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1968-03-22 第58回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月二十二日(金曜日)    午前十時十三分開会     —————————————    委員の異動  三月二十二日     辞任         補欠選任      吉江 勝保君     青木 一男君      宮崎 正義君     黒柳  明君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西郷吉之助君     理 事                 北畠 教真君                 剱木 亨弘君                 近藤英一郎君                 玉置 和郎君                 内藤誉三郎君                 加瀬  完君                 鶴園 哲夫君                 小平 芳平君     委 員                 青木 一男君                 内田 芳郎君                 大谷 贇雄君                 大森 久司君                 岡本  悟君                 梶原 茂嘉君                 小林  章君                 小山邦太郎君                 櫻井 志郎君                 塩見 俊二君                 白井  勇君                 杉原 荒太君                 任田 新治君                 船田  譲君                 増原 恵吉君                 八木 一郎君                 山本茂一郎君                 吉武 恵市君                 岡田 宗司君                 木村禧八郎君                 瀬谷 英行君                 田中寿美子君                 千葉千代世君                 戸田 菊雄君                 野上  元君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 村田 秀三君                 森中 守義君                 鈴木 一弘君                 矢追 秀彦君                 片山 武夫君                 春日 正一君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  赤間 文三君        外 務 大 臣  三木 武夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  灘尾 弘吉君        厚 生 大 臣  園田  直君        農 林 大 臣  西村 直己君        通商産業大臣   椎名悦三郎君        運 輸 大 臣  中曽根康弘君        郵 政 大 臣  小林 武治君        労 働 大 臣  小川 平二君        建 設 大 臣  保利  茂君        自 治 大 臣  赤澤 正道君        国 務 大 臣  木村 武雄君        国 務 大 臣  木村 俊夫君        国 務 大 臣  鍋島 直紹君        国 務 大 臣  増田甲子七君        国 務 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        総理府総務副長        官        八木 徹雄君        総理府人事局長  栗山 廉平君        警察庁警備局長  川島 広守君        防衛庁長官官房        長        島田  豊君        防衛庁人事局長  麻生  茂君        防衛庁経理局長  佐々木達夫君        防衛庁装備局長  蒲谷 友芳君        法務省刑事局長  川井 英良君        公安調査庁長官  吉河 光貞君        外務省北米局長  東郷 文彦君        外務省条約局長  佐藤 正二君        大蔵省主計局長  村上孝太郎君        文部大臣官房長  岩間英太郎君        文部省初等中等        教育局長     天城  勲君        厚生省児童家庭        局長       渥美 節夫君        農林政務次官   日高 広為君        自治省行政局長  長野 士郎君        自治省選挙局長  降矢 敬義君    事務局側        常任委員会専門        員        水谷 国一君    参考人        教育課程審議会        会長       木下 一雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十三年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十三年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を開会いたします。  昭和四十三年度一般会計予算昭和四十三年度特別会計予算昭和四十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続きまして総括質疑を行ないます。  本日は、参考人として、木下教育課程審議会会長が出席されております。では加瀬完君。
  3. 加瀬完

    加瀬完君 私は、政府教育行政方針、特に愛国心国防教育などといわれております内容について伺います。  まず、質問の前提で確認を願いたいのでありますが、総理は過日の衆議院予算委員会で、私は従来から平和に徹し、現行憲法を守ることを政治の基本とし、施政の全般を通じこれを忠実に実践してきた、とおっしゃったと承りましたが、お間違いございませんか。
  4. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 間違いございません。
  5. 加瀬完

    加瀬完君 では、憲法違反憲法軽視の行為をいたしました公務員に対しましてはどういう措置でお臨みなされますか。
  6. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 憲法違反あるいは憲法を軽視する、こういうようなことが私をはじめ公務員にあってはならないことでございまして、忠実に憲法を守らなければならない。これが憲法の命ずるところであります。この点では、皆さん方も同様だろうと思います。その憲法の規定、これを忠実に守るということでなければならぬ。ただいま、抽象的に、憲法違反あるいは憲法軽視と、かように言われますが、実態を十分把握しないでこれに対する態度はできません。しかし、憲法は、どこまでも憲法の条章が命ずるように、これが存在する限りこれを忠実に守らなければならない、かように思っております。
  7. 加瀬完

    加瀬完君 文部大臣に伺いますが、国防教育について、必要があれば国を守っていこうとする気持ちを育てることだとおっしゃっておりますが、そのとおりでございますか。
  8. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) そのとおりだと思っております。
  9. 加瀬完

    加瀬完君 では、必要があれば守らねばならない。すなわち、守る対象たる国というのは、法的位置としてどういうものですか。
  10. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) わが日本国であります。
  11. 加瀬完

    加瀬完君 それでは、教育の基盤である国家とは、憲法できめられた日本国と承ってよろしいですか。
  12. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) そのとおりでございます。
  13. 加瀬完

    加瀬完君 教育審議会が先般「国民」というものをはっきり出せと言っておられますが、その「国民」とは憲法にきめられた日本国国民ということでございますか。
  14. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 国民と申せばそのとおりだと思います。
  15. 加瀬完

    加瀬完君 そうすると、総理文部大臣が、国民的自覚とか愛国心とか言われておりますが、それはあくまでも憲法のワクの中と承知してよろしいですね。
  16. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) そのとおりでございます。
  17. 加瀬完

    加瀬完君 では、文部大臣教育課程審議会会長に伺いますが、わが国の歴史に対する正しい理解指摘しておりますが、では、いままで正しく理解されておらない点はどこですか。
  18. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 正しい理解を与えるということが教育の目的だろうと思うのですが、それだけのことです。
  19. 加瀬完

    加瀬完君 正しく正解されておらない点はどこですか。
  20. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 正しく理解されておることと思いますが、ますます国際情勢も変わりますので、一そう正しく理解することが必要になってくると思います。
  21. 加瀬完

    加瀬完君 では、審議会会長に伺いますが、国際情勢が変われば教育上の歴史判断というのも変わるという御見解ですか。
  22. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 教育課程審議会におきましては、国際理解国際協力ということを十分うたっておるのでありまして、それに基づきまして教育は行なわれるであろうと思っております。
  23. 加瀬完

    加瀬完君 教育憲法教育基本法基本じゃありませんか。それを抜きにして、いまおっしゃるような点が教育基本になりますか。
  24. 木下一雄

    参考人木下一雄君) ただいま御質問でございますが、私ども教育課程を編さんするにあたりましては、小学校中学校を通じまして共通理解事項というのを定めておるのであります。御参考までに、お答えになると思いますので、それをお読みいたします。「教育課程は、「教育基本法」の趣旨に基づき、今日の学問、文化の飛躍的な進展に対応し、国家社会の必要に応ずるとともに、現代の児童生徒の特徴を配慮し、学問的な基礎にたって、改訂され」ることとございまして、教育課程教育基本法趣旨に基づいておるものであります。
  25. 加瀬完

    加瀬完君 そのときに、世界歴史を背景に広い視野に立って、という御指摘がありますが、これはそのとおり承ってよろしゅうございますね。
  26. 木下一雄

    参考人木下一雄君) さようでございます。
  27. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 参考人、ここへ来て御答弁願います、間違うといけませんから。
  28. 木下一雄

    参考人木下一雄君) さようでございます。
  29. 加瀬完

    加瀬完君 基本的にはあくまでも憲法精神を踏まえるということになりますね。
  30. 木下一雄

    参考人木下一雄君) ただいま御質問でございますが、先ほど共通理解事項を読みましたのですが、さらにその先を続けてお読みすることにいたします。「その際、人間尊重個性確立基本とし、国家社会に対する理解と愛情を育成し、さらに、国際理解精神を」養うよう特に意を用い、全体として「人間形成のうえから統一と調和のある教育課程を」編成すると、ここで特に私どもは「人間尊重個性確立基本とし」ということを述べておるのでありますが、このことは、憲法並びに教育基本法の核心となるものを基本といたしております。
  31. 加瀬完

    加瀬完君 それでは総理並びに文部大臣に伺いますが、今日の日本教育でこの憲法精神が踏まえられているという御認定ですか。
  32. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 憲法精神にのっとって教育は行なうべきものであるというような指導をいたしておるわけでございますのでこの線に沿って教育が行なわれておるものと思います。
  33. 加瀬完

    加瀬完君 憲法が尊重されておらない事実が明白になりましたら、その責任はだれが負うことになりますか、総理大臣に伺います。
  34. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 抽象的でちょっとわかりかねますが、もう少し具体的に。やはりその責任も具体的な事例について感じなければならないと思います。最終的また国政全般につきまして総理大臣が最高の責任者であること、これは変わりはございません。しかし、憲法違反ということになれば、どういうところだろうか、もっと具体的に。
  35. 加瀬完

    加瀬完君 重ねて総理に伺いますが、総理はたびたび、核はつくりません、持ちません、持ち込みません、とおっしゃっておりますが、この御発言は、再び核兵器による惨禍を日本に及ぼさない御決意と承ってよろしゅうございますか。
  36. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 佐藤内閣として、その方針に変わりはございません。
  37. 加瀬完

    加瀬完君 このことは教育方針でもあると考えてよろしゅうございますか。
  38. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、これは多分に政策的なものでございますが、しかし、憲法の第九条第一項が示している平和主義、その平和主義と全然関連のないものでもございません。したがいまして、私は、そういう意味で、この佐藤内閣のもとにおいてこれを少年にさように教え込んでもちっとも差しつかえないものだと思います。しかし、このこと自身は、憲法そのものじゃございませんし、これは政策的なものでございますから、そういう点の誤解のないように願いたいと思います。
  39. 加瀬完

    加瀬完君 では具体的に伺いますが、教科書原爆キノコ雲写真がたくさん出ておったわけでございますが、これは子供に見せてはいけないとお考えですか。
  40. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 原爆の被害という、まあたいへん悲惨な状態でございますから、事実を正確に認識するという上にはあるいは必要かわかりませんがこういう写真をそのまま出すことはいかがかと思います。ことに情操の点からどういうような影響を持つだろう、私はそういう意味で心配をいたします。
  41. 加瀬完

    加瀬完君 同じこと、文部大臣
  42. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) ただいま総理大臣お答えになりましたとおりだと思います。あまりまたどぎついものを小さな子供にそのまま見せるということは必ずしも適当でないという要素もあろうかと思います。
  43. 加瀬完

    加瀬完君 この前の検定のときには、いずれの本でもこのキノコ雲の載っておらないのはございません。今度はだいぶ除かれております。除いた理由は何でございますか、文部大臣
  44. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私は一々のことをよく承知いたしておりません。特に除いたのかどうかという点につきまして、政府委員からお答えいたさせます。
  45. 天城勲

    政府委員天城勲君) 御存じのとおり、検定でございますから、発行者のほうで提出した教科書に対して、検定基準に照らして検定をするわけでございます。まずイニシアチブは発行者のほうにございまして、特に検定基準に即して適しない点があればそれに意見を述べるというわけでございます。ことあらためて指図したというわけではございません。
  46. 加瀬完

    加瀬完君 その点についてはあとで触れます。水素爆弾日本人に再び死の灰のおそれを与えた、これは正しい史実ではございませんか。文部大臣に伺います。
  47. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 事実をそのままに書いておると思います。
  48. 加瀬完

    加瀬完君 では、これを削除しなければならない理由は何ですか。
  49. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 特に削除しなければならない理由があったのかどうか、削除させたのかどうかという事実については、私はよく承知しておりません。その点については政府委員のほうからお答えさせます。
  50. 天城勲

    政府委員天城勲君) 教科書検定は非常に点数が多いものですから、どこの教科書がどうこうということは私一々覚えておりません。基本的には先ほど申し上げたような趣旨検定をいたしております。
  51. 加瀬完

    加瀬完君 核兵器のおそろしさを強調するなということでこれは省かれました。これ、憲法の原則にも、総理がおっしゃっている方針にもはなはだしく食い違っているではありませんか。
  52. 天城勲

    政府委員天城勲君) 一般に私のほうで取り除くという方針でそういうことをいたしておるわけではございません。また、個々教科書のどこがどうだということを一々いまなにしたわけではございませんが、先ほど来申したような検定基準で、基準に即さないところがあれば意見を述べる。基本的には編集者のほうの考え方が教科書にはもとになっておるわけでございます。
  53. 加瀬完

    加瀬完君 かりに自主的に変更したとしても、これを検定したのは文部省ですね。それじゃあ、前の本が悪くてあとの本がよくなったという理由は何ですか。検定した責任者ですから答えてください。
  54. 天城勲

    政府委員天城勲君) よくなった悪くなったというよりも、教科書は、発行者のほうで、まあ新しい時代の進展に即してこういう創意を持った教科書をつくりたいという形で改訂なり新しい本の申請をしてくるわけでございまして、それが検定基準に即しているかどうかということを見るのがわれわれの仕事でございまして、これをぜひ入れろとかということもございませんし、また、これを削除しろと——削除しろということは、この前申しましたように、検定基準に即しない点については意見を申し上げております。そういうやり方をいたしております。
  55. 加瀬完

    加瀬完君 時間の関係で次に進みますが、これは外務大臣文部大臣に伺いますが、では、満州事変日本侵略だとは思いませんか。
  56. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 外務大臣歴史評価を申し上げることは、私は適当だとは思わない。ただ、言えることは、国際紛争を武力によって解決しようということは誤りである、これだけは言えると思います。
  57. 加瀬完

    加瀬完君 文部大臣、答えてください。
  58. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 歴史評価ということは非常にむずかしい問題だと思います。文部省といたしましては、歴史の変遷について記述をさしておりますけれども評価という問題については、きわめて慎重な態度をとっております。
  59. 加瀬完

    加瀬完君 では、次の二つの文の内容はどう御判断なさいますか。満州事変原因の一部の記述でありますが、「日本軍張作霖の乗っていた汽車を奉天郊外で爆破して張を爆死させた」、これは間違いですか。
  60. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) それは文部省検定を経た教科書でございます。文部省としましては、学習指導要領に照らしまして、検定基準に照らしまして、その記述について差しつかえないという考えのもとに認めております。
  61. 加瀬完

    加瀬完君 ところが、これは不合格になりました。削除されました。「奉天の近くで中国軍戦い満州事変を起こした」、これは正しいとお考えですか。
  62. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 事実については私つまびらかにしておりませんので、取り調べました上でまたお答えをいたしたいと思います。
  63. 加瀬完

    加瀬完君 政府委員に答えさせてください。
  64. 天城勲

    政府委員天城勲君) 教科書検定は総合的な評価でございまして、特定の教科書一定の個所だけが決定的な不合格理由であろうかどうかということは、個々教科書について見ないとわからないことでありまして、先生がいま具体的に提示になった本とそれから文がわかりませんと、そのときの検定合格、不合格の判定の理由は、私どものほうでは何とも申しかねるわけであります。
  65. 加瀬完

    加瀬完君 文部大臣が正しいと言った史実が、満州事変日本侵略だとは書くなということで訂正させられておる。この事実をどうしますか。
  66. 天城勲

    政府委員天城勲君) 現に教科書の中に満州事変のことにつきましては、事実についてのいろいろな記述のしかたをいたしておりますので、現行教科書をごらんになってもわかりますように、私も一々はこまかく覚えておりませんが、全体として原因、それから起きた事件等についてはかなり詳しく書いた部分もございます。したがいまして、いまの御指摘教科書については、そこだけで全体の不合格になったのかどうかということについて、いまお答えしかねるわけでございます。
  67. 加瀬完

    加瀬完君 私は不合格を言っているのじゃない。削除させたのは何だと言っている。文部大臣史実としては正しいというものをそのままいままで使われておった。それを削除させて、史実として正しくない、「奉天の近くで中国軍と戦って満州事変を起こした」という曲げた史実を表現している。これをどう思うかというのです。
  68. 天城勲

    政府委員天城勲君) たいへん同じことを繰り返して恐縮でございますけれども、削除させたとか取りはずした、取り除いたということにつきましては、当時の検定の資料を見ませんとわからないわけでございます。検定につきましては、先ほど来申し上げているように、全体の基準との関係意見を申し述べますし、それに対して教科書会社のほうからそれを直してくるわけでございますから、そのときの態度もいろいろあるわけでございまして、個々の具体的の問題につきましては、はっきりと申しかねるわけでございます。
  69. 加瀬完

    加瀬完君 私はたくさん例をあげますので、一つ一つどうしてこれを削除さしたのか、訂正さしたのかという具体的な事実について聞いている。その満州事変のところでは、「南満州鉄道が突然爆破された」という表現になって、その解説として、「これは日本軍が計画したものであることが後になってわかった」という説明がある。これも削除させられている。削除しろと言って削除させられているのです。削除してないと言うならばその記録を出しなさい。
  70. 天城勲

    政府委員天城勲君) たくさん教科書ございますし、何年の、何年度のどの教科書かわからなければ、私はこの場で御返事できないのであります。
  71. 加瀬完

    加瀬完君 文部大臣に伺いますが、中国との戦い太平洋戦争根本原因である。満州事変以来中国への侵略がもしなかったら太平洋戦争は起こらなかったに違いない。当時日本アメリカの間には、中国問題を除くと戦争しなければ解決できない問題はなかった、こう書かれている本がありますが、これは間違いですか。
  72. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 間違いであるとか間違いでないとかいうことを私この席ではっきり申し上げることはできません。
  73. 加瀬完

    加瀬完君 それでは政府委員やってください。政府委員どうですか、現在使われている中学の教科書ですよ。
  74. 天城勲

    政府委員天城勲君) 検定は、御案内のように、専門の調査官と調査員とそうして検定審議会委員が三段階の検定をいたしておりますので、合格した教科書につきましては、現在行なわれている教科書につきましては、検定合格した教科書でございますので、検定基準あるいは基本法その他に即して妥当と認定された教科書でございます。個々教科書の中身については、二百何十点教科書があるのでございますから、この場でお答えしろといっても、それは不可能なことでございます。
  75. 加瀬完

    加瀬完君 いまの内容が正しくないかという問題、いまの事実は正しいか正しくないかということを聞いているのです。
  76. 天城勲

    政府委員天城勲君) 合格して現行されている教科書としては妥当とされているわけでございます。
  77. 加瀬完

    加瀬完君 そんなことを聞いていない。この文章が正しいか正しくないかということを聞いている。
  78. 天城勲

    政府委員天城勲君) いまいろいろな部分的なお話について私にここで価値判断を求めるということは、いま、検定趣旨からいって私が最終の検定意見を申し上げるわけではございませんし、また、歴史教科書は全体を通じて通史的な扱いになっている。小学校なら通史的な扱い方中学校なら日本史世界史を含めた扱い方、いろいろございますものですから、いまおっしゃった部分的なことだけで私が判断するのはいかがかと思います。合格されている教科書としたら、妥当と検定をしたわけでございます。
  79. 加瀬完

    加瀬完君 それでは比較して御回答いただきます。ある本には、太平洋戦争原因として、「日本援蒋ルートを断ち切ろうとして仏印に進出し太平洋戦争になった」、「東南アジア植民地の解放と大東亜共栄圏をつくるために太平洋戦争が起こった」、「アメリカは英とともに日本の資金を押え、石油の輸出を禁じ、ABCDラインをつくって日本を取り囲んだ」、これが戦争の原因である、この記述を正しいと思いますか。
  80. 天城勲

    政府委員天城勲君) いま御質問教科書の問題でございますので、教科書検定につきましてては、繰り返し申し上げますように、一定機関を経て妥当なものは合格して教科書として使っているわけでございます。私がいま歴史上の問題についてここで個人的な見解を申し上げることは、教科書検定とは関係がないことじゃないか、かように思いまして、私の意見を申し上げることを差し控えたいと思います。
  81. 加瀬完

    加瀬完君 では大臣答えてください。いまの前のと、あとのと、どっちが正しいとお考えになりますか。
  82. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) この教科書検定につきましては、それぞれの専門家が十分検査いたしまして、これが教科書検定基準に合うか合わないかというところでこれを見ておるわけでございます。その個所を御指摘になりまして正しいか正しくないかということは、私がお答えするのは適当でないと考えます。ただし、検定についての責任はもちろん文部大臣にあるわけでございます。
  83. 千葉千代世

    千葉千代世君 関連。文部大臣が答弁を渋っているのは私、はなはだおかしいと思うのです。というのは、先ほど大臣は、教育については憲法から発した教育基本法を守っていくと、こうおっしゃったわけです。そうすると、憲法は私が言うまでもなく、平和と民主主義と人権を守ると、この三つを基調としたものからなっている。その憲法の二十六条を受けて、さらに教育基本法の十条があるわけでございます。したがいまして、教育基本法の大もとが憲法から発している以上は、この平和という一番大事な柱、戦争の反省の中から国民が一番大事に守っていかなければならない、これが守られている憲法、これから発した教育であるならば、当然教科書検定基準というものはこれに準拠していかなければならない。何を答えを迷っているのか。最近の教科書を見てきますというと、検定状況、後ほど加瀬委員が述べられると思うんですが、随所にこれがゆがめられている。一方には不当な権力が介入していく、教育の現場が荒らされていく、こういう中で、一番大切な子供たちが学ぶ教科書の中に再び権力の支配、あるいは軍国的な色彩を帯びてくるという不安があればこそ、具体的な例を追及しているのです。したがいまして、明快に文部大臣責任を持ってお答えをいただきたいと思います。
  84. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 憲法精神を守り、教育基本法精神を守るということは文教行政の根本であります。したがいまして、ただいまいろいろおっしゃいましたけれども、私ども憲法とか教育基本法精神を守り、佐藤総理の言われる平和に徹するということはきわめて大切なこととして、今日まで教育行政をやってきておるわけであります。誤解のないようにお願いいたします。
  85. 加瀬完

    加瀬完君 じゃあ総理に伺いますが、現憲法の解釈ですね、自衛のために先制攻撃をも認めるという説をおとりになりますか。
  86. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 現憲法のもとでは先制攻撃は認めない、こういうふうに私は理解しております。
  87. 加瀬完

    加瀬完君 前のあげたものは不合格であります。あとのあげた大東亜共栄圏をつくるためとか、ABCDラインを先制攻撃をするのは当然だという考え方のものは合格であります。そこで、理由は、文部省の調査官が、太平洋戦争の直接の原因は、ABCD包囲陣による圧迫である、こんな小さな島国があんな圧迫を受ければ、生きるためには自存自衛の戦いは当然である、ここを強調せよという指示がなされております、これをどう思いますか。
  88. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私はその指示ということについて承知いたしておりませんので、どういう考え方でその指示をしたかわかりませんけれども先ほど来申しておりますように、検定基準というものは、ただ局部局部だけで不合格にするとかなんとかということではございません。全体を通じての話であるということを御了承願います。
  89. 加瀬完

    加瀬完君 前の客観的な記述によって書かれたものが不合格になって、政治的な目的とも思われる、自存自衛のためには先制攻撃も当然という考え方に立ったものが合格をしておる。そうすると、検定基準というものは、あとのほうになるでしょう。それでよろしいかということを聞いておるのです。
  90. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) この教科書検定にあたりましては、政治的な要素は考えないで検定をしてもらうことになっております。
  91. 加瀬完

    加瀬完君 外務大臣に聞きますが、国際間の紛争は外交によって解決することが原則ではございませんか。
  92. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 全くそのとおりでございます。
  93. 加瀬完

    加瀬完君 そうすると、この調査官の考え方は違っていませんか。自存自衛のためには先制攻撃をしてもいいという考え方による基準でしょう、これは。
  94. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 歴史記述でございますから、その当時の事情に即して記述をしなければならぬと思います。
  95. 加瀬完

    加瀬完君 あとでその点は、そういう書き方が違反であるということを申し述べますが、法制局長官に伺いますが、自存自衛ということで仏印や東南アジアヘの侵略を当然と考える、そういう考え方が憲法上許されますか。
  96. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げます。  考え方ということでございますが、国民の、まあ個人がかりにどのような考え方を持とうと、それは憲法上はむしろ自由に属することであって、別に憲法その他の法律上の問題になることはないと思います。ただ、憲法は、国政の処理の方針と申しますか、指針と申しますか、そういうものを規定しておりますので、憲法に違反するような国政上の処理が行なわれるということになれば、これは憲法に違反するということになるわけであろうと思います。
  97. 加瀬完

    加瀬完君 同じ問題で文部大臣に伺います。
  98. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 現在の日本国憲法のもとにおきましては、先ほど外務大臣が申されましたように、国際関係の紛争は交渉をもって解決するというのがたてまえでございます。したがって、日本が先制攻撃をかけるというふうなことはあり得ないものと私は思います。
  99. 加瀬完

    加瀬完君 それならば、そういうような意味にとれる表現をしたものは基準にはずれるでしょう。  そこで外務大臣に伺いますが、ちょっと古い話で恐縮ですが、三国干渉は国際的詐欺にかかった事件と御判断なさいますか。
  100. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ歴史の見方というものはむずかしいが、私は詐欺だとは思ってない。これはあのときのやはり国際情勢——臥薪嘗胆ということばもここに出たわけでありますが、国際情勢やむを得ずああいうことになったものと、私個人の解釈は詐欺だとは思っておりません。
  101. 加瀬完

    加瀬完君 それでは文部大臣に伺いますが、三国干渉、「政府は三強国の圧力に屈してやむを得ずこの干渉に従ったが、戦勝を誇っていた国民は三国のやり方に大いに憤りを感じた。政府は外国の圧迫に負けないようにと盛んに軍備を整え、また大がかりな八幡製鉄所をつくった。このため国の予算は軍事費に多く割かれ国家主義の考え方が一そう強くなった」、この内容はどうですか。これは教科書に出ている。
  102. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 当時の日本の実情を説明するものとして、そのような記述が、検定が行なかれたものと思います。今日の頭によって判断をすべきことではないと、かように考えます。
  103. 加瀬完

    加瀬完君 政府委員に聞いてください。
  104. 天城勲

    政府委員天城勲君) 私から申し上げることはたいへん恐縮でございますが、同じことになると思いますが、検定合格した教科書でしたら、内容は妥当と判断されたもの思います。現行教科書にあることでしたら、検定基準に照らしてそう判断されたものだと、かように考えますし、一部分だけでなくて、特に歴史史実は、先ほど申しましたように、諷刺的に扱う部分とか、世界史との関係で扱う部分とか、いろいろございますものですから、全部がどうなっておるかということで最終的には検定判断がなされておるわけでございます。いま御指摘のことだけで、先ほど申し上げたように、個人的見解を述べる立場でないと考えております。
  105. 加瀬完

    加瀬完君 いいのか悪いのか。——では文部大臣に、次の文章は正しいと御認定ですか。「わが国は三国の軍事力をおそれてこの要求を受け入れた。このできごとで、生活は苦しくとも軍備を強める必要があるという気持ちを国民は強めた」。
  106. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 検定の当否についてはかれこれ申し上げることを差し控えたいと思いますが、私個人の考えといたしましては、その記述は当時の日本の実情を説明したものと思います。
  107. 加瀬完

    加瀬完君 先に読んだ文章はいまのように変えられたわけですよ。変えた理由は、三国干渉は国際的詐欺だ、臥薪嘗胆を十分に書けということであとのように変えられました。そこで法制局長官に伺いますが、武力の強化で国際紛争を解決するという方向が憲法上許されますか。
  108. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 先ほども申し上げましたように、ある特定の国民個人がそういう考え方を持つということは、これは憲法上その他法律上の問題として持ち出すことではないと思います。しかし、いまおっしゃいましたような例でございますが、国際紛争を解決する手段として武力を強化するということになれば、これは少なくとも憲法九条の禁止に違反するということに相なろうと思います。
  109. 加瀬完

    加瀬完君 法制局長官にさらに伺いますが、文部省調査官は、平和は力が必要だと書けという指示によりまして、いまのような方針に変わってまいりました。生活は苦しくとも軍備を強めることのみを強調することになりましたら、一体、教育基本法に触れてはきませんか。
  110. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 教育基本法は、申すまでもなく、憲法精神を体していることは言うまでもないと思います。ところで、平和は力だというようなおことばでございまして、その意味がよく理解しがたいところがございますが、平和は力によって保持されるというような御趣旨だとすれば、そしてまた、そういう趣旨が国政の上で実現されることになれば、それは先ほど申し上げたように、国政の処理上の大原則である、国際紛争を武力の行使によって解決することを禁止しております関係上、もしそういうことを国政上の何といいますか、措置といたしまして、平和を力によって保持する、あるいは国際紛争を、それを条文に当てはめて言えば、国際紛争を武力で解決するということを考え、しかも、考えるだけでなしに、それを現実に国際紛争を武力で解決するための武力を強化するということになれば、これは憲法九条に違反するということは明らかであると思います。
  111. 加瀬完

    加瀬完君 これは、おことばは私のことばではないのです。文部省の調査官のおことばです。
  112. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) わかりました。その文部省の調査官のことばの意味が、いま申し上げたようなことであれば、ただいま申し上げたとおりでございます。
  113. 加瀬完

    加瀬完君 うしろのほうでがやがやしておりますが、歴史の問題ではない。前の教科書あと読んだように改めたのは、文部省なんでしょう。検定方針がそうさせたのでしょう。その指示は、平和は力が必要だということを書けということで、生活は苦しくとも軍備を強めることを強調したわけです。強調する考え方は憲法に違反している。違反している方針でそうすると検定はされたということになりますね。文部大臣、この点はどうでしょう。
  114. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) どうもお述べになりましたことだけで私はとかくの判断はいたしにくいと思うのです。日本が平和国家であり、平和国家としての目標に向かって進んでおりますことは、申すまでもないことであります。その大方針と反するようなことを検定官が言うはずは私はないと思います。
  115. 加瀬完

    加瀬完君 それでは、あとで、言ったか言わないか、記録を出してもらいますけれども、そこで、審議会の会長さんと文部大臣に伺いますが、教育基本法制定の目的は何ですか。
  116. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 教育基本法は御承知のように、現行憲法日本国憲法に立脚して教育基本法ができておるのであります。したがいまして、この日本国憲法が大きな目標といたしておりますようなりっぱな国家にいたしますために、それをになうに足るりっぱな国民をつくりたいというところから、この教育基本法ができているかと思います。
  117. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 参考人意見聞きますか。——木下参考人
  118. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 教育基本法を定めるにあたりましては、戦後におきまして、日本教育の、新しい平和国家になりました結果といたしましても、その教育目的をいかに定めるかということから研究が始まりましたわけであります。
  119. 加瀬完

    加瀬完君 あなたはさきに、人間の尊重、個性確立ということを審議会の内容として重視をした。教育基本法には「真理と平和を希求する人間の育成」ということが目的になっておりますね。しかも、憲法を踏まえた新しい人間像をつくることが目的だと書かれておりますね。そうすると、平和的に書かれたものを富国強兵といいますか、個性確立や人間の尊重を破っても、防衛拡張といいますか、軍備をすべきだという考え方を教科書で教えることが許されますか。
  120. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 人間尊重個性確立ということをたてまえといたしておりまして、それによりましてできた教育基本法でございますので、武力とかなんとかいうことは考えておらない。
  121. 加瀬完

    加瀬完君 考えておらぬようなことが検定で表現されておることは、文部大臣いかがですか。
  122. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私は、この現在の教育はどこまでも、平和国家としての日本の大きな目標を達成いたしますためにりっぱな人材をつくっていくということにあると思うので、その大原則をいささかもくずされておらないと思うのであります。再び軍国主義に返るというふうなことは思いも寄らぬことであります。
  123. 加瀬完

    加瀬完君 思いも寄らぬことが教科書の上であらわれておりますから、質問しておるのです。  あらためて総理に伺いますが、憲法前文の「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」というこの一節は当然尊重されるものと考えてよろしゅうございますね。
  124. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろん憲法を守りますが、先ほどいろいろ質疑をこの横で聞いておりまして、ただいまの平和、世界の平和はどこにあるか、それはやはり力の均衡によって保たれている。それを一国の力によって平和を維持しよう、かようには考えておらない。何だか加瀬君のお尋ねだと、日本は一国の力によって平和の維持をはかろうとしているんじゃないか、そういう意味の富国強兵論をやってるんじゃないか、こういうような論旨にとれる質問のようでありますし、また、発展もその方向にいくんじゃないか、私は心配しているのですが、この機会に、私どもは、平和を確保しよう、そのことをはっきり申し上げたい。だから、いまの憲法は、ただいまお読みになりましたような崇高なる一つの理想を掲げておる。しかし同時に、日本の国が自衛力、自衛権を持つこと、これは否定はしておらないですね。この点では社会党の皆さんも同様だと思います。したがいまして、その自衛権、これはやはり憲法の承認したところ、しかし、日本は国力、国情に応じてその自衛力を持つという、整備するという、そういう基本的なものを考えております。教育においてもやはりそういうことだと思います。しかし、今日、世界におきまして核兵器のあることは、これは否定できないことであります。そういうもとにおいて日本の安全を確保する場合に、私どもは、政策として日米安全保障条約、それを選択をしている、ここに問題があるわけです。したがいまして、ただいま言われておるように、一国の安全を確保する、あるいは平和を維持する、それが力だけではないんだと、こういうことは先ほど外務大臣も、同時にまた文部大臣も答えておる、かように思います。私はそういう意味で、やはり富国強兵論——明治時代の富国強兵論、これは今日の憲法のもとにおいて考えられていないということ、これはもうはっきり申し上げておきたいと思います。
  125. 千葉千代世

    千葉千代世君 関連。
  126. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) あまり関連が多くなると困るのですが、一問にお願いします。
  127. 加瀬完

    加瀬完君 総理のおっしゃることはよくわかります。教科書がそうなっていないということを私は申し上げているのです。
  128. 千葉千代世

    千葉千代世君 いま佐藤総理は、明治時代の富国強兵論ということは考えていないとおっしゃったですね。たとえば、いわゆる国策、こういう名のもとに教科書が漸次変えられていく。いま加瀬委員侵略の問題を言われたのですが、いま国策の問題を一つとってみましても、昭和四十一年に家庭科の教科書は変わったわけです。それまで日本人は大体一人当たりが一日十二・九グラム消費の砂糖がが四十五年までで一人当たり五十グラムを消費せよ、こういうふうになっている。そこで先生方が相談して栄養についてもたいへん問題がある、この五十グラムのお砂糖を消費していくためには、牛乳四合をとらなければカルシウム等のバランスがとれない、こうなります。そうしたところが、文部省のほうでは、いや、大蔵省から頼まれたんだ、お砂糖がずっとふえてたくさんになっていくと、消費しなければならない、こういうことになりますというと、これは何のための国策だと、明治時代のような富国強兵ではないとおっしゃったけれども、いわゆる国策という名によって、ある一部の独占資本に奉仕するような、このいわゆる産業構造の問題が教科書の中にすでに侵入してきているわけなんです。さっき天城局長がおっしゃったのですが、部分的なことではわからない、総合しなければわからないとおっしゃったのですけれども、これはあらゆる教科書にありますから、それを総合してずっといきますというと、たいへんな問題が出てくるわけです。しかも、こういう問題をよけて各地方の教育委員会が、たとえば明治百年についてはこれこれ、もっと具体的に言えば、鹿児島県あたりでは——あなたは鹿児島県ですね、西郷さん、この明治百年祭には教育委員会が七万のパンフレットをつくって、たいへんな予算をかけておるのです。数字は持っていませんけれども、その中で、西南戦争から始まって、ずっとあるわけなんです。その中に、平和の問題が全部抜けている。教育基本法憲法も抜けております。それを配ってきているのです。明治百年の中には、ずっと一番大事な最後の憲法の問題が抜けているから、どうして抜けたのですかという現場の先生から追及があったらば、これは脱漏いたしましたから、よろしく御指導くださいということの回答があったと、こういうのです。何でしょう。教育委員会ですよ、木下教育委員長もいらっしゃいますけれども、こういうふうな総合的に考えますと、日本のもとから裏まで、どういうような教育体制が仕組まれて現場を侵食していっているかということを考えたときに、あれは単に明治時代の国策云々ということでは、私は答弁は不満足でございます。
  129. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま別にお尋ねでもなかったように思いますけれども、御意見を伺って、私はたいへん不満足でありますという、それが結論だったように思います。私はまあ、いま御高説を拝聴したように思います。しかし、ただいま私はこんな冗談めいたことを申してたいへん恐縮ですが、教育の問題はたいへん重大でございますし、ことに、この日本の運命を託する次の世代をになう青年諸君のその教育でございます。したがいまして、私は教科書の選定、これはたいへん力を入れておるところでありまして、そうして、各界各党の御意見も伺って、そうして、その選定をするという、それが正しくなければならない。私はそういう意味で、ただいま御注意が、さらにその検定にあたってもっと選択、それに注意しろ、こういうお話じゃないだろうかと、かように伺っておるのでありまするが、一々私、私自身が選定したわけでもございませんので、具体的には存じないことも非常に多いんですけれども、問題は次の世代をになう青年の教育、かように考えますと、これはたいへんな問題だと、そういう意味政府はもちろん、また文部当局ももちろん、そういう意味で青年の教育に万全を尽くすよう、この上ともいたしたいと、かように考えます。
  130. 千葉千代世

    千葉千代世君 関連。
  131. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 関連はもう、一問にしてください。
  132. 千葉千代世

    千葉千代世君 一問という規則をだれがきめたんですか。
  133. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 議事進行さす上に、なるべく御遠慮を願いたい。関連の質問意見をたくさんお述べになりますと、どっちが中心の質問者かわからなくなるのですよ。
  134. 千葉千代世

    千葉千代世君 いま答弁中です。
  135. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ですから、簡略にしていただかないと困るんです。簡略にお願いします。千葉君。
  136. 千葉千代世

    千葉千代世君 総理大臣に伺います、重ねて。あなたは国策の問題について、いま御意見拝聴した云々とおっしゃったんですけど、さっき、自衛権はみんなお互いに持っている、社会党も持っていると、あなた、こうおっしゃったんですね。どういう意味のことでしょう。たとえば、あなたの頭の中にある自民党の自衛権、あるいはあなたの、総理としての自衛権、社会党はどういう自衛権を考えているかということを、あなたはどういうふうに把握してそれをおっしゃったんですか、それを一言だけ聞かしていただきたい。
  137. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 社会党のことに触れたことが気に食わなければ、それは取り消します。
  138. 千葉千代世

    千葉千代世君 関連。
  139. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) もう関連はそう何度もやらないでください。千葉さん、やめてください。
  140. 加瀬完

    加瀬完君 では、この憲法前文の点を教育上主張されることはいかがですか。いまおっしゃいましたね、憲法全体でもいいです。憲法精神、あるいは憲法内容というものを教育上強く主張することはいかがですか。
  141. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは先ほど文部大臣お答えいたしましたように、この憲法を受けて教育基本法ができ、これを忠実に守っていく、かように考えております。
  142. 加瀬完

    加瀬完君 ついでにまた総理に伺いますが、じゃあ戦争肯定というような考え方は許されませんね。
  143. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはもう先ほど外務大臣お答えしたとおりでございます。
  144. 加瀬完

    加瀬完君 ある本にですね、「戦争の惨禍」という写真を掲げて、その説明に、これは憲法前文の切実な意味をあらわしているのではないという説明を書きましたらね、その写真が非常に残酷だということで、次のような指導、指示がなされました。「もっと戦争の明るい面、たとえば出陣する学徒、工場で働く女生徒のように一生懸命協力している面を出せ」、こういうことでこれは没になりました。どういうことでしょうか。
  145. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 没になったと、こういうお話でございますけれども、私はその教科書のこともわかりませんし、どういう理由でなったのか具体的にそういうことはつまびらかにいたしておりませんので、その点はひとつ御了承いただきたいと思います。ただ、教科書に記載する事項といたしまして、あまりに残酷な、残虐なようなものを幼い子供たちの前で見せることがいいか悪いかという考え方は、私はあろうかと思います。また、戦争のことを書きます際に、その残虐の面だけ書いたことがはたして適当であるかどうか。戦争のいろいろな様相というものが記述されるということも、あながち否定すべきものでもないと思います。
  146. 加瀬完

    加瀬完君 これは問題になっている家永裁判の教科書であります。戦争の明るい面とは何ですか、戦争協力が明るい面ということですか、これはあわせて政府委員見解を承りたい。あなた方が検定したんだから、答えなさい。
  147. 天城勲

    政府委員天城勲君) 戦争の問題につきましては、できるだけこれを客観的に扱うという態度がとられておりまして、第二次大戦につきましても、現在の教科書にはそういう態度で一貫して書かれているわけでございます。なお、いま具体的にお話のございました写真の問題につきましては、先ほども大臣がお答えいたしましたように、あまりにも悲惨な風景は避ける。これは子供の発達段階、それぞれを考えておる次第でございます。なお、戦争の明るい写真を入れろと言ったというお話でございますが、非常に悲惨な暗い写真に対して、そういう議論が出るのかもしれませんけれども、特に戦争の明るい写真というような考え方を——私たちもいまのおことばだけではよくわからない。おそらくそのときには、それとの比較の問題でそういう議論が出ていたんじゃないかと、これは推測でございますが、考えております。
  148. 加瀬完

    加瀬完君 家永さんは、出陣する学徒、工場で働く女生徒のように戦争に一生懸命協力している明るい面を出せという注意を受けてこれが不合格になったと、こう言っている。だから、戦争協力を明るい面とお認めになりますかどうか、これは文部大臣に伺いましょう。
  149. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 明るい面と暗い面というようなおことばでございまけれども、私は、戦争に際して協力した事実、それを教科書に書くことがいいか悪いかという問題はまた別のことでもあろうかと思いますけれども、戦争に協力した国民の活動状況というようなものは歴史としてやはり記録せられるべきことであろうかと思います。
  150. 加瀬完

    加瀬完君 じゃ重ねて伺いますが、国防精神の高揚のためには、歴史教育においても戦意の高揚を教育する必要があると、こうお認めになるんですね。
  151. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 戦意の高揚というようなことを、今後の歴史教育におきまして私どもは強調しようとは考えません。
  152. 加瀬完

    加瀬完君 最近の教科書でそういう方法がとられていることはお認めになりませんか。——とられておりましたらどうします。
  153. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 戦意の高揚をはかるような趣旨において、教科書検定は行なっておらぬと思います。
  154. 加瀬完

    加瀬完君 ある教科書には、新しくさし絵として、学徒動員、集団疎開、徐州へ進む陸軍部隊、女子学生の軍事教練、東条首相と宣戦布告、遺児を励ます東条首相、真珠湾攻撃といったものが新しく掲げられました。これが徐州へ進む、それから学徒動員の写真でございます。これ新しく入れられたんですよ。これは戦争肯定ですか、否定ですか、どっちです。
  155. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 先ほどから申しておりますように、教科書の編集は発行者がするもので、それが私ども教科書検定基準に違反しない限りは、これを認めておるわけでございます。いまお話しになりましたような写真が載っておるのか載ってないのか私は事実は知りませんけれども、そういうことも歴史上の一つの事実として記述せられるものにつきましては、特にこれを否定する理由はないと思います。
  156. 加瀬完

    加瀬完君 あとで述べますが、いままでは平和的なさし絵の記載というのがあった。戦争を否定するさし絵の記載が多かった。それを、戦争を肯定か、あるいは戦意高揚か知りませんが、いまのようなものに改めた一体文部省検定方針というのは、どういうことですか。
  157. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私はそのことをもって戦争を肯定したということにはならないと思います。
  158. 加瀬完

    加瀬完君 めちゃめちゃですよ。いいですか、ここに戦没兵士の遺児を励ます東条さんの写真が出ている。この写真の本文は——「戦争が激しくなるにつれて国民の苦しみも大きくなった。中学生以上は工場や農村に動員され、学業の途中で兵役についたり、一家をささえる人も召集されたりすることも多くなった。生産は戦争に必要な物資だけになり、生活物資が欠乏して物価が上がり、国民の生活は非常に苦しくなった。」、こういう本文に対して、「遺児を励ます東条首相」というのは、どういうことですか、つながりがないじゃありませんか。これは政府委員に説明を求めましょう、文部大臣がしろうとなら。どうしてこの写真をここに入れなければならない理由がありますか。
  159. 天城勲

    政府委員天城勲君) 個々教科書のことは、私もつまびらかには存じませんけれども、その写真を挿入しろと検定の段階で申し上げたことはないと思いますし、またいまのお話で、前に新聞にも出たことで記憶があいまいでしたら、また間違っておりましたら直しますけれども、現在の教科書にはそれはないのではないかと思っております。その後出版社のほうで自主的にそこのところは直されたのではないかと思っております。ちょっと最後のところはあいまいですが、特に指示してその写真を入れろと言ったことはないと思います。
  160. 加瀬完

    加瀬完君 問題は、直された直されないじゃない。本文にも少しも関係のない東条さんの写真を入れた、しかもそれを検定合格させた理由は何だと聞いているのです。
  161. 天城勲

    政府委員天城勲君) 全体の事実を見ないとわかりませんけれども、当時特に不適当でないという判断検定がなされたのだろうと了承いたしております。
  162. 加瀬完

    加瀬完君 もう一回、もう一回。答弁わからないよ、もう一回、もう一回。
  163. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 答弁の趣旨がよくわからないそうで、もう一度願います。
  164. 天城勲

    政府委員天城勲君) その写真を挿入しろということを検定して、検定合格したとは私は思っておりませんが、結論としては、全体の叙述の中で妥当だと判断されて検定審議会を通ったものだ、このように理解しております。
  165. 加瀬完

    加瀬完君 そこにいて聞いてください。本文と関係のないものだというので、多くの写真が没になっている。これだけ本文と全然関係ないのに入れたのは、どういうわけですか。特別の理由がなければならない。それを述べなさい。
  166. 天城勲

    政府委員天城勲君) 個々検定の事情は、ここで私あまりつまびらかにしておりません。しかし、結論としましては、先ほどから申しておりますように、検定審議会で最終的に妥当、こう判定されたものが現在の教科書でございますので、特に検定基準に照らして不都合なものでないという判定が下ったものと、このように理解しております。
  167. 加瀬完

    加瀬完君 ちょっと天城さんね、ほかのものは、本文に合わないものはみな没にしているでしょう。これだけ本文に全然関係のないものを入れたのはどういうわけですかと私は聞いている。
  168. 天城勲

    政府委員天城勲君) ですから、繰り返して申しますが、文部省が入れろと言って入れた写真ではないと私理解しておりまして、出版社のほう。
  169. 加瀬完

    加瀬完君 検定通したのはどういうわけだ。
  170. 天城勲

    政府委員天城勲君) 全体として教育の中で妥当と判断されたから合格になったものと、このように理解しております。
  171. 加瀬完

    加瀬完君 妥当だというのは、どういうわけで妥当か、それを聞いているんだよ。戦争についてのさし絵、写真を調べてみますと、旧来の五社について調べますと、戦争批判や戦争の悲惨をあらわしたもの八十六、戦争の戦果または協力を意味するものが三十九であります。それが、現在使われている中学校の社会科の歴史では、戦争肯定が六十三、戦争批判が三十と逆転したわけです。この理由は何です。これは文部省基準でこういうふうになった、検定のやり方でこういうふうになった、その理由を伺いたい。
  172. 天城勲

    政府委員天城勲君) 歴史上の戦争の扱いにつきましては、私たちは、いま先生おっしゃった、戦争肯定が何件、否定が何件というような分類のしかた、要するに戦争を肯定するというような意味での検定基準を設けたわけではございません。子供の発達段階に即してできるだけ客観的に処理すると、一面的な解釈、扱い方はしないと、こういうのが検定基準であります。
  173. 加瀬完

    加瀬完君 しかし、いま指摘したとおり、戦争肯定の写真がうんとふえた。前には戦争否定の写真が多かった。そこで文部大臣に伺いますが、戦争の反省などは子供関係ないと思いますか。
  174. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 平和教育を徹底したいと考えておるわけでございます。子供に対して戦争を鼓吹するようなことはあってはならぬと思っております。したがって、戦争の反省ということも、子供の発達段階に応じての教育ではございますけれども教育基本としては十分考えなければならぬと思います。
  175. 加瀬完

    加瀬完君 戦争の反省など子供関係ないと指摘した調査官がおりますが、いませんか。
  176. 天城勲

    政府委員天城勲君) 現在、ごらんになればわかりますように、教科書全体に戦争の反省というのはいろいろの個所に出ております。検定の立場も、その立場を堅持いたしております。
  177. 加瀬完

    加瀬完君 いま出ていない例をたくさんあげたでしょう。何を言っている。検定の第一基準指導要領ですね。現在の指導要領には、この点をどう規定されていますか。
  178. 天城勲

    政府委員天城勲君) 御案内のように、小学校社会科の六年で通史的な歴史を取り上げておりますが、そこでは、基本的にいろいろなことがございますが、「世界の平和や人類の福祉に貢献しなければならないわが国の立場について考えさせる。」という点で、この小学校六年の通史の社会科の目標が掲げられております。内容につきまして一々戦争の反省というようなことばを使っておりませんが、たとえば「国家間の利害の対立や紛争はなお絶えず、特に原子力時代といわれる今日では、これを戦争という手段によって解決しようとすれば、人類全体にとって恐るべき結果が予想されるので、人々の平和への願いはいっそう高まってきている。」というような、そういうような趣旨指導要領の内容にいたしておりまして、当然戦争についても反省すべき点は反省するような扱いができるように指導いたしておるのであります。
  179. 加瀬完

    加瀬完君 中学校歴史には何と書いてあるか。
  180. 天城勲

    政府委員天城勲君) 中学の社会科の目標には、「われわれが国際社会に対して果すべき役割を自覚させて」、と、そういうような表現がございます。また、非常に長い前後がございますが、「世界平和の実現に進んで協力しようとする意欲と態度を養う。」、あるいは「他国民と協力し、世界の平和の確立に貢献しようとする態度を養う。」というような形で、国際関係、それから歴史扱い方をいたしております。これはいろいろな点が入っておりますけれども、特に戦争や国際紛争に関しましては、このような観点で指導いたしておるのでございます。
  181. 加瀬完

    加瀬完君 それでは、現行指導要領には、大戦について反省し、特に戦争のもたらした人類の不幸について考えさせるという内容はありませんか。
  182. 天城勲

    政府委員天城勲君) 中学校の社会科の歴史関係でございますが、最後の文章のところに、「また、この大戦について反省し、特に戦争のもたらした人類の不幸についても考えさせることがたいせつである。」という学習指導要領に規定がございます。
  183. 加瀬完

    加瀬完君 では、中学校社会科指導書は憲法をどう取り扱えと規定しておりますか。
  184. 天城勲

    政府委員天城勲君) 憲法扱い方は、先ほど来の大臣の御答弁にもございますように、学習指導要領憲法及び基本法を大前提にいたしておりますので、いろいろな分野で憲法考え方というのがいろいろな表現を通じて出ているわけでございます。特に憲法そのものにつきましては、社会科の中で、政治組織という中で「日本国憲法と民主政治」という扱いがございます。もちろん憲法の中にあるいろいろな章条につきましてはここだけで規定するわけではございませんが、「民主政治の組織」という面で、日本国憲法の性格と申しますか、立場は、この指導要領で規定されております。
  185. 加瀬完

    加瀬完君 ちょっと委員長中学校社会科指導書に憲法をどう取り扱えと書いてありますかと私は聞いているんです。その資料がない。資料を見なければ質問できませんから、ひとつ休憩して資料を整えさせてください。
  186. 天城勲

    政府委員天城勲君) いま申し上げました点を、指導要領の表現について申し上げますと、社会科の目標、内容という内容のところに入ってまいりまして、「民主政治の組織と運営」の中に、「日本国憲法の大要に触れ、国や地方の政治のしくみと働きについての理解をもとにして、主権が国民にあることに」という書き出しで、憲法の性格、骨子というようなものを教えるように中学校ではいたしております。
  187. 加瀬完

    加瀬完君 だめですよ、それじゃ。指導書じゃないですよ、いま読んでいるのは。私が伺っているのは、指導要領という教科書をつくる基本にはこう書いてある、しかも教科書を扱えという基本指導書には、憲法についてどう扱えと書いてある、それに非常に違反をしておりますから、その基本はどういうものか出せと言っておる。それが出せなくちゃ次の質問ができませんのでね。
  188. 天城勲

    政府委員天城勲君) たいへん失礼しました。私、指導要領のあれだと思っていまお答え申し上げました。
  189. 加瀬完

    加瀬完君 指導書。
  190. 天城勲

    政府委員天城勲君) 指導書、いま手元にございませんので、すぐ取り寄せますが、持ってきて……。
  191. 加瀬完

    加瀬完君 じゃそれまで休憩してください。
  192. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 加瀬君、いまのあれはちょっと時間がかかりますから、次をやっていただきたいと思いますが。
  193. 加瀬完

    加瀬完君 いや、次たってこれから、それを確認してもらわなければ質問できない。  そのかわり、木下さんの質問をもう省きます。お帰りいただいてけっこうです。
  194. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 木下参考人、よろしゅうございます。終了いたしましたから。
  195. 加瀬完

    加瀬完君 木下先生、悪いですけれども、もう四、五分。  教育審議会会長さんに伺いますがね、今度の答申は、国民としての自覚と誇りを強調していますが、日本世界の人類に対して、帝国主義の反省をすることは必要がないとお認めになっておりますか。
  196. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 私どもは、これから先の日本教育のことを考えておりますから、そういう意味におきまして、国民的自覚ということを十分必要だと思っております。
  197. 加瀬完

    加瀬完君 それは必要ですよね。しかし前には、戦後の教育方針では、歴史教育の目的としては、もちろん自国の歴史を知り、国民たるの自覚を得ることが目的ではあるが、特にいままでの日本の帝国主義の反省ということを大きい目的としておったわけですね。これを省いたのはどういうわけですか。
  198. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 帝国主義の反省というようなことにつきまして、特に断わりませんでも、これから先の教育は、自然そういう反省になっておると私は考えております。
  199. 加瀬完

    加瀬完君 その点が結局非常に欠けているのです。いま教科書でいろいろ例をあげたように、なぜ一体これを省いたか、特別に。
  200. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 今後の教育課程におきましては、十分慎重にそういう点、研究をいたしております。ただし、私は、もう一つお答えの中に入れさせていただきますが、およそ私どもは社会的存在でありますが、社会的存在ということは、日本国民としての社会的存在でありまして、したがって日本国民としての社会的存在である以上は、日本歴史、伝統というものを断ち切ることはできないと思っております。それに立脚いたします。
  201. 加瀬完

    加瀬完君 その考え方おかしい。悪い歴史の過去というものは、これは断ち切るべきです。そこで、帝国主義の行動というものは反省しなければならないという立場で、教育基本法から類推されて、当然指導要領もそうなっておる。そこでその点を一つと、もう一つは、教育課程審議会において、憲法を尊重すべきであるという、どういう議論が行なわれましたか、伺います。
  202. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 憲法教育基本法をもとにいたしますことは、もう冒頭におきまして先ほど述べたとおりでございます。したがいまして、その精神が入りまして、人間尊重個性確立ということが入ったわけであります。それから、これから先の日本教育におきましては、さような意味におきまして、さらに世界的な中における日本という立場からのいろいろの観点を含めて、教育の中に入れておるわけであります。
  203. 加瀬完

    加瀬完君 その教科書の中でも、教育の方々の上でも、憲法教育基本法が非常に軽視されておる。そういう御意見は開陳されなかったか、どなたかから。
  204. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 軽視されるとか、されないとかいう問題につきましては、あまり議論なかったようであります。しかしながら、今後の教育におきましては、憲法教育基本法を土台とするということにつきましては、各委員から御発言があり、熱心に御意見があった……。
  205. 加瀬完

    加瀬完君 さっき申し上げましたように平和的な象徴をしておりまするさし絵が全部とられて、戦争肯定のようなさし絵というのがたくさん出てきた。こういう形の上で国民的自覚、あるいは審議会の答申の国民としての姿をもっと率直にあらわせということになりますと、この教科書はさらにいまの教科書の方向に進めてよろしいという御判断ですか。
  206. 木下一雄

    参考人木下一雄君) ただいまいろいろ教科書につきまして御指摘がございました。解釈はいろいろ立つと思うのでありますが、私は、現在並びに将来における政育におきましては、御心配のようなことはないと思っております。ただ、史実というものは非常にむずかしゅうございまして、審議会の過程におきましても、歴史史実につきましては十分論議が重ねられました。したがいまして、ただいま教科書につきましての御指摘がございましたが、歴史という学問が進歩してまいりますと、新しい史実というものがだんだん出てまいります。したがいまして、過去の史実に拘泥をしておるということは、歴史学の進歩の上からは考えられない。新しい史実によりまして歴史の解釈というものは出てくると思います。
  207. 加瀬完

    加瀬完君 それはそのとおりでしょう。しかし、新しい史実に基づいて歴史教科書が編さんされている方向ではない。国史的な見方をして、もとの見方に返っている。戦争前、戦争の間の見方に返ってきた。これを私どもは憂えるのであります。学問的じゃないんです。学問的でないという方向をどう規制なされますか。
  208. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 私は、学問的である、ないということは、社会科の歴史関係する分野の根拠にはなると思うのであります。しかしながら、歴史学の学問そのままが社会科の教材になるとは考えられないのでございます。また、御心配になりましたようなことは、私ども教育過程を審議する間におきましても、かりにもとへ返るというようなことは考えられない、とうてい考えられないと思っております。
  209. 加瀬完

    加瀬完君 先生は、ききに、学問的基礎に立ってという基本方針をお出しになりました。学問的基礎には一つも立っておらないのです。それを問題にするのです。学問的基礎に立って、正しい史実というものを取り上げるという方向になりますか。
  210. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 学問の根拠はどこまでも必要でございます。しかしながら、その学問の根拠に立ちまして、教育の面に社会科の教科といたしましての内容になってまいりますものであります。むろんそこには学問の根拠が教育内容になって出てきておるのでありますが、その内容を、ただいま私ども教育課程を審議する過程におきましては、御心配のような見解は一つも私ども持っておらなかったということを申し上げます。
  211. 加瀬完

    加瀬完君 よくわかりました。
  212. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは、午前中の審議はこの程度にいたしまして、十二時四十分に再開いたします。  これにて休憩いたします。    午前十一時四十一分休憩      —————・—————    午後一時二分開会
  213. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは予算委員会を再開いたします。  まず、委員の異動について御報告いたします。  本日、宮崎正義君及び吉江勝保君が委員を辞任され、その補欠として黒柳明君、青木一男君が選任されました。     —————————————
  214. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは、午前に引き続きまして質疑を続行いたします。加瀬君。
  215. 加瀬完

    加瀬完君 答弁を文部省のほうから先にしていただいて、それから。
  216. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) さきほどの加瀬委員の質疑に対する答弁を願います。
  217. 天城勲

    政府委員天城勲君) 中学校の社会科の指導書におきます憲法扱いでございますが、「日本国憲法の大要に触れ、国や地方の政治のしくみと働きについての理解をもとにして、主権が国民にあることについての自覚を高める。」というのが一つと、これに関して具体的な解説がございます。また、「日本国憲法と民主政治」につきましては、「日本国憲法は、基本的人権の尊重、平和主義国民主権、三権分立、代議制、議院内閣制などの基本的な原則に基いていることを認識させ、あわせて、天皇の憲法上の地位について理解させる。」ということで、約一ページにわたって内容の解説をいたしております。これは中学校の三年の社会科の関係でございますが、扱いにつきましては、「歴史的分野の学習を基礎とするのもつの方法である」ということは言っておりまして、歴史扱いにおきましては、むしろ憲法の中身は社会科の第三学年のほうに譲りまして、二学年の歴史の中身におきましては、「ポッダム宣言に基く占領政策下に、日本の民主化をさまたげるものを除去し、民主化を進めることに努力した諸改革があげられる。例示してみると、政治面ではいわゆる天皇の人間宣言、新憲法の制定、民法の改正」等の通史的な扱いで述べられておるわけでございます。あと、社会、経済面の改革などについても触れておりますが、長くなりますので省略させていただきますが、要は、歴史と社会の関係において憲法扱いをいたしております。
  218. 加瀬完

    加瀬完君 戦争放棄。
  219. 天城勲

    政府委員天城勲君) 恐縮でございますけれども、時間をかしていただきます。——いまの日本国憲法の解説の続きのところに、「日本国憲法が、基本的人権の尊重、国民主権、平和主義の三つの基本原則と、これらに基く各種の権利および自由の保障、戦争の放棄、代議制、三権分立制」ということで、戦争放棄の条項にも触れております。
  220. 加瀬完

    加瀬完君 ちょっと。憲法の戦争放棄の条項は、他国に見られない徹底した平和主義のたてまえをとっていることを理解させるという内容はございませんか。
  221. 天城勲

    政府委員天城勲君) たいへん恐縮でございました。いま、ずっと長いもので、途中で省略いたしましたが、その文章のずっと先のほうで、「憲法の戦争の放棄の条項は、他国にみられない徹底した平和主義のたてまえをとっていることを理解させることが望ましい。」としております。
  222. 加瀬完

    加瀬完君 では、調査官のたれがどの教科書会社に対して、戦争の反省、あるいは戦争の放棄を強調するいまの指導書の内容を指示しておりますか。その記録をお示しいただきたい。
  223. 天城勲

    政府委員天城勲君) 教科書検定の仕組みに関連をいたしますので、いまのお話の前に、ちょっと仕組みを申し上げまするが、教科書検定は、御案内のように、教科書検定の審議会、それから教科書調査官、それから調査員の組み合わせでやっております。非常に大ぜいの人間が三段階に目を通しまして、最終的に検定審議会の決定を経て意見が出てくるわけでございまして、個々教科書の調査官の意見教科書会社に指示をするわけではございませんので、最終的には審議会の意見に基づいて、担当の社会科なら社会科、国語なら国語の調査官が著者と話をする、発行者と話をする、こういう仕組みでございます。
  224. 加瀬完

    加瀬完君 それでは、教科書調査官の職務について御説明いただきます。
  225. 天城勲

    政府委員天城勲君) 教科書調査官は、文部省設置法の施行規則の第五条の二に規定されておりますが、主任の教科書調査官と、それから教科書調査官と二種類ございます。教科書調査官は、上司の命を受け、検定申請のあった教科書の調査に当たり、また、主任教科書調査官は、その担当する教科について教科書調査官の職務の連絡調整を行なうというのが法令上の職務でございます。
  226. 加瀬完

    加瀬完君 法制局長官に伺いますが、「上司の命を受け」というのであれば、当然、上司に対して職務の執行状況を報告する義務があると解してはいけませんか。
  227. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいま文部省当局からお話がありました条文をいま拝見しましたが、上司の命を受け、調査に当たるというので、その調査に当たることについて上司の命を受けることは、ことばの意味から明らかでございますが、その結果を報告して悪いかということは、むろんございません。いずれにしても、上司の命を受け、調査の事に当たる……。
  228. 加瀬完

    加瀬完君 いや、報告する義務があるのじゃないか。「上司の命を受け」ということであれば。
  229. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) それは命の中身次第だと思います。上司の命令の範囲内でやることがあれば、むろんそれでもよろしいし、場合によって、あと報告をしろというようなことがあれば、これはむろん命令の中身になると思いますので、そういう場合には、そういうこともあり得るだろうと思います。
  230. 加瀬完

    加瀬完君 席に早くお着きください、質問をいたしますから。「上司の命を受け」ということであれば、当然義務を生ずるんじゃありませんか。というのはね、この職務規定の中には独立性は認められてはおりませんね。調査官は、結局、教科書検定などに対して調査をするわけです、上司の命を受けて。そうすれば、調査内容に対する上司に対する報告義務は当然あるんじゃありませんか。
  231. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 私は、条文を読みます前には、職権の中身から言いまして、ある程度職権行使の独立性が担保されていい仕事ではないかと、ひそかには思っておりましたが、いまの条文の根拠を見ますと、「上司の命を受け」、「調査に当たる」ということでございますので、まさに、その上司の命の中身次第ということに相なるだろうと思います。
  232. 加瀬完

    加瀬完君 中身は、法律に準ずる命令に規定されておるわけですから、義務があると私は解すべきだと思う。  そこで、この調査官を中心とする検定制度について、この仕組みをひとつ御説明いただきます。
  233. 天城勲

    政府委員天城勲君) 教科書検定の組織でございますが、教科用図書検定調査審議会という文部大臣の諮問機関がございまして、この調査審議会の答申に基づいて文部大臣検定を行なうという仕組みになっております。審議会のほうは三つの分科会がございまして、検定に直接当たっておりますのが検定調査分科会でございますし、九十人の委員で構成されております。そのほかに、先ほど申し上げました教科書調査官が専任の制度として文部省に置かれております。別に、教科書検定について調査員というのが広く教育界の経験者の中から選ばれておりまして、それは申請件数その他によって数は違いますが、五百名前後、五、六百名近いときもございますが、こういう調査員制度がございます。申請がございますと、最初に、いわゆる白表紙の原稿で——これは発行者も著者も全然ついてない内容だけに白表紙をつけた原稿本があるわけでございますが、これにつきまして調査員三人で、三人一組みになりまして、その原稿本を調査いたします。その結果は、三人がそれぞれ調査意見を付して、評定をつけて提出いたします。個々三人が同じ原稿を別々に見るわけでございまして、独立に意見を述べるわけでございます。一方、文部省のほうの教科書調査官は、それぞれ担当教科がございまして、それも複数でございますが、これは共同して調査いたしまして、その意見は調査官のまとまった意見として、意見と評定が出てくるわけです。この、いわば調査官のグループから出る一つの意見調査員から来る三つの意見、四つの意見を、先ほど申しました検定調査分科会に提出いたします。ここで、分科会の中に九つの専門別の部会がございますが、それぞれの担当者が、これらの方々もあらかじめ原稿を見ているわけでございますが、その調査意見と評定をもとにして慎重に検討いたすという仕組みになっております。その結果、合格のものと、それから条件つきの合格のものと、不合格という判定が出るわけでございますが、先ほども申し上げましたように、これらの御意見は、検定調査分科会におきまして全体の意見としてまとまった意見を、担当の調査官から著者ないしは発行者に伝える。こういう仕組みでございます。
  234. 加瀬完

    加瀬完君 調査官は、主査一人、副主査一人の二人で、調査意見書と評定書の各一部を審議会に報告する義務があるのですね。それからその報告書に基づいて、いま御説明のございました条件つきの合格といいますか、そのものについて各会社との話し合いをいたしますね。結論が出たものを文部大臣から調査官を通し申請者にまた報告をすることになっておりますね。そうすると、最初の調査意見書、評定書、それから話し合いの記録、さらに調査官から申請者に対しての伝達文書、この三つの記録文書はあるはずですね。
  235. 天城勲

    政府委員天城勲君) 調査意見書、評定書とも文書で出ております。
  236. 加瀬完

    加瀬完君 それでは、その調査意見書に基づいて、先ほど申しました戦争の反省や戦争の放棄をどのように指導したかをひとつお示しいただきます。
  237. 天城勲

    政府委員天城勲君) 先ほど申し上げましたように、学習指導要領におきまして憲法歴史扱いにつきましての考え方が規定されております。検定はこれに基づいて行なわれるのでございますので、これは、発行会社につきましても、著者につきましても、すべて検定基準ないしは学習指導要領その他の必要な基準になる事項が全部あらかじめわかっておるわけでございまして、それに基づいて検定が出てくるわけでございます。したがいまして、そこに規定してあることを中心に教科書が編集されて——御案内のように、検定基準には絶対条件というのがございますので、必ずそのことが入っておらなければならぬという条件、あと、必要条件、それからネガチブな、否定的な条件と、いろいろございます。それに照らし合わせて措置いたすわけでございます。絶対条件におきましては、先ほど来御議論のございます日本憲法、あるいは教育基本法にのっとるということが非常に強くうたわれておるのでございます。  いまお尋ねの個々検定記録について、どの条項についてどういう指示を一々したかということは、いまの原則から申し上げるわけでございまして、何年度の何の分のどこのページと私理解しておりませんので正確にお答えできかねます。
  238. 加瀬完

    加瀬完君 私は、そのような基本方針のとおりに教科書検定をされておらないという点を指摘したわけです。そういうことはありません。検定は、憲法教育基本法にのっとってやっております、というお答えであった。それでは報告の義務もあるし、申請者に対して調査官は、伝達文書もあるのだから、この実際の記録の中でそれならば戦争の反省なり戦争放棄の第九条なりというものを強く指摘したものがあったらお出しなさい、こう言っているのです。
  239. 天城勲

    政府委員天城勲君) 先ほど社会科の指導書で申し上げました中身は、憲法の学習指導におきます指導の手引というような意味であのものはできてきておりまして、検定基準は御案内のように学習指導要領に基づくということでございまして、憲法のどの条章をどういうふうに入れろということまで規定はございません。それは学習指導要領に書いてございます。先ほど申したような趣旨が規定されているわけで、それにのっとればいいわけでございまして、たとえば絶対条件にいたしましても、教育基本法に定める教育の目的、方針という言い方をいたしておりますし、一々何条のどれというような規定のいたし方はいたしておりませんので、一連の戦争放棄の条項というものだけを絶対条件とかあるいは教科書の中に必ず含めなければならぬというような規定のいたし方はしておらないわけでございます。
  240. 加瀬完

    加瀬完君 そんなことはないでしょう。憲法教育基本法に忠実に検定はやったとおっしゃるのでしょう。それにしてはおかしいじゃないか。戦争肯定みたいなたくさんな資料を出しますからね、そういうような検定のし方はしないとおっしゃるのでしょう。それならば逆に、そうじゃない、憲法を尊重しておりますという、こういう一体指示や指導というものを私どもに、ございますというものを出さなければ、憲法を尊重しておると言ったっておかしいじゃないかと、こう言っている。記録はあるはずだ、お出しなさい。
  241. 天城勲

    政府委員天城勲君) 憲法扱いにつきましては、先ほど申したような趣旨でございます。先ほど来お話のございました歴史教科書における過去の歴史上の扱いの問題につきまして、現在の憲法の規定によって過去の歴史を解釈するというようなことを私たち強要いたしているわけではございませんし、歴史歴史の解釈、特にそれについて一面的な解釈にならないようにという考え方はとっておりますけれども、過去の歴史上の扱いの問題については、いま申し上げたような考え方、現在の憲法扱いにつきましては平和憲法趣旨ということはもう明瞭でございます。
  242. 加瀬完

    加瀬完君 明瞭なことが行なわれておらないから指摘するのですよ。指導要領には敗戦について反省し、特に戦争のもたらした人類の不幸について考えさせるとあるでしょう。ところが、まるで戦争肯定のようなさし絵をうんとふやしているでしょう。本文もそういうふうに書いているでしょう。これはおかしいじゃないかと、おかしくないと言うならば、憲法を尊重すべくわれわれは指導したという証拠をお出しなさいと言っているのです。
  243. 天城勲

    政府委員天城勲君) 教科書検定について何か私たちが適当に、いろいろ積極的にあれを入れろ、これを入れろと指示をしているようにお考えでございますが、本来、広く著者に創意くふうに富んだ教科書をつくっていただくという前提で検定制度をとったわけでございます。ただ、義務教育ないしは高等学校においては、国民教育の水準の維持向上、教育内容の良質を保障するという観点から私たちは検定をいたしたわけでございますので、先ほど来申し上げましたように、検定基準に照らして不適当なところがあれば直していただくという考え方でございます。なおそれ以上各著者におきましていろいろくふうなさるということにつきましては全く自由なわけでございます。
  244. 加瀬完

    加瀬完君 それでは伺いますが、調査官が各申請者に対して伝達をした内容あるいは調査意見書の記録はありますか。
  245. 天城勲

    政府委員天城勲君) もちろん審議会で意見を決定するわけでございますので、それを相手方に口頭で伝えます。著者のほうで筆記なり録音なりをされることは自由で、そのことはよく行なわれております。
  246. 加瀬完

    加瀬完君 私どもは、その筆記をしたりテープにとったりした資料で文部省はこう言ったと言っておるのです。そう言わないというならそう言わないという記録を出しなさい。また上司の命を受けて調査をするわけですから、上司は当然報告を受ける義務もある。あなたは掌握していなければならない、それがさっぱり内容を掌握しておらないということはどういうことだ。あなたの責任をもあわせて伺います。
  247. 天城勲

    政府委員天城勲君) 先ほど調査官の職務の御説明申し上げましたけれども、調査官は、命を受けて教科書の調査にあたるということでございます。しかし検定の組織は、先ほど申し上げましたように、調査員、調査官、そして最終的には審議会の決定、その答申に基づいて文部大臣が行なうという形になっておりますので、教科書検定のプロセスは、専門家とないしは審議会の決定という流れで、文部大臣はこの答申を拘束されながら検討するというやり方になっておるわけでございます。したがいまして、通常調査官の調査結果につきましては、私どもは途中でその内容について必ず報告して意見を出せという形をとりませんで、審議会に報告するというプロセスをとっております。
  248. 加瀬完

    加瀬完君 ちょっと待ってください。さっきの答弁漏れだ。記録はあるかないか、審議会にかける記録。
  249. 天城勲

    政府委員天城勲君) 先ほど申し上げましたように、各調査員それから教科書調査官の意見書は文書がございますし、それから中央審議会の決定も文書はございます。
  250. 加瀬完

    加瀬完君 いずれ時間の制限のないところでゆっくりやります。  総理に伺いますがね、現行憲法を守ることを政治の基本とするということは、教育におきましても、憲法についての教育を重視していくということと解してよろしゅうございますね。
  251. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そのとおりでございます。
  252. 加瀬完

    加瀬完君 いろいろと天城さんからおっしゃいますが、あなたの調査官は、ある社に対して、大日本帝国憲法日本国憲法を比べるな、日本国憲法についてよけいな解説をするなという指示をしておるのです。どう思いますか。しておらないというなら証拠出しますよ。
  253. 天城勲

    政府委員天城勲君) 一々の部分についてどう指示したか、これは私も存じないわけでございますが、ただ一般論といたしまして、おそらくその扱う場面が歴史的な様式で取り扱うためにとか、あるいは社会特に憲法を扱う部面で取り上げるときとかいう、場合によりまして全体の叙述が冗漫になったり、特に歴史の通史的な趣旨が十分に出ない場合には、他の分野に、そういうことは調査に書くなら書くという指示はあろうかと思っておりますが、ただ、いま御指摘のような、ある部分だけで帝国憲法日本国憲法と比較して云々という御指摘されましても、各教科書のどの教科書であって、どういう文章の中で取り扱っておるかということを見ないとわからないことだと、おそらくそういう観点で指示があったとすればあったのじゃないか、かように考えております。
  254. 加瀬完

    加瀬完君 らちがあきませんから総理に伺いますが、次の憲法についての文章はいけませんか。読み上げます。「日本国憲法によって私たち日本国民は、民主政治の原則と仕組みを保障されたが、歴史はまだ浅い。民主政治は人類の長年の努力によって築き上げてきたものであり、日本国憲法基本精神は、この近代民主政治の示す方向に沿うものである。——私たち国民か民主政治を守り育てていくことが必要である。」これいけませんか。
  255. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はいいように思います。
  256. 加瀬完

    加瀬完君 だれが考えたっていいんですよ。ところが、これが削除されました。そこだけが削除されているわけではない。たとえば帝国憲法と現憲法との違いをさがそう、こういう学習課題は削除されております。大日本帝国憲法は現憲法と比べて基本的人権が尊重されておらない、これも削除されております。憲法に関する基本的な表現をしたものは全部削除されておる。削除の理由は何ですか。
  257. 天城勲

    政府委員天城勲君) それはおそらく先ほど申し上げましたように、扱う分野がたとえば小学校中学校……。
  258. 加瀬完

    加瀬完君 これは中学校です。
  259. 天城勲

    政府委員天城勲君) 歴史と社会の分野で非常に違うのじゃないかと思います。ですから詳しくやるところでは詳しくやったほうがいいわけでございまして、現在の憲法の解釈について比較をいけないというような考え方はわれわれもっているわけではございません。おそらく全体の通史の段階で何か言われたようなことじゃないかと思いまして、基本的にいまの憲法の問題について、旧憲法との比較がいけないとか、基本的人権の問題について触れていないとかいうようなことは、毛頭ございません。
  260. 加瀬完

    加瀬完君 ございませんと言ったって、あなた、よかった教科書が訂正されているのですよ。中学三年の政経分です。それから帝国憲法と現憲法との比較とか、そういうのはみんな中教出版とか——両方とも中教出版ですが、訂正されているのですよ。文部大臣、御所見はいかがですか。
  261. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 具体的なその原稿というのは見ていないわけでございますから、それに触れてのお答えはむずかしいのでありますが、ただ教科書検定をいたします場合には、その教科書全体としてつり合いのとれた内容でなければならないと思うわけでございまして、また同時に、子供の心身の発達段階に応じた教科書でなければいけないと思います。あまりにむずかしいことを書きましても、子供には向かないということもございましょうし、また教科書全体のつり合いの上から、そこだけ非常にこまかく書いておるというふうなことも考え直してもらう、こういうことになるかと思います。具体的な問題はわかりませんけれども教科書検定をいたします場合にはそういう考慮も働いておるのでございます。
  262. 加瀬完

    加瀬完君 それじゃこれはむずかしゅうございますか。小学校の社会ですけれども、「大日本帝国憲法に比べるといろいろな点で違ったところがあります。」、「日本は第二次世界大戦を経て、こうした理想を掲げて新しく出直したのです。」、「このように日本国憲法に示された理想を実現して日本人がみんな幸福になるためには私たち国民が一人一人真剣に努力しなければなりません。」。これはむずかしゅうございますか。
  263. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) ただいま読み上げられました内容はけっこうなことだと私は思っております。ただ、そこだけとらえてかれこれと批判することもいかがだろうかと思います。
  264. 加瀬完

    加瀬完君 そこだけとらえたのじゃないのですよ。これは前の本では合格になっております。小学校です。来年から使うところの教科書にはこれが削除されておる。なぜ一体けっこうだとおっしゃるような内容が削除されたわけですか。削除したのは文部省ですから、ひとつ御見解を承ります。
  265. 天城勲

    政府委員天城勲君) しばしば削除したのは文部省というお話がございますけれども先ほど来申し上げておりますように、条件に即しているかいなかということできまるわけでございまして、前の教科書と今度の教科書との違いについては検定上の問題もございますと同時に、全体の仕組みから著者のほうでいろいろ変えられた点もございます。ですから一がいに前の教科書と今度違っているところは、全部検定によって削除したのだというふうには言えないものがたくさんあるのじゃないかと思っております。
  266. 加瀬完

    加瀬完君 前の教科書のとおりにこの申請者は出したのです。ところが削られた。検定基準が違ったわけですね。前の検定基準はどうで今度の検定基準はどうだと、お示しいただきたい。
  267. 天城勲

    政府委員天城勲君) 検定基準は変わっておりません。
  268. 加瀬完

    加瀬完君 それでは変わっておらないで削除したのはどういうわけですか。出したものがなくなったのですよ、文部省検定によって。説明してください。委員長、説明をさせてください。基準が変わらないで出したものをなくした。検定したのは文部省ですから——大蔵省ではない。
  269. 天城勲

    政府委員天城勲君) 検定基準はご指摘のとおり、お答え申し上げたとおり変わっておりませんし、基本的なものの考え方は全然変わっておりません。ただ教科書が三年前と今日と変わっておる場所がありますのが全部検定によって削除されたというものばかりではございません。これは著者の側で考えられて直した点もずいぶんございます。
  270. 加瀬完

    加瀬完君 具体的な問題を聞いている、この問題の。
  271. 天城勲

    政府委員天城勲君) いまの具体的な問題につきましては、どこのどの教科書ということを見ませんとわかりませんし、私もいま手元に資料がございませんので、いま一般論的に申し上げざるを得ないところでございます。
  272. 加瀬完

    加瀬完君 申請者は前の教科書のとおり出した。その内容文部大臣がけっこうでございますという内容だ。ところが、検定でこれが削除されている。申請者は出したのですよ。検定でこれはいけないと削除されている。削除したからには検定基準が違うかというと前と同じだ。同じであって、前に合格したものを今度出さないのはどういうわけだ。
  273. 天城勲

    政府委員天城勲君) 検定基準も同じでございますし、一般論としては内容が不適当——前は適当であって今度不適当になるということはないわけでございます。ただ、叙述の中でどういう扱いをしているかという流れの中で著者がお変えになることもいろいろございますし、前と全く同じでないということによってすべて検定で削除したというものでないものはたくさんございます。個々の本のどこがどうしたということになりますと、一冊の本で百カ所から二百カ所ぐらいの個所がいつも問題になるわけでございまして、しかも何百点という本でございますので、私ここで全部記憶しているわけではございませんので一般論で申し上げるわけでございます。
  274. 加瀬完

    加瀬完君 答えになりませんよ。憲法は尊重するという。憲法は尊重するという憲法の記載を、前には合格させておいて今度は削除したのはどういうわけだと聞いているのですよ。資料がなければ資料を持ってきなさい。
  275. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 教科書検定につきましては、先ほど来御説明いたしておりますように、大ぜいの人が専門的な見地からいろいろ検討を加えてこれを処理いたしておるわけでございます。いま御指摘になりましたのがいかなる事情のもとにそのようなことになったかというようなことは、政府委員も実はお答えができない、私にももちろんできないような問題でございます。具体的にどの教科書のどこがどうであるというふうなことについての御指摘があればまた検討してみたいと思います。
  276. 加瀬完

    加瀬完君 いままで私全部指摘してきたわけですから、それについてどういう経過でそうなったか、あとで資料として御提出をいただきます。  それでは法務大臣に伺いますが、新民法の精神はどういうところにございますか。
  277. 赤間文三

    国務大臣(赤間文三君) 新民法の精神は、御承知のように、個人の権利義務を明確に規定しているところに趣旨があると私は考えております。
  278. 加瀬完

    加瀬完君 文部大臣に伺いますが、その民法改正が教科書で最近どう取り扱われておりますか。
  279. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) まことに遺憾でございますが、私そこまで承知いたしておりません。
  280. 天城勲

    政府委員天城勲君) いろいろ問題はございますので、御指摘のところ、私も非常に不勉強でございまして、膨大な中身でございますので、的確にすぐお答えできない点はひとつ御了承願いたいと思いますが、現代の社会生活、これは社会科でございますけれども、家族生活について触れているところがございますが、家族の社会集団としての機能と同時に、民法における家族制度のあり方、これも指導要領には社会科で規定されております。
  281. 加瀬完

    加瀬完君 前には詳しく全部の本が触れておりました。ところが、旧民法を批判するな、内容が悪いのではない、運用がまずいだけだという文部省の指示で、家族制度の欠陥、階級制、女性の地位というものが全部削られました。これはお認めになりますか。教科書にないのだから認めざるを得ないでしょう。
  282. 天城勲

    政府委員天城勲君) 加瀬先生教科書から全部削除されたとおっしゃいますけれども教科書は非常に種類が多うございまして……。
  283. 加瀬完

    加瀬完君 一本だけですよ、書いてあるのは。あとみんな除かれている。読んでごらんなさい、時間待ってもいい。
  284. 天城勲

    政府委員天城勲君) たまたま私の手元にありました教科書を見たのですけれども、家族制度のことには現行教科書も触れております。長いものですけれども読んでみますと、「(昭和二十三年)には民法が改正されて、家族制度が改められた。これまでは家が重んじられ、家の中心である夫や、家をつぐ長男の権利が大きかったが、家庭においても夫婦が平等の権利をもつようになり、財産も兄弟姉妹が平等に相続することになった。こうして、女性の社会的地位が高まり、社会の民主化がすすめられたが、」という形で社会の問題を……
  285. 加瀬完

    加瀬完君 それは何です、どこのです。
  286. 天城勲

    政府委員天城勲君) これは中学の「日本歴史世界」清水書院でございます。
  287. 加瀬完

    加瀬完君 そのほかにありますか。清水書院だけですか。
  288. 天城勲

    政府委員天城勲君) たまたま私の手元にあった教科書でございます。
  289. 加瀬完

    加瀬完君 法務大臣と国家公安委員長に伺いますが、治安維持法や特高警察について最も反省している点はどういうことですか。
  290. 赤澤正道

    政府委員赤澤正道君) 治安維持法は、御案内のとおりに、戦前は国体の変革を企てることは重大な罪に該当いたしましたので、これは極刑と申しますか、死刑を含む七年以上の実刑に処せられた。また、私有財産制度というものを守りますために、これを破壊しようという計画を企てるものは十年以下の懲役に処すと、こういうことになっておりました。しかし戦後は新しい憲法のもとにこういったものを全部なくしまして、ことに思想だとか信条あるいは集会、結社、それがきわめて自由になったわけでございます。戦前は、やはりそういうたてまえになっておりましたので、それを取り締まるために、やはり特警高察などの必要があったわけでございましょうが、ただいまはそういったものは全然姿を消しまして、警察も社会運動その他を取り締まることは絶対にございません。ことに自治体警察になりまして、これは政府とはほとんど縁が薄くなって、国家公安委員会が民主的に管理をしている実情でございますので、ただいま御指摘になりましたような治安維持法も消えておりますし、憲法でも、あらゆる自由が、自由過剰と言われるまでに保障されております。そういうことでございまするので、いまどう考えるかという御質問でございましたけれども、現状を一応お話しいたしました。
  291. 加瀬完

    加瀬完君 御反省をするところは何だというのです。もとの、それはよくわかっている。ですから、そういった制度に対して、国家公安委員長としてどういうところが一番悪いとお考えになっていらっしゃるかということです。
  292. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 私は現憲法のもとで、いろいろ仕事をいたしておりまするので、憲法に基づくこういった制度、また立法というものを尊重していかなければならないという立場に立っております。
  293. 赤間文三

    国務大臣(赤間文三君) お答えを申し上げます。  戦前における治安維持法の制定とかあるいは特高警察の制度というようなものは、当時の政治体制あるいは社会情勢のもとにおきましては、私はそれなりにそれ相当の必要性があったものと考えております。しかしながら、今日新憲法のもとにおきましては、いわゆる主権在民で、民主主義政体を確立しました今日におきましては、このような考え、法制というものは運用の上におきましても許されないものである、かように私は考えております。
  294. 加瀬完

    加瀬完君 多くの教科書が治安維持法の廃止についてほとんど触れなくなりましたが、文部大臣、これはどういうわけですか。
  295. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 治安維持法のことは、中学校あるいは高等学校の教科書の上では、相当触れておるものと考えております。
  296. 加瀬完

    加瀬完君 これは肯定みたいなものはありますよね。共産党が組織されたから治安維持法をつくった。——これじゃ肯定論です。  そこで、ある本に、「国民の政治活動や思想を取り締まっていた治安維持法や特高警察を廃止し」と、こういう表現をいたしましたが、これは削除をされました。どういうわけですか。
  297. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) どういうわけかというお尋ねでございまするが、私はどういうわけか存じません。ただ、その教科書検定するに際しまして、これを入れることが適当でないという判断のもとに削除いたしたものと考えます、もしこちらがわったとすればですね。ただしまた発行者のほうからそういうふうにはずしてこられたものについては、私にはわかりません。
  298. 加瀬完

    加瀬完君 発行者ははずしていないですよ。申請したら削除をされた。削除というのは、出したものを削られたから削除。出さないものを削りようがない。  そこで、あらためて伺いますが、歴史教育において封建社会の批判はいけないとお考えになりますか、文部大臣
  299. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 封建社会に対する記述をいたしましても一向差しつかえないと思います。批判とおっしゃいますけれども、その内容いかんによると思います。
  300. 加瀬完

    加瀬完君 これは来年の小学校社会ですが、「農民の生活」という題で、「国に納める田畑の税のほか、男子は土木工事や兵役などに従う義務がありました。多くの農民の生活はかなり苦しいものでした。中には自分の土地を捨ててその義務をのがれようとするものもありました。」前の本のとおりにやりましたら、これは全文削除されました。どういうわけですか。
  301. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 一々どういうわけかとお尋ねになりましても、私にもお答えはむずかしいのでございます。教科書検定上この種の記述が全体の教科書のつり合いの上から申しまして不適当であると考えたか、あるいはまた、その記述がそこまで書く必要はないというふうな判断のもとにやったものと考えます。
  302. 加瀬完

    加瀬完君 ある学者は修正要求には三つの線があるということを言われておるのです。一つは、あらゆる機会に天皇の神性を回復するような書き方をしなければいけない。二つには、民衆の生活、ただいま例にあげましたような貧しさとか苦しさとかいうものを書いてはいけない。三つは、戦争反対、平和希求の記述をぼやかさなければいけないと、こういうふうに言っておるわけです。そのとおりだ、いま私のあげたところは。そこで、こういう方向は、少なくも政府方針ではないと考えてよろしゅうございますか。
  303. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 現在の日本の状況からいたしまして、適切なものはこれを進めてまいりますし、適当でないと思えば、その点について注意をするということは当然のことだと思います。
  304. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 議事進行。いまの答弁を聞いておりますと、加瀬さんのほうは具体的な事実について指摘をしているのです。ところが政府委員の答弁のほうは、抽象的な言いのがればかりやっているわけです。だから質問に対して答えてないです。そのまんま時間つぶしをされると、たいへん私どもとしては迷惑なんですが、指摘をした具体的な問題に対しては、もっとやはりまともに答えてもらいたいと思うのです。文部大臣だってそうです。いままでの答弁を聞いていると、教科書検定というのは責任者がないみたいです。そんなことはないでしょう。文部省責任があるのですよ。責任があるんならば、いままでやってきた問題について、削除したり修正したり手を加えた問題については、どういう理由でこうしたのか、削除したなら削除したということを的確に答えるべきですよ。なぜそれを答えられないのか。答えることができないんなら、その理由を答えてもらわなければいかぬ。一体どういうことなんです。それをはっきりさせないと議事は進行しませんよ、時間つぶしだけです。
  305. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 先ほど来申しておりますように、教科書検定を受ける件数というのは非常に多いのであります。それを一々どの部分についてはどうだということを仰せになりましても、われわれとうてい頭の悪い者には記憶のできる問題ではありません。政府委員にしましても、そこまで一々具体的に承知はしておらぬのであります。したがって、お答えは自然一般論とならざるを得ないのであります。具体的に御指摘になりましたら、われわれも調査の上で、また御説明をいたしたいと思います。
  306. 加瀬完

    加瀬完君 具体的にといったって教科書内容をそのまま、ここはいかがですかといって、これ以上具体的なことはないでしょう。調査がないというならば、それじゃ後日十分調査をして、あなたの監督下にある調査官がどういう指導をしたか、指示をしたか、一切の記録をお出しになって、おまえの言うようなことはございませんという証明をお出しいただけますか。
  307. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 具体的な御指摘ではございますけれども、私どもはその具体的なものについて一々記憶しておらないのでございます。したがって、一般的なお答えをせざるを得ないというのがいまの私どもの立場でございます。いろいろ御指摘になりますれば、よく調査をしてみたいと思います。
  308. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いま加瀬委員が要求している点ね、これは認めてもらいたいと思うのですね。
  309. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) いまの文部大臣の答弁にありましたとおり、それは具体的に教科書内容を示されるけれども、答弁するほうは一々それを、調査官でありませんから、これはどうだ、ああだと答えられないのですよ。抽象的な答えにならざるを得ませんよ。
  310. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 だから、後刻資料を出してもらいたいというのですよ。いま出せというのじゃないですからね。後刻資料を出してもらいたい。
  311. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) いまの、文部大臣お聞きのとおりの要求がありますから、そういう資料ができますれば、御提出を願います。加瀬さん、すぐは出せぬでしょうから進行していただきます。
  312. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 具体的に、どの社の発行で、いつの教科書というふうなことを御指摘いただきまするならば、取り調べてみたいと思います。
  313. 加瀬完

    加瀬完君 先般NHKが現職の学校の先生方にアンケートを出しまして、現在の教育はあなたの理想とする方向に進んでいるか、こういう質問を出しましたら、進んでおらないというのが九〇%でございます。九〇%の否定は何によるとお考えですか、文部大臣
  314. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私にはわかりません。
  315. 加瀬完

    加瀬完君 ここに東京都の教育長野尻さんと田中日比谷高校長の対談があります。例の愛国心の問題ですね。田中さん「愛国心、そういうものは自然につちかわれるべきで、おまえは国を愛さなければいかぬと頭から言ったって受けつけませんよ。私は自然でなければいけないと思いますね。」、野尻さん「ぼくも先生の意見に賛成だな、ことさらにそのための教育考える必要はないと思うんですよ。その前に教育とは何かということを考えて、人間の完成を目標としての教育にもっと力を注ぐべきですね。」こういう対談があります。まじめな人々の意見といまの文部行政が逆行をしておりませんか。逆行をしておるところにこの理想を失わせる原因があるとはお考えになりませんか。
  316. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私は、いまの文部行政が逆行をしておるものとは全然考えておりません。また、愛国心は自然に育つものだというお話でございますが、愛国心というものが国民として大切なものであるといたしまするならば、自然に育つのはけっこうであります。同時に、学校教育の場におきましても、これが正しく育ってまいるように指導していくのが当然じゃないかと思います。(「そのとおり」と呼ぶ者あり)
  317. 加瀬完

    加瀬完君 そのとおりなどということをおっしゃいますので、さらに伺いますがね、現場の教師が理想を失っているもう一つのものに、文部行政の教育内容への介入がございますよ。これをどう思いますか。介入してないとお考えになりますか。
  318. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 介入というふうなおことばでございますけれども、不当な介入はいたしておらないつもりであります。教育内容の向上をはかっていくということは文部省のつとめではないかと思います。
  319. 加瀬完

    加瀬完君 それでは家永裁判の口頭弁論書で、教育行政は必要な限り教育内容に及ぶものであるという理由と根拠をお示しください。
  320. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 適正な教育内容を維持してまいるということは、教育条件の重要な内容をなすものだと考えます。
  321. 加瀬完

    加瀬完君 教育内容に介入するというのはどういうことですか、できるということは。その根拠は。
  322. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 介入を、不当なる介入をいたしておるつもりはございません。文部省としては当然なすべきことをいたしておる、このように考えておるわけであります。
  323. 加瀬完

    加瀬完君 そういうことを聞いてない。教育内容に介入できるという根拠を示しなさいと伺っている。
  324. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 教育条件を整備するということは、この教育内容についても文部省が発言をし得るものと考えます。
  325. 加瀬完

    加瀬完君 それでは文部省の役人が教育内容に介入できるということで、教壇で子供を教えることが可能ですか、法的に。
  326. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 教壇で教師が子供に直接教えることにまで一々介入しようとは思っておりません。それは教師の自由だと思います。ただ、教師が教壇で教育するのにつきまして必要な条件を整えるということが文部省の仕事ではないか、かように考えます。
  327. 加瀬完

    加瀬完君 それでは教育内容の及ぶ必要限度はどこですか。文部省のお考えになる教育内容が及び得る必要限度。
  328. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) すでに質疑応答をずいぶん重ねたわけでございますけれども学習指導要領を出し、また教科書検定をいたす、こういうことがすなわち文部省の仕事としてあるわけでございまして、文部省としましては、この趣旨を徹底することにつとめますけれども、大臣が教壇における教師のその人その人の教育に一々介入しようということは夢にも考えておりません。
  329. 加瀬完

    加瀬完君 それは教育行政の限界について、福岡、旭川の地方裁判所、福岡高裁から判決が出ておりますね、その判決の概要と御見解
  330. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私はその判決をつまびらかにはいたしておりませんので、政府委員から。
  331. 天城勲

    政府委員天城勲君) いまの判決の中身のお話でございますが、福岡地裁でいっておりますのは、要するに、教育諸条件の整備、基本法十条第二項にありますけれども、「教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。」というこの趣旨の解釈で、「諸条件の整備」とは教育内容教育方法にわたらない外的事項だという前提でこの判決ができていると思うのでございます。たいへん前後長いのでございますが、要点は、ここに一つあるのではないかと思います。
  332. 加瀬完

    加瀬完君 それは福岡ですね。旭川は。
  333. 天城勲

    政府委員天城勲君) あと旭川と大阪地裁もあるわけでございますが、大体趣旨はその点だったと思います。判決文をここで詳しく話していると時間がかかりますが、要するに、学習指導要領の効力についての判例でございますので、いまの福岡地裁のときと同じ考え方でいっているのではないかと思っております。
  334. 加瀬完

    加瀬完君 旭川は違いますよ。
  335. 天城勲

    政府委員天城勲君) ちょっと調べてみます。——旭川の判決でございますが、その趣旨は、「学校教育法三八条は、文部大臣が、教育課程の編成について教育の独立、教育行政の地方自治等を尊重しつつ、大綱的な基準を設定すべきものとした趣旨に解するのが相当である。」と、こういうふうに解釈しております。
  336. 加瀬完

    加瀬完君 十条はどうですか。
  337. 天城勲

    政府委員天城勲君) 十条につきましては、教育内容について、国家の行政作用、強権的な行政の介入を押え、教育活動の独立を確保し、教員の自由な、創意に富む活動を尊重するものだと、要するに、やはり先ほど申し上げましたように、教育諸条件の確立なんだ、こういうことをいっております。そして学習指導要領につきましては、大綱的な基準の限度にとどめよう、こういうのが、旭川の判決の趣旨だったと思います。
  338. 加瀬完

    加瀬完君 違うでしょう。福岡裁判は、先ほどお述べになりましたとおりです。教育行政は「教育の具体的活動内容に立ち入って監督命令すること」があってはならないと、こういうことをいっておりますね。旭川は違いますよ。基本法第十条は、「戦前、戦中における文部、地方内務官僚や軍部等による強力なる中央集権的、画一的、形式的教育統制に対する反省を基礎としている。」、したがって、「行政作用の介入を抑え、教育活動の独立を確保し、教員の自由な、創意に富む、自主的な活動を尊重するという理念を基礎としつつ、教育行政の任務を教育条件の整備確立」だけに置いたのである、こういっているじゃありませんか。違いますか。
  339. 天城勲

    政府委員天城勲君) 全部読むと、初めのほうにはそういうことがずっと書いてあります。法制につきましては、先ほど申しましたやはり条件の整備にとどめるべきであるということで、その前に歴史的ないま先生のお述べになったことが書いてあります。
  340. 加瀬完

    加瀬完君 教育基本法の第十条の解釈は、私が言ったとおり旭川地裁は述べておるわけです。そこで、教育基本法の解釈は、制定のときといまでは違ったのですか、文部大臣
  341. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 文部省としては別に解釈を変えたつもりはございません。
  342. 加瀬完

    加瀬完君 法制局長官に伺いますが、法律解釈については、制定時の立法精神というものは尊重さるべきものだと解してよろしゅうございますね。
  343. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 御説のとおり、通常はそうであろうと思います。通常はとわざわざ申し上げましたのは、国内法制、まあとにかく法制の全般を通じてみますと、わが国にはそういうようなことはございませんけれども、他国には非常に古く制定された法律がございます。そういう法律は、やはりその時代のバックグラウンドに照らして合理的に解釈されるように変わっていくということもございます。まあその典型的な例は、ナポレオン法典なんかはそうでございますが、そういう点がございますので、多少の留保が要りますけれども、大体は御説のとおりと考えて差しつかえないと思います。
  344. 加瀬完

    加瀬完君 そうすると、教育基本法は、制定の当時と解釈は変わっておらないと文部省はおっしゃる。それならば、そのときの法律解釈については、制定時の立法精神は当然尊重されると考えてよろしゅうございますね、教育基本法に限界を置いて。
  345. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 教育基本法だけの面に限ってのお尋ねでございますが、これはそう古い立法というわけでもございません。いまお話のように、制定時の精神というものは、いまの精神と同じだと心得て差しつかえないと思います。
  346. 加瀬完

    加瀬完君 それでは文部大臣に、昭和二十一年九月七日、教育刷新審議会における吉田総理のあいさつ内容をお示しいただきたい。
  347. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) これは、用意しておったようでございますから。——これは吉田内閣総理大臣代理の幣原国務大臣があいさつせられたものでございますが、一応読み上げてみます。「我々はこのたび戦いに破れて現に満身創痍といういたましい姿であるのであります。しかも我が国民生活の逼迫は、これからして後もなおいっそう深刻を加えることがあっても、減ずることは今後数年間には期待せられないのであります。顧みれば我々の先輩は、八十年前に国内情勢の至大なる危機に際会せられ、勇気と果断とをもって国難の打開に尽力せられ、美事に明治維新の大業に翼賛せられたのであります。われわれは今や内外両方面とも非常な危機に際会致しておるのでありまして、今や、幕末の当時よりもさらに幾倍の悪条件の下に、さらに意味の深い第二次の維新ともいうべきものを為し遂ぐべき必要に迫られているのであります。その最も根本的な問題は教育の刷新であります。今回の敗戦を招いた原因は、煎じ詰めますれば、要するに教育の誤りによるものと申さねばなりません。従来の形式的な教育・帝国主義・極端な愛国主義の形式は、将来の日本を負担する若い人を養成する所以ではありません。われわれは過去の誤った理念を一てきし、真理と人格と平和とを尊重すべき教育を、教育本然の面目を、発揮せねばならぬと考えます。」、まあそんなところです。
  348. 加瀬完

    加瀬完君 それでは同じく二十二年三月十三日、文部大臣衆議院本会議における教育基本法第十条の説明をお示しいただきます。——政府委員でもいいですよ。
  349. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お許しを得て政府委員から申し上げさせます。
  350. 天城勲

    政府委員天城勲君) 教育基本法の提案理由、これ、全文を読むのでございますか。
  351. 加瀬完

    加瀬完君 基本法の第十条の説明。
  352. 天城勲

    政府委員天城勲君) 十条につきましては、提案理由の中ではそれほど詳しいことをいっておりません。「第十条、教育行政の条下におきましては、教育行政の任務の本質とその限界を明らかにいたした次第でございます。」、こう書いてございます。
  353. 加瀬完

    加瀬完君 それは教育内容に介入すべきではなく、教育の外にあって教育を守り育てるための諸条件を整えることが目標だといっておりますね。そうでありませんか。それはそのとおりですよ。別に社会党で解釈が違うわけじゃないのだ。
  354. 天城勲

    政府委員天城勲君) いま急な御質問で、何でが、「第九十二帝国議会における教育基本法案の審議」「教育基本法案の提案理由について」というので、高橋誠一郎国務大臣の説明の中には、先ほど申したのが記録にあるのでございます。(「そんなことは聞かなくったって、質問者が調べればわかるじゃないか。一々国会で記録に残っているものまで政府委員に聞く必要はないよ。当然質問者が調査して」と、呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  355. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 加瀬さん、質問を続行してください。
  356. 加瀬完

    加瀬完君 まあこれは同僚ですからね、かばうのもやむを得ない。  いま申し上げたとおり、さらに山崎文部次官も、こう言っているのですね。「中央集権的、画一的統制の弊にいままでは陥っておった。そのために教育者がはつらつとした態度でその貴重な使命遂行に精進することがはなはだしく阻害された」、これは先ほど申しました旭川の裁判あるいは福岡の裁判と同じ考え方ではありませんか。
  357. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 学校の教師が自由なはつらつたる姿でもって教育のことに従事してもらうことは、われわれも望むところであります。ただしかし、小中学校、高等学校等の教育におきまして、また自由自由と申しましても、それぞれの教師がかってな自由な教育をやられても困る面もあるわけでございますので、その意味におきまして、教育の水準の確保をしていくとか、教育内容の適正を期していくという意味において、文部省学習指導要領なり、あるいは教科書検定をやるということは当然のことではないかと、このような意味において認められておることと私は思うのであります。
  358. 加瀬完

    加瀬完君 私はそういうことを聞いておらない。いつまでも教科書にこだわって質問しているわけじゃない。法制局長官も答えた立法の趣旨というものは生かされておるかどうかという問題を聞いておる。立法の趣旨を生かした解釈は裁判所の判決だ。裁判所の判決をいつ変更されたのか、あるいは立法の趣旨に基づく基本法の解釈をいつ変更されたのか、あらためて伺います。
  359. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 立法の趣旨に反したことをやっていないつもりでございます。
  360. 加瀬完

    加瀬完君 立法の趣旨に反したことをやっているから、裁判所が文部省考え方はいけないという判決をしたわけでしょう。
  361. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私どもとしましては、先ほどお答え申し上げましたとおりであります。別に立法の趣旨に反したことを行政庁がやっておるつもりはございません。
  362. 加瀬完

    加瀬完君 山崎文部次官の説明されたとおりな方向でやっておらないでしょう。あるいは高橋誠一郎文部大臣の、直接教育内容には介入すべきでないという方針にはいまいってないでしょう。基本法憲法も変わらないのに、解釈だけが変わっているというのはどういうわけですか。解釈が変らなければ、いま文部省のおやりになっていることは正しくないということになるでしょう。
  363. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) われわれは、この学習指導要領を制定し、また、教科書検定をいたしまして教育の水準の確保とかいうようなことをやっておりますのは、現行法において認められておるところであります。かってに文部省がやっているわけじゃありません。その意味におきまして、文部省教育内容に不当に介入するとかいうふうなことはしておらないのであります。同時に、このことは、私は、教育基本法精神に何ら反するものではない。
  364. 加瀬完

    加瀬完君 旭川裁判でも、あるいは福岡裁判でも、あなたの見解とは違っているのでしょう。違っていますよ、と指摘をされている。それに対する所見を伺いたいと言ったら、何もお返事がなかった。
  365. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 個々の裁判の判決は判決として承らなくちゃなりませんが、私ども従来とっております方針に何ら変更を加える必要はないと思います。
  366. 加瀬完

    加瀬完君 答弁にならない。旭川裁判なり何なり、どう解釈するのですか。
  367. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) その判決が、私どもがとってまいりました方針と違っておるとするならば、まことに残念なことでありますけれども、私とは見解を異にいたします。
  368. 加瀬完

    加瀬完君 見解を異にするというのはおかしいですよ。立法精神のとおり、少しも解釈は変わらない。解釈のとおりの判決が出たんです。それは反対だというのは、どういうわけです。矛盾するじゃありませんか。    〔政府委員高辻正巳君発言の許可を求む〕
  369. 加瀬完

    加瀬完君 いや、あなたには伺っておりません。伺ったとき答えてください。あなたが答えるとまた変なふうになっちゃう。
  370. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) いや、ちょっと法律的な重点の問題がございますので、一応お聞き願いたいと思います。  教育基本法についての精神趣旨といいますか、先ほどお尋ねがございました。これは教育基本法に御丁寧にも前文がついております。それから各条の規定がございますが、そういう前文から流れる基本精神、これは変わりようがないはずでございます。ただし、一つ一つの条文については、これは法文についてはありがちのことでございますが、一つの条文について二つの解釈が成り立ら得るということは、これは教育基本法に限らず、いろいろあるものでございます。これは、いろんな法律の解釈について学者の見解に甲論あり、乙論ありというようなことで、必ずしもその解釈が二つあるからといって、その精神にいずれかが反するというふうにかたく考えることは私はないのではないかと思います。旭川の判決がいかなるものであるか私は承知いたしませんが、その条文についての考え方としては、文部省考えられてきたことも一つの解釈であり、それから判決に示された解釈も一つの解釈であるということになるのでございまして、このことはそうふしぎなことではないとい思ます。
  371. 加瀬完

    加瀬完君 法制局長官は詭弁局の長官じゃないはずだ。あなたはさっき何と言った。法律の解釈は立法精神が尊重されると言った。立法精神は何だということになれば、それは判決と同じだということになっている。立法精神と同じ解釈を判決がしたのに、その判決には反対だと、こうおっしゃる。それでは首尾一貫しないではないかと伺っている。これからあなたのいろいろ詭弁を聞いても時間がたちますから、私は、少なくも客観的な見方をする者は、文部省がるるあげた教科書の問題からいっても、教育基本法の問題からいっても、偏向をしておるのはむしろ文部省だという判断をするでしょうから、これは国民判断に待ちます。  そこで、問題を移しまして、厚生大臣に伺いますが、現在の精薄児あるいは施設、この内容はどうですか。
  372. 園田直

    国務大臣(園田直君) 昭和四十一年の八月調査に基づいた推定の量は、十八歳未満の精薄児約二十二万千二百人、そのほかに、精神薄弱児施設に入所している者一万六千八百五十二人、通園している者二千四百四十三人、これからいたしますると、いまなお施設に入所して指導監護すべき必要のある者が約三万人、施設に通園せしむる必要があると思う者は七千人と推定いたしておりまするが、精神薄弱児などというものは往々にして隠すという傾向もありまするから、実際は厚生省で推定しておるものよりも増加の傾向がありまするから、上回っておると判断をいたしております。
  373. 加瀬完

    加瀬完君 厚生省から出された統計によりますと、二十四人に一人の割りしか収容されておらないということでございますね。収容されない二十三人の家族というものは、一体国の施策というものに十分な感謝をしているという状況にございましょうか。
  374. 園田直

    国務大臣(園田直君) いま申し上げました数字からいたしましても、全部に国家の施設が行き届いてないことは事実であります。しかしながら、四十三年度から新たな指導員の制度などを設けて、御承知のごとく。その施設の概略を御報告申し上げますると、児童福祉法に基づいて、まず児童相談所で保護等の相談を受け、そこで入所する者とあるいは在宅で指導する者との二つに分け、指導した者は通園と入所の両方に分けて、施設の中では、これに対する監護、それから独立のために必要なものに対する指導、こういうものをやっておりまするが、なお特に重度な者に対しては特別児童扶養手当を出しております。明年度——ただいま御審議を願っております予算では、財政がきびしいおりからではございますが、このような重大な問題でありまするから、新たに施設、それから設備その他の整備というものをはかると同時に、指導員の制度を強化をいたしまして、なおこれに対する早期の発見、予防あるいはその他についての特別の研究の費用、研究の制度、あるいは相談所に対する指導員を配置するなどということによって、できるだけこれを施設に入所するようにいたしておりまするが、正直に言って、なかなか追いつくものではございません。そこで、精神薄弱児を持つ両親などがお互いに手を握って立ち上がろうという姿でございますから、私といたしましては、できるだけ政府のほうでもありとあらゆる努力をする一面、民間等の協力も得て、お互いにこういうものに対しては、政府と民間と、親と近隣の者が全部が助け合ってこれを早急にやらなければならぬ、こういうふうに考えております。
  375. 加瀬完

    加瀬完君 その点は厚生大臣によろしくお願いをいたします。  そこで、ある新聞に「総理一機ください」という投書が二通続けて載りました。毎日精薄児施設の上を何十回となく自衛隊機が飛ぶ、あの一機があればこんな施設が四十も五十もできる、どうか総理一機ください。続いて、「わたしにも一機欲しい」、こういう投書がありました。木造ボロ校舎で、体育館も図書館もなく、転入があれは物置きからボロ机を引き出して間に合わせる始末、私にも一機ください。この投書を待つまでもなく、どうも予算の傾向というものは、防衛予算が重点で、国民全体の福祉予算というものが軽視されているとは思いませんか、大蔵大臣にひとつ伺います。
  376. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 防衛予算が特に他の経費に比べて多いというふうには考えません。今年度の予算編成におきましては、三次防の骨格をなす基本計画というものはできるだけ尊重し、しかし、国の財政状態に応じて節約すべきものは節約し、後年度に延ばせるものは延ばすというようなことで、もしいまの三次防計画を投資的にこれを実現しようという計算でいきますと、本年度の分は相当になるのでございますが、それよりもはるかに経費を切って、今年度四千二百億円というものをきめたのでございますが、これは伸び率から見ましても、また一般会計の中に占める地位から見ましても、逐年下がって、四十一年、二年、三年——本年度は最も低い率で九%という程度のものでございまして、他の経費に比べて防衛予算を特に強化したというような事実は全然ございません。
  377. 加瀬完

    加瀬完君 防衛予算の中に試作品費というのがありますね。その四十年度以降対前年度比率はどうなっておりますか。
  378. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 四十一年度は対前年度比率で一三%の伸び率、四十二年度は一二・二%、四十三年度は九・一%という伸び率でございます。
  379. 加瀬完

    加瀬完君 それは違いますよ。違いませんか、政府委員。——それでは試作品費という内容に試作費まで入れますとどうなりますか。試作品費の中には当然試作費が入るでしょう。
  380. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) 御質問の試作品費とおっしゃるのは、研究開発費などを含めた経費だろうと思うのでありますが、これは四十二年度予算が十一億でございますが、これが十二億七千万にふえておりまするから、約一億六千五百万円の増加でございまして、一四、五%の増加、こういうことになろうかと思います。
  381. 加瀬完

    加瀬完君 私の調べでは違いますね。四十年が四六%、四十一年が三一%、四十二年が六七%、四十三年が三八%というようにふえておりますね。そこで、その試作品というものはどういうものですか、防衛庁長官。
  382. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 加瀬さんにお答えいたします。試作品のおもなものは、航空機につきましては対潜飛行艇でございます。また中型輸送機、それから誘導武器につきましては、空対空誘導弾、短距離地対地誘導弾、その他につきましては、新型戦車、遠距離探信装置、ハイドロフォイル等を試作いたしております。
  383. 加瀬完

    加瀬完君 三十九年度以降、その試作品の中で、兵器として採用になったものと、ならなかったものの区分けをお示しいただきます。
  384. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 加瀬さんにお答えいたします。三十九年度から四十二年度までの間に兵器として実用化されたおもなるものは、対潜哨戒機、六四式対戦車誘導弾、三〇型ロケット弾、六四式七・六二ミリ小銃、六六式探信儀等でございます。  また、試作をいたしたり、あるいは研究開発はいたしましたけれども、これを中止し、実用化されなかったものは、船舶用ガスタービンでございます。その理由は、開発はいたしまして成功いたしましたが、すでに一昨々年ごろからジェットエンジンによる船舶推進の開発が世界的趨勢でございますために、開発はいたしましたけれども、中止をいたし、実用化いたさなかったわけでございます。
  385. 加瀬完

    加瀬完君 その使用不能のもので、買い上げました総額は幾らになりますか。
  386. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 加瀬さんにお答えいたします。  詳細の数字は存じませんが、三億ないし四億円が実用化のためのその目標で実験等はいたしましたけれども、これを実際に開発はしないで中止いたした。つまり、三億円ないし四億円は、研究はいたしましたが、財政的見地から見れば損をした、こういうことに相なっております。こまかい数字は政府委員から答弁させます。
  387. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) お答えいたします。  三十九年度、四十二年度で申しますと、いま申しました舶用ガスタービンでございまして、二億一千四百万でございます。
  388. 加瀬完

    加瀬完君 新明和のPXSはどうなっていますか。
  389. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) PXSは、約五年前からその開発につきまして技本で研究をいたしました。それから新明和に基本設計並びに細部設計を委託いたしまして、成功いたしたのがこの新明和のPXSでございます。
  390. 加瀬完

    加瀬完君 じゃ、このPXSはいつ発注しました。
  391. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 新明和に発注しました対潜飛行艇の研究の経過は、長いことでございますので、簡単に申し上げますが、三十五年度からこの開発に入りまして、まず三十五年度に米軍からUF−1という飛行機の供与を受けまして、それを改造して実験いたしました。それによってデータを得まして、三十八年から新明和と現実の開発の契約をしております。現在、基本設計、細部設計を終わりまして、試作機ができまして、昨年の十月に第一号機が飛んでおりまして、現在会社でその試験飛行を行なっております。
  392. 加瀬完

    加瀬完君 最初に注文したのはUF−XSじゃありませんか。これを四十年の一月十一日に発注して、四十二年の七月三十一日納期という契約じゃありませんか。
  393. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 米軍から供与を受けましたUF−1をUF−XSとしましてこれを改造しております。三十五年から三十七年まで、今度のPXS、つまり対潜哨戒艇の構想につきましては、初めての対潜哨戒艇でございますし、しかもソーナーを海中に入れるというような特殊な構想を持っておりますので、まずアメリカ側から供与を受けましたそのUF−1をUF−XSに改造しまして、その実験を終わって、そのデータを得て、もうその実験機は別にしまして、新しくPXSの開発にかかったわけでございます。
  394. 加瀬完

    加瀬完君 四十年に一号機、四十二年に二号機が納入されていますね。これは使われていますか。納入と、使われているかどうか。
  395. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 一号機は、先ほど申しましたように、四十二年の十月に初飛行を行ないまして、現在、会社で当然の試験飛行を行なっております。大体この三月、四月ぐらいにはわれわれのほうでそれを受けまして、今度は実用試験、技術試験を行ないたい。そのほかの二号機のほうは大体この四、五月ごろにはできるんじゃないか。それにつきまして会社側でまた飛行試験を行ないまして、この秋にはわれわれが領収したいというふうに考えております。
  396. 加瀬完

    加瀬完君 この一号機は、飛んだって実用になるかどうかの実用試験はやっていませんね。ところが、さっき防衛庁長官は成功したとおっしゃった。これは兵器として採用しているのですか。
  397. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) PX−Sにつきましては、三十五年からの長い計画のもとに非常な——非常なと申しますか、われわれの性能要求を満たす結果を得てこの十月の飛行を終わっております。その後さらにこまかい実験を終わっておりまして、われわれはPX−S——対潜哨戒艇の開発は成功したというふうに考えております。
  398. 加瀬完

    加瀬完君 実用試験は終わったですか。
  399. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) われわれは、開発いたします場合には、まず会社のほうで十分な試験を行ないまして、それを今度は軍用としまして実用試験と技術試験を行ないます。現在まだ会社の手元にありまして、受け取っておりませんので、実用試験は行なっておりませんが、会社が飛ばしましたいままでの十月以降の成績は非常に良好であるというふうに申しております。
  400. 加瀬完

    加瀬完君 良好であっても、まだ兵器としては採用しておらないわけですね。にもかかわらず、これに幾らの金をいままで払っているのです、PX−Sに。
  401. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 全体で申しまして、こまかく申してまいりますと、先ほど申しましたUF1の実験に約四億を要しております。そのほかに基本設計、細部設計に約七億弱の費用を出しております。それから試作費、試作系統につきましては、その二機と、当然飛行機をつくります場合には、まず強度破壊試験がありますので、飛ぶような飛行機でないのですが、機体をつくりまして、現在技術研究本部でその強度試験——どこまで強いか、いたむか、こわれるかという試験を行なっておりますが、その試験用の三機につきまして約六十三億の費用を計上しております。大体それが現在までの開発に要しております費用でございます。
  402. 加瀬完

    加瀬完君 さっき長官は、使えないものに払ったものは三億だと言った。それからPX−Sは成功していると言った。ところが、払っているのに使えない、成功しておらないですね、PX−Sは。それに六十何億払っているわけですよ。そこはおかしいじゃないですか。
  403. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) お答え申し上げます。  先ほど使わなくなったというのは舶用ガスタービンのプロペラのことを研究いたしたわけでございまするが、すでにジェットエンジン時代に汽船といえどもなっておりまするから、そこでとりやめたわけでございます。その金額の詳細は三億ないし四億と覚えておりまするが、詳細なことは装備局長をしてお答えさせます。  それから、PX−Sはいままで六十三億かかっておりまするが、これは私どもは常識人として見て申し上げておるわけでございまして、常識上みんなお互い政治家という立場で見まして、私どもは成功した、世界に誇り得る対潜哨戒艇である、しこうして、これは一般の水上飛行機としてもこういうものが開発されますというと、救難用その他旅客用にもなりまして、非常に国利国益のみならず、世界各国から見に来ております。そういうわけで非常に有益なる開発をいたしたものである。対波関係が、数メートルの高い波であっても離着陸できる。これは日本だけの発明でございまして、世界のユニークな発明である、こう考えておる次第でございます。
  404. 加瀬完

    加瀬完君 成功したというのは、技術試験をパスして、さらに実用試験をパスして成功したということになるのです。技術試験もパスしていないのだ、これは。まして実用試験もやっておらない。それで成功したと言われますか。兵器として採用になっておらないんでしょう。兵器として採用してそれに金を払ったということじゃないのです。技術試験の段階で金を払っているわけです。
  405. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 加瀬さんにお答えいたします。  この成功という字にだいぶとらわれていらっしゃるようでございますけれども、技術開発としては成功いたしておるわけでございます。したがいまして、本年度の予算におきましてPX−Sを二機購入する。いよいよ研究開発段階から購入段階に予算の折衝が大蔵省とできまして、予算としては計上して皆さまの御協議を願うことに相なっておるわけでございまして、こういうものをわれわれ政治家から見れば、お互い政治家としては、成功であると、こう考えてよろしいと私は考えております。
  406. 加瀬完

    加瀬完君 飛行機のことを、あるいは飛行艇のことを政治家が判断したってわかりませんよ、これ。外側だけしかわからない、われわれには。そこで、これは政府委員でもいい。四十一年度の時点では確実にRX−Sは成功するという見通しであったのか。
  407. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 開発の問題でございますので、確実という問題につきましては、もちろん研究中でございます。しかし、いままでの世界の飛行機の開発の実態、計画、それに基づきまして関係者が十分な検討いたしまして、いま申しましたように、普通であればすぐ試作をするのに、われわれの場合には特に入念に、米軍から一機をもらいまして、それを改造して飛ばして、つぶしてみて、それで初めて設計に入ったということで、関係者一同確信を持っております。
  408. 加瀬完

    加瀬完君 四十一年はどうです。四十一年の線では。年度の初めでは。
  409. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 確信を持っております。
  410. 加瀬完

    加瀬完君 この四十一年の上期から四十二年の下期までで、新明和ががPX−Sの機械、試験設備の充実ということで十八億を投資しておるわけです。その十八億の内容というのは、結局ほとんど政府から援助された金です。できるかできないかわからないんでしょう、四十一年にはまだ。それで十八億のPX−Sの機械、試験設備の充実ということで工場を設置している。工場を設置しているときにはまだ注文はいっていませんよ、おかしいじゃないですか。
  411. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 工場が設置をいたしますのは、工場の立場でいたしております。私たち、新明和がこのPX−Sのために特に必要とした設備としましては、この飛行機に特に積みます特殊なソーナーの研究施設、試験施設をつくったと聞いておりますけれども、その他につきましては一般の設備でございます。今後日本の航空工業が成長します段階で、その問題についてはいま通産省がその法律と育成の指導をしております。で、われわれとしましては企業が投資しました内容は存じておりませんが、その投資しましたものをどう見るかは、現在の私のほうの調達計画の中でこまかい試算の方式がございます。われわれは、このためにというふうには考えておりません。
  412. 加瀬完

    加瀬完君 四十年に四億、四十一年に十億、四十二年に二十一億、その他予算面にのぼらない金が一億支払いをしているんでしょう。これで工場もできているんでしょう。違いますか。
  413. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) その点につきましては、ただいま申し上げましたように、私のほうは詳細存じておりませんが、各企業がそれぞれの立場で将来を考えて投資するということは別問題でございまして、われわれは、その投資されたものの現実に設備をどう使ったかということにつきましては、当然その会社の内容を見まして、われわれの原価で計算いたしますけれども、この関係とは直接と思っておりません。
  414. 加瀬完

    加瀬完君 その会社の設備ができるかできないか、不確定な要素に基づいて契約をした政府の資金でできているということに問題があると思うんですよ。  次に、その問題だと思う点を言いますよ。それじゃ、試作品が決定するまでの事務的手続はどういうことですか。
  415. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 簡単に申しますと、今後の、将来の日本の防衛を考えて装備をどうするかということで当然審議が行なわれます。その過程で将来こういうものを開発するということで勉強がされますが、たとえば二次防なり三次防なりの計画をつくる際に、その中でこういうものを開発するという方針がとられます。とられますと、そのもとでいまのたとえはPX−S——対潜哨戒機であれば、海幕なり空幕なりあるいは技本なりが中心になりまして関係者が会議を持ちます。持ちましたものは当然それが毎年の業務計画になりまして、長官の決裁を受けますと、関係者が集まりまして要求性能をつくりあげます。要求性能に基づきまして、その性能は、長官の承認を受けますと、それの基本要目をきめまして、その過程で当然どこの会社にそういう開発をさせるか、あるいは技本の部内でどこまでの検討をするか、あるいは海外に調査を出すということで、いま申しました設計ができてまいりまして、で、要求性能できますと、それに基づきまして開発する会社を決定します。その場合には、当然現在の日本の企業の中でわれわれの開発の能力を持つという会社を選定しまして、そこと契約いたして進んでいくということでございます。
  416. 加瀬完

    加瀬完君 試作品の決定は結局開発会議というものが中心になりますね。開発会議の構成をお述べいただきます。
  417. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 研究段階はいろいろございますけれども、われわれのほうとしましては、いま申しましたルートと、それと並行しまして装備審議会という事務次官を長とする審議会を持っておりまして、関係の、まあ防衛庁で申しますと参事官と申しますけれども関係参事官、関係の各長——幕僚長、技本部長等が入りました会議でそうした方針なり、基本要目なり、要求性能なりをきめてまいります。
  418. 加瀬完

    加瀬完君 それは一般の契約をするときでしょう。開発会議は防衛庁の部長クラスと技術本部の専門家によって構成されるでしょう。そこでこの試作品をとるかとらないかということをおきめになるんじゃないんですか。
  419. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) いまの装備審議会のサブ機構としまして、部長と申しますか装備局長が長になりました総合部会がございます。この総合部会の中に各専門専門部会を持ちまして、その専門部会で検討したものを総合部会で検討しまして装備審議会で決定する。決定するというか考えまして長官の決裁を受けるということでございます。
  420. 加瀬完

    加瀬完君 そこでですね、さらに技術本部と関係業者の間で試作品についての予算が話し合いをされることになりますか。
  421. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 開発関係の予算につきましては、いまの技術研究本部が中心で予算を組みます。もちろん、こうした大きな開発項目でございますし、非常に総合的なものでございますので、各方面の意見は聞きますが、一応の技術開発系統の予算の取りまとめは、窓口は技本でございます。
  422. 加瀬完

    加瀬完君 そこでですね、その試作品をきめたり予算を決定したりするのに重要な役割りをした人々がその開発関係の相手方の会社の就職いたしておりませんか。これは防衛庁長官に伺います。
  423. 麻生茂

    政府委員(麻生茂君) お答えいたします。  お尋ねの飛行艇の開発は新明和工業で行なっておりますので、おそらく先生のおことば……
  424. 加瀬完

    加瀬完君 いや、契約会社全体ですよ、いまのあらゆる契約会社に、その予算関係なり試作品を決定した関係者が就職しておらないかどうか。
  425. 麻生茂

    政府委員(麻生茂君) お答えいたします。  御質問がこまかいので、ちょっとすべてについてということはなかなかお答えいたしかねるわけでございまするが、私のほうは自衛隊法の第六十二条によりまして、離職後二年間は、離職前五年以内に従事いたしました職務と密接な関係にある営利企業体の地位で総理府令で定めるものにはついてはならぬということになっておるわけでございます。その総理府令で定めると申しますのは、登録会社の役員またはこれに相当する地位ということになっております。したがいまして、この役員あるいはこれに相当する地位でない者であるいはなっておる者があるかと思いますが、個々に当たりませんと、ちょっと先生の御質問につきましては正確にはお答えいたしかねるかと思います。
  426. 加瀬完

    加瀬完君 それではですね、三十九年度から四十一年度間の契約面の上位の会社に元防衛庁制服の就職者、またもとの身分、人員、お知らせをいただきます。一佐以上でけっこうです。
  427. 麻生茂

    政府委員(麻生茂君) 階級は将補以上でよろしゅうこざいましょうか。
  428. 加瀬完

    加瀬完君 ええ。
  429. 麻生茂

    政府委員(麻生茂君) 第一に三菱重工業。陸将。これは中部方面総監でございました加納富夫、それから海将石渡博、海上幕僚副長でございます。それから海将の矢幡孝一、これは技術開発官でございます。それから海将補の関戸好密、これは第一術科学校長でございます。それから航空自衛隊では空将の鈴木順二郎、第五術科学校長でございます。  それから、私が申し上げますのは三十七年の四月一日から申し上げておりますが、三十九年……。
  430. 加瀬完

    加瀬完君 いいですよ、全部言ってください。
  431. 麻生茂

    政府委員(麻生茂君) それから空将補で高岡迪、第四航空団司令でございます。  それから石川島播磨重工業には陸将補川合了第一教育団長でございます。それから海上幕僚長の海将の中山定義、それから海上幕僚監部の技術部長の岡田憲政、それから空将補の中村治光、技術研究本部第三研究所の第二部長兼庶務課長でございます。それから空将補の坂本善輝、補給統制処の副処長でございます。それから——十社でございますか。
  432. 加瀬完

    加瀬完君 五社ぐらいでけっこうです。
  433. 麻生茂

    政府委員(麻生茂君) 川崎航空機工業でございますが、陸将の種田弘治、武器補給処長でございます。それから海上幕僚長をやっておりました海将の西村友晴、それから海将補の横山修、これは防衛研修所の所員でございます。それから海将補の塚田正、これは海上幕僚監部の技術部の副部長でございます。  その次に、日本製鋼所、これには東部方面総監でありました陸将の野尻徳雄、それから海上自衛隊の幹部学校長でありました海将の永井昇、それから横須賀地方総監部の副総監の海将補の清水鶴造。  それから第五番目といたしまして、三菱電機をあげますと、陸将補の榎本健二郎、これが第一ロケット実験訓練隊長でございます。それから陸将補の広嶋清彦、通信学校の副校長でございます。それから海上自衛隊では、自衛艦隊司令官をやっておりました海将の三上作夫、それから自衛艦隊司令部付をやっておりました海将補の田崎高義、それから第四術科学校長をやっておりました空将補の梅崎実、こういう人が顧問あるいは職員として就職をいたしております。  いま申しました期間は、三十七年の四月一日から昨年の十二月三十一日までの間に退職してこれらの会社に就職した将補以上の人物でございます。
  434. 加瀬完

    加瀬完君 三菱重工は、一佐まで入れると計十一人、石川島が八人、川崎航空が七人、三菱電機が六人、日本電気は十五人が就職しております。  そこで伺いますが、日本アビオトロニクス、伊藤忠、日商、丸紅飯田と防衛庁の取引関係はどういうものですか。
  435. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 日本アビオトロニクスと防衛庁の発注の関係は、三十九年が一番大きいのでございますが、バッジ関係でございます。これは、日本アビオというのは、バッジをつくるために日本で伊藤忠のつくった会社でございます。それから三菱重工は……。
  436. 加瀬完

    加瀬完君 伊藤忠。
  437. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 伊藤忠は大体通信系統の輸入をしておるのでございます。メーカーではございません。輸入の関係をしております。
  438. 加瀬完

    加瀬完君 丸紅。
  439. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 丸紅も大体同じ——輸入系統につきましては、航空機あるいは通信系統の国内の生産の弱いものにつきまして、大体輸入手続をしております。
  440. 加瀬完

    加瀬完君 日商。
  441. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 大体同じでございます。
  442. 加瀬完

    加瀬完君 この日本アビオトロニクスには永盛義雄さん、技術開発官ですね、バッジなどの技術開発をした者がそのまま入っている。伊藤忠には調達本部の副本部長の小笠原喜郎、丸紅には航空幕僚長の浦茂、日商には航空幕僚監部整備課長竹本清、みんなこれは現役のときには、それぞれ会社の専門とする業務に関係の深かった仕事を自衛隊ではしておった方です。あまりに特別関係が強過ぎませんか。これはひとつ長官願います。
  443. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 加瀬さんにお答えいたします。  ただいままで各種の国防産業の会社に入っておりますことは、いま申し上げたとおり事実でございます。しかしながら、重役その他意思決定機関にはなっていないわけでございまして、顧問あるいは嘱託でございます。しかし、意思決定機関である場合、重役である場合には、特に長官の許可が要るわけでございまして、いままで三件——たった三件とおっしゃいますけれども、この数年来三件あるだけでございまして、すなわち、法に触れるきらいがあるものは、幹部としては三件ございました。長官が許可したわけでございます。しかし、将来の問題といたしましては、防衛庁の部内の長官が許可するということでなしに、自衛隊法それ自身を検討して、国防産業に重役その他意思決定機関として入る場合は、第三者機関が——人事院総裁は国家公務員はやっておりますが、必ずしも人事院総裁とは言いませんけれども、第三者機関のほうがよろしいと、こういう考えを持っているわけでございまして、先般も佐藤総理大臣が、ほかの機会において、国会において言明されました。私はそういう趣旨がよろしいのではないか。長官自身が許可を与えるということは過去において三件あっただけでございます。これは法に触れるきらいがございまして、検討してそうして許可したわけでございます。あとは法に触れていないわけでございますが、それでも私はやはり慎重に事を処しなくてはいけない、防衛庁自身の長官ではいけないのではないかと、こういう疑念を抱いておりまするし、また、検討しなくてはならない問題であると、佐藤総理と同じ考えであります。
  444. 加瀬完

    加瀬完君 法に触れるか、あるいは法に触れなくても適当かどうかという判断あとにいたします。そこで、客観的にひとつ御判断をいただきたいと思います。防術生産会社、いまの契約上位の、三十九、四十、四十一各年度の契約高の推移をお示しいただきたい。
  445. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 金額その他につきましては、政府委員からお答えいたさせますし、また、推移等につきましては、いま必ずしもいろいろな数字でとっているかどうかわかりませんが……。
  446. 加瀬完

    加瀬完君 いやとっていますよ。
  447. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) しかし、数字自身は申し上げることはできます。あといろいろな統計表になっているかどうか、よくわかりませんが、数字だけは申し上げます。
  448. 加瀬完

    加瀬完君 本年度はいいですよ。三十九年、四十年、四十一年、上位五社ぐらいでけっこうです。
  449. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 申し上げます。  数字を読んでまいります。三十九年度の一位が日本アビオで百八億。二位が三菱重工で百億。三位が石川島播磨で三十七億。四位が日立製作所で三十七億。日本鋼管が五位で二十二億でございます。四十年になりますと、一位が三菱重工で二百三億。石川島播磨が九十二億。川崎航空が四十三億。三菱電機が三十六億。新明和が三十六億。四十一年になりますと、一位が三菱重工が二百億。石川島が七十億。川崎航空が六十七億。日本製鋼が二十四億。三菱電機が二十二億。こういう経緯でございます。
  450. 加瀬完

    加瀬完君 その契約内容のおもなるものは何ですか。
  451. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 申し上げます。  こまかく統計とっておりませんが……
  452. 加瀬完

    加瀬完君 大きいものだけでいいです。潜水艦とか護衛艦とか、そういう程度で。
  453. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 日本アビオが先ほど申し上げましたバッジ通信機でございます。三菱重工は艦船と航空機と、それから戦車等の装備品がございます。石川島播磨はエンジンと船舶でございます。日立製作所は電気機械でございます。日本鋼管は船舶かと思います。それからあとは川崎航空は飛行機でございます。それから三菱電機は通信系のものでございます。それから新明和は飛行機でございます。日本製鋼所は大体大口径の砲でございます。以上でございます。
  454. 加瀬完

    加瀬完君 そこで、三菱重工業は潜水艦、ヘリコプター。日本鋼管は哨戒艇。富士重工は練習機。三井造船は護衛艦、船舶。川崎重工は潜水艦。新明和はPX。間違いありませんね、主たる契約は。
  455. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 大体そのとおりでございます。
  456. 加瀬完

    加瀬完君 防衛庁長官に伺いますが、潜水艦、護衛艦の決定は海幕、一応中心が。航空機の決定は空幕。通信関係の決定は通信技術関係。こういうのが一応中心になるということは当然ですね。
  457. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 加瀬さんのおっしゃるとおりでございます。
  458. 加瀬完

    加瀬完君 三菱重工業は海幕が何人入っていますか、あるいは空幕から何人入っていますか。
  459. 麻生茂

    政府委員(麻生茂君) 一佐以上で申し上げますと、三菱重工業は陸が四名、それから海が四名、航空自衛隊が三名でございます。合計十一名でございます。
  460. 加瀬完

    加瀬完君 先ほど申しましたが、日本アビオトロニクスは、当面のバッジの開発官であった技術開発官の永盛さん。  それから小松製作所は、武器補給処の鈴木政志さん。  ダイキンは、武器補給処長の久保功さん。  日本電気は、通信課長の淺野敏夫さん、それから通信団長の北村肇さん、その他通信関係の者が何名か入っています。  三菱重工業は、幕僚長も入っております。やめましたが、庵原さん。それから、さっき言った海幕の石綿博さん、矢幡孝一さん、海将補の関戸好密さん、空将の、しかも技術関係の校長であった鈴木順二郎さん、それから幹部学校長の小島喜久さん、空将の高岡廸さん、それから阿部季隆さん、吉田英三さん、それから一佐では有村さん、寺田さんと入っておりますね。  それから石川島、これも空将補の東方総監部の川井さん、海上幕僚長の中山さん、それから海将、技術学校長の永瀬芳雄さん、先ほどお述べになった、何人も出ておりますね。  それから川崎航空機も、陸幕が田中堯さん、西篤さん、村岡忠雄さん、これは研究員ですね、輸送関係の。それから海幕監査課長の神谷義城さん、補給部の野田喜久雄さん、総務部の早川利夫さん、それから補給処の東京支処長の五十嵐正冬、さん、こういう方がみな入っていますね。  それから三菱電機も、自衛隊司令官の三上作夫さん、それから技術学校長の梅崎実さん、それから陸将の岸本重一さん、それから陸将補の榎木健二郎さん、それから一佐あるいは将補が数名入っておりますね。  それから日本電気に至っては十五名、その中にはもちろん陸幕、海幕、空幕からも入っておりますが、直接の通信関係の通信課長浅野敏夫さん、先ほど言った通信課の斉藤博さん、同じく通信課の吉岡良一さん、それから通信団長の北村肇さん、あるいは通信一佐の櫻井稔さんと、通信関係の者だけが多数入っておるわけです。これで特別の関係者の就職が、一体、契約関係に全然影響なしと言えますか。
  461. 麻生茂

    政府委員(麻生茂君) ただいまお述べになりました中には、いろいろ入ってまいりました会社での地位が違うわけでございまして、技術者として本人自身の持つ力、技術屋として自分の手腕を発揮するという立場で入っておる方もあります。しかも、その社内での仕事が技術に専従するということで、防衛庁と直接接触をするというような立場にないわけでございまして、防衛庁の行政を適正に運営するという上において支障はないのではないか、というように判断をしておるわけでございます。また、先ほどお述べになりました大部分の方は、顧問、嘱託あるいは下の職員の方でございまして、しかも、営業関係にタッチをしない方であるわけでございます。それぞれ技術的な意見を諮問に対して答えるというような立場にあるわけでございまして、これらの人が影響力を防衛庁の調達に対して及ぼし得るというような地位にないものと一応判断しておるわけでございます。
  462. 加瀬完

    加瀬完君 これは大臣の御答弁をいただきますが、防衛庁の契約担当の組織は、調達実施本部長が陸海空幕僚長と技術本部長に調達要求に基づいて一応の結論を出して、それを長官に承認を受けるという組織になっている。そこで、陸海空あるいは技術本部の関係者というものは、契約関係には重要なこれはポストにおるわけです。しかも、試作品等の契約を実施をするためには、技術本部の関係者と会社の技術関係の者がこれは相談をするわけです。その会社の技術関係の者に、かりに下僚であっても大ぜいの防衛庁関係者が入っておれば、これは前の上司や同僚ということになるわけですから、関係が生まれざるを得ない。これはお認めになりますね。関係があるなしじゃなくて、関係が生まれる危険というものは当然あるような組織になっています。
  463. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 加瀬さんの御質問はごもっともな点が相当あるわけでございまして、ただいま人事局長からお答え申し上げたのは、自衛官在官中の修得した技術、経験等を生かすという場合におきまして、弊害のない線へ就職させたい。これはやはり一定の停年もございまして、自衛隊員が相当精強なる部隊として練成されていなくちゃいけませんから、停年というものが相当若いわけでございます。しかも、修得した技術というものは、相当りっぱな技術や経験を持っているわけでございまして、そこで、それぞれの会社工場等へ就職いたしましても、弊害のない線ならばよろしいと、こう考えておりまするが、弊害のある線、すなわち、営利関係とか、あるいは従来やっておった、自衛隊員として従事しておりました職務と密接なる関係のある会社工場、国防産業等に従事し、しかも、意思決定機関であるとか、重役であるとか、あるいは重役に準ずる者、そういう者は防衛庁長官だけの許可になっておりまするが、これは人事院総裁といったような第三者機関がよいのではないかということを先般も佐藤総理から御注意を受けましたが、私はごもっともなる御注意だと思っております。そこで、自衛隊の内部で、長官が自分の部下の就職先を許可するというようなことはやはりよろしくないのでございまして、希有の例ではございましょうとも、人事院総裁が許可をせんければならぬような国家公務員に対する立場と同様に、第三者機関が試可をするようにしたほうがいいじゃないか、こういうわけで、自衛隊法をいま六十条、六十一条、六十二条というようなものを検討中でございます。
  464. 加瀬完

    加瀬完君 総理が御指摘があったということは、結局、そういう関係が疑われるような、あるいは関係が生ずるような現状にあるということだろうと思います。いま長官の御趣旨のように、これは法を改正しなければならない問題だと思います。  そこで質問を進めますが、防衛庁の契約高は三十九年と四十年で、三菱重工は百九億から二百三億、石川島は三十七億から九十二億、川崎航空機が十九億から四十三億、三菱電機は十八億から三十六億、日本電気が十九億から二十四億八千万と上昇していることはお認めになりますね。
  465. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 加瀬さんにお答えいたします。  数字の点は、ただいま装備局長が申し上げたとおりでございまして、上昇しておる線が、大体において予算額に照らして自然にそうなると思っております。ただし、日本アビオトロニクスは非常に減少しております。もう一応済んだものでありますから、減少しておりますが、ほかは一応等比級数的に上がってくるということに、若干ではございますが、約七・二五%の上昇を示しておりまするから、それくらいは上昇しておるのじゃないかと、こう考えております。
  466. 加瀬完

    加瀬完君 この間の、いまあげた各社の政治団体に対する献金をお示しいただきたい。
  467. 降矢敬義

    政府委員(降矢敬義君) お答えいたします。  いまお話がありました各会社の政治献金につきましては、寄付を受領いたしました各政治団体が届け出をしておりますので、会社別には集計をしてみないとわかりませんが、後日、官報の記載を集計して提出さしていただきたいと思います。
  468. 加瀬完

    加瀬完君 それでは献金を受けた団体のうちの新財政研究会、新生政治経済研究会、海と陸と空の会、丹門政経研究会、この団体は責任者はだれですか。また関係の深い政治家はだれですか。
  469. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 新生政治研究会の代表者は新倉という人です。丹門政経研究会は横山重一という人でございます。それから海と陸と空の会は三井正昭ということになっております。  それからどの政治家と関係があるかということは、一々そういうことは自治省としては調べておりません。
  470. 加瀬完

    加瀬完君 それじゃ一つだけ伺いますが、新生政治経済研究会というのは、どなたと御関係があるというおうわさを承っておりますか、仲間ですからわかるはずです。
  471. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 何せ一万三千もある、数ある中でございまするので、その団体についてはうわさも聞いておりません。
  472. 加瀬完

    加瀬完君 これは増田さんではございません。防衛庁長官が在職中、契約会社から献金を受けたといたしましたらどういうことになりますか、総理大臣に伺います。増田さんではないと念を押しましたから、ひとつ御心配なく。
  473. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 普通の政治献金なら差しつかえないのじゃないかと、かように思います。ただ、仕事でそこに結びつきがあるんだという、そういうような疑惑を受ける、こういう問題がございますけれども、政治献金自身は別に問題はないと思います。
  474. 加瀬完

    加瀬完君 まあ法律的には合法でありましても、立場上、政治姿勢としては好ましいとは御判断はいただけないでしょうね。好ましくないという御判断でございましょうね。
  475. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまお答えいたしましたように、いろいろ疑いを持たれることは好ましくないというふうに考えます。
  476. 加瀬完

    加瀬完君 ——幕僚長や幕僚、あるいは技術関係者がそのままずばりと関係のあるところに就職をする。これでは防衛庁の綱紀をどんなに振興しようとしたって、これは振興はできませんよ。そこで、先ほどからいろいろと、今後法律を変える、あるいは政令を変えるとおっしゃっておりますが、人事院もまことにだらしない、全然天下りはチェックできない機構になっております。いまの政令でも防衛庁長官が断固としてやろうとすれば、これはできる問題なんです。今後は少なくも疑われるような天下りはやらないと御確認をいただけますか。
  477. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 先ほど来私や政府委員お答え申し上げておりますとおりに、法令に許された範囲内におきまして就職をいたしておるのでございまして、あとの三件というものが防衛庁長官が許可を与えた、つまり許可を与えないと法律に触れるからでございます。そこで法律に触れるおそれがありまするから、検討いたしました結果、審査いたしまして、この範囲はよかろうということで許可をいたしたのはこの三年間に三件ございます。そういうようなものはむしろ第三者機関のほうが公平でいいじゃないか、自衛隊自身の長官がきめるということはよろしくないという総理の言明もございまして、私もごもっともだと思っております。公正を期するために、いま人事院がどうなっているかは別といたしまして、当該上司である長官が許可をするなんということはやはり不公正に流れるきらいがございますから、法でも政令でも長官の心得次第だとおっしゃってはくださっておりますが、やはり法律の機構といたしまして第三者機関のほうがいいじゃないかと、こう考えておりますが、密接でないもの、自衛隊におったときに習得した技量、経験、あるいは頭脳、技術等を生かすということは、弊害がない場合には、停年が非常に若いのでございますから、ある程度許されてよろしいのじゃないか。しかしながら、それでも会社の意思決定機関であるとか、あるいは防衛庁関係の営業にタッチする関係とかということは、意思決定機関でなくても私自身はきびしく取り締っておるつもりでございます。
  478. 加瀬完

    加瀬完君 私は、時間の関係で意を尽くしませんでしたけれども、国を守る自覚というものを総理がどんなにお述べになって、前半に述べましたように教科書をいかに変更をいたしましても、信頼に足る政治の姿勢というものが正されなければどうにもならないのじゃないか、その一つの例が、防衛庁の機密が漏れるとかなんとかいってもこのとおりだという例をあげたわけです。というのは、ある新聞に、また新聞を例に出して恐縮ですが、「車両禍で道もおちおち歩けず、通勤には定員の三倍以上の殺人電車に乗せられ、空気はよごれ、騒音や物価高に悩まされ、汚職だ脱税だと不愉快な話ばかりで、税金だけはがっちりと天引きされる、このようなサラリーマンにはこの国を守る気慨などとてもとても」という投書があります。これに十分ひとつ総理お答えをいただきたいのでございます。  質問を終わります。
  479. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、すべての国民が祖国を愛し、祖国に尽くし、祖国のために働き守る、こういうことは、その程度の相違はありましても、みんな同じようにそういう気持ちを持っておると思います。そうして、ただいまどうも政治が悪いから自分は働けないのだ、こういう御批判がございました。私別に弁解がましく申すわけではありませんが、およそ民主政治のもとにおきましては、どういう方法で政治が批判されるか、この国民の権利義務ということと政治を批判する方法、これはおのずから別じゃないだろうかと、かように私思っております。したがいまして、気に食わないことも、また不合理な点も多々あるだろうと思います。正しい政治、そういうものは国民の総意によって決定される。これは不満でも支持を得ておるその政党がただいまのように政局を担当している。そしてそのことと自分がやる行為が、どうも政治が悪いからおれはかってによそを向いているのだ、こういうことはやはり問題を偏向している、間違っているのじゃないか、かように私は思います。
  480. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもちまして、加瀬君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  481. 西郷吉之助

  482. 青木一男

    青木一男君 私は、最近における反日共系三派全学連の暴力活動を中心として、佐藤総理並びに関係大臣に質問をいたします。各問題ごとにまず私の意見を述べまして、これに対する各大臣の御所見を一括してお伺いしたいと思います。  まず、三派全学連の本質について総理にお伺いいたします。昨年十月及び十一月、佐藤総理の海外旅行を阻止すると称して、反日共系三派全学連が羽田空港に押しかけた羽田事件をはじめとし、佐世保事件及び王子病院事件、成田空港事件等、相次いで大規模な警察との衝突事件を引き起こしました。これらの事件に共通するところは、彼らはヘルメットと軍手で武装し、角材や石を武器とし、覆面して、警備についている警察に対し積極的に攻撃をかけるという戦法をとっておるのであります。警察は角材や投石の攻撃に対して防御方法を講じておるけれども、なおかつ毎回数百人の負傷者を出しておるのであります。全学連がかような暴挙を計画的に繰り返し、世間の非難を浴びても少しも反省の色を示さないのは何ゆえでありましょうか。それは彼らがもともと法の秩序と国家の権威を否定しているからであり、寸毫も悪の自覚を持たないためであると私は解しますが、総理の見るところを伺いたいと思います。  彼らは単に警察に攻撃を加えるだけでなしに、投石によって市民を負傷させ、民家や自動車を破損し、土足のまま民家に飛び込み、角材を盗み出し、道路舗装のための石をはぎ取り、あるいは東京から博多までの車両を独占し、一般の乗客はもちろん、車掌や公安員の立ち入りをも拒否するという傍若無人のふるまいを行なっております。さらに成田事件のときには、竹槍や劇薬である農薬までも用意し、農薬をまともに受けた警察官の一人は瀕死の重傷を負い、気管切開の手術により、かろうじて生命を取りとめたのであります。かように政治上の目的をもって国家権力に刃向かい、社会の秩序を撹乱することを専業とする三派全学連は、もはや学徒の団体ではなく、市井の暴力団よりも狂暴にして、悪質な暴力団であり暴徒であると断ぜざるを得ません。全学連の本質についての認識は、社会の彼らの行動に対する評価政府の取り締まり対策に重大な関係があります。総理は三派全学連を狂暴にして悪質な暴力団であり暴徒であるという私の見解に同意されるかどうかをまずお伺いしたいと思います。
  483. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまお尋ねになりました羽田事件、あるいは佐世保事件、その後引き続いて起こりました王子事件、あるいは成田空港事件等々、一連の学生のこの行動、これは確かに私はいま御指摘になりましたように、一部学生の常軌を逸脱した暴力的な行動だと、かように思います。もっとはっきり申せば、これは一つの政治目的であって、いわゆる学生運動ではない、かように思っております。したがいまして、かかる行動、これは市井の暴力行為、あるいは暴徒、かように目されてもやむを得ないものではないだろうかと思います。目的のためには手段を選ばない、あるいはそのことが羽田事件以後引き続いて行なわれた事件の実相だと思います。私は、学生全部が非常に間違っておる、かようには申さないのでございまするが、一部のイデオロギー的な、そのイデオロギーによる学生、これに付和雷同しておる者がかような問題を引き起こしたと、かように考えます。まことに、私、残念に思っているような次第でございます。  なお、この全学連の全貌というものをどういうように見ておりますか、文部大臣からもさらにお答えさしたら、全貌がもっとはっきりするんじゃないかと、かように思います。
  484. 青木一男

    青木一男君 次に、民主主義と暴力との関係について総理にお尋ねいたします。  暴力は平和な市民生活の敵であるとともに、民主主義の最大の敵であります。私は、暴力はいかなる場合にも無条件に絶対に排除されなければならないと考える。羽田空港事件のときは、世論は無条件に全学連の行動を非とした。しかるに、佐世保事件のときは世評区々であって中には全学連に同情する者、あるいは警察を行き過ぎと批判する者もあったやに報道されております。エンタープライズ号寄港に反対する人々が全学連に同情的であったという事情も考えられるわけであります。しかし、目的は手段を正当化することはできません。  政治上の見解の相違は、国会において、あるいはその他の場において、言論と文書とその他法律で認められた方法で表現し争うのが民主主義のたてまえである。私は、政策上の見解や立場とは無関係に、いかなる場合にも暴力を絶対的に否定するのが民主主義の原則であると考えますが、総理の御所見を伺いたいと思います。
  485. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 青木君のただいまの御意見、常に私も考えております。およそ民主主義のもとにおきましては、自分たちの政治目的を達するにはルールがございます。そのルールを守らなくて、目的のためには手段を選ばない、暴力ざたになると、これは許されるわけのものではございません。私は、民主政治が守られ、そうしてそのもとにおいて目的を達成する、いわゆるこれが法の秩序のもとにおいてなされるということが最も大事でございます。一部の学生等が法を無視し、そうして暴力行為に訴えたと。その原因、あるいはどういう事情によろうとも、それは弁解の余地のない問題だと。このことこそ、暴力によったと、そのこと自身で排撃される、拒否されると、かように私は考えております。  どうも一部におきまして、暴力、それはよくないけれども、どうも政治環境が悪いとか一部の者がどうしたとかいうような話をしばしば聞くのでありますが、私はさような弁解がましいことがあってはならないと思います。いままで私どもはよく、どろぼうにも三分の理ありということを聞いてまいりました。三分の理があるからどろぼうしてもいいという議論はどこにもないと、かように思うのでございまして、いけないことはよくないと、これはもうはっきりし、また他の点におきまして、かような運動がどういうもとにおいて起きているかと、こういうことについて私どもが反省することも当然でございますし、その結果は、そういうことがあるからといって暴力行為が許されるものではないと、これだけはもうはっきり申し上げておきます。
  486. 青木一男

    青木一男君 次に、警察の警備について赤澤国務大臣にお尋ねいたします。  佐世保事件のとき、警察が行き過ぎであるという批判があったようであります。私は、かような論者に対し、しからばあの場合警察はどうすればよかったのかと反問したいのであります。全学連は基地突入を呼号して警察に襲いかかったのである。基地侵入は懲役刑を科せられる犯罪でありますから、いかなる方法を講じてもかような犯罪を防止すべきは警察の責務上当然であります。  もし全学連がガスと水に追い帰された状態を見て、全学連に同情し、警察を行き過ぎと評したものであるとすると、これは大きな間違いであります。学生がかわいそうだという甘い認識に出たとすると、彼らがもはや純真な学徒ではなく、凶悪な暴徒であるという本質を見落としておるのであります。形勢の悪い弱者に味方する気持ちが働いたとすると、全学連と警察の衝突を市井の暴力団同士のけんかと同じように考えるのであって、事柄の本質の判断を誤るものであります。法の秩序を守るということは民主主義国家、文明社会構成の基礎でありますから、これを尊重するという正義観はすべての人情に優先すべきものであると考えます。  率直に私の感想を申しますと、警察の方針はむしろ手ぬるいと思われる点があります。警察は警棒の使用にも制限を加えておるのに、暴徒の角材や石の使用は無制限であるから、常に警察側に非常に多くの負傷者が出てくる。私はこの点でいつも警察担当者に深き同情を寄せておるのであります、警察側にのみ負傷者が多く出るというようないまのやり方を繰り返しておりますと、警察の士気に影響する心配がないでありましょうか。また、現行犯であるのに、十一月の羽田事件以外では検挙者が非常に少ない。私は、他の犯行事件と同じように、現行犯はすべて逮捕するという方針でいくべきものであると考えますが、当局のお考えを伺いたいのであります。  国家公安委員長が最近、全学連の暴状と警察の任務について所見を発表し、国民理解を求められたことは時宜を得た措置であると思います。  近時、全学連事件がややもすれば興味本位のニュースの対象となり、あるいはやじ馬気分の見物の対象となって、社会の秩序に反抗する暴徒の横行に対し警察が警備に苦心しておるという事件の本体がかすんできたように見えるのは、まことに遺憾であります。今後市民が巻き添えを食うことのないようにするにはどうしたらばよいか、また第三者の混入が警察の職務執行を妨害しないためにはどうしたらよいか、こういう点についても、警察当局はその対策に遺憾なきを期していただきたいと思います。それと同時に、先般公安委員長が発表されましたあの国民の一般の理解、ことに報道機関理解と協力について、当局はどういうような方法を講ぜられるつもりであるか、お伺いしたいと思います。  法の秩序を否定し、公共の安全を害し、平和な市民生活を脅威して顧みない不退の行動が白昼堂々とまかり通るということは、法治国家としてあり得べからざることであります。今後当局はいかにしてこれに対処していかれるお考えであるか。警察法の規定によりますと、直接の権限と責任国家公安委員会にあります。国家公安委員長たる赤澤国務大臣の決意のほどをお伺いしたいと思います。
  487. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 常習的な学生の集団暴力事件に対する先生の見方は、私も全く同感でございます。私は国家公安委員長として、公安委員の諸君とともに、国の公安保持のために最終的に全責任を負うておる立場でございます。そこで、今日の事態を正視いたしまして、非常に憂慮をしておりましたけれども、これ以上ああいう暴挙は許せないという結論になりまして、先週の木曜日でございましたか、期せずして全員意見が一致いたしまして、そのときの談話を私が外に対して代表して発表したわけでございます。  この談話は、「三派系全学連は、昨年来、学園内において暴力をもってその秩序を破壊しつつあるのみならず、学外においては砂川事件、羽田事件、佐世保事件、王子事件、成田事件と相次いで暴力的不法行為を敢行し、しかも最近は、土足をもって民家に乱入し、あまつさえ投石をもって市民を失明させるなど、平和な市民生活に著しい脅威を与えるに至っている。しかも、これから一連の行動が、わが国の民主的体制の基盤である法秩序を武装闘争で打破するという考え方に基づいてとられていることは、わが国の法秩序の根底をゆるがすものであるとして放置できない問題であると考える。国家公安委員会は、法秩序を維持し、これら暴力行為の脅威から市民生活を守るため、今後も、都道府県公安委員会と緊密な連携のもとに、厳正にこれら団体による暴力的不法行為の取り締まりに当たる考えである。国民各位は、三派系全学連の暴力行為がもたらす民主主義的体制破壊の危険性を十分認識され、警察がこれら団体に対してとる措置に理解と支持を与えられるとともに、関係の向きにおかれては、それぞれの立場で不法行為の防止に努められるよう切にお願いする。」という意味の談話でございます。  で、最近のこの状態を見てまいりますと、やはりこの間もこの席で申し上げましたとおりに、つかまえてみると、非常に若い、子供と申しますか、少年法の適用者、児童福祉法の適用者などがたくさんおるわけでございまして、やはり関係の向き——と申しますことは、こういう人たちが、若い者ができるということには何かそれ相当の理由があるんではないか。こういう現象が起こりました際に、取り締まり当局として徹底的に取り締まりまして、法秩序を守るためには、取り締まる責任は当然私どもにあるわけでございまするので、それはいたしますけれども、しかし、それだけで足るわけのものじゃないと思います。やはり根底をよく分析して、そしてこういう若い人たちの考え方は正しくないんだということを国民全体の力で考えていかなければいかぬ、かように考えておりまするので、最近頻発しておりまする学園紛争なども、やはり大学の自治だとか学問の自由を守るといったような分野で大きなはき違えがあるんじゃないかという考え方も持っておりまするし、当然文教当局などとも今後のことについては協議もいたさなければならぬと考えております。  それから、まあ世論の指導に非常に大きな役割りを果たしておられるのは、言うまでもなくマスコミの皆さんですが、実はこの前の安保のあの事件がありました際に、新聞社が七社でもってこういう声明を発表しておられます。これは共同宣言。これは朝日新聞に出た記事ですが、民主主義は言論をもって争わるべきものである、その理由のいかんを問わず、また、いかなる政治的難局に立とうと、暴力を用いて事を運ばんとすることは断じて許されるべきでないという態度を各社とも明確にいたされまして、いまでもみなこの宣言のとおりにものを見ていただいておるとは思っておりまするけれども、しかし、ああいうどさくさの際ですから、私どもといたしましては、非常にそのときに気にかかる報道の内容があるわけでございます。  たとえば、大新聞あたりに、そういう事件の内容扱いまするに、誤報もありますし、たとえば、ある十八歳の女の学生がいろいろこの中に、混乱にまぎれておりまして、新聞を見ましたところ、何か混乱に巻き込まれてじん臓破裂という重大な傷害を受けたということが堂々と新聞に出た。私もこれにはたいへんびっくりいたしました。これはたいへんだというので、よくよく調べてみましたところ、医者の診断には、そうじゃなくて、内臓にも何にも異常がない。泌尿器系統で調べてみたら、これも全然異常はない。ただ何か吐きけを盛んに訴えるので、これは科が違いやしませんかということで、ほかのところへ行ったら、何か一つの結論が出た、こういうことがある。世人には、じん臓破裂という受け取り方は、たいへんに受け取るわけです。私どももこれはたいへんだと思いまして、すぐやって調べてみたわけであります。  また、こういうことも、申し上げるのはたいへん残念だけれども、ひとつ記憶にとどめておかなければなりませんが、あのときに血みどろになった人たちがみな医者のところにかけ込んだわけです。ある医者——ここでは、持っておりまするけれども、病院の名前は一応発表は差し控えさせていただきまするけれども、もうレーンコートが血まみれになっておる。医者がよく見ると、これは血液じゃない。調べてみたら、何か赤いインクみたいなものをぶっかけてある。ヘルメットを取りなさい、頭に傷したんだからといって、取りかかるというと、なかなかぬごうとしない。無理に取ってみると、中に、脱脂綿に赤いインクを含ませて、それでガーゼで巻いておる。押えると、ばっとこう赤いものが流れる。こういうことをやったり、いろいろなそういうことまでかまえて、そうして同情をかうような所作まであるわけでございまして、私どもはこういう若い人たちが一体何のためにこういうことをやっておるかということにつきまして、非常に憂慮もいたしますし、そういったことで今後ともそれぞれの新聞社の方々も正しく報道していただくことも期待をいたします。  それからまた、警察といたしましては、言うまでもなく、法秩序の破壊行為などに対しましては断固たる取り締まりを行なっていく所存でございますが、まあ先ほど申しましたように、これは国家公安委員会全部の熱望でございます。暴力は絶対に容認しないという立場から、警察のとる措置については理解と指示を与えられますようにお願いをしておるわけでございまして、大学当局をはじめ関係機関がそれぞれの立場において、学生の違法行為を防止するためさらに努力を尽くされんことを要望もいたしております。これら諸機関対策と相まって、法秩序の維持に遺憾なきを期してまいりたいという強い決意を持っておる次第でございます。
  488. 青木一男

    青木一男君 ただいま国家公安委員長から、公安委員全員の決意として、断固取り締まるという方針を伺いまして、私は安心いたしました。ぜひそのとおり実行していただきたいと思います。  次に、全学連の暴挙と日本の革命について総理の所見を伺いたいと思います。  十月八日の羽田事件直後、三派系全学連の委員長秋山某は、意気軒高として記者会見を行ない、四十五年革命の予行演習として行なった今回の行動は成功であったと語っておるようであります。彼らの行動が四十五年の革命運動の前哨戦または予行演習であることは、多くの人の認めておるところである。そうして成功を誇示したのは、おそらく、弁天橋付近の闘争で全学連が主導権を握り、警察はたじたじとなって、幾台もの警備車を焼かれ、警察側にのみ数百人の負傷者を出したのに、全学連側は負傷者も被検挙者も非常に少なかったことをさしたものと推察されます。また、三派全学連は、佐世保闘争の自己評価の中で、武装デモと直接行動により七〇年闘争の突破口を切り開いたと、その成功を誇示しておるのであります。  日本人ほど革命のおそろしさを知らない国民はない。また、日本国ほど取り締まり法規がなく、革命工作の容易な国はないといわれております。私は、自由民主党とその政府の健在なる限り革命はあり得ないことを確信するものでありますが、しかし、事態は容易でありません。一瞬の油断もできないと思います。国家と民族の運命を一朝にして転覆する革命の防止につき、万全の対策を講ずる必要があることは言を待ちません。  四十五年をもって日本の危機と言うのは、この年を期して革命勢力が一斉に蜂起する情勢にあることを意味するのである。わが国には、四十五年をもって革命展望の年ときめておる政党があります。また、三派全学連がトロツキストであることを認めつつも、四十五年の安保闘争の同盟軍としてこれを包容していこうとしておる政党もあるのであります。  四十五年の革命勢力の結集、決起の題目は日米安保条約の廃棄であり、その運動が暴力化することは容易に想像されるところであります。昭和三十五年の安保騒動の直後、私は本会議で緊急質問をしたのであるが、その演説の冒頭に、自分は国会の楼上から騒動の模様を見て、革命前夜の思いがしたという感想を述べております。なお、先ほど国家公安委員長の言われた大新聞共同のあの声明に触れまして、自分はけさ、あの共同宣言を見て、日本国家いまだ滅びずという感想を持ったということを演説の中で述べておるのであります。三十五年の安保騒動のときは、わずかの全学連の暴動によってあれだけの大事件を起こし、アメリカ大統領の訪日中止、岸内閣退陣の原因をつくったのであります。四十五年の安保反対闘争に動員を予想される革命勢力の規模は三十五年の比でないことは疑う余地はありません。また、その戦術も悪化することが予想される。去る一月三十一日、日比谷で開かれた三派全学連佐世保闘争報告大会の席上、委員長秋山は「大衆には当然武装の権利がある、大衆が誤った権力を武器を持って倒すのに遠慮は要らない、一九七〇年にはもっと武器を用意すべきである」と叫んでおるのであります。代々木系全学連はいま三派の行動を静かに傍観しているが、四十五年に備え力をたくわえておるものではないかと想像されます。学生以外にも、広く各方面の革命勢力の参加を見ることは必至である。もし国の治安権力が暴力に屈したならば、これすなわち革命であって、四十五年の危機とはその危険性をさすのであります。  かりに日本に革命政権ができ、安保条約を廃棄したならば日本はどうなるかということを、この段階で考えてみる必要があると思います。私はその場合、米国との親善関係を失ったというだけで日本経済は根底から崩壊することは間違いないと思います。わが国産業の発展が外国貿易の伸長に依存することはいまさら言うをまたないところであります。そして輸出入とも最大の得意先は米国であります。要するに安保条約を通じて米国と親善関係にあることが今日の経済繁栄と国民生活の向上をもたらしたものと言うべきであります。もし日本に革命政権ができて、安保条約を廃棄したならば、米国は日本の工業力が国際共産主義勢力に利用されることを防ぐ必要からも、日米貿易はおそらく途絶に近い状態におちいると思います。かくなっては、経済の繁栄どころではなく、全国工場の火は消え、失業者は続出し、物資は欠乏し、物価は暴騰し、恐慌から一挙に日本経済は破局におちいり、国民が食べていくことのできない国となることは明らかであります。  要するに、四十五年の危機を切り抜け、安保体制を堅持することは、国家の安泰と国民の自由の擁護と経済の繁栄と、国民生活の安定向上を持続するための要件であり、自民党とその政府に課せられた至上命令であると私は思います。総理は、四十五年の危機をどういうふうに見ておられますか。またいかにしてこれに対処されるお考えであるか。また、この危機回避の見地からしても、三派全学連の革命の予行演習はまずもって断固取り締まるべきものであると考えますが、以上の点について総理のお考えを伺いたいと思います。
  489. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はまあ政府の最高責任者として、絶えずこの国の平和と安全を、同時にその繁栄を心から祈っております。そういう意味で、民主主義のもとにおいてのただいま申し上げるような繁栄、平和ということを念願しておりますが、これは政府考えだけで実はできるものでもございません。先ほど私並びに赤澤国家公安委員長からお話申し上げましたように、暴力行為、社会秩序を破壊するような行為は、行動は、これは厳重に取り締まる、かような意思、意向をはっきりいたしまして、しかし何と申しましても、ただいまいわゆる世論、国民の支持がなければこういうことはでき上がるものではないのであります。ただいまいろいろお話になりましたが、やはり国民の支持を得るということ、その立場に立って事態を明確にしたいということだろう、私かように思います。  この羽田事件以後引きて続いて行なわれました学生運動に対する世論の動向は、非常にはっきりしてきびしいものがあります。中には、ただいまの状況はもう学生運動ではない、これまた単純な大衆示威運動だというものでもない。もう明らかに竹やりを用意する、あるいは角材を用意する、かような状態になっては、これは許せないと、たいへんきびしい批判を実は受けていると思います。したがいまして、私は一部の思い上がった諸君にいたしましても、いわゆる四十五年の予行演習というようなことばは適当でないのじゃないかと、実はかようにも思うのであります。もちろんそういうことについて大事をとって政府は十分注意していかなければならない。楽観したり、あるいは甘く見てはいかぬこともちろんでございます。したがいまして、それぞれの現象について十分注意はしてまいりますが、ただいま述べられましたようなそれほどの事態に考えることはいかがであろうか、かように思うのであります。私は絶えずこの世論の動向というものを民主主義時代においては考えていかなければならない。で、この動向こそ最も大事な政治を決定するものだと、かように思います。一部の権力——政局を担当するというその権力だけにたよってはいけないのだ、かように考えてみずからを戒めておるつもりであります。  ただいま日米安全保障条約の問題についてお話がございましたが、私は国民の大多数は、日米安全保障条約のもとにおいてわが国の平和が確保され、安全が保障され、そして繁栄を来たしたのだ、かように思っております。したがいまして、今日の状態においてこの日米安全保障条約、これは戦争への危険のものだ、かように国民大多数は考えてはおらない。いわゆる国民の良識から申しますならば、この日米安全保障条約のもとにおいて、わが国の安全が確保され、また繁栄への道を歩んでいる、かように実は大多数の方が確信を持っておられると思います。したがいまして、この四十五年というものが到来いたしましても、また、この状態を破壊しようとする一部の考えを持った者がおるにいたしましても、その力は私はそうたいした大きいものにはならないだろうと思います。しかし、私ども政府に課せられた責任は、社会秩序を守ること、法秩序を守ることでございますので、社会秩序を破壊するような暴力行為、これは勇断をもってこれに対処していく、これでなければならないと思います。そうして一面、世論の動向、また世論の支持を得るような事態を明確にしていく、絶えずその努力はしなければならぬと思います。そのことにおいてわが国はりっぱに繁栄していくのではないか、かように思っております。  どうも最近の一連の行動は、確かに御指摘になりましたように行き過ぎの問題がございます。そうして、これはただ単に文教当局だけにまかしてはおけない。もうすでにそれが警察の問題であったり、あるいは法務関係の問題であったりするようにも発展しておると思います。そういう意味で、ただいまも破防法の適用そのもの等につきましてもいろいろ政府は捜査もし、調査も進めておる。しかし、こういう事柄につきましては政府はもちろん慎重でなければならない、かように思いまして、これらの問題も真剣に、慎重に取り組んでおるというのが現状でございます。問題は、一部の暴力ざた、あるいは社会秩序破壊行為、あるいはまた、その言動としては四十五年の予行演習だ、かように申しましても、私はそのものが実を結ぶとは思いません。健全な社会世論がある限りにおいて、国内においてかようなものが実を結ぶとは思いません。しかし、この上とも注意をいたしまして、万一にしろ、かような事態が起こらないようにこの上とも努力してまいるつもりでございます。
  490. 青木一男

    青木一男君 私も、四十五年に革命はあり得ない、自民党内閣の健在な限りはあり得ないと思います。しかし、この問題は、万一あったらばもう取り返しのできない問題でありますので、くれぐれも万全の策を考える必要があることを重ねて申し上げまして、総理のあらゆる対策を講ずるということに御決意のほどをお願いしておきたいと思います。  次に、私は、大学当局の責任について文部大臣にお伺いします。  三派全学連の暴力行動に参加した学生は、学生の本分を越え、国家社会に多大の迷惑をかけているものであって、大学教育に莫大な経費を投じている国家と父兄の期待と信頼を裏切るものであります。大学当局は、自校の学生がかような運動に参加することを阻止するため何らかの措置をとっておるのでありましょうか。また、参加学生、特に起訴された学生に何らかの処分を行なっておるのでありましょうか。あるいは、学外の行動には責任がないと言うのか。または、学外の行動にまで手が及ばないと言うのでありましょうか。文部大臣は、先般、全学連の問題で大学の代表と懇談されておりますから、大学当局の責任感とその態度について見るところを伺いたいと思います。全国から集まる全学連の活動資金がどこから出てくるかということは、国民のひとしく関心を寄せておる問題であります。資金の一部が大学自治会から出ていることは明らかでありますが、それがために自治会の権力闘争が行なわれておるのである。しかし、自治会の金が暴力活動に使われるということは自治会の目的を逸脱するものであり、善良なる学生の意思に反することも明らかであります。ことに大学のチェック・オフ制度によって会費が集められているとすれば、大学は間接に暴力に協力した結果となる。大学当局は、善良な学生らとともに自治会のあり方について再検討する必要があると考えますが、文部大臣の御所見を伺いたいのであります。  次に、大学が全学連活動の基地または拠点として使用されるということは、まことに重大な問題である。学校が暴徒の集合、宿泊に利用されるのは、羽田事件、成田事件にも例がありますが、その顕著なるものは九州大学である。九州大学は、佐世保事件の継続中、数日間にわたり全学連の宿泊、休養、作戦の基地として占拠され、間接に暴徒の非行を援助した結果となったのである。事件後、九州大学の当局は、全学連に占拠されたのは遺憾であるが、警察を導入して混乱を起こすことを避け、大学の自治を守り得てよかったというようなことを発表している。九州大学の諸君は、大学の自治を何と心得ているのであろうか。大学は治外法権の場ではありません。彼らの常識を疑わざるを得ないのであります。佐世保事件のとき、全学連は佐賀大学を占拠しようとした。しかし大学当局が、もし侵入すれば警察力で排除すると通告したため、彼らは佐賀大学占拠を断念して福岡に戻ったのであります。九州大学が何ゆえ佐賀大学と同じ方針をとり得なかったのか。世間には、九州大学には赤の教授の多いことをもって両大学の態度の相違を説明している人があります。国民として憂慮にたえないところであります。  さきに国立大学協会は学生運動についての意見書を発表したが、その中で、学生の処分の励行と、自力で暴力を排除し得ない場合の警察導入について積極的な意見を述べている。まことに同感でありますが、各大学はこれを実行に移す考えがあるのであろうか、文部大臣の見るところを伺いたいと思います。  私は、この協会の意見は私立大学にも適用さるべきものと考える。近時、私立大学において三派全学連、または代々木系全学連が中心となっての暴力ざたがひんぴんと起こっている。授業料値上げ反対、学生会館管理権争奪等を目的として実力を行使し、学長や理事者などを長時間監禁するという事件が常例化し、警官の出動で監禁を解かれた事件もあるのである。最近の中央大学事件のごとき、バリケードを築いて試験を妨害し、高等学校にまで出かけて試験を妨害した。これは明らかに受験を欲する学生の人権侵害である。社会正義の見地からも放任できない人権侵害であります。しかも最後には、学校は管理能力を失い、全面敗北をした。大学が完全に暴力に屈服するということはゆゆしきことであり、私立大学の経営の危機を感ぜざるを得ません。私は、国立大学と私立大学とを問わず、先ほど述べた国立大学協会の意見書の趣旨を励行し、学園の内外を問わず暴力を排除することが刻下の急務であると考えますが、以上の諸点について文部大臣の御所見を伺いたいと思います。
  491. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お答えいたします。  羽田事件あるいは佐世保事件等においてあらわれました一部学生のあの暴挙につきまして、大学はいかなる措置をとっているか、あるいは指導をしているかということでございますが、大学といたしましても、あのような事件が起こる、しかもそれが計画的で継続的に起こっているという事態に対しましては、深刻に検討を加えているところでございます。当時の措置といたしましては、あのような行動に参加することを戒める学長の告示でありますとか、あるいは教官による学生に対する説得など、学生指導につきましてできる限りの措置をとったと思います。また、大学の施設が暴力的活動の拠点として利用されている、そのようなことの絶対ないように、学内施設の警備、よその大学生の侵入等に対して、大学によって多少の相違はございますけれども、それぞれ学内指導はいたしておるのであります。また、学外における暴力行為のほかに、あるいは授業料の値上げ等に関する授業放棄、教官の軟禁事件等の事後措置としての学生処分についても、各大学において検討を行なっておるところであります。決して放任しておったわけではございませんけれども、私、率直に申しまして、このような不法な学生に対する措置、指導についていろいろ苦慮はしておりますけれども、それが現状でございます。今日までの措置につきましては、必ずしも十分でなかったという反省をしなければならぬと思うのであります。文部省としましては、各大学と緊密な連絡をとりまして、大学当局の事態改善に対する真剣な努力を促してまいりたいと、そのような態度で今日臨んでおるような次第でございます。暴力的行動に参加した学生の処分についても、私どもも重大な関心を持っております。各大学におきましても、これら学生に対する処置につきましていろいろ検討も加え、また、従来のやり方等についても反省をいたしておる次第でありますが、同時に、国立大学協会、私立大学連盟等でも、その後の学生の指導のあり方等について真剣に検討をいたしておるところであります。学生の処分につきましては、今日までのところは、まだ件数にしてそれほど多いとは思いませんけれども、暴力活動、暴力行動に参加した事実に関する調査でありますとか、いかなる程度の処置をするか、このような問題について大学の内部においていろいろ検討をせられておるところでありますけれども、われわれといたしましては、ものごとのけじめははっきりつけてもらいたいというつもりで、大学当局の真剣な検討をわずらわしておるところであります。従来ややもしますというと、やはり大学と学生の関係でございますので、大学側としましては、どちらかといえば学生かわいさということが先に立つわけでもございましょうが、ややその点についてきびしさが欠けておったのじゃないかと思います。現在の事態におきましても、もちろん私は、大学当局といたしましては、学生に対する理解と愛情というものはどこまでも持たなければならぬと思いますけれども、この事態に対処いたしまする態度といたしましては、従来のような、やや甘きに失するような態度でなく、き然たる態度をもって合理的な処置をとってもらいたい、このように考えております。  また、自治会の資金についてのお尋ねでございますが、この自治会の資金の徴収、あるいは配分等につきましては、大学によっていろいろ状況が違っているようでございます。いわゆるチェックオフをやっている大学も若干ございます。そうでないところもあるわけであります。その問題は、やはり一部学生の活動と関係なしというわけにもまいらぬと思います。同時に、また、それがすべて一部学生のあの行動のほうに使われているということも私はないと思うのであります。いずれにしましても、現在の自治会が母体になりまして、そうしていわゆる全学連というものができているわけであります。したがって、この自治会というものに対する正確な認識というものが私どもも必要だと思いますし、大学それ自身がもっと自治会というものに対して検討を加えて、正すべき点は正していく、この努力がなされなければならぬと思います。自治会は、申すまでもなく、大学教育の一環として認められている学生活動でございます。しかるに、それが現在のあの一部の学生の行動は、自治会活動の範囲をはるかに逸脱しておる、そうして自治会の名においていろいろな活動をやっているということは、とうてい容認できることではございませんので、私は、この自治会に対する指導、あるいはその改善という問題について、われわれも、また、大学当局も、もっと積極的に見ていかなければならぬということを痛感いたしております。目下いろいろ調査をいたしているところでございます。  なお、佐世保の事件に関しまして九州大学のとった措置についてのお尋ねでございます。九州大学は、一般原則といたしまして、原則として警察官の導入はしないという態度を大学としてきめておったようであります。しかしながら、大学としましては、暴力的学生が外部から侵入することに対しましては、これを阻止するための計画を立て、侵入学生に対しては説得これつとめたわけでありますけれども、結果は御承知のとおりであります。いかにも遺憾な事態を現出しましたわけでございます。学内において、たとえいわゆる流血の惨がなかったといたしましても、外部学生の侵入を受けまして学内の秩序が乱されたということは、まことに残念なことといわなければなりませんし、九州大学の学長としても、このような多数の暴力的学生の侵入に対して学内の秩序を維持することができなかったということについては、深く遺憾の意を表しているところでございますが、その間、お話にもございましたように、警察官の導入をしなかったために、学生が大学構内に侵入はしたけれども、しかし、大学の自治は保たれたのであるというようなことを言っている向きがあるようでございます。この点は、私はある段階において警察官を導入するのがいいか悪いかという問題はその時点において判断すべき問題だと思いますので、一がいに入れたほうがよかったとか悪かったとかいうことをきめつけるわけにもまいらぬと思いますけれども、しかし、このことは九州大学の関係者にも私は申したことであります。不法な学生の侵入によって大学の諸施設が占拠せられているこの事態は、すでに大学の自治が脅かされている、あるいは破壊されているといわなければならぬと思うのであります。一面において、必要によって警察官の導入を求めるということは、これは警察官の職務執行を求めるわけでございます。不法な学生の侵入することと警察官が入ってくることと同じように考え、あるいは警察官の入ってくることが大学の自治を侵害するというような考えはおよそおかしい、考え直してもらいたいということを実は私申したように記憶いたしております。いずれにしましても、この警察官導入問題につきましては長い間の沿革もあることでございますし、いまもって各大学において必ずしもすっきりした姿とは私は思いません。ただ、御承知のように、前々からの慣行といたしまして、大学の要請によって警察官に入ってもらうということは行なわれてきているわけであります。この慣行は、私は、これはそのまま維持してよろしいと思います。必要に応じましては、大学は自分の力で学内の秩序を維持することができない、それによって大学の自治が破壊されるというような危険のある場合におきましては、遠慮なく警察官の導入をしてしかるべきものである。国立大学協会における意見の発表がございましたが、これも御指摘のとおりでありまして、必要に応じては警察官の導入をちゅうちょすることなくやってよろしいじゃないか、こういう意見のようであります。私もそのように考えるわけでございます。もちろんこの間において、いままでのような大学と警察との間の妙な因縁、空気というようなものは、もはや今日の時点においては忘れてお互いに協力していく。大学としても、警察に協力する必要があれば協力しよう、警察もまた大学に協力する、こういう協力関係が設定せられることが何より大事なことではないかと思うのであります。この大学の自治に対して警察官の導入の問題につきましては、数多い大学の教官の中にはまだまだいろいろの意見を持っておる人もおろうかと思うのであります。おろうかと思いますけれども、しかし、それは各大学においてそれぞれ意見の統一をはかりまして、必要な場合に必要な措置をとることに欠けることがないようにしてもらいたい、私はそのことを大学に要望したいと思うのであります。また、同時に、この問題は、ひとり国立大学の問題ではない、私立、公立、すべてを通じまして、りっぱな学園をつくり上げていくその障害となる場合におきまして、必要があれば警察官の導入もまたちゅうちょすることなく行なったらよろしい、この原則はすべてに通ずるものと考えておる次第でありますけれども、いままでの経過から申しますというと、その点においていろいろ問題があろうかと思います。今後、そのような方向において、各大学の諸君も、みずからの大学の自治を守りますために、適切な処置として、その一方法としてこれを考えたらよろしいのじゃないか、かように考えておる次第であります。
  492. 青木一男

    青木一男君 大学が暴力によって侵害される場合の対策についての文部大臣のお考えはよくわかりました。私は、これが国立大学、私立大学を通じて、大学の世論となってこれが実行されることを期待するものであります。  次に、破防法適用の問題について総理並びに法務大臣にお伺いします。  羽田事件以来の三派全学連の暴力行動は、何ぴとが考えても、破壊活動防止法第四条に規定する「暴力主義的破壊活動」のうちの、団体の活動として、政治上の施策に反対する目的をもって、警察の職務を行なう者に対し、凶器を携え、多衆共同して公務執行妨害をなす行為、これに該当することは明白であります。国家の前途を憂慮する国民は、政府が何がゆえに破防法適用をちゅうちょしておるのか、理解に苦しんでおる。公安調査庁という役所は何のためにあるのか、破防法は今度のような場合に適用する法律ではなかったのかと、こう言っている人が多いのであります。三派全学連の団体としての性格、その活動が法律上の要件に適応するかどうかという点並びに証拠の点等について問題があるのであるとすると、それは当局の判断に待つべきであって、部外の者の軽々に口を差しはさむことは慎しむべきであろうと思います。しかしながら、政府が破防法の適用をちゅうちょしておるのは、そういう法律論点にあるのではなく、むしろ同法適用の効果、影響等についてであると伝えられておる。そこで、私は、これらの点について私の見るところを述べ、政府の所見をただしたいと思います。  破防法適用の手続が複雑であり、相当の日時を要することは事実であるが、それは法律の規定であるからいたしかたがない。また、破防法発動の効果について一定の限界があって、たとえば三派全学連を構成する下部機構に及ばないというようなことは、法律の規定上、これもやむを得ないところである。しかしながら、法律の認めた範囲の効果は十分に期待できるのであります。たとえばいままでの金看板である三派全学連の名において従来の幹部が活動できなくなるだけでも大きな効果である。看板を書きかえること、また陣容を建て直すこと等は容易ではありません。新しい看板のもとに同じような暴力活動をする団体が出てくれば、あらためてこれに対して同法を適用すればよいのであります。三派の委員長秋山某が、保釈中の身でありながら、ごう然として成田に出動している。まことにけしからぬことであるが、破防法が発動されればそういうこともなくなるのであります。世間には、破防法はもっと大きな事件に適用される法律であると考えている人があるかもしれない。私が先ほど触れた四十五年には、もっと大規模にして深刻な事件が起こるかもしれない。しかし、そのときに破防法を適用しようとしても間に合わないことは明白であります。破壊活動が積み重ねにより大事に至らないように対処していくのが破防法の大きなねらいである。現行法制のもとでは、かような予防措置を講じ得る根拠法としては破防法が唯一の法律であります。破防法制定当時、反対論の主要な一点であった、乱用によって国民基本人権を侵害するおそれがあるという点については、本法の適用によって全学連の基本人権を侵害するという世論は、この際おそらく起きないでありましょう。その他、本法発動による社会上の影響で、よいものは多く考えられるが、悪いものはほとんど予想することができません。裁判所と行政庁との中間的機関ともいうべき公安審査委員会が、三派全学連を暴力主義的破壊活動を行なう団体として処分することは、社会各方面に与える影響が少なくありません。たとえば資金カンパのような、学生なるがゆえに寄せてきた安易な同情もそのあとを断つでありましょう。大学当局も責任感を強めるであろう。学生全般に反省と警戒の機会を与えるであろう。父兄も子弟の行動に注意を払うであろう。全学連の幹部が大いばりでテレビ会見に出てくるなんという不愉快な場面もなくなると思います。また、今日のように、全学連の暴力行動が平然として繰り返し行なわれると、国民がまたかと思うだけで、その違法性や害毒について不感症になるおそれがある。国民の正邪の判断が麻痺することほどおそるべきはない。破防法の適用によって社会悪という焼き印を押し、国民判断の麻痺を防止する必要があると思います。もはや全学連の暴状は見ておられない。これを絶滅するためには一切の手段を尽くせというのが私は国民の声であると思います。もはや破防法発動は政府責任であると私は考える。総理並びに法務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  493. 赤間文三

    国務大臣(赤間文三君) お答えを申し上げます。  三派全学連が憲法の保障する自由を乱用いたしまして、組織的、かつ、計画的に多数の学生を動員して激しい暴力的な破壊行動を繰り返しておるということは、毎々皆様からお話がございましたように、真にこれは民主主義の基本を害するゆゆしい問題でございます。私は、法務大臣といたしましても、一番大事な、国民のすべての者がこの法治国家においては、法秩序を守らねばならぬという立場から見ましても、この三派全学連のこの法秩序無視の行為は見のがすことのできない問題であると痛感をいたしておる次第でございます。こういう点からいたしまして、わが政府といたしましては、総理からもお述べになりましたように、あらゆる面からこれの防止に今日までできるだけの力を尽くしてまいったのでございます。第一次の羽田から成田に至る各事件までに、検察庁で送付を受けました人間は千二百四十三名で、そのうち百三十三名を起訴し、また、年の若い者で二百二十一名を家庭裁判所に送って、残余の五百四十人は引き続いて捜査をいたしております。厳正にき然として検察庁においてはこの暴挙に対しましても措置をやっていくという考えで今日まで進んでまいっておる次第でございます。  なお、この事件につきましては、法としてはき然として適切なる態度で臨んでいくということは申すまでもありませんが、だんだんに一般国民も、いまお述べになりましたように、三派全学連のあの暴力的な破壊活動に対しまして批判をする声がだいぶ出てまいりました。世論の力も、だんだんに三派全学連を批判するようになってまいりました。私は、この機会におきまして、三派全学連が、法秩序を乱すことは日本国民としては最も好ましくないものである、しかも、最高の教育を受ける者が一国の法秩序を乱すというようなことは最も好ましくないということをみずから自覚して、この破壊的な行為をやめることを衷心から期待してやまないのでございます。しかしながら、なかなかわれわれの思うようにもならないようでございまするし、ただいまは破防法を適用することについて熱心なお話を承ったのでありまするが、法務省といたしましては、目下この破壊活動をあえてする三派全学連に対しましては、破防法を適用することを目安といたしまして、事実上並びに法律上、あらゆる面から万端の準備をいたしておりますることをはっきりと申し上げまして、お答えにかえる次第でございます。
  494. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 結論からは、ただいま法務大臣がお答えいたしましたし、先ほど私も破防法適用について触れましたので、したがって、破防法の問題はこれで明らかになったと思います。私、先ほど来からいろいろお話を伺い、私どももまた国民世論の動向にかんがみてこういう問題を措置しなければならぬ、こういうことを申しました。いかにもこの種の暴挙が国民世論の動向が責任を持つかのようにとられるとたいへんだと思いますが、私は、申し上げるまでもなく、政府自身がこの種の暴力行為を取り締まる責任があると思います。ただ、問題は、国民のこういう社会悪についての憎しみというものがもっと盛り上がることが必要ではないだろうか。ただいまもいろいろお話を聞いておりまして、羽田の事件だけならばまだ許せるのじゃないか、こういうことをいわれる。また、佐世保の事件になると、どうも一部警官の行き過ぎがあって、学生の行動にも理解ができるという人も出てくる。また、王子の病院の問題などになりますと、どうもこれは米軍の病院であるというようなこともからみまして、だんだんこれについての批判が、暴力行為そのものと、こういう問題が起きたその動機とが、せつ然と分けて判断されない。成田の空港問題においてもそういうようなものが見受けられる。もし、いわばこういう社会悪が引き続いて起こった場合に、国民がこういうものになれっこになって、それでもっと強い——最初起きたときにはその刺激にたいへん驚きますが、引き続いて何回も何回も行なわれると、この種のものになれっこになってきて、こういう事柄についての関心が薄らいでくる、ここに実はたいへんな危険があると私は思うのでありまして、そういう意味で、こういう事態についての正しい批判、これをやはり国民にもお願いしなければならないと思います。  私は、こういう事柄を、社会秩序を維持するその責任政府にあるのだと、かように思っております。しかし、ただいま申し上げるように、正しい批判を国民の皆さんにも持っていただきたい、このことをお願いする次第であります。
  495. 青木一男

    青木一男君 ただいま法務大臣並びに総理から破防法の問題についてはこれを発動する方向で慎重に検討しておるというお答えを得て、私は満足いたしました。  最後に、問題を変えまして、阿波丸事件の善後処理について外務大臣にお尋ねしたいと思います。  昭和十九年、政府は、米国政府から、わが権力下にある連合国の俘虜、抑留者に対して救恤品を届けたいから実行の手続をしてもらいたいという依頼を受け、南方地域の分を輸送するために阿波丸を使用したのである。阿波丸に対しては、米国は、襲撃、臨検その他一切の障害を与えないことを約し、安全航海を保障しております。阿波丸は、二十年二月二十七日門司港を出発し、任務を果たし、三月二十八日シンガポールから帰途についたところ、四月一日台湾沖で米国潜水艦の襲撃を受け沈没した。米国政府は、日本政府の抗議に対し、全責任が米国側にあることを認め、米国政府の遺憾の意を表し、当該潜水艦長を懲戒処分に付し、乗船者及び船舶に対しては戦争終結後賠償するという意思表示があったのでありますが。その直後に終戦となりました。  昭和二十四年四月七日の阿波丸事件に基づく日本国の請求権放棄に関する衆議院の決議に基づき、四月十四日米国政府との間に請求権放棄に関する協定が結ばれた。  昭和二十五年春の国令に政府は阿波丸の見舞金に関する法律案を提出し、国会を通過したのであります。この法律により、阿波丸で死亡した者の遺族に対し死亡者一人につき七万円の見舞金を支出し、阿波丸の所有者、日本郵船会社に対し千七百八十四万三千円の見舞金が支給された。そうして、本件については今日までその後何らの措置がとられておりません。本件処理についての私の見解を述べ、外務大臣の御所見を伺いたいと思います。  米国政府が、阿波丸の撃沈をもって、戦争行為と見ず、不法行為としての責任を認め、当時事実上の戦勝国が賠償を約束したということは、国際法上先例のないことであります。見舞金法案審議の際、委員から、国民の権利を放棄する以上、政府は米国にかわって被害者に賠償する覚悟がなくてはならないのではないかという見解が強く述べられております。日米協定においても、日本政府が対米請求権を放棄するという条項と並んで、日本政府が被害者に見舞金を支給するという条項がある。米国政府としては、一たん公約した賠償支払いはこの協定により日本政府に肩がわりされたから、公約不履行の不名誉を免れておるものであります。私は、法理論としても、政策論としても、政府国民の権利をその同意なくして放棄する以上、債務者にかわって国民に賠償するのが当然であると解します。  次に、見舞金の内容であるが、船舶については、名前は見舞金でも、大体において賠償の実質はあったのである。船舶の見舞金千七百八十四万三千円というのは、船価に複利計算による五カ年間の利子を加えたものである。しかして、この金額では新船建造には不足するから、その不足分は政府資金を有利な条件で融資するという方針委員会で説明されておる。その説明をしたのは、今の大蔵大臣が政務次官としてされております。したがって、船舶については、名称は見舞金であっても、賠償の実質を持っておったから、委員会においては、委員もこれに満足して、ほとんど追及の質問はありません。これに反し、人的損害については、七万円というのは、賠償の実質がなく過少であるというのが与党、野党を通じ発言者全員の意見でありました。そうして全委員不満のまま委員会を通過したことが速記録でうかがわれるのであります。  人命喪失の賠償の標準については、今日では何百万円ということが交通事故等の標準となっております。七万円というのは、当時の標準としても低きに失しております。昭和二十三年十月、有名な京都のジフテリア予防接種禍事件で死亡した二歳の幼児に十万円あてを支払っておる。東京地方裁判所昭和二十五年(ワ)第六八号事件では、電車の運転手があやまって七歳の児童をひいた事件で、遺族に十七万七千円を支払っておる。二十六年四月の横浜桜木町国鉄事件では、最高百五十万円、平均五十五万円と、標準が高くなっております。要するに、過失で幼児を失った賠償として十万円、十七万円を支払っておるのに、不法行為で働き盛りの人を死なせた事件で七万円というのは過少であると思います。  戦後処理は一時不再理でないことは、農地報償、引揚者給付金等の例を見てもわかります。軍人恩給や遺族扶助料は何回となく手直しが行なわれた。これは、国家財政にそれだけの力がついてきたことを示すものであります。占領下これらの戦後処理が一切厳禁されておった時代に、唯一の例外は阿波丸見舞金であった。それだけ阿波丸被害者は強い権利を持っておったと見なければなりません。他の戦後処理の進んだ今日、阿波丸問題が再検討さるべきは当然であります。ことに、私は、船舶と人命の不均衡は何としても是正されねばならぬと思います。犠牲者の数は二千人にすぎないのでありまして、大きな声を出す力はありません。しかし、理の存するところは、声なき声も施政の上に反映するのが正しく明るい政治であると思います。  私は、本件につき、昨年七月十八日の大蔵委員会で質問し、その結論として、政府は本件再検討の意思があるかどうか、次期国会で明らかにされたいと申し入れてあります。ただいまその宿題の回答を求める次第であります。外務大臣の御所見を伺いたい。
  496. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 阿波丸事件は、当時日本人の胸を打った事件でございます。遺族の方々にもたいへんにお気の毒に思うのでございます。事情は青木さんがお述べになったような事情でございますから、とにかく昭和二十五年に阿波丸事件の見舞金に関する法律というので、当時としては、七万円というものは、ホフマン方式といいますか、その当時の計算として割り出された金額であったことは間違いがない。その後、戦後処理に関しては、引揚者や在外財産の問題を最後にして、今後はこういう問題はやはり社会保障その他の問題で処理しよう、これをもって戦後処理は終わりにしようという政府考ええ方で引揚者の問題も解決をしたわけでございます。したがって、いまここで阿波丸の見舞金を再検討をしろという青木さんの御提案に対して、再検討いたしますとは私は申しかねると思います。これは、しかし、事情について研究はいたしますけれども、ここでもう一ぺん阿波丸の見舞金について再検討せよということについては困難である。非常に事情はお気の毒に思いますけれども、これをこの機会にもう一ぺん再検討するということはなかなか困難であると御了承を願いたいのでございます。
  497. 青木一男

    青木一男君 それでは伺いますが、外務大臣は、当時の支給が十分であるからできないというものであるか。ことに私が力を入れた——船舶については、名前は見舞金でも、実質的賠償の実を持っております。あの当時の対策は、内容としてもあれ以上のことはできない。ところが、七万円というものは、二歳や七歳の子供の当時の賠償と比べてもはるかに低い。私は、そういうことで十分の措置がとれたとお考えになるかどうか、あらためて伺いたい。
  498. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 人命を失った場合に、十分ということはないと思います、人命に対して。したがって、この七万円が、あれだけのとうとい人命を失って十分などという考え方は、そういう考えが出るわけはないのでありますが、とにかく法律によって阿波丸事件の見舞金に関する法律というものが国会で可決をされて、その法律に従って善後処置が決定をされ、そしてそういう見舞金を支給されたという事実は、われわれが注目せなければならない。しかし、その見舞金の額が十分などということは、いずれの場合でも人命を計算した場合にそれが十分だと言おうとするわけではないのでございます。
  499. 青木一男

    青木一男君 船舶との権衡問題についてはどうですか、その点をお伺いします。
  500. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 船舶については、いま青木さんの御指摘になったように、船価に利子五分でしたか、そういうものをつけて、千七百万円余が計算されたわけですが、そのときに政府としての資金をこれに対して補給するというような発言を私は承知していないのです。その計算は、船価にプラス金利などを加えてそれが出たという報告でありまして、その間政府政府資金というようなことをそのことに関連して出したということは、私自身は承知していないのでございます。
  501. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 青木君、時間が終了いたしました。
  502. 青木一男

    青木一男君 外務大臣の答弁は、この際再検討する約束はできないと、こういうんですか。将来自発的には研究するという含みは持っておるのかどうか、この点をひとつ伺っておきたい。
  503. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いろいろ青木さんのお話は、よくわれわれも理解できる点もあるので、研究はいたしてみますけれども、それに大きな期待を持たれては困る、非常にむずかしいが検討はいたしてみましょうというお答えでございます。
  504. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 以上をもちまして青木君の質疑は終了いたしました。  次回は明二十三日午前十時開会といたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十九分散会