○
国務大臣(
佐藤榮作君)
伊藤君にお答えいたします。
わが国の
自衛隊、これはその
本質におきまして
防衛的のものであり、また、その
行動も
自衛隊法によって縛られておりまして、外へ向かって
攻撃的な
行動をとるものではございません。したがいまして、ただいま、るるお述べになりましたが、これは
自衛隊の
本質に反する
お話でございます。三分間で
戦争が勃発するとか、あるいは
核戦争に巻き込まれるとかいうことはないのであります。
攻撃がない限り、さような
事態は起こらないのであります。したがって、ただいまいろいろ具体的な事例をあげられましたが、まず
日本を
攻撃する力があって、はじめてこれに対する
防衛態勢をとるということでありますから、
わが国を
攻撃する力がない限り、
わが国はただいまのような
戦争に巻き込まれるとか、こういうものではない。まして、私
自身がこれを知らないうちに戦闘が勃発するということはございません。私は全部の
責任を持ち、また、全部私が知っております。ただいま、
攻撃がある、ない、こういうところが議論になっておりますが、
攻撃がないのだから
自衛隊は要らないのではないかと言われます。しかし、
日本の
憲法は、御
承知のように、
自衛権は否定しておりません。
自衛権があるということは、この国がいつ
攻撃されましても、これに対して立ち向かうという、その準備の
自衛隊であります。だからこそ、
自衛隊法でも、また、私
どもの国防の
基本的方針におきましても、
国力、
国情に応じた必要な
防衛力を持つということになっております。したがいまして、この点を
誤解のないようにお願いをいたします。
次に、核の問題でありますが、私が一昨年
——一昨々年になりますか、ワシントンを訪問いたしました際に、
アメリカ軍は、
日本が
攻撃をされたならば、いかなる
攻撃に対しても
日本を守ると、こういう話をしてくれたのであります。この約束で、ただいま、
日本への
攻撃が、
通常兵器による
攻撃ばかりでなく、その他の
攻撃の場合におきましても、
アメリカは
日本を
防衛してくれる。そこで、
アメリカの核の
抑止力に
日本はたよっておる、そういう
実情になったのであります。私は、このことは
安全保障条約の
本質から当然のことだと思います。
安全保障条約は、特定の
攻撃に対してのみこれを発動するというものではありません。あらゆる
攻撃に対して
日本を守るというのが
安全保障条約であります。したがいまして、私は、核の
抑止力にたよると、かように申しましても、これは改悪ではない。また、このことは、いわゆる
条約自身の内容の変化ではございませんから、
国会に
承認を求める事柄でもありませんし、また、
国会を軽視したというものでもない。この点も
誤解のないようにお願いいたしておきます。
次に、
非核武装宣言の三
原則、なぜこれを
宣言しないのか、あるいは
国会の
決議をしないかという
お尋ねであります。私は、しばしば
お話をいたしましたように、
わが国だけがこの
決議をいたしましても、これが
国際間の
緊張緩和にどの程度役立つか、また、
自分の国だけはその
決議によって縛られるが、
外国を縛る効力はもちろんない、これはおわかりだと思います。また、
外国におきましても、この種の
決議あるいは
宣言をした国はまだないのであります。さような点を
考えてみまして、この
非核宣言を私の
内閣においていたしますことは適当でない。
佐藤内閣におきましては、いわゆる
核兵器を持たない、製造もしない、持ち込みも許さない、このことは
基本的方針でございますから、
佐藤内閣ははっきりそれを守りますが、国、
国民自身をさような
決議で縛ることは、ただいまの状態では不適当だと、かように
考えます。ことにただいまのような
非核三
原則は、
日米安全保障条約を
前提として、
基礎として初めて成立するのであります。御
承知のように、
世界ではただいま
核兵器を持っておる国が数カ国ございます。これらの国々が
核兵器を持っておる。「
核兵器を持たない
日本が、
わが国の安全を確保する上においてどういう
処置をとったらいいか、ただいまの
非核三
原則をとることは、これも一応わかるけれ
ども、それだけではたして
日本の安全は確保されるか」ということを
国民から聞かれますならば、私は、
アメリカの核の
抑止力によって
わが国の安全を確保しておる
——これが
現実の姿であります。この点もまた御了承をいただきたいと思います。
また、
沖繩の
基地についていろいろ
お話がございました。ただいま
沖繩の
基地は
米国が
施政権を持っておる。その
意味におきまして、独自にまた自由に使用できる
基地を持っておるわけであります。そして
沖繩の
基地が果たしておる
役割りは、
わが国の安全のためにももちろんでありますが、同時に、
アジア全般について重要なる
役割りを果たしておると思います。したがいまして、この点について、
沖繩が
日本に復帰する、その場合において、
アメリカと十分これらの点について協議する必要がある。したがって、ただいままで私は、
沖繩の
基地についてのあり方は白紙だということを申しておりますが、
沖繩の
基地が果たしておる
役割りを
考えますと、十分協議しないと最終的な結論は出てこない、かように思っております。ことに現在におきましては、
沖繩自身が
核基地を持っておる、そういう
実情でございますから、新しく持つということとは違いますので、十分協議する必要がある、かように思っております。
次に、
お尋ねがありました
日本は
平和利用を本気でやるのか、こういうことでありますが、これも申すまでもなく、
基本法を持っておりますし、また、それが
自主・
民主・
公開の
原則によって運用されており、また私
ども、軍事的に一切使わないと、そういうことを約束しておる。このことはすでに御
承知のとおりであります。
平和利用の面では、すでに
原子力発電、これは他の国にも
——危険を比べましても、あまり劣らないようなものに発達しつつあります。今後は、さらにこれを
推進力にする
船舶等に使いたいというので、いろいろすでに皆さんの御
協力を得ましたいわゆる
測量船をつくるというようなことにもなっております。これらのさらに発達を期するつもりであります。
最後に、
ジョンソン声明をどういうように
考えるかということでありますが、これは、私がすでにもうお答えいたしましたように、
ジョンソンの
和平提案並びに
北ベトナムのこれに対する
対応処置、これなどは私
ども心から歓迎するものでありまして、これが
ベトナムに恒久的な平和のくるその
端緒だと、かように思いますので、ぜひ守り育てたいと、かように思います。私が
ベトナムを訪問いたしましたのも、その当時申しましたように、平和への
端緒を目ざすことが心からの
自分の願いだと、かようなことを申しましたが、すでに今日
和平への糸口が見つかったという
状況でございますから、たいへんしあわせに思っております。私の
訪ベトナムの目的も達しつつある、かように思っております。(
拍手)
次に申し上げますが、
米国の今回の
ベトナム和平提案は、
世界政策に
転換を来たすものではないか、かように言われておりまするが、しかし、私は、ただいま
アメリカ自身が、
ベトナムへの
和平提案をしたからといって、
アメリカが本来主張しておる自由を守り平和に徹するその
基本的政策が変更あるとは思っておりません。私
自身も、自由を守り平和に徹する、
日本のこの
基本的方針を、この上とも堅持してまいるつもりでございます。(
拍手)
〔
国務大臣増田甲子七君
登壇、
拍手〕