運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1968-04-03 第58回国会 参議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月三日(水曜日)    午前十時十八分開会     —————————————    委員の異動  四月二日     辞任         補欠選任      市川 房枝君     石本  茂君  四月三日     辞任         補欠選任      田村 賢作君     斎藤  昇君      佐藤  隆君     白井  勇君      黒柳  明君     宮崎 正義君      矢追 秀彦君     北條 雋八君      高山 恒雄君     片山 武夫君      春日 正一君     須藤 五郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西郷吉之助君     理 事                 北畠 教真君                 剱木 亨弘君                 近藤英一郎君                 内藤誉三郎君                 加瀬  完君                 鶴園 哲夫君                 小平 芳平君     委 員                 内田 芳郎君                 大谷 贇雄君                 大森 久司君                 岡本  悟君                 小林  章君                 小山邦太郎君                 櫻井 志郎君                 任田 新治君                 中村喜四郎君                 船田  譲君                 増原 恵吉君                 八木 一郎君                 山本茂一郎君                 山内 一郎君                 吉武 恵市君                 木村禧八郎君                 田中寿美子君                 千葉千代世君                 戸田 菊雄君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 森中 守義君                 二宮 文造君                 北條 雋八君                 宮崎 正義君                 矢追 秀彦君                 片山 武夫君                 須藤 五郎君    国務大臣        外 務 大 臣  三木 武夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  灘尾 弘吉君        厚 生 大 臣  園田  直君        農 林 大 臣  西村 直己君        通商産業大 臣  椎名悦三郎君        運 輸 大 臣  中曽根康弘君        労 働 大 臣  小川 平二君        自 治 大 臣  赤澤 正道君        国 務 大 臣  木村 武雄君        国 務 大 臣  田中 龍夫君        国 務 大 臣  鍋島 直紹君        国 務 大 臣  増田甲子七君        国 務 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院事務総局        給与局長     尾崎 朝夷君        総理府人事局長  栗山 廉平君        総理府統計局長  岡部 秀一君        行政管理庁行政        管理局長     大国  彰君        防衛庁長官官房        長        島田  豊君        防衛庁人事局長  麻生  茂君        防衛庁経理局長  佐々木達夫君        経済企画庁調整        局長       赤澤 璋一君        科学技術庁計画        局長       武安 義光君        科学技術庁研究        調整局長     梅澤 邦臣君        科学技術庁原子        力局長      藤波 恒雄君        外務省アジア局        長        小川平四郎君        外務省北米局長  東郷 文彦君        外務省条約局長  佐藤 正二君        外務省国際連合        局長       重光  晶君        大蔵政務次官   二木 謙吾君        日本専売公社監        理官       前川 憲一君        大蔵省主計局長  村上孝太郎君        大蔵省主税局長  吉國 二郎君        大蔵省理財局長  鳩山威一郎君        大蔵省銀行局長  澄田  智君        国税庁長官    泉 美之松君        文部大臣官房会        計課長      井内慶次郎君        文部省初等中等        教育局長     天城  勲君        文部省大学学術        局長       宮地  茂君        文部省社会教育        局長       木田  宏君        文部省文化局長  安達 健二君        文部省管理局長  村山 松雄君        厚生省公衆衛生        局長       村中 俊明君        厚生省医務局長  若松 栄一君        厚生省薬務局長  坂元貞一郎君        厚生省社会局長  今村  譲君        厚生省保険局長  梅本 純正君        農林政務次官   日高 広為君        農林大臣官房長  檜垣徳太郎君        農林省農政局長  森本  修君        農林省農地局長  和田 正明君        食糧庁長官    大口 駿一君        通商産業省貿易        振興局長     原田  明君        運輸省自動車局        長        鈴木 珊吉君        運輸省航空局長  澤  雄次君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        建設省道路局長  蓑輪健二郎君        建設省住宅局長  三橋 信一君        自治省行政局長  長野 士郎君        自治省財政局長  細郷 道一君        自治省税務局長  松島 五郎君    事務局側        常任委員会専門        員        水谷 国一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十三年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を開会いたします。  昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算昭和四十三年度政府関係機関予算。  以上三案を一括して議題といたします。  これより一般質疑に入りまするが、委員長及び理事打ち合わせ会におきまして、その日程等について協議を行ないましたので、その要旨について御報告いたします。  一般質疑は本日から開始いたしまして六日間といたし、質疑の全体の時間は七百八十五分とし、各会派への割り当ては、自由民主党及び日本社会党はそれぞれ三百五分、公明党百分、民主社会党日本共産党及び第二院クラブはそれぞれ二十五分といたしました。質疑の順位につきましては総括質疑と同様にすることといたしました。  以上御報告いたしまするが、そのとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  4. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは、これより一般質疑を行ないます。戸田菊雄君。
  5. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 最初に、三木外務大臣にお伺いしたいと思いますが、今回の北爆停止ジョンソン声明に対してどのように理解をしておられるか、伺いたい。
  6. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 今度の北爆停止声明は、まあ一部分は除いておるわけでありますが、大部分の地域に対して、無条件に北爆を停止し、また、期限も付してない。したがって、従来、アメリカサンアントニオ方式と言われておった何らかの条件を付して北爆をやめるという従来の政策に対して、新たなるアメリカ方針が打ち出されたものであります。しかも、この声明を発するについて、大統領がみずから出馬をしない、やはり、ベトナム和平のために、選挙戦に災いされることなく専念したいという、重大な自己の大統領の地位をかけて、この声明を出したというところに、従来のアメリカ方針とも非常に変わっておりますし、また、これだけの大統領決意を示したところに、この提案は、われわれとして、やはり額面どおりに受け取るし、この提案を通じてアメリカ和平達成への熱意もくみ取ることができると考えております。
  7. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 きのうの各委員の質問に対しまして、外務大臣は、日本ベトナム戦争に対して協力や加担をした事実はないという趣旨の答弁をなされておったようでありますが、現代の近代戦争軍事戦略は、外交、国策、経済、政治、文化、こういった全般の総合戦力を費消するものと思うのでありますが、これらに対する考え方はどうですか。
  8. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 御承知のように、政府は、軍事的にベトナム戦争に対してわれわれは介入をしてない、これはおわかりのとおりであります。民間のほうでは、いろいろ貿易、その他の点で関連が全然ないとは言えません。しかし、少なくとも政府に関する限りは軍事的に介入もいたしておりませんし、また、ベトナムに対する武器弾薬は、これを輸出することを禁止しておりますし、日本政府ベトナム戦争に関与せず、こういう立場は、私はこれは非常に無理な言い方ではないと考えております。
  9. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 軍事戦略の中に補給輸送というものは入りませんか、どうですか。
  10. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この安保条約の規定によって、日本補給ということが、日本施設が利用されておることは事実でありますが、これは何もベトナム戦争という意味ではなくして、通常の補給ということは、このベトナム戦争があったから特に補給をしなければならぬということではなくして、常にそういう補給というようなことは日本施設に入ったらやることでありますので、特にベトナム戦争に、そのこと自体が戦争介入であるという考え方は持っておりません。
  11. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 今回アメリカが三年有余にわたってあのような戦争ベトナムに展開できた、こういうことは、少なくともアメリカ本国から一万数千キロを経て、そうして軍事、そういったものの補給輸送、こういったものが日本本土ないし沖繩肩がわりができた、こういうところに私はあの戦争の遂行の率が非常に高められたというように考えているのですが、それはどうですか。
  12. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そのように、私は日本のまあ民間輸送、これは政府が関与しない民間の契約によって輸送に従事したような例もあるようでありますが、しかし、日本がこのベトナム戦争に対して非常に大きな役割を果たしておる、日本のこの民間の活動であっても、戦争に対して非常な大きな日本関連を持っておるというふうに私は評価をしておらないのでございます。
  13. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 私は二年前に北ベトナムに行って参りました。ファン・バン・ドン首相とか、あるいはその政府首脳と会見をしたのでありますが、その際に、北ベトナム民主共和国といたしましては、詳細にいまアメリカが戦地で使っている各種兵器あるいは日常用品、こういった問題について、その九割が日本からいろいろと送られ、あるいは日本から提供をされ、あるいは修理をされる、こういう各種兵器とか、そういったものがあるということを科学的に実態的に私たち説明をしたのでありますが、そういう考え方北ベトナム民主国家は明確に調査の上に立って持っております。こういう事実に対してはどういうふうに考えられるか。
  14. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 日本のこの武器弾薬輸出禁止というものは、きわめて厳重にやっておる、たとえば参戦国に対しても輸出を認めてないわけですから。まあこれで日本武器というものはないと私は言っておるわけではない。いろいろ回り回ってそういうことの場合もあり得るでしょうけれども、少なくとも日本態度としては、ベトナムに対してはもう絶対に送らないし、ベトナムばかりでなしに、その紛争のいわゆる関連を持っておる国々に対しても武器輸出を認めておりませんから、それを日本責任であるというふうに言われたときには、これはやはり責任とは私は考えてはおらないのでございます。
  15. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いまベトナム戦争アメリカ各種使用兵器というものは、いろいろな本に一ぱい出ておりますけれども、これは日本から持っていかれたものであるということは常識化されていると思うのですね。で、そういうことからいけば、一つはLSTの輸送、これは日本のものですね。それから自動小銃とか機関銃、あるいは弾丸、自動車、果てはベトナム・シューズ、あるいはちり紙に至るまで日本から多く送られている事実は、これはあると思うのですね。それは一体どうお考えになるか。
  16. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま言ったように、武器弾薬というものは非常に厳重な、これは貿易管理令によって厳重な輸出規制をしておるわけでありますから、もしそういうことがあるとしたならば、どういう経路をたどって行くのか、私もいまここでお答えするだけの知識はございませんが、少なくともみな国民の方々にも理解してもらいたいのは、日本政府武器弾薬に関してはもう輸出を禁止して、そうしてその国ばかりでなしに、戦争関連する国々にも輸出を禁止して、そういうことのないような厳重な規制を行なっておるのだ、だから日本が好んでそういうふうな武器弾薬というような種類のものをベトナム戦線に送って、そうして直接戦争というものに協力するようなことは政府の意思にも反するし、われわれとしてはしていないのであって、していないのだということをよくわかってもらいたいと思うのでございます。
  17. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 時間がありませんからもう一点だけお伺いしたいと思いますが、アメリカジョンソン大統領北爆を停止する、こういう声明を出した。きょうの朝日新聞によりますと、タンホア爆撃をした、こういうこともありますから、私たちも夢々安心はできないと思うのでありますが、しかし、こういう機会に日本政府といたしましては、真に平和を確立することに向けて、私は大いに政府としても努力をすべきではないか、そういう決意をお持ちになっているのかどうか。
  18. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 日本のやれることというものは、一応制約もあります。なぜかといえば、ハノイとの間に日本外交関係もありませんし、したがって、ハノイ政府と話をするということは、なかなかやはり適当なルートを限られるわけであります。そういう点で制約がありますけれども日本外交としては、やはり何とかこの不幸な戦争を早く終わらせることはできないかと、まあできる限りの努力をしてきたつもりでおります。このために私自身でもカナダ、ソ連、東ヨーロッパ諸国、この訪問の大部分ベトナム早期和平実現ということに費やされた旅行であります。また、そういう場合に、こういう方法はないであろうかという提案をこの各国にも行なったし、アメリカにも必要な忠言というものは、必ずしもそのつどつど発表はいたしませんでしたけれどもアメリカにも日本政府としてのアドバイス戦争を早く終わらせるという上に立ってのアドバイスというものは、私してきたつもりでございます。したがって、今後アメリカがああいう提案をして、今後はハノイがどう出てくるであろうか、ハノイがこのアメリカ提案に応じて話し合いが始まるであろうということをわれわれは心から願っておるわけであります。だれ一人としてこの戦争をいつまでも続けたらいいという人は、良識を持つ人は私はないと思う、世界に。何とか早く終わらせられないのか、こういうことがこれは世界人類の声であると思いますから、こういう世界の願いに沿って、ハノイアメリカ提案に答えて、そうして話し合いを始めるということを願っておるわけで、いまハノイにげたをあずけられた形でありますので、このハノイ出方等もにらみ合わせて、日本としてできることがあったならば、このベトナム平和的解決のために、あらゆる労を惜しまない、どんなことでもしたいという覚悟でおるわけでございます。
  19. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 もう一点だけお伺いをしますが、かつて一九五四年でありますけれどもジュネーブでのインドシナ休戦協定の成立、このときには、インド、セイロン、あるいはパキスタン、インドネシア、ビルマ、いわばコロンボ五カ国会議といわれるこういった国々が、非常に、一九五四年ジュネーブ協定の成功に向けて献身的な努力をした。ですから、そういう立場にいまの日本というものはあるんじゃないか、やればできるんじゃないか。当時そういった国が大いに努力して、そういう成果を見た事例があるわけであります。そういう意味で、私、政府にもう一度、やはりアメリカの言うことばかり聞かないで、その辺は自主性を持って、そういった戦争阻止のための努力というものをやるべきではないか、こういうふうに考えますが、どうですか。
  20. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それが和平早期実現に役立つならば、いま御指摘のようなことも、それも一つのあるいは効果のあることになるかもしれませんし、御指摘のようなことばかりでなしに、あらゆることをやろうと考えております。
  21. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 次に、経済企画庁長官にお尋ねをしたいと思うのでありますが、これはわが党の木村委員なり田中委員からもすでに質問いたしておりまするから、もうしないところでお願いをしたいと思いますが、昭和四十三年度経済見通しについてであります。名目成長実質成長企業設備投資鉱工業生産卸売り物価消費者物価輸出輸入、こういった諸点に対する四十三年度経済見通し、それから四十二年度予測実測値について御説明を願いたいと思います。
  22. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 四十二年度のほうから申し上げますが、全体の経済成長率としては名目で一六・四%を見込んでおるわけでございますが、まあ大体いいところではなかったかと思っております。少し上回ることがあるかもしれないと思いますが、そう大きくひどく上回ることはないと思います。したがって、これは設備投資も、多少、一千億程度ぐらい動くことはあるかと思いますが、まあまあのところではないかと思います。  国際収支でございますが、これは七億ドルの赤字を見ておったわけでございます。そこで、二月までが明らかになっておりまして、二月までの総合収支は五億ドルになっております。そこで、三月でもう二億ドルの赤字が出たかどうかということでございますが、貿易のほうは必ずしもはかばかしくございませんが、資本収支のほうで流入が長短期でございますので、どうも三月一ぱいでネット二億ドルの総合収支の減があったとは考えにくうございます。したがって、七億ドルという総合収支赤字は結果としては過大であったというふうにいま考えております。  消費者物価につきましては、三月分の全国の指数が今月の末でないとわかりませんけれども、東京都のほうはすでに出ております。そこで全国に、三月中にそんなに大きな異変があったとは思われませんので、四・五%と従来申し上げてきましたが、それを少し下回って年度を終わったことはほぼ確実であるというふうに思っております。  大体、以上のようなのが四十二年度の推定でございますが、その上で四十三年度を考えてみますと、ただいまのところ四十二年度の終わりかたがあまり大きくは狂っておりませんので、一般的に見て四十三年度の、先般来申し上げております見通しをこの際改める必要はいまのところ感じておりません、と申しますか、そうしなければならないといったような要素がまだ見えておらない、貿易の環境は相当きびしいことは確かでございますけれども、一五%の輸出が不可能になったというようなふうにはただいまのところ考えておりませんので、四十三年度見通しはいまのまま、このまま継続していきたい、こう考えております。
  23. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 四十二年度予測と実際値の割合をお示し願いたい。
  24. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 実は四十二年度の計数がまだ一つも確定しておらないわけでございます。と申しますのは、三月の数値がほとんど明らかになっておりませんので、したがって、ただいま申し上げました程度が現在わかっておるすべてでございます。
  25. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 各年度の「経済見通し経済運営基本的態度」について、こういう中で、私は、四十二年度予測と実際値というものは、すでに出されておると思うのです、資料に。それはおわかりでないですか。
  26. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま私の申し上げましたのは、四十三年度予算編成に対しまして、四十三年度経済見通しと、四十二年度経済見通し改定とをいたしました。その改定をいたしましたところと、いまの時点に立っての四十二年度との関係を申し上げたわけでございます。で、申し上げましたことは、したがって、改定いたしましたところと実際とが、まず大体乖離がなかろう、こういうことを申し上げておったわけでございます。
  27. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 当初見通しと実際値の比較ですよ、私の言っているのは。四十二年度、これはちゃんと資料として出ているのじゃないですか。
  28. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは先般資料として差し上げてございますとおりで、当初見通し、つまり一年あまり前の見通し実績とを比べますと、実績というのは、まだ確定いたしませんけれども、これはもうかなり大きく狂っております。ことに設備投資を中心に相当狂っておりますことは先般来申し上げたとおりであります。
  29. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 その比較でまいりますと、全く問題にならないくらい私は狂っていると思いますね。名目成長率ですと、当初一三・四%に対して一六・四%、それから実質成長率において、予測は九%で実際は一一・六%、こういうぐあいに各項目ごとに相当な狂いを生じておる。かろうじて消費物価だけが四・五%にとどまっている、こういう状態ですね。こういうことから考えまして、ことに一番見通しの誤りの誤差があるのは輸出であります。当初一一%に対して七・七%、輸入は一四・八%が二〇・八%、実に驚く数字にのぼっておると思う。こういう狂いが生じてくる経済見通しというものは、過日木村委員指摘をされましたけれども、やはり政府経済見通しのずさんさにあるのじゃないか、こういうふうに考えますが、それはどうですか。
  30. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、おそらくずさん以前の問題でありまして、一年間の経済見通しを、これだけ成長する経済に対して的確に行なうというだけの十分な資料なり技術なりを私どもが持っておらないということになると思います。非常に精緻に、全能力を傾けてやっておるつもりではございますけれども、結果は大きくこのように乖離をする。これはずさんという問題ではなくて、それだけの一年先を見通すということが、いまの段階では私ども能力を越えておるのではないか。その点はいつも反省をし、改善を加えてきておるつもりでございますけれども、なお的確に見通し得ないというのが現状でございます。
  31. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 この輸出入額ですけれども、四十三年度ですと輸出が百二十一億ドル、輸入が百一億ドル、貿易収支で二十億ドルの黒字ということではじき出しているわけですね。輸出増加で一五・二%、総合収支は三億五千万ドルの赤字、こういうことになっておるのでありますが、この見通しに対して前途自信がございますか、どうですか。
  32. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 四十三年度でございますか、四十二年度はたいへん間違っておったではないか、そのとおりでございますと申し上げたあとで、四十三年度のほうは自信がございますと申し上げるのは、非常に申し上げにくいことでございますけれども、ただいまの段階で、これは努力をすればできる目標であるというふうに考えております。
  33. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 通産大臣にお伺いをしますが、今後のベトナム特需の行くえについて、通産大臣の最近のお考えを伺いたい。
  34. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 特需の数字は、大体ごく最近のところ約五億ドルの程度でございます。それで、その内容は円セール、つまり軍人軍属の家族、そういうもののカメラであるとかラジオであるとか、そういったようないわば一般の平和時における民生物資がだいぶあります。それが六、七〇%を占めております。それから軍の需要する一般物資、これがあとの三、四〇%を占めている。でありますから、かりにいま急に和平実現しても、これはちょっとそういうことは考えられませんけれども、そう大きな打撃はないわけであります。まあ和平は朝鮮戦争のように、だんだん段階的にずっと縮小していく、そうしてある時点にきて和平ということになるものと思われますけれども、そういうようなことであれば、なおさら特需というものの減少過程というものは非常にゆるやかに進んでいく、そうしてしかも朝鮮のときの割合は日本輸出の六五%ですが、それが五億ドルというものは、これはまあ六五%に比較すると、その十分の一にも満たない、五%ぐらいのもので、たいしたこれによって経済的な影響を与えるものじゃない、こう考えております。
  35. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 この四十年、四十一年でけっこうですが、物資、それから役務、この契約高はどういうふうになっておりましょうか。
  36. 原田明

    政府委員(原田明君) 四十一年の特需収入の総額が四億六千九百万ドル、四十二年が五億六百万ドルでございます。このうち米軍の公用調達に当たります分が四十一年一億六千万ドル、四十二年一億三千二百万ドルでございました。駐留米軍軍人、軍属、またはその家族等によります個人消費等を中心とします、いわゆる円セールと呼ばれておりますものが、四十一年三億九百万、四十二年三億七千四百万ドルでございます。円セールのほうはカメラ、トランジスタ等、消費物資でございますが、これの中身は判明をいたしておりません。軍調達に基づきますうち、特需の契約によりまして行なわれました物資の調達が、四十一年六千万ドル、四十二年は二千六百万ドルに減っております。またサービスないし役務のほうは、四十一年四千七百万ドルでございました。四十二年は五千七百万ドルになっております。
  37. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 漸次減少の傾向にあると思うのでありますが、そこで今後の国際貿易のですね、拡張、振興というようなことを言われておるのでありますが、こういう点に対して、中国貿易に対して、過日これは大蔵委員会でも、衆参両院でありますが、附帯決議でもって積極的に前向きで検討すると、こういうことを言われたのでありますが、通産大臣のお考えを聞きたい。
  38. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ日本のこの貿易、特に輸出貿易、国の経済をまかなっていく上のこれは基調であるということは言えると思います。そういうわけでございまして、まあ過去の経過をたどって見ても、よくまあこれほど貿易が伸びたものだと思うぐらい年々伸びております。この情勢を維持するということは、今日の内外の経済情勢から言えば、なかなかむずかしい問題でございまして、そういうまあ情勢であればあるほど、どことでも可能な限り貿易を盛んにするというたくましい覚悟でいかなきゃならぬ。そういう意味で私は中共貿易、これは現在の政経分離の原則下において経済の拡大をはかっていきたいと、こう考えております。
  39. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大蔵大臣にお伺いしますが、財政硬直化とは、どういうものですか。
  40. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 財政硬直化とは、予算の内容をなすいろいろの経費の伸縮性が非常に乏しい。そうして、しかも経費自体に内在する膨張、圧力が強まって、これをコントロールする力が失われつつあると、こういう状態を大体財政硬直化というふうに私どもは呼んでおります。
  41. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 続いてお伺いをしますが、硬直化の原因は一体何だと思いますか。
  42. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 原因は前々からしばしば申し上げておりますように、一つは財政の構造自体の中に原因があるということと、また、財政のよって立つ経済的な背景の環境の中に硬直化の原因があるというふうに思っています。まあ経費自体に内在する問題としますというと、法律とか制度というのに基づいて、義務的に増加を余儀なくされる経費、いわゆる当然増経費というものがございますが、これに準ずるものとして、さらに物価の上昇とか所得水準の増加というようなものによって、経費の増加が起こっておるということ、もう一つは、いわゆる公共事業に見られるようにいろんな長期計画がいま策定されておりますが、この計画に沿って年々経費が増加していくと、こういう仕組みになっておりますので、この仕組みの運用を間違うと、これは硬直化の原因になる。こういうまあ大体三つの原因がもとになって、いまの財政の硬直化現象というものが起こっておるというふうに私どもは考えております。
  43. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これは昭和四十二年の十二月五日の五十七臨時国会においてでありますが、大蔵大臣は次のように言っておられます。わが国財政はこれまで急速な経済成長を背景に多額の自然増収をあげ、これで社会資本の拡充と社会保障の充実など、各般の施策を推進する一方、その一部をもって大幅な減税ができた。しかし、この間、歳出多きを求める反面、税負担をもっぱら軽きを望む気風を醸成されたことは、健全な財政運営の見地から憂慮すべきことであると言っておる。同じようなことを大蔵省の亘理課長も「金融」十二月号で発表されております。で、こういうことを言われておるんでありますが、私は具体的に大臣に聞きたいんですが、一体国民が求めることが健全な運営というものを阻害しておるのか、この点はどうですか。
  44. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 健全な何ですか。
  45. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 国民がいろいろ要求することが健全な運営を阻害するというようなことを大臣は言っておられたけれども、どうですか。
  46. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いや、そういうことを言っているんではございませんで、国民の財政需要についての要望というものの中には、この社会が政治、経済が進んでいくんですから、当然と思われる要望というものは非常に多い。しかし、これに対処する対処のしかたが問題でございまして、国民の需要が強いからといって、財政的な考慮をしないで、さっき申し上げましたような安易な気持ちでこの財政需要に応ずるということをやっても、成長期においてはこの自然増があり、結局その始末ができ、ことに年度の途中で二千億、三千億の補正予算ができるというような状態でございましたので、これになれて、漫然と財政を膨張させてきたということが、過去のあり方でございまして、たとえば極端に申しますと、本年度の予算がかりに十分でないと思っても、それなら一月からこういう経費を盛るというんなら、ことしの予算に響かないだろうというようなことで、この年度の経費を一月から増額するというようなことをやる。これは翌年度にこれが財政の大きい膨張となってあらわれるというようなことも、最近しばしばやっておったことでございますが、こういうようなやり方が重なったことが、やはりこの財政硬直化の原因をなしておることは事実だろうと思います。
  47. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 その臨時国会で大蔵大臣は、いま読み上げましたように、もっぱら税負担を軽きを望む気風を醸成されたことは、健全な財政運営の見地から憂慮する、こういうことを言っておられる。一体国民が減税要求をするということは正しくないのですか、どうですか。
  48. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは全くむずかしい問題になりますが、たとえば社会保障の問題、いまいろいろの審議会でもこれは討議されておりますが、この国費で支弁すべき社会保障、そうじゃなくて、社会保険として国民の保険料負担によって解決すべき社会保障、いろいろございますが、本来なら国民の社会保険料の負担ということで解決すべきものでございましても、これは国に自然増があるというような成長期の財政につきましては、そういうものを国民に負担させない、そうしてこれを国の税によって支弁するというようなことを行なうことによって、社会保障の体系というものが非常に複雑になって、いまこれを統一的に整理しなけりゃいかぬというようなところへ直面してきておるわけでございますが、その前には、やはり国民の負担すべきものと、国の負担すべきものというようなもののけじめが最初からついておれば、そういう先にいっての混乱は避けられると思うのです、が、そうじゃなくて、やはり成長期においてはこういうもののけじめをつけないで、負担はできるだけ軽くしておく、そうして国の負担を多くするというような財政政策をとったことは、これは事実でございますので、こういう風潮というものが、やはり三十年代の成長期にはっきりと見られておったことは事実でございますが、これが四十年代になり、過去のそういう成長が望めないというときになりましたら、こういういき方については、ここらで考えなきゃならぬという時期にようやくきておるんじゃないかというふうに考えます。
  49. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 私は、大臣ね、国民が減税を要求することは正しいのかどうかということなんです。大臣が臨時国会の演説で明確に言ってるから、それは正しくないのかということです。
  50. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 減税は、これもしばしば申し上げておりますように、たとえば国民所得が年々ふえていく、所得水準が上がるということになりますと、いまの日本の税制でいきましたら、これは所得税が非常に高度の累進課税をとっておりますので、そのままでもう増税につながることになりますので、国民としては所得税の減税というようなものを非常に強く希望いたしまするし、また、政府としても、これは当然税の調整をやって、増税にならぬように減税を考えなけりゃならぬということは当然だろうと思います。
  51. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 現在の国民の平均所得はどのくらいでしょうか。
  52. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 国民所得は三十六兆でございますので、一億国民として大体千ドル。
  53. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 租税負担率についてお伺いをしたいと思うのですが、標準世帯で、所得税、住民税合わせましてどの程度になりますか。それから諸外国のアメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス、こういった国際比較においてはどうなんですか。
  54. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) もしわが国の税法を適用した場合の所得税負担ということで、夫婦子供三人の給与所得者ということで、各国とも比較をやってみますというと、日本が五人家族の場合、平均国民所得百八十七万一千六百円、で、これに対する所得税額は十六万九千、負担率が九%、アメリカは五百七十九万九千六百円、所得税額が百六十一万三千四百円、負担率が二七・八%、イギリスが二百三十二万四千百六十円、税額が二十八万二千六百円、負担率が一二・二%、西ドイツが二百七十三万二千四百円、四十万五千円の税額、一四・八%の負担率、フランスが二百七十七万四千二百四十九円、税額は四十一万七千八百円、負担率は一五・一%ということで、この点から見ましたら日本の負担率が一番低いということになっております。  また、もし日本と同じように、夫婦子供三人の所得額が百万円の場合とかりにしたら、ほかの国はどういうふうになるかという比較をしますというと、夫婦子供三人で百万円の所得者の日本における所得税額は一万五千四百円、負担率が一・五%、イギリスが四万六百八円、負担率が四・一%、西ドイツが二万二千五百円で負担率が二・三%、これは大体国際比較になっております。
  55. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いま大蔵大臣が読み上げられた租税負担の率と、国際比較では、非常に日本が安いということになっておるのですが、私がいろいろと調べたところでは、そのようにはいっていないのでありますが、たとえば標準世帯五人で、いま百六十二万二千四百五円、この租税負担率の割合というものを聞いてみたいのですが、これはいま大蔵省でわかりますか、標準世帯五人で。これは一九六六年の統計に出ているのですが、この標準比較ではどのくらいの負担になるか、おわかりですか。
  56. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 百六十二万というのは、昭和四十二年度予算編成のときに、そのときに想定される平均所得で申し上げたのであります。先ほど大臣が仰せられたのは、四十三年度の平均所得の見通しに基づく百八十七万を申し上げたのであります。百六十二万二千四百五円の場合に、日本の税法で見ますと、税額は十三万六千八百円になりまして、その負担率は八・五%、それからアメリカの……。
  57. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 住民税は幾らですか。
  58. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 住民税は六万六千五百九十円となっております。それから同じ所得の場合、アメリカの税法でまいりますと四万六百八十円で、その負担率は二・五%、イギリスの税法の場合には十八万一千四百四十円で、その負担率が一一・二%、西ドイツの税法の場合には十四万四百円で、その負担率は八・四%、フランスの税法の場合には五万一千百七十五円で、その負担率は三・二%、こういう数字になっております。
  59. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そうしますと、いまの四十二年の平均割合でいきますと、いま国税庁長官のおっしゃられましたように、租税負担率の割合というのは、所得税八・五%、おそらく住民税は四・一%になっているのじゃないか。そういうことになりますと、一二・五%というのが日本での租税負担率ということになると思うのです。それで、アメリカ、イギリス、西独、フランス、いろいろ説明願ったのでありますが、はるかに日本が高いと思うのです。じゃ逆に、アメリカの平均所得と目される五百六十一万二千四百円、これでいった場合に、一体日本はどういう負担割合になりますか。
  60. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) アメリカの平均国民所得であります円換算五百六十一万二千四百円の場合、日本の税法では、税負担額が百五十七万六千九百円、この負担率は二八・一%、アメリカの税法を適用した場合には、七十八万一千二百円の税額で、負担率が一三・九%、イギリスの税法を適用しました場合は百六十六万千四十円、その負担率は二九・六%、西ドイツの税法を適用いたしました場合には百三十三万二千三百六十円、その負担率が二三・七%、フランスの税法を適用いたしました場合は七十万六千六百八十円の税額、負担率は一二・六%、こういうふうに相なっております。
  61. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 ただいま説明を願ったように、この日本の四十二年度の標準世帯で百六十二万二千何がしでいった場合には、はるかに日本の租税負担率は住民税を含めて高いと思うのです。これはお認めになりますか。
  62. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お話のように、先ほど申し上げましたのは所得税だけでございますので、日本の住民税をこれに加えますと、いまの負担率の二八・一%はさらに上がるわけでございます。同時に、外国におきましても、アメリカでございますと州所得税がございます。イギリスの場合には地方の所得税ございませんですが、西ドイツの場合にはやはり地方の負担がございます。それらを全部合わせてみた場合に、確かにアメリカに比べますと日本の負担率は高いと思います。しかし、これは平均国民所得に著しい差があるので、その点はやむを得ないことでありまして、イギリスと比べますと日本の税負担はそれほど高いものではないということが言えようかと思うのであります。
  63. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 確かにアメリカの場合は連邦所得税ないし州税というのがありますが、私の計算ですと一四・九%、少なくとも日本の場合は三七・六%の租税負担率になっておる。それからイギリスの五人世帯で二百六十一万円で計算をしてまいりますと、これは四十二年でありますが、その場合は一九・一%、日本の場合は二一%をこえると思います。それから西独の場合でも、二百六十万六千四百円の所得割りでいきますと、西独は一三・一%、日本の場合は二一・六%、フランスの場合は二百五十八万四千六百四十九円でいきますと大体五・八%、日本の場合は二一・何がし、こういうふうになりますけれども、これはどうですか。
  64. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お話のとおり、所得税と住民税、これのあるのは日本アメリカでありまして、ほかの国にはそういった所得に対する地方税があまりございませんので、そういう比較からいたしますと、いまおっしゃったとおりの数字になると思います。ただこれは、ごらんのように、わが国の平均国民所得が諸外国に比べて低い、そこに原因があるのではないかというふうに考えられるわけでございます。わが国の平均国民所得の場合の負担率と、諸外国の平均国民所得に対する負担率、こういう比較でいきますと、必ずしもわが国の負担率がそれほど高いということは言えないと思うのであります。
  65. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 税金の問題についてはあとでまた触れたいと思います。この辺にとどめておきたいと思います。  それで、大蔵大臣にお伺いしますが、この硬直化の真の原因というものは、下方の硬直性にあったのではないかと考えますが、その点はどうですか。下方硬直性によるんじゃないか。
  66. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは、おっしゃられるのは、制度の硬直性の問題でございますが、そうすればなかなかこれは簡単には切れないということになろうと思います。
  67. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 その具体的な例ですけれども、たとえば、予算をプレッシャー団体によって何か一定の調査費を設置をする、そうするとその後になってくるとだんだんだんだん予算がふえてくる。そういう一たん予算を設定をいたしますと、その予算は減額をされずにどんどんどんどん増大していく、こういう事例が幾つかあるわけです。あるいは、予算が余ったような場合に、各官庁では年度末になりますとから出張でどんどんどんどん金を予算だけは使ってしまう。そこには節約とかなんとかいうものは全然出てこない、こういったようなこと。あるいは、過去にわれわれは反対であったのですとか、無理をして一部農民に対して、農地報償制度とか、こういった名目のもとに金をくれてやった、あるいは引揚者団体に対する報償金的なものを支給した、こういった非常に結果的には自民党の選挙工作と目されるような、いわゆる圧力団体等のそういう要請によってどんどんどんどん予算というものを拡大をしていった、こういうところに私は今日の財政硬直化のおもなる要因というものがひそんでいるのではないか、こういうように考えますが、その辺はどうですか。
  68. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういう原因がないということは言いません。いままでそういう問題が相当積み重なってきておりますので、これも硬直化の原因になっておると思います。
  69. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 その財政硬直化の最大の危機というものは、大体池田内閣当時から、三十六年から高度成長という名目でもってどんどんどんどんと膨張政策がやられた、結局四十年度に参りまして赤字公債というものが二千五百九十億発行された、私は、この辺に非常な財政危機というものがあったのでありましょうけれども、当時は公債発行で乗り切った、こういうところに現在の財政硬直化を唱えなければいけないおもなる原因があったと思うのでありますが、実際はこの四十年でこういう危機はやってきたんじゃなかったかというふうに考えるのですが、その点はどうですか。
  70. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これはもう原因を探れば、これはどういうことでございますか、もう三十年代の初め、それ以前からもう硬直化の原因というものは醸成されておったということは言えようと思います。四十年になって公債政策を導入するということから、四十一年、二年、三年と公債費というものが当然にふえてきますので、これをこのまま行ったなら、やはりこれは財政の大きい問題になりますので、そういう点で硬直化の問題が特にいろいろ論議されてきたということは言えましょうが、しかし公債が出たから急にこういう現象が超こったという問題ではございません。
  71. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 四十年の田中蔵相時代でありますか、このときに、税調の答申を無視をいたしまして、配当分離課税というものを実施をいたしましたが、その分離課税を実施をする前とあとの状況は一体どういうふうになっておりますか。さらに、四十年以降、利子配当に対する特別措置減収額ですね、これもあわせて説明を願いたいと思うんです。さらに、農地被買収国庫債券——これは農地報償による交付国債でありますが、これらの償還状況、こういうものについてひとつ説明を願いたい。
  72. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お話のとおり、昭和四十年度に配当所得につきまして課税の特例を設けたわけであります。それによる減収額は、昭和四十年度が三百三十四億円、昭和四十一年度が三百三十億円、昭和四十二年度の見込みが三百十億円、それから四十三年度の見込みといたしましては三百二十億円、こういうことに相なっております。
  73. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 こまかく聞きたいと思うんですが、利子所得の分離課税についてはわかりましたが、少額貯蓄利子の非課税、それから配当所得に対する課税の軽減、それから有価証券の譲渡所得の非課税、これの四十一年、二年、三年の内容おわかりですか。
  74. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 先ほど申し上げた数字が配当所得の分離課税の特例による減収額でございます。お尋ねの少額貯蓄の——元本百万円まで、少額貯蓄の利子が非課税になっておりますが、それによる減収額、これは三十八年度から設けられておりますけれども、最近で申し上げますと、四十年度で四百八十五億円、四十一年度で四百億円、四十二年度の見込みが五百億円、四十三年度の見込みが五百十億円、それから利子所得の分離課税と、それから本来二〇%で源泉徴収すべきのに対しまして、以前は一〇%、昨年から一五%に増徴することになっておりますが、それにいたしましても軽減税率になっておりますので、それによる減収額を見ますと、四十年度が百三十億円、四十一年度が二百七十億円、四十二年度が二百三十億円、四十三年度の見込みが二百六十億円、このようになっております。なお、有価証券の譲渡所得の非課税の見込み金額は、四十年度が七十億円、四十一年度が三十億円、四十二年度が三十億円、四十三年度は有価証券の非常に値下がり傾向が見られますので十億円、こういうふうに見込んでおります。
  75. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 あれはどうですか、農地被買収の国庫債券。
  76. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) お答え申し上げます。  農地被買収者の債券は、当初千四百億円程度と見込んでおりましたが、その後申請を打ち切りましたところで大体千三百億円台になったと記憶しております。これは、その翌年度から十分の一ずつの償還をいたしますから、その翌年度においては百三十億円程度の当然増的な要素になるわけでございます。しかし、四十年度を転機とするいわば経済の成長条件の変動と、にもかかわらず財政の過大な期待ということから生ずる硬直化の現象というのは、むしろもっと大きな要因があるのでございます。先ほど大臣もちょっとおっしゃいましたけれども、現在の日本の財政の構造を分析いたしますというと、義務的な経費と称されるものが約六割を占めており、その上に準義務的なものまで加えますというと、財政の中の九割は財政当局がコントロールすることが非常に困難な経費なわけでございます。しかも、その義務的な経費の膨脹圧力というものが従来と同ようなイナーシアをたどっているわけでありまして、四十一年度までは毎年六%ぐらいずつ予算全体を膨張する力として働いておったのでございますが、四十二年度にはそれが八%台になり、四十三年度にはそれが実に一三%をこえる膨張圧力となって働いている。他方、公経済の原資になる収入の面におきましては、経済全体の成長条件の変動によるところの先細りの状態にあるというところから、硬直化というものの打開を何とかはかっていかねばならぬという基本認識が生れてきた、こういうふうに御理解を願いたいと思います。
  77. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いま説明を願ったように、利子配当等に対する特別措置の原資というものは、年々一千億円をこえておりますね。こういう不当な税制上からくる減収というものに対しては、非常に問題があると思うのですが、これは過日——去年の五十五国会じゃなかったかと思いますが、佐藤総理もそういうことを認めて、こういうものは早期に改廃する、いわゆる廃止をすべきじゃないかというような趣旨を言われた記憶があるのでありますが、大蔵大臣、その点はどうですか。
  78. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 御承知のように、昨年この問題を検討いたしまして、改正することにいたしました。戦後、日本の復興のために資本蓄積が非常に大事である、何をおいても生産力を増強しなければというような政策目的から、貯蓄についての優遇という特別措置をとったわけでございますが、現在その必要があるかないかというのが、これを廃止していいかどうかということのきめ手になるのじゃないかと思いますが、まだ私どもは、日本が資本を蓄積する、そうして大衆の預金を優遇するという措置は、いまのところすぐ一挙にはとれない、こういう認識のもとに、昨年は税額を五割引き上げるという措置をとったのでございますが、あと二年期間がございますので、いままでやった措置の効果を十分見ながら、この二年間に次のこの問題に対する措置をきめよう、こういういま立場でやっておる、効果をいま見守っておるという段階でございます。
  79. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 この四十年に、二千五百九十億の赤字公債、これを発行したわけでありますが、その後これに見合う節減はやっておりますか。
  80. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 四十一年からは、もちろん赤字公債は出しません。出す公債は、財政法四条によるいわゆる建設公債、しかも市中で消化する公債ということを原則とした公債を発行し、これによって必要な公共事業の推進をはかっておるということでございまして、現在は四十年度のような財政不足を補てんする赤字公債というものは出しておりません。したがって、現在の出しておる公債は、これは社会資本の充実という要請に沿った仕事に生きて使われているということでございます。
  81. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 当時四十年に、公債発行財政特別措置法というものを立法化して実行したわけでありますが、これは当時われわれもいろいろと問題にいたしまして反対をしたわけでありますけれども、これは明らかに財政法第四条違反じゃないかと思うのですが、それは大蔵大臣どうですか、ちょっと確認しておきたいと思います。
  82. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これははっきりとした国の歳入不足を補てんする公債と銘を打った公債で、特別の法律によって出した公債でございますので違反ではないと思います。
  83. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 その現在の国債の発行割合ですね、さらにこの市中消化——四十二年度と四十三年度のですが、この状況について説明を願いたいと思います。
  84. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 四十二年度は御承知のように一千億円公債の発行が残っておりましたが、これは三月末に全部切りをつけました。経費の不用、それから増収というようなものによって、二百億円公債の発行をさらに減額する。そうして資金運用部が五百億円引き受ける。そうして市中消化分が三百億円ということで国債の処理をつけました。そうしますというと、当初八千億円の予定が、七百億円昨年の夏に削減し、さらにこれが二百億円削減されましたので、九百億円の国債の削減ということになりまして、七千百億円、そうすると、七千百億円のうち千億が資金運用部の引き受けでございますので、市中消化は六千百億、これが四十二年度の最後の実績でございます。四十三年度は、これは六千四百億の公債発行、資金運用部が五百億円引き受け、市中消化を五千九百億円という予定になっております。
  85. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 過日の日経新聞に、四十二年度の残に対しましては、結局資金運用部で二百億ですか、これを引き受けるというようなことがあったのですが、それはそういうことになるのですか。
  86. 鳩山威一郎

    政府委員鳩山威一郎君) お答え申し上げます。ただいま大臣から御説明申し上げましたように、本年の三月末日——三十日の日に資金運用部が五百億円を引き受けました。
  87. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そうすると、それは六千百億の中に含まれているわけですね。
  88. 鳩山威一郎

    政府委員鳩山威一郎君) 六千百億は市中の引き受けた分であります。そのほかに資金運用部が五百億、それからその前に資金運用部が五百億円引き受けておりましたので、全部で資金運用部は千億であります。
  89. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 銀行扱いどれくらいですか。
  90. 鳩山威一郎

    政府委員鳩山威一郎君) ただいまの六千百億と申しますのは実額でございまして、額面に直しますと六千二百億になります。それで、六千二百億円のうち一割相当額が、これが証券会社が引き受ける分でありまして、残りの九〇%が、銀行だけではございませんが、各、シ団、証券会社以外の生保等も含めました機関が総額として引き受けておるわけでございます。
  91. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 この二千五百九十億の公債発行のときに、当時の福田大蔵大臣は、この公債、発行によって減税措置をとったり、家計——生活を豊かにしたり、社会資本を充実させたり、非常にいいことを言っておったのでありますが、現状国債政策は行き詰まっておるのじゃないかと思うのですが、大蔵大臣どうですか。
  92. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 国債発行のときに、財政制度審議会からも答申もございましたし、またいまの福田大臣が発言されましたように、この国債発行は私は意義があったと思う。そうでなければ、国民の負担がもっとふえますし、また、国民の蓄積を利用して、そうして長きにわたるこの国民経済に効力を持つ公共事業を進めるというようなことは、日本経済にとって当面必要なことでございますので、この要望に沿って国債政策は導入されたということは、私は間違っていなかったと思います。ただ公債を発行する最初のときに、この発行によって、そのうち三千億を減税に充てるというような措置をとりました。本来なら、もう歳入が不足のために公債を発行するということまでやったときでございますから、公債発行によって、そのうちの三千億を減税にさくというような措置がよかったか悪かったかは、いま考えて若干問題であるかもしれないと私は思っております。そのために、もしそうしなかったら当初の出発が四千億円前後の公債発行で済んでいたということになろうと思いますが、減税をやるために七千億の公債から出発したということがやはり現在まで若干尾を引いておりまして、一挙にこの公債を減らすということがなかなかむずかしいという原因をつくっておるのでございますので、いまできるだけこの公債の依存度を下げて、そうして額も下げていくということに私どもは非常に骨を折っておりますが、公債政策が破綻したというような問題ではこれはございません。当然公債の依存度を下げるという必要があったので、現在下げておるということでございまして、公債を出したことが失敗だったというふうには考えておりません。
  93. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 時間もありませんから先に進みますが、硬直化要因の項目別削減内容と申しますのは、この「ファイナンス」でも亘理課長がいろいろと論文を書かれておりますが、こういう各項目については削減をしなければいけない、そういうふうなことを言っておるのですが、その項目別削減内容というのを一つお示し願いたい。
  94. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これはむずかしい問題で、正確にちょっと計算は困難だと思います。要するに、本年度の予算の規模を圧縮するとか、あるいは公債の依存率を下げて経費を削減するとかいうようなことをやりましたので、これが予算の全項目に結局査定としてはあらわれておりますので、もしこれをやらなかったとすれば、本年度は各省の要望でも六兆何千億という要望をここまで縮めたのでございますから、この査定をしないというと、各項目の予算は相当膨大になったであろうと思われますのをここまで縮めたということでございますので、各項目別にその硬直化を考えて削減した予算額が幾らかという正確な数字を計算するのはちょっとむずかしいと思います。
  95. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 「ファイナンス」のナンバー7でありますが、十一ページですね、亘理課長は「財政硬直化の傾向とその帰結」、こういう中で具体的に数項目をあげられてやっているのですね。その内容をひとつ御説明願いたいと思います。
  96. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) この硬直化対策というものは、われわれは去年からいろいろと考えたわけでございますけれども、その対策としては二つある。一つは、要するに、先ほど申し上げましたように、客観的な経済情勢が変わってきておる。三十年代のように非常に恵まれた国際、国内的な成長要件というものが今後はなくなっていくと、そうした中において財政への過大な期待というものは従来どおりに存続する、あるいはそれが強まっていくというところに硬直化の大きな危険というものがあるわけでございますから、したがって、まず第一の対策としては、その財政に対する過大な期待のイナーシアを断ち切るというのが第一歩として一番重要である。第二には、この十一ページから十二ページに書いてございまするところの国債費であるとか、あるいは地方財政の経費であるとか、あるいは人件費であるとか、あるいは社会保障的な経費であるとか等々の制度的に義務づけられました諸経費について、もっと伸縮性を得させるように制度自体の根本的な検討をいたす。この二つが硬直化打開というための対策としてわれわれは予定したわけであります。御存じのように、この第二の制度の硬直性をほぐすという問題は、これはすべて法律の改正につながってくる問題であります。したがって、われわれがあまりに早急に一方的な結論を出しましても、これは大方の御賛同を得るというのにはなかなかむずかしいと思いまして、この問題については財政制度審議会に引き続いて昭和四十三年度においても十分な審議をしていただき、そうして慎重に結論を出していただく。四十三年度予算におきましては、従来のそうした財政の過大な期待というもののイナーシアを断ち切るということを念願したわけでございます。総合予算主義の問題であるとか、あるいは補助率の抑制の問題であるとか、あるいは人員等の整理の問題であるとか等々のそうした一連の問題につきまして、四十三年度予算というものはいままでどおりの過大な期待を財政にかけても財政はその負担にたえないということで、三十年代における公共事業も社会保障も、あるいはさらに減税もというふうな、そういうことをやっていけないということを予算の上にあらわそうと、こういうことで対策を立てたわけでございます。したがって、この十一ページから十二ページに書いてございまする諸制度の根本的な検討というものは、今度の予算におきましては、ほんの少数の点を除きましてあまり出ておりません。むしろ、先ほど大臣がおっしゃいましたように、従来と同じような考え方で、財政に対する需要の増大を放置しておくとどうなったであろうかということに対して見れば一体どの程度の削減が可能になったかということを、まあ、取り上げてみれば、言えるかと思うのであります。たとえば国債費にしましても、ことしの一四%という程度の実行依存率というものを来年度も続けるとしますれば大体八千億ぐらいになろうかと思うのでありますが、それに対して六千四百億の発行に押えたということは、千六百億の今後の公債費にたとえば六分五厘の利息が出ても百億になると思いますが、そういうものが削減されたということが言えましょうし、あるいはまた、公共事業費につきましても、現在ありまするところの五カ年計画というものを平均的に伸ばしていくとしますと、毎年一四%ぐらいの伸び率で運んでいかなければならぬ、こういうことに相なるわけでございます。それに対して来年度は七%に押えたということでありますれば、大体七百億ぐらいの縮減がされたと、こう言えるのではないかと思うのであります。あるいはまた人員等につきましても、従来この五年間の実績をとってみますと、毎年一万三千人ぐらいずつの増員が行なわれております。これが来年度は非常に数は少ないのでありますけれども、六百三十一人という逆に減少をしたわけでありまするから、一万三千人ふえたとすれば百三十億円程度の人件費の増加があったところが、それが逆に減少になったと、まあこういうふうに、取り立ててみますれば、ある程度の項目別の削減の経費ということを申し上げられるかと思うのでありますけれども、この十一ページから十二ページに言っておりまするところの国債費等々につきましては、医療保険の問題にしましても、地方財政の問題にしましても、これから財政制度審議会において制度自体の検討をめぐって、その結論を待って、さらに削減を加えて、財政の伸縮性なり弾力性というものを確保すると、まあ、こういう段階にあると御理解を願いたいと思うのでございます。
  97. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 私は、非常に政府が財政硬直化で困っておるんだと、何かそれを打開しなければいけない、そういうために総合予算主義をとっていくんだと、こういうふうなことをいろいろお題目としては言っているのでありますが、実際の予算編成期においては、いま主計局長がおっしゃられたように、全然制度上の改善とかチェックとか、そういうものはないんじゃないかというふうに考える。いまいろいろと説明をなされたようでありますが、この「ファイナンス」にも六項目程度のいろいろな要件がありまして非常にりっぱなことを言っているのでありますが、制度上当然増となるようなそういう制度上の改廃について具体的にやられたものがございますか、どうですか。
  98. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) 先ほど申し上げましたように、国債費については結局、国債の発行を抑制していくということでございます。人件費につきましては、要するに、行政の中間経費と申しますか、今後の機構改革それから人員の抑制、さらには三カ年間五%削減ということをわれわれは計画を立っておりますけれども、これなどがあろうかと思います。地方財政の問題になりましては、ことしは交付税率そのものを、地方と中央との財源配分の根本的なあり方についてはまだ結論を出しておりません。むしろ地方財政がもっと財源があるべきであるというような御議論も衆議院、参議院を通じての国会ではいろいろ審議、御意見を賜わったようでありますけれども、そうした中にあって中央、地方の事務配分をどうするか、その事務の重複性をどう整理するか、そうしてあるべき事務配分に即応して交付税率をどうきめていくかというふうな問題は、これからもっと慎重に議論をしていただいて、大方の御賛同を得ないというと、われわれが一方的にいたしましてもおしかりを受けるだけで、何ら結論まで実らないような状態でございます。医療保険の問題にしましても、現在、厚生省で医療保険制度の抜本的な検討策を立っておりまするが、これと並行しまして、財政制度審議会におきましても慎重な審議をしていただきたいと思っております。そのほか、五カ年計画のあり方等々につきましても、今後、さらに十分な諸方面の御意見も伺い、そうして世間の皆さんの御同意を得るような結論にまで持っていきませんというと、早急に制度自体を改善し、それに基づくところの法律案の改正を上程して御審議を賜わるというところまでは達していないというのが状態でございます。したがって、財政の硬直性の打開という問題は、ただ単に第一歩を踏み出したということでございまして、今後さらに非常に険しい数年間の努力をしなければならぬとわれわれは思っております。
  99. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いろいろと説明をされますけれども、結果的には、私は、今回の財政硬直化の打開、総合予算主義、こういうものは、一つは食管処理、いわゆる生産者米価を押えつける、こういうものと、一つは、公務員賃金を初めとして労働者全体の賃金抑制策をとるいわゆる所得政策というものを導入していく、こういうことに尽きるのじゃないかと思いますが、大蔵大臣どうですか。
  100. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 当初予算を組むときに、とにかく三千億円以上になる補正要因をそのまま残して組むというやり方は、これは財政運営から見て大きい問題でございまして、従来はそれが年度の途中で自然増によって補正ができたというために、慣習的にこういう予算の組み方が行なわれておったのでございますが、まずこういう点から直すことが一番必要でございまして、一歩を踏み出すその一歩として、あらゆる見込み得る歳入を当初全部見込んでしまう、目一杯見積もる、そうしてあらゆる財政需要を全部網羅して、一番最初に優先度、あるいは均衡をとるということをやって、そうして、もう年度の途中においては予算を補正しないと、こういうやり方をやることがやはりこの硬直化打開の一歩であるというふうに考えまして、今回こういう措置をとったのでございます。これはやはり今度の措置としては大きいことでございまして、いままでやらなかった予算の編成のしかたを今度踏み切ったということでございまして、私は、非常にこれは意義のある措置であるというふうに考えています。今年度まずこういう措置をとったことは確かに一歩を印したということになろうと思います。
  101. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 予備費の使い方について質問をしておきたいのでありますが、予備費というのは予算の範囲に入ってないのじゃないかというふうに考えるのですが、したがって、この予備費をふくらましていくということは、きわめて慎重でなければいけない。ところが今回、公務員賃金のベースアップあるいは米価の問題、こういうものがそういう中に包含をされておる。こういうことになっておると思うのですが、これは全く財源対策だけにとどめるべきであって、政策的なものはその中に含まるべきじゃないと思うのですが、この点はどうですか。
  102. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 予備費は、あらかじめ予見のできない予算の不足に対するものでございますから、何が幾らということをあらかじめ算定できないもののために設けてある項目でございます。したがって、今度のように、年度の途中でとても自然増というようなものは見込めない、もう年度の途中で予算の補正もむずかしいというふうな予算の組み方をいたしますときには、できるだけいろいろなことを考えまして予備費を充実しておくことが必要だと考えまして、経費の節約とか、あらゆる努力を払って予備費の充実をはかってあるということでございますので、いろいろな予見しない問題が起こりましても、この予備費の中で私どもは解決をしたいという考えを持っております。
  103. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大蔵大臣はいままでの答弁の中でしばしば言われておりますが、絶対補正予算は組まないということは言ってないようでありますね。補正予算を組まないように努力はいたします、しかし、特定災害等が発生した場合においては、それは組む場合があり得るというようなことをにおわしておるのでありますが、そういうことになりますと、予備費の設置、いわば使い方、こういう問題についてはあらかじめ明確に政策の御設定をして、国民の前に明らかにしていく必要があるのじゃないかと考えるのでありますが、その辺はどうですか。
  104. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 予見できないもののための予備費でございますから、何と何がおそらくこの予備費によって支出されるであろうということは、これは明確には申し上げられませんが、いま考えられますことは、たとえば人事院の勧告、これは事柄としては予見できますが、金額の予見はできないというものでございますが、いずれにしろ、事柄としては予見できますので、この人事院の勧告が出たという場合に、公務員の給与費の処理はこの予備費でされるということは、これはあらかじめ考えられることでございます。それから、例年の例によりましても、災害というものは予見できませんが、災害が起こったという場合には当然この予備費をもって処理をするということになりましょうし、また、義務的経費の精算というようなものが従来ございましたが、できるだけこれが当初予算の中でいろいろ考えられるものを見るということにして、この予備費をできるだけ多く準備して充実させておこうという趣旨でやりましたので、考え得るいろいろなことが起こまりしても、今年度の予備費で十分私は対処できるのではないかというふうに考えております。
  105. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 総務長官の関係で、ちょっとこの問題を離れますが、質問をしておきたいと思うのでありますが、四十三年度の家計調査での独身の場合、あるいは二人世帯、五人世帯、この場合での食費、住居費、光熱費、被服費その他こういうことでの生計調査の内容がどういうふうなことになっているか、それが第一点。それから、課税最低限の問題について関係をするわけでありますが、四十三年度の現在独身者あるいは二人世帯、三人、五人、こういったものの基準生計費といいますか、この内容についてちょっと御説明を願いたい。
  106. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えいたします。  総理府の統計局でもって実施いたしております家計調査は、最近の経過といたしまして、昭和四十二年の平均までを調査いたしましたが、四十三年度見通しにつきましては、総理府の統計局ではまだわかっておりません。  なお、この家計調査の問題は、同時に、ただいまの御質問は、大蔵省の免税点の決定に基づきますいろんな標準生計費の問題とも関係があることだろうと存じますが、なお、詳細な詳しい点は統計局長からお答えをいたさせます。
  107. 岡部秀一

    政府委員(岡部秀一君) ただいま長官からお答えいたしましたとおりに、四十二年度のはできておりますが、四十三年度のはまだできておりません。
  108. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それで、予備費の問題について再度またお伺いをしたいと思うんですが、今後大蔵大臣は補正予算を組まなくても済むと、こう考えているわけですか。
  109. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 補正予算を組まなくて済ませたいと思っております。
  110. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 一つは、公務員賃金の引き上げ等についても、政府が考えておるような金額でおさまるという保証はまず私はないと思う。たとえば生産者米価についても私はそうだと思う。ことに過日スハルト大統領が参りまして、インドネシアに対する経済援助、これを政府が六千万ドル約束をしている。しかし、スハルトが来日し、これが六千万ドルを上回るというような話が大体新聞では固まったと言う。しかし、国会中でありますから額についての明言はかんべんしてもらいたい、こういうような趣旨だといったようなことも載っておるのでありますが、経済援助資金がかりに予定される六千万ドルをこえたものになる、こういった条件が出てきた場合には、これも予備費から流用してやれるのか、こういう問題については一体総体的にどういうように考えておるのですか。
  111. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) インドネシアの援助はいままで輸銀を通してやっておりますが、そうしますというと、輸銀でその緩和された条件の援助をするということばむずかしゅうございます。したがって、条件緩和に役立つように、昨年は千万ドルのグラントというものを別にインドネシアに提供して援助するというような措置をとりました。この金は予備費から支出されました。しかし、こういうことは非常に好ましいことでございませんので、本年度からそういうことがなくて済むようにというので、インドネシアへの援助は海外経済協力基金を通じて行なうという、いまそのための法の改正を国会に提出して御審議を願っておる、こういうことでございますので、その範囲内において、この予算の範囲内において各国の経済援助をするという方針でございますので、今年度からは、たとえばインドネシアの問題が起こりましても、一般会計の予備費からこれを支出するというようなことはしないつもりでございます。
  112. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 人事院総裁来ていただいておると思いますが、だいぶ待たして申しわけないのですが、この公務員賃金は、結局、人事院が設置をされたというのは、国家公務員労働者がストライキ権を剥脱されたその代償として人事院というものができて、少なくともその人事院の勧告については労使双方を拘束をする、こういうことになると思うんです。今回のように予備費でもってあらかじめ公務員賃金が抑制をされて、こういう形で予算が組まれてしまう、こういうことになったら、人事院の存在価値というものは私は失われる。同時に、国会における修正権なり予算審議権、こういう問題についてもあらかじめ政府は拘束してくることになるんじゃないか。そういう人事院の問題についての考え方について一つと、それから、後段の問題については大蔵大臣にお伺いいたします。
  113. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私ども公務員給与の勧告を担任いたしております立場のものとしては、公務員給与を適正ならしめることそれ自体は絶対の要請であるという信念を持っているわけでございます。いまお尋ねの問題は、先ほどから大蔵大臣との間に質疑応答もありましたけれども、私どもとしては、これは財源上の対策として今回予備費においてその財源を補充していただいたというふうに考えております。これはその意味では前進であろうと思うわけでございます。したがいまして、私どもの今後の勧告に対する態度といたしましては、従来どおりの方式をもって従来どおりの態度を堅持しつつ勧告を申し上げ、そうしてその勧告がどう出ますか、そのときの次第によって、これが完全に実施されますように、これはあくまで例年どおり力を尽くしてお願いしようという気持ちでいるわけでございます。
  114. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私どもは人事院のために非常に考えてこの総合予算主義をとったというふうに思っております。もしこういうやり方をしなかったら、本年度のごときは、年度途中で予算の補正をやるような余裕というものは全然見込みはないときでございますので、人事院総裁がいかに勧告しても、政府がゼロ回答しかできないというような事態に追い込まれることもあり得ますから、これをおそれて年度の当初予算において相当の準備をしたということでございまして、人事院を拘束するどころではなくて非常に人事院の立場を考えた措置をとったつもりでおります。ですから、衆議院のほうの予算委員会における人事院総裁の答弁を聞きましたら、心理的圧迫をいささかも感じなかったと答弁をしておりますが、まさにそういうことだろうと私も思っております。
  115. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いろいろこの問題については経済団体あたりからも問題があったようでありますけれども、結局、たとえば公務員賃金の分として五百億あるということになれば、それであらかじめ決定される。そういうことになれば、かりにそれ以下のベースアップのような場合は、これはその五百億を使ってしまえ、いわば逆の硬直性を持つ。から出張のような、予算が余ったからから出張に使ってしまえというような、そういう逆の意味のそういうものも出てきはしないかという心配がありますが、ことに予算の運用は弾力的でなければならないと再々大蔵大臣は言うのですが、そういう意味においては、全く逆の硬直性を持つ、こういうふうに考えるのですが、その辺はどうですか。
  116. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) とにかく政府の誠意に出た措置でございますので、これは人事院の勧告があるという場合には、万全の努力をする、最善の努力をするというつもりでございますので、御心配はないと思います。
  117. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 農林大臣にお伺いをしたいと思うのでありますが、今回の総合予算主義でもって米価の問題が非常に大きな問題になっているわけですが、結局、今後生産者米価というものは上げなければいけない、諸般の経済情勢からそういう状況になってくると思うが、そういう点についてはどうお考えでございますか。
  118. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 生産者米価は、私どもは、御存じのとおり、食管法三条の規定に基づきまして買い入れ価格をきめております。したがって、労務費あるいは資材費等値上がり要素がありますれば、上がるということもあると思います。こういうふうに考えております。
  119. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 ただいま人事院のほうの回答を聞いたんですが、同じような立場に米価審議会もあると思いますが、従来米価審議会というものは、生産者、消費者あるいは第三者——中立、こういったものが総合的に公平さを保持した形で構成されておったのでありますが、それが今回は、この売り手、消費者を排除する、こういうような形で審議会というものがつくられる、こういうことについて、私は、これは商法の慣行から言ってもおかしいのじゃないかと思うのですが、農林大臣はこういう点についてどうお考えですか。
  120. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 米審の構成につきまして、生産者、消費者等加わっていないで発表になっておりますことにつきましては、いろいろの御議論のあることはすでに私どももよく存じております。また、国会を通じましてもこの御議論はしばしば出たわけであります。ただ、生産者、消費者の意向が反映しないではないかという点につきまして、もちろん、そういう点もありますが、同時に、それはいかなる形で反映をすべきかという、こういう方法論の問題も一つございます。いま一つは、米審の構成につきましては、国会におきましてもいろいろ御議論がございまして、各党間におきましてこれを十分協議したいという御意見も出ておりますので、それらを見まして、私どもは、米審としては運用の適切をはかってまいりたい、こういう考えであります。
  121. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 この食管法で米価の二重価格制というものが確保されていると思うのですが、こういうものが実質的に今回の総合予算主義によってこわされやしないか、こういう心配がありますが、この点はどうですか。
  122. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 確かに、財政の関係から補正を組まない総合予算制というものをとっておられる。これは私ども政府立場において十分存じております。同時に、国会において御審議を願っておる。ただ私どもは、米価の決定、買い入れ価格、また、消費者に対する売り渡し価格、これは現行の食管法に従って私どもはこれをきめてまいる、この態度は当然のことであります。したがって、ある意味においての二重価格制であることは十分存じておりますが、当然これはこの総合予算制という中で、それから両者の価格が正常の形でもってやられるような形において、やがて私どもは審議会等の意見も十分聞きながら、決定を具体的にやってまいりたい、こういう考えでおります。
  123. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 厚生大臣にお伺いをしておきたいと思いますが、今回のこの国立療養所の特別会計移行措置等の問題につきまして、現在、国立療養所が全国でどのくらいあるか、この問題についてお伺いをしたい。  それからもう一つは、厚生省設置法による国立病院と療養所の性格、規定の問題ですね、これは根拠法規を示してひとつ説明を願いたい。
  124. 園田直

    国務大臣(園田直君) 療養所は、結核療養所が百五十三カ所、精神療養所が六カ所、脊髄療養所が一カ所、このほかに、らい療養所が十一カ所ございます。  療養所と病院の設置法の規定は、療養所のほうは、特殊な治療をやって医術の向上に資する、国立病院のほうは、一般病院の治療をやって医術の向上をやっていく、こういうことになっております。
  125. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 非常にこの問題は重要な問題でありますから、あとで委員会等で詳しくやってまいりたいと思いますが、今回この特別会計に移行したというその移行理由は一体どういうところにあるわけですか。
  126. 園田直

    国務大臣(園田直君) 療養所は、御承知のとおり、主として結核療養の補てんとして戦後やってまいりました。逐次この成果はあげてまいりましたが、御承知のごとく、戦後の陸軍の建物あるいは施設等を受け継いだものでありまして、非常に施設が老朽してまいりました。これを一挙に近代化の設備を施すためには、いまのままではなかなか困難ではないか。それからもう一つは、さらに結核療養のほかに、心身障害だとか、あるいは筋ジストロフィーとかいう、そういう長期慢性の特殊な治療の設備をする必要も出てまいりましたので、財政に弾力性を持たせ、早急に近代設備をやるために特別会計に切りかえたわけでございます。
  127. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 文部大臣にちょっとお伺いしておきますが、現下、大学での受託研究等の問題について、受託研究費の取り扱い、制度上の問題、こういう問題についてお伺いしたい。
  128. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お答えいたします。  国立大学における外部からの試験研究調査の委託には、形の定まったものと随時のものとあるわけでございます。形のきまったものとしましては、各種病院等における各種の検査料とか手数料とかそういったものがおもでございますが、これは国立の学校における授業料その他の費用に関する文部省令でございます。その規程によりまして、額及び徴収の方法について文部大臣の承認を得て、受託の規程というものを定めております。それによって取り扱っているわけでございます。また、随時の、形のきまらないものにつきましては、その受託の内容はそれぞれ違っておるわけでございます。かつ、これを予測することも困難でございますので、いま申しましたような特別な受託規程というものは定めておりません。この形のきまったもの、しからざるもの、いずれの場合におきましても、毎年、受託に伴う経費が毎会計年度の歳入歳出予算に計上せられておるわけでございます。これが予算計上にあたりましては、受託側の研究題目、金額等を大学が検討いたしまして、受託の数の判断をいたしまして、その上で文部省に概算の要求をすることになっております。このような概算要求に基づきまして、文部省といたしましては、毎年度予算に、歳入歳出それぞれ予算を組んでおる次第でございます。研究委託に関する予算は、いま申しましたように、すべて歳入歳出予算をくぐって、そうして適正に経理されることになっておるのでございます。  次に、受託研究費の契約につきましては、国立学校に委任して設置いたしております契約担当官——国立大学の事務局長が当たっておりますが、目的、経費、研究報告、権利の保存、危険負担等を内容とした受託契約を締結いたしまして適正に行なうことにいたしております。また、受託に伴う経費の算定にあたりましては、受託に伴う必要な所要額を算定いたしまして、たとえば実験設備費とか、消耗品費とか、旅費とか、光熱費、材料等、それぞれ算定いたしまして適正額を徴収することになっておる次第でございます。
  129. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 企画庁長官にお伺いしておきますが、知事会等の問題ですが、今後、東北開発等についてどういう一体構想をお持ちですか。それから北東開発の特利の問題ですね、一体どの程度になるのか。
  130. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国全体が経済成長をしております中で、東北がいまのような状態にあるということは、非常に私ども申しわけないことだと以前から実は思っておりまして、それで、たまたま知事会の提案も非常にいい提案だと私は思っておりますが、昨年就任早々伺いまして、できるだけそれを将来の施策に取り入れていきたいと考えております。さしずめ、今年度ではまず、東北開発会社が御承知のような状態でございますから、この再建を続けるとともに、何か前向きに、私企業ではなし得ない、しかも、県だけでもなし得ないといったようないい仕事を、公共性のあるものをさがして、それを今後の東北会社の使命の一つとしていきたい。他方で重荷になっておる資産はできるだけ売り払って再建を進めていきたいということが一つであります。  それからもう一つは、北東公庫に特利を設けて、とにかく東北というところは土地も労働力も水もございますから、何かよそと違った優遇措置、いわゆるインセンティブがあれば企業が来やすいのではないかと、こう考えたものでありますから、その地方に限って一定の範囲で少し安い金利で貸し出しができるということをしたい、こう考えたわけであります。この点は予算編成に際しては、大蔵大臣とは基本的に了解点に達したわけでございます。  そこで、どの程度の特利を設けるか、それから、どの地域の範囲でそれを適用するか、及び、どういう業種について適用するか、その三つの点について大蔵省等々とただいま折衝を続けておりますが、多少時間が長引いておりますのは、特利というようなものはめったに例がございませんので、一ぺんやりますと、結局、将来よそに波及して、特利が特利でなくなってしまうということに非常になりやすうございますので、そういう特色が将来東北に向かって残るように、それらの三つの点について、ただいま協議を続けてみるところでございます。できるだけ早く結論に達して、年度が改まりましたので実施に進みたいと思っております。
  131. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 最後に、税金の問題について二点ほど、時間がありませんから簡単にお伺いしますが、配当所得の課税最低限について、課税最低限は幾らになっていますか、この点。
  132. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お答えいたします。  御承知のとおり、日本の税法では、法人税は個人所得税の前取りと観念いたしております。したがって、配当所得だけの場合におきましては、四十三年度の見込みでは、二百三十六万円までは申告不要ということになるわけでございます。
  133. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 給与所得、事業所得、こういった場合のいまの配当所得の最低限を税をかけるとすればどのくらいあるんですか。
  134. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 給与所得の場合におきましては、四十三年分でございますと、八十万八千六十三円ということになります。それから事業所得者の場合でございますと、白色申告者で専従者がない場合におきましては、五十六万三千二十二円、それから青色申告者で配偶者一人が専従者であるという場合におきましては……。
  135. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 いや長官、私の聞いているのは、配当所得の課税最低限二百三十六万というやつを、それを給与所得者として所得税と住民税をかけた場合に、一体、税金はどのくらい納めなくちゃいけないのか、それから事業所得の場合には、どの程度納めるのか、そのことを聞いている。
  136. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 給与所得の場合でございますと、所得税で二十七万九千円の税額となります。事業所得者の場合でございますと、所得税で三十五万四千円という数字になります。
  137. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そのように非常に税が不公平にいっていると思うのです。少なくとも、税制のたてまえは公平原則が絶対であって、いまのように配当所得の課税最低限は二百三十六万に対して、これは全くゼロですね。こういった、いわば不当な特別措置等の問題については、早期に改廃する必要があるのじゃないかというふうに考えます。そのことが一つ。  それからもう一つは、今回、間接税の増徴にいっていますけれども、もっとやはり所得税自身の内容検討というものが必要じゃないかと思うのですが、この点は一体、大蔵大臣どう考えておりますか。
  138. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま、法人というものはどういうものであるかという問題の研究からこの問題の解決に税制調査会が当たっておりまして、八月までには一応の検討の結果を答申してもらうということに、ただいまなっております。所得税自身についての検討、むろん今後必要でございますし、たとえば今度の課税最低限の問題にしましても、私どもはいろいろ考えられることはあっても、何をおいても最低限を少なくとも百万円前後まで上げる、これをやってから今度は税率の問題とか、そのほかの問題に入っていきたい、まず最低限を上げることが一番先だというような方針で現在やっておる次第でございます。
  139. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 最近、都市近郊の農村地帯で非常に問題になっている相続税の問題ですが、大蔵省と農林省ではだいぶ意見が違っておると、こういうことですが、その辺はどうですか、農林大臣。
  140. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 都市近郊の農地を相続税の場合にどう評価がえするかという場合でございますが、農地につきましては、御存じのとおり、一種、二種、三種というような形で、宅地化しやすい農地、きわめて近郊農地、宅地の熟度が、非常にその辺が宅地化されていくような部分につきましては、大体宅地化並みの評価でいこうという原則は、両省の間で原則的には異論はないようでございます。ただ問題は、これを現地で具体的に適用する場合に、よほどその評価を妥当にしませんと問題が起こりやすい、こういうふうに考えております。
  141. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 大蔵大臣。
  142. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) いま農林大臣からお答え申し上げましたように、都市近郊の農地の場合におきましては、その周辺の宅地化の状況を勘案いたしまして、宅地になった場合に比べて造成費がかかるわけでありますから、それを差し引いたところで評価をするということで、両省の間で意見は食い違っておりません。ただ、具体的に都市近郊で現在どこまで宅地化されているか、そうして、その宅地化されているものに比準すべき農地の範囲をどこまでにするか、これが具体的な個々の問題として処理されるわけでございます。その個々の問題につきましては、両省の間で今後とも意見の一致を見るように努力したい、このようにいたしておるわけでございます。
  143. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 最後になると思いますが、大蔵大臣、課税最低限の問題について、前国会で、五十五国会だと思いますが、百万円まで要するに免税点を引き上げる、三年間、こういうことを総理、大蔵大臣は約束をしておるわけですが、この四十年以降、物価上昇を見ますると、相当、二〇%くらいに三年後にはなるのじゃないかという見通しがあります。そういうことになりますと、当然その分だけは免税点の引き上げをさらにやっていく必要があると思いますが、百万円では足らないと思いますが、その点はどうですか。  それから時間がなくなってあれですが、防衛庁長官や運輸大臣、あるいは専売公社総裁等は、時間がなくなって問題を聞くことができませんので、その点は申しわけございません。その点はひとつ。
  144. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 本来なら四十四年ごろまでに最低限の百万円の引き上げをやりたいと考えておりましたが、なかなかこれはそう簡単にはいかぬということでございますので、四十五年というのが一応公約になっておりますが、いま言ったような事情もございますので、四十五年には百万円以上の最低限を確保するという方針でございます。
  145. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもちまして戸田菊雄君の質疑は終了いたしました。  午後一時半再開することといたしまして、休憩いたします。    午後零時三十一分休憩      —————・—————    午後一時四十二分開会
  146. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 予算委員会を再開いたします。  午前に引き続きまして一般質疑を行ないます。船田譲君。
  147. 船田譲

    ○船田譲君 私はまず文部大臣にお尋ねをいたします。  文部省は今年度の予算案で教員の特別手当を計上され、これに見合って教育公務員特例法の一部改正を行ない、超勤に関する労働基準法三十六条、三十七条の適用を除外する措置を行なおうとしておられます。これは公立学校教職員に関しましては、ILOの教員の地位に関する勧告によるところの専門職に向かって一歩前進するものと評価されるのでありますけれども、その反面、私立学校教職員につきましては何らの措置も考えられておらないので、この人々はいわゆる労働者として置き去りにされてしまうわけでございます。教員が公立、私立でその地位が差別されるような感じを持たざるを得ないのでありますけれども、これに対する文部大臣のお考えをお聞きいたします。
  148. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お答えいたします。今回の教育公務員特例法の一部を改正する法律案の趣旨は、すでに御承知のように、国公立の小中高等学校段階の教員の時間外勤務手当につきまして、その勤務態様の特殊性にかんがみ、より適当と思われる給与の措置として教職特別手当を設けることといたしました反面におきまして、一般の超過勤務手当は支給しないこととするために、公立学校のこれらの教員には労働基準法第三十七条等を適用しないことといたしておるのでございます。私立学校の教員もその職務の性質におきましては公立の学校教員と変わりはないと存じますが、給与決定の方法その他勤務の諸条件の制度が両者異なっておりますので、私立学校の教員についてはなお従前のままとしたものでございます。すなわち私立学校の教員の給与は、国公立学校の教員の給与のように法令によって一様に定まっておるものではなく、いわば個々の学校の設置者と教員との契約によって、学校によりさまざまにきまるものである、このように考えるのでございます。教職特別手当も給与の一部分であるので、この手当についてのみこのたてまえをくずして私立学校の教員について法令で特に規定を設けることは必ずしも適当でない、そのように考えまして、従来のたてまえを変更しなかったものでございます。私立学校の教員だけが労働者になるのかというような心持ちはさらさらございませんけれども、すなわちその職務の性質から考えました場合には同じように考えていかなければならない仕事であろうと存じますけれども、いま申しましたような事情のもとに、今回はこれの格別の規定を設けなかったということでございますので、御了承いただきたいと思います。
  149. 船田譲

    ○船田譲君 いまの御答弁はよく了承いたしましたけれども、ただ一点だけ、たとえば昭和四十年に労働者災害保険法が改正せられまして、二年の猶予期間でその全面適用が実施される、こういうことになっております。去る三月の閣議決定におきましても、いよいよ本年度から全面適用、あるいは五人以下の事業所にも適用というように踏み切られようということになっております。したがって、その法の適用の対象でありますところの教育事業に従事する私立学校教職員に対しましても、これは全面適用を免れないんじゃないかという結論になるのではないかということが考えられるわけでございます。しかし、私立学校の教職員は業務の内容から見ましても、強制適用は適切とは思えませんし、また、公務災害の発生の頻度などを考えましても、掛けた保険料がほとんど給付されることなくして、ほかの業種のための単なる財源化してしまうおそれがあるのではないかと思います。これに対しまして、文部省は料率などのいわゆる運用上に何らかのくふうをするか、あるいはいっそのこと私立学校教職員を対象にいたしまして、地方公務員災害補償法に準ずるような立法措置をすることによりまして、労災法の強制適用を受けないようにするお考えはないかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  150. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 労働者災害補償保険法が四月一日から常時五人以上使用する全事業所に適用されることになりましたために、お話しのとおりに私立学校もその適用対象となったわけでございます。しかしながら、お話にもございましたが、私立学校教職員の災害の発生率というようなものはきわめて少ないと思いますし、また、私立学校経営の実情等もあることでございますので、保険料率の問題についてはよほど配慮しなければならぬものがあろうかと存じます。そこで、保険料率の引き下げ等、具体的なこれが実施にあたりましては、運用上の配慮をいたしまして、私立学校に過大な負担をかけることにならないように、そのような趣旨をもって労働省ともよくお話を進めておるところでございます。
  151. 船田譲

    ○船田譲君 次に、私立の義務教育学校に対する文部大臣のお考えをお聞きしたいと思います。教育基本法の第六条には、いわゆる学校教育法の一条学校は公の性質を持つものであって、国、地方公共団体のほか法律に定める法人、すなわち学校法人でございますが、それのみが設置できると書いてございまして、その公共性が法的に認められておるわけでございます。また、学校教育法二十九条には「市町村は、その区域内にある学齢児童を就学させるに必要な小学校を設置しなければならない。」とあり、同四十条でも、中学について同種の規定をいたしております。これは市町村が学齢児童、生徒を収容するに足る学校を設置しておく義務があることを規定しているのでありまして、決して市町村立の学校にぜひとも入らなくてはならないという規定ではないと私は思うのであります。現に私立の小学校のみならず、国立の大学の付属小学校にも進学が認められているわけであります。しかるに、近年、児童生徒数の減少傾向にかんがみまして、学級編成基準による学級数確保の気持ちなどが働きまして、地方教育委員会などで私立義務教育学校に進学することを阻止するような動きの実例が二、三見られますのはたいへん遺憾でございます。この際、文部大臣に私立義務教育学校についてのお考えを承りたいと存じます。
  152. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 義務教育段階の私立学校につきましては、公立学校が普及いたしておりますために、その量的な比重は比較的少ないと思うのであります。しかし、それぞれの特色のある教育を行なって小中学校教育の進歩に貢献しておられると思います。現在、私立の義務教育諸学校におきましては、その設置者は児童生徒から授業料を徴収して学校の経費をまかなっておるわけでございますが、最近、私立の義務教育諸学校の経費について、公費の負担とすべきではないか、そのような御意見もだんだんと出ておるようでございます。またそういう要求もございます。そのことにつきましては簡単に結論を出すわけにまいりません。なかなかむずかしい問題だと存じておりますが、しかし、船田さんの御承知のように、現在、中央教育審議会におきまして、就学前教育から大学教育についてまでの各学校段階ごとの学校について、基本的な問題についていろいろ御検討願っているところであります。そういう際でもございますので私立義務教育諸学校に対する助成その他の措置につきましては、その審議との関連においてさらに十分ひとつ検討さしていただきたいと思います。
  153. 船田譲

    ○船田譲君 昭和四十一年十月の中教審のいわゆる後期中等教育の拡充整備についてという答申と、それから高校卒業生を受け入れる大学側や産業界の要望などに基づきまして、今年度から高等学校に理数科が設置されるようになりました。文部省の予算におきましても若干の計上が行なわれております。しかし、これは十分なる施設、設備の裏づけと、それを教える教員の研修が裏打ちされておりませんと、単に国立大学、特に理工科系の大学への進学特別コースというようなものに堕してしまうおそれがあると思うのであります。また、この際に理数科設置とあわせまして、理科教育振興法の中に、たとえば数学を繰り込むとか、あるいは産業教育振興法の中に原子力技術を取り入れていきまして、理数科の充実と相まちまして、いわゆる中堅科学技術者あるいは技能者の養成に資したいということを考えておりますけれども、大臣のお考えはいかがでございますか。
  154. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 理数科、中央教育審議会及び理科教育及び産業教育審議会の答申の趣旨にのっとりまして、高等学校における教育内容の多様化の一環として設けることにいたしましたことは、船田さんもすでによく御承知のとおりだと存じます。自然科学や数学に強い興味を持ち、かつ、その学習に対する相応の能力、適性があり、この方向の学習を深めたいと希望する生徒に対して、事象を科学的に探究し、処理する能力を深く身につけていただくというふうなことを目標といたしておるわけでございます。  なお、この理数科は、理科、数学にだけ片寄った教育を行なうものではなく、国語、社会、外国語の学習も重んじておりますし、内容は現行学習指導要領の範囲内で、実験、観察、研修等を重視していくことになっておるわけでございます。お話にもございましたように、相当なやはり設備というふうなものも整えてまいらなければならぬと思います。また、これに従事する教職員の研修、こういう問題にも努力してまいらなければならぬ、お話のとおりに考えております。なお、理科教育振興法等で、やはり数学その他の教育を進めていくということも、確かにお考えのとおりだろうと私も思うのであります。昭和四十三年度以降におきましての教育課程審議会の答申に基づく教育内容や、方法の改善、数学教育現代化講座等、数学担当教員を対象とする現職教育の充実などによりまして、数学教育の振興もはかってまいりたいと思います。また、数学教育のための設備の整備充実につきましては、現在、義務教育費国庫負担金、教材費でございます。この対象となってもおりますし、また、理数科を設置する高等学校に対しましては、先ほど申しましたように、当面必要な設備、国庫補助も行ないたいと考えております。御質問にあるように、理振法その他に含めることにつきましては、事柄としましては私どもしごくけっこうなことだと思いますが、やり方等につきましてはひとつ研究をさしていただきたいと思います。
  155. 船田譲

    ○船田譲君 この二、三年来、自衛官の大学院進学阻止の運動が、方々の大学で起こっておりまして、幾つかの大学が現実に進学を拒否したり、東京大学などでは一般有識者の進学まで許可しないという方針を出しているように聞いております。これは憲法の二十六条に、何人も「その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」という条項の明らかな違反じゃないかと私は思うのであります。また、学会によりましては、自衛官がその研究発表をしようと申し込みましても、その申し込みを遠慮してくれというような措置をとるところもあるやに聞いておりますが、これもまた学問研究の自由を妨げ、文化の進歩に逆行するような措置じゃないかと思うのでありますが、この二点につきまして文部大臣の御見解を承りたいと存じます。
  156. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 自衛官の国立大学の大学院に入ることにつきまして、とかくの議論が、こざいましたことは御指摘のとおりでございます。一応現状をちょっと御説明申し上げたいと存じます。実際には四十三年度の大学院の選抜試験におきまして、自衛官で出題いたしました者がみんな受験をしたわけでございます。国立大学につきましては、自衛官の志願者が四大学二十六人、そのうち十名の合格者がありまして、この四月に入学することになっておるわけでございますが、大学によりましては、あるいは自衛官に対してその入学を拒むとか、制限するとかというふうな声もございますけれども、私は大学院に限らず、学生の入学許可につきましては、所定の受験資格を具備しておれば、これは本人の能力によって入れるか入れないかはきめるべきものであろうと思うのであります。さらに、職業を持つ人の入学につきましては、その職業の種類によって差別すべきではないと存じます。職業と両立するかどうかということが大事なことでありまして、その点に対する考慮を払う必要がございますけれども、それ以外に職業によって区別をする理由はない。一般の職業人と同様に、自衛官の身分を持つ者でも大学院の課程を履修することに専念し得る状況にある、こういう者につきましては、単に自衛官という理由のみで他の職業人と区別して入学を許可しないということがあれば、それは御指摘のように、教育基本法の機会均等の大原則からいたしまして適当ではないと、かように存じております。
  157. 船田譲

    ○船田譲君 次に、著作権法の改正がけさの新聞にも出ておりますが、政府の現在考えておられます改正点につきまして、たとえば著作者の死後三十七年であったものを五十年まで認めよう、あるいは音楽、映画等の演奏者、出演者等のいわゆる隣接権を認めるというような改正を考えておられるようでありますけれども、こういった改正がはたしてわが国の現状や従来からの慣行に合っているものであるかどうかということをまず第一にお聞きしたいと思います。たとえば、例を音楽著作権のみに限って考えてみましても、この利用者の範囲はきわめて広うございます。また、著作権者につきましても、日本人に対しまして外国人の比率がきわめて多いわけでありますから、それによってわが国は多額の著作権料を外国に支払う、いわゆる支払い勘定のほうが受け取り勘定よりはるかに多いのじゃないかということが心配されるのでありますけれども、文部大臣のこれに対しますお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  158. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 著作権法の改正は多年の実は懸案であったわけでございます。それを諸外国の状況に比較いたしますというと、かなりおくれておる。まあ著作権法に関する限りは日本は非常に後進国だといわれてもしかたのないような状況で今日まできておるわけでございます。政府としましても、やはり世界の水準というものに、著作権に関する問題にいたしましてもおくれてはならぬと思います。同時にまた、いろいろ関係する向きも多いかと思います。利害関係もいろいろとあるところでございますので、かなり長い時間をかけまして慎重に検討をいたしまして、どうやら成案を得ましたので、この国会にでき得べくんば提案をして御審議を願いたい、このようなつもりで進めておるような次第でございます。国会におかれましても、きわめて複雑広範な問題でございますので、十分御検討もいただきたい、さように存じております。いま、これをやると支払い超過になりはしないか、そういうふうな御心配もあるようでございますが、少しくどくなるかもしれませんけれども、現在の著作権に関する対外収支の状況のすべてを把握するということはまことに困難でございます。困難でございますが、著作権仲介機関の取り扱いによる昭和四十一年度実績は、外国からの入金が約四千万円、それに対して対外支払い額は約十一億円になっておるのであります。日本人がいかに外国の芸術を好んでいるかということがわかるような気がするのでありますけれども、まあそういう数字が出ております。わが国がいわば文化輸入国であることから、このように著作権の世界におきましては支払い超過の実情にあり、その実績が今後もある程度継続するということは、おそらく避けられないところであろうと思います。この点は外国における日本の作品の使用状況が著しく低いことに由来するものであり、根本的にはこの点の改善に待たなければならないと存じます。  ところで、今国会に提出して御審議を願いたい、かように考えております著作権法案のうちで、まず隣接権制度は、外国の実演家やレコード製作者には適用しないことといたしておりますので、その方面から対外支払い額が大きくふえてくるというふうなことは考えられないのじゃなかろうかと思います。次に、レコードによる放送等につきまして著作権を認めることとなりますが、これらの使用料率につきましては文部大臣の認可制となっておりますので、現在に急激な変動を及ぼさないように妥当な使用料額を定めて、できるだけ実情に即した処理をしたいと考えております。したがって、今回の改正が音楽著作権における対外支払いを必ずしも大幅に増額することにはおそらくならぬであろう、このような判断をいたしている次第でございます。対外収支の見地からいたしまするならば以上のごとくでありますので、おそらく支払い超過ということは避けがたい状況にあるのではないかと存じますが、今回の著作権法案の内容は、先ほどもちょっと申し上げましたが、日本が国際社会の一員として当然要求せられるところでございます。かつまた外国人の著作者のみならず、日本人の著作者によってより多くの利益を期待し得る性格のものでございますので、対外収支の関係だけでこの問題を論ずることもいかがであろうか、このように存じている次第でございます。十分にひとつ御検討いただきたいと考えます。
  159. 船田譲

    ○船田譲君 次に、科学研究費の補助金配分についてお尋ね申し上げたいと思います。昭和四十三年度の科学研究費補助金は五十億円が新しい予算案に計上されておりますが、これの配分の審査委員は、従来ですと百二十人の委員が学術会議の推薦によって委嘱されまして、大体二万数千件にのぼる応募件数の中から四千件ほど採用しているというのが例でございます。しかし、百二十人で膨大な数の広範な分野にわたる研究テーマを審査するのは物理的にも困難でございますし、同時に、いわゆるボス支配の弊害を生ずるおそれもなしとしないわけでございます。それで、ことしは四百人を学術会議の推薦で委嘱して、その四百人が三人一組となってまず一次審査を行ない、この四百人の中から文部省が第二次審査委員を選ぶ方式に変えたと承っておりますけれども、そのとおりであるかどうかお聞きしたいと思います。また、これに関しまして、学術会議のほうでは、これは第二次委員を文部大臣が四百人の中からかってに選ぶのは官僚統制だと言って反対をしていると聞いておりますけれども、それが解決の方向に向かったかどうか、あわせてお聞かせいただきたいと思います。
  160. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 科学研究費の予算を執行するやり方につきましては、御質問の中にございましたような事情によりまして、昨年の秋、文部大臣の諮問機関であります学術審議会によって、この科学研究費の配分について改善策というものを答申していただいたのであります。それはいまお話になりましたように、従来のやり方を変えまして、審査を願う方の人数もふやし、それからまた一段式じゃなくて、二段式の審査をやって配分の適正を期していきたい、こういう考えであるわけでございます。文部省といたしましては、もちろんその過程におきまして関係の各方面との意見も十分承ったつもりでございます。同時に、そういう改善策ということを前提といたしまして予算の編成を行ない、その趣旨を認められまして、決して十分とは存じませんけれども、明年度の科学研究費の額は相当増額をしていただいているわけでございます。この改善せられたやり方によりまして予算の執行をいたしたいと存じまして、日本学術会議のほうに御協力を求めたわけでございますけれども日本学術会議のほうにもいろいろ御意見がございまして、ことしのところはわれわれが希望するような姿で審査をなさる方の御推薦を願うわけにいかなくなってきたことはいかにも残念でございます。しかし、いつまでも待っているわけにはまいりません。ことしのところは、とにかく残念ながら文部省の独自の立場委員さんの御委嘱もし、そして審査をやってまいりたい、このように存じております。今後の問題につきましては、もちろんなおよく各方面とも御相談もし、また日本学術会議の御了解もいただくようにわれわれとしてはつとめてまいりたいと存じております。さしあたって、今年度は当初計画いたしましたような線で文部省がやらざるを得ないという段階になっておることを御報告申し上げておきます。
  161. 船田譲

    ○船田譲君 以上で文部大臣に対する質疑を終わりまして、次に、農林大臣に二、三お伺いいたします。  政府は今国会に農地法の改正案を提案せられまして、農業基本法のねらいであるところの自立経営農家の育成と農業生産の安定成長を期しておられますけれども、これに関して二、三の質問を申し上げます。  わが国の農業就業人口は最近全就業人口の二〇%を割りまして、特にその中でも後継者の不足あるいは二種兼業農家の比率の増大と農業労働力の質の低下等、著しい変化が見られております。それにもかかわらず農家の戸数の減少率は微々たるものでございまして、土地経営規模の拡大は一向に進んでいないというのが実情でございます。これは一面では農地の資産的保有の傾向が強まり、同時に労働力の質の低下等をあわせまして、荒らしづくりが広がっていって、いわゆる農地の生産性を低める結果となっているのではないかと心配いたしますし、他面きわめて優秀な将来を見通す後継者たちが、あまり目が見えるために自立経営農家の将来に対する失望を味わって、農家に残らぬというような結果を来たしているのではないかと思います。で、基本法農業の目標でありますところの経営規模の拡大によります自立経営農家の育成のためには、現行の農地法が障害になっていることはもはや明らかであります。今日の時点でこれを改正しますことは時宜を得ておると私は思うんでありまするが、その基本的な考え方を御説明いただきたいと思います。
  162. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) おっしゃいますとおりに、経済の高度化で農業就業人口が非常に急速に減ってきておる。これ自体はある意味では意味のあることでありますが、しかし、それだけでは事態の解決にはなりません。一方におきまして農業の選択的拡大、機械化、これもある程度進んでおりますけれども、御存じのとおり、経営規模は零細である。そこで、生産性の向上をはかるためにも限界が起こっておるのであります。兼業化も進んでおるし、おっしゃるとおり、農地の荒らしづくりと申しますか、粗放耕作の傾向を示している。そこで、農業基本法の精神を生かさなきゃなりませんし、これによって農地の生産性の高い経営によって効率的に利用をされるように流動化を促進したい。これをもとに今回の農地法を御審議するように国会に提案したのであります。内容は、すでに御存じとは思いますけれども、概略申し上げますと、賃貸借の解約、更新等、これらの制限を緩和する、こういうことが一つでございます。言いかえますれば、借りやすいように、ものを生かしていくという精神でございます。小作料統制に関する現行の制度を廃止する。それから他産業に就業して、不在村者になる場合も、在村者並みの小作地の所有を認める。こういう制度を新たに起こした点であります。もう一つは、農地を拡大する、農地を取得するに際して、一つの上限の面積が制限がありましたものを、これを廃止する。いわゆる農耕地の拡大に資する。同時に下限の面積を引き上げる。第五番目には、農業生産法人の要件を緩和する。これも流動化に資するように緩和をはかる。第六番目に、草地利用権の設定制度を新しく設ける。これらを主要な内容にいたしまして、農地法の一部を改正する法律案を国会に提出して、農地の流動化促進、もちろん農業全体におきましては、これだけでは解決しないもっといろんな問題もございますが、これも大事な柱としてひとつぜひ国会におきまして慎重な御審議を願い、御協力を願いたい。こういう趣旨でございます。
  163. 船田譲

    ○船田譲君 今回の農地法の改正は、一部反対する方々は、これは賃貸借の自由化ばかり強調している結果になるのではないか、そして本来の経営規模の拡大の方向に農地の流動性を増すという目的はなかなか達成できないのではないかという心配をされる向きがありますけれども、それについてどう考えますか。
  164. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 最近の傾向は、経営規模の拡大のために専業農家の中には借り入れによって規模の拡大をしているものが相当見受けられます。これは実際でございます。したがって、賃貸借に関する制限の緩和等をはかって農地の流動化を促進する。経営規模の拡大をはかっていく。これは当然そういう形が期待できると思います。同時に農業生産法人の要件を緩和し、または農協によっての農業経営の受託の道を開く、協業等の集団的な生産組織によって経営規模の拡大もあわせてはかっていく、もちろんこれは農地法、先ほど申し上げましたように、農地制度の上での改正でございますが、これだけですべてを解決するというよりは、その前提となります農業生産基盤の整備、言いかえますれば、圃場整備なり、土地改良なり、こういった生産基盤の整備、あわせて総合資金制度等の農業金融の拡充、それからもう一つは、今回、国会でさらに御審議を願うように、その土地利用計画、言いかえますれば、安定した農村づくりと申しますか、農業の新興地域の整備をはかってまいるという、まあ環境整備的な考え方、また単に私どもは特定の専業農家を、自立農家だけが中心ではなくて、兼業農家等のための育成、協業助長と申しますか、こういった面も総合的に考えながら、今日国民が望んでおる農業の経営規模、生産性の向上、そして構造改善というものをはかってまいりたい。こういう趣旨でございます。
  165. 船田譲

    ○船田譲君 いま現実に、特に西日本などで、いわゆる請け負い耕作というものをやみでやっておる例がかなりございます。またその他にもやみ小作に出してやみ小作料をとっておるという例もかなりあるように思います。そういったものが今度の法改正によってどのように調整されていくのかということ、また、そういった場合に、農業協同組合というものは、あるいはいま大臣が言われました農業生産法人というものは、どういう役割りを果たすべきものであるかということを簡単にお答えいただきたいと思います。
  166. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 重なるかもしれませんが、今回の農地法の改正におきまして、小作料の統制制度を撤廃する。賃貸借の解約等についての規制の緩和、これを行ないます。それから協業等の集団的な生産組織の育成というものをするために、生産法人の要件の緩和、それから構成員が法人に貸し付けている小作地について小作地の所有制限、これをしない。協同組合が委託を受けて農業経営を行なう場合には農地等の権利の取得を認める。この場合にも委託したところの農地については小作地の所有制限をしない、こういうふうな法的改正をいたします。このような改正によりますと、従来相対で請負耕作、やみ小作、こういうものをやっておりました原因の大部分というものは制度的に解決し得ると、こういうのがわれわれの考えであります。この制度を誤解のないように十分徹底申し上げまして、知っていただきまして、この農地の利用関係が農地法の根本の正しい精神の中で活用されてくるように、こういうふうに、私どもは正常な姿で農地が利用されるように、この農地法を御理解願って推進をしてまいりたい。そうすれば、請負耕作なり、やみ小作というものの姿は正常な姿の中に乗ってくるのではないか、こういうふうな考えでございます。
  167. 船田譲

    ○船田譲君 農地法の改正についての最後ですが、ほんとうに耕作意欲のある農家に土地が移動していき、そうしてほかの職業に移ることを希望している農家が安心して離農できるような措置は、今度の改正案及びこれに関連いたします施策にどのように盛られておるか。これもきわめて簡単でけっこうでございますから御説明願います。
  168. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 私どもは農政を通じ、農業を近代化していく場合に、農民を切り捨てるとか、追い出すとか、離農を促進する、こういう考えは全然ございません。しかし、近代化する過程におきまして、本人の御意思によって転換せられていく方々、農業の構造が変わっていく段階において、たとえば賃貸借をして、そうして自分は他の労働に出ていく、その場合に一番大事なのは、私は就業の機会を十分につくるということ、これは大事なことだと思います。就業の機会をつくるには何と申しましても地域開発、こういうようなことに対して他の官省と十分関係しながら、われわれはやはりそういった面においての打開をはかってまいらなきゃならぬと思います。それから、かりにそういう就業の機会が十分でない場合におきまして、過渡的に出かせぎその他の現象が起こります。所得を増加するためには、これはやむを得ないとは思いますが、それも正常な姿で、正常に保護されたる姿の中で行なわれるような形でいきませんと、いわゆる労働基準の問題であるとか、いろいろな災害関係におきましても保護されないとかいうような気の毒な状態がおりおり発生する。われわれとしてはこれを守ってまいると申しますか、そういう弊害を除くことにつとめてまいりたい。それからなお現実の過程におきまして、そういうようなことは労働省のほうの御所管の事柄と、十分、職業転換等の場合におきまする転換給付金制度等とも関連をもって努力し合ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  169. 船田譲

    ○船田譲君 今度の予算で、先ほどちょっと農林大臣も御答弁の中にお触れになりましたけれども、農林漁業金融公庫の融資の中に総合施設資金制度を設けられました。また、従来からあります農業改良資金の中に新たに集団的技術導入資金を設けたり、それからそのほかに従来から近代化資金だの、構造改善資金だの、後継者育成資金だの、いろいろと制度金融は複雑多岐にわたるわけでございますが、これを利用する農家あるいは後継者の側から申しますと、もう少し農業に関する制度金融制度を整理、体系づけていく方向があってもいいのじゃないかと、こう考えられるのでありますけれども、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  170. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 農業金融におきましては、基本的には制度金融、それから系統金融、この二大金融でやっておるわけであります。それから同じ金融の中でも、どちらかというと補助金を振りかえたような形できわめて低利に、小額であるけれども低利にやっているものと、それからやや経済投資的な線を長期にわたってやっている種類もございましょうし、もちろんそれから農政全般は金融だけでいけるものじゃありません。助成政策も大事なことで、生産構造、価格について、助成と金融、車の両輪でいかなければならない。そこで制度金融自体について、体系が複雑ではないかとおっしゃいますが、いまの段階では制度金融は大体はそれぞれの政策目的に従って出てまいってきておると思うんであります。公庫資金につきましても、一般の農業者に対して必要な資金需要に十分充てるように、総額では千八百億円ぐらいの金が動いておると思います。それから今回新しく、比較的専業でいく若年の、しかも優秀な農業をやっていこうという人が、個々のばらばらな種目別の金を自分で集めて、項目別に借りたものを集めてやっておるのではいかぬので、そこで運転資金とも合わせて、一括して総合資金という制度を公庫法改正のもとに一つつくっておるんであります。これは御審議中でございます、法案を。これは全体の中では二十億の金でございますから、一般の農業者を圧迫するようなものではございませんけれども、ほんとうに専業農家として、しかも大型農家として真剣に近代化をはかっていこう、しかも総合的に家族農業経営を樹立していこうという中には、比較的まとまって金をつかんで、しかもりっぱな審査を受けてやっていけば効果があるんではないか。それから、お話が触れました、今度新しく出ておる集団的技術導入資金と申しますもの、これが十億円ほどのワクで出ておりますが、これはむしろ集団的な生産組織というものが、一連の機械操作をやるような場合に、集団技能として一括して使うような場合は特殊な制度が要る、こういう意味で起こしておると思います。これ以外にもちろん後継者が技術改良のために習得するための金であるとか、それぞれ制度の目的に従ってやっておるつもりでございます。それから、これらの制度ができますれば、十分それぞれの機関を通して御理解願って、生きて使えるようにいたしたいと思います。と同時に、農政というものは絶えず動いてまいりますから、私どもは現実に即していくように、絶えずこういうもののあり方については、おっしゃるように検討を加えてまいりたいと、こういう考えでございます。
  171. 船田譲

    ○船田譲君 農協が最近、自分の経営を安定させるために、揮発油、軽油、あるいは自動車の販売、スーパーマーケット、理容所、美容所の経営、あるいは生保、損保、自動車の賠償保険等の保険業というような、本来の業務からやや離れたと思われる広い範囲の営業を行なうようになっておりまして、員外利用の問題で、地方におきましては、土地の中小企業と競合を来たしてきているような事例が珍しくなくなってまいりました。これは一面、農協みずからの組織を守り、また組合員の利便をはかるというプラスの面もありますけれども、他面、地方において、いま申し上げたように中小企業との間の競合が起こるということも事実でございます。この点につきましては農林大臣、どのように御指導なさっていかれるかということをお聞きしたいと思います。
  172. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) まあ農協自体が農産物の販売、農業資材の購買など、農業生産に関連する事業が中心である。しかし、同時に農家の生活に関連する事業、これも行なうことも認められている。その中で、いま言ったような事態がいろいろ発生しております。一方、農村と都市化現象というのが少しぶつかり合っている部分があるし、いま一つは兼業農家等もそこに入ってくる、ここに複雑な社会的な事態の上で、所によっては中小企業の末端とそういうものとのフリクションがあることは私どもも、耳にいたしております。そこで、法律には一定範囲内における組合員以外の員外利用の規制というようなこともあるわけでありまするから、私どもはこれは何といっても同じ土地に住んでおる、同じ経済で生きていこうという、それぞれの目的は違いましても、経済交流をやりながらやっていく地域の方々の中で、摩擦がないような調整をとれるように、私どものほうが私ども立場で、農協本来のよい姿が十分達成されるような立場から指導はしてまいりたい、こういうように考えております。
  173. 船田譲

    ○船田譲君 以上で農林大臣に対します質問を終わりまして、次に、厚生大臣にお伺いを申し上げたいと思います。  医師法の改正が衆議院で一部修正されまして本院に送付されております。先ほど戸田委員もお触れになりましたので、こまかいことはあまり聞かないことにいたしたいと思いますが、ただ、その修正点につきましてちょっと気になる点がございますので、お伺いいたしたいと思います。たとえば医師の国家試験に合格した者は二年間の「臨床研修を行なうように努めなければならない。」というところが、「努めるものとする。」というふうに、任意的なものになっておる。それから、そういうことによりまして、臨床研修をしない医師が診療に当たる場合が出てくるわけでございまするけれども、患者の側から見ると、研修した医師としない医師では、しない医師のほうにかかる場合に不安があるのじゃないかということが一点ございます。  それからまた法の中に、研修を修了した医師は厚生大臣が本人の申請に基づいて医籍登録をするとなっておりましたのが、病院長が厚生大臣に報告するというふうに変わっております。いわゆる医籍登録がなくなったわけでございますが、たとえばこれはまああまり多くない例だと思いますけれども、医師などが国際交流をする場合に、臨床研修修了の有無が明らかでないということで、たとえば外地での医療行為であるとか、あるいは外地の大学や病院等への留学、就職の場合に不利をこうむるようなことがないか、この二点をまずお聞きしたいと思います。
  174. 園田直

    国務大臣(園田直君) お答えをいたします。  この医師法の一部改正の要点は、義務制ではなくて、「努めなければならない。」と、こうなっておりまするが、あとで御指摘になりました登録の問題と関連をして、大部の人から、「努めなければならない。」とはなっておるものの、実質上においては、これを登録することによって義務制でしいておるのではないか、こういう誤解もありまするし、医師法改正の目的というものは、そういうものではなくて、国家試験を受けて、医師の資格を受けた方が、さらに日進月歩の医術に対してみがきをかけるという意味でございますから、これは法文でやるのではなくて、将来、二年間の研修期間において十分整備された教育環境において、各人がみずから進んで希望して、各人が望むことが一〇〇%得るようにという意味からやったことでございます。そういうわけでございまするから、「努めなければならない。」と書いても、「努めるものとする。」と書いても、法の本質は同じでございまするから、その誤解を避けて、「努めるものとする。」と委員会で修正されたことに、私としても了解をしておるわけでございます。  なおまた、登録の問題についても、登録するという法律の趣旨は、研修について政府責任を持つということを明確にする意味で書いたわけでございまして、決して医師の資格を特別に格づけをしたり、あるいはその他のことを考えておるわけではございません。したがって、研修したということがわかればいいのでございまするから、委員会ではこれを教育した院長から大臣に報告をするということで修正をされましたので、この点も私は了解をしたわけでございます。なおまた、したがいまして、研修というのは医師の一つのまあ経過、学問の経歴になる点でございまするから、外国との医師の交流等につきましては、あるいは患者につきましては、それはまあ患者のほうや、外国のほうからいえば、研修しなかった方よりも、研修したほうがよろしいということはあると思いまするが、その点は、法律的に格差がつかないようには規定したい、むしろ法律的に格差をつけて強制するのではなくて、一番大事な教育環境の整備をすることに今後重点を置いて、皆さんがいろいろな困難を排してでも、自分から進んで研修を受けたいというふうに持っていきたいというのが私の念題でございます。
  175. 船田譲

    ○船田譲君 次に、研修医へのいわゆる謝金の問題ですけれども、診療協力謝金が、国立病院と国立大学病院あるいは公私立の大学病院でそれぞれ異なっておるわけでございます。また、その身分も、たとえば、大学病院では研修生ということになりまして、それから国立病院では非常勤の国家公務員ということにあるいはなるかもしれません。それから民間教育病院では職員または準職員ということでございまして、たとえば健康保険関係の問題あるいは共済年金の適用の問題等で、身分の扱いにアンバランスができるのじゃないかというような心配をする向きがあるのですけれども、これについてはどうお考えになりますか。
  176. 園田直

    国務大臣(園田直君) 身分と処遇が違う点についても、いろいろな御意見があることは十分心得ておりまするが、しかしながら、御承知のとおりに、インターン制度を廃止して研修制度をつくる、しかも医師法の改正をお願いする段階におきましても、相当の紆余曲折がございまして、その中に、いろいろ困難な状態を切り抜けて、放任するわけにはまいりませんので、このような方向で第一歩を踏み出したということについて御了解と御援助を願いたいと、こういう意味で相談をしてまいりましたが、ただいまの身分と処遇が違います点は、厚生省と文部省の所管が違いますという点と、もう一つは、いままではインターンと研修生は本質的に違いまするものの、全然国家の助成がなかったわけでありまするから、これを予算上措置するについて相当の無理が正直に申し上げるとあったわけでございます。したがいまして、身分、処遇等についていささか違っておりまするが、これは厚生大臣の責任においてすみやかに処遇及び身分については統一をしなければならぬものであると考えておりまして、衆議院のほうでもさようにお約束をいたしております。  なお保険の問題につきましては、これはつとめる場所でいろいろの問題がございまするので、そう簡単に一挙にいくわけにはいかぬかと思いまするが、この点も誤解がないようにいろいろ検討してみたいと考えております。
  177. 船田譲

    ○船田譲君 厚生大臣がいろいろ御苦心なさり、また文部当局もいろいろ苦心しておりますように、ここ一年このかた、青年医師連合——いわゆる青医連が盛んに暴力をふるいまして、そのピケットの巻き添えで、自分では国家試験を受けたかったというインターン終了生でも国家試験を受けられなかった、そういう医学生がたくさんおるように思うのでありますけれども、それの救済の方法をどうお考えになっておるかということと、今度はことしの五月あるいは六月ごろに新制度による国家試験がおそらく行なわれるのじゃないかと思いますけれども、その場合にも、これを円満に受験する、受験率が一〇〇%近いものに期待できるかどうかということ。  それから、こういうふうにして昭和四十一年度、二年度のインターン修了生の中で、かなりの部分が国家試験を受けておりませんので、医師の世代のつながりでどっか切れるところができてきやしないか、こういうものに対する何と申しますか、将来に対しまして補足をする方法をお考えになっておられるかどうかということについてお聞きしたい。
  178. 園田直

    国務大臣(園田直君) 医科の学生の諸君のいろいろな問題については、他の方と違ったことで厚生大臣は見なければならぬと考えております。第一は、思想上の身分の管理とか、あるいは教育の管理とかいうことについては別でありまするが、その他のことにつきましては所管大臣として相当まじめにこういう諸君の言い分を考えなければならぬじゃないか、その第一は、医療技術というものが進みまして、単に病気をなおすという観点からだけではなくて、すでに近い将来に生命の造成まで考えられ、医術というものと医術の社会的適用というものとの関連が深くなってきております。そういう若い医学生の諸君の理想と現実の教育環境との差異というものが、学生諸君の相当な不満になっておるのではないか。したがって、この研修制度をやりますことを契機にいたしまして、第一には、まず新しく資格を得られた医師の諸君が希望を持って、日々、日にちを惜しんで勉強されるような教育環境の整備をいかなる方法にてもやることが大事だと考えております。なおまた、今日、お願いしまする医師法の一部改正は、正直に申し上げましていままでの環境を突破するために苦労をして第一歩を踏み出したということで、必ずしも十分であるとは考えておりません。しかし、将来に向かっての計画なり、具体的な実施の時間等申し上げて、できるだけ了解を願いたい、こう考えております。そういう意味におきまして、ただいま御指摘になりましたいままでの争いといいますか、トラブルのいきさつからきて、こぼれております方々は、卒業試験を受けておられない方は別ではございまするが、卒業試験を終わっている方々については、大体ただいまお願いをしている法律案が通していただければ、成立していただければ、六月に新法による試験をやることになると思います。
  179. 船田譲

    ○船田譲君 次に、四十二年九月の中医協の建議では、薬価基準につきまして医薬品の実勢価格を反映させるために、薬価調査を少なくとも毎年一回は実施すべきであるということを建議しております。四十三年は大体いつごろ行なわれるのか、承りたいことが一点でございます。  それから、同じくその建議の中で、薬価基準価格の決定の際のバルクラインの問題については引き続き検討すると書いてございますが、その検討はなされたのであろうかということでございます。私は現実の医家向けの販売業者の値引き、あるいは景品販売、過剰接待という実情をときどき見聞きいたしまして、この点を詰めていけばもう少し薬価基準を下げることができるのじゃないか。また現在行なっております九〇%バルクラインという薬価基準のきめ方が少し甘過ぎるのではないか、こう思うのでありますけれども、厚生大臣はどうお考えになりましょうか。
  180. 園田直

    国務大臣(園田直君) 御指摘の九〇%のバルクラインについてはいろいろ御批評があることは十分承知はしております。審議会及び中医協等の建議等に基づきまして、それぞれ調査をし、及びこれを適時改定していくということが申し入れられております。そこで、ただいまそれぞれ審議会で検討願っておりますので、昨年も実態調査をいたしました。ただいまも実態調査中でございまして、ただいま調査票を収集中でございます。この結論が出次第に、これに基づいて御意見も承って改定したいと考えております。その際、九〇%のバルクラインがゆる過ぎるか、あるいはどのように適正に持っていくか、こういうことも御意見を十分くんで検討したいと考えております。
  181. 船田譲

    ○船田譲君 それから医療の実態調査でございますけれども、四十四年の八月末日に迫りましたところの医療保険制度の抜本改正の問題ですが、それに一番、何といいますか、重要なデータを提供するものじゃないかと思いますけれども、これはどのように医師会側などとも連絡をとられまして実施していかれるおつもりであるか、お聞かせ願いたいと思います。
  182. 園田直

    国務大臣(園田直君) ただいまの調査は、御承知のとおり、中央保険審議会が実施をやっていただいております。この調査についていろいろ御意見がございまするが、これは各方面、特に経験者の御意見等を承りまして、近代統計学の抽出方法による抽出の方法で、その実態を申し上げますると、病院が五分の一、一般診療所が三十分の一、歯科診療所が百分の一のようなことで摘出の調査をいたしております。したがいまして、この調査の票は、ただいま三月末で約七七%の回答がきております。したがって、この調査の結果というものは、抜本改正のこの調査の目的は、医療報酬の適正なる体系をつくることが調査の目的でございまするから、その目的を達成するために十分効能があり権威があるものと考えて、これを中心にやるつもりでおります。
  183. 船田譲

    ○船田譲君 次に国立療養所の特別会計移行について、前質問者も触れられましたので、簡単にお聞きしたいと思います。  第一点は、昭和四十二年度の収支の場合、支出を一〇〇にいたしますと収入は五四であって、その差額を一般会計から繰り入れ、あるいは借り入れ金でやっておられるわけでありますけれども、それが特別会計に移行することによって、印刷局とか、アルコール専売とか、あるいは国有林野会計のように独立採算制になってしまって、一般会計からの繰り入れができにくくなるのではないかというような心配をする向きがございまするけれども、これについてはどうお考えになりますか。
  184. 園田直

    国務大臣(園田直君) 特別会計に繰り越すことについては私は最後まで慎重であったわけでありますが、御指摘のように、これを特別会計に移すと、独立採算制に移行して患者、従業員にその負担を押し詰められるという御批判が相当強いし、私もそういうように考えておるわけであります。したがいまして、その第一点としては、独立採算制にしない、経営の収支はこれは一般会計から繰り入れる。したがって、ただいま御審議を願っておる予算におきましても、本年度会計四百二十億のうち二百五億、四九%は一般会計から繰り入れたわけでございます。なおまた、明年度以降におきましても、その収支は一般会計から繰り入れる。こういうことを財政当局とも相談をしておりまするし、なおまた、患者、従業員にそのしわ寄せがこないように、運営の面については十分注意をしていきたい。このようにいたしております。
  185. 船田譲

    ○船田譲君 いまの厚生大臣が患者にもしわ寄せがいかないようにというお話がございましたが、例の一律二割引き制度を一応やめる。しかし、既入院者の既得権は認める。その場合、新規患者についてはこれはどうお考えになるか。それから結核予防法や生活保護法の患者の場合、やはり一律二割引きをやめますと、医療保護関係の予算措置がなされておるかどうか、この二点について伺います。
  186. 園田直

    国務大臣(園田直君) 新規入所患者及び外来患者につきましても、自己負担を有するものについては二割引き制度を存続をして基準加算をいたさない。このようにいたしております。また、結核予防法、生活保護法等の患者にかかる二割引きの廃止等に伴なう必要な財政措置につきましては、昭和四十三年度の予算案に計上して処理するようにいたしております。
  187. 船田譲

    ○船田譲君 以上で厚生大臣に対する質問を終わりまして、次に、自治大臣にお伺いいたしたいと思います。  今回の地方税法の改正によりまして、個人の住民税の標準世帯における課税最低限は、十万円上がりまして五十三万円となったのをはじめといたしまして、事業税の専従者控除など、かなり減税を行なわれましたことは一応評価されてしかるべきだと思います。しかし、所得税の標準世帯における課税最低限が八十三万円に引き上げられ、四十五年には前の方も言われましたように、百万円に引き上げるということを目標としておりますことや、青色申告における完全給与制の実施などと比較をいたしますと、なお相当の差がございます。納税義務者の数も所得税の約一千九百万に対しまして二千五百万人と、非常に広範囲にわたっておるわけであります。たとえば、年収八十万円の標準世帯の四十三年度における所得税の見込みは六千六百円あまりでございますけれども、それに対して住民税は約倍の一万二千円、それから夫婦子供三人の世帯では前者がゼロでありますのに後者は九千五百何円というふうに差がございます。これは、所得税は一応、応能主義で考え、それから地方税は応益主義の原則にのっとっているからだという批判をする方もございますけれども、自治大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  188. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 御案内のとおりに所得税と住民税、事業税、つまり地方税とは性格が違うという考え方が支配的でございまして、ただいま所得税は応能的であるとおっしゃいましたけれども、住民税などの場合はやはり地域住民がその地域で必要とする行政事業をみんなで出し合おうじゃないかということが基本になっておるわけでございまして、所得税と住民税とは同一視しなきゃならぬという根拠はありませんが、しかしやはり地域住民の負担というものは軽めでいくのが当然のことでございまするので、そういった意味ではいろいろ将来のことにつきまして検討はいたしております。それから所得税が明年度から完全給与制をとられるようでございまするけれども、地方税の場合は翌年課税にもなっておりますし、完全給与制を所得税面でおとりになった様子をよく分析いたしまして、これを近い将来に前向きでやるということを前提といたしまして検討はしなきゃならぬと思っております。しかしいずれにいたしましても、地方財政そのものが非常に窮屈でございますので、やっぱり地方財政全体をにらみ合わして、あまり大幅の減収になりますと、大蔵大臣のほうで減収補てんをやってもらえるんならこれはまあけっこうですけれども、なかなか事態がそういかぬといたしますと、まあ地方財政の面で責任を持つものといたしましては、やっぱりその点も十分考慮いたさなきゃなりませんので、まあしかしながら負担軽減という意味では前向きで十分善処いたしたいと考えております。
  189. 船田譲

    ○船田譲君 次に、公営競技についてちょっとお伺いをいたします。公営競技は、その収益が自主財源に乏しい地方の公共団体の貴重な収入になっておりまして、学校の施設、あるいは社会資本の充実に大いに貢献しておるわけでございますが、他方まあ倫理的な面からの批判とともに、施行団体と非施行団体との間に財政上の格差を生じておることが問題になりまして、先般来均てん化措置のことが将来の課題となって論じられております。しかし施設を持っておる施行団体側から申しますと、相当な投資をしておるし、運営にも努力をしておるんだと、片方非施行団体が均てん化の措置によって、いわば不労利得を得るというのはこれはひどいじゃないかというような抵抗もあるわけでございます。またある一定以上の収益を県段階でまとめまして、これに申し込んできた地方公共団体に配分をするといっても、その配分の方法をどうするかというような問題もございます。それに関しまして大臣は、将来の問題でございまするけれども、もし均てん化をやるということをお考えはなったときには、公営競技の収益のうちでいわゆる基準財政需要額の何%以上のものは均てん化すべしというふうにお考えであるか、まあ大体のところでけっこうでございます。また県段階ではどういう形で配分をしていったらいいかということについて、これは将来の問題ですけれども、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  190. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) いま基準財政需要額の何%ということをきちっと割り出しておるわけではありませんが、大体この人間の射幸心を利用してたとえこういうスポーツ振興、あるいは社会福祉、また教育文化、まあいろんなけっこうな施設をつくるのに、射幸心を利用してつくることは私はよくないと思うが、ただ戦争に負けて廃墟と化した状態から一日も早く立ち直るためにはやむを得ぬということで、公営ギャンブルの道が開かれたと考えております。しかし必要悪とよく言いますけれども、私はこういうものはなるべく早い機会に解消すべきものである。こういうギャンブルの道を開いておるものですから、まあ家庭悲劇の原因になっているものも間々あることを新聞紙上なんかでも拝見をいたしております。しかし一方このぐらいな楽しみは庶民にあってもいいじゃないかという意見もありますけれども、やっぱり私は長くこういうものは続ける性質のものじゃないと基本的には考えております。しかし実態はいまお述べになりましたとおりでございまして、この公営競技がありますために、その収益で相当まかなわれている部分があるわけでございますが、しかしながらこれがやっぱり財政の一つの乱れにもなっておりますし、それからそういう競技がやれるところとやれないところがあるわけでして、それがまた地方団体間でいろんなあつれきのもとにもなっておるわけでございます。そこで、もうぼつぼつ二十年も経過するわけですから、一応必要悪として認めるとしても、やはりこれを何らかの形で必要以上の収益というものは他にも均てんする道を開くべきであるということが非常に国会の内部でも有力な意見となりましたので、私どもといたしましては、そういう措置をとろうと実はいたしましたけれども、なかなか議論が多くていまのところ完全にまとまるというところには至っておりません。  そこで、基準財政需要額の何%が妥当かということですが、中には、まあそれぞれ上がりが違うわけでございまして、五〇%のところもあれば、あるいは基準財政需要額の何倍かの収益をあげておるところもある。しかし一方行政需要というものはほとんど無限に近いといっていいぐらいあるわけでございまするので、やっても切りがないが、どこでこれを切って他へ均てんさしていくかということはなかなか問題がございます。いま冒頭申しましたように何%までということを私のほうでは詰めておるわけではありませんけれども、やはり方向としては、一定額以上のものは他へ均てんさせるという方向でまとめたいと考えております。
  191. 船田譲

    ○船田譲君 次に、自治省は三月の下旬に、地方公共団体が行政の簡素化、能率化を実施するには国の制度、行政運営の改善が先決だとして、各省に要請する改善案の大筋をまとめられたというように承っております。その中で特に許可、認可事項の整理、それから地方公共団体あるいは国の出先機関への権限の委譲の問題、あるいは地方事務官制度の廃止の問題、そういったことを中心にしまして、簡単にお考えをお述べいただきたいと思います。
  192. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) なかなか行政改革は意のままに進みませんので、今度内閣では一省庁一局削減などという手荒い計画を立てて実施に移すことになったわけでございますが、国の事業、公共事業すべて窓口は地方団体になっておりまするので、ほとんど大部分は実施に移すのは地方公共団体でございます。そこで、いまの行政を見ました場合に、非常に国との間に二重行政、二重監督になっている面があって、そこにたいへんなロスがあると私どもは見ておるわけでございまして、今度は行革本部で各省庁それぞれ案をおまとめになるはずでございますが、一つの機会ですので、自治省といたしましても、地方公共団体から見た行政改革のあり方というものを意見を述べたいと考えております。それはたくさんございまするけれども、その中にいま先生の御指摘になりました出先機関の権限の問題、それから地方事務官制度、いろんな問題があります。しかしこれらはすべてやはり国の法令だとか、予算だとか、あるいは補助金制度にからんでおりまするので、なかなかこれは地方団体と申しますか、自治省だけでやれることではございませんので、やはりこういった問題につきましても、根本的な改革案というものをつくりまして、そして来月中には行革本部に提出いたしたい。つまり合理化、簡素化という意味で私ども立場から見ました行政改革案というものを提出いたしたいと、かように考えておる次第でございます。
  193. 船田譲

    ○船田譲君 次に、政府は地方公務員法の改正によりまして、地方公共団体が定年制を採用できるようにし、あわせて定年退職者の再雇用、いわゆる特別職による再雇用、それから共済年金の受給の道を開くための関係法規の改正を行なおうとしておられます。これに対しましては、国家公務員には定年制がないのに地方公務員についてだけ設けるのは公平を欠くという議論がございますけれども、それに対して自治大臣どうお考えになりますか。
  194. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 国家公務員の場合は年齢的に見ましても、わりに定年制をいますぐ必要とするという状態ではないと見受けておりますが、地方公共団体の場合は情実と申しますか、現にもう七十歳に近い方々がたくさんおられて、勧奨退職の道はありまするけれども、しかし中にはがんばってやめられない方もある。ですから、地方公共団体もどうしても職員の何と申しますか、新陳代謝と申しますか、やはり若さというものを注入いたしまして、住民のためのサービスというものを活発にやっていかなければならぬ責任が当然あるわけでございまするので、しかしながらいままでは、やはり定年制を条例でしくということは何か法律に違反するような印象であったわけですけれども、今度はそういうことでなくして、地方公務員法で離職に関する規定を入れまして、条例によって定年退職の道を開くということにしたわけでありまして、画一的に何歳以上はやめさせなさいというわけでは決してないわけでございます。ですから、条例をつくるところもありましょうし、つくらない団体もあるし、これは自由にまかせる、こういうことにいたしております。が、しかし大体民間が五十五歳になっておりまするけれども、やはり民間のほうでも多少でも定年を延長しようといったような状態でもありますし、国民の平均年齢というものも御案内のとおり非常に伸びてまいっておりまするので、どこらが定年として一番おさえるのにいいかということになりますると、いろいろ議論はありまするけれども、これも画一的な指導はいたしたくないと考えております。まあ常識的には民間の定年よりは少しおそくというくらいの考え方は一応持っております。それから、いずれにいたしましても第二の人生をやめる方も開かれるわけですが、中にはその職場にいてまだ十分働ける方もありますし、またいていただかなければならぬ職種もあるわけでございまするので、そういう方々にはやはり再雇用の道を開く。これは民間でもそういう方向にあるわけでございますので、公務員でも当然そういう仕組みを取り入れていきたい。いろいろそういったことをあわせまして、離職への道を一応開いている、条例によって定年制をしきましても、それは決して違法ではないという道だけは開いておくという考え方に立っておるのでございます。
  195. 船田譲

    ○船田譲君 今度は、定年退職されるであろう公務員の側から見た考えでございますけれども、現在の勧奨退職制度で退職をした場合、一般の例でございますが、退職金と年金を足したものと、それから定年で退職されまして特別職として再雇用されたときの給与と、これは何年——三年くらいつとめられるといたしましょう、そしてそれに退職金、それから同時に共済組合法の改正で年金が支給されるということ、それの合計を比較した場合、つまりいまの勧奨退職制度のほうが退職をする公務員に有利か、それとも再雇用を含めての制度のほうが合計としては有利かどうかということ、これは政府委員でもけっこうでございますが、もしおわかりになりましたら、ほんとうのモデルでけっこうです。
  196. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) お答えいたします。  勧奨退職によりまして、割り増した退職金をもらいまして、それから年金をもらう、それと再雇用になりまして給与を受けまして、それからなお退職金と年金というような場合、いずれがもらうほうから見て有利かというお話でございますが、具体的な数字がちょっと出せませんのでございますけれども、概略申し上げますと、再雇用職員の給与は退職時の給与より相当下がることにはなりますけれども、それにいたしましても、かりに三年なら三年間年金をもらいながら給与を受けるということになりますと、それは再雇用職員の受け取りますほうが有利になるだろうと思います。ただ、まあ額を言えませんので、再雇用いたします場合には、特定の職種に従事してそれに対する報酬ということもありますので、それが額として多くなるのも普通の場合では当然ではないかと考えます。
  197. 船田譲

    ○船田譲君 以上で自治大臣に対します質問を終わります。  次に、科学技術庁長官にお伺いいたしたいと思います。宇宙開発の推進につきまして、現在国会に宇宙開発委員会設置法が提案になっておりますが、原子力委員会に対応するのには原子力基本法というのがございますように、将来宇宙開発基本法のようなものをこの開発委員会に対応するものとして制定されるお考えはあるかどうかということ。  それからもう一つは、この委員会設置法の目的に、一部には平和目的に限るとか、自主、公開を原則とせよというようなことを入れろという意見もございまするけれども、もし先ほど私が申しましたように、委員会に対応するべき宇宙開発基本法というのができるとするならば、これは基本法のほうにゆだねるのが適当じゃないかと思うのでありますけれども、以上二点につきまして長官の御意見を承りたいと思います。
  198. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) 宇宙開発委員会法、これは今後におきます宇宙開発のいわば中心部になりまして、国として開発をしていく政策の立案方針、あるいは開発の計画、あるいは予算というものを総括していく中心的なものでございます。ちょうど原子力委員会のような機能を有するものになるかと思います。したがいまして、宇宙開発基本法というようなものを当然これは早晩出さなくちゃならぬわけでございまして、科学技術庁としてもこの基本法の検討に入っておるわけでございます。  ただ、原子力とちょっと——平和利用と違いまして、宇宙開発の面で問題になっておる一つを申し上げますと、ロケットの開発、通信衛星、航行衛星といわれるいわゆる宇宙開発と、それから御承知のソ連、アメリカでやっております月ロケットとかあるいはお月さままでいくようなもの、いわゆる宇宙開発の分野が非常に大きいわけでございます。日本の現状に即しまして、実際お月さままで着陸をするというようなところはとうていまだ手が届かない実情にある。したがって、そういった範囲をどういうふうな形できめていくかというような点に実はまだ検討の余地がございますので、宇宙開発基本法は本年度はお出ししておりません。したがって、本年度お出ししておる設置法ができまして、それらによっていろいろ御審議を願い、いずれ基本法を出す段階へなろうかと考えます。  それから設置法の中に平和利用、あるいは自主、公開、あるいは民主という原則を入れるべきかどうかという点は、いま申し上げましたように実は基本法に入れてしかるべき筋のものであると私は考えております。したがって設置法はそこまで詳しく書くべきであろうかどうか、まあ御提案しておるものでよろしいのではないかというふうに考えております。
  199. 船田譲

    ○船田譲君 これもいま国会に提出になっております科学技術基本法についてただ一点だけお聞きしたいと思います。その中で、政府としての目標を設定して推進すべき研究の実施について大学の参加を必要とする場合、年次報告とか、基本計画とか、基本計画に基づく施策を大学の当該研究にかかる部分に限って適用するということになっておりますが、それは大学のほうで希望して参加するのであるか、あるいは強制的にというか、自動的に適用がかぶっていくのか、その点についてお聞きしたいと思います。
  200. 鍋島直紹

    国務大臣(鍋島直紹君) 今回御提案しております科学技術基本法は、御承知のとおり、人文科学と、それから大学における研究を除いております。しかし、たとえば原子力のような場合における原子炉の開発であるとか、あるいは宇宙開発の面における東大の宇宙研といったようなもの、そういうものにつきましては、それぞれ御研究になっておりますから、いずれ、いわば官学民と通称言っておりますように、国家機関あるいは民間及び学者の方々、研究グループの方々、そういう方を総合した一つの実施機関をつくられていくべきであると思います。その際、大学の方が研究分野を一つ持ちながら、基礎的なものとしてそれを持って、さらにその基礎的なものをいま申し上げた実施機関のほうに、あるいはたとえば事業団になりますか、そういうことに参加する御希望があれば、また参加していただくようにお願いをしたいと思いますけれども、大体主導権としてはやはり大学側にあるというふうに考えます。
  201. 船田譲

    ○船田譲君 最後に行政管理庁長官に、時間がありませんから、ただ一点だけお伺いしたいと思います。  いわゆる許認可事務の整理、それから審議会の整理はその後どのように進行しておられるかということ、この一点をお聞きしたいと思います。
  202. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 許認可の問題でありまするが、臨時行政調査会が廃止、統合、委譲及び規制の緩和をはかるように指摘したものが三百七十九件ありました。そのうち二百一件は処理済みであります。内容を申し上げますると、廃止したものが六十八件、統合したものが二十三件、下部機構に委譲したものが四十四件、規制の緩和をはかったものが六十六件あります。なお、昭和四十三年、ことしの六月までの間には十五件、政令以下のもの——法律が十五件でありまするが、政令以下のもの五件、これを整理したいと思っております。  しかし、許認可の問題でありまするが、どうもまだ八千件ぐらいあります。それでありまするから、報告なんかも二万件ぐらいがございます。そういうようなものを何としても整理していきたい。それで、今度の行政改革三カ年計画の中にみな織り込みまして、許認可などは少なくとも一割、それから報告事件なんかは二割を整理の対象にして少なくしたいと考えております。  それから、審議会の問題でありまするが、五十一国会で三十四件整理いたしました。今度また六件整理するつもりでありまするが、それでもなおかつ二百四十九審議会を持っております。その審議会の問題と取り組んでみますると、審議会をつくっておきながら一ぺんも、一度も開かない審議会なんかもありまするし、まだまだ整理していくべきじゃないか。私は、二百四十九件のうち、少なくともその半分くらいは整理をしてみようと、こう思いまして、いままで取り組んでまいりましたけれども、とても半分じゃもの足りない、もっと思い切って整理していく必要があるんじゃないか。ということは、物件を対象にする審議会というものをつくりますると切りがないのであります。そうでありまするから、物件を対象にした審議会でなく、大胆に申し上げますると、各省庁に一つずつの審議会を置き、顧問のような内容にいたしたら、十八で間に合うんじゃないか。なるほど民主政治でありまするから、広く民間人の意見を聞きまして、それを行政に反映させるということは非常にけっこうなんでありまするけれどもあまりそういうことをやっておりますると、政治の責任の所在が不明確になる危険があるのであります。そうでありまするから、場合によりますると、各大臣なんかの隠れみののようになってしまう。そういうことは私はいけないことだと思っておりまするから、やっぱり責任の所在は明確にするためにこういう審議会制度というものは思い切って廃止していきたいと、こういう考えでこれから取り組むつもりであります。まあそういう考えであります。
  203. 船田譲

    ○船田譲君 最後に、議事の進行に関することでありまするが、一言だけ委員長に御意見を承りたいと思います。  憲法の五十一条には、「両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。」と書いてございます。これは言論の府たる国会において議員が十二分に自由な言論を行ない、その立場を明らかにすることができるように保障したものだと思います。しかし、これには国会法百十九条によって裏打ちがなされているのだと私は思います。すなわち、国会法百十九条には、「各議院において、無礼の言を用い、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。」とございます。今後の本委員会の審議もこの百十九条にのっとった運営であるべきだと思いますけれども、これについて委員長はいかがお考えでございますか。
  204. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) お尋ねでございますからお答えいたしますが、いまの委員長に御質問の内容はきわめて重要なことでございまするので、理事会等にはかりまして善処したいと思います。
  205. 船田譲

    ○船田譲君 以上で終わります。
  206. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもちまして船田譲君の一般質疑は終了いたしました。     —————————————
  207. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 次に、前川旦君。
  208. 森中守義

    ○森中守義君 議事進行。いまの船田君の最後の問題ですが、具体的に何を意味したのかわからない。かたがた、委員長理事会で相談をするというけれども、何をやろうというのですか。単なる法律上の解釈を求めたということであるのか、具体的なことであるのか、その辺がよくわかりません。もう少し明確にしないと、委員長理事打合会にまかせるといっても、何をやろうというのです。
  209. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) いま私が聞きましたのは、船田君の御質問の趣旨は、憲法五十一条の内容に対しまして、国会法百十九条にあるこの内容がそれを裏づけておるのではないかという御意見でございました。それですから、これはきわめて重要なことでございまして、委員長に対する質問が適当かどうかもわかりませんけれども、御質問がございましたから、理事会に相談いたしまして善処する、そうお答えしたわけです。だから、私にはわかっております。
  210. 森中守義

    ○森中守義君 何のことですか、わからない。
  211. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) いま申し上げた御質問の要旨はわかっております。御質問の要旨はいま申し上げたとおり……。
  212. 森中守義

    ○森中守義君 ですから、それはわかっておる、それは。それはわかっていますが、その程度のことは、およそ議席を持っている者はみんな理解していますよ。だから、いまさらのように予算委員会委員長理事打合会でことさらに見解の統一をしなければならぬという、そういう性質のものじゃないでしょう。
  213. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) いろいろそういうふうに御意見があると思いますけれども、予算委員長に御質問になりましたから、委員長が独断であれこれ言うべきではないと思います。理事会にはかりまして、どうするかと、すべて御相談してやっていただくことがいいと思いまして、そうお答えしたわけであります。私は独断でこれに御返事をすべきでないと思います。
  214. 森中守義

    ○森中守義君 いまのことはわかっている。別に見解の統一をするような必要はありませんよ。
  215. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) いまお尋ねがありましたから、この問題は委員長におきまして、いま申し上げたとおり、私に質問がありました以上は、理事会でいかがいたしましょうかと、各党の理事がおられますから、そういう御意見を伺いまして善処いたします。いま森中さんのおっしゃったような意見、いろいろあると思います。しかし……。
  216. 森中守義

    ○森中守義君 法律の解釈一つじゃないのだよ。
  217. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) しかし、森中さんはそうおっしゃるが、そういう質問が具体的にあったのですから、やむを得ないじゃないですか。
  218. 森中守義

    ○森中守義君 いや、具体的にあったというが、そういう具体的な事実を言っていないじゃないか。だから、そういう解釈は当然なことだから、別に見解の統一をはかることはないじゃないか。
  219. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) いま、委員一般質疑の問題のときなんですから、それをいまここで……。  それでは、いま船田君の委員長に対しまする御質問に対しまして私は申し上げましたが、訂正をいたしまして、伺っておきますというふうに訂正いたします、先ほどの私の答弁を。     —————————————
  220. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 次に、前川旦君。
  221. 前川旦

    前川旦君 外務大臣にお尋ねいたしますが、ベトナムの問題はひとしくわれわれ心を痛めておる問題です。毎日刻々と情勢が変わるわけなんですが、あした衆議院でわが党の委員長が質問されますので、ごく簡単に一、二お尋ねしておきたいと思います。  その第一は、ジョンソン声明に先立って、何らかの事前の知らせというものが日本の外務省、外務大臣政府にございましたかどうか。
  222. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) あの発表を三十一日には向こうで行なった。その前にジョンソン大使を通じてこういう発表を行なうという通知がありましたけれども、それはもう当日の朝でございます。事前ではあっても、一日前の日というわけではございません。
  223. 前川旦

    前川旦君 事前というからには、一応考慮をするだけの時間的余裕がなければいけないと思いますが、ほんの直前じゃ、ちょっとないと思いますね。  そこで昨日の朝日新聞の夕刊には、バンディ米国務次官補が下田大使を呼びまして説明をしているという記事がワシントンから出ております。その中で、「ベトナム戦争をはじめ、米国の重大政策転換は事前に連絡をとるとの日米の了解が実行されなかったこともあって、」ということばがございますが、このことについて、いかがでございますか。
  224. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ今度の場合を考えてみますると、日本は前から、早期和平、早期に平和的に解決すべきである、軍事的に問題を解決することはできないと言っておるので、日本の意思に反しての行動ではないわけであります。ああいう形でアメリカが戦線を縮小していこうという決意をし、それを実行に移すということは、日本の主張から照らして歓迎すべきことでありますから、むろん相談があってもこれは日本としては歓迎すべきことで、日本の主張とは——相談をして、いろいろ考え方に対して日本の意見も聞くことにより考え方にいろいろ参考にしようという性質のものではなかったと思います、提案は。しかし、まあああいう提案が行なわれて、一時間ぐらい前であったですか、これはやはり向こうとしても、日本に対してよく事情を説明しておきたいということで、まあ一番最初に下田大使とバンディ国務次官補が会ったようでありますが、そういう意図もあったんだと思いますが、そういう意味であったというふうには私は聞いておらない。アメリカの事情をよく日本政府に理解をしてもらいたいということで会談をしたことは事実でございます。
  225. 前川旦

    前川旦君 この新聞の報道には、「ベトナム戦争をはじめ、」と書いてありますから、ベトナム戦争以外全部含むという意味であろうと思いますが、「米国の重大政策転換は事前に連絡をとるとの日米の了解が実行されなかった」と書いてありますから、事前にそういう了解が事実としてあるのでしょうか、どうでしょうか。
  226. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは何もそういうちゃんとした文書に残っておるというわけのものではないと思いますが、総理などがワシントンを訪問した場合に、そういう重要な事項は日本政府にはできるだけ事前にお伝えをすることにしようという話は、話し合いの中にあったというふうに私は記憶しております。
  227. 前川旦

    前川旦君 そういたしますと、文書で取りかわしたものではないが、紳士協約あるいは紳士協定としてそういう話がいままでのうちにあったというふうにお伺いいたしましたが、いつごろそういう話が出て、いつごろからそういう状態になっておったんでしょうか。
  228. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 岸・アイゼンハワー会談のときから、そういう話が両国首脳部の話し合いのときには出ておるわけでありますから、まあ岸・アイゼンハワー時代からと、こういうふうに御了解くださってけっこうであります。
  229. 前川旦

    前川旦君 昨日、日中関係の問題で、総理は、必ず事前に相談があるはずだと、こういうふうに質問に対して言い切られましたが、その確信もこれから出たことでしょうか。
  230. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、米中関係のことを言われておるのかもしれませんが、そんなに米中関係に、目がさめてみたら日本の頭越しに米中の和解ができておったと、そういうことを心配される人がありますが、私はそういうふうには思っていないんです、米中関係は。それで、相談もなしに、何か米中関係がにわかに日本の知らないうちに和解できるようなことがあったら、非常に日本としても、こんなにアジアの一員として非常に困ったことだということで、そういう配慮ならば、そういうことは私は考えられないと思う。一晩のうちにそんな、外交というものがそんなに、何ですか、急激に——いろいろな背景を持った両国の関係が一晩目がさめてみたら違っておったというようなことは、歴史の上においてもそういうことはあり得ないことで、そういうようには考えませんが、むしろ話し合いというより、将来はやはり日本が米中関係をできるだけ改善するような、そういう改善の役割りというものを日本もやはりする時期が来るのではないか、そういうふうに考えるわけでありまして、日本を通り越して米中が両方の関係を改善できるということは——そういう米中関係もだんだんと改善されるような努力、これを日本がやはりやる役割りというものは将来あるのではないか、そういうふうに考えますから、何にも日本というものを抜きにして米中の妥協ができるというふうには、私はそういう心配は要らぬと。むしろ日本がやはりそういうふうに骨折らんならぬ時期が来るのではないかとすら考えておりますから、そういう心配は私は一切してはおりません。
  231. 前川旦

    前川旦君 米中のことではございませんで、こういう事前の了解か岸さんの時代からあったとすれば、現在も生きていると考えてよろしゅうございますね。
  232. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 生きていると考えて当然でございます。
  233. 前川旦

    前川旦君 こういう重大なアメリカの政策転換がそれじゃなぜ今度事前に通告なり報告、相談されなかったのか、たいへん私はその点で疑問に思いますが、どうお考えでしょうか。
  234. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ事前であることは間違いないのですけれども、理想的に言えば、もう少し時間があったほうが、日本もこれに対して、そういう場合にもう少し時間があって相談を受けたほうがそれは好ましいと思いますが、しかし、今度のいろいろの場合において考えられることは、今度の場合も、常々日本が望んでおった方向でアメリカが踏み切るのですから、そういう意味において、そして、また、ベトナムに対しては直接日本はこれに対して介入をしておりませんから、そういう点でアメリカとしても、日本に対しての事前のアメリカの通知というものが、どういう事情がほかにもあったのか知りませんけれども、おくれた原因にもなっておるのではないか、こういうふうに考える次第でございます。
  235. 前川旦

    前川旦君 一応一国民として、やはり日本がないがしろにされたという気持ちを禁じ得ないわけですね。そこでこういう約束ごとをひとつ生かして、生きているとしたらなお生かして、われわれ批判がありますけれども政府のほうはアメリカとは対等のパートナーとおっしゃるんですが、これを生かして活用していくというお考えがおありでしょうか、どうでしょうか。
  236. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ前川君はないがしろにされたと言われますが、今日の日本というものは、もうないがしろにされる国ではないですね、日本は。それはいろいろな問題はあるけれども世界で百三十ぐらい国があるのですが、その中で生産力が世界の第三位にのし上がってこようという日本、この日本というものを無視してアジアというものは考えられないですね。また、日本の動向というものは世界にも影響を与え得る数少ない国の一つですから、あまり日本がないがしろにされているのではないかという、何かこうコンプレックスを日本国民が持たないほうがいい。ないがしろにされるには、あまり日本の今日の地位は世界の中できわめて重要な地位を持っているので、そういうふうには考える必要がない。もっとやはり日本人が自信を持って——これは影響力を持っていますよ。こんなにアジアに対しても、日本の動向というものは、国際連合などにおいても、日本がどうするのかというのは非常に影響力を持っている。だから、今日の日本の地位に対して日本国民全体がやはり自信を持ってしかるべきだと私は思っております。アメリカだって日本との——日本自身にも、安全保障の上においても、まあわれわれと前川君との立場は違いますが、安全保障の上において、共同の責任アメリカは負うて安全保障上の大きな役割りを果たしておるわけですが、アメリカもまたアジアにおける唯一の工業先進国日本とのパートナーで日本との友好関係を持っておるということがアメリカの地位をどれだけやっぱり強いものにしておるか。日本だけがアメリカのお世話になっておると私は思わない。アメリカもまたこの日本との友好関係というのは世界における地位を高からしめておる。アメリカ日本を無視してこれからアジア政策をやっていこうということはできない。日本人みずからが日本の地位というものに対して確信を持ってしかるべきだ。無視することができない力を今日は日本も持っている、軍事力こそないけれども。その点においてみな日本へ勉強に来るじゃありませんか。日本がどうしてこんなに短期間の間に発展を遂げたのかというのをアメリカからもたくさん勉強に来る。世界がこぞって日本のこの発展の歴史を学ぼうとする日本が、世界から軽べつされる日本であるはずはない、こういうふうに考えております。
  237. 前川旦

    前川旦君 私が申し上げるのと問題が違うので、自主的に独立した気持ちで、追従政策をとっていなければそれなりの尊敬を受けて対等になるはずなんですね。ところが、常にイエスマンでいる限り、これは無視をされて、あとで言えばついてくるということで、いわばばかにされるのじゃないか、こういうことを申し上げたわけなんでして、その点で今後の自主的な外交方針というものはより必要じゃないかということを申し上げたのでありますから、その点をお答えいただきたい。
  238. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 外交自主性ということをよくいわれますけれども、私は、外交自主性というものは、どこの国もみな自分の国の国益というもの、国のやっぱり利益という上に立ってみな外交をやっているわけであります。ことに私は外交の上へ自主外交ということをつけることはきらいなんです。私は使ったことがない。外交で自主でない外交があるのか、そんな外交をやっている国は、私はおそらく世界にあるまいと思うのであります。だから自主外交をみずから使わない。ことにアメリカ一辺倒と、こういわれますけれども、一辺倒外交というものは、これはもうそんな外交があるとしたならば、それこそまことに国民に対して不忠実な外交であります。あり得ない。日本は、ごらんになってもわかるように、アメリカだけでなくて、どこの国との間にも友好関係を増進していこうという立場外交をやっているわけで、日本の日米の協力と一辺倒外交は違うということであります。協力したら、それがもう自主性がないのだ、一辺倒外交だという、この一つの何といいますか、そういう考え方というものは直していただかないと、いかにも国民自身から外交は隷属しておるのだと言ってみずから外交の地位を軽んずることは、日本外交の名誉のためにも私はよくないと思います。アメリカに対してもイエスマンではありませんよ。イエスマンどころか、アメリカに対してもいろいろな場面で、私が外務大臣になっても意見が一致しないことが相当にあるわけです。中国政策なんか一致していないですよ。それは共同コミュニケ、一昨年ですか、佐藤総理の訪米したときに全然意見が違って、その妥協のコミュニケができなくて、両方の意見を並立したことを前川君御記憶でしょう。違うのです、中国政策というものは。軽い外交政策ではない。これに対してもアメリカとの間に違いがあるので、そういうことで、何かアメリカに対しては何でもイエスマンだということは、国民自身がみずからの外交立場というものをそんなに卑下されるとやっぱりよくない。これはやっぱり日本外交のためにもどうか。アメリカにも一辺倒ではないのだ。それを必要な反対のときだけ強調して私は演説しませんよ。しかし、いろいろな場面においてアメリカと意見の不一致するところがある。しかし、大きな政策において一致しておるから、アメリカとの間の協力関係、パートナーシップというものは成り立っているのだが、個々の政策の上においてはアメリカとの間に相当の意見の不一致はある。しかし、根本において日米両国が一致しておるところにアメリカ日本との基本的な友好関係というものが成り立っている基盤があるので、一々の政策については、アメリカだって自分の国の利益というものにはとてもこれはきびしいですよ、アメリカは。また、日本もそうあるべきで、そういう個々の政策には大いに違いがあって、決して一辺倒外交はやっておらないということを、前川君自身も、ひとつこの点は御理解を願いたいと思うのでございます。
  239. 前川旦

    前川旦君 それでは、日本と米国との関係の場合に、その基本にあるのは日本の国益であり、アメリカの国家利益である、いろいろ友好関係はあっても、帰するところは、それぞれがそれぞれの国益に従って行動するのが基本的な原則だということになりますか。
  240. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 基本的には、われわれはやっぱり共産主義というものに対しては反対の立場である。共産国に対してはわれわれは外交関係も樹立して、この関係はできるだけ友好関係を維持したい。共産主義というものによっていわゆる国を立ててないわけです。イデオロギーとしての共産主義というものは、日本政府はこれに対して反対の立場アメリカもまた世界のいわゆる自由といいますか、自由主義的な、自由民主主義的な方向によって、こういうもとでやっぱり世界の秩序を維持していきたい、この点においては意見が一致しておるわけです。やはり国というものの社会形態というものを自由民主主義の上で維持発展さしていこうという点で一致しておる、これが一つ。  また、世界の平和というものを維持していくということが、まあいろいろベトナム問題に対しては、人によって評価が違うと思います。しかし、アメリカ自身とすれば、これを侵略の戦争だとはアメリカは考えていない。ベトナム政府の要請を受けて、そして自由独立のためのアメリカ軍事介入であるという立場をとっておる、しかし、これは人によっていろいろ評価が違うでしょう。われわれとしても、アメリカ自身が軍国主義的な国だとは思ってない。やはりアメリカ世界の平和というものに対して、武力によらないで平和的にものを処理しようという一つのプリンシプル、これはやはりアメリカ自身が信奉しておる国である、こういう点で、やはり大きなこれからの世界政策の基本について日米間において一致の点がある。これがやっぱり日米の友好関係が築かれておる基盤だと思う。しかし、個々の問題については、いま前川君が言われたように、いろいろと個々の国の利益によって意見の対立することもあるし、一致することもある、こういうことはやむを得ないと思う。
  241. 前川旦

    前川旦君 それぞれの国家利益に従って判断し、行動するということを前提にしてお尋ねいたしたいのは、ジョンソン大統領のあの声明があったときと、それから昨日きょうとだいぶ感じが変わってきましたね。印象としては、ほぼ全面的な、九〇%までの北爆停止だというふうな印象で、歓迎するというムードがありましたが、きのうあたりの新聞を見ますと、北爆を許されておる範囲がうんと広がっている。ハノイの百何キロ近くまで許されている。四つの省までが入っておる。単なる一部じゃなくて、かなり広い部分だということで、一部ではこの先行きに絶望的な感じが出てきておると思うのです。たとえばそういうことがパリやイギリスのロンドンでも報道されておりますが、その点についてどうお考えになりますか。
  242. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) アメリカが、今度のジョンソンの提案によって、一つの戦線縮小というものの決意であることは私は疑ってないわけです。戦線を縮小していこう、戦線を拡大していこうというのではなくして、戦線を縮小しようという決意であることは、これはやはり確信をいたしておるものでございます。しかし、まあこの爆撃、昨日ですか、北緯二十度の地点まで爆撃があったようですが、この機会に私は個々のアメリカ軍事行動というものを批判することは差し控えたいと思う。個々の軍事行動に対する批判は差し控えたいと思います。そして、こういうこともだんだんともうなくなっていく、この北爆というものもだんだんと一日も早くなくなるということに対して私は期待もし、また、そういう条件をつくるために日本外交努力をしたいと思っております。
  243. 前川旦

    前川旦君 ただいまの外相のお答えでは、ジョンソン声明前には一日六十波、ジョンソン声明以後一日百波というふうに北爆の波数が上がっておるという記事がありますね。そういう事情はやはりこれは好ましくない、やはり声明以前よりはさらに縮小すべきだという考えにお立ちになるのでしょうか。
  244. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) われわれがこのジョンソン声明というものに対して評価をしたのは、戦線を縮小していこうというこの決意のあらわれであるというんですから、だんだんと戦闘状態が縮小するということがわれわれの期待でございます。これから戦闘行為が拡大するということはわれわれは考えていないこと、縮小して、しまいがきたら北爆もなくなる事態というものが早くくることを期待しておるのでございますから、これが戦闘行為の拡大はわれわれの期待するところではございません。
  245. 前川旦

    前川旦君 北ベトナムがこれを受諾する可能性というものが、きょうあたりの新聞等を見ますと、だんだん少なくなってきたような論説なり情報がたくさん入っております。で、この点についての見通しを、日本の外務省、外務大臣はどうお立てになっていらっしゃいますか。
  246. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは世界もまたハノイの反応というものをみな見きわめようとしておるのですから、日本の外務省がハノイがどういう反応を示すであろうかということをここで申し上げるということは、これはできないことでございます。ただ、言えることば、どうかせっかく、いろいろな不徹底な点もあるでしょうけれども、ジョンソンが自分の大統領の地位をかけて戦線を縮小したい、そして平和的に解決したいという決意であることは疑う余地はありません。だから、ハノイ話し合いに応じて、そして戦争を終わらせる、話し合いによって戦争を終わらせるという方向でハノイが反応を示すことを期待するということが私のいまの心境でございます。一体どうなるかということを予測することはきわめて困難でございます。
  247. 前川旦

    前川旦君 ちょっとよくわかりませんが、その対策を考えて検討しているけれども、いまここで言う段階でないということなんでしょうか。全然それは検討の必要がない、しないとおっしゃることなんでしょうか。
  248. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この点はわれわれが最も関心を持っておるのですから、外務省の耳をアンテナにして、各国の各在外公館を通じて、ハノイがどういう反応を示すであろうかということには関心を示しておると同時に、ハノイに影響力を持つ国々に対しても、どうかこの機会をとらえてベトナム戦争平和的解決のきっかけにしてもらいたいという、こういう在外公館を通じて日本政府の意図を伝達せしめておる次第でございます。
  249. 前川旦

    前川旦君 これを受諾するかしないかの二つしか道はないと思います。そこで、受諾をしないということになれば、その理由としては、やはり北爆停止が不徹底であるとか、あるいはさらにその間に増強をしたとか、だから平和の意図が信じられないと、こういったような理由に実はなるだろと思うのです。そこで、一体、この機会を平和の機会だととらえて、もし受諾をしないというあれが出てきた場合には、その条件を満たすようにアメリカを説得して、北爆を完全にやめさすとか、これを転機としてそういう方向に努力をなさるのか、それとも、受諾しないという段階で、次にとるアメリカ態度、処置を御支持なさるのか、どうお考えでしょうか。
  250. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 現在、ハノイ立場というものも非常に微妙な立場で、まだジョンソン提案に対してハノイの公式の政府の意思の表明はございませんから、この機会に、断わったという場合を予定して日本外務大臣が発言することは適当でない。この時点において、早期の平和的解決日本外交を担当する者としては全力を尽くすということ以外に申し上げることは適当でないと思います。
  251. 前川旦

    前川旦君 ここで、もしジョンソンの提案が一応拒絶ということになって、あとはどうなるかというと、再び戦闘再開ということしか考えられない。その場合、一般に言われておりますことは、もうこの段階では、北進か、さもなくば戦術核兵器の使用か、こういうことが普通一般に言われております。これは、世界の平和に対する非常に危険な様相が出てくると思うのです。そこで、このチャンスをつかまえて、是が非でもここで平和をものにするんだという強い主体的なそういうお考えがおありなのかどうか、その線に沿っての外交をこの際展開なされるおつもりかどうか、この点をお答えいただきたいと思います。
  252. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 前川君の言うとおりに、この機会を平和的解決一つのきっかけにしなければいかぬ、全力を尽くしたいと思っております。
  253. 前川旦

    前川旦君 その場合に、必要とあればアメリカを強く説得をしてでもこの機会に何とかやり遂げたいという、それほどの強い御決意でしょうか。
  254. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) アメリカ大統領の地位をかけてもああいう声明をしておるわけですから、これを平和的に解決をしたいというアメリカの意図は疑う余地はない。だから、私はいまの段階で言いたいことは、どうかハノイアメリカとの間にこれを平和的解決一つの機会として話し合いに入ってもらいたい。聞かなかったらお前はアメリカを説得するのかという、そういうことを言う前に、アメリカ提案にこたえてハノイ話し合いに入って、いろんな言い分があれば、その話し合いというものは相当長く続くんでしょうから、そういう続く場合においてハノイの言い分もむろんいろいろあると思いますから、軍事的に解決はもうとてもできない戦争であることは明らかですから、どうかハノイ話し合いに入ってもらいたい、それを私は願っておるものでございます。
  255. 前川旦

    前川旦君 話し合いに入ってもらいたいという願望で見ているのではなくて、何らかそのための手を打つべきではないかということを先ほどからしきりに言っているわけです。必要とあればハノイに行かなければいけないときもあるでしょうし、あるいはアメリカを強く説得してさらに徹底した北爆停止をやらせるという面もあるでしょうし、それほどのことを強い決心でおやりになる気持があるのかということを聞いているのですから、ハノイ待ちだ、それを見ているんだということでは、ちょっと私は納得ができないと思うのです。
  256. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは、先ほど申し上げましたように、ハノイに対して友好的な関係を持っておる国々、これに対しては、これをひとつベトナム平和的解決の大きな一つの契機にしてもらいたい、そのために日本は協力できることはどんな協力も惜しまないということを在外公館を通じて各国の政府に伝えたわけであります。ただじっとハノイのやることを待っているというのではなくして、日本もそういうふうに努力をしながらハノイがどういう態度に出るかを見守りたい。その結果、いろいろな結果が出るが、その結果に従って日本平和的解決のためにできる最善を尽くしたいと考えております。
  257. 前川旦

    前川旦君 私は、その最善の具体的な中身は何だろうかということを実は聞きたいと思っているわけです。先ほど具体的にアメリカを説得するとか、いろいろ申し上げたのも、最善を期したいということばだけではなくて、具体的にわれわれはここまでやってでもこの転機をつかむんだという、その強い姿勢がほしいと思いますので、その点を再度聞かせていただきたいと思います。
  258. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この結果は、ハノイがどういうふうな反応を示すかによって日本の働きぐあいも違ってくると思います。ジョンソン提案に対してハノイがどういう反応を示すかということが、日本が働くにしてもいろいろ働き方が違ってくると思います。いまやれることは、まあいろいろハノイにも言い分があろうと思うけれども、少なくともジョンソン大統領が自分の地位をかけて約束したというジョンソン大統領の本心でベトナム平和的解決を求めておるということをハノイ額面どおり受け取って何か話し合いに入る一つの契機にできないかと、そういうことについて、ハノイと友好関係にある国々に、これを一つの契機にしてベトナム和平への一つの気運を盛り上げていこうではないかということがいまの段階では日本政府としてはやる点だ。その後のそういう両国の関係の進展に伴っていろいろやり方も違うでしょうが、とにかく日本政府が早期にベトナム平和的解決を望んでおることは疑う余地のないことですから、そのときに応じた全力を傾けた努力をしたいと、これを申し上げておるのでございます。
  259. 前川旦

    前川旦君 私ども聞きたい答えが出てこないようですが、これはまああしたの衆議院の本会議のほうにお譲りして、私どもが言うことはこれでいいと思います。  そこで、次にまいりますが、最近問題になっております安保条約の第六条の解釈その他いろいろありますが、安保条約あるがゆえに戦争を防いできたと政府はおっしゃるけれども安保条約あるがゆえにやはり戦争に巻き込まれる危険もたびたび感じてきたとわれわれはこう考えるのです。やはり一つのものに完全というものはないわけなんですから、安保条約日本が好まずして戦争に巻き込まれるその危険性というものの——要素があるということをお認めになりますかどうか。
  260. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは、前川君の言われるように、いろいろなプラスの面、マイナスの面が何でもあると思います。われわれは、しかし、国の安全を確保するということは、政治の第一義的必要な点だと考えております。それについて何にも防衛力を持たずにいったらどうかという御意見もあるようですけれども、そういう国は世界で類例はないのですね、どこの国でも。何かやっぱり不安定な世界です。それで、そういうここができるなら、どこの国もみな好んで、やっぱり防衛力は金のかかることですし、やる国はないと思います。しかし、それでは国民に対する安全上の政府責任を果たせないというところで、みな相当無理をして一国の防衛というものを考えておるわけです。したがって、日本の場合は、これはどこの国の統計に比べてみても、日本の防衛費というものは世界の先進国で一番少ないわけですね。こんなに少ない防衛費しか出していない国は世界のどこにもない。それだけでは十分でないので、安保条約というものでこれを補っておるわけであります。このことによってもし日本を侵略しようという国があれば、アメリカとも——これだけの大きな軍事力を持っておるわけですから、圧倒的な軍事力を持っておるアメリカとも敵にして戦わなければ日本の侵略というものはできないんだということが、これはいま戦争を実際にこうやってきた国はないのですから、前川君も、どれだけ安保条約のごりやくがあったということを、ちょっと実際にないから、計算しにくいですけれども、しかし、このことがどれだけ日本に対する日本の安全を確保する上において役立っておるかということは、これは評価しなければいけない。巻き込まれると簡単に言いますが、巻き込まれるということは直接日本を攻撃してくるわけですから、極東に対しては日本の安全というものに関連を持つ地域以外に対して日本が戦闘作戦行動に基地を提供するようなことはしませんから、やはり極東の安全といっても日本の安全との関連性をもった極東の安全ということでしょうから、そういうことを考えてみると、そういう一番端的な場合は日本を侵略してくる場合ですから、そうしたときには、日本ばかりでなしにアメリカも相手にして戦わなければならぬということは、そういうことで戦争に巻き込まれるというけれども、巻き込まれるということは攻撃をしてきたということでしょうから、攻撃をしてくるということは、それだけの大きな戦争決意しなければ攻撃ができないわけでありますから、頭の上ではそういうことを考えられるかもしらぬけれども、現実の場合で安保条約を結んで戦争に巻き込まれるということの考えは私は持っていないのです。日本の周辺の国にいろいろな変化があっても、日本国民というものは日本の安全というものに対しては非常な確信を持って、日常生活は動揺しないですから、これは何といっても、日本の防衛力はわずかであっても、日米安保条約というものはそれが補っておると、こういう一つの安心感というものが日本の国民に対する安全上の不安を与えていない原因だと思います。国民の一部の中には、やはり防衛力は要らぬという人もあるでしょうけれども、国民の大部分は今日の世界情勢で不安である。大部分の国民に安心感を与えておるものは、日米安全保障条約による保障というものが大いに役立っておる。戦争に巻き込まれるどころか、日本戦争を防止する上においてその正当な価値というものは国民が評価しなければならぬ、こういうふうに考えております。
  261. 前川旦

    前川旦君 私の質問に対して遠いところぐるくるとお回りになってまたおすわりになるように思うんですが、たとえば、安保条約の第六条の事前協議というこの条項は、安保あるがゆえに好まざる戦争に巻き込まれるのではないかという国民の危惧の念を、これを一応カバーするために非常に努力をなさって事前協議という条項を入れられたんだと、こういうふうに伺っておりますが、そのとおりなんでしょうか。
  262. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 日本政府が同意できないようなこと、そのことのアメリカ軍事行動が起こってはいけない。一切の軍事行動は政府の同意のもとに行なわれなければならない。そういうことで、何でもかんでも事前協議にかけるということはないですけれども、一国の運命をきめるような重大な問題は事前協議による政府の同意が必要である、こういうことにいたした次第でございます。
  263. 前川旦

    前川旦君 先ほどのお答えの中にちょっと不安に思う点がありますから、この点をお尋ねしておきますが、この六条の解釈はだんだん空洞化してきているとわれわれ見ておるわけですね。日本の国益に基づいた安全保障ということを考えれば、できるだけ広く広く解釈していくほうが日本の安全のためにプラスになると思うのです。だんだん狭く解釈されていくということを非常に危惧するわけですね。そこで、一体、本質的に広く解釈していくほうがいいのだと、プラスになるのだということ、そういうふうに外務大臣はお考えになりませんか。
  264. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 広く広くと言いますが、事前協議を何でもかけるようにしたほうがいいんではないかという、まあ何でもないことでも事前協議にかける条項をもう少し広くしたらいいのではないかというような御意見ですか。
  265. 前川旦

    前川旦君 いや、たとえば直接戦闘作戦行動の解釈にしても、もっともっと広く解釈をして、ごく一部のものだけがそれに当たるんだということではなくて、もっと広く解釈していったらいいじゃないかということを言っているわけです。
  266. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 一つ日本政府の考えておる基本的な考え方は、われわれはアメリカのための防衛に海外派兵もしないのですね、アメリカのためには。日本の防衛のためにアメリカ責任を負わせているわけですね。アメリカ自身が防衛上いろいろな危険におちいっても、海外派兵してやらないですからね。日本では安保条約というものが非常に片務的だと言うが、アメリカから見れば非常に片務的だと言う。この条約というものは、日本は助けてくれないで、こちらだけがいつも日本を助けるのだ、片務的だというきびしい議論が国会の中に絶えずあるのです。われわれも聞かされるわけですね。だから、事前協議というものを、いやなものがやってくるから、これをなるべく行動を縛るように、事前協議を縛っておこうという考えではないんですね、われわれは。国の運命に関係するような重大問題は政府の同意なしにやってもらっては困るということで、あんまり何でも縛って、もういやでしょうがないのだけれども、これが来ているから、こいつを縛って行動を縛ろうという考えではなくして、日本の防衛の責任を負わせている、しかも核兵器時代における防衛の責任ですから、アメリカとしてはたいへんなコミットメントであることは事実ですわね。だから、これに対して何でも縛ろうというのではなくして、ある一つの一点、それは日本の運命に関係する、そういう場合において、事前協議によって日本が同意もできればまた拒否もできるという自由を持っておきたいというわけでありますから、日本が、安保条約は要らぬものであるのだ、ああいうものがあるからこいつを縛らなければならぬというのではなくて、われわれはやはり日本の防衛のために安保条約の果たしておる役割りを正当に評価して、しかし、運命に関係することに対しては政府の同意がなければできないということで、縛り方に対して、安保条約を否定するか、安保条約一つの効果を正当に評価するかということで、事前協議に対する考え方が非常に違ってくる。われわれは、いやなものをやっているというふうに考えないで、日本の防衛を補っている、こういうことで、事前協議もあんまり何でもかんでも縛り上げるというようなことはよくないのではないかというので、いま言ったような、前川君からいったら、あまりにも事前協議というものが非常に重大な場合だけしかしないじゃないかと、こう言われますが、重大な国の運命に関係する場合、そのときに事前協議をするということで今日までわれわれは安保条約の事前協議を考えてまいってきておるわけでございます。
  267. 前川旦

    前川旦君 直接戦闘作戦行動だけをつかまえてみた場合に、ここまで狭くなってくると、あとはノーという場面しか残っていないのじゃないかと、ここまで考えられますね。そこで、たとえば朝鮮で紛争が起きる、これは非常にあり得ることです。現に、この間のプエブロ号事件のときに、一瞬非常な緊張が高まりました。前の朝鮮戦争のときには、おそらく日本の基地から、特に板付だろうと思いますが、米軍の空軍が飛び立っていって直接戦闘作戦したはずなんです。したがって、今度も、戦略的にあるいは戦術的に考えても、もし朝鮮で紛争が起きれば、日本の基地から直接行動に入るということが考えられますね。その場合に、ノーと言われる御決意がおありでしょうか。
  268. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 前川君の御質問が少々無理だと思います。いまここでどういう事態が起こるのかわからぬときに、ノーと言えということは無理で、イエスの場合もあればノーの場合もある。そのときの朝鮮半島における状況と判断、これによってノーでもありイエスでもあるということでございます。
  269. 前川旦

    前川旦君 それでは、関連して聞いておきますが、たとえば朝鮮で騒乱が起きる、日本の米空軍が出動する、直接戦闘作戦行動で行動するときには、事前協議の対象になるでしょう。一たん、たとえば韓国内の朝鮮領土内の基地におりて、補給でも何でもいいおりて、それから次の行動に移るという場合には、これは事前協議の対象になりますか。
  270. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは日本の基地を使いましてね、戦闘作戦行動の命令が出て行動をしたら、それでその行ったところが韓国内におけるアメリカの基地であっても事前協議の対象になることは明らかであります。
  271. 前川旦

    前川旦君 もう一つお尋ねしておきますが、日本で直接戦闘作戦命令を受けて出動するということをしきりに言われました。事前に本国で作戦命令を受けて、それで日本へ寄って補給をして、それから直接戦地に行くと、この場合はどうでしょうか。
  272. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) むろんこの作戦命令を受けて日本に寄航してですね、日本からやはりそれは全く直接すぐに戦闘作戦に入るわけですから、日本からはね。それは事前協議の対象になるということは明らかでございます。
  273. 前川旦

    前川旦君 それでは運輸大臣にお尋ねいたしますが、国際空港である羽田、伊丹、これを利用するアメリカの軍用機、あるいはMAC機、MACのチャーター機、そういうものが事実ございますか。
  274. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ございます。二月の統計では、月に羽田に着陸する飛行機の回数が約五千回でございますが、アメリカのMACチャーター機は二百回ぐらいその中で着陸しております。そのほか大阪空港におきまして、これは四月二日の統計によりますと、三千七百二十回民間機がついて、そのうちMACチャーター機が六回、米軍機は六十回、羽田の場合は米軍機は二回でございます。
  275. 前川旦

    前川旦君 朝日新聞の二月九日の記事では、羽田から米軍のMAC機なり、あるいはMACのチャーター機が直接南ベトナムへ行っているという記事が実は出ております。そこでお尋ねしたいのは、羽田あるいは伊丹から米軍の軍用機なりチャーター機なりMAC機なりが南ベトナムへ直行する、サイゴンは一応国際空港ですから、これはのけるとして、たとえばカムラン・ベイとかダナンとか、チュライとか、そういったところに羽田から直行する便というのが実際この新聞のとおりありますか。
  276. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 羽田からMACで行くのは韓国に行ったり、台湾に行ったり、沖繩に行ったりしておりますが、中にはベトナムに行くのもあるだろうと思います。しかし方向は明示されておりません。これは軍の機密で公表できないことになっております。われわれは推定で、韓国に行ったり、台湾に行ったりしてますから、ベトナムに行くのもあるだろうと想像しております。
  277. 前川旦

    前川旦君 日本民間飛行場を利用する飛行機は着陸、離陸するときには全部飛行計画を出さなければいけないということとが航空法で規定されておりますから、軍用機といえども、あるいはMAC機といえども、全部このフライト・プランというのを出すわけです。しかもそれは運輸省で秘密扱いになっておりませんから、決しておっしゃっても私はいいと思うのですが、これはもうこれでけっこうです。そこで、こういう羽田、伊丹といった国際民間空港に米軍機が離着陸する、利用するという法的な根拠は何でしょうか。法制局長官にお伺いしたいのです。
  278. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げます。米軍機は地位協定五条の一項に、御承知だと思いますが、規定がございまして、わが国の民間飛行場に出入することができることになっております。
  279. 前川旦

    前川旦君 法制局長官に続けてお尋ねしますが、それは羽田、伊丹という国際空港だけでたく、日本民間飛行場は全部これに該当するのでしょうか。
  280. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 五条、ただいま申し上げました地位協定の五条でございますが、ただいま申し上げました、簡単に言えば米軍機でありますが、それは日本国の飛行場に出入することができるというわけで、地位協定上その限定はございません。
  281. 前川旦

    前川旦君 限定はない。どこでも行ける。どこの飛行場でも同じだということですね。
  282. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) そのとおりでございます。
  283. 前川旦

    前川旦君 運輸大臣にお尋ねしますが、日本で一番給油能力の多い飛行場は羽田だと思いますが、いかがでしょうか。基地を含めて全部日本にある飛行場のうちで。
  284. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 羽田であります。
  285. 前川旦

    前川旦君 羽田を利用して米軍機それからMAC機、これは軍用機です。それからMACのチャーター機が兵員を直接戦場である南ベトナムそれも国際空港のサイゴンでないほかの米軍の基地、ダナンとか、カムラン・ベイとか、チュライとかへ行っておるということになりますと、若干問題があるのは、しかも羽田が一番給油能力があるということになりますと、羽田を利用しての直接作戦行動というものが緊急の事態にはアメリカの国益に従ってあり得るという場合も可能性があると思のです。そこでこの場合には一体はたして第六条の事前協議の対象になるのかどうか、いかがでしょう。
  286. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) MACで羽田を使う場合は大体トランジットで、お客を運ぶという場合が多いのです。兵員の場合はわりあいに横田をほとんど使っておりまして、横田が一ぱいだという場合に羽田を使わしてくれと言ってきておるのです。したがって、混載してきている場合が多いので、そこから韓国へ行く人もありますし、ベトナムへ行く人もありますし、あるいは沖繩へ行く人もあります。専用でベトナムのほうへ行っておるかどうかわれわれのほうでは状況はよくわかりません。が、しかし、大体いままではアメリカも非常に遠慮して、自粛しておりまして、一般の背広の人や技術員やあるいは転勤の軍人や、そういう者が混載してきておる場合が多いようであります。
  287. 前川旦

    前川旦君 この地位協定によって日本の飛行場はどこでも米軍の軍用機あるいはMAC、これも軍用機です、利用できます。しかもこれは東京周辺の基地は給油能力に限界があります。これは汽車やそれからトラックでガソリンを運はなくちゃいけませんが、羽田は直接船で運びますから給油能力が一番あるはずです。そうなると、いざ事という場合、やはりアメリカの国益に従って、アメリカ自身の自衛権の発動としてこれは羽田なり伊丹なり、あるいはほかの飛行場を使われる可能性がゼロとは私は言えないと思う。安保条約の第六条の事前協議の対象にはなるかどうかということについては、法制局長官いかかですか、これは。この条文から見て日本にある基地以外は基地から発進して基地を使う場合にはこれは事前協議の対象になると書いてありますね。ところが、基地以外は含まれていないのですか、これはどうでしょうか。そういう場合にも事前協議の対象になるでしょうか、どうでしょうか。
  288. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げます。事前協議をきめました規定は御承知のとおり岸・ハーター交換公文がございますが、その交換公文について特に問題としていらっしゃるのは戦闘作戦行動でございますが、そのための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は日本政府との事前協議の主体とするということになっておりますから、この交換公文の定めのとおりに施設区域の使用について事前協議の対象になります。
  289. 前川旦

    前川旦君 運輸大臣にお伺いいたします。羽田、伊丹、これは地位協定に従って米軍に提供された地域及び区域でょしうか。
  290. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 羽田、伊丹は施設区域になっておりません。
  291. 前川旦

    前川旦君 外務大臣と防衛庁長官にお伺いしますが、たいへんこれは抜け道ではないでしょうか。たとえば提供した基地を使って直接戦闘作戦行動に移る場合には、事前協議の対象になる。基地として提供されていない、以外の民間飛行場、これはしかも自由に入れるとおっしゃる。自由に入れる。ここを使って直接戦闘作戦行動に出るときには全くこれは事前協議の対象にならない。こうなるとたいへんこれは大きな不備になると思いますが、外務大臣いかがでしょう。
  292. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 羽田、伊丹を利用している場合は人員輸送が大部分でありまして、兵員の転勤とか、あるいは輸送とか、そういうもので、銃器、弾薬、あるいはそういうものを持って人を殺傷に行くというので出ていくという場合はないのであります。そういう意味で、基地から外国を出撃するという意味の戦闘作戦行動ということではないんです。で、現在そういうふうな兵員輸送のために羽田を利用、向こうがさしてもらっている場合でも、こちらのほうから非常に強い要望をしておりまして、こちらの発着にさしつかえない範囲にしてくれというので、大体二百回をこさないようにしておるんです。五千回着陸している間でまあ最高二百回ぐらいですから、それも時間帯が国際線や国内線が発着するときでない昼間の時間を主として使っておるのでありまして、現在のところはそれほどさしつかえをきたしておる情勢ではございませんし、また、内容自体も、戦闘作戦行動と言うべき内容ではないのであります。
  293. 前川旦

    前川旦君 運輸大臣は先ほど刑特法に触れるからおっしゃらなかったんでしょうけれども、いまおっしゃた何を運んでいる——兵員、いろいろな内容おっしゃいましたね、軍属運んでいる。さっきの話とちょっと矛盾をいたしますがね。ですから、刑特法に触れるから言えないし、また、それを調べる権限もないわけなんでしょう。権限もないわけですから、その飛行機で何を運んでいくかわからないわけですね。実は降下部隊を運んでいるという可能性もゼロではない、ゼロではないですね。あるとは言いませんがゼロではない。したがって、将来のことを考えれば、これを使って直接戦闘作戦行動に使うという可能性もゼロとは言えません。その場合、全くこれ事前協議の対象になりませんか。外務大臣、どうですか。
  294. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) なかなか重大な問題でございますが、ただいまの御質問に対して私は岸・ハーター交換公文の中身をそのままお答え申し上げましたが、いまのお話は、この施設区域でない飛行場を使って、そして、たとえば戦闘作戦行動というものに使われた場合にはどうなるかというのが御質問の主眼点だと思います。そこで、私は、安保条約の第六条によって施設区域を使用されておるわけでございまして、地位協定によっては出入することを許されるということになっておるわけです。さっきの五条でございますね、地位協定の五条では。そこで、御指摘のような戦闘作戦行動に出るというような場合について民間の飛行場を使うということは、およそ予想されないことだと私は思います。もしそういうことがあるとすれば、これはその岸・ハーター交換公文の趣旨に照らして、やはりそういう事態に照らして相当な措置が私は必要だと思いますけれども、そもそも地位協定上出入を許されている飛行場、それから安保条約上一定の目的のために使用を許されている施設、区域、それはおのずから性格的には差異があるので、民間の飛行場から戦闘作戦行動に飛び立つというようなことは予想されないことであると考えております。
  295. 前川旦

    前川旦君 私は法制局長官に政治問題をお伺いしたのでありません。法律問題をお伺いしたのであって、法律問題の解釈として、この条文の解釈として事前協議の対象にならないというお答えをいただけばそれでけっこうなんです。あなたのおっしゃったのは、いまは政治上の問題だと思う。だから、その政治上の問題について外務大臣と防衛庁長官にお尋ねしているんですから、お答えいただきたいと思います。
  296. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 実際問題としては、そういう場合は考えられません。戦闘作戦行動に、民間というか、アメリカに提供してない施設を使ってするということは考えられませんが、もしも、そういうことはないけれども一つの理論、理屈の問題として、そういうことがあったならば、むろん事前協議の対象にすべきだと思います。
  297. 前川旦

    前川旦君 これは当然、常識論として、事前協議の対象にすべきというのが私はほんとうだろうと思うんです。ですから、いまのお答えでいいわけなんですが、ただ、その場合に、手続として、こちらから言えないということをいままでおっしゃってこられたわけですね、第六条の問題は。それは一体どういうふうに御処理なさいますか。
  298. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 六条による事前協議はアメリカがイニシアチブをとる、四条は日本がいつでもイニシアティブをとれるわけです。したがって、六条からアメリカがくるし、四条からは日本がくる。したがって、事前協議をやろうではないかということは、いつでも日本が言えるわけですから、一方的に事前協議と言えばアメリカが言い出さなければやる機会はないのだというふうにお考えにならぬほうがいいと、六条による事前協議はアメリカ自身がイニシアチブをとるべきものでしょう、それはやはりアメリカが核兵器を持ち込んだり、あるいはまたアメリカが戦闘作戦行動に日本の基地を使ったり、あるいは軍隊の移動、編成、軍隊の大きな移動というような場合にかかるわけですから、アメリカ軍事行動によるわけですからね。だからアメリカ自身がイニシアチブをとらなければ、日本から何をしてくれと言い出す場合は考えられませんから。しかし、六条はアメリカであっても、四条は常に日本からどうもきみのほうはあやしいぞ、事前協議をやろうじゃないかと言えるのですから、両方からやれるわけですから、あまり日本が何にも事前協議に対してはものを言えないのだという解釈をなさらないほうが私はいいと思います。
  299. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連外務大臣に伺いますが、そうすると前川委員指摘される点は、日本のほうから事前協議として御提出になると考えてよろしゅうございますか。
  300. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そのようにお考えくださってけっこうでございます。
  301. 前川旦

    前川旦君 直接戦闘作戦行動にはいろいろ個々のケースに当たってみなければいけない場合がたくさんあると思います。一般的に言えない場合がたくさんあると思います。しかし、先ほど言いましたようにアメリカ本国で、たとえば陸軍が作戦命令を受けて、そしてこれはアンカレッジから一番近距離ですから、羽田へ飛行機に乗って一ぺん着いて、チャーター機であろうとマック機であろうと、給油をして、それから戦地へ行く、これは南ベトナムは戦地ですね。たとえばサイゴンという国際空港でない、ほんとうに戦地のまん中の向こうの基地へ着陸して、そしてそのまま戦闘に参加すると、これはやはり分けられない一連の行動ですからこういう場合は私は大いにあり得ると思うのですよ。実際にいまもこれはわかりませんがね、実際あるんじゃないかという疑いの念を持っています。こういう場合は、やはり直接戦闘行動とみなしていいのではないかと思いますが、いかがですか。連続をしている、沖繩へ行っているという場合とは違うのです。
  302. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 実際問題としてはそういうことは、戦闘作戦命令を受けたものが直接日本へまた来て給油などをしてというようなことはちょっと考えられませんが、実際の問題のケースから言ってそれが直接戦闘作戦行動だと見られる場合は、事前協議を日本は請求をいたします。  つけ加えておきますが、いまの私の言ったのは、直接戦闘作戦行動で、輸送というものはその中に含んでいない、これは前川君に誤解を生じてはいけませんから。直接作戦行動である。
  303. 前川旦

    前川旦君 直接戦闘作戦行動というのがきわめてあいまいになってくるのですね。たとえばこれが単なる爆撃機、戦闘機——爆弾を積んでいくから、爆撃にいくということだけに限られるのか、地上軍が展開をするのには、これはどうしても輸送機は必要ですね。これは空艇部隊ということもあるし、実際着陸してその場でぱっと戦線に出る場合もあるわけでしょう。ですから輸送だからこれは作戦行為じゃないと言い切れない面があると思いますから、いまの問題どうでしょう。
  304. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) これもたびたびいろいろお話をしておりますけれども、戦闘作戦行動、たとえば御指摘のような例ですぐ考えられますのは、飛行機でもって自分自身が戦闘を直接やるわけではないけれども、あるいは弾薬を空から補給する、あるいは人員がそこからおりて行けば、むろんそうでありますが、そういうような場合、戦闘作戦行動と密着した補給行動といいますか、そういうものは戦闘作戦行動の中に入れて考えるべきだと思います。しかし、こちらから、民間飛行場から出て行って、兵員を向こうに送って、その兵員が態勢を整えてそれから戦闘作戦行動に出るというような場合には、むろんその前は単なる運搬であって、その行動自体が戦闘作戦行動というわけにはいかないというふうに考えております。  それから特にお許しを得たいんですが、先ほど申し上げたのが、何か事実の予想みたいなふうに私の申しましたことをおっしゃいましたけれども、私は地位協定なり安保条約なりを見まして、そうしてそう私が申し上げたように見るのが、法の上では正当な解釈であろうというつもりで申し上げたことでございます。簡単にもう一ぺん申し上げますと、地位協定の第五条では、ごらんになればわかりますが、「入港料又は着陸料を課されないで日本国の港又は飛行場に出入することができる。」これに対してこの施設、区域の使用のところは、安保条約の第六条でまあ一定の目的のために「アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」とこうなっておりますので、私の見るところではこの第五条の出入ということを利用して、この規定によって戦闘作戦行動を行なう余地がここから生じるということは考えられない、という意味で申し上げたつもりでございます。
  305. 前川旦

    前川旦君 いまのことをおっしゃられると、またもう一ぺんやり直さなければいかぬということになってしまいます。  そこで、私いま質問してたのは、直接戦闘作戦行為というものは一体どういうものなんだ。それがまたあいまいになっている。命令をどこで受けるかという問題じゃなくて、単なる補給はこれはそうじゃないという統一的なあれになっていましょうが、人員、兵員ですよ、実際戦闘要員です、これは。戦闘要員を直接沖繩輸送する——単なる移動じゃないんですよ。戦地へ直送して、すぐそこで戦闘行為に入るんですから、これは連続しているわけなんです。そういう場合には、やはりこれは事前協議の対象にしてしかるべきじゃないかということを、まあしきりと私は言っているわけですが、どうでしょう。
  306. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはやはり事前協議の対象になる戦闘作戦行動というものは、命令を受けて、そして出撃のやっぱり行動が伴ってくる。こういうことで輸送の場合を戦闘作戦行動に入れることは考えていない。いま言ったような場合が、端的に命令を受けて、それを出撃のやはり行動に出ると、それがやはり戦闘作戦行動であると、こういうふうに解釈をいたしておる次第でございます。
  307. 前川旦

    前川旦君 また逆戻りをするんですが、それにしたら、その空挺部隊を乗せて——これも輸送ですね。そういう例は考えられるでしょう。空挺部隊を乗せて行って、それで向こうの上空でパラシュート降下する、すぐそれは戦場ですよ、戦争ですよね。これは一体どうなんですか。
  308. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 空挺部隊を一ぱい積んで、そして戦場に直接行って、それでそれが落下傘をおろして戦闘行動に入るということは、それはいま言った直接戦闘作戦行動でございます。
  309. 前川旦

    前川旦君 私は質的に同じことだと思うんです。形が違うだけでですね、上からおりるんと下へ一ぺんおりてすぐその場で展開するのも、そう質的に変わりはないので、私は広く広く解釈してほしいというのは、そういうデリケートな問題を狭く狭く解釈するんじゃなくて、やはりそれも戦闘作戦行動だと、したがって、そういうかっこうで兵員を日本の飛行場から直接戦場へ持っていくような場合は、やはりこれは事前協議の対象にしてもらいたいという、そういう姿勢があってしかるべきじゃないかということを、しきりに申し上げているんですがいかがですか。
  310. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 一たん、たとえば空母のような場合、航空母艦ですね、そういう場合に日本の基地から出て行く。実際は飛行機はある基地へ行って、命令はそこで受けるのですよ。命令はある水域に行って受ける、その場合には事前協議の戦闘作戦行動とは見ていない。やはり日本施設から命令を受けて、そうして作戦行動に出る、端的なそういう場合を事前協議の対象にすると政府は考えておるわけです。
  311. 前川旦

    前川旦君 先ほどの答えとちょっと違うと思う。先ほどの答えは、たとえばアメリカの本土で作戦行動命令を受けて、そうしてアンカレッジからたとえば羽田を経由してベトナムに行く、一例をあげますと、これは一番近い便ですからよく利用していますでしょう、実際問題としてアンカレッジから、一番近いのですから。そこで命令を受けて、そうしてここで給油をして直接行く。これは全部連続しておるわけですよ、戦闘作戦行動が連続しておるわけです。そのときはどうですかと、さっき外務大臣、確かにそれは連続しておるから事前協議の対象にすべきだ、なるというふうにおっしゃったと思います。いま逆になりました。日本での命令だけを問題になさいました。しかし、命令だけを取り上げると妙なことになるのですよ。たとえば封筒で命令をもらって、日本を出て何時間後にこの封筒をあけて見ると、こういう命令だってあるんでしょう。たとえば真珠湾攻撃のときなんか、そういう例があるのでしょう。ですから、日本で命令を受けるということだけにこだわっておると、私は非常におかしなことになると思いますが、どうですか。
  312. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 前川さんにお答え申し上げます。  さっき三木外務大臣がアンカレッジあたりで戦闘作戦行動の命令を受けて日本へ寄って行った場合がありとすれば、それはコンバットオペレーションでございますと、でございますから、事前協議の対象になりますということを申したことは、これは論理上そういうことは考え得るということでありまして、しかしながら、われわれはいつも事実問題をとらえて法制局長官等も答えているんですよ。別段政治的答弁とも思っておりません。これは事実問題をとらえて法制的見解を述べるのが、法制局長官のつとめでもございまするし、われわれ国務大臣のつとめでもある。そこで事実問題としてエアボーンなんかが、アラスカあたりから空挺部隊が東京の立川へ寄って、立川から現地に行って、すぐ落下傘で展開するというようなことがありとすれば、これは戦闘作戦行動でございます。しかしながら、MACなんかは輸送機でございまして、輸送関係は戦闘作戦行動ではない、オペレーションではある。つまり行動ではあるけれども戦闘行動ではない、こういうふうに考えております。でございますが、事実問題としては別段、国利、国益で広く考えたほうがいいという前川さんのお説は私は賛成ですよ。それは広く考えるほうがけっこうでございますが、要するに第六条による交換公文として岸・ハーターが合意をとげたのは、日本を基地として行ったり来たりして戦闘作戦をしてもらうときには、断わりなしでは困る。そういうことでございまするから、どうしても日本が基地となって行ったり来たりするということを想定しなくちゃならぬわけでございまして、そういう意味のことは、お互いに論理の遊戯というわけではございませんが、論理上考え得ることは、とことんまで私どもも考えてお答えをいたしております、現に三木外務大臣が。しかしながら、基地として戦闘作戦行動に出た場合に、どうしても事前協議をしてもらわなければならぬというのは、日本の基地が米軍の極東における戦闘作戦行動の本拠地としていつもそこを行ったり来たりして使われる、こういうような場合には、どうしてもわれわれは事前協議をしてもらわなくちゃ困る、日本政府はまた特段の意思表示をするでございましょう。そうすればアイゼンハワーのときからきまっておりまする日本政府の意思に反して行動することは米軍はございませんということを、いつも言っておりますから、それに従いましてアメリカ軍は行動すると私は考えております。
  313. 前川旦

    前川旦君 これは時間の制限がありますから、分科会で一ぺん落ちついてうんと論議したいと思います。  そこで、次に参りますが、第四条ということをしきりに外相おっしゃいます。こういう問題も、私はやはり第四条でもってとらえて——羽田を使ってどんどん実際兵員を輸送しているのですから、これは第六条がいまの解釈で無理であれば、そのために民間機も圧迫されることもありましょうし、現実にそういう問題が起こっております。現に民間機の発着時間なんかも大幅におくれているわけですね、これがあるために。したがって、こういう問題は第四条——これは非常に広い範囲で協議できるのですから、これでおやりになる、相談する、そういうお考えはおありなのでしょうか、どうでしょうか。
  314. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 前川君の御指摘のように、四条というのは随時いつでもできるわけですが、これこそ広いわけですから、だからいままでもいろいろな問題はこの第四条でやっておるわけでありますから、羽田の場合においても、いろいろ軍用機が、羽田の場合は民間空港としての機能が発揮できないような状態、これはやはり四条によって話し合いをして適当だと思います。
  315. 前川旦

    前川旦君 第六条による事前協議がいままで例がないと聞いておりますが、第四条によって協議された実例というのは、いままで何回くらいおやりになって、どういう項目——内容はともかくとして、おやりになったか。これは政府委員の方でけっこうですから、お答えいただきたいと思います。
  316. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) たとえば原子力潜水艦などが入ってくるような場合に、これは非常に安全保障上——安全保障といいますか、放射能その他、そういうふうな問題、そういう意味における一般住民の安全上の諸問題がありますから、これはもう四条によって協議をいたします。B52の場合も、沖繩の問題などを向こうといろいろ話をする場合も、この四条によってやるわけです。これはいつでもいろいろな問題に広範にできますから、非常に日本政府としては活用しておる条項でございます。
  317. 前川旦

    前川旦君 この第四条による随時協議は、日米安全保障協議委会員で行なわれるということだろうと思います。一体何回開かれて——随時、たびたびやっておりますとおっしゃいましたけれども、やっておられますか、いままで。これは安全保障協議委員会が発足してから一体どのくらい開かれていますか。
  318. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 安全保障協議委員会は年に一回ですけれども、その下の下部的な会合というものは非常にたくさんあるわけです。しかし、四条は外交機関によっても随時協議ができるわけですから、これは回数に制限はないのですが、安全保障協議委員会は一年に一回でございます。
  319. 前川旦

    前川旦君 私が申し上げたいのは、もっとこれを活用すべきである。特に外務大臣は、これがあるがゆえに第六条の場合も日本からイニシアをとることができると答弁されているわけですから、一年に一回というのは、どういう意味でこれは一年に一回ときめられたのでしょう。私どもの記録では、いままでに七回しか開かれていないと思いますが、どうでしょう。
  320. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この四条によっては、安全保障協議委員会でもできるし、それから普通の外交ルートでもできるわけですから、その安全保障協議委員会は一年に一回で、その下部機構としての協議会が幾つもあるということでございます。これには太平洋の艦隊司令官のシャープなども来ますから、そうひんぱんというわけにいかぬ。一年に一回だけですが、下部機構の協議会というものは相当何回も開かれている。一方における外交ルートを通じての協議というのは、ひんぱんに開かれる可能性を持っております。
  321. 前川旦

    前川旦君 一般の外交ルートによる話し合い、これもいろいろ開かれるのはわかります。しかし、やはり第六条に対する日本からのイニシアチブとしての第四条、この第四条による随時協議となりますと、やはりこれは正式に日米安保協議委員会でなければ正式の議題として拘束力を持つものはあり得ないと思うのですが、もっとこれを御活用なさって、うんと活用することが日本の国益上と安全保障上必要なんじゃないでしょうかということを申し上げておるのですが、どうでしょうか。
  322. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 安保協議委員会は年一回、いま言ったように、向こうから来る人もきまっておるものですから、そうひんぱんというわけにはいかぬのですけれども、機構というわけでもないのですけれども、下のほうは、その協議委員会の一つの——協議委員会そのものではありませんけれども、下のほうの委員会というものは、非常に、ときどき開くことになって、そういう意味では活用されておるわけでありますが、私もやはりこれはできるだけ活用しろという前川君の御意見には賛成であります。
  323. 前川旦

    前川旦君 時間が足りなくなりましたので、これまた分科会でひとつ。  そこで、最後の項目として、防衛庁長官なり大蔵大臣なり外務大臣なりと少し対話をしたいのです。どういう対話かというと、非核三原則——これは総理が述べられた非核三原則ですね。いま防衛問題、外交問題についてナショナル・コンセンサスはありません。全く百八十度われわれと政府と違うわけです。私はこれは不幸なことだと思います。どこかにやはり共通点を見出して、広げていくべきだというふうに考えます。そこで、その非核三原則、——これは共産党から自民党さんのほうまで全部やはりナショナル・コンセンサスだと思います。ですから、それを一つの基盤として、もっと広げていきたいという考えがあるのです。  そこで、非核三原則は憲法上の問題ではなくて政策であると答弁されております。政府の見解です。一体どういう根拠に基づく政策であるのか、まずお伺いしたいと思います。
  324. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いまのところは、核拡散防止条約も、日本はこの条約は締結されていない。核兵器を開発しようとすれば、やろうとすればできるわけです。核兵器も持ち込もうとすれば持ち込めるわけです。そのできる可能性を持っておるのにしないということが、政策たるゆえんでございます。
  325. 前川旦

    前川旦君 私の聞きました政策はなぜ非核三原則をいうのかという理由なんです。それは一つは、われわれ聞いておりますのは、これは一つの悲願である、核をなくするということが悲願であるという道義的な立場から聞いております。一つは、国民感情という立場から聞いております。この二つからだけなんでしょうか、ほかにまだ政策的な立場があるのでしょうか。
  326. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 日本の場合は、私は、歴史的にほかの国と違ったものがある。原爆ですね、原爆による被害を日本が受けて、そうしてあれだけの犠牲を経て、こういう原爆を再び地上に落とすようなことはなくしてもらいたいというのが、これは日本国民の願いだと思います。そういうことで、よその国よりも違ったやはり国民的な感情を持って、むしろみずから核兵器というものを——大国といわれる国々はみな核兵器を開発しておりますが、しかし日本はむしろ、そういう核兵器の開発よりも、これをなくするために日本人が今後努力をしていこうということが、原爆を受けた日本国民の決意であったと思います。そういうふうな決意を受けて、日本がみずからやはり核兵器を開発したりしないで、これを何とか段階的に、やはり核軍縮とか、核の国際管理とか、いろいろな過程を経なければ、いきなり核兵器をなくするということは不可能なことでありますが、だんだんとやっぱり核兵器をなくする方向に国民的なエネルギーを、これを向けていこうという国民の決意の上に立った核政策だと私は思っております。
  327. 前川旦

    前川旦君 国民感情を基盤としてこの政策、それだけを基盤としてできたということになれば、国民感情を変えることによってその政策も変わるということになってくる。そうなると、一連の教育問題、この間からいろいろ言われています。それから原潜の入港のエスカレーション等も、やはりこれは国民感情——核アレルギーをなくするんだというふうな常に疑いの目をもって見なければいけないと、こういうことになります。そこで私は、非核ということ、日本は核武装しないということが、日本の防衛上、安全保障上どう考えられるのか、とらえられるのか。日本の自衛隊を核武装しないということで、防衛庁長官は、それで安全保障上それでいいのだ、そのほうがより安全なんだと、こういうことをやはり国民に対して説得をして確信のあることを言う私は義務があると思うんです。ですから、安全保障上の立場からとらえた非核の三原則をどうお考えでしょうか。
  328. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) お答え申し上げます。  いま三木さんから申し上げましたとおり、非核三原則を佐藤内閣、池田内閣、岸内閣がずっと踏襲いたしておりますのは、国民の一致した感情である、国民の悲願である、こう思っております。それから、こういうことをすることによって、全世界の非核、つまり核兵器関係をなくすというコンセンサスを得る端緒にもなると私は考えております。しからば、自衛隊は核がなくていいか、あるかという御質問でございまするが、われわれは、あくまで核関係はなくなればけっこうでございまするが、いまの現時点におきましては、アメリカの核抑止力に依存いたしております日本といたしましては、自衛隊は、憲法九条のこともございまするし、それにプラス国民感情もございまするし、全世界にコンセンサスを得るように訴えていくという積極的立場もございまして、通常兵器による局地的侵略に対処する範囲の実力を存在せしめ、訓練していけばよろしい、こう考えておる次第でございます。
  329. 前川旦

    前川旦君 私は、この非核三原則というものを非常に前向きの視点でとらえて、ショナル・コンセンサスを広げていきたいという願望から実は申し上げているんですが、それでは一つずつこまかく伺いますが、たとえばガロア理論等を援用して、アメリカの核抑止力は、いざとなったらアメリカだけの国益でしか判断しないから、これはなかなかたよりにならぬという意見があります。事実あります。したがって、日本単独で核武装すべきだという意見がいろんなところで聞こえてくるわけですね。はっきり言えば聞こえてくる。それに対して、核を持たなくても日本の防衛はいいんだという、はっきりした見解をお示しにならないと、いつまでたってもそういう議論が、片一方で核を持つべきだという議論が沸騰しているんじゃないか、その見解をやはり防衛庁長官はきちっとなさる義務があるんではないか、こういうふうに思うんです。安全保障上——理念じゃなくて安全保障上、このほうが安全度が高いんだという科学的な根拠というものをやはり私は聞きたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  330. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 前川さんにお答えいたします。  なかなか研究していらっしゃって敬意を表します。そこで、ガロア理論でございまするが、いま私は、理念とか理想を離れて、現時点をとらえて話をせよという御質問でございますから、理念、理想の問題は、先ほど私が申したとおりでございます。そこで現時点におきましては、私はガロア理論はとらないのでございます。すなわち、いかなる攻撃に対しても日本を守るという、佐藤ジョンソン・コミュニケが一昨年出ておりまするが、それもございまするし、安保条約第五条を正当に解釈すれば、そうなるのでございます。したがいまして、日本が戦略的核兵器はもちろんのこと、戦術的核兵器も持たないのがよろしい。アメリカに友好と信頼の関係においてたよっておるわけでございまして、でございまするから、ナイキハーキュリーズ等につきましても、これは戦術的の核兵器でございます。それから生産以外で向こうから持ち込むという場合であるならば、憲法の禁止するところではございません。原子力基本法にも触れてはおりませんが、しかし、非核三原則を堅持いたしまして、ナイキハーキュリーズは、発射装置から弾頭に至るまですべて非核になっておりまして、そこへ核のナイキハーキュリーズの弾頭がきましても、これは発射できないという、そういうしかけで国産を、ライセンス生産ではございまするが、いたすわけでございます。これで私は、日本の安全は守り得ると、遠くのほうからアメリカの核抑止力が日本を守ってくれれば日本には核の侵略もないし、また通常兵器による侵略も、日本の自衛隊が存在し、一生懸命訓練しておることによって侵略は防止できる。もし不幸にして侵略があるならば、これを排除する力が、通常兵器による局地的侵略ならば日本独自の自衛隊でできる、こういう立場でございます。
  331. 前川旦

    前川旦君 非核三原則の軍事的な側面を中心にしてお聞きしたい、このように思っておるわけですね。そこで、戦略的核兵器を日本が持つべきだという意見も一部にございます。たとえば日本も核兵器を持って三十万の軍隊があったら、という御発言などは、分析していけば核抑止力を持つべきだということに到着しそうなんですね。到着すると思う。そういった核抑止力となると、これは戦略的核兵器だと思いますが、それを日本が持つということは、安全保障上かえってマイナスになると私ども思いますが、いかがでしょうか。抑止力としての力にならぬ、働かないだろう、対等に抑止力とならないだろうというふうに考えますが、どうでしょうか。
  332. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) まず第一に、現実の問題でございますから、経済、財政のことも言わしていただきますが、経済、財政上核兵器を持つなんということの段階では日本はとうていございません。それから戦術的核兵器といえば、外国に脅威を与えない核兵器ということになります。すなわち、幾ら飛んでも三、四百キロしか飛ばないという、つまり外国の土地を直接侵さないという、日本を守るだけの核兵器のことを戦術的核兵器というようでございます。このいわゆる戦術的核兵器、これを使うということは、私は絶対反対でございまして、これを持ち、これを使うということが、一発でもございますれば、二十数年前の広島、長崎のときと違いまして、核を装備している国が相当多うございますから、たびたびこの委員会においても申し上げておりまするが、一発が必ず連鎖反応を起こして人類は壊滅状態におちいる、だから人類が理性を働かすべきときは、英知と理性を活動さすべきときは今日であり、今日より必要なるときはないと私は確信いたしておる次第でございます。
  333. 前川旦

    前川旦君 私、軍事的な側面に限っていろいろお伺いしたいと思っているわけなんです。戦略的核兵器となりますと、いわゆるICBMですね、これを持つべきだというやはり声がありますから、それは持ったらかえってあぶないんだ。たとえば人口密度を、この日本の周囲で核を持っている国の人口密度を見てごらんなさい、たとえばですね、そうするとこうなるでしょう。日本が一番、人口密度が非常に高くて、場合によったら二十倍くらい高くて、しかも、それが太平洋ベルト地帯に集中していると、こういうところで戦略的核兵器を抑止力として日本に配置して、はたしてこの安全保障上プラスになるかどうか、非常に大きな疑問がある。逆にマイナスになるんじゃないか、ねらわれるだけですね、そういうような視点でのお尋ねをしているんです。まずICBMについてのお尋ねです。
  334. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) ICBMを日本に配置するということは、これは非核三原則は別として一応現実の問題としてお互いに対話をいたします。その場合には、憲法上は差しつかえないということになっております。しかしながら、日本自身がICBMを持つことは、これは憲法違反でございます。そこで、なまじなICBMを憲法違反でない形においてかりに非核三原則を破りまして持ち込んだといたしましても、お説のとおり、私は前川さんのお説に賛成でございまして、なまじにそういうものを持てばかえって非常に危険であると考えておる次第でございます。
  335. 前川旦

    前川旦君 私、一つコンセンサスできたと思います。  それじゃ戦術的核兵器についてお尋ねいたしますが、陸戦用の戦術的核兵器、これは日本の国土で陸上戦闘に使うということですから、日本の国民の上で使うということに、まあ、なってしまいますね。ところで、戦術的——陸上の戦術的核兵器を持ち込む、あるいは保持するということは、日本の安全保障上マイナスになると思いますが、また、使えないと思いますが、いかがでしょう。
  336. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) これも、非核三原則を抜きにした論議でございますが、これは、SAMにしても、SSMにいたしましても、マイナスの要素のほうがほとんど全部ではないか、プラスの要素は何にもないと私は考えております。
  337. 前川旦

    前川旦君 防御用の戦術核兵器は持つべきであるという強い意見があります。特にそれは、ABMの配備について、日本もABMの配備をすべきだ、こういう意見が非常に聞かれるわけですね。ABMに限って申し上げますが、ABMを日本に配備するということは、私は、これはやはり管理権は米軍が持っているということになると、日本の独立的国民感情からおかしくなってくるということが一つ。それから、遠距離のものについてはともかくとして、近距離の弾道弾ですね。近距離の、ミサイルについては、いまの予見し得る、われわれの予見し得る将来の科学技術からは不可能である、とらえることが。その二点から、日本におけるのABM配置は、結局、安全保障上プラスにならないと思いますが、それはいかがでしょう。
  338. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) これも現実の問題としてお答えいたします。非核三原則はまた抜きにいたしまして……。
  339. 前川旦

    前川旦君 私も抜きで論議している。
  340. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) これは、予想されておる——核兵器を所有している国は五つありまするが、それらの国がICBMを持ったという場合に、日本あまりに盲点に近くなっておりまして、意味をなさない。持つべきではないと考えております。
  341. 前川旦

    前川旦君 科学の進歩は非常に驚異的ですから、将来の何百年先は別として、少なくとも、われわれが責任を持って予見し得る将来の科学技術の発展では、電波はこれ、直進するのですから、あらかじめ弾道弾が地平線を出なきゃ、アンチミサイルが、来たって撃てないはずなんで、そういう点から考えると、近距離には、いまの科学では、なかなかできないということが言えると思うのですね。そういう点で、私は決してプラスにならない、しかも、管理権が外国にあるから、ならないと思います。  そこで、もう一つお尋ねしますが、海上の兵力に核爆雷を持つべきである——サブロックあるいはアスロック、いろいろありますね。これ、海上であれば、国土も汚染しないし、しかも速力の早い原子力潜水艦に対しては、いまもう核爆雷でなければとうていつかまえられない、したがって、海上については核装備してもいいじゃないか、こういう意見が一部にありますが、これに対してどうお答えになりますか。非核三原則抜きに。
  342. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 非核三原則抜きにお答えいたします。  それは、サブロックとか、アスロックは、核、非核、両用でございまして、ことにサブロックは専門的な核兵器であります。これはわが自衛艦隊は持つべきではない。つまり、私の一つの哲学みたいなものでございますが、最初の一発が連鎖反応を起こしまして、とんだことになってしまいますから、全世界が壊滅状態に、もうおちいるのですから、私は、戦術的核兵器は海上自衛艦隊といえども装着すべきではないとかたく考えている次第であります。
  343. 前川旦

    前川旦君 ただいまの長官の考えは、長官の一つの哲学、たいへんに私はそれはりっぱだと思いますが、哲学でなくて、たとえば安全保障——狭義の、狭い意味の安全保障という面でとらえて、たとえば、いま潜水艦から、かりに日本の船舶が攻撃される、それに対して反撃して、核爆雷をほうり込むということになりますが、——装置すればそうなりますね。原潜は速力が三十五ノット以上だから、それでなければ捕捉されないということは軍事科学者がよく書いております。それは大体常識だろうと思うのですが、その場合に、船舶なり艦船を攻撃するための潜水艦から発射する核魚雷というものは、目下開発されておりません。現実に開発されてないわけです。事実、どこの国も持ってないのですね。そうすると、日本の船団なり船なりが、かりに——かりに、万一ですね、その対象国から——仮想敵国ということばをお使いにならないのはたいへんりっぱだと思います。まあ、かりに対象国から攻撃を受ける、それに対して自衛権の発動として核爆雷をほうり込むというと、私は、通常兵器に対する、攻撃に対してそれを上回る——いわゆる自衛権の内容である均衡の理論を越えた反撃であると、しかも、それを使用することによって、かえって日本に対する核使用の口実を与える、そういう意味で、私は、これも安全保障上、持たないほうがより安全だと——これは絶対じゃありませんで、より安全であるというように思いますが、長官、いかがでしょう。
  344. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 前川さんのおっしゃるバランス上も、また戦略戦術上も、それから安全保障上も、持たないほうがよろしいと考えております。
  345. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 前川君、時間が経過しましたから。
  346. 森中守義

    ○森中守義君 関連して。防衛庁長官と外務大臣に一問ずつお尋ねいたします。  その一つは、先ほど来の議論にもありましたように、外務大臣の事前協議に対する解釈は、少なくともいままで的確なものではございません。そこで、問題なのは、一体、作戦戦闘行動とは、具体的にどういう内容のものか、この辺のことが明確でないのですよ。私が申し上げたいのは、たとえば、在日米軍司令官が戦闘作戦行動の命令を受けて、それで隷下部隊に命令を発するときに、すなわち戦闘作戦行動態勢というものは発生する。あるいはまた、エンタープライズが日本海域に行ったとか、あるいは東シナ海に行ったといっても、かってな動きはしておりません。やはり第七艦隊司令官が戦闘作戦行動の命令を受けて、それでエンタープライズに指揮をしている。したがって、これは何といっても、司令官が命令を受けて、その命令によって隷下部隊を動かし始めるときに、当然戦闘作戦行動というものは発生する、こういうように考える。したがって、朝鮮経由でどこそこに行けとか、沖繩経由でどこそこに行けということは、すでに作戦行動に入る。ですから、あまり狭く狭く事前協議の対象を限られるということは危険である。だから、七艦の司令官なり在日米軍司令官が命令を受けて、それを隷下部隊に発したときに戦闘作戦行動というものは発生するという解釈を統一してしかるべきではないかと思う。これが外相にお尋ねする第一点であります。  それから次の問題は、先ほど言わたように、一体ベトナムの平和に対して最善の努力をしたい、できるだけ平和の到来を実現したいと、こうおっしゃるけれども、きのうからきょうにかけるハノイに影響のある国々の反響というものは、おおむね明瞭になってきている。すなわち、北爆の中で許容されている範囲が約三百数十キロに及んでいるということ、こういうことだとか、あるいはあの声明と同時に相当数の兵員をさらにベトナムに派遣をするという、こういったようなことは、関係諸国では非常に冷厳に受け取っている。だから、ほんとうに自主外交をいままで貫いてきたと言われるならば、むろん、これはアメリカに対してハノイが主張するように、北爆の全面的停止というものを日本政府は言ってこそ、初めて自主外交である、あるいはまた、ほんとうに平和を招来しょうということになるのじゃありませんか。私は、先ほどから何回も、この席からしきりにいろいろなことを言ってきましたけれども、いま外相が言われることは、何としてもジョンソンの声明を踏まえて、北側にこれをおっかぶせている。はたして、そういうところに、真実の期待をする平和というものが招来されるかどうか。私は、外相の言われること、あるいはきのう総理が言われることが、疑いなくそのとおりであるとするならば、北爆の全面的停止あるいは増兵の禁止、こういうことが条件にならなければ、この先行きというものにかなりの不安があるのではないか、こういうように思うんですが、これもひとつお答えをいただきたいと思います。
  347. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 関連は、もう少し簡略に。
  348. 森中守義

    ○森中守義君 それから、いま一つ防衛庁長官にお尋ねしたいと思います。  五条発動の場合、一体、日米は共同作戦をとるか。指令が一本になるのか。米軍は米軍、日本軍は日本軍というように別個の司令部になるか、この辺のことを明らかにしてもらいたい。
  349. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) お答えをいたします。  第一の、戦闘作戦行動、これはやはり日本の基地から作戦命令を受けて行動に移すということで、実際問題として、それに合致する事態は、これはできるだけ広く事前協議を解釈すべきものだと思いますす。  それから第二のいまアメリカに対していろいろと日本から言ったらどうかという御趣旨でありますが、アメリカとしても、今度のジョンソン提案を通じて言えることは、ベトナム戦争をいつまでも続けてやろうということではない。何とか戦争を早く終わらせようという意図がある。そうでなければ、大統領に出馬しないというような重大なことまでも、ジョンソン大統領がそういう決意を固めて、こういう提案をしたということは、やはり相当な決意の表示だと見るわけです。したがって、これは、いま御指摘のように、ハノイにおいてもいろいろな言い分は私はあると思う。しかし、ハノイ自身が、何とかアメリカ戦争を早く終わらしたいというこの熱意は、これはだれが見ても明らかでありますから、話し合いに応じて、そうして話し合いの過程においてハノイの言い分というものが提示できないであろうか、そういうことを願っておるわけでございます。それがいよいよどうしてもできぬということならば、その時点に立って、日本政府としては、戦争を早く終わらせる、平和的に解決を促進するという見地に立って。その場合にならないと、どういうふうに日本の活動の余地があるかということは、どういう形においてこのジョンソン提案の反応があらわれるかということによって、やり方にも違いが来ますから、そのときにはあらゆる日本努力を傾けてみたいと、こう言っておるわけでありまして、いままだ提案して正式の反応がハノイから出てないときに、ある、これはハノイが受けないであろうとか、どうであろうとかいって、それを前提にしてこういうことをいたしますというようなことを申し上げることは適当ではないのではないかということで、いろいろな仮定をした御質問を、前川君からもずいぶん熱心に御質問をいただいたのでありますが、私は申し上げなかったのであります。そういう場合にはそういう場合として、できるだけの努力を傾けたい。実際、日本政府としても戦争の継続を望んでいるわけではないので、それはいろいろわれわれがアジア外交をやる場合に、ベトナム戦争というものがアジア外交の推進をどれだけはばんでいるかというものは、外交政策の担当者としては、これは非常に担当者でない方々よりもそれを感ずるわけでございます。したがって、できるだけの努力を傾けたいというわれわれの願いは——これはここでその場限りの発言をいたしておるものではないということを御信用願いたいのでございます。
  350. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 森中さんにお答えいたします。  第五条の発動をする場合には、五条に書いてございますとおり、それぞれの国の憲法の手続に従いまして共通の危険に対処する。でございまするから、協力一致してやりますけれども、指揮系統はめいめい違うのでございます。指揮系統がめいめい違うということを申し上げておきます。
  351. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもちまして、前川君の質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたし、明日は午前十時より開会いたします。    午後五時十七分散会