○
国務大臣(
佐藤榮作君) 先ほど来、いま起きておるゴールドラッシュについてもいろいろとお話しがございました。近く開かれる十カ国蔵相
会議、これも
ワシントン会議できめたいわゆる
金プール諸国の考え方、これをさらに拡大強化しようというのにほかならないと私も思います。したがいまして、ただいままだ具体的な
措置がとられたわけではございません。ただいまのような
程度の話が外へ出ただけで金の価格もやや落ちつくのじゃないか。その金額も四十数
ドルのものが四十
ドル程度になったといってそれでもうこの話が終わったとは、私はかようには思いません。思いませんが、少なくともこの問題をめぐるいろんな波紋、それはもっとその経過を見る必要があるのじゃないかと私は思うのであります。ただいま一応想定して私
どもがとってきたこの
予算の縮減方策なりあるいは金融なり等の一連の
措置をこの際にさらにまたどうこうするという考えはいまございません。おそらくこういう事柄は、しばらく推移を見てやらなければならぬ。もちろん、こういう金融の問題でありますし、生きた問題でありますから、時期を失しないで処置をとることがこれは大事なことであります。したがいまして、
政府はただ、いままでの処置がこれで万全だと、かように申すわけではありませんから、さらに
十分注意していくつもりでございます。そこで、ただいまお話しがありますように、
一つは国内の経済情勢の
あり方、または対外的には貿易を拡大すること、ことに
輸入よりも輸出振興に
重点を置いての
措置をとるべきだと思います。したがいまして、国内の
引き締め方策、これが徹底すれば、輸出に必ず向かわざるを得ないし、また、中小企業な
ども設備近代化などでこの輸出貿易に協力するような処置をとりたいものだと思います。しかし、これは
日本だけの問題ではありませんし、
各国とも、こういう
事態に当面いたしますと、輸出振興に目をつけるだろう。したがいまして、輸出競争はますますきびしさを増すものである、かように考えます。したがって、国内の経済が強固でない限り、私
どもが対外的に輸出貿易を十分思うようにこれを伸長さすことはできないことである、かように思いますから、今日大事なことは、ただいまの
政策のもとにおける国内経済の体質を強固にして、そうしてその力で対外的に輸出貿易、輸出競争にひけをとらないようにする、かように努力するつもりであります。また、輸出貿易を拡大する場合におきまして、私
どもは、いままでもそうですが、国によって差別をするということをできるだけ、極力避けてまいりたい。私は、いまお尋ねになりました対中共貿易にいたしましても、これはいわゆる政経分離のもとではあるが、貿易は拡大したいと、また、人的交流もそういう
意味ではしたいんだということを申しております。しかし、なかなかこの政経分離のもとにおける貿易の拡大にはいろいろ困難があると見えまして、つい最近古井君、あるいは田川君等が参りまして、いろいろLT貿易の継続、あるいは
長期的な契約なぞにも話し合いをいたしましたけれ
ども、まあ、一応一年限りの中共貿易の妥結ができるような道まで今日まで入ってきております。私は、貿易を望むというそういう姿から申せば、もっと
長期的な貿易契約があってもしかるべきだと、かように思いますけれ
ども、両国間の
関係においてそこまで今回の交渉を進めることはできなかった、これは私は遺憾に思います。しかし、全然交渉がないよりも、一年でもできたということは、これは両国間のために将来に期待を持つという
意味で、私は好もしいことではないかと思います。せっかくそういう芽ができたのでありますから、その芽を育てたい、かように思います。
そこでさらに、ただいまお話しになりました吉田書簡の問題でございます。まあ、吉田書簡というものは、いわゆる吉田書簡でございまして
政府間のものではございません。したがいまして、これを撤回するとか、あるいはこれを無効にするとか、こういうような筋のものでないことは、これはもう
羽生君も御承知だと思います。問題は、この吉田書簡がねらっておるところのもの、いわゆる輸銀の資金が一体どういうように使われるか、これが政経分離のもとにおいては使われない、そういうようなことが依然として続くのかどうなのかという問題だと思います。これは
政府の統一見解といたしましては、
政府は、それぞれのケース・バイ・ケース、具体的なものについてそのつどきめていこう、そのつど考えたらいいじゃないか、こういうように考えておる次第であります。ただいまもお話がありましたように、私は、最近の貿易の傾向から見まして、あらゆる国との貿易を拡大していかなきゃならない、かように思います。また、お尋ねではございませんでしたが、それだったら、一体貿易の決済方法はどうなるのか、これはまあいわゆる東側のルーブル、こういうものは一体どういうような
態度であるのか、これを考えてみても、どうもこれに十分国際決済基調通貨としてのものがあるとも実は考えられませんし、またさらに、いまの他の使いなれた
ポンドが弱い、あるいは
ドルがどうしたとかいいましても、使いなれた
ポンド、
ドル、こういうようなものがやっぱり国際基調になっている通貨だと、こういう点についてはゆるぎがないようでございますから、そういうことを考えると、やっぱり先ほど来
質疑でやりとりいたしましたように、この
国際基調通貨をやっぱり強固にするとせっかく
金プール諸国の申し合わせができたのですから、この話をさらに具体化する、そうしてこの際は何といっても一オンス三十五
ドル、これを守っていく、二重価格にする、これはすでに御承知のことだと思いますが、一九三四年に一オンス三十五
ドルができた。もうそれから三十四年たっています。おそらく一定の価格でこんな長く続くということはないんだと思います。だから、そこでいろんなスペキュレーションが行なわれ、金についてもいろいろな話があるだろうと思います。また、
わが国の実情を考えてみましても、
わが国なぞは、もう明らかに金というものについてはこれは二重価格をとっておる。そうして二重価格のもとに生活をしておる。したがって、
日本における金はもうすでに六百六十円だ、六百八十円だと、こういうようなことがいわれております。この点はよく御承知のことだと思います。しかし、私
どもが金に兌換しない円を使っていても何らの不安を感じていないのであります。これは申すまでもなく、
アメリカの
ドルとそういう点がプールされたということでありますから、私は、今日
ドルが一オンス三十五
ドル、これを堅持すると、かように申しておる限り、また、私
どももその
政策に協力するということであるならば、この基調は変わらないでいくだろうと思います。私は、したがって、もうすでに
日本自身がただいまのような点では先べんをつけておる。だから、
日本国民とすれば、この実情について十分の理解を持っているのじゃないだろうか。少し甘いかもしりませんが、私はそういうふうに考えております。これらのことを考えて、今後の処置にも万全を期していく。何と申しましても、しかし、金にリンクされている、つまり金為替
政策を私
どもは採用しているのでありますから、そういう
意味で、やっぱり金というものも無視はできない。いま二重価格の
方向へ踏み切った、かようなことでございますから、その
政策の
あり方、
ワシントン会議の結果それがどういうような波紋を描くか、さらに私
どもは考えなければならない。それは先ほど来いろいろ指摘になりました
ユーロダラーの取得の難易等にも
関連いたしまして、
わが国の金融・
産業界にも重大なる
影響があるのだ、かように思って、この結果を十分私は見守りたい、かように思います。