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1968-04-12 第58回国会 参議院 予算委員会第四分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月十二日(金曜日)    午前十一時三十一分開会     ―――――――――――――    委員異動  四月十二日     辞任         補欠選任      田中寿美子君     北村  暢君      瀬谷 英行君     山本伊三郎君      山本伊三郎君     鈴木  力君      北村  暢君     戸田 菊雄君      市川 房枝君     山高しげり君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     主 査         宮崎 正義君     副主査         船田  譲君     委 員                 剱木 亨弘君                 西郷吉之助君                 中村喜四郎君                 八木 一郎君                 吉武 恵市君                 小野  明君                 鈴木  力君                 戸田 菊雄君                 山高しげり君    国務大臣        文 部 大 臣  灘尾 弘吉君        国 務 大 臣  鍋島 直紹君    政府委員        科学技術庁長官        官房長      馬場 一也君        科学技術庁長官        官房会計課長   斎藤 吉郎君        科学技術庁計画        局長       武安 義光君        科学技術庁研究        調整局長     梅澤 邦臣君        科学技術庁振興        局長       谷敷  寛君        科学技術庁原子        力局長      藤波 恒雄君        科学技術庁資源        局長       鈴木 春夫君        文部大臣官房長  岩間英太郎君        文部大臣官房会        計課長      井内慶次郎君        文部省初等中等        教育局長     天城  勲君        文部省大学学術        局長       宮地  茂君        文部省社会教育        局長       木田  宏君        文部省体育局長  赤石 清悦君        文部省文化局長  安達 健二君        文部省管理局長  村山 松雄君        厚生省社会局長  今村  譲君    説明員        文部省大臣官房        人事課長     諸沢 正道君    参考人        日本学校給食会        理事長      清水 康平君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和四十三年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 宮崎正義

    主査宮崎正義君) ただいまから予算委員会第四分科会を開会いたします。  分科担当委員異動について報告いたします。  本日、田中寿美子君、瀬谷英行君、市川房枝君、山本伊三郎君が委員を辞任され、その補欠として北村暢君、山本伊三郎君、山高しげり君、鈴木力君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 宮崎正義

    主査宮崎正義君) 参考人出席要求についておはかりいたします。  昭和四十三年度予算中、文部省所管の審査のため、本日の分科会参考人として日本学校給食会理事長清水康平君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 宮崎正義

    主査宮崎正義君) 異議ないと認めます。  なお、その手続等主査に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 宮崎正義

    主査宮崎正義君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
  6. 宮崎正義

    主査宮崎正義君) 昭和四十三年度予算中、科学技術庁所管議題といたします。  この際おはかりいたします。  政府から提出されております予算概要説明につきましては、口頭による説明を省略し、これを本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 宮崎正義

    主査宮崎正義君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  これより質疑に入ります。質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  8. 小野明

    小野明君 宇宙開発の問題について若干お尋ねをいたしたいと思います。  長官も御承知のように、昨年の十二月二十日に宇宙開発審議会から答申が出されております。この線に沿いまして施策がなされておると思うのであります。そこで、これまでも宇宙開発体制ということで種々論議があったところなんでありますが、要は、この開発体制の問題といたしましては、統一ある構想のもとに宇宙開発実現をする、こういうことがうたい込まれておると思うのであります。この点につきまして、現状を御説明いただきたいと思うのであります。
  9. 鍋島直紹

    国務大臣鍋島直紹君) ただいま御指摘のとおり、十二月二十日に宇宙開発審議会から内閣総理大臣に対しまして答申がございました。それの内容につきましては、御承知かと思いますが、いわば宇宙開発日本における一元化体制を整備する。その内容は、中枢部としての委員会設置、及びロケット及び通信衛星を打ち上げるための一元化した機構、及びそれの事務局、さらに長期計画として四十八年度静止衛星を打ち上げる、いわば段階的な計画というものがその内容でございます。そこで、その審議会答申を受けまして、政府におきましていろいろ具体化いたしましたところ、現段階におきましては、最初に一元化体制をしていくために、どうしてもその中心となります宇宙開発委員会内閣設置するということに踏み切りまして、今日、宇宙開発委員会設置法衆議院に御提出申し上げて御審議を願い、でき得れば速急にひとつ参議院におきましても御審議お願いするということになるかと思います。そこで、この委員会設置することによりまして、まず大綱、計画等を定めて進めていくわけでございます。そうして少なくとも本年度後半か来年度当初には宇宙開発審議会答申せられました通信衛星及びそれを発射するロケット実行機関というものを設置したいと考えております。それまでは文部省におかれます東大ロケット発射実験及び科学技術庁におきまする宇宙開発推進本部拡充強化、これは人員等もふえておりますので、それらのもの及び郵政省その他運輸省等におきまする通信衛星、あるいは航行、気象衛星等の御研究というものを連絡をとりながら本年はやっていただきまして、少なくとも来年ぐらいは一元化した機構にのっとって進めていく。そういうことをするにも、まずどうしても本年度中枢部となる宇宙開発委員会設置を速急に行なっていくという方針にいたしておるわけでございます。  大体以上のようなことでございます。
  10. 小野明

    小野明君 各省ともそれぞれこの実用衛星については計画があるようであります。この統一ある構想、あるいは一元化というものがはたしていいものかどうかという点につきましても、これは若干問題がなきにしもあらずと思うのであります。というのは、なるべく早くこの静止衛星を打ち上げていくということが目標でありますから、あながち一元化ということにこだわる必要はないと思う。しかし、これだけの膨大な予算がばらばらに使われるということもまた問題があるところでありますから、やはり連携強化、統一ある構想というのは私どもも賛成をせざるを得ないと思うのであります。そういった中で、今日先発的な役目を果たしております東大宇宙研でございますね、この東大宇宙研役割りというものがどういうものであるかということがやはり問題として見なければならぬと思うのであります。そこで、この東大宇宙研役割りというものは一体どんなものか、この点について御説明をいただきたいと思います。
  11. 鍋島直紹

    国務大臣鍋島直紹君) 東大宇宙研は非常に早くから研究を進められてきておりまして、いわば東大自身としての御研究の分野が進められております。ただ今日、文部省側を通じ、東大側とのいろいろな話し合いの中におきまして、あくまで科学衛星いわゆる研究的立場大学の本旨として貫いていく、そういうようなことでお話し合いを進めてきておりますので、今後におきましても、いわば一・四メートルのミュー衛星、しかも、それはあくまでも研究的科学衛星ということで、これを推進していくというようなことに大体お話をしておるわけでございますし、東大もそのようなことで御了承をいただいております。そこで、それらの御研究推進本部の中の今度は実用的な衛星の中に取り入れていく。日本自主開発という技術の中におきましてそれを取り入れて、密接な連携をはかっていく、そうして、場合によりましては実用衛星を打ち上げるための推進本部、あるいはそういった機構が今後できるかと思いますが、客員の研究員として来ていただくとか、あるいは連絡委員会、あるいは連絡として東大研究学者の方に、日本実用ロケット等のために、まあ専門員として来ていただくというような形において連携を進めていく、ただ東大としてはあくまで大学でございますから、御研究立場というものが主体になります。そこで、大体一・四メートルのロケットを、しかもその中心はあくまで研究科学衛星ということでお進めをいただくというようなことに大体なっておるわけでございます。
  12. 小野明

    小野明君 やはり静止衛星にどうつないでいくかということが問題であると思うのでありますが、答申にもありますけれども東大でやっておりますM4Sのロケット、これが成果基礎としというようなことばであらわされておるのでありますけれども、このミュー4Sというものが成功するかどうかということが、やはり一つのポイントになることは、私は間違いのないところではないかと思うのであります。私も専門家でないからわかりませんけれども、どうもこの点が成功するというような判断の上に立って、その次にNに継いでいく、こういう想定をされておるように思うのでありますが、東大所管が違うのでどうかと思うのでありますが、やはり先ほど説明ありましたように、いろいろな連絡ということがおありになるようでありますから御説明いただきたいと思うのですが、このミューSロケットというのは、はたして成功するものかどうか、この点の見通しを伺いたいと思う。
  13. 鍋島直紹

    国務大臣鍋島直紹君) 詳しくは局長から御説明申し上げてけっこうでございますが、現在におきまして、私が聞いておりますところによりますと、今日までいろいろ東大で御研究をいただいておるわけでございますが、今後、非常に慎重にやっておいでになりますから、いま漁業問題でちょっとストップしておりますが、本年度中には必ず打ち上げることができるかと思いますが、そういう事態におきまして、私は東大のM4Sが、今回におきましては成功すると信じておるわけでございます。また、ぜひひとつ成功さしていただかなければならぬというように考えておるわけでございます。
  14. 梅澤邦臣

    政府委員梅澤邦臣君) ただいま大臣が申し上げたとおりでありますが、実際、今年度中に上げることの計画文部省で持っておられますが、やはりその前に、私たちのほうも、四十五年の小規模な衛星打ち上げの計画の第一段、第二段、これには現在までの東大でやりました固体燃料技術を十分受け継ぎまして、そこの関係からすでに進めております。したがいまして、現在のわれわれのシステムデザインでやります中には、大部分は東大成果を組み入れながら進むという形を現在とっております。
  15. 小野明

    小野明君 また、これは科学技術庁所管であろうと思うのでありますが、四十六年ころを目標に、中高度に実用実験衛星を打ち上げ得るロケットを試作する、こういうふうに書かれておるし、また計画がおありになろうかと思うのでありますが、この見通しと、先ほどミューSロケットとの関係というものはどういうふうになるのですか。
  16. 梅澤邦臣

    政府委員梅澤邦臣君) 大体、現在私たちのほうが四十五年の小規模な、まず大学のと大きさは同じ一・四メートルでございますが、制御その他あるいは第三段目に液体燃料を積むというような形で違っておりますが、その計画を現在進めております。それでこれを四十五年に、低高度ではございますが、一個打ち上げまして、それでその成果に基づきまして四十六年にはもう一つ、一回り大きな中高度にまいります衛星に進めて、それの成果をとりまして、今度はそれに静止できる衛星を載せまして、それで四十八年度に静止する衛星を上げるという順序を考えておるわけでございます。
  17. 小野明

    小野明君 それで、中高度に実用実験衛星を打ち上げるロケットを開発するというのですが、この辺の見通しはいかがですか。
  18. 梅澤邦臣

    政府委員梅澤邦臣君) 私たち専門家でございませんが、大体のこの前の審議会での先生方の御意向からいきますと、やはり制御機構誘導制御と申しますか、その辺の技術日本としてはある程度足りません。したがいまして、その点の技術交流ということはある程度考えられると思いますが、私たち研究は、今度のインテルサットの問題その他から、どうしてもそういう現在の計画で進めていくのがタイミングとしては、最も、何というか最大限度自主技術を使っていく一番早い道ではないかということで、いまの計画を立てたわけでございます。したがいまして、ある程度の技術交流という点を考えましても、どうしてもいまの四十五年、四十六年、四十八年の計画に間に合わせていくということが、世界の諸般から見ますと、どうしても大事なことであるということで計画しております。
  19. 小野明

    小野明君 いずれも目標なり努力目標というような御説明なんでありますが、これが成功するためにはいろいろな隘路があると思うのでありますが、その一つの問題として、種子島射場の建設について地元の漁民から非常な反対が出ておるということが報ぜられておるのですけれども、この点は解決がついておるのですか、その見通しはどうですか。
  20. 鍋島直紹

    国務大臣鍋島直紹君) ただいま御指摘種子島射場の問題につきましては、種子島付近を漁場とする各県の漁業方々から反対が出てまいりまして、もうすでに一年数カ月発射することを中止して、そうして現在交渉中でございます。そこでその関係は、鹿児島、宮崎及び愛媛、高知といったような各県の漁民方々おいでになりますが、大体、宮崎県を除きまして話し合いがついてまいりました。最終的に宮崎県の漁民方々の御了承を得れば、これが一段落をつけるということになるかと思います。で、宮崎県につきましては、昨年秋の十一月下旬に、東大とあわせまして科学技術庁が窓口となって、宮崎県の黒木知事にあっせんをお願いをして、この交渉に当たり、しかも四十二年度予備費には漁業対策費として約三千万程度の予備費も用意をいたしまして進んできたわけでございます。それがだんだん進展をいたしまして、三月末の事態前後におきましては、宮崎県の漁業組合等についても、一組合を除いて、大体いわばその話に乗ってこようという段階にまでなり、三月下旬から四月に入りまして、ようやく宮崎県のほうも漁業対策全体として、県漁連でございますが、いろいろ今後における漁業対策費についての話し合いに応じようという段階に現在きております。そこで、まあいわば順次御了解もついてきておりますから、早晩私は宮崎県の黒木知事から、これらのことについての御回答があるかというふうに考えております。決してこれが悪いほうにはいっておりません。したがって、いまデリケートな段階でございますから、憶測を加えることは、あるいはいけないかと思いますけれども、そう長からざるうちにこの問題は解決していく、そうして御了解を得ることによって、まず種子島発射地点の整備、さらにそれに基づく発射実験というふうに、何とか解決できるのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  21. 小野明

    小野明君 大体、予算としてはこの補償関係にどれくらい計上してあるわけですか。
  22. 鍋島直紹

    国務大臣鍋島直紹君) 四十二年度予算に三千万円を計上しておりましたのを、今年度に繰り越しておりますし、この分を含めまして、さらにそれらの交渉の中に、今後三年、五年という計画的な漁業対策費政府としては組んでいく、その交渉が始まろうとしておるというところでございます。
  23. 小野明

    小野明君 これは先ほど局長からも御答弁がありましたように、東大ミュー4SからNロケットへ移っていくと、こういうことになりますと、やはり東大宇宙研に匹敵するような予算も計上されておるわけですね。その場合、東大宇宙研におきましては、いろいろ疑惑が持たれている点もあるわけですね。一体、研究主体宇宙研にあるのか、あるいはこの六十社にのぼるメーカー、これにあるのか。こういったとかくの研究計画の上から、あるいは経理の上からも疑惑が持たれている点があるわけであります。そういった点について、今回新たな構想で出発するわけでありますから、こういった反省に基づいて、いかなるこういった点における配慮をなされておるか、ありましたら御説明をいただきたいと思うんです。
  24. 梅澤邦臣

    政府委員梅澤邦臣君) やはり宇宙開発につきましては、努力目標でやっていく問題というのは将来を考えながら進めていくわけでございます。したがいまして、その契約の問題、あるいはその考え方からくる概算の立て方をもっと考えていかなければならない点等が非常に多うございます。それが一つと、それから産業界先ほど六十社とおっしゃられましたが、相当な産業界のお手伝いというものが必要でございます。その関係から、現在私たち産業関係で合理的にしかも効率的にいくということで、産業界としての結びつきについては、現在のところ経団連を仲に入れまして、十分業界の取りまとめのところは考えていきたい。それから、契約その他につきましても、今後私ども予算債務負担分を入れますと、約四十億の予算というところから考えましても、十分これからの基準、やり方、こういう点について検討中でございまして、十分な措置をとっていきたい、こういう考え方でございます。
  25. 小野明

    小野明君 この宇宙開発の場合に、日本学術会議もいろいろ意見を述べていると思うのです。その辺の意見をどう取り入れられようとしておるのか、その辺を少し説明をいただきたいと思います。
  26. 梅澤邦臣

    政府委員梅澤邦臣君) 先ほど号答申が十二月にありましたが、あのときも、約半数は大学の諸先生に入っていただきまして、十分の御検討をしていただきました。これから先、委員会を通していただきますと、委員会委員としては少数でございますが、この下に専門委員というのを設けてございます。そこで技術的内容等については、それぞれ専門委員会をつくりまして、そこで十分皆さん方の御意見が入るという形をとって進めていかしていただきたいと思っております。
  27. 小野明

    小野明君 大学先生ということではなくて、これが日本学術会議ということでまとまっておりますし、代表者もおるわけでありますから、その意見といいますのは、科学技術基本法につきましてもいろいろな面で勧告なり声明がなされておるわけですが、そういった面での科学技術庁配慮というものをお尋ねをいたしておるわけです。
  28. 梅澤邦臣

    政府委員梅澤邦臣君) 宇宙開発直接につきまして、まだそれほどの勧告は実際上学術会議からきておりません。しかし、今度の四月に総会がございまして、私たちの風聞しているところでは、宇宙の問題を現在取り上げておるようでございます。したがいまして、それが勧告なり何らかに出てまいると思いますが、これにつきましては私たちのほうは十分その勧告その他が出ましたときに委員会のほうで相談させていただきまして、十分それを配慮しなければいけない、こう思っております。
  29. 小野明

    小野明君 科学技術庁としても日本学術会議意向というのはやはり十分尊重してもらわなければいかぬと思うのですが、いままでも国の科学政策――技術がついているからとうも間違いやすいのですけれども、そういったものについて種々勧告なり声明が出されております。しかし、あまりにお聞きにならぬようなふうですね。この点についてひとつ長官の御見解を伺いたい。
  30. 鍋島直紹

    国務大臣鍋島直紹君) 実は科学技術基本法をつくります際におきましては、当初、政府側政府与党と申しますか、それと日本学術会議との間に、御承知のとおり、人文関係を入れるか入れないかというような点において大きな意見相違があることは事実でございますが、それ以外、科学技術庁といたしまして、現在ここにあるいは原子力開発平和利用、あるいは宇宙開発というような点につきましては、学術会議のメンバーの方もたびたびお入りいただいておりますし、また、会議としての御意見等にそう特に意見相違があるとは考えられません。ただ、いま局長が申し上げましたように、宇宙開発についても日本学術会議が非常に関心を持たれて、この四月にはそれらのことも議題になって、あるいは御勧告になりますか、あるいはよく話し合ってみようということになりますか、そこはわかりませんですが、科学技術庁の今日まで審議会答申を得て踏襲しております方針基礎に、学術会議の御意見を十分取り入れて、そうしてひとつ、これはやはり大型プロジェクトでございますし、役所、いわゆる官も、それから学者学術会議方々も一緒にならぬと自主開発ができないような大型プロジェクトでございますから、その御意見も十分取り入れて進めてまいりたいというふうに考えております。
  31. 小野明

    小野明君 それから最後に、ロット研究宇宙開発、こういった問題になりますと、やはりえてして軍事研究というものと結びつくわけですね。その点をやはり国民の福祉に結びついた平和路線実現を堅持してもらわないと、憲法違反なり、そういった懸念される点も出てくるわけであります。そこで、この点に関しまして長官の御見解をいただきたいと思うのであります。
  32. 鍋島直紹

    国務大臣鍋島直紹君) これはもうあくまで平和利用に徹し、それ以外のことはいたさないつもりでございますが、機構的にも宇宙開発委員会が国会の御賛同を得て近々発足することになりますれば、これはもう公開、しかも自主開発、そうして民主的な運営ということで、決して軍事利用というふうにいくことはない、かように思いますし、なお委員会設置されますれば、私も先般、新聞記者会見等で申し上げましたように、やはり宇宙開発基本法等も考えていかなくちゃならない。そうして早急にこれも研究もし、できれば早く制定をしていただくように進めなくちゃならない。その際には原子力基本法と同様に、そこに明確に平和利用をうたっていく。それまでには委員会において、そういう点においてのいろいろな御審議お願いをするということで、軍事利用とはもう明確に一線を画していくというふうにしてまいりたいと思います。     ―――――――――――――
  33. 宮崎正義

    主査宮崎正義君) 分科担当委員異動について報告いたします。  本日、北村暢君が委員を辞任され、その補欠として戸田菊雄君が選任されました。     ―――――――――――――
  34. 宮崎正義

    主査宮崎正義君) 審議を続行します。
  35. 船田譲

    船田譲君 小野先生宇宙開発関係をおやりになりましたので、私はきわめて簡単に、原子力平和利用関係について若干質問を申し上げたいと思います。  米ソがとうとう合意に達しまして、現在ジュネーブの軍縮委員会で草案の起草を終えまして、今月の下旬に開かれるといわれる国連総会にかけられる予定の核兵器の不拡散に関する条約通称核拡散防止条約に関しまして、わが国の原子力平和利用を推進する立場にある科学技術庁のお考えをお聞きしたいと思います。  まず第一点としては、平和利用軍事利用の区別であります。この条約には、非核保有国の軍事利用を禁止することを最も重点としておりますけれども、いま日本でも進めようとしています新型転換炉、あるいは高速増殖炉の研究開発上、当然プルトニウムの物理的な性質を研究したり、あるいは特にその臨界性の研究が必要になってまいりますが、それは必然的に原爆製造についての情報なり、技術なりの開発につながるわけでございます。また、濃縮ウラン生産工場の開設、あるいはその運転ということは、財政的な面を別にいたしますれば、そのまま原爆製造に移行できる可能性を持っておるものでございます。したがって、非核保有国が原爆をつくる意図があるかないかということだけが、理論的にいえば、平和利用か、軍事利用かの区別をする唯一の目安でございますが、元来、意図があるかないかという、範囲があるか範囲がないかということを客観的に確かめ得ることは非常にむずかしいと思うのでございます。また、もし軍事利用を完全に禁止するために査察をはなはだしくきびしくいたしますと、これは非保有国の平和的な利用まで抑制するという結果にならないとも限らないのでありますけれども、これについて長官、どのようにお考えになっておるか、お聞きしたいと存じます。
  36. 鍋島直紹

    国務大臣鍋島直紹君) ただいまの船田委員軍事利用平和利用の問題でございますが、これはもう日本は明確に、法制的な面からいえば、御承知のとおり原子力基本法によりまして平和利用に限っておる。これは御承知のとおりでございます。しかも、原子力平和利用を行なっていく場合、必ず原子力委員会においてその大綱、方針がきまっていく、その委員会の運営はあくまでも公開であり、民主的であり、しかも自主的な開発ということを中心にしていくわけで、三原則で進むわけでございますから、現実の問題として、その目的というものが明確であれば、実際においてこれが軍事利用に進むというようなことはまずあり得ない。またできないし、日本としてできる意図は持ってないということを明確に申し上げることが法制的にもいえるかと思います。  次に、査察の問題でございまして、この査察の問題は、日本の場合におきましては、特に原子力基本法においてその安全性、あるいはそのほかの点におきましてきびしく取り締まっておりますから、まずこれが軍事利用という形に進められることはあり得ないかと思います。ただ、それを意図的に、日本の場合じゃなくていった場合、どうしても国際原子力機構による査察制度をやっぱり行なって、そうして他の国がこれを行なわないように、つまり軍事利用ということを制御するように、どうしてもいかなくちゃならぬという点に問題があろうかと思います。特に、これは核拡散防止条約について日本原子力委員会がいっておりますように、査察は非核保有国について非常に厳重であって、軍事利用を持っておる国において、いわば自主的に平和利用の査察を受けるというような形になっておりますから、この点に一つの問題があろうかと考えます。しかし、問題としては、核爆発というものが現在軍事利用のみに重点的に置かれて、そうして平和利用の核爆発の区別が実は現段階においてはついていない、率直に申し上げて。しかし、観念的には平和利用もできるのではないかといわれておる段階でございます。この点は、査察においてきびしく進めていくとともに、今後における科学技術の、いわゆる原子力平和利用技術の発展を待たざるを得ないのじゃなかろうか、そういった点にございますけれども、少なくとも日本におきましては、その目的を明確にして原子力委員会においてこれをし、査察もし、安全性の審査もしていきまずから、軍事利用に転化するということはまずない。まずないというか、絶対にないということは言えるかと思います。
  37. 船田譲

    船田譲君 長官の言われますように、日本では原子力基本法をはじめとして、自主、民主、公開という原則がございますから、したがって、日本の場合は、軍事利用に転用されるおそれがあるという理由から、よけいな行き過ぎた査察を受ける心配はないと、こうお考えになるわけですね。
  38. 鍋島直紹

    国務大臣鍋島直紹君) 査察はとにかく国際原子力機構の査察を受けております上に、日本自身の原子力委員会の安全性の審査そのほかが非常に厳重でございます、これはそれ以上に。したがって、まずと言いましょうか、その審査ということから考えますれば、しかも法律できめられておることでございますし、両方の面か軍事利用ということはあり得ないと考えます。
  39. 船田譲

    船田譲君 この条約の三条に、いわゆる査察条項があるわけでございますけれども、非保有国は国際原子力機関によって、核原料物質、特殊核分裂物質に関しまして、それが施設の中にあると外にあるとを問わず、その生産、処理、使用、貯蔵等について査察を受けるわけでございますけれども日本は、これは従来から日米原子力協定、あるいは日英原子力協定等によりまして、保障措置を国際原子力機関に移管しておりますが、その移管しておる範囲以上にはこの三条で査察を受けるおそれはないというふうに解してよろしゅうございますか。
  40. 鍋島直紹

    国務大臣鍋島直紹君) いま御指摘のとおりに、現在、国際原子力機構の査察を日米、日英協定によって受けておるわけでございます。そこで、核拡散防止条約に賛成をしてその中に入っていきますと、それによる査察を受けるということになって、いわば、ある場合においては二重査察というようなことになるかと思います。で、少なくともこれは今後の問題として一元化していただかぬというと困るわけでございまして、ノーハウの問題もございますし、そのようにひとつ、これは外務省を通じて国連ほか実際の運営の面におきまして進めていかなければならないかと思います。詳しくはちょっと局長から。
  41. 藤波恒雄

    政府委員(藤波恒雄君) お尋ねの中に、核防条約ができた場合の査察と、それから現在の二国間協定による査察とで範囲が違うかどうかということについてのお尋ねがあったようでございますので、私から補足してその点申し上げますと、実は今度の核防条約ができますと、先ほど指摘ありましたとおり、すべての核物質につきまして査察があるわけでございますので、かりに国産のウランに対しましても査察があるという意味におきましては、現在の二国間協定よりは若干広くなるということは言えるかと思います。ただ、日本の場合は、御承知のように、大部分を外国からのウランによっておりますという実情から申しますと、大部分は同じ範囲であるということが言えるかと思います。
  42. 船田譲

    船田譲君 先ほど長官の御答弁がございましたように、この査察は核保有国のほうにとってはいわば平和利用の部分だけをボランタリーに国際査察に出すというだけで、それもこれは軍事利用関係があるといえば、故意に狭められるわけですが、その点、非保有国のほうは全部かかってきまずから、不公平だということは、これは非保有国全体の不平だと思うのでございますけれども、特に三条のところで、開発中の施設の設計図の査察、いわゆる設計審査というのがございます。それから核物質の量及びその移動の報告によってその加工のプロセスであるとか、あるいはそれを使っておる原子炉の熱核設計まで査察されてしまう。これは条約によりますと記録と報告というところにあります。それからさらに、国際原子力機関によりますところの生産研究施設内の核物質そのものの査察ということ、これは条約にはないけれども、当然IAEAの憲章に従いまして随時立ち入り検査というものを認める形になると思います。こういうようなことで、非保有国は、日本を含めまして、原子力計画全体が査察を受けるということになるわけでございます。そうしますと、国としての秘密はもとよりでございまするけれども、今度の原子炉等規制法などの改正によりまして、特殊核燃料物質までも民有が認められてくるわけでございますから、当然、民間の会社で、いわば企業努力によって商業上の秘密を持っておる、その秘密まで査察の名によって抜かれてしまうというようなことがあり得ると思うのであります。したがって、そういうことがないためには、非核保有国の発言権を国際原子力機関の中におきましても強大にいたしまして、行き過ぎた査察であるとか、あるいは極端にいえば便乗査察と申しますか、一種の合法的な産業スパイと申しますか、そういうようなことのないように、保障をある意味でとっておかなければいかぬと、こう思うのであります。それについて、日本側の発言権を強化する問題とか、人がどの程度国際原子力機関に参加して、そういうことを保障せしめるかという見通しについてお答え願いたいと思います。
  43. 鍋島直紹

    国務大臣鍋島直紹君) その査察の問題につきましては、ただいま船田委員が言われましたとおりのことを実は心配いたしております。これは一つの大きな非核保有国にとっての今後における大問題であろうかと思います。そこで、国連にいよいよ総会にかかってこれが審議されるという段階になるわけでございますが、どうしても非核保有国としては、日本原子力委員会もそれを明確に言っておりますが、どうしても発言権を大にして、そうしていまのような便乗査察、あるいは商業上の秘密にまで入っていって、それを他に利用するというような点の査察をどうしてもある程度防止していくということが必要でございます。そのためには国際原子力機構の中に、これも御指摘のございましたように、日本の発言権を大にしていくという点も必要であって、いわば一方において国連の審議の中における――これは外務省を通じてやっていただくわけでございますけれども、その審議の過程における明確なその点の限度をはっきりしておくこと、それから実行機関として国際原子力機構の中における日本の発言権を大にする、まあ幸いに、国際原子力機構の中に日本科学技術庁から査察の担当として田宮君が行かれることになったことは、一つの大きな日本の発言権の大をなすことだし、その意図を通じてやってくれるものと私は思います。したがって、今後の問題といたしましては、そういった外交的な面におけるいわゆる国連の場における審議の中において、いまの点を十分考慮して防止していくということと、国際原子力機構の中における実際の査察の場合に、おそらく基準がきまってまいりましょう。私しろうとですからわかりませんが、いろいろな基準があろうと思います。そういう点に、査察の実現の実際の中において、いま申し上げた意図を実現していくように進めていくということに尽きるのではないかと考えております。
  44. 船田譲

    船田譲君 次に、査察の有効性の問題なんですけれども、核物質は放射能がございますから、たとえば施設の中へ入っていって直接測定をするということは、まず不可能だと思います。特に発電の原子炉などは、運転しているところで量を調べていかなければならない。したがって、運転の何といいますか、記録から計算して推定していかなければならないということになると思います。したがって、当然一〇〇%の正確度というものが得られないのじゃないかと思うのですが、小さな原子炉の場合は問題起こりませんけれども、大型の原子炉の場合は、たとえば測定の誤差が何%かあっただけでも、その分だけで原爆が一つや二つはできるということにもなり得るわけでございます。しかし、そうかと言って、逆に原子炉を一々とめて、中に入っているものを出して見せろということをされたのでは、これまたこちらの発電その他の計画が非常に狂うわけでございますから、なるべくいまの段階で有効な測定の方法があるのかどうか、あるいはそういう努力をIAEAなどがなされておるのかどうか、開発の努力が、そういう測定技術が。そういう点ひとつお答えいただきたいと思います。
  45. 藤波恒雄

    政府委員(藤波恒雄君) いま御指摘の点は確かに査察技術上で非常に重要な問題でございまして、各国とも関心を持って研究もいたしておるところでございます。原子炉の中で分裂作用を起こしました燃料の中に、どのくらいのプラトニウムが生成されておるか、こういうことはいろいろな計算で出す、その計算が前提になる条件はおっしゃるとおり、原子炉の運転状況できまってくる計算でございますので、どうしても若干の誤差は出るということが考えられるわけでございます。その誤差をいかに縮めるかということ、それから中へ入れませんので、いかにしてそれを確認するかということが非常にむずかしいわけでございます。そういうことでございますので、原子燃料が精錬され、加工され、それから原子炉の中で使われ、取り出されて再処理工場で再処理されるという一連の工程のあらゆる段階で、計量できるところでは計量をいたしまして、それらの記録を精細に保存し、それを詳細に照らし合わせるという方法によりましてチェックをして、大きなミステイクでありますとか、あるいは誤差がないように努力する、こういうのが現状の方法である。したがいまして、大きな間違いということはないと思いますけれども技術上どうしても避けられない誤差というものはある程度ある。なお、こういう査察全般のやり方につきまして、もっと合理的な方法がないかどうかということにつきましては、現在、国際原子力機関自身でもいろいろ検討会を持ちまして研究いたしておりますし、関心を持ちます個々の国におきましても目下研究は続けておる、こういう段階でございまして、わが国といたしましても非常な関心を持って、それらの合理化を要請するとともに、われわれといたしましてもできるところは研究をしていきたい、こういうぐあいに考えている次第でございます。
  46. 船田譲

    船田譲君 時間がありませんので、簡単にあと二、三お聞きしたいと思います。  新しい日米原子力協定、それの裏打ちになります原子炉等規制法ですね、あの改正点につきまして一、二お尋ねいたしたいのですが、一つは、今度の新協定で米国から供給がきまりました濃縮ウラン百六十一トン、これはわが国の原子力発電計画をどの程度までまかなうのに足りるものか、簡単でよろしゅうございますからお答え願いたい。
  47. 藤波恒雄

    政府委員(藤波恒雄君) 百六十一トンでまかないますものは、今後五年間に着工を予定しております十三基の原子力発電所が、この協定の有効期間、すなわち三十年間に必要な燃料というものを積算したものでございます。
  48. 船田譲

    船田譲君 現在日本の国内、国外でわが国が利用できると考えられる天然ウランの量の先行きの見通し。それからそれにあわせまして、この間、原子力委員会の懇談会で計画をお立てになったようですが、わが国自身の濃縮技術の開発についての見通しですね。この二点について簡単でけっこうですからお答え願いたい。
  49. 藤波恒雄

    政府委員(藤波恒雄君) 最初の、わが国におけるウラン資源の問題でございますが、御承知のように、人形峠を中心といたしまして、ある程度の量は発見されておりまaが、その量は〇・〇五%くらいの品位のところまで拾いましても、せいぜい五千トン、イエローケーキという段階に換算して五千トン程度でございます。それに比べまして、わが国の今後二十年間くらいに必要とするウランの需要量は、同じベースに換算しまして九万トンくらいでございますので、品質、量とも国内ではほんの一部しかまかなえない。大部分を外国にたよらなければならない、こういう形でございます。それから、それを濃縮しなければ現在のような炉には使えないわけでございます。  さて、濃縮に関するわが国における研究はどうかという第二点でございます。現在、日本では技術が確立しておりません。外国からの導入も軍事秘密等で入ってきませんので、現段階においては能力ございませんが、将来に備えまして基礎研究は若干進めております。現在、動燃事業団におきまして遠心分離法を中心にし、また理研、メーカー等におきまして、拡散法につきましても、そのほんの基礎でございますが、部分的研究をやっております。しかし、濃縮につきましては、相当な研究期間、さらにそれが経済ベースでいけるかどうかということにつきましても、相当の問題がございますので、日本でいつみずから濃縮ができるかということは、まだはっきりいたしておらないと思います。
  50. 船田譲

    船田譲君 最後に、原子力というと発電利用が一番普及しているわけですけれども、発電以外の利用について、わが国ではどんなことが考えられているか、あるいは考えられるかということなんでa。たとえばイスラエルが、あれはアカバ湾岸に、フランスから技術提供を受けた原子炉による海水の真水化の施設をつくるとか、つくったとかという話を聞きましたけれども、わが国ではそんなことはどういうふうに考えておられますか。
  51. 鍋島直紹

    国務大臣鍋島直紹君) 原子力発電以外の原子力平和利用につきましては、すでに御承知のとおり、原子力の船の問題がございます。船の問題は本年度とにかく着工をいたしまして、そして昭和四十六年度一ぱい、七年度に入るかもしれませんが、原子力船をつくる。これは世界で三、四番目になるわけでございますが、要するに問題は、船舶用の原子炉の研究が、アメリカ、ソ連等は軍事利用をやっておられることでその技術がございませんから、どうしても自主開発をしていかなければならない、この点に今後における原子力船の問題が一つございます。そのほか、御承知のとおり、アイソトープの問題としては、医学とか、農学、工業、特に医学の場合におきましては放医研でガンに対する研究等はやっておりまaし、農学の面は新しい品種の育成なり、あるいは栽培技術についてアイソトープを利用して、その中心になってこれは相当進んでおるかと思います。また、工業部面におけるいろいろな計量、厚みをはかるとか、そんな点、あるいは食品照射という点がございます。これも日本では相当、世界において決して劣らないくらいの研究利用ができておるのではないか。第一位とは申しませんけれども、世界における、いま申し上げた点は相当進んだ研究も進めてきておるし、成果もあがりつつあると考えます。ただ、淡水化の問題と、それから地域暖房の問題が世界においていろいろいわれておるのが、新しい一つのトピックとしてございます。淡水化の問題につきましては、いま御指摘のアカバ湾の問題が一つございますとともに、アメリカではロサンゼルスの郊外に大きな原子力発電所、百八十万キロですか、それの原子力発電所を現在つくりつつあって、それに付設しまして一日の淡水能力六十万トンといわれる淡水化の技術が現に実現しつつある。まだ完成はしておりません。しかも、その料金は大体水道料金に相匹敵するのではないかといわれております。したがいまして、これは日本の発電とも密接な関連がございますから、たとえば福島県あるいは福井県等で、そういう点が今後の日本における大事な研究課題として進められてまいりますれば、淡水化の問題は近々実現化する可能性があろうかと考えます。なおそのほかに、原子力のいわば新しい都市計画、あるいは都市開発等ができてきた場合、地域暖房という点において、日本の場合におきましては非常に有望な原子力平和利用の問題になっていくのではなかろうか、これはまだ実現といいますか、研究の緒についたという点でございます。そういった点を進めますので、淡水化と地域暖房の点は、さらにひとつよく、研究段階ではございますが、実現化の方向へ進めてまいりたいというふうに考えておるわけであります。
  52. 船田譲

    船田譲君 終わります。
  53. 宮崎正義

    主査宮崎正義君) ほかに御発言がなければ、これをもちまして科学技術庁所管に関する質疑は終了したものと認めます。  午後一時まで休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      ―――――・―――――    午後一時九分開会
  54. 宮崎正義

    主査宮崎正義君) ただいまから予算委員会第四分科会を再開いたします。  昭和四十二年度予算中、文部省所管議題といたします。  この際、おはかりいたします。  政府から提出されております予算概要説明につきましては、口頭による説明を省略し、これを本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 宮崎正義

    主査宮崎正義君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  56. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 文部省に、国立学校における受託研究等の研究費の取り扱い等につきまして質問したいと思います。  いま大学で受託研究を行なっていると思うのでありますが、この受託研究の際に、それぞれ受託者が謝礼ないしはその研究費を受け取ったような場合にはどういう処理をするのか、まずその法的根拠を明らかにしていただきたい。
  57. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 事務取り扱いの問題でございますので、政府委員からひとつお答えを申し上げさしていただきたいと思います。
  58. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 国立大学におきまして外部から、たとえば検査をしてくれとか試験をしてくれとか、あるいはいまお話のございました一定の研究をしてくれとか、こういうことを委託いたしますが、この委託につきましては、形の整いましたものと、随時取りきめますものとの二種類がございます。形の定まっております定型的なものにつきましては、国立の学校における授業料その他の費用に関する省令、第十条の規定によりまして、その額及び徴収の方法等につきまして、文部大臣の承認を得まして受託規定をあらかじめつくらせることにいたしておりまa。で、随時外部から入ってまいります非定型的なものにつきましては、その受託の内容が個々によって異なりますし、かつ、あらかじめ相当将来長期間にわたりまして予測をするということも困難でございまするので、随時の非定型的なものにつきましては受託規定を定めていないのでございます。ただし、右のいずれの場合におきましても、毎年度受託に伴いまする経費は歳入予算と歳出予算に計上をするということにいたしております。で、歳入予算と歳出予算予算を計上をいたしまして、予算が成立いたしまするというと、その内訳に従いまして、歳入予算をあらかじめ大学のほうへ配賦をいたしております。で、大学のほうでは歳入が入ってまいります際に、受託契約を委託者と受託をいたします大学との間に結びまして、国立学林特別会計の歳入歳出を通しまして、適正に経理するというたてまえに相なっております。
  59. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 私の聞いているのは、そのこともありますけれども、その法的根拠は何によってそういう財政取り扱いを、会計取り扱いをやるようドなっているのかという、その根拠法規です。
  60. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 受託研究費につきましては、国が一定の契約を結ぶという行為を行ないまするが、一般の契約法規と同一の法的根拠かと存じます。
  61. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 この国立の学校における授業料その他の費用に関する省令、これはございますね。
  62. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) ございます。
  63. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 その十条をひとつ説明していただきたいと思います。
  64. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 国立の学校における授業料その他の費用に関する省令第十条は、この省令で授業料、入学料、検定料等は、額も定め、その徴収方法等もいろいろ定めておりまするが、こういった経費のほか、先ほど申し上げましたように、たとえば国立大学付属病院で行ないまする、診療を行ないましたときに入ってまいりまする診療料でございまするとか、あるいは病院等で一定の検査を行ないますときに徴収いたしまする検査料でございまするとか、この省令で金額あるいは徴収方法を定めていないいろいろな費用がございます。そういった費用に関しましては、先ほど申し上げましたように、あらかじめ一定額をきめ、あらかじめ徴収方法を定めることのできまする定型的なものにつきましては、文部大臣の承認を得てその規定を国立学校の長が定めるのだ、こういうことを第十条は規定いたしておるものと解釈いたしております。
  65. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 結局この受託研究費のその学校等の取り扱いは、この十条を土台にして取り扱われておるわけだと思うのです。ですから具体的に申し上げますと、東京大学や東北大学は、それらの取り扱いをとういう――制度的なものがあるのかないのか。それからその責任者ですね、責任者は一体だれになっているのか。この場合東北大学の工学部の建築学科、これは一体だれが責任になっているのか、その受託研究費の取り扱いについて。
  66. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 先ほど申し上げましたように、定型的なものと非定型的なものがございます。非定型的なもの、すなわち随時起こってくるもの、これは歳入予算と歳出予算に計上するというやり方でございますが、たとえば具体的にある学部、まあ工学部のお話ございましたので、工学部を例にとってみますというと、委託者のほうで何大学の何学部のどの教授、どの研究室に、一定金額である研究を委託したいと、おそらくそういうふうな意思が委託者のほうに出てまいろうと思います。これにつきましては、おそらく委託を受ける研究室、教官との間にまず事実上の話があろうかと思いまするが、まあ学部のことでございまするから、学部長の判断を求め、かつ、これは原則といたしましては、翌年度どういう受託が行なわれるかという見積もりが各学部から大学当局のほうへ上がってまいります。これを、大蔵省に文部省が概算要求をいたしまするおおむね一カ月くらい前に、各大学のほうから翌年度予算要求を文部省のほうに提出をいたします。その際に各大学のほうから、翌年度Aという委託者があって、どの学部のどの研究室でこれを受託せしめ.る、こういうことで概算要求の資料が文部省に到着いたすわけでございます。これに基づきまして予算要求をし、予算を計上する。  それで、そういう取り扱いになっておりまするが、一定の委託者から委託を受けるか受けないかという判断は、実体的にはその委託を受ける研究室あるいは学部で判断をすることになろうかと思います。ただ委託者と先ほど申しましたように契約を結ぶわけでございまして、契約を結ぶというのは、国立大学で申しますると、契約を結ぶ権限は事務局長に私のほうから委任をいたしております。したがって、受託契約の幾つかの例を私ども見ますというと、大体学部長が判を押し、それから事務局長が判を押していると、正規の契約締結権は、大学では事務局長ということに相なっております。ですから実体的な判断は当該受託者である教官の方がし、それをおそらく学部長の判断を求められて、大学当局の本部のほうに上がってくる。実体判断は教官ですけれども、それが一定額が妥当な金額であるかどうかという、そういう金額の見積もりのこと等もございまするし、契約締結の権限は事務局長である、このように御理解いただきたいと思います。
  67. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そうしますと、もう一回復習をしますけれども、実体としては当該の教官がいろいろと提携の下準備といいますか、そういうことをやっている。形式的には、しかし、そこで結ばれたものは必ず工学部長、最終的に事務局長、こういう形で受託研究契約というものが行なわれる、こういうことですね。それは間違いないですね。
  68. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) ただいま戸田委員の申されたことのとおりだと思います。で、先ほど申しましたように、翌会計年度予算要求を大学が前年度の大体七月末から八月ごろ文部省のほうに持ってまいります。そのときに大学全体といたしまして、その大学全体でいろいろな学部研究所がございますけれども、翌会計年度どれだけ受託研究費が入り、どれだけ受託研究費の歳出が必要かということの見積もりを文部省に一応提出する、こういうことになっていることを御了解願います。
  69. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そうしますと、受託研究契約というものは、必ず文部大臣が最終的には確認をすることになりますか。
  70. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 契約関係につきましては、これは契約の場合、それから金の支出の場合、これはそれぞれ文部大臣から国立大学の、契約で申しますと事務局長、支出面で申しますと経理部長に、文部大臣が権限を委任いたしておりまして、その事務局長、あるいは契約で申しますと事務局長が、全責任を持って処理をいたし、検査院の検査も受ける。で、文部省といたしましては、これに対する指導助言をいたしておる、監督をいたしておる、こういうことでございます。ですから、権限といたしましては、委任されておるというふうに御理解いただきたいと思います。
  71. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 きょうはあまり時間もありませんから、こまかく触れていくわけにはまいりませんけれども、そうしますと、経理部長に権限を付与した法的根拠は何ですか。  それからもう一つは、東北大学の受託研究契約、これ四十一年と四十二年でどれくらいありますか、実績をひとつ発表を願います。
  72. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 初めに実績のほうから御報告申し上げます。四十年と四十一年を申し上げます。昭和四十年度東北大学の受託研究は、総件数三十五件、受け入れました歳入が一千百八十八万三千八百円、それから歳出が一千百五十一万九千円、それから四十一年度が、件数にいたしまして十八件、受け入れました歳入が一千三十三万六千円、歳出が一千三十一万五千円。四十年、四十一年、一応以上のようなことに相なっております。
  73. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 その法的根拠は。
  74. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 先ほど申し上げましたように、文部大臣が国立学校等、各いろいろな部局を文部省所管で持っておりますが、これに対しまして会計経理等の取り扱いにつきましては、文部省所管の会計経理事務取扱規程というものを一つ持っておりまして、これで全般的な各学長の責務でございますとか、そういうふうなことを取りきめておりまして、もう一つ文部省の訓令でございまするが、文部省会計事務取扱規程というものを定めておりまして、この訓令の中におきまして、たとえば契約担当官が契約を結ぶほうで申しますと、別表第六というところで、国立大学につきましては事務局長にその権限を委任する、それから支出官、経理部長でございますると、この訓令の別表第四で経理部長に支出官の事務を委任する、こういうふうなことに相なっております。
  75. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 ただいまの会計課長説明をした内容によりますると、四十年で三十五件、それから四十一年で十八件、こういうことになっているんでありますが、この件数が実際の取り扱い件数とだいぶ違うと思う。この調査はどういう方法でやられたか、その内容、もっと正確なものが資料としてあるのかないのか、この資料が文部省としては完ぺきだというのかどうか、その辺ちょっと確かめておきたい。
  76. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) この資料は、特別会計の歳入予算に歳入として受け入れ、歳出予算として支出いたしました受託の件数並びにその金額でございます。おそらくいま先生お尋ねの背景に相なっておろうと思いますのは、四十年、四十一年におきまして、国立大学に対しまして外部からいろいろ研究費等が入ってまいりまするものすべてが特別会計の歳入歳出をくぐっておるのかという点につきましてのお尋ねかと存じますので、その点につきましてもちょっと補足して御説明申し上げたいと思います。  この点につきましては、さきの国会におきまして、特に外国、米陸軍等の問題等をいろいろ御審議いただいたところでございまするが、そういうことにもかんがみまして、昨年この問題は、実際に、先ほども申し上げましたけれども、外部の委託者と実際に接触をされますのは教官でございまするし、教官のこういう問題の扱いに対しまする認識を深めてもらわなければならない点もございまするので、文部省だけということでなくて、文部省と国立大学協会と、両者で構成いたしておりまする特別会計制度協議会というのがございまするが、特別会計制度協議会に、そういった大学に外部から入ってまいりまする経費の取り扱いにつきまして、文部省のほうから問題を提起いたしまして、この扱いを一体どのように改善してまいるかということを、特別会計制度協議会で御審議をいただきまして、その結果、文部省といたしましては、従来ややもいたしますると、外部からの資金の受け入れにつきまして、特別会計の歳入歳出に全部くぐっていなかった点もあるのではないか、この制度に国立大学の教官がほんとになじんでいただきまして、国立学校における研究、教育の経費に充てる目的をもって外部から受け入れる資金については、すべてこれを私的に経理することなく、公費の扱いにより処理するものであることという原則を、国立大学の全教官にも徹底し、こういつた点の扱いを改善をはかっていく必要ありということで、四十二年八月七日に文部次官名をもちまして、各国立学校長に対しまして通達を発したわけでございます。  で、その通達を発しまして、その趣旨に基づきまして、その受託研究費等の扱いにつきましても、できるだけの改善をはかっていただきまするように、事務的な補足の指導等も各大学に対して行なっておるところでございます。少し先走ったかもわかりませんが、おそらく東北大学におきましても、外部から入っておりまする受託研究費の全部が、はたして特別会計の歳入歳出に入っておるかどうか、これに対しましては、すべて公費の扱いとして特別会計の歳入歳出にくぐらせるべきものだ、その方向に向かいまして、積極的な指導助言を文部省としては現在いたしておるところでございます。
  77. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 文部省が次官通達その他で、非常に関心をもって指導をやっておられることについては、そのとおりだと思います。しかし、いまの会計課長の答弁ですと、必ずしもこの出された資料というものは信憑性が完ぺきだとは言えない、こういう回答になるかと思います。そういう確認でいいですね。
  78. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 国立学校特別会計の歳入に、いま歳出として支出いたしました受託研究費といたしましては、この資料に掲げましたとおりであり、先ほど私のお答えしたとおりでございます。
  79. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 具体的に申し上げますと、あなたの出した資料の中には、東北大学の工学部の建築学科の受託研究費は一さい載っていませんね。私の調査によりますと、四十一年で十二件、金額にして概算でありますけれども約二千数百万円あるかと思います。これは全然文部省に報告されておらないのですが、結果的に、私は、私的扱いはだめだというあなた方の指導内容とはだいぶ食い違っておる。こういう点について、何か内容を知っておるような実情はございますか。
  80. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 先ほども申し上げたとおりでございますが、私どもも、既往におきまする、こういつた外部からの資金との受け入れにつきましては、大学の長い間の慣行といいますか、慣習というものになれておった占mがやはりあったのではないかと率直に思っております。その意味で、四十二会計年度の後半から、先ほど申し上げましたような次官通達も発し、ただいま鋭意特別会計の歳入歳出に必ずくぐらせるのだということを促進いたしておるところでございます。それで既往におきまして特別会計の中に入らないで、私ども通常、別途経理と言っておりますけれども、私的な経理の行なわれておりました個々の案件につきましては、私ども子、の詳細はよく存じておりません。
  81. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 もしそういう事実行為があったとすれば、文部大臣、どういう御処置をおとりですか。
  82. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 先ほど政府委員からお答えを申し上げているような事情でございまして、既往におきましては、その種の問題のその種の案件の取り扱いについて、必ずしも文部省としましても正確に把握しておらない、あるいは把握し得ない状態があったと思う。これは率直に申し上げるわけであります。取り扱いが多年のしきたりと申しますか、そういうようなことで、正規のいわゆる会計をくぐらないままに取り扱われておった、こういう事実が決してなかったとは言えないと思います。そういう点を是正しようというので、昨年来、はっきりした筋を立てまして、取り扱いの適正をはかっていこうということになっておるようなわけでございますので、かつて過去において行なわれました問題について、これをどう処理するか、こう仰せになりましても、これをいまさらどう処理するというわけにもまいらないものがあろうかと思うのでございます。もっぱらひとつ今後の粛正を期してまいりたいと思っておる次第でございます。
  83. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いまの次官通達ですね、明らかに指導内容としては、そういう私的取り扱いは一切やってはいけない、こういうことを言っているわけでしょう。さらにその受諾研究費を私的に取り扱って、なおかっそういうものを私費に全部消費をした、そういうことになると、公務員法上どうなりますか、文部大臣
  84. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 文部省が取り扱いについて方針を定めまして、これによってやるようにということをいたしまして以後の問題についてそのような事態がありますれば、その事態の是正について文部省は指導しなければならぬと考えております。
  85. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いわゆる公務員法のたてまえ上はどういうことになりますか、そこをもっと具体的に。
  86. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 公務員法上と申しますか、先ほど申しましたように、本来、国立大学の教官の行なわれます研究に対しまして、外部から一定の研究が委託される場合においては、国の機関としてそういう受託の契約を結ぶ権限を持っておりまする事務局長が、正規の契約を結んで研究をやっていくというたてまえになっておるわけですが、いわゆる別途経理、私的に経理しておった過去の取り扱いはあろうかと思いますが、それはそういう観点から見ますというと、結局、個々の受託いたしました教官と、それに委託者との私的な契約というような形で実際に取り扱われているのではないか、そういった私的な契約的なことを、実際、国立大学の個々の教官が随時結べるかどうか、こういうふうなことに相なろうかと思いますが、これは、ただし国立大学の教官の服務と申しますか、ある意味では服務される場合のいわゆる良識の問題に結局過去においてはなっていたのではなかろうか、公の国の契約締結権限を個々の教官は持っておりませんので、そういうことになるのじゃないか、かように思います。
  87. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 きょうは時間もありませんから、具体的にはあまり触れることはできませんが、ただ問題は、さっき会計課長説明されたように、形式的には工学部長に行って、事務局長が最終契約者で、文部省に報告する、こういうことになるわけですね。それに対して、工学部長も知らない、事務局長も知らない、もちろん文部省に報告されておりませんから、資料には載ってこない、こういうことですが、これについてどう考えますか。まさしく違反でしょう、指導内容の。どうです。
  88. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 既往におきまして、おそらくそういう取り扱いがあったろうと思います。で、それは国立大学の会計につきましては国立学校特別会計法、昭和三十九年度に制定した特別会計制度で、ただいま国立学校の一切の経費を運用しておるというたてまえから申しましても、会計上もきわめて好ましくない。原則といたしまして公費の扱いをすべきだということで、先ほど大臣からもお答えいたしましたように、ただいま鋭意努力をいたしておるところでございます。
  89. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 具体的に各契約内容を話しておきますから、あとで詳細に現地を調べて、責任ある資料を提出してください。  四十一年分はここに載っているほかに、電通ビル、それから東京サーキット、それから大成建設と契約して二百万の受託研究費を受けております。それから大日本インク、それから第一生命、これは清水建設です。それから草なぎ体育館、小名浜煙突、神戸タワー、ドリームランド、それからランプポール、それから道路標識、パイプクレーン、こういつたものがそれぞれ研究を委託されてやっておる。それぞれ契約ごとに百万円以上の契約金をもらっております。  予それから四十二年度は、竹中工務店ドーム、それから電電公社のアンテナ、それから霞が関ビル、、一れは鹿島建設と契約をしております。それから貿易センター、こういうことで四件があったと思います。  まだ私も調査未了のものがありまして、もう少し数が多いようでありますが、確実なところはいま申したとおりであります。この受託研究をそれぞれ契約をされて、現地の建築科の当該教官と、それからそれぞれ業者との間に契約書をやって受託研究費をもらっておる。同時に、その研究は長いものになりますと三ヵ月ないし四ヵ月、それだけ研究をするわけであります。ほとんど学業はほっぽり投げて、そして官費を費消しているわけですね。結局研究材料はすべて学校資材を使っておる。相当な経費というものがその中に支出をされておる。そしてなおかっこの受託研究をして歳入になった経費は全然あげてこない、こういう実態があるはずであります。ひとつ文部省として責任を持って正式に調査をして、次回の文教委員会でも決算委員会でもけっこうでありますけれども、機会を得て詳細に問いただしてまいりたいと思いますので、それだけきょうは要求をいたします。  この点の善処方について、文部大臣どうお考えになりますか。
  90. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) ちょっとその前に。いま戸田先生のほうでお話のございました点、どういう経路から先生のほうは調査されたか、よく存じませんけれども文部省といたしましては、やはり国立大学事務局を通じて調査をする以外にすべがございませんので、調査に相当期間を要するかもわかりませんが、誠心誠意その実態把握につとめたいと思います。
  91. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) ただいま会計課長が答えましたとおりであります。十分取り調べてまいりたいと思います。
  92. 小野明

    小野明君 参考人出席お願いいたしておきましたが、学校給食会の理事長、お見えでございますか。
  93. 清水康平

    参考人清水康平君) 私でございます。
  94. 小野明

    小野明君 けさほどの新聞によりますと、学校給食会が強制捜査を受けたことが報ぜられておるのであります。これは全国の学童、生徒に関係をいたしますきわめてショッキングなニュースであるわけであります。その点についていかなる点の疑惑であるか、芦てういった問題を中心に若干御説明をいただきたいと思うのであります。
  95. 清水康平

    参考人清水康平君) 私、日本学校給食会理事長清水康平でございます。昨日、日本学校給食会の職員が収賄の容疑で逮捕され、昨晩おそく書類を押収されるに至りました。私といたしまして、まことに痛恨のきわみであり、遺憾しごくに存じておる次第でございます。この不祥事件によりまして、各方面に御迷惑をおかけいたし、また世間をお騒がせいたしました。これは全く理事長としての私の不明不徳、監督不行き届きの結果でございまして、まことに申しわけなく思っておる次第でございます。  事件の推移につきましては、司直の手によって厳正に徹底的に調べていただく、またそれを希望しているわけでございますが、私といたしましては、理事長をはじめ役職員全部がより一そう自粛自戒いたしまして、かかる不祥事件が絶対に二度と発生しないように、こん身の努力を払ってまいるつもりでございます。まことに申しわけないと思っておる次第でございます。  ただいま御質問の中に、どういう容疑で逮捕されたのかというようなお話がございましたが、司直の手によりまして、まだ何も伺っておりません。ただ新聞その他の情報を見まするというと、収賄容疑で逮捕されました職員が、日本学校給食会が学校給食用脱脂粉乳を寄託いたしておりまする倉庫との関係で、そこに贈収賄があったというふうに報道されておりました。検察当局、司直の警察当局からは正式にいまのところはお話もございません。  以上でございます。
  96. 小野明

    小野明君 監督不行き届きということはもちろんでありますけれども、逮捕された係員、この人がどんな仕事をしておったかと、こういうことは理事長としてはおわかりになるはずですね。ですから収賄の容疑ということであれば、その辺の検討といいますか、その辺があなたのほうではっきりしませんか、つかめませんか。
  97. 清水康平

    参考人清水康平君) 日本学校給食会の組織、職務を申し上げまするというと……。
  98. 小野明

    小野明君 いや、その人の担当の業務を言ってもらえばいいのです。
  99. 清水康平

    参考人清水康平君) 本人は物資課の次長でございます。物資課長が上におります。それ以外に会計課長と総務課長、総務課がございますが、本人は昭和二十八年ころから、財団法人日本学校給食会の当時から職員であり、三十年に日本学校給食会が特殊法人になりましてから、主として物資方面につきまして輸送あるいは買い入れというようなことについて従事しておったものでございます。それが次長といたしまして、課長を補佐する役目におるわけでございます。
  100. 小野明

    小野明君 この給食物資の輸送を担当しておったわけですか。
  101. 清水康平

    参考人清水康平君) 輸送、買い入れというようなものにつきまして、物資に関する、主として現在は脱脂粉乳でございますが、それの主管課が物資課でございまして、課長補佐と申しますか、私のところでは次長と言っておるのでございますが、課長を補佐しておる立場におるわけでございます。
  102. 小野明

    小野明君 この買い入れとしては、やはり脱脂粉乳が一番大きいものでございますね。
  103. 清水康平

    参考人清水康平君) はい。
  104. 小野明

    小野明君 この脱脂粉乳、これは輸入されるものなんでしょうか。   〔主査退席、副主査着席〕 どこからどれくらいの数量を輸入されておるものか、御説明をいただきたいと思います。
  105. 清水康平

    参考人清水康平君) たとえば昭和四十年以降から今日までの脱脂粉乳の輸入数量を申し上げまするというと、昭和四十年度におきましては五万一千七百九十八トンでございます。四十一年度におきましては四万七千二十ミトンでございました。四十二年度におきましては三万八千八百八十六トンということになっております。本年度、四十三年度につきましては、ただいまのところ二万五、六千トン、大体二万六千トンぐらいになるのじゃなかろうか、かように思っております。  それで、どこから買い入れるかという問題になりますが、これはグローバルに買うわけでございますけれども、実は昭和四十年までは、アメリカ農務省にありまするCCCという公社がございます。コモディティ・クレジット・コーポレーションと申しますが、その略字がかしら文字のCCCから主として特別安く輸入しておったのでございますが、四十年度までは。四十一年度に入りましてから、アメリカの国内事情、国際情勢から、アメリカから四万七千二十三トン入るところ九千トンしか買うことができませんでした。しかし私どもといたしましては、児童生徒に対して遅配、欠配はどうしてもなくさなきゃいかぬというので、グローバルにこれをやりまして、アメリカのほかにニュージーランド、フランス、カナダというところから輸入いたしておるわけでございます。それから四十二年度になりまするというと、安いアメリカの脱脂粉乳を期待しておったのでありまするけれども、残念なことに、四十二年度におきましては一トンも売ってくれない、一トンも買えなかったということでございます。したがいまして、また何と申しますか、グローバル、世界的に視野を広めまして、四十二年度におきましては、ニュージーランド、フランス、ベルギー、カナダというところから急遽購入いたして、需要を満たしてまいったわけでございます。四十三年度におきましては、まだただいま折衝中でございまするが、おそらく北半球、南半球数カ国から買うようになるのじゃなかろうか、かように想像いたしておる次第でございます。
  106. 小野明

    小野明君 学校給食はやはりなま乳給食をやってもらいたいという要求が、それぞれの父兄から非常に強いわけですね。それにもかかわらず、脱脂粉乳をあちらこちらから輸入をされておるわけですが、その理由というのは那辺にありますか。
  107. 赤石清悦

    政府委員(赤石清悦君) ただいまの御質問は、やはり私からお答えしたほうがいいと思いますが、御承知のように、脱脂粉乳から国内産牛乳に切りかえようという政策をとっております。しかし牛乳の供給状況からいたしまして、一拠に脱脂粉乳をやめて生乳に切りかえることは、今日の生産状況からして困難でございます。年次を追いましてその目的を達成する予定でございます。そこで、次第に生乳がふえ、脱脂粉乳が減る。それで脱脂粉乳が、一応の計画でゼロになるであろうという年を昭和四十五年度目標を置いております。もっとも、脱脂粉乳の必要性については別個に問題がございますが、一応大きなたてまえといたしましては、さように相なっております。
  108. 小野明

    小野明君 そうしますと、物資課の次長、逮捕された人の名前は何とおっしゃるのですか。
  109. 清水康平

    参考人清水康平君) 申し上げます。小松三郎と申します。
  110. 小野明

    小野明君 この人は、輸入する場合には、やはり検査が必要だと思うのですね、その買い入れの際の検査というものをやられておったわけですか。
  111. 清水康平

    参考人清水康平君) 外国から食品、ことに脱脂粉乳などを輸入いたします場合には、原則として検査機関は厚生省でございます。厚生省が、それぞれの食品衛生その他の法律に基づきまして検査をいたすわけでございます。それが原則でございます。  しかし、厚生省が、前の例もあり、いろいろな事務の都合ですか、検査を省略するという通知が私のほうにございます。しかし、たとえ検査を省略しても、大切な児童生徒の口に入るものですから、日本学校給食会としては、厚生省と農林省の共管である財団法人でありまするが、日本乳業技術協会、これは検査機関でございます、オーソライズされた。そこへ検査を委託いたします。厚生省は国であるものですからただでやりますけれども、乳業技術協会は実費を払いまして検査をいたします。そうして検査の合格したものを地方に配送して給食をしている、こういうことに相なっております。
  112. 小野明

    小野明君 そこの、農林省と厚生省の合同で検査されたものは、無条件で学校給食会が受け入れるわけですか。
  113. 清水康平

    参考人清水康平君) 厚生省と農林省の共管の財団法人であるところの日本乳業技術協会、これはなかなかりっぱな検査機関を持っておりますが、それは厚生省の検査が省略された場合でございます。そこでもっと検査されまして、そうしてそれに合格したものだけを学校給食用乳としてこれを地方に供給いたすわけでございます。
  114. 小野明

    小野明君 検査に合格しなかったものの処分というのは、やはり厚生省と農林省の合同機関の中でされるわけですか。
  115. 清水康平

    参考人清水康平君) 厚生省が脱脂粉乳を検査いたしまして、厚生省であろうと乳業技術協会であろうと、その中に若干品いたみがございます。品いたみの例をちょっと申し上げまするというと、船中でもって包装が破れたとか、あるいは船からはしけへ移すときに破れたというようなものは、これは飼料用、まあ動物のえさですね。その他、検査を受けますというと、やはり不適品が出てまいります。そういうものは、これは学校給食用としては売れませんものですから、検査した結果に基づきまして、農林省と文部省の承認を受けまして、そうしてこれをそれぞれの団体に払い下げるということをやっております。
  116. 小野明

    小野明君 それぞれの団体といいますのはどこどこなのか。あるいは小松という人は、そういった買い入れをやるわけですから、あるいは払い下げのほうについてもそういった仕事をされておったのかどうか、これをお尋ねしたい。
  117. 清水康平

    参考人清水康平君) 不適品の売却につきましては、やはり特殊法人でございまするので、日本国内の需給を見なければなりませんもんですから、かってに売るわけにはいかない。やはり農林省や文部省の承認を得まして、これは団体に売るわけです。その団体は農林大臣が指定した団体七つございますが、そういうところへ売っておるわけでございます。あるいはえさの団体というようなものに売るわけでございますが、売る場合の予定価格と申しますか、これは課長中心にいたしまして、物資課長中心にいたしまして、次長も補佐するでありましょう。それから関係の常任理事も調査いたしまして、これは部外秘でございます。そうしてそれを予定価格をつくりまして売却いたすわけでございます。
  118. 小野明

    小野明君 ちまたにこういううわさがあるわけですね。指定された団体の中か、あるいは外かよく判明いたしませんけれども、町の製菓業者に払い下げておる、こういう話も聞くわけですね。そうしてこの売却した金というものは一体どこにいったか、これが全然わからぬ、こういう話も聞くわけですが、その辺はどういうふうに処理がされておるわけですか。
  119. 清水康平

    参考人清水康平君) 不適品を処理する団体は、農林省がこの団体とこの団体に売ってもらいたいと言ってまいります。その団体の代表者を集めまして、いつの日か入札したい、数日前に説明会を開きまして、そうして売却いたすわけでございます。その団体からどういうところへまいりまするか、いま先生のおっしゃいましたのは、お菓子屋さん、これはえさじゃございません。えさをお菓子屋が使うわけはございませんから、これは不適品の中に、私先ほど申しおくれたのですが、動物に食べさせるえさとしての不適品と、それから厚生省で、乳業技術協会が給食では不適だけれども、一定の条件がありますが、一定の温度等与えて、二度くらい加熱して、こういう条件でもってやった場合には、たとえばビスケットとか、そういうものに使える、こういう判定がございます。そういうものはやっぱり農林省が指定された団体を集めまして、そこで入札をいたし、そうして売却代金というものは、今度は日本学校給食会におきましては、会計の所属になりまして、売却代金が入ってくる場合には、物資経理の収入金として処理されるわけでございます。
  120. 小野明

    小野明君 そういった払い下げ等にも、この小松ですか、この人が関係をしておることは事実ですね。
  121. 清水康平

    参考人清水康平君) 物資課長の補佐でありまするから、その限りにおいて関係していると申し上げて差しつかえないと思います。
  122. 小野明

    小野明君 その間において、先ほど申し上げたような飼料として払い下げる、それが一定の温度を与えて加工して、それから先は人間の食べるものにいっていない、理事長はこういう保証はできますか。
  123. 清水康平

    参考人清水康平君) いま先生のおっしゃいました飼料ですね、これはそういう団体じゃありません。飼料団体がございます、えさだけを買う。これはやっぱり農林省が指定した団体だけでございまして、これは加熱も何も関係ございません。これは飼料会社へ売ってしまうわけです。  それからいまの加工用ですけれども、ビスケットは熱を加えますが、そういうものはこれは別でございまして、これは農林省、厚生省に厳重な視格がございまして、そうしてまた厚生省にも届け出るということでもって処理され、厚生省も検査をいたしておるわけでございます。ですから、その心配はまず万ないと私は思っております。
  124. 小野明

    小野明君 問題は違いますが、行政監理委員会で昨年でしたか、日本学校給食会というものが整理の対象にされたことがあると思います。その際に非常に強い反対運動が起こったのでありますが、これはあなたを中心にして起こったんですかどうですか。
  125. 清水康平

    参考人清水康平君) 日本学校給食会理事長としては、この問題に関心を持つことは私は当然だと思います。しかし、これは各方面、父兄ということもございますし、あるいは小学校長会等もございますし、いろいろの団体があるわけでございます。でありまするから、主としてこれを民間としてやりましたのは、これは日本学校給食会存続強化推進全国会議ですか、団体が二十七、八くらい集まりまして、その人たちが実情を訴え、民間の運動を進めてまいったのでございます。
  126. 小野明

    小野明君 それじゃこれで最後ですが、今回のような不祥事件が起こりました原因、これは理事長としてどのようにお考えなんですか。
  127. 清水康平

    参考人清水康平君) この問題の推移につきましては、先ほど申し上げましたとおり、私は司直が徹底的に調査していただくということを願っておるわけでございますが、それについて二度とこういうものが発生しないように、打って一丸となって、反省自粛をやっていくつもりでございます。ただ、現在の時点におきまして、これはよくわかりませんけれども、私の今日までの感じでは、収賄、贈賄とかいうよう問題が、組織上どこから出てくるであろうかという気持ちを持っておったわけです。にもかかわらず、昨夜家宅捜査で書類が押収され、本人が逮捕されたということで、これはやはり私の知らないことであります。入札にしろ、あるいは倉庫に対する寄託にしろ、小松自身が一人でもって何するような組織になっておらないのでございます。一人でもってこれを恣意にこれをきめることのできないような組織になっているにもかかわらず、どうしたことかと思って、実は疑っているわけでございます。しかし、司直の手が伸びたということは、相当の私はあれがあるんじゃなかろうかと思います。つらつら、私理事長として考えまするのには、やはり率直に申しまするというと、今後の推移を待たなければなりませんけれども、率直に申しますというと、その職員は物資関係があまり長かったんじゃなかろうか、相当人間としてもよく強勉しますけれども、私は本人を信頼していた、それが私の不明のいたすところでございますけれども、物資関係が非常に長かったんじゃないか、やはり適当なときに配置転換を行なうべきじゃなかろうかということと、もう一つは、分掌規程その他は再検討して、責任の所在を明らかにするとともに、一人でもって気がつかないうちに独断専行が行なわれないように、もう一度検討すべきじゃなかろうか、こういうふうに思っておる次第でございます。
  128. 小野明

    小野明君 どうもあなたのは初めと終わりが違うわけですよ。一人ではできないはずだ、あとは、独断専行はできないように直す、こう言われる。最初のことばを聞きますと、一人でできないということは何人か共同でこの仕事をやっておった、こういうことになりますが、あなたはほとんど監督が行き届いていないようですが、その辺はどうですか。
  129. 清水康平

    参考人清水康平君) 私は、率直に申し上げまして、脱脂粉乳その他につきましても、寄託であるとか買い入れであるとかいう問題を一職員でもってはなし得ない組織、それによってやっておるわけです。でありますから、昨日そういう逮捕をせられるまでの間はおかしいなと思っておったのですが、逮捕ということに踏み切られてみると、私ともが知らない――私の不明でございますけれども、私の知らないところに何かあったに違いない、かように思うわけでございます。そうなると、本人が一人ではできないことになっておるけれども、まだ掘り下げていってみて、分掌規程その他を検討しなくちゃならないのではなかろうか、かように思っておるわけでございまして、いままでどおりやっていくというよりも、さらに検討してまいるほうが――検討してみなければわかりませんけれども、ただ私がいままでやっておったところによりますと、一人でできないようになっております。しかし、こういうことができたということは、やはり組織上の欠陥、もちろん人間ということもありますし、申すまでもなく私の監督不行き届きということもありますが、全部洗いざらいこれを検討してまいりたい、こういうふうな意味合いで申し上げた次第であります。
  130. 小野明

    小野明君 赤石体育局長お尋ねいたしますが、やはり監督権限というのは文部省にあるわけですけれども、この学校給食会の監査というのはどのように行なってきたのですか。
  131. 赤石清悦

    政府委員(赤石清悦君) 補助金その他国費が出ております。さような関係で、やはり定期的な監査もいたしております。しかし、これは事業全般をおおうものではございませんが、文部省といたしましては、御承知と思いますが、現在の学校給食会法でかなり特殊法人に対する指導監督をせなきゃなりませんから、法規の命ずるところで、ちょっとくどくなりますが、役員の任命、解任、それから事業計画の承認、それからただいまお話出ました供給物資の相手方の制限――変なものに供給物資がいかないようにするとか、かなり広範な権限を持っております。さような権限を行使しまして、もちろん学校給食会は自主的に正しくやっておると思いますけれども、なお一そう文部省の目から見ましてそういう法律上の監督指揮権によってやっていくつもりでございます。ただいまお話の出ましたようなことは、私どもちょっと気がつかないような事例でございますが、さような事例にまで従来私どもが目を通しておったかどうかとなりますと、なお私どもとして考えなければならない点があるような感じがいたします。
  132. 小野明

    小野明君 大臣お尋ねいたしたいと思いますが、いま局長の御説明のように、特殊法人が非常に多くあるわけです。その中でも学校給食会というのは、学童生徒全般に関係をする問題でもありますし、今回の強制捜査というものが与えた影響というのはきわめて私は大きなものがあると思うのであります。この点について大臣の御見解を承りたいと思います。
  133. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 特殊法人日本学校給食会の職員が収賄の容疑で逮捕されたという事実は、私も昨晩の新聞で承知したのであります。まことに残念なことであると思うのであります。御指摘のとおりに、この法人の性格から申しましても、目的から申しましても、何と申しましても教育関係の団体でございます。また、全国の皆さん方がそれぞれ関係を持ち関心をお持ちになる性質の団体だと思うのでございます。それが、このような事件のために、学校給食そのものに対しましてもいろいろとまた御心配になり、あるいは給食会に対して不信の感を抱かれるというふうなことになりましては、ほんとうに申しわけのないことと言わざるを得ないのでありまして、私も心から遺憾に存じております。この容疑の事実につきましては、現に捜査当局の手で取り調べが開始せられたわけでございますので、私は、いま理事長も申されましたが、文部省としましても、この容疑事実について徹底的にひとつ糾明をしていただきまして事態を明らかにしていただきたいと思うのであります。そしてまた、このようないわゆる不祥事件が起こる余地のないように文部省としましては今後の指導監督の上におきまして一そう留意をしてまいらなければならぬと、かように存じておる次第であります。また、日本学校給食会に対しましては、これまた申すまでもないことでございますけれども、このような事件を起こしたということについて、深い反省を持って自粛自戒、これを繰り返すことのないようにと厳重なひとつ注意をいたしますと同時に、将来の監督の徹底を期してまいりたいと存じております。
  134. 小野明

    小野明君 重ねてお尋ねをいたしたいと思いますが、大体脱脂紛乳の給食という問題については、父兄の間に非常に反対が多い、早く生乳給食をしてもらいたい、こういう要望があることは事実でありますし、先ほど局長の御説明によりますと、四十四年までは無理をして問題のある脱脂粉乳を輸入されておる、しかし四十五年度からは解消されていくというのでありますが、なるべく早い時期に生乳給食に切りかえていただく、この点をひとつ要望をしておきたいと思うのであります。  それからいま一つは、先ほど理事長にもお尋ねをいたしたのでありますが、行管から整理対象に指摘をされておるわけであります。閣議におきましても、昭和四十四年以降は整理をせよ、こういう決定がなされているやにお聞きをいたしておるわけであります。整理をすることによって非常に給食代が高くなるのかということになりますと、これは問題でありますが、事実逆な結果になる、そういった繁雑な機関がなくなることによってかえってよくなることになるのではないかということも私ども考えられるわけですが、この行管から指摘をされております問題についてどのようにお考えであるか、その点もあわせてお尋ねをいたしておきたいと思うのであります。
  135. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 学校給食会を廃止したらどうか、こういう意見が出ておりますことは、これは御指摘のとおりでございます。その問題についていろいろ政府部内におきましても相談をいたしたのでございますが、先ほど局長も申しましたように、文部省としましては、脱脂粉乳にかえてすべて生乳を配給すると申しますか、そういうふうな方針でもって今日まで進んでおります。年々その量もふえておると思うのでありますが、これは私どものほうだけで解決のつく問題でもございませんし、文部省としましては、その方針をなるべく早く達成したいと思いますけれども、一面において、今度は供給のほうの問題、需給計画が確実なものになってまいりませんというと、にわかにこれを変更するわけにもいかない、こういう点もございますので、ただいまのところでは、農林省との間の話では、先ほど局長が申しましたように、昭和四十五年度、これらのところでは全部切りかえることができるであろうという見通しのもとに事を進めておるわけでございます。それがそのとおりに実現してまいりますというと、学校給食会の存続という問題もその時点において検討せられてくると、こういうことになろうかと思います。もっとも、特別変わったまた不測の事態が起こりましたら、この予定はあるいは変わってくるかもしれませんが、そういうふうな一応の了解のもとに今日進めておるようなわけであります。御了承いただきたいと思います。要は牛乳の供給量を確実にわれわれが入手し得るかどうかというところにかかっておろうかと思います。
  136. 小野明

    小野明君 くどいようですが、これは局長にお伺いしたいと思うんですが、生乳の場合ですね、やっぱりこの農業振興、酪農振興といった国の農業政策の観点からも、私は奨励さるべきではないかと思うのです。それが加工に難点があるということは、一体どういうことなのか。たとえば、昭和四十四年から生乳でやるんだということになって、農業団体、農林省とも連絡をしながらそういった計画的に生産を行なえば可能ではないかと思うんですが、アメリカからの輸入はゼロ、無理をして輸送費のかかる脱脂粉乳を入れる必要はないと思うんですが、局長いかがですか。
  137. 赤石清悦

    政府委員(赤石清悦君) 生乳の問題は、文部省だけできまる問題じゃございませんので、まあ供給という一点を考えてみましても、生産者が牛乳を生産することに大いに魅力を感じてやり得る経済的な状態であるかどうかという一点がございますし、もう一つ、御承知のように、牛乳は脱脂粉乳より高うございます。したがって、父兄負担の軽減という観点をも含めまして、今日財政補助をいたしております。その額は年々非常に増高を来たしております。そうした国庫の財政補助といったような観点から、まあ供給の問題もございますが、一足飛びに脱脂粉乳から生乳に切りかえるだけの国家の財政が許すかどうかといったような問題もございます。また、財政補助をいたしましても、この生乳に切りかえることによって脱脂粉乳を使用したときよりもかなり父兄負担も高まります。この一点を、文部省立場からいたしますると、非常に問題点であると、このように考えておるわけでございます。しかし、さような万般のことを勘案いたしまして、とにかくいまの現状においては、私どもはかなり――昭和四十五年度目標にしているということは、決してマンマンデーではなくて、かなり国としては生乳の切りかえに積極的に国が熱意を持っていると、こういうあらわれであるのではなかろうか。むしろその予想しておる四十五年度での切りかえがはたして可能であるかどうだろうかといったようなことを心配しているわけでございます。  もう一つこの機会にあわせて御指摘申しておきたいと思いますことは、生乳に切りかえた場合、その脱脂粉乳から生乳に切りかえた場合の切りかえの率が若干いま専門家の間で問題になっております。確かに生乳のほうがいいことはいいんでございますが、量が少なければ、脱脂粉乳よりむしろ、味その他は別にいたしまして、栄養価においてちょっと落ちる点があるという点が、現在専門家によって指摘されております。まあさような観点、もう一つは脱脂粉乳と生乳の根本的な性格の相違でございますが、たとえば僻地、離島等に生乳を使うということにつきましては、輸送等々のいろんな困難な問題がございます。したがいまして、脱脂粉乳を全然ゼロにし得るかどうかという問題が、やはりこの切りかえの完了予定時を目前にいたしまして幾つかの問題点として指摘されております。  さようないろいろなことを織り込みまして、今日、保健体育審議会におきまして、この切りかえの方針はもちろん変わらぬと思いますけれども、切りかえにあたってのいろいろな形の切りかえにおける支障のない状態をどうして出現させるかといったようないろいろな専門的なことをいま検討いただいておるところでございます。
  138. 小野明

    小野明君 最後に理事長に要望いたしたいと思いますが、先ほどからお聞きいたしましても、どうしてこれが起こっただろうかと、この原因をお尋ねをしても、一人でできるだろうか、あるいはこの――というような、非常に原因の究明があいまいであります。甘いと思うのですね。捜査は警察庁でと、警察権の範囲内で徹底的にやってもらうと、こういうふうなことは当然のことでありますけれども、やはりおたくの理事会、給食会の内部に欠陥がある、あるいはあなたの監督に欠陥があったからこういうことが起こったんだから、あなたとしても、当事者として徹底的にやっぱり、この機構あるいは職責、そういうものにメスを入れて、再びこういうことが起こらないように、学校給食に対する全国民の不信、そういう事態を招かないように厳重に注意をしていただきたいと思うんであります。要望しておきます。
  139. 清水康平

    参考人清水康平君) お答え申し上げます。  いま御指摘のとおりでございます。私の不明をおわびすると同時に、欠陥はどこにあるか、まず第一に同じ仕事を何年もやらしちゃいかぬということは、まず私の考えたことでございます。それから職制、責任の分野ということを、いままではよかったと思っておったかしれぬけれども、ただいま御指摘のとおり、全般的に根本的にこれを再検討いたしまして、再びこういうことのないようにこん身の努力を払ってまいりたいと思います。御指摘のとおりでございます。
  140. 小野明

    小野明君 次の問題に移りたいと思いますが、日本育英会が、羽田事件に関連をいたしまして、参加をした学生に対して奨学金の打ち切りの措置を行なった、こういうことが以前から報じられておるのであります。そこで、この問題につきまして経緯なり打ち切りの根拠というものについて御説明がいただきたいと思うのであります。
  141. 宮地茂

    政府委員(宮地茂君) 日本育英会が、羽田事件で、昨年の十月、十一月二回ございました例のいわゆる羽田事件に参加いたしました学生に対しまして、そのうちこれは直接暴力行為によって検挙起訴された学生に対して奨学金の打ち切りなりあるいは停止処分を行なったということでございますが、これは事実でございます。で、この問題につきましては、御承知のように、日本育英会奨学生は、これは奨学生としての身分を持ちます手続は、御承知のように、各大学から、人物、学力、健康ともにすぐれているということで、大学から育英会のほうに推薦された者につきまして、育英会が奨学生として採用しておるわけでございます。したがいまして、育英会が奨学生に採用するときの要件としての人物なり、学力なり、健康なり、こういったようなことで奨学生に値しないというような場合にこれを打ち切るということになっております。  その根拠でございますが、これは一応奨学規程というのを育英会は持っております。この規程は、日本育英会の業務方法書――これは日本育英会法及び定款に基づきまして文部大臣が認可をいたしておりますが、この業務方法書に基づきまして実施の細目として会長が日本育英会奨学規程なるものを定めております。それの十一条なり十三条なりにそういった条文はあるわけでございますが、大学の学生が奨学生に採用されております場合に、その「奨学生の学業または性行などの状況により、補導上必要があると認めたときは、奨学金の交付を停止し、または奨学金の貸与期間を短縮することがある。」、あるいは似たような条文がございまして、打ち切るといったような規定がございます。これにつきまして、羽田事件で起訴、検挙された学生は六十六名おりましたが、従来はこ、ういう奨学生につきまして、打ち切りとか、あるいは停止とか、こういうことはそれぞれの大学から意見を求めてやっておったのが通例でございます。ただこれは、たとえばその大学でいろいろ学内での非行があったといったような場合には、これは育英会では十分わかりませんので、大学意向を十分最初から聞いたわけでございます。しかし、今回の措置につきましては、これは学外で行なわれたいわゆる暴力的な行為でもございましたし、またその特定の大学というよりも、多くの大学に通じての、多くの大学の学生でもあったと、こういったようなことから、育英会といたしましては、こういう起訴、検挙された学生については、当然奨学生として打ち切りなりあるいは停止をしたいがという、その自分としての意思をあらかじめ出しまして、これについての大学意見を聞くという形でやった点が従来と違うわけです。従来と違いますのは、以上申しましたような理由によったわけです。で、これにつきまして、大学のほうから、やむを得ないとか、いろいろな理由で返事が出ておりますが、その返事を待ちまして正式な形式的な打ち切りなり停止ということを決定しておる。ですから、自分の考えを出して一応意見を聞いたということでございまして、形式的にはやはり大学意向を聞いて措置した、こういう関係でございます。
  142. 小野明

    小野明君 私が知る限りにおきましては、大体この何らかの大学側に連絡もなく、育英会が一方的に打ち切ったと、こういう話を聞いておるわけであります。そうしてあとで了解を求めたと、こういう手順がだいぶ局長のいまの御答弁と違うんでありますが、それはどうですか。
  143. 宮地茂

    政府委員(宮地茂君) 手順は、私が申しましたとおりでございます。もし何でございましたら、一々育英会のほうから何月付でどういう文書を出してどうということを御説明してもよろしゅうございますが、手順は私が申したとおりですが、ただ大学が一方的であるという印象を受けまして、これは正直に申しまして国立大学協会のほうからもそういう意向が育英会にもありましたし、私のほうへも、育英会にこのように言ったという連絡が、国立大学協会の第三常置委員会という補導の委員会がございます、その関係の学長が二人おいでになられまして、そのことを育英会に言ったと言っておられました。これは、先ほど申しましたように、いかがですかというだけの聞き方をしてない。先ほど申しましたように、学外のことでもあるし、それから暴力事件によって起訴、検挙されたものでもある。また、一つ大学の学生ではなくて、多くの大学の学生であった。これは、ある大学――A大学とB大学で同じ事件について措置が違うというのもおかしい。こういったことから、育英会としましては十分、これは学校当局でなくとも、育英会としてもある程度の事前の判断が下せるという観点に立ちまして、こういう学生に対しては奨学金の打ち切りあるいは停止ということを、自分のほうはそのように考えるが、大学としての御意見も承りたいというものを出したわけです。ですから、関係者としては、意見を聞いたけれども、もう措置することをきめておいて意見を聞いておるじゃないかというふうにとれぬでもないということで、多少意思の疎通も十分でなかったようですが、その点につきましては、先ほど来申し上げたとおりでございます。で、この点につきましては、育英会の会長、それから大学当局とも十分にお話し合いされまして、一応双方了解には達しておるようでございますが、先生のお耳に入っておりますのは、国大協としても一方的であると思って、先ほど私が申しましたように第三常置委員会から意見が出たわけでございますから、先生のお感じになったとおりでございますが、内容はそういうことで、その後十分話し合いをして了解を相互にし合っておるというのが事実でございます。
  144. 小野明

    小野明君 いずれにいたしましても、いまの御説明ではっきりいたしたわけですが、やはり育英会がリードしておる、この処分についてね。打ち切りという処分について大学側をリードした、こういうことは事実として明らかになったと思うんであります。  そこで、この措置について私はお尋ねをいたしたいのでありますが、先ほどの給食会の事件などは、これは破廉恥罪である、だからこれはもう申すまでもないことでありますけれども、羽田事件――私は暴力を決して肯定をするわけではございません。そういった立場から言っておるのではありませんけれども、ただ単に起訴、検挙されただけで育英会が先ばしって大学側の意向を聞くことなくぱっと切ったということに、どうも私は納得ができない点があるのであります。たとえば、学外の行動と学内の行動とを峻別するという意見ももちろんありますけれども、やはり大学生であることに変わりはない。しかも、憲法三十二条によって、何人も裁判を受ける権利というのは奪われないわけです。そういった結果を待たずに育英会が処分を先行するというのは、どうも私は不当ではないか、こういう気がいたすのでありますが、この点について私は大臣の御見解をいただきたいと思うのであります。
  145. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私は、今回の育英会のとった措置につきまして、先ほど局長からも御説明申し上げておりました、その間に大学側との間の連絡が不十分であったとか、あるいは意思の疎通が欠けておったというふうなことで、いろいろ意見があったということは伺っておるわけでございます。ただ、今回のような問題につきまして、奨学金の支給をどうするかという問題として考えましたときには、私は、どの程度の処置が適当であるかということについてはいろいろ議論もあろうかと存じますけれども、とにかく学生たる者が、しかも人物、品行、あるいは健康というふうな点において十分審査を受けた上で特に奨学という優遇措置をしてもらっておる人たちが、あのような行動に出るということは、私はそのこと自体が育英奨励の上から申しますというと大きに問題とすべきところじゃなかろうかと思うのであります。これは私は、裁判の結果どうなるかというふうな問題と必ずしも一致して考えられる必要はないので、あのこと自体がすでに私は学生として許すべからざる行動であると思う。したがって、それに対して、育英奨励金の支給という問題について育英会が考慮するということは、むしろ当然のことじゃなかろうか。ただ、その量定がいいか悪いかと、こういう問題はいろいろ議論がございましょうけれども、ものの考え方としましては、裁判の結果を待ってどうするこうするというふうな考え方をこの際採用する必要はないのじゃないかと、このように考えております。
  146. 小野明

    小野明君 大臣も御承知のように、奨学金というのは、かなり貧困な家庭、そしてまた受ける学生というのはきわめて優秀な学生であるわけであります。私は、学生がとった手段は、もちろん暴力という否定すべき手段であることについては変わりはないわけでありますけれども、やはりその辺で、若い学生をそういった行動に走らしめた原因というのは一体那辺にあるか。日本の政治にそういった欠陥はないのか。奨学金を打ち切る、あるいは騒乱罪を適用すれば天下国家は治まっていく、そういった考え方の中に私は誤りがあるのではないか、こういう気がいたすのであります。そういった立場から、奨学金の打ち切りという先行的な措置というものについては、相手が学生であるということだけに、あまりにもきびしい措置ではなかったか、このように考えるわけであります。再度大臣の御所見をいただきたいと思うのであります。
  147. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 今回の学生のとった行動の原因いかん、こういう問題になりますれば、小野さんの御指摘になりましたように、いろいろ原因はあろうかと思います。一がいに学生だけが責められる問題ではない、他に責められてしかるべきものもあろうと思うのでございます。それは私もそう思いますけれども、しかし、この育英奨励というような施策を考えましたときに、すべての学生が育英奨励を受けておるわけじゃないんです。その中で、人物もいいし、健康もいいし、よく勉強するし、しかも家庭が恵まれていなという人たちが選ばれて育英奨励を受けておるわけでございます。そのほかにも、育英奨励のほしい人は幾らでもおるわけであります。そういうふうなことを考えましたときに、このように学生としてあるまじき行動をした人たちがそのままの姿において依然として育英奨励を受けておるという、こういうことは、何かその辺にけじめをつけなければならぬことじゃないか。永久に何も停止する必要はないかもしれません。しれませんけれども、そこにけじめをつけるということは、私は、育英奨励というものの性質から考えましても、育英会として当然考慮していい問題ではないか、このように思います。
  148. 小野明

    小野明君 何らかの区切りをつけるというふうにおっしゃったのでありますが、私は、いま大臣がおっしゃったように、やはりそういった背景を持ちます学生であるだけに、今後の配慮というものについて十分お考えをいただきたいと思うのであります。そういった要望を申し上げまして、次の質問に移りたいと思います。  厚生省、お見えですか。――社会局長お尋ねいたしますが、生活保護家庭の子供は高等学校に行けないようになっておりますか、そういうふうに措置をされているんですか、どうでしょうか。
  149. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 結論から逆に申し上げますと、現在生活保護法では、高等学校に相当数行っております。高等学校に大体三万三千人ぐらい被保護家庭の児童生徒が行っております。本来からいいますと、生活保護というのは、健康にして文化的な最低限度の生活ということで、義務教育までは足らないものは全部差し上げるということでありまして、それでやってきたわけでありますが、高校進学が非常に一般に率がどんどん伸びる、私どもも何とかして救えるものなら救える方法はなかろうかということで、だいぶ前からいろいろ検討したわけでありますが、一方にはそういう最低限度の義務教育費までは国なり県で保障するが、それ以外の人はやはりたいていの家庭でも働きに出る人がたくさんおられる。そこまで――高校が義務教育になるなら別として、そこまではなかなか踏み切れないというので迷っておりましたが、もう一つ逆に考えますと、そういう人方が高校を出て社会に出ればその世帯の自立更生が早くなる、いわゆる生活保護を受けなくても済むようになり得るというので、その点の接点といいますか、いろいろ研究いたしまして、一つには世帯分離ということ――これは十年前後前からでありますけれども、世帯分離ということを考えまして、その生徒さんがアルバイトをして学校に通えるというなら、その人の収入はその世帯の収入と見ないで、それは全然生活保護でないのだというかっこうにして進学――それは一緒のうちに住むわけでありますけれども――ということにしたいということが一つ。それからもう一つは、たとえば、いま議論になっておりますように、育英会の奨学金、あるいは県でも独自にあるところはありますけれども、そういうふうな権威のある奨学金をもらえるようなりっぱな青年がおる。それで教育費だけならまかなえる、生活費は無理だというものの奨学金をもらっておるような人については、その人の生活もひっくるめて保護世帯の中で学校に行くことを認めるという二段階の方法をとりまして、現在計数的に申し上げますと、四十二年の三月に中学校を卒業します生活保護の家庭五万三千のうちで高校一年生に入った人が一万八百五十三名ということでございます。したがいまして、これは三年間を見ますと、大体三万人から三万三千人ぐらい全体で被保護世帯から進学いたしておる、こういう状況でございます。
  150. 小野明

    小野明君 世帯分離その他、奨学金を使う方法はいろいろありましょうけれども、たてまえとしては、高等学校に進学すれば生活保護を打ち切る、こういう措置であることは間違いありませんか。
  151. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 原則は、生活保護法の場合は、義務教育は別といたしまして、それを卒業しますならば、働ける人は働き、資産のある人は資産を活用して、全部自分の生活に充当して、なお足らない部分は国が保障するというたてまえでありますので、義務教育なら就労はできませんけれども、高校以上の者になりますならば、原則としては教育関係について生活保護、公費ごめんどうを見るということをしないということが生活保護法のたてまえになっております。したがって、それとの折衷論をいろいろ考えておる、こういう状況でございます。
  152. 小野明

    小野明君 局長は御存じか知りませんが、いま高校の進学率というものは七五%、ここ数年のうちに八十数%にのぼるようになっておるわけですね。いわば高校教育ということが準義務制化してきておる、実態としてそういうふうになってきておるわけです。なおまた、高校教育だけではなくて、勤労青少年の教育の場というものも何らかの形で与えるべきであるということで、それぞれ対策が練られておるわけですね。そういった中で、やはりいま厚生省のおとりになっておる高校に進学すればたてまえとして切るのだというような措置は再検討すべき時期に来ておるのではないか、このように考えるわけでありますが、この点はいかがですか。
  153. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 仰せになりますように、私持っておるのでは、四十二年度で七四%くらいまあ一般の進学と、逆に言いますと、二五%の人は、高校に行きたいのか行きたくないのか、とにかく就労しておる、こういう状況があるわけです。お話のように、これが、先ほど申し上げたように、高校が制度として一般国民が全部という義務的な問題になりますならば、生産保護も当然それに追随していくべきだと思いますけれども、教育の進展の問題、現在義務教育というものは六・三ということになっておりますので、それ以外の部分はどうなるか。一般のいわゆる文部行政、文教行改上の方針決定前に生活保護が先に走ってしまうというわけには非常にこれはいきにくい問題だというふうに考えますので、これがとこまで――九九%あるいは一〇〇%まで参りますかどうか、その辺の情勢を見ながら、私どもはあとから――生活保護というのは一番あとの問題の始末でございますので、その辺はもうしばらく情勢を考えさしていただきたいと思うわけです。
  154. 小野明

    小野明君 局長、逆に言いますと、高校進学率がなかなか伸びない。最近は、就職をするにいたしましても、高校程度出ていなければ就職ができない。むしろ雇用主――経営者としては、中卒程度で安いもので働かしたほうがいいかもしれませんけれども、実際その子の将来、家庭、国というような立場を考えますと、やはり高校程度は就学させるというのが私は国の方針でなければならぬと思うのです。それをあなた二五%は行っていないというお話でしたけれども、厚生省のそういったきびしい措置があるから二五%も行けないわけですよ。だから、ひとつその点を、問題は文部省にあるようですから、あなたに質問はやめますけれどもね。  大臣お尋ねをしたいと思います。いまお聞きのとおりであります。進学率がほとんど準義務制といわれるくらいにまで伸びてまいりました。そこで、高校の義務制といったものも検討される時期に来ておるのではないかということが一つです。まずこれから聞いておきましょう。
  155. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 教育の普及、教育の向上をはかっていくことは、これはいつの時代にも考えなければならぬことであります。そのような意味から申しますれば、現在の任意制であるところの高等学校制度を義務制にするということも確かに検討すべき題目の一つであろうと思います。ただまあ現時点において、具体的に申し上げますというと、いま高校制度を義務制に切りかえるかどうかということは、具体的な日程としての課題にはまだのぼっていないということを率直にいま申し上げるわけでございますが、仰せのとおりに、この高等学校に進学する人たちは非常にふえてきておる。その中にも、全日制の高等学校へ通う人と同時に、これはあるいは他の制度との関連においてそうであるのかということかもしれませんけれども、定時制でありますとか、通信制でありますとか、そういうふうな特殊の方法を講じまして、やはり何らかの形で高等学校教育を受ける機会を与えようという努力は、御承知のようになされておるわけでございます。それが生活保護制度との関連においてどう考えるかということになりますと、にわかに結論を下すわけにはまいらぬと思いますけれども、いずれにしましても、高等学校程度の教育はすべての国民が持つようにはしなければならぬという方向において私は検討すべき問題だと存じております。具体的に義務制にするかどうかとおっしゃれば、まだそこまでは至っておりません。
  156. 鈴木力

    鈴木力君 関連して。厚生省の局長さんに伺いますが、いまの御答弁でちょっと気にかかることがあるんです。それは、生活保護家庭の子供が高等学校に入る場合に、まあいろいろ技術的に何か入れている、しかしたてまえとしては高校に入るのは認めていない、そういう筋で伺ったのですがね。その場合に、義務制になれば別だけれどもと――まあ高校が義務制になれは、これはもう保護家庭も何ら支障なしというか、たてまえとして認める、こういうふうに伺ったのですが、ちょっと少し勘違いもあるのじゃないかという感じがするのですね。義務制の場合にはもう当然学校には入るべきですが、入ることを認めるかどうかじゃなしに、義務制になれば厚生省が認める認めないということは言う必要がないことでしょう。これは当然入るべきなんですよ。そういうのじゃなくて、義務制の場合には要保護児童とか準保護児童までいろいろな教育援助を与えているわけですよ。教育の保護をしている、援助を与えているわけなんです、国が。ところが、いま高等学校の場合には、そこまで認めるにはまだいっていないわけですよ。ただし、高校に入ることによって保護家庭というのが認められないという原則はもう時代おくれではないかと、こういうことを言っているわけです。むしろ、義務制になれば、それは認めるとか認めないとかいうことは一省の言うべきことじゃない。義務制になったら、保護家庭とか要保護家庭とかに教育援助もし、つまり授業料も免除をする、あるいは教科書の援助も与える、学費の援助も与える、こういう手は義務制になれば差し伸べると、こういうことになるわけです。そうすると、義務制にならない場合に、少なくともいま高等学校まで入るというのはほとんどの国民の希望なんだから、国としては、要保護家庭であろうとなかろうと、希望をして入れ得るという家庭には、もう入れなければいけない。そういう制限にまだ厚生省がこだわっているというのは、ちょっと私はやっぱり納得しかねるわけです。だから、さっきの義務制になればということは、ちょっといまの言ったこととは違うのであって、そうでない観点からこの問題を検討すべきだ、こう思うのですが、いかがです。
  157. 今村譲

    政府委員(今村譲君) ちょっと私の言い足りないので、義務制になれば公費で教育費あるいはいろんな学習費というものが出せるのですがと、こういう意味だったんですが。で、たてまえからいたしまして、現在すでに三万人、まあいろいろ条件はつけてありますけれども、三万何千人入っておるということであります。ただ、制度そのものが、いわゆる義務制というものが確立をしない限りにおいては、いまの生活保護法の四条でいいますと、生活保護法は請求権がございます。これはくれなければ裁判所まで持っていけるということでございますので、そのかわり非常にきびしい制限がありまして、たとえば働ける人は全部働き、資産のある人は資産を出し、自分の生活に充当して、なおかつ足らない部分は確実に国が生活保護法に基づいて支給をすると、こういうまあ能力をフルに活用してもらった上でという前提がありますので、そこが、たとえば義務制になれば、学生というものは当然学校へ行かなきゃならぬということで能力活用の余地はありませんけれども、現在の義務制が中学校までということになっておりますと、一応社会通念としては、働ける者は全部働いて、それで足らぬところは出すというふうなかっこうの仕組みになっておりますんで、そこのところで折衷案が非常にむずかしいのではないか。で、原則としては、全部生活保護家庭は高校へ行けないというのじゃありません。ただ、ちょっとその辺は言い回しの問題かもしれませんけれども、とにかく奨学金をもらっておる、あるいはアルバイトをしておるという場合に、世帯分離とか、いろんな方法で高校に行けるようなかっこうにわれわれはしたいということで、現実にそこまで進んでまいっておりますんで、これは何といいますか、行っていいのだという問題じゃなしに、能力活用をどこまで緩和するか、これが法律制度、文教上きまっておりますならば、それは問題ないが、そこまできまっておらないので能力活用の要件にもひっかかってくる、その辺の関連をどうしようかというので私どもは現実に苦労しておる、こういうことを申し上げたかったわけです。
  158. 鈴木力

    鈴木力君 もう一つ。関連ですから、あまりくどくなると恐縮なんですけれども、いまの局長の御答弁でどうも気になるのは、いまの生活保護法の四条でいえば、いまのたてまえでいえばこうなるという御答弁なんです。いまのたてまえでこうなっておるから直す気がないかというのが私の質問をする意図なのでして、だから、たとえば働ける者は働くべきだという原則、これはいいのです。ただし、働くべき者の中に、そろそろもう高等学校の生徒を働くべき者の中にもう入れる時代ではなしに、高等学校の生徒ぐらいは働くべき者でなしに、学ぶべき者に入れる時代がもう来ているのじゃないかということです。そういう観点からいまの四条なら四条の扱いを検討すべきだ。と申しますのは、現実にはもう認めていると局長さんおっしゃったとおりでしょう。認めざるを得ないような情勢に教育を受ける状態は進んでいるんですから、社会が進んでおるのに、厚生省だけが古い条項に閉じこもって絶対離さないという言い方がどうも私にはおかしい、こういうことを申し上げておるんです。だから、働くべき者の中に、もう高等学校までは学ぶべき条件のある者は学ばせるというたてまえをとれば、ここまではいまの生活保護云々という問題は出てこなくなる。私はいまの取り扱いで現実に取り扱っておることはよくわかる。その気持ちはわかるのです。ただし、感じやすいあの子供たちに、おまえは保護家庭だから世帯を分離しなければ高校に行くことができないぞというような、こういうむごたらしい扱いを厚生省がなお固執してやっておるという気持ちがわからぬということなんです。これは教育問題なんですから、非常に感じやすい子供なんですから、あの高校の入りがけは。特にそういうことを配慮すれば、現実に扱っているぐらいなら、それを原則としてやってもいいじゃないか。これは、そういうたてまえがあれば、いますぐとは言わないにしても、早急に検討して、こういう点は考え方を変えて、制度を直すべきだ、こう思うのですけれども、いかがですか。
  159. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 仰せになることはわかりました。ただ、私ども現実にそういう運用をしておることは、最近の情勢に従ってやっておるわけでありまして、最後的にやはりその問題は、いま大臣が申されましたように、文教行政上の、その辺の――あと二五%しかないのではありますけれども、その辺の進め方ともにらみ合わせないと、生活保護だけではそう簡単にはきめられないということで、もうしばらく内容について厚生省としても検討さしていただきたいということでございます。
  160. 小野明

    小野明君 初中局長お見えですね。いまの論議をお聞きだと思いますが、要保護、準要保護に対する教育扶助という問題については、義務制まではおやりになっている。しかし、いままでの論議でおわかりになりますように、これを私は高等学校にまで延長すべきではないか、このように考えているわけであります。この点はいかがですか。
  161. 天城勲

    政府委員(天城勲君) いまの小中学校に行なっております要保護、準要保護は、御存じのように、生活保護法との関係でとられている政策でございます。結論的には、いまの、前の質疑にございましたように、高等学校に生活保護法の範囲を拡大する、これとあわせて要保護も高等学校の段階に適用したらということになろうかと思うのでございますが、やはり現在われわれとして、義務教育の円滑な実施ということで、要保護、準要保護の政策をとっておりますので、高等学校生徒につきまして直ちに生活保護的な制度まで踏み切れない状況でございます。そのために、御案内だと思いますけれども、奨学の方法、あるいは学校へ来てからの勉学を少しでも容易にする方法として教科書ですとか学習書の無償供与、あるいは夜間の場合の給食費の補助というような制度を進めているわけでございます。なお、全般的に勤労青年の教育の問題につきましては、御指摘のように、進学率がだんだん高まってまいっておりますので、その中で勤労青年の教育を一そう受けやすいようにするという措置は、単に生活の資ということだけではなくして、就学形態、勉学の形態等もあわせて考えなければならぬものでございますので、総合的に検討しながら、できるところから進めているというのが現状でございまして、一挙に要保護、準要保護、いわゆる就学援助の適用まで現在のところまだ拡大できない状況でございます。
  162. 小野明

    小野明君 最後に大臣お尋ねをいたしたいと思いますが、いま厚生省の局長も言われておりますように、何といいましても、所管省がどう考えられるかであります。大臣がやはり高校にまで晴れて進めるようにあるいは援助を拡大する中心的な役割りというものを果たしていただかなければならぬと思うのであります。いわばこういう方向に向かって中心的な動きをしていただかなければならぬと思うのでありますが、先ほどから申し上げておりますように、勤労青少年に対する教育というものもやはり、中教審の答申にありますように、漸次拡大をされてきている。そういった情勢から、そういった問題に、高校にまでやはり拡大をしていく、こういう方向で御努力をいただけるものか、御所信を伺いたいと思います。
  163. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 先ほどから両局長のお話も伺っておったのでありますが、いろいろな考え方があろうかと思います。生活保護の面から申しますというと、これは申すまでもなく憲法上保障せられている、国民の最低の生活を権利として認めている、こういうことでありますから、現状で引いている線が生活保護の線としていいのかどうかという基本的な問題もあろうと思うのであります。私は、憲法の規定している精神というものが、現在日本の制度として持っている生活扶助の基準として認めている、その基準というものにいつまでもこびりつかなくちゃならぬものとは思いません。むしろその線を上げていく、もっと何といいますか、ことばがオーバーになるかもしれませんが、もう少し豊かな生活を保障してもいいのじゃないかというふうな考え方もあろうかと思います。決していまのように最低限度というものを一体どこに線を引くかという問題は固定的ではないと思うので、日本のやはり力がついていき、日本の国民生活というものを考えましたときに、最低の線をもっと上げるという考え方が政治としては今後やはり考えていかなければならぬ問題だと思います。一面におきまして、今度はむしろ教育という観点からの御質問でございます。その教育という観点から考えましたときに、これを生活保護のほうへ目を向けて考えましたときに、生活保護の支給基準の中に教育というものをどこまで織り込んでいくかというふうなこともくふうしてよろしい問題の一つじゃないかと思います。現在は、申すまでもなく、あるいはまたそれが当然かもしれませんけれども、義務教育というところに限られております。しかし、今日のように高等学校程度の教育を受ける人がほとんど大部分だということになりました場合に、その辺を織り込んだような生活保護というようなこともくふうしてくふうできない問題でもないような気もするのであります。また、われわれプロパーの問題として考えましたときには、いわゆる後期中等教育の拡充ということは、文部省の念願とするところであります。その後期中等教育の拡充をはかる意味において、いろいろ資金面における援助の問題というふうな問題も、いまある姿だけで決して足れりとすべきものではないかもしれません。そういう点についても、もっと積極的にくふうする余地がありはしないかと、こうも考えられる問題でございます。そういうふうな問題は、現在の制度について忠実に考えておられます厚生省の局長にしましても、あるいはうちの局長にしましても、そう伸び伸びとしたお返事をしにくいだろうと思いますけれども、やはり将来の方向としましては、国民生活の最低基準を引き上げる一方、教育ももっともっと普及していこうという意味において、これは政治として考えなきゃならぬ大きな課題だと思います。そういう意味におきまして、私も御趣旨はよくわかりますので、今後ともにひとつ勉強させていただきたい、このようにお答え申し上げたいと思います。
  164. 小野明

    小野明君 終わります。
  165. 山高しげり

    ○山高しげり君 私は夜間中学校について少しお伺いをしたいと思います。  四十一年の秋に、行政管理庁から文部省へ、夜間中学校をなるべく早く廃止をするように指導をすることというような勧告が行なわれたようでございますが、そのことにつきまして、その後文部省としてはどんなふうにお考えいただいておるでしょうか。
  166. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 夜間中学の問題は前々からの問題で、山高先生にもいろいろ御心配いただいておるわけでございます。この夜間中学を合理的に整理していくといいますか、解消していくということで、文部省としても努力しなければならないと思っております。その状況等につきましては、所管局からお答えいたさせます。
  167. 天城勲

    政府委員(天城勲君) これはもういまさら申し上げるまでもないことで、義務教育において夜間授業を受けるということは好ましくないという前提で、いままでいろいろ措置をしてまいっておるわけでございますが、最近の状況をちょっと申し上げまして、いろんなこの中からわれわれの考えておることを申し上げたいと思いますが、これは当初のころは正確な数が必ずしも明らかではございませんでしたけれども昭和二十八年度に約三千人の夜間中学の生徒がおりました。その後いろんな方面からこれの解消に向かって努力をしてまいったわけでございますが、四十二年度で二十一校四百六十六人という数字をわれわれ持っていたわけでございます。ここ数年の間にも逐次減っておりまして、学校も毎年減ってきておるような状況でございます。これは本来学齢期にある生徒でございますので、当然昼間の就学をすべきでございまして、そのために必要な就学援助の措置はできるだけ広げてきておるわけでございますけれども、なお現在四百六十六名の夜間中学生がいる。ただ、これの実態を全面的に把握しかねておるのでございますが、たとえば東京の例で申しましても、夜間中学におります生徒が二百五十七名おるわけでございますけれども、いま学齢期にあります生徒は五十六名で、それ以外がみんな年齢超過者でございます。この学齢者につきましては、できるだけ諸般の処置をしながら、昼間に就学するように、各地でも努力していただいておるわけでございますが、実はこの年齢超過者の問題は、本来の学齢者の中学校教育と違ったような意味を持ってきておりまして、過去において不就学の状態であったとか、あるいは義務教育を修了する機会を逸したとかという人たちが、その後いろいろな関係から義務教育の修了だけはしておきたいということで来ておられる方もあるものですから、この問題は二つに分けて考えなきゃならぬと思っております。特に学齢にある子供につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたように、主として経済的な面からの援助と、それから昼間の学校に行くことについての指導というような、両方を進めているのが現状でございます。
  168. 山高しげり

    ○山高しげり君 まあ二十八年の三千人が現在四百六十六人まで減ってきた。たぶん二十八年のころにこのことが問題になりましたのは、不就学、長欠生徒というような問題から起こってきたように思いますけれども、いろいろな御努力もあり、またはほかの事情でだんだん減ってきたことは、それはそれでけっこうでございますが、なるべく早く廃止をするようにという指導をせよという勧告に対しまして、相当の御努力があって減ったのか、自然に減ったのか、その辺があまりはっきりしないように思いますのは、現状におきましては、もうこれ以上はなかなか減らせないのではないか。で、その中には、いま御指摘のように、学齢の子供と、それから超過をしている子供の、その内容にいろいろ問題があるわけのように思うわけでございます。廃止の方向へ向かって御指導をなさる場合に、具体的にもう少し伺いたいと思います。たとえば学齢の子供には、いまおっしゃったように、昼間に行くように努力をするとか、あるいは経済的な援助を云々とおっしゃったのですけれども、もう少しその対策として具体的なものはございませんでしょうか。
  169. 天城勲

    政府委員(天城勲君) これは、夜間中学校の対策というのは、たいへん矛盾をしたことをしなきゃならぬような立場がございまして、本来解消すべき方向で努力するならば、少しでも少なくするように、子供の問題もございますし、学校の数も、あるものは減らしていくという努力をしなくちゃならぬことでございますが、同時に、教育を受けている以上は、教育をしっかりしてやらなきやならぬということで、このために、先生方の努力に対しても、労働に対しても報いなきゃならないし、まあもっと現実的なことになりますと、夜間の、冬は暖房の設備も考えなきゃならぬし、需用費も見なきゃならぬ、非常に相矛盾したことを重ねていかなければならないことでございます。どういうこと、どういう方法でということでございますが、これは地域によって、非常に学齢児童で夜間に来なきゃならぬ子供の事情が異なっているようでございます。ある場合には、どうしても正規の住民登録を拒んでいるグループがあったりして、昼間の学校に行けない、親がある意味では所在を明らかにしない、することを拒否しているために、どうしてもつかみ切れないで、一応先生方がたずねて子供を無理に引っぱってきているというようなふうな状況もあったりして、この辺の問題は学校問題だけでは率直に言って解決しかねる問題だと私は思っております。  それから、年齢超過者の問題につきましては、これはあるいは制度といたしましては、昔の尋常小学校あるいは国民学校の初等科六年の時代、義務教育六年の時分に修了した方々が、いまの時代だから自分も中学校教育を受けたいということをあとで考えて勉強されている方があるわけでございまして、これは実は制度的には新学制に移り変わるときから十分予想されたことでございまして、いわゆる中学校の通信教育という制度を残しておるわけでございます。現在も非常にわずかでございますけれども、東京と大阪では義務教育の中学校の通信教育を、先ほども申した昔の尋常小学校と国民学校初等科修了者を対象として開いておるわけでございます。したがって、年齢的には当時のあれですから、三十四、五歳以上の方になると思うんですけれども、こういう道は一応残してあるんでございますけれども、何らかの理由で、それ以後の人たちでも、何らかの形で義務教育を終えてないという人たちが再び勉強したいと、資格だけははっきりしておきたいという理由で来た者を拒むこともなかなかできないものですから、現在のところ、一方では学齢期の子どもをできるだけ昼間に回すという努力はいたします。いたしますが、絶対に皆無になるかどうかにつきましては、教育的な努力だけでは私は限界があるのではないかと率直に思っております。それから一方、高年齢者の問題につきましては、だんだん数が減るとは思いますけれども、いまこの中学校を開いている段階で、これらの人を拒むということもできませんので入れておりますが、行く行くは成人講座、あるいは先ほど申しました通信教育その他の方向にだんだん解消していかなきゃならぬのじゃないかと、このように思っております。
  170. 山高しげり

    ○山高しげり君 廃止の方向へ向かってまいりますのに、たとえば行管の勧告の文章の中にも、「福祉事務所など関係機関との連けいを密にして保護措置を適切に行ない」云々と、確かに文部省だけで片がつく問題ではなさそうに思いますけれども、いまお話しの中で、やはり対策については矛盾を感じるものがあると率直におっしゃったわけでございますけれども、教員の処遇とか、それから暖房設備等のようなもの、そういう問題はそれでは考えなければならないけれども、これだけ考えてこういうふうに実行したというような内容があるんでございますか、ないんでございますか。
  171. 天城勲

    政府委員(天城勲君) これは全国的な状況でございますが、この夜間中学、現在二十一校ございます。四百六十六人、これに対して百五十七名の先生が特に当たっておられます。そのうち五十六名が夜間専任になっておる。したがって、普通の場合よりもこれだけ余分に教員をその中学には配当しているという形になっております。それから、一部は昼間の先生が兼任という形でやっておられます。したがって、こういう教員の設置ということが、夜間中学のために、これは何ということばを使ったらいいんでしょうか、必要やむを得ずということになるかもしれませんけれども、置いているわけでございます。そしてまた、夜間でおやりになるために、これは地方によって若干違うのでございますけれども、制度的に明らかに一律のものはございませんが、大体夜間の授業を担当するために、高等学校の定時制と同じような、まあ七%の手当を出すというような措置をいたしております。これは府県によって措置のしかたは異なりますけれども、そういう教員給与の問題、それから需用費といたしましては、施設は昼間の学校のを使いますけれども、夜間でありますと、やはり暖房費とか、光熱水道、その分だけ校費で負担しなければなりませんで、東京の例で申しますと、各区がこれを負担しているというような事情でございます。それからなお、これも場所によるのでございますけれども、夜間のために給食の問題が起きているために、給食費の補助ということをやっている地域もございます。
  172. 山高しげり

    ○山高しげり君 夜間の給食費の補助なんか、やはり東京の場合は区がやるわけでございますか。
  173. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 私、東京で知っているところでは、荒川の例で、区が負担しております。
  174. 山高しげり

    ○山高しげり君 文部省といたしましては、四十二年度が二十年の戦後教育の総点検の年とかいうようなお話も承ったのですけれども、四十一年に勧告が出ておりまして、もう四十三年度に入ったわけでございますけれども、総点検をなさいました中で、当然この夜間中学問題というものも浮かび上がってきた一つではないかというふうに考えられるわけです。それを廃止の方向へ持っていくためには四十二年度においては文部省はどんなふうな努力をなさるという、そういう具体的なことはないわけですか。ただ自然にだんだん減るからそのうち減るだろということでございますか。
  175. 天城勲

    政府委員(天城勲君) いま四十二年度総点検ということをおっしゃいましたけれども、時期がそういう時期だというんだろうと思うのでございますが、実は私たち、この四十三年度に夜間中学について具体的にどうするかという具体的方策を、率直に言って、持っておりません。ただ、四十三年度にわれわれが、いま先生がおっしゃった点検という意味では、非常に地域的に教育上困難な条件のあるところが出てまいっております。その条件が地域によって非常に違っております。よくいわれますように、片方では過密化すると同時に片方では過疎という現象が起きている。また、過密の中にいろいろな条件がございます。一方産炭地というような特殊な経済条件を持っている地域もございますし、僻地も――実は従来から僻地のこれは具体的には級別指定の再検討という宿題を持っておりますので、こういういろんな教育上困難な条件を持っている地域について、かなり文教行政の地盤になるようなものも含めてまさに総点検をいたしたいという計画は持っております。その上で各地域に即した措置をいたしたいと思っておりますが、特に都会におきます夜間中学の問題も、当然いま言った広い意味でのそういう教育の困難な条件の地域における教育の中に入っておるわけでございますが、具体的に夜間中学だけをどうするかという具体策までまだきめておりません。
  176. 山高しげり

    ○山高しげり君 産炭地の子供たちの悲惨な実情も私ども幾らか知っているつもりでございますけれども、お話に出ました僻地の子供の問題も同じようなことではありますけれど、私の知っているある教師は、僻地に数年間勤務をいたしまして、最近自分から志望をいたしまして大都市の夜間中学に勤務をしている人がございますけれども、その教育の実情については、とうていその僻地の困難性と夜間中学の仕事のむずかしさとは比べものにならないということを言っておりました。まあ、それはただ一人の教師の発言でございますけれども、数は少ないのですけれども、そうして確かに学校教育法にもないものが存在しているということ。私も何でも夜間中学を残しておきたいとは思いません。あそこに学んでいるあの子供たちが、あの人生をあの幼い年齢に背負いながら進んで学んでいるという実情に対して、あの子たちがあの生活から抜け出すことが一日も早かれと祈る意味で、文部省の御当局にもぜひひとつあたたかくこの問題を解決をしていただきたいと思います。で、それに関連して一、二申し上げたいわけでございますが、この中学校卒業程度認定試験というものがございますね。
  177. 天城勲

    政府委員(天城勲君) はい、ございます。
  178. 山高しげり

    ○山高しげり君 ございますね。それはその義務教育の猶予とか免除とか受けた者に限るわけでございまして、その資格でございますね――試験を受ける資格――それは夜間中学在籍者にはその資格がないと聞きましたが、そのとおりでございますか。
  179. 天城勲

    政府委員(天城勲君) これは制定の趣旨が、御案内かと思いますけれども、主として身体上の理由でもって通学できなくて、中学義務教育をやれない子供たちに家庭でかなり勉強している子供たちがおるので、最終的に義務教育の修了を認定するという意味から始まったのが目的でございまして、四十二年――昨年初めて発足したものでございます。したがいまして、実はこれを初めて実施いたしてみたのでございますけれども、いろんな予期しない人たちの希望も出てきておりますけれども、この制度は、受験資格が十五歳以上の者、ということは、十五歳以下の者はたてまえとして本来中学校に就学すべきである、しているはずだと。制度上、就学できない者ははっきり理由が明らかで免除ないし猶予になっているのだから、そういう人たちが満十五歳までにその条件が回復できないで、したがって、中学校をやれない者に対してそういう道を開こう、こういう考え方なものですから、いま十五歳以下の者が当然中学に入る、こういう前提でおりますので、まず年齢上の一つの問題がございます。それと同時に、いま当然猶予、免除を受けている者、こういう前提があるわけです。いまの夜間中学の子供たちは猶予、免除されてない、いわば本来就学している、要するに在籍しているのが一種の長欠のような形でもって学校から抜け出てしまったというような子供たちなものですから、この本来の扱いにちょっとのらないわけでございます。
  180. 山高しげり

    ○山高しげり君 おっしゃるとおりではあろうと思いますけれども、そして、たいへん新しい制度ではございますけれども、そういう新しい制度が生まれる契機というものが、やはり正当に義務教育の上にのらない特別な子供たちがいるということから発足をしております以上、身体上の欠陥云々ということでたとえ始まりましたとしても、たとえば夜間中学に現在おります十五以上の子供の中には、おっしゃるとおりに、すでに在籍していたけれども、長欠の結果夜間中学に現在おるというような子供がおるわけでございまして、   〔副主査退席、主査着席〕 そこまでこれを拡大していただくということはできないものか。あるところで文部省のある責任のあるお役人の方がおっしゃったのには、義務を果たさなかった者にチャンスは与えられないと、たいへん冷たいことばとしてそれがその関係者の方に伝わっておりますけれども、私はこういうことは残念だと思いますけれども、どんなものでしょうか。
  181. 天城勲

    政府委員(天城勲君) いま私、四十二年に始まったときの趣旨とその実情を申し上げたわけでございますけれども、ちょっと先ほど申し上げましたように、やってみますと、当初予想したよりも以外に、いろいろな条件の人が希望しているということがわかりましたので、この制度そのものは、たてまえはいま申し上げたような趣旨でございますけれども、実際問題としてやむを得ぬ事情で就学できなかった人たちが、なお中学校の義務教育を修了したという認定を得たいということでございますから、私は方向としては当然含まれていい問題だと思っておるのです。ただ、何と申しますか、本来の趣旨から言って何か矛盾した制度を公然と認めるということも、われわれとして非常にやりにくい点もございまして、最初からいまのたてまえが、ちょうど夜間中学と同じようなちょっと矛盾したことにもなるものですから、これは免除した者は「やむを得ない場合」ということをたてまえとしているために、だれでもかれでも、中学の教育を受けるかわりにこれで認定を受けるのだという形はとりたくないという立場からいろいろ申しましたのかもしれませんけれども、いま夜間中学のまことにやむを得ないという現実に立った制度でございますが、その子供たちの教育ということを考えれば、当然認定試験は将来商用していっていいものだ、かように考えます。
  182. 山高しげり

    ○山高しげり君 たとえば正規の教育形態ではございませんけれども、そこに学ぶ者があり教える者がおって成り立っている現実の夜間中学校でございますから、そこの中にいま申し上げる問題がありますことを、どうぞひとつお考えくださいまして、将来この認定試験は拡大させていただきたいと思いますが、大臣はいかがでいらっしゃいましょうか。
  183. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) この問題は、年来の実は問題であります。人数はだんだんと減っておりますけれども、とにかく問題として残っておるわけであります。あるいは永久に若干の人は残るかもしれないという性質の問題だろうと思うのであります。しかし、こういう人たちが教育の機会を得ないままに大きくなるということは、いかにも気の毒なことであり、みじめなことだろうと田ひ、う。その意味において、また先生のおっしゃるのも全く私も同感でございます。ただ、役所仕事でございますので、その間に何でもかんでもいいというわけにもいかんところがあります。何かくふ、りをいたしまして、何とかうまく筋が立てばそれを救っていく、こういう点、研究してみたいと思います。
  184. 山高しげり

    ○山高しげり君 その方向づけだけでもけっこうでございます。もう一つ同じような連関でございますが、その夜間中学の子供たちをだんだん解消するために、あれも現在のような形でなく、特殊学級というような扱いぱ全然考えられないものでしょうか。
  185. 天城勲

    政府委員(天城勲君) まずその一は、昼間の学校に来られるか来られないかというところが問題でございまして、いま夜間ということは、昼間どうしても学校へ来られないという現実の問題があるわけでございます。したがいまして、夜間でやらざるを得ないという問題が一つございます。それから特殊学級というおっしゃる意味はどういう内容でおっしゃっているのか、現在の特殊学級というのは、一言でいうと、特殊児童に対する教育でございまして、要するに、心身の障害児を対象とする教育ということでございますので、それと同じ範疇で特殊学級を考えることはちょっと無理じゃないかと思います。ただ、何か特別なクラスでもという意味でしたら、現在夜間中学も中学校における一つの特殊なクラス、実質的にそういう.形をとっておるかもしれません。ちょっと先生の仰せの点が十分とれていないかもしれませんが、全然、特殊学級というのはどうしても心身の障害児に対する教育なものですから、ちょっと先生のおっしゃる意味とは違うかもしれませんから、どうぞひとつ。
  186. 山高しげり

    ○山高しげり君 たいへん常識的にこちらは申しております。心身障害児も特殊児童でしょうし、昼間の学校に行かれない子供も特殊な境遇にいる者ですから、そういう一つの範薦で特別なクラスと、この呼び名は何でもいいと思うのですが、あの子たちの存在に対して、道も開かないで消えてなくなれ、こういうことはどうも納得がいかないわけですけれども、いま大臣はそのことにお触れになりましたから、それはそれでよろしいのですけれども、何とか考えてやっていただきたいと、そう思うわけでございまして、あの子供たちが右から左に昼間のクラスになれるものなら問題はないのでございます。夜間学ばなければならないという形態を何かの形で――一一つのつなぎみたいなものでもよろしいと思うのです――将来なくしていくための暫定措置でも、ひとつ何かあたたかく考えていただかなければならないと、あれ以上あの子たちちっともひがんでいないことは不思議なようでして、おそらくここにおいでの皆さんは、夜間中学においでになったことはないだろうと思うのでa。ほんとうにいい子ばかりで、いい先生たちがあんなに一生懸命やっていらっしゃるのに、いつまでも、俗に申します日のあたらない教室というわけにはいかない。あの教室がなくなることが理想でございますけれども、その理想に至る間のことを私が切にお願いをしているわけでございまして、大臣は心に置いてくださるそうでございますから、もう時間もございませんから、最後に、この夜間中学がそもそも生まれてまいりました原因が、その当時の不就学、長欠生徒にあった。で、長欠児というものは減りましたけれどもやはり現在あるようでございますけれども、それを解消していくことが、自然的に夜間中学の廃止という結果を生むのだと思いますけれども、その長欠の問題でございますけれども、このごろは何人ぐらいございますでしょうか。
  187. 天城勲

    政府委員(天城勲君) パーセンテージで申し上げますと、四十一年の統計では、小学校で〇・三九%、それから中学校で〇・七六%でございます。前のことを申し上げるようですけれども、二十七、八年ころは小学校で一・五%ほどでございましたし、中学校は三%か四%くらいあったわけでございますが、減ってまいりました。数で申しますと、小学校で三万八千人、中学校で四万三千人弱でございます。
  188. 山高しげり

    ○山高しげり君 それで、子供たちは学校に籍があるわけですけれども、除籍者というものが出てまいりますね。学校で子供の籍をお除きになることがあるわけですね。その除籍者の調査というものは文部省はなさっていらっしゃるのでしょうか。
  189. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 除籍者と言われる意味でございますが、実は義務教育におきましては就学義務がありますから、全部就学すべきだという前提で把握しておりますし、その中で、いろいろな事情で就学できない者については、猶予、免除の措置をいたしますから、猶予、免除以外の除籍ということは、普通には義務教育の中にはないわけでございまして、どうしても義務教育の手から離れるのは、非行の場合に、少年院、教護院に行く場合だけだと思っております。それ以外に除籍という処分は、いまの義務教育の制度では、ないたてまえになっております。
  190. 山高しげり

    ○山高しげり君 たてまえはどうか存じませんけれども、東京都などは一ぺんその調査をやりたいということを教育長の人から聞いたことが私はあります。それから、ところによっては、地方の都市でそういう調べを持っているところが、非常にまれでございますけれども、あるやに聞いております。やはり、こういう落ちこぼれというものを拾って、何で落ちこぼれたのかというところまで掘り下げないと、夜間中学は、幾ら消えてなくなれと言っても、なくならないものじゃないかと思う、実質は。あたたかくと私がお願いするのは、そうでございまして、お役所のたてまえはちゃんといろいろおきまりでございましょうけれども、そ、うい、う人たちが何人かいるようでございますから、名前は何でもよろしゅうございますが、その落ちこぼれをひとつお拾いを願いたいと、いかがでございましょう。
  191. 天城勲

    政府委員(天城勲君) いわゆる長欠児童がなぜ長欠しているか、それから、長欠にも期間的にいろいろございまして、一年なら一年の全期間来ない子供、あるいは三カ月くらいとか、百日くらいとか、いろいろそういう調べはございますし、それから一応、その期間における長欠の理由は、いろいろ調べているのがございますが、ただやはり、何割かは病気であったとかいろいろなことがございますが、いま実際に、おっしゃる、長欠しているうちに結局どこへ行ってしまったかわからなくなったという問題だろうと思うのですけれども、把握しようにもしようがなくて……そこを除籍とおっしゃいましたか。わかりました。そういうこまかいところの理由まで、私たち現在手元に持っておる資料では、最近の資料ではございませんが、全般的な資料はございますけれども、個々の原因を分析したようなところまで持っておりません。
  192. 山高しげり

    ○山高しげり君 やはりそのこまかい個々の分析というところから仕事が始まって、積み重ねていかれるものではないか。そういう掘り下げになりますと、文部省のお仕事か厚生省のお仕事か限界点もはっきりしないことが起こってまいりますけれども、どこでやっていただいてもよろしいのですけれども、現在の夜間中学の生徒のような、中には、学校ぎらいがほんとうに学校が楽しくなったというような子供が非常に数が多いことを考えましても、昼間しあわせに学校に行っている子供たちの中に、あんなに学校ぎらいがあるという事実と照らし合わせて、たいへんな皮肉でもございますし、やはり教育関係者はお考えを願わなければならない問題がどうもひそんでおるようでございますので、まとまらない質問でございますけれども、現実を通してひとつ訴えさしていただいたわけでございます。  私、実はもう少し、最近答申が出ました家庭生活問題審議会の、あの家庭生活に対する答申等に関連をいたしまして、あの中からは、今後の文部省の社会教育のお仕事の中で期待を申し上げなければならないことが非常に多いようでございますので、そのことについても少しお聞きをしたいと思いましたけれども、きょうは時間がございませんそうですから、これで終わらしていただきます。ありがとうございました。
  193. 鈴木力

    鈴木力君 最初にちょっとお伺いいたしたいのですが、実は予算書をもらいまして、しさいに検討しようと思いましたら、どうも予算書のこれだけでは非常にわからないところが多いわけです。そこで実は、いま私も言い方がおそかったのでありますけれども、きょう午前に、せめてこの初中局の――あとの局はあと回しにしても――初中局の予算のうちに、特に事業なんかに伴うものについては事業計画等のこまかいものを見してくれないか、そういうことを申し入れをいたしましたけれども、どういう都合か、これがちょうだいできなかったわけです。そういうことになりますと、予算で特に事業を伴う等のものは多少少しこまかく伺わないと、どうも御質問申し上げるにも困ると思うんで、それでこの際に主査お願いしたいんですけれども、時間の制限がきわめてあるんだそうですが、いまのように資料お出しいただけないと、一つ一つここでお伺いを申し上げるということになり、相当の時間がかかると思うんでございますが、その点をひとつ先にお許しをいただきたいと思うんです。
  194. 宮崎正義

    主査宮崎正義君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  195. 宮崎正義

    主査宮崎正義君) 速記起こしてください。  資料請求は後日出していただきたいと思います。
  196. 鈴木力

    鈴木力君 一番先にお伺いいたしたいのは、この予算が、これはもうどういう事情になっても自然成立でも成立することになっておりますから、そこでこの予算が成立をしたあとの取り扱いについて文部省どう準備しているのか、ちょっと伺いたい。それはこの予算が成立をするわけでありますが、この予算の中に大学、高専等の拡充の予算があるわけであります。教科も設置をいたしますし、それから高専も新しい教科の設置もあるわけであります。しかし、その設置予算は通っても、全然教官の定数というのは出ていないわけですね。そこで、教官の定数をどこでどうして配置をするのか、その計画をひとつ伺いたいと思います。
  197. 宮地茂

    政府委員(宮地茂君) これは予算が数日のうちに通していただけるし成立すると思いますが、その場合に、一応法律関係でないものは執行さしていただけると思います。ただ、法律的に問題になっておりますのは定員法関係の問題と、それから国立学校設置法との関係大学関係するものでございます。で、先生承知のように、定員関係のが行政機関の職員の定員に関する法律案で、来年国立学校の定員につきましてはいろいろ増員方をお願いいたしておりますし、二千数百名にのぼっておるわけでございます。ところで、この国立学校設置関係だけに限定いたしますと、大学院が四つございますし、それから文理学部の拡充改組がございますが、文理学部の拡充改組のほうは、きわめて人数的には、定員的には十名に足らない純増でございます。したがいまして、こちらのほうは、支障はございますけれども、運用上絶対支障があるということではなくいけると思うのでございます。しかしながら、定員関係の法律が通りませんと、国立学校設置法に直接関係はいたしませんが、各学科増とか、それから昭和三十九年八月から学科を新設いたしましたものの学年進行的にふえてくる教官、こういったものにつきましては、予算は動くようになりましても、定員法の改正が成立いたしませんと、私のほうといたしましてはこれは実際に措置することができない、こういう関係になろうかと思います。
  198. 鈴木力

    鈴木力君 それじゃ局長の御答弁、こう伺っていいんですか、定員法が通らなければあきらめる、そういう趣旨の御答弁と伺ってよろしいですか。
  199. 宮地茂

    政府委員(宮地茂君) あきらめるという先のことを申し上げたのではないので、理屈、理論だけを申し上げましたので、あきらめるかどうかということにつきましては、私どもせっかく定員法は各省の総括的な定員法改正も出ておることでございますし、国会もまだ審議日数もございますので、一刻も早くその定員法の改正されることを現時点では要望いたしております。その後の、また定員法が成立しなければ云々ということは、まだちょっといまの段階では申し上げかねると思います。
  200. 鈴木力

    鈴木力君 いま定員法を提案しているとおっしゃいますけれども、何月何日にどこで提案をなさっていらっしゃいますか。これは私のほうが調べていないので粗漏があるかもしれません。ちょっと私のほうは、いまの提案されている法律を全部調べてみても、定数に関係のある法律はどうも見当たらない。
  201. 宮地茂

    政府委員(宮地茂君) 定員法が出たということは確かでございますが、その日付等いまわかりませんので、ちょっと調べさせますので、後ほどお答えさせていただきます。
  202. 鈴木力

    鈴木力君 日にちは、いまここで調べなくても、別に質問するのに支障があるわけでもありませんが、ただ私が申し上げたいのは、ことしの政府予算の提案のしかたや、それから法律の提案のしかたがどうもおかしいんじゃないかと思っているんです。それでこういう変なことをお伺いしたわけです。  それで、大臣がいらっしゃるうちにもう一つだけお伺いしたいのは、文化財関係もそうなんですね。いまこれは提案にはたしかなっていると思いますけれども審議が非常におくれておる。私どもは非常に問題のある法律なんですが、総理府の設置法の改正ですか。そういたしますと、その予算書を見ますと文化財保護委員会予算は暫定予算にはあるかもしれません、本予算には本年度分がないわけでしょう。そうすると、この法律は通るでしょう。この法律は成立いたしますね。予算にはないわけです。そうして文化財保護委員会は残っているわけです。そういたしますと、そういうときの扱いというのはどういう扱いになるのかを、これは文化局長から……文化局長でなくてもどなたでもいいです。
  203. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 昭和四十三年度一般会計予算予算総則第十二条の規定によりまして、「行政組織に関する法令の改廃等に伴う職務権限の変更等によって、」云々という規定に相なっておりまするが、主管、所管及び組織の区分によりこの予算書にございまするような執行をすることができない場合におきましては、主管、所管または組織の設置、廃止もしくは名称の変更等につきまして予算の移しかえができるという規定が第一項。第二項は、「行政組織に関する法令の改廃等に伴い、この予算の組織又は項に用いられている行政機関の名称が実際の行政機関の名称と対応しないことになった場合においても、その組織又は項に係る予算はその目的の実質に従い、そのまま執行することができる」、この予算総則の、特にただいまお尋ねの点につきましては、第二項の「組織又は項に係る予算はその目的の実質に従い、そのまま執行することができる」、これを根拠といたしまして、組織に関しまする改廃の法律が予算成立の時点とずれますというと、現在御審議いただいておりまするのは文化庁という形で予算を御審議いただいておりますけれども、その実質に従いまして従来どおりの文化財保護委員会、本省の文化局に分けて予算を実質に従って執行してまいる、こういうことに相なっております。
  204. 鈴木力

    鈴木力君 その場合には、定員でいいますと、予算書には四十三年度の定員として文化庁は八百二十九名になっていますね。それから文化財保護委員会は四十二年度の定員として五百四十七名になっています。いまのような扱いになりますと、五百四十七名が定員として生きるわけです。八百二十九名が定数となるんです、移しかえの場合。
  205. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 定員関係の法律改正の成立がない場合には、現在の四十二年度の文化財保護委員会とそれから文化局は本省関係に入っておりまするが、その定員しか法律的にはございませんから、それによりましての執行に相なろうかと思います。
  206. 鈴木力

    鈴木力君 もう一つだけお伺いします。  そうしますと、総理府設置法がかりに通って、そうして定員関係の法律が通らない、こうなった場合には、文化財保護委員会が文化庁に切りかえられて定数は文化財保護委員会の定数で運用をする、こういうことになるわけですか。
  207. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) ただいまのお尋ねは、組織の改変は成立をした場合でございましょうか。ちょっといまの御質問とりかねたのですが、組織が成立をして定員法のほうが成立を見ない場合でございますか。
  208. 鈴木力

    鈴木力君 そうです。
  209. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) ちょっと本格的に検討いたしておりませんが、今回のは、各省関係の定員が一本の法律に定員関係はなっておるわけですけれども、もし定員法が通らないということであれば、現在の文化財保護委員会、それから本省の文化局の定員を基礎に執行するようになろうかと思いますけれどもお尋ねの趣旨がちょっとわかりかねるのです。
  210. 鈴木力

    鈴木力君 いま三つのもので一つのものを審議することになっておるのでしょう。一つ予算ですね。それからもう一つは行政機構の簡素化等のための総理府設置法の一部を改正する法律案、これで文部省設置規則が相当に改正されるわけですね。具体的に言えば、ここだけで言いますと、文化財保護委員会がなくなって文化庁になるわけですね。ところが、もう一つ定数の関係の法律案が出てくるわけでしょう。この三つがぴちっとそろえば、最初の計画どおり進めれば。ところが、いろいろな場合があるわけですよ。これは仮定の上に立ってと、何か昔、はやったことで、答弁できないと言われればそれまでですけれども予算は通ることは確実ですね。通るか成立するかは確実だ。この設置法が通って定数法が通らない場合には、この設置法が通るから機構がえはするわけですな。そうすると、定数は文化財保護委員会の定数が移行するのか、その移行のしかたをいま聞いているわけです。
  211. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 組織関係の改正の法律の御審議が進みまして機構の改変が成立いたしますると、文化財保護委員会並びに文部本省の文化局関係の現定員、四十二年の定員をもととした仕分けができて組織が一応できます。そうして四十三年度をどう改変するかという問題がいま先生の御指摘の御審議いただいている定員法に相なりますので、組織の改変に伴いまして新しい組織につきましての定員の割りつけは同時に行なわれるというふうにお考えいただいてよろしいかと思います。
  212. 鈴木力

    鈴木力君 ちょっとわからないんですがね。そうするとこういうことなんですか。かりに文化庁ができるといたしますね。四十二年度の定員で割りつけするというから五百四十七名で割りつけをするわけですね。ところが、ここに載っておるこの設置法の構想は八百二十九名を必要とする計画がこっちにできているわけでしょう。そうすると、その場合には、これが通れば定数法が通らなくとも八百二十九名の配置でできると、こういう解釈ですか、いまの御答弁は。
  213. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 行政機構の簡素化等のための総理府設置法等の一部を改正する法律案の第十六条が文部省設置法の一部改正でございまして、「文部省設置法の一部を次のように改正する」ということで案文ができておりますが、その中で、「第三十一条中」云々というのが、法律案で申しますと二十一ぺ-ジのところかと思いますが、「同条の表中「本省一〇三、九五一人、文化財保護委員会五四六人」を「本省一〇三、六九四人、文化庁八〇三人」に改め、」云々という条文が入っております。したがいまして、行政機構の簡素化等のための総理府設置法等の一部を改正する法案が成立いたしますれば、本条が動いてこようかと思います。
  214. 鈴木力

    鈴木力君 そうすると、定数法が通らないでも八百三名は適用できると、こう伺ってよろしいわけですね。
  215. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) この行政機構の簡素化等のための総理府設置等の一部を改正する法律が成立いたしますれば、ただいま私の読み上げました定員に相なるわけでございますが、四十三年度予算との関連の増減関係は、新しい定員法が成立しないと成立しないわけであります。
  216. 鈴木力

    鈴木力君 そうすると、結局はこういうことですね。将来はこの定数でいくわけですけれども、定数法が通っていないと、この五百四十六名ですか、この定数で通るまではやらなければいけない、こういうことですか。どうもその辺、私のほうのが理解しにくいのかもしれませんけれども、もう少しきちっと御答弁いただきたい。
  217. 諸沢正道

    説明員(諸沢正道君) ただいまお話しのありましたように、もしこの定員法の改正がない場合には、組織の上で文化財保護委員会と文化局が一緒になりまして文化庁ができました場合の定員は、現在の文化財保護委員会の定数と、それから現在文部本省の定数の中に規定されております文化局の定数と、それが機械的に一緒になったものが文化庁の定数と、こういうことになります。
  218. 鈴木力

    鈴木力君 大体わかりました。非常にややこしいのでいま伺ったわけです。それからまた、逆の場合もありますね。これが通らないで、定数法だけ通った場合にはどうなるか。
  219. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) 定員のほうは法律上効果が発生するわけでございますけれども機構の改正が伴いませんので、機構の改正が伴わない分につきましては、これは定員のほうも効力を発生しない、こういうふうなことになろうと思います。
  220. 鈴木力

    鈴木力君 その辺の関係はわかりました。  そこで、さっきの大学、国立学校の定数関係をもう少し伺いたい。これは私、何か文句をつけるために言っておるのではなくて、いま、もう入学試験をやって生徒は採用してしまっているんでしょう。そこはどうですか。
  221. 宮地茂

    政府委員(宮地茂君) そのとおりでございます。
  222. 鈴木力

    鈴木力君 そこで、説明ですと、国立学校設置法とそれからもう一つ文部省設置法で教官の定数をきめましたですね。それがこの三本がセットになっていったわけですから、大体その進みぐあいというのもそう狂いを来たさないと思うのです。ことしはどうも政府が非常に、私に言わせると、乱暴な提案のしかたをしておるものですから、そういう場合に、かりに定数法通らずに、それからまた、この総理府の設置法もそのままになった場合、入学試験で募集をした学生とその教官が、まあ国立学校の設置法はこれは通るとして、そういう場合に文部省はどう扱うつもりでおりますか。
  223. 宮地茂

    政府委員(宮地茂君) いまの段階におきましてまだ国会の会期も相当ございますし、いまの段階でちょっと先生の仮定の問題に答えますのも――これ実は定員法は文部省だけでございませんで、各省全体の今度は総括定員法でございますので、文部省だけでどうという考え方をお述べしても、これはちょっとぐあいが悪い点もございますので差し控えさしていただきたいですが、要するに、いまの段階といたしましては、国会の審議期間も、まだ会期もございますし、まことに恐縮ですが、この定員法の審議を促進していただいて、一刻も早く定員法が通ることを私どもは心から祈念いたしておる次第でございます。
  224. 鈴木力

    鈴木力君 その気持ちはよくわかるんですがね。その気持ちはよくわかるけれども、私が申し上げたいのは、まあ、その予算の性格はよくわかりますけれども、さっきも乱暴なということばを使ったのです。これは私のほうが乱暴かもしれませんですけれども、何かどういう意図かわかりませんけれども、各省を一つにまとめてしまって設置法という一つの法律で打ち上げてしまおうというような計画、定数もそうですよ、そこで私はこの場合に非常に心配なのは、一体この大学の教官を一般の行政職と一緒の法律で持っていくというところにどうも私は疑義を感ずるのです。大学の教官というのは、やはり行政職とはまた違ったそれぞれの配置と任務がなければならないはずです。そういたしますと、もっとこまかな教官の配置というものがあってもいいんじゃないかというような気もするのですけれども、そういう点については文部省はどう考えていらっしゃるのかですね。  それからもう一つは、これはあとで審議をする機会があるだろうと思いますけれども、たとえばこの総理府の設置法等を見ましても、文化財保護委員会を文化庁に切りかえる。これはただ一省一局削減などというふうに新聞には出ておりますけれども、私どもから見ると、そういう簡単なものじゃないような気がするのです。完全にこれは性格が違うわけです。国会の承認人事である保護委員をもって構成している委員会行政が、これが文部省の直轄行政に、もちろん文部省の管轄ではありますけれども、官庁行政に切りかえられるわけです。こういうようなものと定数法とこの予算とをばらばらに出しておいて、将来の運営は心配ない、こういうふうにお考えになっているところが私はどうも少し乱暴ではないか、こう思うのです。これは政府全体としてまとめられるときに相当御論議なさったのだろうと思いますので、こうしたものの考え方の、何といいますか、考え方の本質がどういうところにあるのか、これは大臣から御答弁をいただきたい、こう思います。
  225. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私は政府の一員でありますので、私がお答えするのが当然でございますが、今回の提案のしかたについていろいろ御批判をいただいたわけでございますが、私は私なりに考えたところをお答え申し上げたいと思います。  定員法を一本にしたということは、私は、この政府職員の定員の問題を各省各個ばらばらでなくて一本にして、そうしてその定員が政府の職員の定員の増減、こういうような問題についてみんなが考える、こういう趣旨のもとに一本にしたものと考えておるわけでございます。それから各省設置法に関係したものを一本にしてまた御審議お願いをいたしておりますが、これは便宜一括して一つ委員会で御審議を願うというのが便宜ではなかろうかということで、そのような取り扱いをしたものと心得ております。  また文化庁の問題でございますが、一局削減という方針には、私どももこれに従いまして、文部省の局課の問題であります一局削減の問題につきましては、文部省政府方針として一局削減するという方針を認めました上で、さてどういうふうに削減せられた定員のもとに文部省の組織機構等を考えたらよろしいかというところまで、実は文部省は考えたわけでございます。ただ単に一局を減らすということでなくて、一局削減の目的も達しながら、できれば文部省の行政がよりよく進展する余地がありはしないかというふうな点から考えまして、従来いわゆる行政委員会としてやっておりました文化財保護委員会と文化局とを統合することが日本の文化行政の進展の上にベターであろう、こういうふうな考えをもちまして、このような機構の改革をして御審議お願いしている、こういうふうにひとつ御了解を願いたい。いずれまた御論議をいただく機会もあろうかと思いますが、そういう趣旨でやっておるのだというふうにひとつ御了承願いたいと思います。
  226. 鈴木力

    鈴木力君 いまの一省一局削減の問題につきましては、あとで具体的にまたお伺いをする機会があると思いますから、きょうはそれでやめますが、学術局長一つだけ最後にお伺いしておきたいのは、いまの定数を政府が一本化する、いまの大臣の御答弁のような御趣旨もわからないではないわけです。しかし、いま関係者――関係者ということばは悪いかもしれませんが――大学の教授なり教官の人たちの心配の中に、いわゆる行政職と一緒に、同列に見られるということを一つは非常に心配している。私はそういう印象を受けている。たとえばかりに将来一律に五年間で何%を減員をするというようなことが出た場合にも、大学には大学のいろいろな特殊事情がございますから、たとえば教授の定員なり助教授の定員にしても、適任者があるまでしばらく人をさがして待っておるとか、それまでは兼任教授でがまんをしながら適任者をさがしておるとか、いろいろな事情があるわけです。   〔主査退席、副主査着席〕 そういう、大学でなければならないような事情を一本化された場合に、はたして勘案してやってもらえるかどうかという心配が、大学の教官の方々にも相当あるように私は印象づけられておりますので、そういう点に対する文部省見解を伺っておきたい、こう思うんです。
  227. 宮地茂

    政府委員(宮地茂君) 大学の教官も、これは国家公務員という基本的な性格におきましては、他の一般公務員と同列でございます。こういうような観点から、先ほど大臣のおっしゃったようなこともございまして、今後は総定数については教官を一般職員に含めまして法律で一本できめようということでございます。さればといって全部彼此相通じ合うといったようなことではございませんで、従来も政令なり省令なりにおきまして各大学ごとのこまかい数もきめておりまして、今後それが政令でいくか省令でいくかは別といたしまして、大学の教官の定数を一般職と彼此相通ずるといったようなことは、私どももするつもりもございませんし、政令か省令かは別といたしまして、はっきり定数は従来のようにきめてやりたいと思っております。  それからもう一つ定員削減の問題でございますが、俗称凍結定員の問題で、欠員不補充といったようなことで、いろいろ一般の行政職員には問題はございますが、これにつきまして、私ども文部省といたしましては、一般の職員、とりわけ本省の職員はどうあろうとも国立学校の教官だけはできるだけそういうような措置から例外として扱ってもらいたいということでございまして、教官とその他の一般職員とは峻別いたしまして、できる限りそういうことは教官に及ぼしたくないというふうに努力いたしてまいっておるところでございます。従来も、たとえば一般職員ですと、二人やめますと一人しか補充できない、二分の一でございます。しかし、教官は十人やめて、一般職員と別個だというわけにもいかなければ、十人やめれば一人、一般職員二分の一補充に対してせいぜい十分の一くらいといったようなことで、できる限りの措置をいたしておりましたが、今後のことにつきましても、これは行政管理庁あるいは大蔵省、人事院、関係省庁と十分その点は相談することになっておりますし、従来から教官に対しての特別の措置をしてきた考え方は将来も変わらないつもりでございます。
  228. 鈴木力

    鈴木力君 いま局長から御答弁いただきましたような趣旨で、最後まで、やはり教官やあるいは教授や研究者に不安を与えないように方針をがっちりと推し進めていってもらいたいと御要望申し上げます。  あと文化局長にお伺いいたしたいんですが、この予算書に、たぶん文化局の管轄だろうと思いますが、芸術関係のところに明治百年ということばが出ておるんですね。明治百年記念事業に補助金を出す、そういう項目があるように見受けたんですが、この明治百年という用語はいつから公式用語になったのか伺いたいと思います。
  229. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 政府におきまして明治百年の記念事業をする、こういうことでそれぞれ各省で適切と思われるものを考える、こういうことから明治百年記念というようなことが起こってまいったわけでございます。
  230. 鈴木力

    鈴木力君 だから、それはわかるのです。明治百年という用語が公式用語となったのはいつからで、どういう理由かということを聞いている。
  231. 安達健二

    政府委員(安達健二君) ちょっと正確な日付は忘れましたが、たしか一昨年ころだと思いますが、政府で明治百年の記念事業をしよう、こういうことでございます。
  232. 鈴木力

    鈴木力君 私が聞いているのは、そういう記念事業のことじゃなくて、明治百年という用語について聞いているのです。少なくとも日本は、天皇一代にして一つの元号を使うということに明治以来なっていると思う。日本人は全部そう思っている。ところが、文部省は明治百年明治百年と言って、大正天皇、今上天皇を無視している。大正天皇といまの天皇を全然ないがしろにして、日本の天皇は明治天皇しかないみたいな宣伝をじゃんじゃんやられるということは、これはどういうことかという意味です。そこで、明治百年という用語を政府が公式に使うという意図はどういうことなのだ、もう少しその点ははっきりと御答弁いただきたい。
  233. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 明治百年と言いますのは、日本が近代化を始めたその明治時代から現在まで百年たった、そういう意味で明治百年ということでございます。
  234. 鈴木力

    鈴木力君 私が聞きたいのは、そういうことを聞いているんじゃないですよ。そうすれば、何年たったということになれば、その前の慶応百何年という言い方も成り立ちますが、そういうことではなしに、公式に言う場合に、明治百年という用語が適切なのかどうかということですよ。それはいろいろ世間で言う場合には私はかまわないと思う。ことしは明治から勘定して百年目だ、新聞でいろいろなそういう行事をしたり、そんなことについては、別にぼくはどうということはありません。公式に文部省が明治百年という用語を使うということは、元号という一つのしきたりの考え方が固定しておったものを今度変えるのかどうか。
  235. 安達健二

    政府委員(安達健二君) その問題はむしろ政府一般、総理府の所管の問題であると思いますが、明治百年というのは、元号の問題とは関係なく、日本が近代国家として偉大なる発展をしたその時点としての明治というものを考えて、それから百年たったとして、明治をしのび、その将来の日本の発展をこいねがう、そういう意味で明治百年と言っているものと考えております。
  236. 鈴木力

    鈴木力君 そうすると、明治百年というのは公式の用語でない、こういうふうに確認してよろしいですね。
  237. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 公式の用語かどうかということは、よくおっしゃる意味わかりませんけれども、いま言っておる明治百年というのは、いわゆる法律のあれでもございません。いわば国民も期待し、そして政府もそれに応じて明治百年を記念しよう、こういうことでございまして、公式、非公式という、そのおっしゃる意味のこととはちょっと関係がないように思います。
  238. 鈴木力

    鈴木力君 これは私はどうもつまらないみたいな立場からものを言うから皆さんお笑いかもしれませんけれども、私は真剣にこの問題は討論してみるべき必要があるんじゃないかと思うのです、特に文部省はですよ。というのは、さっき言いましたように、明治百年明治百年ということばが非常にはやり出してから、いまの子供たちでも、いつごろから一世一代一元号といういまの方針が変わったのかという質問をする子供がもう出てきているのです。そういう点の配慮は全然なしに、だれかが思いついたかもしれない。近代化が明治から始まったというけれども、しかし、歴史が、明治が始まるまでには、その前からもう続いておるのでございまして、全然そこにはっきりした切れ目があるわけじゃない。見ればなるほど近代化がされた。しかし、近代化といいましても、ほんとうの近代化かどうか、新しい日本という場合には、いまの憲法から生まれたのが、むしろ非常に大きな性格がありましょうから、それは議論がうんとあるところでしょう。明治百年ということばには、それが近代化された明治百年明治百年ということばを文部省もあまりに強力に使うものだから、たとえば、ある県の教育委員会みたいに、自分の県の明治百年の年表を学校の生徒に全部配る。そうすると、残念なことに、明治憲法の日は出ているけれども、いまの日本国憲法の成立した日はその年表から抜けておった。県民に騒がれて、あわてて小さな紙で修正を出したというような、そんなことがもう出てきているわけです。だから、明治百年を大事にするという気持ちは、立場は違うとしても、考え方はいろいろあるとしても、そういう人たちの気持ちはよくわかるけれども、それなりに、しかしそこだけ気がついてそこだけ大きく広げようとしておって、皆さんが気がついていないいまのようないろんな弊害があるわけです。だから、私はそういう、特に文部省が公式に使ういろんなものについては、よほどこれは慎重に扱っていただきたい。これはただ議論しておっても時間を食うばかりですから、これは相当検討し直してもらいたい、こう思います。特に、この予算を見ますと、従来やってきたものを、あらためて頭に明治百年という名前をかぶせている、そんなものがずいぶんありますわね、この予算で見ましても。そういうことでは私は意味がないと、こう思うのです。何でもかんでもひいきの引き倒しで明治百年がいいということを思いついたらとんでもない。何でもみんな明治百年をくっつければいいというような変な時流に乗るような文部省の態度というものは、私はやっぱり反省をする必要があるのじゃないか。これは意見として申し上げておきます。  それからもう一つ伺いたいのは、国立劇場の予算で、運営費は出ておりますけれども、この中で後継者の養成については、予算をどれだけとっており、国立劇場ができてから三年ですか、なりますが、後継者の養成はどの程度に進んでおるのか、伺いたいと思います。
  239. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 国立劇場の予算の中で、養成事業関係予算は、昭和四十三年度は養成事業の準備をやるということで、三百万円の予算計上ということに相なっております。
  240. 鈴木力

    鈴木力君 準備をやるということになりますと、四十二年度までは全然やっていなかったわけですか。文化局長
  241. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 国立劇場は文化財保護委員会所管なものですから。
  242. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) 四十二年度のお話が出ましたので、私、昨年の十月まで文化財保護委員会事務局長をしておりましたので、その関係で申し上げさしていただきます。  養成事業につきましては、国立劇場設置以来、主要目的として研究し、実施に移したいということで鋭意やってまいったわけでありますが、何ぶんにも、この種伝統芸能の養成事業というのは、過去においていろいろな試みがありましたが、いずれも永続せず、率直に言えば失敗に終わっているという歴史がございます。そこで、やるにしても、きわめて慎重に対処いたしたいということで、国立劇場の組織で、そのための部課を設けて、さらに、多くの部外者、この問題に関する専門家の協力を求めて、何度か実態の調査をし、ディスカッションをし、伝統芸能技術者の養成事業をやる場合の問題点の整理のかなり膨大なる資料をつくって、準備を四十二年度中にいたしまして、ここでこれならいけるという方向が出れば、四十三年度からは実施いたしたいというぐあいにやってまいったわけでありますけれども、その後、おそらくこれならやれるという十分な見通しが立たなかったために、四十三年度も引き続き研究を継続するということに相なったのだと思います。
  243. 鈴木力

    鈴木力君 伝統芸能の後継者の養成というのが非常にむずかしい実情にあるということは、私も多少わかるつもりなんです。そこで、そのむずかしい実情にあるから、いままではやろうとしてもやれなかった。四十三年度はいよいよ準備に取りかかるということになりますと、いままでの問題がある程度整理をされるなり前進をされたのではないかと、こう思いますけれども、文化財の保護委員会からきょう来ていないとすれば、お伺いしても無理ですか。どなたかわかっていらっしゃれば。
  244. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) 私がやっておりました段階では、関係者からの事情聴取を実に何度か繰り返しまして、問題点は整理いたしました。それから問題点を整理してかりにやるとすればこういうことが考えられるという養成事業試案、これは外部に発表できるだけの自信作には至らなかったのでありますが、試案程度のものは作成いたしました。そこで検討しました問題点、こまかくなりますが、いま記憶いたしておりますおもな点を申し上げますと、まず、何をやるか、伝統芸能といってもいろいろな分野がございます。歌舞伎をはじめ、文楽ですとか、あるいは舞踊ですとか、いろいろな分野がございますし、それからまた、下座音楽のように補助技芸のようなものもございます。いろいろな分野がありますが、結論だけ申し上げますと、とりあえず、まず歌舞伎の演技者から始めるのがよかろうというようなことが一つ出ております。それから、どのくらいの年齢段階から始めるか、これも、この種の技芸は早いほどいいという意見と、あまり早過ぎて思慮分別も定まらないうちからやるのはどうか、これだけでも議論すればきわめて複雑な議論のもととなるような問題点がございますが、そこら辺は割り切りまして、義務教育終了程度、なるべく早くという角度から、それにしても、義務教育段階の者をこういう養成事業に専念させることはできないわけでありますので、義務教育終了程度からまずやったらどうか。それと並行して、一応の心得のある者に対して、別科とか専攻科という形でやったらどうかという議論が出ております。それから次に、修業期間をどのくらいやったらいいかというような問題、それから先生をどうするか、これは結局、この種の問題でありますから、理論とか歴史は別として、実技の問題となりますと、現に非常に少なく、かつ忙しい演技者の人に協力を求めなければなりません。そこで、そういう方が協力してくださらなければ、幾ら当事者が願望してもできないわけでありますので、主としてその演技者の方から協力してもらえるか、どういう形で協力できるかというようなこと、これまた論議を重ね、事情聴取もやっておったわけでありますが、ここら辺がかなり結論の出にくい事柄になっております。それからまた、男女共学の問題でありますとか、手当の問題ですとか、それからまた、さらに最後の大問題は、養成した者がある程度習熟した場合の受け入れ態勢をどうするか、これは義務づけるか、あるいは国立劇場で引き受けるか、あるいは外の同種の芸能に入っていってもよろしいか、いろんな場合が考えられるわけでありますが、ここら辺についても議論を重ねましたけれども、必ずしも明確な結論は出ておりませんでした。それが実は率直に申し上げますれば、昨年の十月くらいまでの状況でありまして、その後、引き続いて検討されたとは思いますが、四十三年度もさらに従来の検討の線の上に、新しい問題点も含めまして、十分検討の上で、何ぶんにも、これは軽々に始めてしくじりますと、及ぼす影響も多いものですから――しかし、またやってみないとわからないという面もありまして、いつまでも検討しておってよろしいという課題でもないかと思います。非常に重要な課題で緊急を要することであるけれども、さりとて、十分な成算なくして始めることもどうかということで検討が続けられることだと思います。
  245. 鈴木力

    鈴木力君 これも、どうもいま伺ったことは、実は大体国立劇場ができるときの、あの法律をつくるときの議論から幾らも進んでいないと私は思うわけです。相当むずかしいということはよくわかります。しかし、今度準備費を置いたということになりますと、それこそむずかしいということで、毎年毎年同じことを繰り返しておるとこれはぐあいが悪いと思いますから、これについては、いろいろな問題があろうとも、そろそろことしあたりは具体的に前に進むべきときじゃないかと、こう思いまするので、これは関係のほうに、局長を通じましてよく御努力をいただきたい、これは要望を申し上げておきたいと思います。  大臣がいらっしゃらないので、初中局長さんに次のことをお伺いしたいのですが、これはさっき申し上げましたように、あとこまかいことはまた別にあとで伺うとして、一つだけ伺いたいのは、予算の中の教職員の研修の充実というところなんですね。ここには、いろいろ各種研修会、講習会がずっと出ておりますけれども、この各種研修会、講習会というようなのがどういう研修会、どういう講習会を計画をされているのか、それをひとつ伺いたいと思います。
  246. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 確かに初中局の予算はおわかりにくいかと思います、いろんな教職員を対象として行事が多いものですから。いま御指摘の各種研修会、講習会等、これの中身でございますが、一応事項を最初に申し上げますが、科学教育研究室という理科教員関係の講習会、学習指導要領関係の講習会、教職員資質向上という、たいへんこれは大きなワクになっておりますが、とにかくこれが一つございます。それから教育課程の研究集会、司書教諭の養成を目的とした講習会、校長等の研修会、こういうふうに大ざっぱに分けると中は分かれております。
  247. 鈴木力

    鈴木力君 ちょっと整理してもらいたいのですが、たとえば校長等のというふうにやる場合には、対象でずっと並べてもらいたいし、それから科学教育研究というように研究の中身という場合には、全部そういうふうに並べてもらいたい、校長等のという場合には、何をおやりになるのか。
  248. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 鈴木先生のいま御質問も、この各講習会の目的を一つ一つ申し上げなければならぬことになるわけでございますし、私もすべてそれだけの資料を手元に持ってきておらないものですから、たとえば目的をそれぞれ申し上げるとか、あるいは、その対象を申し上げるとかによって――確かにごちゃごちゃいたしておりますので。
  249. 鈴木力

    鈴木力君 いまの校長等の、そこです。
  250. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 校長等々ということでございますが、これは大体校長と、それから教頭と、それに準ずる教職員、これを対象にして、ことしはまだ行なっておりませんけれども、去年の例で申しますと、二週間の研修会を催すわけでございます。
  251. 鈴木力

    鈴木力君 二週間の研修を行なうということはわかりますけれども、その校長、教頭、教頭に準ずる教員を集めて二週間研修する、そのテーマはどういうことを考えているかということを伺いたいのです。
  252. 天城勲

    政府委員(天城勲君) それぞれの講習会の事業目的の資料がいま私の手元にございません。正確を欠くといけませんが、校長としての必要な資質を向上するというのが目的でございますので、学校管理運営上の問題、あるいは現在の教育課程の問題、あるいは非常に広い意味での、校長の教養を広めるという意味で、必ずしも教育問題ではない、外部の方の講演を開くとか、いろいろあるわけでございますが、いま講座の内容についての資料が手元にございませんので、詳しいことはお答えできません。
  253. 鈴木力

    鈴木力君 時間がありませんので、研修の問題はまたあとでもお伺いできると思いますが、資料を持ってこなければ、あとでまたお伺いいたします。  それから、どうしてもわからないのは、資質向上というのが大見出しにもあり、また、具体的に言うと教職員の資質向上とありますが、こういう御説明をいただくと、どうしても私の頭ではわからないのですよ。資質向上というのは、いま言われたこと全部資質向上になるわけでしょう。特にその中に資質向上として、この事業を組まれているとすれば、どういう事業を考えていらっしゃるのですか。
  254. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 率直に申しまして、この予算の項目というのは、極端に言えば、全部おっしゃるとおり資質向上でございますし、教職員の現職教育でいいのでありますが、実施いたしましたそのときどきの事情からそういう名称がそういう形でついているわけでございまして、内容といたしましては、それぞれのプログラムに従ってやるわけでございますが、たいへん恐縮なんですが、きょう全部の講座、講習会の中身を持ってきていませんものですから、的確にお答えできないことはたいへん申しわけございません。
  255. 鈴木力

    鈴木力君 私の頭ではわかりかねるので、それぞれのプログラムによってやることもよくわかりますけれども、そのプログラムが何かということをお伺いしたかったのですが、これもあとでお伺いいたします。  これ以外に、特にこの教科書についての普及、教科書の普及、趣旨の徹底とか、学習指導要領はさっき伺いましたからあれですけれども、そういうことについては、事業としては文部省は考えておりますか、いないですか。
  256. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 教科書につきましては、現在、教科書編さん趣旨徹底費というのが一つ事項としてございます。これはことしの例で申しますと、四十三年度はちょうど中学校用教科書の採択がえの年でございます。この目的は、その採択の適正を期するということが目的でございまして、俗なことばで申しますと、過当な宣伝競争をある程度規制しながら、それぞれの教科書の編さん趣旨を十分徹底するというために、国でこの教科書の編集趣意書というものを編さんすることにいたしております。これは各著者、発行者から、それぞれの教科書についての趣旨、たとえば編集の基本方針ですとか、それから、その教科書の構成、編集上の特色というようなものを全部一定の形式で出してもらいまして、いたずらな広告とか宣伝の文書にわたらないように、一定の趣意書の形にいたしまして、一冊の本にまとめまして、これを私のほうで採択関係者に配り、そうして、これに対する趣旨の説明会を文部省中心になって行なう、このための経費は、教科書の編さん趣旨徹底費という事項で行なっております。
  257. 鈴木力

    鈴木力君 小さいことでくどくて申しわけありませんけれども、そうすると、大部分の費用はこの編集趣意書の編さん費ということになりますか。
  258. 天城勲

    政府委員(天城勲君) この経費は本年度予算で四百十八万九千円でございますが、印刷製本費が三百八十万でございますから、おっしゃるとおり、大部分でございます。それからあと、趣旨の説明会がありまして、これが百二十八万ほどございます。これは会場借料、会議費等でございます。
  259. 鈴木力

    鈴木力君 わかりました。この気持ちはよくわかります。ただ、ともすると、何か教科書編集の趣意書を文部省がつくるということに、ある見方からすると疑問を持っておる人もあるやに聞いたものですから、ちょっと伺ってみました。しかし、公正を期するために文部省が同じ条件で一つのものにまとめて、これを見るということは、私もわかると思うのです。ただ、この際に、私は局長に要望申し上げたいのは、文部省からそれは出ていくけれども、それ以外の補足説明というのがまた各社から出る、こういうことになると、せっかくのこの文部省の気持ちというものは、実際にそちらのほうからくずされる、それが混乱をされてくると、いろいろまた教科書問題というのが、採択をめぐっての問題に発展をする可能性もないわけじゃないと思いますから、私は、せっかくこういうことをやり出すなら、ほんとうに徹底して、どこへ行っても、これ以外に教科書の趣旨というものは全然日本じゅうにはない、こういうことを徹底してやるという条件でこれをひとつやってもらいたいと、こう思うのです。
  260. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 御指摘のとおり、教科書の販売につきましては、一応コマーシャルベースでございますので、私たちがすべてを規制するわけにまいりません。しかし、不当、不公正な取引ということ、それから過当な宣伝等につきましては、特に教科書でございますので、非常に注意いたしておる点でございます。それから、いまの教科書編集趣意書、これは各著者、出版社から出させて、一定の形式にまとめるわけでございますけれども、その他不公正な取引にわたりませんように、各発行会社にそれぞれ宣伝について指導いたしております。たいへんこまかくなりますので、全部申し上げませんが、たとえば見本の問題から、それから展示会における出展部数の問題、それから教師用指導書の問題、それから宣伝用パンフレットの作成頒布の問題、それから、ときどき問題が起こります物品供与の問題等につきまして、それから駐在員、宣伝員等の問題、それから講習会、研究会、いろんな方法での不当な宣伝が行なわれる憂いがある点につきましては、十分に教科書会社に指導いたしますし、また、教科書会社のほうも教科書協会をつくりまして、自主規制もかなりいたしております。
  261. 鈴木力

    鈴木力君 もう一つだけ教科書について伺いたいのですが、いまの教科書の編集趣意の徹底をはかるという名のもとに、教師用書といいますか、教師用指導書ですか、あれが相当な役割りを果たしているように、そういう感じを私どもが受けてるんですけれども、あの指導書に対する扱いは、文部省としてはどういう扱いをしているのですか。
  262. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 採択に影響を及ぼさないということで、教師用指導書、これはいわゆる献本は一切禁止いたしております。事前の献本を一切禁止いたしております。
  263. 鈴木力

    鈴木力君 それでは、最後にこれは申し上げます。指導書というのが、何か私は、これはまあ検定の問題と関係すれば、別の機会にお伺いしなきゃいけないと思いますけれども、少しこのごろ、指導書というのが、何といいますか、親切過ぎるという気がするのです。どの指導書を見ましても、中身と相当違ったような指導書があってみたり、向きが違わないにしても。それからまた、とらの巻き式の指導書が出てみたり、そのとらの巻き式が売りものになって、指導書はうちのが一番りっぱだからこの教科書という形の売り込みが、いま局長は献本を禁止しているとおっしゃいましたけれども、そういう売り込みが私はいままでのところ絶無、全然ないという保証をし切れないんじゃないかというふうに、そういうふうに見られるような節もあるような気がするんです。こういう点については、文部省としても、せっかくのこの趣旨を生かすためには、そのあたりからくずれたのでは意味がないと思います。よく見ていただいて、検討していただいて、もし不当な傾向があるとすれば、できるだけ早く善処しておくことを、これは要望申し上げておきたいと思います。  で、時間がありませんので、大臣がお見えになりましたから、簡単に大臣にお伺いいたしたいんですが、それは人口急増地帯の学校建築についてであります。これはいまの制度からいいますと、文部大臣だけが一人どう切り回ってみてもどうにもならないという仕組みになっていることは、私も承知はしておるんです。ですが、たとえば埼玉県の上福岡地方でありますか、くどいことは申し上げませんけれども、ああいうところに参りますと、同じ番地に小学校を三つ建てようという計画があってみたり、それが今度は中止になったわけでありますが、行ってみますと、生徒を一つの学校に収容できる以上の校舎を建てられる可能性があると思われるようなあき地というものは、あの町には一カ所しかないわけです。それが毎日毎日建て売り住宅とか、そういう計画がある地域でありますから、ことし、もしもあの土地をあの町が取得をしていなければ、おそらく適正な小学校というのは永久に建てることが不可能じゃないかとさえ私どもは見ておるのでありますが、きょうは時間がありませんので、そういう差し迫った問題の応急処置として、文部省が、これは見殺しにするわけにはいかないと思いますから、どういう手を打っていらっしゃるのか。応急処置として何かいいことがあるのか、文部省のお考えを伺いたいと、こう思います、どうも時間の関係で詳しく御説明を申し上げないで恐縮ですけれども
  264. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 一応管理局長から。
  265. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) 社会増によります学校問題、これは一番切迫した問題になりますのは、学級増で済まなくて、そのために学校を新設しなければならぬ程度に社会増が激しい場合、しかも、学校を新設するということになりますと、敷地が要るわけでありますが、敷地を取得することが実際問題としても、あるいは財源的にも困難だという場合に一番深刻になるわけでありまして、福岡町の場合はまさにそういう場合かと思います。そこで、応急の処置ということでございますので、その点について申し上げますと、現在、文部省は制度上、用地に対して何か世話をするというたてまえにございません。建物につきましては、敷地がきまって補助の申請があれば、三分の一の補助が出せる。中学校ならば二分の一の補助が出せるわけでありますが、用地については、直接やれる立場にございません。文部省でやれることは、問題の用地を手当てすること、あるいは財源のめんどうを見るところに対して事情を話してお願いをするということしかないわけであります。そこで、福岡町の場合でありますと、これはいろんな事情がありますが、公団住宅等による急増が多いわけでありますから、財源の問題はしばらくおくといたしまして、用地の世話だけは公団においてやっていただきたいというぐあいにお願いいたしまして、これはある程度まあ、めんどうを見ていただけるのではなかろうかと思っております。  それから次の問題は、やや長期的な問題になりますが、財源の問題、これは現行制度上は起債の道しかないわけでございますので、起債ワクの拡大について、これは自治省にお願いするということでございます。これも個別の問題といたしましては、なかなかやりにくうございますので、一般のワクの拡大、つまり、公共用地の先行取得の場合、あるいは政府資金による地方債のワクの拡大、こういうことをお願いしておるわけでありますが、御承知のように、四十二年度政府資金の地方債ワクが初めて十億円認められ、これが四十三年度に二十億になると、その範囲でできるだけそのめんどうを見ていただくようにさしあたりはお願いし、将来の問題としては、このワクの拡大、さらにはもう少し抜本的な対策はないかということを苦慮しつつ検討しておるのが現状でございます。
  266. 鈴木力

    鈴木力君 いま実は福岡町と言いましたけれども、私も福岡町だけというつもりで申し上げておるのではありませんで、時間の関係一つの具体的な例で御質問申し上げておるわけでありますから、その他だいぶ差し迫ったところもあるけれども、それで、いまの場合、もう一つお伺いいたしたいのは、用地を公団で世話するという意味は、適地をあの町で発見した場合に、公団のほうがその用地の取得についての世話をする、こういう意味ですか。公団の範囲内の敷地を提供させると、こういう意味ですか。
  267. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) いろいろなやり方がありますが、現在やっておりますのは、千戸以上を建てる場合には、公団でかわって学校を建てる。建てた学校について、三年ないし十年の期間に校地、校舎を買収するということでありますが、その際に、とにかく自分の用地あるいは他の用地でも私どもとしてはよろしいわけでありますが、実際問題として公団で用地の手当てをしていただきたい。それから財源については、現行制度では、政府資金による起債ワクを拡大し、かつ、これを充当するようにお願いをしたい、こういうことでございます。
  268. 鈴木力

    鈴木力君 ちょっと事態の認識が、あるいは私の説明が、時間の関係でしなかったから、ちょっと食い違いがあるかもしれないと思いますが、これは単に福岡町だけではないと思いますけれども、たとえば福岡町ですと、もう公団ができてからだいぶ時間があるわけですから、それで、小学校が非常に建っている。たとえば最近の小学校の建築の状況を見ますと、昭和三十七年に第二小学校の買収を、三十七年、三十八年とやっていますね。その間に中学校の増築をやっておる。この辺が公団との関係があるところだと思う。そうしているうちに急増いたしまして、四十年になりましたら、第一小学校の増築、第二小学校の増築、中学校の屋体を建てる。四十一年になったら、第二小学校の増築、第一小学校の危険改築をやる。四十二年になったら、第三小学校を新設する。そして四十二年に第四小学校を新設する。小学校を同じ年度に二つ新設しているわけですね。そして、いま第五小学校を新設しないと千人ぐらいの生徒が収容し切れなくなっておる。そこで、用地については、あの町では、いまの公団のある地域は前の国有地ですから、比較的安く払い下げできる。それから公団の関係の土地もあるわけです。交換も簡単なわけです。そこで、第二小と第四小学校と並んでいる、小学校が二つ。その隣に、もう一つ第五小学校を建てようという計画があったけれども、第五小学校をそこへ建てますと、鉄道の西側のほうから駅を越えて通学路を――通学時間が、父兄がついて三十分から四十分ぐらいかかる。ところが、駅の西側に千人くらいの生徒が――千人には足りなかったと思いますけれども、通学している生徒がある。その駅の西側に、小学校を建てる用地に十分とは言えないけれども、間に合いそうだという敷地がある。そこへ建てたいのだけれども、用地を買う金もないという状態ですね。あそこの町の予算は年間で四億未満の予算です、いまのように学校をやっておっても。ところが、そこの用地を取得するには、およそ四億ぐらいの金が必要だ、どうにもならない。だが、起債か何かで先行買収でもしてしまわなければ、学校を建てる用地が住宅地になってしまうということで、いま、あそこの町は大騒ぎです。こういう町のケースが、私は一つや二つじゃないだろうと思うのです。こういうところに対しては、仕組みの上からいうと、起債は自治省ですから、文部省が直接どうというわけにはいかない。いろんなそういう仕組みがありますけれども、やはり教育の中心である文部省が、これはまあ自治省に折衝をしてくださるとか、いろんな便宜をやはり文部省として、はかって上げる努力をしてやるということが、さしあたりはいま私は必要な時期ではないだろうか。そして、いま局長がおっしゃるように、将来やはり法律を改正するなり、こういう人口急増地域に対する手当て――過疎も今度出てくると思いますけれども、そういう制度を検討する時期だと思いますけれども、その検討しているうちには、もう町がつぶれてしまうという状態になっているから、やはり応急措置として、文部省として関係機関にも働きかけて、何とかこういう種類のところを救済するようにしてほしいと、こう思って申し上げたわけです。
  269. 村山松雄

    政府委員(村山松雄君) 応急措置としては、いままでに申し上げた以上に、まあ新しい手段を直ちに思い当たらないわけでありまして、いままでのやり方を一そう強めたい、かように思います。御指摘のように、福岡町あたりですと、町の財政の年次によっては、半分以上が教育費になっておるというような状況であります。四十三年度におきましても、その財政の中で、用地買収費四億円予算計上しているようでありまして、もう福岡町がそのように住民を受け入れること自体が無理ではなかろうかとすら、私どもとしては思いたくなるような現実でございます。応急措置としては、従来やっておりましたようなこと、さらに私の感じでは、文部省と町との間には県という機関もあるわけでありますので、そこら辺とよく相談して、できるだけの手は打ちたいと思います。
  270. 宮崎正義

    宮崎正義君 私は学制改革のことについてきょうはお話ししようと思って、いろいろなことをお伺いしようと思っておりましたが、時間の関係等ございますので、その中で一点にしぼりまして、幼児教育のことにつきましてお伺いいたしてみたいと思います。  文部大臣は遠き将来をおもんぱかって、長期的視野に立って着実に推進すると所信表明でも発表されておられますが、現実に今日まで新教育制度が戦後二十年余りになってまいりまして、種々の問題がいろいろ提起されてきております。そこで、昭和三十九年に幼稚園の教育振興七カ年計画というものを実施されて今日まで来ております。その進捗状態等と、それからさらに、これから三年ですか――あと三年の所見、そういうものを伺っておきたいと思います。
  271. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 私から幼稚園の振興七カ年計画の進捗状況を最初に御報告いたします。  この計画は三十九年度から幼稚園の全国的普及を目的といたしまして、おおむね人口一万以上の市町村における幼稚園の就園率を四十五年度までに六三・五%という目標を掲げたわけでございますが、その目標に向かって幼稚園の新設と学級増を計画してまいったわけでございます。四十二年度までに新増設されました学級数が六千三百十三学級でございまして、大体予定どおり進んでおると思うのでございますが、ただ、率直に申しまして、普及状況がやや都市に片寄っているという傾向はございます。小さな市町村における普及がやや都市に比べておくれているのではないかと思っておりますが、まあ、この計画も、また過程でございますので、今後当初の目標どおり全国的に配置、普及できますように努力をいたしたいと考えております。なお、そのための施設、設備関係の補助金、それから地方交付税によります財源措置の充実等につきましても、逐年いろいろな進捗を見せているのが現状でございます。
  272. 宮崎正義

    宮崎正義君 大臣のこれからのお考えを。
  273. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 幼児教育が人間形成の上に非常に大きな役割りを果たすものだということをかねがね専門家方々からも伺っておりますので、この部門の振興をはかりたいということは、私の年来の実は希望でございまして、昭和三十九年度から幼稚園の拡充につとめてまいりましたにつきましても、多少なりとも私もお手伝いをさせていただいたつもりでおるわけでございます。この問題と関連いたしまして、あるいは幼稚園を義務化したらどうかとか、あるいはまた、就学年齢を下げたらどうかと、こういうふうなきわめて積極的な幼児教育の拡充に対する御意見なり御要望も実は私もよく伺っておるところでございます。現段階は、ただいま局長から御説明申し上げましたように、計画的に幼稚園の増設をはかっておるという段階でございます。これを義務化するとか、あるいは就学年齢を引き下げるという問題につきましては、なおいろいろ研究を必要とする点があるように承っておるのであります。それらの研究を十分いたしまして、できることなら、私は日本の幼児教育をもっともっと伸ばしていきたいと存じておりますが、その前提としましては、いまのような研究を進めますと同時に、全国にやはり幼稚園網を張っていく必要があろうかと存じますので、研究と同時に、施設の拡充整備について、今後もさらに努力を継続してまいりたいと、このような考え方をいたしておる次第でございます。
  274. 宮崎正義

    宮崎正義君 先ほど予定どおりに進捗しているというのですが、現在の段階は終着点に対する何%でしょうか。
  275. 天城勲

    政府委員(天城勲君) これは一応四十五年度までに当初の計画で一万五千八百学級を新増設するという予定でございました。ただ、これは均等で計画を立てたわけでございませんで、逐次これを上げていくというやり方をいたしておりますので、四年度で全体の計画から申しますと四〇%、大体当初の計画も四十二年度このぐらいでございますが、比率で申しますと、大体四〇%は達成されていると思います。
  276. 宮崎正義

    宮崎正義君 さっきもお話ありましたように、その流れの行き方というものは、都市に大体集中されていると。これは私は逆な方向に行かなきゃならないのではないかと思っているのです。と申し上げますのは、幼稚園のない市町村というものは約五〇%あるのじゃないか。こういう点から考えまして、やはりそういうところに力を入れていくようにしていかなきゃならない、こういうふうに思うわけですが、この点どうなんでしょうか。
  277. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 幼稚園の普及状況は、先生御存じだと思いますけれども、全国的に見ましても、非常にアンバランスでございまして、現在まあ全国平均しますと、五七・二%という普及率でございますが、非常に高い県、おもにこれは瀬戸内海沿岸付近が多いのでございますが、もう瀬戸内では八割以上の県もございますが、一方、一割そこそこの県もあるというような、県間のアンバランスが非常にございます。それから町村関係でございますが、先ほどちょっと申し上げましたように、やはり一万前後の町村の普及というものが一番おくれているわけでございます。五万以上の市になりますと、もうほとんど半数以上はできているわけでございまして、普及率は五〇%をこえているわけでございますが、一万から二万辺が一番おくれているわけでございます。これにつきましては、一つは建設の問題と、あとは維持費の問題と、両方からございますので、財政的に申しますと、したがいまして、園舎の建設費につきましても補助をいたしますし、それから維持費につきましては、交付税の積算基準の改善ということも、これも自治省にお願いしていることでございますけれども、逐次改善いたし、四十三年度におきましても、いまお話ししているところでございますが、実情に合うような交付税の措置をいたしていただくようにいまお話を進めている段階でございます。
  278. 宮崎正義

    宮崎正義君 地方交付税の問題点がありますけれども、人口に応じた一分律というふうなワクがあるために、大体幼稚園設置に関する障害があるようにも思えるわけですが、いずれにいたしましても、設置別といいますか、公立と私立の割合がいまどんなふうになっていますか。
  279. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 幼稚園の園数で申しますと、比率で申しますと、私立が六四%でございます。私立が非常に多いわけでございます。それから幼児数で申しますと、七割四分ぐらいが私立の幼稚園に行っております。
  280. 宮崎正義

    宮崎正義君 これは私はいまさら申し上げるあれはないのですけれども、もう常に取り上げられている問題でありますが、どうしても私立のほうになりますと、当然出費は多くなる、公立は安い。これは当然なんです。ある私立のところなんかは、一年間の総経費が二十三万五千円以上にのぼっているというような、極端なそういうふうな私立もあるわけです。そうかと思いますと、私立幼稚園の中でも、非常に、一カ月に三千円も払ったんではどうにもならないから、三百円か四百円が至当じゃないかといって、そういうふうな、いがけのいいといいますか、そういう私立幼稚園もありますが、また一面には、おかあさん、おとうさんたちが、入園をするときに面接に行くと、何口入ってくれるか、何口園債を受けてくれるかとかいうような、そういうふうな問題が今日まで取り上げられてきておるのです。そういう面から考えてきましても、いまお話がありましたように、そういういいところも悪いところもひっくるめて、私立幼稚園というものは六四%もあって、三六%が公立にすぎないという、こういう是正をするのが、私は、七年計画の振興対策としての是正をしていかなければならない考え方じゃなかろうかと思うわけであります。そこで、一部の幼児を除きまして全体的に言えることは、知力だとか、あるいは体力等、非常に上昇しておりますし、また、教育ママというようなことばが出てくるぐらいに、非常に教育熱というのは旺盛になってきておりますけれども、こういうふうな点から考えてきましても、非常に幼児の教育ということに対しては力を相当入れているわけです。そこで、幼稚園は、これは義務化していけば、そういう私立幼稚園等の、多額にお金をかけていかなければならないような父兄の負担というものがなくなっていくのじゃないか。考えてみれば、小学校の教室はいま、だいぶあいてきております。そういう点から考えていっても、幼稚園の義務化ということは、もっと当然この時点において取り上げていかなければならない。そして、先ほど文部大臣も言われたように、年齢を引き下げてやるということも一つの行き方だというようなお話もありましたし、この際、私は、ぜひとも幼稚園の義務化をこれは当然はかっていくときが来ているのじゃないか、こう思うわけですが、いかがでしょう。
  281. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 幼稚園の義務化の問題、先ほどちょっと触れた問題でございますが、私も、幼稚園の義務化という形態でいくか、あるいは小学校の就学年齢を下げていくかというような問題について、実はまだ私自身としては結論を持たないのでございますが、いずれにせよ、幼児教育というものをもっと充実し普及するということが必要であるということにつきましては、最初に申しましたように、私も非常に大きな関心を持っておる問題でございます。この方向に向かって今後の幼児教育の問題を考えていきたいと思うのでございますが、先ほど宮崎さんの御指摘になりましたいろいろな問題点、そのとおりだと実は私も思うのであります。義務化を進めてまいります上におきましては、やはり事実問題として、相当な程度にこの種の施設が普及しておりませんというと、一挙に義務化をするということもむずかしいと思います。と同時に、そのためには、現在のような、施設が片寄っておる、偏在しておるというような状態も改めていかなければならぬのじゃないかと思うのであります。それと同時に、先ほどの御指摘の中にも、都市と農村という方面で施設が非常に都市のほうに片寄り過ぎておる、こういう御指摘もございました。これは一面におきましては、農村方面には保育所という形で子供さんを預かっておる、その施設がずいぶんあるわけでございます。この保育所と幼稚園というものとをどういうふうにひとつ今後持っていったらよろしいかという問題も、実際問題としてあるわけであります。三十九年に幼稚園の普及計画を立てます際に、厚生省と文部省との間で御相談をいたしまして、本来設置する目的は違っておりましても、一日のうちに何時間かお預かりしておるという関係においては同じことでございます。したがって、保育所においても、幼稚園に準ずるような教育をぜひやってほしい、やろう、こういうふうな話のもとに、現在は保育所も幼児教育の機関として活用せられておる、このような状態でございます。しかし、いつまでもこういう形でいくのがいいのか悪いのか、こういうふうな実際問題をどう解決していくかという問題もございますし、また、幼稚園と申しましても、公立の幼稚園と私立の幼稚園と二つある。しかも、それも、地域的に分布の状況が違っておる。また、私立の幼稚園においては、かなり家庭の負担も重いと、こういう実情がありますことは、先ほどお話しになりましたとおりであります。そういう場合に、一体、現在ある私立の幼稚園と今後普及すべき幼稚園と、どういうふうに調整していくかというふうなことが、やはりかなりそれぞれの地域においては問題となる事項だと思うのであります。これをどう解決するか、これらも実は私ども頭を悩ましておる問題の一つでございます。そういうふうないろいろな現状に即しての問題点を漸次調整したり解決したりしながら、幼児教育網を張っていく必要があるんじゃないか、そして、ある程度のところに来ましたら、これは義務的なものに切りかえていく、こういうふうな段階で進めなければならぬのじゃないかと思っておりますが、なかなか現実問題の解決が実は、それぞれの地域におきましては、かなりむずかしい問題がございまして、いろいろ問題が生ずることもございますけれども、やはり漸次、地域の方々の御協力を得て合理的な解決の方向に向かって進めなければならぬ、文部省もそれに対しましては適切な協力をしていかなきゃならぬ、こういうふうに考えております。
  282. 宮崎正義

    宮崎正義君 いまの大臣の後所見でわかったわけでありますが、いまおっしゃられた中で、幼稚園あるいは保育所を修了しまして小学校に入ってきている、そういう経緯をたどってきて小学校に入学する、それが約七〇%にまで及んでいる、こういうふうな現況の上から考えましても、三つ子の魂は百までと、よくそういうことがことわざに言われております。先ほども申し上げましたように、小学生のほうは減少している時期でもあるし、また、新しく幼稚園なり保育所なりを設けるとしても、相当土地の取得権ということが大きな困難な問題にもなってきていますし、あらゆる社会情勢等を考えてみましても、一番適切なのは、現在の小学校を利用しての義務化ということが最大に望ましいことではないか、こう私は思うわけですが、どうか、そういう方向に向かって文部大臣としていかれんことを要望いたしまして、私の質問を終わります。   〔副主査退席、主査着席〕
  283. 宮崎正義

    主査宮崎正義君) ほかに御発言がなければ、これをもちまして文部省所管に関する質疑は終了したものと認めます。  以上をもちまして、本分科会の担当事項であります昭和四十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、文部省、厚生省、労働省、自治省及び科学技術庁所管に対する質疑は終了したものと認めます。  以上をもちまして、本分科会の担当事項であります昭和四十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、文部省、厚生省、労働省、自治省及び科学技術庁所管に対する質疑は終了いたしました。これをもって本分科会の審査を終了いたします。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを主査に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんでしょうか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  284. 宮崎正義

    主査宮崎正義君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十五分散会      ―――――・―――――