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1968-04-11 第58回国会 参議院 予算委員会第四分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月十一日(木曜日)   午前十時十六分開会     ―――――――――――――    委員異動  四月十一日     辞任         補欠選任      柳岡 秋夫君     小野  明君      大橋 和孝君     瀬谷 英行君      岡田 宗司君     田中寿美子君      石本  茂君     市川 房枝君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     主 査         宮崎 正義君     副主査         船田  譲君     委 員                 剱木 亨弘君                 西郷吉之助君                 中村喜四郎君                 八木 一郎君                 吉武 恵市君                 大橋 和孝君                 瀬谷 英行君                 田中寿美子君                 市川 房枝君    国務大臣        厚 生 大 臣  園田  直君    政府委員        人事院事務総局        給与局長     尾崎 朝夷君        厚生政務次官   谷垣 専一君        厚生大臣官房長  戸澤 政方君        厚生大臣官房会        計課長      高木  玄君        厚生省公衆衛生        局長       村中 俊明君        厚生省環境衛生        局長       松尾 正雄君        厚生省医務局長  若松 栄一君        厚生省薬務局長  坂元貞一郎君        厚生省国立公園        局長       網野  智君        厚生省社会局長  今村  譲君        厚生省児童家庭        局長       渥美 節夫君        厚生省保険局長  梅本 純正君        厚生省年金局長  伊部 英男君        厚生省援護局長  実本 博次君        社会保険庁長官  熊崎 正夫君        社会保険庁医療        保険部長     加藤 威二君        社会保険庁年金        保険部長     中村 一成君    説明員        厚生大臣官房企        画室長      首尾木 一君        厚生大臣官房統        計調査部長    浦田 純一君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和四十三年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 船田譲

    ○副主査船田譲君) ただいまから予算委員会第四分科会を開会いたします。  分科担当委員異動について報告いたします。  昨十日、瀬谷英行君が委員を辞任され、その補欠として大橋和孝君が選任されました。また本日、石本茂君、岡田宗同君委員を、辞任され、その補欠として市川房枝君、田中寿美子君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 船田譲

    ○副主査船田譲君) 昭和四十三年度総予算中、厚生省所管を議題といたします。  この際おはかりいたします。  政府から提出されております予算概要説明につきましては、口頭による説明を省略し、これを本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  4. 船田譲

    ○副主査船田譲君)御異議ないものと認め、さよう取り計らいます。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 大橋和孝

    大橋和孝君 本日は、まず最近の厚生行政につきまして、大臣に対してお尋ねを申し上げたいと、こう思うわけであります。  昨年夏の健康保険特例法によるところの初診時の一部負担倍増額、あるいはまた、薬剤の一部負担の新設、また、薬価基準の引き下げなどの一連国民医療機関への圧迫、そしてまた、十一月の十七日に出されましたところの医療保険改革試案、そしていま国会においてまた行なわれておりますところの医師法の一部改正案、あるいはまた、国立病院特会制の問題、それからまた、国民年金の一部改正案などをずうっと見てまいりますと、まさに、最近の厚生行政というものは財政対策に終始しておるような感が非常に深い。しかも、国民の生命と健康を守るという厚生行政ほんとうにどこかに影を薄くいたしまして、むしろ大蔵省のしり馬に乗って財政対策に対して振り回されておるというような感じを私どもは受けるわけでありますけれども園田厚生大臣は、この厚生行政に臨む姿勢というものをもう少し明確にしていただきたいと、こう思うのですが、こういうような一連政策から、われわれがそういうふうにもとれるような向きは、国代に対しても非常にいけないと思うわけでありますから、特にそうした意味において、この厚田行政に対する姿勢のほどをひとつ明確に初めに伺っておきたい、こう思います。
  6. 園田直

    国務大臣園田直君) 四十三年度の一般会計及び特別会計についての説明速記録に譲らせていただきましたが、本予算を御審議を願っておりまするが、厚生行政現状、並びにその理想からはまだまだ不十分な点がありまするが、本年度の国家財政の中では相当苦慮をして編成したものでございまして、この編成に際して与野党各委員協力のあったことをまず心から御礼申し上げたいと思います。  ただいま大橋委員からの御質問でありまするが、私も終始そのことを念頭にいたして、厚生行政の確立につとめておるつもりでございまするが、決して国家財政のために厚生行政かゆがめられているとは思いませんけれども、少なくとも今日の生活困窮者あるいは心身障害者あるいは母子の問題等をながめますると、逐次予算はふえてはきておりまするし、ことしもこの苦しい財政の中では相当努力をしたつもりでございまするし、財政当局も必ずしも無理解な態度ではなかったんでございまするが、そのふえ方というものは、決していままでの非常なおくれを取り返すものにはなっていないということは、私自身十分反省をいたしております。しかしながら問題は、これは今日できた問題ではなくて、そもそも社会福祉保障制度あるいはその他の問題が、日本制度の沿革というものは相当西欧諸国と違っておりまして、当初は、正直に言って、戦前から民心安定ということば厚生行政というものが治安対策の一部のごときものの考え方で発足をいたしておりまするし、戦後はまた新憲法によって形式だけは急いでそろえなければ、国内的にも国際的にも非常に困る、しかも、いろいろ困ることがたくさんどんどんふえてきておるということで、部門と看板だけは急いでそろえたが、その内容においては必ずしも出発当初から十分でなかったというよりも、正直言って、かっこうをつけたという点が多いのでございまして、ただいま世界各国とも、社会保障についてはそれぞれ理想を持ってやっておりまするが、その理想と、日本国内ではむしろ現状は、基礎の内容を充実していく点に重点を置かなければならぬというのが現実でございまして、その理想現実と、国家財政の中においてどうこれを理想方向に一歩でも進ませるかという苦労が今日の厚生行政の一番問題であると考えております。したがいまして予算の中におきましても、いろいろ苦慮をいたしまして、たとえば生活保護にいたしましても、災害による補償金とか、保険金とか、あるいは見舞い金とかは、従来収入として認定していたものを、いろいろ研究の末、これらを控除しないこととするなど、いろいろ事務当局も苦労しておりまするものの、御指摘のごとくやはり根本は予算上の措置ができなければならぬ問題でございます。そこで、そういう状態でございまするからこそ、われわれは各位の御協力も得て、社会保障福祉理想をまぎらわさないように、その効果を減殺しないようにいろいろ苦慮していきたい。その姿勢だけは、御指摘のごとく、こういう際であるからこそ特に注意をして、いかなる場合でも、場所でも絶えず主張して、憲法で規定しておりまする国民権利が遂行でき、国家義務が果たせるようにしたいと考えております。
  7. 大橋和孝

    大橋和孝君 私は、先般第五次の沖縄調査団として社会党から沖縄へ行ってまいりました。そしてあそこでいわゆる健康保険制度を見てまいりまして、私はその前に何かの機会で、大蔵大臣であったか、沖縄でやっている方法はなかなか理想的にいっておるという発言を耳にしたようでありますが、そういうことを思い浮かべてみますと、沖縄で行なわれておりますところのあの療養費払いをずっと見せてもらってまいりましたが、実に私は驚いて帰ったわけであります。総報酬制でもって、その率は比較的まだ天井まではいっておりませんけれども、総報酬制でもって掛け金を集められるその金額は五百六億ドル、しかもそれが療養費として、患者、そういう被保険者は前もって保険料を払っておきながら、今度医者にかかるときには、全額を一たん払わなければいけない。払って、今度はあとからその領収証を持って保険庁に金をもらいに行く。その金をもらいに行くのには、たとえ五ドルであっても、十ドルであっても、バスでもって相当離れたところへもらいに行かなければならない。もらいに行くのがたいへんだから、やめる。その給付金はわずかの百二十六億ドル。そうすると、掛け金を集めた約三分の一しか給付していないという状態であります。しかもあとの五人未満の方、内地でいうところの国民健康保険に当たるものはないわけであります。こういうことを考えてみますと、これは理想的に黒字であるかもしれませんけれども、実際は、私は、その病気をして医療をしておる人にはほんとうに恩恵になっていない。だからして所得なんかを調べてみますと、沖縄では、日本に比べますと、非常に貯金率が高い、九四・六%も貯金をしておる。貯金目的は一体何であるかと聞けば、貯金目的は不慮の災害病気が第一、続いて老後の心配がある、あるいはまた、そうした不安な状態のために貯金をしなければならぬというパーセントがあらわれておるわけであります。しかも、所得はどうかと申せば、日本に比べれば六割何ぼぐらいしか所得かない。こういうような状態で、いま沖縄に行なわれておる実際を見てまいりまして、私は非常にこの社会保障ということがいかに必要であるかということを痛切に感じてきたわけであります。困っておる人たちは、とうかといえば、農業をやっている僻地の人なんかは、あの甘蔗といいますか、砂糖キビをつくってやっておる状態を見ましても、非常に疲弊な状態で、私は内地以上に僻地の農民は困っているというふうに見てきたわけでありますが、そういうような状態の中で、社会保障がないためにそういうふうな状態をしいられているということを見て、私は非常にびっくりして吊ったわけであります。私は、前に大蔵大臣がそういうことを言われて、まあ比較的理想的にいっておるのではなかろうかと言われておった。ところが今度、厚生省試案を見てみますと、今度の健康保険改革試案の中には、やはり大学の附属病院とか、厚生省の指定する病院は、療養費払いをするということが打ち出されておる。そういうことを裏返して考えてみると、やはり沖縄でやっておられるのは、一つの、何といいますか、モルモットを使う実験のように、沖縄健康保険をやってみて、そうしてしかも療養費払いだったら黒字になるぞということで、これを入れていこうというような考え方、私にはこれが何か関連があるように考えられるわけであります。同時にまた、医師法のあれを見ましても、あるいはまた今度の特会制を見ましても、医師法の一部改正では、やはり比較的診療の手当とかというふうなことで、わりあい低い賃金でもって若い医者を大きな病院にくぎづけしようということも考えられるわけでありますし、また、特別会計においては、特に私は問題がある。あの国立療養所には、そうした重症心身障害児あるいはまた筋ジストロフィーとか、あるいはまた、いろいろなそうした手がかかって非常にお金のかかるものが収容されて、長期の療養をされる方々が入っておられる。こういうような対象を今度はまた独立の会計に持っていこうとする考え方、私はこれを一面に考えまして、何か非常に割り切れないものを感ずる。特にまた最近厚生省で打ち出されておるところの受益者負担という考え方、私は、病気をした人が利益を得るという考え方は最も根本的に間違っておる。好きこのんで病気になるわけでないし、病気になったために、病気にかからない人よりは、お薬をもらったり、注射をしてもらったり、それだけのものを受けるかもしれませんけれども、これはそのためにほかに仕事もできないし、あるいはいろいろなハンディキャップがあって、好んで病気をする人はないわけですから、こういう人たち負担させる考え方自身は非常に間違いではないか、こういうようなことをいろいろ考えてみましても、私は、特に厚生大臣に対して、特にそういうことに対しては今後根本的に改めて、そういう人たちを救済するというか、ほんとうにそういう人たちの身になっての行政をしていく。先ほど大臣からもおっしゃいましたけれども、戦前は、あるいはそういうふうな救うという意味だったかもしれません。しかし、いまの憲法下においては、これは当然すべきであるし、また受けるほうの側には要求すべき権利があるわけですから、そういう観点から申すと、そういう根本的な考え方というものをここでひとつ十分にかみ砕いて、今後の方針を立てていただかないと、やはりこの厚生行政出発点が、非常にいま大臣お話を承れば、そういうことに対する配慮をしていただいておりますが、国民の側からは、その大臣の気持ちが十分受け入れられない、そういうふうに間違ってとられるような節々がいま私が申し上げたようにたくさん並んでいる。特にこういうような状態で私考えますのは、日本経済状態は、いつも言われているように、この次の世紀日本世紀だといわれるほど産業経済発展をしておる。だけれども、だからといって国民全体がそれだけレベルアップされておるかということになりますと、これは私は、社会保障の面では非常に心さびしいものがある。いま大臣のおっしゃいましたように、まだまだ総花的で、十分なところまでいかないの、か現状だということは、私もわからないわけではございませんし、そのとおりだと思うのでありますが、しかし、こういう時期において、それほど経済発展をしておるし、また世界から注目されておるいまの現況において、厚生行政というものもすっかり姿勢が変わって今後いかれるということが、まずここできちっと出ることを、私は国民がどれほど希望しておることだろうか、そういうふうに思うわけでありますので、特にそういう意味で、ひとつ厚生大臣所信をこういうときに明らかにしていただくことは、国民が今日望んでおるところではなかろうかというふうに考えておるのでありますが、そういうことでありますから、特にくどくこのことに対して申し上げておる次第でありますが、あらためて御所信を聞かせていただきたいと思います。
  8. 園田直

    国務大臣園田直君) まず第一の沖縄の問題でありますが、沖縄は、全般的に言って、私は、戦後国内が非常に疲弊している時期において、沖縄基地になった瞬間において、沖縄のほうがいろいろな施設は若干進んでおったような気がいたしますが、その後国内はどんどん復興し、沖縄基地となった以後あまりめんどうを見られなくて、国内沖縄の差は相当開いておるというのが、私の沖縄全般に対する考え方であります。  主管であります厚生行政、特に保険社会保障制度については、範とすべきものは何らないばかりでなく、非常に矛盾が多い。たとえば、残念ながらアメリカの軍が力をかして開設いたしました沖縄病院など一つ取り上げると、それは私が所管しておる国内病院の及ばないような待遇とか施設とか、りっぱなものでございます。まことに残念ではございまするが、しかし、その他の医療等については、第一に、医者の数はもう絶対的にあるのかないのかわからないような関係で、保険を実施するについても、この医師の問題をどう解決していくかという大ワクから非常な問題が出てくるわけであります。それから、御指摘のとおりに、基地とか植民地の特性である貧富の差が非常に激しくて、特別なごく一部の者は非常な富を持っているが、他の者は非常に困窮状態に置かれておる。こういうことを考えてまいりますと、沖縄が返還されたあと、どういうふうな保険制度をとるのか、あるいはどういうふうな社会保障制度をとるのか、少なくとも、一体化ということばがありますけれども、厚生行政については、一体化国内と同じようなことをやっておったのでは、とても沖縄というものはわれわれと一緒に足並みをそろえられないのではないか。だとすれば、沖縄については、やっぱり私個人の考えでありますが、特別な何かものを講じて、特別な突っぱりをしなければ、とうてい国内とようやくというところまではいかないのではないかということで、非常にこのことについても検討いたしておりまして、保険その他も、現在のものが模範になるとは考えておりません。したがいまして、全額払って払い戻しを受けるというような制度が、今度の事務局試案にありますが、これは沖縄を範としたものではなくて、これについては、保険局長から説明をいたします。ただ、先ほどもお話に出ました厚生行政全般に対する基本的なものの考え方というものは、私もいま一番大事だと思います。これは特に政府においても、それから関係官庁国民方々にも、先ほど来申し上げたような、治安対策の一部でもなければ、あるいは余った金でやる慈善行政でも断じてなくて、憲法で規定されておる国民権利である。政府はその権利を完全に遂行しなければならぬ義務を持っておる。したがって、厚生行政というものは、政府義務であって、ただいまの現状でおしかりを受けるにいたしましても、その国家義務という政治中心に向かってすべての行政というものがこれに沿うてきて、国民全部がひとしく文化的な健康的な生活ができるという点に努力をしておる現状なのか、それとも今日の国家財政では、これはもう思い切って慈善事業でやったらいいんだという考え方なのか、同じ現状においておしかりを受けるにいたしましても、その二点において非常に分かれると思います。私が正直申しまして、予算お願いするにいたしましても、行政をやるにいたしましても、絶えずひっかかることはその問題でありまして、やはり今日、はっきり厚生行政というものはすべての政治中心であって、その厚生行政を完全に遂行するために、産業政策もあれば、あるいは地方行政政策もあるというふうにはっきりしていなければならぬ。これは私自身相当努力をして、関係各省にも、あるいは政府にも、あるいは国民方々にもお願いをしなければならぬ問題であると考えておりまして、小さい問題一つ一つにも、あるいは厚生省事務当局にも、絶えず具体的に、あるいは政策ごとお願いをしておるところでございまして、したがいまして、そのもの考え方から、特別会計もあるいは保険抜本改正も、すべて分かれ目でありまして、現状においては大差はないかもわかりませんが、少なくとも、一厘でも一分でもその方向に向かって改正をやり、その方向に向かって予算づけをやらなければ、これが一年たつごとに差が非常にひどくなっていく、こういうことでございまして、特別会計の問題にいたしましても、予算の問題に対しても、大橋さんと同様の私は懸念を持ち、その懸念の歯どめをして向きを変えることが私に課せられた仕事である、このように考えていることをはっきり申し上げておきます。
  9. 梅本純正

    政府委員梅本純正君) 療養費払いの件でございますが、事務当局試案は十分ごらん願ったと思いますけれども、事務当局試案におきます考え方といたしましては、現在の現物給付、でき高払いを原則とするということを強調いたしております、御承知だと思いますけれども。で、一部につきまして、いろいろ支払い方法を検討いたしますということが、現在のところ試案考え方でございまして、全面的に療養費払いをとるとか、そういう考え方はしておりません。ただこの際申し上げておきますのは、現在の健康保険制度におきましては、たとえば薬価基準に、保険で使います薬を登載する、そのときにいろいろ新薬が出てきましたときに、中央医療協議会というふうなむずかしい協議会でいろいろ議論の末、その結果が出るわけでございまして、行政的なズレができてまいります。そういうような場合に、そういう薬をたとえば使いたいというときに、それを使った場合において、いまの健康保険法制度におきましては、根っこから自費診療になるという法律上のたてまえをとっております。こういう点は、やはり患者の立場からしまして、これを差額徴収というふうな行政的な措置がはっきりできるまで――差額徴収というようなことにするか、あるいはその療養費払いにするかというふうな問題が前から議論としてございますので、一部につきまして療養費払いというものも検討いたしておりますし、あるいは件数払いというものも検討する、こういう趣旨でございます。
  10. 大橋和孝

    大橋和孝君 これに関連して、ちょっと厚生省のほうに、お願いになるかお尋ねになるか、特に私が強調しておきたいのは、ちょっといま沖縄問題に触れましたので、大臣沖縄に対してはもっと、いまの内地以上の突っぱりをしなければいかぬだろうというようなお考えを聞いて、ぼくもそのとおりだと、大臣のお考えと同じだと、そういうふうに思うわけでありますが、私は沖縄状態を見まして、復帰後でなくて、いまのうちから、もしできるものならば社会保障の拡充という意味でそういう素地をつくっておかたければ、ここでいま復帰しても一ぺんにぱっということはできないはずだと思う、この問題は非常にむずかしいわけでありますから。だからそういうことから言えば、私は現今では、社会保障関係について、沖縄に対しては即刻、少なくともいまの内地並みぐらいにすべてのものを引き上げてやるということがどんどん行なわれていくという過程が――まあ復帰ということが出てこない限り、あるいはまた復帰か少々おくれたにしても――まあそのことは私にもわからないわけでありますが、どういうことにしたって現状そのものがもう非常に悪い状態であるということに対しては、私は、日本の国土の一部であるということであれば、特にそうしたことの差別があってはならないと、こう思うわけでありますからして、沖縄を見せてもらった私の実感として、もう即刻この社会保障充実のための施策をひとつ十分に共現をしていただいて、具体的にどんどんと社会保障を引き上げる施策を早急にやってもらわなければ、いま見ておれば、ほんとう病気であえいで死にかけている人をじっとこう見ているような感じがいたします。ですからして、ことに社会保障医療保障、すべての面でありますけれども、即刻沖縄に対してのひとつ施策を具体的に早く取りかかっていただきたいということを私は思うわけでありますからして、特にそれをお願いしたいと思いますが、いかがなものでしょうか。
  11. 園田直

    国務大臣園田直君) 私もそのように考えますが、実際問題は相当障害が多いわけでございます。たとえば医師の問題にいたしましても、国家試験沖縄でやろうとして手続をやっておって、まぎわになってできなかったような、これはまことに恥ずかしい話でありますが、そういう点がありまして、やはり私は、ただいま沖縄問題がああいう現状でありますから、総理府が一括して所管をしておりますが、これはもうそろそろ各省に分配をして、総元締めだけ総理府がやるようにして、それぞれの省が直接アメリカと話し、あるいは沖縄の者とそれぞれ事務的な研究会等を開くようなことからやっていかなければ、心だけあっても現実にできない。これは単に予算だけの問題ではなくて、そういう機構上の問題もございますから、そういう点も機会があったならば申し入れてひとつやりたい。厚生当局では、そういう中でいろいろ向こうとも連絡をしておりますが、あくまでも民間援護のようなかっこうで、まあきまったようなものがあるというようなかっこうで――何ら将来についてのつながりがなくなるわけでありまして、やはりいまおっしゃいますとおりに、私は、いま研究することも、打ち合わせすることも、やはり将来の芽になるようなやり方でなきやならぬ、こう考えておりますが、いずれにいたしましても、御指摘方向に向かって努力をしたいと考えております。  それからもう一つは、いまの保険の問題でいいますと、いま先生のおっしゃったようなことが非常にあると思います。たとえば事務当局考えておりますることは、特別な薬だとか、あるいはいい薬を使いたい者のために、そういう制度をつくるというんだが、それはそれでよくわかるが、それでは一般の薬を使う貧乏な人が、金を持っていかなければ診察を受けられないということになる。そこに問題が出てくる。一方に、そういう便法をはかろうとすれば、高額所得者と低額所得者はどうなるのか、あるいは困った人に一時便法で金を貸すような機関をつくらなければならないのか、何かそういう歯どめをつくらなきゃならぬものか、これも私苦慮している問題の一つでございます。
  12. 大橋和孝

    大橋和孝君 いろいろお話を承りましてありがとうございました。  こうしたような厚生行政の中にありまして、立ちおくれた社会福祉関係、特に私、きょうは身体障害対策について、ひとつ一本にしぼっていろいろとお話を承りたいと、こう思うわけであります。社会党は、こうした考え方から、立ちおくれておる、著しく目立っておるところの身体障害対策をこのまま放置しておけないと、こういう観点から、去年の十二月ごろから今日まで、東京とか大阪、青森、北海道、群馬、静岡とか鳥取というようなところで社会福祉施設を見せてもらうと同時に、社会福祉関係に携わっておられる人たちと対話の集会を持ち、ずっとやってまいったわけでありまして、三月の二十二日号の社会新報で集約を載せておいたわけでありますが、これに対しまして、まだこれからも大阪とか京都、釧路、山口等でも、この対話集会を計画いたしておるのであります。私はこうした対話集会にできるだけひとつ積極的に参加しようというので、出てずっと見てまいりました。身体障害者の本人あるいはまた家族、あるいは関係者の人から、毎日の生活の中にいろいろにじみ出たところの体験とか、不満とか、要求というものを聞いてまいっておるのでありますが、今日これらの問題に対しての施策がいかに薄いかということを、行って実際、はだ身をもって感じてまいったわけであります。こうした関係者とゆっくり話し合って、その要求を政治の上に反映をしていくということ、がいかに必要であるか、また、いかにそういう人たちは要望しておられるかということも、また一方で感じてまいったわけでありますが、いまやどうしてもこうした厚生行政、ことに社会福祉関係に対する行政というものは、上のほうから、厚生省のほうから通達でやられるということじゃなしに、やはりほんとう生活の中からこういう人たちのものを積み上げて、そしてこれを行政の中に反映をしていただくようなことがいかに私は必要であろうかということを感じたわけでありますので、厚生省としては、こういう福祉の基本的な考え方、これに対して私はまだまだ足りないように思うのでありますが、この点は具体的にどういうふうにされておるのか。まあ数個の問題について、ひとつ御所信を伺ったらありがたいと思うのです。
  13. 園田直

    国務大臣園田直君) 私、ただいまの御意見の中に出てまいりました、いま新聞等で報道されております、昨日あたりから話が進んでおるようでありますが、心身障害児のための基本法の制定が各党で考えられているようでございまして、非常な関心を持っておるわけでございますが、ただ願わくば――政府が願うというわけにまいりませんが、この基本法が単なる一つ理想を示すものではなくて、ある程度義務を負わせるものであってほしいと私は祈っておるのでありまして、この私の発言の趣旨は、先生にはよく御了解願えると考えております。  そこで、ただいま私のほうでは、心身障害児を、就任以来私の重点施策の第一に取り上げまして、特に今後の予算では、それぞれ四〇%、二〇%、一二%と、予算も増額になっておりまして、数字の上から見ると、非常に飛躍的な予算の増加になっておるわけでありますが、現実の面から言うと、それは決してそうではなくて、いまなお収容しなければならない人間がそのままほうられておるものが数万ございます。そこで私のほうでは、これを大体二つに分けて、一つは、まことに申しにくいことばでございまするが、回復の見込入のない、いわゆる安楽死などという――親御さん方が安心して死ねない子供さんの重度のもの、それからもう一つは、精神、身体ともに不自由児で、よく診断調査いたしますると、特別な神経、特別なものについては、ほかの者よりすぐれている人も非常に多いわけでございまして、社会復帰の目標のある者との二つに分けて大体考えておるわけでございます。  そこで、いろいろ身障児の収容施設の計画、大体六年度の計画を立ててやっておるようでございますが、大体毎年二千ベッドということを目標にしてやらなきやならぬわけでございますが、毎年二千ベッド目標で六ヵ年間ということではとうてい現状は待てないものであって、私のところにくる手紙等を見ましても、なかなか深刻な、両親からすれば死と直面をした手紙ばかりでございます。一方から言えば、そういう苦しい現状のもとでいままで泣いておった両親か、あるいはその関係者、一番困っている人たちが、横に手を握って、身障児の親の会であるとか、あるいは何とかの会であるとかというものをつくって、自分たちの力で立ち上がろうという傾向があるわけでございまして、一面から言うと非常なありがたいことでございますが、一面から言うと非常に責任を痛感するわけでございます。そこで、現実の問題から言うと、国家財政で六ヵ年毎年二千ベッド増設などということではとうてい間に合わない。そこで私は、身障児については、幸い各方面の御理解もどんどん高まってきているところでございますから、ひとつ各国の制度等も研究をして、総合的なもので、しかも政府が基金を出して、これを民間の協力等も得て、親、それから民間、政府と、みんなが力を合わして早急にこれを整備したい、こういうことを実は考えてひそかに検討しているところでございます。
  14. 大橋和孝

    大橋和孝君 先ほど大臣もお触れになりましたが、そういうことで、社会党もその運動の結果、いろいろやってまいったのでありますが、そういう観点から、各党でも、いま大臣のおっしゃったように、総合的な基本法を考えられるというふうになっておりますが、これはいまおっしゃったように、そのお気持ちは私もよくわかるわけでありまして、これでほんとうに充実したものにしていきたいという気持ちの――基本法でただ言うだけではだめだということを私も十分感じておるわけでございますが、これは一ぺん厚生大臣のほうで、あるいは事務当局のほうで、こうしたものを政治的な責任の上からどういうふうにするのか、いま大体の概略はお話を承ったのでありますけれども、もう少しきちっと、いま各党で考えているような総合基本法というようなものをもう少し上回ったところのぴっちりとしたものを、政治責任として厚生省でつくるというお考えはあるんですか、ないんですか、そういう点も少し承りたい。
  15. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 心身障害者に関しまするいろいろな施策が行なわれておるわけでございまするが、やはりいま問題点となっておりますのは、そういった障害を持っておる子供なり、おとなたちの健康と福祉と、それから社会復帰あるいは雇用促進、教育、こういうふうないろんな観点からの施策の総合的な連関性といいますか、協調性といいますか、こういった点については、各省それぞれ、まあ端的なことばで申し上げますと、ややばらばらの感があるというそしりがあると思います。したがいまして、こういった心身障害者に対しまするそういうような教育とか、福祉とか、健康とか、あるいは雇用の問題とか、こういうふうな一環したチームワークをもう少し各省において検討しなくちゃいけないんではないか、こういう問題点は、率直に認めざるを得ないと思います。そういうような観点から、もし基本法というようなものができるとしますならば、そういうふうな観点も一つの大きな問題点にはなろう、かように考えております。現在各党におかれまして、この問題につきましていろいろ御検討をされておりますが、私どももそういうふうな問題意識を持ちまして、まあ検討を現在はしておるわけでございますが、ただ実際問題といたしまして、たとえば厚生省所管の児童福祉法でございますとか、あるいは身体障害福祉法でございますとか、精神薄弱者福祉法でございますとか、各法がございまして、それぞれ具体的な施策は行なっておりますし、しかもその幾つかの法律におきましても、相当理念的な根本的な思想も明確にしてございますので、その上に乗っかりますところの基本法の構想につきましては、現在ありますそういった現行の法律との関連におきまして十分検討を加えなければならないのではないか、かように考えております。
  16. 大橋和孝

    大橋和孝君 昨年三月でしたか、経済企画庁のほうで経済社会発展計画を策定して、その副題として、四十年代への挑戦というものをつけておられたわけでありますが、その中で、従来のわが国の社会保障には総合的な観点から必ずしも十分ではなかったということにかんがみて、わが国の経済社会の実態と、その将来の進路に即したところの適切な社会保障の長期計画というものを策定して、それに基づいて体系的整備を行なうことが不可欠であるという、こういうようなことが書いてあるわけであります。また、老人福祉だとか、身体障害対策等の立ちおくれを指摘して、その充実に格段の努力を払うように書いてあるわけでありますが、この発展計画が作文であるような形になってしまわないで、実際この計画を年次的につくって実施に踏み出すことが必要ではないかと思うのでありますが、こういうふうな社会保障の長期計画というもの、こういうものについては、厚生省のほうではいまどういうふうな状態でやっておられるのか。大体いま大臣からお触れになったと思うのでありますが、もう少しこういう観点からびしつとお示し願いたいと思います。
  17. 園田直

    国務大臣園田直君) 政府がつくっております発展計画の中の社会保障の問題は、目的年度内に七・五%に振替所得を上げるということで、ただいままで五%のものが今年度五・五%に上がったという程度で、あと数年間で引き上げるということになっております。数字の上では児童手当とか、あるいは年金の改善とかありまするから、大体政府の示す数字には何とか追いつくと思いまするが、しかし内容では、新しい部門ができたり、改善したり、あるいは増額になったりすることで、いろいろ内容的には流動的であり、したがって、積み上げた形での社会保障の長期計画ということについては今日おくれておりますが、実は私、事務当局に言っておりますのは、ただいま触れられました保険抜本改正の問題でありますが、これについてのものの考え方を私は次のように示して、体系立った長期の計画の策定を命じているわけであります。と申しますことは、保険制度をどうするかということだけで考えると、そこにいろいろな間違いが出てきたり、あるいはおしかりを受ける点が非常に多い。したがって、厚生行政の基本というものは年金と保険、その年金と保険というものは、年金は保険制度を守るためにあるのではなくて、厚生行政目的を達成するための二つの手段としてあるのであるから、あくまで各局連携のもとに厚生行政全般の体系立った長期的な計画をつくって、その計画を達成する手段として保険はどう改正したらいいかということからいかなければ、少なくとも保険改正の技術的な面よりも理論的な矛盾が出てくる。したがって、これを機会に早急に、抜本改正の問題もさることながら、長期的な体系立った計画をつくって、その中の手段として保険がこうある、したがって、保険はこうなきやならぬというふうにやってもらいたいということを二ヵ月前に命じて、いま検討をしてもらっているところでございます。
  18. 大橋和孝

    大橋和孝君 そういう形で一つの、社会保障のまだまだ行き届いてないところを引き上げるための長期的なそうした事柄をほんとうにいまの時期では力を入れてやっていただきたい、こういうふうに私も同じように考えるわけであります。しかし、いま行なわれている状態を見ましても、身体障害対策について見てみましても、その施策内容を知らずして、その実際を利用していないという向きが私は非常にたくさんあるのではないか。したがって、いまのそういう身体障害者の対策そのものは、いわば、いろいろ大臣からもおっしゃったように、まだまだ低いものであると、ところが、その低い状態で現在行なわれているのに、これに対して、これを利用できない部分がたくさんあるということになれば、私は非常にこれは問題ではなかろうか。たとえて言いますならば、育成医療にしても更生医療あるいは障害者手帳の交付とか、こういうふうな問題を見ましても、非常に法的医療機関、あるいはまた保健所あたりでPRしていないために、こういうことに対して十分理解がされていない。だからして、もらうべきものももらってないということが非常にぼくはあると思うのでありますが、いま厚生省の中でやはりPR費というものを相当組んでおられるわけでありますが、こういうことに対して向けられている費用は、一体どのくらいになっておるか。この予算の面ではどうなっているか、ひとつ伺っておきたいと思います。
  19. 今村譲

    政府委員(今村譲君) お答え申し上げます。  いまお話しのように、更生医療でもあるいは義手義足とか、補助器とかもらえるのになかなか来ない人もおるということでありまして、これは二十四年に法律ができてもう二十年近くたっているわけでありますけれども、まだ徹底しないということでございます。ちょっとこまかい金額はあれですけれども、PRにつきましては、ことに昭和二十年代のあのころは、身体障害者というものは家の中に隠して表面に出さぬというような、非常に消極的な時代でございまして、現に数百万の法施行事務費というものを出しておりまして、これは二分の一でありますけれども、それで身体障害者の後援会あるいは大会、あるいは引っぱり出していろいろな運動をやらせるということで運動の大会とかというふうな経費、それから本省でも数十万円だったと思いますが、中央で身障者大会をやりましたり、あるいは作品の展示会をやりましたりということでやっておりますが、実態は、やはり各都道府県のいわゆるそういう身障者の団体の育成あるいはそういういろいろな行事、講習会というような費用で国が出しておりますのが法施行事務費としては大体――ちょっといま調べますけれども、数百万か千万足らずというかっこうで、まだまだ徹底いたしておりません。
  20. 大橋和孝

    大橋和孝君 詳しい数字はあとでいいと思いますが、やはりPRすることによって、そういう人たちに恩恵を受けさせるとするならば、私は非常に大事なことだと思いますので、特にPRにしても、どういうふうにしたらいいかということをもっと具体的に考究をして、そして最も有効な、適切な方法でもって、こうした人たちが落ちこぼれのないように徹底した配慮をしていただきたいと、こう思うわけであります。  それからまた、先ほどちょっと大臣からもお触れくださいましたんで、大体理解はできるわけでありますけれども、私はそこのところをもう少し詰めてお考えを聞きたいと思うわけでありますが、身体障害対策として、病気の発生の予防あるいはその病気をできるだけ早期に治療する、それからまた、その症状が固定してきた人に対しては、早くまたこれを教育、訓練をして、そして正常なほうにできるだけできるように指導していく。これが労働やら社会生活につながっていくようにしていく。あるいはまた、先ほど大臣がおっしゃったように、重症な人は何とか保護を加えてやっていくというお話でありますが、そういうようなことがいま、あるいはまた渥美局長のほうからもお話しになったように、いま法律でこれが相当の理念を加えて守られている。これはそれでいいわけでありますが、しかし、私が先ほどから申したように、こういうふうなものが行政的に一元化される。大臣もそうおっしゃいまして、そういうことでいろいろいま研究しているんだというお話でありますが、私は、政府部内にもう少しこれを研究する機関ですかね、何か機関をすぐつくってしまって、そして具体的にこうやっていくというふうにしたほうが前向きになり、早くできるのじゃないか。全体的に研究をさしておられるのもいいと思いますけれども、ひとつそういうことを中心に置いていく機関を――調整機関というか、一元化するための機関をひとつ置いて、それからいろいろな面でそれを配慮していくとか、あるいはそれを全部から寄せて、そしてこれをしていくというような、何かもとになるところの政府部内に調整機関というものをつくられたらどうかと思うんですが、そういうことに対してどんなふうなお考えでありましょうか。
  21. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 先ほど私御説明申し上げましたように、いろいろな施策の関連性をもっと密接にしていく、それから、たとえば子供からおとなに対しまする一貫した施策を講ずる、こういうふうな問題があると思います。それで、たとえば精神簿弱児と精神薄弱者の一貫性のあるケアをしていきたいというような問題が一つあるわけでございます。この点に関しましては、昭和三十九年から、厚生省におきまして、児童家庭局におきまして、子供のほうもおとなのほうも、精神薄弱という事態に着目いたしまして、子供もおとなも一貫して児童家庭局で所管するという一つ方法も講じたわけでございます。それからまた、厚生省部内におきましては、たとえば身体障害者は社会局でやっております。あるいは肢体不自由児は児童家庭局で所管しておるわけでありますが、こういった関係におきましては、部内におきましても十分意見を整えまして、相ともに協力しましてただいま行なっているのが現状でございます。  また、各省ごとのいろいろな関連につきましては、たとえば精神薄弱につきましては、各省の連絡協議体を総理府に持っているというふうなことでございまして、これからも各省ともに、また厚生省の中におきましても、十分よく連絡をとりまして実施をしていくように進めたいと、かように考えております。
  22. 大橋和孝

    大橋和孝君 それから次の点は、身体障害者の中で筋萎縮症、筋ジストロフィー、サリドマイド症とか、リューマチ、脳卒中、あるいはまた情緒障害は身体障害者の中に含まれていないと、こういうふうに思うわけでございます。新たに職業病、公害病だとか、あるいは風土病、あるいは交通災害によるところの疾病、これは社会の発展とともに非常にいまではふえてきているわけであります。こういうふうな障害が非常にふえておりますからして、こうした疾病を将来みな障害対策の対象にして、これを一元的に対策を立てていかなければならぬと思うんでありますが、こういう点について、ちょっと御所見をお伺いいたします。
  23. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) ただいま御指摘ありました進行性筋萎縮症あるいはサリドマイド症、こういった子供たちにつきましては、法律上肢体不自由児として取り扱うようにしております。特に進行性筋萎縮症につきましては、昨年児童福祉法の改正をいたしまして、昨年八月一日から、肢体不自由児――疾病は全然別でございますが、肢体不自由児としていろいろな法律的あるいは財政的な取り扱いをいたすことにしたわけでございます。なお、サリドマイド症の子供たちにつきましても、もうすでにだいぶ大きくなった子供もおりますけれども、肢体不自由児施設におきまして指導訓練を行なったこともございます。それから、情緒障害とか自閉症とかいうのがございましたですが、これらは、情緒障害につきましては、独立の児童福祉施設といたしまして、情緒障害対策治療施設というのがございまして、そこで現在その治療なり訓練なり教育なりを行なっておるわけでございます。なお、自閉症等につきましては、これはなおまだ学問的ないろんな問題点もございますけれども、ともかく、そういった子供たちが何らの施設的なケアを受けてないという観点に立ちまして、昭和四十三年度よりそういった自閉症の子供たちを収容する施設を設置しよう、かようにいま計画を練っておるところでございます。
  24. 大橋和孝

    大橋和孝君 それから身体障害者手帳の交付状況あるいはまた使用の状況、将来またこれを、どうしていくかというふうなことについて、この身体障害者手帳の実情で非常に問題かまだまだあると思うわけであります。特にこの障害者の不服審査の請求の権利をどのようにして守ってやるかとか、あるいはこの身体障害者手帳の交付状況、使用状況に対してもっと充実する。実情とはどういうふうになっておるか。いまの実情と将来の上の考え方をちょっと伺っておきたいと思うんです。  それからまた、いまのお話の中にありましたように、筋ジストロフィーとか、サリドマイドなんかは、障害者手帳の中に入れられているんですか。まだそういうふうなことが十分にできてないと思うんですが、その点も一つ
  25. 今村譲

    政府委員(今村譲君) いまお話しのように、大体百十四万人という全体の身体障害者、これはほとんど全部手帳を持っておるという状況でありますけれども、実益はまだまだくふうをしないと、たとえば運賃減免、これも非常に軽い人はなかなか全部二分の一減免ということをしてない、この辺は今後の折衝問題でありますけれども。それから義手、義足をもらう、補聴器をもらう、あるいは更生.医療をするというふうな場合にも、身体障害者手帳はすぐ使うわけでありますけれども、そのほかにも、これに基づくいろんな、これは実体法の問題でありますけれども、どれだけの重きをつけるかということは今後とも努力をしていきたいと思います。  それから、筋ジストロフィーにつきまして、たとえば現在はどうであれ、現実に身体障害があるというものにつきましては、手帳を出しております。ただ、実は身体障害者の施設にも筋ジストロフィーの人々が二十名くらいだったと思い、ますが、実は入っているのです。これは医療、収容の正式の施設がきわめて少ないためです。ただこれは病気でございまして、症状固定ではございませんで、私も非常に心もとないのでございますけれども、こちらも一応しろうとでございますが、そういうふうなことは四十三年度から成人のベッドも確保していただきましたので、そちらのほうで十分な医療看護のもとにめんどう見ていただきたい、こういうふうに思っております。
  26. 大橋和孝

    大橋和孝君 この身体障害者手帳というのは、そういうような基準になるわけでございましてね、これをうまく――これも一つのPRだと思うわけでありますが、そういうことでないために非常にアンバランスがある。ちょうど局長指摘されましたように、たとえば軽症の人は運賃割引も受けて恩恵も受けられるけれども、重症の人は何にもない。いろんな事柄からのアンバランスもあるし、また、使い方も十分でないし、あるいはまた等級等についてもいろいろ差があるわけです。これは非常にむずかしい点もあるからして、なかなかそう口で言うだけではできるものではないと思いますが、やはりこういうふうなものは、身体障害者の立場に立って見ていく場合に、正しく評価されているということは、彼らも非常に心の慰めになると思うのです。これはつい、隣のほうに同じような人があって、その差がこれだけあるのに、自分のほうは多いとか少ないという、そういうアンバランスが非常に不安定な気持ちを起こさせる。私はこういうふうなことは、上から見た場合は小さなことかもしれませんが、実際その場におるその人たちの場合を見ますと、非常に私は大きな問題だと思うのです。こういうことが、やはりこの行政がすみずみまで行き届いているかどうかということの対象にもなるわけであるし、また、そういうことに対してはどういうふうにしたらいいかということを、私ども実際においてそういう現場に行って見ながらも、確定的な方策は私自身もこうしてもらいたいということをお願いするところまでいかないわけです。それほどむずかしいと思うわけでありますが、それだけに、私はこうした問題に対して非常に慎重を期さなければいけないと思います。そういうところからいけば、障害者で不服があったら審査請求ができます制度になっていますわね。しかし、その権利を実際どれくらい使っておるのかといえば、実はあまり使っていないのじゃないかと思うのです。しかも、その不平不満というものは非常にくすぶっている。やっぱりそういうふうな道が開けているのにそういうものを使っていない。こういう現況を見ますと、やはりこれはそういう対話集会なんかへ行ってみますと、そういうことが非常に大きく浮かび上がってくるわけです。そういうことにかんがみて、私は、やっぱりこうした制度も十分に使われるような方向に持っていくし、また、それを使わなくても、公的病院なりあるいはまた保健所なりからして十分なPRをして、もっとそういうことを徹底すべきだと、こういうふうなことも特に思いますので、そういう点は特に配慮していただきたい、こういうふうに思います。  それからその次には、この医療の面でちょっと聞いてみたいのでありますが、発生予防、治療そのあとの保護ですね、これを一貫してやらなければならぬということは、先ほどからも大臣のお気持ちの中で十分わかるのでありますが、ことにその発生予防に対しまして、いま行なわれておる施策というのは、どうも私はまだまだ不十分ではないか。たとえば脳性麻痺にしてもあるいはまた重症な精薄にしても、私はもっとこれに対して非常に力を注げばそういう悲惨な人ができないで防げるという――原因はたくさんあると思うのですが――そういうものに対する基礎研究というものを、私はいろいろ拾って見ておりまして、いろいろ考慮はされていると思いますが、こういうことをもっと抜本的にあるいはまた一元的に考えてやる必要がある。特に産婦人科あたりで、妊婦に対すること、その懐妊中から、分べんから、それから生まれた直後からと、こういう状態が私はだいぶ必要であろうと思いますが、特にその基礎的な研究という面についてはまだまだ遺憾な点がたくさんある。こういうことについて一体どのようにお考えになっているのか、その点も一言触れてお聞かせ願いたいと思います。
  27. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 先生おっしゃるとおりと思います。妊産婦、それから分べん周辺の時期、それから新生児、乳幼児、こういうふうに一貫して健康診査あるいは健康管理を行なうということは、母子保健行政の非常に重要な問題でありまして、さらに強力にやっていかなければならないと思いますが、現実におきましては、妊産婦、乳幼児の保健指導を保健所を中心として行なっております。それからまた、あるいは助産婦、保健婦等によりまして妊産婦、新生児あるいは未熟児、こういったものに対しましての訪問指導も行なっておりますし、あるいはまた新生児の健康診査、三歳児検診、いろいろな機会をつくりまして健康管理あるいは保健指導を行なっておるわけでございます。特に、たとえば妊娠中の異常な状態が発見された場合におきましては、たとえば妊娠中毒症でございますとか、あるいは妊産婦糖尿病でございますとか、こういった異常な状態が発見されました場合におきましては、経済的な余裕のない方方に対しましては公的機関による医療も行なっておりますし、あるいは、たとえば出産周辺期におきましては、重症黄だんにがかった子供に対する交換輸血、これも公費負担でいたしております。あるいはまた代謝異常の子供に対しましては、昭和四十三年度から相当いろんな疾病、たとえばフェニルケトン尿症であるとかあるいはウィルソン病であるとか、そういった代謝異常の子供に対する公費負担医療も行なうようにしているわけでございます。いずれにいたしましても、まだ先生おっしゃったようなPRの問題も不足でございます。さらにこういった指導を強力に進めなければいかぬと思っておりまして、四十三年度におきましては、実は市町村の地域におきましてこういつた母子保健の推進をやっていただくための組織づくりをやってみたい、かように思っておるところでございます。なお、この発生予防あるいは治療に関する研究、こういった点につきましては、四十三年度におきましては、たとえば脳性麻痺の発生または治療に関する研究でございますとか、あるいは、これはちょっと問題変わっておりますけれども、ダウン症候群に関する研究でございますとか、あるいは自閉症の治療研究、こういうふうな異常児の発生予防あるいは治療、こういったものに対するところの特別研究を強力に実施するようにいたしたいと、いま関係学会等とも十分相談いたしまして、その計画を進めておるところでございます。
  28. 大橋和孝

    大橋和孝君 この間園田厚生大臣は、正常分べんを保険の中に入れてやりたいというようなことを予算委員会でお述べになったように私承ったのでありますが、その考えは私たちもたいへんけっこうだ。いまのような面で、分べんというのが非常に大きなそういうふうな障害児のもとをなすわけでありますから、これもそういうワクの中に入れて、そうしてこれをやっていくということは、非常に前向きなことで、私は非常に感を深くしてそのお考えを聞いたわけでありますが、同時に私は、その話を聞いておりまして浮かんできたことは、たとえば先ほど言っている、生まれたての子供さんをいろいろなことをやる、検診をするということが、非常に将来のそうした障害児の予防にもなるわけでありますからして、同時に、乳幼児も非常に治療がしやすいので、少なくとも十割給付ぐらいでそういう乳幼児は見てやるという線の中に入れたら非常にいいのじゃないか。それと同時に、年寄りの病気の多い人もそういうところに入れれ、ば、非常にそうした意味の予防にもなるし、あるいはまた、国民のそうした弱い面を救うという意味から、そういう人たちに対して、かかりやすい情勢をつくるということからいっても、私は非常にこの考え方はいいと思うのですが、その点について、ついでに、そういう方向でやっていただきたいという私の気持ちから御意見を伺いたい。
  29. 園田直

    国務大臣園田直君) いままでの質問の中で一貫したことでありますので、まずそれをお答えいたしますが、PRの問題であります。  確かに、身体障害児の問題についても、お医者さんのところに行くと、原因のいかんにかかわらず実際に肢体あるいは心身が不自由ということで診断をされるのでありますが、窓口でちょっと頭をひねったり、あるいは本人のほうで心配をされて、それに入っていないという陳情をときたま受けることがございます。それは確かにそういう点がありますが、このPRについては、よその省と違って印刷物によるPRは効果がないのです。私たちとしては、ただいま厚生省厚生省相談室というのをつくって、ありとあらゆる相談を受ける。そこでPRなり、ものごとをさばき、国民厚生省との血管をつなごうと考えておりますが、この相談室を各地に置いておりますが、非常に少ない。本年度も少しはふやしておりますが、やっぱりこれは将来全国に私は配置をしてそうして相談室をつくりたい。これはもうPRでなくて、これはあらゆる意味において円満にいくし、また厚生行政をわかってもらえるのじゃないか、こういったことを考えております。そこで、身体障害児については、原因のいかんにかかわらずやれと。それからもう一つは研究でございますが、文部省と私のほうの両方でそれぞれ専門医学校に特殊な研究をお願いして助成金を出しております。筋ジストロフィー等についても今度は新しい予算がついております。ただ私としては、父兄のほうから、いままでほうっておかれたが今度は研究費をつけてもらったと、数百万の金だけで泣きながらお礼を言われると、非常に責任を逆に痛感するわけでありまして、実はこの方法なんでございますが、やはり行政上調整機関をつくって、少なくとも文部、厚生、将来科学技術庁等も入れた研究機関をつくるということは確かに御意見のとおりだと思いますが、まあ一つは研究についても、いまのように専門に委託するばかりでなくて、ほんとう国立病院の特殊性からいって、国立病院にそういう施設や人員を集めて、一般の医療のほかに、そういう専門的な研究、新しい病気あるいは将来の医療についての開拓、結局そういうものをやらなければならぬ。そこで、なかなかできませんから、ひとつ一ヵ所でもそういうモデルをつくってみたいと実は考えて先生の御趣旨と同様なことを考えておるわけでございます。  それからまた健康の早期診断でございますが、これは局長がいまちょっと、全国に本年度は母子健康、保健の管理の推進員を配置することによって、それを拠点にしてぜひ早期診断あるいは生まれたあと、あるいは生まれる前からの母親と子供の健康をやりたい、これによって身体障害児も相当早期発見することによって減ってくるのではないかと、このようなことも考えておるわけでございます。ただいまの御意向を十分拝聴いたしまして、逐次整備していきたいと考えております。
  30. 大橋和孝

    大橋和孝君 次には、ちょっとあと保護のことについて伺ってみたいと思いますが、この対策がまだ不十分であるのではありますけれども、医療機関だとかあるいはまた能力を開発するところのリハビリテーションの施設というものの充実、あるいはそういうことに対する研究体制というものの進め方は、やっぱりいまの状態ではどうなっておるんだろうかと、まだまだいまのような一貫性もなければ、あるいはまたそういう施設も非常に少ない。外国なんかでいいますと、ずっとそういうことを一貫的にやっておられるし、また、その機能の程度によっていろんな施設考えておられるということになっておるわけであります。また更生用具あるいは補装具、こういうようなものも全額公費負担で見るのが望ましいわけでありますけれども、現在の状況では、かなり個人負担もあるわけでありますが、こういうことについて、やはりもう少しいまの現状を前進さすような、その方法考えてもらいたいと、こういうふうに思うわけでありますが、これに対して現在の状況を踏まえて、将来はどういうふうに考えていくか、こういうようなことに対してもちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  31. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 一応成人の十八歳以上の担当でございますけれども、実はいまおっしゃいましたように医療の過程からリハビリテーションを考え、そしてリハビリテーションをやる、それから職業まで一貫してやる、これが一つのもう大原則だと思うわけです。ただ現実は、職業補導は省が違うとか、いろいろありますので、ばらばらになっている。今度の総合福祉法案のねらいとされる大きなものはそういうところにあると思うんです。現実に私ども身体障害福祉法で持っております百六十施設、約一万人ということで、そのうちで訓練施設が約半分、まあ形式上はリハビリテーションということでありますが、実は悩みがございまして、ほんとう意味のPT、OTとかそういう学問的な裏づけのある人を得るということは非常にむずかしい状況でございます。それで、その施設以外にも、たとえば長野県の鹿教湯に老齢者のあれでありますけれども、高齢者のリハビリテーションの施設とか、あるいは九州地方やあっちこっちにも、だんだん医療機関、お医者さんまで含めた施設をつくらなければだめだというふうな動きが出てまいりまして、逐次出てまいっております。ただ問題は、そういう専門の人を県や市で集めるというのが非常にむずかしい状況でございます。まあ今後のその職員の養成とかなんとかいうふうな問題とからみ合わして、これは私どももただ見よう見まねということでなしに、本格的にふやし、あるいは内容を充実するというかっこうへ持っていかなければならぬ。願わくば医療機関そのものについても、医療行為、症状固定のほかに、リハビリテーションという部面が開拓される、あるいは並行的にやられるということが一番望ましいのではないか、こういうふうに考えております。
  32. 園田直

    国務大臣園田直君) あなたへの答弁で大事なことを、医療の公費負担の問題で御質問になったのを抜かしましたが、老人のことについては私もおしかりを受けました。明治維新の大業をやった老人を公費負担でめんどうを見ないのは何ごとかとこっぴどくしかられたことがございます。それを補う意味におきましても、老人の医療公費負担ということで保険局長のほうへ具体的に検討を頼んでございます。それから乳幼児のことについては検討したいと考えております。  それからきのうございました分べんの問題でございますが、これはILO条約の百二、百三号に分べん前後の手当では全部そろっておりまするが、いまの分べん費だけその条約に該当しないわけでございまして、幸い、事務当局努力によって、ただいままでこのお産をした赤ん坊が患者になっていなかったのを、患者にすることにして、医療法の改正をやっておりますから、それに伴って母親というのも当然これはそのようにやるべきじゃないか、ただ問題は、日本の場合には、それがなかなか困難でありますのは、自宅でお産姿さんでお産する人と入院してする人との区別がございますから、そういう点が非常に事務的には問題があるようでございますので、これも厚生省のほうで検討いたしたいと思っております。乳幼児の問題もそのような方向で研究してまいりたいと思っております。
  33. 大橋和孝

    大橋和孝君 それから次に、障害者の教育でございますが、これはほんとうは文部省に多少関係してくるかもしれませんが、現在はその体制がどうもまだまだ確立していないのが現状だと思うわけであります。結局、障害者の教育が生活指導も含まれておるわけでありますので、これに対してやはり基本的に厚生省としては、これからどういうふうにしていくのだという心がまえをお伺いしたいのですが、ことにここでもって敷衍して申し上げるならば、私はこの間、北海道へ参りまして、北海道の札幌に厚生省の何といいますか、更生施設重症心身障害児施設があるわけですね。そこを見せてもらいましたが、そこでは重症児がお母さんと一緒に母子入園というのをやっているのを見せてもらいましたが、その人は非常に涙を流しながら陳情されたのを私は感激して伺ったのですが、私はこれは非常に重症の心身障害児を持っているお母さんが、子供さんと一緒に入園してきて、二ヵ月ないし三ヵ月の間一緒に教育のしかたを親が教わり、親と子供が一緒に生活し、教育とともに生活教育だと思いますが、重症な人は、そういうことのやり方を根本的に指導を受けて、それを家に帰って教育する、それを持続してやる。いろいろな問題が出てきたら、またそこへ母子入所をしてそうして教えてもらってやる。これは私は非常に理想的じゃないかと考えたのです、教育には。子供だけ預けっぱなしにして、親が働きに行くというのは、もうちょっとはずれているわけであります。ことに小さい乳幼児あるいは小さい小学校の間くらいにはそういうことが非常に必要じゃないか。親がほんとうに愛情を込めた教育をする、その教育をどういうふうにするかということをまた教えてもらうということも、これも教育の一つ方法であろうというふうに考えますし、同時に、こういうところの教育というものは、症状によって非常に差があるわけでありますからして、こういうものをやるのには、相当人手も要るでしょうし、あるいはまた、そういったことがその病人の階層に、病状といいますか、障害児の階層にマッチしたものでなければならぬと、それが非常にうまく早くやられることによっては、私はこれが将来の訓練の方向へ持っていけて、正常な、少なくとも残っているところの能力を開発して、これが正常なほうに持っていけるということが根本になるわけでありますから、この点から考えると、私は、この教育というものはむずかしくもあるし、また、そういうことをするためには、もっとこまかい配慮を、そうしてそういう施設ごとにたくさんふやしてやる。北海道の札幌あたりで聞いたのは、主人と別れて――まだ小さい子供を持っているのですから、三十代の奥さんが、二ヵ月ないし三ヵ月間、主人との生活を離れて――はるばる遠方からやってきている。ちょうど私がそこに行ったときに、すぐ前に外国人のそういった人が見学に来られて、第一番目にびっくりしたと言う。外国人から考えてみたら、奥さんをそれだけ離れてほうっておくというのは大問題らしいのですが、日本ではよくやっているなということで、私は涙ながらに、このお母さんたちがいかに家庭を犠牲にして子供のためにやっておるかということを聞いて、そこらにはもう少し教育の手をあたたかく伸ばして、各施設を近くに近づけてもっと通える範囲においてこれができるような形にまで持っていくということが、私は教育の面から非常に必要じゃないかということを感じて帰ったわけでございますが、そういう観点から申しましても、教育について、厚生省のほうでもう少し、涙をもってやっているそういう親たちに報いるような教育のしかた、これがまた将来は、残っておるところの機能を開発して、将来産業発展のほうに持っていけるという一つの望みにも大きくつながっておるわけでございますからして、その辺について障害児教育という点について考え方もひとつ大いに進めていただきたいと思うのでございますが、そういう点についてもひとつお考えを伺いたいと思います。
  34. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 心身障害児に対しますところの教育も、その心身障害状態によりまして、ある程度違った取り扱いをしなくてはならないことは言うまでもないと思います。たとえば精神薄弱児に対する教育、あるいは肢体不自由児に対する教育というものは、それぞれ少しずつ違っておるわけでございます。総括的に申し上げますと、私どもは施設内におきましては、生活指導それから学習指導それから作業指導、こういうふうないわば三つの大きな教育といいますか指導といいますか、これを十分やるように指導しているわけでございます。その中で、特に学習指導の問題につきましては、これは学齢前と学齢児に分けて考えていかなくてはいけないのでございまして、学齢児につきましては、精神薄弱児の子供たちに対しましても、現在精神薄弱児施設におきましては、約一万八千名ばかり子供がおりますが、その約四分の三が一応特殊教育あるいは養護学校における教育、こういうものを受けておるわけでございます。それから肢体不自由児につきましては、学齢児におきましては、すべて義務教育を受けるというふうにしておるわけでございます。それから学齢前の子供たちに対しましては、学習といいますか、義務教育の問題はないのでございますが、先ほど先生御指摘になられましたような小さな子供でございますので、おかあさんとともに通園さしたり、あるいは入園さしたり、北海道におきましては、マザースホームというのがございまして、母子入園院の制度をもってやっております。これは実はわが国の肢体不自由児の対策の親ともいわれますところの高木先生が世界に先がけましてこの制度を採用されたわけでございます。わが国におきましては、母子入院制度というのをさらに拡充するようにいまやっているところでございます。
  35. 大橋和孝

    大橋和孝君 時間も迫ってまいりますので、次に進みたいと思っております。  次に年金について伺いたいと思うんですが、年金問題に関連しまして、生活の援護についてお聞きしたいわけでありますが、いまの法律で解釈いたしますと、十八歳未満で障害者になったものは、障害福祉年金を受けることになるわけであります。ところが二十歳後で障害者になった人は、国民年金に加入しておったといたしますと、その加入の条件が適合しますので、わずか数回かけたような人であっても、拠出制の障害年金を受けることになるわけでありますが、その間には大きな格差が出てくるわけです。こういうようなことなんかも、そのままに置かれておるようでありまして、私はこの現場へ行っていろいろ聞いてみますと、そういうことによるアンバランスというものが非常にある。隣の人がこうなっているのに私はこうだという非常な不満を持っている人があるわけであります。こういうものについて、一体これは将来どういうふうに考えられるのか、もう早くこういうようなものを調整しなければいかぬのじゃないか。ことに低い人を上げてやるという方向で何か措置すべきじゃないかと思います。
  36. 伊部英男

    政府委員(伊部英男君) ただいま御指摘のように、国民年金の被保険者は二十歳からでございますので、二十歳以後において被保険者として拠出をされた方につきましては、もとより拠出制の年金が支給されるわけでございます。しかしながら、二十歳前にすでに障害が発生しており、あるいは生まれたときからの障害があるという方につきましては、実はただいまの年金制度の上におきましては、これを救済する方法がいまのところないのでございます。しかしながら、総合的に考えますと、たとえば外国等の例を考えてみますと、そういう場合におきましては、むしろ児童手当の延長という問題で問題を解決いたしておるのでございます。さらにまた重度心身の障害児のいわゆる扶養保険の問題につきまして、児童局におきましても研究が進んでおる状況でございますし、児童手当の研究もされておる状況でございます。また年金におきましても、明年の厚生年金の再計算の機会に、総合的な検討を国民年金を含めまして行ないたいと厚生省としては考えておりますので、これらを含めまして、十分問題に取り組入たいと、かように考えておる次第でございます。
  37. 大橋和孝

    大橋和孝君 それから、国民の中でもこうした障害者というものは非常に弱い人であるから、こういう人に対して年金の額が非常に底く過ぎると考えるわけです。きのうあたりのテレビを見ておりますと、デンマークあたりでは七万なんぼもらっている老人がおって、そこえケースワーカーが行って、わしは実習にきておるんだけれども十一万円もらっておるというPRをやっておられて、私は非常にさびしさを感じたわけです。それはデンマークでは、少々税金が高いけれども、社会保障が完備しているから、少々税金が高いほうが生活が楽だというようなことをPRされておったわけでありますけれども、そういうことから比較してみましても、あまりにも障害者に対する、何といいますか、年金の額が少ない。そこで、どういうことが現場のほうではみな心配されているか、こう見てみますと、いわゆるおかあさんたちが元気であるうちはいろいろカバーしているというわけでいいけれども、しかし、いま現在では、介護者とか保護者とかがあるうちはそれでいいわけでありますけれども、親が死んだあと、この年害者の対策があまり劣悪であるために、自分たちが死んだら、親が死んだら子供たちはどうなるだろうかという心配がある。私は非常にきついものがあると思うんですね。もうみな口々にそれを言っていられるわけであります。親は相当自分の生活が苦しくても、子供がかわいいという意味でこの間これをカバーしているわけであります。私は、こういうこと自身はもう非常に矛盾だと思うんですね。先ほど厚生大臣もおっしゃっていますけれども、十分大臣もこれは御認識願っているわけだから、くどく申すわけではありませんけれども、少なくともなくなったあとをどうするかということは、少しは配慮してやっていただかないと、死んで残された者は気の毒だと思うので、親の苦しみというものに対して、国としてはある程度こたえてやらなければならぬという立場にあると感じてまいりました。非常に涙切々としてこういうことを訴えられておりましたのですが、こういう問題に対して、厚生省としてはどういうふうにお考えになるか。こういう人々に対してその不安を少しでも除去するためのはっきりしたものが打ち出していただけたらありがたい、こういうふうに思います。
  38. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 御指摘のように、親がなくなったあとの子供の処遇について、親御さんがたいへん御心配されております。そうしてすでに一部の地方公共団体におきまして、数はまだきわめて少ないのでございますが、生命保険と提携いたしまして、基金制度をもちまして、親がなくなったあと、その基金から子供に対する生活処遇費を出すという制度、いわゆる心身障害福祉基金制度、こういうものを設けまして、実施をされているところがございます。私ども国におきましても、こういった制度につきましてどういうふうに国として考えたらよいか、財政的にあるいは制度的にどう考えたらいいか、こういうようなことを研究すべき段階でございまして、四十三年度予算におきまして、これらの研究調査費を計上いたしまして、この新年度に入りましてからその調査を始めたわけでございます。
  39. 大橋和孝

    大橋和孝君 御指摘のように、やはり東京都でも検討中であるようですし、神戸、岡山あたりでもやっているようでございます。私は、地方自治体が先立ってやられることは非常にけっこうだと思いますけれども、これはいま調査費を組んでもらって前向きにやってもらっているわけだから、すぐ実現するからいいとは思いますけれども、地方自治体にこういうものをゆだねるのでなくて、どうぞひとつ国のほうで調整して、地方自治体と国の責任においてこういうものがどんどん保障されていくようなことをごく早くやっていただくということを要望しておきたいと思います。  それから次にお伺いしたいのは、障害児も結婚したりあるいは配偶者を持って子供ができるわけでありますが、できると見なければならぬわけでありますが、そうなりますと、現在の障害年金には扶養加算というものがないわけですね。ですから、私は当然障害者のあれに対しましても扶養加算をつけるべきだと、こう思うんですが、この点についてはどうですか。
  40. 伊部英男

    政府委員(伊部英男君) 厚生年金制度におきましては、御指摘のように扶養加算制度が設けられているわけでございます。しかしながら国民年金におきましては、一人一人の方がそれぞれ被保険者であるという考え方からいたしまして、扶養加算制度がないのでございます。しかしながら、ただいま明年度の改正を控えての研究の非常に主要な方向一つといたしまして、両制度のバランスという問題か非常に大きい問題になっておるのでございまして、まあこの見地から考えますと、扶養加算の問題につきまして十分取り組まねばならぬ問題であるということを考えておるのでございます。またさらに、扶養加算そのものの額が現在程度で十分であるかということにつきましても、今後の研究問題として取り組んでまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  41. 大橋和孝

    大橋和孝君 特にこれも相当そういう人たちの要望としてはきついものがありますので、至急そういうものに対してよく考えていただきたい。  それからその次に、母子福祉の中で行なわれておりますところの資金貸し付け制度があるわけでありますが、まあこの身体障害者に対しましても、世帯更生資金貸し付け制度ですか、こういうようなものがあるのでありますが、こういうものの運営の状況は一体どういうふうになっておりますか、ひとつちょっと御説明を願いたい。
  42. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 母子福祉資金制度につきましては、早く昭和二十七年から母子福祉資金の貸付等に関する法律というのがございまして、それができましてからずっとやっておりまして、現在まで約八十万母子世帯でございますが、約百八十億ばかり資金の貸し付けを受けまして、それぞれ経済自立あるいは社会自立のお役に立っておるわけでございます。で、その後昭和三十六年に母子福祉法ができまして、それに吸収されたわけでございますが、現在国が三分の二の国庫補助率をもちまして県に補助しておりまして、県が三分の一をつけましてやっておるわけでございます。昭和四十三年度の国庫補助額が六億円ということになっております。この貸し付けをいたしました昭和二十七、八年当初におきましては、生業資金が非常に大きなウエートを占めたのでございますが、最近におきましてはその半数近くが子供さん方の就学資金の貸し付けに充てられておるわけでございまして、そういうふうな見地から、昭和四十三年度よりは就学資金の内容の改善に意を用いたい、かように考えておるところでございます。
  43. 大橋和孝

    大橋和孝君 次には、この住宅事情についてひとつお伺いしておきたいと思うのですが、まだまだ現在ではあまりこの住宅事情はよくなっておらないわけでございますけれども、特に私はこの障害者に対しての住宅に関しては、非常にそういう障害者が困っておるということであります。私はこれは建設省に対して言うのがほんとうかもしれませんけれども、公団とか公社の住宅の少なくとも一階あたりに、特にこういう身体障害者あたりを入れるような配慮をするとか、何かこういうふうなことを厚生省のほうからイニシアチブをとってやるべきじゃないか。外国なんかへ行って、その個人個人に合うようなアパートあるいはまたそういうところをつくっておるという現状を私ども見せてもらってきたわけでありますが、そういう観点からいって、いまこの人たちが二階へ上がるということは非常に大きな問題があるわけです。だから少なくともそういうふうな者の住宅というものを特に私は身体障害者に開放するとか、何かそういうようなことの新しい施策があるべきではないか。特に現地で話を聞けば、そういうことに対しての不満といいますか、そういうふうなことがないために非常に苦しんでいる人たちの要望をたくさん聞いてまいりましたが、こういうふうなことに対してもひとつ十分な配慮をしてもらいたい、こういうふうに思うわけです。
  44. 今村譲

    政府委員(今村譲君) ただいまの問題、たしか一昨年だったと思いますが、住宅局長と社会局長のほうの連名で話し合いをつけまして、住宅困窮度、いわゆる一定の資格制限はありします。相当の所得制限はありますけれども、その中において、身体障害者は極力優先的に扱えというふうな、単に抽せんでやってましうということでは困るということを、各都道府県のほうに連絡してございます。問題は、それでもなかなか特殊の構造、あるいは手すりとか階段とか、まあいろいろ一階にしてもふろ場とかというような問題があるものですから、具体的に身体障害者用の設計をどうするというところまではまだ話は詰まっておりませんが、いま仰せられましたように、老人を含めまして、身障老人のようなものは特別に一階に措置してくれというようなことで、いま建設省といろいろ相談しております。
  45. 大橋和孝

    大橋和孝君 それから次にちょっとお伺いしたいことは、在宅障害者ですね、障害児、こういうふうな者に対してはいま相当たくさんありますから、こういう人たちの比重が非常に重くなっておる。私はこのことは非常に大事なことじゃないかと思っておるのでありますが、これにつきまして、数なんかは報告を受けて知っておりますけれども、この状態が、非常に上から下まであるわけですね。それからこういうものに対して一体どういう状態で、数とか表面的なものではなくて、実態をどういうふうにしてつかんでいらっしゃるのか、こういうことに対して少し私あちこち回って見たところで疑問を感じたわけです。特に私は巡回医療とかあるいはまた教育や職業指導、生活相談、こういうようなものが非常に必要じゃないかということを痛感して帰ったわけですが、いま一体巡回、こういうようなものに対して予算的にはどのくらいのものが見込まれてどういうふうに行なわれておるのか。私はこの間もテレビを見ながら、老人のさびしさを解くための、巡回をしてお相手をしているというようなことを聞いて、いまの日本状態ではよその国とは一緒になりませんことはよくわかりますけれども、あまりにも格差が大きいのだし、非常に問題があるわけでありますが、一体今年度の予算の面からいって、巡回診療、巡回相談、教育、職業、そういうことのあっせんとか、そういうもろもろの巡回のものに対してはどういうふうに組まれておって、どういうふうにやられておるか。それは過去においてはどういうふうにはね上がってきて、どういうふうな階層にそういうふうなものがあるかということを、もしわかれば……。
  46. 今村譲

    政府委員(今村譲君) おっしゃいますように、施設はやっと百六十一万人収容ということになりましたが、大多数の、九十何用は在宅である。しかもそのうち相当重い人が三、四〇%というふうな状況であります。それで巡回相談は、各府県に身体障害者更生指導所というものがございまして、そこでお医者さんもなかなか足りませんが、各大学の先生方に頼んで、少なくともその管轄地域をひんぱんに回るようにということで一切をやらしております。ただ、それに対する予算措置というもの、指導所の予算あるいは法施行事務費というものが非常に少ないものですから、おっしゃるように、月に一回とかなんとかというふうに回れるような実態にもまだなっておりません。それで補装具の給付とか、いわゆる更生医療とかいうふうな問題については、身体障害者相談員なり、巡回相談のおりなりに、こういう方法がありますということを、身体障害者の人に知らせてあげるというようなことでやっております。ただ問題は、福祉事務所の身体障害関係の人が非常に少ないものですから、せいぜい一人か二人くらいのかっこうでありますので、昨年に身障審議会の意見を取り入れまして、全国に四十三年度三千名の身体障害者相談員というものをつくりました。これは盲とかろうとかそれぞれの身体障害者の中から、いろいろ、何といいますか、世話役をできるような人をお願いいたしまして、そういう人からいろいろ福祉事務所なり身体障害者更生指導所なりのほうに常時連絡をしてもらうというふうなかっこうでやっております。それからホームヘルパーも四十二年度から――四十三年度で三百九十名ほどありますけれども、これも大都市から始めてどんどんふやしていきたい。それらを居宅に対する対策というふうに考えております。
  47. 大橋和孝

    大橋和孝君 特に私は巡回というのが、先ほど申したPRとも関係をするわけでありまして、私自身もその予算を見せてもらって、あまりにも少ないという感じを持っているわけであります。これは予算ができておるときのいまから言ってみても時期おくれかもしれませんけれども、これはひとつ重点的な考え方をもって、収容施設に収容されておる人よりも相当在宅の人が多いわけでありますから、こういう人たちに対して、一月に一回も回れないというような状態では、私は実際さびしい感じがいたします。現場に行きまして、そういう反応が非常にきついと思います。ですからそういうものを受ける側から考えて、そういうものに特に力を入れていただきたい。特に今後そういうところに重点を置いて――大臣も重点を置いてやっていただいておるわけでございまするが、そういうことを特に感じましたので、お願いをしておきたいと思います。  それからいまのお話にも出ておりましたように、専門の医師だとかあるいは看護婦だとか保健婦だとか作業療法士、技能訓練士あるいは理学療法士あるいは視能とか聴能矯正士、言語の治療士だとかあるいは義肢装具技士ですね、そういうような専門の職員がまあ極端に少ないことはわれわれも十分聞かされておるし、見せられておるわけでありますけれども、こういうことに対しては、やっぱりもう、いま少ない少ないと言っている時期ではなくて、これをどうするかということをもっと根本的に考えてもらわなければいかぬ。もちろん考えていただいておると思いますけれども、私はいまの段階では、非常にまあそういうところへ近い込まれてきているんじゃなかろうかと思います。これは私は、どうしても国の責任においてこうしたものを充足できるような計画をすっぱり立ててもらわなかったら、てんで足らないままになっていくと思いますし、いつまでもこういう状態が続けば、やっぱり弱いところにしわ寄せになるということになると思いますから、こういうものに対しての養成計画なんかは立てていただいておるでしょうが、どういうふうになっておるか調べていただいて知らせていただきたい。おそらく現在の足らない数字から言ったら、よほどのことをやらなきゃ、これはもうそこまで引き上げられないという現状です。こういうことを思ったならば、私は現地でそういうことをいろいろ見聞きして、御存じのようにそういうことが十分でないためにそういう施設が焼けて、子供たちが六人も死んでいるというのが大分県にあったわけです。あすこも私行って見せてもらってきました。それはもう二十歳にならぬぐらいの人が、これは連日当直をしておるようなことでは、これはアイロンを消すのもうっかりすることもあり得るでしょう。こういうことは、そういうようなところにしわ寄せになっているから大きな事故が起こってくると私は思うわけでありまして、いろんな現場でいろんな話を聞けば聞くほど、もうこれはほんとうにいまでは何をほっといてもやらなければならぬような現状にきているんじゃないかと、こういうことを思うわけでありますが、こういうことについてのお考えなり、あるいはまた現在の不足の段階からどういうふうにするのかというふうなことも、相当前向き考え方も聞いておいて、そして、まあちょっとタイミングが悪いから、こういう議論を申し上げてもそれが即四十三年度にははね返らぬと思いますけれども、私は何らかの方法考えて、一刻もこれをほっとくことはできないことだと考えますので、ちょっとお聞きしておきたいと思います。
  48. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) PT、OTと申しまするような特殊な医療従事者が非常に不足していることは御指摘のとおりであり、まことに遺憾に存じます。しかしPT、OTのこの制度は、制度としては新しゅうございますので、新しい制度による有資格者はまだきわめて少ないのでございますが、それらの業務に習熟した技術者は相当多うございます。しかし、わが国ではこの制度がおくれたために、現在養成施設はわずかにPTについては六カ所、OTについてはわずか二ヵ所という状況でございまして、しかも国立の清瀬にありますPT、OTの養成所は外人の教授を雇って英語の教科書を使って教育をしているというような、まさに医学の蘭学事始めというような状況にあるわけでございまして、まことにおくれたことは申しわけないと思っております。現在新しい制度による有資格者は理学療法士が四百九十三名、作業療法士が七十二名ということでございまして、これは実際に私どもが一ヵ月幾つかの仮定を用いて計算いたしました実績では、需要量の十数分の一というようなことになろうかと思っております。ただし、実態として相当の経験を持っている人間が多いことはいま申し上げたとおりでございまして、たとえば理学療法士の学校等の養成所は出ておりませんけれども、現実国家試験を受けた人間は第一回の試験で千二百三十七名、第二回の試験でも千四百七十六名というふうになっておりますので、いわゆる有資格ではないけれども経験のある予備軍というものが相当ある。いずれにしろ、こういう全般的にきわめて不足の状況でございますので、将来とも急速にこの養成施設を拡充してまいりたいのでございますけれども、ただいま申し上げましたような事情で、有資格の教師がいないわけでございます。外人を雇ってくるというような状況で、したがって、さしあたっていまわが国の整備された養成施設を出た人間を外国等に留学させまして、そうして国際的な水準における教師の資格を得させる、そういう教師の資格を得た者がだんだんできてまいりますと、国内での養成施設が今度どんどんできていく、そういうような二段がまえの段階で計画中でございます。
  49. 大橋和孝

    大橋和孝君 だいぶずれておりますけれども、二段がまえでやっておる。現場では非常に困っておるという状態で、そういう話を聞いて私は悲観をいたしますけれども、しかし早くそれを進めてもらわぬとどうにもならぬと思いますから、ひとつ二段がまえの段階の階段を早く取ってもらって、早い時期に移っていただきたいと思います。  それから最後に、私ちょっと民間施設について………。いま非常に補助を――これは当然国がやるべきだと思うのでありますが、民間の設備に対してはもう少し予算の助成の面で十分配慮していただかないと私はいけないと思います。特にものを建てるにしても単価が安いだろうし、あるいはまた、いろんなことで民間でやっておる人たちは非常に苦しい状態に追い込まれておる。こういうようなことに対しても根本的にまた考え直してやっていただきたい、こういうように考えます。  最後になるわけでありますが、先ほどもちょっと大臣のほうにお願いをしておいたわけでありますが、この身体障害者というものを考えてみれば百十六万もあるでありましょうし、あるいはまた精神の障害者については百二十何万もあるというような、非常に大きな心身障害の対象者があるわけでありまして、これがいままでいろいろな見地からではありましょうが、ばらばらな向きがある。私はそういう意味で各党がその基本法をつくって、そうして一貫したもののもとに十分これをやっていこうという発案をされておるわけでありますが、こういうことを踏んまえて、どうぞひとつ大臣のほうにおかれましても、そうした事柄を前向きにとらえて、ひとつ先ほどからの御所見にもありましたように、この心身障害者というこういうハンディキャップを受けている人たちをいかに守っていくかという形を、ことに現場のほうにおる人たち、受ける側に立ってひとつ考えていただきたいし、同時にまた、この総合基本法に対しましても、どうぞひとつ厚生省が中に入って労をとって、これをひとつ充実したものにしてもらって、そうしてこれによってきっちりと心身障害者を守っていけるようなことにしてもらいたいと、こういうふうに思うわけでありますが、今後の厚生大臣のお考え――各党でそういうことが盛り上がっているのをひとつまとめていただいて、これをひとつ何とかうまくやっていただけるようなおとりなしもいただきたい、こういうふうに考えるわけであります。御所信を伺って私の質問を終わります。
  50. 園田直

    国務大臣園田直君) 所管大臣としては各党から出される場合に、政府としてそういう基本法的なものを考えるのは当然でありますが、先ほどから申し上げますとおり現実は時間的ななまやしさを許すものではございません。そこで手段とかタイミングとかいうものは抜きにして、手っ取り早い方法でやってもらいたいということで、各党から出されるものを非常に関心を持っておるわけでございまするから、当然自分のやるべきこととして御協力を申し上げたい、こう思っております。
  51. 市川房枝

    市川房枝君 最初に厚生省が監督をしておいでになりまする三悪追放協会について伺いたいと思います。この協会に対しての四十二年度の予算は、補助金としての予算は六千六百七十五万一千円であったと思いますが、四十三年度も補助金が予算に出ているようですが、金額はどれくらいでしょうか。これは大臣でなくて窓口である公衆衛生局長からでもけっこうです。
  52. 高木玄

    政府委員(高木玄君) 四十三年度のこの関係予算も前年度補正後予算と同額の六千二百七万八千円でございます。
  53. 市川房枝

    市川房枝君 これは昨年私の同僚の議員であったかと思いますが、この補助金は毎年続いてお出しになるでしょうかと伺ったときに、そのときの情勢とあるいは運動の成果によって、とお答えがあったかと思うのですが、本年度も引き続いて補助金を御決定になった。その経過といいますか、それを伺いたいと思うのですが、これは厚生大臣から………。
  54. 園田直

    国務大臣園田直君) 三悪追放の性病と麻薬でありますが、これは麻薬については相当効果をあげております。世界各国からも相当驚異の目で見られております。性病のほうは残念ながら非常に蔓延をしております。ただいまのところ非常に苦慮をしているわけでございます。そういうわけで、やはりこの三悪というものは、いまの政治の非常な悪の中心でありますから、ぜひこれは追放していきたい、こういうことで考えておりまして、協会に対する助成についても、それぞれほかのものとにらみ合わして将来やっていきたいと考えております。
  55. 市川房枝

    市川房枝君 四十二年のこの団体の事業の収支予算書をいただいてちょっと拝見をしておるのですが、啓発費、思想普及大会開催費、映画等製作費、広報資料費、資料製作費ということで五千九百十一万円、ほとんど六千万円という金が計上されておるのですが、この会は八月一日から昨年度はスタートしておるので、八ヵ月しかないのですが、これは相当莫大な金だと思うのですが、どういうふうに使われておるか、はなはだ疑問なんですけれども、きょうはそのことは伺いませんけれども、私ども国民としては、これは国民の税金でございますから、最も効果的にこれが使われなければならないという意味において、使い道を心配をしておる一人でございます。この団体については、実は昨年の予算委員会で社会党の瀬谷さんから問題とされて、幾つかの質問がございました。その一つは、ちょうどおりからの東京都知事選挙にこの団体を利用したということが一つと、それからもう一つは、この団体の発起人というのは、ほとんど自民党のえらい方々であって、ほかの党派の方は一人も入っていない。片寄っているということあるいは婦人は一人しか入っていないというような御質問があったのですが、この選挙の問題はあとでちょっと触れますけれども、片寄っているという点については、監督官庁の厚生省としては、その後この団体に対して何か助言といいますか、なすったでしょうか。
  56. 今村譲

    政府委員(今村譲君) この問題この前、いまお話になりましたようないろいろの組織上の問題がございまして、それは会長である菅原さんにそういう問題もあり、これは一つ国民運動というふうにして国庫補助を出すというふうな団体であるからということは、重々申し上げてございます。
  57. 市川房枝

    市川房枝君 実はここに去年の当時の趣意書と、それからさっき厚生省からいただいた趣意書と両方もらっていて、それを比較してみますと、この前は予算委員会で問題になりましたように、ほとんど自民党の人だけですが、最近できたのはちょっと違っているのですね。それは社会党顧問の鈴木茂二郎さんと、前総理の片山哲さんがその発起人の中に入っておるのです。それから婦人がもう一人入っておるのですが、厚生省からおっしゃられなくても、この団体のほうでそういうふうになさったかどうかと思うわけですが、それはまあけっこうだと思います。ただしかし、いま局長もおっしゃいましたけれども、この団体は、創立の趣意書のときにも書いてあるのですが、「婦人団体、青少年団体等を重点に、国民各層に対する広般な社会教育活動等により、全国的にこれら三悪追放の国民運動を大々的に展開し、これを盛りあげて」云々と書いてありますが、国民運動と書いてあります。ところが、国民運動の中心となるべき婦人団体、あるいは青少年団体の関係者というのは、発起人にもちろん入っておりません。女は入っておりますけれども、この人たちは婦人団体と関係のない人たちなんです。それから役員も理事にもそういう人は全然入っていないんですが、それはどうお考えになりますか、その点についての何か注意でもなすったことありますか。
  58. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 実は菅原会長にもそういう点を申し上げて、先ほどのように鈴木先生とか、いろいろな人が若干は入られたわけですが、ただ団体にも私はおそらく一緒におやりになりませんかというお話をなすっていらしゃると思います。ただ、各団体ともそれぞれみんな歴史の古い、矯風会にしても何にしてもいろいろ歴史が古く組織も大きいということで、話がなかなかまとまらないという点があるのかなというふうに思っておりますけれども、ちょっと団体の構成メンバーをどうしてこうしてまで役所のほうから深入りするわけにも参りませんので、一般的にこれは全国的な国民運動としてふさわしいような格好にしていかなければ困るということだけ申し上げて、あれを入れたらどうですか、これを入れたらどうですかというふうな内政干渉みたいなことはちょっとやりにくい状況にありますので、御了承いただきたいと思います。
  59. 市川房枝

    市川房枝君 いまお話のあった婦人団体にも、ちょっと話が来ていることは私も承知しておるのです。ところが初めから相談がないし、それからその話というのもちゃんといろんな運動についての相談をするという形でないので、その団体がそれを受けかねていると、まあこう言っていいかと思うのです。だから、いまの形でいくと私は国民運動にはならぬと、こう言っていいと思うのですけれどもね。それじゃこの団体の目的というか、その目的に賛成して国から、私どもは相当莫大な金だと思うのですが、補助金をお出しになってもその金が生きないんじゃないかと、こう考えるので、それはまあ干渉がましいとおっしゃるかもしれませんが、もっとこれは私は内面指導なり、よくお話し合いになってそういう方向にいくようにしていただきたいと思いますが、大臣は、私いま局長お話し合っている点、どうごらんになりますか。
  60. 園田直

    国務大臣園田直君) 御意見十分わかりますので、そういうことで当事者とも話してみたいと思います。
  61. 市川房枝

    市川房枝君 いま一つ、問題はさっきちょっと申し上げましたが、瀬谷さんがおっしゃった、あの当時の東京都知事選挙に際して、この団体といいましょうか、団体の代表者が、当時の松下候補者の運動に利用したということを国会で問題にされたわけなんですが、まあしかしこれは済んだことですから、いまさら繰り返す必要ないんですが、実はそれに類したようなことがございまして、ちょっと私はこれを心配をするんですが、この会が去年の十一月二十五日に三悪追放中央大会及び大講演会というのを、神田の共立講堂で開かれたことは御存じですね。そこへ実は私、秘書をやりまして、どういうふうに行なわれているかということを、実は見に行って報告を受けたのですが、そのときまあプログラムには名前が出ていなかったのですが、実際には大会当日、これはもうすでに公認を受けて立候補されておりまする、まあお名前は預かっておきますが、某女史が協会の幹事という肩書きであいさつをされたらしい。この方は三悪追放協会の会長の菅原さんが後援会長をしておられるのです。それでそういうことを知っている者から言いますと、まあやっぱり一つの選挙に対する事前運動らしきょうに考えられると、こういうことでありますが、これはどうですか、厚生省からごらんになって差しつかえありませんか。
  62. 今村譲

    政府委員(今村譲君) ちょっとこれはどういうことですか………、大会には実は私もうしろの席のほうに行っておりました。おそらくその司会者とか、あるいはいろいろな方、それはみんな関係団体の人方、あるいは三悪追放協会の関連の人方がそれぞれ大会を運営しておられるものだろうというふうに思っただけで、別にそこまで深い考え――私も詳しいことよく存じませんものですから、知らないで帰ってきたわけですけれども、ちょっとその辺は事務当局としては答弁いたしかねるのじゃないかという気がいたします。
  63. 市川房枝

    市川房枝君 御存じない方といいますか、それはまあ来た人の中にも、それを知らない人はそれは何とも思わないかもしれませんけれども、去年の十一月ですから、まだちょっとときが離れているのですけれども、前にそういうことのあった会長ですから。それで現在、実はその候補予定者の事務所はこの三悪追放の事務所と同じ建物にあるのでございます。というか、後援会長のいる建物と同じところにあるのですが、ですから、いろいろな地方の三悪追放協会の講演会なんかでも、やはりそれらしきことがもし行なわれるとすると、これはやはり問題になると思いますし、これがことに厚生省の外郭団体である、補助金をもらっている団体だとすると、そこは私は問題になるのじゃないかと思うのですけれども、そういうことが問題になってきてからではおそいのであって、監督官庁としてはやはりその点をいまから注意をしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  64. 今村譲

    政府委員(今村譲君) いまの点、今後の問題としまして、おそらく全国的にいろいろなPR活動、大会をなさると思います。それでこの団体ができますそもそもが、いわゆる売春審議会のほうで、国民的な運動としてのりっぱな団体をつくろうじゃないかという審議会の答申があり、それを受けてできたものでありますだけに、いやしくもそういうふうなかっこうに見られるような動きというのは、非常に趣旨に反するのではないかというふうに存じますので、これは厚生省でも、麻薬とか性病とか、関係部局がたくさんありますけれども、そういうところとよく相談いたしまして、さようなことを疑われるだけでもおかしいということを、よく申し伝えたいというふうに考えます。
  65. 市川房枝

    市川房枝君 次は、看護婦に関することをちょっと伺いたいのですが、人事院の方おいでいただいておりましょうか。――国立病院に勤務しておりまする看護婦の方たちの深夜業に対しては、百円の手当といいますかございますね。これはどういう経過で与えられるようになったのでしょうか。
  66. 尾崎朝夷

    政府委員(尾崎朝夷君) 看護婦さんの夜間勤務につきまして、その業務の問題かいろいろございまして、一方におきまして、回数の制限の問題、それから一方において手当の関係ということで、措置を先般昭和四十年でございましたか、行なったわけでございます。この手当は一回について百円ということになっているわけでございますけれども、その算定の根拠といたしましては、民間の病院につきまして、看護婦さん、か夜間勤務をした場合にどの程度の手当が出ているかという関係を調査をいたしまして、それに基づいて算定したものでございます。  こういう関係の特殊勉務手当は、民間の関係では大体あまり高いものではございませんで――一般的な話でございますけれども、大体月当たり七、八百円から千円という感じのものが普通でございます。看護婦さんのこの関係の手当につきましては、当時やや高めに端数整理をしてきめたものでございまして、その後における二回ほどのベースアップのことを勘案しましても、現在それほど不適当だというふうな感じは持っていないわけでございます。  なお、こういう正規の勤務時間が夜間にかかるという陶係の職種としまして、ほかにいろいろございまして、そういう夜間勤務関係は非常に労働がきつうございますし、最近の関係として、だんだんいやがられる仕事になってきておりますから、私どもとしては非常に注意を払ってきているわけでございます。まず御婦人であるということと、それから看護業務がきついという関係で、とりあえずそういう関係の中から看護婦さんを引き抜いて一番最初に措置をしたということでございまして、昨年の勧告におきましては、航空管制、気象、電波、警察等におきます通信関係関連業務の夜間勤務者に対しまして、看護婦さんにバランスをとった手当を勧告をしてつけたということでございます。現在の段階では、一方におきまして、いま申し上げました関係を、さらにほかの職種もございますので、よく精査をいたしまして、この関係ではやはり業務の合理化という関係が先決でございますので、業務の合理化ということを各省庁にお願いしつつ、やむを得ないところは手当で措置していくということで、そういう関係をやはり手当てをしてまいりたいという方向一つございます。それから、いつまでも手当の額がこのままでいいというわけにもまいらないと思いますので、民間の関係におきます水準というものを留意をしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  67. 市川房枝

    市川房枝君 人事院が、この看護婦の夜間勤務について特別に手当を勧告をしてくださったことはありがたいと思いますが、ただ、これは四十年で、もう三年目でございますし、いま看護婦の人たちの実情を聞きますというと、やはり朝帰るとるときに車で帰ったりすると、百円どころか、たくさんかかってしまうので、やはり百円では少な過ぎるといいますか、もう少し上げてほしいという希望もだいぶあるわけです。看護婦全般がいま非常に足りないのですが、足りない一つの原因は、やはり手当が少ないというところにもあるらしいですが、ことに夜間勤務というのはほかの御婦人の職業としてはあまりないので、それが看護婦を忌避する一つの理由でもあるかもしれません。そういう意味で、特にほかのいろいろな男の方々の夜間勤務もありますし、そういう方々に対しても、去年ですか、勧告をしてくださったことはけっこうですけれども、看護婦の場合は特別にひとつお考えくださって、次の機会には何とか少しでも上げてくださるようにお考えいただければありがたいと思いますが、そのお願いだけを申し上げておきたいと思います。
  68. 尾崎朝夷

    政府委員(尾崎朝夷君) 民間の同種手当の関係なども十分留意をしながら、先生の御趣旨につきまして十分考えてまいりたいというふうに考えます。
  69. 市川房枝

    市川房枝君 現在看護婦が非常に足りないということについては、この間、一般質問の石本さんの質問のときにお答えがあったようですが、必要な看護婦は現在何名か、それに対して現在働いている看護婦は何名。それで、その看護婦の内訳は、正看護婦何名、准看護婦何名か、ちょっと伺いたいのです。
  70. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 現在看護婦で実際に働いておりますのは二十四万名程度でございます。私どもが理論的に計算いたしまして一といいますのは、医療法の規定で病院は四ベッドについて一人の看護婦を標準にするという規定がございますので、そういう標準をとりまして計算いたすしますと、現在のところ二万名ちょっとぐらい足りないという計算になろうかと思います。しかし、現在年々相当数がふえてまいりまして、一年に一応一万五千名程度ふえております。しかしまた、病院もふえてまいりますので、一、二年で解消するというわけにいきませんが、四十六年ごろには、およそそういう理論的な必要数というものを充足することができるのではないかと考えております。  なお、看護婦と准看護婦の比率につきましては、現在のところ看護婦が若干多くて准看護婦が若干少ないという段階でございますが、現在年々養成されます数は、准看護婦のほうが看護婦の二倍程度ありますので、近い将来におきましては、准看護婦のほうがかえって多くなってしまうという見通しでございます。したがって、われわれとしては大体半々程度が望ましいと考えておりますので、准看護婦から看護婦への昇格ということをはかりながら、できるだけ半々に近いような体制に持っていきたいと努力いたしております。
  71. 市川房枝

    市川房枝君 看護婦の標準が、程度が低くなることはやはり一般国民としては心配なんで、できるだけ准看護婦を正看護婦といいますか、に引き上げる、半々というお話しでしたけれども、できれば准看をもう少し少なくして正看を多くしていただきたい。これがまあ国民の願いなんですが、准看の養成の機関がだんだんふえていっているようなんですので、お話のようにだんだん准看のほうがいまのままでいけばふえて、正看のほうが少なくなっちゃうというような逆な現象が出てくる。これはまあ非常に私ども心配なんですが、いまちょっとお話にございましたが、准看を正看に引き上げるという方法ですね、厚生省としては具体的な方法をどういうふうにお考えですか。
  72. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 現在いわゆる准看といいますのは中卒二年でございます。普通の正看といいますか、看護婦は高卒三年でございますので、非常に開きがございます。したがって、この格差はかなりのものでございますので、私どもといたしましては、看護婦という業務の性質上、正看護婦のほうが望ましいことは当然でございます。しかし、現在の需給状況から考えまして、准看を一挙に減していくということは、これまた看護体制全般から非常に大きな問題でございます。したがって、現状におきましては、正看それ自体の絶対数を、養成をふやしていくということと同時に、准看から正看に橋渡しをしていくということが必要なわけでございますが、これもただ単に勤務年限が三年、五年ということですぐ看護婦にするということは、これは将来看護婦の資質の低下を招くおそれがございますので、これにつきましては、資質の低下を来たさないということを十分配慮しつつやりたい。したがって、准看が正看になるためのいわゆる進学課程、正規の教育課程をもって橋渡しをしていきたい。そのために最近は進学課程を非常に拡充を急いでおりまして、現在では百二十校にまでなり、その入学定員は三千四百名をこえております。さらにこの勢いを強めまして、将来四千名、五千名程度までふやしていきたい。そういうことにより資質の低下を招かずに、准看護婦からの看護婦への昇格を広げていきたいと考えております。
  73. 市川房枝

    市川房枝君 社会党から法律案が今国会はどうでしたか、先国会に出ておりまして、ちょっとその内容を拝見したのですが、その社会党の案は、准看が就業しながら受験資格を獲得する、正看の国家試験の受験資格を獲得するという案のようであったのですけれども、あの案について厚生省当局としてはどう考えておられますか。
  74. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 就業しながらいろいろな資格要件を満たしていくということは、現実的にはきわめて困難な面が多々ございます。もちろん通信教育というような面もございますが、看護婦の職務の性質上、どうしても通信教育だけではなかなか満足できない面がございます。したがって、相当のスクーリングあるいは実習というものを加味しなければなりませんので、それを普遍的にやろうといたしますと、そういうような比較的短期のスクーリングあるいは実習施設というものを、非常にたくさんほうぼうにつくっていかなければならない。このことは、現実に教師の面、教育側の面、あるいは施設の面等できわめて困難がございます。そういう意味現実的には、考え方としては非常におもしろい考え方だと思いますけれども、実現性についてはかなり困難が多いと思います。同じような考え方が実は日本看護協会からも出ておりますけれども、これも具体的化しようとする段階で、かなり困難が見られております。そういう意味で私どもは現在の段階では働きながら行けるように、夜間課程の進学コースをいま拡充をいたしております。したがって、これも働きながら行けるわけですが、やはり施設の数がなかなか足りませんので、これにさらに補って、何らか一部は通信教育に類するような形、そうして一部は夜間コース、あるいは一部はスクーリングで補うというような多角的な方法で、相当充実した教育ができないかということにつきまして、現在専門家等のお集まりをいただきまして研究中でございます。
  75. 市川房枝

    市川房枝君 准看を正看に引き上げるといいますか、ということについては、国民の立場から、また准看の方々自身がやはり正看になれば待遇もよくなるし、また希望も出てくるし、そういう意味で、できるだけそういうチャンスを与えるといいますか、いま夜間のコースでというお考えは、これもなかなか勤務しながらは困難でしょうけれども、やはり勤務をやめてということになりますと、収入の問題にも関係するし、いま看護婦は足りないのに、やはりやめてということになるとなかなか困難でしょうし、そこは実際問題としていろいろむずかしいでしょうけれども、ひとつ厚生省当局でさらにいい案を考えてくだすって、できるだけ早くそれを実施に、実行に移すように、ひとつお骨折りを願いたいと思います。  次は新生児の問題でちょっと伺いたいと思いますが、国立病院において新生児に対する看護婦の割り当てが全然なかった、患者と認めなかったのだということは、たいへん恥ずかしい話ですが、去年あたりこの問題を取り上げるまで実ははっきりしませんでして、一体そういう状態がいままでほうっておかれたということが、私は実はふしぎに思ったのですが、厚生省当局はそれこそよく御存じであったはずですが、どうしていままでにそういう問題を早く解決ができなかったのか、そのためにつまり妊産婦の死亡も相当多かったようだし、それから出生児の死亡も相当多かったようだし、聞くところによると、それは私立病院側からの反対が強いので、それで厚生省がその反対に押されていままでなさらなかったのだという意見も実は聞いていたのですが、ところが今年度の予算で、これは園田厚生大臣のお骨折りで新生児のための看護婦を何名か採用することができるようになりましたことは、私ども大臣に対して非常に感謝を申し上げているところなんですが、ただ一応予算は通ったといいますか、せんだって私ちょっと予算を伺ったところが、何だかよくわからぬ。何か突っ込みだから計算ができないというような話をちょっと伺ったのですけれども、新生児のための看護婦の増員は何名であって、それに対する予算はどれだけかということを伺いましょうか。
  76. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 国立病院において新生児看護の充実のために、それに向けるべき看護婦の増員分が百十四名ということで、予算は、看護婦全員の総数の中に百十四名を増加いたしましたので、その分を特別に抜き出して予算は計上してございます。
  77. 市川房枝

    市川房枝君 国立病院では一応それだけふえるのですが、大学病院は全然あれは会計が違う、文部省の所管といいますか、違うから、あっちのほうはふえていないのですね。
  78. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 文部省のほうでそのような手当てをしたとは聞いておりません。
  79. 市川房枝

    市川房枝君 そこで、これを一般の国立といいますか、公立あるいは私立の病院にもこれを及ぼしていくためには、やっぱり医療法の施行規則を変えなければいけませんね。これは国会には関係なくて、省のほうでおきめを願えるわけなんですが、これもこの間一般質問のときに、できるだけ早い機会と、たしか大臣おっしゃっていらしたと思うのですが、いつごろになりましょうか。
  80. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 先ほどの御質問の中にも、この施行規則の改正が一部の反対等もあって、なかなかいかぬのじゃないかというお話もございました。実はこの問題を提起されましたのも、民間の団体からの発言でこれが提起されたわけでございますが、したがって一番もとの意見を提起されました団体等に当たりまして、現実の実情の調査をいたしております。産科を標榜しております二千八百の病院について、現実に一体看護体制がどうなっているかという実情を調査しておりまして、そのためにかなり時間がおくれてしまったわけでございまして、一部の反対等のためにおくれているというわけではございません。したがって、その調査もほぼ完了いたしましたので、いま法案の案文作成等を行なっておりますので、これはその検討が済み次第、今度こそほんとうに近い将来に実施できる予定でございます。
  81. 市川房枝

    市川房枝君 その施行規則には、どういう文句で入りますか。そして、いま患者四人に対して一人となっているんですね、それがどういうふうになりますか、大体の文句ですね。もし施行規則の文句をおわかりでしたらちょっと伺いたい。
  82. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 医療法の施行規則で、病院におきましてはおよそ患者四人について一人の看護婦を置くことを標準にするという規定がございます。その際に、従来産科における新生児というものは患者と勘定していなかったわけでございます。したがって、産科における新生児については看護婦を割り当てる基準に入っていなかった。基準に入っていなかったということは、看護婦がついていなかったということとは別でございまして、現実には相当の看護婦がついていたわけでございます。国立病院におきましては、産科におきまして、産婦と新生児の数を合わせて、それに四人に一人以上の看護婦が現実についております。今度調査いたしました結果でも、大多数の病院等におきましても、やはり相当の配慮がなされております。したがって、規則が変わらない前とあとで、現実状態が極端に変わってくるということはないと思いますが、ただ、新生児に看護の割り当てがなかったために、ほかのほうから融通をしてきて現実に新生児の看護に充てていた。したがってある意味ではほかの部門が新生児あるいは産科のためにしわ寄せを食って、標準よりも少なくなるかっこうになっておった。したがって今度の基準を変えますと、そういうしわ寄せが直されて、ほかのほうがいままで割りを食っておったものが回復してもとに返える。しかしそれと同時に、新生児看護は、一般に四対一よりも手がかかりますので、それ以上が必要になってまいります。したがいまして、増加されれば、それだけまた現在よりはかなり厚い看護の体制になるということは予想されるところであります。
  83. 市川房枝

    市川房枝君 その施行規則ができれば、今度はほかの病院もそれに従って看護婦がなるわけですね。特に大臣をわずらわさなくてもと言いましょうか、当然のこととして予算に計上されるわけですね、国立のほうは、あるいは大学のほうも。
  84. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 医療法の施行規則で新生児を看護婦をつける対象に算入いたしますが、これは新生児部門に何名、内科に何名、外科に何名と診療科別あるいは病棟別に看護婦の標準をきめておるわけではございませんで、病院全体として一括しております。したがって現在でも標準よりもかなり多数の看護婦を持っているところも多多ございます。もちろん足らぬ面もございます。したがって相当たくさん持っている看護婦を、現在の機構の標準よりたくさん看護婦を置いて、そうして現に新生児看護等にも相当の手当てをしておるところにおいては、今度の規則改正によって特別な新たなことをやる必要もないというものも多々あろうと思います。もちろん、いままで不十分なところは、今度の改正によりましてりっぱな体制に持っていっていただくということは当然であります。
  85. 市川房枝

    市川房枝君 次は赤ん坊の死産の問題なんですが、いまの新生児の問題のときにあわせて提起されたことですが、病院では、七日以内に死亡すると、それは死産の数に入れて、乳幼児の中には加えない、それで乳幼児の死亡率というものを計算するときに非常に死亡率が低くなるわけです。実際上は乳幼児の死亡率は日本は相当高いところらしいのですが、それが実際よりも低く表には出ておるということは、一方から言えばうそなんであって、一体そういうことがあっていいのか、これも実は私個人にとっては驚きの一つだったのですが、これはもう政府のほうの統計からでなくて、目黒の保健所長さんが自分でだいぶお調べになった結果を私どもが伺ったのですけれども、そういう事実を厚生省当局はお認めになりますかどうか。
  86. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 統計の数字のことでございますので、私から説明されていただきます。  御指摘のように、わが国の乳児の死亡というものはかなりの水準にありまして、欧米先進国と肩を並べてと言っても過言ではないのであります。ただ、この数字の中身の問題でございますが、いろいろと先生の御指摘のような御批判もございます。しかし、この統計のできる道筋を申しますというと、まず届け出人のほうに、戸籍法に基づきまして届け出していただくという手続が要るわけでございます。したがいまして、少なくともこの届け出に基づきまして資料をいただきますというと、そのあとは私どもいやしくも間違いがないように期して努力しておるつもりでございます。たしか目黒の保健所長さんの御指摘になりましたような、そういったような事実は、私どもとしてもあり得ることではないかというふうに考えております。と申しますのが、これはやはり何と申しますか、届け出られる方の親御さんのほうのいわゆる戸籍面に対する考慮と申しますか、そういったようなことなども十分に考えられますので、まあそのようなことがあるかとも存じます。しかしながら、やはりこれは問題でございますので、十分関係のほうにも正しく届けていただくようにということでもって指導してもいますし、今後も指導したい、このように考えております。
  87. 市川房枝

    市川房枝君 そのことを厚生省のどなたかに私ちょっと伺いましたときに、それは日本ばかりじゃないのだ、ほかの国にもそういう例があるのだ、そこで、いわゆるこういう乳幼児の死亡率なんか扱っておるWHOのほうで、乳児の死亡率の統計のとり方について、何か協定を結ぶとかしたとかなんとかいうことをちょっと伺ったんですが、それだけではちょっと私納得いかないのですが、そういうことありますか。
  88. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) これはやはり世界的にもこういった問題があるようでございまして、そういったことに対する考慮を現になしておる国もございます。たとえばフランスでございますが、フランスにおきましては、生後五日間の死亡につきましては、これは死産で届けてもあるいは死亡で届けても、どちらでもいいといったような扱いをしております。また先生御案内のとおりWHOでは、この問題はやはり重大な問題であるというので、第八回の国際傷病死因分類表の改正におきまして、その中でこの点を特に改正一つの主眼にいたしまして、周産期死亡、お産の時期をめぐる死亡という一つの指標を出すことにいたしました。周産期死亡と申しますのは、妊娠八ヵ月以降の死産それから生後一週間以内の死亡、いわゆる新生児死亡でございます、一週間以内でございます。この両方を含めまして、そして出産の千に対する比率で見ていくということで、先生の御指摘のような御懸念は、数字の上からはなくなってきた、お産の時期をめぐってのそういった死亡を、死産といわず新生児死亡といわずとらえまして、誤りなきを期して対世の参考にしたいということで、すでにこの一月一日から日本もこれに参与いたしまして、実施をいたしております。
  89. 市川房枝

    市川房枝君 次に売春婦の保護更生の問題について伺いたいと思います。  厚生省では、いわゆる婦人の保護施設所管をしておいでになって、そして各県にある公立あるいは私立の保護施設に対して補助をしておいでになるわけなんですが、その実際の定員よりも、非常に収容者の数が低いということですね。これはだんだんだんだん収容率が低くなってくるという傾向ですか。そのことを最初に伺いたい。
  90. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 実は私、個人的なことでありますが、売春法ができる寸前まで生活課長でしたので、売春の施設関係を担当しておりました。あれから見ますと、確かに何といいますか、収容率も落ちております。ということは、あの当時、売春関係の法律をつくるのだということで、非常にいろいろ世上にも問題になりまして、どんどんいろいろあった公娼を廃止すると、公娼といいますか、赤線をつぶすとかいう状況でございましたが、最近は、施設はなるほど三十二年発足当時五十五でありましたが、現在六十四でありますから、ふえておりますし、三十二年当時千八百八十五名の定員が、定員としては二千三百ということで、必要がある時期がございまして、とにかく五百名ふえております。しかし問題は、何と申しますか、あの当時でも、非常に健康で、売春関係で警察につかまる、保護施設に入るという人がたくさんおりましたが、どんどん回転が早かった。最近は、なかなか、知能程度が非常に悪いとか、あるいはからだがもうがたがたになってどうにもならぬというふうな人が非常にふえてまいりまして、生活指導訓練をすれば、りっぱに更生ができるというような簡単な人が少なくなってきた。そういう人はどんどん出ていってしまうというような状況でございまして、収容率は、三十二年当時定員に対して七五%、それが大体五五%、半分ちょっとというふうなかっこうになってまいりました。これはやはり施設そのものが使命を果たしたという……、どんどん減る一方だとは私見ておりませんが、やはりこの施設の対象で、そういう知能程度の低い者、あるいは非常に病弱な者というような者とかも収容しなけれ、はならないし、それから、一ぺん毎期間であれ生活指導訓練とかなんとかして、また社会に復帰してもらうという人も収容しなければならぬので、その辺は施設ごとに、ただ漫然とじゃなしに分類して、それぞれの人々、婦人を入れて更生させていくというかっこうにしなければならぬ。先生のおっしゃるのは、これはなくなっちゃうのじゃないかということだと思いますが、そうはならぬだろうと私は思っております。
  91. 市川房枝

    市川房枝君 その収容者がだん、だん少なくなるもの、だから、しかし職員は一応きまっただけいらっしゃいますね。そこで、私ども地方の施設を見に参りますが、入っている女の人は少ないけれども、職員だけ何人もいて遊んでいる。全くもったいない。税金のむだ使いがされておるという感じが強くするのですが、そういう非難がある。大蔵省も実際には収容率が少ないもんだから、予算をどんどん減らしてくるのですね、定員はあっても。そこで、女の人で困っている人ならだれでも入れていいじゃないかという一つの方針を厚生省がおとりになって、それは売春の防止をすることと、おそれがあるということをくっつければ、若い人ならだれでもくっつくでしょうから、そういう方針でやっておいでになるというようなことも聞いたことがあるのですけれども、それはどうなんですか。
  92. 今村譲

    政府委員(今村譲君) お答え申し上げます。  売春法発足当時でも、やはり現実に売春の経験ある者というのは、大体五割あるいは五割五分がやっとというかっこうでありまして、現実に四十一年度の統計では、相談所に来る人の三割四分くらいが経験があり、それ以外の人の六割六分くらいが、ほっておけばそういう危険性が非常に強い。この辺は紙一重でありまして、あなたは売春歴がないから入れないというわけにもまいらない、その辺が非常にむずかしいのじゃないか。施設でも、なるほど経歴ありという人が四十二年度で三一%ぐらい、もとは四三、四%くらいあった。それで、ないほうが約七割近いというふうになっておりますが、結局私どもはそういう環境にある人ならば、しかも非常に家庭事情が悪くて、それに近い込まれざるを得ないというふうな心配のある人は、相談してくるならば収容してもいいのじゃないか、こういうふうな希望です。
  93. 市川房枝

    市川房枝君 さっきの局長お話のように、だんだん固定化してくるといいますか、少し知能指数の低い人たちお話、これも私たちはそのとおりと思いますけれども、分類収容ということは法の上ではございませんね。これは運営の上でおやりになっておると思いますが、各県は幾つもないから分類はできない。大都市では幾つかあるから分類はできますけれども、しかし実際東京なんかの実情を見ますと、必ずしも分類が画然とされているわけではないみたいですしね。いわゆる精薄というような人たちは、あそこから出してかにたの精薄施設のようなものに収容するほうが適当じゃないのかというふうに思うのですがどうですか。かにたのような施設をお考えになっていますか。
  94. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 実はおっしゃいますように、東京、大阪とか大きいところでありますと数カ所ありますし、それから分類収容はやはり施設のあれからすると本筋でございます。しかしこれは行政上の措置でできるわけでございます。ただその施設の新生寮にしましても慈愛寮にしましても、職員なり寮長なりの何といいますか人柄、経験から見てどれが適当かというふうに割り振ってみて人を送り込んでいくということはできると思います。やはり千葉の館山にありますかにたのようなものが関西方面にも一つ要る。ところが各県に一つはとてもできるものじゃないということで、将来精薄の非常に重いもので転落した人というふうなものを地域的につくっていきたい、こういうふうに考えております。
  95. 市川房枝

    市川房枝君 売春婦あるいはおそれのある人たちに対する更生の制度といいますか方策は、これは売春防止法を制定したときはよく御承知だとおっしゃいましたが、もう十二年になりますね。それからそのまま継承してきているわけですね。それで世の中はずいぶん変わってきているというか、あるいは売春の問題の様相もずいぶん変わってきているので、私は何とかもう一ぺん再検討してもらいたい。そうしてほんとうに税金が生きるようにというか、あるいは法の目的を達するように、もう十年以上もたってそのままという法はないと思うのですけれども、厚生省どうですか。
  96. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 非常におしかりをいただいたわけですが、社会福祉事業というのは組織制度じゃなく、結局一人対一人の問題だと思うのでございます。従来のように、ほんとうの社会事業家が一人一人の心をつかまえてというかつこうでいくように、それぞれの分野では努力いたしておりますけれども、ただしかし重度精薄児のように相当長期というのは、わりあい簡単に金さえ出せばできるのでございますが、千差万別の家庭環境の人たちの気持ちをどう引き立てるかということについては、先生おっしゃるように十二年たったからということは、救世軍にしてもどれくらいたっておりますか、私どもいろいろ考えますけれども、なかなか名案がなくて悩んでおるという状況のようでございます。その一つ方法としまして分類収容して、傷か浅い人で早く社会に出られる人は、そっちはそっちで固める、あるいは重い人は相当長期に収容するというのも一つ方法だと思っておりますが、そのケースワークのテクニックといいますか、技術といいますか、ただ施設環境をよくし、めし代をよくしということだけでは結論がつきませんので、いまし、ばらく先ほど先生おっしゃいますように研究さしていただきたいと思います。
  97. 市川房枝

    市川房枝君 厚生省には法律のできたころから売春対策推進委員というのがありましたね。これは法によらないのですけれども、何人かの方が推進委員として厚生省においでになる。これはいまどんなことをやっていられるのですか、どのくらい会合するのですか。
  98. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 三十二年に閣議決定でこういうものを厚生省にひとつつくって、これは法的な組織ではないですが、一つの大きな国民運動であるから、そこでいろいろ知恵を出してもらって、厚生省ばかりではありません、法務、文部、一連の知恵を貸してもらおうじゃないかということで三十二年七月にできました。それから大体毎年多いときあり、少ないときもありましたが、大体十回前後集まっております。厚生省の中に集まりまして、必要に応じては文部省、労働省とか来てもらってやっております。そういうふうな状況であります。
  99. 市川房枝

    市川房枝君 これは大臣にお伺いしますけれども、売春対策推進委員について閣議決定がせっかくあっても、四人か五人が初めから同じ人です。それでマンネリといいますか、私どもはそこで一体何をやってどういうことになったのか、一向聞いたことないのですが、ですから少なくとも少し新しい人を――こういう人をやめてもらうわけにいかないとすれば新しい人を加えて、そしていまの実情に適するような新しい意見といいますか、そしてい吏局長もおっしゃいましたいまの構成に対してもう一ぺん再検討をする、そういうことも、そういうところから意見を出してもらう、そういうようなふうに少し機会といいますか、それはどうでしょうか、厚生大臣
  100. 園田直

    国務大臣園田直君) 政府の方針として売春対策推進委員、こういうものの再検討がなければならぬのでございますから、削減すべきであるか、改組すべきものであるか、あるいは必要あればいまおっしゃったような人員の交流とか、そういう点について検討したいと思います。
  101. 市川房枝

    市川房枝君 もう一つ厚生省に伺いたいのですが、婦人相談員に対して今年度の予算で少し手当が上がりましたね。これは七・九%ですか、公務員のべースアップと同じに上がったのですが、これはそうすると、今後は婦人相談員の手当も毎年のベースアップと同じようにずっと上げていってくださるおつもりでしょうか、どうでしょうか。
  102. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 私も、会同四百七十五名、非常に苦労しておられますので、給与問題は非常に神経質になっているわけでございますが、ことしは公務員と同じきちっと七・九というふうに上げてもらいましたので、今後ともという気持ちでおります。
  103. 市川房枝

    市川房枝君 次に、ちょっと性病のことで一つだけ質問して終りたいと思いますが、性病予防法が改正をされたのですが、その結果、一体、少しはよくなりましたかどうですか。
  104. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) ただいまのお話のように、性病予防法が昭和四十一年に改正になりまして、この新しい改正に基づきまして十月から性病の対策を実施いたしました。その中で特に強調されますのは、御承知のとおり結婚のときに性病の健康診断を受けるような指導。それから妊娠をしたときに性病の健康診断を受けるというようなのが、大きな改正点であると存じます。この数字を申し上げますと、法改正の年の十月から翌年の三月まで約六ヵ月間でございますが、婚姻の対象が半年で約九十万という計算をいたしました。これは一年に直しますと百八十万人になるわけでございますので、六ヵ月ということで半分の九十万という計算をいたしました。この半年間に婚姻ということで健康診断を受た数が七万六千名おりまして、比率にいたしますと約九%でございます。それから妊婦の健康診断でございますが、一応半年で前と同じような計算をいたしまして、七十五万人対象があるという見込みをいたしまして、これに対して半年間で受けましたのが二十二万六千人ございます。比率にいたしますと約三〇%ということになるわけでございます。私どももせっかく法律の改正をいたしましたし、当初においては法の趣旨が十分徹底していない、こういうふうなきらいもあったのでございますが、今後十分この法の精神が生かされるような、そういう努力をしてまいりたいと、こう考えます。
  105. 市川房枝

    市川房枝君 妊産婦のほうも少し率を一〇〇%ぐらいやってほしいのですが、結婚のほうが九%ぐらいというのは非常に少ないのですが、これは啓発が少し足りないといいますか、これこそ三悪追放協会のほうで宣伝をさしておられますか、やっておられますか、ちょっと聞いておきたいのですが。
  106. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 先ほど社会局長が御説明申し上げましたとおり三悪追放協会の目的一つに性病がございまして、特に最近の潜行的な性病の蔓延状態に対しては、大いに力を入れるというような趣旨から、この協会に対する私どもの期待というのは、一般的な啓蒙宣伝を大いにやっていただくということで、私どもが受け持っております予算の中では、特に性病予防の普及啓蒙というふうなことを中心に協会にお願いいたしております。こういうわけであります。
  107. 市川房枝

    市川房枝君 しかし、あまり効果があがってないというようなので、何とかこれはひとつ結婚のほうは、それこそ一番基本ですから宣伝をお願いいたしたい。  どうもありがとうございました。私の質問は終わります。     ―――――――――――――
  108. 船田譲

    ○副主査船田譲君) 分科担当委員異動について報告いたします。  本日大橋和孝君、柳岡秋夫君が委員を辞任され、その補欠として瀬谷英行君、小野明君が選任されました。     ―――――――――――――
  109. 船田譲

    ○副主査船田譲君) 他に御意見がある方もあろうかと存じますが、午後二時まで休憩いたします。    午後一時二分休憩      ―――――・―――――    午後二時十四分開会
  110. 船田譲

    ○副主査船田譲君) ただいまから予算委員会第四分科会を再開いたします。  昭和四十三年度総予算厚生省所管を議題といたし、午前に引き続き質疑を行ないます。  質議のある方は、順次御発言願います。
  111. 田中寿美子

    田中寿美子君 私まず第一に、社会保障ということをどういうふうに理解するかという基本的な理念について、大臣の御意見を伺いたいと思うのです。  私は、私ども日本というこの資本主義の国の中でできる、いま現町点でできることというようなことについては厚生省方々厚生大臣考えていらっしゃることと立場がそんなに違うことはないだろう。ことに国民福祉社会保障考えておる立場というものは同じ立場に立つものだろうと思うわけなんです。ですけれども、根本的な考え方には、だいぶ違いがあるんじゃないかというふうに考えます。  で、まず社会保障というのを、私は完全な形の社会保障というのは国民の生存権、まず労働権が保障されているということが前提条件だと思う。だれもみんな.仕事が与えられて、そうしてその持っているところの仕事で最低生活ができる、つまり最低賃金制なんかがあってきちっと生活ができる、そういうことが前提になっていないと、今度労働が不能になったときの所得とか、あるいは不時の災害があったとか、あるいは老齢になってしまったとか、そういうときの保障がかりにあったとしても、健康で働ける者の条件が守られていなかったら、これは水がざるから漏ると同じようなことになりますから、まず第一番にその労働権、生活権というものが保障されていなければならない。その保障の上に立って不幸に、あるいは災害に対しての保障をしていく、こういうことだろうと思うのです。そうしますと、それでも私はほんとう社会保障というのは働く者が、労働する者が労働して生み出したものが全部働く人のもとに戻っていく、還元されていくというのが、一番ほんとうの徹底した社会保障だと考えるのですけれども、それは資本主義社会では無理な話で、資本というのは利潤を必ず持つものですから、利潤の部分はのけておいて、そうして働く者が得た所得の間に格差がある、その格差があるのを縮めていく、それから貧困が起こる、災害が起こる、そういうときの保障をしていくという意味所得を再配分するのだ、こういうふうに考えておるわけなんですが、そういう意味考えた場合にも二通りあると思うのです。一つはいわゆる福祉国家と言われているような国がやっておりますように、その所得にいろいろ格差があるけれども、一方税金で累進的に非常に収入の多い者には高い税金をかけていって、そうして累進課税で徴収したものを、できるだけ再配分していってその格差をなるたけ縮めようとするやり方、ですからそういう場合は、たとえば北欧のいわゆる福祉国家と呼、ばれている国あるいはニュージーランドだとか、そういう国々では私はいわゆる拠出制度よりは無拠出制度保障制度よりは社会保険制度のほうに向かっていっていると思うんです。それからもう一つのやり方は、フランスなんかがやっているようなあるいはイギリスがまあ両方併用しているわけですけれども、保険を主としてやっていくというやり方があると思うんです。で、日本の場合一体どっちをとるべきだというふうにお考えになっていらっしゃるのか、そのところからお伺いしたいと思います。
  112. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの御意見のとおりに、社会保障の基本的なものの考え方は、先生の御意見のとおり一致すると存じます。憲法に規定してある国民の生存権、生活権というものを保障するということであって、ただ現実としては健康な者の生存権の保障ということに手が回らないで、不幸な者に対するささえという点が現実の重点になっておって、それさえもまだ十分手が回ってないというのが現状であります。そこで保険、年金というものはこの社会保障制度の二つの手段、柱と考えているわけでありますが、当然理想としてはこれは保障でありますが、日本現状においては、やはり社会保障の二つの柱には保険と年金を考えなければならない実情であります。このように理解いたしております。
  113. 田中寿美子

    田中寿美子君 それはまあ当然そうだと思うんですけれども、最近社会保障よりは社会保険のほうへという傾向が出てきているし、またそのようなことば大臣も言われるし、総理も言っていらっしゃるように思うんですが、それはどういうことですか。
  114. 園田直

    国務大臣園田直君) 保障から保険へということは……。いまの御意見は、たとえば負担の問題とかあるいは給付の率とかいう問題からどうも保障からだんだん後退していって、そうして保険のほうに切りかえていくんじゃないかという御意見のように聞きますが、必ずしもわれわれそうは考えていないので、やはり逐次関係者の一部負担というふうなものもだんだんはずしていって社会保障理想に近づきたいと思っているが、国家財政現実上、やむを得ずそういうものの制度を破壊しないようにするために、やむを得ずそういうことも、というようなものの考え方で言っているわけでございますが、ことばづかいにまあ誤解を受ける点もあったかと思いますが、決してものの考え方がそういうふうに変わっているわけじゃございません。
  115. 田中寿美子

    田中寿美子君 私まあ厚生省はやはりそういう点ではほんとうに遠い見通しを失わないでほしいというふうに思うんです。それで、特に四十三年度予算はいわゆる財政硬直化ということを非常に掲げているわけなんですけれども、そうなった理由のほうは省きまして、財政制度審議会の意見が非常に多く取り入れられているわけですね。財政制度審議会で社会保障に関していろいろと建言していますが、その中でたとえば日本社会保障というのは何でもかんでも出そろってしまった、戦後無秩序に取り入れてしまっている。その中で医療保障がやたらに過重になってしまって医療保障に使う費用が、国庫負担率がもう非常に高い。で、そのほかの年金その他のほうがおくれているから、その進んだほうを少しストップさせてバランスをとれというような考え方が出ているわけですね。これは財政の面から医療保険なんかで赤字が出ているということから、そっちは保険料の徴収のほうにもつとウエートをかけていってそしてバランスをとれというのは、いかに進んだほうを引き下げていって、そしてうんとおくれている年金だとか、まだ児童手当なんていうのは全然ないわけですが、そういったほかの面を引き上げようというような考え方があると思うんですけれども、厚生省はやっぱりその立場に立って考えていらっしゃるんでしょうか。
  116. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの問題は、現実の問題としては差はないかもしれませんが、理論的に非常に大きな差があるのです。財政制度審議会の御意見というものは、どうも私から言わせれば社会保障制度福祉施設というものを、戦前の民生安定という治安対策の一部に考えておるかあるいは慈善事業だと考えておるというような、いわゆる新憲法下における社会保障制度というものに対する本質的な理解がないために出てくることばであって、国家財政の余裕の中に社会保障をつくれということであって、新憲法下社会保障というものはそうじやなくて、憲法で規定された国民権利である、政府としてはこれを保障しなければならぬ義務があるという観点から――ただし現実政策には財源が要ることでありますから、そのやり方が国家財政を崩壊するということではあしたから困りまするから、国家財政は無視してはならぬけれども、やはり社会保障制度目的を達成するということが重点であって国家財政考えなければならぬということであって、国家財政のワクの中でやれという考え方は、私としては納得できません。
  117. 田中寿美子

    田中寿美子君 財政当局はどうしても財政中心主義になると思うんです。それに対してやっぱり厚生省が抵抗していただかなければ、社会保障を進めることができないと思います。ただし財政を破壊するというこの考え方ですけれども、私は財政の立て方そのものにも問題があるのだと思うんです。ですから、厚生省厚生省の立場から十分主張なすっていいのではないかと考えておりますが、いかがですか。
  118. 園田直

    国務大臣園田直君) それは御指摘のとおりだと考えます。なるべく主張するように努力したいと思います。
  119. 田中寿美子

    田中寿美子君 それでは、医療保険の給付率を引き下げる方向に向かうのじゃないかという気がしますが、どうですか。これは国民健康保険の七〇%のほうに向かって、いま健康保険の本人一〇〇%、これをそっちのほうに向けていくという姿勢じゃないですか。
  120. 梅本純正

    政府委員梅本純正君) おっしゃっていることは、医療保険抜本改正事務当局試案の点を御指摘だと思いますけれども、一応事務当局試案といたしましては、現在の国庫負担その他たとえば国民健康保険でございますと四割五分、日雇い保険は三割五分、それから去年の夏の臨時国会で政府管掌の健康保険につきましては保険料の千分の七十というふうにおきめ願いましたので、その財源としての前提を一つ置きまして、その中で今後の一つ方向としまして、抜本改正一つの目標でございます保険料負担の均衡をとる。それから給付の割合についてはいろいろ、各制度によりましてばらばらでございます。現在の健康保険につきましては家族は五割給付でございます。ところが国民健康保険は本年に入りまして世帯主、世帯員とも七割になったわけでございますが、そういう点で給付割合も均衡をとるという考え方をとったわけでございます。そういう意味におきまして、あの試案考えました考え方といたしましては、やはり与えられた一定の財源を前提にしまして、考え方としましては、できるだけ重い長い病気に重点的に医療費が回るようにという考え方一つと、それから最近の人口構造の変化、今後の人口構成の移り行きというふうな点から、生計中心者といいますか、働き手いわゆる先生のおっしゃった経済の再生産構造の中で働いておられる中心者、それに中心を置きまして、生計中心者というものを置いたわけでございます。そうしまして結局生計中心者の入院、いわゆる重いむずかしい病気というものを十割に置きまして、そしてあと給付割合の均衡をとる。したがって被用者保険の家族を七割に引き上げて、そして本人を十割給付というものを三割に引き下げた、こういう結果になったわけであります。しかし、われわれのほうで考えておりますのは、先ほど社会保障か社会保険かという話も出ましたが、医療関係につきましては、いわゆる.医療の定義がございましょうが、医療保障的な方法医療保険との併用といいますか、併用でいくのが妥当だというふうに事務当局考えております。したがって、あの試案でも書いておりますように、公費負担医療というものを十分今後従来よりも充実していくという考え方一つでございます。この公費負担医療を、医療保障的というふうに定義づければ医療保障的でございます。従来からの医療保険というものは保険方式でいく。そして十分に従来に比して公費負担医療を充実さして、公費負担医療医療保険とをあわせまして、むずかしい、そして長期療養を要するというような疾病のものにつきましては、実質十割給付に近い形をとっていったらどうかということでございまして、従来のように――率直に申しますと、本人十割ということにつきまして、私たちは一方、世間から非常に非難を受けている問題がございます。これは十割給付ということですと、現象形態としてただの医療になるということで、そういうことで相当の所得のある方でも非常に簡単な病気を安易に受けて、いわゆる医療費のむだがあるのじゃなかろうかというふうな非難もありますので、医療保険の部面は一応本人につきましては給付率を一歩後退さしておいて、そして低所得者でありますとか、あるいは長期療養者、それからまた社会公共的に取り上げなければならぬ公費負担医療――結核、精神、重症心身障害児、あるいは身体障害者というふうなものは、公費負担医療医療保険等をあわせまして、十分な医療が施されるように、そういうふうに考えております。
  121. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、国庫の.医療保障的な負担というのは減らされていくという傾向ではないのかどうかということ。  それから財政制度審議会の答申ですか、建議の中にあるように、いわゆる応能主義という考え方ですね。応益主義や応能主義ということを言っておりますね。応益というのは、病気なんかは受益じゃないと思っております。これは災害と同じような一種の災害補償というふうに考えるべきだと思っておりますけれども。もう一つ応能主義という考え方がこれには出ておりますね。つまり保険料をちゃんと能力に応じてもっと高く、上限を高くしていくべきだという考えだと思います。そういうことはどうお考えですか。
  122. 梅本純正

    政府委員梅本純正君) おっしゃるとおり、今回の事務当局試案につきましては、応能主義ということを従来よりもはっきり出しております。特に国民健康保険につきましては、御承知のように応能、応益、いろいろのむずかしいとり方をしておりますけれども、一応考え方としましては、試案としては、応能主義一本に考えております。そうしてそのほかに、やはり現在の制度が、被用者保険につきましては標準報酬制度をとっておりますので、三十六等級に分けておりますが、標準報酬制度の上に料率をかけていく。それとともにあの試案におきましては、今度は健康保険組合、そういうふうな一つのグループごとの財政調整を考えておりまして、いわゆる標準報酬の高い組合につきましては、その高い分だけ、非常に標準報酬の低い人だけでつくっておる保険グループというところに金を応援する。応援するときに国庫負担を半分つける、こういうふうな形で、おっしゃいました応能主義というのは、実質的には保険料の部面とプールと、両方の点につきまして実現をしていきたいという考え方でございます。
  123. 田中寿美子

    田中寿美子君 応能主義というのをもし非常に徹底させようとすると、これは保険料というのはよほど報酬の高い人――非常に高くなっていかざるを得ないのですね。私は社会保障の観念の中に応益主義とか応能主義というのは、理想から言えばほんとうは正しくないと思っているのですが、たとえばスエーデンなんかは医療保険と保障ともちろん両方併用していますけれども、保険料は全部一率ですね。一人二百円くらいです。そうして未成年者とかそれから収入のない者は、均等割りなんというのは全然ありませんですね。ですから、いわゆる生計費の調査なんかなしにしてある。そのかわり別にあれは社会保障税をとっておりますわけで、だから年金も無拠出制になっているわけですね。だから能力のない者は何にも出さないでももらえるし、それから金持ちの者でも貧富の差なく一律にもらえる、しかし税金のほうで累進をしている、こういうやり方で、福祉国家としてはわりあいに完全なやり方になっているわけなんですが、応能主義とか応益主義ということを言い出しますと、これを徹底させようとすると非常に今度はまたおかしなことになりはしないか。その辺で社会保障のあり方、あるいは社会福祉のあり方というものについてはちょっと中途半端じゃないかという感じがするのですけれども、いかがでしょうか。
  124. 梅本純正

    政府委員梅本純正君) 社会福祉関係はちょっと私の分野でございませんが、医療保険につきましては、先生のおっしゃるようなフラットで保険料をとるという方法もいろいろございます。しかし、健康保険制度ができましてから四十年間の歴史を持っておりまして、一応各制度各国に比べまして非常に数が少なくわかりやすい制度でございますが、それも一本でなくて八つくらいの制度に分かれております。しかし、四十年の歴史を持っておりまして、一応徹底しました考えですと、総報酬制にして料率をかけるということであれば完全に応能主義が徹底するわけでございますが、一応標準報酬制をとり、また一方におきまして組合というものの自主的運営を認めておるということで、応能主義という観点から見ますと非常に緩和した形で現在進んできております。したがいまして、いろいろ先生のおっしゃるような議論も専門家の間でございますけれども、われわれの現在意図しております試案におきましては、やはりできるだけ歴史と沿革を持ってきたそういう制度を生かしながら、よほど医療面その他にプラスがあるならば別としまして、やはりできるだけいままでの考え方で、別に主義を徹底するとかいう形じゃなくて、現在やってきました制度のいいところをできるだけ生かすということと、保険料負担においても、どの制度に分かれておってもやはり同じような所得の方は同じような保険料負担をする、こういうことをいたしたわけでご、ざいまして、あまり一定の考え方で割り切ったということじゃなくて、できるだけ現状制度を生かしながら是正していくという考え方をとったわけでございます。
  125. 田中寿美子

    田中寿美子君 確かに日本社会保障というのは、一ぺんに無秩序にぱっと間口を広げてしまったために、いまそれを整理するということは非常に困難なことで、たいへんだということはよくわかるのですけれども、何となく、特に四十三年度の予算から財政硬直化ということがいわれ、そうして応能主義、応益主義あるいは受益者負担ということばが盛んに使われて、社会保障の転換期みたいな感じを受けるものですから、これは大臣社会保障というのは硬直化の原因になるものではないというふうに考えていただきたいのですけれども、社会保障費を増額するということは、むしろそれは社会保障制度審議会がいっているように、購買力をふやして景気調整の役に立つ消費需要を喚起するのだというような考え方をどこまでも貫いていただきたいのですが、いかがですか。
  126. 園田直

    国務大臣園田直君) ことしというわけじゃありませんが、社会保障制度についての一つの転換期というか、現実にはまちまちに出てきて、看板だけそろえた社会保障各種制度を、体系つくって、これを総合的な立場から確立をしなきゃならぬ時期がほんとうの転換期だと思いますが、また一面には財政からくる問題で、社会保障制度が、ここで考え直さなければ、英国その他のごとくとんでもないことになるという意見があることも事実でございます。しかし、私はやはり社会保障制度というものは、そういう観点からくるものではなくて、ここで総合的な体系的なものをつくって、新たに充実整備の方向へ前進しなきゃならぬということは御指摘のとおりに考えております。
  127. 田中寿美子

    田中寿美子君 時間を倹約するために、あまりこういう議論はあれしておきまして、家庭と児童の福祉の問題のほうに入りたいと思うのですが、これもたいへん衆議院の予算委員会でも問題になりました児童手当のことなんです。社会保障の重要な柱の一つとして児当手当が考えられているわけですね。ところが、衆議院の予算委員会での質疑の中にあったことばであったかどうか、ちょっと私記憾ありませんけれども、何か総理のことばの中に、日本社会保障は救貧として出てきたものであるから、体系的に言って児童手当というのはそぐわないものであるというようなことばがあるのですがね。これはおかしいことばではないか。どこの国でも社会保障制度というのは救貧から始まっているわけですね。英国なんかでも例のプア・ローから始まっている。一番食えない人、行き倒れた人を救うことから始まっているわけなんです。それがほんとうに体系化するときに、一番最初に手をつけるのは児童手当であったり、児童福祉であったりするわけですね。そういう点では非常にその点が欠けていると思うのですけれども、このことをどうお考えになりますか。
  128. 園田直

    国務大臣園田直君) これは当初は救貧からきているのだと思いますけれども、やはり社会保障制度は救貧ではなくて防貧だと思います。なお、先ほどもちょっと言い落としましたが、財政上の見地からいろいろ問題出てまいりますが、私は財政上の見地から社会保障制度を眺める場合には、たとえば一例をあげますると、保険財政が非常に困難になってきたという場合には、給付とか、負担の率を上げて財政の安定をはかるべきではなくて、やはり社会保障制度においても先行投資みたいな、いわゆる病人を減らすとか、あるいは施設を充実することによって、社会保障の金が減っていくような施策をつくるとか、そういうことから財政的な研究をしていかなければならぬのであって、現実にあるものに対してやるべきことを、負担率とか、あるいは給付とかの率を変更してやるべきではない、こう考えております。
  129. 田中寿美子

    田中寿美子君 児童手当について大臣は――まあこれだいぶ問題になって、初めは昭和四十年ごろ厚生省から、もう間もなく児童手当を実現するかのような発言があって、そしてなかなか進まないで、四十三年度からはと言っておりましたが、また延びたわけですね。いよいよ今度は四十四年度から児童手当の実施をしようという気がまえがあるように見えるところもあるのですけれども、それはどうでございますか。
  130. 園田直

    国務大臣園田直君) 児童手当の問題は、いままでも何回も御質問受けたのでありますが、手続上からいえば、懇談会等では意見がまだ出ておらないこともあります。正直に言うと、財政当局と私どもの話し合いがなかなか困難というか、財政当局は、相当これに対しては国家財政上無理だという考え方をまだ持っておられるようで、私どものほうでは、懇談会等の答申等が出てくれば、それをまとめて具体的な折衝に入りたいというわけで、少々おくれているわけでございます。
  131. 田中寿美子

    田中寿美子君 これは非常にたくさんの費用が要るわけですね。かりに一人千円ずつというふうなことにしても何千億という金が要る。そこで、たいへん公約したために責めたてられていらっしゃると思うのですけれども、ところが、児童手当懇談会ですか、あれは去年の暮れにできて、まだ一回しか会合開いてないわけですね。なにか、ことしの予算前にはほとんど目ぼしい進み方はないわけですけれども、どういう進み方でございますか。
  132. 首尾木一

    説明員首尾木一君) 児童手当懇談会につきましては、昨年十一月二十八日に最初の会合を開きまして、その後十二月、一月、二月、三月、三月には二回やりまして、計六回いままで懇談会を開いております。  それで、その間の事情につきまして、非公開で行なっておりまして、内容につきましてはまだ外に御報告する段階でないのでございますけれども、その間児童手当につきまして、中身の問題としまして、たとえば対象児童をどのような範囲で行なうか、あるいは手当の額はどの程度にするか、それから財源の調達はどうするか、それから他の制度との競合をどうするか、あるいは賃金体系との関連をどう考えるかといったような問題につきまして、懇談会の各メンバーの方々がそれぞれ御意見を交換をしておられる、こういうようなことでございます。まだ懇談会としましてまとまった結論といいますか、そういうところに達しておりませんので、できるだけ私ども懇談会の先生方にお願いをいたしまして、なるべく早い機会に御結論をいただきたい、こういうように考えているわけでございます。
  133. 田中寿美子

    田中寿美子君 懇談会の答申を得るということは権威づけることではありますけれども、厚生省の当局としても案があるはずだと思うのです。それで、さっき私ちょっと言い間違いましたけれども、さっきの発言は、大蔵大臣の発言ですね。衆議院の予算委員会で、救貧から発した日本社会保障制度で児童手当は異質のものだというようなこと。これは私はそうでないと思うのですがね。異質だというふうには考えないのですけれども、それは厚生大臣どうお思いになりますか。
  134. 園田直

    国務大臣園田直君) 私も同様に考えております。
  135. 田中寿美子

    田中寿美子君 それで、社会保障制度の体系をちゃんとしてからでないと、いま、たとえば財政当局の言い方、あるいは厚生省でも考えていらっしゃると思うのですが、日本の賃金の中には家族手当があるから、あれがある意味では児童手当的なものじゃないかというようなことを考えて、そういうものもみな勘案した上で社会保障の体系がちゃんとつくられなければ児童手当は考えられないというような、そういうゆうちょうな考え方があるのじゃないですか。
  136. 園田直

    国務大臣園田直君) それは考えておりません。
  137. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうじやない………。それを待っておりますと、いつになってこれが実現するかわからない状況だと思うのです。ですから、財.源を考え出すということは私は、いろいろこれは別の省に関係してきますけれども、できるはずだというふうに思っているのですがね。  大体、児童手当というのは、やはり子供というものをどう考えるかということにあると思うのです。子供は個人的な私物じゃなくて、社会の子供だという考え方に立って、それから子供を持っている家庭と子供を持たない家庭とで、家計に対する圧迫が違ってくる。そうすると、やはりこれは私北欧なんかで、社会保障の勉強に行きましたときに、そういうことを向こうの人たちが言ったのですが、子供があるために家計が圧迫されると、子供に対する精神的にも悪い影響を及ぼす。親子の関係や家族の関係に影響を及ぼす。そういう意味で国は子供を守り、家庭を守る責任があるんだ、こういう考え方に立っているわけなんですけれども、やはり児童手当をするのについては、その考え方が必要じゃないかと思いますが、いかがでございますか。
  138. 園田直

    国務大臣園田直君) 児童手当については、社会保障の中の困った方を保護するという意味よりも、むしろまた別な意味で価値がある。そういう意味で異質だと思いますが、西欧諸国でも、やはり子供というのは次の世紀をになうものだ、だから特別に子供だけは、財政が苦しくても子供ぐらいだけは見ていかなければならぬという気持ちは相当各国とも働いているのでございます。したがって、大蔵大臣の異質だということばに賛成するならば、私はそういう意味においてやはり社会保障制度の中で困った方々だけ、あるいは一部の不幸な人々にだけということではなく、積極的に未来を考えたそういうものに大きく踏み切らなければならない、こういう意味で、児童手当についてはそういう二重の考え方で私は検討いたしたいと思います。
  139. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、児童手当という場合に、大臣は一律無差別に同じ額を、つまり家計調査なんかによって段階をつけたりするべきではないというお考えにお立ちでしょうか。
  140. 園田直

    国務大臣園田直君) 実施する場合にはそのように考えておりません。やはり相手の実情等も考慮して、どういう方にどれくらいの率で手当をつけるかということで、一律にやろうとは考えておりません。
  141. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうですが、私は子供というのは貧富の差なく一律に千円なら千円――、非常に少ないですけれども千円、二千円なら二千円出すべきだというふうに考えているのですが、これは子供に対する影響から考えてもですね。またそれで両親の収入のほうは別な形で、これは社会保障では扱うことはできるはずです。子供は全部無差別にやるべきだと思うのですけれども、ただ財源の観点からそういう考慮を厚生省がしていらっしゃるのかどうか。
  142. 園田直

    国務大臣園田直君) 外国ではほとんど一律にやっているようでございまするし、また児童手当の、先ほど申し上げたような理想からいえば一律にやるのが当然であって、相手の立場を考えてやるのは別個の問題だと思います。いろいろな事務的に難航している点も考えてそれを考慮するか、あるいは思い切って一律にやるか、そこのところはまだ正直には……、重点はやはり一律のほうに重点を置いて、何か加味するかどうかというところでございます。
  143. 田中寿美子

    田中寿美子君 いま日本の人口構成が非常に変わっていきますね、そしてやがて老齢者が非常に多くなって、子供の比率が少なくなっていくような状況なんですが、やはりそういう点から申しますと、政府が人的能力の開発だというようなことを盛んに言うけれども、いま児童を、大事に国が守るという制度をとっておかないと、この点ではあとで困るのじゃないか、これは私は自分たちは人間の生きる権利のほうからものを考えたいと思いますけれども、国家としてはやはりそういう点を考えないわけにいかないだろうと思います。そうすると、やはり子供を社会の子供として守るという、そういう意味で児童手当の制度はなるたけ早く実施しなければならないと思います。で、まあそのめどは大体いつごろとお考えですか。
  144. 園田直

    国務大臣園田直君) いままで見通しをいってだいぶ責められておりまして、大蔵大臣と直接私しょっちゅう話しておりますが、大蔵大臣もなかなか顔を向けてくれませんので、そういうものをそろえて、なるべく大蔵大臣もいやと言えないような態勢をつくりたいと考えておりますので、できるだけ早期にやりたいと考えておりますが、何年何月ごろという見通しを言うことはまことに困難でございます。
  145. 田中寿美子

    田中寿美子君 来年度から一歩でも進めるということにはなれないでしょうか。
  146. 園田直

    国務大臣園田直君) いままで昨年、それから今年、それぞれこの児童手当の調査費というものはつけてありますが、それから一歩でも前進をしていきたいと考えております。
  147. 田中寿美子

    田中寿美子君 もうすでに地方自治体ではいたたまれなくなって実施しているところがあるのですが、非常にわずかなものですけれども、そうして相当制限つきのものであったりしますけれども、国のほうがこれに早く一歩踏み出していただかないとならないと思います。そうしてばらばらになっている社会保障制度を一歩でも調節することはそれはずいぶん時間がかかると思いますので、それをしながらやはりこういうことは早く進めていくように私要望しておきたいと思います。  それから次に保育所の問題をお伺いしたいと思うのですが、全国の保育所の四十二年度の数字を私は持っておりますが、四十三年度は公立、私立幾らになりますか。
  148. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 私どもの持っております資料は四十二年の十一月現在が一番新しいわけでございます。これで全国で保育所が一万二千百三十二、定員が九十七万九千百十、こういうふうな状態でございます。
  149. 田中寿美子

    田中寿美子君 それは私立を含めてですね。
  150. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) さようでございます。
  151. 田中寿美子

    田中寿美子君 四十三年度の予算ではこれが幾らにふえることになっておりますか。
  152. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 四十三年度予算におきましては、四十二年から実は私ども年次計画をもっておりまして、毎年約七百二、三十カ所以上の増設を考えております。それから定員といたしましては約六万名、こういうふうな計画をもっておりますので、先ほど御説明いたしました四十三年の四月現在で先ほどの数字がもう少しふえると思いますので、それにさらに保育所が七百カ所と定員が六万名上乗せする、こういうような状況になると思います。
  153. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまおっしゃったのは、保育所緊急整備五カ年計画というあれですね。これは実際に計画どおり進んでおりますか。
  154. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 大体計画どおりとまではいきませんが、計画の線に沿いまして進んでいると、かように考えております。
  155. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、現在保育にかけている児童の数、それから保育を要する児童の数を、四十三年度で何人と数えていらっしゃいますか。
  156. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 四十二年度からおおむね五年間の計画で保育所に通所させようという計画をもったわけでございますが、そのときの子供の数が約三十万名、保育所の数にいたしまして約三千九百ヵ所、かように相なっておりまして、したがいまして、四十二年度におきましては、おおむね計画が順調に進みましたために、この四十三年以降の設置個所数も約三千二百ヵ所、それから定員にいたしまして約二十四万人、こういうふうな数字を到達目標といたしているわけでございます。
  157. 田中寿美子

    田中寿美子君 それは保育にかけている児童の数ですね。児童の中には幼稚園に行くのもありますね。幼稚園に行かない児童でやはり保育所に入れたらいいと思われるもの、つまり保育を要するものの数ですね。
  158. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 先ほども御説明いたしましたが、実は四十二年からおおむね五年計画をもちまして三十万人の児童を収容したい、こういうことにいたしたわけでございますが、その三十万人という数字につきましては、実は昭和四十年に要保育児童調査というものをやりまして、幼稚園に行く方はもちろん除かれておりまして、児童福祉施設でありますところの保育所にどうしても緊急に通わせたいという調査をいたしたわけでございます。そのときの調査の数字が、四十二年から行なう三十万人の児童を通わせるいわゆる五ヵ年計画ということでございます。
  159. 田中寿美子

    田中寿美子君 いま非常に共かせぎがふえております。それから、厚生省でなすった児童家庭調査、あれはちょっと古いですけれども、あのときもすでに子持ちの母親の五五%が一時間以上働いている。あれよりもいまもっとふえていると思うんですね。そして、農村といわず都市といわず、それから、つとめる者でなくても商家なんかでもみんな主婦が非常に忙しい。それで保育所というのは非常に必要な施設だと思うんですが、ところが公立の保育所が間に合わなくて、いわゆる共同保育をやって、無認可保育ですね、これがどんどんふえていっているわけなんですけれども、この共同保育の運動、これはやっぱり厚生省のやっている保育所の活動を相当助けているものじゃないかと思うんですね。無認可保育所という名前は私あまり気に入らないんで、こういう名前は使わないほうがいいと思いますけれども、これの役割りをどんなふうに考えていらっしゃいますか。
  160. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 先生御指摘のとおり、雇用労働者数もこの十年間約三倍になってきております。そういうふうな意味で保育所に対する需要というものは非常に急激であろうと思っております。したがいまして、先ほども私ちょっと申し上げました三十万人の計画も、実は昭和四十年のデータによって組み立てたものでございまして、あるいは三十万では足りないのじゃないかというふうな感じもしておるわけでございますが、いずれにいたしましても五ヵ年間の三十万人計画というものが、一応目標到達いたしましてからその時点においてまた考えたい、かようには思っております。  それから第二の、要するに無認可、まあ正規の保育所でない保育施設の重要性といいますか、こういった問題でございますが、こういった点につきましては、実は保育所の設置状況が地域におきまして非常にアンバランスでございます。先生御承知のように、たとえば東京なり大阪なり、あるいは横浜とかいった大都会におきましては、他の地域に比べますると、保育所の個所数及び保育所に通っておりますところの児童の数が農村等に比べますと約半分でございます。そういうふうなこともございまして、しかも都市に対しまして人口がどんどん集中しております。そういうふうなこともかてて加えまして、都会におきますところの保育所の整備というものは他の地域よりも重点を置いて行なっていかなくてはいけない、かように考えているわけであります。そういった間におきまして、いわゆる認可保育所以外の保育施設というのが出てくるというのは、まあやむを得ざるような状況にあるような感じもいたします。したがいまして、昭和四十三年度におきましては、従来の保育所の認可基準につきまして、特に都会向けにおきましては基準を緩和いたしまして、いわゆる小規模保育所、これは従来の保育所におきましては六十人以上の子供を通わせない場合におきましては保育所として認可をいたさなかったのでございますが、昭和四十三年度からは三十人以上の場合におきましても、特に都会地等におきまして、その他児童福祉施設に定めますところの基準を有しているようなところにつきましては、正規の保育所として認可していこう、こういうふうな計画を実施に移そうと、かように考えているわけでございます。したがいまして、いわゆる認可していないところの、いままで認可を受けられなかったような保育所につきましても、その価値を十分尊重いたしまして新しい政策をやってみるというところまで至ったわけでございます。
  161. 田中寿美子

    田中寿美子君 それで今度は三十人以上ならば補助が出るようになりましたですね。ただし、それは財団か福祉法人か公立のものでなければならないということになっておりますね。東京なんかでは非常にそれ以下のいわゆる共同保育をやっている小規模のものが多いわけで、その内容はもうよく御承知だと思います、ずいぶんたびたび陳情にも見えておりますからね。経営が非常に困難だ、そして母親たちも六千円から八千円、ときには一万円の保育費を払ってもなお保母さんたちはろくな給料がもらえないという状況でございますね。こういうものに対して、つまり何かもっといい知恵はないのかということなんです。つまり三十人以下の、たとえば十五人、二十人というのもあるわけですね。たとえば団地なんかはこのごろ非常にパートタイマーに出る奥さんたちも多い。で、厚生省の保育整備五ヵ年計画の中には団地の保育所の整備の計画もあるはずですね、あれはどの程度進んでいるのか。そうして共同保育の形で母親たちが自分たちの家を提供して小型のものをつくっている場合に、それを幾つか連絡をとらせて一つの単位にするというふうなことは考えられないのか。
  162. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 実はいわゆる無認可の保育施設状態なんでございますが、先生御承知のように、二、三人の子供のお世話をしているいわゆる保育ママさんから非常に多くの子供さんをお世話しているいわゆる無認可保育所までございまして、その経営主体にいたしましても千差万別でございます。お話にありました団地の保育につきましても、これは昨年来建設省あるいは住宅公団等とも相談いたしまして、なるべくそれを地域の保育所にするようにいろいろと相談をしておるところでもございますけれども、いずれにいたしましても三十人以下の保育施設につきましては、その設備構造なり、あるいは資格を持った保母さんの問題もありますし、やはり今度は逆に児童のほんとうの健康と福祉という立場からも考えていかなければならないと思います。そういうことで先ほど御説明申し上げましたように、四十三年度から一応三十人以上のものにつきまして正規の保育所として認可すると同時に、また東京とか大阪等におきましては他の地区と比べますと非常に飛躍的に正規の保育所の設置計画をお持ちのようであります。したがって、やはり正規の六十人以上の保育所の設置を国としても十分応援すると同時に、そういった都会地におきます小規模保育所の設置についてもいろいろな応援をするということでやってみたいと思っております。なお、そういった小さい、いわゆる共同保育あるいは保育ママさんという問題もございますけれども、これにつきましては、まだまだ問題が制度的に解決するというところまでは実は立ち至っていないというのが実情でございます。
  163. 田中寿美子

    田中寿美子君 これも財源と関連してくると思うのですけれども、小型の小規模のそういう共同保育というのは、実はつとめる母親の側から申しますと、遠くまで連れていかないで、なるたけ近くで、そういう小さな型の、設備さえちゃんとしておれば一番望ましいわけですね。そうでありますから、保育所の非常に発達しておる福祉国家でも、あるいは社会主義の国でも最初は大規模にやっていたのをだんだん小型に少しぜいたくになってきて直そうとしているけれども、ただ、日本の場合、やむにやまれず自分たちで始めてしまって、資格もない者が、あるいは設備もよくないものが始めてしまったという条件の中から厚生省が指導される場合、監督も何もしないで放って置いていいものでもないと思います。監督というか、援助を与えなければいけないと思いますね。それで三十人に満たないものに対してさっきちょっと私が申し上げましたように、幾つかを一つの単位にして、それを公的なものに、あるいは法人組織にさせるような指導はできないかどうか、そうして資格なんかも整えていくようにする。そうすると場所としては点々と小規模にはあるけれども、一つの単位になって指導を受ける。どうですか。
  164. 園田直

    国務大臣園田直君) 保育所の問題で、いままで厚生省で持っております計画をこのまま進めていって、そして必要に応じてなるべく小規模にしていくという方針でやっておりますが、現実問題としては、それでは追いつかない。いなかでもそうですが、近ごろ保育所に預けるという両親が非常にふえてきている。それから女子の職場への進出がどんどんふえてきておる。それで考えなければならぬことは、一つは、看護婦さんだとか、あるいは終夜勤務に従事する婦人の方々の子供を預かる場所、こういうものは、いままでの保育所のワク内で考えるとなかなか困難ですから、何かそういう特殊な保育所というものもやはり検討しなければならぬのじゃないか。  それからもう一つは、季節保育所というのがございましたが、これについては、いろいろ批判がございましたが、これは非常に喜ばれた。なおまた、単に農村漁村の忙しい時期だけでなくて、災害その他の場合の緊急の保育所もあるわけでございますから、これは名目を変えて存置することにいたしました。  なお、いまの無認可保育所というのは、ことばをかえて言えば、必然性から出てきた、政府の助成が及ばない保育所というのが当然でございまして、ただ政府としては、それを助成はしないということだけで考えておるのでありますが、やはり何かの事故のあった場合の責任、監督は出てまいりますから、その点において非常に慎重にやっておりまするし、事務当局としてもいろいろ問題かあるというのでちゅうちょしておりますが、いまおっしゃいました個々のそういう託児所、これは数がふえるばかりでなく、実際に聞いてみますと、電車やバスを使って遠いところまで預けにいくということは、実際問題としてできないので、手近にそばに預けたいということになってくるわけでありますから、いまのような個々のものを集団的につないで、そこへ監督官とか、あるいは専門の技術を持った婦人を配置をして、何とかそういう人とともに話し合って、助成もしないで監督ということはけしからぬと言われぬように、何か集団にして、その集団の中に監督指導もし、幾分でも助成をやるような方法も確かにごりっぱな意見で、必ずそうしなければ追いつかぬじゃないかと思いますので、事務当局でまだいろいろ問題があるようでございますが、ただいまの御意見は真剣にもう一度事務当局に検討させてもらいたいと思います。
  165. 田中寿美子

    田中寿美子君 私もぜひそれを検討していただきたい。そしてそういうところに働いている保母さんといわれる人たちの待遇はたいへん悪いですから、何年もほんとうにひどい報酬でおりますので、それに対して基準に合うように指導しながら補助していくという方向に指導していただきたいと思います。  それからもう一つの公立の保育所の足りない点は、ゼロ歳児の保育が非常に少ないということ、それと、いまおっしゃった夜間の保育所ですね、ですからそういう面を補っているのが、このいわゆる無認可保育所なんで、これはどうしても国家の責任だと思います。それでたいへん問題になったと思いますけれども、東京都の無認可保育所に対する例の違憲論議ですね、厚生大臣はどうお思いになりますか。
  166. 園田直

    国務大臣園田直君) 私も事務当局も当初から意見は一致しておりまして、これは憲法違反であるというきめ方ではなくて、憲法に抵触しないように指導していこう、いわゆる東京都でやられたことを、何かそういうものに支障がないようにしたいという気持ちで終始一貫してやっております。
  167. 田中寿美子

    田中寿美子君 保育所はあの場合に憲法に違反するというのは、公費をもって慈善事業とか教育事業とか、そういうものに金を出してはいけないという立場で違憲だというふうに言われているわけなんですけれども、私は、保育所というのは、これは児童福祉法の対象じゃないですか、慈善事業だとか教育事業ではないと思うのですけれども、それはどうですか。
  168. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 憲法八十九条に、公金その他の公の財産は、慈善、博愛、教育というようなものに、公の支配に属さないそういう団体に出してはいけないという規定がございます。私どもこの憲法八十九条に関するいままでのオーソドックスの考え方といたしましては、なるほど保育所の施設自体は、保育所という施設は児童福祉施設でございますが、憲法八十九条のオーソドックスの考え方としては、従来からの考え方は、この事業は慈善事業に属するという解釈で進んできたのでございます。
  169. 田中寿美子

    田中寿美子君 それは非常なおかしな解釈だと思うのです。この際、法の解釈を変えるべきだと思う。社会保障というのは権利だというふうに言っている厚生省ですから、児童福祉だってこれは児童の権利だと思います。ですから、保育所はやはり働く婦人の権利でもあり、また母性の権利でもある、児童の権利でもあるという立場から、児童福祉法の対象と考えて、当然これは助成してもいいのだというふうに考えるべきじゃないかと思います。それはぜひそういうふうに今後考えを変えていただきたいということを要望します。  地方財政のほうで、交付金を出しても、はたして皆さんの計面するどおり引き受けるかということなんです、地方の持ち出しが多いですから。実際に一つの保育所をつくるときに、設置費が平均して全国でいま六百万から七百万の出費か要るそうですね。たいへん安いと思うのです、施設がわりにちゃちだから。その場合に、市町村の負担が四百万から五百万。だから、保育所の予算かついても、ほんとうにこれは困ってしまうのだという声を聞くのですがね。もう少しそれは何とかなりませんですか。
  170. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 保育所を設置いたしまする場合の地方公共団体――市町村の負担が非常に重いじゃないか、こういう議論は前からあって、私ども十分承知しておるわけでございます。昭和四十三年度におきましては、従来の保育所設置に対しまする国の補助金額は、大規模のものにつきましては百万円、小規模のものにつきましては七十万円というのが従来の補助金額であったわけでございます。四十三年におきましては、これらの七十万円という制度を引き上げまして、全部百万円ということにいたしたのでございます。もちろん御指摘のように、百万円でも地方の負担が五、六百万円、あるいは六、七百万円あるから、まだたいへんじゃないかという議論は残ることは残るのでございますが、この点につきましては、さらに今後とも努力をしてみたいと、かように思っております。保育所に対する需要が非常に多うございますので、地方の公共団体の方々たいへん御苦労だとは思いまするけれども、現在のところ、保育所の設置の要望のほうが非常に強いわけでございます。まあどうやらこの百万円でも、まだ希望に対しては予算が応じ切れないというのが一応の現状でございます。しかし、この現状で満足しておるということではございません。
  171. 田中寿美子

    田中寿美子君 全体として保育所の予算というのは非常に少ないのですね、数とか、それから扱う子供の人数から言いましても。したがって、保育単価なんかでも私はたいへん低いと思う。その予算の七五%は人件費に使われてしまっている。そういうことを考えると、社会保障というのは、ほんとうにお金が要るのがあたりまえなんですから、これは政府全体の考え方が変わらなければ困ると思いますけれども、うんと努力をしていただきたいと思います。  それから措置費なんですがね、あの中に所得の低い層からは保育料を安く、これは段階をつけてありますね、AからDまで。そのC、Dのところで固定資産税による付加加算ですが、これをやめるわけにいかないのですか。
  172. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 保育単価も毎年保育の内容が充実したり、あるいは人件費が、人件費といいますか、職員の処遇も少しずつ改善してまいりますために、保育単価がだんだん上がってはおります。それに応じまして、保護者から取りますところの保育料も、特に子供さん方に対しまするまかない料であるとか、そういった施設の費用を中心といたしまして、保育料も上げていかなくちゃいけないわけでございますが、上げるにあたりまして、いま御指摘のように、ABCDと四つの階層――Cを三つにさらに分け、Dをさらに四つに分ける、こういうふうなことで、九段階で保育料をいただいて、そのうちA階層とB階層はいただいておりませんが、七段階におきまして保育料をちょうだいしているわけでございます。これもやはり従来からいろいろと負担の均衡、公平をはかるためにこういうふうな七段階という措置を検討いたしまして、結論的にこういうふうなかっこうで、四十三年度も七段階に分けてちょうだいしたい、かように考えております。これはいろいろこの段階の取り方が問題があるとかいうふうな御意見があろうかと思いますが、従来からもこれをやっておりましたし、また現在におきましてもどうしても負担の均衡をはかるにはやはりこのぐらいのこまかい配慮が必要じゃないか、これをもう少し大ざっぱに分けますると、たちどころに飛躍的によけい取られるという方も出てきやせぬか、そういうふうな観点から、四十三年度におきましてもこの保育料の徴収基準というものの中における段階別の考え方は踏襲いたしてまいりたい、かように考えております。
  173. 田中寿美子

    田中寿美子君 保育所はいま幾らあっても足りない感じがするんです。それから施設も不十分だし、保母さんの数もとても足りないので、保母さんを補助するような職員といいますか、そういうものをもっとふやさなければならないと思うのですね。それで自分の地域に保育所があるなら、ことに公立の保育所があるなら働きに出られるので、みすみす生活保護にかからなくても済むんだというような人もあるわけですね。ですから、そういう最低のところから救っていかなければならないので、それに果たす小規模保育所、無認可保育所の役割りなんていうものにも十分考慮して、私は特に無認可保育所の問題ももっと重要に考えていただきたいということをお願いして……、ぜいたくな福祉国家の保育所を見ますと、全くこれはそれこそ零歳児の場合は一人が一人を扱っているようなぜいたくなやり方すらしているようなところもあるんで、それを見ますと、日本の保母さんも気の毒だし、子供たちもかわいそうだし、働くお母さんたちもほんとうにたいへんだと思います。やはり人間のいのちを大事にするという意味で、ぜひ保育所の問題は、私は数とかそういう重要性から言ったら非常に予算が少ないということをつくづく思いますので、厚生省関係は金の要ることばかりですけれども、あまり遠慮しないで予算の要求はしていただきたいと思います。大臣、どうぞお願いをいたします。
  174. 園田直

    国務大臣園田直君) 御趣旨の線を十分拝聴して、善処いたします。
  175. 田中寿美子

    田中寿美子君 それでは最後に、国民の栄養の問題をお尋ねしたいと思います。いつでも私は厚生省の中でほんとうにしいたげられて、片すみにあるのは栄養の問題だというふうな気がするのです。厚生行政の中で栄養行政というのは一体どんな陣容でどういう構成になっておりますか、ちょっと御説明いただきたいのですが。
  176. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 現在公衆衛生局の中に栄養課がございまして、ここで取り扱っている中に栄養全般の事項でございますとか、最近健康増進というふうな問題が出てまいりました。このこともあわせて所管をいたしております。そのほかに事務的な事項として、たとえば調理士の問題、あるいは栄養士の問題とか、こういう仕事所管いたしております。四十二年度の予算は全体の厚生省予算に比べまして非常に少のうございますが、四十三年度、約倍ふえておりまして、このふえた中身といたしましては、従来他所で行なっておりました例の栄養の基準量の調査というふうなことを新しく四十三年度で実施をしております。さらに毎年実施いたしております国民栄養の実態調査の結果、いろいろ問題が出てまいります。特に低栄養地区に対して重点を持っていこうという形の予算も、若干でございますが計上いたしております。その他栄養関係のPRというふうなことをこめてやっております。
  177. 田中寿美子

    田中寿美子君 国民栄養調査は、一昨年でしたか、私がお尋ねしましたときには、三十七年くらいから三、四年前のしか出ていなかったのですね。   〔副主査退席、主査着席〕 ことしは四十一年度のがもう出ているので、やはり少しは改善されたような気がするのですがね。これで見ますと四十年、四十一年度の状況ですね、一人一日平均のカロリー二千二百六という平均として出ておりますね。たん白質が七十五グラム摂取量、それで昭和四十五年の国民栄養の目標にだいぶ近づいてきているというふうに説明されているのですが、この目標は変えないでもいいのですか、このままで。何年度にこれは立てられたのですかね、三十八年ですね。そのときに立てられた国民栄養の標準、それはもうそのまま動かさないで適当だとお思いになりましょうか。
  178. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) ただいまも大ざっぱな栄養課の予算を御説明申し上げましたが、この中で栄養の基準量の測定と申しますか、これを昭和四十三年度で実施をいたしたい。約一千百万円くらい計上いたしておりますが、この四十三年度で一応調査をいたしまして、これをもとにして、おおよそ五十年見当の栄養研究と申しますか、国民がどの程度栄養をとる必要があるか、そのためにはどういう形で食糧の生産が必要かというふうなための基礎資料をつくりたい、こういう考え方でございます。
  179. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、やはり栄養の基準量は前に設定されたのと変化していく可能性はあるわけですね。四十五年というのは動きますね。
  180. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) まあどの国の栄養の状態日本人の目標においていいかというむずかしい問題はあるわけでございますけれども、一応そういう諸外国の現在の栄養の摂取状態を目標にすることじゃなくて、日本人の体位というふうな点から割り出して、一応カロリーの計算をしたいという考え方を現在持っております。したがいまして、最近の傾向として、特に小中学生、高校生、若年層の体位の向上ということにからみまして、当然これに必要な栄養の摂取量というものはふえてまいるというふうな感じがいたします。
  181. 田中寿美子

    田中寿美子君 私もそう思うんです。いま中学生、高校生、たいへん背は高くなってきているんですけれども、ひょろひょろとしている。この前のオリンピックのときに非常に体位がどんなに劣っているかということを知らされたわけですね。それで日本人の体位から考えなければならないとおっしゃったのはそのとおりだと思いますが、国際比較で見ますと、カロリーでは三十六番目です、これFAOの統計でですね。それからたん白質の摂取量が七二・四とこれはなっておりますが、二十七番目ぐらいですね、たん白質の摂取量というのは。これは非常に長い間おくれていて最近急に追いついてきたといいますが、七十五グラムぐらいを基準にしていますかしら。これは私もっとふやさなければならないんじゃないかと思うんです。それからビタミンやカルシウム、それから油ではまだずっとおくれているんじゃないですか。その辺はいかがですか。
  182. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) ただいま御指摘のとおり四十二年度で一年かかりまして、先ほどちょっと触れました今後の国民の栄養の基準量を策定する栄養審議会の部会を個々に開きまして、いろいろな部門別の検討をいただいておりますが、その中でも御指摘のように、カロリーを上げるだけということが、国民の体位の向上ということにそのままつながるのかどうか。たとえカロリーがそれほどなくても良質のたん白を摂取する、あるいは含水炭素を控えて脂肪をとるということが考えられないかどうか。あるいはビタミンのBが欠乏しているけれども、これをもっとふやすにはどういう食品の摂取がいいのかというふうな議論がいろいろ行なわれているように仄聞いたしておりまして、確かにカロリーだけで見当をつけるということは、ちょっと大げさでございますが、少し乱暴な感じを私自身もいたしておりますが、従来の栄養の問題を議論する場合には大体カロリーが基準になりまして、最近、いまお話のように、たん白質の摂取、中でも質のよいたん白質をとる、あるいは同じカロリーでも含水炭素の摂取量を減らしていくというふうな食べるものの内容の吟味と申しますか、質的な改善ということが今後の栄養問題には当然出てくる、私も四十三年度予定しておりますこの調査では、そういうことも一応考慮に入れた検討がなされるものと考えております。
  183. 田中寿美子

    田中寿美子君 そこで、私は栄養の摂取量をやかましく言わなければならないのは、これはわれわれの家計費の中にたいへん問題になってくるからなんです。この厚生省生活総合調査ですか、こういうものや、栄養の調査なんかで出てくるのは、これだけの食料をとっているということが出てきて、そしてその食料の入手金額の比率は出ているんですね。ですけれども、実際に幾らかかったかという金額は出してないんですがね、私はどうしてそれを出していただけないのかと思うんですが、それがやっぱり働く者の賃金、あるいは世帯の収入、そういうものに関係してきまして、どれだけは最低栄養をとらなければいけないのか、金額のほうで押えられてしまって、実は栄養のほうは圧縮しているかもしれないわけなんです。そういうことを考えますと、やはり現状はこれだけを食べていてこれだけの金額を使っている、それは標準からいえばこれだけ足りないんだ、標準だけのカロリーと、たん白と、ビタミンとカルシュウム、そのほか油をとるのにはこれだけの費用が要るんだということを、私は栄養課あたりがあるいは厚生省が出してもちっともおかしくないはずだと思っているんです。そのやり方によって同じ動物性たん白質でも安いのもあるし高いのもあるわけですね。主婦たちの家計簿を見ますとね、物価が上がっていても、三年間百グラム七十円の肉を買っているんです。だから質は落ちているんですけれども、でも家計簿を押えるためにそうやっているんですね。ですからいろいろなやり方で、ほんとうは収入が上がるのにこしたことはないけれども、現実にいま自分の家族の健康を守らなければならない場合にはいろいろなくふうをしなくちゃならない。そこで厚生省が、基準の栄養摂取量はこういうものである、これはたとえばたん白質七十五グラムというときには、この前に一ぺん出されたことがありますね、一日に大アジ一本及びウインナソーセージ二、三本というのを厚生省が発表したことがあるでしょう。あれはたいへんある意味では役に立ったですから、幾組か、もうちょっと高く食べるもの、もうちょっと安くてもいいというようなもの、そういう指導までしていただかないと、厚生省というものが国民の体位を向上させようという努力、研究と調査の結果が生きてこないだろうと思うんです。どうでしょうか。
  184. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 栄養の問題を考える場合は、いまの御指摘の、たとえば男子と女子によって栄養の所要量が違う、あるいは年齢的な問題とか、あるいは生活形態、労働の程度によって摂取される栄養所要量というものは変わってくるわけでございます。一つの基準的な家族を構成して、そういう労働力あるいは年齢、性というふうなものを考えて、その家族の大体どのくらいの栄養所要量があって、それを計算するとその都市ではどれくらいな食料費がかかるかという調べは私できると思います。現に昭和四十年度の――これは毎年やっておりますが、四十一年の集計はちょっとおくれておりますけれども、四十年度の栄養調査では、全国平均か百九十四円何がしというのが一日の一人の食料費になっております。これを農家と非農家と区別しますと、四十円ぐらいの差がすでにある。しかもこれを都市と郡部という分け方にしますと、七大都市では二百四十円何がしで、郡部が百七十円と、相当大きな開きがあるのでございまして、これを全部足して平均を出すというふうなことについても、どの程度意味があるかという議論も私ども実際いたしまして、やはり全国に同じような形で食料費の計算をして、これに合わせた食事をしましようというようなことの指導は実態にそぐわないじゃないかという考え方をもちまして、現在やっておりますのは県単位で、つい先だっても神奈川県でございましたが「健康展」というのをやりまして、そこでたとえば高校の大学受験生がお夜食にどういう内容のカロリーのある食事をとったらいいか、お皿に盛りつけまして、これは大体幾らぐらいだというふうな書類を出していただきまして、一日二百円のお弁当をつくるとすれば大体どの程度のものができるか、それにはカロリーがどういう栄養素を内容として入っておるかというふうな展示をやっております。これは県というのもまだ厳密な意味から無理だと思いますけれども、せめて県単位でそういう形の指導を今後続けていく必要がある、こう考えます。
  185. 田中寿美子

    田中寿美子君 保健所でそういう栄養の指導をやっていかれるということはこれでわかるんですが、それはほんとうに頻度はとっても少ないんですね。ですから一般国民になかなかそれは徹底しないわけなんで、それで結局これは局間の栄養改善普及の運動と結んでいくという、私はそれでいいと思うのです。ただ、それのためには厚生省には栄養研究所もあるわけですから、そういうものを使いながら、そういうもっと地域の住民たちに役に立つようなそういう指導がされたらいいのではないかと思うのです。それで、厚生大臣、この前も私はそういう議論を多少したわけですけれども、厚生省生活総合調査、この前は別の資料でしたけれども、総合調査で見ますと、四十一年の世帯の所得の平均七十一万円になっております。これは農村全部含めてあるわけですね。ですから総理府から出てきます所得よりはだいぶ低いのですね。そういうのが実情であって、その実情の中でやはりエンゲル係数が低くなりましたということで生活が高くなりましたよといったような言い方を私はするべきではないと思います。ですから、もう少しこまかく、エンゲル係数が低いのは食費を詰めているのだというような実情もあるわけです。ことに生活保護世帯なんかのエンゲル係数はうんと高いでしょう。それから日雇い労働者の場合でしたらどのくらいかというようなこと、ちょっといまわかりましたら言っていただきたいし、そしてそういうことから、厚生省――前に大蔵省がメニューを出して問題にされたのですけれども、これは厚生省は婦人雑誌にまかせないで、幾つかのメニューを出してもいいんじゃないかと思いますが、そういうお気持ちありませんか。
  186. 園田直

    国務大臣園田直君) エンゲル係数が低くなったからといって栄養内容が改善されたのではないということは、申されたとおりでございます。この点については、ただいまの御意見等も十分拝聴して実施に移していきたいと考えております。なおまた、いろいろな家庭、あるいは特別な栄養を必要とするもの、そういうものの一つの食事の、標準栄養を基礎にした献立表というものは事務当局に検討さして国民一般に発表するように考えたいと思います。
  187. 田中寿美子

    田中寿美子君 一つだけ押しつけますと、だいぶまた非難が出てきますから、こういう場合も、こういう組合わせもというようなことをしていただくと、幾つかはやっぱり参考になりまして、農村なんかに行って、どなたもみんな一日にアジ一匹、二、三本のウインナソーセージぐらい、これに相当するだけの動物たん白質を食べなければいけないそうですよ、厚生省によればと言うと、ああそうですかというようなことで、参考にするのですね。ですから、私は栄養とか国民の健康に関しての厚生省の指導というものはそういう意味で一定の基準みたいなものを参考に出していただきたいということを申し上げまして、そうしてこの栄養改善のための保健所の活用、それから栄養士の養成といいますか、それから栄養士だけではとてもいま足りないのでしょう。保健所なんかには栄養担当の人が必ずいるものでございますかどうですか。
  188. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 定数を配置いたしまして全国の保健所におります。約一千名ぐらいでございます。
  189. 田中寿美子

    田中寿美子君 それが集団指導するというふうなのはどういうふうにしているわけですか。
  190. 村中俊明

    政府委員(村中俊明君) 一番多いケースは、週の曜日をきめまして、そこで育児の指導とあわせて離乳食の指導、それから離乳食の終わったあとの人に対しては一般的な調理の指導、大体週に一、二度ぐらい、普通のところではやっております。そのほかの日には、曜日をきめまして町村へ出まして、町村の農業生活指導員等とタイアップで、農村あるいは漁村の栄養指導、これを集団で指導しております。そのほかにいまキッチンカーをもちまして、これは農村漁村の主として僻地でございますが、そういうところに、先ほどのアジもたぶん入ると思いますけれども、材料を持ち込んでそこで講習をやる、現物を見せながら主婦の方に調理の指導をする、こういうふうなことをやっております。
  191. 田中寿美子

    田中寿美子君 たいへんじみな努力ですけれども、やはりそういうこともあわせながら積極的に国民の健康を守っていく方法、それからこのごろは共同給食といいますか、そういう施設もあちこちできていますので、ああいうものへの監督指導、そういったことをもっと強化していただきたい。厚生大臣することがあまりに多過ぎてお困りになるかもしれませんけれども、どれもこれも金の要ることで、厚生省はなかなか金の生み出せる省ではないと思うのですが、大いにがんばっていただきたいと思います。
  192. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいまの御指示のあった点にっつまして、ただいまの予算でやりくりのできることもあるようでございますから、できることから早急にやっていきたいと考えております。
  193. 宮崎正義

    主査(宮崎正義君) ほかに御発言がなければ、これをもちまして厚生省所管に関する質疑は終了したものと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十五分散会      ―――――・―――――