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1968-04-15 第58回国会 参議院 予算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月十五日(月曜日)    午前十時五十一分開会     —————————————    委員異動  四月十五日     辞任         補欠選任      宮崎 正雄君     大森 久司君      西村 尚治君     任田 新治君      津島 文治君     斎藤  昇君      山内 一郎君     森 八三一君      小野  明君     村田 秀三君      北條 雋八君     黒柳  明君      片山 武夫君     向井 長年君      春日 正一君     岩間 正男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西郷吉之助君     理 事                 北畠 教真君                 剱木 亨弘君                 近藤英一郎君                 玉置 和郎君                 内藤誉三郎君                 加瀬  完君                 鶴園 哲夫君                 小平 芳平君     委 員                 内田 芳郎君                 大谷 贇雄君                 大森 久司君                 岡本  悟君                 梶原 茂嘉君                 小林  章君                 小山邦太郎君                 斎藤  昇君                 櫻井 志郎君                 塩見 俊二君                 白井  勇君                 任田 新治君                 中村喜四郎君                 船田  譲君                 増原 恵吉君                 森 八三一君                 八木 一郎君                 山本茂一郎君                 吉武 恵市君                 岡田 宗司君                 木村禧八郎君                 瀬谷 英行君                 田中寿美子君                 千葉千代世君                 戸田 菊雄君                 野上  元君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 村田 秀三君                 森中 守義君                 黒柳  明君                 原田  立君                 宮崎 正義君                 向井 長年君                 岩間 正男君                 山高しげり君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  赤間 文三君        外 務 大 臣  三木 武夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  灘尾 弘吉君        厚 生 大 臣  園田  直君        農 林 大 臣  西村 直己君        通商産業大臣   椎名悦三郎君        運 輸 大 臣  中曽根康弘君        郵 政 大 臣  小林 武治君        労 働 大 臣  小川 平二君        建 設 大 臣  保利  茂君        自 治 大 臣  赤澤 正道君        国 務 大 臣  木村 武雄君        国 務 大 臣  木村 俊夫君        国 務 大 臣  田中 龍夫君        国 務 大 臣  鍋島 直紹君        国 務 大 臣  増田甲子七君        国 務 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   橋口  收君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        総理府特別地域        連絡局参事官   加藤 泰守君        防衛庁長官官房        長        島田  豊君        防衛庁教育局長  中井 亮一君        防衛庁人事局長  麻生  茂君        防衛庁経理局長  佐々木達夫君        防衛庁装備局長  蒲谷 友芳君        防衛施設庁長官  山上 信重君        防衛施設庁総務        部長       財満  功君        防衛施設庁総務        部会計課長    春日敬太郎君        防衛施設庁施設        部長       鐘江 士郎君        経済企画庁総合        開発局長     宮崎  仁君        科学技術庁科学        審議官      高橋 正春君        法務省刑事局長  川井 英良君        外務省アジア局        長        小川平四郎君        外務省北米局長  東郷 文彦君        外務省欧亜局長  北原 秀雄君        外務省経済局長  鶴見 清彦君        外務省条約局長  佐藤 正二君        大蔵政務次官   二木 謙吾君        日本専売公社監        理官       前川 憲一君        大蔵省主計局長  村上孝太郎君        大蔵省関税局長  武藤謙二郎君        大蔵省理財局長  鳩山威一郎君        大蔵省銀行局長  澄田  智君        大蔵省国際金融        局長       柏木 雄介君        国税庁長官    泉 美之松君        厚生省公衆衛生        局長       村中 俊明君        厚生省環境衛生        局長       松尾 正雄君        厚生省薬務局長  坂元貞一郎君        厚生省国立公園        局長       網野  智君        厚生省社会局長  今村  譲君        農林大臣官房長  檜垣徳太郎君        農林省農政局長  森木  修君        農林省畜産局長  岡田 覚夫君        食糧庁長官    大口 駿一君        水産庁長官    久宗  高君        通商産業省公益        事務局長     井上  亮君        中小企業庁次長  沖田  守君        運輸省自動車局        長        鈴木 珊吉君        海上保安庁長官  亀山 信郎君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省婦人少年        局長       高橋 展子君        建設省都市局長  竹内 藤男君        建設省河川局長  坂野 重信君        建設省道路局長  蓑輪健二郎君        自治省行政局長  長野 士郎君        自治省選挙局長  降矢 敬義君        自治省財政局長  細郷 道一君        自治省税務局長  松島 五郎君    事務局側        常任委員会専門        員        水谷 国一君    説明員        建設省住宅局調        査官       三宅 俊治君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十三年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。  本日、北條雋八君片山武夫君及び春日正一君が委員を辞任され、その補欠として、黒柳明君、向井長年君、岩間正男君がそれぞれ選任せられました。     —————————————
  3. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算昭和四十三年度政府関係機関予算。  以上三案を一括して議題といたします。  一昨日に引き続きまして、締めくくりの総括質疑を行ないます。原田立君。
  4. 原田立

    原田立君 最初に総務長官にお伺いしたいと思うのでありますが、えびの地震新潟地震に匹敵するような大きな被害であるのでありますが、被害総額が少ないというような意味激甚災害法適用になっておりませんが、その被害度合い等からいえば、困っている苦しいそういう人たちのためにも、激甚災害法適用をしてあげることがあたたかい政治となるんじゃないかと、こう思うのですが、その所見をお伺いしたい。
  5. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えをいたしますが、激甚災害法指定にあたりましては、いろいろと制約がございまして、確かにお説のごとく、えびの吉松地区地震に対しましては、激甚災害法の規定がどうも適用がむずかしいのでございます。われわれといたしましては、その被害の惨状にもかんがみまして、特に松代地震と同じような連絡協議会を緊急につくりまして、それによりまして、特にあるいは融資の面におきまして、あるいは特別交付金の面におきまして万全の救済措置考えたい、かように存じておる次第でございます。ちょうど今日が第一回の連絡協議会を開催いたしておる次第でございます。
  6. 原田立

    原田立君 こんなことを申し上げてはどうかと思うのでありますが、三月の十五日、災害対策特別委員会対策会議がつくられるというふうに言明なさり、四月九日に内閣できまった、おそかったんじゃないでしょうか。私はこういうような問題こそ、即刻設立してあげることが、そういう気の毒な被災者のためにもあたたかい激励になる、こう思うのでありますが、そのおそかったことについて。
  7. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) これはその後、各省担当官現地に参りまして、ことに非常に技術的な関係が多いものでございますので、技術者の方方も参られて、そうしてその報告その他を取りまとめられまして、いよいよ本格的に対策につきましての協議が始まったわけでございまして、その間決して遅滞をいたしておったわけではございません。非常な各省とも関係者は努力いたしまして、対策その他につきまして真剣に検討を進めてまいったのでございます。
  8. 原田立

    原田立君 お役所ぺースからいけばたいへん早いのかもしれませんけれども、実際の被害を受けた人たちから見れば、一刻も早くやってもらいたい、早く対策を立ててもらいたいという声が強いわけであります。そういう意味で、お役所ペースではなしに、そういう被災を受けた人の心になって早く処置してもらいたいと思うんです。今後のこともありますが、いかがでしょうか。
  9. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) その問題は今日までじんぜん手をこまねいておりましたわけではございませんので、現地におきまして緊急処置すべきものは処置をいたし、それからまた手を打つべきものは打ってまいっておるのでございますが、ただいま申しましたのは、これらの連絡協議会によりまして、本格的な、あるいはシラス土壌の問題につきまして、つゆを前にしてどうするかとか、あるいはまた今後の対策、防災の対策をどうするかといったような基本的な問題の検討に入ったわけであります。具体的な現地の処理は着々としていたしておったわけでございます。
  10. 原田立

    原田立君 きょうが第一回の打ち合わせだそうでありますが、それは期して待つのみでありますが、総理にちょっとお伺いしたいのは、新潟の場合には確かに被害総額が多かった、そのために激甚災害法適用を受けた。災害を受けた形においては新潟えびのもちっとも変わりはない、そういう面からいっても、被害総額の大小により激甚災害法適用、特例が変わるというのは法の不備で不公平ではないか、こう考えるのですが、これを改正なさって、そういう気の毒な被災者人たち救済策に当たるべきだと、こう思いますが、いかがでしょうか。
  11. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) もっぱら財政政策が中心になっておりますので、これについて主計局長から答弁させます。
  12. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) お答えを申し上げます。  災害を受けられた非常にお気の毒な方々のお立場に立てば、これはどんな被害総額であろうとも同じことであろうかと思うのであります。ただ、この激甚災害指定するかどうか、国が補助率等で非常に手厚い保護を加えるかどうかということになりますと、その被害国民経済全体と申しますか、全体に及ぼす影響ということも考えまして、応能負担で調達します税金をどういうふうに手厚く扱うかというその全体との関連ということも関係いたしてまいりますので、現在はその被害総額その他の基準によりまして、その被害経済全体、社会全体に及ぼす影響も考慮して、いわば救済措置厚薄が設けられておる、こういうことであろうかと思うのでございます。これはもちろん災害を受けられた方々にとりましては同じようなお気の毒なことでございますけれども、それに対しましては一応災害に対する現在の措置がきまっておりまして、それをさらに越える全体への影響を考慮する場合に、この激甚災害指定するかどうかという基準が浮かび上がってくる、こういうふうに考えておりますので、現行制度でよろしかろうと私は思います。
  13. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま原田君の御意見並びにお尋ねは、先ほど来、政府並びに事務当局から御説明いたしましたごとく、いわゆる激甚地災害としての指定は受けないけれども、その中身におきましては十分実情に即して対策を立てなければならぬと私も考えます。また事実、総務長官が答えましたように、いままでもすでにやっておるということでありまするが、いかにもPRがまずいように私も思いますし、ただいまこれはPRだけではないかという御意見もあろうかと思いますけれども、少なくともPRのまずいことだけはたしかであります。したがいまして、御意見もございましたし、これからの今後の処置につきましては、私どもさらにくふうをしたらいいだろうと、かように思います。申すまでもないことですが、国家的な措置特別財政的措置をしなきゃならぬと、こういうことになると、やはり被害総額が相当出てこないと、まあ政治的、経済的なものはない。しかし、御指摘のように、被災者のほうから申せば、これは国家がやはり同じように扱ってくれるべきものだ、こういう意見はもっともだと思います。私は法の改正まではいたさなくても、実際の取り扱い方といたしまして、この災害地激甚災害に準じた扱い方をすればその要望は達するんじゃないかと、かように思います。そういう意味で、法の改正は必要じゃないだろう、また、もう少し事前に、やっておる事柄を地方自治体等との連絡におきましてももっと積極的にとりまして、そして安心を与えるような、不安を除くような措置をこの上ともくふうしてやるようにいたしたいと思います。
  14. 原田立

    原田立君 それではえびの地震についてはこのぐらいで終わりにしたいと思います。  次に、政治資金規正法についてお伺いしたいと思うんでありますが、先般、自民党案が発表になりましたが、最終案として提案なさるのかどうか、その点、総理いかがですか。
  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政治資金規正法案はできるだけ早く出したいということで、鋭意、党におきましても、また自治省におきましても、成案を得べくただいま研究中でございますので、まだなかなか問題が、最終的な結論に達していないと、かように私は聞いております。
  16. 原田立

    原田立君 ただいま検討中ということでありますが、いつごろ提出なさるのか、また、総理成立させる意思がおありなのかどうか。一説によれば、会期末に提出して流してしまうのが作戦だなんていうようなことをちらほら聞くわけでありますが、そういうことであっては相ならないと、こう思うんでありますが、その点はどうですか。
  17. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま御意見を述べながらお尋ねでございますが、私は政治資金規正法は大体二月じゅうぐらいには出したいと、こういうことでいろいろ急いでまいりました。しかし、二月じゅうにはこれが出ず、今度は三月じゅうにと、かように思いましたが、これまた三月じゅうにもできない、まあただいま期限を切るわけにもまいりませんが、できるだけ早目に出さないと、この審議も十分じゃない、その意味ではなかなか成立は期しがたいということにもなろうかと思います。でありますから、早く出さないことには、ただいまのような観測すら行なわれるということにもなろうかと思いまして、私自身たいへん責任を感じ、関係者を督励しておる最中でございます。
  18. 原田立

    原田立君 総理責任を感じて督促中であるということでありますが、この四月十四日の新聞の記事によると、いずれにしても自民党に今国会で改正案成立させる意思はないので、提出されたとしてもただそれだけのことに終わりそうだと、こういう予想が書いてある。総理の言っていることと全然違うのでありますが、その点の御所見はいかがですか。
  19. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の所信はただいま表明したとおりでありまして、ただいまの記事記者諸君のあるいは観測記事ではないかと、かように思います。私の所信はただいま説明したとおりでございますので、かように御了承いただきます。
  20. 原田立

    原田立君 自民党の四十二年度上期の報告書によりますと、その支払い先党執行部とか、組織部等内部機関になっていて、それから先の支払い先が不明だが、こういう取り扱いは違法ではないのか、こう思うんでありますが、自治大臣いかがですか。
  21. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 別に違法であるとは考えておりません。
  22. 原田立

    原田立君 じゃ、そういうようなことがあってもよろしいと、こう大臣はお考えですか。
  23. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 現行法では別に違法ということではございませんけれども、やはりそういう経理のしかたというものはよくありませんので、やはり次の段階ではこういった点を改めたいと、かように考えております。
  24. 原田立

    原田立君 規正法三十一条によりますと、当局報告提出を要求する権利があるということでありますが、そういうようなことで内容不備により提出を要求なさったようなことがおありですか、あるいはなさるお気持ちがおありですか、その点はどうですか。
  25. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 別に報告を要求をしたことはありません。報告もございません。
  26. 原田立

    原田立君 大企業の政治献金はほとんど国民協会を通じて会費納入の形で行なわれ、どこが幾ら寄付しているか全くわからない。答申案もさきの政府案公開制原則にしているが、その趣旨を貫く考えはおありですかどうですか。
  27. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) ございます。
  28. 原田立

    原田立君 たいへん答えは簡単でありますけれども中身において御説明願いたい。
  29. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) いままで会費は届けなくともよろしいということになっておりました。しかし、答申ではやはり寄付同様に扱うべきであるという御意見でもございますし、そういった方向をとりたいと思っております。
  30. 原田立

    原田立君 公開制は保っていくということでありますが、総理、今回の自民党案ではこの点が留保されているんでありますが、もし留保などというようなことになれば、これは佐藤総理公約違反というような問題にまで発展すると思うんです。その点について総理はどのようにお考えですか。
  31. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) ただいまの段階では、それもあわせて検討中であるということを申したわけでございまして、決して公開原則に反することを計画しておるわけでもなく、またそういう方法を検討しておるわけでございませんので、その御質問はあたらないと考えております。
  32. 原田立

    原田立君 それでは公開制は保たれるというようなふうに解釈していいんだというようなことでありますが、その点は国民が多く監視しております。十分その点は御考慮願いたいと思うんであります。  次に、和歌山県の妙寺で戸別訪問違反の裁判が無罪になった。言論の自由こそ基本的人権の中でも認められているものでありますが、そうかと思うと、戸別訪問等含めた選挙自由化が見送られそうな情勢ですが、その点、政府の見解をお聞きしたい。
  33. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 違反ではないという最高裁の判例もございまするけれども、そういうことはさておきまして、やはりこの現在の選挙は非常に規制が多過ぎて陰惨な印象を与えておる、選挙はもっと国民全体が参加して、そうして明朗にやるべきものであるということが審議会の空気も支配的でございまして、大幅に自由化をするべきであるという御答申でございます。しかしながら、おっ放しではまずいので、若干の制約が加えられておることは御承知のとおりでございます。
  34. 原田立

    原田立君 政治の汚職は、しょせんは政治資金を規正してその根源を断つしかないというのが一般世論であります。せめて答申案までの線は断然出して成立を期すべきであると思うんでありますが、先ほど総理からもせっかく努力中であるということでありますが、それにしても、世論においてはまた流れるのじゃないかということを懸念している向きが非常に多い。重ねて総理所信をお伺いしたい。
  35. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の所信は先ほど申したとおりであります。  私は、政治資金規制、これだけで政界がきれいになるとは思いません。しかし、ひとつ政党政治、このもとにおいて政治資金、これはやはりもっと自粛されることが望ましい、これは御指摘のとおりであります。政治の浄化、こういう点で、まずこの点が問題になるだろう、かように思いますが、しかし、これだけでないことは御了承願いたいと思います。
  36. 原田立

    原田立君 それでは、次に国際収支の問題についてお伺いしたいと思います。  過日、ホノルルの日米会談により、外資導入先欧州市場に切りかえるというようなことが話し合われたと聞いておりますが、具体的にはどのようなことですか、お伺いしたいと思います。
  37. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 話し合われたというよりも、日本側の大体考えを述べたのでございまするが、やはり資金調達先を多様化する必要が日本としてもございますが、今後米国市場にのみ依存しない、自分たち欧州市場調達先を求めるというようなことを考えておるということを申しました。これは私ども方針でございますが、そのことは、結果においては米国に負担を軽くしてやるということであって、ドル防衛に結果としてはなるだろうということを私どもは説明して、向こうもこれを了承したという事実はございます。
  38. 原田立

    原田立君 ことしに入ってからの欧州市場でのEEC加盟国外債発行実績等はどうなっているのか。あるいは今後の見通しについてはいかがですか。
  39. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 昨年における欧州における外貨債発行というものは、大体二十三億ドルぐらいといわれております。そのうちユーロダラー債が十七億ドルといわれておりますが、これは非常に順調にきておる。今年度に入ってからも大体六億ドルぐらいのユーロダラー債発行されておるというふうにいわれております。で、わが国でも、先ほど申しましたような方針を持っておりますので、すでに民間におけるユーロダラー債発行されておりますが、今後まだ国内にも相当希望者が多うございますし、また、これは長期の安定したユーロダラー債が取り入れられるのなら非常に好もしいことでございますので、御承知のように今度税制の改正をお願いいたしまして、民間が発行する外貨債の利子に対する免税措置ということを行なうことにいたしましたが、これがなかったために、いままで民間債がなかなかできそうになかったという事情もございますので、こういう措置をとりましたら、今後質のいい長期のユーロ債を取り入れることがだんだん可能になるだろうというふうに考えております。
  40. 原田立

    原田立君 ユーロダラーの性格はいいんだというようなお話でありますが、かつて池田内閣のときも、佐藤内閣のときも、世界の高金利国を流れ歩く資金で不安定な外資だから、あまり導入すべきでないというようなことが政府のほうで発表されたことがあります。その点から見れば、不安定な外資というふうに私、思うのでありますが、大臣のいまのお話では、長期安定のユーロダラーと、こういうふうなことですが、そこの点の相違の見解をお伺いしたい。
  41. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ユーロダラーは最初やはりそういう性質のものでございまして、不安定なものでございましたので、それを無制限に取り入れるというようなことはすべきでないという方針でございましたが、御承知のようにあれから非常にこのユーロダラー市場というものは発展してまいりまして、基金も非常に現在多くなっておりますと同時に、質も変わってまいりまして、長期債が消化されるというようなことになって、きわめて安定した資金化している実情でございますので、今後この安定したユーロダラー債は、必要な限り取り入れていくということはむしろ好ましいことで、当初のようなユーロダラーとは違っておりますので、いまになりましてはそう心配なことはないと思っております。
  42. 原田立

    原田立君 そんなに簡単に、不安定な外資が長期的な安定な外資になると、私、どうも思えません。現に新聞等においても、高金利国を歩いているそういう資金だということが、十分いろいろな問題のところで指摘されております。現在資金量が百六十億ドルというようなことになって、たいへん多くなっていることは、これは事実だけれども、多くなっているということだけであって、資金の性格が安定資金に変わったとは私思えないのであります。この点はどうですか。
  43. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まあ、ポンドの切り下げの直後は、非常にユーロダラーのレートが上がりましたが、いまでは上昇前の水準に戻っておりまして、非常に安定しておりますし、したがって、このユーロダラー債が、昨年においても十七億ドルも発行されているということからしましても、これは非常に長期資金化して安定しているということは、これはもう事実でございます。
  44. 原田立

    原田立君 そこのところがたいへん意見の分かれるところでありますが、対象外資は十分に吟味して、安定外資であるという保証がなければ、当面二十億ドルの外貨準備高を維持しても、非常に不安定なものになります。そういう面で、大臣は安定外資であるということを言われるけれども、くどいようでありますけれども、重ねてその所見をお伺いしたい。要するに不安定資金のユーロダラーを含めて二十億ドルつくったとて、何にもならないじゃないか。見せかけの外貨の準備高の好調を示すだけであって、何にもならないじゃないか、こういうことをお聞きしているのです。
  45. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま日本の民間でも非常に希望者は出てまいりましたが、今回の税制によって考えているのは、やはり三年以上というようなことを法律では考えておりますが、事実上の指導としましては、やはり少なくとも五年以上のものというようなことで、政府は銘柄も選びますし、国際信用をなくしないような形で、できるだけ長期のものを取り入れるようにしたいと考えておりますが、いまのところ、それはもとと違って、非常にこれは可能なことになってきていると思いますので、今後そういう意味で十分の指導をしながら、長期安定資金だけを取り入れるという方向で努力していきたいと思っております。
  46. 原田立

    原田立君 国際収支改善の根本策は、貿易振興によって行なうことが基本ではないかと、こう私は思う。ユーロダラーのような資金を導入するということは、かえって将来に大きなマイナス——負担を残すのではないか、こう私は思うのでありますが、この将来に向かってたいへんな負担を残すこの不安の解消は、どういうふうに考えておりますか。
  47. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 国際収支対策ということから、短期でも長期でもかまわぬというような態度をとっているわけではございませんが、それはかたがた、国際収支のためには非常に貢献するという結果でございまして、その長期資金であり、しかもいま国内の金利よりもユーロダラーのレートのほうが低いということでございますので、これを日本の産業のために活用するということは、決して悪いことではない。短期ではない、できるだけ長期の資金である限りは、日本の産業に貢献するというふうに考えております。この国際収支をただ一時よくしようというためのあせりの措置ではいまのところございません。
  48. 原田立

    原田立君 それでは、次に漁業問題についてお伺いしたいと思いますが、日ソ漁業交渉の状況は、現在どうなっておるか。農林大臣に御説明を願いたいと思います。
  49. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 御存じのとおり三月に入りましてから十二回の日ソ間の漁業交渉が始まって、モスクワでやっております。その中には大きなサケ・マスの交渉もございますし、それからカニの交渉等もございます。そこでさしあたり、御存じのとおり詰まっておりますのはカニの問題でございます。ただカニにつきましては、長期取りきめがすでに昨年来できておりまして、その長期取りきめに従いまして、大体は、わがほうとしてはやっていく基本姿勢でございますが、その間におきまして、御存じのとおり、大陸だな資源というソ連側の意見も出してまいりまして、それによって話が難航いたしました。しかし、わがほうの態度といたしましては、カニの好漁期もございますから、従来きめられました協定の線で出航の準備は一応いたしまして、現地まで母船あるいは独航船等が参りまして、その間になかなか話し合いがつかず、操業の時期も、大体予定された十五日、いわゆる本日の午前零時というところになりましたのでありますが、その間に、現地モスクワの折衝の空気におきましても、無理にこちら側で操業の形をとるよりも、むしろ話し合いをする間において円満な妥決を、若干おくれますけれども、いたしますれば、その後におけるその他諸般の交渉もまたさらに進展し始める、こういうことで、昨晩いわゆる網を入れる——投網の点については、一時ちょっと待つように指令をいたしまして、現在モスクワにおいてさらに折衝をしているというのが現状でございます。
  50. 原田立

    原田立君 もし操業を始めたとして、拿捕されるような、そういうことが起きる心配はないかどうか。この点はどうですか。
  51. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 現在のタラバガニと申しますか、カニの漁業につきましては、一応両国間に長期取りきめがされておりますから、一応理論的にと申しますか、筋の上ではこちらがやっていいことである。しかし事柄が両国の国と国との間の事柄でもございますから、無理をしないという形をちょっとここでとりましたものですから、いま御心配のような、いわゆるこれに対しての相手方の不法拿捕であるとか妨害であるとかということは、こういう事態はいまのところ考えないうちに、円満妥結を期待できると思います。
  52. 原田立

    原田立君 そうでなくて、こうなってはたいへん心配だということでお聞きしているわけなんですから、その点はどうですか。
  53. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 私どものほうで、出航の準備はいたしまして、現地に行っております。あちらのほうも、ウラジオ中心に船が出てきたわけでありますが、操業そのものは暫時猶予期間を置いております。したがって、いまのところ、そこに非常なトラブルが起こるという空気はモスクワとしても感ぜられないので、むしろ話し合いを進めようという空気でございます。
  54. 原田立

    原田立君 心配はないですか。
  55. 西村直己

    国務大臣西村直己君) そういうことで、いまのところ、われわれは非常なトラブルが起こるというような心配のほうがむしろ少ない。絶対にないということは、交渉事でございますからわかりませんけれども、交渉の過程を通じまして、いまのところそういう心配はまずない、こういうふうに考えております。
  56. 原田立

    原田立君 わが国との漁業協定ができている国と、現在交渉中の国、それから未交渉の国、これは大体どことどこになりますか。
  57. 西村直己

    国務大臣西村直己君) いろいろ状況によって、国によって違いますので、水産庁長官のほうからお答えをいたさせます。
  58. 久宗高

    政府委員(久宗高君) お答えいたします。  御承知のとおり、日韓の漁業協定が一番基本でございますが、お尋ねの問題は、専管水域その他との関連があると思いますので申し上げますが、日米加の一般的な漁業の条約がございますが、専管水域問題と関連をいたしまして、日米間におきましては暫定的に取りきめができまして、専管水域内におきましても、特定の漁業水域につきまして実績を確保しているわけであります。そのほか、その上におきまして、これも問題となりましたニュージーランドの関連におきまして、これもやはり専管水域の関係でございますが、昨年お話ができまして、今国会にもお出しをいたしているわけでございます。なお、メキシコとの関連も、やはりこれも専管水域の問題でございますが、先般お話がつきまして、この三つが固まったわけでございます。なお、現在の段階におきましては、オーストラリアと話を継続中でございまして、二月に一応の交渉をいたしたわけでございますが、詰め切れませんで、若干問題を残しておりましたが、これも五月の段階ではおそらく話を詰めるということでございます。なお、先般、新聞紙でも報道されましたように、インドネシア海域につきまして、相当やっかいな問題があるわけでございます。これも部分的には相当の詰めをいたしまして、先般の大統領が見えました際に、大筋といたしましては、早急にこの話をきめようというところまで話が固まっておるわけであります。
  59. 原田立

    原田立君 いままで不幸にして拿捕されて、現在まだ未送還の隻数、人数、国別に明示してもらいたい。
  60. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 拿捕の関係では、御承知のとおりソ連の関係が非常に多いわけでございますが、一番多うございましたのは、三十年代の初めに相当の数がございまして、その後漸次減ってまいってきております。現在の段階では、四十三年になりまして十二隻拿捕がございまして、人数では八十九人、内一隻は帰還いたしまして、二十三名も帰還いたしました。したがいまして、四十三年で申し上げますと、十一隻がまだ未帰還、六十六名が未帰還でございます。通計いたしまして四百四十一隻、百六名という形になっております。なお最近になりまして、アフリカ関係におきまして、スペイン並びにモーリタニアの関係で、特につい最近になりまして数件の拿捕がございました。スペイン領関係では六隻、モーリタニアの関係では三隻、これは全部帰還いたしております。なお、インドネシア関係では、通計いたしまして十八隻の拿捕がございますが、これは全部帰還いたしております。なお、フィリピン関係では七隻ございまして、これも全部帰還いたしております。
  61. 原田立

    原田立君 現在、まだ未送還の隻数と人数を聞いているのでありますから、現在の数を言ってもらいたい。
  62. 久宗高

    政府委員(久宗高君) お答えいたします。  未帰還は百六名でございます。ソ連関係だけでございます。
  63. 原田立

    原田立君 韓国やアメリカ、国府、中共、その関係は全然ありませんか。全然ないのですか。
  64. 久宗高

    政府委員(久宗高君) ございません。
  65. 原田立

    原田立君 それでは、このソ連の、十一そう百六人の人が不幸にして拿捕されているそうでありますが、この返還交渉はどういうふうになっているんですか。
  66. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 拿捕をされたつど厳重な抗議をして、即時釈放を要求しております。また、それに対する損害賠償の請求に対しては留保をしているということで、外交機関を通じてこういう折衝はしておるのでございます。根本的には、いろいろ漁業交渉を通じて漁業に対する安全操業というものを確保するということが根本ではありましょうが、そういう問題が起こったつどには、そういうことをいたしておるのでございます。
  67. 原田立

    原田立君 わが国の遠洋漁業は、諸外国からだんだんと締め出しをはかられているのでありますが、わが国外交の重大問題でありますから、この点について外務大臣所見をお伺いしたい。
  68. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) まあこの領海の問題というものが、国際的にもいろいろ紛糾を起こしておるわけであります。日本とすれば三海里、これは日本ばかりでなしに世界各国とも多数の国が三海里説をとっておるわけであります。しかし、これを漁業水域とか専管水域とかいうような名において広げていく傾向があるわけであります。日本は領海三海里。こういう領海というものは、国際社会における合意が成立しなければ、かってにその国が領海の幅員を広げるべきものではないという立場をとっておるわけです。どうもこの領海の幅員というものに対して広げようという傾向はあるけれども、合意にはあまり達していない。やはり国際法上では三海里というものが一つの規定であります。実際問題として、いろいろな漁業水域を設けて、漁民が出漁した場合にいろんな事件が起こるということで、領海を広げるということを認めるわけではないが、その国との間に漁業協定を結んで現実的な解決はしておる。それが、いま水産庁長官が申し上げたように、漁業交渉の実態になっておるわけであります。でき得ればこういうものをやはり国際社会全体のものとしてきめられることが一番好ましいのでありますが、各国の利害なかなか調整がつかなくて、非常に残念なことではありますが、これは現実の問題として処理するよりほかにないというのが現在の状態でございます。
  69. 原田立

    原田立君 何となく手をこまねいているというような感じを受けるのでありますが、そんなことはおそらくあるまいと思うのですけれども、交渉の過程等においていかがですか。
  70. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 漁業というものは日本としては大産業でありますから、しかも漁業に従事しておる人口が非常に多い国ということであって、この漁業問題というものに対しては非常な関心を持ち、この問題は外交交渉の中でも重要な一つの交渉の対象になっておるのであります。したがって、いろんなこの漁業問題が起これば、漁業における紛争が起これば、そのつど外交機関を通じて解決に当たると同時に、問題が起こればそのつど解決するということでは不安定でありますので、いま言ったような各国との間に漁業協定を結んで、できるだけこの安定した漁業ができるような努力をして、相当大きな部分を外交交渉の中で漁業交渉というものはとっておるわけであります。決して手をこまねいておるわけではない。これはもう非常に大きな外交交渉の一つの対象になっておる次第でございます。
  71. 原田立

    原田立君 沖縄の返還問題等もいろいろ議論されているわけでありますが、北方領土の返還問題、これらについてもいろいろと問題が提起されております。それで、政府は、北方領土はどことどこがわが国固有の領土であると、こう思っておられるんですか。
  72. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 政府がソ連に対して返還を求めておる領土は、択捉、国後、歯舞、色丹であります。この北方領土の返還に対する交渉は、昨年コスイギン首相と私との間に、何かこう中間的な措置考えてみようということで、むろん何かの成案を頭に描いての発言ではありませんでしたが、全般的に、総まくり的に日ソ間の関係を話し合おうということになって、昨年の秋からモスクワにおいて中川大使との間に日ソの全般的諸問題について話し合いが行なわれておるわけであります。もちろん、日本の固有の領土であり、一日もすみやかにいま指摘したような島々は日本に返還を求めたいと、国民だれも異存のない国民的な要求でありますが、なかなかこれは、原田委員も御承知のように、長い懸案でありまして、一気に解決をできるとは私は思ってない。しかし、これは日本は、あくまでも固有の領土であるという立場から、いかに時間がかかろうとも日本の主張の上に立って外交交渉を続けていきたい決心でございます。
  73. 原田立

    原田立君 北方領土返還の見通しについて、総理いかがですか。
  74. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま外務大臣が答えましたように、なかなか困難な問題でございます。ただいま私どもが、あらゆる機会に、またあらゆるルートを通じまして、わが国の本来の主張、これに理解をしてもらうべく最善の努力をしているのが現在の実情でございます。
  75. 原田立

    原田立君 あらゆる機会を通じてせっかく努力中ということでありますが、あまり努力をしていないんじゃないかと、こういう意見もあるわけです。で、日米ソ三国会議で北方領土返還の交渉というようなことを、そういう公式なルートに乗せて進めていくというような、そういう構想なり、今後の見通しはどうですか。
  76. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ことほど領土問題というのは、国際会議だとか、あるいは三国会議だとか、こういうところできめるものではない。それぞれの相手国との交渉、これが本来の筋だと思います。したがいまして、ただいま努力しておりますことは、日ソ間においてこの問題と取り組む、そういう形でございます。われわれが、前内閣当時もそうでございますが、あらゆる機会に請求をしておる。それによりまして中断しない——時効の中断はないということでただいまやっておるというのが現状であります。ただいま外務大臣から、過去において取り上げたその大要について話がありました。また、これからもその方針に変わりはない。これまたお話があったとおり御了承いただきたいと思います。
  77. 原田立

    原田立君 総理は、三十九年六月、総裁立候補宣言の中において、経済社会開発のための計画と総合一体化して展開されなければならない、特に家庭の主婦、中小企業、農民などが期待している愛情のある政治の実現が緊急の問題である、こういうふうに述べられているわけでありますが、実情、現状を通して見たとき、この社会開発にはほど遠いのではないか、こういう感が強いのでありますが、総理になられて四年間、はたしてどのような成果があらわれたと思いますか。
  78. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはもう申すまでもなく、私だけではございませんが、経済を発展させ、それが全部の国民に恩典が、その利便が均てんする、それがねらいであります。それが社会開発だと思います。ところで、しばしば古来から言われておりまするけれども、いわゆる衣食住という表現で言われております。しかし、私ども最近の生活状態を見まして、衣食、その点では一応まずまずだと、住の問題についてはさらにわれわれが整備をしなければならないものが非常に多い、この住を中心にしていろいろくふうしていく、そこにいわゆる社会開発の問題がある、かような意味の取り組み方をしてまいりました。したがいまして、住居、これが一世帯一住宅、そういう表現のもとに住宅の整備をいたしております。住宅の整備をいたしますと、これは当然交通の問題が起こるし、また最近のような都市の状況から下水の問題が起こる。交通の問題はなかなか、地下鉄ができ、あるいはハイウエーができましても、ラッシュアワーがいまだありまして、これを解消することは非常に困難であります。いまの下水の問題にしても、これまた簡単ではありません。しかし、下水の問題は、私どもいままで口にしている、汚物輸送の車が朝晩町じゅう通っておる、これで近代都市と言えるかと、かように実は思いましたが、最近はそういうものも目につくことは非常に少なくなりました。私は、下水の整備も、おそいとはいいながら、十分その効果を生んでいると思います。また、最近になってまいりますと、産業の発展、それにつれての大気汚染その他いわゆる公害、それと取り組まなければならない、かような状況にもなっております。いろいろ御不満もおありかと思いまするけれども、しかし私は、ただいま提唱した社会開発の方向に向かってすべてが努力され、しかも、ただいまも原田君の言われるように、テンポがおそいじゃないかというおしかりを受けるほど、この問題に力が入っていることが御理解いけるのじゃないか、かように思います。政府といたしまして、さような意味で、社会開発の問題と真剣に取り組み、さらに成果があがるように、また皆さん方の御要望にできるだけこたえられるように、この上とも努力するつもりであります。
  79. 原田立

    原田立君 そのテンポがおそいというところに大きな問題があると思うのです。過日、四月八日の当委員会の一般質問におきまして、保利建設大臣は、現在の状態では住宅難は解消しているとは思えない、こういうふうな答弁があった。総理は、いま、住の問題をまず最初にあげて、その大事なことを言われたわけでありまするけれども総理の閣僚の中の一人の保利大臣は、現在の状態では住宅難は解消しているとは思わない、こういう発言があった。これは重大な問題だと思うのですが、この点総理いかがですか。
  80. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 確かに、ただいま、テンポがおそいといいますか、これまた政府だけで問題と取り組むわけでもございません、国民全体もやはりこういう問題に関心を寄せてもらいたい。政府自身の予算その他で処置して、あるいは地方団体等がこれに協力する、かようなこともございますが、同時に、民間の負担によりましてこの問題を解決する、その面も多分にございますから、そういう意味におきまして、建設大臣の率直な表現の問題だったのではないか、かように私は理解いたします。
  81. 原田立

    原田立君 住宅建設五ヵ年計画ででき上がった様相、あるいは今後の状況、いかがですか。
  82. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 住宅建設五ヵ年計画は、四十一年度から五ヵ年の計画をもって六百七十億、そのもののねらっておりますところは、その段階に至りますとおおむね一世帯一住宅という事態が実現できようかということで極力取り進めてまいっております。現在の四十三年度まで努力いたしてまいりますれば、おおむね計画の五〇%以上を達成できる状態でございます。
  83. 原田立

    原田立君 公営住宅のほうの計画はどうですか。
  84. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 公営住宅も、予定計画の公営住宅それ自体は、先日もお答え申し上げましたように、五四、五%の進捗率でございます。改良住宅、改良公営の率が四九%弱となるのですから、したがって公営住宅としましては五二、三%というふうに思います。
  85. 原田立

    原田立君 あと、年度の予定はどうですか。
  86. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) したがいまして、予定いたしておりますことは四十四年度、四十五年度両年度をもってどうでもこうでも達成をしたい、こう思います。
  87. 原田立

    原田立君 どうでもこうでも達成したいということですが、できる自信はおありですか。
  88. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 先日大蔵大臣も申されましたように、政府の重点施策として、ぜひ達成をはかってまいるつもりであります。
  89. 原田立

    原田立君 私は無理じゃないかという考えを持っている。それは、過去三年間で二十二万一千戸できた。あと残り二十七万九千戸は、これ二年でできますか。
  90. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 二十七万戸という計算は私のほうにはちょっとございませんけれども、ともかく予定いたしております五ヵ年計画は、最小限五ヵ年計画はぜひ達成いたすつもりでおります。
  91. 原田立

    原田立君 せっかく努力願いたいと思うのでありますが、次に下水道の問題ですが、総理もいまお話がありました、下水道の改良ということが国民の多くの願いであります。下水道施設の普及率、これは現在どうなっていますか。
  92. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 下水道につきましても、目下五ヵ年計画を策定しまして、九千三百億という五ヵ年計画、これでなにしておりますけれども、これはもう御案内のように、ヨーロッパあるいはアメリカあたりの先進諸都市と比べてみますというと、お話にならないような低いところでございます。と申しますのは、ロンドンであるとかパリであるとかというところは、百年以上の長きにわたってこれをやってきておりますから、一〇〇%の域に達しておるわけでございますが、東京にいたしましても、取りかかりましたのはきわめて最近のことでございますから、したがってこの普及というものは非常に低い。しかし、五ヵ年計画を達成しました暁におきましては、全国都市の普及率というのは三二、三%にまでは達すると思います。
  93. 原田立

    原田立君 五ヵ年計画が達成しても三二、三%、それでは先ほど総理が仰せになる社会開発にはほど遠いのじゃないですか。
  94. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 社会開発にはほど遠いという実情は、そのとおりでございます。なかなか国力相応、また実際の経過等も十分考えて、御理解をいただきたいと思います。
  95. 原田立

    原田立君 それでは、各市町村を結ぶ幹線下水道、これについては国庫補助を三分の二の要求に対し二分の一にしてしまった。こういうことですと、四十四年度以降は五五%増と国費をふやさない限りにおいては計画達成はむずかしいんじゃないか、こう思うのでありますが、いかがですか。
  96. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) まずもって、もろもろの社会開発がおくれておる。したがって、社会開発には力を入れなければならないというのが、私は政府考えであると思うのです。そこで、いまの幹線下水道の問題でございますが、私は、予算要求の場合に補助率二分の一をお願いをいたして、そのとおりに財政当局もこれを承認してくれているわけなんです。三分の二の要求は、私は承知をいたしておりません。
  97. 原田立

    原田立君 市町村道路の改装について、現在どんな状況か、今後の見通しはどうか、いかがですか。
  98. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 市町村道と申しますと、車の通るところもあるし、車の通らない道もある。しかし、その全キロ数が八十四万キロという非常に大きな数字になっておるものですから、したがって、改良率であるとか、あるいは舗装率というものは、いま非常に低い状態でございます。何さま、道路整備に本格的に取り組みましたのも、戦後、特にこの十数年の間でございますから、どうしても大きい幹線道路に力を入れていかなければならないという全体の事情の上から——しかし、県道、市町村道にしましても、それ相応の力を入れてまいっておるわけでございます。もちろん、補助事業であるのみならず、各市町村におきましては単独事業として相当実績を積み上げてまいっておりますけれども、何さま八十四万キロという大きなものでございますから、これと整備率というものは、もうそれは、おそらく、この現行の五ヵ年計画を達成しました暁でも、八十四万キロから見ますというと、五、六%といったような非常に低い整備率になるような状態でございます。
  99. 原田立

    原田立君 先ほどから問題にしているように、おくれのはなはだしいのが問題であって、ただ現状の説明では何にもならない。おくれているんだ、おくれているんだでは、議論の余地がないと思う。そこで、不良住宅地区改良懇談会というのが設けられているはずでありますが、これはどういうふうな活躍をなさっておられますか。
  100. 三宅俊治

    説明員(三宅俊治君) 昭和四十一年に、不良住宅地区懇談会というものを、建設大臣の私的な諮問機関といたしまして、学識経験者からなる構成をはかって、地区改良の推進をはかって、その結果、重点的に住宅地区改良事業を進めようということで、大阪の釜ケ崎地区あるいは東京山谷地区等について具体的な推進をはかるように、私どものほうもそれを進めてまいったわけであります。
  101. 原田立

    原田立君 その再開発の状況はどうなんですか。
  102. 三宅俊治

    説明員(三宅俊治君) まず、大阪の釜ケ崎愛隣地区につきまして申し上げますと、昭和四十二年度におきまして、住宅地区の改良地区といたしまして地区の指定をし、かつ事業計画の認可をいたしました。それから次に、用地の一部買収に取りかかっておるわけでございます。四十三年度で、改良住宅を含めまして、医療施設、労働施設等が一体になった地区整備事業と建設事業を進める、こういう状況になっておるわけでございます。  東京都の山谷地区につきましては、東京都と連絡をいたしまして、事業の推進をはかれるように、現在打ち合わせ中でございます。
  103. 原田立

    原田立君 あまり時間がないので、その他こまごましたことをお聞きしたいと思いましたが、やめるとして、こういうようなスラム問題などの解消は、社会開発でのひずみ是正という面からもまっ先にやるべき問題じゃないかと、こう思うのですが、総理どうですか。
  104. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま御指摘になりましたスラムの解消、これなどはしなければならない問題でございます。いろいろ社会開発がおくれていること、その実情については、十分その説明もいたしたと思います。かようにおくれているからこそ、私ども社会開発という政策を取り上げ、そうして各方面に呼びかけ、各方面の御理解のもとに強力にこれを推進していこうと、かように申し上げておるものでございます。だから、私は政局を担当してもうすでに四年になろうとしておるが、実績があがらない、かようにおしかりを受けましたが、私はただいま御指摘になりましたような諸点について積極的に取り組んでおりますから、この上とも御支援のほどをお願いいたします。
  105. 原田立

    原田立君 最終的なようなお答えですが、もう一つお伺いしたいと思うのですが、それは、いままでの政府のいろいろな計画は、威勢のいい計画はバアーンとぶち上げられるけれども、その財源的裏づけがいつも乏しい、そのために最終年度またはその前年度くらいまで来ると改定を余儀なくされている、こういうことが実情であります。計画を立てるときには財源的な裏づけを必ず確保してやるべきだと思うのですが、そういう姿勢について今後いかがですか。
  106. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま言われるような姿勢で取り組んでおります。しかし、御承知のように、五ヵ年計画を立てましても、その後の事情によりまして、さらに内容をふやすこともございますし、また物価その他によりまして、やはり最初の計画だけでは済まない場合もございます。したがいまして、計画どおりの金額で押しつけるいうわけにもいかないのです。途中におきましての変化等は、情勢の変化と、かように御了承をいただきたいと思います。全部一応当初の計画というものは持っておりますけれども、なかなかそれだけにしばってやるわけにはいかないものだという意味の説明でございます。
  107. 原田立

    原田立君 公害基本法の実施法がいまだ国会に提出されておりませんが、今後の見通しはどうですか。
  108. 園田直

    国務大臣(園田直君) 御指摘の中の大気と騒音は、近く審議をお願いするべく準備をいたしております。水質その他のことについては、早急に準備しておりまするが、その中でも一番大きな紛争処理と救済の法律案が、これは財政当局と私のほうとの意見が食い違うわけじゃなくて、財政当局は理解をしているわけでありまして、ただいま審議会に諮問をしておりますから、この答申を早急にいただいて、答申のでき次第各省と折衝して早く成案を得たいと考えております。
  109. 原田立

    原田立君 この見通しはいかがですか。
  110. 園田直

    国務大臣(園田直君) 紛争処理の問題につきましても、できるだけ今国会にと考えておりましたが、今国会で無理なようなことになってまいりましたが、成案だけでも得たいと、こう考えておりますが、少なくとも四十四年度までには間違いなく出したいと考えております。
  111. 原田立

    原田立君 公害紛争処理法案、これは多くの国民が要望しているものでありますが、当然必要なことということは厚生大臣も十分承知だろうと思うのですが、その当然必要なのはこうやって今年度もできない、また来年度だなんというような、おくれるというのは、これは重大な責任問題じゃないかと思うのです。来年などと言わずに、じゃ、なぜそんなにおくれなければならないのか。その理由はいかがですか。
  112. 園田直

    国務大臣(園田直君) 四十四年度と申しましたのは、四十四年度につくりたいというわけではなくて、できれば今国会中でも成案を得、臨時国会等でもお願いをするということで準備をやっております。  紛争処理と救済のおくれましたのは、非常に大きな問題でございまするから、ただいま審議会答申をいたしておりますから、この成案を得たいということでありますが、この紛争、救済については、成案ができてから関係各省意見の調整を行なわなきゃならぬ、そういうわけでございます。
  113. 原田立

    原田立君 阿賀野川の水銀事件について科学技術庁から最終原案が出されたのですが、厚生省の報告から見ると、たいへんおくれている、ずっと後退しているような感じがするのですが、その御所見はいかがですか。
  114. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) 阿賀野川の事件につきましては、まだ科学技術庁は成案を出しておりません。大体原案はまとまりつつあるところでございますが、今週から各省との調整に入りまして、近々科学技術庁としての意見を出す予定でございます。
  115. 園田直

    国務大臣(園田直君) 先ほど新聞にちょっとそういうことが出ましたから、さっそく科学技術庁長官に会いまして、そういう結論が出たのかどうか、この結論については慎重にお願いしたい、技術的な問題でありまするから、いろいろな判断を入れぬでやってもらいたい、こういう申し入れをいたしております。
  116. 原田立

    原田立君 そうすると、厚生大臣は科学技術庁の出した原案について納得であるということですか。
  117. 園田直

    国務大臣(園田直君) まだ科学技術庁は結論を出しておりません。
  118. 原田立

    原田立君 それでは結論が出てないそうでありますから、じゃあ、今後の姿勢として、新聞報道によれば、たいへん厚生省の原案と、最初の報告とはるかにおくれている時点が見受けられますから、そういうようなことが政府統一見解だなんということにならないようにしてもらいたい。これは要望であります。  それから水俣病について、その後発生原因者の発見等もできずに今日来ておりますが、その御所見はいかがですか。
  119. 園田直

    国務大臣(園田直君) 水俣の問題は、医療救護に関しては、御承知のとおり、県と国と市が三分の一ずつで、自己負担をなくいたしておりますが、四十三年度では公害医療研究費補助金でこれを支出したいと考えております。なお、治療の研究及び原因の研究等につきましては、阿賀野川の問題もございまするから、あわせて公害医療研究費補助金から支出をしてこの研究をやってまいりたい。なおまた、現地から、今日やっておりまする看護料がどうも少ないという意見もあるようでありますから、この看護料は増額をする方向でただいま早急に検討いたしております。  なお、そのほかの問題でございまするが、生活保護を受けている方の問題につきましては、一時金、すなわち見舞い金、葬祭料、弔慰金等については生活保護から削除しない、こういう方針で四月一日からやらしておるわけでございます。
  120. 原田立

    原田立君 聞こうと思ったことを先にお答えなのであれですが、いまの生活保護世帯ですね、これは非常にかわいそうだと思うのです。七万五千円ですか、補助が出ると、会社のほうから見舞い金が出ると、生活保護費から差っ引かれてしまう。そのために生活が非常に困っているという実情であります。この点については生活保護の中からはずすということでありますから、その点納得するわけでありますが、そういう姿勢はよくないと思う。いままでのように、生活保護の中から差し引くというようなことは、よくないと思うのです。  それから、水俣病の子供を守る会というのが、熊本短大の女子学生がいままで看護に当たってきたのがあるのですが、それは御承知ですか。
  121. 園田直

    国務大臣(園田直君) いまの御意見の中に誤解がございますが、水俣病に対する会社側との調停の結果、毎月出されている七万円と十二万円、成人と子供。これについては、おっしゃるとおりに、生活保護から差し引くことを中止したいということで検討をやらしたのでございまするが、やはり年金的な色彩を持つもので、これを中止しますと、その他一切の年金にかかってくるということで、月々の手当についてはまだ解決はしておりません。私が言ったのは、見舞い金、それから葬祭料、それからその他の一時金については生活保護から差し引かないようにした。あとの七万、十二万は、まだそこまで行っておりません。しかし、これはここだけの特殊な問題でございまするから、何か事務的にやる方法はないか、なお引き続いて研究をしたいと考えております。  あとの質問の、水俣の患者を守る会で学生さん方がやっていただいていることは承知いたしております。
  122. 原田立

    原田立君 これらの人が国の社会保障の貧弱さを嘆いて、甘い考えではだめだとして、卒業を機に今回手を引いてしまった、こういうことであります。民間の好意に甘える社会保障では愛情ある政治はできない、こう思うのです。総理、どうですか。
  123. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、政府がそういう実情について深い認識を持ち、そうして施策をすることはもちろんでありますが、ただ、政府だけで全部が片づくものではないと思います。そういう意味では、国民の協力がぜひとも望ましい。国民一体、官民一体となってこういう問題と取り組まないと、十分の成果があがらないのじゃないか、かように私は思います。どうも政府がやります場合には、取り締まり強化だとか、あるいは罰則だとか、法を適用するとか、こういうようなかたいものになりますが、問題は、そういうことも必要だが、政治そのものとしては、もっと広い範囲におきまして十分成果があがるようにしなければならない。そのためには、何といいましても、民間、国民の協力を得るように、そういうことが望ましい。それにはまず政府自身姿勢を正さなければならんことは御指摘のとおりであります。そういう意味で、政府は姿勢を正していく。同時に、国民の理解ある協力を得たい。かように私は思います。
  124. 原田立

    原田立君 水俣の一地域に起きた問題であるというふうに大臣も、総理大臣も仰せでありますけれども、こういう公害の問題で苦しんでいる人たちは、ただ水俣だけではありません。阿賀野川の人たちだってもそうでありますし、あるいは神通川のイタイイタイ病の人たちだってもそうでありますし、だから、ただ一つの局地的なものとしてのお考えは、たいへんこれは認識不足じゃないか。もっと国全体として、わずかな人数ではありますけれども、そういうわずかな人たちにこそあたたかい手を差し伸べる、生活のしっかりできる、安心して治療も受けられるという態勢にしなければならないのじゃないか、こう思うのですが、どうですか。
  125. 園田直

    国務大臣(園田直君) 御指摘のとおりでございます。私が一地域と申しましたのは、月々会社から渡っている手当のお金を生活保護から差し引かないようにしたいという事務的な検討の際に、ただいまでは水俣だけでありますから、何とかのけてみたいということで研究いたしております、ということでございます。
  126. 原田立

    原田立君 文部省のほうにちょっとお伺いしたいのですが、この胎児性水俣病の子供たちの特殊学級を湯之児リハビリテーション・センター内につくってくれという現地の要望があるのですが、厚生省でどう考えているか、あるいは文部省等のお考えをお聞きしたいと思うのです。
  127. 園田直

    国務大臣(園田直君) リハビリテーション及び治療の研究等、これは先ほどの御意見のとおりに、阿賀野川その他の事件等もございますので、これと合わせて、先ほど申し上げましたとおりに、公害医療研究費の補助金から支出をして、これに対する検討をただいまやらせております。
  128. 原田立

    原田立君 最後に、もうこれで大体終わりですが、タクシー料金の値上げが運輸省で検討されているとかいうような新聞情報等があるわけですが、これは現状どうなっておりますか。
  129. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) タクシー料金は局地的に、全国的にアンバランスのところがございます。しかし、そういうローカルな部面は適正に是正する必要があるところがございますが、東京、大阪のような大都市のところは、物価抑制その他の見地も含めまして値上げすることは考えておりません。
  130. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもって原田君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  131. 西郷吉之助

  132. 黒柳明

    黒柳明君 残り時間で質問を続行させていただきたいと思いますが、よろしくお願いします。  日通事件は、その性質が非常に公共性が強いものですから注目を浴びておりますけれども、福島前社長が逮捕され、ますます核心に入ったと、こう私思いますし、また昨日は、傘下数百社の会社の一部に脱税問題で手入れがされておる。さらに、まだ使途不明金四億ないし五億、この行くえが政界に流れたんじゃないかと、こういううわさがあります。そこで国税庁の長官、それから運輸大臣、それぞれのお立場でこれまでこの問題についてどのような手を打たれ、また、今後どのような姿勢で取り組まれるか、御説明願いたいと思います。
  133. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 日通の税金の問題につきましては、東京地検とも緊密な連絡のもとに調査を進めております。なお、関連会社について特別調査云々ということが新聞に出ておりましたが、私どもといたしましては、それぞれ国税局、税務署で申告書が提出されますならば、それぞれについて適切な調査体制をとっておるところでございます。それについてどういう調査を行なうかというようなことは、調査の性質上申し上げかねます。
  134. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日通につきましては、司法当局の処断を待ちまして、業務体制全般にわたって特別の監査をやる体制を整えております。なお、長い間の独占体制がああいう事態を引き起こしたとも考えられますので、競争原理を導入するということも、関係方面と協力して実施してまいりたいと考えております。
  135. 黒柳明

    黒柳明君 総理は現状をどう認識され、また、最高責任者として今後どのような指導をされていくつもりですか。
  136. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ、日本通運という会社は、私が申し上げるまでもなく、かつての特殊会社から、ただいまは一私企業になっておると、かように思いますが、しかし、何といいましても、非常に公益性の高い、強い仕事でありますし、また、たいへん強力な、強大な組織でもあります。そういうところにおきましてこの種の事件が起きたということ、これは二、三の会社経営者の責任にしろ、たいへん国民に対して重大なるあやまちを犯しておる、かように思います。そういう意味で、最高責任者である私自身がたいへん遺憾なできごとだと思います。ただいま、事柄は検察当局の捜査にかかっておるその際でございますから、その結果を待たないと全貌を明らかにするわけにはまいりません。しかし、いずれにいたしましても、ただいまのような状態で疑惑に包まれておる、こういうことでは国民に対しても申しわけないように思いますし、この問題が捜査が一応終了したその暁におきまして、ただいま運輸大臣所信のように、特別監査をすべき問題ではないか、また在来の業務遂行上におきましても、今後一つの区分をすべきものじゃないか、かように私思います。
  137. 黒柳明

    黒柳明君 自治大臣にお伺いしますが、公職選挙法の第百九十九条の第一項、それから政治資金法の第二十二条についてですが、これが国及び国会議員の選挙規制する面について事実違反を認定する場合、まあこれはこまかい点、いろいろあると思うのですけれども、事実違反を認定する場合に、おもにこの文章の中のどことどこが主要な点になるか御説明いただきたいと思います。
  138. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 公職選挙法に、いま御指摘の百九十九条の一項に、いつも問題になることですが、「当該選挙に関し、寄附をしてはならない」ということがございます。たびたびこういった案件を裁判所でいろいろ調べ上げた結果、最高裁の統一見解では、「選挙に際し選挙に関する事項を動機として」という、こういう解釈、統一解釈になっておるわけでございます。政治資金規正法もこの百九十九条を受けておるわけでございますが、同じことでございます。
  139. 黒柳明

    黒柳明君 ほかに問題点ございませんでしょうか。そのあとのやっぱり特定契約を結ぶ会社。
  140. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 特定の契約を結ぶということは、「請負その他特別の利益を伴う契約」ということになっておりまして、なかなか議論があるところでございまして、普通、まあ商契約をいたします場合に、利益を無視した契約というものは、まあまあ特別のものしか、以外考えられないわけでございまして、みな若干の利益を伴う。請負だって同じことでございます。で、特別の利益を特に伴うという場合は、これはきわめてわずかなことであるけれども、統一見解としては、たとえば請負のごとき特別契約というふうに解することになっておりまするので、やはり請負をいたしておりまする者はこれに関連があるわけでございます。
  141. 黒柳明

    黒柳明君 重ねて自治大臣に念のためお伺いするのですが、この「選挙に関して」ということは、要するに、選挙期間中あるいは選挙にごく真近である、要するにその「選挙」ということの時期について問題点がある、こういうふうにいま私は大臣の御答弁を解釈したわけですが、よろしゅうございますでしょうか。
  142. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) まあ本来、選挙に関してはもちろんでございまするけれども、時期には関係ないと考えます。
  143. 黒柳明

    黒柳明君 局長さんにお伺いしますけれどもね。この「選挙に関して」、それから、「請負その他特別の利益を伴う契約の当事者」と、これについては従来どのような御見解をお持ちでしょうか。
  144. 降矢敬義

    政府委員(降矢敬義君) 「請負その他特別の利益を伴う契約の当事者」というのは、「請負」は特別の利益を伴う部分の経営者という解釈が従来からとられております。それから「選挙に関して」というのは、先ほど大臣が申されたように、「選挙に際し選挙に関する事項を動機として」という統一見解になっております。
  145. 黒柳明

    黒柳明君 それでは農林大臣にお伺いしますが、食糧庁と日通との運送契約の年月日、相互の契約当事者及び各年度の契約金額、御説明願いたいと思います。
  146. 西村直己

    国務大臣西村直己君) お手元にも資料が行っているかとも思いますが、組部につきましては食糧庁長官から申し上げまするが、契約の担当者は食糧庁の経理部長でございます。それからこの政府の、食糧庁の運賃の支払い実績の合計です。年度別に大まかに申し上げますと、三十七年が百十億、三十八年が百十四億、三十九年が百八億、四十年度が百十三億、四十一年度が百二十六億、四十二年度が百四十五億。このうち、大ざっぱに申し上げまして、半分ぐらいが鉄道運賃、船舶運賃等の通り抜け勘定のものでありまして、日通自体にはその半分前後が毎年入っているのじゃないかと思います。細部必要がありますときは、食糧庁長官から申し上げます。
  147. 黒柳明

    黒柳明君 三十七年から四十二年までにわたって百億以上の契約を結んでいる、これは食糧庁ですが。で、これは毎年度契約を結んでいる。継続的であり、非常に多額であると私は判断します。  それから大蔵大臣にお伺いしますが、専売公社と日通との輸送契約はいかがでしょう。
  148. 前川憲一

    政府委員前川憲一君) 便宜、私からお答えいたします。  専売公社の貨物は、全国的に広範囲にわたりまして、交錯輸送も行なわれております。また、時期的に変動も激しい。そういう関係をもちまして、全国的な規模で計画的に輸送ができ、かつ、地域的な採算を調整できるような輸送機関でないとそれを引き受けられない。このような要請にこたえられまするものは、現在のところでは日本通運でございます。そういう関係をもちまして、従来とも専売公社の輸送を日通にお願いしておったような次第でございまして、昭和三十九年以来の関係で申しますと、三分の二が日通に依存しておるような状態でございます。しかし、将来におきましてこのような輸送の要請にこたえ得るような会社ができましたら、もちろん、そういうものにもお願いすると、こういうことになります。
  149. 黒柳明

    黒柳明君 専売公社と日通との契約も多額であると私は認識したいと思います。  防衛庁長官、今度は防衛庁の所管物資の日通との契約、これはわかっている範囲でけっこうでございますが。
  150. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 武器弾薬等の運輸を日通にお願いいたしております。昭和三十九年度においては三億二千七百万円、四十年度におきましては三億七千八百万円、四十一年度におきましては三億八千六百万円でございまして、防衛庁の武器弾薬等の運輸全体に占める割合は約五分の一でございます。
  151. 黒柳明

    黒柳明君 さらに運輸大臣にお伺いしたいと思いますが、健全なる常識で判断いたしますと、いまの食糧庁あるいは専売公社、あるいは若干の防衛庁の所管の物資の輸送、それと日通との関係、これは明らかに独占的であり、あるいは利益を相当伴ったものである。巨額である、継続的である、私はこのように判断するわけですが、いかがでしょう。
  152. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 仕事の性質が、ただいまの専売公社のお話にもありましたように、交錯輸送あるいは運賃料金の計算、精算、そういうあらゆる部面から日通以外にないというので、やむを得ず日通と契約している向きが多いと思います。しかし、そういう契約の結果ある程度の利潤が生じておるということは、私的企業としてこれまた当然のことであると思っております。
  153. 黒柳明

    黒柳明君 それから先ほどの点に戻りますが、「選挙に関して」という項目ですね、法務大臣どのような見解をお持ちでしょうか。
  154. 赤間文三

    国務大臣(赤間文三君) この「選挙に関して」ということの御質問でございまするが、私たちがこの「選挙に関し」というものの解釈は、一般には、選挙に際して選挙に関する事項を動機としたものがこれに相当する。なおいま一ぺん言いますと、選挙に際して選挙に関する事項を動機としたものはこういうふうな解釈に当てはまる、かように考えておるのであります。なお、これ一般的に具体的に申し上げますると、寄付の趣旨とか、あるいは寄付の、何といいますか、性格と申しますか、また寄付者の意見、真意、こういうものが私はどうであるかということが大きな要因をなすものと考えております。
  155. 黒柳明

    黒柳明君 そうするとですね、これはすでに「選挙に関して」ということは判例があるわけですね。公職選挙法の百三十八条、これは戸別訪問の項ですが、「選挙に関して」とは、具体的に施行される特定の選挙意味することはもちろんであるが、当該選挙の施行されることが確定的となった場合に限られる云々と。選挙期間、それから選挙が確定になったそのときから。こういう判例についてはどうでしょう、法務大臣
  156. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 「選挙に関し」というのは、ただいま大臣から御説明申し上げましたように、「選挙に際し選挙に関する事項を動機として」行なわれた場合に、「選挙に関し」ということに相なっているわけでございます。  そこで、「選挙に際し」ということばは、大体時期的なことを判例が言っているわけでございまして、それは選挙の直前であるとか、あるいは選挙の期間中であるとかというふうな場合には、多くの場合において「選挙に際し」ということになろうかと思います。ただ問題は、時期だけでは簡単に認定ができませんので、また時期だけを根拠として認定いたしますと非常に広くなって乱用のおそれがあるということで、判例が確立いたしましたのは、選挙に関する事項を動機として行なわれなければならないということで、時期だけではなくて、プラス・アルファとして、ある程度寄付者の主観的な動機をしんしゃくするというのが判例の解釈でございます。
  157. 黒柳明

    黒柳明君 プラス・アルファはあるにしても、ともかくも選挙に関してその動機、時期が問題であると、こういうことですね。  私は、以上のことを整理すると、ともかくこれは百九十九条、あるいは二十二条——独占的な、政府と契約を結んでいる当事者、また選挙に際して寄付をしてはならない、こういう点が非常に今度の日通の問題に深く結びつくもう一つの要因をここであげたいと思いますが、自治省に今度昭和三十七年以降の政治資金、日通から届けられている政治資金について。選挙局長でけっこうです。
  158. 降矢敬義

    政府委員(降矢敬義君) お答えいたします。  黒柳委員が先般御調査になりまして、私のほうに、官報について確認するように申し入れられた資料につきまして確認いたしましたので、それを言わさせていただきます。  三十七年は、対山社というのが三十万であります。それからあと、三十七年中最初申し上げますが、睦政会、これは黒柳委員の資料では三十万でありますが、確認いたしましたのでは三百万になっております。それから竹友会三十万、朱岳会十八万、東邦政治経済研究会二十四万。それから三十八年は国政研究会五十万、対山社三十万、睦政会五百万、それからなお交友クラブ五十万、竹友会二十万であります。それから四十年でありますが、国民協会であります。この点は四十年のところは、国民協会黒柳委員の資料では二百五十万というふうになっておりますが、私たちの調べたところでは五百万になっております。それから新生政治経済研究会三十万、政治経済外交研究会三十万、それから新生政治経済研究会五十万、政治経済外交研究会三十万、それから白渓会五万。  それから四十一年の下期でありますが、新生政治経済研究会二十万、二十日会二十万。  それから四十二年の上期は、勝和会というのが二十万になっております。  それから四十年の下でありますが、周友会百万、それから新財政研究会五十万。  それから四十一年が、政治経済外交研究会三十万、周友会三十万、東京一百会五万、新財政研究会五十万、それから東京一百会五万。  それから四十二年のものでは、玄同会百万、それから東京一百会が、黒柳委員の資料では五十万になっておりますが、これは五万円でございます。  以上でございます。
  159. 羽生三七

    ○羽生三七君 議事進行。  ただいまの黒柳委員の質問に、自治省が献金の内容を答えられましたが、もしそういうことが許されるなら、なぜ先日、木村委員の質問の際に拒否されたか。私は議事を無理に紛糾させる意思はありませんから、自治大臣から釈明を求めます。
  160. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 赤澤自治大臣
  161. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) ただいまの御質問のように、どの政治団体、政治結社が日通から寄付を受けているかということでございますと、これは官報に一覧表が出ておりますので、一目りょう然でございます。しかし、よく御認識いただきたいことは、届け出られた政治結社、政治団体というのは、全国で一万三千六百有余あるわけでございます。そのおのおのに日通が寄付したものがあるかと聞かれますと、たいへんな、まあ寄付の案件からいいますと、数十万か、調べたことはありませんけれども、数百万にものぼるのじゃないかと考えます。それを一々すぐ洗ってこいと申されましても、実際上非常にむずかしいことでございまするので、そこらはひとつ御了察をお願いいたしたいと思います。
  162. 加瀬完

    ○加瀬完君 議事進行。  そうすると、自治大臣黒柳委員のように、これは間違いないかという資料を提供すれば、それの間違いか間違いでないかについては確答をいただけると解釈してよろしいですね。
  163. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 赤澤自治大臣
  164. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) これに間違いないかと言われる資料は、おそらく官報を調べてこれに間違いないかとおっしゃったことと考えております。そういたしますれば、われわれのほうで一応点検いたしまして、ただ、その寄付の性質が何であるかということまでは自治省はいたしませんけれども、正確には官報に掲載しておりまするので、確実であると申し上げます。
  165. 黒柳明

    黒柳明君 さらにプラス昭和三十七年の参議院選挙から四十二年衆議選挙、四回にわたってこの選挙期間中、また、これにごく近いときに、日通から政治資金が出ていますが、これについてお願いしたいと思います。
  166. 降矢敬義

    政府委員(降矢敬義君) 先ほど申し上げましたように、いま申し上げておりますのは、黒柳委員が調査されたものにつきまして、官報に当たってそれを確かめてくれという御要求でありましたので、それを確かめたものを申しているわけでございまして、私たちのほうから積極的にこういうものであるというようなことを御提示したものではございませんので、御了解いただきたいと思います。  なお、黒柳委員の御質問で、私たちのほうに先般資料をいただきまして、それを官報と照らし合わせたものをそのまま読まさしていただきます。三十七年に黒柳委員の御指摘の対山社というのは三十万でございます。それから衆議院の三十八年には、御指摘の国政研究会、対山社、睦政会というのは、先ほど読み上げたとおり、そのとおりでございます。それから四十年の国民協会につきましては、先ほど四十年六月三十日となっておりますが、それは違いまして、二百五十万というのは五百万ということを申し上げました。それから新生政治経済研究会、政治経済外交研究会、先ほど申し上げたとおりであります。それから四十一年の下と四十二年の上をあわせて御指摘になりましたものにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、新生政治経済研究会、二十日会、勝和会、永広会というのが御指摘になっておりますが、これは私の調べた官報による届け出を見ますと、日通ひまわり交通ということになっております。  以上であります。
  167. 黒柳明

    黒柳明君 そこで、再び公職選挙法百九十九条、「衆議院議員及び参議院議員の選挙に関しては国又は公共企業体」、そこをちょっと抜きますと、「その他特別の利益を伴う契約の当事者である者は、当該選挙に関し、寄附をしてはならない。」、はっきりこういうふうに規定されているわけですね。この「関して」というのは、選挙というものを一つの動機として、はっきりこれは選挙期間中であり、選挙の二、三日前、すぐまぎわ、またこれを、「特別の利益を伴う契約の当事者である」ことは、だれが見たって、健全なる常識を持つ者ははっきりしているわけです。非常に日通の政治資金政治献金というものは大きなここで疑惑が持たれている。要するに、公職選挙法百九十九条第一項、あるいは政治資金規正法第二十二条違反ではないか、こういう疑惑がある。  ところで、また自治大臣にお伺いしたいのですが、もしここで今回の参議院選挙にあたって、その選挙まぎわ、あるいは選挙期間中に日通から寄付をしたい、政治献金を出したいという申し入れがあったら、どのように判断するか、いかがでしよう。
  168. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 先般の日通の事故は、ただいま司法当局で事実はお調べになっているわけでございます。一つ私ども考えておりますることは、政治の寄付でございますが、「選挙に関し」ということがどういう意味であるかということは、ただいま法務大臣も判例によって見解を示されたわけでございます。しかし、政治活動というものは常時、確認政党であれ、あるいは政治結社であれ、あるいは個人であれ、やっているわけでございまして、常時行なう政治活動のために寄付をするということは、あえて違法ではない。ただ、「選挙に関し」ということになりますと、選挙に際して、選挙に関する事項を動機とする、つまり、目的、動機などが明確に、選挙にその金を使うということが明確になりませんと、なかなか法律に該当いたしませんので、その点は、違法であるかどうかということは、おそらく、ただいま検察当局のお調べになっていることと思います。ですから、ただいま申しましたように、寄付が平常の政治活動に対する寄付であります場合においては、日通がかりにどの団体に寄付いたしましても、あえて現行法では違法だとは言い切れない。選挙に関すれば違法である、こういうことでございます。
  169. 黒柳明

    黒柳明君 私の聞いているのは、行政指導上どうするか、捜査云々とは全然別のことです。
  170. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 将来はともかくといたしまして、現段階では現行法によって……。
  171. 黒柳明

    黒柳明君 現段階ではない。行政指導上どうするか。もしそういう事態が起きたらどうするか。起こり得べきことだし、現にそういうことが問題になっている。司法は別です。それは法務大臣の管轄です。
  172. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 行政指導と申されましても、ちょっとわかりませんけれども、やはり普通行なわれる政治活動に対して、法人あるいは個人が寄付することは許されておりますので、私どもは違法ではないと考えますが、ただ、ただいま起きている事件にかんがみまして、やはりとかく疑義の起きやすいことは相互慎むべきであるという判断は持っております。
  173. 黒柳明

    黒柳明君 ちょっと、違法でないけれども慎むべきであるということははっきりわかりませんけれども、違法なのか、だめなのか。
  174. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 現行法のもとでは、私は、一般の政治活動に対する寄付は必ずしも違法ではない。「選挙に関し」、ただいま法務大臣の申しましたこういった動機、目的等が選挙にあります場合は違法でありますから、これは行政指導上こういうことは違法でございますから、断固取り締まらなければならない、かように考えております。
  175. 黒柳明

    黒柳明君 私もう一回繰り返します。要するに、選挙まぎわ、参議院選挙の期間中、日通から政治資金を出したいと、こうなった場合、行政指導上だめだとするのか、いいとするのか、行政指導上ですよ。
  176. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 私どもは法律によってそういう問題を処理いたしますので、行政指導と申しますれば、こういう事故を起こしておる最中でありますから、やはり疑問を呼ぶようなそういった寄付はすべきでもないし、また、受け取るべきでもない。しかし、現行法に照らしまして、やはり区分があるわけでございまして、選挙に関せないというものだったら、受け取っても違法ではないけれども、行政指導という意味を一つのとり方によりましては、やはり戒むべきである、そういう指導はいたします。
  177. 黒柳明

    黒柳明君 それで、その動機とか、選挙に関するものじゃないというのは、これはどう判断しますか、選挙期間中に政治資金が来たら。
  178. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) ただいま取り調べの段階でありまするので、こういった帯付をすることは好ましくないということは申し上げました。しかし、これがただいま申しました一般の政治活動に対する寄付であるか、選挙に関するものであるかということは、これはやはり取り調べ当局の調査を待たなければ、軽々に申し上げることはできないと思います。
  179. 黒柳明

    黒柳明君 一般的にです。一般論です。
  180. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 一般的にと申し上げれば、いま事故を起こして取り調べの最中でございまするので、やはりこういった法人との政治献金の授受というものは戒めなければならぬ、私は好ましいものではない、かように考えております。
  181. 黒柳明

    黒柳明君 私は、何となしにいまの自治大臣の御答弁を聞いていて、いまの現状の、確かに事件が起こっておる日通、これは私、認識しております。十二分に知っているから質問しているのです。と同時に、今度は、行政指導上の責任者なわけですよね。そういう一般論だって当然起こり得るわけです。日通だけの問題じゃない。法律というものは一般的に当てはまるものでしょう。そういう契約をしているもの、あるいは「選挙に関して」と、一般的にこれは当てはまるわけです。それじゃ、一般的にいった場合に、選挙期間中に、あるいは選挙のまぎわに、そういう独占的な契約、継続的な契約をしている当該当事者というものがあらわれ、そして自治大臣のほうに、政治献金をしたい、こうなった場合に、これはどうするのか、こういうことですよ。
  182. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 別行法のもとでの議論かと思ったのでありますけれども、将来にわたってということになりますれば、ただいま政治資金規正法を提案する段階でありまするので、こういったことは明確にしたい、そういうことで、いま前向きに検討いたしておる最中です。
  183. 黒柳明

    黒柳明君 将来じゃなくて、いまだって、現行法あるんじゃないですか。それを踏まえているのです。
  184. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 現行法では、ただいまも説明申し上げましたとおり、選挙に関してはいけないということで、選挙に関しなかったらいいわけです。しかし、こういうことはやはり国民の疑惑を呼びますので、新しい政治資金規正法ではこういう点を明確にするという意思を私は申し上げたわけでございます。現行法では、ただいま申し上げたとおりと申すよりほかいたしかたございません。
  185. 黒柳明

    黒柳明君 まあ、ここで自治大臣と議論をしていてもなかなか発展しませので、私はここで現行法上、ともかく、この選挙に関して、選挙を一つの動機にして出したか、あるいは、これは日通は意識しないで出したかわかりませんよ、その点は私にはわかりません。しかしながら、表面上に浮かんだだけで、総理大臣、二千五百万の政治資金のうち一千万円ぐらいが、これが明らかに選挙期間中であり、選挙のすぐまぎわなんです。この日通のこの十一件、さらには、もっと私は考えられることは、冒頭に述べましたように、使途不明金が四億から五億ある。従来言われていたのは、この政治献金二千五百万というのは、日通は少な過ぎるんじゃないか、もっとあるだろう、裏金が。当然私はあると思います。私はそう推定したいんですけれども、それもこういう表に浮かび上がっただけでも、公職選挙法に抵触する疑惑のある金がこれだけある。まして、その使途不明金の四億、五億というものがそっちのほうに流れる可能性がある、流れているという疑惑をマスコミが投げかけるのはもっともなことだ、私はこのように思うわけです。しかも、それが、いまこう自治省の発表によりますと、自民党の組織にこう流れているらしい。まあ公党の日本の最高の責任者でもあり、また自民党の総裁として、この点非常にまずいと私は思うんですが、いかがでしょう。
  186. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ二つ問題があるようですね。一つは、ただいま検察庁が捜査をしておる、それによって結論が出てこなければはっきりしない。また、もう一つの政治献金そのものは、一体、選挙に際して、選挙に関したか関しないかわからない政治献金がある。法律論は先ほど赤澤君からお答えしたとおりでございます。しかし、こういう問題が特別な関係があり、最初冒頭に申しましたように、特に公益性の高い、また、非常に重大な役目をしておる会社でありますだけに、慎むべきことだろう、好ましくないことだと、かように申すのが当然だと、かように思います。
  187. 黒柳明

    黒柳明君 法務大臣、結局、いま総理も非常に好ましくないと、この発言ですけれども、ここでいま選挙に関してか関してじゃないか問題であるとおっしゃったわけです。これは当然今後捜査をしなければならないと同時に、私がいま申し上げましたこの問題から発展して、さらに、その使途不明金の四億、五億もそちらの方面に流れる可能性、流れていた可能性があるんじゃないかという面に対して、捜査の手を伸ばす必要があるんじゃないか、こういうふうに私は思うんですけれども、いかがでしょう。
  188. 赤間文三

    国務大臣(赤間文三君) ただいま総理からお答えがあったとおりで、日通事件は非常に遺憾なことでございます。捜査当局におきましても、あらゆる面から適正な、き然たる態度で捜査のいままっ最中でございまするので、私は適当な結論が出るものと考えております。捜査の内容等については、いつも申し上げまするように、ここでお答えするわけにはまいらぬことは御了承のことと思います。
  189. 黒柳明

    黒柳明君 わかります。私も捜査の内容までお伺いしようとは思いません。そのき然たる中には、この問題、要するに、政治献金というものが選挙に関してであれば、公職選挙法に触れる、こういう問題も含まって、また、その使途不明金の四億、五億というものが相当に政界にも流れているんじゃないか、こういう捜査も含めて、き然として捜査をしておる、こう判断してよろしいでしょうか。
  190. 赤間文三

    国務大臣(赤間文三君) あらゆる面から、お述べになりましたことも含め、また、お述べにならぬことでも、重要なことは、検察庁の威信にかけて厳重なる捜査が行なわれるものと確信をいたしております。
  191. 黒柳明

    黒柳明君 当然、お述べにならないことを私は聞こうと思いません。お述べにならないことは、それでけっこうですけれども、ほんとうに検察の威信にかけてこの問題をやっていただきませんと。私は時間が来ちゃいましてね、委員長にまたおこられますので、この辺でやめますけれども、ひとつ総理はじめ関係大臣も、この問題に真剣に取り組んでやっていただき、また後日にいろいろな質問を保留したいと思います。
  192. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもちまして黒柳君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  193. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 赤澤自治大臣
  194. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 先般の木村さんのお尋ねに私はお答えいたしました際に、少しことば足らずもあったかと思いますが、委員の諸先生のほうで、こういうことがあるがこれは確実かという資料をお示しになりました場合は、私のほうで調査いたしまして、確認を求められた場合は御要求に沿うように努力をいたします。
  195. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもちまして午前の質疑を終了いたし、午後一時半再開いたします。  これにて休憩いたします。    午後零時五十分休憩      —————・—————    午後一時四十五分開会
  196. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を再開いたします。  午前に引き続きまして、質疑を続行いたします。向井長年君。
  197. 向井長年

    向井長年君 私は、まず外務大臣にお聞きいたしたいと思いますが、いまベトナム和平の交渉する具体的な問題で候補地が問題になっておりますが、この候補地が、いまどういう国々が候補地にあり、あるいはまた、どの国でやられるか、その見通しについてお伺いいたしたいと思います。
  198. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 御承知のように、候補地が問題になって、ハノイはカンボジアのプノンペン、それからポーランドのワルシャワを提案して、アメリカは、今度の交渉は中立国がいいではないか、交渉を通じてどの国も利益を得るというのではなくして、中立の国がいいではないか、ことにアジアの問題に重要な関係があるから、アジアの中立国がいいのではないかということで、いろいろ、たとえばラングーンとか、ジャカルタとか、それからビエンチャンとか、いろいろ提案があるようですが、そういう点で候補地がいまだにきまっていないのですけれども、とにかく予備的に話し合いをしようということで両方が一致したんですから、その一致したということは、話し合いによってベトナム戦争を解決しようという意思があったから両方が合意したのでしょうから、場所についてこれからのいろいろやりとりはありましょうけれども、このことで話し合いができぬというようなことになるとは私は考えていない。そういう場所がきまらぬで話し合いができぬというようなことは、そういうことであっては、これは世界が失望をいたします。必ず場所の問題は解決するに違いない、こう思っております。
  199. 向井長年

    向井長年君 日本が候補地にあがらぬのは、これはどういうわけですか。アジアの先進国と言われておる日本が、しかも、地理的にも最も適当だと思うのだが、そのあがらない理由はどういうわけですか。
  200. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 日本にはハノイの大使館がありませんから不便です。ハノイは大使館がない。アメリカのほうはちゃんとしてあるけれども、ハノイのほうはいろいろの施設がない、大使館が。まあそう無理に日本が名のりをあげなくてもいいと思っております。
  201. 向井長年

    向井長年君 わが国の憲法の前文にこういうことがあるのですよ。「われらは、平和を維持し、専制と隷従、壓迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてみる國際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」、こういう前文があるのですがね。この前文に伴うならば、こういう和平交渉というものは日本にあってもいいのではないか。これは、少なくとも日本は世界から見て、アメリカの従属国である、こういう見方をされておるということでしょうか。その点いかがですか。
  202. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これだけちゃんとした独立国を、野党といえども従属国というふうに考えることはよくない。日本は自身を持たなければいけない。したがって、日本は、和平会談の場所というものについては、ハノイの大使館がないでしょう。だから、連絡するのにも非常に不便でありますから、私は適当だと思いません。しかし、アメリカもハノイも、いろんな施設を利用するような場所が、利用できる場所が——これは両方の便宜であろうと思います。そういう点で日本が候補地にのぼらなかった。そういう条件が整えば、やっぱり東京というものは非常に有力な候補地になったであろうと信じております。
  203. 向井長年

    向井長年君 総理お尋ねしますが、日本も東京をそういう候補地に名のりをあげて希望したらどうですか。
  204. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 希望もけっこうですが、私も、いま外務大臣お答えしたとおりに考えております。この点では、やっぱり両者に対しまして連絡の便なところが望ましい。でありますから、三木外務大臣が留守中に代行の椎名君は、日本として、もし利用してくださるならばたいへんけっこうですということを申しております。私は、それより以上の積極性をいまは持ちましても、実情は、いまのような従属国だとは思いませんけれども、また私は、政府としてそういうことはないとはっきり申しますが、当該北、アメリカ双方に便なところでないと実現しない、かように私は思います。
  205. 向井長年

    向井長年君 次の問題で、総理は、核の三原則を今国会でも国民に明確に宣言されておりますが、非常にけっこうなことだと思いますが、これと、沖縄の本土返還については白紙であるというようなことをたびたび言われていると思うんですが、この点について、この関連性はどうでしょうか、沖縄の本土復帰の条件の問題との関連性は。
  206. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの和平問題ですか。
  207. 向井長年

    向井長年君 いやいや……。
  208. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 核原則の問題ですね。この問題は、私が内閣にある限り、総理である限り、これ、いわゆる核を製造したり、持ったり、持ち込みを許すという考えはございません。決議の問題については、ただいま各党間で話し合っている、かように私承知しております。  ところで、沖縄の軍基地、そのあり方、現在どういう状態であるのか、これも、私ははっきりまだつかんでおりません。核基地、メースBがあるとか、あるいはその他のものが相当ある、これは同時に、日本並びに極東の安全確保のために必要な施設だと、かように理解しております。しかし、今後科学技術の発達等もございますし、また、国際情勢の変化もございますし、今後のあり方については米側と十分話し合っていく、そうして結論を出すことが必要なんではないか。現状についての認識と将来に対するあり方等について十分協議する必要があるだろう。そこで、私はいま現状においては白紙だと、こういうことを申しております。もちろん、私が白紙という問題——事実白紙でございますが、しかし、今後とも国民世論にもこれは聞かなければならない問題でございますから、そういう問題、いわゆる三つの問題とかみ合わして結論を出していったらいい、かように私は考えております。
  209. 向井長年

    向井長年君 この沖縄も、返還されれば本土になりますね。そうすると、佐藤総理が三原則を打ち立てている以上は、これはあくまでも沖縄もそういう形でなければならぬ、こういうかっこうで解釈していいのでしょうか。
  210. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たいへん単純に結論を出しておられますが、私は、先ほど来詳しく説明をいたしましたように、沖縄の米軍基地が果たしておる役割り、これは日本並びに極東の安全確保のために大役を果たしておる、かように考えます。そういう点で、これが日本に返ってくる、その結果、ただいまのような、状態が変わってくるとは私は思わないのです。でありますから、それらの点で十分話し合いをしないと結論は出てこない、かように申し上げておるのであります。
  211. 向井長年

    向井長年君 それは、総理、そうすると、結局、沖縄には核基地もあり得るという考え方があるわけですね、交渉の過程においては。そういうふうに解釈できますね。
  212. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はさようには思わない。いまは白紙だという、ただいまのところ、これについてどういうものがあるということは考えてないということを繰り返し申し上げております。しかし、いま沖縄の基地が果たしておる役割り、これは、何と申しましても、日本の安全にも役立っている、極東の平和と安全に寄与していると思います。で、これは逆に考えまして、日本に沖縄を復帰さす、祖国復帰、これはもう絶対命令だと思います。私は、何が何でも祖国復帰、これを実現しなければならぬと思っております。しかし、同時に、一方で極東の安全確保がそういう場合にこと欠くことはいかがかと思います。かように私は思いますので、そこらに、私どもとしても、もっと柔軟性があっていいんじゃないか。もっと言うならば、いま沖縄が祖国復帰がおくれても差しつかえないものであるか。ただいま言われるような極東の安全のためにアメリカが何と考えようと、これはアメリカのかってで、しかしそんなことじゃいかぬじゃないか、こう言って私どもが主張したときに、アメリカに対する説得力が十分でないんじゃないかと思います。いわゆる祖国復帰がおくれるんじゃないかと思います。私は、皆さん方と同様に、沖縄の祖国復帰を早く実現したい。これには異存はないことだと思います。これは、沖縄百万の同胞ばかりの熱願ではございません。日本の全国民が、祖国に復帰、これを一日も早く実現しよう、こういう考え方だと思います。そういう意味の祖国復帰実現に支障のないということをやはり十分継続的に話し合っていって、そこで初めて結論を出すべきじゃないか、かように考えているのであります。いまのところ、現状については十分に把握しておらないし、また、将来のこの基地のあり方についてもアメリカ側から十分考え方を聴取する、そのこともできておらない。この状態はいまは白紙だと、かように御理解いただきたい。私どもの目的は、何といっても、日本が戦争に——いわゆる国際紛争を武力によって解決しないで、憲法を守る、そのもとにおいて私どもの行動ははっきり制約を受けている。同時にまた、いまの沖縄を祖国に復帰させる、これは至上命令でありますから、そこを早期に実現することが必要だろうと思います。早期に実現することが必要だからといって、私に非常に妥協僻があるというものではない。私どもの信念は貫きたい。しかし、そこでは十分協議を遂げなければ、一方的に話はきまらないじゃないかということを申し上げているわけでございます。誤解のないようにお願いいたします。
  213. 向井長年

    向井長年君 時間がないから詳しく言えないわけですが、とにかく、核の三原則総理国民に明確に訴えた。したがってこれは沖縄の本土復帰にもつながっている、というふうにわれわれは解釈している。それが、まだこれから交渉しなければならないから、戦術上白紙だということはわかりますけれども、しかし、そういう条件もあり得るということになれば、国民に対して欺瞞することになると思うが、その点についてどう考えておりますか。
  214. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、国民を欺瞞するような考え方をしているわけではございません。おそらく、私がいま言っている事柄で、憲法の精神を無視するというようなことがあれば、これは国民から批判を受けるだろうと思います。しかし、私自身は、そのような意図もございませんし、また、そういうことをするつもりは全然ございません。その御心配はないと思います。国民に対して欺瞞するとかということは一体どういうところから出てくるのか。私は祖国復帰を心から望んでいる。その立場に立ってこれは実現したらどうかと思います。まあ、いままでないところにその核を持ち込む、あるいはそこはいまある状態のものかもしらない。そういうところでその処置をどういうようにするかということは、やはり区別されてもしかたのないことじゃないかと、私はかように思います。しかし、だからといって、私は、現状を肯定したと、こういう考えではございません。そこに継続的な協議の必要があると、かように思っておりますので、国民をだますとか、そんなことには私はならぬと、かように考えます。
  215. 向井長年

    向井長年君 総理、誤解しているから。私はすわったままでやります、時間がないから。  私は、そういうことを言っているのじゃなくて、いま言ったことは、いわゆる核の三原則国民に明確に訴えられた。したがって、沖縄が本土復帰していった場合に、もしそこに基地がつくられるならば、結局、総理の言っている三原則はくずれる結果になると言っているのですよ。したがって、それは結果的には国民に言ったことが変わってきたということになりますが、この点をどう考えておられるかということなんです。
  216. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ万一という御心配のようですが、まだそんな状態にはならないのですから、また、そこらはいまから御心配をなさらないように、そのときになってこの批判は幾らでもなすったらどうかと、かように思います。いましばらく模様をひとつ見て、そうして、私が総理としてどんな態度で交渉するのか、総理である限りにおいては、しばらくその点は私におまかせをいただきたいと、かように申し上げるわけであります。
  217. 向井長年

    向井長年君 そうすると、もし万が一そういう事態になった場合には、いつかも言われましたが、国民に信を問うと、こういう形は言えるわけですか。
  218. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私もそういうように思いますけれども、そういう時期が早く来ればたいへんけっこうなことですが、そういうところにまだ来てないんだと、かように思っております。ですから、あまり先ばしった意見で、そうして批判めいたことは、いま私も申し上げかねますから、しばらくその返事だけは留保させていただきたいと思います。
  219. 向井長年

    向井長年君 本院の予算委員会で他の委員から質問されて、総理は、そういう場合においては解散をして国民の信を聞きたいというようなことが発言されたように私は聞いておるのですが、この点どうですか。
  220. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いわゆる仮定の事実の問題ですから、仮定の事実についての答え方はいろいろあるだろうと思います。ただいま同様のことが言えるかと思いますが、この前の本院においての質疑も、これは純仮定の問題だと、かように御了承をいただきたいし、ただいままた重ねての向井君のお尋ねですから、ただいま仮定の問題でございますから、私も非常に正確にお答えしているので、その辺に別に食い違いがあって言を左右しておるわけじゃありません。だから、その辺はややニュアンスは違いましても、その辺の御理解をいただきたいと思います。
  221. 向井長年

    向井長年君 次に、農林大臣にお聞きいたしますが、液卵の輸入問題と養鶏対策についてお聞きいたしたいと思います。  日本の農畜産物中、価格において国際競争に勝っていく、あるいはまた国際競争に伍していけるというような品目は何ですか。
  222. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 養鶏の価格につきましては、比較的国際競争力は私のほうとしては、たえ得る価格状態であると思っております。養鶏の関係でございますね。
  223. 向井長年

    向井長年君 鶏卵。
  224. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 鶏卵関係、養鶏関係につきましては、国際競争力にはたえ得る性格のものだと思っております。
  225. 向井長年

    向井長年君 しからば、いま日本の最近の鶏卵の価格はどの程度になっておりますか。
  226. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) お答えいたします。大体キロ当たり百七十円前後でございます。
  227. 向井長年

    向井長年君 諸外国の鶏卵の現状ですね、これを説明していただきたい。特にイギリス、アメリカ、オトーストラリア、西ドイツ、イタリア等。
  228. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) お答えいたします。ただいま詳細な資料を持ち合わせがございませんので、正確にお答えいたしかねるわけでございますが、最近の液卵の輸入価格を申し上げますと、大体英国が百八十四円、オーストラリアが百七十五円、南アフリカ連邦が百二十円程度でございます。
  229. 向井長年

    向井長年君 輸入価格じゃないんですよ。現在の価格、どれくらいか、国内で。
  230. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 国内の価格について申し上げますと、正確な国際比較が出ておりませんが、四十年について申し上げますと、日本では百八十七円でございまして、イギリスでは二百二十二円、アメリカ百七十四円というふうな程度の資料しかただいま持ち合わせがございません。御了承願います。
  231. 向井長年

    向井長年君 農林大臣、このように考えてみますならば、二百円以下というのは日本とアメリカぐらいじゃないんですか。
  232. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 大体日本は第二位になっておると思います。
  233. 向井長年

    向井長年君 最近日本に液卵と申しますか、あるいは粉卵か、こういうやつがどんどんと輸入が増大しておりますが、この現状はどうなっているか。
  234. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 凍結液卵は確かに製パンとか製菓、食肉加工食品等の需要の増加に伴いまして、オーストラリア、イギリス、南ア連邦等から輸入されておるのであります。その他の国からも出ております。ただ問題は、価格面だけで見ますというと、先ほど申し上げましたように、大体それほど日本のほうに——日本の卵がよほど高い場合であれば、これが入ってきた場合に冷却する効果がありますけれども、低水準にある場合におきましては、もちろんこれはもう競争力があるわけでありません。そこで、これらの量として入ってまいりますのが日本のわずか総流通量の〇・五%程度といわれております。しかも、おもに中心になっておるというのはオーストラリア中心でありまして、オーストラリアの鶏卵産出量自体がわが国の産出量の十分の一、それからそのオーストラリアから入ってくる液卵でございますが、それが全体の日本の総流通量の〇・五%程度でございますから、わが国の養鶏産業に重大な影響を与えるというふうには考えておらないわけであります。
  235. 向井長年

    向井長年君 大臣ね、三十九年から四十二年までどんどんと輸入はふえているでしょう。これはどういう現状ですか。
  236. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 具体的に畜産局長からお答えさせます。
  237. 向井長年

    向井長年君 理由ですよ。量じゃなくて、理由が。
  238. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 簡単に御説明申し上げますと、昭和四十年八百七トンでございます。四十一年が二千六百三十七トン、四十二年が八千七百六十四トン、こういうふうにふえておるわけでございます。これは御承知のように、需要は年々ふえておるわけでございますが、先ほども申し上げましたように、価格的に見ますと、国際的な競争力はあるというふうに判断をいたしておるわけでございます。申し上げるまでもございませんけれども、鶏卵については、時期的な価格変動がかなりあるわけでございます。したがいまして、時期的に価格が高いときには輸入をされるというふうなことがあるわけでございまして、そこで、一方で需給の規模が拡大しておることと、価格的な変動の要素によりまして輸入がなされておるわけでございまして、最近ふえておりますのは、需給の規模が拡大したことと、価格がかなり高水準になったと、こういうふうなことで輸入がふえておるというふうに考えているわけでございます。
  239. 向井長年

    向井長年君 日本の生産と需要のバランスはどうなっているのですか。結局生産が追っつかぬということですか。したがって輸入しなければならぬということですか。
  240. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 御承知のように鶏卵については、すでに自由化をされておるわけでございます。わが国の生産量は四十二年におきまして百二十三万トンというふうな規模になっておるわけでございます。輸入されておるものは九千トンでございますから一%足らずというふうな程度になるわけでございまして、これは先ほど申し上げましたように、時期的に価格変動がございますので、そういうふうなことによりまして、高いときには若干輸入されるというふうなことは、これはあり得るのではないかというふうに私は考えておりまして、全体的に申しますと、需給につきましては大体自給自足でやっていけるというふうに考えておるわけでございます。
  241. 向井長年

    向井長年君 自給自足で日本がやっていかれるというのにもかかわらず、これを入れなきゃならぬということはどういうところにあるのか。価格の問題になってくると思いますが、しからば、この価格というのが諸外国から見て、特にオーストラリアかなんかから入るのは、これは何か関係があるんじゃないですか。こういう実態があらわれておるというのはどういうことであるのか、この点どうつかんでおられますか。
  242. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 御承知のように、わが国の鶏卵の価格というものは時期的に変動がございます。昨年四十二年で一番安いときは百六十円ぐらいになったわけでございますけれども、昨年秋の高いときには二百四、五十円になるというふうな時期的な変動があるわけでございます。そこで非常に高いときには若干外国から入ってくるというふうなことがあるわけでございまして、それ自体は、価格が高水準になっておりますときには若干輸入がありまして価格を下げるということも、物価政策から見てやむを得ないことであるというふうに考えておるわけであります。何といたしましても、非常に生産能力の旺盛なものでございますから、やはりそこに試行錯誤的な価格変動というものもあり得るわけでございますから、したがいまして一%程度入っておるからといって、それはわが国の自給する状態にならないということで許しているわけではございません。全体的に申しまして、必要なものを供給するという力を持っておりますし、そういう状態にあるというふうに考えておる次第でございます。
  243. 向井長年

    向井長年君 これは世界の水準から見ても、オーストラリアから入っているこの価格というものは、これはダンピング以外にないんじゃないですか。ダンピングと考えていいんじゃないですか。ダンピングであればダンピングに対する国としての方策があるはずなんです。この点農林大臣どうですか。
  244. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 私のほうの調査によりますと、価格共済のような内部的な積み立て金みたいなものを州なり連邦でやっておることは知っております。ただし、それ自体はあくまでも価格共済のような制度でありまして、それをもって私のほうで関税的な対抗措置をとるという考えはないのでございます。  それから鶏卵そのものが御存じのとおり自由化の対象でございまして、局長から話がありましたように、価格の多少の変動がございます。そこで液卵というものは現在御存じのとおり加工の場合には使いやすいものですから、ある程度は入ってまいりますが、大勢としては、私どものほうとしては液卵が入ってくることに対して、十分輸入協議会等もございますから、自主的な調整等も行ないますれば、大勢としては心配ない。と同時に、国内におきましてもこの液卵加工と申しますか、そういった方向も漸次開発をされてきております。
  245. 向井長年

    向井長年君 政府は液卵輸入問題に対して、特に相手国の生産費とか販売の経費、その他合理的ないろいろな利潤問題について調査されたことがありますか。
  246. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 昨年六月ごろ、卵価が非常に低迷をいたしたときがあるわけでございます。その際、若干英国、オーストラリア等から入ってまいるという状態があったわけです。そこで輸入商社に話をいたしまして、わが国の国内自給にできるだけ影響がないような輸入のしかたをしてもらいたいという要請をいたしまして、御協力を賜わったことがあるわけでございますが、その際に、たとえばオーストラリア等についてはダンピングしておるのではないかというふうな話もあったわけであります。そこで現地の公館等を通じまして、いろいろ御調査を願ったわけでございますけれども、ダンピングしておるという事実はどうもはっきりいたしておりません。たとえばオーストラリアについて見ますと、州及び連邦の各段階にエッグボードという半官半民の機関がございまして、ここで国内と輸出の代金のプールをいたしまして、連邦のエッグボードでは生産者から課徴金を取りまして、その課徴金を各州の農民の受け取るものがひとしくなるように州のエッグボードで配分しておるというふうな事実がございます。これは一種の価格共済でございまして、国自体が補助金を出しまして、それで安く売っておるというふうな状態とは違っておるように了解をいたしておるわけでございます。現在入っております液卵の価格が一キロ当たりおおむね二百円程度でございます。これはから付き卵になおしますと、百七十五円程度になりますので、特に安いというふうにも考えられないわけでございます。先ほど申し上げましたように、現在のわが国の鶏卵価格は大体百七十円程度でございますから、これは競争力はあるというふうにわれわれは判断をいたしておるわけであります。
  247. 向井長年

    向井長年君 日本では、養鶏業者から見れば自給自足ができておるが、したがって需要のバランスがとれておる。そうして世界の価格に比して非常に安いのだ、第二位である。こういう中でこのオーストラリアの十数万トンしか生産しないところが、こういう価格でくるということについては、日本のいわゆる養鶏業者というか、そういうものを圧迫するのではないのですか。こういう点について農林大臣どういうふうにお考えですか。
  248. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 鶏卵の全体の生産量が百二十三万トンといま局長から御説明申し上げまして、それに対してオーストラリア並びに各国から入ってくる液卵が大体一%弱でございます。しかもこれは価格の高低によって自由化のもとに多少入ってくる。しかし多少の気をつけるべきときは、輸入に対しての商社指導は自主規制としてやってまいっておるわけであります。百二十三万トンのうち四十二年度には九千トンでございますから、私はその点ではそう心配はないというふうに考えております。
  249. 向井長年

    向井長年君 農林大臣、毎年輸入が増大しておるのですよ。一万トンと言われるけれども、しかしこういうようにして価格がそういう形になってくるならば、これからの輸入の増大も考えられるわけです。一方において国内においては自給自足、あるいは養鶏業者に対する奨励をして、大いに生産を向上せしめておると思うのです。こういう中でこのままいくならば、いわゆる消費者に対する価格という問題もありますけれど、結局は零細な養鶏業者を圧迫する結果になってくるのではないか。しかも現在養鶏業者はほとんど最高の合理化をされておるという現状じゃありませんか。こういう点に対してこれからの施策としてどう対処されるか、再びお答えいただきたい。
  250. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 今日のように加工食品の中に液卵を使うほうが便利である、これはもう向井委員御存じのとおりでございます。そこで日本としても液卵についてのさらに技術の高度化等によって国内産の液卵化を進めてまいるというようなことによっても、私は十分対向できるというふうに考えております。
  251. 向井長年

    向井長年君 今後輸入の制限をやりますか。
  252. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 自由化されましたものに対しまして、全体のたてまえから考えまして、私どもとしてはいまの鶏卵につきましてそういう考えはございません。
  253. 向井長年

    向井長年君 そうすると、三十九年から四十二年までずっとこれが増大していっておりますが、四十三年、四十四年と、これはまだ増大する予定がありますか。
  254. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) お答えいたします。  将来のことでございますので、何とも申し上げかねますけれども、私たちの考えとしましては、まあおおむね一万トン程度は需給並びに価格変動の状態によって輸入されるということはあり得るであろうと。しかし、これが膨大にふえるということはあり得ないというふうに考えておるわけでございまして、御承知のように、わが国の養鶏業というものは非常に合理化されておる。生産量も自由諸国において第二位でございます。だんだん経営規模も拡大されまして、合理的な経営というものが非常にたくさん出てまいっておるわけでございまして、国際競争力はいよいよまあついてまいるというふうに思っておるわけでございます。したがいまして、国内の必要とする鶏卵につきましては、国内で十分供給できるというふうに考えておりますので、今後この数量がどんどんふえていくというふうには考えておらない次第でございます。
  255. 向井長年

    向井長年君 そうすれば、日本の生産者がどんどんとこの生産向上をやっていくならば、これは減らしていくと、こういうように考えてよろしいのですか。
  256. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 年々需要の規模は拡大をいたしております。したがいまして、これに即応しまして国内の供給量をふやしていかなければならないということになるわけです。一方で経営の合理化というものが進みまして、大規模経営にしております。したがって、養鶏農家の戸数は毎年減ってまいっておるわけでございますけれども、一方で大規模のものができる、あるいは協業化によりまして大規模化していくというふうな形で合理化が進行しておるわけでございます。
  257. 向井長年

    向井長年君 答弁になっていない。減らしていくかどうするかということを聞いている。輸入を減らしていくか、どうするか。
  258. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) ただいま申し上げましたように、需要に対しまして供給が十分であるということになれば、輸入の必要はないわけでございます。現在、自由化でございますから、輸入数量を割り当てをいたしまして、それを減らすというふうな形はできないわけでございます。必要に応じまして入ってくるということになるわけでございますけれども、まあ相当合理化されまして供給力が十分であるということになれば、輸入というものはふえないであろうというふうに私たちは考えておるわけでございます。
  259. 向井長年

    向井長年君 この問題については、時間がございませんから、いずれ他の委員会で大臣に具体的にお聞きしたいと思います。  次に、自治大臣にお聞きしますが、電気ガス税が昭和三十七年から一%ずつずっと減らしてまいっておりますが、昭和四十年からとまっております。これはどういうわけですか。
  260. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 地方の財政事情が逐年驚くべき増加もいたしております。昭和三十九年末の税制調査会の長期答申にも、まあ現状では存続するものとして、逐次減税その他合理的な措置考えよと、こういう答申もいただいておるわけでございますので、つとめて減税、また免税点を引き上げるという努力を傾けつつありますけれども、ことしはなかなか御期待に沿うことができませんで、ガス税に関しては免税点百円だけ引き上げることにとどまった次第でございます。
  261. 向井長年

    向井長年君 これは自民党政府の中で、しかも三十七年のときに、毎年いわゆる需要が伸びますから、それに伴って少なくとも一%程度はずっと毎年減らしましょう、こういうことから減らしてきたはずなんですよ。それがちょうど四十年からそのままとまっちゃっている。しかも、四年間全然やっていない。こういう現状はどういう理由か。
  262. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) ただいま申し上げましたとおりに、電気ガス税は全部で七百億こえておるわけでございますが、市町村をささえる財政の一つの柱になっているわけでございまして、やはり免税という点から考えますならば、まっ先に取り上げなければならぬ税目ではございますけれども、しかし、地方財政の実態から考えまして、急激な減免がなかなかできかねますし、一方、行政需要は逐年増加しておりますので、はなはだ遺憾ながらそういう状態にとどまっているというわけでございます。
  263. 向井長年

    向井長年君 四百円まで電気の場合は免税ですね。しからば、四百円を設定したのはどういう理由ですか。
  264. 松島五郎

    政府委員(松島五郎君) 電気ガス税につきましては、御指摘のとおり、昭和三十七年から三十八年、三十九年と毎年度一%税率を下げてまいりました。その後昭和四十年度に免税点の引き上げをいたしまして、現在この四百円になったわけでございます。  四百円は何を基礎にしたかということでございますが、電気の使用量等を一般に調査をいたしまして、この程度までは免税になるという配慮から出たものでございます。
  265. 向井長年

    向井長年君 低所得階層に対するいわゆる減税という意味だと思うのですよ。これはまあけっこうなことです。しからば、電気は生活の必需品でしょう。したがって、いま直ちにできなければ、なぜこういうような基礎控除方式、あるいは免税点法式というものをもっと拡大しないのか、この点、自治大臣
  266. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) ただいま申し上げましたとおりに、ことしはそういった免税につきましてもいろいろ考慮をいたしましたが、御案内のとおりに、住民税もかなり軽減いたしましたし、また地方財政全般から申しましてあれこれ考えましたけれども、ことしはガスに対する免税点をわずか引き上げることにとどめざるを得なかった次第でございます。
  267. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 向井君、時間が来ました。
  268. 向井長年

    向井長年君 総理、実は池田内閣当時私はしばしば言ったのですが、総理が通産大臣のとき、こういう税金はどうですかと言えば、これは悪税に近い税金である、一日も早くなくしてもらいたいということを答えられましたね。そうして総理総理大臣になってからほとんどとまっちまったのです。どういうわけですか、これは。総理は通産大臣のときは、絶対一日も早くなくせい、こう言っておきながら、総理大臣になってからとまっちまった。減税しなくなっちゃった。どういうわけですか。
  269. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も、この種の税金はあまり好ましい税金だとは思いません。そこで、税そのものをとにかくやめるわけにもいかない。これは財源の関係です。したがって、免税点あるいは基礎控除方式、そういうものも加味して今日までやってきておるわけであります。四十年で減税がストップした、たいへん残念に思いますけれども、最近の地方財政、その財源から見まして、なかなか適当な財源が見つからない。いま好ましくない税だが、地方財政をささえておる一つの柱でありますので、そういう意味で、皆さんの御理解ある援助を求めておる。  しかし、いまのような、ことしは住民税なども減税をいたしました。この住民税も、いわゆる所得税の場合とは違った観点で処理されるわけです。税にはそれぞれの目的があって、それぞれの税にその目的達成のために必要な方法がとられておると思います。まあ今回の酒やたばこの問題等につきましても、御批判のあるのもそういうことじゃないかと思います。で、まあこの辺にも国民の負担も増さざるを得ないような観点に、そういう状態になってきております。したがって、まあ電気ガス税は一口に好ましくない税だとは申しましても、最近は大部減税もされておりますし、基礎控除も、また免税点などもだんだん引き上げられている。その辺でごしんぼういただくということはやむを得ない措置かと思います。しかし、この問題、なお研究の余地が全然ないのか。そうじゃない。やっぱりそれぞれ研究もしていかなきゃならぬと思います。そういう意味で、自治省におきましても、また地方財源でなくなると中央からの見返り財源というものを見なきゃならない。ここにも一つの困難さがございます。ただ減らすだけなら、それでいいというものでもありません。そこらも勘案いたしまして、総合的にこういう問題に対処していくと、こういうことでなければならないように思います。
  270. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 向井君、時間がだいぶ超過しましたから。
  271. 向井長年

    向井長年君 超過してへん。  総理ね、免税点というけども、これは何でしょう、四百円までの人は免税するが、四百円ちょっとこえたら全部かかるのですよ。こういう不合理な税金にしているのですよ、いま。それと同時に、通産大臣、これは年間どのくらいふえていきますか。
  272. 松島五郎

    政府委員(松島五郎君) 昨年度が六百億ちょっとでございます。今年は七百十六億で、約百億強ふえておりますので、一七%くらいの増に本年度はなっております。
  273. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 向井君、時間がたちましたから。
  274. 向井長年

    向井長年君 大蔵大垣、百億程度を特別交付金で各市町村に交付したら、これはやめられますよ。これやる気ありませんか。こんな生活の必需品にかけておって、ほかの税金よりもっと早く軽減し、なくさにやいかぬ税金ですよ。総理はそう言われているでしょう。それから一%減らしたらどうです。百億というのですよ。
  275. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 御指摘のとおり、税源の再配分の機会がありましたら、私はこのことを強く主張したいと思います。しかしながら、現段階では、交付税と申しましても、御案内のとおり特別交付税は交付税額の何%ということがきめられていますので、特別交付税だけ大蔵大臣がふやすというわけにもまいりませんので、来たるべき機会にはやはりまず免税すべき税目であるということを考えておりまするので、もうしばらくのごしんぼうをお願いいたします。
  276. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) もう時間が過ぎましたから。
  277. 向井長年

    向井長年君 いましばらくだけれども………。  四年間そのまま据え置きになっているんですが、いつまで待つんですか。いつになったらなくすんですか。総理はこんな悪税はなくしてもらいたいということを言ってるんやから、たびたび。これだけ聞いてやめます。
  278. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 私も党におりましたときは免税の急先鋒をやりまして、自分でもガス事業を経営しております関係上、電気ガス税は悪税だということで先陣を競いましたけれども、しかし、自治行政を担当してみますと、この税目というものをなかなかすぐに消すというわけにはまいらない事情があるのでございまして、ですから、いつこれを免税してしまうかというお尋ねでございまするけれども、いますぐこういう段階でということは申し上げかねます。  前の総理のときにも毎年一%づつという方針をきめた。そのときには現総理は通産大臣をしておられました。しかしながら、総理大臣になられてからも、私たち自治行政を担当いたします立場になりますと、なかなか、総理が悪税だとおっしゃても、事務当局のほうでは、まあ一応この税目は普遍性もあるし、取りやすい税金だとは申しませんけれども、とにかくなかなかその間の事情があるのでございまして、しかしながら、考え方としては、総理もいま申されましたが、いい税金だとは考えておらぬと申されましたが、やはり私どもも御期待に沿うように、早い機会にこういう税金は免税いたしたいと、かように考えております。
  279. 向井長年

    向井長年君 基礎控除方式でもとれませんか。いわゆる千円なら千円までは基礎控除するとか。
  280. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) いろいろその点もあわせて議論いたしましたけれども、今年は、ただいま申し上げましたとおり、ガスだけに限って百円だけ免税点を引き上げることにとどまったわけでございまして、いま向井先生が言われます議論も十分いたしました結果でございます。
  281. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもって向井君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  282. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 次に、岩間正男君。
  283. 岩間正男

    岩間正男君 今度、日米両国政府によって調印された小笠原諸島返還協定について、二、三の問題をただしたいと思います。  まず第一にお伺いしたいことは自衛隊の小笠原諸島派遣についてでありますが、この派遣計画の概要を説明してほしいと思います。派遣の時期はいつになるのか、それから人員はどれくらい派遣されるのか、最初に防衛庁長官にお伺いしたいと思います。
  284. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) お答えいたします。  小笠原諸島における防衛のことでございまするが、ただいま検討中でございます。ただ、しかしながら、返還協定は調印されまして、そうして国会にも付託されるわけであります。そこで、防衛庁といたしましては、返還計画を立てるために、従来一次、二次、三次にわたって現地で調査をするための調査隊を派遣いたしております。これは総理府において派遣いたしておる全体の調査隊と並行して派遣しているものでございます。
  285. 岩間正男

    岩間正男君 人員と時期はどうですか。
  286. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 究極のところを申し上げますが、究極のところでは、父島に約三十名ばかりの米兵がおります。それから、硫黄島にロラン局を含めて約八十名ばかりの米兵がおります。それから、南鳥島に約四、五十名の米兵がおります。そのうちのロラン局はコーストガードでございまして、これは向こうで地位協定に基づいて保有するということに今度新しく調印した協定はなっております。そこで、われわれのほうは原則として、米軍の返還いたす基地を承継いたして、基地としてこれを保有する。その主たるものは硫黄島の飛行場でございますとか、父島におきましては、こちらの海上自衛隊等が二見港にときどき寄港しますが、それに対する受け入れ施設として、海上自衛隊を若干派遣している。究極は、自衛隊が七月一日ごろ全面的に返還を受けた場合に米軍基地を承継いたしますが、二百名以上にはならないという一つのプリンシプルを持っているわけであります。
  287. 岩間正男

    岩間正男君 これは協定は国会にいつかかるのですか。それから、見通しとしてはいつごろこれを批准するか。それによってこれは当然きまってくると思うのですが、外務大臣、どうでしょうか。
  288. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) もう間もなく国会に提出されると思います。まあできればこういうことは早いほうがよろしいのですから、近いうちに国会に提出されると思います。審議がどれくらいかかるか、これは御協力次第でございます。御協力によって短期間のうちに国会の承認を得られれば、小笠原の返還というものは、これはその審議の状態にもよりましょうけれども、六月中には完全に返ってくる、こういうことに考えております。
  289. 岩間正男

    岩間正男君 これは協定によれば当然批准後一カ月ということになっておりますから、六月に返すということになれば、五月中に少なくともこれは国会を通過して批准する、そういうことになりますと、当然派遣計画というのは持っていなければなりませんね。これがいまのようなばく然としたものですが、それでいいんですか、どうですか。
  290. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 計画は終極的には内閣で決定いたしますけれども、いまのところ、先ほど申したようなことでございまして、もう一つ付け加えますと、南鳥島に千三百メートルの飛行場がございます。この飛行場の管理方も米軍から頼まれております。そして米軍と日本の自衛隊とで共用するということは、小笠原島における硫黄島の飛行場と同じでございまして、硫黄島の飛行場は一万フィートという羽田に匹敵する大飛行場でございます。これを管理すると、そういうようなことでございまして、平時にはつまり管理者としての自衛隊がおるだけというおそらく防衛計画になる、こう考えておる次第でございます。
  291. 岩間正男

    岩間正男君 そうしますと、批准と並行してもうどんどんこういう準備は進められている、こう考えておっていいわけですね。ところで、この小笠原に派遣される自衛隊の任務というものはどういうことですか。
  292. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 小笠原島諸島の領土、領海、領空の防衛ということでございます。
  293. 岩間正男

    岩間正男君 当然これはロランC基地が残されるのですが、アメリカの基地防衛にも任ずるわけですね。これは外務大臣、両方でいいんですか、どうですか、外務大臣
  294. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 硫黄島と南鳥島のロラン局は、これはアメリカに、安保条約の地位協定によって、施設として提供されるわけでございます。それ以外は全部。
  295. 岩間正男

    岩間正男君 しかし、基地防衛の任務があるでしょう。日本の自衛隊に、どうです、当然。当然日本のそういう任務が安保条約によって発生するのじゃないですか。
  296. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 当然に安保条約の適用を受けるわけでありますから、基地防衛に対する責任は伴ってくると思います。
  297. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、自衛隊は単に領海、領空の自衛だけの問題ではなくて、米軍の基地防衛の任務も持っておるということを確認しておきたいと思います。  その次にロラン基地についてお聞きしますが、ロラン基地を残した、これを今度の協定の第三条一項で残したわけですね。そして安保条約を、さらに地位協定を適用する、こういうことなんですが、何のためにこういう必要があったのか。
  298. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) ロラン基地だけは地位協定に基づいて残してくれということで返還がされるわけでございまして、でございますから、日米安保条約で共同防衛ということにはこれはなるわけでございます。ただしロラン基地というのは俗称は電波灯台と言っております。正確に申すと長距距離無線航法装置、しょっちゅう無線を出しておりまして、その無線を出しておりますというと、飛行機あるいは海上の船が、日本の国内におきましては十勝にもございます、それから沖縄にございます、それから南鳥島と硫黄島にあるわけでございまして、その波長等の相違によってビーコンみたいな作用をしまするから、自分の位置がわかるという電波灯台でございます。
  299. 岩間正男

    岩間正男君 総理にお伺いしますが、日米共同声明の中で、安全保障のために措置をとるということで、具体的にはロラン基地の話があったのですか、当時、十一月ころ。
  300. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私と大統領の間では、ロラン局とかそういうことについての話し合いはございません。
  301. 岩間正男

    岩間正男君 これはお伺いしますが、戦略上どういうことになります、このロラン基地の任務は。いまのお話のような、単に電波を出している、それは航行に役立つと、そういうことだけじゃないのだ。戦略的にどうですか。
  302. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) これは近代の灯台といたしましては、やっぱり光の見えるといった灯台はごく原始的なものでございまして、電波を出しておる。そこで飛行機なりあるいは船舶——単に軍艦に限りません、船舶が自分の位置がわかるわけでございまして、電波灯台としては非常に有効なる作用をなしておるものである。別段戦略的に特別に寄与しておるというわけでございません。どの船でも、漁船にいたしましてもあるいはどこの飛行機にいたしましても、電波のことは公開いたしておりまするし、またロラン局が一方的に電波を送り出すだけでございます。灯台が光線を出すだけでございまして、受けるという施設はないわけでございます。そういうものでございまするから、近代的な電波灯台というものは文明の一つの進歩を象徴するものであると、こう考えております。
  303. 岩間正男

    岩間正男君 ロランのA局とC局は違うはずですよ。それからいまのような答弁では、あなた防衛庁長官としてはとてもだめです。そうでしょう。だからロランCについて、もう少し戦略的な立場から言ってください。
  304. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) ロランCは到達距離が長いわけでございまして二千八百キロメートルの電波が行くわけでございます。すなわち二千八百キロ以内のものであるならば、たとえば十勝から来る電波とそれから南鳥島から来る電波と硫黄島から来る電波をこうやりますというと、そこで角度がわかって自分の位置がわかるという、一つのやっぱり私は、戦略にもそれはいい影響はあると思いますけれども、一般の航海にも航空にも影響がある、いい影響をもたらす文明的の施設だと思います。
  305. 岩間正男

    岩間正男君 ロランAとロランCは区別しなければならぬと思うのですね。いまお話のように、これは沖繩と十勝とそれから小笠原の硫黄島、南鳥島、こういうところにあるわけですから、これがもう西太平洋におけるB52、それからポラリス潜水艦あるいはICBM、こういうものの長距離航行誘導装置であるということは、これはもうはっきりしているじゃないですか。こういう点から考えれば私は非常にこれは重大だと思う。  総理はよく核抑止力ということを言っています。この核抑止力の、しかもアジアにおける最も根幹をなすものはB52、それからポラリス潜水艦、そうでしょう。そうすると、太平洋核戦略態勢の中で最も重大なこれらのものを誘導する装置というものは、非常に大きな意味を持ってくる、戦略的な意味を持ってくるわけでしょう。そうすれば、ここで今度協定で小笠原は返された、日本の領土になった。この領土がアメリカの核抑止力の一環である戦略態勢の中にはっきり巻き込まれるという新しいそういう性格が起こるということは、これは迷惑ですね。これについてはあなたはどうだったのです。これは総理にお聞きします。昨年の十一月に行って、こんな問題を具体的にやらないというのはおかしいじゃないですか。
  306. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 佐藤・ジョンソン声明には、小笠原島における責任を徐々に多くのものを日本が負うことになるということが書いてございます。それだけのことでございます。そこでこまかい点は外務大臣がジョンソン大使と条約を締結いたしたその過程における審査をいたしたわけでございまして、ロラン局はお説のとおりAとCがございます。しかしながら、これは国際電気通信条約の範囲内のものにおいて保護されておるのでございまして、軍事用、一般用を問わず、どこの国の航空機も、どこの国の船舶もその恩恵に浴することができるしかけでございまして、ICBMというようなものは絶対に関係がないのでございます。
  307. 岩間正男

    岩間正男君 あなたそういうことを言っておるけれども、特にポラリスの場合は重大でしょう。長時間潜水して、水中から核ミサイルを発射することを使命とするのがポラリス潜水艦ですが、ロランCというのがなければ全くこれは役に立たないわけです。この二つの組み合わせによってはっきりこれはアメリカのいわゆるとらの子戦略とまでいわれておる。このロランCはまさにとらの子戦略の目です。この目がないときどうしてこれを成功さすことができるか。これはそういう任務を持っておることは明白です。そういうものが、軍事的な要因が大きく今度の小笠原返還の中に残されておる。そうしてそういうものの防衛をも兼ねて、自衛隊の増強はすぐに六月を待って行なわれようとしている。  私は、そういうような問題と関連してもう一つお聞きしたいのですが、次に、小笠原の住民の帰島についてお伺いしますが、第一に、私は戦前の様子を明らかにしたいと思うのです。そこで、第一に、小笠原諸島の人口はどれぐらいあったか、お聞きしたい、戦前の人口。
  308. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 戦前におきます小笠原の人口は約八千ほどでございまするが、この職業別、あるいは詳細なことにつきまして担当者から申し上げます。
  309. 加藤泰守

    政府委員(加藤泰守君) お答えいたします。  大体農業漁業関係が九〇%くらいございます。その他は商業でございます。
  310. 岩間正男

    岩間正男君 それで、この各島のなにが出ていますか。これはどうなんですか。ちゃんとこれは先に通知しておったのだから、調べたものをもっと正確にやりなさいよ。表ぐらい出したほうがいいよ。
  311. 加藤泰守

    政府委員(加藤泰守君) お答えいたします。  父島の人口が四千三百四十八名、それから母島が二千百九名、硫黄島が千百六十四名、北硫黄島が約九十名でございます。合計七千七百十一名でございます。
  312. 岩間正男

    岩間正男君 それじゃ農作物はどういうものがあったか。
  313. 加藤泰守

    政府委員(加藤泰守君) 農作物は、トマト、キュウリ、カボチャというようなものが主でございます。
  314. 岩間正男

    岩間正男君 これもあなた資料ないのかね。あまりあっさりした答弁でなく、もう少し資料を用意してやってもらいたい。トマト、キュウリ、カボチャはだれでも知っているのだ。資料を持ってきて答弁しなさい。ちゃんと事前に通報しているのだ、子供じゃあるまいし。
  315. 加藤泰守

    政府委員(加藤泰守君) お答えいたします。  父島におきましてはトマトが一番多くて、その次がカボチャ、セロリ、キュウリ、それから、それ以外の果実でございます。母島におきましてはカボチャが非常に多くて、その次にトマト、キュウリ、トーガン、サトイモ。硫黄島におきましては、ほか果実等でございます。
  316. 岩間正男

    岩間正男君 バナナとかオレンジ、ネーブル、こういうものはなかったですか。蔬菜物についてはどうですか。
  317. 加藤泰守

    政府委員(加藤泰守君) 父島におきましてはバナナ、パパイヤ、これは本数にしましてバナナが二万三千本、パパイヤは二万本程度ございます。
  318. 岩間正男

    岩間正男君 農家の数と耕地の面積。
  319. 加藤泰守

    政府委員(加藤泰守君) お答えいたします。  農家の戸数は、総数で専業が百八十三戸、これは十四年十二月現在でございます。兼業が二百十五戸、合計三百九十八戸でございます。  作付面積は、たんぼが二百二十七アール、それから畑が八万七千二百九十七アールでございます。
  320. 岩間正男

    岩間正男君 次に、林業と、それから山林の面積、そのあとに漁業を聞きますから調べておいてください。その次は教育、それだけちゃんと先に予告しておきます。あまり時間をかけちゃ悪いから。
  321. 加藤泰守

    政府委員(加藤泰守君) 林野面積は、合計いたしまして八十一万九千四百十八アールでございます。そのうち、国有地が約九九%で、ほとんど国有地でございます。あと公有が少しと、私有は〇・一%程度でございます。
  322. 岩間正男

    岩間正男君 それじゃ漁業。
  323. 加藤泰守

    政府委員(加藤泰守君) 漁業につきましては、カツオ、マグロ、カジキ、ブリ、サメ、それからサワラ、ムロアジ、トビウオ等が主でございまして、それから、その他の中で、タコ、エビ、アオウミガメ……。
  324. 岩間正男

    岩間正男君 それはもういいです。それから漁民の数は。
  325. 加藤泰守

    政府委員(加藤泰守君) 水産業者といたしましては、本業が百四十四、副業が百五十二、これは男性でございますが、女性で漁業をやっておりますのは十二名でございます。——ちょっと間違いました。漁労に従事していた者が、そのうち本業が三十四名で、業主が六十一名、副業が二十九名で、業主が二十三名でございます。それ以外の製造業に従事しておりましたのが、本業が四十三名で、業主が六名、副業が九十八名で、業主が二名でございます。その結果、本業は百四十四名が男でございまして、副業としては百五十二名、男でございます。女性が十二名、これは製造業に従事しております。
  326. 岩間正男

    岩間正男君 次に、教育。教育の施設状況。
  327. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 岩間君、教育の何ですか。もっとはっきり質問しなさい。
  328. 岩間正男

    岩間正男君 教育の施設はどうだったか。先生の数、校舎の数、児童の数。
  329. 加藤泰守

    政府委員(加藤泰守君) お答えいたします。  昭和十五年三月一日現在でございますが、小学校といたしましては大村尋常高等小学校でございます。それから、弟島にその分教場がございます。それから、扇沢尋常高等小学校があります。以上、小学校は二校と分教場が一校、それ以外に、青年学校といたしまして大村青年学校、扇沢青年学校、以上でございます。
  330. 岩間正男

    岩間正男君 非常に時間をかけて聞いたのは、わが旧領土時代にどういうことであったかという、もとの姿を認識することなしに現状について論ずることはできない。これは非常に不十分です。事前に通告しておったにかかわらず、いまの答弁というものは、これは一体調査していたものかどうかわからない。したがって、これは資料として、これは参議院の委員会が終わってからでもかまわないから、出してもらいたい。そういうような実態をここではっきり踏まえておいて、それから現状これがどうなっておるかというのは非常に重要な課題でしょう。現状どうなっていますか。これは総理、御存じですか。現状概略つかんでおられるのですか。
  331. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えをいたします。  二十何年間かの間、非常な変化を遂げておりますので、一月の十八日に総理府が中心になりまして、各省の担当者によりまする現地調査を行ないました。詳細な調査の御報告はお手元のほうに差し出してあると思います。
  332. 岩間正男

    岩間正男君 その中で、耕地のことを言ってください。耕地とか住宅、住民の住居、村落。
  333. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 現在百七十四名が向こうに住んでおりますが、その中の四十四世帯——なお、詳細な住宅のことについてなり耕地面積は、現地に参りました担当官から御報告させます。
  334. 加藤泰守

    政府委員(加藤泰守君) お答えいたします。  住宅の件につきましては、ただいま長官から御発言があったとおりでございます。  耕地につきましては、何しろ二十年間ほとんど耕作が行なわれておりませんので、現在耕地として認められますのは二反歩程度であったというのが調査報告でございます。
  335. 岩間正男

    岩間正男君 ほとんどこれは、米軍の基地以外を除いては、全部ジャングルの中に埋没じゃないですか。住むといったって場所がないじゃないですか。村落といったって何もないじゃないですか。耕地もないじゃないですか。どうですか、総理、答えてください。報告を受けているでしょう、調査団が行ったんだ。
  336. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 御指摘のごとくに、父島の現在の米軍に戦後渡航いたしまして、その米軍のほうに従事いたしておりまする約二百名ほどの世帯以外のところのものはすべてジャングル化いたしておりまして、母島にいたしましても父島にいたしましても、その他全く不毛のジャングルと化しておりまして、その点は御指摘のとおりであります。
  337. 岩間正男

    岩間正男君 佐藤総理にお伺いします。そうすると、これで復帰の問題はどうなるのです。小笠原島への復帰ということでありますが、これはどういうふうに考えているか。何年かかるのです、これをもとに戻すのに。そういうのができないで復帰ができますか。あなた復帰を非常にうたっていたが、それはどうです。
  338. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 復帰の問題につきましては、本土のほうにおりまする方々に対しまして、ただいま帰島するかどうかの調査をとっております。その帰島によります復帰調査というものが前提に相なりまして、さらに、また、これと相並行いたしまして、やはり港湾なり道路なり、いろいろな帰島に先行いたしました公共投資をしなくてはならない、かように考えておりますが、まず、現在おりまする現住民、それから、復帰を希望いたしまする旧島民、この関係の調整やら、さらに、また、ただいま御指摘のように、全くジャングルと化しておりまする現況から申しましても、相当慎重な計画のもとに今後処理してまいりたい、かように考えております。
  339. 岩間正男

    岩間正男君 自治大臣にお伺いしますが、この復興計画と、それから復帰計画というのは、これはイコールだと思うのですね。復興なしには、帰る家もなくてジャングルの中に住めないわけです。そうすると、この計画はできておりますか。
  340. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) とりあえずの暫定措置は、総理府で法律もつくっていただくことになっておりますが、しかしながら、帰属は当然東京都になるわけでございまするので、総理府にお願いすると申しまするよりは、やはり最初から自治省がいろいろお世話をしなければならぬ、かように考えております。いまの段階では、やはり専門家の技術的な調査によりまして、復興計画と申しますか、開発計画を進めていく段階でございまするので、やはりこの前もお答えいたしましたとおり、この秋をめどといたしましてきちっとした計画を立てたい。それには戦前の集落を復元させるという考え方はございませんので、やはり島にふさわしい新しい根本的な開発計画を立てることになろうと思いますが、なかなか秋までと申しましてもむずかしいですけれども昭和四十四年度の予算要求の関係もありまするので、急いで計画を立てなければならぬ、かように考えております。
  341. 岩間正男

    岩間正男君 まだできていないのですか。
  342. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) まだできておりません。
  343. 岩間正男

    岩間正男君 東京都にと言っているが、これは国の責任が非常に大きいわけでしょう、国と国との問題ですから。  それから、復興計画について具体的にお聞きしますが、住宅、医療、教育、水道、電気、道路、こういうもの、それから農業、漁業についての対策、さらに、現在ある小笠原諸島への渡航制限はいつ解除されるか、これをまとめてお聞きしたいと思います。
  344. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) まず、外交関係におきまする協定が成立いたしましたらば、時を移さずとりあえず暫定措置法といったようなものを御審議を願うようにいたしたいと準備いたしております。この暫定措置法におきましては、まず、現在おりまする住民の方々の生活の確保、並びにそれに伴いまする通信施設やら、あるいはまた食糧の状況、あるいは学校教育、その他いろいろなとりあえず現住しておられまする方々の生活を守ってあげなければならない、これがまず第一の措置事項でございます。それと相伴いまして、先ほど申しました一定の計画に基づきまする先行投資をいたしまして、そうして復帰の希望者に対しましての一応の村づくりをいたさなくちゃならぬ。その間におきまする業務の中には、国が当然国の業務として行ないまする業務と、それから自治体が行ないまする業務と、かようなものがございますが、とりあえずはそれを一括いたしました支庁のような形におきまする——支というのは市ではございませんで、いわゆる何々支庁という出先の官庁のようなものをつくりまして、そこにおきまして暫定措置を施行いたしてまいります。それからまあ村づくりから始めまして、一応の暫定措置をいたしました後におきまして今度は復興計画に移ります。それがいわゆる復興法として暫定措置法とは別個に御審議をいただくように相なるだろうと、かように考えております。
  345. 岩間正男

    岩間正男君 渡航制限の解除は。
  346. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) これは、日本人が日本のいかなる島、いかなる所に参りましょうとも、それは何ら制限がございません。
  347. 岩間正男

    岩間正男君 全部撤廃になるのですか。
  348. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 全部撤廃です。
  349. 岩間正男

    岩間正男君 次にお聞きしますが、請求権を第五条で放棄しているわけですね。これは、米軍が、サ条約発効後とにかく十数年にわたってほとんど軍事的にここを使うだけで何にもしなかったということです。そのために、島は荒廃してしまった、さっきから述べているように。これについての請求権放棄というのは非常に理屈に合わないと思いますが、これは、総理、どうお考えになりますか。
  350. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) お答えいたします。  第五条で請求権を放棄しておるわけでございますが、これは五条の第一項のただし書きに書いてございますとおり、この期間に適用されたアメリカ合衆国の法律によって請求権が発生されるようなものはただし書きで除いております。したがって、アメリカの施政権下にありましたときに有効に請求権が発生し得るようなものはそのまま残ると御了解願いたいと思います。
  351. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 岩間君、時間がきました。
  352. 岩間正男

    岩間正男君 そういうことをあんた言っているけれども、そんなものは微々たるもので、ほとんど適用外の問題ですよ。ただうたっているだけだ。基本的なそういうものを放棄するということは、これは絶対許すことができないと思う。  最後に、時間の関係から不十分になりましたが、結局、これは、住民の復興はほとんど何ら顧みられていない。そうして、このめども立っていない。計画は青写真もまあでたかできないかわからない。そして、これが何年後にはっきりちゃんと復興するかというそういう具体策というのは何もない。そして、きまっているのは、自衛隊を派遣するだけ、こういうことだけでしょう。これが小笠原の返還の実態じゃないですか。日米共同声明の中で、日米の安全を、そうして安全保障条約によっていままでの体制を維持するということをうたった、これが小笠原の実態です。これについて、わが党は、二十三年間にわたってアメリカの軍事占領のもとに置かれた……。
  353. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 岩間君、質疑でなかったらやめてください。岩間君、質疑ですよ。
  354. 岩間正男

    岩間正男君 小笠原諸島を日本に返還することは、これは当然だ。そんなことは当然なことだ。しかし、小笠原の人々と日本国民の要求は、あくまで島を平和で明るい住みよいものにして、しかも、政府責任において生活と経営の完全保障をすること、これを求めているわけです。それをしかしほんとうに果たすためには、無条件全面返還以外に私は方法はないと思うのですね。私たちは、そういう意味では、このような軍事的性格、しかも、新たなアメリカの核戦略体制の一環をになわされる、そういうようなはっきりあとを残した形の返還じゃなくて、ほんとうに平和的復興というものを心から要望しているわけです。この点について、佐藤総理のこれに対する見解を最後に明確にしてもらいたい。
  355. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 時間ですよ。時間がきました。時間がはるかに超過しました。
  356. 岩間正男

    岩間正男君 こういう態度でいつまでもいく気なんですか。どうなんですか。この点についてはっきりお聞きして、私の質問を終わります。
  357. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御意見は御意見として承りますが、大体……。
  358. 岩間正男

    岩間正男君 その辺で教える者があるが、そのとおりやっちゃだめですよ。
  359. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私が答えますから、聞いてください。  御承知のように、小笠原は、前戦争の結果、アメリカの施政権下にございました。これが昨年私とジョンソン大統領とワシントンでの会談によりまして日本に返ってくることになった。それで、外務大臣は、在京米大使——ジョンソン大使と協議を遂げまして、ようやくただいまこれが実現しようとしておるわけであります。皆さん方の国会の御審議を経て一定の期間たてば日本に復帰するわけでありますから、私は長い間アメリカの施政権下にあったこの地域が日本に返ってくることを心から実は喜んでおるものでございます。これにつきまして、ただいま、平和で住みいい島づくりをしようと。これについては私も同感でございます。しかし、同時に、私どもが日米安全保障条約を締結しているこの前提を、その基礎を、無視されるような言い方はいかがかと思います。それも共産党としての立場上御主張でございましょうが、私どもはその点では日米安全保障条約を前提としておりますから、安全確保の点で日米提携して協議を遂げる、このことは遺憾ながら共産党の言われるとおりにはならないのであります。共産党の方も国内にはおるのでありますから、そういう意味で、御意見は御意見として聞くというだけで、ただいまのような前提の違っているこれを指摘いたしまして、小笠原が復帰するそのことをひとつそれだけは祝っていただきたい。また、御希望のようにりっぱなものをここにつくることを心から願っておりますから、御協力のほどもお願いしておきます。
  360. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもちまして岩間君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  361. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 次に、山高しげり君。
  362. 山高しげり

    ○山高しげり君 私は、総理大臣にお伺いをしたいと思います。  最近、家庭生活問題審議会総理の諮問に対して答申を行なわれました。「現在のわが国における社会生活において家庭のはたすべき役割ならびにこれに伴う家庭生活上の諸問題に関し、行政施策のとるべき基本的方向を問う。」と、これが総理の諮問でございます。家庭の役割り、行政の基本的方向、それぞれ示されておるようでございますが、そこで、これを参考にしてこれから始まるべき家庭問題の行政措置、行政施策というものについて、この際、総理の御抱負と申しましょうか、所信というものを承りたいと思います。
  363. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 山高君がただいま御指摘になりましたように、家庭生活問題審議会、その答申が最近になりましてようやく出てまいったのでございます。ただいまのようなお尋ねを受けないと、一部の方は家庭生活問題審議会からどういう答申があったか、それを思い起こせないのですが、実は、この審議会は大事な問題と取り組んだのでありますが、答申をいたしますまで二年の歳月を費やしております。そうして、部会を開き、その他の審議会等、おそらく委員方々は八十数回に及ぶたいへんな会議を持たれたように思います。したがいまして、その答申を読んでみますと、ただ一べつしただけではなかなかわかりかねるような問題ですが、それほど広範であり、かつ、大事な問題と取り組んでおります。実は、私も、これを一読いたしまして、たいへん時代の変化と申しますか変遷の著しいのに驚いておるような状態でありまして、私の歩んできたその道からただいまの答申を読んでみると、世の中はこんなにも変わったかと思うような節もございます。したがって、それらの問題についてこれから政府が取り組んで、答申ではそれぞれ一応の課題を提供しておるようでございますから、そういう問題をさらに掘り下げて、そうして結論を出していくということにいたしたいと思います。二年間もかけて審議された結論でありますし、私は、高く評価するが、同時に、本年度の予算には実はこういうものの中身を採用することができなかったこと、この点はまことに残念に思いますが、しかし、審議の経過等にかんがみまして、答申をさらに掘り下げて、順次取り組み得るものから取り組んでいくと、こういうようにいたしたいものだと、かように思っております。
  364. 山高しげり

    ○山高しげり君 あの答申をごらんにならなければ日本の家庭の実情がおわかりにならなかったというふうに承ってはたいへん失礼でございますけれども、確かに広範にわたって二年もおかかりになった。昨年、この予算委員会の席上で、一年お延ばしになったことについて私は不満の意を表したわけでございまして、その理由は、結論は急がなければならない現状にある。しかし、一年延びました。二年かけて丁寧におやりになった、高く評価をする内容がまとまったと、そういう見方もございますけれども、一年延びた間に、実質的に、農村において、また都市において、家庭は幾つも崩壊したのでございます。そのことから考えまして、答申が出ました以上、予算が一文もないというお話でございますけれども、家庭に関係をした各省のお仕事は、ばらばらではございますけれども、ずいぶん幅広く行なわれているわけでございまして、これらをいまいぐあいにつなぎ合わせれば、各省が持っていらっしゃる予算を生かすこともできないではないように思うわけでございます。急いでいただかなければ、こうやっている間にも音を立てて家庭が崩壊しつつある日本の非常に激しい現段階におきまして、ひとつ積極的に仕事と取り組んでいただきたいと思うわけでございます。それで、「家庭生活行政整備の方向」というような部分に述べてあるようでございますが、いままでばらばらであって、家庭の問題を個人を対象にして日本の行政では仕事をしていたことが多い、これからは家庭という共同生活を対象にして進めなければならないというようなことはまことにそう思いますけれども、中央に家庭という名の行政機構は必ずしも好ましいものではないと、こんなふうに触れてあるのでございますが、この点を総理はどうお考えでございましょうか。
  365. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま、山高君が、こうして話をしているうちにも家庭が崩壊すると、こういうことを言われました。しかし、新しい家庭ができつつあると、こう言ったほうがいいのじゃないだろうかと思います。私どもは、この答申を読んでみまして、大体、過去の家庭、いわゆる社会形成の一つの単位として親子、孫というか、そういう関係のものが変わって、そうして、いまの個人本位、あるいは夫婦、さらにその子供、そういう関係、そういうような新しい家庭がつくられつつある。それはいいとか悪いとかいうわけじゃありません。そうして、いわゆる年とった両親というか、親というか、そういうものが取り残されるというか、そういうようなあせりをみんな持っておる。これが、ただ単に都合ばかりじゃない、農村においても同様なことが起きておる。最近の農業の構造改善なども、そういう点が指摘されております。あるいは三ちゃんから二ちゃんあるいは一ちゃん農業になっておるというようなことも言われておりますが、こういうような新しい家庭づくりにただいまは変わりつつある。私は、だから、冒頭に、率直に、われわれの年齢ではなかなか家庭がわかりにくいというか、新しい時代はなるほど答申を読んでみるとこういうように変わるかと、こういうことを率直に実は御披露したのでございます。しかし、これでいい面もあると思いますが、同時に、私ども、ある程度、まあ保守だからというわけじゃありませんが、あまりにも進み過ぎるというか、実は驚くような面もあるのであります。そういう意味で、崩壊ということばも、あるいは適当に当たる適評のことばかとも思います。しかし、とにかく新しい家庭がつくられつつある。それに対しての政府政治そのものも、やっぱりそれに対応していくことが必要だと、かように実は痛感するのであります。一つの例で申せば、老人ホームその他のつくり方にいたしましても、やはり新しい家庭からこういう問題が出てくる。そこにやっぱり政治としても考えざるを得ないのじゃないか、こういうことを実は先ほど申したつもりでございます。それらの点も、おそらく山高君も同様の感じを持たれるのか、あるいはさらにもっと私よりも違った考え方を持たれるのか、その辺の感じを率直にひとつ話し合ってみたいと私は考えます。
  366. 山高しげり

    ○山高しげり君 確かに、こう言っておる問にも、結婚式が行なわれて、新しい家庭もどんどんふえておりますけれども、あの答申の中にも触れておられますように、非常に核家族がふえていると。そこに大きな問題をはらみながら新しい家庭が生まれてきているという現状。古い家庭の問題とあわせて非常に深刻でございます。総理がおっしゃった老いたる親、老人の問題などもあの答申の中にもございますけれども、子供と同居がしたいと。その場合にも、全部子供にたよろうとは思わないと。自分も自立しながら同居がしたいと。そうなってまいりますると、その老人の経済問題には社会保障の裏づけがなければならないとか、いろいろ厚みのある問題が出てくるのでありますが、私が総理にお伺いをしたのは、中央に家庭という名の行政機構をつくることは必ずしも好ましくないという答申が行なわれているという点について、これからそのばらばらの家庭行政をまとめていく上に、どういう御案が、夢でもけっこうですが、何か描いていらっしゃるものがございましょうか。
  367. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまこの答申をもらったばかりでございますし、また、幾つも示唆に富んだ提言もありますから、そういうものをさらに掘り下げていきたいということを一口に申すわけであります。ことば自身でも核家族というようなことばは、いままで私どもの耳には全然新しいことばで、見なれない字でございますので、そういうように家庭というものが変わってきている、それに対する対策がなければならない。まあその封建制度をこわすという、そういうことはいままでもしばしばいわれてきましたが、比較的この点では間違いはないと思いますが、それにいたしましても新しい積極性を持ったこの時代に対応するというのには、もう少し時間をかしていただいて、ことにまたいま御指摘になりますように、一省だけの問題でもないし、総理府だけの問題でもない。総合的な施策がないと十分の効果をあげ得ないんじゃないか。また、その場合においては官製だけでも困る。やっぱり民間、国民総体の理解がないと正しい方向にはなかなかいかないんじゃないか、かように思います。答申をするまでに二年もかかりましたが、今度は実施するのも二年もかかる、かようなことを考えないで、先ほど申しますように、できるだけその一つからでも、取り組みやすいものからでもけっこうだから、どんどん進めていくこと、これが必要なんじゃないだろうかと思います。ことに私自分の年配からもそういうことを考えるのか、老いた両親、老いた親、これの待遇というものは、これからいつも問題になるんじゃないか。社会保障だけが幾らうまくいきましても、老人の自殺者が非常に多い、こういうことも指摘される北欧等の国もございますから、したがって、ただいま言うような、ただ物質的待遇だけでは問題は解決しないんじゃないか。先ほどちょっとお触れになりましたが、子供の生活は乱さない、しかし子供の家庭に入ってやはり一緒に住みたいと、そういう親もある、年老いた親のあること、これは無視あるいは軽視できない問題だ、やっぱり情のつながりといいますか、血のつながりというか、そういう情的な問題をやっぱりこれからも政治の上で考えていく必要があるんじゃないかと、私は痛切に実は胸を打たれた一つでございます。
  368. 山高しげり

    ○山高しげり君 たいへん時間がございませんので、もう一つだけ総理にお伺いをいたします。  二月の本会議のときに私が佐世保の外人バーのホステス問題を触れましたらば、聞いたわけではないけれど答えると、たいへん御親切にお答えくださったんですが、私があれを引きましたのは、ホステスの人権問題ということで取り上げたんでしたけれど、総理は性病の問題というふうにお取り上げになって、政府は三悪追放協会をつくって大いにやっているという御説明でございました。ただいまの時点におきまして、総理は三悪の中のどれに一番重点を置いて仕事が進められているとお考えでございましょうか。
  369. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 三悪は、そのうちで一番どれということは言いにくいわけでございますが、私はわりに麻薬追放、こういうことには力が入っているんじゃないだろうか。売春禁止といいながら、この点ではなかなか各界の協力を得ることが困難だと、かようにも思い、性病の退治というようなことは売春との関連におきましてさらにさらに努力しなければならないものではないかと、かように思いますが、しかしまた、最近のような世相、ヒッピーその他等から見ると、麻薬そのものについても、どうもさらにもっと徹底しなきゃならないと、かように思いますから、三悪の問題はもっと声を大にし、各界の協力のもとにこれを根絶するように積極的な施策をすることが必要に思います。
  370. 山高しげり

    ○山高しげり君 次に、三人の大臣に一分ずつお聞きするより時間がございません。  総務長官にお願いいたします。総理府に売春対策審議会が置かれておりまして、たいへんにこれが現在消極的であるということを審議会の直接の関係者がおっしゃって、いまの政府にはやる気がないんだと、こうおっしゃっておりますが、これはいまの総理のおことばで、私はこれ以上長官には伺いません。ただ一つ伺いたいことは、総理府のやはり御所管で新生活運動協会の予算についてでございますけれども、ときどきトンネルとやらいう予算がくっついてまいります。私はこういう予算の組み方に疑いを持っておりますのですが、今後家庭というような肩書きのつく団体にトンネルの予算をおつけになられると困るという前提でちょっと御意見を伺いたいと思います。
  371. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいま先生の御質問のポイントがちょっと私はっきりいたしませんが、昨年度の予算の場合におきまして、家庭と名のつくものがちょうど二つございまして、それがまあいろいろトンネルのようなかっこうになりましたり、二つで半分半分に割り切ったりといったようなことを御指摘になっておるのではないかと存じますが、このいまの審議会は、本年をもちまして完了いたしましたが、あと何らかの家庭の問題を研究し、また審議するあれがほしいという御意向が非常に強く反映いたしておりましたけれども、その面におきましては本年は遺憾ながらいろいろな事務上の問題がございまして、家庭と名のつくものに明確な予算の配分ができなかったことは遺憾に存ずる次第でございます。
  372. 山高しげり

    ○山高しげり君 これからのことをひとつ。トンネルというような意味の予算はぜひおつけにならないでいただきたい。これは時間がございませんから、大蔵大臣にお立ちは願いませんけれど、要望いたしておきます。  次に厚生大臣にお願いをいたします。  佐世保の外人バーのホステスの血液検査の問題は、もう済んでしまった問題でございますけれども、どんなふうにお感じでございましたでしょうか。
  373. 園田直

    国務大臣(園田直君) この特殊検診カードの発行については、二十八年に都道府県に対してそのようなことはしないようにという指導をやっておりましたが、この事件がありましたので、さっそく本年一月現地に係官を派遣をしてこれの禁止をお願いをいたしました。これは第一には、検診カードを持って外人に接している従業員の方々の人権の無視であり、第二番目には、あたかも売春というものを勧誘か助成をして、半公認のごとき印象を与えて非常にこれは社会的にも本人の人権の上からもやってはならぬことだと考えております。
  374. 山高しげり

    ○山高しげり君 次に時間がございませんので、最後に労働大臣にお伺いをしたいと思いますが、ことしの労働省の予算の案の中には、中高年婦人の雇用の円滑化というようなところで新規の予算が二つも、額はたいへんに少ないのでございますが、ついておるように思います。この際、中高年婦人の雇用対策等につきまして御所管の大臣の御意見を承りたいと思います。
  375. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 中高年婦人の雇用の問題につきましていろいろ御協力もいただき、また有益な示唆も賜わっておりまして、まことにありがとうございます。御指摘のようにことしは調査費を計上いたしまして雇用の実態を十分に調査することにいたしております。最近におきましては婦人の職業戦線への進出が非常に著しい、労働力の給源といたしましてもたいへん大きな比重を占めてきております。そこで、本年は従来やってまいりました施策に加えまして、婦人の雇用についての啓発活動、啓蒙活動を全国的な規模で第一にやってまいりたいと思っております。  それから職業講習、職業訓練、これは従来より一そう充実をしていく方針にいたしております。就職に際しましての職業相談、それからあっせんの活動もさらに活発にやってまいりたいと思いまするし、家事の管理と申しますか、いわゆる家庭責任と職業活動を両立させる必要がございますから、働く婦人の家というのが現在各地にございますけれども、託児の施設等を備えたものもございます。この働く婦人の家並びに各種の福利施設、この充実にも特別に力を入れてまいりたい、これがあらましの方針でございます。
  376. 山高しげり

    ○山高しげり君 ついでながら伺いますけれども、家内労働法制定のお見通しはいかがでございましょうか。
  377. 小川平二

    国務大臣小川平二君) 家内労働が昔から行なわれておりますけれども、一般的に申しまして労働条件も立ちおくれておるわけでございます。そこで、これを改善いたしますことが家内労働者自身のためでもあり、雇用の構造を近代化するためにも必要でございます。しかるに今日、これに対処いたします専門的な行政の方式というのはございませんし、法律も最低賃金法に一部の規定があるだけでありますから、かねてから審議会に御検討をお願いいたしておるのでございます。何ぶん非常に複雑な実態でありますので、私どもが期待しておりましたよりは作業がおくれておることは事実でございます。三月の十九日に今後法律を制定いたします上においての問題点についての小委員会というのが設けられておったわけですが、この小委員会の報告が総会で発表されて、了承されております。そこで、これに基づきまして起草委員会をおつくりになって、審議会の設置の期限が来年の春まででございますが、期限到来以前に、できるだけ早く結論を出そうということで、非常に御熱心に精力的に研究をしていただいております。私どもといたしましては、進捗の状況から見まして、夏ろごまでには結論を出していただけるのじゃないかと、このように期待をしておるわけでございます。出ました場合にはこれを尊重して、立法化の作業等も急ぎたい、かように考えております。
  378. 山高しげり

    ○山高しげり君 まだ、法律が必ずできて、それでいいというものでもないかもしれませんので、できますまでの行政措置という中に、内職の問題はひとつお忘れなくしっかりやっていただきたいと思います。  時間がもうございませんけれど、ちょっと厚生大臣に一言だけ。厚生省の予算の中にも中高年婦人の生活実態調査というのが見えるようでございますので、この際、関連をもってお伺いをしておきたいと思います。どんな内容ですか。
  379. 園田直

    国務大臣(園田直君) ただいま総理大臣から家族、家庭というものについての御方針のお話がありましたが、全くそのとおりでございまして、家族が核化することは急速であって、必然性であります。したがいまして、今後はこの方面に対し、社会保障制度を大分いたしますと、家庭の中心である母と子、その母と子も正常な家庭の母と子と、それから夫をなくした母と子、これを中心にした家庭をどう持っていくか。それからもう一つは、核化からはずれる老人層及びハイミスクラスといわれておる中高年の婦人層の方々、こういう方々をどう持っていくかということは非常に大きな問題でございます。したがいまして、そのハイミスクラスといわれる配偶者のない中高年齢層の婦人に対する施策を計画的にやる必要がございますから、実態調査を行なっておるわけでございます。
  380. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 時間がまいりました。
  381. 山高しげり

    ○山高しげり君 これで終わりますけれども、いろいろ家庭に関連した施策が各省にそれぞれやはり御考慮いただいているかにも思いますけれども、青少年の問題でも、青少年対策部長というものに総理がおなりになったと、総理がおなりになれば問題が解決をするわけでもございませんから、格別私は総理に家庭対策部長にはおなりいただかないほうがいいと思いますけれども、お仕事はどうぞしっかりお願いをしたいと思います。失礼いたしました。
  382. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもちまして、山高君の質疑は終了いたしました。  これにて締めくくり総括質疑通告者の発言は全部終了いたしました。よって、予算三案の質疑は終局したものと認めます。     —————————————
  383. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それではこれより三案の討論に入ります。通告がございますので順次発言を許します。賛否を明らかにしてお述べを願います。加瀬完君。
  384. 加瀬完

    ○加瀬完君 私は、日本社会党を代表し、ただいま議題となりました予算三案に対し反対の意思を表明いたします。  政府の説明によりますと、四十三年度予算編成の柱は、目的としては財政硬直化の是正、方法としては総合予算主義で、すなわち恒常的補正要因でありました食管赤字、公務員給与改善費を当初予算で措置をすることが特徴であると説明をされるわけでございます。しかし不本意ながら、われわれは逆に、反対の最大理由にこの総合予算主義、財政硬直化是正をあげなければなりません。以下具体的に申し述べます。  まず第一の反対の理由は、米価と賃金の固定化であります。大蔵大臣は質問に答えまして、「補正を組まないよう実施する。補正を組まないのが政府原則」と御説明をなさいました。この原則をそのまま実施をいたしますれば、いままでのように米価については補正を組まないわけでありますので、農民の賃金的性格の濃い生産者米価は押えられ、一方、食管繰り入れの制限は消費者米価の引き上げを避けがたくさせ、このことは、やがて消費者物価対策を根底からくつがえす危険性をつくることにもなりかねないのであります。さらに公務員給与についても補正を組まないということでありますので、人事院勧告の制度は全く無力となり、制度改正を待たずに、財政措置によりまして法律、規則を抹殺をするという既成事実がつくり上げられるわけでございます。あえて政府がこれをおやりなさいますならば、四十三年度以降、所得政策へ移行する政府意思と受け取るほかございません。財政政策のために国民の収入にストップをかけるいわゆる所得政策を認めるわけにはいかないのであります。  反対の第二は、硬直化の根本にメスを入れていない点であります。政府は、財政制度審議会意見に基づいて、予算編成の段階では種々の引き締め予算の喧伝をいたしておりました。しかし、予算の上にあらわれたものには、具体的効果を認めがたいのであります。それどころか、むしろ四十三年度予算は、硬直化の増加要因をすら新しく発生するのではないかとおそれるものであります。たとえば国鉄への利子補給、恩給費の引き上げ、治山治水、港湾整備の長期計画等は、将来にわたりまして予算をふくらますことになります。特に指摘をいたしたいのは、防衛関係予算でございます。防衛庁予算のうち、航空機、艦船等巨額を要する部分は、国庫債務負担行為、継続費等の方式によりまして、千七百五十九億円が計上をされております。さらに防衛費と旧軍人遺族等恩給費を含めた額は、四十三年度の予算総額の伸び率一一・八%に比べ、三九%の伸び率を示すわけであります。そしてこの方向はさらに続くわけでありますので、ここに最大の硬直化の原因があるわけでありまして、これに手を触れない硬直化の是正というものはあり得ないと思うのでございます。  反対の第三点は、実質減税ゼロの問題であります。四十三年度予算で政府は、千五十億円の所得税減税を酒、たばこの増徴によって埋める、差し引きゼロという方式をとりました。しかし、増減税は低所得者にとりましては、減税の恩恵は全然なく、酒、たばこの増税分だけが大きく負担をさせられるわけでございます。すなわち、エンゲル係数の高い階層の人たちの酒、たばこの支出とエンゲル係数の低い階層の同じ支出の金額は、その所得格差ほどの開きはございません。したがって、これら嗜好品消費物資の増税は、低所得層に対しましては、大きく生活費に響くわけでございます。  反対の第四点は、防衛予算の内容でございますが、これは省きます。  第五点は、海外援助計画でございます。この委員会でも指摘をされましたとおり、主としてインドネシアを中心とする経済援助計画は、貿易の振興あるいは市場の開拓ということでありますが、日本経済援助が、援助する国の経済基盤の強化に何ら効果をあげないようでありますれば、全く無意味でございます。相手方が日本の輸出を受けて立つ、そういう東南アジアの経済の基盤整備を実現をしなければ、この予算は全く無意味となるわけでございます。しかし、確実に日本の貿易の顧客となるその見通しというものが立っておるか、あるいはそういう形に育成をする具体的な方法が立っておるか、こういう点に対しまして、私どもは十分な計画とこれを認めるわけにはいかないのでございます。  反対の第六は、地方財政の問題でございます。端的に申し上げますと、地方行政で住民の利益は守られておるかの問題でございます。  具体例をあげます。政府の主要施策の一つに、交通安全対策がございます。現在の交通事故の多発率は地方道に多く、四十一年をもってしても、死者は一一・四%、傷者は二一・六%増となっております。しかし市町村の道路財源は、国道一キロ当たり一千万円に対し、新財源を加えましても五万円に満ちません。地方に道路財源はないのであります。さらに交通安全対策費にしても、国道の六十六万円一キロ当たりに対して、市町村道は一万円未満でございます。これで交通の安全が保たれ得るとは考えられないのでございます。  反対の第七は、予算全体を通じて国民への保護政策が非常に希薄であるという点であります。二つの例をあげたいと思います。一つは、物価減税でございます。経済企画庁長官の一言をもってしても、四・八%の見込み額の中には、米価の値上がりは含まれておりません。したがいまして、四・八%以上に物価の値上がりを、われわれは認めないわけにはいかないのでございます。すると、大蔵大臣の御説明によっても、物価一%で国税が七十億円増徴されるということになり、五%かりに上がりまするならば、三百五十億の増税がされるわけでございます。したがって、当然政府は物価調整減税をはからなければならないわけでありますが、この物価の上昇に伴う減税は、この予算の中には組み込まれておりません。  もう一つ、中小企業の対策でありますが、財政立て直し政策を、中小企業の金融引き締めにかぶせた形になりまして、倒産件数は四十二年の十月——十二月で月平均八百二十七件、前年に比べまして三三・六%の増であります。下請の保護、零細企業への金融、手形期日の短縮、不渡り手形の救済その他従業員の給与や福祉関係に対しましても、具体的な予算は何ら盛られておらないのでございます。  さらに財政硬直化を社会保障にしわ寄せをしたという一部の評がありますごとく、昨日の新聞にも「身障児施設、一技術者の辞職でピンチ」という内容が報ぜられました。下志津病院は、関東、甲信越で萎縮症児を収容するただ一つの施設でありますが、この身障児の脳波、筋電図をあずかっておりました技術者がやめて、身障児の治療がストップをしたという内容でございます。  国民政府のこのような庶民への政治を待ちわびているのであります。どうぞこの国民の期待にかなうような予算を組まれることを希望いたしまして、遺憾ながら本予算には反対である意思を重ねて表明いたしまして、私の討論を終わります。(拍手)
  385. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 次に、近藤英一郎君。
  386. 近藤英一郎

    近藤英一郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和四十三年度一般会計予算外二件に対し、賛成の討論を行なうものであります。  最近における内外の経済情勢を展望してみますと、わが国においては、昭和四十一年度に本格的なフィスカルポリシーを導入しました後は、は順調な上昇を続けたのでありますが、昨年の初めごろより需要の堅調を反映して予想外に拡大し、国際収支も海外景気の低迷により、なかなかに赤字基調を脱し得ませんでした。このため、昨年の九月及び本年一月の財政金融面による景気調整措置が講ぜられ、その効果も徐々にあらわれてはおりますが、今後の動向について安易な見方は決して許されないのであります。  他方、わが国を取り巻く海外の経済環境は、昨年十一月のポンドの切り下げに端を発し、アメリカ公定歩合の引き上げ、ドルの防衛措置欧州におけるゴールドラッシュ、イギリスの金市場の閉鎖、金プールの停止等々、一九六八年の国際経済はきわめて流動的で、その環境はまことにきびしいものがあります。  四十三年度予算は、このような情勢下において、財政の体質改善に従来見られなかった新たな構想を盛り込んだ異色の予算として、四十一年度の公債発行以来の第二の財政の転換期に対処する政府の態度を高く評価するものであります。  以下その特色について述べてみたいと存じます。  第一は、景気に対し財政規模抑制の予算であると思うのであります。一般会計の予算規模は、六千四百億円の公債発行を含め総計五兆八千百八十五億円でありまして、四十二年度補正後予算に対する伸び率は一一・八%となっております。これは四十二年度の一六・二%、四十一年度の一九・六%を下回るのみでなく、三十九年度を除けば、過去十年来で最も低い伸び率となっております。また、政府の財貨サービス購入の四十二年度実績見込みに対する伸び率一一・七%、国民総生産の伸び率一二・一%とあわせ比較いたしましても、経済に対する財政の抑制的態度が示されております。  また公債発行につきましても、予算規模に対する割合は、本年度は一〇・九%で、四十二年度の一六・一%、四十一年度の一六・七%に比べ相当圧縮されておりまして、財政運営の節度が十分にうかがえるのであります。このように、財政規模に対しきびしい態度で臨んでおりますが、これがひいては景気調整への真価を発揮し、物価の安定と国民福祉の向上に役立つものとして、私の賛同いたすところであります。  第二は、財政の体質改善についてであります。  昨年秋以来、財政硬直化の問題が真剣に取り上げられております。政府におかれては、本年度をこの打開の第一歩を踏み出す年として、予算編成に特段の配慮を払われたことを多とするものであります。すなわち、定員縮減と行政機構の合理化にその努力が顕著に見られるのでありますが、公務員の定員については、向こう三年間に五%の計画的縮減のもとに、本年度は約六百人の減員を行なわんとしておりまして、これは二十九年以降の毎年一万二千人以上の増員が行なわれていた事実に着目すれば、行政コストの縮減に対する誠意がうかがえるものであります。また、行政機構におきましても、一省庁一局削減及び各省庁の部局、公庫、公団等の新設は一切行なわない方針を堅持いたしておることは、行政能力の向上に資するものとして、その英断に満腔の賛意を表するものであります。  第三は、総合予算主義の採用であります。  ここ数年、例外的であるべき補正予算が恒常化しております。予算は本来、年度間のすべての財政需要を見込み、各経費の優先順位を比較勘案して編成されるべきものであります。本年度は、公務員の給与改定等の補正要因をあらかじめ当初予算に計上いたしております。これにより、年度間に異常な災害等の発生を見ない限りは、一般会計での予算補正の必要がなくなるのでありまして、このような方式を採用した政府措置は、時宜を得たものと思うのであります。  第四は、重要施策に対する財源の配分であります。  経済の発展と調和のとれた国民福祉の向上をはかるため、社会保障の充実をはじめとして、文教、科学技術の振興、社会開発、貿易の振興と経済協力の推進、農林漁業、中小企業の近代化、交通安全、公害対策の強化等に、限りある財源を、相互の均衡をはかりながら適正にかつ効率的に配分されておりまして、政府の配慮を妥当とするものであります。  第五は、物価対策であります。  四十二年度の消費者物価の上昇率は、政府見通しより下回ることは確実でありまして、当初の懸念をみごとに克服された政府の政策努力によるところ大であると思うのであります。申すまでもなく、消費者物価の上昇は、構造的、制度的要因によるものが大きく、物価の安定にはじみであっても、農業、中小企業の近代化、流通機構の改善、労働力移動の円滑化、公正な価格形成のための競争条件の整備など、経済の環境を整えることが必要であります。本年度は、物価上昇の国民生活に及ぼす見地から、物価対策関連費六千百三十五億円を投入して、その安定をはからんとしているのでありますが、物価対策はひとり政府の施策だけでは、十分その効果は期しがたいのであります。私は、物価と賃金との悪循環を断ち切るためにも、生産性を無視したスケジュール闘争はこれをつつしみ、賃金交渉のあり方や金額の決定には、労使とも慎重な態度で臨まれることを希望いたすものであります。  以上、四十三年度予算の特色について述べましたごとく、本予算は、財政硬直化と国際収支の悪環境に対処して、財政による景気調整の実効を期すると同時に、財政体質の改善に着手して、財政が本来の機能を十分果たし得る基盤を確立いたしております。  最後に、政府に要望いたしたいのでありますが、流動する国際情勢の中で、最近の金プール会議及び十カ国蔵相会議により、国際通貨の不安が平静を取り決したかに見られますが、しかし、アメリカの政策転換、輸入課徴金、保護貿易の動きなど、わが国に及ぼすその影響については、なお予断を許さないものがあります。国際収支の均衡の確保を命題としているわが国においては、政府としても国際経済の動向に細心の注意を払うとともに、予算の執行にあたっては、財政金融政策の適時適切な弾力的運営をはかられるよう希望いたすものであります。  以上をもって、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  387. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 次に、小平芳平君。
  388. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となっております昭和四十三年度一般会計予算三案に対して、反対の意見を述べるものであります。  まず反対の第一は、予算の規模についてでありますが、政府は四十三年度予算編成方針では、抑制型予算を宣伝し、対前年度予算の伸び率、政府財貨サービスの伸び率、ともに経済成長率を下回るために抑制型予算と自画自賛しておりますが、国立療養所の経費や公共事業の繰り延べ分を調整した実質規模は一八%と、まことに高率であります。まさに景気刺激型であり、財政は景気調整機能を放棄し、そのしわ寄せはあげて金融政策に背負わされているのであります。一月の公定歩合の再引き上げはこのことの証明であり、非常にきびしい窓口規制、選別融資が、中小企業や国民大衆に多大の犠牲をしいているか、はかり知れません。佐藤内閣がみずから行なわねばならない財政緊縮による景気抑制を放置し、大衆の犠牲で景気調整を行なわんとしているものと断ぜざるを得ません。さらに六千四百億円という多額の国債発行は、景気抑制の財政運営と矛盾するものであります。四十一年度の不況脱出時の国債発行を景気浮揚のためと言い、四十二年度は社会資本整備で中立型の国債発行と言い、四十三年度は抑制型の国債発行だとする政府の説明は、全く国債の何たるかを知らず、白を赤と言いくるめる論法と言わざるを得ません。国債が財政制度の奥深く定着し、売れない国債を特別免税の特典まで用意して国庫資金を集める方法は、封建時代の御用金調達の思想のあらわれであり、まことに危険きわまること大であります。公明党は、政府の国債政策の失敗と財政インフレの危険を強く指摘するものであります。  第二には、財政硬直化打開の理由に反対するものであります。政府は、打開のためと称し、国民生活に密着する公共事業を大幅に抑制するとともに、受益者負担の名のもとに国鉄運賃値上げ、食管特別会計への繰り入れ抑制に伴う三年連続消費者米価の引き上げ等、国民生活の犠牲によって財政硬直化是正を行なおうとしているのであります。財政硬直化は、継続費、国庫債務負担行為の乱用による防衛費予算の先取り的な編成方法、及び物価騰貴を放置したことによる予算規模の膨張が大きな要因なのであります。にもかかわらず、佐藤内閣の最近の著しい右傾化姿勢は、これら防衛関係費の先食いを拡大するとともに、公共料金値上げ誘導の物価上昇推進型予算編成なのであります。財政硬直化の根本原因を究明し、除却しようとする姿勢のない佐藤内閣財政政策に反対するものであります。  第三は、実質減税ゼロという名の増税に反対するものであります。千五百億円の所得税減税を酒、たばこ等の増税によって、国庫歳入面で実質減税ゼロと政府は述べておりますが、国民大衆にとっては決してゼロではありません。物価上昇の激しいわが国において、四十三年度は物価調整減税すら十分行なわれておりません。さらに累進度の高い所得税体系から見ても、決して減税に値するものではありません。しかも、所得階層別に見たこの税制改正は、嗜好品、消費物資の増税であるゆえに、逆進性の強い増税となるのであります。  第四に、大衆福祉無視の血も涙もない予算に反対するものであります。  生活保護基準を一三%引き上げ、東京など一級地では月額二万六千五百円になったと述べておりますが、親子四人の標準世帯で一日の生活費八百八十三円、これを全部食費に充てたとしても一人当たり七十円余であります。消費者物価の上昇が続いている今日、一日七十円の食費で一体どんなものが食べられるのでありましょうか。佐藤総理はじめ大蔵、厚生大臣には想像することすらできないのではないでしょうか。これで、憲法で保障する健康で文化的な最低生活が保障されたと政府は公言しているのであります。これは明らかに憲法無視であり、違反であると断ぜざるを得ないのであります。さらにわが国には、重症心身障害者や肢体不自由者等非常に多いのであります。これらの人たちは、自分の責任で生活能力を失ったのではありません。佐藤内閣欧州並みの福祉国家を目標にしているならば、その生活保障は国家の当然の責務であります。しかるに四十三年度予算は、これら日の当たらない身障者に対してはまことに冷たい予算と言わざるを得ません。  最後に、中小企業、農業対策の不十分な予算に反対するものであります。  金融引き締めで一番の被害者は零細中小企業者であります。毎月の倒産件数は上昇の一途をたどり、戦後最高の件数となっております。池田内閣時代の中小企業倒産を批判した佐藤総理は、倒産の前になぜ対策を十分に立てないのかと述べたにもかかわらず、戦後最高の倒産とはまことに皮肉な現象であります。なぜ言行一致、中小企業の倒産の前に有効適切な手を打たなかったのか。また農業関係予算にしても、そのウエートは毎年低下しております。農村の過疎現象は、佐藤内閣の農業政策の失敗によるものと言わざるを得ません。  以上の理由により、公明党は四十三年度一般会計予算三案について反対するものであります。(拍手)
  389. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 次に、向井長年君。
  390. 向井長年

    向井長年君 私は民主社会党を代表し、政府提出昭和四十三年度予算三案に対し反対の討論を行ないます。  戦後二十数年にして、国際政治経済は大きくその姿を変えようとしております。ここ数ヶ月の激しい動きはその端的なあらわれであります。昨年十一月のポンド切り下げ、これに次ぐドル危機の深刻化と金プール崩壊、ジョンソンのベトナム和平宣言等が相次いで目まぐるしく展開されてまいりました。この間にあって、わが国経済も国内の不況の進行と相まって多大の影響をこうむることは言うまでもありません。特に予算案審議を通じて明らかにされたことは、わが国経済の脆弱さと不安定性であります。外貨準備の異常な低さと構成内容の悪さ、一部でうわさされる円切り下げ、ベトナム特需の減少に伴う動揺等がそれであります。しかるに政府は、この国際的な変革の流れにさおをさし、外交はもちろんのこと、経済政策においても、わが党の主張する実効的にして計画的な安定成長政策を無視し、従来の安易かつ無責任な成長政策を固執しているのであります。まさに政府の動脈硬化もここにきわまれりと言うべきでありましょう。これがわが党が政府予算案に反対する基本的な理由であります。  次に、具体的内容に立ち入って反対の理由を指摘いたしたいと存じます。  その第一は、今回の予算案は大衆の犠牲のもとに実質増税が行なわれていることであります。所得税減税の恩典にも浴しない低所得者はいまだわが国に二千万人もおりますが、たばこの値上げ、酒の増税はこれら低所得者に犠牲がかかってくることは明白であります。この明白な事実に目をおおい、実質増税ゼロであると強弁する政府の態度は、わが党の断じて許し得ないところであります。  第二に、財政硬直化を口実にした民生的支出の圧迫が行なわれていることであります。現在わが国にとって最も緊急に手を打たなければならない分野は公共福祉でありますが、住宅対策費は八・二%、社会保障関係費は一〇・三%の伸びと、いずれも予算全体の伸び率にさえ及ばないほど低く押えられているのであります。これは佐藤内閣の公約であった社会開発に全くそむくものであり、公約不履行もはなはだしいと言わなければなりません。このため、政府みずから社会的アンバランスの是正をうたった経済社会発展計画を破綻に追い込み、またも紙くず化としまったのであります。  第三に、わが党がこの予算案に反対する理由は、政府主導型の大幅物価上昇が予想されることであります。  今回政府はすでに国鉄定期の大幅値上げを実施し、また酒、たばこ、物品税の増税を行ない、これが業者の便乗値上げと相まって大幅にこれら商品の値上がりを招くことは明らかであります。さらに電話設備料の引き上げなど公共料金を軒並みに値上げし、この秋には、総合予算主義という名目のもとに、消費者米価も四年連続して値上げされることは必至であります。この結果、不況下の物価高が進行し、国民の生活は以前にも増してきびしくなることが予想されるのであります。これは明らかに政府経済政策の失敗であります。  私は以上の理由により政府予算案に反対の意向を表明いたしまして討論を終わります。(拍手)
  391. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 次に、岩間正男君。
  392. 岩間正男

    岩間正男君 私は日本共産党を代表して、昭和四十三年度予算三案に反対するものであります。  佐藤総理は、昨年の日米首脳会談で、アメリカのベトナム侵略戦争を全面的に支持し、東南アジアの反共かいらい政権に対する援助の増大、ドル防衛政策への協力などを約束して来ました。また、日米安保条約をアジア太平洋地域に拡張強化し、このもとで、日本軍国主義の復活、強化と独占資本の東南アジアヘの帝国主義的な進出を早急に推し進める意図を明らかにしました。このことは、佐藤総理のアメリカの核のかさのもとでの自主防衛論、憲法否定の倉石発言、国防教育についての灘尾発言や本院の審議などによって明らかであります。  第二に、歳入の面では、政府は財政経済の引き締め政策をとると言いながら、一般会計で五兆八千百八十五億円、財政投融資では二兆六千九百九十億円という膨大な予算を組み、その財源として、一兆円に及ぶ公債発行、九千五百億円の税の自然増収、国鉄定期券の値上げ、酒、たばこ、物品税の引き上げを行ない、他方では、輸出奨励などの名のもとに大資本に対する各種の減免税措置を拡大しています。これは、大資本に奉仕し、勤労者の税負担を重くし、物価値上げに拍車をかけることによって、人民の生活を一そう困難にするものであります。  第三に、歳出の面では、総合予算主義ということで公務員賃金、食管会計への繰り入れ、災害復旧費などを千二百億円の予備費でまかない、補正予算を組まないことにしていますが、これは人事院勧告制度、食管制度などを事実上取りくずし、公務員賃金と生産者米価を一方的に押えつけ、これを通じて、労働者と勤労人民の生活水準を全体として抑制しようとするものであります。また、勤労者の切実な要求である低家賃住宅は八万八千戸にすぎず、生活保護基準と失対賃金のわずかばかりの引き上げと引きかえに、失対事業で四千人、生活保護で四万八千人が適用のワクからはずされております。また、政府の金融引き締め政策のもとで中小企業の倒産が激増しているにもかかわらず、政府対策はほとんど見るべきものがなく、かえって、大資本の要求に沿って、中小企業を整理淘汰する政策が強められています。さらに重大なことは、政府が、受益者負担の原則や独立採算制を強調して国立療養所の特別会計移管、消費者米価や各種の公共料金の引き上げなどによって、国と地方自治体が当然負担すべき経費を人民の負担に肩がわりしていることであります。このように、政府は、財政硬直化を口実に、人民に犠牲を強要しながら、第三次防衛力整備計画による自衛隊の増強、東南アジア経済援助の増額などは優先的に確保し、軍人恩給の増額、教員の反動的支配のための特別手当の新設、明治百年記念事業、政府新聞の発行など、国民の間に軍国主義思想を強めるための費用を著しく増額しています。さらに政府は景気抑制を唱えながら、前年度繰り越し分を加えると二兆九千億円にのぼる膨大な公共事業費を計上していますが、これは高速度道路、港湾その他主として独占資本のための産業基盤の整備と利潤の増大を保障するものであります。  要するに、四十三年度予算案は、勤労人民を犠牲にして独占資本の利益をはかるだけではなく、日米共同声明による日米共同責任体制をつくり上げるための第一年度として組まれたものであります。これはわが国を軍国主義と戦争の道に一そう深く引き入れるものであり、わが党はこのような予算案に絶対に反対するものであります。  ポンド切り下げに続くドル危機の深まりは、世界資本主義経済の諸矛盾の激化と相まって、資本主義世界全体に対するアメリカの金融支配が大きくくずれつつあることを示しています。ベトナム和平に関するジョンソン演説、キング牧師の暗殺と黒人の闘争の高まりなど一連の事実は、アメリカの侵略的な世界政策、とりわけベトナム侵略戦争を中心とするアメリカの極東政策が、政治的にも、軍事的にも、経済的にも破綻し始めたことを示すものであります。それは同時に、日米安保体制による日本の安全と繁栄という自民党佐藤内閣の基本政策の危険な性格とその破綻を端的に示すものであります。今日激動するアジアと世界の情勢のもとで、わが国の進むべき道は、日米安保条約を破棄し、真の独立を実現し、民主主義と平和中立の政策を実行することであります。これによってのみわが国の安全と経済の自主的、平和的発展、国民生活向上の道を切り開くことができるのであります。  わが党はそのために広範に国民とともに奮闘をすることを明らかにして、私の反対討論を終わります。(拍手)
  393. 西郷吉之助

    ○委長員(西郷吉之助君) 以上をもちまして討論通告者の発言は全部終了いたしました。よって、三案の討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算昭和四十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して問題に供します。三案を原案どおり可決することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  394. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 起立多数と認めます。よって、三案は原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。(拍手)  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  395. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十四分散会