大作)

    神田(大)委員 総裁はどうです。
  104. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 いまのお話は、通勤者というものは非常に多数でもってバスをもってしてはとても輸送できぬとか、あるいは将来の工業の発展というものに対して国鉄は何を考えておるのだ、こういうことでありまして、実はそういうようなことに今度の調査におきましては目の届かなかった点があると思いますので、ここにおいてこれを実行するについては、さらに各線ごとに徹底的に再調査をして、さらに地方の諸君の御要望を聞いて、その上で善処するということです。つまり、いま神田さんの御心配の点はそれでカバーされることだと私は存じております。決してそんな、もう何でもかんでも一斉にレールをはずすということは絶対いたしません。どうぞ御安心願いたい。
  105. 大野委員長(大野市郎)

    大野委員長 沖本泰幸君。
  106. 沖本委員(沖本泰幸)

    ○沖本委員 大臣が時間をお急ぎでございますから、一足飛びに飛んで大臣にだけ先にお伺いいたします。  先般の通常国会の予算分科会で、大阪の城東貨物線の電化、客車化についてお伺いしたわけですが、できるだけ早めにこの問題をやっていきたい、こういうふうな御答弁があったわけです。それにつきまして、この十日にも朝日新聞では、この城東貨物線の放出という駅と永和という地名があるわけですが、その間の高架に着手したいということを国鉄側発表したということなんですが、あくまでもこの赤字問題とからんでの話になるわけですが、城東貨物線のいわば外環状線ということになるわけですが、この問題について万国博にからんでどうしてもそれまでに間に合わしたいというのが地元全体の熱意であります。それについて、今度のATSの闘争にからんで、既環状線はすでにピークの状態になっておるわけですから、その外側を考えなければならないわけですけれども、来年度について大臣はこの問題をどういうふうに処理をなさっていくか、あるいは国鉄のほうでは第三次計画の中に盛り込みながら結局出費が多いという点からこれをはずしておったわけですが、この点もう一度大臣から来年どういうふうな方向でこの問題にお取り組みになるか、御回答いただきたいと思います。
  107. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 沖本委員の御要望は国鉄のほうにも伝えまして、善処するように命じておきました。その後いろいろ報告を聞いてみますと、いろいろ検討して努力しておるようでございますが、まことに申しわけないのですが、どうも万国博までには間に合いかねるというのが実情のようであります。なお、しかし、よく実情を調べまして、できるだけ御要望に沿うように努力していきたいと思っております。
  108. 沖本委員(沖本泰幸)

    ○沖本委員 大臣のできるだけという御答弁があるわけですが、それに関して大臣のお気持ちとして、何とか万国博にできれば間に合わしたい。これはまあ国家的事業ですから、大臣もこの問題からはずれるわけはないわけで、そういう観点にお立ちになってこの問題をどういうふうに現在お考えでございますか。
  109. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 具体的な工事計画のことは国鉄がやっておりますので、私はわれわれの考え方国鉄のほうへ伝えておりますので、具体的な予算措置その他は国鉄のほうから回答させることにいたします。
  110. 長浜説明員(長浜正雄)

    ○長浜説明員 ただいまの御質問に対しまして御答弁いたしますが、第三次の計画の中に織り込んでございまして、逐次用地買収から始めております。御承知のように新大阪駅付近の用地買収に六億円、それから放出の将来電車の基地になりますところの用地買収を六億円、それからまた途中の吹田を通過いたしますので、その付近の用地買収は、地元の区画整理事業とにらみ合わせながら、必要のときには金を出せるように準備はしてございます。四十四年度、来年度の予算につきましては、これは今後御審議いただくことになりますので、その中でいろいろ考えていきたい、こういうふうに考えております。  ただ万博までに間に合うかどうかという点につきましては、物理的にいまからでは間に合いかねます。それからまた工事費総額が、いま試算いたしますと、いろいろ高架化の御要望などもございまして、約二百五十億ぐらいに上がろうかというような数字になっております。物理的に間に合わないのと、そういうふうな金額になっておるということも背景にいたしまして、いまのところ間に合わない状況になっております。ただ全部が間に合わないということではなくして、途中から地元の御要望の非常に強い一部の高架化の問題、この点につきましては、万博までにどうしても仕上げなければならない区間が、ございますのは、いま先生がお話しになりました放出と永和の間、この間につきましてはなるべく早く着工して間に合わせるようにしたい、こういうふうにいま考えております。  ただ高架化の問題につきましては、御承知のように費用の負担につきまして、在来いろいろ国鉄としては忍べない点がございましたので、いろいろ関係方面の御協力を得まして、建設省あるいはその他の道路管理者の方々と御相談をいたしまして、費用の分担についての基本的な話し合いをいま進めております。したがいまして、この区間につきましても近くまとまることと承知しております。そうなりますと早急にも着工して間に合わせるようにしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。以上でございます。
  111. 沖本委員(沖本泰幸)

    ○沖本委員 大臣に対しては大体以上なんですが、率直に言いまして、これはだれが考えても万国博までに間に合わせればこれほどのことはない、こういうふうに考えられるわけなんです。それで大臣は、国鉄のほうにその旨を伝えて早くやるように、こういうふうなことは言っておいたというお答えですけれども、やはり大臣としても、全体、国家的な内容から考えてどうしてもこれはやるべきであるという点について、もっと——万博までに物理的に間に合わないと言うけれども、できるだけ間に合わす、こういう点についての強いお考えはありませんですか。
  112. 中曽根国務大臣(中曽根康弘)

    中曽根国務大臣 環状線の必要性というものは十分認めておりまして、この点は沖本委員と全く認識は同じでございます。できるだけ促進するようにいたしたいと思っております。
  113. 沖本委員(沖本泰幸)

    ○沖本委員 では大臣、けっこうですからどうぞ。  それでは、あらためまして国鉄側に伺ってまいります。きょうの問題は、赤字路線廃止ということが一番の焦点となって話が進められているわけですけれども、その反面黒字路線の開発ということは、これは非常に貴重な問題だ。先ほども総裁はその問題についていろいろお話があったわけですけれども、磯崎副総裁は先般の通常国会の予算の分科会で、大阪付近の黒字線は東海道、山陽線、内環状線が、いろいろな利子の点とかあるいは償却費、こういう問題でべたべたであるというふうな意味の答弁をしていらっしゃるわけですけれども、まず第一にこの大阪の内環状線は、一体現在赤字なんでしょうか黒字なんでしょうか、将来は黒字になるのでしょうか。あるいは、これの輸送計画は大体もうピークにきておるのではないか、こういうふうに考えられるわけですが、この点についてとりあえず御答弁いただきたいと思います。
  114. 長瀬説明員(長瀬恒雄)

    長瀬説明員 大阪の内環状線につきましては、四十一年度の原価計算によりますと、営業係数九〇ということに相なっております。
  115. 長浜説明員(長浜正雄)

    ○長浜説明員 内環状線の輸送計画につきまして、いま六両運転でやっておりますが、輸送の状況を見まして、将来八両運転になり得るような設備を逐次いま行なっております。その例といたしましては、大阪駅のホームの工事あるいは鶴橋の工事あるいは天満の工事というように、逐次仕事を進めております。
  116. 沖本委員(沖本泰幸)

    ○沖本委員 もう一つお聞きしておる点に触れられないのですが、時間がありませんのでできるだけ簡単にお答えいただきたいのですけれども、やはり実際に言って改善しなければならないのでしょうか、あるいは赤字なんでしょうか、数字でお示しになりましたけれども、もう一つぴんとこない。
  117. 長瀬説明員(長瀬恒雄)

    長瀬説明員 営業係数九〇と申しますのは、百円の収入を上げるのに九十円のコストがかかったという意味でございます。四十一年度の決算で申し上げますと、大阪内環状線で、これはまだ当時できたばかりでございますので、収入が五百八十四万円、経費が五百二十八万円ということでございまして、したがってそれを割りますと営業係数九〇ということになります。現在はもっと変わっておると思います。
  118. 沖本委員(沖本泰幸)

    ○沖本委員 話は変わりますが、大阪で聞きますと福知山線は赤字なんですが、それを片町線と結ぶ計画をつくって、その間を大阪の地下鉄を利用する、こういうことでこの線を結ぶということが実施に移されつつあるということなんですが、これはどういう理由でこういうようになっておりますか。
  119. 長浜説明員(長浜正雄)

    ○長浜説明員 福知山線は御承知のようにいま単線で東海道線の途中の駅、尼崎から分離されております。この沿線の地元の非常な強い御要望もあり、また実際非常に土地が開発されまして輸送量がふえることが想像されますので、これを複線電化をするということをいま進めております。ただその場合に、福知山線が尼崎まで入ってきましてそれから東海道線で大阪に行くわけでございますけれども、そうなりましたときに、東海道線の線路容量といいますか線路の電車の入り得る容量が足りませんので、そうしましたときには大阪までどうするか、尼崎で打ち曲げるということになりますと非常に輸送が混乱いたしますので、将来非常に輸送量が多くなりましたあかつきには何とか大阪に持ち越すくふうをしなければならないということで、たまたま大阪市の地下鉄計画がございますので大阪市と協議をいたしまして、できれば直通運転が好ましいのではないかということで、東京付近と同じような考え方に立ちまして相互乗り入れをやったらどうかということで話を進めるようにいましておる段階でございまして、まだ決定したとか決定しないとかいうことにはなっておりません。したがいまして、また同じようなことが今度は片町線でもございまして、片町線が御承知のように片町でとまっておりますので、これをやはり市内に乗り入れるためにはどうしたらいいかということで、これも地下鉄との相互乗り入れということも考えられるのではないかということでいま小当たりをしておるという段階でございます。
  120. 沖本委員(沖本泰幸)

    ○沖本委員 そうすると福知山線の複線化、電化あるいは片町線と結ぶについて、これの建設費はどのくらいかかるのですか。
  121. 長浜説明員(長浜正雄)

    ○長浜説明員 いま福知山線と片町線を結びますのに金がどれだけかかるかということは、実は私のほうでは試算はいたしておりません。これをやります事業主体が大阪市になりますか、あるいは一部が兵庫県になるかその辺はまだわかりませんが、そういうことでありますのでまだ試算をしておりませんのでわかりかねますが、大ざっぱなキロ当たり幾らという概略の数字でなら申せますが、これでははなはだ将来——またもうちょっと調べてみないと、数字がちょっといまのところ申せませんので、お答えできかねます。
  122. 沖本委員(沖本泰幸)

    ○沖本委員 ちょっと不審に思うのですが、大阪のほうの関西の地元のほうで聞きますと、相当具体化した話が出ておるわけですが、大きな話題になって、大阪府のほうも一生懸命になってきているというなら、またこの問題に対して兵庫県のほうは、どうして大阪のほうだけ持っていくのか、こういうような疑問を持っておる、こういうことがあるわけですが、こういう点はどうなんですか。
  123. 長浜説明員(長浜正雄)

    ○長浜説明員 私がいま申し上げましたのは、片町線と福知山線をつなぐ問題につきまして、まだ予算の概算その他、そういうことが出ていないということでございまして、福知山線につきましては、もうすでに今年度から着工するようにしておりますので、今年度用地費十二億のうち二億を使う、こういうことでいま仕事を進めておる段階でございます。
  124. 沖本委員(沖本泰幸)

    ○沖本委員 それじゃ、この福知山線だけを問題にして一これの全体計画はどのくらいかかるわけですか。概略でけっこうです。
  125. 長浜説明員(長浜正雄)

    ○長浜説明員 いまちょっと正確な数字を——間違うといけないんですが、いま複線にしまして電化をするのに四十五億円じゃなかったかと、こう承知しております。
  126. 沖本委員(沖本泰幸)

    ○沖本委員 そうしますと、決して福知山線が要らないということではないわけなんですが、これは黒字という点で考え合わせていきますと、大阪の外環状線を黒字線と見るべき統計をおとりになったり、計算なさったりした事実はございますか。
  127. 長瀬説明員(長瀬恒雄)

    長瀬説明員 その前に、先ほど大阪の内環状線の数字を間違いましたので訂正させていただきます。先ほど五百八十万と申し上げましたのは、五十八億でございます。それからコストが五十二億でございます。それから、外環状線につきましても、原価計算はこれはまだ計算いたしておりませんので出しておりませんが、将来、旅客との関連においていろいろと計算がむずかしゅうございますので、今後計算したいと思います。
  128. 沖本委員(沖本泰幸)

    ○沖本委員 それでは、先ほどのお話の中に、都市の開発とかそういう面にからんで福知山線あるいは片町線というものは非常に重要な問題になってくる、こういう点の御答弁があったわけですが、この点にからんで考えてみますと、外環状線の重要性という問題とからんで全然お考えがなかった、全然計算の中に入っていないし、考えもしていなかった、こういうような結論になるのですが、あまりずさんじゃないですか、これは。
  129. 長浜説明員(長浜正雄)

    ○長浜説明員 城東線の複線電化につきましては、三次計画の中にも入っておりますし、三次計画で着工するということになっておりますので、考えてないということではございませんで、複線電化を考えておるわけです。
  130. 沖本委員(沖本泰幸)

    ○沖本委員 先ほどの御答弁の中にもありました。ですけれども、建設費については建設省との話し合いがほぼ方向づけが出てきたというお話があったわけですが、このお話はすでに通常国会のときに皆さん方は御答弁になっていらっしゃるわけです。その御回答が相当日数がたった現在でも同じようなお答えになってきておるということは、この問題が具体化されていないという結論になるわけですが、こういう点あわせて考えてみますと、せんだっての私のお伺いした中にも外環状線はもうかるのでしょうか、どうでしょうか。あるいは都心部が過密状態でドーナツ現象を起こしておるので、外から出てきた乗客はほとんど昼間は都心部へ行き、夜は外のほうへ出ていく、こういう面だけのものであって、横をつないでいくところの環状線については、どういう点かまだはっきりというような副総裁のお答えがあったわけですが、そういう点について、具体的に統計をとって検討を加えて都市の発展状態だとか、こういう問題をにらみ合わして考えていきますときに、あまり結論が出ていらっしゃらない、あるいは研究していらっしゃらない。先ほどのお話しのとおりに、いわゆる一番問題点となってくるところの放出と永和の間はできるだけやっていこう、こういうことは、つまりこの間においてほかのものと交差の問題が起きてきておりますし、大阪周辺としては、この東大阪の高架にしなければならない地点が副都心化していっているというように都市化現象を起こしてきているわけです。こういう点をにらみ合わせて、国鉄のほうは計算していらっしゃったのかどうかということになるわけですが、こういう点はいかがですか。
  131. 長浜説明員(長浜正雄)

    ○長浜説明員 最初の、輸送量をどの程度に想定するかという問題、これは工事を計画いたしますにいろいろ想定はしておるのでございますが、何ぶんまだ全然旅客輸送も行なわれていない線区でございますので、想定はなかなかむずかしいのですが、一応これが完成したとして一万人まではいかないであろう、一万人弱くらいではないかというような数字も出ております。これは予測でございますので確たる数字ではございませんのと、将来のその辺の発展の状況いかんによっても非常に変わってくるわけであります。それがまたどういう営業係数になるかということにつきましては、これがまた、いまの旅客輸送とのからみその他でなかなか計算がぴたっと出てこないのでありますが、いずれにいたしましても、これを着工してやっていくというつもりにいまなっておるわけでございます。  それからまた、もう一つの御質問の問題の放出——永和の間の着工の件でございますが、これにつきましては、建設省との話し合いは仰せのように数カ月たっております。これは全国的に数十カ所ございますので、それぞれいろいろなケースがございますので、それのルールをいまつくるようにやっておるわけでございますけれども、それのうち、特に本区間につきましては、おっしゃるように築港線の立体交差の問題もありまして、万博との関連上なるべく早く仕上げなければいけないということをわれわれも承知しておりますので、これにつきましては、特に早く計算をして着工できるようにしていきたいということを最初に申し上げたわけであります。そういう点で特に努力をしておるわけであります。
  132. 沖本委員(沖本泰幸)

    ○沖本委員 そうしますと、万博に間に合わせてくれという要望に対して、一つも御検討になっていないということになるのじゃないかと思うのですね。利用度がどれくらいあって、どれくらいの人が乗る、万博になったときにはどのくらいの利用面が出てきて、都市部から都心あるいはこの新大阪駅へ向かってどういうような利用度が出てくる、あるいは人の輸送がどうなっていくかということは、国鉄お得意の統計がいまこそ必要なはずなんですが、そういう面についてぴちっとした計数とか統計とか、将来に向かってこういうことになるという点を十分明らかにして、黒字になるならないというような計算をお出しになってやるべきではないでしょうか。こういう点がいまのお話から伺いますと、全然ばらばらなように聞こえてくるのですが……。
  133. 長浜説明員(長浜正雄)

    ○長浜説明員 いまの数字のどれくらいの輸送量になるかという点につきましては、もちろん計画をしております段階において数字は計算してございます。ただ、それが赤字になるか黒字になるかという点、これは断定的にここで申し上げるのも私、資料なしで何だと思いますけれども、簡単に申しまして、輸送量が旅客が一万人に足らないというところに二百五十億の新しい追加投資をして、すぐには黒字にならぬことは明らかなことではないか、こう考えられますが、どれくらいの輸送量でどうなるかというような推定は、計画を立てる段階におきましては、われわれとしては十分計算いたします。
  134. 沖本委員(沖本泰幸)

    ○沖本委員 それはすぐには黒字にならないというのは、いずれのところも同じじゃないでしょうか。地方自治体のほうが地下鉄を建設してどんどんやっていることも、黒字にならないけれども、必要に応じて、将来ということを考えて、みなやっていっているわけなんです。ですから、赤字路線廃止という点とからんで考えていくときに、黒字というものを真剣にお考えになるのが、先ほど総裁がおっしゃったとおり、いわゆる独立採算制内容の中の一番主要な問題ではないか、こういう点を考えるのですけれども、そういう点をはっきりお出しにならないで、万博には間に合いませんと言う。こういうことでは話にならないのではないか、まして地元の方が非常に不審に思い、また関西方面の方からいろいろ声が出ているのは、東京周辺の環状線化については東京都のほう、あるいは地方自治体に全然負担をかけていない。ところが、この大阪周辺に関して、またこの環状線に関しては、地元負担金あるいは利用債を相当買わされておるわけです。いままでに数十億という金が国鉄に出ているはずです。そして大阪駅周辺の用地買収のために、すでに六億の利用債を買わされておるし、また吹田周辺の用地買収に関しては、もうそのためにお金は用意してあるということを言って熱意を示しておるわけです。それで一日も早くしていただきたい、こういうふうな内容と、それからどんどんドーナツ現象を起こしておる都市現象と、こういうものをにらみ合わしていくときに、こういうものの関連したお考えを、まだ計画をお立てにならないということは私は全く不信だ。ですから万博にぜひとも間に合わしていくようなお考えではなかったのだ。高架化が成り立たないので、また国鉄のほうの全額負担に近いいろいろな経費がかさんでくるので、問題にしなかった。ところが、先般のお答えの中にもありますけれども、建設省との話し合いがついて、全国六十カ所の高架問題が出てきて、十年間ぐらいの間にこれを解消していきたいというようなめどがついたということはお答えになっていらっしゃったわけです。ですから、高架という問題にからんで、ただ単にこの大阪の城東貨物線、外環状線をつくるという問題をお考えになっておって、この問題が消化されないからてんで手がつかなかったので、第三次計画の中に入れておったけれども、問題にせず、四十三年度予算からはずしてしまった、こういうふうな結論が出てくるのじゃないか、こうとらざるを得ないわけなんですが、この点について石田総裁はどういうふうなお考えをお持ちでしょうか。
  135. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 私はいま長浜君の答弁をよく聞いておりましたが、私にはよくわからない。こういう問題につきましてはよく速記録を見た上で、それでよく調べた上で御答弁いたしたいと思います。
  136. 沖本委員(沖本泰幸)

    ○沖本委員 総裁は速記録をとこうおっしゃいますけれども、いまの私との話のやりとりで率直にそのままお聞きになって、この外環状線はどうしても必要でしょう、早くしなければならないのじゃないでしょうか。また総裁として御経営になっているお立場から、これはもうかる、いままでの長年の御経験から、そういうようなものが出てくるのじゃないかと思うのです。それと万国博とをからめてお考えになって、これはどうしても大阪に必要だ、こういうふうな感じをお受けになりませんでしょうか。
  137. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 私は実は鉄道については全くのしろうとです。せっかくの御質問でありまするが、この点はひとつよく速記録を調査いたしまして、できるだけ早くお答えをいたしたいと思います。
  138. 沖本委員(沖本泰幸)

    ○沖本委員 それではしろうとして御研究いただいて、よく知っていていただきたいと思うのですね。そういうところが地元のほうの不満じゃないかと思うのです。東京だけに国鉄は力を入れて、大阪あたりはいわゆる通勤客の輸送に関して同じ条件が出ておるのに、少しも考えてもらえない。そして利用債とか何かは十分お取りになっている。どんどん言われる。東京では全然それはないというわけです。そういうふうな不公平はあり得ないというわけです。それでもあえてやりましょうということの熱意を示しているんだからというのが、地元のほうの考え方です。何とかして万国博という頂点を中心にして、これの実現をはかるのがチャンスじゃないか、こういうふうなのが大阪地元の二十七の市町村にわたる考えであるわけです。こういうことですから、この点をきょうひとつお耳に入れていただいて、お帰りになったら係から十分その御説明を聞いていただいて方針をきめていただきたい。できれば四十四年度の計画の中にもっと大幅に組み込んでいただいて——物理的と先ほどおっしゃいましたけれども、これは物理的ではなくて、全然計画していらっしゃらなかった。話し合いがついていく順序順序にこういうことができ上がりつつあるということしか言えないわけですけれども、この点十分総裁のほうで御配慮いただきたいことをお願いしたいわけです、黒字になるという点から。赤字のほうに力を入れていらっしゃるわけです。そういう点不合理である、こういうふうに言いたいわけです。じゃ、これは要望事項としてお願いしておきます。  それから小さい問題ですが、特に質問の機会があったらどうか頼むということを地元から要望されましたのでお願いしておきたいわけですが、これは担当の方にお願いします。  関西線の天王寺駅から平野周約二キロありますが、その間に杭全町の交差点があり、貨物の百済駅があるわけですけれども、ここに乗客のおりる百済駅を何とか新設していただきたい。これは奈良街道とそれから新庄——大和川線と美章園と、こういう主要道路が交差しておる地点に当たるわけです。また大阪市の東部市場という大きい市場があるわけです。こういうものとも関連がありますので、ぜひともここに百済駅というものを新設していただきたい、こういう地元の要望がありますので、お願いしておきたいわけです。できましたらこの点について御存じの方があったらお願いしたいと思います。
  139. 石田説明員(石田禮助)

    石田説明員 最後お話の中で、国鉄東京周辺輸送増強にもっぱらにして、大阪のほうはどうもあまり考えていないというふうにおっしゃられますが、これは違う。それはもう決して大阪と東京との間にそんな差別待遇を考えておりません。ただ、さっきお話しの大阪外郭の線路というものは、むしろどっちかと言えば、先行投資とは言わぬが、東京近所の通勤輸送のごとくにプレッシャーではない。われわれは決して東京と大阪を区別してないということと、利用債の問題でありまするが、私は大阪で利用債を持ってくださるということにつきましては、非常に感謝しております。その点に対しては東京都に対してもやっているのですが、いかんともすることができぬ。なかなか頑迷とは言いませんが、頑固にしてどうしても容認してくださらぬ。これははなはだアンフェアなように思いますが、できるだけのことはやっておるのでありますが、アクセプトするかどうかということは向こうの考えによることなんで、どうもはなはだ遺憾ながらできないので、その点はどうぞ御了承ください。
  140. 沖本委員(沖本泰幸)

    ○沖本委員 もう一問だけつけ加えたいのですが、先ほど御答弁ありました放出と永和間、これはぜひともやってやりたいということをおっしゃったのですが、これを延ばして、とりあえず新大阪から加美間、この間をできるだけ早い機会に着工していただきたい、こういうようにみんなが考えておるわけです。この点ぜひともお願いしたいと思います。  以上で終わります。      ────◇─────
  141. 大野委員長(大野市郎)

    大野委員長 次に、港湾に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。砂田重民君。
  142. 砂田委員(砂田重民)

    ○砂田委員 港湾運送事業の集約化の問題で、だいぶ時間が予定より過ぎておりますから基本的なことだけを伺っておきますから、どうぞ見坊参事官、御答弁も簡略に、基本的なことだけをお答えいただきたいと思います。  審議会答申に基づいて港湾運送の近代化、集約化の努力が続いています。そこで当委員会でも関係者である数人の方に参考人としてここに来ていただいて、そういう方々の意見も伺いました。その当時から私は、この集約化が公正自由な競争場裏で営業をしている私企業を対象にした措置でありますから、そういう行政措置であるので、その措置は無理があってはならない。段階的に考慮して進める。したがって、九月三十日に集約完了というようなことは、それは初めから無理だ、そんな考えはなさるべきじゃないということをお話もしておりました点が一点。  それから参考人の御意見を伺ってみても、審議会委員の中で港湾運送事業の業界を代表して委員になっておられる方、そういう方が審議会という場所で業界意見をそのまま率直にはどうも御説明しておられないような印象を、参考人意見の中からもわれわれは聞きとったわけです。私だけじゃない。この委員会に出席しておる議員みんなが、そんな感じを受けられたと思う。そういう問題もあり、港湾それぞれの特殊事情もあることですから、各港湾地方協議会のようなものをおつくりになって、中央の協議会なんてものよりは、地方の協議会を先に先発をして、その場所で集約の対象になる企業そのものから意見を十分お聞き取りになるべきだ、こういう要望もしてきたわけなんですが、こういったわれわれの考え方も含めて、その後の経過はどうなっているのか、九月三十日までの見通しはどう考えておられるのか、この二点をひとつまず伺いたい。
  143. 見坊説明員(見坊力男)

    ○見坊説明員 お答えいたします。  港湾運送事業の集約化につきましては、港湾運送事業法の改正が行なわれました以後、港湾審議会港湾運送事業の近代化、合理化についての方策につきまして諮問いたし、本年の三月に答申が出たわけです。それ以後、答申を受けたあと、ただいま先生からお話がございましたように、各港の実情に即してやるべきである、それと地方協議会をまず発足させて、地方意見を十分反映させるべきであるというお話もございました。さっそく、私どもといたしましては、地方局長会議を招集し、四月の末から五月の初めにかけまして、五大港各港ごとに地方の協議会を発足させました。その協議会におきましては、その港における港湾運送事業のいろいろな業種がございます、その業種の方々に委員になっていただき、実際のその港における実情を十分そこでお話いただく。もっとも、その前に集約化、近代化のPRが不足であったという御批判もございます。海運局を通して、その辺の趣旨につきましてはその協議会を通して十分にPRをいたしたわけでございます。協議会におきまして、各業種の方々が非常に真剣にその会合を重ねられまして、意見をまとめられたわけでございます。その中には要望もございましょうし、あるいはこうすべきであるという積極的な御意見もあったわけでございます。まあ意見がまとまりまして、一方中央におきましては、五月の半ばごろでございますが、港湾近代化促進協議会が発足をいたしました。これは財団法人でございますが、この協議会は、もともとこのような港湾運送事業の集約というようなことが、港湾運送業界だけの力ではとてもできない、どうしても取引関係にある利用者の方々の協力がなければ進めることができないということから、利用者側のほうも非常に積極的かつ協力的でございます。一緒になってその協議会をつくったわけでございます。その協議会におきまして、地方協議会の委員の方々が中央協議会の専門委員になりまして、日を何回か重ねたわけでありますが、各港ごとに中央の協議会においでをいただきまして、そこで各港の具体的な事情をお述べをいただいたわけであります。その後協議会のほうからも、運輸大臣あてに要望も出てまいりました。現在のところでは大体予定どおりいっておる、と申しますのは、個々の点についてはなお問題もございます、いろいろ考えなければならぬ点もございますが、業界の自主的な力によって集約をはかっていく、その積極的な努力を行なうということがまず第一であります。その動きと申しますか、そのこと自体は、われわれは現在も軌道に乗っておるというふうに判断いたしております。  そこで、先ほどお尋ねの第一点の九月三十日の件でございます。港湾運送部会の答申にもございますが、答申自体の中に、法令の要件を充足するのは当然である、それ以外に、さらにいろいろな将来あるべき姿というものを答申いたしております。この九月三十日というのは、港湾運送事業法の十六条の法定期限でございます。法律はもちろん守らなければなりません。答申の中でうたわれているいろいろな事柄につきましては、答申自体におきましても、各港の実情に即してこれを推進していけということをうたっておりまして、われわれもその趣旨に沿って進めておるわけでございます。したがいまして個々の具体的な問題につきましては、あるいは十月にずれ込むものが若干あるというのはわれわれとしてもやむを得ないというふうに考えております。むしろ九月三十日でもうそこで終わりというのではなくて、少しねばり強く近代化合理化のほうに努力をしていくべきである、それによって業界自体の力をつけていくということが第一であろうというふうに考えております。  大体以上でございます。
  144. 砂田委員(砂田重民)

    ○砂田委員 企業の側でもたいへんな努力をしておられる時期でもありますし、きょうが九月十九日で間もなく九月三十日、きょうのこの時点で業界の努力のあり方も考えれば、私のほうもいろいろな意見を申しにくいし、あなたのほうも御答弁になりにくいだろうと思うので、あまりこまかい具体的な点はきょうは私は質問いたしませんけれども、少なくとも九月三十日、法令の充足について、やはりこれは法律を守らなければならぬということは当然のことであるけれども、その法令の充足のしかたについては、将来の集約のしやすいような点も運輸省は考慮されるべきだと私は思う。平たいことばで言えば、九月三十日の法令の充足は、すいも甘いもかみ分けた法解釈をしながらこれを守らしていく、これはひとつ要望をしておきます。  それから、そういう業界努力に対して、中央の協議会でも、港湾運送事業の業界だけでやれることでもないということだったのだけれども、集約を努力していく業界に対して、近代化のためのいろいろな必要資金が当然考えられると思うのです。この点も、業界みずから、あるいは関係業界もこぞって協力をしていこうという体制のように聞いておりますけれども、やはり側面から国の何らかの助成があってしかるべきだというふうにわれわれは考えるのです。こういうことを、運輸省としてどういう考えをしておられるか、伺っておきたい。
  145. 見坊説明員(見坊力男)

    ○見坊説明員 最初の点でございますが、現在もう九月三十日が迫ってまいっております。各港におきまして、海運局は当然でございますが、各業界の方々も非常に真剣にこの問題に取り組んでおられます。したがいまして、まだ日もございますが、われわれとしても、そういう地方海運局をさらに督励いたしまして、その実情に合った措置を十分行なうように指図したいと思います。  それから、集約を行なうにあたって国の助成が必要であろうというお話でございますが、われわれも全く同感でございます。業界自体が自主的な努力で、これだけの近代化合理化の努力を払っているときに、国としてもそれを側面的に応援して、将来の港湾機能の向上のために手をかしてやるということは、当然考えていただいていいのではないかというふうに考えます。われわれといたしましても、来年度予算に、運輸省の重要項目になっておりますが、港湾近代化基金という名称で予算を要求いたしておりますので、今後これの実現に努力を集中してまいりたいというふうに考えております。
  146. 砂田委員(砂田重民)

    ○砂田委員 もう一つ、料金問題をどう見通しておられますか。
  147. 見坊説明員(見坊力男)

    ○見坊説明員 料金問題につきましては、現在港湾審議会の港運部会でも検討が開始されております。本年の一月二十二日であったと思いますが、港運部会の専門委員会におきまして、港湾運送事業の運賃、料金体系のあり方につきまして検討が終わりまして、一月二十二日に、港運部会に報告がなされております。それをさらに具体的に答申に持っていくために、港湾運送部会が開かれまして、その検討が進められております。早晩この答申審議会のほうからいただけると思っておりますので、その答申を受けてから、その線に沿いまして、業界と関係業者の方々との具体的な折衝に入るということに相なろうかと思っております。
  148. 砂田委員(砂田重民)

    ○砂田委員 私の質問は、そういう基本的なことだけ伺ってきょうは終わりますけれども最後に申し上げたいと思いますのは、さっきも申し上げたように、ちょうど時期が、質問もしにくければ答弁もしにくい時期だろうということは、私には大体わかるのですね。  そこで、九月三十日を過ぎてから、十月の何日かに、また当運輸委員会も開かれることだと思うので、九月三十日の時点での様子をもう一ぺん伺って、その時期に私の意見を申し上げたいと思いますけれども、そこでひとつ参事官考えておいていただきたいと思いますことは、港湾運送事業法の改正をしたときのあの国会の当委員会でのわれわれ委員運輸省側の質疑応答に照らしてみても、行政がかってに先行しないのだ、させないのだということが議論がしてあるはずです。この考え方はいまだに双方に生きていると思いますから、十月一日以降わずかなところで集約化からこぼれているとか、あるいはそういう業者もいろいろ出てくるだろうと思うが、これをどう措置していくのか、集約の問題と法律の充足の問題と二つの問題がありますが、こういうことについて十月一日以降のその措置のしかたについては、行政だけが独走をされたのでは困るという感じがするのです。そこで、十月に開かれるだろうところの運輸委員会でわれわれとまた十分意見交換をしていただいて、十月一日以降の措置について、それを終わってから考えていただきたいと考えるのですが、いかがですか。
  149. 見坊説明員(見坊力男)

    ○見坊説明員 いま非常に微妙な段階でございますので、いずれ十月一日を迎えまして、現在積極的に進められているそれがどのような、そしてまた個別的な問題としてどういうものが出てくるのか、その具体的な措置はどうするのかというようなことは、いまの段階でどうするということを私どもは申し上げることはできません。ただいまお話のありましたように、十月に入りましてからまた、各港の状況等も取りまとめまして当委員会の御意見も伺いたいというふうに考えております。
  150. 大野委員長(大野市郎)

    大野委員長 関連して福井委員から発言の要求があります。これを許します。
  151. 福井委員(福井勇)

    ○福井委員 港湾運送事業の新免についてのことでありますが、ここに新しい貿易港が指定されて従来よりも五倍も十倍もこの港湾運送の仕事がふえてきた、そういう場合に在来の業者は当然これを許可されているわけであります。他に例をとってみますと、自動車の新免を許可する場合に、その土地の在来の許可会社以外に、人口の増加だとか、それからいろいろの役所の規定における条項が整った申請がくると、整っていると自動車の新免はやはり許可せざるを得ないというようなことがあると同様に、港湾運送の新免について従来の業者のみにこだわらぬように、私が前段で申し上げた従来よりも格が上がった国際貿易港として指定されて、そうしてたとえばの話ですが、輸送量が五倍にも十倍にもなったというようなときには正当に考慮してもらいたい。これは抽象的なことでありますけれども、ここでそれは許可しますとか許可しませんとかいう答えを得るということは、これは無理な話ですが、見解を承りたい。それだけです。
  152. 見坊説明員(見坊力男)

    ○見坊説明員 新免、新しい免許を出すという問題につきましては、御承知のように港運業界自体が集約化の努力を重ねておるときであります。したがいまして、そう新免をどんどん出すというのでは、せっかく既存の人たちが体質を改善して力をつけていくという、そのことにブレーキになるおそれがございます。したがいまして、われわれとしては、原則としては新免は抑制という方針をとっております。しかし、ただいまお話がございましたように、貨物量が非常にふえる、あるいはその港において新たな需要が発生する、あるいは既存の業者ではとても処理できない特殊なものである、いろいろなケースが予想されるわけであります。それらのものにつきましては、ケース・バイ・ケースでこれを考えていく。それで港湾の機能自体がマイナスにならぬように、そこで港湾機能が十分発揮されるというような方向でケース・バイ・ケースで考えていきたいというふうに考えております。
  153. 大野委員長(大野市郎)

  154. 野間委員(野間千代三)

    ○野間委員 先ほど砂田さんから御質問があって、参事官として、慎重に取り扱っていくというふうなお答えがあったのでございますが、私どもも、たいへんむずかしい問題ですから、慎重に、かつ実情に合った方法をとりながら指導を進めてもらいたいという立場でおりますので、その件については別に異議はないのでありますが、ただ問題は、集約していくについて、いまやられておる中で多少集約をすることに阻害になりはしないかという心配をする点が二、三ありますので、この件についてだけ御見解を承りたいというふうに思います。  実は、御存じのようないろいろな経過がありまして、おそらく港湾運送事業者にとっては、将来をちゃんと見通していけば、それなりの決心ができ、集約の方向に進んでいくものと思います。いま、そういうふうに、気特ちとしては進んでいるというふうに思うのですが、しかし、それぞれの個々の会社とすると、その会社の歴史もあり、資本なり業務の内容なりがあり、しかも、特に京浜港の場合には、非常に複雑多様に免許が許可をされて、それぞれ店社が活動をしておるわけですね。それ自体にはもちろん問題があるのですけれども、そういう実態を踏まえながら集約することになってきて、いまその渦中にあるわけだけれども、これは予想以上にいろんな問題が発生をしております。この問題それぞれ、実は直接運輸当局の見解を承りたい問題もあり、また当局から出している指導のための通達であるとか、そういう問題についても、いよいよそれを適用する場合に発生をしてくるいろいろな問題があって、一つ一つ検討していくとたいへん多くの問題がある。したがって、それは時間もないし、また国会の任務でもなかろうというふうに思うので、今回は一応それは地区協議会なりあるいは運輸省当局と、今後できればきめこまかく——地方海運局に、もちろん地区協議会を通じて論議をしてもらうのだけれども、当局としても、そういう実態を見て、きめこまかく指導なり援助なり、あるいは指針を出すなりしてあげたほうがいいのじゃないかというふうに思いますので、そういうこまかい問題については、今回はまあ一応おいて、それぞれの努力なり論議なりに一応まかしていきたいというふうに思っておるわけです。  そこで一つ問題になるのは、十六条を改正をして集約をしようというので、集約の形をいろいろ考えましたね。それが施行規則の第十一条の二項で「密接な関係」というものはこういうものであるというふうに規定をされました。あれは十六条改正の去年の国会論議の際に、それぞれ知恵を出し合って考えたもので、その当時実は論議をしておけばよかったのだろうけれども、ちょっと手落ちをしておったのですが、株の持ち合いということをしたらどうか、株の持ち合い、つまり資本の系列を積んだらどうか。これが一番強いのじゃないか、集約としては。それができない場合は、長期契約を結ぶ。その長期契約の内容もなかなかむずかしいであろうから、その場合には、その背景として一〇%の株の持ち合いをしてみたらどうだという指導がされておるのですね。これも私は否定をいたしません。ただ問題は、株の持ち合いの場合に、結局株を下請業者が買う場合もある、それと元請業者が下請業者の株を買う場合もある。おそらく港湾事業者の株は上場されていないと思うのです。そうすると、評価は非常にたいへんですね。評価をする場合に低く評価をするというと、これは税金の対象になってくる。差額の分だけその会社に贈与ということになると思うのです。そうすると、その分は課税の対象になる、こういう問題が出てくると思うのですね。これはもう多少論議された機会もあると思うのです。したがって、集約をして、たとえば日産とプリンスが合併したとか、いろいろな合併の事態があるけれども、これは株の比率を出して、そうして相殺をしていって、税金の対象にならぬというふうになっていくのじゃないかと思うのですが、同じ国の法律に基づいて、施行規則の方法で実施をしていく株の持ち合いということであれば、当然これは税金の対象外にしてもらわないと、阻害要因になりはしないかと思うのですね。したがって、これはどういうふうにいま措置をされておるのか。これが第一点。
  155. 見坊説明員(見坊力男)

    ○見坊説明員 集約を進めるにあたって、株式を保有する。それが税金の面から阻害要因になるという御質問であろうかと思いますが、新たに株式を発行して、その株を元請なり、あるいは逆に下請が持つというような場合に、その額面と実際の評価との間に差額が生ずるという場合の課税の問題でございますけれども、私もあまり税金には詳しくないので恐縮でございますが、商法の規定によりますと、増資の場合の差額については、これを資本準備金に組み入れるということにいたしております。したがいまして、損益計算には出てこない。それから、法人税法におきましても、「資本等取引」ということばが使ってございますが、増資の場合の差額につきましては収益に入れない、また、損金にも入れないという規定がございます。したがいまして新株発行によって株の持ち合いをやっていく場合には、課税の問題は起きないというふうにわれわれは考えておるわけでございます。ただ、個人が持っている株あるいは第三者が持っておる株、特に法人等の場合には帳簿に載っておるわけでございます。それを買い取る。したがって、評価が相当高いものを買い取ったために、その売ったほうの会社に利益が生ずるという場合があると思います。これは、いわば資産を処分をした場合でございます。これの課税はあるいはやらざるを得ないのではないかというふうに思うわけでございます。それから、個人の場合には特定の場合を除きまして、と申しますのは、簡単に申しますと営業として株の売買をやっておるというような例でございますが、そういうもの以外は原則として所得税を課さないというような規定もございます。したがって、個人の場合にはそういう阻害要因ということも起こってこない、かように考えられるわけでございます。なお、その辺はもう少し検討させていただきたいと思います。
  156. 野間委員(野間千代三)

    ○野間委員 今度の集約で、増資をして、そうしてその株を持ち合いをするということはないと思うのですよ。したがって、現在の会社が持っておる株、あるいは港湾運送事業者というのは法人であるけれども、大体が社長が持っておるものですよ。法人と社長ぐるみで株を持っておる。それを持ち合いをするわけです。そうすると、結局はやはりどちらかの会社に、二分の一なり四分の一の株を買い取るという行為が出てくるわけです。そのときの問題なんです。ですから、参事官の言う後者の二つの例の問題ですね。この場合には当然額面どおりにやったのでは——やれば一番簡単なんですね。ですから、額面どおりに持ち合いをするというなれば、これはやり方としては簡単なわけです。しかし、それはAの会社からBの会社が株を買った場合に、額面どおりだけでは、これは税務署は必ず評価をします。評価をしても、安く買ったわけですからね。今度はその差額だけは利益になるということになってくるわけですね。そこで、その利益の分については、多少の減免措置はあるだろうけれども、課税の対象になってくる。そうすると、それは税金を払わなければならないということになるわけじゃないですか。
  157. 見坊説明員(見坊力男)

    ○見坊説明員 いまの御指摘の点は、あるいはそうではないかと思いますが、実際に株の持ち合いを港湾業界で現実に話が進められておるわけです。大体は新株のほうでいっている。また、われわれも海運局のほうにそういうふうに指導をいたしております。それによって税金がかからないというような指導もいたしておるわけであります。それと、これはその会社の間にいろいろな関係がございますので、一がいには言えませんが、最近非常に大きな会社が株を持つという話がありましたときには、これは額面で持つということになっております。そういうような例もございますことを御参考までに申し上げておきます。
  158. 野間委員(野間千代三)

    ○野間委員 新株で持つということになると、今度はその会社の現在の株数と、二分の一、四分の一で持ち合いをするそのときの基準は、そうすると、新しい株を加えたものの二分の一、四分の一になるわけですね。そうすれば、その新株の分をやりとりをして、いま参事官の言うような税法であれば、それはあるいは問題はないかもしれない、その部分はね。しかしそういうことで集約をする場合のやり方を全部新株でするということに、イコール直ちにどの会社もそうするというわけにはなかなかいかぬじゃないか。会社の規模にもよるでしょうし、それから増資の手続にもよるでしょうし、いろいろ問題が出てくる。したがって、現在の株でやるということになる場合も相当あるというふうに考えなければならぬと思うのですけれども、その場合には、やはりこれはさっきぼくが言ったように、税法上では税法の対象となるというふうになってきますよ。それはもちろん評価額になるであろう金額でやりとりをすれば出てこないでしょう。それは税金の対象にならぬ。しかしそうすると、これは買うほうでは相当大きな金額になる場合がありますね。たとえば二分の一なんかになると、これは千台の株単位ですから、相当高い。したがって、相当多額の株を買わなければならぬ。そうすると金額の面でたいへんです。そうなれば、理屈としては、そんな金を出して何の利益があるのか、ただ集約の系列をつくるだけではないかという理屈も生まれてきて、そういう理屈がまた集約の阻害要因になるというふうに私は思うのです。したがって、現在の株の、たとえば五十円なら五十円、百円なら百円の評価額で持ち合いができるというふうにして、それは評価をすればこれこれの差額が出てくるんだけれども、そういうものについては課税の対象にしない、減免の措置をするとかいうことにしておかないと、この問題は確かに資本系列を結ぶ場合の阻害要因になるというふうに思いますがね。
  159. 見坊説明員(見坊力男)

    ○見坊説明員 先ほど申し上げましたように、いまのところ私どもが聞いておりますのは、増資で措置をするという例が多いように聞いております。  なお、増資でいくのか、現在の株でいくのか、これは確かにいろいろな関係がございますので、一がいには申せないと思います。ただいま御指摘のようなこともあるいはあるかと思いますが、なお具体的なケースにつきましてよく検討して考えてみたい、こういうふうに思います。
  160. 野間委員(野間千代三)

    ○野間委員 まあそういうことになるのでしょうけれども、ぼくらのほうでは、税務署に相談をしてみる。そうすると、著しく不当に買われた場合には、これは差額については課税をさせていただきますという答えが出てくるのですよ。ですから、京浜のような場合に、たくさん業者がありますから、したがって、資本系列を結ぶいろんなケースが出てくる。やろうとする場合、たった一〇%の問題でも相当な金額になる。したがって、税務署に必ず踏み込まれるということになってきます。ですから、そういう事態があるということをまず考えていただいて、そして運輸省としてはやはりそれは課税の対象にできるだけならないようにしておかないと、大蔵省との関係があるでしょうが、これは阻害要因に明らかになると思います。ですから、これはいまお答えのように事態をもう少し検討して調べてもらって、そうしてそういう事態であるならば、これは大蔵省に折衝してもらいたい。税法上この税法を変えるというのは、なかなか実際問題としてはこれは無理ですね。贈与税なんですから、贈与税のうちこれこれについてだけどうこうするという法律を新しくつくらなければならないということになる。これはなかなかむずかしい問題ですよ。ただ国のほうでそういう指導をされるのですから、したがって現在の株の価額で取り合いをした場合には、これは資本の系列の関係でそうするんだからということで、これは何か大蔵省のほうで考え方が得られるかどうか。もしそれができないと、今度はそれぞれ五倍、六倍、七倍くらいだそうだ。船内なぞは、税務署に言わせるとそのくらいの金額で持ち合いをしなければならぬということになってくると、これは買うほうがたいへんですよ。したがって、この規則による方法はとれないということになります。したがって、法律が空文であったということになるのですね。これは当委員会としては昨年いわば軽率だったというふうなそしりを免れないが、しかしお役所としては、これは軽率だったでは済みませんからね。これはちゃんと御明示をいただきたいと思います。この点は以上であります。  それから次に、集約の具体的な問題なんですが、さっき言ったようにたくさん問題があるので、ここ二、三日整理をしてみたんだけれども、どうもこれは整理をし切れない。したがって、別の機会にそれらの問題はお伺いすることにして、まず原則だけひとつ。  集約の一番理想とするところは、答申にもあるように無限定一種に向うことですね。それぞれの企業が無限定一種の形態になっていくように集約するというのが一番いいんじゃないですか。
  161. 見坊説明員(見坊力男)

    ○見坊説明員 集約の目標は港湾運送業者がその経営基盤を強化する、港湾機能の発揮に十分の力を出すということであろうかと思います。  ただいま無限定一種になることかというお話がございましたが、港湾運送業者の中にはいろいろございます。一般港湾運送事業から船内、はしけ、沿岸の専業者、単独業者もございます。それらの人たちがそれぞれの業務を分担をして、全体の港湾の作業が行なわれておるわけでございます。それぞれの業種の事業の内容発展していくということがまず望ましい。いまの無限定になるのが望ましいという点は、限定一種の場合にそれは確かに言えると思います。ただ、これも答申にもうたわれておりますが、一つの方向としてそれをいっておるわけでありまして、およそ限定一種というものは無限定一種に必ずなるべきであるという意味で答申がうたわれておるのではない。一つの方向づけを答申はいっておるというふうに考えます。
  162. 野間委員(野間千代三)

    ○野間委員 いや、それはちょっとそういうお答えは不満なんだ。つまり、輸送体系が陸海、海と陸をずっと通じてくるということで、一貫的に輸送体系がつくり上げられてくることが一貫輸送という意味で、たとえばコンテナ時代などを考えるとこれがきわめて望ましいということ、そうでしょう。したがって集約したいということの一つには、もちろん業者が基盤を強化しなければならぬということは、それはありますよ。ありますけれども、それはそれぞれが、たとえばただ単独でそれぞれ幾ら基盤を強化したって、これは輸送の一貫体制ということにはなりにくいのじゃないかと思う。したがって、将来の方向としてそれぞれ系列的に沿岸、はしけ、船内というふうに一体にして港湾運送の責任がとれるという方向に業の集約をしてもらいたいというのが将来というか、基本的な今回の十六条改正の意義なんじゃないですか。
  163. 見坊説明員(見坊力男)

    ○見坊説明員 十六条で期待いたしておりますのは、おっしゃるように一貫責任作業体制の確立ということでございます。そこで、一貫直営体制まではいかなくとも、全体の流れを責任を持ってやる一貫責任作業体制、それを一つの目標にいたしておるわけでございます。
  164. 野間委員(野間千代三)

    ○野間委員 時間もありませんから、その論争は原則問題だから続けませんが、それはいろんな論議をして、そうして現実としてぼくが言っておるようなことをいま直ちにやったらここ一、二年でつくり上げることは困難だというような問題から、責任直営体制から責任作業体制というふうにやって現実に合うようにしようということ、そういう傾向になってきたのが経過じゃないかとぼくは思うのです。それはそれとして、そこで限一の問題が一番出てくるのだけれども、限定一種の業者が協同組合をつくって、そうしてやがて無限定に向かっていくというふうにいまやっていると思うんですよ。そういう方向で協同組合化などをやっておるわけです。そこで問題になるのは、協同組合をつくったら、それはやがて協同組合をつくったものが、まあ形はいろいろあるにしても最終的には——業者の中でもただ協同組合をつくったら寄り集まって仕事をして、あるいははしけを共同配船をしたり何かしている範囲でもってやっている程度であれば、何も協同組合化する必要はないのですよ。それは将来ちゃんとした大きな会社になれる、なるんだ——これはよく皆さんの言う日本の現在の港湾における状態がそれを希望している、したがってそういう会社になる、それで基盤を強化する、そうして責任を持つという、そこまで決心をしてその方向を見詰めていなければ、協同組合にしてもこれはしようがないんですよ。協同組合そのものにメリットがあるなら別ですよ。しかし、それはいまはないんですから、いまの方向は別に共同配船しなくたっていいんだから、したがってそういう方向を目ざして決心をして、運輸省のいう集約の方向に向かおうじゃないか、そうして協同組合をつくるならつくろうじゃないか、そうしてお互いに一緒の仕事をしながら一つの会社になれるようにお互いに努力していこうじゃないかという、そういう方向なり決心なりがついて、初めて協同組合ができるのだとぼくは思うのだ。ところが最近いわれておることに、単独の免許は、限一が限一として免許を持っておってそれ以外に、たとえばはしけなりあるいは船内なり沿岸なりの単独免許を持っている。しかし今度はこれが兼用は認めないのです。こうなっておるのですから、限一の分としては船内十五万トン、はしけ十万トン、沿岸十万トンのものを持っていなければならない。それ以外に単独のものを持っておる場合には、単独の分として別にきめられたトン数を持っていなければならぬ。それは兼用を認めないのです。こうなっていますね。したがって、単独の免許を持っている部分については、それはお返し願いたい、こうなっているようですね。これはいいですね。これは簡単にそうならそうと言ってください。
  165. 見坊説明員(見坊力男)

    ○見坊説明員 限一につきまして協同組合の、これは局長通達等でも言っておりますが、将来無限定になるということはこれは望ましい方向でございます。ただ協同組合自体としても、やはり実質的な内容が備わっていなければいかぬ。それが一つの中心になりまして、初めて将来無限定への発展ということも出てくるのではないか。この限一で単独を持っておるという場合に、協同組合をつくって、その単独が基準に合わないという場合にこれをどうするかという問題でございますが、これが協同組合をつくって下請関係に入るという場合にも、やはり関連下請業者の立場にも立つわけでありますので、その面についてはやはり法令上の要件は充足をしていただかないといけないということになるかと思います。以上でございます。
  166. 野間委員(野間千代三)

    ○野間委員 あとつかえているから、ぼくの言いたいことだけ言っておくけれども、一番いい例が、いまいったような限一で、これがたとえばいまぼくが言うようなぐあいに単独の免許はお返し願いたい、兼用を認めないんです、こうなっているから、これは原則的には港湾事業法の附則第二項でぼくが質問したときに、いまここにおられる河毛さんが答えたようにみなし規定で、既存の業者はそれでいいんです。新免によるものですとみなしてもらっているわけですね。ですから原則的には免許は返す必要はない、これは原則ですね。したがって返さぬでもいいんだろうと思うんですよ。いいんだろうと思うけれども、そうはいかないから、皆さんのほうで自主的に返しているわけです。返して、それで業者に言わせれば、海運局長から返してくださいと言われれば、それは返しますよ。正直に言って、返しますと言っておいたほうがいいでしょうね。そこでぼくは問題があるというのです。そこでその場合は、たとえばA、B、Cという会社がある。それが協同組合をつくった。その場合に、たとえば横浜の場合には全部はしけなんだ。単独を持っているのも、中に沿岸なり船内なりを少し持っている。それはいまは兼業を認めておるから、単独を持っているわけです。いまはみなされているわけですね。しかしやがてこれはみなしません、返してください、こうなるから返さなければならない。返しますね。返すというと、今度それは全部はしけだけになっちゃう。はしけの単独を持っている、基準に充足している、兼業しなくても。そうすると船内の仕事と沿岸の仕事、沿岸の仕事はこれは協同組合の仲間同士では下請に出せないわけです、単独の免許を持ってないのだから。Aのはしけの会社は船内を出したいのだけれども、これは同じグループの中に船内の単独を持っておるものはいないから、ほかの船内に出さなければならない。免許を持ってないところに出せないですからね。そうなるでしょう。そうするとせっかく協同組合をつくりながら、自分たちの足らない部分について、そういう相当程度の施設を持っている会社がありながら、兼業を認めないので返しちゃった。返しちゃったから、そこに下請に出せない、こうなるわけです。これは当然そう出てくるんですよ。それならばおたくで言うように、はしけ、船内の単独ぐらいのものを協同組合が持ったらいいじゃないか、こう言うんだね。それは新しい免許は、いまこちらの質問があったように、そう簡単にはくれないんですね、これは出すべきじゃないですよ、設備過剰になる。横浜には船内が八つ、沿岸が二十幾つか、ばかでかい会社がある。それが大体請け負って消化をしているわけですから、そうするとそこの協同組合に入らない、よその船内にいままでどおり下請を出さなければならぬということになる。そこで私が一番初めに言ったように、協同組合の中でお互いに仲よく仕事をやり合うという関係が、皆さんの言う単独の免許をお返しくださいという結果から出てくるんじゃないか、こういうんです。そういう現実だけ認めていただければいいんですよ、きょうは。返さぬでもいいんですという答えができないでしょうから。
  167. 見坊説明員(見坊力男)

    ○見坊説明員 もともとこの集約化というような、あるいは近代化、合理化の非常な大きな仕事といいますか、港運業界自体が非常に努力をされておる、そのことの発端も、免許基準に合わないような事業者が乱立をしておるというところから問題が出てきたというふうに思うわけです。原則的にいまの御指摘のような場合に、これを認めるか認めないかということをいまここで申し上げるのは非常にむずかしい、認めるということを申し上げるのはむずかしいというふうにお答えせざるを得ないのでありますが、これが具体的な例になった場合、その協同組合のつくり方、内容、取引関係あるいは将来の取り扱い貨物量の見通しであるとか、いろいろな問題がからまってくると思います。これも法令上の要請は、これは充足しなければいかぬという前提に立つのは当然でございますから、なお具体的なケースにつきましては、それぞれに実情に合うように十分考えていく必要があるんじゃないかと思います。いまの御指摘のような点も重要な点として、今後慎重に検討してまいりたいと思います。
  168. 野間委員(野間千代三)

    ○野間委員 御答弁としてはけっこうです。これは一例なんです。ほかにたとえば単独であるとか無限定であるとか、あるいは改貨であるとかという、それぞれの部門で同じような問題が、免許の問題に限らずたくさんの問題がありますから、ですから一番最初に言ったように、丁寧に慎重にいわばきめこまかく事情を、いつも言うように現実を見ていただいて、それに適切な指導をされる必要があるんだということを言いたいんですね。そういう意味に考えて、一番最初にお答えのように、九月三十日なんだけれども、なお引き続いてねばり強く努力をされるということでお答えがあったので、一応きょうはそれでお答えとしていただいておくことにいたします。      ────◇─────
  169. 大野委員長(大野市郎)

    大野委員長 次に、海上保安に関する件について調査を進めます。  この際、漁船第八昌徳丸の転覆事件について政府当局から説明を聴取いたします。河毛海上保安庁長官
  170. 河毛説明員(河毛一郎)

    ○河毛説明員 漁船第八昌徳丸転覆事件につきまして、御報告を申し上げます。  先日八戸沖で起こりました漁船第八昌徳丸転覆事件につきまして、概要を申し上げます。総トン数は八十四トン、乗組員三十二名のイカ釣り漁船第八昌徳丸は、本年八月二十八日八戸港を出港いたしまして、根室沖でイカ釣り漁を行なった後、推定でございますが、イカを約三十五トン積載いたしまして八戸へ向け帰港中のところ、九月五日二十三時ごろ、八戸港の北々東約十八海里付近で転覆沈没いたしております。九月十七日現在、三十二名の乗り組み員中救助されました者が五名、死亡十六名、行くえ不明十一名となっております。  本事件は、九月六日早朝、現場付近を航行中の汽船第二辰巳丸が救命浮環や応急いかだにつかまっていました乗り組み員五名と漂流中の六つの遺体を発見、揚収したことにより判明いたしたものでございます。このため、海上保安庁からは巡視船三隻、航空機二機、海上自衛隊からも航空機が出動、捜索を実施いたしました。同時に、地元関係者による第八昌徳丸海難対策本部も捜索、救助に当たっております。  次に、遭難の原因でございますが、これは目下調査中でございますので、現在のところはっきりしたことを申し上げるわけにはまいらないわけでございますが、一番問題になりますのは、船長あるいは漁労長という本船の責任者が救助されておりませんで、いずれも生存者から的確な事情聴取をすることがむずかしいというような状況がございまして、この原因究明は非常にむずかしい点があるわけでございますが、目下鋭意調査中でございます。  また、海上保安庁の調査によりますと、本船は定員が二十五名に対しまして三十二名乗っておりましたこと等、船舶安全法あるいは船員法の違反があったと考えられておる次第でございます。  以上をもちまして、第八昌徳丸転覆事件の概要についての御報告を終わります。
  171. 大野委員長(大野市郎)

  172. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 限られた時間でありますので簡単にお尋ねをしたいのでありますが、いま保安庁長官の御報告では原因がわからぬ、究明中であるということでありますが、いずれにしても事実は二十七名の漁船船員がいまだに帰ってこない、船は沈没しているという事実であります。だから、これにはおおよそどういう原因であろうかという、その推定はできると思うのですね。推定も何もできないことではないと思うのです。ですから、保安庁として、推定からいけばこれはどういう原因があったのだろうか、そういうことぐらいはわかると思うのですね。それは御発表いただきたい。
  173. 河毛説明員(河毛一郎)

    ○河毛説明員 ただいまの原因の点でございますが、まず一つ問題になります点は、漁獲物の積みつけ量及び積みつけの方法がどうであったかということでございます。これは先ほどの御報告でも申し上げましたように、約三十五トンのイカを箱詰めにいたしまして、——箱にいたしますと約三千五百箱になるわけでございますが、積んでおった、こういうことでございます。この量は、必ずしも本船の状況から見ますと著しく多い量であるというふうには言い切れないのではなかろうかというふうに一応検討をいたしておりますが、ただその積みつけ方法につきましては、甲板積みのものが約三分の一程度あったということがございまして、この辺にも一つどもが今後検討しなければならない大きな問題がある、こういうふうに考えております。
  174. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 いまのお話のことは、いわゆる積み荷の問題が原因ではなかろうか、そういう御推定でございますか。
  175. 河毛説明員(河毛一郎)

    ○河毛説明員 これも原因の一つとして検討されなければならないのではなかろうか、こう思う次第でございますが、あと当時の海象、気象状況から見まして、船の機能その他の点もさらに検討する必要があろうと存じております。
  176. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 船舶局、それじゃその船の機能について、何か原因になりそうなものがありますか。
  177. 高田説明員(高田健)

    ○高田説明員 積み荷のことにつきましてはただいま海上保安庁長官から申し上げられましたとおりでございまして、この船はもともとはサケ・マス漁船八十四トンでございます。エンジン、操舵設備その他、船が転覆をいたすことについて関係あると思われる性能につきましては、特に欠けるところはなかったとただいまのところは考えております。このことは、ちょうどこの船が八月二十四日中間検査を終わりまして、適正な整備状況であったという検査のもとに証書を出されておるところから申し上げておるのでございます。
  178. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 船員局としましては、いま保安庁からお話がありましたが、これは船舶局の関係でもあろうと思うのでありますが、人間が二十五名の定員に定員をオーバして乗っていた、この辺の重さの問題じゃないと思うのでありますが、あるいは公認手続をしていなかったというようなこと、それから、聞けば報酬というか、そういうものは全部歩合制というような問題、あるいはこれは船員局になるのかどうかわかりませんが、いわゆる船長、甲板長、機関長、こういう者も漁場に行けば一般の漁夫と同じようにイカをつるという作業をしていた。そういうことについて、この原因として考えられるようなものがこの中にあるのかないのか、いかがでしょう。
  179. 高林説明員(高林康一)

    ○高林説明員 船員に関します面から見ますと、やはり本件のようなイカ釣り漁業の場合におきます経営形態と申しますか、ないしはそれに関連いたします雇用形態というものが必ずしもはっきりしていない。いわゆる釣り子というものは雇用労働者という観念が比較的薄い。そういうようなことのために、船員手帳の受有ということが少ない。また八戸地区等におきましても、比較的船員保険の加入が、最近は相当進んでまいりましたが、非常におくれておるというような、いわば船員としての、近代労働者としての考えといいますか、そういう船員法に対する知識の不十分というようなことが経営形態の問題、すなわち歩合というような問題ともからみ合いまして、一つの大きな原因をなしておるのではないかというふうに考えております。
  180. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 あまり的確なお話じゃないのでありますが、時間もありませんから、私ども考えを基礎にしてお尋ねをしていきたいと思うのですが、いまもお話がありましたように、またある新聞の写真報道によりますれば、甲板積みというのが非常に多い。しかも、これは木箱に入れて積んである。だから、これはどっちの管轄になるかわかりませんけれども、保安庁かもしれませんが、甲板積みする場合に、その積みつけについていままで適切な指導をしたことがあるかどうか。あるかどうかだけ聞きたい。
  181. 河毛説明員(河毛一郎)

    ○河毛説明員 ございます。
  182. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 そうしますと、さっきお話しのようなことだというと、指導はしたが守られないということでありますか。
  183. 河毛説明員(河毛一郎)

    ○河毛説明員 いまの点をもう少し具体的に申し上げますと、八戸地区におきましては、乾舷確保、積み荷の荷くずれ防止等につきまして、昨年十二回、本年は七月までに九回の海難防止講習会を開催いたしております。また海難防止のしおり等も配布いたしておる次第であります。このように努力いたしておりますが、なかなか現場までは徹底しないという状況であろうかと存じます。
  184. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 現場まで徹底しなければ、この指導は絵にかいたもちということになります。  いままで幾つかあげられた原因の中で、結局過積みではなかった——これは生存者の意見でありますから、どの程度信憑性があるのか私はわかりません。これははっきりいって疑っていいと思うんです。疑ってかからなければ、これは安全性は確保できないと思うんです。生存者をまるきり安全の問題に対して信用することは、私は死んだ者に対する態度ではないと思うんです。だからこれは厳重に取り調べをしてもらいたいというふうに、一つ思います。  それから積み荷の積みつけの不良でありますが、これはいわゆるイカ釣りそのものの操業のしかたによると思うのですね。漁場に行って、さっきも話しましたように、船長も釣るというのですね。船長も釣る、機関長も釣る、甲板長も釣る、漁労長はもちろんのこと釣る。釣ることは別に差しつかえはないかもしれませんが、それじゃこういうふうに夜中に帰ってくるときに、操船に実際に責任者が当たる場合に、その責任者は一般の漁船船員と同様に疲労しておる。だからおそらく一つの原因として考えられるのは、操船の誤りもあるであろう。過労からくるところの操船の誤り。それから二十七名がいまだに帰ってこない原因は過労であります。それから膨張いかだが作用しなかったというが、効能がなかったというふうにこれに書いてある。いわゆる係留索が切断流失して、一人もこれに収容できなかったということですね。これは言うならば、何人かの専門家、二人か三人はいるのでありますが、その他三十名以上の者はいわゆる船には全く経験のない者が多い。漁船船員とはいうものの船員ではない。釣り子です。釣り子でありますから、専門の魚を釣ることは十分にわかっておる。しかし海の上において遭難というか危急存亡のときのいわゆる訓練というものは、全然できていない。そこに一つの問題が私はあると思うのですね。  さらには、この事態を起こした直接ではないが、もとをただせば、言うならば、さっき船員局長説明あったとおり、この漁船船員のいわゆる労働者の形態が共同経営者という形になっているということ。税務署もそういうふうに認定しているそうですね。漁船船員である者に事業税を課している。それは言うならば釣りざおを持って船に乗り込んできている、これはその船を借りて釣っている、だから共同経営者だから事業税をとる。これは実際は、もともとは事業税を課するような共同経営者じゃないのです。ただ全歩合制なるがゆえに、そういうところに追い込められているのです。いわゆる船主と同じような方向を向いてこれは走っていくわけです。だから今度もとれるだけとって帰ろうという、そこに無理があるわけであります。  ここは水産庁に一言聞きますが、私は約十年間漁船船員の安全の問題でこの国会でやってきたが、いまだかつて水産庁からは、安全操業について前向きの姿勢が出たためしを寡聞にして聞いたことがない。今度も新聞紙上であなたの意見を拝見すると、歯切れが悪いですね。魚をとることが目的なのか——これはもちろん目的でしょう。しかし命をかけての魚とりであるのかどうか。近代化も進めておられるようだが、この歩合制一つとっても、歩合制は否定することはできませんという談話を発表しておる。歩合制というものはさっき申し上げたように、海では死の道に通ずるわけですよ。おかでは神風タクシーなるものが出てくるのですよ。  それで聞きますが、先年来、数年になりますか、運輸省と共同通達によって、いわゆる給与の問題も含めて労働条件に対して指導要綱なるものをたび重ねて出しております。しかしイカ釣り一つとりましても、たとえばこの第八昌徳丸に対して全歩合制が今日あるというのだが、六割は固定給であるべしという通達はどんなふうにして徹底しているのか聞きたい。
  185. 安福説明員(安福数夫)

    ○安福説明員 お答えいたします。  たとえば、いま、新聞紙上で報道されました私の談話というものについてお話があったわけでありますが、必ずしも新聞紙上で私の意のあるところを全部伝えられていないように私は感じております。それをここで弁明するつもりはございませんけれども、歩合制度の問題につきましては私はこういうふうに考えておるわけでございます。経済の発展段階がいろいろあるわけでございます。したがいまして、経営あるいは資本と申しますか、それの漁業をつかまえる形というものは、それぞれの経済発展段階においていろいろな形態があるわけでございます。農業でも同じような問題があるわけでございますけれども、たまたま八戸の近くはいわゆる南部地方でございます。あそこの農地制度をお考えになればおわかりになると思いますけれども、終戦直後までいわゆる名子制度という制度があった。これは非常におくれた段階の経済制度だと思うのでありますが、それがさらに発展しますと、刈り分け小作という形に発展するわけであります。同じような事情が漁業の中にもあるということでございます。私の新聞の報道での意見の、歩合制が合理性があるのだという意味は、それぞれ経済発展段階において、そういう給与形態と申しますか、そういったものの合理性があるのだという趣旨で申し上げた。その趣旨の報道であるはずでございます。それで水産庁といたしまして、終戦後も労働問題について前向きに取り組んでまいっておるつもりでございます。ことに歩合制度につきまして、それ自身の合理性はあるにしましても、やはり経済発展段階との関係におきまして歩合制度というものは過渡的なものである、こういうふうに考えております。したがいまして、四十二年十一月でございますか、「労働条件改善の指導要綱」というものが、運輸省との間においていろいろ議論があり、それが実施されております。それにつきましても水産庁はそれをそのまま地方に流し、事あるごとに歩合制度の改善という問題について指導してまいったわけであります。八戸のいまの歩合制度の問題にいたしましても、たまたま本船につきましては全歩合制であった、こういうことが報道もされ、そういうようなものであったとは思っておりますが、かなりの部分が改善されておるというふうに私ども考えております。  ただ先ほど申しましたように、経済とか、そういった発展段階との関連があるわけでございます。ただ、ここで非常に不幸な事態でございますけれども、それには当然技術の発展、経済の発展、そういった問題が裏づけになりませんと、急激な給与改定というものには一つの限界があるという趣旨で申し上げているわけでございます。それで水産庁といたしましては、基本的にはやはりこの歩合制度というものは過渡的な制度であるということを前提といたしまして、将来これをなくすべきだ、近代的な雇用関係が現出できるような経済基盤を生産段階において打ち出したい、こういうことを鋭意長期にわたって検討してまいっております。それで八戸のイカ釣り漁業の実態につきましても、まだ大多数のものが旧態依然たる操業の実態であるということはわれわれも認めざるを得ない、こう考えておりますけれども、一割まではまいりませんが、かなりオートマチックな機械化設備を備えた漁船が現実に動いております。ここでは非常に雇用関係も近代化され、乗り組み員も非常に少数で操業し得る、そういう現実に非常に機械化されました漁船、それによる操業というものが、ある意味では給与問題まで含めました非常に近代的な操業の実態になりつつあるわけであります。ある意味ではすべての漁業についてそういう経済的な基盤あるいは技術的な進歩というものをわれわれ自身期待したいわけでございますけれども、むしろそういう問題からこの問題を考えますと、イカ釣り漁業が一番早くいろいろな面で近代化し得るのじゃないか、われわれ自身こういう技術的な自信がございます。そういう面につきまして、強力に指導してまいっております。  それと並行いたしまして、先ほどから指摘されております給与形態の問題なり、あるいは船員保険の問題なり、そういった問題を関係官庁あるいは関係団体を含めまして指導いたして、だんだんそういう改善の徴が見えておる、こういうふうに考えておりまして、われわれ自身必ずしも漁獲第一主義で水産行政をやっていく、そういうことじゃございませんので御理解願いたいと思います。
  186. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 ことばの上ではおっしゃるとおりが筋ですよ。あなたのおっしゃるように、機械化もしております。漁獲の機械化、これはもちろん必要でしょう。またあなたは雇用関係も近代化したと言うが、近代化しておりますか。全部歩合制だなんて、それで漁労長はもちろんだが、船長も甲板長も機関長も全部魚をとらなければいかぬというような体制は近代的でしょうかね。機械化、近代化をする前に雇用の近代化、操業の近代化をすべきだと私は思うのです。あなたもこの新聞をお読みになったでしょう、あなたのこの記事が出ておるから。この一番最後の文句ですね、これはこういうふうに書いてあります。「長男を失った勇さんはこういった。「オラたちには、海でもオカでも、あぶねえところしか、働き場所がねえ。安全に働けるように、お願いしやす」」これが具体的に実現されたときに初めて、私は政治であり行政であると思うのです。いままでのあなたの答弁ではちっとも——あなたのほう、水産庁ばかりじゃないですよ、お並びになっている役所すべて、この長男を失なった勇さんなる人の言うことばにこたえているかどうか、ちっともこたえていない。指導はしております、末端までは届かないかもしれません、経済の発展段階に応じて——そういうものは勇さんというおやじはわからないのです。経済の発展段階に応じて歩合制云々なんというのは、そういう理屈はわからないのです。安全で、めしが食っていけることだけわかるのです。むずかしい論議は国会でやらぬでもいいのです。経済学者にまかせたらいいのですよ。私はそういう意味で申し上げているのです。勇さんというおやじの気持ちを私は代弁したいつもりで、きょうはわかり切ったことだが言っているのです。  つい先だって、通常国会が終わる末期に、この委員会で船舶安全法を可決した。そのときは、あなたも御承知かもしれないが、幾つかの附帯決議がなされたのです。そのうちの一つだってやってないじゃないですか。ましてや、数年前からやっているところの、歩合給はなくすのだ、ちっとも努力してないじゃないですか。あなたの説明では一割か二割はそういうことになってきたという。第八昌徳丸そのものは全部歩合じゃないですか。そういうことを前向きで考えてほしいと思うのです。だから、通達は単なる指導条項だとするならば、法律改正によって、船員法の中にそういうものは全部入れなさい、全部歩合はだめだということを入れなさい。それで、取り締まりの要員が足りなければ増員しなさい。自分の命をみずから守る能力のない国民に対しては、法と政治の力で守ってやる以外にはない、手数はかかるが。帰りには自分もイカと一緒に沈没することもわからぬで釣らねばならぬ境遇というか、立場に追い込められた、それを救うのがあなたらの役目じゃないですか。何にもやってないと言われてもしかたがないじゃないですか。救命ブイは手持ちのもので、どこにあったかわからぬ、救命ブイはとうとうSOSを発信できなかった、どこにあったかいまだにわからぬ、発信しない。いわゆる救命いかだは一人も乗せることができなかった、訓練もしてない、そういうことじゃないですか。  だから、もう一ぺん簡単に聞きます。船員局として、定員以上に乗るような、そういうものを事前に労務官はチェックできないのかどうか。この、八戸かどこか知らぬが、この港だけでも一斉に点検をする用意があるかどうか。それから、入港してくる船を見て、積みつけを十分に良好にやっているかどうかの点検をする考えはあるかどうか。過積みであるかどうか、乾舷マークを点検する用意があるかどうか。それから、少なくとも船長とか機関長、漁労長、甲板長——漁労長は別として、こういう操船の責任者に釣らせるということでなくて、これらには十分な固定給を与える、そういう指導をされる考えがあるかどうか。さらには、準備が十分できないままにこの船は出したらしい。無線の登録もしない、船の名義人も他人のまま。船の名義が他人のままでイカ釣りができるかどうか、私は疑問があると思う、実際は。漁業権というのはどうなのか。船を借りてもできるのかもしれませんけれども、おかしな話だ。それから先ほどの報告の中には、船員法もやっと、まだ幾らか残っておりますが——船員法あるいは船員保険法の適用がまだ十分でないという。だれが拒否しているか。これは厚生省に聞きましょう。これらは少なくとも強制的にやらせるものだと私は承知している。そういうものができないとすれば、集中的にこの港だけでもいい、月一ぱいくらいかかっても、いま私が申し上げたようなことを徹底的にやる、そういう用意があるかどうか。一人一人、関係の方にお答えをいただきたい。
  187. 河毛説明員(河毛一郎)

    ○河毛説明員 ただいま久保先生より、今回のイカ釣り船の遭難に関しまして種々御指摘をいただいたわけでございます。私どもといたしましては、海上における安全ということを任務といたしておるものでございまして、いま御指摘の点はまことにごもっともなところであると考えております。先ほど申し上げましたように、これらの船の海難防止対策につきましては種々具体的には努力いたしておりますが、さらにこのような問題に対しまして私は現地及び部内に一そう徹底をいたしまして、このようなことが起こらないように一そう努力をいたしたいと考える次第でございます。
  188. 高林説明員(高林康一)

    ○高林説明員 八戸のイカ釣り漁業の問題につきましては特に問題があるということで、かねて東北船員地方労働委員会におきましても指摘があった点でございます。昨年八戸におきましてイカ釣り漁業の近代化促進協議会というものが労使及び関係官庁あるいは市等がまざりまして、船員法あるいは船員保険法、そういうような各条項の徹底ということにつきましていろいろ力を尽くして、たとえば船員保険等においても大部分が適用されるようになったというような成果を見ておりますけれども、ただやはり現状におきましては、まだ言うならば八割程度が入っておる段階ではないかと推定される点もございます。この点は海運局の支局におきましても、非常に人数は少のうございますが、これらの近代化促進協議会等と手をとりまして、とにかくこういうような事故がないように絶対にわれわれといたしまして力を尽くしてまいりたいと考えております。
  189. 高田説明員(高田健)

    ○高田説明員 火災防止あるいは乾舷マークの厳守ということにつきましては、船舶局では定期検査あるいは中間検査の機会に、船主、船長、船員に対してその意義を十分わからせるように指導させておったのでございます。なお救命設備の取り扱いなどについても機会あるごとに検査官がこれを説明してやるというふうに指導をしておりましたが、今回それが十分な功を奏しなかったことにつきましてたいへん残念に存じております。本船転覆につきましては、過積みであるかなかったかというふうな問題、疑いはございますが、もし過積みでなくてなお転覆したというふうなことが事実であるとするならば、船舶の性能についてさらに向上をはからなくてはならない、こう考えまして、今後もこのことにつきましては詳細検討いたしたいと思っております。とりあえず今回のイカ釣り漁船の遭難に対しましては、なお四百隻のイカ釣り漁船が毎日出漁をしておりますので、とりあえず東北海運局、北海海運局に対しまして出航前の立ち入り検査を海運局職員によって行なわせる、それから操船あるいは操船の中止あるいは救命設備、遭難信号発信器の取り扱いなどにつきまして、船員の一人一人に一そう徹底いたしますように指導をさせるというふうに一昨日両局長に通達を出しました。なおこれを本省も応援して励行させたいと思っております。
  190. 安福説明員(安福数夫)

    ○安福説明員 水産庁といたしましては、先ほど海上保安庁長官なりあるいは運輸省の方がおっしゃったその点につきましても、側面から組織をあげまして末端に徹底をはかりたいと考えております。  そのほかに先ほど来問題になっております歩合制度の問題、特に雇用関係の近代化、こういう趣旨には、先ほどもちょっと申し上げましたところでございますけれども、近代化し得る可能性のある経済的な基盤を強化するということを、私どもは水産庁の立場としてさらに強力に進めたいと考えております。これは先ほどの答弁と重なりますけれども、実態から申しますと、非常にオートマチックなイカ釣り機械を装備しました船は、昨年度の実績では数隻にすぎなかったのでございますけれども、本年度はその数倍の三十数隻がそのイカ釣り機械を据えつけております。非常に急激な伸び方を実際はしているわけでございます。かたがたそういった問題を踏まえまして資金的な援助と申しますか、資金的な融資その他をあっせんいたしまして、できるだけそういった経済的な基盤の強化、これは釣り子にとりましても経営者にとりましても飛躍的な収入の増加になるような非常に近代的な設備でございますが、そういった設備を強力にあそこにつぎ込む、そういうことによりまして経済基盤の強化、ひいては雇用の近代化、釣り子のいわゆる所得の安定といった方向に鋭意力を注いでいるのでございます。昨年から今年、さらに来年にわたりましてこの線は飛躍的に伸びてまいる、こういうふうに私ども考えておりますし、そういった線についての指導の徹底をはかりたい、こういうように考えております。
  191. 吉村説明員(吉村仁)

    ○吉村説明員 八戸地区のイカ釣り子に対します船員保険法の適用につきましては、昨年来漁業近代化対策協議会が発足いたしまして、その協議会の協議の線にのっとりまして漸次適用を促進してきたわけでありまして、現在六千三百三十五人適用しております。今後とも近代化対策協議会の協議あるいは船主、船員両側の同意を得まして船員保険法の適用を促進してまいりたいと考えております。
  192. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 船員保険課長、報告では六千三百三十五人、八戸ではイカ釣りが船員保険に入っているということだが、新聞によりますれば約八千人イカ釣りがいるそうです。あと千五、六百人入っていない。私は今月中にでも、人手も限度があるかもしれませんが、まず事故が起きたことから片づけていかなければいけないのじゃないかと思って、さっきからみんなに申し上げているのです。これはひとつ約束していただきたい。点検して、それで悪質な業者はどんどん水産庁と共同して免許証を一ぺん取り上げる、こういうことですよ。法律がどうあろうとも、行政指導がいかなければ強行手段でやるべきですよ。何とでも理屈はつくのですから取り上げてしまう、そういうことをやらなければならぬ。  それから船舶検査官、指導いたしますと言うが、点検しなさいよ。SOSのブイがどこにあるかわからぬで船が沈没しても出てこぬようでは、これは全然ものの用に立たないじゃないですか。  それからもう一つは、救命いかだはあったにしても、それを操作するだけの能力がなくしてそんなものをやったってだめですよ。SOSのブイもそうでしょう。あるところはわかったかもしれませんが、それを持ち出して操作する能力がなかったから、結局SOSはとうとう発信できないままに沈没していったということなんですよ。これは釣り子というか船に経験のない者がどんどん出かせぎに来るそうです。そうだとするなら、一定期間そういうものの講習をしてからでなければ乗船させない——何らか法律に抵触するでしょう。そうしたら、そういう者は資格がないから乗船させないというくらいの強行手段をとりなさいよ。これは約束してほしい。  それから水産庁の部長さん、あなたは今度は機械化すればイカもたくさん釣れるから釣り子にも利益になりますと言われるが、これはとどまるところを知らずなんです。歩合給だから、機械化してとれればもっととるということですよ。これは機械化したからプラスになるのではなくて、まごまごすると死の道に近づくかもしれぬ。それで持ってくれば豊漁貧乏で、いわゆる魚価は下落する。安定基金は解散したのですからものの用には立たない。新たなくふうを大衆魚については考えるべきだと思うのですが、何かやっておりますか。大衆魚の魚価安定について、それと漁獲について関連させて、そしてそれが安全につながるように持っていかなければ、残念ながら命を的にして安い魚を釣ってくるということになるわけです。その矛盾を解決するのが水産庁ですよ。運輸省じゃないですよ、こんなものは。運輸省協力いたします——協力するのは、運輸省のほうがあなたのほうに協力するのが当然だ。これは私はそう思うのですが、どうですか。
  193. 安福説明員(安福数夫)

    ○安福説明員 ただいまの私の答弁、生産官庁である水産庁の立場というふうに、あるいは片寄ったかと思いますけれども、私は先ほど、経営的な基盤の強化ということは、それを通じて当然雇用関係の近代化という、それにつながってくるという趣旨で申し上げたわけであります。先ほど来申し上げております。非常にオートマチックな機械をイカ釣り漁船に持ち込む、この経費はそれほど経営者としても負担になるような金額じゃございません。したがいまして、その技術が普及すれば非常に急速度に伸びるだろう。そうなってまいりますと、雇用関係が現在の歩合じゃなくて近代的な、むしろ固定給に非常に強く片寄ったような、雇用の典型的な近代化というものができるだろう。現在そういう機械を持ち込んでいる船については、そういう雇用形態が現出しているわけでございます。そういう趣旨で申し上げているわけでありまして、現在の歩合給をそのまま固定化していって、歩合給がそれほどいいものだという、こういう趣旨で申し上げているのじゃなくて、その歩合給を打破する一番基盤になるのが経営の強化であろう、そういう趣旨で申し上げているわけでございます。  それから、先ほど来魚価安の問題があるわけでございますけれども、御承知のとおり、水産庁の行政といたしまして、魚価安定基金がこの九月一ぱいで一応ふたを閉じる、こういう問題がございます。そのほかに生産調整組合法という法律がございまして、非常に乱獲におちいりまして生産者の手取りが非常に悪くなる、魚価が暴落する、こういうものについての一応法制的な手当てはいたしているわけでございます。ただ、その法律ができましたのはかなり前でございますけれども、その後におきます冷凍設備なり冷蔵庫なりあるいは流通の改善、そういった流通過程の合理化というものは非常に進んでまいっております。  この八戸のイカ釣りにつきましても、数年前であれば、非常な大漁であれば箱代にもならぬような価格にまで暴落する、むしろ赤字である、こういう大漁貧乏という現象を起こしていたわけでございますけれども、幸か不幸か、最近そういった流通関係の改善がかなり進んでおりましてイカの暴落——現在とられておりますサンマでもそうでございますけれども、非常にとれるにかかわらず生産地の価格というものは必ずしも暴落しない、こういうことでございます。そういう面で、さらに労働にヘビーがかかる、プレッシャーがかかる、こういう問題もございます。そういった問題については、さらに大きな需給という問題と、長い目でやはり考えていかなければならない問題だというふうに考えております。  ただ、さらに魚価安定基金、それにかわるべき制度、それをすぐに打ち出そうと思いましても非常に問題があるわけでございまして、それを補完するような流通改善事業についても、そう大きな金額じゃございませんけれども、将来の流通改善という問題を踏まえました試験的な実施を現在鋭意進めているわけでございます。そういった経験を踏まえまして、流通改善の問題にメスを入れ、生産者の所得安定、そういった方向へそれを結論づけるような施策を将来にわたって進めていきたい、そう考えております。
  194. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 漁政部長にだけ当たっているようだけれども、大体二年も過ぎれば、また栄転されて魚とは関係のないほうにみな行ってしまいますから、気は楽だといえば失礼だが、そういうことになるかもしれませんけれども、実際に考えてみれば、いつまでたっても同じようなことをこの国会で質問したり答弁を聞いたりするのは耐えられませんよ。だからお互いに、前向きで一つでも二つでも解決することが先決じゃないですか。それをどうもやらない。やれと言えば予算もないとか人がないとかいうことを言っているんだが、私は命の問題だからさしあたりやってみて、人手も金もこれだけ足りなかったいということを何で証明しないのかということです。あなたのおっしゃることも筋でしょう。流通機構の問題も、何年論議しているのですか。きょうは水産庁長官に出てきてくれといったら、ノリの問題でやっておるそうですね。ノリの問題なんか十年前に問題になって、そのときに卒業したと思ったらいまだに卒業していない。これは水産庁ばかりじゃございません。その犠牲がいつでも弱い労働者の上にかかってくるのではちょっとかわいそうじゃないですか、人情からいってもね。水産庁ばかりじゃなくて御列席の皆さんが、そういう生産点に立っている者をまず第一にこの際は考えてほしい。近代化、近代化といったって、あるいは労働力を云々というが、いわゆる漁業の面で労働力がだんだん減ってきますよ。なぜ減っていくか。全体的に減っていくのだけれども、ましてやいい若い労働力なんか来ないですね。来ないのはいまの前近代的な労働条件、そういう環境にあるからこそだめなんです。それを解決することがまず日本における漁業振興のもとであるわけですね。そういうことでひとつ考えてほしい。  それからもう一つ、これは水産庁と船員局に聞きますが、前の通常国会の末期に、いわゆる船員法の拡大について提案をして、それぞれ御答弁をいただいて、前向きで処理することになっている。十二月中にというぼくからの提言だから、まだ十二月までには間があるけれども、どうも思うようにいっていないようにも聞いている。水産庁が悪いのか運輸省が悪いのかわからぬけれども、まあ厚生省あたりはすなおにオーケーといっているから問題はないでしょうが、あるいはわかりませんけれども、いずれにしても両省の間がうまくいっているのですか。それで約束どおり諮問ができて答申を受けて、できるだけ早く、といえば来通常国会に船員法改正が提案される見通しはあるのですか。当時の水産庁長官、いまはかわりましたから思想も変わったかと思ったらば、やはり同じらしい、いろいろな回りくどいことを言っているが、結局船員法を拡大するか、そうじゃないなんといって、では何か名案があるのかといったら名案はないのですね。名案がなければ、いまの船員法拡大でこれは処理しておいて、そのあと名案が出たらやるべきだと私は思っているのです。これはどうですか。  これは再び確認するようなことでありますが、船員法拡大については、二十トン未満の漁船船員についても、これは適用拡大の方向で諮問する、その方針に変わりはないかどうか聞きたい。
  195. 高林説明員(高林康一)

    ○高林説明員 二十トン未満の漁船船員に対します船員法適用の問題につきましては、通常国会でも大臣から御答弁いたしましたとおり、運輸省といたしましては前向きの姿勢でこの問題に臨みたいというふうに考えております。  これに関します手続といたしまして船員法の改正を要しますけれども、その点についての船員中央労働委員会への諮問につきましては、来月、十月に諮問いたしますように、現在事務的な手続を進めておるという状況でございます。
  196. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 水産庁どうですか。
  197. 安福説明員(安福数夫)

    ○安福説明員 ただいま船員局長からお答えになったと同じ考えで、水産庁としても前向きで検討しているということであります。
  198. 久保委員(久保三郎)

    久保委員 それでは最後に、くどいようですが、もう一ぺん申し上げます。  さっき言ったように、全歩合制は近い将来なくする、少なくとも最低保障給はやるべきですよ、だれが何といったって。無理な操業を少しでもやめさせるような方向で指導しなければいけません。そうでなければ機械化しても何にもなりません。だからこれはぜひやってほしいし、それからいままでそれぞれの方に申し上げたことは、今月中には全部点検してほしいし、悪いところがあれば全部是正の方向で努力してほしい。  最後にまた言いますよ。おやじの勇さんの言ったこと、「オラたちには、海でもオカでも、あぶねえところしか、働き場所がねえ。安全に働けるように、お願いしやす。」  以上。
  199. 大野委員長(大野市郎)

    大野委員長 関連して野間君から申し出があります。野間君。
  200. 野間委員(野間千代三)

    ○野間委員 漁船の問題については久保先生からだいぶ詳細にお話がありましたわけですが、私のほうでは別の問題が一つあります。時間がないのできょうは問題の提起だけしておきます。次の十月の国会の際にあらためてその後の処置についてお答えをいただけるようにしたいと思います。  問題は、港則法第八条一項、つまり船舶を修繕をする場合には届け出をしなければならない、こうなっております。それから、同じく港則法三十六条の二で、港内で修繕を行なう場合、港内では相当な注意をしないで火気を取り扱ってはならぬ、こうなっております。  それから危険物船舶運送及び貯蔵規則第五条で、港外においても領海ではガスのあると予想されるような場合は工事をしてはならない、こういうふうにきめられておるのは御承知のとおりであります。  そこで問題は、まず第一は、ことしの六月二十九日に、横浜の海上保安部長あてに横浜市の野口久次郎という人と海附守という人が連名で告発をしております。その内容は、大分県大分市大分港で、昭和四十三年六月十日午後一時ごろから翌日の午後九時ごろまで、大洋船舶株式会社の美洋丸、トン数は約七万三千トン、これが原油七万二千トンを積んで港内で修繕をしているという問題であります。しかもそれは無届けでありますから、したがって港則法第八条、それから危険物等の規則の第五条、港則法第三十六条の二に明らかに——これはしかも火気を使っておりますから、明らかに違反をする。この工事は主機関のピストンを三筒修繕をするという、約三十数時間かかっておりますから、明らかに——何か内規によると二十四時間以内は対象外とするというようなことがあるようですが、それからいっても明らかに違反をしているというふうになります。これが第一点。  第二点として、二十四時間以内という内規があるようでありますけれども、その問題について、工事の内容によると、たとえば二十四時間で終わるにしても、相当火気を発生をしたり、使ったりすることになるので、二十四時間という時間で制限すべきかどうかというのが第二点として出てくる。  第三点は、同じ人がことしの七月二十五日に、これは東京地方検察庁に同様の事件について告発をしております。事件の内容は、四十二年十月十一日午後五時ごろから同じく十月十二日の夜にかけて、大洋船舶株式会社菱洋丸というのですか、トン数九万一千トン、これが原油八万九千トンを積んで、同じく三十時間ぐらい主機関の修理をしておる。これは海上保安庁の大阪の海上保安本部に問い合わせたところ、明らかに無届けであるということが明らかになっております。これは——法務省の方いらっしゃいますね。東京地検に告発をしたのだけれども、受け付けてあるが、全くその後の調査が行なわれていないというのが明らかであります。これは一年の時効だそうですからことしの十月十日になると時効になります。したがってすみやかに調査をして、時効中断の措置をする必要があるというふうに思います。これが第三点であります。  時間がないので、以上の事件の内容についていろいろ申し上げたいことがあるのですけれども、省略をして、海上保安庁並びに検察庁でそれぞれ本庁において、本部において事態を調査をして、すみやかに適切な処置をとってもらいたい。これはこの次には海上保安庁に——いまたとえば東京湾の場合に、十万トンのタンカーあたりが発火した場合に、はかり知れない事態になると思うのですね。そういう港湾の事故を防ぐために、船舶の特に修繕ですね、修繕のやり方について指導監督をしている内容など、あるいは届け出があるのかどうか、そういう等の問題について質問をする予定でおりますので、きょうはできませんから、そういう資料などもあればそろえておいていただきたいと思います。きょうは海上保安庁と検察庁に、私が申し上げた二点について精細に調査をして、適切な処置がとられるようにお願いだけしておきます。ちょっとその点どうなのか、その答弁だけいただきたい。
  201. 河毛説明員(河毛一郎)

    ○河毛説明員 ただいま御指摘のございました具体的な案件につきましては、早急に調査いたしまして、次の国会において御報告申し上げます。
  202. 吉田説明員(吉田淳一)

    ○吉田説明員 同じように、ただいまの件につきましては十分に調査いたしまして、そうして適正な処理をするようにということで現地に連絡をいたします。
  203. 大野委員長(大野市郎)

    大野委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後三時二十七分散会