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国務大臣(
三木武夫君) 沖繩はこれから
アメリカと交渉しようとするわけです。いま言われるように、
日本がこれだと言って旗を立てて、これ、一歩も譲らないという
外交交渉のあり方もありましょう、それはね。しかし、むろん
外交交渉というものは、国内の世論の動向な
ども踏んまえて
外交交渉をやることは当然のことである。初めから旗を立てて、これ、一歩も退かぬという形でなくして、
アメリカとの間にいろいろな複雑な問題がありますから、たくさんの問題があるから、この問題を
両方で話し合って、結局は
早期な沖繩の施政権返還というところに焦点を合わしてこの交渉を進めるというやり方があるわけです。われわれとしては、初めからもう
日本の旗はこれだと言って旗を立てて、そうして一歩も退かぬというような形は、なかなかやはり目的を達成する上において、それが非常に強い
感じを
国民が受けるかもしれぬが、目的達成の上に必ずしも賢明だと思わないので、
日本は早く施政権の返還を実現したい、こういう目標のもとに精力的な協議を
アメリカと続けてまいりたいと、こう思っておる次第でございます。
中共問題については、一昨年でしたか、
佐藤総理がワシントンへ行かれて——共同コミュニケごらんになったでしょう——
アメリカと相当
中共政策について意見が違うわけです。共同コミュニケにも
アメリカの
考え、
日本の
考えというものを、非常に違うものをそのまま共同コミュニケに、一昨年の一月でしたか、載せてあるわけです。これな
ども、
アメリカと違ったものを共同コミュニケに載せざるを得ない大きな
考え方の違いがあるわけです。もし自主
外交とおっしゃるならば、これなんかも全く自主
外交の
一つの標本みたいな
感じがいたすのでございます。
それからまた、長期ビジョンというものは、
アジア・太平洋構想というものを私が言っておるわけです。このことはなぜかと言えば、やはり南北問題というものが
世界の最大の
課題である。人類の三分の二がやはり腹一ぱいめしも食えないでおるというような状態で
世界の平和が築かれるというほど甘く私は
世界情勢を見ていない。そこで、どうしても
世界全般がこの南北問題というものの対象にさるべきでしょうが、
日本はやはり一番
関係を持っているのは
アジア地域ですから、この
アジア地域の南北問題、これの
解決のために
努力をするということがこれは平和に通ずる、大きな平和の条件をつくるやはり基礎的なことだと私は思っている。平和というものは、ただ平
和平和と言って達成できるものだとは思わない。そういう
意味で、
アジア諸国の地域協力というものを促進していきたい、地域協力。いままで
アジアのナショナリズムというものは、やはり
お互いに隣り同士仲悪かったわけですから、その地域協力、
日本は、東南
アジア閣僚
会議な
どもそういう機運を助長するために
一つの役割りを果たしている。私は日曜日に立ってシンガポールの東南
アジア閣僚
会議に出席するのですが、そういう
会議を通じて、みなが狭い排他的なナショナリズムからやはり協調のできるようなナショナリズム、そういうことに持っていって、地域協力を、まず
アジアが
お互い同士に仲が悪いということになると、軍事力の面においても、非常に大きなやはり軍事力を持たざるを得ないことになって、やはり国の
経済建設などの面においては力をあまりそぐことはできなくなりますから、そういう
意味で、みながやはり地域協力ということが大事である。一方において
アジアに対して一番その動向に
関心を持ち利害を持っているのは太平洋の先進諸国だと私は思っておるのです。これはヨーロッパよりずっと近いですから、
関係が。それで
アメリカ、カナダ、あるいはオーストラリア、ニュージーランド、
日本、こういう太平洋の先進諸国が
お互いの
貿易を拡大して
お互いの
経済を発展さすこともいいが、やはり共同して
アジアの開発のために尽くそうじゃないか、こういう
アジア・太平洋地域における連帯感というものが生まれてこなければいけない。そういう
意味で、いま
アジア・太平洋の中における太平洋の先進諸国とのいろいろな連係というものは深まりつつあります。たとえば、今度はシドニーで太平洋
経済委員会というものが開かれて、五カ国の
経済代表者が寄って、そうして
経済的にいろいろ提携し、
アジアに対する援助問題も話すことになっております。この一月には、そういう学者がみな寄って五カ国の
会議をしました。こういうようなことで、
アジアの地域協力、太平洋先進諸国の
アジアヘの共通の
関心、これを助長する役割りというものを相当
日本は果たしている。最後には
アジアと太平洋とが結びついて、いますぐに大きなEECのような機構というものは、これは
アジアとは条件が違いますから、すぐにその大きな機構をつくり出すことはかえって
アジア・太平洋における連帯を阻害しかねないような場合もありますから、いまはやはりそういう
一つの下地をつくって、やがては何らかの機構が生まれて、
アジア・太平洋を通じて、そうしてそういう国々が
アジアの開発、
アジアの発展に貢献する、こういうふうなことに
日本は力を尽くすべきである。私は、
日本の大きな
方向として、
アジア太平洋における
一つの、いま言ったそういう形において
アジアの南北問題を
解決する。そのために
日本外交が精力を傾けることは、大きな
日本外交のビジョンだと私は確信をしております。