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国務大臣(
灘尾弘吉君)
お答えいたします。
羽田事件あるいは佐世保
事件等においてあらわれました一部学生のあの暴挙につきまして、大学はいかなる措置をとっているか、あるいは
指導をしているかということでございますが、大学といたしましても、あのような事件が起こる、しかもそれが計画的で継続的に起こっているという事態に対しましては、深刻に検討を加えているところでございます。当時の措置といたしましては、あのような行動に参加することを戒める学長の告示でありますとか、あるいは教官による学生に対する説得など、学生
指導につきましてできる限りの措置をとったと思います。また、大学の施設が暴力的活動の拠点として利用されている、そのようなことの絶対ないように、学内施設の警備、よその大学生の侵入等に対して、大学によって多少の相違はございますけれ
ども、それぞれ学内
指導はいたしておるのであります。また、学外における暴力行為のほかに、あるいは授業料の値上げ等に関する授業放棄、教官の軟禁
事件等の事後措置としての学生処分についても、各大学において検討を行なっておるところであります。決して放任しておったわけではございませんけれ
ども、私、率直に申しまして、このような不法な学生に対する措置、
指導についていろいろ苦慮はしておりますけれ
ども、それが現状でございます。今日までの措置につきましては、必ずしも十分でなかったという反省をしなければならぬと思うのであります。
文部省としましては、各大学と緊密な連絡をとりまして、大学当局の事態改善に対する真剣な努力を促してまいりたいと、そのような
態度で今日臨んでおるような次第でございます。暴力的行動に参加した学生の処分についても、私
どもも重大な関心を持っております。各大学におきましても、これら学生に対する処置につきましていろいろ検討も加え、また、従来のやり方等についても反省をいたしておる次第でありますが、同時に、国立大学協会、私立大学連盟等でも、その後の学生の
指導のあり方等について真剣に検討をいたしておるところであります。学生の処分につきましては、今日までのところは、まだ件数にしてそれほど多いとは思いませんけれ
ども、暴力活動、暴力行動に参加した事実に関する調査でありますとか、いかなる程度の処置をするか、このような問題について大学の内部においていろいろ検討をせられておるところでありますけれ
ども、われわれといたしましては、ものごとのけじめははっきりつけてもらいたいというつもりで、大学当局の真剣な検討をわずらわしておるところであります。従来ややもしますというと、やはり大学と学生の
関係でございますので、大学側としましては、どちらかといえば学生かわいさということが先に立つわけでもございましょうが、ややその点についてきびしさが欠けておったのじゃないかと思います。現在の事態におきましても、もちろん私は、大学当局といたしましては、学生に対する
理解と愛情というものはどこまでも持たなければならぬと思いますけれ
ども、この事態に対処いたしまする
態度といたしましては、従来のような、やや甘きに失するような
態度でなく、き然たる
態度をもって合理的な処置をとってもらいたい、このように
考えております。
また、自治会の資金についてのお尋ねでございますが、この自治会の資金の徴収、あるいは配分等につきましては、大学によっていろいろ状況が違っているようでございます。いわゆるチェックオフをやっている大学も若干ございます。そうでないところもあるわけであります。その問題は、やはり一部学生の活動と
関係なしというわけにもまいらぬと思います。同時に、また、それがすべて一部学生のあの行動のほうに使われているということも私はないと思うのであります。いずれにしましても、現在の自治会が母体になりまして、そうしていわゆる全学連というものができているわけであります。したがって、この自治会というものに対する正確な認識というものが私
どもも必要だと思いますし、大学それ自身がもっと自治会というものに対して検討を加えて、正すべき点は正していく、この努力がなされなければならぬと思います。自治会は、申すまでもなく、大学
教育の一環として認められている学生活動でございます。しかるに、それが現在のあの一部の学生の行動は、自治会活動の範囲をはるかに逸脱しておる、そうして自治会の名においていろいろな活動をやっているということは、とうてい容認できることではございませんので、私は、この自治会に対する
指導、あるいはその改善という問題について、われわれも、また、大学当局も、もっと積極的に見ていかなければならぬということを痛感いたしております。目下いろいろ調査をいたしているところでございます。
なお、佐世保の事件に関しまして九州大学のとった措置についてのお尋ねでございます。九州大学は、一般原則といたしまして、原則として警察官の導入はしないという
態度を大学としてきめておったようであります。しかしながら、大学としましては、暴力的学生が外部から侵入することに対しましては、これを阻止するための計画を立て、侵入学生に対しては説得これつとめたわけでありますけれ
ども、結果は御承知のとおりであります。いかにも遺憾な事態を現出しましたわけでございます。学内において、たとえいわゆる流血の惨がなかったといたしましても、外部学生の侵入を受けまして学内の秩序が乱されたということは、まことに残念なことといわなければなりませんし、九州大学の学長としても、このような多数の暴力的学生の侵入に対して学内の秩序を維持することができなかったということについては、深く遺憾の意を表しているところでございますが、その間、お話にもございましたように、警察官の導入をしなかったために、学生が大学構内に侵入はしたけれ
ども、しかし、大学の自治は保たれたのであるというようなことを言っている向きがあるようでございます。この点は、私はある段階において警察官を導入するのがいいか悪いかという問題はその時点において
判断すべき問題だと思いますので、一がいに入れたほうがよかったとか悪かったとかいうことをきめつけるわけにもまいらぬと思いますけれ
ども、しかし、このことは九州大学の
関係者にも私は申したことであります。不法な学生の侵入によって大学の諸施設が占拠せられているこの事態は、すでに大学の自治が脅かされている、あるいは破壊されているといわなければならぬと思うのであります。一面において、必要によって警察官の導入を求めるということは、これは警察官の職務執行を求めるわけでございます。不法な学生の侵入することと警察官が入ってくることと同じように
考え、あるいは警察官の入ってくることが大学の自治を侵害するというような
考えはおよそおかしい、
考え直してもらいたいということを実は私申したように記憶いたしております。いずれにしましても、この警察官導入問題につきましては長い間の沿革もあることでございますし、いまもって各大学において必ずしもすっきりした姿とは私は思いません。ただ、御承知のように、前々からの慣行といたしまして、大学の要請によって警察官に入ってもらうということは行なわれてきているわけであります。この慣行は、私は、これはそのまま維持してよろしいと思います。必要に応じましては、大学は自分の力で学内の秩序を維持することができない、それによって大学の自治が破壊されるというような危険のある場合におきましては、遠慮なく警察官の導入をしてしかるべきものである。国立大学協会における
意見の発表がございましたが、これも御
指摘のとおりでありまして、必要に応じては警察官の導入をちゅうちょすることなくやってよろしいじゃないか、こういう
意見のようであります。私もそのように
考えるわけでございます。もちろんこの間において、いままでのような大学と警察との間の妙な因縁、空気というようなものは、もはや今日の時点においては忘れてお互いに協力していく。大学としても、警察に協力する必要があれば協力しよう、警察もまた大学に協力する、こういう協力
関係が設定せられることが何より大事なことではないかと思うのであります。この大学の自治に対して警察官の導入の問題につきましては、数多い大学の教官の中にはまだまだいろいろの
意見を持っておる人もおろうかと思うのであります。おろうかと思いますけれ
ども、しかし、それは各大学においてそれぞれ
意見の統一をはかりまして、必要な場合に必要な措置をとることに欠けることがないようにしてもらいたい、私はそのことを大学に要望したいと思うのであります。また、同時に、この問題は、ひとり国立大学の問題ではない、私立、公立、すべてを通じまして、りっぱな学園をつくり上げていくその障害となる場合におきまして、必要があれば警察官の導入もまたちゅうちょすることなく行なったらよろしい、この原則はすべてに通ずるものと
考えておる次第でありますけれ
ども、いままでの経過から申しますというと、その点においていろいろ問題があろうかと思います。今後、そのような方向において、各大学の諸君も、みずからの大学の自治を守りますために、適切な処置として、その一方法としてこれを
考えたらよろしいのじゃないか、かように
考えておる次第であります。