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国務大臣(
佐藤榮作君) いまの
日本民族から申せば、世界の唯一の被爆国、そうしてどうしても核をにくむ気持ちが感情的に走らざるを得ないと思います。私はこのことはたいへんけっこうなことだと思います。また、核兵器というのはそういう意味で人類を滅亡に導くものだ、そういうものをなくする、ほんとうにそういう形でありたいと思います。しかし、核兵器そのものを
考えてみまずと、まだようやく戦後、——まあ戦時中開発され、二十年ばかりたったものであります。これの小型化等がいろいろ議論されており、あるいはまた同時に核拡散防止条約等もいろいろ議論されている。核軍縮ということもあるけれ
ども、まだ核軍縮というものに全部の
意見はなかなか
一致しない。私
どもの政治目標からいえば核兵器をなくする。で、
日本が決議したからといって、
日本国民はその決議に縛られ、それを尊重してまいりますけれ
ども、しかし、世界から核兵器がなくなるという状態ではない。そういうもとにおいて
日本の安全はどうして確保されるかということも
考えなければならない。私は、これから核兵器も、いろいろ科学技術は進歩してまいりますから、どんな変化が出てくるかわからない、かように思います。あるいはもっと、同じ核といいましてももっと進歩したものが出てくるかもわからない。したがって、そういうときにどういうようにするかは、もっと国民の皆さんとも
どもに
考えたらいいのじゃないだろうか。現在の政局を担当している
政府が、こういう問題をどうするか、そのことが一番問題なんじゃないだろうか。
政府自身は核兵器は持たない、製造もしない、持ち込みも許さない、これは非常にはっきりしている。そこで、国民のほうからいえば、御心配はないのじゃないか、かように思うのであります。私はそれ以上に今日いろいろのことが
考えられますけれ
ども、これでいいのじゃないだろうか。ただ、私
どもがこういうことを
考えるにいたしましても、
日本の場合は、現実に核兵器が存在する限り、アメリカの核抑止力に
日本の安全保障を頼っておる、そのもとに安全を確保している、かように
考えております。しかし、各党におきましてこの日米安全保障に対する
考え方がそれぞれ違っております。私は、公明党の方があるいは
段階的解消ということを言っておられる、あるいは社会党や民主社会党がどういうようなことを言っている、一々紹介はいたしませんが、そこらに変わり方はございます。したがって、わが国の安全を確保するという、そういう場合に、その背景になるもの、基礎になるもの、これからやはりスタートしてこなくて、
日本の安全は確保されるんだということにはならない。核兵器を憎むその気持ちだけからの非核三原則、これを決議したって、大事なのは、
日本の安全を確保することなんです。それについての保障がないと、私は、非核三原則の、この核兵器を憎むその気持ちが率直に出たからといって、国民には別に、感情的にはそれでいいかしりませんけれ
ども、大事な
日本の安全を確保する、こういうことでは足らないのではないか、かように私は思います。