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国務大臣(
佐藤榮作君) ボーダー・タックスやそれから課徴金制度、こういうものは、私は、かねて
アメリカがとってきた貿易
政策——自由貿易、ケネディラウンド等の一連の
政策とはおよそ逆行するものだ、かように思っております。これはその点では、珍らしく高山君と私は同一
意見であります。私はこの問題を、昨年ワシントンに参りました際に、すでにこういう問題が出ておる、そういうときからどうも
アメリカの一部に保護貿易論者がある、そういうことを実は非常に重要視いたしまして、そして
ジョンソン大統領に率直に、これこそは
アメリカがいままでとってきた
政策に逆行するものだ、こういうことは
日本政府は絶対反対だ、こういうことを申しました。そのときに
ジョンソン大統領は、自分のほうで拒否権まで使ってその種の法案の成立はささない、こういうことをはっきり申しました。当時これは大きく伝えられたと思います。そのとおり当時の問題は一応引込んだのでございます。しかし当時、その後に
アメリカ側で申しますのは、これは大体暮れまでの間の問題として一応それは取りやめられるようだが、しかし、年が明けて三、四月になればまた同じ問題が起こるだろう。こういうことを言われたのです。ちょうどそういう問題にいま当面しておる。したがって、この正月にロストウが参りまして、そして
ドル防衛についての具体策を私
どもに提起した。そういう際にも、この課徴金制度はこれは絶対に困る、こういうことで
政府の強い意思を表明して、これは向こうに伝達したわけです。さらにまた、ハワイ会談におきましても同様なことが言われておるということであります。そこで今度は、ただいまは一体どうなのですか、産業界から
佐藤団長が出かけて行かれた。これも同じことを申して行っております。また、私
どもの党から福田君の一行が出かけた。これまた、ただいまのような課徴金やボーダー・タックス類似のものを課すということはこれはもう絶対にいかぬ、また孤立主義的な
考え方あるいは保護貿易主義的な
考え方、これも反対だ、むしろ積極的にケネディ・ラウンドを早期に実現する、繰り上げ実施する、そういう
方向ならわれわれも
理解できるが、ということを強く申し入れております。そこで、これについてもさらにもっとやり方はないのか、こういうことで、いまの高山君のような御
意見が出たと思います。ひとつ
各党申し合わせをして、そうしてそこから
政府からの委嘱も受けて出かけたらどうか、自民党だけでそういう
態度をとっているのはどうか、こういうただいまの具体的な
提案であります。これは
衆議院におきましても、そういう御
意見が野党のうちから出ております。私は、そういうものがうまく協力体制がとれておれば差しつかえないように思いますが、とかく与野党の間におきまして大きな開きがございますので、そういう結論だけが同一だと申しましてもそれぞれのスタンド・ポイントが違っている。こういう
立場だと、なかなか共同
行為がとりにくいのじゃなかろうか、かように思って、私は具体的にはその案を進めないで今日まで来たのでございます。しかし、ものによっては、
各党で共同のできる問題もございますから、これは全然考えのうちに入れない、こういうことでないことだけは御了承いただきたいと思います。
ところで、まだ
政府自身は何らの
処置をとっておらない、こういうことであります。この点については、私
ども政府といたしまして、向こうへ出かけるとして、タイミングがなかなかむずかしいのじゃないか、タイミングをはずして出かけたら何らの
意味をなさない、かように実は考えておりまして、十カ国蔵相
会議の成り行きな
どもその決断をする
一つの材料だ、かように思ってその成り行きを見ていたのでございます。ところが、また最近は、ただいまのような三十一日の
ジョンソン大統領の談話、これで大きくいまゆれております。したがいまして、この問題
自身も、
ベトナムの戦争は戦争、また、在来の
ドル防衛は
ドル防衛、こういうことで
態度がきまる、こういうことにもなる、その心配は多分にある、かように私は思っております。しかし問題が、どうか
アメリカがいままでとってきた
政策と逆行するようなことがないように、これを実は願っているわけであります。それには何といいましても、一部にある保護貿易論者、これを
政府がひとつ押えてもらいたいし、そうして米国
自身が孤立主義的な
方向をとらないで、それを実は率直に
外交、大使館を通じてそういう
意見を実は述べているわけであります。したがいまして、本日こういう点についてもお尋ねがございますから、この国会における審議、これも
日本政府のはっきりした
態度を、かように必ず
アメリカ側がとると思いますので、私はっきり申し上げるような次第でございます。
政府自身がただいま特別な使節を送る、こういうことについてただいま時期を見ている、かように御
理解をいただきたい。そうして、ただいまの
ジョンソン談話以後の
変化というものは、もうちょっと模様を見ないと結論は出ないのじゃないか、かように私は思っております。