運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1968-04-10 第58回国会 参議院 予算委員会第四分科会 第1号 公式Web版

share
  1. 主査及び副主査の互選 ○昭和四十三年度一般会計予算(内閣提出、衆議 (会議録情報)

    昭和四十三年四月十日(水曜日)    午前十時二十六分開会     ————————————— 昭和四十三年四月九日予算委員長において、左の とおり本分科担当委員を指名した。                 剱木 亨弘君                 西郷吉之助君                 中村喜四郎君                 船田  譲君                 八木 一郎君                 吉武 恵市君                 加瀬  完君                 田中寿美子君                 森中 守義君                 宮崎 正義君                 石本  茂君     —————————————    委員の異動  四月九日     辞任         補欠選任      森中 守義君     成瀬 幡治君     —————————————  四月十日     辞任         補欠選任      成瀬 幡治君     柳岡 秋夫君      田中寿美子君     岡田 宗司君      加瀬  完君     瀬谷 英行君      瀬谷 英行君     大橋 和孝君     —————————————   出席者は左のとおり。     主 査         宮崎 正義君     副主査         船田  譲君     委 員                 剱木 亨弘君                 西郷吉之助君                 中村喜四郎君                 加瀬  完君                 田中寿美子君                 成瀬 幡治君                 柳岡 秋夫君                 石本  茂君    国務大臣        労 働 大 臣  小川 平二君        自 治 大 臣  赤澤 正道君    政府委員        労働大臣官房長  石黒 拓爾君        労働大臣官房会        計課長      東村金之助君        労働省労政局長  松永 正男君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省安全衛生        局長       大野雄二郎君        労働省婦人少年        局長       高橋 展子君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君        労働省職業訓練        局長       和田 勝美君        自治政務次官   細田 吉藏君        自治大臣官房長  宮澤  弘君        自治大臣官房会        計課長      鈴木  博君        自治省行政局長  長野 士郎君        自治省選挙局長  降矢 敬義君        自治省財政局長  細郷 道一君        自治省税務局長  松島 五郎君        消防庁長官    佐久間 彊君        消防庁次長    山本  弘君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○主査及び副主査互選昭和四十三年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————   〔年長者剱木亨弘主査席に着く〕
  2. 剱木亨弘君(剱木亨弘)

    剱木亨弘君 ただいまから予算委員会第四分科会を開会いたします。  本院規則第七十五条によりまして、年長のゆえをもって、私が主査及び副主査選挙管理を行ないます。  これより主査及び副主査互選を行ないますが、互選は、投票の方法によらないで、選挙管理者にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 剱木亨弘君(剱木亨弘)

    剱木亨弘君 御異議ないと認めます。  それでは、主査宮崎正義君、副主査船田譲君を指名いたします。(拍手)     —————————————   〔宮崎正義主査席に着く〕
  4. 主査(宮崎正義君)(宮崎正義)

    主査宮崎正義君) 一言ごあいさつをさしていただきます。  ただいま、皆さま方の御推挙によりまして、本分科会主査をつとめることになりました。何ぶん微力でございますので、皆さま方の絶大な御協力を得まして責務を全ういたしたい所存でございますので、どうかよろしくお願い申し上げます。(拍手)  審査に入ります前に、議事の進め方についておはかりをいたしたいと思います。  本分科会は、昭和四十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、文部省厚生省労働省自治省及び科学技術庁所管を審査することになっております。議事を進めます都合上、本日は午前を自治省、午後を労働省、明十一日は厚生省、十二日は午前科学技術庁、午後文部省という順序で進めていきたいと存じますが、御異議ございませんでしょうか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 主査(宮崎正義君)(宮崎正義)

    主査宮崎正義君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 主査(宮崎正義君)(宮崎正義)

    主査宮崎正義君) 昭和四十三年度総予算中、自治省所管を議題といたします。  この際、おはかりいたします。  政府から提出されております予算概要説明につきましては、口頭による説明を省略し、これを本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 主査(宮崎正義君)(宮崎正義)

    主査宮崎正義君) 御異議ないと認め、そう取り計らってまいります。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 加瀬完君(加瀬完)

    加瀬完君 この自治省本省予算には直接関係のないことになりますが、地方団体としては一番問題でございます財政計画について、一般質問でも若干触れたわけでございますが、もう少し詳しく伺いたいと思いますので、地方財政計画の内容の何点かについて伺いたいと思います。  きのうもちょっと申し上げたんですが、過密対策というものが非常に叫ばれておりますが、過密現象というものに対して、財政計画では的確な過密対策というものがないんではないか。たとえば道路とか、上下水道とか、病院とか、環境衛生あるいは消防施設というように過密地域は非常な事業費の膨張を来たしておるわけでありますが、これに対して、それぞれの項目に対する補助率全一国一律で、別に過密地域だからといって、上下水道補助よけいだとか、あるいは環境衛生費用よけいだということにはなっておらないと思うわけですが、これは私のように了解してよろしゅうございますね。
  9. 政府委員(細郷道一君)(細郷道一)

    政府委員(細郷道一君) 過密だから補助率が高いというような例はございません。ただ、私ども交付税計算におきましては、人口の非常にふえるところとか、あるいは過密地域に対しましては、学校でありますとか、あるいは都市計画の面でありますとか、そういったようなものにつきまして、需要を多く見込めるような方法考えております。
  10. 加瀬完君(加瀬完)

    加瀬完君 この今度の財政計画長期計画事業というものを一応もくろまれたことは、私は適切だと思うわけですが、この長期計画事業に見合う分を、四十二年度予算と四十三年度の財政計画とを比較してみると、道路とか港湾といったようなものは伸び率がふえておりますけれども生活環境費用というものは、伸び率が八・八%減っていますね。これでは、若干交付税その他で過密対策財源というものを考えたにしてもどうにもならないじゃないか。しかも、単独事業伸び率は一二・七%であったものが九・六%と、私の計算では減ってるように思われるわけです。で、こういう過密地帯は、公債費なんかも相当支払いを必要といたしますし、あるいは公営企業などを新しく始めれば、これの繰り出し分もふえてまいりますし、直接住民にサービスする過密のための事業費というのは全然なくなっているわけですね。急にことしの四十三年度の財政計画過密対策というものを打ち出すわけにはいかないかもしれませんけれども現象として、もう数年間いわゆるドーナッツ地域といわれるようなところでは、過密のための事業費に食われて団体の運営がどうにもできなくなっている。ところが、何年たっても財政計画の上では過密対策は出てこない。これは逆に過疎対策ということにもなろうかと思いますが、焦点をしぼって過密だけに考えてみても、あまりにも過密対策というものを政府自身としても考えなさ過ぎるのじゃないか、こういうふうに思うわけですが、この点はどういう御見解ですか。  それともう一つは、今後これをどう解決なさっていただけるか、どうお見込みになりますか。
  11. 政府委員(細郷道一君)(細郷道一)

    政府委員(細郷道一君) 人口の非常にふえます都市あるいは大都市等におきまして、いま社会環境施設あるいは学校といったようなもののための財源に非常に不足を感じておるわけでございます。四十三年度財政計画としてはグロスで全国が上がっておりますが、私どもとしましては、交付税におきましてやはり傾斜配分をしてまいりたい。その方法といたしましては、人口急増補正を強化をするとか、あるいはいままでとっておりませんでしたが、昼夜間の人口流出入、それによります変動を補正の要因に加味することによりまして、都市圏を通じての需要を充実する方法考えるといったようなことによりまして、交付税基準財政需要額におきまして約二百十二億ほどそういった面に需要増を見込んでおります。それから反面、地方債におきましては、単独事業の中で都市過密対策事業といたしまして、四十三年度では百億見込むほか、たとえば交通問題としての地下鉄事業につきましては、起債を増額して七百十億にいたしておる。さらに公共用地先行取得あるいは都市開発事業、そういったようなものにも、それぞれ重点的に起債を充当することによって、少しずつでもそういった問題に対処してまいりたい、かように考えております。
  12. 加瀬完君(加瀬完)

    加瀬完君 一応交付税というものはこれは財源になりますよね。しかし、この中には不交付団体も多いわけでしょう。不交付団体の場合は、交付税というものはそれほど——交付団体交付団体になって幾らかもらえるという程度で、交付税伸びがそのまま地方財源ということにはならないわけですね。それからきのうも私は質問をしたわけですが、大臣のお答えはなかったわけですが、地方債は、そういう過密なんかで公共事業なんかを広げたところは、ある程度ワク一ぱいになっているわけですね、地方債が。たとえば市町村予算に占める公債費割合というもので前には大蔵省起債制限をしておったのですけれども、その制限はいまはなくなったのですか。予算に占める公債費割合にかかわりなく、幾らでも新しい起債というものをふやすということがいまはできるのですか。
  13. 政府委員(細郷道一君)(細郷道一)

    政府委員(細郷道一君) 地方債につきましては、公債費一般財源の二割をこえるものについては注意をいたしております。
  14. 加瀬完君(加瀬完)

    加瀬完君 ですから結局、それでやはり財源的に制限をされて、交付税制限をされる、地方債制限をされるということで、過密対策をしたくても、財源が実際はそういう地域はかれているわけですね。ただ固定資産税都市計画税だけは、今度一四・七%というふうに伸びが非常に大きくなりましたね。そうすると都市計画税をかけるか、あるいは固定資産税のいわゆる固定資産評価を上げて固定資産税よけいかけるか、どうしたってこういう方法をとらざるを得なくなるわけですね。すると、それは政府考えている物価対策ということとは矛盾をしますよね。当然地代も上がるでしょう、地価も上がるでしょう、家賃も上がるということになりますわね。で、財政計画でも、固定資産税都市計画税伸びの見方というものは、私は大き過ぎると思うのです。どうでしょう。
  15. 政府委員(松島五郎君)(松島五郎)

    政府委員松島五郎君) 固定資産税昭和四十一年と四十二年、四十二年から四十三年の伸び比較の問題でございますが、御指摘のとおり、四十二年は、固定資産税は一一・一%の伸びでございましたのに、四十三年は一四・七%の伸びになっておりますので、非常にこの間伸びが大きいように見えるわけでございます。ただこれは統計の出し方の問題でございまして、四十一年対四十二年の場合の基礎になりました四十一年は、国会で免税点の引き上げについての修正が行なわれる前の数字と比較をいたしております。したがいまして、本来ならば四十一年の額がもう少し小さくなるわけでございまして、それと比較いたしますと、四十一対四十二も、四十二対四十三も、ほとんど変わらないのでございまして、大きくなっておりますのは、そういう統計上の比較のしかたの問題ではなかろうかというふうに考えております。きのうも申し上げましたように、土地につきましては、負担調整率を定めておりますけれども、これは今回の地方税法改正によって全然動かしておりませんので、特別に土地について新しい増徴をするというような問題はないわけでございます。家屋償却資産につきましては、毎年それぞれ事前に新築家屋の増加なり、償却資産の増加がございますから、多少伸びがございますけれども、特に固定資産税をそういう意図をもって動かしているということはございません。
  16. 加瀬完君(加瀬完)

    加瀬完君 具体的例をあげますと、千葉県の某地で、固定資産評価額が反二万三千円ですよ。ところが、ある施設ができるというので、税務署はこれを七十万に査定をいたしました。今度、売買価格は百四十万ということにきまるようであります。そうすると、二万三千円という評価額をこれは引き上げざるを得ないでしょう、どうしたって。しかし、農家なら農家経営をしているものは、二万三千円の土地も、それから七十万に査定をされた土地も同じなんですね、売買をしない限りは。しかし近傍類地が上がったということで、これが相続税とか、あるいは贈与税なんかになりますと、大蔵省基準の七十万円になりますよ。そうすれば、財源があるならば別ですけれども財源がなければ、大蔵省が七十万に評価しているものを、二万三千円の評価で税金取るわけにはいきませんよ。これは上げて、もっと取ろうということに自然の勢いとしてならざるを得ないじゃないですか。やはり、ドーナッツ地帯も大体同じことですね。結局、地価がずんずんずんずん自然現象のようにつり上がりますから、それは宅地だけしか持っておらないものの固定資産税でもやはり上がらざるを得なくなる。それは一応歯どめをかけておりますから、上がりぐあいは歯どめのワク内ということになりますが、これはやがて、固定資産税都市計画税というものだけに財源を求めていくというと、この歯どめがきかなくなっていくおそれがあると思いますが、それはどうでしょう。
  17. 政府委員(松島五郎君)(松島五郎)

    政府委員松島五郎君) ただいま御指摘のございましたような事例は、多少あちらこちらに最近出ておるわけでございます。固定資産税は、御承知のように、農地につきましては、農地であるという状態において評価をいたすわけでございますので、ほかの評価に比べますと相対的に低いという場合もございます。ただ、農地現実には宅地に転用するという段階において評価をするということになりますと、また形が変わってくると思うのでございまして、その辺がいま御指摘のあったような問題点ではなかろうかと考えておりますが、なお、この都市近郊宅地評価につきましては、ただいま問題になりましたような、現在は農地であるが常に宅地への転換の可能性を含んでいるというものについて、どう評価すべきかという大きな問題がございます。従来は、農地につきましては、転用いたしますためには法律的な規制がございましたので、潜在的には宅地としての価値を持っていても、現実にはそういう法律的手続経ずしては宅地にはならないわけでございますから、現在そういう農地段階にあれば農地として評価をするという基本的な考え方をとってきたわけでございます。しかし、これにつきましては、今日の都市近郊におきます農地実態からして不合理ではないかという批判も少なくないわけでございます。こういう問題を今後どう取り扱っていくかという問題は、土地税制のあり方の問題として検討していかなければならないところでございまして、一挙に負担さえ上げれば問題が解決するというわけでもございません、しかしまた、評価というものは、税負担をされる方相互の間に均衡がとれることが必要でもございますので、そういった両面からこの問題について検討していきたいと考えております。
  18. 加瀬完君(加瀬完)

    加瀬完君 農地は一応押えがききますよね。山林雑地というのは押えがきかないわけですよ。具体的に申し上げますと、いま問題になっております成田空港の候補地近傍で、相続をした事例があるんです。税務署山林雑地——やはり山林雑地ですから、畑が二万三千円ですからもっと低いわけですね。それでやはり七十万という評価課税をしているわけです。たとえば雑地はそのまま牧野にしておいたり、あるいは山林はそのまま山林経営しておりましても、近傍類地ということで、その贈与相続の場合は、山林価格では評価をしないわけですね。あるいは課税しないわけですね。こういう事例があるのです。そうすると、かりに山林雑地ですから一万幾らというものでしょう、おそらく固定資産税評価額は。ところが、税務署は七十万。同じ国の、あるいは公共機関でありながら、同一物件に対して、さきの畑を例に出せば、二万三千円と七十万というはるかに違った評価をしておるわけですね。それからそういう地域じゃなくて、ドーナッツ地帯地域では、固定資産税の何倍ということで大体税務署査定をしていますね、課税をする場合。たとえば坪一万円のところならば、これに二・七倍かけるとか、あるいは五・六倍かけるとか、こういうことで課税をしておるのですね。そうすると、結局上のほうにだんだん固定資産税だって引き上げざるを得なくなるじゃありませんか。
  19. 政府委員(松島五郎君)(松島五郎)

    政府委員松島五郎君) ただいまの御指摘の問題、非常にむずかしい問題でございまして、現実にその土地が所在する近傍におきまして七十万円なら七十万円で取引が行なわれておるという実態があります。しかも、それがたまたま特定の土地がそういうことで売買されたということでなくて、一定の施設ができるであろうという予想のもとに、少なくとも一つの区域としてそういう売買が行なわれる可能性を持っておるということになりました場合に、どう評価するかという問題でございますが、そこで、相続税あるいは登録税固定資産税食い違いという問題も起きてくるわけでございます。固定資産税は単に、ある一ヵ所二ヵ所の土地でどうであるかということでなくて、日本全体の土地相互均衡のとれた形で税金を納めてもらうためにはどういう評価があるべきかということを基準にしてまいりますので、たまたま、ある地域が非常に値上がりしている、その近傍地域がそれほどの値上がりがないということになりますと、現況が少なくとも同じであれば、なかなかそこまで上げて評価をするということができないという点もございます。また、そういう評価のしかたが適当であるかどうかという問題もございます。特に、先生も御承知のとおり、固定資産税評価現実に三年に一回評価をするということになっておりますけれども昭和四十二年度は評価がえもいたしませんでしたというような関係があって、総体的に町価固定資産税評価との間にズレが出てきておることも事実でございますが、そのズレを別にいたしましても、先ほど申し上げたような問題があるわけでございます。一方、登録税相続税は、そういった事態が起きたつどに問題になる税でありますから、やはりそのときの状況に応じて評価をされるというようなことになるわけでございます。そこにある程度の食い違いが出てくるということもやむを得ないのじゃないかと思います。ただ、いま御指摘になりましたような点は、極端な食い違いがあるわけでございます。やはり私は固定資産評価そのものにも時間的なおくれというものがあるのではないかという感じもいたします。また、それだからといって固定資産評価を一挙に七十万円に持っていこう、こういう考えを持っておるわけではございませんが、しかし、固定資産税評価につきましては、先ほど申し上げましたように、都市近郊ないしは新しく発展しつつある地域において非常に総体的に低いものになっておるのではないかという批判も非常に強いわけでございまして、この辺は、税負担の面と評価適正化という面と両面から問題を考えていかなければならぬと考えております。
  20. 加瀬完君(加瀬完)

    加瀬完君 それは固定資産改正法のときにいろいろ私ども伺ったわけでございますが、住民税所得税と違って、固定資産税には免除をする最低限というものはないわけですね。一坪持っておったって確実にいわば固定資産税はかかるし、百万坪持っておったってやはり固定資産税はかかるし、同じことなんですね。で、都市計画税とか固定資産税というものだけをかりにいまのような黙認の形でふやしてまいりますと、これはもう生活の上でも、たとえば自分のうちを建てる、七十坪か八十坪の土地だけしか持っておらないというようなものでも、非常に固定資産税値上がり生活費に響いていくということになると思うのですね。この点はどういうように、一体、固定資産税としても、非常に低い固定資産所有者に対する救済の対策というものも一体考えなくてよろしいかどうかという点は、将来ひとつ研究をしていただきたいわけです。  そうすると、こう承ってよろしいですか。過密対策財源にことさらに都市計画税やあるいは固定資産税を上げて、それで過密対策事業財源に振り向けていくという考えは全然ないのだと考えてよろしゅうございますか。
  21. 政府委員(松島五郎君)(松島五郎)

    政府委員松島五郎君) 人がたくさん集まりますと、おのずからそこに土地需要が高まってまいります。土地需要が高まってくれば、固定資産土地価格も上がってくるわけでございます。固定資産税は、そういった社会的な変遷というものをある程度評価の上に反映しながら課税をしていくというたてまえの税であるというふうに考えておる次第であります。したがいまして、いまのように、人が集まってそのために土地需要が高まって地価が上がる、それでも固定資産税はその以前の状態と同じであっていいのだということにはならないのではないかというふうに考えます。ただ、それだからといって、何か人が集まってきてふえる財政需要というものを、全部固定資産税なり都市計画税でまかない得る、あるいはまかなっていこうというような考え方を持っておるわけではありませんけれども、人が集まって土地の値段が上がるということは、やはりそこに地方団体のいろいろな行政が行なわれる、行政が行なわれることによって住民便益が得られる、便益が得られることが地価の上昇へとつながっていくということであれば、やはりそれに応じた負担を求めていくということは適切な措置ではないかというふうには考えてはおります。
  22. 加瀬完君(加瀬完)

    加瀬完君 ですから、固定資産税都市計画税だけを当て込んで過密対策を進めていくということではないと考えてよろしゅうございますね。  そこで、過密対策などの問題の一つ解消策として、公共用地先行取得事業というものを認めましたね。しかし、これも地方債などをさらに拡大でき得ない市町村にとっては、地方債等財源先行取得をするというわけにはいかなくなりますね。
  23. 政府委員(細郷道一君)(細郷道一)

    政府委員(細郷道一君) 先行取得事業債は、その必要な市町村に認めておるわけでございますが、先ほども申しましたように、過去の地方債が非常に多い、そしてその公債費の額が一般財源の二割をこえるような場合でございますと、私どもとして注意を実はいたしておるのでございます。現実問題といたしまして、人口のどんどんふえてまいりますような都市では、やはり人口のふえるに応じまして税収もわずかながらでも上がってまいります。したがいまして、一般財源の二割をこえるというようなのは非常にまれでございまして、むしろいなかのほうの町村に、人口が減っていくといったような町村にあらわれる現象でございます。それから不交付団体どもほとんどその制限にひっかかるということはございません。したがいまして、さしむき、先行取得事業債というのは、やはり十分そういう都市においては活用されてしかるべきものであろう、こういうふうに考えております。  なお、私どもは、今回地方財政計画全体を通じまして過去の災害債の繰り上げ償還を二百五十億ほどするように措置をいたしているわけでございますが、こういうことによりまして、災害の起債が非常に大きいために、公債比重が高まっているというような地方団体は、これによってだいぶ救われてくるだろう、こういうふうにも考えております。
  24. 加瀬完君(加瀬完)

    加瀬完君 きのう、まあ負担金まがいの寄付金について伺ったわけでございますが、国鉄の地方に対する寄付金が、納付金のような形でかぶさってきておりますね。たとえば駅をつくる、すると敷地を寄付しろ、そのほか駅の構内の建築費として一億寄付しろ、あるいは一億五千万寄付しろ、こういう形で結局、しかしながら、住民は、そこに駅を必要とするという要望に市町村もこたえなければなりませんから、駅の設置を国鉄に懇願をする、そうすると割り当て寄付がくる。これは過密地帯では、まあ私どものほうの総武とか常磐の複々線の負担金については、たいへん自治省ではお骨折りいただいて、何とか解決をさせていただけそうでありますが、駅舎に対して地元が二分の一近いような寄付金をさせられるという法律的根拠はどこにもないわけですよ。ところが、これが公然と行なわれている。私鉄より始末悪いですね。私鉄は駅をつくったって、まさか地元に寄付金はかぶせてきません。しかし、国鉄は寄付金がなければ駅をつくらない。いまは健全財政でやっているところも、こういうように負担しなくてもいいものまで負担をさせられてまいりますと、当然負担しなければならない学校とか公衆衛生の施設とか、いろいろあるわけですから、やっぱり財政的には破綻を来たさざるを得ませんね。きのう大臣は、二十八条の二に違反しているようなものは絶対にそういうことはさせないとおっしゃいましたが、二十八条の二どころの話じゃないですよ、これは。しかし、慣習としてそれが行なわれておりますと、どうしたって国鉄は当然のようにそういう要求をしてくるわけですね。こういう状況といいますか、状態を御存じですか。
  25. 政府委員(細郷道一君)(細郷道一)

    政府委員(細郷道一君) 私も負担すべからざるものを負担させることはけしからぬことだと思っております。したがいまして、現在財政再建特別措置法によりまして、そういう種類の寄付金でありますとかというようなものにつきましては、承認制を実はとっておるわけでございます。もちろん、その場合は、法令の定めるところによりまして、やむを得ざる事情のあるものはこれを承認をするという態度をとっておるのでございますが、そういった、一見、審査を通じましてあまりにもむちゃなものでありますれば、これをその関係の省庁に注意して是正をしてもらうというふうなことで、一つ一つの問題としてできるだけ解決をしてまいりたいと、かように思います。
  26. 加瀬完君(加瀬完)

    加瀬完君 ことばをとらえて恐縮ですが、むちゃとむちゃでない線というのはどこへ引くのです。
  27. 政府委員(細郷道一君)(細郷道一)

    政府委員(細郷道一君) 先ほど国鉄の駅舎の問題等出ておりますが、駅舎等につきましては、一体どこらでその線を引いていいのか非常にむずかしい問題でございます。いろいろろ両者の利害が対立しておりますと、両者の間でいろいろ話し合いが行なわれ、おのずとそこにむちゃかむちゃでない線かが、両者の間で出てくるのではなかろうか、そういったことも個々のケースとしてはある程度認めていかなければならない、こういうふうに思いますので、一がいにどの程度ということは申し上げかねると思いまするけれども、法律の精神は、少なくとも負担させるべきでないようなものについて、その意思にかかわらず負担をさしてくるようなものは、これはもう法律のらち外である、かように考えておるわけです。
  28. 加瀬完君(加瀬完)

    加瀬完君 財政秩序の明確化ということが、いままでうたわれておったわけですけれども、財政秩序はいいが、むちゃであろうがむちゃでなかろうが、そういう負担金なり寄付金なりというものは、これは出すべきじゃないし、また、国鉄としては受くべきではないと考えて、間違いですか。
  29. 政府委員(細郷道一君)(細郷道一)

    政府委員(細郷道一君) まああくまでも個別の問題としてこれを判定していかなければならないと考えます。
  30. 加瀬完君(加瀬完)

    加瀬完君 個別できめるというのは、寄付してもいいというものと、寄付してならないというものとが出てくるわけですよ。どういう法律的な根拠で寄付していいという根拠が出てくるのですか。
  31. 政府委員(細郷道一君)(細郷道一)

    政府委員(細郷道一君) ちょっといま政令を持ってきておりませんのであれですが、御承知のように、財政再建法の政令によって、その場合には限定されると思います。
  32. 政府委員(細田吉藏君)(細田吉藏)

    政府委員(細田吉藏君) ちょっと私から。私は長い間国鉄の財政をあづかってやったものですから、こういう問題だと思います。国鉄が地元でいろいろ御要望があったときに、利用債をもってくれという話がある。これは寄付ではないわけです。いまのお話は、駅を新たに設置する場合の寄付、こういうお話だと思います。そこで、全国的に見ますと、地方の自治体、あるいは小さくいうと、いなかにいきますと部落、そういうところから駅設置の御要望がございます。ここの駅とここの駅の間につくってくれ、その場合には、地元負担、地元負担がなければ駅はつくらない、こういう原則を国鉄が立てておるわけでございます。そこで、地方自治体がどうしても駅をつくってもらいたいというときには、国鉄は寄付がなきやつくらぬというたてまえをとっております。ところが、その反面におきまして、国鉄自身がその必要性を認めて駅を中間につくるという場合があります。その際には、これは寄付がないというのが原則です。そこで問題は、非常にいまおっしゃった、むちゃであるか、むちゃでないかというような限界にもあたるわけでございますが、たとえばいなかで、私ども陳情受けたりして、よくあるわけですが、このごろでも全国的に無人駅が多いですけれども、中間駅ができている。三百万、五百万という程度の駅が多いですけれどもございまして、そういう駅はなるべく国鉄としてはっくりたくないけれども、地元住民がどうしてもつくってくれというときにつくる、そういうものは全部国鉄が金を出してやっていくということになると、国鉄は予算が窮屈だから出せない。ただ問題は、おそらく先生の御指摘になっておるのは、こういう点だろうと思いますが、大都市近郊、こういうようなところで団地ができる、何ができる、人口が急増して、当然その必要性が地元自体の要請云々ということと別に、もっと強い程度において、国鉄は交通機関として置くべきじゃないか、こういう場合が大都市近郊等についてはある、こういうことだと思います。そういうものについて、さなきだに学校だ、水道だ、下水だ、いろいろな金が要るところへ、さらに駅まで負担をさせるということはおかしい。こういうものは国有鉄道がその必要性から見て駅をつくるべきじゃないか、そういうところについては、おっしゃるように非常におかしい。しかも、そういうところについては、たとえば電車駅であったりいろいろいたしますから、金はよけいかかるから、ほかの負担も多い。それはいままでの国有鉄道の新駅設置方針について、こうした都市現象の中で考え方を変えてもらわなければいかぬ問題じゃないか。それは全国一律にやりますと、これはできない相談なんです。どんないなかのほうでも、駅をつくろうという要望はありますから、そんなことをどんどんやっておった日には切りがないですから。ただ問題は、必要度の非常に高いところ、そういうところについて、いままでの方式でいいかどうか、いけないのだ、こういう問題だろうと思うのでございまして、これらの点につきましては、政府の中で、先ほど財政局長が申しましたように、そういうことはないようにする、こういう方向で話し合いをしなければならぬ、それが正しい方向じゃなかろうか、こう私は思っております。
  33. 加瀬完君(加瀬完)

    加瀬完君 大臣が見えましたから、成瀬委員が待っておりますから簡単に終わらせていただきたいと思いますが、国鉄の関係団体が団地をつくったわけですね。それで駅をつくらざるを得なくなっちゃたわけです。ところが関係のない住民側、市町村が結局寄付金出さなければ駅をつくれないというような事態があるわけですよ。ですからそれは寄付金の額その他についていろいろ御配慮いただかなければならないと思いますが、財政局長に伺いますが、そういう負担金は、あるいは寄付金は、当然過密地域の必要経費として特別交付税なり何なりで若干は見ていただけるということになりますか。
  34. 政府委員(細郷道一君)(細郷道一)

    政府委員(細郷道一君) いままでは、そのものとして特交で見たことはございません。むしろそれ以外にもっと学校とか道路とか、そういうほうにさしむき必要な金がよけいに要るものでございますから、そっちのほうで見ております。
  35. 加瀬完君(加瀬完)

    加瀬完君 しかし局長、むちゃでない線は、これは黙認せざるを得ないというような御説明であった。そんならむちゃでない寄付なら当然な地方の出費として、これは財政上何らかの措置が考えられていいということにはなりませんか。まるまる見ろという意味ではなくて、それも必要経費として、過密地域などについては、やはり計算の中に入れていただかなければ、なかなか過密地域財政計画は立っていかないのじゃないかと思うのです。
  36. 政府委員(細郷道一君)(細郷道一)

    政府委員(細郷道一君) 個々の団体の財政全体との比較でものを判断しなければならないと思います。その点だけを取り上げてやるということになりますと、そもそもが、私どもはあまりそういった事例がたくさん出ることを好んではおりませんものですから、それをそのままずばり特別交付税に見ることが、他の団体に与える影響はどうであろうかというようなことも考えてみなければなりませんから、やはり終局的には、その地方団体の財政事情との見合いで判断しなければならないと、こう思います。
  37. 加瀬完君(加瀬完)

    加瀬完君 どこそこの町村にしからば幾らということを、私はここで求めているわけではない。過密事業ワクの中にそういう点もこれは入れなければならない場合もあり得るわけですから、検討をする対象としてお考えはいただけないかということなんです。
  38. 政府委員(細郷道一君)(細郷道一)

    政府委員(細郷道一君) 財政計画からいえば、いわゆる単独事業というものの中には、いろいろそこの団体の特色ある事業が選ばれるものと、こういうふうに考えますので、包括的に入っているものと私ども考えております。ただ、個々のケースについてどういうふうに今後もっていくかについては、なお私どもよくくふうしなければならないと考えます。
  39. 加瀬完君(加瀬完)

    加瀬完君 これ一問で終わりますが、あとで成瀬委員のほうから質問がありますが、地方団体道路財源として、自動車取得税というものを新しくつくるということになったわけですね。しかし、自動車取得税だけで地方道路財源というものが一体まかなえるか、この点はどうお考えになりますか。
  40. 政府委員(松島五郎君)(松島五郎)

    政府委員松島五郎君) 自動車取得税だけで地方道路財源がまかなえるかどうかというお尋ねでございますが、御承知のとおり、従来は、国と県につきましては、道路目的財源として揮発油税、あるいは揮発油税の一部であります地方道路譲与税、軽油引取税、石油ガス譲与税というような道路目的財源があったわけでございますが、市町村には、指定市を除きまして全然そういう財源がなかったわけでございます。そこで市町村からは、かねてから市町村財政の整備が今日急務となっております折りから、道路目的財源を与えるべきである、こういう強い要請があったことは御承知のとおりでございます。そこで今回、自動車取得税を新設いたしまして、その財源に充てようとするものでございますが、いま見込んでおります額は、昭和四十三年度で三百九十億余でございまして、これだけの財源があるから市町村道路はもうこれで万全だというわけにはまいりません。ただ、従来全然目的財源が与えられていなかったというところに、これだけの財源が与えられるということは、それだけ道路日的財源という面から見れば前進をしたものというふうに考えております。
  41. 加瀬完君(加瀬完)

    加瀬完君 そういう見方もあれば、根本的に市町村道を改良するには、一体どのくらいの財源というものが見合うべきかという点から考えて、自動車取得税だけではどうにもならないというまた見方も成り立つわけです。長くなって恐縮ですが、一級国道の総延長は大体一万三千キロですね。主要地方道が三万三千キロ、一般地方道が八万八千キロ、市町村道は八十四万キロでありますが、これを概算しますと、きのうもちょっと建設大臣が言いましたけれども、国道と主要地方道は、一キロについて一億、大体四十二年度で建設費が投入されております。ところが、地方道は二万円ですね、一キロについて。路地みたいなところもあるからしかたがないといえばそれまでですが、今産、おっしゃるような自動車取得税を入れても五万円にしかなりません。一キロ五万円では、いかに地方道といえどもこれで整備できるはずのものではないですから、だから自動車取得税だけでは問題の解決にはならないのだ、ガソリン税なり何なり、それからまた、もっと地方に還元するものを抜本的に考えなければならない。これは意見になりますが私は持っております。これは成瀬委員から質問するそうですから、私は指摘するだけにして質問をやめておきます。
  42. 成瀬幡治君(成瀬幡治)

    成瀬幡治君 私は最初に、加瀬君と若干ダブっているんですが、やっぱり都市問題です。その中でいま過密の問題が出ました。公害の問題もございました。そこでずばり言えば、一つは、地価対策、これは物価の問題も——国全体の問題ですから、地価対策土地対策をどう考えるかという基本的な大きい問題があるわけです。もう各方面でいろいろと指摘されておりますのですが、対策は遅々として進まないというのが実態であろうと思うんです。  そこで大臣に、最初にお伺いしたい点は、どうするんだということを、国務大臣として希望なり、あるいは自分はこういうことを考えておる、こういうことを今後努力していきたいというよらな政見発表といってはおかしいんですが、そういうことについての御意見をまず最初に承りたいと思います。
  43. 国務大臣(赤澤正道君)(赤澤正道)

    ○国務大臣赤澤正道君) 都市の再開発というのはなかなかむずかしい問題でございまして、人口の移動がここまで激しいということは、数年前は予想もできなかった。しかも最近になってまいりますと、大都市ではいわゆるドーナッツ現象など起こしまして、たとえば東京の中央などは、昼間はたいへんな人口だが、夜はいなくなってしまう。どこに行っているかというと、みんな周辺に住むというわけです。これが際限もなく広がってくるわけでございます。それで、ここで都市再開発のためには、根本的な対策を立ててやる必要がもちろんあるわけでございます。いままでの実績を見ますと、やっぱりおくれおくれになっておりまして、いろいろなまずい現象があっちこっちに起こってくるわけでございます。確かに施策面全体を考えました場合におくれておりますので、やはりわれわれといたしましては、少し政策が前に進むような形で処理していかないと、いつまでたっても切りがないと考えておりますので、そのことは、いま大都市再開発を大いにするいろいろな法律が各官庁から提出されておりますけれども、これを総合してやっぱり統一ある政策を進めていかなければならぬ、かように考えております。
  44. 成瀬幡治君(成瀬幡治)

    成瀬幡治君 進めなければならぬということだけれども、私もあなたの意見と同じですが、しかし、あなたは自治大臣であり国務大臣である。当面の責任者なんです。ですから、後手後手にしているということをあなたもお認めになっておるんだから、早急に巻き返す態勢をつくらなくてはならぬと思う。ですから、そういうことについて、ならなければいかぬわいというだけでは前へ進まぬと思う。それは具体的に、せめて緒につかなければならない。いまは緒についていない、それは各省ではいろいろな動きはあると思うけれども。ですから、それを突き破って何か抜本的な対策を立てる、そういうことをどこかがやっていかなくてはならぬと思う。そういうことについては、何か抱負というものはございませんか。
  45. 国務大臣(赤澤正道君)(赤澤正道)

    ○国務大臣赤澤正道君) もちろん抱負と申しては僭越かもわかりませんけれども、抜本的な対策考える必要はある。たとえば大都市に必然的に伴う交通の混雑緩和にいたしましても、抜本というか、いまこういうことをやったらどうかということも、世間から考えたらそんなたいへんなことがやれるかといったようなことになるでしょうし、しかしながら、とにかく衆知を集めてこれはやらなければいかぬ。それから周辺でも乱雑な発展をいたしますと、あとでこれに手を加えるといたしましてもたいへんですから、それにはあらかじめ計画的に、予定される土地にはやっぱり計画性を持たせまして、そして次第にそれが周辺へ延びていくという形をとりませんといけない。そのためにいろいろな方法考えておりますけれども、いまここで私が感じたままの私見を申し述べるのはいかがかと思いますが、これは企画庁あたりを中心といたしまして、至急にそういう対策を練らなければいかぬ。自治省の場合は、自然に膨張するものですからそこへの社会資本の投入が自然不足してきますので、追っかけ追っかけそれに対して財政的な手当てをするというのが現状でございます。
  46. 成瀬幡治君(成瀬幡治)

    成瀬幡治君 予算委員会分科会ですから、あまりこの問題についてどうこうということはないのですが、私は、要望として、後手後手に回っておるということは、だれが見てもわかることですから、その日暮らしじゃなくて、ひとつ赤澤さんが中心になって何か考えていただかなくてはならぬと思うんです。包帯やこう薬ばかりみたいなことになってしまう。  そこで私は、最近のことで気づいておる点ですが、公共用地先行取得事業債もあるんじゃないかと思うんですが、これはどのくらい予定しておるか、その中で土地の問題、先行取得土地はどのくらいですか。
  47. 政府委員(細郷道一君)(細郷道一)

    政府委員(細郷道一君) 四十三年度は、いまの計画では百三十億です。
  48. 成瀬幡治君(成瀬幡治)

    成瀬幡治君 このごろ大臣、一番困っておることは、こういう問題が出てきたんですよ。公害がございますね、都市で。それは騒音であり悪臭であり震動と、いろいろあります。そうするとおまえ立ちのけということになる。工場主は立ちのきましょうと言っておる。そうすると、これは地方自治体が新しい適地をあっせんいたします。で、行くわけですが、さて、そのあと地が非常に問題になる。あと地は売ろうとしてもなかなか売れない。それだけ事業主は負担になる。ですから、このあと地対策を、たとえば事業債の中で市町村がいろいろな意味で先行投資をして全部買ってしまうということに対して、百三十億ではちょっと——とてもとてもですが、そういうことはこれでいいわけですか。
  49. 政府委員(細郷道一君)(細郷道一)

    政府委員(細郷道一君) あと地の利用のためにとしては、御承知のように、都市開発資金というものが別個に建設省の予算に計上されております。低利で来年度は約四十億でございます。これは工場が引っ越しをしたそのあと地を、将来の公共用地あるいは換地の材料にするという意味で買っておく、こういうものでございます。しかし現実には、そのほかに、たとえば東京で言えば新橋の駅の前のような、いままで非常に超過密しておった小さないろいろな家が並んでおりますところを整理をいたしてやります都市改造事業というのがございます。そういったようなものに対しましても、私どものほうは、先行取得事業債とは別に、地域開発事業債として別個に認めるようにいたしております。それは埋め立て等もいろいろ含めておりますので、額はその分としては明らかにされておりませんけれども、全体では、明年度で言えば六百二十五億円であります。したがいまして、もちろんいまの状態で、これだけの起債をもっていま御指摘になったような問題を全面的にカバーできるかというと、私もなかなかできないと思っております。しかし、それぞれ具体的に計画ができてくるものにつきましては、私のほうでは起債をかなり弾力的に運用いたしまして、当初予定をいたしました起債ワクがきまっておりましても、それを必要な場合には乗りこえてワク外の起債を許可するといったような方法も講ずることによって、個々のケースとして対処していきたい、こういう気持ちでおります。
  50. 成瀬幡治君(成瀬幡治)

    成瀬幡治君 大臣土地対策の問題にからむわけですが、イタリアなんかは、一つ地方公共団体土地を持つということに対しての政策を出しましたですね。これは失敗に終わったようですけれども一つのアイデアとは思います。これは私見ですけれども、私の考え方としては、こういうふうに各市町村土地を持っていくということは、何かにつけて非常にいいことだと思うのです。そこでいまのお話だと、こういうような予算配分をしておりますよと、こうおっしゃる。しかし実際問題として、あと地対策が行なわれておるというのはないんですよ。聞いていない。いや、そんなことはない、こういう実例があるよと、こうおっしゃるかもしれませんけれども、実際問題としてはない、私の知る範囲内では。そこで自治省としては、そういう方針なんだから、あと地はそういうふうに市が積極的に、あるいは町村が積極的に買い上げていくというふうに行政指導をしておいでになるわけですか。
  51. 政府委員(細郷道一君)(細郷道一)

    政府委員(細郷道一君) 積極的かどうかといろいろ見解がございますけれども、私どもとしては、やはり再開発地帯と申しますか、そういう地帯については、どうしても手を打たなければできないだろうということで、具体的な相談がございますれば、できるだけそれに応ずるようにしていきたいというのがいまの態度でございます。
  52. 成瀬幡治君(成瀬幡治)

    成瀬幡治君 そうすると、ある工場の問題がぱっと出てまいりますね。そうすると、それに対していろんな起債の問題、いろいろな問題がありますけれども、そういうものに対しては、自治省としても積極的な姿勢で取り組んでいこうと、こういうふうに了解してよろしゅうございますね。
  53. 政府委員(細郷道一君)(細郷道一)

    政府委員(細郷道一君) 大体そういうことでございます。
  54. 成瀬幡治君(成瀬幡治)

    成瀬幡治君 わかりました。これは非常にいいことですから、ぜひそういうふうにしていただけばいいと思います。  それとともに、こういうことがもう一つあなたのほうで考えていただけませんでしょうか。やっぱり労働人口が非常に問題になるわけです。ですからAの地点からBのほうにかわっていきますと人の問題かある。労働者の問題があるわけです。どうしても住宅の問題が一つ出てくるわけです。そうしますと、住宅に対して、公害で出て行った場合なんですから、それはまあ住宅金融公庫でやるべきことであるとか、あるいはというようなことではとてもとても済まされるものじゃないのです。やはり公害の問題で出て行けということなら出て行きましょう。しかし、労働者のせめて住宅、アパートみたいなものを建設する場合の資金のめんどうを何かどこかで見れぬものだろうか、こういうことを事業主、あるいは地方自治体のほうから言われているわけですけれども、何かそれに対する知恵はありませんでしょうか、それに対する対策
  55. 政府委員(細郷道一君)(細郷道一)

    政府委員(細郷道一君) 現在特別地方債の中で一部中小企業者の住宅を企業主が建てる際の転貸債として、地方団体が一回借りてさらに企業者に貸して建てるというやり方を一部とっております。そのほか、雇用促進事業団の資金で、御承知のように、地方団体が公社や協会等をつくって、その金を利用して労働者住宅をつくるというようなことをいまやっているわけでございます。
  56. 成瀬幡治君(成瀬幡治)

    成瀬幡治君 わかりました。それから先ほど加瀬君の質問に対して、夜間人口と昼間人口との比率の問題ですね、いまむしろドーナッツ現象で出て行っちゃって、過密対策をやろうとすると、人口が減っていくわけなんですね。これは交付税も減っていくわけです。そういうものに対して、一つ考え方として、これを勘案していこうと、こういうお話ですが、どういうふうにこれを埋めようとされているのか。そのウエートですね。あなたのほうでも試算されているのなら、交付税の算定基準の中でこんなふうにひとつやってみようじゃないかというような……。
  57. 政府委員(細郷道一君)(細郷道一)

    政府委員(細郷道一君) 実は交付税法が成立を見ましたならばさっそく補正一つ方法として、具体的にそういう問題に取り組みたいと考えております。いま考えておりますのは、さしあたり大都市の周辺五十キロ程度の圏域において、その距離の遠近と、それから昼夜間人口の格差、比率の格差、その二つを要素にいたしまして補正をすることによって都市計画事業費であるとか、あるいは清掃費であるとか、そういったような財政需要額の計算をしていきたい、こういうふうに思っております。まだ法案御審議中でございますので、具体的な作業はいたしておりません。
  58. 成瀬幡治君(成瀬幡治)

    成瀬幡治君 その問題はそれにしまして、次に、自動車取得税の問題でちょっとお話を聞きたいのですが、まあ総額の問題はよろしいとして、これを配分される基準ですね、自動車取得税を配分される基準。  いま一つ、ついでに、いま加瀬君から指摘されましたように、一キロに対して大体五万円ぐらいじゃないかというお話が出ておりました。まああなたのほうでも、その標準規模と申しますか、一自動車に対してこんなものぐらいだというようなものについての算定基準と申しますか、試算をされたものがあると思いますが、どのくらいの額になるのですか。大体市町村のこのくらいの人口でこのくらいの面積を持っておれば、これはこのぐらい自動車取得税の配分がいくのだよというようなものがあったら、ちょっと示してもらいたいと思います。
  59. 政府委員(松島五郎君)(松島五郎)

    政府委員松島五郎君) 自動車、取得税は、徴税費総額といたしまして五%程度を控除いたしまして、残りました九五%を三割、七割の割合で、三割を府県分、七割を市町村分に交付することにいたしております。したがいまして、総額に対しましては、市町村に対しては六割五分五厘くらいの割合に、三分の二くらいの割合になると思います。これが個々の市町村にどれだけいくかという問題でございますが、配分の基準は、道路市町村道の延長と面積とによって配分することといたしておりますけれども、ただ市町村道の延長なり面積というものは、かなり市町村によって相違がございます。同じ程度の人口市町村でも、非常に市町村道の延長が多いところもございますし、少ないところもございます。また、同じ程度の市町村の面積に対します道路割合も多いところ、少ないところ、非常なばらつきがございます。したがいまして、一律にただ単純な延長と面積とに配分することが適切であるかどうかという点については、いろいろ問題があとるころでございまして、やはり道路交道というものの実態を反映するような補正が必要ではないか、こういうふうに考えております。法律案の中にも配分の際に、道路の延長及び面積において必要な補正をすることができるようになっております。ただいまのところ、何が一番補正として適切であるかということについていろいろ試算をいたしておる段階でございます。したがいまして、この補正方法がきまりませんと、一市町村当たりどれだけというふうに簡単に申し上げられませんが、大きな市だけで申し上げますと、単純な、いまの補正なしに単純に道路の延長と面積とで配分をいたしました場合に、たとえば神奈川県の横浜市でどのくらいになるかと申しますと、市町村分としては大体六億程度でございます。そのほかに、こういういわゆる指定市は、国道並びに府県道を管理をいたしておりますので、三割をもう一度こういう指定市だけ再配分することにいたしております。その分が約一億七千万円程度でございます。したがいまして、両方合わせますと七億三千万円程度になります。ただ、いま申し上げましたのは、単純な道路の延長と面積とによる案分でございますので、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、道路の交通量というようなものを考慮しながら補正をいたすことにいたしておりますので、大都市につきましては、もう少しふえるというふうに考えております。  なお、いま申し上げました数字は、平年度計算の分でございます。  なお、五大市等につきましては、同じような計算をいたしておりますが、名古屋を例にとりますと、市町村分としてまいりますのが約八億、それから指定市分としていきますものが一億五千万円、合わせまして九億五千万円程度でございます。それから大阪市で申しますと、市町村分としてまいりますのが十一億ばかりでございまして、それから指定市分としていきますものが三億程度でございますので、合わせまして十四億程度、こういうようなことでございます。
  60. 成瀬幡治君(成瀬幡治)

    成瀬幡治君 そして加瀬君が指摘しましたように、大体国道は、これは拡幅、舗装、すべて含めて、新設も含めての大体の平均の単価だろうと思いますが、市町村加瀬君が指摘するように、今度二万円であったものが五万円になるという数字はお認めになりますか。
  61. 政府委員(松島五郎君)(松島五郎)

    政府委員松島五郎君) 道路の特定財源がどの程度になるかという試算は一応いたしておりまするけれども、この道路の特定財源が、国道なり府県道なり市町村道なりに、それぞれどれだけになるかという試算は、たいへん計算しにくい問題がございます。と申しますのは、昭和四十三年度の予算で申しますと、国税として入りますガソリン税は三千七百八十四億円でございますけれども、これが全部国道に使われるわけではございません。このうち、一部は府県道の補助なり、あるいは一部は市町村道の補助に向けられるというような問題がございますので、それらを考慮して、国道の場合に特定財源がどれだけあるか、あるいは府県道の場合に特定財源がどれだけあるかということを計算してまいらなければなりませんので、なかなか正確な数字が出にくいわけでございますが、市町村のほうは、比較的国からもらいます分もすぐ——特定財源と申しますと、今回新たに設けられました自動車取得税だけといっていい状態でございますので、これを市町村道の総延長八十四万六千キロ、市町村分として自動車取得税の七割が交付されるものとして二百六十億を割り返してみますと、道路一キロ当たり——そのほかに、市町村には街路事業について国の補助金がございますので、その分を合わせますと、九万四千円程度に一キロ当たりなりますが、そういう街路事業に対する補助金を除いて計算いたしますと、一キロ当たり三万一千円という程度でございます。
  62. 成瀬幡治君(成瀬幡治)

    成瀬幡治君 今度、私も勉強不足で悪いのですけれども、拡幅、あるいは新設も当然使ってもいいわけですよね。
  63. 政府委員(松島五郎君)(松島五郎)

    政府委員松島五郎君) そのとおりでございます。
  64. 成瀬幡治君(成瀬幡治)

    成瀬幡治君 そうして、あなたのほうは国道のことも試算をしてお見えになると思いますが、大体国道は一キロ当たり一億というものも大体認められますか、あなたの試算で。
  65. 政府委員(松島五郎君)(松島五郎)

    政府委員松島五郎君) 加瀬先生がおっしゃったのは、おそらく事業費ではなかろうかと思いますが、私どものほうは、一応その国道の延長、この延長につきましても、先ほど加瀬先生は旧一級国道というふうにおっしゃいましたが、私のほうは現在の国道、一級、二級全部突っ込みで計算しておりまして、二万七千六百キロで、国の特定財源が、先ほど申し上げましたように、予算額では三千七百八十億でございますけれども、そのうち、地方団体の主要地方道あるいは街路事業等に対しまして補助金として千九百六十億円出しておりますので、それを差し引きました残りを国の特定財源というふうに考えますと、千八百十八億円でございますので、一キロ当たり六百五十六万五千円の特定財源、こういうことになるわけでございます。ただし、これは何度も申し上げますように、特定財源だけの計算でございまして、事業費計算ではございません。
  66. 成瀬幡治君(成瀬幡治)

    成瀬幡治君 県道はどのくらいになりますか。
  67. 政府委員(松島五郎君)(松島五郎)

    政府委員松島五郎君) 県道は、特定財源としては地方道路譲与税、軽油引取税、石油ガス譲与税、これらのものと国から受けます補助金とを合わせまして、特定財源が三千二百三十億円程度になりますので、総延長十二万二千キロでもって割り返しますと、二百六十四万七千円程度になるものと思っております。
  68. 成瀬幡治君(成瀬幡治)

    成瀬幡治君 これを計算をしてみて、数字をお聞きになったと思いますが、どうなんですか、これで。
  69. 国務大臣(赤澤正道君)(赤澤正道)

    ○国務大臣赤澤正道君) きのう一般質問の最後に、加瀬さんがいきなりこの道路の問題についてこまかい御質問があって、だいぶ自治省はまごついたのですが、そのために建設省の道路局などというものがあるわけですから、こまかいことで実は参ったわけであります。それできょうは、その雪辱をはかるために皆川参事官がちゃんとこまかいことを準備してきたわけでございます。残念ながらやはり道路行政というものは国が行なう、建設省中心の計画に、われわれとしては即応していくのがやはりいまの段階では重点なんです。そこで国道、地方道の負担割合や何かのことを申されますけれども、やはり道路は、その重要度から見ると国道、地方道になっていくことはやむを得ぬ。地方道でも市道あるいは町村道になっていくわけですね。それから社会開発のうちで一番おくれているのは、やはり世界的に見ましても道路だと思うのです。そうすると、一般会計の予算の取り合いになりますと、どうしても国道に重点がかかる段階にまだあるわけでございます。国道のうちでもやはり一級国道からかかるのはやむを得ないことでございます。そういう順序をいまとっておりますので、先般閣議決定を見ました第五次の道路計画六兆六千億かけてやりますと、大体国道は片がつくのじゃないか。その過程を通じてぼつぼつ地方道のほうにもかかりませんと、やはり国道ができたらそれでいいというわけのものではありませんし、きのうは、もう国道、地方道で事故がある、どっちが多くなるかというような質問を受けまして、たいへんまごついたわけでございます。地方道は総延長も長いには長いけれども、また地方道の中でも市道あたりで非常に混雑して事故を起こしておるようなところが、やはり国道のひまなところよりあと回しになっているというのが点々実情としてあるわけでございます。自治省といたしましては、やはりこの地方団体の自主性というものを尊重しなければなりませんので、ある程度の道路予算が確保された場合には、それぞれ地方団体内部において重要なところから手をかけていく、こういうことになるわけですけれども、まだそこまでの段階にきておらぬのが残念ながらの実情であると思うわけであります。  そこで、一キロ当たりが一億円だ、あるいは二万円だ、三万円だと申されますけれども、現状は残念ながらそういうことでございますけれども、決してゆるがせにしておるわけではございませんので、社会開発と申しますか、特に産業開発の中の動脈でございまするから、一日も早く地方道も国道並みの整備をしなければならぬと、かように考えてはおるわけでございます。
  70. 成瀬幡治君(成瀬幡治)

    成瀬幡治君 まあ大臣がこういう数字を見てびっくりされた、それからこの数字を見れば市町村の人たちも非常に腹を立てることだと思うんです。ですから対策はおのずからそこに出てまいりますから、これ以上の議論をする必要もないと思いますからこれでやめますが、しかし今度は、税収のほうのことで少しお尋ねしておきたいと思うんですが、まあことしは三百九十四億、平年度五百十一億ということですね、予定をされておるようですが、もっとほんとうはあるんじゃないですか、税収は。
  71. 政府委員(松島五郎君)(松島五郎)

    政府委員松島五郎君) 自動車取得税の収入見込み額につきまして、もっと収入があるのではないかというお尋ねでございますが、これはしばしば私どももそういう御質問をいただいております。ただ私どものほうといたしましては、初めての税でもございましたので、途中の試算の過程におきましては現在よりも低い数字であったことは事実でございますが、逐次新しい実績等をも勘案をいたしまして、自動車取得税の課税対象の見込み台数というようなものも修正をしてまいっておりまして、たとえば昭和四十三年度の課税の基礎になります新車の台数にいたしましても、現在三百二十九万三千台というふうに見込んでいるのでございます。この数字は、運輸省が自動車関係の登録の、予算の基礎に使いました数字を基礎にいたしたものでございますが、なお軽自動車のうちの四輪の乗用車につきましては、最近の実績が非常に伸びておりますので、これはこの分だけは最近の実績に置きかえまして修正をいたして、いま申し上げました約三百三十万台を一応課税の対象の基礎にいたしました。それから、そのうち、地方団体あるいは国等の所有、取得します自動車につきましては非課税となっておりますので、その率を自動車税等を参考にいたしまして控除いたしまして、課税見込み台数を三百十三万八千台といたしまして計算をいたしているものでございます。なお、自動車工業会等におかれましてはもっとあるといわれますが、台数においては、新車においてはほとんど差はないと思っております。もちろん若干自動車工業会のほうが多いようでございますけれども、これはまあそれぞれのお立場で見積もりを立てておられる面もあると思いますので、しかし、そう大きな差はないものと考えております。問題は、自動車工業会等で試算をされております際には、徴収率は一〇〇%であるという計算でもって税収入見込みがこれだけだというような計算をしておられますけれども、これはやはり一〇〇%であることが望ましいことではございますけれども、実際の見積もりということになりますと、なかなか一〇〇%というわけにはまいりません。そういった面の相違があるために、まあ世間でいろいろいわれております数字と私どもの見込みとの差があるのではないか、こういうふうに考えております。
  72. 成瀬幡治君(成瀬幡治)

    成瀬幡治君 私はいろんなことが聞きたいわけですけれども、ずばりお聞きしたいことは、中古車課税の問題ですね、附帯決議等もあったわけですが、これは地方行政委員会で議論があったと思うんです。同じものが他に転売されていくたんびに——土地なんかもございますけれども、こういう消耗品で、なくなっていくものへ何べんでもかかっていくという、そういうのは税の体系上から他に例がないんじゃないかと思うんですが、どっかにありますか、こういう例が。
  73. 国務大臣(赤澤正道君)(赤澤正道)

    ○国務大臣赤澤正道君) 例はないわけではありませんが、大体、自動車を持ちますと自動車税がかかる、物品税がかかる、ずいぶん税金がかかるわけです。その上なお自動車取得税まで創設しましたのは、先ほども指摘のとおりに、地方道の道路財源がないかということでさがし回って、やっとここに一つの担税力を見つけたわけですが、これは流通課税の一種ですから、自動車を持っている限りは毎年、毎月かかるわけのものでもありませんし、取得したときに一回だけ払えばいい。これがどれだけ買い主の負担になるかということですけれども計算してみますと、そうたいしたものではないわけです。たとえば耐用年数を三年にし、あるいは五年にしましても、一ヵ月当たりどのくらいの負担になるか、割り算して見ますれば、たいしたことはないということは、人にもよりますが、そう大きなことでもありません。一回限りの税金でもありますので、流通税の性格からいたしまして、少なくとも無理なものではない、かように考えておるわけでございます。
  74. 政府委員(松島五郎君)(松島五郎)

    政府委員松島五郎君) 中古車に課税をするのは適当でないではないかという御指摘でございますが、ただいま大臣から御説明もございましたように、自動車取得税は道路の目的財源に使うというのではございますけれども、これを税の面から見ますと、自動車を取得するというそのことの中に担税力を見出して課税をするというのでございます。そういう意味では一種の流通税、したがいまして、百万円の車を買われる人の担税力は、その対象が新車であるか中古車であるかということによって区別するということは、必ずしも適当ではないのではないか。百万円の自動車を買われる支払い能力を持たれる方は、中古車で百万円の車を買われようと、あるいは新車で百万円の車を買われようと、担税力は同じと見るべきである、こういう観点から中古車についても課税をすることにいたしておるわけでございます。
  75. 成瀬幡治君(成瀬幡治)

    成瀬幡治君 政府としてはそう言わざるを得ぬと思いますけれども、奢侈品や貴金属を見ても、幾らでもいろいろこんなものがあるわけです、人から人へ転売されるのは。そういうものについても流通税というものはないのです。苦しまぎれで、どうにもならぬというのでやったのだということは、私もわかりますけれども、しかし、その税体系から見て、こういう中古車——売るたびに課税をしていくということはいいか悪いかということになれば、これなんか悪いということになる。ただ財源がないからやむを得ないのでやったのだと言うなら、話はまた別になってしまう。ですから、将来はこういうことはしないほうがいい。やめなければならぬ、廃止の方向で。いまはやむを得ずやっていたが、将来は廃止すべきだという、本心は、そういうふうにお考えになっているわけですか。
  76. 国務大臣(赤澤正道君)(赤澤正道)

    ○国務大臣赤澤正道君) そういう時代が来ればけっこうだと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、やはり道路をこわす大きな犯人の一つは自動車、しかも、自動車はまだぜいたく品です、日本では。ぜいたく品ではなく使っている方もありますけれども。だからやはり、自動車を使うというほどの人は、先ほど局長も申しますように、担税力があると考えなければなりませんので、私どもは、先ほど申しました道路の目的財源としていろいろ考えたあげく、これを選んだのでありまして、やはり、道路の整備が一応形がついたということになれば、あえてこういう取得税を徴収することはないと思います。
  77. 成瀬幡治君(成瀬幡治)

    成瀬幡治君 害があったとか益があったとか、損得という議論なら、私はまた別な議論が実は言われるわけです。ただ自動車が道路をいためるから——道路のいたむのは自動車があるからだということなら、自動車がどれくらい経済の発展とかいろいろなことについて貢献をしておるか、そういう問題から大きく議論をしなければならぬ問題だと思いますから、そういうことについては、あまり大臣がそういうことを言われないほうが私は穏当だろうと実は思っている。そうじやなくて、税の体系から議論をしていった場合に、もし、そういう流通税というようなものでやるとするならば、適当なものがもっと他に財源を求めようとすれば、ある、あるいはダイヤモンドにしましてもあるわけです。特に骨とう品、これが無税ですけれども——物品税はないわけです。そういうようなものがあるわけです。持っている人から言うならば、もっとぜいたくにやっている人から取ろうとすれば取れるわけです、ただ、そういうことでつかみにくいということがある。あるけれども、やはり感心したものじゃない。ですから、たとえば最低課税限を引き上げていく。課税限を引き上げるというような——じゃ、将来はやっぱりこういうものは廃止の方向にいくべきなんだというプリンシプルが自治省に立っておらなければいかぬと私は思う。提案して、この間やっておるばかりなんだから、そんなことまで言えぬ、通ったばかりなんだから無理だと、こうおっしゃるかもしれぬけれども、プリンシプルはあっていいと思う。
  78. 国務大臣(赤澤正道君)(赤澤正道)

    ○国務大臣赤澤正道君) 先ほど申しましたように、免税点にいたしましても、税率にいたしましても、やっぱりこれは将来とも避けていくべきものであると思いますけれども、さっき申しましたように、道路目的財源としていろいろ考えたあげく、その一つとしてこれを探し出したわけでございます。道路とそれから車両というものは、これは実に密接な関係があることはみんな認める。加瀬さんに、きのう、地方道路財源はよろしいのか、いや全く不十分でございます、と答弁をさせられたわけであります。これで、全く足りないことは皆さん御承知のとおりでございますけれども、といって、新税を創設するのに何かないかといって探すというわけにもまいりませんし、まあまあ、新税をつくったり増税したりすれば、どっちみちそれは国民から批判を受けることはわかりますけれども、やむにやまれずやった。いろいろな税を探すにしても、まあまあ適切なものであったというふうに私は判断しているわけでございます。  そのプリンシプルということは、これは税というものはそういうものですから、やはりできるだけ減免税を考えていくのは当然のことでございますので、プリンシプルという点では同感でございます。
  79. 成瀬幡治君(成瀬幡治)

    成瀬幡治君 意見のようなことになりますから、これで私はやめようと思いますが、少なくとも税の体系、目的税そのものに対してのいろいろな意見があると思います、こういうものを新設することに対して。そうして道路財源としてこれをやったんだというが、中古車の問題は、附帯決議等もあります問題で、ぼくは来年度のいろいろなときに十分考えていただきたい。そうでないとおかしなことになっちゃって……。もっとぼくは政府としても努力されてもいいと思うのですよ。それから、これは脱税の犯罪をつくる、むしろ、こういうことになると、結果的には脱税犯人を製造するようなことにもなりかねないんですよ、実際問題として。ですから行政というものは、ぼくはそういうものじゃないのですから、十分そういう点を考えていただきたいということを、まあ意見と申しますか、要望をして終わろうと思うのです。
  80. 政府委員(松島五郎君)(松島五郎)

    政府委員松島五郎君) 先ほど成瀬先生にお答えをいたしました道路一キロ当たりの特定財源の問題につきまして、ちょっと補足さしていただきたいと存じます。と申しますのは、国に入りましたガソリン税のうち、地方団体に対して補助された分は、それから落として計算していると申し上げましたが、この落とし方は地方団体に交付されます補助金は、全部ガソリン税から交付されているものという前提に立って落としているわけであります。しかし、国の場合の予算はガソリン税だけでできておるわけじゃなくて、それにプラス国債収入というようなものも合わせて予算ができておりますので、補助金になった場合に、全部ガソリン税からそれを補助金に出しているわけでは必ずしもないわけでございますが、その辺の区分けは一応つきかねますけれども、一応そういう過程のもとに出しておりますので、必ずしも正確な数字ではないということをお含みの上、お取り扱いをいただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  81. 加瀬完君(加瀬完)

    加瀬完君 いま数字の問題ですが、私も訂正をいたしておきます。きのう建設大臣が一キロ一億と言ったので私も一億と申しましたが、元一級国道は一千万でありますので訂正いたします。  それから大臣に伺いますが、まるきりいまの道路財源とは違う問題でございますが、国家公安委員長に質問することになるかもしれませんが、このごろ道路の駐車停止が非常に多くなりまして、それで、これからすぐ参議院の選挙が行なわれるわけでありますが、ほとんどいままで演説をするのに適当だと思われるところは全部駐車禁止で演説できないようになっております。これを一体選挙局なりあるいは警察なりで何とかしてもらわなければ、演説をする場所がないという注文がだいぶ私どものほうに出ておるわけでありますが、この点、何か適宜な対策をお考えいただけますか。——早急に研究していただければいいんですよ。
  82. 国務大臣(赤澤正道君)(赤澤正道)

    ○国務大臣赤澤正道君) まことにもっともなことでございまして、これはまあ選挙はしょっちゅうあるわけのものではありませんし、そういう際に自分の政見を述べる場所がないということになると、これは大きな問題でございますので、至急に検討いたしたいと思います。  〔主査退席、副主査着席〕
  83. 宮崎正義君(宮崎正義)

    宮崎正義君 過日の予算委員会で、自治大臣に時間がありません関係でちょっとしか触れませんでしたけれども、これも分科会でございますのでごく簡単に要点だけを申し上げまして御答弁を願いたいと思います。  四十三年度の予算は、御存じのように硬直化されておりまして、地方自治体は相当のまた財政難が予想される。そういう観点から考えましても、今回のような鹿部村の問題がまた随所に起きてくるのじゃないか。過去においてもかなりの無償譲渡とか不正の行為が取りかわされておったという事例がかなりあります。そういうことから考えまして、大臣にお伺いしたいことは、地方自治体のやっていることがなぜ早くわからないのかということなんです。そして早くわかれば速戦即決主義といったりっぱな手もできたんじゃなかろうかと、こう思うわけなんですが、こういう自治体に対する国家の組織形体というか、そういうものについてちょっと御説明願いたいと思います。
  84. 国務大臣(赤澤正道君)(赤澤正道)

    ○国務大臣赤澤正道君) 御質問の趣旨がよくのみ込みかねるわけですけれども、要するに公有の財産をやたらに無償譲渡することは、私はそういうことがあっちこっちあるとは考えませんけれども、調べてみると多少あるようでございます。よほど財政的にゆとりのある町村でも、やっぱりみだりに公有財産などというものは無償譲渡などすべき性質のものではないはずですが、ただ、先般も国会の予算委員会で述べましたけれども、都会地からいなかにくる人たちはなかなか計算高くていなかの人をだますことにはなかなか妙を得ておる向きがありまするので、いなかの町村長あるいは議会の諸君が、そういうことで一ぱい食わされないかということをたいへん憂慮しておるわけでございまして、これはあっちこっちそういう例が、たとえば地域の振興計画に協力をするとか、いろいろなことでしかるべき趣旨を述べて、じゃひとつ村の財産をただでくれぬかというようなことに乗ぜられておる向きがあるということを聞いておるわけであります。それをどこでどういうことがあったかということをことごとく調べておるわけではございませんけれども、しかしながら、やっぱりあとで問題が起こると自治省としても指導を誤ったことになりますので、よく注意をいたしますが、かりにそういったことがありましても、やはり住民には監査あるいは直接請求それから議会での審議を通じての批判ということもありまするので、そういうおかしなことは起こらぬはずですけれども自治省といたしましては十分注意をいたしたいと、かように考えております。
  85. 宮崎正義君(宮崎正義)

    宮崎正義君 私の申し上げている問題の件は、これは地方自治体の議会で議決をしない以前に、村長と民間会社とが無償譲渡の公証人を立てて契約を取りかわしたわけです。それから騒がれて村会のほうにかけて契約を行なったということなんです。そしてそういう経路があって、これは御存じだと思いますが、一千万の保証金を積むということでやったわけです。そしてその受けた会社は、最初東京航空事業株式会社といっておりましたのですが、途中で日本航空事業株式会社という会社の名前に変えまして、そしてその会社がさらに無償譲渡を受けた契約の一部を、それを担保のような形で、そして転売したような形で契約をまた取りかわしている。その金額、契約書等皆ありますが、その契約は村では知らないわけです。知らないうちに第三者にそういう契約を結んで、今度は有償転売しているわけです。その期日がきたらまたそっくりそのまま返すという代物弁済のような形で契約をやっている、こういうことです。大体私の申し上げたいことは、そういう経過でこの事件が起きているわけです。先ほども申し上げましたように、分科会の席上でございますので、こまかいことは申し上げませんですが、自治法の二百三十四条の二に、これは該当するのじゃないか。この事例は、三十六年の十二月の二十六日にも、行政裁判等でこんなような事例で判決が下っております。こういう観点から考えまして、明らかに地方自治法の違反じゃないかというふうに思うわけです。この点についてお考えをお伺いをいたしたいと思います。
  86. 国務大臣(赤澤正道君)(赤澤正道)

    ○国務大臣赤澤正道君) 御指摘の案件につきましては、ざっと私報告は聞いております。しかし大体こういったことが町村長の専決処分でできるわけのものでもないし、まあかりに仮契約をいたしたといたしましても、議会に報告するのは当然なはずですけれども、そういうことが行なわれていないとすると、これは明らかに違法の面もあると思います。それからそれを転売したということ、それからまた契約どおりに契約の履行が果たされつつあるということ、こういったことにつきましても、実はちょっと調べてみましたけれども、何か遊覧飛行のために飛行場をつくるということのようですが、工事はおくれてはおるけれども、だんだんやっておるという情報も聞いておりますし、いろいろせんじ詰めてまいりますと、やはり会社そのものが譲り受けたものを個人の名義に書きかえたものというのは、これはどうも私ども納得いきませんので、その点はやはり調査して成規の手続によらさなければいかぬ、かように考えております。
  87. 宮崎正義君(宮崎正義)

    宮崎正義君 その契約の履行期限が六月一ばいらしいんです。第三者に譲りました、転売した分です。ですからまだ二ヵ月ばかりありますけれども、いずれにいたしましても、こういったようなことが——譲渡されて、その間、この件について結局税のほうでは固定資産税の徴収という面から考えましても、また税の評価の問題にいたしましても、第三者にやったのは二千三百万の契約のような内容なんです。こういうものに対する課税といいますか、それなんかはどんなふうになっていきますでしょうか。
  88. 政府委員(松島五郎君)(松島五郎)

    政府委員松島五郎君) 私詳しい内容を存じませんが、税の面から申しますと、村有財産でありますならば、これはもうもちろん課税の対象にならないわけでございまして、固定資産税は、その年の一月一日現在で固定資産課税台帳に登記されております方に課税をされるわけでございますから、その日現在で、譲り受けました新しい所有者の名義に登録されておりません場合は、その年分の税は少なくとも課税をされないということになろうと思います。
  89. 宮崎正義君(宮崎正義)

    宮崎正義君 それをよくまたお調べになって、後日また決算委員会とか、あるいはまた専門委員会におきまして、この問題は私は他日に譲っていきたいと思います。いずれにいたしましても、地方自治体か地方自治法の違反をしていくということは、これは監督の面からいきましても十分に注意しなければならないのじゃないか、こう思うわけでございますが、このことを一言申し上げまして私の質問を終わりたいと思います。大臣からもう一度御所信を……。
  90. 国務大臣(赤澤正道君)(赤澤正道)

    ○国務大臣赤澤正道君) 自治省といたしましてよく事情を調査いたしまして、行政に誤りないように指導いたさなければならぬと考えます。  〔副主査退席、主査着席〕
  91. 石本茂君(石本茂)

    石本茂君 私は、たいへん素朴な質問だと思うのですが、実は路地裏に住んでおる一人でございまして、常にその周辺に起きている小さな事柄についてお聞きしたいのですが、先ほど来、あるいはまたいつもいつも出ている問題ですが、この都市周辺の人口過密地域に対します政策は、手を打っていただいているのでございますけれども、実はたとえば国道を離れまして裏に入ったところに住んでおりますと、そこには水道ももちろんございません。ガスなんというものは、もちろんそんなものはございません。道路はもちろん自分の買った土地、いわゆる私道でございます。火事がありましても、消防車どころか小さな二輪車も入ってこれないというところに実は住んでおります。そうして雨でもたくさん降りますと、自分たちのつくった道のわきのどぶでございますが、これがあふれまして、とにかく普通のくつをはいておったのでは歩けない。時間がたつのを待ってやっと家の玄関に入っていくというような状況でございますが、こういうものを自治省のお立場で、どこでもいい家さえ建てればいい、とにかくそこに住めばいいということでございますのかどうか。人家があります限りは、やはり人のちゃんと通れる道もあってほしいし、できますことなら、火事のときには消防車くらいは入ってくるくらいの道路かほしいと思いますし、どぶにしましても、いつもいつも詰まってこわれるたびに住民が集まって相談をしない限りは直すこともできないというような状況でよろしいものでございましょうかどうか。  それから同時に、そういうものに対しましてどの程度の指導措置がなされておりますものか。どこへ一体訴えていったらいいのでしょうか。区に言っていっても、さっぱり聞いてもらえないというのが実は実情でございます。
  92. 国務大臣(赤澤正道君)(赤澤正道)

    ○国務大臣赤澤正道君) それが、先ほどから御質問になっております過密地帯に最近発生している。そういう乱雑の家などが建ちまして、そこに十分な社会資本の投入ができておらぬものですから、交通の問題といわず、ただいま御指摘のような問題で、いろいろ地域住民の不満を買う種がそこへできておるわけです。ですから、やはりあらかじめこの都市周辺の発展の予定される地域に、ちゃんと計画的な都市開発を行なわなければ、そういう結果に当然なるわけでございまして、残念ながらいまの段階では、われわれの政策のほうがおくればせにそれに追いつこうとしている状態でございまして、もっと先んじて計画性のある発展をしなければならぬというのは当然のことでございますが、個々の問題になりますと、やはりただいま御指摘の東京の水道、これも水源の関係で、まだどんどん広がっていく地域全体に給水する域に達しておりませんので、これはあとで局長のほうから説明させますけれども、年次的に水源を確保するということによって住民の満足を得るように計画は立てられてありますし、下水だって同様でございまして、ここに家を建てたけれども、まだ水道がこんじゃないか、下水道がこんじゃないかとおっしゃいましても、なかなかその域までいっておらぬわけでございまして、完全にそういう住める地域が整備されて家が建つのじゃなくて、家を建てられたあとから追いついていくような現状でございまするので、いろいろと御不満を買っているわけでございます。  水道につきまして計画を申し上げましょう。
  93. 政府委員(細郷道一君)(細郷道一)

    政府委員(細郷道一君) 東京都の水道の整備の状況でございますが、現在は特別区を通じまして九一%の普及率になっております。これは四十一年度でございます。都の計画によりますと、四十五年度で九五・五%までいく。現在でも、すでに区によりましては一〇〇%のところもあるわけでございます。区ごとに見てまいりますと、練馬区とか板橋区とかいうところが非常に普及率が低うございます。それらにつきましては、いま利根川からの水を取る工事等をいたしております。四十五年度までにはおおむね満足できる状況になると思います。自治省といたしましては、そういった東京都の持っております事業計画が、計画どおり達成されますように、事業の認可の面について厚生省に話をするなり、あるいは資金について起債を許可するなり、そういう面で御協力を申し上げたい、かように考えます。
  94. 石本茂君(石本茂)

    石本茂君 いま申されましたように、最も普及率の悪い練馬区に住んでおりますので、先ほどのようなことを申し上げたわけでございますけれども、いかがなものでございましょうか、今後、家を建てる場合には、必ずそこには道路が予定されて、そうして上水道なども計画されているところでなかったら家を建ててはいかぬのだというような、そういう規則なり、あるいは指導なり、指示なりできないものでございましょうか、それは非常に困難なことなんでございましょうか、お伺いいたします。
  95. 国務大臣(赤澤正道君)(赤澤正道)

    ○国務大臣赤澤正道君) 一定の地域に家を建てちゃいかぬという私権の制限は、ちょっとむずかしいと思いますが、やはりわれわれのほうで政策が先行すると申しますか、将来発展を予想される地域には、言うまでもなく電気、ガス、水道、下水、こういったものが完備しなければなりませんし、また、当然でございまするので、やはりそういった政策が先行するような方法をいま研究しておりまするので、御心配のようなことがないようにいたしたいと考えております。
  96. 石本茂君(石本茂)

    石本茂君 もう一つまつわる問題でございますが、先ほども申しましたように、区道も何もない土地でございますと、非常に高い坪単価の土地を買いまして、六十坪あるというからほんとうに六十坪あるのかと思って行きましたら、さっき申しました私道のかど地でございますと十坪以上が道なんだというようなことで、何か、だまされたような気がするのでございますね。こういうことにつきまして、これは道路との関連でございますが、こういうものについても、しかたがないのだ、それは買った者が悪いのだと、知らなかった者が損をしたのだというようなことで済むのでございましょうか。坪単価十万円以上のところでもそういうことがございますが、この辺につきましても、どういいますか、治安といいますか、住民生活の安定ということの基本的条件をかまえておいでになります自治省のお立場での御意見を聞いておきたいと思います。
  97. 国務大臣(赤澤正道君)(赤澤正道)

    ○国務大臣赤澤正道君) 都市開発のところでさっき申しましたけれども、結局これは自治省というよりは、やはり主管は建設省と私考えるわけでございます。決して逃げるわけではありませんが、やっぱり都市開発に先行するものは、都市政策、都市利用計画というものがまず国で立てられなければならぬ、また、公共団体で立てられなければならぬものであると私ども考えておるわけでございまして、そういう計画されている地域でありましたら、まあ先生がおっしゃるようなことは起こらないのじゃないかと思われる。ただ、そういう無計画なさら地へもっていって家をお建てになりますと、いまおっしゃるようなことが私は当然起こってくるのじゃないかと思いますので、先ほどから申し上げますように、計画をまず先行させなければならぬ。いま都市計画法が提案されておりまするけれども、こういうものがやっぱり先行いたしましてまず御可決願いましたならば、よほど事情も違ってくる、かように思っております。
  98. 石本茂君(石本茂)

    石本茂君 いまの大臣のおことばを信頼しておきたいと思います。どんどん、どんどん家が建ってまいっておりますので、ぜひこういう問題は早くにおきめくださいまして、そうして安心して家を建てて、安心してそこで住めるようにしてほしいということを要望いたします。  次にお伺いしたと思いますのは、交通安全対策のことでございますが、昨年来、非常に歩道橋がふえましたし、信号機の設置も多くなりまして、とても喜んでいる一人でございますけれども、なお全国的に見ましてどれくらいあと整備なさらなければならない状況でございましょうか。その辺をお聞きしたいのです。
  99. 政府委員(細郷道一君)(細郷道一)

    政府委員(細郷道一君) いま交通安全緊急三ヵ年計画というものをやっております。それがちょうど四十三年度で三年目になります。この計画をまず緊急にやるべきであるということで、その点についての財政的な配慮を国においても、地方においても、交付税に算入する等によって措置をいたしております。さらに、昨年法律でできました通学路、通園路の交通安全、それから踏切道の改良、こういつたようなことにつきましても、昨年末に計画をつくりまして、昨年と本年の両年にわたりましてこれを全部やってしまう、こういうことで、それぞれ財政措置を講じております。したがいまして、こういったことによりまして漸次交通安全施設を整備してまいりたいと思いますが、この三年計画が終わりましたら、また次にどういう段階の手を打っていくかということを政府としても考えなければならぬだろう、こういうことに考えます。
  100. 石本茂君(石本茂)

    石本茂君 大体四十三年度、今年度をもちまして最も住民として、国民として気をつけておりましたものは解消するであろうというふうに理解してよろしゅうございますか。
  101. 政府委員(細郷道一君)(細郷道一)

    政府委員(細郷道一君) まだ私は十分であると思いません。と申しますのは、たとえば交通安全三ヵ年計画によりますと、道路の路線を指定いたしまして、その指定された——交通量の多い路線でありますが——そこについて交通安全施設をする、その指定をされております路線の延長はまだ十万キロにも達していない。御承知のように道路の延長は全国で百万キロ近くあるわけでございます。十万キロにも達していない。数万キロ一六万キロぐらいであったと思います。その程度でございます。それからまた、通学路、通園路につきましても、学校の周辺数百メートルの範囲について施設を整備していこうと、こういう計画でございます。したがいまして、これだけでは私はまだ十分でないと考えます。そういう意味合いにおきまして、先ほども申し上げましたように、これができましたら次のまた段階において漸次手を打っていくべきものと、かように考えております。
  102. 石本茂君(石本茂)

    石本茂君 もう一つ関連でございますが、例の自動車などが、何といいますか、違反をいたしましたあの罰則金でございますが、四十二年度と申しましてもなんでございますが、大体年間どれくらいの額が罰則金として徴収されておりますのか。  それからこのお金は全部この安全対策のほうに回されているのだというように聞いておりますが、そのとおりでございますのかどうか、この際、お聞きしておきたいと思います。
  103. 政府委員(細郷道一君)(細郷道一)

    政府委員(細郷道一君) 道路交通法が昨年改正になりまして、比較的軽微な違反事件につきましては反則金制度ができました。その反則金制度によって収入されました反則金は、全部国から地方団体に回して交通安全施設の整備に使う、こういうことになっておるわけでございます。反則金制度がこの七月から実施されます。本年度はそれによります収入は百二億円、平年度になりますれば百五十億程度になろうかと思っております。
  104. 石本茂君(石本茂)

    石本茂君 どうもありがとうございました。  最後にもう一点お聞きしておきたいのは、先般、これは新聞紙上で拝見したことですが、選挙運動におきまして文書活動がかなり自由化されるだろうということでございますが、当局におかれまして、どの程度一体これが自由化されていくのか、もし御説明いただけますならば、その範囲といいますか、あるいは事例で、こういうふうな書き方の文書ならいいんだというような事例でもございましたら教えていただきたいと思います。
  105. 国務大臣(赤澤正道君)(赤澤正道)

    ○国務大臣赤澤正道君) この間、ある新聞に非常に次の参議院選挙では文書活動、その他自由化されるというふうな記事が出ておりました。内容は、選挙制度審議会などでも、思い切って自由化の方向へ進むべきである、それで、大体の大筋については答申に出ておりますけれども、たとえば文書活動をどうするかというこまかい点につきましては、何のあれもないわけでございますので、実は公職選挙法の一部改正ということでいまこの問題を検討しておる最中でございまして、この国会にぜひ間に合わせまして皆さんの御審議をいただきたいと思ってはおります。が、しかし、いまの段階では、これは現行法がちゃんと現存しておるわけでございまするので、かりにこの法案が通らなかった場合には、やはり現行法でやるということになれば、法律できめられておるものを、自治省で緩和するとか、特に警察でそれ以上取り締まるという筋合いのものではないと思いますので、現状では、やはり現行法を厳密に行なうというふうに考えておいていただきたいと思います。
  106. 石本茂君(石本茂)

    石本茂君 以上、終わります。ありがとうございました。
  107. 主査(宮崎正義君)(宮崎正義)

    主査宮崎正義君) ほかに御発言がなければ、これをもちまして自治省所管に関する質疑は終了したものと認めます。  午後一時半まで休憩いたします。    午後零時二十四分休憩      —————・—————    午後一時四十二分開会
  108. 主査(宮崎正義君)(宮崎正義)

    主査宮崎正義君) ただいまから予算委員会第四分科会を再開いたします。  分科担当委員の異動について報告いたします。  本日、成瀬幡治君が委員辞任され、その補欠として柳岡秋夫君が選任されました。     —————————————
  109. 主査(宮崎正義君)(宮崎正義)

    主査宮崎正義君) 昭和四十三年度総予算中、労働省所管を議題といたします。  この際、おはかりいたします。政府から提出されております予算概要説明につきましては、口頭による説明を省略し、これを本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんでしょうか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  110. 主査(宮崎正義君)(宮崎正義)

    主査宮崎正義君) 御異議ないものと認め、そう取り計らいをさしていただきます。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  111. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 私は四十三年度予算に関連しながら、労働省関係の方々の労働政策に関して少しお尋ねをいたしたいと思います。  まず、いわゆるコストインフレ論というものが特に経営者の側からは掲げられております。いま、名目賃金、実質賃金、労働生産性など、三十五年を一〇〇として比べてみますと、名目賃金は四十一年度で一八三・七、それから実質賃金で一二九・三、労働生産性で一六七・三。で、これ、四十二年度はおわかりでしょうか。
  112. 政府委員(石黒拓爾君)(石黒拓爾)

    政府委員(石黒拓爾君) 四十二年度につきましては、名目賃金では二〇五・一でございますが、生産性につきましては集計ができておりません。
  113. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 そういたしますと、全体にいままでの経過を見てまいりますと、労働生産性に対して実質賃金の伸び率というのは低いと考えられるんですけれども労働省のほうはそれをどうお思いになりますか。
  114. 政府委員(石黒拓爾君)(石黒拓爾)

    政府委員(石黒拓爾君) 通常、生産性と賃金との比較の場合には、名目賃金と生産性を比較いたしておりますが、それは大体長期的にはほぼ見合った形でございます。実質賃金は、もちろんそれからCPIの上がり分を差し引きますので、実質賃金の上がり方は生産性の上がり方をかなり下回っております。
  115. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 労働大臣にお伺いしますけれども、いまのように名目賃金と労働生産性とを比較して、それでもなお名目賃金と労働生産性とつり合いがとれているというふうにいわれておりますけれども、そういう考え方は、労働大臣は妥当だとお考えになるでしょうか。私は実質賃金と比較して賃金が生産性に追いついていないというふうに思うんですけれども……。
  116. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 名目賃金と生産性を比較いたします場合に、その年によってそれぞれ違っておるわけでございますけれども、多少長期的、マクロ的に見ます場合には、これがつり合いを保っておるといって差しつかえないのではなかろうかと存じます。これは西独でございますとかアメリカでありますとか、外国の事例と対比いたしますと、きわめて必然に明らかになるところであると考えます。
  117. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 労働大臣もそうすると名目賃金と比較すべきであるというふうに考えていらっしゃるわけですか。
  118. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 一般的に賃金と生産性の関係を論ずる場合に、通常そのような方法がとられておると、こういうふうに考えます。
  119. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 私、働く者の立場からしますと、実質賃金、実質賃金の中には租税も入っておるわけですね、税金も含まれている。当然その実質賃金と比べるべきだと思っているのですけれども、そのほかに労働分配率で見ますと、各国に比べて日本のほうはずっと低いんですね。ですからそもそも賃金の出発点において、ほかの国に比べて賃金が低い、そこのほうの是正も必要だというふうにお考えになりませんか。分配率に対応してもっと賃金を上げていくべきだと。
  120. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 分配率の比較でございますが、算定方法等がほぼ似通っている諸外国と比較をすることになるだろうと思います。資料として先ほどお耳に入れましたのはそういう数字でございます。その場合に、よくいわれますように、日本においてとりわけそういう企業の負担が多いといわれておる福利厚生費的なものが、日本の数字には反映しておらないということがありますでしょう。それからまた、日本の経済が非常に急速に成長してきた過程で、資本の蓄積が進んでいった。それによって生産も拡大し非常に多数の労働者のために新たな雇用の機会が開かれたという事実も出てきておるわけでございますが、そのことが、日本の分配率がなおかつ低いことの大きな原因である、このように考えておる。収益率が高いから労働の分配率が低くされておるのだという結論は、諸種の資料に基づいて検討いたしますときに、必ずしも出てきておらないと思います。分配率自身も、最近の労働力の需給逼迫という事情もあり、賃金が毎年改善されてきておりますために、最近ではほぼ横ばい、強含みの状況になっておるものと了解しております。
  121. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 そうしますと労働大臣、日本の賃金の水準は欧米諸国——まあアメリカは別ですけれども——と比べて低くないというふうにお考えになっていらっしゃるのですか。
  122. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 分配率にあらわれておりまする限り、これも数字が明瞭に示しておることでございます。なおかつ低いことは、これは事実だと存じます。こういうことは、後進国が先進国に追いついていく過程で免れがたいことだと思っております。だんだんこれが上がってきておることも事実だと思っております。
  123. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 もう一つ。賃金を引き上げる際に、物価の上昇率にスライドさせていくべきだというふうにお考えにならないのでしょうか。
  124. 政府委員(石黒拓爾君)(石黒拓爾)

    政府委員(石黒拓爾君) 賃金を決定いたしますのは、もちろん労使の自主的決定でございますが、その場合に考慮される要素といたしましては物価の問題もございますけれども、そのほかいろいろな問題がございまして、現実の日本の賃金水準は、物価の上昇率をかなり上回って上がっておりますので、物価にスライドさせるのが正しいというふうには目下のところ私は考えておりません。
  125. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 名目賃金でおっしゃられるとそういうことになってしまうのですね。物価指数の上がり方と、それから実質賃金の上がり方を三十五年以降比べますと、物価上昇率のほうは一五二から二八〇まで上がっているわけですね。それから、実質賃金のほうは一三〇以下ですね、指数が。ですから、必ずしもいまおっしゃったことのとおりだというふうに私は考えないのですが、労働大臣、日経連の出しておりますいわゆる賃金白書「激動する国際環境と日本経済」これの中に、生産性を上回ってどんどんその賃金が上がっていくというふうな考え方をしているのですね。それで、こういう賃金の上昇を押えないとますます物価は上がるという見方をしておりますが、その点はどうお考えでございますか。
  126. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 私も日経連の文書は一読いたしましたけれども、賃金が生産性を越えて上昇していく。一つの長期的な傾向としてそれが全面的に出ておるという考え方をしておるのでは必ずしもないのじゃなかろうかという印象を持っておりますが、ただいま手元に文書がございますから、その点についていま調べさしておりますけれども、私はそういう感じを持っております。
  127. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 全体を通じて賃金の上がり方がひどい。大幅上昇のために「賃金の硬直化現象」というようなことばがございますね。今後どんどん上がっていく。そして、そのために購買力がふえて、それがインフレを引き起こしているのだという考え方に立っていると思いますが、そうではないでしょうか。
  128. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) あるいはニュアンスとして多少そういう印象を与える書き方をしておるかもしれませんけれども、理論的にただいまの事態というものがいわゆるコストインフレーションであるというふうな見方をしておる、そこまでの考え方を述べておるものだとは考えておりません。
  129. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 こういうふうに書いてありますね。「このような生産性を上まわる賃上げはすみやかに改められなければならない」とね。生産性を上回って賃金が上げられているという考え方は一貫しているのですが、その辺、労働大臣はどうお考えですか。
  130. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 私どもの見方は、繰り返して申し上げましたとおり、それぞれの年、個々の時点をとってみますればそういう事実もあるかと思いますけれども一つの傾向としてそういう事実が存在をしておるとは必ずしも考えておりません。
  131. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 労働大臣のお考えはそうだとわかりますが、これは企業を担当しておるほうの、資本の側では、そういう考えを持っておるということなんです。かつて労働省が三十八年当時出された文書では、大幅賃上げが物価上昇の原因には.なっていないということを発表されていますが、その考え方はいまでは変わりましたでしょうか。あるいはその辺はどういうお考えですか。
  132. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 先ほど来申し上げますように、生産性と賃金とがほぼ見合っておるわけでございまして、その限りで賃金の上昇が全面的な物価騰貴を引き起こしておるのだというふうには考えておらないわけでございます。ただ、日本におきましては、中小企業と、非常に生産性の低い分野が、なお広範に残存しておるわけでございまして、そういう分野におきましては、ただいまの労働需給の逼迫、人手不足ということを背景にいたしまして、賃金の上昇を生産性の上昇によって吸収することができない。そのためにこういうおくれた分野で価格の上昇が起こる——消費者物価の上昇を引き起こしておるということ、これは否定できないと考えております。
  133. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 いまおっしゃいました低生産性部門ですね、これが物価を引き上げる一つの要素になっている、これは私も認めます。個別的な要素の一つである。ただ、それがどの程度物価上昇に寄与しているというふうにお思いでしょうか。
  134. 政府委員(石黒拓爾君)(石黒拓爾)

    政府委員(石黒拓爾君) 御指摘の低生産性部門における賃金上昇が物価にどの程度影響しているかということを的確に把握することは非常にむずかしい問題でございます。先ほどおっしゃいました、三十七年か八年ごろに労働統計調査部で若干の試算をいたしたことはございます。これはもうだいぶ、五年以上前のデータでございまして、現時点におきましての何%という試算は持ち合わしておりませんが、全体の物価水準に決定的な影響を与えているというほどのものではないと思います。
  135. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 私もその点では同感なんですが、ただ、もちろんサービス関係だとかあるいは中小企業などにおいての賃金の上昇ということはこれは避けられない、また必要なことでもあるかと考えますが、それがそれ以上、そのほかのたくさんの理由で私は物価が上昇していると思うのですが、あまりに強調されるようなことがあってはならないと考えております。その辺は労働大臣も同感じゃないかと思いますが、いかがですか。
  136. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 私ども考え方は、先ほど来申し上げましたとおりでございまして、ただいまの時点では、賃金アップと申したらよろしいでしょうか、当面の物価騰貴に対して、賃金だけが犯人であるというふうには考えておりません。これは日本の非常におくれた産業構造の問題もございましょう。労働力の当面の状況もございましょう。いろいろな要因が重なり合っているのだと考えております。
  137. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 それでは最近心配されておりますところの所得政策なんですが、この前、私、総括質問のときにも、労働大臣は所得政策なんていうものは考えていないと言われましたが、ただ国際収支が悪くなる、ドルや円の不安がある。それで引き締めていかなくちゃならない。そういう中で、総合予算主義というのがとられていて、例の公務員給与のベースについてのワクがとられているわけですね。これはどのようにまあ大蔵大臣がごまかされましても、明らかに大体五百億が予備費千二百億のうちに考えられているわけです。地方財政計画を見ますと、八百五十億が計算してありまして、大体公務員の給与のべースアップ昨年度分五百億に対して一・五倍が地方財政のほうには必要になるわけですね、地方公務員のは。ですから、いま地方財政計画の中に八百五十億、それには災害対策費が入っているわけで、大体昨年度の七・九%アップで計算がされていると思います。七・九%アップで七百四十九億円、で、それは宙に出てきたわけじゃなくて、公務員給与のベースアップの大体の基礎に基づいて計算されているわけなんです。つまり、こういうふうに大体ワクをきめてしまう。人事院の勧告を待たずにワクをきめていくということは、所得政策への一歩ではないかというような気がするのですけれども、労働大臣はそうお思いになりませんか。
  138. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) おことばにありましたように、非常にきびしい国際経済環境でございますから、そういう環境のもとに置かれておる日本経済の現状にかんがみて、労使双方が国民経済的な観点から賃金をきめてもらいたいということを考えておりますけれども、この段階で所得政策というようなものを導入すべきだと思っておらないことは、さきに申し上げたとおりでございます。ただいまのこの地方財政計画の八百五十億もまた予備費にすぎないものであって、したがって、これまたおことばにございましたように、災害対策のための予備費等をも含んでおるわけでございます。この勧告に備えて予備費を充実することの趣旨については、いままで繰り返しお耳に入れておるわけでございます。私どもといたしましては、今後毎年相当額の自然増収というものに必ずしも期待し得ないかもしれない。その結果、勧告が出ましても、これの実施が全く困難になるというような事態もあり得るということを考えますれば、今回、勧告に備えて予備費を充実しておくということは、労使関係の円滑化というような観点からも望ましいと考えておりますけれども、これによって何か公務員の給与をくぎづけにする、それを一つの指標なり目安として民間の賃金を誘導していこうというようなことを考えておるわけではございません。
  139. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 もしも人事院勧告がそれ以上に——予備費で考えているのはこれはベースアップ分だけではありませんね、米価なんかもありますからね。そういうものでまかなえない場合には補正もあり得るというふうにいまのお答えですと考えられるわけですが、それは労働大臣の権限外だとは思いますが、賃金や労働を担当していらしゃいます労働大臣としては、いまおっしゃたような線で、もしくぎづけするというようなことがあるとしたら、これは好もしくないと、こうお考えになっているというふうに理解してよろしいですか。
  140. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 政府が総合予算主義を打ち出しました趣旨については、大蔵大臣等からしばしばお耳に入れておりますので、御理解いただいておることと存じます。いままだどういう勧告がなされるか、いまから予見することができないわけでございまして、勧告がなされました際には、その趣旨を実現すべくできるだけの努力をする、まあただいまはこれ以上のことは申し上げられないわけでございます。勧告がなされたにもかかわらず、これが実施されないという事態がかりに起こりますれば、これは遺憾なことであることは申すまでもございませんが、私といたしましては、あとう限りの努力をしたいと考えます。
  141. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 予算でこういうふうに出てまいりますと、人事院の勧告にワクをはめる感じがいたしますので、私は念を押して伺っているわけであります。  それでは、日経連のいわゆる賃金白書の中に、賃金決定に関して政府はガイディング・ライトを示すべきだ、つまりこれは所得政策の考え方ですね、民間企業に対して賃金に関して指導を与えるべきだということを推奨しているんですが、これについては、どうお思いになりますか。
  142. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 根本的には、賃金は国民経済の成長と調和を保って決定されることが望ましいと考えております。ですから、労使双方とも国民経済に及ぼす影響ということを十分考慮した上で、自主的に賃金をきめてもらいたいということを切望しておるわけでございますが、もともと賃金と物価、生産性の関係ということは非常にむずかしい問題であるに違いない、かつ、いろいろな方面でいろいろな議論がなされておるわけでございます。労働省といたしましては、労使の各種団体がこの問題についていろいろな意見を出すと存じますけれども、これに一々論評を加える立場ではないと実は考えておるわけでございます。いずれにしてもたいへんむずかしい問題でありますので、経済審議会の総合部会の経済学者の諸先生にかねてからお願いをいたしまして、この問題について理論的にも実証的にも研究をしていただきたい、こういうことをお願いして、ただいま作業がなされておるわけでございますが、いずれにいたしましても、所得政策あるいは所得政策的なものをこの時点でただちに導入しなければならないような事態だとは、私先ほどから申し上げましたことから御理解願えると思いますが、そういう必要があるとは考えておりません。
  143. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 労働者にとって賃金というのは労働の対価ですから、一番根本的な問題なんであって、労働省には賃金はいかにあるべきかという考えがあるはずだと思うんですね。それによって使用者の考え方あるいは労働組合、労働者の考え方に対しての批判があるだろうと思うんですが、賃金とはいかにあるべきものかという積極的な信念を述べていただきたいのでございます。
  144. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) これはきわめて抽象的で恐縮なんでございますが、要するに、国民経済の成長と調和のとれた形で賃金が決定されることが、これが一番望ましいことだと考えております。
  145. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 大臣は国家、国民の経済という立場からだけ言われますが、私は働く労働者が生活できる、食べられるということ、その労働に相当した対価を受け取るということを忘れていただいては困ると思います。労働者だけに犠牲をしいるということがないような方向に賃金というものはあるべきだと思うんですが、こういう議論はたいへん抽象的になりますから、これでやめます。  いま確かに財界には所得政策に向かう動きがあるんですね、これは先日も総括質問のときに、そのようなことは一切知らないというふうに大蔵大臣も経済企画庁長官も答えられましたけれども、経済審議会では、もう安定成長政策ではだめだ、新経済計画という構想について検討しなければならないということを言っていて、特に賃金物価生.産性委員会という小委員会にかけて、もうすでに日程にのぼせて検討している。これは総理大臣の諮問機関でございますからね。ですから労働省がそのような企てがあるということを全然知らないというふうに思えないのですけれども、いかがでしょう。
  146. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 現在所得政策そのものについて研究が行なわれておることは事実だと存じますが、もちろん財界の一部にあるさような意見に対応して、あるいは圧力を受けてそういう研究が行なわれておるわけでも何でもないと存じまするし、非常にむずかしい問題でありますために、結論を出すにはたいへん時間もかかるんじゃなかろうかと存じております。私も作業の内容等について詳しいことを聞いておりませんけれども、新聞などにしょっちゅう出てまいります限りでは、皆さん非常に消極的だという御意見のような印象を私持っています。
  147. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 労働を担当される大臣ですし、労働省でございますから、賃金労働生産性委員会なんていうものに対してやっぱり積極的に情報もとられ、また、意見も述べられるチャンスがなければならないと思いますけれども、今後そのことをよく注意をしていていただきたいと思います。  それから次に労働力の流動化の問題なんですけれども、四十三年度の予算編成にあたって、物価対策特別委員会に経済企画庁長官があいさつをされました。その中で、物価対策一つとして、労働力の流動化をはかるという項目があるのですがね。この労働力の流動化というのの構想ですね。これはどんなものでございますか。
  148. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 非常に人手が足りなくなっておりまするし、現状は労働力の分布と産業の分布がマッチしていないという実情でございます。そこで、今後全国的な規模で労働力の流動化をはかっていく必要がある。この必要性そのものにつきましては、あまりくどくどお耳に入れずとも御理解がいただけるわけでございます。この流動化を促進いたしまするための現にやっておりまする施策、これから実行しようとする施策につきましては、政府委員からただいまお耳に入れさしていただきます。
  149. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 流動化の必要性はただいま大臣から御答弁があったとおりでございますが、これが物価対策との関連という問題についてお尋ねがございましたので、その点について申し上げますが、われわれ物価対策といいますか、物価の安定に寄与するという意味では、この流動化政策も寄与していると思いますが、物価対策そのものをねらいとしたものではないという点は御了解いただきたいと思います。
  150. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 それでは、雇用対策として、この前有馬職安局長が「人手不足の雇用政策」という文を日本経済新聞に出されましたですね。あれによって雇用対策を提唱されているところを見ますと、労働力には、まだ不足といわれていても余裕がある、特に農村人口はもっと減らしてもいいのではないかという考え方がありますね、そうではないですか。
  151. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 人手不足が叫ばれておるわけですが、私ども現状と将来の見通しについていろいろな角度から分析をいたしたのでございますが、世間にいわれるように、人手不足という実感はございまするけれども、本格的な人手不足ではない。まだまだ余裕はある。これは欧米諸国と比べて余裕があるという結論を出したわけでございます。その余裕はどういうところにあるかという点になりますが、これは必ずしも一次産業に余裕がある、あるいは三次産業に余裕かあるというふうに具体的には指摘をしておりませんが、やはり産業部門ごとに国際比較をしてみますと、一次産業、あるいはむしろ三次産業の流通部門に相当余裕がある、節約の余地がある、こういうふうに私ども考えております。具体的な数字はあの場合に触れてないのですが、大体抽象的に申しますと、そういう部門に余裕があるというふうに判断をいたしております。
  152. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 余裕のある部門を節約してもっとうまく生かせという考え方でございましたね。そうしてたとえばサービスなんかの過剰なのを減らぜというようなことも言っておられるわけですが、たとえば過剰サービスというのは、どういうようなものをお考えですか。
  153. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) どの部門に余裕があるかというような御指摘でございましたが、私どもの不足対策の大前提は、まず大企業をはじめとして、人手に依存する従来の慣習を改めよう、そういう角度から考えますならば、労働力の節約の余地が大企業をはじめとしていろいろなところにある、この労働力の節約をまずはかって、それから国民経済的に見て、余裕のある部門について、さらに労働力の活用といいますか、労働者の能力の一〇〇%発揮という観点から労働力政策を樹立しよう、こういう考え方で展開いたしております。  そこで、具体的にどういう部面に余裕があるかという御指摘でございますが、この不足対策の基本的な見解にも例示として指摘しておりますが、一つは、過剰就業の状態が、たとえばバー、キャバレーというような三次産業の部門にある、あるいは配達、注文取りといったような部門に過剰サービスの傾向がある、こういったところを具体的に指摘しておるわけでございます。これらは、やはり企業の立場から見て、労働力節約の余地がある問題と並んで、やはり国民経済的に見て、過剰就業、過剰サービスという問題を労働力対策という面からも考え直さなければならないということ、こういうことを提唱いたしたわけであります。
  154. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 その点はわかるのですけれども、それではそれをどの方面に雇用を促進していくかということになって、たといえば輸出産業ということがここにあげられているのですが、そのほかどういう部門にどういうふうに流動させていくのですか。そんなにうまくいくと思いますか。たとえばバーやキャバレーで働く過剰サービス、あるいは御用聞き、配達、出前などというものが、うまく輸出産業あるいは第一次産業、第二次産業とかいう方向にいけるものかどうか。それはちゃんとした計画をお持ちになっていらっしゃるのですか。
  155. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) この基本的な見解を発表して以来、各種の批判が出ておるわけですが、新聞論調等でも御承知のように、労働省の雇用政策にはきめ手がない。これが一様にいわれているのですが、われわれのきめ手のないところに雇用政策の限界があると思います。なぜならば、職業選択の自由と、それから適格紹介の原則、こういう二大前提の上に立って雇用政策を展開いたしておりますので、かりに輸出産業、その他国民経済の発展にとって重要な生産部門に雇用を誘導したいという考え方をとりましても、そこには労務統制という手段をとるわけではございませんので、そこへいやがる者を連れていくということはできない。そこにきめ手がないし、雇用政策の限界がある、こういうことを日経の意見にもるる書いておいたのですが、そういう限度を意識しつつ今後の労働力不足対策に対処していきたいというのが、この雇用政策の考え方の基本でございます。
  156. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 職業選択の自由、それからその自由を守りながら、しかも国家の経済から、そちらに向けたいと思う方向に誘導させていくという一方針であるというように伺いましたけれども、そういうやり方が、何年かの間に、労働力の不足がこのくらいあって、そしてそれがうまく克服されていくという見通しをお持ちなのでございますか。
  157. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 昨年雇用対策法に基づきまして、雇用対策基本計画というのを閣議で決定いたしたわけでございますが、これは要するに数量的な需給の調整計画ではなくて、今後の雇用事情に対処いたしまして展開すべき雇用政策の基本的な考え方を、計画として織り込んでおるわけでございます。したがいまして、御指摘のような、今後三年先、五年先にどういう部門にどれだけの雇用需要が具体的にあって、それに対処して、具体的にどういう部門からどういうような数字で需給の調整をするかというような、数量的な需給調整計画は、実は持ち合わせていないのでございます。もっとも、雇用事情の見通しというものは、動向の大筋というものは、前提に持っておりますけれども、部門ごとの需給調整計画の数量的なものは持っていない。したがいまして、今度の不足対策についても、国民経済の発展にとって重要な生産分野、こういうようなばく然とした分野の限定をして、そこへ労働力をできるだけいま申しましたような選択の自由、適格紹介の原則という前提において誘導していこう、こういう考え方でやっておりますので、数量的な指導はやらないつもりでおります。
  158. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 それで労働者の能力を開発したり、あるいはその職業の訓練をしたり、それから情報提供をしたりしながらそちらに誘導していくということで、労働力の不足の解消はできるというように見込みを立てていらっしゃいますか。
  159. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 従来のような過剰時代の頭で労働力に依存するというやり方を前提とするならば、今日においてもすでに絶対的な不足という意見も出てくるかと思います。私どもは今後の不足事態に対処して、従来のような人手依存の考え方から脱却して、労働力を節約して有効に活用していく、こういう考え方に立ってこの不足対策を講じておりますので、ここ当面の問題としましては、こういう考え方で誘導政策を展開していくならば、不足の事態に対処いたしまして、まずまず対処できるのではないか。少なくともこのまま放置して、足りないから近隣から外国労働力を入れろというふうな声が相当強いのでございますが、これらの声に対しましては、まず足元を固めて、こういう考え方で雇用政策を展開することによって外人労働力の導入に対しては対処していく、こういうふうに考えておるわけでございます。
  160. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 いまの、外国労働力を入れるべきではないというふうに言っておることは、私もその見解に賛成なんですけれども、現在どのくらい外国労働力というのはどういう国から入ってきておりますか。
  161. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 現在は外人労働力は、原則的に入れておりませんので、いわゆる外国人労働力としては入っておらないわけでございますが、ただ、例外としまして、技術習得、技術訓練のために若干入っております。これは総数にして現状では数百名の程度でございます。また、熟練工が日本の労働市場で得られない熟練工としまして、中華料理のコックさんをはじめ、これも数百名程度入っております。そのほかに戦前から在住しておった、いわゆる韓国系の方々がおられることは御承知のとおりでございますが、その他の外人労働力は現在のところ導入していないという状態でございます。
  162. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 政府が導入していないかもしれませんけれども、実際には入っておりますね。韓国、フィリピン、台湾それから中国人という項目で、これは法務省の資料によりますと相当数入っておりますね。四万九千人、技術訓練なんというような程度ではないのですね。それで、そういう点を考えますと、外国人の労働力というものが、労働力不足に関連して入ってくる可能性が相当あるというように思うのです。政府のベースでやらなくても、民間べースの話し合いで韓国なども入ってくる様子です。その点は労働省としては、民間の問題について全然タッチできないということでございますか。
  163. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 御指摘のような四万数千という労働力が入っておるということは初耳でございますが、現在の入国管理体制は、御承知のような管理令によりまして、労働者として入ってくる場合には、必ず法務大臣から労働大臣に合い図がございます。その際の例外は、先ほど申しましたような技術習得の場合のみ、それ以外の労働力としては熟練工が若干入っているという程度でございますので、数万というような労働力が入っていることはないと思います。
  164. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 いま私ちょっと数字を間違えましたけれども、法務省の資料によりますると、外国人労働者数としていただきました、いわゆる外国人総数、たとえば中国人という国籍になっておりますものが四万八千三人のうち、無職が三万四千ですから、一万四千ばかりは労働者ですね。それからアメリカ人という項目の中に、一万六千七百九十、そうして無職が一万一千ですから、もうここで五千人くらいおります。朝鮮人に関しては、いま言われた前からの在日朝鮮人の方で、これは非常に数が多いわけであります。そのほか聞くところによりますと、台湾からもフィリピンからも入ってきておる。これらはあるいはいまおっしゃった技術訓練という名目かもしれませんけれども、やはり十分この点は労働省としても注意していっていただきたいと思います。ことに台湾、フィリピン、韓国というのは、日本の労働者よりも低賃金で働く人たちでございますので、そういう点で労働者の賃金を脅かすということになると思います。その点を注意していただきたいと思います。そこで、労働力の不足ということから、特に流動化の問題の中でも婦人の労働力の活用ということを労働省でも言っておられるし、経済審議会が人的能力の活用ということばを使って、その方針を出しまして以来、婦人の労働力の有効活用というようなことばでもって中高年齢層の婦人、あるいは家庭にいる婦人を引き出すという方針が労働省のほうでも出されていると思うのです。そこで、婦人の労働者は戦後非常にふえてきているわけなんですけれども、家庭の責任があります関係で、一たん中断してしまうということ、あるいはそのまま家庭に入ってしまうということが非常に多かったわけたんです。それをさらに引き出そうという考え方に立っているわけなんですが、それには基本的にどういうやり方で婦人の労働力を活用しようとしていらっしゃるのかということ、それを労働大臣に伺いたいと思います。
  165. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 目下の状況でございますので労働力の新しい供給源を開くということが非常に緊切な課題になっておるわけです。そういう観点から、婦人の方にも労働省としていろいろな方法で呼びかけておるわけでございます。パートタイムと申しますような形が、わが国においては比較的最近出てきた就労の形態でございますら、まず実態を把握することが必要でございますので、そういう調査も懸命にやっております。それから技能を持っておりながらまあ家庭に埋没——埋没と言っては誤弊があるかもしれませんけれども、入っていた人たちが、子供も大きくなったのでひとつ働いてみたい、そういう人たちも相当多数ございますので、こういう方々のためには有能婦人コーナーというようなものも特に設置いたしまして就職の相談にも応じまするし、就職に先立っていろいろ講習をするとか、いろいろ方法を講じておるような次第でございます。いま婦人少年局が調べた結果によりますと、パートタイマーを使っている事業所は、全事業所の約一六%というふうな数字が昭和四十年に出ておるわけでございます、なお、昨年の十二月に女子パートタイム雇用に関する専門家会議というのを労働省につくりました。職業訓練、職業紹介、労働条件、また家事の管理、家庭における責任と、これをいかにして両立させるかというようないろいろな問題について研究をいたしておるわけでございます。
  166. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 これは経済審議会で経済発展における人的能力開発の課題と対策というのを三十八年に出して以来、つまりちょうど労働力がどんどん必要になってき始じめた、高度経済成長が進んできて必要になってくるとともに、婦人の労働力の有効活用ということばも出てきたわけなんですけれども、たとえば日経連の人たち、名前を申しませんが、話をしますと、労働力資源というようなことばも出てくるぐらいに、人間を人的資源というような考え方をもっていられるわけなんです。私は婦人の労働力の有効活用というようなことばは、それは雇用対策を立てられる方の立場からいえばそういうことばかもしれませんけれども、ちょっと抵抗を感じるわけですね。これは確かに国民の経済、国家経済から見たら労働力の活用でしょうけれども、しかし、一個の婦人の立場から申しますと、婦人自身の能力の社会への寄与をさせていくことであり、また婦人が人間として働く権利がある、これは憲法二十七条でも保障されている権利でもあるし、それから婦人自身が成長していくことでもあるというふうに考えるのですけれども、このことばについて労働大臣あるいは所管の方の御意見を伺いたいのです。
  167. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) この雇用政策はあくまで根本的には人間に着目して行なっているわけでございます。働く人の福祉の増進という見地から進めておるわけでございます。ただこれを労働力の問題としてとらえます場合には、多少お耳ざわりのことばが出てくるということはあり得るかと存じます。まあそういう点をやかましく申しますと労働市場というようなことばも人間を品物扱いにしておるので不愉快だというようなこともよく聞くわけであります。基本はあくまでも人間に着目いたしまして、それぞれの方々が持っている能力を十二分に発揮していただき、それによって適正な報酬を得ていただく、こういうことが雇用政策の基本でございます。
  168. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 婦人労働に関しては、戦前から、これは短期間の労働であって、一種の出かせぎ型であって、必要に応じて引き出す、必要に応じて家に返すというたいへん便利な労働力として使われてきたわけです。戦後もそういう傾向をたどってきたのですけれども、今度は労働力不足になりますと、有効に活用しなければならないというふうな、ほんとうに伸縮自在のもののように考えられてきた。ことに経済の効率化ということが盛んにこのごろ言われるようになってきて、婦人労働もやはり効率的に使うべきだという考え方が非常に支配的だと思うのです。それで若い間、結婚するまで、あるいは結婚して子供を持つまでの間は、安いしまた使いやすい。子供を持って家庭の責任ができるとこれは引き合わない。産前産後の休暇を与えておる。あるいはそのほかの保護をしなければならないということで引き合わないから、一たん返しておいて、そうしてまたもう一ぺん再雇用しよう。こういうのが一番効率的な使い方だという考えが使用者の側にはあるのですけれども、こういう考え方大臣、どうお思いになりますか。
  169. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) まあ有効活用ということばは先生おっしゃるとおりでございまして、私どももできるだけそういうことばを避けて使っていきたいと思いまして、基本的な考え方は、この基本計画のくだりにもございますが、婦人の労働力を代替的補充的に使ってはいかぬということが大原則になっております。したがって、過剰時代においても不足時代においても、そういう考え方を基礎にして婦人の労働能力を一〇〇%発揮していただくという考え方に徹して雇用政策を考えておるつもりでございますので、よろしく御了解願いたいと思います。
  170. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 労働省には婦人少年局もあることですから、そういう点では特に婦人の立場から婦人の労働を守っていくと、こういうこと、それから非常に冷めたい経済の効率化というような立場から考えないで、働く者の立場から特に政策を考えていただきたいと思うのですけれども、さっきあげられました中高年齢層の婦人労働者、こういう人たちの雇用の条件ですね、それからパートタイマーの人たちの条件はどんなものであるかは、調査していらっしゃるものを見てもわかりますけれども、一応御説明いただきたいと思います。
  171. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 婦人少年局長から御説明をいたします。
  172. 政府委員(高橋展子君)(高橋展子)

    政府委員(高橋展子君) 先ほど来の有効活用の点につきまして私からも一言付言さしていただきます。  特に近年クローズアップされてまいりました中高年婦人の労働力というものをどう考えるかということにつきまして、婦人少年問題審議会から昭和四十一年に建議書が出ております。その中に、原則的に中高年齢婦人の労働力ということについての基本的な考え方が述べられてございますが、その中で、これを単に若年労働力の量的補充としてではなく、中高年齢婦人の能力の有効な発揮と、その地位の向上のための条件を整備するという方向で考えるべきであるという基本原則が述べられておりまして、私どもももとよりこのような考え方に立って仕事を進めております。ただ、その有効活用ということばはいかにも私どもも抵抗を感じるのでございますが、ことばとして適切なことばが他に見つからないために今日まで使っているという点を御了解いただきたいと思います。当然私どもは婦人自身の人間としての働く権利、働く喜び、能力を生かす、その喜びということを政策の上で実現させていく、そのことが国家、社会の経済の発展にもつながる、寄与すると、このような姿勢で施策に取り組んでおりますことをまず御了解いただきたいと思います。  で、お尋ねの中高年齢婦人の労働の現状でございますが、御存じのように近年、年を追って婦人労働者の年齢が高くなる傾向がございます。で、三十歳ということで一応区切りますと、昭和三十八年には三十歳以上の者がきわめて少なくて三五%でございましたのが、四十一年になりますと、これが四六%というような数字になっているような次第でございます。また、これらの中高年の婦人は、当然のことでございますが、結婚をしている、あるいは死離別等によりましても、いずれにしても家庭を持っている方が多いわけでございます。有配偶の者についてだけその割合を見ますと、近年では全婦人雇用者の中の四割に近い三六%が有配偶者、このようになっております。さらに、これに死離別者を加えますと四六%がいわゆる既婚者、家庭を持っている方と、このようになっているわけでございます。これらの方々の就労の状態を見ますと、一般に就業分野といたしましては、若い方たちとかなり違った傾向が出ておりまして、若年の女子の多い分野でございます事務職という分野には比較的少なくなります。これに比べまして販売あるいは技能工、生産工程従事者等の単純労働者、このような職種における就業が多くなります。また、いわゆる、管理的職業あるいは専門的技術的職業という職種における従事者の割合も多くなっております。また賃金水準で見ますと、女子の賃金は若年のその初任給は男女差がほとんどない状態になっておりますが、年齢が高くなるにつれまして男女の差が出てまいります状態でございます。特にいわゆる中高年齢になりますと、賃金の伸びというものがほとんどとまりまして、年齢に応じたところの上昇カーブというものが女子の場合にはむしろ横ばいあるいは低下する、このような傾向が見られているようでございます。で、これが中高年齢女子の一般的な状態でございます。特にその中でパートタイムということにつきましてのお尋ねがございましたが、パートタイム雇用は、日本では比較的まだ歴史が浅いということもございまして、なかなか把握のしかたもむずかしいわけでございます。パートタイマーと呼ばれる人々に事実上は短時間労働ではない人たちがまざっているような状態もございますために、なかなかその条件の把握等もむずかしいわけでございます。私どもが数回の調査で把握いたしましたところでは、これらパートタイマーは非常に既婚者が多いということと、また年齢が高いということ、したがって、家庭、子供を持っている人が多いというような特徴が出ております。また、就業分野といたしましては、単純労務が多いのでございますが、最近の動きとしましては、事務職の分野にもパートタイマーがふえてきているわけでございます。また、パートタイマーの賃金につきましては、これは一時間当たりに換算いたしますと、把握できました範囲におきましても、一般女子雇用者の賃金と大差ない、このような傾向のようでございます。
  173. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 いま御説明いただいたのですけれども、パートタイマーの制度ですね、これはしかし非常に広がりつつあるわけなんです。いま一般女子と賃金においてあまり差がないようである、これは把握されたデータからだと思いますが、私の持っているデータでは、一時間当たり六十円ないし百円、たいへん低賃金、こういう低賃金労働者を固定化していく心配が私はあると思います。パートタイマーに対する政策は急がなければならないと思うのですが、これをいつまでもパートタイマーとしていろいろの保障なしに、労働条件の保障なしに、いつでも首が切れて、そうしていつでもまた連れ出すことができるというような状況ですから、非常に困る。また先日も問題になりましたけれども、月のうち十三日間働く、たとえば競輪、競馬なんかに出ていく婦人、そういう者の場合に、全然もう何年もそれを続けているけれども、少しも保障がないというような状況なんかを考慮に入れて、もっと対策を講ずべきじゃないかと思いますが、大臣いかがですか。
  174. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) パートタイムで働く婦人の方々が非常に劣悪な労働条件のもとでこき使われるというようなことがありましては、御本人のためにはもとよりでございますけれども、非常に好ましからざる影響が出てまいりますから、まだ研究が足りない面もたくさんございますけれども、労働の基準等については特に指導監督も厳重にしなければならないと存じます。根本的には先ほどお耳に入れました専門家の会議等の御意見をも取り入れまして、あとう限りの努力をしていきたいと考えております。
  175. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 そのような政策はどこが責任を持ってこれはイニシアチブをとり、そして実行していくのでございましょうか。
  176. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) これは関係するところがいろいろあるわけでございまして、婦人少年局の問題でもありまするし、あるいは雇用の問題でございますから、安定局の問題にもなるわけでございます。労働条件に関連して基準局にも関連する仕事になってくるわけでございます。
  177. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 時間がもうきたようですけれども、それでは最後に私は、パートタイマーという制度は、家庭を持つ婦人を今後どうしても労働力の不足から引き出さなければならない状況であるとすれば、これをもっとちゃんとした制度にして、労働条件の保障もする、福祉もはかるという方向を考えていただかなければならないと思うんですが、たとえば、イギリスなどで主婦と五交代から七交代という工場もございますですね。四時間あるいは五時間という短時間労働制をとって、すっかり勤務体制をつくっているようなところがあるわけなんですが、そういうことも今後考えられるんじゃないか。そうして、しかもきちんと労働組合にも所属し、その労働条件の保障もあると、こういう方向も研究の課題にすべきではないかと思います。  それから、もう一点だけ伺いたいのは、パートタイマーとか、中高年齢層の婦人の問題だけではなく、働く婦人全体がいまでは家庭の責任を持ってなお仕事を続けなければならないという状態が非常にふえているわけで、先ほどのデータでもわかったんですが、それで家庭をも守り、職場をも守るという意味で、いろいろの母性保護施設あるいは子供を守る施設が必要だと思うんですが、そのほかに最近全電通なんかで実行されております育児休暇の制度あるいは日教組が提唱しておりまして、まあ社会党も出しておりますが、育児休暇法案というのも出しておりますが、育児休職、育児休暇の制度について、労働省としては、どういうふうにこれに取り組む考え方を持っていらっしゃいますか、伺いたいと思います。
  178. 政府委員(高橋展子君)(高橋展子)

    政府委員(高橋展子君) 私どもは、やはり今後家庭の婦人が労働市場に出てくるということが不可避的であるということを前提として考えます場合に、婦人の職業活動と家庭生活の調和をどのようにはかるかということがきわめて大きな課題であると思って、重大な関心を払っております。その場合、家庭責任の中でも特に育児という問題が、非常に大きなウエートを占めるわけでございます。この育児の責任を果たしつつ、婦人が職業活動を遂行してまいりますためには、従来からとられておりますような、保育施設等の施策の強化が必要であることは言うまでもないと思います。しかし、同時に育児期間に家庭にとどまって、育児に専念したいと考えるものにとりまして、それを可能にするための施策というものも検討され、推進されなくてはならないと思います。そのような意味合いにおきまして、全電通などでお取り上げになっていらっしゃる育児期間中の休職制度のあり方等は、非常に注目に値する試みだと思いますし、まだ日が浅いのでございますが、たいへんに大きな効果をあげておられるというようにうかがっております。ただ、これを一律にすべての企業に望むというようなことも、なかなか実現困難なことでございましょうと思いますので、私どもとしては、成り行きを見ながら大いに検討を進めてまいりたいと思っております。
  179. 田中寿美子君(田中寿美子)

    田中寿美子君 この問題については私も意見があり、私は、婦人労働者を守るという立場からもう少し御意見を聞きたかったんですけれども、言いにくいこともあると思いますので、ここで終わります。     —————————————
  180. 主査(宮崎正義君)(宮崎正義)

    主査宮崎正義君) 分科担当委員の異動について御報告いたします。  本日、田中寿美子君が委任を辞任され、その補欠として岡田宗司君が選任されました。     —————————————
  181. 主査(宮崎正義君)(宮崎正義)

    主査宮崎正義君) 質疑を続行いたします。
  182. 中村喜四郎君(中村喜四郎)

    中村喜四郎君 私は、三十分間ということを割り当てられておりまして、与党であるから三十分ぐらいでがまんしろ、こういうことでございますから、簡明にお尋ねいたしますから、どうか当局のほうでも簡明に、具体的にお答えをいただきたいと思うのであります。そうして、労働問題の中で、私はきょうは特に失業対策事業についてだけしぼってお尋ねをしたいと思うのでございます。労働大臣は、今年度の予算編成の際に、失業対策事業についてたいへん苦しまれた、たいへん御苦心なされたと私ども聞いておりまます。いまの財政硬直化の中で一割削減、こういう課題と、さらには失業対策事業というものが世論のきびしい中にあって、いまの姿で失業対策事業というものはいいのか。おそらく十年、十五年と継続化している、固定化しているような、こういう失業対策の姿がそれでいいのか、こういうきびしい批判が政党幹部ばかりでなく、世論の激しい批判があるわけです。その中で大臣は、あえて大蔵省、各方面と折衝して、われわれには予想外の予算編成をなされたわけですが、その熱情には私感謝するものです。そこで、その熱情が今後失業対策事業の中に、あるいは労働政策の中にどう反映させていくかということが私は課題だと思うのであります。したがいまして、失業対策事業の運営についてどのような考え方を持っているかを、まずお伺いいたしたいのでございます。
  183. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 失業対策事業につきましては、いま御指摘のございましたように、いろいろな批判がなされておりまるし、率直に申しまして、制度本来の趣旨から考えまして、多くの問題点が存在していることも事実でございます。したがいまして、昭和四十三年が法律に基づいてこの制度を再検討すべき年に当っておりますので、各方面の御意見も謙虚に承りまして、この制度を本来の趣旨に沿う方向で改正の余地があれば、改正もしてまいらなければならない、このように考えております。
  184. 中村喜四郎君(中村喜四郎)

    中村喜四郎君 ちょっともの足らないわけでございますけれども、しかし、この問題で長く時間をとることは許されません。  緊急失業対策法の基本的な精神はどこにあるか、ひとつお伺いしたい。
  185. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) この失業対策法の基本の精神は、失業対策事業ないし公共事業にできるだけ失業者を吸収して、生活の安定をはかっていこう、こういうことになっているわけでございます。失業者に対して公共の負担によって働く場所を提供するものでございますが、この就労の場、就労の機会というのは、あくまで再就職し得るまでの、通常の雇用につき得るまでの一時的なものでございますから、失業者が安易な気持ちでこの事業に依存をいたしましたり、長期にわたってこれに滞留する。これは本人の幸福という観点から考えましても、この制度の本来の趣旨から考えましても望ましいことではない、かように考えます。
  186. 中村喜四郎君(中村喜四郎)

    中村喜四郎君 失対法の第一条も、いまの大臣のお話のように「多数の失業者の発生に対処し、失業対策事業及び公共事業にできるだけ多数の失業者を吸収」し得る云々といっておりますが、これはあくまで一時的な職場を与えることが眼目であると思います。この一時的であるべきものが、私が冒頭に申し上げましたように、固定化する傾向が非常に目立ってきておりますが、これはどういう理由なのでしょうか。この問題につきましては、御承知のように雇用審議会のほうからも指摘されておるはずでございます。お伺いいたします。
  187. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 非常に率直に申しまして、従来の施策において欠ける点があったという点は、反省しなければならないと思うのでございます。就職が困難な高年齢者等に対しまして、それらの人人が常用雇用につくことができますように、十分な職業指導や転職訓練ということをやらなければならない、これは当然でございますが、これが必ずしも十分でなかった。あるいはまた、一たん失業対策事業に就労した人たちに対しましても、民間の雇用にこれを戻すために積極的な施策を実行すべきであったにもかかわらず、こういう点が不十分であったと存じます。こういう状況がございましたので、昭和三十六年に日雇い労働者の転職訓練というのを開始いたしまして、三十七年には雇用奨励制度を創設いたしました。こういう方法で対象者の常用雇用化を強めてきておるわけでございますが、その後三十八年には職安法及び緊急失業対策法を改正いたしまして、失業者の就職の促進ということに重点を置いた制度をつくったわけでございます。従来この線に沿って鋭意努力を続けてきておる次第でございます。
  188. 中村喜四郎君(中村喜四郎)

    中村喜四郎君 大臣は非常に謙虚な反省の中からこうしたいということを申されておるわけでございますけれども、しかし、政府が、あるいは職業安定所がこうやっていきたいということをいろいろ計画しても、それが具体的に実行されないところに問題があるんではなかろうかと思います。現場における関係が問題だと思うのです。で、私はそれに触れる前に、失業者が失対事業に固定化、定職化している実態をまず御説明をいただきたいと思うのでございます。これは局長さんでけっこうですから。
  189. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 昨年の九月の調査によりますれば、全国平均で十年五カ月という相当長期にわたって固定化しておるという状態でございます。
  190. 中村喜四郎君(中村喜四郎)

    中村喜四郎君 その固定化、定職化している原因というものが、もし手短かに私どもに理解できるならば、そしてそれがその原因を撤去することも、また今後の労働政策の上においては大切なことですから、お伺いしたいと思います。
  191. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 定職化、固定化している一番大きな理由は、やはり就労者の年齢が年々高齢化してきて、今日におきましては平均年齢が五十四・七歳というふうに非常に高くなっておるということが、一番大きな原因でございます。そのほか、終戦後の社会混乱情勢を反映いたしまして、今日の失対就労者が固定化しているわけでございますが、失対事業地域的にもわりあいいなかの地域に固定をしておりまして、そういう地域においては民民間の正常雇用の求人が比較的少ない。したがって、民間に復帰する機会が少ないというふうな事情もございまして、今日のような固定化の現象が生じておるわけでございます。
  192. 中村喜四郎君(中村喜四郎)

    中村喜四郎君 その固定化は、これからもなお続くことが予想されますね。
  193. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) これは三十五年当時は失対労務者の数が三十五万二千でございました。今日、四十三年の二月現在で二十二万七千というふうに、十三万程度減ったわけでございますが、現在二十二万七千に減った今日におきまして、将来これらの高年齢層の就労者が、うまく民間の求人口と適合いたしまして、民間雇用に復帰できるかどうかという点になりますと、今後は非常にむずかしい事情が出てきておる。したがって、いままでのような速度でこれを減らしていくということは非常にむずかしいのではないか、率直に申しまして、こういうふうに考えておるわけでございます。
  194. 中村喜四郎君(中村喜四郎)

    中村喜四郎君 現在の二十二万七千という人たちは、それは高年齢層だというそういうハンディキャップ、あるいはまた女であるというハンディキャップ、もろもろであろうと思いますけれども、この就業促進のための指導、助言あるいは職業訓練措置、こういったものについてはどういうふうな手配をしておりますか。
  195. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 民間の雇用に復帰させるためには、三十七年以来雇用奨励制度を設けておりますし、また技能の習得のためには、三十六年以来日雇い労働者の転職訓練を制度として確立いたしております。こういった積極的な転換対策を軸といたしまして、先ほど申しましたように、三十五万から二十二万まで縮小してきたわけでございますが、今後におきましては、こういった速度で急速に減っていくということは非常にむずかしい状態ではないかと、しかしながら失対制度の本来の趣旨に従いまして、できるだけ民間の正常雇用に復帰さす積極的な方策を講じて、今後とも対象者の減少には努力を続けてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  196. 中村喜四郎君(中村喜四郎)

    中村喜四郎君 局長説明で三十五万のものが二十二万七千に減ったのだと、これだけ努力をしたのだという努力したあとを認めると同時に、私は経済的、社会的条件がそうさせたのであろうことも、同時にこれは謙虚に考えなくちゃならぬと、問題は二十二万七千のこれからますます定着化、固定化していこうとするこの人たちを、しかもこの人たちが、五年、七年、十年にわたってこれから定職を持とうとする強固な意思がありつつこの失対事業と取り組んでいるかどうか、指導者の意思と無関係に動いているのではなかろうか、そういう点も私どもは懸念するわけです。それが世論のきびしさというものになってあらわれてくると思うのですが、まあ、そういう点について局長のひとつ御見解をお尋ねしたいと思います。
  197. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 組合の指導者は勢力の温存という観点から、対象者が減ることについては非常に消極的でございますが、就労者個々人につきましては、民間の雇用にできるだけ復帰したいという希望は、年をとった方々もなお依然として持っているわけでございます。したがいまして、われわれの指導いかんによりましては、まだまだ民間復帰の可能性はあるのでございますけれども、何せ高齢者でございますのと、地域的に相当いなかに偏在をしている、分布しているというふうな事情もございまして、これを一気になくしてしまうということは非常にむずかしい、こういうことを申し上げたわけでございます。
  198. 中村喜四郎君(中村喜四郎)

    中村喜四郎君 苦労はわかります。苦労はかわりますけれども、私は二十二万の中で約十五万が全日自労に入っているということ、しかもこの全日自労の動き方というものは、政治的に少し片寄った動き方をすることが、問題に包蔵しているわけだと思います。それだけではない。しかし、いずれにしても失対の対象の人たちは心の中では何とかして就職したい、職につきたい、安定したい。こういう感じはあるはずでございます。このある感じをひとつ政治の力で、あるいは社会的な環境の整備によって、その渦巻きの中に織り込まれないで定職を持てるように、私は指導をすべきであると思いますが、そういうことについての考え方と指導、対策はどうやっているかをひとつお伺いしたい。抽象的であるいはわかりにくいかとも思いますが、私の聞きたいところは、やりたい人、定職につきたいという人、この人たちを政治運動に巻き込まれる中から引き戻して、そうして職につけてやって安心させるという措置については、どういうことを考えているかということをお聞きしたいのです。
  199. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 就労者個々人につきましては、御指摘のように、やはり民間の正常雇用につきたいという気持ちは相当ございます。これを足がかりにいたしまして、私どもとしましてはできるだけの努力をいたしております。しかし、何せ高年齢でございますので、一方では再就職支度金というふうな形で民間雇用を奨励しながら、漸次、高齢者については労働戦線から引退をしていくという方もございます。これは生活保護に移行するというのでなしに、子弟が成長して扶養能力ができたというような事態もございまして、漸次、生活ができるという前提のもとに引退をしていくという方もございますので、両面から私どもとしましては、なるたけこの人手不足の時代におきまして、失対事業が固定化しないように積極的な努力を続けてまいりたいと思います。
  200. 中村喜四郎君(中村喜四郎)

    中村喜四郎君 それでは問題をもとに戻しまして、この失対事業がいまのように異常形態になっているところも見られるわけですが、失対事業の正常な運営を確保するために、労働省としてはどのような方針を今後とろうとしているか、お伺いいたします。
  201. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 失対事業を公正に運営、管理していくためには、運営、管理適正化ということをはかっていかなければなりませんが、失対事業で一番世間から非難される点は、労働時間が著しく短い。八時間労働のたてまえになっているにかかわらず、ひどいところは半分くらい——四時間くらいで作業を打ち切るというような事態でございますので、これはやはり指定労働時間を厳守していただく。さらには働かないで賃金をもらうというふうな者がございます。これは管理制度も悪いわけでございますが、そういった不就労賃金につきまして厳重な規制を行なう。こういつたことを通じまして運営、管理の欠陥を早急に是正をしてまいりたい。これによって世論の非難にこたえたいと思っております。
  202. 中村喜四郎君(中村喜四郎)

    中村喜四郎君 いまの現実的な問題として働かなくて賃金をもらっている、こういう実例は各所に私ども聞かせられております。また八時間労働であるべきものが、それこそ四時間ないし二時間、一時間半くらい。私が九州のあるところに行ったときにもそういう実例がありまして、小学校の生徒の作文の中にもそういう例が出ております。で、こういう問題、あるいは賃金上積みの問題、こういう問題等もこれは各所に起きておるわけですが、これらについてはもっときびしく、しかも具体的にそれらの不正、不当等が解決される措置をとるべきであると、私どもは常々労働管理考えるわけだが、これについてもう少しひとつ局長の見解をお尋ねしたいと思います。
  203. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 御指摘のような場面は、失対事業の正常な運営から見ますときわめて遺憾な点でございますので、早急に是正をして京いりたいと、かように考えております。
  204. 中村喜四郎君(中村喜四郎)

    中村喜四郎君 この失対事業の就労者の団体が各地の安定所等に対し闘争を行なっているようであるが、その実態について御説明をいただきたいと思うのです。
  205. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 失対労務者の団体が、いわゆる流入闘争を展開いたしておりますが、これも地域的に非常に濃淡がございまして、私どもとしましては、この労働者の団体が戦術としてとっておりまする流入闘争については多分に行き過ぎもございまするので、団体の指導者に対しまして、こういった戦術は考え直してもらいたいということを再三申し入れますと同時に、第一線におきましてはやはり現実に行き過ぎた流入闘争に対しましては、安定機関といたしましては公正き然たる態度でこれに対処していくように、現地を督励いたしておる次第でございます。
  206. 中村喜四郎君(中村喜四郎)

    中村喜四郎君 いまの説明にもあった流入闘争の実態を、もう少し説明してください。
  207. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) これは一口に説明しにくいのですが、まず求職者の掘り起こしから始まりまして、学習活動を行ない、集団的に安定所に押しかけて、求職者の求職活動に介入をし、安定所の職員にいやがらせをするといった一連の戦術、か展開されております。
  208. 中村喜四郎君(中村喜四郎)

    中村喜四郎君 私どものほうの資料によりますと、ある職業安定所で、約一ヵ月間にわたる間に職業安定所に集団で五百名、三百名、あるときは二百名という、こういう人数で、一ヵ月間に二十四回安定所に押し寄せてきている。強硬に所長に面会を強要する。その間、警察官の出動したのが九日、いわば退去命令が出されたのは十回だと、こういう各地におけるいわば求職闘争、流入闘争をし、求職闘争——掘り起こして、そうしてそれを一つの目的に持っていくという、こういう行き方が私は世評のきびしさをわき立たせる大きな原因ではなかろうか。そこで、これらの安定所に対する闘争、要求、これらの対策については前線にどんな指導をしているのか、局長さんにお伺いをしたいのです。
  209. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) まあ安定機関としましては、今日の流入闘争が最近の就労者団体の闘争としては、非常に変わった事例でございますので、これに対処して三年がかりでいろいろと指導をしてまいったのでございますが、何せ戦術を変えるという事情にもございませんので、やむなく昨年の六月以来、二度にわたり通達を出しまして、この流入闘争的な行き過ぎに対しましては、公正き然たる態度で対処するというふうな指示を第一線に出しております。第一線はこの指示に基づきまして公正、き然たる態度で対処をいたしておりますが、何せ安定所は失対労務者以外の一般のお客さんを多数かかえておるところでございますので、これらのお客さんに対しましても不便をかけないようにという気持ちで対処をいたしておりまするので、なかなか思うにまかせないところもございまするが、この流入闘争に対しましては、き然たる態度で対処すべく第一線を指導しておるということを御了解いただきたいと思います。
  210. 中村喜四郎君(中村喜四郎)

    中村喜四郎君 最後に大臣にお尋ねいたします。いまの説明のように、各地でいろいろ職安闘争が行なわれている。私の郷里の茨城県の高萩の職業安定所でひどい闘争が行なわれている実例を、身をもって体験しておるわけでございます。職業安定所のほうでは職業安定全体の視野から立って、各種の問題を取り扱っているわけでございますが、問題はこういう失対事業というものに大臣は非常に理解を示し、少なくともこういう失対事業の形態をできるだけ少なくし、定職化する、いい人ばかりなんだ、この人たちに職を安定さしてやりたいのだという親心から、予算獲得にも、労働行政にも熱意を示しているわけですが、これらの問題も含めまして、今後失対事業に対して大臣のとらんとする処置、方法、これらについてお伺いしたいのです。
  211. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 失対事業の現状につきましていろいろ御批判をいただき、また御高教を賜わったのでございます。ことに失対事業は、一時的な就労の場であるべきであるにもかかわらず、これに流入することを目的とする運動か行なわれておる。いろいろ集団的な行為等によって業務の正常な運営が妨げられている。こういう事態は非常に遺憾でございますから、こういう事態に対しましては、私どもも今後峻厳な態度で臨んでまいりたいと存じますので、この制度自体には、この点以外にも御指摘のありましたさまざまの問題点があるのでございまして、各方面の御意見を取り入れまして、改善のための検討を行なってまいりたいと存じますが、これは法律が施行されてから今日まで相当時間も経過いたしておるわけでございますし、根本的な再検討を行なうということは、これはなかなかたいへんな仕事だと存じております。慎重に検討をいたした結果、望ましい結論を得たいと考えておる。ただいまのところは、ここのところをこうしようというまだ具体案を得ておる段階ではございませんけれども、先ほど来、るるお示しのありました諸点につきましては、制度本来の趣旨と照らし合わせまして、十分検討の上有効な改善策を打ち出してまいりたい、このように考えております。
  212. 中村喜四郎君(中村喜四郎)

    中村喜四郎君 許された時間があと四分ございますものですから、もう一つだけお伺いいたします。  失業対策事業とは別個の問題で、私立学校教職員に対する労災保険の強制適用の問題についてお伺いしたいのでございます。昭和四十年の労災保険法改正によって本年度、常時五人以上の従業員のいる事業所は労災保険の強制適用の対象になるという、したがって、私立学校の教職員もその対象となると思うが、その業務の内容から見まして、製造工業、輸送業などと比較すると、業務上の災害の起こる頻度はきわめて少ないと思うが、また勤務時間中、勤務外の判定も困難だと思われますが、これについて料率の引き下げ等の措置や、勤務時間の判定に関する一般的な基準のようなものを考えているかどうか、最後にお伺いしたいと思います。
  213. 政府委員(村上茂利君)(村上茂利)

    政府委員(村上茂利君) ただいま御指摘の問題につきましては、全体としては労災保険法及び失業保険法の完全適用という観点から、昨年の特別国会に全面的に強制適用にするという内容の法案を出したのでございますが、これは御承知のような結果に相なっております。しかるところ、労災保険におきましては、昭和四十年の法改正におきましては、政令で強制適用の範囲を拡大することができる、こういう措置が講ぜられておったのでございますが、その後いろいろ検討いたしました結果、五人以上の労働者を使用する規模の事業につきまして、全面的に労災保険法を適用したい、こういう観点から労災保険審議会に諮問いたしまして、その答申を得たのでございますが、政府考えどおりに全面的に適用すべきであるという答申をいただいたのでございます。  その趣旨といたしますところは、御承知のように、四十年の労災保険法のこの改正によりまして大幅に年金制度が導入されまして、障害年金あるいは遺族につきましては遺族年金といったような制度が導入されたわけであります。一方、労働基準法上の災害補償制度は、御承知のように一時金で処理されるということになっております。一時金で処理されますよりも、年金制度のほうが継続的に十分な給付ができる、このほうが手厚いわけでございます。その手厚い補償制度をできるだけ拡大したいというのが、趣旨の第一でございます。  それから第二の点といたしましては、御承知のように、最近は交通事故が非常に多うございます。ちょっとした商店などにおきましても自動車を使用する例がございまして、交通事故で従業員が死亡いたす、あるいは重度の障害を受けるという場合に、一時金の補償よりも年金の補償をするほうが適切である。私立学校におきましてもいずれかといいますと、小都市よりも大都市あるいは中都市に多いわけでございます。そこで授業中の災害というのは確かに少ないのでございまするけれども、教職員が業務上自動車を使用するという場合に交通災害にかからぬという保障はない。その際に、問題は労災保険とその給付とのバランスの問題がございますが、数人の死亡者が出ますと相当多額な保険料、数年ないしは十年分くらいは一度にペイしてしまうというような事例も少なくございません。そこで私どもはまず全面適用をいたしまして、保険料率は、御指摘のように、災害の発生率とそれから保険給付の支出の面とを考慮いたしまして引き下げるということが可能なわけでございます。ただ遺憾ながら具体的詳細なデータがございませんので、これをどうするという結論はまだ出ておりませんが、法の定めるところに従いまして、保険料率は当然これは検討しなければならぬ、こういうことに相なるわけであります。そのような問題を私ども意識しながら、労災保険審議会の答申があったからというて、直ちにこれを施行するのはどうか。当初昨年の十月一日から施行する予定でございましたが、私学関係の各団体ともいろいろ御連絡申し上げまして、御意見も拝聴いたしまして、三月初めに御意見をちょうだいし、そうして四月一日から適用する、こういうことに踏み切った次第でございまして、今後御指摘のような問題については十分検討してまいりたい、かように存じます。
  214. 中村喜四郎君(中村喜四郎)

    中村喜四郎君 料率の問題の措置についてわかりました。ただ、勤務時間とか、勤務中、勤務外の査定等については問題があろうかと思いますが、時間がきましたので、後刻お伺いいたします。以上で終わります。
  215. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 私は先ほど来田中委員がやはり同様な質問をいたしておりましたが、人手不足の問題なり、あるいは中小企業退職金共済制度の問題についてただしていきたいんですが、職安局長もだいぶ先ほどから答弁に立って疲れておるようですから、人手不足の対策につきましてはあと回しにしまして、中小企業退職金共済制度の問題点等についてただしていきたいと思いますが、この制度が三十四年につくられているわけです。今日もうすでに十年余経過しているわけですが、現在の運営状況について、概括的にちょっと御説明願いたいと思います。
  216. 政府委員(松永正男君)(松永正男)

    政府委員(松永正男君) ただいま御指摘のありましたように、昭和三十四年にこの制度を始めましてから、すでに十年近く経過をいたしておるのでございますが、その業務の概況について申し上げますというと、四十二年の九月現在でございますが、これに加入をいたしております企業数におきまして九万五千九百三十三でございまして、また労働者数におきまして百三十四万九千五百七十三人という現況でございます。
  217. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 この現行制度につきましては、五年月ごとに検討するということになっていると思うのです。そうしますと、来年の四十四年がその時期に当たるわけですけれども労働省としてこの制度運営のいままでの実績から、この制度についてどういうような問題点を把握をいたしておりますか。
  218. 政府委員(松永正男君)(松永正男)

    政府委員(松永正男君) おっしゃいましたように、中小企業退職金共済法によりますと、五年目ごとに掛け金額、給付額等につきまして検討をするというたてまえになっておりまして、ちょうど五年目検討の年になってまいったのでございます。で、この制度をめぐりまして、いろいろな論議がございます。たとえば事業主の希望からいたしますというと、もう少し制度に魅力をつけてくれたほうが入りやすいということが言われます。それからまた、労働者の側から見ました場合に、給付金額がもう少し高くならないかということがございます。それからまた、従来、加入をいたしまして、この掛け金の納付を途中でやめたままになっておる事業主も相当数ございます。そういったような面から、一面におきましては、制度そのものの根本検討も必要でございますが、同町に、事務能率をあげまして、加入者の現状をもっと詳細につかむような方法考える必要もあるのではないかということが考えられまして、今年の六月ごろから電子計算機を導入をいたしまして、この加入者の現状、それから掛け金の納付の状態というものを詳細、個別に把握できるような方法を講じたいということで   〔主査退席、副主査着席)やることになっております。  なお、五年目検討の時期を迎えておりますので、三月に行ないました中小企業退職金共済審議会におきましても、いよいよ五年目検討になるので、加入者並びに加入した企業の労働者の方々から、その希望もあり、検討をしようではないかということで意見の交換がございまして、私どもも、審議会におきまして、専門の方々がお集まりでございますので、ここでじっくりと検討をしていただきたいというふうに考えております。
  219. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 先ほど現状について、加入者数の説明があったのでございますけれども、まあ労働省のこの調査によりましても、加入現況を見ますると、たとえば産業別に見た場合には、中小企業が最も多い製造業あるいは商業、サービス業というものが九〇%を占めているわけですね。しかも、この数から言っても、制度の対象者数と比較いたしますと、約一割ぐらいじゃないですかこの加入させている数はですね。最近非常にこの加入の数が減ってきているということも言われているわけでございますけれども、どうして加入したがらないのかですね。加入しないという原因は、一体どこにあるのかですね。そういう点は労働省としてどういうふうに把握していますか。
  220. 政府委員(松永正男君)(松永正男)

    政府委員(松永正男君) 加入者が減ってきておるということはないのでございまして、大体の傾向といたしましては、率におきまして毎年一八%ぐらいずつ加入者がふえてきております。それから加入労働者数におきまして毎年二万人程度ふえてきております。ただ御指摘のありました点は、制度の当初における増加率に比べますというと、加入者がふえてくる割合がだんだん減ってきておる、これは確かにそういう傾向がございます。  それから、御承知のように、この制度の対象といたしましては、製造業等につきましては三百人未満の企業、それから保険、サービス、卸小売、不動産業といったような面につきましては五十人未満の企業ということにいたしておるのでありまして、まあそのような企業数、並びにそこに所属する労働者数がどれくらいかということは、的確には把握しにくいのでございますけれども、総数におきまして約一千万というふうに考えられるのでございまして、現在百三十七万人が加入をいたしておりますけれども、これと率を比較するということになりますというと、約二二%というようなことになるわけでございます。そこで私どもといたしましては、このような対象と考えました中小企業が、できるだけこれに加入をして、その所属する労働者が退職金共済の利益を受けるということが望ましいわけでございますが、制度といたしましては、退職金の制度でございますので、本質的に強制加入というわけにはまいりませんので、任意加入というたてまえになっておるという点が、当事者が非常に苦労するところでございます。しかし御指摘のように、制度そのものが非常に魅力があれば、もっとふえるんではないかという観点がございます。この点につきましては、私どもといたしましては、制度そのものがそれほど貧弱なものである、魅力のないものであるというふうには考えていないのであります。それはこの保険形式によります退職金の制度でございますが、事務費としましては全額国庫負担ということになっております。それからまた、給付につきましては、三年以上の在籍者の退職につきましては五%、十年以上は一〇%というような給付そのものに国庫補助がつくわけでございますので、一般のこの種の共済制度あるいは保険制度に比べますというと、退職金の支給の額——勤続年数に応じたカーブを描いておるわけでありますが——におきましても、決して不利ではないというふうに考えておるのでございます。ただ制度といたしまして掛け金が二百円から二千円まで現在制度がございまして、この掛け金の額に応じて退職金の額がきまると、それに国庫補助がつくと、こういうことになっておりますので、高い掛け金を払いますというと、相当大きな額の退職金が支払われるということになるわけでございますが、現状から申しますというと、現在の加入者の中では二百円の掛け金を掛ける人の数が一番多くなっておりまして、その次に千円を掛ける者それから、五百円口、それから三百円口というようなことになっております。最近の傾向でございますけれども、最高額の二千円を掛けるという企業も、だんだんと出てまいってきております。で、全体の賃金の上昇というようなものから考えますというと、この制度におきましてもやはり世間並みの退職金といいますか、制度発足の三十四年ごろに比べますというと、相当額の退職金が支給されるような制度が望ましいということは言うまでもないのでございます。現在のたてまえとしては、この二百円から二千円までのそれぞれの掛け金について事業主の自由選択ということになっておりますが、これらの制度につきましてもさらに高いものをつくるかどうか、そういうことにつきましても、また二百円口をできるだけ上のほうの口に切りかえるというようなおすすめをするということも必要なことではなかろうかと思うのでございます。
  221. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 三十八年をピークにして、いま局長も言われましたけれども割合としてやはり減少しているわけですよね、対象者の数と比較をする場合。労働者の数もそれに従ってやはり減少しているわけです、鈍化しているわけです。伸びがないんです、いままでの伸びから比べますとですね。これはやはり一つには先ほど来言われておりますけれども、一年未満の掛け金は、一年未満で退職する場合ですね、掛け金は掛け捨てになるわけですよね。このことがやっぱり一つの原因ではないかと私は思うんですよ。この労働省の雇用関係のいろいろな資料を見ましても、非常に新規学卒者の定着状況ですね、これは非常に離職する者が多いと、そういうことが言われているわけですよね。その離職する者の産業別なり規模別の職場を見ますと、大体退職金制度の対象の職場に多いわけですよね、これは労働省としてもお認めになると思うんですけれども。したがって、この退職金制度の対象の職場の離職者が非常に多いわけですから、この一年未満の退職者に対してのそうした離職を防止するためにも掛け金の掛け捨てということについては、この際改善をする必要があるのではないかと私は思うんですが、その点はいかがですか。
  222. 政府委員(松永正男君)(松永正男)

    政府委員(松永正男君) 加入者の中からもそういう声がございますので、検討に値する問題だと思うんでございますが、問題は勤続年数といいますか、加入在籍年数に応じまして、これは御承知のように加入者の間で労働者が転々といたしましても、これは通算をするというたてまえになっておりますので、要するにどれくらい期間働くかということに応じましてどのような退職金のカーブ、給付のカーブをきめていくかという問題になるかと思うんであります。現在の立て方といたしましては、御指摘のように一年未満は給付がないと、それから大体予定利回といたしまして六分二厘五毛の利回りを予定いたしております。一般の保険会社等に比べますというと、高い予定利回りになっておるわけですが、四年半ぐらいの時点におきまして六分二厘五毛の元利合計が支払われるというところを一つのポイントにいたしておりまして、そうして十年でその元利合計の一・一一倍、十五年で一・一六倍といったようなカーブをつくっておるわけでございます。このようなカーブをつくりました目的といたしましては、やはり従業員の定着ということも一つの観点として考える、それから勤続年数の長いほど有利な退職金が支給されるということが、一般の企業における退職金制度にも普通の考え方というふうになっておりますので、それらの退職金の、一般に支給されている退職金の実情というものとも考え合わせ、かつまたこの従業員の定着という中小企業から見ますというと望ましい方向、そういうものも考えまして短期よりは長期の在籍者のほうを有利に計算をしておるということでございます。  で、御指摘のような一年未満掛け捨てと、それから短期のものが不利になって長期のものが有利になるこのカーブを、基本的にそれではどう考えるかということも、今度の五年目検討におきましてやはり重要な問題としてわれわれは検討いたしたいと考えておりますが、現在やっております制度そのものは、そういうねらいからできておるわけでございます。
  223. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 しかし一年未満であろうと、事業主は退職する者に対しては現実に退職金を払っているわけです。これは東京都あたりの調査を見ましても中小企業の大体八%において一年未満の労働者に退職金払っているわけです。その額を見ますと、中卒の場合ですと九千三百円、高卒ですと一万一千六百五十五円、大学卒ですと一万五千八百四十円、こういうことで払っているわけですから。だからこの制度がせっかくあるんですからね、私はこの際、法改正をして一年未満であっても退職金を支給するというようなことにすれば、これは事業主もある程度もっと加入しておいたほうがいいということになってくるんではないかと私は思うんですよ。いま、いろいろ一年未満の退職者に対して支給をしないということの理由について申されましたけれどもね、この法制定の当時に言われたことは、一つはいま言われたように一般の退職金制度の例にならっているということがありますね。もう一つは一年掛け金と利息、そういうものを長年の勤続者の退職金の財源として回すんだと、こういうことが言われているわけですよね。これはいま言われたことと同じなんですけれども、まあ、これもそれなりに理由はわかりますけれどもね。しかし働く者一人当たり二百円なりを掛けてそれが長年勤続者のほうに回され、さらにまた一年勤続者の者にも自分で金を払わなければならぬと、こういう制度では、私は事業主としてもあまり魅力はないんじゃないかと、こういうふうに思うんですよね。ですからこれはやはりいま検討に値するというふうなことでなしに、やはりこの際五年目ごとの検討の時期にあたって、前進した形での法改正というものを私は要求したいんですがね、この点はいかがですか。
  224. 政府委員(松永正男君)(松永正男)

    政府委員(松永正男君) ただいま先生もおっしゃいましたように、この掛け金の額がございまして、それが累積をしてそれに運用利回りが加わったもの、これが支払い原資になるわけでございます。その支払い原資を勤続年数別にどのように配分するかという問題でございまして、いま御説明申し上げたのは永年勤続といいますか、長期在籍者の人に、先ほど申し上げたような率で有利になるように回していく。そこで一年未満につきましても、まあ数から言いますと、私どもの把握しておりますところでは、退職金支払う企業と支払わない企業で言いますと、支払うほうが少ないんではないかというふうに私考えておるのでありますが、しかし、そういうような掛け金はかけたけれども、今度は自分で払わなければならないというようなことになりますと、二重負担になるわけでございます。そこで、おっしゃいましたような点ごもっともでございますので、この給付のカーブをどうするかという問題の中に含めて検討をいたしたい、こういうふうに考えます。
  225. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 それからさらに全体的な魅力がないという一つの理由として、給付の額が少ないということは、やっぱり否定できないと思うのですね。二百円初めかけて、三年かけたといたしましても、この退職金の給付の額はわずかに七千五百八十円ですよね。これはしかも五%の、先ほど言われた国庫補助が入っているわけです。こういう低い額しか支給されない。しかしながら、現実にそれじゃ東京都内あたりで中小企業の退職者の皆さんにどの程度の退職金が払われているかというと、大体一万円以上ですね、三年でも払われているわけですよ。そうしますと、やはりこういうところに入っていなくても、より退職金の多い職場にどんどん流れていくということは、これは考えられるわけでございまして、この魅力をつけるためには、やはりもっと給付の額を引き上げる、そういうことが私は必要だと思うのですがね、その点はいかがです。
  226. 政府委員(松永正男君)(松永正男)

    政府委員(松永正男君) いわば一種の保険でございますので、掛け金の額と、それから給付の額というものがそれぞれ見合ってくるわけでございます。ただ、先ほども申し上げましたように、事務費は国庫負担、それから給付には補助金がつくというようなことで魅力をつけておるわけでございますが、やはり最近の傾向から考えてみますというと、毎月二百円で年に二千四百円の掛け金ということではやはり安いのではないかという感じがいたします。したがいまして、そういう今後の経済発展に応じまして、企業の支払い能力と見合いまして、できるだけ世間並みな退職金の支払われるようなランクの掛け金になるべくかわっていただくということでございます。  それから根本検討といたしましては、先ほど申し上げましたようなカーブの描き方で、短期のほうを有利にするということも可能であるわけでございます。それから全体といたしまして現在運用利回りが六・二五%、六分二厘五毛ということでございますが、これをできるだけ高率運用ということで利回りの向上をはかっていくということが考えられます。ただし、先ほど申し上げましたように、一般のその他のこの種のものと比べますというと、相当の高利回りをねらっておりますので、これにも限界はあるかと思うのであります。  それからもう一つは、国庫補助が現在三年以上五%、十年以上一〇%ということになっておりまして、これはこの補助につきまして増額を検討するということもあるわけでございます。もちろん相当長期にわたる国庫支出を要する問題でございますので、財務当局と十分なる打ち合わせをしつつやらなければなりませんが、それら全般の問題につきまして、御指摘のような魅力のあるような制度に、どうしたらいけるかということを検討いたしたいと考えております。
  227. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 もう一つ、この現行制度によりますと、一年以上二年未満ですね、いわゆる十二カ月から二十三カ月のもの、この場合には掛け金の元金すらもらえないのですよね。それを下回っているわけですよ。こういうことも、やはり一つ問題点ではないかと私は思うのですがね、この点はいかがです。
  228. 政府委員(松永正男君)(松永正男)

    政府委員(松永正男君) 確かにおっしゃったようなカーブの描き方になっておりまして、先ほど申し上げましたように、六分二厘五毛の複利計算による予定利回りが元利合計で返ってきますのは、四年半ぐらいの時点になっておるわけでございます。その趣旨は先ほど申し上げたようなことでございますが、事業主がかけたお金は、元利合計分はいかなる場合にも、従業員が退職した場合に返ってくるということも一つ行き方だと思うんでありますが、そうしますというと、上のほうの、長期勤続のほうのどこかを削ってきてカーブを書き直すというようなことになりますので、先ほど来何回も申し上げて恐縮でありますけれども、全体のカーブをどう描くかということの中に含まれる問題だと思いますので、その意味で先ほど申し上げた検討の中に入ってまいると存じます。
  229. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 いま言ったような一年未満のかけ捨てをなくす、あるいは一年から二年未満のものの掛け金の元金すらもらえないというようなことをなくしていく、少なくとも掛け金と同額以上の退職金は支給される、こういうことをもしやったとした場合に、いまの利回りの件もあるでしょうけれども、一体どのくらいの経費が必要になりますか。
  230. 政府委員(松永正男君)(松永正男)

    政府委員(松永正男君) ちょっとこの場では計算ができませんので、もし必要がありましたら、また検討いたしまして、別途御説明申し上げさしていただきたいと思います。
  231. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 効率的な運用資金の運用ですね、そういうこともある程度考えられますけれども、六分二厘五毛というような一つの利回りによってもしまかなうとすれば、やはり上のほうから下に回すということも出てくるかもしれません。やはりこれは私どもの意に反するわけで、問題は国家が長期にわたって支出をされるから云々ということを先ほど言われましたけれども、しかし私は中小企業の労働者の雇用の安定と定着をさらに強めていくというためには、やはりもっと国が、これに対する補助五%、一〇%ということでございまけれども、もっと補助の引き上げということも必要ではないかというふうに思うんですよね。  それからさらにもう一つは掛け金の上限ですね、一人当たり二千円、こういうことになっているわけですけれども、加入している事業者の声としては、これをもっと引き上げてもいいんではないかと、こういう声もあるわけですがね、こういう点についてどうですか。
  232. 政府委員(松永正男君)(松永正男)

    政府委員(松永正男君) 国庫補助につきましては、検討の内容に入れて検討をいたしたいと考えております。それから二千円につきましては、先ほども申し上げましたように、最近はまだ全体の中の。パーセンテージは低いんでありますけれども、最近これに加入する方がふえ出してきておりますので、退職金共済の目的としては非常にいい傾向だと思っておりますが、なおさらにもっとかけたいというような希望も聞かれますので、その点も含めまして、たとえば二百円から二千円というランクをもう少し上のほうにずらした形でやるか、あるいは二百円は二百円として残しておいて、さらに上位のランクをつくるか、そこら辺も検討いたしたいと思っております。
  233. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 さらにまた事業主の間には、年金制にしたらどうだと、こういう意見もあるわけですね。これは退職金という一つの性格からして、どちらがいいかは私も判断に迷っておりますけれども、しかし事業主のそういう要望があるわけですけれども、これについてどういうふうに考えておりますかね。あるいはまた一時金と年金という両方つくって、どちらでも選択できるような形にしたらどうかということも考えるわけですけれどもね。その点はいかがですか。
  234. 政府委員(松永正男君)(松永正男)

    政府委員(松永正男君) 最近大企業の退職金につきまして、まあ退職年金制度というものがだんだん普及をしてきております。中小企業におきましても、将来を考えますというと、年金構想というものもひとつの構想ではなかろうかと思うのでございますが、しかし年金にいたしました場合に、まあその年金の保険計算をどういうふうにするか、それからまた毎年の年金の額がどれぐらいが適当であるか、掛け金のはね返りがどんなになってくるかというようなことは、従来のこの制度運用の実績に徴しまして、いろいろなデータによって検討をしなければなりませんので、私どもが年金を全くネグっておるということではないのでございますけれども、やはり年金化するかどうかという問題は、相当時間をかけて検討しなければならない問題だというふうに考えております。
  235. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 さらにもう一つ、この事業団で加入者に対して融資制度をつくっておりますね、それぞれの住宅あるいは保健施設。これの融資制度の一つとして加入している事業所の労働者に、いわゆるまあ無制限というわけにいかぬでしょうけれども、掛け金の範囲内ぐらいで、いわゆる貸し付け制度というものをやる意思はないでしょうか。
  236. 政府委員(松永正男君)(松永正男)

    政府委員(松永正男君) ただいまはこの制度の加入者は事業主でございまして、そうしてだんだんこれを運用しておりますうちに将来の支払いに備えまして支払い備金がだんだんたまってまいります。それを運用をするわけでございますが、その一つといたしまして、加入者に魅力をつけるという意味で還元融資をしたほうがよろしいということで融資の制度を始めまして、現在約十二億円ぐらい融資をいたしておりますが、そのうち直接加入者に融資をする分と、それから中小企業の福祉施設といたしまして、地方公共団体が福祉施設をつくる場合の起債を引き受けるという形でやっております分と両方あるわけでございます。そこで、加入者が事業主であります関係上、加入者に対する還元融資ということは、これはできる範囲内でやるべきだというふうに考えるわけでございますが、この制度から見ますというと、もちろん退職金の支払いを受けるのは個々の従業員でございますけれども、掛け金をかける加入者と事業団との関係から見ますと、まあ第三者といいますか、この制度によって利益を受ける人が従業員ということになるわけでございまして、その従業員に対して直接融資の制度を設けるべきかどうかという点、従業員からの希望も聞いておるのでございますが、これはまあ慎重に検討しなければならないというふうに考えておりまして、この場でそれをやる方向で検討するというお答えをするまでに、私どものまだ考えが熟しておりませんので、その程度で御了解をお願いいたします。
  237. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 まあ第三者的立場であるかもわかりませんけれども、中小企業、まあその企業を盛り立てているのは労働者でありますから、これはその融資それぞれの加入者に対する融資の中に一つワクを設けて、それでそのワクの中で従業員に対する貸し付け制度をつくるということも、これはできるんじゃないかと思うんですがね。やはり、そういうことをしなければ、なかなか魅力がもたらされないのじゃないかと私は思うのです。いままでの答弁を聞いておりますと、せっかく審議会というものがありながら、すでに十年に近いこの制度運営の中でいろいろな問題かあり、いま加入者の数から言っても、全体の約一〇%前後ということのように魅力のない制度と言われているわけですけれども、一体、審議会あたりでこういうこの問題について真剣に問題点を把握して、制度改善のために答申といいますか、政府なり労働省当局に積極的にこの進言をするということがあったのでしょうか。どうもいままでの話を聞いてみますと、これからぼつぼつ始めようか、こういうようなふうに聞こえたのですがね、そういうことなんですか。
  238. 政府委員(松永正男君)(松永正男)

    政府委員(松永正男君) 審議会はいわゆる、保険とか共済制度といったようなものにつきましての学識経験者で構成されております。学者の方もおられますし、中小企業の団体の方、商工会議所の方もおられますが、総評、同盟等の労働組合の代表の方も加わっておられます。そうして審議会の場におきましては、やはり制度運用上のいろいろな問題につきまして、活発な御意見が常に出ておるのでございますが、特に五年目検討を控えておりますので、さきの審議会におきましては、ただいま先生の御指摘になりましたような内容についても、委員の中からも非常な意見が出まして、活発な議論がされております。私どもといたしましても、審議会において四十三年度におきましては、その問題について相当詰めた御議論を願いまして、五年目検討の成果として改善すべきものは改善していきたい、かように考えております。
  239. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 特に商業関係に多いと思うのですが、家族従業員ですね、これに対しての適用について衆議院の予算委員会等では、実現の方向で結論を出したい、こう答弁をされているのですけれども、具体的にどういう形で適用しようとするわけですか。
  240. 政府委員(松永正男君)(松永正男)

    政府委員(松永正男君) 従来は、家族従事者につきましては、三等親内の親族は加入できないというような取り扱いになっておったわけでございます。税金の扱い等につきましても、家族従事者について損金落としということがやられるようになってまいりましたので、私どものこの制度におきましても、五年目検討を待たずに三等親内の親族でありましても、他の従業員と同じような形でこの職場で働いておるというような者につきましては、できるだけ早い機会に加入できるような方向でやりたいというふうに考えております。
  241. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 これは特に法の改正というようなことをしなくても運用解釈でやれる、こういうふうに私は思うのですが、その点はいかがですか。
  242. 政府委員(松永正男君)(松永正男)

    政府委員(松永正男君) 法改正を待たずにやれる事柄であると考えております。
  243. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 大臣にお伺いしますが、いまいろいろとただしましたように、中小企業の労働力の確保ということが、現在非常に大きな問題になっているわけですけれども、この一つの退職金制度、共済制度これの現状が非常に魅力がないものであるということが明らかになっているわけですね。したがって、非常にこの対象企業の中で一年未満なりあるいは短期で職場を離れていくという者が非常に多いわけですけれども、これだけの理由ではないかもしれませんがね、しかし、これも一つの理由だと思います。そういうことに対して大臣としてどういう考えを持ち、これがより改善をされる方向に、私は持っていかなきゃならぬと思うのですが、大臣としての決意と申しますか、考え方をひとつお聞きしたい。
  244. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) この種の制度は、労働者自身の福祉のためからも、また中小企業に労働者を定着させるためにも、非常に大切な制度だと存じております。加入の状況は、まだまだこれでは不十分だということを認めざるを得ないと存じますが、これにつきましてはこれから先もこの制度について周知徹底させる努力も必要だと存じます。同時に、ただいまいろいろ具体的な御提案もいただいておるわけでございますが、それらの点も十分勘案いたしまして、制度の改善のために努力していきたい。この制度をさらに魅力あるものたらしめたい、このように考えておる次第でございます。
  245. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 それでは、この問題は時間の関係もございますから、またいずれ後刻論議をしますけれども、次に雇用問題について、特に最近の人手不足の対策についてお伺いしてまいりたいと思います。  先ほど田中委員のほうから若干なされておりますので、重複する面があるかもしれませんが、一つはいままでの労働省の労働力対策というものが、どちらかというと産業政策のしりぬぐい的対策におちいっていたのではないか、こういう反省がなされたと思うんですね。そのために、これを一歩前進をさせて、産業政策樹立にあたっての労働力というものが前提条件になるんだ、こういう形で雇用対策基本法というものがつくられたと思うんですけれども、今日まで、この法律の精神を生かすために、具体的にどういうような対策を立ててこられたか、まずお伺いしたいわけです。
  246. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 基本法の趣旨は仰せのとおりでございます。このためにやっております施策は非常にこまかいことになっておりますので、安定局長からお耳に入れさしていただきます。
  247. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 一昨年できました対策法に基づきまして、昨年基本計画を樹立いたしました。これは先ほども申しましたように、今後向こう五カ年間にわたる雇用対策の基本的な考え方を取りまとめたものでございます。したがいまして、あの法律ができて、最も大きな成果はこの基本計画の中へ考え方として織り込まれておるわけでございますが、これをさらに具体的に学卒あるいは地域雇用計画、あるいは中高年対策というような形で、それぞれ具体化をいたしておりますので、細目につきましてはさらにお尋ねに従って御説明申し上げたいと思います。
  248. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 労働省の刊行物によりますと、その中でこういうことを言っていることがあるんですね。計量経済学の知識を持ち、これを駆使し得ることは労働問題を語るものの常識であるべきだ、こういう一文があるわけです。ところが、いま言われた、昨年三月出された雇用対策基本計画というものを見ますと、計数の操作とか、予測を伴わない計数の操作というものがないし、あるいはそういう予測というものが全然伴っていないような感じを受けるわけです。いわゆる単なる政策的な文言の羅列ではないかというふうに私は思うのです。少なくとも計画を立てるというからには、もっと計数についての予測の裏づけ、こういうものがあってもしかるべきではないかというように私は思うのですがね。そういう点について、私は私なりに一つ批判があるわけですけれども、もしそうだとすると、雇用政策の自主性とかいわゆる自立性とか、あるいは指導性というものが欠けておりますから、依然として産業政策に追随をした計画だと、こういうふうに言わざるを得ないと思うんですが、この点いかがですか。
  249. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 雇用政策の基本を基本計画の形で取りまとめたわけでございますが、これはあくまで雇用の現状と将来の見通しという観点に立って、今後の雇用の動向を見定めた上でこれだけの計画を立てたわけでございます。先ほどから申し上げておりますことは、これを単なる労働力の需要と供給、需給調整計画として、数字的な計画として打ち立てたのではない。雇用の動向を見定めた上で雇用政策の基本的な考え方を取りまとめたものであるということを申し上げたので、決して雇用の現状ないしは将来の動向を数量的に検討しないでこの計画を立てたわけではない。したがいまして、先ほど計量的なものが背景にないから、産業政策に従属するような計画ではないかというふうな御指摘がございましたが、私どもは基本計画が、雇用対策法の中にも経済政策との調和の条項がございますし、この基本計画の考え方についても、随所に産業経済政策との相互の調和をはかるということを基本的な態度といたしておりますので、決して産業経済政策に従属するというふうな考え方でできておるものではないということを、御了解いただきたいと思います。
  250. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 労働省が一月に出しましたこの労働力不足の現状とその対策、これが出ているのですけれども、これは一般的に言われていることは、これは労働力の傾斜的配置ではないか、こういうことを言われているわけですよね。これについては一体どういうふうに労働省考えておりますか。
  251. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 傾斜的配置ということでございますが、実はこの文書そのものには傾斜的という字を使っておるわけではないのでございまして、配置という字もまたしかりでございます。その後新聞等でいろいろ論評がなされたわけでございますが、新聞の記事や何かに傾斜ないし配置ということばを使っておるわけでございます。まあ、この字句に関する限りのお答えでございます。
  252. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 ところが、一昨日出されたこの「新規学校卒業者職業紹介の基本的方針」というこの中に、「職業紹介にあたっては、学校卒業者の紹介にふさわしい一定の条件を具備する主要な産業の企業、輸出貢献企業等へのあっ旋についての配慮をとくに強化するものとする。」こういう通達が出されておりますね。これはもう出されておるわけでしょう。
  253. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) そのとおりでございます。
  254. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 そうしますと、これは特定の産業、企業への労働力の配置ということになるのじゃないですか。
  255. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 配置ということばと傾斜ということばは新聞がつけてくれた表題でございますが、必ずしも不適当だとも思いませんけれども、配置ということばから連想されることは、そこに行政力が加わるのではないかという、まあ何といいますか誤解を生ずる余地があるという点で、配置ということばは避けておるわけでございます。また傾斜ということばも使っておりませんが、この基本的な考え方の第二項に、輸出産業と主要産業への雇用の促進という項目がございまして、先ほどから申し上げておりますとおりに、職業選択の自由と適格紹介の原則に即しつつ、重点的な職業指導を行なうという基本方針が打ち出されておりますので、何らかの形の傾斜なり、あるいは重点なりというものが指向せられるということは基本的見解でもはっきりいたしております。それをさらに、本年度の学卒の紹介、職業指導にあたりまして、これを具体化して、いま申し上げたような配慮を特に強化するということによって具体化したわけでございまして、この基本的な考え方を当てはめた、具体化しただけのことでございます。
  256. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 まあ具体的にどういう方法でそういう労働力の、特に配置ということばが新聞でつくったことばだというふうに言われましたけれども、するのかわかりませんが、いわゆるこの中で一定の条件を具備するということになっておりますけれども、これは具体的にどういうような状態、どういうような要件というものを意味するのですか。
  257. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) まあ輸出貢献企業と言いましても、四千企業からございまして、その中には労働条件あるいは職場環境、いろんな点から見まして学卒労働者には適当でないという企業も相当ございます。そういった観点から一定の労働条件を具備した求人といいますか、企業に対してしかも求職者、学卒者の適格に応じて、その上にまた求職者には希望がございますから、あすこはいやだ、ここはいやだという希望もございます。あすこに行きたいという希望もございますので、それらの希望を加味して職業指導を行なうということに相なるわけでございまして、通俗的に言いまするならば、まあ条件がまあまあで、どっちに行ってもいいと本人が言う場合には、それじゃあこちらに行ったらいかがでしょうかという職業指導をやるということでございます。そこに本人の意思にさからって職業指導を加えるということは絶対にないというふうに考えておるわけでございます。
  258. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 労働条件とか労働環境のよい企業ということが一定の条件、要件だということになりますと、これはもう企業としてあらゆる努力を尽くしてもどうしても他から比較すれば労働条件が悪い、まあこういう場合もあると思うんですね。そういう場合にはそういう企業へは労働力の補充とか雇い入れということはできなくなってくるんですか。これはどうですか。
  259. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 学卒の場合には、御承知のように初任給は社会的に水準が平準化されております。その他の条件についてもやはり学卒求人をする企業につきましては、そう大きな条件の格差はないわけでございます。大きな格差があるならば、かりに求人申し込みをしましても、本人も行かないし、われわれの窓口においても悪い条件の企業に職業指導するはずがないわけでございますので、大きな格差のない求人条件の中における職業選択であるというふうにわれわれ考えておるわけでございます。
  260. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 局長の言うような形で職業紹介、指導をなされておればまあ問題もないかもしれませんけれども、しかし基本方針として特にこの主要産業の企業、いわゆる輸出貢献企業等へのあっせんについて特に強化をする、こういうふうにうたっておられると、これはやっぱり職業紹介の過程で、私はやはりいま言われた職業選択の自由という立場から、求職者の気持ちというもの、求職者の意見というものを優先にするんだと、こう言われてもやはり紹介をする姿勢、態度としては私はこの基本方針に沿った態度があらゆる言動の中に私はあらわれてくるんではないかと思うんですよ。そうしますと、この労働条件なり労働環境というものが企業の責任じゃなくって、特に今日中小企業の場合は幾ら企業が努力をしても、その努力の範囲を越えたどうしても避けられないあれがあると思うんですよ。その企業だけでは労働条件なり労働環境をよくすることができないものがあると思うんですよ。これは政府の中小企業対策というものが非常にいま問題になっているわけでございますが、したがって、そういうところがこういう形によって職業の安定機関いわゆる職業安定所から今後労働力の求職者募集から見捨てられるということになっていって、そういう企業はますます人集めに困るのではないかと私は思うんですよね。そういう点いかがですか。
  261. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) これは規模の大小を言っておるのではなくて、大企業でも人間疎外その他の理由でもって定着が悪いというふうな企業がございます。そういう場合にはやはり新規学卒は行きませんし、私どもも規模が大なるがゆえにそこへ職業指導するという考え方はないのでございます。この基本的見解もお読みになればおわかりだと思いますが、特に中小企業の部面についての配慮を随所に加えてございまして、私どもの安定機関の第一線におきましては、大企業の需要押えてそれによって中小企業にできるだけ回していくという考え方孝基本にいたしておりますので、その点の規模の大小による御懸念はないものと考えております。
  262. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 この労働力不足とその対策についての中に第三次産業部門の中の特にこの奢侈的サービス業ですね、こういうものについての対策といいますか見解が述べられておりますけれども、これらについてはどういうような考えを持っていますか。
  263. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) これは先ほどからお話のありまする学卒の場合におきましては、こういった奢侈的な産業に卒業からストレートに就職をするという場合は縁故の場合を除いてまずございませんので、この学卒の問題を離れて私どもが雇用政策の観点からこの不足対策の第一点として指摘したわけでございますが、これは先ほどから申しましたとおり、労働力をあらゆる面から節約をする、企業の立場から大企業は大企業なりにだぶつき雇用が相当ございますから、これはこれで節約をお願いする、さらに国民経済的な視野に立って過剰就業、過剰サービスというような面について、こういう具体的な事例指摘しましてこの面についても雇用主はもちろんのこと、消費者、一般国民についても御協力、御反省をいただきいという意味で指摘したわけでございます。まあそういうことで、これが直接私どもの窓口の指導におきまして、多過ぎるから全部シャットアウトするというふうな極端な指導をやるつもりもございませんし、また中年以降の御婦人等につきましては、本人の御希望も、また御性格等からいいましてもこういった奢侈産業に向く方も相当にあるわけでございます。それらを別の方面に、工業部面に向けるというような不適格な紹介をやるということは、これは安定法上許されませんので、その辺はやはり選択の自由と適格紹介の原則という大前提に立つならば、こういった産業においても人手はそれなりに確保されていく、ただあまりにも多過ぎるじゃないかということを指摘したまででございます。
  264. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 安定法第三条の解釈についてはどういう読み方をしているんですか。
  265. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) これはいわゆる均等待遇の原則を明示してございますので、私どもも、この精神は窓口におきましてもわれわれの政策の面におきましても十分貫いていきたいと思います。
  266. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 これは労働者の均等待遇の原則と考えているんですか。
  267. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) これは何人もでございますから、雇用主等を含めてこの均等待遇の原則が適用になると思います。
  268. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 そういうことになりますと、世上いわゆる傾斜的配置とか、あるいは誘導、こういうことが行なわれることになりますと、この安定法の均等待遇原則に違反する、雇用主のそういう自由についても侵す、こういうことになりますね。
  269. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 先ほどから誘導政策と申しますのは、これはあくまで労働者側、求職者側に対する誘導政策でございまして、雇用主側の産業をこれによって規制をするとか、あるいは甲乙をつける、あるいは職業に甲乙をつけるというふうな考え方では毛頭ないわけであります。
  270. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 しかし、現実に特に強化をするというようなことで職業紹介の実際の指導がなされるということになりますと、これは企業主側に言わせれば、労働力がほしいと思っても職業安定機関としてはなかなか世話をしてくれないと、こういうことが起こってくるわけですから、そうしますと、雇用について、企業主に対して、その労働条件なり労働環境の悪い雇用主に対しては差別待遇をするということになるんじゃないですか。
  271. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 求人の受理につきましては法令に違反しない限り求人を受理しなければなりませんし、またこれを、学卒の場合に学校等に提示をします場合におきましても、求人自体をあまり恣意的に取捨選択をして学校へ提示をするということは許されないわけでございます。したがいまして、多数の求人の中で求職者たる学卒がどこを選ぶかというのが職業選択の自由の問題でございまして、これは最大限に確保していかなければならぬという考え方を貫いておりまので、ここで傾斜的誘導とかあるいは傾斜的配置と申しましても、先ほどからくどいように申し上げておりますように、選択の自由と適格紹介の原則、この前提に立ってやっておるので、重点的に職業指導で誘導できる範囲というものはごく限られた範囲であるということを強調して、この前も日経新聞にその点を書いたわけでございます。
  272. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 この労働力の現状とその対策、それから今度出た来年の学校卒業者の職業紹介の基本的方針、これをやはり私はずっと読んでみますと、どうもこの政策というものは、一見しますと雇用政策というものが産業政策をリードする、こういうような形をとっているように見えますけれども、しかし、実際はどうもまだまだ特定の産業あるいは企業、そういうものに追随をしたものだ、こういうふうに私はどうしても受け取らざるを得ないわけです。大臣どうお考えですか。
  273. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 局長からお耳に入れましたように、一面において職業選択の自由があるわけでございまして、労働力は労働条件その他を含めて魅力のある職場に流れていく、これをいかんともすることができないのでありまして、本人の意思に反してこれを配置するというようなことは、これはもともとできないことでございます。また、適格紹介の原則と申しますか、本人の適性に応じた職場へつけるということが職業紹介の基本原則でございますから、したがいまして、私どものやれることには狭い限界があると思っております。でありますから、傾斜的配置というようなことばが、その実態から考えますときに非常に大げさなことばになるわけです。あの文書を発表いたしましたのは、何か私ども非常に大げさな野心的な意図をもって出したわけじゃないのでございまして、労働力不足の実態について、国民の認識を深める一助たらしめたい、こういう気持ちもあって、あの文書を出したわけでございます。ただ、いろいろな条件が同一であって、本人の意思も必ずしも確定的にどこそこへ行きたいというようなはっきりした意思がありません場合には、そのときどきの国民経済の要請に従って常識的に当然必要と思われる職場へついてもらうように、職業相談等について勧奨もするでございましょうし、協力もする、そういうことはございましょうけれども、しょせん労働省としてやり得ることにはこの点では限度がある。根本的に、たとえば中小企業等を魅力ある職場たらしめる仕事は、これは総合的な国策の問題であろうと存じます。その点におきましては、労働省といたしましては、あるいは福利施設等の充実につとめる、あるいはまた労働条件の改善につとめる、こういう努力はこれから先も継続してやってまいりたいと考えております。さきに発表いたしました文書の趣旨は、いま申し上げたようなところと御了解いただきたいと思います。
  274. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 一般に職安は二割職安だとこういうことがいわれておるわけですね。大企業の場合は、これはもう独自でもって学校に紹介する、あるいは文書で募集する、あるいは直接出向いて募集する、こういうことをみんなとっておりますよね。したがって、この職業安定機関というものを経由しなくても必要な労働力は調達しているわけですけれども、二割職安といわれておっても、この職安をたよりにし、そうしてこれを利用しているというのは、やはり何といっても中小零細企業だと思うのですよ。そうしますと、その新聞なり、あるいは一般に労働省の今度の基本方針はどうも特定の産業なり企業に奉仕をするようないわゆる傾斜的な紹介になっているのではないかというようなことになると、いま言ったような中小零細企業、いわゆる弱い企業というものはますます困ってくるということになるわけですよね。こういう点についてどういうふうにお考えですか。
  275. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 先般出しました文書がさような印象を与えるといたしますれば私どもとしても反省をしなければならないと思います。中小企業の人手不足はとりわけ深刻な状況にありますので、これを解消いたしますためには、これからもあらゆる努力をしていきたいと考えております。
  276. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 それでは、労働省はすでに昨年の十一月いわゆる輸出貢献企業ということで約四千の名簿を職安に配付をしておりますよね。これはやはり何といっても傾斜的な紹介制度というものがもう半年も前から実際にやられているのではないかというふうに私はどうしても思わざるを得ないわけです。一体、その紹介の方法あるいはその実績というものの内容ですね、それはどういうふうになっておりますか。
  277. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 昨年の十一月に輸出貢献企業四千企業の名簿を通産省からいただきまして、参考資料として第一線の窓口に送付しておることは事実でございますが、これはあくまで参考として送付したわけでございます。そこで、まあ今後この基本的な見解並びに先ほどからお話が出ております学卒紹介につきまして、これをさらにどういうふうに具体的に使うかという問題に相なるわけでございますが、これは先ほどから大臣からも御答弁がございましたように、きわめて限られた限度において職業指導の面におきましても誘導指導を加えるということはわれわれとしては考えておるのでございます。それは先ほどから申しましたように、条件が同じで本人の希望もどちらでもいいという場合、しかも、まあ学校並びに安定機関が判断をして、この子はこういつた方向へいったほうがいい、適格性も持っておるというような場合に限って、どちらかといったらこの重要産業部面にいったらどうですか、こういう指導を加えることになっておりますので、そういう場合に四千企業の名簿も参考資料として活用されることはあり得ると思います。
  278. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 そうしますと、労働条件に差異がある場合にはそういうことはしないわけですか。
  279. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 労働条件に著しい差がある場合には、これはやはり求人の条件として、まず相当優劣が出てまいりますので、これは本人の側も希望しないでしょうし、われわれが職業指導する場合にも、大きな格差がある場合には受理はしますけれども、今日のような倍率になりますと、実際問題としてはそこへ職業指導をするということはあり得ないと思います。
  280. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 同じ労働条件であれば、まあどちらかというと主要な産業、あるいは輸出貢献企業、こういうところへいったらどうだ、こういう誘導的な紹介をするということですね、これは本人の希望もありますけれども、紹介の態度としてはやはりそういう考え方でやるわけでしょう。そうしますると、それをもし求職者が拒否をした場合にはどうなるのですか。
  281. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 先ほどから申し上げておりますとおりに、今日の倍率は平均で三倍ないし四倍、供給地にいきますと十倍からの倍率になっておりますので、本人は拒否する自由はありますし、選択の積極的な自由はもちろんあるわけでございます。
  282. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 これは新規学卒者だけが対象になっているんですか、それとも一般の求職者にも適用されるわけですか。
  283. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 今回の通達は、これは中卒と高卒に限定した学卒者の指導要領でございます。
  284. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 そうすると、もし一般の求職者に対してもこういうようなことが行なわれるということになりますと、たとえば失業保険の受給資格者であったものが、そういうような職安の紹介を拒否したとなると、これは就職をする意思がない、こうみなされて、失業保険金の支給を受けられない、こういうことになりますか。
  285. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 再就職の場合は、すでに何がしかの職歴をもち、経験をもって再就職するわけですから、まずは適格紹介の原則というものが大いに働きますし、また、選択の自由というものも中年からの再就職の場合には特に重視しなければなりませんので、まあこういう職業指導の余地というものはうんと狭まってくると思います。その範囲では、やはり職業指導を行なう、あるいは職業相談を行なうということは可能でございますし、実際もやると思います。
  286. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 再度確認しますけれども、これは新規学卒者の職業紹介の基本的な方針、こういうことでいいわけですね。
  287. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) そのとおりです。
  288. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 それからこの対策の中に、地元優先主義の是正ということが一つの方針として掲げられているのですけれども労働省は機会あるごとに、府県当局の学卒紹介に関する地元優先あるいは地域モンロー主義というか、そういうことを非常に非難をしているわけですね。私はきょう午前中本会議質問したのですけれども、経済の地域格差は特に高度成長によって拡大をしているわけでございますけれども、地元で労働力を確保しようとすることは、私はむしろ府県当局のやむにやまれない自衛手段ではないかと思うのです。そうしますと、こういうことを非難するということは、これはかえって太平洋ベルト地帯なり特定地域への労働力を集中させる、そういうことになってくるわけであって、したがって、地域的あるいは産業的な労働力の傾斜配置と、こういうことにもなってくるのではないですか、この点いかがですか。
  289. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 産業と労働力の分布がアンバランスでございますので、その間に流動政策をとらざるを得ないわけでございますが、最近のように不足がちになってまいりますと、地域主義の考え方が非常に行き過ぎる場合があるわけです。この行き過ぎに対しては、私ども関係の府県当局に要請をいたしまして、ぜひ是正をしなければ今後の日本の産業経済の発展を大きく阻害いたしますので、行き過ぎに対しては、ぜひ是正をしてまいりたい、こういう考え方をうたっているわけでございます。
  290. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 行き過ぎということが、どの程度が行き過ぎなのかわかりませんけれども、これは産業界にすればやはり経済の効率化、あるいは経済の合理主義にのっとって、立地条件のよいところにどんどん工場を建ててしまうわけです。したがって、労働力というものはやはりそこに集中をしてくるということになるわけですけれども、これはやはりそれに従って地域格差というものはますます拡大してくるわけですから、ですから労働省の労働力対策としては、やはりそうした府県当局の、自分たちの地域開発あるいは格差是正の政策、そういうものに対しても、やはりある程度協力をするというようなことが私は必要になるのじゃないかと思うのです。一体労働省はこういう地域格差を是正するという、いま日本経済の中で直面をしている大きな課題について、労働力の配置との関連でどういう考えをもっているのですか、これは大臣に聞いたほうがいいと思います。
  291. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) もちろん各地域の実情、実態については、十分検討しなければならないと存じますが、当面必要なことは、やはり産業と労働力の配置の不均衡、アンバランスを全国的な規模で解消していくことである、このように考えているわけでございます。
  292. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 どうもそういう点からも私はまだまだ労働省の労働力対策というものは産業に追随をした対策になっていると、こういうふうに考えざるを得ないわけです。  そこでさらに、時間もありませんので、これに関連して、地方事務官の身分移管の問題ですが、行政管理庁あるいは臨時行政調査会等の答申では、国家公務員の身分を持っている職安行政職員、これを地方公務員にするということを労働省にもう前々からいっているわけですけれども労働省としては、職安行政というものは統一して国でやったほうがいいのだ、こういうことで拒んでいるというふうに聞いているのですけれども、いま言ったような地域モンロー主義あるいは地元優先主義、こういうことを考えますと、労働省としてこの際これらの問題について考え直す必要があるのではないか、こういうふうに思うのですが、この点はいかがですか。
  293. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 先ほどからモンロー主義を是正することが産業政策に奉仕するものだと、産業に従属するものだというような御指摘がございましたが、私どものほうは全然逆なことを考えておりまして、労働市場としては全国一本の労働市場の中で条件のいいところに労働力は流動するというのがごく自然の姿でございます。で、地域地場産業の要請があるからといって、条件の悪いところに足どめをするという政策は、これこそ産業に従属するかもしれませんけれども、求職者側から見ますと福祉の向上に反するという考え方で、この行き過ぎ是正をうたっておるわけでございます。  また、地方委譲の問題につきましても、労働力の行政につきましては、先進諸国においてはこれは国の行政として展開をしておる、決して府県とか市町村単位の行政としてやっておらないのでございます。これはますます不足になればなるほど府県単位の行政にすれば弊害が出てくることは明らかでございますので、この労働力行政を国の行政として堅持するという方向は今後も持ち続けたいと思いますが、地方地域との利害の調整という点においては、さらにいろいろ制度的にも検討の余地はあろうかと思います。そういうふうな考え方で今後対処してまいりたいと思います。
  294. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 労働力の対策について、単に現状を是認した上でこれの対策を立てていくというならば、いま言ったようなことが、局長の言われたようなことがあるかもしれませんよ。しかし、労働力対策は、単に私は、ここにもいろいろ書いてありますけれども、本人の希望に従って適格者をそれぞれの産業に紹介をするということが私は労働省の労働対策ではないと思うのです。たとえば賃金問題だってそうでしょう。最低賃金制の問題について午前中もやりましたけれども、一律最低賃金を全国的に施行する、これを法的に規制をして全労働者に及ぼしていくということは、これは労働省の仕事でしょう。そういうようないろんな面を総合的にやって初めてこの労働力の円滑な流動あるいは雇用対策というものも、これは一産業や一企業に片寄らない、そして地域のそれぞれの開発にも貢献をし、格差をなくしていく、こういうことに私はなると思うんですよ。ですから、そういう総合的な対策がやはり労働省としてまだまだ不十分じゃないかと思うんですよ。最低賃金そのもの一つとってみてもそのことは言えると思うんですよね。そういうことを隠して、単に労働条件のいいほうに労働者が流れていくのはあたりまえだと、こういうことで雇用対策考えられておったんでは、これは労働省としてのいわゆる労働行政としては少し私は足りないところがあるのじゃないかと思うのですが、この点はいかがですか。
  295. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) むろんいまおことばにありましたような総合的な施策が必要だと存じますので、現に各種の施策の充実強化につとめておるわけでございます。中小企業に対しましても、先ほどお話が出ておりまする共済等への加入も勧める、あるいはまた最低賃金制の効果のあがるような形での推進につとめていく、そういう施策も合わせ行なっていかなければならないことは当然でございます。そういう施策を充実することによりまして、中小企業の場合でありますれば、中小企業の職場をより魅力あるものにすることがこれが根本でなければならないと考えておるわけであります。本人の意思に反して劣悪な労働条件の職場に強制的に就職させるということはこれはしょせん不可能なことであります。そういう意味で私どものやっておりますことに非常に狭い、限界があることはこれはもう最初から認めなければならないこと、だと思います。
  296. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 これで私の質問は終わりますが、最近の国際的な経済の流動、変動ですね、ベトナムの和平なり、あるいはドル防衛、そういうことに関連して、この日本の産業なり経済にやはり大きな影響があることはこれはもう明らかだと思うのです。したがって今後の労働力をそうした将来に展望した場合に、一体どの程度の不足と申しますか、あるいはどういうような影響があるのか、これは非常に抽象的ですが、ひとつ大臣考えておられることをちょっとお聞きしたいと思います。
  297. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 先般来の国際通貨の不安の問題は、当面一応の落ちつきを見せておりますけれども、まだまだ流動的な要素がたくさんございましょうし、ベトナムの戦争にいたしましてもこれがはたして最終的な和平が、平和が戻ってくるのか、それがいかなる形で実現されるのかというようなことがなかなか予測しがたいことだと存じます。したがって、将来に対してなかなかこの段階で的確な見通しもつきかねるかと思いますけれども、常識的に考えられ、また言われておりますとおりに、当面実行されております景気調整が相当長い期間にわたるのじゃなかろうか、かようなことが考えられるわけでございます。これに伴いまして、あるいは部分的に整理とか解雇とかいうようなことが出てこないとも限らない。もちろん基調としては今後当分ただいまの労働力不足の基調が持続することと考えられますけれども、さような事態が出てまいりました場合には、現行の制度を十分に活用して対処していきたいと思います。今後予見し得る非常に近い将来に労働需給の面で大きな変動があるかないかというようなことは、ただいまこの時点ではなかなか予想がつきにくいところだと考えております。
  298. 柳岡秋夫君(柳岡秋夫)

    柳岡秋夫君 ひとつ今後さらに労働力の不足というものが逼迫してくるということは予想されるわけですから、十分これらの点について労働省としても的確な予測あるいは的確な対策を今後推進されるように私は要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  299. 宮崎正義君(宮崎正義)

    宮崎正義君 私は失業問題につきましてお伺いしたいと思います。  昭和四十三年度の労働省の所管であります一般会計及び特別会計予算説明要旨に説明もございますが、「労働力の不足基調が一層強まるとともに、人口構成の高令化や技術革新の進展等により職種、年令、地域等における労働力需給の不均衡がさらに拡大するおそれがあります。」こういうふうに説明をされております。御存じのように、昨年の中小企業の倒産は八千数百件と聞いております。これら中小企業の倒産によりまして、さらに失業者の方がふえて、苦しい生活をされておる人たちが非常に多いのじゃないか。今日までの失業者の現況等について説明をお願いいたしたいと思います。
  300. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 失業情勢を判断する指標はいろいろございますが、まず第一には、いわゆる完全失業者の失業率でございますが、これは最近一%内外の失業率でございまして、この指標から見ますと、失業情勢は非常に好転をしておるというふうに判断されます。さらにこの失業率だけでは判断できませんので、失業保険の受給率を見ますと、受給率が二%台から最近は一・九%というふうに低下いたしておりますので、これもまた失業情勢を判断する指標としては、非常に失業情勢がよくなっておるというふうに判断されるわけでございまして、企業の倒産件数はふえておりまするが、人手不足の基調の中で、大筋としては離職者あるいは合理化解雇者の問題がうまく解決をしておるというふうに見ておるわけでございます。
  301. 宮崎正義君(宮崎正義)

    宮崎正義君 失業者はどれだけあるか、失業者、半失業者等の数が現在の状態でわかれば説明をしていただきたいと思います。
  302. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 完全失業者の数は昨年の十月−十二月平均で五十万でございます。それから完全失業者だけでは不十分でございますので、私ども意識面から見た不完全就業者の把握につとめておりますが、これは三十一年に二百七十八万であったものが、四十年には百八十四万に減っております。
  303. 宮崎正義君(宮崎正義)

    宮崎正義君 労働力不能の貧困者というのはどのくらいありますでしょうか。——労働力不能の貧困者、働きたくも働けないという……。
  304. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 非常にむずかしい問題ですが、労働力不能というのはつかみにくいんですけれども、たとえば身体障害者でとらえますと、全体で百四万ございます、十八歳以上の身体障害者が。この中で就業している者が約四十万で、就業していない——これはほとんど八割までが就業不能者でございますが、これが六十万ございます。このほかにも不能の状態が、精薄等についてあると思いまするけれども、ちょっといま数字がはっきりいたしません。
  305. 宮崎正義君(宮崎正義)

    宮崎正義君 ここでレイオフシステムということについて御見解を伺っておきたいと思います。
  306. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) レイオフの制度は御承知のようにアメリカで発達をいたしておりますが、景気の調整過程におきまして、雇用量を縮減するという場合にレイオフ制度をとっておるわけでございまして、これはいわゆる先任権制度にささえられておりますので、入社後経験の浅い者から一時的に解雇をされ、そして景気が回復したならば復職する、こういう慣例に相なっております。
  307. 宮崎正義君(宮崎正義)

    宮崎正義君 日本の過去の例をご存じでしたら、教えてもらいたいんですが。
  308. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 日本の場合には、アメリカと同じような形でのいわゆるレイオフはほとんどないと思います。なぜならば、先任権制度が確立いたしておりませんので、日本的な解雇、合理化というものは過去の不況期にこれは相当ございました。最近のような人手不足になりまして、ようやく合理化解雇が減ってきておるという状態でございます。
  309. 宮崎正義君(宮崎正義)

    宮崎正義君 二十九年ごろに金融引き締めの不況のときがありましたのですが、そのときのことが少し知りたいのですけれども、この日本の鉄鉱関係等のですね。
  310. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 二十九年の不況時の問題は、たしか鉄鋼と造船だったと思いますが、これはあくまで解雇という形をとっておるわけですけれども、当時、失業保険との関係におきましては、一時帰休というふうな形で合理化がなされた経験がございます。その後、最近におきましても、四十年の不況に際して、日経連等におきましては、そういった一時帰休の考え方をとりたいという一部の意見はございましたけれども、まあ私どもとしましては、雇用情勢が十年前とは大いに違っておりますので、この際はそういった一時帰休というような形はとらないでほしい、なるたけ首を切らないことと、どうしても解雇せざるを得ない場合には、他に不足面がございますので、解雇をして他に就職をあっせんする、まあこういうはっきりした形で問題の決着をつけたいというようなことを申し上げまして、その際には一時帰休ということはとられなかったという経緯がございます。
  311. 宮崎正義君(宮崎正義)

    宮崎正義君 前の端境期なんかにおけるところの状態はどうなんでしょう。前の端境期の製糸工場とですね、いま現在と、どういうふうになっていますか。製糸工場ですね。
  312. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 以前に製糸についても、操短による一時帰休という事例があったようでございます。
  313. 宮崎正義君(宮崎正義)

    宮崎正義君 毎年あるのじゃないかと思っておったのですが、そうじやないのですかね。
  314. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) いま申し上げたような産業については、毎年一時帰休ないし解雇を繰り返すということはあまり聞いておりませんので、土建等に見られる季節労働者については、シーズンオフになれば解雇をするという慣習はいまだに残っております。
  315. 宮崎正義君(宮崎正義)

    宮崎正義君 したがいまして、その現在の実情等、私は知りたいわけなんですが、なお、四十三年度は引き締め財政で、これらのことが随時、違った形ではありませんけれども、こういう形をとって一時解雇のような姿をかなり見られるわけですが、この見通し等についてはどんなことでしょう。
  316. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) いわゆる季節的な循環解雇を行なっておりまする季節労働者につきましては、過去十年来、こういった労働者がふえ続けまして、大体今日では五十八万程度にふえております。で、いわゆる季節労働者の数字は、見方によっていろいろ違うのでございますが、私どもが保険の面で把握しておる数字は五十八万という数字でここ三、四年この数字は頭打ちといいますか、横ばいになっております。したがいまして、今後の景気の調整過程におきまして、これがどういうふうに変動するかという点は予測がなかなかむずかしいんでございますが、建設工事量等の点からいたしましてそう大きな変動はない。したがって、失業保険会計におきましても大きな見込み違いが生ずるというふうなことはまずないんではないかというふうに判断をいたしております。
  317. 宮崎正義君(宮崎正義)

    宮崎正義君 経営者は当然労働基準法の第二十条によりまして三十日前に解雇予告を行なう、これはあたりまえのことなんですが、三十日分以上の平均賃金の支払いをしなければならないということはわかるわけですが、実際の問題からいきまして支払っていないようなところも私は聞いているんですが、この点御存じでしょうか。
  318. 政府委員(村上茂利君)(村上茂利)

    政府委員(村上茂利君) 解雇をいたします際には三十日前に予告をしなければならない、即時解雇の効力を発生させるためには平均賃金の三十日分以上を支払わなければならないという規定はこれは強行規定でございますので、使用者は予告か、しからずんば、予告手当を払わなければならない義務があるわけでございます。そこで、この問題につきましては間々二十条違反の問題としてありますことは事実でございます。従来とも訴訟の事案になりました例も少なくないわけであります。ただ先生御指摘の点は、おそらく退職ないしは解雇いたします際に、不況の場合には賃金不払いの問題も生じまして、賃金も不払いだ、退職金も支払わないといったようなケースがあるのではないかというような理解もできるわけでございますけれども、賃金不払いの事案につきましては従来とも監督の重点として指導監督をいたしてきておるわけでございまして、最近の傾向としては件数、金額ともほとんど横ばいというような状況になっておりますけれども、何ぶんにも労働者の生活に直接響く重大な問題でございますから、今後とも監督指導の重点として処理してまいりたいと、かように考えております。
  319. 宮崎正義君(宮崎正義)

    宮崎正義君 件数と金額を知らしていただきたい。
  320. 政府委員(村上茂利君)(村上茂利)

    政府委員(村上茂利君) 御指摘の点は賃金不払いの件数と金額……。
  321. 宮崎正義君(宮崎正義)

    宮崎正義君 そうです、二十条による……。
  322. 政府委員(村上茂利君)(村上茂利)

    政府委員(村上茂利君) 二十条によりますところの件数は、ちょっとこれは正確な数字は把握しがたいんですが、といいますのは違反がありましたときに是正させます。そして、支払いましたものはこれは件数として数えておりませんので、そういった点につきましては全部を網羅したデータはございません。
  323. 宮崎正義君(宮崎正義)

    宮崎正義君 金額はわかりませんですか。どれぐらいの金額かもわかりませんか。
  324. 政府委員(村上茂利君)(村上茂利)

    政府委員(村上茂利君) この点は実は正確に押えがたいんでありますが、つまり三十日前の予告をいたしまして、予告いたしました場合は、これはもう問題はないわけであります。ところが、即時解雇の効力を発生さしたいという場合に解雇予告手当を支払うかどうか、支払わなければならぬわけであります。ところが、即時解雇の意思表示が明確でないというケースがあるわけであります。そのような問題がございますので、いま先生御指摘の金額を明示せよということになりますと、即時解雇をするというたてまえで三十日分以上の予告手当を支払った、その件数と、その金額を押えなければならない、こういうことになりますが、予告手当につきましては途中で三十日の残日数を、平均賃金にその残日数を掛けましてその時点において解雇の効力を発生さすということも認められておりますので、そういう形態のものでございますから、何件あって、その金額が幾らというのは行政的にも数字をとっておらないわけでございます。
  325. 宮崎正義君(宮崎正義)

    宮崎正義君 私の聞き方もまずかったんでしょうけれども、いま違反事件として取り上げられているものですね、それらの問題について、履行していない違反事件として……。
  326. 政府委員(村上茂利君)(村上茂利)

    政府委員(村上茂利君) 御指摘の、監督をいたしまして明らかに労働基準法二十条違反であるという観点から措置をいたしましたものの件数は、四十二年の実績について申し上げますと百八件となっております。
  327. 宮崎正義君(宮崎正義)

    宮崎正義君 先ほど御説明がありましたので、失業態勢というものは減っていっている状態だから、レイオフ、一時解雇等の問題は少なくなっていくというお話を聞いておるんですが、先ほども申し上げましたように引き締め財政になってくればこういうケースが私はふえてくるんじゃないか、これを心配するわけなんですが、こういう点について十二分に監督行政等を行なっていただきたいということをこの件については申し述べておきたいと思います。  次に失業保険の特別会計の現況について御説明を願いたいと思います。
  328. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 失保特別会計の四十二年と四十三年の規模について申し上げますが、四十二年度は千九百五十億、四十三年度は二千六十八億、こういった規模で予算が組まれております。そしてその中で一番おもな歳出予算の費目でございますが、保険の給付費の総額は四十三年度は千五百六十四億見込まれております。そのほかに予備費が四十三年度は百八十七億計上してございますので、先ほどから、もし景気の調整過程において雇用情勢か悪化したならばどうするかというふうな御懸念がございましたようですが、この予備費でもって、人員に換算いたしますと、月平均二十万八千人相当分の予備費が計上してあるわけでございますので、これで十分対処していけると思います。  なお、金額ではわかりにくいと思いますが、受給者の実績を申し上げますと、四十一年以来大体五十万台で推移しております。ことし、四十三年度の予算におきましても千五百十二億の一般の給付金額は、人員に直しますと五十八万人見当の受給者を予定しておるわけでございます。
  329. 宮崎正義君(宮崎正義)

    宮崎正義君 大体この内容、要するに受給者の内容というのを、大づかみでいいですから分けて御説明願えないでしょうか。たとえば日雇い失業保険とか、あるいは一般とか、季節労務者に対するもの、それに対する、何万人に対する予定だというようなことがわかれば御説明願いたいと思います。
  330. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) ただいま申し上げました月平均の五十八万受給者と申しますと、年間に実員で引き直しますと約百七、八十万になると思います。で、これを大ざっぱに内訳的に申し上げますと、女子の受給者が約四割見当になると思います。それからさらに、御指摘のように、毎年季節労働者として雇用と失業を繰り返すという場合の受給者がこのうちに頭数で約三分の一見当含まれておると思います。それから、日雇い保険につきまして別建てになっておりますので、大体月間の受給者が八万八千人という見込みでございます。
  331. 宮崎正義君(宮崎正義)

    宮崎正義君 季節労務者に対する保険制度としての考え方というのはどういうふうにお考えになっているのか。
  332. 政府委員(有馬元治君)(有馬元治)

    政府委員(有馬元治君) 失業保険は保険でございますので、保険事故に偶発性がなければならぬということは保険の性格上当然でございますけれども、季節労働者の場合は毎年予定された失業を繰り返しておるという実態がございまして、どうも失業保険の面から見ますと、これはなじまない層でございます。しかしながら、出かせぎをしなければ食べていけないという実態もございますので、まあ私どもとしましては、できるだけこれらの季節出かせぎ的な就労形態の労働者を正常雇用の労働者に転換をさせていって、この種の受給者が減るように対策を講じておるわけでございます。現に、今年度の新しい考え方といたしましては、通年雇用奨励制度を設けまして、冬場の季節的な就業者に対して、冬場事業を継続する場合にこれらの受給者を雇用したならば一定の奨励金を事業主に助成をする、それによって積雪地帯の冬場の冬季工事を継続工事として可能ならしめる、あわせてその地域における失業受給者を雇用労働者として吸収してもらう、こういった一石二鳥の考え方で通年雇用奨励金制度を創設いたしておるわけでございます。
  333. 宮崎正義君(宮崎正義)

    宮崎正義君 時間がございませんので、まだそのほかいろんな角度からお伺いをしようと思っているのですけれども、時間がありませんのでこの程度でとめますけれども、最後に申し上げたいのは、炭鉱離職者緊急就労対策事業というものが行なわれて、今年度も引き続いて行なわれるようになっております。実情は、緊急と言いながら、賃金をもらえないうちに廃山になってみたり、あるいは解散をするような事態の中で、実際の受給を受けるのは早くて一ヵ月半、それ以上に延びることがほとんどであります。こういう一つの例から取り上げてみましても、失業者は減ってきているから、だんだんいい傾向になっているからと言いながらも、最低生活をしその失業の苦を味わっている人たちは、まだまだ私たちの生活の想像以外な苦しい生活をしているという、一つの炭労の離職者のことから取り上げてみても、これはまことに深刻なものでありますし、これに対する考え方はより積極的な私は労政の行き方というものを考えていかなければならないということを申し添えまして、大臣の所見等伺って私の質問にかえたいと思います。
  334. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) ただいま、一般的には、先ほど答弁も申し上げましたとおり、失業者の数も減ってきておりまするし、労働力不足の基調が強まってきておるわけでございますが、炭鉱は確かにこれは特殊な事態でございますから、これに伴いまして閉山等に際し非常にお気の毒な事情の方が出てきておる実情については、私もかねがねいろいろ聞いておるのでございます。炭鉱離職者に対する措置につきましては、これからも、現行制度の活用、要すればさらに制度の改善を行ないまして御迷惑のかからないように十分対処いたしてまいりたいと考えております。   〔副主査退席、主査着席〕
  335. 石本茂君(石本茂)

    石本茂君 私は、婦人及び年少労働者の労働に関しまして、四つのことについてお尋ねをしたいのでございます。  まず初めに、大臣の御所見といいますか、お聞きしたいと思いますのは、労働基準法がございましたり、特に婦人年少者のためには特定な基準もございまして、非常に守られてまいりました。特に近時労務管理が行き届いております大企業においてはよろしいのでございますが、まだまだ全般的に見まして、女であるがゆえに、あるいは年少でありますがために、みじめな実態もございますが、これらの実情につきましてどの程度まで御掌握になっておられますのか、お伺いいたします。
  336. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 婦人労働者の労働条件の維持改善ということには、私ども強い関心を持っております。ことに最近の人手不足に伴いまして、労働力の供給源としてますますこれは婦人の労働力ということが大切な問題になってまいりますので、これからも労務管理の近代化、ことに中小規模の職場に働いておいでになる女の方々について労務管理を近代化していくということについては特に力を入れていかなければならないと考えております。
  337. 石本茂君(石本茂)

    石本茂君 そこでまずお伺いしたいと思いますことは、実は四十二年度の予算を拝見しておりますと、看護婦とか助産婦の深夜勤務をめぐりまして、このことにつきましては予算の措置がなされませんで、昭和四十年度の下期から、婦人少年局長もおいでになっておりますが、とても気をつけてくださいまして、このことのための会議も再三開いてくだすって、いま申しておりますように、四十二年度では、単年度予算であったと思いますが、わずかではございましたけれども二十万円ほど計上されておりました。ところが四十三年度予算を拝見しておりますと、それが消えてしまいまして、単年度だからということと、あるいはまた他のものとの組み合わせにおきまして消えたのかとも思うのでございますが、せっかくわずかでも予算がとれておりまして、非常にこの職におりますもの一同、労働省のほうでやっと私どもの問題にも目を当ててくだすって、やっと日の目が、婦人労働者としてあるいは年少労働者としてお考えいただけるというので喜んでおったところでございますので、非常に残念なんですが、なぜこのようなことになったのでございましょうか。お尋ねいたします。
  338. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 非常にきびしい本年度は予算が組まれました結果、私どもといたしまして、これからますます伸ばしていきたいというような施策に関連する予算で残念ながら実現を見なかった例も若干あるのでございます。ただいまお話のございましたのは看護婦、助産婦等の夜勤等に関する専門家会議費二十四万九千円、昭和四十二年度計上されておりましたのを本年度要求しませんでしたのは、ただいま専門家会議で検討をいただいておる事項についての結論が一応四十二年度にちょうだいできるものと、かような予想のもとに計上いたさなかったわけでございます。
  339. 石本茂君(石本茂)

    石本茂君 まあこの席でその経過につきまして、あるいはいま大臣申されましたようにある程度の結論が導き出されたということになりますと、何はともあれそれを教えていただけないものでございましょうか、どのような一体結論に導かれていったのか。
  340. 政府委員(高橋展子君)(高橋展子)

    政府委員(高橋展子君) ただいまの専門家会議につきましては、予算の編成の時期におきましては、今年度内に一その会議の結論がちょうだいできると、このような見通しでございましたために計上いたさなかったわけでございますが、まあいろいろな事情で多少審議が延びておりまして、四十二年度中には結論をちょうだいするに至らなかったわけでございます。したがいまして、この会議はいまだ審議続行中でございます。しかし、遠からず結論が得られるのではないかと思っておりますので、それまでお待ちいただきたいと思います。
  341. 石本茂君(石本茂)

    石本茂君 それでございましたら会議費は取れませんでしたが、なおこのことにつきましての結論が出るまでは会議等を続けていくというふうに理解してよろしゅうございましょうか。
  342. 政府委員(高橋展子君)(高橋展子)

    政府委員(高橋展子君) 仰せのとおりでございまして、現に会議を開催し、継続して審査いたしております。
  343. 石本茂君(石本茂)

    石本茂君 このことではぜひそのようにひとつよい結果が導き出されますようにお願いいたしますが、続きまして次の点と申しますのは、これは昨年の暮れでございました、宮城県下の、場所をはっきり申し上げていいかどうかわかりませんが、回っておりましたときに、ある病院に立ち寄りましたところが、その地域の労働基準監督署から署長のお名前をもちまして、その病院長にあてて、いま現在働いて、就労しております女子労働者の、いわゆるこれは資格を持っておる准看護婦でございましたが、一月になりませんと満十八歳にならない人でございました。この者に深夜勤務をさせていると、これはもちろん公的医療機関でございますから三交代制勤務をしているのでございますが、深夜勤務をさしていることはけしからぬ、それは人権の基本的なものにももとるものである、これは即刻やめさせろという強いお達しがあったわけでございます。で、実は昨日大臣にも、私電話して、いらっしゃいませんでしたが、このことをめぐりまして質問をいたしましたら、基準局、長さんの御回答によりますと、こういう場合は基本的な人権が優先するのではなく、法的根拠によりますとですね、むしろ准看護婦という資格が優先するのだという御回答でございましたけれども、同じ労働省管下にあります、特に下部的——部ということばを使ってよいかどうかわかりませんが、組織体系でありますところの労働基準監督署長さんがいけないとおっしゃることを、本省の基準局長さんの御見解におきまして——法律はそれをきめているのではありますけれども——そうでないんだということになりますと、何かとても問題がややこしくなりまして、実は私個人にあてましてそのことを労働省に確かめろということでございますのです。ですけれども私もそうそう軽々しく言えることでございませんので、基本的人権が優先するのか、資格、身分が優先するのか、実はそのことを聞きたかったわけで、それで昨日聞いたわけです。これは記録にも残っておりますことですので、もう一ぺんこの場所で——実は石巻市の周辺のある村の村立の病院のことでございます。
  344. 政府委員(松永正男君)(松永正男)

    政府委員(松永正男君) 予算委員会では一般論を申し上げましたのですが、一般論につきましては、予算委員会で答弁したとおりでございます。で、あのときは看護婦というよりも、年少者であれば、准看護婦である年少者についても深夜業は認められている、しかし、労働時間そのものは八時間でありまして、もう延ばすことは、それ以上延ばすことが例外は認められないわけです。ですから、通常の場合、昼間労働した場合に、夜間勤務を認めるということはほとんどあり得ないというふうに申したわけであります。そこで、御指摘のケースにつきましては、私どもさっそく調査いたします。  そこで、准看護婦で、しかも年少者であるから深夜勤務がいけないと言うたのか、あるいは昼間労働しておって、さらに深夜業をさせるということがいけないということなのか。あるいはよく混同される事案といたしまして、深夜勤務が正常な深夜勤務か、あるいは宿日直という形の勤務かどうかという問題ももう一つあるわけであります。で、もし、宿日直という形で、看護婦であります年少者にそのような勤務をさしておりますと、十八歳未満の者についてはそのような宿日直を認めておりませんから、許可いたしておりません夜間に仕事をしておりますけれども、それが宿日直であるならば、それは認めておりません。そこで、そういう意味で昼間の労働をオーバーして夜間勤務をさしておった状態か、あるいは宿日直形態の認めていない者をやらしておったものか、そういった点を私どももさっそく調査いたしてみます。そういう意味で私のは、一般論を申し上げたのでございますけれども実態をよく調べまして、的確な処理をいたしたいと存じます。
  345. 石本茂君(石本茂)

    石本茂君 ぜひお願いいたしたいと存じます。といいますのは、私のほうもまた書類を実はその場で見たものですから。はっきりと深夜勤務という時点だったと記憶しておりますけれども、もう一ぺんその病院長に対しまして、当時の書類を確認したいと思っておりますけれども、そのときは私だけではございませんで、数人一緒だったものですから。大きな病院の総婦長なんかもおりまして、これはたいへんな問題だ、われわれはやはり職務優先ということで実は深夜勤務に充てているのだ。しかし、いまこのような事例が出ますと、これは避けられないことだ、たいへんな違反をしていたのだという話題もそこに出ておるわけでございますから、私のほうもその資料をとって見たいと思いますけれども、ぜひいま局長さんのおっしゃいましたように、まちがった事態での忠告だったのか、いわゆる、深夜十時からあしたの朝の五時までの勤務はいけないということだけだったのか、私のほうでも吟味したいと思いますが、私はそのように受けとめて帰ったものですから、しつこく、しつこく聞いているわけでございます。  それでは、続きましてもう一つ、ここでさっき大臣も申されておりましたけれども一般事業所はともかくといたしまして、特定の事業所、特に人命救助という使命を持っております病院あるいは診療所、大きな病院はともかくとしまして、診療所等にまいりますと、いまの労働基準法、特に女子年少者のためにきめてあります法律、規則なんというものは一体、どこにございますのか、さっぱりわかぬかっこうでございますけれども、超過勤務手当というものをもらったことがありません。ましてや深夜勤務手当をもらったことがありません、しかしながら、あるときは二十四時間勤務をいたしますというような事態がまだ随所にあるわけでございますけれども、こういうものを労働省としましてはどのように取り締まると申しますか、あるいは指導と申しますか、あるいは監督と申しますか、していただいておりますのか。で、私のほうの仲間同士の言っておりますのは、その仕事がしたくないというのではありませんけれども、そういう特別の使命感のある場所に働いておる者としては、特別の勤務状況は当然であると思うけれども、それに対して特段の処遇でございますね、そういうものが全然なされていない。むしろ人並み以下ないまは賃金で働いているものが多いものですから、そのことに対して、非常にどこに言っていいかわからぬふんまんといいますか、日本の労働省は一体われわれをどう思ってくれているのかという、非常に大きなふんまんを持っている人がたくさんにいます。しかも、そういう人は私のほうに訴えるという、そういう状態すらも持っておりません。たとえば専門職団体がございますが、そういう団体の一員になることすらもできかねる状態です。雇用者がそれを許してくれないわけでございますが、このような実態について、どのように一体指導監督をしていただけますか、この際、明確に教えていただきたいと思います。
  346. 政府委員(村上茂利君)(村上茂利)

    政府委員(村上茂利君) 御指摘の問題につきましては、毎回先生から強い御意見もございまして、私ども労働基準監督という面からは重点として取り上げて監督をいたしておる次第でございますが、たとえば一例を申し上げますと、病院を含みます保健衛生事業につきまして、二千三百五十一の病院、事業所を監督いたしましたが、その結果、労働時間の違反については九百八十八件四二%という、非常に残念でございますが、かなりの違反があったという事実を把握いたしております。その中で悪質なものは送検をいたしておりますけれども、特に病院等におきましては、私ども遺憾に存じまするのは、労務管理の体制が一般の工場、事業場のような形になっていないということでございます。この点につきましては、先年、厚生省にも強く申し入れまして、特にその経営最高責任者が医師でございますので、そう言っては何ですけれども、必ずしも労務管理とか、時間管理について十分な知識をお持ちでない。そこで労務管理の近代化について、厚生省も十分指導をしていただきたい。特に時間の面につきましては、いわゆる労働時間とそれから休憩時間、手待ち時間といったようなものについての限界が必ずしも明確じゃない、それからそういう時間の配分が必ずしもリーズナブルなものじゃない、そういう点につきましては、法以前の労務管理ないしは時間管理の問題として、一般の事業場に比較しましてまだまだ研究すべき余地が多い、こういう観点から、厚生省にも改善方を要望いたしておるのでございますが、第一線の労働基準局及び監督署におきましても、これは府県によりまして多少のニュアンスはございますけれども、県医師会などと協力いたしまして、集団的に指導しておるところがある。実績を上げているところがございます。しかし、遺憾ながら、間々、そのような協力を得られないというところもございます。そういうところにつきましては、残念でございますけれども、監督指導という面を通じまして、いわば国家権力を背景にした措置もある程度強行せざるを得ない。そうでなくて、協力を得まして、労務管理の研究を進めていただくところにつきましてはさらに今後とも協力態勢を保持して改善をしていきたい、かようなことで、あれやこれややっておりますけれども、先生のお立場からごらんいただきますればはなはだ不満足であるという点も少なくないと思います。私どもがいろいろ考えておりましても指導の根幹が厚生行政にございます関係上、私どもも十分緊密な連絡をとりながらやらざるを得ないのでありますけれども、先ほど申しましたような監督実績、送検数もかなり多くなっておるといったようなことで、残念ではございます。そういう件数が多いことは残念でございますけれども、当面、監督行政の重点としてそのような措置をさらに強く進めていきたい、かように存じております。
  347. 石本茂君(石本茂)

    石本茂君 非常に、これは私一人の考えかもわかりませんが、医療にしても、その他の事業にしてもですが、その所管する官庁がもちろん指導権の優先的なものを持っておるかもしれませんが、おそらく労働者にまつわる問題につきましては、私はなぜ労働省が最高の権限をもって当たることができないのか。医療問題といいますとすぐに厚生省厚生省ということばが出るのですけれども、それはやはり労働省だけの所管事項として、労働者の問題として強くお取り上げいただくということは非常に困難なんでございましょうか。これは国の政治でございますからそんな一がいにきちょうめんなことを言ってみたところでむずかしいということもわかるのでございますが、やはりこのままでおかれますと、こういう特定な事業所というのは、半永久的に、いや人が足りないのだ、いや有資格者がいまおらぬのだ、いや夜中に病人が入ってくるのだということばかり言っておりまして、なかなかそういうところに働く者は日の目が当たってこない。勢いそういうところに行き手がなくなる。ですから看護婦にしてやるなんというようなことを言って、そして何にも知らない素朴な若い子を連れてきて、実際には看護婦になるのじゃなくて、准看護婦になるのだということで、実に問題が大きく浮び上がっておりますが、これは一体労働省の問題ではないでしょうか。
  348. 政府委員(村上茂利君)(村上茂利)

    政府委員(村上茂利君) まさに御指摘のとおりでございます。ただ、病院の経営が国立とか公立とか、あるいは民間の病院があるわけでございます。そこで私ども、同じ労働基準法適用事業として臨みまする場合に、もちろん民間の病院につきましては、先生仰せのとおり臨むわけでありますが、その際に引き合いに出されるのは国公立の病院であるわけでございます。国公立の病院におきまして、先生予算委員会で御質問ございましたけれども、深夜勤務等におきましても、所定の定員を備えまして無理のないような形で事が処理されておるというようなことが臨ましいのでありますけれども、間々問題がございます。そこで労働省といたしましては、国公立関係の問題につきましては、基準局長と婦人少年局長連名で、毎年予算編成期に厚生省関係局長それから自治省局長ともに、労働基準法違反を生じないように予算面についての配慮を強く要請して数年継続してまいってきたような次第でございます。  そこで、国公立病院についての姿勢の正し方と申しますか、そういうものとのいわば社会的な見合いの問題かあろうかと思うわけでございます。それが私ども行政を進めるにあたっての一つの問題として感じておりますけれども、しかし、基本姿勢は厚生省がどうこうという筋合いのものじゃないのでありまして、労働基準法違反という問題がございますればこれは厳正に措置すべきが当然のことでございます。したがいまして、先ほども一例を申し上げましたけれども、違反として指摘した事項、送検した事例といったものもございまするので、基本姿勢を保持して今後とも強力な監督姿勢を進めていきたい、かように存じます。
  349. 石本茂君(石本茂)

    石本茂君 私がたびたびこういうことを申し上げておりますのは、働いている労働者自身を擁護してほしいということと同時に、それらの人々によって守られていく生命、いわゆる病人でございますが、そういう人たちが、より健全により完全に守られるためにも、この労働条件の措置というものが一日も早くやはり改善されませんことには、問題はくまなく起こっているわけです。新聞紙上の種になるなんというのもこれはときどきあるところでありまして、もうしょっちゅうそういうことがあってよいかと思うようなことがあるわけでございます。ですから、それを知っておりますがゆえに、こういうことをしつこくしつこく言っておるわけでございますので、どうかその辺にも意をお使いくださいまして、今後ともどうぞあきらめることなく国あるいは県等につきましてもやかましく御指導く、ださることを要望したいと思います。  最後に一点お伺いしたいと思いますのは、今年度の予算説明書あるいは予算書を見ておりますと、この婦人年少者の問題で、特に中高年齢婦人の雇用の円滑化をはかりますためということ、要するに就業分野の拡大ということのために、初めて新しい予算が、新規予算が計上されておりまして、まあ額そのものは三十七万二千円というたいした額ではございませんが、一体この予算を背景にいたしましてどのようなことが具体的に計画されておりますのか、実施されようとしておりますのかお伺いしたいと思います。
  350. 政府委員(高橋展子君)(高橋展子)

    政府委員(高橋展子君) 中高年齢婦人の就業分野の拡大のための啓発活動についてのお尋ねでございますが、この事業は中高年齢婦人の雇用の円滑化という施策の一環として今年初めて計上されたものでございます。中高年齢婦人の雇用の円滑化をはかりますためには、婦人の側に職業技能を付与すると申しますか、職業技能を高めるための訓練等を与えると同時に、受け入れ側と申しましょうか、その就業分野の整備が必要でございます。で、現状では中高年者に対しては一般にございますが、特に中高年婦人に対しましては就業分野というものがかなり狭いものがございます。で、その狭い要因といたしまして、単なる伝統的な偏見というようなこともあるようでございます。で、私どもはこの中高年婦人の雇用の円滑化のための非常に大きなポイントといたしまして、この採用側の採用態度と申しましょうか、それを改めていただきたいと、このような願いを持ってこの事業を計画したわけでございます。その際、ただ単に偏見を改めるようにという観念的な啓発活動ではございませんで、より具体、技術的な検討を経た上で、このような分野に中高年の婦人が就業し得るではないかと説得力を持って啓発をしてまいりたいと考えております。具体的には、近くこの問題に関しての研究会議を専門の先生方によって開催いたしまして、それら先生方のお知恵を拝借いたしまして啓発資料をつくります。そして年度のうちに地方の婦人少年室を通じまして地域レベルにおいてセミナーのようなものを開催いたしまして、広く採用側に呼びかけていく、あるいはまた社会一般に対しても関心を喚起してまいりたい、このような考え方でございます。
  351. 石本茂君(石本茂)

    石本茂君 そういたしますと、本年度は主として調査研究あるいは教育という点に重点を置かれるということでございますね。そのように理解してよろしゅうございましょうか。
  352. 政府委員(高橋展子君)(高橋展子)

    政府委員(高橋展子君) 仰せのとおりでございます。
  353. 石本茂君(石本茂)

    石本茂君 最後に一つだけ。これもお願いでございますが、中高年齢と申しませんが、婦人労働者が、しかも技術労働者がなぜ、足りないといわれておりますのに職場を去っていかなければならないか。これにまつわりますのが例の保育所の問題でございますが、一体労働省のお立場でこの保育所問題をどのようにお考えになっていらっしゃいますのか、大臣に再度お尋ねいたしまして私の質問を終わりたいと思います。
  354. 国務大臣(小川平二君)(小川平二)

    ○国務大臣(小川平二君) 婦人の方に職業戦線に積極的に復帰していただいて、持っておる能力を十分発揮していただくためには、やはり一面において家事の管理の責任を持っておる方が多いわけでございますから、そういう面と両立できる施策を強めていくことが望ましいと存じております。したがいまして保育所についてもまだまだ実績は貧弱なのでございますけれども、企業内の託児所の施設に今日まで融資をいたしておるわけでございます。これから先もこういう施策を強めてまいりますとともに、厚生省にも今後積極的にお願いをいたしまして、保育所あるいは託児所施設というものの数をふやしていただくような努力をしたい、こう考えております。
  355. 石本茂君(石本茂)

    石本茂君 終わります。ありがとうございました。     —————————————
  356. 主査(宮崎正義君)(宮崎正義)

    主査宮崎正義君) 分科担当委員の異動について報告をいたします。  本日、加瀬完君が委員辞任され、その補欠として瀬谷英行君が選任されました。     —————————————
  357. 主査(宮崎正義君)(宮崎正義)

    主査宮崎正義君) ほかに御発言がなければ、これをもちまして労働省所管に関する質疑は終了したものと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十五分散会      —————・—————