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1968-03-06 第58回国会 参議院 本会議 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月六日(水曜日)    午後一時三分開議     —————————————議事日程 第六号   昭和四十三年三月六日    午後一時開議  第一 国家公務員等任命に関する件  第二 製造たばこ定価法の一部を改正する法律   案、酒税法の一部を改正する法律案物品税   法等の一部を改正する法律案及び租税特別措   置法の一部を改正する法律案趣旨説明)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  一、請暇の件  以下 議事日程のとおり     —————————————
  2. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 諸般の報告は、朗読を 省略いたします。     —————————————      ——————————
  3. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) これより本日の会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  谷村貞治君から病気のため二十九日間請暇申し出がございました。  これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。      ——————————
  5. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 日程第一、国家公務員等任命に関する件。  内閣から、人事官佐藤達夫君を、  原子力委員会委員に、武藤俊之助君、與謝野秀君を、  土地調整委員会委員谷口寛君を、  文化財保護委員会委員に、石田茂作君、細川護立君を任命することについて、本院の同意を求めてまいりました。  まず、人事官原子力委員会委員土地調整委員会委員任命につき採決いたします。  内閣申し出のとおり、いずれも同意することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  6. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 過半数と認めます。よって、いずれも同意することに決しました。      ——————————
  7. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 次に、文化財保護委員会委員任命につき採決いたします。  内閣申し出のとおり、これに同意することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  8. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 総員起立と認めます。よって、全会一致をもってこれに同意することに決しました。      ——————————
  9. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 日程第二、製造たばこ定価法の一部を改正する法律案酒税法の一部を改正する法律案物品税法等の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案趣旨説明)  四案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。水田大蔵大臣。    〔国務大臣水田三喜男登壇拍手
  10. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 製造たばこ定価法の一部を改正する法律案酒税法の一部を改正する法律案物品税法等の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  政府は、さきに経済安定的成長に即応する税制あり方とその具体化の方策につきまして、税制調査会に諮問したところでありますが、昨年十二月に同調査会から、当面改正を必要とする事項について、昭和四十三年度の税制改正に関する答申が提出されました。政府といたしましては、当面の経済情勢とこれに対応する昭和四十三年度財政金融政策の基本的なあり方と関連し、この答申中心として昭和四十三年度の税制改正等につきまして鋭意検討を行なってまいったのであります。その結果、中小所得者負担軽減が急務であることを考慮して、平年度一千二百五十億円の所得税減税を行なうほか、輸出振興技術開発の促進、中小企業構造改善等、当面要請される税制上の措置を講ずることとし、他面、所得水準物価水準等の状況に応じて、間接税負担調整及びたばこ定価改定を行ない、歳入の充足をはかることといたしました。これらの税制改正等のための所要法律改正案のうち、今回はここに、製造たばこ定価法の一部を改正する法律案酒税法の一部を改正する法律案物品税法等の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案を提出した次第であります。  まず、製造たばこ定価法の一部を改正する法律案につきまして、その大要を御説明申し上げます。  製造たばこ小売定価は、十数年来据え置かれておりますが、この改正案におきましては、この間における所得消費水準上昇及び諸物価動向等を考慮し、また、財政収入の確保をはかるべく、製造たばこ小売り定価引き上げをはかることといたしております。  このため、種類別等級別に法定されている最高価格を、紙巻きたばこについては十本当たり五円ないし十五円、パイプたばこについては十グラム当たり十円ないし二十円、葉巻きたばこについては一本当たり十五円ないし六十円、それぞれ引き上げる等、所要改正を行なうこととしております。     —————————————  次に、酒税法の一部を改正する法律案につきまして、その大要を御説明申し上げます。  この改正案におきましては、酒税税率所得水準物価水準変動にかかわらず定額に据え置かれているため、税負担低下を来たし、他の諸税の負担との岡に均衡を失してきている点を考慮し、清酒特級及び一級ビール並びにウイスキー類に対する税率引き上げる一方、所要規定整備合理化をはかることとしております。  まず、清酒特級及び一級ビール並びにウイスキー類税率引き上げをはかることとしております。すなわち、これらの酒類に対する従量税率種類別級別間格差を考慮しつつ、おおむね一〇%ないし一五%程度引き上げることといたしました。この結果、通常の容量の容器一本当たり清酒特級は六十円、一級は四十円、ビールは七円、ウイスキー類特級は六十一円、一級アルコール分四十二度もので四十一円、四十度もので二十八円、二級は三十九度もので二十円程度増税となります。  また、ウイスキー類特級従価税率につきましては、従量税税率引き上げに見合ってその税率引き上げを行ない、新たにウイスキー類一級及び二級の一部のものにつきましても、税負担適正化をはかるため、昭和四十六年四月から従価税制度導入することとしております。  次に、酒類定義整備をはかることとしております。すなわち、しょうちゅうについて、一定の限度内での砂糖等の混和を認め、また、ウイスキー類のうち、ウイスキー原酒まだはブランデー原酒が混和されていないものは、ウイスキー類範囲から除外してスピリッツ類とする等、酒類定義について所要整備を行なうこととしております。  このほか、手続の簡素化をはかるため、ウイスキー原酒等についての未納税移出承認制申告制に改める等、所要規定整備を行なうこととしております。     —————————————  次に、物品税法等の一部を改正する法律案につきまして、その大要を御説明申し上げます。  物品税につきましては、国際競争力強化等の見地から、カラーテレビジョン受像機等品目につきまして、暫定的に税率軽減または非課税措置を講じてまいりましたが、この暫定措置期限は、本年中に到来することとなっております。これらの物品のうち、小型カラーテレビジョン受像機等品目につきましては、すでにその目的を達成したものと認められるところから、その期限到来とともに本則税率を適用することとしたのでありますが、パッケージ型ルームクーラー等品目につきましては、その生産及び取引実情に顧みまして、なおしばらくの間、その税率軽減または非課税特例措置をとる必要があると認められるのであります。このため、この改正案におきましては、パッケージ型ルームクーラー等品目につきまして、その税率を漸進的に引き上げ、または非課税措置延長することとしております。  すなわち、パッケージ型ルームクーラーについて、一五%の軽減税率を、小型白黒トランジスターテレビ受像機及び温蔵庫について、五%の軽減税率をなお二年間適用し、あわせて、他のトランジスターテレビ受像機及び電子楽器について、非課税措置をなお二年間継続することとしております。  また、アンサンブル式レコード演奏装置暫定措置期限到来に伴い、その構成部分品に対する税率調整をはかるほか、オールチャンネルテレビ受像機について、今後二年間課税標準特例を設けることといたしております。  このほか、これらの改正に伴う所要規定整備を行なうこととしております。     —————————————  最後に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について、その大要を御説明申し上げます。  この改正におきましては、最近の経済情勢と当面の政策上の要請にこたえ、税制上の特別措置について、新設あるいは整理合理化適用期限延長等を行なうこととしております。  第一に、輸出振興をはかるための措置といたしまして、輸出の伸長に貢献した企業に対して、輸出割り増し償却率及び海外市場開拓準備金積み立て率特別割り増しを認め、また、技術等海外取引特別控除制度及び海外投資損失準備金制度について、その適用範囲を拡充するほか、国際観光ホテル建物等に適用する耐用年数を短縮し、民間外貨債利子非課税とする措置を講じております。  第二に、技術開発を促進するための措置といたしまして、試験研究費が増加した場合の税額控除制度を拡充する一方、電子計算機産業の育成に資するため、電子計算機買い戻し損失準備金制度創設することといたしております。  第三に、中小企業構造改善を促進するための措置といたしまして、特定商工組合等組合員の工場、機械等及び事業協同組合等共同教育施設について割り増し償却制度を新設するほか、中小企業者機械等割り増し償却制度の業種の指定期間延長することとしております。このほか中小企業構造改善準備金等中小企業に関する課税特例についてその適用期限延長することとしております。  第四に、既存の措置のうち、特定設備を廃棄した場合及び合併をした場合の税額控除制度につきまして、その適用範囲を縮減する等の合理化を行ない、一方、その期限延長することとし、また、価格変動準備金制度について、その積み立て率を引き下げて、その整理合理化を行なうこととしております。  第五に、国債についての別ワクの少額貯蓄非課税制度原油備蓄増強のための石油貯蔵施設及び大都市の地中配電設備について特別償却制度創設し、また、期限の到来するその他の特別措置については、実情に応じて期限延長を行なうこととしております。  なお、以上のほか、収用等に伴う圧縮記帳特例等に関する申告要件についての宥恕規定を設ける等、所要整備合理化を行なうことといたしております。  以上、四法律案趣旨につきまして、御説明申し上げた次第であります。(拍手
  11. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。野上元君。    〔野上元登壇拍手
  12. 野上元

    野上元君 私は日本社会党を代表して、製造たばこ定価法の一部を改正する法律案酒税法の一部を改正する法律案及び物品税法等の一部を改正する法律案等について若干の質疑を行ない、総理並びに関係大臣の所信を伺いたいと存じます。  政府は、四十三年度において所得税で一千五十億円の減税を行なうというのでありまするが、一方、たばこで五百五十億円、酒税で四百五十億円、物品税で五十億円、合計一千五十億円の増税を行なうことによって、差し引き減税ゼロというのが四十三年度の税制改正の実態であります。このように結果的に減税なしというのは、過去においては三十五年度を除いては例を見ないところで、戦後税制史上、画期的なできごとであると同時に、四十三年度は国民にとって暗黒の年になろうといたしておるのであります。ここで私があえて画期的という表現を用いたのは、一つには、九千五百億円あるいは一兆円をこすといわれる巨額の税の自然増収がありながら、間接税増税が断行され、結果的には物価調整減税相当する三百四十億円ないし四百三十億円に及ぶ実質増税が行なわれたことであり、一つには、増税手段として最も逆進性の強い消費税財源を求めたために、低所得層税負担の加重を集中したことになり、しかも、とどまるところなき物価上昇が最も大きな政治的、社会的問題となっているときに、その上昇を刺激するような施策政府の手によって行なわれたということであります。  今日まで、税制改正といえば必ず減税が行なわれるものと国民は期待してまいったのであります。しかるに、今回の税制改正が実質的には増税であり、しかも低所得層中心増税という結果となり、国民の中から、またもや弱い者いじめかという大きな不満の声がわき起っているのは、けだし当然と言わなければなりません。何ゆえに、このような増税が強行されなければならないのか、このことはただいま国民の最も知りたいところであろうと思うのであります。  そこで、私は、まず税制改正に対する政府基本的姿勢についてただしたいと思います。  四十三年度予算編成の当初、大蔵当局は執拗に、財政硬直化による危機感を訴え、経費節約のキャンペーンを行なったのであります。このような事態を招来したのは、そもそも高度成長に甘い夢を託し、長い間放漫財政を続けてきた歴代政府の責任であり、強く反省を求めたいところでありまするが、その点についての追及は次の機会に譲ることといたします。いずれにせよ、四十三年度予算は、ポンド切下げドル防衛強化という国際環境のきびしさに当面して、徹底した抑制型予算が編成されるものと喧伝されてきたところであります。  本来、国債を抱いたフィスカルポリシー下財政あり方としては、景気抑制のためにはまず国債発行を中止または大幅減額し、場合によっては景気刺激の一因でもある減税の縮小もやむを得ないとする考え方が本筋であり、したがって、財政規模圧縮が絶対要件となるはずであります。なるほど、四十三年度予算案の表面を見れば、四十二年度補正後予算に比較すれば一一・八%の伸びにとどまっているのであります。しかるに、国立病院会計特別会計への移管や公共事業繰り延べ分を含めると、実質的には一四・八%の膨張となり、GNPの伸び率一二%を上回り、これを四十二年度の当初予算に比較すれば、実に一七・五%の伸び率と相なるのであります。これは中立型予算といわれた四十二年度予算の一四・八%という伸び率をはるかに上回っておるのであります。  しこうして、あれほど喧伝された財政硬直化解決策はほとんど見られないのであります。すなわち、総合予算主義を採用したことと、国債発行を若干少なくしたにとどまり、肝心の当然増経費の削減は中途はんぱに終わっており、おせじにも景気抑制予算とは言いがたく、財政硬直化の実体とはそもそも何であったのか、疑いなきを得ないのであります。したがって、この放漫予算をまかなうためには国債発行財源とせざるを得なくなり、当初、財源不足分をまかなうに足る発行を考えていたところ、財界筋の強い要請によって六千四百億円に圧縮せざるを得なくなったために、突如として間接税増徴の線が浮かび上がってきたものと言われておるのであります。これを言いかえれば、財政硬直化のしりぬぐいと金融機関等負担を軽くするために、もの言わぬ低所得層中心とした国民大衆税負担に振りかえた施策であるといっても過言ではありません。私は、この際、政府に対し、「沈黙の中にこそ最大の敵あり」という先人の警句をかみしめてみることを勧告したいのであります。国民の税金によってまかなわれる三次防計画をめぐる、いまわしい疑惑の発生を見つつあるとき、特にその感を深くするのであります。経済理論の立場からすれば、景気を抑制するためには、あらゆる手段を講じた後に、場合によっては増税を行なうことも許されるかもしれません。しかし、その場合であっても、国民大衆の利益と最低生活を破壊しないための、あたたかい配慮があってしかるべきだと思うのであります。すなわち、増税措置はあくまでも高所得層に重点を置くべきであります。従前からしばしば非難され、かつ、問題にされておりますいわゆる租税特別措置整理合理化を強力に推進すること、たとえば利子配当課税の是正とか交際費課税強化等をはかれば、たばこ値上げに見合う五百五十億円程度財源は容易に捻出できたはずであります。政治弱き者のためにこそあるべきで、苛斂誅求といういまわしいことばは現代の政治から取り除かなければなりません。(拍手)  いままでのように巨額自然増収があれば、予算編成はだれにでも容易にできるはずであります。むしろ財源が窮屈になったときこそ、政府の真価が発揮される時であります。すなわち、窮屈な財源の中からいかにして貧しい人々により多くのパンを与え、より明るい光を送ることができるか、このことに全努力を傾注することこそが、政治の要諦でなければなりません。(拍手政府が、増税手段として、最も取りやすきところから取るという態度は、あたかも戦時中の戦費調達手段に似て、最も反省すべき点であろうと思うのであります。このような安易な政治姿勢は、まさに国民不在の最たるものであり。貧困者にとっては冷酷無情の予算であり、増税といわなければなりません。  以上の諸点について、総理の所見をお伺いするとともに、今後財政及び景気調整の一手段として増税を常時採用する考えであるのか、また、低所得層に対する特別の救済手段を用意しているのかどうかという点についても、総理の構想をあわせ明らかにしていただきたいと思うのであります。  次に、今回の税制改正間接税増徴が行なわれたことから、今後新たな税種導入される糸口になるのではないかという懸念であります。言うまでもなく、わが国の税制は、いわゆる英米型といわれる直接税中心となっております。現在直接税と間接税比率は、直接税六〇、間接税四〇の線でここ二、三年来固定しておると承知いたしております。しかし、所得税が依然として国民生活重圧感を与えているため、この際、所得減税財源として間接税比重を上げてはどうかという有力な意見が政府部内にあり、直間比率の問題は税制上の重要課題となっておるのであります。この点について、昨年二月、税制調査会の「長期税制あり方についての中間答申」では、「直間比率一定水準に固定することを税制の目標とすべきものではないが、直接税と間接税等との間の所得弾性値の差異を認識し、かつ諸事情を考慮するときは、少なくとも当分の間は税体系における間接税等の地位がほぼ現状程度にとどまるよう、一方では所得税中心とする減税を行ないつつ、他方間接税等負担適正化を図っていくことが望ましい。」と述べ、長期的観点に立った税制あり方を示唆しておるのであります。しかし、所得税間接税弾性値を比較した場合、所得税弾性値がはるかに高いことは、いまさら言うまでもありません。したがって、今後所得税において物価調整のための減税程度を実施しているのでは、直接税の比重はますます高くなり、酒税揮発油税たばこ専売益金だけの増税間接税比重を上げていくことは困難であることは明らかでありますから、間接税体系に別の強力な財源導入することが検討されることは自然の理と思われるのであります。  すなわち、一般売り上げ税創設については、従来から、所得税大幅軽減をはかるための身がわり財源として論ぜられてまいりましたが、物価水準への影響など、多くの問題点をかかえているため、税制調査会では、一応消極的な姿勢を示しております。しかし、売り上げ税創設については、政府部内に相当根強いものがあるといわれ、昨年の大蔵委員会においても、同僚議員の質問に対し、水田蔵相は、間接税比重を上げる方向で税制を検討したい、そのためには売り上げ税導入など考えてもよいという発言があったことは、この間の消息を雄弁に物語っていると言うべきであります。  また、現在、ガット加盟国間接税の免税は認められているため、西欧諸国が採用している売り上げ税制度導入することによって輸出振興をはかろうとする動きが、最近、政財界において高まりつつあるといわれております。他方売り上げ税制度については、その逆進性によって、これまた税負担が低所得層ほど高くなるおそれがあり、物価への影響も無視できず、しかも、最も警戒すべきことは、軽い税率巨額財源を確保できる仕組みになっているため、これを乱用すれば、財政放漫化をいよいよ助長する懸念があるといわれていることであります。  このように考えますと、現在のような政治経済も流動しつつあるときには、簡単に毒薬にもなりかねない性質を持つ売り上げ税導入については、慎重の上にも慎重な態度が望ましいと思われまするが、蔵相は、売り上げ税導入についてどのように考えておられるのか。また、今日においても間接税比重を高めるべきだと考えておられるのか、もし高めるべきだとするならば、どの程度比率を考えておられるのか、また、いかなる手段を用意しておられるのか、この点をこの際、明らかにしていただきたいと思うのであります。  次に、今回の税制改正国民大衆生活にどのような悪影響を及ぼしているかについて指摘し、政府見解を求めたいのであります。  まず、たばこについて申し上げれば、一部の下級品を除き、一五%ないし三〇%の引き上げ酒税については、清酒特級一級ビールウイスキー類をそれぞれ一〇%ないし一五%引き上げ物品税については、小型カラーテレビ等に対する一〇%ないし二二%の暫定税率を一五%の本則税率引き上げ改正を行なっております。これら間接税のうち、たばこ酒類は、所得物価上昇とのバランスのほかに、たばこについては、原料の値上がりに起因するコストの上昇益金率低下という点から、また酒類については、定価改正が行なわれていたにもかかわらず、従量税率で固定されていたため、両者ともいわゆる意図せざる減税が自動的に行なわれていたものとして、昨年度の印紙税登録税改正趣旨と同様に税負担調整をはかったにすぎないというのが、今次増税に対する政府見解であります。  この点、はたして政府の言うとおり、単なる税負担調整であるかどうかを分析してみる必要があると思うのであります。たばこ益金率を見ますと、たばこ定価が据え置かれた昭和二十六年度では七三・六%の益金率であったのが、四十二年度は五七・六%と、確かにその間、大幅に低下しております。四十三年度も、もし定価改定がなければ、五五%ないし五六%程度に下がるものと予想されております。しこうして、この益金率低下は、おもに原料葉たばこ価格上昇に起因するものといわれております。根本的には現行の納付金制度自体に問題があると思うのでありまするが、企業努力にも欠けるところがあるのではないかという世評もあります。たとえば現在、二十種類以上のシガレットが販売されておりまするが、これらをある程度整理することによって、相当経費の引き下げに寄与できると言われているのは、この点であります。  また、二十六年を一〇〇とする消費者物価指数は昨年で一九〇となり、これに対し、たばこは据え置かれた関係で一〇〇にとどまっております。相当格差が見られることは事実であります。ただし、十本当たり平均単価で見ると、二十六年には二十一円二十銭であったのが、その後上級の新製品が相次いで製造販売されたことによって、現在三十三円程度となり、その指数も一五〇をこえていることに注目する必要があります。酒類の場合でも同じように、物価上昇と比較すれば、清酒二級一一一、ビール九九で、かなり低いことにはなっておるのでありまするが、近時上級酒を含む数多くの新酒が製造販売されておりまする現状を見るときに、この数字相当妥当性を失いつつあることは明らかであります。いずれにせよ、このような数字をもって直ちに税負担調整する必要があるかどうかは疑問であります。なぜならば、たばこでも酒類でも、当初から高過ぎる税負担をかけられ、その後若干の負担低下があったとしても、現行の税負担率それすらが、はたして国民大衆の納得できる妥当な税負担であるかどうかを、慎重に検討してみる必要があろうと思うのであります。  昨年度の統計資料を見ると、たばこはおおむね五〇%ないし六〇%の税負担であり、酒類はおおむね四〇%ないし五〇%という高い負担が課せられており、特に大衆品である「新生」は五一・八%、ビールは五〇・一%という高率であります。ちなみに、二十八年の負担率を見ると、清酒二級は五二・五%、ビール六一・八%、ピース六七・八%、ゴールデンバット七二%という驚くべき高率の負担となっておったのであります。したがって、現在見られる負担率の低下は、むしろ税負担の正常化運動と解すべきであります。しかも、たばこ酒類は、いずれも逆進性の強い大衆課税的性格を多分に持っているため、低所得層ほど強い影響を受けるのであります。いま簡単にその一例を示しますと、月収三万円の者の間接税負担割合は二・一四%でありまするが、五万円では一・五三%、七万円では一・二六%、十万円では一・〇五%と、高所得層ほどその税負担割合は低くなるのであります。これは総理府の家計調査をもとにしてつくられた数字であります。政府は、間接税増徴分は所得税減税でカバーできると宣伝していますが、はたして真実でありましょうか。所得税減税の恩恵に浴さない者二千万人については、何をもって救済しようというのでありましょうか。また、所得減税を受ける者でも低所得層は、間接税増徴によって減税の効果をゼロにするどころか、むしろ増税になるのであります。  一例をあげて申し上げますると、年所得百万円の給与所得者で標準家族の場合でありまするが、所得減税は年間七千二百三十八円となります。いまかりにホープを一日一箱吸う人は、一日二十円の値上げによって減税分が全部相殺される勘定になるのであります。また、ビール一日一本飲む人は、三千円見当の負担増となり、愛煙家、愛飲者にとっては明らかに増税となるのであります。  さらにまた、間接税増徴分が所得減税分を上回らない者も、物価調整減税分に相当する所得税の実質増をかぶることになることは明らかであります。最近大蔵省は所得階層別の資料を提出しないので、ミクロ的に明らかにすることはできませんが、いまこれをマクロ的に見れば、物価調整のための減税相当額は、総体で三百四十億円ないし四百三十億円といわれ、その分だけ実質負担増になることは疑う余地のない事実であります。  さらに憂慮すべきことは、ことしは物価の動きが予断を許さないという実情であります。四月から国鉄定期、酒類、五月からたばこ、電話設備料の引き上げ、そのあと私鉄定期、ふろ代その他のサービス料金の引き上げと、メジロ押しに物価上昇の要因が控えており、しかも四十三年度に見込まれる消費者物価上昇率四・八%には、消費者米価の値上げを含んでいないので、これらの要素を考慮に入れれば、五%ないし六%の物価上昇は必至であるといわれておるのであります。このようなときに、消費者物価上昇への寄与率が〇・三%にもなるたばこ酒類の値上げを、しかも政府が率先をして行なうことの不合理と非政治性は、断じて看過することのできないところであります。  最後に、間接各税の問題点について少しく触れておきたいと思います。  酒類については、清酒二級以下のものを据え置くことによって低所得者層への若干の配慮をし、課税負担の公平を少しでも示しているのであります。しかるに、たばこの場合は、大衆品である「新生」を引き上げるという無慈悲をあえてなしている点であります。「新生」の値上げについては、与党自民党の内部においてさえも相当反対意見が多かったということを聞いております。かりに「新生」を据え置いたとしても、そのための減収は百億円程度で、このくらいの財源は税の自然増収のワク内で十分まかない得られるものと考えるのであります。  なお、酒類の場合は、税負担引き上げに便乗したマージンの引き上げを十分警戒する必要があります。ビール一本の税負担の増加分は七円でありますが、業界ではこの際便乗して十円程度引き上げを行ないたいという強い意向があるやに承知しているのでありまするが、この点について、政府の強い行政指導が望まれていることと思われるのであります。  物品税改正についても、この際一言触れておきたいと思います。  物品税は、消費税体系の中で最も奢侈的性格の強いものであるにもかかわらず、その課税体系は、旧態依然不合理のまま放置されている点を指摘したいと思います。よく例に引き出されるように、ダイヤの指輪とか銀ギツネ、毛皮のえり巻きが一七%程度、高級乗用車が三八%、ゴルフクラブが二〇%であるのに対し、「新生」、ビール、砂糖のような大衆性の強い必需品が、いずれも四〇%ないし五〇%の課税負担割合を示しております。
  13. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 野上君、時間が非常に超過しております。
  14. 野上元

    野上元君(続) したがって、かりに一歩を譲って、この際増税に踏み切るならば、この不合理を是正する方向を打ち出し、少しでも国民の納得を得るための努力が必要ではなかったかと思うのであります。佐藤総理が唱えておられるように、三C、すなわち、カー、クーラー、カラーテレビはまだ早過ぎる、消費を抑制すべきであるというならば、これらぜいたく品と認められる物品に対しては、増税を行なうことによって筋を通すべきであったと思うのであります。  以上申し上げた幾つかの点について、大蔵大臣の所見をお聞きしたいと思います。  日本社会党は、現時点において間接税増徴に踏み切ることは、国民各層、特に低所得層に深刻な打撃を与えるとの認識のもとに、強い反対の意向を表明するとともに、三法案の撤回を要求するものであります。政府の再考を求めて私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  15. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 野上君にお答えいたします。  ただいまいろいろ税制についての基本的な考え方を述べられ、またそのうちから幾つか私への質問、大蔵大臣への質問を投げられたのでございます。大部分が御意見に属する部分でございますので、これについての私の考え方は、しばらく預からしていただきたいと思います。  ただ、二、三の点で、今回のこの処置が増税になっているのじゃないかというようなお話は、どうも私賛成ができません。御承知のように、今回は所得税減税を千五十億いたしました。なるほど、お話しのように、物価調整減税が十分考えられているかどうか、こういうことですが、千五十億といえば、これは調整減税といわれる三百四十億を上回るものである。これはもう御承知のとおりであります。  ところで、ことしの四十三年度の予算編成にあたりまして、私どもが非常に苦心をいたしましたことは、なるほど今回は九千三百億の自然増収がございますが、今後の経済情勢の推移を考えたときに、非常に多額の自然増収ばかりにたよって、そうして施策を積極的にやっていくわけにもいかないだろう。ことに最近は、当然増といわれる義務的支出がだんだんふえております。そういう状況のもとにおいて、歳入は必ずしもわれわれが期待するような自然増収は、これからは計上できにくくなる。こういうことを考えますと、こういう際にこそ、体質も改善し、さらにまた景気を安定成長へ持っていくような抑制型の予算を組まなければならない、こういうわけでいわゆる減税などは考えられないような実は年でございます。しかし、減税はすでに百万円減税、これは国民に対して私ども公約事項の大きなものでありますから、それを一歩実現すべきものだと、かように考えまして、今回中小所得者に便するような、いわゆる所得税減税を計画いたしたのであります。それが千五十億である。同時に、片一方で、二十六年以来たばこなどは一度も上げたことがないのであります。二十六年以来そのまま引き続いている。これは、安いほうはたいへんけっこうでありますが、内容を見ると、国家的にはどうもその価格を維持もできない。かような点で税調等からも、これについて、酒やたばこ等も増収、ある程度の値上げ、これはやむを得ない、かような指摘がございました。それらの点を合わして、今回は、増税減税プラスマイナス・ゼロ、こういうようなことに実はしたのでございます。したがって、ただいま言われますこれが増税だということについては賛成ができませんから、いずれ他の委員会におきまして詳細にひとつ御検討願う、かようにお願いをしておきます。  さらにその次に、問題のこの財政硬直化の厄払い——実は金融機関の負担を軽くする、そして国民大衆負担を重くしたんじゃないか、酒、たばこを上げることによって。こういうような御意見でございます。しかし、私は、公債を今回減額したこと、この点では確かに民間資金を豊富にする、かような結果を招来するのでありまして、これは経済の安定成長に必ず寄与する、かように思いますし、また、財政体質をなおす、かような意味におきましても、この国債は今回のような減額措置をとるべきだと、かように私は考えております。ただいま言われますように、金融機関の負担を軽くして、大衆の負担に切りかえた、こういうものではないように私は考えております。  また、その次に、租税特別措置に触れられまして、この租税特別措置整理すれば、たばこや酒の値上げ、その程度のものは簡単に出るではないか、こういうような御指摘でありました。もちろん、この租税特別措置というものにつきましては、後ほど大蔵大臣から、現在どういうようにその金がなっているか、金額を発表、報告さすつもりでございますが、私は、この租税特別措置が既得権化するとか、あるいは慢性化になりまして、そうして税の負担の公平を欠く、こういうようなことがあってはならない、かように考えております。したがいまして、この租税特別措置はできるだけ実情に合うように、また、流動的にこれを整理していく、かような態度で臨むつもりでございます。もともと、こういう制度が設けられましたことは、政策目的をもってこの制度が生まれたのであります。たとえば、輸出振興のために租税特別措置をやるとか、あるいは中小企業の近代化、構造改善のために特別な措置をとる等々のものでございます。また、野上君が御指摘になりました利子配当についての特別措置の問題でありますが、これは、四十二年度の税制改革の際に税率引き上げましたし、同時にまた三年間の期限をつけて、四十二年に改正したばかりであります。したがいまして、いましばらくこの模様を見て、そうして実情に合うようにいたしたいものだと私は考えております。  また、景気調整の一手段として常時政府増税を考えているのではないか、こういうような御意見がございましたが、しかし、さようなことは考えておりません。私が申し上げるまでもなく、税というものは財政運営の一環としての役割りを持っておりますが、同時に、税そのものは国民負担でありますから、どこまでも適正であり、そうしてそれが公平であるように政府は考えなければならないものであります。ただいまの、今回の改正も、そういう観点に立ちまして、私は改正をいたしたつもりであります。いわゆる景気調整のために絶えず増税を考える、かような安易な結論を出すものではございません。  次に、最後に、低所得者に対してどういうようなことを考えておるか、これは、私が申し上げるまでもなく、中小所得者所得減税をしたことが一番大きいのであります。しかし、所得税を払わない階層もありますから、それらの方々に対しましては、これは国税ではございませんが、住民税の課税最低限を大幅に引き上げる、これによりましてたいへん私は負担が軽くなったと、かように考えております。  また、間接税につきましては、大衆酒についてこれを上げなかったことは、野上君からもこれの意義を認めていただいたのであります。しかし、たばこについてなおもっと考慮があってしかるべきではないか、こういうお話でありましたが、私は、今回、最も消費量の多いハイライトにつきまして、その値上げ率を低めたという、こういう点はぜひとも見のがさないで、政府もよく考えたとおほめをいただきたいものだと思います。  その他の点につきましては、大蔵大臣からお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男登壇拍手
  16. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まず、御質問の第一点でございますが、ことしの予算抑制型予算とはいえないじゃないか、景気対策を考えた予算じゃないじゃないかというお話でございましたが、この予算ワクを圧縮したということは、これはいままで過去十何年の予算を見ましても、はっきりと今年度の一一・八%というワクは圧縮されたワクでございまして、これは問題ございません。国債発行額を減らしたということも、これは事実でございまして、一六%に及んでおった国債の依存度を、とにかく一〇%台に持ってくるということは、まあたいへんなことでございましたが、あえて今年度はやりました。にもかかわらず、そうは言っても、去年からずれたものを入れたり、いろいろのことを加えてみたら、やはり相当成長率よりはワクが大きくなっているのではないかというお話でございましたが、これは前年度から繰り越されてきたものとか、そういうものを全部入れまして、結局、景気対策をどういうふうにとったかということを見るためには、やはり政府の財貨サービス購入額を見て判断するよりほかないと思いますが、これは明らかにことしの成長率よりも縮めている。いろいろな昨年からのずれてきたものも何も全部入れて、政府関係三公社五現業の仕事も入れ、地方財政も入れて、なおかつ、本年度の政府の財貨サービス購入額は過去何年かに比べて明らかに少ないということで、今度の予算の性格を察知していただきたいというふうに考えております。  なぜ、そういうことをしたかということは、もう御承知のように、国際収支の改善目標ということを中心にした予算である以上、どうしても私どもは今年度の予算においては、減税をかりに犠牲にしても、やはり国債発行額を削減するということに相当の重点を置かざるを得なかったというようなことから、減税になる改正を行なうことができなかったということは非常に残念でございます。そうかといって増税はどうかということですが、イギリス、ドイツ等を見ましても、やはりああいう財政放漫化のあとにきたために、いまでは増税をやらざるを得ないところにきておりますが、日本はまだそこまでまいっておりません。いま私どもがいろいろ言うておる硬直化の問題を心配して、いまからやっておいたら、こういう景気情勢が出てきても、増税に踏み切らなくても、りっぱに財政運営はやっていけるんじゃないかというふうに考えますので、増税は避けるが、しかし、フィスカルポリシーとしては大きい減税をやれないという事情になったのが今年度であるというふうに考えております。  したがって、実質減税はできないというものの、減税をしなくてもいいかと申しますと、そうはまいりません。先ほど、いろいろ予期せざる減税とか増税とかというようなお話がございましたが、所得税はもう高度の累進構造を持っておりますので、国民所得水準が上がれば、そのままでももう増税になるという性格の税でございますから、中小所得者のためには、どうしてもこの所得税はいじらざるを得ない。反面、税制調査会からも始終指摘されておりますが、この相対的に税の負担が軽くなっていく間接税については、調整を加えるべきものだということでございますので、今年度は、この調整をするということに私どもは決心した次第でございまして、これが酒とたばこの値上げということになっているわけでございます。これはそういう意味で、酒とたばこを積極的に上げるというのではなくて、もう相対的に税負担が下がってきておった。先ほどもお話がございましたように、たばこ益金率を見ましても、昭和二十六年に七三・四%、これが五〇%になってくるということから考えまして、こういうものの調整をここでやろうということでこの調整を行なったのが、今回の改正でございます。  それから、その際、間接税比重を大きくするという意図を持ってやったんじゃないかということでございましたが、今回の場合はそうでございません。また、税制調査会も、そういうことを言っておりませんで、両方——捨てておけば増税になる、捨てておけば減税になるというものの、絶えず調整をやって、いまの比率を保つぐらいがいいというのが、税制調査会の考え方でございましたが、そういう意味において今回調整をしただけでございまして、間接税を特にふやそうということでやったことではございません。  そこで、それじゃ間接税について、前に私が売り上げ税の問題を言ったことがあるが、これはどう考えているかというお話でございましたが、私は、将来の税制の問題としてこれを考えなければならぬ時期が来やせぬかと、いますぐの問題ではございませんが、長期の税制を考えるという場合には、これはやはり考えてもいいことだということを申しただけでございまして、したがって、いま税制調査会に、長期税制あり方というところで検討を願っておるということでございまして、これを早期に、この売り上げ税というようなものを取り入れるということは、日本の租税体系を大きく狂わせるなかなか重大問題でございますので、そう簡単にはいかないことだろうというふうに考えております。  それから、先ほど、大衆に対する負担を重くしないかということについて、総理からお話がございましたが、総理から御答弁のとおりでございますが、私どもは、国税の減税をやると同時に、地方税の減税もやる、そうして、さらに、一番生活力のない、生活保護階級の人たちに対しては逆に、これは税の措置では及びませんので、この扶助基準を上げて、一三%生活保護費を上げるという措置によって対処することにいたしておりますので、この点も、税と予算との関係において御判断をお願いしたいと存じます。  それから、物品税のお話がございましたが、いまの物品税に比べて、酒、たばこが高いのじゃないかということでございましたが、これは、日本におきましては、大衆の必需品というものについては物品税をかけておりません。また、かけるものも免税点というものを置いて、大衆生活が困らないようにいろいろ配慮しておりますが、酒、たばこというのは、これは別でございまして、各国とも歴史的に、昔から特別にこれは高率な負担をかけるということになって、財政収入のこれをもとにしておるといういきさつから、これはもうどこの国でも高いものでございまして、日本も外国に比較して、負担から見たら、外国のほうがまだ酒、たばこの税は高いということでございまして、特に高くしているわけではございませんが、これは一般物品税において逆進性という問題にも触れられましたが、売り上げ税などを置いている国から見ましたら、これは相当逆進性を持った税制と言うことはできましょうが、日本は、そういうことがなくて、奢侈品に物品税をかけている。しかも、そのうちで特に酒、たばこは、これはいままでの歴史的な問題もございまして、別個の取り扱いをして、国の財政収入の基本として特にこれは高率な負担をかけているということでございますので、これの税率が相対的に低くなったのを今回調整したということは、そう逆進性の問題ということに触れて論議されなくてもしかるべきじゃないかというような気がいたします。  それから、そのほか「新生」の問題でお話がございましたが、「新生」は、御承知のように、一〇%くらいの消費量でございますし、一番大きいのが何といってもハイライトでございますが、嗜好品でございますので、いろいろ論議がございましたが、やはり一番国民が多く吸っているハイライトの値上げを少なくして、これを調整することのほうがいいんじゃないか、一〇%のほうを据え置くということによって、今度はそれによってハイライトの売れ行きその他に変化が出てきましょうが、そういうことをするよりも、やはり、とにかく昭和二十六年以来の据え置きでございますから、この程度の値上げはすると同時に、特に大衆が一番嗜好しているたばこの値上げを制限したほうがより実際的ではないかというような、いろいろな議論もございまして、今回のような措置をとったという次第でございます。(拍手)     —————————————
  17. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 戸田菊雄君。    〔戸田菊雄君登壇拍手
  18. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 私は、日本社会党を代表して、租税特別措置法の一部を改正する法律案政府趣旨説明に対し、質問を行なうものであります。  初めに、基本的問題について若干質問いたしたいと存じます。  歴代の自民党政府は、繰り返し大幅減税を宣伝してまいりましたが、事実は全く逆になっております。戦後上がったものは物価と税金だと言われておりますが、全く物価はウナギ登り、公共料金は軒並みに上がり、中でも日本の税金はすごくふえ続けてきたのであります。百姓とゴマの油はしぼればしぼるほどよいという徳川時代のことばがありますが、まさに生かさず殺さずの姿を地で行っておるのではないでしょうか。国民大衆は、心からの憤りを感じております。特に一九六〇年の安保条約改定所得倍増計画が発表されました時期から、税金は幾何級数的にふえております。そして、ことしは、ついに政府もお認めになっておりますように、実質減税ゼロというのが昭和四十三年度税制の特徴だと思うのであります。所得税の納税者の数は、昭和九年から十一年までが九十五万人にすぎなかったものが、本年度は二千百六十四万三千人と、約二十二倍という驚くべき数字になっているのであります。  現在の租税構造の特徴は、所得税構造では勤労所得課税、資産所得優遇のシステムを強め、法人課税においては中小企業軽視、大企業優遇のシステムが年々強化されていると言わなくてはなりません。しかも、税制改正のたびごとに大衆重課税の様相が顕著になってまいっております。したがって、税制改正の重点は、当然、物価高の中で生活難に悩む勤労大衆の税負担をいかに軽減するか、資産及び所得格差が拡大している中で税負担の不公平をいかに解消するかに最重点を置かなければいけないと思うのでありますが、佐藤総理税制の基本的改善策についての御所見をお聞かせ願いたいと思うのであります。  昭和四十三年度予算案について、政府が強調いたしました焦点は二つあったと思います。一つ景気抑制であり、一つ財政硬直化打開策であり、これらの二つのスローガンは、結果的には困難な増税ないし負担増加を国民に受け入れさせる手段としての危機意識の導入の役割りを持たせ、国民負担の増大を合理化するためのキャンペーンであったと思うのであります。  そこで、この予算は著しい増税予算だということであります。政府は、四十三年度は所得税を一千五十億円減税し、酒、たばこ、その他の間接税を一千五十億円増税するから、収支とんとんだと言っておりますが、決してそうではありません。第一の理由は、物価調整減税をやっていないということであります。さきに税制調査会答申において、消費物価が五%以上上がった場合は、個人所得税自然増収の三割は自然増税になるのでありまするから、それだけは物価調整減税を行なわなければならない旨の指摘がなされているのであります。したがって、答申にしたがって計算をいたしますと、四十三年度の租税収入総額四兆六千九百四十八億円のうち自然増収は、四十二年度当初予算に比べて八千九百二十六億円、四十二年補正予算に比べて六千二十五億円となっておるのであります。このうち個人所得税の総額は一兆四千六百五十八億円で、四十二年度の個人所得税の当初予算に比べ七二千八百七十四億円の増収となっており、四十二年度補正後に比べて二千二十億円の増収となっておるのであります。四十三年度は五%以上の物価値上げが予想されておりますが、かりに五%として計算いたしますと、二千八百七十四億円ないし二千二十億円の三割、すなわち、八百六十二億円ないし六百六億円だけ減税しなければならないのである。ゆえに、その分だけ基礎控除、扶養控除、配偶者控除などを引き上げることが当然だと思うのであります。そうして、こうした事情は地方税においても同様のことだと考えられるのでありますが、実際は全然減税を行なっておらず、また、従来の答申尊重の精神と慣行は無視され、実質減税ゼロのうそと大増税現状に対して佐藤総理はどうお考えになりますか、お答えを願いたいと思うのであります。  また、自然増収の名による増収分の使用については、当然減税国債削減、歳出増等に向けられるべきだと考えますが、大蔵大臣いかかでありますか。ことに国債削減につきましては、昭和四十二年十二月二十五日の財政制度審議会報告に基づき、四十二年九月以降の財政あり方についての報告の中で、一、四十三年度公債発行額は六千億を目途とすること。二、現在の公債依存度の極力引き下げ、ここ数年間で五%以下に引き下げ、四十三年度は一〇%程度とするよう指摘されておるのでありますが、この見通しについて大蔵大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。  そこで、具体的に大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、昭和四十二年当初国債発行額は八千億円でございますが、七百億削減され、現在七千三百億となっております。ところが、最近新聞、雑誌等によりますと、さらに一千億削減するということを耳にするのでありますが、この点はどうでありますか。もし伝えられることが実現したといたしますと六千三百億となり、四十三年の六千四百億円は百億円の増ということになるのであります。このことは財政制度審議会報告に逆行するばかりではなく、政府や大蔵官僚の言う硬直化是正の一役をになったということにはならないと思うのでありますが、いかがでありましょうか。また、削減しないということであるとするならば、四十二年四月の国債売り上げ高一千四百億と四十三年の一千億を加え、二千四百億円の売り上げを消化しなければなりませんが、その場合の見通しはいかがでありましょうか。具体的にお願いいたしたいのであります。  また、昭和四十二年度における証券界引き受け額市中消化分のうち、八月は一億六千四百万円(三%)、九月は四億六千七百万円(八・六五%)、十月は四億三千万円(九・七一%)、十一月は四億(一〇%)、十二月は四億二千万円(一〇・二八%)、一月は七億五千万円(二三%)等々の売れ残りが生じておる現状であります。この実例は明らかに市中消化の行き詰まりを立証しておるものであると考えますが、大蔵大臣はどう考えられておりますか。  さらに、今回新しく新設されました国債非課税措置の拡大は、明らかにこれらの打開策と思われるがどうですか。また、国債非課税によって利回りは高くなると思いますが、どのくらいでありますか、具体的にお答えを願いたいと思うのであります。  さて、以下、租税特別措置法改正案についての具体的な内容についてお尋ねしてまいりたいと思うのであります。  第一は、利子配当軽課措置についてであります。利子配当優遇措置は直ちに廃止すべきだと考えます。租税特別措置による平年度減収見込み額は、昭和四十二年、国税で二千四百十九億円、地方税に及ぶ減収額が七百八十七億円となっており、合計四千三十五億円となっておるのであります。このほかに、貸し倒れ引き当て金等のように本法に組み込まれ、一般減税に振りかえられたもの、地方条例による減免措置を加えると、さらに七百億円以上という実情であります。これは全国銀行財務諸表分析による四十一年度上期の実例でありますが、富士銀行の資本金二百二十億円、これに対しまして貸し倒れ準備金は二百七十三億九千九百四十三万六千円、住友銀行は資本金二百二十四億円に対し、貸し倒れ準備金二百七十五億五千万円、三菱銀行は資本金二百二十億円、貸し倒れ準備金が二百六十億円、このように資本金を上回っておるのが現状であり、また、四十二年度は、主要全国銀行八十六行の資本金総額が四千五百三十二億八千百万円、これに対し貸し倒れ準備金四千九百八十四億六千七百万円となっておるのであります。ほかに価格変動準備金等々があるのであります。これらの租税特別措置による減収額が、昭和二十五年から四十年まで累計いたしますると、国税の租税特別措置だけでも二兆二千九百七十八億円の巨額にのぼるのであります。もちろん、この減収額は決算ベースでの点検は行なわれていないのでありまするから、実際には、もっと巨額にのぼることが予想されるのであります。しかも、適用範囲が会計処理の実態を上回って設定されているため、力の強い大企業に有利であることは言をまたないところであります。また、租税特別措置の利用は、大企業、高額資産所得に偏重し、事実上、大企業のみの合法脱税装置となっておるのであります。ことに、利子配当優遇措置は、高額資産家の減税はきわめて高く、逆に少額貯蓄者は少額非課税を受けない場合は、事実上、一五%の源泉分が取られっぱなしとなっておるのであります。また、架空名義預金、無記名預金の利用により脱税が見のがされておるのであります。これは租税特別措置でありませんが、株式所有分布を見ますると、法人株主が五三%にのぼり、その受け取り配当は益金不算入となっているので、巨額非課税収益を受け取る仕組みになっておるのであります。これらの減免措置により大企業の実効税率は、普通税率三五%、これに対しましてきわめて低く、一〇%から二〇%をはるかに下回っておる現状であります。このようにその減税額が一部に偏重し、税収の硬直化に拍車をかけておるにもかかわらず、歳入面の硬直化には一切触れずに、財政硬直化の打開策をはかるといっても、それは空論にひとしいと言わなければなりません。佐藤総理の所見はいかがでございますか。  また、政府は、いまこそ税制調査会答申どおり租税特別措置の縮小もしくは廃止を断行すべきときであると考えます。ことに、利子配当優遇措置は直ちに廃止すべきだと考えます。また、四十三年度の減収額は幾らになるのでありましょうか、お答えを願いたいのであります。  第三は、中華人民共和国等に対する関税差別問題についてであります。本日の朝日新聞によりますと、LT貿易交渉が妥結したと伝えられております。また、本年七月から実施予定のケネディラウンドに基づく関税一括引き下げ措置は、中華人民共和国、ベトナム民主共和国、朝鮮民主主義人民共和国等々の国々との貿易については、若干の例外を除いては適用されないかのように伝えられているのでありますが、これが事実とすれば、これらの国々からの輸入品に対する関税は、従来の格差に加えてその格差が一そう大きくなるわけであります。今回の関税引き下げを適用しない国は、きわめて限られた諸国であり、その中で特に従来までは年間六億ドルに及ぶ重要な貿易相手国であります中華人民共和国との取引を除外することは、わが国の貿易拡大のために不合理きわまると思うのであります。  現在ケネディラウンドの精神に逆行してアメリカのドル防衛政策強化され、ポンド不安は解消せず、EEC諸国をはじめとするヨーロッパ各国の活発な中国との貿易拡大が進められている中で、ドル不安の影響を受けない唯一の国であります中国との貿易は、きわめて重要なウエートを持つものであります。特に日中貿易は国民の衣食住に密接な関係があるのであります。四十三年度の政府経済見通しでも、経済成長率を一二・一%に押えても、なおかつ国際収支の総合赤字は三億五千万ドルに予想されているので、輸出振興について、全日本国民努力しなければならないときだと考えるのであります。そのようなときに、新たな日中貿易に対する差別措置は、政府の中国政策の後退を意味し、わが経済発展を願うものとし、憂慮にたえないものであります。佐藤総理はいかがお考えでありますか、明確な御答弁をお願いをするものであります。  最後に、輸入課徴金問題について簡単に質問いたしたいと思うのであります。五日の朝日新聞によりますと、本問題について三木外務大臣は、四日午後、外務省にジョンソン駐日米大使を招き、課徴金の額は輸入価格の四%ないし五%になるとの情報が入ったため、あらためて注意を促すことになったと伝えられておりますが、その内容はどうなのか。  また、政府は四日、関係各省の緊急対策会議を開き、米国が実施に踏み切った場合は、輸出業者への間接税の払い戻しや、輸出した業者に輸出所得控除制度で対抗することに意見が一致したとありますが、決定内容はいかなるものなのか。また、輸出所得特別控除はガットの規定に違反することから昭和三十九年は廃止したわけでありますが、この点に対する通産大臣の見解を具体的にお聞かせ願いたいと思うのであります。  以上で私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  19. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  税制の基本的なあり方、しかも長期的な税制はいかにあるべきかという最初のお尋ねであります。申すまでもなく、今後社会経済はどんどん変わってまいる、発展していくだろうと思います。絶えずそういうものに即した、その適正なる税制がなければならないと思います。しかも、それは直接税ばかりではありません。間接税もともに、どうしたら社会経済の発展に即するか、こういう観点に立って、いわゆる税制調査会はいろいろ取り組んでおるのであります。もうすでに数年取り組んでおりますが、おそらくそのうちに結論が出てくるのではないか、かように考えております。早ければ七月にも結論が出るんじゃないだろうか。そうすると、政府がその答申を得た上で、これと真剣に取り組んで、実情に即したものをつくる、わが国にふさわしい税制をつくりたい、かように考えております。  次に、先ほどもお答えしたのでありますが、調整減税という点についてお尋ねがございます。これは野上君に答えたところでお許しを得たいと思います。  次に、利子配当分離課税、これまた先ほど野上君に答えたところでありますから、これもお許しを得たいと思います。  そこで、一つつけ加えておきたいと思いますのは、特別措置の問題が先ほど来議論になっております。大蔵大臣から詳細を答えていただくつもりでいましたら、それがはずれましたから、私から申し上げます。昨日は衆議院で、四十二年度分についての数字を説明いたしました。きょうは四十三年度分が出てまいりましたから、それをお答えいたしたいと思います。  事項別の内訳で見ますると、総額が二千六百四十八億円。その第一のものは貯蓄の奨励でございます。これは利子あるいは配当、あるいはさらに生命保険等のものでありますが、千六百十六億、一番大きい金額であります。輸出振興等は四百七億。次に技術の振興、これが三百十七億。次に内部留保の充実等、これが二百三十一億。次に社会開発の促進、これが三百九十九億。以上が減税額の分であります。その他といたしまして、四十三年度は三百二十二億——特別措置増税もございます。三百二十二億、これが増税で、計総体として二千六百四十八億、かようになっております。しばしば大企業にこれが楽で、中小企業が痛めつけられておるという批判がございますから、規模別内訳でもう一度説明を加えますと、企業関係の分だけを抽出いたしますと、大企業の分が三百六十七億円、中小企業分が四百四十八億円、合計いたしまして八百十五億ということであります。これをパーセンテージで見ますと、大企業が四五%、中小企業が五五%、むしろ租税特別措置中小企業の利益に役立っておる、こういう数字が出ております。これが今年の四十三年度分でございますから、以上御報告しておきます。  次に、貿易拡大について、もっと中共貿易について力を入れたらどうかと、ことに関税の点でいろいろお話がございました。確かにこの中共貿易、これは総額といたしましてもたいへん軽視できない金額であります。新聞の報ずるところでは、ようやくただいま、LT貿易も、一年間の問題ではありますが、妥結を見たようであります。近く古井君も帰ってまいりますから、さっそく古井君から実情を十分聴取いたしまして、そうして実情に合うような処置をとりたい、かように考えております。  私が申し上げるまでもなく、お互いに独立を尊重し、内政に干渉しない、かような立場に立ちまして平和外交を推進しております。したがいまして、私は中国敵視政策をとっておるわけではありません。しかし、この中国との関係は、いわゆる政経分離の形において貿易が行なわれ、文化交流が行なわれておる。したがいまして、政府間協定のできるような、いわゆる条約に基づくような関税が適用をされておらないのでございます。この点はまことに残念に思います。そこで、日本の国定税率がそのまま適用されるいわゆる条約によるものでないということ。したがって、最恵国約款条項等も適用はございません。ケネディラウンドの交渉の結果、いわゆる国交のあります国々においての協定税率は非常に安くなりましたから、したがって、国定税率との間には相当の開きができておるのが現状でございます。しかし、中共と日本との貿易の約八割を占めます米、石炭、塩、クリ、アズキ等は、いわゆる協定税率と、それから国定税率との間につきまして関税上の格差があまりないのでございますから、それらの点ではうまくいくかと思いますが、しかし、なお、ケネディラウンドの交渉以後、特殊な品物については関税の間に開きがあると貿易もなかなかしにくいと、かような状況でございます。これらの点もあわせて、ただいまの古井君その他が帰ってまいりましたら、こういう実情か、十分伺ってみるつもりであります。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男登壇拍手
  20. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 自然増収減税との関係について御質問がございましたが、昭和四十年を境にとってみますと、四十年の過去三年間の自然増収に対する減税率が一四%ということになっております。四十年以後は、七千億の建設公債を出したという四十一年、これは自然増収がないのに三千億円の大幅な減税をやっているということから、いろいろのしわ寄せもまいっておりますが、四十年を境としたあと三年、今年度を入れた減税率は一六%ということでして、四十年度以前の三か年平均よりもまだ依然として高いということでございますので、今年度十分な減税ができなかったことは非常に遺憾でございますが、これの減税の効果というのは何年にも及んでおることでございますので、かりに三年一期という形で見ますと、そう過去の減税率に劣っていないということが言えようと思います。  それから、国債についてのお尋ねでございましたが、昨年の四月から本年の三月までのシンジケート団引き受け額は五千九百億円でございます。したがって、昨年七百億円の国債発行削減をやりましたので、あと一千億円がまだ未発行として残っております。この一千億円をどう処理ずるかということでございますが、もし年末になりましてどれだけの不用額が立つか、また、増収が見られるかということによって、もしこういうものがあるのでしたら、これだけの分を差し引いて、あとはやはり国債発行する。出納整理期間中の払い込みによって今年度中に契約をいたしますが、金は四月に入ってくることもございますし、それから、そのほかは資金運用部の引き受けによってこれを消化するつもりでございます。したがって、もう少しぎりぎりになってからでないと、今年度さらに幾ら削減するかということは、きまらないところでございますが、一千億削減するというようなことはございません。したがって、今年度の国債発行よりも四十三年度の国債発行のほうが多額であったというような事態は起こりません。そうしますと、整理期間中の発行をしますというと、四月の新年度と重なるのではないかということでございましたが、これは重なってきますので、金融市場の状況を見て市中消化の可能な額にこれはとどめたい。四月に特に無理して公債発行をしようというようなことを、いま別に考えておるわけではございません。この間の調整は十分いたしますので、この消化についてはいま確信を持っておるところでございます。  それから、特別非課税制度をもし国債発行にとるとしたらどういうふうに応募者の利回りが変わってくるかという御質問でございましたが、六・一九二%−六分一厘九毛二糸ということに利回りはなる。そうしますと、もし支払い利子が全部課税されるというときの利回りは五・九〇八%でございましたので、この措置によって〇・二八四%だけ利回りが上がるということになろうと思います。それから、あとは、租税特別措置法についてのお尋ねでございましたが、今年度措置法で増ワクされますのは、さっき提案理由の説明を申しましたことによって減税となります分は、輸出振興等のためのものが二十五億円、技術開発の促進のためのものが九億円、中小企業構造改善のためのものが四億円、その他三億円、合計四十一億円でございますが、一方、整理する分、先ほど申しましたように、価格変動準備金の積み立て率を下げるとか、そのほか特定設備の合併とか、あるいはスクラップ化に対してとられた措置、これを整理することによる増収分が大体四十一億円ということでございまして、租税特別措置法における増減は一応今回の改正によってはないというふうに考えております。(拍手)    〔国務大臣椎名悦三郎君登壇拍手
  21. 椎名悦三郎

    国務大臣(椎名悦三郎君) 輸入課徴制度の問題についてお答え申し上げます。  ホノルル会議、さらに年初の大統領の声明と、だんだんアメリカのドル防衛政策が強まってまいりまして、そうして、先般、ロストウ特使が日本に来られましてジョンソン大統領の声明の内容についていろいろ説明をしに来られたわけでありますが、ヨーロッパに対して国境税の撤廃をアメリカが非常に要望しておったのでありますが、だんだんこれに対して何らかの対抗措置を講じなければならぬということになり、当初は日本は何らそういう課税障害を設けておりませんから、もちろんいま日本がそばづえを食うというようなことは考えておらなかったわけでありますが、どうも、どういう事情か知りませんけれども、輸入課徴金制度をどの国にも無差別に適用するというような声がだんだん強まってくるようになりましたので、われわれとしては、一体どういう実態、内容を備えることになるのか、その点を注目して、そしてあらゆる場合に対する最も有効適切なる措置を講ずるように、いま考えておる段階でございます。どういうふうにやるかということは、向こうの、相手の出方次第によって、こっちもきまってくるわけでありまして、ただいま具体的に申し上げるわけにはいかないのであります。  それからなお、これに関連して、輸出所得控除というものをかつて日本がとっておったけれども、これを撤廃した理由はどうだというお話でございましたが、もともと日本といたしましては、貿易で立っておる国でありますから、もう自由、無差別な貿易ができることを望むことは当然なわけでございますが、これがガットの精神に反するというような国際的な文句が出たものですから、それじゃ日本は率先してこういうことはやめようということで、いま全くフェアな姿に返っておるのであります。したがって、アメリカが従来の自由貿易の主義主張というものに逆行するような、かような措置に出た場合には、ある程度日本も従来のこういう所得控除あるいはこれに類するようなことをやるということも、あるいは場合によっては考えなきゃならぬかもしれませんけれども、なるべくならば、日本がどこまでもフェアプレーでいくという態度は変えたくない、他の方法によって、有効、適切な手段を講じたいと考えておりますけれども、すべては相手方の出よう次第でございます。  なお、中共に対する貿易の問題については、総理からすべて説明申し上げたようでございますから、私はこれは省略いたします。(拍手)     —————————————
  22. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 中尾辰義君。    〔中尾辰義君登壇拍手
  23. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 私は、ただいま議題となりました製造たばこ定価法酒税法物品税法等の一部を改正する三法律案並びに租税特別措置法の一部を改正する法律案等に対して、公明党を代表して、総理並びに関係大臣に若干の質疑をいたすものであります。  四十三年度の税制改正におきまして、納税者として最も納得のいかない点は、何といっても国税の減税を実質ゼロにするということであり、しかも、所得税を納めない低所得層まで負担のかかる間接税増徴することに大きな問題があるのであります。つまり、初年度で一千五十億円の所得税減税をするかわりに、一方では酒税で四百五十億円、たばこ定価改定で五百五十億円、物品税で五十億円の増税をすることにより、所得減税分を帳消しし、実質的に減税をなくするものであります。考えてみますると、今回の減税分も千五十億円、また酒、たばこ等の増税分で千五十億円、ここに両者がふしぎにも一致してきた。一致したところに政府の明らかな政策的な意図があると思われるのであります。  今度の税制改正の背景には、いわゆる財政硬直化の打開、公債発行規模の圧縮という予算編成上の大問題がありましたが、その原因は政府・自民党の経済政策の失敗によるものであり、安易に赤字国債を大量に発行し、歳入歳出のつじつまを合わせてきた放漫財政のとがであって、それは当然政府の責任であります。財政硬直化による予算編成難を減税にしわ寄せして、所得減税という美名のもとに酒、たばこ等の大衆課税増税に踏み切ったことは、国民生活を考えない、政策的判断に迷った政府の愚かな政治感覚と言わざるを得ないのであります。  そこで、来年度は約九千五百億円に達する戦後最大の租税の自然増収が見込まれながら、何ゆえ実質的にびた一文の減税もせず、酒、たばこ等の逆進性の高い間接税増税をするのか。また、物価上昇で著しく国民生活が圧迫されているとき、なぜ減税よりも国債の減額を優先するのか。さらにまた、間接税増徴する前に、何ゆえに金持ち優遇措置といわれる利子、配当の分離課税のごとき租税特別措置整理合理化を断行できなかったのか、納得のできる説明を総理、大蔵大臣にお伺いをいたします。第二は、間接税の不公平と財源対策の不合理性であります。  政府は、酒税につきましてはその税率所得物価水準変動と無関係に定額に据え置かれているため、税負担が相対的な低下を来たし、他の諸税との間に均衡を失していると認められ、また、たばこについても酒税と同様な事情があると説明しております。しかし、現行の間接税負担割合は全く不合理、不公平なものとなっており、決して政府の言う税負担低下しているとは言えないのであります。たとえば酒税では、ビールは現在五〇%からの負担であります。特級酒で四三%、一級酒で三七%、また、たばこ消費税並びに専売納付金の負担割合は「新生」で五一・八%、ハイライトで五八%であります。一方、ダイヤの指輪やミンクのコート、ゴルフ道具等の高級品に対する物品税負担は二〇%にも満たないのであります。また、ビール税率を諸外国の税率と比較してみましても、日本のビールの場合は現行五〇%でありますが、西ドイツは八・七%、アメリカで一〇%の税負担でありまして、実にアメリカの五倍、西ドイツの六倍、主要国で一番高いのが日本の酒税であります。それにもかかわらず、今回の増税の大部分が酒、たばこのような政府の統制下にあるものが選ばれ、しかもウイスキーの二級酒、たばこでは「新生」「いこい」まで値上げをしていることは、完全に大衆課税強化であり、財源調整の具体策について何らの対策もせず、安易に取れるところから取る、納税者が気がつかないように取る、大衆課税でも取る。うるさく言う相手は敬遠するというのでは、財源はできても、国民の不信はぬぐうことができないのであります。  このように、すでに高率の課税負担がかかっている酒、たばこ等に減税のかわり財源を求めた安易な政府財政調達について、政府はいかなる説明をするのか、大蔵大臣にお伺いをいたします。  第三は、酒税引き上げ酒類価格の改定についての問題であります。  政府は、今回の酒類の値上げについては、物価対策の見地から酒税引き上げ分についてのみ値上げが行なわれる、清酒一・八リットル、つまり一升びんで、特級で約六十円、一級で約四十円、ビールは大びんで約七円、小売り価格千円のウイスキーは約四十円程度増税による値上げになるが、消費者価格はそう変わらず、国民の生計費にはさして響かないと言っておりますが、酒類の価格につきましては、三十九年に清酒の基準価格制度が廃止されたのが最後で、完全に自由価格になっております。それにもかかわらず、政府増税分のみの値上げで押えようとし、業界はこのほかに、原料米高騰分にコストアップ要素を織り込んだ価格改定を主張しております。政府物価政策の観点から極力値上げ幅を少なくしようとするのはわかりますが、それは表面的なことであって、四月からは増税分のみを値上げし、また参議院選挙のあとは、そのコストアップ分を含めて値上げを予定しているものと思われます。これでは二段階の値上げとなり、国民を欺瞞することになりますが、この点はどうなるのか。またそうでないとすれば、増税分以上については、年内に上げないくらいの意思表明があってしかるべきでありますが、酒類の小売り価格についての政府の方針を、大蔵大臣にお伺いをいたしたいのであります。  第四に、たばこ専売益金の原価計算についてであります。  四十三年度の専売納付金は二千三百四億円、前年度より七百億円もの増収を見込んでおります。たばこ専売は財政専売でありますが、その専売益金には、税金分と企業利益との区分がはなはだ不明確になっております。一体、この区分はどうなっているのか、この際明らかにしていただきたい。また、たばこの値上げは、専売事業の原価が上がったから定価を上げるのか、それとも税金を考えて定価を上げるのか、不分明でありますので、この点もあわせてお伺いをいたします。  また、税金分を明らかにすれば専売公社は国の企業である以上、収支とんとんでもよいはずであり、定価を上げないで企業努力により、財政収入、つまり増税分の消化ができるのではないか。戦後、たばこ定価改定は、例外的な場合を除き、値上げが行なわれていないと言っても、自動車産業のごときは逆に小売り価格が下がっております。しかも、たばこ専売事業は競合がなく、製造、販売、配給まで独占事業でありまして、消費者数についても心配の必要はなく、利益率が上げられないわけはないと思われるのであります。四十三年度は六千七百億円という巨大なたばこの事業収入が見込まれておるとき、たとえ増税分五百五十億円分とまではいかなくとも、せめて収入額の五%、三百三十五億円の増益をはかるならば、大衆銘柄の「新生」「いこい」などは上げなべても済むのではないか。また、その程度企業努力はできるのではないかと思われますが、大蔵大臣にお伺いをいたします。  第五は、本年の改正でまたまた税負担の公平の原則に反し、資産優遇対策としての国債の五十万円別ワク非課税特別措置であります。不況退治の切り札として、はなばなしく登場いたしました国債が、ついに発行価格の九十八円六十銭を大きく割り、暴落したことは、直接には景気政策の転換による金詰まりと政府は説明されましょうが、国債の市中消化は無理であり、一般大衆はインフレ国債発行には賛意を表していない証拠であります。現行の百万円までの少額貯蓄非課税制度の一件当たり利用額平均は、二十五万円程度であるといわれております。今回の別ワク非課税の適用を受けようとする者は、すでに百万円の満額を利用している者であり、税負担の公平を乱すことはなはだしく、また、これによって市中消化がどの程度まで促進されるか、はなはだ疑問とせざるを得ません。これによる減税額は平年度二億円といわれております。ほんの一握りの者の恩典に、特別措置に、屋上屋を重ねられようとしておりますが、これによって国債の市場価格は安定し、市中消化は促進されるとお考えになるのか、また、税負担の公平についてどのようにお考えになるのか、大蔵大臣に御説明を願いたいと思います。  最後に、輸出振興税制と関連して、最近の米国の輸入課徴金の問題について、ただしてまいりたいと思います。  そもそも、自由貿易主義を旗じるしとしてきた米国が、たとえドル防衛への焦慮からとはいえ、その精神に逆行する貿易制限措置に踏み出すことばきわめて遺憾であります。米国の貿易収支は現在黒字であり、国際収支を悪化させているのは、ベトナム戦争や対外援助、海外投資など、資本収支面の赤字であります。それを直接貿易制限によって国際収支の改善をはかろうとすることは本末転倒と言わなければなりません。実際に輸入課徴金が課せられれば、わが国にとって、特に低開発国との競合品である軽工業品などの輸出に深刻な打撃を受けると思われます。  周知のとおり、わが国が輸出振興策としてとってまいりました輸出所得控除は、すでに三十九年、ガットの精神にのっとり廃止をしてきたところであります。しかるに、米国は、ガット規定に違反するにもかかわらず、あえて輸入課徴金を課そうとしているのであります。これに対抗する措置として政府はいかなる方策を考えているのか、また、積極的な経済外交を進めるべきときであると思うが、総理、大蔵、通産大臣にお伺いをいたしまして、私の質疑を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  24. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 中尾君にお答えいたします。  もうすでに野上君あるいは戸田君に答えたところと重複するかわかりませんが、その点お許しを得たいと思います。  御承知のように、来年度の自然増収は九千五百億、かようにいわれております。たいへん多額なものでございます。かような際に私どもが減税でもできればたいへんけっこうでございますが、一方、予算を編成する場合にいろいろくふういたしてみますると、いわゆる義務的支出、当然増というような、そういうもう新たに計上することのできないような予算の硬直化の現象がございます。同時にまた、今後の経済の推移を考えてみますると、毎年多額の自然増収を予定するということは、これはたいへん危険でもあります。そういうところから、この際にひとつ、九千五百億の自然増収はあるが、体質の改善もはかろうし、同時に、この予算の硬直化、これと真剣に取り組んで今日手当てをしないと、先進国である、あるいはイギリスがおちいったような、またドイツがおちいったような、その轍をまた踏むようなことになるのではないか、かように考えまして、実は、減税増税いわゆるゼロのような状態にいたしたのであります。また、したがいまして、この実情をよく説明すると、ドイツやイギリスのような轍を踏まないためにも、この処置が必要であることが理解いただけるのではないだろうか、かように私ども思っております。  そこで、まず、いま申し上げるような立場ですから、総体としては減税などは考えられないような状態ですが、しかし、中小所得者に対する百万円減税とか、これはすでに公約事項として非常に国民も期待しておりますので、これを漸次実現すべく最大の努力を払おうということで、所得税減税をいたしたわけであります。そうして他の面において、先ほど来大蔵大臣からるる説明をいたしましたが、所得水準や、あるいは物価水準等に比して税負担が相対的に低いと考えられますたばこや酒、これを引き上げる——もちろん、政府だけではございません。これは税制調査会答申、この意見も聞いた上で、かような処置をとったわけであります。  次に、この増収があるにかかわらず、減税をやらないで、国債発行、これを優先したのはどうかというお尋ねでありますが、ただいまも申し上げますように、長期経済の見通しに立つと、この際に、景気はあまり過熱しないように、抑制型の予算を組むということが望ましいことであります。そういう意味で、まず国公債の発行を減額する。そうして、このことは抑制型であるばかりでなく、財政の体質改善にも必ず効果がある、かように考えて踏み切ったわけであります。  次に、間接税を上げる前に租税特別措置法整理しろという御意見であります。これは、先ほど租税特別措置法の中身をるる説明をいたしました。総額として二千六百四十八億であります。この中には簡単にやめることのできないものもあります。また、あげられました利子課税等の問題は、昨年、改正したばかりでもございます。それらの点も考えまして、今回は、この特別措置について増税分等の改正はいたしますが、また、減税もいたしますが、このいわゆる整理というような方向には考えないで、まあ間接税のほうを取り上げて、たばこ、酒、これに手をつけたのであります。もちろん、この租税特別措置法というものは、ときにこれが既得権化したり、あるいは慢性化いたしますと、税負担の均衡が破られたり、あるいは公平が保たれなくなるのでありますから、この租税特別措置というものは、それぞれの政策目的を達するためには必要でありますが、これを非常に広範に、また、永続的にこの種の制度を残すことはいかがかと思います。したがって、これらの整理合理化については、流動的にその改廃等について今後とも私どもは考えていく考えでございます。この点も御了承を得たいと思います。  次に、最近の国債の暴落の問題でありますが、これは後ほど大蔵大臣から詳しく説明すると思いますし、まあ先ほど戸田君にもお答えしたのでございますが、私自身、一つ感じますことは、この債券市場の価格というものは、これは金融情勢等の影響を多分に受けるものであります。そこで、昨年夏以来、価格が低迷状況であった、それで債券といわず国債といわず、やや価格が低目でありまして、やや心配いたしておりました。しかし、最近はようやくこれも落ちついてまいりましたので、これらの点では一部で心配されるような、そういうことはないと、かように私は確信を持っております。しかし、その国債は、御承知のように戦後二十年、そういう空白時代があってようやく始めたのであります。私は個人として、なかなかなじみがたい制度ではないかと思うのです。したがって、この国債についての国民の積極的理解を得るためには、政府におきましても、さらにこれらの点について十分注意をすることが必要だろうと思います。今回、大蔵省で特に税についてくふうをいたしましたのも、国債政策が円満にして、かつ健全で、国民の理解を得ると、こういう立場の処置だと、かように御了承をいただきたいと思います。  最後にお尋ねになりました米国の輸入課徴金の問題であります。この点は、先ほども戸田君に通産大臣からお答えをいたしました。今日の状態ではそれがきまったわけではございません。しかしながら、昨年の秋以来、米国に、いわゆるボーダータックスというか、あるいは課徴金というか、あるいは物資についての制限というか、何らかの処置をとるだろう、こういう動きがありますので、私がアメリカに参りましたときに、すでにこの種の動き、この種の計画、それについては十分警戒をしなければならない。また、そのことはかねて米国がとってきた自由貿易主義、あるいはケネディランドの貿易拡大の方向とも矛盾するものだと、こういうことで、アメリカに対しましてもしばしば反省を求め、そして、私どもの反対意向を述べてきたのであります。しかし、今日まで、あらゆる努力はしてまいりましたが、まだ、なお警戒を要する状態、いな、警戒をさらに厳重にしなければならないような状態になっておるのであります。  先ほども通産大臣からお答えいたしましたが、私どもは、かねての主張をこの際もさらに明確にする。もちろん、これらにつきましては、イギリスやカナダ等の、日本と同じような立場にある国もございます。欧州の諸国は、それぞれの国が、すでに自国の国益を守るという立場から、特殊のボーダータックス等を持っておりますので、米国がこれに対する対策として何らかのものを考えようと、いましておるのでありますが、米国のきめ方いかん、どういうことになるか、そのきめ方によりましては、わが国の輸出は三〇%が米国向けだと、こういう状態でありますから、わが国に重大なる影響のあることは当然であります。したがいまして、政府が、こういう事柄について無関心であるはずはございません。国民とともに、適切なる処置がとられることを、米国政府にまず期待いたしますが、さらに、国内自身といたしましても、今後の見通しいかん、今後の発展いかんによりましては、それぞれの対策をとらなければならない立場にあると思います。  私どもは、わが国の産業を守り、国益を守るという立場に立って、この問題と取り組むつもりであります。しかし、ただいまの状況で、まだ米国がとろうとする態度もはっきりいたしておりません。そういう際に、重大なる外交交渉の問題でございますだけに、私どもの態度も慎重である、慎重でなければならない。したがって、この機会に、皆さん方に申し上げるにいたしましても、私自身が慎重な発言をしておる、その点を御了承いただき、私ども、皆さん方とともども、わが国の国益を守る、かような立場でおりますから、どうか御声援のほどをお願いいたします。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男登壇拍手
  25. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) お答えいたします。  相当自然増収があるのにかかわらず、実質減税をゼロにしたかという問題、それから、所得税減税分の穴埋めを酒、たばこに求めなくてもよかったじゃないかという御質問につきましては、先ほど考え方を申し述べましたので、省略させていただきます。  それで、次のお尋ねは、酒の自由価格の問題でございましたが、いま酒造業界で、払い下げの米の値が上がったということ、労務費が上がった、販売経費が高くなったというコスト高から、値段を上げたいという運動をやっておることは承知しておりますが、これはやはり実際にコスト高に対する要望であって、こういう増税のあったようなときに、えてして起こる、いわゆる便乗値上げというものとは違うと思っておりますが、しかし、先年物品税の大きい変更をしましたときに、やはり、私どもは一応、増税分と、そのほかの便乗値上げとははっきり区別する、こういうときに便乗してもらっては困るということで、物品税変革のときには相当きつい態度で、税の増額分だけしか物価の上がらぬようにということでやった経験もございますので、今回もやはり、このコスト高と税の上がった分とは、はっきり区別する必要があると思いますので、いろいろコスト高についてはわかりますが、しかしこの際、この値上げは自粛してほしいという要請をいたしております。御承知のように、自由価格でございますので、どれだけ押えがきくかというような問題はございますが、私どもとしては極力いまそういう要請をしておるところでございます。  それから、国債の諸問題でございましたが、先ほど総理が申しましたように、私どもはやはり個人消化ということを今後国債については重要視しておりますが、金融情勢の変化、あるいはまた、いままで国債を出していなかったから国民に十分なじまないという点で、個人消化は十分でございません。そのために今回一つの呼び水としての租税措置をとったわけでございますが、さらにこの個人消化というものを促進するために、やはり国債は五万円額面の国債を出すというようなことをやったらいいんではないかということを考えて、いま事務当局で検討しておるところでございますが、こういうことによって極力この公債の消化には努力をしたいというふうに考えております。(拍手)    〔国務大臣椎名悦三郎君登壇拍手
  26. 椎名悦三郎

    国務大臣(椎名悦三郎君) 現段階では、課徴金の問題につきましては、総理がお答え申し上げた以上に何ものもございません。(拍手
  27. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 大蔵大臣から答弁の補足があります。水田大蔵大臣。    〔国務大臣水田三喜男登壇拍手
  28. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) たばこの益金の問題でございましたが、公社としては従来から経営の合理化努力してきたところでございますが、何しろこの小売り定価が長い間据え置かれておりますために、公社の企業努力だけでは一般経済情勢の推移に伴う原価の上昇を吸収し切れない、そうして益金率低下を見るに至っておりますので、したがって今回の定価改定はこの益金率低下を回復するということでございまして、これによって他の間接税との不均衡も是正するし、こういうたばこ、酒の値上がりという、増収というようなことによって、経費をいたずらにふやすという方向にはこれを使わない。一番財政上問題になっておる公債の発行額を縮減するということに、この増収を貢献させたいというような考えで、やはり今回は値上げせざるを得なかったという事情にございます。そこで、益金のうちで、企業努力分がどれだけかという問題でございましたが、公社の企業利益に相当する分を国庫に納付するというたてまえをとっておりますために、このうちから公社の企業努力による分を正確に区分しろということは、なかなかむずかしい問題でございます。いずれにしましても、現行制度におきましても、公社は設備の近代化と人員の配置というような合理化に非常に努力しておられるものでございますが、この努力分がどれぐらいあるかということを利益金の中で区別しろということは、これは非常にむずかしい問題だと存じます。(拍手
  29. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十六分散会      ——————————