運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1968-04-02 第58回国会 参議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月二日(火曜日)    午前十一時四十分開会     —————————————    委員の異動  四月二日    辞任          補欠選任     斎藤  昇君      田村 賢作君     大矢  正君      野上  元君     宮崎 正義君      黒柳  明君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西郷吉之助君     理 事                 北畠 教真君                 剱木 亨弘君                 近藤英一郎君                 内藤誉三郎君                 加瀬  完君                 鶴園 哲夫君                 小平 芳平君     委 員                 内田 芳郎君                 大谷 贇雄君                 大森 久司君                 岡本  悟君                 梶原 茂嘉君                 小林  章君                 小山邦太郎君                 佐藤  隆君                 櫻井 志郎君                 田村 賢作君                 任田 新治君                 中村喜四郎君                 船田  譲君                 増原 恵吉君                 八木 一郎君                 山本茂一郎君                 山内 一郎君                 吉武 恵市君                 岡田 宗司君                 木村禧八郎君                 瀬谷 英行君                 田中寿美子君                 千葉千代世君                 戸田 菊雄君                 野上  元君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 森中 守義君                 黒柳  明君                 二宮 文造君                 矢追 秀彦君                 高山 恒雄君                 春日 正一君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  赤間 文三君        外 務 大 臣  三木 武夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  灘尾 弘吉君        厚 生 大 臣  園田  直君        農 林 大 臣  西村 直己君         通商産業大臣  椎名悦三郎君        運 輸 大 臣  中曽根康弘君        郵 政 大 臣  小林 武治君        労 働 大 臣  小川 平二君        建 設 大 臣  保利  茂君        自 治 大 臣  赤澤 正道君        国 務 大 臣  木村 武雄君        国 務 大 臣  木村 俊夫君        国 務 大 臣  田中 龍夫君        国 務 大 臣  鍋島 直紹君        国 務 大 臣  増田甲子七君        国 務 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        総理府人事局長  栗山 廉平君        防衛庁長官官房        長        島田  豊君        防衛庁人事局長  麻生  茂君        防衛庁装備局長  蒲谷 友芳君        経済企画庁調整        局長       赤澤 璋一君        経済企画庁国民        生活局長     八塚 陽介君        外務省アジア局        長        小川平四郎君        外務省北米局長  東郷 文彦君        外務省経済局長  鶴見 清彦君        外務省条約局長  佐藤 正二君        大蔵政務次官   二木 謙吾君        大蔵省主計局長  村上孝太郎君        大蔵省主税局長  吉國 二郎君        大蔵省関税局長  武藤謙二郎君        大蔵省国際金融        局長       柏木 雄介君        国税庁長官    泉 美之松君        厚生省医務局長  若松 栄一君        厚生省薬務局長  坂元貞一郎君        厚生省児童家庭        局長       渥美 節夫君        厚生省保険局長  梅本 純正君        農林政務次官   日高 広為君        農林大臣官房長  檜垣徳太郎君        農林省農政局長  森本  修君        通商産業省通商        局長       宮沢 鉄蔵君        通商産業省貿易        振興局長     原田  明君        中小企業庁次長  沖田  守君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省婦人少年        局長       高橋 展子君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君        自治省行政局長  長野 士郎君        自治省選挙局長  降矢 敬義君    事務局側        常任委員会専門        員        水谷 国一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十三年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を開会いたします。  昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算昭和四十三年度政府関係機関予算。  以上三案を一括して議題といたします。  この際、三木外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。三木外務大臣
  3. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 最近、外交上重要な問題が起こりましたので、この機会に御報告をいたしておきたいと思います。  ジョンソン大統領は、三月三十一日、ホワイトハウスで、全米のテレビラジオ放送を通じて、北爆の一方的停止による和平提案を明らかにいたしました。北爆停止については、昨年九月、サンアントニオ演説において、北爆停止による意義のある話し合いが始まること、北爆停止を利用しない等の条件を付して北爆停止に応ずるということが、アメリカの従来の態度でありました。今回は、ハノイ反応を期待するというのみで条件は付しておりません。そして、一、直ちに和平交渉に入る用意のあること、一、非武装地帯の北方の一部を除き、北越の全地域に攻撃を停止する、一、ジュネーブ協定共同議長国であり安保理事会における常任理事国であるイギリス並びソ連和平努力を要望する、一、和平会談のためハリマン大使、トンプソン駐ソ大使を適当な場所に派遣する用意がある、一、南越に今後五カ月間に補給部隊一万三千五百人の兵力を増派するというのがおもな内容であります。そして演説の最後に、来たるべき大統領選挙には立候補をしないし、指名を受けても、その指名を受けないという声明を行なって、和平提案大統領地位をかけて、最高の重みをつけて提案をいたしたものであります。  われわれとしても、この提案ベトナム和平実現のための真剣な意図の表示であると掛け値なしに受け取り、これを評価するものであります。ハノイ側も、北爆無条件停止すれば話し合いに応ずるとしばしば公言しておりましたし、ウ・タント国連事務総長をはじめ、数多くの各国首脳部同様趣旨発言を今日までいたしてまいりました。したがって、今回のジョンソン大統領提案を真剣に受け取って、この提案和平のきっかけになるよう、ハノイに対しても対応してもらいたいと心から願うものであります。また、イギリスソ連も、アメリカの要望にこたえて、和平のための努力を強く期待するものであります。一九五四年のジュネーブ協定のごとき解決に一挙に持っていくことが困難であるならば、まずアメリカハノイとの停戦の話し合い戦線縮小等、段階的にでもこの提案を生かして、ベトナム和平への大きな前進にしてもらいたいと心から願うものでございます。  このベトナム戦争は軍事的に解決はできない、またそれは好ましいことでもありません。したがって、あくまでも話し合いによって政治的に解決されることをわれわれは心から希望し、日本政府としては、今後引き続き早期和平の達成のためにあらゆる努力をいたしたい決心でございます。  右御報告を申し上げます。
  4. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまの三木外務大臣の御報告重要性にかんがみまして、本日、理事会におきまして、これに対し緊急質問の形式をもちまして各党質疑をいたすことに決定いたし、日本社会党持ち時間三分、公明党三分、民主社会党二分、共産党二分という、こういう形で持ち時間をきめ、質疑をいたすことに決定いたしました。  なお、今回の緊急質問は、各党代表質問でありますので、これに対しまして関連質問は御遠慮願うことにいたしました。  順次発言を許します。羽生三七君。
  5. 羽生三七

    羽生三七君 各派のお許しをいただきただいまの外相報告に基づく、国際政局の重大な転換に際して、社会党を代表して質問をいたします。  アメリカベトナム戦争北爆停止戦闘段階的縮小という重大な政策転換を行なうことを明らかにしたことは、ベトナムに平和を求めてきた世界の大多数の国々及び人民の今日までの主張が正しかったことを証明するものとして、われわれもこれを歓迎するものであります。しかし、北爆停止は全面的かつ無条件停止でないこと、また、いま外相の説明にもありましたように、戦闘段階的縮小と言いながらも、南べトナムへの増派を決定していることから、はたして真の和平の訪れとなるかどうか、なお情勢の推移を見なければならぬことと思います。しかし、いずれにしても、このような決定が戦術的なものではなく、真実なものであることを希望するし、また、それが真実なものであるならば、それが明らかになるならば、ハノイ及び解放戦線の実りある反応を期待したいのであります。  アメリカ北爆停止戦闘段階的縮小という決定とともに、いま一つ重要な問題は、ジョンソン大統領大統領戦への不出馬声明であると思います。これは今日までジョンソン政策を支持し、これと緊密に結びついてきた国々にとりまして、大きな関係を持つ問題であることは当然であります。佐藤内閣は、今日まで、それが積極的であったかあるいは消極的であったかは別として、とにかく北爆を含むアメリカベトナム政策を支持し、またその極東戦略にほとんど無条件的な追随を示してきたことは疑いもないこれは事実であります。今回のアメリカ決定は、佐藤内閣ベトナム戦争に対する見通しを誤ったかどうかという見通しの問題ではないと思います。本来、軍事的介入を行なうべきではない民族独立闘争に対する政府の基本的な姿勢そのもの誤りを証明するものであると思います。  また、今回のアメリカ決定は、単にベトナム戦争それ自体の問題だけではなく、ドル防衛にも関連する重要な問題でもあると思います。今日の国際通貨体制危機は、その根源がアメリカドル危機に重要な関係を持つものであることは言うまでもございません。政府は、ベトナム戦争のみならず、ドル防衛についても、今日まで、終始、日米運命共同体的に対処してきたことは周知の事実であります。しかも、今日のアメリカ政策転換は、単にベトナム戦争政策だけにとどまるでありましょうか。われわれは今日のアメリカドル危機アメリカ軍事力中心世界政策の破綻となってあらわれたものと思います。また、それとともにアメリカアジア政策も今後多くの変化を余儀なくされる事態に発展すると考えます。このことは、当然、日米安保にも、またアメリカ核戦略にも、さらに対中国政策にも、そしてまた沖繩地位についても、多かれ少なかれ何らかの変化をもたらさずにはおかない性格を持つものであると考えます。また、単に客観的に情勢を見るだけでなく、日本はみずから進んで積極的に情勢転換役割りを果たすべきではないでしょうか。特に当面、今日のアメリカ政策転換を歓迎するというだけではなく、これが真実の平和につながるためにどのような役割りを果たさんとするか、その所信を承りたいと思います。  佐藤内閣は、この際、アメリカ極東戦略への追随を断ち切り、今日の安保体制そのもの転換をも考慮すべきではないでしょうか。率直に言って、日米共同声明、その他あらゆる機会を通じてアメリカ政策を全面的に支持してきた佐藤内閣の政治的、特にその外交的責任は重大であると思います。しかも、その当の相手のジョンソン大統領佐藤総理が最も緊密に連絡してきたそのジョンソン大統領選挙出馬声明は、佐藤内閣国際的支柱の崩壊を意味する重大な問題であると思います。この重大な転機を契機として総理はどのように対処せんとされるのでありましょうか。  道は二つあります。一つは、これを契機アメリカ核抑止力依存政策をやめ、沖繩無条件即時返還を求め、対中国政策を改め、安保そのものから脱却することであります。要するに、今日までのあらゆる行きがかりを捨てて、平和日本にふさわしい新たなる政策選択を行なうということであります。いま一つは、それがもし不可能ならば退陣することであります。この重大局面に際して、総理はどのような政治的責任をとらんとするか、総理の真剣なる所信の表明を求めて私の質問を終わります。
  6. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  ただいま外務大臣から報告いたしましたような、ジョンソン大統領ラジオテレビを通じてのこの演説は各方面に多大の波紋を投げかけております。しかし、世界各国とも、ベトナム和平が一日も早く来ることを念願していたその各国も、そういう意味においてこのジョンソン大統領の新しい方針が必ずや和平への糸口を見つけるものだ、かように思いまして、たいへんこれに期待をかけておるという状況であります。ただいまも外務大臣から、そういうように考えるがゆえに、これをとらえて、この機会に北側もこれに率直に応じたらどうか、さらにまたジュネーブ会議議長国であるソ連イギリスあっせんをしたならどうか、あっせんをひとつしてほしい、こういうことも申しております。これらの各国とも本来が和平を望んでおるのでありますから、そういう意味におきまして、この問題とぜひこれは有効に成果のある方向で取り組みたいと思います。また、ただいまお話のありましたドル危機につきましても、私はこの処置が必ず効果を上げるだろう、かように確信しております。  そういう意味で、なおこういう問題についての積極的な取り組みが必要だと思います。私はこの問題をかように考えておりますし、いままでも北爆を支持した、こういう表現をされておりますが、さようなことではございません。私ども和平を望むがゆえに、それぞれの戦闘行為等につきましても、理解のできるものは理解をする。北の浸透、これが続く限り、こちらからもそれに対する防戦的な攻勢を展開しておる、かように理解しておりましたが、この基本的な態度としては、何度も申し上げましたように、一日も早くベトナム和平がくること、これを心から願う、かように申しておりますので、個々行為についてこれを支持したとか、支持しないとかいうような議論をする必要はないものだと、かように私は思っております。その点では誤解のないようにお願いをいたします。  そこで、ただいま、ジョンソン大統領が不出馬——次大統領選挙に出ないということ、これがたいへん日本として困る状況ではないか、こういうお話でありますが、私が昨年ワシントンに参りまして、ジョンソン大統領との間にコミュニケをつくりました。そして、これが沖繩返還にもつながる問題だ、こういうことで、今後継続的な交渉をと、こういうことを申しましたが、それについてしばしば皆さん方から質問がございました。ジョンソン大統領がかわったら一体どうなるのか、あるいは私自身が三選に出なかったら一体どうなるのだ、このいわゆる共同コミュニケ処置そのことについてたびたびお話がございました。私はそれに対して、これはなるほどジョンソン佐藤共同コミュニケではあるが、このことは日米両当局の最高首脳者共同コミュニケだから、いわゆる条約にこそないけれども、この両国首脳者共同コミュニケであるから、人の問題ではないのだ、人がかわるようなことがありましても、そこに変わりはございませんということをはっきり申し上げております。したがいまして、今回ジョンソン大統領が不出馬、これにつきましてはいろいろ政治的な理由もあるだろうし、また、どういうような事情があるか、それは私はつまびらかにいたしませんけれども日米間の問題において、これが将来に暗い影を残す、かようには私は思いません。また、その他の事柄につきましても、私どもはいわゆる日米安全保障体制というものには依存しておりますけれども、しかし、りっぱな独立国でございますし、私自身はその独立国家の首班でございますアメリカ追随一辺倒だと、かように言われたり、何だかアメリカ従属国であるような印象を与えるその御意見には、私は実はたいへんな抵抗を感ずるものであります。どうか、ただいま私どもは独自の立場において、この日米安全保障条約を選んだんだ、選択は独自の立場において選択をしたのだ、このことだけは十分御理解がいただきたいと思います。したがいまして、アメリカ極東戦略体制、これに私ども追随するものでもなければ、これに対して何ら意見を持たないで盲従するものでもない。これはすでに安全保障条約を結びましても、いわゆる事前協議というものがあり、アメリカ自身日本政府考え方に反してまでアメリカ行為をする考えはないということは、これは覚え書き等ですでに明らかにしております。したがいまして、私は事前協議というものが行なわれ、また両国もそれについて独自の考え方を持っておる、いわゆる独立国としてりっぱにその責務を果たしておるのだ、この点では何ら心配はないのであります。私は、今後におきましても、そういう意味で、ただいまのお話は伺っておきますし、また、御意見は御意見として尊重すべきものは尊重してまいりますけれども、ただいまの状況のもとにおいて、私がいままでお答えしたいわゆる日米安全保障体制、あるいは核の問題、あるいは沖繩返還の問題、さらにまた中共に対する考え方など、この機会に私は変更する必要はない、従前どおり考え方でいい、かように考えております。  なお、私はこの機会に、私がしばしば申し上げておりますように、沖繩の問題にいたしましても、極東の問題にいたしましても、これらの問題が解決されるのは、今後の科学技術の進歩もあるわけです。同時に、国際情勢変化なり、さらにまた世論の動向によりまして、こういう問題に対処していくんだという基本的な私ども考え方基本姿勢をはっきりいたしております。私は今日ジョンソン大統領大統領選挙出馬しない、またベトナムにおいて北爆無条件、無期限、ただ限定的ではありますが、その地域について九〇%に近い北爆停止、こういうことを申したことを、いわゆる国際的な情勢変化一つだ、あらわれだと、かように私はとっております。  そういう意味におきまして、こういう事態をわが国の国益の増進にいかにわれわれがこれに対処し得るか、こういうことを今日は考うべきことだ、かように考えております。幸いにいたしまして、各国ともこれによってベトナム和平がくるんだと、これにこしたことはございません。またその方向努力すべきだと思います。  また、経済問題その他については、ただいまもいろいろ米政府と折衝をいたしておりますが、その態度を変えるものではございません。
  7. 西郷吉之助

  8. 二宮文造

    二宮文造君 私も引き続き公明党を代表して、この問題についてお伺いしたいんですが、外務大臣報告を聞いておりますと、確かに今回は一方的な措置、こういうふうな御理解のようです。われわれは共同声明なり、あるいは南ベトナムの緊急援助なり、そういう政府姿勢を見て、やはりそこに重大な変化があった。今回の事態は重大な変化だと見ざるを得ないわけです。公明党は、さきに平和維持会議の開催を提唱しました。その前提条件として北爆無条件停止、これを提唱してまいりました。結局そのとおりになった。いまの外務大臣報告を聞いておりますと、その辺に政府見通し誤りがあった。総理北爆を支持してないと、こう言われますが、共同宣言の中にはそう理解させられるような文言がありますが、この点を重ねて伺いたい。
  9. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、北爆を支持した覚えはございませんし、この共同コミュニケの前後をお読みくださればよくわかるだろうと思います。この一つ行為よりも、私どもがしばしば申し上げましたように、和平そのものがここに招来されることを心から願っておるのであります。したがいまして、個々戦闘行為、そういうものを支持しないというような問題でないことを御理解願いたい。
  10. 二宮文造

    二宮文造君 ハノイ日本に対しまして、従来のいきさつから敵対心が残っているとわれわれはこう心配しておりますが、総理はその点どう思いますか。なお、この問題についてハノイ態度をどう理解されておりますか。
  11. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろん北ベトナムにつきましては私どもはいま国交を持っておりません。そういう意味北ベトナムに対して南ベトナムと差別的な扱い方をいたしておりますから、そういう意味では、北ベトナムもなかなか日本にも向こうも何もかも話ができるような立場でございませんし、何かと誤解もあるかもわかりません。しかし、私は今回のこの措置については、北ベトナムがそういうことをも乗り越えて、そうしてこの問題と真剣に取り組む、各国が望んでおるように和平への糸口、そういうような話し合いの場をひとつ見つけるべきではないか、かように北ベトナムに対しましても心から願うものでございます。
  12. 二宮文造

    二宮文造君 沖繩問題について、総理は従来の基本的な態度をいままた再び述べられました。しかし、新しい事態としてここで困離な条件がなくなったとわれわれは理解しなければならぬ。したがって、そういう事態に対して返還交渉のスケジュール、あるいは核抜き返還を主張するかどうか。さらに、きょうはまだB52が南爆をやっております。これは沖繩住民意図を汲んで、この事態に対拠して強い意思で撤収を要求する必要があると思うのですが、総理はどうでしょうか。
  13. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はベトナムジョンソン大統領の新しい方針の提起これは必ず沖繩にも幸いするものだと、かように確信しております。ただいまB52の問題がとやかく言われております。昨日、私、大浜君と——つい最近沖繩を実地調査された方からつぶさに情報を聞いたのでございますが、ちょうど聞く前にすでにジョンソン大統領のこの演説がなされたのちであります。したがいまして、私ももうこれで沖繩のB52の問題の解決もわりに楽なんじゃないのかと、こういうような話もいたしておりました。私はこの点はただいま、ジョンソン大統領演説だけで全部が終止符を打ったわけではございません。先ほど来話しておりますように、北側もこれに対して戦闘をやめるということでなければ困るだろうし、また、ソ連その他北側を支援する諸国も、ぜひとも今回の政治的生命を打ち込んでのジョンソン大統領の新しい提言に対して真剣にひとつ考慮を払っていただいて、そしてぜひとも賛成していただきたいと思います。私はそういうことができれば、沖繩の問題もすでに一つの支障はなくなったものではないかと思います。  そこで、ただいまのスケジュールは一体どうするかということでありますが、きのうのきょうでございますので、まだそこまで突き進んでお答えもできないことをまことに残念に思いますが、ただいま、きょうも沖繩から参っております学童、小さな学童にも会いましたが、彼ら子供たちが心から願っているのは、一日も早く祖国復帰、それを実現してほしい、かように私に訴えております。私はこれらの同胞の心情を考えても、こういうような問題が起きておっても、ぜひとも祖国復帰、これが一日も早く実現するように努力しなければならない、これが私に課せられた責務だ、かように私は感じておる次第でございます。
  14. 二宮文造

    二宮文造君 対中国の問題がまた今度は新しく大きな焦点を浴びてまいりました。私ども心配しますのは、ある日突然にというような形で米中の国交が回復すると、今回のようにまた日本が取り残されるような心配が出てまいります。この事態において総理はどう考えられますか。
  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は今回のこの問題、ことに大統領が次の大統領選に立候補をしない、その事前にそういう点について話し合いがなかった、ところがそれが私は非常な欠点でもあり、また同時に中国問題が置き去りになるのだ、かように心配しておられるようですが、私はその御心配は要らない、また、さような心配は私自身もしておりません。私はただいま最も大事なことは日米両国間の相互信頼、これは相互信頼のもとにただいまの親善友好関係も打ち立てられ、また同時に相互信頼のもとに日本日米安全保障条約もあると思います。この相互信頼を何とかしてこわそうというようないろいろな運動もあるやに想像もされるのでありますが、私はその点では、これは一そう強固なものになる。重大なる影響を直接日本に与えるようなこの中国問題等について、アメリカ自身が単独に特別な措置をとるものだと、かように私は絶対に思いません。それよりも大事なことは、今日展開されている両国間の親善友好、これを一そう信頼の上に築きあげることこそが大事なことではないだろうか。私はそれが世界の平和につながるゆえんだ、かように実は思っております。ことにベトナム問題は私どもが軍事的に何ら協力いたしておりませんから、したがって、ベトナムで軍事的な行動についてアメリカ日本に対して相談しないのはこれは当然のことであります。そして、日本自身ベトナムに早く和平が招来されることを念願して今日までやってきておる。その方向でこれを処置したのでありますから、私はそういうことでは日本にこれが一カ月もあるいは二カ月も前に話されなかったからといって、これをとやかく言うことは間違っておると思います。ことに、きのうも外務大臣について発表前にいち早く連絡がとられておりますから、そういうことを考えると相互の信頼、これは今回の行ないによってこわされるものではないと、かように思いますし、また、大統領が立候補しないという、これは純個人的な、また純内政的な問題ですね、こういう事柄について私が相談を受けないからといって、それで私が裏切られたと、かようには思っておりません。
  16. 二宮文造

    二宮文造君 私が言うのは、この際イニシアチブをとるべきじゃないか、南爆停止にしても、それからまた対中国問題にしても、アメリカから相談があってからどうするというんじゃなくて、この事態日本もそういうように踏みかえるべきじゃないかと、こう申し上げているんです。
  17. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はやや誤解をいたしておったようです、お尋ねを。しかし、私は先ほど羽生君にもお答えいたしましたように、今日の安全保障体制、さらにまた沖繩問題、あるいは核について、同時にまた中共についての考え方、これによって在来の考え方をいま変えるような考え方はないと、かように申しておりますので、ただいまの二宮君の御意見は御意見として拝聴しておきます。
  18. 二宮文造

    二宮文造君 時間がありませんので、二つひっくるめて総理にお伺いしておきます。  こういう事態を私ども考えまして、やはり人類の最終的な願いというものは核軍縮にあろうかと思います。世界がそういうふうな和平の機運に向いてきた、そういう努力をしていこうという年来の念願がかないそうな現在におきまして、日本が核大国の首脳会談を提唱して、人類の悲願であるところの核軍縮をはかる、そういうイニシアチブをとる必要があると思うんですが、総理考え方はどうか、これが一つ。  それからさらに、今度はやはりアジアの新しい事態に対しまして、問題になってまいりますのは、日米安全保障条約の問題であります。公明党はすでに段階的解消を主張し、今日までまいっております。週刊朝日などを見ましても、国民の大部分がわが党の主張に賛成である、こういうふうな気持ちを強く持つわけでありますが、一九七〇年代に早期解消を提唱してまいりました私ども考え方、さらに現在の時点におきまして、この日米安全保障条約の早期解消をはかる筋道で総理は進むべきであると思うんですが、その点はどうですか、この二点をお伺いしたい。
  19. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) こういうような事態が起きる、ジョンソン大統領が今回の北爆停止、これを決意したその背景をなすもの、それは私はおそらく一日も早く平和を招来しようという、そういうことだろうと思いますが、ただいま言われますように、核というものはとにかく使われるべきものではない、核兵器はもう使うものではない、これはもう軍事専門家のひとしく言うところであります。そこで、いわゆる核拡散防止条約等が議論されておりますが、それもまだ最終的な決定を見ておらないというのが世界の現状であります。これは主としてフランス、中共等がこれに入らないということでございますが、それについてはいろんな理由があるだろうと思います。そういうような現在の状況のもとにおきまして、核軍縮、核の兵器の絶滅を期する核軍縮、その関係国の会議をいま提唱する、こういうふうにしたらどうかという御意見でございますが、たいへん私は非常な示唆に富んだものと思いますが、ただいま私どもが直ちに賛成するものでございません。なお、こういう問題は、御意見は御意見として十分伺い、この核問題について政府もさらに掘り下げて検討していくべき問題だと、かように思いますので、しばらく時間をかしていただきたい。かようにお願いをいたします。  第二の問題は、この日米安全保障条約の問題であります。これについて公明党は段階的解消ということを言われる。また、ただいまの状態を一応承認した御意見だろうかと、かように思います。そこで、日米安全保障条約、もう戦争がなくなる。そういう世の中、そういう世界情勢ではない。そういう際に、安全保障条約は必要ないんだ。おそらくそういう考え方ではないと思います。そういう意味から早期解消をはかるかどうかというお話でございますが、私はこの日米安全保障体制につきましては、もうしばしば申し上げてまいっております。私は十二分の立場に立ってわが国の安全を保障すべく、それを確保すべきだ。これが総理として、総理に課せられた責務の一番大きな問題だということをしばしばお答えしてまいっております。私は今回のこの問題につきましても、安全保障条約がなくなる。こんなものはなくてもいいような、そういう時代がくることを心から望みまして、私は今日の情勢下におきましては、ただいまのような早期解消ということを主張する、そういう気持ちにはまだなれないのであります。私はこれはまだ今日の時期においては、そこまでは言えないのではないか、かように考えます。
  20. 二宮文造

    二宮文造君 自後はあとに譲ります。
  21. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 高山恒雄君。
  22. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 民社党を代表いたしまして質問したいと思います。  今回のジョンソン大統領北爆停止の発表は、従来からわが党がアジアの平和を確立するためには、その第一歩としてベトナム和平の実現に力を尽くすべきだと強く今日まで主張してきたのでありますが、なおまた佐藤首相に対しても、そのことについてしばしば警告も申し上げたつもりでおります。それにもかかわらず、佐藤総理は、ジョンソン大統領との昨秋の共同声明で、むしろ北爆を支持するかのごとき賛意を表しておる。これはあくまでもそういうふうに書いてあります。このことは、現在のジョンソン大統領北爆停止した瞬間、日本の国民は政府に対して、特に佐藤総理に対しては重大なあやまちをおかしていたことを指摘せざるを得ないと考えるのであります。また、指摘したのに対して、佐藤総理のその責任はほんとうに私は重大だと考えております。この誤りを国民に対してどのように釈明しようとされるのか、この点まずひとつお聞きしたいと思います。  ところが、本朝の報道によりますと、特に木村官房長官は、北爆停止和平につながることでけっこうなことだと言っておられるが、けっこうだということをいまさら言うくらいならば、自主独立外交でこれをなぜ示さなかったか。したがって、この停止だけでベトナム問題が解決したとは言えない。問題はこの後に残されることは当然でありますが、ところが、日本政府は従来の政策を変える必要はないということを言っておられますが、その姿勢で臨むとしますならば、これまた大きなあやまちを起こすのではないかという観点に立たざるを得ないのであります。この点のひとつ質問に対するお答えを願いたいと思います。
  23. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 高山君から、民主社会党がたいへん先見の明があったと誇りにされますが、しかし、私はジョンソン大統領の今回の演説は、おそらくだれも予期したものはなかったと思います。ことにジョンソン大統領が突然立候補をしないと、こういう声明をした。これはたいへんな、私はなかなか民社党の先見の明をもってしてもわからなかったものじゃないだろうかと思います。したがいまして、ただいま言われました点は、とにかくベトナムにおいて和平はどういう方向でなすべきか、そういうことについて民社党から意見が出ていた、かように私は理解いたします。また私ども和平努力はいままでもたいへん努力してまいったのであります。したがいまして、ただいま高山君から先見の明があり、その立場に立って政府にも警告したのだ、それを政府は何ら聞かなかった、かように言われますが、私は和平への努力政府はしてきた。その力は、なるほど十分効果はあげておりません。おりませんけれども、とにかく心から和平を願い、それの努力をしてきたことは、この点は国民の皆さんはよく御承知だと思います。私は結果的なただいまのような御意見については必ずしも賛成いたしません。私がそういう意味において責任は重大だ、政治的責任をとれと言われるならば、私はそれはやや無理な発言ではないだろうか、御意見ではないだろうかと思います。ことに御承知のように、ベトナム戦争、これに日本は軍事的に介入はいたしておりません。このことはもう何度も申し上げた。私はベトナムでこういう戦争が展開されておる、これはさらにエスカレートする心配もある、極東の平和を念願する日本としてはほんとうに心配にたえないのだ、こういうことは申しておりますが、しかし、ベトナム戦争は、私どもは平和憲法を守り、自衛隊法を守り、そういう意味軍事的介入は全然しておりません。何だか軍事的介入でもしておるかの印象を与えられたただいまの発言につきまして、私は一言その点を指摘しておきます。したがいまして、私は今回ジョンソン大統領演説をしたこと、そうして必要なる処置を米側においてすでにとったと、これを心から歓迎をし、そうして大きな期待をかけるものであります。どうかこのジョンソン大統領が自分の政治生命をかけて世界の平和をかけて世界の平和のために踏み切ったこの処置を成果あらしめる。これは敵であろうが味方であろうが、すべてのものがやらなければならないことではないだろうかと私は思うのであります。私はそういう意味におきまして、日米相互信頼、そういう立場に立つ日本といたしましても、積極的にこの問題と取り組むべきではないだろうかと、かように私は考えております。また、日本政府姿勢そのものについて、この際これで変えろ、こういうお話でございますが、政府姿勢は、憲法のもとにおけるいわゆる平和国家としての姿勢をただいま保っております。別に、ベトナムで戦争が行なわれた、それについて私ども軍事的介入したわけではございません。私どもは人道的立場においていろいろくふうはいたしておりますが、どこまでも平和憲法を守っていく。したがって、ただいま言われるような従来の姿勢を変えろ、こういうようなものは私はないように思います。そういう点でさらにこの点を変えろ、こういうお話があればお答えをいたしたいと思います。
  24. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 春日正一君。
  25. 春日正一

    ○春日正一君 ジョンソン演説は、アメリカベトナム政策が、少なくともこれまでのベトナム政策が破綻したということははっきり示していると思います。これは同時に、このベトナム政策を一貫して支持してきた佐藤内閣ベトナム政策の破綻でもある、こう思います。そこで、政府はこの際ベトナム政策を根本的に考え直す必要があると思うけれども、いままでどおりのベトナム援助とか、その他をやっていくつもりなのかどうか、これに対してお聞きします。
  26. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この今回のジョンソン大統領演説ベトナム政策の破綻かどうか、これは先ほど外務大臣から説明いたしましたように、昨年もうすでにサンアントニオ方式というものを声明いたしております。私どもはサンアントニオにおける発表について相当の期待をかけたものでありましたが、不幸にしてこれは身を結ばなかった。したがいまして、今度はそのサンアントニオ方式ばかりにとらわれないでさらに一歩進めた処置である、かように思います。今回のものは爆撃は地域的な制限はございますけれども、大体北ベトナムの九〇%は爆撃から除外されるということでありますから、わずかが残っている。さらにまた無条件であり、無期限である声明であります。したがいまして、これはかねてから言われていた北側からの要望、またその他の諸国からも言われていたいわゆる北爆、これを停止することが和平への一つの機縁になるだろう、こういうことで、これこそほんとうに勇断をもって踏み切ったと、私はかように考えるのであります。したがいまして、これはアメリカベトナム政策が破綻したとか破綻しないとか、そういうような段階の問題ではなくて、これは和平への積極的な踏み切った姿勢だ、かように私は評価いたしたいのであります。そういう意味でこの問題を十分ひとつ取り組んでほしい。したがって、関係国であるソ連や英国もあっせんもしてほしいし、北ベトナムもこの問題については謙虚にひとつ伺って、それこそ和平を願っているのは世界各国でございますから、世界各国の期待を裏切らない処置をひとつ北側でもやっていただきたい、かように私は念願するものであります。そこで、ただいま言われますように、ベトナムに対する日本態度、そこで考え直す必要があるのじゃないか。これは御承知のように、私ども南ベトナムと国交を持っております。北とはただいままで持っていない、こういう状況でございます。そこで今後このジョンソン演説がどういうように扱われるか。おそらくジョンソン大統領も、私がただいま申すように、非常に期待をもって、勇断をもってこの問題と取り組んだと思います。したがって、北もこれの話に乗り、そうして和平交渉に入り、そうして最終的決定を見ることができれば、それにこしたことはございませんが、最終的決定を見ることができなくても、段階的な問題でも、戦闘がやむという、そういうような状態になれば、それこそ各国とも北に対しましての考え方も、いろいろそのときに考え方をきめればいい問題ではないだろうか、私はかように考えております。私はいまの状態ですべてが終わっている、かようにはまだ思いません。また、ジョンソン大統領演説、それにぜひこたえていただいて、そうして戦争はやめる、戦闘はやめる、そうして和平への努力が払われる、そういう機会各国がいかにすべきかということを考えればいい、かように思っております。
  27. 春日正一

    ○春日正一君 サンアントニオ方式が持ち切れなかった。しかも今度の声明の背景ですね、ドル危機、テト攻勢による敗戦、こういうものを見て、だれでもが破綻と判断しておる。そこで、ジョンソン北爆の限定的な停止によって和平交渉を呼びかけておるのでありますけれども、同時に、和平に応じなければ徹底的にたたくというような、どうかつ的な姿勢は変えておりませんし、南ベトナムのかいらい政権への援助の強化とか、あるいは米軍の増派というようなことも一緒につけ加えてきておる。これではベトナムに真の和平をもたらすことができないのではないか。どうしてもこれは変えさせなければならぬのじゃないかと思いますけれども政府としてどういう考えを持っているか。
  28. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来、私は政府のこの問題についての取り組み方を詳しく説明いたしましたが、ただいまのお考え方、共産党のお考え方はお考え方として伺っておきます。私はこれこそこういう機縁、和平へのこれが機縁になりますから、そういう機縁、これを生かして、そうして成果あらしめる、これが関係者一同の心からの願いではないか、かように考えております。
  29. 春日正一

    ○春日正一君 そこで最後に、私どもこれまでこの委員会でも常にベトナムにほんとうの平和をもたらすというためには、ベトナム人民の民族自決権というものをはっきり認めて、外国の軍隊を撤退し、ベトナムの問題はベトナム人民にまかせることだ、これ以外にないのだと、その方向日本政府努力をすべきだということを言ってきたわけですけれども、いままでなかなか総理はそれを肯定されなかったけれども、実際の動きは今度のジョンソン演説ですぐそこにいくということにはならぬにしても、その方向にいかなければ、そこを突き詰めていかなければ、ほんとうの解決はできないんだということを示したと思います。そこで、政府がこの立場からベトナム和平の問題に取り組むべきだし、そこのところを踏み切らなければ、日本政府の積極的な役割りというようなものはあり得ないんじゃないか、この点どう考えるか、これだけお聞きします。
  30. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は昨年ベトナムを訪問いたしました。その前に東南アジア諸地域を訪問した。そうして私が受けた感じは、とにかくアジアの問題はアジア民族で片づけようじゃないか、こういうことがアジア各国の間に醸成されておる一つの空気だということを率直に説明をいたしました。それにいたしましても、ベトナム自身、これは民族自決、これが中心なんだ、この南北ベトナム考え方がすべてを支配することになるのだということを申したのでございます。それはただいま春日君の御指摘になるこういう問題は、結局、民族自決というか、その民族自身がきめるべきことではないか、外国の軍隊などがきめるべきことではないんだと、こういうことを私は示唆したと思います。そうして今回のジョンソン大統領演説にも、方針にも、その点がはっきりなって、アメリカはいつまでもあそこに駐兵すべきではない、こういうことをはっきり申しております。これらのことを考えて、やはり民族自決の方向でこういう問題がきめられる、他国のあまりお世話にならないといいますか、そういうことが一番望ましいんではないか、かように私は思います。とにかくいまジョンソン——アメリカ態度が宣明されたばかりでありまして、そうしてそれに対する反響がないから、今日、次の段階について触れることはいかがかと思いますが、将来は必ずこういうものは民族的に解決される、かように私は考えております。
  31. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもちまして緊急質問は終了いたしました。     —————————————
  32. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 去る二十八日に引き続きまして総括質疑を続行いたします。二宮文造君。
  33. 二宮文造

    二宮文造君 先ほどに引き続きますが、総理北爆支持をした共同コミュニケではないと、前後の文章を読んでくれれば、私の意図はわかる、こういうお話でありますが、私読み上げます。「総理大臣は、また、北爆停止にはハノイによるそれに対応した措置が期待されるべきであるとの見解を表明した。」、前後を読みましても、これに類するものはないんです。これがいわゆる北爆支持と、こういうふうに受け取られているのですが、総理の説明を伺いたい。
  34. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私どももしばしば和平、これを招来することが望ましいことだと、そこで個々戦闘行為についてはいろいろなことがある。北爆をやめれば、やはり北からのそれに対応する措置が望ましいことは、これは当然のことだと、かように私は申してきました。しかし、ただいまもうそういう時期を通り越しちゃって、北爆無条件、無期限にやめる、これはもう何をか言わんやでございます。
  35. 二宮文造

    二宮文造君 総理はそこまで見通さなかったわけですか。
  36. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 当時の状況としては、その見通しはなかなか困難だったと思います。
  37. 二宮文造

    二宮文造君 もう一つ伺いたいんですが、今回のアメリカ措置について、事前にアメリカ政府から何らかの通告がありましたか、相談がありましたですか。
  38. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ジョンソン演説の朝ですけれども、その演説の前に、アメリカ政府から、こういう演説をするという通告はありました。それが一時間ぐらい前ですか、その前日というわけではありません。
  39. 二宮文造

    二宮文造君 その後にあらためてまた何かアメリカ政府としての通告はありましたか、意思表示はありましたか。
  40. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それはありません。もう相当、ジョンソン演説というものはかなり詳細な演説でありますから、それに対してアメリカは特に補足して日本政府に説明しようというようなことはありませんでした。
  41. 二宮文造

    二宮文造君 私ども総理がたびたびおっしゃる日米のパートナーシップ、これはもうほんとに総理はもう口を開くと、相互信頼ということばでもって返ってくるわけです。しかも、政府の説明によりますと、重要な政策の変更の場合には相互に相談する、こういう約束ごとみたいなものがあったようにも聞いております。その上に成り立った相互信頼とも伺っておるんですが、重大な政策変更の演説の一時間前に、外務大臣は通告があったというんですが、こういうふうな相談のしかたで、はたして政府アメリカの真意をくみとることができますか、これはどうでしょう、総理
  42. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまちょっと私、取り調べをやっておりまして、いまのお尋ねを聞いておらないんであります。先ほどの北爆停止の問題につきまして、これは、私が読んでくださいと言ったのは、この共同コミュニケの第四に書いてありますこの点、四を初めから最後までひとつ読んでいただく。ただいま言われるように一つだけ抜き取って読まれないようにお願いをしたいのであります。特に大事な点は、「大統領は、紛争の正当かつ永続的な解決を見出すため、いつでも話合いに入る用意のあることを明らかにした。総理大臣は、紛争の正当かつ公正な解決を求めるという米国の立場に対する支持を表明するとともに、できる限り平和探求に努力するとの日本の決意を再確認した。総理大臣は、また、——これからが問題です。「北爆停止にはハノイによるそれに対応した措置が期待されるべきであるとの見解を表明した。」、これを全部ただいまのように続けて読んでいただくと私は理解ができる、北爆だけを取り上げてとやかく言ったのではない。御了承いただきたいと思います。
  43. 二宮文造

    二宮文造君 日米のパートナーシップで、重要な政策の変更の場合にはお互いに相談しようじゃないか、こういうような約束ごとみたいなものがあった。そこに成り立つ相互信頼であった。今回のような重要な政策変更の場合に、一時間前に通告をする、あるいはまたその後に及んでは何ら意思表示がない、そういうことで、政府としてアメリカ政府の真意をくみ取って、この問題に正確に対処することができるでしょうか。日米のパートナーシップというのは、そういうもろいものなのでしょうか、こういう私どもの疑問なんですが。
  44. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は今回の問題について、ただいま二宮君の言われるようなことが一つ問題であるかと思います。しかし、駐日アメリカ大使も、全然知らない。これはもうきわめて少数の人たちによってこれが計画をされ、事前には一切漏れていない、こういう事実を承認しなければならないと思います。私は、しかもそういう事柄が、私どもの望む方向に、かねて平素から言ってた、このただいまも共同コミュニケを読み上げたのですが、この和平の招来についての必要なことはよく知っておりますから、日本自身和平への方向の重大なる決意、これについては、アメリカ自身事前に詳しく説明しないにいたしましても、ただいま申し上げるように知り得るその最大限の連絡はしている、こういうところに、アメリカの誠実性を信頼していいんではないか、私はかように考えております。これがもし万一別な方向へ進んでいる、こういうことなら、日本がこれについて簡単に賛成はしないでしょう。しかし、日本がかねてから要求している和平への道をしばしば意見具申をしておる、その方向でものごとが解決される、しかもこれは事柄の性質上きわめて少数の者によって計画された、かように考えなければならない問題である。そういう点で、これが日本が除外されたとか、日本に前もって話がなかった、かように言ってアメリカを責めるというのは、これは私はやや行き過ぎじゃないだろうか、かように思います。
  45. 二宮文造

    二宮文造君 だから、先ほどの質問に返るのですが、きわめて少数の人で対中国のアメリカ姿勢が百八十度に転換をして米中の国交回復になる、そういう事態は絶対あり得ない、こう総理は確信されますか。
  46. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはもう私はそういうように確信しております。絶対に日本に相談なしに対中共問題についてのアメリカがステップをとるということはない、かように考えます。
  47. 二宮文造

    二宮文造君 外務大臣にお伺いしますが、外務大臣は、駐英、駐ソ大使に、ジョンソン大統領演説の線に沿って努力をしなさいというふうな訓令を出したようですが、これは日本政府の考えですか、アメリカからも特にそういうような話はなかった、要請はなかったですか。
  48. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) どうもその、何かやると、アメリカから要請されてやるような、そういう御懸念は、私は非常にどうかと思うのですね。やはり日本外交というものは、これはもう国益を踏まえて外交をやるわけですから、アメリカ意見の違うこともあるわけです。したがって、アメリカの気に入らぬようなことだってわれわれは幾多外交の上においてあるわけですから、そういうことで、日本外交というものが自主性を持っておるということに対しては、国民がその自主性を大事にしないと、何かいかにも全部アメリカから言われてきておるといって、みずから日本外交の自主性を傷つけるような考え方は、私はよくないと思っております。アメリカから頼まれたわけではありません。しかし、ソ連イギリスはやはりジュネーブ協定共同議長国でありますから、したがってこれはアメリカ努力を要望しておるわけです。この演説の中にも、特にイギリスソ連の場合をメンションしてアメリカ努力を要望しておるし、したがって、議長国であるし、安保の理事会の非常任国である、こういう責任が重いわけでありますから、したがってこれはこのジョンソン提案をきっかけにして和平への努力をしてもらいたい。日本が協力できることならば、和平のためにはいかなる協力も惜しむものではない。日本政府態度は、申し入れを支持したわけでございます。
  49. 二宮文造

    二宮文造君 非常に遺憾だというふうな言い方ですけれども、あまりにも打てば響く関係が、私どもにはそう思わせるわけです。従来の実績と称しますか、うしろからそういう声もありましたが。  で、話題を変えますが、総理ベトナムに対して軍事的な介入はしていないと、ところが国民の側には心配があるわけです。というのは、ある人が言うのには、日本ベトナムにおけるアメリカ軍の後方兵たん基地の役目をやっているじゃないか。そうすると、これは、和平になったときに、兵たん基地をやったという悪い印象だけが残って、和平交渉の中に、あるいはその後のいきさつに、日本が取り残されていくんじゃないか。アジアにおいてきわめて大事な立場にある日本が取り残されてはたいへんだ、こういうふうな国民の心配がありますが、先ほど軍事的介入はしていないという再三のおことばですから、国民に対してもっと具体的に姿勢を説明していただきたい。
  50. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはもう何度も申しましたように、日本軍事的介入はしておりません。ただ、日米安全保障条約による補給基地、あるいはそういう意味の施設の利用ということはあると思います。したがいまして、傷病兵が日本に飛んでくるとか、あるいは修理をする等々のことはいたしますけれども、それがいわゆる軍事的介入、こういうことにはならないわけであります。これはどこまでも安全保障条約、そのらち外には出ておらない、このことを十分理解していただきたいと思います。今回の問題にいたしましても、私、エンタープライズが寄港する、一部の暴徒、学生の反対等の示威運動がある、あるいは王子の病院についてデモが繰り返されておる、こういうような事柄が、いかにも軍事的介入だと、こういうような印象を与えておりますけれども日本は、いわゆる日本でなす、日本条約上しなければならない、その範囲はいたしておりますけれども、それより以上に積極性を持った軍事的介入はいたしておりません。それは申すまでもなく憲法違反もしておらないし、また自衛隊法もそのまま守られていく、そうして何ら誤解はないものであります。この辺は、私どもが、政府が申し上げるばかりではございません。野党の諸君も、私ども軍事的介入はしていない、これはよく御承知だろうと思います。したがって、多くを申し上げる必要はございません。そういう点で、国民にも実態を十分理解していただく、これが大事なことだと思います。また、ただいま言われますように、ベトナムが幸いにして和平が招来された、そういう暁において、日本が取り残されるようなことはないかと御心配でございますが、これは政府も国益に反するようなことはいたしません。国益を守り、国益を増進する努力をいたします。また、野党の諸君も、皆さん方も、同じように日本の国益を守ろう、日本の国益を進めよう、かように努力されるのでございますから、私は、今回の処置日本が不利益をこうむる、かような心配は一切持っておりません。
  51. 二宮文造

    二宮文造君 先ほどの政府側の答弁も、ハノイの受け方をじいっと見る、こういうふうな、またそれを受け入れることを期待するというふうな答弁に終始したようでありますが、従来の日本は、北ベトナムに対して接触を試みました、何らかのものをつかみたいという動きはしましたけれども、それが不幸にして好ましい結果にならなかった。したがって、こういうより積極的な和平への日本姿勢世界に示していくという立場で、総理は何かこれから進んでいく上の具体的な構想をいまお持ちですかどうですか、日本役割りです。
  52. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日本役割り、これはもう一つには、積極的にソ連が、またイギリスが積極的にこの問題と取り組んでほしい。このアメリカからの提案、これに成果あらしめる議長国あっせんが実は非常に大事だ、私はかように考えております。そういう意味で、日本がこれに協力する、これは望ましい姿ではないかと思います。私はかつて、当委員会でありましたか、申し上げたと思いますが、こういう問題は、世界の大国、それらがほんとうに胸襟を開いて話し合えばおさまる問題ではないだろうか。もっと具体的に申せば、米ソ、この両国がこういう問題と真剣に取り組んで、戦争をやめようじゃないか、和平へひとつ努力しようじゃないか、こう率直にそういう意見を表明すれば、この問題は片づく問題じゃないだろうかということを申しました。まあ今回は幸いにいたしまして、アメリカでとり得る最大限のことをとりました。私は、これに必ず強国であるソ連がやはり対応すると思います。そして力をかして、そして南北両ベトナム和平への話し合いにつく、そういう方向にぜひとも進展さしたいものだと、かように思っております。  したがいまして、先ほどソ連並びに英国駐在の大使に対して日本から訓令を出したという外務大臣のことばは、あれはもう当然なことであり、もっともなことである、かように思って、私は外務省のとっていることをただいま支持しておりますから、私は、ただいま申しますように、そしてあとはじゃまにならない、これが必要なことだと思います。とにかくこの問題を、あるいはいろんな批判をしますが、そういう批判はやっぱり差し控えたほうが、ただいまの国際会議をスムースに開かす方向になるんじゃないかと、かように思いますので、そういう意味では消極的な態度としては、こういう事柄についてあまり立ち入った話はしない、そのほうが望ましいことではないだろうか。とにかく今回の提案が、和平へのアメリカとして考えられる最大のものである。ことにジョンソン大統領が、自分の政治的生命をなげうってこれと取り組んだ、その意味におきましても、これをひとつ成果あらしめる、こういうことで各国が協力すべきじゃないだろうか、かように思います。したがって日本態度としては、積極的な面と消極的な面がある、その二つのことを指摘しておきたいと思います。
  53. 二宮文造

    二宮文造君 ソ連イギリスの動きに対して総理は非常に期待をされているような答弁でありますが、きのうのきょうで、どうかと思いますが、新聞を見ますと、どうもソ連アメリカの真意をくみかねている、大臣の訓令に基づいて、現地からは何かその模様らしきものを報告してきましたか、その点を伺っておきます。
  54. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まだおそらくきのうですから、きょうぐらい会うことになると思います。きのう訓令を出したわけです。したがって、まだ両国政府反応はきておりませんけれども、まあとにかく紆余曲折は私はあると思うんです。これでベトナム問題が一気に、劇的に和平会談が開かれて解決するというふうには、そこまでは一足飛びにはいかないと思いますが、とにかく、あのジョンソン提案を境にして和平糸口ができたことは事実じゃないか。世界が全部、やっぱり北爆停止すれば話し合いが始まると、世界の指導者が口をそろえて言ったんですから、これをきっかけにして、和平実現へ向かってソ連あるいはイギリスなど、重要な責任を持っておるジュネーブ協定の責任国でありますから、働きかけるばかりじゃなしに、ほかの国々でも、従来カナダとも東欧諸国ともベトナム問題については絶えずわれわれは話し合いをしてきておるわけでありますから、そういう国々もひとつこの提案機会に、和平実現へ国際的に協力して、和平の実現の達成をしようじゃないかという外交努力は全力をあげるつもりでおります。
  55. 二宮文造

    二宮文造君 総理ですね、総理の先ほどの答弁は、イギリスとか、特にソ連ですね、ソ連反応を非常に期待する、こういうふうな答弁の趣旨、なるほど軍事的に見ますとそうかもしれませんが、事、ベトナムの問題、和平の問題は、アジアの一員であり、また総理がしばしば言われる人道的見地、こういう立場から言いますと、先ほどの総理の、じゃまにならないようにいるだけだというのは、非常に消極的過ぎる、何かやはり総理として、具体的な和平を進めていく、こういう強い決意に立った日本独得の行動というものがあるのじゃないか、そうすべきじゃないか。従来の総理の強気の姿勢とは、はなはだいただけないような答弁なので、ちょっとがっかりしたのですが、もっと自信を持ってやってもらいたいと思います。
  56. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、先ほど申し上げましたように、積極の面をまず説明したはずで、また消極の面も申して、あまりじゃまにならぬようにしてほしいということを申しました。私はこういう事柄は、やはり国論が統一されて、そうして国民的支持のその背景のもとにおいて政府がやるべきじゃないかと思います。私は、政府自身が積極的にやっていることにおいて別に人後に落ちるつもりはございません。その点では十分国民の皆さんは支援してくださると思います。しかし、何かこの問題について野党の諸君の質疑等を通じて聞きますと、たいへんなアメリカ側にミスがあるのじゃないか、あるいは行き詰まっているのじゃないか、あるいは政府アメリカに何でもかんでも追随している、そういう結果こういうことになっているのじゃないか。私は何か、国民感情としての率直な御質問だとは思いますけれども、しかし、それにいたしましても、事柄の重要性から考え、心から和平を望んでおる国民の姿から申せば、もっと積極的な、ただいま言われますように、政府ばかりが積極的な態度でやるわけじゃないのですから、国民自身も積極的にこれと取り組む、それが望ましい。政府で十分の考え方がないならば、ひとつおれがいい知恵を授けてやろう、ここまで踏み込んでなされたいもののように思います。私はそういう意味で、先ほど来、政府自身で過去におきましてもあらゆる努力をしてまいりました。今回の問題につきましても、もう、きのう出れば、すぐさっそくそういうことについて手を打っておる、これらの事柄を、私は手を打ったことを一々は申し上げませんけれども、国民の皆さん方も、この際もっといい考え方があるならば、政府にこういうことをなぜやらないのか、こうひとつお示しいただく、そのほうが望ましい姿じゃないか。またほんとうに世界の平和を願って、そういう皆さんと私ども同じ立場ですから、時に私は政局を担当しておりましても、その意味においては、世界の平和、繁栄を願う、その気持ちは全部同一だ、かように思いますので、そういう意味で、さらに積極的な御鞭撻をひとつ、また御叱正をお願いしたい、かように思います。
  57. 二宮文造

    二宮文造君 従来もたびたび御鞭撻をやったつもりなんですがね。そのときは総理は、私はそうは思いませんというので終わっちゃったわけです。  そこで、外務大臣に伺いますが、きのうの衆議院で、いわゆる和平交渉ですね、これはジュネーブ協定の線に沿うべきだ、ベトコンも中国もこれに加わるのがいいんじゃないか、こういう趣旨の答弁をされているようでございましたが、総理もその考えは同じですか。
  58. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私が外務委員会できのう申したのは、やはり、このベトナム戦争の終局にはジュネーブ協定の精神によることが一番妥当である。しかし、ジュネーブ協定そのものを、参加するメンバーの国もそのものを再現しなければならぬとは思っていない。しかし、中国はアジアの安定のためにきわめて重要な関連を持っておるから、この国際会議には中共は招聘さるべきである、こういうことを申したので、ベトコンの問題は、この戦争当事者が話し合いをする場合に、ハノイアメリカばかりじゃなしに、南ベトナム、そういう戦争の当事者が話をする場合に、何らかの形で、形はいろいろありましょうが、ベトコンは当然その中に入っていくべきだと私は考えております。
  59. 二宮文造

    二宮文造君 総理は御意見どうですか。
  60. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま外務大臣がたいへん率直に申されましたが、私は何よりもただいま戦闘をやめて、そうして話し合いの場につくことが必要なんでございます。かように思います。したがいまして、話し合いの場でいろいろ議論されるそういう問題をただいまから予測することは、かえって問題を紛糾さすんじゃないか、かように私は思いますから、それはただいまの外務大臣もそういう意味だろうと思います。ただいまから条件めいた話はまだ出すのは早いんじゃないか、かように思います。おそらく、こういう問題が進めば、必ずそういうことを中心にして和平への話はだんだん進んでいくでしょう。そういう際に、ただいまのような力のものが除外されなくて済むようになると思いますけれども、ただいまからその点に触れることはやや早いように思っております。こういう意味でございます。
  61. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 関連。先ほど総理が消極的ということを言われました。また、いまの答弁も聞いておりましたけれども、いま何かの行動を起こすことは早いように、このように言われますが、先ほど二宮も言いましたように、私たちが前々から主張しておりましたベトナム和平に対する方式というものを総理が前々から持っておられましたならば、いまごろ、何もしないとか、そんな消極的な話でなくても、ちゃんと日本ベトナム和平に対するやり方は正しかった、こういうふうにりっぱに評価をされると思います。  それからもう一つの点は、軍事援助はやっていないと、このように言われますけれども、実際兵器は日本の中で製造されております。また米軍の飛行機の修理等も行なわれておりますし、こういうものが絶対軍事援助ではないと、こう総理が言い切られるならば、国民は絶対に納得しないと私は思います。  そうして、いま、人道的な面でいい案があれば教えてもらいたい、こういうことを言われましたけれども政府南ベトナムに対して医療援助をいままでやっておりましたけれども、医療援助は非常にけっこうだと思います。しかし、この際私は、その医療援助をさらに拡大いたしまして、北も南も両方の人が救われるような、たとえば病院船でも仕立ててトンキン湾に持っていって、そうして両方の傷兵の病気をなおしていく、いろんなその他の病気もなおしていく、こういった点で、人道的な立場から私はベトナム和平へのきっかけがつくれるんじゃないか、このように思うんですが、この三点についてお伺いします。
  62. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、いま三点と言われますが、いまのは具体的には病院船という一つの問題だろうと思います。人道的な見地から日本政府がいろいろやっている、これはお認めになる。また、それはもっと拡大してやれと、これはひとつ、御意見としても、私は当然のことだろうと思いますので、よくうかがっておきます。ただ、病院船を仕立ててとおっしゃるが、ただいま適当な船がございません。日本は病院船を持っておりませんし、その点ではやや具体性を欠きやしないか。しかし、たいへんいい着想じゃないかと思います。いままで、それに似通った考え方ですが、ただいまたいへんベトナムには孤児が多い、その孤児を救済する方法はないか。これは自民党の党内におきましても、孤児救済について積極的に乗り出そう、かように申しておりますが、これなども、私は、ただいま言われるように、たいへんもっともなことだと思います。  また、軍事援助の問題ですが、ひいては経済援助だろうが何だろうがみんな軍事につながると、解釈のしかたではそう言うことができると思います。しかし、私は厳密に申すのは、やはり、日本自身戦闘に参加したとか、あるいは日本の自衛隊が派遣されているとか、そんなことは絶対にありませんということなんです。これだけははっきりさしておいていただきたい。いかにも、日本安全保障条約を結んで、そうして施設を利用させれば、それがだんだん回り回ってアメリカベトナムにおける軍事強化に役立っているんじゃないか、あるいは、日本でいろいろの武器あるいは経済援助をする、これは回り回ってアメリカの負担を軽くしている、それはアメリカベトナムにおける軍事協力だ、こういうように議論を発展させられては、ちょっと困るんでありまして、私が申し上げるのは、軍事協力、そういう意味の積極的なただいま軍隊の派遣だとか、こういうようなことは一切ないんだと、だから軍事的に介入はしておらない、これはそのまま率直にひとつ認めていただきたい、かように思います。
  63. 二宮文造

    二宮文造君 先ほど総理は、これから進めていかれる和平の方式にいまから条件はつけたくない、こういうふうな非常に控えたような、控え目な答弁でした。しかし、私どもは、この和平が取り進んでまいりますると、当然南北を含めて、国土の復興だとか、人心の安定とかいうことで、日本がまた果たすべき役割りは出てくる、経済援助という形で、どうしても日本としてはそれを手がけなければならない。そうしますと、そういう目先の問題も踏まえて、たとえばジュネーブ方式で和平が進められるとしますと、日本はいすに招かれないわけです。したがって、日本も何らかの形でそういう和平の会談に参加する用意がある、これぐらいの姿勢総理としても全世界に表明してもよろしいのではないかと私は思うんですが、この機会総理考え方を明らかにしてもらいたい。
  64. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たいへんけっこうな御提案だと思います。私は、北爆停止無条件、無期限——これは限定的な、地域限定だけの北爆停止だと、かように考えておりますので、これをそのまま受け取って、そうして協力するのが本来の姿だと思います。そうして、和平がちゃんとできれば、必ずあすこのなまぐさい戦いの場が今度は経済再建の、また経済建設の方向に向かう、これは当然でございます。そういうことを考えれば、私ども日本として果たし得る役割り、これはございます。だから、したがいまして、そういう場合に日本もどういうようにするのか、そこらのこともひとつ考えておかなければならぬ。しかし、ただいまの段階は、先ほど来申し上げておりますように、もう話がどんどん進んで、いま二宮君の言われるように、経済建設にまで話が進んでいる、あるいは遺児の救済にまで話が進んだ、こういうように取り組むことのできないまだ段階でございますから。最近の新聞等を見れば、あるいは北のパリーにいる大使館筋では、きょうにでも北側の反応が示されるだろう、かように実は申しております。われわれはその記事を見まして、たいへんな期待をかけているわけであります。その話が持たれ、そうして戦争が現実にやんで、そうしていろいろな話が出てくるでしょう。いまの関係者の範囲をもっとどういうふうにしろとか、ベトコンはどういうように扱っていけとか、また将来の問題として経済建設はどうとか、こういうことになってくるだろうと思います。そういうような状態ができることをとにかく私は心から望んでいる。それより以上に進んで先走った話をいたしますと、これは見通しを誤ったというようなことでまたおしかりを受けますから、私はその辺は相当慎重でもありますけれども、ただしかし、そうあってしかるべきじゃないだろうか。皆さん方のようにどんどん突き進まれる、そういう状況になれば非常に望ましいことだ、いまの段階ではまだそこまで申し上げることはどうかと、かように思っております。
  65. 二宮文造

    二宮文造君 先走ってまた見通しを誤ったじゃないかと言われるのがいやさに慎重を期する——そうでもないでしょうが、私は、先ほどの共同コミュニケの読み方も、総理は非常にじょうずにお読みになりますから、それだけの用意があれば、私が申し上げたような用意があるぐらいなことを言ったところで、またあとで見通しを誤ったと、こう指摘されても、読みかえは自由になさる総理だろうと思う。  それはそれで別としまして、通産大臣に伺いますが、どうもこの事態がこういうふうになりますと、特需に対する影響というものは、通産省としては、どうこれから踏まえていきますか。
  66. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 特需の推移でありますが、だんだん四、五年前から漸増の傾向が参りまして、最近では五億ドル程度であります。
  67. 二宮文造

    二宮文造君 それはわかります。今後の見通しをどう踏まえられたかということを伺っているんです。
  68. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 見通しといたしましては、まず特需の内容ですが、これは軍属とその家族、そういうものに対して、トランジスターラジオであるとか、カメラであるとか、そういったようなものが大部分を占めている。武器はございません。武器は、国際協定に従って、あるいは国連の決議に従って、交戦国であるとか、あるいはそれに関連する諸外国、そういうものに対しては、武器の輸出はしておらない。でありますから、ほとんど、いわばまあ民需物資、大部分が民需物資であります。でありますから、民需物資がかりに戦争の成り行きによって多少減ってまいりましても、それ自身は、いままで武器をつくっていてそれを輸出しておる、それがとまったというようなことになりますと、ちょうどとうふを切ったようなそこに非常な断層が起こりますが、そういうことはない。でありますから、その影響はそうたいしたことはない。朝鮮戦争のときは、もともと日本の輸出が二十億ドル……いや、十億ドル台だったと思います。十二、三億ドルだったろうと思いますけれども、それに数億ドルの輸出が急に重なってまいりましたので、それが、たしか全体の輸出額の六十数%に達した。ところが今日におきましては、日本の輸出自体が非常に伸びておる。そして五億ドルということだと、まあ、五%、十分の一にもまだ当たらない、そういう状況であります。
  69. 二宮文造

    二宮文造君 ですけれども、きのうの証券市場の動きを見ましても、午前中には急落をした。午後に持ち直した。その理由は、復興特需というものを読み込んでの持ち直しである。いずれにしても、敏感な反応を示したわけです。今度のジョンソン大統領演説についても、やはりその大きな要素はアメリカ自身ドル防衛、こういう問題に尽きてしまいます。したがって、そうなりますと、日本が今後欧州市場においても、またアメリカの市場はもう申すに及ばず、猛烈な輸出競争なり、それからまた市場合戦が始まると思うのですが、通産大臣としてはそれらを見込んでどういうふうに見通しを立てていきますか。
  70. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 和平がすぐ実現するとは思いませんけれども、とにかくエスカレートすることはない。したがって、それに伴って、アメリカの国際収支関係というものは、いわば出血が全部とまっていく、こういうことになろうと思うのであります。そういうことは、日本の海外貿易にとって、私は好ましい情勢であると考えます。  それからヨーロッパですが、ヨーロッパは大体景気が立ち直りつつあるようでございますから、ヨーロッパに対する関係も私は決して悲観すべき状態でない、むしろ好ましい傾向である、かように考えております。
  71. 二宮文造

    二宮文造君 まるで手放しで好ましい好ましいと言うが、どちらの国の通産大臣かわからないような答弁なんですが、そこで、アメリカの国際収支の出血がとまる、好ましいと、こういう大臣の説明ですけれども日本はどうします。その対策を聞いているわけです。
  72. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) アメリカ情勢は漸次そういう方向に進んでおるから、好ましい情勢にあるということ。すぐ好ましい情勢が展開するとは申し上げてない。それから日本は、いま申し上げたように、特需関係の内容を申し上げた。そして全体の輸出量に対するパーセンテージはきわめて朝鮮戦争の当時と比べものにならぬほど低い。そういうことで、多少の影響はありましても、大勢には影響ない。それから……。
  73. 二宮文造

    二宮文造君 貿易の問題です。
  74. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日本の貿易にとって、アメリカが漸次そういう情勢に向かっていくというふうになれば、これは日本の輸出政策というのは非常に実行しやすい状況になるので、私は少しも悲観すべき状態というものはこの事件に関して急に起こってくるというようなことはない。従来の方針に従って大いに輸出振興をやっていく、こういう考えでございます。
  75. 二宮文造

    二宮文造君 そこでこの間インドネシアのスハルト大統領が見えました。経済援助のことについて総理と会談を持たれたようですが、従来の東南アジア諸国に対する経済援助と、それから事態がこういうふうに変わりつつある場合の経済援助のあり方と、その内容は当然変わってくるべきじゃないか、こう私ども思うのですが、総理はどうでしょう。
  76. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) とにかくベトナム和平が招来されると、積極的に経済建設、そういうのが各国とも進んでいくだろうと思います。したがいまして、なかなか、どういうように変わるかしばらく模様を見ないとわかりませんけれども、いま言われるように、在来よりももっと資金需要は旺盛になる、かように私どもも考えなければならぬ、かように思っております。
  77. 黒柳明

    黒柳明君 関連。
  78. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) あまり関連をやってもらうと困るんだが、黒柳君、一問だけ。
  79. 黒柳明

    黒柳明君 先ほどから総理はじめ大臣方の答弁、非常にりっぱだと思います。ということは。高姿勢であり強腰であり、ある意味におきまして、私非常にこれからの政府外交姿勢というものはどのようになっていくのか憂える面もある。というのは、昨日の官房長官の談話、アジア政策は変更しない、ただいまの総理発言北爆を支持した覚えはない。そのような非常に一連のジョンソン声明、発表に対する政府態度というものは、従来の対米外交あるいはアジアに対する外交姿勢に何らの反省がない。ところがジョンソン大統領は、過去の非は非として率直に認めている。しかも最後には涙を流して、私はいまこういう時にあたって一時間たりとも大統領選挙なんかに自分のことでうき身をやつすわけにいかない。残された任期はベトナム平和に対して全力を尽くすと、こういうことを発言しているわけです。当然わが国の総理大臣も、ジョンソン大統領以上に国を思い、国民のことを憂慮していることは、これは私は確信しております。しかしながら、先ほど言いましたように、何か従来の態度に対して全然日本政府は非がない。言うならば、いままでアメリカに対する日本外交姿勢というものに対して一分の狂いもなかったか。今後のアジア政策というものは決して変更する何ものもないのか、こういうことを私は質問したいと思う。なぜかなら、昨日からきょうにかけて、テレビとかあらゆる面でこのジョンソン発言の問題を取り上げ、各界の有識者が意見を出しております。その中では、当然アメリカ態度の変更は言うまでもなく、日本政府としても何らかの外交態度というもの、姿勢というものをアメリカに対し、あるいはアジアに対する姿勢というものを改めざるを得ないのじゃないか。また、昨日の夕刊、けさの朝刊、各紙一斉にそういうことを論じております。また、これは自民党内部でも派閥がある。そういう意見があるのはあたりまえだと言われればそれまでのことですけれども、特に今回のジョンソン声明に対しては、佐藤総理の党内においても、これはわが党のいままでのアメリカに対するあまりにも一辺倒外交政治というものはこれは疑問があるのではないか、改めるべきだ、こういう大きな声が出ているやに新聞報道は伝えております。あくまでもこのテレビ、そしてこの新聞の報道は、言うならば、国民世論の集約である。国民の声である。私は総理があえて——まあこれから答弁願いたいと思いますが、アメリカに対するこれからの、いままでの姿勢に対して、全然一分の狂いもない、そしてアジア外交に対する何らの改める点もない、こう言われるならば、国民に対する挑戦をあえてしてでも、わが自民党の道を行くんだ、こういうような態度は、これは新聞でも論じたように、総理の三選をはばむものであるというふうに私も感ずるわけですが、まあ総理、相当自信があるから、にやにや笑いながら聞いていらっしゃる。ひとつその覚悟のほどといいますか、くどいようでございますけれども、従来、そしてこれからのアジアに対する外交姿勢、いかがでしょう。
  80. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はいままで、いつも申し上げてきたと思いますが、どこの総理——私は日本総理だ、こういう立場でものごとを考えておるということをたびたび申し上げてきました。また、皆さん方からも要望されることは、独立の日本国を早くつくれ、それが皆さん方の願いでもあり、ことに外交の問題となると、やはり独立の外交、独自の外交といいますか、国益を増進する外交を展開する、このこともしばしば申し上げたつもりでございます。したがいまして、基本的姿勢として私は、皆さん方からアメリカ一辺倒だとか、あるいは追随外交をやめろとか、こういうことを言われると、たいへん実は不愉快に聞き取ったのであります。私は、こういうような独立外交、それは進めておるつもりだが、まだ国民の一部からはさように考えられるかと、たいへん私はそれは残念に思ってきたのであります。ことに日米安全保障条約にいたしましても、これを結ぶがゆえにアメリカ極東戦略日本は盲従する、こういうような批判を受けることは、私はたいへん残念に思います。この日米安全保障条約は、これは申すまでもなく、日本の安全を保障する、確保する、その方法として私どもが政治的に選択した方法でございます。いわゆる選択の問題でございます。そこに日本の独立性、独自なものをちゃんとつかんでおるつもりでございます。したがいまして、今回のようなアメリカベトナム政策、これについて和平へ踏み切った、こういう事柄がそれじゃ、わが国の独立外交、その路線に一体どうなっているのか、かように考えると、これは私は幸いにして不都合を来たさないように思っております。さように思うがゆえに、この際に、このジョンソン大統領声明をひとつもり立て、そして成果があがるようにしようじゃないか。これが日本の国益に合致するのだ、私はかように考えておるわけです。  ただいま二宮君から経済援助についてのお話がございました。私は、アメリカ自身がさらにこれから後に、アメリカの一部にあるように、孤立主義にでももしも入るならば、あるいはまた、一部で心配されているように、保護貿易論者が力を得るようになれば、このアジア並びに日本考え方も大きく影響を受けるだろうと思います。ただ、ベトナムにおいて和平へは踏み切ったが、在来のアメリカの貿易拡大の政策には変わりはない、また、孤立主義でもないんだ、こういう方向アメリカがあるならば、私は別に心配することはないと思います。この点はまだ、ただいまいろいろな議論はされておりますが、はっきりした方向が示されておるわけじゃありません。そこで私は、いま東南アジア諸地域に対しての経済援助の問題、これは資金量としてはふえるだろうということを申しました。私は各国ともおそらく、軍事的な要求よりも、やはり民生安定への努力をする、その時期に来ている。こういう意味で、いろいろ経済協力、経済援助を求める声が大きくなるのじゃないかと思います。インドネシアのスハルト大統領がお見えになりましたが、軍人の出身だと言いながらも、私がお話ししてみると、経済の問題についてはたいへん詳細に資料を持って日本に見えております。そのことを考えると、やはり経済発展あるいは民生の安定への努力、民生向上、これへの努力、これは東南アジア諸地域の主権者あるいは政権を担当する者の当然考えるべきことじゃないだろうか、かように思います。そこで、アメリカ自身のこれらについての考え方も、すでに、あの演説の終わりのほうに、戦いはやめても経済復興については協力しようという積極的な態度を示しております。私はその点では、在来の考え方に変わりはないように実は思っております。したがって、ただいま多くを申し上げる必要もないように思います。御指摘になりましたとおり、やはりどこまでも自立外交、これは必要なことである。しかし、私は、一国だけで何でもできる、かようには思っておりません。今日の状況のもとにおきましては、友好親善関係のある国々と提携して協力して、そうして、わが国の繁栄、同時に平和を確保する、そういう方向努力するつもりでございます。また、今回のような問題が起こりましても、日米間の相互信頼、これはもっと強固にすべきじゃないか、私はかように考えておりまして、その意味では、あるいは御賛成を得るかどうかわかりませんが、私は、アメリカとの安全保障体制も必要だし、また、両国政府は信頼の上に立って相互協力をすべきだ、かように今日考えておる次第でございます。
  81. 二宮文造

    二宮文造君 時間がありませんので、取りまとめて、主張なり質問なりをいたしますが、いま総理もまた、日米安保の問題についてお話しになりました。しかし、私ども考えますのは、今度のジョンソン大統領演説は、通常兵器による紛争も限界がある、もうこの地上から戦争という状態をなくする、こういう人類の究極の願い、そういう方向に進んできたということで、非常に私どもも評価をいたします。で、そういう意味からも、日本はいままでの日米安保条約に対する考え方、特に総理考え方は、これは戦争をなくする、こういう意味において、新たな時点に立って考察をすべきときが来たのではないか。ただ、かたくなにそれは守っていけば日本が安全なんだというような意味だけでは、今日通らなくなってきたのではないかということが一つ。  それから、先ほど来伺いましたけれども、平和の推進につきまして外務大臣はその方式を提言しております。ベトコンを加えたらどうか、あるいはまた、中国も呼んだらどうか、そういう、ベトコンだ、中国だという具体的な名前をあげて提言をした日本政府が、日本がとるべき方向についてじゃまにならないように、あるいは条件をつけちゃどうかと思うというような消極的な姿勢では、どうにもならないのじゃないか。蒸し返しになりますけれども、この二点がどうしても疑問になります。いまから振り返ってみますと、総理があの国民の反対を押し切って南ベトナムにいらっしゃったり、あるいは共同宣言の中で、北爆に対する考え方——さっき意見が分かれましたけれども北爆に対する考え方、あるいは中国に対する考え方を盛り込んだ、あれが、いまの時点から振り返ってみれば、誤りではないか。ここで新たに謙虚な立場に立って、総理の言われる国益という立場でひとつ所信を明らかにしてもらいたいし、誤りのない日本外交の自主性を回復していただきたい、こういうことを私はお願いをしたいわけです。答弁を求めて終わりにします。
  82. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、確かにこれから戦争がなくなる、地上から戦争がなくなる、そういう事態が始まるということを心から望んでおります。しかし、今日そういうように断定して申し上げることはいかがかと思います。そこで問題の日米安全保障条約、これは戦争に引き込む危険があるのか、あるいは、これあるがゆえに戦争にならないのか、この点で安全保障条約を見直していただきたい。私どもがしばしば国民の皆さん方に説明しておるのは、米国の強力なる核兵力、これと結んでおれば戦争にならない、日本に戦争をしかけてくる国はないのだ、これがアメリカの持つ核抑止力であります、戦争の抑止力であります、こういう説明をしてきております。この点は私はくどく説明するまでもなく、これあるがゆえに戦争をしかける国はないのだ、また、日本自身がそれでは戦争をしかけるのかというと、これはもう平和憲法がありますから、日本は戦争をしかけるようなことは絶対いたしません。したがって、日米安全保障条約は、その名が示しておるように、日本の安全を保障し、同時に防衛的なものである、これあれば、その抑止力が働いて戦争にならない。二宮君の言われるような状態になるわけであります。したがって、私どもは、今日のこの状況下において世界各国の実情を考えたとき、日本の安全を確保するにはこれが必要だ、かように申しております。  第二の和平への努力の問題です。これはただいま外務大臣もいろいろ話をしておりますが、私は、この段階においてこれらの点も十分検討すべきだと思います。このベトコンやあるいは中共招聘の問題、これなどは十分考うべき問題だと思います。これは前向きにおいて検討するということを申し上げておきます。  さらに、私が南ベトナムへ行ったことは失敗ではなかったか、こういう御指摘であります。しかし、これは、私当時申しましたように、私が南ベトナムへ行くのは和平を探求するために行くのだということを申し上げたのであります。したがって、私は、私が南ベトナムへ行ったことは別に間違ってはいない、いまも確信をしておりますし、また、今日和平が招来されれば、現地の南ベトナムを私自身見てきただけに、こういうことは何かと役立つのではないか、かように私は思っております。したがって、私が南ベトナムに参りました際に、チュー大統領は、日本に対しましても、北との和平交渉糸口を何か見つけてくれないか、また、自分のほうで親書を出してもいいのだ、ここまでの話も受けております。そのことを考えると、私が南ベトナムへ行ったことは、日本の国益増進に役立ちこそすれ、これに反するものでないと重ねて申し上げまして、お答えといたします。
  83. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもちまして二宮君の質疑は終了いたしました。  午前中はこれにて休憩いたし、午後三時に再開いたします。    午後一時三十三分休憩      —————・—————    午後三時十八分開会
  84. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 予算委員会を再開いたします。  午前に引き続きまして質疑を続行いたします。高山恒雄君。
  85. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 総理にお尋ねしたいのですけれども、私は民社党を代表して総理並びに各関係大臣に対して若干の質問を行ないたいと思います。  まず最初に、今回のジョンソン大統領によるベトナム政策転換に関連して伺いたいのであります。昨日のジョンソン大統領の決断で北爆停止されたことは歓迎すべきことであります。ジョンソン大統領演説でも認めていますように、ベトナム戦局が不利である、いま一つは、ドル防衛の経済的要請からくるものであることと考えます。ところで、米国のこの決断に至るまでに日本政府としてはどんな働きかけを行なったのか。もし効果的な働きかけがあったと判断されるものがあれば、具体的にひとつお示しを願いたいと思います。
  86. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 特にこのジョンソンの今度の提案に直接的に日本ベトナム政策が影響したとは思いませんが、日ごろ日本が言っておることは、どうしても軍事的には解決できないと、この問題は。単に普通の戦争という概念では律し切れないベトナム戦争は複雑な様相を呈しておるわけですから、これは政治的に解決するよりほかにない。したがって、政治的に解決をするためには——軍事的であれば軍事的の勝利を得るまで待てばいい。そういうことはできない。そうなってくれば、できるだけ早く、そして話し合いによって解決する道を選ばなきゃならぬ。両方の言い分は、サンアントニオ方式にしましても、ハノイアメリカとの考え方というのはそう根本的に違いはない、みなやはり和平を望むというのですから。ただ、お互いに信用し切れないという一点だけがこの戦争の早期解決をはばんでいるんですから、こういうことで各国とも話し、日本もたとえば相互保障方式などは、これはまあ世界的に提案をして、これで動いた国々もあるわけで、こういう間接的に日本努力というものが、むろんこれは大問題でありますから、一国の力ではいけないけれども和平を望む世界各国努力の集積がジョンソン大統領の決意の中には、背景の中にはあるということが言えると思います。
  87. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 佐藤総理はしばしば国会答弁で、わが国が働きかけて効果的な条件があれば行動を起こすが、いまはその時期でないという意味のことを言ってこられたのでありますが、今日となってみれば、全く動きすら見せなかったという理解をしてもいいのか。日ごろのことと違う。この点ひとつ。
  88. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) このベトナム和平につきましては、いままで日本政府としてできるだけの手を尽くしたと、これはもう言えることであります。いままでもそのつどどういう手をやっているか。たとえばソ連外相日本に来た当時、これに働きかける、またさらにソ連の要人が来ればそれに働きかける、また英国から外務大臣が来ればそれにも働きかけると、こういうような働きかけはすでにしている。御承知のとおりであります。また、私が昨年ワシントンを訪問した際に、東南アジア諸国のベトナム観もよく伝えるが、同時に、一日も早く和平を招来しなければこれはたいへんなことなんだ、現に中共自身が核兵器も開発している、そういうようなことが東南アジア諸国に対して非常な脅威を与えておる。それなぞを考えてみてもベトナム問題が早く片づかなければならない、こういう話をしております。もちろんそれによって直ちに何らかの措置をとれと、こういうものではありません。いわゆる平和を望んでおる日本国民の姿、その姿勢、これは私、十二分にアメリカにも伝えることができたと思います。また、海外使臣、大使館等を通じてそれぞれの関係のところでそれぞれの努力を払ってきている、これはいままで説明してきたとおりに明らかであります。ただ、今回のその決定についてですよ、それじゃ日本は何かしたのか。これはしかし、ただいま申し上げるような一般的な情勢、そういう措置一つ日本が働きかけた。この結果アメリカが今回のようなジョンソン談話、演説になった。かように理解していただけばいい。また今後、日本は一体どうするか。在来からの方針を引き継いでさらにそれを強化していく、そうして努力していく、これ以外にはございません。
  89. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 ジョンソン大統領も言っているようにですね、経済的理由も大きくあずかっているとすれば、いかに佐藤内閣といえども、経済の原理から考えてみてですよ、ベトナム和平解決を積極的に提唱できるはずではないかと私は思うんです、いままでの関連から見てもですね。それはIMFのストックホルムの十カ国蔵相会議がございました。大蔵大臣の代理が出席しているのでございますから、米国の経済節度を要望する立場からも、特に課徴金も現に出ておることでありますし、積極的なベトナム和平解決を求めることができたのではないか。政府はこの際もそういうことを全然考えなかったのか。訓令なり、あるいはまた指示も大臣しなかったのか。この点はひとつ外務大臣と、なお大蔵大臣と総理大臣から御答弁願いたいと思います。
  90. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 先ほども申したように、しばしば昨年はアメリカとの間に会談がありました。一番多く扱ったものはベトナム戦争の問題であります。これは日本が早期に解決を望むという立場から、これは一番時間を費やしてアメリカと話したのであります。このベトナム戦争の平和的解決は必ずしも、パブリシティーといいますかね、そういうものが目的を達する上において適当かどうかということは私は疑問に思うわけです。アメリカに対しても相当われわれとして苦言も呈し忠告もし、そういうことは絶えず昨年度においてもいたしておるのであります。ただしかし、それがですね、ドル防衛という問題、確かにベトナム戦争というものがドルのいわゆる国際収支の上において非常な負担になっておることは事実でありますが、ドル防衛のためにベトナムを片づけろと言うことは、これはやはり関連はあっても、そのことで直接に、また別の一つの問題点でしょうから、だからドルの防衛と結びつけてベトナムということではありません。もっとやはり平和——アジアの平和的なこの開発、そういうふうなことからベトナム問題の持っておる世界平和への波紋、不安、こういう角度からこの問題を片づけなければならぬというのが、日本のいままでアメリカに対していろいろベトナム問題に対して言ってきた立場であります。それが片づけば、ひいてドル防衛にもいい結果をもたらすことは明らかでありますが、もう少しこの問題を——単にドル防衛という角度でなくして、世界の平和、アジアの平和、安定という角度から、この問題を政府はとらえてまいったのが真実でございます。
  91. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 ちょっと待ってください、答弁を。いま外務大臣にちょっともう一つ聞きたいんですがね、ドル防衛という問題と政治外交という問題と切り離して、そのものにひっかけてアメリカに忠告をするとか、ベトナムの早期解決をやるべきだという主張はできない、それは。けれどもベトナムの問題については、ジョンソン大統領も、ドルの今日のアメリカ経済の問題もあるということは明らかに言っておるわけです。その明らかに言っておる、アメリカ大統領が言っておるのにかかわらず、日本はどうしてそれをひっかけて言えないのか。ドル防衛のために、日本にも重大な影響のものを言ってきているじゃありませんか。たとえば課徴金の五%ぐらいは取るのだ、そういうことを言っておるにもかかわらず、日本だけは切り離して解釈するということは、外務大臣としてはおかしいではないかという感じを持つのですが、どうですか。
  92. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、ドルの防衛と関連があるということは否定しないんです。これはやはり大きな関連を持つ。一番国際収支の上で影響力が多いのはベトナム戦争です。しかしドル防衛のために、いろいろなアメリカ自身としての政策というものが、そのことばかりで問題を決しがたいであろうということを言っておるので、ドル防衛と関連がないということではありません。しかし、そのことはかりでも——アメリカのいろいろな判断をする場合に、ドル防衛の角度からばかりでも判断はしにくいと言っておるので、それを否定するものではございません。
  93. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 総理大臣の立場として、いまの問題。
  94. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 十カ国蔵相会議、その会議でもこういう問題が扱われなかったか、こういうお尋ねでございます。御承知のように十カ国蔵相会議には大蔵事務次官が出席した、大臣はこのとおり足どめされておりますから。したがって、ただいま申し上げるように、この十カ国会議に出たのは大蔵次官と日銀総裁でございます。したがいまして、いわゆる政治的な問題には触れなかった、かように私は理解しております。したがいまして、十カ国蔵相会議でこういう問題が論議される、全般ですよ、全般についても総合的な議論が展開された、かようには思いません。なお、その実情については、大蔵大臣からお聞き取りいただきたいと思います。  高山君が御指摘になりましたように、このドル防衛ベトナム問題、あるいは課徴金問題とか、その他の一連のものが全然関係がない、かようには私も考えません。それは関係がある。しかし今日まで、米国が、正月にとってきた対策、これではベトナム問題とその他の問題とを切り離して、そうしてドル防衛の対策を立てるというのが、一月に私のところにまいりましたときの骨子でございます。その話を聞くと同時に、私どもも、そういうことでよろしいのかというような話まで、実は打ち割ってしたのでございます。けれども、当時におきましては、国内並びに経済協力、そういう点でドル防衛はりっぱに成功する、そういう一つのプログラムを持っておった、かように私は理解しております。
  95. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 最近におけるOECDの会議、それから金プール諸国の会議、こういう国際金融を中心にした会議では、もう全部の国の世論が一致しておりまして、ドル不安の原因を除くためには、アメリカが自分の国際収支の赤字を解消する強い措置をとるべきだということで、これは日本も同様に、あらゆる機会にこのことを主張して今日まできました。先般も言いましたように、国際収支の赤字は原因がたくさんあって、そのうちのベトナム戦費もその一つでございますが、それよりも、ベトナムに戦費がかかることによって米国の財政赤字が非常に大きい、それをそのままにしておくことが、結局ドル不安の一番のもとだと、この解決はすべきであるということが、最近各国の要請でございましたので、今回の十カ国会議におきましても、ベトナム問題には触れませんでしたが、米国の財務長官は、米国としてはこの問題についてもう真剣な措置をとるということを述べて、十カ国はこれを了承したというようないきさつがございました。
  96. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 米国が事前に日本政府に何らの連絡、相談と申しますか、もなかった。一方的に通告してきたといわれることについて、ジョンソン政権を日ごろから信頼しておられる佐藤内閣は、今度の場合は米国に信頼されなかったという証左であると思うが、どうですか。されなかったと見てもいいですか。
  97. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今度の場合は、別に私信頼されなかったと、かようには考えておりません。と申しまするのは、事前に日本考え方ははっきり申し伝えてある。いわゆるベトナム和平を招来することが、それが心からの願いであるという点は申し出てありますから、別に信頼しなかった、かような結論には到達しておりません。
  98. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それは総理のいまの答弁は強がりだと私は思いますね。しかし、これは大事な問題なんです。  そこで、沖繩を両三年内に返還するというめどが大体ついて、答弁がいままでずっとなされております。佐藤ジョンソン問の合意であったはずが、今度の政策転換に際しても、このいままでの経過から見て、一方、ジョンソン大統領出馬も断念するということを言っておられる。そうすると、この三年というのが、国際信用上そんなことはないと総理は言っておられますけれども、この三年というのが、ほんとうに空文になるのではないか、から念仏ではないかという心配すら国民はするのです。この点はどう考えるかということですね。
  99. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 両三年内に返還のめどをつける、このいわゆる昨年のジョンソン大統領と私とのコミュニケ、これはジョンソン大統領がその席に、その職になくとも、また私がその職にいなくても、この共同コミュニケはそのまま有効に残っておるのであります。と申しますのは、私どもは個人的な友人関係で二人が話し合ったというものじゃございません。両国政府を代表して、その政府の代表、その最高の責任者として話し合ったこと、取りきめたこと、これには狂いがない。だから国民の皆さん方もその点では御心配のないように、これはもう昨年共同コミュニケで約束したこと、これは人がかわりましても、その中身に変わりはない、かように御理解いただきたい。ことにこの問題についてはしばしば、今日ジョンソン大統領が立候補しないというのではっきりいたしましたが、そのことがない前に野党の皆さん方からしばしばこれは聞かれた。万一のことがあったら一体どうなるのか、そのときも申し上げましたように、これは政府首脳者両国政府首脳者が約束したことでありますから、これは変わりはございません。これははっきり申し上げておきます。
  100. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 その答弁は、総理を信頼する以外私はないと思いますけれども北爆停止によって米国の極東における戦略の配置の転換があるものと考えるのです。したがって、沖繩を基地とするB52の駐留は意義を失っていくのじゃないか。この際政府は、従来に増してB52の沖繩撤去を強くひとつ要求する考えがあるのかないのか。特に大浜さんの意見もお聞きになっておると思うのですが、どうですか。
  101. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) このたびのことで、極東国際情勢に大きな変化が、幸いするような方向であってほしいと、私ども願っております。したがいまして、ただいまの段階では、ジョンソン大統領の一方的な処置だけでございまして、これに対して北ベトナムが対応する、あるいは世界各国とも、このジョンソン大統領のとりました処置についてこれを理解する、あるいは歓迎する、かように申しておりますから、必ず私は効果的な、私どもに幸いするような国際情勢変化がある、そうすれば米国の体制ももっと緩和されると、かように考えて、それを期待しております。したがいまして、こういう点をも含めて、ただいまの推移を見たい、かように考えております。
  102. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そういうものを含めてB52の撤去に対して要求をする、こういうことですか。
  103. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) B52の処置についても考えていくということでございます。
  104. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 ところが、いま確認を得ましたので、もうその必要ないかと思いますけれども、やはりうわさが出ておりますから、この点は総理にひとつお聞きしておきたいと思うのです。核基地の核をつけた返還総理は考えておるのじゃないかということが往々にしていわれておりますね、世間で。もしそれがほんとうであれば、米国のアジアにおける戦略転換によっての意味は全くないものではないかという考え方がするわけです。この際あらためて政府のほんとうの真意のあるところを私はお聞きして、国民に安心させてもらいたい。私は午前中も、国民にあやまるならあやまって、安心させてもらうべきじゃないかというのだけれども、一向に総理はその点については反省の色がないようだが、どうもおかしいと思うのですね。その点ひとつ。
  105. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日本総理としては、日本国民に責任を持っております。したがって、国民の皆さん方も十分理解していただきたい。私は沖繩の基地について、いままではっきりしたことを申しておりません。いまも白紙の状態でこれに臨んでおる。重ねて今日まで繰り返して答弁しております。この機会にも同じように申し上げますが、まだ白紙でございます。
  106. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それではもう一つお聞きしますが、午前中総理は、日本は実際には戦力には参加していないのだ、こうおっしゃるわけですね。ところが、日本条約を結んでおるということは、これは認めざるを得ませんね。その条約を結んでおる日本の、いわゆる百万県民のおる沖繩からB52が、核爆を積んでいなくても、爆撃をしておるという事実はお認めになるでしょう。そのときに、日本が追撃を受ける危険性があるのかないのか。もしあったとした場合に、日本は国際法上それに対して異議の申し立てができるのかどうか、この点はどうですか。
  107. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日本日米安全保障条約を結んでおる、それは御指摘のとおりであります。しかしこの日米安全保障条約は、たびたび申し上げるように、これは防衛的なものであり、また、日本政府の、日本考え方に反してまでアメリカはとやかくはしない、そういう覚え書きの交換もできております。したがいまして、日米安全保障条約がありましても、これで日本がどうこうというものではございません。沖繩の問題をただいま引き合いに出されました。沖繩はなるほど、ここに住んでおるものは私どもの同胞であります、日本人であります。いわゆる百万の人たちがいる。しかし、これはさきの戦争以後、施政権はアメリカにある。アメリカの施政権下にある沖繩の問題は、どうもまことに残念ながら、アメリカの言うとおりやらざるを得ない、施政権者の自由に使うことをわれわれも黙認せざるを得ない、かような状況でございます。
  108. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私はその点を聞いておるわけじゃないのです。沖繩のB52が、安保条約に基づく沖繩基地から、核は使用しなくても、爆撃をしておる事実はお認めになるでしょう、この間新聞にもちょっとそう出ていましたから。そうした場合にですね、日本がもし追撃を受けた場合に、異議の申し立てが日本は国際法上できるのですかということを聞いている。できなければ全く不安なものです。それを聞いておるのです。
  109. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君)  沖繩アメリカの施政権下にある、これは事実でございますね。したがって、そのアメリカ沖繩の基地をどういうように使っているか、いま私どもがとやかく言うことじゃない。いま言われるように、このB52が沖繩から出て爆撃しているかもわからない。しかし核は使っていない、これだけははっきりしている。これは大浜君のほうが向こうへ行って、そして飛行機そのものを見たのでございます。その飛行機がいわゆる核を積む飛行機ではない、E型並びにF型だといわれている。だからこれは核は積まない、これはもうはっきり確認してまいりました。だからその心配はございません。しかし、一部ではいまなお核を積んでいる、こういうようなうわさを立てておりますけれども、この点はその心配のないことをこの機会に申し上げておきます。したがって、ただいまB52が沖繩から出ている、沖繩自身が爆撃を受ける心配はないか、こういうことですが、これは現地の同胞諸君も、いま米軍の強力な軍事力というものを考えたとき、万一にも沖繩が爆撃を受けるというようなことはない、現地の人たちもはっきりそういうように感じておるそうです。私は、同時に、ただいまの状況では、日本本土そのものが、B52が沖繩に来たから、それで爆撃を受けいるということはない、この点は御了承いただけるのじゃないかと思います。  また、ただいままでの攻撃に対する、爆撃といいますか、防御といいますか、それは侵略行為に対して、その反撃は認められておりますけれども、ただいまの日本自身がそういう侵略行為をしていないこと、これもはっきりしておりますし、また沖繩から米軍が出発いたしましても、この米軍の行動そのもの、これはまあ議論のあるところでありますが、これは南ベトナムの政権維持のために頼まれて出ていっているのである、いわゆる侵略行為ではございませんから、これはアメリカが爆撃に沖繩を基地として出ていきましても、沖繩自身が爆撃を受けることはない、これは理論的にそういうことも言える、かように私は思っております。実際の実力から、ただいま攻撃を受けないということは最初に申しましたが、同時に、法制上もそういうものに対して十分抗議は申し立てられる、かように考えております。
  110. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 次へ移りますが、日米共同声明佐藤総理は、米国のベトナム政策を全面的に支持されたのでありますが、そのアメリカアジア政策の根本はドミノ理論を唱え、共産主義を排撃する武力滅却の政策であったと思うのです。それを基礎にして佐藤ジョンソン共同声明というものが出された。ところが、アメリカは今回の声明で、武力だけでは北ベトナムを屈服させられない、こういう実証をしたわけです。したがって、アメリカは対アジア政策の変更をしいられたと言っても過言でない。したがって、日本政策を変えない、日本政策を何ら変える必要がないのだというその自信のほどは、何をもって言っておられるのか、もっと詳しく聞かしてもらいたい。午前中もこの問題でだいぶ答弁されましたけれども日本は、いままでのアメリカ政策を根本的に変えてきたのだが、それにもかかわらず、日本は従来のままで行こうとするのか、政策を変えないで進むのか、武力でやってきたものを今度は平和的に解決しようというんだから、その共同声明を出された佐藤総理の責任において依然としてそのままついていかれるのは、これはどういう意味ですか、お聞かせ願います。
  111. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは非常にはっきりしたことで、日本日本の行き方、アメリカアメリカの行き方だと、これは今日までもその間に相違のあったことは、御承知のとおりであります。私どもは、平和憲法のもとに、そうして国連憲章を守る、平和に徹した行き方をしている。アメリカ自身は、どこにでも出かけ、そうして世界の平和、繁栄のために自分たちに課せられた役割りを果たす、そういう行き方であります。しかし、私ども日本は、国外には一切そういうような働きはしない。自衛力、それはもう防衛的なものしか持たない。したがって、アメリカの軍事的戦略体制というものと日本の戦略体制は違います。その点ははっきりしている。日本がいままで、日本の独自の立場で、日本の憲法を守り、日本の法制を守り、そのもとにおいて平和に徹し、そこで経済的な繁栄をいまやっておる。また同時に、親善友好、これをいずれの国とも仲よくしていこう、そうしてそれのためにはお互いに独立を尊重し、内政を干渉しない、こういう立場なら、その政治的イデオロギーが違おうが違うまいが、そんなことにおかまいなしに仲よくしていこう、こういう考え方をいまさら私ども変える何ものもない、かように思っております。ここにいわゆる独立日本の行き方があるわけであります。アメリカの行き方と日本の行き方は、そこに違いがあるのであります。したがいまして、私は、アメリカがどうこうしようが、日本の行き方をただいま変える必要はないんだ、いままでどおりでいいんだ、われわれは平和に徹した行き方をすればいいんだ、そうしていずれの国とも友好関係を結んでいくということであっていいと、かように思います。そうして同時に、アメリカとの間では日米安全保障条約がございますから、特に日米間で望まれるものは、相互の理解と信頼といいますか、それを傷つけることのないようにしたい、これが日本の行き方であります。
  112. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 いまの質問に対する答弁、外務大臣にひとつ見解をお聞きしたい。
  113. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 日本ベトナムに望んでおったのは早期に平和的な解決であって、戦争を支持したことはありません。やはり日本の場合、アジアとの関連が多いですから、いろんなことを、経済協力でもやろうとしても、ベトナム戦争というものが黒い影をアジアに投げておることは事実であります。そういうことで、常に望んでおったのは平和解決でありますので、この根本的な日本外交姿勢を変える必要はないと考えております。
  114. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 しかし、自民党の内部でも、かなり姿勢を変えるべきだという意見がありますね、新聞を見ても。これは余談ですけれども総理はあまりかた過ぎるのじゃありませんかね。  それじゃ次に移りますが、この共同声明を発表されてから。——その節総理が米国のベトナム政策を全面的に支持してこられたことは、申すまでもありません。特に米国で歓迎を受けておりますが、この時点のベトナム政策と、今回発表されたベトナム政策とは、もう全然違うわけですね。違うのですよ。その時点でも、日本は変わらないのか。  特に私申し上げたいのですが、去年の十二月一日のワシントンでの下田発言日本国民の大多数はアメリカベトナム政策を静かに支持していると、こういうことを述べているのです。静かに支持するということは、北爆をやることを静かにわれわれ国民がみんな賛成しておるのだ、こういうことを言っておることでしょう。それをとめたわけですよ、アメリカ自体がやめると。そうすれば、日本は平和を初めから願っておるのだからということと、いまの下田発言というものが——責任ある大使です、外交官が言われたことと三木外相の言われることとは、だいぶ私は異なると思う。そういう面のひとつ見解をお聞かせ願いたい。総理も。
  115. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 下田大使の演説のテキストを私も読んでみました。その御指摘になった場所は、原文でツー・アコンプリッシュ・イン・ベトナムだから、ベトナムアメリカが達成しようとしていることに対しては、日本人はこれに対して理解をし支持をしておる。達成しようということは、南ベトナムというものの力による支配はいけない、自由と独立を守るというアメリカが達成しようとする目的を支持しようということで、ベトナム戦争あるいは北爆というものに対して、これはけっこうでございます、これを支持するというような演説をしたということではないと私は承知しております。
  116. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの外務大臣のお答えでもういいかと思いますが、もう一度共同コミュニケを読みますから、その大事な点をひとつ十分御注意願いたい。  このジョンソン大統領と私との共同コミュニケ、そのうちの第四がいわゆるベトナムについてのくだりでございます。その中ほどに、「総理大臣は、紛争の正当かつ公正な解決を求めるという米国の立場に対する支持を表明するとともに、できる限り平和探求に努力するとの日本の決意を再確認した」云々と、あとまだ続いております。したがいまして、アメリカ自身がただいまやっておりますことが一体何なのか。これは申すまでもなく、南ベトナム人民の自由と独立を擁護するために引き続いて援助をやっておる。そこで、ただいまも申すような紛争の正当かつ公正な解決をはかるためにこのアリメカがとっておるその立場を支持する、こういうことを表明しておるのです。別に、アメリカが戦争をやっていることがりっぱだとか、あるいは北爆はたいへんりっぱだとか、さようなことを申しておるわけじゃありません。したがって、この点の誤解があると私は困ります。ことに、「できる限り平和探求に努力するとの日本の決意を再確認した」、日本がそういう意味におきまして平和探求ということを強く主張しております。これらの点から見まして、別に変わったことではございません。また、ただいま言われている今回のジョンソン大統領のとった処置が、さきのサンアントニオ方式に対して大きな修正を加えた、全然別なことだ、かように御指摘でございますが、私はさように非常な修正を加えたものだとは思いません。アメリカ自身も、平和のためなら大統領自身がどこにでもいつでも出かけると言うし、またサンアントニオ方式では、自分たちは、話し合いができるなら、北からの浸透というようなものを十分考慮してくれるなら、爆撃をやめていいのだ、ここまで実は言っておる。今度は、さらにその条件を緩和して、無条件、無期限、限定した北爆停止、それまで実は言ったのです。私は、むしろ、ジョンソン大統領がここまで、過去のような条件的なものも考えないでここまで言い切って、そうして政治的生命をかけておるこの態度に、やっぱりわれわれも協力するということが世界人類ためにしあわせなんだ。私は、世界平和のために今度は成果あらしめたい、かように念願しております。だから、その点で、おそらく皆さんも同じだろうと思いますので、そういう意味で、これからどうしたらいいかというのがきょうの午前中からの質問だろうと思います。私は、そういう意味で、皆さん方の御支援も願いたいし、御協力も願いたい、かように思っております。
  117. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それは非常に分析された答弁をしておられるわけです。しかし、下田・ワシントンの発言というものは、総理ジョンソン大統領と会談されて、しかもアメリカ自体としては北爆最中なんです。北爆をやっておるのです。いかに極東の平和、アジアの平和を日本が願うものだと言ったって、攻撃をしておるその時期に下田発言というものが出てきた。そうしますと、武力でもいいから、それを一つ言わせて、そして平和を求めてもいいということにつながるのです。いまならば、総理の答弁は、私は適切なことばだと思う、いまの現状であれば。しかし、前の現状のときに分離して考えることができたのかというと、それはちょっと無理です。こういう点は、あまりごまかさないで、もっと政府も、根本的に変わってきた今日の国際情勢というものを、特にベトナム情勢というものを、変わってきたものをもっとはっきり国民の前にやはり言われるべきですよ。ひとつ総理ももう一ぺん見解を聞かしてもらいたい。
  118. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、先ほど申したように、別に変わったことはないように思います。ただ、皆さんが心配しておられるのは、こうでも申したらはっきりするのかもしれない。あるいは軍事的な力で解決ができると思ったが、そういうものをやめて、今度は政治的な解決方向にいく、これが今回のジョンソン大統領演説だと、かように申したら御理解いただけるかと思います。とにかく、いずれにいたしましても、和平を招来するその方法が、在来のような力だけでやるのではない、今度は政治的な解決をしようとしている。ここに私どもは非常な意義を認めている、かように考えております。
  119. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私は、わが国の外交政策が、まあアメリカ追随ということをよく報道その他で言っております。したがって混乱を招くのだ、今度そういうふうに断定されている。政府日米安保体制の上にあって、いままではあまりにも気楽にあぐらをかき過ぎたのじゃないかという感が出るのは当然だと思うのです、私は。わが国はあくまで独自の立場から自主外交を展開せよということは、もうこれは国会で何回となしに言われております。今回のジョンソン声明で痛感したことは、政府はいまこそわが国の自主独立の外交政策を確立するいいチャンスだと私は思うのです。そういう意味で、自民党の内部にも、これはこの時期にやらなくちゃいかぬという声があるのだと思うのです。それは、総理はいま自民党の総裁でもありますから、ほんとうにその声があることは、佐藤総理がいかなる弁解をされようとも、国民は両様の見解というものを非常に不安に思っておるわけです。依然として変えないと言う。変えなければ、どうして日本政府はいくのかという問題については、これは重大な問題です。このときこそ、き然とした態度で、やはり政府としては、いままで基本的に平和という問題を基調にしてわれわれはきたんだからというのでなくて、いままでの政策見通しも甘かったんだと、それならそれでやはりはっきり言うべきじゃないかと私は思うのですが、この点どうですか、信念をひとつ聞かしてください。
  120. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たいへん自由民主党の内部の声まで御心配のようですが、その点ありがたくお礼を申し上げたいと思います。
  121. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 別に心配してません。
  122. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 心配してなければ、別に、私総裁ですから、なるべく私にまかしていただきたい。私が取りまとめをいたしますから、ただいまのような自由民主党内部にどういう意見があるというような御議論はやめていただきたい、これは私は率直に申し上げます。私は、政府並びに与党といたしまして、ただいままでもたいへん熱心にこういう問題に真剣に取り組んでおります。まだ結論が出ておらない。ただいまのところは、まだ変更する必要なし、かように考えております。
  123. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 いや、それは総理ね、私、自民党の誹謗をしているわけじゃないです。新聞に載っておったかと言うのです。私みずから自民党を誹謗する必要はないのです。自民党内部に——こういうことが新聞に載っているがということを言うわけです。御了解願いたい。  そこで、今日まで佐藤内閣ジョンソン政権が一体化の形できたのですが、隠れもないこの事実はお認めになると思います。佐藤総理は、過去にはそれを誇りにさえ今日までずっと言ってこられたわけです。今回のベトナム政策の大転換ジョンソン大統領が余儀なくしなくちゃならぬということに立ち至って、その影響は大きなものがあると私たちは思うのです。したがって、この際、先ほども申しましたように、米国の追随外交というものは、そんなことはないとおっしゃるけれども、もっと日本の自主独立のために、その経済外交、あるいはまた政治外交、ともに大飛躍をした考え方を持っていくべきじゃないか。したがって、まあ米国の政策に、無定見ではなかったと、こうおっしゃるでしょう。しかし、一般から見ますと、当然いままでの政策そのものは、いろいろ情報あるいは質問から見ても、そういうふうに国民はやはり考えていると思うのです。しかし、この際、非常に経済的にも、またベトナム問題に対するジョンソン大統領の失敗を見ても、みずからやはり国内の問題を考えて、ジョンソン大統領は、この際自分は次の選挙には出馬しない、こういう断念をして発表をいたしております。総理は、そこまでいっているにもかかわらず、いまだに変更しないでもいいと言う。変更しなければ、日本に混乱がなかったとお考えになっているのか、経済的にも、あるいはまた今後の問題についてもですね。したがって、それはなかったと、こういう観点に立っておられるのか、その点ちょっとお聞きしたい。
  124. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも気に食わんですね。ぼくが大統領と親交があるとか、それを誇りにさえ思っているとか、あるいは米国の政策に無定見、追随してきているとか、どうも私は気に食わない、その点は。私は、しばしば申し上げますように、自主独立の外交を展開しております。その立場に立ってやっているのです。アメリカがどういうようなことを言おうと、私はそれによって左右されておらないです、いままで。だけれども、どうもそういう先入観でものごとを見ておられる。そうして、国民がさように思っていると言われる。しかし、国民はさように思っておりません。それは、もちろん高山君も国民の一人ですから、高山君が思われることはけっこうですが、大多数の国民はさようなことは考えていない。だからこそ、日米安全保障条約に対して絶対の支持を与えているじゃありませんか。私がいままでとってきた政策は、間違っているとは思いません。ただいまの申し上げるような表現が、いかにも私が無定見であり、そうして自主性を欠いている、そうしていかにも弱々しい男のように表現される。私はたいへん残念に思う。私はそういう者でないことをこの際申し上げる。そうして、「国民」をそう簡単に使われることもひとつやめていただきたい。私は、いままで選挙におきまして、わが自由民主党はちゃんと国民の圧倒的な支持を得ている。それにもかかわらず、国民はこういうふうに思っている、ああいうふうに思っていると、簡単に言われるけれども、とんでもない話だ。これはひとつやめていただきたい。
  125. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 総理は新聞はむろん見ておられると思いますが、私個人だけが言っているんじゃないですよ。私だってあなた全国区ですからね、全国区から支持を受けているのです。私一人の発言じゃない。そう思ってもらわなければ困る。
  126. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 絶対多数です。
  127. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それはむろん、絶対多数ではありますよ。しかし、日々の新聞の報道によれば、そういう見解の新聞が今日までずっと継続して報道されておった。突如としてジョンソン大統領の平和解決の端緒が見えてきた。こういう事態に差しかかっているのに、依然として政府は、いままでのはわれわれが正しかったんだと、こういう見方を断定されておりますから、真情のほどを聞き、さらにまた、今後もその方針でいかれますのかと、しかも、アメリカの失敗しておるジョンソン大統領は、この際みずからが、出馬もしないという断念をしたじゃないですか。日本総理も親密な連絡をとってこられた一人に間違いないのだから、私は、それだけ総理が残念だとおっしゃるならば、私も残念なんです。そういう総理の答弁では残念なんです、いままでの報道から見て。むしろ、この際改めたいと、こう言われるならば、国民も納得し、かつまた、それならば私も了承しますよ。そうするとおっしゃるならば了承もしますが、依然としてそれは固執されておる。したがって、これに対しては、願わくば、やはりジョンソン大統領のような態度をとられてもいいではないですかと言いたいくらいです、私は。ジョンソン大統領のような態度日本総理もとられてはどうですかと言いたいくらいです。それに対して総理、決して個人的でないと、国民の多数がやはり支持しておると、こういう問題は、そういう立場の答弁は私はよしていただきたいと思う。私も個人じゃないんです。総理ひとつ答弁願います。
  128. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は答弁しないで、ただいま高山君の御高説を拝聴しておったのですが、何かお答えしなければなりませんか。
  129. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それはしなさいよ。私は個人じゃないというのです。あなた、個人だと言われたけれども、私は個人じゃないというのです。
  130. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私が申したのは、国民国民とおっしゃるけれども、あなたも国民の一人でしょう。その立場お話しになることはわかります、こう言ったのです。ただいまはりっぱな公人ですよ。公人なら公人らしくやはり話し合ったらいいでしょう。そういう対話をなさらないから、ただいまのように私自身も不愉快に思うわけです。私自身をずいぶん誹謗なすった。そういう事柄が私は対話の精神を欠くものだと、かように思うから、私、ここで訓辞を入れておきます。
  131. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 総理、その誹謗だと言われることが私はおかしいと思うんです。誹謗ではないですよ。報道に書いておることを私は言っておるんですよという、何も誹謗じゃないですよ、それは。報道によく書いていますよ。アメリカ追随外交だとか言っておるじゃありませんか。アメリカ一辺倒だとも言っておるし、そういう表現を使っておるだけであって、それがそうむかつくようでは、総理はこの問題について私はもっと慎重な態度で御答弁願いたいと思います。これは希望意見を申し上げておきます。  それでは、次に移ります。もうベトナム問題やめますが、次は綱紀粛正の問題です。  総理は、綱紀粛正については過去にたびたび国会で論争されております。そのたびに、政府は善処を約してきた、今国会においてもそういう実例があります。ところが、防衛庁の機密漏洩事件だとか、高級官僚のゴルフ問題だとか、あるいはまた、学校教員の入学収賄だとか、いろいろな問題があるわけですね。で、幾多の問題が論議されて、新聞等に毎日、三面記事をにぎわせておりますが、その後、粛正すると総理は言われるけれども、全然あとを断たないではないかと私は思うんです。それで佐藤総理は、昭和四十一年の十二月十九日の衆議予算委員会においても、積年の病弊ともいうべきものは根絶しなくちゃいかぬと、積極的かつまた具体的に処置をとることが私に与えられた国家国民に対する義務であると考えると、こう答弁されておるのです。綱紀問題があとを断たない原因は一体どこにあるのか。また、具体的処置と言われてきたが、具体的処置のとられたその内容は一体どうなのか、これをもっと具体的に私は示していただきたい。そうして汚職、綱紀紊乱をなくする自信と方策を総理の責任において、これは重大だと思います。かつまた、重大なことを言明しておられます。これをどうするつもりなのか。全くこれは国民の政治に対する私は不信だと言っても過言でないほど、今日多く出ております。私はちょっと拾ってみただけですが、これだけでも約三十何件になります、わずかの間捨ってみただけで。どう考えますか。
  132. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 綱紀の粛正の問題は、私は最高の責任者としてこの問題と取り組んでまいりました。あらゆる機会に、あらゆるお答えをしており、また、私の具体的方針ども説明しておりますけれども、依然としてなかなか断たない、次々に問題を起こしておる、まことに私、残念で申しわけなく思います。  まず第一に、こういう問題に対して何が原因であるか。これは申すまでもなく、公務員そのものが全体の奉仕者であるということをほんとうに徹底しないといかないと思います。したがって、この考え方が十分理解され、そうして、そのもとに行動されるならば、少なくとも、ただいまのような綱紀の乱れはなくなるのだと、かように思います。そのために、信賞必罰の制もはっきり使用し、また、内部監察も厳重にいたしていきますし、また、そういう問題が不幸にして生じたら、これを摘発もし、そうして、その処置をつける、そういういまの態度でございます。しかし、私は、かような問題が起こらないようにしなくちゃならない。ただいまの状況のもとにおきまして、いわゆる百年河清を待つような状態だと、かように思って、たいへん残念に思っております。また、各大臣とも、私が各大臣を督励いたしまして、公務員の綱紀の粛正を、振粛をはかっておりますが、各大臣もたいへん熱心にこういう問題に努力しております。しかし、なかなかこの問題は一朝一夕に片づくような問題でもございません。ことに、皆さん方からも決算委員会を通じ、あるいは他の委員会を通じ、熱心にこれらの糾弾もされ、同時にまた、政府の責任、いかに処置すべきかということも、たびたび率直な御叱正を賜わっておりますが、しかし、ただいま申すように、なお依然として次々とあとを断たない、こういう状況でありますので、まことに残念でございます。しかし、問題が起これば、これを、くさいものにふたをする、こういうような考え方では、この種の問題はあとを断たない、かように思いますので、この問題にはやはり勇気を持ちまして、そうして真正面からその問題の摘発、また、その処置に取り組んでいくつもりでございます。
  133. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 まあ考え方だけはわかったのですが、そういう答弁は前からもう何回も総理はしておられると思うのです。特に、これを見ますと、この何ですか、自民党の青年学校ですか、ここでも総裁はそのことを強く主張されておるのです。ところが、いまも同じような答弁をしておられるのですけれども、具体的にどういう処置をとっておられるか、それをちょっと聞きたいですね。具体的にケース・バイ・ケースと言われますけれども、それは法的関係あるものは法律でさばくということでしょうが、政府がそういうものに対して、たとえば時間中にゴルフに行っておるとか、こういう問題が非常にたくさん載ってきていますね。依然として継続されておるという話も私は聞いておりますが、一体、そういう問題が起こった場合の具体的な政府処置としては、どういう処置をしておられるか、具体的な処置をひとつお聞きしたい。
  134. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまも申し上げますように、各省大臣もそれぞれ訓令を出し、そして厳に綱紀の振粛をはかっておる。そこで、ただいまのような、あるいは汚職を引き起こしやすいような業者とのつき合い、これなぞはよほど最近は変わってきたと私は思います。最近もなおウイークデーにゴルフをしているとか、あるいは特別な会食をしているとか、こういう事例がないことはございませんが、よほど少なくなったように思います。もちろん、そういうものが見つかれば、厳重な注意をし、ものによりましては厳罰に処しておる、こういう状況でございます。これがまあ信賞必罰と申しますか、その点を明らかにすることが必要なんではないかと。また、そのために内部監察の強化、監察制度の強化をはかっておる役所も現にございます。したがいまして、ただそういうものが偶然に発見されるということでなしに、積極性を持って摘発もやっておるということであります。しかし、まだまだ十分ではございません。また、いまも言われましたように、毎回同じような答弁を続けて、さぞ気に食わぬだろうと思いますが、私は決してこういう問題をないがしろにして、軽く見ているわけではございません。あらゆる努力をしているつもりでございます。そして全体の奉仕者として間違いのないように、国民の信頼を得るように、この上ともひとつ努力しろと、かようなことを申しております。いま言われるように、それぞれの場合におきましてそれぞれの適当した処置があると思います。
  135. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それじゃ次に移りますが、これは外務大臣にちょっとお聞きいたしますが、通産大臣も含めてお聞きしたいんですが、つまり、米国の繊維に対する輸入規制の問題、これは実際に実現する傾向があるのかないのか、まず、それからお聞きします。
  136. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 現在日本に、日本ばかりではありませんが、関連するのが輸入課徴金の問題、これについては、西欧諸国のドル防衛に対する協力ということで、一連のアメリカと西欧諸国との話し合いが行なわれております。こういうことが、西欧諸国が非常にドル防衛に協力するというようなことになれば、課徴金というものは根本的に考え方が変わるような場合もあるんです。そうでなければ、この輸入課徴金は実現する可能性を非常に持っている。いま、したがって、アメリカとしても、西欧諸国との交渉というものに、この問題のどうなるかという問題がかかっておるので、何とも言えない微妙な段階にあると思います。また、繊維に対する輸入制限については、これは物品税の付加の形において国会に出てきておるわけですね。政府はこれに対しては従来、昨年度も鉄鋼、繊維などに対する輸入制限のいろんな措置が行なわれようとしたときに、非常に政府自体としては、これに強い反対を唱えて、そして、まあ昨年度はこれは片づいたわけであります。また、今年は選挙の年であるという関係もありましょう、またこういう輸入制限の法案がこの国会に上程されるようになってきておるわけです。これは従来、アメリカの自由貿易による世界貿易の拡大という方針にも反しますし、このことがまた連鎖反応世界に起こせば、貿易の縮小にも通じますので、われわれとしては、あらゆる機会に、アメリカに対して、そういう制度をとらないで、もう少しやはり貿易を拡大する方向においてアメリカ自身としてもドル防衛を考えるべきではないかということで、極力アメリカ政府にも、こういう輸入制限あるいは輸入課徴金、こういうものはとらないようにしてもらいたいという強い要請をいたしておる次第でございます。いまのところは、それは思いとどまらせることはできるかというと、必ずしもそうは言い切れない。相当実現する可能性も持っておるが、極力これは政府としても阻止することにできるだけ努力をしてまいりたいというのが、現在の正直な立場でございます。
  137. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 輸入課徴金の問題については、いま外務大臣から申し上げましたところとたいして私の考えも違っておりません。  もう一つ、ホーリングス法案——繊維の輸入制限の法案、これが審議の過程に入っておりますが、これが無事成立するか、それとも阻止されるか、私はいまのところ、半々に考えております。聞くところによると、両院の協議会において、これをあくまで成立を阻止するのだという意見がだいぶあるということを聞いておりますが、ただそれだけで何とも……。もしもこれが通るということになると、繊維輸出の三億七千万ドルのうち、五千万ないし六千万ドル程度の輸出減になるのではないかというような感覚をいたしておりますが、極力アメリカの従来からの自由貿易主義の方針を貫いてこれを思いとどまってもらいたいということを強く申し入れておる次第でございます。
  138. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 総理にお聞きしたいのです。課徴金の問題は、ハワイの経済会議の問題のときから出ておるのですね。大蔵大臣も御承知でしょう。すでにこれで今日に至って一カ月以上かかっておりますね。一体、アメリカを信頼するというその政府態度ですね、まあ緊密と信頼ということを絶えず総理は言っておられますが、一体、アメリカ提案したケネディラウンドというものに今度課徴金は反しないのかどうか。私は反すると思う。反するものに対する日本姿勢というものが弱いではないかという感じがするのです。たとえて一つの例を申し上げます。これは外務大臣に申し上げます。財界がすぐアメリカに行きました。これはまあ財界の佐藤団長をはじめとして行かれたのだから、これはそれでいいと思うのですね、経団連のほうは。ところが、衆議院の自民党さんからおいでになった。こういう外交こそ、日本はもっとアメリカに対する発言はないのか、たとえば決議して各党の代表を政府の代表として派遣するとか。この点は大事なことだと思うのですね。一自民党さんの問題だけじゃありませんよ。根本の経済をどうするかという重要な問題、いまも通産大臣おっしゃったように。日本の一体これからの問題を考えますと、今度は特恵があります。これも時限的には七〇年ということが決定いたしておるようです。こういう問題こそ、親密とかあるいは信頼するとかいう表現の中に、もっと強い外交ができないのかということをわれわれとしては案ずるわけです。この見解ひとつ総理お聞かせ願いたい。
  139. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ボーダー・タックスやそれから課徴金制度、こういうものは、私は、かねてアメリカがとってきた貿易政策——自由貿易、ケネディラウンド等の一連の政策とはおよそ逆行するものだ、かように思っております。これはその点では、珍らしく高山君と私は同一意見であります。私はこの問題を、昨年ワシントンに参りました際に、すでにこういう問題が出ておる、そういうときからどうもアメリカの一部に保護貿易論者がある、そういうことを実は非常に重要視いたしまして、そしてジョンソン大統領に率直に、これこそはアメリカがいままでとってきた政策に逆行するものだ、こういうことは日本政府は絶対反対だ、こういうことを申しました。そのときにジョンソン大統領は、自分のほうで拒否権まで使ってその種の法案の成立はささない、こういうことをはっきり申しました。当時これは大きく伝えられたと思います。そのとおり当時の問題は一応引込んだのでございます。しかし当時、その後にアメリカ側で申しますのは、これは大体暮れまでの間の問題として一応それは取りやめられるようだが、しかし、年が明けて三、四月になればまた同じ問題が起こるだろう。こういうことを言われたのです。ちょうどそういう問題にいま当面しておる。したがって、この正月にロストウが参りまして、そしてドル防衛についての具体策を私どもに提起した。そういう際にも、この課徴金制度はこれは絶対に困る、こういうことで政府の強い意思を表明して、これは向こうに伝達したわけです。さらにまた、ハワイ会談におきましても同様なことが言われておるということであります。そこで今度は、ただいまは一体どうなのですか、産業界から佐藤団長が出かけて行かれた。これも同じことを申して行っております。また、私どもの党から福田君の一行が出かけた。これまた、ただいまのような課徴金やボーダー・タックス類似のものを課すということはこれはもう絶対にいかぬ、また孤立主義的な考え方あるいは保護貿易主義的な考え方、これも反対だ、むしろ積極的にケネディ・ラウンドを早期に実現する、繰り上げ実施する、そういう方向ならわれわれも理解できるが、ということを強く申し入れております。そこで、これについてもさらにもっとやり方はないのか、こういうことで、いまの高山君のような御意見が出たと思います。ひとつ各党申し合わせをして、そうしてそこから政府からの委嘱も受けて出かけたらどうか、自民党だけでそういう態度をとっているのはどうか、こういうただいまの具体的な提案であります。これは衆議院におきましても、そういう御意見が野党のうちから出ております。私は、そういうものがうまく協力体制がとれておれば差しつかえないように思いますが、とかく与野党の間におきまして大きな開きがございますので、そういう結論だけが同一だと申しましてもそれぞれのスタンド・ポイントが違っている。こういう立場だと、なかなか共同行為がとりにくいのじゃなかろうか、かように思って、私は具体的にはその案を進めないで今日まで来たのでございます。しかし、ものによっては、各党で共同のできる問題もございますから、これは全然考えのうちに入れない、こういうことでないことだけは御了承いただきたいと思います。  ところで、まだ政府自身は何らの処置をとっておらない、こういうことであります。この点については、私ども政府といたしまして、向こうへ出かけるとして、タイミングがなかなかむずかしいのじゃないか、タイミングをはずして出かけたら何らの意味をなさない、かように実は考えておりまして、十カ国蔵相会議の成り行きなどもその決断をする一つの材料だ、かように思ってその成り行きを見ていたのでございます。ところが、また最近は、ただいまのような三十一日のジョンソン大統領の談話、これで大きくいまゆれております。したがいまして、この問題自身も、ベトナムの戦争は戦争、また、在来のドル防衛ドル防衛、こういうことで態度がきまる、こういうことにもなる、その心配は多分にある、かように私は思っております。しかし問題が、どうかアメリカがいままでとってきた政策と逆行するようなことがないように、これを実は願っているわけであります。それには何といいましても、一部にある保護貿易論者、これを政府がひとつ押えてもらいたいし、そうして米国自身が孤立主義的な方向をとらないで、それを実は率直に外交、大使館を通じてそういう意見を実は述べているわけであります。したがいまして、本日こういう点についてもお尋ねがございますから、この国会における審議、これも日本政府のはっきりした態度を、かように必ずアメリカ側がとると思いますので、私はっきり申し上げるような次第でございます。政府自身がただいま特別な使節を送る、こういうことについてただいま時期を見ている、かように御理解をいただきたい。そうして、ただいまのジョンソン談話以後の変化というものは、もうちょっと模様を見ないと結論は出ないのじゃないか、かように私は思っております。
  140. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 その点は、私もそういうなにはありましたけれども政府のつまり経済外交の非常に貧弱なやり方ではないか。かりに課徴金の問題それから輸入規制の問題、七〇年から起こる特恵の問題、へたをすると、現在でも皆さん御承知のように毎月中小企業の倒産は累積いたしております。しかも、これに何ら日本は手が打てない。もしこれが実施されるというようなことになれば、軒並みにつぶれるというおそれがないではない。そういう問題を含めて、企画庁長官は一体どういう計画を持っておられるのか、一ぺん聞かしてもらいたい。日本の中小企業に対する計画について、企画庁長官、ひとつお願いします。
  141. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 中小企業、一言に申すわけにもまいりません。いろいろございますと思いますが、やはり基本的にありますことは、わが国の失業がほとんどなくなりまして、そうして労銀が年とともに高くなってきている。それは喜ぶべきことだと思っているのでございますが、しかし他方で、それに伴って資本装備率が上がってまいりませんから、業種のうちには、やはり国際的な分業との関係で、わが国は相当高級なものをつくって、労働集約的なものは、ものによってはだんだん長い時間の経緯のうちで発展途上国のほうに渡していく、あるいはそのほうが国の経済全体として有利であるといったようなものもあると思います。それからまた、そういったような業種の中でも、たとえば織布業のように、ただいま事業団が中心になって始めたわけでございますが、産地別の組合をつくって合理化をして、そうして資本装備率を上げていく、あるいは機械をスクラップ・アンド・ビルドしていくというような必要のあるものもあると思います。これらはすべて構造改革に属するものであると思います。それから、そうでなくても、一般的に申せることは、協業化でありますとか、高度化でありますとか、そういうものを通じて省力をし資本装備率を上げていく。全体的に申せば、生産性を高くしていくということであろう。これが私は基本的な考え方だと思いますので、昭和三十九年以来かなり中小企業、中小製造業の資本装備率は上がってまいりました。また今年度、四十三年度におきましても、さしずめ四−六月、第一四半期あたりは政府関係機関の貸し出しは昨年の同期に比べてたぶん三割くらいふえておるわけでございますが、やはりそうやって資本の装備率を上げていくということがわが国の中小企業の生産性を高める一つの基本であろうというふうに考えております。
  142. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 通産大臣にお願いします。  特恵の問題ですね、これは一九七〇年ということですからまだ時間はありますが、この特恵は、この問題を含めて日本として現状のままで対応することは非常に困難だと思うのですよ、日本としては。したがって、後進国に移動する部面も起こってこようと思うのであります。いろんな産業として移動する面も起こってくると思うのであります。逆にまた日本は、いま企画庁長官がおっしゃったように、日本日本としての協業化あるいはその他の方法で効率を上げる方向に進まなくちゃいかぬと思うのですが、通産省としては、現在の日本の中小企業、たとえばクリスマス電球とかあるいは縫製二次製品だとか、メリヤス、いろんなのがありますね、それから軽金属、軽機械、こういうものがございますが、こういうものの一体計画というものをどういうふうにお考えになっておるのか、非常に私は重要な問題だと思うのです。一九七〇年の特恵を実施する時期に来て日本はあわててみてもしようがないと思う。特別のこれには金融措置、あるいは先ほどの、企画庁長官おっしゃったように、この協業化、そういう指導をするのかどうか、具体的にひとつお聞かせ願いたい。
  143. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いろいろなここへ来てむずかしい要素が出てまいりました。  まず第一に、労力が不足しております。この労力不足化によって、いままでの生産方式ではまた計画困難であるということがある。そこで、その御指摘の低開発国の追い上げムードもありますし、そして現にもう付近の韓国、台湾あるいは香港、こういう方面から、どんどん日本のやっておるいわゆる軽工業その他が普及しておるというような状況でございまして、この間にあって、一体それをどうすればいいか、こういう新しい問題にぶつかってまいりましたので、われわれといたしましては、その一つ一つ、繊維にしろその他の雑貨にしろ、軽工業、そういうものに当たって、たんねんに行政指導によってどういうふうにこれらのものを持っていくべきであるかというような点をつぶさに分析検討いたしまして、そうして、場合によっては、こっちの方面に転業すべきじゃないかというようなことを勧告することもあるかもしれません。高度化の問題もそうであり、近代化の問題もそうであります。いろいろなそういう方面からこの問題を早急にすべてその対策を考えたい、かように考えておる次第であります。
  144. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 高山君、時間が参りました。
  145. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 終わります。
  146. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもちまして、高山君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  147. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 次に、春日正一君。
  148. 春日正一

    ○春日正一君 私は共産党を代表して、主として安全保障、防衛の問題について質問します。  最初に核の問題ですけれども総理は、アメリカの核のかさのもとでの安全保障ということを言われるんですけれども、この意味と、それから、どういう構想であるかというようなこと、これを御説明願いたいんです。
  149. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、私は最初ジョンソン大統領に会いましたときに、この安全保障条約について、通常兵器の攻撃に対して日本を守ってくれることはわかった、しかし、それ以上にアメリカはどういうように考えておるかということを尋ねたのに対して、アメリカはあらゆる攻撃から日本を守る、こういうことをはっきり言ったわけです。そこで私は、この安全保障条約の説明において、現在核兵器の存在する世の中で一体そういう際にどうなるか。ここにアメリカの核の抑止力に、また通常兵器の攻撃に対してはアメリカの力を、同時にまた自衛隊の持つみずからの力、こういうものでこの国の安全を確保する、こういう考え方をしておる。この点はしばしば御説明したとおりであります。
  150. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、総理の核抑止力というお考えの中には、アメリカの核戦力が絶対的に強いんだ、だから、それに日本の安全をまかせておけば一番安心だと、こういうように聞き取れるんですが、どうですか。
  151. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、安全保障条約を結んだアメリカはまた核兵器を持っておる、またそれも強大だと、かように信じておりますから、この核抑止力、これは十分国民にも理解のできる問題だと思っております。
  152. 春日正一

    ○春日正一君 いま核抑止力ということばが出たんですけれども、そこで、広島、長崎に原爆を投下したのはどこの国ですか。これはちょっと答えにくいかもしれませんけれども、はっきり答えてください。
  153. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは別に答えにくくありません。アメリカです。
  154. 春日正一

    ○春日正一君 この事実から見ても、アメリカの核戦力というものが強いと、それだけでは核抑止力ということじゃなくて、これは核破壊力である。結局、その後ソ連の核戦力がアメリカと拮抗するようになってきた。そこで、核の手詰まりだとか核の抑止力ということがいわれるようになったんじゃないのですか。アメリカの核兵器さえあればということなら、これは広島、長崎みたいな破壊力となって発動するおそるべきものだと思うのですが、どうですか、その点は。
  155. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまいろんな議論をしたくございませんが、私はとにかくアメリカ安全保障条約を結ぶことによって、このもとに日本を攻撃する国はどこにもない、かように考えております。これがいわゆる核抑止力である、かように思います。
  156. 春日正一

    ○春日正一君 私は、核抑止力というものは、核戦力のバランス、その上で成り立っておるし、しかもこれを成り立たせているのは、その双方なり相互なりがいつでも核戦力に転化し得る、発動し得るというような状態のもとでのこの自制というか何というか、そういうものが抑止力として働いておるのだ、こういうふうに考えるのですけれども、そこのところはどうですか。
  157. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま私が申すように、いわゆる日本を攻撃する国はそこに出てこないだろう、アメリカの報復力というものをやっぱり心配するからと、こういうことでございますので、いまおっしゃることと同一かと思います。
  158. 春日正一

    ○春日正一君 しかし、そういうバランスの状態なら発動し得ることもあり得るわけです。そして、もし核兵器を使うとすれば、どこの国でも自分の国の死活のかかる場合、そういう場合に限って使われるのだろうと私は思うけれども、どうですか、その点は。
  159. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そのとおりでございましょう。
  160. 春日正一

    ○春日正一君 そうしますと、アメリカ日本の安全のためにだけ自国の運命をかけて核兵器を使ってくれると思うのかどうか、ここの問題ですね。
  161. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日本を攻撃されたときにアメリカは本国の攻撃と同様に考える、こういうことであります。
  162. 春日正一

    ○春日正一君 それはやはりアメリカの判断と決定に属する問題であって、今度のベトナム政策の変更というようなものを見ても、攻撃したら自動的にすっと来るというようなものでなくて、そこでアメリカの判断もあり決定もあるということになるわけじゃないんですか。
  163. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この点で共産党の諸君が、自分の国は自分の力で守れ、こういうことは理解できるのですが、私どもは、ただいま申し上げますように、みずからの国をみずからで守るにいたしましても、限度があるように思います。
  164. 春日正一

    ○春日正一君 そこでもう一つアメリカの核にたよるといっても、たとえアメリカが守ってくれたとしても、核戦争ともなれば、当然日本は破滅的な被害を受ける、そういうことになると思います。政府はそこまで考えた上でアメリカの核のかさのもとにたよる、こういうことをおきめになったのですか。
  165. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私が先ほど来申し上げましたように、アメリカとこれの核の抑止力、それはこういうところへ攻撃をしてくるところはないんだ、かように考えておるのであります。こういうところへ攻撃してくれば必ず報復を受けるという、その攻撃国自身がそういう反省をいたしますと、攻撃をかけるわけにいかない。したがって、日本は安全だ、かように私は考えております。皆さんのように、まず日本が爆撃された、攻撃を受けた、そのときにアメリカが立ってくれるかという、こういうような考え方は私はしないのであります。
  166. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、絶対戦争がないという考え、しかし、この間のここの質問でも、CBRというような訓練をやっておいでになる。万々が一にもあったら困る、あり得るという前提なればこそ、CBR、特にRについての訓練をやっておいでになると思うのです。その万々が一、万々万が一でもいい、そういう可能性というものがあり得るということが前提とならなければそんな訓練の必要はないと思うんです。その点どうなんですか。
  167. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、ただいま申し上げますように、こういう国を攻撃し得る、そういう力はないと確信をしております。それにいたしましても、日本がこういう問題について科学的な知識を持つこと、これは当然のことで、私は、それが攻撃を予想して自衛隊が訓練しておる、こういう結論を出されるのはいかがかと思います。私は、もっと現代兵器について理解を持たなければだめだ、かように思います。
  168. 春日正一

    ○春日正一君 その点では、やはりここでも一億に対して責任を持たなきゃならぬと、だからCBRの訓練をやっておるということは言われたと思います。そうすると、結局まあ絶対攻めてこない、絶対安全だという前提に立っている。しかし、今度のドル危機だの、ベトナムでの敗戦という事態を見れば、必ずしもアメリカが言ってきたとおりにはなっていない。これは事実だと思うのですよ。そうすると、結局そういう万々一のときにはアメリカと運命をともにすると、まあこういうあきらめといいますか、観念といいますか、そういうものが根底になければ、この考え方というものはできないと思うのですけれども、そこをひとつ。
  169. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、この国の安全を保障するというか、その責任を負わされている総理であります。総理に考えられるいま唯一の手段は、アメリカの核抑止力にたよると、こういうことでございます。私はいま、さらにどうも春日君に私自身が反問するわけにいかないのですけれども、ただいま私はこの方法以外にないように思っております。しかし、共産党のほうでまだもっといい考え方がある、こうしろとおっしゃれば、ひとつ聞かしていただきたいと思います。
  170. 春日正一

    ○春日正一君 それは、私どもはですね、この核戦争の危険に巻き込まれるということは何としても防がなきゃならぬ、そのためにあらゆる努力をしなきゃならぬ、まあこう思いますけれども政府もそう考えておるのじゃないかと思う。そうすると、どういう方針でいままでどういう努力をしてこられたか、このところを。
  171. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、私が何度も申し上げておるように、憲法のもとにおいて私どもが平和に徹したその国づくりをしている、これでお答えになるかと思います。
  172. 春日正一

    ○春日正一君 ちょっとおかしいですよ。総理は、どこかで、この前ですね、平和憲法というものは日本の国だけにしか通用しないのだと、よそは拘束しないのだから軍備も必要だとか、安保も必要だと言われた。そうすると、非核三原則というようなことだけ言っておっただけでですよ、それで核戦争の危険はなくなるものか、おかしいと思うのですが、そこが。
  173. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私どもが平和に徹すると、そうすると、必ず相手の国に対していわゆる紛争を起こしましても、これがいわゆる武力によって外交問題を解決しない、そういう態度でございますから、こちらから戦争をしかけるということは絶対にないと、これが私がいま平和に徹した日本の国、そういう国づくり、そのもとにおいては戦争をしかけることはないだろうと、こちら側からの危険はないと、そこにもってきて今度は、日本の国を攻めてくる、そういうことは考えられるかというと、いまのアメリカの核の抑止力がある、したがって、日本を攻めてくるところもない、そこで私は戦争のない平和な日本ができると、かように考えております。
  174. 春日正一

    ○春日正一君 まあそれは総理一つの願望だと思うのですけれども、それは現実的でないということですよ。やはりそういう核戦力があり、国際的にいろいろな対立というものが深まっていけば起こり得る危険がある。どうしても防ぐようにしなきゃならぬ。そこで私どもは、核戦争の危険をなくすために、さしあたってやはり核兵器の使用を禁止する、これが一番大事なことだ、そういう立場から私ども社会党公明党と一緒に、いわゆる非核決議案というものを国会に出したわけですけれども、これに対して総理は賛成しない。その理由として、安保条約の内容を制限する、あるいは将来政府と国民を縛ることになる、こういう答弁をされておると思うのですけれども、これは一体どういう意味ですか、説明願いたい。
  175. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この国会で決議をなさる、そういう問題を私自身が反対していると、こう言われますが、これはまあ党としていろいろ折衝している問題なのであります。したがって、いろいろ私の考えもございますけれども、わが党はたいへん民主的な党でございますから、党議が民主的に決定されると、かように思いまして、いわゆる衆議院の予算委員会におきましても、そういう決議が国会でなされれば、もちろん私はそれを尊重します、かように実は申してきておるのであります。したがって、私は、ただいま決議のお話が出れば、これは衆参両院それぞれの機関におきましてその問題と取り組んでおられる、かように思いますので、私の意見はあまり述べないほうがいいんじゃないだろうか、かように思います。
  176. 春日正一

    ○春日正一君 そうでなくて安保条約の内容を制限するということを、松本善明議員に答えておいでになる。社会党の山本書記長の質問に対しては、将来政府と国民を縛ることになるという答弁をしておいでになる。だから、これはどういうことなのか。将来持ち込む余地を残そうとしているのじゃないかという疑いさえ出るから、お聞きしているのですが。
  177. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、佐藤内閣としてとり得る政策これはもうはっきりしている。したがって、この佐藤内閣でやること、これはただいま言われますように、いわゆる非核三原則、これは堅持してまいります。けれども、私、ただいま申しますように、国民を未来永劫にこういうことで縛るということはいかがかと思う。これは確かに言えることじゃないか。科学技術の進歩はすばらしいもので、これからはかり知ることのできない発展を遂げるように思います。一体核というものが、そういうことになると、どういうような考え方を皆さん持たれるか、やっぱり一国の最高権威である国会としては、そういう意味の慎重さも要るじゃないだろうかと思います。したがいまして、各国におきましても、まだ決議を国会でしたことはございません。おそらくそういう点も心配したんじゃないかと思います。核兵器を憎んでいることは、日本の国も他の国も同じような状態だと思います。しかし、これが最高権威である国会において決議されない、そこらはやっぱりもう一度考えてみる必要があるのじゃないか、かように私は思っております。私がはっきり言えることは、これはいつまで続くか知りませんけれども佐藤内閣においてはこの政策を堅持する、これははっきり申し上げます。したがって、国民を核について非常に縛る、あるいは誤解を受けるような問題はもっと慎重にされたらどうか、こういうことを私は考えます。しかし、いずれにいたしましても、国会で扱われる決議でございますから、それは国会におきましても、こういう問題を慎重に扱われる、かように思っておりますので、私の意見はあまり申し上げるのはどうか、かように思っております。
  178. 春日正一

    ○春日正一君 私は、総理意見質問しているわけです。そこで、立ち入ってお聞きしますが、そうすると、総理の縛ることは好ましくないという考えは、将来日本への核持ち込みの自由が縛られるというような意味が入っているんですか。
  179. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうもたいへんな問題でございますが、私ひとつ、私の危険な、心配の点をひとつ申し上げます。それは、ただいまの核エネルギーということ、平和利用、これはどんどん進めていかなければならぬ問題だと思います。日本にある原子力基本法におきましても、平和利用は何ら拘束をしておらない。しかし、その平和利用と軍事利用との間に画然と一つの線が引けるかどうか、各種実験をこれからやっていくという場合に、はたしてそれが引けるかどうか、いまの状態においては、どうも引けないというのが、現状においてはさような状況であります。しかし、これから後科学技術が非常な進歩をすれば、必ず一線は引けるだろうと私は思います。そういう際になって核エネルギーの使い方もまた変わってくるのじゃないだろうか、かように思います。そういうことを一つの心配として指摘ができやしないだろうか、さように思っております。
  180. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、たとえば極東またはその周辺でアメリカが核兵器を使うのの自由が縛られる、それが安保の内容を拘束するというような意味にとっていいですか。
  181. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この点は、事前協議で、はっきり日本に持ち込む、日本が持つ、こういう事柄については、事前協議の対象になる。製造の問題は自主的にきめることですから、自主的にやらないと言ったら、問題ない。そこで、事前協議の場合に、日本考え方を無視してアメリカが強行することはない、こういう覚え書きの交換ができておりますから、したがって、日本の国内についてそういう心配は全然要らない、かように思います。だから日本が持つとか持ち込むとか、こういうようなことは、佐藤内閣のもとにおいては全然考えておりません。
  182. 春日正一

    ○春日正一君 そうじゃないんです。私が聞いておるのは、日本には持ち込まぬけれどもアメリカ日本の周辺で使うということを、いわゆる核禁決議でもされたら縛るというようなことを総理は憂慮しておられるんじゃないかという質問なんですがね。
  183. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも、その態様について私分析をしたことはございませんから答えられません。
  184. 春日正一

    ○春日正一君 はっきりしないな。  もう一つ聞きますが、そうすると、日本アメリカ核戦略体制へ参加したり協力する、これがどうも決議されるとぐあいが悪いという意味はありますか。
  185. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、もう一つ申し上げておきますが、その答えで最初の問いにも答えることができるかと思いますが、それは、日米安全保障条約そのものが防衛的なものでございます。防衛的なものというのは、日本が攻撃をされた際に対応措置をとるというものでございます。したがって、いわゆるアメリカ核戦略体制云々というような問題はないわけでございます。この点をひとつ誤解のないようにしていただきたい。日米安全保障条約日本の防衛のためにあるんだ、それより以上のものはないんだ、かように御理解をいただきたい。
  186. 春日正一

    ○春日正一君 もう一つ、くどいようですがお聞きしますが、アメリカの小型核兵器、こういうものが日本の周辺で使用されるとか、将来核兵器が小型化された場合に、日本に持ち込まれるというようなことが縛られるというようなことも考えておいでになるのかどうか。
  187. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 佐藤内閣のもとにおいては、先ほど三原則ははっきり守る、かように申しております。したがって、将来の問題は私の関与することじゃない、かように思いますから御了承いただきたい。
  188. 春日正一

    ○春日正一君 さっき総理は、核の平和利用ということを非常に大事だと言われておる。しかも、これは軍事利用と非常に入り組んだ関係にあるということを言われておったんですけれども、まさにここのところです。だから、平和利用とか宇宙衛星とかいっても、こういうもののすべてがやはりいまの状態では核戦力に転化できる、そういう関連を持っている。とすると、政府立場ですね、方針というものが、核戦争なり核兵器というものに対して、これを否定するというようなはっきりした方針が出ていないと、いわゆる平和利用すら核戦力に転化される危険があるというものが確かにつきまとう。そうした意味で私どもは核兵器を全面的に禁止する、日本側も持たぬというだけでは危険がなくならないわけだから全面的に禁止する、そのために日本政府努力すべきだ、こういうことを主張しているし、あの決議にも盛られておる。しかも、これはソ連も中国も核兵器は最初に使わないということをはっきり宣言しているんですから、アメリカが、おれのほうが最初使わないという約束さえはっきりすれば、さしあたってどちらからの攻撃の危険というものはチェックできていく。それを日本政府アメリカに対してやるべき一番適当な地位にあるんじゃないか。おやりになるかどうか、この点ですね。
  189. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私どもアメリカに対して言える場合とか、また、共産党あたりが共産主義国に対してどの程度言えるか、そういうこともあるだろうと思います。私どもも同じように、核兵器、これが世の中になくなる、これが願いであります。そこで一足飛びにはそれが実現しないから、まず最初に、核爆発というものの実験はひとつ禁止しよう、地下は別として、空中でやることはやめようじゃないか、そういうところで私どもはいち早く賛成した。ところが共産党の方は、あのときちょっと足並みが乱れた、かように思います。また、最近は、今度は核の拡散防止条約、これはただいま締結しようとしている。私どもも核兵器をなくするということは、一つの希望だ、われわれの熱願だ、そういう意味で段階的にこういうこともやったらどうか。それがいまの段階的な問題としてどうも必要やむを得ないものだと、そこでその趣旨に賛成だと、だが、まだまだいろんな問題がございますから、さらにこれ紆余曲折を経ることだと思いますが、ともかく私どもも核兵器のないような世の中、そういう方向へ一歩でも二歩でも近づけるような努力をしなければならぬ、かように実は思っております。それらの点におきましては、ただいま言われるようなことと私どもが、別な方向ではございませんが、ただ一足飛びに理想はなかなか実現しません。そこらに皆さん方と私どもの相違があるんじゃないか、私どもは一歩でも二歩でもそちらの方向へ近づこう、こういう努力をすべきだ、かように思っております。
  190. 春日正一

    ○春日正一君 部分核停のことを言いましたけれども、今日ではあれが核兵器の改善、そういうものをチェックするものでないということはもう明らかになったわけです。だれも部分核停をあまり言わなくなっている。特に核拡散防止条約にしても、これが核兵器の使用あるいは他国への持ち込み、こういうものを何ら禁止するものじゃない。そういう意味で言えば、この条約ができることによって部分核停の地下実験と同じように、核兵器の持ち込みが国際的、条約的に合法化される、そういうものだから、私たちは何の効力もないということで反対しておる。だから、核兵器の使用禁止の問題と、この拡散防止とか部分核停という問題とは質的に違うと思うのですよ。だから、どうしても使用禁止協定をやる必要がある。ところが政府は、核拡散おやりになりたいならそれもやりなさい、しかし使用禁止のワクもかけなさいと言っても、それに賛成しない。そして、去年の国連のあれでは禁止促進決議案に棄権させるというような態度変更をなさっている。これでは総理がいままでるる説明してこられたことを、政府一つの行動でもってうそだということにしてしまうんじゃないですか。
  191. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 使用禁止の方向で話ができればこれはたいへんけっこうです。まあいままで一つの足がかり、手がかりとでも申しますか、それはいずれの国も先に、進んで核兵器は使用しない、ことに民主主義の国は、はっきりこの核兵器を使用するのが最初ではない、最初に使用するというようなことはしない、これもはっきり言って、また、それが信頼できるような状況でございます。ところが、いまも春日君の言われるように、中共も同じことを言っている、ソ連が言ったかどうか、ソ連も同じことを言っておれば、ただいまのような使用をしないという申し合わせができないわけでもないだろう。使用もしないもので、やっぱりそういう兵器を持っている、そういうことはナンセンスになる、そういうところからさらに論理は進んでいくのじゃないか、かように私は思いますので、その一つの核兵器のなくなる、それを理想の形と考えるものにとりましては、一つの手がかりはあると、かように私は思います。
  192. 春日正一

    ○春日正一君 いま総理、いずれの国もと言われましたけれども、私寡聞にしてアメリカ政府が先には使わないと声明したことは知らないのですけれども、いつおやりになったのですか。
  193. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはマクナマラがはっきりそういうことを証言しております。
  194. 春日正一

    ○春日正一君 いつですか。
  195. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) しばしばそういうことを言っているそうです。はっきりしている。これはもうそういう意味で私はたいへん一つの手がかりがあるように思う。だけれども、いま核拡散防止協定すら、まだ核を持っている国全部がこれに参加するとなかなか言わないのが現状でございます。これはしかし、イデオロギーだけの問題でもなさそうだし、フランスもとにかくそれに参加するとまで、はっきり言わない、そういうことも私考えますが、イデオロギー的に批判するだけではございません。とにかく持っている国はただいま五カ国ですから、そういう意味ならこの点はわりにはっきり話がつきいい、つき得るんじゃないか、かように私は思います。しかし、どうもいままで国力をあげて開発している核兵器、それが簡単に使用しないと約束されるかどうか、たいへん私は疑問に思いますけれども各国がそういう方向で行くなら、これなら願ってもないけっこうなことだと、かように思います。
  196. 春日正一

    ○春日正一君 そうしたら、とにかく日本として、持たない国の日本として、禁止協定を結ぶべきだということをはっきり態度として表明して、そのために何年かかるか知らぬけれども、全力をあげて努力をしていくということが、やはり政府としての義務じゃないかと思うのですけれども、そこまでいくと総理はぼやかしてしまうけれども、そこのところはどうですか。
  197. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 国連の決議に対してはですね、日本ばかりでなしに、非常に棄権した国がほかにもあるわけなんですね。その上から言ったら、核兵器をみなつくることは自由だ、使っちゃいけぬということは不徹底じゃないか、そこまでいくならば、やっぱり核軍縮というものも伴って、やはりつくることも、製造に対してもできるだけそれを減らしていくということでなければ、みなつくることに対しては何ら規制しないで、使うことだけのことを規制することは不徹底ではないかという意味の理由を付して棄権をしたのであって、本質的にそういう条約に反対という立場ではないのであります。不徹底だから、もっと徹底したものならば賛成しようというのが立場でございます。
  198. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) さっきのマクナマラの証言でございますが、これは最近のものとしては、一九六一年一月二十六日、上院軍事委員会の歳出権限委員会国防省小委員会、その席における証言、それではっきり「わが国の長年にわたる政策によれば、アメリカによる先制攻撃は否定されている。」、これははっきりさように申しております。
  199. 春日正一

    ○春日正一君 それならば、なおさらそういう努力が実る可能性があるのだから、私どもは製造、使用、実験の禁止ということを目標にしておるのですけれども、それがすぐできないいまでも、さしあたって使わぬという約束だけは取りつけておく必要があるだろうということで決議の中にはそうなっておる。だからその点は、総理のいまのお答えから言っても、それを受け入れられないというものじゃない。だからそこはそういう態度をはっきり表明してほしいと思うのです。  次にいきますが、戦術核兵器が非常に発達してきて、朝鮮その他にはこれが持ち込まれている。で、もし将来朝鮮その他で戦術核兵器が使われるというような事態になれば、そういうものが一つの発火点になってさらに大きなものが使われるような危険も出てくる、だから当然これは反対すべきだと思うけれども政府日本の周辺でそういうものが使われるという場合、これに反対して阻止するという態度をとられますか。
  200. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの前提になることは、私ども全然知らないのでありますけれども、ただいまのような危険はないように思います。
  201. 春日正一

    ○春日正一君 知らないと言うけれども、たとえばプエブロのときに、米軍の責任ある司令官の言として、もし三十八度線を越えて攻撃してくるならば、韓国駐留米軍の戦術核兵器を使用するよう勧告するというようなことが言われておるし、あすこにたくさんの戦術核兵器が持ち込まれておるということは、私国会図書館で調べてきたらちゃんと持ち込まれておる。だからそのように言う。だからそういうことけっこうですと言うか、やめてくれと言うか、これは国民の重大関心事だと思う。
  202. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは当然にやめてくれと言うべきで、核兵器を使ってけっこうですという者は世界じゅうにいない。核兵器は使ってはいけない。
  203. 春日正一

    ○春日正一君 もう一つアメリカの核のかさにたよるということになると、まあ核兵器そのものは持ち込ませない、つくらず、使わずということになるけれども、この核のかさの柄になる部分ですね、つまり核戦略の支援体制といいますか、たとえばロランCとか、あるいは依佐美の送信所だとか原子力潜水艦の寄港だとか、エンタープライズの寄港だとか、こういうものはやはり許さざるを得ないし、現に柄が日本にあるんですね。そうしたらこれはもう一番先攻撃されますよ。そういう危険なものは断わり得ないということになるんじゃないですか。
  204. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 核のかさとか柄とかいうものは、私はどうもそういう表現はどうかと思うんです。しかし、柄が日本にあるというが、どうも柄があるとは思えませんけれども、しかしとにかくポラリス潜水艦のようなものは寄港を認めない、こういうわけですから、柄といっても何が柄になるでしょう。要するに核の持ち込みは認めない、また日本はみずから核兵器の開発はやらない、ポラリス潜水艦のようなものでも寄港を認めない、こういうんですから、柄というものは日本にないんです。やはり全体としてこれは日本ばかりではなしに、私はかさというのは適当でないと思うのは、これはNATOにしてもやはりアメリカの核抑止力というものはNATO条約の中心になっておるのに、かさといったら、こう日本アメリカだけが、二人が入っているような感じを受けてよくない。世界全体が、自由世界といってもいいかもしれませんが、欧州においても世界全体がアメリカの核抑止力というものは安全保障の上において役割りを果たしておる、日本アメリカだけが相合いがさに入っておるのではない。だから私はかさということは適当でない、そういう表現は適当でないと考えておるものでございます。
  205. 春日正一

    ○春日正一君 ないといってもロランCというものは沖繩が返ってくれば日本に全部あるわけですよ、硫黄島とか十勝太とか。これは原潜の目だということはしろうとでもわかっておる。これがなくなれば原潜はえらい支障を受ける、これはしろうとでもわかっておる。たとえば依佐美の超長波の送信所というようなもの、これもそのために使われるということは、その筋の人なら知っていることです。そういうものを置かざるを得ない、断わり得ない、核のかさにたよるなら。そこに新しい危険がつくり出されるだろう、このことを私は言っているわけです。  次に入りますが、事前協議の問題ですが、事前協議の対象になるものを言っていただきたい。
  206. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 一つアメリカ軍の重大な配置の変更、装備の変更あるいは直接作戦命令に、直接戦闘行為日本の基地を使う、こういう三つの場合が事前協議の対象になるのでございます。
  207. 春日正一

    ○春日正一君 配置の重要な変更ということはどういう内容のものですか。
  208. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはしばしば申し上げておりますように、地上兵力一個師団、海軍一機動部隊、陸空軍一個師団、これ以上の配置の移動ということが事前協議の対象になる、それはその部隊が日本に移動するという場合でございます。
  209. 春日正一

    ○春日正一君 装備の重要な変更というとどういうことになりますか。
  210. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは全部申し上げておいたほうがいいと思いますが、装備は核兵器、それから基地を使う直接作戦行動というのは、日本の基地で命令を受けて、そうして行動を起こす、そういうことに日本の基地を使う、この場合が事前協議の対象になるということでございます。
  211. 春日正一

    ○春日正一君 いままでの本院の質問あるいは衆議院の質問でも、この事前協議の発動の条件というものをずっと明らかにされていっているところをみると、いま言ったような非常に大きな部隊の移動でなければ対象にならない、あるいは臨時の寄港、通過というようなものは対象にならぬとか、あるいはもう反覆寄港も対象にならぬ、あるいは無害航行なら対象にならぬとかというような形でみんなはずされておる。だから一つお聞きしますが、原子力潜水艦の基地の役割り、そういうものはどういうものですか。
  212. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 原子力潜水艦あるいは商船にしても、これは推進力が原子力というんですから、日本でも原子力商船はつくろうということでありますから、いまの時代には、軍艦にしてもあるいは商船にしても、そう特別のものであるというふうには考えられません。ただそれが海水とかいろいろな汚染というような点では、これは普通の船と違って注意をしなければならぬわけでありますが、それ以外には、特に原子力時代においては変わった船舶でいるとは考えておりません。
  213. 春日正一

    ○春日正一君 私の聞きたいのは、原潜というのは御承知のように推進力が原子力だから、長期にわたってもぐっておれる。だから二月でも三月でももぐっておって、それでたまさか港に来て、休養と補給をやって出て行って、また二、三カ月もぐって任務につくということになれば、横須賀や佐世保に反覆寄港するということは、事実上基地を提供したと同じ意味を持つようになるんじゃないかということですわ。
  214. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それはしかしある一つの単位を持たないと、やはり反覆寄港しても事前協議の対象にはならぬということでございます。
  215. 春日正一

    ○春日正一君 だから重要なものがはずされておるということを言っているんですわ。出港後の出撃も、これも対象外だというような形。それで、核装備可能な航空機や艦船でも、装備してなければ対象外だと、実際に確かめるすべもない。そういうものを対象外だというような形ではずしてしまうし、特にこの間衆議院で問題になった松前・バーンズ協定ですか、あれによると、緊急の場合には米側の一方的な処置で命令できるというようなことになると、事前協議の対象になるのは実際上ほとんどなくなってしまう。ぎりぎり結着のところ何と何が残るか、これを聞きたい。
  216. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ぎりぎり結着も、やはり最初申し上げたように三つであります。核は持ち込んではいけません、核兵器、これははっきりしておる。それから戦闘作戦行動に日本の基地を使う、このときは日本事前協議を受けなければいけない。それからいま言った単位の部隊が日本に配置されるというような場合が、ぎりぎりと申しますか、事前協議の対象になるわけでございます。
  217. 春日正一

    ○春日正一君 結局、だから戦争するにはたいして差しつかえないということだと思います。で、たとえばフルブライトが、安保の批准国会でこの問題について、その協議に際しては何ら重要な困難はないと信ずる、なぜなら日本と米国は共通の関心と共通の目的を持っているからである。こういう結論で、日本極東で起こった紛争に巻き込まれないということは考えられないと、また、極東以外で侵略行為が起こったときも駐留米軍は日本と協議した後に使用されることになるが、その協議に際して何ら重要な困難はないと信ずる、なぜなら日本と米国は共通の利害に結ばれておるということを言っているんです。だからそれがそのとおり、だんだん突き詰めていくと、なっているんじゃないかというふうに思いますけれども、その点どうですか。
  218. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 事前協議の場合でも何ら混乱はないというのはフルブライト氏の解釈であって、われわれは厳重に、日本日本立場から同意できるかできないかというのは事前協議でやる。これはあまり困難はないというのはフルブライト氏自身意見日本政府が拘束を受ける性質のものではありません。
  219. 春日正一

    ○春日正一君 こういう事前協議の内容ですね、いまずっとお聞きしたような、これはいつだれが、どうして取りきめになったんですか。
  220. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは安保条約の改定——新安保条約の場合にもう全会議を通じて、そして事前協議というものが話をされ、また岸・ハーター交換公文、これによってでもこれが明らかに、またその一単位という、いまの私の言った単位というものは、文書はありません。これは前新安保条約交渉のときの両国一つの紳士……ゼントルマン・アグリーメントというのですか、そういうことで了解した点でございまして、これを文書には作成はしておりません。
  221. 春日正一

    ○春日正一君 口約束ということですけれども、しかし当然記録はあるでしょう、覚書みたいなものは、メモみたいなものですね。
  222. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いや、これはもうそのときの全般を通じて新安保の場合は、事前協議というのが改正の重要な点でしたですから、全交渉を通じて話をされたわけで、これがどういう形で記録が残っておりますか、しかし、これは日米両国とも了解をしているので、いまさらいろいろ記録を出してこなくても、これはいつも問題になって、日米両国ともこの紳士条約は、その後日米両国とも了解している点であることは明らかでございます。
  223. 春日正一

    ○春日正一君 記録があるかないかと言って聞いているのです、だからあるならあると言っていただけば。
  224. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは記録は、いま言ったような覚書のような形にしてございませんから、記録は私はないと思います。
  225. 春日正一

    ○春日正一君 これほど大事な、一番問題になったという大事なものの、しかも中身ですね、国会でこれほど論議になるうるさい問題を、記録なしにして両方の話し合いということで、当事者がかわってしまったとか記憶が狂ったということになれば、これは実際上たいへんなことになる。ゼントルマン・アグリーメントと言ったって、双方にメモぐらいとって覚えておいて、三木大臣がかわって、増田外務大臣になっても、それが引き継がれていくということになってなけれりゃならぬ道理ですよ、そんな無責任な話はないと思いますがどうですか。
  226. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはもう国会においても一番やっぱり論議になっておりますから、このことはもう引き継ぎを必要とする事項ではなくなっています。これはもうたいへんにやっぱり事前協議の条項は、毎国会において論議せざることなし。速記録を調べればおそらく何十回となくこういう見解を述べておるのでしょうから、だれが外務大臣になろうが、この日米の了解を変えることはできません。その点は御安心になってくださってけっこうと思います。
  227. 春日正一

    ○春日正一君 毎国会論議になるということは、非常にあいまいなところがあるからですね。これはどうだ、これはどうだといって問題になるので、むしろ論議になること自体、そういうあいまいなものを含んでおる、そこに国民は不安に思っているわけですね。だから、当然政府として事前協議の実際の中身はこういうものだ、これは除外される、こういう場合には適用されるというようなものがあるはずだし、なければこれほど複雑なものを両方の頭の中だけに置いておいて、だんだん人がかわっていくというような状態で維持できるわけじゃないんですから、これは当然あるべきものだ。なければこれは政府の大きな責任だと思いますよ。だから、それをやはり国民がこれほど、そのたびに聞くほどあいまいなものだから、はっきり、こうこう、こうだというものを整理して、文書にして国民にわかるように出してほしいと思う。その点どうですか。
  228. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはもう、しばしばこの問題については論議をされて、出ておりますが、さらに事前協議というものに対して、こういうものだという不徹底な面があれば、国民に対して周知徹底する労をいとうものではございません。
  229. 春日正一

    ○春日正一君 それを出してくれるんですか、ちょっと聞いてくださいよ、委員長ちょっと聞いてくださいよ、労をいとうものじゃないと言うけれども
  230. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 速記録にも、これ私が言っておることがそのままこれ記録ですが、何か文書にする必要、春日さん、実際ありましょうか。
  231. 春日正一

    ○春日正一君 速記録をずっと整理して、私も整理してみたけど相当ありますよ、いろいろ問題が。だから整理してでもいい、とにかく、こういう場合は適用されないんだ、こういう場合は対象にならないんだ、ここだけ残るんだということを、国民にだれでもわかるようにしてもらえれば安心できるから、不安がなくなる。
  232. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはそうすると、いろいろな場合を整理して一つ事前協議条項を整理しておくようにということは承知いたしました。しかし委員会にこれを出すという、これはもしできれば議員の各位にお配りしたほうがいいのかもしれませんし、この委員会に出すというわけにはいきませんが、整理はいたします。
  233. 春日正一

    ○春日正一君 整理して出してほしいですね。  そこでもう一つ事前協議を受けた場合の承認するかしないかという基準ですね、政府の。どこに置いているか。
  234. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 常に政府が同意するかしないかというときは、日本の国益、この見地に立って日本がノーかイエスかを言うのです。いろいろなケースが違いますからね。ここでいろいろな場合を想定しては言えませんが、そのときにおける日本の国益擁護の立場に立って、政府は同意をしたりあるいは拒否をしたりいたすわけでございます。
  235. 春日正一

    ○春日正一君 結局時の政府の政治判断できまるということになれば、政府アメリカの核抑止力あるいは軍事力に国の運命を大きくゆだねておるという状態のもとでは、核兵器の持ち込みあるいは日本からの戦闘作戦行動が必要なんだ、ということが要請されてくれば、論理的に言えば断わり得ないということになるんじゃないですか。
  236. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ、政府のいろいろな責任があるけれども、一番大きな政府の責任は、核戦争を防止すること、日本を戦争に巻き込まさない、これはもうこれ以上の国民に対しての政府の義務はないわけです。だから、それはいろいろ御心配くださらなくても、当然に政府日本の平和を守るということに対して、すべてのこれはもう基本になりますから、戦争に巻き込まれるということになれば、これはもう国民生活に根本からやっぱり、今日のような、しかも核戦争へいったらもうこれは、とにかく日本ばかりの運命でもございませんが、これはたいへんなことになる。したがって、政府は、第一義的な国民に対する責任は、日本を戦争に巻き込まさない、平和を維持することでございますから、そんなに事前協議というものをアメリカから言われたからといって、日本の国益に反するような事前協議日本政府が同意を与えることは絶対にありません、御心配のような。
  237. 春日正一

    ○春日正一君 重ねて言いますが、私は核戦争だけ言っているわけではない、事前協議を。局地戦争の場合、朝鮮に戦争が起こったというような場合、やはり日本政府アメリカの軍事力に安全をゆだねておる、たよっておるということになれば、朝鮮での戦争、これが日本の安全を守るために必要なんだから出撃する必要があると言われてくれば、断わり得ないという論理になるんじゃないかと、そこをお聞きしているんですよ。核戦争だけの問題言っているのではない。
  238. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは日本の安全という角度から見るわけですから、日本の安全から考えてきて、日本の安全というものに対してそれが利益にならないということならば、幾ら日ごろ友好関係であっても、事前協議の場合に、その申し出は拒否することは当然であります。それだけの責任を国民に負わなければ、今日国民に対する責任を政府は果たしておるとは言えない。どんなにアメリカと仲いいからといって、言われたことを何でもそのまま受け取る、そんな政府の存在は許されない、今日。だから、そういう点は、厳重に事前協議というものを、われわれは履行したい考えでございます。
  239. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、いまよく言われていますけれども、たとえば核兵器の持ち込みその他事前協議の対象になるものを包括的な承認をするというようなことは、絶対やらぬというふうに言われますか。
  240. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 包括的といいますか、何でもやってよろしいというようなことでの事前協議はいたしません。
  241. 春日正一

    ○春日正一君 沖繩の問題ですけれども沖繩の核装備、これはどうなっていますか。防衛庁長官のほうがいいかな。全部言ってください。戦術核兵器、使用し得るもの。
  242. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) お答え申し上げます。  メースBがランチャーにいたしまして三十六機ございます。その弾頭数はよくわかっておりません。これが核兵器であるというふうに想像いたしております。それからナイキハーキュリーズが六機ございまして、ナイキハーキュリーズは二個大隊か三個大隊と思っておりますが、これは核、非核両用でございます。核ハーキュリーズに対する核弾頭があるかないかはわかりませんが、日本でこれから備えんとするものと違いまして、核弾頭あるいは非核弾頭両方を使用し得る地対空のミサイルでございます。
  243. 春日正一

    ○春日正一君 それだけではなくて、たとえばF105Dサンダーチーフ、これは水爆積載可能三個中隊、第七艦隊所属の攻撃型原子力潜水艦の寄港地になっている。ポラリス潜水艦もこの寄港しているという、これはわからぬけれども、言われておるというような形で、航空機その他においても核装備の可能なものが置いてあるのじゃないですか。
  244. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) お答えいたします。  F105は核弾頭を運搬し得ますけれども沖繩にあるF105は核弾頭を備えていないというふうにわれわれは考えております。  それからポラリスは寄港し得る状態ではございますが、いままでわれわれの得た知識では、ポラリスは寄港いたしておりません。
  245. 春日正一

    ○春日正一君 朝鮮でプエブロのときになぜ救援に行かなかったのだというアメリカでの記者会見での質問で、アメリカ側の担当官はF105Dは水爆を積んでおった、だから行けなんだということを言っているのですね。そうすると沖繩のやつが積んでないとは言い切れない。こういうものを全部をもし非核三原則を適用するなら、撤去させるということになりますか。その点総理ひとつお答え願います。
  246. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 非核三原則というのは、結局、核弾頭の持ち込みを認めない。それからミサイル、それから核兵器の基地を認めない、この原則でありますから、したがって、核兵器を搭載して核弾頭を搭載しておるような航空機も、その中に入ることは当然でございます。
  247. 春日正一

    ○春日正一君 新聞報道によると、非核三原則の特例として、ポラリス潜水艦の沖繩寄港を許すというようなことを、首相側近で検討しているというようなことが伝えられているのですけれども、そういうことは考えられていますか。
  248. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 沖繩は御承知のように、アメリカの施政権下にあります。まだそんなことを私の側近が考えることはございません。
  249. 春日正一

    ○春日正一君 これは返還の問題と関連してですからね、いまから考えていないというのも妙な話だと思います。しかしまあ、総理は核基地をどうするか、沖繩の基地の自由使用をどうするかということについては、白紙だと言っておられるので、私は別な角度からお聞きしますけれども沖繩の基地が自由使用ということになれば、この安保五条が適用されて、そこから飛び出していくことによって、これが一つの戦場、いわゆる対象になってくるということになれば、日本はいきなり戦争に引き込まれるということになるのじゃないですか。そしてもし沖繩がそれで攻撃されれば、自衛隊が参加していくのだから、そうなると、本土での事前協議というものも、実際はそこで穴があけられてしまう、ということになるのじゃないですか。
  250. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 沖繩の基地、どういうふうにするかということは、まだきめておりません。
  251. 春日正一

    ○春日正一君 私の聞いているのは、こういう場合には、こう道理としてなるのじゃないかということを聞いているのです。
  252. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私が申し上げますように、沖繩の基地については、白紙でございます。したがって、ただいまのようないろいろなことを想定して、そうしてその結論を論理的にどうなるのだ、こういうようなことにはお答えいたさない、かようなことでございます。
  253. 春日正一

    ○春日正一君 非常におかしいと思うのですよ。沖繩を返す、白紙だと言うけれども、それにはいろいろ考えているのだということだと思うのですけれどもね。そのためには、いろいろな場合を想定して、認めたらどうなる、認めなかったらどうなるということは、当然総理は考えていなければならぬと思う。それをいま言ったような答弁じゃどうもおかしな話ですよ。
  254. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうもおかしいと言われましても、それはどうもしかたございません。それはなるほどおかしいかもしれませんが、まだ私は白紙でございますので、そういう点はいまお答えいたしません。
  255. 春日正一

    ○春日正一君 それではもう一つANZUS、米比条約には、太平洋にある両国の管轄下にある諸島または太平洋における両国の軍隊、公船もしくは航空機に対する武力攻撃に対して締約国が共同して行動するということになっておりますけれども沖繩返還された暁にも、沖繩の米軍基地に対する攻撃にはこの条項が生きるんじゃないかという質問に対して、条約局長は、はっきりそうなりますと、こう言っているんですね。こういうことになれば結局復帰して安保条約が適用される、そして米比、ANZUSがあって、これも生きているということになれば、いやおうなしにANZUS、米比、日米安保の実質上の軍事同盟というものが、そこにできてしまうんじゃないか、この点どうですか。
  256. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 私からお答えしましたかどうか、よく覚えておりませんが、沖繩が返りましたときに、日本の安保条約がここに適用されたと、そういう状態を考えまして、そこにある米軍に対する攻撃に対しては安保条約は適用される、そういうふうにお答えしたように私考えております。これはANZUSそれから米比の場合は、西太平洋ないしは極東における米軍に対しての攻撃についての共同防衛と申しますか、集団的防衛、そういうふうな形になっておりますから、現在もちろん沖繩におります米軍に対する攻撃というものも、当然その集団的防衛の対象になると思います。ただそれが何と申しますか、一種の同盟と申しますか、共同防衛の同盟と、そこまでお話になりますと、それは米比なりANZUSなりの条約の義務として、ANZUSの締約国がそれに対して共同防衛する、共同防衛と申しますか、集団的防衛の義務を負うということで、こちらはこちらで安保条約として防衛の義務を負うということで、個別の義務の問題でございまして、それは一種の同盟関係で、一緒に共同して、共同防衛の形で動いていくということにはならないと思います。
  257. 春日正一

    ○春日正一君 その説明ですね、安保条約とANZUS、米比条約沖繩という軸をあれして、二つのベルトがかかって、沖繩が回れば同時に動くという関係ですね。だから私は事実上の、とこう言った。  それからもう一つ、ついでにお聞きしますが、沖繩の米軍基地に対する攻撃に米比、ANZUSが生きるとすれば、日本本土の米軍基地に対する攻撃も、太平洋地域の米国軍隊として生きてくるのじゃないか。
  258. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 米比、ANZUSに関しての条約文から見ますれば、現在の日本におります米軍に対しても、条約上は義務があるということになると思います。ただ、これは米軍がこちらにおりますのですから、おそらくフィリピンの軍隊がこちらに来て守るという形にならないと思いますが、事実問題として、条約の義務から言えばそうなると思います。
  259. 春日正一

    ○春日正一君 これは問題だと思いますよ。日本のとにかく領土にある米軍基地、事前協議というようなもので制約されておる。そういうものに対して、日本の領土におる米軍にまで対して、アメリカとANZUSやフィリピンがかってに条約を結んで、ここがやられたらおれのほうが出ていくなんという条約を結ぶというのは、けしからぬと思いますよ。こういうものを政府がやはり、沖繩が返った場合、この二つの条約のこの条項は、はっきり沖繩からはずしてくれということを要求すべきだと思いますが、どうですか、その点は。
  260. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま申しておるのは、これはそういう多角的な同盟条約にならぬということは春日さんもお認めになっておる。個別。しかし、日本が攻撃を受けるわけですからね、米軍の基地として。こういう場合というものは、普通の場合にこれは日本も攻撃を受けると同じことですからね。日本が与えてある基地、これが攻撃を受けるんですから、日本に対する攻撃である。こういう場合において、やはり事態としてはきわめて非常な事態であって、このANZUSあるいは米比条約というもので、そういう場合に、実際問題として、日本へそういう国々の兵隊が来るとは思いませんけれども条約上のたてまえとしては、やはりアメリカに対して、アメリカの基地防衛の責任を負うというたてまえは、研究しておりますけれども、これはやはり否定することは適当ではないかと、私も条約局長のように考えております。
  261. 春日正一

    ○春日正一君 実際の経過とか、そういうことになれば、私も、いきなりフィリピンから日本へ兵隊が来るというふうには考えていないけれども、少なくとも国際条約で人の国のことまでかってにきめてしまうというような状態というのは好ましいことじゃないだろう、だから、それはなくする必要がある、このことをお聞きしているわけです。  それからその次、安保条約の問題ですけれども総理が、共同声明で、日本の安全と極東の平和及び安全の確保のために日米安保条約を堅持することが両国の基本政策であるということを明らかにした、そして、日本がその国力に応じて積極的に貢献する用意がある、こういう約束をしておいでになったのですけれども、この意味、内容を、もう少し詳しく説明してほしいのです。政治的な意味ですね、こういう約束がいまさらされた。
  262. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、ここに書いてあるとおり、両国の基本政策を再確認したと、かように理解しております。
  263. 春日正一

    ○春日正一君 ことさらに今度の声明で、日本の安全と極東の安全ということを結びつけて、しかも基本政策であることを明らかにしたということ。ことさらに明らかにされなくたって、こんなの、安保条約の本文の中に入っておるはずですからね。なぜそうされたのか。意味があるはずです。
  264. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この基本政策をはっきりさして、その次にやっぱり、「政治的安定と経済的発展にもよるものであることを認めた。」——これは、次を読まないと、基本政策の中身ははっきりしないと思います。「平和と安全の維持が、単に軍事的要因のみならず、政治的安定と経済的発展にもよるものであることを認めた。総理大臣は、日本がその能力に応じてアジアの平和と安定のため、積極的に貢献する用意があると述べた。大統領は、このような日本努力はきわめて貴重な貢献をなすであろうと述べた。」、この辺が問題だろうと思います。
  265. 春日正一

    ○春日正一君 それを読んで、結局、極東の平和と安全のためにアメリカ日本が共同して当たるということが言われてるんじゃないかと思うんですけれども、その点どうですか。
  266. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、日本の東南アジア諸国に対する経済的援助、これが一貫してこれに述べられておるわけであります。日本が軍事的な働きのできないことは、これはもう相手国も百も承知している。したがって、日本が政治的安定あるいは経済的発展のために協力する、それを惜しまないということは、はっきり申し上げたのでございます。
  267. 春日正一

    ○春日正一君 三木外務大臣は、去年の九月ですか、アメリカへ行ったときに、日米両国はアジア太平洋社会の。パートナーとして運命をともにしておる、切迫したアジアの諸問題解決のためにも協力することが必要である、こう言われてるんですが、運命をともにしておるということの中身ですね。どういうふうな考えでそれを言われたのか。
  268. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) どこの演説ですか、それは。どこでやっている演説ですか。
  269. 春日正一

    ○春日正一君 これは、当時新聞に出ておった。九月の十三日か十四日のジョンソン演説の前かあとですね。資料をさがせば——この演説、やっていますよ。
  270. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) おそらく——どこの演説であったか記憶しませんが、しかし、太平洋における平和と安全というものは、これは日米共通の一つの重大な関心の的である、太平洋の平和というものが脅かされればアメリカの安全も脅かされるし、日本の安全も脅かされる。そういう意味においては日米共通の運命というものは、私はある、こう思います。その演説については記憶はありませんが、そういうふうに私は考えております。
  271. 春日正一

    ○春日正一君 そういう意味で、アジアの平和と日本の安全というのは結びついて、日米共同して努力するのだ、それが共同声明に盛られている、こう理解していいわけですね。
  272. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これが具体的にアジア開発銀行の構想だとか、あるいは農業基金の問題で、各国、米日が出し合うというような問題にまで発展しているわけでございます。
  273. 春日正一

    ○春日正一君 そこで、アジアの平和と安全ですけれどもベトナムにおけるアメリカのあの侵略戦争ですね。あれは、極東の平和と安全を守るためのものだというふうにお考えですか。
  274. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ベトナム戦争の見方はいろいろあるようですが、私ども見ているのは、アメリカがあすこにおいて南ベトナムの安定、その独立の達成、それに協力している、かように私どもは見ております。
  275. 春日正一

    ○春日正一君 アジア諸国が中国の核脅威に影響されない状況をつくることは、政治的、軍事的、経済的に、それはどういう意味を持ったものか、これをお聞きしたいんですがね。
  276. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この共同コミュニケにもありますように、とにかく、いま中共自身が核開発をしている。これに関心を寄せない者はございません。また、日本ども、これについて十分注視しているということであります。その脅威を感ずるかどうか、それは、国々によってそれぞれの考え方があると思います。また、見方がある。しかし、中共自身が核兵器を開発しているということは、これは重大な問題である。それで関心を述べるのは当然である。そういう場合に、各民族、各独立国が経済的に向上し、あるいは政治的に安定する、これが何よりも、この中共の核の脅威を感じない方法だと、かように考えておりますから、とにかく独立達成、そういう方向各国も進めていく、これに力をいたすべきだ、これが共同声明のねらいであります。
  277. 春日正一

    ○春日正一君 総理は、衆議院だったと思いますがね、この項について、軍事的に言えば、アメリカの核のかさで保護することだというようなことを言われたと思うんですけれども、その点、どうなんですか。
  278. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの御指摘でございますが、さあ、私、日本の場合でも、あまり「かさ」ということばは使わない。先ほども、かさの柄があるとかないとかいうお話ですが、この抑止力ということは私も使っております。また、他の国に対して、いわゆるアメリカ自身が軍事的な意義を持つと、こういうことは触れていないはずであります。これが、日米両国関係におきましては、軍事的な関係——東南アジア諸国に対しては、これは除外されております。そこの誤解はないように私は思っております。だから、私自身が、日本アメリカの抑止力にたよるということは別といたしまして、東南アジアの諸国がなおアメリカの抑止力にたよっていると、かようにまで私理解しておりません。また、ジョンソン大統領との間でも、そういうような話はなかった、かように考えております。
  279. 春日正一

    ○春日正一君 この問題は残しておきますわ。  それで、東南アジア援助の拡大ということが言われておるし、努力もしておるんですけれども、それは当然、いま言われたような政治的な目的と統一されたものだろうと思うんですけれども、これはどうですか。
  280. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そのとおりでございます。民族的な独立達成への協力であります。
  281. 春日正一

    ○春日正一君 そこで、政府は、安保条約によって日本の安全が守られている、守られてきたと言っておりますけれども、戦後の日本が外国からの侵略の脅威を受けたというような事実があったかどうか。
  282. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 侵略の脅威を受けたことはありません。
  283. 春日正一

    ○春日正一君 私もそう思っております。反対に、朝鮮戦争とか、ベトナム戦争とか、この間のプエブロ事件のように、日本を基地としたアメリカの戦争、あるいは日本を補給基地としているアメリカの戦争に巻き込まれやせぬかという危険に絶えずわれわれは脅かされてきておる、これは事実じゃないですか。
  284. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ、いま一番関係の深い朝鮮半島の国境には、ゲリラ部隊の侵入等、紛争があるようですけれども、しかし、戦争が起こる危険はない。ベトナムについては、これは直接日本が基地として、日本を作戦基地として使っていませんし、補給基地あるいは安保条約における条約上の義務ということで直接介入しておるわけではないのです。ベトナム問題が、またベトナム問題の本質も、春日さんとは政府の見方は違いますが、それにしても、ベトナム戦争というものによって日本が戦争に巻き込まれるという危険は、われわれは感じておりません。
  285. 春日正一

    ○春日正一君 この問題、時間がありませんから、これでおきますけれども、結局、戦後二十三年、今日までのところ、やはり安保条約によって日本の安全が守られたのじゃなくて、安保条約があり、米軍が駐留することによって、日本の国民が絶えずはらはらさせられてきたというのが事実なんじゃないですか。
  286. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは非常に基本的にも考えの違うところでございます。まあ、各国とも、みんな安全保障ということに対して無関心の国はどこもないわけであります。政治の第一義的重要問題としておるわけです。そういう意味で、日本としては、いざというときに日本を侵略する国があれば、アメリカとも戦わなければならない、こういうことがやはり大きな日本の戦争抑止力として働いておる。実際にそういう事実がありませんから、どれだけきいたかということを具体的に計算することはできないけれども、このことが、いろいろなことがあって——もう日本人というのは、あまり、日本への侵略の危機、危険というようなことをみんなが感じないで、安んじて国民がその職業にいそしめる、その根底の中には、いざというときに安保条約の保障があるということが、どれだけ国民に安心感を与えておるかということは正当な評価をされなければならない。この点は、春日さんとは根本的に意見を異にするものであります。
  287. 春日正一

    ○春日正一君 そこの議論は、私、おいておきますが、現に、ベトナム戦争が拡大するにつれて、各地でいろいろ基地周辺の被害が増大しているし、王子の野戦病院の問題、あるいは最近の電波障害防止地域の設定の問題とか、日本の国民は直接被害を受けているんですね。そうして、ベトナムから攻めてくる心配はないということはあるけれども、もし朝鮮で起こったらというようなことを一番みんなが心配している、こういうことだと思います。だから、私どもは、そういう意味では、安保条約にたよって日本の安全を守るというけれども、しかし、いま言った、そういう事実から見ても、そのことはむしろ危険の誘因になっておるし、特に最近のベトナム戦争の成り行きですね、それからドル危機の激化というような、けさ報告されたようなジョンソン演説が出るというような状態を見れば、アメリカ世界政策というものが政治的にも経済的にも破綻し始めておる。私は、これは徹底的に破綻して、もうだめだと——あれだけの国ですから、力は持っているけれども、しかし非常に矛盾が深くなって、わずかなあのベトナムでさえ後退せざるを得ないような、そういう状態になっておる。こういうアメリカの戦争政策に国の運命を託するということは、沈みかかったどろ船に国民を乗せるというようなことになるのじゃないか。私はそれを憂います。ほんとうに日本の安全と繁栄を守ろうというなら、私ども言っているように、安保条約を破棄して、そうして憲法に基づいて、独立、民主主義、平和中立の政策——総理は自主防衛というけれども、ほんとうに守るに値する日本というものを、まずつくって、その上で平和中立の政策をとっていく、これが憲法に忠実な道でもあるし、いまの世界情勢の中で日本の安全を守る最も現実な道であろうと私どもは考える。この点を特に総理に強く注意を喚起して、私の質問を終わりたいと思います。
  288. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもちまして、春日正一君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  289. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 次に、市川房枝君。
  290. 市川房枝

    ○市川房枝君 質問に入ります前に、ちょっと申し上げたいと思います。  先般の暫定予算の審議における私の質疑中に、迫水久常氏及び小林章氏について述べた内容中、事実に反する点については遺憾の意を表し、これを取り消します。  私は政治姿勢あるいは政治資金の問題等、幾つかの国内問題について、関係閣僚に質問したいと思います。  最初に総理に、議員の報酬等の値上げについて伺いたいと思いますが、今度国会議員の通信交通費も三万円上がるようですが、地方の特別職議員の報酬が軒並みに大幅に上がったようであります。物価が上がれば幾分の値上げはやむを得ないかと思いますけれども、国民の間には、きのうから定期の値段が上がりましたし、続いて酒、たばこ等等、値上げがありますときに、だいぶ不満があるようでありますが、総理はどういうふうにお考えになりますでしょうか。
  291. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国会議員の通信費が引き上がったということは私も大蔵省から聞いておりますが、地方議員の歳費が高くなったと、そういう実情を私把握しておりませんので、自治大臣からお答えをいたさせます。
  292. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) お答えいたします。  最近若干の府県で議員報酬の値上げをいたしております。内訳についてでございますか。
  293. 市川房枝

    ○市川房枝君 ええ。
  294. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 簡略に御説明ください。
  295. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 三月三十一日現在で、都道府県では三十七道府県が改定をしております。その改定率及び改定額は、平均三三%、三万七千円となっております。六大都市では四市が平均五四%、八万一千円の改定。特別区は中野区が一区でして、これが一一%、一万円の改定を行なっております。  それから市町村につきましては、現在調査中ですが、昨年末現在では百六市が平均二七%、一万一千円の改定、それから町村では四百九十三町村が平均二〇%、三千円の改定をしております。  なお報酬引き下げをした市は、現在聞いているのは愛知県に一市ございます。わずかばかり引き下げをいたしました。
  296. 市川房枝

    ○市川房枝君 いま伺いますと、地方のはパーセントが非常に高いですね。私さっき総理に申し上げましたが、つまり国民は何となく不満な気持ちでいるということについて、総理の御感想を私は伺ったわけですが。
  297. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は実情を十分知っていないものですから、先ほどのようなお答えをいたしたのでありますが、議員諸君、これは国民の代表でございますから、それらが当然適正に待遇されること、これは望ましいことでありますが、同時に、しばしば言われるように、お手盛りだというような非難を受けないように、やはり各党におきましても相談されることが望ましいことだ、さように思います。
  298. 市川房枝

    ○市川房枝君 自治大臣はこの値上げをどういうふうにお考えになっておられますか。この値上げの額は適正だとお思いになっておられますか。
  299. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 必ずしも適正であるとは思っておりません。しかし私ども立場といたしましては、やはり地方団体の、地方行政の自主性というものを尊重しなければなりませんので、画一的に議員の報酬は幾ら、また議長の報酬は幾らときめるわけにもまいりませんし、またそれぞれの各級の議会、またそれぞれの市によりまして、職務の内容というものもよほど違っておるわけでございますので、その地その地の実情に即しておのずからきめていかれるべきものと思います。しかし、いまの御質問ですけれども、実は四、五年前でしたか、ちょうど私自治省におりましたときに、先生から非常なきついおしかりを受けまして、そのときには、地方自治法の改正をしたらどうかという案もありましたけれども、やはりそれは将来に向かって地方自治というものをゆがめるのではないかという感じがいたしましたので、御案内のとおりに、審議会をつくりまして、必ず第三者機関にはかってきめなさいということにいたしました。全部都道府県は審議会をつくりまして、その議を経ておることになっております。  ついでですから、審議会のメンバーのことを申しますと、たとえば東京都の場合は会長が元人事院総裁の浅井さん、それから新聞は日本新聞協会の会長の上田さん、元東京市長の大久保さん、総評議長の太田薫さん、それから日本有職婦人クラブ連合会前会長の西さん、その他大体財界とか経済界のよくこういう審議会に顔を出される方はほとんどいらっしゃる。足立商工会議所会頭はその一人でして、マスコミの代表だとか、また種々こういったことについての御意見のある労組関係の方とか、こういった方々でつくっておる審議会の議を経ておるわけでございます。よく問題になります大阪にいたしましても、財界では大阪商工会議所会頭をやっておられる市川さん、そのほかどういう方かと申しますと、大阪労働協会の会長の塩谷さん、日本労働組合総評議会の仲橋さん、日本経済新聞の編集局長の藤倉さん、全日本労働総同盟の松尾さん、大学教授の先生もいらっしゃいます。いずれも十名で構成されております。この議を経ておるのですけれども、審議の内容自体はどういうふうになっておるか、私よくわかりませんけれども、やはり国会議員の報酬などから見まして、地方の議会が比較的金額は多いのじゃないかという感じを持っております。
  300. 市川房枝

    ○市川房枝君 いま自治大臣のおっしゃいました、その地方には報酬等審議会というのができて、そうしてその議を経ておる。これは総理がいまおっしゃいましたように、お手盛りでなくて、一応そこの議にかける。それで一応そこには知らないうちに上がるということでなくて、一応明朗になったということは、私やはり一つの進歩だと思います。ただいまの東京、大阪なんかの審議会のメンバーはなかなかりっぱな方々ですが、必ずしも全部そうでもなさそうのような気がしますけれども、これは自治省のほうで審議会の構成というものを一ぺん御検討を願って、そうしてもっと公正な結論が出るようなふうになりますように御心配いただきたいと思います。
  301. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) ずいぶん考えまして、住民の代表として、こういった問題について忌憚のない御意見をはかれる方々をそれぞれ選んで委員になっていただいておるつもりでございます。そこで私どものほうといたしましては、しばらく以前には、大体基準はこのくらいということを考えて指導もしたことがありました。たとえば都道府県議会の議員諸君の場合は、大体その府県の部長クラスの中堅どころぐらいのところでどうでしょうかということをやったのですが、なかなかそういう指導がまかり通るような状態ではありませんので、結果を見ますと、大体部長クラスといたしますと、普通府県の部長が十二万円から十三万円ぐらいですから、そこらぐらいで落ち着けば、まあ自治省で考えておることとぴったりするのですけれども、実態はその倍ぐらいにいっておるわけでございます。そういたしますと、国会議員が二十七万円であることに比べますと、国会の場合は何と申しましても専門職でございますけれども、やはり地方議会の場合は、名誉職とは申しませんが、まあ私どもはこれはやはり専門職とまではいかぬのじゃないか、そうすれば、まん中どころの判断ぐらいに考えておりまするので、そういった意味から多少私どもは審議会でおきめになるのが常識的にいいましても少し多いのではないかという印象を持っておりますので、やはりそこらは常識的な線に落ちつくようにできればお願いをいたしたいと、かように思っております。
  302. 市川房枝

    ○市川房枝君 次に、政治資金規制法の改正案について自治大臣に伺いたいと思います。  自民党の政治資金規正法改正案がまとまったように新聞で拝見したんですが、あの案に自治省も御賛成でしょうか。国会にいつごろ提案されるような——見込みは立っておりましょうか。
  303. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) この法案は、われわれの与党内部にありましてもいろいろの議論がありまして、ただ簡単に最大公約数でしぼるというわけにもまいりません。何と申しましても、一応答申を尊重して、その線から多くはずれるということではやはり世間の非難を浴びることにもなりましょうし、しかし、まだ自治省としての案というものは出しておらぬわけです。新聞にああして党でフリートーキングやりました結果がまとまったような姿で出ましたけれども、これからだんだん政府と党との調整に入るわけでございまするので、まだ新聞に出ましたものが自民党案として固まったものではございません。
  304. 市川房枝

    ○市川房枝君 総理にお伺いしたいのですが、いま新聞に発表されましたのは、自民党としてもまだまとまっておいでにならないという御意見でしたけれども、政治資金については総理は前から非常な熱心でいらっしたのですから、あの新聞に出ました自民党の案で総理はおそらく御満足でないだろうと思うのですが、私ども拝見して、あの案は制限されているように見えるんだけれども、ほんとうは現状と全く同じで野放し、この前の政府案よりはるかに後退しておる。自治省ではだいぶそれで御苦労になっておるのかもしれませんけれども総理はどんなふうにお考えになっていらっしゃいましょうか。
  305. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まだ報告を聞いておりません。私が総裁ですから、大体、案ができ上がる前に原案でも私に説明があると思いますが、まだ来ておりませんから。
  306. 市川房枝

    ○市川房枝君 自治大臣に。自民党の今度の試案の中にこういうことが出ておったのですが、法人からの会費を寄付とみなして公開することを義務づけると会費が集まらないからというので、法人会費を寄付とみなすことに反対だ、こういうふうにあったのですけれども、これについて自治大臣の考え方を伺いたい。
  307. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) その問題につきましては、党の調査会でも結論が出たというふうには聞いておりません。
  308. 市川房枝

    ○市川房枝君 現行の政治資金規正法は寄付さえ届け出ればいいことになっておりまして、会費、賛助費としてあれば届け出なくてもいい、こういうことで逃げていることになっているんですが、したがって、どこから収入があったかはわからなかった。これがだんだん、それが毎年ひどくなってきておりますが、自治省の御調査で、これは四十一年でいいと思いますが、政党及び政治団体の寄付の届け出は大体全体の収入の何%ぐらいになっているのですか。
  309. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 四十一年度分の収入の総額は百五十一億五千八百万円になっております。そのうち寄付金が四十一億一千四百万円で、収入総額との対比は二七%になっております。五大政党の場合の収入総額は九十億八千三百万円でございまして、全体の約六〇%を占めております。そのうち寄付は二十一億六千九百万円で、その比率は二三%でございます。そのほかの政治団体の収入総額は六十億七千五百万円、そのうち寄付は十九億四千五百万円で、その比率は三二%となっております。
  310. 市川房枝

    ○市川房枝君 そうすると、寄付は大体まあ三〇%には達していないんですね。だから、三分の一以下が寄付です。そうすると、三分の二というものは届け出がないからわかりませんね。どこから収入があったかということはわからない。これはまあ現在の政治資金規正法でも、ガラス張りということがあの法の立法の趣旨なんですけれども、その趣旨からいうと、ちっともガラス張りでないわけですけれども、それ、自治大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  311. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 考えようによっては御指摘のとおりでございますが、なかなか寄付と会費というものはやかましい議論がございまして、会費も一々個々のものを届け出るということになりますとたいへんでもございまするし、いままではそういったことで寄付は届け出る、もう毎月毎月きまった額を会費として払うものは、それまで一々会員が滞りなく払ったかどうかということを届け出る必要はないということで、そういうふうな区分ができておったと考えますが、まあ先生御指摘のとおりに、全部ガラス張りで透明にするという観点に立てば、やはり政治政党であれ、その他の政治結社であれ、わずかな金でも受け取ったものは全部発表してしまえば、これは一番ガラス張りということでは趣旨に沿うことになると思います。
  312. 市川房枝

    ○市川房枝君 自治大臣、この間の政府案では、会費、賛助費等も寄付として届け出ることという改正案になっておりましたね。ですから、自治省としてはそれを主張しておいでになる立場だと思いますが、そうですね。
  313. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 答申には明らかに会費も寄付とみなすことになっておりますから、それを受けてこの前の政府案になっております。この問題を含めて全体につきまして目下党のほうでもいろいろ意見の調整をいたしておりまするので、最終段階におきましても市川先生が御指摘のような点も十分考慮いたしましてそうして成案を得たいと考えております。
  314. 市川房枝

    ○市川房枝君 いまここに私、四十二年に一億円以上の収入のあった自民党の有力な派閥六団体の調査をちょっといたしまして、その収入総額とその中の寄付の金額とのパーセントを、さっき伺いましたようなパーセントをちょっと出してみたんです。それで、これ私申し上げたあとで総理の御感想を実は伺いたいんですが、まあ金額順に私簡単に申し上げますと、まず第一位は佐藤——総理派ですが、これは三団体、すなわち育政会、政経研究会、アジア研究で総額三億七千七百八十四万円。もっとも政経研究会は、下期が届け出がありませんので、これは上期を倍額にいたして計算いたしております。第二位は福田派でありまして、これも三団体、時局経済問題懇話会、千代田経済懇話会、新政治経済研究会、総額三億一千七百四十七万円でございます。第三位は前尾派、すなわち新財政研究会でありまして、総額が二億二千九百万円。これは四十年、四十一年は、実は佐藤総理派に次いでの第二位は前尾派だったんですが、四十二年になって福田派のほうが上におなりになったのであります。第四位は三木派でございまして、これは二団体、近代化研究会と政策懇談会でございます、両方とも下期が届け出てありませんので、上期を倍額にいたしました。そうしますと、これは一億六千百八十万円でございます。第五位は田中角榮派でございます。つまり越山会が一億二千五十九万円。第六位は石井派で蓬庵会一億一千二百八十万円でございます。この中で、どこから金をもらったかを全部届け出ている、つまり全部寄付としての届け出は、実は三木派だけでございまして、三木派は全部その点は非常に明朗でございます。石井派は寄付が六二%でございます。福田派は五五%、前尾派は三五%、田中角榮派は一六%、佐藤総理派は一%もないのでございます。最下位でございます。すなわち、総額三億七千七百八十四万円のうち、寄付として入った、はっきりしているのは三百万円だけなんです。その内訳は、アジア研究に日本酒造酉政会から百万円、それから育政会に日本医師連盟から二百万円、この三百万円だけがはっきりしておりまして、その他、つまり三億七千四百万円ですか、それは全くわからないです。そういう意味からいえば、これはきわめて不明朗で、ガラス張りではないということになるのです。総理はそれは自分は関係ない、こうおっしゃるかもしれませんけれども、しかし政治資金の規制を御主張になっておいでになる総理としては、私はやはりそういうふうなものを明朗にはっきりとしていただくようにしていただくと、手本を示していただくことになるのじゃないかと思います。総理のちょっと御感想を伺いたい。
  315. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私もただいまのようなことになっているとは存じませんでした。ただいま、たぶん総理はそう言うだろうというお話でございますが、私自身市川さんからそういうことを指摘されましたから、これはどういうような関係者がやっておりますか、それによく注意したいと、かように思います。
  316. 市川房枝

    ○市川房枝君 総理の派閥の中で、よくなったところもあるのですよ。これも私、こういうのを持っているのですが、それはですね、上期のほうはこの三団体から——これは去年の予算のとき、私、申し上げたのですけれども——特定の方に、まあ、今度はそれは植木さん、松野さん、寺尾さん、橋本さん、愛知さん、田中角榮さんの六人の方が二千万円ずつおもらいになって、それをまたお分けになっているのでしょうが、ところがまた下期になりますと、そういう金の出し方にはなっていないので、七月の十五日には三十万円、十二月二十三日には五十万円ずつということで、延べ約百人の方に調査費として出ているのでございます。これは私、事実に即しているのだから、これは一つの、まあ、明朗になった点であろうと実は思うわけでございます。  ところで、もう一つ自治大臣に伺いたいのですが、きのうの朝日新聞によりますと、自治省は政治資金規則を改正して、粉飾報告を締め出すと出ておりましたが、これはどういうことでしょうか。
  317. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) これは検討中でございまして、きめたわけじゃありませんけれども、やはり公表いたしますからには、ごらんになる方がわかりやすいような形にいたすことを検討いたしているという意味でございます。
  318. 市川房枝

    ○市川房枝君 これは私、たいへんけっこうだと思うんですよ。新聞に出ているところでは、支出を途中でいきどまりにしないで、一番先まで明瞭に書くことにするように規則を改正したい、こういうことであったのですが、私は、収入のほうも、途中でとまらないで、おしまいまで収入がわかるようなふうに規則で何とかなりませんでしょうかどうか。これはひとつ御研究を願いたい、こう思いまして、これも付け加えて申し上げたいと思います。  そこで、あとは税金の問題を少し伺おうと思って、国税庁にお願いしてあったのですが、これは時間が少ないので省きます。  次は、汚職の激増とその対策について総理に伺いたいのです。これは先ほど民社の方の御質問が実はあって、総理は、はしなくも百年河清を待つごとしと、こうおっしゃったんですが、汚職はなんだか日本の名物の一つみたいになりまして、ここのところ私も新聞をずっと一月から見てみたのですが、一月は三十二件、二月は三十七件、三月は五十二件、新聞にも出ているんですね、汚職が。そして範囲も非常にふえている。それで、その汚職に対しての総理のいろいろなお考え、対策はさっき伺ったんですけれども、私はそういうのでなく、やっぱり百年河清を待つような、どうしてそういうふうになっているのか。だから私は、根本の原因を追及して、そうしてそれに対するやっぱり対策を立てていただかなくちゃいけないのじゃないか、こう思うのでございますが、総理は汚職の根本の原因はどこにあるとお考えでしょうか。
  319. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、先ほどお答えしたんですが、全公務員が国民の公僕である、そういう考え方に徹すべきだと思います。そこらになお姿勢を正すもとがあるのじゃないか、かように私考えますので、また別の表現をすれば、最近は道義的観念がよほど薄らいだのではないか。そういう意味のやはり道義的観念、これを高揚することも必要だと、かように思います。また最近非常に件数がふえておる、こう言われますが、積極的にこの種の問題を摘発すべきだと、かように私言っておりますので——信賞必罰ということにも徹したいと、かように思っておりますので、あるいは数がふえているかわかりません。数が少ないからといって安心のできないのが、この汚職の問題でございます。
  320. 市川房枝

    ○市川房枝君 私は、官界、業界といいますか、あるいは政界の上層部の、全部じゃないそのうちの一部とでもいいましょうか、やはり体質が幾らか腐ってきているのじゃないか。それだから押したらうみが出てくるのじゃないか、こういうことになるのではないかと、こう考えまして、それじゃどうしてそういう体質ができたのかということを、これは私の考えですが、一つの原因は、私はやはりただめしといいますかただ酒と申しますか、ただめし、ただ酒を飲む、そういう機会が多い。そうしてそれが習い性になってそうしてこっちからまた要求するようになる、それでモラルが低下する、こういうことが私は根本の原因じゃないのかしらと、こう思うのですが、総理いかがですか、その点は。
  321. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま御指摘になったような点も多分にあると思います。それともう一つは、道義の退廃というそのことばで尽きるかと思いますが、正邪の区別がなかなかついていない。善悪、正邪の判断を欠いておる、こういうところに問題があろうと思います。
  322. 市川房枝

    ○市川房枝君 それで、私のいま申し上げた原因と思うことでこれをもう少しちょっと詳しく申しますと、私はつまり会社にいわゆる魔性の金と、こう言われているのですが、これは多額の税金のかからない交際費というものがある。さらには政治団体等には寄付金という、これもまあ税金のかからない金がたくさんある。余ればこれは税金としてやっぱり取られるのだから、会社がじゃんじゃん使ったり寄付したりする。ここからいわゆるただ酒、ただめしがずっと出てくるのじゃないかと思うのですが、そこで、私は、両方に税金をかけてくだすったらどうなのか、そうすれば、いやおうなしにただめしやただ酒を飲む社用族、あるいは公用族というものは減るのじゃないか。それから、その汚職の場所を提供しているといわれる高級料亭とか、バー、キャバレーとかいうものも幾らか少なくなる。それで、そこで働いておる多数の女性も健全な仕事につくことになりはしないか。それから、もしここから税金を取れば多額の税金が入ってくるのじゃないですか。総理、そうお考えにならないでしょうか。
  323. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま静かにお説を伺っていたのですが、市川君の言われるとおり簡単でもないだろうと思います。ことに料亭、キャバレーという名前を出されましたが、これはりっぱな仕事でございますから、そういう仕事に圧力を加えるというような仕組みは一体どうか。やっぱり自由営業は自由営業として尊重しなければならぬ。ただ、交際費というものが、これが大体問題だ、かように御指摘になりますが、非常に、どう考えるか、もうかっている会社、そういう場合の会社がこの利益金を労使双方に分配する、これは比較的わかりいいことである。しかし、同時に、私どもが絶えず言っておるのは、これは大衆に還元する方法はないか、これは労使双方だけで利益を配分するのじゃなしに、企業の経営としてはそうあるべきだと、そのことが十分に守られれば物価高に悩むような世相もなくなりますし、そういう点に根本の問題があるのじゃないかと、かように私は思っております。  そこで、いま一つの問題として、この交際費を相手にして何とかしろ、あるいはこれと同じような問題ですが、広告費がしばしば問題になる。その二つが税金の対象になってくると、この辺に社会悪を根絶するそういうキーがあるのじゃないか、かぎがあるのじゃないだろうかと、こう御指摘になりますが、それも一応は考えられることだけれども、必ずしもそればかりでもないように思います。実際の税金の把握ということがなかなかむずかしい問題でありますし、やっぱり私が最初に申したように、収益した利益、これを労使双方だけで分配するのじゃなしに、さらに国民大衆、消費の最終者に利益を還元する、そういう形で経営されれば、ただいまのような交際費だとかというような問題がなくなるのじゃないだろうかと、かように思います。
  324. 市川房枝

    ○市川房枝君 交際費に税金をかけろということを私は申し上げたのですが、それは別にバーやキャバレーを圧迫するわけじゃなくて、ただの金があるからあすこが繁盛して、ほとんどあすこでは自分のふところから金を出している人方は少ないんだと、まあこういわれるので、私はそれを圧迫とお感じになるのは少しちょっと納得ができないのですが、まあしかし、佐藤総理のおっしゃった消費者にも還元するようにということは、私はたいへんけっこうで、それはまあちょっとあとで伺おうと思っているんですが、大蔵大臣、最近一カ年の交際費というものは大体総額は幾らで、その中で飲食費に使われている金というのは幾らですか。
  325. 水田三喜男

  326. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お答えいたします。  私どものほうで法人企業統計というのをつくっております。それによって見ますと、四十一年に支出されました交際費の総額は五千九百二十六億円でございます。そのうち、損金不算入になっておりますのが千六十億円、それによって課税されております金額は三百二十八億円になっておるわけでございます。なお、申し上げるまでもないことでございますが、交際費は、法人税の課税にあたりましては、本来、これは社外に流出いたしたものでありますから、本来、損金性を持っておるものでございます。ただ、最近の交際費の支出状況を見ますと、社用消費等も目立っておりますので、それに対して規制を加えていく、そして浪費を避けてもらう、そういう意味で損金不算入制度を設けておる次第でございます。
  327. 市川房枝

    ○市川房枝君 国税庁長官、いま交際費の課税の特例として三百億くらいとおっしゃいましたけれども、これは政府から出ている数字を見ますと、交際費課税の特例として五百億円、地方税が二百四十五億円、合わせて七百四十五億円というものがそれだけ税金が入らないという数字が出ているのですが、どうなんですか。
  328. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) お話の数字は、それだけ税金が入らないのじゃありませんで、普通なら交際費は損金になるのでありますけれども、交際費のうち、年四百万円と、資本金等の千分の二・五をこえます分の半分は損金に認めない、さらに前事業年度の交際費支出額を五%上回る金額をこえる部分は全額損金に認めない、こういう制度によりまして損金に算入されないことによって税収がふえる分が四十一年度で三百二十八億円、それから、いま先生がおっしゃったのは四十三年度の予算の見込みでございます。私が申し上げましたのは四十一年度の数字でございます。
  329. 市川房枝

    ○市川房枝君 私、伺いたいのは、損金算入になっている交際費としての総額、そして、それにもし課税するとしたらこれは税金が何ぼになるか、国税と地方税で。
  330. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 四十一年の数字で申し上げますと、先ほど申し上げましたように、交際費支出総額が五千九百二十六億円であります。そのうち、損金に算入されないものが千六十億でございますから、損金に算入されておりますものが四千八百六十六億、こういうことになります。そして、もし交際費の支出額を全額否認いたしますと仮定いたしますと、先ほど申し上げました三百二十八億円の上に、プラス千二百八十五億という数字が一応は出てまいるのでありますけれども、御承知のとおり、いまの中小企業の負担ということを考えますと、いま年四百万円プラス資本金の千分の二・五ということで、中小企業の場合には交際費課税を交際費の損金算入制限によりまして課税を受けることが少なくなっておるのであります。その中小企業が交際費課税全額を損金に認めないということになります。非常な負担増を来たす、こういうことになろうかと思います。
  331. 市川房枝

    ○市川房枝君 まあ交際費も幾らか私は損金に認めてもいいと思うけれども、四千八百六十六億円もこれは課税してないわけなのです。これに法人税を課税すれば千二百八十五億ですか、ずいぶんたくさんの金になる。これにさらに寄付金のほうを加えますというと、千五百億どころでない、もっと税金が出てくるのじゃないですか。そうすればそんなにたばこや酒なんかの課税などしなくてもいいので、私は、国民の側からいうと、ここにずいぶん抜け穴があるということを感ずるわけですけれども、これはまあしかし、いまの税のたてまえとしては、こういうふうな税のたてまえは当然だとおっしゃるかもしれない。大蔵大臣、そうですが。交際費あるいは寄付に対しての課税は幾らかは損金を認めてもいいけれども、いまのようにこんなに膨大な金額が無税になっている、損金になっている。それで、それが使われるということが、さっきのただ飯、ただ酒になっていくんだと、こういう気がするんですけれども、課税の問題で大蔵大臣はどうお考えになっていますか。
  332. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 昨年の税制改正で交際費の問題は改正をいたしましたが、あと二年期限がございますので、その間に、いままでやった実績をそのほかを勘案して、二年後にまたこの改正をしようということでございまして、昨年やったばかりでございますので、今年度は手を触れません。
  333. 市川房枝

    ○市川房枝君 そうすると、来年度改正ですね。そのときは、もっとたくさん課税するようにしていただけるといいと思うんですが。  次は、さっき総理がちょっとおっしゃいましたけれども、こういうばく大な金が損金に入っているんですね、経費として入っていますからね。そうすると、結局、コストがそれだけ高くなっているんじゃないでしょうか。結局、物価高になっている。そして消費者がそれを負担をしている。もしこれが経費に入らなければ、物価は少し安くなる。消費者も得ですし、あるいは働いている人たちにベースアップで還元すれば、そっちのほうも潤うと、こういうことになるんですが、コストを高くしているということについて、経済企画庁長官、どうですか。
  334. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 御通告がございましたので調べてみましたが、交際費は、法人統計でございますけれども、売り上げ千円に占める額が五円六十六銭になっておるそうでございます。それから寄付金は、同じく千円に占める額が三十一銭であるそうでございます。原価のほうが法人統計から出てまいりませんではっきりいたしませんが、この場合、交際費は、やはり商売をする上の純粋の経費というものが相当あると思いますので、これは不要なコストだということはなかなか言えない分もあろうかと思います。また、しかし、実は交際費と称して、あまりそういう目的を達していないものもあろうかと思います。寄付金の場合には、法人が社会の一員として存在するためのいわばつき合いのようなものであるという、そうであるとかないとかいう判例のような問題もございましたが、ちょっと何とも判断いたしかねますが、割合はいま申し上げたようなことでございます。
  335. 市川房枝

    ○市川房枝君 長官、佐藤総理総理におなりになった四十年の初めに、物価政策として、その中に、最も弊害のある社用消費というものを節約するということを書いてあるんですが、その内容は、やっぱり交際費を節約するんだと、当時の企画庁当局の方がそうおっしゃったんですけれども、それは企画庁としてはあまり努力をなさらないで、交際費はどんどん毎年ふえていっているんですけれども、どうなんですか、それは。いまの企画庁のお話だと、交際費が要るんだと、こういうふうな御意見で、ちょっと納得ができないのですが。
  336. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは確かにそういう対策についての勧告がございまして、「現在弊害の最も著しい社用消費の大幅節減を求める必要がある。」と。これは、御承知のように、したがって、祖税特別措置法ではかなりこのごろしぼっておるわけでございます。それから売り上げ千円当たりの割合もかなり低下はいたしております現状でございます。
  337. 市川房枝

    ○市川房枝君 それでは、次は、選挙局の格下げと独立の選挙管理機構について関係の当局から伺いたいと思います。  今度の行政整理で自治省選挙局が行政局選挙部に格下げになったことについて、選挙関係の各種団体は不満なんですが、私も有権者の立場で不満に思うのですが、これはどういう経過だったのでしょうか。これは行管の長官にお伺いしたほうがいいですか。おいでになりますか、木村さん。——それじゃ自治大臣。
  338. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) これは、行政改革をぜひやれという総理の非常に強い御決意のあらわれとして、まず、中央の省庁から一局ずつ減らせということでして、各省庁漏れなく一局ということになりますと、自治省の場合は、事務の内容をいろいろバランスの上から考えまして、行政局、税務局、財政局いずれも廃止するわけにはまいりませんので、やむを得ず選挙局を選んだわけでございますが、ただ、選挙局が部になったからといって決して選挙をおろそかにするわけではございませんので、かりにそれが行政局の中の部になりましても、事務のほうは倍旧の努力をする決意をいたしております。
  339. 市川房枝

    ○市川房枝君 もっとも、私は、ほんとうは、自治省の中に選挙局を置いて選挙区や政治資金規正法なんかの重要法案立案をすることには実は賛成できないといいましょうか、自治省では、党派や議員の利害に左右されて、国民の希望するような公正な立法ができないから、どうしても独立の選挙管理機構というものを持つ必要があるんじゃないか、こう前から考えてきておったんですが、憲法調査会で選挙の公正、特に適正な選挙法の制定を保障するための特別な機関が問題になったことがあると思いますが、そのときの趣旨と内容を簡単に法制局長官からお願いいたします。
  340. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 御指摘のように、三十九年七月の憲法調査会の報告書にも出ておりますが、憲法調査会では、選挙に関しましては、公正な選挙法の制定を保障するために、国会や内閣から独立した地位にある特別な憲法上の機関を設けたらどうかという議が出ております。そのような案を御提案になりましたのは、廣瀬委員、高柳委員、中曽根委員それから大西委員の四人の方々でございます。それぞれ少しずつ中身は違いますので、これを一通り全部御説明するのもいかがと思いますが、憲法調査会の中では、やはりこれについてはかなり問題が大きいので、それぞれ賛成の意見が述べられたのもありますが、まあ一致した結論というものは必ずしも得られなかったという状況であったと思います。もし特にそのうちの何かを説明せよというようなことがありますれば、また御指名によってお答えいたします。
  341. 市川房枝

    ○市川房枝君 その憲法調査会で特別な選挙のための機構を主張された一人に廣瀬久忠氏がおいでになったということがいまお話がありましたが、私それを覚えていたものですから、廣瀬さんをおたずねをして実はこの問題について伺ったんです。廣瀬さんの御主張は、これは憲法調査会の第百三十回総会議事録の中に出ているんですが、ちょっと簡単ですから申し上げてみようと思いますが、「国民が主権を行使するのは選挙においてであるから、選挙の意義は極めて重要であり、よき選挙制度の制定には最も重点を置かなければならない。しかるに、選挙法ないし選挙制度の改正等は極めて困難であり、選挙の弊害は容易に是正されないのが実情である。そしてそれは、議員・政党・内閣は、その立場上、選挙法の立法を行なう適格者ではないことによる。すなわち、あたかも、裁判官について、自分のことは自分では裁判しないという原則があるように、選挙法については、当事者たる議員や政党政治家の立場を離れた公平な第三者に立案せしめることが必要である。現行の選挙制度審議会もこの趣旨で設けられたものではあるが、選挙法改正に関するその答申が国会に提出される前に、内閣や政党によってじゅうりんされるのが実情である。したがって選挙法の調査・立案・制定に関して特別の権限を有する憲法上の機関を設ける必要がある。」、こういう御意見なんですが、これは憲法改正によってそういう特別の機関を設けようという御趣旨なんですけれども、なかなかむずかしいけれども、しかし、この中におっしゃっておる議員・政党・内閣はその立場上その選挙法立案の適格者ではないのだという考え方は、いまでもそのとおりだと思うのです。これは自民党の廣瀬さん、同僚議員でいらっしゃるのですが、そうおっしゃっておられますが、総理はその点どういうふうにお考えになられますか。
  342. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 憲法改正にまで論議が飛躍いたしますとちょっと困りますけれども選挙制度あるいはまた選挙機関、こういうものは公正な選挙が行なわれる、そういうことがまず第一に必要なことであります。そういう意味で、私どもはその目的を達するのに適しておる機関、これを考えるべきじゃないかと、かように考えております。
  343. 市川房枝

    ○市川房枝君 憲法を改正して国会と別な機関で選挙法を制定するというのは、これはちょっと私無理といいましょうか、あるいは立法はやっぱり国会の権限でございまするから国会で審議すべきだと、こう思うんですが、現在の内閣制度のもとで、総理のもとで独立な選挙管理機構というものが一体できないものだろうか。それで、これは総理あるいは自治省もよく御経験のとおりに、選挙制度審議会で答申しても、なかなかそれが政府提案になるまでに問題が起こる。ということは、やっぱりこれは政党の立場でいろいろ党利党略のほうがまあ得だといいますか、いわゆる党利党略というものが入るということは私はやむを得ない。これは自民党でなくても、社会党がもし内閣をとっていらっしゃっても同じようなことになるのではないかと思うんですが、そこで私は、内閣のもとで独立した機関、だからまあたとえば中央選挙管理委員会というようなものを設けて、それは国会で、各党が推薦をしてそして国会の指名によって何人かで組織する。そしてその機関に選挙制度審議会が付属して、それでその答申を待ってその委員会が立案をして、そしてこれは選挙管理委員会の委員長は、私、国務大臣がおなりになってもいいと思う、それは公安委員会みたいに。そして国会にいったら、国会でそれぞれどんなに修正なさってもこれは国会の権限なんですが、少なくとも提案されるまでの間に国民のおおよそ考えていることと違うことになっちゃうんだと。これは私はいままでの選挙制度調査会あるいは審議会の過去の答申で重要なものは一つとして成立していないということから考えても、この問題をひとつ考えていただきたいというふうに実は考えるわけですけれども、そう急ということもありませんけれども、まあ憲法調査会では問題になったんですけれども、憲法を改正しなくちゃだめだということで、その後その問題がほとんど、問題にならなかったというところに問題があったんじゃないかと思います。この問題ひとつ総理、御研究を願いたいと思いますが、いかがでしょう。
  344. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 選挙の公正を期するために中立的な機関でそれを管理したらどうか、こういう御提案だと思います。その点は自治大臣がどういう考え方を持っていますか、それをお聞きいただきます。
  345. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 一案かもわかりませんけれども、憲法でどうきめましても具体的に法律をつくる場合は国会でつくるしか道はないわけでございます。国会は何と申しましても国権の最高機関でございますので、幾らどういう審議会がどういうふうにおきめになりましても、やはり最初は国会がおきめになることは言うまでもないことでございます。そこで、公正な第三者機関がこういう方法でやったらどうか、ああいう方法でやったらどうかということをおきめになったものを、それじゃ今回はそれでやろうという、そこで皆さんが気軽におやりになるならけっこうですけれども、しかし実態はなかなかそうはいかぬ。議員は自分自身のことでございまするから、やはり主観が加わるわけでございまして、からだを張って抵抗するなどという方はありませんかもしれませんけれども、やはりなかなかそういうことがむずかしいので、行き悩んでおるわけでございます。この間の審議会の答申にいたしましても、たとえば区制の問題だって結論が出たような出ないようなことになっておりますけれども、やはりあのときは同士打ちの選挙をやることが政治の不腐のもとになるという御指摘がありまして、じゃ、ひとつ小選挙区に踏み切るにはどういうやり方があるかということをいろいろと検討になりまして、小選挙区でやれということがほとんど大部分の意見でしたけれども、具体的に、じゃ小選挙区のやり方をどうするかということになると議論が分かれましたために、残念ながら最終の決定が得られなかったわけでございます。  政治資金の規正の問題にいたしましても、やはりいまの各政党の場合、政党の成立の過程というものはそれぞれ違うわけでございまして、あの委員会でも政治活動とは何ぞや、それに使用する必要経費は一体何をいうかというような問題を十分詰めないでいきなり資金規正をやるという形になったものですから、そういうことが私どもの党内におきましてもいろいろの議論の対象になって、なかなかそこの調整ができかねておるわけでございます。  要は、市川先生御指摘になるように、もっと気軽にそれでやってみようかという気持ちになるようになればいいけれども、制度を変えようとしますと、これはもう百年もやらなければならぬというような気持ちにみななられるもんですから非常にむずかしくなってきておると思います。ですから、先ほど申しましたように、幾ら憲法を変え、そうしてそのもとで選挙を公正にやると申しましても、具体的なところまで全部憲法というわけにはまいりません。最終はやはり国会の議決を要することになりますので、結果的には同じことであって、これは国会を構成する議員の頭というものをだいぶ入れかえませんと、なかなか御期待のような結果は出ないと考えております。
  346. 市川房枝

    ○市川房枝君 一応御無理のない御意見とは思いますけれども、国民の側から言いますと、国民主権というけれども、一体これは何だといえば、やはり選挙だけでしょう。だからこの選挙が国民にとっては一番大事なんです。それで、それが、国民の望むように選挙というものが考えられないというか、結局まあ、選挙は議員の方たち、あるいは政党なんかのお考えのような方向に行って、国民の考えが入らないというか、その点に国民の非常な不満がある。では、国会に行ってから国会で審議の上で修正なさることは、これはもう憲法で制定されておりますし、私はこれは国民も文句は言えないと思います。その立法の過程、提案の過程において党派の利害関係が入り組んでなかなか提案ができないところに問題があるので、まあひとつ、そんなに急にはできますまいけれども、御検討を願いたいと思います。  行政管理庁長官おいでになりましたからちょっと伺いたいのですが、いま私が申し上げておりましたところの独立の選挙管理機構ですね、立案管理機構というものを現在の選挙管理委員なんかをみんなそとえ出してまとめれば人員も費用もあまり、いまと同じくらいなんですか、ですから、行政管理庁としては、といいましょうか、私ども行政整理は賛成なんですよ。なるべく政府は金がかからないように能率をあげてほしいと思うんですが、しかし同じように能率があがる制度だったら、ひとつ行政管理庁も御研究をいただきたい、こういうふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  347. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) ちょっとこの前からだのぐあいを悪くしましてね、ここに神経痛が残ったのですよ。それで休んでおりまして、申しわけありませんでした。おわびを申し上げます。  今度の一省庁一局削減の問題なんですが、これは全部各省庁に御一任いたしまして自主的に一切おきめになったもので、それで自治省のほうから選挙局が分離するのだ、こういうお話でありましたから、それを私のほうではすなおに受け取ったわけです。そのときに自治大臣としては局を部に変えましたけれども、どういうお考えだとお聞きいたしましたところが、機構は縮小した形だけれども、使命の重大さはそれ以上に感じておる、いろんなことをこれからはやるからどうかよろしくということでしてね、それで円満に話がついたわけです。
  348. 市川房枝

    ○市川房枝君 もう一つあったのですけれども、時間がありませんので、最後に農林大臣に主婦農業のことに関してちょっと伺いたいと思います。  農村の就農者がどんどん減ってくるということは、やっぱりそれだけ主婦の負担を重くしている。主婦農業というものの私は負担が重くなってくることじゃないかとも思うんですけれども、その主婦を生産者として考えてくださるときに、これは一方においては生産者であるけれども、片っ方においては家庭を持っている、子女の養育にも当たっている、この二つの責任を持っておる。片っ方を主にすれば片っ方はおろそかになるのでありまして、私はそれを指導する——両方ができるように、しかも健康で、しかも喜んでやるように手伝ってやることが、現在の主婦農業のウエートをだんだん高めてくる時代においては、農林省の農政の一つの大きな問題だと、こう思うんですけれども、どうでしょうか。
  349. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) おっしゃるとおり大事な点でございまして、御存じのとおり、日本の農業が日本の経済構造の変化で労働力の流出が出ております。もう一つは、兼業がふえている。そこで日本の農業の今日のあれが、大体の形が家族経営が主体になっております。そうすると、家族経営でございますと、長く申し上げませんが、主婦に対する生産者としての負担、同時に家庭人としての子女の教育あるいは家事こういう二つの面の責任が重くかかっていることは事実でございます。そこで、私どもはその点は十分留意いたしまして、一つは、生産面における近代化、言いかえますれば、機械化なりあるいは協業化ということで主婦が比較的近代科学と申しますか、機械力等を使い、協業の力を借りて生産能率をあげる、かたわら家庭におきまして大事なのは、一つは環境整備、言いかえますれば、水道なり、保育所なり、衛生面のいわゆる健康管理、それからもう一つは家事そのものの労働力をうまく分配、適正化していくという事柄がございます。そういったことを考えまして、生活改善の普及、これに対して相当私どもは力を入れて、特に農村における主婦の婦人労働の地位を尊重していくということに、おっしゃるような立場で推進してまいりたい。こんな考えでおります。
  350. 市川房枝

    ○市川房枝君 農林省に生活改善課というのがあって農村婦人の生活を指導していることは知っているのですが、生産のほうの指導と生活のほうが総合的にいかなくちゃならない。ここに問題の一つがあると思うのですが、生活指導は私はいままでも長いこと、小さい、小人数でやってきた、それが非常に現在生きていると思うのですけれども、ところが、最近の新聞を見ますと、これは自治省ですけれども、自治省が時代おくれの、現在の社会に適合しない行政機構だというので、廃止ないしは、何と書いてありましたか、とにかく廃止の中に農林省のこれが入っているのですけれども、農林大臣はそれをどう考えですか。とんでもない認識不足だと思うのですけれども
  351. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 生活改善は、私のほうとしては、今回の皆さんに御審議いただいておる予算要求にも普及事業並びにそれに関連する事業の予算額を昨年度よりさらにふやしてむしろ前進させてまいりたいという大事な点でございます。
  352. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) これにて時間がまいりました。以上をもちまして総括質疑は全部終了いたしました。  本日はこの程度にいたしまして、明日午前十時より一般質疑を行ないます。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時十五分散会