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1968-02-27 第58回国会 参議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年二月二十七日(火曜日)    午前十時四十七分開会     —————————————    委員の異動  二月十二日     辞任          補欠選任       田村 賢作君    佐田 一郎君       内藤誉三郎君    中山 福藏君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         北條 雋八君     理 事                 青田源太郎君                 梶原 茂嘉君                 秋山 長造君     委 員                 斎藤  昇君                 日高 広為君                 大森 創造君                 亀田 得治君                 西村 関一君                 山高しげり君    政府委員        法務省人権擁護        局長       堀内 恒雄君        厚生省環境衛生        局長       松尾 正雄君        厚生省薬務局長  坂元貞一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君    説明員        農林省農政局参        事官       田所  萠君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (農薬に関する人権問題に関する件)     —————————————
  2. 北條雋八

    委員長北條雋八君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  まず、農薬に関する人権問題に関する件について調査を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  3. 亀田得治

    亀田得治君 私は、本日、農薬問題について、人権を守るという立場から若干質問をいたしたいと思います。  実は、昨年の七月、私が社会運動関係で非常に親しくしておる、大阪松本さんという方がおるんですが、その方のおいに当たる方が、これは十八歳の高校生ですが、農薬中毒で死んだということが和歌山県で発生いたしました。このなくなられた松木悟君というのは、非常に健康な方でありまして、小学校のころには二十日ほど学校を休んだことがあるようですが、それ以来、中学校高等学校も無欠席、それから無遅刻といったような、非常な健康でもあるし、精勤な方であったようです。この人が、七月の十日に、おとうさんと一緒に、ミカン園ですね、ミカン農薬を散布した。使ったのはニッソールですが、そのために中毒にかかって三十六時間後に死亡した。こういうまあ事件が起きたわけです。  この関係者訴えは、農薬問題についてこの種のことがときどきあるわけですが、どうかこれを最後にして、こういうことが日本の農村で再び起こらぬように政治をやってもらいたい、こういう強い訴えを受けておるわけです。私も、いろいろ当時の状況、経過などを聞きまして、まあ考えさせられる点が非常に多々あったわけです。農薬問題は最近大きなやはり社会問題になっていて、政府のほうでも以前よりは前向きの姿勢で取り組もうとしておる、そういう点は理解できる点もあるわけですが、まだまだ私はこの問題についてはしっかり取り組まなきゃならぬのじゃないかというふうに痛感をいたしました。そういう立場から若干の問題点をひとつ拾い上げてお聞きをしてみたいと思うのです。  そこで第一にお聞きしたいのは、危険な農薬が、十分な解毒方法、こういうものが発見されないままに使用を許されておる、こういうことは私は非常な問題ではないかと思うわけです。ただいま申し上げましたこのニッソールの場合でも、なるほどその農薬注意書きと、こういうものが入っております。ここに私、現物持ってきておりますが、この注意書きを見ますると、中毒した場合の応急手当てといったうらなこともここに書いてあります。しかし、これは決して、この専門家に聞いてみますると、これでしからば完全に中毒したものをなおせるのかというと、必ずしもそうではないようです。やらぬよりもやったほうがいいという程度のことなんですね。こういう事件が起きてから、私も若干聞いてみた。そうすると、内容はどうもそういうことのようです。そういうあいまいな状態でこの有害な農薬使用を許すということは、非常に私問題があろうと思うのです。で、松本悟君が死亡されまして、その親戚なり関係者の方が日本曹達大阪支店に行っていろいろ聞いたようです。いろんな話がありましたが、結論としては、確実にこのニッソール中毒にぴたっときく、そういう解毒剤はないのだ、それは研究中なんだと、こういうことばを使われたようです、研究中ということばを。そうしますると、われわれとしては、そういうものを研究するのであれば、研究が完成してからこういうものを売り出すようにしてもらいたい、当然そうなるわけですね。研究中ということが、単なるその場の言いのがれでそういうことを言われておるのか、あるいはほんとう研究をしておるのか、そこら辺も私が報告を聞きましていろいろ疑問に感じておるところなんですが、要するに、こういう危険な農薬というものをきちんとした解毒剤が発明されてそれで初めて売り出すようにしていく、こういうことが私は人命の尊重、人権を守るという立場からは当然必要なことじゃないかと思うのですが、そういう点についての考え方をまず最初に承りたいと思うんです。まず、厚生省農林省と両方からその点についての見解を披瀝してください。
  4. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 農薬解毒剤についての御質問でございます。農薬の登録は、亀田先生御存じのように、農林大臣のほうでやっておられるわけでありますが、解毒剤が確かにきくものがないじゃないかという点については、確かにお説のとおりでございます。一部の農薬については非常に著明な効果を持つものが出されているわけでありますが、すべての農薬について適切な効果的な解毒剤といろものがまだ現在開発されていないという点は、まことに遺憾に思うわけでございます。  そこで、いま御質問ございましたニッソール等のいわゆる有機弗素性製剤についての解毒剤としまして、いまお述べになりましたように、現時点においては確かにこれという効果的な解毒剤がいまだないということ、これも事実でございます。そこで、先生お述べになりましたように、現在研究中であるというお話がございましたが、私どもとしましても、たとえばアセトアミドというようなものが開発途上にあるわけでございます。これは現在まだ試験段階で、研究をしているわけでございます。一説によりますと、拮抗剤として非常に有効であるというふうにいわれているわけでありますけれども、残念ながらまだ開発途上にあるということでございますので、できる限りこういうようなものを、私ども厚生省としましても、解毒剤開発研究というものに力をいたさなければならぬというふうに従来から考えていたわけでありますが、いま仰せのように、すべての農薬についての解毒剤というのが完全に出ていないということは事実でございますので、今後こういう面について積極的に国のほうも関係業界促進をして研究開発に力をいたすように努力をいたしたい、かように思っているわけでございます。
  5. 亀田得治

    亀田得治君 農林省あとでいいです。  一部の農薬については十分きくものがあると、それはどういうものでしょうか。
  6. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 現在わが国各種農薬使用されているわけでありますが、私先ほど申しました、一部の農薬について非常に顕著な効果を持っている解毒剤があるということを触れましたのは、たとえば有機燐製剤というものがございます。こういう有機燐製剤に対するパムというようなものが数年前から開発されて非常に効果をあげているというのが一つの例でございます。それからもう一つは、若干見方は違いますが、水銀剤とか砒素剤系統農薬に対してバルというようなものが解毒剤として非常に効果があるというふうに言われております。それから、たとえば鉛剤系統農薬に対しましてEDTAというようなものが使われておりますが、こういうものも非常に効果がある。まあ大体こういうものが現在までのところわが国において使用されている解毒剤として顕著なものであると言われておるわけでありますが、特に冒頭に申しました有機燐製剤に対するパムという解毒剤は非常に顕著な効果を持っているということが一般的に言われている、こういうふうに承知いたしておるわけでございます。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 いま解毒剤について三種類説明があったわけですが、現在日本で使われておる各種農薬の中で、いま言われました三種類解毒剤を用いて効果があるものは全体の何%ぐらいになるのです。それを用いても効果がないという残りは何%ぐらいになるのですか。
  8. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) ただいまの御質問にぴったりする統計的な、科学的なデータを持っておりませんので、御質問にぴったりする御答弁はできにくいわけでありますが、現在のわが国農薬の事故に伴う解毒剤としてパム等が非常に顕著な効果を持っているということは、大体国内的にいろいろな方面学者なり医療機関等で認識されている事実だろうと、私どもはこういうふうに思っております。ただ残念ながら、いま御質問のように何%ぐらいの効果を持っているかというような点についての具体的な統計、データを実は厚生省としてもとっておりませんので、数字的には申し上げられないわけでありますが、パム等治療効果解毒効果というものは非常に顕著であるということが一般学者なりあるいは医療機関等で認識をされているということは事実のようでございます。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 先ほどの説明の中で、アセトアミドですね、有機弗素に対する解毒剤として研究中だというふうに言われましたが、それはどこで研究しているんですか。
  10. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 試験段階研究でございますので、私どもも詳細には当該メーカーからうかがい得ないわけでありますが、非公式に私どもが承知しております点は、いわゆる先ほど先生お述べになりましたニッソールを出しております日本曹達アセトアミドというものを現在開発研究中である、こういうふうに承知をいたしております。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 パムその他解毒剤研究は、その対象になる農薬を製造しているメーカー研究しているわけでしょうか。つまり、メーカーと離れて、厚生省なりあるいはそのほかの研究機関研究しているということなのか、解毒剤はともかく危険な農薬をつくる会社が研究する、そういうたてまえになっているということなのか、どっちなんでしょう。
  12. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 御質問のように、必ずしも当該農薬を出しておりますメーカー解毒剤研究するということにたてまえとしてはなっておりません。したがいまして、こういうような農薬メーカーというものも、当然解毒剤開発しなければならぬというたてまえにはなっておりませんが、やはり道義的なものとしまして、解毒剤というものは当該農薬メーカーとしても真剣に考えてもらわなければならぬ問題でありますし、私どもは実は、農薬を出している当該メーカーに、必ずそういう農薬を出す以上は、危険性が伴うものは当然あるわけでありますので、解毒剤というものの研究開発も片方においては絶対に怠ってはいけない、こういう指導も私どもとしてはやっているわけであります。ただ、解毒剤開発については、先生よく御認識いただいていると思いますが、なかなか苦労が伴いますし、簡単なものでありませんので、そういう能力技術を持っているメーカーでないと解毒剤の製造というものができないわけでありますので、一がいに当該メーカーだけで解毒剤を責任を持って開発しろと言っても、まあ実際的にはむずかしい場合もありますから、私どもとしましては、当該メーカー解毒剤開発を終始忘れてはいけない、むしろ優先して考えるべきだという内面指導はしながらも、一般のそういう方面解毒剤開発メーカー等に対しても、いま日本で市販されているもの、あるいは今後開発されるような農薬については、できる限り解毒剤開発するようにという業界に対する指導は従来ともやっている、こういう事情になっております。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 ここにニッソール注意書きがあるのですが、ニッソール農薬の包装に巻いて入っていたものですが、これを見ますと、治療に関する参考事項一から十までちゃんと書いてあるわけです。これをしろうとが読んでおりますと、ちゃんとこれで解毒ができるような感じを受けるわけです。私は、完全なものでないから、こういうふうにしても完全ではありませんから注意しなさいとか、それがほんとう注意書きじゃないかと思うのですが、大体近ごろは、誇大広告というか、ずいぶんいろいろな食品なり、あるいはポッカレモンでも、いいかげんなことを書いて誤解を与えるということが多いわけです。こういう有毒なものについての完全に的確にきくという解毒剤がない場合の注意書きというものは、もっと私はそれこそ注意して、誤解の起こらぬように書いてもらわなければいかぬと思うのです。そういうふうなことは、厚生省のほうで注意してごらんになっておりますか。皆さん専門家だから、薬務局の人は、これはこういう意味だ、ああいう意味だ、それはすぐ理解するでしょうが、しろうとは、そういう深い理解ではなしに、万が一かかった場合にはこれでいいのだ、こういうふうに理解すると思うのですが、どうでしょうか。
  14. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 確かに表示の面で解毒方法というものを書いているようでございますが、おそらく、私その表示を見ておりませんので申しわけございませんが、農薬全般に通ずる一般論としまして、解毒の応急的な措置というものがいろいろあるわけでございます。お医者さん、医療機関等で、応急的に中毒患者等に対して強心剤を打ったり、あるいは輸液注射をしたり、酸素吸入をしたり、いろいろ症状に応じた応急的な措置というものが一般的にあるわけでございますので、おそらくそういうようなものを表示してあるんじゃないかと思いますが、ただいま先生おっしゃられましたように、ニッソールならニッソールとしてぴしゃり効果的な解毒方法というものがかりにまだ日本において開発されていないとするならば、そういう応急的な措置のほかに、実は先生の御質問のように効果的な解毒剤の問題について表示をするほうが私どもとしましても当然だと思うのでありますが、いずれにしましても確かにそういう問題は私どもも今後十分気をつけて指導をしていかなければならぬ問題だろうと、かように思っているわけでございます。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 これは私は、厚生省でこの問題はやっぱり研究してほしいと思うのです。これは、この注意書きに、この薬については的確な解毒剤はありませんと一番終わりに書かれたら、あるいは買わない人がだいぶ出るかもしれぬ。すると、メーカーなり商売する人はできるだけ売りたいからそういうことは書きたくないわけだ。しかし、そこが行政指導の大事なところですよ。私は、やっぱり注意書きとか広告というものは正確を期さなければいかぬ、特に人命に危険なものについてはそうだと思うのですよ。そうして、厳重にそういう正確に記載させることによってその販売が困難になると、そういうところから、初めてメーカーとしても、これはやはり解毒剤というものをもっとしっかり研究開発しなければならぬというまた意欲も出てくるわけでしてね。だから、そういう意味で、私はまあいまニッソールのやつだけ見ておるわけですが、ほかにもたくさん類似のこういう印刷が農薬について入っているんだと思いますがね、一ぺん点検してほしいと思います。これは要求しておきます。いいですか。
  16. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) まことにごもっともな御意見をいただきまして、さっそく私ども農林省当局と御相談を申し上げまして、いま御指摘の点を十分今後の指導に生かすように配意をしてまいりたいと、かように思っております。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 それから、次に、私、今度の松本さんの問題が起きてから、いろいろこの関係法規等を調べたりしたわけですが、若干気のついた点で確かめたいと思うのです。それは毒物及び劇物取締法、この第十二条ですね、ここに「毒物又は劇物表示」ということが取り上げてあるわけですね。その第二項ですね、ちょっと条文をごらんになってください。第二項にはこう書いてある。「毒物劇物営業者は、その容器及び被包に、左に掲げる事項表示しなければ、毒物又は劇物を販売し、又は授与してはならない。」そうして、一、二、三、四と、一は「毒物又は劇物名称」、二は「毒物又は劇物の成分及びその含量」、三は「厚生省令で定める毒物又は劇物については、それぞれ厚生省令で定めるその解毒剤名称——こういうことが第三番目に書いてあるわけですね。この法律の趣旨からいいますと、毒物及び劇物については厚生省令で定める解毒剤名称を書くんだ、必ず書かなければならぬという強い書き方にはなっておりませんが、ともかく、そういうものを書いてなければ販売したりしてはならない、こうなっているわけですから、原則としては十二条の第二項の三号というものが十分普及しておれば相当事態は私は変わっていると思うのですが、第二項の第三号の運用というものは一体どうなっているのか、説明願いたい。
  18. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 毒劇法の十二条第二項第三号で、ただいま御意見のように、厚生省令で必要な毒劇物について解毒剤名称表示するように法律で定められておるわけでありますが、実はこれはまことに私どもも申しわけないと思っているのですが、現在この省令はまだできていないわけであります。と申しますのは、先ほど申しましたように、解毒剤一般についてまだ非常に現在のわが国開発研究というのはほんとうに水準が低いということでございまして、先ほど私、特定の毒物劇物等についての解毒剤が非常に顕著なものがあると申し上げましたのでありますが、そういうものが非常に数が少ないわけでありますので、実はこの省令をまだ現在までのところ制定をいたしていないわけであります。そういう事情で、非常にこの点は私どもも従来手を抜いてきたような感じになっておりますので、先般来からこういう問題について少し積極的にこの解毒剤問題を取り上げてまいりたいということで検討を重ねておる段階でございますが、もうしばらく時間をかしていただきたいというわけでございます。
  19. 亀田得治

    亀田得治君 この法律ができたのは昭和二十何年でしたかね——二十五年でしょう。もうあなた二十年近くたっているわけですよ。こういうふうになっているということは、ともかく早く解毒剤開発して、厚生省もちゃんとその点を調べて、そうして特に大衆の使う農薬等についてはちゃんと解毒剤をそろえてやっているのだと、専門家の使うものはこれはそれほどあぶなくない、農民皆さんが使うような場合にこそ、こういうやっぱり省令を生かして完全なものにしていただかなければならぬわけですよ。だから私は、いまのやり方は厚生省自体がこの毒物及び劇物取締法に違反したことをやっているという感じがするのです。それはなかなか専門的にむずかしい研究をしなければならぬ点もあるでしょうから、それは二年や三年はおくれるということがありましても、二十何年もそれが現実化しないというものだったら、第十二条の第二項の第三号なんというのはあってなきにひとしいですよ、二十何年というのは。だから、もしそんな二十何年もほったらかしておくものならば、この条項を削除しなければいかぬでしょう。ほんとうは。私はいろいろ調べてみてこういうものが目についたものですから、一体これはどうなっているだろうかというふうに疑問を持ったからお聞きしているわけですが、お聞きすると、省令はつくられておらぬ、したがって解毒剤名称を書かないでもいいんだ、こうなるわけですね。業者から見たら、そうなるわけでしょう。これは早急に何とかなりませんか、法律があるんですからね。
  20. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 先ほど申し上げましたように、法律制定後長期間にわたりましてこの面の検討を怠っていたわけでございます。まことに申しわけないと思います。先ほどお答え申しましたように、早急にこの問題については、法律の精神にのっとりまして、省令作成その他の作業を急ぎまして、ただいま先生の御指摘のような点について遺憾のないように前向きの姿勢で処してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 たとえば、先ほどの説明からお聞きしますと、有機燐剤等についてのパムなどは非常に確実にきくようだという御説明があった。あとの二つについては、ちょっと説明から受けた感じは、若干確実性がないような感じを受けましたが、少なくともパムについてはそういうことがはっきりしておるのであれば、そのパムに対してちゃんと合う農薬については、十二条二項三号の省令というものをつくって、たとえその分だけでもやはり実行していくという姿勢がなければ私はいかぬと思う。そうなりますと、今度は十二条の二項三号、そういう省令に基づく表示のないようなものとあるものと二つ出てくるわけですね、市場には。そうなると、それはやはり一般農民にとってみれば非常にはっきりしてくるわけだ。だれだってやはり、省令で定められた解毒剤表示されたものを好むことはあたりまえなんですね。そういう行政上の措置というものがやはり解毒剤開発促進にもなっていくわけでして、パムについてはすぐ私はできるように思うのですが、どうなんでしょうか。
  22. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 終始ごもっともな御意見でございます。たとえばパム等については、十分に顕著な解毒効果を持っているということが一般に認識されております。少なくともこの分に関する限りは早急に省令作成を準備いたしたい、かように考えるわけでございます。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 人権擁護局長おられましたね。ちょっとお聞きしますがね、人権立場からひとつ考えてほしいのですが、人畜に有害な農薬解毒剤がないままに売り出されておる、こういうものはたくさんあるわけなんですね。先ほどからの質疑でこれは明らかになった。私はこれはどうしても、農業政策とかそういうことはまた別な立場であって、人権という立場から考えたら、解毒剤をきちんと開発して初めてこれが売り出しの資格を持つ、こういうふうにすべきだと思うのですね。農民はこれは専門家じゃないのですから、取り扱いの注意事項というようなことをここに書いてあります。これはなかなかたくさん書いてあるんですよ。それはぼくらが、多少農業問題をやっておりますけどね、それを一ぺん読んだって覚え切れぬですよ。いわんや、お百姓さんはそういう化学的な部門についてはわりあい弱いですわね。基礎理論がわかっておらぬわけでしょう。根本理論がわかっておらぬ人に暗記させておいたって、これは間違えますよ。根本理論がわかっている人でも、それは疲れたりいろいろすると間違う場合がある。だから、そういう農民大衆に、しろうと農民大衆に使わす危険物について的確な解毒剤のないまま売り出しがなされておる、こういうことは、はなはだ私は人権という立場から見て筋が通らぬと思うんですよ。局長のひとつ見解をお聞きしておきたい。
  24. 堀内恒雄

    政府委員堀内恒雄君) 人体に有害な農薬使用を認めるかどうかにつきましては、その農薬使用によりまして防除すべき病虫害の性質、程度農薬効果、その農薬有毒性程度などを総合的に比較検討して決すべきことが当然でございますが、私ども人権人命を尊重するという見地からしましては、農薬使用の許可は十分に慎重になされることが望ましいと考えます。  ただいま御質問のありました、まだ解毒剤のないものが売り出されておる、そういうものは十分に解毒剤開発されてから売り出すべきではないかという御質問でございますが、御質問のように十分に開発されましてから売り出すということは、お説のように最も望ましいところではございますが、やむなく劇薬等の使用解毒剤がないままに許可する場合におきましては、農薬取締法その他の関係の諸法規に従いまして、製造業者が農薬解毒剤農薬使用上の注意事項というものを容器などに明示することによりまして、そういうような行政上の指導監督を行ない、また使用者にそういうことに関する知識を普及徹底させるような十分な行政措置がなされることが望ましいと私ども考えております。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 局長のそんな答弁は、それは農林省と同じことなんですよ。農林省だって何も有毒なるものはなるべくないほうがいいという立場をとっていろんなことをやっているのでね、厚生省だって。だから、そうじゃなしに、私の聞くのは、この扱う農民は化学的な問題についてどうしてもこれは知識が乏しい、そういう人たちに的確な解毒剤のないまま売り出すということは人権という立場から見たら間違いじゃないかと。これは現在売り出されておりますからね。皆さんはその現状を否定するようなことを言いたがりませんけれど、私はほんとうは要求したいのは、法律で禁止してほしいと思っているんですよ。それがそろわなければ農薬の販売は許されない、こう禁止してほしいと思っているんですよ。禁止すれば——それはみんなあたりまえじゃないか、そんな法律は、何でそんなことをいままで手間かかったのか——これが私は常識になると思うんですよ。人権局長に聞いているのはそこを聞いているのであって、もう少しそれはあんた人権立場に徹した意見を出してもらわなきゃ、一歩も前進しませんよ。私が厚生省に要求したいのは、せっかく先ほど指摘した十二条のような規定があるわけですから、この規定の精神というものを私はよく考えてみたら、解毒剤のない農薬——すべての農薬という必要はありませんよ、医者なり専門家が扱うものについちゃそんな厳密なことは私は要らぬと思います。農薬のような一般大衆が使うそういうものについては、解毒剤がそろわぬ以上はもうこの法律で禁止するというふうな改正を実はきょうは要求したいと思っていた。その要求をする前にですね、人権擁護局長意見を聞いたほうがおそらく私の意見に賛成してくれる、それを根拠にあなたのほうへ言おうと思ったんだが、どうもあなたの答弁じゃ、それはだめですわい。それはもっとしっかりしてもらわなきゃ、どうなんですか。そんな書いてきたものをたよりにやってもらっちゃ困りますよ、それはもっとしっかりやってもらわなければ。もう一ぺん答えてください。
  26. 堀内恒雄

    政府委員堀内恒雄君) お説のように、農民は薬物などにつきましての根本的な理論が欠けておるという点もありますので、解毒剤開発途上のものにつきましては売りに出さないというほうが最も好ましいということは申せると思います。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 初めからそういうふうに答えてもらいたいと思います。それでね薬務局長、この解毒剤研究は、先ほどからの答弁を総合すると、主としてメーカーが現状ではやってるようですが、どういうメーカーが熱心にやってますか。熱心なのと不熱心なのといろいろあるだろうと思うんですが、その辺のところをここで明らかにしてください。
  28. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) メーカーの中にはいろいろ規模なり技術力等において格差があるわけでございます。まあこの点は先生も御存じだと思うわけでありますが、やはり解毒剤みたいなものの研究開発というのは、先ほどもちょっと触れましたように、相当の技術力と力がなければなかなか一挙に簡単に開発できにくいものでございますので、それ相当に技術力、資本力等のそういう開発能力というものがあるものが当然解毒剤開発には積極的になるわけでございます。現在までのところ私どもが承知しております点では、大メーカーが非常に解毒剤開発にいろいろ従来実績もあげているわけでございます。ただ、個々のメーカーでどのようなメーカー開発意欲が積極的かどうかという点については、いろいろ国会等の場で申し上げるのもどうかと思いますので差し控えさしていただきたいと思いますが、やはり私どもが承知しております点は、農薬開発なり製造をやって販売をいたしますことは非常に当該メーカーの業績をあげることになるわけでありますが、解毒剤開発研究というようなものについては、若干メーカーとしては採算に乗るか乗らぬかというような点も考慮しているような点も聞いておりますので、私どもとしましては、そういう採算ベースというような点で解毒剤の問題をメーカーあたりが考えているということは絶対困るというような点で従来指導をしているわけでありますけれども、やはり技術力、資本力等のそういう開発能力の点からいって大手メーカーが従来わりと実績をあげている。これはいわば当然なことと言えば当然でございますが、やはりそういう大手メーカーでないとなかなか効果ある解毒剤開発研究ができにくいということもありますので、そういう方面の大手メーカー、これは先生御存じでおそらく御質問されておられると思いますが、大手メーカーほどこういう問題については意欲を持っておるし、また私どももそういう大手メーカーに大いに期待をかけまして、解毒剤開発促進を今後やっていただきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 具体的にひとつ教えてほしいのですけれどもね。大手メーカーがどの程度解毒剤開発研究のために経費をかけておるか、代表的なやつをひとつ説明してほしい。
  30. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) ただいま手元にそのような具体的な資料がございませんので、後ほど取りそろえまして御報告をさせていただきたい。
  31. 亀田得治

    亀田得治君 じゃそれは資料としていただくことにします。  次に農林省、農政局長がきょう来られぬようですからあなたにお聞きしますが、農林省もどうも私はいままで相当手抜かりがあるというふうに思うのです。それは農薬取締法ですね、ちょっと条文見てください。この第一条の二、ここに公定規格の規定があるわけですね、「農林大臣は、農薬につき、その種類ごとに、含有すべき有効成分の量、含有を許される有害成分の最大量その他必要な事項についての規格を定めることができる。」、こう書いてあるのですよ。私、質問を始める前に、農林省の担当の方に、現在までどの程度この公定価格というものがつくられたか、私の勉強の参考に出してくれと言ったところが、まだこの条文を活用してつくったものはありません、こういう返事なんです。間違いありませんか。
  32. 田所萠

    説明員(田所萠君) 現在まで公定規格はございません。
  33. 亀田得治

    亀田得治君 そういうことじゃ、農薬の取り締まりをやる監督官庁、さっきの厚生省解毒剤についてはなはだ怠慢であったと同じように、農林省自体もはなはだ私心外だと思うのですよ。この第一条の二は、昭和二十六年に農薬取締法の一部改正で追加された条文なんですね。わざわざこれは最初つくられた法律に追加してきたものなんですよ。追加してきたということは、やはり公定規格をつくって弊害を除いていかなければいかぬ、こういうことでこれはできたはずでしょう。私、当時の速記録も参考にと思って引き出してみたのですよ。そうしたら、農林省の堀説明員は、こういうことを委員会で答えておる。「公定規格につきましては、有効成分のみならず有害成分の最大量についても規定する考えになっております。」——ききめのある部分だけじゃなしに、害のある部分についても規定する考えですと、「なおそのほか必要がありますれば、粉末度とか、或いは水素イオン濃度といったような物理的な性質についても規定したいと、こういうふうに考えております。」、これは参議院の農林水産委員会で二十六年の三月三十日にちゃんとお答えになっているのです。決して何もこれはお飾りの条文じゃないのだと、こういうふうになっておるのですがね。それからあなた、二十年以上たつのですよ。
  34. 田所萠

    説明員(田所萠君) 第一条の二に出ております農薬につきましての有効成分の量並びに有害成分の最大量の問題でございますが、この有害成分というものにつきましては、この条文で言っておりますのは、作物に対します薬害というような意味におきます有害成分ということでございまして、実際、農薬メーカーがつくりまして登録するわけでございますが、そういう場合にそういうものに非常な被害があるということであれば、当然、登録過程におきまして、検査の結果それを却下するというようなことにもなるわけでございますので、ここでは人畜ということではございませんで、作物に対します薬害というものの最大量ということでここに書いてあるのでございます。それで、実質問題といたしましては、そういうような過程で登録されますので、公定規格というものはなかなか——まああればそれにこしたことはないわけでございますが、そういう必要性はあまり感じていなかったということと、それから最近におきましては、非常に農薬が多種多様に製造されまして、日進月歩に新しいものが開発されておる。有機合成剤なり抗生物質と、いろいろなものが次から次と出てくるというようなことで、公定規格をきめるということは非常にむずかしいという問題がございまして、そういうようなことに現在なっておるわけでございます。
  35. 亀田得治

    亀田得治君 二つのことを言いわけされましたけれども、次から次といろいろなのが出てきて、公定規格をきめにくいと、こういうことを言われますがね、そんなことは当時から予想されたことでしょう。予想しないほうがおかしいですよ、それは。またたくさん出てきたら大いに忙しく仕事をしたらいいわけでしょう。たくさん出てくるから、もうそんなものはしかたがない、ほうりっぱなしだ。そんな、あなた無責任なことあるんですかな。数が多いから、この条文を使わないでほっておくのだ、むずかしいからほっておくのだ、数が多いとむずかしいと、二つ言われたが、いずれも、そんなことは理由になりませんよ、それは。それに応ずる体制をとったらいいわけでして、それなら、なぜ最初はなかった条文を二十六年にここへ入れたのですか。わざわざ改正までして入れるということは、公定規格をつくっていかなきゃならぬという立場からやられたわけでしょう。その第一の問題は次にして、第二の数が多いからむずかしいからと、そうすると、今後もどうもこれは活用しないでほったらかしにしておくというふうに私聞こえるのですが、そういう考えですか。
  36. 田所萠

    説明員(田所萠君) どうも説明が舌足らずになって恐縮でございます。もちろん、法律に載っておる事項でございますので、当然国としては、この問題につきまして十分検討し考えなければならない問題であると思います。  ただいま数が多いということを申し上げたわけでございますが、まあ数が多くてなかなかつくり得なかったという実情を御説明申し上げたわけでございます。先生のおっしゃるとおり、当然法律に書いてあることでございますので、この問題について、農林省としても検討しなければならないと、かように考えております。
  37. 亀田得治

    亀田得治君 それから第一の点ですがね、作物に有害な成分の最大量の意味だと、こういうふうに説明されましたが、国会では別にそういう説明にはなっておりませんね。そうして、おそらく、作物に有害なやつは人畜に対しても有害な点は、ぴったりは私は一致しないと思いますが、しかも、私はしろうとでよくわからぬが、しかし、相当私は関連性があると思うんですよ。だから、少なくも、そういう狭い解釈の上に立った運用だとしても、真剣にこれに取り組んでおれば、たとえば、後ほどこれはまた厚生省にも聞きますが、食品の中の毒性の残留問題とか、そんなようなことについてだって相当これは影響していく問題なんですよ、確かに。それを全然使っておらないと言うんですから、これは話にならぬですよね。仕事に着手してみたけれども途中でやめたと言うんですから、どうなんですかね、何かそういう公定規格をつくろうというような作業をやったことがあるんですか、全然やっておらぬのじゃないですか。
  38. 田所萠

    説明員(田所萠君) この問題につきましては、過去において農業資材審議会のほうにはかった経緯があります。その審議会において、公定規格をつくることは非常にむずかしいというような話があったということでございます。
  39. 亀田得治

    亀田得治君 それはいつごろですか。
  40. 田所萠

    説明員(田所萠君) いまちょっと記憶ございませんので、後ほど、調べまして先生のほうに御連絡いたしたいと思います。
  41. 亀田得治

    亀田得治君 そうしたら、いつごろだけじゃなしに、むずかしいという理由ですね、それもひとつきちんと明らかにしてください。大体そんないいかげんなことなら、わざわざ法律改正までする必要ないんですからね。しかも、法律改正するときには、ちゃんとやりますということを、説明員が国会でも答えているわけだ。だから私は、はなはだ農薬問題についての取り組みが、いままであまりにも業者まかせ過ぎたと思うんですよ。
  42. 田所萠

    説明員(田所萠君) まあ農薬の問題につきましてのいろいろな被害、先ほど問題になっておりましたそういう中毒問題、それから残留問題、そういう点につきまして、農林省といたしましても今後十分指導その他につきまして考えていきたいと思っております。
  43. 亀田得治

    亀田得治君 次に、私、厚生省の環境衛生局長のほうにお聞きいたしますが、この農薬の食品中における残留許容量、こういう問題は最近世間がずいぶんやかましくなってきたから、皆さんも取り上げるようになったし、また、農林省もそれに対応した安全使用基準と、こういったようなことを検討しておられる。それは私一つの進歩として評価いたしますが、その点はあとにまた聞きますが、その前にお聞きしたいのは、食品衛生法の第四条の二号にはこういうことが書いてある。「有毒な、又は有害な物質が含まれ、又は附着しているもの。」、本文のほうは、次のようなものは販売してはならないというものの第二号として、いま言うたやつがあるわけですね。「但し、人の健康を害う虞がない場合として厚生大臣が定める場合においては、この限りでない。」と、こうなっているのですね。そして、これの違反については、この法律の中で罰則がついているわけですね。懲役刑までついているわけです。こういう条文があれば、私は、有毒な農薬が食品の中に入っているというふうなことが明らかになってきた場合には、相当強い規制ができるように実は思うのですよ。それで、ただ、この条文には例外規定がここに書いてあるわけですね。厚生大臣が認めた場合にはよろしいと、例外だとなっておるわけですね。ところが、その点は省令できめておるわけです。それを見ますると、二つ書いてあるのですよ。読んでみましょう。「有毒な又は有害な物質であっても、自然に食品又は添加物に含まれ又は附着しているものであって、その程度又は処理により一般に人の健康を害う虞がないと認められる場合。」、これが一つ。それからもう一つは、「食品又は添加物の生産上有毒な又は有害な物質を混入し又は添加することがやむを得ない場合であって、且つ、一般に人の健康を害う虞がないと認められる場合。」、こういう二つのことが例外としてきめられておるわけですね。こういうきめ方は、はなはだ私は不親切だと思うのですね。第四条第二号違反だということで業者と取り締まり官庁の間で紛糾した場合、こういうきめ方では水かけ論になると思うのですよ。これは、もっと例外規定をつくる場合には具体的にきめなきゃ私はいかぬと思うのです。「一般に人の健康を害う虞がないと認められる場合。」と、これはあなた、どうとも解釈できるでしょう。私は、そういう具体的にきまっているんだろうと思って、その例外規定はどこだというふうに厚生省の人に聞いたらこれだと、こういうふうに教えられたので、これじゃ、あなた、法律の本文に少し形容詞をくっつけて、同じようなことを並べているだけですよ。だから、こういうところに、どうも私は、厚生省自体がこういう問題について取り組み方が消極的なような感じがするんですね。具体的にきめて——具体的にきめればこれははっきりしてきますからね、その例外以外のものについては、罰則は三十条の懲役規定まであるのですからね、相当強いこれは取り締まり対象になっていくわけですよ。この点どういうふうにお考えでしょうか。
  44. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 先生の御指摘のとおりのような性質を帯びておりますことは同感でございます。ただ、農薬の残留につきましては、この第四条の、いま先生指摘の条文を、たとえば三十一年におきまして、一応その解釈に従いまして、暫定的と申しますか、そういう残留を一応指示したという経過はございます。私ども、ただいま、この第四条の御指摘の第二号というようなただし書きということでいく方法によるか、あるいは、むしろ、第七条の中に、厚生大臣が公衆衛生の見地から必要なものに、食品につきまして、その基準、成分をきめることができる、そういうきめをいたしましたものについては、一般的に販売したり使用したりその他のことが禁止されるという法律条文がございます。むしろ、第七条を適用いたしまして、近くその残留農薬の許容基準というものを具体的に実施したい、かように考えておるところでございます。
  45. 亀田得治

    亀田得治君 私は、あなた、法律の運用面を指摘すると、みんな、亀田委員指摘のとおりと、そんなことじゃ、困るですよ、これは。私は、これはしろうとです。だから今度松本さんの事件で私自身が非常にショックを受けて、それで、この関係をずっと一通り質問する準備のために当たってみたのです。そうしたら、われわれしろうとから見ても、これほど法の運用が粗雑であるということは、姿勢を改めてもらわぬといかぬと思うのです。  そこで、一番最近問題になっておる各いろいろな農作物の中の毒性問題ですね、これについて、最近厚生省では、食品の中の、どこまで毒性があってもよろしいかという、その許容量ですね、これを研究されてきて、最近その一部を発表される段階に来ておると聞きますが、その辺の事情を御説明願いたいと思います。
  46. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 農薬の食品における残留問題が、先ほど来、急性毒性としての面から、いろいろ事故の例等も御指摘がございましたが、慢性毒性という立場からも、やはり非常に注意を要する問題である、こういう点に着目をいたしまして、厚生省では三十九年から具体的な実態調査を開始いたしてまいりました。多数のそういう農作物等ある中でございますので、そういうものの中から重点的に品目を選んでまいりまして、ただいまのところ、近く私どもが成案を得る予定であるというものは、リンゴとかキュウリ、トマト、ブドウというものにつきましての、たとえば砒酸鉛、あるいはDDT、あるいはパラチオン、こういうものについて、それぞれどの程度まで残留しておったら、それ以下であればいいか、こういう許容量を近くきめたい、その近くきめたいと申しますのは、三月八日に、食品衛生法に基づきます食品衛生調査会が設けられておりますので、その食品衛生調査会に諮問をいたしまして、すみやかに答申をいただいて実施の運びにいたしたい・こういうことを予定しておるわけでございます。
  47. 亀田得治

    亀田得治君 三月八日の調査会にかける原案はもうまとまっておる段階ですか。
  48. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 事務的な段階でのいろいろ検討いたしました線はほぼまとまってまいっております。ただ、諮問をいたすたてまえでございますので、答申の結果どのように委員の御意見であるいは修正になるか、あるいは条件がつきますか、そこのところはまだ明らかでございませんけれども、具体的なものとして諮問をする準備は一応完了しております。
  49. 亀田得治

    亀田得治君 これはまあ日本の食品行政として初めてのことでして、非常に意義のあることだと思いますが、われわれもまあ今後いろいろ研究したいと思うんですが、その調査会にかける前の案ですね、それを資料としてこの法務委員会に出してもらいたいと思うんですが、どうでしょうか。
  50. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) さっそくに調製いたしまして提出をいたします。
  51. 亀田得治

    亀田得治君 それで、いまお聞きしたのは四つの種類だけですが、あとにまあたくさんのくだもの、野菜、いろんなものがあるわけですね。そういうものについては、これは研究の計画も立てておられると思いますが、ありましたら、全貌を御説明願いたい。
  52. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 三十九年から、先ほど来申しましたように、リンゴ、ブドウ、トマト、キュウリ、それに米を加えましたものを調査対象にいたしまして、残留の実態を調査してまいっております。さらに四十年には、ただいま申しました三十九年のものにつけ加えまして、イチゴ、キャベツ、大根、緑茶、日本ナシ、それから四十一年度は、その前の年度にさらに追加をいたしまして、ナツミカンとか豆、バレイショ、ホウレンソウ、四十二年、本年度におきましては、ナス、それから白菜、ネギ、タマネギ、ニンジンというようなものを、ただいま申し上げました各年度にさらに積み重ねまして、これを全部対象にしておるわけでございます。したがいまして、そのような逐年——これは一ぺんにやれという御希望もあるかと存じますけれども、非常にこういう分析は慎重にやっていくたてまえから、衛生試験所その他の能力なども考えまして、さような計画のもとに、逐年その調査対象を拡大してまいっております。したがって、これらの検査が次第にまとまってくるに従いまして、先ほどの四品目以外にも、こういう基準を拡大してまいりたい、こういを姿勢でこの計画を進めておる次第でございます。
  53. 亀田得治

    亀田得治君 いま御説明になった品目は、年度が一つずつずれておりますが、すでに研究に着手しておるという意味になるわけですね。
  54. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) そういうことでございます。
  55. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、いま申された以外もまだ計画をされるのか、その点はどうなんでしょうか。いまおっしゃった品物だけで一応おもなものが入っているからこれでストップだという考えなんですか、どっちなんでしょうか。
  56. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 大体、こういう計画につきまして、いわば残留農薬としての基準をきめるための調査計画というのは、大体四十六年までに終了したい、こういうような計画のもとに進めておるというわけでございます。ただいまからその第一回目を始める、実現するということでございます。四十六年までには既存の農薬についてのさような調査を行ないたい。ただ、全品目食品につきまして一つ残らず調査をしてきめるかどうかということは、非常に多くの大量の食品でございますので、確答はいたしにくいわけでございます。少なくとも、その農薬の残留という問題と関連いたしまして大事だと思われるものは、できるだけ拾っていく、こういう姿勢で計画を進めてまいりたいと思います。
  57. 亀田得治

    亀田得治君 いま説明になった研究の順序ですね、品目をいまちょっとおっしゃったわけですが、これも一覧表にしてつくってくれませんか。皆さんにひとつ渡してほしいと思う。
  58. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) さっそく調製して提出いたします。
  59. 亀田得治

    亀田得治君 そうして、そういうものがきまりますと、先ほどの説明では、食品衛生法の第七条できめる、そういうことになりますね。
  60. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) ただいま私どもといたしましては、七条で食品の規格という形で示すほうが最も適当という見解で進めております。
  61. 亀田得治

    亀田得治君 第七条と第四条違反は、これは罰則がだいぶん違いますね。第七条のほうがだいぶん軽いわけですね。第四条のほうが重いわけですよ。そういう規格に反して毒物が、一般大衆が食べるものに入っている、相当に。これは知らぬうちに健康を害するわけです。私がいつも言うように、これでは、けんかでなぐり合い、これはお互いの承知の上でやる。知らないうちにいつの間にか健康が侵される、そういうおそれがある。こういうものは私は相当悪いと思うのですが、そういうちゃんと規格が出た後に、なおかつそういうことがやられるということでは、これはうっかり——罰則の適用ですから、全然知らなかったのだとか、そういうことになれば、また違ってくるでしょうが、承知の上でやるということにならなければ、罰則の適用になってこないでしょう。承知の上でそういうことをやるという場合は、七条でなしに、四条のほうがいいんじゃないですか。
  62. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 第七条というほうを適当であろうと考えましたのは、決して罰則の軽いほうをとるというつもりではございませんでして、第四条で、有毒のものが付着しておるものというものはいけないのだ、ただし、健康をそこなうおそれのないものとして厚生大臣が指定して除いた場合ということになりますと、その場合のきめ方にもよるわけでございますけれども、たとえば、ある一定度以上のものはいけませんというような物質についての規定が第四条で出ますと、かりに私どもの考える許容量をちょっとでも越したものは有害であるということを考えておりませんので、うんと安全圏のつもりでございますけれども、四条でまいりますと、すべてのものが全部それに一気に引っかかってしまうというおそれが出てまいるわけでございます。したがいまして、現在の、一応先ほど申し上げました計画のもとにいろいろな実態を調べておるという段階からは、個々の食品という形で、個々と申しますか、それぞれの食品という形で第七条を適用する、かつ、それを広げていくということでカバーするということが最も妥当だというふうに考えたわけでございます。ただ、七条の違反がありました場合には、第四条というものは全く発動しないのかという問題がございますけれども、これは一応、法律のほうの専門ではございませんが、七条に違反した場合でも、同時に第四条を適用するという解釈が成り立ち得るということも私ども聞いております。
  63. 亀田得治

    亀田得治君 そういう理解なら一応いいだろうと思うのです。  そこで、残留許容量の問題については、アメリカなり外国でも最近ずいぶん基準をきめていますね。そういうのとだいぶん違いますか。この四品目について、その国なりによってだいぶんこれは違うものでしょうか。私の聞きたいのは、そんなに違わぬものだとすれば、一応諸外国できめているやつがありますからね。一応それを基準にして、こちらも早くもうきめてしまう、あとからさらに日本の土壌等にきっちりあった基準が研究されたらまた訂正するということでも私はいいんじゃないかと思って聞くわけですが、どうなんでしょうか。
  64. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) こういう残留農薬の許容量の問題というのは比較的歴史が浅いという問題があるかと存じますが、国々によりまして、やはりかなりでこぼこがあるという実態でございます。まあ一口にまとめて先ほど申しましたような、これから予定しますものを申し上げれば、まずアメリカとかオーストラリアに比べますと、はなはだきつい基準になるという傾向でございます。どららかといえば、ヨーロッパ諸国のほうにはやや近い。しかしアメリカあたりに比べれば、これから私どもが提案しようとしている案は非常にきびしいものになる、大体そういう案でございます。したがいまして、ただいま私どものほうでも、やはり従来から外国の例を直ちにとりまして算定したいというふうな空気もあったわけでございますけれども、いまのような例から申しますと、いきなりそれをとることがはたしてほんとうなのかどうかという不安も感じております。特にアメリカのような基準が比較的高いというようなことにつきましては、現在国際的にも御承知のようにWHOあるいはFAOのこの問題の専門委員会が開かれておるわけでございますが、そういうところにおきましても、やはりおまえのほう高いじゃないかという非難も、アメリカにも向けられておるという状況でございますので、私どもやはりWHOやFAOでこれくらいの許容量であるときまったものにつきましては、それと日本の実態をよく合わして、少なくともその線より以下、言いかえますと、一方で計算しまして、ここまででよろしいと、こういいましても、日本の先ほど申しました実態が現実にそれよりはるかに下であるというような場合に、何も上の高い基準をとることはないと思いますので、そういうような態度でもって、できるだけ低いほうの基準をとって食品の安全をはかりたい、どういうつもりでございます。したがいまして、確かに外国のものをとって、いきなりきめるということは一法かと存じますが、必ずしもそれによりがたいという点で、できるだけ私ども日本に合わせてやりたい、こういうふうな基本的なつもりでございます。
  65. 亀田得治

    亀田得治君 そういうものがきまったあとは、それを取り締まるということが当然出てくるわけでしょうが、それはどういうふうにして調べることになりますか。
  66. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 全国に御承知のとおり、約五千数百名の食品衛生監視員と称する都道府県知事の任命を受けた者が全国の都道府県並びに保健所におるわけでございます。一部は衛生研究所にももちろんおるわけでございます。こういう五千何百人かの食品衛生監視員の方々が、あるときには私どもの指令と申しますか、そういう指示に従いまして一定の時期に全国一斉にやる、こういう形で収去をいたしまして、検査をする、あるいはその県によって独自の立場で計画を組んで任意にこれを見ていく、こういう大体二つの方向で監視の線を強めてくる、こういうつもりでございます。
  67. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ次に農林省に聞きますが、そういう残留許容量に対応した安全使用基準をあなたのほうは検討しておるわけですね、農薬の。その作業はどういう状況ですか、御説明ください。
  68. 田所萠

    説明員(田所萠君) 農薬の残留問題につきましては非常に重要な問題でございますので、現在厚生省とも十分連絡をとりましてその対策を進めておるわけでございます。それで農林省といたしましては、現在厚生省のきめます農薬の残留許容量というものが出ましたら、それに対応しまして農薬の安全使用基準というものをつくっていきたいということで、現在試験研究機関、検査機関の体制の整備をはかっておるわけでございます。それで昭和四十二年度から年次計画によりまして、農産土壌の残留調査を進めておるわけでございます。
  69. 亀田得治

    亀田得治君 あの何でしょう。農林省のほうじゃ厚生省の作業を待って、それに対応した使用基準をつくるというので、したがって向こうの仕事がはかどらぬことには困るということになるのかもしれませんが、厚生省じゃ四品目についてはもう結論が出るわけですね。そういうものについての農薬側から見た使用基準というものは作業が進んでいるでしょう、ある程度
  70. 田所萠

    説明員(田所萠君) 安全使用基準につきましては、まあ農薬を何回かければどの程度残留するというような立場で、農薬の使い方によりまして毒性と申しますか、残留毒性の量が違ってくるというようなこともございますので、現在厚生省のほうで許容量をつくっておりますが、農林省といたしましては、いろいろそういう関係の作物につきまして、この際問題になっております農薬について散布の試験なり、いろいろなことをやりまして、どの程度になるかというようなことを現在調査中でございます。それで許容量が出ましたら、それに合わせまして結局、調査しておりますデータにのっとりましてそういう基準をつくりたい、そういうふうに思っております。
  71. 亀田得治

    亀田得治君 十八種類ぐらいの農薬については大体の作業ができているのじゃないですか。
  72. 田所萠

    説明員(田所萠君) 四十二年度におきましては大体十三の農薬、作物は十作物を対象にいたしまして現在調査をやっているわけでございまして、これは農林省の技術会議のほうで調査をやっております。その結果につきましては、まだわれわれといたしましては報告を受けておらないわけでございまして、あと四十三年度につきましては、まあ四十二年度に実施したものを含めまして大体十八品目、それから農薬、それから十四対象作物につきましてそういう調査を進める予定にしております。
  73. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると技術会議のほうでそういう検討はやっているが、的確な最終結論というものは厚生省側の許容が出て、そして初めてきまる、そうなんでしょうか。
  74. 田所萠

    説明員(田所萠君) 先生がただいま申しましたように厚生省農薬の残留許容量がはっきりいたしまして、その結果によりまして安定使用基準というものがきまることになるわけでございます。
  75. 亀田得治

    亀田得治君 どうですか。いま一般に売り出されている農薬全部について許容量との関係における安全使用基準というものを早くきめてもらいたいというのが私たちの要求なんですが、これはいつごろ完成できますか。
  76. 田所萠

    説明員(田所萠君) 厚生省のほうの先ほどの農薬の残留許容量の決定にマッチする農林省のほうの体制を整えていきたいと思っております。ただそういう順序につきましては、まあ毒性の強いものからできるだけ実施をしていくというようなやり方でいるわけでございます。
  77. 亀田得治

    亀田得治君 まあ、どうもその辺ははっきりしません。ともかく両者これは一緒になってだね、早く全薬品、全食品につきまして、一般使用者が安心できるような措置というものを早急にやってもらわなければいけません。ともかくこのいわゆる公害に関する法律でも業者の抵抗が強いのですよ、いつの場合でも金がかかる、こういうことは。だからそういうことはもう人権——健康にかえられぬ問題ですからね。これは変な毒素が日本人に全部回ってしまって、それからあわてたって、そんなあなた間に合いやせんですよ。  それは皆さん十分御存じのようにいろんな研究が出ていますがね。日本人の髪の毛は外国人の数倍でしょう、水銀の含有量。日本を離れて外国に留学していると水銀がずっと減る。日本に帰ってきて二、三年するとまたもとの状態になる。おかあさんのこの水銀が胎児のほうにも移る。いろんなデータが、これは部分的ではありますが、貴重な研究というものが出ているわけですわね。だからぜひこれはひとつ厚生、農林行政のいま片すみじゃなしに、強い立場でやってもらいたいと思います。これは広く言うたら公害の一種ですよ。公害問題はずいぶんやかましくなっておりますが、あれは目に見えるからなんだ。こっちのほうは目には必ずしも直接には見えない。だんだんに悪くなっていく。近ごろ肝臓病というのが多いでしょう。これは厚生省医務局長来ておりませんが、どうなんですか。
  78. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 肝臓疾患、呼吸・消化器系の中でふえておると思われるような統計はございますが、なぜふえているかということにつきましては、どうも統計的には必ずしも明らかにできませんが、そういう傾向にあることは事実でございます。
  79. 亀田得治

    亀田得治君 それはまあ肝臓が悪くなるのは必ずしも農薬だけの原因じゃないだろうと、これはまあしろうとにもわかりますけれども、しかし相当やっぱりいろんなことが重なっているのじゃないかと推定されるような原因は、一つ一つ排除していく以外に具体的な道はないわけですからね。せんだって私は、肝臓病のふえている状態よく聞きますからね、統計にもあらわれているのだろうと思って資料を求めたのだけれども厚生省はないと言うのです。そういう資料はないといったってあなた、保険制度がちゃんと完備していて、そんな統計が一体厚生省にないのかと言ったら、医者が保険を請求する場合には、内科とか外科とか大まかな区分で請求しているので、これは肝臓病やとか、これはじん臓病やとか、そこまで書かぬでもいいことになっているのだということを私は聞いたのですね。大体そういうこともこれなっとらんですね。厚生行政として膨大な国費を使って保険制度というものを持っておるのに、その制度を通じて病気の状態がつかめぬようなことをやっているというのでは、これははなはだおかしいと思うのですがね。これは担当が医務局長だが、おかしいと思いませんかね。
  80. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) あるいは先生の御要望になりました趣旨を私どものほうが取り違えて、そういうものがないという意見をお答え申し上げたのかも存じませぬが、その辺はもしそうでございましたならばおわびを申し上げます。  御指摘のように厚生省、私は環境衛生局長でございますから、直接の担当は別でございますが、便宜お答えを申し上げますが、厚生省でも御指摘のとおり健康保険あるいは国民健康保険というものの疾病の動きというものについては、これは問題の基礎資料でございますので、非常な苦労をいたしまして、いろいろと取ってきております。ただいま、たとえば昭和四十年度の肝臓疾患という大づかみなものでございますけれども申し上げれば、そのときの患者の中で、政府管掌健康保険では約一・八%、国民健康保険では約一・七%、これはサンプルをとって抽出してやっておりますので、その誤差はございますが、そういうような実態は実はわかっておるわけでございます。先ほどもお答え申し上げましたように、肝臓疾患がふえる傾向にあるのではないかと申し上げましたのも、さような数字をにらんだ上でのことでありまして、ただその原因が農薬というような問題との結びつきにおいてふえたかどうかというようなお求めと解釈したかもしれませんが、それは非常にむずかしくて、なかなかわからないというようなお答えを申し上げたかと存じますが、実態はそういうことで、厚生省としても疾病の変化というものにつきましては、非常に大きな努力をしてつかんでおるわけでございます。
  81. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと薬務局長、専門家だろうと思うのだが、この農薬というような有毒なものが体内に入ると、肝臓の負担に非常になるんでしょうか、どうなんです。
  82. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 環境衛生局長専門家ですから……。
  83. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 私も実はそういう専門家ではございませんけれども、一応いままでの点を申し上げますと、御承知のとおりいろいろな農薬関係がどこで蓄積をするかというような問題は、動物実験等でもございまして、たとえばBHC関係では肝臓とかじん臓に蓄積をする、しかしそのまた一部は排出をされて出ていくというようなことがそれぞれわかっております。それから先ほど御指摘の水銀のような問題、これもまたじん臓とか中枢神経のほうに蓄積をするというようなことも、実験的にいろいろとわかっておりますので、そういったものが先ほど来御指摘のとおり、その一つが原因であるという意味ではなくて、全体が一つの要素として、やはり健康にとって好ましくない方向に働いておるということは、総括的には申し上げられると思います。
  84. 亀田得治

    亀田得治君 農林省に聞きますがね、現在農薬を登録するのは農薬取締法第二条で、農林省農薬検査所で調べて、そうして許可するわけですね。その場合に今後は残留許容量と、それに対する安全使用基準というものがちゃんと明確になって、そうして許可される。こういうことになるのだろうと思いますが、どうでしょうか。
  85. 田所萠

    説明員(田所萠君) ただいま先生がおっしゃいましたように残留量の問題、これは毒性試験、そういうようなものの成績を登録業者のほうから提出をしていただきまして、厚生省と十分協議をいたしまして、そういう残留量試験を実施した上で登録を許可するということを考えております。
  86. 亀田得治

    亀田得治君 今後はそうだとすると、いままではそれがなかったわけですから、非常に大きなこれは空白状態が長年あったことは認めざるを得ないと思うのですね。これは私は実に大きな損害だと思うのですよ。それでどうでしょうか、厚生省で今度食品衛生法の第七条で、先ほど御説明のように許容量の指定がある。それに反するとその商品は売れないことになる。そうなった場合にこのつくった農民と、それを扱っておる流通機構と、その間の権利義務というか、そういう関係は一体どうなるのですか。これは農林省どうですか。
  87. 田所萠

    説明員(田所萠君) 使った場合にどういう結果が出るか……。
  88. 亀田得治

    亀田得治君 犯罪物件になるのですから、当然これは売れないことになるわね。廃棄するか何かなるのでしょう。そうなった場合、農民のほうに、これは売れないから、流通機構のほうが金を払わぬというようなことになったら問題が起こらぬとも限りませんがね。そういう問題はどういう  ふうに考えておりますか。
  89. 田所萠

    説明員(田所萠君) そういう場合が起こるということも想像されないわけではありませんが、農林省立場といたしますと、そういう農薬の使い方なり、そういうことにつきまして十分、もちろんその農薬そのものの利用方法として表示もいたすわけでございますが、指導いたしまして、共同防除なりいろいろな方法、それから指導者、農民に対するPRなり教育を十分やりまして、そういうことのないように極力万全を期していきたいというふうに考えております。
  90. 亀田得治

    亀田得治君 したがって、新しい農薬について、農薬取締法第二条による許可を与える場合に、安全使用基準というものをよほど厳格にきちっとつくっておきませんと、あとにそういうトラブルが起きて、双方の業者に迷惑をかけるというようなことにもなりかねないわけでして、私はこれはいままで法律の第二条運用、いままでの運用よりも非常に重要な問題がつけ加わってきておるという認識を農林省にしてもらいたいと思って指摘しているわけなんです。
  91. 田所萠

    説明員(田所萠君) 先生のおっしゃるとおりであろうと思います。われわれといたしましても、そういう表示につきましては、今後十分指導をしていきまして、そういうことが起こらないように、万全を期していきたいというふうに思っております。
  92. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっとまだいろいろお聞きしたいこともありますが、時間がありませんので簡単に聞きますが、農林省農薬使用方法についての今後の指導方針ですね、指導方針、中身を申し上げますと、一般農民の方はこれはしろうとですね、しろうと。だから、しろうとにそういう危険なものを扱わせない、専門家が請け負って農薬を使うとか、あるいは専門家が参加した共同体制で農薬を使うとか、こういうことが指導方法としては大事なんじゃないかと思っているのです。しかし、個人使用になれている農民にすれば、そんなことめんどうくさいという、若干は不平不満が出るかもしれぬと思いますが、その辺のところを、根本方針だけ、ちょっと承っておきたいのです。
  93. 田所萠

    説明員(田所萠君) 最近は農薬の被害、そういう問題がございますので、農林省といたしましては、今後の危被害対策といたしまして、厚生省なり都道府県とできるだけ協力をいたしまして、そういう危害の防止をしていくように努力をしていきたいというように思っております。そのために農林省といたしましては、本年度農薬の安全使用の予算もとったわけでございますが、今後は、そういう安全使用の講習会開催なり、それからそういう指導者がついた共同防除というような組織をできるだけ育成いたしまして、そういう事故のないように今後は進めていきたいというように考えております。
  94. 亀田得治

    亀田得治君 端的に私の聞きたいのは、個人使用でいくのか——それだけでいくとはおっしゃらぬだろうが、それをなるべくさせぬような方針で、そうして共同防除なり、専門家にやらしていくという方向をとっておるのか、どっちかというのです。方向だけでいいのです。こまかいことは時間がないから……。
  95. 田所萠

    説明員(田所萠君) 農業団体を通じまして、できるだけ共同防除ということで、事故のないように進めていきたいというふうに考えております。
  96. 亀田得治

    亀田得治君 それからもう一つの大きな問題、結局は毒性の少ない農薬開発、これができれば問題はだいぶん楽になるわけですね。しかし毒性の少ないのはきき目も悪いというようなことで、そこに矛盾が出てくるわけですが、それにしても、毒性が少なくてできるだけきくというものをやはり努力してほしいのですね。ある程度私はきき目が少なくてもしかたがないと思うのですよ、それは。業者の立場に立つと、やはりきき目のあるやつをじゃんじゃん宣伝するとよう売れるものだから、あまり乗ってこない。毒性の少ないのできき目のあると言ったら、ちょうどこれは解毒剤みたいなもので、なかなか金のかかる研究をしなければならぬことですが、その点の根本方針がどうなんですか。
  97. 田所萠

    説明員(田所萠君) 農林省といたしましても、ただいま先生が御指摘になりましたように、できるだけ低毒性のものを今後使っていくという方向で考えておるわけでございます。ただ、直ちにすべてのものがそういうふうになるわけにはまいりませんが、今後はそういう低毒性の農薬を普及すると同時に開発をしていって、そういうことのないようにできるだけやっていきたいというふうに思っております。
  98. 亀田得治

    亀田得治君 水銀剤は、予定どおりことしからすべてストップですか。
  99. 田所萠

    説明員(田所萠君) 水銀剤につきましては、大体年次計画で予定どおりに転換をしてきております。大体四十三年度をもちまして全面的に転換をするように指導をしていきたいというふうに思っております。
  100. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと弱いですな。あれは国会でちゃんと問題になって約束になっているのですよ、四十三年で打ち切ると。四十三年度というと来年の三月までになるが、とにかくことし一ぱいでしょう、約束は。そうでしょう。だいぶんややこしくなってきているのと違いますか。
  101. 田所萠

    説明員(田所萠君) そういうことはありません。
  102. 亀田得治

    亀田得治君 ことし一ぱいで打ち切りますか。
  103. 田所萠

    説明員(田所萠君) ことし一ぱいで打ち切るように考えております。
  104. 亀田得治

    亀田得治君 業者のほうがそれを聞かないというたらどうなるのですか。登録取り消しの方法をとりますか。
  105. 田所萠

    説明員(田所萠君) 業界のほうには、そういう農薬につきましての生産はストップをさしております。
  106. 亀田得治

    亀田得治君 だから、現在出ておるのはストック品ですか。
  107. 田所萠

    説明員(田所萠君) 現在あるのは大体ストックでございますが、その中でストックが残っておるということであれば、そういうもののうちひどいものにつきましては、できるだけ回収をするという方向で業界指導していきたいと思っております。
  108. 亀田得治

    亀田得治君 それからパラチオンとチップは四十四年末でストップの指令を農林省は出しておりますね。これは予定どおり作業は進行しておるのですか。
  109. 田所萠

    説明員(田所萠君) パラチオンとチップにつきましては、ことしから生産のほうも調整をいたしております。四十四年度で打ち切るように進めておるわけでございます。
  110. 亀田得治

    亀田得治君 いまの農林省じゃその程度しか力がないからね。だから実際は有害だということがわかりながら、若干の年を置いてやっておるわけですがね。実際はやはりもう少しぼくら早めてやってもらいたい。それは会社にはどれだけの負担になるかわからぬけれども、しかしあることによって、やはりたとえわずかの人でも損害を受けるということは、文明国のすることじゃないですよ、それは。一人の人の命を助けるためにでも全力をあげてやらなきゃならぬ。それがあなた民主主義の時代です。だから既定方針をさらに繰り上げろというてもなかなかできぬでしょうが、一ぺんきめたやつを、また業者の圧力でずるずるになる、そういうことにならぬように、ひとつ努力をしてください。  それから最後に人権擁護局長にもう一ぺん聞きますが、昭和四十一年の九月二十八日に、人権擁護委員連合会の全国の大会で、水銀農薬の禁止をしてほしいという、こういう決議をされたわけですね。農林省がいまのような取り扱いをしている一つのささえにも私はなっておると思うのです。そういう面から見ても、農薬というものに対するやはり認識をもっと深めてもらって、とかく知らぬうちに善意の第三者が健康を害されると、こんなことはやはり人権立場からもっと強く関心と注意を払うようにしてほしいと思っているんです。何かなぐり合いとかそういうことだけが人権じゃないですからね。そういう点についての局長のひとつ、きょうの質疑を通じて考え方を最後にお聞きいたしておきます。
  111. 堀内恒雄

    政府委員堀内恒雄君) 農薬関係しまして人が死亡したというような事件で、人権問題として従来取り上げたことはございませんですが、ただいまお話がありましたように、全国人権擁護委員連合会におきまして、有機水銀含有農薬が農作物の中に残留しまして、それが食べ物とともに人体内に摂取される、それによって人の身体に害を及ぼすということが報道されましたので、それを連合会におきまして、人権上も問題があるとしまして、お話のように昭和四十一年の十二月八日に、連合会長の名前をもちまして、農林大臣に対しまして、さような農薬使用をやめて他の安全な農薬に切りかえる措置をとるように要望したことがございます。また、ただいま御指摘のように、私ども立場といたしましても、今後人命を尊重する立場から、農薬の取り扱いにつきましても、私どもも十分に注意をして検討していきたい、対処していきたい、こう思います。
  112. 北條雋八

    委員長北條雋八君) 他に御発言もなければ、本件の質疑は本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十五分散会      —————・—————